○大野元裕君 民主党・新緑風会の大野元裕です。
本日は、会派を代表して、
総理及び官房
長官に対し、
安全保障会議設置法改正案に関し、質問をさせていただきます。
民主党政権は、冷戦時代の古い発想、つまり、自民党政権が一六
大綱で脱却の必要性を表明しながらも実現し得なかった
変化への
対応を実現させ、
平成二十二年の
防衛の
大綱において、動的
防衛力や
防衛省の所管に限らないオールジャパンの
安全保障体制を定めました。それは、冷戦時代の発想を転換するのみならず、南西方面への
対処を含めた
我が国を取り巻く
安全保障環境に適切に
対応するものであり、内外から高い評価を受けてまいりました。
このように、
我が国の
安全保障の思想を明確にした上で、武器輸出三原則の
見直し、あるいは
米国に対する
日米ガイドラインの
見直し協議を働きかける等、
国民の皆様の
理解を得られるよう努力しながら、確実に段階を踏んで
日本の
安全保障体制を構築してまいりました。
同様に民主党は、中長期的な
戦略に基づく確固たる
考えの下に、
日本の
安全保障にかかわる
戦略構築を機動的に行う必要性から、
国家安全保障会議、
日本版
NSCについても党内
議論を重ね、
防衛の
大綱、さらには本年の参議院
議員選挙のマニフェストに盛り込みました。これは、明確な
安全保障戦略があってこその所産であります。
ところが、現政権は、政権交代の直後にこの
防衛の
大綱を凍結し、暫定的な
防衛整備計画なるものに
我が国の
安全保障戦略を矮小化させた結果、中期的な
戦略と
防衛力整備は方向性なき漂流状態に陥りました。マスコミでは様々な
安全保障に関する安倍政権のアイデアが取り上げられているようではありますが、中期的な
安全保障戦略なき政権だからこそ、
NSCの活用を思い付いたのかもしれません。しかし、確固たる
戦略の下にこそ組織は生きるのです。
また、民主党が取りまとめていた構想と比較して、
日本版
NSCを機能させる上で不十分な点も散見されますところ、この点については、衆議院における修正協議で、最低限
NSCが機能できるような建設的な提案をさせていただいたところでございます。
このような
問題意識に立ち、
我が国の
安全保障戦略の要となるであろう
日本版
NSCのありよう、及び機能的かつ弾力的な運用が必要な
NSCが真に機能するかという
観点から質問をさせていただきます。
総理、
防衛の
大綱が凍結され、長期的な
戦略が欠如する中で、構想ばかりが先走りする安倍政権の
安全保障政策において
日本版の
NSCがいかに位置付けられるのかが見えません。いかなる中長期
戦略の下で
日本版
NSCを必要とするとのお
考えに至ったのか、お聞かせください。
第一次安倍政権において
法案提出にまで至った
日本版
NSC設置案は、福田
内閣により、既存の
安全保障会議の機能を生かすとともに、官房
長官、
外務大臣、
防衛大臣が従来にも増して一層緊密に協議をすることにより代替され、
廃案となりました。なぜ再び、福田政権の
判断が覆され、今次
法案の提出となったのか、
総理、お聞かせください。
官房
長官は、本年一月に発生をしたアルジェリアの事件を例に挙げて、常日ごろから
意見交換をし、
事態対応を機動的に行うことができる体制がどうしても必要だと述べておられます。また、
総理は、
NSCに専門
委員会を立ち上げて、常にその
事態を見ていくと述べておられます。しかし、五千名を超える省員を抱える外務省においてすら、アルジェリア情勢をフォローしていたのは担当官と地域班長等、ごく僅かです。官房
長官、数十名と言われる
日本版
NSC事務局で、例えばアルジェリアの
事態を想定した準備を行い、常にその
事態を見ていく
責任を負えると明言はできるのでしょうか。
ある
事態を想定した
対処のシナリオ作りに関しては、既に
事態対処専門
委員会が存在しています。しかし、
事態対処専門
委員会は、過去十年間で八回しか開催されていないと
理解しています。
事態対処専門
委員会の活性化すら行わない政権において、このような絵にかいたもちのごとき主張を行っても説得力がないと
考えますが、官房
長官、
事態対処専門
委員会をまずは活性化させるおつもりはないのでしょうか。
また、官房
長官の
理解される
日本版
NSCと
事態対処専門
委員会の役割分担とは何でございましょう。
国会の議事録を読んでおりましたら、昭和五十八年の総選挙の折、自民党は
国家安全保障会議の
設置を選挙公約とされておられました。この自民党の選挙公約実施は見送られ、代わりに
安全保障会議が
設置されました。この点に関する昭和六十一年の
政府答弁では、
国家を付けた場合にはどうしても外部からの攻撃に対し、外部からの脅威、外部からの侵害に対して国を守るというニュアンスがどうしても強いので、やはり取った方がいいのではないかという
判断をしたとしています。
この
政府答弁に従えば、内外の
安全保障を広く扱う
安全保障会議よりも、国際的脅威のみを扱う
国家安全保障会議の方がより狭い概念になります。今回の
法案では、
安全保障会議の
名称が
国家安全保障会議に変更されていますが、それは、対象をより狭くするという
意味でしょうか、あるいは、かつての
政府答弁が誤っていたということなのでしょうか。今回の
改正案において、
NSC法案の基となる
安全保障会議の
考え方が変更されるとすれば、その中身を一から
議論し直さなければなりません。
総理から明確にお答えを賜りたいと思います。
国防
会議に代えて
安全保障会議が
設置された際、
重大緊急事態への
対処に関する
重要事項がこの
会議の
審議事項に付加されました。その際の国会における
政府答弁では、このような
事態においては
国家公安
委員長が本件に主たる関与をする
大臣として想定をされた由であり、それゆえに、
安全保障会議設置法では
国家公安
委員長が新たに当時、
会議の基本的な構成
議員に加えられました。今回の
改正案第二条第一項第十号の
審議の
議員からは、
国家公安
委員長が基本的構成員から外されています。主たる関与をする
大臣であるはずなのに、
国家公安
委員長が
事態の
種類に応じ指定されるかもしれない
大臣にとどめられ、基本的な構成員になっていない理由を
総理にお伺いをいたします。
安全保障担当
総理補佐官ですが、いわゆる
政策決定のラインに入っていません。これでは、
情報から疎外され、官僚はその指示に従わず、無理に関与をしようとすれば、
政策構築、建議の
在り方を阻害しかねません。この補佐官を、官房
長官、副
長官から
事務局に至るまでの
意思決定ラインから外した理由を
総理にお伺いをいたします。
民主党は、首相補佐官を
安全保障担当とするのではなく、ラインにおいて強力な指導力を発揮し、かつ外国の
NSC補佐官の窓口として十分なランクになり得る
安全保障・危機管理担当の副
長官を新設することを提案をさせていただきました。
総理はいかがお
考えでしょうか。
事態対処専門
委員会を包含していることからも分かるように、閣僚レベルの
NSCは
安全保障と危機管理の双方を対象とし、また現在の
内閣官房事務レベルでは、
安全保障と危機管理の両方を安危組織が担っていますが、
政府案では、上も下も
安全保障と危機管理を担当するのに、その間にいる局長と危機管理監がそれぞれの所掌を別個に担当することになっており、円滑で機動的に動ける体制になっていないのではと危惧をしています。民主党案では、副
長官の下に
安全保障危機管理監を新設し、その下にこれまでの安危組織の経験を生かせる形で
安全保障組織と危機管理組織を並列させていますが、
総理はこの提案をいかがお
考えですか。
改正案では、現在の
総理補佐官の最大五名という定員が増員されることなく、その中から
安全保障を担当させることになっています。
総理は、
法律に基づかずとも、それぞれの補佐官に役割と
責任を担わせる権限をお持ちです。実際、野田政権の下では、特定の補佐官が
安全保障を担当し、
総理にアドバイスを行っていました。状況に応じては、例えば大災害のような際には全員をその
対処に振り向けることもできるという補佐官の柔軟性を阻害しかねないと危惧します。あえて
安全保障担当の補佐官を法定で置かなければならない理由を
総理にお伺いします。
我が国の
情報収集・分析体制及び能力については、これまでも様々な批判がありました。
NSCが仮に有効に機能するとしても、効果的インテリジェンスがなければその機能は不全に終わります。
平成二十年の官邸における
情報機能の
強化の
方針はこの点への
対処を取りまとめていますが、
総理は、この目的が満足いく度合いまで達成され、十分に諸機関が
情報を共有しているとお
考えですか。
情報の
NSCへの提言を確実にするため、
会議が
情報提供を各省に求めることができるから、
議長の求めに従い、
提供しなければならないとの民主党の指摘は修正案に反映をされました。その一方で、効果的な
戦略構築に向けた
情報の
提供、共有を十分なものにするためには、
内閣情報官への
情報の集積が不可欠です。これを担保するために、民主党は、
内閣情報官を所管し、かつ各省からの直接の
情報ルートの状況をも把握し得る官房
長官が各省の
情報提供状況を報告する案を提案しています。
総理はこの提案をどのようにお
考えですか。
法案第十七条では、
安全保障会議に
提供された
情報を
NSC事務局が総合することになっていますが、
戦略と
情報の分離原則に従えば、
提供された
情報を
NSC事務局が総合するのではなく、
NSCより示された
情報関心若しくは
情報要求に従い
内閣情報官が
情報を総合し
提供すべきと
考えます。
内閣官房において
事務局の役割と
内閣情報官の役割を明確にするべき、官房
長官、いかがお
考えですか。
さらに、民主党は
NSCの議事録を残すことを提案しています。かつて野党時代に自民党の皆様は、重要な
会議では議事録を残し後で検証するべきである、議事録すら残さないのは、作成しないのは政権の隠蔽体質を表していると非難をしておられました。政権与党になった今こそその気概を示し、
責任を果たされるべきではありませんか。もちろん我々は、
NSCのような組織において自由闊達な
議論を行う
環境を整える重要性は十分に承知していますが、この点に配慮しつつも将来における検証を可能にするべきと
考えますが、
総理の見解をお伺いします。
内閣官房の安危組織は、現在においても厳しい人数的制限の中で、多発する災害や厳しい
安全保障環境への
対処を強いられています。官房
長官、
安全保障局が
設置されても
内閣官房安危組織で危機管理に
対応する定数は一人も減らされないと
理解してよろしいでしょうか。
民主党は、
我が国を取り巻く
安全保障環境に適切かつ機動的に
対応するための
日本版
NSCは機能しなければ
意味がなく、本
法案が
我が国の安全と
国民の安心を確固たるものとするために真に有効なものでなければならないと
考えています。
総理及び官房
長官におかれましては、この
意味での本
法案に対する
議論の重要性をしっかりとお受け止めをいただき、真摯で丁寧な答弁を求め、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣安倍晋三君
登壇、
拍手〕