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2000-09-28 第150回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成十二年九月二十一日)(木曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。    委員長 原田昇左右君    理事 甘利  明君 理事 金子 一義君    理事 斉藤斗志二君 理事 中村正三郎君    理事 原口 一博君 理事 遠藤 和良君    理事 中井  洽君       伊藤 公介君    伊吹 文明君       石川 要三君    大原 一三君       奥野 誠亮君    亀井 善之君       久間 章生君    栗原 博久君       小坂 憲次君    塩川正十郎君       砂田 圭佑君    高鳥  修君       中山 正暉君    丹羽 雄哉君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       福田 康夫君    牧野 隆守君       八代 英太君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    金子善次郎君       木下  厚君    佐藤 観樹君       城島 正光君    筒井 信隆君       中田  宏君    野田 佳彦君       日野 市朗君    平岡 秀夫君       横路 孝弘君    吉田 公一君       赤松 正雄君    桝屋 敬悟君       鈴木 淑夫君    達増 拓也君       木島日出夫君    志位 和夫君       辻元 清美君    横光 克彦君       山本 幸三君    井上 喜一平成十二年九月二十八日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 原田昇左右君    理事 甘利  明君 理事 金子 一義君    理事 斉藤斗志二君 理事 中村正三郎君    理事 佐藤 観樹君 理事 原口 一博君    理事 吉田 公一君 理事 遠藤 和良君    理事 中井  洽君       伊藤 公介君    伊吹 文明君       石川 要三君    大原 一三君       奥谷  通君    亀井 善之君       久間 章生君    栗原 博久君       小坂 憲次君    後藤田正純君       桜田 義孝君    塩川正十郎君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       高鳥  修君    中山 正暉君       丹羽 雄哉君    萩野 浩基君       福田 康夫君    牧野 隆守君       八代 英太君    石井  一君       岩國 哲人君    生方 幸夫君       金子善次郎君    菅  直人君       木下  厚君    城島 正光君       筒井 信隆君    中田  宏君       野田 佳彦君    日野 市朗君       平岡 秀夫君    横路 孝弘君       赤松 正雄君    桝屋 敬悟君       鈴木 淑夫君    達増 拓也君       小沢 和秋君    大幡 基夫君       木島日出夫君    志位 和夫君       辻元 清美君    横光 克彦君       山本 幸三君    井上 喜一君       西川太一郎君     …………………………………    内閣総理大臣       森  喜朗君    法務大臣         保岡 興治君    外務大臣         河野 洋平君    大蔵大臣         宮澤 喜一君    文部大臣    国務大臣    (科学技術庁長官)    大島 理森君    厚生大臣         津島 雄二君    農林水産大臣       谷  洋一君    通商産業大臣       平沼 赳夫君    運輸大臣    国務大臣    (北海道開発庁長官)   森田  一君    郵政大臣         平林 鴻三君    労働大臣         吉川 芳男君    建設大臣    国務大臣    (国土庁長官)      扇  千景君    自治大臣    国務大臣    (国家公安委員会委員長) 西田  司君    国務大臣    (内閣官房長官)    (沖縄開発庁長官)    中川 秀直君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 相沢 英之君    国務大臣    (総務庁長官)      続  訓弘君    国務大臣    (防衛庁長官)      虎島 和夫君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    国務大臣    (環境庁長官)      川口 順子君    内閣官房長官      安倍 晋三君    総理府政務次官      中原  爽君    金融再生政務次官     宮本 一三君    北海道開発政務次官    橋本 聖子君    防衛政務次官       仲村 正治君    防衛政務次官       鈴木 正孝君    経済企画政務次官     小野 晋也君    科学技術政務次官     渡海紀三朗君    環境政務次官       河合 正智君    沖縄開発政務次官     白保 台一君    国土政務次官       蓮実  進君    外務政務次官       浅野 勝人君    大蔵政務次官       村田 吉隆君    文部政務次官       鈴木 恒夫君    厚生政務次官       福島  豊君    農林水産政務次官     石破  茂君    通商産業政務次官     坂本 剛二君    運輸政務次官       実川 幸夫君    郵政政務次官       常田 享詳君    建設政務次官       植竹 繁雄君    自治政務次官       中谷  元君    政府特別補佐人    (内閣法制局長官)    津野  修君    政府参考人    (厚生省老人保健福祉局長           )            大塚 義治君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    予算委員会専門員     大西  勉君     ————————————— 委員異動 九月二十八日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     奥谷  通君   久間 章生君     桜田 義孝君   木下  厚君     石井  一君   平岡 秀夫君     菅  直人君   志位 和夫君     小沢 和秋君   井上 喜一君     西川太一郎君 同日  辞任         補欠選任   奥谷  通君     田中 和徳君   桜田 義孝君     後藤田正純君   石井  一君     木下  厚君   菅  直人君     平岡 秀夫君   小沢 和秋君     大幡 基夫君   西川太一郎君     井上 喜一君 同日  辞任         補欠選任   後藤田正純君     久間 章生君   田中 和徳君     亀井 善之君   大幡 基夫君     志位 和夫君 同日  理事池田元久君及び海江田万里君同月十八日委員辞任につき、その補欠として佐藤観樹君及び吉田公一君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件     午前十時開議      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に       佐藤 観樹君 及び 吉田 公一君 を指名いたします。      ————◇—————
  4. 原田昇左右

    原田委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  6. 原田昇左右

    原田委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として厚生省老人保健福祉局長大塚義治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  8. 原田昇左右

    原田委員長 それでは、基本的質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子一義君。
  9. 金子一義

    金子(一)委員 自由民主党の金子一義でございます。  総理は、今国会、二十世紀の最後の国会を二十一世紀日本をつくる礎に位置づけて、重要な国会考えておられます。どうぞ総理のお考えをこの委員会で、どんどん国民に理解をしていただくようにお述べいただくことを期待申し上げます。  まず、その礎になります教育問題について、冒頭に御質問をさせていただきたいと思います。  今度の教育改革国民会議分科会中間報告書でありますけれども、私これを何度も繰り返し読ませていただきました。すばらしい議論と、また、すばらしい提案が行われておると思っております。この中で、「教育という川の流れの、最初の水源の清冽な一滴となり得るのは、家庭教育である。」という曽野綾子さんが書かれましたここから始まりますこの文章、読んでいまして胸がわくわく私ですらしてくるのであります。国民の少しでも多くの皆様にこの報告書をこれから読んでいただきたい、そんな気持ちでいっぱいであります。  一つだけ、おばあちゃんの話を御紹介させてください。八十四のおばあちゃんなんです。この方が、私は今元気で介護の必要もない、しかし、介護されるようになったら、その私の姿を孫たちに見せて、そして孫たちに老い、人の老いとは何か、そして家族とは何か教えたい、やがて私にも死のときが来る、そのとき、みずからの体で孫たちに教えたい、人の死とは何か、人の命とは何かを。こう言い切ったおばあちゃんというのは大変幸せな方だと思うんです。  しかし、こういうお年寄りを含めまして、国民みんなが青少年の教育を大変に心配をされている。政治は決して情緒に流されてはいけないと私自身戒めつつ、教育は押しつけではいけないと私自身自問自答しつつ、あえて申し上げます。人の命の大切さ、そして家族のきずなの大事さ、こういう理念というものを教育基本法上に取り上げてもらうのに何のためらいがあるんでしょうか。  どうぞ、来国会というのは教育国会として、礎として位置づけられております森総理のこの教育問題についてのお考え冒頭にお伺いさせてください。
  10. 森喜朗

    森内閣総理大臣 教育問題といいましょうか、教育に対する改革といいましょうか、これは何も今に始まったことではなくて、長い、多くの政治家国民もみんな考えていたことだろうと思っています。  ただ、私は、ちょうどいよいよ今世紀も終わって新しい世紀に入る、いろいろな改革を進めていかなきゃならないだろう。その中には国際化という視点もありますし、情報化という視点もあるし、当然高齢化少子化ということもあるでしょうし、いろいろな角度から日本教育を一遍よく振り返ってみて、二十一世紀をしっかりと支えていってくれる日本子供たちをどういう教育環境の中から育てていくことが大事かということを改めてみんなで考えてみよう、そういうことで、小渕前総理の提起でこの教育改革国民会議への御審議をお願いした、こう思っております。そういうふうに承知をいたしております。  戦後、確かに日本経済をここまで大きく成長させてきた、日本国民はやはりむしろ心をそこに置いていたと思うんです。確かに、それだけの十分な力を持つ、技術も持ち、経済も持つ国になった。しかし一方、静かに振り返ってみると、さまざまな問題がこの社会に露呈をしてきた。それを一つ一つ分析していくと、いろいろな要素はあるんでしょうけれども、やはり教育というところに結局落ちついてくる、たどり着いてくる。やはり人間というのは教育によって人間になっていくというのは、これは先人の言葉でもあるわけでありますけれども、そう考えてみると、今の社会のいろいろな現象というのは、恐らく日本のどの国民も、これでよかったんだろうか、これで本当に日本教育はよかったんだろうか、そんな思いを、私はどの国民皆さんもやはり心配をしておられるんだろうと思います。多くの成果を得てきたと思いますし、すばらしい教育の実績もあると私は思いますが、しかし、ごくわずかなことかもしれませんが、やはりまゆをひそめるようなことが、また心を寒々とさせるものがあることは事実だというふうに考えれば、そこの点についてやはり反省をしていく、そこの点について改革をしていくということが大事だというふうに思います。  今、金子議員がおばあちゃんお話をとられ、人間というもの、死というもの、そういうものを例としてお話しになったことが人間教育のすべてだろう、私はこう思っております。  そういう意味で、そうしたところに視点を少し置いていくべきではないか。優秀な、すばらしい、学問を身につけていくことも大事だけれども、最も大事な人間としての良識をわきまえていく。これからの教育は、社会の中に生きていく一国民として当然持っておるべきような良識、そういうものをしっかりとやはり教えていく人間教育、全人教育ということにむしろ私ども軸足を置くべきではないか、私どもはそのように考えて、今回の中間答申をいただいたわけでございます。  これを、先ほど金子議員もおっしゃいましたように、多くの国民皆さんにやはりよく見ていただいて、知っていただいて、そういう意味でこれから地方での公聴会ども考えておられるようでございまして、そしていよいよ最終答申報告をまとめていただくようになろうかと思っております。政府といたしましても、今いただきました中間答申について早速対応でき得るように、大島文部大臣にはそのことをお願いいたしておるところでございます。  本当に今大事な時期でありますから、これは与野党を超えてみんなで、日本の将来に対してみんなが思い一つにして、どういう教育日本の国の将来にとって大きな支えになっていくのかということをやはり真剣に考えていただく。そういう意味で、私は、次の国会にはそうした関連の法案をお願いして、そしてみんなで日本教育考えていくような、そういう国会にしていただきたいものだな、そういう思いで申し上げたわけであります。
  11. 金子一義

    金子(一)委員 総理のそういう御決意そのものがまた国民の関心を呼んでいただく、そして国民にいろいろな議論を出していただく、その過程につながってまいると思っておりましたので、どうぞ、今おっしゃられた御意見を踏まえながら、どんどん国民の多くの方々を巻き込むような議論をしていただくようにお願いを申し上げる次第であります。  ちょっと個別になります。シドニー・オリンピック選手が大活躍をされていまして、これは文部大臣大島大臣にお願いしたいのでありますけれども女子マラソン高橋尚子選手が優勝されましたけれども高地トレーニングというのをやっているのですよ。コロラド、アメリカ、あそこまで行って、二千メーター級でやっている。陸上だけかと思ったら、水泳選手、海に潜るんじゃないのですね。高地に行って水泳もやっていて、好結果を得ている。これはやはり、海外へみんな行っちゃっているのですけれども、国内でもそういう高地トレーニングセンターというのをつくったらどうかという議論が随分今出てきております。  地元の場所で恐縮なんでありますけれども、御岳山という、これは二千メートルの高さなんですけれども、今、大学の先生、専門家、これを含めまして、本当にその効果があるかどうかというのを調査をやってもらっているのでございますけれども総理のお地元白山がある、大臣のお地元に八幡平がある、いろいろありますけれども、ぜひ、どこというのは別としましても、これを進めていただくこと、それがオリンピックで大活躍をした選手へのプレゼントになると思っております。大臣に。
  12. 大島理森

    大島国務大臣 金子委員お話がございましたように、高地トレーニングというのは大変今重要なポイントだと思っておりまして、高橋選手は確かにボルダーという三千五百メートルのところで訓練、トレーニングをされました。あるいは市橋さん、女子マラソンの十五位をとりましたが、サンモリッツでやられた、これは約三千メートル。今お話しされた水泳でございますが、アリゾナ、二千百メートル。そういう高地トレーニングについてのさまざまなトレーニング成果があちこちに出ております。我が国としても、いわゆるナショナルトレーニングセンター、この整備について本格的に検討に入らなければならない、こう思っております。  したがいまして、来年に私ども予算要求をいたしまして、まず、どういう国立のトレーニングセンターが必要かという議論を始めたい。そういう中で、高地トレーニングセンター必要性、あるいはまた平地でのトレーニングセンター必要性、そういうさまざまな議論をしながら進めてまいりたい、こんな思いでございます。  いずれにしても、金子委員指摘のように、今、多くの国民に、すべての国民に感動を与えたあのオリンピック、やはりそこにおいては科学的なトレーニングのあり方というものも真剣に考えていかなければならない。御指摘のようなことも踏まえて来年から本格的な調査に入ってまいりたい、こう思っております。
  13. 金子一義

    金子(一)委員 ぜひ本格的に進めていただきたいと重ねてお願いいたします。  さて、経済の現状について総理にお伺い申し上げます。  もう既におっしゃっておられますように、明るさが見えてきた、本当にいい状況が少しずつやってきた。ただ、御指摘になられましたように、業種間の格差といいますか、業種間によって違い、ばらつきが出てきている。都会と地方というこの地域間のバランスも出てきている。こういう問題をどういうふうに我々考えていくのかというのが、今のもう一つポイントになってきているのだと思います。  総理のお地元地元ばかりで恐縮でありますけれども白山を挟んで私と隣同士でありますけれども産業といいますと、温泉を中心とする観光、それから、私のところは家具、木工、総理のところは九谷焼といったような、それから高冷地蔬菜もそうでありますね。ただ、いずれも、厳しいだけじゃなくて、海外からも家具がどんどん安いのが入ってくる、野菜すらどんどん輸入されてきてしまう。しかし、企業というのは、こういう厳しいときというのは物すごく強いものだな、物すごく対応が早い、これも感心していることでもあるのです。  家具というのは、今まで、つくったものを売るのだったのですけれども、今何をやっているかというと、置いてもらう家の間取り、色調、そういうものを事前に送ってもらってコンピューターに入れて、そしてそれに合わせて設計をして製造するという、もうITを先取りしちゃっています。温泉もそうなんです。お客は宿泊が少ない、伸びてこないならば、昼間、これまでと違う客層に来てもらって、ゆっくりおふろに入ってもらった上で少々豪華な食事をしてもらう、それでやっていけるような経営体質にどんどん変えていこう。大変な苦労、工夫をされておられまして、むしろ、厳しい厳しいと言ったってしようがない、どうやって生き延びていくかだ、これが昨今の動きではあると思っておるのです。そういう努力をする人たちに何とか報いていきたい、そのためにも経済をきちっと回復させる、それが我々の役割である。  ただ同時に、我々これから考えていかなければいけないのは、一方で、全体を支えるだけではやはり済まない、どんどん我が国の将来を引っ張ってくれるような分野地域産業、そういうところもどんどん伸ばしていくという、両方に目を配って、両方の芽を育てていくということが一方で大事だという難しさを迎えているのだと思います。  総理もおっしゃっておられます。我が国経済は古い殻を破って新しい構造に転換している真っ最中だと。そういうものを踏まえまして、どうぞ、当面の経済運営財政運営についてのお考えお話しいただきたいと思います。
  14. 森喜朗

    森内閣総理大臣 詳細、経済企画庁長官からでもまた補足をしていただけたらと思いますが、今金子議員お話を承りながら、確かに、これまでのさまざまな努力で緩やかな改善をしておりますことは、御承知のとおりでございます。  しかし、今お話がございましたように、雇用情勢がいまだ厳しいというのは、そういう労働ミスマッチというものがやはりあるんだろうと思います。環境あるいは介護、そしてまたIT関連、そうしたものの人の需要というのはかなり多くなってきているわけですけれども、なかなかそれらに対する技術の習得が間に合っていないという面が、雇用の問題としてまだまだ厳しさが残っているんだろうと思います。  それからもう一つは、やはり倒産が多いということ。なかなか今の時代に乗っていけないといいましょうか、ある種のあきらめみたいなものもあるんだろうと思います。そういうことが企業意欲を、他にもいろいろな理由があるんだろうと思いますが、企業意欲が喪失していることもやはりあるんだろうと思いますね。ですから、そういうところの穴をどう埋めていくかということがここ一番大事なことだろうと思うのです。  それからもう一つは、今これも金子さんおっしゃいましたように、地域的な差がかなりございます。経企庁はウオッチングというものを設けて、それぞれの地域景況感をいろいろ把握しております。やはり今申し上げましたように、今の時代に乗っていけるような企業、全くそういう時代に乗り合わせができないような企業地域によってかなりばらつきがございましょう。  それから、今例えば温泉お話がございましたように、いろいろな工夫をしながら営業努力というものを皆さんがそれぞれの分野でなさっておられます。しかし、何といっても、全体的に景気がよくなったねという実感が国民の中に出てこなければならないだろう。それはやはり消費という問題なんだろうと思います。  ですから、国民皆さんには、大変御無礼な言い方かもしれませんが、よく言われるように預貯金というのはかなりあるわけですね。それがなぜ流れていかないのかということは、これもさまざまな原因があるのだろうと思いますけれども、そういう、地域全体に漏れなく、ばらつきがないようにして全体的な景気を浮揚させていくには、これは即効性があるものはやはり公共事業だろう、そう思うのです。  ですから、そういう意味では、公共事業も十分に見きわめながら、効率よく、これも公共事業についていろいろな意見はあるけれども地域によってはそのことにウエートを置いていかなければならぬところは、かなり私は北海道を初めあると思うんですね。ですから、今回の新たな補正予算の編成に当たりまして、そういうところをきめ細かく、今経企庁の方で検討していただいておりますので、改めて関係閣僚ともよく御相談を申し上げて、そしてまた各省庁のいろいろな要望も承りながら、従来のように、補正があるから、さあ、今までやり残したことをやろうよというような安易な公共事業等であってはいけないというふうに私は思います。ですから、そういう意味では、本当に実効性があって国家国民にとって大事なところ、その地域にとっても大事なところということを十分に精査する必要があるだろう、そう思っています。  そして同時に、お金を投資して社会的なインフラを整備していくことが将来の日本の新しい道につながっていくことと、そして新しい産業がさらに大きく生まれ育っていくような、そういう基礎的なものになるようにすることも今回の予算措置では大事なのではないか。そういう意味で、四分野を中心にした新しい日本新生プランというものに乗って進めていきたい、このように考えているわけであります。
  15. 金子一義

    金子(一)委員 そういう中で、資金面という意味で、中小企業の方々が相当苦労されておられる。中小企業の方々、担保がない、特に土地担保がないと借りられないよ、これは今までと全然違っちゃっているよ、こういうのが随分聞こえるんです。  ただ、一方、中小の金融機関の皆様方からは、やはり、金融検査マニュアルにしっかり準拠して、そして運営していこうとすれば、もとの担保、特に土地といったようなところに戻っていかざるを得ないんだよねと。確かに、銀行全体、金融機関全体で見ますと、日銀金融統計でありますけれども、この五年間で三十兆円、中小企業向け金融が落ちているのが今の現状だと思っているんです。  相沢金融再生委員長、一方で経済を刺激しながら、金融という社会で見ると、特に中小金融でありますけれども金融が縮小するという、相反するベクトルが今両方で起こっちゃっているというような見方がかなり多いのであります。そうはいいましても、金融検査というものは、やはり地域の実情にきちっと合った状況というものをつくって、合ったものにやっていただきたいと思いますけれども、同時にやはり、回り道のようではありますけれども、そういう中小金融機関の皆さん経営体質を強化してもらう、資本増強対策の必要があればやっていただく。  前国会では、こういう中小金融機関、信用金庫、信用組合は資本増強がちょっとやりにくかったのでありますけれども、法律改正をいたしましたよね。そして、よりやりやすくするようにさせていただいたのでありますけれども、やはりこういうものを使いまして中小金融機関の経営体質を強化してもらうということが、回り道であっても中小企業事業者への円滑な資金供給を進める上で早道になってくるんだろうと思っているのでありますけれども、今後の金融庁の、この中小企業金融の問題と、そして将来これをどういうふうに進めていくかという御方針、あわせてお伺いをいたします。
  16. 相沢英之

    ○相沢国務大臣 お答えいたします。  私も、いろいろ地元の中小企業の方々からお話を聞くにつけても、貸し渋りは解消しているという金融機関側の説明に対して、いや実際はそういうことじゃない、なかなか銀行は金を貸してくれない、まず担保がないからだめだと。それから、金融マニュアルのあれが厳しく適用されるようになって、特に信用組合等においてもそういう問題があるということを耳にいたします。  しかし、今お話がございましたように、例えば信用金庫や信用組合、いわゆる協同組織金融機関につきましては、あなたが大蔵委員長の当時に金融二法の改正を行って、資本増強が行えるようになりました。でありますから、そういう信用金庫、信用組合等に対しましても、貸し出しに影響があるような状態にあれば、当然において資本増強についても考慮していかなければならぬというふうに考えております。  それから、資本増強につきましての中小企業に対する貸し出しも、御案内のように、十二年三月末の実績で対前年度四兆二千億でございましたが増加もしておりますし、それからまた、中小企業関係の政府関係機関の融資についてもいろいろと拡充措置を講じているということでありますから、私は相当な程度改善しつつあるというふうには思っております。  ただし、おっしゃるように、まだまだ、これで十分であるかといえば、いろいろ御注文もあるし、また実情に即した対応も必要だと思っておりますので、その点については十分に考えていくようにしていかなきゃならない。  それからもう一点、これは中小企業庁の関係でありますけれども、例の融資に関する特別保証制度、これは来年の三月までということになっておりますけれども、その期限が切れる後の措置についても、今、一般保証枠の拡大等々、中小企業庁においてその検討が行われておるし、私もその成果に期待をしていきたい。いずれ法律改正の形でもって国会において御審議をお願いすることになる、このように考えております。
  17. 金子一義

    金子(一)委員 信用保証枠について平沼大臣に、通産大臣にお伺いしようと思ったのでございますけれども、今ちょっとお答えがありましたものですから、申しわけございません、割愛をさせていただきまして、財政構造改革の問題に触れさせていただきたいと思うんです。  総理がこの問題、本会議の演説でお話をされています。準備は今から始めなくてはいけない、そして、まず財政の効率化、質的改善を進めると述べておられまして、今度の補正、そして来年度の通常予算、多分、私、非常に大きく踏み込まれたと思っているんです。どこか野党の本会議の演説の中で、言葉だけとおっしゃっていましたけれども、相当実質的に大きくかじを切り始められたなという実は印象を持ってこれを受けとめているんです。  一方で、景気回復をより確かなものにした上ではありますけれども、税制、社会福祉、国と地方のあり方といったようなものを視野に入れて取り組んでいきたい。このことは、宮澤大蔵大臣もこれまでの国会で述べておられまして、しかしね、膨大な作業量になるな、時間のかかるテーマでもあるなとおっしゃっておられましたが。  今度、経済財政諮問会議というのが来年から発足されると伺っておるのでありますけれども、こういう大きなテーマというものをここの場で御議論を始めていただくということはどうなんだろうか、何とかそういうことを検討いただけないんだろうか。  なぜか。一つだけ申し上げます。経済財政改革とか財政再建といいますと、大蔵省の諸君は直線的に進みます。鋭角的なんです。一直線に行ってしまうんです。コンコルドみたいなものですね、びゃっと行ってしまう。例えば歳出の一割カットとか、歳出を抑えてしまう。それから、何年か後に目標を定めて、それに向けて、つまり出口をふさいでしまう。こういうやり方をこれまでとってこられたのだと思うのですよ。このことというのはうまくいかなかった。何でうまくいかなかったとつらつら考えてみますと、財政再建のための財政再建になってしまっているんです。  それでは、これから、総理がおっしゃられたように、税制とか社会福祉とか国と地方の関係といったものを考える上では、今までのやり方、大蔵省が悪いと言っているのではないのです。彼らはまじめだと言っているのですけれども、これだけではやはりなかなか国民の理解というのが得られないのかもしらぬ。  私は、やはりIT、これから五年後にすばらしいIT社会をつくるね、総理の言われているIT社会、これが実現すると、すばらしいこういう世の中になりますねと。学校、教育、学級編制も少人数学級ができて教育環境がよくなります、少しお金がかかるかもしれません。福祉、年金も、これだけは絶対に確保いたしますよ、しかし少し御負担を願うかもしれません。何よりもそれよりも、七十になっても八十になったって働ける場所、これを提供いたしますよ。お宅にいるお年寄りは、かかりつけの医者とインターネットで結ばれて、そして、いざというときには診断を得られますよ。そういう、いわば明るいイメージの社会というものを、だからそのためには財政再建というのは必要なんですよ、財政構造改革は必要なんですよという国民的な理解を求めていって初めて成り立ち得る。  こういう視点というのは、こういう長期の問題でありますし、経済諮問会議というものを通じてやっていただくというのが一番望ましいのではないかと思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  18. 森喜朗

    森内閣総理大臣 今、コンコルドとおっしゃいましたけれども、私も国会へ出ましてから三十年を超えておりますので、長い間、与党という立場の中にあっても、行政の皆さんといろいろな議論をしてきました。コンコルドという言い方がいいのかどうかわかりませんが、基本的には、やはり役所というのは単年度主義ということじゃないでしょうか。今は、単年度で物を一つ一つきちっきちっと数字を出していくということが、むしろその数字を出すためにかなり制御的なことが行われているということになろうと思うんです。  いろいろな過去のそういう経験も自分なりに考えながら、今度改めて中央省庁が発足するわけでありますが、その中央省庁の最大の大きな意義づけはいわゆる経済財政諮問会議だろう、そういうふうに思います。  この経済財政諮問会議は、金子議員よく御承知のとおり、経済運営に関する事項、財政運営の基本その他経済財政政策に関する重要事項について、有識者の意見を十分に反映させながら、内閣総理大臣としての指導性を十分に発揮するということを目的に内閣府に設置するということになりますので、今お話がありましたようなことなどを十分参考にして議論をしていくことになるんだろう、そう思っております。  したがいまして、当面これから日本の財政構造について改革していかなきゃならぬし、このことについて避けることはできないわけであります。しかし、私の姿勢は、今金子議員からの一つの御判断をいただいたような感じが、非常に評価をいただいたことはありますが、私としては、やはり景気をしっかりしていくということが、財政を改革し、財政を改善していくには、何といっても税収ということをやはり一番考えなければならぬわけでありますから、そういう意味で、日本経済がまずは本格的な軌道に乗るということに引き続き大きなウエートを置くということは、基本的には私は変わっておりませんし、そういう考え方でこの補正予算にも取り組んでいきたい、そういうふうに思っています。  そして、先ほど議員からも御指摘がございました、その上で財政再建にどういう道筋でたどっていくかということはまた改めて、今お話をいただきましたように、そうした有識者やいろいろな方々の御意見をいただきながら、また日本の行政をしっかりと担当してきた役所の皆さん意見も十分聞くことも当然のことであろうと思いますが、政府や民間一体になって、日本の財政改革が本当にこれから国民皆さんに理解が得られるような、そういう透明性を持って進めていかれるように最大限の努力をしていきたい、こんなふうに考えております。
  19. 金子一義

    金子(一)委員 私も、どんな状況であっても、財政構造改革とか財政再建、こういうものを踏み出すときには、絶対的な、マクロ経済的な支援というものが必要であるということはもとより大事なことであると思っているのです。  ただ、アメリカンドリームという言葉があります。親の世代たちよりは子供の世代の方がより豊かだ、そして孫の世代がより豊かだ、このことは決して我が国にとっても無縁ではなくなってきたのかもしれない。そのことを実現していくのが私たちの責任でもある。そういう意味で、議論をなるべく早くスタートしていって、そういう大きな絵をかいていただきたい、我々もいきたい。そういう思いでこういう——今、長期の問題を議論する場所がなかなかないのです。財政諮問会議というのも、御指摘がありましたような単年度の考え方でいかれるということでありますので、政治政治として、一方でこういう長期の問題というものを検討する場として御活用、御検討をさらにいただきたいと思っております。  IT問題について、総理はいろいろおっしゃっておられたのであります。五年後にだれでもが手に触れられるというIT社会、これを具体的に翻訳いたしまして、堺屋長官、これが実現されますと我々は、うちの中では何が変わるのですか、外へ、社会に出ると何か変わるのですか。まだ我々見えないのですけれども、ぱっと桜が咲くような話をちょっとやってください。
  20. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 IT社会の未来についてはいろいろと議論されておりますけれども委員指摘のように、これは世の中全体にかかわる問題でして、大きな変化が起こると思います。その一番のあれは、我々が目指します日本IT社会のまず第一として考えるべきことは、個としての自立した個人がデジタル情報で結ばれることによって好みの縁でつながる世の中、いわば好縁社会というようなものが誕生するんじゃないか、これが非常に重要なポイントだと思っております。  日本は、かつて大家族の血縁社会あるいは村や町ごとのまとまった地縁社会でございました。ところが、戦後、それが崩れまして、高度成長の中でみんな大都会へ出てきて、職場のえにし、職業のえにしでつながる職縁社会になったわけです。高度成長はしたのでございますが、今、終身雇用制が崩れ、労働力の流動化が言われ、職業がどんどん変わる、産業も変われば職場も変わると言われております。そういった中で、多様な知恵の社会を迎えるのに、職場に結びついた社会だけではなくして、本当に人々が好きこのみ、そういったことで楽しく結びついて、そして安全に生きられる、そんな社会が出てくるんじゃないかと思っています。  そのあらわれとして、既に若い人たちの間では職縁社会、職場人間、会社人間というのを拒否するようなフリーター志向というのがあらわれていますし、一方ではテーマコミュニティーというようなものが生まれてまいりまして、退職した後の人々も楽しみかつ働けるという世の中が生まれてきております。  こういった日本型デジタル社会、情報で好みでつながる社会ができる、これが重要でございまして、それだけに日本では、全国民がデジタル情報につながっている、そんな社会を一日も早くつくらなければならないのではないかと思っています。  産業経済的に見ますと、IT革命が進行いたしましたら、個人や組織の活動が情報技術上の制約を外れまして自由に飛躍できる、そういう意味経済社会のさまざまな面でのダイナミズムと創造性が高まってくるだろうと考えています。そのことが、生産性を向上し新しいビジネスを生む。人間の、国民の生活を便利にし楽しくしていくというような、楽しさと便利さが増進するということも期待できると思います。  また、企業の経営の面で見ますと、ネットワークの取引でありますとか、企業経営の効率化、生産性の飛躍的な向上といったものがもたらされまして、消費生活にも利便と選択の幅が広がるというようなことが起こってくると思います。  ITとは、今までのパソコン技術などと違って人と人とをつなぐネットワークでございますので、これをより安くより速くより美しいネットを実現することで、すべての国民ITを基礎とした活用能力を身につけて、多様な魅力的なコンテンツを充実させていく。光ファイバーでつながった世界というハード、それからみんなが使えるというソフト、そして便利で楽しいコンテンツ、情報の中身、この三つを同時的につくり上げていくことで、五年くらいの間に、人々が好みのえにしでつながって、職場を離れても年をとっても、安心できる、便利で楽しく生きられるような社会ができ上がるんじゃないかと思っております。
  21. 金子一義

    金子(一)委員 ありがとうございました。  ただ、まだ三分咲きぐらいなイメージで、これから、これをさらに進めていくために、また政府としてもどうやって国民に説明していくのか、御努力をいただければと思います。  いろいろ御質問、大臣にもお願いをしておりましたけれども、時間も参りましたので最後の質問とさせていただきます。  自治大臣にお願いしたいのです。  公設秘書の給与問題。前民主党の山本譲司君の事件をきっかけにいたしまして、この公設秘書給与のあり方、与野党を通じて検討をされるべきであると思っておりますし、その動きもようやく出てまいりました。  そういう中で、昭和四十八年から平成十年まで共産党参議院議員の公設秘書を務められました兵本達吉という方が、公設秘書給与の扱いに関して、日本共産党及び同党代表者ほか数名を、政治資金規正法違反の刑事責任を問うべきとして東京地検に告訴いたしまして、今年七月、受理をされました。  告発状によりますと、日本共産党は、長年にわたり、同党所属の衆参両議院議員の公設秘書から、両院より支給される公設秘書給与の約半額を強制的に徴収している。その仕組みは、両院から支払われる給料は、まず共産党議員団名義の預金口座に一たん振り込まれまして、その後、公設秘書本人に対しては、約半額を天引きの上、党から支払われる。これが仕組みだそうであります。同人の場合も、過去十年間で、参議院からの支給額約一億円に対しまして、実際の党からの支給は五千三百六十万円にすぎなかったと記しております。  この告発状によりますと、兵本さんは、日本共産党より、党に寄附する意思がありますかという確認を求められたことはない。また、それに対して異議を申し立てたならば、直ちに解雇されることは確実であった状況だ。つまり、本人の同意もなく、半ば強制的に給与を天引きされたとこの告発状の中で申し立てておられます。  この共産党の給与天引き問題というのは、昨年、確かに一部マスコミで取り上げられました。これを機会に、日本共産党は、秘書給与の徴収分を個人寄附金として政治資金収支報告書に記載をするようになりました。これだと思うんですけれども平成十一年度の日本共産党の政治資金報告書では、個人寄附金が約十二億三千六百万円と、前の年に比べて倍増しておりますが、これもそういう処理をとったためであろうと思われております。  そこで、自治大臣、寄附のあっせん者が個人に対して半ば強制的に当たるような方法によって寄附のあっせん行為を行ったということであるならば、政治資金規正法上どのように扱われるかをお伺いさせてください。
  22. 西田司

    ○西田国務大臣 お答えをいたします。  政治資金規正法第二十二条の七では、第一項において、「何人も、政治活動に関する寄附に係る寄附のあつせんをする場合において、相手方に対し業務、雇用その他の関係又は組織の影響力を利用して威迫する等不当にその意思を拘束するような方法で、当該寄附のあつせんに係る行為をしてはならない。」とされておるわけであります。また、同条第二項においては、「政治活動に関する寄附に係る寄附のあつせんをする者は、いかなる方法をもつてするを問わず、寄附をしようとする者の意思に反して、その者の賃金、工賃、下請代金その他性質上これらに類するものからの控除による方法で、当該寄附を集めてはならない。」とされているところであります。  そして、これらの規定に違反した場合については、第二十六条の四第一号、第二十六条の五第一号にそれぞれ罰則が設けられているところであります。  以上でございます。
  23. 金子一義

    金子(一)委員 条文の一つ一つが御回答であったと思っておりまして、公設秘書の給与、これは税金で賄われているわけですから、組織的に公設秘書から献金をやらせるやり方というのは、税金をいわば分け取りするという行為そのものと言わざるを得ないのですよね。  日本共産党は、政党助成金というのは国民の税金を分け取りする憲法違反と批判をいたしておりますけれども、まさにこの今おやりになっている行為というのはその行為そのものだと我々は思っておりまして、ちなみに、この兵本さんという方は、ことしの春にある月刊誌に手記を載せまして、この手記の記事の中で、自分は四十年近く在籍した共産党から密告者として査問されたと。そして、その査問というのはどういう意味か。同氏によりますと、昔ながらの暗黒裁判を受けた、その上で除名をされたと語られております。  そういう経緯がありますので、我々はさらにこれは議論をさせていただきたいと思っております。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  24. 原田昇左右

    原田委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、赤松正雄君。
  25. 赤松正雄

    赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。  私は、IT革命の本質という問題と、それから日米関係の成熟化などといった問題、二兎を追う質問をしたいと思っております。  まず最初に、森内閣は、国民運動としてのIT革命という、さきの総理の所信表明でも大変に熱のこもったお話があったわけですけれども、この国民運動としてのIT革命を掲げられた森内閣に対して、きょうお集まりの全大臣に最初に質問をしたいと思うのですが、大変恐縮ですけれども、お手を挙げていただくということで質問させていただきたいと思います。  いわゆる個人のホームページを皆さんで持っておられる方は手を挙げていただきたいと思うのですが、官庁のホームページじゃなくて、個人、政治家としてのホームページを持っておられると。  私、実は調べましたら、六人の方が持っておられて、あとはお持ちでない。宮澤大蔵大臣のは拝見しましたけれども大臣、手を挙げられなかったですね。  総理はお持ちじゃないということですね。これは、総理御自身のやはりIT革命に対する取り組み姿勢という意味でも、私はぜひお持ちになるべきだというふうに思います。  そこで、多分これは、今聞きますと、官邸にあるというふうにおっしゃると思うのですけれども、実はその官邸の情報公開度といいますか、これも、私に言わせると余り十分ではないというふうに思います。  一例を挙げます。これが後の日米関係の成熟化ということに絡んでくるのですけれども、実は総理、九月二十二日に、来日中のアメリカの国防長官コーエンさんとお会いになられた。そのときの様子が実はある新聞の夕刊に、その日の朝お会いになられたことが出ている。それは、在日米軍が日本の軍事大国化を防ぐ役割を果たしているという、いわゆる瓶のふた論というものを総理が認められたと。「在日米軍、周辺諸国の不安抑える」、こういう見出しで、あわせて同時に、瓶のふた論首相認める、こういうふうな見出しでありました。  私は、これは何らかの勘違いというか、総理は当然反論されると思います。実は私、ここで言いたいのは、総理が反論をなさる、どこかの機会をつかまえて反論される、こう思っていたんですが、その反論がない。ずっといろいろなものを探してみましたけれども、ない。ようやく、九月二十五日の外務省のホームページで、記者の質問に答える形で川島事務次官がお答えになっている。総理自身の声ではなくて、外務次官の、外務省の受けとめ方として答えられている、こういうことでございます。  このことは後でまた聞きますから。このことについては実は私がきょうここで初めて言おうと思ったんですが、きのうの参議院本会議で野党の方が質問なさっているので、総理の御答弁も、未定稿でありますけれども、拝見しました。後でそれについては触れます。  私は、ここで冒頭総理にお聞きしたいのは、先ほど堺屋経済企画庁長官の方から、将来像、この五年間かけてソフトとハードとコンテンツというお話がありました。  私は、このIT革命の本質というのは、いろいろな言い方がなされると思いますけれども、やはり一番大事なポイントは、いわゆる技術の革命という側面ではなくて、もちろんそれも大事なんですけれども、情報の主権の革命だというふうに思います。つまり、市場経済社会でいえば、消費者がメーカーと直結する、つくった人、経営者と消費者が直結するということの変化が大変大きい。いわゆる中間層、ミドルの大きな変化ということも今言われておりますけれども、それを政治の世界に当てはめると、今度は、有権者と政治家と直結するという時代が来るというのが、私はIT革命の本質だろうというふうに思うのです。  こういうIT革命の本質は、言いかえればおのずと情報公開を必然的に促す、こういうふうに思っているんですけれども総理、その辺のとらえ方についてお話し願いたいと思います。
  26. 森喜朗

    森内閣総理大臣 まだ、IT化といいましょうか、まさに創成期のところだろうと思うのです。  ちょっと御質問と違いますが、私がホームページを持っていなかったのは、一応開いたんですけれども、しばらく党の役員をやっておりまして、党の中にホームページを置いておりました。今、官邸としてまたホームページを持っておりますので、自分の個人の意見を今言うべき時期でもないだろう、かえっていろいろな意味で誤解があってもいけないし、いろいろなことで重複してもいけないということで、官邸のホームページにはできるだけ多くのことを入れるようにという指示はいたしております。  今おっしゃいましたように、確かにそういう意味で、これからのIT社会というのはそれぞれ個人の情報、個人の意見というものが多くの人たちに出ていくわけでありますけれども、逆に言えば、これは不特定多数のところに出ていくという面での危険性もまたあるわけでございます。そういう意味で、こういう新しい時代に広がりを見せていくという時代の中では、やはりそれをどうやってセーフティーガードをまたある意味ではつくっていくのかということも非常により大事なことでありまして、その双方をしっかりとわきまえてやっていかなければならぬ、そういう時代だと思っています。  今、政府IT戦略本部も、そうしたデバイドの問題もありますし、セキュリティーの問題もありますし、そういうことも含めてどういう戦略を進めていくのか、どういうことを国民皆さんに教示を、教示というのは大変失礼な言い方ですけれども、啓蒙と言った方がいいのでしょうか、していったらいいのかということも含めて今議論をいたしておるところでございます。
  27. 赤松正雄

    赤松(正)委員 今総理は、自分の個人の意見を述べるのは誤解があってはいけないというふうにおっしゃいました。まあそういう側面もあろうかと思いますが、先ほど申し上げたような、まさに誤解を招いたようなことがあったら直ちに私は反論されるとかいうことがあっていい、というよりも、その前に的確な情報をきちっと公開されるべきだ。そういう姿勢がないと、私はIT革命は何のためのものかというふうに思います。  私は、持論を申し上げさせていただきますと、いわばこのIT革命は、政治家の世界にとっても大変重要な役割を果たす、何でも隠したり真実を述べないという政治家はおのずと淘汰される、こんなふうに思います。  私は、きょうはこういう場面で話をさせていただく機会を得ましたけれども、通常、私のような普通の政治家は、なかなか自分の意見を述べる場面が、世の中にわかるという場面がない。そういうときに、インターネット、ホームページでどんどんいろいろなことを言うということを今やっていますけれども、大変にいい時代がやってきた、こんなふうに思っております。  しかし、先ほども金子先輩の質問に対して光と影というお話がありました、やじで。確かに影の部分が想定されます。そういった意味で、総理の所信表明の中で、非常に、私はさらに具体的に聞きたいという部分があります。それは、みんながインターネットを使えるようになることが大事なんだ、こういうことをおっしゃった後で、必要な基礎技能習得のための思い切った方策を展開したい、思い切った方策を推進してまいりたいと。この必要な基礎技能習得のための思い切った方策推進というのは何ですか。
  28. 森喜朗

    森内閣総理大臣 まだそのことにつきましては勉強中といいましょうか、検討中でございます。興味ある方は、これはもう御自分の意思でどんどん真摯に勉強していかれるだろうし、しかし、なかなか、ちょうど我々の世代かと思いますけれども、我々のエージといいましょうか、こういう世代は、やはりやや腰が引けてくる。私自身もそういう体験をしてまいりました。ですから、もっと多くの人たちがこれになじめるようにするにはどうしたらいいのかということ、このことをやはり今政府としても真剣に取り上げるべきだろうと考えております。  この前、先々週の土曜日でしたか、日曜日でしたか、九月十五日の敬老の日でございましたけれども、三鷹市を訪問いたしましたら、三鷹市ではお年寄りの皆さんが喜んで勉強していらっしゃるんですね。会社などでそういうさわったことのある経験者の方々にある程度の技術を習得させて、そして認定させて、指導者になっていらっしゃる。  その三鷹の産業プラザといったと思いますが、その建物の中は、そういうパソコンのことに非常に興味を持っている人がみんなお集まりになっていて、そこで、七十五歳のお年寄りの方でございましたけれども、一生懸命に、もちろん一人でなくて何人かで碁を打っておられました、パソコンで。お尋ねをして、どなたと打っていらっしゃるんですかと言ったら、アメリカの方と打っているんだと。御存じなんですか、いや、全然知らない方ですけれども、ちょうど私と手ごろな相手ですよと言って、一生懸命にパソコンを見ながら碁を打っておられて、本当にほほ笑ましいなと思いました。  だから、何となく及び腰の世代も、パソコンの使い方によっては非常に楽しく興味ある、さっき堺屋さんおっしゃいましたけれども、コンテンツの問題なんだろうと思いますが、そういう意味で、さわらないままで、いわゆるインターネットの恩恵に浴さないままでいる人たちがやはりあるんだろうと思う。そういう人たちに積極的に入っていただいて、そして本当に興味あるものだなということを勉強していただくことがとても大事じゃないかということで、今、具体的にどういう方策がいいだろうか、公のところと民のところ、個人のところ、非常に難しい問題がございますが、これをIT戦略本部で今いろいろと議論をいたしております。  そのことの過程で、例えばバウチャーの話だとかいろいろ出ているんだと思いますが、まだ正式にすべてをまとめているわけではございません。また、先生大分勉強していらっしゃいますので、いい案がありましたら、ぜひむしろお教えをいただきたいなと思う次第でございます。
  29. 赤松正雄

    赤松(正)委員 ただいま勉強中ということでちょっとがっかりいたしましたけれども、お互いに大いに勉強してまいりたいと思います。  実は九月二十二日に、我が党が、これは中川官房長官に直接手渡したんですけれども、さまざまなこのIT革命の推進の具体化についての申し入れをやりました。いわゆる学校の教育システムに光ファイバー等の高速大容量の通信インフラを整備するということを初めとしまして、図書館に一般利用者がインターネットを使えるパソコンを設置することとか、あわせて小学校等の教育施設の地域開放を図るというふうなこと。  きょう、朝、NHKのニュースを聞いておりましたら、政府がそういう今私どもが申し入れていることの、ほぼ一致したようなことをぜひやりたい、補正の中でも取り入れたい、こういうふうな報道がなされておりましたけれども、実は、私どものこういう申し入れに対して、図書館関係者から大変大きな反応がありました。ぜひ、一般利用者がインターネットを使える、そういうパソコンを図書館に設置するということは進めてほしい、こういうふうな要望も寄せられております。改めてこのことについて御決意を述べていただきたいと思います。
  30. 森喜朗

    森内閣総理大臣 今、私勉強中と申し上げましたのは、どういう方法がいいかということを取りまとめ中だという意味だというふうに御理解をいただければと思います。  今御指摘がありましたように、例えば学校の整備は少し早めていくべきだろうというふうに今私どもとしては政府部内で検討しております。それから、私は、公民館でありますとか老人ホームなどはむしろどんどんパソコンを配置して、そういう公的ないろいろな施設には、今おっしゃいましたように、大きな容量でスピーディーに情報が流れるようなそういう手だては、できる限り仕組みを考えながら、国と自治体が一体になって進めていくべきだろう、そう思っております。  まだまだそういう公的な場所がたくさんあるのではないかな、そういうものをぜひつなぎ合わせていきたい。そして、だれもがどこへでも行ってそのことを勉強し、なじむことができるようなところを、日本じゅう全体にそういう仕組みをつくっていくということが大事かなと考えております。
  31. 赤松正雄

    赤松(正)委員 ぜひよろしくお願い申し上げます。  ところで、もう一つのテーマに移ります。  総理は、昨日の本会議で、御答弁の中でこう答えておられます。要するに、日本が専守防衛という観点に立って、軍事大国化を目指しているということはない、そういう瓶のふたなんということに言及した覚えはない、言ったのはこういうことだとおっしゃっています。米軍は韓国、中国等日本の近隣諸国からも地域の安定的要素として受けとめられているとの趣旨を述べた、こうおっしゃっているわけです。  この発言自体、私は、なかなか、ちょっといろいろなことを考えさせるお話だなと思いますが、私は、例えば中国が米軍をどう見るかというものにはやはり二面性があるだろうと思います。総理のような側面も確かにあるだろうと思いますが、同時にまた、中国は違う場面で、日米の同盟関係というものが中国なら中国に対してどういう影響を与えるかということについてかなり厳しい発言も同時にあるわけでございまして、総理がコーエンさんとの間にこういうことだけをおっしゃっていたのなら、ちょっとのんきなお話だなというふうに思うのが一つ。  もう一つは、近隣諸国からも地域の安定的要素という話の中で、やはりこのことで思わざるを得ないのは、沖縄の皆さんのことであります。沖縄の住民の犠牲の上に成り立っているという側面があるということを考えた場合に、私はやはり、あらゆる場面でアメリカに対して、もちろんいろいろな言い方はあると思いますけれども、アメリカに対して日本のスタンスというものをきちっと言うべきであるというふうに思います。  今回、この国会に、例の日米間の安保条約に基づく特別協定、第二十四条の五年たっての見直しということがあって、四条でいわゆるアメリカの光熱費に対する節約を課すという項目が入れられたということでございますけれども、こういう問題もいわばホスト・ネーション・サポートということで仮にいいとしましょう。でも、ホスト・ネーション・サポートをアメリカが要求するのだったら、私は、日本としてアメリカにゲスト・ネーション・マナーを要求すべきだ。ゲストとして、ゲストという言葉がいいかどうか知りませんが、パートナーでもいいのですけれども、ホストネーションに対してゲストネーション、サポートを日本がするなら、アメリカはやはりマナーをわきまえてほしい。私は、こういうことを不断に日本政府として、総理としてアピールをしていただきたい、そう思うのですが、いかがでしょうか。
  32. 森喜朗

    森内閣総理大臣 今、議員から、私の昨日の本会議でのことでお話がございましたけれども、大変御無礼でございますが、改めて私からも議員に対してそのときのことを申し上げておきたいと思います。  二十二日のコーエン国防長官との会談の際に、話題が東アジア情勢に及んだ際に、私は、我が国は憲法のもと専守防衛政策に徹しておりまして、米軍は日本の近隣諸国からも地域の安定的要素として受けとめられている、そういう趣旨を申し上げたわけでございます。  いずれにいたしましても、日米安保体制に基づく米軍のプレゼンスは、過去四十年間、我が国及び極東の平和と安全をもたらしただけではなくて、アジア太平洋地域の平和と安定にも寄与してきているものと考えておりまして、この点については多くの国が評価しているものと考えているというような趣旨のことを私は申し上げたわけでございまして、いわゆる伝わっておりますような瓶のふたなどというような役割については、一切言及をいたしておりません。  それから、今お話がございました、いわゆるホスト・ネーション・サポートというのならばゲスト・ネーション・マナーだ、こう御指摘がございまして、私も、その考え方は正しい、当然だろうというふうに思います。私は、在日米軍の円滑な駐留のためには、米軍が地元の方々とのよき隣人関係を不断に維持、発展させていくことが重要であろうというふうに思っています。  去る七月の沖縄におきます日米首脳会談におきましても、私から、遺憾な事件の再発防止のための綱紀粛正を徹底し、両首脳で協力して沖縄の人々の気持ちにこたえていきたい旨、発言をいたしました。そして、クリントン大統領からは、一連の事件に対する県民の方々の気持ちを踏まえた上で、大変申しわけないことでもあるし、恥ずかしいことだ、そういうお話がございまして、強い遺憾の意が表明されました。私は、大統領とともに、これから本当に一緒に協力してそういうことに留意していこうじゃないかということを確認いたしたわけでございます。
  33. 赤松正雄

    赤松(正)委員 ぜひその姿勢を不断に続けていっていただきたいと思います。  最後に、私は別に瓶のふた論にこだわるわけじゃありませんけれども、私は、日本が持つパワーというのは、ハードパワーとソフトパワーと、もちろん両方あると思うのです。  その日本の持つソフトパワーというのは四つほど代表的なものがあって、いわゆる日本が世界で唯一の核被爆国であるというふうな側面、あるいは経済としてこのアジアの中で大変大きな力を持っているという側面、あるいは文化、東西両方の融合するところに位置する文化国であるということ、あるいは科学技術立国であるということ、こういったソフト部分を遺憾なく外交の場面であらゆる角度で宣揚することが大事だ。言ってみれば、そのふたの中身はハード部分ではなくてソフト部分まであって、米軍という存在によって閉じ込められているということがあってはいけないと思います。  そういった意味で、いわばソフトパワーを生かした外交姿勢ということで、私どもはさまざまな角度で外交政策を展開しているわけですが、これについてはもう触れる時間がありませんので、また別の機会にいたしたいと思いますけれども、そうした日本のアジアにおける役割というものを、ぜひソフトパワーという側面で強く不断にアピールしていただきたい、このことを要求いたしまして、同僚にバトンタッチいたします。
  34. 原田昇左右

    原田委員長 この際、桝屋敬悟君から関連質疑の申し出があります。赤松君の持ち時間の範囲内でこれを許します。桝屋敬悟君。
  35. 桝屋敬悟

    桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。関連質問をさせていただきたいと思います。  私の方からは、外交もさることながら、内政問題を中心に、特に介護保険について議論をさせていただきたいと思います。  昨日まで、総理も御承知かと思いますが、与党三党におきまして、介護保険、運営上の問題点等についてつぶさに検証もし、改善点についてまとめまして、官邸に政策責任者会議を代表してお届けになったというふうに聞いております。ぜひともこうした内容について格段のお取り組みを冒頭にお願いしておきたい、このように思います。  さて、本年十月からいよいよ介護保険の高齢者の保険料の徴収が始まるわけであります。与党三党の円滑導入という特別対策を決定し、実施をしてまいっておりますから、当面は一年間二分の一ということでありますけれども、現在、各市町村で納入通知などの準備が行われております。先ほど申し上げたプロジェクトでも、現場の市町村、首長さんの方々の声をしっかりと聞かせていただきました。  その中には、納入通知を見て、一体これは何か、あるいは、介護サービスを受けてない自分だけれども、なぜ保険料を払わなきゃならぬのか、こういう声でありますとか、だれが一体決めたのか、払えないという声、もっと悲惨なのは、払わない、払いたくない、こういう声もあるわけでありまして、悩ましい声であります。ぜひとも制度の趣旨を多くの国民皆さんに理解をしていただかなければならぬ、私はこう思っているわけであります。  振り返ってみますと、公明党、私どもは、介護保険が始まる前に、保険料全国一律三千円ぐらいというふうに当時言われておりましたから、制度が始まるときは大混乱もするわけだし、順調に始まるまではぜひともならし運転の期間をつくってもらいたい、そして、そのならし運転の期間はできれば三千円を千円以内ぐらいに抑えるような、そんな知恵は出ないのかということを随分悩んだわけであります。  最初に厚生大臣にお伺いしたいと思いますが、この十月から始まります高齢者の保険料の徴収、私ども一番心配しておりますのは、年金暮らしをされておられるようないわゆる所得の少ない方々、こういう低所得者のお年寄りの方はどれぐらいの保険料になるのか、まず御説明をいただきたいと思います。簡単にお願いします。
  36. 津島雄二

    ○津島国務大臣 お答え申し上げます。  高齢者の保険料は市町村によって当然異なるわけでありますが、基準額は全国平均で二千九百円でございますね。これに対しまして、この基準額をもとに所得段階別の五段階を設定していることは委員承知のとおりでございますが、一番低い方が、世帯全員が市町村民税非課税の場合の第二段階ということで、これは今の基準額の〇・七五倍ぐらいでやったらどうであろうか、それからさらに、生活保護受給者や老齢福祉年金受給者などの場合は第一段階といたしておりまして、これは基準額の〇・五倍、つまり半分でどうですかという基準を示しております。  これに従って今の委員の御質問にお答えをいたしますと、本来の、しかも本年十月から取られるものは一年間基本額の半額とされておりますから、これを加味して計算いたしますと、第二段階の方の場合は月額で千九十円ぐらい、それから、第一段階の方の場合は月額で七百三十円ぐらいになると思います。
  37. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  私どもは、何とか千円以内でスタートし、制度の運用状況をしっかり見きわめてという思いであったわけでありますが、今の厚生大臣の御説明では、いわゆる所得の少ない方は七百円あるいは八百円、こういう数字でありまして、こうした特別対策によって何とか円滑に進んでもらいたいな、こういう希望を持っているわけであります。しかし、それでも今、先ほど御紹介したようなさまざまな悩ましい声があるのも事実であります。  きょうは、委員長にお願いして、資料を各委員あるいは皆様にもお配りをしております。この資料をちょっと見ていただきたいわけでありますが、今厚生大臣が御説明になりましたこの十月から始まります保険料、このように、基準額を真ん中に挟みまして、所得の少ない方は第二段階、第一段階、あるいは、所得の比較的多い方は第四段階、第五段階と、所得に応じて保険料が五段階に設定をされているわけであります。今その御説明をいただきました。  これで低所得者対策は相当行われているというふうに私は思っているわけでありますが、これはある市町村の実態ということで、特に、私数字を入れるのを忘れましたが、全国平均で、第一段階の方は、総理、これは二%ぐらいの方であります。第二段階の方が二八%ぐらいというふうに言われておりまして、基準額の真ん中の方は四六%ぐらいであります。この第二段階の方はかなり幅がある、数が多いという実態がある。逆に、第一段階、確かに手当ては講じられているけれども、二%というふうにかなり少ない数であります。  そういう現状から見ますと、ある市町村の実態ということで伺ってきたわけでありますが、下に第二段階の方々の、これは第二段階に矢印をつけております。第二段階の方々の世帯の収入の状況を見てみますと、この収入というのは課税対象年金、それと給与収入だけを整理してみたわけでありますが、世帯収入ゼロの方から六十万円まで、あるいは百二十万、さらには二百四十万まで、二百四十万以上と、これぐらい整理をしてみたわけであります。  もちろん、これがすべての収入ではない。世帯収入ゼロで生活はできるわけではありませんから、いろいろな仕送りとかあるんだろうと思うのですが、この百二十万までの収入の方々が一二%、二三%、一八%、約半分以上、五三%ぐらいいらっしゃる。私は、これが直ちに生活困窮者だとは思いませんけれども、この中に悩ましい実態があるという話を伺いました。それがその下の表でありまして、第二段階の具体的な事例、これは総理にぜひ見ていただきたいのですが、今、市町村の現場では何を悩んでいるかということであります。  この第二段階の、〇・七五倍になる、いわゆる所得の低い方々の中には、世帯A、世帯Bと事例を挙げております。ともに老老夫婦、お年寄り御夫婦の世帯であります。  そうした中で、世帯Aは、夫の年金が年二百六十万、妻の年金が年二百六十万、ともに無税であります。そして年金合計額が五百二十万というケースも、めったにはないと思いますが、この二百六十万というのは厚生年金のフルペンションの数字であります、理論的にはあり得る。中にはこういうケースもあるわけであります。こういう方々は、年間年金額が五百二十万、月に直しますと四十三万円であります。この方々も第二段階でありまして、保険料は、ここに書いてありますように世帯保険料は年間五万四千円ぐらいになるわけであります。  もう一つは世帯B、高齢者夫婦二人世帯で、夫の年金が年八十万円、これは国民年金のフルペンション、四十年掛けて。そして妻の年金が三十七万円ぐらいで、合わせますと年金合計が百十七万円、まあ百二十万前後のケースをつくってみました。百二十万というのは大体、私の地元でもそうでありますが、お年寄りが一月、生活保護の基準が十万ぐらいです。一年間で百二十万、こういう基準を頭に置いてみたわけでありますが、このケースも、総理、五万四千円なんですね、第二段階で。  これぐらい第二段階には幅がある。いわゆる普通のお年寄りの家庭と、中には、生活に極めて困窮をされているケースもこの第二段階にあるのではないか。場合によっては第一段階以上に厳しい方もあるのではないか。その方々に保険料を設定し、徴収しなければならぬという市町村の悩みの声がある。  したがって、きのうの総理の本会議の答弁で、一律にただにする、一般財源を持ち込むというようなことは好ましくないという御答弁は理解できます。それはわかるのですが、その理解をした上でなお、なお市町村の現場で、ではなぜ好ましくないことをおやりになる市町村があるのか。その苦しみや悩みは一体どこにあるのかということもあわせてお考えいただきたい。  総理、こういう事例について率直に総理の御感想をまずお伺いしたいと思います。
  38. 森喜朗

    森内閣総理大臣 発足をしたばかりでございますし、これをみんなで支えて、さらによりよいものにしていくということが大事だと思います。そういう意味で、昨日、与党三党からのいろいろなお考えをお示しいただきましたことも、政府として真摯にこれを受けとめて、より改善できるようにしていきたいと思っております。  それから、ここ数年、この介護の問題は毎国会で話題にもなり、そして、テレビや新聞報道を通じ、多くの国民皆さんにかなり私は喧伝されていると思っておりましたけれども、それでもやはりいざ始まると、今おっしゃったように、えっ、なぜこんなものが始まるのということになる。それぐらいやはり多くの国民がいろいろな見方をなさっているのだということもよくわかりますので、政府としても、さらにこれを周知徹底、そしてどういう仕組みのものかということを、これから広報にも十分力を入れていかなきゃならぬなということを改めて、今、議員の御質問の中からもそんなふうにも感じました。  御指摘の、この五段階の設定に対しての御意見でございますが、私の今の内閣の立場で申し上げれば、高齢者の介護保険料は、課税状況などに応じた五段階設定を基本といたしておりまして、所得の低い方の保険料が低くなるように配慮をいたしているわけでございます。  確かに、収入だけをとらえれば、市町村民税が同じ非課税の世帯でありましても収入状況が異なる世帯があることは議員の御指摘のとおりでございますが、負担能力をどう見るかということになりますと、これはまた、資産の状況といった点もあるので、必ずしも一概に論ずることが難しい問題ではないだろうかということを感想として申し上げておきたいと思います。
  39. 桝屋敬悟

    桝屋委員 総理のお立場として、この資料を見て、それはそうだ、大変だな、これでは現場は悩むななんというようなことは軽々にはおっしゃれない気持ちはよく私もわかるわけでありますが、どうぞ、きょう私があえてこの資料を持ち込んだ気持ちもあわせて、全国の市町村の声だということで御理解を賜りたいと思います。  その上でもう一点だけ。この資料の中で、全国では、一律にただにするとか一般財源を持ち込むとかということではなくて、今私がまさに第二段階の具体事例を申し上げましたが、こうした事例については、今総理が言ったように、この収入だけをもって判断することはできないということは確かでありまして、申請をしていただいて、手を挙げていただいて、私は苦しい、これではちょっと払えないという方は手を挙げていただいて、申し出ていただいて、そういう方については、まさに世帯Aと世帯Bの事例ではありませんけれども、これを同じに設定するには、いかにいっても現場は苦しいから、では手を挙げていただいて、こういう方は第二段階の方でも第一段階と同じような扱いをしようではないかという取り組みが見られます。  これは、一律にただにするというような市町村とは違う、整理をする必要があるのではないか。私は、本当に現場の知恵として、これは市町村の事務でありますから、その中で知恵を出して工夫をされる、そういう取り組みはあっていいのではないか、許されるのではないかと思っております。  ちなみに、大阪市であるとか神戸市であるとか、第二段階の階層が特に多い地域においてそういう動きもあるようでありますが、そうしたことについては厚生省としてはどうでしょうか、あるのかなという認識でしょうか。どのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  40. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員指摘のとおり、介護保険制度は非常に大きい制度を多くの国民に適用するという今大事な段階になっておりますので、今度の与党の御提言のような現場の実情に即した声には、私ども真摯に耳を傾けてまいりたいと思っております。  そういう中で、一定の所得層の方に保険料の配慮をしろという御意見はございますけれども委員がおっしゃったとおり、一律に減免するということは、みんなでこの制度を支えるという趣旨からいってやはり適当ではないし、また、減免分を一般財源から投入するということも慎まなければならないと思っております。また、五段階の配慮をしたということもやはり低所得層への配慮をしたということであります。  これだけ申し上げた上で、しかし、それぞれの地域でこの制度の定着を図るいろいろな努力をしておられる、その努力は私どもはやはり大切なことだなと思っている中で、市町村が地域の実情に応じて独自に低所得者の方への配慮を行われる、そういう場合にも、制度の本来の趣旨を十分念頭に置いて、その趣旨を逸脱しない範囲内で対応していただきたいなというのが私の今の答弁でございます。
  41. 桝屋敬悟

    桝屋委員 ありがとうございます。  今の一つ考え方、一律にただにするというようなことは慎まなければならない、あるいは、一般財源を安易に持ち込むということは保険の根幹を壊す、こういうことはよく理解ができます。なおその中で、その範囲の中で、保険の大枠を守りながら現場で柔軟な対応をする、さまざまな工夫をする、これは私はあっていいことではないかというふうに思っているわけであります。  もっと言いますと、総理、見ていただいたこの資料の中で、確かにこれだけでは判断はできないけれども、こうしたペーパーの中に、この数字の中に、極めて生活の困窮されている方があるということもこれまた事実でありまして、今の神戸や大阪の事例の中で、百二十万ぐらいの収入の方、全くそれ以外に収入がない方はそういう取り扱いもしよう、こういうことなんですが、私に言わせますと、第一段階よりもっと厳しい生活困窮者がいらっしゃるということがあるのではないかと思っております。  実は、この保険料は来年の十月からフルセットになります。特別措置があるということをよく国民皆さんに理解をしてもらわなければなりませんが、今回のこの事態を見てもそうでありますから、国民皆さんはそういうことは失念をされて、何だ、保険料が倍になるなということを来年の十月はまたお感じになる。これがソフトランディングをする戦略を立てたときのいつも悩むことであります。  したがいまして、来年の十月を目途に、私どもは、まだなお生活が困窮されている方については、この五段階の設定でどうしても整理できないような方々については、総理、例えば、保険料は来年の十月から倍になるんだけれども——倍じゃない、もとになるんだけれども国民は倍になるというふうに理解をされる。そういう中にあって、そこそこの年金がある方はそれは倍になってもいいけれども、フルセットになってもいいけれども、本当に生活が困窮される方は倍になることを何とかとどめおくような、そんな知恵が出ないものかと私どもは悩んでおりまして、ぜひこれからも与党プロジェクトチームの中でも私たちは議論をしていきたいと思いますし、党内でもそういう取り扱いを、来年の十月に向けてさらに取り組んでまいりたい、このように思っておる次第であります。  最後に、IT分野をもう少しやりたかったのですが、総理、沖縄サミット以降ITという言葉が、IT戦略あるいはIT社会という言葉が本当に脚光を浴びてまいりました。私ども公明党にとりましては、感慨ひとしおのものがあります。ぜひともきょうは全国のテレビを見ておられる方にも御理解をいただきたいのでありますが、私ども公明党は、実は昨年の十一月に、高度情報通信社会に向けて情報通信立国日本をつくれ、こういうことで、今議席をお持ちではありませんが、議員を退かれましたが、福留泰蔵先生あたりが中心になりまして、今の総理が打ち出しておられますIT戦略、ほぼ同じようなものをつくってまいりました。  時間がないということでありまして、本当に私どもはそんな思いの中で、住民基本台帳ネットワークシステム、さらには個人情報保護、こうしたことを一生懸命取り組んできて、ここへ来て一気にそれが大きく動き出したな、こういう感がするわけであります。  総理に、最後、一言だけお伺いしたいと思います。  住民基本台帳ネットワークシステム、総背番号だとか丸裸になるとか、いまだに批判をする方がありますが、光と影は十分認識した上で、これからのIT戦略の中でどんな役割を持たそうとされているのか、最後に一言だけお伺いしたいと思います。
  42. 森喜朗

    森内閣総理大臣 早くから、公明党さんもそうでありましたし、我が党もそうでしたが、このITに関しての準備といいましょうか、勉強といいましょうか、これはかなり早くからいろいろな対応をするから進んでいたと思います。  ただ、当時は、今お話しのように、高度情報通信という日本語でむしろ進めていたことが多かったと思います。私も、法律の中とかこういう国会の言葉の中でITという言葉を使うことについては、やはり若干ためらいがあります。しかし、高度情報通信、こういうことをまた長々言うのもいかがなものか、こう思い、バージョン6なんというような言葉を使って、これもこの前少し御批判をいただいたこともございました。しかし、やはりそういう言葉を、私も、なかなか難しい言葉だけれども、これはきちっと出して国民皆さんにもこのことになじんでいただくということも大事なのではないか、こう思っているわけでございます。  今御指摘ございました日本IT社会の実現は、二十一世紀における豊かな国民生活の実現と我が国の競争力の強化を実現するためのかぎだというふうに私ども考えておりまして、世界最高水準の電子政府の実現というのは、IT革命を推進する上で最重要課題の一つだ、こう思っております。  そういう中で、電子政府の中核となる国への申請等の手続のオンライン化を図るに当たっては、高い安全性のもとに住民票の情報を提供することができる、今議員御指摘ございました、いわゆる住民基本台帳ネットワークシステムを活用するということは極めて有効な手段だというふうに認識をいたしておりまして、現在、住民基本台帳ネットワークシステムの構築が進められているわけでありますけれども、このシステムは電子政府実現の重要な基盤の一つになり得る、このように考えているわけでございます。
  43. 桝屋敬悟

    桝屋委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  44. 原田昇左右

    原田委員長 これにて赤松君、桝屋君の質疑は終了いたしました。  次に、西川太一郎君。
  45. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 保守党の西川太一郎でございます。  きょうは、中小企業の金融の問題と、特に繊維業界の問題につきまして、的を絞ってお尋ねを申し上げたいと存じます。  森総理は、さきの所信の表明演説におきまして、現下の厳しい、長い不況の中で、日本産業の大黒柱とも言えるような、企業数において九九・七%を占める中小、小規模企業の経営者の皆さんに対する配慮を十分にしなければいけないという観点から、信用保証協会制度を活用したいわゆる特別枠、これを、来年の三月三十一日に期限が参りますが、その後一般枠を拡大することを中心に、また、その他いろいろな問題で中小企業の金融というもの、貸し渋りをさらに解消していく、こういう強い御決意を御披瀝いただき、私ども与党といたしましては、まことに心強い印象を強くいたしたわけでございます。  そこで、きょうは、せっかくの機会でございますので、総理大蔵大臣、通産大臣経済企画庁長官の皆様に質問をさせていただきたいというふうに存じます。  まず初めに、平沼通産大臣にお尋ねをいたすわけでございますが、私どもが、信用保証協会の特別枠というものを創設するように、当時の野田幹事長の発案も、またここにおいでの鈴木淑夫議員も御一緒に汗を流されて、そして当時の与党の総意で、与謝野通産大臣と折衝を何度も繰り返して、そしてあの制度が生まれたということを、私も当時委員の一人としてよく承知をいたしております。特に、宮澤元総理大蔵大臣は、野田毅議員に対して、これで無事に年を越すことができたと、そんなことを予算折衝の席でおっしゃっていただいたことも、私漏れ承っております。  そこで、これはレビューのような形になりますが、通産大臣、もしこの制度がなかりせば、私は、倒産件数ももっとふえたであろうし、中小企業皆さんは、あの往時の貸し渋りの非常に厳しい環境の中で大変な御苦労がいや増しただろう、こういうふうに思うわけでございます。この制度をやってよかったと、大臣もきっとそう思っておられると思うんですが、国民皆さんに、この制度がどんなに効果があったかということを具体的に御答弁をいただければありがたいと思います。
  46. 平沼赳夫

    ○平沼国務大臣 委員指摘のとおり、中小企業の皆様方が貸し渋りで大変困っておられるときに、大変皆さん方が努力をしていただきまして、特別保証制度が、未曾有の信用収縮に対する臨時異例の措置として、御承知のように一昨年十月に創設をされたところであります。  委員もこれはもうよく御承知だと思いますけれども、制度発足から、この保証承諾実績は、本年二月末に二十兆円を突破いたしました。九月二十二日現在で、件数で百三十九万件、そして保証の実績も二十三兆四千億円と、大変多くの中小企業の皆様方に御利用をいただいてまいりました。  そして、本年度の中小企業白書において、この特別保証制度の導入等によって、平成十一年度において約七千八百社の倒産が回避された、そういう分析がなされております。  また、中小企業庁が毎月行っている実態調査によれば、民間金融機関の貸し渋りを受けていると感じている中小企業の割合は、一昨年、発足の十月時点では三五%の中小企業の皆様方が、貸し渋りがある、こういう認識を持っておられましたけれども、それが、本年九月では一九・四%と、一貫して減少傾向にあるわけであります。  そういう意味で、未曾有のいわゆる金融収縮に伴って、先ほど委員指摘のように、我が国の九九・七%の経済の基盤を支えていただいている中小企業の皆様方にとって、この特別保証制度というのは非常に効果があった、このように通産省としても、中小企業庁としても認識をいたしております。
  47. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 ただいま通産大臣が中小企業白書に触れられました。実は私、次の質問でそれを取り上げてお尋ねをしようと思ったのでありますが、先に言っていただきました。  確かにおっしゃるとおり、これは政策効果の定量的分析という手法を当てはめた場合に、ただいまのような、仮にこの制度がなかった場合に、七千八百社、小規模企業も含めて中小企業の倒産があった、それが回避できた。しかも、これは雇用の面では約七万七千人の方々の失業を促したかもしれないものを回避できた。それから、負債総額では一兆六千億ほどこれを軽減することができたのではないかという、これはあくまで一つの推定でありますけれども、こういう効果があったと。  私も実際、これは定量的分析、科学的分析ではありませんが、選挙区の小規模企業皆さんから、本当にいい制度をつくってくれたね、こういう称賛の声が続いている。そして、私の下町では、実際に倒産件数がゼロという年もあったわけでございまして、これは本当にうれしいことだというふうに思っております。  そこで、実は、そうではございますけれども、ちょっとまた辛口のことを申し上げざるを得ないんですが、中小企業庁や中小企業総合事業団のいわゆる業況判断指数というものは、確かに改善をされてきているんです。改善をされてきているんですが、しかし、データを見ますと、相変わらず頭に黒い三角がついているわけですね。何か幽霊は白いものをつけるんですが、黒い三角がまだ取れないんですね。それから、日銀のいわゆる短観も、よくはなってきているけれども、しかし手放しで喜べる状態ではないわけでありまして、景況は依然として厳しい。特に中堅以下の企業にとっては、これは非常に厳しいわけでございます。  そこで、堺屋長官にお尋ねをいたすわけでございますけれども、今、厳しいけれども経済は確実に回復しているということを、やはりこの機会に国民皆さんにぜひアピールしていただきたいし、また、この信用保証特別枠が大いにそれに効果があったというふうに私は思いますが、マクロ経済的に分析をした場合にどんな評価を下されているか、長官の御意向を伺いたいと思います。
  48. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のように、この中小企業金融安定化特別保証枠、ちょうど二年前の今ごろ、この国会でも盛んに議論し、また深夜、この後さんざんいろいろ議論したことを思い出します。  ちょうどあのころは、日本経済がもうデフレスパイラルに落ち込むということで、中小企業への貸し渋りもございまして、倒産件数がどんどん上がってくるというような悲惨な状況でございました。そういうときにこの制度をとりまして、それ以後、九八年の十月に発足いたしましてから、十月—十二月期以後、確実に改善をした。その意味では、当時の経済を下支えし、倒産を防止した大変大きな意味があったと考えております。倒産件数が大幅に減ったし、それによりまして、金融移行期、金融困難を移行するときのコスト、社会的コストを非常に縮小することができたと思います。そして、そのことによりまして、どん底に落ちようとしていた日本経済を救うとともに、一定の時間的余裕を金融機関の方にも、また中小企業者の方にもお与えすることができたと思っております。  しかし、無限に続けられる制度ではございませんので、この時間的余裕を利用していただきましてできるだけ立ち直っていただきたい、こう考えております。  ちょうど景気も少しよくなってまいりました。業種によって差がございます。これこそ、一方において企業の利益がふえ、一方において閉業、倒産も出てくるというのは、まさに新旧経済の交代の時期でございますので、ここはひとつ、各企業で頑張って正常化の方に乗りかわる準備をしていただきたいと考えている次第でございます。
  49. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 まさに今のお話のとおり、いつまでも続けるわけにいかないわけであります。これは入れ込み、モラルハザード、いろいろな言葉がこれについては聞かれるわけでありますけれども、しかし確かに、カンフル剤といいますかそういうものを、いつまでも薬に頼ってはいけない。やはり健全な、しっかりと御自分の足で中小企業、小規模企業には立ち上がってほしい。しかしまだ、さっき申し上げたとおり厳しい状況にもあるということになりますと、この特別保証制度の精神を生かしながら一般保証枠を拡充していくというこのたびの中小企業庁の発案というのは、大変時宜を得たものである、こういうふうに思うわけであります。  そこで、まず通産大臣に制度の中身について伺いたい、こう思うわけであります。  今度計画をしておられます、総理の所信で概要が述べられましたことにつきまして、今の段階で、十一月の上旬の補正の発表を待たなければならないことはよくわかるのでございますが、大臣として、こんなつもりだということを、国民皆さん、きょうはテレビ中継もあることでございますので、関心を持っておられると思いますので、差し支えない範囲で具体的にお示しいただけないでしょうか。
  50. 平沼赳夫

    ○平沼国務大臣 先ほど委員指摘のとおり、日本経済が回復基調にあることは事実でありますけれども、まだ中小企業の皆様方の活力がいま一段根強いものがない、あるいはGDPの六〇%を占める個人消費もまだ非常に低調である、そういうことを考えますと、やはりこの秋の臨時国会補正予算でも私どもは中小企業に力強い支援をしていかなければならない、そういう基本的な考え方を持っております。  そういう意味で、今般の補正予算に当たっては、金融面では、今御指摘のとおり特別保証制度の期限が、これは一年延長をしたわけでありますけれども、先ほども私ちょっと触れましたように、異例、特別の措置として一年も延長いたしました。そして、来年の三月に期限が到来をします。したがって、そのかわりとして私どもは、さらに一般保証制度の枠を拡大していこうと思っています。もちろん、今これから財政当局とも詰めていかなければいけませんけれども、少なくとも、今の五千万円をある程度大幅に上回る、そういった枠の拡大は、私ども財政当局の御理解を得て実現をしていきたい、こう思っております。また、大型倒産や災害等のセーフティーネット保証の充実もしっかりと私どもは確保していきたい、こういうふうに思っております。  それから、もう少しきめ細かくやるために、政府系金融機関においては、一時的な業況の悪化ですとか、取引先企業の倒産あるいは取引先金融機関の破綻等に対するセーフティーネット、貸付制度を整備して、そして皆さん方に安心をしていただきたい、こうも思っております。  その他、中小企業、これからやはり体力をつけていただかなければなりませんから、IT対応を支援するために、ITに対する中小企業における活用の事例の紹介や実践的なノウハウに係る研修も行っていきたい。そういった形で、IT関係にも力を入れて、そしてこの時代に対応していただく、そういう素地をつくっていただこう、こう思っています。  また、政策融資の充実も当然図らなければなりませんし、物づくり分野や商業分野において多くの中小企業者が共通して活用できるソフトウエアシステムの開発、そういったものの導入も積極的に行っていきたい、こういうふうに思っております。
  51. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 もう時間が迫っておりまして、恐縮でございますが、大蔵大臣には、ただいま通産大臣も御発言がございましたように、予算措置をぜひひとつよろしくお願い申し上げたいというふうに存じます。簡単で結構でございますが、その御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 小渕内閣がこのたびの不況脱出に当たりまして、今、森内閣に至るまで二年数カ月でございますが、顧みまして、この施策が私は一番効果を持った施策であったというふうに思います。  ただ、実は貸し渋りというのが、その前の年に始まりました中小金融機関の早期是正措置というものがございまして、早期是正措置で中小金融機関が融資を引き揚げたというところから事が始まって、行政がそれに十分注意をいたしませんうちに急速に悪化をいたしました。したがいまして、この制度が導入されるにつきましては、行政というよりはむしろ、西川議員もそのお一人でしたが、いろいろ世の中のいわば下情を知っていらっしゃる国会の先生方の動きから始まったというところに特色がございます。  私は、かなり思い切った制度でございますので、一抹の不安を持っておりましたが、中小企業の諸君が、非常に苦しみながら誠実にこの契約を履行されたことは極めて感銘すべきことであって、私は、我が国だからできたことではないかというぐらいに実は思っております。  今回、この制度が長くなりましたので改めようという通産大臣のいろいろお考えがございますので、間もなく補正予算の編成を総理の指示のもとにいたしますから、通産省のそういうお立場に御不自由がないように、十分対応してまいりたいと思います。
  53. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 最後に私は、繊維の問題について触れる予定でございましたが、もう時間でございますが、一つだけ、総理のお耳にもこれを申し上げておいて、そして時間があればお答えをいただきたいと思うんです。  実は、ただいまの金融制度につきましては、総理にぜひこれは真剣にやっていただけるということを期待しておるということが一つと、それから、我が国の繊維産業、とりわけニットでございますとか綿布でありますとか、こういうものは特に中国などからの輸入が物すごくふえておりまして、国内の産地は疲弊しております。そして非常に厳しい状況にございます。  例えばニットなどは、国内市場の約九割を輸入品が占めておりまして、四年前には四億八千万枚でありましたものが、本年は九億枚もセーター類が外国から入ってきている。国内生産はわずか一割なのでございます。全繊維を見ても、輸入品の八〇%、二十四億四千万枚が輸入品でございまして、雇用はめちゃくちゃになる、伝統技術は崩壊する、産地は疲弊する、そして余ったものは廃棄物として捨てるなどという、資源やいろいろなことで問題がございます。  どうぞ総理、こういう状況をぜひとも御理解いただきたいということを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
  54. 原田昇左右

    原田委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  55. 原田昇左右

    原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅直人君。
  56. 菅直人

    ○菅(直)委員 この百五十国会というのは、考えてみますと、総選挙が終わって、特別国会があり、その後もう一度臨時国会があって、三度目の国会になります。  しかし、総選挙の直後に中尾元建設大臣が逮捕されて、我が党は、それ以前から出していたあっせん利得罪を野党四党でそろってその特別国会で既に提出をいたしました。しかし、与党側は、どうもこの問題で腰が定まらないまま、さきの臨時国会でも、結局我が党あるいは野党四党の法案についてしっかりとした議論をしないで逃げて回ったわけであります。やっと今回与党の方からも法案が出される、こういうことになりまして、我々も、そうした経緯の中で、さきに出したあっせん利得処罰法をより厳しいものにもう一度つくりかえて、昨日、四党の幹事長の方から衆議院議長に提出をいたしたところであります。  こういった経緯から考えて、逃げ回っていた自由民主党が何とか土俵についたわけでありますので、何としてもこの国会でしっかりしたあっせん利得処罰法をつくらなければならない。このことは総理も同感であると思いますが、まずその点についての見解を伺います。
  57. 森喜朗

    森内閣総理大臣 私は、先国会でも申し上げたと思いますが、今与党三党で取りまとめの協議を努力しております、こういうふうに申し上げたと思います。そして、私はそのときに、でき得れば次の国会、つまり今開かれている国会ということになるわけですが、この国会でぜひ成立を期すように結論を出すようにしていただきたい、こういうふうに申し上げてきたわけでありまして、自由民主党の総裁という立場でも、決してこれを逃げたりおくらせたり、そういうことは一度も私どもとしては申し上げておりません。むしろ私は積極的に督促を、むしろ与党の皆さんにできるだけ早くまとめられるようにということを申し上げてきたつもりでございます。  幸い与党三党で案が取りまとめられまして、この国会で今御審議をいただくことになるわけでありまして、この国会にぜひとも民主党を初め各党の皆さんとの協力もいただいて成立ができますように、心からそのことを期待いたしております。
  58. 菅直人

    ○菅(直)委員 経緯はもう国民皆さんがよく御存じのとおりですので、どちらが逃げたとかということは、国民皆さんが判断していただけると思います。  そこで、私は、このあっせん利得処罰法がきちんとしたものが生まれたときには政治の体質が変わる、また政治の体質を変えるためにもこの法律が必要だと考えております。  つまり、自由民主党の方は、なぜ口ききをして悪いんだ、なぜあっせんをして悪いんだ、政治家の仕事はそこがポイントじゃないかとよく言われます。しかし、少なくとも、国会議員の仕事の第一義的なものが地元のいろいろな要請とか業界の要請を取り次ぐことであるかといえば、私は違うと思います。それはやってはいけないとは言いませんが、第一義的には、国内外の国の方針をこの国会議論をして方向性を出していくこと、あるいは行政のあり方、制度のあり方について、どういう形でその制度をつくっていくかということを決めていくこと、そういうことであって、何かお役人に物を頼む、つまりは行政の下請のようなことが国会議員の主なる仕事であるかのような勘違いをされている与党議員、自民党議員が多いわけでありまして、そういう政治の体質を変えることが、私はこの法律をつくる最大のある意味での目標だ、このように考えますけれども総理はいかがお考えですか。
  59. 森喜朗

    森内閣総理大臣 国政に関与する者は、広く国家国民のためにどのような法律をつくっていくのか、あるいはまた国際的に我が国はどのような役割を果たしていくのか、そういう大きな見地に立って、我が党のみならず、それぞれ国会議員はそういう自覚で国政に臨んでおられるということは言うまでもないことだと思います。
  60. 菅直人

    ○菅(直)委員 だから、言うまでもないことがそうでないところに重点が置かれているんじゃないですかと申し上げてきたわけです。  そこで、少し中身に入っていきたいと思います。  九月の二十一日に初めて出された与党の案では、今回、二十七日、昨日改めて提出いたしました私たちの案に比べてかなりざる法的な部分が見受けられます。大きく言って四点の点でざる法になってしまうのではないか。  第一点は、請託というものを要件としていること。第二点は、私設秘書を実質的に、我が党では含まれる表現になっておりますが、これを外していること。第三点は、野党では盛り込んでおります第三者への供与、これは本人ではなくても自分の派閥へいろいろなお金をかわりにもらってもらうなんという、こういうことを阻止するためですが、これが与党案ではないこと。第四点は、対象が契約等非常に絞り込まれていること。  このようなことを考えますと、昨日提出をしました野党案の方がはっきりと厳しい内容になっていて、そういう点では、この野党案を、私は、与党の皆さんも賛成して成立させることが、与党の皆さんもよりよいものをつくるという意味では当然の姿勢だと思いますが、総理は、この四点について、野党と与党の案を比べて、私は野党の案の方が明らかに厳しくてすぐれていると思いますが、いかがお考えでしょうか。
  61. 森喜朗

    森内閣総理大臣 本会議のときにも申し上げましたけれども、私は、構成要件を明確にすること、それから国民の要望を幅広く行政に反映させるという政治の役割にも配慮する、こういうことを繰り返し申し上げてきたわけでありまして、そういう論点を十分に踏まえて今回の構成要件や対象行為等を定められた、このように承知をいたしております。  したがいまして、そういう意味からいえば、さきの臨時国会に提出されました野党案よりも構成要件を明確にした、あるいは処罰対象を大幅に拡大しているもの、こういうように私は承知をいたしております。
  62. 菅直人

    ○菅(直)委員 前の答弁書を読まないでくださいね。  今申し上げたのは、さきの臨時国会あるいはさきの特別国会では、我が党あるいは野党四党がいち早く出しました、その後やっと与党案がまとめられたので、野党四党で再度協議をして昨日出した法案との比較を申し上げているんです。ですから、昨日出したものを飛ばして、前出したものとの比較を言われても議論にならないじゃないですか。  ですから、昨日四党が出した案と、そして与党が出された案で、四点にわたって私が具体的に申し上げたわけです、これらがこういう点でざる法になっているんじゃないかと。この点についてもう一度見解を聞かせていただきたいと思います。
  63. 森喜朗

    森内閣総理大臣 これは議員立法で、それぞれ党がまとめてお出しになっているものでありまして、ぜひこれは委員会で御論議をいただき、そしてお互いに足らざるところを補うというのも一つの議会のあり方だろう、私はそのように思います。
  64. 菅直人

    ○菅(直)委員 相変わらずリーダーシップが見えないわけですが、議員立法といっても自由民主党の議員立法なんでしょう。民主党や野党の議員立法だから私の方からそれについていろいろ答えられないというならわかりますよ。森総理は自由民主党員じゃなかったですかね。自民党総裁じゃないんですか。自由民主党の総裁として、当然、党としても了解をされて出されている以上は、政治家森喜朗として、あるいは自民党総裁としてその点について見解を述べられるのがなぜ悪いのですか。逃げるのですか、相変わらず。
  65. 森喜朗

    森内閣総理大臣 私は逃げておりませんし、先国会から、先ほど申し上げたように、むしろ積極的に次の国会にまとめていただきたいというふうに今まで申し上げてきているわけです。  我が党が中心になった与党三党の案というのは、それぞれ皆さんが協議して認められたわけですから、皆さんがお出しになった案と、これからどういう整合性があるか、大いに国会の中で議論をしていただきたい、こう申し上げているわけでありまして、別に逃げているというわけじゃございません。  たびたびこの国会で申し上げておりますように、この国会でぜひ成立を図っていただきたい、こう申し上げているわけで、決して逃げているわけではございません。
  66. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理も大いに議論をしてこの国会で成立を図ってほしいということでありますから、まさにこの予算委員会などが終わった後、最優先でこの与野党の法案の審議に入るよう、与党の皆さんもたくさんおられますので、強くそうした形の扱いをお願いして、次の問題に移りたいと思います。  そこで、総理、やはり今国民皆さんが一番心配している問題は、日本経済、それは景気の問題であると同時に財政の問題でもあると思います。  総理は、この所信表明演説の中で、財政についてこういうふうに言われていますね。「財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるための準備は、今から始めなくてはなりません。」このように言われております。これを私流に解釈すれば、財政破綻が心配されている中で、破綻してしまってはいけないので、財政破綻に至らないように今からその仕組みをつくり上げる準備をやらなきゃいけない、まさにこのように読めるわけですが、ところで、どういう準備を始められているのでしょうか。
  67. 森喜朗

    森内閣総理大臣 財政構造というものの改革については、これは必ずなし遂げなければならない、そういう課題であるということを私は常々申し上げております。そして同時に、その前に、まずは経済を自律的な回復に持っていきたい、それに乗せていきたい、これが私の、今一番大事な政府がとるべきそういうスタンスだろう、こう思っています。景気をまず優先させるということが大事だということを常々申し上げております。  そういう景気回復に軸足を置いた経済的運営の財政を図ってまいりたい。しかし、経済を自律的回復に乗せる前に、性急に財政再建というものをもし優先させれば、せっかくここまで来た景気回復がまた危うくなるのではないかということを、常に私どもとしてはそのことを念頭に置いて申し上げているわけであります。  そういう中で、財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げられるように、今、菅議員から御指摘がありましたように、そういうために財政のまず透明性の確保を図るということが大事だろうし、効率化と質的な改善というものを十二分に進めながら、そして我が国景気の回復をより確かなものにして、その上で、税制のあり方やあるいは社会保障のあり方や、さらに中央や地方のそういう関係まで幅広く視野に入れて取り組んでいきたい、こういうことを申し上げているわけでありまして、そういう準備ということは、そういうことを心構えとして、次の、これから編成をしなければならぬいわゆる補正予算に対して、そういうことを十分に考慮しながら予算編成に当たりたい、こういうことでございます。
  68. 菅直人

    ○菅(直)委員 今総理が最後のところで述べられた文章は、一字一句所信表明の文章と変わらないですね、一字一句。私が申し上げたのは、心構えをお聞きしたのじゃないのです。総理自身が準備を今から始めなくてはなりませんと、心構えの問題じゃなくて、準備を始めなきゃいけませんと書いてあるから、どういう準備を始めているのですかと。心構えを抽象的に聞いたのじゃありません。  そこで、我が党の考え方をまず申し上げてみたいと思います。  我が党は、さきの選挙でも、財政再建の重要性も景気の問題と並んで重要だということを指摘してまいりましたが、その後、選挙の後に、第一期鳩山ネクスト・キャビネットの最後の仕事として、四項目の政策課題の一定の方向性を出しました。その中で、財政再建として、財政の健全化に向けた当面の数値目標として、できるだけ早期、できれば五年程度、遅くとも十年以内にプライマリーバランス均衡化を目指した財政健全化プランを策定すると。つまりは、できれば五年程度、遅くとも十年以内には現在の財政のプライマリーバランスを取り戻す、均衡化させるということを中間的な目標として我が党の方針として出しました。  決して、プライマリーバランスを回復したからといって、それで財政再建ができたとは思いませんが、現状はプライマリーバランスが大きく崩れて、簡単に言えば、国債の償還と金利払いに充てる新たな借金よりも、たしか十兆円余りのプラスした借金をして何とかその年ごとの財政をやりくりしている。年間に二十兆円、このパターンでいけば累積債務がこの部分だけでもふえていくという構造になっているのを何とかここまで持っていくべきだ、こういう考え方をとっております。  こういう考え方について、総理も何らかの準備をされているのでしょうから、その考えられている準備と我が党の考え方と比較して、どういうふうにお考えになりますか、このプライマリーバランスの回復について。
  69. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、私どもとしては、今、次の補正予算の編成をしなければなりません。その補正予算の編成をするに当たって、財政というものを十分に考えて、そして編成をしなければならぬし、これ以上の国債に依存するようなことは極力避けていきたい。そのための財源をどう生み出していくか、その準備を今いたしているということでございます。  したがって、例えば公共事業の見直しなどということも、これは二百三十三事業の中止、見直しがございますが、こうしたこともやはり十分なる配慮、準備ということにもなるわけでありますし、さらに、これらの予算編成の過程にあってさらにフォローアップをしていきたい、こんなふうにも考えておりますし、さらに、財政のバランスシートの公開ということなども、やはりこれも準備の中に入っていくものだと思っています。  いずれにしても、今、その作業をこれから十分に留意しながら進めていくということを申し上げているわけであります。
  70. 菅直人

    ○菅(直)委員 単年度の話だけをしているのじゃないのですよ。財政の赤字が国債だけで三百六十四兆と言われておりますけれども、これを将来にわたってどうしていくのかということなんです。  そこで、もう少し視点を変えてお聞きをします。  今、金利が非常に低い状態であります。国債の平均的な利回りを聞きましたら、平成十年度末で三・五一%、最近は三・四%程度ではないかと聞いておりますが、そうすると、三百六十四兆円に対して三・四%といえば、三百六十四兆に対して利払いが、その計算からいえば十兆七千億というように大蔵省が説明をいたしております。  そうしますと、現在は新規発行は一・九程度で、まだ平均利回りはどちらかといえば下がる傾向にありますが、これが景気が回復して、利回りが上がってきた、一般的な金利が上がってくると、額はふえている、そして、利払いの利息が上がってきたときには、私は、もうとてもプライマリーバランスどころか、もっともっとその穴が大きくなっていくのじゃないか。  つまり、景気がよくなるということは、一般的に言えば金利の上昇が、少なくともゼロ金利とか今のような金利からはもう少しリーズナブルな金利になると思いますが、そう考えますと、景気がよくなればその後に財政再建がしやすくなるというように国民には受けとめられるような発言を総理は繰り返されていますが、少なくとも、景気がよくなったときの金利の問題から考えると、果たしてそういうことになるのか。その点について、基本的な問題ですから、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 以前御提出申し上げました資料にも関係ありますことでございますので、私から申し上げます。  確かに、今の国債の金利は低うございますので、経済活動が興ってまいりました場合にはこんな低い金利では済まない、おっしゃるとおりであると思います。またしかし、同時に、このような少子高齢化時代でございますから、社会保障諸支出というものもこのままではなかなか持っていけないというような事情もございます。  したがいまして、けさも御議論がございましたが、いわゆるマクロで考えてまいります場合には、財政再建ということはそれ自身ではやれませんで、むしろ財政であれば、税制であり、中央、地方関連、これは行財政あろうと思いますが、それから社会消費の問題であり、それらのいろいろな問題を、恐らくマクロで、これはマクロモデルが要ると思いますが、取り上げました上で、そこで国民が選択をしなければ財政再建というものはなかなか難しいだろう。菅委員の言われますように、今の直線上では財政再建ということはなかなか可能でない。つまり、負担と給付との間で国民がどういうふうな選択をするかということ、その問題に取り組みませんと財政の姿というものはよくならない。マクロとけさ御質問がありましたのはそういう意味思いますが、私どももそう思っております。  そのときに、菅委員の言われましたように、プライマリーバランスというのもその結果あらわれる一つの姿である、あるいは道行きであるというのならよろしゅうございますが、一つのお考え思いますが、それらを達成するための諸施策の間の整合をいたしませんと、そういう目標だけを掲げましてもそれを達成することはできない、こういうふうに考えておるわけであります。
  72. 菅直人

    ○菅(直)委員 宮澤大蔵大臣はよくおわかりなのか、本当はわかっていないのか、私にもよくわからないのですが、負担と給付ということはもちろんそのとおりです。ただ、今、私が申し上げた一つの問題を全く答えられませんでしたね、利払いの話を。つまり、プライマリーバランスの考え方は、釈迦に説法だと思いますが、少なくとも国債に対する償還と利払い部分は借りかえましょう、いわば新しい国債で借りましょう、年度年度必要なそれ以外のものについてはその年の税金でやりましょう。確かに、それは負担と給付の一つのバランスがとれる、とれないがあります。しかし、私が申し上げているのは、景気がよくなったら税収がふえるかもしれないけれども、しかし金利が上がれば国債費の負担がどんどんふえるんじゃないですかと。もとが物すごく大きいのですからね。  これを見ますと、昭和六十年、利払いが九兆六千億ですよ。そして、それが二・五倍ぐらいになった十年度の利払いが、どういうわけか十兆円ちょっとですよ。余りふえていないのですよ、利払い。御存じでしょう。それは平均利回りが半分ぐらい下がったからですよ。倍借金がふえているけれども、金利が下がったから、まだ十兆円程度で利払いが済んでいるのですよ。これがもとの金利まで戻ったら、今だけでも軽く二十兆超しますよ。その問題を一切触れないで給付と負担と言われるから、本当にわかっておられるのか、わざと話をごまかそうとされているのか。できたら総理にお尋ねします。
  73. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お時間をとってはいけないと思いましたのですが、金利のことは、おっしゃるとおり、私も最初に申し上げました。確かに金利負担は、今小さく済んでおるように見えますのは今の金利が安いからでございまして、普通になりましたらとてもそんなことでは済まないだろう、そのとおりであります。  私の申しましたのは、したがって、それだけ国債を出してはいかぬではないか、そのためにプライマリーバランスを心がけるべきではないかとおっしゃることが違っていると申し上げているのではなくて、そのように国債を出さないで済むのにはどうしたらいいかということをやらなければその目標は達成できないわけですから、それですから、私が、税制の問題であり、社会保障の問題であり、中央、地方の財政の問題であって、それらを全部レビューしなければそれだけの国債を出さないでいいという状況が来ないではありませんかと。よほど税金でも高くするとか、いろいろ方法がありますが、そういう方法を一つ一つ探していかなければ、おっしゃいますようなプライマリーバランスが達成できる状況が起こらない、一つ一つの要素を片づけていかなければならない、それが財政再建の道だということを申し上げました。
  74. 菅直人

    ○菅(直)委員 言われていることは、私とかわられたらどうですか、まるで野党が政府に対して言っているようなものじゃないですか。  そのとおりですよ。まさにおっしゃるとおりですよ。だから、そのことをどうやって準備されているかと聞いているんじゃないですか。税制の問題、歳出の問題、そういうものを、先ほど申し上げたでしょう、つまり財政が将来も持続可能な仕組みをつくり上げるために、今まさに宮澤大蔵大臣が言われたようなことを考えて、何らかの仕組みを考えなきゃいけない。その準備を始めていると言われるから、具体的にどういう準備を始めているんですかと聞いたら、いや、こういう問題点があります。そんなことは私たちもわかっていますよ。それに対しての何らかの準備と言う以上は、せめて我が党が言っている程度か、あるいはもう少し突っ込んだ話か、どういう絵があるんですか。  先ほどモデルという言葉を使われましたが、では、例えば宮澤モデル、森モデルは、どういう考え方の骨格があるんですか。問題点を指摘するだけなら野党の席でやってください。どうですか。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 野党のお立場でも私どもと同じことをお考えいただいておることは、私はそうだろうと思っていますので、同じことを申し上げたからどうぞお怒りなきようにお願いいたしたいと思うんですが、先ほど総理の言われましたのは、今財政再建に入れるような国の収入はない、しかしながら、例えば、二年間ほど国会でお求めのありましたバランスシートというものも、ようやく秋ごろにはとにかく試作品をお目にかけて財政の現状を申し上げたいとか、あるいは公共事業についてもこの際抜本的な見直しをするとか、あるいは来年から中央省庁の再編成をいたします。こういったようなものがみんないわば財政再建につながる道であるし、このたびの補正予算にいたしましても、多少の国債は出さなければなりませんが、できるだけ手元の財源でいたしたいとか、そういう何となく全体的な将来の財政再建を考えながら準備をいたしておることは事実でございます。  それで、先ほどマクロと申しましたのは、これはけさお尋ねがありましたので図らずも申し上げましたけれども、そのような幾つかの、つまり財政といえば税制、税制なら中央、地方の行財政の関係、それから、社会保障につきまして一貫したプログラムはできておりません、それらのものを一つ一つマクロモデルで拾い上げまして、そして幾つかのマクロモデルの中から国民がどの選択をするか、その道を経なければ、このまま幾らやってみても、一つ一つの話では財政再建というものは本当に百年河清を待つということでございましょうから、やはりそういう選択をしなければならない。そのためのいろいろな心構えを今やっておるということを総理は言われるんですが、さてしかし、国税収入さえ見通しのつかないような状況ではすぐにそういう仕事に入れませんから、恐らくは最初の手段はやはりマクロモデルから入るのではなかろうかということを、これもおわかりいただいていることだと思いますが、申し上げておるわけです。
  76. 菅直人

    ○菅(直)委員 国民皆さんが聞かれて、今ごろになってまだそんなことを言っているのかと。  社会保障のプログラムにしても、かつて医療保険制度の抜本改革などの議論をして、また骨抜きにしたのも自由民主党でありましたし、公共事業は、我が党が選挙のときに強い見直しを言って、当時は、ばらまき大いに結構じゃないかと自民党政調会長は言われていましたが、最近ちょっぴり民主党の考え方をまたぱくりと食べたのか、それは後ほどやりますが、部分部分で野党の言い方を少しまねてこられたかもしれませんが、一向にマクロモデルとかというものが見えてこない。何かここには、何回も読みますけれども、「持続可能な仕組みをつくり上げるための準備は、今から始めなくてはなりません。」と。今から始めてどういうのをやっているんですかと言ったら、心構えしかありませんと。こんなことで大丈夫ですか、本当に。  さっきから、金利の問題というのはまさに金融の問題とも関連をして、ある意味では、景気がよくなった場合においても、財政再建の点だけからいえばマイナス要素になるんじゃないですかということを言ったんですよ。幾ら心構えがあったって、それに対して何にも答えがないじゃないですか。もう一度総理に、心構えの次に来る準備はあるんですか、それとも、今話された以上のことは一切何もないんですか。
  77. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、まだ私ども内閣といたしましては、本格的な景気の回復になったというふうに判断いたしておりません。まあ、ここが正念場だろうということを私は本会議でも申し上げました。ですから、次の補正予算についても、十分に景気対策ということに軸足を置いていかなきゃいかぬだろう、この姿勢は変わっていないということを私は先ほども申し上げたわけであります。  しかしながら、その財源については、今大蔵大臣からもお話ししましたように、これ以上公債依存率を高めるようなことであってはいけないし、極力そのことは避けるための財源を求めなければならないだろう。そういう意味で、今、補正予算の準備に入っているということでございます。  同時に、今、菅議員いろいろおっしゃいましたこと、大蔵大臣が話をいたしましたこと、そういう意味ではかなり整合性も多いところはあるわけです。  しかし、いずれにしましても、来年の税収がどうなるのか、ことしも税収がどうなるのか、まだはっきり言って明確ではないわけです。しかし、そういう心構えをしていかなければならないということが準備ということじゃないんでしょうか。私はそのようなことを申し上げているわけであって、そして、十三年度の予算編成も、引き続きそのことを十分に留意しながら予算編成に入っていくということだろうと私は考えております。
  78. 菅直人

    ○菅(直)委員 これ以上言っても繰り返しに、総理の答弁の方が繰り返しになると思いますから、一回だけ私の方で念を押しておきますと、将来も持続可能な仕組みをつくり上げると言われたのは総理ですからね。この補正予算が幾らになるかという話ではないんでしょう、将来の持続可能なというのは。つまり、一年や二年ならまだもつのかもしれない、かなり危ないですけれども。しかし、五年、十年たって、これだけの膨大な赤字が累積した中で、将来破綻しそうだ、だからどうしましょうかという話の議論をしているのに、お答えになるのは補正予算で財源がどうとか。  景気の話は、もう耳に本当にたこができるぐらいお聞きしました。だから、その部分を前提にした上で書かれたんでしょう、この部分は。結局のところは心構え以上の準備は何もない、これが答弁だったと私には聞こえましたし、多分、国民皆さんにもそう聞こえたと思います。  そこで、その中で公共事業の問題について少し話を進めたいと思います。  民主党は、公共事業の見直しをこの選挙でまさに公約として掲げました。具体的に四つの事業を名前を挙げて、それらの中止あるいは大幅な見直しを申し上げました。  今、自由民主党を中心として見直しをされて、二百三十三とかいろいろな数字が躍っていますが、我が党が提起した四事業の中で、吉野川可動堰と中海の干拓の中止という方向は盛り込まれました。しかし、あとの二つは盛り込まれておりません。一つは農林省構造改善局がやっております諫早湾の埋め立て、二千三百億円。建設省河川局の川辺川ダム、やはり二千数百億円。なぜこの二つは入らなかったんですか。
  79. 森喜朗

    森内閣総理大臣 今、菅議員から御指摘がありましたように、公共事業につきましては、先般、与党政策責任者会議におきまして、大変準備を十分にしながら、また熱心な議論をいただきながら、二百三十三事業の中止を前提とする抜本的な見直しに関する三党合意を取りまとめていただきました。  御指摘の川辺川ダムや諫早湾干拓が見直し対象とされていないのはなぜかということでありますが、川辺川ダムは球磨川沿川の治水、利水上必要なものであること、諫早湾干拓が農地造成と高潮、洪水等からの防災対策の面で必要な事業であること。また、これらの事業がこれまで着実に進捗いたしておりまして、三党合意で示されたいわゆる見直しの基準にも実は該当しないということのためでありまして、見直し対象が不十分、そういうことではないというふうに私は理解をいたしております。  政府としてはこの三党合意を、私としては重く受けとめて、公共事業の見直しを進めてまいりたい、このように考えております。
  80. 菅直人

    ○菅(直)委員 これはせんだっての本委員会でも申し上げたのですが、私は、公共事業の見直しということを自民党の皆さんが言われるときには、むだな公共事業発生装置というものをきちんと壊しておかなければいけないんじゃないかと。今の亀井さんの話は、言ってみれば、ダイオキシンが発生しているごみ処理場、焼却炉を、ビニールカバーをかぶせて安全ですという看板を立てて、これでダイオキシンは大丈夫ですと言っているようなもので、もともとの発生源は全然なくなっていないわけです。  農林省が参議院の比例代表で毎回毎回、構造改善局次長を出されて、多分来年も出されるんじゃないですか、この間、谷さんにお聞きしましたから。あるいは建設省も、平成七年には河川局長が比例代表の選挙に出られています。まさにこの局長や次長が担当しているのが、川辺川ダムやあるいは諫早湾の埋め立てじゃないですか。  今、森総理は諫早湾について、農地造成と防災と言われました。それは、外堤防は防災に若干関係するかもしれません。しかし、今、農地造成してお米をつくるんですか。あそこは低いところですよ。なかなか他の物をつくるのは難しいですよ、土を新たに入れない限りは。つまりは、減反減反をやりながら農地をつくるなんということがまだとまらない。  農業構造改善局次長OBはまた来年の選挙にも自由民主党から出てくるだろう。違うなら違うと言ってもらって結構ですよ。つまりは、むだな公共事業発生装置をそのままにしているというのはそういう意味なんですよ。まさに族議員の親玉を次々に発生させて、役所にとって必要だ、業界にとって必要だ、しかし国民にとって、納税者にとっては全く必要がないものをどんどんつくっていて、これが公共事業の見直しですか。いかがですか、総理
  81. 森喜朗

    森内閣総理大臣 公共事業というのは、やはりそれぞれの地域地方にとっても、自分たちの地域にとって必要なことを事業として建設省なりあるいは農水省に、いわゆる事業の方向をお願いしているわけですね。それぞれ地元皆さんのそういう声もあるということを、やはり私は忘れてはならないというふうに思います。何か中央の政府の方で無理やりに仕事をしているということでは、私はないと思いますよ。  それから、今、国会議員を無理やり出して、そのための事業を起こしているというようなことは、極めて私は、菅議員のお言葉とは思えない、大変残念な言葉だと思っています。我が党の議員は、国政全体に対して強い責任感と、そして見識を有しております。国民の厳正な審判を受けて国政に携わっている方ばかりでありまして、御指摘のように官僚OBを族議員として送り込んでむだな公共事業発生装置としているというようなことは、極めて当を得ない御発言だというふうに私は思います。  第一、諫早の問題にしても、言いにくいことでございますけれども、民主党の長崎県連は諫早の干拓事業を推進しているじゃありませんか。
  82. 原田昇左右

    原田委員長 建設大臣扇千景君。(発言する者あり)
  83. 扇千景

    ○扇国務大臣 建設省の名前が出ていますから……(発言する者あり)今指名をされましたからお答え申し上げます。答えられたら困るんでしょうか。委員長の御指名でございますから、建設省のお名前が出ましたし……(発言する者あり)  今、御存じのとおり、菅さんからの御説明がございましたけれども、建設省の管轄であるという川辺川ダムについて、菅委員からのお尋ねがございました。  御存じのとおり、過去三十年間、七回も大きな水害が発生しております。そして、御存じのとおり、川辺川ダムは治水上も何としても必要だということはおわかりいただけると思いますけれども、中心地で今まで七回災害が起こっております。これは、川辺川ダムで御存じのとおり過去三十年間で七回も水害が起こりました。そのときには、昭和四十年、浸水が二千七百五十一戸、家屋の倒壊が、流失しまして千二百八十一軒、死者が六名出ました。  例えば仮に、こういうふうに、今おっしゃいましたけれども地元皆さん方は、ぜひ川辺川ダムをつくってくださいという陳情もいただいておりますけれども、これは御存じのとおり、この間の名古屋の浸水も含めまして、あっという間に、もしも川辺川ダムがなくて、今までのように川辺川と球磨川との間で浸水が起こったとしたら、恐怖を募るわけではありませんけれども、これだけの浸水箇所ができる、約七万戸が浸水するということを想定して、我々は国民皆さん方の生活の安全と安心確保のために公共事業をしているということはぜひ国民皆さんにも御理解いただけると思いますし、御存じのとおり、名古屋でもあっという間に五万八千軒の浸水が起こったんです。ですから、私たちは、国民の安心のために公共事業もしているということをぜひ御理解いただいて御協力賜ることが、真に国民の生活の安全になるということを願っております。
  84. 菅直人

    ○菅(直)委員 扇建設大臣が大変大きな声でおっしゃるのは、後で申し上げますから、慌てないでください。  森総理地方の声ということを先ほど言われましたよね。私、選挙が終わってから島根県に行ってまいりました。島根県の県知事は、当初、中海干拓については中止をしないでくれと一生懸命言われていましたね。私たちは、もちろんそれは中止すべきだと思っていましたよ。地方の声だったですよね。しかし、亀井さんがやっちゃいましたね。  だから、地方の声イコールすべてじゃないわけでしょう、当たり前ですが。本当にそれが使われているのはその地方だけの税金じゃないんですから。それこそ全国の納税者が払ったお金を使っているんですから。  そういう意味で、地方の声といえば、本当にそれが役に立つか立たないかという判断が間違っているんじゃないか、役所に役に立つけれども、島根県にとって役に立ったかという問題を議論したわけですよ。  ですから、そういう意味で、私は、総理の答弁は全く的外れだと。そんなことを言えば、自由民主党のような考え方、森さんのような考え方だったら、一つも見直しなんかできないんじゃないですか。  それからもう一つ、今建設大臣がいろいろ言われました。大臣は川辺川へ行かれましたか、五木の村に行かれましたか。私は、五木村にも川辺川にも何度か足を運びました。四十年のときの水害の理由が中房ダムにあるのではないかという指摘もいただきました。そういう議論を加えてやっているんですから、一方的にその部分だけうのみにされないで、まず足を運んで、地元皆さんによく話を聞かれた上でもう一回同じことを言われたら、私の方からちゃんとお答えします。  ですから、余り一方的にお役人の説明だけをPRするような大臣にならないように希望をいたしておきます。  そういった意味で、次の問題に移りたいと思います。  実は、今皆さんのお手元にお配りをいただいておると思いますが、昨日、我が党におきまして、介護保険制度についての七つの提言というものをまとめさせていただきました。ちょうど期を同じくして、与党でも介護保険に対する一つ考え方をおまとめになったようであります。  私は、与党の案を拝見しまして、我が党の案と共通な部分もありますが、やや与党の案は状況に対して楽観的というか、現場の切迫した危機感というものが余り感じられていないようにお見受けをしました。  総理はこうした現場は何度かごらんになったことがありますか。あるいは、いろいろな現場の人の話を聞かれたことがありますか。
  85. 森喜朗

    森内閣総理大臣 五月に立川のホームに参りまして、視察をいたしたことがございます。
  86. 菅直人

    ○菅(直)委員 立川というと私もそう遠くないのですが、立川の何という施設をごらんになりましたか。
  87. 森喜朗

    森内閣総理大臣 立川の至誠ホームに参りました。
  88. 菅直人

    ○菅(直)委員 それは大変古くからの歴史ある施設ですのでごらんになったのかもしれません。  私たちは実は最近、大津市と仙台市で現地調査公聴会、我が党の公聴会を開きまして、私も仙台の方にも足を運んでまいりました。  ここに七項目の具体的な提言をいたしております。幾つかちょっと取り上げてみますと、ケアマネジャーの皆さんが今非常に苦労されています。ケアマネジャーの皆さんにとって、五十人ぐらいのケアプランをつくることを前提とされているようですが、一生懸命やってもなかなか三十人程度しかできない、やはりそれに必要な費用をもうちょっとふやしてもらえないかとか、あるいはいろいろなサービス提供、特にグループホームなどは夜勤の体制がないと痴呆性のお年寄りの面倒が見られない。残念ながら今の場合、報酬の算定上夜勤が含まれていないので、そういうものも含まれるような介護報酬の引き上げというものを、三年後となっておりますが、もっと早くやる必要があるのではないか。またさらに、施設も四人部屋が前提で厚生省の計画は進んでおりますが、やはり個室を前提とすべきではないか。また、その戸数も厚生省が考えている戸数ではかなり不十分ではないか。  こういうことを具体的に我が党として、現場の皆さんの話を聞きながら、あるいは何人かで手分けをして足を運んで、こうしてまとめたところであります。ぜひこの提言に沿った改革を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  89. 津島雄二

    ○津島国務大臣 菅議員御指摘のとおり、御党から七つの提言がきょう出されたことを伺いました。また、私ども、与党三党からも介護保険制度の定着へ向けた改善方策について昨日申し入れをいただいております。  厚生省といたしまして、何としてもこの介護保険制度を安定させるためには、やはりそのことで苦労しておられる方々の声に真剣に耳を傾け、また保険者である市町村長の御苦労にもやはり十分な理解を示しながら進めてまいりたいと思っておりますが、御党の七つの提言につきまして、さっと今見まして、かなりの部分で、やはり現場の声に耳を傾けておられるという意味で、私は率直に言って共感するものを感じました。  ただ、中身につきましては、またこれは細かく検討いたしまして、担当の委員会等で真剣に議論させていただきたいと思います。
  90. 菅直人

    ○菅(直)委員 せっかくですから、もう一つ総理。  我が党は、この介護サービスの特に基盤整備を進めるに当たって、例えば経済企画庁からは介護保険はGDPを〇・一%押し上げたという発表があったわけでありますが、グループホームやあるいはホームヘルパー制度、こういった介護保険の基盤整備を行うことが、従来型の大型公共事業、先ほど例に出たようなダムとかいわゆる干拓といったようなことよりも雇用創出効果が高い、こういったことも研究結果で明らかになっております。  そういった観点からも、公共事業の見直しというのが看板倒れにならないためにも、こうした介護サービスの基盤整備の推進に、同じ財政出動をするにしても基本的な方向を変えるべきだと考えますが、総理、いかがですか。
  91. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、私は、この補正予算もそうでありますし、また十三年度予算につきましても、日本新生枠という枠を総理の分として残してございます。今回の補正予算も、まだこれから編成するわけでありますが、四分野を強めていきたい、こういうふうに申し上げて、その四分野の中には高齢化対応という分野があるわけでありまして、それが、今、菅議員がお話しいただいたことなども十分含めて、そういう中に新しい財政を出動していくということはやはり大事な考え方だというふうに私も思っております。
  92. 菅直人

    ○菅(直)委員 続いて、ちょっと総理には耳の痛いお話になるかもしれません。今、首相公選の問題が我が党の中でも議論をされております。  アメリカの大統領選挙が事実上始まって、ゴア副大統領とブッシュ・ジュニアとの間で、いろいろな問題についてテレビやあるいはいろいろな場面で大議論が続けられるわけであります。  それに比べて、我が国では、率直に申し上げて、小渕総理が倒れられた後の密室談合によって新たな森総理が誕生する、つまりは、国民の前で真剣な議論をして、その結果国民が選ぶのに対して、自民党のあるいは一部与党の少人数の人が密室で、次はおまえでいくか、じゃお願いします、こんなことで決めているのを見て、こんな形のいわゆる議院内閣制、つまりは国民が直接総理を選べないやり方ではなくて、直接に総理大臣を選ぶことの方が、よりよい、民主的な、そして力のある総理を選べるのではないか、こういう声が私の耳には高まって聞こえるし、我が党の中でも、そういうふうな考え方が私自身を含めて強まっているところであります。  総理はこの首相公選制についてどのようにお考えか、見解を伺います。
  93. 森喜朗

    森内閣総理大臣 菅さん、承知の上で言っておられると思うのですが、総理大臣を密室で選んでいるんじゃないんですよ。まず、我が党としての総裁が倒れられたので、後継総裁をどうするかということを役員で話をしたということでありまして、総理大臣をその場で選んでいるということじゃないということ。これは民主党だって、委員長をどう選ぶかということは、役員間でやはり協議されることはあるんじゃないでしょうか。具体的に名前を申し上げませんが、各政党によってそれぞれ、政党の指導者をどうするかという選び方は必ずしもすべてオープン、ある程度話が決まってからオープンになっていくんじゃないでしょうか。  あのときはやはり、ちょうど小渕総理が突然病に倒れられたということもあったから、後継の総裁をということで私が選ばれて、しかしそれは、自由民主党の候補者として衆議院、参議院で首班指名を行って私は首班指名を受けたわけでありまして、密室で何か私が選ばれたということに対しては、私も今まである程度、多少のことは我慢しておりましたけれども、まだ、いつまでたっても、選挙が終わって——また選挙の後も、与党三党でやはり総理大臣として国会で首班指名を受けたんだということだけは、菅さんも御承知の上で言っておられるのだと思いますが、このことだけは明確に申し上げておきたいと思っております。  それから、公選制については、これは何も菅さんの持論だけじゃなくて、我が党でも長く、この議論はいつもいたしておることです。たまたま今資料を持っておりますが、平成六年三月にも、私どもとしては、首相公選制についての、我が党で幅広くいろいろな議論をいたしておりまして、やはり賛否両論、いろいろな意見があったこともここに付記されております。  首相公選制、総理大臣の任命について、国会の議決による指名ではなくて国民等によって直接公選するということは、現行憲法ではそのような考えはないわけですから、かつて内閣に設置されました憲法調査会においても議論をされました際には、賛成、反対、それぞれの立場からさまざまな意見が出されたが、多数意見は、やはり議院内閣制を維持すべきである、首相公選制はとるべきではないということであったというふうに私は記憶をいたしております。  憲法に関する問題については、衆参両院にせっかく憲法調査会が設置されたわけでありますから、将来の我が国の基本的なあり方を見据えて幅広く熱心な議論が行われているわけですが、この問題については、国のあり方に対しての根幹にかかわる問題でありますから、十分に掘り下げた慎重な議論がこれから積み重ねられていくべきであろうというふうに思っております。  それぞれ、個人としては、議院内閣制がいいのかあるいは公選論がいいのか、私は私なりにもやはりいろいろ考えるところございます。今の立場としては、大いに憲法調査会で御議論をいただくということがやはり一番、お互いに各党にとっても適切な議論の舞台ではないかなというふうに私は考えます。
  94. 菅直人

    ○菅(直)委員 最後のところが総理の個人的な見解があったのかなかったのか。憲法だからそちらの議論に任せると言われますが、私は、総理大臣になられた経験者、まさに今それを経験されている真っ最中の総理に、私自身が感じ、あるいは多くの国民が感じている、何か自分たちで直接選んだ方がもっと自分たちのリーダーにふさわしい人を選べるんじゃないかという気持ちを申し上げて、それについての見解を伺ったんですが、余り真正面から答えられないわけであります。  自由民主党の役員を決めた云々という議論は私ももう蒸し返したくはありませんが、わざわざ言われるものですから、またそうすると、あのとき閣議を開いたのは、だれが臨時代理をやられて、一体だれが臨時代理に選んだのかというその話にまでさかのぼりますので、必ずしもそういう自民党の中のことが密室談合で決まったのではなくて、臨時代理そのものが密室談合で決まったというところからこの問題が始まっているということを、あえて言われましたから、改めて申し上げておきます。  そこで、もうちょっと耳の痛い話を残念ながらさせていただかなければなりません。  ことしの五月二十二日の衆議院の決算行政監視委員会で、私が総理にこのような御質問をいたしました。「そこで、いろいろな出来事がありますが、我が党にも、割と若いころに自民党本部に突入して逮捕された人とか、東大安田講堂に立てこもって逮捕された人とか、国会議員の中におります。総理は、これまで逮捕されたという経験はお持ちでしょうか。」と御質問したら、総理は「ございません。」とお答えになりました。そこで、私は重ねて、現行犯逮捕も含めてそういう逮捕の経験はないんですかと言ったら、一度もございません、選挙違反で事情聴取されたようなことは覚えていますがと言われております。これは犯歴はないという意味だと思いますが、このときの答弁は今も全く変わっておられないでしょうか。
  95. 森喜朗

    森内閣総理大臣 前回もお答えをいたしたとおり、逮捕されたということはございません。
  96. 菅直人

    ○菅(直)委員 ということは、犯歴はないということでよろしいんですね。
  97. 森喜朗

    森内閣総理大臣 そのとおりであります。
  98. 菅直人

    ○菅(直)委員 いろいろ報道もされておりますが、総理は今民事訴訟を起こされていて、この犯歴の問題が一つの焦点になっておりますが、それであるならば御自分でそのことを証明する努力をされればいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  99. 森喜朗

    森内閣総理大臣 私は……(発言する者あり)ちょっと静かにしてくれませんか。  私は、自分の良心に従って自分の名誉に対して告訴をしているんです。そして、今それが裁判中であります。したがって、国会であろうとも、総理という立場であろうとも、公判中の問題について原告がここでコメントを申し上げるということは控えたいと思うんです。  私は自分の良心に従って申し上げているわけでありまして、菅さんがそれを信じてくださらないということであるならば、そしてまた、そのことがそんなに重要な問題であるということであれば、菅さん御自身がお調べいただいたらいいんじゃないでしょうか。私は、とかくいろいろ問題がある、そうしたスキャンダルを取り上げている雑誌と今戦っているんです。国会議員として、私個人の名誉を賭して戦っているんです。そのことについてあなたが信頼してくださらないのならそれはそれで結構ですから、その雑誌と一緒にあなたも私のことをお調べになったらいかがでしょうか。
  100. 菅直人

    ○菅(直)委員 何かいやに居直られて、私が別に総理を訴えているわけでも、総理のことをとやかく申し上げたわけじゃありません。ですから、この問題は参議院の本会議でも議論になっておりますので、今後の問題としても、裁判所という公的機関が絡んでおりますので、普通であれば、裁判所がこういう資料を出せといったときに、総理が原告として反対されているのがなぜなのかなと思ったからその理由をお聞きしたんですが、今のことが答えになっているかどうか私にはわかりませんけれども、この問題は後また同僚議員からどこかの機会に聞かせていただきたいと思っております。  そこで、せんだっての本会議でもいろいろ議論のあった日米首脳会談についてお聞きをいたしたいと思います。  七月二十二日、サミットの折に、クリントン大統領と森総理は会談をされたわけであります。そこで、我が党の代表質問の中で、いわゆる普天間飛行場の移転について、その代替施設の使用期限十五年という問題について、しっかりした議論をされたのかということをお尋ねいたしました。それに対していろいろとお答えになっておりますが、もう一度確認をいたしたいと思います。総理は、クリントン大統領との会談で、使用期限十五年という数字を挙げてこの問題を取り上げられたのかどうか、まずその一点に絞ってお聞きをいたします。
  101. 森喜朗

    森内閣総理大臣 サミットの際の日米首脳会談におきまして、普天間飛行場の移設につきまして、私から、代替施設に関する使用期限の要請については既に貴国政府との話し合いの中で数回にわたり取り上げたところであり、今後、国際情勢の変化に対応して、同飛行場の代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき貴国政府と協議していくこととしたい、我が国としては国際情勢の肯定的変化のための外交努力を積み重ねていく考えであり、右についても貴国と協力をしていきたい、このように私から述べました。そのように取り上げたところであります。  これに対しまして、クリントン大統領からは、代替施設の使用期限に関し、在沖縄米軍を含む在日米軍の兵力構成等の軍事態勢については、SACOの最終報告及び一九九六年の日米安保共同宣言を踏まえ、日本側と緊密に協議をしていきたいという旨の言及があったわけであります。  なお、地位協定の見直しの問題を取り上げることはございませんでしたが、政府としては、昨年末の閣議決定にあるとおりでございまして、地位協定の運用の改善については誠意を持って取り組み、必要な改善に努めていく考えです。  そこで、今、菅議員から、十五年という数字を挙げたのかという御質問に対しまして、日米首脳会談におきましての使用期限の問題に関するやりとりは今申し上げたとおりでありますが、十五年という年数は具体的には申し上げておりません。代替施設に関する使用期限の要請として取り上げたということでございます。
  102. 菅直人

    ○菅(直)委員 結局、十五年という数字は挙げられていないことを今認められました。クリントン大統領の返事を今紹介されましたが、SACOの最終報告及び一九九六年の日米安保共同宣言を踏まえ云々と。これは、一九九六年、もちろん橋本内閣におけるクリントン大統領との共同宣言ですが、この時点では普天間の移転というのはまだ決まっていないわけですね、もちろん十五年間の期限という話も沖縄から出ていないわけですよ。ということは、少なくともクリントン大統領のこの返事は、つまり、普天間の移転先の新たな基地を十五年という期限で日本に返してほしいという沖縄の知事の要請について、まだそういう問題が起きる前の一九九六年の日米共同声明、いわゆる米軍の前方配置が約十万、そういう基本的な合意が国際情勢によって云々という一般的なことを言っているだけで、結局は、期限の問題の話題は何もクリントン大統領は触れていないじゃないですか。  結局、私が言いたいのはこういうことなんですよ。どうも外務省のやり方は、ほかの面でもそうですが、国内向けに説明する仕方とアメリカに対して言う言い方に微妙に差をつけて、そこでごまかしていると私には見られてならないのですね。  例えば、総理は先日の我が党岡田議員の質問に対して、この問題で、深く時間をつくってこの普天間問題をじっくり話し合う時間はなかったけれども、しかし、基本的なことだけはきちっと申し上げておりますとか、総理が普天間の十五年期限について具体的にお述べになり、そしてクリントン大統領はそれに対してよく協議をしたいというふうに本当におっしゃったんですかと岡田議員が聞いたことに対して、こちら側の申し入れはきちっといたしておりますし、日本側の申し入れ等については、沖縄の皆さんが求めておられることについては、十分に大事にそれを受けとめてこれから両国で真剣に議論していきましょう、こういうお答えがございましたと総理は答えているのですよ。  こちらの質問、岡田議員の質問は、十五年の期限についてきちんと協議したのかと言ったら、こちらの申し入れはきちっとして、沖縄の皆さんが求めておられること、つまりは十五年の期限ということについて、十分それを大事に受けとめて両国で真剣に議論していきましょう、こういうふうにお答えがございましたと、総理が答えているのですよ、クリントン大統領の返事について。  しかし、今の文章といいましょうか、読み上げられた文章、あるいは総理が覚えておられることでいえば、一九九六年の日米安保共同宣言を踏まえて緊密に協議しと書いてあるじゃないですか。  結局、国内に対する説明とアメリカとの交渉というのか話とは全然すれ違っている、あるいはわざとすれ違えているのじゃないですか、どうですか。     〔委員長退席、中村(正)委員長代理着席〕
  103. 河野洋平

    ○河野国務大臣 お尋ねでございますが、この問題、使用期限の問題は、これまで何度か日米間で日本側から取り上げてきているわけでございます。  総理が今御説明になりましたのは、菅議員が指摘をされました、先般の日米首脳会談の折にどういう話をしたか、こういうお尋ねであったわけで、今総理から御返事を申し上げたようなやりとりであったというふうに私も承知をしておりますが、これまでに使用期限の問題についてはそのとき一度だけ取り上げられたのではないわけでございまして、これまでにも数次にわたって、この使用期限の問題につきましては、地元の要請を重く受けとめていくという旨つけ加えて取り上げてきているわけでございますから、その点はぜひ誤解のないようにお願いをしたいと思います。  それから、日米安保共同宣言の話は、これはつまり、アメリカの兵力あるいは軍事体制、こういったものについては国際情勢を踏まえて日米間で協議をしていきましょうねということをその九六年に言っているわけでございまして、今度の問題もそれに絡む問題でございますから、その九六年の共同声明を踏まえて、アメリカ側から答弁があった、答えがあったということでございます。
  104. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、外務大臣森総理も、あるいはお聞きになっている皆さんも、結局、アメリカ側は一九九六年のいわゆる日米共同宣言、つまりこの普天間の移転問題がまだ上る前の、まさに冷戦後の米軍の前方展開あるいは在日米軍の全体の規模などについての議論の中で、私の理解で言えば、その議論の中で、それは自分たちがこういう基地が必要だということが、例えば普天間であろうが新しい施設であろうが、それが十五年後に別のところに行こうが、そういうことをやられるのなら、それはどうぞ御自由にやってくださいと。つまりは、一般原則の中でちゃんと措置されるのならいいですよ、一般原則さえきちんと守られればいいですよと。個別の普天間の代替施設の十五年ということについて、クリントン大統領は何も触れてないじゃないですか。  いいですか。全体において、それは米軍が例えば半分ぐらいに引き下げていいという合意が出たときに、そこがそうなるかもしれません。しかし、そうならなかったときにも、沖縄の皆さんは、代替施設を認める前提条件として、たとえこの九六年の大枠の中で変更が必要ないということがあったとしても、少なくとも普天間の代替施設だけは十五年で返してくれ、それをどこに持っていくかどうかはまた別の問題として返してくれ、アメリカに持っていくのか国内に持っていくのかは別として返してくれというのが知事の要求じゃないですか。  つまりは、先ほど申し上げたように、総理は、沖縄の皆さんが求められていることについて十分に大事にして、これを真剣に議論するというふうにお答え、つまりそういうふうにクリントン大統領が答えたというふうに答弁されていながら、実際にはアメリカが答えているのは一般原則、普天間の代替施設の問題が起きる前の一般原則について答えているだけで、それをあたかも十五年の問題について答えたかのように国民に説明しているところに、私は一種の二枚舌があると思うのですが、総理、どうですか。これは総理の答弁ですからね。——ちょっと待ってください。これは総理の答弁ですから。
  105. 河野洋平

    ○河野国務大臣 外交担当者として私から申し上げたいと思いますが、まず最初に、その二枚舌とかなんとかということはぜひ御勘弁をいただきたい。私は、一つ一つの問題について、でき得る限り正確に誠実にお答えをしているつもりでございますから、これはぜひおわかりをいただきたいと思います。  普天間の問題につきましては、総理の指示によりまして、昨年暮れの閣議決定に基づいて、私も、それから防衛庁長官、これは瓦長官もそうでございますし、現在の虎島長官もそうでございますが、この問題について懸命に取り組んできております。どうやって普天間への移転を、地元のお考えというものも重く受けとめながら、さらに日米安保条約の効果的な運用がどうすればできるかということも考えてこの問題に取り組まなければなりません。  今私が申し上げました一九九六年の日米間の合意につきましては、これは、やはり何といってもこの日米間で安保条約というものがうまく運用されて、日本の平和と安全、あるいは日本ばかりではありません、周辺の平和と安全というもののために事が進んでいくということも考え、さらには地元の要請も重く受けとめるということを考えて一生懸命知恵を絞り、協議をする、取り上げてきているということでございますから、ぜひその点は、何か表だけつじつまを合わせているような、二枚舌ではないかというようなお受け取りはおやめをいただきたいと思います。
  106. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理はどうですか。総理の答弁なんだから。
  107. 森喜朗

    森内閣総理大臣 菅議員は一九九六年の日米安保共同宣言のことに、そこだけにこだわってお話しになると、確かにそういう意見も成り立つのかもしれません。しかし、先ほど私が申し上げたのは、クリントン大統領からは、在沖縄米軍を含む在日米軍の兵力構成等の軍事態勢については、SACOの最終報告というふうにおっしゃっているわけですね。この中にこの使用期限が入っているわけでしょう。それに、及び一九九六年と言われたわけでありまして、そこのところはなくてもいいわけですが、大統領がそうおっしゃったということを申し上げたわけです。  したがって、このSACOの最終報告の中にこの使用期限ということは盛られているわけでありますし、そのことは大統領のお話の中でそう申し上げているわけです。
  108. 菅直人

    ○菅(直)委員 今の答弁でいいんですね。SACOの最終報告の中に十五年というものが盛り込まれているからそれでいいんだというのが総理の答弁ですよ。それでいいんですね。
  109. 森喜朗

    森内閣総理大臣 今私が申し上げたところ、ちょっと誤解がございまして……(菅(直)委員「誤解じゃないですよ」と呼ぶ)今のところは、そのSACO最終報告の中にその使用期限が入っていることは、入っていないということでありまして、そこを私は間違えて今答弁いたしました。取り消しておきます。
  110. 菅直人

    ○菅(直)委員 ということは、答弁になっていないじゃないですか。今言われたのは、SACOのことに入ってるから答えていると言ったけれども、それに入っていないとなったら何も答えたことになっていないじゃないですか。だめですよ。総理大臣が……(発言する者あり)ちょっと待ってください。  総理大臣がそういう認識だから、総理大臣がそういう間違った認識を持っているから、それを十分に議論をするというふうにクリントン大統領は言われたというふうに、クリントン大統領のこのところをもってそういう理解をされていたんでしょう、多分。だから本会議でそういう答弁をされたんでしょう。それが間違っていたということは、国民に対して間違った認識のもとに答弁をしているということになるじゃないですか。
  111. 森喜朗

    森内閣総理大臣 普天間の移設と返還が入っているという意味でございます。
  112. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、十五年の問題についてきょうは話題にしているのであって、十五年の期限という問題が沖縄県民あるいは沖縄知事の要望だったから、そのことについて議論されたのかと言ったら、今ここに入っているから議論したと言われた、あるいは、そういう答弁があったと言われた。間違いじゃないですか。(発言する者あり)いや、間違いというのは、本会議における答弁のときの認識そのものが間違っていたんじゃないですか、そうすると。
  113. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私から総理の御答弁を補足するというのはどうかと思いますけれども、十五年の期限というのは、沖縄県知事及び名護の市長からその後にそうした御提案がございましたことは、菅議員のおっしゃるとおりでございます。しかし、こうしたことを重く受けとめて日米間の交渉に取り上げろという御指示を総理が出されたことも事実でございまして、総理の認識に間違いはございません。
  114. 虎島和夫

    ○虎島国務大臣 ただいまの政府側答弁にもう一つつけ加えまして私の方から御答弁を申し上げたいと思います。  それは、先般、アメリカの方と2プラス2あるいは防衛首脳会談が行われました。当然私が当事者でありますから参ったわけであります。その際、このように私の方からは申し入れておるわけであります。  沖縄県民の負担を軽減するため、今後とも日米協力してSACO最終報告を着実に実施していきたい。私は、就任以来二カ月のうち二度にわたり沖縄を訪問した、そして、SACO関連の全施設を視察する等全力で取り組んでいるところである。普天間については、代替施設に関する協議会の初会合が開催された。ここで若干国内問題を説明いたしました。その基本計画の作成に必要な事項について協議することになる、その作業が円滑に進むよう最大努力をいたしたい。なお、代替施設の使用期限については、ただいま河野外務大臣からお話があったとおりである。また、これまでも私の前任である防衛庁長官からそれぞれ貴国に対して申し上げたとおり、私としても、昨年の閣議決定に従って適切に対応していきたい、そういうことを申し上げたわけであります。  過去の防衛長官の申し入れ発言の中には今の期限問題も入っておるということを、つけ加えて御説明申し上げておきたいと思います。  以上であります。
  115. 菅直人

    ○菅(直)委員 私は、七月二十二日のサミットの時点における首脳会談のことをお聞きしたのであって、ほかの方がいろいろやっておられるのは、それは努力は買いますが、総理の認識は、先ほどの答弁を聞いても大変あいまいで、少なくとも国民に対しての説明とアメリカの認識とが大分食い違っているというふうに私には受けとめられました。  そこで、この問題をこれ以上言ってもまた総理の間違った答弁が出てきそうですので次にしますが、今回の所信表明で何といっても特徴的だったのは、ITという言葉。私も数えてみました、見出しを含めると二十三カ所、読み上げられたところで二十二カ所、ITという言葉がありました。今やITという言葉を語らずして何か国会が明け暮れしないということになっておりますが、国民皆さんからすれば、まだまだなじみの少ない言葉ではないかと思います。  そういう意味で、国民皆さんに一部かわって、この所信表明でいろいろ言われていることについて、ちょっと二、三、総理の言葉ですから、お尋ねをしてみます。  まず、ITというのは、これは何の略ですか。
  116. 森喜朗

    森内閣総理大臣 情報技術ということであります。
  117. 菅直人

    ○菅(直)委員 それと、ちょっと難しい、私も後でいろいろ調べてみたのですけれども、わかりにくいのですが、IPバージョン6などによる云々というのがありますが、このIPバージョン6というのは何でしょうか。     〔中村(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  118. 森喜朗

    森内閣総理大臣 正直申し上げまして、この議論IT戦略会議等に入って伺っておりますと、わからない言葉は、率直に言って、結構私もありますよ、それは。ですから、IPバージョン6なんという言葉を、先ほど午前中も申し上げたと思いますが、果たして所信表明に入れることがいいのかということでかなり議論をいたしました。しかし、それを日本語に言いかえるということはとても難しいということでした。これは専門の学者さんにも聞きましたけれども、難しい。ですから、むしろその言葉を出して、国民皆さんにそのことはどういう問題かという問題意識を持っていただいた方がいいのではないかという結論でございまして、あえてこの所信表明の中に織り込みました。  詳細は担当の中川大臣の方が詳しいわけですが、要は、今のこのインターネットに対して、それぞれこれを享受するためには、四十三億になるんですか、四十三億のアドレスに可能だけれども、世界全体の人口からいったら、もうこれでは使えなくなるということで、もっと、それの何兆分の十兆分というふうに聞きましたが、ちょっと忘れましたが、そういうふうに、世界じゅうの人たちが可能な限りアドレスが引けるようにしよう、それがこのIP、いわゆるインターネットプロトコル・バージョン6という言葉なんだ、そういう技術なんだ、私はそういうふうに伺っておりまして、それ以上のことを専門的に申し上げろと言っても、話している方もなかなか難しいし、お聞きになる方も難しいんじゃないかと思います。
  119. 菅直人

    ○菅(直)委員 いろいろなことが言われていますよね。超高速インターネットの整備とか、あるいは電子取引とか電子政府とか、いろいろなことを言われています。  ここに、総理が主宰されているIT戦略会議と、本部があるのでしょうか、会議の議長である出井さんが八月三十日に、一枚紙の考え方というものを出されております。後半をちょっと読んでみますと「我が国は、五年以内にアメリカを越える超高速インターネット大国となり、」云々、一番には超高速のこのIPバージョン6を用いた云々、二番には電子商取引、三番には電子政府、四番には超高速インターネットの人材、こういうふうに書かれております。これは御存じですよね。
  120. 森喜朗

    森内閣総理大臣 承知いたしております。
  121. 菅直人

    ○菅(直)委員 これはほとんどそっくりですよね。総理の所信表明に盛り込まれていることと、その所信表明よりも前に行われたこの……(発言する者あり)いや、いいんですよ。そっくりでもいいんですよ。ほとんどそっくりですよね。ですから、出井さんが言われたことをそのまま、総理としては、これはこれでいいだろうと思われて、文章も含めてほぼそっくりこれに取り込まれた、そう理解しても間違いありませんね。
  122. 森喜朗

    森内閣総理大臣 これは出井さん個人のお考えではないと思うんですね。いわゆるIT戦略会議の議長というお立場で、民間人、学者、多くの人たちといろいろ議論をした上で、出井案といいましょうか、出井メモがまとめられたということでありまして、このIT戦略会議は、IT担当である中川官房長官のもとにおきます政府IT戦略会議でございまして、その意見を伺いながら、いわゆる政府にありますIT戦略本部でそのことを受けとめて政策として取り入れていこうということでございますから、そのことを私も所信表明に入れて、国の方向としてはそういう方向に持っていきたいということを申し上げているのは、何ら私はそこに間違いはないというふうに思っております。
  123. 菅直人

    ○菅(直)委員 間違いがあるとかないとか私は言っているんじゃないんです。ここで出井議長の考え方として出されていることと、ここが表現を含めてほとんどそっくりなわけです。それは、IPバージョン6などというのは、かなり専門家でも知らない言葉だと私も思いますよ。だから、そういう意味でそのまま取り入れられたのかなと思ったので、それをお聞きしたんです。  それでは、もう一、二点だけお尋ねをしたいと思います。  総理教育問題をよく取り上げられますが、実は大変興味深い本が最近出ておりまして、不登校の中学生がインターネットで連携をしていろいろな活動を起こす、「希望の国のエクソダス」という村上龍さんの本が出ておりますが、総理はごらんになったことがありますか。
  124. 森喜朗

    森内閣総理大臣 本のタイトルは、たしか新聞の広告に出ておったと思いますが、本の中まで見ておりません。
  125. 菅直人

    ○菅(直)委員 ITITということをいろいろ所信表明で述べられることがいけないとは申しませんが、もう少し何か総理として、こういうものが日本社会の中でどういうことにつながるのか、私にはなかなかイメージが見えないという感じがしたものですから、ちょっとお聞きをしてみたんです。  それからもう一つ。来年から省庁再編が行われます。従来から、例えばインターネットというものはコンピューターを通信回線でつなげたものであって、役所でいえば、コンピューターは通産省、通信関係は郵政省というふうになっている。せめて、省庁再編をするのならば、あるいはIT革命、IT革命と言うのならば、その障害となっているようなこういう縦割りを変えたらどうかという議論がありますよね、従来から。総理は、IT革命を政府として推進するというなら、まずそこから手をつけられるべきではないか、そう私は考えますけれども、いかがですか。
  126. 森喜朗

    森内閣総理大臣 そういうことも含めて今IT戦略会議議論をしていただいているんです。IT基本法も、今基本法案について成案中でございますが、政府としての役割はどういうことであろうか、あるいは民間の役割というのは何なんだろうか、それから、まずどういうところから取り上げていくべきであろうかというようなことを、プライオリティーの問題であるとか、そういう点も今議論をしながら、IT基本法をまず国会にお願いしたい。そういう意味で戦略会議もしばしば開かせていただいているということでございます。  確かに、おっしゃるとおり、中央省庁の再編によって新たな役所というものができ上がっていくわけですが、当然この所管についてもいろいろなそれぞれの意見があると思っています。そういう意味で、私はあえて、今度の内閣ができましたときに、通産であるとか郵政であるとかということではなくて、むしろ担当大臣をとりあえず官房長官のもとに併置したい、こう思いまして、IT担当大臣に官房長官をお願いしたということでございます。  当然、新しい省庁がスタートしていきましたならば、いわゆるIT担当の大臣というのはどういう形に置くべきかということも十分考えてみなければならないというふうに思っております。
  127. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理大臣というのは、内閣の総理大臣なわけですね。ですから、内閣の組織をどうするかというのは、まさに直接の総理のいわば権限といいましょうか、最終的には法律ですから国会にかかりますが、一義的には総理考えられる責任と権限があるわけです。もちろん、いろいろなところで議論されるのは結構ですし、従来から何回もありました、この問題は。  ですから、来年から始まる省庁再編の中で、まだ今になって基本法をつくってその中で議論をしてもらうなんということを言っているから、ドッグイヤーどころか、これだと何イヤーになるんでしょうかね、カメイヤーぐらいになるのでしょうか。これではとてもじゃないけれども五年後の世界一なんというのは夢のまた夢になるんじゃないか。まずは障害で、政府として、内閣としてやれることの重大な一つがそこにあるのじゃないか。  それは、先ほどの何とかバージョン6とかいろいろな問題は民間企業が相当の力で開発をしているわけですから、そこはある程度民間が進めるのを応援するという姿勢でいいと思いますが、役所のことは民間にはできません。民間の企業の合併は民間でできます。民間の中のセクションの合併は民間でできます。しかし、役所の合併や、あるところの統合は民間にはできません。だからこそ、そこのところをまずやるのが総理の責任じゃないですかと申し上げたのですが、残念ながら、また基本法をつくってからゆっくりやりますということですから、これではとてもじゃないけれども対応ができないんじゃないか。  もう一度だけお聞きします。
  128. 森喜朗

    森内閣総理大臣 確かに、我が国の対応がおくれていた面はあると思うのですね。ですから、私どもとしては、やはり国の一つの目標を立てて、この件は何年までにする、この件は何年を目標にするということを、そんなに長い目標年次ではなくて、定めていかなきゃなりません。それはまあ菅さんのように何もかも全部精通されている方ならば別としまして、こういう専門的なことについては、やはり私は謙虚でなきゃならぬと思っていますから、やはり専門の皆さん意見を十分聞きながら、過ちのないようにしていくということもまた政府のとるべき判断じゃないでしょうか。  いずれにしても、五年たったら、おくれておる日本を取り戻して、そしてアメリカを追い越すような、そういう目標を立ててやろうというのが、今内閣の、私たちが国民に示しているそういう姿勢である、そういう目標であるというふうにどうぞ受けとめていただきたいと思います。
  129. 菅直人

    ○菅(直)委員 もうくどいぐらいですから私もやめたいのですが、私が申し上げたのは、専門的なところを総理にソニーの会長や社長と同じような知識をお持ちいただきたいということを言っているのじゃなくて、逆に言えば、ソニーであろうがどこであろうが役所のことに一義的には責任を持てないわけですから、役所のことに一義的に責任を持っているのは総理大臣なんですから、そこをやっていただきたいと言っているのであって、その部分も専門的にわからないと言われるのだったら、これは大問題ですよ、その部分についても。そのことだけ申し上げておきます。  そこで、もう一つ、次に移りたいと思います。  先ほど少し不登校の問題がその本の中でも出ているということを申し上げましたが、総理、義務教育という言葉がごく普通に使われております。この義務というのは、だれが何に対してどういう義務を負っていると理解されていますか。
  130. 森喜朗

    森内閣総理大臣 義務教育は、わかりやすく言えば、子供をきちんと勉強させなさい、学校へやりなさいということを、親に、親権者に対してこれを規定している、義務化させているということだと思いますし、それから学校の設置義務者に対して、つまり小中学校であれば市町村が設置者でありますから、設置者に対して義務教育の諸学校を整備しなさいということを義務化しているというふうに私は判断をいたしております。
  131. 菅直人

    ○菅(直)委員 それでいいんですね、本当に。  私は、ちょっと違うと思うのですよ。憲法二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」とまず書いてあります。そして二番目に、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と書いてあります。いいですか、「保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と書いてあるのです。学校という言葉は一つもないのですよ。  イギリスでは、義務教育といっても、例えば家庭教師であっても構わないと言われています。今、総理のお答えの中では、親が子供に勉強をさせる学校にやることが義務だと言われましたが、少なくとも憲法には学校という言葉はありません。  そこで、ここに、学校教育法の二十二条の中に、今度は、就学させる義務を負う、子女が何歳に達したときにこれを小学校云々に就学させる義務を負うという条項があります。つまり、何が申し上げたいかといいますと、私は、学校という施設あるいは学校というシステムに子供をやるのが親の義務、裏返して言えば、子供にとっては行くのが義務になっている。本当にそれでいいのでしょうか。  ちょっと話が飛ぶかもしれませんが、予備校というものがあります。予備校に例えば高校を卒業して大学受験に失敗した人が行くのが義務かといったら、だれも義務とは言いません。家で勉強してもいいし、あるいは別のところで勉強してもいいけれども、いいと思えば予備校に行けばいい。  ですから、義務教育という言葉を、学校に行くのが義務だ、だから、子供が学校に来なくなると親が呼びつけられて、何で子供を学校にやらないのだ、その裏返しとして、子供に対しても、なぜおまえは学校に来ないのだ。つまり、学校という施設とシステムに来るのが子供の義務だ。私は、そこに義務教育の義務の根本的な認識が誤っている。  子供たち教育を、普通教育を受けられるような環境をつくるのが親の義務であり社会の義務であって、学校という施設にあるいは学校というシステムに、例えばここに住んだらこの学校に行かなきゃいけない、行かないやつは法律に反しているというのがこの学校教育法のつくり方ですよ。  そういう意味で、私は、憲法の考え方とこの学校教育法の考え方は少なくともぴたっと一致はしていない、そう思いますが、総理、いかがですか。
  132. 大島理森

    大島国務大臣 菅さんの教育そのものの、教育はどうあるべきかということをできれば後で聞きたいのです。  おっしゃるとおり、憲法においては、書いてある二十六条では、すべての国民は、ひとしくまず教育を受ける権利を有する。第二項では、「その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」保護する子女ということは、保護する人に義務がありますよ、こう書いてあるのは事実です。  そのことを受けて、我々がそれをどのように担保するかということで学校教育法をつくり、学校ということを基礎にして、子供たち教育をまさに受けるそういう場を与えるということで、法体系としてそうつくっているわけですから、初めから学校を否定して、親がその責務を負うっていうんだから親に任せればいいじゃないかという考え方は、私どもはとりません。
  133. 菅直人

    ○菅(直)委員 きょうは、この議論をゆっくりやる時間は予定の時間にありません。ただ、この問題は……(発言する者あり)何か変なやじが飛んで、逃げるなとか言っていますけれども、もともと、よく考えてみてください。不登校がこれだけふえた、そうすると、一般の学校ではだめだからフリースクールとか何とかスクールとかというのをつくってやる。非常に逆説的に聞こえるかもしれないけれども、不登校というのは何でふえるのですか。学校があるからじゃないですか。いや、わかりますか。いや、いいですか、そこが……(発言する者あり)ちょっと、静かにさせてください。静かにさせてください。
  134. 原田昇左右

    原田委員長 お静かに願います。
  135. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、この問題はもうちょっと私はまじめに受けとめるべきだと思うのです。つまり、今の学校が子供を縛りつけるのにふさわしい学校になっているかという根本的な問題を問いかけているのです。  ですから、先ほど申し上げた「希望の国のエクソダス」というのは、六十万人の中学生が学校に行かなくなった中から話が始まるのですよ。そして、非常に活力ある形でいろいろなことが動く、もちろん小説ですから、そうなると言っているのじゃないのです。学校の本質を見直すところから始まっているのですよ。  それを文部大臣のように、いや、学校というものはあるのが当然で、その学校があることが前提で子供たちが義務を負っているというふうに考えるのか。親たちが、社会子供たちに本当に喜んで教育を受けられるような環境をつくるのが義務なのであって、そちらから、学校のあり方を含めて、今までのようながちがちの学校なのか、まさにいろいろな選択性があるのか、場合によっては、中には例外的に家庭教師であっても構わないとするのか、そういうことのあり方を私は問いたいから、あえてまさに問題となるような発言をしてみたんですよ。そうしたら、皆さんは、学校というものが頭から、てんから、もう最初からあるようなことを言われるけれども、憲法に言っているのはそうじゃないということを申し上げたのです。
  136. 大島理森

    大島国務大臣 伺いますれば、学校があるから不登校があるということよりも、菅さん、今我々がやることは、学校に行かなくなった子供たちに心を開くように私どもがよく話し合い、そして、その子たちが喜んで行けるような学校をつくること、そしてまた、いろいろなカウンセラーやそういうさまざまな対応をしながら、そういう子供たちが集団で学校へ行って、みんなで喜んで勉強できるようにすることが大事なのであって、菅さんのお話を伺っておると、学校そのものを否定しているような気がいたします。私どもはそういうことをいたしません。  それで、フリースクール等につきまして……(発言する者あり)静かにしなさい。フリースクールにつきましても、その地域教育委員会あるいは学校長とよく話して、そして、そのフリースクールを一生懸命やってくださっている方々には、きちっと校長もそれを認めてやっている。かなり柔軟にやっているのです。少し勉強していただきたいと思います。
  137. 菅直人

    ○菅(直)委員 時間ですので、きょうは問題提起にとどめますが、我がふるさとには、かつて松下村塾というのがありまして、それは、子供たちではありませんが、牢獄の中で、一つの学校と呼ばれるかどうかわかりません。そういう意味で、どうも私が提起した問題をまだ文部大臣もきちんと理解をしていただいてないようですので、また機会があったら議論をさせていただきます。  それでは、終わります。
  138. 森喜朗

    森内閣総理大臣 菅さん、私は村上龍さんのその本は読んでおりませんが、教育国民会議皆さんにも議論をぜひしてほしいということを言っていることが一点あるのです。  それは、これだけのIT社会というのができてまいりますと、確かに、ある意味では、自分でそういう専門の先生方と実際でのパソコン通信をしながら勉強できるわけですね。事実、アメリカの大学と、アメリカの教育者とそういうインターネットを通じて勉強している人たちもいるわけですから、そういう知識を、学術だけを身につけていくということであれば、確かにこれはインターネットで十分できるということになると思うのです。  私は、学校というのは、そういう学力といいましょうか、知識を身につけるところだけではないと思う。学校というのは、もっともっといろいろな、多面的な、そういう人格をはぐくんでいく、人間人間がぶつかり合っていく、そういう大事な場所だというふうに私は考えております。
  139. 原田昇左右

    原田委員長 この際、石井一君から関連質疑の申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石井一君。
  140. 石井一

    石井(一)委員 どうぞよろしくお願いします。  参議院の非拘束式名簿方式による選挙制度の改革を導入すること、これは、中身におきましても、その手続におきましても、極めて大きな政治問題を呈しておると思います。自民党、公明党、保守党、与党三党は、多数をいいことにして民主主義の基本を踏みにじるのか、こういうことを勝手に変えていいのか、私は、怒りとともにこのことを明確に申し上げておきたいと思います。  十七年前に全国区制度を改正いたしましたことは、総理も古い閣僚の皆様方も実感を持って見ておられたと思うのでございます。私は政治改革一筋に生きてきましたので、この点につきましても、五十五年、五十六年、五十七年のいわゆる改正の時期につきます議事録を子細に読んでまいりました。なぜ変えたのか。一つ、有権者にとって候補者の選択が困難である。これは、全国区制度の問題点ということを指摘し、現在の制度に変えた自民党の金丸三郎先生が、その法案の提案理由説明において明快に言っておられます。あなたは、候補者の顔が見えるとかなんとかと言われますけれども、全国で何百人という候補者が出て、その人一人を選ぶということになってくれば、顔が見えるというよりも、候補者をどう選択していいかという問題がまずある。  第二に、膨大な経費を使わなければいかぬ。これは全部、金丸自民党代表の発言であります。五当四落、当時、五億円で当選、四億円では落選。当時、はがきが四十円であった。百万票とろうと思えば、三百万人ぐらいに一回はがきを出すだけで一億五千万円。銭酷区とかいいますが、これは天文学的な数字が必要な制度である。どこからこの金を取ってくるのか、持ってくるのか。  過酷な肉体行使。亡くなられたとされる方が、村上孝太郎、山本伊三郎、向井長年、江藤智ですか、その他たくさんございますが、どれほどの過酷な肉体労働を、選挙期間だけではありません、一年、二年ぶっ続けてやるのか。  人気投票になってしまう。マスコミかタレントしか上位が当選できない。そうばかりではないかもわかりませんが、それでなければ、相当な組織力、資金力がなければこれはできない。  選挙違反の続発。全国区時代には四けた。一つの選挙で一千七百二十三件というのが一番少なかった。十二回の全国区選挙で、一番多かったのは八千九百七十八。比例代表にすると、一けたか二けたになってしまった。  こういう問題が、深刻に、長い時間かかって、そうして国会を九十四日間延長して、審議を重ねて重ねて、この制度が今の制度に変わった。  さて、どうですか。こういうことを踏まえておられるのかどうか。私は、総理、事情はわかっておりますから、私の質問に明快にお答えをいただきたいと思うのでありますが、今回、与党だけで勝手に非拘束の制度に、こういうことがあるのにかかわらず変えていいのかどうか。まず、これをお伺いしたいと思います。
  141. 森喜朗

    森内閣総理大臣 石井さんは我が党にかつておられましたときから選挙制度については大変な見識を持っておられましたし、参議院のみならず、今の衆議院の比例代表並立制の仕組みについても大変な努力をされたことを私はよく承知しています。特に、あなたと私は同期生ですから、同じ考えを持ったときもございましたし、選挙制度についてはかなりあなたと意見を闘わせたこともありました。  しかし、今回の選挙制度の改革は参議院の改革であって、参議院の皆さんが協議をされて、参議院の皆さんが提案をされるということになるわけでありまして、もちろん与党三党でやったことでありますが、しかし問題は、参議院の皆さんが、今石井さんがいろいろと列挙されましたことを皆経験もされている方もあるし、当然そういう話も聞いておられた上で、あえてこの制度を変えなきゃいけない、そういう判断を彼らはされたわけであります。  まず私は、そういう意味で、選挙制度というのは、どんな制度でも一長一短というのがあるわけでありまして、また、当初考えておりましたような理想とはほど遠いという結果も出てくるケースもやはり間々あるわけでありまして、今日までの議長のもとにありましたいわゆる参議院制度改革に関する協議会などでもいろいろな協議を経た上で、与党三党としてはあえてこの法案を提出させていただいた、このように私は聞いておりまして、まず参議院の審議を私は十分に見守っていくということではないかというふうに考えております。
  142. 石井一

    石井(一)委員 総理、私が聞いておりますのは、与党三党が合意すれば選挙制度を勝手に変えていいのかということを聞いておるのです。そうすれば、将来別の政党が政権をとった場合に、党利党略で、自分たちの考える方向で選挙を変えてもいいということを是認するのか、そのことを聞いておるのであります。
  143. 森喜朗

    森内閣総理大臣 選挙制度というのは不変のものではないというふうに思いますから、政党によってまたいろいろと改正をしていくということは、当然これは予想でき得ることだというふうに思っています。  なお、拘束名簿方式と非拘束名簿式のこのものにつきましては、参議院の議員協議会でも議論をいたしていたけれども、結論が出なかった。ただし、非拘束名簿方式ではいけないという意見ではなかったはずでありまして、私が聞いておるのではですよ。私はそういうふうに伺っておりまして、そして、この問題については今回は結論を出さないでおこうということになったというふうに聞いておりますが、しかし協議会の報告では、今回のこの制度はなかなか、いつまでたっても結論を出すというふうにはいかないだろう、これ以上先送りをしないで、正面からむしろ取り組んでいかなければならぬ、そういうふうに判断をしたというふうに私は報告を受けております。
  144. 石井一

    石井(一)委員 今のも私の質問に対する答弁には全くなっておりません。  私が聞いておりますのは、与党の都合で、党利党略で選挙制度を勝手に変えていいのかと。それなら、将来政権がかわった場合に、自民党の政権も永遠ではございません、そのときに、その与党がまた自分たちの都合で選挙を変えさせてもらっていいのかということをお伺いしているのであります。その一点をひとつお答えいただきたい。
  145. 森喜朗

    森内閣総理大臣 この名簿拘束制と非拘束という問題については、これは与野党でやはりあの協議会で話し合ってきているわけですから、その話し合ってきている経過を経て、与党の三党がその結論を出したということであります。
  146. 石井一

    石井(一)委員 全く答えておられません。  森さん、率直に言えば、もう少し心を開いて答えていただきたい。答えにくい問題だと私は思いますけれどもね。しかし、これが非常に大きな政治問題だから私は聞いておるんですよ。いいですか。  参議院で協議をされたと言いますが、参議院では去年一年かかって、九回にわたって激しい協議をされました。須藤良太郎さんですか、座長になりまして全党が参加をして、そして結論は、当面、一年もない時期に今から非拘束だとか意見はあるけれどもできない、拘束を継続して選挙をやろうという答申をしたのじゃないですか、ことしの二月二十五日に。  ところが、久世問題という問題が起こってきた。これは動機まことに不純、後で触れますけれども。そこで急に、一月ほどのうちに、三党が集まってこれでやるというふうに決めた。そんなこと、これは問題がありますよ。それで、須藤氏なりその他の人々が、議長のところへ行ったり抗議を申し込んだりした。我が党の参議院の方からも報告を受けてきましたけれども、自民党の方は、もう上からの命令でどうにもならぬのだ、こらえてください、参議院議長の権威も私たちの論議もどうしようもございませんと。  上からというと、あなたですか。
  147. 森喜朗

    森内閣総理大臣 石井議員の、今、どなたからどういうお話をお聞きになったのか私わかりませんが、少なくとも、自由民主党の参議院の皆さん、さらに与党三党の皆様が十分に協議をされた一つの結論が出たものだというふうに私は報告を受けております。
  148. 石井一

    石井(一)委員 私は、北澤参議院幹事長なり、寺崎選挙制度協議会委員から子細に報告を受け、また報告書も全部読んで、ここへ来て立っておるわけでありますが、あらゆる角度から参議院の立場も検討して、議論を踏まえて結論を出しておられるわけですね。森さん、私の質問に答えていただけませんか。上からの指示でどうにもならぬ、上というのはあなたですかと僕は聞いているのです。あなたがそういう指示を出されたのですかと聞いているのです。
  149. 森喜朗

    森内閣総理大臣 参議院の方で皆さんが中心になって議論をされているというふうに、そしてその中で結論を出したと私は報告を受けております。
  150. 石井一

    石井(一)委員 そうすると、七月三十日に久世問題が起こって、八月一日からそういう発言が出てきたのも全部調べてみたが、八月の二十五日ぐらいに至って、青木参議院会長、幹事長ですか、それから村上議員会長が最終的にそれを決断して、三党に呼びかけるというようなことを新聞記事で知りました。上からというのはその辺が決めたのであって、あなたは知らぬ、こういうことなんですか。私は、だれが上なのかと聞いているのですよ。
  151. 森喜朗

    森内閣総理大臣 参議院の皆さんがそういう協議をされて、そして、それは御党もそうだろうと思いますが、我が党もそれぞれ機関があるわけですから、その中で皆さん議論をして意見の集約を図った、そういう私は報告を受けております。
  152. 石井一

    石井(一)委員 私は、与党だけが勝手に決めていいのか、答えが返らない。それでは、正式の機関で正式の決定をしたものをだれが覆したのか。これまたどうもあなたではないようだ。しかし、それ以上申し上げません。しかし、これはよく覚えておいていただきたい。非常に重要な問題だ。  そこで、衆議院で選挙制度協議会をつくりました。これはもう十五回ぐらい開きました。あなたが座長で私もそのメンバーで、いろいろお話をいたしました。  この経過はどうだったのか。まず最初に、小渕、小沢トップ会談で衆議院五十削減というのを決めた。これで驚異的なショックが公明党に走った。そして最終的に、自自二党でそんなことを決めていいのか、選挙制度はみんなで集まって決める問題だ、協議会をつくってくれという公明党の強い要請を受けて、あなたがイニシアチブを、リーダーシップをそのときとられて、協議会をつくってくれと我が党にも強い呼びかけがあった。私は基本的に反対であったけれども、そこまで言われるのなら五十削減を覚悟してそれに臨もうということで、それに臨ませていただきました。  公明党は、選挙制度の、民主主義の基本にかかわるような問題については二党で決めてはいかぬ、全党参加のもとに協議をしなければいかぬということを強く主張し、森さんは当時自民党の幹事長として、自自だけでは困る、公明を引っ張り込まないかぬという時期でしたから、そのとおり、協議会をつくろうつくろうと言って協議会をつくって、我々はこれまで議論をした。  片や参議院では、協議会ができてしっかりとした結論を出しておるものをも、そんなものをないがしろにして、だれが決めたかわからぬ、参議院の雲の上で方向を変えた。衆議院と参議院でやることが違うじゃないですか。答えてください。
  153. 森喜朗

    森内閣総理大臣 当時の衆議院の場合は、確かに自由党、自由民主党とのいわゆる連立ということ、その中から、小沢党首から当時五十人の削減をしよう、そういう御提案があって、それについて、小渕当時総裁はそのことを合意事項として取り入れられた。そして、私たちもその指示を受けたわけであります。  しかし、当然まず与党でまとめていかなきゃならぬことでありますから、公明党を加えようとか云々ということではなくて、公明党も与党でありますから、当然まず与党で協議をしていこうということで、いろいろな知恵を絞りながら、まず三党でどういう案がいいかということを協議したというふうに、私はそういう記憶をいたしております。  その中でいろいろな推移といいましょうか、変化もございましたけれども、最終的にはああいう形になったわけでありまして、それも与党三党で取りまとめをし、与党三党で提案をしたということではないでしょうか。  当初は、確かに民主党も、最初の段階は議員定数を削減するということについては賛成のお立場でありましたけれども、最終的には反対というお立場になられたり、そんないろいろな経緯はあったわけでありますが、やはり法案として提出をいたしますときは、与党三党として最終的に取りまとめて法案を提出したというふうに私は記憶いたしております。
  154. 石井一

    石井(一)委員 私が言っておりますのは、参議院では、全党参加の協議機関において決定をしたにもかかわらず、その意思をほごにして三党だけでこの非拘束の案を出してきている。片や衆議院の方では、二党だけで決めるのは困るといって公明党さんが強い要請をしたから、あなたは全党の協議会をつくった。衆議院でやることと参議院でやることと、そのときそのとき全部違うじゃないですか。  公明党の代表の続さん、どう思われますか、今の話を聞いておって。公明党は明らかに、衆議院で五十名を減らされるということに大変な党の危機感を感じた。自自二党で五十を削減されるということに大変な抵抗感を感じられた。三人の中選挙区に対する案というものをも党内でまとめられた。衆議院で協議機関をつくってくれ、つくってくれと来た。我々はつくって、やった。参議院では今や三党で、だれが了承したのか知らぬが、協議機関も何も無視してやる。公明党がスタートになってこういう問題が起こっておるんですが、あなたはどういう見解を持っておられますか。
  155. 森喜朗

    森内閣総理大臣 ちょっと石井さん、そこのところは念を押しておかなきゃなりませんが、公明党も与党でありますから……(発言する者あり)いや、この法案をいよいよ具体的に取りまとめていかなければなりませんから、与党の協議会をつくろうということだったと思います。  それから、公明党さんがつくれつくれと言ったからつくったというふうに、石井さん、あなたおっしゃいますけれども、そうじゃないです。私は、これはまず与党の協議会をつくるべきだと私がむしろ提案をしたというふうに承知をしております。
  156. 続訓弘

    ○続国務大臣 私は、衆議院における選挙制度のことはよくわかりません。しかし、参議院では、私自身も実は委員の一人でございました。したがいまして、今石井議員がおっしゃるようないろいろな協議を重ねておりました。  平成二年の第八次選挙制度調査会の中でこの問題が議論をされたという事実もございます。同時に、今までの選挙制度に対して、いろいろな問題点があるということに対する議論もございました。さらには、ブロック制に対するいろいろな議論もございました。そういういろいろな議論の中で恐らく今お話しのような結論が、私、そのときには委員でございませんのでよくわかりませんけれども議論の集約はあったかと存じます。  しかし、いずれにいたしましても、この選挙制度の問題は、学識者が相集まって議論をされた第八次選挙制度調査会の結論の中にもこの問題はございました。そういう真摯な議論を踏まえて、今回、与党三党が相集まって、そしてまた同時に、この問題は院の構成の問題でございますので、参議院自身でいろいろな議論を踏まえて結論を出される、こういうふうに私は思います。
  157. 石井一

    石井(一)委員 続長官は、これもまた私の質問を全く理解されない。  私が言っておりますのは、公明党の主張が衆議院と参議院とで全く違うじゃないか、矛盾しているじゃないかと。参議院では三党で、与党になったかもしらぬが、談合をし、そこへ参画をし、賛同をしておる。衆議院の方では、それと同じ時期から始まって今日まで、協議会をつくれと言って、選挙制度を議論するのは全党でなければいかぬ、一党や二党では困るんだと言い続けてきて、今日までの経過になっておる。公明党の方針がなぜ衆議院と参議院とそんなに違うんですかと、それをあなたに聞いておるんです。  あなたは総務庁長官として忙しくてわからないんなら、何だったら、一遍、神崎代表にでも電話をかけて聞いてもらったらいいですよ、今。これは非常に重要な問題です。公明党の原点に関する、原点と申しますか、選挙制度に関する問題である。  自民党の非常にあいまいなものは、私の最初の質問、与党は勝手にやっていいのか、答えが返ってこない。それから、その次に私が言っております問題につきましても十分な回答が得ておられませんけれども、私は、公明党の考え方について一遍、それはどうですか。
  158. 続訓弘

    ○続国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、選挙制度は民意の反映といいますか、理想的な選挙制度にすべきだということの議論は年々歳々行われているわけですね。そういう意味では、平成二年の第八次、今申し上げたような選挙制度の結論の中でもあるわけですよ。そして同時に、参議院自身もこのことを踏まえていろいろな協議をしておるわけです。そういう中での集約ですから、これは公明党の云々というのじゃなくて、私ども自身もそういういわば理想的な選挙に向かって議論の集約をしているわけですから、ちっとも間違いはありません。
  159. 石井一

    石井(一)委員 続長官平成二年の第八次と言われるが、今私は、平成十二年の衆議院と参議院で起こった問題の公明党の態度の豹変、野党におる場合に言っておられることと与党に入られたことの百八十度の違いをどう国民に御説明になるのですかということを聞いておるのですが、ちょっとあなたにこの質問を迫るのも無理かもわかりませんね。これは問題として、こんなことをやっていましたら時間がもうありませんので、これはすべて積み残しでございますが、前へ進ませていただきます。  そもそも、大体この問題が起こったのは、久世問題という問題であります。それがなければこのままいっておったことは確かなんです。  久世問題というのはどういう問題なのか。皆さん御存じですけれども、テレビを見ておられる方もおられると思いますので簡単に申し上げますが、久世議員が、自己の順位を上げるために三万人の名簿を宗教団体の霊友会ですか、から出していただき、その党費の立てかえを大京という建設会社か不動産会社に頼んで一億円を出してもらった。それによって十四番ですよ、久世さんは。それじゃ、十三番以上は幾ら出したんやろうか。一番の有馬さんなんて余り出しておられないのかもわからぬし、僕はわかりません。僕も自民党で全国組織委員長をしておりましたから。しかし、そのことをここで申し上げるのはいささか問題だと思います。  問題は、自民党の名簿は、党員二万人、そして後援会員百万人、これを基礎に順番を競うのですから、たまったものじゃないですよ。しかし、久世さんが金融再生委員長辞任するに当たるこの問題が露出し、そして、これが動機不純のまま、今選挙制度の改正というふうに移ってきておる。こんなことがあっていいんですか。自分たちの党内問題の処理を選挙制度改正に転嫁する、こう言われても仕方ないでしょう。  しかも、この問題について、森総理は、自由民主会館へ寄附を募って一億円をもらったんだと。一億円という金ですよ。しかし、久世さんはそう言っておりませんよ、これは党費の立てかえを頼んでやってもらったんだ。両者の意見は食い違ったままこういうふうな問題が起こっておる。  私は、こういう状態でこの問題を与党三党が押し切るということは大変な問題だと思います。総理の見解を伺いたい。
  160. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、今、石井さんがそう決め込んでお話をされているわけですが、この選挙制度がいいかどうかということは、一長一短あり、さまざまな意見があるということを常々申し上げております。  第一回目にあの選挙をやりました後にも、やはり顔が見えにくいとか、この制度では問題ありだとか、いろいろな意見はありました。ですから、先ほどから話が出ています参議院の議長のもとにおきます協議会でも、やはりこの拘束制、非拘束制という議論はしているわけでありまして、かなり長い以前から、この問題についての議論というのはいろいろな方面で行われているわけでありまして、久世問題があったからこういう形で唐突に出てきたという考えは、石井さんはそう決め込んでおられるのだ、私はそう思いますね。  それから、もう一つ申し上げておきますが、これは御質問にはないのだけれども石井さんの御意見の中にもありましたが、我が党としては、この比例名簿の代表の順位を、あたかも党員集めをしたその順序で決めているから、久世さんだって十四番だったので、その上はもっともっと云々というような発言をされましたが、これは大変国民に誤解を生むことになると私は思いますよ。これは石井さんもよく知っておられるし、この仕組みの一つ考え方をおつくりになったのは、小沢さんもやはりお知恵を出されたことで、いろいろな党活動の幅広い点数を積み上げてつくるものであることは石井さんも御承知のとおりだと思います。
  161. 石井一

    石井(一)委員 私は、もし仮に非拘束を導入するのなら、参議院で正規の機関ができたのだから、須藤良太郎さんのその委員会でそういう結論を出されるべきであったので、そこはもうそういうふうに決定をして、それから後に、本年そういうことが起こっているということになれば、あなたは久世と違うと言われましても、それはやはり、そこには大きな疑問が出てくるのは当然でしょう。  これ以上申し上げませんが、一つ、私は、これは参議院の問題じゃない、議会制民主主義の根幹にかかわる重大問題だと思うのです。衆議院は、参議院のことだから関係ないということはない。この制度を決めれば、この国の政治がどうなるのかということが変わってくる。久世問題の解明なくしてこの問題の解決はないというふうに思います。  委員長、本委員会に久世参議院議員を証人か参考人で招致し、そうして、一体総理の言われていることと久世議員の言っておられることがどうなのか、一体この問題はどういうことかということを解決することを要求いたします。
  162. 原田昇左右

    原田委員長 ただいまの石井委員の要求でございますが、今、参議院議員を呼ぶということについての問題については、理事会で協議をしなきゃなりません。  それからもう一つ。今、答弁でありましたように、久世問題とこの選挙制度とは関係ない、そういう明確な答弁もあるわけでございますので、追って理事会で協議をさせていただいて結論を出します。理事会で協議します。
  163. 石井一

    石井(一)委員 私は、二党なり三党が与党を形成して、その都合で選挙制度を変えるということは間違っておる、憲政のまさに常道を逸脱した暴挙だ、こういう考えであります。もしあなたが今回これをやられるのであれば、まあ民主党は政権をとるかどうかわかりませんが、そんなことを言ったら怒られるから、次にでもとれば、我が党は直ちに私たちの好きな方にやらせていただく、そのことだけを申し上げておきたいと思いますが、そうでなく、やはり昔の自民党には良識がありました。角マンダー、田中角栄、鳩マンダー、鳩山一郎、絶対多数を持っていたのですよ。しかし、やりませんでした。少数意見も聞きながら、モラルと、やはりそれなりの常識を持って選挙制度というものは御決定をいただきたいと思います。  次に、一票の格差の問題が、本年、国勢調査の年に当たっております。選挙区画定審議会、これが開かれ、確定値は一年後にしか出ませんが、定数の格差是正をやらなければいけません。たまたま私が最初の自治大臣のときにこの画定委員会をつくりまして、いろいろ中身も知っておる立場でございますが、要は、この三条に、人口格差を二倍未満とすることを基本とすると書いてあるのですが、最初に区割りした時点で既に二十八、二倍を超えておった。ところが、今幾つになっておると思われますか。八十九まで二を超えてきたのです。確定値が出るときには百を超える。三分の一のところがこの審議会違反だということになる。  私は、このことについては自治大臣に、あなたが介入するわけではございませんけれども、このときにやりませんとまた十年先ですから、しっかりとした格差是正をやっていただきたいということを申し上げたいと思いますが、いかがですか。
  164. 西田司

    ○西田国務大臣 投票価値の平等につきましては、委員指摘のとおり、大変重要な課題でございます。  本年三月末現在の住民基本台帳人口によると、衆議院小選挙区選挙におけるいわゆる一票の格差は最大二・四八七倍で、二倍を超える選挙区の数は、今お話がありましたように八十九となっておるところであります。ただし、本年十月に行われる国勢調査の人口に基づきいわゆる一票の格差がどうなるかについては、現時点で予測することはできがたいのであります。  衆議院小選挙区におけるいわゆる票の格差の是正の手続、すなわち小選挙区の区割りの見直しについては、衆議院議員選挙区画定審議会設置法において、基本的には十年ごとに行われる国勢調査に基づき同審議会がその勧告を行うこととされております。本年十月に行われる国勢調査の人口が最初に官報で公示された日から一年以内に区割りの改定案の勧告が行われるものと承知をいたしております。  小選挙区の区割りの改定案の作成につきましては、第三者機関である衆議院議員選挙区画定審議会に全面的にゆだねられているものであり、政府としてはその勧告を尊重する立場にあると考えております。
  165. 石井一

    石井(一)委員 例えばアメリカでは、ビルの中を二つに割っても人口の格差を縮めるという努力もしております。これは、同じ人間がなぜそれだけ政治的一票の格差があるのか、大変な問題であります。特に、第一院である衆議院の場合はその必要性があるということ。  そういうことをお考えいただきましたときには、私は、六名、七名のすぐれた審議会のメンバー、私のときのそのお方が今ほとんど残っておられる姿でございますが、この際確実にこの法の精神にのっとった形での定数格差を縮めていただきたい。場合によっては、一県に一ずつ与えておる基数を排除してでも一票の平等というものを守っていただきたいと思います。  総理、御見解があれば一言お願い申し上げます。
  166. 森喜朗

    森内閣総理大臣 一票の格差につきましては、今自治大臣からお話しのとおりでございます。  私としては、一票の格差の是正についても重要な課題であるというふうに認識をいたしております。
  167. 石井一

    石井(一)委員 非常に時間が経過いたしまして、このことばかりやっておられません。私はたくさん問題を持っております。  公共事業の問題につきましては、我が党の菅幹事長がやりましたので省略をしなけりゃいかぬのじゃないかなというふうに扇さん期待されておるようだが、ほかにもっと重要な問題がありますのでね、と思うのですが、私は総理の演説を聞いておりまして、公共事業ビッグバン、いや、すごい言葉を使うな、僕もある程度英語のわかる男だけれども、一体ビッグバンというのはどういう意味で使われたんですか。
  168. 森喜朗

    森内閣総理大臣 やはり国民にはわかりいい言葉がいいだろうということで申し上げたわけですね。といいますのは、印象深い方がいいという意味ですよ。ですから、さっきITの際にも申し上げたのもやはりそうであって、この公共事業ビッグバンについては、所信表明演説でも申し上げましたように、受益と負担の明確化や事業評価システムの確立、それから、入札・契約制度への改革を推し進めるとともに日本新生プランへの思い切った重点化をしていこう、そういう意味で事業間の連携等を推進していこうという内容でございまして、こうした公共事業に関する抜本的な見直しを徐々に実施していくというのではなくて、全面的にかつ一気に推し進めていく時期だろう、私どもこう考えます。  したがいまして、この補正予算もそうでありますし、来年の予算編成の際にも、基本的にはできる限り思い切った公共事業の見直しをしていきたい、そういう思いで、あえてこの趣旨をビッグバンという呼称を用いたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  169. 石井一

    石井(一)委員 ビッグバンといいますと、宇宙が成り立つときに起こる大爆発。一体何年前だ、何千年前だ。それぐらいに一回しか起こらぬ大転換が今度の公共事業の見直しであるのか。ビッグバンといえば、反省点もあれば改正点もある、問題点もある、責任問題もある、そういうことがあるから今後やろうということでなきゃいかぬのだが、一体そういうふうになっているんだろうか。  検証してみますと、私、驚くべきことがたくさんありました。これは一方的に申し上げさせていただきたいと思うのでありますが、本来、運輸大臣、農水大臣建設大臣にもいろいろ質問を御通告いたしておりますが、時間が限られております、お許しをいただきたいと思います。  要するに、今回、亀井政調会長が中心に、自民党が公共事業の見直しをやった。二百三十三件。このことによって削減効果が二兆八千億あり、その二百三十三件の中でこれまで既に投資した金額が約六千億ある。こういうようなデータが、私、これを調べたところもらっておるということでございますけれども、一体、公共事業全体で幾らあるのか。公共事業は、農水省で二万九千五百件、直轄事業、補助事業を含めて。建設省は約二万件。運輸省は少ないのですが二千件。それぞれ調べたらこういう回答が返ってきたが、トータルで五万件。五万件の中で二百三十三見直した、こういうことなんですよ。〇・五%。  亀井さんが、一夜漬けで資料を持ってこい、徹夜して持ってこいと言って持ってこさせて、その中から、適当にと言うたらいけませんけれども、採択後五年しても見通しのないものとか、二十年経過しても完成していないものとか、あるいは現在休止されておるもの等々をこれだけ加えた。それは国民は新聞を見ておったら、民主党は主張しておったけれども、自民党はばらまきだ、公共事業だと言っておったのに、一遍に百八十度転換して見直した、いや、大したものだ。  たった〇・五%です、これだけを見直したというのが現在の成果なんですね。  問題があれば、また、私の同僚議員が建設委員会その他で細かくこの問題を、私はこれは非常にいいところだと思いますので申し上げてみたいと思うのでございますが、この中には、非常に問題になっておりますいろいろの問題があります。例えば我が党が総選挙で提示いたしました川辺川ダム、諫早湾の干拓事業、徳山ダム、中海、吉野川、これで入っておるのは中海だけですね。あとはすべてまだ継続中でございます。  こういうことをやっておりますと百年河清を待つというか、しかも中海のところに視察に行かれた政調会長が、どうですか、そのかわりに、これはやめるけれども別の振興策を何かやりましょうと。事業はもうとまっておるにもかかわらず、これを中止したということによってさらにそれへつぎ込む、こういう形にならざるを得ない。公共事業の問題は——答弁待ってください、申し上げておりますように、きょうはそういうことにはなりませんので。こういう状況であるということを私はあえて申し上げておきたいと思います。  もし仮に見直しをやるということになれば、もっと徹底的にやらないけませんね。私は、予算委員会というのは、予算を執行する、国民の血税をどのようにむだ遣いせずにやるかということを考えた場合に、五万件もある中でたった二百三十三見直しをやるというのでは、これは足らないと思うのですよ。全部チェックせないかぬ。もう既に支払った金額でも六千億、こういうデータがここへ出ております。これはだれが責任をとるのか。  私は、こういう問題を考えましたときに、予算委員会はもっと毎日でも開いてもらっていい。各省、きょうは建設省、それは扇さんも出てきて堂々と答弁やってもらったらいい。次は運輸省、これを全部洗ったらどうですか。そのために国会はあるのですよ。国民はどれだけ汗を流して働いているのか。国民が税金を納めなかったら直ちに強制収用されるか差し押さえされるぞ。政治家がむだ遣いをして金をばらまいて、どこに責任をとっているのか、こういう考え方が出てくるだろうというふうに思います。  私は、公共事業の抜本的見直しについて、ビッグバンだと言って宇宙時代からの大爆発をやるというのなら、私が今言っておるようなことぐらいのことは当然考えてもいいんじゃないか。こんなものは、ノミの心臓とかなんとかいいますが、これだけ大きな公共事業の中のたった、ちっぽけなこんなものだけやって、自民党は公共事業の見直しだというようなことが言えるのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  170. 森喜朗

    森内閣総理大臣 石井さんは今、五万幾つあるという公共事業がすべて最初からむだだとか政治家がむだ遣いに持っていったとか、そういう前提でお話しになっている。(発言する者あり)いや、私はそうは思っておりません。やはりそれなりに地域にとっても、社会資本を整備していくとか、農業基盤の整備をやっていくとか、治山や治水やいろいろな問題を、長い間その地域でしっかりと頑張って生活をしておられる方があるわけですね。そういう方々の悲願あるいはそういう方々の熱望、そういうものを受けて自治体が事業というものに取り組んでいるわけですから、すべてがそういうふうに初めから間違っているんだ、むだなんだという発想は、私はとり得るべきではないというふうに思います。  現に、石井議員もかつて我々の党の仲間におられたときには、やはり兵庫県や神戸のことでいろいろおっしゃったじゃありませんか。そうでしょう。(発言する者あり)いえいえ、あえて言えば、公の費用を投ずることはやはり公共事業なんですよ。ですから、そういうことをもう少し謙虚に見てやっていくべきであって、そこで私たちとしては、今の時点で、今ああいう形で一つ一つ洗いをした結果が二百三十三ということでございますし、さらにこれからも見直しも続けていきたい、こういうふうに申し上げているわけです。
  171. 石井一

    石井(一)委員 私は、この問題を建設委員会なら建設委員会で取り上げさせていただいて、時間をとってお話をさせていただき、国民のサイドに立って、これは不必要、これはどうしてもやる、必要なものをやるなとは言っていませんよ。そういうことを、ビッグバンと言われるのならビッグバンらしいことをやっていただきたい、こういうことを申し上げておるわけでありまして、願わくば、予算委員会予算を査定し、執行する最重要の委員会でありますから、毎週各省を呼んで精力的にやるぐらいの知恵をひとつ委員長、お考えをいただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、あと十分と言っておりますが、非常に重要な問題を私はあと二つ持っておりますので、これも答弁を一々もらいたいんですが、十分な時間がありませんけれども、申し上げます。  外交問題で、最近、自民党の野中幹事長がしばしば発言を多方面にやっておられます。河野大臣、外務省は屈辱外交から抜け切れていない、日本の立場を堂々と主張する主権国家としての外交を取り戻さなければいけない、聞かれたことはありますか。日本はかつてほどの経済大国ではないのに首相が外国訪問をするたびに援助して回るということにいら立ちと不満を持ってきた、官房長官当時からそう感じておったと。  これは問題と思うんだが、プーチン来日直前に日ロ平和条約と北方領土問題を切り離して検討する可能性に言及をする。一体これ、政府と与党というのは一体じゃないんですか。これ、民主党、私が言うとか共産党の皆さんが言われるというんならまだ看過できますよ。国民のサイドから見てどう思われますか。これはまさに二元外交でしょう。ソ連のプーチン氏だって、もし仮に与党の幹事長が、いや今度こそ、待ちに待った二〇〇〇年の終局に新しい大統領が生まれた、ここで懸案を解決するべきだと言うのと、この問題はもう問題があるぞ、そういうことを言ったんなら国益も外交もないんじゃないか。  私は一年前にここで野中さんとやり合った。個人的な恨みは全くありません。しかし、まあ、やめる、やめぬ、やめる、やめぬと言うて……(発言する者あり)いや、だから、きょうはおられないんだから欠席裁判はしたくないんだけれども、しかしながら、ちいと振り回され過ぎておるんじゃないか。本来なら、それだったら総理、注意したらいいじゃないですか。それを放置しておくということはおかしい。  河野大臣、屈辱外交を我が国はやっているんですか。
  172. 河野洋平

    ○河野国務大臣 我が党幹事長からいろいろ御発言があることを私は承知しております。しかし、これらの発言は、外交をしっかりやれという御激励と私は受けとめておるのでございます。  幾つか具体的に、例えば総理が出かけたときのODAの問題はばらまきではないかというような御指摘もございました。私ども、十分注意をしてODAを使っているわけでございます。  先般も、総理がインド、パキスタン、いわゆる南西アジア訪問に出かけられましたけれども、このときにも総理は、インド、パキスタンに向かって、CTBTの早期署名でございますとか、つまり核不拡散について積極的な働きかけをいたしました。一方でインドは、例えば、核実験を行って以来、我が国はインドに対する経済援助をとめておりますから、この経済援助をとめるということについてインド側からは、何とかこれはあけてほしいなという気持ちがあるというふうに私どもは聞いておりましたけれども、これも、CTBTの署名、そういったものがうまくいかないということであれば、それはそうはいきませんぞということで、これまでの継続の案件につきましては一部これを行うという決定はいたしましたけれども、それ以上のものをやってきておりません。必要なところで必要なものをやるということに、私どもとしては徹しているつもりでございます。
  173. 石井一

    石井(一)委員 私は、きょうは時間が限られておりますので、この問題について、与党と政府は一体であり、国益に関する大きな国際問題であるということを考えましたときに、私は、この点については、もう少し総理というのはこういうところにリーダーシップを発揮してもらいたい。注意ができないのか。これは与党の幹事長の発言としては踏み込み過ぎですよ。そういうことを言われたら、外務大臣、これからロシアへ行ってどう言うんですか。こういう問題を指摘しておきたいと思います。  最後に、私は中川官房長官に御質問を申し上げたいと存じます。  中川官房長官、滑川裕二という人物を御存じですか。
  174. 中川秀直

    ○中川国務大臣 直接的には存じません。
  175. 石井一

    石井(一)委員 直接には存じません。  この人があなたに送った書簡がここにあるんですけれども、あなたとは呉で食事もしたし、選挙の応援もしたし、あなたに侮辱もされたということを言っております。  科学技術庁長官時代に、平成八年十月十四日付内容証明書の書簡を受けておられるというふうに思うのでございますが、こういう事実はございませんか。
  176. 中川秀直

    ○中川国務大臣 たしか平成八年の秋であったと思いますが、科技庁時代にそういう内容証明つきの文書を送られたことはございます。全く事実無根でございますので、事実無根だとお答えを申し上げました。
  177. 石井一

    石井(一)委員 この滑川裕二君という人はどういう方なんですか。
  178. 中川秀直

    ○中川国務大臣 何か報道によりますと、私が呉の時代にお目にかかったことがある、こうおっしゃっておられるようでございますが、私自身は記憶が十分ございません。そして、そういう文書が送られてきたということ、それしか私はわからないわけであります。
  179. 石井一

    石井(一)委員 私も今の官房長官の御答弁というものをそのまま受け取りたいという気持ちでございます。これ以上、内容についても申し上げません。  ただ、あなたもこれをお読みになったらわかられますように、もしこのことが事実であるとすれば、これはゆゆしき問題というよりも、まさに内閣の大番頭としては説明責任もあれば、やはり将来あるあなたとしては看過できない重要な問題だと思います。  今、面識はない、受け取った、事実がない、こういうふうなことをおっしゃいました。私はそれを信じて疑いませんけれども政治国民との信頼関係、森内閣のまさに官房長官、こういうふうな立場で、もし今お答えになったことといささかでも違いが出てきた場合には、これはやはりそれなりの責任をおとりにならなければいけない事態が起こり得る。それは、私がとれとかなんとかと言う立場ではございませんし、このもの自体を否定されておるわけでございますから、これ以上のことを申し上げませんけれども、まことに重要な問題である。  私は、今ちまたに出ております雑誌やそんなことを申し上げるつもりはございません。しかしながら、この問題のことについては、それなりのお考えがあって、そういう確信があってお答えになったと思われるんですが、もし何か御一言がございましたら最後にお答えをいただきたいと思います。
  180. 中川秀直

    ○中川国務大臣 そこの記載されております、報道にもございましたが、内容は、私にとりまして、まことに私自身の名誉にもかかわることでございますが、事実無根でございます。その旨お答えをいたしまして、しばらく何もございませんでしたが、今般、そういう私信がなぜ外へ出ていくのか、それも不可解でございますが、そういうものが表に出て、今こういうお取り上げをいただいているんだろうと思います。  私は、今の委員お取り上げの問題について、天地神明に誓ってそんなことはありませんから、その旨申し上げておきます。
  181. 石井一

    石井(一)委員 終わります。
  182. 原田昇左右

    原田委員長 これにて菅君、石井君の質疑は終了いたしました。  次に、中井洽君。
  183. 中井洽

    中井委員 自由党の中井洽です。  森総理に三十分の時間で質問をいたします。  ずっとさっきから考えているのですが、森総理とはいろいろなおつき合いがあったのですが、こう一問一答させていただくというのはほとんど初めてみたいな気がいたします。風邪を引いてお疲れのこともあると聞いておりますが、率直にお尋ねをいたしますので、率直にお答えをいただければありがたい、このように思います。  最初に、外交関係で二点お尋ねをいたします。  六月に韓国と北朝鮮の南北頂上会談、首脳会談が行われました。まことに歓迎すべきことでございます。  この会談の中で、金大中大統領は金正日総書記に森総理からの伝言を伝えられた。日朝国交改善、改革の強い意欲を伝えられた。金正日さんの方から、ありがたく承った、こういう回答があったと伝えられております。  また同時に、金大中大統領から金正日総書記の、十分安定した権力を掌握している、また極めて、報道とは違い、個人的判断、確かなものがある、世界の情勢に十分通暁している、できる限り日本も早く関係改善を急がれた方がいい、こういうことを含めたアドバイスが伝えられていると私どもも聞かせていただいております。  これを受けて国交正常化交渉が行われているのだ、このように承知をいたしますが、間違いありませんか。
  184. 森喜朗

    森内閣総理大臣 七年半ぶりに、日朝間におきます正常化の話し合いがこれまでで二回進んでいるわけです。また、引き続きこのことは両代表団の中でこれからも議論を進められていくことになると思います。  一方では、今御指摘がありましたように、南北の首脳間の話し合いがあって、その後、いろいろな形で、各レベルでいろいろなお話し合いが進んでいるということも極めて歓迎すべきことだと思います。そのことが結果として、一時ちょっと見送られておりました二回目の会談もそのことによってむしろ促進をしたというふうに、私もある意味ではそういう判断もしているわけでございます。  いずれにいたしましても、金大中大統領は、金正日総書記とお会いをされた印象を私にわざわざ電話で報告をしてくださいました。そういう報告の中で、どこの国にもあることだけれども、事務的に進められていくことも非常に大事、それはしっかりと詰めていってください、しかし、でき得れば直接総書記のお耳に入るようにするということも大事なのではないか、少なくとも自分が会ってお話し合いをした中で、金正日という方はこういう方でございましたという、いろいろな細かなお話がありまして、そして、率直にあなたの気持ちが伝わるようなことを何か努力なさったらいいだろう、また私にその役割のお手伝いができればできるだけのこともしたい、こういうお話がございまして、大変ありがたくこれを受けさせていただきました。  そういうお話を承っておりましたので、ちょうど河野大臣に北朝鮮の外務大臣とお会いをいただくという機会もできたのも、いわゆるそういうアドバイスの一つの流れからあったというふうに御承知おきもいただければと思います。  残念ながら、ああしたアクシデント等によって金永南氏はニューヨークにお見えになれなかったけれども、実はニューヨークでお話し合いをできるようなことは、むしろ北朝鮮の方からそういうお話が積極的にあったということでございますので、そういうお話し合いが加速でき得る環境が次第次第に整っているなというふうに思っております。  しかし、重要なことは、やはり公式の、我が国でいえば高野大使を代表とするこういう中で一つ一つ詰めていかなければならぬことでありますし、また、いろいろなレベルで接触をこれから頻繁にやっていくべきであって、そして必要があれば、また総書記とお目にかかる機会があれば、そういう時期が来れば、環境が整えば、ぜひそういう方向に持っていければいいなというふうに私自身は希望をいたしているところであります。
  185. 中井洽

    中井委員 日本の安全にとっても、あるいは北東アジアの安定、安全にとっても、北朝鮮が窓を開いて世界と交流を深める、このことは非常に大事なことだ、特に韓国とこういう雪解けムードの状況をどんどんふやしていくということは大事なことだ、こう思っております。  しかし一方、韓国におきましては、トップ会談をやった直後に総選挙があったけれども、金大中さんの民主党は余り伸びなかった。ハンナラ党が第一党だった。また、九月から、このハンナラ党と民主党との話し合いがうまくいかず、国会が二十日以上とまっている、こういう状況でありますし、また、いろいろと話を聞きますと、非常に南北の融和あるいは将来での統一というのは時間がかかるだろう、こういう感じもいたします。  一方、日本と北朝鮮との間には、拉致疑惑の問題あるいはミサイルの事件、古くからいえば四百億円ぐらいまだ片づいていない貿易保険の問題があります。また、この間から処理が始まっております朝鮮銀行、この信用組合の問題で約一兆円以上のお金がつぎ込まれようとしている、こういったことがずっとあるわけでございます。  これらのことを本当に国民に十分理解をいただいて、これらのことがあるけれども、なおトップ会談をやってでも日朝間の正常化をやっていくんだ、こういう意欲でいらっしゃるのか、あるいは、こういう問題があるから一つ一つゆっくりとやろうとされておるのか、森総理の御決意を承ります。
  186. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、多くの問題がございます。したがって、両国のいわゆる代表団が一つ一つしっかりと議論をして、そしてお互いの接点を求めていくことは当然大事なことだと思っています。いたずらにトップ会談だけすぐやるということがこれを解決する道だとも、私はそんな安易なことを考えているわけでもございません。  特に、日朝間につきましては、今指摘がありましたような人道上の問題もございますし、安全保障上の問題もございますから、そういう問題をさておいてまずというわけにもいかないだろうし、あるいは、その問題が片づかなければ何が何でも話し合いができないんだということであってもいけないんだろうと思います。いろいろな角度で柔軟な形でお話し合いができ得るような環境を整えていきたいというふうに私は考えております。
  187. 中井洽

    中井委員 先ほどから話題になっております総理の所信表明演説、この中に外交関係で「二十一世紀の国際社会を見据え、グローバルな座標軸を設定し、先見性と戦略性を持って、積極的かつ創造的に外交を展開していく考えであります。」、極めて格調の高い、具体的には何だろうと思われるような文言が述べられているわけでございます。まことに結構なことでございます。  これに関連するかどうかということは別にして、もう一つお尋ねをし、御注文申し上げたいことがございます。それは、台湾の李登輝さんが私人として強く日本への訪日を希望されていると伝えられております。同時に、日本国内でも随分たくさんの方が彼の訪日を待ち望んでいるわけでございます。日本の政党の中で李登輝さんの今のお立場での訪日を反対する政党、僕はいらっしゃらない、こういうふうに考えております。  そういう意味で、積極的に自主的な外交をやるというのであれば、ぜひ、李登輝さんの訪日を歓迎される、このことを総理の立場からお述べいただきたい、このことを申し上げます。
  188. 森喜朗

    森内閣総理大臣 李登輝氏の訪日につきましては、現時点では具体化していると承知をしておりません。我が国政府の対応につきましては、ビザ申請等の具体的な動きがあれば、これを受けて主体的に判断することになりますが、こうした具体的な動きがない現時点におきまして、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  189. 中井洽

    中井委員 主体的に判断をする、この言葉を私は評価したい。ぜひ、あのように日本人を理解し、日本に対して温かい気持ちを持ち続けてくれた方を、年間九十六万人から百万人近く台湾の方は日本にいらっしゃるんですね。日本人も七十五万から八十万ぐらい行って、経済的な取引もまことに大きい。その国の人が一私人として訪ねるときに、日本が、国内的には何も問題ないけれども、どこかの国の気持ちを拝察してお断りする、これは本当に自主的な外交ではないと私は思います。そういった意味で、ぜひ御決断をいただきますよう重ねて申し上げておきます。  次に、先ほど民主党の石井議員から詳しくお述べになりました参議院の選挙制度、与党側が今国会突如お出しになりましたいわゆる非拘束名簿の問題であります。  先ほど森総理が、参議院で御議論をいただく、こういうことを言われましたが、私どもの党は、参議院の強引につくられようとしております委員会への委員の名簿の提出をお断りいたしております。同時にまた、あした参議院で予算委員会がございますが、どういうかげんか、自由党は参議院の予算委員会に席を持たせていただいておりません。したがいまして、この衆議院で私が反対理由を簡単に申し上げる以外に手段がありませんので、重なりますが、あえて森総理にお尋ねをいたします。  先ほどのお話と同じく、全国区を政党名の比例区に変えるあの法改正のときに、私は、若輩でありましたが、民社党の公職選挙の理事をいたしておりました。思い余って民社党の幹部と一緒に金丸さんの事務所までお訪ねしたこともございます。そのときに金丸さんは、金がかかって仕方がない、だからだめだ、変えるんだ、中井君、社会党とも話がついておるものを文句があるなら社会党より大きくなってから言え、こういうふうに言われて、軽く一蹴されたのを懐かしく思い出しているわけでございます。  あの当時、この前の選挙で、私の敬愛いたします奈良県出身の全国区、向井長年先生が投票日にお亡くなりになる、自分の当選を知らずに死んでいった、こういう事件もございまして、本当に体力的にも金銭的にも大変な選挙、そういう中での改正でありました。  せっかく政党名で書くという選挙が大体定着してきた中で、突如今回また個人名で、昔の残酷区に戻る選挙に変えられる。一体どうして変えられるのですか。ここのところを御説明ください。
  190. 森喜朗

    森内閣総理大臣 これもしばしば申し上げていることで、お耳ざわりかもしれませんが、いわゆる参議院のこの制度を実施いたしました当時、私も当然議員としておりました。私は、個人的には、こういう仕組みでやることがいいのかなということは、若干ちゅうちょした立場をとっておりました。  しかし、当時としては、確かに今おっしゃったような指摘された点もあって、政党順に並べるということですが、その選挙が終わった後にさまざまな意見があったり、あるいは、選挙制度審議会からもやはりこれについては意見もあったわけで、決して今唐突に起きてきたテーマではない。かなり絶えて久しく、ずっとこの議論というのは行われてきたと思います。  そういう中から、参議院の皆様が、参議院の皆さん方としてこの問題にやはり与党としての責任を持って結論を出そうという判断をされたというふうに私は承知をいたしております。  そういう面で、いろいろの御意見があろうと思いますけれども、私は、従来の参議院の、あの残酷区と言われた全国区というあのスタイルを、そのまままたもとに戻すということではこの仕組みはないというふうに思っています。  確かに、運動面でありますとか個人の名前を出すとかいうことから見ればそういう面はあるかもしれませんけれども、必ずしも昔のものをそのままに進める、もとに戻す形というふうに、私はそういう理解をいたしておりません。  それからもう一つ、衆議院と参議院はできる限り補完的な役割をしていく、民意を吸い上げるための補完的な立場で、必ずしも同じ選挙方法がいいのかどうかという議論も、この衆議院の小選挙区制を取り入れるときにかなり議論が出ました。結果としては、参議院の仕組みと衆議院の仕組みはそう違わないという形になったことも、また大方の批判のあったのも、これも私どもとしては記憶に新しいことでもあるわけでありまして、そういう意味からいえば、衆議院の今の仕組みとまた違った考え方を参議院の皆様がとろうとされていることも、一つの私は参議院の皆さん考え方でもあったのではないかというふうに思っております。  ぜひ、国の基本にかかわる大変大事なテーマでありますから、参議院でまず大いに議論をしていただくということを私は期待したいと思っているのです。
  191. 中井洽

    中井委員 あえて申し上げますけれども、やはり全国を運動するというのは大変なことでございます。それも、参議院の選挙区選挙だけでも、実は三重県なんかでいうと一人区ですから、大変な広さでございます。全国区で同じ日にちでやるのですから、肉体的にも組織的にも大変だ。そして、お金がかかる。  森総理はあっちこっちで、今の参議院の比例区の選挙でいくと個人の顔が見えない、顔の見える選挙をやったらどうだ、こういうことで非拘束を導入するんだと言われているようでありますが、この比例の選挙というのは党首の顔なんですね、党の政策なんですね。もし個人の顔が見えないとしたら、顔の見えない人を党首に選ばれる政党がこれは弱いのです、選挙に。それは、その政党が、個人の顔と政策がきちっと見える候補者を選び、党首を選び、政策を出される、そういうことで努力すべきであって、選挙制度を変えるということではないだろう、このように考えています。  それからもう一つは、参議院で議論しよう。私どもは何も、こういう政党ですから、他党が言われたことを、絶対反対だとかあるいは審議拒否だとか言うつもりはありません。参議院は参議院で議論してくれ、そのとおりでしょう。しかし、参議院で今までやってきたルールと違うやり方で選挙制度を変えようとなさるから、私どもは他党と一緒に、断固反対だ、こう言っているわけでございます。  これは、議長のもとにおありの協議会へ、もう既に非拘束ではやらない、もう今では無理だ、こういうことになったけれども、与党の勝手な事情で、どうしてもお考えいただけませんかとこの協議会へお出しになったら、私どもは審議拒否なんということをいたしておりません。それを、国会へ法案でどんと出して特別委員会で、こうおやりになるからこじれるわけではないでしょうか。  昨日でしたか、一昨日でしたか、私どもは本会議場で総理に対する代表質問で、佐藤君という一年生議員が立ちました。大変立派な若武者ぶりで、総理からも激励のお言葉をいただきました。扇大臣からは、お母さん、かわいいよみたいな形でおっしゃっていただいて、その後けちょんぱんに、言語道断とまでお言いになったけれども……(発言する者あり)いやいや、建設大臣が。あれは全くの誤解と偏見。私どもはあえて申し上げなければなりません。  それは、扇大臣が私どもと一緒に自由党におられましたときに、先ほどからお話が出ました自自合意、五十削減、定数削減がございました。そのときに、扇さんは私と一緒に自由党の常任幹事をされておりまして、参議院では協議会で既に話が始まっている、二党だけで定数の話を約束するとこの協議会での話が全くうまくいかなくなる、したがって協議会にお任せをしてほしい、こういう強い御要請が二度、三度とあったわけでございまして、私どもは、扇さんのおっしゃることが筋だ、こう考えて、自民党と自由党との協議の中で、参議院の定数是正については協議会へ、こうお願いしたわけでございます。  したがいまして、佐藤君がおととい質問をいたしましたのは、扇さんはそこまで参議院の協議会、各派協議会を大切にされておったのに、今回なぜ、突如、協議会ではもう時間的に無理ですよと決めた法案を与党三党でどんと国会へ出してきたんですか、変えられたんですか、政治家としての筋道を変えられたんですかと御質問を申し上げたわけでございます。  どうぞひとつ、私どもが参議院でどういう主張でいるか十分御理解をいただいて、参議院が国民注視の中で円満に円満に、選挙制度の改革、定数是正、これらを議論できるように御努力をいただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  192. 森喜朗

    森内閣総理大臣 前段のお話は別といたしまして、たびたび申し上げておりますように、参議院の方でいろいろな意見の経過の中から今回の法案の取りまとめになったというふうに私は聞いておりますし、協議会の方も、全く非拘束というものについて否定をした意見が結論で出ていたわけでもないというふうに聞いております。  先ほど申し上げましたように、与党三党として責任を持って進めていきたいということでお願いをしたんだと思いますが、要は、やはり大事なことは、ぜひ、参議院の仕組みでありますから、まず参議院の方で十二分に協議をしていただきたいというふうに私は願っておりますし、中井さんのそういうお気持ちも、私も参議院の執行部には十分お伝えをしておきたいと思います。
  193. 中井洽

    中井委員 私ども思いを参議院の執行部にお伝えいただけるということですから、それで結構でございますが、しかし、森総理は、先ほどからたびたび、協議会で非拘束の方式を取り入れるということがもうやめになったということはないんだ、こういうお話をされますが、私どもが持っております参議院での合意の文章では、これはもう無理だ、したがって、定数是正だけをやりましょう、こういう協議になったわけであります。  もし総理がこれが違うとおっしゃるなら、その違うということを書いた文章を予算理事会へお出しいただきますようお願いをいたします。  委員長、お取り計らいをお願いします。
  194. 原田昇左右

    原田委員長 理事会で協議させていただきます。
  195. 中井洽

    中井委員 時間が限られておりますので、次に教育基本法の問題に移らせていただきます。  総理はたびたび教育基本法の改正に熱意を示されるような、あるいはまた意欲を示されるような発言をされますと同時に、また、後戻りをされたりいたしておりまして、ここのところがなかなか私どもからは何をお思いになっているか判断がしにくいところがございます。  例えば、今回の所信表明におかれましても、教育基本法の見直しなど、これを、あした中間報告が行われる予定ですと教育改革国民会議の項で述べられております。ところが、最後の方で、「教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を受けて、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいります。」こういう形で、中間報告も出ていない間にもう最終報告のことまで述べられて、議論はまた先だ、こうおっしゃっておられます。  かつて、昭和五十七年か八年、臨教審、このときにも、森さんは文部大臣をされて強く教育基本法の改正に意欲を示されましたが、結局、臨教審法の第一条に教育基本法の精神を云々ということだけでお茶を濁して、今日の状況になっているわけでございます。  昭和二十二年からもう既に五十年以上が経過をいたしました。私も読ませていただきましたが、憲法に書いてあることもございます。戦前の反省ばかり強く出ている、こういうのもございます。今の少子化の中で、私は、小学校の教育で一番大事なことは、実は集団生活をすることだ、学ぶことだと思っています。私らの子供のときには、家でも地域でも、集団活動、生活というのはあったのです。今は何もありません。学校しかこれがない。こういったことを実は述べてほしいけれども、これらについても述べられていない。こういったことを含めて私は見直すべきである、このように考えています。  時間がありませんので、一遍にお尋ねをいたしますので、お答えをいただきますが、中間報告でも、実は私どもは大変残念に思っておりますのは、教育委員会の制度、あるいは、先ほど菅さんからお話がございましたが、小学校と中学校を本当に地方自治体の、この責任がどこにあるかわからない教育体制の中に任せていいのか、こういったことを含めて私は議論をしてほしかった。それがちっとも出てきていないというところに問題がある。  今の教育の荒廃、日本人の若者の荒廃、これに対する危機意識は、お互いみんな持っていると思うのです。それを、中途半端なびほう策や、あるいは文部省には手をつけない、学校にはさわらない、教育基本法には言わないということでは、私は到底直っていかない。地方自治体に教育を任すというのなら、教育基本法なんか要らなくてもいいじゃないかという議論をしてまででも私はすべて見直すべきである、このように考えておりますが、森総理教育改革についての意欲をお尋ねいたします。
  196. 森喜朗

    森内閣総理大臣 教育国民会議は、幅広い多くの方々から、今の教育について、またこれからあるべき教育についていろいろと御議論をいただいているわけでありまして、その議論の過程の中で、余り私どもとして、そのことが教育国民会議意見の集約に影響を与えるようなことはできるだけ避けるということは、私も大事だというふうに常に思っております。  今、中井さんが御指摘になりました五十八年、九年、当時の臨時教育審議会の設置の際は、その臨教審設置そのものの法律が国会にかかりまして、その成立に二カ月ぐらいかかったと思いますが、その過程の中でいろいろな制約が各党から出まして、そして、特に教育基本法でありますとか教育委員会でありますとか、そういうことには触れないでほしいという意見が出ました。したがって、そうしたことには触れない一つ考え方が、仕組みの方が主に出てきたというふうに思っております。  私は、今回はあのときの反省の中から、もっと思い切って柔軟な話し合いができるようなことがいいのではないかということで、当時、小渕前総理に私的審議会になさった方がいいというふうに私は御進言を申し上げたのが、今の教育改革国民会議でございます。  結論としまして、もちろん年末に向けてこの最終答申をまとめるわけですが、教育基本法については、これは結論を出さなかったということじゃないと思います。大方の方がこれを改めるということについては大勢の意見であったというふうに、ただ、幅広くもう少し国民的な議論を起こしてほしいということがもう一つ書いてあったと思います。  したがいまして、これから国民会議の方では、全国で四カ所ばかり国民の皆様の意見を聞くような、そういう機会を設けることになっておりますし、さらに年末にかけて最終報告取りまとめになるというふうに思っております。そのまとめ方を十分に私は見きわめていきたいと思っております。そして同時に、私も教育国民会議にもお願いをしておるのですが、中井議員がおっしゃるとおりなんです。教育委員会制度そのものについてももう少し議論をしていただけないだろうかということも申し上げております。  要は、この戦後の教育というのは、大きな成果はあったと思うのです。ただ残念ながら、今の社会から見て、我々が考えつかないことがいろいろ起きている。そのことは何なんだろうかと考えてみると、まず一つには家族制なんですね。家庭が崩壊をしている。それはなぜなんだろうか、学校でなぜああいう行為が起きるのだろうかということを考えれば、やはり出発点は家庭なんだろうというふうに思う。  だから、子供に何の責任もないと私は思っています。むしろ学校の先生や、我々も含める社会を形成している大人にむしろ責任があるということであれば、そういう教育の中に出てきたそういう人たちによって今の社会が構成されて、学校も編成されているということであれば、やはりここのところに多く反省を置くべきではないか。  そういう意味で、もう少し国のことを、あるいは地方のことを、家庭のことを、あるいは自分たちの父、母のことを、あるいは先祖のことを、そういうことをもう少し真剣に考えていく、そういう子供たちになっていく、そういうことにやはり我々大人としては善導していく責任があるのではないか。そういうことがあの教育基本法の中には残念ながら欠落しているわけでありまして、そういうことを採用することがいいのか悪いのかという議論は私はしていくべきだろうというふうに考えているわけです。
  197. 中井洽

    中井委員 あの少年法、特に二十歳を十八歳に適用を引き下げるべきだ、社会全体で少年の問題、教育改正とともに立ち向かうべきだ、私はこういったことを申し上げたかったんですが、熱意ある御答弁をいただきまして、時間になりましたので終わります。ありがとうございました。
  198. 原田昇左右

    原田委員長 これにて中井君の質疑は終了いたしました。  次に、大幡基夫君。
  199. 大幡基夫

    大幡委員 日本共産党を代表して、森総理に質問します。  まず、介護保険の問題についてお伺いしたい。  介護保険が始まって半年、この間、全国では利用料の負担が重いために必要なサービスが受けられない、こういうお年寄りが続出しています。私は、介護保険の制度の本来の目的からいって、介護保険ができてこれまで受けていたサービスが後退する、こういう事態はあってはならないことだと考えます。  ところが、森総理は、我が党の代表質問に対する答弁の中で、利用料の負担が多いためにサービスの利用を抑えている例は少ない、このように、さも問題がないかのように受け取られる答弁をされました。  そこで、総理にお伺いしたいんですが、利用料の負担が重く必要な介護が受けられないでいるお年寄りに対して、その存在に対して、あなたは、それはやむを得ないことだ、こういう立場なのか、それとも、本来あってはならないこと、直ちに是正しなければならない、こういう立場なのか、どちらなのかということをお聞きしたい。
  200. 森喜朗

    森内閣総理大臣 介護制度は、いよいよ本格的なスタートになるわけでございます。ですから、これは、お年寄りに対しまして、国民全体でみんなが支え合っていこう、そういう新しい制度になったわけでありますから、まだこれがスタートしたばかりでありますし、保険料も現実、この十月からということでもございますし、多くのさまざまな意見があるだろうと思います。  私も、与党三党からも申し入れがございましたし、民主党さんからも七つの項目でやはり要求が出ておりますのは、現状、どういう仕組みがあったのか、どういう不便さがあったのか、どういう声があったのかということをそれぞれ政党がいろいろな形で今勉強していただいて、それに対してのまたお申し入れだろうと思いますから、政府としては謙虚にそれらのことについて耳を傾け、できるだけみんなでいい制度に、仕組みに変えていくということが私はやはり大事だというふうに思っておりまして、全く耳を傾けないなんて、そんな考え方を持っているわけではございません。
  201. 大幡基夫

    大幡委員 今の総理の答弁は、私の質問に答えていないと思うのです。つまり、私は、利用料が重くて介護サービスを減らさざるを得ない人がいる。このことはあってはならない、こういう立場に立たないと、例えば今与党三党の改善の議論が始まっていると聞いていますが、現状を抜本的に打開する対策は打てないんです。  この問題がいかに重大な問題か、この点で一つの事例を紹介したい。  この方は、京都の七十八歳の男性です。本人の障害年金で生活している人。もともと高血圧で、糖尿病があって治療中だった。合併症で左下肢を切断した。つまり、日常生活は何らかの介護が必要な状態でした。  この方は、介護保険以前のサービスは、訪問看護週二回、訪問診察週二回、それで利用料は月六千五百円だった。ところが、介護保険が始まって、要介護三の認定を受けた。そして、要介護三のサービスを受けると月一万八千六百五十五円かかる。これまでの三倍以上の出費はできない。したがって、訪問看護週一回、訪問薬剤指導を減らすことにした。  四月から始まって、五月ごろから、安定していた血圧が上昇し出した。医者もいろいろな手を尽くしたんだが、安定しない。よく聞くと、今までは看護婦さんや薬剤師さんが家に来て薬を管理してくれたので、安心して飲んでいたんだと。来なくなって、何が何かわからなくなった。また、入浴回数も減ったことで血の循環が悪くなった。その結果、残った右足も動脈が閉塞を起こして、とうとう右足も切断せざるを得なくなった。こういう方もおられるんです。  利用料の本人一割負担によってこれまで受けていた介護サービスが利用できない、このことがいわばこういう悲劇をつくっている。多かれ少なかれこういう事例は全国にあるんです。つまり、これを少ないから問題はないという態度をとるのか、あってはならない、二度とこういう事態を起こさないために直ちに手を打つ、つまりこの立場かが今問われていると思うのです。もう一度お願いしたい。     〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
  202. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、従来の方式と違うことになるわけですから、さまざまなそういう事態もあるんでしょうが、そういういろいろな例を、いろいろな報告を受けながら、どのように改善をしていくか。積極的にできるだけ多くのそういう方々に耳を傾けながら改善していく努力をしていかなければならぬ、このように先ほども申し上げたわけであります。
  203. 大幡基夫

    大幡委員 私は、総理の立場、総理のリーダーシップという問題が問われていると思うのです。  今、こういう事態が全国にあります。そして、地方自治体は、やむにやむを得ずさまざまな独自の利用料減免の措置をとっています。こういう利用料減免の措置をとっている自治体が二百四十七まで広がっている。  このうちの一人、山口県小郡町の町長さんは、新聞のインタビューでこう言っているんです。私は介護サービスを利用される方のことを第一に考え、サービスを低下させず負担をふやさないことを原則にした。つまり、うちの町では一人たりとも介護保険ができてサービスが低下するということをつくらない、これが自分の町長としての役割だということで努力をしていると思うのです。  やはり、そういう立場に総理が立つ、今このことが現状の解決の上でどうしても必要じゃないかというふうに考えます。どうですか。
  204. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員、具体的な例を挙げて御質問でございますが、具体的な例について、例えば今のお話、障害者認定の問題も絡むんじゃないかと思いますけれども、そのような話は具体論になりますから、お答えはここでは避けたいと思います。  いずれにいたしましても、介護サービスの利用料は、基本的にはみんなで介護サービスを支え合うという制度であり、御案内のとおり、四十歳以上の方は皆さん保険料をお払いになっている。そういうことの中で、どこまでが支え合うというシステムのあり方として適切かということであろうと思います。  今総理から御答弁がございましたように、私どもは、この制度を確立していくために、現場の声に対しては常に謙虚に耳を傾けていきたいと思いますけれども、基本的なところは、保険料も払ってみんなで支えておられる、その場合に、受益を受ける方にもそれなりの負担をいただく、そのことをやはり大事にしなければならないと思います。  低所得者に対する特別措置は、委員はもう既に御承知のとおり、介護サービスが高くなったら一定のところで頭打ちをするとか、それから、生活保護の方の場合には実質的に負担がないようにしておるとか、あるいは離島等の条件の悪いところについての特例もございますし、それから、社会福祉法人が適切に利用料の負担の軽減をした場合には、それに対して国費の応援もいたしておる。そういうことをいろいろやっておりますので、これからもいろいろな御意見には耳を傾けてまいりたいと思います。
  205. 大幡基夫

    大幡委員 あなたには、利用料が払えないから必要な介護が受けられない、そういう人の痛みがわかっているのかというふうに言いたいです。  先ほど、みんなで支え合う制度、こういうふうに言ったけれども介護保険も社会保障の一環です。互いに助け合うということは、払えない人からも取り立てるということではないんです。本来所得の低い人を助ける制度がその人を苦しめる、そんな社会保障はないんです。  しかも、あなた、今特別対策だとかいろいろ言われたけれども、先ほどの京都の方の実例は、その特別対策がいかに役立っていないかという例証でもあるんです。  例えば、高度の介護の上限規定、これは非課税の場合、一カ月二万四千円を超える場合の助成です。先ほどの方は、一万八千円を超える、これが払えない。また、三%の軽減も訪問介護だけでしょう。先ほどの方は、もしこれが看護、他の分野にも適用されていれば起こらなかった、政府の今やっている特例措置が力を発揮しなかったという例なんです。それに対して痛みを持たない、それではだめだと思います。  しかも、この実例は部分じゃないんです。  パネルを持ってきましたが、これは北海道の民医連が一千五百六人を対象にして調査したパネルです。ここの要介護一の認定から要介護五の認定、つまり、在宅サービスの認定の方は、押しなべて利用率が三割台です。例えば、要介護五の場合は三十五万八千三百円の利用限度額、ここまで使える。しかし、実際に使っているのはそのうちの三三・三%。つまり、押しなべて三割台の人しか使っていない。使いたくても、一割の自己負担。要介護五を全部受けると自分で三万五千八百円の負担が必要。つまり、こういうことから受けたくても受けられない、こういう実態があるんです。  まさに、この現状を放置すれば、先ほど紹介したような悲劇が次々と生まれてくる。この利用料の負担が高いからサービスを受けられないお年寄りが生まれていることに対して、直ちに改善する必要がある。総理、そういう認識を持ちませんか。
  206. 津島雄二

    ○津島国務大臣 ただいまの御意見でございますけれども、基本的には、この介護保険が今どのように各地域で受け入れられているかという判断でございますけれども、最初の委員の御指摘のところから、私どもとはいささか認識が異なっております。  我々、私自身も各地を訪ねて回っておりますけれども、押しなべて、この制度ができまして介護サービスの利用はふえている、そういう意見が大部分でございますし、全国の市町村も、この制度をやはりやってよかった、こういうふうに言っておられるわけであります。  昔のように全部公費で、これを措置費でやるという話の限界を感じて私どもはこれを保険にしたわけでございますから、その保険の本旨に従ってやっていく以外はないわけでございます。  しからば、今御指摘の、非常に気の毒な例がおありになるかどうかということにつきましては、私どもは、まず、生活保護の方については利用料をちょうだいしないというところから始まっていろいろな仕組みを設けておりますので、それが適切なものであるかどうか、これは各地の保険者である市町村長がやはり苦労しながら今やっておられるので、その御意見に真剣に耳を傾けているところでございます。
  207. 大幡基夫

    大幡委員 このパネルをもう一遍見てほしいんです。このパネルで、要支援の認定の方は五四・七%、圧倒しているんです。つまり、これは、利用制限が六万一千五百円、一割負担でも六千円、まさに利用料が低ければ使いやすい、使っているというのがこういう状況にも生まれています。  同時に、もう一つ大事なことは、いよいよ保険料の徴収が始まる。この保険料の徴収に対しても、非常に重大な問題が今表面化しているということです。それは、年金収入の低い方が収入の高い方よりも多くの保険料を請求されているという事態が大規模に生まれているということです。  このパネルは、厚生省の資料に、大阪市の二年後からの保険料と、その全国推計の、何人おられるかということを合体させたものです。実は、第一段階の老齢福祉年金の受給者の方、これは今、年三万四千円余りですが、この第一段階の老齢年金受給者の方よりも現在もらっている年金の金額が少ない方が全国で二百五十三万人もおられる。これは厚生省からもらった資料です。老齢年金受給者全体八百五十六万人、八百五十六万人の中で老齢福祉年金相当額を下回っている者二百五十三万人、厚生省がこういう表を出しています。  つまり、第二段階に設定されている人、第三段階に設定されている人が、実際は、収入という点では第一段階の人よりも少ない。ところが、支払う保険料は、大阪市の場合で言いますと、第一段階は二万二百八十四円、これよりも少ない第二段階の人は三万四百二十六円、第三段階の人は四万五百六十七円。こういう方が二百五十三万人もおられると推定できる、そういうふうに厚生省から資料が出ている。これはとんでもない問題、大きな矛盾だと考えませんか。
  208. 津島雄二

    ○津島国務大臣 委員、大変立派なパネルをおつくりになったわけでありますが、まず、そのパネルの中で基本的な問題は、これは年金の金額だけでお比べになっているんですね。私どもの段階は、年金のほかにほかの収入、給与の収入も含めて見ておりまして、これを含めて見るのは当然のことでございまして、高齢者の方だって資産、所得のおありの場合もあるわけでありますから。ですから、年金との関連でこうだというだけの議論は、残念ながらどうも実態を正確にあらわしておらないと思います。  いずれにいたしましても、委員の御意見を伺っておりますと、とにかく保険料の方も安ければ安いほどいいという御意見に帰着すると思いますけれども、やはりこれは保険でございますから、保険をみんなで助け合って維持するという、市町村長中心に保険者が苦労しておられることも私たちは忘れるわけにはいかないわけでございます。
  209. 大幡基夫

    大幡委員 あなたは本当に痛みがないんですか、胸の痛みが。  総理、大阪市が今回、第二段階の方の保険料の減免措置を決めました。大阪市はなぜこの減免措置を決めたのかということをコメントで出しています。お渡しします。——こう言っているんです。いいですか。大阪市の文書です。「保険料の五段階設定について、第二段階以下の世帯全員が市民税非課税の方の中には、実態として第一段階の方以上に生活に困窮している方がおられるなど、生活の程度に相当の幅が」ある。つまり、第二段階の人で第一段階の人よりも多額の保険料を払う人が相当いる、しかも生活が苦しい人がいる、したがってこういう制度をつくったというふうに言っているのです。この制度をつくったのは政府ですよ。大阪市がそういう認識でやっているのに、政府は問題だとも思わないというのが、さっきの厚生大臣の答弁です。  同時に、これを放置すればどうなるかということも書いているのです。続く文書です。「本年十月から保険料の徴収が始まる中、このような方が保険料の納付困難から、将来介護サービスの利用制限につながる事態が現実に懸念される」。つまり、こういう方が保険料を払えないで給付を停止される、一番保険が必要な方が保険対象から外される、そういう事態になってはならないということでこの軽減制度をつくったというふうに言っているわけです。  今、全国で保険料の減免制度をつくっている自治体は百五十自治体に近づいています。こういう制度を、まさに現状を解決するために対策が必要、総理、そういう認識はお持ちでしょうか。
  210. 津島雄二

    ○津島国務大臣 大変強いトーンでおっしゃっておりますけれども、私は、本当の思いやりというのは、立派な介護保険制度が定着をして、そして多くの国民の方が必要な場合には必要な介護が受けられるということが大事であろうと思っております。  さっき委員がおっしゃった、いわゆる第二段階までの方の中にもいろいろおありになる、まさにそうなんです。第二段階の中に、本当に低い方から、ほかの所得もあって高い方までございまして、それを、低い方がいるからかわいそうだ、それもそのとおりでございますが、同時に、払える方には払っていただくということによって保険制度というのは成り立つわけでございまして、その辺が、私どもは、今全国における実施状態を見守っておるところでございます。  いずれの場合も、保険はみんなで分かち合う制度でございますから、一律にまけるということになりますと、保険自体がおかしくなりまして、実際、結局は国民が困られるということに私はつながる。それが一番の思いやりということではないかと私は感じております。     〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 大幡基夫

    大幡委員 あなたは本当に反省がないというか、冷たい人だ。政府は知らぬ顔をできても、直接住民に接する自治体はそうはいかないんです。  例えば、愛知県の碧南市は、世帯全員が市民税非課税で収入四十二万円以下のお年寄りは保険税をゼロにしました。既に百五十自治体に減免自治体が広がっています。こういう地方自治体の対応を尊重し、激励する措置は当然だと思うのです。この点は、総理、お答えください。
  212. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますし、厚生大臣も申し上げたように、今スタートしたばかりの制度です。やはりこれを完全なものにしていくということが大事であります。そしてまた、そのために地方の市町村長は大変な苦労もし、努力もしておられると思います。碧南市のそういう行き方もありますが、隣の市はそういう方向をとらないというふうに言っておられますね。  ですから、それぞれ今苦労をしながら、この制度を何とか成熟したものにしたいという努力をしておられる、そして、そういう地方自治体とも厚生省は十分相談もしながらやっているんだということもぜひ理解をしてあげてほしいと思います。
  213. 大幡基夫

    大幡委員 地方自治体がこういう独自の制度をつくっているのは、現行制度に欠陥がある。それをつくったのは国なんです。国が欠陥がある現行制度を一向に直そうとしない、したがって、やむにやむを得ずいろいろな努力が図られている、それを地方自治体に任せるという態度は、総理、責任の放棄です。  しかも、政令市でいえば、この減免制度を決めているのは大阪市、川崎市、神戸市などです。いずれも自民党や公明党が与党の自治体です。こういう自治体も、我が党らと同じように利用料や保険料の減免措置を国に求めています。国が対応しないから地方自治体がやってきている。私、今ここで踏み込んで、さきに述べた利用料問題、介護料問題への対策が必要だと思うのです。  そして、保険料の根本の問題は、やはり住民税非課税の世帯、憲法二十五条の健康で文化的、最低限の生活を営む権利ということで、住民税非課税がある、この非課税の世帯からも無理やり保険料を取る、ここに矛盾の根本があると私は思います。  したがって、このような方々の保険料、利用料を減免する。そのために必要な財源は約九千五百億円です。九千五百億円、お年寄りのために出せないはずはないと思うのです。五十兆円の公共事業枠から見ればわずかです。これを削れば十分財源はつくれます。  しかもまた、当面の半年間、今回の補正予算でこれらの方の措置をする。そのために必要な財源は二千億円です。今回、剰余金が一兆円ある。一兆円のうち、半分の五千億円は借金返しに回す。財政法六条です。しかし、残る五千億円のうち二千億円をこの苦しんでおられるお年寄りの介護の助成に使う、これはやる気になれば可能だと思うのです。  総理、その意思がおありかどうか、お答えください。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 補正予算につきましては、まだ各省庁から予算要求がございませんので、今の御質問に答えられる立場にございません。予算要求がございますればまた検討いたします。
  215. 大幡基夫

    大幡委員 補正予算で二千億円の財源をつくれば、介護の緊急措置というのは可能です。ぜひこれを実現していただきたい。  一方で、きょう、そういうことの明言を避けられましたが、新聞報道では、今回の補正予算で、結局相も変わらず大型公共事業を中心とした大型補正を準備している、こういうことが言われています。  予算の主役は社会保障と国民の暮らしにすべきです。そういう政治実現のために日本共産党は引き続き全力を尽くすことを表明して、質問を終わります。
  216. 原田昇左右

    原田委員長 これにて大幡君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美君。
  217. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  きょうは、この第百五十回国会、二十世紀最後の国会になります。私は、この国会の責務は、まず政治にたまりにたまったうみを出し切るということが一つの大きな役割だと思っているのです。確かに、IT革命とか、ITとか教育とか、いろいろな目新しい言葉をちりばめるのもいいのですが、私自身は、やはり、政治にたまったうみをいかに出し切れるか、そして二十一世紀をさわやかに迎えたいという気持ちできょうは質問をさせていただきたいと思います。  さて、そういう立場に立ちまして、特に社会保障のあり方や政治献金のあり方を中心に議論をさせていただきたいと思います。  総理は所信表明演説の中でこうおっしゃっています。「社会保障全般について、実際に費用を負担し、給付を受ける生活者の視点に立ち、横断的、総合的な見直しを進めていくことが必要」というふうにおっしゃっているわけです。この中で、特に生活者の視点に立つということを私は非常に重要だと思っています。  私の理解では、生活者の視点に立つということは、例えば弱い立場にある患者の意向を十分踏まえて医療制度を改革していくなど、弱い立場にある人を重要視していくというように受けとめていいでしょうか、いかがでしょうか。
  218. 森喜朗

    森内閣総理大臣 これからの医療制度を充実させていく、そういう意味では、いわゆる社会保障の、私どもとしてはまた新生というふうに申し上げているわけですが、これを十二分に制度として構築していかなきゃならぬと思っています。そういう意味で、給付を受ける方々の立場も十分に考えていかなきゃならぬ、そういうことを申し上げたわけでございます。
  219. 辻元清美

    辻元委員 それでは、この医療制度の抜本的改革というのは、私はことしまでにきっちりと話し合っていこうというように承知しておりましたけれども、これのめどはどのようになっているんでしょうか。総理
  220. 森喜朗

    森内閣総理大臣 御承知のように、今社会保障構造のあり方に関する有識者会議において議論をしていただいているわけであります。恐らく間もなくこの御議論の成案といいましょうか、そういうものもまとまる、そういう予定をお願いしているわけでございますので、そういう議論を踏まえながら、平成十四年度に向けましてその具体的な措置について精力的にこれから検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  221. 辻元清美

    辻元委員 今、平成十四年までにとおっしゃった。それは西暦でいえば二〇〇二年までということなんですけれども、私は二〇〇〇年までという取り決めがあったというふうに承知しているんです。  そういう中で、今回、今国会で健康保険法などの改正案が提出されています。これを早く与党は審議しろ、審議しろときょうもどうやら議運の方で主張されているようなんですけれども、この中身を見ますと、七十歳以上の高齢者の患者負担を来年一月から原則一割に引き上げるという内容が盛り込まれています。はっきり言えば、お年寄りの負担がふえる。  一方、では、改革の方はどうなっているか。総理、これを覚えていらっしゃいますでしょうか。これは三年前の一九九七年に、当時森総理は自民党の総務会長でいらっしゃいました。そのときに、与党医療保険制度改革協議会確認事項ということで、三年前の九月二日に、しっかりと自民党の総務会長が仕切る総務会も通った確認事項があります。この中にどういうことが書かれているか。ここから改革が始まっているわけです。皆さん、覚えていらっしゃいますよね。  その中に、医療制度の抜本改革をしない限り患者負担増は生じさせないようにしようという取り決めをしています。そしてさらに、二〇〇〇年、ことしまでに医療改革をきっちりするんだ、負担について議論するのはその後なんだと。もっと具体的に、三時間待ちの三分診療や、医療による適切な説明と患者の理解に基づく医療といった課題を解決することが、負担を議論する条件になっているわけです。総理はこれを総務会で、あのときは夜中までえらいもめていましたから、覚えていらっしゃると思います。  今回の政府の提案を見ていると、改革は先送りでお年寄りの負担だけふやすということで、私は納得できません。この確認事項、これをほごにされるということですか。総理、いかがですか。——ちょっと待ってください。これは自民党総務会で、あのとき総理はこれで御苦労なさっていましたから、そういう経験を踏まえられて、総理のお立場を私は伺いたいわけです。いかがですか。いや、ちょっと待ってください、二〇〇〇年までにこうしようと思ったが、できなくてこうなったんだと率直におっしゃればいいじゃないですか。  厚生大臣、ちょっとお引き取りいただきまして、まず、この問題ですから総理に出ていただきたいと思います。覚えていらっしゃらないのですか、総理。さんざんやっていましたよ。ここから始まっているわけです、この改革議論は。いかがですか。
  222. 森喜朗

    森内閣総理大臣 それは、政党と政党の合意の中で協議したことでございますし、そうしたものを前提にしながら、政府としてもどう取り組むかということを、いろいろとこれまで協議をしながら、今の仕組みをまずお願いしているのだろうと思います。それは当時の社会党と私どもとそういう中で協議をした、そういうときの経緯だろう、そう思います。
  223. 辻元清美

    辻元委員 それでは質問を続けたいと思いますけれども、政党と政党で協議して、そして取り決めたものが多々あります。これからは連立時代ですよね。そうすると、各政党で取り決めたものを政権が変わればころころ変えていくというのが政治のあり方ですか。そういうやり方が今政治不信を買っていて、選挙制度の問題もころころ変えて、何でもそうじゃないですか。  さてそこで、なぜ改革がおくれたのか。三年あったわけです。三年間何をしていたか、なぜおくれたのかという点に触れたいと思うのです。  いろいろ調べてみますと、もめておるわけです、利害関係者の中で。その原因の一つが、特に日本医師会などの反対にあると言われています。いずれも医療費抑制や受診料の低下につながるということで、要するに自分たちに入ってくる診療報酬が減ったら困るということで、反対して改革をおくれさせている大きな原因になっていると言われていますが、総理、この御認識はいかがですか。これはすごく大事な部分ですよ。いかがですか。
  224. 津島雄二

    ○津島国務大臣 先ほどからの委員の御質問に対して、正確にまず事実関係を申し上げておかないといけません。  平成九年八月の与党協議は、先ほど総理が申されましたように、当時の自社さの枠組みの話でございます。このときに決まりましたのは、薬価制度や診療報酬、高齢者医療制度、医療提供体制という四つの課題に取り組んだ上で早く結論を出してくれということでございましたが、その際にやはり大きな問題になりましたのは、どのようにして患者さん方にこの医療の大切さをわかっていただくか、そのための自己負担をどうするかということを中心にいろいろな議論があり、反対する人たちもございました。ようやく今回、一割の自己負担を認めると。  これは当時から、関係団体、今委員がおっしゃった関係団体を含めた方々が非常に強く反対をしておられたことについて、ようやく今回は、やはりそのことは大事だなという御理解を得て、この間の通常国会に提出をいたしました健康保険法等の改正案が出てきたわけでございます。また、医療法の改正につきましても、随分に苦労いたしましたけれども、関係団体がようやく理解をしていただいたというところで提出することができたわけであります。  今度の国会にこの二法を、前回成立いたしませんでしたので、私どもは提出させていただいておりますので、ぜひともこれまでの苦労が無にならないように、速やかに御審議をお願い申し上げたいと思います。
  225. 辻元清美

    辻元委員 私は、今の厚生大臣の認識とちょっと違いますね。といいますのは、医療診療報酬については、昨年の十二月に〇・二%アップしているわけです。そして、ことしの四月から値上がりしておるわけですね、これが四百三十億。この値上がり分を、結局、はっきり言えば、医療給付がふえたから賄わなくちゃいけない。この財源として今回の一割負担ということで、七十以上の高齢者の、お年寄りの負担をふやして、早う賄わなあかんから早う成立させてほしいということじゃないんですか。それも、先ほどから私は、日本医師会から、はっきり言いまして非常に反対の声が強いことが多々あって改革がおくれているということは、皆さん御存じじゃないですか。  これは厚生大臣に実際に答申を出しています社会保障制度審議会の中でももう困ってしまって、このままじゃ改革が進まぬということで、中立な機関を設けてほしい、関係者の利害や既得権を離れて問題の解決を図るという方法を提案したいというようなことが、審議会すらも答申を出しているわけです。  さて、そういう中で、総理にお伺いしたいんですが、私は、日本医師会と自民党の関係を問いたいですよ。七十以上の御高齢の方々に負担をふやそう。生活者の視点に立つとおっしゃっているけれども、利害関係者の意見は聞くが生活者の視点のどこに立っているのかと思いますよ、この間の医療改革を見ていると。  さてそこで、総理にお聞きいたします。  日本医師会の政治団体があると思いますが、日本医師連盟の自民党に対する献金はトップクラスだと聞いております。この医療改革議論がなされた三年間、自由民主党はどれだけ政治献金を受けていたのか、まず答えてください。
  226. 原田昇左右

    原田委員長 自治大臣西田司君。(辻元委員「ちょっと待ってください、自由民主党総裁の総理にお伺いしていますよ。そうですよ、総理にお伺いしていますよ」と呼ぶ)委員長の言うことを聞いてください。  指名は、西田司君。
  227. 西田司

    ○西田国務大臣 お答えをいたします。  自由民主党の政治資金団体である国民政治協会の平成九年から平成十一年の収支報告書を確認いたしましたところ、日本医師連盟から、平成九年に一億七千七百万、平成十年に三億五百万、平成十一年に二億七千六百万。なお、日本歯科医師連盟から、平成九年に三億一千七百七十五万、平成十年に四億二千五百万、平成十一年に六億六千万、寄附を受けた旨の記載が確認できております。
  228. 辻元清美

    辻元委員 私は、足してみますと、日本医師連盟からは三年間に七億五千八百万、日本歯科医師連盟からは十四億二百七十五万、両方合わせると二十一億六千七十五万円なんです。  森総理自身も、調べさせていただきましたが、一千万ずつ受けていらっしゃいまして、総理におなりになって一千五百万にちょっと値上がりしていました。この三年間にパーティーは、五百四十九万円分パーティー券も買うてもらってはったわけです。  こういう、何だか業界と、政治献金とそれを媒介にして政策に影響力を行使するということが今問題にされているんじゃないですか。総理、いかがでしょうか。これは総理に答えていただきます。いかがですか、総理。それは、総理の御所見で結構ですので、答弁書を見ていただかなくても、本当に率直なお答えをいただきたいと思います。
  229. 森喜朗

    森内閣総理大臣 政治家が政策を立案し、国民に訴えまして、そして支持を得ていくためにはある程度の資金が必要でありまして、その意味では政治資金は民主主義に必要なコストである、このように考えています。  同時に、国民政治に対する信頼を確立するためには、政治家一人一人の政治倫理の確立が重要でありまして、政治資金については、国民の疑惑を招くことのないように、その収受については政治資金規正法に基づいて公明正大に行われていることが大事だ、このように考えております。
  230. 辻元清美

    辻元委員 私もいろいろ調べさせていただいたのですけれども、その中で、例えば、先ほどの診療報酬が〇・二%アップされて事実上二〇〇〇年までの医療改革の抜本的な改革が先送りされたのは去年の十二月、そして取り決めが行われたのが、十二月十九日に決着と言われているのです。この前後、今申し上げました日本医師連盟から、十一月二十六日に三千万、十二月一日に三千万、十二月九日に一千万、十二月十五日に二百万振り込まれているわけです。そして、十二月十九日に決着しているわけですよ。  これは普通、常識で考えましたら、何だと。これは本当に、あっせん利得罪ができても、今の与党案ですとこれは処罰できません。ざる法ですよ。  そして、さらにあります。ここに日本医師連盟執行委員会の議事録があるのです。これは、ことしの四月二十六日午後一時三十分から日本医師会館三階小講堂で行われた議事録です。最後の部分にこう書いてあるのですよ。「自由民主党税制調査会、医療基本問題調査会、社会部会などに参画している議員の名簿が示され、これらの議員を落選させないようにとの強い指示が唱えられた。」と書いてあるわけですね。  私は、こういう一部業界と政治の癒着、そしてそれは票と政治献金を媒介にしている、これが今問われていると思いますよ。総理は公明正大に献金をいただくとおっしゃいましたけれども、この一連の流れをどう説明されるわけですか。いかがですか。
  231. 森喜朗

    森内閣総理大臣 医療改革につきましては、関係者間の真摯な政策的な議論によって政策が決定しているものでありまして、政治献金とは何ら関係がないと私は承知しています。
  232. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、二〇〇二年まで、医療改革というのは本当に、日本に住んでいらっしゃる外国人も含めてすべての皆さんの生活に直結する問題なんですよ。特に、今回は七十歳以上の高齢者の負担をふやそうという話です。これじゃまるで一部の、言い過ぎかもしれませんよ、しかし、一般の方々から見ましたら、一部の業界から政治献金をようけもろうてはる、意向を聞く。七十歳以上の高齢者のお年寄り、政治献金できますか。普通できないですよ。そうしたら、そういうところから、言い方は悪いですけれども、お金を負担させようというなら、はっきりと説明がつくような、だれが見てもおかしくないようなお金の扱いをしなきゃいけないと思います。  そこで、お聞きしたいと思います。私は、この二年間の間に本来の抜本的な医療改革をするというならば、総理、ぜひ決断していただきたいと思うのです。それは、一つ目はここの答申に出ています。関係者の利害や既得権を離れて議論する場、それをきっちりと設置しよう、独立して。いかがですか。これをやらないと、二年先も同じような議論になりますよ。いかがですか。総理、いかがですか。とても大事な問題です、これは。
  233. 森喜朗

    森内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、今有識者会議の中でそうしたことも含めて議論をしておられるわけでありまして、間もなくその答申をいただいて本格的に制度改革について検討を始めたい、こう考えております。
  234. 辻元清美

    辻元委員 その有識者の中身が問題なんです。  ですから、総理、もう一つ、あっせん利得処罰法、これを法制化しようと言われていますが、私は、与党案では構成要件は弱いと思います。それは入札に関する契約などになっていますが、範囲を広めるべきです。  それともう一つ企業・団体からの政党や政党支部への献金もこの際あわせて禁止する。そしてさらに、この政治連盟というのは政治団体です。政治団体に名前を変えればこの献金は企業・団体献金のカテゴリーに入りませんので、はっきり言うたら出し放題になるわけですよ。ここにもはっきりメスを入れないと、私は、この二十世紀最後の国会はこういう政治の古いしがらみを断ち切る大事な国会だと一番最初に申し上げましたが、総理、いかがですか。それを決断されたら、本当に歴史に残る総理になると私は思います。いかがでしょうか。
  235. 森喜朗

    森内閣総理大臣 政治家個人に対する企業・団体献金は、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえまして、既に本年から政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されました。それは、私は決断をいたしました。  一方で、政党に対する企業・団体献金については、これは最高裁の判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を持つことは認められているわけでありまして、これをおよそ悪と決めつける、そういう論拠は私は乏しいと考えています。
  236. 辻元清美

    辻元委員 先ほどと同じ紙を読んでの御答弁だったと拝聴いたしました。  私は、この政治家のお金の問題とモラルの問題というのは、本当にこの二十世紀最後の臨時国会の最大のテーマだと申し上げたんです。それでないと教育問題も語れません。総理も道徳が大切とおっしゃっていました。私は、やはり決断していただきたいけれども、がっかりするお答えだったので、がっかりしちゃったので、モラルを聞きたいと思います。  先ほどの他の委員の質問の中に、総理自身も、そして官房長官自身も女性問題のスキャンダルなどに関する疑惑がかけられていて、とても悲しいことなんです、こういう疑惑がかかるというのは。これもきっちり晴らして二十一世紀に臨みたい。国際的にも、やはり総理と官房長官の問題ですから、はっきりさせないと私はまずいと思うのです。  そこで、総理に御提案したいと思うのです。疑惑を晴らす方法が一つあるんです。先ほど雑誌社と戦っていらっしゃるとおっしゃった。私は、もう雑誌社と戦う時間があれば、ぜひ総理に政務に専念していただきたい。  そこで、何だか昔の売春等取締条例違反で逮捕されたなんて、こんなことが報道されて、訴えていらっしゃると聞きました。これを晴らすためには、身に覚えがないということを証明する。これは身に覚えがないならば、御自身がきっちりと、この犯罪番号というのも私は今持っているんですけれども、申し上げませんが、御自身が問い合わされて、それをオープンにして、ほら見て、ないだろうというふうにされたら、雑誌社は大負けで、この問題は解決するんですが、総理、いかがでしょうか。そして、政務に専念してください。お願いいたします。いかがですか。
  237. 森喜朗

    森内閣総理大臣 私は政務に専念いたしております。このことについては弁護士にすべてお任せを申し上げて、今法廷で戦っているところです。そのために政治的に時間を割くようなことはございませんし、初めからそう決め込んでそういうものをおっしゃるというのは極めて失礼な話。私は自分の良心にかけて、名誉を今毀損されているので戦っているんです。そのことをよく理解してほしいと思います。
  238. 辻元清美

    辻元委員 私は理解して申し上げているからこそ、終わらせる唯一の方法は、身に覚えがなかったら、問い合わせて公にして、ほら見てみとおっしゃればいいんです。それをされないから疑惑に疑惑を、何かもやもやしているわけですよ、この問題で。  では、これは聞かざるを得ないと思いますが、中川官房長官にお伺いをしたいと思います。  きょうも実は私は、このバッターに立つ質疑者の女性、一人なんですよ。特に、やはり女性の皆さん、最近、政治に関心を持っていただいていますので、政治の中で特に女性スキャンダルは敏感になります。  ですから、お聞きしたいと思いますが、私は、中川官房長官がだれと恋愛しようが、そんなことは一切関心ないんですよ。ただ、先ほどからおっしゃっていました、何だか怪文書のようなものが出たり、私も拝見しましたけれども、その中身を見ると、何だかとっても恐ろしいような中身が書いてあるわけですよ。  事実無根だとおっしゃいましたね。私は、事実無根をはっきり胸を張って言っていただくために、本当に事実無根であって、万一あのような恐ろしいことが一つでも事実であるならば、私は、特に男女共同参画社会基本法の担当大臣でいらっしゃいますので、官房長官としても、もしもそうだったら失格だと思います。  そういうことはないと思いますけれども、もしもそういうことがあるならば、はっきりと責任をとるぞということをこの場でおっしゃっていただきたいと思います。
  239. 中川秀直

    ○中川国務大臣 たくさんの要素の入った御質問ですから、ちょっと一遍に答えにくいのですが、最初の部分について、つまり、いろいろな週刊誌等々で、余り関心ないといった部分でございますけれども、それについては、数年前の個人のことでございますから、こういう場で回答することは差し控えたい。議員も御承知でございましょうけれども国会法の規定というのもございます。  それから、後の問題、もう本当に、もしその怪文書のようなおどろおどろしいことがあったならばどうするんだということですが、さっきから申し上げているとおり、天地神明にかけてそういうことはありませんし、私自身の名誉のためにも必要なことはしなきゃならぬ、こう考えております。
  240. 辻元清美

    辻元委員 私は、今の件だけではなく、きょう質問させていただきました一連のやりとりを聞かせていただきまして、今の私たちの政治の問題点、それから、これからどうしていかなきゃいけないのかということを示唆していると思うわけです。  やはり私は、政治とお金の関係や、それからあらぬ疑惑、これをいかに説明して晴らしていくかということがない限り、教育のことを子供に説く資格がないとすら外で言われるわけですよ。そうじゃないですか。それをこの二十世紀の最後の国会でどこまで切り込めるかということだと思います。  総理は、所信表明演説の中でこうおっしゃっているのです。「私は、国民の皆様とスクラムを組んで、あらゆる困難を乗り切って、日本新生のゴールポストを目指して走り続ける覚悟であります。」日本新生とおっしゃっています、ゴールポストまで走り抜けると。そのためには、私はそれ以前に、やはりこの覚悟であります、この覚悟を、古い政治のしがらみをはっきり断ち切るという覚悟があって日本新生になるのじゃないでしょうか。いかがですか、総理
  241. 森喜朗

    森内閣総理大臣 辻元さんのお考えによれば、すべてが全部古いしがらみだというふうに私は片づけられても困ると思います。温故知新、古きものをやはり温めながら、また新しい仕組みを時代に沿ったものとしてつくり上げていくということが新生だというふうに私は思っております。
  242. 辻元清美

    辻元委員 私は、古い、いいものは受け継ぐ。  ただ、先ほど私は医療改革の事例で申し上げました。これは、非常に典型的な今の政治の問題点を浮き彫りにした事例だと思うから申し上げたわけです。私は、これには反論の余地なしだと思います。実際に二〇〇〇年までの間にあれだけ大合唱した医療改革ができなかったわけです。答申すらも、このままじゃもうできないと言っているわけです。  そういうお金、業界、政治、票、これをひっくるめて、はっきり申し上げさせていただきましたら、それが今までの自民党の政治のやり方だったと私は思いますよ。だから、衆議院選挙でも負けたのです。参議院選挙では堂々と戦いたいとおっしゃるならば、こそくに選挙制度を変えようなんということをおっしゃるのではなくて、それをはっきりと断ち切るという決断が要ると私は思います。  最後になりますけれども、この二十世紀最後の国会、私は、政治のしがらみを断ち切るというふうに申し上げましたので、疑問のあるところは徹底的に追及して、そして徹底的に議論していくという姿勢で社民党は臨時国会に臨みたいということを申し上げまして、質問を終わります。  以上です。
  243. 原田昇左右

    原田委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。  次に、山本幸三君。
  244. 山本幸三

    山本(幸)委員 21世紀クラブの山本幸三です。  時間が限られておりますので、物事を単純化して進めざるを得ません。舌足らずになることがあると思いますけれども、お許しいただきたいと思います。  総理が外されましたのでちょっと困るのですが、私は、金融政策と財政政策の関係について議論をしたいと思うのです。  先月、八月の臨時国会のときにこの席で、私は、現在の景気の現状、そしてまた将来の見通し、つまり原油高騰とか、あるいはアメリカ経済、アジア経済、ヨーロッパ経済、そういう見通しを含めて考えると、日本銀行がゼロ金利解除をするのは早過ぎる、これは急ぐべきではないということを申し上げました。森総理も同じような見解を示されました。  にもかかわらず、日本銀行は、全く私どもの言ったことを聞く耳を持たないで、ゼロ金利解除を八月十一日に強行いたしました。私はこれを見て、一国の内閣総理大臣がこれほどばかにされた政策決定というのは見たことがない。その結果、海外のエコノミストは森総理のおっしゃることを信用できなくなった。また、日本国の信用が失われました。ムーディーズは国債を格下げいたしました。そして今、森内閣は補正予算編成に追い込まれたということであります。金融政策が引き締めに移るから、その結果、財政政策で補正予算編成に追い込まれる。これは、私は本末転倒の政策決定ではないかという気がしておるのです。  その議論をしたいのですが、最初に、事実関係として、八月十一日、日銀がゼロ金利解除を決定する前に、日銀総裁から総理のところに何らかの御相談なり、電話でも結構ですけれども、そういうものがあったのでしょうか。
  245. 森喜朗

    森内閣総理大臣 金融政策は日本銀行の所管事項でありまして、合議体の意思決定機関であります政策委員会が判断するものであります。これは前国会でも議員から御質問があって、申し上げたと思います。  日銀総裁が政府に事前に相談することにはなってはいないわけでありまして、先般のゼロ金利政策解除に際しても、事実、相談は受けておりません。
  246. 山本幸三

    山本(幸)委員 私は、それは、日銀法第四条、「政府経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」ということに抵触すると思います。これは一つの問題としてある。  それから、今言ったように、総理の信用あるいは日本国の信用が失われたわけです。その結果、金融で引き締め、そして財政で拡張という政策の組み合わせに追い込まれつつあるわけですが、実はこれは変動相場制のもとでは最悪の政策の組み合わせなんですね。財政でアクセルを幾ら踏んでも、金融でブレーキをかけてしまう。その結果、効果はなくて、二酸化炭素という財政赤字がどんどん累積するだけですから、こういう政策は変動相場制のもとではやってはいけないというのが原則なんですね。  そのときに、日本銀行は大本営発表みたいにこう言っているわけですね。いや、ゼロ金利解除をしても金融は十分に緩めている、緩和していると言っているわけですが、この日本銀行の大本営発表を信ずるかどうかですね。  金融は緩和しているかどうかというのは、何らかの基準に基づいて議論しないといけません。ところが、数字を見ると、お金の量はどんどん減っているんです。マネーサプライは、八月、対前年比一・七%、七月の二・〇%から〇・三%落ちました。二%台でも非常に低い水準ですね。また、そのもとになっている、日本銀行がコントロールできるマネタリーベースは、八月、対前年比四・六%と、前月の五・八%から一気に落ちまして、四カ月連続して減っています。民間の銀行の貸し出しはどんどん減っている。  それを私ども周辺の中小企業の社長さんに聞けば、銀行は金を貸してくれなくなって倒産せざるを得ない状況に追い込まれたという話ばかりですから、実感としてわかる。そういう意味で、日本の金融は決して緩和していない。  基準についてはいろいろありますけれども、例えば、いろいろな学者が言っていますが、マッカラムという人が一つのルールをつくっていまして、これから言うと、一・七%に落ちたマネーサプライというのは、日本にとっては本来一〇%ぐらいないとだめだ、あるいは、四・六%に落ちているマネタリーベースというのは一四、五%ないとだめだ、それが本来あるべき量だと言っているんですよ。それに比べて明らかに金融は引き締めている。これは将来必ず禍根を残す、森内閣にとって私は大きな問題になりかねないと思います。  そこで私は総理にお伺いしたいのですが、総理のここで行わなきゃいけない選択は、この金融政策の方向を変えさせなきゃいかぬ。総裁が固執しているんだったら、総裁にやめてもらうように言って、日銀に金融政策の方向を転換させる。そうでなければ、せっかくやる補正予算は効果がないんです。それをやるか、あるいは日銀の言っていることを受け入れるのであれば、それは日銀の金融政策決定会合を見れば、いや、財政を縮小したって大丈夫だ、倒産は幾らふえたって大丈夫だなんて議論をやっているんですから、もう大丈夫だということですから、補正予算編成なんかやっちゃだめですよ。そのどっちを総理は選ばれますか。
  247. 森喜朗

    森内閣総理大臣 どうもゼロ金利政策の解除と補正予算との関連性をつけて委員お話をされていますが、この金利政策の解除とはまた別途に、やはりいろいろな経済動向を見ながら必要があれば補正予算を組まなければならないだろうということはかなり以前から申し上げてきたことでございまして、そのこととこのことと組み合わせるというのは、いささか私は意見を異にいたしております。  日本銀行によりますと、先般のゼロ金利政策の解除は金融緩和基調を引き続き維持する中でのいわゆる微調整であって、引き続き適切かつ機動的な金融政策運営を継続するとしておりまして、経済政策の基本的な方向については、政府と基本的な相違があるものとは私は考えておりません。
  248. 山本幸三

    山本(幸)委員 そういうふうに補正予算をずっとやってきた。しかし、なかなかきかないというのは、日本銀行は基本的に金融を、さっき私が申し上げたように、ある基準から見て引き締め的にやっているからなんです。これをまたはっきりとした形で続けていけば、また効果がなくて赤字だけがたまるということになると私は思います。  そこで、時間もありませんので、日本銀行総裁にお尋ねいたします。  大変聞きにくい質問でありますが、私は、八月十一日解除した後、日銀総裁は退任の表明をされるのかなと思っていたんです。つまり、一国の内閣総理大臣の意向を無視してやる以上は、首をかけてやるぐらいの覚悟でやられたんだろう、それはある意味で非常に評価すべきことかなという気がいたしましたけれども、どうもそうじゃない。そして、先ほど申し上げたように、日本の信用がなくなるとか、いろいろな弊害も出ている。日銀総裁、退任される意向はございませんか。
  249. 速水優

    速水参考人 日本銀行総裁として私の任期は、平成十五年三月までございます。引き続きまして、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行に課せられました使命を達成するために全力を挙げてまいりたいと思っております。
  250. 山本幸三

    山本(幸)委員 終わります。
  251. 原田昇左右

    原田委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会