○
井上義久君
公明党の
井上義久です。
私は、
公明党を代表し、
菅総理の
施政方針演説について質問します。(拍手)
民主党政権の政策的な矛盾や不誠実な
政治姿勢、そして
国民感情とのずれ。
菅総理、私
たち公明党は、あなたの
政権担当能力に大きな疑問を持たざるを得ません。
そして、あなた方
民主党が国民との契約とまでうそぶいた
マニフェストを修正するのであれば、国民、有権者に対して契約の不履行を心からおわびし、改めて信を問うべきであると申し上げたい。また、それができないのであれば、総理の職を潔く辞すべきです。
チュニジアで起こった
ジャスミン革命は、学校を卒業しても職につくことができず、生活のために道端で野菜を売っていた青年が
焼身自殺を図ったことが発端でした。
翻って国内では、今春
卒業見込みの大学生の
就職内定率は六八・八%、短大生に至っては四五・三%、かつての
就職氷河期を下回る
史上最低の
緊急事態です。あなたは、一に雇用、二に雇用、三に雇用と声高に叫んだことをよもやお忘れではないでしょうね。国民の悲鳴や苦悩の声に、居ずまいを正して耳をそばだてるべきです。
児童養護施設などに善意の連鎖が広がっている
タイガーマスク運動。この
伊達直人と名乗る匿名の善意は、私
たち国民に温かな気持ちを運んでくれています。しかし、永田町の直人さん、あなたの言動は、政治への信頼を損ねるという負の連鎖を拡大し、
国民感情とのずれを増幅させるばかりです。
政治と金の問題をめぐる
党内抗争、国益を守れない外交、高どまりした為替を見守るだけの
金融政策、実行されない
成長戦略など政策の滞り、
財政規律を無視し、財源探しに明け暮れた
予算編成、あげくの果てに、
予算編成直後の
マニフェスト修正の暴言、そして、
消費税増税のための
内閣改造と、その
閣僚起用に見る議会人としての矜持の欠如。
あなたが今語るべきことは、いたずらに国家の危機を語ることではなく、わずか四カ月で改造せざるを得なかった失政への謙虚な反省の弁であるはずです。あなたが強調する
消費税と
社会保障の
一体改革、平成の開国というTPPなど、それはまさに
内閣改造せざるを得なかったことから生まれた副産物であり、現政権の延命のためのキーワードとして利用しているにすぎません。
菅総理、そもそもあなたは、日本の進路を左右する政策を判断するための信任を国民から得ておりません。得たのは、さきの代表選という党内での審判と、
参議院選挙での不信任という洗礼ではないですか。
平成の開国、
最小不幸社会の実現、不条理を正す政治と、言葉は躍りますが、中身は
具体性を欠き、その先にあるべき国の姿があなたから示されたことはありませんでした。今度こそ熟議の国会と言いながら、その一方で、我々野党に対し、歴史への反逆と挑発する。謙虚さがみじんも感じられないあなたのいわれなき高揚感に、私は、現政権の劣化、不安を感じないわけにはいきません。
以下、
重要案件について質問しますが、総理、いたずらに多弁を弄することなく、誠実に、そして明快にお答えください。
まず、当面する
緊急課題について二点伺います。
初めに、
雪害対策です。
昨年末から続く記録的な豪雪により、
雪おろし作業中の
転落事故などで、既に四十五人の方が亡くなっています。また、長時間の
交通渋滞、
孤立地区の発生、
公共交通機関の運休、停電、断水、漁船の転覆や、
ビニールハウス、牛舎の倒壊など、各地で甚大な被害が発生しています。
亡くなられた方々、そして被災された皆様に対し、心からお見舞いを申し上げます。
自治体では、
補正予算を組むなど復旧へ向けた
取り組みが懸命に行われていますが、その後も大雪が続いていることから、
財政支援はもとより、
除雪作業や
公共交通機関の復旧、生活に必要な電力などのライフラインの確保には、国による適切な支援が必要です。また、
漁業者、
農業者へのきめ細かな支援など、
スピード感を持って行うべきです。総理の見解を求めます。
また、今回の豪雪で、
除雪体制の
弱体化が浮き彫りになっています。
東北地方のある県では、
公共工事減少のあおりを受けて、老朽化した機材の買いかえや作業員の確保が困難になっており、
除雪作業に携わる
建設業者の七割以上が、五年後までには今の
除雪体制を維持できなくなるとしています。
命にかかわる
除雪体制を今後どうしていくのか、総理に答弁を求めます。
次に、家畜等への
伝染病予防対策です。
昨年末から、渡り鳥の
飛来地を中心に野鳥に
鳥インフルエンザ被害が発生しており、今月に入ってからは、宮崎、鹿児島、さらに愛知県の養鶏場でも発生が確認をされました。
昼夜を徹して対応に当たっておられる
関係者の御労苦に、心よりお見舞いを申し上げます。
政府に対し、
拡大防止へ、迅速な殺処分や、
発生農場周辺での鶏や卵の
移動制限と消毒、鶏舎への
野生動物の
侵入防止対策などに全力を挙げるよう求めます。
また、今後拡大が心配される野鳥からの感染を防ぐため、第一に、正確な情報に基づく広報を迅速に行い、
風評被害を防止すること、第二に、野鳥の
監視体制を強化すること、第三に、
養鶏農場への
ウイルス侵入を防止するため、
鳥ネットの
整備点検を徹底すること、第四に、渡り鳥のルートや
飛来地での
発生状況などの
情報共有について、韓国、中国、
ロシア各国と協力して行うことを求めます。
また、韓国で
感染拡大に歯どめがかからない口蹄疫についても、国内での
水際対策の一層の強化とあわせて、アジアにおける検疫・
防疫能力向上をサポートする
国際協力体制を強化すべきです。
そのためには、現行の
家畜伝染病予防法の
抜本改正も必要と考えます。総理の答弁を求めます。
次に、景気・
経済対策について伺います。
日本経済は、依然として
デフレ状況から抜け出せないばかりか、足元の経済も雇用不安が増し、欧州を初め
世界経済の先行きも不透明です。
少子高齢化、
人口減少社会の本格的な到来、そして新興国の台頭など、
世界経済の劇的な変化に対して日本はどう立ち向かうのか。
民主党政権の司令塔なき
経済無策では、その展望は全く見通せません。
昨年は、
党内政局と
外交無策による対応に忙殺され、
経済政策は大きな停滞を余儀なくされました。
補正予算の編成も、
公明党が昨年八月に提案したにもかかわらず、
菅総理は
党内政局を優先し、結局、
国会提出は十月末。
スピード感ゼロ、責任感ゼロ、
現場感覚ゼロの姿を露呈しました。
「
民主党が
日本経済を破壊する」、これは、
菅総理がこのたびの
内閣改造で任命された
与謝野経済財政政策担当大臣がわずか一年前に発刊された著作のタイトルです。
日本経済の現状は、まさにそのとおりになりつつあります。
ところが、総理は、その
与謝野氏を、よりにもよって、政権の
肝心かなめの
経済政策の
責任者に任命されました。
民主党に
経済政策がなかったがゆえに任命できたのでしょうか。また、仮に総理が
与謝野氏の
経済政策を十分に認識された上で大臣に任命されたとすれば、
民主党マニフェストを直ちに撤回すべきではありませんか。総理、お答えください。
しかも、
与謝野氏は、入閣後も
自民党比例による議席で
国会議員の職にとどまり、さらに、
衆議院では
民主党会派入りしています。昨年三月の
参議院予算委員会で、当時副総理であった
菅総理は、
民主党比例で当選し、その後、離党して
自民党・
改革クラブに所属した
大江康弘参議院議員に対し、「政治家としてもし筋を通したならば、ちゃんと離党と同時に辞職して
自民党に入党されればよかった」「天につばするものだ」とまでののしられました。この発言と、今現在やっていることは、全く違うではありませんか。有言実行と言うなら、即刻、
与謝野氏に対し、
議員辞職と
自民党への
議席返上を求めるのが筋ではないですか。
また、
与謝野氏は、
民主党の前代表、前総理の鳩山氏を平成の脱税王とまで厳しく追及した人です。その
与謝野氏の指摘に対して総理はどうお考えですか。答弁を求めます。
日本経済は、確かにマクロの数字だけを見れば、
エコカー補助金や
エコポイントなどの
政策効果もあり、一時期の危機を脱した感はあります。しかし、
地域経済やそれを支える
中小企業の現状は依然として厳しく、雇用はもちろん、そもそも仕事がない状況です。
菅総理は、
公共事業を二十二年度一八・三%削減したのに引き続き、二十三年度
予算案でもさらに五・一%削ろうとしています。地域における
雇用創出や
需要創出の有効な方策もないまま、どう
地域経済を回復させていくのか。
社会インフラ整備のおくれも心配であります。
総理、なぜここまで大幅に
公共事業を削減するのか、また、
地域経済やそれを支える
中小企業の
活性化をどのように推進するのか、答弁を求めます。
平成二十三年度
予算案、
税制改正について伺います。
来年度
予算案は、
民主党政権になって二度目、しかも、初の実質的な
予算編成となりました。二十二年度予算では、
マニフェストを実現できない言いわけに、
自公政権を批判したり、
経済情勢の変化などの理由を述べていました。しかし、総理みずからが認める仮免許は既に終わりました。ところが、来年度予算は、総括すれば、
国民不在、
理念不在、
リーダーシップ不在の中で、昨年同様
マニフェストありきで迷走を重ね、
国民生活の安心、安全のための予算とはほど遠い内容であると断じざるを得ません。
まずは、二年続けて、
新規国債の発行、いわゆる国の借金が税収を上回る異常な予算である点です。
民主党は、歳出の
見直しなどで財源は幾らでも生み出せると言ってきました。しかし、歳出の
見直しは全く進まず、むしろ場当たり的な増税や一時的な
埋蔵金頼みで財源を取り繕い、結局、昨年と同じ四十四・三兆円もの新たな借金をつくる。総理、こんな手法でどうして
財政健全化ができますか。答弁を求めます。
第二に、
成長戦略もその本気度が全く見えません。
成長戦略に重点配分するとした元気な
日本復活特別枠は本来の趣旨を大きく逸脱、
思いやり予算など
成長戦略とは無関係な予算が含まれるなど、ごまかしと
架空計上がなされています。何のことはない、
政治主導とは見せかけで、役所が勝手に
予算要望を出して思うままに配分しただけ。実態は
官僚主導そのものではないですか。総理の答弁を求めます。
第三に、
マニフェストの破綻がさらに明確になりました。
特に、二年目に達成、進捗すべき
子ども手当、
高速道路の
無料化、
暫定税率廃止などは、恒久的な
財源手当ても不明確なままで、期限内の達成は到底困難です。
民主党は、速やかに、
マニフェスト破綻を認め、撤回の上、国民に謝罪すべきです。総理、いかがですか。
第四に、
税制抜本改革の全体像が全く見えてきません。
例えば
法人税減税は、
代替財源をめぐる
帳じり合わせに終始した結果、
国内投資や
雇用拡大などの
プラス効果につながるのかどうか、全く不透明です。
減税財源も確保できず、新たな施策を行う際は恒久的、安定的な財源を確保する、いわゆる
ペイ・アズ・ユー・ゴー原則、これを全く有名無実化させるなど、
菅政権における
経済財政運営の
基本的方針は初年度から崩壊をしています。
また、
家計増税となる
人的控除の
見直しや
相続税見直しなども、結局は、
子ども手当などの
マニフェスト実現のための
財源あさりとして行われました。
総じて、足し算と引き算だけの場当たり的、
財源あさりの
税制改正であると断じざるを得ません。総理の答弁を求めます。
次に、
社会保障の
あり方について伺います。
公明党は、昨年十二月、充実した中福祉・中負担の実現や、
共助社会を確立する、新しい
福祉社会ビジョンの
中間取りまとめを発表いたしました。ここでは、
セーフティーネットの
機能強化や
国民目線に立った
社会保障制度改革、新たな
福祉社会の方向性を提案しています。
公明党は、年金、医療、介護、
子育て支援など、
社会保障をより充実させるための安定的な財源として、
景気回復などの前提のもとに、
消費税を含めた税制の
抜本改革は必要との立場です。しかし、その前に、あるべき
社会保障の姿を示し、それを受けて必要な費用、財源を論議してこそ国民の理解を得られると考えます。そのために、
公明党は、まずは、
社会保障のあるべき姿、
機能強化を検討するための与野党の
協議機関を立ち上げることを提案しております。
総理も、
施政方針の中で、
社会保障の
費用負担の
あり方について与野党間で協議を始めようではありませんかと呼びかけておられます。しかし、総理、その前に
民主党にはなすべきことがあるのではないですか。
民主党は、二〇〇三年の
衆議院選マニフェストで、
年金制度を一元化して月額七万円の
最低保障年金をつくると提案して以来、七年以上が経過した今も
具体案をまとめておりません。
後期高齢者医療制度についても、うば捨て山と批判し、
制度廃止を掲げたにもかかわらず、今度は二〇一三年三月末まで存続させると言っております。介護に至っては、
介護労働者の賃金を月額四万円引き上げるという約束は、一体どこへ行ったんでしょうか。
公明党の、新しい
福祉社会ビジョンに触れていただくことは結構ですが、まずは
民主党案を示すことがすべての大前提ではありませんか。総理の答弁を求めます。
次に、
農林水産業について伺います。
菅総理が突然
協議開始を表明した
環太平洋経済連携協定に対し、全国の
農林漁業者、
自治体関係者から懸念と批判の声が上がっています。
総理は、平成の開国を断行すると言われましたが、日本の全品目を通した
平均関税率は世界で最も低い水準にあります。
農産物関税に限っても一一・七%とEUよりも低く、既に
世界有数の開かれた市場になっています。総理は、日本の現状について何か勘違いをされているのではないでしょうか。
加えて、
自由化と農業の再生を両立させると言いますが、
施設園芸、果樹、畜産などは既に
国際競争の中で闘っており、農産物の
生産額ベースの自給率も七〇%に達するなど、健闘しています。課題は、
水田稲作を初めとする
土地利用型農業の
構造改革ですが、政府・与党からは具体策が全く見えてきません。平成二十三年度
予算案も、
構造改革を進める中身にはなっておりません。
そもそも
民主党は、
小規模経営を含めた農業の継続を可能にするために
戸別所得補償制度を導入したはずです。政権を担うようになって、やはり農地の集約、大
規模化が必要だと言うのは、何を今さらと、聞いてあきれます。
政府は、さきの国会で、全国一律に交付する
仕組み自体に
規模加算のインセンティブが含まれており、その結果、需給は引き締まるので、
米価維持のための
政府買い入れは行わないと繰り返し答弁しています。それが一転、二〇一一年度予算で
規模加算を行い、昨年末には米の
政府買い入れを決定し、さらには、提出するとしていた
戸別所得補償法案まで見送ったことは、
民主党農政が幻想であり、いかに場当たり的であったかの何よりの証左です。答弁を求めます。
今、
日本農業に必要なものは
担い手、特に
水田稲作を初めとする
土地利用型農業の
担い手を育成することです。そのためには二つの視点が必要です。
第一に、徹底した
農地情報の整備と共有です。
農地基本台帳を法定化するなど
農地情報の整備を進めずして、
規模拡大も
構造改革も進みません。
第二は、新しく農業を始めようとする将来の
担い手に対して長期的な支援を行う必要があります。
農業技術を習得し、自立した
農業経営者になるまでには数年かかります。その間の
生活費を保障するなど、安心して農業に参入できる大胆な
仕組みをつくることです。
農業ビジョンを明確にすること、特に
農地情報の整備や
担い手の
育成支援について、その工程を早急に示すべきです。総理の答弁を求めます。
国際森林年である本年、国内では、国産の杉やヒノキの需要が高まり、
林業復興の好機が到来している一方で、
国内林業の
後継者不足や
高齢化により、生産量が追いついていません。
公明党が推進してきた緑の雇用などをてこに
人材育成を一層進めることはもちろん、林業に欠かせない
路網整備が急務です。
森林情報の収集や
路網整備計画の作成とあわせて、
公共財として必要な基幹的な路網は国による整備が必要です。総理の答弁を求めます。
次に、
海洋水産資源の持続的な利用と開発について伺います。
我が国は、
水産資源の
持続的利用の方法として、
漁獲可能量、TACを設定していますが、現在のような一律の割り振りには疑問の声が上がっています。各県で調整できる
仕組みが必要ではないでしょうか。現在七魚種にとどまる
対象魚種の拡大も検討すべきです。
また、複数国の漁船が操業する海域においては、特定の国だけが
資源管理に取り組んでも効果は薄く、操業国すべてが参加して取り組む必要があります。日中韓にロシアを加えた
周辺諸国間との
連携協力の強化がますます重要です。その道筋を示していただきたい。
私は、
地域活性化の一つの方策として、一次産業に支えられた
まちづくりを一層推進すべきと考えます。国が町を支えるのではなく、町が国を支えるという視点に立ち、
地域住民の知恵と発想を柔軟に展開できる
仕組みが必要です。
日本の津々浦々で
地域ビジネスが注目を集めております。例えば、徳島県上勝町の
葉っぱビジネスなどです。上勝町は過疎化と
高齢化が進む町ですが、一方で、全国でも有数の
地域活性型農商工連携のモデルとなっている町であります。
一次産業を基盤とする
地域産業が持続可能となるためには、地域に眠る資源と
消費者ニーズをつなぐコーディネーターやプロデューサーの存在が不可欠です。
地域活性化の中核を担う
協同組合やNPOなどの
育成支援を大胆に行うべきと考えます。総理の答弁を求めます。
次に、
科学技術の振興について伺います。
今、
我が国は
国際競争力が著しく低下するという厳しい現実に直面しており、その基盤である
科学技術の振興に国の総力を挙げて取り組む必要があります。私
たち公明党が
衆議院に
科学技術・
イノベーション推進特別委員会の設置を提案したのも、国会において
科学技術政策に関する議論を活発化させる必要があると考えたからです。
科学研究費補助金、いわゆる科研費の来年度
予算案について、減額の方向が
一転増額となったことは評価しますが、その過程については疑義を抱かざるを得ません。何とかしろの総理の一言で増額が決まったと伝えられております。もしそれが本当なら、どういう戦略、方針に基づいて予算を組んだのか。そもそも
菅内閣に
科学技術研究の戦略がなかったのではないかと疑わざるを得ません。
科学技術は、
天然資源に乏しい
我が国にとって、国を成長、発展させ、世界に貢献していく生命線です。当然のことながら、研究には、
戦略性、中長期の一貫性が求められます。そうでなければ、多くの
研究者も腰を据えた
取り組みができません。
科学技術研究の戦略、また、予算の確保についての総理の見解を求めます。
地域主権改革について伺います。
民主党が公約の一丁目一番地と位置づけてきた
地域主権改革は、
政権発足から一年たった現在も遅々として進んでいません。
地方公共団体の
自治事務について国が法令で事務の実施やその方法を縛っている、義務づけ、枠づけの
見直しさえも進んでおりません。
さらに、国の
出先機関の廃止に向け昨年十二月に閣議決定されたアクション・プランに
広域ブロックへの
移譲推進が盛り込まれたものの、
ブロックの
運営自体に課題が山積しており、いまだ
設立見通しの立たない地域も多くあります。さらに、何を、いつ、どのくらい移譲するのかも全く明確になっておりません。どの
出先機関を、いつまでに、どう廃止しようとしているのか、総理、明快にお答えください。
マニフェストで、
民主党は、
ひもつき補助金を廃止し、地方が自由に使える
一括交付金として交付するとしていました。その
考え方自体は否定しませんが、今回の
一括交付金は、少額であるのみならず、結局、
継続事業に消化されるだけで、地方の
裁量拡大に寄与するとはとても思えません。今後、段階的に
ひもつき補助金を廃止するというものの、将来的な配分や工程表、スケジュールがはっきりせず、地方からは不満と不安の声が上がっています。
一括交付金化の将来像とスケジュールを明確にすべきであります。総理の答弁を求めます。
一部地方自治体で起きた首長と議会との対立などを契機に、地方自治の二元代表制における首長と議会の
あり方等について、地方自治法改正の問題が浮かび上がっています。
私
たち公明党は、この問題を重く受けとめ、住民の視点で改革を進めるべく、今月十二日に、地方議会改革への提言を発表しました。提言では、首長や行政に対する議会のチェック機能を強化するために、議長への議会招集権付与や通年議会化、今後重要性を増す地方議員の役割、責務を踏まえて、地方議員の法的な位置づけを明確にすべきとしております。また、議会と首長が対立した場合、第三者機関の調停や住民投票を行うなどのルール化も進めるべきと考えております。
地方自治法改正について、総理の見解を求めます。
次に、がん対策の充実について伺います。
がんによる死亡者は年々ふえ続け、一九八一年より
我が国の死亡原因の第一位になり、今では国民の三人に一人ががんで死亡しております。生涯リスクとして、男性の五四%、女性の四一%、つまり国民の二人に一人ががんになると言われております。
公明党は、がん対策を国家プロジェクトとして取り組むよう訴え、二〇〇七年四月に施行されたがん対策基本法の制定に全力を挙げました。そして、与党時代からがん対策予算の増額を毎年実現してきたのも
公明党であります。
がん対策基本法の理念に基づき閣議決定されたがん対策推進基本計画は、
公明党の主張が三本柱として盛り込まれています。一つは、放射線治療や化学療法を普及させ、患者自身が治療法を選択できるようにするための環境整備です。二つ目は、治療の初期段階から痛みを取り除く緩和ケアの実施。三つ目に、基礎データを把握するためのがん登録の推進です。これまで日本で立ちおくれてきた分野の推進をがん対策の骨格に盛り込んだのです。
基本計画は、二〇一一年度までの五年間を対象として数値目標を定めています。しかし、五年後の時点での目標達成度報告では不十分な結果になるおそれがあるため、中間報告を義務づけるよう
公明党が提案をし、昨年六月、中間報告が行われました。
基本計画では、五年以内に、すべてのがん診療に携わる医師に緩和ケア研修を行うことや、すべてのがん診療連携拠点病院で放射線治療、外来化学療法を実施できる体制を整備するなどのほか、十年後のがん死亡を二〇%減らすという大きな目標を実現するため、二〇一一年度末までにがん検診受診率五〇%を目指すなど、さまざまな目標を掲げ、国民に約束しています。
菅政権に、この目標を達成し、国民をがんの恐怖から守る気持ちはおありでしょうか。例えば、がん治療の切り札である早期発見のためにはがん検診しかありませんが、現状のがん検診受診率は二五%程度。あと一年余りで受診率五〇%をどう実現するのか。そして、五年以内に医師への緩和ケア研修を終える目標についても、国民、患者の皆様のために何としても実現すべきです。総理の決意を求めます。
次に、高額療養費制度の
見直しについて伺います。
がんや慢性疾患など、高額な医療費負担に苦しんでおられる方がたくさんおられます。しかし、現行制度は、中低所得者の自己負担限度額が重いことや、要件に該当せず制度の恩恵を受けられないなど、患者の負担軽減を図る観点から、制度の
見直しが必要です。
これまで
公明党は、七十歳未満の自己負担限度額の引き下げや、レセプトが二万一千円を超えない場合でも合算対象とすることなど、具体的な改善策を国会論戦の場で繰り返し求めてきました。
菅総理も、昨年十月の私の質問に対し、自己負担限度額の
見直しについて、
社会保障審議会での議論を進めており、引き続き幅広い観点から検討したい、このように答弁されています。しかし、政府の来年度からの対応は、外来診療における現物給付化を決定しただけで、患者の要望の強かった自己負担限度額の引き下げは見送られました。総理、なぜ見送ったんですか。明確な答弁を求めます。
次に、B型肝炎訴訟について伺います。
去る一月十一日、札幌地裁より和解に向けての所見が示され、政府も前向きに検討する方向と伝えられています。
公明党は、これまで、命にかかわる問題は党派を超えて最優先で取り組むべきと主張し、C型肝炎患者の救済法や肝炎対策基本法の制定に尽力してきました。
B型肝炎訴訟の全面解決に向け、政府は、原告との和解、合意を目指し最大限の努力を行うとともに、患者の幅広い救済を行うため、新たな立法措置について政府において早急に検討すべきと考えます。総理の考えをお聞かせください。
昨年末、新たな防衛計画の大綱が閣議決定されました。新大綱では、基盤的
防衛力にかわって、
動的防衛力という概念が採用されました。
基盤的
防衛力は、軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となって周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国として必要最小限の
防衛力を保有し均衡に配備するという、日本の
防衛力整備の基本となってきた方針です。
六年前に作成された現大綱では、
基盤的防衛力構想の上に立って、テロや地域紛争などの新たな脅威や多様な事態に対処できるように、多機能で弾力的な実効性ある
防衛力を打ち出しました。これとどう違うのか、なぜ、今、
基盤的防衛力構想を変えるのか、政府から明確な説明がありません。
原則なき不明確な
動的防衛力の強調に対して、これまでの憲法の恒久平和の原理に基づく専守防衛を逸脱するのではないかとの懸念さえ指摘をされております。総理の見解を求めます。
熟した議論などあったかに思えない大綱の策定プロセスで、総理のリーダーシップがあったかのように見られているのは、武器輸出三原則等の
見直しの明記を断念したことです。しかし、これも、明確な信念に基づく判断からなされたものではなく、政局的判断からなされたものであることは明白で、今後に火種を残しただけの先送りにすぎないと言わざるを得ません。
長年にわたる国会での
安全保障論議の中から生まれ、衆参両院それぞれの国会決議でも武器輸出三原則は取り扱われてきました。つまり、国家の基本的なありようにかかわる極めて重要な原則です。
それを見直すかどうかの判断は、その原則に基づく政策展開が果たしてきた効果を詳細に検証することが最初になされなければなりません。その上で、国民を巻き込んだ形での国会の徹底した議論が必要です。いわば、防衛計画の大綱よりももっと上位に位置する、平和国家の基本理念というべきものであります。これを、大綱の変更に当たって、政府・与党の御都合主義的な姿勢で見直そうというのは、言語道断です。総理の所見を求めます。
普天間移設問題について伺います。
もとをただせば、鳩山首相の辞任の二つの理由のうちの一つが普天間移設問題の失敗です。その後を受けて首相の座に着いた
菅総理は、何が何でもこの問題の根本解決を図る責務があります。
施政方針演説で、沖縄に集中する基地負担の軽減に全力を尽くすと述べておられますが、具体的にどのように進めるのか、全く明らかにしておりません。例えば、地位協定の
見直しをどう進めるか等について具体的な一歩が示されない限り、沖縄県民は政府・
民主党への疑念を晴らすことはないと思います。総理の明確な答弁を求めます。
次に、政治改革について伺います。
相次ぐ政治と金の問題で国民の政治に対する信頼を失墜させた
民主党政権、とりわけ総理の責任は極めて重大です。国会における鳩山氏、小沢氏の説明責任はいまだに果たされておりません。
昨年十月、小沢氏喚問に関する我が党議員の質問に対し、総理は、「場合によれば御本人の意向に沿った形、場合によれば沿わないでもこれをやらざるを得ないというときには党として判断をしていきたい」と答えられております。また、報道によれば、岡田幹事長は、国会での説明責任の場は政倫審と証人喚問の二つしかないので、残りは一つになると述べておられます。
総理は、小沢氏にどう国会における説明責任を果たさせるのか、明確にしていただきたいと思います。
鳩山前総理について、実母から資金提供を受けた偽装献金問題をめぐって約六億円の贈与税を納付したものの、そのうち約一億三千万円が時効で還付されたと報道されています。それは事実でしょうか。もしそれが事実であれば、納税者である
国民感情からいって、到底納得できるものではありません。まさに
与謝野大臣が指摘されたとおり、平成の脱税王になるのではないでしょうか。
鳩山氏の修正申告を受けて、どのような税務調査が行われ、結論はどうだったのか、国民の前に明らかにすべきです。もし明らかにできないというのであれば、鳩山氏みずから国民の前で説明すべきだと思いますが、総理、どのように思われますか。見解を伺います。
もとをただせば、
民主党の自浄能力のなさが原因の政治資金疑惑。
公明党は再三再四にわたり政治と金の問題の再発防止策実現を訴えてきましたが、総理は一向にリーダーシップを発揮しようとしません。
昨年十一月、秘書がやったとの政治家の言い逃れを許さないために
公明党が提出した、政治家の監督責任を強化する政治資金法改正案について、我が党議員の質問に、総理は、「次の通常国会のある時期までというところで、何らかの結論を出してお示しをしたい」と答えられました。いつまでも先延ばしせず、今国会で直ちに成立させるべきです。答弁を求めます。
企業・団体献金の禁止も同様です。
民主党は、直近の衆参
マニフェストで企業・団体献金の禁止を掲げていました。ところが、昨年、自粛していた献金の受け入れを再開しました。
施政方針演説で、総理は、政治改革の推進について、それぞれの提案を持ち寄って今度こそ国民が納得する具体的な答えを出そうではありませんかと呼びかけられました。まるで人ごとのような言いぶりには、あきれるばかりです。総理、あなたが決断すれば、これは実現できるのです。明快な答弁を求めます。
最後に、総理、私は、今回の
施政方針演説を聞いて、あなたの言葉に謙虚さが全く感じられなかったことに、正直驚きました。政権交代からわずか一年四カ月、昨年の
参議院選挙における
民主党惨敗の原因が、期待を裏切った
民主党に対する国民の怒りだったことへの反省はないのでしょうか。
雄弁に欠かせないものは誠実さである、自分に対して誠実な人間になれば人を説得することができるとは、英国の批評家ウィリアム・ハズリットの言葉です。総理の演説には、残念ながら、そうした謙虚な姿勢、誠実さが感じられませんでした。総理、いかに多弁を弄しても、誠実を欠けば国民を説得することはできません。
公明党は、だれよりも国民の声を真摯に受けとめ、闘う野党として、真剣な議論を通して、
国民生活を守り、国益を守るために全力で闘うことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
〔
内閣総理大臣菅直人君登壇〕