○羽田雄一郎君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま一括して議題となりました
資金運用部資金法等の一部を
改正する
法律案及び
郵便貯金法等の一部を
改正する
法律案について
質問をいたします。
今回の財投
改革案は、財投が現行
制度になって以来の大
改革案です。しかし、
政府が提案している
改革案が本当に
改革となるのか、現在顕在化している弊害を解消できるのか、我々は大きな疑問を持っています。
この
改革案に対する我々の懸念を端的に申し上げれば、入り口である郵便貯金について言えば、
政府による巨額の資金運用が健全な市場をゆがめることはないのか、
政府に三百兆円を超える資金運用を任せて大丈夫なのかということであり、中間部である資金運用部については、財政投融資の規模縮小につながるのか、特殊法人
改革が進むのかということです。少なくとも、
政府が提案している
法律案にはこれらの懸念に対する回答は全くありません。
特に重要なことは、特殊法人の効率化、さらには一歩踏み込んで整理統合が実現できるのかどうかです。
今さら例に挙げるまでもなく、旧国鉄債務処理や国有林野
事業の清算においては莫大な
負担が
国民に押しつけられました。この大きな要因として、余りに肥大化した財投があったことは周知の事実です。必要以上の
事業を行うばかりでなく、債務の整理さえもこの巨額の資金に依存して先送りした結果、天文学的とも言うべき不良債権が
国民に押しつけられたのです。
この二の舞を防ぐためには、特殊法人を初めとする財投機関の整理縮小が必要なことは明らかですが、既得権益に凝り固まった
政府は、この最も重要な
改革に手をつけようとしていません。そればかりか、みずから
改革に手をつけられない無能さを棚に上げ、特殊法人の
改革を市場に押しつけようというのが今回の
政府案です。本来の
改革の対象である財投機関を温存し、これを財投
制度という抽象的な対象にすりかえたばかりか、財投債という第二の国債によって、このあいまいな
改革さえも骨抜きにしてしまう。やはりこの財投
改革においても現政権は実質的な
改革を先送りしているとしか言いようがありません。これでは、二度と
国民に理不尽な
負担を押しつけないという最大の
目標が達成できるわけはありません。
まず最初に、この最も重要な
課題である財投規模の縮小、財投機関の効率化の達成について伺います。
ポイントは、多くの識者が指摘するように、財投債の発行をどこまで許容するのか、いかに財投機関に財投機関債の発行をさせるのかであります。この点に関しては、大蔵大臣も
衆議院の
審議で懸念を表明され、そして最終的には、我が党
議員の
質問に対して
法律の
実施、運用に当たっての基本的な
考え方を表明されました。
そこで、大蔵大臣に改めてこの財投債発行に関する基本的な
考え方を確認いたします。
さらに、大臣が示された基本的な
考え方でも財投機関の合理化を担保するには不十分だと考えます。より具体的な、例えば財投機関は必要資金の最低半分はみずからの発行する財投機関債によって資金調達する、あるいは財投機関本体とは信用力が切り離される資産担保証券などの積極的活用など、定量的、具体的な指針をガイドラインのような形で示される必要があると考えますが、大臣の
見解をお伺いいたします。
特殊法人の合理化促進のためには、一義的には財投機関債依存の防止が不可欠です。しかし、それをさらに踏み込んで考えれば、
政府の財投機関を使った政策実現の
あり方そのものを見直す必要があります。大臣が示された基本的な
考え方でも、財投債による融資は政策的に必要と
判断される場合にのみ
実施するとしていますが、この場合でも、従来のように景気対策に財投をふんだんに使い、また
社会経済
状況の
変化を全く無視した
事業を継続するという政策
判断を下してしまっていては、財投債の規模縮小、財投機関の効率化は実現できません。それどころか、かえって安易な審査による財投債融資が
事業の正当性を誇張し、一層の財政依存を招きかねません。この懸念を払拭するためには、特殊法人を活用した政策実現という手法そのものを見直す必要があります。
財政に
責任を有する大臣として、単に財投債の発行抑制にとどまらず、さらに一歩踏み込んで財投機関の活用そのものの規模縮小を要請する必要があると考えますが、大蔵大臣の
見解をお伺いいたします。
大蔵大臣に対する
最後の
質問は、本
改革案と財政との
関係です。
政府は、今年度予算において三十兆円を超える国債発行を予定していますが、これが来年度に急減する可能性は少なく、ほぼ同程度の国債発行が必要となると思われます。その上で、大蔵大臣が縮小の
努力をされても一定の財投債の発行は免れ得ず、この分が国債発行額に上乗せされます。結果的に国債による資金調達規模が非常に大きくなることが予想されます。この巨額の国債をどのように市場に引き受けてもらうのか、今年度において大蔵省は国債の年限
多様化等の
努力を行っていますが、これは基本的に長期債から中期債への転換であり、財投機関への貸付原資としては余り適当とは思えません。財投機関が望む長期資金の原資をどのように調達していくのか、大臣の
見解をお伺いいたします。
また、財投債を発行することにより国あるいは一般
政府の長期債務は見かけ上急激に膨れ上がることが考えられます。実体上は従来と余り変わりなくとも、国の資金調達はつまるところ信用で支えられていますので、見かけの悪化はこの信用を低下させるおそれがあると考えます。財投債発行による国の信用力低下についてどのように考えておられるのか、大臣の御
見解をお伺いいたします。
政府の政策を受けてこれを
実施する特殊法人の
事業は市場の
判断になじまず、今申し上げたように、本来は
政府あるいは政治がその政策の必要性に応じて
判断すべきものであります。しかし、癒着構造の中で特殊法人
改革に踏み込めない現政権は市場にその
改革を押しつけました。それにもかかわらず、
政府は市場が
判断するのに十分な
情報の提供を行うことを怠っています。特殊法人に関する
情報公開
制度もない状態で市場に
判断を仰いだところで、市場はこれを拒否するでしょう。最低限、現在、証券取引法で有価証券の発行主体に義務づけている企業会計に従った財務
情報の開示は必要です。さらに、特殊法人という特殊な機関の性格上、
政府は特殊法人にどれくらい補助金を投入するのか、出資金はどこまで入れるのか、逆に特殊法人を
政府が見放すことはないのかといった、まさに
事業や特殊法人の命運を左右する
情報を提供することが不可欠です。
財投機関債を発行する特殊法人に関しては、現在の民間企業以上に
情報開示が求められているのです。今後、どのように特殊法人の
情報開示を進めていくのか、総務庁長官にお伺いいたします。
次に、郵便貯金等の自主運用について、郵政大臣の御
見解を伺います。
まず最初に基本的な認識ですが、郵政大臣は郵貯の自主運用に当たって、確実、有利、公益の三原則の調和を図りながら、市場原理のもとで競争を進める金融ビッグバンに即した運用を行うとしています。
正直申し上げて、これでは何を言っているのかさっぱりわかりません。確実、有利、公益は、資金運用に当たってはそれぞれ矛盾する言葉であります。その上に、金融ビッグバンという言葉が重なってしまうと、一体どのような運用を行うのかさっぱりわかりません。このような言葉を使うこと自体が市場経済を理解しておらず、この市場経済を理解していない主体、すなわち霞が関がこの巨額資金の運用を行うこと自体が不自然であり危険なのではないでしょうか。
改めて、自主運用に対する大臣の姿勢を伺うとともに、さきに大蔵大臣が示されたと同様に、郵貯自主運用においてもその
考え方を具体的に示す必要があると考えますが、これに対する大臣の
見解をお伺いいたします。
次に、市場との
関係について伺います。
冒頭申し上げましたように、世界有数の金融市場を有する我が国にあっても、郵貯は余りにも大きな存在感があります。将来的に三百兆円を超える可能性がある資金規模は、その運用いかんによっては、円相場を揺るがし、株価を左右することもあり得ます。
このような事態を避けるためには、市場との対話が不可欠だと考えます。いかに市場にその運用姿勢を示すのか、市場の理解を得ていくのか、その具体的な方策をどのように考えておられるのか、郵政大臣にお伺いいたします。
また、先般、米国株価の急落を受けて我が国株式市場が動揺した際に、またしても
与党幹部から郵貯資金等を使ったいわゆるPKOが提案されました。これは、我が国の株式市場の健全性を損なうばかりでなく、安全、確実を旨とする郵便貯金の運用としても全く許されるものではありません。各界から再三PKOの問題点を指摘されているのにもかかわらず、懲りもせず提唱する
与党幹部にはあきれるばかりです。本当に自由経済を標榜する政党の幹部かと疑いたくなります。
郵政大臣におかれましては、このようなことはないと信じますが、ここで改めて
国民、そして海外に対して、将来的にも、すなわち自主運用となっても株価維持のためのPKOは行わないと宣言をしていただきたいと考えます。
最後に、経過
措置について郵政大臣にお伺いいたします。
大蔵省は昨年末に
平成十三年度以降七年間における経過
措置を発表しました。それによりますと、郵便貯金は、資金運用部の既往貸し付けを継続するために必要な財投債の引き受け、市中発行財投債を
年金資金とともにおおむね二分の一程度引き受けることとなっています。
これを素直に受けとめますと、少なくとも当初七年間において郵貯資金はかなりの部分が財投債引き受けに回ることになると考えられますが、実際に郵貯が本来の意味での自主運用を行う規模はどの程度になることが予想されるのか、また、このように財投債引き受けに手足を縛られた状態で本当に郵政大臣のおっしゃる商品提供から資金運用まで一貫した経営を行うことが可能となるのかどうか、大臣の認識をお伺いいたします。
あわせて、この経過
措置は七年限りのものなのか、再度延長される可能性があるのかどうかについても伺います。
以上に申し上げてきましたような懸念、疑問について、現在提案されている
政府案は何ら回答となっていません。本院での
審議を通じて、この問題点について
政府が明確な
答弁を行われることを期待して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕