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2006-06-01 第164回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年六月一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月三十一日     辞任         補欠選任         主濱  了君     平野 達男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩城 光英君     理 事                 加治屋義人君                 常田 享詳君                 小川 勝也君                 小川 敏夫君                 和田ひろ子君     委 員                 岩永 浩美君                 岸  信夫君                 国井 正幸君                 小斉平敏文君                 野村 哲郎君                 三浦 一水君                 郡司  彰君             ツルネン マルテイ君                 平野 達男君                 松下 新平君                 谷合 正明君                 福本 潤一君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    副大臣        農林水産大臣  三浦 一水君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       小斉平敏文君    事務局側        常任委員会専門        員        高野 浩臣君    政府参考人        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       松本 義幸君        農林水産大臣官        房総括審議官   佐藤 正典君        農林水産省総合        食料局長     岡島 正明君        農林水産省消費        ・安全局長    中川  坦君        農林水産省生産        局長       西川 孝一君        農林水産省経営        局長       井出 道雄君        農林水産省農村        振興局長     山田 修路君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農業担い手に対する経営安定のための交付金  の交付に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人  農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律  案(内閣提出衆議院送付) ○主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○理事の辞任及び補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨五月三十一日、主濱了君が委員辞任され、その補欠として平野達男君が選任されました。     ─────────────
  3. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案の審査のため、本日の委員会厚生労働省医薬食品局食品安全部長松本義幸君、農林水産大臣官房総括審議官佐藤正典君、農林水産省総合食料局長岡島正明君、農林水産省消費安全局長中川坦君、農林水産省生産局長西川孝一君、農林水産省経営局長井出道雄君及び農林水産省農村振興局長山田修路君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野村哲郎

    野村哲郎君 自由民主党の野村哲郎でございます。  私は、まず三法の質疑に入る前に、今日から始まります米国牛肉リスクコミュニケーション、このことについての、まず前段、御質疑をさしていただきたいというふうに思います。  五月の十九日、二十日の新聞に一斉に記載されたわけでありますが、要は米国牛肉輸入再開に向けて六月末の日米首脳会談、こういうものを踏まえながら、小泉総理ブッシュ大統領牛肉の話はさせないと、こういったような取組が現在行われておると、こういったような風潮の記事であります。  私、三月九日の当委員会におきましても、中川大臣の方に基本的なスタンスについての御質問をさしていただきました。それはそれとしまして、こういった新聞報道がなされ、もうあたかも七月の初めには輸入再開に至るのではないかと、こういう先行して記事が載っているわけであります。  今日に至るまで、三月九日、中川大臣の御答弁を聞いておりますが、食の安全あるいはリスク管理厚生労働省農林水産省が担っており、二度とこういうことを起こさないと、こういったことでアメリカから提示されるいろんな報告書についても検証して、いろんな対策をしっかりとして判断をすると、こういう大変心強い中川大臣の御答弁をいただいているわけであります。  したがいまして、こういった再開が既定の事実みたいな感じで出ておるわけでありますけれども、今日に至るまでの中川大臣が、まさか心変わりされたとは思いませんけれども決意のほどをお伺いをいたしたいと思います。
  7. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) おはようございます。  今、野村委員から御指摘ありましたように、結論からいうと、全く心変わりはしてございません。一月二十日に危険部位入り米国牛肉水際発見をされた。それ以来、我々はリスク管理機関といたしまして、厚生労働省とともに、再発の防止、それから今回のこういう事案の発生の原因の徹底の糾明、この二点について我々はきちっとやるべきである、そしてまた、そのことをアメリカ側に何度となく、私からも、また政府事務当局側からも伝えているところでございます。  五月の十七日から三日間にわたりまして、アメリカ側厚生労働省農林水産省外務省とで協議をしたところでございまして、それを受けまして、本日から全国十か所で説明会を開催しているところでございます。  我々といたしましては、政治的あるいは外交的な要素とは全く別の次元で、リスク管理機関としてきちっとした作業一つずつ前に進めていくと。決して、タイムスケジュールをつくって、いついつまでにとか、いついつまではやらないとか、そういうことは一切考えておりません。我々は、あくまでもリスク管理機関としての作業をして、冒頭申し上げた二点についての責任を全うしていきたいというふうに考えております。  国民は、もとより食の安全だけではなくて安心を求めているわけでございます。安心につきましては、我々がきちっとした作業を仮に終えたといたしましても、最終的には消費者の御判断でございますから、ここはアメリカ側に言っていることでありますけれども、仮に手続、我々の手続が終了して再開したとしても、仮にでありますけれども、しても、消費者がこれはもう安心できないということで食べない、買わないということになれば、アメリカ側としても決してアメリカ側が求めている方向にはならないでしょうと。だから、私は何回も、急がば回れで、一つ一つやることがアメリカ側要望というものにも合致するのではないでしょうかということも含めて申し上げているところでございまして、我々は今鋭意、この説明会において国民皆様方の御意見というものをきちっと説明した上でお聞きするということに今全力を傾注しているところでございます。
  8. 野村哲郎

    野村哲郎君 ただいま大臣答弁安心できる部分も実はあります。といいますのは、タイムスケジュールでやっているんじゃない、あるいは政治的な決着を図る、そういう問題ではないと。あくまでも国民安心、安全、そこに主眼を置いてやる、こういうお話でございました。  そうなりますと、当然、この責任の重さというのはどこに来るかといいますと、先般開かれました専門家会合だと私は思います。といいますのは、そういう政治的な要素が働かないとなりますと、じゃ専門家会合でどこまで詰め切ってきているのかと、こういうことがやはり今度問われてくるのではないかと、こういうふうに思います。  そこで、先般行われました専門家会合、これの内容について、ひとつ厚労省松本部長の方から御答弁をいただきたいと思います。
  9. 松本義幸

    政府参考人松本義幸君) 委員お尋ね日米専門家会合につきましては、米国側から農務省のランバート副次官ほか担当者出席し、日本側からは外務省農林水産省及び厚生労働省からのそれぞれの担当者出席して、五月十七日から十九日までの間、外務省で開催されたわけであります。  本会合におきましては、本年三月の日米専門家会合において実施することとされておりました日本側リスクコミュニケーションですとか、米国側の対日輸出施設の再調査の結果等について議論を行った次第であります。  具体的に申し上げますと、日本側からは、四月に行いましたリスクコミュニケーションにおきまして、輸入手続再開に慎重な意見が全般として多く出される一方、一部には再開を希望する意見もあるなど、本件については国民意見を得ながら対処していくことが必要との認識を米国側に伝えたところであります。  一方、米国側からは、三十五施設のレビューの結果、本年一月二十日以降に追加された要件を含めた対日輸出プログラムへの各施設対応状況については、一部の施設手続書類上の問題点が確認されたものの、製品の対日輸出条件への適合性等に影響を及ぼすといったものではなかったということ、また発見された問題点については早急に改善される予定であるということ、また昨年十二月十二日から本年一月二十日までの間に二十五施設処理され対日輸出された牛肉等につきまして、保管されていた記録を検証した結果、問題点発見されなかったことが確認されたとの説明があったわけであります。  さらに、輸入手続再開のために必要な措置として、日本側による事前現地調査の実施、適格品リスト日本側への提供等について意見交換を行いますとともに、香港及び台湾において発生した牛肉の不適格事例について説明を聴取したところであります。  政府といたしましては、本会合の結果を踏まえ、今後どのように考えるかということで日本側考え方を整理して、本日、仙台を皮切りに十四日まで全国十か所で開きますリスクコミュニケーションを行いまして、その結果を踏まえ、米国側輸入手続再開のための措置調整を行うということとしたところであります。
  10. 野村哲郎

    野村哲郎君 今、松本部長の方から御答弁をいただきましたが、非常に二、三疑問に思うところがございますので、質問をさせていただきたいと思います。  その一つは、今、松本部長お答えになりましたように、三十五の施設というふうにおっしゃいました。私ども、最初から聞いておりましたのは、当初聞いておりましたのは、認定工場は四十施設あると、そのうちの二施設は今回の輸出プログラムを違反した、犯したということで認定を取り消された。あと三つ、今三十五とおっしゃいました、四十から二を引きます、三十五になりますとあと三つ施設はどうなっているのか、その状況を教えていただきたいと思います。
  11. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 今先生の方から御指摘のありました三施設でありますけれども、このうちの二つは、これはアメリカ側食肉処理業者として最大手のところでありますけれども、その企業再編合理化に伴う事業所の閉鎖というふうに私どもは聞いておるところでございます。  また、残りの一つにつきましては、これは認定は自主的な申出で行いますけれども、今回、一業者については、その企業の自主的な意向として認定の取下げの申請をしたというふうに聞いております。
  12. 野村哲郎

    野村哲郎君 前も申し上げましたけれども日本からアメリカ輸出する認定工場というのは、厚労省なりあるいは農水省の皆さん方事前工場に立ち入って立入検査をされて、厳重なるチェックをされて、そしてその結果、アメリカからの査察も受けて認定を受けている、こういうふうに聞いております。  そうしますと、アメリカが当初認定いたしましたこの四十工場、いかにも私はいい加減だと、そういうふうに思うわけです。それは、二つ工場は当然この輸出プログラムの違反を起こしているわけですが、あと二つは何か統廃合だとか、あるいはもう自分から認定を降りたとか、そういういい加減な工場、この三十五の中にもまだ残っているんじゃないか。そういうところで処理されたり出てくる、日本への輸出牛肉というのは本当に信用できるのかなと、こういう思いがするわけでありますけれども。  今後、三十五施設については事前査察をされる、こういう話も聞いておりますけれども、そういったところを、きちっと日本輸出プログラムに合った処理なりあるいはまた屠殺が行われているのかどうか、やっぱりきちっと見ていただかなきゃならないと、こういうふうに思うわけですが、いかがお考えですか。
  13. 中川坦

    政府参考人中川坦君) アメリカからの輸入手続再開に当たりまして、今日から行っております消費者方々意見交換も踏まえて、これから最後、アメリカ側との調整をしていくことになりますけれども、私どもといたしましては、この手続再開に当たりましては、現在、登録、認定をされております三十五施設につきまして事前確認調査をしたいということでアメリカ側日本側要求は伝えているところでございます。そういった線で実現方に努力をしていきたいというふうに思っております。
  14. 野村哲郎

    野村哲郎君 それからもう一つは、先ほど松本部長の御答弁の中で、昨年の十二月から今年の一月、ストップするまでの間にアメリカから牛肉が入っている、その一部が輸入されたわけで、通関しているわけでありますけれども、今、松本部長お答えでは、一月二十日までの間の二十五施設処理されたこの肉等については、この保管されている書類を拝見すると何も問題がないと、こういうお話になっているわけです。  そこで、今通関はしてないですけれども日本に入っている、いわゆる港で止まっているアメリカからの当時の肉というのはどのぐらいあるのか、教えていただきたいと思います。
  15. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 現時点におきまして我が国の港等で未通関となっております米国牛肉につきましては、動物検疫所への届出等から推計をいたしますと、約千トン程度であろうというふうに思っております。
  16. 野村哲郎

    野村哲郎君 そこで、先ほどのお話と通じてくるんですけれども、私は、書類で見たら問題はなかったと、こういうアメリカ側の話でありますけれども、じゃ日本側として、アメリカ側は問題はなかったと、保管されていた記録を検証した結果問題はなかったというんであれば、日本に来ているこの現物等チェックする必要があるのではないか。せっかく、アメリカまで行って調べてこいとは言いませんけれども日本の港に揚がっている肉であれば、アメリカのこれは了解なしにはできないかもしれませんけれども、なぜその書類現物とのチェックができないのか。そのことについて私はもう単純な疑問を感ずるわけでありますけれども、そこのなぜチェックをしてないのか。現物検査をして、書類現物も、玉も間違いありませんと、ここでやはり納得する話ではないのかなと、こういうふうに思うものですから、そのところについて、なぜできないのか、教えていただきたいと思います。
  17. 松本義幸

    政府参考人松本義幸君) 先ほど御説明しましたけれども米国側調査報告ですと、昨年の十二月十二日から一月二十日までの間、二十五施設処理されたと。そこについて、牛肉として保管された、処理あるいは加工、出荷等すべての記録を検証した結果、問題点発見されなかったと、これはアメリカ側調査であります。  この当該貨物取扱いにつきましては、本日から全国十か所で行われます米国牛肉輸入問題に関する意見交換会におきまして、日本側による対日輸出施設事前確認調査において、予定しておりましたが、そこでアメリカ側が調べて問題はなかったと言っておりますけれども、それを更に事前確認調査で特段の問題がないということが検証されれば、輸入手続停止を解除して、全箱検査を行って、その結果問題がなければ輸入を認めるという考え方説明して、消費者とか事業者方々からの意見を伺うということをしております。  厚生労働省といたしましては、それらの意見を踏まえまして、今後その取扱いについて農林水産省と十分相談しながら検討することとしております。  ですから、先生指摘のものにつきましては、事前調査に行って、そこで、五月十七日から十九日はアメリカの調べた報告であります。今後の話になりますけれども事前調査に行って、それをちゃんと我が方としても検証して、本当に問題がないかどうかと検証して、それで問題がないということであれば全箱を開けるというようなことでやりたいと。その全箱検査を行ったということになりますと、将来の、今後の話ですけれども委員指摘米国側輸出プログラムが本当に適切であったかということについてのデータも得ることができるものという具合に考えております。
  18. 野村哲郎

    野村哲郎君 私が申し上げたかったのは、要は、アメリカから書類上保管されているものをチェックしたら問題ありませんでしたと。ただ、それをうのみにするんですかと。やっぱり、せっかく日本に玉が入っていて港に止まっているんならば、やはりこの裏を取る必要がある。書類だけで見て、アメリカからの言いなりで間違いはない、それだけでうのみにするのかなという、そこのところがどうしても解せない気持ちになったものですから、ただいまのような質問をしたわけです。  ただ、今、松本部長がおっしゃいましたように、これは施設事前査察もする、そしてその日本に揚がっている肉もまた検査もしていくんだと、こういうことですから、どっちが先かとは言いませんけれども、やはりそこまできちっとやって私はその説明会に臨まれた方がよかったのではないかと。やはり、このアメリカからの書類だけでうのみにしたんじゃありませんと、ちゃんと日本に届いている肉も検査したらこの書類と玉とはきっちり一致しましたと、やはりそういうものがこの説明責任として国民皆さん方に正しく理解してもらうための方策ではなかったかなと、こういうふうに思うわけであります。そこは議論しても堂々巡りになります。  そこで、もう一点、これは中川大臣にお聞きしたいんです。  といいますのは、一月二十日に本当にあの危険部位が混入していた、そのことで一発で輸入停止を決められた。これは政府としての、特に大臣の御英断、御判断というのは、これは私どもだけじゃなくて国民皆様方も非常に、私は満足といいますか、非常に納得されたのではないのかなと、こういうふうに思います。ですから、そういう日本の毅然たる態度というのが国民皆さん方牛肉に対するこの信頼というのを与えていくのではないかなと、こういうふうに思うわけです。  そこで、これはアメリカは、先ほど来申し上げますように、大変ずさんなことをやっているなというのが、それは工場のこともそうですが、香港に対しましても二度も三度も同じような過ちを犯している。私は、今後この輸入再開に、日本との輸入再開に至ってからまた出てくるのではないのかという懸念も一方ではいたすわけであります。私は、そのときに香港のようにその該当施設だけを輸入ストップするんじゃなくて、今回、日本がとったような措置、いわゆる一発でレッドカードを打って、そして全面禁止をすると、このことが今後も必要ではないのかなと、こういうふうに思うわけです。それは、私は、日本国民皆さん方に対しては大変これは日本のそういう政府、国としての姿勢というものを非常に評価されてくるのではないかと。  一方、アメリカにつきましては、三十五施設連帯責任一つ施設がそういうものを出したときにはすべての施設からのストップをすると。そういう緊張関係が生まれてくるし、連帯責任としてのやはり私はアメリカ姿勢というのが変わってくるのではないかなと。ですから、今後ももしあったときにはまた全面停止ですぞと、このことだけは大臣、せっかくの機会でありますんで、是非決意を述べていただきたいなという要望を申し上げます。
  19. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 一月二十日にその特定危険部位が入ったものが成田の水際発見されたということを私が聞いたときに、根拠になるルールあるいは法律を調べたわけでございます。根拠になりますのが、これは農林省所管動物検疫所での作業の中での発見でございましたので、家畜伝染病予防法四十条が該当の条文であるということでございます。それを読むと、一定の要件の下では動物検疫手続をストップしなければならないということが書いてございました。  その場合に、個別でその当該施設だけをやるか、あるいは全部をやるかについては、これは決まりがなかったわけでございますので、そのときに私は、別に政治判断でもなく、きちっとした法律判断でもございませんけれども、それを読んだときには、これは検疫手続をストップしなければならないということで、川崎厚生労働大臣と御相談をしながら、これは検疫手続をストップするということで、米国から来る牛肉についての検疫手続をストップしたわけでございます。そして、それを総理にも御報告をしたところでございます。  今後、こういうことがあってはならないということで今鋭意アメリカ側も、また日本側もいろいろと要求を突き付けながら作業をしているところでありますから、本当は想定したくないことでありますけれども、しかし可能性が一〇〇%ゼロかと言われれば、それはない。だから、我々の動物検疫所なり厚生労働省機関がきちっと機能をしなければならないわけでございます。万が一、水際でそういう事態が仮に起こったとするならば、やはり同じように法律あるいはルールに基づきましてきちっとした対応を迅速にしていくということは一月二十日のときと同じでございまして、そういう姿勢で臨んでいきたいというふうに考えております。
  20. 野村哲郎

    野村哲郎君 いずれにしましても、今日から始まりますリスクコミュニケーションにおきましていろんな国民皆さん方の御判断なりあるいは御意見も出てくると思います。そういったものを十分に検討していただきながら今後の手続を進めていただきたい、慎重に進めていただきたい、そのことを御要望申し上げておきたいと思います。  次に、本論に入りますけれども、いよいよ三法の中で、これはまあ私とか加治屋先生甘味資源につきましてはほかの出身県先生方には余り興味のない話かもしれません。ただ、鹿児島それから沖縄、北海道、ここはもう三県しかありませんので、この前も紙先生もちょっとおっしゃっておりましたけれども甘味資源、特に砂糖価格調整に関する法律に、紙じゃない、紙先生紙資源じゃありませんので、法律についての御質問をさせていただきたいと思います。  これはもう十分大臣も、あるいはまた役所の皆さんも御承知のとおりでありまして、砂糖や、あるいはまたでん粉の原料でございますカンショ、これにつきましては鹿児島沖縄のこれは基幹作目であるというのは十分御認識いただいているところであります。私ども鹿児島県でも、こういったサトウキビとかあるいはカンショといった粗放的な経営というのはいかがなものかと、もう少し換金性の高い、あるいは収益性の高い野菜、特に野菜等々に作付けを変えていったらどうかということを行政なり団体ともやってまいりました。しかし、もう御承知のとおり、鹿児島県あるいは宮崎も、小斉平政務官のところの宮崎もそうでありますが、やはりシラス台地で非常にやせた土地でありますし、その上に台風のこの常襲地帯、こういったことで、これは四百年の先達の知恵だと思うんですけれども、やはりこれしか作れない、これしかないという作目がやはりカンショであったり、また南西諸島、沖縄のサトウキビだ、こういうふうに思うわけであります。  これらの作物はまた最終的にそのままで流通していくわけじゃありませんで、やはりこれは砂糖であればキビ工場に持ち込んで、そしてそれを搾っていかなきゃならない。あるいはカンショにしてもでん粉にして販売していかなきゃならない。そういう地場の加工産業、いわゆる食品加工産業との本当にこの表裏一体の産業がこの農業の分野でいく産業でいえばサトウキビであったりカンショであったりと。そういう意味では、よく沖縄皆さんや奄美大島の皆さん等は生命産業だと、こういうことをよくおっしゃっておるわけです。これしかないと、もうこれでしか生き延びる道はないんだという、そういったことのお話をよく伺っておりますし、実感としても思っております。  そこで、そういった事情をよく参酌していただきまして、これまではサトウキビにしましても、あるいはビートあるいはまたバレイショでん粉等々につきましても、最低生産者価格という、ほかの作目にはない最低の生産者価格をお決めいただきながら再生産を図ってきていたのが、実は今までのキビ、カンショの実態でございます。  そこで、ただ、私どもはやっぱりこの内外格差を考えましたときに、やっぱり幾ら基幹作目これしか作れないといいましても、やはりそこの内外格差のところについては私どもも一抹のこの問題意識というのは持っておりました。甘蔗糖でいえば八倍、それから、でん粉でいえば四倍というこの格差があるわけであります。そういう意味では、生産性を高めるそういう努力も生産者並びにこの団体、行政、一体的に取り組んできたわけでありますが、しかしながら、そうはいってもなかなか一挙に生産性も上がってこない代物であります。  そこで、今回新たな制度に変わっていく、そこのところに生産者が大変不安を持っておるわけであります。今までは最低生産者価格で、まあ守られてきたと言えば語弊がありますが、そういう意味で、政府の支持を受けてきたと。今回から新しい制度になると、サトウキビの、あるいはカンショの再生産が確保されるのか、そういう所得水準にあるのかどうか。  昨日も実は参考人皆さん方の御意見をお伺いしました。これは米であったり、あるいは小麦、大豆であったりというお話でありましたが、この甘味資源とて同じであります。ですから、そういう今まで最低生産者価格で再生産をやってきた、所得水準は守られてきた。今度の新しい制度でその再生産が確保できる所得水準が守られるのかどうか、そのことについて御所見をお伺いいたしたいと思います。
  21. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 新制度に移行した場合の再生産の確保はどうかというお尋ねでございます。  これまで委員指摘のように、最低生産者価格というものを現に取ったわけでございますけれども、これは、サトウキビなどの甘味資源作物につきましては、前年産価格を基準に生産コストの変動率などを反映させるという考え方を基本として、また、でん粉原料用芋につきましては、農業パリティー指数の変動率を反映させるという考え方を基本にそれぞれ算定をしてきていたところでございます。  今回の制度改正におきましては、最低生産者価格などは廃止いたしまして、てん菜及びでん粉原料用のバレイショにつきましては担い手経営安定新法に基づく品目横断的経営安定対策、一方、サトウキビとでん粉原料用カンショにつきましては改正後の砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律に基づく品目別の経営安定対策にそれぞれ移行するということにしておりますが、いずれの経営安定対策におきましても、諸外国との生産条件格差を是正するため、生産コストのうち生産物の販売額では賄えない部分に着目いたしまして、標準的な生産コストから標準的な販売額を差し引いた額を交付するということとしております。  このことによりまして、対象者におきましては、甘味資源作物及びでん粉原料用芋の再生産を可能とする所得水準、これは確保されるものというふうに考えているところでございます。
  22. 野村哲郎

    野村哲郎君 今局長答弁で、再生産を確保する所得水準、これは今までサトウキビでいえば二万四百七十円、そしてカンショでいきますと千百九十二円と、これは農家の実質手取り価格でありましたけれども、そういった水準は守られると、こういう認識でよろしいですね。
  23. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 今回の制度の開始に当たりまして、最終的には今年、制度発足前にきちんとした数値で示すことになりますけれども、昨年の十二月に試算を出した水準というのはもう現状の水準というものとほぼイーブンという格好で試算をさせていただいておりますけれども、いずれにしてもこれは最新のデータでもってきちんと計算をして出すということにしてまいりたいというふうに考えております。
  24. 野村哲郎

    野村哲郎君 大変前向きな御答弁をいただきまして、感謝申し上げます。  そこで、もう一つ農家の皆さん方が心配をいたしておるのがあります。それは、今までは最低生産者価格が決まれば、そしてカンショはでん粉工場に、そしてサトウキビはキビ工場に持ち込むわけでありますが、この交付金手続交付金の支払時期の問題、これに大変現場で不安が出ております。それは何かといいますと、今まではもうただ出すだけで、交付申請をするとか、あるいはその交付金の金がいつ来るのかと、こういったような心配は全くなかったんです。  例えばカンショで申し上げますと、カンショは大体もう二日後にはそれぞれの口座に振り込みがされておりました。サトウキビも、いろいろありますけれども、おおよそ一週間ぐらいの間にこの金が振り込まれてきていた、こういうことになっております。これは先般も郡司委員の方から質問があったところであります。  私は、これは二つあるというのは、お年寄り、いわゆるその高齢化が進んでおります。これはもう鹿児島だけじゃなくて全国なんですけれども。ただ、そこで、お年寄りがその交付申請の事務という、交付申請書を書いたことがない、そういう方々が本当にこのきちっと申請をして、そしてお金をもらえるのか。むしろ、サトウキビを作るよりも、そっちの事務はもう分からないよと、サトウキビを作った方がまだ楽だと、そういったようなやっぱりお年寄りの悩み、不安もあるわけであります。  ですから、一つはそういった交付申請という慣れない手続を今度踏んでいかなきゃなりません。そのことをどういう形で農家に交付申請をさせるのか、あるいはどういうことを考えて、システム的に考えておられるのか、そのことが一点であります。  それからもう一点は、その交付申請をした後にお金がいつ入ってくるのか。例えばカンショにしてもサトウキビにしても、工場に入れた、その原料代としての金はその工場からもらえますけど、交付金の部分というのは国から出てくる、そこのところはいつ入ってくるのか。その間にいろんな支払をしていかなきゃならない、こういう問題が実はあるわけであります。ですから、これはビートにしても、あるいはまたバレイショでん粉にしても、交付申請、同じですよね。そうしますと、そのところをどうしていくのかというところがどうも私どもには見えてきてない。  再三、私は役所の皆さん方にも、この交付金はいつ入るのかと、もうそのことが一番この農家の皆さんの関心事でもある、心配事でもあると、早くこの交付金の支払の時期というものを教えてくれと。いや、今システムをいろいろ検討しております、検討しておりますと。もう昨年来ずっとその話を聞いておるんですが、どこまでこの交付金の関する手続なり、あるいは交付金の支払の検討がなされているのか、一番最新の検討の状況を教えていただきたいと思います。
  25. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) サトウキビ、でん粉原料用カンショの交付金について、今年の一月以降、現地説明会における意見交換を通じまして、生産者から早期支払の要望があるということは承知しておりまして、これは大変重要な問題であるというふうに認識をしております。このために、これらの交付金の支払業務を行うこととしております独立行政法人農畜産業振興機構とともに、関係者との意見交換を行いながら、交付申請手続について検討を進めております。  具体的には、事前に対象者要件の確認を行って、各生産者に対して生産者コードを交付するシステムを構築するとか、申請書の様式及び添付資料の簡素化をする、あるいは電子データによる申請方法を導入する、生産者からの申請数量の確認を迅速に行うために製造事業者等との生産者コードを共有すると、あるいはその農協などによる代理申請に当たっての必要な対応はどうするかといったことについて現在も検討を進めているところでございまして、個々具体的にどうすれば早くできるかという視点でもって内部検討を進めているところでございます。  いずれにいたしましても、交付金の支払に当たっては、農家単位での対象者要件の確認や、申請数量の確認などが必要となるわけでございますけれども交付金支払の業務の適切な執行に留意をしながら、営農に支障がないように、できるだけ早く支払うように努めてまいりたいということで、今事務方と直接、どうすれば早くできるかということで、やり取り、行ったり来たりをしながら検討しているというのが実情でございます。
  26. 野村哲郎

    野村哲郎君 今局長の方からいろいろ御答弁をいただきました中で、やっぱり今後お考えいただきたいのは、答弁の中にも少しあったんですけれども、先ほど来申し上げておりますように、カンショ、キビにしても非常に高齢者も多いわけであります。申請事務というのは初めての経験だと私は思います。ですから、そうなりますと、申請の代行をやはりこれは考えていかなきゃならないだろうと。それはJAがやるのか、あるいはその県がやるのか、いろんな形で農家個々に申請書類を整備させるというのはこれはなかなか至難の業だし、いろんな間違いも起こりやすい。そういう意味では、的確なやはり、そういうJAグループなりあるいは行政なり、そういうところからの申請の代行というのがやはり私は必要ではないのかなというのが一つ。  それからもう一点は、支払のところで、大豆の場合も交付金が今現在行われているわけですけれども、大豆も出してから大体最終生産交付金が下りてくるのは一年後であります。ですから、その間、農家は所得がないわけでありますからJAが代わって概算払していると、こういう仕組みを実はつくっておるわけですね。  ですから、今回のサトウキビにしてもカンショにしても、やはり農家の経営を安定させていかなきゃならない、あるいはまた、すぐ要る金が必要な人たちのことも考えていかなきゃならない。そうなると、どこかがまた、事務じゃありませんけれども、概算払をする仕組みもやはり考えていかなければいけないんじゃないのかな、そういうことも実は御提案したいと思います。  ですから、そういうことも踏まえまして、先ほど西川局長ちょっとおっしゃいましたけれども、やはりいろんな農家に負荷が行かないような形で、今まではただ工場に持ち込みさえすれば金が下りてきたわけですから、交付金制度に変わってからもう大変になったと、キビ、カンショを作るよりもそっちの方が大変だからもうやめたとかいうふうにならないように、是非とも事務の簡素化、合理化なり、あるいは支払時期を早めにしていただく、そのことを十分念頭に置きながら是非とも設計をしていただきたいと思います。  そこで、対象者の要件を云々という話がありました。  これは冒頭聞けばよかったんですけれども、品目横断的な経営安定対策では、面積要件だとか、いろんな要件が付されておるわけでありますが、サトウキビあるいはまたカンショにしましても極めてこれは零細であります。カンショが、平均的にいきますと、作付面積は五十四アール程度しかならない。あるいは、キビにしても八十アール程度であります。ですから、こういう人たちが地域の農業を支える、あるいはまた経済を支えておるわけでありますけれども、こういった零細な規模の皆さん方であります。ただ、これではいけない、これではじり貧になるという意識、危機意識というのは、これはございます。ですから、今集団化なりあるいは規模拡大、そういう取組が進められておりまして、少しずつは規模拡大が進んではおるわけであります。しかしながら、これもなかなか、その途上にありまして、一挙に行っていかない。  ただ、今回の私は制度変更によりまして、このことに加速化していく、このことは多分間違いないであろうと、こういう認識はいたしております。また、そうしていかなければならない。島の、あるいはまたシラス土壌地帯のカンショなりキビを守るためにはやはり生産性を上げていかなきゃならない、そういう気持ちはあります。ただ、加速させなきゃいけないというのはありますけれども、今度の新しい制度になりまして、零細な農家をここで一挙に希望要件だとかそういうもので足切りをしてしまうと、一挙に私は量的にも、また先ほど申し上げました工場との表裏一体での関係があるわけですから、工場の操業も成り立っていかない。いろんな問題を抱えていくわけであります。  したがいまして、対象農家、これを、ほかの品目横断的な考え方が入るのかどうか、あるいはそれとは別だよということで整理していただいているのか、そのことについてお伺いをいたしたいと思います。
  27. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 新しい制度の対象者というお尋ねでございますけれども、冒頭委員指摘のように、サトウキビなりでん原用のカンショにつきましては、代替作物に乏しい自然条件下の下で、高齢で零細な規模の農家が生産の大宗を占めていると、そういう実態を踏まえまして、品目別の経営安定対策ということを講ずるということにしているところでございます。  この品目別対策の対象要件でございますけれども認定農業者や一定の作業規模を有する者に加えまして、一定の作業規模を有する共同利用組織に参加している者や一定の条件を満たす基幹作業委託者も対象とすることとしております。また、地域の実情にも配慮いたしまして、受託組織等が存在しない場合もあるという現状も踏まえまして、担い手の育成を目的とする一定の組織に参画する者を対象とするといった特例も設けることとしておりまして、そういった面では現場とのやり取りの中で生産現場の事情を十分反映したものというふうになっているというふうに考えております。  こういった対象要件の設定によりまして、意欲ある人は幅広く対象となるというふうに考えているわけでございますけれども、いずれにしましても、委員お話ございましたように、いかにして生産性の向上、安定供給を図るかというのがこの二つの品目、大課題というふうに考えておりますので、これらを通じましてその目的を達成したいというふうに考えているところでございます。
  28. 野村哲郎

    野村哲郎君 今局長お話で、地域の実態に即した特例を設けながら、私の受取方ですけれども、現在の生産者はきちっとその範囲の中に入れていくと、こういったような御答弁だったというふうに前向きに受け止めさせていただきたいと思います。  そこで、次にでん粉の問題でございます。  でん粉につきましては、もう御承知のとおり、今の国内産なり輸入品を合わせましても三千万トン、そしてそのうちの芋でん粉が約大体一割を占めているわけであります。この一割を占めている北海道のバレイショでん粉なり鹿児島のカンショでん粉、これは今国民の食生活の中で非常にいろんな使われ方をしてき出した、こういうふうに思っております。甘味料だったり水あめだったり、いろんな形で使われております。そういう意味では私は国民生活に欠くことはできない、こういう認識でおるところであります。  ただ、今までの国内産のでん粉につきましては、コンス用のトウモロコシとの抱き合わせ販売でこれがすべて国内産でん粉が供給されていったといいますか、売れていったというふうに認識をいたしております。そういたしますと、今回新しい制度に移るわけでありますが、今まで抱き合わせ販売があったから、こういう制度があったから国内の特にカンショでん粉についてはすべて費消されてきた、こういうふうに思います。そういう意味では、この制度というのは本当にどなたがお考えになったのか分かりませんが、大変な救世主的な私は制度だったんだろうと、そういうふうに思います。  しかし、今回の新しい制度は抱き合わせ販売をなくして、そして言わば砂糖と同じように調整金制度に移行していくわけでありますけれども、やはりでん粉工場皆さん方の心配というのは、在庫を抱えてしまうんじゃないのか、売れないのではないのか、そのときはどうなるんだ。今までは抱き合わせですべて費消されていったわけでありますけれども、今度からは本当に需要が出てくるのか、あるいは全部引き取ってもらえるのかどうか、そのことを一番心配されているわけであります。  したがいまして、国内産でん粉の販路の確保という点でどのように今度の新しい制度の中でお考えいただいているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 国産芋でん粉の販路の確保についてのお尋ねでございますけれども、国内産芋でん粉につきましては、抱き合わせ廃止後におきましても、輸入トウモロコシを原料といたしますコーンスターチ等から調整金を徴収し、これを財源として生産農家等に対して政策支援を行うといったことによりまして、国内産の芋でん粉の価格を関税割当てによるコーンスターチ等の価格と同水準として競争条件を同一にいたします。  また、コーンスターチ用トウモロコシの関税割当てあるわけでございますが、この枠は国内産芋でん粉の需要に影響を与えないように、国内のでん粉総需要量から国内産芋でん粉供給量、これを差し引いた水準とすると。枠外のコーンスターチ用トウモロコシなどには二次関税を課して輸入を抑制すること、こういったことによりまして国内産でん粉の販路は確保される、そのように努めてまいりたいということでございます。
  30. 野村哲郎

    野村哲郎君 今局長の御答弁で関税割当て枠のところでの調整をしていく、そういうお答えだったと思うんですが、どうもやっぱり、それはそれとしてある程度の理解はできるものの、本当に需給のきちっとした見通しがないと、関税割当て枠とそれから国内産の生産、あるいはでん粉の生産量あるいは需要、こういうのがきちっと一致しないと、どこかで帳じりが合わなくなってくるのではないか。  そういう意味では、私は、砂糖で今行われております需給調整会議、こういうものできちっと数字を押さえないと、どこかにゆがみが出てきたときに国内産のでん粉が滞ったりあるいは足らなかったりとか、いろんな私は問題が出てくると思うんです。ですから、そういう意味での協議会の設置について、どのようなお考えをお持ちかお聞かせいただきたいと思います。
  31. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) この件につきましては、関税割当て制度の適切な運用などによりまして国内産芋でん粉の需要の確保を図っていくこととしているわけでございますけれども、その割当て枠の設定に当たりましては、委員指摘のように、でん粉全体の需給の見通し、国産芋でん粉の生産や販路を含めた供給の見通し、コーンスターチの生産の見通しなどにつきまして的確に行うことが必要であるというふうに考えています。  このため、今御提案ございましたけれども、御指摘のように、でん粉の需給に関しまして関係者により協議を行う場を設置いたしまして、新たな制度の円滑な運用、これに努めてまいりたいというふうに考えております。
  32. 野村哲郎

    野村哲郎君 でん粉につきまして最後の御質問をさせていただきますが、従来、国内産のでん粉につきましては承認数量というのがありました。現在五万五千トンだというふうに思っておりますが、認識いたしておりますが、今まではこの五万五千トンを超えると、大変な役所と生産者団体等といろんな協議をさせていただきながら、国内産でん粉の言わば消費を促進してきたわけでありますけれども、やはりこのでん粉工場というのは確かに、有り難いことに鹿児島のカンショ、しょうちゅう用の需要が増えまして、いろんな形ででん粉の生産量というのは減ってきております。  しかし、このしょうちゅうの原料用のカンショが、またしょうちゅうの消費が止まって、いつでん粉工場に持ち込まれてくるのか、非常に心配もしておるわけです。今まで私は、でん粉工場というのが、鹿児島県の豊作であったり凶作であったり、あるいはまたしょうちゅうの売行きによってしょうちゅう工場が引き取らないそのカンショをでん粉工場に持ち込んできて、そしてでん粉を生産していた、こういう調整機能というのをでん粉工場は私は果たしてきたと思うんですね。  そういう意味で、今後もやはり、超過というのはあるのかどうか分かりませんが、承認数量なるもののやはり考え方があるのか。それは、先ほど御質問申し上げました協議会の中で、きちっとやっぱりこれはでん粉だけじゃなくて、しょうちゅうの方も是非見ておいていただいて、そこの需給調整のところでバランスを取っていただかないと、関税の割当て枠は増やしたわ、国内産のでん粉はでき過ぎたわと、こういうことになれば国内産のでん粉が滞ってしまう、いろんなことを想定するわけであります。  ですから、こういった超過分だとか、あるいは豊作のときの超過あるいは逆に凶作の場合、数量に大きな変動があった場合にどのような対応をお考えになっているのか、そのことも一つの懸念材料として地元はございますので、是非お聞かせいただきたいと思います。
  33. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) カンショでん粉につきまして、抱き合わせを廃止し、新しい調整金制度を導入するということにしているわけでございますけれども、これによりまして需要に応じた生産を推進するというのが基本だろうと思います。調整金制度の下で安定的なでん粉原料用カンショの生産を図るということをするためには、生産者にでん粉製造事業者との契約に基づく計画生産、計画出荷を、これを的確に実施していただくことが必要であるというふうにまず第一に考えております。  先ほどお話ししましたように、また、でん粉に関する協議会といったものをつくりたいと思っておりますけれども、ここにおきまして生産者団体を含む関係者の意見を聴取した上で需給を見通して、これを踏まえまして具体的な数量というものを、政策支援対象数量を適切に設定するということによりまして、円滑な制度運営、カンショ生産農家の経営の安定というのを図っていきたいというふうに考えているところでございます。  なお、委員冒頭お話ございましたように、カンショにつきましても、食品産業との連携強化とか、加工性の高いいろんなものができておりまして、その需要もかなり拡大しているということで、聞くところによりますと、むしろ足りないぐらいといったことも聞くわけでございますけれども、長期的にはやはりより付加価値の高い物づくりというものも一方で進めていくというのが大事なんではなかろうかと。  それともう一つ、これも御案内のとおりでございますけれども、こういう厳しいところでできる作物ですから、生産というのは、災害は受ける、これに耐えるんですけれども、意外と安定しているんですね、物の生産としては。そういった特徴もございますので、それらも踏まえて、先ほど申しました意見交換の場を十分活用して対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  34. 野村哲郎

    野村哲郎君 いろいろ新しい制度に移行していくわけですから、先ほど来御質問申し上げましたまだいろいろ不明な点、そしてまだ未整備の面があると思いますんで、しっかりと制度設計をしていただきながら、現場に混乱が起こらないように是非ともしていただきたいと思います。  時間がございませんので、担い手に対する経営安定のための法律案につきましては、岩永先輩が後ろに控えておられますから岩永先輩に譲るとしまして、ただ一点だけ私がここで御質問申し上げたいのがあります。それは何かといいますと、やはり昨日も参考人皆さん方、あるいはまた一昨日のここの委員会での審議の中でも出ておりました、本当に担い手がつくれる、担い手が確保できるのか、その一点だけに絞って御質問をさせていただきたいと思います。  今まで私どもが押さえております数字といいますのは、大体、現在の対象農家、担い手は、認定農業者でおおよそ、十七年の数字でありますけれども十九万四千戸、そして特定農業法人なりあるいは団体、そのほか集落が一万、こういうふうに伺っておるわけです。まず一つは、今最新の数字で、この今申し上げました認定農業者なりあるいは集落営農、これが幾らになっているのかを一つお伺いしたいと。  それから、私が一番聞きたいのは、昨日もお話がございました農業構造の展望では、十年後にこの認定農業者、いわゆる家族経営の農家を三十五万から三十七万にする。今現在、先ほど言いました十七年の数字ではおおよそ二十万戸ぐらいしかないんですね。そうすると、この十年間に十五万ないし十七万戸増やさなきゃいけない。一年に単純平均しますと一万五千から一万七千ずつ認定農家をつくっていかなきゃならない。しかし、本当にこれで間に合うのか。  なぜならば、この方々が十年間の間、対象農家に認められなくて、そして経営が成り立っていくのかどうか。私は、やるならばもうスピードを増して、この一、二年の間にこの三十五万戸、三十七万戸をつくっていかないと間に合わないんじゃないか。その人たちはいつまでも予備校生で卒業ができない、卒業できなかったら途中でもう退学しちゃおうと、そういう話になるんじゃないのかなと。小斉平先生が笑っておられますけど、何か、私事の話であります、二人しか分からない話でありますが、非常にそのことが私は気になってしようがないんです。十年間で十三万から十五万戸もつくるなんて、そんな悠長なことは言っておられない。その間にもうやめてしまうんじゃないか。だから、この一、二年の間にこの三十五万なり三十七万をつくらないと、とてもじゃないけれどもやっていかれないのではないのかなと、こういうふうに思うわけです。  ですから、十年間、農業構造の展望にあるような数字というのは、数字合わせではこういうことになることかもしれませんけど、実態として、昨日もいろいろお話がありました、そういったものを是非ともお考えをいただきたいなと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  35. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) まず、認定農業者、集落営農の最新の数でございますが、十八年の三月末時点で全国認定農業者は二十万八百四十二と二十万を超えました。この一年間で約一万九千戸増えております。集落営農の方は、従来申し上げてます平成十七年五月時点の調査以降、データが最新のものがございませんので、その十七年五月時点の一万六十三というのが最新の数字でございます。  それから、委員指摘のとおり、その十年間でただだらだらとやっておりましてもこの構造展望が実現するのかという点については、誠にそのとおりであると思います。  私どもも、既に十八年度予算でも、この認定農業者向けに、認定農業者の掘り起こしですとか経営能力向上ですとか、さらに規模拡大のための農地の利用集積、リース用の機械、施設の導入といった新規の予算を講じているところではございますが、十九年度からこの新たな経営安定対策が導入されるのに合わせまして、農業経営に関します予算、金融、税制の各方面にわたりまして、この認定農業者などの担い手にこれらの施策を一層集中化、重点化するということで、はっきりとしためり張りのある予算・金融・税制措置を講ずるということで、おっしゃられるように、こういった育成確保の取組を加速化をしていきたい、こういうふうに考えております。
  36. 野村哲郎

    野村哲郎君 時間が参りましたので、いろいろ御通告は申し上げておりましたけれどもあとは岩永委員の方できっちりとした大所高所からの御質問があろうと思いますので、以上で終わります。  ありがとうございました。
  37. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 おはようございます。自由民主党の岩永浩美です。  一昨日に引き続いて、担い手三法について質問をさしていただきたいと思いますが。  昨日、参考人質疑がございました。東大の生源寺先生、全中の山田専務、北海道農民連盟の西原委員長、岩手ふるさと農業協同組合の門脇さん、それぞれの立場でいろいろな御議論がございましたが、一つの法案にこれほどまでに見解が違って本当に十九年度からうまくいくのかなという率直な、素朴な疑問を抱きました。  過日、同僚の議員から、質問として、与党の質問というのは限界があって非常にやりにくいという御質問もありましたが、私自身も与党に籍を置く一人でありますが、ただ、法案の方向性について、決して私は否定をいたしません。しかしながら、この法案を農家全体の皆さん方の理解を得て、本当に集約し、競争力の強い農業に育成さしていくための本当の法律案なのかなと、まだまだ正直に私は疑問を持って、細かい点について少し質疑をさしていただきたいと思います。  初めに、昨日の参考人質疑の中で議論になったことでちょっと気になることがあったので、これは質問の通告を出してないのでどなたが答弁なさるのかちょっと分かりませんが、集落営農の要件で、これは、一つは代表者を定めた規約の策定をすること、それから二番目、経理の一元化を図ること、それから三番目に地域の農地利用集積の三分の二以上の目標を目指すこと、四番目に中心となる者の農業所得目標を設定すること、五つ目に農業生産法人化計画の策定が必要とされていますね。  その中で、今回の経理の一元化に伴って、企業会計を取り入れてやっていくことを方向に示されていますが、昨日、参考人質疑の中で、それぞれ集落営農をしていく農地の中にも、有料の農地と非常にやっぱり条件不利地域に属する農地がある。その集落営農を、経理の一元化をして、果たしてその集落として成り立っていくのかという疑問を言っておられました。それは私も、当然そういうことはあるなと思う。特に、平野部の中においてそういうふうなことは均一化されてやっぱり圃場というのは整備されているかもしれませんが、中山間地域の中に位置するその集落の中における高地と低地の間には、同じ圃場の面積であったとしても条件が違ってくることが多々ございます。  そういう問題について、経理の一元化は交付金交付するための窓口だという形の説明を一面にはされますが、企業会計を取り入れて今後それを義務付けられるということになると、集落を離脱する人が出てくるという心配がありますけれども、その件についてはどうお考えだろうか。
  38. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 経理の一元化についてのお尋ねでございますが、私どもが今回の対策で対象になる集落営農組織にお願いをしております一元経理、これは主として収入面について、その農産物の、ここでいうと米、麦、大豆、対象作物でございますが、その販売収入と経営安定対策などの交付金、補助金でございますね、そういった収入を一元的に集落営農組織名の口座に入れていただくと。その農産物の販売収入を入れていただくということは、その農産物の販売名義を集落営農の名義にしていただいてということでございまして、ありていに言いますと、集落営農組織の口座をまず設けていただくと。二つ目が、米、麦、大豆の販売名義を集落営農名義にしていただいて、名義が変わりますのでその販売収入は集落営農組織の口座に入ると、この三つ要件としてお願いをいたしております。  支出の面、今お尋ねのように、例えば剰余金ですとか配当金ですとか労務費ですとか、こういったものについてはその集落営農組織ごとに状況が違いますので、その組織の中で自由に決めていただいて結構でございますと。ですから、今お尋ねのように、明らかに単収が違うとかそういうことがその集落の中で認知されているのであれば、その集落の中の話合いで、やはり単収の高い人には剰余金や配当金がそれなりに多く渡るという取決めをなさることは、これは一向に構わないということでございまして、何も、例えば二十人の方が入りましたらすべて収入を面積割で戻すとか、そういう硬直的な扱いをせよと言っていることは決してございません。
  39. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 それは、そういうことを強制しているということではないんですね。  集落の中における土地の私有権を認めてあるわけだから、その私有権を認めてあるそれぞれの農家の皆さん方は、たまたま中山間地域の中における、例えば大豆を仮に低地で作った場合に湧水が出てくる、高地の場合にはその水は出てこない。そうすると、単収に歴然と差が出てくるんですよ。どんなに努力してもそれはできないんですよ。  そうすると、そういうふうな形で、交付金を受け取るためだけの一つの一元化の口座をそこに開設をすること、それからその中で、単収においてはそれぞれの集落の中の話合いによってそれを、結論を出してもらえればいいんだというのは、それは役所の考え方。集落の中ではそんな話はできないんですよ。そういうふうなことの規制を受けたりするんだったら集落を離れたいという人が出てきはしないかという心配を持つんですよ。昨日、岩手の門脇会長さんはそのことを一番やっぱり、現場を経験してみてそういうことが出てくる人間関係、そういうことがこじれて地域の集落が壊れていくことを懸念しておられましたよ。  私は、それ聞いて本当にやっぱり、平野部の米を作るための一つの基盤整備事業、今までずっとやってきているんですよ。今、大規模な一つの農地というのは一町歩か二町歩の農地を作ろうという基盤整備事業をしていこうとする地域、その人たちはある程度やっぱりいいと思う。しかし、私の出身地の佐賀の場合には、それは三反歩や五反歩の田んぼもありますが、圃場整備をして〇・五反、五畝ぐらい、一反歩ないんです。そういうところも圃場整備してあるんですよ。そういうところを集落の中に全部入れて、それでその集落の中でその収入のようなやつは話合いをして結論を出していく、そういう集落の営農なんて現実的にできませんよ。  それをあなた方は、それぞれの集落の収入は集落の中で話をしていけば、そのことは農林省としては関知すべきことではないと、こう言うけど、現実的にそういう問題が出ているという、そういうところについてはどうなさるのか。集落から離脱してしまった人たちは耕作放棄地として農地が荒れてしまう結果になることの要因にならないのか。そこはどういうふうに指導されるんですかと。
  40. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、その制度に乗るための最低限度の一元経理というのは先ほど申し上げたことを要請しているのみでございまして、支出面についてどういうふうにお決めいただくかというのは、今おっしゃられましたように、条件が非常に均一で、集落内でも平等に扱って争いがないというところが確かに平野部では多いかと思いますが、中山間部で明らかにだれが見ても顕著に違っているというものは、当然そういうものが参酌されて集落内でもお決めいただけるものだというふうに考えているわけでございます。  もし現実問題として、中山間地の集落営農組織を形作る上においてそういう問題が発生しているのであれば、私どももそれを真摯に受け止めて、正に現場の方々とよく御相談をし、解決策を見いだしていきたいと思っております。
  41. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 簡単にあなたおっしゃっているけど、法律ができて、政令、省令とか運用の中でそのことは真摯に受け止めて解決をしていくとおっしゃるけど、現実的に今、集落営農の説明に行っておられる皆さん方説明は、ここで議論する以上にもう事務的な話しかしていないんですよ。事務的な話だけやっていて、具体的に農家の意見取り入れていないんですよ。国からこういうふうに言われているから、これせざるを得ないんだと。そして、不承不承、ある程度やっぱり認定農業者や集落の営農の組織化もだんだん進んできているというけど、理解してじゃなくて、不承不承やっぱり了承をしてやっておられるというところ多分にあるんですよ。  そういう気持ちがあるところで十九年から始めていって、本当にそのことが、あなた方と我々が意図して作っていく一つ法律案国民に理解されてでき上がっていくのかということを危惧しているんですよ。そういう問題があればという考え方、甘いですよ。
  42. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 岩永大臣の御地元の正に……(発言する者あり)失礼しました、岩永委員の御地元の切実な問題の御提起でございます。  全国に多様な農業があるわけでございますから、当然御地元でのそういう現状もあると思います。それから、御指摘のように、今はあくまでも政府案を前提にして、しかし十九年度からのスタートに向けて事前説明というものを鋭意やっているわけでありますから、正に審議することによって、例えば資料を出せとか試算を仮に示せとかいうことで、そのたびにまた国会からあるいは農林水産省からまたこういう情報が追加で入るとかということで、現場で説明されている皆さん方は大変御苦労をされているということも我々はよく認識をしておかなければならないと思います。他人事かどうかは別にいたしまして、一生懸命説明していただいているところでございます。  今回の法案の趣旨というのは、あくまでも全国一律にということではないということは、ある意味では法の趣旨の大前提にあるわけで、むしろ多様な農業の中で、個々の経営体としてあるいは集団として、日本の食料政策あるいは車の両輪である地域政策を進めていきたいということでございます。  したがいまして、岩永委員の御地元での実情が決して例外中の例外だからそれは今回の法案の想定外であるということは決して申し上げません。そんなことはむしろ逆でございまして、そういうところも含めて、地域として、あるいはまたやる気と能力のある個々の農家、あるいはまた集落営農との関係というものは極めて難しいということも当然我々は予想しなければいけないわけでございますので、ここから先は答弁になっているというふうに御理解いただけるかどうか分かりませんけれども、そういう実態も十分踏まえながら、実施前までに御理解をいただいた上で、最終的にどのように個々の農家あるいはその地域、集落が御判断をされるかというところに至るまで、我々としては、審議の過程で、あるいはまた成立をさせていただきましたならば、その後の中で、実態の問題としてきちっと御説明をした上で御判断をいただけるような最善の努力を我々は今後も、何も御地元だけではなくていろんなところでそういう問題が個々の事例として、定型ではなくて個々の事例としてあるであろうということを十分予測しながらこれから我々が作業をしていかなければいけないということは、極めて大事なことだろうというふうに思っております。
  43. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 大臣、誤解がないように。私どもの地元からということだけではなくて、昨日の参考人意見の中で、岩手県でもそうだった。そういう一つの話が具体的にお示しになったので、そういう問題の解決があって初めてこの法律が生きるということ、そのためにはやっぱり情理を尽くしていかなければいけないのではないのかと、そういうところでまずお尋ねをいたしました。  そこで、集落営農による担い手の農地の貸しはがし、これ農地の集積を図るということで今回この法律が出ていますね。過日、福島県のいわき市に、委員長の御地元に行った、農家の人たちとの懇談会がございました。その視察先で、都市近郊の中における農地の土地貸しはがしというのは現実の問題としてあるということをおっしゃっていましたね。この法律案では、貸しはがし以上に農地を集積をすることを目的としてこの法律案が出されていますけれども皆さん方の役所に貸しはがしの実態としてそういうふうなものが上がってきた事例がありますか。
  44. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) いわゆる貸しはがしと言われているものにつきましては、既に相当の規模拡大を行ってきた認定農業者に対しまして、集落営農組織をつくりたいので農地を返してくれというような話が来ているというようなことをいわゆる貸しはがしと言っておりますけれども、これは一部、先日、朝日新聞にも報道されておりますけれども日本農業法人協会のメンバーに対してアンケート調査をやったというのがございまして、このアンケートについては累次にわたって非常に精密にその調査をいたしております。その中で、全国に非常な勢いではびこっているということではありませんが、一部の地域あるいは一部の法人において、そういうふうに返してくれと言われたという事実はあるというお答えが、数は最終的には十数件でございましたけれども調査の中では、上がってきております。  これにつきましては、やはり認定農業者と集落営農組織という、今回の対策では大きくいうと二つのタイプを認めているわけでございまして、既に認定農業者がもうほとんどいない、例えば中山間地等でそういった地域ではもう集落営農でいくしかないということでありますので、余りそういう事態にはならないとは思いますが、既に認定農業者がある程度、数は十分ではないけれどもおられるという地域で、その地域全体をどう考えるかといったときに、一方でやっぱり集落ぐるみで落ちこぼれのないようにみんなでやっていきたい、そういう考えのグループの人と十分に事前調整が付いていないということで、そういうことが起こっているということも聞いております。しかし、認定農業者のサイドからは、そういう話があったけれども、その集落営農のリーダーたるべき人とよく話をしてやめてもらったということも事例としても上がってきております。  やはり、その地域の中でどちらで行くのか、あるいはどうやって共存していくのかということについて事前の話合いということが大事でございますし、また、そういったものを地方公共団体あるいはJA、そういったところが第三者として仲介に入って話合いの場を設定していくということが大事なのではないかと考えております。
  45. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 両方から意見をお聞きになって、それぞれ問題解決に多分御努力いただく、それは当然のことだと思いますけれどもね。私は、今回、法律案三法案の中で農地の集積化を図っていくことは主たる一つの今回の法律案の目的ですよ。そういう貸しはがし現象が現実の問題としてあるとすれば、この問題はこの法律案と矛盾することになるんですね。これは、そういう問題が起こっていることについての矛盾は余り感じていませんか。
  46. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今申し上げましたように、一方では認定農業者に現在なっていない大多数の方のグループとしては、その集落営農組織を立ち上げて正に農地の集積を図りたいと。どちらの方も農地の集積を図りたいという意図はお持ちなわけでございまして、その両者の意図がある意味でぶつかっているという面ではないかと思っております。これが、規模拡大をされてきた方がこれによってその経営基盤を失ってしまうというようなことになるのは、委員指摘のように、本末転倒でございまして、そういったものが常態化するようなことであれば、これは大変なことであると私たちも認識しております。  現在までのところ、私どもが聞いておりますのは、やはり集落営農組織をつくるに当たって若干足りないので何とかしてくれということで、例えば二十ヘクタール、三十ヘクタール耕作されている方に大体、そういうふうに返してくれと言われているものは平均的には今の耕作面積の大体四、五%以下というふうに、その調査の限りでございますけれども、出ておりまして、認定農業者の方の方からもある程度のことは、地域、集落と折り合っていくために、ないしはその地域のほかの人たちが農地を集積するということであればやむを得ない面もあるのではないかと。それが、ただ自分たちの経営の根幹にかかわるような大規模な貸しはがしということになれば非常に問題なので、具体的にこういう問題についてはそういうことを調停するというか、そういう窓口を設けてほしいというような要望が寄せられております。
  47. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 今まだ具体的に貸しはがしの問題は、都市近郊の中においてそういう、やっぱりUターンしたりIターンしたりしてやりたいということで貸しはがしの問題が出てきている。しかし、今回、集落営農を組織化してやっていく上において、やっぱり離脱したい、例えばその集落からもうこれじゃやっていけないから離脱したいとか、そういうふうな形の、今までそのA、B、Aという人に貸していたり、一緒にやっぱり離脱したいとかということが現実的に私は出てくると思うんです。  それで、私はその集落営農と認定農業者あるいは農業法人との関係、それは集落営農を優先するのか、農業法人を優先するのか、担い手を優先するのか。これは何を優先して集落のリーダーとしてやろうとしているんですか。
  48. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 正に今回、認定農業者のほかに集落営農組織というものを対象者にするといたしましたのも、正に地域の実態がやはり日本は南北、東西に長いわけでございまして、中国地方のようなところでは既に三分の二の集落でいわゆる主業農家がいないわけでございます。一方、東北地方あるいは北関東ではまだ担い手たり得る人が他の地域に比べれば多く残っておられるという状況にございますから、全国一律にあくまでも例えば認定農業者優先主義でいくんだとか、それで集落営農は認定農業者のいないところでやれとか、そういう通り一遍の、何といいますか、解決とか、中央がそういう形を示して、それに引きずっていくというのは、正に地域実態に反しているんではないかと思っております。  ですから、正にその地域の中で一番いい形は何であるかということでその選択をしていただくということが必要だということでありまして、昨年来から累次の説明会等も含め、集落の中での話合い、その中に私どもの地方機関も、あるいは県や市町村やJAの人にも入っていただいて、さて我が市、我が町、我が村の中でどういうのが望ましいのかなということを、やっぱりその集落の中で得心をしていただいて、自分たちのこととして選択をしていただく必要があるんではないかと、そういうことでやっておるわけでございまして、一律に、やはりまず認定農業者ありきとか、いやいや、そうじゃなくて、集落全体でやった方が落ちこぼれがないんだから集落営農が優先するんじゃないかといったような一律主義は取り得ないと思っております。
  49. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 一概には、私もそれはそうだと思う。ただ、農業法人にしても認定農業者にしても、ずっと未来永劫その人が認定農業者をやるということであるわけがないんですね。やはり認定農業者に認定されたら、その後継者が、親族は必ずそこの担い手になっていくということは約束されるわけではない。その地域の集落の共存を図っていく上において何が一番望ましいかということは地域によって違うことは、これは私は事実だと思う。  ただ、その共存を図っていくという概念で物を言っても、実質的にその地域全体のリーダーという者がいないとその集落が成り立っていかないと思うんですね。その共存を図っていく手段として、今局長は、県とかあるいは自治体とか、そういうものも中に入って、今後のことについては運営に参画をしていくことを何か取り計るような話をしておられますけど、現実的な問題としてそこはちゃんとやっぱり担保しておいた方が集落としては今後維持できていくのではないのかと。  だから、どこかを優先するということではない、それも私は分かります。しかし、あるときは優先しなければ回っていかないときもありますね、地域によっては。だから、その共存を具体的にどういうふうにやっていくのか、共存を図っていくために何を担保にしていくのかということはどうお考えですか。
  50. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 私どもも、その地域ごとに実情が違うわけでありますが、より地域に近いところにいる行政機関の単位でやはり方向性というものをはっきり出していくことが必要だと考えております。  ですから、少なくとも今各県単位で我が県の農業はどっちへ行くのかということを示してもらいたいと。既に示されている県も多数出ております。それを市町村段階にブレークダウンをしていただきまして、市町村段階でも、県の方針が決まっても、県の中で中山間地もありますし平場もあるわけでございますから、我が町、我が村としてどういう方針でやるかということもその町村の段階で御議論いただいて決めていただくと。その言わば現場に近いところの大方針に沿って、個々の集落の実情に合わせて、その大方針を受けた市町村の職員やJAの職員や普及所の職員がある意味でチームをつくり束になって、集落ごとの実情を踏まえて、その集落の人々の気持ちを参酌して、こちらの集落の場合にはこれがいいんじゃないかと、隣と似ているように見えるけど、あなたの方はこっちの方がいいんじゃないかというようなアドバイスをして進めていくということを考えておりますし、十八年度の予算でリーダー育成のお金を付けました。二十億ほど付けたわけでございますが、既に三千人以上の申出がございまして、うち半数以上、千七百人ほどのこの集落リーダーと言われる普及員のOBですとか農協の営農指導員のOBの方とか、こういった地域づくりとか集落営農づくりとか地域の農業に非常に熱意を持っていらっしゃる方、千七百人ほどが既に任命をされまして、具体的に集落の中に入ってその集落づくりに参画するという活動を始められております。  委員の御地元でも既に百数十人の方が指定されているはずでございまして、そういう方々が現場に入っていく中で更に地域の実態に合った形での推進が図られるということを期待しているわけでございます。
  51. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 このことだけで議論をずっと続けるわけにはいきませんが、要するに、やっぱり生産法人、集落営農、担い手、それを優先させることはできなくても、あるときには優先せざるを得ないときがある。共存していくための一つのコンセンサスを得るために、何かやっぱり第三者の、第三者的機関があって、そこでやっぱり担保できるシステム、仕組みがないと、感情だけが先に来てしまうことになってしまうと集落全体が壊れてしまう。そういうふうなことがないように、十分な話合いをしていただきたいことを要望しておきたいと思います。  それから、WTOとの関連で、内外価格差是正交付金の件について伺っておきたいと思うんですが、一昨日の質疑の中で、私は大臣に、今回のWTO交渉の中における是非お願いをしたいことの二点、それは、上限関税を是非死守してもらいたい、MA米の輸入の枠の拡大が是非阻止できるようにしていただきたい、そのことを是非お願いを私はしました。もちろん、交渉の過程ですから、どういうふうに展開になるか分からない、このことも十分承知をしている。  ただ、私はいつも思うんですけれども、上限関税、もう本当、何としてでもやっぱり死守してもらいたいことは、もう私どもの本当のお願いなんですけれども、逆に、もう恐らく農林水産省の方では、そんな議論も、想定外の調査とか研究はしてないと言われるかもしれませんが、仮に七〇〇%ないしは八〇〇%掛かっている関税が一〇〇%単位ぐらいで下がることによって、やっぱり国内生産米との間の価格交付金をどれだけ今度は積み増ししなきゃいけないのかという研究とか、そういうようなものをされたことがあるんですかね。
  52. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 正に現在行っておりますWTO農業交渉における主張にもかかわる事項でもございますので、具体的なコメントは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  53. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 恐らくそういうふうに答弁なさるだろうと。ただ、研究はずっとやっぱりしたりすることはないんですかね。
  54. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 岩永委員は何でも御存じでありますし、まして交渉についての状況も御存じでございます。したがって、もちろん、上限関税は絶対にのめないということが大前提でございますので、それを強くアメリカ、EU、G20等に申し入れているところでございます。  先日、パスカル・ラミーさんに五月の初めにお会いしたときもそれを申し上げたら、おとといの委員会では、ラミーさんが日本料理に例えたというお話をたしかした記憶がありますけれども、その中で、日本料理、複雑かつ繊細な日本料理の中で上限関税は最後に掛けるコショウのようなものだということを言ったので、日本料理にコショウは使わないと、それから、コショウを振り掛けるかどうかは料理を食べる者、つまり日本判断の自由であって、その比喩を使うならば、仮に、コショウは使わないけれども、そういう言い方をするんであれば、掛けるか掛けないかは日本の自由ではないかということを私は申し上げたところでございます。いずれにいたしましても、コショウは掛けませんということが日本の主張でございます。  で、その主張をする前提で、仮に上限関税が掛けられた場合、五〇〇%、三〇〇%、二〇〇%、一〇〇%、そしてEUが言っているような一〇〇%、アメリカが言っているような七五%の場合にどうなるかというシミュレーションをしておりますなんということを仮に外にこれ、この公式の場で申し上げるということになりますと、これはもうこの場だけの秘密会でも何でもございませんので、我々としてはこういったシミュレーションはしておりませんということで御理解いただきたいと思います。
  55. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 過日、大臣は、ウルグアイ・ラウンドの交渉の折に、ある一部の政治家と一部の団体の方と夜中に決めたその一つの失敗が非常にやっぱり農政に混乱を起こしたという話を、答弁をされました。  私は、やっぱりウルグアイ・ラウンドの失敗を二度と繰り返さないためには、やっぱり国民皆さん方にある程度オープンに、事前に、こういうふうなことになったら、こうなったらこういうふうなことが想定されるということを前もって言っているとある程度理解も早くなるのかなというか、しかし、交渉ですから、それは今の御答弁を私は了としますけれども、やっぱり国民が、二度とウルグアイ・ラウンドの二の舞をしないようにしていくために、やっぱり理解せしめる一つのムードというのがないことがかえって不幸なのかなという思いが強く私はするものですから。今の上限関税のことについては了としたいと思う。  それと同じようなことをまたお聞きしたいんですけれども、それでは、攻めるところと譲るところと両方あるというのも、答弁もよく大臣はされる。上限関税は攻めましたと、譲るべきところはMA米だと、これもまだ交渉の過程だから言えませんと。まあもちろんそういうふうにおっしゃると思いますね。  ただ、私は、昨日、北海道の農民連盟の方の答弁の中で、MA米の売渡価格が六十キロ一万三千八百円とかという話でした。そして、北海道の米の政府買入れ価格の手取りが七千五百円ということでした、手元に残る、一俵当たりの。これはちょっと、やっぱりみんな御存じなんだろうか。市場からMA米は隔離されているとはいえ、国内でできた買入れ価格が七千五百円で、手取りですよ、手数料全部、そういうようなことを引いて。お話があったときに、MA米がもし仮に今回少しでも入ってくる、これは市場で隔離をするから直接国内市場とは関係ないからいいんですということを言われても、これは納得しないんじゃないかという思いを私はしたんですね。昨日の参考人の方の御意見がそうだったんです。  だから、今日私は、MA米というもので、仮に市場と関係なく、国内の農家の皆さん方に負担増に掛かったり迷惑掛かることはないので、それで一部譲歩することは了承してもらわなきゃ困るんだということを言われても、その一つ政府の買入れ価格との実態と非常に差があり過ぎる気がして心配しているんですよ。これはどうなんでしょうか。
  56. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 繰り返しの答弁になるかもしれませんけれども、現在、正にMA米全体につきましては、国家貿易の下で極力国内米の需給に影響を与えないという運用を行っているところでございます。  そうした中で、先般のあの国会審議で御説明しましたMA米一万三千円、一俵当たりですね、で販売しているということでございますけれども、これはいわゆるSBS方式、同時売買入札方式で売っているものでございます。  少しあれなんですけれども、SBS方式につきましては、ミニマムアクセス米の輸入の実施に当たりまして、一つは、多様な外国産米に対する適正な市場評価を得るということ、それからもう一つは、正に国家貿易ですけれども、これは、条約上、WTO協定上、商業的考慮のみに基づいて行う必要があるという規定があることから、ミニマムアクセス米の輸入の実施から導入された制度であるということでございまして、全体といたしましては、繰り返しになりますけれども、国産米の需給に極力影響を与えぬように運用しているところでございます。
  57. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 国産米の運用には、隔離しているからそれ影響ないとおっしゃる。  昨日の参考人質疑の中で、大規模農家、二十ヘクタール以上の米作農家の皆さん方が離農を余儀なくされていると言うんですよ。集落営農と、四十ヘクタール、五十ヘクタール、北海道は特にやっぱり大規模農家が多いだけに、そういう米単作地帯の大規模農家ほど離農していくと言っているんです。そういうふうな現実が今あるのに、いや、もう国内の産米農家の皆さん方には余り影響がないからこれはいいんですという説明では、これはやっぱり農家の人、納得しませんよ。  だから、それは、SBS方式でやって市場価格をちゃんとやると言うけど、現実的に規模を増やした農家ほど離農していかざるを得ない状況が現実に起きてるときに、MA米のことについての輸入の枠の拡大を今ここで議論することはおかしいことかもしれないけど、もし仮にそういうふうなことにでもなったら大変混乱を起こすからねという思いで私は質問してるんですよ。そういう切実な声なんですよ。だから、今、岡島局長が言うような答弁説明には、農家の、産米農家の皆さん方説明が付いた答弁とは私は思いませんよ。
  58. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) ただ、繰り返しになりますけれども、現時点におきましては、正に国産米の需給に極力影響を及ぼさないように運用しているというところでございますし、将来のことにつきましては、これもまた繰り返しになりますけれども、現在交渉中でございますので、コメントすることは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  59. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 じゃ、将来その現実的な問題が起きたときには十分考慮されるということですね。
  60. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 将来のことというのがどういうことか、現時点においては国産米の需給に極力影響を及ぼさないように運用しているというところでございますが。
  61. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 現実的な問題、状況が変わったときにはそれに対処するということですね、じゃ。
  62. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 現時点においてはとにかく国産米の需給に極力影響を及ぼさないように運用しているということでございます。
  63. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 今、MA米の七十七万トンというのは一応義務付けられているわけでしょう。それは十分分かってますよ。だから、現状が変わったときには、今私が御質問したようなことも含めて対応するということですねということを言ってるんです。
  64. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 繰り返しで申し訳ありませんが、現状が変わるというのがどういう状況を想定するのかということがあろうかと思いますけれども、その点についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
  65. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 交渉ですから、予断を持って今ここで結論は言えないことは言うまでもありません。私は、現状が変わったときには、若しくはもっと少なくなるかもしらぬ。多くなるということばっかりじゃない。七十七万トン輸入しているやつが五十万トンでいいということになるかもしらぬ。そういうことだってあり得るわけだから。量が増えるということを私は言ってるんじゃないんですよ。少なくなることだってあるだろう。現状が変わったときには対応しますねと、こう言っているんです。
  66. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ミニマムアクセスをウルグアイ・ラウンドの最終段階で受け入れざるを得なかった、一九九三年の十二月だったと思いますけれども、その後に六兆百億という対策を取ったわけでございます。あれも、当時の私、農林部会長として端っこの方におりましたけれども、このミニマムアクセス一粒たりとも入れないということで最後まで頑張ったわけでありますけれども、そういうことになった。したがいまして、六兆百億という、あの受入れのときは自民党は野党でございましたけれども、私は野党の農林部会長、急遽、与党の農林部会長になりまして、その後、六兆百億という対策を取ったことは岩永委員も、あるいはまた国井委員も御存じのことではないかというふうに思っております。  と同時に、閣議了解でMA米が入ってくるとしても国産米の需給には影響を与えないという政府としての決定をしているわけでございまして、これは現時点におきましても、今後もこの決定というものは守っていかなければいけないというふうに思っておりますので、先ほどの上限関税も含めまして、交渉事でございますから相手があることでございますので、我々は守るところは守るということで、特に今月、来月、当委員会の御支援もいただきながら、文字どおりまなじりを決して交渉に臨んでいきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、減るかもしれないし増えるかもしれないという前提ではございますが、御質問でございますが、いずれにしても国産米の需給に影響を与えないというのが我々のある意味では縛られている前提条件でございます。
  67. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 我々が危惧を抱かなくていいように、私たち議員が危惧を抱くというよりも、農民の、農家の皆さん方がそういう心配を抱かなくていいような形が続いていくように私たちは願っています。  次に、農地・水・環境保全対策についてお伺いをしたいと思います。  今回、環境保全対策で、農地並びに農業用水の資源の良好な保全と向上を図るために、地域の共同の活動と地域の環境保全に向け、農業者ぐるみで行われる先進的な営農活動を一体的に支援することによって、農業の持続的発展と多面的機能の健全な発展を図るための対策を実施すると、こういうふうにしてございますね。  それで、私は、中山間地域の直接支払と環境保全対策とはどういうふうに違うのか、これちょっとお聞きしたいんです。
  68. 山田修路

    政府参考人山田修路君) お答えいたします。  農地・水・環境保全向上対策は、今委員おっしゃったとおりですけれども、地域を対象として共同活動を行っていくといったことに対して、その地域における活動を支援していくということでございます。一方、中山間等の直接支払、これも御案内のとおりですけれども、個々の農家に対して、平地、平場と、それから中山間地域の生産条件の格差がありますので、これを補正するということで、農業生産活動の継続を図っていただきたいということでやっております。こういう意味で、両者のねらいは異なっているということでございます。
  69. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 これ、環境保全対策というのは、環境汚染とかそういうものが基になっていて環境保全対策をするということではないんですね。
  70. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 御指摘のとおり、環境保全につきましては、環境保全といいますか、我が国農業を環境に配慮したものにしようというのはもう既に農林省として進めているわけでございますけれども、今回の対策はあくまで地域対策として講じようとするということで、もちろん先進的な営農活動を通じまして環境に対する負荷というのは軽減されるというのは期待しておりますけれども、地域全体でそういうものに取り組むことによって地域も活性化しようじゃないかと、そういったねらいで実施しようとするものでございます。
  71. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 環境汚染としての実態が何かあったんですか。
  72. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 実態ということになりますと、個別地区におきまして、例えば地下水に対しまして硝酸態窒素が基準を超えているとか、あるいは閉鎖性の湖沼の中で汚れが進んでいるとか、そういったことは現実問題としてあるわけでございますが、これはやはり過度の施肥等によってもたらされているといったような分析といいますか、個々のどの農地というわけではございませんけれども、地域全体として見れば農業系でこのぐらいの関与をしていると、そういった分析等は、実際に富栄養化が進んだ湖沼等について分析はされているということでございます。
  73. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 私、心配するのは、こういう、ひとつ環境保全対策として予算化を一方で図っていく、中山間地域の直接支払にも約六百億近くのお金を投入した、農業の生産性向上のために、それぞれの水利の管理とか農地の管理をしていくためにやっていく。それぞれの一つの予算が、今予算そのものは、財政やっぱり厳しい折でもあるだけに、すぐ圧縮されたりなんかして、その予算の範囲の中でやっぱり処理をしなきゃいけないという事態がよく出てくるんですね。そうすると、同じような一つの予算が二つ三つもあると、その分についてはもう二つは削って一つにしろと。その総額が足してそのまま一つになっているならいいです、三分の一になってしまうと。そのこと自体が生産に非常に影響をもたらすことが出てくるんですね。特に、やっぱり中山間地域の水利あるいは農道の維持とかそういうものは特にそうなんですよね。最低の一つの額がやっぱり確保されないと管理できないんですよ。  しかし、役所の方々というのは、すぐ今年の予算は何ぼだからその予算の中で配分をしますという言い方で全部切ってしまうんです。これ、予算がないんだからしようがないでしょうと言うけれども、しかし生産に必要な農道や水利というのはやっぱり管理しなきゃうまくいかないんですよ。だから、そういうふうなことがならないようにやっぱりしてもらいたいんですよね。  だから、今回の担い手三法の中に、この一つの農地の保全対策、一方で挙げた。これは、挙げていただいていることは私は了として受け入れているんです。ただ、一方の中山間地の直接支払も一方の方であるものだから、それもまあ四、五年もたっていくと、どっちかをやっぱり切り捨てていこうというふうなことに結果的にそういうふうなことになったんでは困るんで、そこはよく整理しておいてもらいたいと思うんですよ。
  74. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今委員からお話がありましたとおり、あるいは私が説明をいたしましたのは、両方の対策は、ねらいは基本的に異なっておりますけれども先生お話にありましたように、農道ですとか水路を保全をしていくというような活動をやっていくという意味で、やはり一部に同じようなことが行われていくということがございます。  それで、これにつきましては今年はモデル事業で実施をしておりますけれども、十九年度から本格的に取り組む際には、今年の状況をよく踏まえまして、その中山間地域の直接支払制度あるいは対策と農地・水・環境保全向上対策がそれぞれ並立し得るように、その辺の関係をよく調整をして実施をしていきたいというふうに考えております。
  75. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 並立して実施するなら、両方とももらえるの。
  76. 山田修路

    政府参考人山田修路君) それは十九年度に向けて調整をしていきたいと思いますけれども、基本的には、少なくとも十八年度のモデル事業ではそこは両方もらえるという格好にしておりますので、その実施状況を踏まえて十九年度の仕組みを考えたいと思っております。
  77. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 今後も、それ、もし並立してもらえるんだったら、平場と中山間、それぞれの一つの役割が違うわけだから、それは残してもらいたい。しかし、将来、予算がなくなってきたんで、平場のやつは自分たちでやりなさい、中山間は農家にやらせる。逆に、今度は生産効率の悪い中山間は、もう自分たち、そこまでは払うお金がないから、平場の集積した担い手のところだけをやりますから、あとはあなた方でやりなさいというようなことにならないような措置を十分に担保してもらいたいと思いますが。
  78. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今お話ししましたように、十九年度から本格実施をするときにその辺の関係も整理をして実施をしていきたいというふうに考えております。
  79. 岩永浩美

    ○岩永浩美君 大変失礼な質問をさしていただきましたが、私の質問はこれで終わります。
  80. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩といたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  81. 岩城光英

    委員長岩城光英君) ただいまから農林水産委員会再開いたします。  休憩前に引き続き、農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案砂糖価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 平野達男

    平野達男君 民主党・新緑風会の平野でございます。  農林水産委員会は余り来たくない委員会ではありましたが、今回はどうしても質問させていただきたいということで筆頭理事にお願いをして、じゃ、しゃあないかということでちょっと貴重な時間を割いていただきました。  今回の法案は、私は本当にある意味で歴史的な農政の大転換だというふうにとらえていまして、非常に重大な、重要な、そしてこれが施行されますと、これからの農村とか農業政策にいろんな形で、有形無形の形で大きな影響が出てくる法案じゃないかなというふうに思っています。  その中で、この法案というのが一体どういう考え方で仕組まれているのか、それからどういうねらいで仕組まれているのか、一見分かるようで考えれば考えるほど私はちょっと分からないなという疑問点が多々ありまして、今日は取りあえずそういう疑問点を一点一点挙げていきながら、政府の見解、大臣の見解をちょっとお聞きしたいというふうに思っています。  今回の法案の一つの大きな要素は、やっぱりこれから農地流動化起こしますよということだろうと思います。農地流動化というのは、もう御承知のように、出し手がいて受け手がいます。出し手があって受け手がいて、それでその中でうまくマッチングすれば農地の流動化が進むというのは、これはもう自明の理でありますね。ところが、今三十六万ヘクタールとかなんとか耕作放棄地が今ありまして、それがまた増えている。今までの農地流動化施策は、農業経営基盤強化法を作ったり、農地流動化何でしたっけ、促進法でしたっけ、そんな法律を作りながら、いろんな法律を作って農地流動化を進めてきましたけども、なかなか進んでこなかったという背景があります。  農地流動化が今まで進んでこなかった背景、あるいは耕作放棄地が今増えている背景、理由、これをどのようにとらえられておるでしょうか。考えられる要素としては、受け手が少ない、請け負おうと思っても農地の条件が非常に悪いからこれは耕作放棄地になる。つまり、農地の条件ということで受け手がいなくなる、受け手がいないと、そういうような要素があるんではないかと思いますけども、どのような御認識でしょうか。
  83. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 正に平野委員はこの問題のエキスパートでございますから、既にお考えなりをお持ちの上での御質問だと思いますので。  この農地の流動化がなぜうまくいっていないのか。したがって耕作放棄地が増えてきている、また、いわゆる担い手への土地の集積が進んでいないという原因でございますが、これは出し手側あるいは受け手側両方に要因があると思いますし、何よりもそのミスマッチということが一つの大きな原因だろうと思っております。  出し手側としては、やはり農政の中心が稲作であり、稲作というのは比較的小規模で、そしてそう労働時間も掛けず、またいろいろと耕作をする上での合理化が進んできたということもございます。それから、そこそこの収入が米によって得られていた、これはあえて過去形で申し上げた方がいいかと思いますけれども、投下する労働に比べて収益が多かったということがあろうかと思います。したがって、幅広い農家が、いろんな経営の規模、あるいはまた意欲その他、いろんな農家が米作、つまり農地を手放すということの面から見ますと、マイナスの要因に働いたということだろうと思います。  それから、これは必ずしも悪いことというふうに断ずることはできませんが、出し手としては、先祖伝来の農地を人に貸すとかあるいは手放すとかいうことに対する抵抗感も心理的という観点からあったのではないかというふうに思っております。  また、受け手側といたしましては、農業をめぐる経済情勢が良くないという状況の中で、受け手側にも積極的に受けようという意欲がそう強くなかったと。あるいはまた、自分が望んでいるような農地、隣接の農地あるいは平地の農地等々いろいろあると思いますけれども、そんなような農地がなかなか手に入れることができないということもあったのではないかと思います。  この両方があってミスマッチということで、複合的にこういう原因があったのではないかと考えております。
  84. 平野達男

    平野達男君 私も、基本的には、今までの整理としてはその方向だと思います。  ただ、あえて若干補足させていただきますと、食管の時代では、特に米は生産費所得方式というのを取って、労働を掛ければ掛けただけちゃんとそれを評価して米価を決定されてきた。かつてベトコンという、国会議員の中にベトコン部隊もあったやに聞いていますけども、米価をいかに設定するかが大きな政治的課題でありまして、それはもうとにかく高米価、高米価ということで圧力が掛かってきた。そういう中で、一方で土地改良が進みますから、労働生産性の向上が図られてきているという中で、小さな農家でも一ヘクタールでも五反でも六反でもとにかく米を作れば作っただけ所得が上がったということで、出し手側のインセンティブは全くなかったということは言えると思います。  それから、あと大臣が言われたように、資産所有の問題、それからあと資産としての所有したいという意欲の、意識の問題ですね。それから、あと農地法に対する一種の当時まだアレルギーがあったと思います。一回出したらもう返らないという、まあそういうこともありましたね。  ところが、今状況は随分変わっています。まず、米に関して言いますと、もう食管制度がなくなりましたから価格はもう完全に市場価格、完全に機能しているとは思いませんけども、まず今市場で決定されている。それから、農地法に対するアレルギーもまずなくなってきています。それからもう一つ、資産という、保有はまだあるかもしれませんが、そういう中でまず営農条件が、営農をめぐる条件が非常に大きく変わってきているというのがあります。それから、更にもっと大きな条件は、今農業業者あるいは基幹農業従事者も含めて六割が六十五歳以上だということであります。これは何を意味するかといいますと、このままいきますと農業就業人口がどんどんどんどん減っていく、あるいは農業従事者がどんどんどんどん減っていく。ということは、農地の出し手が出てくるということです。  そういう中で今回の法律が出されたわけですけども、この法律の中を仕組むときに、農地の流動化というときに着目した場合に、これからどういう視点でこの農地流動化を見ていかなければならないのか、その視点についてお伺いしたいと思います。  質問がちょっと漠としていますから、具体的に言いますと、一点は、これからは農地のマクロ需給という観点から見ますと、先ほど言いましたように、農業従事者、就業者数が減ってきますから、出し手はどんどん出てきます。ということは、農地の需要供給という観点から見たら、供給が増えてくる。だから、供給はそんなに気にしなくてもいい。むしろ受け手側が対策重点なのか、いや、そうじゃない、今のスピードじゃもっと駄目だから、もっともっと出し手側を確保する必要があるという観点で今回仕組まれたのか。これは、今回の法律の全体の枠組みを考える上での非常に重要なこれ概念だと思いますので、そこはしっかりとちょっと説明していただきたいと思います。
  85. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 平野委員おっしゃるとおりで、これから高齢化、あるいはそもそも人口が減っていく、もちろん農村においてもそうだと思います。そういう意味で、出し手側により出すインセンティブというか圧力が加わってくることは言うまでもございません。  他方、受け手側も、やはり意欲のある、今回の法案の対象としようとしているようなところは規模拡大の意欲も当然あるというふうに考えております。我々はそれを期待というか、ある意味じゃ前提としているわけでございます。  そういう意味で、どちらに対してのよりウエートを掛けた法案の趣旨かと言われると、これは両方というふうに言わざるを得ないんでありますけれども、やっぱり出すものがなければ受けることもできないし、そのミスマッチがこのまま続いていけば、耕作放棄とかそういうこと、あるいは農地転用とかそういうことになりますんで、それを何としても防いでいかなければいけないということでございます。
  86. 平野達男

    平野達男君 今の答弁はよく分かりました。  つまり、出し手対策も大事でありますし、受け手対策も大事だと。つまり、出し手対策が大事だということは、もっともっと農地を出せということなんです。つまりは、受け方をちょっと変えますと、農業従事者はもっと減っていいということです。  じゃ、今、しからば、農業就業人口、農業従事者、何でもいいんですが、どれだけのスピードで減っているかといったら、今大変な勢いで減っているんです。だから、私が冒頭申し上げたように、これからは黙っていても農地の出し手は出てきますと言ったのはそのことです。にもかかわらず、今大臣の中では、出し手も大事だと、出し手対策も大事だということは、もっともっと農地を出せと言っていることです。つまり、今の農業従事者というのは余計だと言っているというふうにも取れちゃうわけです。つまりはそういうことになっちゃうんです。つまり、出し手側にインセンティブを与えるというのはそういうことなんです。  だから、私が冒頭で言ったのは、農地の流動化といったときには、片側に農地の流動化ということを考えた場合には、出し手、つまり供給側ですね、受け手、需要側、これは二つありますと。これは理屈上はどっちが大きくなってもこれは耕作放棄地が出てくる可能性があるわけです。ああ、ごめんなさい、需要側が非常に出てくれば、ニーズが出てくれば耕作放棄地はそんなに出てきませんね。だから、供給側がどんどん増えてくれば、これは耕作放棄地が出てくる可能性がある。そういう中で、どっちに重点を置きますかということで今回の施策の考え方も地元に対する説明も実は変わってくるんです。  だから、今大臣答弁の中では両方だとおっしゃいました。だから、今、私の質問は、さっきの話に戻りますけども、ならば今の農業従事者というのは、減少の度合いというのは、この減少はもっともっと減っていいんだと、減らすんだと、そういう理解でよろしいですか。
  87. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いや、施策がどっちがウエートがあるかと言われれば、それは農地の移動ということですから、どちらに対しても配慮をしなければいけないということを申し上げたんで、出し手側にウエートも、出し手側に対しても配慮をするということは、必ずしも、あなた農業をやめなさいと、農地を出しなさいと、もっといい経営するところに出しなさいという、そういうようなことまで想定した答弁ではないわけでございまして、ある意味では農業を続けたくても続けられない、高齢化とかいろんな要因で。あるいはまた、農地を手放したくても手放せないと、それはある意味では資産価値の問題も過去あったかもしれませんけれども、そういう意味で申し上げたわけでございますから、無理やり農地を取り上げてというようなことは毛頭考えておりません。  他方、受けたい人が受けられないということに対しては、よりそれに対して強い施策を取っていくことが私は食料政策あるいはまた農村政策等々からいって必要なことだと思います。  要は、そのミスマッチをどうやって解消していくかと。お互いの自由意思の中でうまくそれが同じ方向を向いたときに、うまくそれが、農地が移動できるようにするということが最大のポイントであるということを先ほどから何回もミスマッチの解消ということで申し上げているところでございます。
  88. 平野達男

    平野達男君 今、概念上の整理をさせていただきますけども、正にミスマッチの解消なんです。ですから、需要が非常にたくさんあって出し手が不足している場合には、担い手対策といった場合には、今度は出し手対策をしなくちゃならないです。そうじゃなくて、今の農村の状況を踏まえていれば、黙っていても出し手はありますと。しかし、受け手がいないんですとなれば、需要と供給のミスマッチ解消するために受け手対策になるんです。  じゃ、何で私が先ほどのような質問をしたかといいますと、今回は、お金を投資する、お金を使う側が四ヘクタールとか二十ヘクタールという線を引いて分けましたね。今回のいろんな交付金の対象にならない農家というのは、ある意味においては、それ以外、交付を受ける農家との差別化を受けるわけです。つまり、これは農地を手放せということに対するインセンティブを与えているとも取れるわけです。  先ほど私は食管管理下時代の農地流動化の話をしましたけども、あのころの農地流動化施策というのは出し手対策が中心でした。踏み切り料とか言いましてね、出してくださいと言ってお願いして歩いたんですよ。だから、今回はどういう考え方でやるんですかということの基本的な考え方なんです。これをはっきりしなかったら、現場なんかで説明できませんよ。  実は、大臣のそういう認識、申し訳ありませんけど、農林省自体もここについてははっきり説明できないんです、私何回も聞いたけど、どっちなんだと聞いても。その軸足がぶれているために、今回のこの法案が一体何をねらっているか、これから見ても、るる聞いていきますけど、よく分からない。これはよく整理しておいた方がいいですよ。  私は、これからの日本、人口減少社会、農村社会の変貌に備えた上で、担い手を確保する必要がある、受け手が必要だというなら、これは理屈として分かりますよ。だけど、今の大臣の話では、何か分かりませんけども、出し手も必要なんだと、需要と供給のミスマッチの解消だということが先ほどお話の中で出ているんだけども、どっちにウエートですかと。出し手対策も重要だといえば、繰り返しますけども農業就業人口どんどん減っているじゃないですかと、片っ方で耕作放棄地増えているじゃないですかと、そういう問題が出てきます。そこをどうやって説明するかということであります。
  89. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、今回の政策は、農業政策、つまり食料増産政策というものをはっきりと位置付けているというのが一つの大きな特徴で、食料増産じゃございません、自給率あるいはまた消費者から好まれる農産物を供給することによって消費者にもプラスになり、それから生産サイドもそういう消費者を意識した経営をやることによって経営がより良くなっていくという、その経済的な側面といいましょうか、農業的な政策を準農業面にフォーカスした政策というものを強く打ち出しているというのが一つの特徴でございます。  じゃ、先ほど平野委員がおっしゃるように、残りの人たちは切捨てか、あるいは関係ないのかと。決してそうではないんでありまして、一つは集落営農等々の手法もございますけれども、もう一つは農地・水・環境対策ということで面的に参加をした人に対しての集団としてのメリットということも考えているわけでございまして、どちらかということを先ほどから何回も御質問されております。私は、両方であり、ミスマッチの解消がセットで大事だということを申し上げておりますが、その中で、質問聞いていると、何かそのとおりだというふうに言っていただいたと思ったら、また違うというふうにお話しになっていらっしゃいますけれども、結局、平野委員としては、お考えとしては、何が正解なのかということを是非教えていただければ大変有り難いなというふうに思います。
  90. 平野達男

    平野達男君 私が正解をやるんじゃなくて、この法案を仕組む前提をどのようにお考えですかというのを聞いているわけです。  私は、一番最初にテーマを設定したときには、今、農地流動化という枠で設定をしました。今、農地、水と土とかというお話されましたけども、それで言う意味の出し手対策はまた農地流動化とは別の話です。販売の話、それも別の話。  先ほどから大臣が言われているのは、ミスマッチというのは、あくまでも農地の需給関係の話をしているんです。だから、そこは話をごちゃごちゃにしないでください、そこは。あくまでも、農地の流動化というのは、繰り返しになりますけども、出し手があって受け手があるという話ですから。  私は、今回の話は恐らく受け手対策だろうと思っていました。それは、その今の農村の状況を考えたら、そういうふうに判断するのはごく自然だと思うからです。日本はこれから人口減少社会に入ります。これは大臣もるるあちこちで答弁されています。人口減少社会の波が一番どこに来るか。都会でもありません、中都市でもありません。もう私は農村だと思います。六割の人が今農業従事者だ、六十五歳以上の人が。そういう中で、黙っていても、黙っていてもといったら、何か対策を打たなかったら農業従事者、農業業者はどんどん減っていきますよ。今回、それについては、その農業従事者対策じゃなくて、それは、私は、今回の中で施策をはっきり選別した結果、担い手というところに集中をすると言ったから、これは当然考え方とすれば、ああ、これはそういう社会認識の中で、担い手の中で受け手を、もっともっと農地を受けてもらおうと、そういう政策なのかなというふうに私は理解していました。だから、この軸足をしっかりした説明できなかったら、本当この法律の全体の説明できなくなりますよ。そのことを申し上げているんです。  いや、ここは多分、大臣と私の認識は多分一緒だということで理解して、次に質問にちょっと入らせていただきますけども、じゃ、しからば、今度は逆の質問なんです。本当に担い手対策になっていますかという話なんです。担い手が、じゃ何で今まで担い手が育たなかったと思いますか。その考え方をちょっとお聞かせください。
  91. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 平野委員はとにかく農地問題の大変なプロであったわけで、今も大変な御見識をお持ちですから。農地からこの議論を始められるということは、ある意味では今まで余り農地と農業政策というのは関連されて議論が、突っ込んだ議論がなかった。そういう中で平野委員はずっとこの農地問題に取り組んできた。今回、担い手とか海外との格差とか競争力とか、こういう議論が出てきておりますけど、確かに農地の議論というのは、突っ込んだ議論が、私は農地法ができて以来抜本的に本当に議論をしているということが余りなかったのではないかと。  私は、農林省の皆さん方は問題意識を持っていることは十分、もう私は当選して以来農林省の皆さんとお付き合いをしていて、農地法という問題大事であるという、時代に合ったものにしなければいけない、いろんな人と勉強会をやって、そういう議論をずうっと二十数年間聞いておりましたけれども、こういう国会の場とか、あるいは、まして農地法についての議論とかいうことはなかったわけでありますから、そういう意味で私は大変にいい御指摘だと思いますが。  この法律の主眼というのは、まず担い手というものに対してどういう施策を持っていくかということがポイントであって、その関係から、農地流動化あるいは農地の世界をどういうふうにしていくかということが私は議論の順序だろうと私なりに思っているわけで、まず農地法、農地の流動化があって、そこから担い手をどういうふうにしていくかという論理立てというのは、ちょっと私には初めての体験なんで若干戸惑いながら今やり取りをさせていただいているのが率直なところでございます。
  92. 平野達男

    平野達男君 やっぱり依然として議論かみ合いませんね。私は、今まで、ここで一時から質問に立ちまして、農地法の話は一言もしていません。農地法の話はしていないんです。関連付けて経営基盤強化法とか農地流動化の話はしました。今、私、頭の中に農地法どうのこうのの頭は全くないです。あくまでも、農地の動きがどうなるのかというフローの動きで考えています。  これは、私の趣旨、多分周りにおられる方は、こう言ったら失礼ですけども、少し分かっていただけるんじゃないかと思いますね。ちょっと後でまた大臣も議事録なり何かちょっと精査してみてください。  それで、次のステップに行きますけども、じゃ、なぜ担い手が今まで育成しなかったのか、出てこなかったのか。私は、これから本当に、ある意味では農地の受け手を確保するというのは本当大事だと思います。じゃ、なぜ今までその受け手が、いろんな担い手対策、担い手対策とやりながら出てこなかったのか、その原因はどこにあると思われますか。
  93. 三浦一水

    ○副大臣三浦一水君) 農業従事者の減少、高齢化など、農業の生産構造の脆弱化が進む中で、水田農業を中心に担い手が十分に確保されているとは言えない状況で、また担い手への農地の利用集積につきましても増加率が鈍化をしており、農業の構造改革が立ち後れているというのは事実だという認識を持っております。  このような中で、今のお尋ねに対します主要な要因としましては、一番目に、担い手の規模拡大意欲が抑制されてきたこと、これは近年の経済状況があるかというふうに考えております。それから、担い手から見て望ましい農地が出てきたかということが二番目にある、出てこなかったという認識を持っております。三番目には、機械化の進展等を背景に、兼業農家等が稲作に特化した経営を持続することが可能になってきた等をその理由として考えております。  また、一方で、政策面におきましては、様々な指摘がございますが、本質的には、これまでの農業経営の改善に向けました各種施策が価格政策等のように幅広い農業者を一律に対象としてきたため、担い手のいわゆる経営規模の拡大等による望ましい農業構造の実現に結び付いてこなかったという認識をいたしております。
  94. 平野達男

    平野達男君 今の答弁の中で三つか四つぐらいの要素を挙げられたと思いますけども、以下はちょっと私の考え方で進めさしていただきますが、何で担い手が育たないかといいますと、それだけの要するに経営上のメリットがないからという、抽象的な言葉でいけばそれに尽きると思います。それから、今日の午前中の岩永議員の質問にもございましたけども、規模拡大したからといって経営が安定するわけじゃない。二十ヘクタール、三十ヘクタールの米単作農家は現につぶれているという御指摘もありました。事実そのとおりです。  今、先ほど言いましたように、米、野菜もそうなんですけども価格はもう市場価格で決定されます。米については、もう御承知のように消費は落ちている。しかも、一方でミニマムアクセス米は倉庫に詰まっている。価格の下落圧力というのは、もう御承知のように、すごい今大きいですね。そういう中で、経営規模を拡大するというのは実に勇気のあることだと思うんです。そういう中で、担い手農家を確保するためには、その勇気を与えるような仕組みが多分必要なはずですね。  ところが、今回の品目横断対策を見ますと、米、麦、大豆、それから、でん粉、バレイショ、それからてん菜。でん粉、バレイショ、てん菜は北海道が中心だと思いますから、まず米、麦、大豆というふうに見ますと、米はゲタ、ナラシとは枠組み、別ですけども、麦、大豆という形で見ますと、キャッシュフローという観点で着目しますと、そんなに今までと入ってくるお金変わりありませんね。これは農林省の資料でそうなっているんですよ。大豆が三千円ぐらいちょっと上がるということで、一万円ぐらい上がるんです。そうしますと、現金収入という観点から見ると、担い手から見た場合にはほとんど変わらない。  じゃ、何が、こういう中でどういうインセンティブで担い手がより以上に、今まで以上に農地を受け取るのか、それが説明できますか。これは、私は、地元に行って一番説明に苦慮していることなんです、実は。一番じゃない、三つ苦労していることあります、実は。後でまた二つ言いますけど。三つ苦労していることの一つです。これ、ここでこういう説明するよりは、担い手あるいは意欲のある農家にどのように説明すればいいか、ちょっと教えてください。
  95. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは、平野委員分かった上での御質問だと思いますけれども、今回のこの四ヘクタールとか十ヘクタールとかあるいは二十ヘクタールとか、それ以外に対するいろいろな所得特例等々につきましては、一応のスタートラインとしての仕切りとしての数字を持っておりますけれども、過去払いだけでくれば、全くこれは、平年作であれば、あるいは農産物の市場価格が一緒であれば同じということになるわけでありますから、対象農家から見れば全く同じじゃないかということになるわけであります。それはそのとおりであります。  しかし、そうじゃなくて、今回、担い手、つまり対象の農家あるいは農業集団に対してよりインセンティブを与えている部分が、正に我々非常に気に掛けておりますWTO上のわざわざ黄色というものも選択して、どうぞ品質向上、規模拡大やってください、それによってある意味では施策の対象がそちらに絞り込まれるわけですから、先ほど切り捨てられるじゃないかという御指摘があったわけでありますけれども、仮にその外れる方はその施策の対象にならないと。片っ方対象になるということで、そちらに対しての支援策と、より他産業並みの所得、あるいはまたより良いものを作ればどんどんどんどんやっていくと。  要するに、日本も多様な農業ということは、WTOだけじゃなくて日本の国内においても多様な農業があるわけでございますから、御地元の岩手県も、あるいはまた西日本の方は認定農業者のあれがなかなかうまくいっていないとか、大変申し訳ございませんが、私の地元で言いますと、過去二十数年の間に農家戸数は半分になり、農地面積は一割増えて、そして一戸当たりの農地面積は倍になって、所得は二・五倍になっております。農地が足りない、何とか農地が欲しいと言っている地域もごくわずかでありますけれどもあるわけでありますから、そういう意味で、今回の施策というのは、いろんな多様な農家がありますけれども、文字どおりプロといいましょうか、もうかる、あるいはもっともうけようと、もっといい経営をしようというところに対しての施策として、単なる過去払いプラスアルファがあるということが私は大いなるインセンティブになるというふうに理解をしております。
  96. 平野達男

    平野達男君 私のまた先ほどの質問に対しては、必ずしもちょっと的確に答えいただけなかったと思います。キャッシュフローという観点から見た場合にはどういう説明ができるか、それから経済的インセンティブから見たときに担い手にどういう説明ができるか。  今の説明は、この委員会の中では抽象的な話として何となく分かりますけれども認定農業者に向かってWTOがございましてどうのこうのなんて言ったって分かりませんよ、そんな話は。本当に今回の中で流動化を進めるときに、あなたは担い手、今回の政策の中で安心して要するに農地を受け取ってもらっていいですよと、そういう環境ができますよと私、説明できないから今困っていますよ。そのことを申し上げたいんです、私は。  それからもう一つは、あと担い手になるときに将来に対する安心感がないという、その要素もあります。しかし、今回の政策の中では、確かに政策が安定するからその安心感は出てくるかもしれない。だけど、それだけが本当に担い手が今までできなかった要素かということなんですよ。この担い手というものを考えた場合に、なぜ担い手ができなかったということを冷静にきちっ、きちっと分析して政策を立てなければ、片っ方で農地の出し手はどんどん出てくるかもしれないんですよ。  それから、私、中川大臣答弁の中でちょっと気になるのが一点ございますけれども、地域、地域によって違うというのはそのとおりです。いい農家もあれば悪い農家もある。だけど、もう一つ大事な点は、自給率という問題もあって、マスとしての農地を確保しなくちゃならないという問題もあって、全体としての農業生産力を確保しなくちゃならないという問題もあります。その話をするときに、地域性があるからこうだ、こうだという議論も大事だけれども、全体として、じゃ日本の農地はどういうふうにして確保していくんだ、自給率はどうやって確保していくんだという話は、地域性よりもマスとしての、ストックとしての議論がやっぱりこれ必要だと思うんです。この観点を抜きには。  私は、今回の法律の中の一つのあれは、農地流動化と言ったのは、今あえて農地の面についていろいろ質問していますけれども、ストックという、私なりの今概念で話しているつもりなんですが、こういうことを話するときには、地域性云々ということも大事ですけれども、そういうもののマスを確保していくためにはどうすればいいかという視点で話していますので、私への答弁は、あくまでも概念的な整理として聞いていますんで、地域性の話は余りしていただかなくても結構であります。私は、地域性の話についても私なりにもいろいろ理解しているつもりですから。それを話をされますと焦点がぼけますので、そのことをちょっと御注文申し上げておきます。
  97. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 黄色か緑か云々というのは、もちろん私も地元へ行ってそんな説明をするつもりはありません。それでもって理解をしていただく必要もないと思います。  ただ、この場ですから、ましてプロ中のプロである平野先生ですから、過去払いでいけば同じですよと……
  98. 平野達男

    平野達男君 農家に対してと言っているんですよ。
  99. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) ええ。  過去払いだけで面積も増やさず、品質も増やさず、単収も増えず、市場価格も同じであれば、それは同じですよと。でも、それだけではメリットありませんよねと。じゃ、どういうメリットがあるのかというと、どうぞ規模を拡大してくださいと、その分またプラスアルファが一つ増えますよと、あるいはまた品質向上すれば、それに対しての基準となる交付金の額が増えますよということで、トータルとしてインセンティブに、インセンティブといいましょうか、結果として収入が、売上げとしても増えますし、品目横断の支払も増えていくということになりますから、更にいい所得が上げられるということになりますから、大ざっぱに個々の農家に対して言えば、意欲のある農家はもっと規模を拡大してください、もっといいものを作ってください、そうすると所得も増えますし、それから品目別の支払も増えますし、それから自分が積立金を払っている価格変動支払については、今までは最高七割であったものを万が一の豊凶変動によっては九割まで補てんされますよと。  つまり、農業の継続につながっていきますよという意味で、私は、農地を増やすとかいうことも含めてやっていけば、よりいい経営ができるというインセンティブになっていくというふうに考えております。
  100. 平野達男

    平野達男君 今までの状況でも、例えば利用権設定する、作業受委託でもいいです、まあ利用権設定でいきましょう、して規模を拡大すれば、転作をやって大豆交付金もらいました、麦作安定資金もらいましたと。それは規模を拡大するメリットはあったんですよ。  今回は確かに、多少、品目加算が入りましたとか、いいものを作れば収量が上がりますと、交付金がちょっと増えますと。それが、これだけこれから人口減少社会に入ってきて農地の出し手が出てくるかも、多分一杯出てくるかもしれないという状況の中での担い手確保の決定打になりますかということだと思うんですよ、これ政策的に見れば。  他方、もう一回担い手に関して言いますと、私は、品目、いいものを作ったから少しはいい収益入ります、要するに掛金はちょっと安くなります。それはそうですよ。だから、じゃ今まで五ヘクタールやっている人が十ヘクタールやるというのは、今までの政策と比較してどこがインパクトあるかといったら、とても私、今の説明の中では説明できないと思う。  本当に、繰り返しになりますけれども、麦を作ろうが大豆を作ろうが、そこに掛かる交付金の単価というのは、今の一応標準的な単価は変わらないんだから、変わらなかった以上は、今までの政策だって担い手の規模を拡大しようと思ったらできたはずなんですよ。何でしなかったのかということについてはきっちり分析しなかったら、それこそこの政策は、ただ単にゲタだナラシだといって今までの組替えをしただけで、しかも交付の対象を四ヘクタール、二十ヘクタールと限定しただけで、何も変わらないということになっちゃうんですよ。  その結果、何が起こってくるか。農地の出し手は片方で出てきますよ。受け手はインセンティブは変わらない。耕作放棄地が出てくるというのは、これは最悪のシナリオなんですよ、実は。かまやつひろしの歌に「下駄を鳴らして奴が来る」という歌がありますけど、これは本当に下駄を鳴らして変な政策が来るということになりかねませんよ、本当に。  というふうな私は、本当に今そういう、これを考えていけば考えていくほどこういうことになるのかなと。だって、実は私はこの問題については、何回も地元に行って、農協の方を相手にしたり、意見交換会してきたり、集落へ行って座談会やったりいろいろ、私、実は農林省で二十四年間、飯食いましたから、少しはこれはいいメリットがあるんだということをいろいろ説明しようとしましたけれども、なかなか説明できない、これは。  しかも、また今度は別の観点に変えますけれども、一方で、じゃ今回の政策で出し手が、じゃ逆に、ちょっと今度は先に逆の話をしますが、こういう政策を入れたからといって、今まで一ヘクタール、二ヘクタールで六十五歳ぐらいの方が農地を放すかというと、なかなか私、そのインセンティブも実はないと思います。それは何でかといいましたら、兼業農家は何で、兼業農家です、そういう方は何で農業をやっているかといいましたら、所得もさることながら、それが欲しくてやっているんじゃないですね。もう完全に生きがいですよ。その人たちは集落営農なんか言われたって、集落営農、今日午前中に岩永さんが非常にいい議論をやられました。あのとおりですよ、私は。岩手県だって、もうあのとおりの現状なんです。集落営農は自分が農業やりたい人にとっては何がメリットがあるか分からないんです。これで今、大混乱になっていますよ。  それで、午前中、井出局長から選択、選択とありました。選択と言うのなら、同じ条件で選択さしてください。片っ方で、これやれば補助金付けますとやって、片っ方は、なければ一切その交付金は対象外になりますといったら、冷静な判断できないですよ。そして、本当に集落営農が農業者にとってメリットがあるなら、今までだって集落営農出てきたんですよ。当たり前の話ですよ、これ。何でこれが出てこなかったのか、この分析もしていない。その結果が、交付金もらって、片っ方は交付金を付けなけりゃ集落営農が進みますなんというのは、これは政策じゃないですよ、私に言わしたら。何も考えてないとさえ言いたくなる。お金を付けたら、集落営農が進みますよ、流動化が進みますよ。どこが政策だと言いたいですよ、私はこれは。  これは、今の中で、現場の中で説明していたときに、農家は、最初のうちは農林省の考えることだからいいことだろうと思って聞いていた節がある。しかし、だんだんだんだん考えてみたら、これは一体何なんだという疑念が私、出ていると思います。  それから、独りしゃべりして申し訳ないんですけれども、集落営農に関してはまた時間がありましたらいろいろお聞きしますが、これ今の段階でかろうじてうまくまとめたとしても、いずれ私は、お金というインセンティブで集落営農をつくっている限りは必ず崩壊すると思う。崩壊したところの集落のところというのは悲惨ですよ。そういうこともやっぱり考えてもらいたいですよ。(発言する者あり)そういうことを、郡司さんは親切で、考えてあるというふうにおっしゃいますけれども、そういうことであります。もっと、今ちょっと勢いを盛り上げたところ、郡司さんから、後ろからちょっとちょっとと水を入れられましたから、ここでちょっとトーンダウンしますが。  まあいずれ、今の状況を踏まえますと、黙っていてもこれからは農地の出し手は出てきます。これは残念ながら出てくるんです。  それから、あともう一つ一つ言い忘れましたけれども、岩手県みたいな中山間地域は何で農地を放さないか。もう一つあります。今、景気悪いですから、他産業だけで生計立てる人は少ないです。かといって、経営規模が小さいですから、農業だけで生計立てる人も少ない。ほんのわずかの収入でも、とにかくそれが自分の農家収入を支えるすごい助けになっているんです。それを集落営農を言い出して、この資料だと何か一杯配当金がもらえるような仕組みになっていますけど、あれは私は全然信用しません。一ヘクタールでも二ヘクタールでも自分でやって、実はこれ自分でやってということにもからくりがありまして、全部自分でやらないですよ。農家は営農集落はやらないけれども、機械のない人は、じゃ耕起をお願いしますといって、耕起だけお願いするんですよ。で、水管理をやって、あと稲刈りは比較的簡単だから稲刈りは自分でやるという、半作業受委託が集落の中で進んでいて、それでもたせているんですよ。それが地域の要するに農業を支えているし、実は地域の生活を支えているという実態も農水省は分かっているはずですよ。  そして、ましてや、繰り返しますけれども、これから高齢化社会でしょう。私は死ぬまでとにかく何でもいい、一ヘクタール、いや二ヘクタールでもいいから米を作りたいという農家はたくさんいますよ。何で私たちが米作っちゃ駄目なんだと、いやいや、米作って駄目だと言っていないというのは承知していますよ。しかし、今回の政策はそういうメッセージを出してしまうんですよ。  ということで、演説になってしまいましてね、質問をちょっとしなくちゃならないんですが、私は、これからの、原点に戻りますけれども、今回の政策の中で、農地流動化のそのマクロ需給という観点から見た場合には、やっぱりこれは下手しますと今の政策では供給過剰になってしまう。  だから、むしろ今大事なのは、今回の政策は今回の政策として、よく考えた政策ですし、政策自体として私、悪い政策だと思っていません。ただ、一点だけ重要な問題は、四ヘクタール、二十ヘクタール、まあいろんな条件ありますけど、それに外れた人に交付金を全く出さないということです。  私は、自分の考え方を先に結論を言いますと、今必要なのは、とにかくみんなでできるだけ農業をやってくださいと。その代わり、担い手になる人は規模拡大したらリスクを抱えるんですよ、先ほど言ったように農産物の価格の変動リスクがすごい大きいから。だから、そういう人たちには厚くやりましょうと。これは一般の農家は理解しますよ。それで他方で、兼業農家に対しては、あなた方もちゃんと立派な担い手です、やってくださいというメッセージを出して、そしてその一方で、その中で、私は残念ながら、残念ながらという言葉を使いますけれども、農地は出てきます。それをしっかり受け手につなぐという政策が多分今この日本の中で一番ふさわしい政策じゃないかと私は思っています。  大臣、感想を一言でいいですから。それに分かったと言ったらこの法律駄目になっちゃうから、なかなか言えないでしょうけど。
  101. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、消費者あるいは実需者あっての農業、つまり農業には多面的機能がありますけれども、作ったものは商品でありますから、これは買ってもらわなければいけない。  いろんな、もう消費者から見れば、お米であろうが肉であろうが魚であろうが果物であろうが、内外はもとより、もう全国、北海道から九州、沖縄に至るまで同じものの中から消費者がどれを選択するかというときに、先ほど平野委員おっしゃったように、十年、十五年前であれば、お米であれば何作っても大体政府が決めた価格で同じということでありましたけれども、同じものであっても努力をすると。それは品質面もあるでしょう、あるいは有機の問題もあるでしょう、顔が見えるとかそういうものもあるでしょうと。そういう努力をするためには、やはり私は、単にいわゆる御本人がやる気がありますというだけではない、客観的な線引きをしないといけないという時代に入ってきたと。逆に言いますと、じゃ、このままほっておいたらどういうことになりますかということは、もう多分、平野委員と私と行き着くところに対する認識は同じだろうと思います。  ですから、私もいわゆる兼業の方々を決して否定するわけじゃありませんし、飯米農家は別にいたしまして、少なくとも出そうとしている人は一生懸命作っていると思いますけれども、それでも一律にやっていけばもう限界に来ているということは、我々としてはもうぎりぎりの状況に来ているんだということになるわけでございますから、やはり規模拡大によるメリット。なぜならば、今度の四品目に絞って言えば、土地利用型という土地によるメリットというものが一つの前提になっているわけでありますから、そういう意味でこの四品目に絞っている。あるいは、米についてもいわゆる価格変動に対する対策というものも考えております。  しかし、それは、先ほど平野委員もおっしゃったように、何も品目だけであれば今までと同じようにもらえるじゃないかと。いや、今度は違うんです。  おととい、あるいは衆議院の委員会においても、どれだけ救いますか、どれだけ切るんですかという議論で随分我々、ここまで救います、あそこまで救いますという議論をしましたけれども、さっき平野委員は、そんなこと関係なく生きがいでもってやりたい農業もいるんだと。そのとおりだと思いますよ。それに対しては、我々は、作るなとかやるななんということを言っているわけじゃないんで、そういう人たちはそういう人たちで大いにやっていただきたいと思います。飯米農家だって日本の自給率の中ではカウントされていくわけでありますから。カウントされるというのは、その分、市場から買わなくて済むという意味で、量的には貢献しているわけでありますから。  そういう意味で、私は、農業活動をあらゆる立場の方がやられるのは結構でありますけれども、少なくとも国の施策として、あるいは国の税金を投入するという前提であれば、今まで正に我々がずっと批判をされてきたような農政の失敗というものをもうこれから転換をしていくためには、やはり一定の、ある程度の客観的な基準を持ってこれからの農業をやっていけるような、食料政策を担っていけるような、そういうところに施策を集中していくということは、正にこれからの我々、ひょっとしたら時期的に後れたかもしれませんけれども、やっていかなければいけないというのが今回の最大のこの法律のポイントだということでございます。
  102. 平野達男

    平野達男君 昨日、ふるさと農協の門脇組合長が来られたと思いますが、門脇組合長に聞いていただいたらいいと思いますけど、米の品質、米でいい米を作っているのはどういう農家かといいますと、決して規模の大きい農家じゃないですよ。  私のおやじはもう亡くなって五年になりますけれども、もう晩年はとにかく田んぼばっかしやっているんですよ。それで、草刈りから水掛けから、山から草取ってきて田んぼに入れてみたり、有機肥料入れてみたりしてね、それでやるんです。私らのおやじの年代のその前、ずっとさかのぼるとまだ上の方の年代まで、まだそれやっています。  だから、本当にいい米を作るのは、規模には関係ないですね。野菜もそうです。だから、彼らは自分たちの農業に対してもっとやりたいという意欲持っているし、確かに好きでやっているという、先ほども使いましたけれども、好きだからやっていますよ。でも同時に、消費者にちゃんと提供できる農家がたくさんいる。  そういう中で、大臣はそういう農家も大事だと言葉でおっしゃいますけれども、今回の法律の体系はそうなっていないんですよ、残念ながら。現場では全く別な観点でやっている。だから、先ほど言った、私なんか、集落営農なんか何のためにやるんだと、これは。まだ家族経営で、担い手で五ヘクタール、六ヘクタール全部引き受けてやりましょうと、地域の中で今年はやっていきましょうという農家に対して、しっかりとした支援を行うことは、私はまだ分かりますよ。今現場で一番困惑しているのは、実は集落営農なんですよ。  その中で、繰り返しますが、さっき言いましたけれども、これやれば交付金もらえますよと、ただその一点ですよ。農家が本当に、個々に参加する農家が本当にそれにメリットを感じない限りはこれは駄目ですよ、私は。そういう感じを持っています。  そして、それからもう一つ、農村というのは、もう今、衆参でいろんな議論されましたけれども、私は、とにかくこれからは農業従事者、農業就業人口はできるだけ確保、確保というような言葉はおかしいですけど、いた方がいいと思っています。これは哲学の違いかもしれません。  だから、まかり間違っても出し手対策みたいな形で農業従事者をもっと減らす、農業就業人口を減らすなんという政策はとんでもない政策だと思っています。むしろ、一ヘクタールでも、例えば六十何歳の人が一ヘクタール水田やって、隣の人がいなくなる、どうしても年取って行けなくなったから、じゃ作業受託しましょうかという農家も結構いますよ。立派な担い手ですよ、そういう人、そこは。何で四ヘクタール以上でなくちゃ駄目なんですかと。その人がそういうつなぎ手として何年間かやってくれるおかげで、その地域の農地が保全されるし、助かっているんですよ、という面もある。ごめんなさいね。今途中で、先ほどマクロ的な話をすると言って、個々の例を今、すぐ私出してしまいましたけれども。  そういう中で、今回の政策というのはやっぱり合わないということを、今日はちょっと時間がありませんから、ちょっと次のまた質問に移りまして、これ今納得していませんので、また後で小川筆頭にお願いして、もう一回やらせていただけるのかな、どうか分かりませんが、もう一回整理して、質問をさせていただく機会があればもう一回今のやつを一から質問させていただきたいと思いますので。次は、もしあれば私は演説しませんので、大臣にしゃべっていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから、農地、水、土地、水保全、これも午前中、岩永議員から質問がございましたけれども、私はちょっと別の観点で見ています。  大事なのは、金額じゃないです、二分の一補助率ですね。二分の一の補助率の補助はだれが負担するかといったら、市町村と県ですよ。こういう状況の中で本当にあれは県、負担できますかね。どうですか。
  103. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今、平野委員おっしゃいましたように、地方の財政状況もなかなか厳しいということは十分承知をしておりますけれども、この農地・水・環境保全向上対策は、国としても大事な社会共通資本でございますが、地域にとっても大事な共通の資本ということでございます。地域の方々に多面的機能を供給をする、あるいは地域の方々、地域の消費者に農産物を供給する、いろんな役割をその地域の資源が持っているわけです。そういう意味で、国ももちろん負担をしますけれども、地方にも応分の負担をしていただきたいと、そういうことで施策を推進していこうという、そういう考え方でございます。
  104. 平野達男

    平野達男君 いや、それは制度の説明しただけの話で、本当に負担できるかというのはそれは個々の自治体に聞いてみなくちゃ分からないということだと思います。  だけど、今は御承知のように、地方財政というのはもう、ここで地方財政の話、余り長々するつもりはありませんが、国以上に財政が硬直化していますよね。それで、他方ではもう地方交付税がどんどん縮減されている。そういう中で、自由に使える経費が本当に限られています。という中で、あの政策がどれだけの自治体が使えるんだろうかとなりますと、甚だ疑問です。特に、午前中の議論でもありましたけれども、中山間地域の交付金、ありますね。あれをやっている自治体、二重取りできますかという質問がありましたけれども、絶対できないです、私に言わせたら。自治体にそんな余裕ないから、あそこでもう目一杯なんです。  そうすると、その結果、今回の政策でどういうことが起こるか。土地・水対策に対しての中山間地域と平地の差がなくなっちゃうんです。使えるのは平場だけだから。しかも、平場でもこういう財政状況の厳しい中では限られた自治体です。  私は、この政策について非常に問題だと思うのは、そういう制度的な矛盾もさることながら、片っ方で、農業生産はこういう四ヘクタール、二十ヘクタールごとで集中ですよと言っておきながら、水、土地は集落で守ってくださいといって金をぼんと出すという、これも私は、姿勢としては本当におかしいんじゃないかなというふうに私は思います。  それからさらに、こういうふうに仕切りを設けたことで、更にもう一つ、今日時間がありませんから、もう一度聞きます。生産調整がうまくいきますか。
  105. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 今までの平野議員の質問を聞いておりましたけれども、これからの日本農業のために、やはり今まで担い手がなぜ育たなかったかということ、そういったことを我々なりに反省して構造改革を進めていく。これは新たな基本法の中で私どもとして考えを出して、その中の流れの中で今移っているということが一つ。  それから、米の問題につきましては、平成十四年に、これからの米どうしていくのかということで、平成二十二年にあるべき姿を実現すると。そのために十六年産から改革を進めております。そうした中で、十九年産からは生産調整のシステムを変えていく。その中で、じゃしからば、非担い手方々に対してもどうしていくのかということがありまして、具体的には、米価下落のための施策、今のいわゆる稲特、担い手経営安定対策につきまして、担い手部分についてはナラシの対策に一本化する。一方で、非担い手方々に対する施策につきましては、当分の間、産地づくり交付金対策の中で措置していくということで、今御懸念の点につきましても、私どもとして生産調整を支援する措置をこれからも継続していくということで考えております。
  106. 平野達男

    平野達男君 もう常に答弁は必ず肝心のところはぼかしますね。確信的に言えないんですよ、すべて。  私は、先ほど言ったように、補助金については使いますかということに対しては制度の説明があった。それから今の説明も、生産調整を今までより円滑に進めますかという質問に対してはまた制度の説明だった。これはしようがないといえばしようがないかもしれません、確信的なことはなかなか政府答弁というのは言えないでしょうから。私ももしそちらにいて答弁を書くとなれば、多分そういう答弁、書いたかもしれません。  ただ、私は本当に生産調整は、片っ方で、要するにゲタ、ナラシという対策をやる、交付金をやる農家群あるいは団体群がある。片っ方でそれに乗らないところがあるという中で、条件が違いますから、条件が違う中で円滑な話をしろといったって、なかなかこれ難しいと思います。  それで、生産調整云々とか、今までの農政というのは、ある意味においては規模が大きくても小さくても、とにかく同じような条件でやっていきましょうという、これはいい面、悪い面はありますよ。そういうことを前提にしてやってきたんです。今回、これを考えようによっては変えるんです。変えるに当たって、今日は生産調整の話しか、今持ち出していますけれども、これがどういう影響を与えるかということもこれはきっちり考えておかなくちゃいけないと思いますが、いずれ私は、これは場合によったら、米だけ作っていけばいいと、一ヘクタール、二ヘクタールの農家は。どうせ農政の中心はもう四ヘクタール、二十ヘクタールのそういう担い手、団体に移っちゃったんだから生産調整はそっちでやってくださいと言われたとしても、それに真っ向から反論できるというあれはなくなると思いますよ。  それは確かに彼らは米価下落のリスクは抱えます。だけど、繰り返しますけど、一ヘクタール、二ヘクタールでやっているそういう方々は、米価が少々下落したって実は農業やめない、一番強い人たちかもしれないんです。何でか。自家労働全く勘案してないからですよ。そういう中で生産調整が本当に進むのか。そういう中でのいろんな要するに矛盾も出てきます。しかし、これは今回の政策が、後でちょっとまた御意見聞かせていただきますから、もう一言だけ言わせてください。  それともう一つは、今回の問題は、最大のポイントは、この政策を是とした場合に、本当に担い手に規模拡大するインセンティブがあるのかどうか。私は、そこにおいてまずないんじゃないかというふうに思っています。だから、今回のあれは言っていることとやっていることが非常に合わない。  それから、そもそも、じゃ、今それは仮にこの政策を是とするという前提ですよ、そもそも私は今回の政策を是としていないから。もう本当にこれからはできるだけ農業従事者を確保していきましょうと。だけど、一生懸命やる人には施策を厚くしましょうと。だけど、一ヘクタール、二ヘクタールの人たちでもちゃんとした従事者です。それなりのしっかりとした、担い手並みとは言いませんよ、ゲタの半分でもいいですよ、何でもいいですよ、そういう政策をやるべきだということが私の基本であります。  ということで、最後ちょっと時間がありませんので、大臣、今までのことでちょっとコメントをいただきたいと思います。
  107. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 非常に勉強になりまして、ありがとうございます。  まず、確かに、先ほど私が規模拡大のメリットということに対して平野委員からは、おいしい米作っているのは中山間の何反歩の農家であると。そうだと思います。実際にそうだと思います。ですから、我々は四品目について土地利用型のものについての自給率の向上、カロリーベースの自給率の向上ということでありまして、米については施策を別にしているということを、平野委員は分かっていらっしゃると思いますけれども、これは議事録に残るわけでありますから、はっきりと言っておかなければいけないと思っております。  それから、一ヘクタール、二ヘクタールぐらいで、まあ片手間でと言うと大変失礼でありますけれども、年間何十時間かの労働時間でもって米を作る、それはそれで結構なことだと思いますし、日本全体の食料供給にも貢献していると思います。ただし、それだけで暮らしていけますかというと、暮らしていけないわけですね。  片っ方では、やっぱりその農業を主業としてあるいは担い手として、あるいは農業だけが中心的な収入として一生懸命頑張っていこうという人と、やはり一ヘクタールとか五反歩でもって、先ほどもおっしゃったように主たる収入は別のところの人たちとでは、やはり私は、経営体としてははっきり言って別だというふうに思いますし、施策も別にしていかなければいけない時期にもう既に来ているというふうに言わなければいけないわけであります。  ですから、先ほど申し上げたように、四ヘクタール、十ヘクタールといっても、地域の他産業並みの収入とはまだ言えない、せめて半分ぐらいにしようと。米作についても、あるいは輪作体系でもですね。そういう意味でそれをスタートラインにして頑張っていただいて、農業においても、地域のほかのホワイトカラーの人やほかの仕事の人と同じぐらいの収入が得られるようになっていくようにしましょう、プロの経営者をつくりましょうというのが今回のあくまでもスタートラインであるわけでございます。  そういう意味で、これからいろいろなことをまだまだ決めていかなければいけないことも事実でございます。集落営農についてもいろいろな御疑問がある、我々ももっと御理解をいただかなければいけない、地域の実態を知らなければいけないというふうに思っているわけでございます。生産調整についてはあくまでも米の世界でありまして、砂糖とかあるいはでん粉とか麦とかいったものはむしろ自給率を上げるためのインセンティブであるわけであります。いずれにしても、この四品目、五品目が中心的な施策であることは言うまでもありませんし、これを守ったり、あるいはまたもっと生産を上げていったりというための一つの大きな政策であるというふうに思います。  そういう意味で、日本の中で、担い手と、あるいは今回の施策の対象者、対象組織として大いに頑張っていける、そのための施策として、冒頭、平野委員が御提起になった農地の流動化も大事でしょう、あるいは新規就農対策も大事でしょうと、あるいはまたいろいろな対策、水管理等も大事でしょうということを法律その他で総合的に、今回の御審議を通じて、最終的な目標は平野委員と私と同じ方向だと思っておりますので、そういう観点で、また御質問の機会を是非つくっていただいて、いろいろとまたお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  108. 平野達男

    平野達男君 方向性につきましては、大臣の方向性というのは、考え方としては一応了解するという意味ではありませんが、分かります。  しかし、繰り返しますけれども、今回の政策の体系の中には私は依然としてやっぱりずれがあると思います。繰り返し言いますけれども、キーワードはやっぱり担い手にそれだけのインセンティブを与えられるような体系になっていないんじゃないかと。  それから、片方でもう一つは、これからは黙っていたって農地の出し手は出てくると。そういう中でどういう体制を取る、体系を取ればいいのかという観点が不足しているということで、これについては、まあ時間はいただけないかもしれませんけれども、多分、同僚議員は同じような考え方を持っておられると思いますので、今日は私、時間になりましたから、引き続きこの委員会で議論をしてくださることを御期待申し上げまして、終わらしていただきます。  今日はありがとうございました。
  109. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 民主党の和田ひろ子です。  今、平野議員がすばらしい質問をされました。本当に私も、農業を知らない私がずっと農業を専攻して農業のこの委員会に置かせていただいているのは、本当に周りの農家が大変な苦労をしています。その苦労を少しでも国政にお聞かせしたいな、そういう思いでずっとここにおらしていただいているんですが、正に平野さんが言われたとおりだというふうに思います。  この三つ担い手法案、昨日の山田さんも、実は農家のみんな分かってないよ、それを一番先に言われたんですね。自分は賛成であるけれども、この法案には分からないことばっかりだって。参考人の御意見は全部疑惑の御意見でありました。正にこれが象徴的だというふうに思います。  地元に帰って聞いてみると、例えば、行政の担当者は三回このレクチャーを受けてきたそうです。農業委員の方は四回聞いてきたそうです。でも、集落に帰って、自分たちは自分たちの言葉で話せない、農家の人に教えることができない、そういう人から聞いた農家の人は何にも理解ができない。だれに聞いても、一回お話聞いたけど分からないって言っています。そして、一番分かることは、深読みかもしれないけど、日本政府は米を一万円くらいでやれよということを言ってるんだなというふうに理解したそうです。とってもみんなの疑念というか疑惑は広がるばっかりで、正にこの法案の分からないことをどういうふうにして皆さんはもっともっと、平成十九年に実現していくとすれば、どんなふうにして、もっともっと御理解を得るような努力をされるのかなということをまず聞いてみたいというふうに思います。  そして、担い手の方とか認定農家の人たちの意見は、認定農業者や地域の担い手を対象とした研修会をもっとしてほしいと言っています。昨日の生源寺さんも担い手の育成が絶対に必要だというふうに言っています。もっともっとリーダーの講習会をしてもらいたい。集落内でだれが認定農業者だか分からない、もっと開示してもらいたいという話もありました。認定農業者になれない担い手、高齢者についてももっと考えてほしい。でも、認定農業者の枠を緩和することだけがおれたちはいいとは思わない。この枠をきっちり守りながら、もっともっと認定者を増やす方向を考えてほしいという話の人もいます。先ほど言われました集落営農を組織すると、個別の経営体や農地の集積が今までのようには進まないんじゃないか、逆に返してくれと言われたらどうするんだろうという話もあります。  私の地元に十四戸で二十六ヘクタールの集落があります。そこのリーダーに、集落営農のリーダーに手を挙げた人が、本当は私は畜産もやっているし、四ヘクタール以上の田んぼも持っているから自分じゃ一人でやってみたいんだと。でも、自分がこの二十六ヘクタールしかないこの集落の中で自分だけがやるっていうことは、この周りの人を捨ててしまうことになる。お若い人なんですけど、高齢者を救わなくちゃいけない、集落を守らなくちゃいけない。地域をどういうふうにしていくんだというふうに考えれば、集落営農に私は手を挙げたと。  本当に私、もう聞いていて涙が出ました。偉いなというふうに思いました。皆さんの出されたことを本当に信じて、周りの地域を救うため、救うと言っちゃ失礼ですけど、周りの皆さんを守っていくためにおれはこの集落を守っていくというふうに言っていました。  でも、一番懸念は財布を一本化にすることだと。財布を一本化にするって、本当にできるのかな、だれがフォローしてくれるのかなと。農協だとすれば、農協にそんなに分かる人がいるのか。例えば、作業に出るといったら田植しか行かない人がいたり、水管理できない人がいたり、いろんな人たちをどういうふうにして計算していくんだ。本当にこの一本化が一番大変なことなんじゃないかなというふうに言っていました。  でも、その村は、転作は前からこういう問題で悩んでいて、本当は豆も麦もやったことがあります。でも、すばらしい水田地帯なので豆も麦も大失敗だったそうです。だから、地域互助会、互助方式というので、農協と行政が間に入って、向こうの人を、何というか名前は隠してどこの人だか分かんないようにしているそうですけれども、おおよそ分かってるけどなんていうふうに言ってましたが、そっちの人から減反分を買ってくる。だから、一〇〇%米を作るということに、米に命を懸けています。自分たちのすばらしい田んぼがもし畑になったら、水が漏ってしまうし、この次、田んぼにするのに大変な努力が必要だし、もうこんなにいい田んぼができるかどうか分かんないので。転作分を買ってくるってすごいお金高いんですよね。一反三万円ぐらいするそうです。それでも、例えば採算が合わなくてもそういうことをやっていきたいんだというふうに言っています。  その村の米の実績がありますが、平成五年度に農協の販売高は二十六億円だったそうです。それが平成十七年では十一億円になってしまいました。半分以下です。いろんな消費の変化とかいろいろ言われると思うけど、平成五年と十七年の間で二十六億と十一億円ですから、こんなにまで米の販売高が減ってしまっている。自分たちの仮渡価格は一万三千七百円、十七年度は一万三千七百円だったそうです。でも、この一万三千七百円というお金は、ずっと見てみると昭和四十九年のお金と本当に同じなんです。一万三千七百円なんです。三十二年前の価格なんです。こんなことで農業やっていけると思うか、和田さんというふうに言われました。そして、福島県が六十キロの生産コストを今年は出したんですが、それは一万四千六十円です。だから、一万三千円で売ったんだけど、コストは一万四千円掛かっているんです。  本当に、昨日山田さん言っていました、コスト割れするかもしれないって。するかもしれないんじゃなくて、とっくにコスト割れしているんです。そして、自分たちの貯金通帳、もういつもいつも赤字。次の年までは赤字になるけど、年内に赤字になったことないんだよ、ここ二、三年は年内に赤字になっている、自分たちの貯金通帳が。それほどお米を作る皆さんは苦労しているけれども、それでも米を作っていく、米だけが私たちの生きがいなんだというふうに言っています。  品目横断とかいろんなことを言われています、転作のことが。でも、麦も作れない、大豆も作れない、そういうところたくさんあるということを、北海道、てん菜なんて北海道だけですよね。ジャガイモなんて田んぼに作ったら全部腐っちゃうんですよ。麦は私の小さいころは会津でもたくさん作っていました。それはオカボといって、二毛作のときに稲を作って、本当においしくない、オカボの米だからこれ、ごめんねなんていただいたのはまずい米なんです。そして、その後で麦は作っていたんです。それを私は覚えていますけど、水田になって麦作っているところはどこもないですよ。隣の村では、麦も大豆も全部駄目だけど、本当に水田に悪いけどソバを作ってるって。ソバは手間も何にも掛かんないからソバ作ってるけど、ソバだって本当は水田に作る作物ではないんですよね。  そういうことを踏まえて、大臣、今の農業の在り方をどういうふうに思っておられますか。まず最初にお聞きします。
  110. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 確かに、てん菜は北海道だけです。それからサトウキビは九州、沖縄だけです。多様な日本農業の中でいろんな物を一生懸命その地域で作ってこそ日本農業があるわけであります。米は北海道から全国で作られるわけであります。黙って作っていたら余るんです。余ったら価格が下がるんです。価格が下がって喜ぶのは消費者でしょうけれども、生産者の皆さんは困るんです。だから生産調整をしているんです。と同時に、みんなで、ほぼ自給率一〇〇%ですけれども、作っていけば余っちゃうから、自分のところの米を、福島の米を少しでも買ってもらいたい、新潟の米を買ってもらいたい、北海道の米を買ってもらいたい、みんなが一生懸命競争してこそ日本農業の将来がありますし、消費者が期待をしているわけでありますから。厳しいところもあるでしょう、いいときもあるでしょう。だからそこを農政が一生懸命やるわけでありまして。  今、大変厳しい御例を紹介されましたけれども、希望のある例も私のところに一杯来ておりますから、いろいろな声を聞きながら総合的に施策をするんでありまして、一部の、米をどうしても作りたい、でも売れば赤字なんだという例だけで私はすべての農政を語りたくないと思います。  そういう意味で、私は本当にやる気のある一定条件以上の農家、担い手あるいは集落営農等々の、みんなで頑張っていこうという中で、日本の産業としての農業あるいは地域政策あるいは環境政策としての農政というものを、この法案を通じてあるいはこの法案の執行を通じてやっていきたいというふうに考えております。
  111. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 農家に、生産調整をするときに、農林省は米の値段二万円から割れたらあんたたちの生活苦しくなるんだよ、だから生産調整やんなさいと言ったんでしょう。二万円と言ったんでしょう。その二万円という数字はどこに行っちゃったんですか。お願いします。
  112. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) そういうことを言ったという記憶は、私も転作かなり長くやっておりますけれども、ありません。  ただ、先ほど大臣が申し上げたように、やっぱり物は過剰になれば、農産物は必ず価格は低下することは御案内のとおりです。先ほど和田委員御提示になった平成五年というのは、平成の大凶作の年ですよね。そのときのお米の価格はすごい価格になっているというのも、これもまた事実でございまして、米の需給調整をしっかりすることによって米価が維持できると、これは間違いのない事実だろうと。  ただ、二万円を守るというか、その価格の能力としては、需給事情によってはそれだけ幅があるわけですから、そういう価格あるだろうし、また今でも、今でもというか、特別の銘柄のやつは結構高い値段もありますのであれだと思いますけれども、特に二万円を保証すると言ったことはないと思います。
  113. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 二万円を言ったことないというふうにおっしゃいますけど、それは地元が確かに言ったかも分かんない、生産調整をするために地元が、農協、行政が言ったんです、確かに。それは農林省のお心をおもんぱかって言ったんですよ。きっと。(発言する者あり)以心伝心という声もあり。いや、本当に、確かに二万円を割ったら農家の生活は悪くなるから、それは言ってないけどお心をおもんぱかって周りがそういうふうにして農家の皆さんに生産調整をさせたことは間違いないですよ。  私は、私の口から言ってないという言い方は、とっても農家の皆さんには失礼ですよ。みんなそういう思いで、二万円は下らないようにしたいっていう思いでみんな生産調整をしてきたわけですから。それで、今、結果一万三千円になっているんですから、そのことは厳粛に受け止めていていただきたい。お答えは要りません。  そして、先日、主濱さんもおっしゃいましたけれども、この担い手法案で、何かこう、意欲のある人、能力のある人って言ってますが、兼業農家だって意欲のある人一杯いますよ。兼業で能力ある人一杯いますよ。そういう人たちを切り捨てない、そういう政策をしていかなければいけない。先ほどの平野さんがおっしゃいましたが、私たち民主党が出している案は、販売をする農家であればみんなに直接の補償をしていく、絶対にだれも切り捨てないということで法案を出しました。  そういう意味では、今回の法案には少し、何というか読み方を違えれば、自分たちは、ああ、切り捨てられちゃったなという思いの人がたくさんいるということをお忘れにならないでいただきたいというふうに思います。  そもそも何で四ヘクタールなんでしょうかね。四ヘクタールはあくまでもスタートだ、所得の半分だから将来は倍になるようにしてもらいたいというふうに言っているんですけれども、四ヘクタールでなくてもいいでしょう。三・五だって三だっていいんじゃないですか。何で四ヘクタールって仕切っているんですか。お願いします。
  114. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今委員が御指摘のとおりでございますが、やはり現状で他産業並みの、他産業というのはその町、村でほかの仕事に就いていらっしゃる方と同様の所得を確保できると、そういう安定的な農業経営者をつくっていきたいと。そのスタートラインとして、おおむねその面積の二分の一程度からスタートするというふうに考えているわけでございます。  もちろん四ヘクタールについても、当然その地域の実情、その地域の規模でありますとか、あるいは中山間地でありますとか、そういったことで地域の実情をできるだけ配慮するようにということで、工夫に工夫は重ねておるところでございます。
  115. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 工夫に工夫を重ねて四ヘクタールなんでしょうか。三ヘクタールでもいいはずですよね、本当は。そういうことだというふうに思います。  食料自給率の向上について、お伺いをいたします。  今までの議論の中で、衆議院、参議院の議論の中で新しい経営所得対策の新設をしたら自給率が上がるというふうに言っておられます。生産性の高い担い手が生産の相当部分を占めるような強靱な農業構造が実現されれば、農産物の生産コストの低減や品質向上が図られれば、需要に応じた供給がなされれば自給率の向上に寄与する。れる、られる、三段活用じゃないと思いますけれども、仮定の多いこんな見通しで本当に自給が向上するというふうに確信できるんですか。確信できるというふうにお答えいただきたいと思います。
  116. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 私どもは、そういった、何しろ今御承知のように、前の議論でもございましたけれども、既に全国の半分の集落では主業農家がいないわけでございます。特に、西日本、中国地方では三分の二の集落でもう主業農家がいないわけでございます。ほっておけば当然高齢化と農業人口の縮小によりまして、ただでさえ受け手がいないのに、本当にこのままいったら耕作放棄地が本当に増大していってしまうと。そういう本当の意味での危機感を持っておるわけであります。  そういった中で、数は認定農業者でも二十万人しかまだ増えた増えたといってもいないわけでありますが、こういった方々に本当に真の意味で農業で暮らしが立てられるという経営体にやはりいち早くなっていただいて、そういう出てくる農地の集約も図っていただきたい。そのために、そういった人たちに、予算であれ金融であれ税制であれ、あらゆる政策手段を集中して、やっぱり頑張ってくださいというエールを送っていかないと、もう本当に日本じゅうの農業、農村地域が沈没してしまうという非常な危機感を持ってやっているつもりでございます。  そのために、そういう構造展望については、十年後の姿でありますから、ある意味での希望的なところは当然入っております。それを実現するためには、私どもも今申し上げたようなありとあらゆる政策手段を傾注して努力をしていかねば実現可能だとは思っておりませんけれども、しかしこれはやらなければならぬと、こういうふうに思っているわけでございます。
  117. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 じゃ、自給率が向上するという確信はないんですよね。だって、前の基本法で五年間のうち四〇%全然上がんなかったんだものね。ただ先送りして、また五年にしたわけだから。やっていきたいという熱意を語っていただいたということで理解しましょう。  それで、さっきの私、お願いをしたリーダーを育成する講座を開いていただきたいとか、そういうの、みんなに聞いてきたので、リーダーの講習を必ずするとか、名簿を公開、認定者名簿、みんな周りは知らないそうですね、この村で何人認定になっているか。そういう名簿の公開はしていただけるのかどうか。そして、高齢者でなれない人にはどういう手だてがあるか、そして財布を一本化することが大変面倒なものなんだけれども、それをきちんとフォローしてくれる人はだれなのか、だれに相談に行くのか、ちょっとお答えください。
  118. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 幾つかの点お話がありましたけれども、順不同ですけれども認定農業者については、個人情報の保護という観点がありまして、その町でその方の、認定農業者のオーケーを取って公開をされているという市町村はあるそうでございますが、そういう点で難しい点があって公開に至っていない市町村もあるというふうに聞いております。  それから、リーダーの育成については、今年、十八年度予算で二十億円の予算を取ったわけでございます。五千人の、五千集落のリーダーをつくるということであれしましたら、非常に関心が高うございまして、既に三千を超える応募がございました。既に千七百人以上がリーダーとして指定を受けられました。  このリーダーというのは、集落の中にいるリーダーというよりは、集落の中にいてもいいんですが、外におられて、例えばJAで長年営農指導をされてきたとか、普及員をやって退職されたとか、そういうことで非常に農業に造詣があって、そういう村づくりに頑張っていらっしゃるという方を公募をいたしましたら、私もやりたいということで非常に多くの方から手が挙がっております。そういう方を地方農政局長が一人一人全部任命をいたしまして、頑張ってくださいということでやっているわけでございます。やっぱりこういう人たちに村の中に入っていただいて、村の実情も踏まえた上で自分の知識、経験を生かして、その村に合った形の指導をしていただきたいと思っております。  それから、経理の一元化については、私どももこれも補助金を出して、例えばJAが自分の持つ営農センターにパソコンや会計経理ソフトを導入したり、専門スタッフを配置するというようなことについても補助対象にするというようなことをやっております。既に補助金がなくても私どもが存じ上げているような幾つかのJAでは、自発的にそういう集落をサポートしようということで、組合長さんが先頭になって農協が走り回っているというような農協も存じ上げておりまして、私どももそういう農協の姿を見て、これは是非予算化をしてもっと広くいろいろなところで使っていただきたいということで、メニューも用意いたしているところでございます。
  119. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 局長が御存じの、私どもが存じている農協ではなくて、全国の例えば集落営農をする人たちが困っているんだから、幾つかの優良な農協のことだけでなくて、きちんとあらゆる農協にフォローしなさいよというような、通達なんといっちゃあれなんでしょうけれども、そういうメッセージは送るべきだというふうに思いますので、お願いいたします。  ゲタの対策についてお伺いします。  過去の生産実績のない休耕田や耕作放棄地の取扱いについて、農林省ではこの三月の委員会で、耕地利用率や自給率の向上対策として別途考えるというふうにおっしゃっていましたが、それは別途考えているのかどうかということを聞きたいことと、品目横断的経営安定対策で過去の実績のない農地や、支払が行われないから当該農地の遊休化が懸念されるというのは、これは農家の皆さんの声なんですね。こういう、みんな、紙さんも何回も、平野さんもおっしゃいましたけど、やっぱりこれはみんな気にしているんですよ、こうなったらどうするんだろうと。  それで、過去の実績に伴う支払については、水稲の転作物として生産してきた地域と畑作地域などの地域の農業の実態が違って、さっきも言ったように、ジャガイモも麦も植えられないところは転作の品目を増やしていくお気持ちがあるかどうか、きちっとお答えをいただきたいと思います。四品目、そこに米とかというんじゃなくて、その地域に合った果樹とかそういうものが全部入れられるべきだと私は思いますが、いかがですか。
  120. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) まず、耕作放棄地や休耕田の扱いというか、これは、そのものについては当然もう耕作放棄や休耕しておりますから、過去作物を作付けしたという、特に最近三年間と言われるとまずないのが耕作放棄地、休耕田であります。  ただ、耕作放棄地や休耕田であっても、例えばそういう農地を取得をして規模拡大をしようとか、例えば新規参入をしようとかいう方があれば、それはこの品目横断的対策とは別の世界ではございますけれども、やはり規模拡大や新規参入は大事でございますから、そういったものをやっぱり奨励、エンカレッジすることについては、やはりこれは別途対策を講ずべきだと私どもも考えておりまして、これも十九年度の予算に向けてただいま検討をいたしております。  それから、品目でございますが、今回の法律ではいわゆるカロリーベースでやはり非常に高いウエートを日本の国内で持っていて、それがいわゆる土地利用型農業としていろいろな作物が密接に絡み合って作られていると、こういう二つ要件を示しております。そのために、この対策としては、今、米、麦、大豆、でん原バレイショ、ビートと、五品目を政令で指定すると言っておりますけれども、当面はそういったその二つ要件に合致するものとしてはこの五品目以外はないと現状では考えております。  ただ、今先生おっしゃられましたように、既存の麦や大豆も作れないし、何作ったらいいんだというような、いわゆる水稲の単作地帯において新しい作物を導入しようということについては、それが生産調整、先ほどの例では地域間調整をされていて、それと交換をされて全部米を作っておられますが、例えば、じゃ、米は地域間調整をしたのをやめて、その転作部分については何かやっぱり別のものを作ろうかと、米ばっかりに依存していると、米のいわゆる価格の変動だけに一喜一憂するのは非常に危険だから、やっぱりいろいろ複合的にやっといて保険掛けといた方がいいんじゃないかという、もしそういうことになりますれば、いわゆる生産調整対策の一環としてやっております産地づくり交付金とかそういう、その世界ではそういうものは対象になるということでございます。  ただ、この品目横断対策としては、正に内外価格差が現にありまして、外国と裸で競争できない作物として、既にゲタを履いております麦とか大豆とか、そういった品目について品目横断的に組み直すということでございますので、この対策の対象とすることはちょっと難しいかと考えております。
  121. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 四品目だけがカロリーの向上につながるというのはちょっと分からないんですが、これは地域間の本当に違いがあるというふうに思いますから、そんなふうに断言しないで考えていただきたいことだというふうに思います。よろしくお願いします。  それで、この間、この委員会でいわきに行ったときに、転用種子のことをちょっと言われましたよね。みんな聞いてきたんですけれども。過去の実績のとらえ方について農水省は、一定の販路に乗ったもののみとしているが、同じ品目にもかかわらず交付金の対象となるものとならないものが混在するのはいかがかと思う、福島県で、私たちが行ったときに、優良な麦の再生産に欠かせない転用種子が過去の実績に反映されないことの疑問、不満を言っておられた方がおられましたので、是非それに対してお答えをいただきたいと思います。
  122. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) いわきでお話があったのは大豆ですよね。
  123. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 大豆ですね、済みません。
  124. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) はい。  大豆の場合、まあ麦の場合もそうなんですが、種子用の大豆というのは非常に高価な品物でございまして、現状でも食用が大豆交付金を乗せても六十キロ当たり一万二、三千円、それに比べますと種子用は二万円を超えているという値段で取引されておりまして、現行制度でもこの大豆交付金の対象からは除外をされております。  そういうことでございまして、これ、逆に種子用大豆をこの制度の対象にいたしますと、従来よりも種子用大豆を作っている方の上にお金が乗ってしまいますと、恐らく食用大豆を作っていらっしゃる方の倍以上のものになってしまいまして、これはやっぱり大豆生産者の中で話が付かないのではないかと思っております。
  125. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 大豆の話でしたので、これはあのときもそういうお答えがあったんですけど、やっぱり作っている人たちには疑問だったのでしょうから、きっと、大きな声で質問をされましたので、お答えをいただきました。  あとは、EUとかアメリカで行われている過去の実績に基づく支払と、これは、今度は緑の政策なんですが、毎年というか今年の、当年の生産量、品質に基づく支払の予算配分についてお伺いしたいんですが。  生産者の生産意欲を高め、自給率の向上とか日本型直接支払とか言われながらこの措置をされると思うんですけれども、この予算の配分については農林省は、過去の実績支払が七から八割で、残りが毎年の生産量、品質に基づく支払となり得るというふうにお答えをされておられますけれども、配分の方針というのは正式の決定は概算要求のときだというふうに思いますが、自給率の向上や品質、生産性向上を実現していくためには毎年の生産量、品質に基づく支払への配分をどういうふうにするのか、お尋ねをします。
  126. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今回の制度につきましては、国内支持に対します国際規律の制約の中で、対策を長期にわたり安定的かつ継続的に講じていくという必要があろうかと思っておりまして、その緑の政策に該当します過去の生産実績に基づく支払、これがいわゆるゲタ、生産条件格差補正支払においてやはりできる限り多くの部分を占めるようにする、つまり緑の部分をできるだけ多くしたいというのが一つ考え方でございます。  しかしながら、やはり我が国の場合には、規模も小さいとか生産性向上の余地がまだまだあるということでございますので、需要に応じた生産ですとか生産性向上に資するような工夫がやっぱり必要であると。農業者がこういう生産性を上げたり品質向上をしたりするようなインセンティブも、これも考えなきゃいけないのではないかということで、この品質格差を的確に反映できるような毎年の生産量、品質に基づく支払、これも加味せざるを得ないというふうに考えております。  やはり、小麦や大豆等でもこの品質格差が今どのくらいあるかというのもございまして、そういったインセンティブが従来よりも働かなくなってしまうというのは困るわけでございます。そういう、何か緑は増やしたいと、だけどインセンティブも付けたいと、そういう中で両方をにらみながら考えますと、やはり緑の部分が七、八割で、このインセンティブ、毎年の生産量、品質に基づく分は二、三割というふうに考えるのが適当ではないかと考えておりますけども、これは法律上審議会の意見を聴いて具体的な水準を決めろということになっておりますので、法律が成立させていただいた以後、審議会の意見を聴いて決めていくということになろうかと思っております。
  127. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 さっきの質問の、大綱に示されている交付金の単価水準は、現行の品目別対策とほぼ同じであるというふうな質問、この対策は担い手に対してメリットがないというふうにさっきも質問に出ました。大臣は十分だと言う。大臣のところは六十ヘクタールなんて人が一杯いるわけだから、私たちの農業とは全然違うんですよね。担い手に本当にメリットあるんですかね。教えてください。
  128. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私は、自分のところを申し上げているのは何も自慢をして申し上げているんじゃなくて、規模が大きいから今はもうかっています。でも、十年前とかは非常に厳しかったんですね、投資で借金があって。そういう時代もあって、今はたまたま、たまたまというか、いい時代であることでございますし、酪農でもそうですけれども、やっぱり五年単位、十年単位で良かったり悪かったりするわけでありますから、そういう意味で、たまたま今は、私は規模の問題として先ほど御紹介したわけでありまして、収入のことを売上げを二・五倍と言ったのは余計なことだったかもしれませんけれども、そういうところも、いいこともあれば悪いこともあると。でも、意欲を持って規模拡大をし、また合理化をし、コスト削減をすることによってより良い経営を目指したいという地域もありますし、先ほどの平野委員のように、一番おいしいお米がひょっとしたら中山間の小規模な田んぼでできているということもありますから、そういういろいろな多様な農業がそれぞれ経営体としてやっていけるように、より施策を集中してやっていきましょうということでございます。  特に、米作の場合は、先ほど和田委員が御指摘になったように全国で作っておりますから、しかももうカロリーを上げるという要素は米の場合には現実ないわけでございますから、むしろ生産調整をいかにするかということの方にある意味では頭を使っていかなければいけないということでございますので、確かに私のところは特殊でありますし、またそれぞれ、福島は福島の、あるいは沖縄沖縄の特殊性というものがあるという前提で、しかし総じて、自給率の向上なり、消費者に好まれるものを国産で作っていこうという努力をするような経営体に対しての後押しをさせていただきたいということでこの法案を御審議をいただいているわけであります。
  129. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 民主党のことを申し上げます。  民主党は、減反は廃止というふうにしています。そして、備蓄米を増やす、そして棚上げ方式にして絶対に市場には出さない、だから価格は絶対に割れないんです。そういうことを私たちは、何回もお聞きになっていると思いますが、考えております。そういう考え方もあるなということは分かっていただきたいというふうに思います。  やっぱり農家の皆さんは米が作りたいんです。その米は、棚上げ方式にして絶対に市場に出さないで備蓄の役目が済んだら違うものに使っていく、そういう方式で、やっぱり田んぼには米をという思いで民主党は農業の再生を誓っておりますので、どうぞよろしくお願いします。  ナラシの対策についてお伺いをします。  米の価格下落への対応について、農林省は、ナラシ対策は一定の水準の収入を農家に保障するものではない、米の価格下落を防ぐためには米政策改革の下での需要に応じた米作りによって対応するという立場ですけれども、需要そのものが一向に改善しないままで、ますます米の販売収入が減少していきます。このような対策は米農家の経営安定につながると思いますか。私たちの政策の方がずっといいと思いませんか。お願いします。
  130. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今委員指摘のとおり、新しいナラシ対策につきましては、農産物の価格は市場の評価にゆだねるということを前提とした上で、この農業収入の過度の変動を緩和して経営安定を図ろうとしております。あくまで本対策では、担い手が市場のシグナルを感受して売れる物作りに取り組んでいただくということを前提としておりまして、販売価格にかかわらず、再生産可能な水準の収入をあらかじめ保障するというものではございません。  私どもは、やはり市場のシグナルというのは非常に大切でございまして、これと直接関係なしに農産物の価格を補償するような措置を講じますと、消費者ニーズに合わない農産物が市場にあふれ、それらの農産物に対して財政支援を行うということになりますので、これは消費者国民の理解も得られないということで、農政上、これは取り得ないと考えております。  先ほど、備蓄をされるというお話ございましたけれども、これはもう相当な量になりまして、相当なお金が掛かりますし、その行き先も、残念ながら、現在の備蓄米でも最後にはえさにしたりしておりますけれども、えさの方からも、もう限界であると、二、三十万トンというものを持ってこられてもう限界であると言われておりますし、やはりこれも財政負担でございますので、国民消費者が理解のできる範囲内での措置というやっぱり限界があると考えております。
  131. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 備蓄に関してちょっと申し上げますと、市場に戻さない米ですから、皆さんが備蓄されて、回転備蓄のような備蓄の方法は取らなくていいということになっていますから、そんなにお金は掛からないことになっておりますので、申し上げておきます。  次は、生産調整について。(発言する者あり)答弁は求めていないから。  生産調整について。この前、やっぱり郡山の集落営農のところに行ったら、経営規模の拡大を声高に唱えているけれども、米の消費減少と価格低迷が今後とも続くと見通される中で、現場では、これ以上経営規模の拡大は生産調整面積を増やすだけだというふうにおっしゃっていました。その指摘もある中で、生産調整に参加しない農家が既に四十万戸にも上る中で、まじめに計画生産に取り組む農家にますますしわ寄せが来るというふうにみんな言われましたよね。そのことについてお答え願います。
  132. 岡島正明

    政府参考人岡島正明君) 現在、生産調整について検討の場を設けております。その中で、今御指摘のように、生産調整につきまして実施計画書未提出の方々が四十二万。ただし、一方で、実施計画書提出農業者の方々が二百九十六万ということでございますから、総数の八八%の方は出していただいている。逆に、一二%の方が出されていないということでございますし、量的ベースで見ますと、全体のうちの大体九割がいわゆる生産調整やられている方々ということでございますので、その四十二万という数字をとらえて多いと言うか少ないと言うかでございますけれども、全体の割合としては一割程度であるということだと思います。  そうした中で、私ども、十六年度から取り組んでいる米政策改革におきましては、規模拡大を進める担い手も含めまして、需要に応じた米作りに積極的に取り組む農業者を支援するために、生産目標数量の配分に当たっては、従来の一律的な手法を改めまして、地域の担い手への配分の重点化や販売先の開拓努力の反映などを極力推進してきているところでございます。  それから、先ほど平野委員から、条件が違うじゃないかというようなことの御指摘もありましたけれども、正にそういうことも踏まえて、十五年産までの画一的な転作奨励助成金から、地域に考えていただく産地づくり交付金ということで、地域の実情に応じた形でのお金の使い方というふうな形で改めてきたところでございます。  こういったことによって、生産調整について取り組まれる方々に支援してまいりたいというふうに考えております。
  133. 和田ひろ子

    和田ひろ子君 産地づくり交付金のことについて、枠が決まっている中で本当にという考えがあるんですが、これは、もう今日は、私は五十分までということなので、新平さんに代わりますので。  どうもありがとうございます。
  134. 松下新平

    ○松下新平君 民主党・新緑風会の松下新平です。クールビズの格好ですけれども、地元から農政に関して切実な訴えを預かってきておりますので、熱い議論をしてまいりたいと思っております。  法案に入ります前に、私から、BSE、米国牛肉輸入再々開の問題につきまして質問を二、三させていただきたいと思います。  午前中、野村委員の方から御質問がありまして、現状について報告がなされたところであります。私からは、この委員会でも与野党から質問がありました、事前査察は必ずやるべきだと。それに対して大臣も前向きな答弁をいただいているところであります。午前中、野村委員質問の中で、リスクコミュニケーション、今日から始まるわけですけれども、それ前に事前査察は決定しておいた方がよかったんじゃないか、私も同感であります。ただ、聞きますと、この日本側事前査察は当然日本側のリスクもあるわけで、責任問題を気にしているのではないかという指摘もされております。  今月あるいは来月には再々開が決定されると報道されておりますけれども、この時点で事前査察についていま一度お考えをお伺いしたいと思っております。
  135. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 米国牛肉輸入再開問題につきましては、先生もおっしゃいましたように、国会でのこれまでの御議論、それから四月にも消費者方々意見交換会を既にやっておりますけれども、そこで出されました消費者方々などの意見ども踏まえまして、先般の五月の十七日から十九日まで三日間掛けて行いました日米の専門家会合におきまして、この輸入手続再開のための必要な措置として日本側が今考えていること、その一つとして、対日輸出認定施設事前確認調査は是非行いたいということでアメリカ側日本側考え方は伝えたところでございます。  こういったことも含めまして、再々開に至ります際に必要と考えている事柄について、今日から始まりました意見交換会で改めて消費者方々説明をし、また御意見をいただくということを今やろうとしているわけでございまして、その意見交換会の、出されました意見ども踏まえて、改めてアメリカ側再開手続についての調整を行いたいというふうに考えております。
  136. 松下新平

    ○松下新平君 前向きに受け止めさせていただきたいと思っております。当然、このリスクコミュニケーションでもその強い要望が予想されるわけであります。  さらに、午前中の議論の中で、やはり同じケースがあった場合にはどうかというのがありました。そのときに答弁の中で、家畜伝染病の法案の四十条ですかね、それに基づいて一月の段階と同じように判断するということでありましたけれども、私は、この政治判断、今までの判断と同じではいけないという考えに立っております。  それは、そもそも昨年の十二月の輸入再開のときには、やはり再開を急ぐ余り、事前査察がなかったとか情報開示が徹底されてなかった、そういう不信、不安の中でのスタートで、そして一か月後の危険部位の混入であったわけです。ですから、予想もされない中で、その影響の大きさからすべてのパッカーからの輸入停止したという経緯があったと思います。  私は、そのときの答弁として、第一次的には米国側だと、日本には責任がない、そういった答弁もあったわけですけれども、同じ過ちを繰り返すわけにはいきませんし、人間のやることですから、決してミスがないということも断言できないわけであります。ならば、どう対応するかということを考える、それが政治判断だと思っております。どうも日本の政治家は政治判断を避けてきて、いわゆる科学的知見だとか専門家の意見とか、そういうふうに言ってきた嫌いがありますけれども、これは国際的な信頼を著しく低下しておる現状があります。  そこで、私は、この輸入再々開に当たっては、同じケース、故意に混入するということもあるかもしれません、あるいは想定されないケースがあるかもしれません。そのときに、やはり今まで全部停止したから停止だということでは米国側も納得されないでしょうし、国際的な基準からも大きく逸脱するものだと思います。  そこで、先ほど申しましたように、事前査察、そして情報公開の徹底をすれば、国民皆さん安心、安全、そして信頼をかち得れば、それは違う政治判断が当然行われると思います。違う判断といいますのは、すべて止めるのではなくて、ミスをしたパッカーからの輸入停止という判断もあると思っております。そのことは、私も昨年、米国のパッカーの視察をしてまいりましたし、今年連休中にもワシントンに渡りまして米国牛肉、畜産業界の皆さんとの意見交換もしてまいりましたときに、意識の差が相当ありますし、出された資料がこちらで見るのと全く違うという状況があります。  そういう中では、なかなか、二国間の問題ですけれども、これから想定される、あるいは予期せぬこと、そのときにまた同じ轍を踏むんじゃないかという心配から、日本側も積極的に同じ轍を踏まないことも考えるべきだという立場に立っておりますので、やはり混入したから同じ対応をするというのは政治判断としてはおかしいということを指摘しておきたいと思います。  さらに、私はこのBSE問題はしっかり検証をすべきだというふうに思っております。今、長々と申し上げたことも含めて、今までは事が起きたときには隠ぺいの体質がありました。なるべく情報を出さないであらしが過ぎるのをずっと待っているという。確かに、いろんな過去の歴史から、風評被害もありましたし、それによって被害を受ける方も出てくるわけですから、時代によってはそれが選択として認められた、最良だったという時代もあったかもしれませんけれども、現代のような情報公開によっては明らかにマイナスであります。今回のBSE問題が正にいい例でありまして、いわゆる全頭検査を導入したときのいきさつは、やはり行政不信でありました。隠ぺい体質の中で行政不信が募って、それでどうしようもできない国内事情があって超法規的に全頭検査を導入したわけです。  私はそのことを評価する発言もしてまいりましたけれども、ただ、それは条件としては、一貫してそのことを日本政府として位置付けて行動していくことでありました。しかし、その後、全頭検査を緩和してまいりましたし、その後の、詳しくは申し上げませんけれども、ダブルスタンダードの方法、手法は、私は、この全頭検査が将来こういうことまで想定しての政治判断ではなかった、場当たり的な目先だけの判断だったということを指摘せざるを得ないわけであります。  この政治判断、これから食の安心、安全と国民の関心が高まれば高まるほどいろんな問題が発生してまいりますので、このBSEの問題はしっかり検証して、特に私が申し上げたいのは情報公開であります。  この委員会でも申し上げましたけれども輸入再開のときの輸入申請書も黒塗りでした。そして、これは厚生労働省農林水産省が二十五か所パッカー視察したときの報告書ですけれども、このように黒く塗りつぶされております。こういった考えでは、また同じ轍を踏むことになります。このBSE問題に関して全頭検査を、そして規制を緩和するということが科学的知見に基づくという、つじつまを合わせることだけでも大変な労力とコスト、そして多くの不安感も起こしたわけでありますので、是非ともこのBSE問題、米国牛肉輸入再々開については今月、来月と言われておりますけれども、是非このしっかりした検証をすべきだと思っておりますけれども大臣の御見解をお願いいたします。
  137. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、松下委員から多岐にわたる御質問がございました。全部をフォローしなければ、後でまた御指摘いただきたいと思いますけれども。  二〇〇一年の九月に日本で初めてBSEが国内牛で確認をされて、あのときは、率直に申し上げればまさかという感じで受け止めたわけでございます。したがいまして、当時は政府におきましても、また少なくとも私の所属している党におきましても、大変なある意味では混乱の中で、しかし関係者、とりわけ消費者皆さん、それから生産者の皆さん、あるいはまた流通、あるいは食品関係の皆さん方の御意見も聴きながら、どういうふうにしていったらいいのかということで、連日対応政府と相談をしていたことを今思い出しております。  そういう中で、全頭検査というふうにしたわけでございます。当時は根拠法がございませんでしたので、これはあくまでも国際獣疫機関、OIEの、日本が加盟しておりますこの国際機関のやり方、あるいは各国の、ヨーロッパ、イギリスなんかはもう既に多数の例があったわけでございますから、各国の例等を参考にしながら、ある意味では世界でも一番厳しい対応を取ったところでございます。その後、このBSE特別法等が制定をされて、今は法律あるいはまた政令その他でもってやっているわけでございます。  他方、二〇〇三年の十二月ですか、アメリカでBSEが発生をして、米国産の牛肉輸入をストップしたわけでございます。ということで、それからの手続を食品安全委員会等々が、設立いたしまして、リスク評価については科学的な専門家の先生方の御判断にゆだねると。そして、リスク管理機関である行政の厚生労働省農林水産省においてその運用を図るという体制ができ上がったところでございます。  松下委員が先ほどから何回かお使いになっておられます、その政治的な判断が必要ではないかということが、ちょっと私にはいまいち理解ができないわけでございますけれども政治判断をせずに専門家に任せるのはいかがなものかというような御趣旨の御判断がありましたが、まさしくまだ原因がよく分からないとか、また感染がよく科学的に究明されていないというような、非常にまだ新しい、未知の動物あるいは人間に感染する可能性のある異常プリオンの出来事でありますので、これは我々が判断する以前に、科学的にすら解明されていないものでありますから、これについてはやはり専門家の皆さんの御判断、つまりリスク評価は食品安全委員会の、特にプリオン小委員会先生方の御判断にお任せをするというのが私は妥当なことではないかというふうに思っております。その結果、アメリカ牛肉再開につきましては、EVプログラムが遵守されれば日米のリスクの差は極めて小さいという答申をいただきましたので、それを踏まえまして十二月の十二日に輸入再開をしたところでございます。  確かに、EVプログラムに基づいてきちっとやっているかどうかを日本側において事前施設チェックすればよかったという御議論も、予算委員会でも大変いろいろな御意見があったところでございます。そして、一月の二十日にああいう形で再び輸入禁止をしたところでございます。  我々としては、御指摘のように、原因の徹底究明、それから再発防止ということを目標として、日米間で、あるいはまた米国米国で、日本日本作業をしているところでございまして、御指摘のように、同じ轍を二度と踏まないようにということは言うまでもございません。と同時に、御指摘のように、ミスは人間がやることだから起こり得るということも、それは絶対ないというふうに私も断言できるほどの自信はございませんし、リスクは常にあるという前提でこれからもリスク管理機関としての行政をやっていかなければならないというふうに思っております。  情報公開につきましては御指摘のとおりでございまして、我々としては、特に食の安全、安心にかかわる問題でございますから、ユーザーであります国民に対して、特に安全という観点からできるだけの情報公開をしていかなければならないと思っております。ただ、これはアメリカ側の情報をこちら側が提供を受けるということでございますし、アメリカ側においても個人あるいはまた企業の情報が保護されるという部分もあるわけでございますから、それとの整合性において、御指摘のような黒塗りの部分を、黒く塗ってお出しをしなければいけなかったということも事実でございました。  いずれにいたしましても、今後、本日から説明会を順次行っていっておるところでございまして、我々といたしましては、その説明会に全力を挙げて、きちっと御説明を申し上げるということに今全力を挙げているところでございまして、その後どういうふうにするか、あるいはどういうふうに政治判断をするかということについては、申し訳ございませんが、政治判断をする考えは現時点においては一切ございませんで、一つずつ粛々とリスク管理機関としての技術的見地に立った再発防止のための作業一つとして現在説明会を行い、十四日に十か所終わった段階で次に何をするかということを我々としては考えていくということが、リスク管理機関の行政に与えられた政治判断の入る余地のない我々の作業だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  138. 松下新平

    ○松下新平君 御丁寧な答弁をいただきましたので、これ以上申し上げませんけれども、一点だけ。  私が使いました政治判断というのは、輸入を止める、そして輸入再開するという政治判断です。政治判断するためにいろんな材料があります。それは、今回のリスクコミュニケーションもそうですし、プリオン専門委員会のいろんな科学的知見からの判断というのを踏まえてという意味ですので、よろしくお願いいたします。  国内では二十七例BSE発生しておりますけれども、当初のような混乱はなく、整然と対応をしていただいております。これは正に情報公開によって、そして国民皆さんとの信頼関係によってかち得たものだと思いますので、これも是非参考にしていただいて、今後の対応に取り組んでいただきたいと思っております。  それでは本題に移りたいと思います。  昨日の参考人質疑、あるいは衆参での質疑が行われました。また、私の地元宮崎では四月十九日に、衆議院の方ですけれども農林水産常任委員会の地方公聴会を開催されております。そこでのやり取り、あるいは地元での声をいただいておりますので、質問をさせていただきたいと思います。たくさんそれぞれの選挙区の先生方からも御意見が出ました。一部重複するところもありますけれども、御理解いただきたいと思います。私の質問は、今回の小川理事の考えでもあります懸念材料を浮き彫りにして課題を認識していただくというスタンスに基づいて質問をいたしますので、よろしくお願いいたします。  先日、日本農業新聞のアンケート、ちょうど見開き、大々的に載っておりましたけれども、そこで現在の暮らしぶり、そして農政についてのアンケートがなされておりました。小泉政権下で自分たちの暮らしは良くなっていないという厳しい評価がうかがえました。特に、農業政策には目ぼしい政策はありませんでした。その上、地方は特に公共事業も大きく減らされております。小泉改革で地方と中央の格差を身をもって感じている農業者の姿が浮かび上がっております。  今回の法案は、農業に意欲と能力があって一定の基準を満たした担い手に対して政策支援を集中するものであります。いろいろ質疑でもありましたけれども、農政の大転換ということでこの疲弊した農村の救世主として大きな期待が寄せられていたはずであったんですけれども、この参議院の質疑を聞いているだけでも本当に心もとないというのが正直な感想であります。  そもそもこの農業というものの考え方なんですけれども、これは先輩議員もこの場でも何度も発言されていらっしゃいますが、大変リスクの大きい産業であります。自然環境の影響もそうですし、外交、貿易の問題もございます。しかし、市場原理に任せておいても今のような状態を更に加速するばかりですので、この農業、国の基としての農業をどう考えていくかというのはそれぞれの国の中心的な課題として取り組まれておりますし、食料自給率と併せて先進国に見習うところもたくさんあると思います。多面的な機能、これはもう言い尽くされておりますけれども、これを実践していくことが今の日本の農村、農業に本当の意味での救世主になると思っておりますので、このことをちょっとお話をさせていただきたいと思います。  申し上げましたように、少々の対策では焼け石に水で、相当思い切った政策が必要であるとの認識から、EU型、米国型の直接支払制度の導入を主張してまいりました。特に、米国の事実上の不足払い制度が注目されております。これは、再生産価格である目標価格を設けて、市場価格との差を直接支払や融資などによって補てんするものであります。米国農業はこの手厚い保護制度によって輸出競争力を維持しております。国内農家の経営が守られているわけであります。米政府はこの予算を増やし続けております。WTO農業交渉で国際的に非難を浴びていることもありますけれども、やはり国の基ということで改める姿勢はありません。むしろ農業協定で合法化を目指しているという話も聞くわけであります。  私は、今回の法案が通ると、この日本農業の抜本的な改革が行われないんじゃないかと危惧をしております。そこで、これまで議論もされてきているわけでございますけれども、私は、申し上げましたように、この直接支払制度の導入なくして食料自給率の向上、そして日本農業の未来が明るくなるということは自信持って言えないんじゃないかという考えを持っております。このことについて、今回の法案を提出されたこと、その兼ね合いで基本的な認識をお伺いしたいと思います。
  139. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 御指摘のように、日本の農政あるいは農業が抱えている問題というのはたくさんあるわけでございます。他方、安ければ外国から輸入すればいいじゃないかと、日本農業なんかなくてもいいじゃないかという議論は私は日本国内にはほとんどない。むしろ、これから自給率の向上も大事ですし、安全、安心なおいしいものをもっと顔の見える日本農業者の皆さんに作ってもらいたい、そして子供の健康のためにも、子供の発育のためにも自然と触れ合いたいという多面的なニーズを我々は背負いながら今後の施策を進めていかなければならないと。そういう意味では、私も当委員会委員皆様方も同じような責任と誇りを共有できるのではないかというふうに思います。しかし、そのためにやるべきことは大変難しく、またいろいろあるんだろうと思います。  そういう意味で、我々としては日本の食料供給という観点からも、あるいはまた農業、農村が果たす多面的な役割のためにも、それらを担う関係者の皆さん方に更に頑張っていただける強い形態になってもらいたいという目的でこの施策を導入させていただきたいというふうに考えております。  御指摘のように、アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、こういう形での、まあ何色かは別にして、農業あるいは農家に対する支援というものは少なくとも先進国ではやっているわけであります。  実は途上国でもやりたいんだという話をよくWTOで聞きます。自分たちだって自分たちの農業を発展させたいから国が支援をしたいんだけれども、でも財源がないんだと。ある意味ではうらやましい、だからこそ貿易歪曲的なんだと、こういう議論で、WTOでよく途上国から日本も含めて責められることがあるわけでございます。  しかし、我々としては、これはWTO上の基本部分は整合性があるというふうに思っておりますので、これを導入して日本の食料を消費者のニーズにこたえられるという方向で少しでもアップしていきたい、また、冒頭に申し上げたように、農業、農村の果たす多面的な役割を更に増進させていきたいという目標実現のためにいろいろな施策をこの中でやっていきたいと思っておりまして、そういう趣旨でこの法案を御審議をいただいているところでございます。
  140. 松下新平

    ○松下新平君 従来、特に都市部の皆さんから言われていたのは、農政はばらまきではないかと。農政だけばらまいて、そして仕事をしてないで、まあ減反ですけれども、お金だけもらっているとかいう批判もありました。しかし、私は、直接支払制度も税金でありますし、納税者の皆さんの理解が何よりも必要でありますから、この多面的機能、国土保全の機能はあらゆる機会を通じて訴えてまいりたいと思います。今、地方が、農村が壊れ掛けております。これは日本の再生にも大きな支障を来すわけですから、このことはあらゆる機会を通じて訴えてまいりたいと思っております。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕  次の質問に参ります。  今回の法案は、これまで品目の価格に着目して支払われていた所得補償を経営に着目して支払うことに変更するという仕組み、発想の大転換の法案でございます。  これは、WTOでの輸出入の交渉が進んでいることによって、農業も国際的な競争の中で勝ち抜いていく体力が求められていることになったことが理由と説明されました。当然そういうこともあると思いますけれども、それだけではなくて、実は国内の財政的な問題が大きくかかわっていると思います。農業の構造改革を行わなければならなくなったという面もあるのではないのでしょうか。これまでの品目ごとの価格保証による経営安定対策ではなくて品目横断的な経営安定対策へと変更し、やる気と能力のある農家に施策を集中すると言われておりますが、これまでの全農家を対象とした施策を一定の農業者に集中せざるを得ない理由が国にはあるのではないでしょうか。それは財政の問題ではないでしょうか。そのためには全農業者ではなく、やる気と能力のある農家になれなかった農家は農業から退場しても構わないという競争原理、格差の導入を農業にも持ち込もうというものではないでしょうか。  小泉内閣によって我が国農業が壊滅状態になったと言われないように、以下の質問を通じて問題点指摘したいと思います。  集落営農や認定農業者に農地を集積するということで施策や予算も集中的に行うということですが、それには大きな問題があると考えられます。我が国農業者の場合は家族経営が少なくありません。また、兼業農家や土地持ちの非農家なども地域に多く存在いたします。これら農家では、土地について代々守っていかなければならないとか、自分の土地を人に任せるのは嫌だとか、又は相続の問題などで他人に預けるなどはできないといった、土地の利用に関しては意識がかたくななところもございます。簡単にはいかないわけであります。  そうしたいろいろな条件の農家の方々に今回の担い手の集中、特に農地の集積という課題について理解していただくことは相当の努力と時間が必要であると思われます。これでは集落営農が対象となるための地域の農用地の三分の二以上の利用の集積を目標とするという要件を地域で満たすことは現実には難しいのではないでしょうか。実際に説明を受ける側が理解できないばかりか、行政やJAといった説明する側も指摘がされましたように事務的で十分に理解していないという問題も起こっていて、現場では相当混乱しているという声も聞きます。施策の内容について正確な情報を伝えるには時間が短過ぎる、急ごしらえの体制であるとの指摘がございます。このような状態で来年度からの施策のスタート時点ではどの程度の担い手が確保できると考えていらっしゃるのでしょうか。  農水省は見通しを示すことは困難であるという姿勢を取られておりますけれども、もう来年ですからある程度の数字ぐらいは推計されているべきだと思いますが、是非お示しいただきたいと思います。
  141. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 品目横断的経営安定対策の対象につきましては、衆参両院の審議におきまして一定の前提を置いたとして、こういうことかということはお示しをしております。それは経営耕地が都府県では四ヘクタール、北海道では十ヘクタールといった一定の前提を置きまして、これに所得特例等の各種の特例がございますけれども、これは加味をしませんで考えた場合には、現時点におきましては対象者の割合は三割程度、対象面積の割合は五割程度と試算されると申し上げております。  ただ、これは繰り返しになりますが、所得特例や地域特例といった特例による参加者というものはカウントしておりませんし、今後の担い手育成の取組の進展度合いによりまして大きく変わるということで、対策導入時における対象者数、対象面積を正確に見通すというのはやはり困難でございます。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  いずれにしましても、現在農業者団体とも手を携えまして一生懸命この担い手づくりに励んでいるわけでございますので、十九年産からの対策の円滑な導入に向けて更にこの意欲と能力のある担い手の育成確保に全力で取り組んでまいります。
  142. 松下新平

    ○松下新平君 具体的な数字はお示しいただけませんでした。短期間で無理やりに担い手をつくってもやはりひずみが出るのではないかと心配をしております。  本施策の対象となる集落営農組織とは、将来的に効率的で安定した経営を行うことができるような特定農業団体、又は特定農業団体と同様の要件を満たす組織とされております。その要件農業生産法人化を目指す地域の三分の二以上の農用地の利用の集積を目標とするなどとされておりますが、数年後にはやはり無理があるので集落営農から離脱したいという農家が出てきたとき、要件は満たせなくなることも考えられます。悲観的な見方かもしれませんが、これも実際、現場からの切実な声であります。  そうした場合を想定して、農水省としての指導なり対処策なりは準備されていらっしゃるのでしょうか。もしあればお示しいただきたいと思います。
  143. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今委員指摘のとおり、この対策の対象となります集落営農組織につきましては、規約作成、経理の一元化を始めとする五つの要件というものを満たすことが必要とされております。  この集落営農の組織化、法人化に当たりましては、従来から国として普及指導員等の指導者を育成するための研修会等を開催するなど支援を行ってきたわけでありますが、この十八年度予算でも、先ほど来御説明をいたしております、集落リーダーを発掘してその調整活動を支援するということで二十億円の予算も計上し、さらに集落営農の中で会計責任者を育成するとか、JAの会計システムを活用して支援システムをつくるとか、あるいはこういった集落営農組織にも集落で使える大規模な農業機械の導入についても支援をするというような措置を十八年度予算で講じております。  御指摘のように、その要件を満たさなくなるということについては非常に、あってはならないことでありますから、いったん集落営農組織として立ち上がりましても、その後も、その立ち上げについて、現在地域の担い手協議会を軸にいたしまして、普及所あるいは市町村、JAの職員がチームを組んでサポート体制を取っているわけでございますが、でき上がりました後も、この五要件のうち三つは目標でございますから、目標に向かって進んでいかなきゃならないわけでございまして、そういったものについて、集落リーダー、先ほど申しました三千数百名の集落リーダーもお願いしておりますけれども、こういった方々が集落営農組織の運営をサポートしたり、組織化に寄与した現場の普及指導員等が助言、指導を行うということによりまして、こういった立ち上がったばかりの集落営農組織が要件を欠くことにならないように、これを未然に防ぐ活動をしっかり展開したいと考えております。
  144. 松下新平

    ○松下新平君 いろいろ、地元の声ですのでよろしくお願いいたします。  いずれにいたしましても、元々の農家単位の耕地面積が大きい平場地域では、担い手の農地の利用集積は割とスムーズにいくということが今までも出てまいりました。集落営農にしても、そういった地域であれば参加する農家戸数が少なくても要件を満たせるわけですけれども、中山間地はこうはいきません。中山間地では農家が所有する農地面積が元々小さいために、ある程度まとまった農家戸数が参加することが必要となってくるわけであります。知事による規模要件の特例という措置もありますけれども、これも緩和された集落営農の要件まで農地利用集積が届かないことも考えられます。また、こうした地域では効率化が思うようにできず、農業所得の目標などもそれほど多く設定できないことも考えられます。それでは、そのような土地、農家の特性を持った地域は切り捨てられることとなってしまうのではないかと心配しております。  集落営農の要件の弾力的な運用が行われることがそれぞれの地元からも特に要望されておりますので、是非とも前向きな御答弁をお願いいたします。
  145. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 中山間地域等の集落営農組織につきましては、今委員からも一部御指摘がございましたけれども、集落内の農地が少ない場合ということで、基本原則の五割、十ヘクタールまで緩和できるという措置を講じておりますし、一方、その地域の生産調整を担っている組織、転作集団でございますが、そういったものが中山間地域であってもございますれば、その地域の生産調整面積の過半を受託を受けておる組織については、その地域の生産調整率を掛けまして四ヘクタールまで緩和できるというふうに措置をいたしております。  また、集落営農組織も、例えば島根県が非常に進めておられますけれども、それを飛び越して集落営農組織を農業生産法人化をするということになりますと、これは法人として認定農業者になりますので、これは四ヘクタールで個別経営の規模要件を満たすということにもなりまして、そういうことで、原則を緩和するだけでなく、生産調整を受託する集団として、あるいは農業生産法人化をするというような方策も許されているわけでございます。  さらに、広島県等で行われておりますけれども、隣接の集落と合わせて一定の要件を満たす組織を作っていくと。また、それをコアに更に中山間地の集落営農組織を拡大していくというようなこともなされておりますので、そういった種々の方策によって門戸は開かれていると考えております。
  146. 松下新平

    ○松下新平君 次に、これも地元からの声であります。  長年、政府が取ってきた生産調整施策などに対応して、農家が経営の安定化に早く取り組んで成果を上げてきた先進的なケースがございます。こうした専業の農家は、それぞれ努力されて競争力も高いわけであります。ただし、それらの中には米作をやめて畜産や果樹に生産品目を切り替えられたところが多く、これら農家は、本案では対象五品目でもなく田や畑でもないために品目横断的経営安定対策の対象とならず、品目横断の交付金が受けられなくなります。品目別経営安定対策も残るということですが、農水省の掲げる担い手への施策の集中という流れの中では、こうした品目の生産農家で担い手となれないものは将来的に横に置いていかれるのではないかという不安も感じているのではないかと思います。  その中で、対象五品目以外を主要品目としている複合農家への考え方をお尋ねいたします。  畜産農家や果樹農家などでは、小規模経営で収益率も高いわけですが、耕地作物の量が少なく、特に米や麦、大豆といった対象五品目を作っていても量が極めて少量なために収入の二七%を超えることは困難でございます。これら畜産・果樹農家がやはり今回の施策の対象者となっておきたいと考えたときにはどのような方法が考えられるのでしょうか。例えば、こうした農家が保有している米や麦、大豆を生産するための農地を少量ずつでも持ち寄って、場合によっては数十軒が集まることもあるでしょうが、どうにか四ヘクタール以上にしてこの対象作物を作る認定農業者に耕作してもらうということで施策の対象者となることもやり方としては考えられると思います。  こうした要望も地元から多いので、是非要件の弾力化の中で検討していただきたいと思うのですが、農水省としてこういったケースを含めることも考えられるか、お伺いいたします。
  147. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 今お尋ねの畜産農家ですとか果樹農家については、現在ではほとんどの方が部門専業といいますか、ほとんど酪農あるいは果樹作で食べておられるという経営体が非常に多いと思います。その酪農、畜産、果樹の経営そのものについては、これは今回の品目横断的経営安定対策とは別に、個別の畜産対策、果樹対策、野菜対策として別途価格対策その他の経営安定対策が従来からも講じられておりますが、これはその分野として継続されるということにまずなっております。  それから、こういった酪農、果樹農家等について、一部その土地利用型農業、米、麦、大豆も作っておられるというような経営体につきましては、いわゆる所得特例というものを講じておりまして、この特例につきましては、市町村が定める基本構想におきまして、近傍のサラリーマン世帯並みの所得を確保するということで、例えば四、五百万とか五、六百万とか、構想が決められておりますが、それの過半の農業所得を、これはもう果樹でも酪農でも何でも結構なんですが、農業から全体から上げておられるということが一つ要件と、もう一つは、その対象となる米、麦、大豆の収入所得、経営規模が全体のおおむね三分の一以上ということになっておりまして、収入所得が三分の一なくても、経営規模が三分の一以上であればよいと。  ということは、例えば果樹をやっていらっしゃるとか野菜をやっていらっしゃる農家で、例えばの例でございますが、一・五ヘクタールの規模であったと。それで、一ヘクタールの果樹園とか野菜畑を持っておられまして、五十アールで米作っていると。全体としては一・五ヘクタールでございますけれども、こういう人たちが、全体としてその地域で五百万というのが基本構想の目標所得であるのに対して、二百五十万とか三百万の所得を既に上げておられて、そういう経営規模も先ほど申し上げたような規模であれば、一・五ヘクタールの規模であっても五十アール米作っておれば、これは対象になるということでございまして、いわゆる果樹地帯とか野菜地帯とか、そういう地帯では、この所得特例を活用していただくことによってかなりの農家が対象農家になってこられるというふうに考えております。
  148. 松下新平

    ○松下新平君 最後の質問になります。  集落営農での農用地利用集積をした場合に、効率化として経営改善努力の観点からは基盤整備事業や圃場整備事業が有効かつ必要であると思われます。特に、広い平野部の多い地域であれば田の一枚当たりの広さも大きく、集積した場合も圃場整備などにより効率化することは割合とよいのではないかと思われます。ある程度の整備は既に行われているところが多いでしょう。しかし、中山間地の多い九州などでは、棚田のような地形のところもあれば、そうした中山間地で圃場整備も行われていないために、田の一枚当たりの広さが狭くて集積も困難なところも多くございます。  認定農業者に農地を集積しようということですが、中山間地では全体の耕地面積も狭いが、区画整理ができておらず、一枚当たりの田の面積も小さいところが多いわけであります。一件の農家が所有する田の枚数は、数十枚となる場合もございます。そうした条件の下で認定農業者に四ヘクタールの農地を集積しても、実際は取り組めない、そういうところが中山間地には多いと思われますが、この法律で、中山間地のような整備のできてない農地を持つ農業者は農業をやめろということなのでしょうか。中山間地などでは耕作放棄地が増えてもよい、そういうお考えなのでしょうか。お伺いいたします。
  149. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 先ほどお答えいたしましたように、中山間地域については、集落営農組織を作る場合でもかなり面積要件を思い切って緩和をいたしておりますし、それに生産調整を実施する集団を組み合わせるとか、あるいはその集団を飛び越えて農業生産法人化した場合には、これは認定農業者になりますから四ヘクタールで結構でございますということになりまして、そういう意味では、中山間地においても本対策の対象になり得ることは当然でございます。  現に、先ほども御紹介いたしましたが、島根県では、そういう特定農業法人という形で集落全体として八ヘクタールとか六ヘクタールしかないと。私も行ってそのリーダーの方にお会いしてお話を聞いたところがありますが、そういうところで特定農業法人化をされて対象者になったということも、島根県ではそれがかなりの数、今できておりますんで、そういう工夫の余地はあると。で、決して中山間地を見捨てるものではないというふうに考えております。
  150. 松下新平

    ○松下新平君 いろいろ申し上げてまいりましたけれども、ほかにも高齢地域の問題ですとか、それぞれ、先ほどありましたけれども担い手にインセンティブ、それが与えられてない、集落、特に集積の方が大変問題になっているわけであります。限られた時間ですけれども、この委員会でもそういった地域の問題を明らかにして、これから政令、省令の中で具体的にこの法案の運用が決まっていくわけですけれども、更に地域の声を届けてまいりたいと思っております。  以上で私の質問を終わります。
  151. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  本日は、農地・水・環境保全向上対策について伺いたいと思います。  まず、対策そのものということではないんですけれども、前段として、水に対する質疑をさせていただきたいと思います。  かつて、世界銀行の元副総裁が、二十世紀は石油で戦争が起きたと、二十一世紀は水をめぐる争いの世紀となるだろうと言われました。本年三月にはメキシコで世界水フォーラムが開催されまして、そのうちのテーマの一つとして食料・環境のための水管理というものがございました。世界人口を養うための食料、またその食料を生産するための水をいかに確保できるかが今世界的に大きな懸念となっているところでございます。実際に世界の水資源の約七割から九割は農業用のかんがい用水だと言われているわけでありますが、つまり農業を他国に顧みることは水資源を他国に顧みることにつながると、間接的にですね、つながると言われているわけでありますが。  実際、昔は水と安全はただだと言われておりましたが、今やもう水も安全もお金で買う時代に入りました。例えば、ミネラルウオーターでございますが、二〇〇五年の統計で出荷額で約一千四百億円あると、そのうちの二百六十億円は海外からの輸入のミネラルウオーターだと、もうそういう時代に入ってまいりました。  そこで、初めに、経済産業大臣として石油を取り扱ってこられた大臣に、この水という資源に対しての認識、御所見を伺いたいと思います。
  152. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 谷合委員の、水を取り上げられたということは、私は極めて、私自身政治家としても大事なポイントだというふうに思っております。  今御指摘のように、日本は資源はないけれどもせめて水ぐらいはというふうに思われがちでありますけれども日本は世界一の水輸入国であります。バーチャルウオーターという話を前提にいたしますと、日本は世界じゅうから農産物を輸入している、つまり世界じゅうから水を輸入している。一キロの穀物を作るのに、あるいは一キロの鶏肉、豚肉、牛肉を作るのに一体何トンの水が使われているのかということを考えますと、日本は食料を輸入しているというよりも世界じゅうから水を、まあある意味で奪っているというふうに私は常日ごろ思っております。そして、日本は水ぐらいはと言っておりますけれども日本の一人当たりの水確保量というのは世界の平均よりもはるかに低いという事実もあるわけであります。  今御指摘のように、先日、メキシコで世界水フォーラムがございまして、皇太子殿下が江戸時代の関東の水状況ということで講演をされましたけれども、大変すばらしい内容でございました。いかに水、水路が江戸の生活、あるいは江戸の食料を支えているかという講演でございました。前回は関西地方で、滋賀、京都、大阪ですかで、日本で行われたわけでございます。日本においても、日本においてすら水というものは大変デリケートな資源である。まして世界じゅうになりますと、満足な水を確保できている人たちは世界の中でも四分の一ぐらいしかいない、安全な水、これが確保できない、まして食料すらということになるわけであります。排水においても同じであります。  そういう意味で、経済産業省時代にエネルギーについてやっていただろうというふうに御指摘がございましたけれども、私は、エネルギーをやればやるほど実は、食料と並んで根源である水の問題に疑問を、疑問というか問題意識を持つようになったところでございますので、大いにこの後の谷合委員お話あるいは御質問を通じて水の問題について考えていくことが、この食料問題あるいはまた地球の貧困、飢餓、病気の問題にもかかわってまいりますので、私としてもこの問題には極めて大きな問題意識を持っているということをまず申し上げさせていただきたいと思います。
  153. 谷合正明

    ○谷合正明君 先ほど、今大臣の認識の中で、決して日本は水資源に恵まれているとは言えないとありました。私も調べて驚いたわけでございますが、年間降水量の世界平均というのは九百ミリであると。日本は約二倍あると。それだけ考えると確かに水は豊富だろうと思うんですが、一人当たりの利用可能な水の量、これを水資源賦存量と言うそうなんですが、これは国土交通省の調べによると、一人当たり年間で三千三百立米。これがどれくらいのものかというと、フランスだとかイタリアだとか、そしてイラクと同じ程度だということでございまして、決して恵まれているとは言えないと。  さらに、日本を地域別に見ていくと、北海道はアメリカと水資源賦存量は同じ程度と。東北、北陸、四国はギリシャ。東海、中国、九州はメキシコと。沖縄はイラン。近畿は韓国。関東に至ってはエジプトと同程度であるということでございます。私は、これ国土交通省の出している資料でございますので、本当にただ単に危険をあおるようなレポートでもございませんので、しっかりとしたデータに基づいた話だと思います。  そこで、数字を確認させていただきますが、日本国内での年間総水資源使用量というのはどのくらいあるんでしょうか。
  154. 山田修路

    政府参考人山田修路君) ただいま国内の年間の水の総使用量についてのお尋ねでございます。  これは先生お持ちの資料と一緒だと思いますが、国土交通省の土地・水資源局が公表している資料、これ十七年度版の「日本の水資源」という資料でございますが、これによりますと、平成十四年の数字でございますが、全国の水使用量は約八百五十二億トンというふうになっております。
  155. 谷合正明

    ○谷合正明君 そのうち農業用水はどのくらい占めているんでしょうか。
  156. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 同じ資料でございますが、農業用水としての使用量は約五百六十六億トンということで、全体の約三分の二程度になっている状況でございます。
  157. 谷合正明

    ○谷合正明君 全体の六割が農業用水だということでございますが、これ以外にもカウントされない例えば養魚用水というんでしょうか、そういったものも五十四億トンほどあるということでございます。  先ほど大臣の方からバーチャルウオーターという言葉が出ましたけれども日本語で仮想水、この仮想水ということですが、平成十六年度版の食料・農業・農村の動向の報告書の中にコラム記事として載っておりましたが、まずこの仮想水量、これは東大の生産技術研究所の助教授の沖先生が研究されているそうですが、この仮想水量、バーチャルウオーターというのはどういう考えなのか、改めて説明いただけますか。
  158. 山田修路

    政府参考人山田修路君) このバーチャルウオーターという考え方でございますが、ある国が輸入をしている食料ですとか、あるいは工業製品もあるんですけれども、そういった食料や工業製品をもし仮に自分の国、自国内で作るとしたらどれだけ水が掛かるかというものを計算をしたものでございます。したがいまして、そのバーチャルウオーターというのは、ほかの国で作ったものの水そのものではなくて、それを国内で作ったら幾らの水が必要であるかという計算に基づくものでございます。
  159. 谷合正明

    ○谷合正明君 つまり、例えば小麦を作る際に、アメリカでは、一キロ当たり水が日本と使う量というのは違うわけで、そういった意味の説明だと思うんですが、果たして一体日本は年間どのくらいこのバーチャルウオーターを輸入しているのか、数字ございますでしょうか。
  160. 山田修路

    政府参考人山田修路君) これも国土交通省が発表いたしました「日本の水資源」という資料でございますが、平成十四年に今のバーチャルウオーターという、平成十四年ベースのものを計算をしておりますけれども、農作物五品目、これはトウモロコシ、大豆、小麦、米、大裸麦、それから畜産物の四品目、これは牛、豚、鳥、牛乳・乳製品、それから工業製品について試算をしておりますけれども、総輸入量、仮定の輸入量でございますが、総輸入量としては年間約六百四十億トンの水が輸入されているという推計になっているということでございます。
  161. 谷合正明

    ○谷合正明君 そのうち農産物、また畜産というのはそれぞれどのくらいあるんでしょうか。
  162. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今の試算によりますと、農作物については年間約四百四億トン、それから畜産物につきましては約二百二十三億トンというふうになっております。
  163. 谷合正明

    ○谷合正明君 水の自給率という言葉があるんだとすれば、私は勝手に計算しましたけれども、今言われた日本国内で使う農業用水、そしてバーチャルウオーターで、入ってくる農産物と畜産物に掛かる水の使用量、これを分母でして、分子に日本国内の農業用水の使用量をしてみますと大体まあ五〇%だと。日本の食料自給率は四〇%でございますので、若干それよりは高いんですけれども、それだからいいというわけじゃなくて、いずれにしても水もそれくらい海外に依存しているということだと思います。  そこで、問題は、例えば水が入ってくる先のアメリカだとかあるいは中国におきましても、今水問題が発生しているということでございます。こういう食料安全保障を考えたときに、こういった視点というのは大事だろうと私は思うわけでございます。  細かい話をさせていただきますけれども、小麦一キロを作るのに約二千リットルの水が必要だと。牛肉一キロを作るのに約二万リットルの水が必要だと言われているわけでございますが、大体これは牛丼一杯当たりどのくらいかというと、二立米ですから二千リットルですか、牛丼一杯で二立米の水が必要だと言われてございます。これは、牛肉、牛はたくさん水を消費しますですし、またその飼料にもたくさん水が必要だということで、こういうオーダーになるわけでございますが。こういう水、この資源というのは、ある程度日本では当たり前だと思ったけれども、やはりある意味危機感を持って接しなきゃいけないものだと思います。  私はこれを考えたときに、日本には森林がたくさん豊富にあると。国土の六割以上、七割近くが森林に覆われていると。しかし、森林の木材自給率は一八%だと。日本にこんなにたくさん資源があるのに実際使われていないと。それだけじゃなくて、実際に山が荒廃しているじゃないかと。こう考えていきますと、日本には水がたくさん豊富にあると。しかし、他国に食料を依存するということで、回り回って水管理が果たして適切に行われるのだろうかという疑問も持っているわけでございます。  今回の対策でございます農地・水・環境保全向上対策でございますが、私はいろいろ大綱も読ませていただきましたが、ここに欠けているのは、水はあって当たり前だと、危機意識がないんじゃないかと。もう一つは、ほかの省庁との連携というのはどうなっているのかということでございます。  今回、水はあって当たり前だというような意識があるんじゃないかと指摘させていただきましたけれども、実際、日本国内の水資源を実際に多く使うのは農業用水でございます。それだけ農林水産省の役割というのは大きいと思います。  もう一つ、他省庁の連携ということでございますが、水資源の管理、今も国土交通省のこのレポートによっていたわけでございますが、一義的には国土交通省がダムなんかをたくさん持って管理もしておりますけれども、国土交通省だけじゃなくて環境省もやはり関連していると。水に関連する法律が六十本ぐらいあるそうなんでございますが、環境省が二十三本、国交省が十八本ぐらいあると。農林水産省はどのくらいあるかということは分からないんですけれども、いずれにしても、それぞれが互いの専門性を発揮して連携していけばいいんですが、今のところ私は縦割りのままじゃないのかなと、この水資源をめぐるこの戦略的な扱いですね、そう思っているわけでございます。  そこで、改めて水資源の管理について他省庁との連携をどうしていくのか、そしてまた農水省自身としてどう取り組んでいくのか、大臣に伺います。
  164. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 御指摘のように、水というのはほとんどが海水、ほとんどというか多くが実は海水であり、そして真水においても、地球上に存在する真水のうち人間が利用している量はたしか〇・〇〇一ぐらいしか人類は利用していない。その中で、先ほど申し上げたように不足している人たちも大勢いるという状況でございます。  それから、日本の場合には、先ほど谷合委員もおっしゃいましたけれども、意外と水の保有量は少ない。しかし、日本では、ある統計の、これは記憶でございますけれども、一トンの水を何日で使うかという統計がたしかあったんですけれどもアメリカ人は二日で一トン使う。日本人は三日で一トン使うと。欧米の人は四日ぐらいで一トン使うと。中国になりますと二十日で一トンの水を使うと。アフリカの飢餓地帯になると、一トンの水で一年間暮らさなければいけないというぐらいに水に困っている人たちも地球上には大勢いるという前提になると、本当にこれは水、農業用水であろうと工業用水であろうと、まして生活用水であろうと、日本においても私は水というのは大事だというふうに思います。まあ、水を制する者は中国を制するという言葉もありますし、また緑の革命という言葉もあるわけでありますから、正に二十一世紀は私は水の世紀だというふうに思っております。  そういう中で、基本的に日本は、もちろん森林等があるいはダムが保管している水もありますけれども、いわゆるフローでいいますと、雨として降ってきたものを山でためたりいろんなところでためて、そして川を流れて海に流れていく。そのうち三分の一は蒸発する、三分の一は地下に入っていく、三分の一が川を通って、大ざっぱにいけばそんな感じの中で、片っ方で農業用水だ、片っ方で森林用に水を使う、片っ方で工業に使う、片っ方で生活用水に使う。したがって、建設省だ、農林水産省だ、厚生労働省だということになっておりますけれども、そんな縦割りでもって我々の暮らしや生活は水に頼るということには私は限界があるんだろうというふうに思います。  したがいまして、農林水産省の中はもとより、行政全体においても水に関して、管理の問題は問題として、縦割りによって水が有効に使えないとか、あるいはまた、いろんな問題に対応できないとかいうことがあってはならないと思いますので、先ほどの世界水フォーラムが契機になって、今各省庁間、一層連絡を密になっておると思いますけれども、当然そうしなければいけないというふうに考えております。
  165. 谷合正明

    ○谷合正明君 力強い、また前向きな御答弁をありがとうございます。  そこで、農業用水の使用量でございますが、先ほど答弁の中で約五百六十五億トンですか、これはただ過去三十年間ずっとトレンドで見ていきますと、ほぼ変わっていないと思います。三十年間、農家の数も減っている、農地も水田も減ってきている、一方で農業用水の使用量というのは変わっていないということは、これはどういう理由なんでしょうか。
  166. 山田修路

    政府参考人山田修路君) ただいま農家の減少、あるいは農地、水田の減少、作付けの減少等によってなぜその農業用水の利用が減らないのか。まあ徐々には減ってきているんですが、今おっしゃったようなことに比べて減り方が少ないということなんですけれども、私ども、その農家なり農地の減少がそのまま農業用水の利用量の減少に、並行的にというんでしょうか、同じ比率でつながるというようなものではないというふうに考えております。  といいますのは、水田についていいますと、現在、水田について汎用化ということで基盤整備を進めております。汎用化というのは畑作物も植えられるようにしていこうということなんですが、そうしますと、要するに地下に浸透する量が増えていく、汎用化をすることによってですね。それから、あるいは圃場が従来よりも、水田が従来よりも乾燥化した、乾田化しているというんでしょうか、そういう状態になっていくというようなことがありまして、どうしても同じ水田でも必要な水の量は多くなっていくということになります。  それからもう一つ、水を利用するときに、特に農業上の利用の場合には一定の水位を確保して、それでその水圧で圃場に送り出す、あるいは水路の支線がありますけれども、そこに水圧で送り出すという形のものが多いわけですので、ある程度の水圧を確保するための水の量というのがやはり必要になります。  そういう意味で、例えば水田の面積が減ってきたことがイコール農業用水の減にはつながらないということでございます。  それからもう一つ、畑地についてでございますが、畑地はこれまで余りかんがいの施設が十分整備されていなかったわけでございまして、そこがまた畑作農業一つ問題点であったわけでございますが、これからますます畑地かんがい施設の整備を進めていこうというふうに考えております。  そういったことから、そういう畑地かんがい施設の整備に伴って農業用水の利用量が増えていくということもございます。そういう意味で、水田の減少等に見合って農業用水の利用総量が減ってきているわけではないという状況でございます。
  167. 谷合正明

    ○谷合正明君 そうしますと、必要な水の量というのは今後増えてくるんでしょうか、変わらないんでしょうか。
  168. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今申しましたような要因、いろんな要因がありますので明確には申せませんけれども、そう大きな変化はないんじゃないかというふうに当面は見ております。
  169. 谷合正明

    ○谷合正明君 農業用水の使用量というのは、いろいろな条件、物理的条件とかもあって一概に言えないというような話だと、私もそれは理解しておりますが、ただ、一方で、いろいろその理由の中で地下浸透だとか水圧が必要だとか言われていますが、本当に忘れてはいけないのは効率的な利用ができているのかといったところだとございます。農業用水を生活用水に回してほしいとかいう声もあるぐらいでございます。  今回、農地・水・環境保全対策では、農地の経済的利益ということで七兆から八兆円ぐらいあると。森林では七十兆円あると。だから、公共財として農村をみんなで守っていこうというような話だと思うわけでございますが、これだけ水を使って、この農業セクター、効率的に利用をやはり農業セクターもしていかないと私はいけないんじゃないかなと思っているわけでございます。  そこで、改めて質問させていただきますが、社会共通資本として農業用水の資源の質を高めると今回の対策の大綱にも書いてございますが、改めて、なぜ支援が必要なのか、農地、水、環境を守っていくという支援が必要なのか、そのところを今の議論を踏まえて大臣お答えいただきたいと思います。
  170. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の農地・水・環境対策というのは、結果的には農業生産にも大きく貢献いたしますけれども、いわゆる車の両輪といたしまして、ある意味では入口は二つに分けて考えているわけでございます。と申しますのは、先ほどからお話がありますように、水というのは、もちろん農業用水だけではなくて、水系の中であるわけでありますから、その水系を引っ張ってきて農業にも使うし、生活用水にも使うし、工業用水にも使うこともあるということでございまして、小さな単位であってもやっぱり水というのは共有の財産であるという前提で、しかも水も、先ほどからのお話もあるように、決して無尽蔵で、しかもほっておいても来るものでもないと、水管理というのは極めて大事であるというふうに考えております。  そういう意味で、今回のこの農地・水・環境対策というものが、正に持続可能な農業、持続可能な農村集落生活等に極めて大事なことでございますので、ほっておいたら少なくなってしまうとか、あるいはどこかにあふれ出て流れてしまうとか、あるいは蒸発しやすくなるとか、それによって農地も荒れていく、町も荒れていくということになりますので、そういう観点から、この対策においても水の位置付けというのは極めて大きい、きちっと対応していかなければいけないということを進めていかなければならないと思っております。
  171. 谷合正明

    ○谷合正明君 持続可能な、また循環型の日本型のこの水利用システムというのは、私は世界に誇るべきものだと思っておりますし、また、今後人口が急増するこのアジア地域において、私は一つ日本がモデルを示せるものだと思っております、食料管理における水資源の在り方としてですね。ですので、今回の対策を通じてこういった日本型の水利用システムというものを世界に是非とも大臣には発信していただきたいということを要望させていただきます。  次に、各論の話になりますが、有機農家、有機農業について質問をさせていただきます。  今回の対策におきましては、環境支払の対象者として、まずエコファーマーであることが条件になっているわけでございますが、有機農業者には、JAS法に基づいて、この有機JASを受けて有機農家だということで頑張っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいます。  質問は、改めて、有機JASを持っている方が改めてエコファーマーの認定を受ける必要があるのかということでございます。
  172. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 先進的な営農支援ということについてのお尋ねでございますけれども、この新たな土地・水・環境対策におけます先進的営農の支援につきましては、単に粗放的な栽培によりまして化学肥料、化学合成農薬の使用を低減するのではなくて、適切な代替技術の導入によって生産性との調和に配慮した生産を推進する観点から、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律、いわゆる持続農業法と言っておりますけれども、これに基づきまして、土づくりと化学肥料、化学合成農薬の低減技術を組み合わせて行う生産方式に取り組む農業者、いわゆるエコファーマーであることを要件としているところでございます。  このため、有機JAS認定を受けている農業者の方々についても、土づくりと化学肥料、化学合成農薬の低減技術を組み合わせて行う農業生産方式の導入に関する計画を作成していただきまして、持続農業法に基づくエコファーマーの認定を受けていただきたいと、そういうふうに考えているところでございます。
  173. 谷合正明

    ○谷合正明君 計画を作成してまた改めて認定を受ける必要があるということでございますが、先日、私もある有機栽培している有機農家の方から陳情をいただきまして、その一つが、今回の対策とちょっと趣旨が外れるんですが、いわゆる表示制度について陳情をいただきました。つまり、幾らコストだとか手間を掛けて、時間を掛けて有機JASの認定を受けたとしても、なかなかこれが消費者に周知されていないのでメリットがないというわけでございます。  今、そのエコファームの認定も必要だというふうな話もございましたが、これまたエコファームの認定を受けるといったところにもやはり同じような手続が要るわけでございますが、エコファーマーと有機JAS、その趣旨は違いますから同格には扱えませんが、まず、消費者にとっても、似たような言葉が並んでくると、よりまた混乱してしまうんではないかということをまた私ちょっと心配しているわけでございますが、まず有機農家から陳情を受けましたこの表示制度の在り方について、ちょっと御所見というか、見解をいただければと思いますが、よろしくお願いします。
  174. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 有機JASの規格、これは平成十二年の一月に発足をしたものでありますけれども、その背景としましては、もう御案内のことかと思いますが、それ以前は、こういった有機の関係の表示というのはガイドラインでやっておりました、強制力もありませんでした。そういうこともありまして、この有機何々と、あるいはオーガニック何々というふうなそういう表示の中に、正直言ってまがいものも結構あったというふうな、そういうことが背景としてこの十二年に有機JASの制度ができたわけでございまして、有機JASと、そういう表示が付いているものについては、きちっとした生産行程管理が行われたそういう農産物であるということを保証するものとして、消費者方々の商品選択に資するようにということでできたものでございます。  メリットのことを今お話しになりましたけれども、もちろん品目、あるいはどの時期によるか、取るかということで多少違いがあるかと思いますが、有機農産物は、一般の国産農産物と比べまして、市場の価格は四割とか、あるいは物によっては倍ぐらい高いというのが実態でございます。そういう一定の高付加価値の商品としての評価は得ているというふうに思っております。  ただ、有機のその認証を取るためにそれなりの手間も掛かるということで、できるだけこの有機JASの制度が普及、定着をしますように、二つの面で努力していかなければならないと私どもも思っております。  一つは、生産者の方々にできるだけ情報提供して、その有機JASの認証を得るための手間を少なくしていくということでございます。このためにハンドブックを配布をいたしましたり、あるいは事務負担の軽減や認定取得のためのいろんな情報提供に力を入れております。  もう一つは、消費者方々に、有機のJASのマークが付いているものはどういうものだということをもうちょっと広く御理解をいただく必要がありまして、こちらの方もパンフレットを作りましたり、有機JASとはどういうものかといった面でのシンポジウムを開き、あるいは雑誌の中に、そういった広告、広報活動の一環としてそういうものを載せるという、そういう取組をいたしております。  この生産者への働き掛け、消費者への働き掛け、双方の働き掛けを行うことを通じまして、有機JAS制度につきましての更に一層の定着を図っていきたいというふうに思っております。
  175. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非しっかり取り組んでいただきたいと思います。  続きまして、もう時間が迫ってまいりましたので、全国農地保有合理化協会、略称で全国協会と呼ばせていただきますが、この点について質問させていただきます。  平成十六年度決算についての会計検査のあらましが本年の二月に公表をされました。この会計検査院からの指摘によりますと、決算剰余金が基盤特会、農業経営基盤強化措置特別会計ですね、この特会に多額の剰余金が発生していると。また、その上で、二段階として、全国協会にも滞留しているお金が多額に上っているというような指摘がございました。  ちょっと分かりづらいのでもう一度説明しますと、まず国、基盤特会があると、その基盤特会から資金補助が全国協会に行くと。全国協会が無利子の貸付け・助成を都道府県の公社にすると。そして、都道府県の公社が農家との間で農地バンクの役割をして、農地の買入れ・借入れ、売渡し・貸付けを行うというものでございますが、この基盤特会にまず決算剰余金が八百億円あったと、平成十六年度末に。一方、資金補助を受ける全国協会に四百九十四億円あったといったことが指摘されまして、効率的な資金の使われ方ができていないじゃないかという指摘だったと思います。  特に、この基盤特会の業務は、大きく四つありますけれども、そのうちの一つが農地保有合理化促進対策でございます。ほぼ、この基盤特会の歳出の九割がこの農地保有合理化促進対策に使われているわけでございます。この対策の支出というのは近年伸びていると。しかし、伸びているんだけれども、どこに支出されているかというと、全国協会に資金補助として入っていると。じゃ、全国協会の中で農地の流動化に資するための事業に使われているかというと、そうじゃないと。全国協会に四百九十四億円がたまっている状態だと。しかも、全国協会は平成十二年から平成十六年にかけて約二百四十億円が、この保有金額が増えているといったことでございます。  まず、この会計検査院の指摘を受けて、この指摘をどのように農水大臣は受け止められたのか、それについて伺います。
  176. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) そもそも、基盤特会それから全国農地保有合理化協会、目的があるわけでございます、農政上の。しかし、だからといって膨大なお金が滞留しているということは、これはもう、日本の財政状況全体から見てもこれはもういかがなものかと。御指摘は真摯に受けなければいけないと思っております。
  177. 谷合正明

    ○谷合正明君 それで、指摘を受けてどういう改善策を講じたのか、また講じようとしているのか、この点についてお願いします。
  178. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 直近の会計検査院の御指摘をいただきまして、全国農地保有合理化協会の資金につきましては、平成十七、十八年度におきまして七十七億円を基盤特会に返還いたしました。基盤特会の剰余金につきましては、平成十八年度におきまして二百九十五億円を一般会計に繰り入れる、つまり戻すということにいたしました。  今後も、不必要に余っているものはどんどん戻していきたいというふうに考えております。
  179. 谷合正明

    ○谷合正明君 この数字の根拠というのも聞かなきゃいけないんだと思うんですけれども、ちょっと時間がございませんので次の質問をしますけれども、今、全国協会、財団法人の全国農地保有合理化協会という言葉が出てきましたけれども、この全国協会の果たす役割というのは、これはそもそも何なんでしょうか。
  180. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 農業の構造改革を推進していく上で、農業経営の規模拡大ですとか農地の集団化が重要でありますけれども、この規模を縮小する農家から農地を買い入れたり借り入れたりいたしまして、認定農業者などの担い手に売り渡したり貸し付けるという農地保有合理化事業というのを推進しております。最近では、この担い手の農地の利用集積面積の約半分、一万八千ヘクタールが農地保有合理化事業により行われているわけでございます。  全国農地保有合理化協会は、こういった農地保有合理化法人、先ほど委員から御指摘がありましたように都道府県とか市町村とか農協がやっている場合もございますが、そういった農地保有合理化法人の行います保有合理化事業を支援するという目的で設立された法人でございまして、主な業務といたしましては、都道府県や市町村の公社などの農地保有合理化法人に対しまして、この事業の実施のために必要な資金を貸し付ける、あるいは事業の啓発普及、あるいは事業従事者の研修というようなことが業務の内容でございます。
  181. 谷合正明

    ○谷合正明君 全国協会というのは、基本的には資金を貸し付けたり助成するというのが役割でございますので、この農地の流動化ということにつきましては直接は関係ないというんでしょうか、この農地の流動化については、やはり法人の方、略称で県公社と言わせていただきますけれども、こちらの方の役割というものが大事だと私は思います。  昨年、法改正されましたけれども、この農地の流動化を進めるためにもこの都道府県公社の役割というものが重要だと考えるわけでございますが、どのような対策を講じようとしているのか、この点について伺います。
  182. 井出道雄

    政府参考人井出道雄君) 委員指摘のとおりでございまして、県公社等の農地保有合理化法人が農地の仲介をするという機能が非常に大切でございます。  このため、昨年の基盤法の改正におきましても、この仲介機能を更に強化充実するという趣旨に出まして、この保有合理化法人が農業生産法人に農地を仲介する際に、農業生産法人の規模拡大に伴いまして必要になります農業機械などの資本装備、このための金銭出資を行える事業を創設いたしました。  また一方では、都市に住んでおります不在村の農地所有者が安心して農地保有合理化法人に農地の管理を任せることができるように、また借り手も安定的にそういった不在村農地所有者から農地を借り受けることができるような貸付信託を活用した事業を創設したところでございます。  今後とも、この農地保有合理化法人の行う保有合理化事業が円滑かつ効果的に推進されるように、その時々の要請にこたえまして適時適切にそういう新しい事業等を創設して、この農地の利用集積に努めていきたいと考えております。
  183. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、その法人の方のいわゆる組織面、財政面での執行体制が適切にできるかどうか、そういったものを、組織の強化であるとか財務基盤の強化だといったところもしっかりやっていただいて、この農地の流動化、農地の集積がしっかり今描いているとおりにいっていただくように要望をさせていただきたいと思います。  最後に、大臣に、これまでの法案質疑がありましたけれども質問させていただきますが、国民に対する理解ということで質問させていただきます。  担い手経営安定法案並びに、今日、農地・水・環境保全向上対策について質問させていただきましたけれども、いずれにしても、この戦後農政を大転換させる非常に大きな意味を持つ今回の法案だということでございますけれども、その一方で、国民に対するこの理解というものが広まっていないということは大臣も言われておりました。そこでまた、今回は、私は、納税者であり消費者である国民に対して、この日本の農政を、また農業、農家をよく知っていただくための一つの機会に、きっかけとなればと思っているわけでございます。  そういう意味で、今WTOの交渉などもございますけれども、簡単には説明国民に対して説明するのが難しいかもしれませんが、しかし国民に対してのこの理解がないと、日本農業というのは先行きが本当に大変になっていくわけでございます。  最後に、大臣国民に対する訴えをしていただきたいと思います。
  184. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 食料と水に関係のない、国民に限らず、人間はいないわけでございます。そういう中で、日本におきまして、先ほどから申し上げておりますように、将来の食料の安定供給に対して国民は不安を持っている方が多いわけでございます。また、安全、安心に関する期待も非常に大きいわけでございますので、当委員会といたしましては、水、食料について国民の期待にこたえる行政をしていかなければなりません。  そういう意味で、この法案というものはそれに貢献をしていくというふうに確信をしております。しかし、それだけでは不十分でございまして、そのためには財源というものが伴うわけでございます。財源というのはおおむねこれは国民からいただいた税金等がベースになっているわけでございますから、自分たちが納めている税金の中から自分たちのために、安全で、そして良質の、顔の見える農産物を作ってもらうために有効に使っているんだという御理解があって初めて消費者国民に対しての御支援が前提としての施策の遂行につながると思っております。  それから、国民の一部であります、この法案の直接の対象者であります農業関係の皆様方に対しては、我々はまだまだ説明が御理解いただいていないと思いますので、今後とも更に全力を尽くして、法案の趣旨が全うできますように、その前提として関係者の皆さんの御理解を得るべく努力をしていきたいというふうに考えております。
  185. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。
  186. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、糖価調整法の問題で質問いたします。  この糖価調整法の改正で、てん菜、サトウキビなどの甘味資源作物、それからバレイショ、カンショなどのでん粉原料用の芋については、これまですべての生産者が最低生産者価格制度の対象になってきたわけですけれども、これが廃止をされると。てん菜、バレイショについては品目横断に移行することになります。  てん菜については、調整金の収支が悪化しているということを理由に直接支払の対象数量に上限を設けるということなんですけれども、この上限は一体どうなるんでしょうか。
  187. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) てん菜の支払対象数量についてのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、糖価調整法の下では、輸入糖から徴収いたしました調整金を財源として国内生産への支援を行う仕組みとなっているところでございます。調整金収支の均衡を図りながらてん菜の安定的な生産を推進していくためには、適正な規模のてん菜生産について支援を行う必要があるというふうに考えております。  その際、てん菜の支援対象数量水準につきましては、需要に応じました生産の促進を基本としつつ、北海道畑作の輪作体系の維持を図る観点も考慮いたしまして、平成二十七年度における生産努力目標でございます砂糖ベースで六十四万トン相当に設定することが適切ではないかというふうに考えているところでございます。
  188. 紙智子

    ○紙智子君 今六十四万トンというふうにおっしゃったわけです。  昨年の三月に、私、この委員会で生産努力目標が今後のビートの生産の上限になってしまって、今後はそれ以上買い取らないということになるんじゃないかというふうに質問したときに、当時の局長はそれを否定したわけですね。そうはならないというふうに言ったんですけれども、結局、懸念したとおりになったんじゃありませんか。
  189. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 健全な制度を運営するためにどうするかということでございまして、現在、調整金、全体の砂糖の需要が減る中で調整金水準も若干減ってはいるわけでございますが、先ほど申し上げたように、北海道の輪作体系を維持するという観点から見たときに、将来、六十四万トンのてん菜生産というのが見通されるという中で、今回の制度の中で支援対象とするのは六十四万トンというふうに決めたいというふうにしているところでございます。
  190. 紙智子

    ○紙智子君 前回そうならないと言ったのに、どうしてそういうふうにころころ変わるんでしょうかね。どうですか。
  191. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 対象数量についてどうするかということについては、やはりこれは制度そのものを円滑にといいますか安定的に運営することが、やはり北海道におけるてん菜生産あるいは経営の安定を図る上では極めて大事という意味で、調整金をベースとしている制度上の仕組みから、そういうふうな、支援水準については六十四万トンとしたいというふうに考えているところでございます。
  192. 紙智子

    ○紙智子君 それはそちらの言い分だと思うんですよ。  ビートは豊作のとき、凶作のときで物すごくこの差が、変動が激しいと思うんですね。ここ数年でいいますと豊作が続いていると。生産量は、二〇〇三年、四年、五年ということで見ると、六百十四万トン、そして翌年四百六十六万トン、四百二十万トンというふうになっているわけです。〇四年の年には生産者が一トン当たり千円の拠出、総額でいいますと五十五億円ですよ。これだけ負担して豊作分を処理したんですね。これ一戸分に直しますと数十万円の負担なんですよ。  このような本当に多大な負担に耐えているのはなぜかと。それはやっぱり輪作体系を維持するためだと思うんですね。やっぱりそれを考慮をしないでこの上限を精糖換算で六十四万トンに設定するということになりますと、ビートの生産の面積自身を縮小しなきゃならないことになるんじゃないでしょうか。これ、大臣、いかがですか。
  193. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私の地元の輪作の一つでございますから、今までですとビートは例えばですけれども七万二千ヘクタールとか、そういうふうにして決めていたわけであります。七万、例えばビートを植えます。植えて、収量があります。何トン取れました、糖分が何%になります、一八%の場合と一五%の場合で取れる砂糖が違います、その結果として砂糖が何万トンということになるわけでございますので、そういう場合には自然相手、生き物相手であるし、それから消費者あっての日本の生産でございますから、そういうものを総合的に勘案して、輪作体系あるいは日本のカロリーの八%を占める砂糖というものをどうやって維持をしていくかということを総合的に考えて、今後の政策としてこういうことを導入しようとしているものでございまして、もちろん豊作もありましょう、凶作もありましょう。そのときに、在庫が少なくなる、消費が、圧力が強くなるといえばそれは増やすこともあるし、豊作が続けば、消費が減っていけば減らしていく。そのときには、質問の御趣旨からちょっと外れるかもしれませんけれども沖縄のサトウキビとか北海道のビートなんかはエタノールのエネルギーに使ったり、いろんなことに世界じゅうで幸いにしてサトウキビやビートは利用されておりますので、そんなことも考えながら、食料としての砂糖政策も行っていきたいというふうに考えております。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 今いろいろ、るる言われたんですけど、私が聞いたのは、面積を減らさなきゃいけなくなるんじゃないですかって聞いたんです。
  195. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 消費あるいは作況動向によっては減らすこともあれば増やすこともあるということだろうと思います。
  196. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっとひどい答弁ですよね、そんな。実際にはこの間のいろいろな現地の議論があって、面積を減らさないっていうふうにしてきているわけですよ。それで、削減が必要だっていうふうには認識していないっていうふうにこの間言っておられたんじゃないんですか。事務方の方はどうですか。
  197. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 近年、てん菜の生産が急増したというのは、これは事実でございました。ただ、これは作物を扱う者として、この数字というのはびっくりするような数字があったことは事実でございます。ただ、長期見通しを策定する際には、これは、将来、北海道の畑作の作付面積拡大する中できちんとした営農を行うためには、輪作体系を組むためには、どうも今のような栽培体系、あるいは営農体系ではなかなか同じような水準の生産上がらないだろうという中で、直播技術を入れる中でしっかりと輪作体系を組み立てると。そうした場合のてん菜の生産量といいますか、単収というのは五・例えば六トンと。  先ほど大臣が申し上げましたけれども、通常てん菜の糖度は十七・一度ぐらいですよね。十七度ちょっとだと思うんです。先ほど、最近のその最高例が、十八度のてん菜が取れた、これは過去最高だと思うんですけれども。その中で、過剰基調といいますか、在庫が物すごくたまったという事情があるわけでございますけれども、将来見通す中では、糖度は上がるけれども十八度までは上がらなくて、もうちょっと低いんでしょうけれども、現状よりは少し上がるという中で、作付面積も現状においては六万七千なり六万八千ヘクタール程度でございますけれども、長期見通しの段階でも六万六千ヘクタール程度は輪作体系の中で位置付けられるだろうと。そういう中で、実際の営農体系を想定する中でこの数字を出してきているということでございます。  実際問題として、ビート糖として流通しているお砂糖の量は実は五十万トンを少し切るような水準でございます、白糖作っておるわけでございますけれども。それやこれや、いろいろ総合的に北海道の輪作体系を成り立たせるという視点も含めながら、この六十四万トンというのを長期見通しとしても出しているということでございます。
  198. 紙智子

    ○紙智子君 畑作農家の方が高額なペナルティーまで負担しながらビートを生産続けているのは、やっぱり、おっしゃっていますように、ビートの面積を維持するということが結局輪作体系そのものを維持していく上で不可欠だからですよ。面積を維持することが輪作体系を維持する上で不可欠だからですよ。だから、わざわざお金たくさん出してやってきているという現実があるわけです。そして、このてん菜を入れることで地力も回復させていくということもあるわけですよ。  今年度の生産面積の配分では、結局、政府の助成の受けられない面積の配分がされているわけですけれども、上限を超えた量については交付金は付かないと。手取りでてん菜の販売収入は生産コストを大幅に割り込むことになるわけですね。北海道は、そういう中で、ビートの面積を、なかなか、この収量が多くなったりするということでは、減らすということでは新規作物に転換しようという話も出ていて、その場合に反当たりにして三万円を交付するということを、事業を北海道としては今いろいろ考えていると。  ところが、現地では枝豆とかチコリとかいろいろ考えているんだけども、じゃチコリといったら日本でどれぐらい消費がされるんだろうかということでは不透明と。しかし、北海道がやろうとしている対策でいえば、これまでに栽培したことがない作物に限定してということの話になっていて、タマネギや大豆ではこれは対象にならないという中で、じゃ輪作体系を崩さないでやるとしたら何が作れるんだと、何を作ったらいいのかということでは非常に模索をしているという状況があるわけです。  実際に、これ、事実上輪作体系が壊れることになってしまいませんか。
  199. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) まず、ペナルティーという大変誤解を及ぼすような言葉はできれば訂正していただきたいと思います。これは、生産者自身が輪作体系を守るために、過剰生産なってしまったからみんなでこういうふうにして出し合いましょうということでございまして、共補償という言葉も別の世界であるわけでありますし、例えば現在の牛乳が余っているからみんなで生産調整をしましょうということでありますから、何も、何か悪いことをしたみたいな、罰金を取るみたいな形では決してないんでありまして、北海道の農業者は賢明でございますから、このまま行ったら値崩れを起こして買ってもらえない、それよりはみんなで少しずつお金を出し合って努力をしようじゃないか、あるいは数年前から導入されております原料糖取引、精糖に回すには余りにも量が多過ぎるから原料糖としてメーカーに回すというような工夫等々、政府農業者が一体となって前向きにするために知恵を絞っているわけであります。  そういう観点から、畑作というのは水田と違いまして同じものを毎年作っていると必ず連作障害というのが起こりますから、輪作というものがこれはもう必然でございます。そういう中で四作若しくは五作という体系が確立されているわけでありますけれども、その中には、これはまあ余り短期的に収入になるかどうかは別にして、地力増進の作物、緑肥、クローバー等を植える場合もありますし、一つの典型例としては、これは農業者自身が考えたことでございますけれども、私の地元ではナガイモが毎年百億円の売上げを上げておりますので、どうぞ地域でいろいろとお知恵を絞り、それに対して後押しをするということも大事であります。それができなければ道がやる、それができなければ国がやるということで、何もかにもがまず国がやれ、国がやったことに違反したからペナルティーだということでは決してないということを是非御理解をいただきたいと思います。
  200. 紙智子

    ○紙智子君 先ほど言った言葉というのは現地の生産者の皆さんから出てくる言葉なんです。確かに生産調整と言えばいいですよ、きれいな言い方ですよ。でも、実態としては作りたいわけですけれども、それがやっぱりできなくされているということでは、思いとしてはそういう思いがあるということも是非御理解をいただきたいと思いますよ。  それで、砂糖が自給率で言うと今三四%ですよね。これを生産縮小させるということになりますと、これ、本来政府が自給率向上と言っていることとも反するんじゃないでしょうか。この点はいかがですか。
  201. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 先ほど、最近の、平成十六年、十五年というところで特に単収が急増といいますか、非常に作が良かったことを背景としてちょっとその在庫がたまると、砂糖として出せない在庫がたまったということがあって、今大臣から申し上げたような、みんなでその過剰対策も講じているというところでございますけれども。  長期見通しにおいては六十四万トンということで三四%の自給率ということを目標としておりまして、この水準というのは、過去の水準は三割切っているような水準、ここ近年あって、一度だけ三五%になったと思いますけれども、先ほど言ったように、収量が一割増、糖度で、砂糖量として五%増といったような中で、三五%を瞬間風速としては達成しておりますけれども、過去は二九とか三〇とか三一、それを三四を維持しようというところで長期見通しは立てているというところでございます。
  202. 紙智子

    ○紙智子君 自給率向上にはつながらないんじゃないですか。やっぱり、それでは私は、担い手育成どころか、この畑作自身を、輪作体系を維持して生産基盤をしっかりつくっていくというふうにはならないと思いますよ。  それはちょっとおいておいて、次のサトウキビの話にも入りたいんですけれども、サトウキビ生産者に対する新たな交付金というのは、これまですべての生産者を対象とした最低生産者価格制度、ここから対象を限定した交付金に変わることになります。原則だけを適用した場合と三年間の限定の特例を実施した場合、それぞれで、現時点でこの交付金の支給要件該当する農家数というのはどの程度あるでしょうか。
  203. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 原則なり特例を適用した場合の対象農家は幾らかということでございますけれども、繰り返しになるかもしれませんけれども、サトウキビの経営安定対策の対象要件は、サトウキビについては零細な規模の農家が生産の大宗を占めているという実態を踏まえまして、認定農業者や一定の作業規模を有する者に加えまして、一定の作業規模を有する共同利用組織に参加している農家、一定の条件を満たす基幹作業の委託者も対象としておりますし、加えて、受託組織などが存在しない地域については、三年間に限りまして、担い手の育成を目的とする組織に参加する者を、農家を対象とするという特例を設けることとしております。  この対象要件については、基幹作業の委託者も交付対象に含むということ、特例につきましては適用される地域が未確定であるということから、この部分についてはセンサス等から推計することはできません。現時点でこれらを満たし得る農家数を的確に見通すことというのは困難でございますが、いずれにしても、現在、行政と農業団体が連携協力いたしまして生産の組織化等を強力に推進しております。  対象要件における特例の活用も含めまして、スタート時には相当な割合の農家が、これは県においてはすべてを目標に挙げておりますけれども、対象になるというふうに考えているところでございます。
  204. 紙智子

    ○紙智子君 ちょっと全然分からないですね。相当の規模の人が対象になるというんですが、根拠は何なんですか、それは。
  205. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) これは、この対策を立てるに当たりまして、現地の農業団体、県も含めまして、それらの方々とかなり連携を密にして、現場の要望、特にサトウキビについては高齢化が非常に進んでおります。  サトウキビは、御案内のとおり、長大作物でありますし、一ヘクタール当たりで六トン、あるいは良く取れれば十トンまで取れる、すごい重量作物ですよね。だから、サトウキビをこれからずっと維持するためにといいますか作るためには、やっぱりしっかりとした担い手をつくらなきゃいかぬということを、そういうことを念頭に置いて今やっているわけでございまして、担い手づくりを今一生懸命やっていると。地域でそういう方々を育てる、あるいは組織について要件を緩やかにする中でそういう環境を整えていくというところに現場が一生懸命今動いていると、そういう状況というふうに御理解いただければと思います。
  206. 紙智子

    ○紙智子君 一ヘクタール以上の農家がどれだけいて、一定の作業規模を有する共同利用組織に参加している者、それから一定規模を有する受託組織に基幹作業を委託している者、要件ですよね、この要件にかなっている人たちが現時点でどういうふうになっているのかというのは分からないんですか。
  207. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 現時点という、今、現時点では分かりません。  ただ、二〇〇〇年の農業センサスなどを使えば、一ヘクタール規模の農家がどのぐらいいるかと、そういう数字はあるわけでございますけれども……
  208. 紙智子

    ○紙智子君 それは何。
  209. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) これは、認定農業者の数でいきますと、沖縄県では三百二十戸でございますし、一ヘクタール以上の農家数というのは三千八百九十四戸、機械・施設の共同利用組織への参加農家数としては三百五十三戸、農作業を請け負う受託組織への参加農家数は百九十一戸と。そういう数字はありますけれども、繰り返しになりますけれども、現在のサトウキビのそういう生産の実態を踏まえる中で、これならいけるというところで我々としてはこの要件をつくっていったということは御理解いただきたいと思います。
  210. 紙智子

    ○紙智子君 支援対象の限定と、制度が大きく変わるわけですよね。そういう施策の対象が生産者にどれだけカバーできるのかというのは、これ重大な問題だと思うんですよ。それを明らかにしないで議論しろというのも、これやっぱり無理な話だと思うんですよ。サンプリング調査もしていると思うんですけど、そういう数字だけだって示すべきだと思います。  今、ちょっといろいろと答えられたんですけれども、今回の制度の改正は、特例がなくなると、個別農家の場合、認定農家になるか、それとも共同利用組織に参加するか、基幹作業を受託組織などに委託している者になるかということなんですけれども。  今、数字幾つか言われましたけれども、栽培農家戸数は、サトウキビは、鹿児島で一万八百ありますよね、沖縄で一万八千百戸ですね。これに対して認定農業者は、サトウキビは、鹿児島で五百二十九戸、沖縄で三百二十戸。ですから、今そういう意味では数%でしかないわけですよね。その他の要件を満たす者も、沖縄のサトウキビの場合は八割が一ヘクタール未満だと。機械・施設の共同利用組織への参加の農家というのが三百五十三戸ですか、受託組織の参加農家が百九十一戸にとどまっているわけです。作業請負の状況というのは、収穫作業で九百四十二ヘクタール、そして耕起、整地ですね、これをやっているところで一千七百七十一ヘクタールしかないわけです。鹿児島状況というのは不明なわけですけれども、こういう同様の状況だというふうに思われるんですよ。  ほとんどの農家をこれから組織するというわけですよね。これから何らかの形で組織しなきゃいけないと。そうすると、対象となる要件というのは、現在のサトウキビの農家の実態とは懸け離れたものだと思うんですね。これでどうやって、三年後にほとんどの農家の人が対象になるようにというんだけれども、一〇〇%対象になるようにするのかという点ではどうですか。
  211. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) サトウキビの生産については、今委員の方からも規模が小さいという数字をお示ししていただいたわけですけれども、そういう実態を踏まえた中でこれからのサトウキビ生産を維持していくというためにはどうすべきかというところで、高齢化もしています。先ほど申し上げたように長大作物ですから、年を取れば作れなくなるんですね、体力が要りますから。そうすると、高齢化とともに、農地がサトウキビとともになくなるということが危惧されると。現に近年のサトウキビ生産というのは非常に弱くなっていると。これを何とかしようという中で今回の対策も講じたと。  そういうところで、一番我々が着目したのは、サトウキビの場合に、労働時間の大体四割強が収穫作業に要するわけです。この収穫作業のところをやっぱり効率化する、合理化するというか機械化していかなければ、サトウキビ自体がおかしくなるというところで、ここに着目する中でそういう組織づくりということを要件にしているわけです。  具体的に、じゃそれをやらなきゃいけないかということに対して、先ほどお答えしましたように、受託組織が現にないところもあるわけです。それらについては、三年間の間にそういう組織をつくってもらうと、組織に参加するということで、担い手をしっかり計画で定めてその組織に参加していただくと、そうすればこの対象にしますと、そういう要件もつくっているわけでございまして、この要件の中でいま一度将来に向けてのサトウキビの生産に立ち向かってもらうと。  そういうことを今推進しようとしておりまして、これも繰り返しになりますけれども、現場の農協、もちろん県もそうでございますけれども、今一生懸命その推進方に取り組んで、島ごとに、あるいは農協の支所ごとに担当者も置いて今働き掛けをしていると、そういう状況でございます。
  212. 紙智子

    ○紙智子君 ですから、やっぱりすごく苦労していると思うんですよ、現地では。そう簡単じゃないと思うんですよ。だから、それだけに、本当に三年切ってそれでやって担い手が育つのかという問題でもあると思うんです。やっぱり三年後の特例廃止ありきということでは、大方の農家がやめざるを得ないことになってしまうんじゃないかと。  だから、三年後、担い手育成の状況を見てこの特例の継続を判断すべきじゃありませんか。この点はどうですか。
  213. 西川孝一

    政府参考人西川孝一君) 今一生懸命それに向けてやっているわけでございまして、繰り返しになりますけれども作業をやはり効率化していかないとキビ生産そのものが成り立たなくなるという、そういう危機感の下でこういう対策を講じようと、制度を改革をしようとしているわけでございます。  三年後には、組織の参加者は対象要件のきちんと作業を委託すればそれも対象にするわけですから、三年後には本則の対象になるというふうに私どもとしては今考えておりますけれども、ちょうど今機運が盛り上がっているわけでございますので、今一生懸命現場も頑張っておりますので、三年後見直すということは現時点で私の方からはちょっと言えないということも御理解いただければと思います。
  214. 紙智子

    ○紙智子君 そこはやっぱりちゃんとその状況を見て、もう少しちょっと言い方ないですかね。  私、去年沖縄に行ってきて、実際製糖会社ですとか農家の人とか話を聞いているんです。これまでも規模拡大とか機械化一貫体系の促進ということで組織化の努力はされてきているんですよ、今までも。だけどなかなか進まないと。それは現地の努力が足りないわけじゃないんですよね。やっぱり離島であって、台風が常襲地帯だということがある中で、それぞれやっぱり地域の特性もあるからなんですね。砂糖生産でいうと、機械の導入が地力を弱めて、逆に今度収量を下げてしまうということもあるということだとかいろいろ言われていて、上からの一律的な機械化促進ということでは批判もあるわけです。  だから、やっぱり本当に、昨日も出ていましたけど、サトウキビというのは生命産業だと、沖縄にとっては。鹿児島も作っていますけれども。だから、そういうところを本当に高齢者の皆さんが頑張ってやっておられて、そういう人たちに、厳しい価格が下がってきている中で、本当に力がわくようにというか、その人たち自身が今も元気に続けていて、続けられるし、更に担い手がちゃんと育つようにと、そういう価格支持政策といいますか支援が必要だということを強調して、ちょっと時間がなくなっちゃったんですけど、次に移らせていただきます。  農地・水・環境保全向上の対策についてなんですけれども、この対策については品目横断の経営安定対策と車の両輪という位置付けをしていますよね。しかし、農水省の「農業構造の展望」の中では、農地の七、八割は担い手に集積することになっているわけです。本来であれば、この担い手が農地の七、八割の部分の水管理や農地管理を行うというのが自然の形だと思うんです。であるなら、こういう対策は必要ないはずなんだけれども、それをあえて対策として位置付けるということは、これ農地の七、八割を集積する担い手に水管理や農地管理を行わせるというのは現実的でないという判断なんですか、大臣
  215. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 車の両輪と申し上げたのは、この産業政策、食料政策としての担い手、経営安定対策が一つ片っ方の車輪としてありまして、もう片っ方としていわゆる農地、農業あるいは食料のと言ってもいいでしょう、多面的機能を果たす役割として、その一つの施策として農地・水・環境対策があるというわけであります。  もう紙委員も御承知だと思いますけれども、紙委員の御地元でも、水を引っ張ってくるときには、北海道ですから、何十ヘクタールあるいは何戸の農家にも一本の川から引っ張ってきて、うまくそれぞれの田んぼあるいは畑に水が行くようになっているわけでありますから、そこはみんなで水管理をしていく必要がある。  その場合には、その地域の農業関係者だけではなくて、農業以外の人たちも、あるいはそこに住んでいない、しかしその地域の環境や多面的機能に関心を持つ、あるいは愛する人々にも参加をしていただいて、みんなでその地域の水や、あるいはまた土壌の管理、あるいはまた景観等々を維持していこうということで、担い手だけがやらなければいけないとか、あるいはそれ以外はやっちゃいけないとか、そういうものじゃなくて、みんなで参加して共同でやっていきましょうと。それに対しては何らかの財政面も含めた支援をさせていただきましょうという趣旨であります。
  216. 紙智子

    ○紙智子君 聞いたことには直接なかなか答えられていないという感じがするんですけど。  要するに、本当に今までで言えば、やっている経営者の方が水管理など含めてずっと今までやってきたという歴史があるわけだけれども、それをあえてこういう形で水管理や農地管理を行わせるということで作るということ自体が、私はやっぱり日本のような複雑な地形を持って、中山間地の話も出ましたけど、農地も小区画な中で、その農地の七、八割を担い手に集約するということがやっぱり非現実的であるということのあかしだということだと思うんですよ。なぜそういうふうになっているのかという、やっぱり素朴な疑問なわけですけれども、結局そういうことなんじゃないのかなと。  なぜ今回、法制度としないで予算措置としてこれを進めているのか。車の両輪というふうに言うのであれば、ふさわしく安定的な制度にすべきだというふうに思うんですけれども、その辺はどうですか。
  217. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 法制度としては、この経営安定対策、したがってこれが新法であって、あと主要食糧法と砂糖でん粉法が改正ということ、あと独法法があるわけでありますが、そういう一つの柱と、それからこの農地・水・環境対策につきましては、既に今までも関係者の皆様方、関心のある皆さん方がやっておられるわけでありますから、全く新しい制度を法制化するのと、それと密接に関連のある、そして今までもやってきているものを更に推し進める。しかも、国だけではなく、また関係農業者だけではなく自治体も、あるいはそれ以外の皆さんも含めてやっていただく。そして、それに対して財政措置もするということで、私はその目的が十分達せられるというふうに考えております。
  218. 紙智子

    ○紙智子君 今日の午前中、午後の議論の中でも、中山間地の支払の話も出ましたけど、こちらの方は今五年区切りということで、もう切れないように、また延ばしてほしいということで、やっぱり生産者の皆さんは非常に不安になって、そしてやっぱり延ばしてほしいということで要求するわけですよ。結局そういう形で、時限のような形でなるのだとすると、やっぱりなかなか安定しないといいますか、心配なく続けられるということにしていかなきゃいけないものなんじゃないのかというふうに思うわけです。  そういう意味で、やっぱり車の両輪にふさわしくということの意味はそういうことで考えるべきじゃないかということと併せて、やっぱり議論にもなったんですけれども、この対策でいうと、地方自治体に対しての予算のあれですね、分担といいますか、国と地方自治体の分担というのがあるわけですけど、これが結局一対一という話が出されているわけで、これで本当に今の苦しい地方財政の中でやれるのかどうかということをめぐっても、様々なやっぱり危機感といいますか、心配の声が出ているわけです。これに対して大臣意見といいますか、これでいいのかどうかということについても一言お聞きしておきたいと思います。
  219. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは、先ほども自治体の負担についての御議論がございました。地方財政も決して豊かではないというふうに思います。国ももちろん豊かではないわけでありますけれども。そういう中で、この対策を進めることによって関係農業者だけではなく自治体も受益するわけでありますから、是非これ自治体もそういう意味で主体的に参加をしていただく。つまり、財政的な負担もしていただいて、みんなでこの目的を推進してまいりましょうと、こういう趣旨で御賛同をいただきたいというふうに思っております。
  220. 紙智子

    ○紙智子君 じゃ、ちょっと時間がなくなりましたので、また続きはこの次にやらせていただくことにして。  いずれにしても、これは財政を負担してもらいたいと言うけれども、実際には、もう自治体の財政はそんな、大変ですから、非常に厳しいということを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  221. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  222. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 理事の辞任についてお諮りいたします。  和田ひろ子さんから、文書をもって、都合により理事を辞任したい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事の補欠選任を行いたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に小川敏夫君を指名いたします。     ─────────────
  225. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業担い手に対する経営安定のための交付金交付に関する法律案外二案の審査のため、来る八日に参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 岩城光英

    委員長岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会