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2004-04-20 第159回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月二十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      木庭健太郎君     浜四津敏子君  四月十六日     辞任         補欠選任      松山 政司君     小野 清子君      浜四津敏子君     木庭健太郎君  四月十九日     辞任         補欠選任      角田 義一君     朝日 俊弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 千葉 景子君                 木庭健太郎君     委 員                 青木 幹雄君                 岩井 國臣君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 野間  赳君                 朝日 俊弘君                 今泉  昭君                 江田 五月君                 樋口 俊一君                 堀  利和君                 井上 哲士君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        法務省民事局長  房村 精一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○電子公告制度導入のための商法等の一部を改  正する法律案内閣提出) ○国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯  罪収益規制等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告申し上げます。  去る十六日、松山政司君が委員辞任され、その補欠として小野清子君が選任されました。  また、昨十九日、角田義一君が委員辞任され、その補欠として朝日俊弘君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事木庭健太郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会法務省民事局長房精一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 山本保

    委員長山本保君) 電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 吉田博美

    吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。  電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。  平成十三年以降、IT革命等社会経済の構造的な変革に対応するため、会社法制の分野においても半世紀ぶりとなる抜本的改正が段階的に行われてきており、平成十七年度には改正作業もおおむね完了されるものと理解をしております。  今回の改正の柱であります電子公告制度については、法制審議会の部会が平成十三年四月に取りまとめた商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案に盛り込まれていたところでありますが、官報電子化進捗状況を踏まえて検討することとなり、これまで改正が見送られてきたと理解しております。  今回、電子官報法的性格やその位置付けの完了をもってこの法案が提出されました経緯を踏まえ、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  この法案は、最初に、この法案インターネット時代に対応したものと思われますが、株式会社公告方法として電子公告を認めることとした背景はいかがなものでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  9. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 現行法上、株式会社公告方法として認められているのは、官報と時事に関する事項掲載する日刊新聞紙の二つでございます。これらはいずれも紙媒体でありますことから、公示内容は原則として一回しか掲載されず、掲載された日の紙面を見逃すと当該公告があったことを知らずに終わるおそれがあり、また公告閲覧するためには、それぞれの公告媒体を購読するか図書館等閲覧に出掛けなければならないといった制約がございます。  これに対しまして、電子公告の場合には、インターネットに接続された端末さえあれば、ホームページ公告掲載されている期間はいつでもどこからでもアクセスして公告閲覧することができます。二週間から一か月という期間がここであるということでございます。貸借対照表になりますと五年という期間がございますが、そのために、その周知力官報日刊新聞紙をしのぐ上に公告掲載のための費用も安価で済むと考えられるところでございます。そこで、株式会社に現代の高度情報化社会に適合した周知性が高くかつ安価な公告方法を提供するため電子公告制度導入することとしたものでございます。
  10. 吉田博美

    吉田博美君 そういう理由だそうでございますが、電子官報法的性格とその位置付けはどのようにされたのでしょうか。また、従来の官報との関係はどのようになるのでしょうか。
  11. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 現在、官報独立行政法人国立印刷局から発行されておりますが、平成十五年七月から、国立印刷局ではインターネットホームページ上に紙の官報同一内容のいわゆる電子官報掲載するという扱いにしております。これが電子官報と呼ばれているわけでございますが、これは官報としての、いわゆる原本の官報というのは紙の官報であるということは従来どおりでございまして、電子官報が紙の官報と離れて独立官報としての法的な性質を持つということはないとされております。したがいまして、電子官報は紙の官報附属物と、こういう理解がされております。
  12. 吉田博美

    吉田博美君 今回の改正により、会社株式及び債権者にとってそれぞれどのような意義や効果をもたらすとお考えなんでしょうか。
  13. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 今回の改正は、大きく三つの内容がございます。まず第一が電子公告制度導入、それから第二に債権者保護手続簡素化、それから第三が公告義務の一部撤廃でございます。  これらの改正がされることとなりますと、会社にとっては公告にかかわる手間費用が削減されるということとなりまして、会社運営合理化効率化に資するということが言えようかと思います。また、株主債権者にとりましては、電子公告制度導入によりまして会社情報に対するアクセスが身近で手軽なものとなると、こういう効果がもたらされるものと思っております。
  14. 吉田博美

    吉田博美君 電子公告利便性というものはお聞きしたわけでございますが、電子公告導入しますと、何らかの事情によりインターネット利用することができない国民の皆さんにとってはかえって不便になるのではないでしょうか。
  15. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 総務省が最近公表をしました平成十五年通信利用動向調査の結果を見ますと、平成十五年末のインターネット普及率でございますが、三百人以上の企業におきましては九八・二%、五人以上の事業所、ここにおきましても八二・六%、それから世帯普及率、これが八八・一%という極めて高い普及率を示しております。したがいまして、中には何らかの事情インターネットを自ら利用しないという方もいらっしゃるとは思いますが、しかしながらこれだけの普及率がございますので、自ら端末を操作しない人であっても職場あるいは家庭等におきまして他の者の助けをかりてインターネットアクセスをすることができる環境は整っているのではないかと、こう思っております。  また逆に、従来の官報あるいは日刊新聞紙の場合は、これを購読した上で、しかも毎日これをチェックしないと見落とすおそれがある、こういうことでございますので、電子公告にいたしますと、先ほど大臣も申し上げましたように二週間から一か月間の間、これがホームページ掲載されますので、その間にアクセスをして内容を確認するということは、従来に比べればはるかにその利便性は向上するのではないか。  そういうことを全体として考えますと、国民全体にとって今回電子公告導入することによって不便になるとは言えないのではないか、こう思っております。
  16. 吉田博美

    吉田博美君 公告コストの削減を図るとのことでございますが、現行制度では株式会社等全体で年間どのぐらいの公告費用を支払っているのでしょうか。
  17. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これもなかなか難しいお尋ねで、ごく概算でございますが、一般官報の場合、おおむね数万円、まあ三、四万円程度と言われております。また、日刊新聞紙の場合は数百万、まあ二百万から三百万程度が平均的な数字だと、こう言われておりますので、これと件数を掛けると額が出るわけですが、件数の方は官報公告が二万五千件から二万八千件程度新聞公告の九割を占めると言われております日本経済新聞が二千件から二千五百件程度でございます。  この公告費用、額と件数を掛けますと、大体、大まかに言いますと五十億から百億の間ではないかと、極めて大ざっぱな数字ではございますが、この程度公告のための費用として使われていると、こう考えてよろしいかと思います。
  18. 吉田博美

    吉田博美君 今の計算すれば五十億か六十億じゃないかということなんですけれども、関連したような形になりますけれども、株式会社等コストが削減される反面、日刊新聞紙等公告収入が減少することとなると思いますが、どの程度今度は減少すると見込まれるのでしょうか、調査結果があれば披瀝をしていただきたいと思います。
  19. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これも厳密な調査というものはございませんが、一般的に、先ほど申し上げましたように、日刊新聞による公告ということになりますと平均的に二、三百万は掛かるだろうと言われておりますので、電子公告が認められることになりますと、これを利用しております大規模な公開会社はその大半電子公告の方に移行するのではないか、その期間がどのくらいかということもこれはなかなか難しいわけですが、少なくとも数年掛かると大半が移行するのではないか、こう思われます。  そういう形で公告収入減収を考えますと、やはり四十億から多くても七、八十億程度までの範囲が減収になる可能性があると、こういうことではないかと思っています。
  20. 吉田博美

    吉田博美君 会社公告を新たに電子公告にしようとする場合、具体的にどのような手続にすればよいのでしょうか。
  21. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは従来、公告方法官報で行うか日刊新聞紙で行うかということは定款で定めるということになっておりますが、今回の電子公告も同じように定款で定める公告方法一つでございます。したがいまして、従来、官報又は日刊新聞紙公告方法としていた会社がこの電子公告公告方法としようとする場合には、株主総会特別決議によりまして定款変更をして電子公告公告方法として定めるということがまず最初に必要になります。  それから、電子公告を行う場合、そのホームページアドレス、いわゆるURLでございますが、これを閲覧する立場にある株主債権者に知らせる必要がありますので、この公告をするホームページアドレス登記をしていただく、こういうことが必要になります。  あとは、登記をいたしましたホームページに必要な公告を必要な期間掲載していただく、掲載に先立って、それぞれ調査機関に対して調査を依頼する、こういうことが必要になります。
  22. 吉田博美

    吉田博美君 会社公告電子公告で行う場合、一定期間継続して公告しなければならないとされていますが、その必要性についてお聞かせいただきたいと思います。
  23. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、官報とか日刊新聞紙の場合ですと、配達されて毎日これを見ることが可能ですが、電子公告の場合ですと、逆に閲覧する立場の方が積極的にホームページを見に行かなければいけないと、こういう関係になりますので、ホームページ掲載していただく場合には、ある程度期間継続して掲載をしていただかないと閲覧が難しいということがございます。  ただ、この期間を不必要に長くしますと会社にとっても負担が重くなる、こういうことがございますので、それぞれの公告趣旨目的に応じまして必要な公告期間を定めることとしております。例えば、一定基準日を定めて、それまでに届け出るようなというような公告をするとすればその基準日までとか、公告の中で異議申出期間を定めて公告をするような場合にはその異議申出期間までの間は当然公告をしていただくと、そのような個別の公告の種類に応じた公告期間を定めてございます。  これによりまして、その必要な期間閲覧をすることによって情報に接することができるような体制を確保すると、こういうことを考えているわけでございます。
  24. 吉田博美

    吉田博美君 電子公告を行っている途中に手違いなどで掲載中断された場合や公告内容ハッカーに改ざんされた場合、公告の効力はどうなるのでしょうか。
  25. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) ただいま申し上げましたように、電子公告の場合には、一定期間公告を継続していただくということを要求しておりますが、しかし、御指摘のように、例えば事故中断をしてしまう、あるいはハッカーによって改ざんされるということもあり得るわけでございます。  ただ、その中断した期間あるいは改ざんされた期間がごくわずかであるような場合にまでこれを一律に公告を無効としてもう一度やり直さなければならないということにいたしますと、これは会社にとっても酷でありますし、また株主等関係者にとっても混乱を生ずるおそれがありますので、一定の場合にはこれを救済するということをこの法案では定めております。  どんな場合に救済されるかということでございますが、まず第一に、公告中断が生ずるについて会社善意であり重過失がない、又は正当な理由がある、こういう場合でございます。例えばメンテナンスのためにサーバーの機能を一時停止する、こういうようなものが正当な理由の最も典型的な例であろうかと思います。あるいはハッカーの改ざんで一時改ざんされたというような場合は、これはよほどのことがなければ善意重過失ということになろうかと思いますが、それが第一でございます。  それから第二に、公告中断が生じた時間の合計が公告期間の一割以下であるということでございます。やはり、公告期間が余り長い場合にはやはり一からやり直していただく必要があろうかと思いますので、十分の一ということで決めております。  それから第三に、会社公告中断が生じたことを知った後、速やかに中断が生じたこと、中断が生じた時間及び中断内容を元の掲載内容である公告に付して公告すること、これだけの措置を取っていただければ、中断が生じてもなお公告は有効なものとして扱う、こういうこととしております。
  26. 吉田博美

    吉田博美君 そこで、電子公告方法を採用した会社サーバーに重大な損傷が生じ電子公告を開始できなくなった場合、会社はどのような処置を講じればよいのでしょうか。
  27. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 先ほど申し上げたのは一時的な中断でございますが、例えば設備が非常にダメージを受けて当分の間電子公告ができない、こういうような場合が場合によってはあり得るわけでございます。そういうときに他の方法公告をしようと思いますと、まずは定款変更をして別の方法公告を定めなければなりませんが、定款変更をするには、先ほども申し上げましたように、株主総会特別決議が必要でありまして、株主総会を招集するためには基準日公告をしなければなりません。これを電子公告でできないわけですので、ほっておきますと、結局は定款変更もできずに公告がずっとできなくなってしまう、こういうこともあり得るわけでございます。  そこで、今回、電子公告を定める場合に、あらかじめ定款に、電子公告による公告を行うことができない事故が生じた場合その他のやむを得ない事由が生じた場合には、官報又は日刊新聞紙のうちいずれかあらかじめ定款に記載したものによって公告を行う旨を定めておくことができる、言わば予備的な公告方法定款に記載しておくことによりまして、御指摘のような事故が起こった場合にはその予備的な公告によって公告を行うということを認めることとしております。
  28. 吉田博美

    吉田博美君 電子公告を行う場合、調査機関による調査を受けることが義務付けられておりますが、この理由は何なんでしょうか。また、いわゆる決算公告については義務付けされていませんでしたが、その理由は何なんでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
  29. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、日刊新聞紙あるいは官報の場合ですと印刷物ですので現物が残りますが、電子的なホームページへの掲載ですと客観的証拠が残らないという難点がございます。そこで、これを、後日争いが生じたときに、ホームページ公告期間中きちんと掲載してきたかどうかということを証拠に残すために調査機関調査を依頼してその調査結果を保存していただく、こういう仕組みを作ったわけでございます。  この公告のうち、御指摘のように、決算公告については調査機関調査義務付けを行っておりません。ただこれは、現在、貸借対照表公告につきまして、日刊新聞紙等公告することに代えまして電磁的公示、いわゆるホームページに五年間掲載をすれば公告をしたことになるという電磁的公示方法を認めております。電子公告を採用した会社決算公告を行う場合には、方法としては、この電磁的公示と全く同じ、ホームページ掲載をしてその内容を周知するということになるわけでございますが、電磁的公示方法については現在そういった調査機関調査義務付けておりませんので、これについて電子公告で行う場合にも同じ扱いにするということで、決算公告につきましては調査機関利用義務付けていないわけでございます。  また、性格といたしましても、決算公告は確定した貸借対照表等公告することによって会社財務状態利害関係者に知る機会を与えるということでありまして、他の公告事項と異なって、公告をされたことによって利害関係者に直接の法律効果が生ずるというものではないということも併せ考えますと、このような義務を課すまでもないと、こう考えられます。
  30. 吉田博美

    吉田博美君 そこで、調査機関登録制とし、民間会社参入をも可能としたということでございますが、それについてお聞かせいただきたいと思います。
  31. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、登録機関はそういう第三者機関としての公正に調査をしていただかなければなりませんので、やはり違法行為を行った前歴のあるような者に行わせるということは好ましくありませんし、また、調査を行い、その結果を保存するに足るきちんとした設備を持っていていただかなければいけませんが、こういった事情利用者が個々に調査をするということは非常に困難でありますので、あらかじめそういった設備の適正さあるいはそういう前歴があるかないかというようなことを欠格事由と定めまして調査をして登録をすると、そしてそういう者のみに調査を担当させるという制度としたものでございます。  同じような目的認可制とか指定制を取っても採用できますが、現在、政府においては民間にできるものは民間にという考え方で、できる限り行政庁裁量がない形で民間競争にゆだねるという方針でございますので、登録制度という要件があればその登録裁量なしに受け付けると、こういう形の登録制度を採用して民間の活力をこの調査部門において活用していくということを考えたわけでございます。
  32. 吉田博美

    吉田博美君 そこで、調査機関の果たすべき役割は今何でしょうか、また調査料金はどのように設定されているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  33. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、先ほども申し上げましたが、適法に電子公告が行われたかどうかについての客観的証拠を確保すると、こういうことが調査機関の果たすべき役割として期待されております。  その料金でございますが、これは先ほども申し上げましたが、登録制を採用して民間参入を自由にしていただくということでございますので、正に各調査機関が自由に設定をして、自由な競争にゆだねられるところでございます。
  34. 吉田博美

    吉田博美君 債権者保護手続について、官報公告に加えて電子公告を行った場合、個別催告省略を認めることとした理由についてお聞かせいただきたいと思います。
  35. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 現行法におきましては、株式会社合併資本減少あるいは会社分割と、こういった会社の基本を変える行為を行う場合には、債権者保護手続といたしまして、官報公告を行うとともに、知れている債権者に対して個別に催告をすることが要求されております。ただ、例外として、合併の場合あるいは吸収分割における承継会社がする場合、この債権者保護手続については官報公告日刊新聞紙による公告とを併用いたしますと個別の催告省略することができると、こうされておりますが、それ以外の場合については一律に個別の催告が要求されているわけでございます。  ただ、この個別催告制度というのは、知れている債権者すべてに催告をするということになりますので、会社にとって非常に大きな手間費用が掛かる、知れている債権者をすべて調査をし、それに対して通知をしていくということでございますので、その負担が大変であるということがかねてから指摘されております。また、先進諸外国の例を見ますと、債権者保護手続を要求している諸国におきましても、一般には公告で済ませておりまして、個別催告を要求している立法例はありません。また、実際にこの個別催告を行ってみましても資本減少等異議を述べる債権者は皆無に近いと、こう言われております。そのようなことから、この個別催告制度についてはかねてから問題点指摘されていたわけでございます。  今回こういう見直しをしました理由といたしましては、一つは、まず官報公告でございますが、これについては、先ほど申し上げたように、電子版官報もできまして、一週間、無料でホームページでそれを見ることができるようになっておりますし、さらに、購読している場合には過去の分も含めてすべての調査をするということも可能になっております。そういう意味で、官報公告自体、従来より情報周知力を高めております。  そういうことから、今回、電子官報をという、失礼、電子公告という周知力の高い公告手段を認めるというときに合わせまして、合併の際の債権者保護手続あるいは吸収分割における承継会社が行う債権者保護手続につきまして、従来、官報公告日刊新聞紙公告という組合せで個別催告省略を認めていたわけですが、これに加えまして、官報公告及び電子公告と、こういう組合せによる個別催告省略も認めることといたしております。また、それ以外の資本減少等債権者保護手続につきましても、官報公告に加えまして、日刊新聞紙公告又は電子公告のいずれかを併用する場合には個別催告省略を認めると、こういうこととしております。
  36. 吉田博美

    吉田博美君 もう答えをいただいたか分かりませんけれども、債権者がこれまで個別催告を受けることができたのにこの改正で受けることができなくなったと。会社等が手間費用が掛かるというようなクレームもいろいろあるそうで、そして債権者の方からも今までの個別催告についてのあれはなかったというふうなことでございますが、正直に言って、債権者に不利益になるのではないかと思うんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 債権者立場からいたしますと、確かに、従来は個別催告を受ける立場で自ら行わなくても通知が来た、これが今後は自ら公告をチェックしなければならないと、そういう意味では債権者にとって負担が増えるということは御指摘のとおりだろうと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、実際に個別催告を行っても異議を述べる債権者がほとんどいないということ、また、先進諸外国においてこの日本のような個別催告を要求している立法例はないという、そういう意味で申し上げますと、日本の会社の場合、そういう先進諸外国の会社に比べまして組織再編等の会社の編成替えを行うときの負担が非常に重くなっているということが言えるわけでございます。  したがいまして、そういう点を考えますと、個々の債権者負担増を考慮いたしましても、債権者保護手続の在り方としては一定の要件の下に個別催告省略を認めるのは合理的であり、また諸外国との競争というようなことも考えますと、国民経済上も望ましいということが言えようかと思っております。
  38. 吉田博美

    吉田博美君 今、諸外国のことに触れられたわけでございますが、そこで、諸外国の公告制度はどのようになっているのでしょうか。電子公告制度を取っている国はあるのでしょうか。諸外国の現状について、分かる範囲で御報告をいただきたいと思います。
  39. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 英米独仏の四か国について、電子公告等を実施しているかどうかについて調査をいたしました。これは、ドイツにおきまして、我が国の官報に相当する連邦公報への公告を行う際に、付加的にインターネットによっても公告することが認められているという例がございますが、このドイツの場合でもインターネット公告のみで足りるとはしておりません。そのほかの国についても同様でございまして、インターネット公告のみで足りるという制度はいまだ採用されてはおりません。  このようなインターネット公告が採用されていない理由でございますが、やはり紙媒体である官報とか新聞紙と違いまして、客観的証拠が残らないということが考慮されたためではないかと思っております。  今回の法案は、この問題を調査機関制度の採用という形で克服することによりまして電子公告を可能にしようとするものでありまして、ある意味では他の先進諸国に先駆けた高度情報化社会に対応する公告方法の実現という意義を持つものと言えようかと思っております。
  40. 吉田博美

    吉田博美君 そこで、大臣は、この法律の成立したことによって国民生活にどのような効果があると期待されているのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  41. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 公告会社がその情報株主債権者、投資家等の国民に広く伝達するための方法でありますが、この法律案は、会社公告を現代の高度情報化社会の根幹を担う情報通信技術であるインターネット利用した電子公告という方法によって行うことを許容するものでございます。  この法律が成立して施行されますと、国民高度情報化社会にふさわしい周知性の高い会社情報へのアクセス手段が提供されることになりますとともに、公告に伴う会社手間コストが相当に削減され、会社運営合理化効率化が図られることになると考えられます。さらに、情報が経済活動において極めて重要な役割を担っていることにかんがみますと、この法律の成立は、我が国の企業法制を高度情報化社会に適合した先進的なものとすることによって国民経済の活性化の一助となると期待をいたしております。
  42. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 民主党・新緑風会の樋口俊一でございます。法務委員会、初めての質問でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  電子公告制度導入の妥当性について、何点か御質問をさせていただきます。  先ほど吉田先生の御質問の中にも、インターネット普及率についての御答弁ございました。企業では九八・二%、全世帯数の八八・一%という御回答でございましたけれども、非常に普及をしていると、こういう認識をしているわけでございますが、一方では年代別の格差、特に公報をごらんになるような方々というのは御年配の方が多いんではないかなというふうに推測するわけでございますけれども、法務省として社会的基盤調査あるいは年代別の調査といったものを独自に調査された上でのことだと思いますが、その辺の数値、もしあるようでしたらお聞かせいただけますでしょうか。
  43. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは世帯別等の数字と同じように総務省で行いました平成十五年の通信利用動向調査の結果でございますが、年代別のインターネット利用率というものがございます。これで申し上げますと、例えば二十歳代が九〇・一%、三十歳代が九〇・四%、四十歳代は八四・五%、それから五十歳代になりますと六二・六%、六十歳から六十四歳ということになりますと三九%ということで、六十五歳以上が一五%でございます。年齢によりまして、高齢者の方の場合には利用率は低くなっているというのが実情でございます。
  44. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今お答えいただきました、年齢層に相当、特に五十代から、あるいは六十代になりますと四〇%を切る、このような情報に対する年齢層の格差というものがあるようでございます。  そういう意味で、今回の法改正についての妥当性をお聞かせいただけますでしょうか。
  45. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、年齢によりましてインターネット利用率、相当差がございます。そういう意味では、インターネットを中心とする電子公告を採用した場合にそういう高齢者の方が公告アクセスしにくくなるのではないかということも懸念されるわけでございます。  ただ、同時に、先ほど申し上げました数字で明らかなように、世帯普及率が八八%、あるいは職場での普及率もいずれも八〇%を超え、三百人以上の企業でありますと九八%ということでございますので、高齢の方でありましても家庭あるいは職場で身近にインターネット利用している人がいることが大半ではないかと。そういう意味で、自らインターネットを使わない場合であっても、その家庭あるいは職場でだれかに依頼をすることによってインターネットアクセスするということは十分可能な環境が整っているのではないかと、こう一つ思われるわけでございます。  それからもう一つは、インターネット利用しない理由として一番多いのは利用する必要がないという、もちろん操作が難しいというようなものもございますが、やはり圧倒的に大きな理由利用する必要がないということでございますので、高齢の方でありましても、現在の操作は比較的容易になっておりますので、公告を見るということを考えた場合には比較的容易にアクセスできるのではないかということも言えようかと思っております。  他方、官報又は日刊新聞による公告は、先ほども申し上げましたが、一回しか掲載されませんので、これを購読いたしまして毎日公告欄を隅から隅まで見ないと公告の有無はチェックできないわけでございますが、インターネットの場合には、あらかじめ定められておりますアドレスを自分の例えばパソコンに登録しておけば一回のクリックでその目的とする会社公告ページに飛ぶことができますので、しかも公告期間が大体二週間から一か月でございますから、一週間に一回程度それを行っていただければ容易に確認ができると、こういうことになりますので、全体として見ますと、インターネットを使う場合には高齢者にとっても現在に比べてより不利になるということはないのではないかと、こう思っております。  また、この電子公告導入は、一律にこれを強制するものではなくて、あくまで選択肢として用意をするものでございますので、会社においてそういう電子公告の場合に株主あるいは関係者等に対する周知の方法としてふさわしくないと思えば従来どおりの方法を取るということも十分可能になっておりますので、そういうことを全体として勘案いたしますと、やはり選択肢の一つとしてこういう高度情報化社会に適応した方法を可能にするということは社会的に見ても有用ではないかと、こう思っているわけでございます。
  46. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今、局長の御答弁の中で、インターネットのメリットあるいはデメリット、あるいは従来の官報日刊新聞紙におけるメリット、デメリット、この辺をお述べいただきました。そういう意味で、インターネットが持っているデメリットの部分、若干これから質問をさせていただきたいと思いますけれども、一点はセキュリティーの問題でございます。  ウイルスやハッカーの侵入ということで情報の安定性の問題というものがインターネットの場合大変危惧されるわけでございますが、今回の改正案では、電子公告に際しましてウイルスやハッカーによる改ざん等、あるいはメンテナンス等で短期的に公告中断があった場合に、一定の要件下の下、公告期間の十分の一まではその中断公告に影響を及ぼさないと、こういうふうに規定をしておられます。この法的効果を生じさせる手続要件の一つであります公告制度についての電磁的方法導入する点についての妥当性、この件について法務省の所見をお伺いできますでしょうか。
  47. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、インターネットの場合、ハッカーによる改ざんあるいはウイルスによる障害というようなことは懸念されるわけでございます。  現在、各ホームページを設けているところにおきましてセキュリティーの確保には種々の工夫をしているところでございますが、これはまたハッカーの方も更なる工夫をしているということで完全に防止するのは困難であることはもう御指摘のとおりだと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、やはりインターネットというのは非常に、これだけ普及をしてまいりますと、身近で情報を得る手段としては何よりも便利なものであるということは言えようかと思っております。  そういう意味で、やはりそういったセキュリティー上の問題について配慮をしつつ、なおこれを利用する方法を工夫すべきではないかと、こういうことから、今回、この電子公告制度を採用する方向で法案を作らせていただいたわけでございますが、その一つの方策といたしまして、先ほど指摘のように、中断期間がごく短期間で、しかもそれについて会社に落ち度がない場合にはこれを救済しようという制度を作ったわけでございます。  また、これは調査機関による調査の依頼が強制されておりますので、ハッカー等による改ざんがあればその調査機関調査によってそれが直ちに分かるわけでございますので、当然その場合には公告会社へ連絡が行くと思いますので、そういった調査機関調査を考えますと、改ざん等がそう長期間にわたることはないはずでございますので、これによって大半期間正しい情報が公示をされれば、やはりそのことによるメリットの方がそういうセキュリティー上の不安を考慮してもなおやはり社会的に見てプラスではないかと、こう思っているわけでございます。  ただ、これはもちろんセキュリティー確保をいい加減にしていいということではありませんので、公告をするところにはそのセキュリティーには万全を期していただきたいと、こうは思っております。
  48. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 一方、電子公告中断した場合の、官報又は日刊新聞紙によって、定款に定めてそれらの公告を採用するということが言われているわけですけれども、債権者の方の立場、あるいは株主の方の立場にとりましては会社事情が非常に把握しにくいわけでございますから、そういう意味で予備的処置というものがそういう方々にとって非常に混乱を招くんじゃないか、あるいは債権者の保護を害するおそれがあるんではないかなというふうな考え方もあるわけですけれども、この辺の法務省の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。
  49. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは一応念のために予備的な公告方法を定めるという措置を講じましたけれども、これだけコンピューターが普及し、それぞれのところが情報のセキュリティー等に気を遣っておりますので、予備的公告方法を使わなければ公告ができないというのは極めて例外的な場合ではないかと。仮に自社で用いておりますサーバー等が完全に物理的に破壊された場合でも、通常は持っている情報をどこかに必ず予備的に持っているわけでございますし、また、そういう緊急な場合に他のサーバー利用して再びホームページを立ち上げる、あるいはアドレスは変わるかもしれませんが、それは登記を変更すればよろしいわけですので、そういった対応が普通は取れるだろうと思っております。  ただ、例えば地震等で非常に広範な被害が生じて他の代替のコンピューターを探すことも困難であると、こういうようなことを想定いたしますと、そういう場合に一切公告方法がないということではこれはやはり会社にとって困るだろうと、先ほども申し上げましたように、そもそも定款変更そのものもできなくなってしまいますので。そういう場合に備えて予備的な公告方法を定めておくということにしたわけでございますので、このような予備的な公告方法を用いなければならないような事態が生じたということは多分関係者にとっては広く分かるという、そういったような事態ではないかと、こう思っておりますので、知らない間に公告方法が変わってしまった、こういうようなことはまずないのではないかと、こう思っています。
  50. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 先ほど公告期間の十分の一の条件の案件でございますけれども、例えば貸借対照表公告の場合、五年間公告すると。そうしますと、十分の一ですと半年。この半年間中断をすると、こういうのはいささかちょっと影響があるのではないかなというふうに思うんですが、この件についての御説明をいただけますでしょうか。
  51. 中野清

    大臣政務官(中野清君) 樋口委員の御質問でございますが、御承知のように、今お話しのとおり、この電子公告期間というものが、例えば合併は一か月以上であるし、株式分割は二週間だと。しかし、今おっしゃったように決算は五年間というふうになっておりますですね。ですから、そういう意味で考えていきますと、公告中断の原因になっている問題につきましては、公告期間が長くなればなるほど今おっしゃるような問題が生ずる可能性があると、これはおっしゃるとおりと思います。  しかし、考えてみますると、この公告中断が許容される期間というものを、では客観的にどうすればいいかとなってきますると、やはり許容される期間に応じて、何というんでしょうか、定める方が合理的でないだろうかと私ども考えておるわけでございまして、その割合をもって定めているところでございます。  御承知のとおり、今言ったような意味で、特に長い問題、半年という問題もあるわけでございますけれども、これについてもある程度は御理解いただけるんじゃないだろうかということも考えておりますし、また逆に、その期間をただ一律に全部くくるとやっぱり問題ありますので、余りにも少ない場合、これも問題があると。両方いろんな意味で長短があるわけでございまして、そうすると、例えば会社にとりましても、これを余りにも一方的にやりますと、公告を例えば短い場合にはまたやり直さなきゃならないというような意味でのインセンティブという、問題が出てまいりまして、せっかく電子公告利用するインセンティブが失われるという面があるわけでございます。  ですから、やはりそういう意味で、公告期間の九割以上の掲載期間が登載されていればというので、あくまでもその六か月というのは最大の限度でありまして、その期間においてはそれについては有効だという話でございますので、恐らく六か月間、全部、初めから六か月間やればいいんだというのは一つのあくまでも法律の限度でありますけれども、企業としてそこまで、六か月間は権利があるんだから報告しなくていいんだということが本来の趣旨じゃないと思いますので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  52. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 いろいろな問題について、それぞれの期間の長さというものが一律に十分の一という、従来のその法律上に基づく内容できちっと対応できるという部分は若干矛盾を感じる部分もあるわけでございますので、その辺は、それぞれの内容について期間の検討というものもあってもしかりではないかなと、こういうふうに思っておりますので、意見として述べさせていただきます。  次に、情報の享受者の簡便性あるいは一覧性の確保ということについてちょっと御質問をさせていただきます。  現行方法では、官報ないし日刊新聞に掲げる方法でございますけれども、これは言わば、受け止める側としては受動的な形で向こうから来ると、こういうことでございますけれども、今回のその電子公告にしますと、まず、知る方としてはパソコンをまず買わなければならないとか、あるいはお持ちの方にしてもやはりインターネットに接続しなければならない。そういうふうな形で能動的な形に大きく転換しなきゃならないのではないかなと、こういうふうに思っております。  そういう意味で、情報享受の簡便性について、電子公告制度導入によってそういった点が若干損なわれるんではないかなというふうに思いますけれども、この辺の法務省の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。
  53. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、インターネットを見るということになりますと、基本的には、パソコンを用意しインターネットに接続をしということが新たに必要になるというのは御指摘のとおりであると思います。  ただ、官報日刊新聞の場合であっても、受動的とは申しましても、これ購読契約を結んで取らなければ自分のところには来ないわけでございますので、そこは、ある意味では基本的に変わらない、やはり一定手続を経た上でないと利用できないということは変わらないのではないかと。  次に、これは、官報日刊新聞の場合、配達されたものを自分でこれを見るということでございますが、逆に言いますと、その公告掲載されているところをすべて見ませんと、しかもこれを毎日繰り返しませんと自分に関係のある公告があるかないかということは確認できないわけでございます。ところが、インターネットの場合ですと、そういう接続をしてしまえば、最初の回は、そこの会社ホームページなり公告掲載されているところを検索するなりあらかじめ登記で見たアドレスを入力するなりということは必要になりますが、それを一回登録してしまえば後はそれをクリックするだけでそこの公告ページに飛んでいけるわけでございます。  また、そういう、自分でURLを一々調べるのが大変だということであれば、行政サービスとして、法務省では法務省のホームページ中に公告リンク集を設ける予定でございますので、そこを見ていただければ、当該会社へリンクが張られておりますので、そういう形で比較的容易にアクセスできる。しかもその場合には、目的とする会社のところでございますし、先ほど申し上げたように、公告の場合には二か月から、失礼、二週間から一か月、決算は五年でございますが、そういう期間掲載されますので、二週間に一回見れば見落としはないということでございますので、毎日必ず公告欄をチェックするということに比べますとかえって手間暇という意味では軽減されるのではないかと、こう思っております。
  54. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 もう一点、インターネットといいますかパソコンの持っている能力的な部分でちょっと御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、私も、企業を経営しておりましたのでいろんな数表をパソコンを通じて見るわけでございますが、中には、大変膨大な数値を一度に見切れないというのも出てまいります。官報やあるいは日刊新聞によりますと、紙ベースでございますから一覧としてぱっと見れば分かるということなんでございますけれども、パソコンになりますと、画面のある程度のスペースの問題もございますので、ボリュームによってはある程度スクロールをして数字を追っていかなければならない、そういうデメリットのようなものもあるやに思うんでありますけれども、こういったことについて法務省の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。
  55. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、公告の中には相当の分量もあるものもございますので、そのようなときには一画面に収まらずにスクロールをしなければならないということもあろうかと思います。印刷物に比べますと、確かに画面でスクロールをしてそれを確認するというのはなかなか確認しにくいというのは、実際に操作している身として私も実感しているところでございますが、ただこれはパソコンで見ているものを印刷することは容易でございますので、印刷して改めて、特に細かい数字であれば画面よりも印刷してチェックをするということになろうかと思いますが、そういったことを考えますと、同じ情報を、じゃ新聞や官報で見るときはどうかといいますと、非常に活字も小さくてなかなか見にくいという面もございますので、これは一長一短ではないか。パソコンの場合であれば、画面あるいは印刷で比較的大きな字でこれを確認するということも可能でございますし、そういったスクロール等の煩わしさもございますが、そういったメリットもございますので、これはそれぞれではないかなということを考えておりますが。
  56. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 では次に、中小企業について何点か御質問させていただきます。  今回の改正案につきましては、大企業にとっても、先ほど吉田先生の御質問の中にもございましたけれども、個別催告の省力化と、これが経費のコストダウンになり、メリットも十分あるというふうに御回答いただいておりますけれども。反対に、中小企業にとっては余りメリットがないのではないか。今まで個別催告できるのを待っておればよかったんでありますけれども、改正によって自ら積極的に官報のチェックあるいは相手企業の公告用のホームページをチェックしなければならないと。  そういう意味で、中小企業が官報を購読し、チェックし、絶えずホームページをチェックするという、こういう意味では経費の問題あるいは人的体制の手当て、こういったものが中小企業にとっては大分不利益といいますか、そういった部分が考えられるのではないかというふうに思うんでありますけれども、法務省の御見解をいただけますでしょうか。
  57. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、個別催告の廃止の場合には債権者にとって自ら公告を注視しなければならないという意味で負担が増すのは御指摘のとおりだろうと思います。  ただ、何度も申し上げておりますが、電子公告で確認をするということになりますと、取引先のそれぞれの公告ホームページを自己のパソコンに登録をしておけば、二週間に一回そのホームページアクセスをして見れば見落としはないという程度負担でございますので、しかも企業におけるパソコンの普及率は、先ほど申し上げましたとおり、五人以上の規模のところでも八〇%を超している。少なくともある程度の事業を行っているところであればまず間違いなくパソコン等の設備があり、インターネット利用していると言えようかと思いますので、そういうところでもう既に既存の設備にこの電子公告アドレス登録する、それを社員が二週間に一回程度見るという程度負担公告は確実に確認できますので、もちろん負担が増えることは間違いございませんが、企業にとってのそういう全体としての負担で考えれば、それは日本経済全体のために個別催告を廃止することに伴う負担として甘受していただけるのではないかと、こう思っております。
  58. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 平成二年の商法改正の際に、一定規模以上の株式会社を対象に貸借対照表登記所で公開する旨の案が検討されたというふうに聞いております。現在発表されております会社法制の現代化に関する要綱試案では特にこの提案がないようでございますけれども、中小企業の決算公告についてはその実施がほとんどないような状況であると聞いているわけでございますが、設立目的からその取引関係を限定している企業、あるいはホームページの開設や維持管理費に、費用等に負担の掛からない企業等に対して一定の要件を課すことでこの登記所での貸借対照表の公開を決算公告に代えるということも一案ではないかと思われるのでありますけれども、この件に関しまして法務省の御見解いただけますでしょうか。
  59. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは平成二年の商法改正に当たりまして、法制審議会で答申した法律案要綱におきましては、御指摘のように貸借対照表登記所公開を行うということが盛り込まれております。  しかし、この登記所公開につきましては中小企業の負担増になるという理由などから反対が強かったことから、会社負担の少ない公開方法といたしまして、平成十三年の商法改正によりまして貸借対照表インターネット公開の制度、いわゆる電磁的公示制度でございますが、これが設けられるということになりました。  このそれぞれの自社のホームページで公開するということでありますと、費用も低廉でございますし、非常に簡便にできると、こういうことからこの制度が設けられたわけでございます。そういうことから、当面、特にこれ以上に登記所において公開するということを実施する必要はないのではないかとは思っておりますが、ただ、御指摘のように決算公告の在り方そのものにつきまして、現在、会社法を審議しております法制審議会において様々な観点から議論がされておりますので、そういう点も含めて今後検討したいと思っています。
  60. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 今回の改正によりまして債権者保護手続が大きく変化すると、このように思われます。  経済活動の範囲が広い大企業は当然でございますけれども、中小企業も不測被害を被らないようにしていくためにも、この電子公告制度導入及び債権者保護手続による個別催告省略について国民の皆さんに対し十分周知徹底を図っていく必要があるんではないかなというふうに思っているわけでありますけれども、この法案の周知徹底方法について、法務省のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
  61. 実川幸夫

    ○副大臣(実川幸夫君) 御指摘のとおり、周知徹底、これはどの法案もその後大変大事なことでありますけれども、今回の電子公告導入されることとなった場合にはパンフレット、またポスターの作成、解説書の出版等、できる限りの手段を用いまして制度の周知徹底に努めてまいりたいと考えております。
  62. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 電子公告が適法に行われているかどうかという客観的証拠を残すために、法務大臣登録を受けた調査機関、これが調査を受ける義務があるというふうにこの改正案に記載されているわけでございますけれども、この調査機関として登録されるための要件についてお伺いしたいと思います。
  63. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この調査機関登録要件は四つございます。  まず第一に、この電子公告調査利用するコンピューターとプログラムがこの電子公告閲覧することができるものである。これは調査する以上は当然のことでありますが、そういう基本的な性能を持っているものであるということが必要でございます。  それから第二に、そういったコンピューターあるいはプログラムにつきまして、ハッカー等の侵入を防止するのに十分なセキュリティーが確保されている。単に見るだけではなくて、そういう調査閲覧をしたそういう経過の情報ハッカーによって改ざんされたのでは意味がございませんので、そういう改ざんのおそれのない十分なセキュリティーが施されていると、こういうことが要件でございます。  それから第三番目に、そういったコンピューター、プログラムがその入力された情報、指令並びにインターネット利用して提供を受けた情報を保存する機能を有していること。いつその公告アクセスをしてそれを送信指令を出して受信し、どういう情報を受け取ったと、こういうことが逐一記録されると、そういうことでないと後で争いが起きたときに客観的な情報として意義がございませんので、そういった保存の機能を持っているということが第三の要件でございます。  第四といたしまして、こういった電子公告調査を適正に行うための実施方法を定めているということ、この四つがこの今回の法案で要求しております登録されるための要件でございます。
  64. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 先ほど局長の御答弁にも民間をどんどん活用していきたいと、こういうお話がございました。大いに結構なことだと思っております。ただ、裏返せば、この民間参入ということはその調査機関というものが公的なといいますか、そういう関係のものもある程度残しておくと、こういうふうな形も考えられるのでありますけれども、そういった民間以外の調査機関というものはどのようにお考えになっておられるんでしょうか、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  65. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) もちろん登録制ということで民間に限定しているわけではございませんので、民間以外のところでありましても、その登録要件を満たして参入を希望すればもちろん登録調査機関になることは可能でございます。  ただ、現在のところ、参入を考えているようなところとしては、コンピューターシステムの開発会社であるとかインターネットサービスプロバイダーであるとか新聞社であるとか、セキュリティーの確保されたコンピューター関係施設を既に有しているところがこれらの施設を利用して調査機関として調査を担当しようと、そういうことを検討しているということは聞いているところでございますが、それ以外に、民間以外のところでこの調査機関になることを検討しているという話は直接は聞いていないものですから、具体的にどのようなところがお考えなのかは分かりませんが、もちろん法律上は要件さえ満たせば可能でございます。
  66. 樋口俊一

    ○樋口俊一君 非常にこの調査機関というのは中立的な立場でなければ駄目だというふうに思っておりますけれども、最近は、日歯連の様々な贈収賄問題とかいうことで、一方では天下りも非常に問題になっているというふうに思っております。こういうことはないとは思いますけれども、こういう機関に天下りがあるようなことはないのかどうか、その辺、法務省としての御見解をお伺いできますでしょうか。
  67. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 大事な問題でございますので私の方から申し上げたいと思いますが、御承知のとおり、天下りには種々の弊害があることはもう指摘されているとおりでございますが、新たに電子公告制度導入するに当たって調査機関を天下り先として利用することは、小泉内閣がもう当初から主張しておりますように、民間にできることは民間に、そういうことで、政府全体の方針を踏まえて、今回、登録制を採用した趣旨にも反することになってまいります。したがいまして、天下り先として調査機関利用するような考えは全くございません。
  68. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 質問通告していなかったんですけれども、冒頭、先ほど局長が、こういうインターネット電子公告みたいな制度は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、いずれも採用していないと、いずれも採用していないと、それで、ある意味では日本が先進的にやるんだというお答えがあったんですけれども、なぜ、アメリカ辺りは本当はインターネットでいえば日本よりも先進国ですよね。そういった国がなぜ採用していないのかなと一瞬思ったり、そういうところにあえてなぜ日本がやるのかなとちょっと感じましたもので、その辺どういう、もしお調べになって分かっているなら、なぜ、そういう先進国はやっていなくて日本が先にやろうとしているのかという点、解説をしていただければ。
  69. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 諸外国でやはり公告をする場合、政府等が責任を持って発行する日本でいう官報に相当するもの、あるいはその会社の地元で指定する日刊新聞紙と、こういうようなものに一般にすることになっておりますが、これは一つは、新聞紙等で周知力があるということと同時に、やはり新聞等に掲載したものについては、掲載の事実が客観的に明らかで後で紛争を招くことがないと、そういうことが大きな理由だろうと思っています。  ところが、先ほどから御説明しておりますように、インターネットというのは非常に便利ではございますが、客観的な証拠として残すということになりますと非常にある意味では難しい。会社の方で、いや、このページを掲載したんですということを言われても、それはなかなか事後的に確認しにくいものがございます。したがいまして、こういったものを利用しようといたしますと、間違いなく掲載されたということを確保する手段がどうしても必要になります。ドイツではインターネット利用も認めておりますが、これはあくまで公告と併用してということでございますが、言わば附属的な、日本で官報電子官報版を使っているのとある意味では似たような使い方でございます。  で、今回、私どもで考えましたのは、決算公告の電磁的な開示、割とこれは広く利用されておりまして、やはりホームページを使った情報の開示というのはこれからの時代には絶対必要になってくる、また、広く普及して、それを見る国民立場からするとやはり便利だろうと。そういう意味で、国民にとって非常に便利であり、周知力があるということと、先ほど申し上げた客観的な証拠として残すという、この二つをどう調和させるかということをいろいろ頭を絞りまして、調査機関という世界的に見て例のないようなものを今回考えたわけでございますが、ある意味では、私どもからしますと、このような制度を日本で採用していただいた場合に、インターネット先進国の諸国がこれを参考にしていただければと、こう思っているわけでございます。
  70. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういう意味では、その調査機関というのは極めて大事な、それこそ世界に例のないことを今から始めるわけですから大事なシステムになってくるんだろうと思いますし、その意味で、調査機関を設定する場合、客観的証拠を残すため、それを証明するという作業のための調査機関になるわけですよね。したがって、先ほど登録基準、これは登録制ですから、登録の基準の問題はお話に、今、樋口委員質問に対してお答えになりました。  その調査機関のいろんな項目、今回、法律が書かれていますが、その四百六十二条の二項の方ですか、これを見ると、今度は「調査機関は、公正に、かつ、法務省令で定める方法により電子公告調査を行わなければならない。」。一体、だから、これからどんなふうに世界で初めての調査機関がやっていくのかということになった場合、中身がちょっと分かんないんですよ。今から法務省令で定めるとなっている。具体的に法務省令でどんなことをお考えになっているのか、この点をはっきりさせておいていただきたいと思います。
  71. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この調査機関調査でございますが、端的に言ってしまえば、間違いなく公告がされているかどうかということを調べるわけでございますが、大きく分けると二つございます。一つは、そういった公告をするということを、依頼会社から言われたとおりの公告が現実にインターネット掲載されているかどうかということを調べることが一つでございます。それからもう一つ、この制度として、公告方法として電子公告を用いる場合にはそのアドレス登記しなければならないと、こうなっておりますので、登記されているアドレスから現実に公告されております電子公告のページまできちんとたどり着けるのかどうかと。この二点を調査するということになります。  まず、公告がきちんとされているかどうかということにつきましては、一定の頻度でホームページ情報を記録しているサーバーアクセスをいたしまして、その情報を、あらかじめ届けられているホームページと間違いないかどうかということを確認していただく。そして、そういった、いつ、そういう確認をしたということと、そのときに得た情報として、ホームページ情報、ダウンロードした情報を保存していただく、それで事後の争いが起きたときに備えると、こういうことをやっていただくということが一つでございます。  それからもう一つは、登記してあるアドレスからそのホームページに行けるかどうか。これは一般に、公告会社が行う場合に幾つもの公告をすることが考えられますので、登記所に登記するアドレス会社ホームページのトップページ又は公告の欄のトップページというようなところを登記することになろうかと思います。そのページからそれぞれリンクを張って必要な公告にたどり着けるようにすると、こういうことになろうかと思いますので、その登記されているアドレスに行って、そこから現実に登記されている公告のページまでたどり着けるかどうかと、これを確認していただくということがそれぞれの調査内容になります。  そういうことをこの法務省令で定めるということを考えているところでございます。
  72. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今お聞きしていると、じゃ、それをやるための調査機関というのは、私、今聞いた内容でいくと、そんな難しくないかなという気もするんですよね。そうすると、どんなところでも、逆に言うと、うち調査やりますよみたいなことになりゃしないかなということもちょっと思うし、ただ、先ほど言っていたセキュリティー面のこともきちんとおっしゃっているわけで、そうなると今度は単純な調査機関ではまだ難しいだろうと思うし、先ほど御答弁の中で、お聞きしていると、どんなところが調査機関になるのかという問題で、コンピューターシステム関係とか新聞社とか、こうおっしゃっておりましたが、どんなところが具体的に、まあこれ、法律で決める。私、何かちょっと、ぱっと思い付いたのは、例えば、先ほど新聞公告との、新聞公告、これで大変な被害を受けるわけです、新聞側は。多分、そうしたら日本経済新聞さん辺りは、これ、当然調査機関立ち上げてやらなけりゃこれは回収できませんからね、そんなことを考えているんじゃないかなと思いながら。  だから、どんなところがこれ調査機関としてイメージ的にわいてくるのかということをもう少し詳しくお話しいただければと思います。
  73. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、やはりセキュリティーまで考えますとそれなりの設備が必要になろうかと思います。また、掲載されているかどうかを確認するにいたしましても、一定頻度、例えば一日なり半日なり六時間なりと、その間で調査をしていただくということが必要になります。余り短期間ですと負担が重くなりますし、余り長く間隔が空いてしまいますとその間に何か事故がある可能性があるということで、これはいろいろ実務的な要望も聞いた上で決めたいと思っていますが、そういった意味で、やはりある程度設備は必要になろうかと思っています。  そういう点を考えますと、既にそういったコンピューター設備を持っているところ、改めてコンピューターを設置し、そのセキュリティーを施しということでは投下資本が大きくなり過ぎますので、現実にそういったものを持っていて、そこで調査のためのプログラム開発をして、かつ、ある意味では公告をする会社から信頼されるような、そういったところがこの調査機関に名のりを上げるのではないかと。  そういう意味で考えますと、先ほども申し上げましたが、システム開発会社であるとかプロバイダーであるとか、あるいは新聞社等は既に相当、大体大きなところであればホームページを持って様々な設備を用意しておりますので、それ以外にもそういった設備のあるところであれば、それは名のりを上げる可能性はあろうかと思っていますが、私どもでどうもそういう検討をしているらしいということで聞くのは今申し上げたようなところでございます。
  74. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと具体的に中身を少し、その調査機関という問題に限って更にお聞きしたいんですけれども、法律案の四百五十七条を見ますと、電子公告を行おうとする会社に対して調査機関電子公告調査を求めることを義務付けているというのでありますが、会社がこの電子公告調査を求めなかった場合、求めなかった場合、電子公告の効力はどうなるんですか、これ。
  75. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、私どもとしては、公告をする以上は調査を求めていただきたいとは思っておりますが、仮に調査を求めないで公告だけはきちんとしたと、こういう場合を考えますと、求めないのはある意味ではけしからぬとは思いますが、公告の効力自体には影響はないと、こう考えております。  公告は、要するに公告内容たるべき情報を正に一定期間公告ホームページ掲載するという、そのことによって周知をしたという公告の効力が発生するわけでございますので、調査機関を使った調査というのはあくまで公告をしたことを立証するための手段でございますので、公告を現実に行っていれば調査機関に対する調査依頼をしていなくても公告の効力は影響を受けない。  ただ、調査をしていなくて、的確、適法にきちんと全期間にわたって公告をしたということを立証するのはある意味ではなかなか困難なことではないかと、こう思っておりますが。
  76. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ちょっと、効力に影響ないというんであれば、調査を受ける義務を課するという意味ということとどう関係性なるんですか、これ。
  77. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、あくまで事後に紛争が生じた場合に、客観的資料を要求して的確にその紛争を解決するというようなことを目標にしているわけでございますが、その義務を課したことの結果といたしまして、この調査機関による調査を求めなかった場合には百万円以下の過料に処せられると、こういう制裁規定が用意されております。  それからもう一つ、例えば合併の場合、合併登記を行う場合には、その登記申請添付書類として合併公告をしたことを証する書面を添付しなければなりませんが、これは調査機関調査結果通知書以外にそういった書面があるとは思えないわけでございまして、そういう意味では登記が必要となるものについてはやはりこの調査をしていないと登記ができないと、こういうことになります。  また、先ほども申し上げましたが、仮に公告効果が争われた場合に、この調査をしていれば、その通知書によって裁判所も間違いなく有効であるということを判断していただけるわけですが、そういう調査をしておりませんと、この公告をした方が全期間にわたって間違いなく公告をしたということを立証しなければいけないわけですので、その負担は相当大きなものがあろうと思います。  そういったことをいろいろ考えますと、公告、仮にそういった負担を乗り越えてすべての期間にわたって有効に公告をしたということを立証された場合にもなお無効にする必要はないのではないか、そこまでやらなくても多くの人は調査機関利用していただけると、こう思っております。
  78. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、今度は四百五十七条の中を読ましていただくと、ここにも「法務省令で定めるところにより、」というのがあるんですよね。つまり、電子公告を行おうとする会社調査機関電子公告調査を求めるについて、その省令で定めるところによって求めることを義務付けている。ここでも、法務省令で、我々のところに今ないわけでございまして、一体どういうことを考えていらっしゃるのか、ここも明らかにしておいていただきたいと思います。
  79. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この四百五十七条で、「法務省令で定めるところにより、」「調査を行うことを求めなければならない。」としておりますのは、その調査依頼を明確な形で行うことによって調査機関が困らないように、あるいは事後の紛争、受任の際に紛争が起きないようにということを考えたわけでございます。  どういうことを法務省令で定める予定かといいますと、まずは申込書又はそれに代わる電磁的記録をもって申込みしなければならないと。要するに、公告内容であるとかURLであるとか、そういったものをきちんと伝えないといけませんので、これは書面又はそれに代わるものでないと困りますということがまず第一点でございます。  その書面等に記載する内容でございますが、これはまずは公告をする会社、これの商号であるとか本店所在地であるとか代表者、これを特定するための資料を書いてもらう。それから、登記簿の公告方法欄に記載されているアドレスでございますね、まずはこれを書いてもらう。それから、現実に公告をするその公告ページのアドレス、これも書いていただきます。それから、公告掲載期間、いつからいつまで行うか。それから、公告ホームページ掲載しようとする内容、それから公告の根拠条文、こういったものを書いていただいてその調査の依頼をする。これだけの事項がきちんと告げられれば調査会社においても調査を遺漏なく行うことができると、こういうことでございます。
  80. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 次は、四百六十五条の二項では、これは電子公告調査に関する料金を業務規程で定めることを要求していますと。つまり、この調査料金先ほどもちょっと議論、登録制になるんだから、その辺で自由になるんだというふうに局長おっしゃっておりましたが、そもそもこの電子公告をやろうとする理由というのは、コストの削減とか、そんな意味でやろうとされているわけですよね。そうすると、この料金自体が、それは登録制だから自由ですよと。それはそうですけれども、余り高額になっても、これ、何のためにやったのかという問題が起きる。  ただ、逆にこれ、余り安くて、ある意味じゃ簡便にやられても困る部分も、正にセキュリティー管理とかいう意味で調査会社というのはそれなりのものを持っておかなくちゃいけない。という意味では、この料金の設定の仕方というのはある意味では非常に難しいところもあると思うんですが、今のところどれくらいのものを見込んでいられる部分があるのか。さらに、私は、余りこれ、高額に設定してしまうという問題については、ちょっとこれは警戒してやらなくちゃいけない部分もあるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  81. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この調査料金は業務規程に定めるということを求めておりますが、具体的に幾らに定めるかは、御指摘のように、自由にゆだねているというところでございます。  御指摘のように、もちろん余り高ければ、これは利用されなくなるでしょうし、余り安い額にされますと、本当に間違いなく調査ができるかという不安を招くという点はございます。ただ、そこは正に利用者に判断をしていただくと。  法務省としては、間違いなく調査が適正に行えるような設備先ほど申し上げたような登録の基準でございますが、これを満たしているかどうかをチェックして、そこがおかしいところにはこれはもちろん登録を認めませんが、そういう一定設備を備え、ちゃんと調査方法も決めているというところであれば登録は認める。その上で、それだけの設備を持っているところが言わば利益を上げられる範囲で、しかも利用者を多く獲得するためにどの程度料金が適切かということは、正に需要と供給の関係でおのずから決まっていくのではないか。これは余り高くすればわざわざ日刊新聞から移行するということがなくなってしまうでしょうし、余り低くすると赤字で営業が継続できないということになりますので、そこは正に経済の原則に従った推移が見込まれるということでございます。
  82. 山本保

    委員長山本保君) いいですか。よろしいですか。
  83. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一問だけ。  最後に、今議論したように、大臣に最後、この調査機関の問題、御指摘あったように、大変この法案の中で一番大事なポイントだと思っています。ある意味ではこれが十分機能することが一番大事だと思っていますし、法務大臣、これ一応監督のための諸権限がきちんとあるところもあるわけですから、その意味では、この調査機関、きちんといけるような形でやれるように、大臣の決意、法案成立に当たっての、そこを伺って、終わりたいと思います。
  84. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員指摘のとおり、この調査機関の在り方がこの法案を本当に便利なもの、有効なものにする一つの決め手になるんじゃないかと私ども考えておりますが、そのために、この商法の第五章、「電子公告調査機関」というところで全面的にもう書き換えて新しい考え方で対応しているわけでございますが、この調査機関制度は適法な電子公告が行われることを確保するために極めて重要な制度であると。そのためには、この法案には、調査機関登録基準に適合しなくなった場合のための適合命令、それから電子公告調査方法に問題がある場合の改善命令、さらには、調査機関電子公告調査を行う義務等の各種義務に違反した場合等の業務停止命令、登録取消し、さらには報告徴収、立入検査等の法務大臣による様々な監督権限に関する規定が置かれておるところでございます。  この法律が成立し、施行されました場合には、これらの監督権限を適切に行使しまして、適法な電子公告が行われるよう万全の配慮をしてまいる所存でございます。
  85. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  86. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  電子公告制度導入は、大多数の投資家や債権者等の利害関係人にとっては公告に接する機会を、そしてまた利便を実質的に増やすことになると思います。私たちも今、あの新聞記事どこ行ったかというときには、新聞をめくるよりもまずインターネットでの検索を行うということでありますから、これは大変利便性は向上すると思います。ただ、今もそれぞれの委員からありましたように、一部お年寄りなどにとってはこれが逆に情報へのアクセスを阻害をすることになりかねないということがあろうかと思います。  二〇〇〇年の一月に「規制緩和推進三か年計画の改定作業状況」というのが中間公表をされておりますけれども、それを見ておりますと、関西経済連合会から出たインターネットによる公告掲載という要求に対して、当時の法務省は措置困難だというふうにここで答えております。理由としては、「閲覧するためのコンピューター機器、閲覧ソフト等の入手、プロバイダーへの加入等が必要となることに加え、コンピューターの普及率が十分とは言えないことを考えると、直ちに誰でもが容易に情報を入手し得る状態に置かれたと見ることは困難である。」と、こういうことを当時言われております。  今、導入が可能になったと判断をされたわけですけれども、その根拠、そしてどういう状況になった上でそれをお考えかと、まずお聞かせください。
  87. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 平成十二年一月の規制緩和推進要望に対する回答でございますので、この回答した時点でのインターネット普及率に関する統計は平成十年末のものでございます。この平成十年末のインターネット普及率を見ますと、全人口普及率では一三・四%、それから企業について見ますと、三百人以上の企業は八〇%でございますが、五人以上の事業所についての普及率は一九・二%、世帯の普及率は一一%ということで、これは当時の認識といたしましてはやはりまだまだコンピューターの普及率は十分と言えないと、こういうことでおっしゃるような意見を出したわけでございます。  だが、これが現在は、先ほども申し上げましたが、比較をいたしますと、十五年度末では人口普及率が一三・四%から六〇・六%まで上がっております。また、企業は、三百人以上の企業が八〇%から九八・二%まで、そして五人以上の事業所については一九・二%から八二・六%へ、世帯普及率が一一%から八八・一%へと、これだけ大きく伸びておりますので、やはり私どもとしては、平成十二年当時ではやはりインターネットというのはまだまだ国民の間に普及していないと、こういう認識でございましたが、その後の利用環境をめぐるこれだけの劇的な変化がございましたので、今回はそれを踏まえて電子公告制度導入するということにしたわけでございます。
  88. 井上哲士

    ○井上哲士君 正に劇的な普及が進んだわけでありますが、しかし、わずかであってもやはりこういう情報に接することがしにくい方々への手だて等、最終的には会社が選択をすることになるわけですけれども、是非ここの手だて等もお願いをしたいと思います。  この制度で、先ほどもありましたように、認証機関が非常に大事になります。ただ、これ登記の前提になるのが認証でありますから、本来これは国が直接的に負うという考え方もあったと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  89. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、国が行うということも考えられないわけではありませんが、しかし、この調査内容は、その掲載された公告ホームページアクセスをいたしまして、その情報を取って、あらかじめ届けられているものと対照して一致しているかどうか、しかもその記録を残す、こういう作業でございますので、その客観的証拠がきちんと残っていればこれは調査がきちっとされたということはおのずと分かるわけでございますので、必ずしも国でなければできないという内容の業務ではないと思われるわけでございます。  そういう意味では、やはりそういった民間で行えるようなことにつきましては民間にゆだねて自由にやっていただくということが基本的に望ましいのではないかということから登録制を採用することとしたわけでございます。
  90. 井上哲士

    ○井上哲士君 民間にゆだねる部分は自由にと、こういうことでありましたが、しかしながら、やはり登記の前提ということで、法務省の監督、検査の権限があるということが先ほど大臣からの答弁もありました。立入検査なども可能のようですけれども、ただ、例えば、この間問題になりましたあの三菱自動車の大型車によるタイヤ脱落事故というのがありました。メーカー側の言い分をうのみにしていたという行政の問題もありますし、同時に、技術力とかがなかなか行政の側にメーカーほどないということも一つの問題かと思うんです。  今回も、コンピューターにかかわることになるわけですが、立入検査をする権限があっても、実際上、技術的な面、いろんな情報の面等で、その辺の能力、それから体制というものが十分確保できるのかどうか、この点いかがでしょうか。
  91. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、登録基準の審査あるいは更新、その後の立入調査等の場合、いずれも設備登録基準適合性というようなコンピューターに関する専門的知識を要求されることがその判断内容を占めるということは御指摘のとおりでございます。そういった能力を法務省の職員だけで賄えるかというと、これはやはり難しいわけでございますので、このような専門技術的事項に関する審査、調査につきましては、法務省の職員による監督の下で民間業者であるシステムエンジニアに委託をして、その専門知識を活用して適正な調査、審査を行うということを考えております。
  92. 井上哲士

    ○井上哲士君 分かりました。先ほども天下りの温床になることはないなというお話がありました。考えていないという答弁でありましたけれども、決してないということを改めて確認をしておきたいと思います。  この間ずっと商法が年何回も変わるということがございましたけれども、一応個別的な問題はこれがほぼ最後ぐらいになって、会社法の全面改定ということが今法制審でも議論をされておるようです。去年中間報告が出されまして、中間試案が出されましてパブリックコメントにも付されているわけですが、その中で特に株主代表訴訟の問題について少しお聞きをいたします。  最近も企業不祥事というのが後を絶たないという中で、私はこの株主代表訴訟というものがそういういろんな不祥事や経営者をただすという上で大変大きな役割を果たしてきていると思うんですが、その点でまず大臣の御所見をお願いをいたします。
  93. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 企業の不祥事を含めまして、会社の取締役がその任務を懈怠して会社に損害を与えた場合には、その損害を回復するために取締役の責任を適切に追及する必要があるわけでございます。取締役の責任を追及する訴えは本来会社が当事者として行うべきものであり、監査役その他訴訟について会社を代表する者が訴訟を遂行することになります。しかしながら、取締役が会社の役員であるために同僚意識などからその責任追及が適切に行われない事態が想定されまして、この場合には会社の損害を回復することができず株主共同の利益を害することになるわけでございます。そこで、商法におきましては、会社が適切に取締役の責任を追及しない場合には、各株主が取締役に対し直接訴えを提起する代表訴訟制度を設けているものでございます。  このように、株主代表訴訟制度株主共同の利益を確保するために取締役の責任を適切に追及するという重大な機能を果たしているものと考えております。
  94. 井上哲士

    ○井上哲士君 重大な機能を果たしていると、こういう答弁でありましたが、では今法制審でこの株主代表訴訟について検討されている主な項目と、そして今後の検討計画はどうなっているでしょうか。
  95. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 現在、法制審で検討しております株主代表訴訟関係でございますが、具体的には、まず訴訟委員会制度導入の可否、これが第一点でございます。それから第二点といたしまして、株主代表訴訟の原告適格の見直し、すなわち違法行為がなされた当時の株主に限定すべきではないかと、こういう点でございます。それから第三が担保提供制度における悪意の意義の明確化と、この三点が株主代表訴訟に関しましては検討されております。  これらの論点について、昨年十月に要綱試案を発表いたしましてパブリックコメントに付したところでございます。現在そのパブリックコメントの結果を踏まえて更に引き続き議論をしているところでございまして、平成十七年の通常国会に所要の法案を提出するということを目指しております。
  96. 井上哲士

    ○井上哲士君 原告適格についての検討が一つの柱でありますが、二〇〇一年十二月に与党の議員立法で株主代表訴訟が改悪をされまして、取締役の責任を軽減をするということがありました。その審議の中で、大和銀行の訴訟の例も挙げまして、持ち株会社が創設することによって原告適格を喪失してしまうということが大きな問題だと、むしろこここそ改善すべきだということを私申し上げたことがあるんですが、こういう子会社の取締役の責任を追及できるようにするという点での改善という点ではどうなろうとしているでしょうか。
  97. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、法制審議会におきましても、代表訴訟を提起した後に株式交換あるいは株式移転が行われた結果、株主の地位を失い、そのことによって原告適格を喪失するということにいたしますと訴訟手続におけるそれまでの努力が無駄になるというような問題点指摘されておりまして、原告適格を喪失しない等の立法上の手当てを行うべきであるという意見も出されております。  そういうことを踏まえまして、要綱試案においてもこれを紹介いたしましたところ、賛成意見も多く出されております。しかし、同時に反対意見もございまして、これは反対意見といたしましては、子会社株主の地位は失うにしても、親会社になった取締役に対して、その子会社の取締役に対する責任追及を株主たる親会社として行わない、そういうことについて代表訴訟を提起すれば結局は目的が達成できるではないかと。やや間接的にはなりますが、そういう議論もございました。  そういったことを踏まえて、現在、引き続き検討をしているところでございます。
  98. 井上哲士

    ○井上哲士君 間接的ということもありましたけれども、いずれにしても、そういう子会社等の取締役の責任を追及できるそういう手だてを取らなくてはならないと、こういう点では共通の声だと、こういう理解でよろしいでしょうか。
  99. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 申し上げたとおり、何らかの形でできるのではないかということでいろいろ議論をされておりますので。
  100. 井上哲士

    ○井上哲士君 もう一つ先ほどありましたように、この原告適格を訴訟の原因になった行為の時点での株主に限定をすべきだと、こういう議論もあるようです。これは、先ほど言いました二〇〇一年十二月の商法改正でも、実は当初、原案にあったわけですが、修正をされて削除されました。その理由ということはどのように承知をされているでしょうか。
  101. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、平成十三年の立法の際、当初の原案では、株主代表訴訟の原告適格につきまして、商法が定める六か月間の株式保有期間の要件に代えまして、当該株主が株式を譲り受けた当時、その取締役の責任の原因となる事実について悪意または重大な過失があるものについてはこれを認めないと、こういう要件になっていたわけでございますが、これが結局最終的には修正されて、六か月間の株式保有ということになったわけでございます。  その理由といたしましては、株主の主観的要件をめぐって訴訟が複雑化するなどの理由から改正を行わない旨の修正が行われたと承知しております。
  102. 井上哲士

    ○井上哲士君 この株主の権利に対する規制を強化するというのはどうなのかということが強い意見としてありました。  それで、先ほど紹介をしたこの規制緩和推進三か年計画の中間公表の中でも、当時、経団連から原告適格を行為時の株主に限る等の厳格化という要望が出されております。これに対して法務省は、「取締役の違法な行為により会社が損害を被り株主全員に現に不利益が生じているので、訴えを提起することができる株主を限定することは相当でない。」という説明を付けて、措置困難だという回答をされているわけですね。  この理由を大きく変えるような状況がその後出ていると、こういう認識があるんでしょうか。
  103. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この点についても法制審議会において審議をしているところでございますが、会社法制の現代化に関する要綱試案に対するパブリックコメントにおきましては、行為株主原則について肯定的な意見が経済界や司法界から複数寄せられてはおりますが、しかし、代表訴訟の実態につきまして、平成十二年以降、それほど大きな事情の変更が生じているとの指摘はないと承知しております。
  104. 井上哲士

    ○井上哲士君 一貫して経済界はこういう要求をしているわけでありますけれども、当時から見ても株主代表訴訟の現状に大きな変化はないと、こういうことでありました。  理論的に見ましても、代表訴訟が会社の権利を行使するものであり、会社の現在の損害を回復をすることを目的とし、しかもその利益は会社に属するわけですから、原告を行為株主に限定をすると、そういう理由も乏しいと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  105. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 先ほども申し上げましたが、要綱試案に対するパブリックコメントで寄せられた意見の中には、原因行為時の株主であった者が原告となることに十分な合理性があるという意見もございました。しかし、他方、同時に違法行為時以外の株主にも株主代表訴訟による取締役の責任追及を認めることが会社の利益にかなうという反対の意見もございますし、また会社不祥事の発覚には通常相当の時間を要するため、代表訴訟の原因たる事実を知らずに株式を買い受け、その後に当該事実が発覚した場合に代表訴訟の道が閉ざされるべきではないという、こういう反対意見もございます。  このように、行為株主原則につきましては様々な問題点指摘されておりますので、今後も慎重な検討が必要であろうと、こう思っております。
  106. 井上哲士

    ○井上哲士君 もう一点、訴訟委員会制度導入ということもありました。  本来、先ほど大臣の答弁にありましたように、会社監査役が訴えすべきなのにしないから株主がやるわけでありますから、訴訟委員会といってもいろんな考えがあるようですけれども、いずれにしても今の経営陣の下に作られた訴訟委員会がこの訴訟に対しての判断をするということになりますと代表訴訟が持つ本来の意義が失われると思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  107. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 株主代表訴訟の意義は、先ほど大臣からも御答弁いたしましたように、取締役の責任を適切に追及することによりまして株主の共同の利益を確保するということにありますので、逆に代表訴訟を提起することによりましてかえって株主共同の利益、すなわち会社の利益を損なうような場合も考えられまして、そのような場合に訴訟委員会が総株主の利益を考慮して取締役の責任を追及しない旨の判断をするときに、裁判所がその判断を一定の限度で尊重することは必ずしも株主代表訴訟の意義を失わせるとは言えないと考えております。  ただ、しかし我が国の訴訟制度とアメリカにおいて採用されております訴訟制度というのが大きく異なりますので、訴訟委員会制度導入を我が国で検討するに当たりましては、委員会の構成をどのようなものとするか、裁判所の審理の対象をどのように定めるかなど様々な困難な問題点指摘されており、株主代表訴訟の意義を失わせることなく訴訟委員会制度導入することができるかどうかについては、なお慎重な検討が必要であると考えております。  そこで、法制審議会においては、そのような問題点も踏まえて、なお更に検討を続けております。
  108. 井上哲士

    ○井上哲士君 幾つかの問題についてお聞きをしましたけれども、大臣も大変重要な役割を果たしていると言われているこの株主代表訴訟がその本来の意義を失わされるようなことではなくて、むしろもっと使い勝手のいいものにしていくと、こういうことでの検討を強くお願いをして、質問を終わります。
  109. 山本保

    委員長山本保君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  110. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、千葉君から発言が求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
  111. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、ただいま可決されました電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     電子公告制度導入のための商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に伴い、次の諸点について格段の配慮をすべきである。  一 電子公告制度導入や各種債権者保護手続における個別催告省略等が株主債権者会社の利害関係人に重大な影響を与えることにかんがみ、高齢者等の情報格差の状況も考慮して、その保護に欠けることのないよう制度目的内容手続等について十分周知徹底を図ること。  二 電子公告制度導入に当たっては、株主債権者会社の利害関係人の保護が十分図られるよう、電子公告調査機関登録基準等について適正な運用に努めるとともに、施行後の実績を踏まえ、必要に応じその見直しを含め適切に措置すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  112. 山本保

    委員長山本保君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  113. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、野沢法務大臣から発言が求められておりますので、この際、これを許します。野沢法務大臣
  114. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  115. 山本保

    委員長山本保君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  117. 山本保

    委員長山本保君) 国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。野沢法務大臣
  118. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 国際捜査共助法及び組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  近年、外国人による凶悪事件が多発するとともに、国境を越えて敢行される犯罪が増加しておりますが、このような事態に有効に対処するためには、諸外国との捜査協力を一層推進し、捜査共助の迅速化を図ることが重要であります。そこで、昨年八月、我が国は、米国との間における捜査共助の実効性をより一層高めるため、刑事に関する共助に関する日本国とアメリカ合衆国との間の条約に署名しました。  同条約は、外交当局を経由せずに捜査共助の要請の発受を行う中央当局制度等を設け、捜査共助を迅速化するとともに、その範囲、内容を拡張し、日米間の捜査協力の推進を図ることを主たる内容とするものであります。  本条約につきましては、承認をいただくために、今国会に提出されているところですが、この法律案は、本条約を締結し、国際捜査共助等の円滑な実施を図るため、国際捜査共助法など関係する法律改正し、所要の整備を行うものです。  次に、この法律案の要点を申し上げます。  第一は、国際捜査共助の手続及び要件について条約に基づく特例を設けるものです。現在の国際捜査共助法では、外務大臣が共助の要請の受理を行うものとされておりますが、これを改正して、条約に基づき法務大臣が共助の要請の受理を行うこととされるときは、法務大臣がこれを行うものとするほか、いわゆる双罰性等がない場合であっても、条約に別段の定めがある場合には、共助をすることができるものとしております。また、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益規制等に関する法律改正し、没収等の共助の要請についても、条約に基づき法務大臣が要請を受理できるようにしております。  第二は、受刑者証人移送制度を創設するものです。すなわち、条約に基づき、刑の執行として拘禁されている者を証人尋問のために国際的に移送する制度を新設し、外国の要請により我が国の受刑者を移送するための要件及び手続を定めるとともに、我が国の要請により移送された外国の受刑者を拘禁するための規定を整備しております。  第三は、業務書類等に関する証明書についての規定を整備するものです。すなわち、外国からの業務書類等の提供の要請に付随して業務書類等の作成又は保管の状況の証明を求められた場合に、裁判所における証人尋問に代えて、簡易な証明書の提出を求めることができるものとするとともに、虚偽の証明書を提出した場合には刑罰を科すものとしております。  その他、国際捜査共助等の円滑な実施を図るための所要の規定の整備を行うこととしております。  なお、本法案の成立により、今後我が国が米国以外の国との間でも同様の条約を締結することが可能となり、外国人による犯罪や国際的な犯罪に効果的に対処する上で、その意義は極めて大きいものがあると考えます。  以上がこの法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  119. 山本保

    委員長山本保君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十一分散会