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2004-04-22 第159回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月二十二日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      朝日 俊弘君     角田 義一君      今泉  昭君     信田 邦雄君      堀  利和君     福山 哲郎君      井上 哲士君     宮本 岳志君  四月二十一日     辞任         補欠選任      江田 五月君     小川 敏夫君      信田 邦雄君     今泉  昭君      福山 哲郎君     堀  利和君      宮本 岳志君     井上 哲士君  四月二十二日     辞任         補欠選任      小野 清子君     西銘順志郎君      樋口 俊一君     円 より子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 千葉 景子君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 岩井 國臣君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 西銘順志郎君                 野間  赳君                 今泉  昭君                 小川 敏夫君                 堀  利和君                 円 より子君                 井上 哲士君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        警察庁刑事局組        織犯罪対策部長  近石 康宏君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君        外務大臣官房審        議官       門司健次郎君        外務大臣官房参        事官       長嶺 安政君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯  罪収益規制等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出) ○労働審判法案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十日、朝日俊弘君が委員辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。  また、昨二十一日、江田五月君が委員辞任され、その補欠として小川敏夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会警察庁刑事局組織犯罪対策部長石康宏君、法務省刑事局長樋渡利秋君、外務大臣官房審議官門司健次郎君及び外務大臣官房参事官長嶺安政君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 山本保

    委員長山本保君) 国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 松村龍二

    松村龍二君 自民党の松村委員でございます。  本日、国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案が提案されましてこの審議に当たるわけでありますが、冒頭質問をさせていただきたいと思います。  国際捜査といいますと、この法案質問に入る冒頭に、私ども、ICPO、国際捜査機関というようなことを、インターポールというのを聞いておるんですが、インターポール国際捜査日本外国の、日本におきます国際的な犯罪とかいうのをある程度やっているのかなというような漠然とした知識もあるんですが、この国際捜査、何ですか、インターポール刑事警察機構の役割というのはどういうものなのか、今回言う国際捜査共助法改正関係があるのかないのか、その辺についてまず警察庁の方にお伺いしたいと思います。
  7. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 国際刑事警察機構を通じての協力というのは、捜査上有益な情報資料を交換するものでありまして、この条約締結後も引き続き行われ、中央当局を通じての共助と相互に補完することとなるものというふうに承知しております。
  8. 松村龍二

    松村龍二君 その説明だけですと、国際刑事警察機構がもうすべて役割果たしてくれるのかなというふうにも聞こえるんですが、現在どういう内容のことをしておって、それではどのような点が不十分で今回正に審議される法律改正になるのか、その関係を教えていただきたい。
  9. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 国家公安委員会は、国際刑事警察機構から外国刑事事件捜査についての協力要請を受けたときは、都道府県警察に必要な調査指示できることとされております。  しかし、要請内容によっては、例えば関係人所在地等が明らかでないなど、都道府県警察指示すべきか、どこの都道府県指示すべきか決めかねることもあります。そういうときには、そのような都道府県に対する指示に先立ちまして、国家公安委員会警察庁の職員に所要の調査指示を直接に実施できると、指示を直接に実施できるというふうなのが、国際刑事警察機構からの要請に迅速に対応できるようにするため必要な規定を設けるものであります。
  10. 松村龍二

    松村龍二君 私は、想定問答じゃないですけれども、質問していないことを今質問して、何かとんちんかんな返事なんですが。  フランスに、リヨンにインターポールの本拠地があって、そこに対して警察からも派遣して、それでいろいろ刑事警察機構を利用して必要な捜査の必要な一部分のことをやっているんじゃないですかと。それで、今、国際捜査共助がすべてできるのならこんなものは要らぬので、そうじゃないんでしょうということを聞いているわけですから、何の、そんなペーパー見ないで答えてください。
  11. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 国際刑事警察機構につきましては、捜査上のいわゆる資料捜査役立資料、そういうものを提供したり、また協力していただくというふうなのでありまして、今回の、それではなかなか公判上の証拠に使用するもの、そういうのの収集とか協力とかいうのができにくいということがありましたので、そういう面ではそれを今度の条約で補完できるんではないかというように考えております。
  12. 松村龍二

    松村龍二君 一言で言えば、情報の交換とか手配といいますか、そういうことをやっている程度であって、証拠収集のために外国からの捜査機関協力を得るという本格的なものはやっていないというふうに認識すればよろしいかと思います。まあ突発的な質問もありますので、イロハの質問をしていますので、しっかり答えてください。  それでは御質問に、法務省法務大臣に対する御質問に入りますが、犯罪国際化傾向指摘されておりまして、過般の出入国管理法審議に際しましても、一時の、期間の切れた外国人犯罪をしているとか、来日外国人犯罪についても審議されたわけでございます。  最近の新聞の紙面を見ましても、我が国で発生した事件外国関係するものが増えております。  福岡一家殺人事件、これは中国の、来日中国人による非常に残虐な犯罪でございましたが、福岡一家殺人事件のような犯行グループの一部が日本で、あるいは一部が外国で、中国で逮捕されるというケースも出ております。また、暴力団当局の厳しい取締りを避けて海外にけん銃、麻薬、ポルノ等規制品供給源を求めてこれを密輸入しようとする事件もあるわけであります。最近では、暴力団やみ金融のお金を資金洗浄のため海外の銀行を利用するといった事件も報道されております。また、暴力団に限らず、日本人が海外において、例えば保険金目的殺人を敢行する、フィリピン等を舞台にですね、そんなような事件も過去に何回も思い出すわけでございます。日米間でいえば、著名な事件としてはロス疑惑事件があります。また最近では、格闘技イベントK—1を主催する企画興行会社による脱税について捜査共助をしたのも挙げられております。  ほかにも大手出版社のいわゆる角川事件ですけれども、大手出版社の社長のコカイン密輸事件、あるいはこの金余りの時代のプリンストン債をめぐる国際詐欺事件などにおいて、日米捜査当局協力が報道されたことを記憶するわけであります。  今取り上げたような事件は、我が国捜査を行い米国捜査を依頼した事件だと思いますが、日米間に限らず、今後も外国捜査を依頼するような犯罪が増加していくという傾向はやむを得ないと思うところであります。  このように国境を越えた、我々、行われる犯罪外国人が主体となった犯罪について捜査をしていくためには、外国との捜査協力は欠かすことができないものと思われます。たとえ外国に対してであっても、我が国捜査機関は有効かつ迅速な捜査を行うことができる体制を整えることは治安対策上、効果があることでございます。  今回の法案は、正に諸外国との捜査協力を一層推進するための法律ということでありますけれども、実際我が国外国から共助要請を受けたり、外国に対して共助の請求を行った事件は、まず数の上でどれくらいあるのか、法務当局及び警察当局にお伺いします。
  13. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) お答えいたします。  我が国が、昭和五十五年の国際捜査共助法施行後、平成十五年十二月末までの間で外国から共助要請を受けた件数は三百九十四件でございます。他方、同じ期間におきまして我が国検察官から外国に対し共助要請を行った件数は二百二十五件でございます。
  14. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 平成十一年から十五年までの過去五年間で、警察外交ルートを通じて外国共助要請した件数は七十一件でございます。
  15. 松村龍二

    松村龍二君 そのうち米国との間における件数の割合はいかがか、法務当局及び警察当局に伺います。
  16. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 我が国昭和五十五年の国際捜査共助法施行後、平成十五年十二月末までの間で米国から共助要請を受けた件数は百六十一件でございます。他方、同じ期間において我が国検察官から米国に対し共助要請を行った件数は七十一件でございます。  なお、要請を受けた件数要請を行った件数とも、米国との件数が他国に比べて一番多いという状況でございます。
  17. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 平成十一年から十五年までの過去五年間で警察外交ルートを通じて米国共助要請した件数は二十五件でございます。
  18. 松村龍二

    松村龍二君 実は、私はこの法案についてはちょっと個人的にも思い入れがあるわけですけれども。  私も平成四年まで治安機関にいたんですが、その後平成七年に参議院に初当選しましたときに、アメリカ大使館の人が、当選後間もなくであったと思うんですが、訪ねてまいりまして、実は日米捜査協力が、アメリカは司法省ということで一本なんだけれども、日本の場合は外務省を通じないとその依頼ができない。実際には法務省であり警察がやっておるということで、その事件内容、そのどういう協力をしてほしいという内容を言うにしても、どこを窓口にしていいのか分からないと。それで、また外務省を通じていると、専門家じゃないから、もうどこにどうしていいかさっぱり分からなくて頭がもう痛くなると。  こんな御相談を実は受けたことがありまして、その後どのような変遷をたどったのか、今日こうした条約締結と、また法律が制定されるということで、まあ八年間か、そのころからですね、たってようやく実現したなというような、ちょっと個人的な思い入れもあるわけですけれども。  まず法務大臣、この法案は、日本米国との間で初めて刑事共助条約締結することに伴いまして国際捜査共助法組織犯罪処罰法改正するわけでありますが、今回の改正によって、これまでの捜査共助に関し、どのような効果が期待できるのか、法務大臣にお伺いします。
  19. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) お答えいたしますが、今回の法改正によりまして、条約締結する米国との関係におきましては、外務当局を介さずに中央当局間で直接共助要請及び証拠の提供を行うことができるようになりまして、今までより迅速に共助を実施することが可能となります。  また、共助要件が緩和されまして、さらには刑事手続における証人尋問証人として出頭させる目的で刑の執行として拘禁されている者を移送することができるようになるなど、共助を実施し得る範囲が拡大しまして、より一層緊密な協力捜査協力体制を構築することが可能となるわけでございます。  今後、米国以外の国とも条約締結していけば、その国との間でも共助できる範囲が広がり、共助迅速化を図ることができることになります。特に最近は、韓国を始めとする東南アジア諸国とのこういった国際捜査共助必要性がますます高まってくるものと想定されますので、この条約アメリカとの間で締結することによって、そのまずモデルとして大変意義のあるこれは条約締結かと思います。
  20. 松村龍二

    松村龍二君 今回の条約では、いわゆる中央当局制度を採用し、外務当局を介さずに共助要請ができるようになるとのことで、これに合わせて法改正を行うということでありますが、捜査では迅速性が非常に重要であります。外国では半年も拘束して捜査するというふうな先進国もあるやに聞いておりますが、日本の場合は、警察はもう二十四時間、四十八時間というような時間の中で検察に送らぬといかぬ。また、拘束、勾留されても、初めの十日間、次の十日間、合わせて二十三日しか捜査でその被疑者を勾留、拘束できないと、そういう中において証拠を集めるというようなことですから、迅速性を要するということは非常に重要であるというふうに認識します。  組織犯罪のような場合には、遅くなれば遅くなるほど証拠が隠滅される危険も高まりますし、隠滅されないまでも証拠が発見されにくくなるわけであります。今回のように、日本外国捜査当局が直接連絡を取り合い証拠の授受を行うのは理にかなっていることかと思います。  やっぱり外務省を通じれば書類を持っていく運送の時間、運んでいる時間、あるいはもうその手に止まりましても半日ほど置いておかれると、上司の決裁その他で時間を要する。それが、法務省あるいは警察からファクスで直ちに先方連絡し、又は先方から法務省に直ちに最近の発達した通信機関、仕組みで返事があるというようなことで、画期的な時間の節約になるんだろうというふうに思います。  それから、お聞きするところによりますと、アメリカ日本捜査やり方が違うと。例えば、犯行現場実況見分調書を作成しようという場合、日本の場合は詳細な図面を作成し、様々な測定、よく交通事故が起きても何か一生懸命、距離をメーターで、巻尺で測っているというような場面を見ることがあるわけですけれども、そのような詳細な図面を作成し、様々な測定などを行うわけです。  ところが、米国の場合は、裁判の在り方が違うということもありまして、日本でお目に掛かれるような実況見分調書はおよそ作成されていないという話だそうです。供述調書においても、日本動機を解明しようとしたり、犯行の前後の状況を含め事件全体について供述を録取するわけでありますが、しかし、米国では、今から裁判員制度その他の審議の過程でも問題になってくるかと思いますけれども、米国では陪審員というような制度もあって、それはそういうところにゆだねて、調書というものはもう犯罪の事実だけを明らかにするということで、動機というものは問題とされない。日本に比べてかなりあっさりとした供述調書になるというふうに聞いております。日本ではまた入念な裏付け捜査を実施するわけでありますが、しかし、米国では元々詳細な供述を取るわけではないので裏付け範囲は狭いと。  このように、日米間の間を取りましても、実際の捜査やり方が異なるわけですから、また細部の補充をしてもらうというようなやり取りをするにしましても、直接の連絡でないと、やたらと隔靴掻痒のことで進まないということにもなろうかと思います。日本が詳細な裏付け捜査を頼んでも、日本が期待しているような水準のものは簡単には得られないのではないかと思われるわけです。  そのような調整が必要なときに、今回、米国日本刑事共助条約締結して捜査当局同士やり取りを行うということは、捜査共助迅速化という点で大変な進歩になろうかと思いますが、今回の法改正日米条約だけを念頭に置いた改正になっているのか、法務当局に伺います。
  21. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 委員指摘のように、今回のこの日米条約によりまして、日米間においては迅速な捜査共助ができるものと期待しております。  そこで、今回の法改正日米間の刑事共助条約がきっかけになっておりまして、日米間の刑事共助条約締結するために必要なものではございますが、日米刑事共助条約だけを対象とするものではございません。今回の法改正では、例えば条約に別段の定めがある場合とか、条約に基づき法務大臣共助要請の受理を行うこととされているときなど、単に条約規定しておりまして、日米刑事共助条約に限った規定とはしてございません。  今後、米国以外の国との間で締結する同種の条約も、今回の法改正規定する条約に含まれることになるということでございます。
  22. 松村龍二

    松村龍二君 戦後、日本外交というのは一元化ということが非常に強く叫ばれたわけです。戦前、駐在武官が勝手に連絡するというようなこと等がありまして、すべてのことは外務省を通じないといかぬと、一元化。私も在外勤務ありますけれども、例えばその出身省庁と直接連絡してはいかぬと、必ず外務省を通じなさいとか、あるいは今でも駐在武官が、諸外国では軍人の身分だけかと思いますけれども、日本の場合は一等書記官、二等書記官一等陸佐というような、あくまでも外交一元でないといかぬという戦後のきつい流れがあったかと思いますけれども、そういう中で今回の問題もあったかと思いますが、このような捜査当局同士が直接やり取りを行うというのは日米間のみに限る必要はないというふうに思います。むしろ、世界的な傾向だと思いますが、世界状況はどのようになっているのか、世界的に捜査共助窓口はどうなっているのか、教えていただきたいと思います。
  23. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) あらゆる国につきまして調査したわけではございませんが、委員指摘のとおり、捜査共助に関しまして、捜査当局同士で直接やり取りを行うのが国際的な潮流であるというふうに理解しております。  今回、条約締結いたします米国は、我が国との間の条約と同様の条約を既に四十八か国、二地域、一国際機関との間で締結しておりまして、締約国は、英国、フランス、イタリー、スペイン、ベルギーといった欧州国々、大韓民国、タイフィリピンといったアジアの国々南アフリカ共和国、ナイジェリアといったアフリカの国々、ブラジル、アルゼンチンといった南米の国々のほか、オーストラリア、イスラエルなど、世界各国にまたがっております。これらの国は、いずれも捜査当局捜査共助窓口とする条約米国との間で締結しております。また、多数の欧州の国は、司法捜査当局捜査共助窓口とする刑事司法共助に関するヨーロッパ条約に加入しております。  このような状況に照らしまして、捜査司法当局同士による直接のやり取りをしているのが国際的な潮流であるというふうに理解しております。
  24. 松村龍二

    松村龍二君 よく分かりました。  捜査というのは、非常に国家主権にかかわる問題かと思うんですね。やっぱり日本におきます事件、あるいはアメリカ人日本犯罪を行った場合に、アメリカ捜査機関が勝手に日本に来て捜査をやっているということでは、これはもう主権は侵害されるわけですから、中央当局制度というものを作って、外務省は離れるけれども法務省がその元締になりましてしっかりやろうと、こういう話かと思います。  今度、少し法律の細かい話を伺うわけですが、今回の改正は、外交ルートを外すという点以外に捜査共助範囲内容を拡張することも目的とし、条約に別段の定めがある場合には、双罰性がない場合、日本犯罪にならないものについては日本捜査はしないというようなことではなくて、双罰性がない場合でも共助をすることができるということでありますが、そもそも外国のために共助を行う上で双罰性要件とするのは世界的に通常のことなのか、少なくとも米国では要件としていないと思いますが、いかがでしょうか。
  25. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) これもあらゆる国について調査したわけではございませんが、委員指摘のとおり、米国では双罰性共助要件とはされておりません。フランス、カナダ、オーストラリア韓国、またイギリス、ドイツも双罰性は原則不要としております。これに対しまして、イタリアやタイでは双罰性を原則必要としておりますが、条約で別に定めれば不要という法制であるというふうに承知しております。
  26. 松村龍二

    松村龍二君 共助を促進するとの観点からは、条約に別段の定めがある場合に限らず、双罰性がなくても共助することができるようにすべきではないのでしょうか。
  27. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 確かに、条約存在にかかわらず双罰性要件としていない法制を採用している国もございまして、双罰性を絶対的な要件としないことが国際的な潮流となってはおりますが、すべての国がおよそ条約存在を問わず双罰性要件としないわけでもございません。どのような場合に共助を実施するか、どのような場合に共助を拒否するのかにつきましては、捜査共助必要性法制度の相違、国民感情等を踏まえながら個別に取り決めていく必要がございまして、条約定めることにより双罰性要件を緩和するのが妥当であるというふうに現在は思っております。  したがいまして、条約の有無にかかわらず、すべての場合に双罰性を問わずに共助を実施すべきとするのは、現状においては妥当ではないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  28. 松村龍二

    松村龍二君 今回の法改正では、受刑者証人移送制度を創設するということでありますが、このような制度を設けた理由は何か、お伺いします。
  29. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 今回創設いたします受刑者証人移送制度は、刑事裁判法廷証人として証言を求めるために、我が国において受刑中の者を外国に一時的に移送し、また我が国外国受刑中の者の移送を一時的に受けることができるようにする制度でございます。  これまでは、外国受刑中の者に我が国刑事裁判法廷で証言してもらう方法はなく、また我が国受刑中の者を証人として呼びたいと外国から頼まれましてもこれに応じる方法はなかったのでございます。しかし、この制度が実現しますと、外国刑事裁判の審理の充実に協力できるほか、我が国裁判所の面前外国受刑者に証言してもらうことができるようになるわけでございまして、法廷での面前での裁判官の心証形成には役立つだろうというふうに思うわけであります。  国際的にも、拘禁されている者について証言目的等のため一時的に移送する制度の有用性についての認識も高まっておりまして、このような情勢を踏まえて、日米刑事共助条約上も拘禁されている者についての一時的な移送制度が導入された結果、そのための法整備を行うこととしたものでございます。
  30. 松村龍二

    松村龍二君 この制度条約がある場合に限られるのでしょうか。現在でも捜査共助条約がある場合に限らず行われるようになっております。さきの福岡中国人の事件を例に挙げても、必要な捜査共助は行われているというふうに思います。逃亡犯罪人引渡しについても、原則として条約を結んでいる国ではなくても犯罪人の引渡しを行ったりしております。受刑者証人移送条約がある場合に限らなくてもいいのではないかとも思われますが、いかがでしょうか。
  31. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 委員指摘のとおり、国際捜査共助法における一般の共助及び逃亡犯罪人引渡法における一般の引渡しについては条約前置とはしておらず、受刑者証人移送制度においても条約前置主義を採用しないという選択肢も考えられないわけではないと思います。  しかしながら、受刑者証人移送は、一般的とはいえ、日本国民を含む我が国受刑者を相手国の拘禁の下に置き、又は相手国の受刑者我が国の拘禁下に置くものでございますから、送出国と受入れ国の二国間で相互の司法制度に対し高度の信頼関係が成り立っていることが前提となるというふうに考えるわけでございます。  そして、あらかじめその要件及び手続を明確にし、手続の適正を確保するとともに、相互に同様の移送を行うことの保証を確実なものとする必要性が高いため、条約締結している場合にのみ受刑者証人移送を行い得ることとしたものでございます。
  32. 松村龍二

    松村龍二君 よく分かりました。  移送の対象となるのは受刑者ということに法律上なっておりますが、未決拘禁の者は含まれないと思いますが、それはなぜ除外されているのでしょうか。移送できる者の範囲は広くすべきではないかという指摘もあろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 受刑者証人移送の対象に刑の執行により拘禁されている受刑者のほか未決拘禁者をも含めるといたしますれば、本来、当該未決拘禁者自身の刑事裁判の審理等のために拘禁されているにもかかわらず、外国での証人尋問のためにその拘禁を継続し、これを利用して移送することで裁判が遅延するなど、その審理に影響を与えるおそれがあるなどの不都合が生じ得るのではないかというふうに考えるわけでございまして、そこで移送の対象となる被拘禁者から未決拘禁者を除外し、受刑者に限定したものでございます。
  34. 松村龍二

    松村龍二君 移送証人尋問証人として出頭させるために限定しておりますが、それはなぜでしょうか。証人尋問に限定せずに取調べのための移送も含めれば、共助要請外国捜査機関供述調書を作成してもらうのではなく、我が国移送して我が国調書を作成することも可能になると思われますが、いかがでしょうか。
  35. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 委員指摘のとおり、受刑者移送が認められる、受刑者証人移送が認められる範囲証人尋問に出廷させることを可能とする場合に限定せずに、捜査段階における取調べや事情聴取を行う場合にも可能とすることも考えられるわけでございます。  しかし、このような目的での移送を認めるとなりますと、移送を行う場面が多くなり過ぎ、受刑者及び国家の双方にとって物理的、経済的に過大な負担となることも懸念されないではございません。また、受刑者に対する刑の執行及び更生改善という点に十分配慮をする必要があると考えるわけでございます。その一方で、受刑地における供述収集によって共助目的を実質的に達し得ることも少なくないというふうに思われます。  そこで、裁判の結果に直結する証人尋問という重大な局面において、真に移送を必要とする場合に限り受刑者移送を行うこととしたものでございます。
  36. 松村龍二

    松村龍二君 更に細かい質問になりますが、今回の法改正では、業務書類等に関する証明書についての規定も整備するわけでありますが、なぜこのような制度が必要なのか、その趣旨を法務当局に伺います。
  37. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 諸外国には業務を遂行する過程において作成又は保管された書類につきまして、その旨の証明があれば伝聞法則の例外として証拠能力を付与するとの法制度を有している国があり、これらの国から業務書類の提供に関する共助要請があるときは、当該業務書類が業務の過程で作成又は保管されたことについての関係者による証明書の提出が随伴して要請されることが多いのでございます。そして、その場合の関係者による証明書の提出は、虚偽であれば刑罰による制裁を受けることの制度的担保の下で行われることが必要とされているのが通常でございますが、我が国では公務員以外の私人が虚偽の内容の文書を作成いたしましてもそれだけでは直ちに処罰されないことから、従来は、証人尋問を行いその結果を記載した証人尋問調書を送付することによりかかる要請にこたえてきたところでございます。  しかしながら、証人尋問裁判所で行う必要があり、期日の設定等に時間を要することから、簡易な証明書の提出によりかかる要請に直接的にこたえることが迅速かつ効果的な共助の実施に必要不可欠でございます。加えまして、ここで想定される証明内容は、当該書類の作成又は保管の状況という定型的かつ事務的な事項に限定されるのでございまして、証明書の提出という証明形式になじみやすい上、その方がかえって証人尋問を実施するよりも証明者の負担軽減につながるものだと考えます。  そこで、本改正におきましては、第八条第三項を新設いたしまして、検察官又は司法警察員に業務遂行過程において作成又は保管された書類等の作成者又は保管者に対しその作成又は保管の状況についての証明書の提出を求めることができることとするとともに、第九条を新設して、証明書の提出を求められた者が虚偽の証明書を提出したときは一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するものとして、諸外国からの要請に迅速にこたえ得る制度を整備したものでございます。
  38. 松村龍二

    松村龍二君 大変便利な制度かと思いますが、相手方が証明書の提出を拒んだ場合にはどのようなことを考えられるのか、どう担保するのか、お伺いします。
  39. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 業務書類等に関する証明書の提出を求めた相手方が証明書の提出を拒んだ場合には、原則に戻るわけでございまして、裁判官に証人尋問を請求することということになります。そのため、第十条第三号は、第八条第三項の規定による証明書の提出を求められた者がこれを拒んだとき、検察官裁判官に証人尋問を請求することができると規定いたしまして、このことを明らかにしている次第でございます。
  40. 松村龍二

    松村龍二君 今回の改正で、捜査共助に関し、ようやく世界標準になるための受皿ができるわけでありますが、今後どのような国との条約締結していくべきか、法務警察当局はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  41. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 現時点で、米国に続いてどの国との間で刑事共助条約の交渉を行うかということにつきましては具体的に決定しているわけではございませんが、我が国にとっての共助のニーズを勘案しつつ、関係省庁とも相談しつつ検討してまいりたいというふうに考えておりまして、具体的には韓国などアジア諸国の中に捜査共助に関するニーズが高い国があるものと認識しております。  せっかくこういう法の改正をしていただくわけでございますから、できるだけ広い範囲でできるように努力はしていきたいというふうに思っております。
  42. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 我が国にとっての共助のニーズを勘案しつつ、優先順位付けを行っていく必要があるというふうに考えております。  現時点で、米国に続いてどの国との間で刑事共助に関する条約の交渉を行うかにつきましては具体的に決定しておりませんけれども、米国以外の国の中ではアジア諸国の中に捜査共助に関するニーズの高い国があるのではないかというふうに考えておりまして、今後、関係省庁とも相談しつつ、具体的に検討を行ってまいりたいというふうに考えております。
  43. 松村龍二

    松村龍二君 私も先般、この前は外交防衛委員会に所属しておりましたので、諸外国の大使館の方とお話ししておりましたら、ヨーロッパの先進国の中で自分たちもそういう条約を結びたいというような国もございましたので、御紹介しておきますが。  最後に、速やかに他国とこの種の条約締結していくことを望むわけでございますが、この点に関しまして、法務大臣に御所見をお伺いします。
  44. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 今回の法改正によりまして、米国のみならず、米国以外の国との間でも同種の刑事共助条約締結していく土台が整うことになるわけでございます。日米刑事共助条約締結後は、各国との間の刑事共助に関する条約締結に積極的に取り組んでいきたいと考えております。  今、日本がこの刑事事件に関して相互に協力している国は約三十か国ほどに上っておりますが、今回のこの締結によりまして、更にこの中でも特に東南アジア中心に需要の高い国辺りからこの制度を拡大しまして、より一層国際犯罪の防止、そして解決のより一層の早期化等について努力をしてまいるつもりでございます。
  45. 松村龍二

    松村龍二君 以上で終わります。  どうもありがとうございました。     ─────────────
  46. 山本保

    委員長山本保君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、樋口俊一君が委員辞任され、その補欠として円より子君が選任されました。     ─────────────
  47. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫です。  このように国際協力を進めて犯罪の撲滅、取締りに向かう、取り組むということは大変好ましいことだと思っておりますが、何よりも、そもそも犯罪が起こらないということがこれは理想なわけでございます。  そうした意味におきまして、まず政府、政治家そのものがきちんと国民に対して説明すべきは説明して、身を正すということを実践しなきゃ、しなくてはいけないかというふうに考えておるわけでございますが。  それで、法務大臣、副大臣大臣政務官にお尋ねいたしますが、今、日歯連の事件によりまして、多額の政治献金とか、いわゆる言葉を換えれば、ばらまきじゃないかというようなことが大変国民注視の的となっております。  それに関しまして、この点お尋ねいたしますが、大臣、副大臣大臣政務官のお三方は、日歯連からの政治献金を受けているか否か、あるいはパーティー券の購入をしていただいたかどうか。そうですね、最近五年以内で結構ですが、その状況について御説明いただきたいと思っておりますが。
  48. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 政治献金の扱いについては、ルールに従いましてきちんとやってきたつもりではございますが、今改めてお尋ねということでございますので、きちっと調べまして対応したいと思っております。  私の記憶では、そういった事実はないと考えておりますが。
  49. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) 私も、記憶では献金等は受けたことはないというふうに記憶しております。
  50. 中野清

    大臣政務官(中野清君) はっきりとしなきゃ分かりませんけれども、私の記憶でも日歯連からのあれはないと思っております。
  51. 小川敏夫

    小川敏夫君 副大臣の答弁が一つあいまいだったんだけれども、献金はないという、同時に、パーティー券の購入の方はいかがですか。あるいは、その点も含めて、お三方にまた確認ですけれども。
  52. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) パーティー券もございません。
  53. 小川敏夫

    小川敏夫君 政務官もいかがですか。
  54. 中野清

    大臣政務官(中野清君) それはないと思います。
  55. 小川敏夫

    小川敏夫君 あと、今最大の国民の関心事といえば、やはり年金問題だと思うんですが、江角マキコさんが国民に国民年金の保険料を払うようにというポスターに起用されていながら御自身が払っていなかったということが話題になりましたが、やはり国民年金の未加入と、あるいは保険料未納ということが大変大きな社会問題となっておるわけですが、こうした観点から含めれば、国会議員、ほかに民間会社の役職がなければ国民年金の加入者だとは思うんですが、この点、大臣、副大臣大臣政務官のお三方は国民年金の加入及び保険料の納付につきましては実行されておられるでしょうか、どうでしょうか。
  56. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 私の経歴からいたしますと、この国民年金の問題については該当しない立場であると思いますが、詳細につきましては、プライバシーに属することなので差し控えさせていただきます。
  57. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) 私も、プライバシーに関しますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  58. 中野清

    大臣政務官(中野清君) 私も、個人的な問題じゃないと思っております。きちんとやっていると思いますけれども、プライバシーの問題ですから、取りあえず御遠慮させていただきます。
  59. 小川敏夫

    小川敏夫君 プライバシーといっても国民年金は加入する義務があるわけなんで、その国民の義務を果たしているかどうかということがプライバシーか。まあ、犯罪者についても黙秘権があるんだから、それ以上答えないならまあしようがないかもしれないけれども、まあ一応今日のところはそうしたことで質問は終わりたいと思います。  この捜査に関する国際共助の点でありますが、最初に警察庁の方にお尋ねいたします。  とにかくここに来て、大変に重要な事件福岡の一家四人殺しですか、非常に単純な動機で大変に凶悪極まりないという犯行が実行されたと。これが事件が解明するまでには警察の方の大変な努力があったんではないかということで、その点については大変に高く評価しておるんですが、この事件捜査、解明につきましては、中国からの捜査協力も大分受けていると思いますが、どうでしょう、この点についての中国協力具合といいますか、協力状況についての状況説明していただけませんでしょうか。
  60. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 御指摘事件に関しましては、我が国から中国当局に対し捜査共助要請しておりますが、これに対しまして中国当局は積極的に対応していただきました。証拠の、証拠の送付など、協力が迅速に得られたところであります。
  61. 小川敏夫

    小川敏夫君 これは日本から捜査官が中国に赴いて、それで事情聴取もさせてもらえたようなことはあるんですか。
  62. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) これ、今公判中でもあり、捜査の中身でありますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  63. 小川敏夫

    小川敏夫君 いやいや、捜査の中身といったって、日本捜査官が中国に行って事情聴取をしたのかどうか、余り証拠の中身に関することではないと思いますので、むしろこの捜査共助状況についてお尋ねしているのでお答えいただきたいんですが。
  64. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 聴取したというより、中国当局が取り調べるところを立ち会ったという事実はございます。
  65. 小川敏夫

    小川敏夫君 そのことをいいか悪いか議論するつもりじゃないので。  ただ、ある意味ではこの今議論している国際捜査共助法ですか、これは依頼を受けた国が、その国の捜査機関捜査をするということですね。ですから、今回、福岡の一家四人殺しの事件では、ある意味ではこの国際捜査共助法で認めている以上のことを中国協力してくれたと。すなわち、今の国際共助法、この議論している国際共助法は日本中国に依頼すれば中国捜査機関が独自に捜査するということを決めているわけで、日本捜査機関中国に行くということまではこの法律の中に入っておらないわけです。  ですから、そう思いますと、あの福岡の一家四人殺しでは、中国当局は正に今この国際捜査共助法で認めていること以上に更に協力してくれたと私は思っておるんですが、そういうふうに言えるんじゃないでしょうか。つまり、日本捜査官が中国まで行って、捜査の場に立ち会わせてくれたということは、この国際捜査共助法、この法律で決めていること以上の協力をしてくれたんじゃないかと、こう言っているわけで。
  66. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 委員指摘のこの共助法以上のことを中国がやってくれたかということでありますれば、これはそれ以上のことをやっていただいたという事実はないものと承知しております。
  67. 小川敏夫

    小川敏夫君 別に事実を聞いているので、いいか悪いか議論しようと思っているんじゃないんですけれども。  ただ、この国際捜査共助法は、求めた国の捜査官が受入れ国の捜査に関与するということまではこの法律では求めていないですよね。これは法務省の方、いかがでしょう。
  68. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 捜査共助要請する、又は要請された場合におきまして、取調べの共助要請だというふうに思うわけでありますけれども、要請された側の捜査機関が取調べをしたその結果を要請した国に渡すということでございますが、その要請された側の捜査機関が取調べの過程において、要請した側の捜査機関捜査させるのではなしに立ち会わせるということは往々にしてお互いの国でやっていることだというふうに思います。
  69. 小川敏夫

    小川敏夫君 やっているけれども、この法律上は義務じゃないわけですね。
  70. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) もちろん義務ではございませんが、今回の日米共助捜査共助条約においてはできるだけ努力をするという条項がございます。
  71. 小川敏夫

    小川敏夫君 私は警察庁にそういうことをしちゃいかぬなんということを言うつもりはないんで、ただ事実を聞いているわけで、共助関係がよく機能しているかどうかということを確認するために聞いているだけで、日本捜査官が中国に行ったことがけしからぬなんということは全く考えていないんで、そういう意味で聞いているんじゃないんですから。  中国以外に結構、往々にして今そういう意味で日本の国内で起きた捜査のために海外で確かに共助を受けなければならない事件というのは結構、随分あったと思うんですね。  例えば、青森県公社で多額の横領事件がありました。あれで、妻がチリに行ってしまったわけで、これは横領したお金の使途に関して大変に重要な参考人であったと思うんですが、これについてはどうですか、そのチリの方の捜査協力の方はどうだったでしょうか。
  72. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) これにつきましても、チリの捜査当局からの積極的な協力が得られております。
  73. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうですか。一つ一つ聞いてもしようがないけれども、しかし、協力を受けられない国も現にあるわけですか。そこら辺の状況はどうでしょう。捜査協力を受けて協力的な国もあるけれども、そうでない国もあるかとも思うんですが、そこら辺のこの状況について概括的に説明していただけませんでしょうか。
  74. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) これは事件内容にもよりますし、また受けた、こちらから要請した相手方の国の法制にもよりますので、十分な我々満足できる協力を得られない国というのもあることはあるということであります。
  75. 小川敏夫

    小川敏夫君 まあ、今回の条約あるいはこの法律のほかにもそうした面、十分な共助が得られて捜査の方しっかり尽くして国民の生命、生活を守るということで、これからも一生懸命努力していただきたいというふうにお願い申し上げます。  この国際共助法のことについて、この法律内容について順次お尋ねいたしますが、まず、外国共助要請を受けて我が国で実際に捜査に動く当局ですが、普通に考えますと警察と、あるいは検察庁と、これだけが思い浮かぶんですが、しかし、さらにもう少し検討しますと、各個別の法律によって、自衛隊法では自衛隊にあると、あるいは海上保安庁の件に関しても司法警察権があると、あるいは麻薬取締官、これは厚生労働省ですが、これにも司法警察権があると。こうした司法警察権を持っているそうした自衛隊、海上保安庁あるいは麻薬取締捜査官、こうしたものもこの法律規定上は共助協力をする対象の捜査当局には入るんでしょうか。
  76. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘のとおりでございます。
  77. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると、どの捜査機関に依頼するか、大きく言っても警察と検察庁もあるわけで、それから今言ったように理論的にはそのほかにも幾つかある。これは依頼する側、すなわちアメリカ側が選択して依頼するんでしょうか。
  78. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 我が国外国捜査共助要請に応じることといたしました場合には、法務大臣は、相当と認める地方検察庁の検事正に対し関係書類を送付して共助に必要な証拠収集を命じるか、国家公安委員会又は海上保安庁長官その他司法警察職員として職務を行うべき者の置かれている国の機関の長に共助要請に関する書面を送付するということでございまして、その間、協議しながら法務大臣がお願いするということになるわけでございます。
  79. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうするとあれですか、それはアメリカ側の方はあくまでもすべて法務大臣をいったん窓口にすると、こういう趣旨なんでしょうか。
  80. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) そのとおりでございまして、中央機関、中央機関制度を設けておりまして、受ける方は法務大臣が一手に受けることになっておりまして、いずれの機関に、いずれの機関に共助に送付すべきかにつきましては、例えば要請内容証人尋問の実施である場合や、共助要請に関する書面において証拠収集を行う機関が明らかな場合を除きますと、法務大臣において、事案や要請内容に応じ関係機関と協議した上、いずれの機関が共助を行うのが最も適当かを決定するということになります。
  81. 小川敏夫

    小川敏夫君 それでは、実際にアメリカから共助要請を受けて我が国捜査機関が行うその捜査手段ですが、これは具体的にある程度限定があるんでしょうか、あるいは全く無限定なのか、そこら辺についての御説明をお願いいたします。
  82. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 結論を申し上げますれば限定がございまして、外国要請を受けて捜査共助を行う場合、検察官又は司法警察員は、共助に必要な証拠収集に関し、関係人の出頭を求めてこれを取り調べ、鑑定を嘱託し、実況見分をし、書類その他の物の所有者、所持者若しくは保管者にその物の提出を求め、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができます。  また、検察官又は司法警察員は、共助に必要な証拠収集に関し、必要があると認めるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索又は検証をすることができます。  さらに、裁判官に対して証人尋問を請求することができるということになっております。
  83. 小川敏夫

    小川敏夫君 捜査の手段で、例えば、もう五年前ですか、通信傍受法などで相当議論があったことがあるんですが、捜査の手法として通信傍受ということがあるんですが、これが除外されているのではないかという意見もあったんですが、いかがでしょうか。
  84. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘のとおりでございまして、国際捜査共助法規定されている以外の、これは先ほど申し上げましたものでございますが、それ以外の形態の証拠収集に関する処分については実施することができません。したがいまして、外国捜査機関からの要請を受けて通信傍受を行うことはできないというふうになっております。
  85. 小川敏夫

    小川敏夫君 これも一つの確認なんですが、これは国際捜査共助ですから、あくまで捜査ですね。証人尋問とかいろいろな言葉が出てくるんだけれども、公判手続において、裁判所が公判の審理のために、要するに公判の取調べともいいますか、証人尋問でしょうか、そうした裁判所が裁判所の公判の審理のために共助要請するというものとはこれはまた違うんですね、この捜査の点と。その点についてはいかがでしょうか。
  86. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘のとおりでございまして、外国に対する捜査共助要請とは刑事犯罪捜査に必要な証拠の提供を求める行為でございまして、概念といたしましては捜査当局要請主体として、主体として想定されているものでございます。  他方裁判所が外国に対し主として公判において行う証拠調べに対する協力を求める行為は、いわゆる司法共助と称されておりまして、その相手方は外国裁判所になるわけでございます。
  87. 小川敏夫

    小川敏夫君 これも確認なんですが、そうすると、証人尋問ということが度々出てくるんですが、これは裁判所における公判手続の証人尋問じゃなくて、いわゆる捜査段階での手続における証人尋問に限定されておるわけですね。ちょっと、証人尋問というと公判も入るのかなというふうに思うんですが、捜査の一つの手法として認められておる証人尋問に限定されておるわけですね。
  88. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) はい。  捜査において証拠収集するために必要な手段として証人尋問をお願いして、その結果を捜査機関としていただくということでございます。それを公判廷に証拠として提出できるものかどうかということは後刻判断の上で、またそれに証拠能力が付与されるかどうかということも裁判所が決定すべきものでございます。
  89. 小川敏夫

    小川敏夫君 あと、日本刑事訴訟法では、起訴後、起訴後であっても捜査は、補充捜査は継続できるわけですが、これは当然、そうすると起訴後であっても捜査のための共助依頼はこれはできるということになるわけですね。
  90. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 我が国におきまして、公訴提起後におきましても補充捜査ができることは委員指摘のとおり当然でございます。そして、外国に対する捜査共助要請は、刑事犯罪捜査に必要な証拠の提供を要請するものでございまして、捜査当局証拠収集については刑事訴訟法に関する規定によって遂行されるものでございますので、公訴提起後であっても捜査に必要であれば共助要請をすることができることとなります。
  91. 小川敏夫

    小川敏夫君 それで、我が国捜査機関アメリカ協力で得られたその捜査の結果、これについて我が国裁判手続において公判で証拠提出するという場合、例えばアメリカ裁判官の前で宣誓した証言調書もあるでしょうし、そのほかの供述調書等もあると思いますが、こうした証拠の扱いについては、これは我が国の刑訴法上の扱いでは、いわゆる証言調書とか検面調書とか、そういう扱いにはならないと思うんですが、これはそういうことでよろしいんでしょうか。
  92. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) おっしゃるとおりでございまして、我が国刑事訴訟法上は裁判官あるいは検察官面前の、いわゆるそういう裁判面前調書検察官面前調書以外の調書として取り扱われることになります。
  93. 小川敏夫

    小川敏夫君 それで、当然捜査段階で作成された書類ですから弁護人の立会い下でないでしょうし、しかし、アメリカで得られた資料我が国の公判で証拠として出てくるという場合、これ弁護人が絡む反対尋問権が十分には保障されないと思うんですが、これはどのように対応したらいいんでしょうか。ないものはないでしようがないということなんでしょうか。
  94. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) ただいまも申し上げましたが、裁判面前調書検察官面前調書以外の供述調書として取り扱うものでございまして、それは例えば司法警察員が取り調べた供述調書等とか、いろいろな供述調書があることは委員御存じのとおりでございまして、それにつきまして反対尋問権をという場合には、その供述者に日本に来て法廷で証言をしてもらうという道を取れるかどうかということに懸かっているものというふうに思います。
  95. 小川敏夫

    小川敏夫君 質問は変えますが、いわゆる双罰性要件ですね。  我が国では犯罪ではない、しかしアメリカでは犯罪だというものがあった場合に、それについて我が国捜査をすると。捜査を受けた側からすると、どうも国内では犯罪ではないものについて取調べなり証人尋問を受けるということは、むしろ国民感情に合わないんではないかと。先ほど双罰性のことに関しまして松村理事からの質問に対して、国民、双罰性要件を外すことが国民の、国民感情にも合うんだというような答弁だったと思うんですが、どうも私は、むしろ我が国犯罪でないものについて取調べを受ける可能性があるということは国民感情にはむしろ反するのではないかと思っておるんですが、そこら辺のところをもう一度お考えをお聞かせいただけませんでしょうか。
  96. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) これは条約に別段定めがある場合ということでございまして、条約を結んだ国との関係になるわけでございますが、反対に我が国犯罪になることで他国で犯罪にならないというものはあるわけでございまして、例えば銃の、銃砲等の単純所持と、それはアメリカでは犯罪にはならない。しかし、日本では大きな犯罪で、銃を入れない、持たせないというようなことでございます。  そこで、例えばやくざが大量にアメリカから銃を入れてきたと。それの根拠を突き止めるような捜査が必要な場合に、向こうでは法律にないから調べられませんよというのも、これまた我が国の国民感情にあるいは反するのではないかということでございまして、したがいまして、そういうような条約に基づいて双罰性がない場合に捜査ができるということは、お互いの国の司法関係、司法制度を信頼してやろうということでございます上に、原則は任意捜査でございまして、強制を伴う場合にはいろいろと慎重な配慮をしながらやっていこうということにしているわけでございます。
  97. 小川敏夫

    小川敏夫君 それから、この法案では、捜査共助において犯罪の証明に必要欠くべからざるという要件が緩和されてかなり使い勝手がいいと、共助協力をお互いにやすいように要件が緩和されておるわけですが、この犯罪の証明に不可欠だという要件が外れますと、しかしまあ犯罪捜査だから犯罪には、捜査には関係していなくてはいけないんでしょうけれども、もう少し具体的に言うと、どういうふうに要件が広がって、どの範囲まで広がったというふうに言えるんでしょうか、ちょっと説明していただきたいと思っているんですが。
  98. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 簡単に結論を申し上げますと、その不可欠性の要件はプラスアルファ、そういうものの疎明が必要だということになったものを、条約にある場合に限りそれを取り除こうということでございまして、証拠の不可欠性の疎明が要求されますのは、証人尋問であれば、証人が場合により勾引を受け、あるいは偽証罪等の制裁を受けることがあり得るところでございまして、また証拠物の提供であれば、当該証拠物の所有権者等の権利をその限度で制限することとなりますために、国民の権利を制約する度合いが比較的大きいと言えますので、不必要な共助要請により国民に過大な負担を課すこととなるのを避けるため、特に当該証拠が不可欠であることが明らかな場合のみ共助要請に応じることとしているものでございます。  他方で、これらの証人尋問証拠物は刑事事件捜査及び訴追のために重要な役割を果たすことが多いのは明らかでございまして、証拠の不可欠性の疎明を余りに厳格に要求し過ぎれば迅速な共助の実施に支障を及ぼす面があることも否定し得ないところでございます。特に、条約締結する場合には、当該外国の司法制度に対し高度の信頼関係が成り立っていることが前提でございまして、必要性のない共助要請がなされることは通常ないというふうに考えますので、条約において共助の実施要件、手続等について詳細な取決めをする際に証拠の不可欠性の疎明を緩和することも不当とは言えない場合もあるだろうというふうに思うわけであります。  そこで、条約の有無を問わず、証拠の不可欠性の疎明の欠如を絶対的な制限事由とするのではなく、条約に別段の定めがある場合においては、証拠の不可欠性の疎明がなくても要請国において捜査、訴追のために必要となる証拠についてその共助ができるものというふうにしたものでございます。
  99. 小川敏夫

    小川敏夫君 この犯罪の証明の不可欠性という要件が緩和されると。そうすると、端的に言いますと、捜査官の方が捜査に必要だと考えればもうそれで共助の対象になると、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。──もう一度同じ質問しましょうか。
  100. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 済みません。
  101. 小川敏夫

    小川敏夫君 じゃ、もう一度同じ質問。  犯罪の証明に不可欠な、不可欠なということがこの捜査共助要件だったわけですが、その犯罪の証明に不可欠だということの要件が外れたと。じゃ、今度外れた場合、じゃ端的に言って、捜査官側の方で捜査に必要だと考えればもうそれで共助要請ができる、あるいは共助を受け入れなくてはならないと、こういうことになるんだと思うんですが、そういうことでよろしいんでしょうか。
  102. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 要は、必要な捜査範囲内だというふうに判断できればその共助要請を受けるということでございまして、例えば不可欠性の要件についての具体的な例を挙げて申し上げますと、証人尋問について、例えば要請国の法制度上、宣誓供述でなければ証拠能力を有しないため公判立証を行うことができない場合がこれに当たりまして、証拠物の提供については、例えば偽造文書であるかどうかを判定するために特にその原本を調べる必要がある場合、要請国の法制度上、法廷において当該証拠物そのものを提示しなければならない場合がこういうことに、こういう場合に当たるわけでございますが、それを余り厳格に疎明を要求するのではなしに、お互いの司法制度を信頼し合って、そういう要請のために必要なんだと、そういうことのために必要なんだということがこちらの方で分かれば要請を受諾するということになるわけでございます。
  103. 小川敏夫

    小川敏夫君 実際に起きた事件をヒントにこういうケースということで考えてみたんですが、例えばアメリカで、ロサンゼルスで日本人が日本人を殺害したというようなケースがあって、主犯と実行犯が別の人間で被害者が日本人と。で、その主犯が日本で、これは当然、国外犯ですから日本裁判を受けることになると。しかし、結局、日本の国内では殺人に関して無罪になったと、で、無罪判決が確定したというような場合があったとします。しかし、主犯とは別に実行犯がアメリカにいて、そのアメリカで仮にその実行犯がやはり殺人で捜査される状況になったという場合に、当然、アメリカの方からこの我が国に関して、もう既に無罪が確定した人物に対して、参考人、あるいは実際の共犯者なんでしょうけれども、無罪が確定しておるというその者に対して捜査共助があり得るかもしれないと。そうすると、もう我が国で無罪が確定しているという人間に関して、同じ事実についてそうした捜査共助があるということも、これは、アメリカ捜査がある以上これはやむを得ないということになるんですね。
  104. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 結論を申し上げますとそのとおりでございまして、我が国裁判で無罪判決を受けましたことは、国際捜査共助法第二条に列挙された共助の制限事由のいずれにも該当いたしません。したがいまして、日本裁判所で無罪判決を受けた者でありましても、同法第五条に定めるとおり、法務大臣が相当であると認めるときは、共助要請に応じて事情聴取や証人尋問といった必要な措置を取ることができることになります。
  105. 小川敏夫

    小川敏夫君 これは当然のことだということかもしれませんが、あくまでも捜査共助ですから、その手続の中で、参考人被疑者であって犯人であるからといって身柄を拘束するとか逮捕するとか、そうした手続には全く関与しない、それはまた別の手続の話だと、あくまでもこれはこの定められた捜査を行うというだけの話だということですね。
  106. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 全く御指摘のとおりでございます。
  107. 小川敏夫

    小川敏夫君 あと、受刑者証人移送ということについてお尋ねしますが、これも証人移送ということでありますけれども、先ほど確認したように、裁判の公判における証人ではなくて、捜査における、要するに出頭してこない参考人に対して捜査手続として行う証人尋問のことを想定していることだと思うんですが、そういうことでまずよろしいでしょうか。
  108. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 我が国証人移送受刑者証人移送を求める場合は、我が国裁判証人となって出てきてもらうために来てもらうわけでございまして、各国の法制度によりますけれども、あくまでも法廷での証人として呼ばれることに応じるということでございますから、各国の法制度我が国のような裁判であるのか、あるいは別の裁判であるのか、少なくとも法廷に呼ばれるということでございます。
  109. 小川敏夫

    小川敏夫君 ああそうですか。ここで言う受刑者証人移送というこの証人というのは、あくまでも捜査段階における捜査のための証人ではなくて、公判、公判における証人も含む。そうすると、これ、ある意味ではこれ司法共助も含んじゃっているんですかね、この部分は。法文ですと刑事手続と書いてあるんですけれども。私は、私の先ほどの答弁も含めた理解は、ここで言う刑事手続というのは、裁判における公判手続ではなくて、捜査のために参考人が出てこないから、出てこない参考人について証人尋問をするという、あの捜査証人尋問を言っているのかなと思ったんですが、これは公判の証人尋問、すなわち司法共助もここでは、この証人移送受刑者証人移送の部分では含んでいるということなんですか。
  110. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) この改正案で設けます第二十三条で書いていることでございますが、「日本国の刑事手続において証人として尋問する旨の決定があつたものについて、」ということでございまして、裁判所が、我が国受刑者証人移送移送してもらうことを要請する場合には、日本裁判所が証人尋問の決定をした者について来てもらうということでございます。
  111. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうですか。分かりました。じゃ、そこの二十三条の刑事手続は公判も含むということですね。答弁は要りません。  あと、新設される業務書類等に関する証明制度ということですが、これは、当事者は公務所だけでなくて私人も含む、あるいはむしろ私人を中心とした規定なんでしょうか。
  112. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘のとおり、私人も含みますし、公務所の者も含みます。
  113. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると私人、私人がどういう証明するかどうか、これはそのケース・バイ・ケースについて、もちろん証明の証明力、信用力等も兼ね合わせて求める者が判断するということになるわけですね。私人だから決まった証明方式もないわけですから、これは捜査する側が言わばその状況に応じた証明方法を選択するということになるんでしょうね、これは。
  114. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) これは、外国から頼まれることでございますので、外国の方で必要なフォームというものはあるだろうと思います。ちなみに、日米共助条約捜査共助条約については、アメリカ側のフォームは、定形式は決まっております。
  115. 小川敏夫

    小川敏夫君 先ほどの受刑者証人移送ですけれども、これ、具体的にどこで受刑者を引き渡すか、その費用関係とか、そのことについて説明をしていただけますか。
  116. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 受刑者証人移送におきましては、受刑者移送要請した国において被要請国に赴き、受刑者の引渡しを受け、証人尋問終了後には再び被要請国まで受刑者を護送するのが原則でございます。したがいまして、我が国外国から国内受刑者移送要請された場合には、要請国である外国の官憲において我が国まで国内受刑者の引渡しを受けに来ることになります。また、証人尋問終了後は、当該外国が再び我が国まで国内受刑者を護送することとなります。  国内受刑者の引渡場所につきましては特に限定されておらず、要請国との協議により適宜の場所で引き渡すことになりますが、一般的には我が国の空港において外国の官憲に引き渡すことが通常であると思われます。そして、我が国外国の官憲から国内受刑者の引渡しを受ける場所も、我が国の空港となることが想定されております。逆に、我が国外国受刑者移送要請する場合には、我が国の官憲が当該外国まで外国受刑者の引渡しを受けに赴き、証人尋問終了後、再び当該外国まで護送することになります。この場合も、一般的には外国の空港において外国受刑者の身柄の引渡しが行われることが予定されております。  このような受刑者証人移送に係る費用につきましては要請した国において負担することになり、国内受刑者にかかわる受刑者証人移送の場合は要請国である外国が費用を負担し、逆に、外国受刑者にかかわる受刑者証人移送の場合は要請国である我が国が費用を負担することになります。  なお、日米刑事共助条約は、第六条一のただし書におきまして、「第十四条及び第十五条の規定に基づく人の移動に要する手当及び経費については、請求国が支払う。」という旨規定しているところでございます。
  117. 小川敏夫

    小川敏夫君 終わります。
  118. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今回の国際捜査共助法改正は、ある意味ではこれまでの国際協力捜査の在り方に大きな、大臣も、モデルケースになる第一番目だと、こうおっしゃいました。大きな意味があると思っております。  まず、副大臣に、この法案がじゃ我が国治安対策にどう効果があると判断なさっているのか、まずこれをお尋ねしておきたいと思います。
  119. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) 我が国治安対策にどのような効果があるかと、そのような御質問でありますけれども、近年、外国人によります凶悪事件が多発するとともに、国境を越えまして敢行される犯罪が増加しておりますが、このような事態に有効に対処するためには諸外国との捜査協力を一層推進することが不可欠でございます。  この法案によりまして日米刑事共助条約を批准することが可能となり、日米間の捜査協力の推進が図られることになりますが、米国我が国共助要請する件数が一番多い国でもありますし、米国との関係捜査共助の実効性が高まることによりまして治安対策上の効果が期待できるものと考えております。  具体的には、例えば銃器犯罪等、米国では処罰されていない犯罪であるために米国から捜査共助を受けられなかった事案についても共助を得ることが可能となるなど、共助範囲が広がりまして、外交ルートによらずに迅速に共助要請やあるいは証拠の授受を行えることになることなど、我が国犯罪捜査のより円滑な遂行にも資するものと考えております。
  120. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、この法案では、これも先ほどから議論になっておりますが、双罰性要件が緩和されて共助範囲が広がって、今お話があったように、我が国外国協力を求めることができる範囲も広がると。もちろん、それが治安対策上、今副大臣がおっしゃったように効果があるということでございますが、この双罰性要件につきまして、本法案では条約に別段の定めがある場合に要求しないと規定しております。この「条約に別段の定めがある場合」とはどういう場合をいうのか、日米刑事共助条約における「別段の定め」というのは具体的にどのようなものか、局長、御答弁願います。
  121. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 第二条第二号及び第三号におきます「条約に別段の定めがある場合」といいますのは、捜査共助にかかわる権利義務関係についての規定を有する国際約束において同号とは異なる定めを置いている場合をいいます。いかなる場合に「条約に別段の定めがある」といいますかは個別の条約の解釈によらざるを得ませんが、例えば第二条第二号については、双罰性がない場合であっても共助を実施すべきことが義務とされている場合が「別段の定め」に当たるわけでございます。  日米刑事共助条約におきましては、第一条4におきまして双罰性の有無にかかわらず共助を実施すると定めますとともに、第三条1(4)におきまして、双罰性が認められない場合であって、共助の実施に当たり強制措置が必要であると認めるときには共助を拒否する、拒否できる旨を定めておりますが、これが「条約に別段の定め」に該当するというわけでございます。
  122. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今回の法改正によって日米間の捜査共助というのは実効性が正に高められていくと思われますが、米国以外の国との関係では捜査共助の実効性、今後どんなふうに、一つ穴は空いたわけですけれども、どう考えていらっしゃるのか、政務官から伺っておきたいと思います。
  123. 中野清

    大臣政務官(中野清君) 木庭委員の御質問にお答えしたいと思います。  これまでも外務省を通じまして条約なしで捜査共助の実績を世界各国において重ねてまいったわけでございますが、今回の法改正では新たに業務書類に関する証明手続について整備をいたしまして、これまで証人尋問によって行われてきた証明を簡易な証明書の提出に代えることが可能となったわけでございます。かかる制度は、条約を前提とするものでないことから、米国以外の外国との関係でも今まで以上に迅速に共助を行うことが可能となるわけでございます。  また、今後、米国以外の外国とも同種の条約締結していきますれば、当該外国との間でも共助要件の緩和や受刑者証人移送制度の創設等、共助範囲が広がるとともに、中央当局制度によりまして迅速な捜査共助が可能となります。外国人による犯罪や国際的な犯罪への対応がより効果的にできるものと確信いたしております。
  124. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これも皆さんに議論していただきましたが、確かに今、来日外国人犯罪が多発していると。特に衝撃的な事件は、私の地元の福岡事件でございました。  昨年六月、福岡市で一家四人が殺害されるという事件がございました。最初、どういう人が犯人かというようなところから始まって、中国の元留学生ということが判明していく、その過程の中で中国側、報道によれば、報道によれば、警察も検察も予想もしないような協力を行っていただいたというような報道がございました。報道でございます。そういう意味では、国際共助という、捜査海外協力しながらやるという意味では、一つの何か逆に言えばモデルケースになるような進んだ形ができたんではないかと報道では推測されます。  現状、この事件について、事件の概要、また現在どういう状況になっているか、公判中でもございますが、話せる範囲内で警察庁から御答弁いただきたいと思います。
  125. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) 御指摘のとおり、お尋ねの件は現在公判中でありますので詳細については申し上げることができませんけれども、この事件は、平成十五年六月二十日、福岡市内在住の一家四人が中国人の男三名に殺害された上、金品を強取され、同市内の海中に遺棄された事件であります。  福岡県警におきましては、即日、刑事部長を長とする捜査本部を設置いたしまして国内捜査を推進するとともに、警察庁を通じ中国捜査当局と連携するなど所要の捜査を遂げた結果、中国人の男一名を平成十六年一月八日、強盗殺人、死体遺棄、住居侵入罪で逮捕し、一月十日、福岡地方検察庁に送致し、一月三十日、同罪により起訴されたものというふうに承知しております。  なお、本件におきまして、事件後、中国人共犯者二名が中国に逃亡しているということが判明いたしました。その後、中国捜査当局がこれらの者を自主的に拘束し、現在、中国においてこれらの者に対する刑事手続が進められているものと承知しております。
  126. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 これも先ほど、御答弁でどこまで話せるかなと思いますが、中国捜査官が派遣されております、これは報道で確認しております、私。国際捜査共助の面で中国側からどのような協力が得られたのか、事件のその中身ということではなくて、外形的なもので話せる部分があれば、警察庁から聞いておきたいと思います。
  127. 近石康宏

    政府参考人(近石康宏君) これも御指摘のとおりでありまして、現在公判中でありまして、個別の事件捜査に関することもありますから詳細については申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、本件につきましては、我が国からの捜査共助要請に対しまして中国当局も積極的に対応し、証拠の送付、また、日本捜査官が中国での取調べの立会い等々、積極的な協力が迅速に行われたというところであります。
  128. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、この中国の問題については、これは新聞ですけれども、「福岡地検の挑戦」という話が書いてあって、何をこれは書いているかというと、実はこれ、検察庁、検事が向こうまで行きまして、また立ち会って調書を取るという、ある意味では画期的なことまでおやりになっているわけでございまして、これが実際に証拠能力認定という意味でどうなるか、これからいろんな意味で議論になっていくんでしょうが、私はある意味ではこれも一つの捜査やり方としては大きな進歩があったなと、特に向こう側の協力があったわけですけれども、と思っております。  これは一般論になるんでしょうけれども、こういった捜査官が立ち会い行われた取調べを記録した調書我が国刑事手続でどのような取扱いになるのか。これも一般論で話すしかないんでしょうかね、その辺は答弁の仕方、刑事局長に任せますが、お答えをいただいておきたいと思います。
  129. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) まず、福岡事件につきましては、検察官中国において捜査をして調べたんではありませんでして、先ほども何人かの質問にお答えいたしましたが、捜査に立ち会わせていただいたというだけでございます。  捜査共助によって得ました供述調書の取扱いについてでございますけれども、外国の官憲等が作成した供述調書等の証拠能力につきましては、裁判官、検察官面前で録取された調書以外の調書に該当するものとして取り扱われます。したがいまして、被告人側の同意がない場合は、刑事訴訟法三百二十一条一項第三号に規定する書面として証拠能力が認められるか否かということになるわけでございますが、同号の書面と認められるためには、供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいるため公判準備又は公判期日において供述することができないこと、その供述犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであること、その供述が特に信用すべき状況の下になされたものであるときであることが必要でございます。  我が国捜査官が立ち会った上で作成された外国捜査機関供述調書がこのような要件を充足するか否かは、個別の具体的事案ごとによって裁判所によって判断されることになるということになると思います。
  130. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今度は法案の中身で少しお聞きをしてまいりますが、仮に、どう言いますかね、中国と、例えば米国中国とですよ、米国と同様の条約締結した場合、その場合は外交ルートを外して共助迅速性が図られることが期待できる、今回の法律の意味はそこにあると思うんですけれども、この法案は、ある意味では一回条約を結ぶことによって米国との間でこれができる。中国ともそういうことができれば今後開けることができる受皿と、受皿になる法律が、その基本のものが今回改正としてできるということです。そうなると、一つの今回の改正の大きな目的は、外交ルートを省略する、省略することによって迅速性を高めると。捜査においては迅速性が何よりも大事なものがありますから、それを最優先させながらやるということになっている。  ところが、そういう法律でありながら、今回の改正では新たに三条二項を設けて、外務大臣に対する協力要請に対する規定を設けている。なぜこれ、外務大臣に対する協力要請に関する規定定めているのかと。その法案、やろうとしている改正目的とこの三条二項とはどういう関係にあるのかということを御説明いただきたいと思うんです。
  131. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 御指摘の三条第二項は、条約に基づき法務大臣共助に要する要請の受理を行う場合であっても、その実施の際には外務省に置かれる施設等を利用すべき場合も想定されますことから法務大臣の外務大臣に対する協力要請権限を規定したものでございます。同条項により求めることができる協力内容といたしましては、在外公館の施設、在外公館と外務省本省との連絡に用いる設備、システムの利用、これらに伴うべき人的協力等が考えられるわけでございます。  なお、第三条第二項により協力を求めますのは、共助に関する事務の実施に関する事柄でございまして、共助要請の受理までも外務大臣にゆだねるものではなく、捜査当局間で共助要請を行い、迅速な共助を可能にする中央当局制度の意義は何ら没却されることはないというふうに考えております。
  132. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 逆のこともまたお聞きしたいんですけれども、要するに現在も、今の法律です、今の法律を読むと、国際捜査共助法第三条ただし書、緊急その他特別の事情がある場合において、外務大臣が同意したときには、共助要請法務大臣が行う、法務大臣が直接行うというただし書の規定があるわけでございます。ある意味では、条約があれば、このただし書に該当するというふうに取ってしまうと、特段改正は要らないというような議論になりはしないかとも思うんです。この辺について御説明をいただいておきたいと思うんです。
  133. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 第三条ただし書に言います特別の事情といいますのは、一般的には個別事案ごとに判断されるべき事情であることが多く、しかも文理上外務大臣の同意に係らしめておりますことから、条約締結している特定の国につき、個別事案とは関係なく条約に基づいて共助要請とその実施が規立され、法務大臣がその主体となることになる場合を特別の事情がある場合に含めて解釈することは妥当でないと思われます。  これまでの条文にありますこの場合、特別の事情がある場合といいますのは、例えば捜査につきましては特に迅速性が要求される場合が多く、また密行性が強く要請される性質のものであり、要請国が外交ルートを経由しないことを望むようなことも考えられますので、そのような場合に一応備えた規定でございます。  そこで、条約に基づき法務大臣共助要請の受理を行うこととされていますときは、共助要請の受理及び要請国に対する証拠の送付は法務大臣が行う旨を新たに規定することにした次第でございます。
  134. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今後、日米間では、外交ルートをある意味ではひとつ横に置いた形で、直接捜査当局要請を行って証拠を受理するということになっていくわけでございますが、もう一面見ていったときに、それはそれで大事なことだと思うんですけれども、外交に対する配慮の点で問題はどうなってくるんだろうか。今後様々な国と条約締結していく、これはやっていかなければならないと私は思っておるんですけれども、もちろん迅速性の問題、今のこの犯罪多発の状況捜査状況を考えれば、当然、迅速性の点では外交ルートを外しながらでも進めていくべきだと思いますが、また一方で、さあ、そうはいっても、外交に対する配慮がなしでいいのかというような問題をどう考えればいいのかという面もあると思います。  法務省としてどうか、外務省としてどうか、それぞれ御答弁をいただいておきたいと思います。
  135. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 現行法でも、相当性がないことを理由に共助要請を拒否する場合等には、要請国との友好関係を損なうおそれがありますことから、外務大臣外交上の観点からの意見を参酌することが適当と認められ、法務大臣の外務大臣との協議義務を定めているものであります。本改正もこれに変更を加えるものではなく、今回新たに、法務大臣において、相当性ではなく、方式の条約適合性を理由に要請を拒否する場合が想定されますことから、この場合につき、新たに外務大臣との協議も定めております。  なお、このように共助要請を拒否する場合に限らず、当省から外務省に対して必要な連絡協議を行っていく所存でございます。
  136. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) 日米刑事共助条約の下では、共助の実施のための連絡を、従来の外交ルートではなく中央当局間で直接行うことになります。したがって、関連事務の軽減、迅速化が期待できるということは御指摘のとおりでございます。また、御指摘のとおり、このことが外交上の配慮の欠如につながるということがあってはならないと考えております。  したがって、このような事態を回避するため、ただいま法務省の方からも答弁ございましたけれども、法務省から外務省に対して必要な連絡協議というものが行われるものと理解しております。そして、外務省といたしましても、外交上必要と認める場合には法務省に対して意見を述べる考えでございます。  今後とも、外交上の配慮を欠くことなく、かつ迅速な刑事協力が行われるよう、法務省とも連絡を緊密にしつつ、一層尽力してまいるつもりでございます。
  137. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 摘発された外国人犯罪者を国籍別に見ると、もちろん今回いろんな意味でこの条約を結びましたアメリカの問題もありますが、アジア地域の国籍が多いこと、もう事実でございます。特に、中国は四五%、韓国の九%を合わせると過半数を占めております。  今回、アメリカとこの刑事共助条約締結することになりますが、我が国はやはり外国人犯罪の抑制につながるというような見地を考えるならば、やはり外国人犯罪者の多くを占める近隣諸国との条約締結する、これを早急に検討する必要性があると私は思われますが、外務省法務省にそれぞれまず御見解を伺っておきたいと思います。
  138. 門司健次郎

    政府参考人門司健次郎君) お答えいたします。  この日米刑事共助条約締結、それから関連国内法の整備が実現いたしますと、同様の種類の二国間条約を今後締結していく土台というものが整うことになります。日米刑事共助条約締結後は、各国との間の刑事共助に関する条約締結に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。  他方米国の次にどの国と条約締結を、交渉を開始するかということにつきましては、一度に数多くの国と交渉を行うことは物理的にも不可能でございます。我が国にとっての共助のニーズを勘案しつつ、優先順位付けを行っていく必要がございます。現時点で米国の次にどの国と交渉を開始するかということが具体的に決まっているわけではございません。しかし、米国以外の国の中では、アジア諸国の中に捜査共助に関するニーズの高い国があるのではないかと考えており、今後、関係省庁とも相談しつつ、具体的検討を行ってまいりたいと考えております。
  139. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 法務当局といたしましても外務当局と同じ考えに立っておりまして、これまでの共助の実績や相手国の法制等を踏まえながら、関係省庁と協議しつつ、韓国を始めアジアを含めた各国との間で二国間の刑事共助条約締結の可能性についても検討していく必要があるというふうに考えておりまして、広くそのような考えで努力していきたいというふうに思っております。
  140. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今、外務省法務省に伺いましたが、最後に大臣に、先ほども松村委員質問に対してお答えはされておりましたが、やはりこの捜査共助の問題、おっしゃったように、日米間でできるという、でも、今回法改正することによって土台ができると、この土台を踏みしめた上で今後広げていく必要性があるというようなことを法務大臣おっしゃっておりましたが、私は、先ほど御答弁されたとおり、やはりこの捜査共助を今後各国との条約締結大いに進めていく必要もあるし、そのときに是非視点として、近隣諸国の問題、やはりここが一番の最優先して取り組む諸国ではないかと私は思っておりますし、こういった問題についての大臣の取組の決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  141. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) アメリカとの関係は、戦後五十年以上を掛けまして、経済、社会、そして法律外交、あらゆる面での信頼関係を築き上げてきた上で今日の捜査協力共助と、こういう段階に到達したわけでございまして、前提としてこの種の協力体制を組むためには、それぞれの国に対する一般的な本質的な信頼関係がなければ成り立たないと、こういう事柄であろうと思います。  そういうことで、これからの共助の相手をどこへ拡大するか。これまでの実績を見ると、約三十か国ほどの国々が挙がっておりますが、私は、やっぱり近隣諸国をまず優先しまして、その国々との経済始め社会、法律、先ほど申しましたような様々な協力と信頼関係を構築することを前提に拡大をしていきたいと思います。これを構築することによって、正に国が一体となり、将来的に見れば一つの共同体として発展していく基盤ができ上がっていくのではないかと考えております。
  142. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  143. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  本改正案は、日本が初めて結ぶ刑事共助条約である日米刑事共助条約締結に基づくものであります。  私、かつて、二年ほど前に、この国際的な捜査共助条約締結を推進すべきだということを質問をしたことがございます。児童買春・児童ポルノ禁止法に国外犯規定ができました。ところが、アジアの国との捜査共助が非常に不十分で、その捜査に時間が掛かっているという例を挙げまして、この共助条約を推進すべきだという質問をいたしました。  ところが、当時の前任の刑事局長の答弁は大変消極的でありまして、「条約があればよりやりやすくなるのではないかということも、それは一つの御意見としてあるわけでございますけれども、」として、今も体制はほぼでき上がっているということを言われましたし、また、「どちらかといいますと、法制的な問題と申しますよりは、実際の共助を実施していく上での運用の問題」なんだと、こういう答弁をされまして、大変消極的というか慎重だなという印象を当時持ったんです。  今回、アメリカと結んで、この法は改正になるわけでありますけれども、これまで日本がこういう共助条約を結んでこなかったその理由というのはどこにあるんでしょうか。
  144. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 刑事の分野における国際協力体制の構築は重要でございまして、御指摘のとおりに、その一つの方法として二国間での条約締結があることは、前からそういう考えがございますし、当局としても十分認識していたところではございます。  他方我が国は、条約締結していない諸外国からの要請につきましても、国際捜査共助法に基づいて共助を行うことが可能であり、条約締結しなくともこれまで諸外国との間で相互に捜査共助を実施してきた相応の実績があったことから、これまで刑事共助条約締結しなかったものでございます。  そういうような実績を踏まえつつ条約というものの交渉をしていくべきものだというふうに考えておりますが、条約締結するには、まずもってお互いの国の司法制度の信頼関係をお互いが持つということも重要なんではないかというふうに考えておりまして、捜査共助の実績を積みながら検討をしていきたいというふうに考えていたところでございます。
  145. 井上哲士

    井上哲士君 信頼関係と実績を積みながら考えてきたと、こういうことでございました。  そうしますと、外務省に来ていただいているんですが、今回の日米刑事共助条約締結というのはアメリカからの要請というのが大きな流れだったと承知をしているんですが、その経緯、そしてアメリカが求めてきた理由、その点はいかがでしょうか。
  146. 長嶺安政

    政府参考人長嶺安政君) お答え申し上げます。  まず、背景といたしまして、近年の国際犯罪の増加に伴いまして、捜査、訴追、その他の刑事手続に関しましては国際的な協力の重要性が高まってきておるという背景があります。このような背景の下で、米国はかねてよりこの分野における二国間の条約締結を諸外国との間で進めてきているということがございました。そして、我が国に対しましても同様の条約締結についての申入れが行われてまいりました。  これを受けまして、平成十年の十一月でございますが、当時、大統領であるクリントン大統領が我が国を訪問した際に、日米の首脳会談におきまして、日米両政府間で捜査司法共助条約締結交渉を行うことで一致したということが発表されました。これを受けまして、その後、平成十一年二月の第一回交渉以降、累次交渉が進められてきたわけでございます。そして、平成十五年六月に至りまして実質的な合意に達し、同八月に署名が行われたということでございます。  以上が経緯でございまして、今次国会におきまして条約締結の御承認を得たいと考えて、これを提出させていただいているところでございます。
  147. 井上哲士

    井上哲士君 そうしたアメリカからの要請があったということであります。  先ほど来、外国人犯罪の増加という文脈で、アジアの国々との刑事共助条約を進めるべきだという御質問がありました。私も、それはそれで大事だと思います。同時に、何も外国人犯罪だけの問題ではないんですね、刑事共助というのは。日本人が外国犯罪を犯すということもあります。  私、その二年前に取り上げたときの問題というのは、児童買春・ポルノ禁止法での国外犯規定関係でありました。一九九九年に、日本人の男性五人がタイに行って現地で性的虐待をやったと。で、日本に帰ってきたけれども、そして日本国内で裁判をする上で、そのタイでの証拠を集めようとしてもなかなか時間が掛かって、二年も三年も掛かった、こういう例を挙げて、この国際共助を進めるべきだということを申し上げたわけでありますが、そういう見地も非常に大事だと思うんですね。  ですから、今後、こうした児童買春とか麻薬の問題などもあります、銃、武器の取引などの問題もある、そういう観点も含めて、このアジアの国々とか途上国との関係でも捜査共助を、条約などを進めていくということも必要かと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  148. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 法務当局といたしましては、これまでの共助の実績や相手国の法制等を踏まえながら、関係省庁と協議しつつ、委員の御指摘のようなお互いの国のニーズも踏まえて検討をしながら、二国間の刑事共助条約締結の可能性についてあらゆる方面からいろんな国と検討していきたいというふうに考えております。
  149. 井上哲士

    井上哲士君 じゃ次に、双罰性の問題についてお聞きをいたします。  今回、条約に特段の定めがある場合には双罰性がなくても共助要請に応ずるということになるわけですが、これまではこの双罰性が必ず必要としておりました。これはどういう理由だったからなんでしょうか。
  150. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) やはり、捜査共助で、相手要請国からの要請に基づきまして、多くは我が国に居住する我が国民に対して捜査の、要請国の捜査のお手伝いをするわけでございますから、ある意味で、我が国国民、国民だけには限りませんが、我が国に居住する人たちに対する権利義務に関することが多うございますので、我が国処罰しない者まで共助要請を受け入れるべきかどうかというのはいろんな判断がございます。今までは、そういうことはお断りしてもいいんじゃないかというふうに考えていたわけであります。
  151. 井上哲士

    井上哲士君 条約によりますと、任意処分の場合は双罰性がなくても共助要請に応じるのが義務と、しかし、強制処分の場合は義務は負わないと、こういう二段構えになったわけですが、今の答弁とも関係するわけですけれども、こういう中身になっているのはどういう理由でしょうか。
  152. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 日米刑事共助条約では、国際協力推進の観点から、任意処分による共助については双罰性の存否にかかわりなくこれを提供するものとし、共助が強制処分等にわたる場合には共助の実施を被要請国の裁量にゆだね、双罰性存在しないことを理由に共助を拒否できることとしております。  共助の実施が任意処分により可能である場合には、そもそも処分の対象者の任意の協力があることから、その権利保護の観点から見ましても、双罰性がない場合の共助の実施を義務とすることには余り問題はないのではないかというふうに考えるわけでございます。  他方、強制処分が必要な場合につきましては、裁判官が令状を発付するか否かの審査を行うものとはいえ、私人に対する権利の侵害の程度について特に配慮することも重要であると考えられましたことから、双罰性がない場合に強制処分等を行うか否かは条約我が国に裁量権があるようにしたものでございます。
  153. 井上哲士

    井上哲士君 強制処分の場合は、私人の権利の侵害につながりかねないということが理由だとお聞きをいたしました。  この法律条約を併せて読みますと、双罰性を満たない強制処分にかかわる共助要請は、応じる義務はないけれども、応じることはできると、こうなるわけですね。その判断は法務大臣が行うと、こうなるわけですね。  私は、そもそもこういう仕組みになっている、強制処分については慎重な仕組みになっているということ、その理由に人権というようなことを考えますと、相当この双罰性を満たない強制処分を伴う共助要請については慎重に扱うべきかと思います。原則応じないとか、そういう対応も必要かと思うんですが、その点、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  154. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員指摘のとおり、改正法は双罰性がない行為であっても条約の別段の定めがあるときは共助を実施し得るということになっております。そのような行為につきましても、証人尋問捜査、差押えなどが法律上は可能となります。しかし、双罰性がないということは、我が国の法令によれば罪に当たるとは言えない場合でありますので、共助犯罪の軽重、当該証拠の重要性、処分を受ける者の不利益の有無、程度等を総合的に勘案しまして、慎重な運用を心掛けてまいりたいと考えております。
  155. 井上哲士

    井上哲士君 今後、他国との共助条約も広げていくという場合には、この双罰性についてはどういうような態度で臨まれるんでしょうか。
  156. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) それは、他国との条約交渉でございますから一概に申すわけにはまいらないと思いますが、我が当局といたしましては、この日米条約を、日米捜査共助条約を基本にし、これに似合うようといいますか、これを基にした考え方で交渉をしたいというふうに考えております。
  157. 井上哲士

    井上哲士君 じゃ次に、受刑者証人移送制度についてお聞きをいたします。  これまでも受刑者に対する証人尋問要請などはあったかと思うんですけれども、これまではそういう場合にはどういうような対応がなされてきたんでしょうか。
  158. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) これまで、受刑者供述や証言の取得を求める共助要請外国からなされた場合には、我が国捜査機関におきまして当該受刑者を取り調べ、あるいは我が国法廷において証人尋問を実施した上、その結果である供述調書証人尋問調書要請国に送付しておりました。
  159. 井上哲士

    井上哲士君 最初の質問のことにも戻るんですが、これまで十分に体制も整えてきたというような過去の答弁からいいますと、むしろ現行制度で対応できないのかなという疑問もあるわけですけれども、この点はいかがなんでしょうか。
  160. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 受刑者証人移送制度がない現状では、我が国刑事裁判法廷において外国受刑中の者から証言を得る方法はなく、また我が国受刑中の者を証人として尋問したいと外国から要請されてもこれに応じる方法はございませんでした。  本制度の導入により、我が国としましても、外国刑事裁判の審理の充実に協力できるほか、我が国裁判所において外国受刑者からの証言を得ることができるようになります。また、国際的にも、拘禁されている者について証言目的等のため一時的に移送する制度の有用性についての認識も高まっているところであります。  このような点を踏まえれば、本制度の実益は十分あるものというふうに理解しておりまして、先ほども少し申し上げましたが、法廷における直接主義というものにも合致するんだろうというふうに思うわけであります。
  161. 井上哲士

    井上哲士君 似た制度として、いわゆる受刑者移送という制度があります。この場合は、移送する場合には本人の同意とともに裁判所の判断というのが必要かと思うんですね。この受刑者証人移送制度についても、証言義務がある証人尋問のために受刑者移送するある意味での強制処分だと思うんですね。  そうしますと、この場合も裁判所の判断というのを求めるということも必要だったかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  162. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 我が国受刑者受刑者証人移送として外国移送する場合、その受刑者については既に本案の裁判において司法判断を得た上で身体を拘束されているものであること、移送自体は一時的なものでございまして、当該受刑者に過度の負担を強いるものではないこと、外国移送されることについて当該受刑者の同意を要件としていること等にかんがみまして、国内受刑者証人移送の実施に当たっては、重ねて司法審査を求めるまでの必要はなく、一般の共助要請の場合と同様、法務大臣の判断にゆだねることをもって足りるというふうに考えております。
  163. 井上哲士

    井上哲士君 じゃ最後に、関連して、沖縄での地位協定にかかわる取扱いの問題についてお聞きをいたします。  最近、アメリカと新たな地位協定の運用見直しについて合意が行われましたけれども、その中身について、まず外務省からお聞きをいたします。
  164. 長嶺安政

    政府参考人長嶺安政君) お答えいたします。  ただいま委員が言われました日米地位協定の下での刑事裁判手続に関する日米交渉の結果でございます。  これは、昨年六月以来、この日米交渉が行われてまいりましたが、その結論として、本年四月二日の日米合同委員会におきまして、日米間の捜査協力の強化等に関する合同委員会合意が作成されたところでございます。  この合意は、平成七年の合同委員会合意に基づく起訴前の拘禁の移転の対象となる事件につきまして米軍当局が速やかに捜査を行うことができるようにするとの見地より、米側からの要請に基づきまして、当該事件について捜査権限を有する米軍司令部の代表者が日本当局による被疑者の取調べに同席することが認められるものであります。  今回の合意につきまして、これが成立したことによりまして、平成七年合意の対象となる事件につきまして捜査協力が強化されることとなると考えております。米側が捜査を迅速に行えるということは、米軍人等の犯罪対策上もメリットがあり、また、平成七年合意に基づく日本側の要請に対する米側の判断が従来より迅速に行い得ることが期待されます。  これは、平成七年のその合意という日米地位協定上の運用改善措置を更に円滑化するものであるというふうに認識しております。
  165. 井上哲士

    井上哲士君 今回の合意に至る交渉の中でのアメリカ側の要求は、取調べの場での第三者の立会いということでありました。  いろいろこの経過については報道もされていますけれども、九五年の合意ができて以降も、アメリカでは、この密室性の高い日本の取調べは容疑者への暴力や自白強要につながりかねないとか人権が侵害されているとか、こういう声が常にありました。今回の合意でこの米軍関係被疑者にだけ特別な権利が与えられるというのは、これはこれで問題でありますけれども、しかし、この密室取調べという問題はやはり日本刑事司法が本質的に抱える問題として国際的な批判も強いわけであります。  報道によりますと、今回のこの米軍の当局者が立会いをするということについても随分日本警察法務省は渋ったということが言われておりますけれども、その理由はどういうことだったんでしょうか。
  166. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) 交渉の中身にかかわるお尋ねでございますので回答は差し控えさせていただきたいと思うのでありますが、捜査協力の強化及びいわゆる平成七年合意の円滑な運用の促進に関する今回の合意の内容に関して言えば、当局として何ら否定的見解を有しているものではございません。
  167. 井上哲士

    井上哲士君 捜査に対する協力という、そういう名目を取ったわけでありますけれども、アメリカ捜査当局者がこの取調べに立ち会うということは、事実上、第三者が立ち会うということになるわけですね。これは、密室取調べということで国際的な批判もある日本刑事司法にとっても大変大きな意味があると思います。  今後、今回は正に特権的に認めたという格好になるわけですけれども、今般の司法制度改革の中でも刑事司法の問題はいろいろ言われているわけでありまして、すべての被疑者、被告人にこうした第三者立会いということを認めるということを私は検討していくべきだと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  168. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) まず、その議論の前提といたしまして、今回の合意は、いわゆる平成七年合意の対象事件において被疑者の身柄が我が国に移転することに伴って米軍当局捜査に制約が生じることにかんがみ、捜査協力を強化するための措置として、日本捜査当局が行う取調べに捜査権限を有する米軍の代表者が同席することを認めるものでございまして、何ら米軍人等被疑者の権利にかかわるものではございません。  これは、先ほど来のこの法案説明で申し上げておりますように、捜査協力の中で相手側要請国の捜査官憲を立ち会わせることは間々あることでございます。したがいまして、弁護人その他の第三者の立会いとは全く別個の問題であると考えております。  裁判員制度と今回の司法制度改革が進められている中で、今後いろいろな面で、その運用の面あるいは司法制度審議会意見書において今後将来的に検討をするべきだと言われている諸点につきましては、今後とも慎重に検討していくことに変わりはございませんが、この日米合同委員会での合意とは全く関係のないことだというふうに考えております。
  169. 井上哲士

    井上哲士君 外務省もそういう説明でありました。ただ、米国からはそういう強い要求があり、国内の世論も非常に強いという中で、この捜査のためという言わば理屈で収めたということがいろんな報道でも出されているわけであります。  繰り返しになりますけれども、日本のこういう密室的な捜査というのは国際的にも大変大きないろんな指摘がされております。例えば、国連規約人権委員会の最終見解は、日本では逮捕された被疑者警察のコントロール下、いわゆる代用監獄に最大二十三日間置かれているということ、それから、この取調べの時間及び期間を規制する規則が存在せず、取調べが被疑者の選任した弁護人の立会いの下で行われていない、委員会は、これらのことに深い懸念を有し、日本政府が刑事上の罪に問われて逮捕された被疑者に関する取扱いを改革するよう強く勧告するということも言われております。  今、司法制度改革の流れの中で様々な問題を検討していくという答弁もありましたけれども、これはやっぱり是非、国際水準に日本刑事手続を引き上げていくということで、流れの中で日米間の問題も本質的な解決を図っていくと、このことが私は必要だと思います。  そのことを繰り返し申し上げまして、終わります。
  170. 山本保

    委員長山本保君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  171. 山本保

    委員長山本保君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、小野清子君が委員辞任され、その補欠として西銘順志郎君が選任されました。     ─────────────
  172. 山本保

    委員長山本保君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、千葉君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
  174. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、ただいま可決されました国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国際捜査共助法及び組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 国際化する犯罪捜査に関し、適正な手続の下、国際間の捜査協力を拡充、強化することが必要であることにかんがみ、諸外国との刑事共助条約締結の拡大に努めること。  二 受刑者証人移送制度の運用に当たっては、受刑者に対し、制度の趣旨、移送期間の取扱い等について周知を図るとともに、証人移送の決定に際し、受刑者本人の意思を十分確認、尊重すること。  三 外国の官憲から引渡しを受けた外国受刑者を拘禁するに当たっては、当該外国受刑者の人権を十分尊重し、適切な処遇を行うこと。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  175. 山本保

    委員長山本保君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、野沢法務大臣から発言が求められておりますので、この際、これを許します。野沢法務大臣
  177. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  178. 山本保

    委員長山本保君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  180. 山本保

    委員長山本保君) 労働審判法案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。野沢法務大臣
  181. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 労働審判法案について、その趣旨を御説明いたします。  社会経済情勢の変化に伴い、個々の労働者と事業主との間における労働関係に関する民事紛争が増加しており、その迅速かつ適正な解決を図ることが求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、個別の労働関係に関する民事紛争について、地方裁判所における手続として、労働審判手続を設けることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とするものであります。  以下、法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、労働審判手続は、裁判官である労働審判官一名及び労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員二名で組織する労働審判委員会が、事件を審理し、調停による解決を試みつつ、当事者間の権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決をするために必要な審判を行う手続としております。  第二に、労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において迅速に審理を終結するものとしております。  第三に、調停が成立しない場合には、労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえ労働審判を行うものとするとともに、労働審判委員会は、事案の性質上、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判を行わずに事件を終了させることができるものとしております。  第四に、当事者は、労働審判に対し、二週間以内に異議の申立てをすることができるものとし、異議の申立てがあったときは、労働審判はその効力を失うとともに、労働審判手続の申立てに係る請求については、労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなすものとしております。  このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  182. 山本保

    委員長山本保君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  183. 山本保

    委員長山本保君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  労働審判法案の審査のため、来る二十七日、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十五分散会