○神本美恵子君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました
義務教育費国庫負担法及び
公立養護学校整備特別措置法の一部を
改正する
法律案につきまして
質問いたします。
その前に、昨十八日、米国が
イラクに対して
武力行使の最後通告を行ったことに対する
政府の
対応について一言申し上げます。
これまで、
政府の
イラク問題への
対応や昨日の小泉
総理の報道インタビューを見る限り、
政府は元々米国への
支持ありきと決め込んでいたとしか思えません。そして、なぜ米国への
支持以外の
選択肢がないのか、いまだに
国民に明確な
説明がされておりません。
我が国がなすべきは、
説明が付かない
アメリカ支持ではないはずです。
私は、女性
国会議員有志の皆さんと、先日、暴力からは何も生まれない、
武力攻撃を食い止めるよう小泉
総理に強く申し入れてまいりました。
日本の市民の八割を超す人が戦争に
反対しています。私たちは、唯一の被爆国として、また沖縄の地上戦、空襲被害の経験から、戦争が戦闘員のみならず多くの人々に計り知れない命を奪うこと、とりわけ女性と子供たちを深く傷付けることを身をもって知っています。
イラクの子供たちはどうなるのか、罪もない市民はどうなるのか、今、空爆の下に思いを致すべきです。
私は、改めてここで、
政府に
アメリカの暴走をやめさせるよう、何としても戦争をやめさせることを強く求めます。
さて、本題の
法律案に入る前に、教育の
基本的な事項について何点かお伺いいたします。
まず最初にお伺いしたいのは、今日、教育における最大の問題は何かということです。私は、高校卒業、大学卒業の若者たちに仕事がないということだと
考えます。
今
年度の高校卒業予定者の就職内定率は、直近の厚生労働省の調査によれば七四・四%、過去最低を記録した昨
年度を更に下回り、また、大学卒業予定者の内定率は幾分
改善したとはいえ、依然八三・五%と大変厳しい
状況となっています。
将来に夢を抱き、苦労して学校を卒業したのに、高卒予定者では約四万九千人、大卒予定者では推計で約六万二千人もの若者が自分を受け入れてくれるところがない。親にしてみれば、高い教育費を掛けてやっと卒業させたというのに我が子の働き場がない。これが
日本社会の実態なのであります。
完全失業率五・五%、完全失業者数三百五十七万人と言われますが、この約十一万人の若者たちはその失業統計にさえ入れられていないのです。高卒、大卒の若者を迎え入れることのできない社会を持続可能な社会と言えるのでしょうか。なぜこのようなことになっているのか。
小泉内閣の二年間で株価は暴落を続け、ついに八千円を割り込みました。
経済状況は極端に悪くなっています。デフレ
経済不況によって企業倒産が増加し、民間企業も公務部門も生き残るためにリストラ、人減らしを進め、新卒者を受け入れないからであります。つまり、小泉内閣の
経済失政によって、今日、高校、大学の新卒の若者たちがこんなつらい目に遭っているのです。
この
現状についての
認識と対策を、遠山文部科学大臣、坂口厚生労働大臣にお伺いします。
次に、小泉内閣が進めてきた教育
改革について
お尋ねします。
ここ数年来の教育
改革の方向は、
一つは教育
改革国民会議が提案した精神主義、道徳主義の強調と排除の論理であり、いま
一つは公教育における様々な自由化、市場主義的競争の導入であります。私は、こうした優勝劣敗、淘汰の市場原理や競争原理、自己責任の主張は、子供の学習する権利の保障、教育の
機会均等原則を損ない、大きく後退させるものであると危惧します。
そこで、文部科学大臣に、今進められている教育
改革はどのような理念に基づくものなのか、あわせて、公教育の様々な自由化、市場主義的競争の導入について御
所見を伺います。
また、
政府が現在進めている学力向上策は、
条件整備を伴わないスローガンと掛け声だけの施策です。昨年一月に出された遠山大臣の「学びのすすめ」アピールは、完全学校五日制
実施を前に、移行
措置など様々な準備を進めてきた学校現場に大きな混乱をもたらしました。昨年発表された国立教育政策研究所の調査によれば、対象となった中学校の校長、教員の約九割が、もっと学校現場の現実を踏まえた教育
改革にしてほしい、学級の生徒数が三十人を超えないようにしてほしいと答えています。
これを見ても明らかなように、
政府が取ってきた施策は、学校現場の切実な声を無視し、一部の学力低下論に押された国の責任の回避策であり、学校、教員、子供たちへの責任転嫁、押し付けにほかなりません。文部科学大臣の御
所見を伺います。
民主党は、現在の学校教育における
条件整備の最低保障、ナショナルミニマムとして、学校
施設の耐震化、教職員定数の充実と三十人以下学級の
実施を提言し、
法案も
提出しております。
国民が求めているのは正にこのような
条件整備であり、真っ先に取り組むべき喫緊の
課題であると思います。
昨年十月に公表された
地方分権改革推進会議の「事務・
事業の
在り方に関する
意見」では、
我が国は既に多くの
分野でいわゆるナショナルミニマムが達成されたとの前提で、これからは
地域ごとの最適状態、ローカルオプティマムの実現を目指すとしています。果たして教育
分野においてナショナルミニマムは達成されたのか、教育のナショナルミニマムの達成とは具体的にどのような
状況を言うのか、また、何万人もの行き場のない新卒者の
状況はナショナルミニマムが達成されていると言えるのか。今のような不十分な教育
予算と
条件整備の
状況の中では格差が拡大するだけで、
地域ごとの最適な状態をつくり出すとは
考えられません。文部科学大臣の御
所見を伺います。
次に、教育
基本法について
お尋ねします。
教育
基本法の
見直しについて、現在、中央教育
審議会において議論されていますが、この最終答申がここ数日中にも出されようとしています。そして、答申が出れば、それを受けて文部科学省は
法案化作業に入り、今
国会中にも
提出する構えを見せています。
教育
基本法は、世界の平和と人類の福祉に貢献するという憲法の理念の実現を、根本において教育の力にまつべきものであるとしてつくられた
法律です。この準憲法的な性格を持つ教育
基本法の
改正を文部科学省という一省の
審議会の答申によって発議すること自体が問題だと
考えます。
御承知のように、憲法については、現在、
国会に調査会をつくって議論されています。せめて
国会に教育
基本法調査会のようなものをつくり、十分な
国民的議論をすべき重大な問題であると
考えますが、いかがですか。文部科学大臣の御見解を伺います。
さらに、文部科学省は、今回の構造
改革特区において株式会社とNPOによる学校設置を認めましたが、これは教育
基本法第六条に違反するとの指摘があります。つまり、第六条では、
法律に定める学校は公の性質を持つものであって、国又は
地方公共団体のほか
法律の定める法人のみがこれを設置することができるとなっており、少なくとも明文上、矛盾があると
考えますが、いかがですか。また、今回の設置主体の緩和で公の性質が担保されるのか疑問です。併せて文部科学大臣にお伺いします。
次に、本
法律案についてお伺いします。
本案は、そもそも昨年五月の
経済財政諮問
会議で片山総務大臣が示した
地方財政の構造
改革と
税源移譲についての試案から論議が始まり、八月の
経済財政諮問
会議で遠山文部科学大臣が約五千億円の削減案を提示、結局、総額二千二百億円を
一般財源化することとなりました。この経緯からは、
経済、財政面からのみ議論が進められてきたと思わざるを得ません。
今回の
一般財源化には教育の
観点がどのように反映されているのか、片山総務大臣は義務教育費国庫
負担制度の性格と意義についてどのように御
認識されているのか、お伺いします。また、文部科学大臣は、
経済財政諮問
会議や
地方分権改革推進会議の主導でこのような
改革が行われることをどのように感じておられるのか、お伺いします。
さて、今回の
一般財源化は、
国庫補助負担金、
交付税、
税源移譲の
三位一体の
改革の芽出しであるとされています。しかし、対象となった共済費長期給付と公務災害補償基金
負担金は裁量の余地のない義務的経費です。これでは単なる帳簿替え以外の何物でもなく、
地方分権にもなっておりません。どこが芽出しなのでしょうか。私には、教育的な判断を棚上げして、額が大きい義務教育費国庫
負担金がねらわれたとの印象がぬぐえません。
交付税を今後どのようにしようとお
考えなのか、
税源移譲を本当に行うお気持ちがあるのか、また、どのような
税源移譲を行うおつもりなのか、総務大臣、財務大臣にそれぞれ具体的にお示しいただきたいと思います。
昨年十二月十八日の総務、財務、文部科学の三大臣合意では、二〇〇四
年度予算編成までに退職手当、児童手当等の扱いについて結論を出し、二〇〇六
年度末までに
一般財源化について
検討を行うとしております。
実は、この制度は過去にも同じような扱いがなされた経緯があります。一九五〇年、
地方財政平衡交付金制度が創設されたとき、その中に義務教育費国庫
負担金が吸収されました。しかし、わずか三年で義務教育費国庫
負担制度に戻っております。これは、当時の議事録によれば、交付金の額の
決定は常に
政治問題化し、義務教育費のような額の大きい、しかも重要な経費が圧迫されるという結果を招来しているためだとされております。
一般財源化にはこのような危うさがあるのではないですか。文部科学大臣、総務大臣の御
所見を伺います。
教育
予算を見ても、義務教育費国庫
負担制度に対する
一般財源化の
検討状況を見ても、財政論ばかりが先行し、教育論が見られません。世界各国では、今、教育を国政の最優先
課題として、知識の
世紀と呼ばれる二十一
世紀に
対応しようとしています。GDPに対する公財政支出学校教育費の国際比較を見ても、OECD諸国の平均は四・九%であるのに対し、
我が国はそれを大きく下回る三・五%しかありません。
小泉内閣は四つの重点
分野の
一つに教育を入れ、小泉
総理も、教育は未来への先行投資と
認識を一応示されていますが、この二年間の小泉内閣の教育政策を見る限り、本気で教育への投資を
考えていらっしゃるとは思えません。猛省を促したいと思います。
その上、
三位一体改革の展望が全く見えない中で教育の
基本である義務教育を弱めるような
改正を行うことは、将来に大きな禍根を残すことになります。また、この
法案の
提出に至る経緯で分かるように、たった七か月程度の論議で妥協的に合意されたものであり、十分な議論が行われているとは思えません。文部科学大臣も、今回の決着には本当のところは納得されていないのではないですか。いかがですか。
義務教育費国庫
負担制度は、繰り返しますが、義務教育制度の根幹を成すものであります。本
法律案が
三位一体改革の一環を成すものならば、その
三位一体改革の全体像を示すべきであります。全体像が分からない中で十分な
審議を行うことは不可能です。本
法律案は潔く撤回すべきと
考えます。
最後に、この点について文部科学大臣の御
所見をお伺いし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣遠山敦子君
登壇、
拍手〕