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2004-04-13 第159回国会 参議院 環境委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月十三日(火曜日)    午前九時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 清君     理 事                 愛知 治郎君                 小泉 顕雄君                 清水嘉与子君             ツルネン マルテイ君     委 員                 大島 慶久君                 山東 昭子君                 田中 直紀君                 真鍋 賢二君                 小林  元君                 山下 栄一君                 渡辺 孝男君                 岩佐 恵美君                 田  英夫君                 高橋紀世子君    事務局側        常任委員会専門        員        大場 敏彦君    参考人        放送大学教授   岩槻 邦男君        財団法人世界自        然保護基金ジャ        パン自然保護室        次長       草刈 秀紀君        社団法人日本動        物保護管理協会        会長       藏内 勇夫君        独立行政法人森        林総合研究所鳥        獣生態研究室長  山田 文雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特定外来生物による生態系等に係る被害防止  に関する法律案内閣提出) ○外来生物種規制法案小川勝也君外三名発議)     ─────────────
  2. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ただいまから環境委員会を開会いたします。  特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律案及び外来生物種規制法案の両案を一括して議題とし、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、両案の審査のため、参考人として放送大学教授岩槻邦男君、財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室次長草刈秀紀君、社団法人日本動物保護管理協会会長藏内勇夫君及び独立行政法人森林総合研究所鳥獣生態研究室長山田文雄君の四名の方の御出席をいただいております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、大変御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。参考人皆様には忌憚のない御意見を述べていただき、両案の審査参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の会議の進め方でございますが、まず、岩槻参考人草刈参考人藏内参考人山田参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後に委員質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言は、意見質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず岩槻参考人にお願いいたします。岩槻参考人
  3. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 御紹介いただきました岩槻です。  この法律是非早期に成立しますようにということを期待する立場から意見を述べさせていただきます。  明けて一昨年になりますか、新・生物多様性国家戦略が編まれましたときに、外来種、当時は移入種という言葉を使われておりましたけれども移入種の問題というのは生物多様性にかかわる最も危険な危ないその要因の一つとして挙げられております。それ以後、環境省中央環境審議会移入種対策検討小委員会というのを作って移入種に対する対策在り方が諮問されましたけれども、私はその委員会の小委員長として、昨年十回にわたる委員会の討議を経て中央環境審議会から移入種問題の問題点を答申させていただきました。  移入種、ここでは外来種ですけれども外来種がなぜ問題なのかという基本的なことから最初に申し上げさせていただきたいと思いますけれども、現在私ども周辺にありますその生態系と呼んでおります自然環境というのは、これはもう最終的に言いますと三十数億年の生物歴史進化歴史の結果作り上げられているものです。その進化歴史を通じて生物はお互いにどうなじみ合うかということを、環境生物相互の間でその働き掛けをしながら現在の姿を作り上げて、現在の生態系というものを作り上げているわけですけれども、ですから、そういう形で非常に動的、ダイナミックではありますけれども安定した状態自然環境というのを、生物多様性在り方というのを作り上げてきたものです。  そこへ人の影響によって、人為的な影響によってですね、辞書を開いていただきますと、自然に対する反語として人為人工というのが挙げられておりますけれども、その人為人工の結果によって、生態系に元来、安定している生態系に元来すんでいない生物を持ち込むことによって生態系安定性が乱されるという現象が生じています。  もちろん、この現象は最近急に生じたということではありませんでして、それこそ私ども専門用語では、史前、歴史以前ですね、史前帰化植物などと呼んでいますように、歴史以前からそういうふうに人の力によってその持ち込まれた生物が様々な働きをしているということはよく知られていることですし、それから外来種というのがすべて悪ではなくて、外来種の中にはその自然としっかりなじんでいるものがあるということも、これもよくよく御承知のことだと思いますけれども、例えば極端な例で申し上げますと、太宰治の名作に「富士には月見草がよく似合ふ」、日本の典型的な景観であります富士ツキミソウがよく似合うという、大芸術家がそういう表現をしているわけですけれどもツキミソウといいますのは十九世紀中に日本へもたらされた外来種です。だから、元来、日本の自然にはなじまないはずのものなんですけれども日本の自然にしっかりなじんでくれているそういう外来種もあるわけですから、外来種即悪ではないということも一応御認識いただきたいんですけれども。  ただ最近になって、様々な環境問題で最近生じていることというのは、歴史的にあったのと違って最近生じていますことは、科学技術が非常に急速に発展したために、例えば外来種の問題について言いますと、私どもが国外と往来することも非常に頻繁になりましたし、それから物質の流動も非常に活発になりましたし、そういうことによって今まで予期しなかったような外来種がどんどん日本へも導き込まれているという現象が生じて、その結果、もう具体的な例は一々挙げるまでもありませんけれども皆さん方も御承知のように、様々な外来生物が現在あります生態系に対して非常に大きい影響を与えている、もういろんなところで報道もされていることですから例を挙げるまでもないと思うんですけれども、そういう例がたくさんあるわけなんです。  そういうものの中には、やがては落ち着くものもあると思うんですけれども害悪を更に大きく広げるというものも十分考えられることですし、それから生態系に対する害悪というのは、私どもふだんは余り実感しないんですけれども、実は真綿で首を締めるようにということが言われますけれども生態系に何らかの害悪が加わりますと、それは徐々に生態系を圧迫していって、ある圧迫の閾値を超えますと、生態系というのはがらがらっと崩壊してしまうというのが、これはもう生物学的な常識になっているわけですけれども。そういうことが生じてから、あるいは生ずる直前になってから慌てても、生態系というような大きいシステムというのはそう簡単に改変することができるものではありませんので、そうならないうちにあらかじめ傷口が小さいうちから十分手当てをしておかないといけないということなんですけれども。  生態系という言い方をしましてもすぐには御理解いただけないことがしばしばあるんですけれども、例えば私どもの体というのを考えてみますと、私どもの体というのは、御承知のように、元々は一つ細胞から出発してまあ六十兆ほどの細胞で体が作られているわけですけれども、その細胞相互にある一つシステム、個体というシステムを作って初めて生きているということができているんですけれども生態系も全く同じことなんですね。三十数億年前に地球上で生命が発生したときにはたった一つの型であったというのが生物学的に確認されているんですけれども、それが三十数億年の進化歴史の過程を経て今、億を超えるとも推定されている種によって形作られている。  しかも、それが私どもは、人は万物霊長であるとしばしば威張った言い方をしますけれども、その万物霊長もほかの生物助けなしには、一瞬間もという言い方をした方が正しいと思うんですけれども、生きていくことができない。食べたり、着たり、住んだりするだけではなくて、呼吸をするためには植物の光合成が必要ですし、そういうものだけではなくて、万物霊長である人が、最下等であると、私は下等という言葉を使うのは好きじゃないんですけれども、最下等であるとしばしば言われる原生、原核生物のバクテリアの大腸菌の助けをかりないと生きていないというような存在でもあるわけですね。  そういう私ども存在のところにほかからいろんな害悪が入ってまいりますと、例えば感染症なんかが非常に分かりやすい例だと思いますけれども感染症が入りますと、命が全うされるようにすぐにそれを除去しようとするはずですけれども、それと同じようなことを外来種というものに対しても対応しないといけないというのがその基本的な考え方だというふうに思っております。  ただし、そういう基本的な考え方で、そうしたら外来種というのは片っ端から全部やっつけたらいいかというと、そういうものではありませんで、冒頭に申し上げましたように、外来種の中にもむしろその生態系となじませることによって生態系をより豊かにする、例えば日本景観をより豊かにするというようなものがあるわけですから、それは選別する必要があるわけですね。  ただ、私も科学者の端くれとしてこういうことを本当は申し上げたくないんですけれども生物多様性に関しての科学の今持っている知識といいますのは皆さん方が多分お考えになっている以上に乏しいことなんですね。  そういうことを客観的な数字で申し上げますと、例えば、今までに、それこそアリストテレスが自然史研究を始めたそのころから営々と努力をして積み上げてきたその結果が、今までに地球上に生きている生物種というのを百五十万種ほど認知しているんですけれども、実際は、先ほどちらっと申しましたように、地球上に生きている生物は我々専門家の間では多分億を超える種数に達するだろう。名前を付けている生物がやっと一%ぐらいしか生物多様性に関しては知られていないということなんですね。  しかも、その名前を付けているというのはどういうことかというのも、最近では例えばヒトゲノムなんかが話題になっていますからよく御存じのように、ヒトゲノムのように全ゲノムを明らかにするということはまだ生物全体の十数種にしかできていないわけですね。  そうしたら、全ゲノムが分かったら、そうしたらヒトはすべて分かったかといいますと、全ゲノムが解析されたところでやっとヒト科学的な研究が始まったという言い方をしばしばすることがあるように、我々が今持っておりますその生物多様性に関する知見というのは、科学全体がそうだと言えばその方が正しいんでしょうけれども、非常に限られたものである。  知っていることも結構たくさんあるんですけれども、それは全体系からいうとごく限られた一部のものであるということも認識しておかないといけませんし、さらに、今、私は非常に気軽く百五十万種だとか億を超える種数だとかと言いましたけれども、種というもの自体が、これは私ども言い方をしますと、完全に定義できるのは生物学が終わったときであるという、私ども生物学研究最大のテーマの一つが種とは何かであるその研究だという言い方をするんですけれども、そういうふうに、まだ分からない、仮の定義しかしていないものを単位にして議論をしているのが生物多様性であるということでもあるわけですね。  ですから、そういう生物多様性にどういう害悪が及ぼされるかという議論をしますと、非常に明らかに見えるものはすぐに捕まえて対応ができるんですけれども、明らかに見えないというものに対する対応は非常に難しいという側面があるわけですよね。  ですから、そういうものに対してどう対応するか。一つは、その科学的な基礎的な知見をどんどん増やしていくということが我々の立場からいっても当然必要なことなんですけれども、それと同時に、すべてが分かってしまってから対策を講じているというのでは物事は何にも進みませんし、すべてが分かったときには地球上の生態系が全部なくなっていて、人も滅亡していたというのではしようがないわけですから、ですから、今分かっている範囲でどういう対策が立てられるかということを考えていく必要があるということで、私ども中央環境審議会での答申も、そういうまだ未知数のところがあるということを前提に、その中で生物多様性に関して我々は外来種問題をどう考えるかという取りまとめをさせていただいたということだと理解しているんですけれども、それに基づいて提案されたのが今回の法律案だというふうに理解しておりますけれども。  すべてのものが一〇〇%完全というわけではありませんけれども、私、こういうことを申し上げてよくないのかもしれませんけれども、十年ほど前に種の保存法というのが作られたんですけれども、それは様々な効果を発揮していると思うんですけれども、それができましたときに、我々仲間のうちでも、この法案では本当に種の保全というのが完全にできるはずはないんだから、もっと完全な法律ができるまで待った方がいいという意見の者もたくさんあったんですけれども、私は、そうではなくて、国が絶滅危惧種というのは守らないといけないんだということを法律の姿で示していただくということがまず大切であって、その法律が後ろを向いているわけじゃなくて、前を向いていて、前を向く歩数がやっと、ちょっとしか進んでいないんだという理解の仕方をして、それをもっと前へ進めるように協力すべきではないかということを周辺の者にも言ったりしたんですけれども、実際、その法律ができて十年たって、まだ周りには批判もたくさんあるんですけれども。  しかし、一定の成果を上げたというのは、例えば国民一般に種の保全ということに対する認識が高まったということを含めてそういう問題提起ができたということは非常に大きいことだと思いますし、それと同じように、外来種の問題も、科学者立場からいっても、この法律ですべてが一〇〇%完全にできるとは思いませんけれども、こういう法律が作られることによって外来種の問題に対する認識がより広められ、さらに、具体的な対策が立てられることによって緊急に問題になるようなものが配意をされ、保全されるようになるということが非常に重要なものだと思っておりますので、その小委員会に関係した立場からというだけではなくて、一科学者立場としても、是非こういう問題は前向きに御検討いただけるようにというふうにお願いしたいと思います。  時間ですので、終わりにさせていただきます。
  4. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ありがとうございました。  次に、草刈参考人にお願いをします。草刈参考人
  5. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) WWFジャパン世界自然保護基金ジャパン自然保護室次長をしております草刈でございます。  最初に、今回の法案審議に当たりまして意見陳述の機会を与えていただきましたことに心より感謝申し上げます。  WWFは一九六一年に設立されました世界最大の民間の国際的な自然保護団体でございます。スイスに本部がございまして、世界に四百五十万人、約一万社、又は団体の会員の寄附によって支えられております。世界二十七か国に各国委員会がございまして、五か国に提携団体、二十五地域にプログラムオフィスがございます。WWFの使命は、世界生物多様性を守り、再生可能な自然資源の持続的な利用が確実に行われるようにし、環境汚染と浪費的な消費の削減を進めることにより地球環境の悪化を食い止め、人類が自然と調和して生きられる未来を築くことでございます。  今回提出されている外来種対策法、に関する法律は、生物多様性保全するためにその役割が大いに注目されているところでございます。是非とも実効性のある法案として成立させていただきたいと存じます。  では、特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律案及び議員立法として提出されている外来生物種規制法案について意見を述べさせていただきます。  まず、両案を総称して外来種対策法と呼ばせていただきます。  私からの意見は三つあります。  第一に、外来種輸入販売実態を把握することの必要性、第二に、水際規制について、第三に、環境委員会資料環境調査室資料の百七十三ページに掲載されております要望書について意見を述べます。  まず、現状把握についてですけれども、先日、八日に行われました環境委員会を終日傍聴しておりました。そのとき、岩佐議員が、まず外来種実態把握が必要であると指摘されました。環境省は、貿易統計農林水産省植物検疫統計で大まかに把握していると答えられました。これに対し、特定外来生物や未判定外来生物以外は全く野放しで輸入実態さえ把握されていないことは問題であると指摘されております。私も全くそのとおりだと感じております。御参考までに、資料一、生きた動物輸入量貿易統計の新しい資料を添付させていただきました。  また、貿易統計実態把握のみならず、ペットショップ熱帯魚屋インターネット販売実態把握も行う必要があります。特に、近年はインターネット販売による違法取引が横行しております。ワシントン条約対象種の爬虫類がインターネットオークション販売されて摘発されております。資料二の、希少クワガタ百匹輸入を図るというものを添付されておりますけれども、このようなことが今起こっているというふうなことでございます。  また、非合法な輸入昆虫類実態把握も進んでおります。例えば、昨年三月に神奈川県立生命の星・地球博物館で開催されました公開シンポジウムでは、インターネット上で調べる限り、アフリカや中南米、東南アジアから百種を超える種類が国内に不法に輸入されているという現状報告されました。また、日本野鳥の会の調査報告、「野鳥の飼養・販売輸入実態とその問題点」という報告には、二百種以上の外国産鳥類が販売されていると現状報告されております。  我が国に定着している外来生物実態把握は不完全ながらもされておりますが、肝心の海外からの輸入されている実態把握ができていないのはなぜでしょうか。平成十二年八月に野生生物保護対策検討移入種問題分科会を置いて、平成十四年八月に「移入種外来種)への対応方針について」をまとめました。資料四にその対応方針を添付させていただきました。  残念ながら、この移入種検討会は非公開で進められました。平成十二年八月から取組を始めて、今年平成十六年に法案が作られたわけですから、約三年半の歳月を掛けているわけです。その間、実態把握ができていないのは問題であると思っております。  先日の環境委員会では、環境省は今後、外来種対策を進めていく上で基礎情報基礎的情報の整備が必要であることは十分考えており、生物全般に係る輸入実態を把握するための効果的な手法について関係省庁とも検討してまいりたいと答弁されております。外来種対策法が施行される平成十七年までにペットショップ熱帯魚屋インターネット販売ども含めて実態把握するよう要求したいと思います。資料三に「サソリ幼虫五十匹逃げる」という新聞記事を添付させていただきました。人の生命、身体への影響があるものが、そういった生きたものを飼育している人がいるという現状があります。  水際規制について、昨日の、答弁では、特定外来生物について被害のおそれがある外来生物を順次指定し、未判定外来生物については特定外来生物生態的特性が比較的似ている生物の中から、生態系被害を及ぼす疑いのある生物一定グループごとに選定するとし、生態系等に係る影響疑いのある外来生物については迅速に輸入規制が可能であると答弁されました。しかしながら、先ほど申しましたとおり、現状把握ができない状態で本当に可能なのでしょうか。  例えば、未記載種対応について触れられておりません。南米のアマゾンは野生生物の宝庫と言われております。そのアマゾン川から様々な魚類が輸入され、販売されております。例えば、アマゾン川で取れた未記載種の魚を輸入して販売した人がいた場合、当然未判定外来生物種に指定されることもないと思われます。このような未記載種は自由に輸入できることになるのではないでしょうか。特定外来生物種リストと未判定外来生物リスト及び規制なしのリスト、このリストに掲載されていない種を輸入する場合、全く規制がなく自由に日本に持ち込まれることになります。  水際規制は、空港、港湾等で本格的に行われる必要があります。アメリカやオーストラリア、ニュージーランドでは、検疫犬というゼッケンを背負ったビーグル犬がおります。生物多様性保全のために、また農林畜産業に有害な生物や病気が入り込まないように検疫犬の制度を実施しております。検疫犬は、有害な生物の侵入を止めるだけでなく、ワシントン条約による絶滅のおそれのある野生動植物取引を阻止するためにも有効に働けると考えております。  昨年、私は成田や横浜の検疫現場を視察しました。我が国植物検疫動物検疫現場ではビーグル犬導入が必要という要求をしているが、その要求が伝わらないというふうなことも聞いております。今回の外来種対策法を契機に、是非とも検疫犬導入を進めてもらいたいと思います。  今回の環境省法案は、主務官庁環境省農林水産省であります。ニュージーランドのMAF、農林省ではこのような水際規制普及啓発用のキットを作成して、検疫現場や市民への普及啓発に力を入れられております。ニュージーランドでは、二十四時間外来生物一一〇番というのがありまして、フリーダイヤルで対応できる仕組みがあります。このような仕組み是非日本農林水産省でも参考にしていただきたいと思います。この資料は一部しかないので回覧させていただきます。  これから環境調査室資料参考資料百七十三ページに掲載されております要望書について意見を述べます。  WWFジャパンは、日本自然保護協会日本野鳥の会及び地球生物会議とともに、三月九日付けで特定外来生物による生態系等に係る被害防止に関する法律に対する要望環境大臣へ提出しております。  科学委員会の設置について、特定外来生物評価判定には専門的な知識を持った学識経験者から意見を聴くとして、先日の環境省答弁では、生物学生態学農学に関する学識経験者を考えていると答えられました。  中央環境審議会野生生物部会委員日本生態学会会長鷲谷いづみ東大教授は、論文で、侵略的な外来種優先順位の決定のためには、生態系への影響の甚大さ及び投資、根絶、抑制の可能性生態学的な視点と経済的な視点の両方から考えるべきであると述べられております。外来種対策先進国であるニュージーランドでも、リスクや費用対効果という側面から判断するようになっております。したがいまして、生物学生態学農学に関する学識経験者に加え、経済的な視点から意見を言うことも必要で、我が国固有生態生物相を守るために、経済的な側面から判断するためにも、関係する学識経験者意見を聴くことが必要と考えます。  私どもは、この科学的な評価判定について科学委員会の設置を法的に担保するよう求めております。先日の環境省からの答弁で、外来種に関する科学評価委員会の設置することについて検討するというふうなことも述べられておりますので、是非とも世界に恥じない科学的な判定ができる体制をお願いしたいと思います。  また、諸外国の知見も踏まえた上で専門家意見を聴いて個別に指定するという答弁がございました。具体的に諸外国の知見とは何を指すのか明らかにしていただきたいと思います。既に外来生物種の知見を収集しているIUCN、国際自然保護連合のSSC、種の保存委員会の中にISSG、侵入種スペシャリストグループがあります。このような専門家グループの知見のことを言っているのか、明らかにしていただきたいと思います。  防除計画の仕組みについて法案第十一条に書いておりますけれども、先日の環境省答弁では、国が関係都道府県の意見を聴いて防除の内容を公示すること、地域の実情を反映させて国と都道府県が連携をして防除を行う、これが基本的な仕組みという答弁がありました。  資料四の移入種への対応方針をごらんいただきたいと思います。この対応方針の五、導入されたものの管理、恐らく三十一ページ程度に書いてあると思うんですけれども、既に平成十四年の時点で外来生物の管理計画に記述すべきことが明記されております。なぜこの法案の中にこの点について詳しく記述されていなかったのかが問題点として挙げられます。  この十四年の対応方針については、生物多様性への影響影響の種類、明確な管理目標として、影響減少の目標及び捕獲数などの目標を設定した管理計画の策定、目標達成状況に関するモニタリング、モニタリング結果に応じる計画を見直せる仕組み、更には計画の策定、計画実施に関し合意形成を図る必要性等々を具体的に明記されております。  私どもは、国がこのような具体的な管理計画を策定し、その方針に基づいて都道府県による防除計画について都道府県知事が地域の現状に合わせて特定外来生物種を特定し、防除する計画を定めることができるようにすべきと考えております。我が国は南北に長く、様々の植生帯にまたがる地理的な特性から、外来生物の引き起こす問題は都道府県ごとに事情が大きく異なると考えております。  平成十一年に改正された鳥獣保護法では、科学的、計画的な保護管理制度として特定鳥獣保護管理計画が導入され、都道府県が任意に保護管理計画を立てることができますし、合意形成の仕組みも担保されております。配付資料五に鳥獣保護法の抜粋を入れさせております。特定鳥獣について種別に技術マニュアルも作成されております。今回の外来種対策法も都道府県が科学的、計画的に防除計画制度が立てられる仕組みが必要と考えております。  また、平成十四年十二月に施行されました自然再生法においても、その事業の実施者が自然再生事業実施計画を立てることができ、協議会の形成や合意形成の仕組みが明記されております。今回の外来種対策法ではトップダウンで進める計画になっておりますが、ここら辺は違和感を感じるところでございます。  鳥獣保護法の適用除外について、私どもは鳥獣保護法の適用除外を行うための条件を明記すべきだと考えております。現在、多くの都道府県が、有害鳥獣駆除の捕獲許可権限が市町村に下りておりますし、現場の監視制度もなく、密猟や違法捕獲行為が多発しており、その捕獲が防除なのか犯罪なのか判別しようがない現状があります。こうした現状に加え、特定外来生物の防除の名の下に、標識のないわなが至るところに仕掛けられた場合、錯誤捕獲、混獲、意図的な違法捕獲が入り交じり、現在の野生鳥獣の保護に大きな支障をもたらすものと考えております。  先ほど指摘しました移入種への対応方針の五の導入されたものの管理を見ていただければと思います。  平成十二年に作成された第九次鳥獣保護事業計画においては、鳥獣の捕獲等に係る許可基準の設定に移入種の駆除が位置付けられました。有害鳥獣駆除は、被害防止対策によって被害防止できないと認められるときに行われることに対し、移入鳥獣の駆除は、自然生態系の攪乱、農林水産業に被害を生じさせ又はそのおそれがある場合に根絶又は抑制の目的を達成するために実施できると明記されております。  先ほど防除計画と合意形成について指摘したとおり、都道府県が科学的、計画的な防除管理計画制度が立てられる仕組みが作られないのであれば、むしろ鳥獣保護法を適用除外を削除すべきと考えます。  重要管理地域についてですが、昨日、環境省答弁では、重要管理地域の考え方として、生態系として特に貴重な地域について、自然公園、鳥獣保護区など、我々が既に持っている、運用している制度、地域を生かして、それを更に規制強化し、充実することで対応したいと考えておりますと発言されました。  私どもは、国内外来生物種を含むすべての外来生物の持込みを禁止する重要管理地域の設置制度を設けるべきと考えております。我が国生物多様性保全上重要な地域、例えば固有種、希少種の多く生息する島嶼や自然保護区について、国内外来生物種を含むすべての外来生物を持込禁止にする重要管理地域を設ける制度が必要だと考えております。環境調査室資料のIUCN、外来生物種によるガイドラインの百五十二、百五十八ページに、生物多様性保全上重要な地域に対しては優先して対処すべきと明記されております。生物多様性保全上重要な地域は重要管理地域とし、重要管理地域においては重要管理地域外来生物管理計画を策定し、外来生物の持込み等を規制するなどすることができるようにすべきと考えます。  なお、重要管理地域の駆除対策の具体的な事例については、森林総合研究所の山田参考人が奄美大島の例を報告されるとのことなので、この程度にしておきます。  最後になりますが、我が国生物多様性条約を批准しておりますが、条約内容を遂行できる国内法の整備はされておりません。我が国我が国生物多様性保全する法律として鳥獣保護法と種の保存法が、二つございますが、鳥獣保護法は鳥類と哺乳類しか対象にしておりません。一部の海生哺乳類は適用除外となっております。また、先ほど岩槻参考人が指摘されました十年前の種の保存法については、絶滅のおそれのある種がわずか二%のみにおいて回復計画が立てられているだけとなっております。  近年、法案の目的条項に生物多様性の確保が明記されるようになりましたが、我が国生物多様性全般を包括的に保全できる法制度はありません。WWFジャパンを始め全国の四十以上の団体が加盟している野生生物保護法制定を目指す全国ネットワークでは、平成十四年より野生生物保護基本法の制定に取り組み、市民案として野生生物保護基本法案をまとめているところでございます。外来種対策法は、我が国野生生物の保護に関する施策を総合的に推進する基本方針の上に立って取り組むべきと考えます。野生生物保護基本法案についても別途の機会がございましたら検討していただければと思います。  私の時間を若干オーバーしてしまいましたが、ここで私の意見を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  6. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ありがとうございました。  次に、藏内参考人にお願いをします。藏内参考人
  7. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) おはようございます。  私は、社団法人日本動物保護管理協会会長を務めております藏内勇夫でございます。今回は、大変権威と名誉のある参議院の環境委員会参考人意見を述べさせていただく機会をいただいたことを心から光栄に存じ、感謝を申し上げる次第でございます。ただ、私は浅学の身でございまして、十分な意見を述べることができない点もあろうかと思いますが、その点につきましてはお許しを願いたいと思います。  それでは、最初に、私ども日本物保護管理協会について簡単に説明をさせていただきたいと思います。  この法人は、動物の虐待を防止し、動物の適正な取扱いと動物の保護に努め、あわせて動物の正しい飼育管理の知識の普及を図り、広く国民の動物愛護の精神を高揚することを目的といたしております。設立は昭和五十七年四月でございます。所管官庁は環境省であります。会員は、日本獣医師会及び四十七都道府県の地方獣医師会、政令指定都市等の八市の獣医師会、それから動物愛護団体でございます。  主な事業内容といたしましては、動物の適正飼養に関することを行っております。犬のしつけのテキストでありますとか、猫の飼い方のテキスト、あるいはNHKビデオ「犬は大事なパートナー」等を作成し、貸出し等を行っております。それから、動物の保護管理に関する調査と研究も重ねて行っております。  また、九月に行われます動物愛護週間におきまして、作文コンクール、絵画コンクール等を行っていまして、特に絵画の部門では全国から小中学校生約五千部ぐらいの参加がございます。これの表彰も含めてこの期間にこういった行事を行っております。  そして、災害活動、例えば阪神大震災、三宅島、有珠山の噴火等でいろんな団体とともに支援活動、動物の支援活動を行ってまいりました。また、今日的課題といたしまして、集合住宅における動物飼育の問題、あるいはペット動物の購入問題等に積極的に取組をいたしております。  そして、最近力を入れておりますのが、いわゆる飼養者の最終責任をきちっとするための動物の個体識別を確立するためのマイクロチップの普及推進、これを進めております。これは、財団法人日本動物愛護協会及び日本動物福祉協会、日本愛玩動物協会、そして私どもの全国動物愛護四団体が全国動物愛護推進協議会を組織をいたしまして、動物ID普及推進会議、通称AIPOと我々申しています、アニマル・アイデンティティー・プロモート・オーガニゼーションでございますが、この協議会の中でこのマイクロチップの普及に努めておるところであります。  このように、私どもは基本的に動物の愛護及び管理に関する法律の趣旨徹底を図るために、この法律の基本原則でございます、動物というのは物ではない、命あるものであるということ、それから、人と動物の共生に十二分に配慮しなきゃならぬということを踏まえ、動物愛護思想の普及啓発動物の適正飼養管理の徹底を図ってまいりたいと考えております。  そういう活動を行っておる日本物保護管理協会といたしまして、今回提案をされております政府案に賛成をする立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、外来生物問題全般に対する概観、つまり問題意識を申し上げたいと思います。  ミドリガメに象徴されるように、外来生物が大量輸入、大量消費をされているのが現状であります。自然な中で在来種を駆逐するだけでなく、ペットを飼う場合は最後まで責任を取るという当たり前のことが、余りにも安易に取引をされていることからできなくなっているのが我が国現状でございます。エキゾチックアニマルという言葉に象徴されるように、多種多様な外国産の生物輸入されてペットとして利用されております。しかし、その大半が野外に遺棄され、生き物を物として扱うことが命を大切にしない風潮を作り、子供たちにも大変悪い影響を与えております。  このような問題意識を基に、動物愛護の立場から五点について意見を述べたいと思います。  まず第一点目。わざわざ外国から輸入してまでどのような影響があるのか分からないような野生動物をペットとして飼育すべきではないと、このように考えます。犬や猫などはペットとして品種改良されてきた動物であります。しかし、野生動物には未知の部分も多く、生態的な特性が不明であるにもかかわらず安易にペットとして導入されています。人の管理から逃げ出した場合に、自然の中で生態系や農林水産業などの被害を及ぼすおそれがあるような生物や人間に危害を及ぼす生物輸入や飼育に、飼養に一定規制を行い、きちんと管理できる動物園など以外では飼養すべきではないと思います。また、影響の定かでない生物についても事前にその評価を行うことが肝要であると考えます。その意味で、問題のある生物特定外来生物として規制するとともに、特定外来生物に当たる疑いのある外来生物を未判定外来生物として輸入に先立っての判定を行う仕組みを有する政府案は大変高く評価できるものであると考えます。  次に、この法律生物多様性国家戦略の一環として法制化されるものであり、動物愛護管理法と大きなかかわりがございます。元来、動物愛護行政とは地球環境の中で動物と人間が接触するところには影のように付きまとうものでございます。動物愛護を所管する環境省として、命ある動物環境構成要素の一つとして取り扱う一貫した方針が不可欠ではないでしょうか。外来生物問題の大部分は、動物取扱業者の手により入手、販売された後、ペットとして飼養され、かつ不適切な飼養管理の結果としての遺棄、逸走により生じているのが現状でございます。  そこで、二点目といたしまして、外来生物規制に当たっては、所有者責任に基づく終生飼養の原則を基本に据え、このため所有者責任規定の整備強化と動物の愛護及び管理に関する法律との整合性に十分に配慮すべきだと思います。特に、飼養者の責任を明確にする観点から、マイクロチップの導入を進めるべきであると思います。外来種を許可を受けて輸入又は飼養する者については、所有者責任の遵守を徹底させ、この法律効果を確実なものとしなければなりません。そこで、国際標準ともされるマイクロチップによる個体識別措置の実施を義務付けるとともに、当該動物の飼養状況を把握するための登録管理システム、これを構築する必要があると思います。  なお、動物飼養者の所有者責任に基づく終生飼養の基本原則は、既に動物愛護及び管理に関する法律において位置付けられております。したがって、外来種対策の整備と並行して動物の愛護及び管理に関する法律を早急に見直し、外来種に限らず、飼育動物に対する個体識別措置の義務化と動物取扱業に対する許可、登録制の導入を検討する必要があると思います。  このように、外来生物問題の中には愛護動物の適正な飼養管理を目的とする動物愛護管理法の改正により十二分に対応できるものが少なくありません。また、そのことは命を大切にする法の精神との一貫性と法体系を簡素化を図ると、こういったことでも非常に効果的であると考えます。よって、同法案動物愛護管理法との一貫性と整合性を図り、お互いのこの二つの法律が補完性を持つように十分考慮されるよう要望いたしたいと思います。  次に、三点目でございます。  外来生物対策実効性を確保するためには、日本獣医師会を始め動物保護管理に関する公益団体の果たす役割は非常に大きいものがございます。これら団体の活動を通じ、外来生物対策の国民に対する普及啓発、調査研究等の新たな科学知見の収集に努めるべきであると考えます。特に、外来種対策の学校教育現場を含む国民に対する普及啓発、新知見の調査研究については、動物医療を担う公益団体である日本獣医師会を始め、私たち動物管理に関する公益団体の果たす役割は大きいものがあり、外来種対策実効性を確保するためにも、関係する公益団体の活力を活用した対策とこのために必要な十分な予算措置を講じられるようにお願いをしたいと思います。  次に、四点目でありますが、外来種対策に関する権限を行使する国の職員、特定外来生物被害防止取締官についてでありますが、動物医療及び動物の生理、生態についての専門家である獣医師資格の持った者の積極的な配置を行うべきだと思います。  そして最後、五点目、防除についてであります。  防除に際しても、殺処分は最小限としていただきたい。やむを得ず殺処分する場合でも、動物の安楽死に関する国際的なガイドラインに沿って行っていただきたいと思います。防除により捕獲した動物の取扱いについては、殺処分せずにきちんと飼養できる人物、団体が引き取って管理していただくのがこれは理想的でありますが、現実にはそうまいりません。やむを得ず殺処分せざるを得ない場合には、動物愛護の観点から、できるだけ動物に苦痛を与えない、恐怖を与えないような方法を取るべきであると思います。  今日はせっかくの機会をいただきましたので、お許しをいただきまして、以上、五点の意見を述べましたが、私たち獣医師がボランティアで行っております野生動物ヤマネコ保護活動について、少し時間がありますので、お話をさせていただきたいと思います。  この特定外来生物に関する法律案は、外来生物とは、海外から我が国導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる生物と定義をされてございます。しかし、国内においても、限られた地域あるいは島などに人間の手によって持ち込まれた生物がその地域の生態系に大きな影響を及ぼすことがございます。  九州の最北端の島、対馬と沖縄本島から遠く南西に浮かぶ西表、この北と南に位置する二つの島にそれぞれツシマヤマネコとイリオモテヤマネコが生息しております。日本にいるヤマネコは在来種としてこの二種だけでございますが、太古の昔、大陸と日本列島が地続きであったことを証明する貴重な生物で、どちらも天然記念物であり、また国内希少野生動植物に指定をされております。  このヤマネコが、環境悪化による獲物、主に野ネズミ等でありますが、の激変や、家猫、人間が飼う家猫からの病気が感染をする、交通事故などによってかなり数が減ってきております。つまり、すべてこれらは人間の活動に起因する原因で、現在生息数百頭を切ると推定され、種の保存法及び絶滅危惧動物種に指定をされております。数年前、捕獲されたツシマヤマネコからFIV、いわゆるネコエイズという、ネコ後天性免疫不全症と言いますが、という治療ができない、こういった病気がヤマネコに感染、いわゆる対馬の家猫から感染猫が発見をされ、それがツシマヤマネコに感染をしておったという事実が判明をいたしておりました。この病気がヤマネコの間で蔓延すれば、瞬く間に滅亡へと進むと言われております。  そこで、私ども九州地区の獣医師が立ち上がり、島に放置されている野良猫を外来種と位置付け、ヤマネコ保護活動に乗り出したわけであります。具体的には、獣医師がボランティアで島へ渡り、診療所をそれぞれに設置をし、家猫に対する避妊、去勢手術を行い、ワクチン接種や感染症の抗原・抗体検査、寄生虫駆除などを行い、処置した後に個体識別ができるようマイクロチップの挿入、これら全部を無料で行っております。今後、野良猫へすそ野を広げていかなければなりませんが、これからはやはり行政、地域の理解、それから持続的な資金がなければなかなか難しいと思っております。  申すまでもなく、自然界の生態系は何千、何万年という時間を掛け築き上げられたものであり、人間の手によって生態系に急激な変化が加わると、思い掛けない連鎖反応、人間に対するしっぺ返しが起こると思います。生態系の変化は、気付いたときにはもう手後れであるということが多く、そうなる前に対処すべきだと思います。  野生の動植物生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として人間の豊かな生活に欠かすことのできないものであります。私たちは、動物にかかわるエキスパートとして、野生動物を保護することにより、動物愛護思想を普及させるとともに、多様な生態系を維持するために今後とも努力をしてまいりたいと考えております。  以上申し上げましたが、いずれにいたしましても、早期に対策を講じていくことが、結果として防除より、やむを得ずその命を奪われる動物の数を最小限にすることにつながると思います。できるだけ早くこの本法案、政府案を成立させ、具体的な取組を開始することが何よりも重要だと思います。  以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  8. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ありがとうございました。  次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人
  9. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 私は独立行政法人森林総合研究所の山田と申します。  今日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。私も、一層の充実した法律ができ上がることを願いまして意見を申し上げたいと思います。  私の専門は、野生動物の保護管理研究を行っております。哺乳類の、特に哺乳類の外来種問題としまして、九〇年当初から奄美大島のマングース問題とかかわっておりまして、その影響とか対策に関して研究を進めてきております。また、IUCNのISSG、外来種の専門研究者としてグループに参加しております。  我が国外来種対策は、先進国であります例えばニュージーランドと比べましても、その後れは二、三十年以上あると言われております。生物多様性条約批准国としまして、我が国もようやくこのような外来種対策の法制度を作り上げるという本格的な取組姿勢を示したことに関しまして、大変喜ばしいことだと思っております。  ここでは、お手元に配付しました資料を使いながら、現在進行中の駆除事業を通じまして、外来種管理の当面抱えている問題、管理に関しての問題、あるいは要望する事項などについて述べたいと思います。  最初のページの次の二ページ目であります。水際規制、予防的措置を行って国内に入らないように予防措置を行ったものですね。残念ながら侵入し、また定着してしまった外来種に対して取り組むべき課題というのは、生息地からの排除が原則であります。IUCNの外来種対策ガイドライン、二〇〇〇年に作られたものですが、一つの方法としては根絶というのが最良の方法と言われております。これは外来種を完全に除去することです。それが非常に困難な場合、個体数をある程度被害水準以下に長期的に削減するという方法として制御という方法があります。この制御の一つの方法として、地理的に隔離させてしまうという封じ込めという方法があります。  これらの方法についての条件ですが、一つとしては、生態学的に実施可能かどうかということです。もう一つが、完了までの予算的措置、それから政策的支援が十分得られるかどうかということです。この二点が条件として必要です。  対策を立てる場合の目標としまして、生物多様性の減少を防止するということ、それから在来種や生態系の回復を図るということが大きな目標であります。したがって、いかに外来種をたくさん捕獲して排除しても、この目標を達成しない限り外来種対策としてはならないということを認識していただきたいと思います。  次のページであります。  現在、我が国でこれまでに取り組まれてきた外来種の事例を表にしております。哺乳類、魚類、昆虫という種類が外来種として対策が立てられてきました。特に哺乳類では、アライグマ、ヌートリア、タイワンリス、ミンク、ハクビシン、イノブタという種類が九九年から鳥獣保護法の狩猟獣として指定されておりまして、狩猟の対象となっております。  この中で、哺乳類の中で積極的に外来種対策として根絶を目指した事業としては、カイウサギ、それからノヤギというものがあります。カイウサギに関してはほぼ鎮圧しましたし、ノヤギに、小笠原のノヤギですが、これも成功事例があります。現在取り組まれているマングースでありますが、奄美大島と沖縄本島で取り組まれております。生息数はかなり減少させることはできましたんですが、分布の拡大は抑えられていないという状況があります。  それから昆虫では、ウリミバエ、ミカンコミバエなど成功事例があります。  このような成功事例があるということに自信を持ちながら、これからいろいろな対策を立てていく上の参考にしていくべきだというふうに考えております。  次のページをお願いします。  では、現在取り組まれているマングースの問題について具体的に考えていってみたいと、御紹介したいと思います。  奄美大島というのは、中国大陸と付いたり離れたりしながら特別な、固有で多様な動物たちをはぐくんできております。しかし、二十五年ほど前にハブ対策導入されたマングースが、本当はハブを駆除すべきだったんですが、しないで、在来種に多大な影響を与えてきております。まだ絶滅を起こしている種はおりませんが、様々な固有種、在来種がえさになっているという状況が分かると思います。特にアマミノクロウサギは、二〇〇二年、最近の調査では、かつてのマングースが入る以前に比べると二〇%、三〇%個体数が減り、分布も減少してきているということが分かります。このまま放置しますと、何年か先には絶滅を起こすということが考えられます。  次のページをお願いします。  マングースというものがそもそもどういう動物かということなんですけれども、これはIUCNの侵略的外来種ワースト百の一種として登録されている種であります。今から百年ほど前に西インド諸島、ジャマイカとかそういうところに導入されて、様々な在来種を絶滅に追いやってきているということであります。そういう動物が奄美大島に一九七九年ごろ、今から二十年ほど前に導入されたということであります。  次のページをお願いします。  七九年ぐらいに三十頭のマングースが導入されたわけですが、積極的な駆除が行われてきたのが九三年ぐらいであります。環境省による予備調査が行われまして、二〇〇〇年から本格的な駆除が行われております。これまでに約二十年経過しているわけですけれども外来種対策にとって重要な問題は、やはり早期探知、迅速対応ということが必要でありまして、その意味で、十数年あるいは二十年という経過の中で本格的に取り組まれてきたということは、時期がやはり少し遅くなったというふうに考えられます。  その原因としまして、次のページをお願いしたいと思います。  二〇〇〇年から環境省による事業が行われているんですけれども、そもそもこの事業自体が鳥獣保護法の有害駆除を予算のベースにしておりましたので、予算規模がそもそも小さいということです。捕獲従事者への人件費が中心になっておりまして、根絶を目指した駆除技術開発あるいは体制作りということに予算がほとんど回っていないという問題があります。それから、駆除が進みますと生息数がどんどん減ってくるわけですけれども、それに伴って捕獲は困難になります。この困難な状況をどう打開して生息数をゼロに持ち込むかというような大きな問題に今差し掛かっております。  次のページをお願いします。四と書いたページです。  それから、世論形成、合意形成が必要だということです。その一つは、土地所有者の駆除立入り拒否という問題があります。この図六の写真がありますけれども、林道にチェーンが張ってあったりとか、あるいは大きなブロック、コンクリートブロックが林道の入口に置いてあるということで、駆除する従事者が作業に入れないという事態が起きております。これに伴って、この駆除ができない地域はマングースの供給源になっているわけです。このような地域では希少種への被害というものが認められております。これはアマミノクロウサギの繁殖巣穴にマングースが入り込んで巣穴を襲っているという写真が確認されております。  次のページをお願いします。  では、現在どのような体制で事業が行われているかというのを示した図がこれです。現在、現場のレンジャーが一人、それから市町村役場三名、それから雇用従事者三名、駆除従事者、これはボランティアの方ですが、四十名ほどで進めているということで、今後取るべき戦略としては、低密度の残存個体をいかに分布を拡大しながらゼロに持ち込むかという大きな問題を抱えたまま、しかしこの弱小の体制で取り組まなければならないという、こういう問題に差し掛かっております。  次のページをお願いします。  冒頭で申しましたように、奄美大島という、狭い島でありますけれども、しかし固有種が多くて非常に多様性に富む動物が、あるいは自然が多い島でありますが、このような重要地域ではマングース以外でも様々な外来種が在来種に影響を与えていることが確認されております。この写真は、ノイヌであったり、あるいは猫であったり、ヤギが確認されます。その結果、クロウサギが食べられたり、あるいはトゲネズミという小型のネズミが食べられたりしております。それから、奄美大島ではありませんが、近隣の島ではニホンイタチが本土から持ち込まれておりまして、そのイタチがアカヒゲなどを襲うという問題が起きております。  次のページをお願いします。  今後、このようなマングース問題、それからその他の外来種問題をいかに克服するかという課題が残っております。この問題を克服するには長期的な予算措置と体制が、確保が必要だということを言いたいと思います。その対策が立てられない限り、このような貴重な島の生物多様性は確実に失われていくということが言えます。  最後になりますが、具体的な法案の中に対して指摘を何項目かさせていただこうと思います。  まず一つは、先ほど来言っております予算措置を十分御検討いただきたいということ。それから、防除体制を拡充していただきたい。それから、捕獲効率低下段階の対応が重要になるということです。有害駆除で個体数を減らすという問題だけではなくて、生息数をゼロにするという課題を、目標を考えた場合、いかにゼロに近づけていくかというときに、コストが掛かるか、あるいは労力が掛かるかということを念頭に置く対策を考えておくべきだということです。  それから、鳥獣保護法の規定を適用しない特例に関してですが、奄美大島でも、従事者を数を増やすということのために、免許制から講習制というふうに変えまして多数の方が参加していただく機会を作りました。講習を受けた方はわなを借りて駆除に参加できると。したがって、今回の法案でも、少なくともわな管理あるいは捕獲個体の管理、錯誤捕獲などを考えますと、少なくとも講習というような条件あるいはわな管理条件というものは最低限必要だというふうに考えます。  それから、私有地の立入りが自由に行えるような対策が必要だということです。それから、重要管理地域、それから国内移動種の問題については先ほど申し上げました。  以上のように、適切な外来種対策法が制定されまして、様々な国内にあります必要とされている駆除対策が適切に実施されることを願っております。今回の法律成立に伴って一つでも成功事例が増えることを願っておりまして、そのことが水際防止についても鋭意効果を上げるというふうに考えております。  以上です。
  10. 長谷川清

    委員長長谷川清君) ありがとうございました。  以上で参考人の皆さんからの意見聴取は終わります。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、各参考人の皆さんにお願いを申し上げます。  御答弁の際は、委員長の指名を受けてから御発言をいただくようにお願いいたします。また、時間が限られておりますので、できるだけ簡潔におまとめ願います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 どうも今日は四人の参考人の方、大変早朝からお出ましをいただきまして、先ほど来それぞれの専門のお立場から貴重な御意見をお聞かせをいただきまして、ありがとうございました。  私、自民党の小泉と申しますが、限られた時間でありますけれども、質問をさせていただきたいと思います。なお、四人の皆さんにそれぞれに質問ができないかもしれませんけれども、あらかじめお断りをしておきたいと思います。  まず最初に、この法案の前提というのは、生物の多様性というものの重要性、それをいかに見守っていくのかということがあると思います。国会の場で生物多様性の重要さというものがいろいろ最近議論をされるようになってきたわけでありますけれども、私は本当に大切なことだと思いますし、環境行政というものを進めていただく上での環境省の役割というものが本当に重要になってきたなということもつくづく思うわけであります。  この多様性ということにかかわってお二人の参考人に御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、まず岩槻参考人の方から事前に提出をいただきました著作を拝見をいたしまして、先生は、個体より高いレベルの生を生きる実体を生命系というふうに新しい概念を提唱をされておられる。しかし、その生命系という生については、直接痛みを神経細胞で感じることがないせいか、人は全くのんきでいるということを書いていらっしゃるわけであります。大変私はこれは示唆に富んだ言葉だなというふうに考えました。いかにこういうような認識を国民の中で高めていくことが大切かということも私も考えたわけでありますけれども。  同じく山田参考人も、この事前にいただいた資料の中で、ちょっと長くなりますけれども我が国では、希少種の保全外来種駆除といった特定の種や種群の管理ないしは駆除を行う必要性は行政においても広く認識され、実施、実践もされていると。しかし、生態系プロセスや生物相互作用を基にした生物群集の維持機構に注目した管理の重要性は必ずしも十分に認識されていないということを書いていらっしゃるわけであります。  私は、基本的な認識というのはここにお二人が合致をしていらっしゃるんじゃないかと思いますし、こういう、岩槻先生が主張される生命系というような概念、あるいは山田先生がおっしゃっておられる生態系管理という考え方、こういうことをやっぱり国民の共通的な認識としていかに高めていくかということが、一番私は大切な課題だと思うわけでありますけれども、その辺にかかわって、お二人の参考人は、今後どういうような対策が、人材の育成も含めてでありますけれども、どういうような対策がこれから必要であるというふうにお考えなのか、簡単で結構ですのでお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 一言で御返事申し上げるのが難しい、非常に大きい問題だと思うんですけれども、私、環境省にもしばしば申し上げているんですけれども、こういう問題、生物多様性の問題、生物多様性の問題だけじゃなくて環境の問題ということについては、どんなに国がいい政策を取られても、科学者がどんないい提案をしても、それでその環境が良くなるわけではなくて、やはり地球上に今生きているすべての人々がその問題に関心を持たないと環境の問題というのは改善されるはずがないことなので、だからその意味では、環境政策として環境教育というのは非常に重要だということを常々申し上げていることなんですけれども、それはお役所がやるだけではなくて、実はいろんなところでやらないといけない問題で、私ども科学者立場で、いかに生物多様性、我々は生物多様性専門家ですけれども生物多様性に関する問題をどういうふうに理解していただくかというのをいろんな形で表現する必要があるというふうには思っているんですけれども。  私、前の期には日本学術会議にも関係していましたけれども、そういうところでは科学者とジャーナリストがもっと密着して、今の科学知識をもっと国民各層に広げるような協力をすべきであるというような提案をして、そういうシンポジウムをやらせていただいたりしましたし、それから最近も、理科教育をもっと広げるような輪を作ろうというようなことに多少関係したりしていますけれども、そういうことを通じて、あらゆる機会を通じてそういうことをやらないといけないと思うんですけれども、それは何か施策があったら急にできるというものではなくて、各層の人間がそういう意識をもっともっと高めるということ以外にないと思うんですよね。  その一環として、例えば先ほど意見陳述申し上げましたように、外来種の問題も、国が外来種というのは非常に危ない問題だからしっかり対策を立てましょうという姿勢を出していただくということが、やはりこういうことを認知する上で非常に重要な問題だと思いますし、それでなぜ、本当は自分は外国から珍しい動物を連れてきてペットにして飼っておきたいと、もう要らなくなったから捨てたいと思ってもいいじゃないかというような人に、なぜそれがいけないのかということを分かってもらうためには、やはり例えば生命系の生というのが何かというようなことを考えていただくという、そういう機会をまた提供するという、そういう在り方しかないんじゃないかというふうに思っていますけれども、それは、国は国として、それから科学者科学者として、ここは関係ないかもしれませんけれども、ジャーナリストはジャーナリストとしてというふうに、いろんな立場でそういう問題を広く認知していただくということだというふうに思っておりますけれども
  13. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 今後の対策でありますが、まず、やはり研究というのが必要だろうというふうに思います。それから、その上で普及啓発、一般の人たちにも御理解いただいていくことが必要だと思います。  研究に関してまず思いますのは、私自身もそうですが、多くの研究者、生物学研究者は、自分の研究対象の、例えば一種類の動物に関する研究を行う、その動物環境との関係を研究するというのが従来の、日本の従来の研究者の進め方であったと思います。外来種問題がかかわってきますと、一種と環境だけの問題ではなくて、そこに別の種類が入り込んで、二種類、三種類の問題が発生してくるわけです。群集生態学といいましょうか、先ほどおっしゃっていただきました生態系管理というようなアプローチが必要になってくるということであります。  ただ、そうした場合には、非常に、一人個人で研究ができるというわけではなくて、やはり専門家専門家がグループを組んで研究していく必要があるというふうに思います。今後、やはりそういう広い視点での研究ができるようなそういう基盤、人材もそうですし、予算的な問題もありますし、グローバルといいますか、やや大きな、ビッグなサイエンスにしていかなければいけないというのが一つ重要かなと思います。  その上で、一般の方々にも、例えばマングースを一種取り除くことによって、ほかにも外来種がすんでいるんです。例えばクマネズミという動物がすんでいたり、これは世界じゅうを制覇してしまったネズミなんですけれども、元々は東南アジアにいたものですが、船に乗って世界じゅうの大陸に進出して成功したネズミなんですけれども、マングースを取り除くことによってクマネズミが奄美大島でもどうも増えているんじゃないかなという問題があります。そのクマネズミが樹上に、登攀能力がありまして、樹上に上がって鳥の巣に入って卵を食べるとかひなを食べるとか、そういう問題が起きる可能性があると。これはモーリシャスでも危惧されておりまして、マングース一種だけを取り除くんではなくて、総合的に外来種対策生態系の変化を見ながら対策を立てていく必要があるということが言われています。  我々、現在、そういう観点で共同研究も進めつつありまして、海外的にもやはり、例えばヤギを取り除くと、何でしょうね、外来雑草が増えるとか、そういうような幾つかの事例がありまして、今後はそういう観点での研究を進めて、新しい知見を得ながら対策を新たに立てていくと。そして、一般の人たちにもそれを理解していただいて、やはり総合的な、例えば地域なり島なりの生態系をいかに管理していくか、回復していくかという視点を持っていくということが大事だと思っております。
  14. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 ありがとうございました。  私も、複数の外来種が生息しているところで特定の外来種に対して働き掛けをすると予想もしなかった問題が起こるというような事例がありまして、本当にこの問題は複雑だなというふうに思ったわけですけれども、いずれにしても本来の固有の多様性というものを守っていくことの重要性、固有の多様性というものが持っておるものの価値というものをやっぱりできるだけ低年齢の段階からきちっと定着をさせていくようなシステムが、教育上のシステムが私は必要じゃないかなというようなことを常々思っておるものですから、こういう質問をさせていただいたわけであります。  あるNGOさんからいただいた見解という文書の中に、外来種が入ってきたその生態系において、結局この方々の主張としては、それらを取り除くというよりも、むしろそういう外来種たちが時間を経過する中で新しい生態系のバランスというものを形成をしていくまで待つしかないんではないかと。恐らく、やがては安定をした形になるんだろうということが想定をされてこういうことになるんでしょうけれども、私は若干こういう考え方については疑問を持つわけでありますけれども、それこそ岩槻参考人の専門的なお立場からすれば、こういう、要するにそのままにしておいて、いずれ新しいバランスができるまで待つべきだというような考え方についてはどのようにお考えでしょうか。
  15. 長谷川清

  16. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 はい。
  17. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) こういうことが生物多様性、多様であるということのその問題点だと思うんですけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、ツキミソウというのは日本の自然に定着していますし、例えばクローバーというのは、芭蕉でさえ俳句に詠んでいませんけれども日本の田園風景でクローバーというのを抜きに考えることができないわけで、そういうふうに定着してしまうものもあるわけですよね。  だけれども、そういうふうに定着するものがあると同時に、今マングースがやっているように、非常に既存の生態系に対する明らかに悪い影響が起こっているものもあるということなんですよね。明らかに悪い影響が起こっているものはやはり撤去しませんと、マングースがこれから先、奄美大島の生態系の中に落ち着いてアマミノクロウサギと共生して生きるなんということは、これは現在の我々の知識をもってしたら全然考えられないことなんですよね。あくまで現在の私ども知識をもってしてはという言い方しかできませんけれども、それは非常に危険なことですから、これはやはり駆除する必要があるということになるわけですよね。  ですから、すべてのものがクローバーのように定着するというんではなくて、しかもクローバーが定着したのは、原始森林で覆われていたところを田園を開発して田園地帯を作るというような条件を作ってきたからそこに定着したのであって、原始自然の日本列島には多分定着しなかっただろうと思うんですけれども、そういう変遷も含めて、そういうところに定着し得るものと得ないものとがあるわけですから、得ないものに対してはやはり対策を講じる必要があるというのは非常に重要なことであって、それがこの提案されている法律の基本的な考え方だというふうに思っております。
  18. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 どうもありがとうございました。  話は変わりますが、政府案では、特定外来生物駆除をしていくというときに、国と地方公共団体あるいはNGOがきちっと協力をし合いながら事業を進めていくということが書かれておるわけですけれども草刈参考人はこういう問題についてのNGOの指導的な役割を常々果たしてきていただいているわけでありますけれども、この法案が成立をしたという前提に立って、これからWWFとしてはどういうような役割を果たしていただけるものか、その辺のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) NGOの役割として協力できることというようなのは、国と自治体なり市民が外来種問題をこれから取り組んでいく中で、NGOというのは合意形成の仕組みをリードすることもできるでしょうし、NGOはNGOのボランティアを投入してやっていくですとかそういったこともできると思うので、環境省と度々意見交換をすると人と予算がないというのはよく出てくることがありますけれども、NGOも予算がないならないなりに、それなりにボランティアを投入するなり国際的な協力を得ながらやっていくというふうなことができますので、今後の環境行政というのは正に市民だとかNGOとかの協力がないと成立できないような環境だと思っておりますので、そういった協力はできていくんではないかなと考えております。  また、そうあるべきだと思いますので、仮に法案が成立してこれから先どうするかという多分これからのステージは、じゃ具体的に実施計画下ろしていったときにはどういうふうな協力ができるかというふうなことを議論をしていかなきゃいけないと思っておりますので、環境省とNGOとでそういう意見交換の場を築いて、じゃ具体的にどういうふうな体制でやっていったらいいか、そういったことを協力してやっていきたいと考えております。
  20. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 ありがとうございました。是非しっかりとした協力関係を持ち続けていただいて、いざ防除とかいった具体的な事業があったときには効果があるような取組を進めていただきたいと心からお願いをしたいと思います。  先ほどマイクロチップの話が出まして、対馬の方ですか、の野猫のお話がありましたけれども、かなり具体的に成功をしていらっしゃるのか、現況をお聞かせをいただきたいのと、あわせて、特定外来生物のこれからの管理とか取組ということを念頭に置いて、このマイクロチップを導入することについての有効性についてもう少し詳しくお聞かせをいただきたいと思います。
  21. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 先ほど申し上げましたように、平成十三年からこの事業に取組をいたしまして、現在対馬で二百十六頭の雌の避妊を行いました。それから、西表では四十三頭。また雄の去勢、対馬で六十四頭、西表で三十三頭。この中でFIVの感染が対馬では十七頭、西表で六頭が判明をいたしております。  当初、私ども、これ三年間事業で、資金の関係も募金でやっていますので、ボランティアでやっていますから、三年間でやろうと。そして、この両方の島には動物の診療所がございませんでした。ですから、それから作らなきゃならぬ、機材も運ばなきゃならぬ、遠い島でありますので飛行機で行かなきゃならぬ、いろんな大きな課題がありましたので、三年間だけとにかくしっかりやろう、こういうことで始めたわけでありますけれども、地元の皆さん方が徐々に、なぜ飼い猫の去勢、避妊をしなきゃならないのか、また、その処置をした猫にどうしてマイクロチップを埋め込まなきゃならないのかと。  当初はなかなか理解をしていただけませんでしたが、三年たちましたら非常に皆さん評価をいただきまして、是非続けてほしい、こういった話がありまして、私ども、九州で会議をやりまして、十八年度まで何とか頑張っていこう、こういうことで決定をしているところであります。  ここで、マイクロチップを埋め込むというのは、一年、二年たちまして、そこの飼い猫等を捕獲して調べたといたしますと、なかなか猫というのは、去勢の場合はそんなに分からないことないんですけれども、避妊をしても傷跡が消えてしまう、この猫が避妊をしているかどうか分からないんですね。ですから、マイクロチップというのは一ミリから二ミリぐらいの大きさのものでありまして、これは首筋の皮下に器械で打ち込みますと終生使えるものでございまして、これはカウンターを当てまして、リーダーといいますが、そうすると十五けたの番号が出てまいります。ですから、どこの猫で、いつどういう処置をしたということが確実にこれは把握できるわけであります。  今回のこの特定外来種の問題も、一番問題なのは、心ない人が、飼っているけれども飼えなくなってこれを捨てたりする、たまたま逸走するのもあるでしょうけれども、このときに、その捕獲をされた外来種がだれの持ち物であるかということはこのマイクロチップさえきちっと設置しておけば一〇〇%分かるわけでありますから、飼い主に対する責任というものをここで完璧に追及できるわけであります。  だから、そういう意味では、この政府案では、いわゆるこの法律が施行された後の実効性というものが僕は高く評価できると思っています。
  22. 小泉顕雄

    ○小泉顕雄君 ありがとうございました。
  23. 小林元

    ○小林元君 民主党・新緑風会の小林元でございます。  本日は四人の参考人の方、大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。  今回の外来生物の問題でございますが、大変難しい問題だというふうにお伺いをしました。岩槻参考人からもいろいろお話がありましたが、帰化植物というんでしょうか、そういう話もございました。  これまでは、国際交流というんでしょうか、国際的な関係というのは、明治以前は希薄だったわけでございまして、鎖国をしていたと。明治以降、急速にそういうものが深まった。今やそれが大変な、本当に国際化の時代といいますか、ボーダーレスになっている。したがって、動植物生物というものについてもボーダーレスの世界に近づいているような感じがいたします。  そういう中で、日本独特かどうかは分からないんですけれども、ペットブームというんでしょうか、そういうことが起きておりまして、これまではどちらかというと、例えば農作物ですとかそういうものをどこかから持ってくる、あるいは家畜を外国種を移入をするというようなことで、むやみやたらに多種多量のものが入ってくるという状態ではなかったような気がいたします。  ただ、何というんですか、園芸植物のようなものはかなり入ってはこられていたのかなという感じはしますが、ただ、これらについては、どちらかといえば管理をしなければ滅亡するというか、生物としては弱い種類のものだったんではないかなと。ところが、今回のペットブームの中では、そういうこととは関係なく野生生物というものが入ってくるというふうな状態でございまして、今回の法案も、民主党の案と政府案が対立をしているというよりは、やっぱりいかにこの生態系をあるいは生物多様性を守っていくよりベターな方法は何かということを、目的は全く私は同じだというふうに考えておりますが、その辺で範囲を少し広めようかどうかというようなことがあるわけでございますが。  この国際条約の予防原則の第十というところを見ますと、生物多様性の減少若しくは損失の脅威のある場合には、外来種に関して十分に科学的な裏付けがないことや知識が不足していることによって、権限ある当局が、侵略的外来種の拡散と悪影響を予防するために、このような外来種の意図的導入に関する決定を下すことを妨げられてはならないというような、かなりこれは強い原則だろうと思うんですが、そのようなことについて、政府案に賛成とか民主党案に賛成とか、これは関係なく、いろいろおありだとは思いますけれども、四人の参考人の方にそれぞれ御意見をお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。
  24. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 私ども昨年、冒頭に申し上げました中環審の小委員会で、十回にわたっていろんな各層の方のレクチャーも伺いながら議論をして答申をまとめさせていただいたんですけれども、答申の形にまとまってはいますけれども委員全員が一〇〇%それに賛成しているわけではなくて、やはりいろんな個人的な見解というのはある。この生物多様性に関する対応に関してはそういうことだと思いますし、それから法律専門家に言わせますと、今回のこの生態系保全するための法律というのは法律用語になじまないような様々な新しいことが提起されているというふうにおっしゃっていますけれども、そういうことからいって非常に難しい問題だと、そういうものに対する対応だということがその基本だと思いますので。  ただ、対策をどう立てるかということに関しては、生物多様性に関する知見に基づいて様々な違いはあると思うんですけれども、私個人の意見を言わせていただきますと、今回の環境省の提案というのは、あ、これ環境省じゃないんですか、まとめていただいた案というのは、先ほど申しました十年前に種の保存法ができたときと比べますと、随分私どもの答申に合う形にまとめていただいているんじゃないかと思うんで、十年前の種の保存法の場合には、私どもの考えからいうと、もっと先へ進んでほしいという期待があったんですけれども、それはうんと進んでいると思うんですね。  だけれども、それに加えて、さらに、種の保存法の場合にはその当時挙党一致で決めていただいたというふうに思うんですけれども、今回は、随分ステップアップした案が作られているにもかかわらず対案が出てきたというのは、これも個人的な意見を申し上げますと非常にいいことなんで、何が問題なのかということがそういうことでクリアになると思いますから、十分議論していただいて、まとめていただければというふうに思っておりますけれども
  25. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 私どもも、環境省の審議会というのはずっと傍聴してきておりますし、民主党のその外来種対策法法案作成に関してもその動きをずっと見てきましたし、呼ばれて問題点を指摘とかしてきております。  環境省法案も民主党の法案もそれぞれいいところがありまして、それを両方ともうまく合致させてより良い実効性のある法律にしていただきたいというふうなのが切なる願いでして、例えば民主党の方の法案ですと、輸入をする人が自分からシロであるというふうなのを証明しなければ入れられないという考え方が入っておりますし、都道府県の防除事業を立てるようなことができるし、資金的にも捻出できるような制度が入っていたりとかしておりますし、それぞれいい部分は入っているので、それをうまくマッチングさせてやっていただければと。  ただ、私どもも、科学委員会とか評価委員会の設置とかというふうなことを言っておりますけれども、それは両案にも入っておりませんし、重要管理地域のことについても入っておりませんので、それを法案に入れることができないにしても、何らかの形でそういったことが仕組みとしてできるようなことを担保していただければ大変有り難いと思います。
  26. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 今回、我が国にこういった外来生物を持ち込む場合の規制がなかったわけでありますので、これにつきましては、政府案も民主党案もお互い規制を対象とされておるということは評価できると思っております。  ただ、この法律を作り上げ、それからそれぞれ実行に移す場合の、どのような計画を作るのか、そしてこの法律実効性の高いものにするにはどうすべきかと、こういった点につきましては、私は、政府案は非常に簡潔にうまく国民にも分かりやすいような、また諸団体も理解できるような形でまとめられておると、このように考えております。
  27. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 私自身は、平成十四年の野生生物保護対策検討移入種問題分科会委員としましてずっとこの法案ができることを願って御協力させていただいたつもりであります。  今回、二つの法案が出ているということに関して、一つ対策という観点からいきますと、国の方針というものが明確に出されるということは重要な問題でありまして、その後やはり地域の問題にかかわってくると思うんですけれども、地域と国あるいは自治体とがどのような連携で成果を上げていけるのかというような点で、二つの案に関してもう少し実効性という点を今後検討していただければというふうに考えております。
  28. 小林元

    ○小林元君 岩槻参考人にもう一度お願いしたいと思いますが、先ほど、種の問題につきましても百五十万種、一億もあるかもしれないというようなお話があったんですが、ましてやその生態というんでしょうか、ということになると、大変その科学知見が不足している部分が多いんではないかと。ですから、今のように、何というか限定的に、被害があるものはこれははっきりするでしょうけれども被害のおそれがあるというのは、ある時間たって、先ほどもお話がありましたが、個体数がある程度一定数になると爆発的な変化を及ぼすかもしれないということが分かればいいんでしょうが、そこが予見できないということになりますと、やっぱりできるだけ慎重にするという考え方を私らは取っているわけなんですが、その辺のいわゆる科学知見というものが、これは国際条約もあって、国際的な会議も開かれたわけですから、相当あって、こういう政府案のようなやり方でやって十分なのか、やっぱり少し足りないところがあると、少し慎重にした方がいいんだと。  ですから、枠を広げて、これは危ないかもしれないというものはノーと、あるいは管理するという特定外来生物にするというようなお考えがあるのかなとも思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  29. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) この問題はある意味ではもろ刃の剣みたいなところがありまして、生物多様性条約の基本的な考え方一つがサステーナブルユース、持続的な利用ということにあるわけですよね。  生物多様性というのは、その生態、我々のその生態、その環境を守る生態系として非常に重要な部分を占めると同時に、遺伝子資源として非常に大きい意味を持つという部分もあるわけですよね。それを、ですから、未知だから入れないというような言い方をしますと、例えば、ツキミソウ富士景観に合うような形、あるいはクローバーが日本の田園風景を作るような形で入るようなものも、ひょっとすると事前にチェックアウトしてしまうということになるかもしれないわけですよね。  それと、もう一つ問題なのは、高等植物だとか、高等という言葉を使わないと言いましたけれども使ってしまいますけれども、分かりやすいように高等動植物という言い方をしますけれども、比較的よく分かっているものについては、どれが危なくてどれが、今の段階でどれが危なくないかというようなことはある程度言えるんですけれども、ほとんどその生物相が分かっていないものについては、特にそういうものの中で未利用な資源というのは非常にたくさんあるわけですけれども、分かっていないから導入しないという言い方をしますと、かえってそれを開発するのを妨げるということになってしまうんですね。実はそういう網の掛け方ですよね。  つい先日、先日ってもう大分前になりますか、御審議いただきましたカルタヘナ条約の関連法案、これ非常にこの法案とよく似ているんですけれども、それが議論されて成立したときに、バイオテクノロジーに関係している生物学者の、我々仲間の者がですけれども、こういう法律ができると新しい品種の育成の研究ができなくなるというような言い方を、実はそうじゃないんですけれども、よく見ていただけるとそういうことを言っているんじゃないんですけれども、そういうような被害妄想を与えるということもあるわけで、その意味では、遺伝子資源の導入あるいは開発ということに対するマイナスの効果というのも、やっぱりそれは考えないといけないんじゃないかというふうに思うんですよね。  私も実は法律、答申をしたものが法律になるときに、自然科学者法律は余り強くないものですから、私は自然科学者の中では、植物命名規約という国際条約にも前々からコミットしていますから、自然科学者としてはまだコミットしている方なんですけれども、それでも、この法律になってしまうと何が起こるかということをすべて思考実験して申し上げているわけじゃないですから、一〇〇%確実には申し上げ難いんですけれども、ただ、今のその論点に関しましてはもろ刃の剣的なところがあるということは申し上げておいた方がいいんじゃないかと思います。
  30. 小林元

    ○小林元君 草刈参考人にお伺いいたしますが、外来種の防除というんでしょうか、先ほど来山田参考人からもお話がありました、根絶をする、とことん駆逐するという考え方ですが、こういうことはできる、実際にできるんでしょうか。その辺はいかがでしょう。
  31. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 外来種の根絶事例は、先ほど山田参考人もおっしゃったみたいに幾つか実際に事例もありますし、鷲谷いづみ教授の論文によれば、世界に見て成功した根絶プログラムは決して多いとは言えない、しかし根絶を外来種対策の基本的な方針とすることの重要性が認識されていると。根絶のために短期に相当の労力と費用を投資することが重要であり、それによって効果を上げることができれば健全な生態系の回復が可能であると。労力や費用を惜しみ、不徹底な対策にとどまれば、そのうちに外来種根絶が不可能なまで蔓延し、それらの投資は無駄になると考えられると述べられております。また、根絶、抑制の計画立案として、根絶は十分な生態学的な研究を踏まえた慎重な計画に基づいて実施し、モニタリングの結果を絶えず計画に反映できるような順応的な手法によって行わなければならないというふうなことをおっしゃっております。  また、根絶に関する事例については、IUCNの侵入種のスペシャリストグループがこのような外来種の根絶に関する報告書を作っておりまして、世界各国の島嶼地域での根絶事例がまとまっていたりしておりますので、国際的なこういう情報を関係者も収集しながら、具体的に根絶していくためにはどういうふうな体制と予算がいいのか、どういうふうな技術がいいのか、それから、何か問題が起きたときにはその計画にフィードバックして計画を見直す仕組みをどうしていったらいいのか、そういったことを検討していくことが重要ではないかなと考えております。
  32. 小林元

    ○小林元君 藏内参考人にお尋ねをしますが、先ほど野生生物は飼うべきではないというような御意見がございました。これは、生態系被害があるとかないとかということと関係のない、関係がない部分も、要するに、トータルとして野生生物は余り飼うべきではないという御意見だというふうに伺ったんですが、今回のこの政府案というか法案ですと、我々の法案もそうでありますが、やはり被害のおそれのある、あるいは被害があるというようなものに限ってと、こういう前提があるわけなんですが、それを越えて野生生物は飼わない方がいいという、そのためにはこれはどういうふうにされたらよろしいのか、お伺いしたいと思います。
  33. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) まず、野生生物が、家庭の中にいるものじゃございませんので、人間が生きる上で必ずしも必要なものではないと、興味本位で飼われることが多いと私は思いますし、また非常に希少価値のあるものが高く評価をされると、こういったことでありますので、基本的には輸入すべきではないと、こういうふうに考えております。
  34. 小林元

    ○小林元君 私も大賛成で、藏内参考人意見に大賛成なんですが、実際になかなかこのペットブームの中でこれを実現するということは、やはり何らかの大義というか、そういうものを相当考えた上でないと難しいのかなというふうに思っておりますが、そういう方向に是非行っていただければいいなというふうに私も思っております。  それから、山田参考人に、もう最後の質問になろうかと思いますが、防除計画についてのお話があり、また実際におやりになっているという中で、今回の法案を見ますと、ここは大分際立って民主党案と政府案違っているわけですが、地方公共団体、都道府県あるいは市町村の参加というものを私どもは積極的に図るべきであると、実施部隊はむしろ地方ではないかと。国はトータルの計画を作って立案をする、そしてそれの実施部隊は地方だというふうに思っておりますし、それぞれの地域の実態というものがありますから、その主力部隊というのはその方がいいんじゃないかというふうに考えているんですが、その辺のお考えをお伺いします。
  35. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 現在の、奄美でマングースの駆除事業が実施されている、見ますと、二つの方法が取られておりまして、鳥獣保護法の有害駆除によるマングースの駆除、それから環境省による駆除という二つの方法が行われております。  現在のところ、四年がたちまして、最終的には環境省が主体になった駆除が主体になってきております。捕獲の担当する範囲が両者の間で若干違っておりまして、そういう意味で、有害駆除の方が中止になってきますと、その地域でまたマングースが復活してくるという問題があります。そういう意味でも、統一的なというか一元化した駆除が必要ではないかなと。  その一元化するためには、やはり地方が主体的に動けるような方向が、中長期的な生態系の管理とかと考えていくと、やはり重要ではないか、それをやはり国が予算的あるいは政策的に支援をしていくというような形が実現可能、実効性が高いのじゃないかなというふうに思います。
  36. 小林元

    ○小林元君 どうもありがとうございました。
  37. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 日本共産党の岩佐恵美です。本日は、参考人皆様には朝早くから御参加をいただいて、そして貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。とても勉強になりました。  それで、最初岩槻参考人にお伺いしたいんですけれども、事前に配られた資料をちょっと読ませていただいて、「移入生物とわが国の生態系保全」という中に、移入種のその動態は問題があると指摘されながら正確な調査も不十分なままに放置されて、それだけに対応にも後れが見えるという状況が続いていたということを言われて、一つには移入種の危険性が十分認識されていないという現実がある、そして社会に対する説得力に欠けていた点があると。その後に、もっと大きな問題は、産業とのつながりがあり、経済活動に制限を加えるだけの論理的根拠の構築ができなかった点を見過ごすことができない、こう言っておられるんですけれども、この点について少し御説明いただければと思います。
  38. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 今の御指摘は、生物科学者生物多様性に関係している科学者としての自戒を込めた表現をしたつもりなんですけれども、少し前に書いたものですから、そういうつもりなんですけれども、それはこういう、種の保存法の場合もそうですけれども外来種の問題についても、こういうことが本当に実効ある形で国の施策としていただくためには、先ほどもちょっと申し上げましたように、各階層の人すべてに御理解いただかないと本当は実効性はないということなんで、その生物多様性条約そのものが幾つかの原則の中に、先ほど申し上げましたように、生物多様性の持続的利用ということを非常に強く訴えている部分がありますように、生物多様性の持っている遺伝子資源を有効に使いませんと、人類のそれこそ生存は保全されないという、そういう側面もあるわけですから、だから産業的に利用するということも非常に重要なことなんですよね。  それとのその整合性で、サステーナブルユースという場合に、サステーナビリティーに重きを置くのか、ユーズに重きを置くのかというのは、これは非常に難しい問題だと思うんですけれども、それを両立させるということを論理的に本当は説得できないといけないんですけれども、それを書きましたころには、少なくとも、今でもまだそうだと思いますけれども、本当にそういうことが、産業界の人にもですし、それから国民各層にもですけれども、本当に理解されているかどうかということに関しては我々も説得力がまだまだ足りないんじゃないかというふうに思っています。  ただ、そのときと比べますと、日本の産業界というのは某大国なんかと比べまして環境問題に対して最近非常に積極的にいろんなことを考えていただいているという現実はありますので、私はちょっとオプティミスティックかもしれませんけれども、将来に向けてはそういう問題は今よりもよりよく理解していただけるんじゃないかというふうに期待はしているんですけども
  39. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ありがとうございました。  草刈参考人それから藏内参考人山田参考人にお聞きしたいと思いますけれども、いわゆる外来種の駆除というか対策についてですね、駆除って、対策について、先ほどから議論されているように、マングースのようにもう本当に根絶しなければいけないものというのがあると思うんですけれども、例えば私は鎌倉市に行ったんですが、タイワンリスがかなりいて、そして最初のうちはかわいらしいものですから、みんなえさをやったりしていると、それが一万から三万に、もうよく分からないというんですね、増えてしまった。もう木の幹の皮まではいでしまって、かわいい割にはやることがすごく実害が大きいというような状態になってしまったと。これについて市民のコンセンサスを得ながら対応していくにはなかなか困難なんだという話がありました。  私は、その話を伺いながら思ったんですけれども外来種についてその害があるという、一種について害がある、あるいは複数で害がある、そして、どういうところにどういう害があるのかというような被害を受ける実態、だから外来種実態も分からない、その害も分からない、それから被害を受けるものの実態も分からないし、どういう被害を受けるのかも分からない、そういうのが今の状況じゃないか。その際に、それぞれ参考人の皆さんのお立場からこの法律が通った、この法律にどういうものを期待をされ、どういう行動をされていきたいというふうに考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  40. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 先ほど都道府県の自治体が外来種に取り組むような制度が必要だというふうなことを申しましたけれども一つ私の経験ではあるんですけれども、以前オーストラリアにWWFジャパンから赴任していたときに、オーストラリアの自治体では外来種問題、かなり徹底して普及が進んでおりまして、オーストラリアのカウンセルが独自に、うちのカウンセル、市議会では外来種はこういうふうなランクのものがあるというふうなのをちゃんと持っておりまして、その防除事業をするためには市議会の、自治体のすべての住民のポストに、何月何日から何日まで、市議会の外来種の問題にはそのリストがあって、これとこれとこれの種類について防除事業をするので理解してほしいというふうな周知徹底をすることがやられていまして、非常に進んでいるなというのを思ったんですけれども。  今回の外来種対策法ももう国がその特定外来生物リストを作っていって、それを見ながら都道府県がやっぱり外来生物に対するリストを作っていくと思うんですけれども、その中で、やっぱりうちの県とかうちの自治体ではどういうふうな外来種が問題になっていて、どう対処するべきだというふうな合意制、例えば自然再生法のときには協議会制度というのがありましたように、やっぱり地域地域で協議会を作って外来種被害に一体どういう被害があるのか、そして市民と自治体とNGOとがどういうふうな仕組みでそれを取り組むべきかというようなことを作っていって、そういったアメリカ、オーストラリアでやったようなランクを作っていって取り組むというふうな制度、体制を作っていくということが、今後一番重要になっていくんではないかなと感じております。
  41. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) よく都会でリスが出没をしたりそういう野生動物が見掛けられるというのは非常に珍しい光景でございますね。そうすると、害を受けていない人はまあかわいいと、どうしてこれを殺すのかと、これは人情だろうと思うんですけれども、しかし害を受けた人にとっては、これはもう切実な問題なんですね。  私は福岡の田舎の方でございますが、山によく行くんですけれども、たまにヤギがおるわけですけれどもね。山登りをやっておってヤギに出会うと、ああ自然だなと、こういう思いをいたしますが、実はそこで植林をやっている方にしてみれば、ヤギというのは植えたばかりの苗木、いわゆる葉っぱ、一番成長するところを食べてしまう、だからもう木は大きくならない。よしんば、それを過ぎた木に対しましても体をくっ付けて揺するんですね。そうすると、木の中が割れてしまうんです。これは何十年間後に大きな成木となって製材をして売れるようになるんですけれども、そのときの傷があると売れない。ですから、大変なこれは被害を被ることになるわけですから、私はこういった害についてはやはり国がしっかりとやる、教育的なものを含めて普及啓発を行うと。それに地方自治体あるいは民間団体、特に見識の高い動物愛護団体等を含めて、よくその計画性等を築き上げていくと、これが一番肝要なことではないかと思いますし、また取り締まる場合に、変な謬論で、かわいそうじゃないかと、あるいは虐待しているじゃないかと、こういった印象を与えないがためにも、専門家である獣医師等を取締官としてきちっと配置をするということが大事だと思います。
  42. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 先ほどタイワンリスのお話がありましたんですが、鎌倉からかなり北部の方に分布を広げておりまして、我々の心配しているのは、競合する在来種でありますホンドリスですね、ホンドリスの生息している森林にタイワンリスが入ってしまうと、恐らくホンドリスが追いやられて絶滅、地域的な絶滅を起こしていくんじゃないかというような観点で、タイワンリスの分布の拡大状況とか、それをいかに食い止めるかという研究も少しは最近取り掛かって進めております。  特定種、特定外来種対策というのが優先度としては早急に緊急課題ではあるんですけれども、タイワンリスとか、もう定着してしまって現に被害を起こしている種に対して今後どのような対策を、効果的な対策を立てられるかという問題が次に控えていると思っております。  研究者とかNGOの方は、その被害というものを非常に感知しているんですけれども、それをどう対策につなげていけるのかというところが行政なりの役割ではないかなと思っております。そういう意味で、対策を立てるための組織というものが必要になってくると思います。  今回、マングースの話題をお話しさせていただいたんですけれども、これは環境省一つのモデル事業という位置付けでありまして、そういう意味では、今後、対策のためのガイドラインを作れるような、そういうふうなモデル事業と位置して再認識していく必要があるのではないかと。そうすれば、この四年間あるいは予備調査も入れた八年間のモデル事業が生かされていくんではないかなと考えております。
  43. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) ちょっと一つ指摘し忘れたことがございまして、地域の合意形成とか、そういったことが必要になっていますけれども、今問題になっているのは、学校の教育現場外来種を利用した教育キットが販売されているという問題がありまして、在来種を利用した教育キットならよろしいんですが、外来種を利用した教育キットが学校教育現場で使われているというのは非常に問題があると思いますので、それをどうしていくかというのを一つ指摘しておきたいと思います。
  44. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) ちょっといいですか。済みません。
  45. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 どうぞ。
  46. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 先ほどヤギと言いましたが、シカの間違いでございましたので。
  47. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 それは議事録で訂正しておいて……
  48. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) お願いしたいと。
  49. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 どうもありがとうございました。  教育が非常に大事だというのは、何か私も聞いた話ですけれども、鎌倉でタイワンリスがいると、学校の先生が、うちの学校の環境はこういうふうにリスがいるほどとても自然が豊かなんですよということを子供たちに言っていたと。そういう、つまり外来種を自然が豊かである象徴として紹介をしているその教育現場の先生たちのレベルアップをどうしていくかということが非常に大きな課題ですよという話を伺いましたけれども、正にそのとおりだと思います。この法律もそこのところをきちっと考えていかなければいけないと思います。  先ほど草刈参考人から御紹介されましたけれども、私もこの法律を考えてみて、特定外来種あるいは未判定種をどうするかという、そういう問題もあるんですけれども、とにかく五億件以上の外来動物輸入件数があるわけですね。こういうものの実態をつかんでいないというのは本当にどうなっているのかなということで非常に疑問に思いました。それで、この間、環境省とやり取りをさせていただいたんですけれども環境省として必要性は感じていると、今後、基礎的情報の整備必要と考えると、生物全般にかかわる輸入実態を把握するための効果的手法について、関係省庁とも相談して検討したいという答弁がありました。  私は、これを効果的にやっていくためにどういうふうにしたらいいのかということについて、関係省庁もそうなんですけれども、例えば、岩槻参考人、それから草刈参考人、そして山田参考人、それぞれ御研究現場から御意見を伺いたいと思います。
  50. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 非常に重要な御指摘だと思いますけれども、これも学会がどうこういう問題に対して貢献できるかということだと思うんですけれども、度々同じ例を引き合いに出して申し訳ないんですけれども、種の保存法ができる前の過程で、日本生物多様性実態がどうなっているかというその情報を、研究者サイドだけで、専門の職業的研究者だけではできないので、ノンプロフェッショナルなナチュラリスト日本にはそういう方非常にたくさんいらっしゃるんですけれども、そういう人がふだん、趣味的にと言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、全部自分が好みで、手弁当で集めていられる情報というのも全部提出していただいて、これはもちろん、その職業的な専門家が常にそういう人たちと知識の共有をするということで非常に良好な関係にあったからできたことなんですけれども。そういうような情報を基にして、植物分類学会とそのときのWWFと自然保護協会と三者が一体になってレッドリスト最初に作ったのが日本の中でのこういう動きの始めだったんですけれども。そういうような形の資料を基にしてこの法ができて、その法ができてからの、後のレッドリストの後追いに関しても、学会とそれから環境省とが非常にいい形で協力をし合いながらその情報の提供をしているという現実があるんですよね。  この場合でも全く同じことで、今その生物多様性に関する情報というのは非常に散在していて、なかなか一本化できないものですから有効に利用できないという状況にあるんですけれども、このことに関しても、国際的な取組を始めいろんなその取組を学会レベルでもやっておりますので、そういう情報はそれこそ非常に有効に生かしていただくというのが、その情報の集成をする側でもそういうことが期待しているところなものですから、そういう良好な関係をこれからますます発展させていくように、環境省の方にもお願いしたいと思っていますし、学会サイドでもそういうふうに動きたいというふうに思っています。
  51. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 岩佐さん、全員の皆さんにお聞きします。
  52. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 済みません、私の時間が十分までなんですね。それで、済みません、手短に、草刈参考人は先ほどもお答えいただいたんですが、補足的な御発言いただいて、余った時間で山田参考人、お願いしたいと思います。
  53. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 先ほど、私の意見陳述でも申しましたけれどもペットショップですとか熱帯魚屋さんですとかインターネットとかで販売されている実態があるというのはありますし、そういうのはインターネットだと調べればある程度どこで何を売られているかという情報収集もできますし、またWWFジャパンの中にはトラフィックジャパン、度々参考にしていただきましたけれども、トラフィックジャパンが野生動植物輸入実態調査とかというのをやっておりまして、前の調査では我が国は爬虫類で世界で第二位というふうな輸入大国というデータが出たりとかしておりますので、私どもの組織としてもそういった外来種実態把握にも努めていきたいと思っております。
  54. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 私どもも、研究者という立場で学会活動を通じて外来種問題を一般の方々に広く知っていただくという活動を進めております。  九九年に哺乳類学会が、マングース、アライグマ、ヤギに対して早急に対策立ててほしいというアピールを出しまして、それがマスコミ等を通じて広く認識していただいて今日に至っているということが、一つは私たちの活動もあったのかなと。  それから、国際的な学会、それからIUCNの関係等の付き合いを広めておりまして、情報交換を進めるということを考えております。
  55. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ありがとうございます。  あと三十秒ぐらいあるので、藏内参考人、済みません。
  56. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 私たちは、冒頭申し上げましたように、動物の愛護と管理に関する法律を基本に活動しているわけでありますので、いわゆる動物を限定するんではなくて、すべての動物に対してきちんと一元性を持っていろいろ国が責任を持って対処をしていくと。そういう中で、あくまで民間団体でありますが、それだけ国民との接点を多く持っておるわけでありますので、こういった問題に対する国民の合意形成には前向きに努力をしていきたいと思っています。
  57. 岩佐恵美

    岩佐恵美君 ありがとうございました。  終わります。
  58. 田英夫

    ○田英夫君 この法案が今回ようやく出てきたわけですけれども、本来、世界的に歩調を合わせてやっていくべきことだろうと思いますけれども、当然まだまだ格差があって、さっきニュージーランド先進国というお話が草刈さんからですか、ありましたけれども、今こういう法律世界的に持っている、既に持っている国、持っていない国、その辺のところを大まかにいってどういう状況にあるか。どなたでも結構ですが、お答えいただければと思いますが。
  59. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 環境調査室資料の中にも幾つか諸外国で持っている法案リストが載っているとは思いますけれども、例えばアメリカなんかですとレーシー法という法律があって、野生動植物、ある個人が入れようと思ったときには、ちゃんとどこのだれだれがどういうものを入れるというふうなのを申請を出さないとできないというふうな仕組みで、その動物が追跡することができるような形になっておりますし、ニュージーランドでも外来種に関連する法律というのはかなり進んでいる、進んでおりますし、諸外国でもそういう、外来種だけではなくてもっと広い面で侵入生物ですとか化学物質とかも含めた法制度を作ったりしている例がございます。  そういう面では、海外の法制度ではもうちょっと進んだ体制の法律ができているというところがありますので、今回の法案は五年後の見直しというのがありますので、五年後の衣替えをするときにはもっとオーバーオールな法案に改正していくような努力が必要なんではないかなというふうに感じております。
  60. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 私どものところでも諸外国のいろんな情報を集めたことがあるんですけれども、例えばEUなんかはもう、EU諸国も非常に先進的なものを作っているのがありますし、ニュージーランドの場合にはしばしば例に出されることがあるんですけれどもニュージーランドの場合には、日本と似たところもあるんですけれども、植生に対するその害の在り方というのがもっともっと極端なんですよね。それが国民各層の、人口も少ないですけれども、御了解が得られて先進的なその案ができたという、そういう側面もあるということなんですよね。  そのことに関して、僕、この機会に是非お願いしたいことがあるんですけれども、それはこの外来種問題に関することだけではなくて、これの根幹である生物多様性条約をまだアメリカは批准していないんですよね。是非日本が積極的に、私ども研究者サイドは始終そういうことを議論するんですけれども、国としても、この委員会から上げていただいて、国としてもアメリカがその生物多様性条約には是非批准をしていただくように推進していただけたらというふうに思います。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 いや、本当に生物多様性条約が基本法みたいな形で国際的にきちんとするということが根幹かもしれませんが、この外来種の問題、つまり外国から入ってくるということですから、具体的にはこの問題は。お互いにそれを理解し合うという意味、あるいはきちんと情報を共有するという、そういう意味で条約化できないのか。  例えば渡り鳥条約がありますね。これなどは正に鳥の方が渡っちゃうんで、それを受け入れる側、出す側、お互いに理解し合うということを国際的に合意していると思います。そういう意味で、この外来種の問題についての条約というのができ得る状況があるのかどうか。これもどなたでも結構ですが。
  62. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 外来種に対する条約というよりは、動物の移動に関する条約としてボン条約という条約がありまして、日本は批准しておりませんけれども動物の移動に関する国際的な条約というのはございますので、そういう条約も日本は批准すべきだと思いますし、国の方でもボン条約がいいのかどうかという検討をされたりシンポジウムみたいなものを開かれたりしておりますので、そういう動物の移動に関するボン条約の批准も非常に重要なことではないかなと感じております。
  63. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) これもまた、絶滅危惧種の場合にはワシントン条約のような非常にはっきりした国際的な協定があるんですけれども外来種全体についてはIUCNもまだそういう国際条約を作ろうという提案をするところまではまとまっていないんですよね。  部分的には、例えばカルタヘナ関連条約もそれに関係するものだと思いますし、それからバラストに関する国際的な協定というのが進んでいるというふうに、部分的にはそういうのが進んでいるんですけれども、国内でもなかなか法律にならなかったように、外来種というのは非常に複雑な内容を含んでいるものですから、IUCNとしてもまだそういう国際条約を提案するところまでは行っていませんけれども日本でそういうものができて実効性があるようになれば、国際的にそういうものを作りましょうという提案を積極的にやっていただけるとこれは非常に有り難いと思いますね。
  64. 田英夫

    ○田英夫君 私事ですけれども、五十年前ぐらいに南極へ行って体験したことがありますけれども、ここに外からしかるべき何か強いものが、寒さに強いものが入ってきたら、この生態系はあっという間にめちゃくちゃになるだろうなと思いました。  というのは、天敵がない状態といいますか、もちろんトウゾクカモメがペンギンの子供を襲うという、これが目撃された中でいうと唯一ですね。アザラシになると全く敵はいない状況ですから、こういうところがやっぱり理想郷なのかなと。その代わり外から入ってきたら大変だなという、素人でもすぐ分かるぐらいの状況を体験いたしましたが、そういう意味で世界的に合意ができるということを大変私は感じているんですが。  参考までに、先進国と言われたニュージーランドというのはどういう対応をしているのか。私の知る限りでは、ニュージーランドというのは元々四つ足の動物がいなかったところへ、鳥類、あの巨大な鳥がいて絶滅してしまっているんですが、そういう体験などを踏まえて、外来、羊を持ち込んだのは人間が持ち込んだんでしょうから、どういう具体的なことをやっているんでしょうか。
  65. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) ニュージーランドで先ほどおっしゃった四つ足がというようなことで、ニュージーランドは二種類のコウモリだけが固有種で、それ以外は人間も含めてすべて外来種というふうなことで、そういう、今入っている外来種ニュージーランドの固有の生物影響を与えるというふうなことが国民のすべての人たちにも理解されているというところが根本的に日本と違うところだと思います。  この前、新・生物多様性国家戦略ができたときに、WWFジャパンが「新・生物多様性国家戦略を考える」というシンポジウムをやったときに、ニュージーランドからキーパーソンを呼んで、ニュージーランド生物多様性国家戦略の策定過程のヒアリングをしたときがありまして、ニュージーランドを八十のブロックに分けて、環境省の担当が、八十ブロックで生物多様性の問題とかどうあるべきかというシンポジウムをやってきて、国民全体がニュージーランドの多様性をどう守るかというようなことが非常に理解が高まっていった、そういった大きな流れの中でニュージーランドの国家戦略は作られている。だからこそ、ニュージーランドは国家戦略について特別予算という多額の予算を付けて自国の生物多様性を守るという形になっている。  ですから、日本も、そういうふうな国民全体の理解を得た上でどうしていくかというような手続をしていかなきゃいけない。生物多様性の国家戦略、まあまた五年後作られますけれども、そのときには是非、北海道から沖縄までそれぞれの地域の生物多様性はどうあるべきかとか、外来種をどうするべきかというようなことをやっていくべきだと思いますし、それから、先ほど南極に外来種が入ったときに非常に問題になってしまうというようなことがありましたけれども外来種、これを特定の外来種にするかどうかという選定の基準ですけれども、やっぱりその基準は、一番我が国生態系の中でも貧弱なところに外来種を入れたときにどういうふうなことが起こるかというようなことを見た上でこれは特定だというふうに判定しないといけないと思います。  例えば、島嶼の生態系というのは非常に外来種が入ったときには貧弱ですから、こういった種類がその島に入ったらどういうふうなことが起こるかという、その基準を、限りなく貧弱というか弱い環境のところに入れたときに何が起こるかというふうな目で黒か白かという判定をしていかなきゃいけないと思いますし、そういうふうな目で特定外来生物というのをどんどん選定していっていただきたいと思っております。
  66. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  67. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 いろんなお話、ありがとうございました。  環境に良いことをすると恩恵が得られるシステムについて、私、御質問いたします。  本来の生態系外来生物被害から守ろうとする趣旨はもちろん理解できます。環境を悪化を防ぐために規制を加えることももちろん必要だと思います。ただ一方で、本来の生態系を更に強化し健全なものにするための努力ももちろん必要だと思うんです。つまり、生態系に良いことをすると恩恵を得られることを、外来システムという、生物というカテゴリーにおいても導入すべきではないかと思うんですけれども、一般的なんですが、どうお考えになりましょうか。どなたでも結構です。
  68. 長谷川清

    委員長長谷川清君) じゃ、どなた。どなたでもと言われると。一通り、じゃ、お聞きしましょうか。
  69. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 基本的には、冒頭に申し上げましたように、自然に対応して人為人工ということがあるわけですから、自然を保全するということは人為人工をできるだけ減らすということになると思うんですけれども、その意味で良好な自然が保全されるというのは非常にいいことだと思うんですけれども、だからといって人為人工をゼロにするということはできないわけですよね。ですから、それとどうバランスを取るかということを考えるということだと、もうつまるところそれ以外にはないというふうに思いますけれども。  ただ、基本的に、生態系、既存の生態系がほかから人為人工影響を受けてひずみが生じるときにはそのひずみが生物多様性に決定的な影響を与えないような配慮というのが常に必要、そのときの知識最大限を活用して保全の方向に向けるようにすべきだというふうに考えておりますけれども
  70. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 生態系に良いことをする外来種を入れてもいいんじゃないかとかということがあるんですけれども、多分そこも科学的な知見をどれだけ充実させて、その地域の合意形成として判断していかなきゃいけないと思いますし、それよりも前に、外来種の教育というのはきちんとしておかないと間違った判断をしてしまうというふうなことが多々あります。学校の教育現場でも、外来種を放すことがいいというふうなことで川にいろんなものを放して、それがもういいことだというふうな教育をしたりとかというふうなことが実際に起こっていますから、まず基本的な、自分の、我々の基本的な学習のレベルをきちんと構築した上で、その上で外来種が本当にその地にとっていいのかどうか、そういうふうな判断のステージを踏んでいかなきゃいけないんではないかなと思っております。  ですから、少なくとも今の外来種についてはまだまだ日本の国民の理解が低いですし、外来種が、及ぶ影響が何かという情報も低いと思います。ですから、やっぱりきちんとした基礎教育を徹底した上で、その共通なコンセンサスができた上で判断するということが一番重要なんではないかなと思っております。
  71. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 生態系を守るというのは、一番難しいのはその利害関係者との調整をどうするかと、こういうことだと思います。ですから、よくやはりこれは事前にそれなりの説明をする、そしてしっかりとした責任を持ったところが計画を作っていくということが大事ではないかと思います。  それから、いま一つ、特に今、鳥インフルエンザですとかSARS、コイヘルペス、BSE、極めて多頭飼育等によって世界同時に感染症等の病気が発生をしておると。これは何を意味しているかというと、私は、ある意味では、自然の摂理、動物生態を超えた行為を人間が行うことによる自然からの人間への警告ではないかと、こういう思いを持っているわけなんですね。そういうときに、本当に人間が未来永劫この地球上で立派な指導的立場で生きていくためにはどういうライフサイクルを作っていくかということも幅広く私は国民的な議論をしなきゃならぬときを迎えているんではないかと思います。  それから、生態系を守るということはみんな大事だと思っている。ところが、なかなか具体的にそういう行動に移していく機会がないわけでありますので、できれば、生態系を守った人を表彰するような、世界的なノーベル賞みたいないい賞を作っていただければもっともっとこれは啓発になるんではないかと思いますね。
  72. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 日本の島々を考えますと、七〇年代、八〇年代にかけてやはり開発優先という流れの中で進んできたと思います。その流れの中で、天敵を使う、天敵動物を使って自然を人間に都合の良い方の形に変えていこうというのが優先したのではないかと思います。そういう意味で考えますと、生態系に良いことをする、生態系のことを考えるという視点は、やはり生物多様性保全条約に批准するという、九〇年代になって発想ががらっと変わってきたと思います。  一つは、希少種の保全、あるいは自然の保全という観点をやはり重視しながら、生態系というもの、我々まだすべてのことを分かっていない中で生物側から赤信号が発せられていると、それを人間がいかに理解していくか、それを守っていけるかということを、そういう人間たちの仲間をできるだけ増やしていくということも大事であるし、それを理解する人を増やしていくという、そういうことが大事だと。そういう意味で、生態系に良いことをする人たちを増やしていければいいのかなと思っております。
  73. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 藏内先生がおっしゃったように、やっぱり生態系にいいことをすると何らかの形で恩恵が得られると、そういうあれができ上がると、もちろん罰則もいいんですけれども、何かいいことをしよう、いいことをしようという、そういう前向きなあれができるんじゃないかと思います。  外来生物の中で、それが生態系とうまくなじみ、むしろその形態が更に活性化するような生物があると考えます。規制を加えるというのは逆で、また同じ意味なんですけれども環境を良くするために特定外来生物を指定してその種の積極的な輸入も視野に入れるべきではないかと思うんです。例えば海外の樹木をして植林するというような方たちを優遇する措置を取るのはどうでしょうか。それは地球温暖化を防ぐための実質的なCO2の削減を率先して行う必要、日本が取る政策としてもふさわしいのではないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  74. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 最初意見のところで申し上げましたように、長い歴史を経て今安定した状態になっている生態系というのがあるわけですね。生物多様性という言葉をしばしば誤解されて、多様であればあるほどいいというふうに読み取られることがありますけれども、それは全く間違いで、そういうふうに進化歴史を経て今安定している状態というのが大切なので、ですから、例えば先ほど例示されました南極なんかの場合には、生物多様度は非常に低いんですけれども、それはそれで安定している。だけれども、そこへ何かをもたらすことによって脆弱な生態系というのは余計に被害が大きいわけですよね。  ですから、緑で覆われればいいというものじゃないんですよね。ですから、何でもいいから植林したらいいというのではなくて、例えばユーカリの植林が非常に大きい影響を与えているというようなことも現にありますように、安定している生態系のその安定性をいかに維持していくかということをまず考えないといけない。  だけれども、それと同時に、先ほどから何度も申し上げておりますように、生物多様性条約の基本的な考え方一つの中に持続的な利用ということがあって、人類のためには利用しないといけないという側面もありますから、農業というのがそれで発展してきたということですけれども、安全なものは生産性を高めるという意味で導入しないといけない。そのバランスをどう取るかということが議論される過程で、ですから、外来種のように危険性のあるものは排除しようという思想だというふうに理解しますけれども
  75. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 言うまでもなく、我々人間にとって有用なことは積極的に受け入れるべきだと思います。  ただし、この外来種という問題につきましては、いろいろ未知な部分が多いわけでありますから、しっかりとしたやっぱり科学的な証明あるいは時間を掛けた結果といいますか、それをやっぱりきちっと判明をしなきゃならぬと思うんですね。  それから、植林という話がありましたが、これは極めて大切な、今後我々が取組をしなきゃならぬ課題だと思っています。  ただ、いろいろな外国に行って植林をやる事業、私もフィリピンでもう十年間ぐらい木をボランティアで植えています。我々が植えたところだけが見事に緑の山になっておりまして、飛行機の上から見ると大変きれいな景観を呈するようになって、地元も喜んでくれ、マラカニアンも非常に高く評価してくれておりますけれども、ただ、我々はその地域にある、例えば山であれば熱帯植物に近いマホガニー等を植えるとか、あるいは海辺ではイピルイピルとか、そういったその地域に生息をする植物を植林をする、そしてその地域の環境保全する、こういうことが大事だと思います。
  76. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 中央環境審議会というのがありますけれども、審議会の審議プロセスや環境大臣の特定外来種の選定基準や選定の理由など、この情報を公開するべきだと思うんです。もちろん、大臣を信頼する気持ちがあったとしても、どんなプロセスを経て決定がされているか、国民にとっては大変大きな関心事だと思います。  やはりオープンな審議プロセスを経るという国民の知る権利の観点からも大事だと思うんですけれども、一言お願いできないでしょうか。
  77. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 先ほどから御紹介しました中央環境審議会のその小委員会というのは全部公開されていますし、議事録もホームページに載っていますし、それから最終的な案をまとめる前にはパブリックコメントも求めていますし、そういう意味では完全にオープンになっているというふうに理解しております。
  78. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 そんなことで、分かりました。  ありがとうございました。
  79. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 終わりですか。
  80. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 はい。
  81. 山下栄一

    ○山下栄一君 あと私で終わりでございますので、よろしくお願いします。  今日は本当にお忙しいところ、また貴重な啓発的なお話ちょうだいいたしまして、ありがとうございました。  この生物多様性条約という条約が締結されて以来、日本でも徐々に生態系を守っていくことの重要性が進んできているようには感じるんですけれども、まだまだ特に経済活動との関係では課題が大変多いというふうに感じております。農林水産、農業、林業の法律の抜本的見直しがありまして、基本法の理念の中にこの生物多様性考え方がきちっと入ったのも最近ですし、今、水産業の方はまだ入っていないんじゃないかなというふうに理解しておりますけれども。  ちょっと今日、お聞きをまずしたいことは、この生態的ネットワークという町づくりにかかわる考え方が、私は、オランダという国でこういう取組が、オランダだけに限らず、EUはそういう取組が強いのかも分かりませんけれども生態的なネットワークを断ち切らない、そういう考え方で町づくりを行っていくという、極めて進んだ考え方だと思いますけれども、こういう考え方日本ではもう非常に、大分先にならないとできてこないのかなというふうなことを感じるんですけれども、それぞれ専門的な取組をされている学問的、実践的観点から、この町づくり、国づくりの観点で、こういう生態的ネットワークの日本における取組についてのお考えを聞いていければと思います。  それぞれ所感がございましたら、簡単にお願いしたいと。
  82. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 四人の皆さんにですね。
  83. 山下栄一

    ○山下栄一君 そうですね。少しずつ。
  84. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) 私どもも常々そういうことというのは期待していまして、国じゅうが長期的な計画に基づいて自然と人の生活とがなじみ合うような形の発展をすべきものだというふうに思っていますけれども、そうしたら具体的にそれを各地域でどうしたらいいかということになりますと、これは様々な条件が関与してきて、学問的にどうこう言うというだけでは決められないと思いますよね。  ただし、ちょっと宣伝をさせていただきますけれども、私、最近、兵庫県立人と自然の博物館というところにコミットしているんですけれども、ここは全く精神的に、その地域の住民の人たちとも話をしながら、完全な自然史博物館ではなくて、造園、景観の人たちも一緒にやっているんですけれども、そういう人たちといかにしたら緑の町づくりができるかということをいろんな形で模索しているというのがありますので、そういうデータもいずれは日本じゅうで利用できるような形になればいいなというふうに思って、そちらの方向に向かって邁進しています。
  85. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 生態的なネットワークというふうなことで、今、林野庁なんかでもコリドー計画という、緑の回廊計画とかというふうなことで、孤立した生態系をつなぐというふうなことが一生懸命やられています。  そういった生態系をネットワークとしてつなぐ流れの中で一つ考え方としてあるのは、これも鷲谷いづみ先生やっておられる埋土種子、今その植生ではないんだけれども、何年か前に土の中に埋もれた種がたくさんあると。それを掘り返して何年前の植生はこういうふうなんだというふうな、そういう緑を回復するようなことをやっているんですよね。ですから、生態系のネットワーク又は生態系を取り戻す行為として、ネットワークとネットワークをつなぐ方法の一つとして、そういうふうに何年前とか十年前とか二十年前とかならば、昔はこういうふうな植生帯があったというふうなことを調べて、少しでも自然再生事業みたいなのをやられていますように、過去に失われてしまった日本の在来の環境を取り戻して生態系をネットワークとしてつなげていく、そういった試みが必要になってくると思います。
  86. 藏内勇夫

    参考人(藏内勇夫君) 生態系ネットワークを作るというのは私も賛成であります。  こういった理念の下に、どういう町づくりを行うかということについてはこれからの我が国の課題ではないかなと、そういう思いを持っております。    〔委員長退席、理事ツルネンマルテイ君着席〕  昔、ドイツに行きまして、バーデンバーデンとか古い都を見てまいりますと、非常にすばらしいものがございますね。ところが、あそこに行って話を聞いてみますと、ここに緑の森があるから駅をどこに作るか、ホテルはどこの場所がいいかと。これを起点に百年ぐらいのスパンを掛けて町づくりをやっているというのがヨーロッパの都市なんですね。そういった感覚を是非我が国もそろそろ取り入れるべきではないかと思います。  それから、国内においてもいろいろ、公共事業の問題いろいろ指摘されますが、土木工事をやるときに、一緒に木をばっさり切ったりあるいは植林をしたりすることがございますが、このときに、土木業者の技術のみではなくて、造園業者あるいは木にかかわる専門家等に、どういった種類の木を植えたらいいのか、あるいはどういう形で道路あるいはその周辺施設を整備していった方が都市としての柔らかさ、緑の豊かな都市づくりができるのかと、こういった観点をもっともっと取り入れるべきだと思いますけれども、私は、ある意味では、環境省でできるのかどうか分かりませんが、そういった理想的な地域づくり、町づくりのモデル事業というものをおやりになったらいかがかと思います。
  87. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 私も、たしか二〇〇〇年だったと思うんですが、オランダに行きまして、生態系ネットワークというのを、国際学会がありまして、参加して、現地視察もさせていただきました。  そのとき感じましたのは、オランダという国の山が低い、標高が低いんですけれども、三百メーターほどしかない、それから運河沿いの緑をネットワークにつないで、野生動物がそこの緑を利用する、野鳥が利用するというようなことで、全土をネットワークでつなげていくという発想を勉強してきました。  私自身、現在、森林総研で野生動物研究をしていますが、先ほど草刈さんがおっしゃったような、国有林の緑の回廊を使った研究を、私自身ではありませんが、同僚が進めております。これは東北の国有林で、回廊という森林を野生動物が果たしてうまく使ってくれているかどうかという検証をしてみようということで、クマの、ツキノワグマですけれども研究を進めるというようなことが進められております。  それからもう一つは、奥山ではなくてもっと里山という観点でいきますと、例えばニホンリスがどの程度の森林を生息地としているのか、それが分断されて伐採されて小さくなっていくといなくなるのかというような研究を私ども研究者が行っておりまして、できることならば、そういう分断化された森林をいかにつなげていけるのかというようなことが問題になってくるんですが、これは、土地所有者あるいは森林の重要性というものをいかに地域の人たち、国民の人たちが重要視するかという点で、研究者側も重要性ということを明らかにしていくという役割があるのかなと考えております。
  88. 山下栄一

    ○山下栄一君 ありがとうございます。
  89. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 今、その町づくりという話が一つありましたので、この環境委員会では審議されないとは思いますけれども、今、景観法の問題が今国会に出されていると思うんですけれども、そこら辺もちょっと危惧しているところがあって、緑の景観を作ればそれでいいというわけではないし、また外来種を持ってきて植えればそれでいい景観があったというものではないので、そこら辺は注意して、景観法でやっていくにしても、あるので、縦割り行政でほかの部分になかなか口を差し挟むことはできないかもしれませんけれども景観法とかそういったところでも、外来種の問題の、使い方とか注意すべきだと思いますし、また、景観法の大きな流れの中では、文化財保護法の改正というふうなことで我が国の文化的な景観を指定するというふうな考え方がありますので、そういうふうな考え方の中でも、我が国固有生物相景観を、文化的に我々が作ってきた景観保全していくというふうなことは必要なことでありますし、そういう面では外来種という問題も関係ないわけではないと思っております。
  90. 山下栄一

    ○山下栄一君 ありがとうございます。国土開発の観点からも、このやっぱり生態的ネットワークという考え方が非常に重要ではないかというふうに感じておりますけれども、ありがとうございました。  次に、専門家の養成、人材育成にかかわることなんですけれども、例えば税関のお仕事や厚生労働省の検疫のお仕事をされている方もそうなんだと思いますし、また、先ほどの今回の法律にかかわります特定生物外来種の政令指定、どういう生物を指定するかということにかかわる判定につきましてもこの専門家存在が非常に大きいわけですけれども、この専門家といっても、もちろん学問的な観点、その学問的な観点も実践的な面、そしてまたNGOやNPOに取り組んでいる方々の様々な御経験や知識、実践に裏付けられた知識とかいうのが非常に私は大事だと思うんですけれども、こういう専門家という観点でいうと、私は、感覚的で申し訳ないんですけれども日本の大学その他のところで、希望する人は多いかも分かりませんけれども、受入れ体制や養成の体制が本当にこれからだなんということを感じております。    〔理事ツルネンマルテイ君退席、委員長着席〕  特に、この生物多様性国家戦略、新・生物多様性国家戦略の中に、二年前、ちょうど丸二年前ですけれども、記述がございまして、化学物質による生態系影響という大きな観点がございます。  特に、POPsにかかわる動物植物影響というのに限ってちょっとお聞きしたいと思っておりますけれども、化学物質、例えばダイオキシンにしろ環境ホルモン関係にしろ、農薬もそうかも分かりませんけれども、そういう動物植物に、鳥や魚や植物にどういう影響を与えるかということを具体的なデータを積み重ねながら研究していくということは非常に極めて重要な取組だと思うわけです。野生生物への影響がそのまま人間社会への影響にもつながる可能性も強いわけですし、ただ、化学物質の野生生物への影響ということを取り組んでおられる方々は非常に少ないのではないかなという、最近もそういう実際やっている人からも指摘を受けたんですけれども。  こういう野生生物の化学物質からの影響という面の研究の今の実態ですね、問題点、分かる範囲でちょっと、岩槻先生、また御専門からいうと山田先生もそうかも分かりませんけれども、ちょっと時間の関係で、簡潔にお願いできたらと思います。
  91. 岩槻邦男

    参考人岩槻邦男君) その生物多様性に関する基礎的な研究者、それを社会に応用するための技術者の養成ということに関しましては、その道の専門家でありながらこういうことを申し上げるのは非常に残念なんですけれども先進国としては非常に恥ずかしい状態であります。  何十年か前に欧米でも生物多様性研究に対する縮小が叫ばれたことがあって、欧米の主要な博物館の館長から、諸外国からもっとちゃんとやっておれという手紙が来れば首切りに対応できるというんで、援助の手紙が欲しいと言われたことがあるんですけれども、そのときには、三分の一になると言われて数を見たら、まだそれでも日本の代表的な機関の何十倍かという、そういうのを慨嘆しながら協力したのを覚えているんですけれども。  例えば、生物多様性に関する国際的なところで議論に参画するのは、ほとんど欧米ではミュージアムの、博物館の出身の人なんですけれども日本では残念ながらまだ博物館にそういう実力がない。それだけではなくて、もっと端的に申しますと、先ほどから生物多様性の情報の話が出ましたけれども、元来、生物多様性センターというのを環境省に作っていただいて、そこがもっと充実しておればそれに対する対応ができるはずですけれども、これは国際的な場で数を申し上げるのが恥ずかしいぐらいのスタッフで頑張っていらっしゃるというのが現状なんで、そういうところは、それを是非認識いただいて、こういう問題を機会に充実させていただくようにお願いしたいと思います。
  92. 山田文雄

    参考人山田文雄君) 私たちは、野生動物を対象にした研究を進めているという立場でありまして、日本的には数少ないというか、組織であるんですけれども、ちょうど平成十二年から十五年、四年間にかけまして、プロジェクト研究ということでダイオキシンの研究、それからPOPsの研究を行っております。  なぜ私たちが研究を行ったかということなんですけれども、これは野生動物を、鳥獣ですね、野生鳥獣を取り扱っている研究者というのが極めて少ないというようなことで私たちに声が掛かりました。現在のところ、もう予算が、我々に来る予算は打ち切られましたので、研究は行っておりません。分析に当たってやはり高額なお金が必要だということが一つの問題です。  研究を通じて分かりましたことは、やはり長期間のモニタリングが必要だということです。イギリスとかアメリカとか海外の野生動物を使ったモニタリングというのはもう長期間行ってデータを蓄積しております。  もう一つは、やはり影響把握をきっちり分かるかどうか。我々が行った研究では上位捕食者、カワウとか猛禽類は非常に蓄積が高いということが分かりまして、それのえさになっているネズミたちあるいはモグラたちというのを、生態系の中で様々な動物を調べたんですけれども、やはり現在問題になっているPOPsなんですけれども、モニタリング対象としては脊椎動物が入っていないというか、魚類は入っていたでしょうか、欧米ではネズミとか入っているんですね。日本ではそれが除かれているんです。その猛禽類たちのえさになっているえさ動物をやはり把握していかなければ生態系の中で有害物質、化学物質がどう循環していっているかということを把握することは極めて難しい。人間だけをターゲットにして考えるということではなくて、やはり生態系あるいは上位捕食者のことを考慮したモニタリングということが必要だというふうにそのときは感じました。
  93. 山下栄一

    ○山下栄一君 どうもありがとうございました。
  94. 草刈秀紀

    参考人草刈秀紀君) 専門家の育成というふうなことでちょっと一つ言っておきたいというか、専門家も育成しなきゃいけないということは、ただ学識経験者の育成は必要かもしれませんけれども、これから重要になってくるのは税関の人の育成ということが必要になってくると思うんです。  私どもトラフィックジャパンの方では、ワシントン条約の動植物取引を監視するのは税関ですから、税関の人たちの教育としてトラフィックジャパンのスタッフがワシントン条約の対象種の識別マニュアルを作ったりとかして、税関でも見分けられるようなことが必要になってくる。これからは、外来生物がこれから規制されるわけですから、税関の人たちも外来生物を識別することが必要になってきます。ですから、そういった人たちの育成ということも今後やっていかなきゃいけない重要なポイントだと思いますので、指摘しておきました。
  95. 山下栄一

    ○山下栄一君 もう時間、もうそろそろ参りましたですけれども、先ほども草刈参考人から景観法、それから文化財の観点からも法改正あるわけですけれども、こういう生物多様性の観点からの議論というのは余りされていないようにも思いますし、まだまだ、環境省は一生懸命頑張っておりますけれども、農水省、一部のところで一生懸命もがいて奮闘しているというふうな状況で、予算的にも、また人の養成の面でも非常に岩槻先生もおっしゃいましたように厳しい状況であるということを今日は認識できたことが非常に大きな私にとりましては成果でございました。  ちょっとほか、もう一つ聞きたいことあったんですけれども、時間ございませんので、また別の機会に御指導いただきたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  96. 長谷川清

    委員長長谷川清君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会