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国務大臣(
谷垣禎一君) 所信を申し上げる前に、
東日本大震災でお亡くなりになった方に謹んで哀悼の誠をささげ、そして被災者の皆様にお見舞いを申し上げたいと存じます。
法務省としても、全力を尽くして被災地の復興にこれから努力を更に加速してまいりたいと思っております。
それでは、所信を申し上げます。
法務大臣の
谷垣禎一です。
国民生活の安全、安心を確保し、
社会経済を持続的に発展させていくためには、揺るぎない法の支配の確立が必要です。そのために、法務省は、国民から負託を受けた権限と責任に基づき、法秩序の維持、
基本法制の
維持整備、国民の
権利擁護、出入国の公正な管理及び
法制度整備支援を始めとする
国際貢献など、その幅広い
所管事務を堅実かつ忠実に果たしていかなくてはなりません。
私は、
法務大臣に就任して以来、こうした認識、信念に基づき、副大臣、
大臣政務官と協力し、職員と議論を重ね、内外に情報を求め、視察先、
訪問先等における国民の皆さんとの対話を通じるなどして、
法務行政の在り方を模索し、多くの課題の克服に取り組んでまいりました。
今、再び経済が活性化を始め、スポーツ、科学などあらゆる分野では、若い力が生き生きと躍動し、壮年、高齢者がその持ち得る経験と知恵を生かして活躍し、共に自立し、協力し合う活力ある社会が育まれつつあります。他方で、政府は、一丸となって震災を始めとする災害、事故からの復興を一層加速させていく使命を背負っています。こうした
社会経済を持続的に成長させ、かつ、復興を支えるためにも、法の支配の貫徹は不可欠な要素と考えます。
私は、
法務行政の責任者として、引き続き、諸課題に真摯に向き合い、所要の
法整備等を速やかに進めるとともに、国民の皆さんから信頼され、安心していただける、プロとして精度と質の高い
法務行政サービスの提供に努めてまいる所存です。どうぞ委員長を始め委員の皆様の一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
我が国における様々な治安上の脅威に対処するため、昨年十二月十日に「世界一安全な日本」
創造戦略が
閣議決定されました。政府としましては、この
創造戦略に基づき、二〇二〇年
オリンピック・
パラリンピック東京大会の開催を視野に、国民の皆さんの安全、安心な暮らしが守られるとともに、外国の方々に安心して訪れていただけるよう、
世界最高水準の安全な
サイバー空間の構築、
テロ対策や
カウンターインテリジェンス機能の強化、
再犯防止対策や
不法滞在対策の推進等に取り組むこととしており、法務省としましても、
関係省庁と協力しながら、世界一安全な日本の実現に向け、全力で
犯罪対策に取り組んでまいります。
中でも
再犯防止対策は法務省における最
重要課題の一つであります。現在、法務省では、
薬物依存の問題を抱える者や、少年、女性、高齢、障害といった対象者の特性に応じた指導、支援の強化や、住居と就労の確保などを柱とする総合的な
再犯防止対策を推進しておりますが、
再犯防止対策の充実に向け、私自身もこれまで様々な
関連施設を視察したり、外国の取組を見聞きするなどしてまいりました。
法務省としましては、引き続き、これまでの取組を着実に推進することに加え、
刑務所出所者等の円滑な
社会復帰を実現するため、地域や国民の皆さんの十分な御理解を得られるよう、様々な
啓発活動に努めるとともに、
刑務所出所者等の
社会復帰を支える保護司、
協力雇用主等民間の方々の地道な取組に対する支援の充実を図ってまいりたいと考えております。
矯正の分野では、
少年矯正につきましては、社会に開かれ、信頼の輪に支えられる少年院、
少年鑑別所を目指して諸改革に取り組んでいるところですが、少年の
健全育成を図るという
少年矯正の理念にふさわしい
法的基盤を整備するため、
少年院法案、
少年鑑別所法案とそれらの
整備法案を今国会に提出いたしましたので、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
矯正施設の被収容者に対する
健康管理、疾病の予防及び治療は、被収容者の身柄を強制的に拘束する国の責務であります。しかし、現在、
矯正施設は深刻な
医師不足に直面しており、
法務行政にとって緊急かつ重大な課題となっております。
こうした現状を踏まえ、昨年七月、医師や
弁護士等外部有識者から成る
矯正医療の在り方に関する
有識者検討会を発足させ、先般、その議論の結果として、
矯正医官の
待遇改善や
地域医療との共生、
連携強化の在り方などを内容とする報告書をいただきました。
今後、報告書の
提言内容を踏まえ、
関係省庁とも連携しつつ、
矯正医療が抱える問題の解決に向けて全力で取り組んでまいります。
また、
国民生活の安全、安心の確保という観点からは、
犯罪被害者等の保護、支援も重要な課題であり、引き続き、
犯罪被害者等のための
各種制度を適切に運用し、きめ細やかな対応に努めてまいります。
北朝鮮関係については、引き続き、核、ミサイルをめぐる動向や、
金正恩体制下の
国内情勢等の把握に努めるとともに、
日本人拉致問題等の重大な問題の解決にも資するよう、
関連情報の収集、分析等を積極的に行ってまいります。
尖閣諸島関係については、我が国の主権に関わる事案の相次ぐ発生を踏まえ、
関係機関と連携し、
関連情報の収集、分析に尽力いたします。
国際テロについては、テロの
未然防止に向け、
不穏動向等の
早期把握に努めるとともに、在
アルジェリア邦人に対する
テロ事件を受けた各種の報告書及び提言等を踏まえ、調査を一層充実し、
危険情報の
官民共有に努めてまいります。
原子力発電所等重要施設については、テロ等の
未然防止のため、不穏・
危険動向の
早期把握に努めてまいります。
また、オウム真理教については、引き続き、
団体規制法に基づく
観察処分を適正かつ厳格に実施することにより、公共の安全の確保に努めてまいります。
テロリズムに対する資金その他の利益の供与の防止のための措置を万全のものとするため、衆議院において
継続審議中の
公衆等脅迫目的の
犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案について、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
適正な
出入国管理に努めるとともに、
東日本大震災からの復興や我が国の
経済成長に資するため、
外国人観光客や我が国の活力となるべき外国人の円滑、適正な受入れの促進が重要な課題であると認識し、適切な対応を進めてまいります。
昨年六月に策定された
日本再興戦略及び
観光立国実現に向けたアクション・プログラムに盛り込まれた施策を実現し、
日本経済の活性化に資する外国人の受入れの促進に努めてまいります。
他方、国際的に依然として脅威となっているテロを防止する等の観点から、バイオメトリクスの活用等により、
不法行為をもくろむ外国人の入国を水際で確実に阻止するとともに、
退去強制事由該当者については、その摘発の推進や自発的な出頭を促す等して一層の減少に努めてまいります。
今国会においては、我が国の経済の発展に寄与する外国人の受入れを促進するための
在留資格の整備を行うほか、
観光立国実現の観点及び二〇二〇年の
オリンピック・
パラリンピック東京大会開催をも念頭に、
クルーズ船の
外国人旅客に係る
入国審査手続の円滑化や
自動化ゲートを利用できる対象者の範囲の拡大など、
上陸審査の手続の一層の円滑化のための措置等を講ずることを目的とする
出入国管理及び
難民認定法の一部を改正する法律案を提出いたしますので、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
近年の
難民認定申請者の増加をも踏まえ、引き続き、
難民認定手続の適正かつ迅速な実施に努めるとともに、より良い
難民認定制度の在り方について検討してまいります。
国民主権の理念に従い、国民にとってより身近でより利用しやすい司法を目指した
司法制度改革は、各制度の
実施段階に入っています。今後は、その
運用状況を見定めながら、更に制度の成熟に向け努力してまいります。
司法制度改革において新たに導入した
法曹養成制度については、質、量共に豊かな法曹を養成することを目指したものですが、各方面から様々な問題点が指摘されています。政府においては、法曹の養成に関する制度の在り方について、
法曹養成制度関係閣僚会議の決定を踏まえ、
法曹養成制度改革推進会議を開催し、また、その下で
法曹養成制度改革顧問会議を開催することとして、
内閣官房に置かれた
法曹養成制度改革推進室において、同
顧問会議からの意見を聞きながら検討を進めているところです。法務省としても、
推進会議の一員として、より良い
法曹養成制度の構築に向けて、迅速に施策の実施及び検討を引き続き進めてまいります。
今国会においては、
司法試験の
試験科目の適正化及び
法科大学院における教育と
司法試験との
有機的連携を図るため、短
答式試験の
試験科目を憲法、民法及び刑法とするほか、
受験期間内における
受験回数の制限を廃止することを内容とした
司法試験法の一部を改正する法律案を提出いたしました。
また、司法の中核を成す裁判所の体制の
充実強化等を図るため、判事の増員等を内容とした
裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び
外国法事務弁護士による法人の設立を認める
外国弁護士による
法律事務の取扱いに関する
特別措置法の一部を改正する法律案を提出いたしましたので、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
日本司法支援センター、
愛称法テラスは、国民への
法的支援の
中心的機関として大きな役割を果たしているところですが、
被災地出張所等を拠点とし、
東日本大震災の被災者に対する援助のための
日本司法支援センターの業務の特例に関する法律を活用した援助を展開するなど、
東日本大震災からの
復旧復興に関してもその一翼を担っております。また、
法テラスでは、自治体、
福祉機関等と連携して、高齢者、
障害者等特に手厚い援助を要する方の
法的ニーズをくみ上げ、総合的な
問題解決を図るといった取組、いわゆる
司法ソーシャルワークを展開しているところですが、近い将来、超
高齢化社会が到来することに鑑みれば、極めて重要な取組であり、その充実が期待されるところです。
今後も
法テラスの
業務体制の一層の充実に努め、
法テラスが行う様々な取組を支援してまいります。
裁判員制度については、その施行から四年半以上が経過しましたが、裁判員の方々の誠実な取組により、おおむね順調に運営され、国民の間に定着しつつあります。昨年十月に、
法制審議会に対して、裁判員の参加する
刑事裁判に関する法律の一部改正に関する諮問を行い、現在審議が行われているところでもあり、今後も様々な課題に適切に対応し、引き続き、この制度が国民の御理解を得ながら一層円滑に実施されるよう、
関係機関と共に尽力してまいります。
法的な物の考え方を身に付けるための法教育は、自由で公正な社会の担い手を育成する上で不可欠なものであり、社会の
複雑多様化に伴い、その重要性はますます高まっています。国民一人一人が法や司法に対する理解を更に深めることができるよう、幅広く法教育を推進してまいります。
現在、時代に即した新たな
刑事司法制度を構築するための法整備の在り方について
法制審議会で審議が行われており、
被疑者取調べの録音・
録画制度の導入や、
通信傍受の合理化、効率化など、
証拠収集手段の適正化、多様化及び
公判審理の充実化を実現するための諸方策について、
制度設計に向けた検討がより一層具体的に進められております。その審議が充実したものとなるよう努めるとともに、その審議結果を踏まえて必要な
法整備等を行ってまいります。
また、
刑事司法制度を国民からより一層支持、信頼されるものとするため、検察の改革のための取組を着実に実施してまいります。
民事基本法についても、国民の意識や
社会情勢の変化に対応し、必要な見直しを進めてまいります。
今国会においては、
社外取締役等による
株式会社の経営に対する監査等の強化並びに
株式会社及びその属する
企業集団の運営の一層の
適正化等を図るため、衆議院において
継続審議中の会社法の一部を改正する法律案及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律案について、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
このほか、
法制審議会においては、民法の
債権関係について見直しに向けた審議が行われています。また、新たに、
人事訴訟事件及び
家事事件の
国際裁判管轄法制の整備並びに商法等のうち運送・
海商関係を中心とした規定の見直しについて
法制審議会に諮問をいたしました。今後、これらの審議結果を踏まえて、必要な法整備を行ってまいります。
東日本大震災からの復興のため、地図の修正等の施策を推進するとともに、全国的に取り組んでいる登記所備付け地図の整備についても、引き続き積極的に取り組んでまいります。
少年法については、
少年審判手続のより一層の適正化及び少年に対する
刑事事件における科刑の適正化を図るため、
家庭裁判所の裁量による
国選付添人制度及び
検察官関与制度の
対象事件の
範囲拡大並びに少年の
刑事事件に関する処分の規定の見直しを内容とする少年法の一部を改正する法律案を提出しましたので、十分に御審議の上、速やかに成立させていただきますようお願いいたします。
一人一人の人権が尊重される豊かで成熟した社会を実現するためには、
人権擁護行政の推進が極めて重要です。
社会的関心を集めているいじめへの対応を含め、引き続き、
人権啓発活動の効果的な実施に努めるほか、
人権侵犯事件の調査・
救済活動を適正に行ってまいります。
国際貢献に関しては、現在、
国際連合と協力し、我が国と関係の深いアジアの国々等の
刑事司法実務家を対象とする
国際研修等を行っています。また、
開発途上国の
基本法令の起草や法律家の
人材育成等を柱とする
法制度整備の支援も行っています。これらの
国際協力は、各国における法の支配の実現に貢献するものとして
関係諸国の期待も高まっておりますので、その期待に応えるため、より一層積極的に取り組んでまいります。
委員長始め委員の皆様方には、平素から
法務行政の運営に格別の御尽力を賜っております。安心、安全な社会の構築に向け、
法務大臣として、奥野副大臣、
平口大臣政務官とも協力し、様々な課題に全力で取り組む所存ですので、より一層の御理解と御協力をいただきますよう、よろしくお願いいたします。