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参考人(
坂庭国晴君) 御紹介いただきました
坂庭であります。このような機会をくださり、ありがとうございます。
皆さんのお手元に私たちが作成をいたしました「
国民の
住まいを守り豊かにする「
住居法」の提言」というカラー刷りのリーフレットをお配りをしております。先ほど
内田先生の方からお話がありました
住宅基本法、
住居法の
要素を、ほぼこれに盛り込まれているのではないかと思いますので、是非ごらんをいただきたいと思います。
私の
意見は、
基本法案に対して、今日の
居住の実態を通して御
意見を申し上げるということが主になると思います。
最初に、今日の
居住の実態と今回の
基本法の目的について見ておきたいと思います。
御存じのように、
住生活の現場での実態は大変深刻なものがあります。今日は、
全国借地借家人組合の相談
事例を御紹介をし、
住生活がいかに不安定性を増しているか、まず触れておきたいと思います。
一つは、
レジュメにもありますが、母子家庭のお母さんの
事例であります。小学校の子供が二人います。昼と夜、掛け持ちで仕事をしてきましたが、体を壊して働けなくなりました。家賃も三か月払えず、毎月家賃支払の督促が来て、子供たちもおびえて困っています。出て行ってと言われているんですと泣き出す若い母親。
次は、車の中で生活をしている元建設業の社長さんの
事例であります。会社の倒産で何もかもなくしました。もちろん家もです。今は車の中で妻と生活して八か月になります。妻が病気になりました。何とか家を借りたいのですが、市営
住宅に入れる方法はありませんか。せめて妻を布団で休ませてあげたいのです。いっそ死のうかと思いましたが、妻に苦労を掛けてきたから何とか頑張りたいのですと
言葉をかみしめて話す七十歳の男性であります。
これらは氷山の一角でありまして、このような事態を一刻も早く解決すること、またこうした事態に陥らない施策を確立することが
住生活基本法の目的であると思います。
第一条に「
住生活の安定の
確保及び
向上の促進」とありますが、現実の事態はそれに反する方向にあると思わざるを得ません。
住生活の安定
向上には何が求められるのか、また
法案に欠けている点などについて、以下五点ほど述べさしていただきます。
第一点は、
居住の
権利についてであります。先ほど
内田先生の方からも触れられました。いろんな
議論がされておりますので、結論から申し上げたいと思います。
私の理解では、
国民の
居住の
権利を明確にしない限り、国や地方公共団体の本当の
責務、すなわち責任と義務は明確にはならないというふうに思います。そして、
法案でも明記をされておりますが、
住宅関連事業者の
責務、
国民、
居住者の位置と
役割もまた明確にならないということであると思います。人間にふさわしい
住居に住むことは
基本的な
権利であるということを確認してこそ
住宅政策は生きたものになるというふうに思います。いろいろ説明が必要だと思いますが、それは省きまして、具体論に入ります。
昨年の九月に、
社会資本整備審議会の答申がありました。
居住に関する
権利について記述がありまして、国会でもしばしばこれについて言及をされていると思います。
これは、前半部分と後半部分、
二つありまして、前半は、要約すると、
居住の
権利は
国民的コンセンサスがあると言えないので
基本法制に定めることはできないという、
居住の
権利を入れることはできないということであります。その後半では、
住宅分野において憲法二十五条の趣旨の具体化に努めるということが明確にされております。
この憲法二十五条の趣旨の具体化とは何か。北側
国土交通大臣が既に何回かこの
国土交通委員会で答弁をされておりますように、これはイスタンブール宣言と同一趣旨であると、同じ趣旨であるということを繰り返し述べられております。つまり、イスタンブール宣言は一九九六年六月十四日、国連人間
居住会議が開催をされて
居住の
権利が宣言をされたわけであります。私たちは毎年、今年も来ますけれども、六月十四日、
住まいは人権デーを開催をしておりますが、つまり、この
居住の
権利を後段で確認をしながら、
基本法には定めないと、これは私は矛盾だと思うんです。
したがって、この矛盾はどうしても解消をする必要があるのではないかということで、
レジュメにありますように、この
基本法第六条に大変大事な規定がありまして、「
住宅が
国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である」と、これはもうそのとおりであります。大事な規定だと思います。その後に、その
確保は
国民の
基本的
権利であるということを付け加え、これを第一条に移動すればこの矛盾は解決をするのであります。是非御検討をいただきたいと思います。
次は、時間との関係で、公共
住宅の
重視の問題であります。
既にこれもいろいろ
議論をされていると思いますので、二、三のデータによって
住生活基本法の中で公共
住宅を柱とすべきだということを実証的に申し上げたいと思います。
まず、我が国の
住宅は一四%
住宅が余っていると、空き家の数は六百六十万戸であるというふうに言われております。ところが、公共
住宅の空き家率は一%以下、これは
国交省が発表した数字で、最近はちょっと違ってきていると思いますが、いずれにしても、日本
全国の
住宅が空き家であるにもかかわらず、まあ空き家の中身はいろいろ問題があるんですが、これはさておいて、いずれにしても、公共
住宅の空きは圧倒的に少ないという事実であります。
公営住宅は、
国交省の発表で〇・五二%でありますし、
公団賃貸
住宅、機構賃貸
住宅ですが、この時点では〇・五一%、その後、算定を見直して三%ぐらいになったと思いますが、公社賃貸
住宅は四・六二%、これは高い
住宅の、賃貸
住宅の家賃が空き家になっているということだと思いますが、いずれにしましても、この公共
住宅は一口で言えば不足をしているのではないかということがこのこれらの数字を見て明らかであります。
また、
公営住宅の応募者は既に百万人を超えているわけであります。特に、格差社会が始まった一九九九年度から〇三年度の間に三十万人も応募者が増えております。更にこれは近年増えていると思いますので、数百万人の人が
公共賃貸住宅を応募するということが既に明らかになっているわけであります。
で、今
公営住宅の
居住者の方は、現状の
公営住宅について次のように言っているということを聞きました。
公営住宅を造らず、
公営住宅に入れず、
公営住宅に追い出すという、造らず、入れず、入れず、追い出すということが言われているようでありますが、これは今日の
公営住宅の実態をよく示しているのではないかと思います。
こういう実情にあるにもかかわらず、今年三月三十一日に終了した八期五計、第八期
住宅建設五か年
計画の公的資金
住宅の達成率、達成率は三〇%台にとどまっているわけであります。
詳しくは申し上げられないと思いますが、いずれにしても、
公営住宅は五〇%台、高齢者向け優良賃貸
住宅、高優賃ですが、これはもう二〇%以下、
公庫住宅は三〇%台、機構
住宅は六〇%台ということで、これらから見ますと、国は責任を果たしていないのではないかと言われても仕方がないと思います。
また、既に、これも時間がありませんので、ファミリー向け賃貸
住宅が大量に不足しているということも明らかになりました。これらは主に、現在の機構、
公団の賃貸
住宅なり公社賃貸
住宅が持っていたのでありますが、改めてこの賃貸
住宅制度を再評価を行い、直接
供給を含むファミリー向けの賃貸
住宅の建設を行うべきであるということを強調をしておきたいと思います。
具体的には、この
レジュメにありますように、第十四条に、これは
住宅の
セーフティーネットのことでありますが、
地域の実情等に応じて
住宅の
確保に
配慮を要する者の
居住の安定を図る
計画を立案し、
公共賃貸住宅の
供給の促進などの施策を講ずるということを補強すべきであると思います。
次に、
住居費負担の問題であります。
青山さんが今日お見えでありますが、
東京都の
住宅マスタープランがこれ〇二年に出ておりまして、依然として高い
住居費負担率ということが示されております。簡単に御紹介しますと、
住宅ローンや家賃を
負担している都民の
住居費負担率、これは年収に占める
住居費負担の割合ですが、二一・一%を占めており、
民間賃貸住宅では二三%と特に高くなっている。
全国と比較すると、
東京の
民間賃貸住宅の
住居費負担率が
全国平均より約五%高くなっているということを言っております。
住居費負担率で見ると、重い
負担をしている
状況は改善されたとは言えないということが
東京都の認識だと思うんです。同様のことを是非国は明らかにする必要があると思います。
かつて、
住宅宅地審議会はこの
住居費負担率の問題について示しておりまして、ここにありますように、第一分位の
世帯の
負担限度ですね、
負担限度をおおむね一五%程度とすると。これは限度ですから、これを超えてはいけないという
意味であります。また、
公団賃貸
住宅はかつて一七%ということを言っておりました。したがいまして、
法案にある
居住者の
負担能力を考慮したという
住居費負担率は一五%から一七%、若干高めだという向きもあるかと思いますが、が妥当ではないかと。
住生活の安定の
確保にとって決定的に重要なこの
住居費負担の問題を解決、改善する必要があると思います。
そのためには
家賃補助制度の検討あるいは導入が必要なのでありますが、これについて一定の時間が掛からざるを得ないという
状況の中では、この第十一条に
基本施策がありますが、その中に、先ほど
内田先生が言われたアフォーダブルな
住宅のことでありますが、中低所得者層に対する適切な
住居費負担による
住宅供給を
確保する施策を追加をすべきであります。
時間がありませんので、次は、ストック
重視の
住宅政策と
既存住宅の改善、改修についてであります。ストック
重視の
住宅政策が言われて久しいのでありますが、現実にはなかなかそうなっていないという問題であります。
ここに、最近日本
住宅新聞というところで、投稿記事だと思いますが、心配な
住生活基本法の条件、岡山のS工務店という工務店の経営者の方だと思いますが、次のように言っております。
住生活基本法が今国会に上程され、五月ごろには成立するようだと聞いていますが、また工務店業界を苦しめる
法律なのか心配でなりませんという書き出しから始まりまして、中小工務店の育成とか良質な
住宅建設に優秀な職人の育成とかが一言も触れられていませんと。これは現実には、木造
住宅の振興、技術の継承などについて第七条二項に示されているわけでありまして、必ずしもこういうことが知らされてないと同時に、中小工務店の育成、職人の育成について極めて不十分であるということが言われていると思うんです。その次が大事なことだと思いますが、
住生活を豊かにするには、建てた後の
地域の実情をよく知っていて
地域住民の顔をよく知っている
地域の職人や
地域工務店が絶対に必要なはずですということで、
住生活基本法案が中小工務店や職人に不利にならないように
意見を出していきましょうという
意見で終わっているわけであります。
このように、我が国の
住宅建設は、新規建設は
重視するが、
既存住宅の改善、改修は
重視しないということが進められてきましたが、これを抜本的に改めるべきであります。これは、公共
住宅のストックの十分な修繕、改善の
重視と併せて是非とも実現をする必要があると思います。
時間が来ましたので終わりますが、そういう点で、耐震、防災のための
既存住宅の改善、改修は、
国民の命と生活を守る公的事業に、公共事業ですね、公的事業に位置付け、国と
自治体の本格的な制度として確立をし、中小建設業、
地域住宅産業の活用と振興を図る、こういう
内容を
是非基本法の中に盛り込む必要があると。
最後の五点目の住民参加の実現の問題は、時間がありませんので、後ほど時間があれば、許せばお話をしたいと思います。
以上であります。