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石破委員 弾道ミサイル防衛というものの
必要性については、もう随分と大きなコンセンサスができつつあるのだと思っています。いろんな御
批判がありまして、例えば、当たらないじゃないかとか、あるいはその
費用に比べて
効果が乏しいじゃないかとか、
文民統制が確保されるのかとか、
軍拡を招くんじゃないか、いろんな御
批判がありましたが、そのほとんどは、
大臣初め
皆様方の御
努力もあって、多くの疑念は払拭されて
国民の
理解を得るに至ったと思っております。
これはもう相当の
確度で当たるものであるということ、一〇〇%当たらなき
ゃだめなのかといったら話は全然始まらないのであって、相当
確度で落とせることが
抑止力になる、当然のことであります。
あるいは、
費用対
効果という
議論をされる方がありますが、
費用は当初八千億、これはわかっています。じゃ、
効果は幾らですかというと、その
効果、比べてみないとこんな
議論は成り立たないし、
費用対
効果というときには、じゃ、ほかにこんな手がありますが、それに比べて
ミサイル防衛はどうですかという
議論をしないと、これは
議論にならない。したがって、これもクリアされたものだと考えます。
文民統制は今回の
法制できちんと担保をされているものであるし、
軍拡になるという
理屈はそもそもよくわからない。
先般、
参考人の
先生方もおっしゃっておられましたが、この
ミサイル防衛を進めることによって、
ミサイルを撃ったって
意味がないんだということがより確実になることによってより軍縮の方向に働く、そういうふうな
努力を我々としてしていかねばならぬのだと思っております。
そういう
意味で、この
法制をきちんとした形で成立させる、我々与党としてもその
観点から
努力をしていきたい、このような
観点から
質問をさせていただきたいと思っております。
今回の
法制は、読めば読むほどそれなりによく考えた
法制だなと、正直言って思っております。この八十二条
系列の
ミサイル防衛法制だけ読めば、よくできている、
完成度の高いものだという認識をいたしております。ところが、これが
完成度が高ければ高いほどほかの
法制とのそごというのが出てくる、これはもうやむを得ないことなのだと実は私自身思っております。
私、
長官をやっておりましたときにいろんな御
批判をいただきましたが、
防衛法制というのはある
意味増築を重ねた
温泉旅館みたいなものである、
複雑怪奇で何が何だかよくわからなくなっているという御
批判がありました。もう
一つは、精密な
ガラス細工のようであるという御
批判がありました。きれいにできているんだけれどもかなりもろいものであって、
理屈はきちんと整合しているんだけれども一点が崩れるとがらがらっと崩れてしまう、そういう面を持っているという御
批判もいただきました。今後これをどのようにしていくかということも含めて、幾つか考えを申し述べ、
大臣の御所見を承りたいと存じます。
まず、
ミサイル防衛の
法制が必要であるというときに、どの
条文でいくんだ。今の
条文ではどれを見ても
対応不可能である。
防衛出動か、いや、でもその意思が表示されていなかったら
防衛出動にならないね。
領空侵犯か、これ、
弾道ミサイルは
航空機じゃないよねということになる。じゃ、何なんだろうということをさんざん
議論いたしました。
素直に考えれば、これは
領空侵犯阻止というのが一番似ているのではないだろうか。ただ、
領空侵犯は「
外国の
航空機」と書いてあって、
航空機というのは
揚力によって飛ぶものですから、
弾道ミサイルはこれは
航空機じゃないねと。あそこの八十四条は、無人である、有人であるとを問わないからそこはクリアできるにしても、
揚力によって飛ぶものが
航空機だけれども、
弾道ミサイルは違うね。そしてまた、着陸させ、退去させるために必要な
措置を講じさせることができると書いているが、
弾道ミサイルに対して着陸しなさいとか退去しなさいとか、そんな
措置が講じられるはずはないよねと。
じゃ、これは、なかなか難しいが、だけれども、先般もどなたかが
議論していらっしゃいましたが、八十二条にしても、つまり
海上警備行動あるいは
災害派遣、
防衛出動、
治安出動、全部六章に
規定があって七章に
規定がある。つまり、
自衛隊の
行動の
規定があって、そして
自衛隊の
権限の
規定がある。これは対になっているわけですね。
領空侵犯だけが対になっていない。
領空侵犯だけが
行動が書いてあって
権限が書いていない。つまり、八十四条的な
構成をするか八十二条
的構成をするかは、そこが多分一番大きな相違なのだろうと思っています。
どっちにしても
条文は書けますが、これを八十四条
的構成ではなくて八十二条的な
構成になさった、その一番大きな
理由は何であろうかということであります。
もう
一つは、
弾道ミサイルへの
対応ももちろん考えなければいけません。しかし、私は大勢の議員さん方と一緒にアメリカへこの連休行っておりましたが、その間に
北朝鮮が
ミサイルを撃ったという情報がございました。これは多分シルクワームのようなものだろう、
巡航ミサイルのようなものだろう、これは
日本の平和と安全に直接
影響を与えるものではない、そういうような判断だったのだろうと思います。しかしながら、
巡航ミサイルというものに対する
対処がどのようになっているだろうかということです。
今、
巡航ミサイルを保有している国というのは全部で七十カ国あるはずです、
日本も含めまして。そのうちの四十カ国は
開発途上国です。
巡航ミサイルと
弾道ミサイルは物が全然違うので、
巡航ミサイルというのは
基本的に
飛行機です。したがって、大きくて遅いです。
弾道ミサイルは
飛行機ではありません。これは
ミサイルというかロケットですから、引力に従って落ちてくるものなので、
巡航ミサイルが大きくて遅いのに比べて、
弾道ミサイルは速くて小さいです。だけれども、何が違いかといえば、
弾道ミサイルはどこに落ちるかが予測可能だけれども、
巡航ミサイルはどこに落ちるかわからない、この差があります。
ですけれども、じゃ、
巡航ミサイルというもの、例えばトマホークは三千キロ飛ぶわけですよね。そしてまた、中国が開発したと言われる、
紅鳥と書くのを何と読むのか私は読み方を知りませんが、これが千五百キロ届くと言われております。その
巡航ミサイルが拡散をしている。じゃ、これにどの
法制で
対応するのだろうかという
議論もこれはしておかなければならないことだろうと思う。
そして、これはもう何度もこの
委員会でも
議論され、私もきちんと
答弁ができなかったのだけれども、九・一一のようなことが起こったときにどう
対応するんだ。例えば、
日本国籍の
航空機を
日本の
テロ集団が乗っ取ったとする。これが何らの
意図も表示せずに
国会議事堂を目がけてどんどんと高度を下げてきたという状況、これを考えたときに、これは
日本国籍の
航空機ですから、八十四条の「
外国の
航空機」というのには該当しない。そして、何らの
意図も明示されていないから
防衛出動も該当しない。だとするならば、結局、
航空自衛隊に対して
治安出動を下令する、そして改正した特別の
武器使用権を行使する以外に考えられないけれども、どうやってこの時間を短縮するんだという問題をクリアしなければならないわけです。
そういうような多くの問題があって、今回の
法制は
法制として
完成度の高いものですが、そのようにほかのものとのつじつまをどう合わせていくかということを、我々政治はちゃんと
議論して結論を出さねばならないのだと思っています。
大臣にお尋ねしますが、これを八十四条
系列ではなくて八十二条
系列にされた
理由は何か。そして、いろいろな
答弁が
国会でもございますが、何で八十四条には第七章の
権限規定がないのか。
普通、
説明されているのは、これが「
外国の
航空機」という対外的な
作用を伴うものであって、
日本国民の
権利や
義務に何らの
影響を与えないので第七章には
権限を書かなかったのだ、第六章に書いてあったとしても、それは単なる
規範ではなくて
行為の
根拠規範を与えたものなのだという
説明がなされます。
同時に、
自衛隊というものができるまでは、去年、できて五十年でしたが、
警察予備隊時代、
保安庁時代には
航空の
組織というものは
存在していなかった。
航空自衛隊というのは
自衛隊ができて初めて出てきたものでございます。そして、
陸上には
警察があって水上には海上保安庁がありますが、
航空警察という
組織は
存在をしない。そういうような歴史的な沿革もあって、第八十四条に
対応する七章
規定がないという
説明がなされています。
そういうことを全部考えた上で、今回、八十二条
系列にこれを設けられた、その
理由をお聞かせください。