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参考人(
上岡直見君)
上岡でございます。
本日は五点ほど申し上げたいと思います。
まず一点目でございますけど、横の方の資料ですけれども、二ページ目を御覧いただきますと、これはもう何遍も出てくる資料ですのでこれ自体は説明いたしませんけれども、今後メンテナンスの
負担が非常に大きくなってくるということを示したものでございます。
それで、ちょうど先月の四月十四日ですが、社整審
道路分科会で、大変強い表現で、最後の警告ということで、今すぐ本格的なメンテナンスにかじを切れという提言が出ております。これは確かにそのとおりなんですけれども、じゃ、メンテナンスにかじを切れというのはいいんですけれども、
財源とかいろんなリソースが幾らでもあればいいんですけど、そうではないわけですから、やはりその優先度というものを考える必要があると。極端なことを言えば、今後は、第一点目ですけれども、維持、防災をまず第一とする、その後余ったら
新設するというくらいの方向転換をしてもいいのではないかというふうに思うわけであります。
二点目でありますけれども、三ページ目を御覧いただきますと、上のグラフですけれども、これは一般道と
有料道路事業との予算概要の最近の変化です。これを見ますと、
有料道路事業の方が非常にその額が、事業費が大きいということが分かりますが、
交通量との比較で見ると、これはかなり、いささか
有料道路事業偏重ではないかというふうに思うわけでありまして、
道路というのはやはり、
有料道路といいますか、一般的に言われる
高速道路ですが、これだけでは
道路ネットワークというのは成り立たないわけで、一般道のことを考えなければいけないわけであります。
そうしますと、
地方道等の特に実情を見てみますと、もう本当にがたがたのところがたくさんあります。また、後に出てきますけど、防災面を考えましても、幾ら
高速道路だけ立派にあっても、一般道とのアクセスの
ネットワークで成り立っているわけであります。そういうことから考えましても、今後は、繰り返しになりますが、維持、防災を先とする、
新設は従とするというくらいの方向転換がはっきりなされるべきではないかと思います。
三ページ目の下ですけれども、これはたまたま東
日本のデータですけれども、当然のことですけれども、管理
費用はそれほど変わっておりません、経年で。ただ、
料金収入ですね、これが減っております。これは、
無料化の補填とか東
日本の被災者の方の
無料化補填とか、そういうものを含めても減っているということです。
一方、
首都高、阪神、それから
NEXCO、合計、今後十年から十五年で概算で四十兆円ぐらいの維持
費用が必要ではないかというふうに試算されているという、ちょっと数字載せておりませんけれども、そういうふうに聞いております。そうしますと、これは当然賄えない、賄うのは非常に難しいということになります。先ほど
根本先生のお話にもありましたように、それをどこから出すかということになりますけれども、そうしますと、考えてみますと、これは当然もう
新設というような余裕は乏しいのではないかというふうに思うわけであります。
四ページ目ですが、これは二点目ですけれども、
道路はストック効果とともに経済的に見てフロー効果もあるというふうに考えられるわけであります、GDPとか雇用に関するフロー効果ですね。これはいろんな
評価があると思いますけれども、産業連関分析というところから見ると、
新設事業であっても、あるいは補修事業であっても、それほどそのフロー効果というのは変わらないということが考えられます。そういうことから、これまではとかく
新設偏重という方向性があったと思いますけれども、これを仮に補修の方に転換したとしても、別に経済にマイナスの影響があるということではないということであります。
それからもう一点は、五ページ目ですけれども、これは将来
交通需要という
観点から見ますと、これは局所的にはいろいろばらつきがあるかもしれませんけれども、全国的に見ますと、この将来の生成
交通量というのを推定する手法はいろいろあるんですけれども、単純に言いますと、一人当たり発生トリップ数掛ける将来人口ということで、大まかに言えばですね。その上の表は、一人当たり発生トリップ数ですが、これはもうそれほど大きく動かないと思われます。その掛ける将来人口の方ですね、これが、いいことかどうかは分かりませんけれども、人口は今後大きく減る傾向であろうということになると、将来
交通量は減ってくるということはもう当然であろうと思われます。
それから、六ページ目ですけれども、これは経年で走行台キロで見た、上のグラフですが、走行台キロで見たグラフで、二〇〇〇年あるいは二〇〇一、二辺りからもう減少傾向が始まっておりまして、これがまたV字回復をするというようなことはまず考えられないであろうと思うわけであります。一方、下のグラフですが、これは、ある
意味では
整備効果を示す
一つの指標で、
整備効果はいろんな
評価法があると思いますけれども、全国平均で見た
自動車の平均走行速度という面で見ると
余り大きな変化がないということから考えると、全国的な
整備レベルを上げるということにもうそれほど大きな社会的価値は見出せないのではないかと思うわけであります。
七ページ目、上の写真でありますけれども、これは
国道の三桁号線ですけれども、広島県の例なんですけど、この上の
高架道路は、これは
高速道路ではありません、下の平面
道路のバイパス
道路ですけれども、これに三キロ百十億円という事業費が掛かっているというような例であります。それに見合った社会的便益があるのかという点で考えますと、計算上は出ていると思うんですが、ただ、
平成二十二年センサスで一日六千三百台というのが
費用便益
評価上の計画
交通量八千八百台というようなことで、言い方は悪いかもしれませんが、ちょっと水増しの
評価をされていると。
一方では、そんなに将来
交通量が増えるとは思われないというようなことで、乱暴に言わせていただければ、全国でこういう無駄な
道路事業があるという一方でその
整備費が足りないというのは、これはちょっと政策的なバランスを欠いているのではないかというふうに思うわけであります。
四番目、防災との関連でありますけれども、七ページ下の写真を見ていただきたいと思いますが、これは落橋防止装置というんですが、ほかの
道路あるいは河川、それから鉄道なんかをまたいでいるところの橋が落ちてしまうのを防ぐ装置ですね。単純な話ですけれども、こういう鎖でやっていたり、ワイヤーでやっていたり、いろんな緩衝装置でやっていたりというのがあります。
これは、実は阪神大震災のときに落橋が多くて非常に苦労したという点からこの
整備が進められてきたものでありますが、ただ、まだまだこれ
道路の
新設等に比べたらはるかに少ない
費用でできるものにもかかわらず、まだまだ
整備率は完全ではないというところがあります。しかも、阪神から造って相当、二十年ほどたっているので、これ、落橋防止自体が大分傷んで、ボルトの引き抜き力が不足しているところが見付かったりとか、そういうような状況でもあるわけであります。防災との関連で考えましても、これはやはり
新設よりも維持、防災を主とするというような
根本的な方向転換が必要ではないかと思うわけであります。
道路も、例えば防災の
観点から考えますと、東
日本大震災でも見られたとおり、
道路のひび割れ等、こういうものはなかなか構造的に防ぐことができないものであります。それから、
高架構造ですね。これは当然耐震設計がしてありますので、一挙に崩壊するとか倒壊するということはないと思いますけれども、ただ、強い震動を受けた場合はよほど点検しないと再開ができません。一方、平面
道路の場合は、ひび割れ等生じても、鉄板敷きあるいは砂利充填とかそういう比較的簡単な対策によりすぐ啓開することができるということで、これは東
日本のときにもくしの歯作戦ということで一般
道路の簡易的な迅速な再開ということがかなり有効であったということが示されております。
こういう総合的な防災の
観点からも考えて、どういうことを優先すべきかという点について再考が必要ではないかというふうに思うわけであります。
それから八ページ目ですが、これは、先ほど
根本先生、それから
石田先生からも言及がありましたとおり、
自動車の
外部費用という問題についてです。これ引用が抜けてしまいましたが、これ、神戸商科大学の兒山先生という方の著書をコピーさせていただいております。
以前、
高速道路の
無料化という名称で
議論がされましたけれども、そもそも
無料の
道路などというものは世の中にないわけでありまして、ただ
料金所でお金を集めているか集めていないかということの違いだけであるわけであります。
道路は必ず
費用が掛かっております。
一方で、先ほど御指摘ありましたとおり、
自動車の
外部費用というものが現在はまだ
負担されていないということであります。これの適切な反映ということ、これは
高速道路でも一般
道路でもあるわけでありますけれども、そういう適切な反映ということも、今後、
道路政策の、環境面も非常に深刻なことが指摘されている中で、これをどうやって反映させていくかということになると思います。もちろん、集めただけではなくて、それをどう配分するかという問題になるわけですけれども、現在は、
自動車ユーザーはまだ
道路の
費用を完全に
負担していないという現状があろうかと思います。
まとめでありますけれども、本
改正法案のもちろんメンテナンスという点についてはこれは当然異論のないところであろうかと思いますけれども、ただ、
道路法できたのが昭和二十七年ということですから、もう相当ですね。当時はもう本当に確かに、
国道といえども砂利、水たまりというような状態であったわけで、確かにそういう
道路整備は重要であったわけですけれども、ただ、現在に至って、五十年たって、その性格といいますか
道路法の継ぎ足し継ぎ足しということではちょっともう間に合わない、基本的な
道路政策の転換ということがやはり考えなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。
それから、細かい話ですが、
道路の立体構造の
高架下空間の
活用等、これはできるところはしてもいいかもしれませんが、ただこれ金額的にどのくらい大きなものになるのか、そんなに大きなものにならないのではないかということ。それからもう
一つは、例えばコンビニ等というような例示がされておりますけれども、こういう民間事業に貸し出しますと、状況が悪くなれば当然撤退してしまうわけでありまして、その
財源の永続性という点から、その辺はどう考えられているのかということに疑問があるわけであります。
時間の関係でもう終わりますが、もう一回まとめますと、今後の
道路政策は維持、防災を第一として、その後、もし余ったら
新設というくらいの基本的な方向転換が必要ではないかというふうに思うわけであります。
以上でございます。