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2015-03-04 第189回国会 参議院 国の統治機構に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十七年三月四日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員氏名     会 長         山崎  力君     理 事         猪口 邦子君     理 事         島村  大君     理 事         渡邉 美樹君     理 事         長浜 博行君     理 事         横山 信一君     理 事         清水 貴之君     理 事         倉林 明子君                 井原  巧君                 衛藤 晟一君                 古賀友一郎君                 酒井 庸行君                 高橋 克法君                 武見 敬三君                 柘植 芳文君                 堀井  巌君                 足立 信也君                 江田 五月君                 風間 直樹君                 浜野 喜史君                 吉川 沙織君                 秋野 公造君                 行田 邦子君                 松沢 成文君                 荒井 広幸君     ─────────────    委員異動  一月二十六日     辞任         補欠選任      松沢 成文君     山本 太郎君  三月三日     辞任         補欠選任      荒井 広幸君     平野 達男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         山崎  力君     理 事                 猪口 邦子君                 島村  大君                 渡邉 美樹君                 長浜 博行君                 横山 信一君                 清水 貴之君                 倉林 明子君     委 員                 井原  巧君                 衛藤 晟一君                 古賀友一郎君                 酒井 庸行君                 高橋 克法君                 武見 敬三君                 柘植 芳文君                 堀井  巌君                 足立 信也君                 江田 五月君                 風間 直樹君                 浜野 喜史君                 吉川 沙織君                 秋野 公造君                 行田 邦子君                 山本 太郎君                 平野 達男君    事務局側        第三特別調査室        長        宮崎 清隆君    参考人        東京大学名誉教        授        地方公共団体情        報システム機構        理事長      西尾  勝君        毎日新聞論説委        員        人羅  格君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国の統治機構等に関する調査  (「時代変化に対応した国の統治機構の在り  方」のうち、国と地方関係(これからの地方  自治))     ─────────────
  2. 山崎力

    会長山崎力君) ただいまから国の統治機構に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、井上義行君、松沢成文君及び荒井広幸君が委員辞任され、その補欠として行田邦子君、山本太郎君及び平野達男君が選任されました。     ─────────────
  3. 山崎力

    会長山崎力君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国の統治機構等に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山崎力

    会長山崎力君) 御異議ないものと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山崎力

    会長山崎力君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 山崎力

    会長山崎力君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国の統治機構等に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ政府参考人出席を求め、その説明を聴取することとし、その手続につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 山崎力

    会長山崎力君) 御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  8. 山崎力

    会長山崎力君) 国の統治機構等に関する調査を議題といたします。  「時代変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「国と地方関係」について調査を行うに当たって、本日は「これからの地方自治」について参考人から意見を聴取いたします。  御出席いただいております参考人は、東京大学名誉教授地方公共団体情報システム機構理事長西尾勝君及び毎日新聞論説委員人羅格君でございます。  この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用中のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。  皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますけれども、まず西尾参考人人羅参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、御意見は着席のままで結構でございます。  それでは、西尾参考人からお願いしたいと存じます。西尾参考人
  9. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 西尾勝でございます。  国と地方関係についての第一回の会合ということで、一体何を私がお話し申し上げるべきなのか迷いましたけれども、私は、過去の自分自身経験から、地方分権改革のこの二十年というのをどう見るかということと、もう一つ地方制度調査会で従事してまいりました地方自治制度改革のことについてどういう所感を持っているかということに中心を置いてお話し申し上げたいと思います。  まず、地方分権改革につきましては、一九九五年から二〇〇一年まで通算六年間活動を続けました最初地方分権推進委員会、これを委員長を務められたのが諸井さんでしたので以下諸井委員会と略称させていただきますが、ここで六年間仕事をしましたのと、その次につくられた地方分権改革調査審議する諮問機関として地方分権改革推進委員会というものがございました。二〇〇六年から二〇〇九年まで三年間の任期でしたが、これは会長丹羽宇一郎さんが務められましたので以下では丹羽委員会と略称させていただきますけれども、この委員会に私は二年間従事いたしました。と申しますのは、委員会任期は三年だったのですけれども、出発早々増田寛也さんが委員に就任され、委員長代理に指名されておられたのですけれども、一年たったところで総務大臣に登用されまして委員会を抜けられました。その結果、一人欠員になった委員補充ということが行われまして、途中から私が補充者として加えられて、後半の二年間はそこで私も従事いたしました。したがって、通算八年間、地方分権改革諮問機関関係したことになります。  ちょうどその頃でいいますと、地方制度調査会の方は第二十四次地方制度調査会から始まっていますけれども、つい最近までありました第三十次地方制度調査会まで、私は二十四次から三十次まで全て調査会に関わっておりました。そういう経験に基づいて、大きくは四点ほどのことについて意見を申し述べたいと思います。  まず最初は、地方分権改革二十年の評価についてでございます。  ただいま申し上げました最初委員会諸井委員会勧告に基づいて、機関委任事務制度全面廃止するとともに、国の各省による地方自治体への関与縮小定型化した二〇〇〇年改革と総称されている、あるいは第一次分権改革と総称されている改革は、戦後のシャウプ勧告に基づく地方制度改革以来の大改革であったというふうに思っております。  また、その後の丹羽委員会勧告に基づきまして、その後逐次法制化されてまいりました法令等による義務付け枠付け見直しという措置、それから都道府県から基礎自治体への事務権限移譲という措置、そして更に加えれば、国と地方の協議の場の法制化といった措置などは、いずれも諸井委員会以来の流れを継承した大きな成果であったというふうに評価しております。  ただ、これらの改革はいずれも行政面中心を置いた改革にとどまっておりまして、国と地方の間の税財源配分、この構造を改める、言わば財政面改革には余り見るべき成果を上げることができなかったということであります。その結果、今なお多くの改革課題が手付かずのままに残っております。その意味で申しますと、地方分権改革は依然として未完の改革、未完成のままにとどまっている改革と言わざるを得ません。  しかしながら、更に手を付けるべき課題はいろいろとあることはあるのですけれども、現在の国、地方を通ずる財政状況の下でこの財政面改革に着手することは極めて難しいと判断せざるを得ないように思います。  そこで、地方側は当分の間、国に地方分権改革調査審議する大掛かりな諮問機関の設置を求めず、個々の自治体地方分権改革のこれまでの成果を積極的に活用して住民サービスを充実し、地方分権改革の言わば効果を地域住民にまで還元するということに専心すべきである、専念すべきであるというふうに私は考えております。これが現在の時点での私の評価所感でございます。  二番目の問題として、地方分権改革推進手法について、少し私の思うところをお話ししたいと思います。  地方分権改革推進を進める手法には、大きく分けて所掌事務拡張路線自由度拡充路線というべき二つの路線があるように思います。いずれもこれは私が作り出した造語でございまして、私の本とか論文には書いてありますが、世間一般の人が広く使っている概念ではありませんので、これから少しずつ中身については御説明はいたします。  先ほども戦後のシャウプ勧告に言及いたしましたけれども、このシャウプ勧告は、国と地方の間の事務配分や、都道府県市町村の間の事務配分を改めて、そしてこの事務の再配分に合わせて税財源配分構造を改めようとしたものでございます。  そのとき以来、戦後の我が国では、国から自治体への事務権限移譲とか、都道府県から市町村への事務権限移譲、要するに、まあ言葉が適切かどうか分かりませんが、上位の団体から下位の団体へ、さらに中間の団体から末端の団体へというふうに、上から下へ事務権限移譲することを指して地方分権推進というふうに考える、そういう社会通念が確立されました。その後の地方制度調査会による度重なる答申も基本的にはこの考え方をそのまま踏襲しまして、事務権限の再配分を提唱し続けてきておりました。  このような推進手法、すなわち自治体の所掌する事務所掌事務を拡張しようとする手法、国から地方公共団体仕事を下ろせば下ろすほど自治体が所掌する事務の範囲は広がるということになりますが、この自治体所掌事務を拡張しようとする手法、中でも地域住民に最も身近な基礎自治体である市町村所掌事務を拡張しようとする手法、この手法を指して、私は所掌事務拡張路線というふうに呼ぶことにしているわけであります。  ところで、諸井委員会勧告しました、そしてまたその勧告事項の中でも最大のものであった機関委任事務制度全面廃止であるとか、あるいは国の各省による自治体への関与縮小定型化といった一連の措置は、この所掌事務拡張路線に属するものではありませんでした。このときの機関委任事務制度全面廃止に当たっては、従来、都道府県知事等知事とか都道府県教育委員会といったような都道府県知事等執行機関に委任されておりました機関委任事務は、ごく僅かな例外を除きまして、原則として全てそのまま都道府県自治事務法定受託事務かに改めました。また、従前、市町村市町村長等執行機関に委任されておりました機関委任事務も同様に、原則として全て市町村自治事務法定受託事務に改めました。  要するに、この機関委任事務制度全面廃止事務配分変更を伴っていないわけです。国の事務であったものを性格的に地方公共団体事務に変えますと。性格付けを変えましたけれども、国が担当していた仕事都道府県に下ろしたわけでもありませんし、都道府県が担当していた仕事市町村に下ろしたわけでもないということですね。事務の移動は起こっていないということです。国、都道府県市町村の間の事務配分変更せずに、国の各省による関与の仕組みのみに変更を加えたのです。  すなわち、自治事務に区分けされました自治体事務に関して発せられてきました数々の通達通知と言われるもの、この通達通知は、全てこれ以降はこれに忠実に従うべき訓令、言わば命令ですが、命令ではなく、技術的な助言、テクニカルアドバイスにすぎないものに改められたわけであります。  要するに、忠実に従わなくてもいい、助言として参考にすればよいという性質のものに改められたわけであります。自治体の裁量の余地地域事情に即応した創意工夫余地を広げようとする手法でございます。これを私は自由度拡充路線というふうに呼んでいるわけであります。そして、その後の丹羽委員会勧告に基づく法令等による義務付け枠付け見直し措置も、この自由度拡充路線に属する改革手法であったと言えます。そういう意味で、諸井委員会勧告は、地方分権改革改革手法に新しい地平を切り開いたと言えるのではないかと思っております。  ところがであります。ところが、ごく最近の地方団体側改革提言には、この種の機関委任事務制度全面廃止のときに一つ一つ事務を全て洗い出して、これは自治事務にすべきか法定受託事務にすべきかということを一件一件精査したわけでありますが、次の法令等による義務付け枠付けのときも、何々法の第何条何項のこの措置は果たしてこの義務付け枠付けは必要なのかということを一点一点精査するというような作業をしてきて、自治体自由度を少しでも広げようという積み重ねをしてきたわけですが、この種の関係法令関係条項の改正を一つ一つ積み上げていくという類い自由度拡充路線改革手法に満足しませんで、これでは細かな改革の積み上げにすぎないという印象を持たれるのでありましょう、そういう改革手法に十分に満足せずに、旧来の、昔ながらの所掌事務拡張路線への復帰といいますか回帰、そこへ戻ることを求めるもっと大胆な改革構想が続出してきております。  つまり、例えばでありますが、大阪の維新の会が現に実現を目指しております大阪構想大阪府と大阪市を統合しようとする構想とか、あるいは指定都市市長会が一致して要望しております特別自治構想、これはもう端的に言えば、大都市に限っては府県から独立させよう、別の言い方をすれば、大都市府県としての仕事と市としての仕事を一緒にしようという構想ですけれども、こういう特別自治構想というのを打ち上げておられます。  そして、丹羽委員会でも審議し、その後ずっと実現を見ていないテーマとして、国の各省地方出先機関原則廃止という改革とか、あるいは道州制構想などの改革構想は、いずれも大規模な事務権限一括移譲を求めるものであります。国から都道府県へあるいは道州政府へ、あるいは都道府県から市町村へといったような、ともかく、事務配分の大掛かりな変更を求めようとしているものでありまして、これは私の言う所掌事務拡張路線に属すものです。シャウプ勧告以来、それこそが地方分権だというふうに何となく思われてきたその手法にもう一度戻ろうと、そして大きな改革を何とか実現したいというふうになってきていると、そう感じています。これが二番目の私の指摘したいことであります。  ところで、三番目に私が申し上げたいことは、この所掌事務拡張路線というものには、これをする場合には十分に留意しなければならないことがあるという、所掌事務拡張路線留意事項留意点と言うべきものについて少しお話をしたいと思います。  こうした大胆な改革構想は、いずれも言わば一発逆転を目指すような構想になっているわけでありますが、この種の所掌事務拡張路線改革構想にはリスキーな面がある、危険な面があるということです。全く功罪ないというわけでは、罪ばっかりだと言っているわけでは決してありませんが、気を付けなければならない点があるということであります。  特に、国から自治体への事務権限移譲を目指すいわゆる出先機関原則廃止や道州制構想改革構想では、国の側では、国の側の立場からいえば、できるだけ多くの国の機関廃止したり縮小したりしまして、ここで働いている国家公務員を大幅に削減したいという、言わば行政改革の観点からの要望が、期待が出てくる、それを実現するためにできるだけ大幅な事務権限移譲実現したいという考え方が国の側には出てくる可能性がある。  現に、いわゆる出先機関原則廃止は、小泉政権最後の頃に経済財政諮問会議が決定しました歳出歳入一体改革、つまり、いずれは歳入改革、増税もせざるを得ないだろうけれども、その前に徹底した歳出削減をしなければ国民の同意は得られないだろうということで、歳出削減に重点を置いた歳出歳入一体改革という方針が決められたことがあります。  歳出削減する、中でも、国の財政の縮減を図るということが大きな狙いになりましたので、その有力な手段一つとして国家公務員の大幅な削減ということが浮上したわけです。これをしようと思うと、国家公務員の中で霞が関の本省庁で働いていらっしゃる方はごく一部でありまして、ほとんど大半は地方出先機関で勤務していらっしゃるわけです。この地方出先機関に着目をして、ここにたくさんの国家公務員がいると、これを減らしたいというのがその元々の由来だったわけです。ただ、その改革実現する具体策を新設された地方分権改革推進委員会丹羽委員会で審議するようにというふうに振り付けられていたわけであります。  そこで、国の側はそういう期待の下にこのテーマを出してこられた。そのとき、全国知事会はそれに大賛成をいたしまして、極力出先機関を全面原則廃止してほしい、そして、なるべくそこで所管してきた仕事都道府県に移してほしいというのが知事会の取られた立場だったわけであります。つまり、地方の側では、できるだけ大幅な事務権限移譲実現することこそが地方分権改革趣旨にかなうという考え方が出てくる、そういうおそれがあるわけです。現にそれは起こったことです。いわゆる出先機関原則廃止問題をめぐって現に起こったことであります。  ところが、これがなかなか話が付かない。それは言うまでもなく関係各省庁がこれに強く頑強に抵抗したからですけれども、各省庁が抵抗するのにもそれなりの理由がちゃんとあるわけですね。国の各省は、決して、自ら最後まで責任を持つべきだと思うこと、事務について、これに対するコントロール権を手放そうとはしないわけです。それは国の官僚としては無責任だとお考えになるからです。最後まで責任を負おうと思えば、コントロール手段を維持していなければならないというふうにお考えになるわけであります。  国の各省庁のお役人がそう思うような事務権限まであえて都道府県移譲する、あるいは都道府県広域連合移譲する、あるいは新しく新設する道州政府移譲するというようなことを要求して折衝しますと、本来渡すべきものではないのだけれども、そこまでいって渡せと言われるのなら、まず法定受託事務にすることは最低限の要件だと、絶対自治事務にはしないと、こうおっしゃる。法定受託事務にするというのならまだいいかもしれませんが、それでも自信が持てない、コントロールしていくということが十分にできるかどうか自信が持てない。したがって、各省大臣に直接指揮権を行使する余地を必ず留保しようと各省はするわけです。それが繰り返し起こった論争であります。  言わばそういう形で仮に下ろされたとします。法定受託事務なり、あるいは留保付きの、中央が権限を留保した形で下りてくるという形で、受け取った側は実はこれはひも付きの方式で事務権限をいただくわけでありますが、そういう形で受け取った事務が多くなればなるほど、受け取った側は自治体ではなく国の下請機関にだんだんになっていくわけです。その性格を強めていかざるを得ないという問題があるわけです。私は、そういう国の下請機関性格を強めてしまうような改革はそれこそ地方分権改革趣旨に合わないというふうに考えているわけです。こういうやり方は決して正しい進め方ではないというふうに思っているわけです。  したがいまして、国が最終責任を負わなければならないような事務権限は、純粋な国の事務であるとして、あくまでも国の側に留保しておかなければなりません。これは私の確信です。こういう性質事務をあえて自治体に下ろそうとしてはならない、移譲してはならないというふうに思うのです。  この種の改革構想を具体化する際には、したがって、これは国の事務として留保しておくべきものなのか、あるいは地方自治体事務として移譲して任せてもそれほど差し支えがない事務なのかということ、このことを一つ一つ事務権限ごとに丁寧に精査しなければなりません。この事務権限仕分作業は大変な作業であります。これは決して民間有識者だけで、研究者だけでなくて様々な専門家が加わったとしても、民間有識者だけで構成された諮問機関の手に負えるものではありません。必ずそれ以外に、国の官僚地方自治体職員の、実務に詳しい職員たちの助力が絶対不可欠であります。  この種の論議でしばしば原則廃止というふうに、原則と言った方が勢いがいいですから元気よく原則廃止とおっしゃいますし、地方団体側が使った言葉で言うと、丸ごと移管ということをおっしゃったわけですが、こういう原則とか丸ごとと言った途端に丁寧に仕分をしていくという作業が放置されるんですね。そこで危ない議論になるというのが私が一番痛感していることであります。  私は、もう時間がないそうですからやめますが、出先機関縮小廃止に反対だったわけでは決してありません。見直していけばまだまだ下ろせるものがあると思っていたのですが、全てを渡せというような議論が危険だということを強調しておきたい、これは道州制論議でも必ず再現することですから、そのことを強調しておきたいというふうに思います。  あと一点ほどありましたが、後ほどの質疑でお答えしますので、私の冒頭陳述を終えます。  ありがとうございます。
  10. 山崎力

    会長山崎力君) どうもありがとうございました。  次に、人羅参考人にお願いいたします。人羅参考人
  11. 人羅格

    参考人人羅格君) 人羅と申します。  今日は、メディアで地方自治とか分権改革の取材を担当しているということを踏まえましてお話を申し上げます。よろしくお願いします。  私たちメディアは、地方自治分権改革について、東京から、地方から、できるだけ多角的にいろんな角度から取り上げたいというふうに日々努めているつもりでございます。とはいいましても、実際のことを申しますと、分権改革の話というのは非常に多岐にわたって、しかもテーマごとに複雑な話も多いので、とりわけ映像メディアを中心になかなか取り上げにくいというような傾向もあるようであります。  これが、ちょっと残念なことに、最近は活字メディアの方も分権改革について取上げが同様の傾向にあるようでありまして、せっかくの機会なので、毎日新聞のデータベースで、地方分権、さらに民主党政権時代に多く用いられました地域主権、この二つの言葉が入った記事が中央、地方版も含めてどのぐらいなのかなというふうに調べてみたところ、おおむね大体千から七百ぐらいの推移であったのですが、東日本大震災の年からちょっと減りまして、六百ぐらいに減りまして、この記事数が最近またどんどん減ってきていまして、昨年一年間では二百五十ぐらいでございました。こういうふうに、これはうちだけじゃなく、恐らく各メディアに共通する傾向なのではないかというふうに思われます。  それで、じゃ、なぜこの分権改革の報道が昨今ちょっと収まっているというような傾向にあるかというのは、これはメディアの課題ということももちろんあるかもしれませんが、そこのところの理由には、国民に言わば切迫的な関心ですね、これがやはり分権ということについてもう一つ薄いのではないかという点があるのではないかというふうに私自身は感じています。恐らく、どうして分権改革は必要なんだろうかと、そして、それが自分たちにとってどう影響するのかというところがいま一つイメージがつかみにくくて、ともすればこれは国と地方権限争いなんじゃないのというような、そういった印象があるように見えてしまう。そこで、総論では分権いいねというんだけど、じゃ、実際に切迫的な関心があるかというと、どうもいま一つそこにはまだ至っていないのかなという印象が、私は感じています。  あともう一つは、それに加えて、昨今、やっぱり国と地方権限、分権ですね、あと事務とか、そういった議論が一種踊り場にあるんじゃないかという感じがあります。第二期分権改革と言われるものが御承知のとおりここ数年来行われまして、これは義務付け枠付け見直しですとか、国の地方行政への関与ですね、関与縮小という点について進められまして、これはかなりの成果を収めたというふうに私自身は見ております。  そうすると、そこがある程度見えてくると、じゃ、これから先、国と地方権限関係をどう整理して分権論議とか自治の方に議論を進めていくんだと、そこについて政治的なイメージが集約されていない。このため、それがとりわけ民主党政権で、国と地方の、先ほどもお話ありましたが、出先改革、これが膠着して行き止まって以来、どうもこの分権というのはこれからどう進めていくんだということについて、一種の足踏み感があるんじゃないかと考えております。  それでは、じゃ、今どういう方向があるのかというと、単純化させていって言わせていただきますと、二つ議論の方向がございまして、一つは、先ほど所掌事務の拡大という話が西尾先生からございましたけれども、一つは、もう一回国から地方に大胆に事務とか権限を移して、それでブレークスルーしようという、国の守備範囲というものは極力狭めていこうと、そういった方向の議論一つあると思います。これの代表が道州制ということではないでしょうか。  もう一つは、いや、地方の方はかなりもう事務移譲されていて、正直おなかいっぱいだと。もうそこよりも、事務を移すよりも、それぞれの例えば市町村とか基礎自治体できちんと町づくりとか都市計画とかそういったものができるように、そういう分権を進めるべきだと。ラージとスモールという言い方がいいか分かりませんけれども、二つ方向の対立感があるというふうに私自身感じております。  そういった中で、昨年来、地方創生という課題政府中心に出てきて議論されているということだと思います。この地方創生というのは、厳密に言うと分権改革とは違うベクトルの議論でありますが、人口減少問題への対応ということなんですけれども、これはどうして今こういう議論が起きているかということは、私なりの印象で申し上げますと、町村とかにはこの議論をしていくことがいずれまた町村合併につながっていくのではないのかなという受け止めをしているところも多いようなんですが、実際のところは、道州制という言わば遠大な話をするよりも、目先の切実な課題をきちんと、まずは都道府県中心考えて、さらに今の市町村、それが周りと連携しながら課題を解決していこうという、そういった方向の力学が働いて今の地方創生という議論が起きているんじゃないかというふうに私自身は捉えております。  そこで、じゃ、道州制論議をこれから、とか地方制度の改革論議、これをどう議論していくかという問題がやはり政治的には大きいのだというふうに思います。  例えば、毎日新聞は道州制について、分権改革というものを徹底するのであれば、それは一つの選択肢であろうというような取上げ方を社説では従来しております。とはいうものの、この四十七の都道府県を、これで駄目だということであるのであれば、じゃ、それで、ブロックで再編して一体何がどう良くなるのかという具体的なやはり説明ができていなければいけないというふうに感じております。  とりわけ、私、今の基本法の制定論議というものを、これは印象ではありますが、感じることは、やはり何のための道州制で、じゃ、事務をどういうふうに権限を移して、それで、じゃ、基礎自治体市町村を将来どういう姿にするのという、そこがまず固まって、それで、じゃ、道州制やろうよという議論なら分かるんですけれども、基本法をまず制定しようと、手続だけ走ろうというようなふうにややもすると見えてしまう。  これは私、非常に危ないと思います。やっぱり、もしやるのであれば、まず何のためのどういう道州制をするかということをきちんと議論して、そこを固めて走らないと、やはり四十七都道府県を再編するというのは非常に大きな話ですので、最終的には私、個人的には、これは憲法改正の国民投票に値するぐらいのテーマではないかというふうに思っておりますので、そこのところのまず基本、何のためにと。さっき、西尾先生のお話に至っては、それは行革のためなんですか、分権のためなんですかと。行革のためだというのなら、じゃ、都道府県の合併をして、どれだけ人数が削られるんですかと。じゃ、国の地方出先機関をどれだけ移すおつもりですかというところまできちんとベースで議論しておかないと、何やら手続論の話ばかりが走ってしまうのではないかという、そういったちょっと印象を持っております。  そうなりますと、その大きな地方制度改革議論ということは、それはそれとして、やはり最低限やっていくべき話は、基礎自治体ですね、基礎自治体で町づくり、都市計画、こういったことについて自由度を高めていくということは、これからの人口減少社会で都市の計画を、都市の再編というんですか、そういったことを、町づくりをまたやり直さなきゃならなくなりますので、そういった方向のアプローチをして、そこに住民参加ということを、方策を講じていくというアプローチは、やはりここは最低限必要ではないかというふうな印象を持っております。  それが、どうして有権者は、じゃ、分権改革にいま一つ積極的に関心がないのかということに対するやはり答えにもなり得ると。そこをきちんと考えていくことがやはり、ああ、なるほど、生活に分権というのは関係があるんだなというふうに納得も得心も得ていただくという、そういった道になるのではないですかというふうに考えています。  あと、もう一つ分権改革について何年か取材をして感じることは、やはり税財政ですね。これについての議論、難しい多々問題があるわけですけれども、とはいうものの、やはりちょっと政治的に乏しいのではないかという印象を持っております。  御承知のとおり、小泉内閣のときに三位一体の改革というのがございまして、三兆円税源は取ったけれども、五兆円交付税を減らされちゃったということが大まかに言うとございまして、それで地方側は非常に不信感を強めてしまったわけです。それで、あつものに懲りてなます云々といいますか、もう地方財政の話をすると、どうせ財務省にいいようにやられて損するんじゃないかというような妙なシュリンク感が出てしまっているのではないかと。とはいうものの、やはり分権改革というのをきちんと考えていくというのであれば、この地方の税財政ということをどう拡充していくかという議論を、やはり私は政治的にもう一つ積極的に考えていただきたいという印象がございます。  とはいうものの、なぜ、先ほど地方のシュリンクという話もございましたけれども、どうしてその地方の税源移譲という話が難しいかということについて、一つの理由は、地方に税を移せば移すほど、それは地方同士の、大都市地方、ほかの地域の税収格差が拡大してしまって、それで結局のところ、それは地方のバランスを逸してしまうと。これは地方消費税にしても住民税にしろ恐らく同様だと思いますけれども、そこの壁があるんですね。そこの壁に当たってしまうので、なかなか地方に税源を移すという議論が進まない。  そうすると、これはとても難しい話かもしれませんが、やはり地方の間で、共同税という言い方がいいのかどうかは分かりませんけれども、何かの形で税を融通し合うような仕組みは何か考えられないか。それは交付税という形しかないのであろうかということについて、ある程度やはり政治的に議論していただかないと、なかなかこの地方財政というものについての議論について進めていくということは難しいのではないかというふうに感じております。  最後に、先ほど道州制の話と、あと地方財政の話をしましたが、もう一つ政治の場面において積極的に議論していただきたいのは、やはり地方議会ですね、地方議会の在り方ということについて議論を活発にしていただきたいという思いがございます。  御承知のとおり、現在、日本の地方自治は、首長と議会がそれぞれ住民から選ばれる二元代表制という仕組みを取っておりますので、そこの歯車がうまく回らないと地方自治の歯車はうまく回らないという仕組みになっております。しかるに、では、地方議会の方の歯車がきちんと機能して回っているのかということについて言うと、多くの地方議会において、最近、政策機能でありますとか、監視機能でありますとか、そういったことの拡充に努めているということは私も重々承知はしておるつもりなのでありますが、やはりまだ足りないと、十分ではないということがあります。ここは、これから分権ということを考えていく上でも大きなテーマになるのではないかというふうに考えています。  昨今、しかも去年から、例のやじの話ですとか、あと政務活動費の話でありますとか、地方議会については、どちらかというと残念な話題ばかりが、私たちも報じているというようなことがあるわけなんですけれども、あと、最近は、なり手の不足という問題も町村議会においては深刻なようでございます。ただ、そういう問題は問題としてありますが、やっぱり基本的に一番地方議会について問題なのは、地方議会というのが住民の方々から非常に遠い存在に思えて、それで、加えて言うと、何をしているのかがよく分からないという状況がやはり地方議会を考える上では一番根っこの問題なのではないかというふうに私は考えています。  こういった状況を、じゃ地方議会をどうするかということについて、例えば通年議会にして夜間の開催を拡充するとか、議員提案で政策条例を制定いたしますとか、あと、情報公開に努めるとか、そういった運用面で地方議会の改革でできることがかなりあるということは、これは確かに実際そういった動きも起きております。  ただ、その一方で、制度的に考えると、例えば何か四十人ぐらい候補の、定数があって、大選挙区で、一つの選挙区で四十何人出馬した中から一人選べというような選挙の仕方ですね、これが本当に住民にとって選択にいいシステムなのであろうかということであるとか、あと、例えば都道府県議会と政令市議会について女性議員が少ないということであれば、政党色ですね、政党本位の選挙制度ということを考え余地はないのかとか、さらには、大都市と町村の、小規模自治体地方議会ですね、そこの人員のリクルートの仕方、機能の仕方というのは本当に同じでいいのかとか、そういったことをもう少し政治の方からも議論していかないと、地方議会の現状というものを分権時代にふさわしい地方政府にするということから考えていくには、政治の議論ということが必要じゃないかという印象がございます。  あと、その関係でいいますと、例えば住民投票、これについても、住民投票というのは、では、どういうふうに地方政治の中で位置付けていくべきなのであろうかと。一時、片山善博さんが総務大臣のときに、箱物については法的拘束力を認めたらどうかというような議論もありました。これは地方側の反発が、逆に知事会の方が難色を示してうまくいかなかったという経緯がございますけれども、例えば、そのテーマとか拘束力についてどういうふうに考えていったらいいのかとか、そういった住民参加ということの在り方ということについても、与野党、政党において、もう少し正面から考え議論していくといいのではないかという印象を持っております。  少し時間が残りましたが、以上であります。
  12. 山崎力

    会長山崎力君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言いただくようにお願いいたします。  また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくようお願いいたします。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十五分以内で必ず終わるよう御協力をお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  渡邉美樹君。
  13. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 ありがとうございます。自民党の渡邉美樹でございます。  両参考人におきましては、貴重な御意見、どうもありがとうございました。  大きな議論としまして、組織論でございますが、私は、とにかく右肩上がりであったり成長している段階においては中央集権が非常に有効だと思うんですが、やはり右肩下がり若しくは成長が止まった段階、少子高齢というような段階においてはやはり地方権限、財源を渡し、そしてその結果、コストパフォーマンスを上げていくということが大事だというふうに思っております。それを前提に幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思います。  西尾先生のコラム、読ませていただきました。どうもありがとうございました。  西尾先生は、道州制に安易に着手すれば国と都道府県市町村の間で対立と混乱が生じるというふうに述べられております。また、西尾先生が大切だと言われていることは、国が決めていた事柄を地域住民の意思に基づいて決めることだと、このように申しているわけですが、そのためにも私は、道州制への移行、道州制ではなくて県市制でも何でもいいんですが、とにかく地方への財源、権限移譲が大切だというふうに思っております。  その中で、お二人、両参考人にお聞きしたいんですが、西尾先生のこのコラムの中で、地方分権における議論の一番大事なところは、国の総合出先機関になるのか、つまり地方が国の総合出先機関になるのか、若しくは完全な自治体として存在するのかというところの議論が全くなされていない、煮詰まっていないと、それが問題だというふうに述べられているわけですが、両先生におきましては、地方を国の総合出先機関にするべきなのか、若しくは完全な自治体とするべきなのか、どちらがいいのか、そして、その理由をできたら教えていただきたいというふうに思います。
  14. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 誤解のないように申しますが、私は、できるだけ国の出先機関的な色彩を薄めたいと思っているのです。今より、現在よりも薄めていきたい、これをより濃くすることはもってのほかで、できるだけ今よりも薄めたいと思っておりますが、国の下請機関には一切してはならないというふうには思っておりません。自治体としての性格を強めていくということが私が求めていることですけれども、そういう意味で、完全に自治体であって国からの下請機関では一切ありませんという姿を理想だと思っておりません。そういう姿に実現しようと思っているわけでは決してないということを申し上げたいと思います。  その上でですけれども、国の総合出先機関に完全になったら、それはもう自治体ではないというふうに思います。したがって、一切受け取ってはならないとは言っていません。言っていませんけれども、総合出先機関などとなったら、それはもう国の機関であって自治体ではないということになると思います。  戦前の都道府県は総合出先機関だったわけです。そこに一部、都道府県議会も設置しましたから自治の要素も持っておりましたけれども、知事以下、執行機関がやる本体は全て国の仕事をやっていたわけで、国の総合出先機関というのは戦前の都道府県の姿です。それを完全自治体に変えたというのが戦後改革なんですけれども、実は国の事務を、国の団体委任事務であるとか国からの機関委任事務であるということで、国の事務だけどあなたたちがやりなさいというものをたくさんに抱えていたのが戦後の都道府県だと、こういうことだと思います。
  15. 人羅格

    参考人人羅格君) 国の総合出先機関にするんだったら、道州制はやめた方がいいと思います。今の四十七都道府県でもう十分だと思います。都道府県が合併で、もし必要があるのであれば、それで対処するべきではないでしょうか。  恐らく、道州制にする場合、やはり国の関与というものがどこかに出るということは、それはそうだとは思うのですけれども、かつて第四次地方制度調査会において、これはもう相当昔の話ですが、地方制度というものが提起されました。それは、国と地方の双方の性格を併せ持つ地方というものを置くという発想でして、これは私は、こういった議論が道州制の中でまた出てくる可能性もあるかもしれないというふうに思っていますので。  以前、自民党は、限りなく連邦制に近い道州制という言い方をされていましたけれども、もし、その連邦制かどうかは別にして、議論するというのであれば、やはり志として分権改革を徹底するという前提の下に議論するのがそれは当然ではないかというふうに考えております。
  16. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 ありがとうございます。  人羅参考人の「二〇一三年を展望する」も拝読させていただきました。  その中で、やはり地に足の付いた議論が必要だという、その第一に、国の地方出先機関自治体に財源付きで移管する改革の検討ということになっているわけですが、先ほど両参考人の御意見を聞いていても、財源の移行にリスクを感じると、そこに危険があるということをお二人ともおっしゃっていると思うんですが、この財源を移行することに対するリスク、そこにはどのようなところがあるのか、それについて教えていただきたいと思います。両参考人、お願いします。
  17. 人羅格

    参考人人羅格君) 財源を移行する場合、いよいよもってそれは分権が進むわけですから、それを執行することについて、チェックですね、先ほど地方議会のお話をいたしましたけれども、それに対する地方議会のチェック、監視というものは果たして十分に行き届くものであろうか。さらに、その財源というものを地方に移した場合、先ほど申し上げましたとおり、それがきちんとバランスが取れた形で移る、設計ができるのであろうかという点はやはりかなり問題になるのではないかという印象があります。  以上です。
  18. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 財源を移譲するというときに、国も地方も、国税も地方税も増税をする、全体のパイが増える、そのときに、その配分を今までの配分とは少し変えていくというのは比較的やりやすいと思うんです。いずれにしても、国も地方も増収分が出てくる。そのときの国税、地方税の配分を、従来よりも少し地方税を多めに配分をしていくという形で徐々にこの配分を変えていくというのは比較的やりやすいですが、国も地方もおよそ増税する余地がないというような状況下で、現在の姿の中で地方税の比率を高めるということは、結局、国税を減らすということにしかならないわけです。そうすると、借金の度合いからいえば、国の方がはるかに大きな累積借金を抱えている。地方も抱えていますが、比率として国の方が大きいと。そのときに、国はもう一銭たりとも譲るものはもうないと、こうおっしゃることになるんですね。  そこで、三位一体の改革のあの構想は、地方分権推進委員会最後の最終報告で提言した、勧告ではなくて提言したことが、その後、小泉内閣によって取り上げられて、私たちが構想した手法に従って進められようとしたんです。そのときは、国の方も財政歳入歳出のバランスが取れるようにしようと、地方もバランスが取れるようにしようと、お互いのパイの取り合いをするんではないという形でやろうということを考えたんですね、増税が不可能だと考えていましたから。  そうすると、着目したのは、国税として国が徴収したものの中に、かなり、国から地方公共団体財政移転している規模のお金が年間にして二十兆円ほど大体あるわけです、毎年。この比率、これが持っている規模、これがよその先進国よりも多いのが日本の特徴です。これが結局ひも付き財源になっていくと言われる、いろんな条件が、使い方に条件が付いていくというお金になっていますから、これを縮小する。この金額を縮小していって、その分を廃止すれば、国の歳出の方でそれは要らなくなるわけですから、その分国税を減らしても国の歳入歳出は一定ですよねという方式でお金を移そうとしたわけです。  その結果が大失敗になったわけですけど、国の所得税から地方の住民税への税源移譲を三兆円分ほど実現されました。しかし、地方も総額として増えることは何ら期待していなかったわけですね。ところが、逆に総額を減らされたわけです、三位一体の改革のとき。それで、それは約束違うだろうと、こんなことが我々が望んでいたことではないというので総反発が起こったというのが現在の姿で、増税なしという中で移譲していくというのは大変難しい状況になっているというふうに思います。  今回、五%から消費税を八%に上げるというのは一つの機会だったと、国と地方配分を見直す一つの機会だったと思いますけれども、これは社会保障関係に使うと、増やす分はという枠の中で議論をされましたので、社会保障での国の必要な経費と地方の必要な経費を考えてあの消費税の増税分の配分を決めていったということで、社会保障に限定した姿になりましたから、我々が狙っていたような配分変更というのはちょっと起こらなかったというのが今回の増税です。今度、一〇%のときはもう一つの機会だと思いますが、果たしてそううまくいくかどうかというのはなかなか難しい話だと思います。
  19. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 人羅参考人は、道州制の移行は走りながら考え手法は余りにも危険だというふうに述べられています。私も十分に検討した上でシミュレーションが必要だと思っております。  人羅参考人の「二〇一三年を展望する」、ここにも、もう一つ大事なことは、道州制の先行モデル地域を設け、国民に導入のメリットを証明するということと述べられているわけですが、お二人ともこの道州制若しくは地方分権ということについて関わってきたわけでありますが、なぜ具体的に、先行モデルをシミュレーションを仕掛けるとか具体的に前に進んでいくということ、この行動がなぜ起きないのか。実際に、どこにその抵抗勢力があるのかも知りません、誰がこれに対して損をするのかも分かりません。それについては、お二人が率直に、どうしてもっとスムーズにやるべき実験をやらないのか、シミュレーションをしないのか、前に進んでいかないのかという、そのことについて御意見があれば最後に御質問したいと思います。お二人です。
  20. 山崎力

    会長山崎力君) 人羅参考人、どうぞ。  時間もありませんので、できるだけ簡潔にお願いできればと思います。
  21. 人羅格

    参考人人羅格君) モデル地域ということについて私が書いたのは、よく、道州制について言うと、北海道がいわゆる形は道州制なんですけれども、じゃ北海道をどういう道州制にすれば北海道は今の札幌の一極集中が緩和されていい北海道になるという絵を描くんですかという問いかけをすると、これは残念ながら、それについて理路整然と私に答えてくれた人は余りいらっしゃらないような印象があるものでして、そうなると、まずひとつ、じゃ、どこかで考えてみようじゃないかと。それで本当にいいかどうかということを、手が、挙げるところがあるならば、例えば出先機関を一部先行移譲するのでもいいですけれども、そういった考え方というのもあるのではないかという意味でそこでは取り上げました。
  22. 西尾勝

    参考人西尾勝君) なかなか複雑な話なのですけれども、私が今の道州制論議に危惧をしておりますのは三点あります。  一点目は、事務権限移譲、国から下ろそうと思っているものをできるだけ幅広く移譲しようという議論が横行しているということです。もちろん個々の国会の先生たちのお考えはそれぞれ違うでしょうが、ある先生の過去に出された私案は、国税局、税務署も全て道州に移すと言っていらっしゃるんです。国税を徴収するような純粋の国の事務仕事まで下ろして、それが自治体で受け取れますかということを申し上げるんですが、そういう議論まで出てくるということを恐れています。  それから二番目は、その道州制論者の多くの方々は、現在の千七百余の市町村数でもまだ多いと、道州制になったときは市町村数の更なる削減が必要だと言っていらっしゃる方が多い。これに市町村が全部反発しています、今。とんでもないということで反対していらっしゃるということが二点目です。私もそれは非現実的だと思います。  それから三番目、四十七都道府県全面廃止するとおっしゃっているわけです。私、そうやって果たして関東地方とか関西地方に適切な道州の設計ができるでしょうかと。私はできないように思います。巨大な道州をつくっちゃうことになると思います。そういう意味で、そういう部分では都道府県を残す余地も認めた方が現実的なんではないかと思っています。  そういういろいろの危惧を感じているので、現在のような動きだと反対せざるを得ないと言っているということです。
  23. 山崎力

    会長山崎力君) よろしいですか。
  24. 渡邉美樹

    渡邉美樹君 どうもありがとうございました。
  25. 山崎力

    会長山崎力君) 続きまして、長浜博行君。
  26. 長浜博行

    長浜博行君 民主党の長浜博行でございます。  お二人の参考人には、本当にどうもありがとうございました。本来は昨年末でありましたけど、日程の調整をしていただいて今日に至っているわけでございます。  ちょうど地方分権改革の二十年をどう見るかと、西尾先生のお話からスタートしたわけでありますけれども、ちょうどこの二十年を振り返ってみたときに、やはり、一九九三年というか平成五年の、これ宮沢内閣の最後の段階でありましたけれども、地方分権推進に関する決議が六月の三日に衆議院で、翌日参議院という、この二つ国会決議がなされたところからスタートしたという意味は非常に大きかったんではないかなというふうに思っております。  これ、記憶にありますのは、この後の七月十八日に選挙になりましたんで、私もこの選挙で国会に平成五年に入ってきたので記憶に新しいわけでありますけど、新しいというか記憶に焼き付いているわけですが、この十月の二十七日の段階で、平成五年の、第三次行革審の最終答申がなされました。そして、これは、九一年から続いているいわゆるこの三次行革審のたまたま豊かなくらしの部会長であった細川護煕元の熊本県の知事が、そのまさに平成五年の選挙で衆議院当選一回で総理大臣になるというような状況の、ある意味では地方分権をずっとやってきた担当者が総理になるという状況の展開の中で、この平成七年の地方分権推進法の施行という段階に続いていっているというふうに思うわけでございます。  もちろん、この施行された後の、先ほどのお話の中で、機関委任事務といいますか、国の下請からの解放、機関委任事務廃止することの議論はあったわけでありますが、先生の最後のところで時間がちょっと押していて言いづらい部分もあったのかもしれませんが、いわゆる分権の受皿論とそれから地方分権推進法が言うところの首相の勧告尊重義務、この部分が、最初の十年の地方分権における大きなテーマの中においては、この二つの考え方を先生はどのように整理をされているのか、ちょっとお話をいただければと思います。
  27. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 諸井委員会が発足をいたしまして三か月間ぐらい、七名の委員だけで議論を続けました。いずれ専門委員のような方々を十数名更に委嘱しようと思っていたのですけれども、それをせずに七名の委員だけで徹底的に議論をしようということで三か月間議論を続けていました。  そのときに以後の委員会の運営の仕方の基本方針を徐々に決めていったんですけれども、そのときの基本方針の一つが、受皿論は当面棚上げにしようということでした。都道府県レベルでいえば都道府県の統合とか、あるいは道州制という議論市町村について言えば市町村の更なる合併をすべきか否かという問題、こうした受皿論が当時横行していたわけです、世論の中では。要するに、分権を進めるのはいいけれども、分権をこれ以上進めようと思ったらば、受皿になる都道府県なり市町村なりを今のままではなくて再編成して強化しなければ受皿にならないのではないかという議論がかなりあったわけです。そういう議論が世の中にあるけれども、それに手を付けることはやめようと決めました。  我々は、現在の国、都道府県市町村という姿を前提にして、その体制の中でできる限りの分権を図るというのをこの委員会の方針にしようと、こういうことでスタートしました。それは同時に、委員会としては、都道府県市町村という自治体の人たちの要望する分権改革実現したいと、こういうふうに考えましたので、地方団体が結束して応援してくれるようなやり方でやろうという方針決定でもあったわけです。  そういうつもりで始めたのですけれども、第一次勧告を出す前後です、そのときに国会議員の方々から、当初一番我々と接触したのは第一党の自由民主党でしたけれども、そこの行政改革本部で議論委員会関係者と行われたときに、棚上げの方針は都道府県レベルについては認めると、しかし市町村レベルの合併は急ぐということをおっしゃいまして、そして、それは先送りするのではなくて分権改革と同時並行で進めなさいと。そういうふうにしろということを強くおっしゃって、それは自民党の声だけではなくて、委員長が各党をちょっと回っていろいろ幹部の方々に伺ったところ、かなり与野党にまで及ぶ御意見であるというふうに委員長は受け取られたわけですね。  そこで、我々は、最初そういう申合せをしたけれども、市町村合併は手を付けないと国会の先生方の支持が十分に得られないのではないかというふうな委員長の御判断で、急遽それも、合併は議論するということになりました。その結果、第二次勧告の中で、市町村合併はあくまでも対等合併で、住民の合意の上での合併ですから、それが大原則で、自主合併が原則で強制することはあってはならないけれども、政府としてはできるだけそれを支援していくような、促進していくような方策を取るべきであるという勧告を出したわけですね。それが大本になって、後の平成の町村合併と言われるものが進むようになっていったわけです。ですから、我々の委員会自身が出した勧告が大本になって進んでしまったわけです。そういう立場を取らざるを得なかったと思っています。  私自身は、その時点で市町村合併を進めることには反対でした。早過ぎると思っていました。もう少し分権改革が進んでからならばあり得ると、そのとき考えてもいいんではないかという、時期の問題として反対していました。そうなれば、町村関係者は、現にそうなったんですけど、分権に非常に批判的になったわけでありまして、余り町村会も町村議会議長会も協力的ではなくなったわけです。それだけ六団体の一致した支持というのを得られなくなったわけです。そうなるのはつらかったんですけれども、結果的にそうなってしまいました。  でも、そのときにもし合併をしないでずっと済ませてきていたら今も済ませられるかといいますと、その後のこの高齢化の進捗と、それから人口減少時代に入ることは予想されていましたが、本格的に始まり出しています。こういう状況になって、今、地方消滅可能性都市などという議論までなされるというこういう時点になって、あのとき平成の合併が行われていなかったら、今、大議論になっているだろうと思います、恐らく。  ですから、そういう意味では、時期が早過ぎたか否かという問題、あるいはやり方が適当であったかどうかという問題はありますが、当時としてはやりたくないことに手を付けたという状況でした。
  28. 長浜博行

    長浜博行君 この西尾参考人の「時代の証言者」というのは読売新聞でございますけれども、もし可能であれば、人羅参考人、この激動の九〇年代の地方分権議論と、西尾先生がまとめられた部分における委員会の、特に橋本内閣のときのいわゆる委員会からの勧告を首相が尊重すべきであるというこの解釈によって政治の流れというか分権の流れが変わっていったというふうに記憶をしているんですが、このことについて何か御意見はございますでしょうか。
  29. 人羅格

    参考人人羅格君) 質問の御趣旨を私がきちんと受け止められたかどうかはちょっと自信がないんですけれども、分権改革一期、二期というふうによく言われております。その一期において機関委任事務ということを廃止して、国と地方の対等関係、さらに、二期分権改革において国における地方行政への関与縮小、こういったものが非常に西尾先生を中心とする御尽力で着実に進んだということについては、私は個人的には非常に大きな前進であったというふうに受け止めております。  以上です。
  30. 長浜博行

    長浜博行君 それから、これからの地方自治議論する中において、これまでの地方自治議論の中においては、さっき人羅参考人からはちょっと出ましたけれども、地方分権とかこれからの地方自治議論する場合に憲法の改正の議論が出てくるのか。逆の言い方をすれば、憲法を改正をしないと、地方分権なり地方自治のこれからを議論することが難しくなることがあるのか、この議論における現行憲法が何か障害を持っているのかどうか。これについて、お二人から御意見を拝聴できればと思います。
  31. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 多くの改革を進めていくに当たって、現在の日本国憲法第八章の地方自治関係条項が障害になることは少ないと、ほとんどないと思っています。  ただ、一点だけかなり議論がある問題はあります。それは、憲法第九十三条で定めている、それこそ地方公共団体の政治形態の話として、長と議会というものを直接選挙するということを決めています。これが二元代表制と最近よく言われていますが、そういう仕組みを憲法が強制しているわけですね。ここがもっと自由にならないのか、今の形態とは少し違う組織を自治体が選ぶ余地を認めた方がいいのではないか、そういう議論自治体関係者の中にもちらちらと出てくるんですね、ちらほらと。もうちょっと弾力化できないか、ほかの形態を選べる余地は本当にないのかと、九十三条の解釈問題としても本当にないのかという、こういう議論はあるわけです。  ですから、これから長いことを考えますと、今の仕組みが最善なのか、そうではないほかの仕組みを選択的に採択できるような余地を憲法は開いた方がいいのかという問題は、かなり議論のあった問題として、今度憲法改正論議をされるときは必ず議論しなければならない条項だと思います。より良い憲法にするために、どうせ大改正をなさるならこう書き直してほしいと思うことはたくさんあります。ありますけれども、改革を進めるに当たって、どうしてもそこはと議論を絶対しなきゃならないよなというものは九十三条のその政治形態の話じゃないかと思います。
  32. 人羅格

    参考人人羅格君) 道州制について申し上げましたのは、そうすべきだという議論よりも、仮に導入するとするならば、これは言わば日本国民のDNAにあるような四十七都道府県をなくすような話でございますから、それは国民投票で憲法改正にかけるに値するぐらいのテーマではありませんかという趣旨で申し上げました。  あと、具体的な、これから改革を進めるに当たって今の憲法が障害になるのかという点については、西尾先生おっしゃるとおり、首長と議会ということについてはかなり政治的に議論される部分が多いのではないかと私自身も感じております。  ただ、同時に今、首長と議会の関係を見るに、どちらかというと、首長さんの方が、予算に始まり条例の制定権も執行権も全部掌握して、地方議会というものの領分がやや少ないような印象を持たれていますので、そこについては、憲法ということに直接触れなくても、その首長と議会の権限関係ということについて議論していくという余地はあるのではないかというふうに考えております。
  33. 長浜博行

    長浜博行君 ありがとうございました。
  34. 山崎力

    会長山崎力君) その次の方、どなたかいらっしゃいますか。  横山信一君。
  35. 横山信一

    横山信一君 公明党の横山信一でございます。  今日は、西尾先生、人羅先生、両先生には大変に興味深いお話を伺うことができて大変に良かったというふうに思っております。できれば、もっともっと時間を余裕を持ってお話を伺いたいという気持ちが非常に強いのでありますけれども。  まず、西尾先生に伺いたいと思うんですが、地方分権改革推進手法として、先ほど先生が、所掌事務の拡張路線自由度拡充路線という二つの観点からお話を伺いまして、分権改革とそれから行政改革、これが実際には同時に起こっているわけでありますけれども、その一方で、人口減ということも、当時は、地方を見たときにはやはり議論の中にはあったのではないかというふうに思います。  先ほど先生からも時期の問題だというふうに考えているというお話があったわけでありますけれども、例えば所掌事務移譲していくということを考えていくと、地方自治体も定数削減というのはどんどん進めているという状況の中で事務を受けるということについては、結局行政サービスの低下ということが現実問題として起きてくるということを考えると、人口減少というのをどういうふうに捉えていたのかというのをもう一度伺いたいと思います。
  36. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 当時、町村合併の問題を考えるとき、一番短期的な課題として問題になるのは介護保険制度がスタートするということでした。そのとき三千有余の市町村があったわけですが、それで対応できるだろうかという危惧を持つ方はいらっしゃったわけで、その問題をどう考えるかというのが一番短期の課題でした。    〔会長退席、理事猪口邦子君着席〕  もう少し中期的には、地方財政の逼迫、窮迫化という事態が予測されておりましたので、当時から、中期的な課題としては財政上の観点から合併論議が起こるという可能性があると思っていました。  そして、長期的にはということで、いずれ人口減時代に入るということはもう分かっていたので、その人口減になり出したらばもう避けられないかもしれないということ、長期課題として人口減を予測しておりました。  でも、その頃の人口減の予測は、少し我々からすれば甘かったと思っています。その後の国勢調査に基づく国立社会保障・人口問題研究所が出してきた長期予測は、減少が入っていたということはもう分かっていましたけれども、そのスピードですね、人口減少するスピードは私らの予想を超えるスピードだったということだと思います。明治維新以来の人口増が物すごく急激で、世界史上類例のない速度で増加したのですけれども、今度の減少もそれと同じような速度で、大変な速度で減少していくと予想されているわけで、これが予測どおりであれば、これまた世界史上初めての減少率じゃないかというふうに思います。  もっとも、こういう日本の高齢化の速度も世界史上最初の驚くべき率だったんですが、すぐ韓国が追い抜いていますし、やがて中国も追い抜くでしょう。後から付いてきたところはみんなそういうふうになる傾向がありますから、日本の人口減もいずれ同じように急速に下がるという国が出てくるのではないかというふうに思われますが、これは今までの国々が経験したことのない速度で落ちるということですね。これはなかなかの大問題だというふうに思っています。
  37. 横山信一

    横山信一君 ありがとうございます。  先ほどの先生のお話の中で、市町村合併には手を付けないという判断があったという、そういう中での市町村合併を進めていったという非常に興味深いお話を伺うことができたんですが、単純に考えて、やはりその事務権限移譲を進めていけば、当然、自治体規模というのはある程度大きくなっていかなくてはいけないというふうに予想しているわけですけれども、今は平成の大合併があって、今は分権改革はちょっと冷ややかな状況になっているかもしれませんけれども、今後また分権が進んでいくと、先ほど、今の人口減ということも含めて考えていくと、これから先もやはり市町村合併というのは必要になるのではないかという、そういう時期が来るのではないかというふうに思うんでありますけれども。ここは両先生にお伺いしたいんですが、西尾先生からお願いします。
  38. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 平成の市町村合併に終止符を打ちましてから、まだそう年数がたっていないんですね。この合併の嵐が吹き荒れた地方に関する限り、私はほとんど合併の余地は当分ないと思います。物すごい例外は若干の数はあるかもしれませんが、ほとんど起こりようがない、行けるところはもう行ったという感じだと思います。    〔理事猪口邦子君退席、会長着席〕  ただ、この平成の合併の嵐は全土を襲ったのではなくて、この嵐を免れていた地域がございます。それは、主としては東京圏と中京圏と関西圏と、若干、北九州等々、大都市、仙台周辺とか札幌周辺という大都市の近くの郊外、ベッドタウンの自治体大都市の周辺の、その辺にはほとんど合併論議は起こらなかったのです。それなりに人口十万前後の人口を持っている自治体ですし、財政が窮乏していたわけではありませんので、せざるを得ないという状況は地方都市のようにありませんでしたから、ほとんど風が吹かず無風状態で過ごしたというところがあります。ここについて合併の余地がないかといえば、ないことはないと私は思います。  将来、この人口減やこれからの社会資本の老朽化、それから人口の高齢化に伴う費用等がこのベッドタウンで急増してきますので、なかなかベッドタウンの財政状況も厳しくなると思うのです。そうすると、そういうところで合併をした方がいいかという議論は起こり得ると思っています。全国どこにも起こり得ないとは思っていません。大都市の周辺ではあり得る話です。  しかし、その大都市周辺のベッドタウンでいいますと、約市町村の半分、四百ぐらいの市がその周辺にあるわけですが、それが二つが一つずつに半減したとしましても、二百の市が減るだけです。千七百から千五百ぐらいになるというだけの話です。全国的に見て、千以下にするなんという合併は起こりようがありません。それを私は申し上げている。  そのことが一つと、それから、規模はできるだけ拡大しようと、市町村は幾ら言っても、規模の拡大しようのない町村があるということです、日本には。その問題をどう考えるかということを解決しませんと、できるところはどんどんどんどん規模を大きくしていく、しかし、絶対にできないで小さなまま残るという町村と物すごいギャップができます。この問題をどう考えるかが深刻なのです。  日本の場合は島が結構数多くあります。この島は一つ一つの島でコミュニティーしていて、特に外海にある離島の場合はそうで、嵐が来て船が、もう飛行機も行き来がなくなるというときは完全に孤立した状態が何日か続くという島があるわけです。ここが村であること、町であることが多いわけですね。これは、合併しても余り意味がないのです。そういう町村数がかなりの数、日本は抱えているという国だということをよく意識してお考えいただきたいと思います。
  39. 人羅格

    参考人人羅格君) 先ほどは地方創生の関係で人口減少についても申し上げましたけれども、実際には、先ほど西尾先生のお話にもありましたように、合併というのは都道府県でかなり段差がありまして、違いがあると。そういう中で、じゃ、これから人口が減っていく中で、更なる平成大合併第二弾をやるのかという話になると、そこは私も余りその可能性はないんじゃないかと考えていまして、むしろ小規模町村では都道府県からの縦補完、都道府県による補完、さらには自治体としての連携、そういったことで対応していく方がむしろやはり中心になっていくんではないかというふうに思います。  あと、これも先ほど話にありましたとおり、三大都市圏、ここは合併が、必要に迫られなかったからやらなかったという経緯がございます。ただ、これから二〇三〇年ぐらいにかけて、二〇年、三〇年にかけて後期高齢者の数が非常に激増して、そこで社会保障をどう構築していくかという問題がこれから少なからず到来いたします。そのときに、じゃ、そういった大都市圏の自治体が果たして合併というアプローチがいいのか、それともほかの在り方、連携するようなやり方があるのか、ここはいずれにしろきちんと早めに議論しておかないと、個別の自治体で個別対応するような形ですと非常に危ないことが起きる可能性もあると思いますので、まさにこれからそこの地域の連携ないし在り方というものをどう考えていくかということは大きな議論になるかと考えております。
  40. 横山信一

    横山信一君 じゃ、最後の質問になりますけれども、最後また西尾先生にお聞きをしたいのでありますけれども、事務権限仕分は大変だというお話がございました。  今国会でも、戦略特区法が通りまして、地方の側から、都市計画は非常に大事ですから、例えば都市計画のことで言ってみると、その都市計画の中に優良農地が含まれていれば、そこは自治体からすれば、非常にそれは都市計画上なかなかそこは使いようがなかった、そういったところを使えるようにしたいみたいな、そういう発想になってくる。だけれども、国からすると、優良農地を農地として残していくということは食料生産にとって非常に重要なことですから、ですから、それはなかなか自治体から考えると非常に理解しづらい。でも都市計画の中ではそれは何とかしたいと、そういう課題が浮かび上がってくるわけでありまして、先生のおっしゃったように、これは民間の諮問機関だけではどうしようもないんだという、そういうお話はよく理解できるわけでありますけれども。  今後、この戦略特区も含めて分権を進めていくに当たって、そうした国の責任は、先生は最後までそれは国が責任を持つべきだという、事務に関しては、持たなければいけないものは最後まで持つべきだというお話がございましたけれども、そうした地方との兼ね合いといいますか、今後、都市計画を重視していけば当然そういう矛盾というか、全体観に立ったところと、その地域にとって、また地域住民にとって重要なことという、そういう競合というか、これは非常に難しい課題だと思うんですが、そうした部分の解決についてはどういうふうに考えておられるのか、最後伺いたいと思います。
  41. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 都市の用地と農地と、市街地と農地の折衝問題というのは地方分権改革が始まったとき以来の大課題でございました。これは一体的に解決しないと当時の農水省も建設省も了解しないのですね。お互いの関係が物すごく密接にありますから、それがそろって分権するんならするというのが理想なのですけれども、なかなかそういうふうにいかないというのが苦労してきたことです。  今回、今、都市計画の関連で優良農地のことについてお話しになりましたけれども、御承知のとおり、政府地方分権改革有識者会議、そこで農地法の改正の問題について一応の合意ができたという報道がありますね。あれは大変なことで、私はもう物すごく喜んでいます、そこまで行ったということについて。  これがどうしてそうなったかというと、これまでは農水省が反対していたというだけではなくて、都道府県の農政部門も市町村移譲するということに絶対反対でした。国と都道府県そろって反対していました。市町村がどう要望しても実現しなかったのですけれども、今回は地方団体の方でつくった地方分権改革推進本部が都道府県市町村の間の意見調整をやりまして、最終的に都道府県市町村関係者が合意したんですね、これでいこうというふうに両方が賛成する案ができたと、これが一点、すごいことなんです。  それともう一つは、農地を確保していくということが重要だと言っている農水省の言い分は正しいと、それは都道府県市町村も守らねばならぬと、だから、我々も一緒になって守るからこういう仕組みにしてもらいたいという提案を自治体側がしたんですね。それでもまだ最初は、農水省はそれでも心配だと。都道府県市町村から積み上げてきて農地の確保をやろうというので、本当にできるかということが不安だということを言っておられたんですけれども、これからは都道府県が真ん中に入って、市町村からの積み上げもして、国と調整しながら農地の確保をしていきましょうと。農地の確保ということを自治体責任を負いますと、自治体側が言い出したということですね。これは物すごい進歩なんです。これでようやく話が付いたというのは、もう長年の課題にここで一歩大きな前進をすることになるのかなと思っております。  ただ、状況は、過去の問題は、都市地域が農地を侵略していくんですね。都市が拡張していって農地を潰していくという歴史でしたから、対立が激しかったわけです。今度は、都市が縮小していかなきゃいけない時期なんですね。農村も人口が減っていくという時期なんですね。今までのような都市が膨張するという圧力はないという、全く違う状況に入っている。むしろ、農地に戻していくということの方が重要な時代になってきているんじゃないかと、こう感じています。
  42. 横山信一

    横山信一君 ありがとうございました。終わります。
  43. 山崎力

    会長山崎力君) 清水貴之君。
  44. 清水貴之

    清水貴之君 維新の党の清水貴之と申します。  本日は、本当にお忙しい中、貴重な御意見、ありがとうございます。  まず初めに、西尾先生から大阪構想という単語を出していただきましたので、私、維新の人間ですので、まずそれに関してお聞きしたいと思うんですけれども。  事務権限仕分についてなんですけれども、大阪構想、御存じでいらっしゃっていただいたら有り難いんですけれども、大阪府と市の二重行政を解消しようと思って進めているものです。二重行政があって、これを協議会のようなものをつくって仕分をしていく。これは我々でと、これはこちらでというふうなことができればいいんですが、やはりなかなか、これがもう何十年も話し合ってきて、それぞれ持っている権限、財源があって、これはなかなか手放したくないものですから話し合っても進んでこなかったところがあると。だったら、大阪構想にはメリットもあるし、デメリットもあるし、賛否あるのもこれは分かっているんですけれども、ある程度、ある意味、力業で進めていかなければ、そういった地方自治、その仕組みの在り方自体は変わらないんじゃないかと、二重行政は解消していかないんじゃないかという思いで進めています。  大阪構想は、地方自治体地方自治体の話であるわけですけれども、もちろん、国と地方自治体も当てはまると思います。西尾先生がおっしゃったとおり、地方がやるのがふさわしい仕事と国が完全に責任を負う仕事、この仕分をどうしていくかという話なんですが、難しいんじゃないかなというふうにも思ってしまうんですが、実際どのように仕分をしていったらいいものなんでしょうか。西尾先生にお聞きします。
  45. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 地方分権推進委員会でやりましたときは、それをグループヒアリングという場で処理していったんですけれども、委員会側から、委員、専門委員、参与ですね、というような人が数人でグループをつくりまして、そこに分権委員会事務局の担当の職員が付いて、こちら側が五人ぐらいがテーブルに座って、向こうに、今日は都市計画法の関連の問題を議論するというときは都市局長以下、都市計画課長、大臣官房からの審議官等々が数名並ぶと、そういう五人、五人ぐらいのテーブルを挟んだ会議で、膝詰め交渉、折衝と称していましたが、一点一点議論していくんですね。こちら側は、地方側はこう言っているというのを出しますし、それに対して向こうはそれはできないとか、それは違うとか言います。それをまた議論を延々やりまして、お互いのすり合わせをしていくということなんですね。  これ、一回でなど終わりません。また来週やりましょうというようなことで、都市計画関係が一番回数が多かったんですけれども、総計もう四十時間を超えているんじゃないでしょうか、折衝に。それだけ回数を重ねて議論していって、そして、まあこの辺ならお互いに了解できるねという線に行き着くということですから、本当に大変です、これは。でも、そういう、全部の問題にそれだけの時間が必要だというわけではなくて、クリティカルな、決定的に大事な問題というのがありますよね。そこの区分けを間違えたらせっかくの改革が台なしになるという問題がありますので、そういう問題は本当に慎重に議論をすべきだというふうに思います。
  46. 清水貴之

    清水貴之君 人羅参考人にも同じことをお聞きしたいと思うんですけれども、やはりこの事務仕分けですよね、国がやるべきもの、都道府県がやるべきもの、市町村がやるべきもの、この辺りに関しては、人羅参考人はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。どのように仕分けしていくべきだとお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  47. 人羅格

    参考人人羅格君) 都構想の話の場合について言うと、基本的には自治体の中での分け合いの話ということだと思いますので、そこについては今議論が、整理がなされているというふうに受け止めています。  せっかく都構想の話が出ましたので、私、中身の話と別に、ちょっと印象を一つ申し上げますと、自治体についてその帰趨といいますか、その形、運命を住民投票で拘束力を持たせる形で投票して決めるというのは、これは非常に、恐らく初めてのことではないかと思いますので、その意味では五月に投票が行われるやの動きというふうに聞いていますので、それは非常に注目しております。  いずれにしても、そのメリット、デメリットも含めて、その制度についてきちんとした情報が開示されて、きちっと判断材料が提供されて住民が判断するということが、まず、まだ議会のこれから質疑があると思いますが、そこが必要だというふうに考えております。
  48. 清水貴之

    清水貴之君 そうなりますと、今度は都道府県の役割というものについてもお聞きしたいと思うんですけれども、やはり基本的には住民に密着したサービスというのは市町村が行っておりまして、道州制とか、それこそ都構想とかで進んでいくにはまだもちろん、道州制なんかは特にこれからまだまだ時間が掛かると思うんですけれども、その過渡期の、今の現状の都道府県の役割ですね、市町村の話を吸い上げて国へつないでいく、この中間的な今は役割かなとも思うんですけれども、都道府県としてもっと主体的に何かやっていくべきことがあるのか、その辺り、都道府県の役割についてお聞かせいただけますでしょうか。これはお二人に質問したいと思います。お願いいたします。
  49. 人羅格

    参考人人羅格君) 御指摘のとおりでございまして、明治以来、基礎自治体市町村の方はどんどんどんどん再編が進んで、合併が進んできていると。一方で、都道府県については、恐らく一八八八年以来、基本的に四十七都道府県という体制がずっと続いていると。そういう中で、市町村に分権は進んでいるという中で、都道府県の役割というのがだんだん曖昧に、しかも政令市にはどんどんまた権限が移っていますから、曖昧になってきているということは問題意識としては間違いないと思うんですよ。  そこで、じゃ、道州制になるのかどうかというところで、いろいろな考え方の違いが出ているということだと思います。ただ、都道府県というのが非常に何か中二階的な存在に、まあ要素が出てきているということをどうするかということについて、まさにこれからいろいろ考えていかなきゃならないというふうに私も思っております。
  50. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 都道府県市町村関係は、市がだんだん大規模になってきて、実力を付けていけばいくほど、市は半ば府県から独立していくと思うのです。したがって、都道府県が、このままで行けば都道府県の機能は、県域全体をカバーする広域行政と、それから町村、主として町村、しかし市の中にも、市と名のっているけれども、もう町村とほとんど規模の違わない人口規模の小さな市もかなりの数、地方にはあります。そういう市町村ですね、政令指定都市とか中核市レベルの市は別として、そうじゃない一般の市と町村について補完をしていくという仕事都道府県の重要な役割で、この役割は今後ますます重要になるんじゃないかと、町村部について特に重要になるのではないかというふうに私は思っています。  ただ、それにしても、この累次の分権改革で、都道府県から市町村権限移譲しなさいといって都道府県から奪い取ったものがあります。その割に国から都道府県には下りてきてはいませんから、都道府県が言わば徐々に痩せ細っているわけですね、仕事の中身が。それは都道府県関係者からいえば痛感しているわけで、このままではどうにもならないなと。もう少し、そんなに市町村に譲れといって取られていくのならば、国から仕事を下ろしてもらいたいという願望が都道府県関係者にはあるんだろうと、それは察せられます。  私は、現に、先ほどの国の各省出先機関が担当している仕事の中に都道府県に移しても差し支えないのではないかと思う仕事はまだかなりの量あると思っているんです。それは国土交通省の地方整備局にも運輸局にもありますし、経産省の地方経産局にもあると思いますし、かなりの部分あると思うんです。それを議論していくことはいい。だけれども、それを都道府県に下ろすのか、それを道州政府にするのかというようなところでまた大議論になってしまうのですけれども、全部を下ろせるような幻想は抱かない方がいい、決して抱かない方がいいと、そう思います。
  51. 清水貴之

    清水貴之君 地方創生についてもお聞きしたいと思います。  人羅参考人は東京一極集中の是正をということをおっしゃっておられまして、もう今は特に、本当に東京にこれだけいろんなものが集まっている中で、地方がどんどん人口減少しているという中でもこれはやらなければいけないことだと思うんですが、ただ、一方で非常に難しい点もあるのかなと。  地方創生、今回法案通りましたけれども、地方がそれぞれ、プレミアム商品券を発行するとかいう、ああいう、それぞれの商店街、地域が盛り上がることはもうどんどんやっていったらいいと思うんですが、根本的なところではないような気もするんですね。一過性のもので終わってしまう可能性もあると。根本的にその地方を活性化していくためにはどうしたらいいか。これは各地方が非常に悩んでいることだと思うんですけれども、それぞれ、いろんなニュースとか見ていましても、この地域でこんなバイオマスを生かして地域を活性化しているとか、ここはゆるキャラ使ってとかいろいろ出てきますけれども、まああれは一部の成功した事例であって、これが全国的に各自治体が、千八百もある自治体がそれぞれできるかといったら、これはなかなか難しい話で頭を悩ませているところじゃないかと思うんですけれども。  東京一極集中の是正、そして地方創生、あとは市民参加ですね、どんどん市民が参加して町づくりをしていくべきだと思うんですが、最初におっしゃったとおり、地方議会がやはり活性化していないというような現状もあります。そんな中で地方を活性化する、地方創生をしていく方策といいますか、どのようにというお考えがありましたらお聞かせいただけますでしょうか。
  52. 人羅格

    参考人人羅格君) 恐らくそれに具体的な固有の答えというのは多分ないのかもしれないというふうに思います。ただ、一つ言えるのは、ゆるキャラとかああいう横並び的なものから答えというのは恐らく出てこないんじゃないのかなという印象はあります。  難しいのは、これは横展開、横展開というけれども、地域それぞれ事情が違ってやり方も違いますから、簡単に横展開できないわけですよね。そうすると、やはりそこはある程度割り切って地方考えてくださいという、それを、じゃ丸投げというのかというと、私はある程度、それはふるさと創生の竹下さんのときは、その一億円というのは確かに評判悪かったけれども、今度はある程度分権も進んでいるから、ある程度財源ということを面倒を見るからきちんと考えてくれというやり方というのは、それは一つのアプローチじゃないかなというふうに私は考えています。
  53. 清水貴之

    清水貴之君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  54. 山崎力

    会長山崎力君) それでは続きまして、倉林明子君。
  55. 倉林明子

    倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。  今日は二人の参考人に貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。  最初に、私、一九九四年から京都で地方議会の議員をしておりまして、それで京都選挙区からということで参議院に送っていただいたという立場なんですけれども、ちょうど三位一体改革の嵐吹き荒れる中で地方議会を体感したという経験がございます。  あのときの市町村の思いというのは、本当に裏切られたといいますか、そっくり持っていかれたという印象、思いを語っていたことを改めて思い出しているんですけれども、地方自治の充実という観点から考えまして、あの平成の市町村合併、そして三位一体改革、どういう影響を与えたんだろうかと。率直な御意見をお聞かせ願えたら有り難いと思います、お二人に。済みません。
  56. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 三位一体の改革は、僕も、小泉首相のリーダーシップで始まり出したことですから、言わば政治主導で進められ出して、したがって、もう大変な改革ですから、総理自身がそれだけのリーダーシップを振るわない限り成功しようのないことを総理自身が言い出して動き出したことなので、期待しておりました、本当に。私たちが考えたような三位一体の改革を第一弾でもまずやり遂げていただいたらば、更に第二弾目に行ってというふうに徐々に広げていくということを成功してくれたらいいなと思っておりましたけれども、結果を見て唖然とするような、こんなはずではなかったといいますか、惨めなる結果に陥ったわけで、大失敗としか言いようがありませんけれども、政治主導で進められる事柄の恐ろしさというものを実感しました。どこに行ってしまうか分からないという、動き出したのはいいんですけれども、どこへ走っていかれるのかが見えないといいますか、終点がよく分からないところへ行ってしまうという怖さ、それを痛感をした次第です。  あれはしかし失敗だといっても、税源移譲は三兆円なら三兆円はしたというのは大変なことなのですよ。ですから、これからだんだんにもう一遍あの経験を踏まえながら積み重ねていく以外ないのですが、地方もあの怖さを感じていますから、二度と容易には言い出さないという状況に陥ってしまっているということになります。  それから、平成の合併の評価については本当に私は複雑です。いや、やりなさいというゴーサインを出してしまった当事者の一人ですから、その当時、進んでいくときに、あれには反対だったなんて言いようがありません。自らがそのゴーサイン出した責任者の一人なんですから。  ですから、地方制度調査会になったときも、これにどういう結末を付けるかという議論をしたとき、たまたま分権委員会委員長だった諸井さんが地方制度調査会会長になられ、その副会長をまた私が地方制度調査会でやらされるという羽目になって、ゴーサインを出したあなたたちがこれからどう結末付けるか考えなさいと責任を負わされたようなものなんですね。  ですから、非常に苦渋をしながら対処してきた問題ですけれども、いずれはやらざるを得なかったことなんだろう、だけど進め方として正しかったかというと、なかなか思うようにいかなかった。私は、もう少し昭和の合併の経験を踏まえて、編入合併される側の町村の小さな自治を大事にしていくという方策をもっとみんなが力を入れてやらなければいけなかったのではないだろうかというふうに思っていまして、結局、余りメリットのない結果に終わったんじゃないかと、こう思います。最終的には、ある意味そこまで進んでしまったのは、やはり財政的な締め付けが一番利いてしまったのではないかと、こう思います。
  57. 人羅格

    参考人人羅格君) 三位一体改革については先ほども少し話しましたけれども、この改革は、私、発想とアプローチ自体は良かったと思うんですよ。補助金と交付税というひも付き部分を縮減して、それで地方の自主税源を増やそうというアプローチは良かったと思うんですけれども、やはり結果は、交付税の五兆円というのがやはり先走ってしまって、結果は、先ほども申し上げましたけれども、地方は国の改革に付き合うと損をすると、もうたくさんだという非常にトラウマが今まだ残っているという意味で、かなり悪い意味での影響を残してしまっているということは間違いないと思います。  ただ、そこでもうシュリンクしちゃっているとしようがないので、やはり地方団体中心にもう一回きちんと、じゃ税財源をどうするんだというところをやっぱり進んで議論してほしいなというふうに私自身は思っています。これは先ほども申し上げました。  あと、市町村合併については、やはりこれでじゃ本当にその行政の効率化というのが進んだのかということについての、あと、分権の受皿としての基盤の強化ということについての検証がまだできていないと。どちらかというと、それは余りメリットが出ていないのではないかという議論の方が目立つということは事実だと思います。  この一つの、私、要因は、合併した自治体同士で元の自治体を残したり、逆に地域割りで自治組織みたいなのをつくるという議論がもうちょっと進むんじゃないかなというふうに思っていたんですけれども、なかなか合併してみるとそこがうまくいっていないというか、活発になっていないという印象なんですね。そうすると、役所が遠くなったとかそういった、どちらかというと、住民からすると何のための合併だったんだというところの印象が残ってしまっているということで、いずれにしても、やはり平成の大合併の検証というものは必要であり、先ほど第二弾というものについてちょっと慎重な意見を申し上げたのも、そういった事情によるものです。
  58. 倉林明子

    倉林明子君 ありがとうございます。  西尾参考人に次の質問をしたいと思うんですけれども、先ほど道州制について、現在のようでは反対せざるを得ないということで、著書を読ませていただいた段階では、一昨年の四月発行の「自治・分権再考」の中では、慎重論者だというふうにされていたかと思うんですけれども、そこからすると踏み込んだ発言だなというふうにお聞きしたんですけれども、かなり駆け足でその理由について御説明ありましたので、少し丁寧に、繰り返しになりますけれども、御説明いただければ有り難いと。
  59. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 何度か講演でもお話をし、文章でも書いたのですけれども、私は道州制構想の積極的な推進論者ではありません。しかし、道州制と名の付く構想には全て反対ですという原理的な反対論者でもありません、あえて言えば慎重論者ですと、こういうふうに言い続けてきました。そのことは変わっていません。  ただ現在、特に経団連やら同友会やら商工会議所やらから出てくるような、財界から出てきているような道州制構想にそれほど危険な要素を感じていないのです、私は。しかし、むしろ国会の議員さんたちが与野党の中で議論していらっしゃる道州制論議に危惧を抱くんです。強い危惧を抱いているんです。私の聞く限りでありますが、今まで聞いてきた限りで言うと、国会議員の方の方が思い切ってできるだけたくさんのものを下ろしてしまおうと思っていらっしゃる。どうしてもそう思えるんです。その発想が非常に危ないなというふうに思っているということが一点です。  それを下ろせば下ろすほど、私は集権的な道州制になると思っているんです。そこに一種の節制をして、これはやっぱり下ろしてはいけないと、国に残さなきゃというものと、自治体に下ろすものは思い切って下ろそうという、その抑制が利いていかないと分権的な道州制にはならないと思っているんですね。ですから、主としては今は政治家の方々が論じていらっしゃることに危惧を感じているので、現時点では反対と言わざるを得ませんと。これがもう少し落ち着いた議論に、なるほどそこまでよくお考えになりましたかという議論になってきたときは賛成論者になるかもしれませんと、こう申し上げているということです。これが一点目です。  二点目は、どういうわけか私には理解できませんが、今、四十七都道府県がある、それを十前後の道なり州なりに組み替えるとしますと、そのときに、その傘下に、管轄下に千七百もの市町村が依然として残っているのは数が多過ぎるとおっしゃるんですね。これを千以下に統合しろとか、六百程度にまとめろとか、いろいろなことをおっしゃっていらっしゃる。これも国会議員の世界に多い議論じゃないでしょうか。どうも民間の人は余りそんなことを言ってはいないんじゃないかと思うんです。でも、どうしてだか、そこを減らさなければ効果が出ないということをおっしゃる。本当でしょうかと。十の道州になって千七百市町村が残っていたら、本当にどうしようもないんでしょうか。それなら道州制、諦められるべきだと思います。おやめになるべきだと思います。  でも、まとめるとおっしゃっているんですね。これがこれから可能ですかと。この間の平成の合併で三千二百有余から千七百有余まで縮めたのでやっと二分の一程度にしたんですけれども、これが大変なフリクションを起こしています、全国に。これやらなきゃよかったと思っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるという始末なんですね。そこに更にこの千七百を千以下にする、あるいは六百にする、半分にしろとか三分の一にしろというのは、私はもう非現実的な発想だと思うんですよ。それはどなたも賛成しませんよ、町村関係者は。ですから、町村会が一致して反対していらっしゃる。当たり前です。私は当然だと思います。どうしてそう減らさなきゃいけないんでしょうか。これは逆に伺いたい。本当にそんな必要がどこにあるんでしょうか。そこにこだわっていらっしゃることが私が反対する第二点目です。  第三点目は、四十七都道府県を全部廃止するとおっしゃっていますが、そうすると、区割り問題というのは大問題なんですけど、どういうふうに全国を割るかというのは。特に、関東地方をどう割るかとか関西地方をどう割るか、具体的にお考えいただきたいと思うんですね。関東地方と今通常言われているものを全部まとめて一つの道にするとおっしゃったならば、全国の三分の一の人口を押さえ、物すごい経済力を集中したところを一つの道にするということです。これは巨大な道になるんじゃないでしょうか。  片や沖縄は、単独で道なり州なりになりたいとおっしゃるでしょう、多分。そうすると、今、東京都と沖縄との経済力、その他様々な格差は物すごく大きなものです。全国の人口の一割を東京都は持っていますから、大変な格差です。でも、関東道と沖縄道の格差はもっと巨大な格差になります。果たして、それでバランス取れるんでしょうか。私、そういう道をつくってしまっていいととても思えない。特に、東京一極集中が今の深刻な問題だと言っているときに、関東道などというものをつくってしまって本当にいいんでしょうかと思うんですね。  それは関西についても同様です。関西も、どうもあれ一体にせざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども。というのは、大阪都市圏と神戸都市圏と京都都市圏が複雑に重なり合った地方になっていますので、その三大都市圏に関わっている県は全部入れようということになると、滋賀県から和歌山県から兵庫県まで全部入ってしまうんですね。結局、関西地方一つにせざるを得ないんじゃないかという気がするわけです。そうすると、これまた関東地方に次ぐ巨大な道州が関西道として生まれます。私は、それは物すごいアンバランスな国の形になるんではないかと思うんですね。  そうすると、この関東道とか関西道をそれほど強力なものにしないという工夫をしなけりゃいけないんじゃないかと思うんです。そうすると、やっぱり分割論が必要になるんじゃないかと。お考えください。北関東、南関東と分けるんですかと、関東は。南関東になったとすれば、東京都、神奈川、埼玉、千葉、一都三県でしょう。これを一都三県が一つになれば東京大都市圏を全部カバーした新しい道が生まれるというので、それなりの大きな意味はあります。でも、これで全国人口の四分の一は占めてしまいます。これ依然として巨大です。そのときに、東京都とか埼玉県、神奈川県、千葉県を絶対廃止するという必要があるんでしょうか。私は残した方がいいんではないかというふうに思うんですね。ほかの、九州道は九州道と市町村でいくかもしれない。しかし、東京については、市区町村があって、東京都と県があって、その上に道ができていますと。上に乗った関東道とか東京道というところはその東京道全体の広域行政だけをやりますと、多くのことは依然として東京都と埼玉県、千葉県、神奈川県が分担してやっていらっしゃいますという自治の三層構造になったとしても、私はその方が現実的なんじゃないかと思うんですよ。  どうしてそういうことはお考えにならないんでしょうかと、考えるときに全部一律にお考えになるというのが非常に危ないという感じもします。
  60. 山崎力

    会長山崎力君) よろしゅうございますか。
  61. 倉林明子

    倉林明子君 もう結構です、時間が来ましたので。
  62. 山崎力

    会長山崎力君) それでは、行田邦子君。
  63. 行田邦子

    行田邦子君 日本を元気にする会・無所属会の行田邦子です。よろしくお願いいたします。  今日は、お二人の参考人に大変に示唆に富んだ御意見をいただきまして、ありがとうございます。  西尾先生からは、所掌事務拡張路線、そして自由度拡充路線という二つの言葉を用いて、地方分権についてこれまでの経緯、御説明いただきました。こうした自由度拡充路線、個々の事務地方への移譲というか、自由度を拡充していくという個々の積み上げによってのことでは満足できずに、最近では、先ほどから議論がありますような大胆な改革案、一つは道州制だろうと思いますけれども、こうした案が各方面から出てきているわけであります。  こうした中で、私自身も国の形論から入ってしまう、あるいは手続論から入ってしまうというようなことは非常にある意味危険なところがあるなというふうにも危惧をしているところであります。  そこで、西尾先生に伺いたいと思うんですけれども、西尾先生のお考えとしては、これから更に地方自治の充実という意味での分権を進めるに当たって、そのアプローチとして、今の国の枠組み、つまり国、都道府県市町村というこの枠組みを維持した中で、国から都道府県へ、また都道府県から市町村へと権限移譲あるいは自由度を拡充していくということを地道にやっていくべきだというお考えなのでしょうか。お聞かせいただければと思います。
  64. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 基本的にはおっしゃるとおりです。そう思っています。
  65. 行田邦子

    行田邦子君 ありがとうございます。  それでは、同じ質問を人羅参考人に伺いたいと思います。  これから地方分権を更に進めるに当たって、今の国、都道府県市町村という国のこの形、枠組みを崩さずに権限移譲なり自由度を拡充するということを進めていくべきとお考えでしょうか。
  66. 人羅格

    参考人人羅格君) 私も基本的にはそう考えています。  その御質問は多分道州制に連なる問いかけになると思うんですけれども、先ほど来お話にあります、私も話しましたが、手続論ということを先行するんじゃなくて、やはり何のため、そしてどういう権限を移し、事務を移し、そして基礎自治体をどうするのかということについて、先ほど西尾先生が、なるほど、そこまでお考えになりましたかというふうにおっしゃいましたけれども、そこまでお考えになった上で、やはりこの構想を選ぶべきかどうかということを判断していくということがまずあるべきだというふうに考えております。
  67. 行田邦子

    行田邦子君 ありがとうございます。  それでは次の質問なんですけれども、道州制は国と地方の在り方、国の形の話だと思いますが、大阪構想などは、これは地方の中での、各地方自治体の位置付けであったり、地方の形の議論であろうかと思いますけれども、こうした大阪構想以外にも、様々な地域から、例えば中京都構想といったものが愛知県からも出ています。また、たしか新潟県でも同じような構想が出ていたかと思いますし、それから、全国政令指定都市市長会からは新たな大都市制度といった提言も出されているかと思います。それぞれの地域で、それぞれの自治体間の在り方、地方の在り方という提言がなされているわけであります。  そこで、私が思い出しましたのは、大阪構想が国会でも、大阪構想実現するための法案審議が二年前に国会で行われたときのことなんですが、大阪構想実現するための法案の審議の中で、政府側の答弁で、地方の在り方、地方の形というのは、それはそれぞれの地方からの発意によってなされるものであって、国がこうしなさいというふうに決めるものではないと。あくまでも地方からこうしたいという意見が出て、それをできる限り尊重して決めていきたいというようなことを答弁していたのが非常に今でも覚えているんですけれども、一見それは、なるほどと、地方の発意によってということは納得できるようでもあるんですが、ただ一方で、地方の形というのは、これはイコール国の形とも言えるかと思います。やはりここをしっかり国が、国と地方地方地方の形というのをデザインをするべきではないかなというふうにもそのとき私は思ったんですが、この点について、西尾参考人、どのようにお考えでしょうか。
  68. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 都道府県市町村とありますが、基礎自治体である市区町村につきましては、その廃置分合、廃止するとか新しく設置するとか分割するとか合体するとかという法律用語は廃置分合となっていますが、合併などその典型ですね、これは市町村自身の発議から始まるという原則になっています、地方自治法上も。  関係市町村間で話し合って協議がまとまったらば、そこのそれぞれ議会にかけて、合併に賛成という議決を得ると県に持っていきます。で、認めてほしいというふうになっていって国まで来ると。こういう、あくまでも廃置分合、合併論議というものは市町村の発議から始まるというのが自治制度上大原則になっているんですね。それは私は変わるべきではないと思います。国が強制すべきことではないと思います。  しかし、都道府県は同じようになっているかというと、なっておりません、現在の法律でも。都道府県の廃置分合あるいは境界変更は国の法律で定めるとなっているんですね。戦後の地方自治法も、戦前からのこの四十七都道府県を、まあ沖縄は後に復帰したのですけれども、基本的にそのまま設置すると決めているわけですが、都道府県の発議ででき上がっているわけではありません。元々が国の総合出先機関の単位であったという由来もあるでしょうが、ともかく都道府県市町村はそこの考え方に違いが出ています。ここがいろんな議論を今後も複雑にしていくところだと思います。  都道府県は国の直下にある広域自治体ということになりますから、先生おっしゃるとおり、国の形に密接に関わるのよという議論も成り立ち得るんですね。そこに、その間に道なり州なりというものを、新しいのをつくろうというのも、自治の問題でもあるかもしれないけれども、国の形の問題だという言い分は通るところもあるわけですね。接点になっちゃう、どうしても接点になってしまう領域なんですね。ですから、そこは完全に地方の発議によってということは、現行制度もそうはなっていない部分だというふうに御理解いただくといいんじゃないかと思います。
  69. 行田邦子

    行田邦子君 ありがとうございます。  それでは、人羅参考人に伺いたいと思います。  先ほど住民投票といったお話もありましたけれども、実は、私がおりますのは埼玉県ですけれども、私が住んでいるところではないんですが、所沢市で先日、住民投票がありました。これはかなり極めて具体的な課題テーマに対しての住民投票だったんですが、何かといいますと、御存じの方は多いと思いますけれども、自衛隊の基地に隣接している小学校は二重サッシなので、防音設備があるので窓が開けられないと、で、エアコンを設置すべきかどうかといった住民投票が行われました。これが思いのほか全国ニュースに流れて所沢市が話題になったんですけれども、私は、これから住民投票がいろんなテーマで増えていくのかなとも考えてはいます。  そこで伺いたいんですが、地方自治の充実ということの関係の中において、住民投票について何か御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
  70. 人羅格

    参考人人羅格君) 所沢の話は大変注目を集めましたけれども、これは、恐らく住民投票をどう考えるかというのは、地方議会との役割分担、これをどう考えていくかということと連動していくと思うんですね。  私自身は、地方議会の方も、住民投票というと自分たちの存在を何か否定されたように真っ青にならないで、これは住民投票に任せた方がいいだろう、その代わりこちらの方は地方議会の方でやるみたいな、ある程度そういう役割分担意識というんですか、そういったものがあっていいんじゃないのかなというふうに個人的には考えています。  それで、所沢の件でいいますと、恐らく住民投票はやるけれども、何か有権者の三分の一以上の賛成がないと、何というんですか、拘束力じゃない、何か、尊重でもないですね、重視せざるを得ないみたいなところのハードルをつくっているというところが何とも中途半端な感じがあって、それで結局、地方議会というものの関与がはっきりしないという印象を与えたんだと思います。  ただ、私は、憲法改正で国民投票という議論がされている一方で、住民に身近な問題が、住民投票ですね、適切に話題を選んで行われるということ自体は何ら問題はないと思いますし、ただ、そのテーマが何が良くて、どの程度の拘束力を持たせるかということについてはかなり議論の混乱もございますので、むしろ政治の方で引き取って議論なさるのがそろそろいいのではないかというふうに考えております。
  71. 行田邦子

    行田邦子君 最後の質問をさせていただきたいと思います。  西尾参考人に伺いたいと思います。  これまでの地方分権というのは、多分に行政改革、国の行政機関をスリムにするというようなこと、行政改革の結局はその後押しを受けてきた側面もあるのかなというふうに私自身は考えているんですけれども、ただ、行政改革地方自治の充実、分権ということ、これをどう両立させたらいいのか。私は、これを一緒に進めていくことは、これまでもそういう側面はありましたし、可能ではないかなと、更に進めていくこともできるのではないかなと思っているんですが、この行政改革、行政をスリム化するということと地方自治の充実、分権、この両立についてどのようにお考えでしょうか。
  72. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 大変難しい御質問です。  まさに地方分権改革を求めてきた地方自治研究者たちあるいは地方公共団体関係者たち、そして、その人たちが入っていた地方制度調査会は、分権の推進とか自治の充実ということを答申で求め続けたにもかかわらず、時々の内閣によってほとんど取り上げられず、実現しなかったという苦い思い出を持っているのですね。  それが、一九七九年に第十七次地方制度調査会が最終答申を出しているんですけれども、その答申は前書きに、我々地方制度調査会は、過去何度も提言したけれども全く動かせなかった、世の中を、これはこれ以上続けても同じことの繰り返しなので、より強力な内閣レベルの諮問機関を設置して、そこで地方分権地方自治の充実を議論してほしいというようなことを調査会の答申の中に書いているんですよ。これ、異例の答申だったのですね。  そのときは自治体関係者の願望、願いを述べただけのことだったのですけれども、何とその二年後の一九八一年に第二次臨調がスタートするんですよ。土光臨調が始まる。大行政改革の流れがそこで起こるわけですが、そのとき、これで何とかこの地方分権改革も進むんじゃないかという期待を寄せたんですね。でも、三公社五現業、国鉄分割・民営化等々の大問題から取り上げられましたから、なかなか地方分権関係するようなテーマは出てこなかった。  これじゃやっぱり進まないのかなと思っていたら、少しずつ出始めた。でも、なかなか地方自治関係者たちの期待のようにはいかないという経験を積んで、そこで、やっぱり行政改革、臨調とか第一次行革審とか第二次行革審、第三次行革審、行政改革委員会という中では限界があって、それと並行して並ぶ地方分権改革を先端的に扱う諮問機関をつくらないとどうも思うようにいかないんじゃないかと思い出したんです。  それを何とかつくれないかというふうに動いているときに、国会の衆参両院の推進決議があった。そこからぐっと勢い付いて、地方分権推進委員会というものを独立につくるという動きになって今日まで来たわけです。これ並んで走る並走状態になったわけです、行政改革地方分権改革が。ところが、全体としては、行政改革を求めている勢力に後押しされながらやってきた分権改革なんですよ。そこが物すごく難しかったといいますか、いろんな矛盾をはらまざるを得ないというところがどうしてもあります。  ですから、行革にでもなく分権にも矛盾しないというような世界も全くないわけではありません。しかし、多くの問題でやっぱり衝突するというテーマだと、私はそう思っています。
  73. 行田邦子

    行田邦子君 ありがとうございました。
  74. 山崎力

    会長山崎力君) 続きまして、山本太郎君。
  75. 山本太郎

    山本太郎君 政党名に個人名が入っているとは何たることかと、前代未聞であると、国会内の皆さんにもかわいがっていただいております、生活の党と山本太郎となかまたち、山本太郎と申します。よろしくお願いいたします。  参考人の先生方、本当に貴重な御意見聞かせていただいてありがとうございます。是非、中学生でも山本太郎でも理解できるように教えていただけると助かります。よろしくお願いいたします。  まずは、両先生方にお伺いしたいと思います。  ざっくりで結構なんですけれども、いわゆる大阪構想では、大阪市を解体して五つの特別区にすることを住民投票で決める流れになっていますよね。その一方で、東京都の二十三の特別区では市と同等の権限を求める意見もあるようです。専門家の目から見て、大阪市を五つに分割することによって住民へのメリットとデメリット、教えていただけないですか。
  76. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 都構想というのは、東京都の基本的に先例が唯一あるので、それに基本的に同じようなことを大阪考えていらっしゃるわけですけれども、エッセンスは、従来の大阪府に加えて、大阪市がやっていたような広域的な事務といいますか、重要な事務は府の方に持っていくわけです。東京都でいえば、二十三区の都市計画権限のかなりの部分を東京都自身が持っているわけですね。二十三区に残されているのは、軽微な都市計画事業しかできなくなっているわけです。そういう意味で、集中しているわけです。それから、消防の業務等を全部府で持つと。東京都の消防庁が持っているように集中すると。  そういう集中の面と、それから分権するという意味が、従来の大阪市の場合は行政区しかありませんから、区役所しかなくて、区長さんも区議会もなかったわけですね。それが、今度は五つの特別区になりますと、公選の首長さんが出てきますし、公選の区議会もそこに置かれるということになりますから、従来の行政区というよりははるかに強力な自治体が生まれるわけです。そこにまとまった仕事を下ろすという意味では、大阪市以上にもう少し住民に身近なところへ権限を下ろすという部分と、両面を持っているわけです、都政構想というのは。  ですから、そこで、五つの特別区ができたらうまくいくのかというのは非常に複雑な話で、私は、東京都で、東京市と東京府を統合して東京都になってきたあの制度が持っている東京都にとってのうまみですね、それはかなりあの財源に支えられたところがあります。そういう意味で、都政のうまみというのが東京都の関係者は享受している部分があります。しかし、大阪はそれだけのまだ財政力がないんですよ。府市統合してもないんです。それで果たしていいうまみが出てくるかということは、やってみなければ分からないというところじゃないでしょうか、本当に、そう思います。
  77. 人羅格

    参考人人羅格君) 一般的な話として申し上げますと、都構想の場合には、メリットとして議論されているのは、府市、府市合わせという表現をよく言われるようですけれども、そういった二元状態ということがある程度解消されるのではないかという点がまず一点あるでしょう。  あともう一つは、現行の政令市においては、区長というのはお役人です。役所の役人として配置されている人ですが、先ほど西尾先生のお話にありましたとおり、大阪構想になった場合には、自治体ですから、区長、区議会というものの公選が行われるということは、ガバナンスという点では強力になる可能性があるということであろうと、ここがメリットとして言われている点ではないかなというふうに思います。  逆に、じゃ、デメリットの点について言いますと、大阪市をわざわざ分割して市はなくなるわけですから、そこまでして区に割って、それでその割られた区によって財政の均衡度がきちんと保たれるのであろうかと、そこに格差が生じるのではないかと、そこをどう調整するのであろうかということについて、そこの答えはどうだろうという、そこについていろんな議論が多分あるんだと思います。そういった点が議論になっているのではないでしょうか。  以上です。
  78. 山本太郎

    山本太郎君 大阪構想と、そして道州制の関係についてお伺いしたいと思うんですけれども、大阪都ができた場合、大阪都は関西州に含まれるのか含まれないのか。大阪構想と道州制、これ、何か矛盾するような気もするんですけれども、御意見をお伺いできますでしょうか、お二人の先生に。
  79. 人羅格

    参考人人羅格君) これは私の不勉強と言うしかないんですけど、橋下さんとか、大阪府、市においてどのような議論がなされているかということを私自身はちょっとまだよく承知していませんが、基本的には都構想というものと関西州なり何州を、道州制を置くということは別の問題であろうというふうには思いますが、ただ、実際には政治的には、大阪市が仮に都に移行するということになれば、やはり改革機運というんですか、そういった意味では道州制などの議論に政治的には波及、連動しやすいムードが醸成されるということは、そこは政治的にはあるんじゃないかなというふうに考えています。  ただ、それが道州制と都構想が果たして両立することが矛盾するのかという点については、ちょっと私自身、今明確に申し上げることはできないと思います。
  80. 西尾勝

    参考人西尾勝君) これは物すごく複雑な話で、なかなか中学生に分かるように説明するというわけにとてもいかないテーマなのですけれども、東京都の場合も同じなのですが、これを道州制にするといったとき、東京都をまず廃止するわけですね。先ほども御議論の皆さんの前提は東京都も千葉県も神奈川県も廃止するということですが、東京都を廃止するということは二十三特別区制度も廃止するということになるんです。これ大問題なんです。その後どうするのという話になるわけです。  大阪も同じ問題が起こります。今度、今維新の会が進めておられる府市統合が進んで、でき上がったとします。その後、道州制論議が出てきて、大阪府も兵庫県も京都府も奈良県も一旦廃止よとなった途端に、大阪五区はどうするのと。この制度も廃止になります。改めてどうなるのという話になるわけです。ですから、そのときは改めて、旧大阪市だった部分を、大阪市を復活するのかとか、この五つの特別区を全部市にしてしまうのかとか、何かそこの始末をきちんと決めない限り、大阪府の廃止はできないということなんですよ。そういう意味で複雑になりますよという議論です。そのことをどれだけ意識していらっしゃるかは分かりませんが、かなり複雑な問題になりますということです。
  81. 山本太郎

    山本太郎君 ありがとうございます。  次に、地方主権、地方創生にとっても重要なことであろう選挙権年齢を引き下げる公職選挙法改正について、両先生に伺いたいと思います。  若い世代からは、選挙権年齢を引き下げてくれといった声は大きく聞こえてこないんですよね。一方、国会では、十八歳への選挙権年齢の引下げは二〇〇七年の国民投票法改正以前から視野に入っていたのかもしれません。しかし、選挙権年齢を下げること以外には、大切なことが放置されたまま議論も尽くされていない印象を受けます。一つは成年年齢の引下げ、そして、若い方々も政治にチャレンジできるように、被選挙権年齢の引下げと、それを実現するための供託金の大幅な引下げです。これらの議論が少しも詰まっていない状態で選挙年齢引下げだけを先行させるのは、大事な議論をすっ飛ばしている、順序を無視していると言えるんじゃないかなと思うんですけれども、先生方のお考え、お聞かせください。
  82. 人羅格

    参考人人羅格君) 毎日新聞は、十八歳選挙権については実現すべきという立場でございます。  それで、よくそこで議論になるのは成人年齢と少年法ですよね。ここのところの絡みが議論になるわけなんですけれども、成人年齢については、法務省が、少年法もそうですけれども、そこは選挙権年齢と分離しても支障はないという見解を示しております。諸外国の例を見ても、選挙権年齢と成人年齢は一致しているところも確かに多いんですけれども、必ずしも一致しているわけではございません。分離しているドイツのように、最初は選挙権年齢を引き下げて、その後に成人年齢が付いていったというケースもございます。むしろ、選挙権年齢を先行させて、十八歳でも成人年齢に値するのではないかという議論が醸成されていくということもあり得ると思います。ということなので、これはケースとして私もそう思っているんですけれども、その成人年齢と少年法の話ということは、選挙権年齢と必ずしも一体不可分ではないということでの処理が可能ではないかというふうに考えております。
  83. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 人羅参考人の御意見と余り違いません。一体で、引き下げるなら引き下げるで、少年法、刑事関係も民事関係もみんな一緒になった方が分かりやすいとは思いますが、選挙権が引き下げられたら必ず少年法の扱いも民法の扱いもそうなるべきだとまでは言えないのではないか、そこに違いが生じても合理的な理由があれば仕方がないのではないかというふうに思っています。
  84. 山本太郎

    山本太郎君 被選挙権のことについてお聞きしたいんですけれども、よろしくお願いいたします。
  85. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 私は、選挙権と被選挙権に区別を付けているという部分については、余り合理的な理由がないのではないかというふうに思っています。ですから、選挙法についていろいろな改正をするときには被選挙権年齢を見直すということは十分あり得る論点だと思っています。
  86. 人羅格

    参考人人羅格君) これについては私も西尾先生とほぼ同様の意見であります。被選挙権年齢と選挙権年齢については、別に、必ず違っていなければならないということではなくて、大いに議論余地がある問題ではないかというふうに考えています。
  87. 山本太郎

    山本太郎君 ありがとうございます。  供託金のことについてはいかがお考えでしょうか。
  88. 人羅格

    参考人人羅格君) 日本の選挙の進め方において供託金が高過ぎるのではないかという点については、これも毎日新聞の意見としてでありますが、その意見には同意しております。供託金については、これもやはり見直すという議論が政治的にかなり行われてしかるべきではないかというふうに考えております。
  89. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 全てのレベルの選挙についてそう言えるかどうか自信はありませんが、基礎自治体である市町村議員の選挙における供託金はもっと下げるべきなのではないかと思っています。
  90. 山本太郎

    山本太郎君 ありがとうございました。  是非、若者に対して選挙であったりいろんな権利を与えていくということには僕も大賛成なんですけれども、それに伴って、被選挙権であるとか、若者がチャレンジしやすいように供託金、今の供託金の制度だったら選挙区で三百万円、比例区で六百万円、これ政党に属していなかったら十人一緒に立候補しなきゃいけない。これ参議院の場合ですけれども。六千万円を素人が集められるかといったらやっぱり難しいんですよね。だから、そういうところも一緒に政治が、十八歳に引下げということに伴ってというよりも、それとともに一緒に考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思いました。  貴重なお話、ありがとうございました。
  91. 山崎力

    会長山崎力君) 平野達男君。
  92. 平野達男

    平野達男君 改革・無所属の会の平野達男でございます。  今日はどうもありがとうございました。  今日、お話聞いていまして、三位一体改革の話が出てきましたので、かなりテクニカルな話をまず西尾参考人にお伺いしたいと思います。  三位一体改革は結局何を言いたかったかといいますと、国の歳出カットだったと思います。そこに税源移譲をくっつけた。あのときに国の補助金を削って税源移譲をやったんですが、一番激しくやったのは地方交付税の総額に圧縮を掛けましたですね。一般加算でしたか、財源特例債でしたか、ちょっと話聞きながら記憶を必死になって呼び戻しておりましたけれども。結局、それで削ってしまったがために、結果的に、蓋を開けてみたら、いわゆる交付団体と言われるものについての補助金はカット。地方交付税交付金はカットですから、税源移譲をされたとしても、元々税源のベースが少ないですから大したことにならない。だから、もう三位一体改革の結果とすれば、国から来る地方交付税を含めて、補助金含めてすごく減ってしまって、さあ大変だ大変だという話になったということだったと思います。  あれは、三位一体改革が出てきた段階から、これは地方にとっては決していい話じゃないと。ところが、交付団体、私は岩手県なんですけれども、岩手県の、当時全部、市町村、県も含めて交付団体です。三位一体改革やれやれやれという陳情の大合唱でした。これはちょっとおかしいじゃないかというんですけど、今にして思うと、あれを三位一体改革と言われる、片山虎之助さんの発明に係る言葉だと聞いていますけれども、あの言葉にだまされて、だまされてというか、いいものがあるものだというふうに思ってしまったということですね。  ここからが私のちょっと質問なんですが、あのときにバイプロダクトというのが一つありました。それは何かといいますと、物すごい、結果的に財源という意味においては伸びたところもある。それはもう言うまでもなく、西尾参考人が一番お詳しいんですけれども、不交付団体です。  東京都なんかはその典型ですね。東京都は元々交付税はもらっていませんから、交付税削られても関係ない。それから、補助金も余り依存していませんから、補助金削られても関係ない。税源移譲だけが来て、結構大変な伸びを示したということになると思います。元々あのときは所得税を住民税に割っていますから、人口が東京都は非常に多いですから税収がどかんと伸びるということで、当時、これは東京都さんには申し訳なかったんですけど、おかしいじゃないかということで予算委員会でも何か私も随分いろいろ意見言って、最終的に法人事業税ということで一年遅れで別枠を取って、それを東京都から一回吸い上げて、交付団体に交付するという仕組みを一旦つくりました。  質問なんですけれども、今回、消費税が五%から八%に上がりまして、地方消費税というのが一定の割合で行きます。今回も結果的には、地方消費税ですから課税ベースの非常に多い、人口の多いところが、消費税ですから行くということになります。東京都が圧倒的に人口が多いということで、元々不交付団体で更に税収が増えるということで、今回の五%から八%やったときもある一定の、いわゆる垂直的調整というふうに言いましたかね、財源調整を一応やりましたけれども、これからまだ、八%から一〇%に上がるときにどうするかという議論はまだ残っています。  ここで西尾参考人にお伺いしたいんですけれども、これは、所得税を住民税に移譲するというのは地方交付税の総額にも影響してきますから、これは、そういった意味で、東京都さんから少しお金返してくださいよみたいなことは主張はできたと思いますが、西尾参考人が言われますように、財源の問題と移譲の問題として税収が増えた段階でやるというのは、これは私も賛成です。そのときに、私はもう岩手県の出身ですから、やっぱり垂直的調整はもっともっときちっとやってもらいたいなというふうに思います。ただ同時に、消費税ですから、これは元々地方の固有財源ということもありまして、そこに手を掛けるのはおかしいじゃないかという考え方もこれはあると思いますし、東京都さんは当然そういう、あるいは不交付団体団体さんはそういう主張をしてくると思います。  西尾参考人は、ここの垂直的財源調整ということについて、特に消費税に絡めてなんですけれども、どのようなお考え方を持っておられるでしょうか。総務委員会の質問みたいになりましてちょっと恐縮でありますけれども。
  93. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 私は財政学者ではありませんので、お金の関係のことの細かいことは、税、何と何をどういうふうに組み合わせることが最善かというようなことは、なかなか答える能力を持っていません。ただ、三位一体の改革に限らず、これからも、国から地方への税源移譲という話になれば、どうしても多くの自治体に余り地域差なしに、比較的にですよ、地域差のない税金なんかないんですが、少ない、各地域にほぼ同じように下りてくるものというと、所得に掛けるものと消費に掛けるもの、所得税関係と消費税がその典型なんですね。そうじゃない税金になるともっと地域差が大きくなるわけです。ですから、税源移譲考えると、そこにまず手を付ける、消費税関係で手を付ける、所得税関係で手を付けるということにならざるを得ないんだろうというふうに思っています。  ただ、それをやっていくと、東京都とか愛知県名古屋市とか、そういう大都市部のところに必要以上にお金が入るということになりかねないという面が必ず出てくるわけです。そこで、法人事業税のような構想でまた国税に吸い上げるということが起こっていますが、それは避けられないのではないか、両方やっていかざるを得ないのではないかというふうに思います。  そういう意味でいうと、地方交付税の原資に何を充てるかというのはかなり大事な問題で、そこの税目も少し今度いじりますね、今度変わるようですけれども、あれがこれから恒久的にいいかどうかというのは問題ですが、あの原資、地方交付税の配分の原資にする国税の種類をどういう比率で集めるかも物すごく重要な話なんではないかと、こう思っています。
  94. 平野達男

    平野達男君 交付団体、岩手県のような自治体にしますと、いろんな考え方はありますけれども、税源移譲よりは、増税したなら全部地方交付税に回してもらうと、それで配分してもらった方が有り難いという意見もあるということも少し申し上げておきたいというふうに思います。これはまあ意見です。  それから、今度は人羅参考人西尾参考人にお伺いしますけれども、先ほどから出先の廃止論というのが出ていまして、これは西尾参考人意見に私も賛成なんですけれども、一括での全部廃止ということについては、一時、知事会でも盛んに言われる方がおりました。でも、よく見ますと、その知事というのは大体総務省出身の知事が多かったですよね。それで、出先機関廃止について、それからもう一つ特徴的なのは、市町村長からはほとんどそういう声が聞こえない。それが二つありました。  まず、前段の話なんですけれども、全て廃止ということについては、これは東日本大震災もそうなんですけれども、近年、非常に災害が多発しておりまして、しかも大規模災害です。日本全国で見ると、例えば五十年とか百年に一遍ぐらいの確率で発生するような災害が起こっていると。だけれども、それは、地域で見ますと、日本全国で五十年、百年となりますと、地域にとったら千年か一万年ぐらいの確率になるかもしれません。  何が言いたいかといいますと、そういう災害に備えて人を確保しておくというのは大変ですね。こういう大規模な災害の対応をするためには、やっぱり国である程度の技術者、対応人員を用意しておいて、そういう災害が起こったときに国から地方自治体、その地域に行って対応するということについては、これはやっぱり一つの有益性があって、ここまで地方に委ねるというばかりじゃなくて、特に国交省の地方整備局は災害があるといち早く現場に駆け付けますから、あれでいかに地域が助かっているか、自治体が助かっているか、そのことがよく分かっているから、多分市町村の首長さんは余り廃止ということは言わないんだろうと思います。  そこで、この見直し論に関連しまして、まず一つは、人羅参考人は、何で町村の首長さんが出先の廃止を言わないのか、西尾参考人も同じですが、それがまず一点目です。  それから、あと、やっぱり私は、これは国側の都合での行政改革の一環でやるということについて西尾参考人は懸念を示されておりますけれども、この方向は同時に、かといってやっぱり不可避の状況ではないかなという、つまり国の財政も非常に大変だという状況の中である程度の出先の統合も進めるべきではないかというふうに思っていますが、ちょっと二点目は質問になっているのかどうもよく分かりませんが、以上二点についてちょっとお聞きしたいというふうに思います。
  95. 人羅格

    参考人人羅格君) 出先機関廃止について市町村側から声が出ないという、私の印象だと、声が出ないどころか、皆さんむしろこぞって反対なさっていたという印象があるんですけれども、これは恐らく、市町村には都道府県というものが余り強くなるということについてアレルギー感というんですか、まずそこがあるのじゃないかという印象を私は受けました、あの議論のときには。  それで、おっしゃるとおり、この国の出先機関見直し論議が非常に大きなターニングポイントを迎えたのは東日本大震災だったと思います。東日本大震災で国土交通省の地方整備局、これが本当に地方団体に移していいものかという議論がかなり強まったということは、民主党政権下の出来事でしたが、そこは否定できないというふうに思います。確かに、国土交通省地方整備局を地方に丸ごと移すべきかどうかということについては私も懐疑的なところがあります。本当にそれでいいのかと。  ただ、そうなると逆に、さっきの道州制の議論に戻るわけですけれども、では、国と地方の出先のどこまでを地方に持たせ、じゃ、国の役割をどう、守備範囲をどうするんだという議論にやっぱり戻るんだと思うんですね。そこをきちんとまず議論した上で、じゃ、そこまで移すのなら道州制でいいだろうとか、そこまでだったら、例えば、具体的な省庁名を言うのは差し支えあるかもしれませんけれども、ある程度の省庁の出先を移せばそれでいいのではないかとか、そういった議論が行われるべきではないかというふうに考えています。
  96. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 市町村出先機関廃止問題について市町村長たちの中からグループをつくって動き出した最大の要因は、河川問題だったと思います。土木一般ではなくて、余り道路についての反応は少ないのですけれども、河川で特に危機感を感じたんだと思います。  河川管理になりますと、県に受けたら県はやると言っているけれども、本当にそれにやれるだけのお金も下りてくるという保証はないわけですね。そうすると、市町村から見ると都道府県財政力でそこまでの整備ができるとは思えないという、そこの不安感がまずあります。それよりは国がやっていてくれた方が安心感があるという、今までどおりいくというその問題がありましたけれども、河川の場合は、洪水を起こしてあふれますと、市町村長は消防を担っているわけですが、同時に水防を担っているわけです。水が絡む消防団と水防団は大体兼ねていることが多いわけですが。河川が洪水を起こすかもしれないというときは災害対策本部をつくり、現地に出ていくのは、市町村長が水防団と一緒に現地へ出ていくんですね。そこで警戒をし、あふれたりしたら大変なことになるわけで、住民から苦情を言われて、どうしてここの整備をもっと急がなかったのかと攻撃を受けるのは市町村長たちなんですよ、大抵の場合。住民からすればそれが市町村仕事か県の担当か国の仕事か区分けしていませんから、ともかくそこで起こったら市町村長が矢面に立つわけです。そういうつらい思いをずっとしてきているというテーマなんですね、市町村長からいえば。そこで、この河川の問題についての権限移譲には市町村長が厳しく警戒して都道府県への移管を反対したという、私はそこに集約していると思っています。  それから二点目ですが、出先機関廃止問題と縮小問題というのは行政改革から不可避でやっぱりやらざるを得ないんではないかというお話であります。  私は、国の行政改革はなるべく国の責任の範囲内でおやりいただきたい、余りその影響を地方自治体まで持ってきてほしくないと、こういうふうに思っているだけのことなんですが、この出先機関原則廃止のときのあの発想は国家公務員数を減らすということに絞られているわけですが、減らすといっても、皆さん解雇するわけじゃないんですよね。これを地方公務員に引き取れという前提でお話しになっているんですね。そうすると、人が減らないんですね。国家公務員から地方公務員に変わっただけで、給与の支払者が変わるということですね。それだけのお金を地方に下ろしてくれないとしたらどうするんでしょう、地方は、その人を抱えて。下ろしてくださらなきゃ困りますという話なんですけれども、全部丸ごと人件費から下ろしていたんでは行革にならないんですね。これが行革になるという論理が非常に怪しいんですよ。そこから疑問になるんですね。下ろすときにはそれだけの人件費は下ろさない、手当てしない、自治体に。勝手に削減しろというんでしょうか。そうしたら、それはサービス水準の低下ですよね。自治体に移った途端にサービスの低下、やっぱり国がやってなきゃ駄目だよねという話に戻るんじゃないでしょうかね。よく分からないのです、ここが。そういうあやふやな行革は余りやっていただきたくないということですね。
  97. 平野達男

    平野達男君 ありがとうございました。
  98. 山崎力

    会長山崎力君) 続きまして、島村大君
  99. 島村大

    島村大君 ありがとうございます。自由民主党の島村大でございます。  各会派一巡いたしましたので、私の方からは一点だけ御質問させていただきたいと思います。  今まで地域差の問題について大分問題点また御質問があったと思うんですけれども、今までは大都市圏、例えば東京圏と地方とか、そういう地域差はあったと、今話があったと思うんですけれども、例えば私、神奈川選出なんですけれども、いわゆる神奈川県内での、大都市圏の中でも地域差があると思うんですね。特に神奈川県は三十三の市町村があるんですけれども、御案内のとおり、今、神奈川県約九百五万人、その中で横浜市、川崎市、相模原市が政令都市で大きいですよね。ただ残念ながら、横須賀市というのがあるんですけれども、ここの横須賀市が一九九〇年代は約四十四万人ぐらいいたんですけれども、今現在は四十万人を切ろうとしている、約一割減ぐらいになろうとしているわけですね。約一〇%、ここ二十年間で減ってきています。ということは、同じ東京圏としましても、いわゆるその同じ県の中でもこれだけの地域格差ができていると。  これに関しましてやはりいろんな問題が出てきていまして、ただ今回の、政府・与党としましては、この地方創生で、いわゆるその地方創生として地方をどうにかしようということなんですけれども、ただ、今お話ししましたように、横須賀は東京圏なんですよ、いわゆる地方じゃないわけ。ですと、これだけの人口減の町もあるということなんですけれども、これに関しましてはどのように今後、我々政府・与党としましては、この格差を同じ東京圏の中での、まあ違うところもあると思うんですけれども、対策とかどのように考えればいいかということを、御意見ありましたらお二人から御意見を伺いたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
  100. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 人口減問題は全国に及んでいるんだと思います、地方圏だけではなく大都市圏にも。やがて大都市圏の人口もどんどん全体として減り始めるんですね。東京圏も例外でなく減り始めるわけで、そのときになったら相当な減少で進むんですね。そうしますと、横須賀の例をお出しになりましたけれども、多摩ニュータウンなんかもどんどんどんどん人口減がもう始まっているわけでして、そういうことは東京都下にもありますし、至る所に起こっているんだと思います。  ですから、この人口減少問題にどう対処するのかというのが全国の市町村の問題、もう差し迫っているところと、ちょっとまだ余裕があるところの差でしかないんじゃないかと思います。
  101. 人羅格

    参考人人羅格君) 今、西尾先生のお話のとおり、例えば増田さんたちの出したリストだと、たしか豊島区が消滅可能性自治体に入っていて、豊島区が大変ショックを受けたというような話もあるので、本当に関東圏でも例外のない話だと思います。  しゃくし定規に東京圏以外は駄目だとか、中京圏、関西圏だけに区切った話では全くないアプローチが必要だというふうに考えております。
  102. 島村大

    島村大君 先ほど、農地転用のお話があったと思うんですけれども、今回、その農地転用を地方に委ねるということで話が決まったと思いますが、それに関しまして、やはりこの人口減、特に、たまたま今横須賀の話していますけれども、その人口減の町づくり、自治体が今度自主的に農地転用を決めていけるようになると、これは一つは人口減とか町づくりに対してプラスになるとやはり考えてよろしいんですか。そこを一つ教えていただきたいと思います。
  103. 西尾勝

    参考人西尾勝君) 私はプラスになると思います。町づくりの土地利用に関して一括計画を作り、その計画に基づき規制していくという、この関連の権限は私は基礎自治体が持つべき権限だというふうに思っていまして、これがずっと日本の場合は、国の権限としていたものをだんだんだんだん地方権限に下ろしてきたんですけど、農地のところだけが岩盤規制みたいに残っていたということで、私は方向としてはいい方向に進んでいると。それで、市町村が対策をつくるときに非常に有効な手段になっていくだろうと思います。
  104. 人羅格

    参考人人羅格君) 私も、町づくりの自由度基礎自治体が持っていく流れの中では非常に意味のある改革であったと思っております。  そもそも、私は、農水省が、農地転用許可を国が持つことがどれだけ優良農地の保全ということについて効果があったかということについて懐疑的な見方を持っていまして、むしろ耕作放棄地の問題について国と地方が、自治体がきちんと話し合うという体制をつくる方がよほど有意義ではないかというふうに考えております。
  105. 島村大

    島村大君 ありがとうございました。
  106. 山崎力

    会長山崎力君) 続きまして、風間直樹君。
  107. 風間直樹

    風間直樹君 最後になりますが、よろしくお願いします。  私から、人羅参考人にお尋ねをしようと思います。二点ちょっと問題提起をしたいと思うんですけれども、参考人の主要論文等の中に、人羅参考人の、三十八ページですか、不信の本質は存在意義への疑問だという地方議会に対する問題提起がございます。  私も地方議会に随分いましたので、いろいろ感慨を持って読んだんですけれども、地方議会の役割というのは、そこに指摘されているようになかなか住民に理解されていない部分が多分にあると思います。一方で、私は、地方議会の役割のもう最大中の最大のものは首長に対するチェック、監視だと思っていまして、日本の地方自治行政、地方自治法の体系というのは、モンスター首長が出てきたときにそれを議会がチェックすることが非常に難しく実はなっていると私は考えています。  モンスター首長というのはどんな首長だとおっしゃるかもしれませんけれども、私は若い頃、地元の自治体で、その自治体の首長がある問題を起こして住民からリコール請求が出たときに、この首長さんがリコール請求に対して、自治体内のいわゆる町会の会長さんを全部集めて、その人たちにリコール運動反対というステッカーを全部配って、家の戸口に貼れと、自治体を挙げて大騒動になったことがありまして、そのとき、地元自治体の議会もほとんど大半がこの首長の執行権を目当てに首長側に付くと、リコール側に立った議員さんというのはもう三名程度だったという、こういう経験がありました。  ですから、私は、県や市町村を問わず、議会の最大の役割というのは執行部、首長に対するチェックだということを信念として思っておりまして、国会でもそれを心掛けるようにしているんですが、報道陣としてまた何かお考えがございましたらお聞かせいただきたいというのが一点目。  それから二点目は、地方の選挙制度の話で、先ほど来、選挙人の年齢ですとか被選挙人の年齢等々の話題が出ておりますけれども、そもそも、我々、国政選挙で選ばれてきて、いつも選挙のときに疑問に思うんですが、何のために自分たちこの選挙をやっているんだろうと、この選挙に出ているんだろうと思うことが実は一度や二度ではありません。  それは何かというと、有権者の関心の低さです。さきの衆議院選挙も投票率がいよいよ半分に迫るというところまで低下してきましたし、おととし、私、二期目の改選の選挙を迎えたんですが、私の新潟県選挙区では投票率が六〇%ぐらいだったと思います。県内の選挙区を回ってみましても、訴えてもほとんど響かない。私の訴え方が悪いせいもあると思うんですが。  根本的な疑問として、果たして日本の義務教育課程あるいは高等教育課程で民主主義を成立させるための選挙に臨む有権者教育というのがきちんと行われるのかなということを随分感じます。有権者教育というのは政治教育とは別物だと思っていまして、選挙のときにきちんと何を判断基準にして投票すべきかということを学校教育の中で教えればいいと思うんですが、それが欠けているために投票率も下がる、あるいは参考人が配付資料で指摘されているような様々な地方自治に対する問題点が出てくるということなんだろうと思います。  これは同時に、私は、国民の何というんでしょうか、関心ですとか新聞の購読率ですとか文字をどれぐらい読むかという話ともつながってくるような気がしていまして、毎日新聞さんの購読率が、今発行部数は何部で、それがどういうふうにこの三十年ぐらい推移しているのか存じませんけれども、その辺とも関わってくるのかなという気もします。  この有権者教育についてお考えがあればお伺いしたいと思います。  以上二点、人羅参考人、よろしくお願いします。
  108. 人羅格

    参考人人羅格君) 地方議会をどうするかという議論をするときに二つベクトルがありまして、政策活動をもうちょっと発信機能を強化するべきだという議論と行政監視機能を強化すべきだという議論と二つあって、そこはなかなか難しいところがあると思いますが、私は個人的には、やはり住民から見て地方議会というのはこれは地方の国会であろうと。そうであれば、やはり政策機能というものをもうちょっと発揮してほしいという気持ちが強いのではないかなと思います。だからこそ、議員提案の政策条例とか、そういったものをもう少し活発にしていくというアプローチがやっぱり地方議会の活性化ということについては大事じゃないかと。  ただ、やっぱり首長さんが強い仕組みになっているということは確かですので、実際には条例制定権も独占状態に近くなっていますから、そこについて、じゃ地方議会がどこまでできるのかというところの領域の話をもうちょっときちんとしていくべきだというふうに考えています。これが一つですね。  あともう一つ、投票率とかの話になりますと、これはまさに十八歳選挙権ということが実現しますと、高校三年生のときから一部の人は投票に行くということになりますので、その段階でいわゆる主権者教育ですか、投票の仕組みから始まって、棄権しない、選挙ということの大切さということをきちんと教育現場で取り上げていくということは、これは今もう準備が行われているであろうと思われますし、とても大事なことになるというふうに思います。  若いうちに投票に行かないと、年齢を重ねて投票に行く比率は増えるにしても増え代に限界があるというふうに言われていますので、このままですと超低投票率国家になってしまいますので、やはり若いうちからきちんと投票に行くということをこの十八歳を機会に定着させるということが極めて重要だというふうに感じております。
  109. 風間直樹

    風間直樹君 ありがとうございました。終わります。
  110. 山崎力

    会長山崎力君) 他に御発言はございませんか。──他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  西尾参考人及び人羅参考人におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会