○
参考人(
鹿内博君) 御紹介いただきました
鹿内でございます。
重要な
法案の
審議の場に
参考人という形で話をできる
機会を与えていただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げたいと思います。
地元に
原子力施設を多数抱え、そしてまた
国策にかかわってきた
地元の声の
一つとして、一人として聞いていただければ、そしてまた
参考としていただければ有り難いと思います。
今日、私の説明の
資料としてお
手元にお配りしてございます。それに従って話を進めさせていただきたいと思います。
一番先に、美しく豊かな
青森県を
子供たちに残したいと、
県民の一人として
市民運動に三十年近くかかわってまいりました。大きなものを五つほど挙げてあります。
その中で特に申し上げたいことは、当
委員会にもかかわると思うんですが、
白神山地が
我が国初の
世界遺産に指定を、
登録をされました。その最大の原動力、
経緯は、これは
国民と
県民の自然を守りたいという
自然保護運動が
世界遺産登録に結び付いたものだと思います。そうさせたゆえんは、大
規模林道を国が当時
青森県と
秋田県の間で進めていたと。その大
規模林道、
青秋林道と言いますが、その
林道を阻止をしていきたい、そして自然を守りたいという願いが、結果としてそれが実って、そして
世界遺産の
登録に結び付きました。そういう
大型プロジェクト開発が
地域に幸せをもたらすという、恐らくそれは、以前のそういう
地域振興ではなく、自然を大切に人との
かかわりの中で真の
地域の
振興を目指す、その象徴といいますか、それが
青森県と
秋田県での
白神山地、
世界遺産になったという
具合に思います。
そういうようなことを、
青森市の
ねぶた祭りでありますとか、あるいは
津軽弁をともに楽しむことでありますとか、あるいは
青森県内を歩きながら
青森県の自然とか様々な文化を、あるいは食べるものを楽しみながら百キロ歩く会ですとか、あるいは本州と北海道の大動脈であった
青函連絡船を残す
運動であるとか、そういう
地域の問題に
県民の一人として、あるいは
市民の一人としてかかわってまいりました。
その中で、
二つ目として、
県政の特に
開発という
部分で見ていきますと、
国策に
協力をして、その
国策に振り回されて、なおかつその
国策が
失敗をしてきたと、そういうところの
歴史をこれは認めざるを得ません。そしてその中で、その
政策の賛否をめぐって
地元が感情的に、あるいは世論として真っ
二つに分かれて、様々な犠牲を伴ってきたという
歴史がございます。
この①から⑩まで書いておりますが、特に
原子力船「
むつ」の
母港問題は当
委員会に直接かかわってきたものだと思いますし、それから現在、
むつ小川原開発の一環の中でされています
核燃料サイクル施設、後ほど触れますが、そのことは、
むつ小川原開発計画が
失敗をしたということの正にその後始末というか、そのために導入されたと言えるものであります。さらに、
東通原発、
大間原発、そしてまた今
誘致をされています
ITER、あるいはこれから
計画をされている、されていくであろう
使用済核燃料中間貯蔵施設あるいは
MOX燃料加工施設と、そういうものが軒並み
本県においてなされてきたし、なされようとしています。
その中身については、一番
最後に
青森県の地図を示してありますので、その中でいかに
青森県が
国策あるいは特に
原子力施設と
かかわりがあってきたか、と同時に、そのことが、今後仮に今の国の
政策が進むと、
日本で仮に四十年後に
原子力施設が最も稼働、操業している場所は多分
青森県であろうという
具合に推測をせざるを得ません。そういう
地元の一人として申し上げたいと思います。
三点目としては、そういう
経緯の中で、特に電源三
法交付金等による
国策と
土木公共事業依存の
経済構造と体質が残念ながらできつつあるという
具合に思います。この
責任、これは国だけに押し付ける
気持ちは毛頭ございません。私も
県政にかかわっている一人として、やはり
県政にとっても大きな
責任であるという
具合に思います。
具体的に、
県財政、あるいは
むつ市の
原子力船「
むつ」の
母港から始まって、今、
中間貯蔵施設の
誘致、それから
六ケ所村においては、二ページ目に入りますが、
むつ小川原開発が
失敗をし、それが
核燃サイクル、そして
ITER誘致、さらには
MOX燃料加工施設という
具合に、正に
国策に依存しているという、そういう
部分はやっぱりこれは否定できないという
具合に思います。
そういう
歴史的背景の中で、四点目として、今御
審議をされております
法案にかかわって、
青森県と
原子力研究所との
かかわりについてです。基本的には、
原研が
技術開発をして、
本県で
実用化あるいは
商業化をしていくと。
原子力船「
むつ」については、それは
本県での
母港という形になりました。
特に、
ITERについては、
原研でされている
実験的なものが今度は
ITERという形で国際的にされ、
誘致をされようとしている。ただし、このことについては、
青森県としても、私の試算でありますが、五百億円の
地元負担がこれはもう必然的に求められるであろうという
具合に、もう県としても数百億円の
財政負担というものを明らかにしていますし、私はそれよりもはるかに多い金額を
議会等で申し上げてまいりました。
ただ、そのことは、前に
失敗をした
むつ小川原開発の
石油コンビナート構想の二の舞になりかねないと。まだこれが、幸か不幸か、
我が国に決まるか
フランスに決まるか分かりませんが、仮に
我が国六ケ所村に
ITERが建設をされた場合においても多くの不安あるいは問題があるということをまず申し上げておきたいという
具合に思います。
五点目として、
本県と
核燃料サイクル開発機構との
かかわりについてであります。この
核燃料サイクル、
核燃サイクル機構は、従前、
動燃ということでありましたので、その
動燃という
言葉をそのまま
機構という
言葉に使わさしていただきました。したがって、
サイクル機構が
技術開発をしたものを
本県で
実用化、
商業化をされている。
一つは、
核燃料サイクル施設、
六ケ所村における
ウラン濃縮工場であります。
動燃岡山県の
人形峠の
実験プラントで
開発をして成功したということで、
六ケ所村
日本原燃の
ウラン濃縮工場に
遠心分離器を導入されていますが、既に一万七千百八十四台
停止をしています。この
停止という
状況は、必ずしも
開発は成功しなかったという
具合に言えるものではないかという
具合に思います。
二つ目として、再
処理工場があります。御存じのように、
東海の再
処理工場の実績があるから
六ケ所村で
我が国初の
商業再
処理工場をやりますということでありますが、なぜか
施設の
本体については
フランスのUP3の
技術が大半といいますか、多く導入です。なぜ
我が国の
動燃あるいは
核燃サイクル機構が
開発をした
東海の
技術を導入しないのか。そういう点では、やはり
東海工場、正にこれから
議論されるであろう新
法人の
役割を
十分吟味をする必要があるだろうという
具合に考えます。
三つ目として、高
レベル放射性廃棄物ガラス固化の
施設であります。これについては、この後段の方に書いてございましたが、なぜかこの件に関しては、
本体は
フランスの
施設を使いながら、
ガラス固化施設については
東海の
技術を導入するという形になります。この
東海の
ガラス固化施設については、最近、七月でありますが、
評価委員会の
中間報告書というのが公表となりました、実際に作られたのは前のようでありますが。この中の
評価委員の
言葉の中に、
報告書の二十ページに記されておりますが、ガラス固化を製造する
過程の
技術開発がまだ十分に
開発されていないとの
評価がされているということ、私は唖然といたしました。やはり、そういう現実と同時に、相次ぐトラブルということ、やはりそれで果たして
核燃サイクル機構として実績が十分と言えるかどうか。と同時に、それを
六ケ所に、不十分な
技術を
六ケ所の
商業施設に導入していいかどうかという
部分は、更に
議論を重ねる必要があるだろうという
具合に思います。
四点目の大間の原発でありますが、これも当初、旧
動燃が
開発をした新型転換炉「ふげん」の実証炉を大間に建設をするという
計画で
地元が進めておりました。しかし、その後、電気
事業連合会が経済的に新型転換は問題があるということで見直しを求めて、現在は、
我が国初、正にそれは世界で初と思うんですが、軽水炉によるフルMOX装荷にABWRの
原子炉を今進めている最中であります。しかし、国内でのMOX利用については、
機構の「ふげん」にありますが、軽水炉ではわずかに六体しかございません。にもかかわらず、安全性を、これを主張しておりますが、やはりその背景にあるのは、旧
動燃、
機構がこういう実績があるということがそこの背景にありますが、
地元にいる一人としては到底その安全性については納得できるものではありません。
五点目として、MOXの加工
施設についてでありますが、これは今、
日本原燃が当県また
六ケ所村に立地要請をしておりますが、この背景として、
東海事業所の
開発実績を挙げております。しかし、この建設も私はやはり多くの問題があるという
具合に受け止めています。特に安全性についてであります。
三ページに入ります。
六番目に、
原子力施設の相次ぐ
事故隠し。相次ぐ
事故あるいはそのデータ隠し、あるいは
事業者による
資料隠しあるいはデータ改ざんと。そういうものでの
国民の
原子力行政あるいは
原子力事業者あるいは
原子力施設に対する不信、不安は高まっているという、そういう
状況をまず強調しなければならないという
具合に思います。
そして七点目として、そういう
状況の中での二
法人、
核燃サイクル機構それから
日本原子力研究所の
責任と
役割は私は極めて重要であったし、あるという
具合に思いますが、十分その役目を果たしてこなかったという
具合に私は
認識しております。
その理由としては、①として、「もんじゅ」の
事故とそれにかかわるビデオ隠しがありました。
二つ目として、再
処理工場の火災爆発
事故がありました。
三つ目として、今年の三月の国会で
議論になりました、直接処分試算にかかわる問題での
核燃サイクル機構並びに
日本原子力研究所での対応であります。
それはなぜかといいますと、九六年にこの問題はあったわけですが、それ以前に既に旧
動燃においてはいわゆる直接処分の試算をされておりましたし、それから九六年に
議論されておった総合エネルギー調査会のワーキンググループには当時の
動燃の理事長さんも
委員として参加をされておりましたし、当然そういう国会の
議論というものは二
法人は十分熟知あるいは
認識をしなければならなかったはずでありますし、それへの対応というものは私はやはり不信を更に高めたという
具合に思います。
四点目として、
原子力長計を始めとする
原子力政策の様々な
審議会あるいは
会議あるいは会合、その決定をする、
審議をする場面での、
サイクル機構並びに
日本研究所の皆さんは、ほとんどの
委員会に参加、
出席をされているはずであります。しかし、それらについて果たして十分な
役割を果たしたかといいますと、私は、そうではない、そのことが結果として、先般の美浜原発
事故なりあるいは
東海村のジェー・シー・オー
事故等にも入っていると思います。それは、事前であれ、その後の調査
委員会であれ、同様にあるだろうという
具合に思います。そのことについては、やはり両
法人の
研究機関としての独立性、自主性あるいは独自性というものが果たしてその中で十分発揮されてこなかったのではないかと。これはそういう
委員会の議事録等を見た、あるいは
地元に
原子力施設を抱えている
県民の一人としてそういう
議論の
状況を見たときに、そんな印象を強く持ちます。
もちろん、
日本原燃にも、
サイクル機構から延べにして二百五十二名の職員が派遣をされています。現在でも百四十六名。そして、
日本原燃の職員が六百四名、
サイクル機構の教育を受けている。にもかかわらず、溶接を不正にされていることが見抜けない。あるいは配管接続を誤ってやることも見抜けない。防止もできない。いろんな問題があるということは、やはりそういう面での指摘をせざるを得ないという
具合に思います。
そして、
法案審議に望むことについては、八番目でありますが、
原子力に対する
国民、
県民の不信は払拭をして、
信頼と安全の確立をまずお願いを申し上げたいと思います。
二つ目として、
原子力政策の今後の在り方について、
原子力長計の
審議も含めて徹底的かつ十分な
審議を尽くして
国民の
理解と合意を得ていただきたい。私は
核燃料サイクル政策は破綻をしているという
具合に
認識をいたします。
そして、(2)として、両
法人の
業務は、基本は
原子力長計にありますが、長期
計画の中間
報告が十一月十二日に公表されました。この
内容は極めて不十分でありますし、あいまいでありますし、問題点を先送りであります。したがって、
国民の
意見募集等によるパブリックコメント等での
国民合意による長計の策定を私は国会の立場からもやはり求めるべきであるという
具合に考えます。
今、
手元にその中間
報告の取りまとめを持っておりますが、この中でも、例えば再処理を放棄をした場合にどういう問題が発生するかということが書かれてあります、いわゆる
政策変更を行った場合。この
内容を見ますと、普通、再
処理工場の目的はプルトニウムを取り出すことにあるはずですから、
政策変更をすればプルトニウムが足りなくなって困るというのが
報告書のメーンでなければならないのに、そうなっていない。その三番目の中に書いていますが、六ページの三番目にありますが、結果として
原子力発電からの使用済燃料の搬出が困難になる、あるいは
原子力発電所が
停止をする、あるいは中間貯蔵や最終処分場の立地に大きな困難が発生する事態に予想されると。正にこのことは、核のごみをどこに持っていくかという観点でしか再
処理工場の考え方をしていないということは、
青森県は再
処理工場という名目での核のごみ捨て場かということを、あえてやはりそういう疑念を訴えざるを得ません。
さらに、この中で、余剰の、いわゆるその再処理できない
部分の余った使用済核燃料についてはどうするかと。それは二〇一〇年ごろから
検討を開始をして、
六ケ所再
処理工場の操業終了、二〇四五年と今言われていますが、それに間に合うまでに建設、操業ができるように結論を得ると。何と二〇四五年、あと四十年以上もたって、まあ結論出るのはその五年くらい前になるんでしょうか、操業できると。これほど、これが
国策と言えるかどうか。私は到底受け入れられないものでもあります。
そしてまた、余剰プルトニウムの懸念についてはこう記されています。プルトニウム利用の徹底した透明化を進めるために、
事業者はプルトニウムを分離する前にその利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途などから成る利用目的を公表することが適切であり、そしてこれを誠実に実施していくことが
期待されると。
期待されるという書き方が果たして
国策と言えるかどうか。まして、プルトニウムという核兵器にかかわる疑念について、これが長期
計画だと言えるか、
国策としての長期
計画かどうか、私は大きな疑問を持ちます。そのことを、問題点を①から⑩まで書いております。
(3)番として、正に
国民の
理解、合意、
協力を欠いた
政策は、この長計は、
国策とは言えません。いずれこれは破綻をする、あるいは
事故を招く。その結果、
国民に、特にその
原子力施設を抱える
地元と次
世代に多大な膨大な犠牲を強いることになります。これまでの
原子力船「
むつ」にせよ、あるいは
むつ小川原開発の
失敗が私はそれを物語っているという
具合に訴えたいと思います。そして、それを回避するためにも、
国民に
信頼される
原子力行政の展開のための
研究機関としての新
法人の
役割と充実を私は求めたいという
具合に思います。
九番目として、
法案の
内容について幾つか私なりに申し上げておきますが、「もんじゅ」
事故等についてはやっぱり総括をしっかりとすべきであるという
具合に思います。
そして、
最後のページになりますが、②番として、私は両
組織を
統合して巨大な
原子力機関を
設立する意味と必要性はないと思います。
三番目として、
原子力安全
委員会の関与、もちろん
原子力委員会の関与も薄められている、現在より薄められているということについて、そしてまた依然として経済産業省、
文部科学省の複数の省庁の縦割り行政のままでの
国民のメリットは私はないものという
具合に思います。
そして、その新
法人の
業務には、私は破綻したと申し上げましたが、
核燃サイクルの
技術の確立は私は不要だという
具合に思います。むしろ、その七番目に、
最後の方にありますが、結果として
サイクル機構の
業務は私は不要であって、むしろ
原研が今進めている
安全研究の機関として充実を図っていくべきだし、あるいは使用済核燃料の後始末、あるいは
原子力施設の後始末をいかに安全にすべきかと、そこの
部分に注意すべきであるという
具合に思います。
最後に申し上げたいことは、私ども
青森県を始めとして、
原子力施設が建設されているのはなぜか電力の大量消費地から遠く離れたところにあります。それでいて安全だ安心だと言われ、そして電源三法交付金で
地域振興だと言われていることには、私はやはり率直な疑問と不信を持ちます。
二つ目として、
事故や不祥事が発生するたびに、
国民はそうですが、特に
地元自治体、住民が犠牲になる。それでは私は
国策と言えないのではないかと思います。
最後に、このたびの
法案の
審議については、重ねて申し上げたいと思いますが、
原子力長期計画の策定論議と重なっておりますので、この
機会に、
原子力の世界が、いわゆる
原子力の村とも言われてきました、と言われないように、真に今日の地方分権と構造改革が
実現したと、されると、そのことを
法案の
審議の中で
実現していただければと、そのことをお願い申し上げたいと思います。
ありがとうございました。