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2006-12-12 第165回国会 参議院 外交防衛委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年十二月十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十二月八日     辞任         補欠選任      荒木 清寛君     浜田 昌良君  十二月十二日     辞任         補欠選任      佐藤 道夫君     藤末 健三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         柏村 武昭君     理 事                 岡田 直樹君                 山本 一太君                 浅尾慶一郎君                 柳田  稔君                 高野 博師君     委 員                 浅野 勝人君                 川口 順子君                北川イッセイ君                 小泉 昭男君                 櫻井  新君                 関口 昌一君                 福島啓史郎君                 犬塚 直史君                 喜納 昌吉君                 佐藤 道夫君                 榛葉賀津也君                 白  眞勲君                 藤末 健三君                 浜田 昌良君                 緒方 靖夫君                 大田 昌秀君    国務大臣        外務大臣     麻生 太郎君        国務大臣        (防衛庁長官)  久間 章生君    副大臣        防衛庁長官   木村 隆秀君        外務大臣    浅野 勝人君    大臣政務官        防衛庁長官政務        官       北川イッセイ君        外務大臣政務官  関口 昌一君        外務大臣政務官  浜田 昌良君    事務局側        常任委員会専門        員        泊  秀行君    政府参考人        内閣法制局第二        部長       横畠 裕介君        防衛庁防衛参事        官        小川 秀樹君        防衛庁長官官房        長        西川 徹矢君        防衛庁防衛政策        局長       大古 和雄君        防衛庁人事教育        局長       増田 好平君        防衛施設庁長官  北原 巖男君        外務大臣官房審        議官       長嶺 安政君        外務大臣官房審        議官       本田 悦朗君        外務省中南米局        長        三輪  昭君        外務省中東アフ        リカ局長     奥田 紀宏君        外務省国際法局        長        小松 一郎君        外務省領事局長  谷崎 泰明君    参考人        拓殖大学海外事        情研究所長    森本  敏君        早稲田大学法学        部教授      水島 朝穂君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(第百  六十四回国会内閣提出、第百六十五回国会衆議  院送付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) ただいまより外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八日、荒木清寛君が委員辞任され、その補欠として浜田昌良君が選任されました。     ─────────────
  3. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、拓殖大学海外事情研究所長森本敏君及び早稲田大学法学部教授水島朝穂君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、両参考人に本委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、森本参考人水島参考人の順にお一人二十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  なお、参考人質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず森本参考人にお願いいたします。森本参考人、どうぞ。
  6. 森本敏

    参考人森本敏君) 本日、当外交防衛委員会において、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案審議参考人として招致いただき、光栄に存じます。  私は、このたび当該法律案及び法律案成立によって防衛庁を省に移行する、昇格させるということについて、基本的に賛成の立場を持っているものです。  そもそも、国家の基本的な機能であります国家防衛は、外交教育と並んで国の基本的な機能であり、それを所掌する国家行政組織として省になっているということは当然の措置ではないかと考えますが、防衛庁がそもそも昭和二十九年設置されたときの国の内外の事情から庁としてまず設置され、徐々にその態様が整い、今や国の防衛を担当する役所として、省として十分な態様を整えるに至っており、省として十分に資格のある役割機能を果たしている防衛庁を省として位置付けることについて、もはや日本国家行政組織の中で他の省と比べても、あるいは諸外国国防省と比べても何ら遜色はないと考えるものであります。  しかしながら、防衛庁を省にするということになりますと、防衛省であるからには今後一層その機能実態を充実させる必要があると考え、今回の法案成立が実現するということになれば、省としての態様を整え、一層国家防衛を所掌する官庁として重要な役割を果たすように中を充実させていくという非常に重要な機会が訪れているのではないかと考え、以下、防衛庁を省にした場合、防衛省として今後いかなる課題を抱えるのかという、言わば今後の課題ということに重点を置いて少しく所見を述べてみたいと思います。  そもそも、防衛庁というのは、朝鮮戦争後のアメリカ極東戦略の変更に基づいて警察予備隊ができ、それが朝鮮戦争が終わった後、当時の警察予備隊保安隊になり、それが自衛隊になったときに防衛庁という現在の役所ができたわけですが、以来およそ半世紀先人のいろいろな努力とそして訓練を通じて、多くの我々の貴重な生命がこの訓練や事故の機会に失われ、彼らの実績、彼らの努力をもって今日までたどり着いたことだと考えるわけです。  しかしながら、依然として国家有事を含む国家緊急事態に現在の防衛庁を仮に省にするとしてもまだ不十分なところがあって、特に行政官庁としての防衛省が実際に有事の場合にいかなる指揮監督機能を果たすのかということは法律を読んでも必ずしも明確でないところがあり、そもそも、旧軍でいうと軍政軍令という双方の機能を例えばアメリカ国防省は持っているわけですけれども、軍政に特化した防衛省というものがいわゆる軍令機能をどのように果たすのかということについては、今後まだまだ検討する余地があるのではないかと考えます。  今回のこの防衛庁設置法等の一部を改正する法律案の中に、いわゆる国際平和協力活動を本来任務とする本来任務化規定が入っているわけですが、この法律成立した暁には、防衛省として国際協力活動が今後一層拡充されるということが期待されるわけですけれども、しかし依然として日本自衛隊領域外に出す場合には国内法的な根拠が必要であり、その際、今までのところは一般法がないために特別措置法を積み重ねて実施してきているわけですが、こうすると、常に新しい法律を作るために政治的リスクを負い、諸外国から対応が遅れ、かつその都度その活動内容武器使用基準が変わるという不便さがあり、この際、国際協力活動が本来任務化した機会をとらえて、自衛隊が国外におけるこの種の国際協力活動に参加する根拠、あるいは活動内容武器使用基準などを明確にした一般法を速やかに制定し、アジア太平洋における多国間協力や、あるいは将来多国籍軍あるいはPSIなど国際社会の安定のための国際協力に積極的に参加する基礎をつくる必要があるのではないかと考えます。  言うまでもなく、防衛省はその実行機関として自衛隊を含んでいるわけでございますけれども、私は、最近日本が抱えている日本周辺安全保障環境を考えるに、この防衛力というものがいかなる役割を今後果たしていくのか、そして防衛力所要量というのは果たして適切なのか、今の防衛大綱が真にこれからの日本が直面する新たな脅威リスクに対応できる防衛力となっているのかについて、少し見直しを必要とするのではないかと考える部分があります。  あわせて、米軍再編のプロセスがこれから数年にわたって進む際、その最終的な姿を念頭に置きながら米軍再編に伴う日本防衛力在り方を考えた場合に、私は現在の大綱が十分な所要と十分な役割を果たしているとは考えません。この際、もう一度日本防衛力在り方、そして本来いかなる役割を果たすのが真に日本のためなのかと、そしてそのためにいかなる防衛力が量として必要なのかということを見直す時期に来ているのではないかと考えます。  もちろん、安倍政権外交安全保障課題の中で日米協力を強化するということは重要な政策課題一つでありますが、このための体制の整備も必ずしも十分であるとは考えません。特に、ミサイル防衛に関する集団的自衛権問題というものを明らかにすることが必要ですし、この集団的自衛権問題というものが解決される暁には、現在の日米安保条約安保条約に基づく日米地位協定というのは根本的な見直しが必要になる時期が来るのではないかと考えます。  さらに、話を元へ戻して、国際協力活動を拡充するためには、安保条約では読めない日米間の国際協力について条約協定上の根拠がないことから、今後日米間で、例えば今年の年頭に行ったスマトラ沖での日米間の協力などの実態念頭に置きながら、日米間で国際協力協定を将来締結する交渉を行う必要があるのではないかと考えます。  日本防衛、現在の防衛庁、そして今後防衛省になった場合に最も重要なことは、自衛隊及び防衛省全体の統合運用体制を充実させるということであり、この点にかんがみれば、今年三月、統合幕僚監部が設置されたことは一つの重要なステップではなかったかと思います。しかしながら、有事の際に日米協力をより充実させるためには、日米間の指揮運用及びインテリジェンスネットワークをどのようにつくっていくかということも今後の課題であると思います。  在日米軍日本にいる米軍のすべての指揮権を持っているということでは必ずしもなく、結果として、日本は今後、太平洋軍及び日本に設置される新たな陸軍司令部とどのような指揮運用調整を行うネットワークをつくるかということも重要であり、その際、日本防衛力が、陸海空自衛隊によってそれぞれ管轄する区域、空域が必ずしも一致しておらず、かつ司令部機能にいささか冗長な面が見られることから、今後自衛隊指揮の結節を除去するため、司令部在り方や現在のような方面総監あるいは方面隊などの区分けのやり方を根本的に見直していくという必要があるのではないかと考えます。  当然のことながら、我が国にとっては、米軍再編を進めるということは、日米同盟観点からも、あるいは日本国家安全保障防衛の面からも極めて重要な措置であり、今までのところ日米間でいろいろな協議が行われている途中でありますけれども、いずれは、この米軍再編を促進するために予算措置を含む促進法、推進法なるものを制定し、これに基づいて必要な措置をとっていく必要があるのではないかと考えます。  その際、日本の限られた施設区域を最も効果的に使うためには、日米間で施設を相互使用するというところを拡大し、同時に、グアムを新しい戦略基地として機能を拡充させるというアメリカの構想をそのまま採用すれば、いずれの日にかグアム及びグアム周辺日本基地を建設し、そこに自衛隊アジア太平洋にこれから展開する根拠基地を造り日米協力体制を整えるとともに、そこを日本が重要な前進基地として、これから国際協力活動に出ていくという重要な足掛かりをつくる必要があるのではないかと考えます。しかし、その場合、どうしても日米地位協定に匹敵するような、日本自衛隊が米国の領土の中に駐留することに係る地位協定を新たに日米間で交渉する必要があるというふうに考えます。  日本防衛にとってもう一つ重要なことはインテリジェンスでありますが、既にインテリジェンスについては、近年その情報機能の強化を図るためいろいろな施策が取られているところですけれども、私は三つの点をこの際指摘したいと考えます。  一つは、機密保護法であります。国家公務員に秘密を守る義務を課していることは当然でありますが、公務員以外の者について、国家機密に触れた場合、この機密を保護する包括的な法体系がないことは日米同盟信頼性にもかかわる問題であり、これは速やかに改善を必要とするのではないかと考えます。  さらに、自衛隊活動が今後日本周辺脅威リスクに対して有効に対応できるためには、平時から自衛隊駐屯地の外に必要な警戒監視のために展開するということを可能にする法体系も必要であると考えます。  このように、日本防衛在り方を考えるときに、国家行政組織としての防衛庁防衛省にすることは当然ではあるものの、しかし日本防衛を考えた場合に、この省が直面する今後の課題は非常に広範にわたっており、これらを一つずつ確実に充実させることによって防衛省というのがますます重要な国家行政組織に転身できると、変身できるというふうに私は考え、そのような事態ができた場合、国民の中に真に防衛省に対する信頼感が広まり、その結果として、将来防衛省国防省自衛隊国防軍に名前を変え、階級呼称も、一等陸尉などというよく分からない呼称ではなく、正規に陸軍大尉というふうに階級呼称を変えるという措置がとられることを希望するものであります。  日本防衛というのは、過去五十年、日本の置かれた特殊な政治事情憲法の制約の下でここまで育ってきたわけですけれども、本来、冒頭に申し上げたように、国家防衛というのは外交教育と並ぶ最も基本的な機能であり、国家行政組織としての態様を充実させるために今後ますます努力を積み重ねていかなければならず、そのために、省になったことに甘んじることなく、防衛省としてより充実した官庁を目指して、我々は精進し、これを国民として支持し、理解をしていくという必要があるのではないかと、かように考えます。  以上でございます。  委員長、ありがとうございます。
  7. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 森本参考人、ありがとうございました。  次に、水島参考人にお願いいたします。水島参考人
  8. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) 今、この国は極めて重要な転換点にあります。本法案もまたその一つであります。そのような重要局面におきまして発言機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。  さて、冒頭に申し上げたいことは、参議院重要性であります。衆議院の安全保障委員会議事録子細に昨日読んだところではありますけれども、十月二十七日から四回の委員会が御承知のような事情野党欠席のまま行われております。十一月三十日の本会議で本法案は可決されましたけれども、報道によれば、審議時間は十四時間二十分だそうであります。良識の府である参議院で、本法案の持つ重要性にかんがみ、より慎重な審議が求められます。六日の本会議において、藤末健三議員が参議院を再考の府、再び考える府と呼び、深い審議を求めましたけれども、全く同感であります。慎重審議を本委員会に期待し、内容に入ります。  結論をあらかじめ申し上げますと、私は本法案に反対であります。差し当たり、三つ理由を述べたいと思います。  まず第一に、今この時期、このタイミングで防衛庁から防衛省にすることの積極的な説明がほとんどなされていないことであります。なるほど、旧総理府、現在の内閣府の外局として、内閣府の長としての内閣総理大臣の下で、その委任を受けた者としての地位にある防衛庁長官閣議請議権がなく、また御承知のとおり、予算要求予算編成の時期に他省庁と異なり内閣府を経由する手続などもあります。また、これらの理由を読んでみますと、ディフェンスエージェンシーという名詞が他国の防衛担当官との間で一言説明を要するといったような形で、言わば一つ格下に見られることの問題性などなどが指摘をされています。  しかし、これは今に始まったことではなく、既にこの半世紀、これまでもやってきたわけで、その中で先人たちは様々な努力をし、各国説明をしてきたわけであります。これがどうしても不都合であるという積極的な説明が私にはどうしても見られないのであります。  そもそも、なぜ国家のいわゆる防衛任務というのをこのような複雑な二階建て構造にしたのでしょうか。その設計の根底には明らかに憲法九条の存在があります。憲法九条は、安全保障設計軍事力を限りなくゼロにしたところから立ち上げることを要請しています。これは、広島、長崎という人類的な核戦争体験、沖縄に見られる地上戦の悲惨な体験、そしてアジアの多数の民衆の犠牲の上に、日本国憲法はあえて近代立憲主義が自明視した国民国家における軍事力の本質へという点をあえて疑い、軍事的合理性を単に制限するにとどまらず、あえてその軍事的合理性を否定するところまで徹底した平和主義を採用したと私は考えております。ここにこの憲法の特質があります。  国際情勢の変化の中で、憲法施行後わずかな期間で警察予備隊保安隊というものを経由し、今から半世紀ちょっと前に自衛隊が発足するとき、政府自衛のための必要最小限度実力、いわゆる自衛力合憲論を打ち出しました。違憲の戦力と合憲自衛力。だから、当時、改進党が防衛省設置要綱案を作成しましたけれども、結局、防衛庁設置法となったわけであります。  内閣の首長としての内閣総理大臣実力組織としての自衛隊の行動に関する指揮権を持つ、しかし、自衛隊法七条は憲法七十二条の確認規定であると解し、いわゆる統帥権的な創設規定ではないと解します。したがって、長官は、内閣府の長としての内閣総理大臣指揮監督を受け、自衛隊の部隊やその機関に対する指揮監督権隊務統括権を行使するわけでありまして、これは国家行政組織法十条の確認規定と解します。  これは、言ってしまうと列国の、普通の一般の国の国防省とは明らかに異なります。この苦肉の策ともいうべき手法は、これは憲法九条と自衛隊の言わば矛盾的併存状態を半世紀以上続けたことと一体を成していると私は考えています。つまり、日本世界と違って、あえて軍政軍令というようなクリアな分け方や、そういう軍政面にすらこのような二階建て構造をあえて屋上屋を重ねてやることによって、軍事に対して徹底してネガティブな姿勢を取る憲法の下で、あえて必要最小限実力としての正当性各国説明をしてきたわけであります。  いわゆる一般的に知られるシビリアンコントロールと異なる、この日本型のシビリアンコントロールの枠組みもまた、文官スタッフ優位制度を含めて、様々な矛盾を生じてくることは明らかでありますけれども、その矛盾をどう評価するか、その矛盾の中身の問題であります。森本参考人が御指摘するような、軍事的合理性を徹底した観点からすれば、文字どおりこの言わば矛盾的な仕組みというのは非常に不徹底であり、また様々な問題点を含んでいると思うことは明らかであります。しかし、あえてこれをこの国は半世紀続けてきた、その歴史の重みを見るべきであります。二〇〇一年に環境庁を環境省に変えたとき、環境は重要な国家任務であるからということで合意をしていったのとは明らかに異なる、軍事というものに抑制的であったこの国の姿勢はあえて私は重要であると申し上げておきたいと思います。  防衛庁説明図を見ますと、すっきりとした行政組織に変えるという、すっきりとした行政組織という、すっきりという言葉が多用されております。すっきりという言葉は最近いろんな場面で使われますけれども、世の中すべてすっきりするものばかりではありません。この国があえて軍や国防省を持たない国として進んできたこと、これはノーマルではありませんが、アブノーマルではない。世界がむしろ、世界が軍縮に向かっていく中でこの国があえてこの仕組みを今の瞬間変えること、そのことは世界の複雑な状況の中で日本が果たすべき独自の役割を私は放棄するものであり、あえて軍と国防省を持たない国として自衛隊防衛エージェンシーでこのままいくことの方が、私はあえて軍事的合理性を高める、このような法案に対して反対するという観点からこれを強調したいのであります。  これが第一の理由であります。  第二の理由は、海外派遣任務の本来任務化問題性であります。  詳しいことは省略いたしますが、法案子細に読んでみますと、実に様々な仕掛けが入っております。第三条第二項の構造は、一項で定める防衛の目的以外にも、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、別に法律に定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを含むとされています。もちろん、武力による威嚇、行使は含まないという形で縛りは掛かっていますけれども、そこに法律さえ定めれば任務の拡大に歯止めはありません。元々、自衛隊法第八章の第百条は土木工事規定であり、ここに言わばずらずらと追加的に雑則のところに様々な、PKOから一連の任務が付いていったことは御承知のとおりであります。本来、これは本則である第三条を変えてそこで含むべきものと言われるものでありましたけれども、これまで一切そういうことがなされないままこの雑則活用法でやってまいりました。  自衛隊法改正案第三条二項には、法律で定めれば本体任務に連動するようこの雑則との関係も付いております。例えば、テロ特措法イラク特措法という賞味期限付き法律が本来任務に格上げされる仕掛けであります。附則第七項以下では、テロ特措法イラク特措法による派遣当該法律効力を有する間として本来任務にリンクするように設計してあります。  そもそも特措法というのは極めて時限立法であり、それぞれの国会の中で深い議論があります。この中でイラク特措法テロ特措法に賛成した方でも、あえてこれが恒久法であれば決して賛成しなかったであろうような内容と性格を持っております。そのような特別措置法という法律をこのように何度も延長すること自体はここでは、問題でありますけれども触れませんけれども、その特別措置法というものをその法律効力がある間、本体任務に連動されるこの立法作法は私は甚だ疑問であると思います。  すなわち、本来、武装組織を持った以上、その権限行使は本則の部分の権限行動規定でしっかりとした授権規定、すなわちその権限を与える規定を持つべきであります。このような雑則の中にあったものを附則の中にこっそり忍び込ませ、それを言わば別の言葉で連動させて顕現化するというやり方こそ、これはこそくと言わざるを得ません。  あえて次善の策、私はこの法律すべてを違憲と考えますけれども、あえて次善の策を考えるならば、あえてこの附則第七条以下と本来任務を切り離し、言わば別に法律を定めるというところに別の言わば歯止めを掛ける必要があると考えております。すなわち、PKO任務周辺事態任務が附則二項には入っておりますけれども、これと同じように機能するように別に法律の定めるその有効な期間というやり方は余りにもあいまいであり、海外から見ても、日本の対外的な姿勢から見ても問題であると考えるのであります。  そういう観点から、自衛隊海外派遣任務の蓄積をあえて本来任務にすることが当然だという御意見があることは私も理解しております。しかし、これまでの海外派遣実績の冷静な検証、これが求められていると思います。川口元大臣が在席されていますけれども、これまでの日本の対外的な国際協力の中で、自衛隊をどうしても派遣せざるを得ないのというのがどれだけあったのか。自衛隊派遣したカンボジアPKO以降、イラク特措法のサマーワ以降、この中身についての冷静な検証を見ていく必要があると思います。  現地から感謝されているという表面的な理由だけでこれらの海外派遣任務が支持されたとするには私は早計であるし、これだけ財政が緊迫する中、大量の費用を掛けて、例えば同じ費用を掛けるならば相手国に対してもっと喜ばれるような方法があったであろうということも含めた冷静な検討が必要だろうし、テロ特措法イラク特措法でも、現地のニーズにかかわりなく、ある種の派遣されることに意義があるという形で対米的な関係を重視したやり方が取られてこなかっただろうか。真の限られた予算の中で真の国際貢献を言うのであれば、世界の疾病や貧困、今そこにある危機に適切、的確に対応する日本姿勢があってしかるべきであろう。そういうふうに考えたとき、海外派遣というものをこのように容易化するやり方について、今ここで決めることについて私は大きな疑問を持ちますし、また、費用対効果から見ても、日本がやるべき国際協力の形についてもっと検証が必要だろう。  皆さん方の先輩が半世紀以上前の六月二日、参議院の本会議において、「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」というものを行っております。その中で、我が国民の熾烈なる平和愛好精神に照らし、海外出動はこれを行わないと決議したわけであります。つまり、自衛隊は海外に出さないということでこの自衛隊が発足したのであります。これは事情が変わったと簡単に言えるでしょうか。このときの皆さん方の先輩、参議院の議員たちの心にあったことは、少なくとも日本が海外で武力行使をし、再び他国に対し武力による威嚇を行わない、そういう国の形を想定していたに違いありません。そこから生まれてきたこの変則的とも言える防衛庁という防衛エージェンシーの形、軍隊ではなく自衛隊であるという形、大佐と言わず一佐と言うこの不思議な形、英文では一致しているのに、このようなある種の苦肉の選択というものは、この国の五十年の形を私は示していると思います。  この点で、私はドイツの例を引きたいと思います。私の専門であるドイツは、同じように敗戦国として出発しながら、実は様々な海外派遣を蓄積してきました。私の調べた限りでは、今年の十一月の現在で、十地域八千八百八十九人の海外派遣を展開しています。そして、カンボジア、ソマリア、ボスニア、コソボ、アフガン、コンゴ、スーダン、そしてレバノン沖の海軍派遣まで、文字どおり、ヒンズークシからコンゴの密林までドイツ連邦軍の言わば防衛範囲になったと前国防大臣は言っているほどであります。つまり、本来、国防という下に設置されドイツ基本法がそれを根拠付けて連邦軍を設置したものが、九一年の湾岸戦争以降、国防というものの定義、すなわち防衛概念の定義変えを二つの軸でやってきました。  第一の軸は、距離の軸であります。すなわち、本来、国防というのは、領空、領海、領土というものを言わば明確に守るという意味では、地理的な概念であります。これを地理的概念ではない形にして、言わば資源あるいは市場、そしてそことのアクセス、これが国益であると、こういう形で理解し、それを守ることが防衛の概念に含まれる、こういう距離概念の多大な拡大が行われました。その結果、ヒンズークシ山脈に至るまでドイツ国防軍防衛範囲と解釈されていったのであります。これが距離軸であります。すなわち、死活的利益があるもの、守るべきものは国境の外にある死活的利益となっていき、国防目的で設定された軍隊が海外任務に転用されていったのであります。  一方、時間軸は、武力攻撃の着手時点ではなく、脅威内容と程度に応じて事前、先制、予防的に行動する考え方が生まれてきました。これはいわゆるアメリカの二〇〇二年九月の国家安全保障戦略におけるプリエンプティブストライク、先制攻撃などの明確に見られるように、言わば相手国からの脅威あるいはその攻撃の現実性がないにもかかわらず、文字どおり攻撃を掛けてしまう。これはイラク戦争について既にアメリカでさえ反省の動きがあることをかんがみれば、この先制攻撃のやり方がいかに国際的な法の支配を崩してきたかは明らかであります。  ドイツは、この時間軸については抑制的であり、この距離軸についてかなり広げた結果、現在レバノン沖に部隊を展開し、さらに、そこで様々な問題を起こしています。世論調査では、七割が撤収すべきだという世論の結果が出ておりますし、この前の派遣決議では与党の中からすら反対意見が出てまいりまして、ドイツではこれまでのように多大に行われてきた海外派遣任務に抑制的な傾きが見られるのであります。そこにおける議論は、防衛のために設置された軍隊が言わばそのような形で国際政治的に転用されていく、そのことに対する軍隊内部からの批判もあります。私はドイツ滞在中、ドイツ国防軍の中の連邦軍の大佐が委員長を務める連邦軍協会を訪問し、様々な意見を聞きました。彼らは政治に向かってはっきりと軍人としての主張をします。つまり、このような海外における軍人が危険にさらされる任務が法的正当化が不十分なまま行われるということに対する疑問が内部からも出ているのであります。  今、日本までがそのような海外派遣任務を容易にするシステムを取ることは、このような観点からいっても私は大いに疑問であります。ドイツの教訓を導けば、国連任務が明確である場合、そして人道援助のような明確な、いわゆる非軍事活動であることが明確である場合に限っていくという形で、文字どおり国際派遣任務の言わば明確化ということが求められているように思います。その観点から、法案の三条二項に、他に法律に定めるという定め方はあいまいに過ぎると思います。  第三に、この内容については、実質的には憲法改正の先取りではないかという疑問があります。憲法九条の言わば先ほど述べたような軍政軍令を徹底して否定したやり方に対抗して、実質的には軍政面における制度的な改変を一歩進める、不十分であるけれども、防衛省という形で一歩進めることによって実質的には憲法改正の先取りになる。憲法改正は、御承知のように本院の総議員の三分の二を必要とする憲法改正マターでありまして、そのことを自覚するならば、あえてこのことは憲法改正の議論のところでやるべきであります。  政府の行為によってという形で戦争の発生原因を明確化し、平和を愛する諸国民の連携と連帯のネットワークの構築を示唆し、そのために自らの戦争、武力行使、武力威嚇など国家暴力の諸形態を放棄するとともに、軍隊の保持を禁止し、国際法上交戦者の資格としての交戦権を自ら放棄し、そして全世界国民、個人が貧困や飢餓、疾病、自由抑圧などから免れるよう、平和のうちに生存する権利の普遍化のための行動を求めたこの日本国憲法の思想、それは人権と統治の両面から平和を普遍的な憲法原理に高め、本質安全の保障モデルと私は考えております。  このような観点から見るならば、本日、国連の安全保障理事会が半世紀以上前、日本の国連加盟を決定したと聞いております。国連安保理が日本国連加盟を決定した日にこのような場で、私は、日本という国が防衛省というふうに昇格させ、国際任務の拡大という方向に一歩踏み出すような法案審議していることは大変象徴的と私は考えています。  なぜならば、このような憲法の下で、国連の集団安全保障を強化する方向で、日米同盟というもの、つまり日米軍事的同盟関係を過剰に強める方向ではなくして、あえてアジアに軸足を置いて、この国連の集団安全保障の枠組みの中でアジアの地域的な集団安全保障の枠組みを強めていく方向で日本が一歩踏み出していくこと、そのためにも米軍再編や、あるいは様々な海外任務の本来任務化、そして防衛省への昇格といったようなことをひとまずペンディングにして、その上で国連の強化の方向で日本が議論を進めること、それは今アメリカですら、あの先制攻撃的性格を強めたブッシュ政権ですら、今国内からの大きな批判にさらされ若干の軌道修正をせざるを得ないというこの時期、このタイミングでこの日本が文字どおり示すべき見識であると私は考えております。すなわち、防衛庁防衛省にするよりも他にすべきことがたくさんある。何よりも、イラク派遣について文字どおり深刻な反省をすることが求められています。  本委員会において、防衛庁長官は小泉前首相の発言について個人的見解のようなこともおっしゃって、私はいすからずり落ちましたけれども、文字どおり、あの小泉内閣、ついこの前行われたイラク派遣について、あの時期あのタイミングでの支持、協力の表明が正しかったのか、その後のイラク復興支援という名の下で行われた自衛隊のパンツァーファウストまで持つ、百十ミリのあの対戦車ロケットまで持っていったあのような活動が本当に正しかったのか、他に復興支援の方法がなかったのか、冷静な検証が求められていると思うのであります。  そういう意味で、私は、衆議院でわずかな時間しか審議されていない本重要法案がこの国の形を対外的に示すというメッセージ機能を持っているという意味で、本良識の府参議院において、特に本委員会において、先ほどの議員の言葉を借りれば、深い審議を行って、慎重審議の上にも慎重審議を行って参議院の見識を示していただきたいと考えるものであります。  最後に、米国との適切な関係を取ること、そして武力に過剰に依存しない形、この国の対外的な政策において求められるこの二つの姿勢を一貫させるならば、文字どおり対外的な交渉能力や情報力、そして何よりもネットワークの構築能力といったものを日本がもっともっと伸ばしていく、そういう方向に努力をするためにも、ディフェンスエージェンシーであえてとどまること、その上で外務省や様々な省庁との、あるいはNGOなどとの協力をしながら、日本が平和や安全保障について非常に難しいこの極東アジアの状況を踏まえて行っていくことが私は求められていると思います。  本委員会が、繰り返しになりますが、参議院外交防衛委員会という重要な場面におきまして、深い審議を行った上で本法案に対して慎重な態度を取っていただくことを最後に期待して、私の発言を終わります。  ありがとうございました。
  9. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 水島参考人、ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 川口順子

    ○川口順子君 森本水島参考人には、大変にディテールにわたった御意見をいただきまして、ありがとうございました。  それぞれのお立場が基本的には違うということでありますけれども、問題は、お二人が違う立場からそれぞれ論じていらっしゃったことというのは、防衛庁防衛省にすることが適切かどうかということの後ろ側にある、むしろ日本が自らの国を防衛をしていくために今の制度がいいかどうか、適切かどうかという立場の違いに基づいての御議論の開陳であったというふうに思いますし、また日本国際社会で今後どのような役割を果たしていくかということについての考え方の違いもあったかなという気がいたしております。  そういったかなり細かい議論に入る前に、この防衛庁防衛省に昇格あるいは移行するということについての議論というのは、やっぱり日本一般国民の目から見たときに十分に理解されるべき点が理解をされているかどうかということが重要だというふうに思いますので、普通の国民の、有権者の目線にあえて立って基本的な御質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず一番基本的な点について、日本防衛を行っていくために、我が国が日本の我が国の防衛をするために日米安保条約というのがどういう役割を果たしているかということについての見方あるいは見解が一番基本であると私は思っております。  水島参考人はお話の中でアジアとの連携を強調なさったというふうに私には聞こえましたけれども、森本参考人とそれから水島参考人それぞれから、日本防衛日米安全保障条約の関係をどう考えるか、日本防衛をきちんと、防衛を正にするために日米安保条約はどう位置付けられるのかということについて御意見を伺いたいと思います。
  11. 森本敏

    参考人森本敏君) 我が国は戦後、憲法を制定し、そのときはまだ日本国としての主権を回復していなかったのですが、一九五〇年に勃発した朝鮮戦争を契機にして、日本アメリカ極東戦略の変更に伴いサンフランシスコ平和条約によって主権を回復し、その際、この主権を回復したと同時に、九十日以内に占領軍が日本から出ていく、撤退するということになったので、日本日米同盟という道を選択し今日に至っているわけです。この選択は歴史的に見て非常に正しかったと思いますし、今日の国家の安定と反映がこの日米同盟を選択したという選択に大きく依拠していることは明らかであると思います。そのとき我が国の固有の防衛力というのは当然ありませんでしたので、アメリカ日本及びその周辺にいさせるというか駐留させることによって国家の安定を維持し、日本は持っているリソースをすべて戦後の経済開発に、経済発展に投入するという選択を同時にしたわけです。この選択も、今日歴史を振り返ると正しかったと思います。  その後、日本防衛力というのが確実に育ち、日米安保条約に基づくいわゆる日米同盟というものと日本防衛というのはどういう役割を果たしてきたかということについては、冷戦時代と冷戦後と少し内容というか質が変化しているのではないかと思います。  冷戦時代の日米同盟防衛力というのは、明らかにアメリカの極東における抑止戦略が非常に強力で強大なものであり、かつ極東における対ソ封じ込め戦略という大きな戦略的枠組みの中に日本が位置付けられていたので、したがって日本防衛力日米安保体制に基づくアメリカの抑止力の不足部分を補い、相互に補完をすることによってトータルで日本国家の安定を維持すると。結果として、アメリカの抑止戦略によって日本国家の安定を維持するという役割を果たしていたのではないかと思います。  しかしながら、冷戦が終わってみると、リスク脅威が非常に多様化し、アメリカが関心を持たないところまで日本が自らの手で国家防衛をしないといけないということになり、例えば不審船の事件や北朝鮮のミサイル発射に見られるように、必ずしもアメリカが直接関心を持たないような東アジアにおけるリスクについても日本が独自の対応能力を整備し、そのことによってむしろ日米同盟内容、質と量を完全なものにするということであり、軸足が、どちらかというと、相互補完というより、必要な場合に日本が独自の能力を自ら整えることによって結果としてイコールパートナーシップとしての役割を果たすというふうに内容が変質してきたんだろうと思います。依然として、日米同盟防衛力によってトータルで抑止とそして対応といいますか、脅威があった場合にこの二つの機能で対応するという役割には変わりはないのですが、一層、冷戦時代よりも冷戦後に日米同盟日米協力防衛協力の中身がより対等なものになりつつある、あるいはそういうふうにしなければならないという状態に現在来ているのではないかと思います。  私が冒頭申し上げた諸点は、正にその観点について見れば、防衛庁防衛省にしてもまだまだこれからやることが多く、同盟国の関係としては完全なものとは言えないと。我々は何に着意をしてこれからこの日米安保体制に基づく同盟協力日本国家の独自の防衛力を相互に機能させるかということについて私の所見を申し上げたわけです。  したがって、戦後、日本日米同盟という道を選択したときから常に日米安保条約日米安保体制というものと日本の固有の防衛力というものとが合わさって日本国家の安定を維持してきたのですが、その内容をつぶさに見ると、明らかにプライオリティーや重点が質的に変化しているということではないかと思います。  以上でございます。
  12. 川口順子

    ○川口順子君 ありがとうございました。どうぞ。
  13. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 続いて、水島参考人、どうぞ。
  14. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) これはやはり、日米安保体制の評価以前に、やはり、いわゆるその日米憲法が期待する安全保障の形というのは、基本的には今から四十七年前に出た砂川事件の一審判決、東京地方裁判所の判決が言うように、国連の集団安全保障というものを最低線とすると、こういう立場からしますと、いわゆるアライアンス、軍事的同盟関係というものは憲法の期待する安全保障ではないというふうに私は考えておりますから、その角度からすれば、いわゆる砂川第一審判決の立場に立てば、皆さんとは違うと思いますけれども、日米安保条約の違憲性というものは今なおあると私は考えていますが。  しかしその後、これだけ時間がたちました。そして、日本のそのときの選択について他に選び得る手段、全面講和論その他をここでする時間はありません。しかし、少なくとも八九年のベルリンの壁崩壊以降の冷戦の終結以降の日米安保の役割というのは、私は歴史的使命を終えたと考えております。  それは、つまりNATOと同様の位置にあります。NATOの場合には、ヨーロッパ正面の脅威が基本的になくなったということで基本的にここで改編が迫られましたが、私がちょうど九九年の三月に滞在したときユーゴの空爆が始まりまして、実は空爆開始後十数日でNATOは五十周年を祝う予定だったんでありますけれども、実はヨーロッパの状況は、OSCEのような緩やかな地域的な集団安全保障のシステム、EUのシステムなどがありまして、冷戦型のNATOのようなシステムの存続というものがやっぱり議論されていたわけですね。そういう中で、NATOというのがユーゴの空爆やそれ以降のアフガンなどのコミットの中で存在証明をしていったわけですけど、私は、ヨーロッパにおいては基本的に、冷戦が終わったという傾きの中で、基本的に、集団安全保障とその地域版、地域的な集団安全保障の方向にやっぱり基本は流れていると考えておりまして、NATOは歴史的使命をあの時点で終えていたと思っています。  それに比べ、アジアはまだ冷戦が続いていると。金門島もあるし、基本的に三十八度線もある。そう考えると事情は違うというのはそのとおりでありますけれども、少なくとも、この冷戦型、冷戦期に結ばれてきたこのいわゆる日米軍事協力関係というものをこのままの状態で再定義を繰り返して拡張するのか。この国会でも大きな議論を呼んだ、参議院では審議にならなかったあの六〇年の安保改定のような出来事が再び起こるとは思いませんけれども、少なくとも、それに匹敵するような根本的な議論が少なくともアジアを軸足に置けば私は必要になってくる。つまり、日米安保の再定義ではなくして、基本的には地域的なアジアにおける集団安全保障の形に議論のシフトをする時期に来たというふうに私は考えております。
  15. 川口順子

    ○川口順子君 ありがとうございました。  水島参考人の、冷戦構造アジア地域ではまだ続いているという御認識をしていらっしゃるわけで、私もそこはそうだというふうに思っておりますので、それであればなおのこと、今、日米安保条約の、日米同盟の関係をここで変えなければいけないという理由には乏しいというふうに私は個人的には思っております。  時間が実はもうちょっとあると思ったんですが、五十四分までで、あと四分しかないものですから、もう少し簡単な、もう一つ大事な質問をさせていただきたいと思いますけれども。  シビリアンコントロール、普通の人間がこれを考えたときに、日本が一番今重要視をしなければいけないのはシビリアンコントロールがきちんとしているかどうかということである、その点を踏まえたいと思っているというふうに私は思いますが、この委員会でもシビリアンコントロールについての議論は、基本的に構造が変わっていないのでシビリアンコントロール等の基本的な枠組みというのは以前からあるまま、それで十分であるという議論がなされてきたというふうに思いまして、確かに自衛隊の最高指揮監督権ですとか、防衛出動、治安出動の命令権を総理が持っているということでその点は確保されていると思いますが、シビリアンコントロールについて、もう少しそこに行くまでの防衛庁ないし防衛省の中での枠組みをきちんと整理をする必要があるのではないだろうか。その点について、今の状況で次に何をやるべきか、森本参考人は幾つか具体的に挙げられましたので、その点について、それがシビリアンコントロールとどういう関係にあるのかということを森本参考人にお伺いをしたいと思っています。
  16. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 簡潔にお答えください。森本参考人
  17. 森本敏

    参考人森本敏君) シビリアンコントロールのそもそもの意義や内容についてここで説明を繰り返す必要はないと思いますが、少なくてもシビリアンコントロールというのがなかなか日本語になりにくいのは、いわゆるアメリカのこのシビリアンコントロールのシステムあるいはイギリスのいわゆる議院内閣制の下でのシビリアンコントロールという概念を戦後日本は取り入れて、いわゆる今まで防衛庁及び自衛隊の組織や人事、指揮権についてこの原理原則を取り入れてきたので、我々は今日なおシビリアンコントロールというのをそのまま英語の言葉として使っているわけです。しかしながら、この議論をつぶさにすると、それぞれの人が頭の中で考えている問題意識や定義について、ウエートが少しく違うという点は否定できないと思います。  もちろん、シビリアンコントロールですから、自衛隊、すべての指揮権内閣総理大臣が、国会の負託を受けて内閣を代表する内閣総理大臣がその最高指揮権を持っているということや、自衛隊をいわゆる動かすときの法的な措置をすべて立法府である国会において審議し、承認を得て動かすということであり、私はシビリアンコントロールというものの実体が戦後阻害される、あるいはおかしくなったことはないと思いますし、今後もないと思います。  ただ、冒頭申し上げた点は、しかしながら防衛省にするこの機会シビリアンコントロールの中身をより充実させるためには、そもそも国家行政組織としての防衛省、特に防衛省のいわゆる主任の大臣である防衛大臣並びにその指揮監督下にある内部部局、いわゆる内局というものと、それから内閣総理大臣が持っている自衛隊指揮系統との関係が実際に有事にどのように機能するのかということについて、必ずしも明確にその責任の分担や運用のやり方がきちっと決まっているというわけではなく、そもそも平時の行政組織としてつくられている防衛庁内部部局というものが有事にどのような役割機能を果たすのかと、そしてそれが統合幕僚監部とどういう関係になるのかということは、今後もう少し国民に分かりやすく中身を整理をして、実際に、国家緊急事態でも特に国家有事という国家緊急事態といいますか、国家の最も深刻な危機の場合に、行政組織としての防衛省実力組織である自衛隊とどのような指揮運用関係になるかということがシビリアンコントロールの実体を決めるということなのではないかと考えているわけで、そのような観点から問題を提起したところでございます。  以上でございます。
  18. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) よろしいですか。
  19. 川口順子

    ○川口順子君 ありがとうございました。
  20. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 両参考人、ありがとうございました。  今の川口さんの御質問と若干、伺っておりまして、絡みますけれども、このシビリアンコントロールのところは、森本参考人が指摘をされておりますとおり、今後どうなるかというのは非常に大切なことだというふうに思っております。  特に、シビリアンコントロールという片仮名を使っておりますが、我が国の場合に即して申し上げれば、戦争に至るまでの経緯で、陸軍あるいは海軍と、旧ですね、旧陸軍、海軍が時の政権からコントロールが利かなくなった、あるいはもっと言うと、最終的には時の政権を逆にコントロールするようになって戦争に至ったということだと思いますから、その点の反省を踏まえると、このシビリアンコントロール仕組みはしっかりとつくっていかなければいけないと。これはまあこの法案と直接関係するものでありませんので、そういう観点から、森本参考人、そして、これは水島参考人の御専門外かもしれませんが、今申し上げましたあるべきシビリアンコントロール、つまりは本来のシビリアンコントロールというのは主権者たる国民の下に自衛隊があるということになるんだと思いますから、そういう観点で、どういう形が組織上望ましいのかと。それは有事、平時にかかわらずというふうに申し上げた方がいいかもしれませんが、その観点でちょっとお答えいただければと思います。
  21. 森本敏

    参考人森本敏君) 途中の議論を省略をし結論だけを申し上げると、第一は、内閣総理大臣が事実上自衛隊の最高指揮官として常に機能するためには、いかなる場合に内閣総理大臣が置かれても必要な知識、助言が行われ、判断、決断ができるという機能が整備されていなければならず、そのためには、今この政権の下で議論をしている日本版のNSCなるものの結論がどうなるか分かりませんが、私もメンバーの一人なのですが、どうなるか分かりませんけれども、何らかの最高意思決定機関が総理を含んできちっとあって、それが常に機能するという状態であること、それから総理には、いかなる総理が世界じゅうどこにおられても必要な指揮連絡ができるという状態を維持することです。例えば、今特別機にお乗りになって諸外国においでになるときに、総理大臣に直接電話が通じるようには必ずしもなっていないわけで、そういう状態でシビリアンコントロールができるのかと。私はできないと思います。  それからもう一つは、やっぱり総理に必要ないわゆるアメリカでいう軍事参謀、つまりミリタリーアドバイザーというのが常に補佐官として付いていて、きちっとした軍事的な判断が常に総理が間断なくできるようにシステムが取られていること、そういった総理の機能を常に完璧な状態にするようなシステムはまだまだ不整備だということを先ほどから申し上げているわけです。  もう一つは、総理が実際の自衛隊の最高指揮官としても、その中におられる防衛大臣、内部部局というのはどういう役割を果たすのか、あくまで内閣総理大臣を補佐するのか、内部部局は長官の補佐機関なのか。そうではなく、アメリカ国防省のように、大統領が国防長官を通じて統参議長を指揮できるように、実際ラインの中に全部入れてしまうのが正しいのか。  私は、防衛大臣は常に指揮系統の結節はあるものの、実際の部隊の指揮官との間にきちっと入っているという指揮系統が確立している方がよいと私は思うのですが、それがシビリアンコントロール上よいと、望ましいと思うのですが、しかし、そのために防衛大臣なる人に総理と同じような形式がきちっと整って常に防衛大臣が動ける、ミサイル防衛、ミサイルが飛んできても十分以内に防衛大臣なる人が常に判断が間断なくできるというシステムをどうやって内部部局につくっていくかということですね。そういったシステムは、まだ今の防衛庁防衛省にしてもまだまだ整備が足らないと思いますので、先ほど抽象的ながらそういう基本的な問題を指摘したわけです。  以上でございます。
  22. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) シビリアンコントロールにつきましては、例えば理念としてあるいは理論としてと、もう一つは制度としてのシビリアンコントロールというのがあろうかと思います。  私は、これについては、今おっしゃった点などと重なる点は省略して、あえて日本シビリアンコントロール、すなわちこの国で現実に理解され、実は運用されているポイントを指摘したいと思います。  それは、いわゆるシビリアンが文民と訳す場合と、いわゆるシビルスタッフですね、すなわち文官、すなわち文官統制という側面を実はこの国は強く持っております。その点がよく批判の対象になります。文官スタッフ優位制度とも言います。それがシビリアンコントロールとイコールになり、場合によってはデモクラティックコントロール、民主的統制ともごっちゃになって議論されます。しかし、よく問題視されている部分については、いわゆる文官スタッフ優位制度を改めるべきだと、今回の統合幕僚長の仕組みその他も含めて、そういう傾きが大変強いんです。  しかし、私は保安庁から自衛隊に至る過程の様々な資料、当時の一次資料を読んでおりますと、やはり当時は警察の発想で、警察の言わば官僚たちの統制の論理というのが実は保安庁、自衛隊に色濃く残っておりまして、これが先ほどから申し上げている日本的ないわゆるシビリアンコントロールの理解をつくってきた背景にあろうかと思います。  これを今急激に変えて、アメリカ型のすっきりとした、文字どおり軍政軍令の明確な形にすればこれはいいのかどうか。これは私は甚だ疑問に思っていまして、内局のシステムや参事官制度など、これは問題だとするのは、問題の立て方が例えば制服の側から見て問題だというのは、それは制服の立場、軍事的合理性からすればそうでしょう。しかし、今の仕組みをあえて大きく動かすことによって、例えば文官の中に基本的には背広を着た将軍といいましょうか、発想はほとんど現場の軍人よりももっと好戦的だという人が出ないとも限らない。  考えてみると、制度としては、むしろ私は議会統制、すなわちこの委員会も含めて、私はドイツ連邦議会防衛委員会の持つような機能国会法その他を改正しながらこの委員会が持っていくこと、すなわちドイツの軍隊は議会の軍隊と言われていますように、非常に議会統制がはっきりしましたし、明確ですし、あるいは海外派遣についても議会の創設的な、過半数の同意を要件とする法律も近年制定しておりまして、その意味では、言うところのアメリカ型のシビリアンコントロールばかりではなくして、むしろこの議会統制の新しい形、すなわち本来の民主的統制、軍、実力組織に対する民主的統制の議論をすべきだ。  その観点から、例えば、私、今日、ドイツ連邦議会任命の防衛オンブズマン、これは毎年三月に報告書を出しまして、直接本人からこうやって送ってもらっているわけで、歴代防衛オンブズマン、これは連邦議会議長の横に一つだけ座席があって、そこに議会から選ばれ、いつでも部隊を訪問できる一種の水戸黄門のような、言わば議会派遣の、軍隊の内部問題、いじめ問題から様々な軍人からの訴えに耳を傾けてそれを聞いていく調査権を持ったオンブズマンの報告書があります。ここに軍人たちの海外派遣の悩みや様々な問題が報告書として議会に提出されます。  このような仕組み日本にはない。自衛隊内部の自殺事件はそのまんま防衛庁の報告で終わる。しかし、議会に強いそういう内部に対するオンブズマンのような議会任命、直接の機能があれば、これもかなり変わってくるでしょう。私は、シビリアンコントロールアメリカ型のシステムの採用よりも、むしろ検討すべきはこのような現場の自衛隊員の声などを直接議会に届けられるようなシステムの工夫や検討ではないかと考えております。  ありがとうございました。
  23. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ありがとうございます。  シビリアンコントロールと言ったときに、日本の場合は、御案内のとおり、議院内閣制でありますから、大統領が直接選ばれるアメリカとはおのずと異なると。そういう意味で、今議会がある種関与して統制をしていくということについて、私もそうすべきだというふうに思っておる一人であります。  一方で、議会が関与するときによく議論になるのは、機密がすぐ漏れてしまうということが言われていますが、私はこれ、森本先生の中にもあります機密保護法の制定というのは、特に議会の中で秘密会ができるようにし、そこに参加する議員にその機密保持の縛りを十分付けた上で、議会が関与して、そうしたことに、統制に関与していくというのがあるべき姿ではないかなというふうに思いますが、その点について機密保護法の制定を訴えておられます森本先生、いかが思われますか。
  24. 森本敏

    参考人森本敏君) 私が八〇年代、ワシントンの日本大使館に勤務している間、いつも日本から議員の先生がおいでになる際、国防省を訪問し、国防省で必要なブリーフィングを行う。これはほとんどDIAとCIAの担当官が出てきてブリーフィングを行うのですが、事前に国防省から大使館の方に、今度来る議員にどの程度話したらよいのか、ちょっと率直に聞くということを必ず言ってこられるわけです。で、いや、もう十分お話しくださいとか、ここの分野についてはちょっとセンシティブなので少し程度してくださいとかということを申し上げるわけです。というのは、アメリカ日本を知っている担当者は、全部日本の立法府の方に秘密保護の法的義務が掛かっていないということを知っていて、CIA、DIAのクラシファイドのブリーフィングを行うときに、やっぱりその情報がどういう状態で出ていくかということに彼らは一定の基準がなく非常に迷うわけです。  これは恐ろしく難しい問題で、日米同盟関係を将来危うくする原因の一つとなりかねないと思いますので、私は、議員に一律に機密保護を適用するという考え方は私は取りません。どういう考え方かというと、ある秘密というものに接した者、これは議員であれスタッフであれ企業の人であれ、その秘密というものに接した者が機密の保護の義務を負うということでなければ、だれでもかれでも議員にだけ秘密保護の義務を与えるというのは、これは適切ではないと考えます。  しかし、議員の方々ほとんどはそういう秘密に接する機会が多いわけで、私は末席ながら役人を三十年やってきたのですが、やっぱり役人の場合も、はっきり申し上げると、議員の先生に呼ばれて説明をするときに、どの程度話すかということについては上司の許可を取って説明に来るわけであります。こういうことをしているのでは、本当に立法府が政策の議論をしていただくということにはならないわけで、先生御指摘のように、例えばアメリカにあるような情報特別委員会のようなものを設け、そこの議事録はデリートされた秘密部分であって、その中で行われる審議はすべて秘に関するブリーフィングが行われ政策が議論されるという方法は、その秘密に接する者に秘密を守る義務を規定するということによって初めて可能となるわけで、私のわずかな経験では、ミサイル防衛アメリカ日本の議員に説明しようとしたときに非常に深刻な問題が起きて、アメリカの中でクリアされていないこの秘密を日本国会に持ってきて各政党に説明するということにアメリカは非常にちゅうちょしたわけです。  ということは、本当の技術的な秘密部分を説明を受けずにミサイル防衛の技術的評価をするというのは、本当のところはどだい無理な話でありまして、そういった政策を真に議論していただくためには、これは別に議員だけではなく、議員のスタッフであれ、今申し上げたように、企業の人であれ、すべてその秘密に接した人にその秘密を守る義務を課するという、ある種の機密保護法を設けるということによって秘密公聴会もでき、情報委員会も設置でき、あるいは国会議事録に別のバージョンをつくるということもできるわけで、すべてが公開バージョンという中で政策を議論していただくのには、今はともかく余り大きな問題は起きていませんけれども、将来、国家が非常に緊急事態になったときに、これは国として機能しなくなるということなのではないかということを、念頭にあって先ほど申し上げた次第です。  以上でございます。
  25. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 時間が参りました。  ありがとうございました。
  26. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 続いて、高野博師君。
  27. 高野博師

    ○高野博師君 両参考人の貴重な御意見、ありがとうございます。  まず最初に、森本参考人に幾つかお伺いしたいと思います。特に憲法との関係なんですが、森本参考人の御意見は、幾つかの点については憲法改正を前提としなくてはならない点もあるのかなという気がいたしますが、今回の法改正はあくまでも憲法の枠内でということが大前提になっていると思います。  そこで、一つは、防衛庁設置法自衛隊法の改正によりまして、日本防衛は専守防衛に加えて国際平和協力活動業務等、要するに、海外任務が本来任務になったということによって日本防衛は本質的に変わったんではないか、変わるんではないかというふうに思いますが、これまで専守防衛のためには日本防衛力必要最小限度防衛力を持つと、それが憲法にかなっている、合憲だと、こういうことになっていたかと思いますが。  そこで、この専守防衛に加えて海外任務が本来任務となりますと、今のあるいはこの必要最小限度防衛力では十分ではなくなるんではないか。そこは先生もおっしゃっているように、所要量等については検討すべきだとおっしゃっておりますが、そうしますと、その海外任務等の本来任務も達成するためには人員、装備等は十分ではなくなるということになりますと、必要最小限度という枠が崩れるのではないか、そういう意味では憲法解釈を変えなくてはいけないのか、あるいは憲法を変えなくてはいけないのか、憲法上の問題があるんではないかと思いますが、そこはどうお考えでしょうか。
  28. 森本敏

    参考人森本敏君) 日本憲法が我が国の防衛政策や安全保障政策に課している基本的な制約要因とは、つまるところ二点に要約されるというふうに私は考えています。  一つは、もちろん集団的自衛権を国家の権利としては保有しているが、これを行使することは憲法の解釈上できないとされる制約要因が一つですが、もう一つは、日本領域外において武力の行使に当たる行為といいますか、をすることができないとする制約要因です。そして、この二つの制約要因は幾つかの部分で重複している、オーバーラップしていると思います。全く切り離しではなくて、幾つかの部分で重複している。  専守防衛というのはあくまで日本の持っている防衛力の質を言うのであって、この場合、専守防衛と言っていることの意味は、日本防衛力を使って他国を侵略したり攻撃をするということはできない、あるいは日本国家防衛に専ら専念する防衛力を持つという趣旨でありますけれども、これはPKOに見られるように、日本防衛力を領域の外に、武力の行使に当たらない行動に参加できないかというと決してそういうことではないということは御承知のとおりです。  さて、その場合、この任務を本来任務化するということは、国家防衛力に最小限必要な防衛力があって、新たな任務に必要な防衛力が別途プラスアルファになるという意味では私はないと思います。本来任務というのはどういうことかというと、常に自衛隊が持っておるあらゆる部隊と機能がその本来任務を果たす役割が常にできるように平生から装備も持ち、訓練も行われていて、ある特殊な部隊だけが任務を命ぜられていくというのではなく、平生から錬成訓練を行い、装備を持ち、そのような任務が末端の部隊にまで果たせるようにその能力を高めておくということの趣旨です。  もっとはっきり申し上げると、例えば海外に国際協力任務に出ていっている部隊があって、国家防衛に対して非常に重大な事態が発生し、日本防衛のためにその部隊を帰さないといけないときには、当然のことながらプライオリティーとしてその部隊を戻して国家防衛に任ずる、当たり前のことだと思うんです。当たり前のことだと。  ただ、その本来任務にするというのは、先ほど申し上げたように、いかなる部隊、いかなる隊員といえども、治安出動や国際協力任務のようなものを命ぜられたら、直ちにそれができるように平生から部隊として組織し、訓練をして、装備も持たせるということであって、本来最小限、国家防衛に最小限必要な専守防衛防衛力と追加される任務のために別途の防衛力が要るということでは決してないと思います、ではないと思います。
  29. 高野博師

    ○高野博師君 はい、分かりました。ありがとうございます。  もう一つ集団的自衛権についてでありますが、森本参考人は集団的自衛権を認めるべきだというお考えだと理解をしておりますが、集団的自衛権は当然憲法上の問題をクリアしなくてはいけないと思いますが、それがクリアできたとした場合に、それであっても、その集団的自衛権の行使は限定的、抑制的であるべきだと思います。  そこで、限定的な集団的自衛権の行使を認めるという考え方、これについて森本参考人の御意見を伺いたいと思います。例えば、アジア太平洋あるいは極東に限って集団的自衛権を認める、あるいはPKO活動のときに限って、要するに活動に、そういう限られた活動に限って集団的自衛権を認めるというような考え方についてはどうお考えでしょうか。
  30. 森本敏

    参考人森本敏君) 高野議員の御指摘のとおり、集団的自衛権という問題を正面から取り上げてこれを可能にするためには、憲法問題になるというのは明らかで、私は憲法をきちっと、正攻法で憲法問題を処理をして集団的自衛権を行使できるようにすべきだという考え方、立場を取っています。  ところで、それでは御指摘のように、集団的自衛権を自衛隊が行使できるというときになった場合、自衛隊の集団的自衛権行使というのは当然のことながら領域の外で行うわけですから、領域の中で集団的自衛権というのは原則ないわけですから、領域の外で自衛隊が行う活動に何らかの制約要因か歯止めを付けるべきだという考え方を私は取らないんです。取らないんです。どうしてかというと、いかなる国の軍隊といえども、どこか活動すべき領域だとか地域というようなものが制約をされている部隊があるのかというと、私は国内法においてそういう縛りが掛かっている軍隊はないと思います。  ところが、例えば北大西洋条約はその第五条で、北米大陸及び欧州における北大西洋条約加盟国の一若しくは二以上の国に対する武力攻撃があった場合、すべての国に対する攻撃とみなして、これはみなし行為なんですが、みなして集団防衛をするという集団防衛条約になっているわけで、あくまで北大西洋条約が発動するのは、条約をそのまま素直に読めば、北米及び欧州のNATO国に対する武力攻撃であって、例えばユーゴ紛争のように、ユーゴの中でAとBの部族が争うということは、これは北大西洋条約加盟国に対する武力攻撃が明示的にあるわけではないので、北大西洋条約をそのまま発動してNATO軍を正規に出すということができないわけです。こういう場合には、したがってNATO条約、いわゆる北大西洋条約に基づいてNATOが活動できる領域というのは制約はあるわけですけれども、例えばいかなる、アメリカ軍であれ中国軍であれロシア軍であれ、世界じゅうのいかなるところにでも出れるというのが原則です。私は、集団的自衛権を行使した場合に、日本自衛隊をどこどこまでは行っていいとか、どこまでは行って悪いとかというような制約要因を掛けるべきではないと思います。  ただ、一つだけ、我が国が、その場合、将来一般法という形でこの問題が議論される際、どうしても入れていただきたいなと思うファクターというか要因というのは、我が国のクリティカルな国益を追求するに必要な、もうそれしかないという我が国のそれもクリティカルな国益を、その国益を定義しないといけないことは当然のことながら、国益を重視して、その国益を追求するところであれば、たとえそれがどこであっても出るべきだし、あるいは我が国の周辺であっても国益でないところには出るべきではないし、あくまで判断の基準は地域ではなく国益であるべきだという考え方を取っていますので、地理的範囲に基づいてこの集団的自衛権行使に制約要因を掛けることには反対です。
  31. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございます。  水島参考人に、時間が短くなって恐縮なんですが、先ほどドイツのお話がありまして、ドイツが海外派遣ということ、その前に基本法を改正、これはもう冷戦時代ですが、基本法を改正したと。それはもう当然ソ連の、当時のソ連の脅威があったということがありまして、基本法を変えて軍隊を持つ、あるいは徴兵制をつくったというようなことがありましたが、冷戦後、この地理的概念を拡大してきたと、そして海外派遣をしてきたと。しかし、時間軸としては先制予防的な時間軸、これは抑制的であると。  日本が同じようにドイツのようなやり方をしていいのかということは、十分反省しながら、検証しながらやるべきだというお話だったかと思いますが、ドイツもやっぱりいろいろ試行錯誤しながら、冷戦後の国際情勢、国際環境が変わってきたと、テロとか民族紛争とか地域紛争とか、あるいは様々な問題に対処するために、こういうドイツとしての考え方、あるいは軍隊の派遣をやってきたと思うんですが、これは、日本は今までのように海外派遣もしないということが通用するのかどうか、国際社会の中で、これは非常に難しいんだろうと思うんですね。したがって、国際情勢が大きく変わっているという中での国際協力は、日本もやっぱりやる必要があるんではないかと思いますが、その辺についてはどうお考えか、お伺いしたいと思います。  あわせて、防衛庁を省に昇格するということは、我が国の平和主義、当然憲法九条からくる平和主義とありますが、この平和主義矛盾しないのかどうか、理念的な問題でありますが、法的というよりも、問題ないのかどうか、それについての御意見をお伺いしたいと思います。
  32. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 水島参考人、時間がなくなっておりますので、二分程度でよろしく。
  33. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) はい、分かっています。二分以内ですね。  だから、二つ同時に言うと、後者からいきますと、理念的にも矛盾しますし、憲法上これはやはり防衛庁設置の段階から私は違憲と考えていますから、そういうことです。  それから、一点目につきましては、国際協力の形については、やはり日本特有の技術とか医療とか教育とか物、一番日本独自の、いわゆる得意とする分野でもっと発展させるべきだと考えています。
  34. 高野博師

    ○高野博師君 終わります。ありがとうございました。
  35. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 高野博師君の質疑は終了しました。  緒方靖夫君。
  36. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  両先生、本当に今日はありがとうございました。共通して両先生にお伺いしたいと思いますが、この法案は、自衛隊が本来任務として中東を含めてアジア太平洋地域に活動を展開する、そういう仕組みをつくるものだと思うんですけれども、その点で、日米同盟軍事的な分野においてこれがどのような変化をもたらすのか、それについてお伺いいたします。
  37. 森本敏

    参考人森本敏君) 日米同盟根拠とする日米安保条約というものの、御承知のとおり、その五条と六条を軸としてこの条約はできているのですが、従来から日米同盟に基づく活動というのは、安保条約第六条に言う極東の範囲をどう考えるかということで今まで従来からずっと議論があったところです。  ただ、私はこの問題をどう考えているかというと、いかなる条約であれ、アメリカは同盟条約を使って前方展開戦略を進め、その条約に基づいて同盟国に駐留することの意義は、アメリカの持っているグローバルな戦略の基礎として条約を位置付けているのであって、ある特定の条約の条項に基づいて活動できる範囲をこの条約の中で制約しているという考え方にはアメリカは立っていないんじゃないかと。もう、もっとはっきり申し上げましょう。安保条約六条に基づく日米地位協定安保条約第六条及び日米地位協定に基づいて合衆国軍隊が日本に駐留することの意味が正に極東及び日本の平和と安全のためにと書いてありますけれども、それでは極東以外に出れないかというと、アメリカは元々そういう考え方には立っていないと私は思っています。  これは、政府の解釈、政府説明は必ずしも私の言ったとおりにはなっていないですけれども、私は長くアメリカ、軍というものを見ていてそうは考えていないなと。つまり、在日米軍基地を使って、南極であれ北極であれ、必要だと思うところはいかなるところへでも活動できるというふうにそもそも同盟条約を考えているので、したがって日米同盟安保条約に基づく日米同盟に基づいて、日本が中東であれアジアであれ、必要な活動をするときに、合衆国軍隊がまず在日米軍基地を使って活動できないかというと、そういうことではないと。  一方、それは安保条約の解釈の問題であって、日本が中東やアジア活動を拡大するために正にこの改正案があるのではないかという議論については、それは私はこれから行われる、今後行われる国際平和協力活動の拡大といいますか、に伴って、日本が例えば一般法を今後規定し、その一般法の中で活動根拠として国連安保理決議に基づくものに絞るか、あるいはそれ以外の、国連安保理決議はないが我が国が国益に照らして必要だと考える国際平和協力日本として必要な参加をし、協力をするというところまで認めるかによって活動の範囲等内容が変わっていくと思います。  したがって、防衛庁を省にするということで自動的に日本国際協力活動が広がるという考え方は私は取らないし、また実際はそうはなっていないと思うんです。どのような任務に、どのような活動内容をもって、いかなる根拠をもって日本自衛隊を今後国際協力活動に展開させるかということについては別途議論をする機会が出るといいますか、機会があると思います。今のところはそれぞれ、イラク特別措置法であれ、あるいはテロ特措法であれ、必要な法律国会審議されて、その法律に基づいて基本計画ができて活動しているわけですけれども、今後、そのような活動が行われる一般的な基準一般法あるいは恒久法という形で制定するときに、その法律の中でこの活動を、先ほど申し上げたように、いかなる根拠に基づいていかなる活動をどのようなところでやるのかということを審議する際出てくるのであって、省に移行するということによって自動的にこのような問題が出るのではない、かように考えているわけです。
  38. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) ノルウェーの平和学者のヨハン・ガルトゥングという人が非常に面白い言葉を言っていまして、NATOの東方拡大とANPOの西方拡大というふうに書いてあったんです。最初、私、ANPOって何だろうって、よくよく読んだら安保の略だったんですね。ガルトゥング教授はよく日本に来ていますので、安保をANPOと書きました。つまり、NATOはどんどん東に拡大していくと。つまり、既にもう旧ソビエト圏の諸国も介入している。一方、安保は西に介入している。ちょうど喜望峰岬ぐらいで世界がちょうど分割されると。  つまり、アメリカは、ニクソンのときにベトナムの死体の皮膚の色を変えると言ったように、やはり同盟国に派兵を要求してきました。つまり、世界をいろんな意味で日本とEU諸国、ヨーロッパ、NATO諸国で言わば分担管理してもらおうという発想があって、それが今もお話に出ているようなグローバルな発想からすれば、個々の同盟条約の個々の条文には恐らくアメリカはこだわっていないだろうというのは私も同感です。であるがゆえに、日本説明と対アメリカ的理解の間に大きな溝が生まれた場合、そこに大きな日本にとっての問題が起こるわけです。  例えば、先ほどPKOの活動で限定的集団的自衛権がないのかという御質問があったように、いろんな場面で例えば自衛隊が出ていくと。そういった場面の中で、日本の方の事情や出ていく隊員の意識、日本国民の理解の程度、議会の同意の内容と、現地でアメリカがそれを言わば活用するときの間に大きな差ができた場合、そこで犠牲になるのは何なのかということになります。現地の隊員の命であり、同時に日本のやっぱり見識だろうと思うんです。  その意味からしますと、私は海外派遣というものの中に、国連の集団安全保障の枠組みの中における仕組みというところの日米関係の軍事協力関係で出てくるものと、例えば緊急の災害派遣のような国際的緊急援助活動と、すべてそれを正確に仕分する、これは非常に困難ですけれどもやらなきゃならない。それをかなり専門家の判断にゆだねると同時に、この国の場合は非常にアメリカとの対外関係が重視されている。  そこで、例えば出さないと日本は孤立するとか、湾岸戦争のとき参加しなかったことがトラウマだという言い方がありますが、日本が別の例えば違った道をやれば恐らく世界への影響は大分違ったんだろうということは、例えばあの二〇〇三年の三月二十日のイラク戦争直前、ドイツとフランスがつまりノーを言った、あれで大分形変わりましたよね。やっぱり、ドイツといわゆるフランスのノーというのが今アメリカのやっぱり反省の中にも重要な僕は素材になってくると思うんです。あのとき反対しなかった、なぜあのとき反対しなかったかと。  そういうふうにあるように、やはりこれから日本が海外派遣法を、実質機能的にこういう形で組み込まれておりますから、その都度法律改定しなくとも、場合によってはこれ本体業務化という解釈、運用で広がる余地は私はあると見ていまして、その点では、アメリカの要望だから今回は特別だという形の、例えば国会決議で済ますとか、いろんな形で日本が海外的な武力行使に実質的にコミットするおそれなしとしない。  といいますのは、集団的自衛権というのは、かつてのようなヨーロッパ正面で野戦軍が向き合っているような戦争状態はもはや考えられない。各国ともに小規模、機能的、機動的な緊急展開部隊を保有しています。日本も中央即応集団というのを既に保有しようとしています。この機能運用思想というのは、文字どおり野戦軍同士のぶつかり合いよりは、緊急展開して一気に問題解決すれば戻るような言わば瞬発力ですよね。こういうものというのは、武力による威嚇、行使に当たらないようにと法律に書いてあったとしても、その部隊が展開して実質武力行使を行う米軍の後方を担任して、例えば今イラクでやっているような輸送にかかわっただけで既に全体として見れば機能的に集団的自衛権の行使に踏み込んでいると私は考えておりまして、その意味では言葉の問題ではなく機能的な概念の運用は既にもう始まっていると見ていまして、その点からは今回の法案はむしろそれを実質化するもの。そうすれば、憲法で、先ほど言ったように、本来しっかりとあいまいな形にしないで認めるべきだという森本さんと微妙に一致してしまいますけれども、認識論で見れば正にそのようにすべき事柄が実質的にもう始まっていると。そのことをどう見るかというのは評価は分かれるところかと思います。
  39. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 森本先生にお伺いします。  イラクで空自が今も活動を続けておりますけれども、これはアメリカの側からは非常に高い評価と称賛が寄せられている、自分たちの作戦活動がこれなしには展開できないという。つまりそういう緊密な協力軍事協力関係ですね、これはちょっと振り返ってみて、どういう、どの辺がエポックになってここまで来ているのかと、その点について先生の御見解をお伺いいたします。
  40. 森本敏

    参考人森本敏君) その前に、イラク戦争というのは、今からアメリカがどのような政策見直しを行うかということ、世界的に注目されていて、ISG、すなわちイラク・スタディーグループ、俗称ベーカー・ハミルトン・パネルの報告書をどこまで政府が進めるかということに注目が集まっているんですが、私は、二〇〇三年三月にアメリカがいわゆるイラク戦争というものを始めた当初の作戦目的、そして趣旨には、歴史的に見て誤ったところはないといいますか、おおむね正しいと思っています。  何が間違ったかというと、その後の兵力の展開、投入のやり方や、部隊の戦術や全体的な戦略がやはり相当にミスマネジメントが多く、今日振り返って三年半の戦闘を見るときに、どこか重要な、今おっしゃったようなエポックがあって、そのときに戦術や戦略や兵力の投入、展開のやり方をもう少し柔軟に変えていく必要があったのではないかと思って、トータルで今我々レビューを、分析をしているわけです。まだ、三年半の戦争、まだ続いていますので、途中でその戦争を総括するというのはなかなか難しいのですけれども、しかしアメリカの中では、恐らく二〇〇八年の大統領選挙の前後に、このイラク戦争というのがアメリカにとって何であったかということが非常にトータルに見直しが行われるというふうに私は考えているわけです。  その中で、日本アメリカの行っているイラク作戦に支持をし、支持表明をし、自衛隊を送っていくという決断をしたことは私は間違ってはいないし、そしてそのことによって日本が今までにないきちっとした国際協力、国際貢献を行い、そして展開した場所が大変適切であったこともあり、あるいは行った人の努力もあり、一人の犠牲も出さずに、結果として陸上自衛隊の部隊をああいう形で撤退できたことも、後から振り返ると、日本自衛隊のいろいろな国際慣習や戦術に習熟する技術を習得するという意味でもう大変大きなアセットをつくったのではないかと考えています。  しかし、今もおっしゃったように、航空自衛隊をあのような状態で投入さしてかつそれを残したそのエポックというのは、私はその陸上自衛隊を当初は動かすためにどうしても航空自衛隊の航空輸送の部隊がある程度必要で、したがって、アメリカ空軍と一緒に多国籍軍活動をするだけでは必ずしもなく、日本の陸上自衛隊が必要な物資を常に柔軟に手に入れるために航空自衛隊を一緒に活動させるということが当初の段階、つまり作戦計画を作る当初の段階で必要だったんだろうと思います。  ただ、陸上自衛隊を引かざるを得ないときに、航空自衛隊の安全を維持しながらあの部隊を残すというのは大変大きな政治的決断であったと思いますが、私はむしろこの航空自衛隊の部隊そのものを来年七月三十一日、イラク特別措置法がターミネートになるというか、時期満了になるまでの間、来年の通常国会でどのような、法律上これをどのように処理をしていくのかということは、正にそのマーリキー政権が治安維持の責任をどこまでイラク治安軍を使って実施できるのかという能力とアメリカの全体戦略に懸かっているのであって、まだ今の段階で最終的な判断をするのは少し早いのではないかというふうに考えられます。
  41. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 緒方君の質疑時間はもうほとんどなくなっております。
  42. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 一問だけですが、水島先生にお伺いしたいのは、日本の国の在り方としてイラクの派兵が持った意味ですね、時間なくて申し訳ありませんけれども、一言お伺いしたいと思います。
  43. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 質問時間は終了しておりますが、水島参考人、どうぞ。
  44. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) じゃ、十秒で。  私は、やはりイラクの派兵は今の森本さんと正反対の評価をしております。つまり、憲法を破る重大な、やはり戦後五十年に匹敵する、のやっぱり反省のない、に反する決断だと見ています。  以上です。
  45. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 ありがとうございました。
  46. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 社民党の大田でございます。  両先生とも、大変御苦労さまでございます。  森本参考人に伺いたいんですけれども、先ほど日米安保条約重要性について御指摘になったわけですが、日本国の防衛と言う場合、例えば、たしか二〇〇〇年だったと思いますけれども、細川元総理がフォーリン・アフェアーズに論文発表をされて、現在の日米安保条約というものを数年以内に変えて、日米平和友好条約に変えて在日米軍を段階的に撤退させた方がいいと、二〇〇一年に思いやり予算の期限が来るからという趣旨のことで、日本一国の財政的な負担が余りにも大き過ぎるという趣旨の論文を書いておられたわけですね。そうすると、私なんかはそれに賛成するわけなんですが。  どうして賛成するかといいますと、アメリカのCATO研究所がほぼ時期を同じくしてアメリカ議会に対して同じ趣旨のこと、つまり在日米軍を六年以内に撤退させて、その二年後に、アメリカ議会は、アメリカ政府日本政府に対して現在の、現行の日米安保条約を廃棄して日米平和友好条約をつくるということを通告すべきだという勧告をしているわけなんですね。そうしますと、日米平和友好条約をつくることによって日本防衛というのは不可能になるんですか。その点についての御見解をお聞かせください。
  47. 森本敏

    参考人森本敏君) 私もあの論文を読んだんですが、つぶさには記憶してないのですけれども、大田先生のおっしゃったようには私はならないといいますか、ならないと思うんです。  といいますのは、むしろアメリカアジア太平洋における戦略というのは、ゆっくりとアメリカアジアにおける負担を軽減していくために、軽減するということが重要なんですが、軽減していくためにどのような新しい戦略体制を取ることが最もアメリカの国益を守るに効率的なポスチャー、つまり軍事体制かということを念頭に置くと、やはり将来、中国と台湾の関係、そして朝鮮半島の統一というプロセスを念頭に置いた場合に、いずれにせよ中国が冷戦時代のように中ロの国境からその戦略的な重点をシフトさせ南の海域に下りてきて、我々のようないわゆる自由主義経済を取っている諸国の国益を損なったり、あるいは我々にとってリスクになるような状況が将来起こる。そういうことを考えると、今回の米軍再編のプロセスの中で、グアムにいったんぐっとこう下がって、戦略的な縦深性を持ったグアム戦略基地に拡充し、テニアンやその他ミクロネシア周辺を新しい訓練場にし、そして日本、特に日本の西半分並びに沖縄を前線基地、前線部隊に置いて東アジアの新しい戦略体制を取ることができれば少し兵力を下げることができ、いずれは在韓米軍の規模を減らし、しかし日本の西半分並びに沖縄の戦略的重要性はますます大きくなって、しかし大部隊をそこに置く必要はなく、つまりもう少し南側にぐっと縦深を下げた形でアメリカが新しい体制を取るということになるんだろうと思います、アメリカが考えている図は。  そのときに、先ほど申し上げたように、日本防衛力というのはどういう状態にあるかというと、そのようなアメリカの、つまり新しい軍事体制を全体として見ながら、日本が自らの国益を守るに必要な独自の対処能力を日本としてきちっと持っておかないと、今までの冷戦時代のように、例えば日本海で何かあったからといって米軍日本海の中に入っていくということを当然視して日本国家防衛を賄うということはできそうにない。したがって、日本周辺については少なくとも単独で日本防衛する能力を確実に整備をし、そのためには少し、周辺海域、周辺地域において活動できる防衛力、独自防衛力を少し整備しないといけないということになり、そのことによって、つまり将来、日米がもう少し広い範囲のアジア太平洋の同盟国、同盟関係として、例えば日米同盟を軸に海洋の国々をある種の緩やかな集団体制の中に包含していくという方向だって将来あり得るというふうに思います。それはもっと将来のことですけれども。  今やるべきことは、そういうことよりも、米軍再編のポスチャーをどうやって日本として支えるか、それから彼らが少し下がっていく分を日本日本防衛力を整備することによってどうやって強化していくか、その二つが当面これから十年ぐらいの課題になるのではないかと、かように考えているわけです。
  48. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 水島参考人にお願いいたします。  先生は大変沖縄問題に詳しくしておられるわけですが、今回の再編問題と沖縄の基地のありようについてどのようにお考えでしょうか。
  49. 水島朝穂

    参考人水島朝穂君) 私は、沖縄の正に基地問題というのはやはり普天間の移設問題に特化して見えるわけですけれども、機能的に沖縄全体が、先ほど申し上げたような、日本軍事的なある種のコミットメントの拡大に、正に重要な拠点になるだろうと。特にその意味で名護沖に造られるであろうあのV字滑走路の意味はむしろ質的な意味を私は持ってくると思うんです。アメリカから見ても基本的にあの活用法というのはアジアに最も近い、機能的に活用すれば海兵隊の緊急展開部隊の文字どおり拠点になります。私は、新たな基地の建設、冷戦後新たな基地の建設と私は考えています。単なる移転にとどまらない。そういう点で考えると、私は、北東アジアというのは今、周辺諸国、北朝鮮とは拉致問題、ロシアとは北方領土問題、漁船銃撃問題、中国とは尖閣列島問題、韓国では竹島問題、つまり周辺、全周にわたって実はトラブル抱えています。  沖縄というのは実は琉球王朝の時代から武力を使わないで交渉で周辺諸国とうまくやってきましたが、日本に言わば吸収されて以降というのは文字どおり基地になってきました。そういう観点からしますと、私はこの安全保障環境をこの北東アジアにどのようにやっぱり展開していくかというときに、今お話しのようなアメリカ日本軍事的関係を軸に沖縄や様々な場面の調整を図るんじゃなくて、発想を転換して、このような北東アジア周辺諸国との間で基本的にやはり平和的な協力関係、安全保障環境でいえば、先ほど申し上げた地域的集団安全保障の関係をつくっていくべきだと思いまして、その緩やかな中で沖縄の別の果たす役割というのが出てくるんじゃないかと私は考えています。それは大田知事時代に出したアクションプログラムの中に出てくる地理的な位置からも私は言えるのではないかと思っております。
  50. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 森本先生にもう一遍お願いいたしますが、先ほど在沖海兵隊を、米海兵隊をグアムに移すという関連のお話がございまして、実は今回の再編で八千人の海兵隊を沖縄からグアムに移すことが決まっているわけなんですが、御承知のように、普天間飛行場というのは非常に危険な場所なんですね。ですから、その危険を未然に防ぐという意味でも、現在普天間にいる三千人足らずの海兵隊をグアムに移すことが決定している八千人の中に含めて移すべきだと。そうすると、新しい基地を造る必要もないし、それから人命の危険性というものも未然に防ぐことができるということで絶えず言っているわけなんですが、そのわずか三千人足らずのヘリ部隊をグアムに移すことによって日本安全保障という問題で何か大きな影響があるとお考えでしょうか。
  51. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 森本参考人、手短にお願いします。
  52. 森本敏

    参考人森本敏君) 普天間に現在いる部隊は、もう大田議員に説明する必要は全くないですけれども、三つの大きな機能があって、そのうちのヘリの部隊というのは、つまり常に海兵連隊と一緒になって揚陸艦に乗って作戦に従事するということですから、はっきり申し上げると切り離すことができないということだと思うんです。だから、ヘリの部隊だけを離してグアムに移すということはできず、本来であれば、移すのであれば、全部を移さないといけないということだと思うんですね。  だから、ヘリの部隊がなぜいるかというと、当然のことながらヘリの運用というのは、これから今までの海兵隊の運用と大分変わってくると思いますけれども、にもかかわらず海兵連隊と常に同じようなところ、余り遠くないところ、ヘリの航続距離からして大体百キロメートル以内の範囲の中に置いておかないと作戦運用上不合理な面が出るということなので、普天間の部隊を全部グアムに持っていくということはできないんだろうと思います。  今、御承知のとおり、グアムに移そうとしているのは司令部と後方部隊なんですが、戦闘部隊を前に出して、常に、後方部隊と司令部というのは戦闘能力は基本的にありませんので、したがって、作戦の縦深性を取って後ろにぐっとこうやって下げて、つまり戦闘部隊だけを前に出して後ろから運用するという構想になっているのではないかというふうに私は考えているわけです。
  53. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 若干申し上げますと、実は再編問題の担当者として太平洋軍のリーフ副司令官がおりますけれども、この方が九月十一日に、今の普天間のヘリ部隊とそれから有翼機八十九機をグアムに移しても構わないという趣旨の発言をしているわけなんですよ。つまり、アメリカ側はそういうことで、いささかも防衛上で軍事的に問題にならないと考えている人たちも相当いるわけなんですがね。  その辺はもう一度、本当にその海兵隊を全部移すといって、一万六千人近くいて八千人移るわけですから、あとは八千人残るわけですから、ですから、普天間は人命の事故が起こりやすい非常に可能性が高いものですから、それを未然に防ぐ意味では普天間を移した方が一番いいという発想は間違っているんですか。
  54. 森本敏

    参考人森本敏君) これは部隊の運用の基本的な構想なので、ヘリの部隊をああいう千二、三百キロですか、遠くのところに移してしまうとどういうことになるかというと、海兵連隊を揚陸艦だったら揚陸艦に乗せて、そしてグアムにまで持っていって、それからヘリ部隊を乗せるか、ヘリ部隊を先に乗せてから沖縄に戻って海兵隊の部隊を乗せて、つまり両方一緒にならなければ、ばらばらでは作戦ができないわけですから、同じ揚陸艦の中に基本的には両方の部隊が乗って初めて機能をするという作戦構想が維持されている限り、双方の部隊を別々のところに、しかも別々のところといっても千キロメートル以上も離して、艦艇で行くと二日ないし三日掛かるようなところまで離してしまうということは、やっぱり部隊を運用する方としては便利だというふうに私は思いません。  したがって、どういうつもりがあってそういう発言があったか私にはよく分かりませんが、基本的にはこの問題は日本側の要望を受けた形でアメリカが検討し、結論を出したということなんであって、まあ正直言ってイニシアチブは日本側が取ったということではないかと思います。
  55. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 大田昌秀君、時間がほとんどありません。
  56. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 あと一問だけお願いします。  先ほど来、日米安保条約というものの重要性について強調なさっておられるわけなんですが、もしそれが本当に重要だとすれば、どうして沖縄だけに過重なしわ寄せをするようなことになるんですか。なぜ日本国民は自らの平和と安全、独立を守るためというならば、それに必要な軍事基地を自らのところに容認しようとしないんですか。
  57. 森本敏

    参考人森本敏君) これは、沖縄という東アジアにおける戦略的に重要な位置にあるこの島の持っている本当に基本的な悩みでありジレンマであり、我々もこの問題についてすぱっと申し上げるようなそういった明快な論理を持ってはいないのですが、しかし今回の日米協議、米軍再編に関する三年余にわたる日米協議を通じて、できるだけ沖縄の負担を軽くするために随分と沖縄の持っている機能を本土の一部に引き下げ、今回は普天間のヘリの部隊の輸送機の一部を岩国に移したり、あるいは空軍の訓練を本土の空軍基地に移したり、航空自衛隊の部隊に移したりするという措置を随分とってきたし、それからまた多くの基地施設を返還するということもやってきたわけです。  しかし、どう考えてもこの北東アジアの状態の中で、朝鮮半島と中国、台湾の関係がどのような形になるのかということを見極め、その後、中国というものが東シナ海、南シナ海にどのようなかかわり方を持ってくるのかということを将来展望するとき、沖縄の持っている戦略的な価値が私は下がるとは思いません。  したがって、いろいろな努力をしながら負担をできるだけ軽減しつつ、沖縄にその一部の負担を担っていただくためどのような努力があり得るのかということを随分今まで苦労してきたわけで、そこは私も明快な回答を持っていないのです。これはもうずっと日本国が持ち続ける一つの悩み、ジレンマというものなのではないかというふうに私は考えています。
  58. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 終わります。ありがとうございました。
  59. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 大田昌秀君の質疑時間は終了しました。  参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言御礼を申し上げます。  両参考人には、長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼申し上げます。  それでは、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  60. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤道夫君が委員辞任され、その補欠として藤末健三君が選任されました。     ─────────────
  61. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣法制局第二部長横畠裕介君外十一名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  63. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 休憩前に引き続き、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 民主党・新緑風会の犬塚直史でございます。  今日は防衛庁の省移行法案につきまして質疑をさせていただきます。  御存じのように、この防衛庁設置法の一部を改正する法律案は関連法案が八十三本ございまして、その中の自衛隊法を今手元に、ここにあるんですが、専守防衛自衛隊を表に出すと。旧自衛隊法の第三条、自衛隊任務のところは、正に自衛隊は、我が国の平和と独立を守り云々と、要は専守防衛であると。そして、もう一つは、公共の秩序の維持に当たると、こう書いてあるわけでございますが、新自衛隊法の三条二項の二を見ますと、やっぱりこれを外に出すときにはどういう考え方で出すのかということが書いてあるわけです。二つ内容的にございまして、国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与と、そしてもう一つが、その他の国際協力の推進と、この二つが書いてあるわけなんですね。  私は、今日、一時間の時間をいただいているんですが、一番聞きたいところは、まず申し上げておきますが、一番聞きたいのは、要は日本自衛隊を表に出すときに、国連の安保理決議なしでも表に出すのかということ、もしそうであれば一体どういう認識あるいは基準に基づいて表に出すのかというところを一番聞きたいわけなんでございます。  そこで、まず、端的に防衛庁長官に伺いますが、日本は専守防衛自衛隊を安保理決議なしに表に出すのかどうか、ここをお答えください。
  65. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) これまでも海外に行った例として、国連決議がないので一番はっきりしているのは、国際緊急援助隊法に基づいて、災害等が起きたときに、例の津波とかその他もそうですけれども、そういうときに行っている。これはもう国連決議がなくて行っているわけであります。  それ以外のことで行くことというのはほとんどあんまりありませんが、法律で認められている場合は行けることになっておりまして、そして、その法律国会で通った法律でございますが、それ以外では、この間からちょっと議論がございましたけれども、いわゆるペルシャ湾に機雷の除去のために行った、これは、我が国の船舶の航行の安全を確保するために、機雷が浮遊していると危ないということで出掛けていったという、そういうことでございますから、原則としては、そのように国際的に寄与する等のことが明らかな場合を除けば、国連決議、その他特別の法律に基づいてやると。まあどちらかだと思いますけれども、特別の法律の場合もやっぱり国連決議が原則としてその背景にはあるというふうに理解していいんじゃないでしょうか。
  66. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 国連決議がその背景にあるということを原則とするという、その辺りを今日は一番お伺いしたいんですけれども、後方支援だろうが武力の行使をしないという前提で行く派遣だろうが、やっぱりその大本になる参加をする作戦自体に正当性がない限りは、やっぱり送られる自衛隊が誇りと自信を持って国際協力活動に従事するということにならないんではないかなというふうに思うわけです。  それは、本会議でも私は、言い方が失礼かと思ったんですが、ガソリンスタンドみたいなことを言ったわけなんですが、要するに、協力をする本来の作戦、全体の作戦自体が、これにもし目をつぶって仮に国連の安保理決議なしに武力行使をするという、そういう作戦に参加をした場合、後方支援をするからいいんだと、あるいは武力行使をしないからいいんだということでは、やっぱりガソリンをついだ車がどういうルール違反を行ってもいいんだということにつながりかねないと。やっぱり後方支援をする、あるいは参加する作戦に正当性がなければ自衛隊員の方が本当にこれはガソリンスタンドになってしまう。せっかく大変な労働条件の下で一生懸命やっている方に対して、私は逆に自信と誇りを持てないと。  大本の作戦の正当性をしっかり見ていかなきゃいけないというところは、そのとおりと考えてよろしいんでしょうか。防衛庁長官、いかがですか。
  67. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) やはり国際社会の平和と安定に寄与するという、そういう目的がなければ自衛隊員も誇りがわいてこないわけでございますから、そういう国際社会の安定、平和と安定に寄与するということになると、これはやっぱり背後に国連決議があるというのがごく一般的なことじゃないかと思います。  したがいまして、今、インド洋における給油活動についても言われましたけれども、あれもそういう意味では直接きちっとしたものになっているかどうかは別として、数多くのやっぱり国連決議が背景にはあったわけでございまして、そういう意味では、今でこそそういうふうに言われますけれども、あのときあの法律を作って出すことについては国内でも、中身についていろいろ議論はありました、おたくの党も含めてですね。けど、出すことについてはいいんじゃないかというのが圧倒的な声でしたから、だから、そういう点では出掛ける方も結構誇りを持って出ていったと思っております。
  68. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 アフガニスタンに対する空爆、ここの時点までは一応、国連に対するアメリカの報告もあって自衛権の行使だということで国連の枠内で一応認められている行為ですので、ここまでは今日は問題に私は余りしたくないんですね。  今日は、やっぱり、イラクに対する明示的な国連決議がないにもかかわらず行っているこの作戦について今日は議論をしていきたいと思うんですが、まず、その前に、先週の議論のちょっと確認をさせていただきたいんですが、これは浅野大臣にお答えをいただいたのをもう一度確認したいんですけど、国連憲章上で武力行使の違法性が阻却されるのは二つしかないと、一つ自衛権の行使と憲章七章下での集団安全保障、この二つだけだと、これはこれでよろしいんでしょうか。
  69. 浅野勝人

    ○副大臣浅野勝人君) そのとおりでございます。
  70. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 そして、二〇〇三年の米軍によるイラク進攻は憲章七章下での集団安全保障だと、これもこのとおりでよろしいんですか。
  71. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 集団安全保障という言葉は講学上の概念でございますので、それを集団安全保障かどうかということについては種々御意見があろうかと思いますけれども、今副大臣が御答弁申し上げましたように、安保理の、七章下の安保理の決定がある場合に武力行使が例外的に認められる場合があると、その場合に当たるかという御質問であれば、累次御答弁をしておりますとおり、そのとおりでございます。
  72. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 これは平成十五年の外交防衛委員会で同僚の榛葉委員の質問に答えて、当時の林景一国際法局長が言っている内容なんですが、安保理決議の一四四一号そのものにおきまして、決議そのものの中に武力行使を容認する権限を与えるといった規定がないというのは御指摘のとおりでございますという発言があるんですけど、これは今でもそのとおりと考えてよろしいんですか。
  73. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) この対イラク軍事行動の法的根拠につきまして、いろいろ累次、国会、いろいろな場所で政府から御答弁を申し上げております。  ちょっと繰り返しになるかとも存じますが、従来から政府から御答弁申し上げておりますことは、日本政府が勝手にと申しますか、恣意的に言っていることではございませんで、例えば、二〇〇三年三月十七日にイギリスの法務総裁の見解というのが出ているわけでございます。これは、日本でいえば内閣法制局長官に当たるような方でございますけれども、この方の見解は基本的に日本政府の見解と一致しております。  これ全部読みますとちょっと長くなりますので、ポイントだけをかいつまんで御説明をさせていただきたいと思いますが、まずイラクに対する武力を行使するための権限は決議六七八、六八七及び一四四一の複合された効果により存在すると、こう言っております。  まず、決議六七八、これはいわゆる第一次湾岸戦争と言われたときの決議でございますが、安全保障理事会は、イラクをクウェートから排除するため及び同地域に平和と安全を回復するためイラクに対する武力行使の権限を付与したと。次に、決議六八七でございますが、これはいわゆる停戦決議と言われておりますが、決議六七八の下の武力行使の権限を停止したが、これを終了させたわけではないと。次でございますが、決議六八七の重要な違反は、決議六七八の下での武力行使の権限を復活させると。次に、決議一四四一、これは第二次湾岸危機のときの決議でございますけれども、安全保障理事会は、イラクが決議六八七の下で負っている武装解除の義務を完全に履行はしていないため、イラクは決議六八七の重大な違反をこれまでも犯した、また依然として犯していることを決定したと。で、この決議一四四一は、イラクに対しこの義務を履行する最後の機会を与え、これを履行しない場合の深刻な結果につきイラクに警告をしたと。ちょっと飛びまして、したがってイラクは決議一四四一の時点において重大な違反を犯しており、その後も継続して重大な違反を犯している。最後でございますが、したがって決議六七八の下での武力行使の権限は復活し、それは今日も継続をしている。  言葉は若干、もちろん表現の問題はございますが、基本的に政府が答弁を申し上げております考え方はこのイギリスの法務総裁の見解と軌を一にしているところでございます。
  74. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 私もイギリスの法務総裁のその文章は読んだばかりなんですが、質問はもっと簡単な質問でして、お伺いしたのは、安保理決議一四四一号そのものの中に武力行使を容認する権限を与えるといった規定がなかったと林参考人がここで発言をしているんですけど、その見解は今でも変わっていないんですかとお聞きしているんです。
  75. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 決議六七八、六八七及び一四四一の複合された効果により武力行使の権限があると申し上げているわけでございまして、その文言自体の観点からいいますと、一四四一にそういう武力行使を容認するという表現の文言がないのは、それはそのとおりでございます。
  76. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 言わば合わせ技といいますか、で武力行使を容認されたと認識をしたと。しかし、フランスやドイツを始めとして、そうは取らなかったという、まあ見解の相違もあると。そうした中で、その一四四一という中に明示的に武力行使の容認という表現がなかったというところはお認めいただいたわけですが、その明示的に武力行使の容認がないものが今後起こった場合に、この自衛隊法の新第三条二項の二に言うところの国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与、これを今後とも明示的になくてもこれをやるというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  77. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 自衛隊法の考え方というのは、その国連決議で、そういう形で、戦争が始まる始まらないと関係なく、その後、自衛隊が出ていくような要件が備わったかどうかで出ていくわけでありまして、イラクの場合も、今みたいな形で、仮に政府はそれを、アメリカの動きを理解して、あるいは支持するということになったとしても、それでもって出ていくわけじゃございませんから。それでイラクの復興のために国連から改めて要請があって、そしてそのための法律をここで作って、それに基づいて出ていっているわけでございますんで、そこはちょっと違うんじゃないかと思いますんで、これから先もそういう具体的な法律を作るなり、あるいは何か法律があって、それに基づいて国会の事後承認なり事前承認なり、そういう形と絡ませながら決まっていくものと思いますので、私たちはやっぱりそれはできるだけやっぱり抑制的に行動すべきだというふうな基本認識を持っております。
  78. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 長官がおっしゃることはよく分かるんでありまして、法律に基づいて出ていったんだと、特措法があるから出ていったんだと、しかも、イラク戦争が始まるときのいろいろな解釈は別として、その後の人道復興支援の要請に基づいて出ていったんだということは私も理解しているつもりなんです。  しかし、先ほど申し上げたように、その作戦、参加する作戦自体に正当性に議論があるような、国際社会意見が分かれているような作戦自体に、後方支援とはいえ、イラク特措法に基づいているとはいえ参加をさせるということは、やっぱり自衛隊が誇りと自信を持って国際平和協力業務にこれからやろうというときに、ここのところはちょっとはっきりさせておかないといけないんじゃないかと、今後、こう思うわけですね。  もう一度伺いますけれども、自衛隊の皆さんを過酷な環境の中でガソリンスタンドにしないために、たとえ後方であろうが人道復興支援であろうが、その作戦自体の正当性は極めて重要だとお考えになりますか。
  79. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は、それは大事だと思っております。行く者がやっぱり誇りを持って出掛けるような、そういう環境はつくってやらなければ、その上で出さなければいけないと思っております。
  80. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 もしそうであれば、国連を中心とした国際平和のための取組とここに書いてあるわけですね。明らかに明示的に、その国連の安保理決議の中に七章下に基づく武力行使が容認されていない限りは、私はこれは国連を中心とした国際平和のための取組とは言いにくいんではないかと思うんですけど、いかがでしょうか。
  81. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) たびたび言っておりますように、イラク戦争の始まった、あるいはイラク戦争が開始されてそれが終局するといいますか、そこまでのものについてはいろんな意見があったと思いますし、私自身だって内部でいろんな葛藤があっておるわけですけれども、少なくともイラク特措法を作って出すときにはみじんの迷いもありませんでした。というのは、国連から新たに要請されて、戦争が終わったその後の復興のためにしなきゃならない、各国協力してくれということで出ていったわけでありますから、それは私は、あのとき一緒に法律作られた方々も、やっぱりここは自衛隊を出すべきだろうと、民間で行くのは無理だろうと。ただ、そのときに一番気になったのは、イラクはその後まだ紛争といいますか、その治安が本当に確保できているのかどうかというそっちの方の心配はございましたけれども、出ていくことについては国連から改めて決議をして要請があったわけですから、それについては迷いはありませんでした。
  82. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 特措法のときに迷いがなかったというお話なんですけれども、今回はやっぱり専守防衛自衛隊を表に出すと、自衛隊法も改正をすると、表に出すときの内容がこの三条二項二に書いてあると、この中を見て、国連を中心とする取組と書いてあると。もう一つは、その他の国際協力の推進と書いてあると。これは一体どういうことなのかなというふうに思うわけですね。  まず、国連を中心とした国際平和のための取組には、それでは明示的に武力行使の容認の決議がないような作戦に対しても、場合によっては参加をしていくんだという理解でよろしいんですか。
  83. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そうじゃなくて、その他の国際協力の推進という場合は、だれしもが見て明らかに、先ほど言いましたように、津波が起きた、地震が起きた、そういうときに出掛けていくことについて認めてもらえるようなそういう状況、その中で出ていく場合には、そういうはっきりした国連決議がなくてもあるいは行けるんじゃないかと、既存の法律で行けるんじゃないかと思うわけであります。  だから、私が恒久法を作るのに非常に慎重だというのは、恒久法の作り方によって、今委員が御指摘になられるような非常に何でもやれるような状態をつくってしまうのは非常に困るので、やっぱり法律に基づいて出ていくという原則をきちんとやっぱり残しておきたいと。  しかし、その他の国際協力に資するというのは、それは非常に臨機応変にやれるような、しかもだれもが見て、行くことについて異論のないような、そういう場合はあると思いますので、そういうような意味でそこには書いてあると、そう理解していただいたらいいと思いますから、原則として、行く場合にはやっぱりちゃんとした法律に基づいて、自衛隊法、若しくはそれ以外のきちんとした法律に基づいて出ていくというようなことを念頭に置いておるわけであります。
  84. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 話をちょっと進めまして、アフガニスタンの空爆、テロ特のときに戻るんですけれども、アフガニスタンに対する米軍の侵攻というのは、これは憲章五十一条に基づく自衛権の行使と考えてよろしいんですね。
  85. 浅野勝人

    ○副大臣浅野勝人君) アメリカは二〇〇一年十月に開始したアフガニスタンへの軍事行動に関して、十月七日付けの安保理議長あての書簡の中で、国連憲章第五十一条に基づく自衛権の行使として行動を開始したと報告したものと承知をしております。
  86. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 その自衛権の行使というところは異論がないと思うんですけれども、どういう自衛権かということなんですが、米国の国家安全保障戦略で言うところの自衛権なのかと。内容をちょっと読んでみますと、米国は、国際社会の支持を得るべく常に努力するが、テロリストが米国民や米国に危害を加えることを防ぐため、必要ならば単独で行動し、先制して自衛権を行使することをためらわないという戦略を実行したという、そういう自衛権と解釈できるんでしょうか、いかがですか。
  87. 浅野勝人

    ○副大臣浅野勝人君) 確かに、今委員御指摘のアメリカ国家安全保障戦略ではそういう指摘がありますが、同時に、脅威に対して先制的に対処するために必ず武力を行使するというわけではないんだと、さらに、先制攻撃を侵略のための口実にしてはならないということも明記をしておりまして、自衛のための武力行使を総合的に判断して実施したものと理解しております。
  88. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 国際法局長に伺いたいんですが、先制攻撃について国際的に確立した定義というのはあるんでしょうか。
  89. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 先制的な対応というのと自衛権における急迫不正の侵害ということの関係についていろいろな御議論があるところでございますが、我が国におきましても、例えば昭和四十五年、これはたまたま私、手元に持っておりますのは予算委員会における当時の法制局長官の答弁でございますけれども、何らかの武力攻撃がないにもかかわらず、これに対して武力的な圧力を加えるというのは我々の取らざるところでございます、ただし、武力攻撃があるということが、すなわち身が破滅してからでは実は遅いので、武力攻撃の着手、それが第一に考えられる基本であろうと思います、ちょっと若干飛ばしまして、その具体的な事情に徴して、武力攻撃の着手があったときには、武力攻撃があったものと考えて少しも差し支えないと思います、こういうふうに答弁しているわけでございまして、一貫して政府が申しておりますのは、自衛権の行使というのは急迫な不正な侵害がなければならないと。しかし、何をもって急迫不正の侵害かということにつきましては、現実のその攻撃というものを甘受した後でないといけないのかというとそういうことではなくて、客観的に見て武力攻撃の着手が行われた場合には、それは急迫不正の侵害という要件は満たしておるのであると、そういうことを申している次第でございます。
  90. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 米国が九・一一のテロの攻撃を受けて、その後、アフガニスタンに対する空爆を行ったわけなんですけれども、このアフガニスタンに対する空爆を行ったときに、相手が、じゃ武力攻撃に着手していたというふうに理解をされるわけですね。
  91. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 日本政府自衛権の行使の当事者ではございませんので、アメリカの解釈について有権的なことを申し上げる立場にはございませんけれども、自衛権としてこの報告をしていると、今副大臣の答弁にもあったとおりでございまして、この自衛権の要件である急迫不正の侵害があったという前提で行動をしているものだというふうに理解をしております。
  92. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 もちろん人の国のことですから解釈はできないと思うんですけど、私はこの時期にたまたまハワイにおりまして、あそこは軍人の多いところですので、軍人の家族も含めて大変緊迫感があったわけなんですね。大変な一方的な雰囲気といいますか、これはもう絶対にやらなきゃいかぬ、今ここでアフガンの爆撃に反対するような人間はちょっと、まあ非国民というような言葉はないんですけど、何しろまずいと、みんな胸に星条旗のバッジを付けまして、今まで友人だという付き合いを長年してきた人たちも、この件に関してはもう議論はできない、問答無用であると、これは何とかアメリカを守らなきゃいかぬと、そういう言わば日常生活の雰囲気から考えるとちょっと異常心理の中であの攻撃が行われたと、私は自分の体験からそういうふうに認識をしているんですけれども。  外務大臣に伺いたいんですが、私は、事前に自衛権の行使は許されると、あるいは集団的、集団安全保障は許されるという原則をしっかり決めておくというのは、世の中がこういうふうにマスコミ等々の影響によって大きく振れてしまうときこそこういう原則をきっちりと守っていかないと、もうこれは極めて危ない状況だと私はそのとき感じたんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。あれが本当に自衛権の行使と考えられるんでしょうか。
  93. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) ちょうどその事態の直後のころに当たると思いますけれども、これは当時の川口外務大臣の答弁でございますけれども、正にこれが自衛権の行使であったのかという質問に対してでございますが、昨年の九月の米国におけるテロの攻撃といいますのは、高度の組織性、計画性が見られるなど、通常のテロの事例とは次元が異なって、武力攻撃に当たるというふうに考えるわけでございます、我が国は、ある国及びその国民を標的として計画的、組織的にテロ行為が継続して行われる場合には、これを総じて急迫不正の侵害と位置付けるということはあり得るという立場を従来から取ってきているわけでございますということを御答弁になっておられるわけでございまして、したがって、あの事態そのものが、先ほどちょっと私が申しましたその着手があったかどうかという話ではなくて、九・一一の事態自体が急迫不正な侵害であるという認識で今まで答弁をしてきているところでございます。
  94. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 済みません、今のよく分からなかったんですが、九・一一自体が急迫不正の侵害であったと、つまり、一回ああいう攻撃を受けた後、何か月かたっているにもかかわらず、まだその急迫不正の侵害があったという認識の下に爆撃を行った、そういうことでよろしいんですか。
  95. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 繰り返しになって恐縮でございますが、先ほど引用させていただきました川口当時の外務大臣の答弁で、高度の組織性、計画性が見られるというテロであるということで、我が国は、ある国及びその国民を標的として計画的、組織的にテロ行為が継続して行われる場合には、これを総じて急迫不正の侵害と位置付けるということはあり得るという立場を従来から取ってきているわけでございますというふうに答弁している次第でございます。
  96. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 いや、今伺いたかったのは、急迫不正の侵害があったというのは分かるんですけれども、一回そういう攻撃があったと、その後に、また相手国が、相手のテロ組織が武力攻撃に着手をしたと、そういう認識の下に自衛の戦争をやったという、そういう認識でよろしいんですか。
  97. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 高度に計画的、組織的なテロ行為が連続して行われたと、その背景にアルカイダ、タリバンというものの存在が認められたわけでございますけれども、そのアルカイダ、タリバンが引き続きアフガニスタンで権力を握っていると、そういう事態、総合して急迫不正のテロ行為が継続をしているという基本的に考えであろうかと存じます。
  98. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 いや、それはちょっとその、そういう認識は、私は今まではそういう理解をしていなかったのでちょっと意外なんですけれども、タリバンが政権を持っていることをもってその相手を攻撃する自衛権行使の理由になるのか。あるいは例えばここに、手元にあるのは平成十四年の十一月六日の外務委員会質疑なんですけれども、これはやっぱり、林政府参考人が言っているんですが、大量破壊兵器を保有している、そういう事実のみをもって、これに対して他国が直ちに自衛権を行使できるというふうなことは通常想定されないと、ここまで言っているんですね。その今の自衛権の行使についての御説明をもう一回お願いできますか。
  99. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 繰り返しになって恐縮でございます。  この川口外務大臣の答弁でございますが、「昨年の九月の米国におけるテロの攻撃といいますのは、高度の組織性、計画性が見られるなど、通常のテロの事例とは次元が異なって、武力攻撃に当たるというふうに考えられるわけでございます。 我が国は、ある国及びその国民を標的として計画的、組織的にテロ行為が継続して行われる場合には、これを総じて急迫不正の侵害と位置づけるということはあり得るという立場を従来からとってきているわけでございます。」。これは、あり得ると申しておりますのは、先ほど来答弁しておりますように、我が国自身が自衛権行使の主体でございませんので、アメリカの解釈について有権的に御答弁を申し上げる立場にはないという意味でございます。
  100. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 今局長おっしゃっているのは、多分テロが犯罪か戦争かといったときに、組織的、計画的に大規模に行われたものが犯罪の域を超えて戦争に値するからこれには自衛権行使をして当然であるというような文脈でおっしゃるんだったら分かるんですけれども、多分そうじゃなくて、予防戦争というような文脈でおっしゃると私もちょっと訳が分からなくなるんですけれども、そういう理解でいいんですかね。今おっしゃっているのは、テロは犯罪であるか戦争であるかという文脈で言っているんですね。
  101. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 大変繰り返しになって恐縮でございますけれども、もう一点付け加えるとすれば、この九・一一の後に安保理で千六百六十八号、それから千三百七十三号という安保理決議が採択をされているわけでございますが、これらの決議におきまして、個別的又は集団的自衛権が国連憲章第五十一条で加盟国の固有の権利とされていることを認識して、今回のテロ攻撃に対応して米国等が個別又は集団的自衛権を行使し得るということを確認したというふうに考えておりますと、これも当時御答弁申し上げているところでございます。
  102. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 じゃ、テロは犯罪ではなくて戦争行為に値するという文脈だというふうに理解いたしました。それを認めた上で、じゃ組織的、計画的な武力行使が行われるという事態が発生したと、そのときに自衛権の発動ができると。ここまではいいとして、それではその自衛権の行使を先制的にできるかどうかということなんですね。  この件について、昭和五十六年の十一月九日、安全保障特別委員会の議事録の中で、やっぱりこれも政府委員が言っているんですけれども、ちょっと読ませていただきます。「しかし現実の問題として、いわゆる予防戦争と申しますか、単に攻撃のおそれがあるとかあるいは脅威があるということによって自衛権を行使することはできないということは、現在の国際社会においての共通の認識であろうと思います。」というふうに言っているんですけれども、この認識に変わりはございませんか。
  103. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) 先ほど昭和四十五年の当時の法制局長官予算委員会における答弁を引用して申し上げましたように、自衛権を行使する前提としてこの武力攻撃があるという前提であるわけでございますが、では現実に被害が及んでいないと自衛権を行使できないのかということにつきましては、それはそうではないであろうと、具体的な事情に照らして武力攻撃の着手があったときには武力攻撃があったものということになるということを申し上げてございます。  何をもって武力攻撃の着手があったのかと、単に武力攻撃のおそれがある場合と着手があった場合というのはどう区別するのかという御議論でございますけれども、これも従来もう何十年にもわたって国会で御議論があるところでございますけれども、それはやはり客観的な情勢に照らして判断しないといけないであろうと、なかなか抽象的には申し上げられないであろうということを政府から累次お答えを申し上げているところでございます。
  104. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 正にそういう難しい判断であるからこそ今回のような、防衛庁を省にするというだけで歯止めの利かない軍事大国になるんではないかと心配される方も出てくる、あるいは防衛庁を省に昇格するというだけで憲法を改正して戦争をどんどんするような国になってしまうんではないかというような心配をされる方もいる。私は、やっぱり難しいことであればあるほどしっかりとした原理原則というのをできる限り国民の前に明らかにしていく必要があるんだと思うんです。  そこで、一つ例を申し上げたいんですが、例えばコソボにおけるNATOの空爆ですね、九九年の三月、このときに行われた空爆は集団安全保障だったんでしょうか、それとも自衛権の行使だったんでしょうか。
  105. 小松一郎

    政府参考人(小松一郎君) このコソボの事態に際しますNATOの空爆の法的根拠につきましても、これはこの当委員会を含めまして何度も委員の御質問にお答えをしているところでございますけれども、まず自衛権の行使であるということではないわけでございます。安保理による武力を行使をするというその決定が、決議が行われたかというと、それもないわけでございます。正に、これも何度もお答えをしておりますように、当時コソボにおきましてセルビア民族問題をめぐりまして集団殺害のような非常に悲惨な事態が行われておると、それに対してそれを阻止をするというような武力行使を安保理で決定できるかと議論が行われたわけですけれども、拒否権によってそれが頓挫をしているという事態で、そのままそのような悲惨な人道上の事態を見逃していいものかという苦渋の国際社会の決断としてそういう行動が行われたと、そういうふうに認識をしているということを当時の高村外務大臣以来、繰り返し申し上げているところでございます。
  106. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 おっしゃるように、当時の高村外相は答弁で国際法違反か否かについては法的な評価は下せないと、こう言っているわけですね。  そこで、麻生大臣にお伺いしたいんですが、今年の五月四日に、NACですか、あのNATO、日本とNATOの実務的関係構築に向けて積極的に進めていくべきだという、言わば歴史的と言ってもいいと思うんですけれども、日本とNATOの関係を前向きにとらえる発言をされた。また、日本外務大臣として初めてこのNACに参加をされたわけなんですけれども、そこでお伺いしたいのは、例えばコソボの空爆のようなことがあったときに、日本は安保理の決議なしにやっぱり武力行使の後方支援なりなんなりにこれからは協力するという可能性があるんでしょうか。
  107. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 私がいわゆるNACにおける演説の中で述べましたいわゆる実務的関係の構築と言ったと思うんですが、実務的関係の構築というものの定義ということになるんだと思いますが、これまでいわゆる、アドホック、一時的で実施してきた高級事務レベル協議というようなものを一時的な形で継続的にやっていたわけじゃありませんので、そういったものをやってきてはいますが、現実問題として、インド洋でいろいろ補給やら何やらをしているという現状というものは今そこに見られますんで、そういった意味で、いろいろNATOと日本との間でいろいろな話を定期的にやっておく必要があるのではないかというのが元々の発想の基です。  現実問題として、今そこで一緒にアフガニスタンの沖、インド洋沖でいわゆる作戦を展開しているわけで、我々はそれを後方支援とはいえ後方から支援をしていることははっきりしています。したがって、もう少しより計画的、体系的に事を進める必要があるのではないかというのがまず大前提にあります。  その上で、協力在り方についてはいろいろ、今後現実問題としてどういうのをやっていくかというところはもう少し詰めてみないと何とも言えない段階なんであって、今の段階でこういった前提という仮定の段階を前提にして話をするということはちょっといかがなものかと思いますんで、どういう協力が可能だろうかということにつきましては今後適切に判断していかなきゃいかぬところなんだと思いますが、今のこの段階でこの段階になったらこうするというようなことは決めているわけでは全くありません。
  108. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 そこで、外務大臣が帰国されて、最近行ったこの件に関する演説を私は読ませていただいたんですが、価値の外交ということと安定と繁栄の弧ですか、ということを言っておられると。特に、NATOとの関係という文脈の中でそれをおっしゃっておられると。  私は、そこで、ちょっと素朴な疑問なんですけれども、価値の外交と言ったときには地理的な概念ではありませんので、その価値の外交と並列して安定と繁栄の弧と言って、結果としてユーラシア大陸の外縁のところを東欧の一番向こうまで言っておられるという、どうしてこの地理的なこういうものを持ち出されたんですか。
  109. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 今の地理的な話は、たまたまその地域においてソ連崩壊後若しくは冷戦構造崩壊後、それらの地域においていわゆる新しい形でいろいろな自由主義諸国の新興国家が今正に生まれつつあるということだと思います。少なくともソ連邦が十五の国に分裂して、私どもはその中で二つしか大使館を持っていないんですけれども、そういった形で、いろんな形で新しい国々が今そこに起きつつあるという偶然、その中にはウズベキスタン、カザフスタン等々の中央アジアもその中に含まれますが、そういったかの地がたまたま自由と繁栄の弧になるところなんであって、それらの国々は、今新しい国家として生まれつつあるという国々がたまたま形状的にこういう具合になっているというのが一つの現実です。  それらのところにはCVC、カンボジア、ラオス、ベトナム含めて、CLV含めて、いわゆるまだ、そういった中で価値という面からいきますといわゆるまだ弱い、自由とか民主とか人権とか法治主義とか、そういったところの弱い国々、民主主義や含めまして、そういった国々を私どもは助けて、そういった国々をきちんと民主主義なり自由主義なりというものが繁栄させていくということになることによって、それらの地域が政治的にも安定し、結果として経済が安定し、そしてそれが生活水準の向上につながり、社会の安定につながっていく、日本が戦後歩んできた道ですから。そういったものを我々はこれらの国々と価値を共有している、そういったものを我々はこれらの国々のこれからの発展のお手伝いをしていくというのが大事なところではないかということを申し上げております。
  110. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 日本が戦後発展を遂げてきた、正に諸外国から驚異の目で見られているわけでありまして、そういう我々の経験を基にお手伝いしていくと、伴走役をしていくという表現をされておられましたが、それはもう大賛成であります。  ただ、今お尋ねしているのは、このおっしゃられた自由と繁栄の弧というのが米軍がQDRで言っている不安定の弧というのと期せずして一緒になっているわけですね。今までやってきたことの延長の地理的な話ということであれば、それは東チモールもやったわけですし、また将来に向けては小泉総理がアフリカに対する援助をあれだけ力強く発表したという文脈からいえば、この不安定の弧と一緒にするのはどうかと。地球儀片手にこれがどうの、あれはどうだと言う気はありませんけれども、しかし地理的な概念をここで持ち出すというのは私はやっぱり余り良くないんではないかと思うんですけれども、その辺いかがですか。
  111. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 自由と繁栄という意味において、この地域においては少なくとも日本は中央アジアの国々として我々は深い関係があるところでもありますし、もちろんアジアの中における、まだ同じASEANの中でもまだまだCLMVというところは、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナムというようなところはまだまだいま一つ経済的なレベル、生活水準のレベルを見ました場合に、他のASEANの国々に比べてもまだ少し差がある。我々は、ASEANの中でもこれらの国々が落ちこぼれないようにするのが大事なんじゃないのかという話をASEANの会議でもよく言うところでもありますけれども、日本はそれにかなりの支援をしている。  そういったところをつなぎ合わせていくと今申し上げたようなところへつながってくるのであって、アルメニアにしてもそういった地域にしても、GUAMと言われるグルジアとかウクライナとか、そういったところにつきましても、同じように今新たに独立をし、そして自由主義をし、選挙をやり、そして新しい議会を開いて今正に一歩を踏み出したばっかりのところというところなんであって、私どもはそういった国々が更にきちんとした議会制度なり選挙制度なり自由主義なりというものを維持し続けてくれることが我々にとっての安定にもつながってきます。なぜなら、それらの国々が安定することは我々にとっての繁栄にもつながってまいります、もちろん先方の。そういった意味では、私どもは自由と繁栄の弧という言葉を、たまたまそうなっておりますんでそう申し上げたというように御理解いただければと存じます。
  112. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 この話はもうこれでおしまいにしますけれども、価値の外交と言い、そして自由と繁栄と言ったときに、やっぱり私は、例えば北朝鮮の問題にしても対話と圧力プラス、北朝鮮の中で九〇年代に例えば百万人餓死したと報道をされておると、あるいは政治犯が二十万人とか四十万人とか言われるほど人権侵害を受けているというような最近のレポートもある中で、やっぱり自由と圧力、その一方では不安定の弧に重ならないところでも日本が主体的にかかわっていくと。つまり、北朝鮮について言えば、人道問題として北朝鮮の中のことも日本は非常に強い関心を持っているんだよというようなメッセージも発する必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  113. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 北朝鮮のいわゆる人権問題に対して日本が最大の関心を持っておりますのはもう当然のことであって、我々の北朝鮮問題に関しては拉致、核、ミサイルと、拉致が一番最初に来ているところからも明らかです、ほかの国で拉致なんて言っている国はありませんから。日本が拉致というのを最初に申し上げて、拉致、核、ミサイルということをずっと言っていることもはっきりしております。  二つ目には、日本だけが拉致の問題を抱えているんではないんであって、韓国もしかり。最近ではタイとか、いろんな他の国々からも同じような話が持ち上がってきておりますが、レバノンでしたか、出てきておりますんで、拉致の話というのはこれは日本一国の話ではないと、私どもは基本的にそう思っております。  加えて、こういった問題というものは、これ、いわゆる人権の話ですから、私どもとしては最大の関心を持ってこれに大使を送り、いろんなことをしておりますんで、この北朝鮮の問題というのは、我々は全然別個に、今六者協議の中でもいろいろな国で、ミサイルの話が片付きゃこれは再開をと、うちはそんなことはできませんと。ほかの国はミサイルと核が片付いたらそれで終わりなのかもしれぬが、我が方は拉致の話が片付かない限りは、援助再開と、そんな簡単なわけにはいかないということだけは理解してもらいたい。中国、ロシア、アメリカ、同様に皆そのことも申し上げておりますんで、犬塚先生御指摘のとおり、我々はこれにとって大いなる関心を持っております。
  114. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 資料を配ってください。(資料配付)  この資料は、先ほど来議論になっておりました武力行使の正当性、どういうときに国連の安保理決議なしの作戦に日本が参加をするのかと、そういった辺りを簡単にまとめた表なんですけれども、左側にありますのが自衛権発動の三要件、これはもう御案内のように急迫不正の侵害、これを排除するほかの適当な手段がないこと、そして必要最小限度実力行使と、これもう何度も御案内のとおりなんです。  この右側の、保護する責任、軍事介入への原則と書いてあるところがこの資料に一応簡単にまとめた部分なんですけど、この保護する責任というのはどういう内容かと、ちょっと経緯だけを御説明すると、先ほどのコソボの問題がありましたと。これ、国際法上どういうふうに取っていいか日本も対応に非常に苦慮しておると。その後、ルワンダの事件がありました、百日間で八十万人の民間人が虐殺をされたと。しかし、これは国内の問題であったために、国際社会としてはどうにも、まあほかにもいろいろ理由があるんでしょうけれども、動くことができなかったと。  コソボ、ルワンダと続いたこの国家主権をどう考えるのか、あるいは、大変大規模な人命の喪失やジェノサイドといったものにどういう原則を持って国際社会が介入をしたらいいのかという問題提起を二〇〇〇年に国連事務総長のアナン氏が行って、これを受けて丸一年間掛けまして、これは主権と介入に関する国際委員会というのがそれこそ世界じゅうで議論を積み重ねた結果、九・一一の後にこのレポートを出したわけなんですね。  片や、国家主権があると。さっきの北朝鮮の話もそうですが、国家主権の中なんだから、餓死者が出ようが、あるいは政治的ないろいろな政治犯の取扱いの問題があろうが、あるいはルワンダのように百日で八十万人殺されようが、これは主権国家の内部だというのが今までの理解だったと。それではいかぬだろうと。しかし、介入を行うに当たっては、非常にきっちりとした原則がないとこれはまためちゃくちゃになってしまうということを一応国際社会がまとめて、昨年の国連の首脳サミットで正式にこれは、保護する責任という文言が人間の安全保障と併せて使われたという経緯がある、そういった文書なんですけれども。  肝心の軍事介入への原則なんですが、これちょっと並べて書いたのは意味ありまして、自衛権発動の三要件とほぼ同じなんですね。  一番上の急迫不正の侵害があるということは、これは、逆に言ってみれば大規模な人命の喪失や大規模な民族浄化があったんだと、今現在進行であるんだと、あるいは起こるおそれがあるんだということなんですね。  そして、その次が、最後の手段でなきゃいけないと。これはもう自衛権の発動の三要件の、これを排除するほかの適当な手段がないことと全く対応するわけでして、軍事介入は全くほかの手段をすべて使い尽くした後に行うべきことだと。  そしてその下が、均衡性のある手段。これはやっぱり必要最小限度のことをやらなきゃいかぬと。  そして、これプラス、人の国へ入るわけですから、意図的に正当な意図を持たなきゃいかぬと。当たり前ですね。オイルがあるから行くというんではないと。やっぱり、人命の喪失があるから行くんだと。非常に正当な意図がある。  もう一つは、合理的な見通し。これ、コソボの反省なんですけど、コソボのときに空爆をしましたと。空爆をしたことで一体あれが本当に解決に向かったのかどうかという反省の中で、その作戦自体に合理的な見通しがなければいけないという原則をここに入れているわけなんですけれども。  私は、この省昇格の議論に当たって、日本がやっぱりアメリカを中心とする国際社会のいろいろな要請を受けたときに、これを場合によっては固辞するということがあってもいいんじゃないかと。ただ、今のままでは、米国を中心とした国際社会にいろいろな要請があったとき、私は固辞できないと思います。というのは、日本政府が持っている武力介入あるいは後方支援のはっきりした原則というものがなかなか見えにくい。今のうちに私は言っておくべきじゃないかと。この原則に当てはまらないものについては日本は差し控えると。  例えばドイツが、アフガニスタンまでは非常に協力をしたけれども、イラクに対しては一兵たりとも出していないといったような、日本の原理原則というのを今しっかりと持たなきゃいかぬのじゃないかと、私はこういうふうに思うんですが、両大臣のお考えをお伺いします。
  115. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) この原則をこういうふうにつくるというのは非常にいいことですけれども、これは、国連その他がどういう場合にその国の武力行使を認めるかという、そういう原則だと思いますから、まず日本そのものが武力行使はしないわけですからそれは問題外としても、武力行使をしたそういう国を日本がどういう形で応援するか、後方支援をするかというときには、こういった原則に合致しているかどうかを一つのメルクマールにしたらいいんじゃないかと言われるその御指摘は、正に私はいいんじゃないかと思います。  ただ、それ以前に、我が国の場合は自衛隊が、後方支援であろうと何であろうと、これから出ていく場合は法律に基づいて出るわけでございますから、やっぱり国会等でそういう議論をするときに、こういう基準から照らしてどうかということをきっちり議論していただきたいと思うわけでありまして、もう一回言いますけれども、テロ特措法のときもイラク特措法のときも、あの法律を作ることについては全体としてはほぼ何ら抵抗もなく、ただ、中身についていろいろ議論があったということだけを強調しておきたいと思います。
  116. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 同じときに、その特措法をやりますときに政調会長、政調会長代理ですから、もろ話は重なっておりますんで、考え方にそんなにずれはないんだと思いますが。  何となく、こういったものができると、やみくもに地球の裏側でもどこでも全部、アメリカに頼まれたら皆行くんじゃないかという話がようマスコミなんかに出ていますけれども、私どもは、少なくともそれを出すに当たっては、国会で当然議論があるんであって、その国会の議論というものが物すごく大きな要素を占める。世論というものももちろん影響するでしょうし、そういったものが出てくるんだと思うんですね。  私は、何となく政治が軍隊というものをコントロールすることができなかった昭和十年代前半の話、若しくはそのまた前の満州事変に突入していくときの時代、いろんな時代を歴史を見てくると、明らかに政治が軍隊に対して力がなかったんですよ。はっきりしていると思いますね。そういったことにならないようにするためにどうするかという話で、シビリアンコントロールという話がずっと出てきているんだと思います。  私は、その意味で、少なくとも今、国会の中においてきちんと議論をしないで軍が一方的にどこへ突入するなんということはとても今の時代では考えられぬとは思いますけれども、そういったような意識を常に持って、そのときの一つのスタンダード、基準としてこういったものが一つの考え方として持っておくというのは大事なことだと存じます。
  117. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 靖国のことも聞きたかったんですが、次に回すとしまして、シビリアンコントロールの話が出たところで、質問を同僚議員に替わりたいと思います。  ありがとうございました。
  118. 藤末健三

    ○藤末健三君 民主党の藤末健三でございます。  先週、本会議場で質問をさせていただきましたので、その補足的な質問を今日はさせていただきたいと思い、伺いました。  ポイントは二つございます。一つ憲法解釈の変更について内閣法制局からの御返事をいただきましたが、その回答につきまして非常に明確にしたい点がございますので、それを一点明確にしたいこと。そして、もう一つございますのは、是非、久間長官とお話しさせていただきたいのはシビリアンコントロール。私は、本会議場では議会によるシビリアンコントロールの議論だけを申しましたけれど、やはりシビリアンコントロールは文官、官僚によるシビリアンコントロール、議会によるシビリアンコントロール、そして国民によるシビリアンコントロールという三段階があると思いますので、今日は全体的な、包括的なシビリアンコントロール在り方について議論をさせていただきたいと思います。  まず、内閣法制局憲法解釈につきまして御質問申し上げたいのは、内閣法制局が過去に一度だけ憲法の解釈変更をしたという事例がございます。自衛官が文民であるという解釈を、自衛官は文民でないというふうに解釈を変更しましたが、その変更の理由について簡単にお話しください。短くお願いします。
  119. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) お尋ねの憲法第六十六条第二項に規定します文民に自衛官が当たるかどうかという解釈については、昭和二十九年の自衛隊発足当時でございますけれども、自衛隊の前身であります警察予備隊及び保安隊につきましては、その隊員は文民に当たると解していたという前提がございます。  また、当時でございますけれども、現行憲法の下において発足した自衛隊は、やはり旧陸海軍の組織とは性格を異にするというものであるということを重視したことからと考えられますが、自衛官は文民に当たると解していたのでございます。  その後、自衛隊制度がある程度定着していく中で、昭和四十年に至りまして、当時、いわゆる三矢研究が大変な議論になった、それを契機としたものと思われますけれども、詳細は分かりませんが、自衛隊もやはり国の武力組織である以上、自衛官がその地位を有したままで国務大臣になるというのは憲法の精神から見て好ましくないとの考えに立って、自衛官は文民に当たらないとの解釈を示したところでございます。
  120. 藤末健三

    ○藤末健三君 今のような御説明ですと、憲法の解釈を狭める方向に解釈を変更していたということでございますが、私が問題にしたいのは、先週の本会議における法制局長官のお答えの中で、一つ条件が緩和されたんじゃないかと、憲法解釈の変更の条件を緩和したんじゃないかというところがございますので、それをお聞きしたいと思います。  私が記憶していますのは、一九九五年に、大出法制局長官憲法解釈の変更についてはおおむね四つの条件ということをおっしゃっていました。一つが、該当法令の規定の文言、趣旨に即しつつ、そして二つ目に、立案者の意図などを考慮し、そして三つ目に、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことに留意して、そして最後に四つ目に、論理的に確定されるべきということを言っていたんですが、先週の本会議場での回答では、これに一つ条件が追加されておりまして、立案の背景となる社会情勢等を考慮しというのが付け加わっています、十年前の答弁に比較しまして。  なぜこの社会的情勢等を考慮しというのが加わったかどうかというのを教えていただけませんでしょうか、お願いいたします。
  121. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) まず、これまで憲法を始めとする法令の解釈の在り方について内閣法制局長官等におきまして累次の答弁がございます。これらは、御指摘のような解釈の変更の条件という趣旨で御説明しているものではなく、およそ憲法を始めとする法令の解釈の在り方はどのようなものであるかという点で御説明しているつもりでございます。  累次の答弁はいずれも同様の趣旨であると理解しておりまして、まず一つ目には、やはり、規定の文言、趣旨に即するということがやはり解釈の前提であろうかと。また、その御指摘のその立案者の意図や立案の背景となる社会的情勢といった点も言及しておるわけでございますけれども、これはいずれも、立法当時の状況にも考慮を払うべきであるという趣旨を述べている部分でございまして、その解釈の変更について言及している箇所ではないと考えております。
  122. 藤末健三

    ○藤末健三君 二つのことを申し上げますけど、一つは、その憲法の解釈と法律の解釈というのは同じであるべきじゃないと思うんです、基準が。憲法も含め法律の解釈の考え方というふうにおっしゃいましたけど、憲法法律は私は違うと思います、位置付けが。最高法規である憲法法律を同じにすべきじゃないというのが一つ。そして、もう一つございますのは、立案の背景となる社会情勢等を考慮しということを付加したという理由にはなっていませんよね、今のお言葉で。僕は理解できていません、それについては。  法制局の憲法解釈というのは非常に大きな意味があるということを理解していただきたいと思います。集団的自衛権の保有はするけど行使はしない、海外派兵を禁止するというのは、内閣法制局憲法解釈として位置付けられているわけじゃないんですか。それを、法律と同じような解釈という、法律と同じような解釈の基準でやっているんですよという言い方はおかしいと思いますが、いかがですか、そこは。
  123. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) もとより、国家の法規範としての重みとして憲法法律あるいは政令等で当然異なるということは前提でございますけれども、これまで御説明申し上げておりますのは、やはり、その法令の解釈というものは一般的にどのようなものを根拠として、あるいはどのような考え方で行っているかという点を御説明しているわけでございまして、そのような一般論という範囲におきましては、やはり法令の解釈ということで一般化されるのではないかと思います。  お尋ねの、その立案の背景となる社会的情勢というのを付け加えたという御指摘でございますけれども、これは過去にも法制局長官等におきまして答弁申し上げているところでございまして、今回といいますか、初めて何か付け加えたというような事柄ではございません。
  124. 藤末健三

    ○藤末健三君 一点だけ申し上げますと、お立場があるからお答えするのは大変かもしれませんが、憲法の特に九条の関係の解釈、法制局の解釈というのはずっと今まで重みを持ってきたわけじゃないですか。集団的自衛権の解釈どうするのか、海外派兵の問題どうするのかという問題、その問題についてずっと議論がされてきて、一つだけ過去に、憲法解釈、変更されたという事例があったと。  その事例がどういう位置付けであり、そして今後は、非常に難しいものである、あり得ないとかいう明確な考え方を示さなければ、恐らくその集団的自衛権の保有はするけど行使はできない、海外派兵はできないという憲法解釈さえも非常に危ういものになるんじゃないかということを危惧するんですが、どうですか。ここで守ってください、内閣法制局の立場を、発言していただいて。このまま議事録が残れば、内閣法制局の解釈とは何ぞやという話になると思いますよ、私は。お願いします。
  125. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) なかなか、その法令の、憲法を始めとする法令の解釈が、すべて内閣法制局が独断で、あたかも独断で決めているという、そういう前提では全くございませんで、やはり法治国家でございます。司法機関もございます。もとより立法機関としての国会もあるわけでございまして、やはり、その法令の解釈一般在り方ということについてはこれまで累次申し上げてきているとおりでありまして、だれかが何か自由に、あるいは独断で解釈というものを決めるべきものではない。やはり規定の文言、趣旨に即しつつ、やはり立案者の意図あるいはその背景となる社会情勢等も考慮しつつ、かつまた、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性にも留意して、正に理論的に確定すべき性格のものであるということを強調して、これまで申し上げてきているつもりでございます。
  126. 藤末健三

    ○藤末健三君 これは先ほどの犬塚議員との議論と非常に似ていると思うんですけれど、物事に何が必要かというとルールが必要だと思うんですよ。今、内閣法制局の方の回答を聞いていると、ほとんど、裁量を残そう、解釈である程度動けるようにしようというような形に聞こえますけれど、どうなんですか。  一つだけ確認したいのは、例えば、もう答えはいただけないかもしれませんけれども、法制局の解釈を今後どうなるかといった場合に、きちんとその整合性は持つし、そしてまた過去の議論の積み重ねを重視し、そして大事なことは文言、趣旨に即してやりますよということにもう一回戻していただきたいんですよ。社会的情勢を勘案しというのは非常に僕は緩くなっているということをもう一回申し上げたいんですけれども、いかがですか。
  127. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) 重ねて恐縮でございますけれども、御説明申し上げました背景となる社会情勢等を考慮しといいますのは、この立案当時の背景となる社会情勢等を考慮しという趣旨でございまして、なぜそのような法令が立案されたか、どういう立法事実に基づいてその法律が制定されたのか、そのようなやはり背景となる状況を考慮して当該法令を解釈すべきであるという、そのような一般論を述べた部分でございます。
  128. 藤末健三

    ○藤末健三君 そうすると、基本的に今までの解釈、考え方というのは変わってないということですね。イエスかノーかでお答えください。イエスをお願いします、是非とも。
  129. 横畠裕介

    政府参考人横畠裕介君) 法令の解釈が理論的に行われるべきであるという見解について一切変更したものではございません。
  130. 藤末健三

    ○藤末健三君 是非とも、憲法の解釈につきましては確固たる考え方を維持していただきたいと思います。  おっしゃっている意味は分かります、正直申し上げて。ただ、一つございますのは、明確にしていただかなければ、ほかの人が理解しなければ難しいと思うんですよ。内閣法制局の方がずっと議論されてきた内容、背景を理解して、なるほどおっしゃっていることは、ああ、そういう方向なんだなというのは何となく私も理解をしますけれども、明確に多くの方々が分かるような見解を示していただかねばいけないと思いますね。そこの点をお願いします。  次に、シビリアンコントロールに移らさせていただきたいと思いますが、前回の本会議におきまして、私は、議会によるシビリアンコントロール自衛隊のコントロールということを申し上げました。  まず一つ目にございますのは、議会の、議論のまた蒸し返しでございますけれども、本会議場で申し上げましたように、イギリスの事例とかアメリカの事例を申し上げましたが、イギリスは国会議員でなければ国防大臣になれない。あと、アメリカは過去十年に軍に所属した人間は国防長官になれないという話があります。  そしてまた一つございますのは、例えばドイツですと、基本法の八十七a条の一項にございますのは、ドイツの防衛予算、組織、大きな枠組み、日本で言えば私は防衛大綱ではないかと思うんですけれども、そういうものを議会の承認が必要だという話ございます。  そしてまた、四年ごとに見直される防衛指針、QDRにおきましても、アメリカにおきましてもこれは議会に報告するというふうになっておりますので、例えば防衛大綱を議会承認若しくは議会報告の義務を付けるというような方法があると思うんですが、いかがでございましょうか。久間長官、お願いします。
  131. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それらは決め方でございますから、そういう決め方もあろうかと思います。  しかし一方、日本の場合は、例えば防衛大綱にしましてもそれは政府が決めておりますけれども、その予算の支出については毎年毎年、今度は国会予算の支出権限についての承認を得ているわけでありますね。そうしますと、今おっしゃったような形でいきますと、防衛大綱ができ上がってしまいますと、逆に言うと、予算編成は非常に今度は楽になるわけですね、その内容で走っていけるわけですから、議会が認めた大綱だということでですね。それがいいのかどうか、そういうところも含めてやっぱり議論をせぬといけませんから、議会としての関与の在り方がどういうのが一番いいのか。よその国のいいところはまあいいところとして、やっぱりいろんな問題点もある。特にドイツの場合は連邦制でございますから、若干日本の場合と違うという点もあるのかもしれません。そしてまた、先ほど国防大臣がイギリスの場合は国会議員でなければならないと言われましたけれども、これは国防大臣だけではなくて閣僚はすべて国会議員でなければならないと、そうなっております。これを、閣僚は全部国会議員にすることが、イギリスみたいにすることが果たしていいのかどうか、それもやっぱりこういう議論をするときには決めませんと、国会議員以外から採用して、その方がいいというようなことでまあ小泉さんのときも大分採用をしていますけれども、そういうような面もありますので、チェックの仕方あるいはまたシビリアンコントロールといいましてもいろんなやり方があると思いますので、そこは議論を止めるわけじゃございません。
  132. 藤末健三

    ○藤末健三君 先ほど防衛大綱の話を申し上げましたけど、例えばドイツの話は、ドイツは基本法で予算と組織を議会が毎年承認するという形になっているんですよ。ただ、慣習的に防衛方針とか防衛戦略も含めて承認するような形になっているみたいです。で、アメリカはQDRがあると。そして、イギリスも調べましたら、イギリスもその慣習法として毎年議会にディフェンスレビューみたいなのを報告して行う、やる、それで別途予算を要求するという形になっておりますので。やっぱり一つあるのは、議会に対する報告義務によるシビリアンコントロールというのは、他国がやっているからこうしましょうという話じゃないんですけど、ほかの国をやはり勉強してみますと、ある程度の形があると思うんですよ。ですから、今、私は議会によるシビリアンコントロール在り方について、もう一度ベースから議論していただきたいと思うんですが、いかがでございますか。
  133. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今度、防衛庁防衛省になりますと、それでなくとも軍事大国化するとかいろんな危惧を持つ方がおられるわけですから、そうならないということを言っているわけでありますから、その一環として今みたいな話も、諸外国がどういう形でそういういわゆる軍をきちんと統括しているか、その辺についてはこちらとしても勉強してみたいと思っております。
  134. 藤末健三

    ○藤末健三君 議会の統制についても是非海外の例を勉強していただきたいと思いますし、私は、我が国はもう海外よりも厳しいぐらいでも私はいいと思うんですよ。という方向で是非議論していただきたいと思います。  それで、次にありますのは、議会の次にございますのは、官僚、背広組の方たちが制服組の方を統制すると申しますか、コントロールするという議論で、我が国はほかの国にない仕組みとして参事官制度、今たしか八人の文官の参事官が長官を補佐するという官僚による自衛隊の統制みたいな話がございます。  それと同時にもう一つございますのは、ドイツのまた事例をちょっと調べますと、防衛監査委員会という防衛組織を外部から監査する仕組みがございます。この委員会、実は議会に属しているわけでございますけれども、議会からもある程度独立して防衛組織をきちんと監査するという仕組みがございますけど、そのような新しいこの仕組み、まず参事官制度を強化するという議論もあると思いますし、また新しい組織をつくるというような議論もあると思うんですが、その点、長官、いかがお考えでしょうか。
  135. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 日本でも長官を補佐する制度として参事官制度が導入されました。そして、それは現在も続いて、先般、これを改革しようということで動きがございまして、今年の七月に一応改編の成果について出たわけですけれども、今はそれに基づいて八人になりましたが、それに基づいてそれぞれまた充実を図っているところでございますから、せっかく前長官のときにそういうことをされたのを、これから先それを前提としながらやっていこうと思っておりますが。  一方、私は防衛参事官制度というのを知りましたのは、実は十年前に防衛庁長官になりましたときに、例えばそのときだったら教育訓練局長というポストがありました、今名前は変わっていますけれども。教育訓練という形で自衛隊教育その他する、こういうのにはむしろ局長は制服で、その次長に背広を持ってくる方がより実態をよく分かっているんじゃないかということで変えられぬのかと、そして相互乗り入れでほかでもやったらどうかということを言ったことがございます。そのときに、局長は参事官をもって充てると、そういうふうに法律上なっておりますから、これはできないということで、法律変えたらいいじゃないかという話をしたんですけれども、もうほかの法律の改正が手一杯で、それを変えるほどの、参事官制度についての理解が少のうございましたから、そのままでした。  しかしながら、果たしてそういうのがいいのかどうか。シビリアンコントロールはコントロールとしてしなきゃならないけれども、やはりもう少し制服のいろんな意見も取り上げることのできるような制度もまた一方では考えていく必要があるんじゃないかなというのは基本的には思っておりますから、この参事官制度は、せっかくしかし、七月にスタートしておりますので、現在のやつでその充実強化を図っていこうと思っておりますけれども、現在のことについても、今まで御党だけでなくて与党の中でもいろんな議論もありますので、これから先引き続き議論をしていこうと思っておりますので、その中で取り上げていきたいと思っております。
  136. 藤末健三

    ○藤末健三君 私も調べてみますと、その参事官制度というのは、やっぱり日本独特だなという気がしております、正直申し上げて。歴史的な背景見ますと、やはり警察予備隊から始まり、保安隊になり、そして自衛隊になったという過去の経緯からできてきた独自の制度だと思うんですけれど、これはこれでいいところもあるんじゃないかと思います。  ただ一点ありますのは、今回、防衛庁が省になるときに何らかの新しい仕組みを僕は考えなきゃいけないと思うんですよ。正直申し上げて、今、シビリアンコントロールをこう変えますよと、それでパッケージで防衛省にしますという話であれば、私は非常に、いや本当に納得いくような話だと思うんですけれど、シビリアンコントロールの枠組みを変えるという議論がないまま防衛庁を省に上げるということについては少し疑問があります、正直申し上げて。  ですから、参事官制度という制度も認めながらも、やはりこれは過去の経緯を見ますと、警察予備隊として生まれた自衛隊が持っているような少し古いシステムという感じもあるんですよ。これは否定するわけじゃありません。ですから、何らかの新しい、背広組の方々が制服組の方々をコントロールできるような仕組みを今見付けなきゃ私はいけないと思うんですけれども、その点いかがですか。
  137. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 正直言いまして、今度の省移行は、そういうふうなこともいろいろ考えてもしやりますと、やっぱりプラスに取る人もおる代わりにマイナスに取る人もおって、非常に混乱を招くと思うんです。だから、やっぱり庁が省に移行しても、原則としてはほとんど変わらない、シビリアンコントロールについても全く変わらないという形でスタートさせながら、やっぱり実態面において、そういう変わったきっかけにどういうふうに持っていったらいいか、これをこれから先の皆さん方が謙虚に検討する時期には来ているんだろうと思うんです。  でき上がったときは、確かに保安庁としてスタートして、いろんなことが重なってきて今日に至っているわけでありまして、先ほどの文官の話も、両方のお話を聞きながら、とにかく自衛隊ができる以前に憲法があって、文官であるとか自衛官はそのときはいなかったわけでありまして、海上保安庁とかあるいは警察官はおったかもしれないけれども、その連中は文官だったわけですから、最初は文官としてそのまま認められたのが、やっぱり実力組織として定着してくると、そこはそれでいいのかなというようなことの中から変わったのかなと思いながら、これは法制局マターですから何とも言えませんけれども、時代が大分違っているんだなと思っておりますが。今度、今の段階では防衛庁を省にするからといって、今ここでそういうことも全部がらがらっと変えてしまうとなると、結構やっぱりかえって混乱を来すと思いますので、移ったのはそのまま移りながらも、先生のおっしゃるような、そういう点のあれをこれからやっぱり議論していかなきゃならないんじゃないかなと思っております。
  138. 藤末健三

    ○藤末健三君 是非、議論を深めていただきたいと思います。  そしてまた一つ、今まで官僚による統制と、そして議会による統制ということを申し上げましたけれど、一番重要なのは、やはり民主国家において国民による統制、文民統制じゃなくて国民統制というのがあると思います。国民の皆様一人一人が、やはり国防というものを理解し動いていただくというのがあると思います。  私は、その国民の統制、シビリアンコントロールを考えたときに、大きなことはまあ二つあるんじゃないかと思っておりまして、一つ一般的に言われる軍事力が政治に介入することを防ぐこと、そういうコントロール。そして、もう一個あるのが、一般的に言われる軍隊が効率的に動く、働いてもらうこと、無意味に肥大化しないというような管理があると思いますが、そういう考え方をきちんと議論していく必要が私はあると思います。軍部の政治に対する介入を恐れるだけでなく、本当に軍が機能的に最適な規模、組織であるかということをきちんと考えるという議論が必要だと思うんですが。  私が最近思いますのは、正確な国防とか安全保障に関する情報が私は国民に普及していないということを思います。例えば、北朝鮮の問題におきましても、いろんな方と議論しますと、北朝鮮から核ミサイル飛んできたらどうするのかとか、いろんなもう正直申して素人的な議論があるわけですよ。で、何が原因かというと、まあマスコミの原因もあるかもしれないけれど、一つあるのは、私は、防衛庁がきちんとした情報を発信しているかというと、僕はまだ十分にできていないと思います。  そういうところについて、いかがでございますか。
  139. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) これまでも、情報等についてはできる限り広報その他によりまして、いろんなまた組織を通じて伝えておるわけでございますけれども、これから先も安全保障の問題に支障のない限りにおいては、できるだけ努めていこうと思っております。  ただ、まあ正直言って、我が国の場合、私は農林省に昔おりました。そのとき、ミカンがいいぞと言ったら、みんなミカンをばっと作り過ぎてしまうんです。米の減反と言ったら一〇〇%以上減反が進むわけですね。私は、かつて上司に、これから都市化するんだから花はどうなんでしょうと言ったら、君、そんなことしたら日本じゅう花畑になってしまって、花一杯になって過剰になってしまうよと、言わないことの方がいいんだと言われたことあります。  だから、非常にそういうぶれやすい国民性を持っているという、そういう点も考えますから、自衛隊が余り効率よく動くというのは、私は、逆にいけない場合があって、自衛隊はやっぱり法に基づいてきちっと動くという、そういうような建前を持っておかないと、なぜやらぬか、なぜやらぬかということで、解釈だけで拡大、拡大とやるようなことのないようにするためには、やっぱり少しは厳しく法律どおりに動くんだという、そういう固さがあった方がいい場合もあるということも是非御理解賜りたいと思います。
  140. 藤末健三

    ○藤末健三君 それはおっしゃるとおりだと思いますけれども、やはりある程度正確な情報をきちんと出していくという努力はやっていただきたいし、またこれは我々がやらなきゃいけない仕事かもしれませんけれど、独立した防衛の研究機関が僕は必要だと思うんですよ、我が国にも。今、国防の研究機関、まあシンクタンクは防衛庁の下にございますけれど、やはり独立した意見を持ち、きちんと情報を発信するような仕組みがないと、非常に僕は国民シビリアンコントロール国民統制というのは不安定じゃないかと思います。具体的に言えば、マスコミに流れる軍事評論家の方の議論とか見ていても、非常に、余り批判するわけじゃありませんが、表面的な議論が多いような気がするんですよね。  ですから、ある程度きちんとした分析を行い、学術的な分析を行い、そして海外からの議論にも堪えれるような、そういう独立した研究機関を僕は是非とも、防衛庁がつくるわけじゃないですよ、これ当然、我々がつくっていく必要があるんじゃないかと思います。  そして、きちんとした情報を流し、国民の皆様が国防の問題、安全保障の問題を正確に議論するような土台をつくっていかなければ、先ほど久間先生がおっしゃったような、長官がおっしゃったような、ぶれやすいというのは何かというと、正確な情報、正確な解釈が流れてないからだと思うんですよ、情報だけが流れて。今、私はそういう状況にあると思います。軍事評論家の方がいろんなことをおっしゃる、あと、もう私から言うと素人みたいな方がいろんな国防的な発言をされる、それで一気に動くじゃないですか。そういうことをやっぱり止めて安定させるためには、きちんとした学術的な防衛の問題、そして安全保障の問題を検討する機関をつくるべきじゃないかと思っております。これは意見だけでございます。  私が最後に申し上げたいのは、シビリアンコントロール、文民統制というのは、まず官僚、文官による統制、そして我々議会による統制、そして国民による統制という仕組みになっていると思います。  長官もおっしゃいましたように、今の参事官制度、ずっと歴史を引きずってきたもの、そして広報の問題、いろんな問題ある。あと、研究所は独立したものがないような問題ございますけれど、私は、是非とも国防の独立したシンクタンクをつくる、そして参事官制度を見直しをする、議会に対する報告制度若しくは国防大臣の条件を考える、就任の条件を付けるとか。  やはり新しいシビリアンコントロールの枠組みを今議論していただく必要があると思うんですけれど、その点いかがですか。
  141. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そういう組織がまた国と政府と別にできること自体を否定するわけじゃございませんし、それはそれでいいんですけれども、そういう場合にいろんな秘密を開陳しなければならない、暴露しなければならない、そのときにその秘密がどうやって漏れないように、今は公務員の場合だったら少なくとも公務員法できちっと守られておりますけれども、そういうことについても併せて研究していただければ大変有り難いと思います。
  142. 藤末健三

    ○藤末健三君 二つのことを申し上げたいと思います。  アメリカで、やはりいろんな国防なんかの研究がなされているわけなんですよ。それはもう完全にNPOだったり民間機関になっています。公開の情報の中で考え方をきちんとつくっていく。情報を流すときには、もう防衛庁防衛省がなされればいいですよ、防衛機関が。それをいかに解釈して考え方を示すかということが大事であるし、もう一つ、もう一度お聞きしたいんですけれど、シビリアンコントロールの基本的な議論を早急にやっていただきたいんですよ、長官に。私のお願いです。その点についていかがですか。
  143. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほど言いましたように、今度防衛庁が省になると肥大化するんじゃないかというふうに言われておりますから、そういうこともないということと同時に、シビリアンコントロールはきちっとやっているということをもっと分かるような形で取り組むような、そういう姿勢で頑張っていきたいと思っております。
  144. 藤末健三

    ○藤末健三君 最後に、長官済みません、これは言いっ放しになりますけど、私は今のシビリアンコントロールじゃ不足していると思います、これからの新しい日本においては。今のこの仕組みは、少なくとも五十年ちょっと前にできた仕組みをずっと引きずっていると思うんですよ、いろんな微修正はしましたけど。屋台骨からきちんと、シビリアンコントロール国民の統制という概念まで含めたものをつくっていただきたいということをお願いしまして、私の質問は終わらさしていただきます。  以上です。
  145. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 藤末君の質疑時間は終了しました。  高野博師君。
  146. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、最初に防衛庁長官に何点かお伺いしたいと思います。  防衛庁が省に移行して何が変わるのかなというところでありますが、いずれにしましても、新しく生まれ変わるというこの意識の改革も必要ではないかなと。トップの士気というのはもう自衛隊の末端まで影響を与えると思うんですが、最近のいろんな事件を見ましても、また答弁の内容を見ても、ちょっと緩んではいないかなと、あるいは甘えてはいないかなという、そういう感じがいたします。  この「防衛庁を省に」というパンフレットの冒頭に、「危機により強く、世界の平和により役立つ組織に」と、こう書いてあるんですが、本当により危機に強くなるのかなと、根拠は何だろうかなと、これは質問通告していないので聞きませんが、私は不安を持っております。  そこで幾つかお伺いしますが、今朝も参考人質疑がありましてお聞きをいたしましたが、庁から省に変わるということで、そのメッセージ性についてちょっとお伺いしたいんです。  防衛庁防衛庁というエージェンシーであったことによって、これは対外的に平和国家としてのメッセージ性があったという、そういう見方もあります。その逆に、省に昇格することによって我が国は防衛については本気だぞというメッセージは送れないのかどうか、そういうメッセージ性があるのかどうか。それは、北東アジアの不安定な状況を見たときに、日本にとっての抑止力を強めるという方向に働くのかどうか、そこはどういう認識をされていますか。
  147. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は基本的に違いますのは、やっぱり防衛庁という場合は単に自衛隊を管理するという、そういうような色彩が強かった、そのために必要な装備品を取得するとか。そうじゃなくて、今の日本の平和、安全、国際社会の平和と安定というのはやっぱり政策として、単に自衛隊をどう使うかだけではなくてふだんからどういうような軍同士の交流をするかとか、いろんな点を含めて政策マターになっていると思います。そういう政策官庁として防衛庁を省として位置付けるというのが本来は一番強調しなければならないことじゃないかと私は思っております。  それと、やっぱり防衛庁はスタートは確かにそういう形でございましたから、海外に行っても、防衛庁というふうに言ったときに、責任と権限があるのかということからまず説明をしなけりゃならない。そこのところが、防衛省ですと言うことによってそれがもう省かれて非常に、そこが誇りというわけじゃないけど、余計な誤解を取られなくて済むという、そういうメリットがあります。これはもう口に出して言えないけれども、かなりのやっぱり違いがあると思います。
  148. 高野博師

    ○高野博師君 ということは、防衛については、防衛に関しては本気だというメッセージを送れるという認識でいいんですね。
  149. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そういうふうに取ってもらっていいです。
  150. 高野博師

    ○高野博師君 それから、海外任務を本来任務にするということも、これは国際社会にとってはポジティブなメッセージを送れるのかなと。そこはどういう認識でしょう、簡単で結構です。
  151. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 防衛庁あるいは自衛隊が発足したときは、もう国内の専守防衛だということで、どちらかというと抑止力といいますか、そこに存在するというのが中心でしたけれども、災害派遣については非常に増えてまいりました。それと同時に、PKOでも海外に出ていくことも、国際社会の一員として活動し始めると増えてまいりました。そういう点ではこれから先も増えてくる可能性はあります。  そういうのに積極的に行きますよということを国民も認めて本来任務としたということは、諸外国から見ても非常に大きなメッセージとして映るんじゃないでしょうか。
  152. 高野博師

    ○高野博師君 防衛力の本質は抑止力と対応能力だと思うんですが、その防衛力の本質が変わる一つのきっかけになるのかなという感じがするんですね。  専守防衛ということについては、防衛力必要最小限度と、これが憲法にかなっているということでありましたが、自衛隊は、従来から防衛庁は、適正な防衛力、コンパクトで効率的な防衛力、あるいは節度ある防衛力と、言い方はいろいろ変わってきているんですね。そういうことで、これはどういうことを意味しているのかと思うんですが、長官は現在の自衛隊の人員、装備含めまして、この規模等は適正だとお考えでしょうか。
  153. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は適正だと思っております。したがいまして、これが海外任務が増えたからといってこれを増やす必要は私はないと思っております。
  154. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、集団的自衛権と海外任務の点について長官のお考えをお伺いしたいと思いますが。  集団的自衛権についてはどう考えるかということでありますが、基本的には憲法を改正しなくては無理ではないかというふうに私は思っておりますが、今朝、森本参考人に、集団的自衛権を限定的に使うという考えについてはどうかと尋ねたんですが、つまり地理的にアジア太平洋とか極東だけに限って集団的自衛権を認める、あるいはPKOあるいは日米同盟の共同行動と活動を限定してこれを認めるということについてどうかということを聞いたんですが、これは余りやらない方がいいんではないかと、そういう制限を付けない方がいいんではないかということを、NATO等の例を引きながらいろいろお話を、お答えをいただきましたが、唯一その制限というのは国益ではないかと、クリティカルなあるいはバイタルな国益という唯一の制限は付けてもいいんではないかというような答弁でありました。  我々も党内的には相当議論をこれはしているんでありますが、長官はこの海外任務等も含めまして集団的自衛権行使についてどうお考えですか。簡単にお答え願いたいと思います。
  155. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私個人としては、やや今までの解釈が、あんなふうにきちんと個別的、集団的と二つに峻別できるかなということについては、個人的には疑問を持っておりますけれども、従来から政府としては、集団的自衛権は有するけれどもこれを行使しないという、そういうことで議論をずっと積み重ねてきておりますから、そしてそれで結構諸外国にも浸透しておりますので、私はこの考え方でいって構わないと思いますので、むしろ限定的な解除をするとかそういうことをするとかえって誤解を招くかもしれませんし、そこでもっと大きな議論になるかもしれませんから、現在のままの方がいいと思います。
  156. 高野博師

    ○高野博師君 それではもう一つだけ、自衛隊の海外派遣一般法というか恒久法の制定についてお伺いしたいと思いますが、テロ特措法とかイラク特措法という形でこれまで国際協力をやってきたんですが、これは国会で十分議論をし、審議をし、そして時限立法的に自衛隊の規模、派遣地域、任務等その都度決めるという方が国会のチェック機能を働かせるという観点から望ましいんではないかと私は思っておりますが、長官はどうお考えでしょうか。軽々にあるいは頻繁に自衛隊が海外に出るということは余り考えられないと私は思いますが、そこについてどういうお考えでしょうか。
  157. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 我が党でも、あるいはまた内閣官房でも、自衛隊の海外派遣についてはどういう形の法律がいいのか検討しようじゃないかという話はございます。  しかしながら、今のPKO、国際緊急援助隊法、あるいはまたそれぞれの特措法、どれを取りましても非常に特徴がありますから、それを一般法として果たして法技術的にできるかなという、そういうような懸念もございますので、私はこの問題については慎重に取り扱った方がいいし、国会での議論を十分にされた方がいいんじゃないかなと思っております。
  158. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、外務大臣に何点かお伺いしたいと思います。  自由と繁栄の弧というこの新しい政策について先般講演をされたそうであります。同僚議員からも質問があったようでありますが、いわゆる不安定の弧に倣ったのかどうかは分かりませんが、日米同盟強化とそれから近隣諸国との外交関係強化というのに加えて、新しい基軸として自由と繁栄の弧という政策を打ち出したわけでありますが、民主主義とか自由とか、あるいは人権、法の支配、市場経済、これを普遍的な価値、これを重視する価値の外交だというふうに言っておられますが、ユーラシア大陸の外周に成長している新興の民主主義国、これをつなぐということでありますが、カンボジア、ラオス、ベトナム、一方では中央アジア、そしてウクライナ、アゼルバイジャン等の国々でありますが、私は価値の外交ということについては十分注意する必要があるんではないかというふうに思っておりまして、自由とか民主主義とか市場経済というのは、これは普遍的価値とは言いますが、その制度とか体制、大枠では同じ価値かもしれませんが、しかしその大枠の中でのそれぞれの国の価値観というのは全く違うと思うんですね。その地域によっての歴史的な、あるいは文化的、宗教的な背景というのがありますから、それぞれの国の価値観が違う、歴史観も違う、国家観、社会観も違う、それからもちろん倫理観も違う、あるいはもっと詰めて言うと人生観も全然違うということでありますから、その日本が価値の外交というのを標榜するのは私は若干いかがかという感じがいたします。  そこで、カンボジア、ラオス、ベトナム、これはASEANの枠の中で日本はこの関係を強化していくということを考えた方がいいんではないか、当然考えているとは思うんですが。また中央アジアについては、私も十年前に中央アジアに行きまして、日本のプレゼンスがほとんどないということでこの委員会でも何回か取り上げたことがあります。小泉総理も先般行かれたわけでありますが、この中央アジア日本が出てくるということについてロシアは相当警戒感を持っているんですね、なぜなんだろうかと。これは、この間我々もロシアへ行ってまいりましたが、ロシアはこの日本のプレゼンスについては相当警戒をしているということもありますし、これはまた中国も上海機構等ありますし、別な枠組みをつくっている中に日本が入っていくと。僕はそれは悪くないと思っているんですよ、もう前からやるべきだと思っていたんですが、日本は遅過ぎたんではないかと思います。もう一方で、ウクライナとかグルジアとかというのも、これまたロシアとの関係からいうと非常に難しい国だと思うんですね。こういう国を弧という形で無理に線で結んで、自由と繁栄の弧という外交政策基軸を打ち出すという必要性が本当にあるのかなということであります。  僕は、価値の外交というのは、まあブッシュも自由と民主主義と市場経済ということで、イラクなんかにも、あるいは中東にそういう価値観というか、広めるということを言っていましたが、これも非常にそういう背景を見ると難しいと思うんですね。ここはどういうふうにお考えでしょうか。
  159. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) ちょっと少々長くなろうかと思いますが、自由とやっぱり民主主義とか人権とか法の支配とか市場経済とか、これはいずれも戦後六十年かかって日本がきちんと達成して、このルールに基づいて日本は繁栄をし、結果として、少なくともこの日本の中において、いわゆる貧困とかそういった話とはかなり乖離の多いものになった。これは戦前と全く違ったものだったと思っております。しかも、その間、日本という国は、冷戦構造にも守られたおかげもありますし、アメリカ安保条約が功を奏したこともあって、日本は対外的に交戦をすること一回もなく、間違いなくこれらのものを達成できた。これは間違いなく日本が戦後やってのけた非常に誇るべきところであって、ほとんどの方々余り気が付いておられないとは思いますが、ほかの国から見たら大したものだったと、私はそう思っております。  したがって、こういった実績が日本はありますので、少なくとも資源が全くない日本という国でこれだけできるんだと、資源がほかの国はある国でもできない国があると。それ何がそういうことになっているのかといえば、システムや制度や、政治制度や価値観なんかに違わぬではないのかということであって、我々はそれができたんだから、あなたたちにできないはずはありませんというのが一番のところだと存じます。  また、今自由と繁栄の弧と申し上げましたけれども、これはたまたま地理的に今CLMVとかGUAMとか中央アジアとかいうところが新たに独立をして、旧ソ連邦から独立をして十五の国々に分裂しましたが、それらの国々は分裂して新しくできた国で、いずれもその価値観は民主主義を目指し、自由市場経済を目指しということをやっておる国でありますので。ただ、御存じのように、民主主義というのは、できた最初のころはとにかく非常にエネルギーがあふれていて非常にあちらこちらの方向に暴発する、突っ走るというのは我々も六十年来やってきたことですから、そういった経験が我々にもありますし、その意味ではそういった若いエネルギーというものの発散すべき方向を間違えないようにする。少なくともそういった国々が国内の覇権闘争、権力闘争だけにならずに、少なくとも、経済というものを一つ例に取れば、少なくとも日本という国は、経済的繁栄と民主主義を通じて平和と幸福というのを追い求めて、結果的に成功した国でもあります。そういった価値観を我々としては言っていくのであって、それを押し付けるつもりはありません。
  160. 高野博師

    ○高野博師君 かつてカーターの人権外交のときも、やっぱり武力が背景に持っていたということがあると思うんですね。ブッシュ大統領も、世界を民主化するんだというその背景には、やっぱり武力の、いざとなったら武力の行使ということもあるわけですが、日本が、今度は価値といっても、価値の外交というのは一種のイデオロギーを押し付けるということになってはならないと思うんですが、まあそこは今外務大臣がおっしゃったように、価値を押し付けることはないと。そういう価値が崩れるような状況になったときに日本はどれだけ手助けができるのかなというような問題もありますし、本当のねらいが資源であるならば、あるいは国益ということであるならば、もっと外交のやり方というのはあるんじゃないかな、戦略はもっと練られるんではないかなと。僕は若干思い付き的なイメージをちょっと受けたものですから、本当に大丈夫なのかなと。この価値の外交というのはどこまで外務省、政府の中で詰めて議論をして打ち出した、今度は基軸にすると言っているものですから、本当に大丈夫かなという懸念を持っていたわけであります。これはまた時間があるときにもう少しお伺いしたいと思います。  もう一つ、中南米で反米というか左翼政権が続々と誕生していると。この間、ベネズエラのチャベス大統領が三選をされたと。彼は石油を武器にしながら、近隣諸国に対しても反米的な政権が成立するようにいろんな援助をやっていることもありました。ニカラグアにもかつてのサンディニスタのオルテガが再び出てきたということについて驚いておりますし、ペルーは違いますが、ペルーのガルシア、アラン・ガルシア大統領も、私は何十年か前に彼が最初に出てきたときに街頭演説を見ていたものですから、また出てきたのかなという感じがしまして、ボリビア、チリ、ペルー、ブラジル、ニカラグア、エクアドル、ベネズエラ、この辺が左派政権と言われているんですが、本当のところはポピュリズムなのかなという感じもいたします。  そういう中で、一方ではチリとかウルグアイとかあるいはコロンビアとかというのは親米的な政権でありますが、なぜこういうベネズエラに象徴されるような左派政権が今中南米で生まれつつあるのかということについては、どういう認識をされているんでしょうか。
  161. 浅野勝人

    ○副大臣浅野勝人君) コロンビア大使館勤務の経験を持っておいでの中南米の専門家に釈迦に説法ですけれども、一応お答えをさせていただきます。  中南米では、際立った貧富の格差が長いこと社会的な特徴でございました。近ごろ、民主化の進展により、社会の大多数を占める低所得者層の利益を重視する政権が相次いで誕生しております。今、高野委員御指摘の多くのこの一年間の大統領選挙の結果が御指摘のとおりでありますけれども、先月のエクアドル、今月三日のベネズエラで当選した大統領はその典型的な例でございまして、資源ナショナリズムを訴え、アメリカに批判的な政策を掲げて勝っております。同時に、これらの政権の対米関係に関する姿勢は、実のところ経済的にアメリカと密接な関係にある国もございまして、それぞれの国の事情を反映して、必ずしも一様だとは言い切れません。  これらの政府はいずれも選挙で選ばれた政権ですから、日本としては各国の今後の政策の動向を注意深く見守りながら、民主主義、人権、市場主義経済など、私どもと共有する基本的価値の定着を推進されるように協力関係の強化を目指してまいりたいと存じております。
  162. 高野博師

    ○高野博師君 中南米は元々階級社会的な、貧富の差の大きいところでありましたが、やっぱり九〇年代の保守中道政権の時代に民営化が相当進んだと、規制緩和もやったという中で、要するに新自由主義によって相当貧富の差が拡大したと。ジニ係数でいうと、もう日本なんか比較にならないほどの貧富の差ができてしまったというのがやっぱり背景にあるんではないかという気がいたします。  そこで、アメリカがイラク等について相当かかわっている間に、裏庭と言われた中南米に火が付き始めたというような、火が付いたとまで言えないかもしれませんが、これはアメリカにとっては非常に懸念の材料だと思いますが。  イラク政策も見直しをするというような方向になると、これはアメリカがある意味で少しずつコミットメントを引いていくというか孤立主義的な傾向を強めていくと、若干これは日本にとっても、北朝鮮という問題を抱えているだけにちょっと懸念があるなという気がいたしまして、そういうこれからのアメリカ外交政策というのは少しずつ変化をしていくんではないかという気がいたしますが、特に、こういう中南米、足下でこういう問題が起きてくると難しくなるんではないかなと。その辺はどういう認識をされていますか。
  163. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 確かに、アメリカが中南米のいわゆる経済発展、若しくはその他いろいろなことをこれまで深くかかわってきたというこれまでの歴史的背景があります。その結果、アメリカの大体裏庭とか言われたのが一番最初にひっくり返ったのがキューバだと存じます。以来、長いことキューバ以外の国はそこそこだったものが、このところなってきた大きな背景というのは、多分、石油価格の値上がりもあったでしょうし、またアメリカの対外的な余力というものは軍事的にはなくなったのが二つ。それから、中南米の国々はいずれもこれは選挙で政権が選ばれておりますから、国防省のマターではなくて国務省のマターにすべてなったということも条件として挙げられると思いますが。  いずれにしても、そういった国々に対する関係というもの、アメリカは中南米というものに人材を割く、人を充てるという比率は、少なくともこれまで多くの人たちを対ソ、対ロ関係に最大の人脈、人材を充ててきたと思いますが、これからはやっぱりアメリカとしては対アジアというところが一つ。そして、今までほっておいても大丈夫だと思っていた中南米に対して同様にある程度のアテンション、注意を払わなければならぬというような意識になってきているのではないか。  だからといって孤立主義になるかというのはちょっと今の共和党政権下では少々考えにくいんですが、今のところそういった配慮をしなければならない事態になりつつあると感じていると存じます。
  164. 高野博師

    ○高野博師君 それでは最後に、中国残留孤児の問題についてお伺いしたいと思います。  先般、神戸地裁で判決が出されまして、国の責任が厳しく問われたわけでありまして、帰国残留邦人の自立支援義務を怠ったとか、あるいは国交正常化後も孤児の救済責任を果たそうとしなかった国の無策と、それから違法な帰国制限が積み重なった結果だと、こういう判決でありますが。政府は控訴をしましたが、これは私はやっぱり取り下げるべきではないかなと思っておりまして、日中の間で戦後というか、これをいつまでも引きずっているというのは、日中の正常な、良好な関係の発展のためにも好ましくないと思うんですね。  私もこの残留孤児の問題、もう四、五年、もっと前からかかわってきました。与党のPTの中にも入っておりまして、何度も何度もこの議論をしたんですが、全くまとまらない。それは政府が反対しているからでありまして、特に厚労省なんでありますが、今日は呼んでいませんが。  残留孤児邦人の七割はもう生活保護を受けているんですね。一番若い人で六十三歳。もう平均すると七十超えていると。こういう人に対して、彼らが、一度中国で捨てられたと、また日本に来て捨てられたと、生活保護を受けていると。要するに、二度捨てられたという意識を相当強く持っているんです。そして、彼らが名誉と尊厳ということを非常に重んじる人たちでありまして、そういうことも考えて、彼らの名誉と尊厳のために早急に救済すべきだと思います。  神戸の地裁の判決は北朝鮮の帰国者との比較をしておりますが、必ずしも比較は私は適当かどうかという感じがしますが、いずれにしても、政治的な決断によってこれは決着を付けるべきではないかということだと思います。  今日からまた与党PTが再開するんでありますが、麻生外務大臣はどういう認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
  165. 麻生太郎

    国務大臣(麻生太郎君) 今度のいわゆる中国残留邦人のいわゆる訴訟というのは、神戸の地裁の判決というのは、いわゆる関係省庁は法務省、厚労省、外務省、三省庁ということになります。  それで、御存じのように、昨年ですね、平成十七年の夏、七月のいわゆる大阪地裁の判決、それから今年二月の東京地裁の判決と今回のこの神戸地裁の判決というのはずれております。勝訴、敗訴という具合に明らかに分かれているものでありますので、当然のこととして、これ上級審の審判を仰がねばならぬということになって、今月の十一日の日に、国としてはいわゆる大阪高裁に対して控訴したという背景はもう御存じのとおりです。  これはいろいろ御意見の分かれるところです。ただ、中国残留邦人に対して、いわゆる日本においては帰国旅費の支給はもちろんのことですけれども、日本語の指導とか就職相談とか、いろいろ支援施策というのをこれまで講じてはきております。十分であったかどうか、意見の分かれるところだろうとは存じます。  おっしゃるとおりに、かなり高齢化をされておられることも事実であろうと思いますので、やっぱりこれらの方々が安心して暮らせられるようにするにどうするかという話が多分我々として判断をしなければならぬ。裁判は裁判としても、私どもとしてはその別の意味から、そこらの観点からいろいろ関心を持っていかねばならぬところだと思いますので、ちょっとこれは外務省だけでどうにもなる話ではありませんが、いずれにいたしましても、関係省庁といろいろ施策を詰めていかないといかぬところだと存じます。特に厚労省ということになるのかと思いますけれども。  これ、いろいろ重なっておりますので、ハンセン氏病のときも、六年前、そうでしたけれども、いろいろ判断の難しいところだと存じますので、少なくともこれによって今この場で直ちに控訴を取り下げるというような感じではないと、今の状況ではそのように感じております。
  166. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 高野博師君、残り時間あと二分です。
  167. 高野博師

    ○高野博師君 いずれにしましても、是非、政府としましても、麻生外務大臣としても前向きにこの問題に取り組んでいただきたいと思います。  終わります。
  168. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 続きまして、緒方靖夫君。
  169. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 七日の質疑の際に、イラク戦争について、久間長官から、政府として支持するのを公式に言ったわけではないとの答弁がございました。私は、政府は正式にあの戦争を支持すると述べたと認識しているとその場でも申し上げましたけれども。  長官は、翌日の記者会見でその部分を訂正されました。同時に、イラク戦争について、早まったと今でも思っている、終戦の処理の仕方についてはもう少し詰めておくべきだったと述べられました。  なぜそう思われたのか、お伺いいたします。
  170. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私が先生に答弁したことについては、私が間違って、認識不足だったことについておわびを申し上げます。  三月の十八日に小泉総理の記者会見を私は聞いたとき、あれっと思ったわけでございますが、そのときは閣議決定していなかったんですね。それで、二十日の日に武力行使に実際に踏み切ったときに理解して支持すると記者会見をされましたが、その時点では正式に閣議決定をしておったわけでございまして、そういう意味では私の認識不足だったということを重ねておわび申し上げる次第であります。  ただ、私が気にしましたのは、アメリカが武力行使に踏み切るということで記者会見があったときに、後をどうするんだろうと。クルドとスンニ派とシーア派と、あそこは三つに大きく分かれて大変なことになるんだけれども、どうなるんだろうかなという、そういう心配がございました。  そういうこともあって、もうちょっと慎重にやったらよかったんじゃないかなという思いがあったのがこの間のような発言になったわけで、背景としてそういうことでございます。
  171. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 この発言は、開戦から現在の泥沼と言ってもいい状態に至ったイラクの一連の情勢の評価を長官なりに述べられた言葉かなと、そう思います。アメリカ政権内ですらイラク制裁について失敗を認め、さらに政策転換に向けた動きがはっきりしてまいりました。日本政府がこのまま米軍などの輸送協力を続けるうちにはしごを外される、そんなことだってあり得ると思います。  長官も、戦争を余り支持する気持ちがないとおっしゃられましたけども、そうお考えになるならば、自衛隊派遣見直し、あってもいいんじゃないですか。
  172. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 何回も申しておりますように、自衛隊派遣したのは、戦争が終わって、その後、国連が決議をして、イラクの復興のために各国協力要請をしてきた。そのときに、日本としてもやはりこの際、出すべきであると。出すとすれば民間じゃなくてやっぱり自衛隊しかいないじゃないかということで、そのとき特措法を作って出したわけでありますから、私はそのときの気持ちは今でも変わっておりませんし、その法律に基づいて今言っているわけでございますから、私は差し支えないと思っております。
  173. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 すぐ長官はイラク復興のためとか人道支援のためとおっしゃられますけれども、結局この派遣理由ですね、これは政府も明確に認めておりますけれども、日米同盟を挙げてきたんですよね。法律上も、米軍支援ができる仕掛けをわざわざ作ってそれを行っている、そういうことになっています。  お伺いしますけども、これまでイラク特措法に基づいて米軍の輸送を何回、何名輸送してきましたか。
  174. 木村隆秀

    ○副長官(木村隆秀君) これまで、十六年の三月から十八年の十二月まででございますけれども、四百二十五回行っております。
  175. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 何名輸送してきましたか。米軍、米兵です。米兵の輸送。
  176. 木村隆秀

    ○副長官(木村隆秀君) これは関係国個々のことについては公表しておりませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  177. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 まあそうやって政府は隠すわけですけども、イラクで輸送、航空輸送支援をやって米軍を運ぶ、米兵ですよ、兵士を運ぶ、物資を運ぶ。これが軍事的に何を意味するかというと、結局米軍側の認識というのは、ちょうど米中央空軍のノース司令官が述べていますけれども、素早く戦闘に向かわせ、戦闘任務の用意を整えさせる上でと言って、空自の活動を賞賛しているわけですよ。ですから、そういう活動が行われている。つまり、この法案アメリカの戦争協力活動、あるいは米軍支援、それを自衛隊の本来任務とするという、そういう点で大きな問題点があるということを指摘しておきたいと思うんです。  もう一点お聞きしますけども、前回の委員会で、長官が安保理決議なしの活動に対する自衛隊協力問題について、テロ特措法法律的に危なっかしい、アメリカが戦争を仕掛けるのに後方支援しているからだと、そういう答弁をされております。これは議事録に、ここにあるとおりなんですけれども、それを読み上げただけなんですけども、長官のこの答弁は間違いありませんよね。
  178. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それは間違いありません。  私があのとき、法律をつくるときに、武力攻撃と一体化しないように極力気を遣ったつもりでございますから、非常にぎりぎりのところで武力攻撃と一体化しないという形でインド洋での給油という、そういうふうに限定した形でやっておりますけれども、アメリカに対する、アメリカを中心とする多国籍軍に対する支援であることには変わりはありません。
  179. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 その危なっかしい、法律的にと言っても、危なっかしい理由として長官は、アメリカが戦争を仕掛けるのに、後方支援として周辺事態でもないのに応援する仕掛け、これがあるんだということを理由まで挙げているわけですよね。私は、やはりこのテロ特措法についても、これが本来任務になる、されるわけですね、今度の法律によって。これは、やはり非常に重大な問題があるということを指摘しておきたいと思います。  次に、談合温存のメカニズムという捨ててはおけない問題、それについて質問したいと思うんです。  防衛庁は今年の六月、入札談合の再発防止策として、OBを含む業界関係者との接触制限などを盛り込んだ最終報告書をまとめました。同時に、対応要領というものを決めております。この対応要領には、施設庁職員は、職務上必要な場合を除き、防衛庁又は施設庁OBを含む業界関係者と接触してはならないということがここに書かれております。これは間違いありませんね。
  180. 北原巖男

    政府参考人(北原巖男君) 今先生御指摘の六月十四日の通達でございますが、施設長官名で各防衛施設局長等に出しているもの……
  181. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 間違いない。
  182. 北原巖男

    政府参考人(北原巖男君) ええ。そして、その中身の一つには、そういったものが含まれております。
  183. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 重要な中身なんですね、これは。  談合事件をめぐっては、防衛庁OBと現職幹部で組織する施友会という親睦団体の存在が明らかになりました。この団体の実態について私が二月三日の本委員会でただしたのに対し、後日、施設庁から概要資料が提出されました。施友会は、現職四百名、OB千八百名の二千二百名で構成される組織で、談合事件で逮捕された元技術審議官の生沢被告ら三名を始め、談合に関与したゼネコン、マリコンが多数メンバーに加わっている、こういうことがそこで分かりました。  今回の対応要領の趣旨に照らすなら、こうした親睦団体を介しての現職とOBの接触についても、当然何らかの厳格な措置を講ずべきだと思いますけど、その点をお伺いいたします。
  184. 北原巖男

    政府参考人(北原巖男君) ただいま御指摘の施友会でございますけれども、構成メンバー等は先生御指摘のとおりでございます。  この施友会につきましては、あくまでも親睦団体でございまして、他方におきまして、先ほど私どもが六月十四日に出した通達、これは今回のその談合事件等を踏まえまして、また職員のアンケート調査等を踏まえまして、この業務の的確な、厳正、公正かつ透明性を持った業務の執行に努めるといった観点から定めたものでございまして、施友会の親睦団体、これと直ちにその親睦団体との関係について、親睦団体のメンバーになっている、あるいは春、秋、総会等がございます。その総会には私も参加しておりますが、そういった中で、また今回の、私は、集まった皆さんに、今回の事件の調査の内容、そして再発防止策等々について、その場をまた使ってしっかりとOBの方々にもいろいろ申し上げているところでございまして、直ちに施友会を云々ということは全く考えておりません。
  185. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 そういう総会に施設長官が参加をされるとは初めて伺いましたけれども、この対応で、この要領にある対応で問題だと、そういうことが指摘されている、しかしそれでやるんだというのが今の答弁で、それでは全く透明性は確保されないと思うんですね。  最終報告書を見ますと、一九九八年の調達実施本部事件の教訓が生かされなかったことへの反省と記されておりますけれども、当時の調本事件の際にも調本会とか不惑の会とか土曜会、月例経済会といった親睦団体が次々と明らかになって、現職と天下りOB、発注者と受注者が一体になって、親睦を隠れみのに情報収集を目的とした会合とか、あるいは接待ゴルフなどを繰り返していた、そういう実態が大問題になってきた、そういう事実があります。しかし、防衛庁はこうした実態にはメスを入れずに、抜本的な対策を講じてこなかったわけです。  そこで、長官にお伺いしますけれども、調本事件の教訓、反省というならば、やはり国民から官、業の癒着の隠れみのと指摘されるこの親睦団体についても、やはり厳格な対応を取るべきじゃありませんか。
  186. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今、防衛施設庁の問題につきましては、施設長官から話がございましたように、そのような要領を作って今徹底を図っているところでございますけれども、この趣旨に従いまして、業界関係者との対応要領については、防衛庁本庁の契約等担当者につきましても、御指摘の建設工事等に係る対応要領と同様の内容の要領を今策定すべく鋭意検討しているところでございます。多分そのような方向になろうかと思います。
  187. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 いや、それじゃ到底駄目だと私は思いますね。  防衛庁が私の求めに応じて今年四月に提出した各種親睦団体の概要と題する資料があります。これは初めて役所が開示したものだと伺っておりますけれども。  そこでは、少なくとも本庁、施設庁、技術研究本部、防衛大学校、陸海空の自衛隊などに現在二十六の親睦団体が存在し、定期総会等を開いているということです。これに属する現職と天下りのOBの数、これは現職が八千六百二十名、OBは八千五百十名に上るわけです。  この中には、先ほど指摘した施設庁の施友会も含まれているわけですけれども、そのほかにも本庁の管理局原価計算部と契約本部の現職とOBで構成する調友会、あるいは防衛装備品の研究開発を一元的に行っている技術研究本部の現職とOBで構成する技本会、やよい会、卯月会など、予定価格の積算や装備品の受注にかかわる部署にまで現役とOB、つまり発注者と受注者が一体となったそういう形での組織が存在しているわけですよ。これは私は非常に大きな問題だと思います。  防衛庁で調本事件が起きた一九九八年当時、旧大蔵省では金融検査部をめぐる現職とOBの親睦団体の問題があって、当時の松永大臣が、親睦団体に現役職員が加わって一緒の会合を行うのは好ましくない、そう言って、国会で答弁して、親睦団体から現職は脱退するようにと指示したことがあります。  こういうことにかんがみても、私は、同じような問題、同じメカニズムがある。ならば、私は長官に対して求めたいんですけれども、この間、防衛庁のいろんな問題に対しても、要領を作った、何を作ったと言われました。しかし、それがきちっと機能する保証がないというのは、現役とOBが一緒になっているから、受注者と発注者が一緒になる。つまり、大企業と防衛産業と自衛隊が一緒になるという、そういう仕組みがつくられているからだと思うんですよね。そこの透明性をしっかり確保する、そのためには少なくとも親睦団体から現職は抜けるという措置をとられる、あるいはそれを検討するという、それが必要じゃありませんか、長官
  188. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 親睦団体から要請があったときに、現在の状況はどうなっているかというような形で講演を頼まれるとかいろんなことがあると思うんですね。そういうときに出掛けていっていけないかどうかということまでなりますと、そこはやっぱりなかなか難しい点もあろうかと思います。  だから、やっぱり要は自分が在職中にかかわっていた仕事とそれから再就職した仕事との関係がきちんと切れているとか、ある一定の金額以上のことはしなかったとか、何かそういう形での関係をきちんとした方がいいわけでして、全く交流をするなと言われても、同窓会に出掛けていったら一緒になることだってあるでしょうし、なかなか難しいと思うんですね。  だから、要はそこはみんながどうやってけじめを付けるか、きちんとモラルを持って対応するか、そういう問題に最後は行き着くんじゃないでしょうか。
  189. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 緒方君の質疑時間は終了しております。
  190. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 そこで、今長官おっしゃられたことも、幾つかの対策を述べられたのだと思います。  そうすると、やはりこの問題、透明性を確保する、疑惑の種を残さない、それが肝心なわけで、私はそこを求めているわけで、それについては検討していただけますよね。
  191. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 少なくともやっぱり、防衛庁があるいはOBも含めて国民の信頼を得なければならないわけでありますから、とにかく疑惑の持たれないように、透明性の確保についてはこれから先も努力していこうと思います。
  192. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 終わります。
  193. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 これは質問通告は事前にしておりませんが、基本的なことですので、お願いいたします。  先ほど長官も触れられておりましたけれども、今回の省への移行については国民の間にいろいろな不安の声が高まっているわけなんですが、そこで伺いますが、今回の法改正で国際平和協力活動が本来任務化されるわけですが、その際、シビリアンコントロールを従来以上に一層の充実を図るため何らかの措置をとられたかどうか、とられたとしたらどういう点をとられたか、教えてください。
  194. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は、現在でも一応シビリアンコントロールというのは機能していると思っておりますので、制度的にそういう特別のことは講じておりません。
  195. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 一九九七年の八月ごろ、橋本内閣のときに省庁再編が議論されたとき、防衛庁の省への移行問題が検討課題となりました。そのときは、政府内で省への移行に賛成する派と反対する者がほぼ相半ばしたと報じられていました。結果的に行政改革会議の中間報告では、防衛省又は防衛庁の両論併記となったわけなんですが、今回、政府内ではこの省への昇格について反対意見みたいなのはあったんですか。
  196. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それは聞いておりません。ほとんどないと思います。
  197. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 制服組の方ではいかがでございますか。
  198. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それも反対はないと思います。
  199. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 防衛庁、どなたでも結構ですが、自衛隊が入隊するときに宣誓させますね。それはどういう宣誓の中身か教えていただけますか。
  200. 増田好平

    政府参考人(増田好平君) お答えいたします。  服務の宣誓と申しまして、読み上げてよろしゅうございましょうか。  「宣誓」としては、「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」というものでございます。  今は、そのほかに、いわゆる補職、異動のときの辞令の交付のときにも服務の宣誓をするようにしております。
  201. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 そうしますと、今の宣誓文にあるように、自衛隊が海外に出て、例えば現在のイラクの問題のように出るということについては、自衛隊のその隊員は納得して、前の、今読み上げていただいた宣誓文を誓ったわけですが、その中には今の海外派遣の問題はないわけですね。そうすると、その点はどういうふうに整合性を持たせるんですか。
  202. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それは、今の中にもありますように、法令を遵守しということがあるわけですから、法令に従って自衛隊は行動しているわけであります。
  203. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 現行の自衛隊法第三条一項で、自衛隊は、必要に応じ、前半は省きますが、必要に応じ、公共の秩序に当たるとありますが、公共の秩序に当たるとは具体的にどういうことを指すのでしょうか。
  204. 西川徹矢

    政府参考人(西川徹矢君) お答え申し上げます。  公共の秩序の維持に当たると、活動を行うという任務でございますのでそういうことになっておりまして、これは自衛隊法規定されております第六章に規定されている行動のうち、治安出動、それから海上警備行動、それから対領空侵犯措置と、こういうものを指しております。
  205. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 防衛庁長官にお伺いいたします。  自衛隊法第三条において、自衛隊は、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とするとあり、海外活動をこの間、雑則、附則扱いにしてきたのはなぜでしょうか。
  206. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 正直言いまして、ずっと経緯によって後からそういう任務が加わってきたという、そういう流れがあったと思います。そのときに、やっぱりその新しく加わった任務雑則として次々と加えてきたというのが事実上の経緯じゃないかと思っております。
  207. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 長官にいま一つお伺いします。  自民党は、去る六月十四日に、自衛隊が海外活動を行う際の派遣要件を定めた国際平和協力一般法案、いわゆる自衛隊海外派遣恒久法案をまとめて、近く国会に議員立法の形で提出する予定だと聞いていますが、長官はこの恒久法の設定についてどのようにお考えでしょうか。
  208. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 度々この委員会等でも発言しておりますように、今まで海外に出ていきました自衛隊活動につきましては、そのそれぞれがやはりいろんな特色があったわけでございまして、それをまとめて一つ恒久法にくくることができるかどうか。私は正直言って立法技術的にもなかなか難しい、目的とか背景が違いますので。そういう意味では、これはむしろ私よりも法制局長官等が答弁に立つ方が正しいのかもしれませんけれども、そういうふうに性格の違う中身を一つの法で恒久法としてそう簡単にできるかなという、そういう思いがいたしております。これは、したがいまして、内閣官房の方でこれから先検討するということでございますけれども、まだ具体的な検討作業が入っているとは聞いておりません。
  209. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 長官は去る十月二十七日の衆議院本会議において、防衛庁が庁とされている理由についての質問に対し、かつての防衛庁は、防衛力整備や人事といった管理的な業務が主たるものであったことが庁とされていた主な理由と答弁されました。言い換えますと、省へ移行することによって政策面を強化したいとの御意向のようですが、庁のままでは政策面については何らかの具体的な支障があったのかどうか、いま一度確認させてください。
  210. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は、防衛庁と言われながらも、かなり最近におきましてはもう政策面まで踏み込んで実態としては機能しておったと思います。それをむしろ組織体として防衛庁ではなくて防衛省として位置付ける必要があろうかと思いまして今法律を出しているところでございまして、ある意味では少し遅きに失したというような、そういう感じすらするわけであります。
  211. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 参議院外交防衛委員会の調査室の資料によりますと、今回の防衛庁を省に移行するに際して、省名を決める際、防衛国際平和省という名前も候補の一つに挙がっていたようですが、現在、イラク戦争に見られるとおり、暴力が暴力を呼ぶ連鎖的な状況が際限なく広がりつつあって、世界の多くの人々が大変危惧しています。そのような状況下で、コスタリカはソロモン諸島に次いで世界で二番目に平和省が設立される国になる見通しのようです。現在、アメリカなど世界二十四か国でも平和省設立の動きが活発になっているようですが、防衛庁を省に昇格させるのであれば、我が国でも平和省を設立し積極的に現行憲法の平和理念を世界じゅうに広めたら周辺諸国からの信頼も高まると思いますが、長官はそのようなお考えはございませんでしょうか。
  212. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 平和省というのは、まあ平和というのはだれしもが希求するものでございますけれども、それはもう非常に広い概念でございます。その一方、自衛隊の主たる任務は我が国の防衛でございますから、やっぱりはっきりした形での主たる任務であります防衛というのを表に出して、防衛省とした方が私は一番いいんじゃないかと思っております。
  213. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 次に、沖縄の問題に一、二点触れさせていただきます。  新しい知事が誕生しまして、普天間基地の問題については三年以内に解決するという趣旨の公約をしておりますが、長官もそれに対して柔軟な対応姿勢を見せているようですけれども、具体的にどういう形で三年以内に普天間問題を解決されるおつもりでしょうか。
  214. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 普天間の問題は、これも何回も言っていますように、十年前に普天間を返還するというクリントン・橋本会談で合意をしまして、それを受けてSACO合意でその代わり代替施設を造るということで、キャンプ・シュワブに設置するということでしたわけでございますが、その後、それが地元の協力等その他いろんな紆余曲折がありまして実現しないために返還ができないわけであります。  普天間の危険を除去する、廃止するためには、とにかくこういう意味、その意味でのアメリカの合意もあります普天間の代替施設を造るということが大事でございますから、それを目に見える形で動き出しますとまた違った対応が出てくるんじゃないかと思って、またこの辺については、地元の市町村ももちろんでございますけれども、特に今度当選されました仲井真知事さんとはもう非常に胸襟を割っていろんな話をさせていただきたいと思っているところであります。
  215. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 県民の世論調査をしますと、大体七割から八割くらいが県内に新たな基地を造るということについては反対しておりますけれども、前回の質問のときに、特措法を作って知事が持っている海面の埋立て権限を取り上げるという、そういう趣旨のお話がございましたけれども、今その点について県民の多くが大変懸念しておりますが、長官は、そのような今の県知事との新しい関係からして、そういう法律を作るという考えは全く持ち合わせていないと受け取ってよろしゅうございますか。
  216. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 従来のままの反対だったら今の状態がずっと続くということを沖縄県民の方が理解されて、やはり政府協力しながら、協議しながら、どういうふうにしたら普天間が返還されるのか、そういうことについて訴えられた仲井真さんが当選されたわけでございますから、沖縄の県の民意も見えてきたわけでございますから、その民意を大事にしながら私は解決策を詰めていきたいと、そう思っているところであります。
  217. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 これは前の防衛庁長官のときもお伺いしましたけれども、再編問題が片が付いた後、沖縄の米軍基地は全国の専用施設の何%残るとお考えですか。
  218. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 嘉手納以南の土地がかなり返ってまいりますので、どのぐらいになりますか、今数字をここで計算しておりませんから直ちにちょっと申し上げることはできませんけれども、今度の再編の問題が片付きますとかなりの面積が返ってくることになるんじゃないかなと思っております。
  219. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 正直申し上げて、衆議院の質問では、その衆議院での答弁では大体〇・八%返るということでございますが、この参議院では、再編問題が全部片付いたとしても沖縄には依然として七〇%の基地が残るという御答弁でした。ですから、簡単にこの再編によって沖縄の基地が削減されるというふうにはなかなか受け取れないわけですが、その辺をもう少し県民にも分かりやすく説明していただきたいと思いますが。
  220. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) それは後日また詰めたいと思いますが、単に面積といいましても、提供されている山林等、こういうところと、本当に基地として、施設として提供しているところでは価値が全然違うわけでありますから、そういうところの面積だけで果たして言っていいのかどうか。いわゆる普通の住宅地を含む雑種地、そういうところでどれだけ減るかとか、そういうのも結構大きいわけでありますので、その辺については住民にとってかなりの部分が私は今度の米軍再編によって返ってくるというふうな、そういう理解をすることができるんじゃないかなと思っております。
  221. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 あと一問だけ。  実は、今長官がその雑種地なんかの問題をおっしゃったわけなんですが、今、沖縄には基地を提供している、基地を抱えている市町村が二十五あるわけなんですね。そうしますと、基地に提供している面積というのは大体二万四千ヘクタールくらいあって、基地以外の面積が九万九千ヘクタールくらいと言われているわけなんですね。  それで、私は絶えず政府基地の中の生産高と基地の外の生産高を比較してみてくださいと申し上げているわけですが、まだその答弁が出てこないわけなんですが。どうぞ長官も、沖縄県民の基地の負担を軽くするとおっしゃるならば、経済的な面で、基地を抱えた方が本当に経済的なプラスになるのか、基地を抱えない方が経済的にプラスになるのかということについても真剣にお考えいただきたいと思います。
  222. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 基地といってもほとんど手が付かない山林等もございますから、そういったところで生産性が上がる上がらないという議論は、それは、そこは恐らく伐採もできないようなところでございましょうから、そういうところの中での生産性という議論自体が果たしてどうかなというふうに思う点もございますが、せっかくの御指摘ですから、そういう角度からも眺めてみようと思います。
  223. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 分かりました。  ありがとうございました。
  224. 柏村武昭

    委員長柏村武昭君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十分散会