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2009-03-12 第171回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年三月十二日(木曜日)    午後零時十二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平野 達男君     理 事                                郡司  彰君                 高橋 千秋君                 加治屋義人君                 佐藤 昭郎君     委 員                                岩本  司君                 小川 勝也君                 大河原雅子君                 金子 恵美君                 主濱  了君                 姫井由美子君                 舟山 康江君                 岩永 浩美君                 野村 哲郎君                 牧野たかお君                 山田 俊男君                 風間  昶君                 草川 昭三君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   石破  茂君    副大臣        農林水産大臣  近藤 基彦君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       野村 哲郎君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 朝雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農林水産に関する調査  (平成二十一年度の農林水産行政基本施策に  関する件)     ─────────────
  2. 平野達男

    委員長平野達男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産に関する調査を議題といたします。  平成二十一年度の農林水産行政基本施策について、農林水産大臣から所信を聴取いたします。石破農林水産大臣
  3. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 農林水産委員会の開催に当たりまして、所信を申し上げます。  現在、我が国農林水産業は、生産額減少就業者減少高齢化農地面積減少などにより、まさに存亡の危機に瀕しております。全農業所得平成二年から十七年までの十五年間に六兆一千億円から三兆四千億円へと半減し、農家戸数は三百八十三万戸から二百八十五万戸に減少し、基幹的農業従事者の六割は六十五歳以上となり、耕作放棄地は埼玉県の全面積を上回る三十八万六千ヘクタールに達し、農地転用にも歯止めが掛からず、農地面積も五百二十四万ヘクタールから四百六十九万ヘクタールへとなりました。人、金、物、すべての面において持続可能性そのものが危うい状況になっております。  この一方で、世界には、九億人を超える栄養不足人口が存在し、一日に二万五千人の人々が、六秒に一人の子供が餓死しております。そして、今後も世界食料需給逼迫基調で推移すると予測されています。しかるに、我が国においては、供給される食料の約二割に相当する千九百万トンが毎年廃棄され、その量は世界中の食料援助の総量を上回っております。  我が国農林水産業持続可能性を確固たるものにし、世界全体の食料需給安定化に寄与することは、独立国家として、そして世界責任を負うべき国家としての我が国に課せられた責務であります。このような観点から、過去から現在に至る農業政策をあらゆる角度から検証し、見直しが必要なものについては思い切った改革を行うことが絶対に必要であると私は固く信ずるものであります。  以下、当面する農林水産行政の主な課題取組方針を大きく六点に分けて申し上げます。  その第一は、農業持続可能性確保による食料自給力強化です。  およそ独立国家において、農業を持続的に発展させ、食料自給力強化食料自給率向上を図ることが国家安全保障観点からも重要な課題であることは論をまちません。しかるに、我が国世界最大食料輸入国であり、カロリーベース自給率主要先進国最低水準にあります。自給率が大幅に低下したのは、主にカロリー供給源が米から肉類、油脂類へとシフトした結果でありますが、食料自給力を構成する農地農業用水農業者技術等々の個々の要素そのもの危機にあるとの認識に立ち、現状を分析し、実効ある対策を講ずることが重要です。  最も基礎的な生産基盤である農地については、転用規制強化し、優良農地確保を図るとともに、制度の基本を所有から利用に転換し、貸借を通じた農地有効利用や意欲ある主体への面的集積を促進すべく、今国会関連法案を提出したところです。また、農村資源保全向上に関する地域全体での共同活動への支援や、農業用用排水施設整備による安定的な用水供給機能確保により、農業水利を中心とする農業を支える基盤保全します。  農業就業者減少高齢化などにより生産構造脆弱化が進み、戦後一貫して我が国農業を支えてきた昭和一けた世代の方々が今後リタイアされることを考えれば、意欲ある担い手育成確保は喫緊の課題です。経営所得安定対策を始めとした担い手支援策を着実に推進するとともに、就農に関する相談活動農業法人による実践的な研修推進などを通じて、意欲ある若い世代などの新規就農支援します。  本年を水田フル活用への転換元年と位置付け、連作障害がなく半永久的に使い続けることが可能な、我が国の貴重な食料生産基盤である水田をフル活用し、自給率の低い大豆、麦や飼料作物生産拡大を図るとともに、米粉用飼料用等新規需要米本格生産に取り組みます。今国会においては、新規需要米利用促進のための法案を提出したところです。省エネルギー、省資源コスト低減に向けた先導的な技術開発導入を加速するとともに、知的財産の戦略的な創造、保護活用を進め、農業の潜在的な力の発揮を図ります。  おいしくて安全な国産食材の積極的な活用に向け、我が国農林水産物食品輸出額平成二十五年までに現在の四千三百億円から一兆円規模へと倍増することを目指し、輸出環境整備や意欲ある農林漁業者等に対する支援を行います。  WTO農業交渉においては、引き続き、我が国の年来の主張であります多様な農業の共存を理念として積極的な議論を行い、将来我が国農業のために何が必要かを十分に踏まえ、国益が適切に反映されるよう、戦略的に交渉に臨みます。一方、日豪を始めとしたEPA交渉については、我が国全体としての経済上、外交上の利益を考慮し、守るべきものはしっかりと守るとの方針の下、食料安全保障や力強い農業確立に向けた取組進捗状況にも配意しつつ、政府一丸となって取り組みます。  第二は、地域雇用とにぎわいを生み出す農山漁村活性化です。  農山漁村は、農林漁業の持続的な発展基盤であるとともに、雇用の場の提供や多面的機能発揮を通じ、国民暮らしにおいて大切な役割を担っております。現下の厳しい経済情勢の中で、農山漁村活性化し、地域経済再生雇用拡大を図るべく、地域創意工夫を生かした取組推進します。  地域基幹産業である農林水産業と商業、工業等連携強化し、地域産品販売促進や新商品開発など、新たな地域ビジネス展開を促進します。また、地域のリーダーとなる人材の育成地域資源保全活用を通じて農山漁村集落再生を図るとともに、都市と農山漁村の共生・対流や、農産物直売所設置による地域経済活性化鳥獣被害から農山漁村暮らしを守る対策展開に取り組みます。  雇用情勢が急速に悪化する中、農林水産分野における雇用創出を図るため、農業法人に対し、就業希望者を雇い入れ実践的な研修を行うための経費を助成するなど、農林漁業への新規就業を強力に促進いたします。このほか、基盤整備等公共事業の実施を通じた雇用確保に取り組むとともに、厚生労働省連携し、バイオマス利活用など、農山漁村創意工夫を生かした新たなビジネス展開による雇用創出を図ります。  第三は、食の安全と消費者信頼確保です。  昨年の事故米穀の不正規流通問題や中国産冷凍ギョーザ問題等により、消費者の不安が高まっていることを極めて重く受け止め、食の安全と消費者信頼確保に向けた取組強化しなくてはなりません。  まず、科学的原則に基づいたリスク低減対策推進し、農薬など生産資材適正使用の指導、GAPやHACCPなどの工程管理手法導入等により生産から消費の各段階を通じた食品安全確保に努めます。  主食である米については、トレーサビリティーの導入や、米関連商品原料米産地情報消費者への伝達、用途が限定された米の横流しを防止するためのルールの導入を内容とする法案を提出し、米流通システム見直しを行います。  また、食品表示Gメンによる不適正表示の監視、取締りや、食品の製造、流通等に携わる企業の法令遵守を徹底するなど、消費者の視点を大切にして、関係省庁連携を図りながら消費者信頼確保します。  米国産牛肉の輸入問題については、現在、日米共同技術会合報告書の取りまとめを行っているところであり、食の安全と消費者信頼確保を大前提として、科学的知見に基づいて対応します。  第四は、資源環境対策推進です。  農林水産業持続的発展を図るに当たっては、その自然循環機能維持増進を図り、環境との調和に十分配慮することが必要です。  美しい森林づくり国民的な運動として展開し、間伐等森林整備保全による森林吸収源対策を着実に推進するとともに、農地土壌温室効果ガス吸収源としての機能向上農林水産分野における温室効果ガス削減効果表示に取り組むなど、低炭素社会の実現に向けた取組を促進します。食料供給と両立できる持続可能なバイオ燃料生産に取り組むとともに、農林水産分野における地域生物多様性保全するための取組推進します。  第五は、森林林業政策推進です。  森林は、地球温暖化の防止、国土保全や水源の涵養など多面的機能を有しています。この緑の社会資本としての森林の有する機能が将来にわたって発揮されるよう、適切な整備保全を進めることが必要です。我が国世界有数森林国でありながら、木材自給率はわずか二〇%にしかすぎません。機械化は進まず、就業者高齢化し、森林整備は相当に立ち遅れており、多くの林業経営が極めて深刻な状況にあります。  このため、国民のニーズをとらえた多様で健全な森林づくり国民の安全、安心の確保のための治山対策推進するとともに、森林施業集約化路網整備等によるコスト削減林業担い手育成確保国産材加工流通体制整備国産材住宅に関するワンストップ相談窓口設置など、川上から川下に至る施策を総合的に展開し、国産材利用拡大を軸とした林業木材産業再生を図ります。  第六は、水産政策展開です。  我が国水産業は、漁獲量のピークである昭和五十九年から平成十九年までの間に、遠洋漁業で約八割、沖合漁業で約六割、沿岸漁業で約四割漁獲量減少するとともに、漁業者減少高齢化や漁船の老朽化等による漁業生産構造脆弱化などにより、極めて厳しい状況に置かれております。  低位水準にある水産資源の回復、管理推進するとともに、省エネルギー生産性向上のための取組への支援による漁業経営体質強化や、我が国漁業の将来を担う経営体育成確保を図ります。また、多様な流通経路の構築を通じた産地販売力強化など、加工流通消費施策展開するほか、漁港、漁場、漁村の総合的な整備等を行います。これらの施策を通じて、将来にわたって持続可能な力強い水産業確立を目指します。  平成二十一年度の農林水産予算の編成に当たっては、ただいま申し述べました農林水産政策展開するために意を用いました。必要な法整備につき、今後、御審議をよろしくお願いいたします。  以上、所信の一端を申し上げました。  国民本位農林水産行政を実現するためには、農林水産省の抜本的な改革が必要です。昨年の事故米問題は、農林水産省が抱える幾多の問題を象徴したものであったと私は考えております。私の下に設置した改革チームから提出された提言には、「農林水産省は廃止されて然るべきとの審判が国民から下されたと、職員一人一人が自覚するべきである。」、「この改革を契機に、」「伝統的でなじみ深い調整型政策決定プロセスと訣別しなければならない。」とあります。私は、ここに示された強烈な危機感責任感、そして緊張感をすべての農林水産省職員と共有し、行政サービス業であり、生産流通消費にかかわるすべての方がお客様であるとの意識を徹底させ、親切で丁寧で正直な農林水産行政確立に向け、昨年十二月に取りまとめた農林水産省改革工程表に沿って、政策決定プロセス見直し、業務と機構の改革を進めます。  経済情勢が厳しさを増す中で、農林水産業我が国に残された数少ない成長産業であり、その限りない潜在力を引き出すことは、日本に新たな底力を生み出します。適切な気温や降雨量など恵まれた気象条件。豊かな土壌四面環海であり、世界第六位の面積を有する排他的経済水域国土の六六%を占める世界有数森林率我が国は第一次産業にとって世界でも屈指の恵まれた環境にあるのです。百年に一度とも言われる世界的な経済危機のただ中にあって、外需依存型経済から内需に重点を移すこと、新たな雇用創出することが大きな課題となっておりますが、第一次産業はその中で大きな役割を果たしていかなければなりません。その限りない潜在力を引き出し、底力を生かすことこそが、日本の輝ける未来を切り開く原動力となるものと私は確信をいたします。  先般、政府農政改革推進に向けた関係閣僚会合設置され、新たな食料農業農村基本計画の策定に向けた議論が開始されました。農政改革はただ農林水産省のみで行い得るものではありません。私は、農林水産業の問題は、広く国民的な、国家的な課題でありながら、農、林、水の現場は国民から遠く、消費者納税者との一体感に乏しかったのではないかと思っております。  大切なものはただではなく、だれかがそのコストを負担しなくてはなりません。どの国も農業保護しており、我が国が際立って高い保護水準にあるわけでもありません。問題は、何を、だれが、どのような負担によって、どのように守るかということであります。  スイスにおいては、国産の卵は日本円にして約六十円、輸入品は二十円であるにもかかわらず、多くの消費者が、これで農家生活が支えられ、私たちの生活が支えられるとの理由で国産を選択しているとの話を聞いたことがありますが、我が国はこれとはなお遠い状況にあるのではないでしょうか。政府挙げて広く議論を喚起し、この課題に取り組んでまいります。  先般も申し上げましたように、我々に与えられた時間は極めて少なく、選択の幅は著しく狭いものであります。私は、あらゆる議論はすべからく透明性を持って、徹底して行われるべきものと考えており、委員長を始め委員各位におかれましては、今後とも一層の御鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。
  4. 平野達男

    委員長平野達男君) 以上で所信の聴取は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十五分散会