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1999-12-02 第146回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月二日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  十二月一日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     森田 次夫君      竹山  裕君     森山  裕君      中島 眞人君     中曽根弘文君  十二月二日     辞任         補欠選任      中曽根弘文君     中島 眞人君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         風間  昶君     理 事                 北岡 秀二君                 塩崎 恭久君                 竹村 泰子君                 魚住裕一郎君                 平野 貞夫君     委 員                 岩崎 純三君                 佐々木知子君                 中島 眞人君                 服部三男雄君                 森田 次夫君                 森山  裕君                 江田 五月君                 小川 敏夫君                 角田 義一君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君                 松田 岩夫君        発議者      橋本  敦君    衆議院議員        発議者      杉浦 正健君        発議者      中井  洽君        発議者      達増 拓也君        発議者      上田  勇君        修正案提出者   北村 哲男君        修正案提出者   上田  勇君    国務大臣        法務大臣     臼井日出男君    政務次官        法務政務次官   山本 有二君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        警察庁長官    関口 祐弘君        警察庁長官官房        長        石川 重明君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        公安調査庁長官  木藤 繁夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○無差別大量殺人行為を行った団体規制に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○特定破産法人破産財団に属すべき財産回復  に関する特別措置法案衆議院提出) ○サリン等による人身被害防止に関する法律の  一部を改正する法律案橋本敦君外一名発議)     ─────────────
  2. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨一日、阿部正俊君及び竹山裕君が委員辞任され、その補欠として森田次夫君及び森山裕君が選任されました。     ─────────────
  3. 風間昶

    委員長風間昶君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案外二案の審査のため、本日の委員会警察庁長官関口祐弘君、警察庁長官官房長石川重明君、警察庁刑事局長林則清君、警察庁警備局長金重凱之君政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 風間昶

    委員長風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 風間昶

    委員長風間昶君) 無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案及びサリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  最初に、法務大臣にお伺いいたします。  この無差別大量殺人行為を行った団体規制法でございますが、参考人の御意見あるいは同僚議員質問の中にも憲法上のさまざまな議論がございます。そうした点を踏まえまして、この法律存続期間について衆議院の方で修正があるんですが、当初の法務省案では存続期間について規定が全くございませんでした。さまざまな憲法議論があるとしても、しかし実際上社会の不安、混乱が起きて地域紛争が起きているという状況にかんがみて、民主党修正案とともに賛成に回っておるわけです。  ただ、今のこの社会混乱状況、具体的にこの法律適用される団体はこれまでに明らかになった事実ではオウム真理教しかないという状況でございますが、そういう社会混乱状況不安状況というものがなくなった後もこの法案はずっと存続するというようなお考えなんでしょうか、あるいはそういう必要性がなくなれば速やかにそれこそ廃止法案を提出してこの法律廃止させる考えであるのか、そこら辺について大臣の基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  7. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 衆議院における修正によりまして本法案見直しに関する附則が設けられたわけでございまして、本法案が成立をいたしまして施行されました後は、施行の日から起算して五年ごとに、この法律に基づく規制処分実効性規制対象団体の危険な要素消長など、この法律施行状況やいわゆるテロ対策等について検討が加えられまして、その結果に基づいてその見直しについて国会において十分な御論議がなされるものと考えております。  したがいまして、御指摘のような事態につきましても、国会において適切な対応がなされるものと思っております。  政府といたしましても、国会の御論議に資するため、国会報告等について十分な情報を提供してまいりたい、このように考えております。
  8. 小川敏夫

    小川敏夫君 法律ですから、国会が成立させる、廃止するということの権限があるのはそれはもちろん法務大臣のおっしゃられるとおりだと思うんですが、ただ、今の政府のお考えとして、そこら辺を国会論議に任せるということではなくて、この法案提出者としてどういうふうにお考えなのか。  もっと具体的に言いますと、例えばうがった見方をすれば、今オウム真理教による混乱があると、これにいわばかこつけて、この法律を成立させたらオウムの問題がなくなってもこれはもう政府にとっては都合のいい法律だから将来もずっと存続させるつもりなんじゃないかというような危惧を持つ面もあるわけでございます。  あるいは、公安調査庁が時にはリストラということも話題になるような省庁でございます。そういうリストラにならないために、法律を残しておけばリストラを免れる一つの口実になるというようなことから、いわば今起きているこの緊急避難的な状況法律ができるかもしれないものを、そういう状態がなくなってもなお存続させるのではないかという不安があるわけでございます。  ですから、私としましては、今現在起きているこの社会の不安な状態あるいは危険性というものがなくなったということがあればやはりこの法律は本来廃止されるべきものなんだ、これがこの法案を提出した政府考え方なんだということを、国会論議に任せるということじゃなくて、政府考えという点から真正面から答えていただきたいと思うんです。
  9. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 現時点におきまして、オウム真理教の将来における危険性予測、どのような状況になるかということの予測は困難でございます。仮に、将来オウム真理教危険性が完全になくなったと認められる事態を想定するのであれば、その時点で本法案廃止するということは考えられるものと理解をいたしております。
  10. 小川敏夫

    小川敏夫君 ちょっと語尾がよくわからなかったんですが、考えられるものとするというと、考えられない可能性もあるのかというふうに聞こえてしまうんです。むしろ考えるものとするというふうにお答えいただきたいのですが、法務大臣、そこの点いかがでございましょうか。
  11. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 委員指摘のとおり、考えられるものと思います。
  12. 小川敏夫

    小川敏夫君 先に修正案提出者の方にお尋ねしますが、衆議院の方で五年をめどに見直すという条項を盛りました。これはやはりそういう危険性がなくなったときにはこの法律案廃止するんだ、こういう趣旨を念頭に置いての規定でございましょうか。
  13. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) 特にこの五年は、当初私ども民主党からは五年をもって廃止するというふうに修正を求めたんですけれども、結局修正案協議する中でこのように五年ごと廃止を含めて見直しをするという形になりました。特にこの廃止という言葉を入れたことを私は強調したいと思っております。  これだけの劇薬的な、下手をすると他に累を及ぼすような法律はできるだけ早くなくした方がいいと。私は、これほどのかなり団体を透明にする、あるいは監視を強める法律を五年も使えばもうその団体危険性がなくなっているだろうという予測ができると思うんです。ですから五年を主張したんですが、しかし、裁判の成り行きとかそのほかを見ますと、やはり五年できっちり切ることはやや難しいかなということで、五年ごと廃止を含めて見直しをするということでありますので、五年間、先ほど大臣の言われたような規制処分実効性あるいは規制対象要素消長なんかを見て、それがないと見れば、私ども議員立法としても廃止法案を出す決意でございます。
  14. 小川敏夫

    小川敏夫君 法務大臣にお尋ねしますが、法務省の方から、この法律時限立法にしてしまって年数を限定してしまいますと、今ある混乱状態を起こしている団体がその間隠れて、また法律が切れたら活動を再開するとか、そういうことが考えられるので、そういう対策時限立法にはしにくいんだというお考えを、説明を受けたことがございます。  法務大臣としても、この法律時限立法にしないということの趣旨は、法律実効性を担保するという面にその要点があるのであって、決して今ある混乱状況がおさまって、例えばオウム真理教社会問題がなくなった後も、この法律をずっと残したまま別の案件にも対処するという考えではないんだという趣旨のところを、もし法務大臣がそういうふうにお考えでしたら明確に具体的に述べていただけたらと思うんです。
  15. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、委員指摘をいただきましたとおり、この法案は現在のところオウム真理教しか、その対象として私ども法適用に対してはないということは事実でございます。  そして、委員指摘のとおり、将来において、オウム真理教動き自体が非常にこうした法律化動きあるいは政治の動き等に関連をして微妙な変化がいろいろあるわけでありまして、そうした状況考えますと、この法律がもし廃止をされるという状況というのは、よほどそれらの状況というものを見てからでなければ実効性というものを担保できないんではないか、こういうふうに考えているということも事実でございます。  今回の法律が無差別大量殺人というものを実行した団体というふうに規制をしているわけでございますが、私どもとしては、このような行為を行う団体というものはもう二度とあらわれてほしくないと考えておりますし、またあらわれてこないものとそういうふうに信じたい、このように考えておりまして、お説のとおり、現在ではオウム真理教しかこれらの法の対象として実際に当てはまるものはないと考えております。
  16. 小川敏夫

    小川敏夫君 実際上、現在はオウム真理教しか対象になる団体はないと。現在また、しかしそのオウム真理教によって社会混乱が起きている。こういうことで、この法案憲法上さまざまな論議がありながら、しかし成立する運びとなっておりまして、年内にも適用されるような状況ができておるわけです。そういう意味で、やはり社会を守るという意味からそのこと自体にはあえて私も反対しないんです。  また重ねて同じ質問でございますが、では、オウム真理教により起きている社会混乱状態というものが完全になくなったときにもこの法律はまた別のこと、また将来あらわれるかもしれない団体のことも考えてずっと存続させるということなのか、それとも、オウム真理教の問題が解決して、この法律が成立する必要性があったその社会混乱状況というものがなくなったときにはやはり廃止するというのが本来の基本の原則なのか、そこのところを真正面からぜひ答えていただきたいんです。
  17. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 先ほど来申し上げておりますとおり、当初、この見直し規定というのは入っておりませんでした。衆議院の御論議を踏まえまして、廃止も含めた五年ごと見直しということを入れさせていただきました。  私どもといたしましては、それらの国会の御論議というものをしっかりと尊重させていただきたいと思っておりますし、また、国会においても、そうしたものについて真剣な御論議がいただけると思います。その結果を私ども尊重いたしたいと思います。
  18. 小川敏夫

    小川敏夫君 先ほど修正案提出者が明確に、今の起きている混乱状態というものがなくなれば廃止すべきものだという趣旨修正案を盛り込んだということでございます。  では、そうした意思で国会修正議決したこの法案については、法務大臣も当然そういう趣旨だということで考えておるということでよろしいわけですね。
  19. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) そのとおりでございます。
  20. 小川敏夫

    小川敏夫君 それではほかの質問に移ります。  この法案そのもの憲法議論があったところでございますが、それとは別に、運用の仕方によってはやはり憲法上の問題が出る可能性があるんではないかという一面もあると思います。  例えば、法律立入調査というものが認められております。この立入調査一つにしても、このやり方いかんによっては、その立入調査行為自体憲法に違反するんじゃないかという問題が出てくると思うんですが、この立入調査あり方について、これは法務大臣あるいは実際に立入調査を行うことが考えられる警察庁の方にお伺いしたいんですが、法律では客観的具体的な基準まで定めておりませんが、立入調査あり方についてどのような指針といいますか基準を設けて行う考えであるのか説明していただきたいと思います。
  21. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 委員指摘のように、立入調査につきましては憲法上いろいろな疑義が具体的な執行によっては生じるのではないかとのお尋ねでございます。そのとおりだと思っております。  したがいまして、本法の二条、三条の精神をきちっと公安調査庁職員、それから警察職員が遵守すべきは当然であろうと思いますが、この法律具体的執行が違法にならないように、それぞれの組織で、どういう場合に立ち入るか等についても十分協議して、この法律精神を生かして、必要最小限度の法則というのを貫いてまいりたいというふうに思っております。
  22. 金重凱之

    政府参考人金重凱之君) 本法では警察職員による立入検査の権限というのが認められておるわけでございまして、これにつきましては、事前に警察庁長官の承認を得なければならないということにされておりますし、それからまた、警察庁長官が承認しようとするときには公安調査庁長官協議しなければいけない、こういうふうな仕組みになっておるわけでございます。  それからさらに、この法案の細則をこれからつくることになるということでございますけれども公安調査庁長官と今申し上げました警察庁長官との協議が整ったというときにおきまして、警察職員が立ち入りを予定する土地、建物及びその予定日公安審査委員会に通報するものとするというような規定も設けられるというふうに理解いたしております。御心配はないのではないかというふうに思っております。
  23. 小川敏夫

    小川敏夫君 心配ないといいましてもやはり心配がないこともないのでお尋ねするんですが、そこのところは決してそのような人権問題を起こさないという考えで運用していただけるという言葉をいただきましたので、それを信頼して実際に見守りたいと思いますが、本当に十分な配慮をしていただきたいというふうに思っております。  次の質問でございますが、これも法務大臣あるいは警察庁にお尋ねします。  今、オウム関係者がさまざまな裁判を受けておりますが、そこでわかることは、非常に凶悪な犯罪事件を起こした人たちオウム真理教の教祖を初めとした幹部であって、一般信者レベルでは凶悪な犯罪、あるいは凶悪でなくても犯罪行為に加担していない人も随分多いように思います。そうしますと、これからこの法律によって実際に適用される団体オウムであるということで、オウム真理教に対するいわば攻撃といいますかさまざまな抑制がある一方、犯罪には関係していない一般信者が仮に脱会したい、あるいは既に脱会した人たちに対する社会復帰というケアの問題も、やはり手厚い保護をしていかなければ本当の意味オウム真理教対策にはならないかと思うんです。  そういう意味で、脱会者に対する対策について、これまでもさまざまな答弁の中で十分な配慮をするという言葉は聞いておるんですが、そういう総論的な話ではなくて、具体的にどのような方策を講じて脱会者あるいは脱会希望者に対する措置を講じていくのか。といいますのも、この法律が仮に成立して年内にも適用になるという非常に切迫した状況にございます。ですから、脱会者対策というものについても、より具体的な方策をお示しいただきたいというふうに思うのでお尋ねしているわけですが、よろしくお願いいたします。
  24. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、御審議をいただいております本法案によりまして、無差別大量殺人行為を行った団体に対する規制をしっかりと行うということは大変重要な事柄でございます。他方で、その規制対象となった団体構成員、これは今お話しのとおりいろいろな方々がおられて、全くそうしたことに関係しておられない方々も多いわけでございますが、それらの社会復帰に資する体制の整備などの方策を講じますことも大変社会的に重要なことだと考えております。衆議院法務委員会における附帯決議に盛り込まれておりますとおり、政府としても、政府全体として取り組むべき課題であると理解をしております。  現在、オウム真理教信者やこれを脱会した元信者社会復帰等に役立つ対策につきましては、従来から申し上げておりますとおり、政府全体として各省庁間で連携を図りつつ、かねてからの取り組みを強化すべく関係省庁間で協議を続けているところでございます。  私ども法務省といたしましては、オウム真理教信者等社会復帰等の観点から、人権擁護委員やあるいは人権擁護担当部局を活用した人権相談所が設けられておるわけでございますが、そこにおきましてもオウム真理教信者等からの相談を受けるとともに、その利用を呼びかけるPR活動に努めてきたところでございます。今後ともオウム真理教信者等社会復帰に資するよう、このような取り組みを進めてまいりたいと考えております。
  25. 金重凱之

    政府参考人金重凱之君) 信者社会復帰家庭復帰対策につきましては、政府一体で取り組む必要がある重要な問題であるというふうに認識いたしております。  プライバシー問題等もありますので具体的なケースについては差し控えさせていただきますけれども、これまでにも警察オウム真理教の元信者に対して社会復帰対策に努めてきたところでございます。その対象者は、オウム真理教の関与した各種事件被疑者のみならず、自発的に教団脱会して社会復帰しようということで警察相談に来られた方々が中心でございます。  警察としましては、オウム真理教信者等から脱会についての御相談があった場合にはこれに誠実に対応いたしておりまして、具体的な状況に応じまして、例えば信者家族等からの捜索願あるいは脱会者保護を求めてきたというような場合にはその捜索保護などの必要な措置を迅速に行うことにしておりますし、それからさらには住居や職場のあっせんに及ぶこともあったわけでございます。それからまた、これも状況によりますけれども関係機関を通じまして福祉施設あるいは医療施設等での保護が行えるような引き継ぎも行ってきておるところでございます。  こういうような広範な警察活動によりまして、一たんすべての財産オウム真理教に寄進して家族等を捨てて出家した元信者の中にも現在もと家庭に戻られた人もおるわけでございます。その反面、一連オウム真理教による事件で逮捕された後釈放されたオウム信者の約半数が教団に復帰しているというようなこともあります。こうしたことに見られますように、いわゆるマインドコントロールから抜け切れずに、元信者から警察の行う社会復帰対策というのを拒否されるというようなケースもあるわけでございます。  こういうふうにさまざまな困難がつきまとっておりますけれども警察といたしましても、今後ともこの問題に対しましては関係省庁とも連携を図りながら積極的に対応してまいりたいというふうに考えております。
  26. 小川敏夫

    小川敏夫君 話はまた次の論点に行くんですが、この法律施行に当たって警察に対する信用、信頼というものが非常に重要である、こういうふうに思います。また、脱会者に対する救済というものにつきましても、警察に対する信頼というものがなければ脱会者の方もなかなか保護を求めてこないということにもなります。  そう思いますと、ここに来ての神奈川県警で起きました一連不祥事、大変に遺憾というような言葉では済まないような国民に対する背信きわまりない行為だと思います。特に、入手した捜査資料もとに女性を恐喝したり、あるいは同僚婦人警察官プライバシーに関する写真を材料に恐喝しようとしたというような事件が続発しております。こんな例を見ますと、例えば脱会者が来ても逆に、おまえ、元オウムだったことをばらすぞなんて言って警察が恐喝したりしないかなんということも、あながちげすの勘ぐりでもないような不安さえ感じてしまうわけでございます。  そういう意味で、こうした一連神奈川県警神奈川県警だけでないんですが、神奈川県警は非常にそういう象徴的な事件が起きているんです。これについて警察最高責任者である長官はどのような責任を感じておられるのか、その点についてより明確に説明していただきたいと思います。
  27. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 委員指摘のとおり、このところ神奈川県警察におきまして相次いで不祥事案発生をしたほか、不祥事案再発防止県警を挙げて取り組んでいるさなか、御指摘のような恐喝未遂事件発生をいたしたということはまことに遺憾でございます。  私どもとして考えなければいかぬことは、いかにしても失われた国民信頼というものを回復することであろうということであります。私に現在課せられた使命というものは、不祥事案再発防止対策を強力に推進するとともに、各種警察業務において所期の成果を上げることで国民信頼を一日でも早く回復することであると考えております。去る十一月三十日にも臨時の全国警察本部長会議を開催いたしまして、全国警察に対して対策の徹底を改めて厳しく指導をしたところであります。  今後とも、不祥事案再発防止対策の推進に組織を挙げて全力を尽くしていくことで私の責めを果たしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  28. 小川敏夫

    小川敏夫君 実は、この神奈川県警不祥事ですけれども、一度にまとめて起きたんではなくて、過去に起きたものが発覚したというものと最近に起きたものとあるんですが、特に、今警察庁長官の答弁の中にもありましたように、不祥事再発防止に取り組んでいるさなかにまた恐喝未遂事件が起きたわけでございます。  ですから、例えば捜査資料もとに恐喝した神奈川県警警察官がある、そうしたことが発覚したということで、たしか警察庁長官はこのような不祥事が絶対にないようにと、言葉の言い回しは今ここで正確ではありませんが、趣旨として、かかる不祥事は大変遺憾なことで国民信頼を裏切ることだから、このような不祥事はもう絶対に起きないように厳しく対処するということを国会やあるいは報道機関に対して明言したと思うんです。にもかかわらず、その後に同じ神奈川県警から恐喝未遂という事件発生しておるわけです。  そうすると、ではかかる事態が起きないように対処すると言った長官のその言葉はただの言葉だけで何の実効性も持っていなかったんではないか、このように考えられるんです。どうでしょう、警察庁長官がかかる事態を起こさないという決意を述べた後に同じ神奈川県警でそのような恐喝未遂という余りにも不届きな事件が起こされたということについてのその責任、特にもう起こさないと言明した後になお起きているということについての長官責任はいかにお考えでしょうか。
  29. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 御指摘のとおり、不祥事案対策というものをやっているさなかにそうしたものが起きたということ、まことに遺憾のきわみでございます。  私どもとしては、重ねてそうしたもののないように指導してまいりたいということでありますし、神奈川県警につきましては、私ども一つ考えておりますのは、警察庁といたしまして特別監察と申しますか不祥事案対策の推進状況がどうなっているのかということをつぶさに見てまいりたい。そうした状況も踏まえながら、またさらなる指導というもので徹底をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  30. 小川敏夫

    小川敏夫君 その対処方法ですが、これは今回の、十月十七日ですか、婦人警官に対する恐喝未遂事件が起きる前の、それ以前のさまざまな不祥事が発覚した段階で同じような言葉長官はお述べになって再発防止国会国民に対して約束したと思うんです。しかし、なおそれが何の実効性も持たないで同じ神奈川県警で起こされたということについて、どうも私としては長官責任をどうするかということについての答弁としては不十分であると思うんですが、なお重ねてその点について、長官責任について長官御自身はどうお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。
  31. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 御指摘のとおり、不祥事案防止という観点で私ども会議を開き、あるいは通達をもって指導等をしているところでございます。それはさらにさらにまた強めていかなければいかぬというふうに思いますし、それに加えまして、今回の事件の反省を踏まえまして、現在国家公安委員会そしてまた警察庁におきまして、警察に対する国民信頼回復するために、警察法の改正等も視野に入れまして公安委員会の管理機能のさらなる充実強化なりあるいは監察体制の強化等の措置を講じようとしているところでございます。  こうした諸施策を具体化することによりまして、警察に対する国民信頼回復することが私に課せられました重大な責任であるというふうに考えているところでございまして、その務めを果たすべく全力を尽くしてまいる所存であります。
  32. 小川敏夫

    小川敏夫君 組織の中において非行事案があった場合には、その非行者を監督する者の監督責任というものが当然あるわけでございます。  それで、一つ確認するんですが、県警本部長に対する監督責任者は警察庁長官であると思うんですが、これはいかがでございましょうか。
  33. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 警察本部長につきましては都道府県公安委員会の管理、そして監督ということになりますと任命権者である国家公安委員会ということになろうかと思います。
  34. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると、県警本部長が何らかの不祥事を起こした場合に、監督責任というものは警察庁長官にはないという御趣旨でしょうか。
  35. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 法的な問題としては少なくともそうしたものはないというふうに私、認識をしております。
  36. 小川敏夫

    小川敏夫君 たまたま先ほど長官の御説明の中でも、これからの不祥事対策として十一月三十日にも県警本部長を臨時に招集して、長官御自身が綱紀粛正に関する訓示を述べたということをお伺いしました。やはり、警察庁長官の職務として都道府県警本部長をそのように指揮する権限があるんではないですか。
  37. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 現在の警察制度の仕組みでございますけれども、個別具体的なことというのは警視総監なりあるいは府県の本部長というものがその権限を持っているわけでございます。  警察庁がどうかということになりますと、一般的なと申しますか、対策の方向づけをひとつ大きく示すということかと思います。それを具体的にどういう形でやるか、もっと具体的に申し上げれば、ある事件についてこれをどういう手段、方法をもって捜査をするか、あるいはまた、今御論じになっております不祥事案対策、例えば倫理観あるいは使命感というものを一人一人の警察官に浸透させる、それは具体的にどういう方法をもってやるかということの役割なりあるいは責任というものは、都道府県本部長が負うものというふうに理解をしているところでございます。
  38. 小川敏夫

    小川敏夫君 どうも私の質問には明確にはなっていないんですが、より議論をわかりやすくするために端的にお伺いするんですが、この神奈川県警不祥事件では、深山県警本部長ですか、この方が国民に対してあるいは報道機関に対して虚偽の説明を行った。このように虚偽の説明をすること自体、これは身内の不祥事を隠ぺいするための虚偽の報告を行ったわけですが、このこと自体は大変に県警あるいは警察全体の信頼を損なう非常に重要な非行事実だと思うんですが、県警本部長がそのような非行事実を行ったことについての監督責任をだれが負うのか。  やめるかやめないかということは抜きにしても、県警本部長の非行に対する監督者はだれであって、その監督責任はだれが負うのか。私は警察庁長官だと認識していたんですが、それは違うんでしょうか。警察庁長官は、県警本部長の非行に対して全く監督者としての責任がないんでしょうか。
  39. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) 御指摘の点につきましては、警察庁長官としての責任というものはないものと私は承知をしております。  なお、深山本部長の報道対応等が不適切であったということにつきましては、当時、国家公安委員会の処分というものが当時の深山本部長に出されております。たしか減給処分ということであったかと承知をしております。
  40. 小川敏夫

    小川敏夫君 県警本部長についての監督責任警察庁長官にはないという議論をどうも私は納得できない。特にまた国民感情からいけばおよそ到底納得できない考えだと思うんです。  また同じような質問になるんですが、警察庁長官が本当に不祥事を繰り返さないと国民国会に対して約束しながら恐喝未遂という非常に卑劣な事件が起きたということについて、これでは言葉だけでの反省や対策では何も意味がないんではないか、むしろそれはただ単に言葉だけ、その場ごまかしの答弁をしていたんではないか、このように考えられてもしようがないとは思うんですが、警察庁長官はそこら辺のところ……(「その場ごまかしというのは何だ」と呼ぶ者あり)その場をごまかした言葉国民が思われてもしようがないというような意見があるのはこれは当然でありまして……(発言する者あり)
  41. 風間昶

    委員長風間昶君) 質問を続けてください。
  42. 小川敏夫

    小川敏夫君 今、不規則発言がありまして、話の筋が見えにくくなったので端的にもう一度まとめます。  要するに、先ほども質問したことですが、同じような非行事案はもう繰り返さない、かたく対処すると約束した後に、国民に対して述べた後に同じような不祥事が繰り返されたと。これでは、何の実効性もない約束をしている、まさにその場ごまかしの答弁をしていたんではないかと、これは国民は受け取るわけでございます。  そこら辺のところ、今ここでまた長官言葉を強めて、そのような不祥事は絶対起こさないように対処すると幾ら言葉を強く言ったとしても、やはりまた繰り返されるんではないかという不安が当然あるわけで、警察に対する信頼というものはこれはもう回復できない。むしろ、同じ警察庁長官ではこれはもう警察に対する信頼回復できない、むしろ新しい長官になって、そうした不祥事再発を防止する具体的な策を徹底的に行う方がなるべきではないか。やはりそうした再発防止の約束をしながらそれを実行できなかった長官責任をとって辞職すべきではないかというふうに考えておるわけでございます。  これにつきまして、前回、民主党の角田議員も強く指摘しましたが、その点について長官御自身はどのようにお考えでございましょうか。
  43. 関口祐弘

    政府参考人関口祐弘君) その点につきましては先ほど委員の御質問にお答えしたとおりでございまして、私に課せられた使命というのは一日も早く国民信頼回復することだということを強く認識しているところでございます。今後とも不祥事案再発防止対策の推進に全力を尽くしていくことで私の務めを果たしていきたい、責めを果たしていきたいというふうに考えているところでございます。
  44. 小川敏夫

    小川敏夫君 警察に対する信頼回復するためには、最高責任者がきちんとけじめをつけて責任をとって、新しい体制で国民信頼回復するすべを講じるというのが最善であると私は考えております。  では、次の質問に行きます。  先回の国会で通信傍受法が成立いたしました。その際の審議の中で、捜査の方法として通信傍受が可能であればオウム真理教のようなこうした犯罪には十分対処できるんだということが強調されておったわけですが、実際、この通信傍受法の施行の準備状況は今どのように、特に一つの点に絞ってお尋ねしますが、携帯電話、これは現行技術ではできない、しかし一年以内、法律施行期間に間に合わせて通信傍受が可能なような手段を講じるということを約束したわけでございますが、実際その状況はどうなっているか、説明をしていただきたいと思います。
  45. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま委員指摘をいただきました携帯電話の通信傍受につきましては、現在でも一定の条件のもとにおいて可能である上に、現存の技術や設備を転用すれば容易に傍受が可能である部分も相当にございます。それ以外の部分につきましては、通信事業者との間で十分な意見交換を行い、捜査上の観点等からその必要性の高いものから順次開発研究等を進めてまいりたいと考えております。  なお、大変恐縮でございますが、詳細につきましては参考人の方から。
  46. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、政府参考人の方から、携帯電話に限って準備状況がどうなっているかについて説明をお願いいたします。
  47. 松尾邦弘

    政府参考人(松尾邦弘君) 携帯電話に関する通信傍受につきましては、ただいま大臣からも答弁申し上げましたが、現存の技術あるいは設備で可能な部分というものがかなりあります。ただ、現在は技術的にある程度の開発あるいは新しい設備、施設等をつくらないと通信傍受がなかなか困難な部分もございます。この点につきましては、現在、NTTドコモを初めとして各種の携帯電話の通信事業者がございます、そうした事業者と今、具体的な通信傍受を可能とするための技術開発等につきまして協議をしている、進めている、これまで何度かにわたりましてそういう協議をしている段階でございます。  それにつきまして、一定の技術開発が必要である場合に、通信事業者との間での費用分担等、具体的にはいろいろ詰めるべき点がございますので、現在施行に向けて可能とするような、そういう協議の具体的な詰めを行っているということでございます。
  48. 小川敏夫

    小川敏夫君 前回の審議の中では、技術的に困難であるけれども国が費用を投じて技術改善をして法施行期間までの一年以内に技術的に可能にするという説明だったんですが、予算要求を見ましても調査費だけで実際の技術改修費用が見込まれていないというようなことを考えますと、どうも一年以内に携帯電話の通信傍受を可能にするということはできないんではないかというふうに思いますが、その点意見を述べるだけで、また改めてより明確になった時期にその点をお尋ねしたいと思います。  それから、警察庁の方にお尋ねしますが、ことし一月に茨城県鉾田町長選挙に絡む違反事件で、違法に盗聴した買収に関する会話を端緒とした、これは民間が恐らく違法盗聴したんでしょうけれども、それを端緒として事件の捜査が開始されたというような事件がありました。選挙違反そのものは大変けしからぬですが、しかしその端緒がまた違法盗聴のテープだったという点がどうも釈然としないところがあるんですが、こうした事案に対する、違法盗聴テープを捜査の端緒とするような事案の捜査のあり方、あるいはこの件におきましては違法盗聴を行ったことに対する盗聴者の捜査を行っているのかどうか、これについて御説明をお願いいたします。
  49. 林則清

    政府参考人(林則清君) 具体的な事件の端緒についてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、本件選挙違反の端緒というのは御指摘の録音テープではなくて、それ以前に端緒を得て既に捜査を行っていたものであります。  こうした捜査に対する見解ということでありますが、いわゆる盗聴という違法行為により録音されたと思料されるテープにつき、第三者から提出されたテープについてこれを捜査の資料としたとしても、当該違法行為自身警察が行いあるいはこれに関与していない以上、その後の捜査手続が違法になってしまうということはないものと私ども承知しておりまして、判事でもあられた議員御案内のとおり、同趣旨の判例も出されているところであります。  なお、御指摘のテープに関する捜査に関しましては、本年二月二十三日に茨城県警におきまして公選法違反容疑で告発を受理した、選挙違反の告発を受理した際に告発人から任意提出を受けておりまして、直ちに担当部門において捜査に着手し、また九月二日には電気通信事業法違反容疑で告発を受理して鋭意捜査を行っているところでありますけれども、まだ結果が出ておりませんので、その結果についてここでお答えできないのは残念でございます。  以上でございます。
  50. 小川敏夫

    小川敏夫君 終わります。
  51. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 公明党の魚住でございます。  何点か質問をさせていただきたいと思いますが、いわゆるオウム真理教については各所で不安を巻き起こし社会問題化しているというふうに認識をするものでございますが、かつてサリンをまいてという、そういうようなことをやったわけであります。  この宗教法人オウム真理教自体はもう破産になり、公安審査会も破防法の適用はしなかったということがございますが、このいわゆるオウム真理教危険性、現在における危険性というものはどのようにとらえていけばいいのか。要するに、今回のいわゆる団体規制法の中でも無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる具体的事実ということになるんですが、現時点ではどういうような点がその危険を示す事実というふうに認識をしているんでしょうか。大臣あるいは公安調査庁長官でも結構でございますが、御教示いただきたいと思います。
  52. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) オウム真理教は、麻原こと松本智津夫に対する絶対的帰依、あるいは殺人をも正当化する危険な教義を依然として維持しておりまして、地下鉄サリン事件、松本サリン事件等について、麻原が首謀者となって行った教団ぐるみの犯行であることを認めるということもなく、被害者や一般社会に対し謝罪もしていないのみならず、サリン製造やサリンプラント製造、自動小銃密造に関与したことによりまして逮捕されました約五十人のうち、釈放あるいは刑期を満了いたしました約十人が同教団に復帰したことなどから、同教団は依然として危険な要素を保持しているものと考えておるわけであります。
  53. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただ、今大臣が御説明になった、麻原に帰依しているとかいう言葉がありましたね、指導者と仰いでいるという趣旨なんでしょうけれども。あるいは謝罪していないと。それは団体としての意思表明もありましょうし、個々の行為者の問題もあると思うんですが、それはある意味では各人の気持ちの中の話だと思うんですね。三つ目に出たのが、サリンをつくった人たちも出てくるよというようなことで、これは確かにその危険が一歩近づくなとは思うんですが、何かプラントの部材を買い入れたとか、いわゆるそういう具体的な事実は特にないんですか。もっと、何というんでしょうか、そんなよく見えないような話じゃなくて、具体的な事実として何かないのかなと思っているんですが。
  54. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) オウム真理教の現在の危険性についてでございますけれども、確かに御指摘のような無差別大量殺人というものに直接結びつくような、いろいろな化学的な物質とかあるいは例えば銃器とか、そういったものの発見には至っていないわけでございます。  しかしながら、オウム真理教それ自体の持つ危険性は今でもなおかつあると私ども思っているわけでございまして、それは第一には、大臣からも御指摘ありましたように、一つは殺人をも容認する危険な教義、教団はタントラ・ヴァジラヤーナと、こう言っているわけでございますが、その危険な教義を依然として組織の中核の理念として持っているということでございます。このタントラ・ヴァジラヤーナは一時封印したというようなことを言っているわけでございますけれども、しかしながら、現実にはそういった考え方を含んだ書籍などを教えていたりする実態もございますし、現在もそれが教団を導いていく上での教義の中心部分にある、こう私どもは見ているわけでございます。  それから、昨日いろいろ会見で一応謝罪というようなことは表向きやったようでございますけれども、今までのオウム関連の判決とか証拠によって麻原が首謀者となって行った教団としての組織的犯行だということは明らかであるにもかかわらず、そういった点を明確に認めた謝罪ではないというようなことからいたしますと、私ども教団として真摯な反省とか謝罪は行っていないというふうに思っているわけでございまして、それ自体が将来に対する一つ危険性のあらわれ、兆候である、このように思っているわけでございます。  それから、先ほど申しましたように、サリン等の製造などに関与した者のうちある程度の者が教団に復帰している、こういうことも一つ危険性のあらわれだというふうに考えているところでございます。
  55. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 タントラ何とかと、よく口が回りませんけれども、そういう中にあるということなんですが、私よくわからないんですけれども、それは教典なんでしょうね、恐らく。教典だから変えるというわけにはいかぬでしょうね。教典というのは古いことなんだと思うんですね。何かに書いてある古い時代の文章だから変えるわけにはいかないということになるんでしょうけれども。だから、本当にいわゆるオウム人たちがこの危険性を払拭するには、そのタントラとかいう、その教典のこの部分については採用しないというようなことを表明するということになるんでしょうか。ちょっとその部分。
  56. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) 例えば、その危険な教義にいたしましても、その教義自体を封印するというだけでなくてそれ自体を廃棄するというようなことが言われていないということなんでございますが、ただ、教義として言われておりますものの中で、それがある程度中核的なものを占めている場合に、そこだけを廃棄するということができるのかどうかという点についても、いろいろ教団としても検討しなければならぬのではないかと私ども考えているわけでございまして、そう簡単に廃棄できるものであろうかどうかという点も一つの問題であろう、こう思っております。
  57. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 そういう団体だということで、オウム関連の周りの住民の皆さんは大変な不安また危険を感じている。先般の参考人の中にも、お嫁さんが知った瞬間に、夕方には警備保障会社の装置をつけたというような意見陳述がございましたけれども、かつての地下鉄サリン事件の情景を思い出しただけでも確かにその不安は私も理解するところであります。  地方団体の首長さんにも参考人にお出ましいただいたわけでありますが、住民票の受理をしないとか、あるいは学校の就学も拒否をするというようなこととか、あるいは公共施設を貸さないというような方針を立てて対処しているというお話でございましたけれども、今回のこの団体規制法は、直接その不安を除去するかどうかは別としまして、この法律が成立し適用されることによって、どの程度その実効性が期待できるのかというところにつきまして御説明をいただきたい。
  58. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 本法案は、現在も依然として危険な要素を保持しつつ活動しておりますオウム真理教の現状にかんがみまして、当面の緊急の措置として、このような団体に対し、その活動状況を明らかにする観察処分や必要な限度で団体活動に一定の規制を加える再発防止処分を迅速に行うことができ、また、警察当局の持つ情報力あるいは組織力というものを活用できるような仕組みも設けておりまして、本法案が成立し施行された場合には同教団に対して十分な実効性のある規制を行うことが可能であると私どもは確信をいたしております。
  59. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 やはり住民票不受理というのはちょっと異常な状態だと思うんですね。これは日本全国全部不受理にすれば、日本から出ていけということですから。そうすると、それは、功を奏してきたなという段階で具体的に法務大臣としても自治大臣なりに働きかけをしていただけるというふうに考えていいんでしょうか。
  60. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、私どもがこうした法案が成立をいたしまして施行できるような段階になって、それぞれの段階における措置というものはとられていく、そのことによりまして、住民の皆さん方も現在行っているような二十四時間監視であるとか、そういうことの必要性がなくなるという安心感を持っていただけるんじゃないか。そのことによって、今、住民、国民の皆さん方が感じておりますような不安感、そういったものが解除されることによって問題が解決していくんではないかと思います。
  61. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 きょうは修正の部分につきましても若干質問をさせていただきたいというふうに思います。  修正が何点か衆議院におきまして加えられたところであります。特に「目的」の中に、いわゆるオウム真理教活動規制しようということから、「目的」に「例えば」という形で入っているところでありますが、これをきっちりやるには、やはり法律の定義の中でオウムなりサリン云々というような文言を加えるべきではないかというふうに思うところでございますが、修正者はどのようにこの点、お考えでしょうか。
  62. 上田勇

    衆議院議員上田勇君) 本団体規制法案は、その対象となります団体につきまして、過去に大量無差別殺人事件を行い、なおかつさらにその再発の可能性があるというところに限定しているところでありまして、その手法等を明示し特定するということは法制上問題があるのではないかというふうに思っているところでございます。  ただ、現状を考えますと、この法律に該当する団体というのはオウム真理教しかないというふうに私たちも認識しているところでございます。
  63. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 それから、五年ごとに見直すというようなことであります。もちろんこの団体規制について、論者によっては憲法上も抵触するおそれもなしとしないという意見も当然あるわけでございまして、そういう趣旨から入れられたのかなというふうにも思ったんですが、それならやはり期限を切った形の方がいいんではないか。  ただ、この修正は、単に見直すだけであって、そのままずっと、先ほど廃止法案を出しますというような話もあったんですが、やはりちょっと中途半端だなというような感じがするんですが、この点はいかがでしょうか。
  64. 上田勇

    衆議院議員上田勇君) 本法案憲法との関係についてでありますけれども、私どもはこの法案は、無差別大量殺人行為を行って、依然としてその危険な要素を保持しているという団体に限定していることや、また、処分の決定につきまして中立公正な手続を定めていることから考えまして、そうした憲法上の問題はもとよりないというふうに考えているところでございますけれども、今回のこの修正によりまして、今回のこの法案の立法の趣旨がより一層明確になったというふうに考えておりますし、また、手続面におきましても適正な運用がより一層確保できるものになったというふうに認識しているところであります。  なお、五年ごと見直し規定についてでありますが、これは本法案があくまで緊急特例的な措置ではあるということをより明確にするために、その規定を設けたというふうに考えております。
  65. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 せっかくの修正ですから、北村先生にもお聞きしたかったんですけれども、ちょっと私の時間がなくなってきましたので。  次に、特定破産法人の特別措置法についてお聞きしたいんです。  これは、被害者救済ということで大事なことだなというふうに思っております。本来、国で被害者救済の制度をきっちり充実させるべきだとは思いますが、まずやはりこういう被害を与えた側にきっちり責任をとらせるということで大事な法案だと思うところでありますが、この手法の中で否認権の消滅時効、これの起算点をずらすというような条文があるわけであります。これは、この一たん成立したものも、さらに再度時効を改めて復活させた上でやっていこうというふうに読めるわけでありまして、この趣旨はどういうことなんですか。
  66. 上田勇

    衆議院議員上田勇君) 否認権の時効に特例措置を設けているのは、今委員の御指摘のとおりでございますが、この趣旨は、特定破産法人の場合には、現在のオウム真理教の破産手続においても見られますように、危険な団体を破産宣告後も存続させるために組織的かつ巧妙に資産の流出、隠匿行為を行う蓋然性が極めて高いことから、団体規制法によります観察処分が実施されまして、当該団体及びその関係者の状況が相当程度解明されない限り、事実上はこの否認権を行使するということは困難であり、そのような状況考えますと、この否認権の時効を進行させるということはやはり不適当ではないかというふうに考えた次第でございます。  仮に、破産宣告を受けてから二年が経過した後に、団体規制法によります観察処分を受けた特定破産法人について、もはや否認権を行使することができないというふうにしてしまいますと、権利を行使することが可能となった時点から時効を進行させるとする時効制度の趣旨に反し、著しく正義に反する結果をもたらすのではないかというふうに考えたところであります。  加えて、これはもう委員御承知のことだというふうに思いますが、そもそも否認権は破産という裁判上の手続を進行させるために破産管財人に付与された権能でございまして、その消滅時効も手続上の事柄に関する一定の期間制限にすぎないわけであります。実体法上の権利の得喪という効果をもたらすというものではないというふうに考えております。  こうしたことを考え合わせますと、破産宣告を受けてから既に二年が経過した後に、団体規制法によります観察処分を受けた特定破産法人についても、時効の起算点を変更し、否認権行使を可能とする立法上の手当てをするということは必要かつ合理的なものであるというふうに考えてこの法案を提出させていただいた次第であります。
  67. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただ、今のこの点について言えば、破産管財人が否認される行為の相手方を覚知したと否とを問わず、二年間行わないときは時効によって消滅する、大判昭和十二年七月九日民集十六巻千百四十五ページという、そういう判例があるわけでありまして、そうすると相手が知らなくても、でも今回知っているわけです。ただ、かなりこの民法の一般原則も大幅に変える立法だなと。  それから、調べてもらったんですが、時効を停止させるという立法があるんです。余りいい法律とは思えませんが、いわゆる住専のときに停止させたことがあります。ただ、それは完成したものをまた新たに進める、そういうのではないんです。停止だけなんです。さらに、昭和二十二年の勅令というのがあって、これは完成しないものとするというふうな閉鎖機関令というのがあるんですが、かなり思い切った立法だなというふうに思っているところであります。  それから、あともう一点ですが、今回こういう被害者救済のスキームをつくるわけでありますけれども、いろんな推定がなされるわけでありますが、破産後の新得財産あるいは個々の役員あるいは構成員財産も条文上は及ぶわけですね、この推定が。ないことの証明というか、ある意味では悪魔の証明に近いことを相手方にさせるというか信者側にさせるということで、かなり憲法財産権の侵害ということからも問題が生じ得るんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  68. 上田勇

    衆議院議員上田勇君) 今回のこの法案についてでありますけれども一つは、無差別大量殺人行為による損害賠償責任を負う法人が破産宣告を受けたにもかかわらず、それを構成した団体が前後同一のものとして存在している場合に、構成員等が活動資金に供する目的を持って破産財団に属すべき財産の流出、隠匿行為に及んでいる強い疑いがあるというふうに考えております。そうした証明というのは団体規制法の観察処分を受けたということによって行われるものであるというふうに考えております。  今度の法案によりますと、今度の一連事件におきましては、被害者の方が無差別大量殺人行為によって多大な被害を受けている中でいまだに十分な補償がなされていないということを考えたときに、一般のこれまでの、従来の法適用とは若干違う特例を設けておりますけれども、そのことの方が被害者の救済あるいは社会の正義にかなうものであるというふうに考えているところでございます。  なお、やはり時効がもう既に成立しているから賠償責任がないというようなことに規定してしまいますと、管財人の方あるいは衆議院、参議院の参考人でいろいろ御意見を伺った中にも、今のオウム真理教においても、任意団体になっておりますけれども、かつて宗教法人オウム真理教から流出した財産を隠匿しているという疑いが非常に濃いということを考えますと、これを時効成立させることによって免責にするというのはむしろ被害者の方々に対する補償や今回の事件にかかわります社会正義を実現するという意味からは適当ではないので、時効の起算時点を変更させていただく特例の法律を提案させていただいたところでございます。
  69. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 あと一点だけ。  今回、いろんな調査結果を提供するというこの団体規制法でございますけれども、そういうふうになっております。管財人もそうでしょうし、また地方公共団体にもなります。私のところにも、実は家庭の中で行方不明でどうもオウムに行ったらしいというような家族からの問い合わせがあって、何とか調べてくれないかというようなことがあるんですが、こういう点について問い合わせに応じるんでしょうか。つまり個人のプライバシー、それを除いてというのはあるわけでございますが、この点はいかがですか。大臣でもあるいは参考人でも結構ですが。
  70. 風間昶

    委員長風間昶君) 時間をオーバーしていますので、簡潔に願います。
  71. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 本法三十二条では、個人の秘密に関する事項というのは開示の対象から外れております。ただし、地方公共団体の要請の根拠が重大である場合には、もちろん均衡の問題がございますので、開示する場合もあるというふうに思っております。
  72. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 終わります。
  73. 橋本敦

    橋本敦君 昨日、オウムが記者会見をいたしまして、サリンなど一連事件について関与を認めたということは、そして同時に謝罪、被害補償も表明したということは、一定の国民世論にも反映される方向として重要な一つの問題であったと思うんです。しかし、それが果たしてどうなのかという問題が残ります。  例えば、オウム被害対策弁護団事務局長の小野弁護士は、「ただオウム関係者事件にかかわったことを認めたにすぎず、心から反省したという評価はできない。」という受けとめ方をしていますし、できる限りの補償をすると言っても、補償ももちろん大事だが、なぜこのような殺人事件まで起こしたかという厳しい反省の上に立って、具体的にどう補償するか示していないことは問題であるという指摘もしています。  そして、もう一つ重大なことは、何と言っても強大な権限教団内で行使してきた現在の麻原被告が、この謝罪あるいは損害賠償というそのことを本当に認めているのかどうか、このことが明らかになっていないということも、また国民から見れば重大な問題として残るのではないか、その点は私も重大な指摘だと思うんですが、本当に大事な問題です。  そして同時に、この問題については被害者の永岡会長は、オウム真理教家族の会、被害者の会の会長ですが、今後の行動はやはりきちんと監視していくことが大事だろうということを指摘された上で、こういったことについて、当面法律適用を避けるための方便だということにさせてはならない、本当に謝罪と賠償をさせるということが大事なのであって、今後の課題としてこれは大事だということとともに、反省をし、そしてオウムから離れようという意向を持つ信者に対するアフターケア、そういった点についてのケアも国として責任を持つ必要があるとおっしゃっている、私もこれも当然だと思うんです。  今言った松本被告との関係の問題が明らかにされていないことや、さらには教義のために殺人も肯定するということで問題になったヴァジラヤーナの問題については一言も触れていないということも問題として残ることも事実ですね。  しかし、私たちは本当に真剣に反省するなら、そしてそのことが実際に示されるなら、そしてそのことが同時に被害者の皆さんや国民に対し、地域住民に対し、安心を与えていくという方向に行くなら、これは一定の方向だということでよく見ていかなきゃならぬという面も考えています。  この問題について法務大臣はどうお考えか、まず最初に御見解をお聞かせください。
  74. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、委員指摘をいただきましたオウム真理教の昨日の発表、表明でございますが、オウム真理教一連事件等につきまして謝罪をした旨、報道があったことは承知をいたしておりますが、その謝罪なるものの内容を見てみますと、委員先ほど冒頭にお話しをいただきましたとおり、地下鉄サリン事件一連の刑事事件がその判決等により、麻原彰晃こと松本智津夫を首謀者とし同人が唱える危険な教義に基づいて教団組織として行われた事件であることが明らかであるにもかかわらず、これを認めず、単に教団の一部の者が関与したにすぎないとするなど、本当に反省、陳謝していると評価することは到底できないものと、こう考えております。また、被害の弁償の表明につきましても、その内容に具体性がございません。これを現実のものとする意気込みも感じられないところでございます。  教団の最近の動きを見てみますと、新法の制定機運が高まった本年十月以降、教団施設がある関係自治体に対しまして当該施設の早急な売却を行うなど、新法の適用を見越した財産隠しを進めているようにも思われます。  教団の対応は、新法が対策として効果的であるということを裏づけているものと私ども考えておるものでございまして、法務省といたしましては一刻も早く法案を成立させていただくことを念願いたしております。  また、公安調査庁におきましては、同教団の新法逃れとも見られる事柄についての対応につきましては、その実態を十分調査していくことになろうかと思っております。
  75. 橋本敦

    橋本敦君 今後とも国民の立場で厳しく検討していく必要があると、そういう点については私どもも見守っていかなくちゃならぬというように思っています。  同時に、今私がお話ししたように、このことが一つの契機になって本当に反省をし謝罪をし賠償を具体的にやるなら、それはそれとして評価をしていかなきゃならぬ、一歩前進ということになればそれはまたそれとして評価すべきだと思っておりますが、これからの課題として見ていく必要がある点については、私もそう思っております。  そこで、この立法についての問題なんですが、この法案について参議院の本会議法務大臣も「本法案は、法文上その対象オウム真理教のみに限られるわけではございませんが、現時点で適用対象となり得る団体は、事実上オウム真理教以外には考えられません。」と御答弁ございまして、当委員会でもその立場での御答弁がございます。  法律要件としてはオウム教団に限定されないという法律的構造を持っている、そのこと自体はこれは政府原案としては否定できないということは明らかですね。確認のためにお聞きしておきます。
  76. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) そのとおりでございます。
  77. 橋本敦

    橋本敦君 そこで問題が次に出てくるわけですが、衆議院においては、「例えばサリンを使用するなどして、」と文言の修正も行われました。また、十年以前に無差別大量殺人行為をやったという、それは除外するということも行われました。このような修正によっても、今大臣御答弁のとおり、政府案、法案そのものとしては法律構造上、法律要件上オウムに限定されない、そういうことはこれは免れないということは修正提案者も御同意なさっている問題でしょうか。
  78. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) その点につきましては橋本委員指摘のとおりでございます。  私ども政府原案がある程度限定をしてこられたことに対して、さらにこの修正を求めることによって、完全にということではないんですが、限りなく限定をしていこうという趣旨で、今の御指摘のサリンを使うなど、あるいは過去十年、さらには後に恐らくなくなるだろう、期限を切って五年ごと廃止を含めてやるというふうに、それを閉じ込めてしまうという意味で限りなくオウム真理教に限定するということを努力してみた結果でございます。  共産党さんもかなり苦労して、いかにそれに限るかということで、「サリン等」と、サリンを使うなどという限定を加えた、その団体というふうに限っておられますけれども、それでもやはり同等のものが出ればそれ以外のものについても適用がある、これは法が抽象的、一般的にせざるを得ないという、その形式上やむを得ないものだと思っております。
  79. 橋本敦

    橋本敦君 私どもの案にもお触れになりましたが、私ども法案はもう過去にサリン等を発散させて大量無差別殺人行為を行った団体というように規定しておりますので、現実的以上に法律的にも明確だという考えを持っておりますので、その点の御意見の相違はございますけれどもね。  だから、基本的に法律要件としてはオウムに絞り切れていない、こういうことがありまして、その背景にはやっぱり破防法という問題があるわけです。民主党の方でも御努力なさって破防法を使わないような立法ができないかということで、与党と修正の努力をなさったと伺っておりますが、この点は与党としてはどうしても聞けないということになったわけでございますか。
  80. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) なかなか難しい点で、私どもも当初はそのように政治目的と、あとはこのオウムは宗教団体であるということでちょっとずれているなという感じがあります。  しかし、例の公安審の決定でも政治目的ということを認定しておりますし、それから公安審の準司法的役割ということについてもやや評価する面があるということ等、それから政治目的という点でも、限定という意味は、そのほかの我々の求めた修正案を加えると限定目的の一つに加わるということを含めて、それはそこまでは追求できなかったというのが実情でございます。
  81. 橋本敦

    橋本敦君 いろいろ努力なさったことは多としておるわけでございまして、そういう立場からお尋ねしておりますので、御理解をいただきたいと思うんです。  そこで、なぜこの問題に私が質問の重点を置くかというと、かねてから破防法それ自体団体規制として民主的な団体の行動に対する権力の調査、介入、こういったことで重大な違憲立法だという考え方を持っておるものですから、破防法の援用ということについては厳しい対応ということで考えておるわけです。  次に、そこで官房長にお伺いしたいのでありますが、今回の法案で、破防法と違って公安調査庁あるいは公安調査官の権限が破防法以上に極めて強化をされた、こう考えざるを得ないと思っておるんですが、その点はどういう御理解をなさっているでしょうか。
  82. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) まず、破壊活動防止法上でございますが、公安調査庁長官権限といたしましては解散指定処分の請求権が認められております。また、公安調査官の権限といたしましては規制に関する任意の調査権限が認められております。  これに対応する規定は本法案にもございまして、公安調査庁長官権限として観察処分や再発防止処分を請求する権限が認められております。また、公安調査官の権限といたしまして規制に関する任意の調査権限が認められております。  破防法になくて本法にだけある問題といたしましては、観察処分の実施として公安調査官に必要な調査を公安庁長官が命ずることができます。これによりまして、公安調査官が観察処分の実施としての調査をいたすことができる。それから、特に必要と認められるときは公安調査官に立入検査をさせることもできます。そのような権限が破防法上にはない権限として認められております。
  83. 橋本敦

    橋本敦君 規制処分になりますと、これは破防法との関係では、公安調査庁並びに規制処分ということで、一層その権限が破防法以上に広範に拡大されたというのも事実ですね。
  84. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) これは難しいお尋ねでありまして、処分権者はあくまでも公安審査委員会でございます。公安審査委員会は、破防法上は解散の指定あるいは活動の制限ができます。それの方が大きい権限だといえば大きい権限であろうと思います。  ただし、この法案では、観察処分あるいは各種の規制処分という破防法上にはない類型の処分を公安審査委員会が行うことができるとなっておりまして、そういう意味では、公安審査委員会という場で申しますと新たな各種の処分権限が認められた、こういうことになろうかと思います。
  85. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、今官房長がおっしゃったもともとの破防法の解散指定処分との関係でいきますと、もともとの破防法で解散指定はできるわけです。今回の規制法の関係でいえば、その解散処分をするに当たって、今回の法案による調査あるいは規制処分ということとの関係はどうなりますか。
  86. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 破防法上の解散指定処分は、結局、将来にわたる暴力主義的破壊活動のおそれを除去する処分であります。  本法案は、そういう処分ではなくて、むしろ危険性を持っている団体の危険要素の増大を防ぐ、あるいは危険要素があるかないかきちんと活動を解明するというような作用を持っておりまして、破防法上の作用とはその作用を異にしております。  ただ、対象団体が破防法の解散指定処分の要件に該当するような状況になりますと、同法の解散指定処分を行うことになります。そのような場合には、本法を重畳的に適用する必要はなくなってくるだろうというふうに考えております。
  87. 橋本敦

    橋本敦君 本法による調査あるいは規制処分という状況を、解散指定処分ということの中で証拠として、あるいは理由として、事実として援用されるということは法律的にあって差し支えないというお考えですか。それはそうでしょう。
  88. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) もちろん、本法によります調査も行政処分として行われる調査でございます。それから、解散指定処分を請求するための調査も、これもまた行政処分であります。この両者の調査は重なる面もございまして、そういう意味で、証拠関係で解散指定処分のときに使用できるものももちろんあると考えております。
  89. 橋本敦

    橋本敦君 今指摘しましたように、私は、団体規制の解散という重大な憲法上の問題にかかわることにも本法案は関連するという意味で、憲法上の検討ということは極めて大事だと、こう思うんですね。  第四条第一項で、この法案については「無差別大量殺人行為」、これについて、「実行に着手してこれを遂げないもの」、こういう規定があります。これは、現実のオウム教団とは全く関係のない他の団体を想定した規定考えてよろしいですか、官房長。
  90. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) これは、むしろ法論理の問題でありまして、無差別大量殺人行為というのが例えば爆弾で行われた場合に、たまたま駅に仕掛けたけれども人がいなかったというような場合、あるいは一人おられたという場合、それから多数おられた場合、その中で現に人が死んだか人が重傷でとどまったかということは、公共の安全という意味からいいますと余り変わりがない。  つまり、非常に大きなことは、無差別に、つまり限定なく多数の人が殺されるような状態が起きた、そして将来起きる危険がある、そこが一番大きな問題でありまして、したがいまして、法論理上やっぱり未遂罪も入れざるを得ない。また、地下鉄サリン、松本サリンでも多数の重傷者を出しておりまして、その人たちの問題は本法ではかかわりがないとは言えないと考えております。
  91. 橋本敦

    橋本敦君 地下鉄サリン事件はもう既遂で終わっているわけですから、「遂げないもの」という未遂を入れるということについても乱用の危険性が完璧に排除されたものではないというふうに私は考えざるを得ないんです。  さらに、最後の質問ですけれども、第五条の関係でいいますと、綱領の問題まで出てきているわけでありまして、団体が殺人を暗示的に慫慂する綱領ということになりますと、暗示的にという意味の構成要件も極めて不明でありまして、そういった意味で、憲法規定を厳しく解釈すれば重要な憲法上の問題が残る、こう考えておるんですが、暗示的に殺人を勧めるという、暗示的にとはどういう意味で書かれたものなのでしょうか。最後の質問になるかもしれませんが、明確にお答えください。
  92. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 宗教の教典あるいはそういうものがオウム真理教の場合には一つの問題としてあるわけでございます。そういう宗教上の言語が用いられている場合には、殺人をしろというようなことが明示的に書かれていない。しかし、それをどういうふうに解釈するかについては、他の部分で、例えば麻原の説法その他で、綱領そのものは暗示的であっても、その解釈がどういうものであるかがむしろ他で補われて非常に危険な要素となっている場合がございます。そういう場合を考えているということであります。
  93. 橋本敦

    橋本敦君 では終わりますが、憲法上の原則である明白現実の危険性、この問題についてもこの点は重大な疑義があるという憲法上の問題を指摘して、質問を終わります。
  94. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社会民主党の福島瑞穂です。  今、橋本委員の方からもありましたが、参考人の方たちからあったのは、オウム真理教のみに適用するのであればなぜ未遂が入っているのかということは参考人の中から質問がありました。  オウムのみにもし本当に適用するのであれば、なぜこの法案で不特定かつ多数の殺人の未遂が入っているのでしょうか。
  95. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 御承知のとおり、この法案は、現に無差別大量殺人行為を行った団体が将来においてもその増大の危険性があるかもしれない、こうした状況に対処するための法律でございまして、そういうことがあってはなりませんが、そうした団体があるいは何か公衆の場で事件を起こした。それが例えば未遂であっても、それはその行為が多くの人たちを殺傷する状況の中で行われたとすればその対象になるということを法律上つけ加えているものであります。
  96. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私はそれはおかしいと思うんですね。今まで答弁の中で、オウムのみに適用されますというふうに明言をしていらっしゃいます。かと思うと一転して、特に衆議院の場合は二転三転した答弁がありましたし、この場に及んで未遂が入っているのはそういう団体もあるからだというふうに答えられると、一体どこに対して適用があるのか。これを略称としてオウム特別立法と言うことすら私はミスリードのタイトルであるというふうに思いますが、どちらなんですか。
  97. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) あえて申し上げますが、例えばオウムがということを差し入れても結構でございます。
  98. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 例えばオウムがであれば、オウム以外のものにも適用されることがあるわけです。私はこの法律は違憲だと考えますので、オウムにも適用されることについては問題があると思います。しかし、この委員会の中で大臣オウムのみに適用されると明言されたこともありますので、適用に当たってはくれぐれも慎重にしていただきたいと思います。  昨日、ほかの委員の方からも質問がありました謝罪の記者会見がありました。教団の一部の者の行為であることは認めました。それから、松本智津夫さんのことについていえば、仮に本人が認めているのであればそうであるという記者会見がありました。  私は、もちろん組織全体として行ったというふうに言ってもらえればいいですけれども神奈川県警、緒方靖夫さんの事件に関しては、警察官個人がやったのであって警察の一部がやったということは絶対に警察は今の段階でも認めておりません。それに比べれば、教団の一部がやったということを言うのはやはりこれは一歩非常に前進した記者会見であるというふうに思います。この謝罪を受けて、どうですか。
  99. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 先ほどお答えをいたしましたとおり、昨日のテレビ番組でオウム真理教幹部の発言があったということは承知をいたしております。しかしながら、地下鉄サリン事件等、一連事件が麻原彰晃こと松本智津夫を首謀者とする教団による団体の犯行であるというものを認めたものではございませんし、また殺人をも正当化する危険な教義を廃棄する旨宣言したものでもございません。したがって、同教団危険性というものはいささかの変化を生じるものとは考えておりません。本法案必要性についての認識は全く変わらないところでございます。  むしろ、昨日の教団の対応というものは、新しい立法が対策として効果的であるということを裏づけるものでございまして、法務省としては一刻も早く立法を成立させていただくことを念願いたしている次第でございます。
  100. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 参考人の浅野健一さんが、一人の人間が、上祐さんが出所をすると、彼が出所をする前に国会で立法すべきだという形で国会は立法すべきではないということをおっしゃいました。私もそれはそのとおりだというふうに思っています。年内施行する、それに合わせて急いで急いでというふうに言われますけれども、それはやっぱりおかしい。  私は、きのうの謝罪会見も踏まえて、この法律をこれからもし成立した場合にどう適用していくか慎重に判断してほしいと思いますが、いかがですか。
  101. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 当然のことながら、それらの客観情勢等も踏まえて慎重に審議をいたしてまいります。
  102. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 やはり参考人の何人かの、武井さん、浅野さん、それから三島さんの三人から、マインドコントロールをどうやって解いていくかという話がありました。みんなから出たのはやはり法案実効性です。この法律が成立をして、オウム真理教に対してどういう実効性があるのか。むしろ、対話を始める、マインドコントロールを解いていく、カルト対策などが必要ではないかという意見が参考人の中から非常に出ました。  私は、もう相手にしないということではなく、謝罪会見も踏まえて、対話を少なくとも始めるべきであると。マインドコントロールを解いていく、あるいはカルト対策などを積極的に推し進めるべきであって、それがあって初めてこの法律をどうするかという判断をすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
  103. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 私どもは、教団の態度として、少なくとも、先ほど申し上げました首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫に対する考え方、あるいは殺人をも正当化しているような教団考え方、そういったものに対してのはっきりとした考え方を示すということがまず必要であろうかと思っております。  したがいまして、この法案自体は粛々と進める一方、今委員お話しございました教団からの脱退者の信者に対する対応というのは、極めてこれも大切な問題でございますので、政府全体としてしっかりと考えてまいりたいと思います。
  104. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 きのうの記者会見で、松本智津夫さんが死刑になったらどうするかという質問に対して、日本の国法のもとにおいてそうなったのであれば仕方ない旨発言があったと思います。私は、そういうことも踏まえて、もう相手にしないということではなく、ぜひ最大限の努力、権力的作用だけではなく、やってほしいと思います。  先ほど魚住委員の方からもありましたが、私も端的に聞きたいのは、オウム真理教が現在不特定かつ多数の殺人をするおそれがあるかということについてお聞きしたいと思います。
  105. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 先ほど来お答えをいたしておりますけれどもオウム真理教は、麻原彰晃こと松本智津夫に対する絶対帰依や殺人をも正当化する危険な教義を依然として維持しております。地下鉄サリン事件、松本サリン事件、両事件等につきまして、麻原が首謀者となって行った教団ぐるみの犯行であることを認めるということもなく、被害者や一般社会に真摯な謝罪もしていないということのみならず、サリン製造やサリンプラント製造、自動小銃密造に関与したことによって逮捕された約五十人のうち、保釈あるいは刑期満了したために出てまいりました約十人が同教団に復帰したことなどから、同教団は依然として危険な要素を保持しているものと考えております。
  106. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 団体の一部が行った行為であるということは認めていますね。  それから、破防法のことで、一九九七年一月三十一日、公安審査委員会は請求棄却の決定をなしたことは有名なことです。「証拠をもってしては、本団体が、今後ある程度近接した時期に、継続又は反覆して暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があると認めることはできない。」と認定をしました。  私がこの法案で一番危惧するのは、教義がどうたらこうたら、かつてやったことがあるからどうたらこうたら、それを維持しているからどうたらこうたら、反省していないからどうたらこうたら、そういうことが出てくるのであって、現在及び将来の危険の明示的なものが全然示されないんです。  先ほど、橋本委員それから魚住委員の方からもありました、教義がそうだったら、暗示的あるいは明示的にそうだったら、なぜ現在こういうふうな強権的な形で観察処分あるいは再発防止処分も導くようなそんな危険性があるというふうに認定ができるのか。抽象的なことだと思うんです。捜索が行われてこんな事実があった、こういう変化がある、一九九七年と現在はこう違うのだ、何かそういう明白な事実、客観的な事実はあるんですか。
  107. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 実は私、宗教そのものは余り勉強いたしておりませんが、今委員が申されましたどうたらこうたら、そのことが一つ一つ実は大切なんじゃないだろうか、このように思っております。
  108. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 タントラ・ヴァジラヤーナですね、ごめんなさい、正確に言えなくて。  私は、それは精神的自由権の規制手段として、そういうことを理由に、明白かつ現在の危険がないにもかかわらず、教義を依然として維持している、教義を廃棄しないということで精神的自由権を制限することはいかがかと思います。極端ですけれども、もしイスラム教やいろんな教の教典を見て、かつて不特定かつ多数のある宗教団体は昔々例えばやったと、今回は十年に限っておりますが。教義は、ほとんどの宗教は若干の手直しはあってもそのまま維持していると思います。聖書の中にも変なものはいっぱいあります。  そうすると、そういう抽象的なことを理由になぜこんな精神的自由権を極端に制限できる立法をつくれるのか。それについてどうですか。
  109. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 私は宗教のことについては余り詳しくなくて申しわけないわけでございますが、各宗教の教典とかそういったものの中にはいろんなことがあろうかと思いますが、それらのものと今回のオウム真理教が根本的に違うのは、現に無差別大量殺人という行為を実際に行っているという現実があるということが私は違うと思います。
  110. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 かつて行った犯罪、それについては、逮捕され、公判が開始され、司法手続が進んでおります。それで十分です。人間は、ある犯罪行為を行った疑いがあるということで逮捕され、裁判が行われているわけで、過去において何かをやった人間がいれば即危険性があるというふうになれば、それは犯罪概念を全く変えてしまうものです。  私は、この法務委員会で何回聞いても、現在及び将来の危険ということについて非常に漠然とした教義の話とか、教義を廃棄していないといった話しか聞けないということにこの法案の違憲性が出ていると思います。  もちろん、信教の自由のために頑張りたいとも思います。しかし、問題は信教の自由だけではありません。結社の自由や思想、信条の自由、居住の自由、プライバシー権の自由、たくさんの人権がこの法律の制限の対象となっています。この真理をどんなに言っても、教義がどうのこうのということしか本日においても出てこないということについて、私は本当に安全というふうに思います。  では次に、ちょっと手続的なことをお聞きしたいと思います。この法案での手続がちょっとよくわからないもので、教えてください。  例えば証拠書類は、これは謄写され、教団あるいは、教団とは限らない、証拠書類は団体あるいはその代理人に対して謄写され交付をされるのでしょうか。その手続は保証されますか。
  111. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 破防法ではそういう規定がございますけれども本法ではそういう規定はございませんので、相手方に証拠書類を謄写あるいは閲覧させるということは本法規定されておりません。したがって、行われないということであります。
  112. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 いや、それはもう本当に重大な問題で、証拠書類が出るからこそ何に基づいて判断したのかという反論ができます。ここには弁護士の北村先生もいらっしゃるのでちょっと考えていただきたいんですが、証拠書類を見なかったら、何に基づいて判断したのか、そもそも攻撃防御ができません。憲法三十一条は適正手続を書いておりますし、これは行政処分にも準用されるべきであるというのは確立しております。  大臣、証拠書類をきちっと謄写して交付するようにお願いしたいんですが、いかがですか。
  113. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 今、参考人からお話しいたしましたとおり、この法律自体はいわゆる行政法でございまして、直接強制力も極めて弱い、こういう法律でもございますので、私はその必要はないと思います。
  114. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 いえ、破防法よりも強力な法律です。現在及び将来の危険が極めて漠然として、基本的人権の制限ができるわけですから、証拠書類を相手に交付しない破防法よりもやっぱりひどいということなので、その点はなおさら違憲の疑いが強いというふうに思っています。その点については今後もずっと追及していきたいというふうに思います。  意見聴取、これは一回のみに限らないのでしょうか。
  115. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 法律上は回数とかなんとかの規定はございませんので、一回あるいは一回でない場合も法律上は可能であります。
  116. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 証拠書類を一切もらわないで、場合によっては一回で終わるということは、結局、問答無用ということです。私たちは、証拠書類を見てそれにこう反論しようとか、そういうことができるわけですが、何に基づいてやったかわからなくて一回きりだったら、本当に江戸時代のお白州じゃないですけれども問答無用状態になります。  ですから、この手続についてはこの法案は極めて不十分、あるいは明確に書いていないんですが、意見聴取を絶対に一回では終わらせないというように大臣にお願いしたいんですが、いかがですか。
  117. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) そのことは公安審査委員会に属することでございますが、適正な判断をしていただけるものと思います。
  118. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 破防法よりもひどい適用がなされないように、それは今後も監視をしていきたいというふうに思います。  観察処分、再発防止処分の条文、それぞれに対して何なのかというのはよくわからないんですが、例えば五条の一項二号の「全部又は一部」という条文になっております。その一部が構成員であること、「一部が」とありますが、この「一部」というのはどの程度のことを考えていらっしゃるのでしょうか。政府参考人でももちろん結構です。
  119. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) 一項二号についてですね。「無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。」、これは「関与した者の全部又は一部」の「一部」について、それは何人ぐらいのことを想定しているかという趣旨でございましょうか。
  120. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 はい。
  121. 但木敬一

    政府参考人但木敬一君) もちろん、理論的には一人であっても一部であります。ただ、一部という言い方は、必ずしも一人ということを念頭に置いた言葉遣いではないというふうに思っております。
  122. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 もう時間ですから終わりますが、非常に不十分な時間の中でも違憲性ということが大変出てきたというふうに思っています。  構成員であるということがありますが、自分はその構成員ではないという立証を一体どうやってやるのかというふうにも思います。その人間が構成員なのかどうなのかということをやるためには、東京新聞が十一月二十五日に書いているように、公安調査庁がかなりいろんな団体に入り込まない限り、構成員なのか役職員なのか、その人が構成員なのかわからないと思います。むしろ、この法律が将来よりプライバシーを侵害するおそれがあるということもつけ加えて、私の質問を終わります。
  123. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 法務大臣にお尋ねいたします。  政府案、この閣法二号と破防法の関係でございますが、公安審査会とか公安調査庁権限などを新設している内容になっておるんですが、破防法の特例法というふうに認識してよろしいかどうか、お答え願います。
  124. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 破壊活動防止法による解散指定処分等は、団体活動として暴力主義的破壊活動を行った団体につきまして、継続または反復して将来さらに団体活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認められた場合に、そのおそれを除去するために行うことができるとされております。  これに対しまして本法案は、オウム真理教を念頭に置きまして、無差別大量殺人行為が暴力主義的破壊活動のうちでも治安の根幹をも揺るがしかねない極めて危険な行為でありまして、再発を防止することが困難で反復性が強いという特性を有することにかんがみまして、過去に無差別大量殺人行為を行いかつ現在も危険な要素を保持している団体に対し、その危険性の程度を把握するための観察処分及び再発を防止するための再発防止処分を行うことができるという破壊活動防止法の規制とは異なる手法による新たな団体規制の仕組みを設けるものでございます。  そのため、本法案による公安審査委員会公安調査庁権限等についても破防法とは異なる新たな団体規制の仕組みに対応したものとなっております。
  125. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 るる御説明がありましたが、わかりやすく言えば、破防法ではおさまらぬから特別なものをつくるというふうに理解いたします。  共産党の発議者にお尋ねしますが、このサリン等防止法改正案、参法五号ですか、これは政府案と対案関係にあるというふうに認識してよろしゅうございましょうか。
  126. 橋本敦

    橋本敦君 今の御質問についてお答えをいたしますが、御指摘のとおり、我が党案は政府案に対する対案として提出をさせていただいたものであります。  破防法を援用する政府案に対しまして、日本共産党案は、現在のオウム集団の状況に照らし、関係住民の要望にもこたえるオウム対策としては、九五年に制定をされましたサリンの製造、発散などを厳しく取り締まる、そのために全会一致で成立させたサリン防止法がございますから、これを改正して、サリンによる凶悪な無差別殺人行為を犯したオウム集団に特定して適用して、そしてさらに既存の暴対法の手法に準拠してサリン犯罪防止するという、その目的を遂げることが最も適切であると考えているわけでありますが、一般に委員指摘の対案というのは、複数の議案が同一事項に関する規定を有し択一の関係にあるもの、こう解されております。  そういう意味からいいましても、オウム対策という同一事項に関する両案ということになりますから、その点で私どもの案は政府案に対する対案という考え方で提出させていただいております。
  127. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 団体規制という観点から見れば、破防法を補完する内容じゃございませんか、共産党案も。
  128. 橋本敦

    橋本敦君 団体規制という点からという御指摘がございましたが、私どもの案は、提案理由説明でも申し上げましたように、団体規制そのものが破防法で言うような目的ではなくて、私どもとしては、団体の危険な行動を具体的に防止し、そしてそれを規制するという行為に着目をして暴対法の適用を準用している、こういうことでございますので、そういう点では基本的に違いがあるということでございます。
  129. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 橋本先生の御主張はわかりましたが、率直に参法五号、共産党案に対する私の感想といいますか印象を数点申し上げますので、簡略にまとめて御所見をいただきたいと思います。  第一点ですが、今必要なのは、手段のいかんを問わず無差別大量殺人行為を行う団体をどう防止規制するかという問題だと思います。  共産党案は、原因行為をサリンの散布に限定する一方で無差別大量殺人防止すべきだということで、無差別殺人行為はサリンだけだということで、これは無差別殺人の方法はほかにもいっぱいあるわけでございますから、無差別殺人というものを防止するという点からいえば一貫性がないということ、これはそういう意味では法制上非常に私は問題があると思っています。  特に、この無差別大量殺人防止団体規制サリン等防止法、いわゆる禁止、罰則、管理ですか、そういう法律の改正で行うということは筋が通らない、百歩譲っても独立の法として、一部改正法じゃなくて独立法とすべきではなかったかということが第一点でございます。  それから第二点は、この法律を率直に読みました印象としまして、共産党がいかに法務省、中でも公安審査会と公安調査庁をお嫌いかということがわかります。警察機構なら利用してもいい、活用できるという考え方ではないかという感じを私は受けています。  危惧されますのは、例えば活動規制、これは共産党案の第十一条に書いてあるわけでございますが、これが、抽象的基準を設けてはおるんですが立証手続については定められていない。そして、国家公安委員会とか地方公安委員会の判断で行う、こういう仕組みになっています。これに比べて政府案は、再発防止、第八条が相対するものだと思いますが、ここでは八つの構成要件、人を殺害しようとしているとき云々という八つの構成要件を設けて、処分の請求とか決定にも詳しい手続を政府案は定めているわけでございます。  そういう点では、共産党案は、請求と認定といいますか決定といいますか、これを、公安委員会というのは警察の管理運営機関なんですよね、この判断で行うということになっていまして、果たしてその公安委員会で適正な手続が期待できるか、非常に問題があると思っています。  三つ目の印象ですが、これらのことは、仮に将来共産党政権あるいは共産党が政権に参加するというような事態になれば、こういう志向ですと、こういう立法手法ですと警察国家となる可能性があるんじゃないかという危惧を私は持つものであります。特に、当委員会で日ごろ不祥事の多い警察を信用できないとおっしゃっている党からすれば、私は非常に理解できない。  こういう率直な印象、感想を持つわけでございますが、時間が二十分しかありませんので、簡単に御所見を聞きたいと思います。
  130. 橋本敦

    橋本敦君 簡単に答えることが難しい御質問をたくさんいただいたんですが、まず第一の破防法を嫌いだと、こうおっしゃいますが、好き嫌いじゃなくて、破防法自体を私ども憲法違反の法だ、法体系だ、こう考えておりますから、オウムに対する規制あるいは犯罪防止という点でも、破防法を使わないで住民の期待にこたえてやれる方法ということで検討したということでございます。  そういう意味で、先ほどおっしゃいました、それじゃ警察を使うということはどうか、こういう問題になってまいります。公安委員会の判断ということが、確かに今御指摘があったように、準司法機関でないという御指摘もその意味一つの御指摘かと思って伺っております。  この公安委員会について、私どもは政策的には準司法機関に近い構成と判断ができるような改革が必要であるという政策提起もしておりますが、現在はそうなっておりませんので、それは仕方がないので、今後の課題でございますけれども、公安委員会の判断ということで一応チェックをするということと同時に、不服申し立てができるということを設けておりますので、その点のバランスはとれるかと思っておるわけでございます。  それからもう一つ、私どもの方は政府案と違いまして警察法二十三条の規定に基づきまして、暴力団対策は刑事警察の所管でございますから、そういう意味で、私どもはこのオウム集団というのは暴力団以上に極めて危険な、極めて悪質な暴力団だというように規定して、単なる宗教団体と見れないという側面も持っておりますので、そういう意味で刑事警察をこの任に当たらせるということは適当と考えました。  ただし、委員指摘のように、警察については、緒方事件もあり、神奈川県警事件もあり、現実に重大な反省をしていただいて、そして国民の立場に立って公益的立場で仕事をしていただかなきゃならぬ、こう考えております。  最後に、この日本共産党案でいくならば警察国家になるのではないかという御指摘でございましたが、私は政府案こそ、破防法を援用しながら危険な民主的な運動に対する規制を一層広め、権限を強化して、そういう意味では危険な監視体制がつくれるのではないか。警察国家になるというようなことを私どもは決して考えておりませんということでございます。
  131. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 要するに、共産党案の立法構成といいますか、それはやっぱり破防法に対する、私らから言えばねじれたとらえ方、共産党さんの方から言わせればそれは違憲の法律だという、そこのところに原因があると思います。したがって、破防法の議論に若干入らざるを得ないと思います。  公安調査庁長官にお尋ねしますが、平成元年の二月に衆議院の予算委員会で不破委員長が、共産党が破防法の調査対象団体になっていることについて質疑していますが、今日でも調査対象団体でしょうか。国民の多くはまさかと思っているんじゃないかと思いますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  132. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) 御指摘の点につきましては、今日でも調査対象団体でございます。
  133. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 その理由はどういうところでございますか。
  134. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) 日本共産党は、昭和二十六年から二十八年ころにかけまして、全国各地で暴力主義的破壊活動を行った疑いのある団体でございまして、将来暴力主義的破壊活動を行う危険性が現時点で完全に除去されているとは認めがたいことから、引き続き調査を行う必要があると考えているものでございます。
  135. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 この平成元年の衆議院の予算委員会議論の中で、いわゆる敵の出方論ということを当時の石山長官説明して、  いわゆる民主社会主義に基づいてあくまで議会主義を貫いて平和的な革命を行われるという政治志向を持っておられるのか、あるいは時と場所により敵の出方、つまり権力側の出方によっては非平和的な手段にも訴えることがあるのか、この辺が十分に解明できておりませんし、二十年、三十年の問題ではなくて、遠い将来共産党が政権近しと思われる時分になりましたらばどういう方向に出られるかがなお疑念でございますので、調査を継続しているわけでございます。 こういう答弁をなさっていますが、この姿勢は変更していないということですか。
  136. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) 基本的には同じ考え方をとっておるわけでございます。
  137. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 橋本先生にお尋ねしますが、共産党の綱領では、先ほど先生がおっしゃったことと同じことだと思いますが、破壊活動防止法や公安調査庁など国民の権利を侵害する弾圧法令、弾圧機関の撤廃を要求するということが綱領に書かれていますが、この方針は今でもそういうお考えでございますか。
  138. 橋本敦

    橋本敦君 先ほど公安調査庁長官から答弁があった問題については、私は断固たる抗議を申し上げておきたいと思うし、そのこと自体が破防法の明白な憲法違反性を示しておる。今日、我が党がとっている国会及び国民の中で広く民主的な運動を通じ、国民の選挙で示された意思を通じて政治の変革を求めていくという方針について、全く許しがたい独断的判断をしていると言わざるを得ないと思います。  平野議員の今御指摘にございましたが、私どもの党綱領で、おっしゃるように、「党は、国民の民主的権利の拡大のためにたたかい、破壊活動防止法や公安調査庁など国民の権利を侵害する弾圧法令、弾圧機関の撤廃を要求し、軍国主義と権利抑圧のための立法に反対する。」、こう規定してございますから、我々の行動としては、日本の民主的な前進のためにこの破防法はいずれ撤廃すべきものであるという立場で運動を進めていく決意でございます。
  139. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 破防法は憲法違反だと。そして、サリン等防止法改正で団体規制法律を出されるなら、破防法廃止法案というものを共産党は出して、そこでつじつまというか一貫性をつくるべきではなかったかという思いを私は持っております。これは答弁は要りません。  そこで、公安調査庁長官にお尋ねしますが、最近、共産党は各種の選挙で勢力を着々と拡大されており、先般の高知県知事選においても共産党が中心になって橋本大二郎知事を当選させたわけでございます。例えば、本国会でも国会運営で民主党、社民党とともに三党の国会共闘というのは非常に成果を上げておりますし、共産党が政権に参加する時期というのはひょっとしたら来年あたりあるんじゃないかという想定を私はしておるんです。私の自由党でも小沢党首は時々、理念と政策が一致すれば共産党とも国家国民のために協力するという発言をして、私ははらはらしているんです。  こういう状況の中で、共産党を破防法の調査対象団体にしておくといいますか、あるいは調査を継続する必要性ということについて、国民はほとんど知らないと思います。したがいまして、長官、調査対象団体から除くには、長官側からいって共産党がどういうふうにすれば除かれるんですか。
  140. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) 調査対象団体から除くためにどうするのかということでございますが、私といたしましては、そのときそのときの情勢に従って公安調査庁として調査を行うというだけでございまして、それ以上のことはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  141. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 橋本先生にお尋ねしますが、今の長官のお答え、それから現実にかつての共産党と違って、私たちも共産党と国会運営でいろいろ協力し合ったこともあるんですが、いつまでもこういうことでは、あいまいにしたままの、いわば終戦直後の問題をいつまでも引きずっておくということは、私はこれは日本の国にとってよくないことだと思います、さまざまに国民の要望が変化していますし。  そういう中で、ここら辺の問題は、余り破防法を憲法違反、憲法違反と言わずに、これは不都合な部分は変えればいいわけですから、すっきりとなさったらどうでございましょうか。
  142. 橋本敦

    橋本敦君 もう既にきっちりとしておるわけでございまして、現実に現在でも破防法の指定団体としているというそのこと自体が私は速やかに撤回をされるべきそういう問題なので、私の方の問題ではない。  私の方としては、今委員指摘のように国会及び国民の中に公然と広く活動して、比例代表選挙でも全国で八百二十万の御支持をいただいて国民の中に定着した政党として活動しておるということでございまして、これをいつまでも指定団体としておる、そのことのアナクロニズム、それ自体を私は直ちに改めるべきだ、そしてまた、それを改めないなら破防法が一層憲法違反性が明確になっている証拠じゃないか、こういう立場で先ほどから御答弁をさせていただきました。
  143. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 その言葉で終わるとちょっと私の質問趣旨が変わってきますので一言言わせていただきますが、私はそうではないと思います。やっぱり客観的な国の機関がそういうふうに認定する以上、何らかの欺瞞性、何らかの一つの、表と裏といいますか、そういう大きな、そこにやっぱり国民に誤解を生じさせしめる問題があると思いますので、私たちは、今の橋本先生の御発言とは反対の立場で問題を今後も追及していきたいと思います。  終わります。
  144. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 修正案提出者の方にお伺いします。  立入検査に関する質問ですけれども修正により加えられた第十三条によりますと、公安調査庁長官公安審査委員会に対し立ち入り先のリストを提出すべしというふうになっていますね。これは立ち入りの前に提出されなきゃいけないのか、それとも事後でもよいということなんでしょうか。
  145. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) ただいまの御質問に率直に答えるならば立ち入りの前に提出されなければならないわけですが、十三条に「第五条第一項又は第四項の処分を請求するとき又はその後において、」というふうに書いてあって、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、これはその観察処分を請求する前にすべてのリストを提出するわけです。しかし、それは請求する後であってもまた出てくれば当然請求するわけですけれども、その後に具体的に立ち入りをするというときにはその前にはそのリストを提出しなくちゃならないわけです。  その旨は、衆議院修正法案が通ったその直後に附帯決議を決めておりまして、そこではこのように規定しております。「立入検査の実施に当たっては濫用にわたらぬよう、公安調査庁長官において、あらかじめ立入りを行う土地又は建物の所在及び立入りの予定日公安審査委員会に通報するとともに、その立入検査の結果を公安審査委員会に報告するなどの細則を定めること。」というふうに決めております。  それで、その細則につきましては、そこのところまではまだはっきりは決めておらないんですけれども、その概要は、公安調査庁長官は、観察処分またはその更新の請求をする時点で、法第十三条の書面とともに、これと認めるに足りる資料を公安審査委員会に提出するだけではなく、観察処分等の請求後に当該団体が所有または管理していることが判明した土地または建物についても法第十三条の書面及び資料を公安審査委員会に提出する一方、既に提出した書面に記載された土地または建物のうち当該団体の所有または管理するものでなくなったと認めるものについてはその旨を公安審査委員会に通報することを義務づける規定が設けられるものと見込まれているというふうに聞いております。
  146. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうしますと、原則的には前だということだと受け取りたいと思うんですが。
  147. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) そうです。
  148. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 公安調査庁長官がリストを提出するように規定されている一方で、第十四条によりますと警察庁長官にも立入調査権が与えられているわけですね。しかし、警察が立入検査をする場合にも公安審に対してリストを提出するというふうにはなっていないんで、これはバランスが悪いのではないかなと思いますが、その辺のところはどうしてこうなったのでしょうか。
  149. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) これは、警察が立ち入る場合には必ず公安調査庁長官協議をしなければいけないということで、その協議の結果を公安調査庁長官公安審査委員会に報告をするという形になっております。すなわち法案の十三条において、公安審査委員会による観察処分の決定またはその取り消しの判断の適正に資するために公安調査庁長官公安審査委員会に対して当該団体が所有、管理すると認める土地または建物を特定するに足りる事項を記載した書面を提出しなければならないと規定しておりまして、先ほど申しました衆議院附帯決議においても、その予定日等を事前に通報するという細則をつくることになっております。  これを受けて本法案の細則においては、公安調査庁長官は、公安調査官に立ち会わせる立入検査に関する事前事後の報告に加えて、法案第十四条第三項の規定に基づく警察庁長官との協議が調ったときは、当該都道府県警察職員が立ち入りを予定する土地、建物及びその予定日公安審査委員会に通報するものとする旨の規定が設けられることになっておるというふうに聞いております。
  150. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 原則、立ち入り先リストを出す、例外的に後で出る場合もあるということになっているわけですけれども、そのリストに記載されていない場所に立入検査があった、そしてそれが報告されないというような場合もあると思うんですけれども、こうした場合に公安調査庁長官警察庁長官に、罰則と言うとおかしいですけれども、何らかのたががなければ無原則になってしまうというふうに考えるんですが、いかがですか。
  151. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) 確かにそういう問題があると思いますが、リストに漏れたものに入ったから即罰則というふうなことは確かに規定はありません。しかしながら、この法案十三条に基づいて公安審査委員会に提出される書面に記載される当該団体が所有あるいは管理すると認める土地または建物は立入検査の対象となり得るものであって、この書面は、先ほど申しましたように、立入検査が実施されるよりも前に提出されるものであります。この書面に記載のない土地または建物に対してみだりに立入検査がそういうことで実施されるとの懸念はないと思っております。  さらにこの法案は、第二条及び第三条で規制の乱用を厳しくいさめておるということと、四十二条で立入検査の実施に当たる公安調査官あるいは警察職員がその職権を乱用した場合には三年以下の懲役または禁錮という刑法犯による法定刑の重い職権乱用罪が設けてあるので、立入検査につきましてもその執行の適正は担保されているんじゃないかというふうに考えております。
  152. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 立ち入り先が本当に観察処分を受けた団体の場所であるかどうか、それを判断するのはだれがやるのかという問題がありますね。そういう問題で疑問があった場合に、公安審の方が立ち入り先に関して意見を述べたり立ち入りをやめさせたりというようなことは実際できるものなんでしょうか。
  153. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) その適否を判断するのは、これは行政処分でございますので、第一義的にはその行う行政庁が判断するということは、これは一般の行政行為と同様でございますので、まさに行政庁がやるということになると思います。  そして、公安審査委員会は、観察処分の請求を棄却したり、あるいは一たん観察処分がなされた後にこれを職権によって取り消し得る権限を有しておりますので、このような権限を背景にして、団体の所有、管理する土地とか建物を特定する書面の提出や立入検査に係る事前事後の報告を義務づけることによって立入検査の一層の適正を図ることができるというふうな形になっていると考えております。
  154. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 立入調査権というのは、処分を受けた団体に関係がある場所だというような口実で乱用される余地もないわけではないですね。ですから、そのために、公安審に提出された立ち入り先リストというのは事後であっても国会に報告されるべきであるというふうに思いますが、見解はいかがでしょうか。
  155. 北村哲男

    衆議院議員北村哲男君) 立ち入りリストそのものを国会に報告するということはないと思うんですけれども、実際に公安審査委員会がした規制処分の内容、公安調査官及び警察職員の立入検査を含むその実施状況については国会に報告がなされるというふうに考えております。それで、その中身はいつどこに立ち入ったかという報告事項も当然含まれていると考えております。
  156. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 公安調査庁長官及び警察庁警備局長に同じ質問をしますけれども、両庁とも第三十一条で定められた国会報告の際、もしくは法務委員会質問主意書など、国会審議において立ち入り先を事後に公表すべきではないかというふうに思いますが、それに対してどういうふうな見解を持っているかお答えいただきたいんですが、簡単で結構でございます。
  157. 木藤繁夫

    政府参考人(木藤繁夫君) お尋ねの点につきましては、まず、本法案の三十一条で、団体規制措置執行することを責務とする政府が国権の最高機関である国会に対しまして毎年一回その施行状況を報告することを義務づけておるわけでございまして、もって国会における見直しを含む多角的な検討に資することとしております。同条によりまして、公安審査委員会がした規制処分の内容や公安調査官及び警察職員による立入検査を含むその実施状況等につきまして国会に報告を行うことになるものと考えております。  また、政府といたしましては、衆議院における附帯決議趣旨をも踏まえまして、本法の成立、施行後、その適正な運用を確保するとともに、国会本法により行う五年ごと見直しに資するために、種々の情報提供につき法務委員会における報告等の審議や質問主意書に対する答弁等につきまして積極的に対応してまいる所存でございます。
  158. 金重凱之

    政府参考人金重凱之君) 私ども警察庁といたしましても、本法案の第三十一条によりまして、警察職員による立入検査を含むその実施状況等につきまして国会に報告を行うことになるものというふうに考えております。また、この国会審議や質問主意書に対する答弁等につきましても積極的に対応してまいる所存でございます。
  159. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 次に、法務大臣にお伺いしますけれども、立入検査というものを公明正大なものにするためにも立会人を置くというシステム、それがあると非常にいいと思うんです。また、それがあって不便だ、困るというような理由はちょっと考えられないんですが、例えば法務省令に規定を設けるとかそういうことはできないのか、あるいはやるおつもりはないのかということでお答えいただきたいんです。
  160. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) 本法案の第二条及び第三条は、この法律による規制必要最小限度にとどめるべきという旨を定めておりまして、その権限の乱用を厳しく戒めておるわけであります。  また、第七条第二項は、特に必要があると認められるときに限りまして立入検査を行う旨規定をするとともに、第七条第四項及び第十四条第七項は、立入検査はあくまでも規制対象団体活動状況を明らかにするという行政目的のために認められたものでありまして、犯罪捜査のために認められるものではない旨を確認いたしているわけであります。  さらに、第四十二条及び第四十三条は、それぞれ公安調査官及び警察職員の職権乱用について通常よりも重い罰則というものを定めておるわけでございます。このように、本法案におきましては、公安調査官及び警察職員による立入検査の適法性は十分担保されていると考えておりまして、立会人に関する規定を設ける必要は私はないと考えております。  なお、公安の立入検査に当たりましては、その対象となる団体の役職員または構成員がこれに立ち会うことができないとするものではございません。
  161. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 破防法の第二条、第三条で法律の乱用が禁じられていますけれども、今回の法案でもそのまま第二条、第三条がスライドして入って乱用を禁止している、乱用を禁止する担保になっているということですけれども、今まで何度も質疑にも出ておりますように、例えば十一月二十五日の東京新聞朝刊が言っているように、公安調査庁が市民運動までも破壊団体にしているというような、そういう事実があるのではないかという疑いが多くなっているわけです。  また、神奈川県警の問題、警察全体の問題ということで、ただ信用してくれというだけでは国民が納得していないような状況が現実にあるわけですから、やはりこの乱用を禁止する担保というものを今法律の中できちっとやっていった方がいいのではないか。それの一番この法案に関するポイントとしては、やはり立ち入り場所というのを公安審が認定するという制度、これは今回間に合わないかもしれないけれども、今後そういうものをきちっとして国民信頼を、法律自身が信頼されるというふうに改良する必要があるのではないかと思うんですが、法務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  162. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) お尋ねがございました新聞報道につきましては、公安調査庁は日本国憲法の保障する民主主義体制を暴力で破壊することがあり得る団体について、その組織活動状況等を調査しておるわけでございまして、そうしたおそれのない市民運動ないし市民団体そのものやその正当な活動を調査の対象とすることはないと思います。破壊活動防止法第三条にもその趣旨は明記されておるところでございまして、もとより違憲、違法のそしりを受けるような調査活動は行っていないものと私は認識をいたしております。  次に、立入検査先について公安審査委員会が認定する制度にする必要があるとの御指摘につきましては、観察処分の決定に当たっては準司法機関である公安審査委員会の中立公平な判断を経る慎重な仕組みがとられております上に、個別の立入検査について公安審査委員会による審査を要するといたしますと、対象団体危険性の程度を把握するという立入検査の目的に照らしまして準則制の観点から相当でないと考えられます。  一方で、第十三条は立入検査の適正を期するため、観察処分の請求のとき、またはその後において、公安調査庁長官公安審査委員会に対し、対象団体が所有または管理する土地または建物を特定する事項を記載した書面を提出すべきものといたしておりますし、その細則におきまして、立入検査の実施につき公安審査委員会への事前及び事後の報告を義務づけることといたしております。  このように、本法案につきましては、立入検査が乱用にわたらないよう十分に配慮がなされているものと考えております。
  163. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 質問を終わります。
  164. 風間昶

    委員長風間昶君) 他に御発言もないようですから、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及び特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する質疑は終局したものと認めます。  なお、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案修正について、橋本敦君及び福島瑞穂君から発言を求められておりますので、この際、順次これを許します。橋本敦君。
  165. 橋本敦

    橋本敦君 私は、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対し、日本共産党を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。  その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。  これよりその趣旨について御説明いたします。  修正趣旨は、対象とする特定破産法人の定義につきまして、原案が政府提出の「無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案」に基づく指定団体とありますのを、我が党提出の「サリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案」に基づく指定団体とし、また、破産管財人の権限として、情報提供を請求する関係機関を「国家公安委員会又は都道府県公安委員会」とするなど、そのための所要の修正を行うものでございます。  以上でございますが、何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。  以上です。
  166. 風間昶

    委員長風間昶君) 福島瑞穂君。
  167. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対し、社会民主党・護憲連合を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。  その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。  これよりその趣旨について御説明いたします。  この法律案が、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に基づき、観察処分に付された団体について破産法の特例を認めている点が問題だと考えます。無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案は、立法事実そして規制手段について大いに問題があります。特に、結社の自由を初めとする精神的自由権の規制手段については、憲法適合性はないと考えます。規制手段は漠然としており、この法案は明らかに違憲であります。  したがって、憲法違反である無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案を前提にした部分は削除し、破産法の特例の部分のみ独立させて修正案を提出いたします。以下、修正趣旨を申し上げます。  まず、第二条第一項につき、「無差別大量殺人行為」の定義を「不特定かつ多数の者を殺害すること又はその実行に着手してこれを遂げないこと」とします。  次に、第二条第三項第一号につき、「特別関係者」の定義を、「特定破産法人が破産宣告前に行っていた活動を引き継いで行っている法人その他の団体で、次のイからハまでに掲げる事項のいずれかに該当するもの」とします。   イ 当該特定破産法人に係る無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体活動に影響力を有し、又は有していたこと。   ロ 当該特定破産法人に係る無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であり、又はあったこと。   ハ 当該特定破産法人に係る無差別大量殺人行為が行われた時に当該特定破産法人の役員であった者の全部又は一部が当該団体の役員であり、又はあったこと。  また、時効の起算日につき、特定破産法人の破産管財人による特別関係者に対する否認権行使についての消滅時効の起算日を本法施行日とする、とします。  以上、修正趣旨に御賛同くださいますよう、何とぞお願い申し上げます。
  168. 風間昶

    委員長風間昶君) これより両案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  169. 橋本敦

    橋本敦君 私は、日本共産党を代表して、衆議院から修正の上送付された、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に反対、日本共産党提出の特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案に賛成、社会民主党提出の修正案に賛成、並びに特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に賛成の討論を行います。  日本共産党が提出をしておりますオウム規制法案は、サリン被害防止法を改正、強化し、暴対法の枠組みでサリン犯罪集団の活動規制することによってオウム対策を行おうとするもので、暴力団対策と同じように、犯罪の予防、鎮圧を責務とする刑事警察がサリン大量殺人を犯した集団の活動規制する枠組みこそが、関係住民の要望に速やかにこたえ、サリン犯罪等の再発を防止し、住民の安全を確保する上で最も道理ある現実的な方法だと考えておるところであります。  しかし、これに対し、政府提出の団体規制法案は、思想、信条、結社の自由など、国民の基本的人権を侵害する憲法違反の破防法の法的枠組みに基づき、オウム対策の名のもと公安調査庁権限を強化し、さらに団体規制手続も簡易、強化するものであることが明白であります。しかも、法律上、オウム集団に限定されるものではありませんから乱用のおそれがないとは言えず、憲法に照らしてこのような法案には到底賛成することができません。  さらに、今までオウム集団の一連の凶悪事件防止に何ら役に立たなかった公安調査庁規制の実施主体としていることなど、筋違いであると言わねばなりません。  次に、被害者救済のための破産特別措置法案についてであります。  この法案は、破防法による団体規制の法的枠組みにリンクしている点について、日本共産党はこれを改め、サリン防止法に準拠するとの修正案を提出したものであり、御賛同をお願いいたしますが、仮に修正案に賛同が得られない場合でも、この法案自体によって破防法が特に拡大強化されるというものではないため、速やかな被害者救済の要望にこたえて、原案に賛成することとした次第であります。  以上で討論を終わります。
  170. 北岡秀二

    ○北岡秀二君 私は、自由民主党民主党・新緑風会、公明党及び自由党の四会派を代表いたしまして、ただいま議題となっております無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案及び特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案について、いずれも賛成の立場から、並びに日本共産党及び社会民主党・護憲連合各提案に係る特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案二案について、いずれも反対の立場から討論を行うものであります。  まず、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に賛成する主な理由を申し述べます。  第一に、本法律案は、無差別大量殺人行為を行った団体が依然として危険な要素を保持し、地域住民に不安を与え、地方自治体の行政責任者による適切な対応を困難にさせている場合に、これに迅速かつ適切に対処するための重要な法整備を図るものであり、その実効性が十分期待されるところであります。  かつて無差別大量殺人行為を起こしたオウム真理教は、依然として危険な体質を保持しつつ活動を続けており、そのことに国民が大きな不安と危惧の念を抱き、地方自治体の行政責任者が困難な選択を強いられております。この法律案に定める観察処分及び再発防止処分は、こうした状況に迅速かつ適切に対処することを可能とするものであり、これによって、国民の不安等を取り除き、国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することができるのであります。  第二に、本法律案においては、適正な運用を確保する仕組みを設けていることであります。  本法律案に定めるこれらの処分は、無差別大量殺人行為を行い、かつ依然として危険な要素を保持している団体対象を限定し、公共の安全の確保に寄与するという目的の達成に必要かつ合理的な限度で認められるものであります。そして、本法律案では、準司法機関である公安審査委員会が中立公正な手続により処分を決定することとされるなど、適正な手続が確保されている上、これを運用する者において国民の基本的人権を不当に制限することのないよう戒める規定や、その職権乱用行為に対する重い刑罰等が設けられております。  したがって、これらの処分や手続が適正に運用される限り、憲法の保障する国民の自由と権利が不当に制限されるおそれはないものと確信いたします。  第三に、衆議院における本法律案に対する修正により、立法の趣旨がより明確になるとともに、適正な運用をより一層確保する仕組みとされております。  次に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に賛成する主な理由について申し述べます。  本来、破産財団を形成すべきオウム真理教財産がかなり流出していると見られ、そのために地下鉄・松本サリン事件等で犠牲となられた被害者の方々やその御遺族の方々に対する損害賠償が極めて不十分な状況にあります。この法律案は、破産管財人が破産財団に属すべき財産オウム真理教関係者から取り戻そうとする場合に、その立証の負担を減らすことによってこれを容易にするなどの特別の規定を設けるものであります。これにより被害者の方々の救済に資することができるものと大いに期待されます。  これらの法律案につき、委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。  これに対し、日本共産党提案に係る特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案は、同党提案のサリン等による人身被害防止に関する法律の一部を改正する法律案を前提とするものであるところ、その法律案は、個人の行為に対する刑罰と被害防止のための措置を定める法律にこれとは異質の団体規制のための措置を盛り込む構造となっていること、団体規制のための処分の決定に準司法機関を関与させず、処分の執行機関にすべてをゆだねる枠組みとなっていることに根本的な問題があり、賛成できません。  また、社会民主党・護憲連合提案に係る特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案につきましても、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に定める観察処分を受けた団体であることを前提としない結果、対象となる団体の同一性について破産管財人の立証の負担が極めて大きくなるなどの大きな問題があるなど、賛成できません。  したがって、これらの修正案につきましては、いずれも反対するものであります。  以上をもちまして、私の討論といたします。
  171. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、衆議院から修正の上送付された無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に反対、日本共産党提出の特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に対する修正案に反対、社会民主党提出の修正案に賛成、並びに特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案に反対の討論を行います。  無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案、以下団体規制法とします、は、第二破防法と言うべき違憲の法律です。  まず、その立法事実について大いに疑問があります。さらに、結社の自由、思想、信条の自由、信教の自由といった精神的自由権についての規制手段について憲法適合性はないと考えます。基本的人権は公共の福祉といった漠然とした理由に基づいて制限することはできません。なかんずく、精神的自由権の規制は明白かつ現在の危険がなければできません。  団体規制法は、破防法が継続または反復して将来さらに暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれを必要とするのに比し、単に不特定かつ多数殺人行為及び未遂に及ぶ危険があると認めるに足りる事実という抽象的な危険を問題にするにすぎず、しかもそこで列挙されている事実は、いずれも極めて形式的な事実で、今もその団体が不特定かつ多数の殺人行為及び未遂を行う危険性を端的に示す事実とは言えないばかりでなく、事件の関与者が今もメンバーであるとか、事件当時の役員が今も役員であるという要件は簡単に充足されるものであり、その一つが満たされれば足りるとすることは、極めて容易に観察処分などをなし得る道を開くものです。違憲の法律案に賛成することはできません。  次に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案について述べます。  この法案の最大の問題点は、憲法違反である団体規制法を前提としており、二つの法律案は実は一つ法律であるということです。違憲を前提とした法案には賛成することはできません。  したがって、社会民主党・護憲連合は、団体規制法を前提にした部分は削除し、破産法の特例の部分のみ独立させて修正案を提出いたしました。  以上です。
  172. 風間昶

    委員長風間昶君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 風間昶

    委員長風間昶君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、竹村泰子君から発言を求められておりますので、これを許します。竹村泰子君。
  174. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 私は、ただいま可決されました無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会、公明党及び自由党の各派並びに各派に属しない議員中村敦夫さん及び松田岩夫さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     無差別大量殺人行為を行った団体規制に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、思想、信教の自由をはじめ憲法で保障された国民の基本的人権を侵すことのないよう最大の配慮をし、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 本法は、国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与するために必要な最小限度においてのみ適用すべきであり、国民の自由と権利を不当に制限することのないよう、対象団体を必要最小限に限定し、労働組合その他の団体の正当な活動を阻害することのないよう、厳に留意すること。  二 無差別大量殺人行為を行った団体が、依然として、危険な要素を保持している場合には、本法により実効性ある規制を厳正に行うとともに、関係地域住民の不安と恐怖心を除去するため、公安調査庁長官は、調査の結果を関係地方公共団体に積極的に提供すること。  三 本法による公安調査官及び都道府県警察職員の立入検査の実施に当たっては、濫用に及ばぬよう、公安調査庁長官において、あらかじめ立入りを行う土地又は建物の所在及び立入りの予定日等を公安審査委員会に報告するとともに、その立入検査の結果を公安審査委員会に報告するなどの細則を定め、適正な運用に努めること。  四 本法により規制処分を受けた団体から離脱し又は離脱する意志を有する者に対して、離脱の援助・促進、離脱を妨害する行為の予防、離脱した者に対するカウンセリング等社会的援護の充実などの適切な施策を講じ、これらの者が円滑に社会復帰できるよう努めること。  五 本法の適正な運用を確保するとともに、五年ごと廃止を含む見直しをはじめとする国会の十分な審査に資するため、国会に対し、毎年一回の報告のほか、対象団体の動向及び立入検査の実施状況等について、随時、積極的に情報提供をすること。  六 公安調査庁長官は、特定破産法人の破産管財人から、特別関係者に対する財産又は不当利得の返還を請求するために、調査の結果の提供を求められたときは、無差別大量殺人行為により被害を受けた者の救済に資するため、最大限の協力をすること。  七 犯罪被害者等に対する給付金支給制度の充実を含め、犯罪により被害を受けた人々の救済を拡充・強化するとともに、犯罪被害者支援体制の整備に努めること。  八 国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与するため、いわゆるテロ対策等について、調査・研究に努めること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  175. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいま竹村泰子君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 風間昶

    委員長風間昶君) 多数と認めます。よって、竹村泰子君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、臼井法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。臼井法務大臣
  177. 臼井日出男

    国務大臣臼井日出男君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  178. 風間昶

    委員長風間昶君) 次に、特定破産法人破産財団に属すべき財産回復に関する特別措置法案の採決を行います。  まず、橋本敦君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  179. 風間昶

    委員長風間昶君) 少数と認めます。よって、橋本敦君提出の修正案は否決されました。  次に、福島瑞穂君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  180. 風間昶

    委員長風間昶君) 少数と認めます。よって、福島瑞穂君提出の修正案は否決されました。  次に、原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  181. 風間昶

    委員長風間昶君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 風間昶

    委員長風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会