○辰巳孝太郎君 私は、
日本共産党を代表して、
労働者派遣法改定案について、
総理並びに
厚生労働大臣に
質問いたします。
業績が悪いからの一言で切られる、私にも日々の暮らし、家族があり、安定した
生活を求めている、ある
派遣労働者の声です。今でも多くの
派遣労働者が、
派遣は低
賃金で不安定、法改定で直接
雇用の道が閉ざされると怒りの声を上げ続けています。
元々、
労働者供給事業は
職業安定法第四十四条で禁止されています。これは、戦前、人貸し業の中間搾取が
労働者を苦しめ、「蟹工船」にも描かれたようなひどい無権利状態を招いたからです。直接
雇用の大
原則はこの反省から生まれました。
ところが、一九八五年の
労働者派遣法制定以降、当初十三業種に限られていたものが、九九年には
原則自由化、二〇〇三年には製造業にまで広げられました。
派遣労働者の数は二〇〇八年度に過去最高の三百九十九万人に達し、全世界の
派遣事業収益の四分の一を
日本が占め、ILOが
指摘するとおり、
日本は世界最大の
派遣市場を持つ国となりました。その結果、リーマン・ショックを理由に次々と
派遣切りが行われ、
社会問題ともなり、不十分ですが
派遣法の
見直しも行われたのです。
ところが、本
法案は、そんな反省もなく、
規制緩和を更に進めるものであります。
総理、あなたの目指す世界で一番
企業が活躍しやすい国とは、今や四割にまで広がった非
正規雇用、低
賃金、不安定
雇用を更に広げることですか。そんなことをすれば、格差と貧困をより深刻にし、
日本の活力を奪い、国内需要までも冷え込ませることになるのではありませんか。
お答えください。
現行
派遣法には、常用
雇用の代替はしてはならないとの大
原則があり、
派遣は臨時的、一時的
業務に限るとされてきました。これは、
企業にとって
原則一年、最長で三年を超えても必要な
業務は
派遣ではなく直接
雇用すべきだということです。ところが、改定案では、同じ
業務であっても、人さえ替えればずっと
派遣を使い続けることができます。
総理、
常用代替の禁止は、この
法案によって事実上
実効性を失うのではないですか。
また、別の部署に異動させれば永続的に
同一の
派遣労働者を雇い続けることができます。
派遣先にとって、ずっと
派遣を使うことができれば
正社員を雇わなくていい、まさに
正社員を
派遣で置き換えることができるのではありませんか。
改定案では、
同一事業所での
派遣労働者の受入れ
上限は三年としています。しかし、過半数労働組合等から
意見聴取をすれば三年を超えて
派遣労働者を受け入れることができます。
政府は、この
意見聴取に
常用代替に対する歯止め
効果があるとしています。しかし、過半数労働組合等が受入れに
反対しても、対応方針等の
説明を行えば半永久的に
派遣労働者の受入れが可能ではありませんか。これのどこが歯止めになるのですか。
政府は、
派遣労働者が就業継続を
希望する場合は
雇用安定措置をとるとしています。その一つが
派遣元の
派遣先への直接
雇用の依頼の義務付けです。本年二月の施政方針演説において
総理も、その取組によって
正規雇用を望む
派遣労働者の皆さんにそのチャンスを広げますと断言しています。
しかし、あくまで依頼の義務付けです。チャンスを広げると言った
総理は、一体どれだけの
派遣先企業がこの依頼に応えて
派遣労働者を
正規雇用すると見込まれているのですか。また、
正規雇用、直接
雇用のために
派遣先企業には一体何を義務付けたのですか。
総理、具体的にお示しください。
法案では、
正社員への道を後押しするため、
派遣元に義務付ける
教育訓練等によって
キャリア形成支援を行うとしています。三年ごとにキャリアの見詰め直しを行うことが処遇の
改善に結び付くと言いますが、なぜ
派遣労働者だけが三年ごとにキャリアの見詰め直しを迫られなければならないのですか。
総理、
お答えください。
また、現行法では
期間制限のない
専門二十六
業務の方にも
期間制限が課されます。このことで、既に
雇用契約の打切りを言明する
企業も現れ、ベテラン
派遣労働者などを
中心に大きな不安が広がっています。
派遣労働者には
正社員と同等以上の技術や経験を持つ方がたくさんおられます。
正社員を
希望する
派遣で働く方、この方については道が開けるようにすると繰り返し言うのなら、そういう
方々にとって必要なのは、
派遣元による
教育訓練等の義務化などではなく、
派遣先での
正社員化、直接
雇用の義務化ではありませんか。
総理、
お答えください。
次に、違法
派遣があれば
派遣先が直接
雇用する労働契約申込みみなし
制度の問題です。
このみなし
制度は、本年十月一日
施行で、
専門二十六
業務の偽装や
期間制限違反など、違法な
派遣があれば
派遣先に直接
雇用を義務付けるもので、
派遣切りを契機に二〇一二年に盛り込まれました。
総理は、このみなし
制度によってどれだけの
労働者が直接
雇用になると考えていますか。
しかし、本
法案が成立し、九月一日
施行となれば、
専門業務偽装、
期間制限違反などはそもそも発生しなくなり、みなし
制度は発動されません。これでは、直接
雇用の道が開かれるはずだった
派遣労働者は救済されないではありませんか。十月一日の
施行まで三年も待たせた挙げ句に、違法を合法に変える法改定であり、
労働者への背信行為です。
総理は、円滑に
施行するためだと言いますが、
日本経団連は、二〇一三年の
政策提言、今後の
労働者派遣制度のあり方についての中でも、みなし
制度については、その
施行前に
制度自体を廃止すべきであると要求をしてきました。本
法案は、この声に応えるものにほかならないのではありませんか。また、
厚労省は、訴訟につながるおそれを九月一日
施行の根拠ともしています。しかし、訴訟につながるような違法
派遣の根絶に力を尽くすことこそが労働
行政の
役割ではありませんか。
政府は、附則において、
雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は、速やかに新法の
規定の
検討を行うと定めました。厚労大臣は、
雇用慣行が損なわれるとは、
正社員から
派遣への置き換えが常態化する場合と
答弁しました。これは、置き換えが常態化するまでは容認するということですか。厚労大臣、これでは
常用代替の禁止
原則を堅持することにならないのではないですか。
お答えください。
結局、幾ら本
法案が、
派遣就業が臨時的、一時的なものであると明記しても、また
派遣元に
雇用安定措置を義務付けても、
派遣先に負わせる直接の義務は何一つありません。これは、もはや
派遣労働者を保護する
法案でも何でもありません。
派遣先企業免責・救済法ではありませんか。
政府は、この
法案を突破口に、岩盤規制の打破として残業代ゼロ法、解雇の金銭解決など、
労働者が持つ当たり前の権利をずたずたにする
規制緩和路線を更に進めようとしています。今、
政府が行うべきは、直接
雇用、
正社員が当たり前の
社会、欧州では当然の
同一労働
同一賃金が徹底される
社会の実現です。
日本共産党は、安倍政権の暴走をストップするため、そして希代の悪法を三度
廃案にするため、全ての
労働者とスクラムを組んで闘うことをお約束し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕