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2006-06-01 第164回国会 参議院 国土交通委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年六月一日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         羽田雄一郎君     理 事                 伊達 忠一君                 脇  雅史君                 山下八洲夫君                 西田 実仁君     委 員                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小池 正勝君                 末松 信介君                 田村 公平君                 中島 眞人君                 藤野 公孝君                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 加藤 敏幸君                 北澤 俊美君                 輿石  東君                 佐藤 雄平君                 田名部匡省君                 前田 武志君                 山本 香苗君                 小林美恵子君                 渕上 貞雄君    国務大臣        国土交通大臣   北側 一雄君    副大臣        国土交通大臣  江崎 鐵磨君        国土交通大臣  松村 龍二君    大臣政務官        国土交通大臣政        務官       吉田 博美君    事務局側        常任委員会専門        員        伊原江太郎君    政府参考人        林野庁林政部長  石島 一郎君        国土交通大臣官        房技術審議官   中島 威夫君        国土交通省住宅        局長       山本繁太郎君        環境大臣官房審        議官       桜井 康好君    参考人        明治大学大学院        教授       青山やすし君        東洋大学工学部        教授       内田 雄造君        慶應義塾大学法        科大学院教授   松尾  弘君        国民住まいを        守る全国連絡会        代表幹事     坂庭 国晴君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○住生活基本法案内閣提出衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件 ○建築物安全性確保を図るための建築基準法  等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付)     ─────────────
  2. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  住生活基本法案審査のため、本日の委員会明治大学大学院教授青山やすし君、東洋大学工学部教授内田雄造君、慶應義塾大学法科大学院教授松尾弘君及び国民住まいを守る全国連絡会代表幹事坂庭国晴君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 住生活基本法案を議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にしていきたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、青山参考人内田参考人松尾参考人坂庭参考人の順序でお一人十五分ずつ御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人方々の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず青山参考人にお願いいたします。青山参考人
  5. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 青山でございます。  本日は、意見を述べる機会をいただいて誠にありがとうございます。  私は、東京都庁で三十六年間実務に携わってまいりました。また、今回、社会資本整備審議会議論に参加をしてまいりました。そういった立場から意見を申し述べさせていただきます。  従来、我が国の住宅政策は、公庫公団、そして公営住宅三つの柱として量的供給中心に実施されてまいりました。今回、住宅建設計画法を改めて、住生活基本法として住宅政策を量から質へと転換していくということは極めて大切なことであると存じます。それは現在、全国世帯数住宅数が一二%も上回る、すなわち空き家がある一方で、例えば都市誘導居住水準に達する世帯は半分くらいしかないという状況があるからであります。特に、大都市では、大都市問題は住宅問題と言っていいくらい住宅政策は大切な問題であると考えます。今回のこの住生活基本法を基に国民住宅政策に対する期待にどうこたえていくのか、住宅の質の向上をどう図っていくか、むしろ今後の法律の、この法律の下での政策が非常に重要であると、そう考えます。そして、住宅政策というのは、単独で論じることができるものではなくて、総合的なまちづくり政策の一環として展開していくべきものだと考えます。  そこで、二十一世紀まちづくり課題を考えることが必要ですが、二十一世紀課題には、たくさんありますけれども、特に重要なのは資料に記載してある三点であると考えます。  一つは、情報化成熟社会社会的包容力という三つキーワードに対応していくことであります。  まず、情報化時代への対応ですが、都心本社機能というのは、工業化時代には、大量の従業員を郊外から都心に集めまして、そして大量の事務、伝票を処理する場でございました。しかし、高度情報化時代には、知的生産性交流機能が求められております。これらの都心機能転換については、都市再生法等で対応しているところであろうかと思います。  それから、成熟社会でございますけれども、二十世紀の町には効率性が求められました。しかし、成熟社会を迎えた二十一世紀には、快適性、景観、眺望、楽しみ、そういったいろいろな要素が求められております。昭和三十八年に初めて容積率制度が設けられました。これは、高度経済成長時代には、ビルマンション床面積が増えれば、交通、エネルギー、ごみ処理上下水道等都市の、都市施設負担が増すわけでして、容積率都市をコントロールしていこうというのは当然のことであったと思います。しかし、今では、ビルとかマンション床面積が増えても、これでそこに通勤する人あるいは住む人が増えるだけではなくて、むしろOA機器の導入ですとかあるいは快適性を増していくとか、そういったことに床面積の増加が使われると、そういう時代になってきたわけであります。  したがいまして、今後は、人々の価値観変化に合わせて、都市コントロール手段としては、容積率だけではなくて、建築物の高さですとかデザインですとか町並みですとか、そういったものにも焦点を当てる政策に変えて、まちづくりにおける町の質的向上を図っていくということが大切であろうかと思います。これは、ビルの高さが低ければいいという意味ではございませんで、むしろビルの高さを高くして、その分オープンスペースを増していくと、そういった発想も必要であろうかと存じます。  いずれにしましても、容積率制度基本都市をコントロールしていく時代から、総合的な要素を考慮していく時代に変わりつつあると、そう思います。ちなみに、ロンドンでは容積率制度を撤廃いたしました。ニューヨークでも、最高容積率限度二一六〇%ということで、ほとんど容積率でコントロールするという形ではなくなってきているということがございます。  それから、社会的包容力、これはいろいろな階層の人が活躍していく条件を整えていくということであります。  これらの情報化時代成熟社会社会的包容力、こういった三つキーワードに対応していくことが二十一世紀まちづくりの第一の課題であると、そう考えます。  第二のまちづくり課題は、高密度都市コンパクトシティーであります。  コンパクトシティーという言葉は小ぢんまりとした都市というふうに誤解される向きもあるんですが、これはそうではなくて、例えば大ロンドン市の公式の計画書であるロンドンプランなどは、大ロンドン市はコンパクトシティーを目指すと言っていますが、その具体的な内容としては、人口七百三十万人のロンドンを十五年間で八十万人人口を増やします、年間三万戸ずつ住宅を増やしていきます、高層建築物を建てていきますと、それがコンパクトシティーの概念の内容であるわけです。すなわち、まちづくりを行う基本的な思想が分散政策から集中政策へと変わっていくと、それをコンパクトシティーという言葉が象徴しているわけであります。  今回のまちづくり三法も、中心市街地について活性化するために、一面から見ると分散政策から集中政策への転換という側面もあるわけであります。これは、国土レベルにおいても、それから一定の地域の中においても、ベクトルを高度経済成長時代分散から集中へと変えていくと、そういった発想転換が必要であると考えます。  まちづくり課題の第三は、住宅の質の向上であります。内容的には、通勤距離ですとか居住水準ですとか防災性快適性向上等があります。  例えば、都心居住についてですけれども、一ヘクタール当たり夜間人口を見ますと、ニューヨークマンハッタンは六千ヘクタールの中に一ヘクタール当たり二百五十人の夜間人口が住んでいます。それに対して、同じ六千ヘクタールの面積都心四区、東京都心四区、千代田、中央、港、新宿ですが、これは一ヘクタール当たり百人しか住んでいません。東京二十三区で最も夜間人口密度が高いという中野区でさえ、一ヘクタール当たりに二百人にも達していません。つまり、夜間人口密度でいうと、東京二十三区で最も人口密度の高い中野区でさえ、マンハッタン夜間人口密度には及ばないという現状です。  それなのに、なぜ中野区がごちゃごちゃしているという印象を受けるのかと、人口密集地という印象を受けるのかというと、これは平面的に過密であるからであります。立体的にはむしろ過疎であるということであります。  こういった状況の中で、民間中心都心居住を促進する動きがございます。これらの動きを止めてはならないと、そう考えます。  ちなみに、最近できた、ニューヨークセントラルパークの南端にできたタイム・ワーナー・センタービルの場合は、上三分の二がマンション、またその向かい側セントラルパークを挟んで向かい側ですが、ブルームバーグの本社ができましたが、ここもやはり上半分がマンションと、そういう造りになっておりますが、こういった都心居住を推進していくことが必要であろうと、そう考えます。  それから、これからは老朽マンションの問題が非常に問題になってきます。老朽マンションの問題というのは、耐震基準において昭和五十六年以前であって既存不適格であるというだけではなくて、容積率制度以前にできたマンションが多うございまして、老朽マンションの場合には、これは容積率においても既存不適格であるということが建て替えを困難にしております。これは都市防災性向上という面からいっても非常にゆゆしき問題でして、総合設計等で対応していけない部分もございます。そういった意味でも、容積率制度を更に見直していくということが必要であろうと、そう思います。  そういったまちづくり全体の中で住宅政策を考えていくということが必要であると考えますが、特にまちづくりと連携していく上では、地域によって中高層に誘導していくということをしない限り、都市オープンスペース公園道路等が増えていかないということがありますが、同時に、防災性からいって最も問題である木造住宅密集地の解消につきましては、木造住宅密集地域自体を改善していくだけでは不足であって、基本的に税で行うべき生活道路とか近隣公園整備をきちんと行っていくということが必要であろうかと存じます。  また、住宅政策全体を通じる市場重視政策につきましては、例えば都営住宅の改善に当たって行いました公民連携青山一丁目方式というのは、都営住宅敷地を七十年の定借に出しまして、そこに民間分譲マンション都営住宅を建設するという方式で行ったわけですが、そういった多様な方法を使っていくということが必要かと思います。  また、市場重視の場合には、特に市場供給される住宅、これは戸建てもマンションもそうですけれども、信頼性確保していくということが必要でございまして、長年にわたって公庫仕様書建築確認と並んで非常に市場から見ると信頼性のよりどころとなっていたわけですが、まだ今回つくりました住宅保障制度公庫仕様書に匹敵するだけの信頼性が、これから確保していくという段階なので、これを充実していくということが必要であろうと、そう考えます。  また、最後に、公営住宅につきましては、現在はセーフティーネット、すなわち困窮者を受け止めるということを重点に行われていますが、これからはトランポリン、すなわち自立を促していくという方向に転換していくことが必要でございまして、例えば借家法対象外にする、期限付入居を更に認めていくということをやっていかないと、現在の三十倍という競争率は改善されないと、そう考えます。  以上、今回の住生活基本法は是としますが、住宅政策課題は非常にまだまだ多いということを指摘させていただいて、私の意見を終わりにさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  6. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  次に、内田参考人にお願いいたします。内田参考人
  7. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 内田雄造でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は東洋大学工学部建築学科の教員でございまして、大学ではまちづくりとか住宅計画を専攻しております。また、中越地震被災地であります旧山古志村の復興住宅計画を取りまとめた役割を担いました。  皆様のお手元に、一応、住生活基本法案をめぐってという私のレジュメをお届けしてあるかと思いますけれども、このレジュメに沿いましてお話を申し上げたいと思います。  私の住宅政策に関する基本的な立場は、国民居住権利、英語で言いますとハウジングライツですけれども、を重視したいということでございます。居住権利保障し、あるいは豊かな住生活保障するために何をするかということになりますと、良質な住宅ストック、良好な居住環境を形成し居住水準確保する、市場メカニズム重視住宅市場環境整備する、住宅セーフティーネットを構築すると。これは社会資本整備審議会の答申にもうたわれていましたけれども、私もこういうふうに思います。  そういう立場で本法案に対して若干のコメントをしたいと思うわけでございますけれども、一つは、私は市場メカニズムあるいはセーフティーネットを非常に重視する立場でございますけれども、この市場メカニズムセーフティーネット前提となる居住のイメージが弱いんではないかというふうに感じます。  それから、全体を通して見ますと、市場メカニズム重視あるいは住宅の質の確保、これは必要なことだと思うんですけれども、配慮がなされておりますが、セーフティーネットの構築への配慮はいささか不十分ではないかというふうに思います。  私自身は、生活者の視点に立って、憲法二十五条を受けて、いわゆる生存権保障を受けて居住権利を明記した方がよいというふうに考えております。ただ、セーフティーネットとしては、公共賃貸住宅供給に特化する必要はないと、余り絶対化しないで幅広い家賃補助を考えた方がいいんじゃないかと。  私は、昨年の四月に衆議院国土交通委員会でこの問題に関しまして意見陳述を行いました。現行公営住宅制度はいささか機能不全に陥っているんじゃないかということを申し上げて、抜本的な改革を訴えたわけです。  それから、本法案は、借地借家法とか生活保護法などの他の官庁が主管する法案とのすり合わせが若干不十分じゃないかという気がいたします。  それから、最後にですけれども、本法案は、従来から検討されてきた基本法、これは長い歴史を持っているわけですけれども、住居法あるいは住宅基本法と称されておりましたけれども、いささか内容を異にしているんじゃないかと、現実的には一種のこれは計画法ではないかという感じは持ちます。  そういうことを踏まえまして、この新しい法案及び住居法に関する議論を少し整理してみたいというふうに思います。  私たちの分野では、住居法建築基準法は次のように理解されてきました。住居法というのは、一人一室など居住の質を規定している法律であると、それに対して建築基準法というのは、耐震性とか耐火性など住宅を含む建物の質、最低限の質でございますけれども、を規定してきたというふうに理解されています。今日、住宅の品質とか性能とか新しい問題が出ておりますので、必ずしもこのような二つの区分が十分だとは思いませんけれども、一つの流れとして御理解いただければと思います。  それから、国交省のこの法案上程経緯によりますと、住宅居住をめぐる状況変化があると。住宅をめぐっては量から質へと。あるいは良好な住宅ストックの形成と活用がテーマだと。あるいは住環境の質がいよいよ問われていると。私はこれに関しましては全面的に賛成でございます。ただ一つ申し上げたいのは、相変わらず国民居住への不満あるいは不安が非常に根強いということを強調したいと思います。  それから、レジュメの三に移りますけれども、住宅建設計画法が今回この新法案が通りますと廃止されるわけでございます。一九五〇年代に形作られましたいわゆる戦後の住宅政策の三本の柱、公営住宅制度住宅金融公庫制度公団住宅制度は、住宅金融公庫は廃止されますし、公団民営化を含めて大きく変化しておると思います。そういう前提の中で、現在の住宅建設計画法住宅供給計画のフレームというのは既にでき得なくなっているということを指摘したいと思います。にもかかわらず、ある種の計画法はどうしても必要なわけで、この住生活基本法はその役割を負っていると。しかも、市場メカニズムが充実している結果、アウトカム目標というふうななかなか難しい目標を設定しているわけでございます。  少し住居法の今までの経緯を振り返ってみたいと思います。  大正七年に内務省救済事業調査会、これは調査会と申しますけれども、当時、社会政策を取り扱う内務省審議会でした。多分唯一の審議会だったと思います。その審議会において小住宅改良要綱がなされるわけですけれども、その中でイギリス住居法を、ハウジングアクトを随分研究したと思われます。イギリス住居法というのは、一八三二年ですかね、公衆衛生法以来、労働者住居法とか長い歴史を持っていて、十九世紀の半ばにほぼ骨組みができるわけでございますけれども、それを随分意識したと思います。それから、昭和十六年には内務省系財団法人である同潤会住居法案要綱を作成しております。  戦後も、実は建設省内部でも何回もこの住居法を作るという議論はありましたし、あるいは住宅宅地審議会、現在の社会資本整備審議会の前身ですけれども、住宅宅地審議会で検討がなされているわけです。  あるいは国会に対しても、公明党の住宅基本法、旧社会党の住宅保障法、旧民社党の居住基本法が、党派によっては数回にわたって上程されているということがございます。  じゃ、その具体的な住居法内容はどういうものだったかといいますと、当時イギリス住居法がモデルになったと思うんですね。このイギリスの当時のハウジングアクトでは基準が明快に定められておりまして、この基準以下の住宅はアンフィット・フォー・ヒューマン・ハビテーションという形で、地方自治体居住禁止を命ずることができるという内容でございました。居住禁止を命ぜられるということは、じゃ住み替え措置をどうするのか、あるいは融資システムをどうするのか、公営住宅をどうするのかなんていうことが裏に整備されていたわけでございます。  日本における住居法議論というのは、このイギリスのを参考にして、居住権利を認め、これは大体認められておったと思います。その上で、住居にかかわる最低基準レベルをどこに設定するか、あるいは最低基準拘束力をどう考えるか、あるいは国や自治体にどういう責務を負わせるかということで議論が分かれたわけでございます。現行住宅建設計画法では最低居住水準誘導居住水準二つ水準があります。それで、残念なことに、その最低居住水準余り拘束力はないという状況でございます。  それから、諸外国事例を見ますと、アメリカではアフォーダブル・ハウジング・アクトがございます。これは、アフォーダブルというのは居住水準とか住宅水準、あるいは特に住居費が適正だと、取得しやすいという意味でございますけれども、適正な住宅取得への支援をどうやるかということがこの法案内容でございます。  それから、二〇〇三年に韓国で住宅法が作られておりますけれども、この住宅法では、最低住居水準を明示して、その水準以下の世帯に対して優先的な支援を明示しているわけでございます。  私は、このような住居法をめぐる歴史とかあるいは諸外国事例基本法役割として尊重する必要があるんじゃないかというふうに思っております。  では、住生活基本法セーフティーネットとして十分に機能するかどうかという問題でございますけれども、多分国交省としては居住水準などは個別法で規定するというスタンスだというふうに考えます。ただ、今日、最低居住水準未満世帯数は約二百万、それから公営住宅入居基準を満たしながら民間賃貸住宅に住んでいる人が百五十から二百万ぐらいと推定されます。これは旧基準によりますけれども、そういう状態です。そうしますと、個別法ではうまく対応できていない、あるいは個別法の谷間に陥っている国民が多数存在するということだと思います。どの層をセーフティーネット対象として、どんな施策で対応するのか、それを是非基本法で定めていただきたいと考えるわけでございます。  ただ、私は、セーフティーネットの場合には、幅広い家賃補助とか公共賃貸供給、私は今の公営住宅制度は見直しが不可欠だと思っているわけでございますけれども、あるいはグループホームとか、多様な手段を考えたいと思います。  それと、今回の法律を拝見しますと、基礎自治体役割が非常に不明快だというふうに思います。住宅行政というのは自治事務でありますし、もっと基礎自治体に活躍してほしいというふうに思うわけでございます。  そういう立場から、住宅にかかわる個別法を超えて、住生活基本法の備えるべき構成要素を考えたいと思います。これは、この内容に置き換えよということではなくて、こういう問題が起きているんじゃないかという指摘でございます。  一つは、理念としては、居住権利保障したいと。目標としては、最低居住水準住宅水準住環境水準、適正な住居費確保などを挙げたいと。その上で、国、自治体民間企業国民責務役割を挙げたいと思います。居住水準住宅水準、あるいは住環境基準などもここで述べられておく必要があると思いますし、適正な住居費負担についても言及があってしかるべきかというふうに考えます。  その上で、これが重要だと思うんですけれども、最低居住水準以下の世帯などに対してはどういうふうな支援をするのかということで、施策体系を明示する必要があるんじゃないかというふうに思います。それから、現在の外国居住の問題、ホームレスの問題を考えますと、居住差別の禁止もうたっておきたいと思います。  以上が私の基本的な住生活基本法に対する意見でございます。  先ほど申しましたように、私は市場メカニズム重視する立場であります。市場環境整備が必要だと思うんですけれども、特に住宅に関する情報の開示が必要だというふうに思っております。例えば、中古のマンションの売買の問題を考えたいと思うんですけれども、現在中古のマンションを売買する場合、非常に情報が不備だというふうに感じます。例えば設計図書。その後改築とか増改築があった場合には、改修等の履歴がちゃんと明示される必要があると。それから、住宅管理組合の規約。それから、中長期の修繕計画と費用の積立ての実態、まあ通帳の写しか何かになるのかと思いますけれども。さらに、住宅の品質や環境性能、これは今度の法律では随分重視されていると思いますけれども、そういうふうな情報が購入希望者に対して開示されることによって安心な住宅が手に入れることができるというふうに思います。  以上で終わらせていただきます。  御清聴ありがとうございました。
  8. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  次に、松尾参考人にお願いいたします。松尾参考人
  9. 松尾弘

    参考人松尾弘君) 松尾でございます。  私の方からは、本法案及び関連資料を拝見いたしまして感じましたことをごくコンパクトにまとめてお話し申し上げたいと思います。お手元のレジュメに従って説明させていただきます。  住宅の機能が我々の想像をはるかに超える広さと深さを持っていることは、改めて申し上げるまでもございません。それは個人が生を受けて教育を施され、人間性と個性をはぐくみ、最もプリミティブな社会性を涵養する場であります。また、様々な家族形態を持つ労働者にとっては、休息や療養、安全、安心、快適の場であり、生命、身体、自由、プライバシーを守り、多様な消費文化活動を行いながら、人生の圧倒的に多くの部分を過ごす生活空間であります。  のみならず、住宅はコミュニティーの独自性を形成する核でもあり、地域の景観の主要部分を構成し、都市形成の基本単位となり、人々の多様な活動にインセンティブを与えることによって、文明創造の源泉として最も基礎的な社会基盤の一つであります。住宅問題が幾世紀にもわたって国や地方の政策担当者の主要課題であり、経済学者や法律学者を悩ませ続けてきた主要関心事の一つであったことには十分な理由があると言うことができます。  したがって、住宅に関する基本法の理念を容易に単純化、客観化することは本質的に困難であります。しかし、少なくとも、それが国民にとっても政府にとっても、追求すべき真の豊かさとは何かという目標に直結していることは異論のないところでありましょう。国民生活指標を始めとする内外の様々な豊かさ指標において、住居住環境が常に最もプライオリティーの高い生活領域の一つに入れられてきたことに示されております。  本法案の目的に掲げられた住生活の安定の確保及び向上の促進は、必ずしもある特定の具体的な目標イメージを直ちに思い起こさせるものではないように思われますけれども、それだけに、この観念が真に豊かさが実感できる住生活というコンテクストの中で真の豊かさの追求を前提にしていることが、本法案の意義を検証し、またそれを評価するためのかぎになると思われます。このことは必然的に本法案の施策対象が非常に包括的なものとされていることと密接に結び付いていると思われます。  それは、本法案住生活の観念を基本に据えて、住宅の量だけでなく質を問い、居住の安定確保のための住宅供給のみならず、良好な景観を含む良好な居住環境の形成をも視野に入れということに表れています。多様な形態の住宅供給のための円滑な市場形成の環境整備、そして広範な住宅セーフティーネットの構築を施策対象に包含していることにもこのことは表れていると思われます。  また、施策対象者としても、低額所得者、被災者、高齢者、子育て世帯を包含しております。他方、施策を推進すべき主体としては、国、地方公共団体、公的住宅供給者、住宅関連事業者のほか、居住者、地域保健医療・福祉サービス提供者等を含めた相互連携が企図されております。また、住生活基本計画の策定、実施プロセスも含めますと、特定非営利活動法人や地縁による団体、公庫、機構、公社、その他関連機関の多様な主体について、それぞれの立場に応じた責務に言及をされております。  こうした施策対象及び施策推進主体の包括性は、必然的にまたその施策を実施する手段の多様性に通じていると思われます。その中心にある問題は住宅供給居住環境の形成、住生活の安定向上のために政府と民間とがどのように連携すべきかという問題であります。とりわけ本法案は、住宅金融システム等を活用した市場を通じてより良質な住宅供給するという課題と、公的賃貸住宅ストックを活用した住宅セーフティーネットの構築とをどのようにして連携させるかということを模索していると言うことができると思われます。  住宅政策において何が主軸の方策とされるべきかについては、内外で長い間多くの議論と試行錯誤が積み重ねられてまいりました。例えば、持家取得の促進、住宅金融制度の整備、公的住宅建設、供給、譲渡、それから他方では家賃補助、賃貸住宅市場整備、減税措置等々も試みられてきたわけです。今なおその模索は続いている状況にあるわけですが、今や問題はあれかこれかという選択の問題ではなく、これら複数の手段をどの程度、どのような形態において組み合わせることが最も確実に良質な住宅住環境の形成に実際に通じるかを計画の策定、実施をしながら定期的に結果を検証、フィードバックし、施策体系の結合を考えていくことにあると考えられます。  もっとも、その際には特に次の二点に留意されることを望みたいと思います。  第一に、住宅市場供給と公的供給との関係合理化を考える場合に、住宅供給効率性居住の安定性との調整には極めて慎重な配慮がなされなければならないと考えております。本法案でも既存ストックの有効活用が図られておりますが、例えば、公的住宅の維持管理方法を改善するに当たっても、効率性の面だけではなく、公的住宅団地がコミュニティー形成や都市環境形成に対して持つ可視的、不可視的な機能も含め、社会システム全体としての機能を多面的に評価することが必要であると考えられます。  第二に、このことを十分に踏まえた上で公的住宅供給は政府が、一般賃貸分譲住宅民間がという単なる役割分担論を超えて、中間形態を含む多様な形態での住宅供給及び住環境のインフラ整備への積極的連携手段が更に模索されるべきであると思われます。  施策推進主体の拡大、多様化という観点からは、本法案における施策実施手段のもう一つの柱である住生活基本計画の策定手続に見いだされる住民参加の要素も重要であります。本法案では、都道府県計画を定めるプロセスにおいて、市町村との協議、地域住宅協議会の意見聴取と並んで、住民の意見を反映させるために必要な措置として規定されております。これは本法案の準備段階でも議論されておりますところのトップダウン型の住宅政策の見直しという観点からは、単に民間市場を通じた住宅供給ということと並んで、住生活内容形成プロセスにおける住民参加をどのように実質化させていくかということが今後の重要なテーマになると考えられます。この点は、公共事業計画の策定プロセスへの住民参加手続の充実問題とも並行して、一層の工夫が求められている問題であると言えるでしょう。  また、このようなボトムアップ的要素にも目を配ることは、本法案が構想する計画システムにおいてやはり重要な問題でありますところの、地域的多様性への対応をどのように現実化するかという観点からも不可欠な具体的課題になるものと思われます。  五番目に、本法案政策評価法に基づき、計画の策定及び実施に関する管理システムを規定しております。その運用においては、計画の策定、実施プロセスにおいて見いだされるでありましょう多様なフィードバックを反映させた本計画に適合的な実施管理のための柔軟なルールづくりが望まれるところであります。  その際には、ここでの評価は、言うまでもなく、基本理念である住生活の安定向上が具体的にどの程度実現されたかという基準によって判定されるべきであります。そのためにも、このやや抽象的な住生活の安定向上を更に具体化した言わば住生活の安定向上指標というものを早急に具体化する必要があると思われます。その場合には、住宅事情の調査に用いられてきた従来の居住水準に関するインデックスに加え、本法案に盛り込まれた住宅の性能、構造上の安全性のほか、真に豊かな住生活という本法案の理念に相応した一連のインデックスが具体的に議論を得て提示されるべきであると考えております。  最後に、本法案が新たな住宅政策基本となる制度として実質化されるためには、住宅の品質、性能、住宅供給居住の安定確保、良好な居住環境の形成、社会資本整備計画、国土形成計画等々、関連施策の法体系との連接がより具体化され、言わば多様な住宅関連法ソフトの基本OSとしての役割をどの程度発揮できるかということに懸かっていると思われます。そのためにも、本法案内容はもとより、それに基づいて今後策定されるであろう具体的な施策や計画について、国民、住民を含む関連主体に広く情報提供が行われ、実質的な参加手続が開かれることを強く期待する次第であります。  私の方からは以上であります。
  10. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  次に、坂庭参考人にお願いいたします。坂庭参考人
  11. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) 御紹介いただきました坂庭であります。このような機会をくださり、ありがとうございます。  皆さんのお手元に私たちが作成をいたしました「国民住まいを守り豊かにする「住居法」の提言」というカラー刷りのリーフレットをお配りをしております。先ほど内田先生の方からお話がありました住宅基本法住居法要素を、ほぼこれに盛り込まれているのではないかと思いますので、是非ごらんをいただきたいと思います。  私の意見は、基本法案に対して、今日の居住の実態を通して御意見を申し上げるということが主になると思います。  最初に、今日の居住の実態と今回の基本法の目的について見ておきたいと思います。  御存じのように、住生活の現場での実態は大変深刻なものがあります。今日は、全国借地借家人組合の相談事例を御紹介をし、住生活がいかに不安定性を増しているか、まず触れておきたいと思います。  一つは、レジュメにもありますが、母子家庭のお母さんの事例であります。小学校の子供が二人います。昼と夜、掛け持ちで仕事をしてきましたが、体を壊して働けなくなりました。家賃も三か月払えず、毎月家賃支払の督促が来て、子供たちもおびえて困っています。出て行ってと言われているんですと泣き出す若い母親。  次は、車の中で生活をしている元建設業の社長さんの事例であります。会社の倒産で何もかもなくしました。もちろん家もです。今は車の中で妻と生活して八か月になります。妻が病気になりました。何とか家を借りたいのですが、市営住宅に入れる方法はありませんか。せめて妻を布団で休ませてあげたいのです。いっそ死のうかと思いましたが、妻に苦労を掛けてきたから何とか頑張りたいのですと言葉をかみしめて話す七十歳の男性であります。  これらは氷山の一角でありまして、このような事態を一刻も早く解決すること、またこうした事態に陥らない施策を確立することが住生活基本法の目的であると思います。  第一条に「住生活の安定の確保及び向上の促進」とありますが、現実の事態はそれに反する方向にあると思わざるを得ません。住生活の安定向上には何が求められるのか、また法案に欠けている点などについて、以下五点ほど述べさしていただきます。  第一点は、居住権利についてであります。先ほど内田先生の方からも触れられました。いろんな議論がされておりますので、結論から申し上げたいと思います。  私の理解では、国民居住権利を明確にしない限り、国や地方公共団体の本当の責務、すなわち責任と義務は明確にはならないというふうに思います。そして、法案でも明記をされておりますが、住宅関連事業者の責務国民居住者の位置と役割もまた明確にならないということであると思います。人間にふさわしい住居に住むことは基本的な権利であるということを確認してこそ住宅政策は生きたものになるというふうに思います。いろいろ説明が必要だと思いますが、それは省きまして、具体論に入ります。  昨年の九月に、社会資本整備審議会の答申がありました。居住に関する権利について記述がありまして、国会でもしばしばこれについて言及をされていると思います。  これは、前半部分と後半部分、二つありまして、前半は、要約すると、居住権利国民的コンセンサスがあると言えないので基本法制に定めることはできないという、居住権利を入れることはできないということであります。その後半では、住宅分野において憲法二十五条の趣旨の具体化に努めるということが明確にされております。  この憲法二十五条の趣旨の具体化とは何か。北側国土交通大臣が既に何回かこの国土交通委員会で答弁をされておりますように、これはイスタンブール宣言と同一趣旨であると、同じ趣旨であるということを繰り返し述べられております。つまり、イスタンブール宣言は一九九六年六月十四日、国連人間居住会議が開催をされて居住権利が宣言をされたわけであります。私たちは毎年、今年も来ますけれども、六月十四日、住まいは人権デーを開催をしておりますが、つまり、この居住権利を後段で確認をしながら、基本法には定めないと、これは私は矛盾だと思うんです。  したがって、この矛盾はどうしても解消をする必要があるのではないかということで、レジュメにありますように、この基本法第六条に大変大事な規定がありまして、「住宅国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤である」と、これはもうそのとおりであります。大事な規定だと思います。その後に、その確保国民基本権利であるということを付け加え、これを第一条に移動すればこの矛盾は解決をするのであります。是非御検討をいただきたいと思います。  次は、時間との関係で、公共住宅重視の問題であります。  既にこれもいろいろ議論をされていると思いますので、二、三のデータによって住生活基本法の中で公共住宅を柱とすべきだということを実証的に申し上げたいと思います。  まず、我が国の住宅は一四%住宅が余っていると、空き家の数は六百六十万戸であるというふうに言われております。ところが、公共住宅の空き家率は一%以下、これは国交省が発表した数字で、最近はちょっと違ってきていると思いますが、いずれにしても、日本全国住宅が空き家であるにもかかわらず、まあ空き家の中身はいろいろ問題があるんですが、これはさておいて、いずれにしても、公共住宅の空きは圧倒的に少ないという事実であります。  公営住宅は、国交省の発表で〇・五二%でありますし、公団賃貸住宅、機構賃貸住宅ですが、この時点では〇・五一%、その後、算定を見直して三%ぐらいになったと思いますが、公社賃貸住宅は四・六二%、これは高い住宅の、賃貸住宅の家賃が空き家になっているということだと思いますが、いずれにしましても、この公共住宅は一口で言えば不足をしているのではないかということがこのこれらの数字を見て明らかであります。  また、公営住宅の応募者は既に百万人を超えているわけであります。特に、格差社会が始まった一九九九年度から〇三年度の間に三十万人も応募者が増えております。更にこれは近年増えていると思いますので、数百万人の人が公共賃貸住宅を応募するということが既に明らかになっているわけであります。  で、今公営住宅居住者の方は、現状の公営住宅について次のように言っているということを聞きました。公営住宅を造らず、公営住宅に入れず、公営住宅に追い出すという、造らず、入れず、入れず、追い出すということが言われているようでありますが、これは今日の公営住宅の実態をよく示しているのではないかと思います。  こういう実情にあるにもかかわらず、今年三月三十一日に終了した八期五計、第八期住宅建設五か年計画の公的資金住宅の達成率、達成率は三〇%台にとどまっているわけであります。  詳しくは申し上げられないと思いますが、いずれにしても、公営住宅は五〇%台、高齢者向け優良賃貸住宅、高優賃ですが、これはもう二〇%以下、公庫住宅は三〇%台、機構住宅は六〇%台ということで、これらから見ますと、国は責任を果たしていないのではないかと言われても仕方がないと思います。  また、既に、これも時間がありませんので、ファミリー向け賃貸住宅が大量に不足しているということも明らかになりました。これらは主に、現在の機構、公団の賃貸住宅なり公社賃貸住宅が持っていたのでありますが、改めてこの賃貸住宅制度を再評価を行い、直接供給を含むファミリー向けの賃貸住宅の建設を行うべきであるということを強調をしておきたいと思います。  具体的には、このレジュメにありますように、第十四条に、これは住宅セーフティーネットのことでありますが、地域の実情等に応じて住宅確保配慮を要する者の居住の安定を図る計画を立案し、公共賃貸住宅供給の促進などの施策を講ずるということを補強すべきであると思います。  次に、住居費負担の問題であります。青山さんが今日お見えでありますが、東京都の住宅マスタープランがこれ〇二年に出ておりまして、依然として高い住居費負担率ということが示されております。簡単に御紹介しますと、住宅ローンや家賃を負担している都民の住居費負担率、これは年収に占める住居費負担の割合ですが、二一・一%を占めており、民間賃貸住宅では二三%と特に高くなっている。全国と比較すると、東京民間賃貸住宅住居費負担率が全国平均より約五%高くなっているということを言っております。住居費負担率で見ると、重い負担をしている状況は改善されたとは言えないということが東京都の認識だと思うんです。同様のことを是非国は明らかにする必要があると思います。  かつて、住宅宅地審議会はこの住居費負担率の問題について示しておりまして、ここにありますように、第一分位の世帯負担限度ですね、負担限度をおおむね一五%程度とすると。これは限度ですから、これを超えてはいけないという意味であります。また、公団賃貸住宅はかつて一七%ということを言っておりました。したがいまして、法案にある居住者の負担能力を考慮したという住居費負担率は一五%から一七%、若干高めだという向きもあるかと思いますが、が妥当ではないかと。住生活の安定の確保にとって決定的に重要なこの住居費負担の問題を解決、改善する必要があると思います。  そのためには家賃補助制度の検討あるいは導入が必要なのでありますが、これについて一定の時間が掛からざるを得ないという状況の中では、この第十一条に基本施策がありますが、その中に、先ほど内田先生が言われたアフォーダブルな住宅のことでありますが、中低所得者層に対する適切な住居費負担による住宅供給確保する施策を追加をすべきであります。  時間がありませんので、次は、ストック重視住宅政策既存住宅の改善、改修についてであります。ストック重視住宅政策が言われて久しいのでありますが、現実にはなかなかそうなっていないという問題であります。  ここに、最近日本住宅新聞というところで、投稿記事だと思いますが、心配な住生活基本法の条件、岡山のS工務店という工務店の経営者の方だと思いますが、次のように言っております。  住生活基本法が今国会に上程され、五月ごろには成立するようだと聞いていますが、また工務店業界を苦しめる法律なのか心配でなりませんという書き出しから始まりまして、中小工務店の育成とか良質な住宅建設に優秀な職人の育成とかが一言も触れられていませんと。これは現実には、木造住宅の振興、技術の継承などについて第七条二項に示されているわけでありまして、必ずしもこういうことが知らされてないと同時に、中小工務店の育成、職人の育成について極めて不十分であるということが言われていると思うんです。その次が大事なことだと思いますが、住生活を豊かにするには、建てた後の地域の実情をよく知っていて地域住民の顔をよく知っている地域の職人や地域工務店が絶対に必要なはずですということで、住生活基本法案が中小工務店や職人に不利にならないように意見を出していきましょうという意見で終わっているわけであります。  このように、我が国の住宅建設は、新規建設は重視するが、既存住宅の改善、改修は重視しないということが進められてきましたが、これを抜本的に改めるべきであります。これは、公共住宅のストックの十分な修繕、改善の重視と併せて是非とも実現をする必要があると思います。  時間が来ましたので終わりますが、そういう点で、耐震、防災のための既存住宅の改善、改修は、国民の命と生活を守る公的事業に、公共事業ですね、公的事業に位置付け、国と自治体の本格的な制度として確立をし、中小建設業、地域住宅産業の活用と振興を図る、こういう内容是非基本法の中に盛り込む必要があると。  最後の五点目の住民参加の実現の問題は、時間がありませんので、後ほど時間があれば、許せばお話をしたいと思います。  以上であります。
  12. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、大変恐縮でございますが、時間が限られておりますので、簡潔に御発言くださいますようお願い申し上げます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 小池正勝

    ○小池正勝君 おはようございます。自由民主党の小池正勝です。  参考人の先生方にはお忙しい中、お時間をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。今日は、この住生活基本法につきまして御質問をさせていただこう、お教えをいただきたいと思っております。  四先生のお話を伺っていまして、様々ありますけれども、どの先生にも共通だったのは、この住宅の、住生活セーフティーネット機能というものについてどの先生もお話をされておられました。どのレジュメにも入っております。このセーフティーネット機能というものについて御質問をさせていただこうと思います。  先ほど青山先生のお話では、公営住宅都営住宅競争率が三十倍も超えるんだと、大変厳しい状況だというお話がありました。私もそういう話をよく聞きます。一方で、先ほど坂庭先生のお話の中でも、公営住宅の応募率は百万人を超え、空き家率は一%以下だと、こんなお話もございました。公営住宅、入りたくてしようがない、しかも収入基準からすると低い若い夫婦が、小さい子供を抱えて、何回応募しても入れない、抽せんでおっこってしまう、で、高い民間家賃のところに入っていると。こういう実態を私よく聞きます。これはおかしいと思う。  しかし、よく聞いてみると、空き家率一%とおっしゃるんだけれども、実際、収入超過者が入っていると、こういうお話聞くんですね。セーフティーネット機能というんだったら不公平なんじゃないかなと、こう思ったりもするんです。特に、これは国会でも再三議論されました。各県議会なり都議会でも議論されています。  まず坂庭参考人からお伺いしますが、この収入超過者が入っていると、この実態についてどうお考えになりますか。
  14. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) 公営住宅の入居管理システムはやっぱり公正公平にすべきだということは、そのとおりだと思うんですね。しかしながら、今先生がおっしゃいましたように、入りたくても入れない人がたくさんいるわけですよね。  この矛盾をどのように解決するかですが、これは私の考えですけれども、やはり量的に充足をしているのかといえば、これはもちろん地域差があると思うんですよね。地方、県段階によってはもう充足しているというところもあると思いますが、国交省の出している指標などを見ましても、圧倒的にまだファミリー向け賃貸住宅などは何百万戸も不足している実態にあるわけですね。  そういうことから見て、日本全体の住宅は確かに量的には充足をしたかもしれませんが、公営住宅については決して大都市圏を中心として充足したとは言えないのでありまして、その矛盾を、公正な入居システムが必要だとしても、やはり量的なことを考えるべきではないかなというふうに思います。
  15. 小池正勝

    ○小池正勝君 そのお話を聞いているんではなくて、収入基準を超過した人は出ていくべきかどうかということを聞いているんです。
  16. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) それはそのとおりだと思うんですよね。公正公平な入居システムとの関係からいうと、そういう収入超過者はですね。ただ、現在行われているのは、そういう収入超過者に対してペナルティー的にいろんなことが行われるというのは問題だと思いますが、それは話合いに基づきそれは公正な方向に向かうべきだというふうには思います。
  17. 小池正勝

    ○小池正勝君 重ねてお伺いしますが、基準では立ち退き請求ができるという規定があるわけですが、この規定で厳しく発動すべきだというお考えでしょうか。
  18. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) ちょっと詳しいことは知らないのでそのことについて直接お答えできませんので、また勉強してお答えをしたいと思います。
  19. 小池正勝

    ○小池正勝君 今の点に関しまして、青山先生のレジュメ、御説明、御報告を聞かしていただくと、セーフティーネットからトランポリンへ、公営住宅のところですが、セーフティーネットからトランポリンへと、こう書いてあります。借家法対象外にと書いてあります。これはどういう意味なんでしょうか。
  20. 青山やすし

    参考人青山やすし君) この言葉は私の造語ではありませんで、イギリスの労働党が保守党から政権を取り返したときの政策だったと思います。  イギリスの労働党は、第二次大戦後にはゆりかごから墓場までの福祉政策を標榜していたわけですが、その後、政策を大転換いたしまして、セーフティーネットというのは元々サーカスでロープから落っこった人のためのネットそのものを指していたわけですが、それだと受け止めっ放しで再び競技に参加できないわけです。そうではなくて、トランポリンのように跳ね返して、就労できると、あるいは自立できると、そういったことを促進するような教育とか雇用促進ですとか、職業訓練ですとか、そういったことを充実するべきであるという考え方で政権を取り返したんだったと思います。  これは公営住宅政策に限っていえば、現在のように収入分位で下から二五%と非常に広い層を対象としておりまして、しかも高齢者の場合には収入分位四〇%と。一方で生保は一%ですから。こういった現状からしますと、今の制度でいく限り無限に、例えばウィーンみたいに市内の半分ぐらいが市営住宅ですというふうな都市にしない限りは永遠に三十倍の競争率でいくと。その場合にはたまたま抽せんに当たった人だけが非常に大きな恩恵を受けるということで、不公平な状態が続くわけです。  したがいまして、私は基本的に公営住宅については、一挙にはいきません、居住の問題ですから、社会不安が生じないように、徐々に私は収入分位についても限定していくべきだと、そう考えております。
  21. 小池正勝

    ○小池正勝君 この中で、借家法対象外にと入っているところについてお伺いしたいんですけれども、これはむしろお教えいただきたいんですが、青山参考人は副知事を、東京都の副知事もしておられましたから都営住宅に大変お詳しいわけですけれども、都営住宅は、いったん入ってその入居者が亡くなりますとそのお子さんに当然に、選考も何もしないで当然に入居が引き継がれる、相続されるんだと、こんなお話だと聞いたんですが、そうでしょうか。
  22. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 現在、入居資格の承継につきましては、制度は徐々に改善はされてきておりますけれども、基本的には三親等については承継できないというところまで来ましたけれども、基本的にまだ一親等、配偶者等については、自動的ではございません、手続は必要ですけれども、承継できるという規定になっております。
  23. 小池正勝

    ○小池正勝君 借家法対象外にと書いたことの意味は、その一般の私法的な相続と同じようには相続させないという意味でおっしゃっているんではないんですか。
  24. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 基本的に、公営住宅というのは公の税金によって提供されるものでありますので、民間同士の契約の場合を想定した借家法とは違った法律の規制の下に置かれるべきだと、そういう考え方です。
  25. 小池正勝

    ○小池正勝君 今のお話は、したがって公営住宅法には入居の承継なんという規定はどこにもないと思うんですよね。あくまでも、入居については選考というふうになっているはずです。相続なんという規定はどこにもないと思うんですね。しかし、そこは私法的な関係を準用してやっているというのが今の実態だと思うんです。  あえてここで借家法対象外にとお書きになった趣旨は、したがってここは、先ほど先生がおっしゃった税金を入れているものなんだから、きちっと選考という手続を取らなければいけないと、こういう意味でおっしゃったんでしょうか。
  26. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 民間民間の契約の法体系によるのではなくて、公営住宅独自の法体系によって入居の承継については律せられるべきだと、そういう考え方です。
  27. 小池正勝

    ○小池正勝君 終わります。
  28. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 民主党の佐藤雄平でございます。  今日は、四参考人、本当にありがとうございました。貴重な意見をそれぞれ聞かしていただきました。  今度の住生活基本法法案の私は骨子というのは、正に量から質、もう一つはやっぱり民間住宅市場整備というふうなことになるのかなと。そういうふうな中で、今も小池さんからも話がありましたけれども、低額所得層、正にそのセーフティーネットをどういうふうにするかということが行政また政治の大きな役割であろうかなと、そんな思いをしております。  その中で、まず冒頭、青山参考人に。正に行政の責任者として頑張ってこられたんでしょうし、そういうふうな中で、本当に実態としての公営住宅、公社住宅、それと住民の間の様々な私は問題に熟知していらっしゃるのかなと、そんな思いをしております。  そういうふうな中で、私、青山さん、それから内田さん、それから松尾さんに、まず公、政治、行政の、これからのいわゆる公社、公団住宅役割、これに対しての一つの認識をお尋ねしたいんですけれども、それもやっぱり今言ったようにセーフティーネットの中でも、全国公団自治協のこの冊子を見さしてもらいますと、もう次の時代というのは、収入の中心は年金世帯が三二・五%、これがトップになっているわけですね。しかも、やっぱりその中でも公団にこれからずっと住むにつけても一番の心配は家賃の問題というふうなことになってくるわけですけれども、そういうふうなことを踏まえながら、まず三参考人に、いわゆる公的な住まい、いわゆる公団、公社の役割、この辺についての御認識をお伺いしたいと思います。
  29. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 公営、公社、公団というお話がございました。  従来から現在に至るまでの法体系では、公営住宅は比較的低所得者を対象として、公社、公団は中堅所得層を対象としております。しかし、お話の中にもありましたように、現在の入居者の生活実態からしますと、公社、公団の中堅所得層を対象とする住宅への入居者であっても、公営住宅階層の収入階層に変わっているという場合もあれば、逆に、先ほど来の御議論のように、公営住宅階層にも収入が比較的高い層に移行するという場合もございます。  したがいまして、私は、従来の役割は是としながらも、今後は一定程度の相互乗り入れということは必要であろうかと思います。また、その場合に、やはり公的な住宅供給というのは、私は、現在の一定規模は維持しながら、しかし対象ですとか、あるいは地域によって対象を限定する、あるいは相互乗り入れしていくということが必要になろうかと思います。  具体的に言えば、都心部にも、いわゆるグレーカラーと言っていいんでしょうか、いわゆる単純労働的な労働をする方たちが都心部に住むということも必要な場合がございますし、都心部、住宅地、地方都市など、そういった地域の特性に従って収入分位を考えていくということも必要だと、そう考えます。
  30. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 私は、公共による直接供給というのは有力な手法だと思いますけれども、絶対的な手法ではないというふうに考えています。もっと家賃補助の問題とかNPOとの協業とか、そういうことが考えられてしかるべきじゃないかというふうに思います。  それから、先ほど小池先生のお話があったわけですけれども、一番私から見て不公平だと思うのは、収入超過者の問題よりも、公営住宅に入居できる階層でありながら民間住宅居住している人をどうするかという問題が大きいと思います。私が豊島区で調査した例で言うと、公営住宅に入りますと八十万ぐらい様々な補助を得ているということになります。それに対して、民間住宅の場合には何らそういう優遇措置がないというのが一番大きな問題だと。  それから、先ほどの承継に関しては、御夫婦でいいんではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  31. 松尾弘

    参考人松尾弘君) 私の方からは、公社、公団を始めとする公的な主体の役割ということでは、一言で言うと民間の補完ということが言われてきたわけですけれども、民間の補完ということについてもいろんな形態があると思われるわけです。従来は、物で補完するというやり方もあるでしょうけれども、それ以外にもっと多様な補完の形態、連携の形態があるのか、あるいは、あるとすればどういう点で必要かということをこれから工夫していく必要があると思うわけです。  どの点で補完が必要かといいますと、今、青山参考人内田参考人の方からお話に出ました家賃の問題が一つあります。それから、とりわけ民間賃貸住宅で問題になりますのは高齢者の問題であります。年齢の詐称が後に分かって賃貸借契約が錯誤で無効だ、取り消されたというような事例もございます。そのときに、やはり貸主は錯誤や詐欺を主張して、訴訟になれば貸主が勝つという結果にならざるを得ないわけです。ですから、年齢の問題、それからもう一つは国籍の問題であります。外国人の入居もかなり制限されている民間賃貸住宅が多くございます。  したがいまして、例えばこういう家賃、年齢、国籍等について、ある程度入居資格を設けないといいますか、あるいは緩和している、そういう住宅について、公的な主体が資金的にあるいは住宅のいろいろな基準を設定するという形で関与して、そういう連携の仕方というのもあり得るのではないかと思います。  そのときに重要な点は、そういう形態の住宅があるということについての情報提供をしっかりするということ。例えば、その登録制度を作るとか、あそこに行けば安心して住めますよという、そういう一種の安心感のようなものを制度的につくっていくということが大事ではないかと思います。とりわけ住宅の問題に関しては、民間借家では貸主、借主間の信頼関係が破壊される、それがやっぱりトラブルの基でありますから、お互いに疑心暗鬼が生じないようなそういう賃貸借関係を形成していく。それを促すために、公的な主体が一種のイニシアチブを取って連携の形態を模索していくと。これは非常に実現可能でありますし、非常に必要な措置ではないかと考えております。  以上です。
  32. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 青山参考人に、先ほど坂庭さんの方から居住法について出たんですけれども、これについてのひとつ御所見をお伺いしたい。  あと、内田さんから、内田さんなんかは中越地震、これで二重ローンで苦しんでいる人が相当いたと思うんですね、二重ローンについての御所見。  それから、松尾さんから、三番目の「政府と市場との連携」の中で、①に「住宅金融システム等を活用した市場を通じた住宅供給」、これについてもう少し詳しい説明をお聞きしたいと思います。
  33. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 私は、住居についての法律的な基本的な考え方は今回の住生活基本法で十分ではないかと、そう考えます。それ以上のこの法律の考え方の住宅の質の向上を図っていくためには、まちづくり全体の中で良好な住宅群を供給していくことに努力するのが適当であると、そう考えます。
  34. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 二重ローンの問題は、中越だけではなくて阪神・淡路のときも非常に問題になりました。それに関しては、当時の建設省を中心に、住宅公団とか公営住宅をうまく活用して二重ローンの方をどう救済するかということを随分よくやったと思います。  ただ、今、例えば山古志村の場合、公営住宅に入りたいという方の平均年齢は世帯主で七十四歳です。そういう状態で、直接公営住宅の問題、災害の公営住宅ではないですけれども、中山間地を今後どうやって食べていくかということが非常に大きな問題として残っているように思いました。  以上でございます。
  35. 松尾弘

    参考人松尾弘君) 金融制度の活用についてはいろんな形態がやはりあると思うわけですけれども、直接には、入居者が住宅を購入するときのローンだけではなくて、間にだれか建設者が入って、それでそれを賃貸するというような形態、その建設のときに金融制度を活用するというようなこともあるかと思います。とりわけ、そういう形態については一定の水準住居については建設者、所有者に比較的優遇した金利で融資ができるようなシステムをつくっていく。あるいは、いろいろな信託制度の活用等も含めて、非常に円滑な建設、それから良質な住宅の建設、そして賃貸ということが動くような、そういう面での金融システムの、住宅金融のメニューの増加、そういうことも考えられるかと思っております。  以上です。
  36. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 最後坂庭さんにお伺いします。  これ、五月の七日の東京新聞、それから四月の十四日、その前に朝日の、東京新聞、両方なんですけれども、都営・旧公団住宅、孤独死四百人超、高齢者八割近い、一週間以上放置が二割、死後一か月以上も十七人と、こういうふうな実態があるわけです。  私、これは、住んでいる皆さん、今日傍聴なさっておりますけれども、それぞれのやっぱり連携を取りながらやっているとは思うんですけれども、そういうふうな中で、管理者側とそれから住民側、これはやっぱりこういうふうなことが分からなかった大きな原因になっているようなこともあるのかどうか。さらにまた、これから、当然これはもう連携しながら一つ地域社会みたいなのをそれぞれおつくりになっているとは思うんですけれども、どうしてこういうふうなことが起こってしまっているのか、こんなことについての御所見あったらお伺いしたいと思います。
  37. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) 住宅は既に管理の時代に入ったと言われるぐらい、この住宅の管理の重要性は少し前からかなり強調されてきたと思うんですよね。つまり、これまでは新規建設を重視するという、ですから、そういう時代から住宅管理を重視する時代に入ったということは間違いないと思うんですよね。しかし、今先生御指摘のような問題なり事件が出てくると。これはやはり、管理の時代にふさわしい住宅管理が、これは供給者といいますか、管理者側がきちっと果たしてないということを示していると思うんですよね。  それに関連をして、住宅管理の言わば民間化といいますか、委託化ということが行われておりまして、これは全国公団自治協の方からも話が既に出ていると思いますが、例えば機構賃貸住宅の五百戸未満の住宅の管理について、これは民間に委託するということが現実進行するとか、そういう公的な住宅の管理から、言わば市場化するといいますか、一言で言うと、そういう事態は住宅の管理主体としてやっぱり取るべき方向ではないのではないかなと思うんですよね。機構住宅などでは、管理者と居住者との間で連携、研究会、あるいは協働することが行われているようでありますが、居住者の様々な力を公的主体、公的の管理の、何といいますか、一緒にやるということはいいんですけれども、それを下請させるような、そういう方向はやはりおかしいのではないかな。本当の意味でのパートナーシップを構築をしたそういう住宅管理が望ましいと思いますし、やっぱりそれが団地のコミュニティーづくりにはつながっていくということですが、公的責任を果たすということと居住者でのパートナーシップの構築強化、拡大が求められているというふうに考えております。
  38. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 私は、いい意味でのその管理者側と組合側の連携を強く要望して、質問を終わらしていただきます。
  39. 西田実仁

    ○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。本日は四人の参考人の皆様方、本当にお忙しいところ誠にありがとうございます。  順次お聞かせいただきたいと思いますが、まず青山参考人にお聞きしたいと思います。  先ほど小池議員からもお話ございましたが、このセーフティーネットからトランポリンへという、こういう記載がございました。ここで、今住生活基本法におきまして言われているところのいわゆる居住の安定ですね、居住の安定ということと、先生がおっしゃったこの自立を促すという、トランポリン政策という、この関係がやはり大きなテーマになると思います。  居住の安定とは一体何かと、安定とは一体何なのかということをやっぱり我々は考えていかなきゃいけないというふうに考えておりますし、またこれまで取られてきた公営住宅の施策というのもあるわけで、その政策の継続性、またそこには住宅というよりも、正に今回住生活と名を付けたように、生活ということがその建物なり入れ物の中には当然あるわけでございますので、そこの辺も踏まえた上で居住の安定とは何か、また居住の安定ということと自立を促していくということとの関係について、ちょっと御所見を伺いたいと思います。
  40. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 公営住宅に限っての話だと思いますけれども、居住の安定という意味では公営住宅政策は非常に大切であります。同時にまた、公営住宅に生活水準あるいは収入階層等が変わっても永遠に住み続けるということはできないわけでして、その場合に一定程度やはり流動性ということもないと全体としての居住の安定が図れないということになるんだと思います。そういった意味では、今後、安定を図りつつ、公営住宅政策の改善を図っていくということが必要だと思います。  もう一つ、町の在り方としてはやはり公営住宅に全く同じ層の方だけが住んでいるというのがいいのか、それともある程度多様な方が住んでいるのがいいのかということを考えますと、そういう意味では、ある程度若い層も入れるということも町の在り方としては必要ですし、また先ほど来お話のありました孤独死を避けるという意味合いからいいましても、やはりある程度ソーシャルミックスといいますか、いろいろな階層の方が住んで、出ていく人もいる、ずっと住んでいる人もいると、そういった公営住宅の在り方を目指していくということが必要だと思います。  ただ、その場合に一挙に改革はできないと思いますので、ある程度の政策目標を定めて、それに向かって居住の安定を図りながら徐々に改革していくということが公営住宅の分野では必要だろうと、そう考えます。
  41. 西田実仁

    ○西田実仁君 今のお話で更にお聞きしますと、今回公営住宅に関する計画というものが基本法から外されているわけでございます。そして、国の計画は、都道府県が計画を立てていって、市町村からも意見を聴きながらという、そういう仕組みになっているわけですが、今言われたまちづくり、町の質的向上ということも先生はおっしゃいました。そうしたことに対する市町村と国の役割分担ですね、これにつきましてもうちょっとお聞かせいただければと思います。
  42. 青山やすし

    参考人青山やすし君) そういう意味では、全国基準を定める一方で、地方の特性、大都市中心部ですとかあるいは大都市住宅地ですとか、地方の住宅地ですとか地方の中心市街地ですとか、そういった形で地方の特性、地域特性によって収入分位あるいは収入基準等をある程度地方にその内容についてゆだねていくと、全国的な基準は一定の幅で決めつつ、地方に一定の裁量にゆだねていくということも一つの方法としてはあり得ると、そう考えます。
  43. 西田実仁

    ○西田実仁君 続きまして、内田先生にお聞きしたいと思います。  居住水準につきましてでございますが、よくある議論に、この居住水準最低居住水準とか誘導居住水準とか、こういうことをお上に決められたくないと。例えば、狭くても職住接近で住みたい人もいるじゃないかと、それぞれの好みとか嗜好がいろいろあるじゃないかと、それを一定に決められることはいかがなものかという議論が聞かれるわけであります。  この居住水準ということにつきまして、またそれが家賃補助施策がいいのか、それとも箱物をやはり造っていくのがいいのかという議論にもつながってくることだと思いますので、先生の御所見をお聞きしたいと思います。
  44. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 居住水準、私は居住水準を一定の線で決めておくのはいいと思います。ただ、それが私に適用してほしいかどうかというのは本人の自由に任せればいいと。あなたは居住水準を満たしてないから駄目だというのは言い方が変だというふうに思います。  それから、今、直接的な御質問ではありませんけれども、私もまちづくりをやっていて一番気になるのは、一定の社会階層だけが集中する問題でございまして、これに関しては、これを解消するためにも私はむしろ民間住宅に住んでいる方を含めて家賃補助の方がよろしんじゃないかというふうに思っております。  以上でございます。
  45. 西田実仁

    ○西田実仁君 先生のレジュメの二枚目でございますけれども、六番目、六ポツのところですが、最後に「住宅施策をマネージする主体として、基礎自治体重視したい」と、こういうふうにございます。この「基礎自治体重視したい」と、いろんな意味が多分おありになるんだと思いますが、例えば住宅セーフティーネットというテーマで基礎自治体重視するという場合に、財政負担の問題ですが、やはりセーフティーネット、市町村、仮にですね、を重視してやっていくということになると、市町村だけでやろうとすればその財政負担が増えてしまいますので余りやりたくないということにも正直言ってなりかねないわけでございまして、そこの、この基礎自治体重視したいという意味合いと住宅セーフティーネットの関係をもうちょっとお聞かせいただけますか。
  46. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 私がここで基礎自治体重視したいと言うのは、一番まちづくりの問題が強うございました。この問題はもう自治体が抜きには、市町村、あるいは区市町村抜きにはできないことだというふうに思います。  それから、おっしゃったように、今県も含めて、公営住宅を造ろうという積極的な自治体は全然ありません。そういう面では、今のシステム自身をもう少し見直していく必要があるんじゃないかというふうに思います。造ったら基礎自治体負担であるということは私は無理だと思いますし、それから全国で一律の必要があるかどうかと。私のところは住宅政策は頑張ると、むしろ福祉政策はこっちで頑張ると、そういうふうに選択的にやっていっていいんではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  47. 西田実仁

    ○西田実仁君 この今回の住生活基本法の柱の一つとして量から質へということがうたわれているわけであります。ただ一方で、やっぱり量も質もという声も当然あります。ただ、量から質への転換ということになりますと、これはやはり政策を決定していく、住宅政策を決定していく政策プロセスそのものもやはり変えていかなければならないんだろうというふうに私自身も思っているわけであります。  そこで、坂庭参考人にお聞かせいただきたい。先ほど時間がなくて御説明できなかったということでございまして、この五番目が多分その政策決定プロセスにかかわることだと思いますので御説明いただければと思います。
  48. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) ありがとうございます。  住生活基本法でありますので、その住生活の主体者、主人公はだれかと、これはもうだれもが同じように考えるように、居住者ないし国民一人一人ですね、居住者である国民であると思うんです。  これは内田先生も御指摘になられましたように、生活者の視点が欠如していないかということを提起をされておりますが、やっぱりそのとおりだと思うんですよね。私は是非、まちづくりでも、それから住宅造りでも、その居住者、住民参加ということが、これは国交省自身も提起といいますか、方針として出していることだと思うんですね。  したがいまして、具体的にはここに触れておりますけれども、特に住生活基本計画の策定に当たって、幾つか法案の中でも示されておりますが、もっと住民参加を具体的に規定し、かつ住民参加の保障を行うべきだというふうに考えるわけです。  そこで、まず住生活基本計画全国計画ですが、これは国会の中でも少し議論がされていると思いますが、パブリックコメント、いわゆるパブコメをインターネットなどで聴取するということははっきりしているんですが、社会資本整備審議会住宅宅地分科会、これも衆議院段階で質問があったと思いますが、この住宅宅地分科会の意見全国計画の策定には聴くわけですよね。その中に居住者代表はだれも参加をしていないという事実に示されるように、どうも住民参加について極めて不徹底ではないかと。ですから、住宅宅地分科会に住民参加、すなわち居住者代表を入れることと、都道府県計画の中にも住民参加が直接できるような、これは第十八条二項に、住生活計画の実施というところにあるんですけれども、十八条二項に居住者、住民団体を加えると。  それから、既にもう発足をしておりますが、地域住宅計画に基づく地域住宅協議会があるわけです。これも主体は供給者側ということになっておりまして、いわゆる住民参加が実現していないわけです。先ほどお話ありました基礎的自治体、市町村のこういう計画作りに、すなわち地域住宅協議会にも居住者代表など参加をすべきだと。そのことを通じて真の住民参加というのが実現をしていくのではないかなと思います。  以上です。
  49. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございます。  最後に、松尾先生にお伺いしたいと思います。  今の質問と一つは同じですが、住民参加の問題が一つ。それからもう一つは、先生が御指摘された中で、住生活の安定向上の指標を具体化すべきだというお話がございました。インデックスというお話がありました。  例えば、政府の指定統計である住宅統計調査というのは五年に一遍しか、これは法律によって決まっているわけでございますが、こうしたもの以外にきちっとした指標を出して、それがアウトカム目標との連動の中でどう評価していくかという、多分そういう御指摘なんではないかと思いますが、ここで先生が御指摘されている住生活の安定向上を図る指標として、具体的に、例えばこういう指標が大事だというのをもし御指摘があれば御指摘いただければと思います。
  50. 松尾弘

    参考人松尾弘君) まず、住民参加については、今、坂庭参考人の方からも御意見がございました。これは、住民にも十分そういう機会を保障するということはもちろん大事ですし、住民の側でもこれは非常に重い負担でありますから、どういう形で、どのくらいの期間、どういう頻度で参加していくかということについてのお互いのコミュニケーションということ、あるいは準備期間が非常に必要ではないかというふうに思われます。  これは、法律、制度でできるルールづくりの面だけではなくて、もっとインフォーマルなルールとしてお互いに話し合う、非常にインフォーマルな話合いの中で計画ができていく、実質はやっぱりそういうところでできるというものもあると思いますので、そういうことについてのいろんなモデル例ですとか、法律、制度には乗ってこないようなやり方についての情報交換も含めて時間を掛けてつくっていく必要があると思いますし、私自身はそういう、それだけの時間を掛けてやっていくだけの意味のあることであると思っております。  それから、先ほどの住生活に関する指標ですけれども、これについては私自身にも完成した案があるわけではございませんけれども、ここに出ている住宅の性能、それから耐震化率とかバリアフリーとか省エネ化率、そういう住宅そのものについての指標をきめ細かくつくるということと、もう一つは、今回は居住ということも入っておりますので、生活実態あるいは通勤状況、そういうものも何らかの形で指標化していくことが必要か。あるいは環境についても、景観制度との関連もありますけれども、そういう形で、現在、住民がどういう居住の実態にあるのか。単に住宅の広さとか、あるいは質でどの程度足りているかという指標では、やっぱり住生活の中身は見えてこないと思われるわけです。そういうことについて、決して完全ではなくても、もう少し実質が分かるような指標をつくる必要がある。  これも、だれがつくるかということですけれども、恐らくだれかがアイデアを出して、これどうだという形では簡単にできないと思うわけです。その指標についても、やはりそこから住民参加といいますか、こんなアイデア、あるいはこんな指標が必要だということについても情報収集をする価値がある問題であると思っております。  以上です。
  51. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございました。
  52. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。  私どもは、この住生活基本法案に関しまして、やはり国民のいわゆる居住権利を明確にするということが非常に大事なことだというふうに考えております。例えば、国民住まいに対する権利の規定、目指すべき居住また住環境水準の法定化、適切な住居費負担の設定、公的住宅の質量ともの改善の明確化、国民権利を守るための国や自治体住宅関連事業者、金融機関などの責務の明確化などが本当に必要ではないかというふうに考えてまいりました。  先ほどのお話の中にもイスタンブール宣言のお話がございましたけれども、この日本が承認をしていますイスタンブール宣言の中にも、国民が適切な住まいに住む権利ということで、家族のための最小限の広さの確保負担し得る居住費、強制立ち退き、プライバシーの侵害のないことなどをうたっているわけでございます。  そこで、私は、内田参考人、それから松尾参考人にお伺いしたいと思いますけれども、いわゆるこの宣言から見てこの法案をどのようにごらんになるでしょうか。
  53. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 私は、アジア居住のネットワークのメンバーでございまして、私たちとしてはそのイスタンブールのに積極的に参加したグループでございます。ですから、私は居住権利ということはちゃんと基本的に主張していきたいと思っています。  ただ、日本の場合には居住権利というのはかなり幅広くて、豊かな住生活を営む、そういうことも含めて居住権利としていきたいと。エビクション、要するに強制撤去の問題とか、それから最低の居住の問題だけではなくて、ある程度幅を広く考えたいというのが一点でございます。  それからもう一つは、居住権利を主張するということが、同時に公営賃貸住宅を造るということには余り直結させない方がいいと。ある程度幅を広く、その居住権利をどういうふうに、これだけ発達した資本主義国の場合、市場メカニズムをどう活用するかなんということもきちんと考えた方がいいんじゃないかという立場でございます。  以上でございます。
  54. 松尾弘

    参考人松尾弘君) 居住権あるいは住宅人権についての議論も非常に積み重ねられてまいりましたけれども、一つやはり考えなければならないのは、私自身は、先ほど申しましたように、住居あるいは住宅というのは、本当に豊かさの源泉として非常に大事なものであるし、なかなかその機能を簡単に表現できるほどやっぱり簡単ではない、奥の深い問題であると思うわけです。ただ、問題解決に向けて権利を設定するという場合に、長所と短所と両方あるということを踏まえておく必要があると思います。  つまり、権利を設定するということは、一方ではその利益を享受する者、他方ではその利益を給付する者という形で権利義務規範を設けて、給付側から受け手側にその給付の移動が確実に行われるようにと、そういうシステムであります。これは、給付を確実にするという点では便利なシステムでありますけれども、他方では、一方は給付する側、他方は給付を受ける側という形で当事者関係を確定してしまうという、そういう性質も持っていると思います。  それにふさわしい法律関係、社会関係もあると思われるわけですけれども、そもそもその権利義務設定によって問題解決できる場面というのは、実はそれほど広くないということをやっぱり踏まえておく必要があると思われます。  問題はそのシステムが住宅問題の解決にどの程度有効かということでありますけれども、やはり住宅問題については、この住生活という言葉にも表れていますけれども、問題が非常に複雑で、多様な局面を持っておりますし、その場合に、今回の基本法にもございますけれども、住宅の施策主体というのも決して公的な団体あるいは民間事業者だけではなくて、住民とかあるいは入居者とか、実はその人たち自身も主体になって問題解決に当たらなければいけないという面もあるわけです。  つまり、給付を受ける、するというだけではなくて、いかにその同じ主体に、同じ側に立って情報を提供し合い、アイデアを出し合い、その政策を実現していくかと、そういうスタンスもやはりなしには恐らく住宅問題は解決方向には向かっていかないのではないかと、そういう気もするわけです。  したがって、単に言葉の問題で議論するというだけではなくて、先ほどいろんな基準が出されましたけれども、具体的にその住生活の中身でこういうものが必要だ、あるいは現在不足しているということについて、もっともっと情報がお互いに必要な、にもかかわらず、十分それが共有されていないという問題があるように思われます。  以上です。
  55. 小林美恵子

    小林美恵子君 では、先ほど坂庭参考人から、いわゆる居住権利ということを明記しなければ、国や地方自治体責務というのが明確には本当はならないんだというお話がございました。私はその指摘は本当に重要な指摘だというふうに思うんですけれども、その指摘につきまして内田参考人はどうお考えか、そして坂庭参考人はその指摘の部分をもう少し具体的に教えていただけるでしょうか。
  56. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 私も本法案居住権の確保をちゃんとうたうべきだというふうに思っております。
  57. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) 先ほど申し上げましたように、これは教育権などと併せて考えると分かりやすいのではないかと思うんですが、やっぱり国民の教育権を、今教育基本法議論をされておりますが、そこに示されるように、基本的な権利として教育があると。それに対して国や自治体は責任を負うと、あるいは保護者はそれに対してきちっとした教育を子供に受けさせるという、非常に権利と義務、あるいは役割というのは非常にはっきりしているわけです。  やはり我が国のこの今の住宅政策を考えた際に、そのことを、つまりこの権利と義務の関係を明確にする必要があると。耐震偽装問題なども見るとよく分かると思うんですが、なぜあのような事件が起こるのか。それはもう市場主義によって、つまり住宅は掛け替えのない人権であるという認識がやっぱり国の隅々まで、あるいは業者まで行き渡っていないと。本来は国が住宅は人権であるということを確立をして、そしてそれをあらゆる層に徹底をしていくということならば、今日の事態はやっぱり違ってきたと思うんです。  その意味で、国や自治体責務ということをきちっと保障する、あるいは確認をする上で、居住権利を明確にすることが極めて重要だし、これが住生活基本法の命といいますか、命に近いものになるのではないかという考えをしております。
  58. 小林美恵子

    小林美恵子君 次に、青山参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほどの坂庭参考人東京都マスタープランの事例を出されました。いわゆる居住費の負担率が二一%と、民間賃貸でいくと二三%というふうにマスタープランには書いてありましたけれども、いわゆる私は負担率高いと思うんですよね、思うんです。そういう負担率高いという点で、やっぱり良質で安い公共住宅というのは国民の皆さんにとっては求められているものではないかというふうに思うんですけれども、公共住宅の重要性ということについてどのように考えておられるのか、教えていただけますか。
  59. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 私は、基本的には、公営、公社、公団、それぞれの公共住宅の果たしてきた役割というのがありまして、これをやはり、現在の戸数を基本的には維持しながら、対象等を地域によって限定するあるいは変えるという形で柔軟に、地域まちづくり全体の中でこれらの住宅が生きていくという手段を講じるべきであると、そう考えます。
  60. 小林美恵子

    小林美恵子君 それでは、居住費の負担のことで少しお伺いしたいと思いますけど、これは内田参考人坂庭参考人にお伺いします。  いわゆる今、最近、公共住宅の家賃を近傍同種、いわゆる市場家賃並みにするという方向がありますけれども、この近傍同種というのは、結局、公共住宅の性格をないがしろにしていくといいますか、そういうふうになるんじゃないかと私は思っておりますけれども、その公共住宅の性格といわゆる近傍同種にしていく、市場並み家賃にしていくという、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  61. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 今、きちんとした統計が発表されていませんけれども、公営住宅にお住まいの方の住居費というのは非常に安くて一〇%以下だと思います。そういう状況だと思います。それから、近傍同種というのは、所得が平均的になったときに近傍同種の家賃になるということであって、公営住宅にお住まいの方が近傍同種の家賃を払うわけではないわけですね。公営住宅に入っている限りにおいては一種の家賃補助を受けられるわけですから。  そうしますと、私はむしろ、市場メカニズムをうまく発揮する上で、むしろ近傍同種をきちんと近傍同種の家賃にした方がよろしいんじゃないかというふうに考えております。
  62. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) まず、公共住宅はなぜ存在をしているのかという、まあちょっとそもそも論みたいな話ですけれども。  公共住宅が建設され、供給されているのは、市場では供給され得ないので公的機関ですね、公的供給機関が供給をしていると。これは、住宅局長、国交大臣もそのようにして言っておると思うんですね。つまり、市場では供給されないので公的供給が担っているということですよね。ですから、公営住宅については政策家賃が現在でもやっぱり基本的には取られていると思うんです。少し変形になっているところもありますが。  で、公団、今の機構と公社の賃貸住宅については原価家賃が長らく取られてきたと。これはやっぱり市場になじまないからそういう家賃体系がとられてきたわけですね。原価家賃は建設に掛かった費用を、これは一定長期スパンですけれども、それによって原価を回収すると、相償するということできたわけです。これはこれで非常にやっぱり筋は通っていたと思うんですね。  今先生御指摘の、これを、公共住宅の家賃を近傍同種家賃すなわち市場家賃にするということは、これは、元々市場になじまないものを市場家賃にするというのは非常に大きなやっぱり矛盾があるわけですよね。既にそれは、管理主体は公共であっても、実態の家賃は、これは市場ですから公共住宅の性格を著しくこれは変形をさせるものだということが言えると思うんです。  さらに、ちょっと付け加えさしていただければ、その近傍同種家賃によって家賃の水準は非常に変動するわけです、経済情勢その他によってですね。ですから、不安定さは免れませんし、現実の近傍同種家賃は、結局、市場家賃を機構住宅や公社賃貸住宅は支えるという、逆の、これまでは政策家賃なり原価家賃が市場をコントロールしてきたということが進んできたわけですが、逆の事態になっている。さらに、付け加えて言わしていただければ、近傍同種家賃、すなわち市場家賃は何がしかのやっぱり利益を含んでいるわけですよね。結局、それにするということは、公的供給機関が利益を生み出すといいますかね、利益を手にすることになるわけです。現実に機構住宅や公社賃貸住宅住宅経営、賃貸住宅経営は利益を上げていると。それが居住者にすべて還元をされていればまだ納得性もあるかもしれませんが、そうなっていないという問題など、これやはり近傍同種家賃については見直すべきだということが私の考えであります。
  63. 小林美恵子

    小林美恵子君 あともう一つお聞きしたかったんですけど、残念ながら時間が参りましたので、貴重な御意見ありがとうございました。これからの審議に反映していきたいと思います。
  64. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上でございます。四名の参考人の方、長い時間御苦労さんでございます。  まず、青山参考人にお伺いをいたしますが、今回の基本法の改正というのは、量から質へというふうに変わってきたというのはやはり国民の意識の変化もあるというふうに思います。そのときに、住宅プラスアルファまちづくりという視点というのが非常に大事ではないか、このように言われたわけでございますが、では、今なぜ都心に人が住めなくなったのか、住まないのか。都心部に人が住まなくなってきているというのをどのように理解をされているのか。もう一度町の中心部に人を集めようというように国の政策大きく変わってきているわけでございますけれども、そういうことについて、まちづくり住宅との関係、なぜ都市の中に人が住めなくなってきているのかということについて、どのように理解をされているのか。  とりわけ、私はやはり移動の自由というのをこれほど都市保障しているところはないというふうに思いますし、その結果非常に住みやすいと思うんですが、なおそこには住んでいないというところは、一体まちづくりの視点というのはこれから先どのような視点で考えていくべきなのか、ついでにお伺いしたいと思います。
  65. 青山やすし

    参考人青山やすし君) 私は、住宅の質というのは基本的に従来は部屋の広さというよりも狭さといいますか、居住水準という場合に、何人家族で何平米に住んでいるのかということを中心議論されてきたと思います。それはもちろん大切なことですが、それに加えて、その住まい快適性あるいは住んでいる人がどれだけ満足しているのかということも大切だと、そう思います。  特に、その場合に住んでいる場所ですとか、環境ですとか、そういった要素も非常に重要になってくると。そういう意味まちづくり全体の中で住宅政策を考えるべきだと、そう言っているわけです。その場合に、防災性で木造密集地域を解消していくとか、ゼロメートル地帯に対してスーパー堤防等を築いていくという、そういったいわゆる住宅政策以外の分野での政策の充実というのが一方で必要だと、そう考えます。  それからもう一つ御指摘の中でいいますと、通勤距離について、今でも東京二十三区でいいますと片道一時間以上掛けて通勤している方が半分以上いると、東京二十三区の通勤者で。これはやはりその町の在り方としては非常に問題であると考えます。もちろん、好んで遠距離通勤をする場合はいいんですけれども、やはり先ほど来議論がありますように、家賃あるいは住宅の取得価額との関係で遠距離通勤を余儀なくされている勤労者が大勢いるという状況は非常に都市としては、都市政策としては、大都市政策として非常に問題であるということが言えます。  そういう意味では、今後の住宅の質の改善は、広さ狭さの問題もさることながら、防災性向上、それから通勤距離の改善と、この二つが具体的に大きな柱になると思います。そうしますと、都心居住をどうするかということになります。やはり、近年、バブルがはじけて都心部周辺部の地価が下落する過程で、東京でいえば例えば千代田区ですとか中央区ですとかの人口が数年間にわたって継続的に回復してきているということは確かであります。私は、基本的にまちづくりの中でそういった都心居住についての更に促進するような政策を進めるべきだと、そう考えます。
  66. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、内田参考人にお伺いをいたしますが、住宅に対する国民の意識というのは、私は持家というのが非常に強いと思うんですね。そのときに公的住宅が果たす役割というものは一体どのような役割というものを持たなければならないのかというのが一つと、これまで国が進めてきた住宅政策についての問題点は一体どこにあったのかと、あるのかと。  あと加えて、憲法二十五条の基本的な権利のところについて、やはりもう少し私どもはしっかりとした方針をこの基本法の中で示していくことが大事だと思っているんですが、そこの部分が欠落しているというのは一体どういうことなのでしょうか。その辺をお伺いします。
  67. 内田雄造

    参考人内田雄造君) 今の御質問というのは非常に難しいところがありまして、公的住宅の果たしてきた役割というのは、一つはモデルとしての役割があると思います。あるべき今後の日本の都市居住の在り方を提示するということと、もう一つは、一番生活的に苦しい方に対してちゃんと手を差し伸べると。ただ、それが結局、先ほどトランポリン効果という話がありましたけれども、ソーシャルな意味でのインクルージョンにならないで、要するに公営住宅層というのが一種の、ずっとそのまま同じ階層が続いていくと、あるいは一種の既得権みたいなことになっているということは問題があったというふうに思います。  それからもう一つは、最後、私はやはりこれは、ちょっとこの住生活基本法案というのは、今までありました住宅建設計画法のニューバージョンみたいなところが強くて、今まで私たちの国で話されてきた、住生活がどうあるべきかと、あるいは基本法的な役割はどうあるべきかという点が弱いと思います。そういう点をもう少しちゃんと、特に、先ほどおっしゃったように、私も都心回帰なんかはどんどん増えてくると思いますし、都心というのはインフラが非常に優れていると思うんですね。そういう中で、一方で木造密集の問題もありますし、中高層のマンションの売買とか建て替えの問題もあります。そういうことも含めて、どういうふうな政策体系を持つかということを基本法で定めていただきたいと。あるいは、住宅に困窮している人に対してどう手を差し伸べるかということをもう少しはっきり出していただきたいと思います。  以上です。
  68. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、松尾参考人にお伺いをいたしますが、今度の基本法の制定の中で最も大事なことは住民参加、いわゆる地域住宅協議会というものをつくり上げて、そこの中でまちづくり、それから住宅問題について考えるというように住民参加型の方針が書かれているわけですが、ここのところは私最も難しいというふうに思いますね。  この前ちょっとスペインに行ったときに、道路を造っていまして、この道路はうまくいっているのかどうかと言ったら、いや、なかなかうまくいかないと、天国から地獄まで私のものだとか主張するのがいるからなかなか進まないと、こういうような話をしておりました。  その話から聞くとどこの国も一緒だなと思いながら、我が国もやっぱり公と私の間、ここのところの調整を地域住宅協議会がやれるのかどうなのか、またそのためにこの協議会が設けられたのではないかと、このように思うんですが、ここを実質化していくためにはどのようにすればうまくいくのかというようなことについてお考えがあれば御説明いただきたいと思います。
  69. 松尾弘

    参考人松尾弘君) 一言では難しいんですけれども、一つは、計画の非常に早期の段階から、どの段階から参加できるかという問題があると思うわけです。  この点は、公共事業計画の問題ともオーバーラップするところもあると思うんですけれども、例えば、かなりもう計画が煮詰まって、これほとんど大きな枠組みでは動かしようがないというところが決まってから御意見いかがですかというような場合と、もうちょっと早期の段階から、つくっていくという実感が持てるような段階から参加できるかと。ここでは同じ参加でも大きな意味の違いがあると思うわけです。いかに早期の段階から住民参加が可能になるかという点が、それがうまく実質化するかどうかという点の一つのポイントだと思われます。  そのときには、やはり参加する形態、あるいは参加するときの一つの、何というんでしょうか、お互いのルールといいますか、あるいは話合いのルール、あるいはだれが判定者的、あるいは司会、あるいは判断の役割を果たすかと。そういうルールづくりのためのルールというんでしょうか、かなりインフォーマルな部分が多いと思いますけれども、そういうところからつくっていくという以外にはないのではないかと思います。  それについては、かなり時間を掛けた情報のやり取りとそれから準備が必要であると思いますし、ただ、そういうことなしにしては、やはり住宅問題の解決も、公共事業の問題もそうですけれども、本当の意味での問題解決には向かっていかないのではないかという気がしております。  以上です。
  70. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、坂庭参考人にお伺いをいたしますが、やはり住宅困窮者に対する提供というのは私は基本的には国、自治体役割、任務であろうというふうに思うんですが、そこから、最近の政治の動向から官から民へと、民でできるだけやれるものはやっていこうという風潮になっているところでございますが、やはり私は最低限のところはきちっと保障をしていくべきだというふうに考えているんですが、今の公団公営住宅等の量について、十分だというふうにお考えなのか、なお住宅困窮者に対して不十分だというふうにお考えになっているのか。  それと次は、民間住宅の場合に考えられることですけれども、高齢者それから障害者、小さな子供たちを持っている家族は入居制限をしていくというような入居差別というのが現実の問題としてあると思うんでありますが、これらの問題についてどうお考えで、どのような対策を考えられておるのか、御意見を聞かしていただければと思います。
  71. 坂庭国晴

    参考人坂庭国晴君) まず、公共住宅の量の問題でありますけれども、これはよく比較されますように、特に西ヨーロッパ諸国と比べてみて、三分の一とか二分の一とか、公共の賃貸住宅は我が国では七%でありますから、そういう点で、非常に発達した国として、先進国としてこれを見た場合に、かつ、今の先生御指摘の居住の困難さ、実態から見てやっぱり不足していると思うんですね。これも大都市部を中心にして、既に国会の中でも、公営住宅入居階層が百数十万あるいはファミリー向けの賃貸住宅の不足が三百三十万戸とか、いろんな数字が既に示されているわけです。そのくらいですね。  したがって、これは実現できるかどうかは別にして、このやっぱり倍加ぐらいの、大都市圏を中心として、そういう公的賃貸住宅のネットワークができなければ、真の意味住宅困窮者を、居住の安定を図ることができないのではないかなというふうに思います。  また、居住差別の問題についてこの基本法の中でも余り触れていないというのは非常に残念なことだと思うんですね。居住の安定というのはこういう差別をなくすことでありまして、そういう点では是非重視をしていただきたいと思います。  それで、最後にちょっと住宅関係予算のことが出てなかったので、時間がありませんけれども一言だけ述べさせていただきたいと思います。  我が国の住宅関係予算は圧倒的に少ないわけです。これは国交省でも出している数字だと思いますが、日本は全体の占める割合が二・〇%、予算ですね、これ。これは住宅関係予算と、それから減税額ですね。アメリカは七・四%、イギリス六・九%、フランス七・一%というように、非常に先進国の中で住宅関係予算が低いのであります。  そこで、日本経団連は次のように言っていることを最後に御紹介したいのでありますが。国際的に見ても住宅関係予算総額のGDPに占める比率は我が国は〇・一九%と低い。これは国交省が出している。住宅ストック構築の歴史が長い欧米諸国でも住宅政策に力を入れていることのあかしである。我が国では財政再建が求められているところであるが、国際比較の観点からも、住宅政策を重点分野の一つとしてその充実強化を図るべきであると。これは日本経団連が住宅政策への提言で出していることであります。  このように、これは財界も含めて我が国の住宅関係予算が低いということを指摘をしているわけです。いろいろな点で意見を異にすることが経団連はもちろんあるんですけれども、この一点だけは支持できると、共通できるというふうに思いますので、この住宅関係予算のやっぱり拡充、拡大を是非する必要がある。そうでないとこの基本法の実体は保障されないのではないかということを付け加えさせていただきました。  以上です。
  72. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  73. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席をいただき、ありがとうございました。貴重な御意見、これを今後委員会の審議の中で十分に活用していきたいと存じます。  委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  74. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ただいまから国土交通委員会を再開いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  住生活基本法案審査のため、本日の委員会林野庁林政部長石島一郎君、国土交通大臣官房技術審議官中島威夫君、国土交通省住宅局長山本繁太郎君及び環境大臣官房審議官桜井康好君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  76. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 住生活基本法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  77. 小池正勝

    ○小池正勝君 自由民主党の小池正勝です。質問をさせていただきます。  前回、この住生活基本法の総論的なことをお教えいただいたんですけれども、今日は具体の施策についてお教えいただこうと思っております。  具体的な施策として十一条から十四条まで具体的に書いてあるわけですけれども、まず十一条で、国及び地方公共団体は、良質な住宅供給が図られるよう、住宅の耐震改修等、住宅の品質又は性能の維持及び向上と、こう書いてあるんですが、耐震改修のお話は前回質問させていただきましたが、もう一つ、省エネというのが大きな話になっていると思うんです。特に、京都議定書がありまして、その中でこの住宅の省エネ化、これが大きな課題となって取り組んで、政府挙げて取り組んでいると思うんですが、余り進んでないというお話を聞くんですけれども、現状どうなっているんでしょうか。
  78. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 民生部門におけるCO2排出量を削減するため、建築物の省エネ性能向上を推進することは極めて重要な課題であると考えておりまして、京都議定書目標達成計画、これは平成十七年の四月に閣議決定をいたしましたけれども、これにおきましては、平成十八年度に新築の非住宅建築物の八割が省エネ基準に適合するようにする、それから平成二十年度に新築の住宅の五割が省エネ基準に適合するようにすると、これを目標に掲げているところでございます。  これまで国土交通省におきましては、まず省エネ法に基づく床面積二千平米以上の非住宅建築物の新築、増改築時の省エネ措置の所要官庁への届出の義務付け、これは平成十五年四月に施行された時点からでございますが、それから融資等を活用した省エネ性の高い建築物の誘導、それから住宅性能表示制度の普及促進といったような施策で建築物の省エネ性能向上を図ってきたところでございますけれども、この届出義務を課したことで効果もありまして、平成十六年度には新築の非住宅建築物は七四%が省エネ基準を満たしているということでございます。一方、新築の住宅の方は三二%が省エネ基準を満たしているにすぎないという水準にございます。  今年の四月一日に施行いたしました改正省エネルギー法の下で、まず省エネ措置の届出の義務付けの対象に二千平米以上の共同住宅を追加いたしました。マンションでございます。それから、既存ストック対策の観点から、新築とか増改築をする場合に加えて、大規模修繕などを行う場合も省エネ措置の届出を義務付けたところでございます。法律改正もこのようにやっていただきましたので、その的確な施行に努めてまいりたいと考えております。
  79. 小池正勝

    ○小池正勝君 今のお話にもありましたけれども、非住宅の方はかなり進んでいると。しかし、住宅の方はまだまだだと、三二という数字をおっしゃっておられましたけれども、大変後れておるものですから、これは一層の推進方、誘導というのを是非お願いしたいと思っております。これは法律が改正されたばかりでございますから、これから正にその成果というのはこれから出てくるんでしょうから、今ここでは、具体的な議論というよりは、むしろその進捗を見守っていきたいと思っております。  二つ目は十二条でございまして、国及び地方公共団体は、良好な居住環境の形成が図られるよう、住宅市街地の良好な景観の形成等と、こう書いてあるわけですね。今までの法律住宅建設計画法なんかでは、正にこの良好な景観なんという、そんな言葉は全くなかったわけでございまして、良好な景観の形成ということをここで書いたというのは大変大きな進歩だろうと私は思っておりまして、これは高く評価しなければいけないと思っているんですが、問題は、書くだけでは駄目なんで、具体的に推進していかなければならないんだと思っております。  具体的にどのように進めていくか、それをお教えください。
  80. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) これは一つ一つ住宅だけではなくて、居住環境全体の質が高まるのでなければ住生活を豊かにするという目標には役に立たないという観点から、理念でも明確に定め、今引用していただきました「基本的施策」のところでも、良好な居住環境、景観という点を整理したものでございますけれども、これを具体的に進めるためには、まちづくり基本的な法律上の制度であります都市計画、それから都市計画を具体的に執行するための建築基準法の規制、これをあらかじめ明確に手続を経て定めて市街地を整備していく。特に、既成市街地を再整備する場合にあっても、この都市計画建築規制の制度的枠組みを駆使して、皆さんの合意を得て方向を定めて、それに合う形で建築活動を進めていくという取組が不可欠であると考えております。
  81. 小池正勝

    ○小池正勝君 そこで、一つ具体的なことをちょっとお伺いしたいんですが、三日ほど前のテレビの報道で、広島の原爆ドームのすぐそばに高層マンションが建つというのが放映されておりました。そのテレビ報道では、原爆ドーム、世界遺産なわけですけれども、テレビの報道では、そのマンションが建ったら景観を害して世界遺産に外れるかもしれないよというようなことが報道されておったわけであります。それに対して広島市の方は高さの規制はできないと、こんなことを言っていました。しかし、そのテレビの報道では、高さ制限というのは極めて大切なように報道されておったわけですけれども。  そこで、良好な景観の形成のために必要な施策を講ずるものとすると、国及び地方公共団体はと書いてあるわけですが、どういう必要な措置を講ずるんでしょうか。
  82. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、今御指摘いただきましたような問題につきましては、市街地の良好な環境あるいは景観の形成の観点から、個別具体の問題が発生する前にあらかじめ明確なルールを定めて、それに従って建築活動をやろうということを確定しておくことが非常に大事だと考えます。  都市計画法建築基準法等におきましては、建築物の高さあるいは壁面の位置、そういったことが中心になりますけれども、そういった規制を行うために、高度地区あるいは地区計画、さらには景観地区といった制度を設けております。これは手続に従って公共団体は地域の実情に応じて計画決定をするわけでございます。それによって必要な規制を行うことができるわけでございますので、是非こういう取組をすることが大事だというふうに考えているわけでございます。
  83. 小池正勝

    ○小池正勝君 今のお話は、事前にそういう手続を定めておくべきだったと、こういうお話だと思うんですが、そうなると、正に今回の場合は広島市はそういうことを定めてなかったわけですから、高さ制限なしということで原爆ドームの横に高層マンションが建っても仕方がないと、こういう話になるんでしょうか。
  84. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 伺いましたところでは、広島市御当局は、この原爆ドームを世界遺産に登録していただくに当たって、登録は平成八年の十二月ですけれども、その前の年の秋に美観形成要綱という、いわゆる行政指導のための指導要綱でございますけれども、これを決めて運用をしてこられたというふうに伺っております。  これは、しかし、あくまでも法律に基づく制度ではございません、行政指導でございます。我が国は、憲法秩序の下に、憲法二十九条で財産権を保障した上で、財産権の内容法律でこれを定めるというふうに書いておりますので、きちんと法律に根拠を持った形で、土地を建物の敷地として使う場合の具体的な権利の中身を確定するのでなければ、公といえどもそれを主張できないわけでございます。  したがって、単なる指導要綱でやってきたと、法律に根拠のある都市計画は一切そういう形を定めてなかったというために、具体のマンション計画が上がってきましたときに、法律に定めて適法性を判断して、これに対して協議を終え、建築確認も下ろさざるを得なかったという事態となったというふうに理解しているところでございます。
  85. 小池正勝

    ○小池正勝君 非常に苦しそうな御答弁でございますからこれ以上は申しませんが、是非、必要な施策を講ずるものと、こういうふうに言っているわけですし、景観の形成ということは今まで全く入ってなかった、あえて入ったということは大変重要だし、重く受け止めなければいけないんだろうと思うんですよね。ですから、是非積極的な対応をお願いしたいと思っております。  それから、十三条の関係ですが、適正な取引の確保というのが出ているわけです。これも、国及び地方公共団体は適正な取引の確保のために必要な施策を講ずるものとすると、こう書いてあります。そこで、姉歯事件のやつは、これはまた別途建築基準法の方でやるわけでしょうから今日はそれは申しませんで、もう一つ社会を騒がせた問題として高齢者に対する悪質リフォーム業者問題というのがあったわけですが、これへの対応というのはどのようにお考えになっているんでしょうか。
  86. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 近年、悪質な業者による住宅リフォームに関するトラブルが絶えないということで、社会問題化するケースが非常に増えてきているわけでございます。特に高齢者の方、また高齢のために判断能力が失われたといいますか不十分な方がねらわれて、同じ方が次から次にそういう悪質業者のえじきになって財産を取り上げられてしまうといったようなことが出てきているわけでございます。そういう悪質業者の手口もどんどんどんどん悪質化しているという実態は認識しているところでございます。  住宅リフォームにつきましては、仕事の性格上、種類とかこれに掛かる費用といいますか、金額が非常に多様でございます。自分が頼んだことがこれぐらい掛かると言われたときに、それが妥当なのかどうかという判断基準もなかなか難しいと、新築以上にですね、ということがあります。  それから、少額リフォームといいますか、余り多額に上らないようなリフォームが圧倒的多数でございますので、いろいろな業種、いろいろな事業者がこの仕事に参入してきております。専門的なことについて知識を持たない消費者に対してだますという手口でございますので、市民の方々に、消費者の方々に的確な情報を提供すると、分からないときは聞いてくださいという形で対応するということが一番大事なことだと考えております。  このために、今まで取り組んできました事柄としましては、まず事業者サイドに振る舞いを正してもらわなきゃいかぬという観点から、住宅リフォーム事業者倫理憲章というものを事業者団体で定めてもらいまして、これを遵守することを文書で約束した住宅リフォーム事業者を登録しまして、市民の方々にそういうリフォーム事業者の情報を提供するということとか、公共団体でも特に市町村の広報誌を活用していろいろな広報をすると。それから、全国の少なくとも都道府県と政令市にはリフォーム相談の窓口を設置するといったようなことを急ぎまして、ここまではまずたどり着いております。  それからさらに、事業者情報、初めに言いました倫理憲章を遵守することを約束した事業者情報の提供を、数を充実するとか、それから都道府県だけ、政令市だけではなくて、すべての市町村にきちんと窓口をつくってくださいということで、今一生懸命やっております。昨日までで六百七十二か所の相談窓口を設置しております。  それから、都道府県ごとに住宅リフォーム関係の協議会をつくって自主的にいろいろ取り組んでいただくといったようなことも進めておりまして、事業者サイドのいろんな政策、それから消費者に対する情報の提供といったようなことで、こういう悪質な業者が市場に出てきた場合は直ちに寄ってたかってこれに対処できるような環境整備に取り組んでいるところでございます。  なお、悪質リフォームに関しましては、高齢者世帯に対する支援とか保護、それから訪問販売業者に対する指導、それから悪質商法については取締りといった側面もございますので、関係する省庁と十分な連携も図っていきたいと考えております。
  87. 小池正勝

    ○小池正勝君 次に十四条ですが、国及び地方公共団体は、国民居住の安定の確保が図られるよう公営住宅及び災害復興住宅供給等云々と書いてあるんですが、これは正に住宅セーフティーネットというお話をおっしゃっているんだろうと思うんですね。今日は午前中の参考人の質疑でもこのお話が出てきたわけでございますが、住宅にとってセーフティーネット住宅困窮者へのセーフティーネット機能というのは極めて大切だと、これはもうおっしゃるとおりだろうと思っておりまして、そのために公営住宅の位置付け、これも大切だと、これもよく分かっているんです。  午前中の参考人のお話の中にもあったんですが、公営住宅というのは百万人も待っている人がいるんだと、こういうことを参考人はおっしゃっていました。それから、青山参考人なんかは、東京都の場合競争率が三十倍も超えるんだと、こんなこともおっしゃっていました。確かに、若い夫婦が小さな子供がいて何回抽せんしても入れない、高い民間家賃の住宅に入っている。これはもう何としても正にセーフティーネットとして対応していかなければならない、そのとおりだろうと思うんですね。そう思って公営住宅の入居している人を見てみると、公営住宅の収入基準を超過している人がたくさん入っていると。まず、この実態はどうなっているんでしょうか。不公平ではないんでしょうか。
  88. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 公営住宅につきましては、住宅に困窮する低額所得者に対してこれを供給するということで、所得の制限が入口にあるわけでございますけれども、基本的な考え方としては、所得分位で二五%まで、全体の四分の一ですね、までの方を対象にこの政策を打っていこうという考え方でございますので、政令で定めた基準に従って計測した月収ベースでございますけれども、二十万円までの方を対象とします。二十万円を超える方々は収入超過者ということで、基本的にはもう明け渡していただきたいという態度で臨む家族の方々でございます。  それで、さらに、収入分位が六〇%を超えるという方々は高額所得者ということを位置付けまして、この方々にはもう、政令の月収で三十九万七千円ですけれども、こういう方々には出ていっていただくという考え方で臨んでおります。  本当に困っている方に公営住宅を使っていただくという観点から、収入超過者、それから特に高額所得者に対する対策を一生懸命やってきているわけですけれども。直近の数字で言いますと、ストックを使っている世帯のうち、収入超過者が八・二%、それから高額所得者が〇・四%、現在、ずうっと下がってきてはいるんですけれども、直近、平成十六年度でいらっしゃるという状態でございます。
  89. 小池正勝

    ○小池正勝君 この問題についてはいろんなことをおっしゃる方がいらっしゃいます。しかし、どのようなお立場、どのような考えに立っても、不公平というのは一番いけないというのは皆さん共通しているんだろうと思うんですね。若い夫婦が小さい子供を抱えて高い家賃に払うと、何回抽せんやっても当たらないと、やっぱりここはきちっと考えてあげなければいけない。  そこで、そう思って公営住宅法を見直してみると、二十九条に、政令で定める基準を超える高額の収入のあるときは、その者に対し、期限を定めて、当該公営住宅の明渡しを請求することができるという規定があるわけです。具体的にこれをどのぐらい発動しておられますか。
  90. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 高額所得者に対する明渡し請求を何件やったかということにつきましては、実は全国の実績はまだ掌握しておりません。大宗を占めます東京都と大阪府について平成十六年度で聞きましたら、合わせて百二十三件明渡し請求を実施しているという報告を受けております。
  91. 小池正勝

    ○小池正勝君 全体の、先ほどのお話のように、収入超過者は八%を超えているわけです。高額所得者はもちろんまだ一%に満たないわけですけれども、しかしこの数からすれば圧倒的な数になるわけでございまして、とにかくどのようなお立場に立つんであれ、不公平は絶対に許してはいけないというのはどなたも共通なわけですから、セーフティーネットと言うからには正にここのところをきちっと対応をしていかないと、逆に国民の信頼を損なうんではないかと私は思っております。  それからもう一つお伺いしたいのは、公営住宅の入居の相続ということが行われるのかどうかという点であります。公営住宅の入居については、法律上見てみると、入居者は選考を行うと書いてあるんですね。公正な方法で選考して入居者を決定しなければならないというふうに二十五条に書いてあります。相続という規定はどこにもありません。しかし、お父さんが亡くなったら子供さんが当然に入れるんだと、これは何を根拠にして入れるんでしょうか。
  92. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 公営住宅の相続という非常にインパクトの強い言葉を使っての御質問ですので非常に厳しいんですけれども、公営住宅法律の目的に従って住宅に困窮する低額所得者に使っていただくということで、まず入居に当たって、所得要件とかそういった基本的な条件がございます。入っていただくための条件にかなった人でなければ、つまり入居を許可できないということでございます。その一番大きな要件が収入でございますし、それから家族を単位に住宅をお貸しするということで、世帯を形成しているということが条件でございます。法律上結婚しているかどうかはともかく、例えば少なくともカップルであるというようなことがまず原則になります、例外はもちろんありますけれども。その上で、世帯を形成するという意味で、同居について要件を定めております。どこまで、親族一緒に住んでいただくような形で同居の要件を定めております。  それから、入居を許可した相手方が亡くなった場合に、そこで同居をしていた配偶者とか子供たちとかそのほかの親族の方々がおられるわけでございまして、原則としてはもちろん、公営住宅に入るのは、残された世帯が改めて公営住宅に入る許可をいただくわけですから、全く新たに審査をして入居の許可をするということが建前ではありますけれども、これまでずっとそこで住んでこられたということもあって、同居しておられた方のうち一定の要件の下に公営住宅管理者の承認を得て入居を承継できるという制度を設けているわけでございます。  当然に承継できるのではなくて、これは、公営住宅法ですけれども、二十七条の六項の規定に基づきまして、入居承継は事業主体の承認を得なければならないということにしておりまして、その運用につきまして、各もちろん事業主体が自ら運用基準は定めるんですけれども、国全体の基本的な考え方として、入居開始から引き続きその住宅居住している者と配偶者ですね。それから、それ以外ですと、同居の期間が一年以上の三親等以内の親族を対象とすると。一年以上一緒にそこで住んでいた三親等以内の親族であれば入居の承認をするという基準で今まで運用してきた事業主体が多いんですが、委員の今のような問題意識はこれまででもいろいろ御指摘いただいておりまして、昨年、地域住宅特別措置法で公営住宅建設費補助金を地域住宅交付金に改定するための法律措置講じていただきましたけれども、その中でもその点についていろいろな御議論が行われまして、問題があるという御指摘もいただいたところでございまして、私どもは、昨年の法律の審議も踏まえた上で十二月に運用基準を見直しました。全国の考え方として、国土交通省としてはこういうふうに考えているということで、運用基準を見直して、原則として、現に同居している配偶者あるいは高齢者とか障害者で特に居住の安定を図る必要があると、この入居承継の基準を厳格化したところでございます。この考え方に基づいて今公共団体、各事業主体がそれぞれの運用基準を見直していただいているところでございます。
  93. 小池正勝

    ○小池正勝君 おっしゃるように、三親等といったらかなり遠いですよね。三親等までいいんだという議論は、さっき申し上げたように、若い夫婦が小さな子供を抱えて高い家賃のところに入っているという実態から見て、当然に三親等までいけるなんていう話はこれもまた不公平という話に私はなっていくんだろうと思っています。  これは今おっしゃられた局長さんも正にそういう問題意識で正に不公平に対応していかれるというお話でございますから、是非そのことを徹底してお願いしたいと思っているところでございます。  終わります。
  94. 前田武志

    ○前田武志君 民主党・新緑風会の前田武志でございます。  議論もそろそろ終局に向かってきたわけでございますが、ずっとこの委員会議論を私も聞かしていただきながら、やはりこの住宅、しかも住生活ということで基本法を作る。政策の大きな変更というよりも、時代の大きな変化に応じて方向性を、先を見て、ここで思い切って変えていこうというような意気込みというか、そういったものは伝わってまいります。  しかし、この間の社会の変化、経済の変化、これはもう本当に圧倒的な変化ですよね。短期間の間にいろんなことがありました。そして、結果としては社会の構造というのもどんどんどんどん変わっていっております。生活様式も変わっていく。しかし、変わらざるものは、我々生身の人間は、平均寿命が八十歳前後でございましょうか、やはりその生活の場というのは家であり、基本は家庭であり、そして、その家庭、家の近所、向こう三軒両隣から始まってコミュニティーがあってという、そういう中で我々は生活をし、人間はその中で生きていく以外にないわけで、その住宅、そしてそのコミュニティーが人生の自己実現の舞台になっていく。その一番肝要なところを、今回住宅そのものだけではなしにもう少し広げて、その周りの環境も含めて住生活ということで基本法を作ったわけでございます。  我々の生身の人間というのは、そう意識を変えるというのが難しい。そしてまたコミュニティーも、あるいは近所付き合いもあって、なるべくそういうものは変えたくない、大事にしていきたいという気持ちがある。しかし一方で、経済がどんどん変化し、社会が変わり、構造が急激に変化していく、そこに大きなミスマッチがあるんだろうと思うんですね。そこをどういうふうに調整して、そして住生活が真に豊かなものにしていくのか。そして、その住生活というものは当然コミュニティー、まちづくり、特に我々の意識としては、コミュニティーが今崩壊していっているというのが日本のこの在り方の中で一番問題、私はここに一番危機感を感じているわけですが、そういったところを視野に置いて住生活を真に豊かにしていこうと、こういう方向性を出しておられるというふうに解釈をしておりまして、そういう意味では、方向としては私は評価をするわけです。  しかし、何度も申し上げますが、そう人間の価値観だとか生身の人間の生き方というものは余り激しい変化に対して変えるというわけにもいきませんから、この住生活のありようについての専門家の意見も随分分かれるようですね。今同僚議員のこの議論等もお聞きしながら、午前中、四人の参考人の御意見を伺っておりましたが、例えばこの住生活居住権利といいますか、そういったものをしっかりとこの法律のまず一番前提に置くべきだというような専門家の方もおられました。そしてまた、この実態、それから元々憲法の中に、そういった文化的生活というものは憲法の中に規定もされており、その憲法の下にこの住生活基本法等を作っていくわけでございますから、そういったものをあえてここに置く必要はないのではないか、もう少し実態的に方向性をしっかり出していくというような方がいいのではないかとかいう、いろいろ御意見がありました。  まあ確かにこの法律で非常に大きな特徴として言えるのは、今申し上げたような大きな変化というのを前提にしております。  資料は配ってありますかな。    〔資料配付〕
  95. 前田武志

    ○前田武志君 この変化ということについて申し上げると、一番最初に配ってありますのは、ちょっと見にくい表になっておるんですが、要は、二〇〇〇年と、それから、この住生活基本法ですから相当先を見通してどういうふうに対応していくべきかということでございますから、二〇三〇年の人口、そしてそれが大きくくくって全国、首都圏、近畿圏なんかでどう変化していくか。あるいは、住宅の取得年齢層というのは大体三十五歳から四十四歳ぐらいの十年間ぐらいが半数ぐらいのようですね、新築住宅の、その辺の人口がどう変わっていくかというのを見た統計資料がこの一番最初のこの表でございます。  全国で二〇〇〇年が一億二千六百九十二万六千人、それが三十年後には約九百、まあ九百五十万ぐらい減って一億一千七百万ぐらいになる、これは全体ですね。首都圏を見てみますと、三千三百万が、三千三百、これちょっと増えるんですね、首都圏だけは、〇・一%。あとは、近畿圏も中部圏も北海道もどんどん減ってまいります。大体二けたの人口減少率ですね。そして、その取得人口という、この住宅を取得していく五割ぐらいに当たる十年間の三十五歳から四十四歳とを見ると、全国ではここが二百七十六万減ります。今一千六百万ぐらいなのが約一千三百二十万ぐらいに、二百七、八十万減るということですね。首都圏でも、やはり同じようにこの年齢層は大きく減ってまいります。四百四十万が三百八十万ぐらいに減る。住宅関係のディベロッパーは、この辺をしっかりと見据えていろいろ経営戦略を立てているんだろうと、こう思うわけでございますが。  しかし、老年人口の方で見ますと、首都圏の特徴として、今、二〇〇〇年が四百八十一万八千人、これが倍に近く増えるんですね、三十年後に、九百二十四万八千人、九二%の増え方。全国でもこの首都圏というのは、六十五歳人口のこの増加というのは圧倒的に、率だけではなしに数の上から圧倒的に多いですね。言ってみりゃ、東北、四国、既に高齢化がもうかなりのところまで進んでいるし、人口そのもののボリュームもそれほど大きくないということがあるんですが。この辺のところがこの住生活基本法一つの背景にもあるのかなというふうに思います。  後ほどいろいろまた統計資料をお聞きするわけですが、端的に言うと、首都圏とそれから大阪中心の近畿圏において住宅が、まだ最低基準以上の住宅ということに視点を置いても足らないところが多いというようなことでございましょうか。  二ページは、それをちょっと分かりやすく率にしたものですが、もうこれはあえて触れません。  さて、そこで、冒頭、大臣に御見解といいますか、非常に広い視野で、しかも法律の専門家でございます、また市場という面でもいろいろとかかわってこられた大臣でございますからお聞きするわけですが、今申し上げたような非常に大きな変化がある。特に、首都圏あるいは大阪等を中心にこういう都市圏において圧倒的な高齢化層が増えてくる、住宅取得層は減っていく。そして、公営住宅の問題もいろいろありましたけれど、人間の意識そのものはなかなか変えにくい。  そういう中で、本当に施策を打っていくときに、住宅は、極めてこれは自治の、地方分権ということももちろん大きくかかわる、加わるわけでございますが、公営住宅的なものについてはやはり自治の責任というものが大きい。しかし、それに対応できるだけの本当に人材、情報、そういうものがきちっと整備されてあるのか。そういうそのミスマッチの中で、実は市場というものに相当大きな視点を当ててきたのではないかと私は思うんですね。  要するに、官から民というような十把一からげの見方ではなしに、これだけ複雑ないろんな要素がある中で、住宅及び住環境というのは恐らく非常に国民の生活、地域の在り方、コミュニティー、そういった中では一番大きな要素でございますから、それを計画的にいろいろ人材をつぎ込んで公的にやっていくというのにはもうはるか前から限界が来ていて、だから今矛盾がどんどんどんどん積み重なっているのではないか。  もちろん、その公的なところで支援をしていかにゃいかぬところについては、住宅弱者を中心に焦点を絞って、選択と集中ということでやっていく。しかし、この複雑なものは、複雑な要素をどこで最適解を見付けてやっていくかというと、やはり進化した市場というものにいかに乗せていくかということが非常に大きな意味を持っているのではないかと、私はそのように推測をするわけでございますが、大臣に、この辺の私が申し上げたようなことを中心にして、この法律の意図する長期的に非常に大きな問題について、かなり大胆に方向性を出したわけでございますから、その辺の大臣のまずは御所見をお聞きしたい、このように思います。
  96. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) ちょっとまず冒頭、今日役所の側はもうネクタイも取らしていただきまして、上着も取らしていただいて、クールビズで今日からスタートさしていただいております。大変恐縮でございますが、御理解のほどをよろしくお願い申し上げます。  今、前田先生から大変難しい御質問をちょうだいをいたしました。この資料を、いただいた資料を見さしていただきましても、これから三十年間で特に首都圏、近畿圏等大都市部におきまして、三十代後半から四十代前半の人たちの人口の増加率が大幅に減る、そして一方で老齢人口、これは首都圏においては倍近くなるというふうな非常に端的な少子化、また高齢化の指標を出していただきました。  今まさしく我が国というのは、これは住宅問題だけではなくて、少子化、そして高齢化、さらには人口減少と、こういう人口構造の大きな転換点の中に今ある中で、我が国の様々な政策をやはり見直していかねばならない、そういう時期に来ているんだろうというふうに思っております。  そういう中にあって、今回、住生活基本法案につきましても、そうしたものを背景として提案をさせていただいております。この国会で御論議いただきましたまちづくり三法、都市計画法の見直しにつきましても同様な観点がございますし、また新バリアフリー法につきましても同様でございます。こうした大きな時代変化の中で、そうしたこれからの時代にふさわしいまちづくりを、また住宅を、住環境をつくっていくための法案の提案をさせていただいているということだと思っております。  やはりこれからの時代人口が減少してくるということをやはり私は非常に重く見ていく必要があるというふうに思っております。確かに、公が様々関与していくことは当然必要なわけでございますけれども、人口が減少していく中で、市場というものをうまく活用していくということがやはり大事なんだろうと。公の関与はもちろん大事でございますが、民間市場民間の持っている力というものをうまく誘導していくといいますか、そうした施策というものがこれからは人口減少の中で非常に大切だというふうに考えているところでございます。  そういう意味で、市場重視、ストック重視の施策を今回出させていただいた上で、かつ住宅につきましては、やはり生活の拠点で本拠、拠点でございますし、また今委員のおっしゃったように、地域にとってはコミュニティーのまさしく核となるのがこの住宅でございます。そういう意味で、地域の適切なコミュニティーを維持し、また再生していくためにも、この住生活基本法の中で是非そういうことも念頭に置いて、地域のコミュニティーの適切な形成のために役立てさせたいというふうに考えているところでございます。
  97. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、今大臣も指摘された住宅ストック、この法律の大きな目標である良質な住宅確保していく、その中に既存住宅ということを位置付けをされているわけですが、まず住宅ストック状況が今どういうふうになっているかということを、大くくりの簡単なデータで結構でございますから、分かりやすく御説明をください。
  98. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 平成十五年の住宅・土地統計調査によりますと、全国居住世帯のある住宅総数は四千六百八十六万戸でございます。ストック全体の戸当たりの平均面積は九十四・九平米でございます。このうち持家は二千八百六十七万戸でございまして、全体の六一・二%、平均の床面積は百二十三・九平米でございます。  借家は千七百十七万戸、全体の三六・六%でございます。平均で床面積が四十六・三平米でございます。この借家のうち、千七百十七万戸の借家のうち、公営、公団、公社といった公的借家は三百十二万戸でございます。全体の六・七%。この公的借家の平均床面積は戸当たり五十・八平米でございます。それから民営の借家、これが一番多いわけですが、千二百五十六万戸、全体の二六・八%、床面積平均が四十四・三平米でございます。  それから、大分少なくなってまいりましたが、給与住宅、社宅等でございます。百四十九万戸、全体の三・二%、この床面積が五十三・六平米となっております。
  99. 前田武志

    ○前田武志君 今御説明いただいたのは、ちょうど資料をいただいたのを私が配った資料の一番最後に付けてあります。御説明のとおりでございまして、これ見ていてもいろんなことが思い浮かんでくるんですね。持家が二千八百万戸ですか、借家が一千七百万戸。結構借家が多いんですね、私が想像していた以上に。民間借家が多いですね、一千二百万戸。ワンルームマンションなんかもあるでしょうし、あるいは駅の近くの文化アパート、若夫婦が子供一人か二人と一緒に押し込められているというようなのも含めて結構多いようであります。  午前中の参考人の御意見、あるいは今までの議論の中でも、こういった民間の借家に入っておられる層というのは、多分所得層からいっても、加藤議員の議論でもそうだったと思うんですが、相当所得は低いにもかかわらずこういう借家に押し込まれている。片一方で、先ほど御指摘のように、公営住宅で、所得階層がかなり高いのにもかかわらず公営あるいは公団住宅等に入っておられる。この辺の問題というものが不公平感というのを生んでいるのかなという感じがいたします。  そういったことについては、申し上げたように、地方自治体だけの手には余るようなことではないかなと思うんですね。そんなところにまた市場原理というものをうまく使う要素があるのかどうか、その辺のことについてちょっと議論をさせていただくわけでございますが、既存住宅のうちの持家、二千八百六十万戸、約二千九百万戸ですね。この持家というものが、まさしくサラリーマンがそれこそ男子一生の事業として、ローンを組んで自分たちの住みたいところに家を造って、庭付きの家で子供を育てて、それが結局はニュータウンの発展だったんだろうと思うんです。  この持家というものが、今、本当の意味で価値を持っているとお考えですか。住宅局長、どうですか。
  100. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 住宅の、持家住宅ストックの質についての誠にストレートな御質問でございますので、答弁がなかなか難しいんですが、どういう課題意識を持っているかという観点から申し上げますと、やはり持家は木造の戸建て住宅が多いです。木造の戸建て住宅は特に五十六年より前の古い耐震基準で建てられたものもありまして、一千万戸ぐらいはこの新しい耐震基準を満たしてないということもありますので、これは是非とも急いで耐震性能、手当てをしなきゃいかぬという問題意識を持っておりますし、そういう意味で、不十分なストックもたくさんありますので、手入れをしてきちんと使っていかなきゃいかぬと、そういう問題意識を持っております。
  101. 前田武志

    ○前田武志君 せっかく局長さんが木造に触れてくれたので、議論をそっちの方に持っていこうかなと、こう思うんですが、要は、この二千八百万戸の、二千九百万戸の持家、環境的には、子育てをしていたころは、一団地、すばらしい環境だったと思うんですね。子育ての環境はすべて整っている。保育園もあったでしょう。小学校、中学校ぐらいはあったでしょう。大きな団地だと高等学校もある。そして、最小限の買物のそういう場所なんかもあると。そして、近所付き合い、子供たちのPTAを通じてコミュニティーもできた。  今そういったニュータウンがオールドタウン化してきて、そして年齢層が、大体似た年齢層が取得しますものですから、当時はすばらしい活力に満ちた町が今大変な状況になってくる。これがいわゆる多摩ニュータウン問題であり、千里ニュータウン問題に代表されるんだろうと思うんですね。  ところで、ちょっとそちらはまちづくりの方にいくわけですが、今のこの持家の大半は、まあ当時の住宅でございますから、伝統的なといいますか、軸組みの木造住宅、あるいは最近はツーバイフォーもあるでしょうが、ほとんどが木造住宅だと思うんですね。それがまだ耐震構造としてのクリアはされていないという御指摘もありました。しかし、当時としては、もうサラリーマンのすべてをつぎ込んでの家であったわけでございますが、多分、築二十年もたつと、この木造住宅というのは、まあ局長さんからはちょっと言いにくいかも分かりませんが、無価値でございます。価値として、いや、無価値じゃないんですね、実はマイナスの価値なんですよ。  この築二十年以上の木造住宅というものは平均して、まあ大ざっぱに言いますと、底地の担保価値、土地の値段ぐらいしか価値がない。そして、その上物というものは撤去費が掛かる。これは、建築廃材として産業廃棄物でございますから、一戸壊すのに多分百五十万とか二百万ぐらい掛かるんじゃないんですか、厳密にやれば。その分差っ引くよというぐらいのことなんですね。それが二千七、八百万戸、九百万戸ですから、これはゆゆしき問題なんですね。  そこに実はこの二〇〇七年問題というものもかぶさってまいります。大量に団塊の世代がリタイアされていく。この団塊の世代が、本当にもう、自分たちの城をせっかく築き上げてきたのに、過ごしてきたニュータウンは今やコミュニティー崩壊、そしてその家は底地の値段しかない、上物はマイナス評価。これでいいんでしょうかね。  そこで、この辺の問題意識については、大臣、いかがですか。
  102. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 私も地元大阪でございますので千里のニュータウンはよく知っていますし、また地元には泉北のニュータウンもございますので、そうした昭和四十年代から形成されましたニュータウンが今やまさしく高齢化で、非常に深刻な問題になっている。で、人が高齢化しているだけではなくて、建物もだんだん老朽化をしている中で、ここをどうまちづくりを進めていくかというのは非常に喫緊の課題であるというふうに認識をしておりまして、昨年も、これは住宅局長の下ですか研究会をつくって、専門家の方々の御意見も賜りながら勉強会をやったわけでございますが、これはしっかりと取組をさしていただきたい。  今委員のおっしゃったように、若い方々も新たに入っていけれるような、そういうやっぱり魅力のあるまちづくりをしていかないといけないというふうにも思いますし、また都市計画等の見直しなんかもやっぱりやっていかないといけないだろうと。そういうことをしっかりと進めさしていただきたいというふうに思っております。  ただ、一方で、あのようなニュータウンというのは、私の地元の堺もそうなんですが、堺の旧市内よりもよっぽど早く泉北ニュータウンの方が、下水道整備にしても町並みにしても、本当に環境はいいところ、いいんですね。また基盤も整備されているわけですね。  そういう意味では、きちんとした基盤が整備され、また緑豊かなところに住宅があるわけでございまして、これはやっぱり貴重なストックでございまして、ここをやはり魅力あるようにリニューアルをしていくというのがこれからの大変重要な課題だと認識をしております。
  103. 前田武志

    ○前田武志君 この面でもうちょっと議論をさせていただきたいと思うんですね。せっかくそういうお話が出てまいりました。  ところで、そうやってニュータウンができたときには、そこは非常に担税力のある人たちが、当時多分三十代、それこそ三十代後半から四十代そこそこの方々がかなり広い土地を取得されて、そして立派な家をお造りになった。下水道も引いた、道路も造った、インフラも相当整備をされたんですね。学校も造った。したがって、ここにおける地方自治体のこの基盤投資というものは、額的に言うと相当のものをつぎ込んでいるはずです。  しかし、そこからは、現実には所得税、これは国税に行きますが、住民税も固定資産税も都市計画税も上がってきた。それで良かったんでしょう。しかし、今はそこがオールドタウンになって、もうそこの住民はほとんど、税金を払うよりも福祉の対象として市が持ち出す対象に転じてきた。そこに地方自治体のこの住宅政策まちづくり等についても非常に難しい問題が生起しているんだろうと思うんですね。だからこそコンパクトシティーという考え方も出てきているんだろうと思うんです。  そこで、こういう状況の中で、議論の方向としては、一つは、やっぱりコミュニティーを崩壊させたままで放置させるわけにはいかないと思うんですね。何か政治、したがって行政を指導して、そのコミュニティーに再度この輪切りの、もう子育てが終わって子供たちが外へ出て、熟年層が草むしりをしているということではなしに、そこに若い子育て世代、先ほどの民間、言わばワンルームマンションも含めて、民間のアパートに押し込められている若い子育て層というのをそこに政策的に誘導してあげる。そして、午前中の議論にもあった、青山先生、何と言いましたかね、社会的包容と言われましたかな、まあとにかくもう少しコミュニティー、社会として層の厚い、包容力のあるというような社会にすべきだという議論だったと思うんですが、まさしくこのオールドタウン化したニュータウンを再生させるという、そういう手も打っていかにゃいかぬのだろうと、こう思うんですね。  この辺については、多分国交省においてもモデル的に定期借家権なんかを利用して、ここを賃貸に出して、そしてその熟年夫婦はそこから得られる家賃を年金にオンして、一種のリバースモーゲージ的な性格の政策によって、便利なところに、ケア付きマンションに住むだとか、まあまあ、そういうモデル事業もやり始めたと、こう聞いているんですが、まずその事業の概要と、そして申し上げたこのオールドタウンの再生、そういったコミュニティーの再生につながるようなことについて大臣はどうお考えになっているか、お聞きいたします。
  104. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 御指摘いただきました、特に郊外に計画的に開発された市街地、そこにある戸建ての持家、かつて団塊ないしは団塊の前の世代がそこで子育てをして今は老夫婦で住んでいるというような戸建て住宅市街地たくさんあるわけでございますけれども、そういう持家をリフォームするなり将来にわたって使えるようにした上で賃貸に付して、そこに従前住んでおられた高齢の夫婦の世帯あるいは単身の高齢者は、より介護サービスなどの付いた共同住宅に移って余生を送っていくといったような住宅を、ストックをきちんと使えるようにしていくための仕組みといいますか、一つのビジネスモデルですので、きちんとそれが確立されればマーケットでそういうサービスが行われて動くようになると思うんですが、なかなかまだ手探り状態ですので、しばらくの間、国も施策として、モデル施策としてお手伝いをしながら、こういうことができるようにということで今年度からモデル事業を始めました。  このモデル事業では、高齢者の方が持家を貸しやすくするために、貸しやすくというのは、要するにある程度たったら戻してもらって自分の次の世代が住むとかそういう意味でございますけれども、そういうことで定期借家の制度も活用することにしております。  こういう取組によって、各世代それぞれライフステージに応じて必要な質のいい住宅を選ぶことができると、そういう賃貸住宅整備していきたいという考えで取り組んでいるところでございます。
  105. 前田武志

    ○前田武志君 もうちょっと大臣、この議論をさせていただいた上で御感想を聞きます。  私の資料を、ここに一昨日同僚の加藤議員が使った資料を再度使わせていただいております。  図の五というのを、この二枚目だと思いますが、資料でいうと。図の五というのを見てください。住んでいる町の駅、周辺に立地する介護付住宅への関心というのを見ていますと、これ配偶者のところを見ていると、関心があるというのが約六〇%なんですね。だから、住んでおられる方々、団地等に住んでおられる方々は、住んでいる町の近くの駅だとかその周辺に介護、ケアが付いているようなそういう住宅があれば、多分マンションみたいなものでしょう、そういうところに行きたいねと、こう思っているんですね。  その図を見ておりますと、これは高齢者の住み替えに関するアンケートということで調査されたわけで、千里ニュータウンと湘南地域のようですが、図一なんかを見ていると、やはりほとんど上位に来るのが介護だとか身の回りの始末が自分でできない、これもう要するに介護ですね、ここに心配がある。住の安心ということに対して心配があるんですね。  それから、図二、加齢を考慮した場合、現在の住居についてどういう不満を持っているかというのを聞いても、これもやっぱり身体機能が低下したときバリアフリーになってないというのが多いんでしょうし、それから、当然それ造ったころには自分の介護がされる場面というのは想定していませんから、その辺が非常に大きな心配の種になっているようです。  そして、さらに図六なんというのを見ていますと、最近随分進んできたグループホームだとかグループリビングですね、そういったものに対する関心も三分の一ぐらいあるんですね。  これをひっくるめて言えば、片一方で団地が空洞化し始めている。すばらしい家はあるんです、子育てをした。しかも、その家が、マイホームが無価値化している、あるいはマイナス評価になってしまって資産評価が正当にされてない。したがって、この持家のオーナにしてみたら資産を持っているという気持ちになかなかなれない。もちろん、土地の値段ぐらいはあるんですが、それは千里ニュータウンとか泉北ニュータウンならまだ値が付くでしょう。地方都市の郊外都市ぐらいになると、住宅の土地の値段なんというのはもうほとんど余り、無価値なんですね。  その辺の状況があり、一方で、介護あるいは自分の身体のことを考えると、近くの、今までずっと子育てしてきたその町から縁を切りたくはない。近くの駅であったり、その町の周りでケア付きのそういう便利なところに入りたい。片一方で、非常に狭い住宅地に、特に小さな子供を持つ世帯というのは貸家の中では嫌われるんですね。だから、専門の、非常に効率的ではありますが、狭くって、そしてやはり負担からいうとかなり厳しい負担をしながら住んでいる。  この二重、三重のミスマッチといいますかね、こういうものを解消する政策こそ、この住生活基本法においてしっかりと方向を出していくべきだと思うんです。大臣、いかがですか。
  106. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 非常に大事な視点のお話をしていただいておると思います。  これも私事で恐縮ですけど、うちの両親も八十近くになって、もう八十なんですけれども、夫婦二人で住んでいます。子供三人おりますけれども、私も含めて。みんなばらばらに住んでいまして、親二人で住んでいるんですが。  本当は二世代住宅がいいでしょうし、また、せめて近所にそういう子供たちがいれば少しは安心なのかなというふうに思うんですが、今の時代になかなかそういう事情、そういう状況許しません。それぞれ地方に転勤であったり東京にいたり等々で、なかなかそういう事情を許さない。じゃ、年取った親をこちらに引っ張れるかというと、親は絶対来ませんね。今委員がおっしゃったように、もう長年住み慣れたところにやっぱり死ぬまでいたいという意思が非常に強い。これ、多くの方が多分そうなんだろうと思います。  だから、その辺のニーズを、今もアンケートの中に、自分の住んでいる地域の中で介護付き住宅に住みたいというニーズがこれ五割以上あるというアンケートでございますけれども、ああそうだろうなというふうに私も思います。だから、この辺の方々のニーズをうまく理解して、それを施策に反映をしていくということが現実的に非常に大事なことだというふうに思います。
  107. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、今それを現実的に解決していこうとすると、そこで生きてくるのがこの定期借家権なんだろうと思うんですね。  熟年夫婦にしてみても、せっかく子育てをした子供たちはそれぞれの働き場所で、今遠くの方でまた出ていっておられる。しかし、やがてその子供の世代もリタイアすると、自分たちが育ったあの町で住みたいねと言っている人たちも多いんだろうと思うんですね。したがって、その間、家は守っているから帰ってきなさいね、その間、私どもは五年なら五年、この駅前の便利なマンションにいますからと、あるいは子供たちのいる都会の近くのマンションに行くだとか、そういうことを可能にするのがこの定期借家権なんだろうと思うんですね。  そこで、今、この定期借家権というよりも、一般にこういう持家の方々住宅が借家として流通しているのかどうか。先ほど局長さんのお話では、この民間の賃貸住宅というのが一千七百万と聞きましたかな、相当の数ありますよね。その民間の賃貸住宅というのは賃貸が目的で造られたそういう住宅なのか。そこに一般の持家というものはどの程度入っているのか。なかなか推定できないと思うんですが、要するに数なんかどうでもいいんですが、それほど意味のあるほど大きな比率であるのかどうか、その辺をちょっと。
  108. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 先ほど前田先生が出していただいた資料の中にありますけれども、民営借家として千二百五十六万戸ございます。実はこれ、併用住宅ですね、商売をしながら住んでいるというのを含んでいますんで、実は専用住宅だけ調べたのが、内訳が若干あるんです、建て方別の。  これ、専用住宅だけだと千二百三十九万戸です。それが建て方別に統計がありまして、戸建て住宅が百七十八万戸。大宗は、実は非木造の共同住宅ですね。いわゆる賃貸マンションですね。これが七百四十六万戸ですね、七百四十六万戸。木造の共同住宅というのもあります。これは二百五十一万戸ございます。今御指摘いただいた持家が賃貸市場に流動化してきたものというのは、この百七十八万戸の中にあると思うんですけれども、戦前は戸建てで借家というのは結構あったんですが、今使われている戸建ての借家は個人が持家として建てたものが賃貸化したものが結構あるというふうに思うんですが、その内訳がどのぐらいかは、本来借家として建てられた戸建てと持家が流動化したものって、ちょっと内訳がないんで、そういう形になります。
  109. 前田武志

    ○前田武志君 比較としてアメリカの例を取って、米国においては、これは貸家とかいうことじゃなしに、中古の住宅の流動化率といいますか、そういうものがどの程度あるんでしょうか。日本においてはこの中古住宅、賃貸というよりも要するに中古住宅、持家そのものが市場で売買されるその戸数といいますか、概数で結構です。それに対して米国ではどの程度になっているんでしょうか。
  110. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 持家を流動化させるということになりますと、賃貸に付すか中古住宅として売却するかということなんですが、中古住宅として売却する数は、我が国の場合、二〇〇三年の数字で、平成十五年の数字で十七万五千です、十七万五千戸。米国の場合は、二〇〇四年ですね、二〇〇四年の数字で六百七十八万戸ですね。これ、ボリュームイメージを持つために、新築住宅と中古住宅流通をトータルで、市場における供給トータルとした場合の中古住宅がどれだけの割合かというのを割合で見ますと、我が国は全体の供給戸数のうち一二・八%、米国は七七・六%が中古住宅という、そういう規模のイメージでございます。
  111. 前田武志

    ○前田武志君 今の数字を聞いてもお分かりのように、日本の場合には持家既存住宅というものがほとんど資産化していないということだろうと思うんですね。  そこで、先ほど局長の指摘にもありましたかな、耐震対策ですか、耐震改修のお話もあります。こういった二千八百万戸、二千九百万戸という持家そのものの安全性を高める、住みやすさを高める、あるいはバリアフリー化を高める、そういうことによって価値が随分と高まってくるんだろうと思うんですね。しかも、そのほとんどが木造住宅であるわけなんですよ。ということは、リフォームの話も先ほどされておりましたが、多分、地元の大工さんだとか工務店だとか左官だとか、地元の経済に対する、あるいは地元で役割を担う人たちが随分多くなってくると思うんですね。  せっかく耐震改修というものを制度として、喫緊の課題としてやり始めたわけでございますから、この辺に大いに力を入れて誘導する、もちろんバリアフリー化も誘導する、この懸念の中に、不安の中にあるわけですから、それを、その二つをやるだけでも持家の価値というものは潜在的に随分上がってくるんではないんでしょうか。局長さん、どうですか。
  112. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 御指摘のとおりだと考えております。  やっぱり中古住宅の価値を高めるという観点から、最もベーシックな性能でございますんで、耐震性能を高めると。しかもそれは、何というんですか、具体的に仕事をやられる方も地域住宅産業の工務店とかそういう大工さんたちがやられるわけですから、そういう効果もありますんで、是非政策の正面に据えて取り組んでいきたいと思っているんです。  これ一番大事なことは、住宅に住んでおられる方々が自分の住宅、耐震改修しなきゃいかぬと思っていただくことが非常に大事なんで、そういう意味では、隣近所声を掛け合って大丈夫かどうかきちんと見て、それでやっぱり問題があるということであれば耐震改修に取り組むと。これは阪神でも経験したことですけれども、いったん地震があって木造住宅倒れますと、どうしても火が出るんですね。ですから、孤立して一つだけ丈夫にした住宅が残っていても、結局市街地火災で焼けてしまうんです。  ですから、やっぱり町全体で取り組んで、どこが問題があるか、どうしたらいいかということが非常に大事ですんで、昨年の特別会で耐震改修促進法を改正していただいて、公共団体が地域ぐるみで取り組める仕組みですね、耐震改修促進計画を作っていただいて、地震防災マップ、ハザードマップを作っていただいて、問題意識を持っていただいたら耐震診断をしていただいて、で、改修に入っていくと。そういう段取りで進めたいと思いまして、で、いよいよ改修をしようと思っていただいた方についても、問題は費用の負担でございますんで、この費用負担を軽減するという観点から税制改正で耐震改修促進税制もやっていただきましたし、公共団体を通じて昨年つくっていただいた地域住宅交付金で応援できる仕組みができておりますんで、そういったものを駆使して前に進めていきたいと考えております。
  113. 前田武志

    ○前田武志君 税制の対応もやったし、それから地域住宅交付金ですか、あれの何か二割方ありましたね、自主的に何か提案する、こういったものを組み合わせると同時に、もっとこちらの方に使いやすいふうに政策を進化させていただきたいと、こういうふうに思います。  続いては、そういうことを通じて住宅の価値が上がってくる、上がってきたその住宅は、したがって、先ほど来議論していたような背景の中で、貸してもいいよというふうにオーナーが考えたときに、それを何らかの流通市場の情報ネットワークに載せるということが必要になってくると思うんですね。その面で、既に不動産流通近代化センターなんかが考え始めているというようなこともちょっと聞いてはおるんですが、どのような今現状にあるのか、さらにどういう方向を目指そうとしておられるのか、お聞きをいたします。
  114. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) ポイントは、やはり既存住宅がきちんと流通をして、住み替えるという形で価値を生かして使われるということでございますんで、何といっても中古住宅市場とそれから賃貸住宅市場整備ということになります。  中古については、中古を点検をしてその性能を表示すると、住宅性能表示制度で既存住宅の性能表示ございます。これはまだまだ非常に初歩的な段階なんで充実させる必要がありますけれども、その制度を生かして使うということと、それから中古の価値の査定ですね、宅建業者が中古住宅の価格を査定する際に、何年以上になったらもう上はゼロなんだと、あとは土地の価格だけなんだというふうに一律にやらないで、きちんと上物を見て、価値があるものは価値があるものとして評価されるというように、価格査定マニュアルも中古住宅の質とかあるいはその管理状況を見て評価するというように査定項目追加しましたし、さらに、先ほど税制の例を申し上げましたけれども、住宅金融公庫のローン、それから住宅ローン減税ですね、耐震改修促進税制ではなくて住宅ローン減税、いずれもかつては戸建て住宅ですと建てて二十年間に限るとかこうしていたんですが、その要件を古くてもいいと、ただし新耐震の基準に合っていることを証明して出てきてくださいと、そしたら住宅金融公庫のフラット35も使えます、それから税制も使えますというふうにしております。  それから、長く使っていくという観点では、特にマンション、共同住宅については、できたときの設計図書とか修繕の履歴とか、そういうことが大事ですんで、そういった情報をシステムとしてストックしてお客様に見ていただくというようなことに取り組んでおります。  それから、賃貸は、取引の現場でのいろいろなトラブルを未然に防止するという観点からの市場整備は、標準賃貸契約書とかいろいろな紛争解決のためのマニュアルなんかこう整備してきたんですが、今御議論になっている一番のポイントが高齢者のストックをきちんと活用するということですので、先ほどもちょっと触れましたけど、モデル的に高齢者の持ち家を賃貸市場に出すと、そのときに定期借家の制度も使うというようなことを取りあえず三年間のモデルでやってみようということで取り組んでいるところでございます。
  115. 前田武志

    ○前田武志君 今具体的ないろんな施策について説明がありましたが、そういうことで住宅の、自分の家の価値を高める、高齢化しても住みやすい、それから強度的にも耐震対応ができている、そうなれば、もうオーナー自ら、中の住宅の雰囲気そのものも良くするようにいろいろと改修も進めるでしょう。  そして、それが貸してもいいということになると、そのモデル事業で指摘されたように、賃貸の流通市場に情報として載っける。そうすると、ライフステージに応じて、子育て世代がその団地の老夫婦が入っているところ、そこへ住みたいですよと。そして、その地においてコミュニティーの再生のために子育て世代に対する支援措置として家賃を、そこへ住む場合には家賃をある程度補助しましょうということになってくるとかみ合う。そして、三年なり五年なりの定期借家権付きで貸すわけですから、オーナーさん心配要りませんよと、五年たてばきちっと返ってきますよと、あるいはそのときに改めてまた契約し直すということもできるんですよということになると、これは動き始めて、そして多少の実績が出ると。  それを見ているその近所のオーナーたちは、あっ、なるほど自分の家もこれは資産価値があるんだと、ちゃんと整えてそのネットワークに載せれば貸せるんだと、貸したいときに。ということになると、もうそれだけで多分気持ちの上では、今まで、いやいや、これから老後も年金も厳しいし、ますます厳しく政府はやってくるし、しかも貯金もどんどん減っていくし、しかし、あっ、そうだ、この私どもの家が資産価値が出てきているんだというふうになれば、もう俄然違ってくると思うんですね。孫たち連れてたまにはごちそうしにも行くでしょうし、旅行ぐらいも行けるでしょうし、全然違ってくる。  そういった意味でも、この政策を是非もっと積極的に進めるこの新しい法律というのがその契機になると期待をしておりますが、大臣、いかがでしょうか。
  116. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 高齢者のお持ちの中古住宅を若い方々が使っていただけるような、こういう中古住宅市場というものをしっかりとつくっていくと、そのために政策誘導していくということは、今日の前田委員のお話から、本当に非常に重要なことであるというふうに思います。
  117. 前田武志

    ○前田武志君 ということで、貸せるという、価値が出てきて貸せるということになれば、それはすなわち売買という、中古そのものが家そのものに非常に大きな価値が出てきて、住宅取得層というのが減っていく、高齢者が増えていくという中で中古市場というのが動き始めるんだろうと思うんですね。  この辺についてはもうこのぐらいにいたしまして、木造住宅の面に行きます。  実際の持ち家のほとんどが木造であるということですが、この場合に、一つは、木造というものについてのイメージというのが必ずしも良くない。それは、もう木の文化がどうも伝わらなくなった。  ここにおられる先生方は大体伝わっているんだろうと思うんですが、昨日私がこの質問取りで各省の若手の幹部の方々とお話をしていたときにふっと気が付いて、今どこに住んでいるの、官舎です、マンションを借りていますと。床の間はあるかいと、こう聞いたら、皆さんありませんでしたね、そういう借家には。かく言う私の宿舎も床の間はないんですね。これでは木の文化は伝わりませんよね。政策を担当している中核になっておられる方々自身が木の文化の雰囲気にないんですよ。これは問題ですよ、大臣。  そこで、私が質問に立つたんびに木の文化の振興を議論するものですから、今日も木の文化の方に行きたいと思うんですが、環境省、来ていますか。来ていますね。  小泉総理は、地球環境問題については非常に熱心な取組を、G8においては、国際的にはされているんですね。国内に帰ってきてどうかなというのは私はまだ疑問に思うところもあるんですが、いずれにしろ、だけど世界に出ていって小泉総理がこの環境問題でリーダーシップを取られるというのは非常にいいことです。  それで、グレンイーグルズ・サミットにおいて、何ですか、違法伐採、違法伐採木材というのは使わないようにしようと、地球環境を悪くしているこういうものは、先進国お互いに協力し合って使わないようにしようという取決めをしたわけですね。それに伴ってグリーン調達制度というものが多分各国で取られるようになったと承知しておりますが、日本のグリーン調達制度、今、簡単で結構なんですが、どういうことなのか。
  118. 桜井康好

    政府参考人(桜井康好君) 今委員の方からお話ございましたように、平成十七年の七月にイギリスで開催されましたG8のグレンイーグルズ・サミットの成果を踏まえまして、我が国は日本政府の気候変動イニシアチブというものとして違法伐採対策に取り組むということを表明いたしたところでございます。  これを受けまして、政府調達における対応策を関係省庁と連携して協議いたしました結果、本年二月十五日に林野庁の方で木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドラインを策定をしていただきました。また、本年二月二十八日には、今委員の方からお話のありました、国において調達を推奨するいわゆる環境物品の品目あるいは判断の基準というものを定めますグリーン購入法の基本方針を改定いたしまして、その中で紙類ですとか文具類、あるいはオフィス家具などの機器類、さらには公共工事に使う材料に関しまして、その原料となる木材が原産国の森林に関する法令に照らしまして合法に伐採されたものであるということを基準に盛り込んだところでございます。  新年度以降、政府といたしましては、この改定されました基本方針に基づきまして、合法性の確認された木材製品を供給体制の整ったものから調達を進めるというふうにしているところでございます。
  119. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、このグリーン調達制度に基づいて、やはり木材の使用ということについては、公共面に限っているわけでございましょうが、国土交通省においては随分と使っていると思うんですね。  国土交通省において、実際にこのグリーン調達制度にのっとってどういうような今対応をされているのか、お聞かせください。
  120. 中島威夫

    政府参考人中島威夫君) 公共工事の中での木材の使用についてのお尋ねでございますけれども、国土交通省の直轄工事におきまして、これまでもグリーン購入法の基本方針に基づいて間伐材などの調達を推進しているところでございますけれども、特に今御指摘の違法伐採問題について、私どもも地球規模での環境保全とか持続可能な森林経営に影響するものでございますので、その対策について国土交通省としても大変重要な課題というふうに認識しておりまして、先ほど環境省の方からお話ございましたグリーン購入法の基本方針に基づきまして、間伐材以外の木材の調達におきましては、合法性が証明された木材の調達を推進するということを進めておるわけでございます。  この合法性の証明の確認方法につきましては、これも先ほど環境省の方から御説明がございましたけれども、林野庁で作成されました木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン、今年の二月の十五日のものでございますけれども、これに基づきまして、各工事現場において木材を調達する請負者から提出された合法性の証明書、これを発注者が確認することによりまして合法性が証明された木材の調達を推進することとしておるところでございます。
  121. 前田武志

    ○前田武志君 去年完成したあの官邸、総理官邸、あれは国土交通省営繕部でしょう。予算委員会で聞いておりましたら、時の細田長官が、いやあ、新しいところに入ったら目がちかちかして、何かシックハウス状況にちょっとなったようでございますね。多分、合板だとかそういったものを使っておるはずですよ。合板ということになってきたら、ほとんどはこれ外材ですよ。  そのところでお聞きをするんですが、林野庁に。日本の材木における輸入材木と、そして国産材の割合、それから輸入木材の中で違法伐採由来、なかなかこれはつかめないと思うんですが、いろんな想定があります。違法伐採由来というのが何割ぐらいあるのか、教えてください。
  122. 石島一郎

    政府参考人(石島一郎君) 木材の輸入と国産の比率についてのお尋ねでございますが、平成十六年におきまして国産材の自給率が二割をやや切るような水準にございます。また、違法伐採による、輸入材のうち違法伐採のものがどのぐらいあるのかという部分でございますけれども、違法伐採につきましては、まずそれぞれの国の法令に違反して行われている伐採という形でございますので、なかなかこの実態を把握するのが難しい状況にございます。  例えばインドネシアにおきましては、イギリスとインドネシア両政府の合同調査によりますと、生産される木材の五〇%以上が違法伐採木材であるという報告がございます。また、ロシアにつきましては、生産される木材の二〇%が違法に伐採されているという環境NGOの報告も出ております。  こうした地域におきまして違法に伐採されました木材がどれだけ我が国に輸入されているのかという点につきましては、統計的な数値ということになりますと、違法に伐採された木材を識別する方法がございませんものですから、なかなか把握ができていないという実態にございます。
  123. 前田武志

    ○前田武志君 そこで、違法伐採というよりも、要はこの総理官邸においても、ちょっとこれは私の主観で言っているわけですから余り気になさる必要はないんですが、かなり臭いなと思うんですね。本来ならばそういうところはそれこそ我が吉野杉の白無垢ぐらいで内装なんかをやってもらえばいいんじゃないのかなと、こう思うんですが、まあ秋田杉もあるだろうし、木曽ヒノキもあるでしょう。  まあそれはそれとして、木の文化がだんだん伝わらなくなってきているものですから、これからの新築なんということになってくると、床の間もない、木の使い方も分からない。しかし、若い世代の方々に聞いてみると、やっぱり木はいい、木は好きだという人たちが圧倒的ですよ。  そこで、今のお話にもあるんですけれど、要するに木材というのは上流の方に行かないと情報はないんですよね。上流というのは、エンドユーザーは、我々、家を造り、リフォームをし、住む消費者なんですね。その一つ上が工務店、大工、棟梁、そしてその上が木材の流通業、市場があって取引している。もうその段階ぐらいになると、その木材が北側大臣の豪邸に使う木材とはだれも意識していないわけですよ、もしも豪邸を建てられるとしてですよ。更にその上に行くと、市場の上にはこの流通業者が、素材業者が山と市場を結びまして、そしてその上に森林家がいる。幾重にもこの木材というのは、流通過程を経て、その間に輸送があって、積替えがあって、ストック、貯蔵があって、そしてやっとでエンドユーザーに届くころには、この木がどこから由来してどういう木だというのがもう情報としては伝わらない。私はもういつも林野庁に言うんですが、駄目なんですよ。これは無理もないんですけれどもね。この上の方の、上流側の責任官庁ですから。エンドユーザーは国土交通省であり、そして経済通産省なんですよ、建材であったり家具であったり。そこは別に木材に対して、あるいはこの地球環境上、日本の木をしっかり使おう、木の文化を振興していこうという責任は全くない。結局は縦割りの行政のすき間に落ち込んでしまっている。ところが、ゆゆしき問題で、二千八百万戸、九百万戸のこの戸建ての、このそれぞれの家というのはほとんどが木造で、そこに実は木の文化が伝わっていって、住宅ではなしに、住環境といいますか、住生活というか、その豊かさにつながっていくわけですから。  ところが、いよいよ、いろいろ業界の方に聞いてみますと、業界というのは各産業界、この木材、住宅関係ぐらい、まあ一種ハウスメーカーなんかは随分と大きなロットでやるわけなんですが、この戸建ての住宅等を含めて、この木材、これほど合理化が進んでない業界はないと言うんですね。まずは情報が本当に共有されてない。そこに対する、もう少し私は、少なくとも林野庁と国土省、特に住宅局、ここについてやっぱり責任を感じにゃいかぬと思うんですね、この新しい住生活基本法を出す以上は。  で、そこに実はICチップみたいなものを山元で伐採して丸太で切り出したときにぽんと付ける。それを流通過程でずうっと、末端のエンドユーザーまでそこの情報が、その後どういうふうになってきたかというのも全部加味されてごく安くそういう情報がエンドユーザーまでつながるという画期的なシステムが今研究され始めて、割と早い段階に実用化するのではないかと思います。この辺については何か把握しておられますか、林野庁。
  124. 石島一郎

    政府参考人(石島一郎君) 現在、ICチップ又は二次元のバーコードなどを使いまして木材の流通過程を把握する仕組みについての研究、取組が行われていることは承知しているところでございます。
  125. 前田武志

    ○前田武志君 まあその程度でしかしようがないんでしょうが。是非、国土交通省、住宅立場から林野庁と協力し合って、こういったものの技術開発、何条かに書いてありますよね、流通、情報、そういった面で整備をしてください。  時間が迫ってまいりました。最後の質問としては、一つは……(発言する者あり)これは失礼いたしました、もう終わっているようでございます。  それでは最後に、大臣にお尋ねいたしますが、我々の住んでいる住宅がまさか違法伐採、地球環境を悪くしているようなそんな木材でできた住宅だということにならないように、是非御指導を願いたいのと、やはり何といっても、総論、最初に戻りまして、それぞれの持家というものがこの価値を高めて、そしてすばらしい誇りに足る住宅になるように、是非この法律を基に御指導を願いたい、御決意を聞いて、終わります。
  126. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) この住生活基本法案で、第七条の二項で、住宅の建設における木材の使用に関する伝統的な技術の継承及び向上を図るため、これらの技術に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずると、このような規定を基本理念のところに入れさせていただきました。また第四条では、地域の自然、歴史、文化その他の特性に応じて、環境との調和に配慮するということも理念として掲げさしていただいたわけでございまして、私は、今後の住宅政策において、木造住宅供給をしっかりできるように環境条件を整えていくこと、これはもう非常に重要な課題であると思っています。  そもそもこの条項がこのような形で基本法案の中に入ったのは、長年の前田委員の本当に御主張が私は実ったものだというふうに思っているところでございますが、しっかりとこの精神にのっとって、林野庁ともよく連携取って、木造住宅供給がしっかりされるように取り組んでいきたいと考えております。
  127. 前田武志

    ○前田武志君 終わります。
  128. 西田実仁

    ○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。また今日もよろしくお願い申し上げます。前回は総論的なことも含めて全般的にお聞きした面もございましたので、やや各論に絞って今日はお伺いしたいと思います。  まず最初に、住宅のいわゆるセーフティーネットということでございます。先ほど小池委員からもございましたとおり、一番大事なことはやっぱり公平公正ということであろうと私も思います。そのためには、きちっとした実態を把握をして、ルールはルールとしてきちっとあるわけですから、その状況を把握していくということが何よりも大事ではないかというふうにも思っております。とりわけ、この公営、公団等の公的な賃貸住宅に関しまして、居住する居住者の皆さんの実態把握ということについてお聞きしたいと思います。  今日もたくさんお見えになっていらっしゃいますけれども、自治協の皆さんにおかれましては、三年ごとにそこに住んでおられる方の年齢とかあるいは収入等の実態を踏まえた調査というものがなされているわけでございまして、一方、政府におきましては、政府の指定統計において五年ごとに住宅統計調査というのが行われているというふうに承知しております。  今住生活基本法におきましては、二十一条におきまして様々、関係の機関に対して報告を求め、また毎年度その報告の概要を公表するというふうにも定めておりまして、まず大臣に、この二十一条を踏まえまして、特に住宅セーフティーネットに関しまして実態を把握するということについてのお取組についてお聞きしたいと思います。
  129. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 実態把握につきましては、私どもだけではなくて、総務省含めまして、政府として様々な統計調査をやっております。これで的確に掌握するということに尽きるわけでございますけれども、まず一番の基本統計がやはり御指摘いただきました五年に一度実施される住宅・土地統計調査でございます。それから、毎年度実施しております住宅市場動向調査、それからフローの数字につきましては、これは悉皆調査でございますが住宅着工統計などもございますんで、こういったものを使いながら、加工もしながら住宅事情の的確な実態の把握に努めているところでございます。
  130. 西田実仁

    ○西田実仁君 この毎年度報告するということでございますが、ちょっと話題が今の実態把握ということとはずれますけれども、ちょっと今日一つお聞きしたいことがございます。運用に関しましてですけれども、お聞きしたいと思っております。公営住宅法に関してです。  この住生活基本法の第六条におきまして、もう言うまでもなく、「住宅確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保」というふうにうたっているわけでありまして、この中に特出ししてとりわけここで明記はされておりませんが、私はここで取り上げたいのは、いわゆる親御さんのいらっしゃらない、身元引受人のおらない養護施設の卒園者に対する住宅供給ということであります。  既に私も別の委員会で質問させていただいたことがございますが、私の地元埼玉にもこういう方が多くいらっしゃいまして、先日も相談を受けたところであります。  親御さんのいらっしゃらない、身寄りのない方でありますので、当然施設に入っておられる。そして、中学を卒業するまではその施設から通っているわけでありまして、基本的にはそこが機関として保証している。ところが、中学を卒業して社会に出よう、あるいは高校を卒業して社会に出ようとしたときに、未成年になるわけでありまして、この未成年者の身元保証人制度が今この日本にはないという状況の中で、就職するのも大変である。保証人がないとなかなか就職というのは難しい。また、就職のみならず、家を借りるということも実はまだ今の日本の制度でおきますとかなり難しい。  そうした結果そういう方々がどういうふうになっていくかというと、非常に選択肢が狭められる。すなわち、社宅が用意をされていて、そしてその会社が、就職する会社が保証人になってくれるところということに必然的に行き着くわけであります。そうしたところで大変に好意的な会社があればそこで長く勤めることができるわけですけれども、中には大変に、家も、住まいもあるいは職場もともに保証人になっていただいているということで、大変に、良くない社長さんなんかですと足元を見られてしまうような形になって、大変に過酷な労働を強いられてしまって、その後そこを辞めてしまった場合に、じゃどこに行くかといっても、やはりまた同じような保証人になってくれる、社宅もあってしかも会社が保証してくれるというところはそうはないわけでありまして、せっかく能力もありまたやる気もあるそうした卒園者の皆さんが、養護施設の卒園者の皆さんが非常にもう若いころから選択肢を狭められている、そういうことがございます。  そこで、こうした身寄りのない未成年の児童養護施設の卒園者の皆さん、こうした方々が、例えば公営住宅に入るようにしたらどうかという、そういうことを市町村でもいろいろと検討しているところが実はございます。しかし、この公営住宅法を見ますと、まずその第二十三条のところの第一項に、簡単に言えば単身者は駄目だというふうに書いてあるわけでありまして、単身者が駄目というのは、しかしそれは一つの条件ですが、政令で定めればこれは単身者でもいいということが書いてあるわけであります。  では、政令にはそうした項目があるかというと、今はないということでありまして、公営住宅、市営住宅、あるいはまあ市営住宅等で空きがあって期限付でそういったところに入る。期限付というのは、すなわち未成年の間だけですから、中学卒業した人であれば五年、高校卒業した人であれば成年になるまでの二年ないし三年。その未成年者の間だけでもこうした公営住宅に入ることができるような、そうした運用ということも私は大事ではないかと思いますし、それが住生活基本法のこの第六条に掲げられております「住宅確保に特に配慮を要する者」に正に当たるんではないかというふうに思うわけでございますけれども、御見解をお伺いいたします。
  131. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 公営住宅は、民間の賃貸住宅市場でなかなかちゃんとした居住、的確な居住確保できない低額所得者に対して住宅供給するということでございます。基本的には、何といいますか、住宅という観点から世帯単位に住宅供給するというのを法律上の原則としております。これはしかしあくまでも原則でございます。したがって、例外的に特に配慮をする必要がある属性を持った単身者についても入居が認められるという仕組みになっておりまして、法律と政令の構成は御指摘いただいたとおりです。政令では、例えば障害者あるいはドメスティック・バイオレンスの被害者とか、そういったものを限定的に列挙しているところでございます。  そういうことから、今現在の私どもが持っております公営住宅の枠組みでは、養護施設の卒園者を単身で公営住宅で引き受けるということはできないわけでございます。  保証人の問題は確かに非常にクリティカルな問題だと思います。なければ民間住宅に入居することも難しいわけでございますけれども、自分でおうちを借りて住むということになりますと、もちろん前提としては、自分が仕事を持っているということが前提になりますので、私どもが調べている限りでは、定職を持った人であれば民間サービスで保証サービスもあるというふうに聞いておりますので、そういうふうな形で進めると。特に民間の賃貸住宅を円滑に、民間の賃貸住宅に入居できるような環境整備は、この養護施設等卒園者のことを念頭に入れてもいろいろ施策を拡充する必要があると思います。  それから、これを公営住宅におけるその特に配慮を要する者として位置付けて単身で入居させるかどうかということについては現在では非常に厳しいとは思いますけれども、世の中の変化住宅に困っている方々の態様が非常に多様化しておりますんで、公営住宅が担うべき役割があれば、どういう形があるのかというのは一つの検討課題として、困窮者が多様化してきている、それにどうこたえるかという観点から検討を進めていきたいと考えております。
  132. 西田実仁

    ○西田実仁君 今いろいろ格差ということが話題になっている中で、小泉総理も、小泉政権といたしましては、格差が固定化することは良くないことであるという、そしてどうしても自分だけでやっていけない人に対しては国としても支援の手を差し伸べていく、こういう基本方針が既に指摘されておりますし、私もそのとおりであろうというふうに思うわけであります。そして、このことに関しましては厚生労働副大臣にも先般私質問をさせていただきまして、すなわち児童養護施設の卒園者に対する公的な身元引受保証制度、これを検討していこうということであります。  今、住生活基本法という、正に住宅の憲法、住まいの憲法というものを議論をしている中で、今の私も御指摘しました第六条でございます。ここには、低額所得者とか、被災者とか、高齢者、子供を育成する家庭ということが列記されていく中で、その他住宅確保に特に配慮を要する者と。私は正に、今のこの児童養護施設の方々というのは、もちろん民間で借りることができれば私はこんなことを申し上げないわけでございまして、実態として大変にそれが難しくなっており、そして本人の努力とかいうこととはかかわりなく、大変に選択の条件が狭められているという、こういう状況を申し上げたわけでございまして、住生活基本法の第六条の精神にのっとって、やはりきちっと前向きにこうしたことも検討いただきたいと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  133. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 今住宅困窮者方々というのは、もちろん低所得者の方々がいらっしゃるわけでございますが、それだけではなくて、今住宅局長が答弁しましたように、様々な事情で住宅確保が困難という方はいらっしゃるわけでございまして、今委員からの御指摘についてもよく検討をさせていただきたいと思います。
  134. 西田実仁

    ○西田実仁君 是非検討のほどよろしくお願い申し上げます。  二つ目のテーマでございますが、これは私も前回も質問させていただきましたいわゆる伝統工法の担い手の育成ということであります。  この住生活基本法は、住宅基本法ではなく住生活になっておりますが、更に進めてこの条文等を読ましていただきますと、第七条の二項に特に顕著に表れているように、私は住生活から更に住文化というところまで踏み込んだ大変に広範な基本法であるというふうに思っております。  その住文化の、正に先ほど前田先生も御指摘されておられましたけれども、木を使った伝統的な工法も含めてしっかりと育成していく。先日の私の委員会での質問に対して局長も大きな声で言われていましたけど、棟梁ですね、棟梁たちの育成、意欲的に今取り組んでいただいていますので、今回住生活基本法が成立した暁には是非更に大きな旗印を掲げて取り組んでもらいたいと、こういうふうに熱烈な応援のメッセージをいただいたわけであります。  そこで、具体的、じゃ一体何をこの住生活基本法を基にして展開していくのかということになります。  今、既にもう行っていらっしゃる大工の育成塾というのがございまして、年間約四億円を平成十五年度から使っておりまして、毎年百人近く、具体的に申し上げますと、第一期生、ちょうど今年が卒業になります、三年でワンクールでございますので。今ちょうど卒業製作がつくばで行われているというふうに聞いておりますが、第一期生、平成十五年十月入塾した方が五十二名、第二期、平成十六年四月入塾が九十七名、百一名、八十一名と第四期まで続いております。  そこで、まずお聞きしたいと思いますが、第一期生五十二名、間もなく十月に卒業になりますが、今、現時点でこの第一期生は何人いらっしゃるんでしょうか。
  135. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 第一期生でございますが、五月現在で入塾生五十二人のうち、約五割に当たる二十七人が在籍しております。
  136. 西田実仁

    ○西田実仁君 年々、大変にこういった大工の皆さんが減っていくという状況の認識の中で、大工育成塾というものを掲げて平成十五年度から財団法人に委嘱し事業を行っているわけでありますが、五十二名入って今二十七名ということで、要するに半分、入った人の半分はやめちゃったということですね、逆に言うと。  大変に貴重な方々でありますけれども、なぜ半分もわずか三年のうち、一年目でやめたのか、二年目でやめたのか、三年目でやめたのかよく分かりませんけれども、なぜ半分もやめてしまっているんでしょうか。
  137. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) この三年のうちにやめてしまった二十五人の退塾者でございますけれども、理由はそれぞれ様々でございますが、一番大きいのは、進路の変更といいますか、自分は大工には向かぬと思ってやめてしまったと。それから経済的理由、それから健康上の理由、それから人間関係といった、やめるという塾生にいろいろ理由を問いただしますので、それを整理するとそういったような状況になっております。  なお、いつやめるかという関係ですけれども、一期生はそういう感じですが、二期生は入ったとき九十七人であったんですが、今五十四人で六割までに減っております。三期生は百一人入りましたが、今七十三人ということで約七割残っております。  そういうふうな状況でございます。
  138. 西田実仁

    ○西田実仁君 年間四億円使っている事業で大変に肝いりで始められたと思いますし、また局長の、私もいろんな書類を読ませていただきましたけれども、大変に、ごあいさつ文を送られていまして、こうした金物に頼る構法の普及に伴って伝統的な木造軸組み住宅のための大工技術の継承が危ぶまれていますということで、更に力を入れていただきたいという、そういうメッセージも送られていますね。  そういう大変に力を入れておられると思う割には、半分もやめてしまうという、大変残念である。せっかく入ってこられて、いろんな理由があると聞いておりますけれども、この五月に財団から配布されました資料が私の手元にありまして、これ読むと、ああこういう実態なのかとびっくりするわけでありますけれども、例えば塾生に対する、研修なのか労働なのかという大変難しい線引きがございます。研修ということを前提にして、そんなに多額のお金を与えてはいけないというようなお知らせが財団から発せられておりました。例えばこんなような文書がありまして、育成資金、月大体三万ぐらい支給されているようですけれども、これまでも一部の受入れ工務店が社員並みの給料を支給したために塾生が生活を乱し、退塾に至るような事態も発生しており、当財団としても憂慮していると。入塾直前まで少額のお小遣いしかもらっていなかった若者が突然多額の現金を手にするようになって生活を乱すおそれがあることは容易に想像できると。こんなような記載もございまして、実際に、ここに入って、大工になろうと思って入ってこられるんでしょうけれども、先ほど言われたいろんな理由から途中でやめていってしまうという実態があるわけであります。  私は、ここでこの入塾の条件について問いたいと思うんですが、全く仕事に今まで就いたことない、ここでいえば今までお小遣いをもらっていたような若者が、家でお小遣いをもらっていたんでしょうけれども、いきなり大変に厳しい徒弟制度のところに入ってなかなか続かないという多分実例も多いんだというふうに思うんですね。こういう業界のことも何も全く分からないで入ってこられるわけでありまして。そうした方々のみならず、その方々もいらしていいんですが、いわゆる在来工法で仕事をやって、そこを辞めた方が例えばこういうところにも入れるような、また入ることをもうちょっと進めていくということも、いろんな作法を知った上で入ってくるという意味でもっと長続きするんじゃないか、あるいはもっと花が開くんじゃないかという気もするわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  139. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 実はこの仕事の現場の状況について西田先生は熟知しておられるので、私が説明することが、若干、何といいますか、観念的だという御批判があるかと思いますけれども、一応、私たちが何を理想にこの大工育成塾を開設して運営しているかという観点から、大変恐縮ですけど、説明をさせていただきたいんですが。  何といっても、やはり現場でこの道に熟達した棟梁の魅力を前提にやっぱりこの道に進もうというふうに若者に思ってもらおうと、しかもベーシックな技術は棟梁から直々現場で学んでもらおうという、そういう入口の考えですんで、今御指摘いただきました、基本的には、年齢は二十二歳以下としておりますけれども、経験については、要するに実務経験がないこと、あるいは経験していても二年以上経験している人は対象となりませんという要件を設けているわけでございます。  実は、今御指摘になりましたような、実務経験があって仕事を失ったんで更にこの道を究めたいというレベルの方については、建設技能者の組織で設計の学科とか継ぎ手、仕口といった実技を実際に学校で訓練をする職業訓練校等もございますんで、そことの役割分担をきちんと図りながら、この道に入ってもらう入口として我々が考え得る一番いい環境を若者に用意したいということでこの制度を運用しているということを御理解いただきたいと思います。
  140. 西田実仁

    ○西田実仁君 いずれにしても、いわゆる伝統工法を継承していこうということで始められている育成塾でありますので、それが本当に実を結ぶように施策を打っていただきたいと思いますが。  その際、その入塾される方とともに、いわゆるこれは座学とともに実技がありまして、実技の方は今おっしゃっていただいた棟梁に付いて実務というか実技研修を行うわけですね。むしろそっちの方が多い。週四日ぐらいそれをやる。  その受入れ工務店の皆さんなんですけれども、これは、まあ伝統工法と一言で言っても、じゃ何が伝統工法なのかというと、様々流派があるようでございまして、私も技術的には詳しくは分かりません。分かりませんが、原則としては金物を使わないという日本古来の伝統的な木造住宅の考え方であるというふうに思うんですね。  実際、この受入れ工務店の皆さん、いろいろと見てまいりますと、本当に伝統工法をやっているのかどうかという、普通の工務店とはどこが違うのかという気もします。ですから、これは、入ってくる方に対して、今お話で、最初質問しました、今度は受け入れる方の工務店も、これはやはり政策を、本当に実を結ぼうと思えばそれなりの選定基準を持って、そして御協力いただくということが大事ではないかと思うんですね。  この受入れ工務店の選定の基準ということについて、またいわゆるこの金物をできる限り使わない、そういう伝統工法を本当に実践しているところになっているのかどうかについて、ちょっとお聞きしたいと思います。
  141. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 塾生を指導する受入れ工務店、それから指導の棟梁の選定でございますけれども、もちろん、まず伝統的な木造住宅についての技術を持っているということがまず第一でございますが、それと併せて、若い塾生を指導するということについて情熱を持っている、熱意を持っているということが大事だと思います。  したがって、受入れ工務店の選定でございますけれども、作業場とか、あるいは実際の建設の現場で熱意と責任を持って実技指導を行ってもらえるということを選定する観点から、まず第一に、伝統的な木造軸組み住宅について、技術、指導力、それから人格、見識に優れた棟梁が当該受入れ工務店にいるということと、それから、伝統的な木造軸組み住宅の実技研修に適した作業場、あるいはその具体的な建設現場を確保できるといったようなことを要件に、書類の審査と、それから工務店の経営者、それから指導棟梁に面接して審査しております。それで選定しているところでございます。  もう西田先生よく御存じのとおりでございますんで、伝統工法だけを、あるいは伝統工法を主として仕事をしているという工務店は非常に限られております。そのことは我が国の木造住宅生産の現場の現実でございますけれども、しかし、その上で、受入れ工務店に対しましては、あらかじめ伝統的な木造軸組み住宅の建設に不可欠な技術でございます規矩術とか墨付けとか継ぎ手、仕口の加工、そういった指導すべき内容を三か年にわたって、この年はこういうことを中心にということを明確に示しておりますし、定期的に塾生と受入れ工務店の双方から研修の中身、それから熟達度について報告を受けまして、適正に実技研修が行われているかを確認するといったような形で実技研修がきちんと行われるように努力しているところでございます。
  142. 西田実仁

    ○西田実仁君 もうこれで終わりますが、先ほど申し上げたとおり、財団からこの五月に発布されているところには、昨年度まではすべて指導棟梁にゆだねていたと。で、結局受け入れている工務店の方もどう進めていいのかも、あるいはその塾生に対してお金をどう払ったらいいのかとか、労災に入ったらいいのかとか、そういう非常に実は大事なガイドラインみたいなものが国から示されていないので大変戸惑っておられたというふうに聞いておりまして、それがようやくここに来てこういうふうにやりなさいという指導があったようでございまして、その辺、きちっと適正に行われて所期の目的が達成できるように、またきめ細かいフォローをお願いしたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  143. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  私は、法案の第十五条の全国計画、十七条の都道府県計画にかかわりましてまず質問させていただきます。  政府は、国民住生活の安定の確保及び向上に関する基本的な計画を定めなければならないとこの法案には規定をされています。内容も、計画期間、基本方針、目標、さらに閣議決定して、公表して、国民意見反映、関係行政機関の長と協議をし、審議会、都道府県の意見を聴かなければならないと。こうした全国計画のいわゆる手続といいますのは都道府県計画にも引き継がれていくことになる、そういうふうな条文の内容になっていると思いますけど、よく見ますと、いずれも計画策定に関して居住者の参加の規定がございません。午前中の参考人の皆さんの御意見の中からも、居住者の参加というのが非常に大事なんだという御指摘がございました。  そこでお伺いしたいと思いますけれども、なぜこの条文に居住者の参加という規定をしていないのでしょうか。居住者こそ主人公、計画策定に関与する立場に私は最もふさわしい当事者だと思いますけど、なぜ参加しないことになっているんですか。
  144. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 住生活基本計画の策定に当たりましては、関係行政機関や公共団体だけでなく、国民の皆様から幅広い意見をいただいて、これを踏まえて策定する必要があると考えております。このため、法律でも全国計画については第十五条で、その策定に当たり、インターネットなどの利用その他の方法により国民意見を反映させるために必要な措置、いわゆるパブリックコメントでございますが、を講ずべきことを規定するとともに、都道府県計画についても第十七条におきまして、その策定に当たり住民の意見を反映させるために必要な同様の措置を講ずべきことを規定しているところでございます。
  145. 小林美恵子

    小林美恵子君 いわゆるインターネットですね、それから、その他の方法というのはパブリックコメントだというふうにおっしゃいました。それはつまり、住民の皆さんが確かに意見はそういうものを媒介にして言うことはできるかもしれませんけれども、双方向ではございませんね。  私は、この委員会でバリアフリー法が成立をいたしましたけれども、あの場合、市町村が基本構想を決める際には高齢者や障害者などの当事者の参加というのが条文に規定をされていたというふうに思います。住まいに関しての当事者である居住者参加が規定されないのは、あのバリアフリー法との関係からいっても、矛盾しているのではないでしょうか。
  146. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 住生活基本計画全国計画は特にでございますが、この性格にかんがみまして今のような規定を設けているわけでございますが、実務的にはパブリックコメントをいただきました意見は、それについて、計画に反映させるべきものはもちろん反映させますし、反映できないものについては、こういう理由で反映できないということを整理した上で社会資本整備審議会の御審議もいただきます。いろんな方々に参加していただいております社会資本整備審議会に、パブリックコメントの結果、立案しております基本計画の案との関係について資料を付した上で先生方の御意見を伺います。なおかつ、そのこと自体、国土交通省のホームページで国民の皆様にお知らせすると、そういうことを実務的に手続を取りますので、この十五条の措置、あるいは十七条の措置が単に一方向の措置だということではないというふうに私どもは考えております。
  147. 小林美恵子

    小林美恵子君 いや、私はやっぱりどう考えてもそれは双方向ではないというふうに思います。  バリアフリーの場合は、要するにみんなが参加できるわけですよね。インターネット、パブコメだけではございません。ですから、私はやっぱり住まい中心となる住民の皆さんがきちっと参加ができる、そういう場がこの計画を作る際にも必要だというふうに思います。  改めて大臣に、住民の声が反映されて住民が参加できる場が保障できるということが必要だと思うんですけど、大臣、その点しっかりと保障していただきたいと思うんですけど、いかがでしょうか。
  148. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 今住宅局長が答弁したとおりでございまして、いずれにしましても、全国計画も都道府県計画国民意見を反映するために必要な措置を講ずるというふうに明記をされているわけでございまして、大切なことはこの中身、実態であるというふうに思っております。
  149. 小林美恵子

    小林美恵子君 なかなかそうはならないんですけれども。  では、次に公共住宅供給の問題について質問させていただきます。  全国計画内容の中に、これも公共住宅という文言の規定がございません。前回の委員会で私は、六条の居住の安定確保で、低額所得者、被災者、高齢者、子供を育成する家庭その他住宅確保に特に配慮を要する者の居住の安定確保は、この条文上の保障というのは当然だというふうに申し上げました。その理念は、同時に国民全体にすべきではないかというふうに質問をさせていただきましたら、大臣はそのことは三条からの規定に入っているというふうに答弁をされました。  そこで、私は大臣にお伺いしたいと思います。では、なぜその理念の実施の計画となる全国計画の規定に公共住宅供給を入れていないのでしょうか。
  150. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 私どもは、公共住宅供給も明確に位置付けられているというふうに考えております。  第六条で、今委員のおっしゃったように住宅セーフティーネットについて規定をさせていただきまして、これを受けまして、この第六条というのは基本理念でございます。この基本理念を受けまして、第十五条、そして十七条でそれぞれ全国計画、都道府県計画の規定があるわけですが、この十五条で申し上げますと、その第二項の一号で計画期間、二号で基本的な方針、三号で目標、そして四号で前号の目標を達成するために必要と認められる住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策であって基本的なものに関する事項というふうに規定をしているわけでございます。  あくまで、この住宅困窮者のための住宅セーフティーネット確保することは住宅政策の極めて重要な使命の一つでございまして、そして今申し上げたように、国及び地方公共団体が講ずべき基本的施策として公営住宅供給や高齢者向けの賃貸住宅供給の促進など規定をしているところでございます。  いずれにしましても、公営住宅等の供給がこの基本法案の中には明確に位置付けられているというふうに考えております。
  151. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、大臣がおっしゃいましたその内容といいますのは、つまり、やっぱり公営住宅及び災害を受けた地域の復興のために必要な住宅、高齢者向けの賃貸住宅及び子供を育成する家庭向けの賃貸住宅、それは大変大事なことだというふうに思いますけれども、公団、公社を含む公共住宅にはなっていないというふうに思うんですね。  そこで、私、大臣公営住宅のことは位置付けているというふうにおっしゃいました。その点についてお聞きしたいと思いますけれども、都道府県計画公営住宅供給目標を持つというふうになっております、この条文ね。既に住宅建設計画法が廃止されて、地域住宅計画を現に策定することになっていると思いますけど、この計画を今策定している都道府県は何県で、その際のいわゆる公営住宅、公共住宅の新規建設戸数は幾らになっているんでしょうか。
  152. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) まず、昨年制定していただきました地域住宅特別措置法に基づく地域住宅計画でございますが、これは地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅整備などを地域の自主性、創意工夫を生かして計画的に進めるために公共団体が作成することができることとされたものでございます。国は地域住宅計画に基づく事業等の実施に要する費用に充てるために地域住宅交付金を交付することができるというふうに法律で定めていただきました。  この地域住宅計画ですが、昨年度末現在、すべての都道府県で作成されております。  それから、地域住宅計画における目標でございます。これは、公共団体が独自に設定した目標目標を達成するために必要な事業に関する事項、これを法律に基づいて地域住宅計画に掲げていただくことになっております。それに基づいて交付金を交付するということになるわけでございますが、地域住宅、地方公共団体の……
  153. 小林美恵子

    小林美恵子君 戸数です。
  154. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) ええ、今そのことを申し上げます。  自主性、裁量性を尊重する観点から、地域住宅計画に個別の、具体の箇所等は特定しないで、事業種別あるいは概算事業費を記載することをもって足りるとしております。したがって、公営住宅の建設戸数自体は必ずしも明らかにされておりません。ただし、予算のヒアリングを通じて、平成十八年度の公営住宅の建設戸数としては、地域住宅交付金によるもの、経過措置による補助金によるもの、合わせて二万戸程度となっております、十八年度で。
  155. 小林美恵子

    小林美恵子君 そうですか。地域住宅計画の中では幾らかということははっきりはしないと。で、予算上からいくと算出できるという数字が出されてこられましたけれども、私、地域住宅計画を掲げてこの建設戸数が調べられないというのは、いわゆる公営住宅の、公共住宅の建設を重視してないからだというふうに言わざるを得ないというふうに私は思うんです。  それで、実際に地域計画を見ますと、例えば大阪府大阪市の地域住宅計画では二〇一一年度まで府市合わせて一万二百戸の建て替えはしますけど、新規建設はございません。一方、昨日締め切られました大阪府の募集の資料を見ますと、応募倍率は、府営住宅の資料を見ますと、応募倍率は二百七十四倍、三百六十七倍、四百五十一倍の地域がございました。  さらに、香川県ではどうかといいますと、香川県は、これ三月十四日NHKテレビが、驚き、香川県が既存県営住宅を大幅削減かということで放映されたものでございますけれども、香川県は現在の公営住宅を六千四百七十八戸を二千百七十八戸減らして四千三百戸にすると。削減対象団地は十六団地で、九団地は全戸削減です。  私、公営住宅を強調されるんでありましたら、こんなに応募倍率が多いところで新規建設はなし、ましてや三分の一も削減させてしまうという、こういう事態はやっぱり是正すべきだと思いますけど、この点、大臣、いかがでしょうか。
  156. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 先ほど、地域住宅計画の御質問でしたんで答弁いたしましたけれども、今お願いしております住生活基本法に基づく都道府県の住生活基本計画では、当然、公営住宅供給量の目標を掲げていただきます。それは国と協議をした上で都道府県計画では目標を確定していただきます。  国が協議をする際の基本的な考え方は、先ほど大臣から御説明がありましたとおり、住生活基本計画全国計画の中で考え方をきちんと整理をいたしますので、ただいま香川県の例も御紹介いただきました、私どもの対応方針としましては、まず住生活基本法に基づく都道府県計画の策定について、公営住宅供給目標量をきちんと掲げていただきますので、その協議の中できちんとやり取りをしたいと思います。  それから、廃止される場合は、用途廃止は、国の、大臣の承認を受ける必要がありますので、この二つの局面できちんと県の考え方を聞いて、国の公営住宅政策セーフティーネット構築の運用の方針に照らして適切に対応していきたいと考えております。
  157. 小林美恵子

    小林美恵子君 局長、そういうふうにおっしゃいましたけれども、今の事態を私は本当に適切に直ちに是正をしていただきたいというふうに思うんですね。  例えば香川は、本当に高齢者が多くて、六十五歳以上の世帯主の家族が四分の一を占めておられるそうでございますけれども、十二万三千円以下の世帯は全体の約六八%を占めているというふうに指摘をされています。こういうところで、削減の計画が出されているわけですよね。  で、大阪府も先ほど申し上げましたけれども、倍率は相当高いのに一戸も建設をしないという、もうこれはやっぱりしっかりとこの住生活基本法の中で公営住宅ということを都道府県としっかり供給目標を立てるというんだったら、今のこの事態をまず是正してこそこの条文は生きてくると思うんですけど、是正するかどうか、これは大臣いかがですか。
  158. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) この第十七条の二項の五号で、都道府県計画の中で公営住宅供給目標量が出てくるわけでございますが、この設定に当たりましては、国とその当該県との間で協議をいたしまして、そして国が同意するという手続を踏むわけでございます。  また、そもそも公営住宅法の中には、第三条だったと思いますが、地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意して、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅供給を行わなければならないと、こういう規定が明記をされているわけでございまして、都道府県との協議をしっかりさせていただいて必要な住宅セーフティーネット、その核となるのがこの公営住宅でございますので、必要な住宅セーフティーネットが構築されるようにしっかり協議をしてまいりたいと思います。
  159. 小林美恵子

    小林美恵子君 私、本当にきちっと協議をしてしっかりと供給をしていただきたいと思うんですけれども、内閣府の調査によりましても、二〇〇四年十一月の調査では、住宅に関する世論調査で、住宅確保については行政が役割を果たすべきだというのが七割を占めています。私は、やっぱり国も自治体もこの声にこたえなくちゃいけないというふうに思うんですね。  それで、この間、公共住宅の問題で供給しようと思えば財源の問題も出てくるという点で、前回の委員会大臣は財源問題について触れられました。私は、お手元にその住宅予算についての推移を資料を配付をさせていただきましたけれども、この間、二〇〇二年度から二〇〇六年度でいきますと、住宅対策予算すべてにおきますと、九千二百七十八億円から二〇〇六年は七千百七十五億円と減少しています。さらに、公営住宅関係の予算でいきますと、三千七百三十九億円から二千百十六億円でございます。  私は、やっぱり国の予算の中で、日本の場合は大変、歳出の中でも占める割合というのは、住宅予算の占める割合は二%というのが午前中の参考人の方からの御意見もございました。ですから、やっぱり一つは予算を確保すると、そうしてしっかりと供給をしていくということが私は重要だというふうに思いますけど、この点、大臣、予算をしっかり拡充するという点ではいかがでしょう。
  160. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 十八年度予算におきましては、公営住宅関係予算として地域住宅交付金等により二千百十六億円を確保しているところでございます。今委員の方から資料が示されましたが、これ委員も御承知のことと思いますけれども、この平成十七年、十八年度は、例の三位一体改革に関連いたしまして、公営住宅関係予算の一部が税源移譲なされました。その税源移譲額も含めて平成十四年度と十八年度との予算を比較いたしますと、公共事業全体では〇・八七倍なんですけれども、公営住宅関係予算では〇・九〇倍ということで、全体よりも少し多めになっているということも是非御理解いただきたいと思います。
  161. 小林美恵子

    小林美恵子君 全体よりは多めになっているといいましても、実際の額面上では、額では減額をされているわけですから、ここを大臣、ここをやっぱり真摯にとらえないといけないんじゃないでしょうか。きっちりここを増額して国民の皆さんに本当に安くて質の良い公共住宅供給する、そういうことを約束せずしてこの住生活基本法は本当は確立しないんだということを私は強く申し上げまして質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  162. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上でございます。  かつてバブル期には地上げによる強制立ち退きの事例が多発をいたしましたが、今日では都市再生の名による強制退去があり、公共住宅の建て替えによる事実上の立ち退きも起きているのです。公営住宅においても安心して住んでいられない状況が生じつつあります。  また一方では、民間賃貸住宅経営者の約四分の一が入居者を限定をしているとの調査報告もございます。特に、高齢者、障害者、それから小さい子供のいる世帯など、社会的弱者が対象となっております。  このような差別について、国土交通省は居住差別についてどのように対応されようとしているのか、お伺いをいたします。
  163. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 財団法人の日本賃貸住宅管理協会が今年の四月に行いましたアンケート調査でございます。その結果によりますと、約一六%の民間賃貸住宅経営者が高齢者、障害者、外国人等について入居者限定を行っているとしております。これらの方々が安心して民間賃貸住宅居住できる環境整備するということは、御指摘のとおり大事な課題だと考えております。  このために、平成十三年のことでございますけれども、高齢者の居住の安定の確保に関する法律を制定していただきました。高齢者の入居が可能な民間賃貸住宅に関する情報を幅広く提供するといったような取組を行ってきております。  さらには、今年度からあんしん賃貸住宅支援事業という制度を創設いたしまして、公共団体、NPO、社会福祉法人、関係団体と連携しまして、高齢者、障害者、外国人、子育て世帯などを対象に入居可能な民間賃貸住宅に関する情報提供、それから様々な居住支援などを行うことで入居の円滑化と、それから貸主の方からすれば安心できる賃貸借関係の構築と、これを支援していくこととしております。  今後とも、事柄の性格に応じて福祉施策と緊密に連携して、民間賃貸住宅を有効に生かしながら、重層的かつ柔軟な住宅セーフティーネットの構築に努めてまいります。
  164. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策の方向性や具体的内容は、各地域における気候、地形、歴史、文化、経済などで異なると思っているのですが、法律において基本的理念を全国一律の内容で記述することは適当とは言えないのではないかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  165. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 住生活ということに着目して、これを豊かにしていくという目的を掲げているわけでございます。その観点から、地域によって気候、地形、歴史、文化、多種多様なんで一律の対応はできないという御指摘はそのとおりだと思います。  そういう認識に立った上で、この住生活基本法におきましては全国共通に取り組むべき理念を掲げております。理念の三条、四条、五条、六条とこう掲げておりますけれども、これはそういう地域的な特性を踏まえる必要があるという認識に立った上で、常に追求する必要のある方向性を規定したところでございます。また、そのことは基本理念の中でも、地域の自然、歴史、文化その他の特性に応じて良好な居住環境の形成を図ることを目指すというふうに述べております。  したがって、物理的な基準として全国一律の基準を目指すものではなくて、地域の特性にきちんと配慮してこの豊かな住生活の実現を目指すということを法律案では規定させていただいていると考えております。
  166. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 「住宅の需要及び供給に関する長期見通しに即し、」とありますが、この長期見通しについては、現行住宅建設計画法二条にも同様の規定があります。具体的にどのような見通しを持っておられるんでしょうか。
  167. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) これは、住生活の安定向上のための施策を推進する前提となるものでございますので、様々な要因を考慮して検討する必要があると考えております。  例えば、住宅の需要、供給に関する長期見通しを立てる際の要因の一つでございますけれども、世帯数でございます。世帯数の増減についてどういう見通しを立てるか、その前提として、まず人口の見通しはどうかということがあるわけですけれども、住宅需要の単位は世帯数でございますので、世帯数の増減について、例えば国立社会保障人口問題研究所の推計をベースにしまして、また建て替え需要につきましては住宅・土地統計調査で過去の実績をベースにするといったようなことを踏まえて、今実は鋭意検討をしているところでございます。  したがって、具体的なことを御説明することはできませんけれども、今新規建設でいいますと、ここのところ百二十万戸前後で進んでおりますけれども、世帯数はこれから十年間、単身世帯、二人世帯が増えるということもあって、人口は減るけれども世帯数は増えることが見込まれますので、しばらくは今の百二十万前後が進むけれども、基本計画は十年間で作りますので、後半にはこれが下がっていくと、住宅を長く使っていただくということを踏まえて新規建設は下がっていくと、そういうふうな見通しを持っております。しかし、今検討中でございます。
  168. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 住宅関連事業者が適切に講ずる責務を有すると規定をされていますが、この必要な措置の具体的な内容についてはどうお考えですか。
  169. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) この豊かな住生活の実現を図るという観点から、住宅を現実に生産し、流通させ、管理するといった、住宅を直接扱う民間事業者の方の取組が一番大事だと考えております。このために、今御指摘いただきました条文で、「必要な措置を適切に講ずる責務を有する。」と規定しているわけでございます。  この責務規定でございますが、住宅関連事業者がその仕事に伴って生じる責任を前提とした確認的な規定でありますとともに、事業者が講ずべき必要な措置の基本となる規定でございますので、この基本法の趣旨を踏まえて、宅建業法、宅地建物取引業法ですね、それから建設業法、建築基準法などで講ずべき措置を遵守するということはもちろんでございますが、例えば住宅の品質、性能の維持向上に関する技術の研究開発、あるいは住宅取引に係る相談窓口の設置による購入者からの相談に対する適切な対応、それから品確法ですね、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示の活用といった、国民が自分のニーズに合った適切な住宅を安心して選択できるような取組が行われると、そういう措置が講じられるということを期待しているところでございます。
  170. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会資本整備審議会答申では、公営住宅における入居者、非入居者間の不公平の存在、それからコミュニティーのバランスの低下など、現行制度が抱える問題点を抜本的に解消するためには民間住宅を活用した家賃補助効率性の高い政策手段であると、諸課題の克服に向け具体的な検討を進めることが必要であるとしていますが、今後どのように取り組んでいかれるんでしょうか。
  171. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 住宅セーフティーネットの構築は、ストック重視市場重視政策転換していく上でどうしても追求しなければならない重大な課題でございます。そのためにいろいろな努力が必要なわけでございますが、これまでも公営住宅等の公的賃貸住宅供給当たりまして、民間住宅が着実に充実しているという現実を踏まえまして、供給方式の多様化の一環として民間賃貸住宅を借り上げてこれを公営住宅として生かして使うということに取り組んでおります。  家賃補助の、家賃の支援ですね、これについても、基本的にはこうした方式を生かして住宅セーフティーネットの充実に努めていく考えでございます。
  172. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 全国計画に即して都道府県計画が策定をされることになりますが、住生活基本計画全国計画は施行後速やかに策定すべきものと考えますが、いつごろ策定する予定か、お尋ねをいたします。
  173. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) これまでも審議会でいろいろ御議論いただきました蓄積もございますので、今いろいろな準備活動をしておりますけれども、法律の中で、全国計画の策定に当たりましては、国民意見を的確に反映するためのパブリックコメントの実施、それから関係行政機関の長との協議、それから審議会の御意見を聴くこと、それから都道府県の意見を聴くことといった手続が定められておりますので、こういった手続を踏まえて、法律を制定していただきました後、こういったことに努力しまして、今年の秋には策定したいと考えております。
  174. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 全国計画においては国民住生活の安定の確保及び向上の促進に関する目標を定めることといたしております。国民住生活が安定し、かつ向上するという手ごたえは、期待感が持てるような具体的で分かりやすいアウトカム目標とすべきと考えますが、具体的にはどのような内容を定めることを考えているのでしょうか。
  175. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 豊かな住生活を実現するための基本計画、その全国計画でございますので、具体的で分かりやすいアウトカム目標を設定すべきだという御指摘は誠にごもっともな御指摘だと思います。特に、国民の皆様に分かりやすく目標を示すということと併せまして、基本目標市場にも情報として提示するということで、個人の居住の選択あるいは事業者による住宅供給居住サービスの提供についての判断指標として、市場の機能を通じて豊かな住生活の実現を誘導する機能があるというふうに考えております。  したがって、この部分は非常に大事でございますので、指標の達成又は向上につながる具体的施策を伴うものに限って、なおかつ達成度合いを的確にフォローできるよう、可能な限り定量的なものとしたいと考えております。そうすると、非常に難しいんですが、こういう理念に合ったものとして、例えば新耐震基準適合率、バリアフリー化率、省エネ化率、住宅性能表示実施率といったような指標を導入したいと考えております。
  176. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 住宅建設五か年計画及び都道府県住宅建設五か年計画で定められていた住宅の建設目標及び公的資金による住宅の建設の事業量が住生活基本計画では定められなくなることにより、公的住宅役割が低下するのではないかと考えられますが、その見解はいかがでしょうか。
  177. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) この点は住生活基本法で、住宅に対するニーズが多様化、高度化してきたということで政策を量の確保から質の向上転換すると。そして、住宅の質の向上に係る部分が、まず目標が設定されるわけですが、あわせて、住生活基本法では、住宅困窮者に対する居住の安定を図るべきだという理念を明確にした上でセーフティーネット確保を位置付けておりますので、国それから地方公共団体が作ります住生活基本計画の中では、当然セーフティーネットの構築、運用についてどのように進めていくかという方針が定められるものでございます。
  178. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 全国計画にかかわる評価において、その評価の結果、目標達成が困難な状況にあることが明らかになった場合の対応についてどのように考えているのでしょうか。また、達成状況地域ごとの差が大きい場合、国として何らかの対応をされるんでしょうか。
  179. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 正に、そういう対応をするための政策的なツールとしてこの住生活基本計画は位置付けられるものと考えております。  目標について客観的に計測可能な指標で目標を表すということでございますので、きちんと政策分野ごとに政策評価を実施していくということになります。第十六条でそのことを明記していただいておりますけれども。  その際、計画に記載された施策を含む計画の全体について、政策評価のたびごとに詳細な点検を行います。目標が達成されていない場合については、その施策の有効性、これ政策評価の理念そのものでございますけれども、きちんと点検した上で改善方策を検討して実施していくと、新しい計画に反映させていくと。これは、地域的にうまくいっていない部分についても同じやり方で公共団体にも同じアプローチをしていただこうと思っておりますので、取り組んでいきたいと思います。
  180. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 都道府県計画全国計画に即して策定をされますが、全国計画政策評価により見直された結果、都道府県計画と国とのそごが生じた場合、どのように解決をすることになるんでしょうか。都道府県が自らそのそごを認識し見直すことになるのでしょうか、それとも都道府県がそごに気付かない場合は見直しを促す手段というのはあるんでしょうか。お伺いいたします。
  181. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) これは、全国計画を策定する際もそうでございますが、変更する際も都道府県ときちんと協議をしまして相談をして前に進んでいきます。したがいまして、御指摘のようなことがあれば、やり取りをする過程できちんと問題意識を共有して、その点を全国計画にも反映させますし、都道府県においては都道府県計画の見直しに役立てるということになると考えております。
  182. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その場合、都道府県の効果の評価は行うんでしょうか。それで、仮に行う場合、各都道府県が独自に行うのでございましょうか。いかがでしょうか。
  183. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) まず、政策評価については、全国計画については国土交通大臣に義務付けております、第十六条で。都道府県計画については法律上の義務付けはありません。したがって、法律上の義務ではないけれども、やっていただくということになりますけれども、国がやっているやり方と同じようなやり方で都道府県計画についても政策評価をきちんと進めていただきたいと考えております。
  184. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 地域住宅協議会は、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法の第五条によりますと組織することができるとの規定ですが、都道府県計画は、地域における住宅政策に関する基本的な計画ですから、地域住宅協議会は必ず組織してこの協議に応じることとすべきであると考えますが、見解はいかがでしょうか。
  185. 山本繁太郎

    政府参考人山本繁太郎君) 御指摘のとおり、地域住宅特別措置法で規定されております地域住宅協議会は、地域住宅政策を進めるための非常に力を持った主体を集めて、きちんと相談して前に進めていこうという組織でございますので、私どもとしては、地域住宅政策を総合的に展開するという観点から地域住宅協議会を組織していただきたいと、そのことが望ましいと思っております。  お願いしておりますこの法律の案では、地域住宅協議会が組織されている場合は意見を聴くべきだということを義務付けているわけでございますけれども、できるだけ地域住宅協議会を組織して意見を聴いていただきたいと、地域住宅政策を総合的に運用する観点からですね。しかし、組織されていない場合でも、市町村の意見を聴くとか、住民の意見の反映のための措置は法律で義務付けておりますので、極力、住生活基本計画の的確な策定、実施という観点からも、御指摘の趣旨を踏まえて、地域住宅協議会は是非公共団体につくってくださいということをお願いしていきたいと考えております。
  186. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 最後の質問になりますが、住宅政策の重点が量から質へ変化することにより、国土交通省が取り組むだけでは不十分ではないかと考えていますが、他府省との連携は今後どのように協力していくのか、大臣のお考えを聞いて、質問を終わります。
  187. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 住環境を含めました住宅の質の向上へと政策転換するわけでございますが、そのためには、委員おっしゃるとおり、関係省庁との連携協力が不可欠であるというふうに認識をしております。  この法案の十五条の三項で、先ほど来御議論のあります全国計画につきましては閣議決定をさせていただきます。政府全体の意思として閣議決定をさせていただきたいと思いますし、また、十九条から二十一条にかけまして、関係行政機関との協力、また、国土交通大臣がこの関係機関に対して資料の提出を求めたり意見を述べたり、さらには関係機関に対して報告を求めると、このような権限、責任規定も置かせていただいているところでございまして、しっかり連携協力を取り、この住生活基本法案の中に書かれております基本理念をしっかり実現できるように、総合的にしっかり取組をさせていただきたいと思います。
  188. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  189. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、日本共産党を代表しまして、政府提出の住生活基本法案に対して反対の討論を行います。  政府の住宅政策は、国民の強い要求である公共住宅の充実強化に対して背を向けて、公共住宅の新規建設の抑制、公庫住宅の融資の縮小をするなど、公的住宅に対する位置付けを大きく後退させてきました。住生活の安定の確保というなら、住居費の低減とともに、安くて質の良い公共住宅確保こそ不可欠であることは明らかではないでしょうか。にもかかわらず、本法案は、その基本的な考え方において市場重視を掲げ、計画供給居住水準などを市場任せ、民間任せにするとともに、国、地方自治体住宅政策の遂行において果たしてきた責任、役割を大きく後退させるものであり、賛成することはできません。  さらに、本法案には、国民にとっての居住権利が明記されておらず、しかも、住居費負担居住水準の重要な要件も明示をされておりません。国民にとっての居住権利は、アメリカやフランスにおいて国民住宅保障国民権利が明記されていることは審議の中でも明らかになりました。しかも、我が国も承認をしています国際的に確立しているイスタンブール宣言に則すならば、我が国の基本法制に権利は明確に規定すべきではないでしょうか。  さらに、居住者にとって重大な関心事である住居費負担について、この審議の中でも、標準世帯の年収が減少しているのに家賃が上昇していることが明らかになりました。答弁の中でも、バブル崩壊後に収入に対する家賃の比率は高まっていると示されました。しかし、法案は、「居住者の負担能力を考慮して、」とあるのみです。これでは、居住者の住生活の安定は保障できません。  さらに、計画策定の段階からの住民の参加が規定されていません。住生活の主人公である居住者の視点、立場が欠落していることではないでしょうか。  正に、住まいは人権という立場に立つならば、市場任せ、さらに民間任せではなく、国が責任を持って、住まいは人権という立場住宅政策に大きく転換することが今こそ大事であるということを申し上げまして、討論といたします。
  190. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  住生活基本法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  191. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、山下君から発言を求められておりますので、これを許します。山下八洲夫君
  192. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 私は、ただいま可決されました住生活基本法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     住生活基本法案に対する附帯決議(案)   住生活の安定の確保は、すべての国民にとって必要不可欠なものであることを再認識し、政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。  一、少子高齢化時代に対応し得る住宅政策の確立のため、本基本法の下で必要な法律、制度等の整備による総合的な住宅政策体系の構築とともに、個々の施策の効果的かつ効率的な実施を通じて豊かな住生活が実現されるよう、関係機関は最大限の努力を行うこと。  二、住生活基本計画の実施に当たっては、我が国の気候風土、歴史文化が地域によって多様であることにかんがみ、地域特性を知悉する市町村による主体的、積極的、計画的な取組が行われるよう十分配慮すること。  三、住宅弱者のためのセーフティネットを確保する上で、公営住宅等公的賃貸住宅役割は依然として重要であることにかんがみ、需要に対応した供給等が今後も継続して適切に行われるよう十分配慮すること。    また、民間住宅の活用も含め効率的・効果的な新たな仕組みの導入に向けた検討を開始すること。  四、住生活の安定の確保及び向上の促進を図るため、税制が果たす役割の重要性にかんがみ住宅関連税制の充実に努めるとともに、交付金・補助金等の一層の活用を図ること。    また、住宅金融公庫、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社等について、住宅政策の実施機関としての責務を踏まえ、その機能が十分発揮されるようにすること。  五、住生活の安全・安心を確保するため、大都市圏を中心に大量に存在する密集市街地の早期解消に向けて、一層積極的かつ強力な取組に努めるとともに、最近におけるミニ開発等が新たな負の遺産として将来の禍根とならないよう適切な対応を行うこと。  六、住まい安全性と建築行政に対する信頼が大きく揺らいでいることを踏まえ、国民の不安を解消するため、建築確認検査行政において適切な措置を講じること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  193. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ただいま山下君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  194. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 全会一致と認めます。よって、山下君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、北側国土交通大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。北側国土交通大臣
  195. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) 住生活基本法案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま可決されましたことに深く感謝を申し上げます。  今後、審議中における委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議において提起されました事項の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。  ここに、委員長始め理事の皆様方、また委員の皆様方の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表します。  大変にありがとうございました。
  196. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  198. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 建築物安全性確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。北側国土交通大臣
  199. 北側一雄

    ○国務大臣(北側一雄君) ただいま議題となりました建築物安全性確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  今回の構造計算書偽装の問題は、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、多くの住民の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物安全性に対する不安と建築界への不信を広げております。  また、今般の問題では、構造計算書の偽装を、元請設計者、指定確認検査機関、建築主事いずれもが見抜けなかったことから、建築確認・検査制度等への国民の信頼も大きく失墜をしております。  かかる問題の再発を防止し、法令遵守を徹底することにより、建築物安全性確保を図り、一日も早く国民が安心して住宅の取得や建築物の利用ができるよう、早急に制度の見直しを行う必要があります。  このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、建築確認・検査の厳格化を図るため、一定規模の建築物について第三者機関による構造計算適合性判定を義務付けるとともに、三階以上の共同住宅について中間検査を義務付けること等としております。  第二に、指定確認検査機関の業務の適正化を図るため、その指定要件を強化するとともに、特定行政庁が立入検査を行えるようにするなど指定確認検査機関に対する監督を強化することとしております。  第三に、建築士等の業務の適正化を図るため、建築士に対して構造安全性の証明を義務付けること等とするほか、構造規定違反等の重大な違反について最高で三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金を科すなど建築士等に対する罰則を大幅に強化することとしております。  第四に、建築士、指定確認検査機関等の情報開示を徹底するため、処分を受けた建築士の氏名の公表や、指定確認検査機関の業務・財務の状況に関する書類の閲覧等の措置を講ずることとしております。  第五に、住宅の売主などによる瑕疵担保責任の履行に関する情報開示を徹底するため、宅地建物取引業者に対し、契約締結前に保険加入の有無などについて相手方への説明を義務付けることとしております。  その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案を提案する理由でございます。  この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。
  200. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散