○岡崎トミ子君 私は、
民主党・
新緑風会を代表して、
内閣提出、
石綿による
健康被害の
救済に関する
法律案に
反対する
立場から
討論を行います。
静かな時限爆弾と言われる
アスベスト、この
アスベストを
日本はこれまで一千万トン近くも輸入してきました。この
アスベストを吸い込んだことによって発症する中皮腫や肺がんは大変恐ろしい病気です。三十年から四十年という長い
潜伏期間を経て発症したときには、効果的な治療法もなく、短い期間で命を奪われてしまう場合も多いのです。既に二万人近くの人の命が奪われました。
アスベストの
危険性は早くから指摘されており、
政府もその
危険性については、遅くとも一九七二年、自らの研究
報告によって
認識をしておりました。その後、
アスベストの
危険性についての
認識が深まり、各国が規制を強化し、さらには
アスベストの
使用を禁止していく中、
日本の
対応は後手に回り続けました。
この新法を作るに当たって、こうしたことの反省を生かして
政府は
責任をどのように感じているのでしょうか。残念ながら、申し訳ないの一言も謝罪もありませんでした。国の
責任を認めていないのです。
政府は、予防的アプローチの意識が浸透していなかったことや、
関係省庁間の連携が不足していたことなどを認めていますが、だから仕方がなかったのだと言わんばかりです。こうした問題の指摘は、過去を検証して間違いを正すための出発点でこそあれ、国の
責任を逃れることはできません。
当事者も入れて第三者機関を設置して過去の
対応を検証すべきとの我が党の
意見に対しても、各省庁がそれぞれ自分で検証したから大丈夫という始末です。国の
責任が焦点になっているこの問題で、とてもではありませんが、お話になりません。
この法案は、
アスベストによって深刻な
健康被害を受けながら労災
補償の
対象とならない皆さんに対して、すき間のない
救済を迅速に行うための法案であると説明されてきました。しかしながら、この法案による
救済制度は、労災
補償との間に大きな
格差があることが歴然としております、明らかになっており、すき間のない
救済とは全く名ばかりだということが明らかになりました。
すき間から漏れて救うことのできない
被害者、それは
アスベストの
危険性も知らされず、したがって身を守るすべもないまま、たまたま
アスベストを扱う工場の近くに住んでいたという
理由だけで、ある日突然に中皮腫や肺がんなどという恐ろしい病に侵され、生命や健康を奪われた代償が
総額三百万円というのは余りにも低過ぎ、公正なものとは言えません。
同じ
アスベスト被害者でも、労災
補償の場合には支給される通院費、休業
補償、遺族年金、就学援護費が新法の
対象となる方々には支給されず、その代わりに月額約十万円の療養費が支給されるだけです。不幸にして
被害者が亡くなった場合の葬祭料も、労災
補償と新法の
救済制度では額に大きな開きがあります。
同じ病気なのに何でこんなに違うのか、国が
アスベストの危険を知ったときにすぐに
アスベストの
使用を止めてくれればこんな病気にはならなかったのに、これが
被害者の声です。
アスベストによる疾病に
対応できる専門の医療機関は限られており、
居住地域などによっては、病院に通うための交通費だけで多額の出費を迫られている人も少なくなく、月額約十万円の療養費など交通費だけで飛んでしまうという悲鳴も聞かれています。
子供のころ、何も知らずに
アスベストを扱う工場のわきで遊んだために、三十年から四十年たって発症した住民
被害者の皆さんは今、正に働き盛りです。そうした
被害者のお子さんの中には、家計を支えるために学業の継続や進学を断念してしまったという方もおります。月額約十万円の療養費では、このお子さんたちの就学費を応援するにも不十分であります。結果として、
被害者の
子供は進学できない。そんな権利は国にはありません。
また、労災
補償にも多くの問題があります。時効の問題がその一つです。
労災には二年という時効がありますが、中皮腫などの病気は
潜伏期間が長く、発症したときには時効になってから何十年もたっている場合が多く、そのような場合、労災の
補償を受けることができなかったのです。
政府の
救済制度では、この問題の解決も先延ばしにし、新たな矛盾を抱えてしまいました。
政府案では、時効によって労災
補償を受けられなかった遺族に原則二百四十万円の遺族特別年金を支給することとしており、それに対して労災
補償は、暴露業務に従事していたときの、仕事をしていたときの給与を基に算定されるため、
潜伏期間の長い
アスベスト関連疾病の場合には、遺族年金が時効事例の原則二百四十万円に比べて大幅に下回るケースが出てきてしまいます。なぜ時効の人の方が有利なのかという疑問は当然であります。明らかに制度上の不備であります。
民主党は、昨年の第百六十二回通常
国会に、
アスベスト関連疾病については時効を適用しないようにすること、労災法の改正案を提出いたしました。これが成立していれば、このような矛盾は起きませんでした。
さらに、
政府の
救済制度の財源は、全事業者、国、
地方公共団体による
負担となっていますが、この拠出の根拠について、
政府の
答弁は説得力が全くありませんでした。
また、国は事務費の二分の一を
負担することは明らかになっていますが、最終的な給付の
負担割合もあいまいなままです。やはり、
アスベスト対策が後手に回った行政の
責任を明確にして、
政府自ら前面に立って説明
責任を果たさない限り、理解は得ることはできません。
私たちは、
健康被害者の無念さ、不安をひしひしと感じ、
救済が急務であることを
認識してきました。しかし、余りにも問題の多い
政府案を前にして、
対応に苦慮してまいりました。悩みに悩んだ結果、私たちが立法府としてできる手当てとして、最低限の修正を求める決断をいたしまして、病状や個々の状況に応じて療養手当を増額できることとすること、就学援護費の支給をすること、この二つに絞った修正であります。これならば与党の皆さんの理解を得られるのではないかと期待しましたが、かないませんでした。この
救済制度が
被害者に寄り添うものではなかったことを改めて浮き彫りにする結果となりました。これでは、この法案に
賛成することはできません。
さて、この
アスベスト被害を受けられた皆さん、御家族の皆さんの痛みと苦しみを少しでも和らげる
努力とともに、これ以上の
被害の
拡大を食い止めるため、総合的な
取組が不可欠となってまいります。
国民の健康と安全を守り、
環境汚染を
防止するためには、私たちの身の回りにある
アスベストを計画的、段階的に除去し、廃棄し、無害化しなくてはなりません。そのことによってノン
アスベスト社会を実現しなければ、
国民の将来不安は決して消えることはありません。
そこで、
民主党は、
さきの
国会に、国、
地方公共団体、事業者の責務を定め、
国民とともに一体となって
アスベスト対策に総合的に取り組むための基本的枠組みを定める
アスベスト総合
対策推進法案を提出いたしました。小池
大臣、今日のこの
委員会の中でも、
被害者の皆さんとお会いをしたときにがけから飛び降りるからねと言った言わないということで議論になりましたけれども、私は今こそがけから飛び降りる気持ちになっていただきたいというふうに思っています。
アスベスト問題はやっとスタートの地点に立ちました。この
アスベスト問題を解決するためには、
民主党の
アスベスト総合
対策推進法案を制定して、
アスベスト対策を総合的に
推進する、この
必要性を改めて訴えて、私の
反対討論を終わります。(
拍手)