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2000-05-10 第147回国会 衆議院 労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年五月十日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 赤松 広隆君    理事 谷畑  孝君 理事 能勢 和子君    理事 穂積 良行君 理事 森  英介君    理事 鍵田 節哉君 理事 城島 正光君    理事 河上 覃雄君 理事 大森  猛君       逢沢 一郎君    大村 秀章君       木村 隆秀君    木村  勉君       久野統一郎君    小林 多門君       杉山 憲夫君    長勢 甚遠君       福永 信彦君    松本 和那君       村岡 兼造君    渡辺 具能君       石橋 大吉君    中桐 伸五君       松本 惟子君    西川 知雄君       寺前  巖君    青山  丘君       笹山 登生君    畠山健治郎君       土屋 品子君     …………………………………    議員           城島 正光君    議員           大森  猛君    労働大臣         牧野 隆守君    労働政務次官       長勢 甚遠君    政府参考人    (総務庁統計局長)    井上 達夫君    政府参考人    (大蔵大臣官房審議官)  福田  進君    政府参考人    (労働大臣官房政策調査部    長)           松崎  朗君    政府参考人    (労働省労政局長)    澤田陽太郎君    政府参考人    (労働省労働基準局長)  野寺 康幸君    政府参考人    (労働省職業安定局長)  渡邊  信君    労働委員会専門員     渡辺 貞好君     ————————————— 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   白川 勝彦君     杉山 憲夫君   田中 昭一君     逢沢 一郎君   棚橋 泰文君     木村 隆秀君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     田中 昭一君   木村 隆秀君     久野統一郎君   杉山 憲夫君     白川 勝彦君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     棚橋 泰文君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律案内閣提出第六一号)  企業組織再編における労働者保護に関する法律案日野市朗君外四名提出衆法第九号)  企業組織再編を行う事業主雇用される労働者保護に関する法律案大森猛君外一名提出衆法第一六号)     午前十時四分開議      ————◇—————
  2. 赤松広隆

    赤松委員長 これより会議を開きます。  内閣提出会社分割に伴う労働契約承継等に関する法律案日野市朗君外四名提出企業組織再編における労働者保護に関する法律案及び大森猛君外一名提出企業組織再編を行う事業主雇用される労働者保護に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、政府参考人として総務庁統計局長井上達夫君、大蔵大臣官房審議官福田進君、労働大臣官房政策調査部長松崎朗君、労働省労政局長澤田陽太郎君、労働省労働基準局長野寺康幸君及び労働省職業安定局長渡邊信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松広隆

    赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 赤松広隆

    赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷畑孝君。
  5. 谷畑孝

    谷畑委員 おはようございます。  まず、牧野労働大臣質問をしたいと思います。  この法案は、会社分割に伴うところの労働協約承継ということで、とりわけそこに働く労働者にとりましても非常に関心の深い、また自分自身がどうなっていくのかという不安が伴っていく非常に大事な、重要な法案である、このように思っておるわけでございます。  そこで、質問するに当たりまして、まず冒頭大臣にお聞きしたいことは、私が今から十数年前に初めて三十八歳で参議院議員に立候補したころがちょうどバブルの最中でございました。選挙を三回やったものですから、三回大阪府下を駆けずり回ったわけでありますけれども、そのときに驚きましたのは、今まで坪百万円であったものがわずか二年間で一千万円を超えていくという、私ども選挙区の中においてはそういう話が持ち切りでありました。また、マイホームも一億円を超えることが当然のようでございましたし、そのような状況の中で、本当に企業そのものも生業というものを忘れてしまって、社長さんも、集まれば株が上がった話だとかどこそこでビルを買っただとか、そういうふうな話が多かったわけであります。  その後バブルがはじけまして、私ども支持者の中でも借金返しのために自分の住んでいる家を売ったり、時には会社を畳まなきゃならない、そういうような状況もたくさん見てきたわけであります。そういう意味では、企業市民社会といいましょうか、企業そのものがどう社会とかかわっていくべきか、こういうことが、バブルがはじけまして非常に大きなテーマになってきた、このように実は思っているわけであります。  そこで、この間、日経連奥田会長平成十一年の八月に第三十一回の日経連経営トップセミナーというところで人間の顔をした市場経済という題で所感を述べられておりまして、その中身に触れることがありまして、私はそれを拝読させていただく中で、目の覚めるような、なるほど経営者というのはこういう哲学というかこういう考えを持ってやらなければならないのかな、そういうようなことを強く思いましたし、感銘もしたわけでございます。  少し御紹介をしますと、人間信頼関係とは、損なうことは簡単ですが、築くのに長い時間がかかるものです、不景気だからといって簡単に解雇に踏み切れるような企業は、働く人の信頼を失い、いずれ労働力が不足してきたときにはすぐれた人材を確保できず、競争力を失っていくと思います。苦境の中にあってこそ人間を大切にし、人材を最大限に生かす努力をする企業が結局は資本市場の評価も得るところとなり、最終的な勝者となるものと確信しておる、こういう中身であります。  またもう一つは、市場論理資本論理を重視しながらも、市場関係者利益ではなく国民の利益が大切にされるのが人間の顔をした市場経済であります、創造的な、健全な競争社会であります、こういう発言であります。  最後には、結局は安易な形で、リストラという名の中で労働者の首切りをしていくということ自身は、本来の健全な企業者の、経営者姿勢ではない、こういうことをはっきりと申し上げておるように思うわけであります。  私は、この法案を審議するに当たりまして、この日経連奥田会長考えというか、また経営者に対するそういうセミナーを行ったということにつきまして非常に高く評価するものでありますけれども、その点につきまして、牧野労働大臣、どのように思われるか、ひとつ所感をお聞きしておきたいと思います。
  6. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今御指摘になりました日経連奥田さんのいろいろなところでの御発言ですが、基本的に、表現の仕方はともかくとしまして、当然のことであり、世の中経営者の方々に、日経連会長としてさらに強く訴えていただきたいな、私はこう思っております。  昨年ですが、雇用の安定について、企業社会的責任というのを私は強く訴えまして、日経連会長と連合の鷲尾さんにお願いいたしまして、両方で実は雇用安定宣言というものを出していただきました。お二人がそういう宣言を出されたということはすばらしいことでありますが、これを具体的な方策等のところでさらに主張をしていただきたいな、気持ちとして私はこうお願いをいたしております。  御承知のとおり、間もなく二十一世紀を迎えるわけですが、二十世紀経済学を代表する学者というのはケインズでございまして、雇用重大性経済社会基本という形で雇用をとらえたわけでありまして、そういう点に基づいていろいろな政策もとられているわけですが、本当に雇用の不安は絶対になくさなきゃならない、こう考えております。  経済基本として雇用を第一義的に据え置いて、そして設備過剰だとか金融関係、負債、債権の処理を考える、まず雇用を守るというのが基本であろうと思います。世の中経営者合理化合理化ということで、特に解雇というところまで進みますと、その企業は生存しましても、社会全体で見ますと、いわゆる合成の誤謬ということでございまして、社会自身が崩れる、こういうことでございまして、そのようなことは絶対に避けなければなりません。  そういう点で、今御指摘日経連奥田会長考え方、行動は、私自身は、全面的に非常にすばらしいことだ、このように考えている次第です。
  7. 谷畑孝

    谷畑委員 今大臣がおっしゃいましたように、人は石垣、人は城ということで、その企業が発展するのもしないのもやはりその企業に働く労働者人材というものが非常に大事だ。だから、そういうことで安易に人員削減に至るような経営者はみずから退陣すべきだ、こういうように奥田会長もおっしゃっているわけでありまして、企業がそういう姿勢をしっかりと持っていくということが、労使におきましても信頼関係がさらに深まっていくのではないか。そういう状況の中でこそ、この会社分割ということについても信頼をしていって、それなら頑張っていこうということになるのではないか。そこが少しでも揺らいだり不信ということになってきますと、非常に社会不安を増大していくものだ、私はこういうふうに思いまして、この法案冒頭に、まず大臣にその所感を伺ったところでございます。  さて、澤田労政局長に御質問をいたします。  この会社分割は、結局は企業組織再編効率的な経営を目指すことを本来の目的とするものでありますけれども、今言いましたように、企業者が、経営者がすべて善というわけでもございませんし、労働組合自身非常に厄介であるし、会社分割という名の中で組合つぶしといいましょうか労働者人員減らしといいましょうか、やっていこうという、本来やらなくてもいいにもかかわらずこの際やってしまおう、こういう危険性が大いにあろうかとも思うわけでありますけれども、この点について、澤田労政局長、どのように考えておられますか。
  8. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 お答えいたします。  御質問趣旨は、例えば労働組合使用者が嫌悪などして組合員解雇する、あるいは特定組合員のみを新会社承継させる等の行為をもし行おうとした場合は、労働組合法第七条で禁止されております不当労働行為に該当するものと考えます。したがいまして、そうしたことは、現実にあるとすれば、法律上許されないという点が明白でございます。  また、解雇一般について申しますと、解雇するに当たっては合理的な理由を必要とする、とりわけ整理解雇につきましては整理解雇四要件というものが判例で確立しております。したがいまして、会社分割のみを理由に、今申し上げましたような労働者解雇特定労働者の移動というものは許されず、またできない、かように考えております。
  9. 谷畑孝

    谷畑委員 それで安心をするわけでありますけれども、現実的に、今回の法案では、例えばA社B社企業分割をする、いわゆる専らAに従事した者が会社分割に伴ってそこに移動することについてはいいのだけれども、専らBの仕事にかかわっていた人がAに行く場合については異議を申し立てることができる、こういうような趣旨であったと思うわけであります。  しかし、会社分割するということは、その会社の中でも花形といいましょうか、これから伸び行く産業というのがAであり、また逆に、その会社においては斜陽といいましょうか、どうも採算が悪いというのがBであったりして、今までは同じ企業であったわけですけれども、悪い企業に行くということになってきますと、確かに労働協約というものはそのまま分割されても承継をされていくわけですけれども、Bに行きますと、行った、分割されたそのころはいいけれども、将来、二年、三年、四年たってきましたら、その企業状況に応じましてやがてはリストラになるんじゃないかとか、こういう不安があると私は思うのですね。  これは質問趣旨事前に言っていなくて非常に恐縮だと思うのですけれども、そのようなことに対する労働者の不安があろうかと思うのですけれどもそこらの点についてはどういうようにお考えでありますか。
  10. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 お答えします。  現在ある労働協約が、会社分割に伴って設立会社等においても同様の内容で締結されたものとみなすという形で法律上手当てしておりますが、その場合、現在ある労働協約有効期間残期間、これが新会社においても当然機能するわけで、その間は、労働協約について一方的に変更申し入れ等があってもそれは拒否できるという形で完全に保護されます。  新会社において承継された労働協約が、有効期限が来て切れたということになりますと、その時点で改めて、設立会社等において、労使が誠意を尽くして、労働協約内容について、新たにどうするか交渉をするという形で、そこで行われる労使交渉は、設立会社等の新たに置かれておる経営環境等々を踏まえて、合理的な協議がなされ、解決がなされるものと私どもは期待しておるということでございます。
  11. 谷畑孝

    谷畑委員 いや、澤田局長のおっしゃることもわかるんですけれども、確かに、分割をする場合に労働協約そのもの承継されていきますし、また違った分野における会社に移籍をする場合については異議を申し立てることができるんだ、そういうことで、その時点においてはきちっと労働者立場も守っていける、こういうふうに思いますし、もちろん雇用についてもちゃんと保障される、こういうふうに思うわけでありますけれども、私が今言いましたのは、Aという企業で、BでありCでありという会社分割するに当たって、非常に採算が悪いところに行くメンバーについて、専らそこへ行っておったわけですから、これは異議を申し立てるわけにはいかぬわけです。しかし、やがてはその企業自身が、将来、リストラとか含めて、そういう状況も出てくる、こういうような状況にあるときには、その事態に応じてまた不安が伴ってくる、これはもう当然あり得ることだと思うんですけれども、そこはそこで、企業を含めてその中で頑張っていく、そういうことが非常に大事だ、そのようにも思っているわけであります。これは質問通告しておりませんので回答はいいと思いますけれども、そういうような状況があるというように私自身は思っているわけであります。  さて次に、今日の経済状況によりまして、科学技術の発達だとか、いわゆるIT革命だとか、OAの技術改革の問題だとかということで、企業自身も非常に変化が激しくなってきておると思いますし、また、国際競争も、世界的、グローバル化になってきております。  そういう状況の中で、企業としましても効率を求めながら、この際会社分割して、そして強いところを強く伸ばしていって、発展したところでさらに雇用を拡大していくことにもつながっていこうかとも思いますし、その企業全体が、殺してしまうよりも、そういう分割の中でこそそれぞれがよみがえっていくということも非常に大事だと思うわけでありますけれども、改めて、澤田労政局長に、会社分割をしていく背景、なぜ必要なのか。また、そのことにあわせて、いわゆる経営者側論理といいましょうか、分割していくことも避けられないというか非常に大事なことである、こういう視点もあろうかとも思いますので、その点について、お考えがありましたらお聞きしておきたいと思います。
  12. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今回の会社分割制度そのものの導入の目的あるいは意義を若干申し上げますと、先生指摘のように、会社分割制度は、企業間の国際的な競争が激しくなって、IT革命に代表される技術革新が相当進んでいるという中で、企業経営効率性等を高めるためには、企業組織再編成、この再編成ということはリストラというふうに使われますが、いわば再構築という意味でございまして、資源の有効活用という観点が相当ございます、そうした再編成を行うことによりまして競争力を強化するということが現在求められているということが背景にございまして、この会社分割制度が導入されたものと認識しております。  労働契約承継法案につきましては、こうした会社分割制度を導入した際に労働者保護ということがどうなるかという観点で私ども十分検討いたしまして、商法の改正案と一体という形で労働者保護観点から労働契約等承継ルールを決めていく、そういうことで、今先生指摘のように、企業の活力が高まる、そうした中で労働者雇用の安定も十分図られるという仕組みを両法案が相まってつくろうということでできております。  したがいまして、今回の会社分割制度が導入されることによって、先生指摘のように、長期的には、優良な雇用機会が創出され、雇用が拡大していくということ、それはまさに競争力の強化を通じて行われることだろうと思っておりますので、そうした観点では、雇用の拡大という面では多くの成果が上がることが期待されておるということでございます。
  13. 谷畑孝

    谷畑委員 今日の経済情勢の中で、会社分割を容易にできるというか、そういうことも保障していかないと、企業全体が時代に合わせて発展していかない、そういうことであろうと思うのですけれども、私どもが審議しております労働協約承継といいましょうか、労働者側立場をさらに確かなものにし強くするに従って会社分割しにくくなるということで、非常に相反する、そういうことも出てくるわけであります。  そこらバランスについては、先ほど何回か回答もいただいたわけでありますけれども、結局は、本質的には、そういうバランスが非常に大事なことかな、そんなことを思うわけでありますけれども、もう一度、確認のために御回答をお願い申し上げます。
  14. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 承継法案におきましては、分割される営業に主として従事する労働者につきましては、会社分割制度基本的法的性格包括承継という形で個々の同意なくそっくり移る、それは労働条件雇用の安定がそのまま図られるという背景がありましてそういう措置をとる、これはまさに会社分割を円滑に行うという点に即した措置であり、一方、先生指摘のように、承継法案異議申し立て権を付与している労働者につきましては、保護観点から、意に反した承継が行われないような措置を講じておるということで、分割要請労働者保護要請を、私どもからすればバランスよくとった法案であるというふうに考えております。
  15. 谷畑孝

    谷畑委員 最後に、いわゆる会社分割労働協約承継について、会社分割をスムーズにしていくためにも、やはりそこに働く労働者合意というものは非常に大事になると思います。  今日の法案は、異議を申し立てることができるということによって合意形成をしていくということになるわけでありますけれども、それをもう少し突っ込んで、会社分割するその前に、事前労働者理解協力を取りつける、そういうさらにもう一歩突っ込んだ形での方法があるのかないのか、その点について質問をいたしまして私の質問を終わっていきたい、こういうふうに思っています。
  16. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 会社分割を円滑に実施するには、先生指摘のように、事前労働者理解協力を得るということが非常に大事であることは、私どももそのとおりと思います。そうしたことで、例えば、事前に、労使の話し合いなどによって、使用者会社分割についての情報を適切に労働者側に伝えるということを通じて意思疎通を十分図るとか、そうしたことは労使協力して会社分割を円滑に実施し雇用の安定を図っていく上では大変重要なことと思っておりますので、私どもも、そうした点については、使用者ないし労働組合理解を深め、行動するように努力をしていきたい、こう思っております。
  17. 谷畑孝

    谷畑委員 本当にありがとうございました。  失業率が四・九%ということで、非常に高い失業率になっております。働く皆さんにとりましても非常に不安が多い日々であろうかと思います。私どもは、ぜひひとつ、会社分割に伴ってさらに失業率が拡大しないよう、非常に安心できることを、しっかりとそれを担保にしながら、この法案において一日も早く実現できるよう頑張っていきたい、そういうことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  18. 赤松広隆

  19. 河上覃雄

    河上委員 前回、私は、勤労者の不安を解消するという観点から、特に解雇を中心として質問をいたしてまいりました。きょうは、労働条件という観点から、時間も二十分でありますので、数点質問をさせていただきたいと思っております。  申し上げましたように、会社分割など企業再編に伴いまして、勤労者は、解雇の不安、あるいは労働条件がまた低下するのではないかという不安があります。  今申し上げましたとおり、前回解雇についての観点から、私は、会社分割に際して解雇をされるようなことはないのかという質問をいたしました。労働省からは、その際解雇されることはないという答弁があったわけでございますが、今申し上げましたように、労働条件についてなお私は心配が残るところであります。例えば、賃金のダウン、あるいは労働時間の延長、そして福利厚生問題等企業再編後に使用者が一方的に労働条件不利益変更するようなことがないのか、この点なお心配が残るところでございます。  今申し上げましたこの不利益変更が実質的に起こらないようにしなくてはいけないだろうし、実際、こういうような問題というものは勤労者そのものの不安につながるわけでありまして、まず冒頭労働条件不利益変更ということはないのかあるのか、この点についてお伺いをいたします。
  20. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 会社分割に伴う労働条件不利益変更問題についてのお尋ねであります。  本来、労働条件変更するに当たりましては、労働組合法によりまして労使間の合意が必要でありますし、また、民法の基本法理によりまして労働者同意が必要であるということが明らかになっております。このことは、会社分割等企業組織変更の際にも当然適用されることとなります。  したがいまして、会社分割等企業組織変更のみを理由とした会社側の一方的な賃金カット、あるいは労働時間の延長等労働条件不利益変更は行うことができないこととされております。     〔委員長退席鍵田委員長代理着席
  21. 河上覃雄

    河上委員 今、そういうことはできない、こういう御答弁がございました。ただ、それは法律上の視点でございまして、法律上一方的な労働条件変更はできないということになったとしても、実際上使用者勤労者労働条件変更を迫ること等も考えられるわけでありまして、変更を迫られたといたしましても、勤労者には本来応ずる義務はないわけでございます。私は、応ずる義務はないこと等を含めまして、会社分割に当たって労働条件の一方的な不利益変更はできないということを、ある意味ではきちっと広く周知徹底をすることの必要性を感じます。  そういう観点から労働者保護という側面を図るべきではないかと私は考えておりますが、この点についての御見解をいただきたい。
  22. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生指摘のように、労働条件不利益変更は一方的にできないという法理周知徹底するという点につきましては、私ども、これまでもやっておりますが、この法案が成立した場合にはさらに一層努力してまいりたいと思っております。  ちなみに、現在におきましては、地方労働局におきまして紛争解決援助制度というものを運用しておりまして、そこにおきましても、こうした解雇労働条件にかかわる判例法理、既存の法律等については、相談者あるいはトラブルを抱えている双方によく説明をし、未然防止等に努めているところでございます。
  23. 河上覃雄

    河上委員 今会社分割の点から質問をいたしましたが、営業譲渡や合併の場合、合併については直ちに不利益的な取り扱いがあるとは考えにくいと私は思っておりますが、営業譲渡という点から見ますと、その態様も多岐にわたっておりますし、実際上さまざまな問題も発生する可能性がある、私個人はそういうふうに思うところであります。  そこで、特に営業譲渡に際して労働条件不利益変更が行われることはないのだろうかという危惧がございます。営業譲渡につきまして、その根拠を示していただきながら、労働条件不利益変更が行われることがないのかということを、確認の意味質問をしたいと思います。
  24. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、労働条件の一方的な不利益変更はできない。一つは、労働組合法第十五条で労働協約に関する規定がございますが、ここにおいて労使合意が必要であるということが明定されております。また、民法の基本原則そのもので、契約の変更には当事者の合意が必要であるということになりますので、この二つによりまして、営業譲渡はもちろん、あらゆる企業組織変更に伴う一方的な労働条件変更はできないということが明らかでございまして、この点は、先生の御懸念はないものと思います。
  25. 河上覃雄

    河上委員 労働条件からの視点というものをよく踏まえ、また、よく実態に合わせて研究をいたしまして、そして、それが法の精神に照らしてきっちりと運用されるように努めていただきたいと考えております。  労働条件とはちょっと離れますが、一点、別の観点から質問をしたいわけであります。労働条件不利益変更解雇などによる個別労使の紛争という点でございます。  企業組織変更に限らず、例えば、年俸制の導入などの賃金体系の変化という側面、あるいは多様な就業形態、いろいろと広がってあります、これらの実態から、今後、こうした個別労使の紛争は増加の傾向にあるということが予想されるわけでございます。今後は、組織的という側面もさることながら、個別紛争ということが社会の中で様々な形で出てくる可能性が非常に高い、私はこう考えているわけでございます。  その際、最終的にはこれは裁判によって解決をするとしても、裁判にかかる費用であるとか、あるいはその期間、長さによっては勤労者そのものがこうむる負担というものがかなり大きくなるわけでありまして、こういう最終的な裁判による仕組みだけで果たしていいのかなということが現実の問題としてあるように私は思います。だとすれば、裁判だけによるのではなくて、これらの個別的な紛争を解決するためには新しい制度をつくる必要があるのではないのか。この点につきまして、労働省の見解を求めたいと思います。
  26. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 賃金体系の変化とか就業形態の多様化等を踏まえまして、いわゆる個別的労使紛争がふえておることは先生指摘のとおりであります。その点につきましては、裁判で最終的に決着を図るという以前に、できればそれをより簡易、迅速に解決するシステムが社会的に整備されることが必要だろうと私ども考えております。  現在労働省としては、地方労働局で、紛争解決援助制度という形で、労働条件につきましての個別紛争につきましては一定の対応をとっておりますし、男女雇用機会均等絡みの問題につきましては、やはり地方労働局で助言、指導、勧告という仕組みのほかに、調停委員会という仕組みで処理をしておりますが、さらに幅広く個別労使紛争の問題を簡易、迅速に解決できる仕組みを整備したいということで、現在私ども、既存の仕組みを拡充するなり新たに機能をつけ加えるなりの形で、どうしたらいいかということを検討しておりまして、できるだけ早く実現したい、こう思っております。     〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
  27. 河上覃雄

    河上委員 この点につきましても巷間いろいろな議論がある、具体的な形も、いろいろな形で出ていることも承知しております。いずれにいたしましても、個別紛争の処理ということに対して、迅速かつ適正に行えるような新しい仕組みというものは私自身も必要だと考えますので、ぜひとも早い段階で方向性をまとめていただきながら、また議論をいたしたいと考えております。  ちょっと時間が早く終わってしまいますが、今申し上げましたように、前回解雇、そしてきょうは労働条件観点から、勤労者の不安を解消する措置、あり方について質問をさせていただきました。  最後に、これは労働大臣に御決意をお尋ねしたいと思いますが、会社分割あるいは企業再編に伴いまして、今申し上げましたように、勤労者が不安を持つことがないように、やはり全体としてしっかり措置をしていくべきだと私は考えております。その意味では、なお一層万全を期していくべきだろう、このように考えておりますが、労働大臣の御決意をお尋ねして、質問を終わりたいと思います。
  28. 牧野隆守

    牧野国務大臣 社会経済の変化によりまして企業組織というのはいろいろな形で変化するわけでありますが、そこで働いておられる勤労者立場というのは全く同じでありますから、私どもとしては、労働条件が不安定になる、さらに雇用が不安定になる、これだけは絶対に避けなければならない、このように明白に私自身考えておりますし、また皆さんにも、そのようにしなきゃならない、こう申し上げているわけです。  今回は、会社分割に対してどうするか、これについて法律としてどうしてもしなきゃならない最低の条件はきちっとしなきゃならない。あわせて、各委員先生から合併や営業譲渡の場合はどうかという御質問もあるわけですが、慣例的に合併の場合は基本的に問題ない、こう言えますし、営業譲渡につきましても民法の規定によって同意が要求されるということでありますから、一応法的には最低限は保護されている。  こういう考え方に立ちますと、やはりケース・バイ・ケースで具体的に対応しなきゃいけないわけですから、そういう点で、各地区にあります労働局を中心にいたしまして、経営者労働者との意見の調整だとか、あるいは場合によってはお手伝いをさせていただいて、中立的に両方とも満足できるような調停という一つのやり方、そういう形で、現実に即して、実際に労働者の方が雇用不安を持たない、労働条件が不当に変更されない、こういうことについては万全を期させていただきたい、こう考えております。
  29. 河上覃雄

    河上委員 ぜひとも、今申し上げました点、万全を期していただくように督励を申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  30. 赤松広隆

  31. 鍵田節哉

    鍵田委員 民主党の鍵田でございます。  前回委員会で、私ども城島議員、中桐議員の方から基本的な質問をさせていただきまして、かなりの部分で我々の考えております意見なりも開陳させていただきましたし、また、労働省の方からも御答弁をいただいてきたところでございますが、きょうは私は、落ち穂拾いのつもりで質問をさせていただきたいというふうに思っております。まず最初に大臣にお考えを伺って、さらには、先日来の質問に対する答弁がされておるわけでございますが、それらの問題についてさらに質問を深めてまいりたい、また確認をしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  まず最初に大臣に伺いたいわけでございますけれども、先ほどから谷畑議員河上議員の方からも指摘をされておりますように、今日の日本の置かれております経済情勢、そういう面から見ますと、世界的な大競争時代に入ってきておる、さらにはバブルの清算で企業や産業が大きな負担を背負っておるということがあるわけでございまして、それらを克服して大競争時代に生き残っていくために、いろいろな企業再編なりリストラクチャリングが行われておるということはよく知っておりますし、そのことは私も否定するものではございません。むしろ積極的にそういうことも進めていくべきだというふうには思っております。  しかし、従来やってまいりました企業再編なりリストラクチャリングの枠を超えて、非常に大規模な、またかつての固定的な観念では想像もできなかったような、いわゆる財閥の枠を超えたり、また異業種間の合併や営業譲渡ということも起こったりというような再編が起こっておるわけでございます。それらにつきまして、そこに雇用される労働者保護ということがどうしても手抜かりになってくるというような環境もあるわけでございまして、それらの保護に対する整備が非常におくれておる、そういう実態があったわけでございます。  今回の企業分割に対する労働者保護の一環として、労働契約承継法というものができてきたことについては若干の評価はできるわけでございますけれども、まだまだこれは不足をしておるというふうに思っておりますし、今日、先日の中桐議員質問でも、大企業リストラに基づきます人員削減の大きな計画が出ておるというふうな実態もございましたし、大学を卒業しても就職がなかなかできない、大学だけじゃなしに、学卒の失業者が多数出ておる、こういうふうな実態があるわけでございます。  本来、リストラクチャリングというのはどういう目的でやられるのか、ただ単に産業なり企業競争力を強めればそれでいいというふうな問題ではないんじゃないかと。どういう目的でそれを行い、そしてそれに伴って労働者がどんな影響を受けるのかということについて、労働省としてどういう施策を考えていかなくてはならないのかということについて、基本的なお考えをまず大臣の方から聞かせていただきたいというふうに思います。
  32. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今先生指摘のように、国際的に自由化されておりまして、企業としては、国内だけじゃなくて外国の企業とも対抗しなきゃなりませんし、今、現実的には、情報通信技術の進展によって、これを積極的に取り上げないと他の企業との競争に耐えられない、こういう状況にございまして、これに対処するためにいわゆるリストラクチャリングが現実に行われ、これは否定することはできない、こういう状況にあるわけであります。  ただ、そういう点で、企業リストラのやり方を見ていますと、最初は一番軽度なもので残業をなくするとか、その次には休業をするとか、次々その方法がございまして、一番最後に出てくる手段が、私どもとして一番嫌な、いわゆる解雇とか勧奨退職、あるいは定年退職の後新規採用をやらない、こういう形になってまいりまして、御承知の四・九%という最高の失業率、この中に、今申しましたリストラの結果から諸般の問題が出てくるわけでございます。  私としましては、普通の設備過剰だったら、合併して設備を廃止するとか、あるいは銀行の関係で資金繰りを何とか調整するとか、いろいろな措置を講じているわけでありますが、人間の問題だけは、人間は財産でございますから、雇用の問題については、基本的に、企業経営者社会的責任というものをしっかり自覚して対処すべきではないかと。そういう点で、私ども立場からも、労働組合のリーダーの方々も含めて、そのようなことを強くお願いいたしているわけであります。  そういう基本的なお願いのほかに、現実に失業問題が起きるわけですから、では、これに対して、先生方の御意向を十二分に賜って、失業をいかに少なくするか、あるいは失業にならないように事前にどうするかという点につきまして諸般の対策をとらなければならない、または、それに対して、現在まだまだ御批判はちょうだいいたしておりますが、万全を期さなきゃならない、こういうように考えているわけであります。
  33. 鍵田節哉

    鍵田委員 経団連のトップが雇用のあり方について意見を発表されたり、非常に我々にとっても傾聴に値する御意見でもございますが、しかし、それとは裏腹に、現実問題として、多くの人減らしのリストラクチャリングが起こっておるという実態があるわけでございまして、労働省としてはやはり各経営のトップに対して強力な指導をしていただかないと、なかなかこのあらしはおさまらないのではないかというふうにも思っております。  私は、もう一つ別の観点から、特に、中小企業ども多くの人減らしのリストラクチャリングが行われておる、そういう中で基盤技術がどんどんなくなってきているということも大きな懸念をしておるわけでございまして、こういう基盤技術を一回失いますと、取り返すのに五年十年の時間がかかるわけでございまして、新しくまた産業を起こしていく、また新しい製品を開発していくというときに決定的なダメージを受けるわけでございます。そういう意味では、やはり企業というのは人であるという観点に立って、労働行政としてしっかりそういう問題をとらえてやっていただくということが、これからの日本の産業を支えていく要因にもなってくるんじゃなかろうか。そういう意味で、ひとつ労働省の奮起をさらにお願いをしたいというふうに思っておる次第でございます。  それで、前回以降の質問の中でいろいろ御答弁いただいた内容について具体的にお聞きをしていきたいというふうに思っております。  それで、前回、これは中桐委員からだったと思うんですが、外国の労働法制といいますか、EUでありますとかアメリカなどの労働法制の方向というものについて質問をさせていただきましたけれども、その中で、イギリスであるとかドイツなどを初めとするEU諸国、EUではEU指令というものもございますし、そして、各国の労働者保護といいますか、そういう法制も準備をされておるということでありますし、アメリカは逆に、本当に規制緩和の国でありまして、特に労働の問題にしましても、とにかく、史上最高の利益を上げながらも大幅なレイオフをやるというふうなことも平気で行われる、そういう利益優先の国であります。  これは、どちらをとるのかというのは、それぞれの国の方針として定めていくわけでありますけれども、日本の場合にはどういう方向を目指しておるのかということを一つはお聞きをしたいというふうに思います。  それから、最近のいろいろな審議会でございますとか研究委員会などを見ておりましても、この人の考え方といいますか、そういうものを聞いておりますと、この方はどうもアメリカでかなり留学をされたり勉強をされたりしてきた人じゃないか、経歴を調べてみろといって事務所で調べますと大体方向がわかってくるというような状況があるわけですけれども、どうも労働省もそういうものを見ながら選定をされておるような気もしないでもないわけでございまして、これはどうも、同意人事の部分ではよほど慎重に審議をしないといかぬなというふうな思いもしておるわけでございますけれども労働省としては、どういう基準でそういう人たちを選んでおられるのかについてお聞きをしたい。さっきも言いました法制度の方向も、どういう方向を目指しておられるのかということもあわせてお聞きをしたい。
  34. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 まず第一点の、日本の労働政策がどういう方向を目指すかという点でございますが、先生もう御承知のように、EU諸国とアメリカ、さらに我が国と三つを比べると、それぞれ、企業における労使の実情、労使慣行が違いますし、雇用市場労働市場労働法制もかなり違っております。そうした中で、どうしたら労働者保護が一番その国にとっていいかということで、各国それぞれ苦労し、政策を打っていると思うのですが、私どもも、労働省としては、日本の労働政策は、ヨーロッパ型だとかアメリカ型だとかということでなくて、あえて言えば日本型と申しますか、日本の労使関係の実情、雇用市場の動向、労使の物の考え方、社会の仕組み等々も踏まえて、一番適切な政策を探っていくということで努力をしておりますし、今後ともそうしていきたい、こう思っております。  それから、審議会、研究会等の委員、メンバーのお話でございましたが、審議会、研究会等は、それぞれ何のためにあるのかというところがはっきりしておりますので、その所掌分野と申しますか、目的にふさわしい学識を持っているということで、具体的に言えば、外国のその分野について詳しいだとか、それだけでもいけないし、日本の実情についてどれだけお詳しいかとか、そういう総合的なことを勘案して一番適任者をお願いするという形でやっております。先生指摘のどこに留学したかということは、考慮の要素としては余りないんじゃないか、僕はこう思っておりまして、二点目の点につきましては、残念ながら、先生の御意見とちょっと認識が違います。  労働省としては、幅広く、日ごろ、例えば労働法であれば労働法の学者の先生方がどういう論文をお書きになっているか、どういう発言をされているかということを見て、まさにバランスよく我々は先生方に委員をお願いしておるというふうに考えております。
  35. 鍵田節哉

    鍵田委員 決して私の眼鏡は色眼鏡ではございませんで、公平に私自身も見ておるつもりなのですが、最近の審議会の答申だとかそういうものを見ておりますと、若干そういう疑問を感じたものですから質問をさせていただいたわけで、ぜひともひとつ公平な、そしてまた各界の意見も聞きながら、そういうものの推進をしていただきたいというふうに思います。  次に、分割法の方で、主たる営業に従事する労働者については、不同意権、民法の六百二十五条の同意権というものが認められないということになっておるわけでありますが、これについて局長がお答えになったのですけれども、不同意が多くなれば分割が成立しない、したがって、主たる営業に携わる人間には不同意権はないんだ、認めないんだということをおっしゃられたわけですが、それはそのとおりでよろしいのでしょうか。
  36. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 お答えいたします。  前回の当委員会で、私が鍵田先生の今御質問のような他委員の御質問にお答えした点についてでありますが、二点ございまして、主たる業務に従事する者に同意権を与えなかった理由は、一つは、今回の会社分割包括承継という基本的な法的性格があるというところに大きく依拠しております。もう一つは、包括承継という法的性格と、言葉は過ぎるかもしれませんが、法的には相入れない営業譲渡のような場合の個別同意という法的性格のものを併存させるということは、法的にはなかなか難しいという点であります。  現実の場面を想定いたしますと、これが私の前回答弁になるわけでありますが、主たる業務に従事する方々に不同意権を付与した場合、これは可能性の話でありますが、多くの方々が不同意であるということになりますと、今回の会社分割制度は営業の全部または一部を承継するという性格でございますので、営業の全部または一部の中には、基本的にはその営業に従事している労働者が入るわけでございます。そうしますと、不同意権を行使して労働者が、これまた可能性でありますが、ほとんどいなくなってしまった、労働者抜きのその他の営業の承継ということは今回の会社分割制度の上では法的にも認められないという構成になっておりますので、その点を私は申し上げたと理解しておりまして、すべての場合にそうなるとか、そういう現実の話を申し上げたわけではないと御理解いただきたいと思います。
  37. 鍵田節哉

    鍵田委員 法律論として局長はそういうふうなことをおっしゃったということであります。しかし、現実の問題として、労働者にとりまして、民法でも認められておる同意権というものについて、分割を有効ならしめるためには、その人たちの意見を無視してでも分割を成功させるということは、労働省労働者保護する、そういうことのために労働省というのは設置をされておるはずでございますから、それを放棄されるということにつきましては、若干というか大きな疑念を私は持つわけでございます。  そういう労働者同意を得る努力というのは、法律で縛るということではなしに、やはり事前労働組合との協議でありますとか、そういう中でできるだけ分割が可能ならしめるような、そういう合意形成をしていくということが大切なのではないか。したがって、法律的にそういう人たちの権利というものを剥奪するというのはいかがなものかというふうに私は思っておるわけでございます。  そういう労働省のあるべき姿という面から見ましていかがな見解をお持ちなのか、もう一度お答えをいただきたいと思います。
  38. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 主たる業務に従事する方について同意権がないという点について重ねて申しますと、包括承継であるということで、これは、合併の場合と同様に、移る方々の雇用労働条件が維持されるということでございまして、労働者不利益はないという性格のもとにそういう取り扱いをといいますか、法的性格を合併と同様に適用しておるわけであります。  合併の場合に民法六百二十五条の適用がないということは確立した解釈でございまして、それについては疑義がないということで、同じ包括承継という法体系の中で、主たる業務の方々についてもやはり六百二十五条は適用ないのだということが会社分割制度そのものにおけるこれまた解釈でございまして、この点は、権利を剥奪したということではなくて、法的性格に基づくものであるという点をぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、分割するに当たって、労使でよく話し合う、労働者理解協力を得るということは本当に大事なことでございます。これは、これまでも議論になりましたように、法律労使協議を義務づけることの適否の問題になりますけれども、現在のところは、労働省の見解として、日本におきます労使協議制は各企業の実情に即して労使信頼関係のもとで創意工夫を凝らしてやっておられるということでございますので、こうした形で会社分割に際しても労使が自主的にやっていただくという形が一番現実に即しているだろうということで考えております。そうした意味で、労使がそういう努力をされることを私どもは切望いたしますし、必要なお手伝いはしていきたい、こう思っております。
  39. 鍵田節哉

    鍵田委員 今のお答えではちょっと不十分な面もあるように私は思うのですが、ぜひとも合意形成をするための最善の努力をされるように、またできるような施策をひとつ講じていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それでは次に、合併や営業譲渡への対応でございますけれども、今回の法案の中には、合併、営業譲渡というものはすべての労働者は守られておるんだからこういう法制度は必要はないんだというふうなことで御答弁があったわけでございます。しかし、実際に、じゃ、どのように守られているのか、守られなかった事例はないのかということについて、合併や営業譲渡も今までにもあったはずでありますから、それらについて具体的にどのように把握をされておるのか、それらについてお答えをいただきたいと思います。
  40. 長勢甚遠

    長勢政務次官 合併につきましては、御案内のとおり、商法の規定によりまして、労働契約を含むすべての権利義務が包括的に承継されるということになっておるわけでございますから、すべての労働者について雇用労働条件もそのまま維持されるということになるわけでありますから、労働者不利益を生ずるということは、合併の場合にはほとんど想定をされないと考えております。  営業譲渡につきましても、労働者承継しようとする場合には、譲渡会社と譲り受け会社間の合意とあわせて、民法六百二十五条によりまして、労働者本人の同意が必要であるということとされておるわけでございますから、その同意権の行使によって法令上は担保されておると考えております。  また、具体的な問題、裁判等におきましても、この基本ルールにのっとって、労働者同意あるいは会社間の合意があったかどうかについて、実態に応じた具体的妥当な解決が判例上も積み重ねてきておられるところでございますから、そういう点でも労働者の権利がそれなりに守られてきておる、このように承知をいたしております。  また、労働条件変更という問題もあるわけでございますけれども、契約法理によりまして変更に当たっては当然労働者等の同意が必要とされるわけでございますから、これらについてもその権利は法制上守られておる体制になっておる、このように理解をいたしております。
  41. 鍵田節哉

    鍵田委員 今、具体的な事例については御開陳がなかったわけでございますし、私もその時間が今はありませんからやりませんけれども、しかし、合併や営業譲渡においても、労働条件でありますとかまた雇用条件とかというふうな面で非常に不利益な扱いを受ける可能性というのは全くないということではないんじゃないか、ただ今までの契約が包括的に承継されるんだから不利益は起こらないんだということだけじゃない、問題がたくさん内包しておるというふうに私は思っております。  したがって、今次官のおっしゃられた内容ですと、合併だとか営業譲渡だとかということ、我々は衆法でこれも含めた労働者保護ということを申し上げておるわけでありますが、何かそういう必要はないんだというふうに否定されているような気がするわけでございます。しかし、いろいろなことが想定されるというふうに思いますので、それらにつきまして十分な研究をして、その研究の成果に基づいて、これらの問題も含めた保護法的なものをやっていこうというお考えがおありかどうか、それらについてお聞きをしたいと思います。
  42. 長勢甚遠

    長勢政務次官 先ほどは法制上及び判例のどうこうという観点から御説明を申し上げましたが、具体的事案について、先生言われるように、不利益と感ずるというかあるいは思うという事案が世の中にあり得ないということではもちろんないだろうと思います。  こういう問題は、それぞれ、先ほど申し上げました法制上の法令に基づきまして、その解釈、運用というか、それを議論せざるを得ないわけでございますけれども、これを立法的に解決することについてはいろいろ検討すべき点もたくさんありますし、また、判例も含めまして、現在の体制の中で十分妥当な解決が図られておるというふうに理解をしているということを御説明申し上げた次第でございます。  なお、今後につきまして、さらに検討をすべき点もあろうかとは思いますので、それは当然、今後問題が少なくなるような検討は進めていくべきことと思います。
  43. 鍵田節哉

    鍵田委員 ひとつそういう研究委員会などもつくって十分な検討をした上で、またそれに携わります労働者の意見なども十分取り入れて、今後しかるべき措置をとられるようにお願いをしておきたいというふうに思います。  さらにまた、この合併、営業譲渡の議論の中で、大臣は、法的措置として最高裁の判例なども一つの方向を示しておるんだと。実は、前後のことを抜きにしても大臣はよく御承知だというふうに思いますので。判例の積み重ねがある、そういう法的措置があるんだというふうに聞いたんですが、日本の場合には成文法で大体法律的には運営されているわけでございまして、それが法的措置として一つの方向が定まっておるということは、ちょっと言い方としておかしいんではないかなと。判例というのはあくまでも判例であって、法的措置ではないわけでございますが、それらについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  44. 牧野隆守

    牧野国務大臣 先生の御質問、非常に難しい御質問でございまして、現実に最高裁の判例、具体的に解雇が無効となった例は何か、それから、解雇のいわゆる通称四条件と言われているそれぞれの妥当性について、この辺は観念的にはわかるわけですが、既にそういう形で判例並びに最高裁の基準、示された四条件というものが相当周知徹底されておりまして、これは具体的ケース・バイ・ケースで、この解雇は妥当であるかどうか、裁判になった場合に認められるかどうか、最近はそこまで十二分に考慮して経営者の方々が判断される、私どもも、こういう場合というのは必ずこれは無効になるんですよ、こういう説明もいたしておりますから、相当浸透しているということははっきり言えると思います。  そこで、私自身も就任と同時に、これを法文化できないかということも少し個人的にいろいろ聞いてみたんですが、非常に難しゅうございまして、結局同じものにならざるを得ない、抽象的な形にしかならない。そうすると、またそこでいろいろ論議が起きてまいりまして、果たして特別の立法措置を今しなきゃならないかどうかということになりますと、いろいろな意見が出てまいりまして、現在これで落ちついているじゃないか、保護されているという方もありますし、いや、まだだめだ、法律をつくらなきゃ、成文法、日本の法律というのはそういう方向、性格を持っているんだからという御意見もあります。  しかしながら、現実に裁判例において確立しているものですから、特別、立法措置がなくても労働者不利益は生じない、こういうように私どもとしては現在考えているわけであります。  さらに、繰り返しになりますが、解雇の具体的事情というのはこれはもう千差万別でございまして、判例の積み重ねをいろいろ検討して、それを成文化し法的措置を講ずるということについては、まだ多くの問題があるのではないかな、こういうように考えております。
  45. 鍵田節哉

    鍵田委員 大臣もいみじくもおっしゃったように、判例そのものもいろいろ条件によって変わってくる、また時代の趨勢とかそういうものにもよるでしょうし、四要件があって、それで必ずしも労働者保護されるように確立されておるということでもないんじゃないかということになってきますと、四要件があるからちゃんと労働者保護されているんだということにはならないんじゃないか。したがって本当に労働者保護しようとすれば成文法しかないんじゃないか。  したがって、現状において確立されておるというふうに見られる四要件に従って成文化して、そして環境が変わってくればその環境に合わせて法律を変えていくという、判決で、判例で変わってくるというよりも、成文法で今後環境の変化に応じて変えていく、それは国会が責任を持ってやればいいわけですから、そういう方向の方がより安定した、また労働者も安心できる社会になっていくのではないかというふうに思うわけなんですね。  これはやはり労働省なりこの国会が決断をすればいいわけでありまして、判例が確立しておるから、それでもうそういう保護は要らないんだというふうなことは、ちょっと論理のすりかえではないのかなというふうにも思うわけでございますけれども、それらについてもう一度お答えいただければというふうに思います。
  46. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今、判例が確立されており、関係者は十分周知徹底して御存じだということを申し上げましたけれども、これは、人事面だとかがしっかりしている会社、それから労働組合がしっかりしているところ、こういうところについては特別に成文化をされなくても、現実に非常に千差万別ですから、円満に解決されていくのではないか、こう考えておりますが、一つ気になるのは、いわゆる未組織労働者のあるところでございます。そういうことも私自身の念頭にあるわけでありますが、そういう点で、国会におきましてもいろいろな御意見が出て論議されておるわけでありまして、私どもとしましては、もう少し国会の御意見等も賜りながら時間をかけて検討していただければな、こう考えております。  いずれにしましても、判例等が確立しているからといって、どうしてもそれのわからない中小の経営者あるいは中小企業に従事する労働者立場というのは、やはり基本的に考えなければならないな、こう考えております。
  47. 鍵田節哉

    鍵田委員 私も、大企業も中小企業も両方の労使関係に長年携わってまいりました。ほとんどの人は経営者も立派な方が多いです。立場の相違はあっても立派な方が多いわけですから、そういうところでは、むしろ経営側の方が労働者保護についての哲学をしっかり持っておられて、労使関係も非常に安定しているというのが実態でございますけれども、中にとてつもない、我々常識では考えられないような人もやはりいるわけでございますし、最近は外資系の企業も随分ふえてきております。これらの人は、やはり日本の労使慣行でありますとか日本人的な雇用に対する発想とかというものは全くないという企業も出てきておるわけであります。  そういう人たちないしそういう企業に対して予防的な効果を持たすという面から見ますと、やはり成文化しておかないと、判例は確立されておると言われても、ふだんからその判例をずっと研究をしてやっているというふうな企業というのは、よほど労務担当のしっかりした人をちゃんと専門に置いておられるとかいう企業以外はないんじゃないかというふうに思いますので、そういう意味では、やはり成文化に向けた努力労働省としてしっかりやっていただければなというふうには思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。  それでは、ちょっと視点を変えまして、今回のこの承継法の法案の成文に当たりましては、専門家の研究会を持たれ、研究委員会の報告もちょうだいをしておるわけでございますが、四回ほど会議を開催されたというふうに聞いておるわけでありますけれども、この研究委員会ではどのぐらいの時間をかけて研究をされたのか。それから、委員の選定についてどのような基準で選定をされたのか。また、その委員の選定についてどこかの意見を聞かれたのかどうか。その辺についてお答えをいただきたいと思います。
  48. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 御指摘委員会は、昨年の十二月に発足した学識経験者六名から成る研究会でございます。  開催時間についてお尋ねでございましたが、開催回数はこれまでも申しましたように四回、総計開催時間としては十二時間ということになります。  研究会委員の選定の経過というお尋ねでございますが、基本的には労働法学者の方が中心でありますが、これは商法改正と密接不可分の問題でございますので、法制審議会の中に入っておられる商法学者の方にもお入りいただいております。商法の専門家でございます。それから、企業組織変更という問題でございますので、企業組織論とか経営論に詳しい、いわば経済学経営学の専門の教授にもお入りいただいております。労働法の先生方も、例えばイギリスの労働法に強い先生とかフランスの法に強いという方々も入っていただいておりますし、商法の先生などは、まさに各国の商法についても大変お詳しいという方でございました。  この委員の選定に当たりましては、私どもがいろいろその先生企業組織再編あるいは合併、営業譲渡等々にかかわる労働問題についての論文等々をサーベイいたしまして、私どもの責任においてお集まりをいただいたということでございます。
  49. 鍵田節哉

    鍵田委員 私もだんだん人間が悪くなってまいりまして、いろいろと勘ぐりをしたくなってくるわけでございまして、ちょっと反省をしておるわけでございますけれども。  今後のこういう研究委員会なり審議会なりの委員を選定される場合には、やはり関係当事者の推薦というんですか、そういうふうなこともあって選ばれる方がより適切な、まとまりは悪いのかもわかりませんが、労働省自分のところでチョイスする方がまとまりはいいのかもわかりませんし、時間的なこともあるのかもわかりませんが、今後のことでございますけれども、新しいそういう委員会をつくられるような場合には、やはり例えば経営側の推薦する方もいらっしゃるかもわかりませんし、また労働者の推薦する委員の方も含めて、そういう専門家の検討の場を設けていくというようなことが必要なのではないか。  そして、先ほども申し上げましたけれども、やはり合併や営業譲渡、こういうものも含めて、いろいろな事例も研究をした上で、やはり全般にわたって労働者が安心できる、そして安定した社会をつくっていく、そういうための施策を研究していただく、こういうふうな場を早急につくっていく。そして、その中で立法化を進めていくような、そういうことをやるべきではなかろうかというふうに思うわけでございますが、それらについてはいかがなものでしょうか。
  50. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生の御指摘について一つだけ申し上げますと、私どもも、あの研究会を私どもの責任において選任いたしましたが、その間においては、この問題についてどういう先生がおられて、どういうことを御主張されているかという点については、関係方面に聞かないとわからないところがございまして、推薦という形ではございませんが、いろいろ選定に当たっての御意見は聞いたということでございます。  それから今後の話でございますが、今先生が御指摘の点、あるいは当委員会における審議の中でいろいろ御指摘いただいた点を踏まえて対応してまいりたい、こう思っています。
  51. 鍵田節哉

    鍵田委員 そういうことをお願いしておきまして、それでは次に、労働組合側との事前協議の問題について少し触れてみたいというふうに思います。  商法改正のための法務委員会の審議の中で、我が党の北村議員が法務省の民事局長に質問をいたしました。事前協議というのを、労働者個人ではなく、労働組合なり、労働者を代表する者との事前協議というふうなことが入れられないかどうかということでお聞きをしたときに、商法は私法上の権利義務を定めている、公法で定める労働組合というふうな団体との協議というふうなものはなじまない、ただし、私法上で言われる、委任を受けた、そういう代理をして交渉するというようなことについてはできるんだというふうなことを法務省の民事局長がお答えになっておるわけでございます。したがって、労働組合との事前協議ということも決して否定をしていないわけでありまして、委任を受けた場合には、個人にかわって、団体、集団がそういう交渉をするということについてもあり得るんだということで言われておるわけでございます。  そういうことから考えますと、労働委員会の所管である承継法におきましても、やはり事前労使協議というものについて、法律でどうこうするのはどうかという程度のことでございましたけれども、次官の方でお答えいただいておるように思うのですけれども、どうかというのは、それこそどうなのでしょうか。  その辺を若干明らかにしていただきたいと思いますし、先ほども申し上げておりますように、正常な労使関係のところでは労使協議会などもあって、そういうところでは、ほとんどのところが事前協議されているわけですよね。しかし、中にはとんでもない経営者もおられるわけでございまして、本当に一握りの人でありますが、そういう人たちに対しての予防的措置といいますか、そういう人たちから労働者保護するという労働法の立場からいきますと、集団的労使関係というものを労組法でも認められておるわけでありますから、こういう承継法でありますとか、またその他今後検討されます合併や営業譲渡などに際しての協議におきましても、集団的な労使協議、団体との集団協議ということも十分配慮しなくてはならぬのじゃなかろうかというふうに思うわけですけれども、その辺についての次官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  52. 長勢甚遠

    長勢政務次官 最初に、商法の修正案に関するお話がございました。民事局長の御答弁は私法上の原則をおっしゃったことだろうと思いますし、そういう中で委任代理という形で労働組合等が関与することがあり得るということのようでございます。当然、法制上の制度があろうがなかろうが、労使間でいろいろな形で意思疎通が行われる、事前協議が行われるということは望ましいことでございますし、そのことは先生もおっしゃっておるとおりだと思います。  問題は、これを法制化すべきではないかというのがお説だと思いますけれども、御案内のように、事前協議制は大変に我が国において発展をしてきているわけでございますが、基本的には、労使間の信頼関係をもとにして、その企業労使のいろいろな実情の中で、その効果、範囲あるいはやり方等々、さまざまでございます。  これを法制化するということになれば、一種の法的効果を持つことになりますので、当然その内容、手続、効果等について、法の遵守という観点からの厳密な議論も必要となるわけでございます。そうなりますと、各般のいろいろな労使関係がある中で、一律にこういう形で法制化をするということについてはもう少し議論を詰める必要があると私は思っておりますし、またそれが十分でない中で法制化をすることが、果たして、先生指摘のような、労働者保護なり円滑な労使関係という意味で、信頼関係がない中で強制をするという効果を持たせることにどれだけの意味があるのか、またいいことかどうかということも私は慎重に考えるべきことだと今は思っております。  いずれにしても、この問題について、分割等の際に、労使間の協議が必要な限りにおいて円滑に行われることが必要なことは言うまでもないことでございますし、その指導も行ってまいりたいと思っておりますし、さらに労働条件等にかかわる事項は、これは団体交渉事項でございますから、それはきちんとやっていただかなければならない、このように思っておる次第でございます。
  53. 鍵田節哉

    鍵田委員 日常的な労使関係の問題につきましては、それぞれ個々の労使の自治にゆだねるということも別にいいとは思うのですけれども、私どもは、長年、生産性向上運動とか、そういう中で労使信頼関係を醸成していく、そういう観点からもやはり労使協議というものを重視しようということで経営側にも訴えて、そういう環境をつくってきたわけでありますけれども、そういう日常的なこととは異なって、特に企業再編成というのは個々の労働者労働生活にとって大きな環境変化を与える課題であるだけに、こういう問題についてはやはり特に特定してもいいと思うんです、こういう課題については、やはりそういう協議の場をきちっと法制化していくということも検討の視野に入れて今後取り組んでいただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  いよいよ時間も参ってきておりますので、最後に、国会の附帯決議について労働省としてどのようにお考えになっておるのかということについて、これはどなたがお答えいただくんでしょうか、大臣でしょうか次官でしょうか、まず附帯決議についてどのようにお考えになっているのか、お聞きしたい。
  54. 牧野隆守

    牧野国務大臣 国会で十二分に法案を御審議いただいて、その結果、その通過した法律の運営についての委員会としての附帯決議でございますから、政府といたしまして、委員会の御意思と承って最大限尊重すべきであるということは当然のことだ、このように考えております。
  55. 鍵田節哉

    鍵田委員 非常に安心をいたしました。実は、この法案の審議をめぐって労働省の方々に大分私も悪態をつきまして、附帯決議を全く無視しているんじゃないか、けしからぬと随分言ってきたんですけれども大臣のお答えを聞きまして若干安心をしたわけでございます。  ただ、実態として、例えば民事再生法の審議なりそれから産業活力再生特別措置法、これらの審議の際にも附帯決議がついておりまして、労働者保護法の設立といいますか、それをきちっと位置づけなくてはならないという附帯決議があることは御存じだと思うんですけれども、それらがまだそういう措置がされないままで今日に及んでおる、こういう実態があるわけでございます。  そういうことを考えますと、今回の法案の審議の中でもできれば私たちは附帯決議をというふうに思っておるわけでございますけれども、それがどうも今までに取り扱われてきた附帯決議と同じようになるのじゃなかろうかという心配をしておったわけでございますけれども、いや、それは時間的な余裕がなかったということに善意に解釈するべきなのかどうか。  そういう今までの附帯決議の趣旨を生かしながら、もう少し時間をかけて、今回の附帯決議もあわせて、産業の再編成に向けましての附帯決議を生かすそういう法的な措置ということをこれから十分検討していただけるのかどうかということについて、お考えがあればお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  56. 牧野隆守

    牧野国務大臣 大臣就任のときに事務引き継ぎは前大臣から当然のことでございますが、やはりその中で一番大きい問題は実は法律案の取り扱いでございまして、したがって、附帯決議等々についての事務引き継ぎはきちっとさせていただいております。  ですから、今先生指摘のように、この法律についても当然のことながらそのような場合には最大限尊重させていただいて、政府部内におきましても十二分にそれを念頭に置きながらいろいろな審議等々を行うことは当然であろう、こう考えております。
  57. 鍵田節哉

    鍵田委員 前回選挙以降、実は労働大臣が四人かわられております。もう間もなく選挙も始まろうとしておるんですが、これは牧野大臣の時代にやっていただければ一番ありがたいと思うんですけれども、もしかわられる場合も必ず引き継いでいただいて、そして、今までの、附帯決議でありますから、それを生かして新しい措置をしていただくようにぜひともお願いを申し上げておきたいと思います。  以上、時間も参ったようでございますので、それらの政府の国会の附帯決議についてのお考えを聞かせていただいて、質問を終了したいというふうに思います。ありがとうございます。
  58. 赤松広隆

    赤松委員長 午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ————◇—————     午後零時五十一分開議
  59. 赤松広隆

    赤松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中桐伸五君。
  60. 中桐伸五

    ○中桐委員 民主党の中桐です。  私は、冒頭前回質問で十分な時間がなかったものですから、先を急いで十分に議論できなかった問題から入りたいと思います。  それは、行政改革推進本部が平成十一年の十二月十四日付で規制改革についての第二次見解というものを報告しているわけですが、その中に「解雇規制の見直し」という項目がございます。この解雇規制のあり方については、今我が国の置かれている産業構造の転換の現状にあっては非常に重要な要因となってきているというふうに私は考えておりますので、この解雇規制のあり方について、前回は、当面は判例法理に基づきながら対処するという基本的な政府、労働省の見解が示されたというふうに思うのです。  この点について、しかし、この行政改革推進本部規制改革委員会が、労働省が担当省庁として実態調査をして、この解雇規制のあり方については立法化の可能性も含めた検討を行うことが適当だという報告を出しておりますので、これに対して、労働省は、実態調査をどういうふうにやって、いつまでに実態調査を終えて結論を出す、結論はまだ今報告はできないと思いますが、結論を出すつもりなのか、労働大臣にお伺いをしたいと思います。
  61. 牧野隆守

    牧野国務大臣 労働省といたしましては、規制改革委員会第二次見解に基づき、そして、本年三月三十一日には「第二次見解を踏まえ、解雇をめぐる実態を把握する。」このように閣議決定をいたしておりまして、労働基準監督機関等に持ち込まれた解雇に関する紛争事案等についてただいま調査を行っているところであります。本年度第一・四半期までには調査を終える予定であります。  これに基づきまして解雇に関するルールのあり方について必要な検討を行うことが適当である、このように考えております。
  62. 中桐伸五

    ○中桐委員 解雇ルールについての検討を行うということなのですが、それは調査に基づいてどういうところで行うのでしょうか。それについて、政府参考人でもいいですけれども
  63. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 ただいまの件は、既に労働省の方に設置してございます紛争解決援助制度というものがございますけれども、ここの中に持ち込まれた事案を中心にまず調査をいたしております。その結論を得ましたら、その結果、実態に即して、現在の法令、さらには判例法理を中心に、解雇に関する考え方を実施しているその辺が問題があるかどうか、今後に向けて、実態を踏まえまして検討したいということでございます。
  64. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、これは労働省だけでやるのか、それとも審議会のようなもののもとに何か専門委員会をつくってやるのか、そういうことはまだお答えできませんか。何かお答えができることがあればよろしく。
  65. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 まだそこまで具体的には決めておりませんけれども、必要に応じまして研究会等を設ける、あるいは、最終的に何か制度を設けるといったようなことになりますと、当然、中央労働基準審議会等の審議会にかけるという手続が必要になるわけでございます。
  66. 中桐伸五

    ○中桐委員 わかりました。  判例にゆだねるという形では、いろいろな解雇のリスクに直面する幅広い働く人たちにわかりやすい解雇規制のあり方が普遍的によく浸透しないと思いますので、その点については、お答えは結構ですが、この点についてのルール化をする検討は精力的にやっていただきたいというふうに大臣にぜひ要望しておきたいというふうに思います。  次に、労働条件変更に関する問題について、以下質問をさせていただきたいと思います。  午前中の質疑でも、労働条件変更に関して、河上委員とか鍵田委員などからも問題が取り上げられておりましたが、私は、前回の質疑で、企業組織再編が行われるということになりますと、働いている人にとって重大事は、解雇の問題というのが一番重要な問題だろう、これは質疑をさせていただきました。次に問題なのは、労働条件変更、特に分割あるいは営業譲渡後の労働条件変更という問題が重要な問題としてあるのではないかと思います。  会社組織の変更再編成が行われて、その後に労働条件変更が行われるということを考えた場合に、特に不採算部門の分割あるいは譲渡、そういったときがより労働条件変更という問題が起こりやすい、想定されるというふうに私は思うのです。こういう場合に、今回の商法の改正とセットの労働契約承継法がこれから仮に成立をしたといたしまして、そうしますと、企業組織再編成の中でも、会社分割という方法が相当利用度が高いのではないかというふうなことも言われておりますが、そういう法制定がされた後の労働条件変更、要するに、企業組織変更会社分割という方法でやった場合のその後の労働条件変更というのがしばしば起こり得るのではないか、特に、先ほど言いましたように、不採算部門の処理をする企業再編成というときに起こり得るのではないかということでございますけれども、その点に対して労働大臣の御認識を伺いたいと思うのです。
  67. 牧野隆守

    牧野国務大臣 企業組織再編そのものを含めまして、本来、労働条件変更を行うに当たっては、労働組合法による労使間の合意、それからもう一つは、民法の基本原則による労働者同意を必要とする、このように明白になっておりまして、したがいまして、会社側が一方的に労働条件不利益変更を行うことはできない、このように決まっているもの、こう承知いたしております。
  68. 中桐伸五

    ○中桐委員 大臣、その問題はその次のステップなんですが。  いわゆる現在の経済情勢背景にして企業組織再編成を行う。その場合に、先ほど申し上げていますが、比較的経営状況が足を引っ張っている部門、この部門を分割するという形で移っていく、切り離されていく。その分割された部門の労働条件変更というのは、十分あり得ると思うんですね。しばしば起こり得ると思うんです。そういう問題についての大臣の認識についてお伺いしているんですけれども
  69. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今回の商法改正は純法律的に分社というものを規定いたしたわけでありますが、私ども、そこに現実に生身で働いておられる労働者立場考えますと、特に、将来どんどん伸びる可能性のある分野の分社については心配しないんですが、やはり企業全体の合理化という見地から、今先生が御懸念なさったようなところもこれはあり得るのではないかな、こう思っております。  そうしますと、今提案しております法律案のほかに、先ほども答弁させていただいたんですが、未組織の労働者の方々の場合に具体的にどうなんだろうか。したがって、それにつきましては、現在の労働局長を中心とした地方にあります労働省の第一線の組織で事情等を十二分にお伺いしまして、具体的な調整ができないだろうか。  実は私自身も、本件につきましては、就任早々、こういう問題があるなということで幾つかの案件を調査させていただきました。うまくいっているところもありますし、中途半端に切れちゃってどうなっているかわからないというような事情もございまして、この辺につきましては最大の関心を持って対処すべきであろう、こう考えております。
  70. 中桐伸五

    ○中桐委員 わかりました。そのように基本的なスタンスを置いてやっていただきたいんです。  さてそこで、この労働条件変更の問題についてもう少し内容の議論をしたいんですが、私の認識では、労働条件変更というものについて一体どういう今日までの法律による基本的なルールがあるのかということについて、まだ十分全体のアウトラインが私の頭の中に入り切っておりませんので非常に初歩的なことから御質問させていただきますが、この労働条件の決定に際しては労働基準法第二条に定める労働条件の対等決定の原則を尊重しながら決定されるということについて、そういう理解をしてよろしいのでしょうか、労働省の見解をお伺いしたいと思います。
  71. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 労働基準法の二条に、先生指摘のとおり、労働条件の対等決定について原則的なことが書いてございます。念のためお読みしますと、「労働条件は、労働者使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」ということと、さらに、労働者使用者労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実にその義務を履行するといったような趣旨が書いてございまして、先生指摘のとおり、労働条件変更が行われる場合においてもこういった対等決定の原則というものが尊重されるべきであるというふうに考えております。
  72. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、問題は、先ほど大臣もお答えいただきましたけれども、この労働条件の決定に関する、変更をもちろん含んで、いわゆる労使合意、それから労働者個人の同意、これは民法でそういうふうになっているという、この御説明と先ほどの労働基準法の第二条の対等決定原則というのは符合するということだと思うんですけれども、そのように理解していいんでしょうか。
  73. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 基本的に、先生がおっしゃるとおりであると理解しております。
  74. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、法律のルールでいいますと、団体については労使合意、民法によって一人一人の労働者同意というのがあるということなんですが、そういうことになりますけれども、現実の労働条件の決定については、いわゆる使用者が、就業規則というものを例にとって考えてみますと、就業規則というのは、これを決める際に、労働者の組織あるいは個人、そういったものの合意なり同意を前提として決めなければ決められないものなのかどうか、この点についてお伺いします。
  75. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 就業規則についてのお尋ねでございますけれども、就業規則を制定するに当たっては従業員の過半数を代表する者の意見を聞くということが法律に書いてございますので、逆に言いますと、同意がなければならないということではないわけでございます。
  76. 中桐伸五

    ○中桐委員 つまり、同意は絶対条件ではないが意見は聞くということとして理解してよろしいですね。  そのことを前提として、では、既に就業規則が決められていて、その就業規則を変更する、その場合に、今日までにいろいろな裁判上のトラブルなども含めて多くのケースの経験があると思うんですが、そういうものを含めて、今日時点での就業規則変更の際の合理的な判断基準というものが確立をしているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  77. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 この点につきましては判例がございまして、基本的に申しますと、判例におきまして、就業規則の変更によって労働者不利益労働条件を一方的に課すことは原則として許されないが、当該就業規則が合理的なものである限り、個々の労働者がこれに同意しないことを理由としてその適用を拒否することはできないという考え方が示されております。  また、同じく判例でございますけれども、就業規則の変更の合理性につきましては、就業規則の変更による不利益の程度、内容、それから変更必要性労働組合等との交渉等を勘案して、総合的に判断するという判例も示されております。
  78. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしますと、今たくさんの情報を急に話されましたから、全部網羅して頭の中に入ったかどうかわかりませんが、少なくとも一定の合理的な基準というものが判例によって示されているというふうに理解をするわけでございます。  そういうことを基本的前提としまして、今回の商法改正が行われて会社分割というものができることになったといたしますと、会社分割を行って、労働契約承継基本的なルールについては、商法及び今この委員会で議論をしている労働契約承継法という法律で定めようということでありますが、分割後極めて短期間の間に、つまり商法改正とこの労働契約承継法が成立をした以後のことを前提とするわけですが、労働契約承継法に言う承継は合法的にきちんとやられた後に、非常に短期間の間に労働条件不利益変更が生じるということ、あくまでこれは仮の話でありますが、そういう危惧が考えられるのですが、これは政務次官、どうでしょうか。こういう危惧というのは単なる杞憂であって、そんなことはないというふうに考えますか、いかがでしょう。
  79. 長勢甚遠

    長勢政務次官 今回の分割法におきましては、分割後の会社においても債務の履行が確実に行われるということが前提として想定されておるというふうに理解をしておりますので、今おっしゃったような事態が具体的にどういう形で起こるかということは想定しがたいのでございますが、いろいろなケースも起こり得るわけでありますから全く想定されないということでもないかと思います。  ただ、承継後において労働条件変更等があるというケースにつきましても、先ほど来基準局長から答弁いたしておりますとおりでございますので、企業運営上の理由のみで一方的に変更が行われるということは許されないわけでございますので、そういう点で、できる限り問題のないような形になるように、どうしてもそういうことが必要なケースにおいても、そういうふうに徹底をしていかなければならない、このように思います。
  80. 中桐伸五

    ○中桐委員 非常に難しいと思うんですが、そういう悪質な場合、そんなにたくさんあるというふうには思いたくないのですけれども、一応合法的に分割した労働契約承継だけはやる、その後すぐに労働条件変更を就業規則の変更でもってやる、そのときに、先ほどの基準局長の御答弁を加えて考えますと、意見を聞かなきゃいけないけれども合意を前提とした絶対条件ではないということでありますから、ケースがそんなに多くはないとしても、当然これはあり得るというふうに私は思いますね。  そのときに、では、私は頭がはげていることを気にしておりますが、何本毛が抜けたらはげなのかという問題の非常に難しい議論になると思います。つまり、この分割法がカバーする労働契約承継時点分割前と後の話でありますから、分割されたらもうこの法律はカバーいたしません。では、その分割後のどのぐらいの範囲を称して言うのかという問題、つまり非常に難しい問題が発生するのではないか。  例えば、具体的に言いますと、会社分割一週間後に就業規則の変更を、労働者の意見は聞いたけれども、こう変更させてくれと言って変更するというケースを仮に想定する、しかも採算がうまくいかないものを切り離すという場合においては、その分割で移行した労働者、そこで働く人たちが、代替的な条件のカバーもされないまま、かなり不利益をこうむるという形での労働解雇はしませんよというところでぎりぎりメリットはあるかもしれませんが、解雇ということをのければ、どこから見ても労働条件は悪くなるというような変更が行われるということになると、やはり問題ではないかと思うんですが、この点、労働省はどう考えますか。
  81. 長勢甚遠

    長勢政務次官 経営の実態あるいは分割の経緯、その他いろいろなケースがあると思いますし、また、その一週間後にそういうことが起こるというケースはどの程度あるのかわかりませんが、そういう意味で、画一的にどの時点でいいかということは言いにくいのではないかと思います。  承継時においては労働条件は包括的に承継されるということだけははっきりしておるわけでございまして、仮にその後に短期間のうちに変更を行うという事態が生じた場合に、これは就業規則なりの変更の合理性についての基準があるわけでございますから、正当かどうかということがその観点から判断をされるべきものと思います。また、これはあり得べきことではございませんけれども、極めて悪質なケースがもしあったとすれば、これはもうそれ以前の、分割ということ自体が一種の脱法的であるかどうかという議論までさかのぼることも、ケースによっては起こるかもしれません。  しかし、これはいずれにしても、実態との観点でありますし、事情がいろいろあると思いますから、画一的に今、こういうケースはこうというふうに申し上げることはちょっと無理だと思います。
  82. 中桐伸五

    ○中桐委員 大変難しいと思うんですが、例えば今回、指針というのがありますね。そこで、その指針の中に、そういう悪質なこと、やってはいけないようなことを何か明示するというか、そういう方法というのは、もちろん、今ある閣法による指針というものの規定からいうと、そういうことは書けませんということになるのかもしれませんが、法文の中ではなくて、指針というものの中で、安易な分割労働条件変更などをしてはいけないよというふうなことが、しかも単なる行政指導という形ではなくて、何かきちんと根拠を持って言えるようなものをつくるという必要があるのではないかとも私は思うんですが、その点についてどうでしょうか。参考人の方でも結構です。
  83. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 承継法案第七条の労働大臣が定める指針は、分割会社及び設立会社等が講ずべき措置ということになっておりますので、今のような事柄につきましても、承継法上書けないということはございません。  ですから、私ども今後、円滑な企業分割を進め、労働者の適切な保護を図っていく上で、会社が講ずべき措置についてどういう指針を内容として決めていくか議論いたしますので、その中で十分各方面の意見を聞きながら、検討させてもらいたいと思います。
  84. 中桐伸五

    ○中桐委員 そうしたら、多分そんなに多くはないと思いますけれども労働条件変更を非常に不利益な形で行う、しかもそれは非常に短期間、分割後すぐ着手してしまうというふうなことが起こらないような指針の工夫をしていただけるということでございますので、ぜひそういう方向でお願いしたいというふうに思います。  それでは、時間が参りましたので、私の質疑を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  85. 赤松広隆

    赤松委員長 笹山登生君。
  86. 笹山登生

    ○笹山委員 自由党の笹山登生でございます。  前回、我が党の塩田晋議員から、これにつきまして質問をさせていただいたわけでございますけれども、大体次の三点の内容だったというふうに承知しているわけでございます。  一つは、承継についての拒否権の歯どめなき付与というものは、営業実施に不可欠な労働者承継をも不可能にするのではないか。二点目は、前者一による企業経営権の立場に立てば、事業に不必要な労働者雇用法律で強制されることになりはしないか。三点目は、労使協議の義務づけは団体交渉権と競合するのではないかという、以上の三点に尽きるわけでございますけれども、言うてみれば、この法案会社分割による労働者保護というものを図りつつも、同時に、やはり本来の目的でございます円滑な会社分割というものを阻害するものであっては決してならないという、両者のバランスをとった対応というものが必要であるということだと思うのでございますが、その辺につきましてのお考えをまず第一にお伺いしたいと思います。
  87. 牧野隆守

    牧野国務大臣 今私ども御審議いただいておりますこの法律案では、一つは、分割される部門で主として働く労働者を新会社承継させる場合は当然に承継されるということ、二番目が、分割される部門で主として働く労働者をもとの会社に残留させる場合及び分割される部門以外の部門で主として働く労働者を新会社承継させる場合、この場合に労働者異議申し立ての機会を与えて、その場合の保護を図ること等の規定により、労働者保護雇用の安定を図っております。  また、労働者解雇するに際しては合理的な理由を必要とし、特に整理解雇については四要件を満たすことが必要であることは判例において確立されておりまして、会社分割のみを理由とする解雇は許されない、このようにいたしております。  会社分割により労働者雇用の不安定が生じないようにするため、本法案では、分割会社及び設立会社等が講ずべき労働契約承継等に関する措置に関し、適切な実施を図るため必要な指針を定めることができることとなっておりますので、この指針を作成いたしまして、周知徹底を図ってまいりたいと思います。  これに加え、労働条件等にかかわる紛争につきましては、都道府県労働局長による助言指導の拡充、調停制度の発展的拡充、多様な内容の相談にワンストップサービスで対応するための労働基準監督署等の窓口体制の整備などの検討を進めることにより、会社分割における雇用の安定に万全を期したい、このように考えております。
  88. 笹山登生

    ○笹山委員 大蔵省に。会社分割にかかわる税制というものにつきまして、過日の新聞報道では、政府税調が六月末の中期答申に盛り込むというような報道もございました。これは、分割へのインセンティブと同時に、やはり租税回避への歯どめというものが図られなければいけない。そういう意味では、非常に慎重に対応すべき税制であるというふうに思うわけでございます。  本委員会絡みの退給引当金、これも含む例えば準備金、引当金、退給引当金は別にしまして、その他の引当金というのは、いわば利益操作の非常に重要な部門を占めるわけでございますので、その辺につきまして、どのような見通しなのか。また、フランスの会社分割税制を見ますと、引当金等につきましては引き継がなければいけないという規定がちゃんと定められておりますね。そのような諸外国の例も含めまして、今後どのような方針でもって、またどのような対応でもって図られるのか、その辺の見通しをひとつお伺いしたいと思います。
  89. 福田進

    福田政府参考人 お答え申し上げます。  会社分割法制を創設する商法改正に対応いたしまして、会社分割に係る税制上の取り扱いについては、現在鋭意検討を進めているところでございます。分割が行われる場合におきます税制上の取り扱いにつきましては、企業会計あるいは商法会計における具体的な取り扱いを踏まえまして、その意義、趣旨等を踏まえた適切な税制措置のあり方について検討を行う必要があると考えております。  したがいまして、会社分割が行われる場合におきます税制上の、今先生指摘の退職給与引当金あるいはその他の準備金等々の取り扱いにつきましても、こうした検討を行っていく中で定まっていくものと考えておりまして、企業会計あるいは商法会計がどういうふうになるのか、まだ現時点においてははっきりしておりませんが、したがいまして、その展望を述べることは困難でございます。いずれにいたしましても、私ども企業会計あるいは商法会計の検討の動向などを見きわめつつ、平成十三年度の税制改正において対応すべく検討してまいりたいと考えております。  なお、会社分割に係る税制の検討に当たりまして、会社分割はその形態、方法が極めて多様でございます。先生指摘のように、租税回避の手段として利用されることのないように、必要な措置は当然検討すべきであると考えているところでございます。
  90. 笹山登生

    ○笹山委員 展望が困難とは言いつつも、やはりこの辺、見切り発車でこちらの方が、本体が動いているということでございますから、早急な取り組みをお願いしたいと思います。  このような会社分割等によりましての労働者雇用不安、あるいはその辺の労働省の対応、これはどうなるのかということと、昨年の月刊フォーブスとかいう雑誌に非常に際どい見出しで、よいリストラ、悪いリストラなんという話がございまして、ではよいリストラは何かといいますと、長期経営計画を持ったリストラであると。  先ほどからも議論にいろいろございましたけれども、どうもリストラというのは悪い印象ばかりあるわけでございますけれども、本来のリストラというのは、いわば環境の変化に応じて企業構造をより柔軟なものに、そしてよりよいものに仕立て上げる、結果的には雇用の創出を生む、そういう前向きのリストラというものがあるわけでございますので、ひとつ、新しいリストラの形として、一流企業等が採用しているような、例えばカンパニー制とかあるいは早期退職制度、そういう、前向きなリストラといっては際どいのでありますけれども、そのようなものに対応した長期的な雇用政策の手当てをではどうするのかとか、あるいはソフトをどうするのかということも考える時期に来ているのじゃないかというふうに思いますが、これは大臣いかがお考えでございましょうか。
  91. 牧野隆守

    牧野国務大臣 何をもってよいリストラとするのか、あるいは悪いリストラかと。リストラというと大体悪いリストラというのが一般的な見方でありますが、元来リストラといいますのは、単に人員整理を意味するということではなくて、いわゆる本来の意味でのリストラクチャリングは、経済社会の変化に対応して企業再編整備を図っていくということでございまして、これは、長期的な我が国の経済社会の活力を高めるという意味から見ますとやむを得ないし、また場合によっては積極的にやらなきゃならないものであるのではないか、こういうようにも考えられるわけであります。  そういう点で、労働省といたしましては、一つは、そういう大きな変化の流れに対応して、新しい創業、新しい分野への進出に対して、労働移動等も含めまして、積極的にそれを支援するという前向きの仕事と、もう一つは、例えば今回の分割法のように、この場合にどのような形でそこに残られる雇用者を助けるか、一種のいわゆるセーフティーネット、これを片方できちっと整備する、そして変化の対応に応ずる、こういうことでございます。私どもとしては、片方では確実なセーフティーネットを構築するということ、技術研修だとかあるいは労働の移動だとかという形で前向きに一つの変化に対応していく、その二点を中心に置いて対処していきたい、こう考えています。
  92. 笹山登生

    ○笹山委員 次に、総務庁おいででございますか、連休前に平成十二年三月分の雇用失業情勢が発表されたわけでございますけれども、そのうち、数字について御質問したいわけでございます。  一つは、失業率につきまして、季節調整値と原数値、これの乖離がかなりあった。これは、私の調べでは、昨年五月の乖離と大体同じぐらいの乖離があったんじゃないか。もちろん、季節調整値というのは、でこぼこがあって、なだらかにするわけでございますから、どこかが引っ込めばどこかが出っ張るということでありますから、そのこと自体は意味はないわけでございますけれども、その辺の要因といいますか、ちょっと答えにくい質問でございましょうが、その辺の要因たるものがございましたらひとつお知らせいただきたいということ。  もう一つは、女子の十五歳から二十四歳の失業率というものが前年同月比〇・五ポイント減となった。常識的に考えれば、女子の氷河期というのはいまだ続いているという解釈であれば、どうも、この〇・五というのが非常に奇異に感じる数字である。未就職者は非労働人口にカウントはされていないんでしょうね。その辺の疑問点を率直にお伺いしたいのでありますけれども
  93. 井上達夫

    井上政府参考人 三月の労働力調査の結果による失業率の数字の関係でございます。  失業率が季節調整済みで四・九%と発表いたしました、これが、原数値五・二%程度に比べて大分低いではないかという御質問が第一点目だったと思います。季節調整値は、御案内と思いますけれども、原数値が季節パターンで動く場合に、その季節の変動要因を除いて、直近の変化や趨勢的な動向を正しく把握するという目的で計算し、公表しているものでございます。  具体的に御説明いたしますと、労働力調査の昨年十二月までのデータをもとにいたしまして、ことし一月から十二月までの各月に適用する季節指数というものをあらかじめ計算しております。この計算の仕方はいろいろございますけれども、現在労働力調査で採用しておりますのは、アメリカの商務省センサス局の開発したX11という方式でございます。国内の類似のものの季節調整は大体これで行われておりますが、そういう形で各月の季節指数を計算しておきまして、各月の季節調整済みの数値は、その原数値を季節指数でいわば除して決めるというやり方でございます。具体的に申しますと、ことし一月から十二月までのいわば季節指数は既に計算済みになっておりますが、この中で一番高い指数が三月の一〇五・九というもの、ちなみに、一番低いのは十二月の九一・三ということでございます。これの百分の一の形で原数値を割り戻す形になりますので、今御指摘のように、原数値よりもかなり低く出てくるということであります。  ちなみに、過去の系列で見ますと、今回が、季節調整値と原数値の差、〇・三ポイントばかりございますが、過去数回、〇・三ポイント程度のものはあるということであります。  それから、二点目の、若年の女子の三月の失業率が前年に比べて〇・五ポイント減となっている、この理由は何かという御質問でございますけれども、本年三月の、今問題の調査結果によりますと、十五歳から二十四歳の女性の完全失業者数は三十六万人で、前年同月に比べて三万人減少、したがって〇・五%の減となったわけでございます。  この内訳ですけれども労働力調査では、失業者を、なぜ失業になったかという理由別に、今まで就職していたけれども離職してまだ次の職につけない、いわば離職失業者と、新規の学卒者のように、これまで職についていなかったけれどもつこうと思ってつけない、二つに分けております。さらに、離職失業者の方は、自発的に自分でやめたグループと、やめさせられたグループ、非自発的なもの、それから……(笹山委員「簡単に」と呼ぶ)はい、わかりました。ということで、今の三十六万人が、前年に比べて三万人減少になっていますが、その内訳を見ますと、先生指摘のとおり、新卒の者につきましては去年よりふえておりますが、自発的な理由による退職者が減ったということで、トータル的にはマイナス三万人の減少ということになっております。  以上でございます。
  94. 笹山登生

    ○笹山委員 質問時間が迫っていますけれども、畠山先生にちょっと御了解をいただき、もう一点だけ労働省にお伺いしたいと思います。  景気後退の調整の過程におきまして、やはり二つの要因、企業サイドからいえば総人件費の調整、そして雇用者数は大体これで決まりますね。ところが、それの掛け算の相手たる、労働時間については統計があると思いますけれども、一人当たりの賃金についてはどうなっているんでしょう。いわば企業が人件費を、雇用数によらず、例えば賃金によって調整した、その辺の統計というのは、お聞きしましたところ、労働経済動向調査に回答欄があるというようなことで、なかなかその辺の実態というものがつかめていないんじゃないかと。また、こういうふうにリストラの形態がいろいろありますと、日本の雇用風土というものがかなり激変している中におきまして、例えば失業者数、あるいは先行指標としての所定外労働時間あるいは新規求人数、あるいは遅行指標としての雇用保険受給者人員とか、そういうようなものの有機的な一つの再編によって、今の実態に即した、実態を把握し得る一つのインデックスというものをやはり再構築する必要があるんじゃないかという問題提起をしたいと思います。いかがでございましょうか。
  95. 松崎朗

    松崎政府参考人 二点御質問でございました。  一点目の、雇用調整の方法でございますけれども、これは、御指摘のように、労働省でやっております労働経済動向調査というのがございまして、そこで、雇用調整の実施の状況、それから実施の予定、それからその方法等について聞いております。これはかなり詳しく聞いておりまして、残業規制とか、新規採用の抑制でございますとか、希望退職の募集、解雇でございますとか、それから、先生指摘のございました賃金等の労働費用の削減といった項目について聞いておるわけでございまして、かなり詳しく、正確に把握できているのではないかと思っております。  ちなみに、今までの調査におきましても、やはり、生首を切るのは少なくて、賃金等の調整といったところで雇用調整といいますか、総費用を抑えるといった傾向は、今回ばかりでなくて、過去の例からも、こういった景気後退期に多く採用されているという状況でございます。  それから、もう一点でございますけれども、これも御指摘のように、雇用情勢をあらわす指標、いろいろございます。これは、経企庁の方でやっております、景気動向を判断する指標として、雇用関係で申し上げますと、先行指標としては新規求人数、一致指標としては所定外労働時間、有効求人倍率、また遅行指標としては常用雇用者数、完全失業率、こういったものが採用されて、従来から継続的にやっております。  それで、こういった指標も、現在の情勢というものを割ときちんとあらわしておりまして、景気が底を打ったというふうな状況に対しまして、やはり、所定外労働時間でありますとか有効求人倍率は従来よりよくなっておるという現状があるわけでございますけれども労働省では、こういった指標はいろいろな性格がございますので、これを正確に見きわめた上で、総合的に判断をして、雇用情勢の現状、今後の見通し、そういったものを判断しておりますが、今後とも、情勢の迅速、的確な判断といいますか把握に努めていくということにしております。
  96. 笹山登生

    ○笹山委員 終わります。ありがとうございました。
  97. 赤松広隆

  98. 畠山健治郎

    ○畠山委員 前回に続きまして、主として、労働大臣の定める指針についてお尋ねをいたしたいと思っております。  まず、前回の私の質問の、労働契約承継に付随して退職給与引当金についても分割会社に当然引き継がれることはとの質問をいたしましたが、財務会計において引当金を積み立てられているならば継承されるという労働省答弁でありましたが、この答弁は必ずしも適切ではなかったのではないだろうかと考えます。  そこで、税法上、退職給与引当金を積み立てているかいないかは会社の財務会計上の問題であって、新設にしろ吸収にしろ会社分割に伴う債務を履行するに足る資産を保証しなければならない以上、労働者の債権である退職金も労働契約の継承とともに引き継がれてしかるべきではないかというふうに考えますが、いかがですか。     〔委員長退席鍵田委員長代理着席
  99. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先般の質疑でお答えいたしましたが、改めてお答えさせていただきます。  退職給与引当金の設定は法律により強制されているものではございませんので、労働契約承継されるからといって退職給与引当金が当然に承継されるものとはならないということでございます。  しかしながら、今先生が御指摘のように、労働契約承継に伴いましてその一部を構成しております退職給与を支払う義務承継されますので、承継した会社におきましては、公正なる会計慣行に従ってその労働者に係ります退職給与に見合った退職給与引当金が設定されて、また、承継される資産よりも負債の方が多いような分割が認められないことから、承継した退職給与支払い義務に見合った資産が承継されるのが通常である、こう考えます。
  100. 畠山健治郎

    ○畠山委員 前回の私の求めに対して、昨日の理事懇談会で担当課長に指針についての中身の柱だけお尋ねをさせていただきましたが、あれでは中身がよくわかりません。ひとつできるだけわかりやすく御説明をいただきたいというふうに思います。
  101. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 承継法案の第七条で労働大臣が定める指針となっておりますが、その中身につきまして、現時点考えていることを例示的に申し上げますと、一番議論になっております、承継される営業に主として従事するあるいは従として従事する労働者の具体的な判断方法、これはまず指針で明らかにしなければならないと思います。それから、分割計画書等で承継させる労働者の範囲を明確にすることが必要でありますが、その労働者の範囲を特定するために分割計画書ではどういう記載方法があるのか、どういうふうに書いたらいいんだ、こういう点もはっきり指針でさせなければならないと思います。  その他幾つかございますが、今後各方面からまた御議論があると思いますから、そういうものを勘案して決めていきたいと思います。  二つだけではまだ少ない、もしこういうことでございますと、例えば、分割会社分割計画書等に労働契約承継を記載するということになりますが、その場合に承継させられる労働者当該本人の意見をあらかじめ聞くこと等々についても望ましいことではないかとか、そういうことも指針に書くことは十分検討の余地があろうかなということで今考えております。
  102. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ただいまの説明では、労働契約の継承における具体的な内容は十分浮かんでまいりません。  そこで、少し具体的にお尋ねをいたしたいというふうに思いますが、本法案第七条では、労働大臣は、この法律に定めるもののほか、分割会社及び設立会社等が講ずるべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の継承に関する措置に関し適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる、こううたっておりますよね。  この規定のもとになっている本年二月の企業組織変更に係る労働関係法制等研究会報告では、会社分割における労働関係の継承につき実務において適切な処理を行うことができるよう、会社分割に際して労使が留意すべき事項や実施することが望まれる事項等について法律に基づく指針を策定することも必要、こう指摘をしておりますよね。  この七条は、答申に基づき、言葉こそ若干の違いはあるものの、そのことを意味しているというふうに理解してよろしいのですか。
  103. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 研究会の報告書に基本的に沿ってこの第七条の指針の性格を考え、その内容を決めていきたいと思っております。
  104. 畠山健治郎

    ○畠山委員 そこで、お尋ねをいたしますが、まず、答申に言う労使が「実務において適切な処理を行うことができるよう、」とある「実務の適切な処理」とは一体何なのか。また、労使が留意すべき事項あるいは実施することが望ましい事項等とは一体何を指しているんですか。
  105. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 前段につきましては、できるだけ客観的でありかつ明確な基準、判断のよりどころを決めるということで、先ほど申しましたようなものを考えております。  それから、望ましいという点につきましては、先ほど申しましたように、あらかじめ関係する労働者の意見を聞くとか、その他幾つかあろうかと思いますが、その点は当委員会の御審議その他いろいろなものを踏まえて我々は検討させていただきたい、こう思っております。     〔鍵田委員長代理退席、委員長着席〕
  106. 畠山健治郎

    ○畠山委員 よくわかりません。  そこで、私なりに今の答弁を整理すれば、会社分割に伴う労働契約の移行に際しての労使協力、あるいは事前労働者の意向を聞くこと、つまり労使自治による円満な契約承継がこの七条の基本となる、こういうふうに理解してよろしいですか。
  107. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 指針をつくる目的は、この会社分割に伴う承継法案を的確に施行する上で分割会社設立会社等に守っていただきたいこと、やっていただきたいことを中心に書くということでございますので、円滑な会社分割のためには労使の十分な意思疎通理解協力というものが大事だろうと思います。  そうした意味におきまして、先生の御指摘基本的にはそういうことでありますが、指針の法律上の位置づけ、会社分割に伴って労働契約承継に関していろいろ決めていることを円滑に行うという範囲の中でどこまで書けるかという問題がございまして、その辺は私ども、なるべく広く、わかりやすく、実務に役立つようなものにしたいと思っておりますので、その辺の努力を十分させていただきたいと思います。
  108. 畠山健治郎

    ○畠山委員 そうしますと、労使自治が文字どおり発揮される条件が指針や省令で整備されることが必要と考えます。具体的に言えば、使用者側と労働者側とでは経営情報に関して極めて大きな格差があります。労働者側にとってこのような極めて不利な条件を放置したままでは、会社側が定める期間内に労働組合には書面で交付しても、労働者側は十分検討することはできません。  その意味で、会社経営実態の開示、分割後の経営見通しを示すこと、そうした情報開示を基本に、労使が留意すべきことや実施すべきことを具体的に指針や省令に明記することで初めて労使自治の基盤が整備されたということになりはしないだろうかな、そう考えますが、いかがでしょう。
  109. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 指針で書くべきことは、労使が十分話し合って、円滑に会社分割を推進する上で必要な情報、役立つ情報等は当然関係する労働者に提供されるということも大事であろうと思います。  その場合に、そうした情報提供が確実なものでないと、情報提供することがかえって混乱を招くということがございますので、そうした点との兼ね合いで、どこまで情報が幅広くかつ正確なものとして提供できるか、それとの兼ね合いで指針の書きぶりを考えなければならない、こう思っておりますが、先生の御指摘の御趣旨は十分体してまいりたいと思います。
  110. 畠山健治郎

    ○畠山委員 あえてもう一言だけ申し上げておきたいというふうに思いますが、やはり、情報にこんなに大きな違いがあって労使対等で議論をしろといったって始まらないと思うんですね。したがって、当然、情報についても共通基盤に立った議論でなければ労使対等の議論にはならないというようなことを改めて申し上げておきたいというふうに思うんです。  さらにお尋ねをいたしますが、本案に言うところの主たる業務あるいは従たる業務とは一体どう解釈すればいいんですか。この前からも議論になっておったわけですが、改めてもう一度お聞かせいただきます。
  111. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 その基準につきましては、労働省令で定めるということになっております。  現時点で私ども考えておりますことは、一つは、分割計画書を作成する時点でその労働者が、分割される営業との関係で、その営業に主として従事していたかどうかということが基本的には大事であろうと思います。  ただ、分割計画書等の作成時点だけで判断するということもいろいろ問題が生じますので、計画書作成時点以前の一定期間をとりまして、その一定期間内で、分割される営業との関係でどういう就業状況にあったかということもあわせて考えなければならないと思います。  そのほかにも幾つか考える要素が出てくると思いますが、現在、まだそこは検討中でございまして、これも、この基準をつくる際には関係方面の御意見も十分参考にしながらつくっていきたいと思いますので、またいろいろな御意見等々も伺ってまいりたい、こう思っております。
  112. 畠山健治郎

    ○畠山委員 今のような説明は、労働省にとっては説明しやすいことでありましょうが、営業と労働者の有機的一体性論を現実に適用する場合、今のような説明では、そう簡単に線引きはできません。  例えば、現在の企業雇用、人事管理の基本は、特定部門のスペシャリストではなくて、ゼネラリスト重視であることは御案内のとおりであります。ということは、企業内の人事として、多様な部門を経て上がっていく、これが一般的な人事管理であり、ある時期にたまたま分割部門に配置されていることによって主たる業務ないしは従たる業務と区別することが果たして妥当であるのかどうか。従たる業務に関しては労働者異議申し立てがあるが、事は、法律的で定める以上、指針において明確な基準を定めてしかるべきではないかと考えますが、いかがですか。
  113. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生の御質問趣旨は、主に、主たる業務に従事する者の基準の問題に係ろうかと思います。  私どもは、包括承継という形で法律構成され、雇用労働条件が維持されて、主たる業務に従事する方々は継承される。その場合に、現にある営業が包括的に移るわけですから、承継された後のいわば仕事、これはかなりの確度で現在の仕事につくことが想定されるということで、企業内の人事異動で現在の仕事にいつ移ってきたかという問題はあろうかと思いますが、現在の仕事についている状況がそのままそっくり移るということであれば、これはかなり自然なことであり、特段の問題はないというふうに私ども理解をしております。
  114. 畠山健治郎

    ○畠山委員 新設分割にしろ吸収分割にしろ、経営者側としては十分な期間と経営戦略の上に実行することは当然だと思うんですね。であれば、採算部門を残すかあるいは不採算部門を残すか、さまざまな分割形態が考えられます。  同時に、その場合、企業にとって都合のいい労働者あるいは不都合な労働者を選別し、一定期間をかけて配置転換をしつつ排除にかかることは目に見えておることであります。  そうした場合、継承される不利益あるいは継承されない不利益から労働者保護するために、配置転換の期日に関しては少なくとも一年以上さかのぼること、あるいは過去の業務歴との関係を重要な基準とするなどの指針があってもしかるべきではないかと考えますが、いかがでしょう。
  115. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先ほども申し上げましたが、分割計画書作成時点以前一定期間における当該本人の就業状況を勘案しなければならないと申し上げましたが、その一定期間のとり方については、これは多方面から十分議論をして決めなければならないと思います。その際に、先生のおっしゃった一年という御意見もございますし、いろいろな意見があると思いますので、その辺は十分議論をした上で決めていきたい、こう思っております。
  116. 畠山健治郎

    ○畠山委員 いずれにしても、会社分割については、労働契約の継承問題は、結局は譲渡企業使用者のなす整理解雇かまたは譲り受け企業使用者のなす解雇の問題に帰するのであり、そうした解雇の当否についての問題処理に当たっては、前、事後の労働者雇用保護に関しては、労働契約継承にかかわる論点は全く重要な意義を持つものではない、むしろ、労働契約の帰趨の問題は、これを解雇の一形態とも考えて、整理解雇、その他の解雇に関する法理との理論的接合が重要な課題とされるべきであるという学者の指摘がございます。特に、本案は会社分割の際の労働契約の継承に問題を絞り耳目を閉ざしていることを見ますと、ただいま申し上げました学者の指摘は当を得たものと考えます。  雇用保護立場にあるべき労働省として、このことをどうお受けとめになりますか。
  117. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今回私どもが、会社分割時点におきます労働契約等承継のルールを決め、法案としてお出ししておりますのは、その部分については、法制的な面でいわば空白になっている部分がある、あるいは不明確なところがあるということで、法制的に明確化したり新たに規定したりしたところであります。  したがいまして、先生指摘の、分割した後の問題とか前の問題につきましては私どもは幅広く検討いたしましたが、現行の法制、判例法理において十分にルール化がなされ、現実的にも適切な処理がなされていると判断した結果でございます。
  118. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間になりましたから、最後に、本案とは直接的には関係はないとは思いますけれども企業分割に伴って労働者解雇が発生することが十分予見されることは間違いありません。  そうした観点からいたしますと、ILO百五十八号条約、すなわち使用者の発意による雇用の終了に関する条約は、なぜ政府は批准していないのですか。批准の意思があるならば、その時期はいつごろといたしたいと思っておりますか。明確にされていただきたいと思います。
  119. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 ILOの百五十八号条約でございますが、先生指摘のとおり、労働者使用者の発意によって雇用終了させる場合の保護に関する条約でございます。  この条約、いろいろな問題点がございます。例えば、その第三部におきまして、労働者代表に事前に情報を提供するといったようなことが書いてございますけれども、我が国の法制上はそういう規定はございません。その他、我が国の法令上、必ずしもこの条約の内容が担保されている状況にございませんので、慎重に検討を加えていくということになるわけでございます。  ただ、基本的には、ILO条約は、ILOに加盟している国ができる限り批准する努力をすべきであるという義務を負っているものでございまして、そういう観点から今後も検討してまいりたいというふうに考えております。
  120. 畠山健治郎

    ○畠山委員 最後に一言だけ要望しておきたいというふうに思います。  いずれ国際競争力とか生き残りというようなことになりますと、言ってみれば弱いところいじめという格好で労働者に集中しておるわけですよね。それを国際連帯の中で何とかしなきゃいけないというのがILO条約なわけですから、労働省はもっと積極的にILOとのかかわり合いを強調していただきたい、このことを最後に申し上げて終わります。
  121. 赤松広隆

    赤松委員長 寺前巖君。
  122. 寺前巖

    ○寺前委員 現在の雇用情勢は戦後最悪の状態が続いています。最近では、合併による大規模な人減らしや、営業譲渡による分社化に伴うリストラを強行することが横行して、法制度の面でも、小渕内閣以来その支援策が強められ、労働者雇用が危機にさらされています。商法改正によって新しく会社分割の制度がつくられようとしていますが、会社組織が変わることで労働者雇用に不安が生まれる、それを防ぐために、分割後の労働条件を低下させないようにすることが政府提案の労働契約承継法に求められているところであります。  ところが、この法案はわずか七条しか書いていませんが、省令や指針にゆだねられている分野が非常に多うございます。一体これで労働者雇用労働条件が守られるんだろうか。私はいろいろな点で疑問を感じますので、まず三点聞きたいと思います。  第一番目に、この法案の第二条の第一項で、設立会社承継される営業に主として従事する労働者については、分割計画書等に労働契約を設立する会社等が承継する旨の分割計画書等中の記載の有無を書面により通知するということになっております。  労働者がこれから移籍しようとしている新会社について、資本金や労働者数、そして賃金労働条件や退職金、就業場所など今までと変わらないのだろうか、生産規模や経営の将来の見通しはどうなるのだろうか、できれば新会社の資産や財産状況など転籍先の会社の情報について知りたがっているわけです。指針でそういうものを書くようにということを検討しているのでしょうか、局長さんにお聞きしたいと思います。
  123. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 労働者に通知する書面の記載内容につきましては、先生指摘のように、「その他労働省令で定める事項」、こう書いてあります。  その他労働省令で定める事項として、現在私どもがいろいろ検討しておりますが、現時点で申し上げることは、例えば、会社分割制度におきまして、いわば商法の方の規定におきまして、株主総会等の会日の二週間前までに本店に備え置かれることとされている分割計画書等、これにおいて明らかにされている事項が幾つかあります、そういう事項のうち、分割後におきます労働者が従事すべき業務など労働条件に関する事項は、できるだけこの書面の中に盛り込むことが適当ではないかと思います。また、労働契約承継先である会社の業務等も会社に関する情報の一部として盛り込むことを考えております。
  124. 寺前巖

    ○寺前委員 新しいところに行くんだから、私が言うたように事細かく、きちんと書くようにしなかったら不安が残る。指針は一体どういうものになるだろうかという期待にこたえるように、まず明らかにしてほしいということを要望したいと思います。  第二番目に、この法案で本人の同意権を奪ってしまうというところから生まれてくる問題があります。分割会社に在籍している段階で、分割計画書に書かれる前にあらかじめ配置転換したり、あらかじめ在籍出向させるなど、設立会社承継される業務部門に配置しておいて、分割計画書によっていわゆる泥船と言われる設立会社に移籍させられるということになると、問題が出てくるわけです。労働組合の役員や活動家などを意図的に会社から排除することを可能とするということにもなるわけです。このようなことをとめることができるような措置考えているのですか。どうでしょう。
  125. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今先生、いわゆる泥船という例えがございましたが、今回の会社分割制度そのものにおきまして、商法の方の規定の中におきまして、会社分割会社の計画的な倒産等に利用されることがないように、分割の結果、各会社が負担すべき債務の履行の見込みがなくなるような会社分割は許されないとする規定がございます。具体的には、商法第三百七十四条ノ二第一項三号等々でございます。ということで、当初から倒産が予想されるような、あるいはいわゆる不採算部門というようなものについて会社分割を行うことは許されていないと私どもは認識をいたしております。  また、私どもは、承継される営業に主として従事する労働者であるか従として従事する労働者であるかの判断基準としては、先ほど申しましたように省令で基準を定めますが、さらに指針におきましても実際の運用において混乱の起きないような明確な定め方をしていきたいと思っておりますので、先生指摘のように、制度の乱用と申しますか、そういう事態は防止できるものと考えております。
  126. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、労働協約承継等についての規定が設けられていますが、それによると、分割会社労働組合との間で締結されている労働協約については、労働組合組合員である労働者分割会社との間で締結されている労働契約設立会社等承継されるときは、分割の効力が生じたときに、設立会社等労働組合との間で当該労働協約と同一の内容労働協約が締結されたものとみなすとされています。  しかし、労働協約承継しようとしない設立会社の場合には、みなし規定によって、果たして設立会社労働組合労働組合員としての存在を認め、安定性が期待できるのだろうか。会社分割によって労働基本権が弱められないのか心配が生まれます。みなすことにとどまらないで、明文化した労働協約を所定の形式で文書化することを指針で明確にする必要はないのでしょうか。どのように対処するつもりですか。
  127. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 法案の第六条三項で、先生指摘のように、「同一の内容労働協約が締結されたものとみなす。」こう書いております意味は、先生のお言葉をおかりすると、悪質な事業主自分はみなさないと言ったところでそれは意味がなくて、まさにみなされてしまうということでありますから、文書をもって新たに同一内容の協定を結ぶこととか、あるいは先生おっしゃるように指針で文書化することをはっきりすべきであるということと、意味内容といいますかは、それとの差別はないわけでありまして、法文でこれだけはっきり書いてあることは、みなさないとか、そういう解釈の余地がない、一番強硬な、はっきりした規定だと私は考えております。
  128. 寺前巖

    ○寺前委員 労働者の不安というのは、何しろ同意権を奪ってしまうのだから、それは不安というのは大変な不安を持つのですよ。自分がもともとここの会社にと就職したところと違うところの姿になってくるんだから、それを意図的にやられるんだから。だからそういう意味では、慎重にも慎重によく押さえていただくように、指針にゆだねるとか、省令にゆだねると言うた以上は、そこの責任ある措置をぜひともやっていただきたいと思います。  第二番目に、基本的な問題について、まず労政局長さんにお聞きしたいのです。  この法案目的に、「会社分割が行われる場合における労働契約承継等」で商法などの特例を決めて労働者保護を図るとしていますけれども基本法であるところの民法の六百二十五条の第一項には、「使用者ハ労務者ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス」と書かれています。労働者は皆同意権を持っているわけです。この権利が労働者保護しているのです。なぜこれを変えて本人同意が要らないという立法になるのか、これはわからぬ問題なんですが、いかがなものでしょうか。
  129. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 今回の商法改正という形で制度化されます会社分割制度は、法的性格が合併と同じ包括承継という法的性格で構成されております。したがいまして、先生がおっしゃられました、分割される営業に主として従事する労働者、これは分割計画書にまさに書かれる人のコアでありまして、商法で、分割計画書等に記載された権利義務は包括的に設立会社等承継されるという基本的な規定がございます。したがいまして、商法改正と一体となって提案しております労働契約承継法におきましても、主たる労働者については全く同一の構成になっております。  私どもがあえて商法の特例を定めた性格があると言っておりますのは、分割計画書で、分割される営業に従として従事している労働者であって、計画書に記載されたものは、包括承継という法律構成上、まさに本人の同意なく、有無を言わさず承継されるということになりますので、その点につきましては、労働者保護という観点からいかがなものかということで、商法の包括承継という法律構成の中であえて異議申し立て権をつけたということで、私どもは、民法六百二十五条を根っこから剥奪したとか否定したとか、そういうことではなくて、まさに制度の基本法理からくる問題を、むしろ我々は保護観点から特例として修正しているというふうに理解をしております。
  130. 寺前巖

    ○寺前委員 分割して新しい姿のものになっていくんだから、もともと自分が就職したところと変わっていくんだから、そこの経営実態がどういうふうになっていくんだろうかその他について、労働者としては、それでよろしい、私はその会社承継されるんだから行きますというわけに、無条件にゆだねるわけにはいかない事態が発生するんですから、私は、それですべて同意権を奪ってしまうことはやはり問題だと思う。  これは、明らかに、法をつくってくる過程の審議の中でも、会社分割して運営していくためには、早いこと処置をするやり方は何かとしてこの問題が出てきていることが論議されているじゃありませんか。事実の経過から見ても、この問題は非常に重大な問題だと私は思っているのです。  そこで、基準局長に聞きますが、基準局には「厳しい経済情勢下の労務管理の留意点」というこんな、リーフというんですかパンフというんですか、ずっと前から置かれていますよ。これについて、前に私は、最高裁の判例を、中間段階の到達点もあるんだから、それもきちっと入れなさいやと言うて改善をさせてきた経過を私もよく知っています。  そこで、そのリーフの四ページというんでしょうか、最後のページのところに、「転籍について労働者同意が必要であるとされた例」と書いて、「労働契約の一身専属性にかんがみ、労働者の承諾があってはじめて転属が効力を生ずる」んだ、「最高裁第一小法廷 昭和四十三年」云々と書かれています。  さて、局長さんに聞きますが、わざわざ「労働契約の一身専属性にかんがみ、」云々と書いてあるこの文書、最高裁が決めたこの判決、これは何でしょうか。民法の六百二十五条の第一項が確認されているんじゃないですか。労働省としてそういう指導をやってきたわけでしょう、司法の最高の到達点として。  そうしたら、今わざわざ別項を起こさなければならないということとの間には、どういう感じになりますか。わざわざこれを言うているということは、今の労政局長の話と違ってくることになるじゃありませんか。いかがなものでしょう。
  131. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 転籍の一般論ということになろうかと思うのですけれども、判例、学説とも、先生指摘の判例もその中にあるわけでございますけれども労働者同意が必要であるというふうにしておりますし、実務上も労働者同意を得て行われているというふうに理解しております。  そういう意味で、一般論としては、転籍について、こういった状況の中で十分保護が図られているというふうに考えております。
  132. 寺前巖

    ○寺前委員 一般論として考えていますと言ったって、転籍というのは、一般論でも何でもない。転籍のときはこうだよと言って、ちゃんと法的にも、判例的にも確認をしてきたもので、何であえて一般論とおっしゃるのかな。私には不思議でかないません。  そこで聞きますけれども、実は、おとついの日におたくの方に、新しい「厳しい経済情勢下の労務管理の留意点」というのをくれやと言うた。そうしたら、色は同じだけれども中身がちょっと変わってきておる。  今言うたところの転籍について云々の例というものが、どこへ行ってしまったんだろう。今まで言うておきながら、何や世の中の調子が違うようになってきたんで、これは変えたんですか。今までのが間違っておりましたので、これは変えましたんかいな。一体どういうことになっているんですか。
  133. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 このリーフレットはそもそも、一般に労働基準監督署にいらっしゃった方の御相談に際しまして、必要な情報を簡明に提供するという趣旨のものでございますが、その任に当たります担当者が、その後、労働基準法の改正によりまして個別紛争について御相談申し上げる体制になりまして、さらに詳しい判例等の知識を前提にしているわけになりました。そういう意味で、これとは別に主要な判例集をつくっておりまして、それをもとに御相談申し上げているということになります。  したがいまして、この部分を削除したというよりは、その部分を別冊にして充実したということになっているわけでございます。
  134. 寺前巖

    ○寺前委員 冗談じゃないよ。歴然と、表紙は一緒、ちゃんと一番後ろにお問い合わせ先を書いておるのも一緒。そこでちょっと違うてくるのは、こっちは労働基準局と書いてあるのが、都道府県労働局と。ああ、これは、ちょっとこれから変わってくる機構で書いておるなと。だから、一番新しいものは、明らかにその点を、転籍について重視して取り扱っていくという姿勢を投げ捨てたなというふうに私は見ざるを得ぬやないか。間違うてへんというのやったら、胸を張ってちゃんと残したらええし、いかぬと思うんですよ、こういうなし崩し的態度というのは。  間違うておるんやったら間違うておると堂々とここへ来て言いなよ。それは言わへんわ、それで、事実は国民の間に指導性を発揮しないということをやる。大臣、どう思いますか。
  135. 牧野隆守

    牧野国務大臣 説明等異なっておれば問題でありますので、直ちに修正をいたします。両方の説明が食い違っているようであれば、等々があれば、きちっと整合性を求めます。
  136. 寺前巖

    ○寺前委員 だから勉強してくれや。初めて勉強してくれやと言わせてもろうとるのやから、きちっと頼むで。  その次に、最近新聞を見ていると、こんなことが修正案をめぐって書いてあった。雇用契約を分割計画書に書き込むべきものとして明文化せい。もう一つは、労働組合との事前協議を自民党が応じなかった。  事前協議なんて、労働組合事前協議をやるというのは当たり前のことやと。憲法上そうなってへんか。団結権、団体交渉権、ストライキ権、三権はちゃんと憲法で保障されている。労働組合をつくって、そして労働条件の問題について語り合うというのは、憲法上保障されている。その憲法上保障されていることをちゃんと、新しい事態がつくられるんだったら、事前に協議するという権限は労働組合が持っているんだとちゃんと法律に書いて、胸を張って語ったらどうなんだ。事前にあらゆる情報が公開され、労働者に対する事前の協議は当然守れよと。  当たり前のことを言うていると思うんだけれども、これはだれが答えてくれますのか。そんなことを法律に書かなかったらあかんやないか、当たり前のことだ。だれが答えてくれますのか、これは。
  137. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 先生指摘の団体交渉権につきましては、労組法ではっきり法律上の権利として書いておりますし、その他の情報開示だとか労使協議という問題は、憲法上の労働者の権利という形でストレートに出てくるとは私はなかなかちょっと理解できませんが、それは別にして、今回の承継法案の中でいろいろ御議論があることは確かでありますし、労使協議の問題、情報公開の問題もあります。  この点につきましては、残念ながら、今回の承継法の中で立法化すべきという御意見がございますが、私どもとしては、それはなかなか難しい、あるいは不適当であるというお話で来ておりまして、そこにつきましては引き続き、必要なものは議論してさらなる検討を深めていくことが必要ではないか、かように考えております。
  138. 寺前巖

    ○寺前委員 検討するというんだから、それでは、新聞に書いてあるように拒否したという態度じゃないんです、こういうふうに理解しましょう。  最後にお聞きしますが、現実に行われている企業再編成には、企業分割だけではありません、合併や営業譲渡があるんです。それによってリストラ、人減らしと労働条件切り下げが行われていって、泣いている人たちがたくさんおるんです。そこで私は、もう時間が限られてきておりますので具体的にお聞きします。  牛乳やジュースなどの紙パックを製造するテトラパック・グループ会社というのがあるんです。その生産部門を担当している西神テトラパックというのが神戸にありますが、御殿場テトラパック、静岡ですね、それに本社機構的役割をなしている日本テトラパックの三社があるんです。一〇〇%外資企業と言われておりますが、兵庫・西神工場を二〇〇一年末に操業停止する、閉鎖する。かわって静岡・御殿場市に東海テトラパックという新会社を設立して、西神工場の最新鋭生産設備を移して、二〇〇二年から本格生産をするという。  会社からは、皆さんに何を言われているかというと、一番、西神テトラパックを退職して、遠隔地に新設される新会社に応募してくださいよと。二番、会社は、新会社労働条件を切り下げることになることを従業員には説明しているけれども、組合との交渉はまだできておりませんがと。三番目に、個人面接を開始するとしていますけれども、新会社への転籍によって賃下げ、労働時間延長がいろいろ言われてきていますがというような話で、この工場労働者二百人のほとんどが兵庫出身で、定年までこの工場で働けると思って、それを前提にして雇用契約を結んで今日まで来ているのに、ええっという姿になっている。  御存じのように、神戸は、震災の結果、中には二重ローンの支払いに追われている労働者もおるわけです。住宅ローンや老人を抱えて静岡へ移れと言われても困難だという事態にも直面します。家族も泣いています。  こういう条件のもとにいる労働者にとっては、勤務地が遠隔地に変わるというような労働条件の大幅な変更は、解雇を言われたのと一緒なんですね。要するに、新しい会社に行けと。営業譲渡をやっていく、会社はそうかもしらぬけれども、場所が変わるということは、事実上解雇になっていくんだ。会社は転籍を求めているけれども、本人同意が必要だといっても、同意しなかった場合には、工場が閉鎖されるので、事実上の解雇になっていくじゃないか。  業界シェアは、紙容器全体で九八年で四七%、西神工場で製造している百円物であるブリック容器は実に九四%。西神テトラパックの場合は、商工リサーチのデータによると、九九年三月決算期で二百十億円の売り上げ、利益は税込みで二十八億円強という優良企業です。テトラパック・グループ会社会長さんは、九七年十二月現在は、日経連会長をやっておられる山路さんということになっています。  こんな利益を上げている外資会社に、本人同意なしに別会社をつくって行かせるということが許されるんやろか。日産にルノーが入り込んできたときに、大臣はえらいこっちゃと言うて現場にまで乗り込まれたようですけれども、外資系の、こんな黒字の、安定した事態が、そこの地域の人たちを長年にわたって雇っておきながら、しかも、今震災で泣かされている、二重ローンもあるという事態の中で、おい、ちょっと待ってくれよぐらいの指導があってしかるべきやと思うんですが、労働省、こういう問題についてはどうしてますのか。
  139. 野寺康幸

    ○野寺政府参考人 ただいまの御質問の前に、先ほどのリーフレットの判決部分は、こういった冊子の形でより充実してあるわけでございます。  今の御質問でございますが、西神テトラパックにつきましては、二〇〇二年から御殿場に新会社をつくって、そちらに従業員が転籍していくということでございます。  転籍に当たって、労働時間、賃金等の労働条件をどのような水準にするか、基本的にはこれは個別労使間で十分話し合いをなされるべき問題というふうに考えております。その上で、個々の合意を得られまして解決されるということが重要であるというふうに考えております。  労働省としましては、こういった労働者使用者の間の労働条件をめぐる問題につきまして、裁判例等の情報を十分提供しながら、合理的な解決が図られますよういろいろな支援をしたいというふうに考えております。
  140. 寺前巖

    ○寺前委員 いろいろな支援をしたいと言うが、どっちの支援をするのかというのが問題ありますのやで、これはやはり。  それで、九二年の合理化の一環として行われたパート組合員の雇いどめをめぐって、ストライキをやった、そのことをめぐってトラブルがずっとある。委員長不当配転という問題をめぐって地労委、中労委で問題になり、最高裁にまで来ている、ほとんどどの段階でも組合の勝利になっている。それから、脱退勧奨への損害賠償もほとんど全面勝利で、神戸地裁、大阪高裁が終わって最高裁に来ている。三役不当処分、不当配転は、九九年十一月組合完全勝利命令が兵庫地労委で出ている。一連の、会社が大変なことをやってくれているねという内容の上に今日があるんだ。  したがって、そこには組合は連合系の組合と全労連系の組合と両方がおりますが、みんな兵庫県出身の人であるだけに、ちょっと待ってくれよ、このやり方はとみんな言い出しているんだから、私は、労働者立場に立って、労働省というのは、待ってくれよという立場に立たないかぬじゃないだろうか。  そこで、二番目に、設備の御殿場への集中のための西神テトラパックの解散は、今言いました不当労働行為のこれまでの経過から見ても、結果として偽装的な解散になるんじゃないだろうか、テトラパックのグループ会社は実態としてはなくならないんだから。このような営業譲渡を伴う偽装解散とも言うべきものを許すならば、これまでも不当労働行為で争っている労働組合を抱えているということで、その会社を解散して、本人同意もなく別会社に設備を持っていくという勝手なことを許していくということの道に走ってしまうことになるやないか。だから、これが今、分割の問題と違って、譲渡をめぐる問題に対するところの結果になってきている。  こんなことを見過ごしておったら、全国至るところでどこでもこういうやり方がこれから行われることになるんじゃないだろうか。法制度上も研究をしなけりゃいかぬのと違うかと思うんですが、もう時間になりましたので、だれがお答えいただけるんですか、譲渡問題について御検討くださいという話。
  141. 澤田陽太郎

    澤田政府参考人 営業譲渡問題につきましては、これまでたびたび申し上げたとおり、既存の法律において特定承継という法的性格のもとで合理的な解決が図られていると私ども認識しております。  ただし、企業再編の中で、いろいろ裁判に持ち込まれる例、労使紛争が起きる例が起きておりますので、そういう点につきましては、引き続き我々も注意をして事態をよく把握し、どういう問題が法律的に本当に新たに起きてきているのかいないのか、どういうことが検討課題として新たに出てくるのか、こういうことをよく研究していきたい、こう思っております。
  142. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、今のテトラの話は、あなたが、研究していくんだ、現行法のもとにおいてやられると言うんだから、そのことの実際上の成果を見守りたいと思う。なかったら、ちゃんときちっと法律をつくって守ってくれなんだら困るのやで。そこまで責任をちゃんと持ってこの仕事に対応していただきたいということを申し上げて、発言を終わります。ありがとうございました。
  143. 赤松広隆

    赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十四分散会