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加藤公述人 非営利、独立のシンクタンクを主宰しております
加藤秀樹でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
一月余りいたしますと、統一
地方選挙があります。今、それも含めて、市町村のレベルでは市町村合併というのが大変大きい話題、恐らく最大のテーマだと言っていいと思います。
一方で、合併促進のための特例法の期限、これが二〇〇五年に参ります。合併自体については、さあやるべきか、どうすべきか、いろいろあるようですが、特例債という、世上ニンジンと言われたりもしておりますけれども、お金を欲しいというのがあるものですから、焦って、やはり合併すべきかなという議論が大いに行われているというのが
現状かなと思います。
一方で、合併促進の大義として
地方行政あるいは
地方財政の効率化というのがあるんですが、果たして本当に合併をすることが
地方行政、
地方財政の
改革につながるのか、必ずしも十分に議論が行われているわけでもありません。そこについてはいろいろ異論もあるようです。
きょうは、そういうことについての御紹介を含めて、国と
地方の税
財政の関係というものについてお話をしたいと思います。
市町村の首長あるいは議員からよく聞きますのは、国会議員はどうも、恐らく立場上なかなか明確に態度を示しにくいのかとは思うけれども、合併について余りきちんとした話を聞けないという声をよく聞きます。それが実際にどうか、私は必ずしもよくはわかりませんが、そんなことも含めて、実は、構想日本と
経済同友会、それから提言・実践首長会という市町村の首長さんで構成する勉強会があります。この三者で全国会議員に対する合併についてのアンケートを行いました。まだこれは回収中でして、きょう御紹介できるのはまだ回収段階、百人を超えた段階ですけれども、それをあわせてここで御紹介したいと思います。
ちなみに、お願いのようなことになりますけれども、まだこれは回収中なものですから、もしまだ御
回答いただけていなければ、ぜひ後で御
回答をお願いしたいと思っております。
資料の、一枚表紙をめくっていただきまして、二枚目です。これは主にそこでの異論の紹介になっております。割合活発な議論を行っていらっしゃる首長さん十人余りにヒアリングをした結果です。
同じぐらいの
規模同士、あるいは大都会というのは比較的問題が少ないようですけれども、田舎、特に過疎地を抱えているところに行くと、住民の活動範囲が広がっている、だから広域化というのはそれは都市部の話である、
地方ではむしろ、公共交通網の不備とか
高齢化の結果、日常の活動範囲が狭まっているということも多いんだ、霞が関で机上で考えた一律の基準の適用というのは
地方の切り捨てになるおそれが強いというような異論もあります。
それから、
昭和の大合併、これは二十八年、三十七年と行われました。その後、結局のところ過疎化が進んでいるではないか、行政サービスの効率化が進んだとも思えない。やはり歴史にもっと学ぶべきだという声もあります。
それから、
財政悪化の本当の
原因というのは何なのか。合併というのは見かけ上の効率化にはなるかもわからないけれども、実際問題どの
程度財政がそこで
改革されるのか、むしろ
財政悪化の本当の
原因というものをまずちゃんと議論すべきではないのか。これはまことに正論であると思いますけれども、そういう声も実は強くあるようです。
それから、さらに言えば、合併特例債が結局のところまたむだな箱物に使われる可能性があるのではないか。合併バブルという言葉すらできているという声も聞きます。先ほど
富田公述人から
交付税のお話もありました。その延長線上に自治体の
モラルハザード、もらい癖と言っちゃ悪いかもわかりませんが、そういう言葉も使われます。それはもう直らないのではないかという声もございます。
一ページめくっていただきまして、三ページですが、これは現時点で、国会議員のうち御
回答いただいております百名の方の答えを集計したものです。現在の市町村合併の進め方について、大いにやろう、積極派。まあ
基本的には賛成だけれどもよく考えてやるべきだ、これを慎重派としました。それから、いや反対である、どちらかといえば反対である、合わせて反対派といたしました。反対、慎重、積極派、それぞれ三割余りぐらいで、割合拮抗しているというのが
現状であります。
それから、一枚めくっていただきまして、四ページ目です。昨年の秋に西尾私案と言われるものが出されました。これは、現在の合併特例法以降、新たにもう一度法律をつくって、
一定の人口
規模を持たない自治体を解消してさらに合併を進めていこうという案です。この西尾私案についてどう思いますかということを伺いましたところ、これはもちろん国会議員のお答えですけれども、賛成が三二%、反対が五九%という答えが出ています。
それで、最初のお答えで、積極派の中で七割ぐらいの国会議員が、西尾私案も含めて賛成だ。それから慎重派については、この西尾私案については、さらに進めようということについては二割強の方がイエス、しかし六割弱、五六%の議員がそれには反対だというお答えになっております。
次の五ページですが、
財政の健全化の手段として合併の意義は大いにあるのか、それとも、そうでもない、割合表層的で短絡的だということだ、どちらでしょうかと。余り意義がないというお答えが四七%、やはり意義があるのではないかというお答えが四一%になっております。
積極的に進めようという積極派の中では、確かに七六%の方が意義ありとお答えになっておられますけれども、必ずしもよくわからないとおっしゃる方がそれでも二割いらっしゃいます。慎重派、反対派になってくると、
財政健全化の手段としての合併というものにはかなり懐疑的だという御
意見が強いと思われます。
一枚めくっていただきまして、六ページ目ですけれども、これは、積極派と、
基本的には賛成なんだけれどももっとじっくり考えた方がいいという慎重派の中には、合併の
効果に関してかなり開きがあるというものを示したグラフであります。
五つの項目、
地方行政の効率化、
財政全般の
健全性、自治体の自律性、住民サービスの水準、地域の
活力、この五つについて伺いました。ちょっとわかりにくいんですが、星印が全体であります。それから、四角の線が慎重派であります。それから、丸でつないだ線が積極派であります。それから、ずっと低いところの数字ですけれども、三角でつないだ数字が反対派であります。
財政全体の
健全性について、全体としては五三%の議員が一応高まるだろうということですが、これも慎重派と積極派との間には二十数パーセントの開きがあります。また、住民サービスの水準あるいは地域の
活力に合併というのは大いに貢献があるんじゃないかということについては、積極派の方は八〇%を超えておりますが、慎重派については半分強、かなりの開きが出ております。
以上が、現在行っておりますアンケートの途中経過の御紹介です。
もう一枚めくっていただきまして、「「国と
地方のあり方」を考える時の
基本的な視点」という紙があります。これは、よく
地方財政について議論が行われますときに、立場によって皆さん御
意見が随分違うわけです。
例えば、
財政学者のおおむねの御
意見というのは、
補助金とか
交付税というものをもっと思い切って、もう全廃するぐらいすべきだ。それをやるから
財政全体として赤字になるし、
地方に
モラルハザードが起こっているんだという御
意見が強いわけです。
一方で、例えば
地方行政を束ねております総務省としては、いや、
地方交付税というのは、各省が
地方自治体に義務づけている、あれをやれ、これをやれと言っている
仕事の後からお金の面で面倒を見るという仕組みなんだ。だから、もし
交付税を変えるというんであれば、まず各省の
地方に対するコントロールを変えるべきだとおっしゃるわけです。
一方で自治体は、国からあれをやれ、これをやれと言われている、だからやらざるを得ない、それで金が必要なんだ。と同時に、まだ金が足りない。だから、まずは自主
財源をもっと
拡大して
地方の
財政力を強くするというのが必要なんだということを言うわけです。
それぞれ一面では正しいわけですけれども、
自分に都合の悪いところには余り言及していないという面もやはりある。まあ、みんなそれぞれ
自分のところのことは余り言わずにとりあえずほかの悪いところを指摘しているということで、結局どういうことかといいますと、もうこの辺は言うまでもない話ではありますけれども、そこの下にある絵ですけれども、国、都道府県、市区町村とずっと今は縦につながっていて、
仕事の指示なりコントロールが国からずっと自治体に行くと同時に、金とセットで動いているわけですね。
これが本当は、市区町村、都道府県、国がダイレクトに
国民あるいは住民とつながっていて、直接のやりとり、お金を取ってそれに対して行政サービスを行う、いわゆる受益と
負担というのがセットで行政体と
国民との間でつながっているという仕組みにするということなんだと思います。それを一面ずつ問題を指摘すると、先ほど申し上げたようなことになるのかなということだと思います。
このことは、実は、国が
地方にいろいろ指示を出してお金がセットというのは、結局のところ、今過疎化あるいは
地方経済の
活力がなくなっているということが言われますけれども、割合ヨーロッパなんかに行きますと、自治体、
地方の小さい
企業というのが元気だったりします。これは結局、国があれをやれ、これをやれというよりも、自立性が高い。高い結果、さあ
自分のところの売り物は何なのか、
自分のところのことを自前で考えてやっている結果、結果的に元気がいいということになっているということではないか。ですから、そういう
地方の
経済の活性化ということからも、国と
地方の税
財政の関係というのは非常に大事なテーマであると思います。
次の八ページは一枚飛ばしていただきまして、九ページを
ごらんいただけますでしょうか。
これは、過去二年ほど、下に十六県と書いてある、十六県の知事と構想日本で国と
地方の税
財政の関係について勉強会を開いてきました。
何をやったかというと、国と
地方の関係をお金、
仕事の両面で考えると、まずやはりやらないといけないのは
仕事の切り分けではないか。
仕事の切り分けを、これは抽象的な議論ではなくて、都道府県あるいは市町村の職員に、
予算書を一項目、一項目調べて、例えばこれはやはり県であれば県でやるべきだ、いやいやこれは国でやるべきではないか、これは市町村でやるべきではないか、いやこれはそもそも要らないのではないか、あるいは
民間の
企業がやったらいいことではないか。そうやって切り分けていきました。
切り分けるに当たって、本当は市町村でやるべきあるいは国でやるべきものを何で今都道府県でやっているのか、それは背景にこういう国からの規制があるからなのかという、その切り分け作業と同時に、国からのコントロールの有無をセットで整理したものがこれです。この十六県のうちの六県で、そういう職員と一緒に、現場の
人たちと一緒にやったところ、引き続き県でやるべき
仕事というのは平均値で五割強だ。三割ぐらいは市町村でやれる。国に行くのが六%ぐらい。それから、そもそも要らないあるいは
民間でやるべきというのが一一%という結果が出ております。
それから、これをやった上で、仮に今この県が一千億円の
予算だったとします。そうしますと、引き続きこの県でやるべき
仕事というのは五三%ですから、五百三十億で済むわけです。四百七十億は、それぞれ市町村だったり、もうやらなくて済んだり、国がやったりということになります。
そこで、次の作業というのは、じゃ、この五百三十億円をどうやって賄うか、これが
財政の話であります。
現在の、全く自前で集められる金、これが
地方税、あるいは借金ですけれども
地方債といたしますと、そこで足りない部分がどうなるのか。よく足らず前という言葉を使われます。その足りない部分を、
歳出削減をする部分、あるいは税源の国からの移譲、あるいは税率を高めるということで賄う部分、あるいは現在と違う形の
地方間の再分配で地ならしをする部分、この三つで
対応していくということになる。こういう整理であると思います。
ちなみに、十ページは、国から
地方に対していろいろなコントロールがあるわけです。それを土木と農林水産の分野だけについて、これも自治体の方に聞いてまとめたものであります。
最後に、八ページに戻っていただけますでしょうか、ちょっと前後して恐縮ですけれども。これは、国と
地方のあり方を見直すポイントを五つにまとめてみました。
まずは、やはり国のコントロールをとにかく思い切ってやめていこう。
地方がやるべき
事業に関するさまざまなコントロール、これは
計画という形、あるいは規制、基準、さまざまな形であるわけですけれども、これを思い切って切っていこう。その上で、
仕事のコントロールとセットになっている
地方交付税あるいは
補助金というものをもう原則やめていこうということであります。
これも先ほど
富田公述人のお話の中でも出てきましたけれども、これが
財源保障機能の廃止ということになると思います。
その上で、自主
財源というものを強くしていこう。それは、抽象的に言いますと、国税、
地方税の配分の見直しということになりますが、移譲税目の見直しということと同時に、税率の変更、
地方で独自に、うちはこの税金についてはもっと高い税金をかけようということもあっていいわけですね。なかなか今そのことを自治体が
自分で言いません。やはり首長さんも選挙で選ばれていますから、うちの税金がよそより高いということになってくると余り一般受けしないものですから言わないですけれども、これも本当はきちんと考えないといけない。
それから、そういうことをやった上で、
地方間のやはりでこぼこをある
程度ならす上で
財源調整、これは現在のような保障機能込みの
交付税ではなくて、例えばドイツで行われているような共同税、これは国は一切関与しない。日本が行っておりますような基準
財政需要額というものを定めて、そのもとで、いろいろマニュアルでここに幾らという配分の仕方ではなくて、
地方間だけで
一定のお金をプールして、それを極めて単純な、人口だけがいいかどうかわかりません、過疎地はもっといろいろな事情があると思いますから。それで、
地方間だけで配分していく、そういう機能も必要だと思います。
それから、一つだけ最後につけ加えますと、これも割合議論されていない、あるいは全く議論されていない点かもわかりませんが、これも先ほど
富田公述人の最初のお話にありました。今や
国債残高がGDPの
一三〇%を超えているわけですけれども、実は、このGDPの
一三〇%を超える
国債残高というのが国と
地方と両方で使われているわけですね。しかも、道路を含めて、資産の大部分はどこかの
地方にあるわけです。
ですから、この数百兆に上る国の負債、これの国と
地方間での切り分けというのが実は重大な問題であると思います。これをどういうふうに切り分けて、現在はそれは国が全部返すという仕組みになっているわけですけれども、実はこれは国と
地方できちっと
仕事も金も切り分けようということになると、資産、負債、特に負債サイドを切り分けるという作業が必須になってくると思います。それもあわせて考えないといけない。それを含めて全部やることが、小泉総理がおっしゃる三位一体の
改革に、中身のあるものにつながるということだと思います。
直ちに
予算委員会の議論にはならないテーマかと思いますけれども、これは
予算制度、
財政の私は最も
基本にある重大なテーマだと思いましたものですから、きょうお話をさせていただきました。ありがとうございます。(拍手)