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参考人(
室崎益輝君)
室崎でございます。今日は、お招きいただきまして、どうもありがとうございます。
最初に
一言お断りをしておかないといけないんですけど、私はもう四十数年間、
防災、
減災、
復興の取組に携わってきておりまして、
復興とか
減災とかあるいは
防災全体に、私が言うのもあれですけど、とても熱い
思いを持っているつもりでございます。そういう
思いゆえに、いいところもすごくあるという
発言になるかと
思いますけれ
ども、まだここはできていないということもとても目に付いてしまいますので、ちょっと失礼な
発言が含まれるかもしれませんが、その点はよろしくお願いしたいと
思います。
まず、私の
提出レジュメの一枚目と二枚目でございます。今回のこの
二つの法案に対しての基本的な
意見という形でまとめさせていただいております。
先ほど申し上げましたけど、何十年もこういう
防災をやっていて、ようやくここまで来たのかなという点が
幾つかございます。例えば、
復興法という、臨時的な
復興法はその都度作られてきた
経緯がございますけれ
ども、非常に恒久的というか、一般的な
復興の枠組みをしっかり定めた
法律はずっと今まで
日本にはなかったわけで、そういうものが新しく作られたという
意味では、これはもうとても画期的なことだというふうに思っております。あるいは、これは、私は、
厚労省さんが従来から
災害救助法をずっとお世話いただいてきたことというのはとても大きな
意味があったというふうに
思いますけれ
ども、
防災対策全般の一元化、
総合化という面でいうと、複数の
省庁が場合によっては少しずれを伴った形で運営するのはとても良くないというふうに思っておりまして、それを
内閣府に一元化されるということも、これも過去の歴史から見ると非常に画期的なことだというふうに思っています。
その他たくさんございまして、例えば
要請主義というのも、我が国の
防災対策でいうと過去ずっと貫かれた
原則である。この
要請主義も、それぞれの
自治体の
自治を侵さないという
意味では、ある
意味で
要請があって
支援に行くというのは正しいことでございますけど、そのことによっていろんな
対応が遅れたり間違った
対応が生まれてきたことも事実でありまして、そういう場合にはやはりその
要請を待たずに必要に応じて
支援を図るということも、これも従来の
考え方から大きく変わるという
意味で、そういう
意味で随所にそういう
改善がされているという面で、高くその点については評価させていただきたい。
とはいうものの、じゃ今回の
改正で現時点で
災害対策法制が抱えている問題が全て
改善されたかというと、必ずしもそうではないというふうに思っております。
災害対策基本法は制定されてから五十年、かつ
災害対策基本法は基本的な
ベースとしては
伊勢湾台風を
前提にしている
法律でございまして、五十年の大きな期間が経由しています。
災害救助法に至っては、ちょっと計算しないと分からないですけど、七十年
程度の時間を経由していて、時代もあるいは
国民のニーズも大きく変わってきています。あるいは、これから巨大な
災害が次々やってくる、そういう
状況の中でいうと、ある
意味、根本から
災害対策基本法なり
災害救助法なりを見直して、
一貫性のあるものにしていかないといけないというふうに思っているところでございます。
それにつきまして
一言私が申し上げておきたいのは、過去から私は、まず
ベースに
災害予防法、
災害応急法、
災害救助法、
災害復興法という四つの
個別法があって、その上に
災害対策基本法が全体を統合するような形であるべきだという
意見を持っています。
その点でいうと、今まで
災害対策基本法が
応急対応の
部分をカバーしていたり、
予防法がありませんので、まあ具体的な
予防は
河川法だとか
消防法だとかいろんなところで実質的なところは果たしているわけでありますけれ
ども、
予防全体の、例えば
防災教育の
重要性といったところについて言うと、それをしっかり
法制度で語られているところはないわけでありまして、そういう
意味でいうと、将来はそういう形を目指していただきたいという
思いの中で、ともかく
復興法だけは今回新たに作っていただけたということで、これはとても感謝しているところであります。
そういうことでございますけれ
ども、それからもう一点、二番目の大きな評価、二ページ目でございます。これも、とても難しい問題であろうかというふうに
思いますけれ
ども、要するに
非常時と
日常時の
連関性と区別の問題だというふうに
思います。
例えば、
個人情報の
保護という点につきましても、
人権をきちっと守るという
意味ではとても重要な
制度、
システムであります。
日常時はそれはしっかり守らないといけない。ただ、
非常時にもそれをかたくなに守っていると人の命が救えないと、これも
東日本大震災その他ではっきりしたところでございます。
それはいろんな
意味で、例えば
基礎自治体の
自治の
原則というのもございます。これも、基本的には、特に
防災というのは身近な
自治体がしっかり
責任を持つというのがとても重要なことでありますけれ
ども、その
自治体が本来の
機能ができなくなったときにおいて
自治を肩代わりするというか、ここはとても微妙なところで、
自治を
侵害することがひょっとしたら起きるかもしれない。あるいは、先ほどの
個人情報の問題もそうでして、
緊急事態だからといって、じゃ
個人情報をいいかげんにしていいのかというと、そういうことではないわけですね。
今回の
法律は、例えば
個人情報についてもその点については慎重な配慮をしていただいております。緊急時は
個人情報を必要な
人たちに提供してもいい、だけど、その取扱いについては非常に厳密にすべきだということが言われている。
それと同じようなことを申し上げますと、
自治の問題も、私は、本来はやはり
自治体が
被災地の住民に対してしっかり
責任を果たす。果たせないときに、じゃ、ある
程度その
状況の中で
政府や
都道府県が積極的に関与していくということはとても重要なことですけど、どの範囲でそういうことが許されるのかということはとても重要なことだと
思います。そういう
意味でいうと、
自治体の
支援というのは
自治体に対して何か物を与えたり何か知恵を与えたりするということもとても重要ですけど、重要なことは、その
自治体が
自治体として
機能できるように
自治体の力を引き出すということがとても重要であります。
例えば、ですから、
派遣職員を
被災地に行っていただくということはとてもこれも重要なことで、これを否定するものではありませんけど、同時に、個々の
自治体が独自に、要するに
自治体の
職員として何十年間
復興に携わる
責任と気概を持った人をしっかり雇用できるようなところでしっかり応援をしていって
自治体がきちっと、だから、例えば
瓦れき処理ができない、それは国が肩代わりするのは当然なんですけど、でも、
瓦れき処理を自らでできるような力を
自治体に与えるという形での
支援をしていくという、ここがまさに
自治とそれから国の
支援との
関係で、そこの
関係をどう考えるか。
この点についても十分配慮されているわけでありますけれ
ども、時間の
関係で後の方で申し上げようと思っていたことを申し上げますと、例えば今回の
復興の
法律案で申し上げますと、重要なことは、
復興の
基本方針を国が定める、
復興の
基本方針に基づいて
都道府県が
基本方針を定める。「即して」という
言葉は、従ってという
意味なのか、それを配慮してという
意味なのか、ちょっと私は
法律用語よく分かりませんけど、「即して」という
言葉は。じゃ、その
基本方針というのは一体どこまで決めるのか。細かく、例えば
高台移転にしなさいというようなことを一方的に決めてしまうと、
自治体にとっては必ずしも、それは足かせになってしまうことがある。総論というか非常に基本的なところは
基本方針で決めるけれ
ども、個別具体的なところをある
意味自治体に任せるということはとても重要だというふうに
思います。
これは、今回の
法律の中でも書かれていますけれ
ども、じゃ、国が関与するというか、迅速な
対応とも
関係するんですけど、スピーディーな
対応をするという場合に
二つのことが重要です。
一つは、トップダウンです。トップが
責任を持って速やかに決断をして実行する。これは、今回の
法律の中にその精神はしっかり貫かれている。
それからもう
一つ重要なことは、今度は
フラットな
システムです。
フラットな
システムというのは、
現場に
責任と
権限を与えるということだと思うんです。例えば、
避難所でトイレが汚れていて、心筋梗塞、
脳梗塞で倒れていくという
事態があったときに、それは
上部団体とかそれぞれ順番に
意見を求めるのではなくて、
現場の
責任者が、これは
法律違反ですけれ
ども、
運動場に穴掘ってし尿を捨てるということをせざるを得ない。そういう
一つの
権限みたいなものを与えることによってスピーディーに事が進む、途中でそういう議論をしている時間によってなかなか前に進まないところがある。
そうすると、
現場の
意見をくみ上げるということは一体どういうことかというところがやっぱりとても重要な
課題で、これは今後の
運用の問題です、この
法律が間違っているということを申し上げているのではなくて。
運用面ではそこはすごく、
人権の
侵害、
個人情報の問題もそうですし、あるいは場合によっては、みんなが買いだめをしてけしからぬ、
国民は買うのを差し控えなさいといっても、ある人にとってみたら今そのペットボトルがとても重要なときに、買いに行ったら、それをやめなさいというようなところまで行ってしまうと、これは
人権侵害になります。
だから、そういうところの問題というのは、やはり
運用の問題というか
社会の良識の問題の世界であるところを事細かくこういうことはしてはいけないというところまで決めてしまうと、これはやはり少し人々の
人権の擁護と矛盾するように
思いますので、そういうところを少し配慮していただきたいというのが基本的には私が今日申し上げたい全体像でございます。
あと細かなところは、三ページ目から少し書いてございます。
一枚目は、先ほど、迅速かつスピーディーというか、国とか
都道府県がやはり
基礎自治体の足りないところを補完する
機能をしっかり果たすという
意味でとても重要なことだというふうに思っているところでございます。
それから、その次の
災害対策の
総合化というところであります。ここについてもひとつお礼を申し上げたいのは、
ボランティアについてしっかりと
法律の中に書き込んでいただいたということであります。
ただ、
ボランティアのことも、ただ単に
連携を図るという
程度でいいのか。
防災というのは、本当は
行政と
地域コミュニティーと
企業、
民間企業と、それから
NPOというか
ボランティアというかその
中間層、この四者がしっかり
スクラムを組む、対等の立場で
スクラムを組むというところであります。そういう場合に、
ボランティアと
連携をするというときの国の
対応とはどうあるべきかと。
これ
運用の問題だと
思いますけれ
ども、例えば、前回の
基本法の
改正で重要な
改善が行われて、市民の
代表とか
専門家を
防災会議に入れると。これはもう画期的なことです。今までは、
行政だけでやるんだという、非常にそういう構えの中で
防災会議の
メンバーや
災害対策本部の
メンバーが決まっていました。だけれ
ども、本来は
災害対策本部にも
ボランティアの
代表を入れるということがあってもいいんではないか。実は、これは
中越沖地震のときに、刈羽村の
災害対策本部には
ボランティアの
代表が正式の
メンバーとして入りました。そのことによって
被災者の
支援は非常にスムーズに進んだという
経緯がございます。
そういう
意味でいうと、その
ボランティアと
連携を努めるという延長線上に、例えば
防災会議の
メンバーだとか
災害対策本部の
メンバーだとか、あるいは現地の
対策本部の
フロアの中に
NPOの
フロアがあって、赤十字の
フロアがあって、
政府の
フロアがあってというような形での、やはりその在り方みたいなものも今後是非それも考えていく必要があるんではないかなというふうに思っています。
それから、
復興法に関しても、取りあえず大きな
フレーム、これは間違った
フレームではありませんで、僕は、
復興法の今回の
制度の
基本理念のところはとてもすばらしい、単に安全にするだけではなくて、
地域の
生活なりそういう
経済なりの
再建を図るということを、単に安全だけではなくて
地域経済なりそういうものをしっかり見なさいという点ではとてもすばらしいです。
ただ、その
理念の中に
一つ抜けているというのは、これはひょっとしたら、先ほど言った
厚労省さんが災対法から外れたという
表現は良くないですが、きちっとやられるんですけど、とも
関係するんですけど、
個人という、一人一人の
個人の
復興というのはどう扱われているのかと。この
復興法の
原則のところで書かれているのは、
地域の安全とか
復興ということは書かれている。でも、その
前提に一人一人の
人間復興ということが当然あるわけで、やはりそういう全体で見たときに、例えば
災害対策基本法の中でもいろんな
改善が図られていますけど、例えばこれから重要になるであろうと思う
住宅再建、
生活再建のところです。
生活再建の中で
罹災証明を出すこと、あるいは
被災者台帳を作ること、これもとても重要なことで、これも画期的な
改善だというふうに私は理解しておりますけど、じゃそれだけなのか。それをよく見ると、
あと住宅再建とか仮設のところだとか、これは
災害救助法に書いてあると言われればそうなんですけど、
住宅再建はむしろそこから外に出たところである。
生活のなりわいだとか生きがいだとか仕事だとか、そういう一人一人の
復興というところに対しての、突っ込みというとまたこれも失礼な
言葉ですね、切り込みがまだ弱いんではないか、これは次の
課題として残っているんではないかというふうに思っておりますので、そういう点も御配慮いただきたいというふうに思っております。
その次の
被災者保護のところはもう既に申し上げたとおりでございます。
被災者台帳、
罹災証明、これは私の
個人的な
意見ですけど、今回は作っても作らなくてもいいという
表現じゃないんですが、作ることができるというような
表現でありますけど、基本的には一人一人の
個人の
復興という面でいうと、一人一人の
復興のプロセスを追求するという
意味では
被災者台帳はとても重要です。それから、
罹災証明も
生活復興なり
住宅再建にとってかけがえのないもので、それをしっかりやるということはとても重要なことで、だからそれをどうやってその
自治体はやっていくのか。
例えば、
罹災証明を早く出せといっても今の現状では出せないです。非常に細かな基準があって、それを本当に理解した
職員がいなくて、それにもう何日も何週間も忙殺をされて、ほかの
復興復旧の
事業が進まないというような
状況の中で、その
システムの、じゃその
罹災証明もう急いでいいのかというふうに申し上げると、それは余りそういうこと、
医師免許もないお医者さんに健康診断してもらっているみたいなもので、本来はゆっくり見て正しく判断をして、この家は建て替えることができるかと見てもらうという
意味でいうと、急ぐだけではなくて、そこに質の問題を持ってこないといけない。そうすると、そういう
罹災証明を出す
人材育成、これも書き込まれています、今回の中に書き込まれていますけど、そういうところをもう少ししっかり詰めていかないと、多分これは
言葉が出ても、あとなかなか実行に移されないんではないかというふうに思っておりまして、そういう点もよくお願いしたいということでございます。
時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。