○志位和夫君
日本共産党を代表して、小泉首相に質問します。(
拍手)
まず、
政府の緊急な
対応が求められる二つの問題について伺います。
一つは、豪雪災害の問題です。
私は、昨年来の豪雪災害によって亡くなられた方々に深い哀悼の気持ちを述べるとともに、豪雪で日々御苦労されている皆さんに心からのお見舞いを申し上げます。
記録的な豪雪は、
地域の
生活に大きな困難をもたらし、住民の皆さんは心身ともに疲れ、厳冬期を迎えて不安を募らせています。既に我が党は、
政府に対し、豪雪災害に関する緊急の申し入れを行っておりますが、今何よりも重要なことは、
政府が、これ以上の犠牲者は絶対に出さない、
被害の
拡大は最小限に抑えるという立場に立って、雪おろしやライフラインの
確保を初め、万全の
対策を講じることであります。
現地に伺った我が党議員団に対し、現地ではこれ以上
被害を広げてはならないと懸命に取り組んでいる、
政府もそれにこたえる
対策をという切実な要望が出されました。この声を肝に銘じて
対策に当たるべきであります。首相の
答弁を求めます。
いま一つは、
米国産牛肉のBSE汚染問題です。
政府の
輸入再開は、
危険部位の除去、月齢二十カ月以下という二つの条件を
米国が遵守することを
前提に行われたものでしたが、この
前提が守られる保証が全くなかったことを今回の事態は明らかにしました。加えて深刻なことは、
米国が二つの条件を守っているかどうかを確認するために農水省と厚労省が
米国内の食肉処理施設を査察し、適切と認定した直後に今回の事態が起こったことです。
一連の経過は、
政府のBSE
対策なるものが、
国民の安全よりも
米国の要求を
優先させた、まさに偽装
対策だったことを示しています。首相は、その重大な責任をどう認識しているのですか。
輸入牛肉
対策を根底から
見直し、全頭
検査、全月齢の
危険部位除去といった
日本と同様の安全基準が
確保されるまで、
米国産牛肉の輸入は再開しないという方針を明確にすべきであります。首相の
答弁を求めます。
次にただしたいのは、
小泉構造改革が何をもたらしたかという問題です。首相が、官から民へ、小さな
政府のかけ声で進めた規制緩和万能路線の害悪が、今、次々に明らかになっています。
第一は、
耐震強度偽装事件であります。
無法行為を行った当事者たちの責任、
政治家の関与について、徹底的な究明を行うことは当然です。同時に、問題の根本は、一九九八年の
建築基準法改悪で、建築確認を、官から民へといって
民間検査機関に丸投げできるようにした規制緩和にあります。
我が党は、九八年の法改悪の際、
民間任せでは
検査の公正中立性の
確保は困難になる、安かろう悪かろうという
検査になると警告し、この法改悪に厳しく反対しました。この警告は現実のものとなりました。
民間検査機関による
検査が急増し、安さと速さの競い合いが起こり、安全は置き去りにされました。ゼネコンや住宅メーカーなどが出資する
民間検査機関が増加し、ゼネコン、住宅メーカーが自分の物件を自分の手で
検査するという、公正中立性が損なわれる事態が進みました。
今問われているのは、倫理も使命感もない悪徳業者の責任だけではありません。建築行政という
国民の命を守る制度にまで、規制緩和と利潤第一主義を持ち込み、大穴を開けてしまった自民党
政治の責任が問われているのであります。住宅ローンを抱えて苦しむ
被害者への補償と
再発防止も、問題のこの根本にメスを入れる立場に立ってこそ、責任ある解決の道が開かれます。首相の
見解を求めます。
第二は、
ライブドア事件であります。
自社の株価をつり上げ、そこで得た資金を元手に
企業買収を繰り返す。その中で、偽計取引、うその
情報の流布、粉飾決算などの違法行為が行われていた疑惑が大問題になっています。
この
事件の根本にあるのは何か。
ライブドアが株価つり上げに使った手法は、株式交換、株式分割、
投資事業組合という三つの手法を組み合わせて錬金術を行うというものでした。株式交換は、一九九九年の商法改正で導入されたものであります。株式分割も、二〇〇一年施行の改正商法で自由勝手にできるようになったものであります。ここでも
事件の根本にあるのは、自民党
政治が進めた規制緩和万能路線ではありませんか。
安倍官房長官は、堀江さんの
仕事の成功は小泉
改革の成果、規制緩和の成果だと述べていました。私もそのとおりだと思います。首相は、自分の進めた規制緩和万能路線が
ライブドア事件の土壌をつくったという認識と反省がありますか。
首相は、今になって人ごとのような発言を繰り返しておりますが、人の心はお金で買えると公言してはばからなかった堀江氏を、
改革の旗手などと
勝ち組のリーダーとして持ち上げ、党運営への協力を仰ぐことまでしたのは、小泉首相、自民党ではなかったか。その責任をどう自覚されているのか、しかとお答えください。
第三は、
格差社会と貧困の広がりという問題です。首相に二つの点をただしたい。
一つは、現状への認識の問題です。
首相が、この問題について問われ、
格差拡大というのは誤解だと述べたと報道されたことに、私は驚きました。一九九七年と比較して、
生活保護世帯は六十万から百万世帯に、
教育扶助、就学
援助を受けている児童生徒は六・六%から一二・八%に、貯蓄ゼロの世帯は一〇%から二三・八%に、どれも激増しています。首相の目には、貧困と
格差の中で苦しむ庶民の姿は目に入らないのでしょうか。この事実を前にしても、
格差拡大は誤解だと言うのですか。
いま一つは、こうした現状をつくった責任の問題です。
大
企業、財界は、正社員を減らし、
派遣、パートなど非正社員への置きかえを進め、労働者の三人に一人、若者の二人に一人は不安定
雇用のもとに置かれ、その八割は月収二十万円未満という極端な低賃金です。
格差社会と貧困の広がりの根本に、
派遣労働の自由化など、小泉政権の進めた規制緩和万能路線があるという責任の自覚はありますか。
答弁を求めます。
耐震偽装で
国民の命を危険にさらし、ぬれ手にアワの錬金術師を生み出す一方で、
格差と貧困によって
国民から夢も希望も奪い去る。こんな寒々とした弱肉強食の
政治を続けていいのかが今問われています。
日本共産党は、小泉
政治によって極限にまでひどくなった
ルールなき資本主義を正し、
国民の安全に責任を持ち、人間らしい労働を支え、
格差と貧困を是正する、人間が人間として尊重される
ルールある
経済社会への
改革を強く求めるものです。
次に、庶民増税と
社会保障切り捨てについて質問します。
来年度
予算案に盛り込まれた
国民負担増は、定率減税の全廃、お年寄りの
医療費の値上げなど、二兆七千億円に上ります。小泉政権発足以来、二〇〇二年度予算から二〇〇六年度
予算案までの五回の予算編成で
国民に押しつけた負担増を合計しますと、
年間十三兆円に上ります。歴代自民党政権の中でも、これほど巨額の
国民負担増を押しつけた政権はかつてありません。
これだけの負担を
国民に押しつけて、国の借金はどうなったか。小泉政権が五回の予算編成で新規に発行した国債、新たな借金は、何と百七十兆円に上ります。これは、その前の五
年間、一九九七年度から二〇〇一年度の予算編成での新規国債発行の百五十三兆円を大きく上回ります。みずからを世界一の借金王と称した小渕首相などが五
年間で発行した新規国債よりも、小泉首相が五
年間で発行する新規国債の方が多いのであります。小泉首相は、史上最悪の借金王と呼んでも過言ではありません。
なぜ、空前の
国民負担を押しつけながら空前の新規国債発行となるのか。税
財政に二つの大きなゆがみがあるからであります。
第一は、大
企業、大資産家への減税を温存、
拡大していることであります。
小泉政権は、前政権が行った法人税、高額所得者減税を続けただけでなく、研究開発減税やIT減税など、大
企業向けの減税をさらに
拡大しました。加えて、株式の配当や譲渡にかける税金を、税率一〇%まで大幅に引き下げました。大
企業には減税、庶民には大増税。額に汗して働く庶民への税金よりも、株取引で巨額の富を得た錬金術師への税金が低い。こんな不合理なことがありますか。空前のもうけを上げている大
企業、大資産家に、もうけ相応の負担を求めるべきではありませんか。
答弁を求めます。
第二は、巨大開発の無駄遣いを温存、
拡大していることです。
首相は、公共
事業の総額を減らしたと言いますが、削減したのは住宅、福祉、学校など
国民生活に不可欠の
事業であり、関西国際空港二期
事業、スーパー中枢港湾、大都市部の高速道路、大型ダムなど、巨大開発の無駄遣いは温存、
拡大しています。聖域なき
歳出削減と言いながら、ここには巨大な聖域がつくられているではありませんか。
この税
財政の二つのゆがみにメスを入れなければ、どんなに
国民負担をふやそうと、借金はふえる一方であります。その借金を口実に消費税増税を押しつけるなど、絶対に許せる話ではありません。
日本共産党は、
格差拡大と貧困に追い打ちをかける庶民への負担増に反対します。大
企業と大資産家への応分の負担によって、所得を再分配し、
格差を是正する、公正で民主的な税
財政への
改革を強く要求します。首相の
見解を求めます。
次に、外交、平和に対する基本姿勢について質問します。
首相が靖国神社参拝に固執し続けていることは、
日本外交の孤立と行き詰まりをいよいよ深刻なものとしました。問題は、中国、韓国などアジアの諸国との
関係悪化だけにとどまりません。
米国のブッシュ大統領は、昨年、対日戦勝六十周年の記念
演説の中で、アジア解放のための戦争という、靖国神社が立っている侵略戦争正当化論を厳しく批判しました。首相の連続参拝に対して、
米国下院のハイド外交委員長は遺憾の意を伝える書簡を
日本政府に寄せました。首相は、
米国政府や議会からも寄せられている懸念や批判をどう受けとめているのですか。
戦後の国際秩序は、かつて日独伊が行った戦争が侵略戦争であったという共通の認識の上に成り立っています。
日本は正しい戦争をしたと宣伝することをみずからの使命に置いている靖国神社に首相が参拝することは、戦後の国際秩序を土台から否定する行為にほかなりません。この問題を居直りや既成事実の積み重ねで解決できると
考えたら、大きな
考え違いであります。侵略戦争への反省を
言葉だけでなく行動でも示してこそ、世界とアジアの
信頼を
回復する道が開けます。首相の
見解を求めます。
日米両国
政府が米軍再編の名で基地
強化と日米の軍事一体化を進めようとしていることに、全国の
自治体から厳しい怒りと批判が広がっています。私は、首相に三点に絞って伺いたい。
第一。首相は、二〇〇四年十月に、
自治体と相談し、
自治体がオーケーしたら米側と交渉すると明言していました。ところが、
自治体とは何の相談もなく、米側との協議で勝手に基地
強化案をつくって押しつけようとする。これは、みずからの言明をほごにし、
自治体の意思を全く無視した乱暴きわまるやり方ではありませんか。
第二。在日米軍は、沖縄、岩国の海兵隊、横須賀の空母打撃群など、海外遠征
専門のいわば殴り込み部隊であります。キャンプ座間に移設しようとする米陸軍の新司令部も、イラク戦争で多くの人々の命を奪った、ストライカー旅団と呼ばれる殴り込み部隊の司令部であります。
米国が地球的規模で行っている米軍再編の中で、
日本のように海外遠征
専門の部隊の
強化を図っている国がほかに一つでもありますか。お答えください。
第三。今回の米軍再編で、約一兆円と言われる海兵隊司令部のグアムへの移転費用を
日本が負担するという計画が進行しています。
米国の領土にある基地の建設に
日本国民の税金を投入するというのは、現行法では許されず、歴史上も世界でも類のないことではありませんか。
首相は、基地
強化受け入れを平和と安全の代価だと述べて、押しつけようとしています。しかし、基地
強化の動きは、
日本の平和と安全とは無縁なばかりか、
日本を地球的規模でのそれこそ殴り込み戦争の一大根拠地にし、世界とアジアの平和を脅かす震源地に変えるものにほかなりません。
日本共産党は、この動きに正面から対決して、
自治体ぐるみの闘いの一翼を担い、力を尽くすものであります。
最後に、憲法問題について質問いたします。
自民党は、昨年十一月の党大会で新憲法草案を正式に決定しました。この草案は、憲法九条二項を削除し、自衛軍の保持を明記するとともに、その任務として、国際
社会の平和と安全を
確保するために国際的に協調して行われる活動なるものへの参加を規定しています。ここで言う自衛軍の海外での活動には、武力の行使も含まれるのではありませんか。これは、
米国がイラク戦争のような戦争を引き起こした際に、自衛隊が武力行使をもって参加することを可能にするものではありませんか。はっきりお答え願いたい。
米国のアーミテージ前国務副長官は、昨年末、
日本のメディアに寄せた一文の中で、
日本は、イラクへの自衛隊派兵など、既に地球規模のパートナーになったが、これから先の
課題は、その軍事力によってどのような地球的役割を果たせるかにあり、その決断には憲法九条の問題がかかわっていると述べています。地球的規模での軍事力の行使のために九条の改定を、これが
米国の要求であります。首相は、この要求にどのようにこたえますか。
二十一世紀の世界の大勢を見れば、軍事力でなく、平和的な外交によって問題を解決する流れが大きく広がり、その中で、
日本国憲法第九条に対して、国際的にも新しい注目と評価が寄せられています。
日本共産党は、世界に誇るこの
日本の宝を守り抜くために、憲法改悪反対で一致する政党、団体、
個人と力を合わせ、広大な
国民的共同をつくるために
全力を挙げることを表明しまして、質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小泉純一郎君登壇〕