○島袋宗康君 私は、
国会改革連絡会(
自由党・
無所属の会)を代表いたしまして、ただいま
議題となりました本
法案について
反対の
討論を行うものであります。
以下、
反対理由を大きく四つの観点から述べたいと思います。
第一に、本
法案の
必要性が
判断できる
状況になっていないということであります。
予定利率の
引下げは、仮に
実施するとしても、最後の最後の手段となるべきであります。資産の運用
環境が現段階で良くないことは事実であります。また、政権交代でも起きない限り、今後もこうした
状況が続く
蓋然性は極めて高いと思われます。
しかしながら、
予定利率の
引下げという非常手段に打って出る前に、
保険会社がやるべきことはたくさんあるはずです。そうした会社の
経営努力が現在どこまで進んでいるのか、また、今後どのような努力をしていくのかについての考え方や道筋が全く示されていません。さらに、現段階では、利差、費差、死差といった
保険会社の
経営状況を
判断する上で必要な
情報公開は十分進んでおらず、また、将来において進むという見通しも立っておりません。
こうした
状況下で本
法案の
必要性を
理解することは無理であり、少なくとも現段階において必要な
法律でないことは明らかであります。
第二に、本
法案の基本的枠組みに大きな問題があることです。
本
法案では、
保険業の
継続が困難となる
蓋然性がある場合に
予定利率の
引下げができるとしています。この
蓋然性は、
保険会社が本来予測が困難な将来の株価や金利
状況をあえて予測し会社の
経営状況を
判断するもので、
金融庁がその妥当性を検証することになっております。しかし、この
蓋然性なるものは、その
判断のプロセスから考えてもかなり不確実なものと考えなければなりません。
一方、
予定利率の
引下げは、その
前提条件が
蓋然性という言わば仮置きのものであるにもかかわらず、
契約者の
負担だけは固定してしまうということを
意味します。しかし、当初の予想に反し、
予定利率引下げ後に景気が良くなり、結果的に
予定利率の
引下げは必要なかった、あるいは
引下げ幅はもっと小さくて済んだという場合が出てくることは十分想定されることであります。景気が良くなる
状況ですから、
政府の経済
政策が目指す方向でもあります。
問題は、この場合、本
法案には
予定利率の
引下げによって発生した
契約者の
負担金がどうなるのかということについて明確な法的規定がないことであります。
蓋然性という不確かなものを
前提とし、
予定利率の
引下げによって
契約者に
負担を求めることを認めた本
法案である以上、
法律で、求めた
負担の規模が妥当であったかどうかの事後チェックを会社に義務付ける必要があります。そして、必要以上の
負担を求めたことが判明した場合には、それを
契約者に還付する旨の規定を設けるべきであります。こうした規定を設けないことは、
予定利率の
引下げによって生み出された財源は会社がどのような使途に振り向けても構わないことを認めるのと同じことです。
蓋然性をうまく使うことで、事実上
保険会社は実に便利な資金調達手段を得ることになります。
こうしたことに何ら触れずに
引下げ規定だけを用意するのは、
法律の不備としか言いようがありません。この点の
法案修正は必須であります。
第三に、
法律の
実効性であります。
そもそも、本音かどうか分かりませんが、
保険会社の大半が事実上本
法案は必要がないと公言している以上、それを素直に尊重すべきであると思います。また、
保険会社は、
予定利率の
引下げを行うことを決めた場合の
契約解除の増加、新規
契約者の減少のリスクを恐れ、結局は
予定利率の
引下げには踏み切れないという
指摘はかなり現実性があります。
政府からどういう場合に
法案のスキームが有効なのかについての明確な
説明もなく、ただ選択肢を用意したでは説得力は持ちません。逆に、
法律の制定によって、
国民に各種保険に対する疑心暗鬼と不信感だけを残してしまいます。
第四に、言葉による虚飾が目立つ
法案だという点であります。
本
法案は、
保険会社が
契約者への
契約不履行、すなわち
契約反故を
政府公認で認めるものであります。かつまた、
実態上は
契約者が
負担をして会社を
破綻から防ぐという、一義的には会社
保護の
法律であります。
確かに、
予定利率の
引下げによって、
破綻時に比較し
契約者が将来受け取るべき
保険金の減額幅を小さくすることが可能かもしれません。しかし、そのための
負担をしている以上、
保護ではなく自助と言うべきものです。にもかかわらず、
予定利率の
引下げが
契約者保護というのは
実態を覆い隠す巧妙な言い換えで、実に問題であります。
また、
予定利率引下げの手続は
保険会社と
契約者との
自治的な手続によって行うと
金融庁は
説明しております。しかし、
契約者が会社へ
意見を言う、あるいは質問する
機会を全く与えず、
理解が困難な
資料を送付するだけで
同意を求めるなど、おおよそ
自治の名に値しない会社優先の手続となっております。
政府が本来やるべきことは、
破綻する
保険会社が出ないような経済
環境をつくることです。また、
国民の安心、安全確保のよりどころでもある保険
制度の維持は、あくまで
保険会社自身による
経営改善に向けた
徹底した自助努力と、
金融庁による厳格な検査と必要に応じた適切な早期是正
措置の発動などによる
経営の健全性の確保が基本であります。
本
法案は、こうした
原則を大きくねじ曲げるとともに、
保険業だけではなく
金融システム全体の信用を損なうものであり、白紙撤回を強く求めて、私の
反対討論を終わります。(
拍手)