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内閣総理大臣(
安倍晋三君) 稲田朋美議員にお答えをいたします。
国土強靱化の取組についてお尋ねがありました。
この夏、
大阪北部地震、
西日本豪雨、台風二十一号、
北海道胆振東部地震など、大
規模な
災害が相次いで発生しました。私
自身、被災現場を視察し、
自然災害の猛威を改めて実感しました。
災害から人命、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化は喫緊の課題であると痛感しています。
政府としては、一連の
災害に対し、
関係自治体の復旧復興事業が進むよう、十分な
予備費を活用して、発災後直ちにプッシュ型支援を実施するとともに、生活やなりわいの再建に向けた支援策の実施、激甚
災害の指定などの
対策を迅速に講じてきたところです。
また、一連の
災害の
被災地の復旧復興を更に加速し、ブロック塀改修等に
対応するため、
平成三十年度
補正予算案に九千三百五十六億円を計上しているところであり、早期の成立の御理解と御協力をお願いいたします。
今後は、現在進めているインフラの総点検の結果を始め、これまでの
災害を通じて培ってきた経験や教訓を踏まえ、国土強靱化基本計画を年内に見直すとともに、防災・減災、国土強靱化のための緊急
対策を年内に取りまとめ、三年間集中で実施するなど、必要な
予算を確保した上で、強靱なふるさと、誰もが安心して暮らすことができるふるさとをつくり上げてまいります。
日米同盟の強化及び
日米物品貿易協定についてお尋ねがありました。
米国は、
日本が攻撃を受けた場合、
日本と共同対処することを条約上の義務として約束している唯一の同盟国です。私は、
トランプ大統領の就任以降、首脳
会談や電話
会談を合わせ三十回以上に及ぶ
会談を通じて個人的
信頼関係を築いており、
日米同盟はかつてないほど盤石であります。
引き続き、朝鮮半島を含む東アジアにおける
米国のプレゼンスを確保しつつ、平和安全法制に基づく取組等を通じて
日米同盟の強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け協力し、
地域や世界の平和と繁栄に貢献してまいります。
これまで
我が国が結んできた包括的な
FTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、
投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを、交渉を開始する段階から明確に目指してきました。
しかし、今回の
日米共同声明では、サービス全般の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで
我が国が結んできた包括的な
FTAとは異なるものであると考えています。
他方、
FTAについて国際的に確立した定義が存在しないことも事実であるため、言葉遣いの問題として、今回の交渉について、
FTAの一種ではないかとの御意見があることは承知しています。
そうした中で、私がこれまでFFR協議について
FTA交渉でも
FTAの予備協議でもないと申し上げてきた最大の理由は、国内の農林漁業者の
皆さんにTPP以上の関税引下げが行われるのではないかとの懸念があったためであり、
農林水産業は必ず守り抜くとの思いから申し上げてきたものであります。
そして、今回、
日米共同声明において、農林水産物については、過去の
経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大
前提を
米国と
合意いたしました。この点が最大のポイントであり、この
前提の上に今後
米国と交渉を行い、
我が国の基である
農林水産業を必ずや守り抜く
決意であります。
日中関係についてお尋ねがありました。
今回の私の訪中は、日中平和友好条約の締結四十周年という節目の年に
日本の
総理大臣として七年ぶりの公式訪問となり、習近平主席や李克強
総理との間で、長い時間をかけて大変率直で有意義な
会談を行うことができました。
国際スタンダードの上に、競争から協調へ。隣国同士として、互いに脅威とならない。そして、自由で公正な貿易体制を発展させていく。習近平主席、李克強
総理と、これからの日中関係の道しるべとなる三つの原則を確認しました。そして、この原則の上に、ともに世界の平和と繁栄に建設的な役割を果たしていくことで一致しました。
隣国ゆえにさまざまな課題はありますが、大局的な観点から首脳同士が率直に語り合うことでそうした課題もマネージしていく。日中関係の新しい時代を開く訪中となったと思います。
具体的な成果としては、朝鮮半島の非核化に向けて引き続き緊密に連携することを確認したこと、国際スタンダードに合致し、第三国の利益となるウイン・ウイン・ウインの
企業間協力を推進することで一致し、日中の
企業間で五十二の覚書が交わされたこと、青少年交流を推進するため、五年間で三万人
規模の交流を実施することで一致したこと、イノベーション及び知的財産
分野に関する新たな対話の創設で
合意したこと、日中海上捜索救助協定に署名したことなど、幅広い
分野で数多くの具体的な成果が上がりました。
五月の李克強
総理の訪日、今回の私の訪中、そしてその次は習近平主席を
日本にお招きし、首脳同士の相互訪問を通じて、あらゆる
分野の交流、協力を推し進め、日中関係の新しい時代を切り開いてまいります。
北朝鮮問題については、六月の歴史的な
米朝首脳
会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。この流れにさらなる弾みをつけ、
日米、
日米韓の結束のもと、
国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指します。
次は、私
自身が金正恩委員長と向き合わなければなりません。最重要課題である拉致問題について、御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの
決意で臨みます。相互不信の殻を破り、拉致、核、ミサイルの問題を解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指してまいります。
日韓関係については、九月の国連総会の際の文在寅
大統領との
会談を始めさまざまな機会に、本年が日韓パートナーシップ宣言二十周年であることを踏まえ、未来志向の日韓関係構築に向けて協力していくことを累次確認してきているにもかかわらず、御
指摘の韓国主催国際観艦式における自衛艦旗掲揚の問題、そして韓国
国会議員の竹島上陸等、それに逆行するような動きが続いていることは遺憾です。
政府としては、日韓間の困難な問題に適切に
対応しつつ、未来志向の日韓関係構築に向け引き続き努力していく考えであり、韓国側の適切な
対応を強く期待しています。
日ロ関係についてお尋ねがありました。
日ロ間の活発な議員交流は、日ロ関係のさらなる発展のために大変重要であり、四月に二階自由
民主党幹事長がロシアを訪問し、メドベージェフ首相と
会談したことや、先日の観光立国
調査会によるロシア訪問等、活発な党外交の展開に敬意を表します。
政府としても、人的交流の促進は重要と考えており、ロシアにおける
日本年、
日本におけるロシア年の相互開催などを通じ、人的交流の促進を積極的に推進してまいります。
北方領土の問題については、これまで二十二回にわたりプーチン
大統領と首脳
会談を行い、二人だけで相当突っ込んだ議論をしてきました。北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本
方針のもと、引き続き粘り強く交渉を進めてまいります。
防衛力の抜本的強化の
必要性と、防衛大綱の見直しに向けた
決意についてお尋ねがありました。
政府の最も重要な責務は、
我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすることであり、
安全保障政策の根幹となるのは
我が国みずからの努力です。
今、
国際社会のパワーバランスは大きく変化しつつあり、
我が国を取り巻く
安全保障環境は、格段に速いスピードで不確実性を増し、厳しいものとなっています。
このような中、大切なことは、
国民の生命財産、そして領土、領海、領空は
我が国の主体的、自主的な努力によって守る体制を抜本的に強化していくことです。同時に、これこそが
日米同盟の抑止力、対処力を一層強化するものであり、各国との
安全保障協力のさらなる深化にもつながるものです。
防衛大綱の見直しに当たっては、現実に真正面から向き合い、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保することが不可欠であると考えています。専守防衛は当然の
前提としながら、これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる、防衛力のあるべき姿を追求してまいります。
商業捕鯨の再開についてお尋ねがありました。
IWC、国際捕鯨
委員会では、捕鯨を支持する国と反捕鯨国とが対立し、二十年以上にわたり、実質的に資源管理に関する決定がなされていません。
この
状況を打開するため、本年のIWC総会において、
我が国は、捕鯨に対する立場の違いを超えて、IWCの機能回復を目指す改革案を提出しましたが、反捕鯨国の反対で否決されました。捕鯨国に対する異なる意見や立場が共存する可能性すら否定されたことは、極めて遺憾であります。
政府としては、国際法に従い、科学的根拠に基づく資源管理を徹底しつつ、商業捕鯨を再開することを目指すという
方針に変わりはありません。一日も早い商業捕鯨の再開のため、あらゆる可能性を追求していく
決意です。
海洋プラスチックごみについてお尋ねがありました。
海洋プラスチックごみによる汚染は、生態系などへの悪影響も懸念される地球
規模の課題であり、人類の
責任として
防止していかなければならないとかたく
決意しています。そして、そのためには、G7のような先進国のみならず、プラスチックごみを多く排出する途上国も含めた世界全体での取組が不可欠です。
我が国は、スリーRの考え方に基づき、国内の法制度を整え、技術を磨き、循環型
社会を築いてきました。
まず、
我が国としては、今後策定するプラスチック資源循環戦略では、限られた資源を最大限有効利用するための総合的かつ先進的な
対策を盛り込み、プラスチックごみ
対策に一層積極的に取り組む考えです。
同時に、重要なことは、
我が国のこのような経験と技術をアジアの近隣国を始め世界各国と共有し、世界全体の取組へとつなげていくことであると考えます。
来年のG20大阪サミットも見据えながら、廃棄物処理インフラの導入支援など実効性のある国際協力を推進し、海洋の汚染
防止という目的の実現に向けた国際的取組を主導してまいります。
地方創生についてお尋ねがありました。
日本の地方には、それぞれ豊かな自然、特色がある。ふるさと名物、地場
企業のオンリーワンの技術力、固有の歴史、文化、伝統など、さまざまな強みがあります。その地方ならではの強み、魅力を生かし、全国、さらには世界を目指すことで、
地域が活性化するとともに、
日本全体の成長につながるものと考えます。
全ての地方が金太郎あめのように同じことをするのではなく、それぞれの地方の強みを生かす発想が、
安倍内閣の地方創生であります。
そして、みずからの魅力や強みを一番わかっているのは、その地方におられる
皆さんです。
政府として、そうした地方の
皆さんの情熱、独自の創意工夫を、一千億円の地方創生推進交付金などにより後押ししてまいります。
さらに、これまでも
地域おこし協力隊の拡充などに取り組んでまいりましたが、今後、地方にこそチャンスがあると感じる若者のUIJターンを力強く支援していく考えです。外国から来た新しい発想を持つ人々と
地域におられる
皆さんとの融合を通じて化学反応を起こし、地方に新しい活力と次なる成長の可能性を生み出していくことで、地方創生にさらなる弾みを加えてまいります。
農業の成長
産業化についてお尋ねがありました。
安倍内閣においては、農業を成長
産業化させ、農業の
所得向上を実現するため、米の生産調整の見直しや輸出促進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。
これにより、農林水産物の輸出は五年連続で過去最高を更新し、昨年は八千億円を超え、四十代以下の若手新規就農者も、統計開始以来、初めて四年連続で二万人を超えました。また、生産農業
所得も、この十八年間で最も高い、三兆八千億円まで
拡大するなど、着実に成果があらわれ始めています。
こうした農政改革に加え、農業の生産性を飛躍的に高める先端技術の開発や現場での活用を強力に進めるなど、新たな課題にも挑戦してまいります。
安倍内閣では、引き続き、農政全般にわたって改革を力強く進めます。農業の成長
産業化を実現し、食料の安定供給の機能を強化することで、食料
安全保障の確立を図りつつ、若者が夢や希望を持てる農林水産新時代を構築してまいります。
外国人材の
受入れ拡充についてお尋ねがありました。
新たな
受入れ制度は、深刻な
人手不足に
対応するため、現行の専門的、技術的
分野における
外国人の
受入れ制度を拡充し、一定の
専門性、技能を有し、即戦力となる
外国人材を
我が国に受け入れようとするものです。
制度の運用に当たっては、できる限り客観的な指標により
人手不足の
状況を確認し、真に必要な業種に限り、
外国人材の
受入れを行うこととしております。
また、現在、
外国人材の
受入れ・共生のための総合的
対応策の検討を進め、在留のための環境
整備についても関連
施策を積極的に推進するとともに、不法滞在者、偽装滞在者
対策を含む犯罪
防止の取組も的確に進めてまいります。
体制面においても、出入国在留管理庁を新たに設置し、管理体制を抜本的に強化し、
国民の
皆様に不安や懸念を与えることがないよう、
政府全体として適切に取り組んでまいります。
言うまでもなく、
安倍政権として、いわゆる移民政策をとる考えはありません。
全世代型
社会保障制度の具体的な
方向性についてお尋ねがありました。
少子
高齢化が急速に進む中で、これまでの
社会保障システムの
改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠であります。
まず、
消費税の使い道を見直し、子供
たち、子育て世代に大胆に
投資します。二兆円
規模の
予算により、来年十月から
幼児教育無償化を行うとともに、再来年四月から真に必要な子供
たちへの高等教育の
無償化をいたします。
同時に、人生百年時代の到来を見据えながら、元気で意欲あふれる
高齢者の
皆さんが、年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境を整えることが必要です。既に、未来
投資会議において、七十歳までの就業機会の確保や、中途採用、キャリア採用などの
拡大、生涯現役時代の雇用制度改革に向けた検討を開始しており、来年の夏までに実行計画を決定する考えです。
その上で、生涯現役
社会を
前提に、予防、健康へのインセンティブ措置の強化や、年金の受給開始年齢を自分で選択できる範囲を広げるなど、医療、年金も含めた
社会保障全般にわたる改革を行う考えです。こうしたシステム全般にわたる改革を進める中で、給付と負担のバランスについてもしっかりと検討してまいります。
今後三年かけて、子供から若者、子育て世代、現役世代、
高齢者まで、全ての世代が安心できる
社会保障制度へと改革を進めてまいります。
自衛隊と
憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正の内容について、私が
内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、お尋ねですので、あえて、私が
自民党総裁として一石を投じた考えの一端を申し上げたいと思います。
今や、
国民の九割は、敬意を持って自衛隊を認めています。六十年を超える歩みの中で、自衛隊の存在は、かつては厳しい目で見られていたときもありました。それでも自衛隊の諸君は、隊員諸君は、歯を食いしばり、職責を全うしてきました。まさに、自衛隊諸君は、みずからの手で
国民の
信頼をかち得たのであります。
それにもかかわらず、近年における
調査でも、自衛隊は合憲と言い切る
憲法学者は二割にとどまり、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があります。
このような
状況に終止符を打ち、全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる
政治家の
責任であります。
同時に、
国民のため命を賭して任務を遂行する隊員諸君の
正当性を明文化し、明確化することは、国防の根幹にかかわることであります。
いずれにせよ、
憲法改正は、
国会が発議し、最終的には
国民投票により決められるものです。
憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、
国民の
皆様の理解を深める努力を重ね、与党、野党といった
政治的立場を超え、できるだけ幅広い
合意が得られると確信しています。
社会の多様性の尊重についてお尋ねがありました。
御
指摘のとおり、女性、障害者や、LGBTと言われる性的少数者などに対する不当な差別や偏見はあってはならないことであります。
多様性が尊重され、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、そして、支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受できる共生
社会を実現するため、教育や啓発の充実、適切な相談
対応、人権侵害の疑いのある事案への迅速な救済等にしっかりと取り組んでまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から
答弁させます。(
拍手)
〔
国務大臣岩屋毅君
登壇〕