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忠参考人 おはようございます。
ただいま御紹介いただきました忠と申します。
本日は、このような機会をいただきましてまことにありがとうございます。
私は、三年前の
平成十八年四月、いわゆる
品目横断的経営安定対策を定めた
法律案の
審議の際にもお招きをいただきました。さらに今回は、
農地法という、私
たちが
農業経営を行う上でなくてはならない
経営資源に関する
審議に再びお招きいただきまして、また
意見を申し上げることにつきまして、改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。
私自身は、今回の
改正に当たりまして、
平成十八年から十九年にかけて、農林水産省の
農地問題の
有識者懇談会の
委員を務めさせていただきました。本日は、
担い手の
立場から、日ごろ
考えていることを申し上げたいというふうに思います。
まず、私の
経営でございますけれども、新潟県の
北部岩船地域の村上市、旧
神林村でございますけれども、そこで約七十ヘクタールの水稲を
中心として、さらには
米加工品の製造、
販売、また、近くの
農業者の
皆様方と一緒になりながら野菜の
直売所の運営というふうな形で、
従業員十二名、そして、年間にしますと千二百人日ほどのパートの
方々のお手伝いをいただきながら、
農業生産法人を
経営しているという
状況でございます。
先々週から、もう田起こしが始まりまして、私も連日
トラクターに乗っております。来週からはいよいよ田植えが始まり、約一カ月間この
作業が続きます。きのうの午前中は
トラクターに乗っておりまして、私もノルマがあるものですから、朝早くからとか夕方遅くまで
作業を進めながら、きょうこの場に立たせていただいております。
まず
一つ感じておりますことは、今回の
改正メリットというのが
現場にうまく伝わっていないのではないかなというふうに感じてございます。
昨年来、
法案審議前から、時折
マスコミ等で
企業の
農業参入自由化などという情報が流れておりますけれども、今回の
改正が大
規模な
稲作農業経営にどのような
メリットや
影響があるのか、よくわからないというのが
現場での受けとめ方ではなかろうかというふうに思います。
審議途中にあっても、
政府が責任を持って正確な
広報活動をする必要があるというように思います。間違った認識、あるいは誤解を招かないためにも、そして、よい形でいち早く成立させていただくためにも、その点についてはよろしくお願いしたいというふうに思います。
先ほど申し上げましたように、
有識者メンバーとして御
意見を申し上げてきたわけでありますけれども、そこの部分について、幾つか、さらに本日は
課題について申し上げたいというふうに思います。
まず一点目でございますが、国内の農産物の
生産を将来だれに託すのかという点についてであります。
既存の
農業者に加えて、
企業一般を
リース方式で対象にしたということ。
農業従事者の
高齢化や
後継者不足は、中
山間地に限らず平たんな
農村部においても顕著になっているというように思います。
担い手対策は、
農地法の
改正を含めて、さらなる
経営安定のための強力な施策が急務だというふうに思います。しかし、そういった問題については、今御
審議中の
基本計画の見直しという点でさらに御
議論をいただければというふうに思います。
本題の観点からいたしますと、
企業一般の
参入というのは
一つの方法として
考えられるのではないかというように受けとめてございます。貸借に限定して
農業生産法人や
特定法人の
要件を課さずに、
農地を有効利用する見通しが立てば、いわばだれでもよいということになりますけれども、転貸を
目的とした
権利取得は認めないし、
所有も認めないと
政府は明言しているのでございます。この点につきましては、御配慮をいただいたのかなというように感じてございます。
二つ目、
標準小作料の
廃止についてでございますが、
減額勧告の実績がない、あるいは決め方が形骸化している、
小作料が
地主側の圧力で高どまりしているなどというような理由で、私
たちの仲間には
廃止賛成という声があることも事実であります。
一方、先回、四月十四日の
参考人質疑の中に
松本参考人から御
発言があったようでありますけれども、私も所属しております
全国稲作経営者会議の七割の
会員は
存続を希望しております。また、これも所属しておりますけれども
社団法人日本農業法人協会の
会員の中で、五十ヘクタールを超え、あるいは百ヘクタールを超える大
規模稲作経営者の
研究会の
メンバーも、同様の
意見をお持ちでございます。
私も、八十人ほどの
地権者の方と
賃貸契約を結んでおりますけれども、
小作料の欄には、
標準小作料とすると記してございます。
廃止された場合、改めてそれぞれの
所有者の方と
契約を結び直すということになりますと、相当な負担が予想されます。
なお、私の
地域では、本年、二十一年作付におきましては、昨年より十アールあたり六千円引き下げられました。仮にこれを個別で行うことになりますと、これも難しい
作業だなというように思ってございます。
地域の機関、ここでは
農業委員会ということになりますけれども、一致して設定するということが、
所有者あるいは
利用者にとっても望ましいことなのかなというふうに思っております。
また、
企業が
参入する場合、
生産、
販売活動だけでなく、
加工原料の調達など多元的な
目的で
経営をトータルなものとして
考えたとき、
標準小作料がない事態の
影響がどのようになるかは少し不安の残るところでございます。
廃止するかわりに
農業委員会が
実勢価格の公表を行うこととなっておりますけれども、その提示においては、
農業委員会が示す
参考賃貸料などとして、
契約書に書けるようなものにできないかということを御検討いただければというふうに思います。
次に、
企業参入の
担保措置についてでございます。
基本的に、
農地利用は、
所有者の
考え方あるいは
農業委員会の
判断にゆだねられるということになるわけであります。私
たちは、これまでの取り組みから
地域での
信頼関係を構築してきておりまして、
地域の
農業を担うべき者はだれが一番ふさわしいかということにつきましては、その
地域で決めるというのが
農村社会のルールなのではないかなというふうに思います。具体的な
措置は政令や
省令等の
運用ということになるようでありますけれども、
地域の
判断が公正に行われるように希望したいと思います。
一つ気になる点がございます。
特定法人にあった常時
従事者要件が取り払われたというところでございます。
有識者会議でも申し上げてきました。
特定法人は、市町村が介在して
一つの
保証人的役割があったということで、私はとてもいい
制度だなというふうに思っておりました。
生産と生活の場が一体である
農村に、町で生活し農
作業のために
農村に通勤するといった場合や、
経営者がそこに居住していないということを
考えますと、
集落機能がますます低下してしまわないかということについて気になるところでございます。
また、
集落営農を含めた私どものような大
規模経営体が仮に立ち行かなくなったとき、既にその
地域には
担い手がいない、そして
農地だけはまとまっている、そういったところを
企業にゆだねるということが想定されるのかなというように思うわけです。
農地が有効利用されてさえいればそれでいいのかとは言い切れないような気がいたします。
地域の
信頼のない
企業などがその
地域で
農業をやろうとしてもうまくいくはずはありませんけれども、
村社会の論理や資本の力の差など、不安がないわけではないということを申し上げておきたいと思います。
いずれにしても、
参入及び
許可の取り消しに関しては、それを行う
農業委員会だけではなくて、私
たち農業者や
参入しようとする
企業など、だれにでもわかりやすい基準を提示していただきたいというように思います。
次に、
面的集積についてでございます。
面的集積の
促進についてということでございますが、
面的集積は、
作業の
効率化において私
たちの悲願でもあります。
私の
経営でも、七十ヘクタールの耕地は半径十キロほどに広がっておりまして、最大でも一ヘクタールの連担、ほかはばらばらというような形にあります。その場合、
担い手がある
地域においては
担い手が
中心になって利用調整ができるシステム構築というものを望みます。既に今申し上げた飛び地である
農地や、新たに発生する
農地について、隣接する
担い手がその参画する組織の中で調整するということが
現場としてはスムーズに進むのではないかなというように
考えるからであります。
次に、二条に新設される責務について申し上げます。責務
規定というのは当然のことではないかなというふうに思います。しかも、それを法律にうたうことの意義というのは大変大きいものがあります。
ただ、
所有者としての責務と
利用者としての責務とは、どういうことになるのでしょうか。
所有者は、私
たちに
農地を貸したことで責務を果たしたということだけでなく、納税や土地改良の費用負担、あるいは適正に利用されているかという監督責任があるのではないかなと思います。また、
利用者は
農地を
農地として有効活用するという管理責任があります。しかし、借地による
土地利用型農業は、資本力が少なく、資産も少ない脆弱な
経営体質というのが実態でございます。
利用者としての責務遂行には、
経営所得安定対策にさらなる充実を強く要望しておきたいというふうに思います。
二〇〇五年の農林業センサスでは、二十ヘクタール以上の
経営体は、北海道を除きますと三千七百三十七の
経営体が約十五万ヘクタールの
農地を管理しています。これは、
経営耕地面積の六%弱ということになりますけれども、一〇%以上の都府県が十県近くある。このような
状況は今後さらに進むのではないかなというふうに私は思います。
百ヘクタールを超える
経営体のカバー率も、都府県では平均一・二%ございます。土地利用型
経営は、大
規模層の中にあってもさらに二極化傾向になるのではないかなと予想することができると思います。ついでに申し上げれば、そうしたメガファームへの対策というのは、現在の政策の延長線ではなかなか追いつかないという
状況にあることも申し上げておきたいというふうに思います。
最後になりますけれども、
農業委員会の機能の充実についてお願いを申し上げたいと思います。
改正法においては、頼るべきは
地域の
農業委員会しかないのではないかなというふうに私は思っております。市町村の広域合併によりまして、
農業委員の数も減少しておりますし、事務局の人員も大変手薄になっているというようにお聞きをしております。
ここは、しっかりと業務のできる体制の
整備をお願いするとともに、
農業委員会が、本当にその
地域で
農業をやっている者が
中心となって運営できるような構成になるべきだというように
考えてございます。例を挙げますと、私の住んでおります旧
神林村におきまして、合併前は
農業委員すべてが認定
農業者であったという実態がございました。このような運営は参考になるというふうに思います。
以上、私の
意見を申し上げさせていただきまして、終わりにいたします。
ありがとうございました。(拍手)