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1999-11-09 第146回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月九日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 中山 成彬君    理事 伊藤 達也君 理事 小林 興起君    理事 河本 三郎君 理事 山本 幸三君    理事 大畠 章宏君 理事 吉田  治君    理事 大口 善徳君 理事 塩田  晋君       今村 雅弘君    遠藤 武彦君       小野 晋也君    岡部 英男君       奥田 幹生君    粕谷  茂君       金田 英行君    木村 隆秀君       小島 敏男君    古賀 正浩君       桜井 郁三君    新藤 義孝君       園田 修光君    田中 和徳君       竹本 直一君    棚橋 泰文君       中山 太郎君    細田 博之君       村田敬次郎君    茂木 敏充君       森田  一君    山口 泰明君       川端 達夫君    渋谷  修君       島津 尚純君    中山 義活君       山本 譲司君    遠藤 乙彦君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       藤井 裕久君    金子 満広君       藤田 スミ君    吉井 英勝君       濱田 健一君    前島 秀行君     …………………………………    通商産業大臣       深谷 隆司君    国務大臣    (経済企画庁長官)    堺屋 太一君    経済企画政務次官     小池百合子君    通商産業政務次官     細田 博之君    通商産業政務次官     茂木 敏充君    政府参考人    (外務大臣官房審議官)  横田  淳君    政府参考人    (通商産業省産業政策局長    )            村田 成二君    政府参考人    (通商産業省機械情報産業    局長)          太田信一郎君    政府参考人    (通商産業省生活産業局長    )            横川  浩君    政府参考人    (中小企業庁長官)    岩田 満泰君    商工委員会専門員     酒井 喜隆君     ————————————— 委員の異動 十一月九日  辞任         補欠選任   小野 晋也君     今村 雅弘君   奥谷  通君     田中 和徳君   山口 泰明君     棚橋 泰文君   金子 満広君     藤田 スミ君   北沢 清功君     前島 秀行君 同日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     木村 隆秀君   田中 和徳君     奥谷  通君   棚橋 泰文君     園田 修光君   藤田 スミ君     金子 満広君   前島 秀行君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   木村 隆秀君     金田 英行君   園田 修光君     山口 泰明君   濱田 健一君     北沢 清功君 同日  辞任         補欠選任   金田 英行君     小野 晋也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  中小企業基本法等の一部を改正する法律案内閣提出第一号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件     午前十時四分開議      ————◇—————
  2. 中山成彬

    中山委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、政府参考人として、吉井英勝君の質疑の際に通商産業省から産業政策局長村田成二君、機械情報産業局長太田信一郎君、中小企業庁長官岩田満泰君及び外務大臣官房審議官横田淳君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中山成彬

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 中山成彬

    中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渋谷修君。
  5. 渋谷修

    渋谷委員 民主党渋谷修でございます。久しぶりの第十八委員室でありまして、できましたら品位を持った質問をというぐあいに思っておりますが、トップバッターでありまして、先鋒として頑張れということでありますから、少々厳しい内容が出ることはぜひ御了解をいただきたいと思います。  先日、本会議場通産大臣からの所信表明のごあいさつもございました。また、この委員会室堺屋長官も含めましてのごあいさつがありまして、それぞれについての総括的な御質問をするわけでありますが、まずは深谷大臣に対しまして。  先日の本会議で私ども大畠理事の方から、例の藤波氏の問題も含めましてですが、御質問を申し上げましたときに、野党の方からの質疑通告がないので十分に答弁できるかどうかというようなお話がありまして、その後の答弁があったわけでありますが、私が聞いておりましても相当部分抜け落ちておりましたし、深谷先生にしては随分とはしょったなという感じも実はしております。  その際に申されたこと、私も国対の副委員長ということになっておりますので、議運手続、きょうも朝からその打ち合わせなどもあったわけでありますが、あたかも民主党野党側の不手際で質問通告がおくれたといったようなことでの実は御指摘があり、きょうも議運の中では、我が方からの指摘で、それについては議事録に残されている点も含めて善処するということで、これは私どもの方の国対の中での報告があったわけでありますけれども質問に入る前に、深谷大臣の方から、この件についてはどのようになっているのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  6. 深谷隆司

    深谷国務大臣 渋谷委員の御質問お答えいたします。  私は、あのときの答弁冒頭に、こちら側の不行き届きも含めてということを申し上げたつもりでおります。  そして、質問通告がないということであの場所でお聞きして、何項目質問があるものですからメモしていったんですけれども、ちょうど大臣席が横で、マイクの関係でよく聞き取れないんです。これは全く正直な話。私がメモできたのは半分ぐらいでございました。だけれども、私の聞いた範囲で誠実にお答えしますというので精いっぱい申し上げて、幸い二番手、三番手と質問者がおられましたものですから、足らざるところはその冒頭で補わせていただいたということが、あの場面での光景と私の思いでございました。  私は、質問通告をなさらないことを不満で申し上げたのではありません。ただ、せめて項目でもあれば答弁漏れはなかったというそんな思いがあったものですから、そのまま率直な気持ちを申し上げて、できる限りの答弁をしたつもりでございます。
  7. 渋谷修

    渋谷委員 これは議運の中での経過もありまして、当然、私どもとしては協力すべきところは協力をし、質疑は充実させたものにしなければならない、これは相互の努力が必要なわけでありますので、そう考えるわけでありますが、本会議の設定ということがありまして、与党からの強い要求があり、それでは質疑通告ができないけれどもそれでもいいのか、それでも結構という経過があっての話であります。  したがいまして、民主党の側に非があるなどということはないということは確認しておいてよろしいでしょうか。
  8. 深谷隆司

    深谷国務大臣 あのときの答弁冒頭に申し上げたように、先方が通告しないからけしからぬというような意味合いは全く思っておりませんで、議運状況についても私どもは承知しているところでございます。
  9. 渋谷修

    渋谷委員 それでは質問に入ってまいります。  そのときに、藤波さんの件について私ども大畠理事の方から質問をいたしました。質問通告がなかったということもありましょうけれども、実にさらっとした答弁であったわけでありますが、その件について、きょうは事前にこのことを取り上げるということは申し上げてありますので、熟慮の上で御答弁いただけると思うのですが、いかがでしょうか。
  10. 深谷隆司

    深谷国務大臣 収賄罪にかかわる有罪が確定した議員国会議員としての身分の問題については、今まで数次にわたって法改正がございました。そして、九二年には公職選挙法改正がございまして、収賄罪有罪が確定した国会議員身分については規定をしておるわけでございます。たまたまこの藤波議員の場合には、その前の事件でございますので、失職するという立場にはなかったわけでございます。  そこで、そのことをどう考えるかという御質問であろうと思いますが、まず第一点は、司法結論は厳粛に受けとめなければならない、そのように思います。ただ、やめるかやめないかについては御本人の御判断にお任せする以外にはない。それから同時に、野党の方から解任決議案等が出ておりまして、これは議運がどう対応するかということでございましょうが、これからの動きを見守っていきたいと思っています。
  11. 渋谷修

    渋谷委員 大臣、非常に個人的な体験で恐縮なんですが、私は二十代のころにマルコス大統領政権下フィリピンに一人で訪ねたことがあります。当時も、一人でフィリピンのそれぞれの政党の政治家などを訪ねながらインタビューをして、あるいはYMCAという安い宿に泊まっておりましたので、フィリピンの庶民の方と、普通の方々ともいろいろなお話をすることがありました。  当時、非常に治安が悪かった。強盗も横行していたわけでありますけれどもスラム街には絶対行くなとよく言われておりました。しかし、YMCAで知り合ったフィリピンの方と一緒にそういうスラム街を訪ねて、路地などにテーブルを出して歓迎していただきましたけれども、そういったところで出た言葉をつい思い出すんです。確かに治安は悪い、泥棒は横行している。直訳をすれば、お上の中に泥棒がいれば下々に泥棒がはびこるのは当たり前じゃないか、まずは偉い人がお手本になるべきだというのが当時の話でもありました。  何も古い時代のこうしたフィリピンのエピソードを持ち出す必要はないわけでありまして、いつの時代でも、どこの国でも同じであります。国の中枢が腐れば、一般社会に大変深刻な影響を与えるわけであります。一と二の今大臣お答えの部分は、それはそれでわかります。政治家は、本人出処進退本人が決めるべきでありましょう。しかし、一方で議会というのも統治機構、これは政府も含めての話でありますが、私ども統治機構であります。人々から見ればやはりお上なんです、権威なんです。この議会権威というものを一体どうするのか。  私どもと同じ同僚の中に有罪が確定した犯罪人が居座っている、犯罪人一緒議会運営がなされているというこの事実について、一体どのように考えるのかということが一番重要な問題だというぐあいに私は思うのですが、いかがですか。
  12. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいま申し上げたように、出処進退については御本人決断すべきことだと私は思います。できることなら早く決断してもらいたいという思いはございます。ただ、法律上、今の改正された法律では議員資格を失うわけでありますが、そうでないその前の事例でございますので、その意味では失職をされない、そういう法律上の条件がございます。  私としては、御本人決断を待つしかないし、また同時に、各党の協議を経てどのような結論になるか、それを見守っていく以外にはない、ただ、国民政治に対する信頼という点でいきますと、これは最も大事なことであります。どんなにいい政治を行いましても、国民信頼がなければ民主政治は成り立たないわけであります。そういう意味では、私どもも含めて一人一人議員自覚を持って対応するということが最も大事なことだと考えております。     〔委員長退席小林(興)委員長代理着席
  13. 渋谷修

    渋谷委員 もちろん、手続論で言えば自動的に本人議員資格を失うということにはなっていないわけでありますけれども、私が言っているのは、議会権威という問題であります。今の現状を許しておく、議会の側がけじめをつけられないということになれば、これは与党だけじゃない、我々も含めてこの今の現状を助けているのではないか、あるいは先に行けば共犯者ではないかと言われかねない、そういう状況があるわけであります。  今大臣がおっしゃるように、まさにこういう事態を放置しておけば、人々に対して倫理を語れますか、子供たちに対して道徳を言えますか。行政政府に対して信頼がなければ、ついこの間お二人から、両大臣からごあいさつをいただいたところであります、これからの行政に対する決意もいただいたところでありますが、これに対する国民信頼あるいは協力を得られなければ、その政治は成功するでしょうか、実効を上げることができるでしょうか。これはできませんでしょう。  議会の側がこの問題についてけじめをつけるということはできるのです。それは、そのことが即議員資格を失うということにはならなくとも、議会の側が少なくとも辞職をしなさいという勧告決議することができたわけでありますが、あえて与党側はこれを否決してしまう。この事態について、行政権力を行使しようという大臣にあえてこのことについてお伺いをしているわけであります。  もう一度お願いします。
  14. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいまのお話の、議運関係との議論について、議会側の御判断でありますから私どもから申し上げるべき話ではないだろうと思っています。  私の方から申し上げられることは、司法結論は厳粛に受けとめる、やめるやめないについては本人決断を下す、国民政治に対する信頼を回復するために私どもも含めて国会議員が全力を尽くして努力をする、これ以上のコメントはしにくい立場にございます。
  15. 渋谷修

    渋谷委員 大臣は御記憶かどうかわかりませんが、大臣選挙に私自身中小企業団体の役員として応援に駆けつけたことがあります。眼鏡の組合の春木さん、あるいは上野の中川ジュエリーの社長や葬儀屋さんや豆腐屋さん、いろいろな中小企業団体大臣のファンで一生懸命応援しましたけれども、残念ながらそのときには落選をされてしまいました。しかし大臣は、そのころにはこうした政治の問題については率直に発言をされておられました。  大臣自身もお父上が職人の方であるということを聞いておりましたし、私自身牛乳屋の息子でありますが、それこそ中小企業者は皆実直に、まじめに一生懸命働いているわけですよ。そういう方々に、今のような話、議論というのはわかるかということなんです。議会がきちんとこのことについてけじめをつけられない、それで立派なことはそれぞれ言うということでは、ここで私ども中小企業問題についてこれからどんな高尚な高邁な議論をしましても、勝手にやっていればという話になりかねないのであります。  だから私はあえて、今は言いにくい立場というぐあいに申されましたけれども大臣である前に議会人でありあるいは政治家である、私から言わなくても当たり前のこととしてこのことは自覚をしていなければならないことでありますから、ぜひこのことについては、普通の人たちが、まじめな中小企業経営者が聞いて、なるほどな、さすが中小企業町台東、文京の選挙区から出ている深谷大臣だと言えるような答弁をぜひお願いしたいのです。
  16. 深谷隆司

    深谷国務大臣 渋谷議員がかつてそのようなお立場で私と何度もお目にかかっていることは、鮮明に記憶しています。あなた自身も御苦労なさり、私どもも大変苦労しながらこの道を歩んできました。ですから、中小企業皆さんの御要望にこたえて信頼を集めながら、これからも人生をかけておこたえしていくという点ではいささかも変わりはありません。  しかし、法律上失職するという状況にない立場の人に対して、内閣一員として、もちろん政治家ではございますけれども、コメントできにくい場面というのはやむを得ないことと御理解をいただきたいと思います。司法結論は厳粛に受けとめる、そこに私の思いを御理解いただきたいと思います。
  17. 渋谷修

    渋谷委員 深谷大臣はこれが限界だというぐあいに言いますから、それでは、堺屋長官民間人から抜てきされまして国務大臣となられました。議会人ということだけではありませんが、しかしこの民間の空気というのは一番敏感によく感じておられる。それが感じ取られなければ、景気対策だとかあるいはこの国の抜本的な改革などということは、これはできる話じゃありませんから、その意味でいえば、今の話はそれは政治家の話、議会でやっておけばいいという答弁は簡単でありますけれども堺屋長官だったら、その民間人という立場考えましたときに、どのようにこの問題を処理すればいいのか、ぜひお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  18. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 藤波議員に関する質問でございますが、私のように、選挙をしたことがないもので、余りこの問題に詳しくございません。選挙法その他の適用を実際に受けたことがございませんので余り詳しくございませんが、贈収賄事件に関して有罪が確定した議員に対しては大変厳しい措置がとられるように公職選挙法は改正されたというようなことは承知しております。ただ、藤波議員の場合は経過措置がございまして、その対象になっていないと伺っております。  そもそも、民主主義というのは、この投票制民主主義というのが地域割り選挙区をくくっているということは、各地域選挙区の方々有権者方々が、その多数の意見によってみずからの代表を選ぶことができるということであります。したがって、ここで重要なのは、選挙民方々、特にその地域有権者方々意見ではないかと考えます。これは政治学立場からいってそうでございます。  したがって、藤波議員の場合も、みずから置かれた立場を考慮され、選出された選挙区の方々の御意向、御心情を十分に考慮して、賢明な選択をなさるものだと信じております。
  19. 渋谷修

    渋谷委員 確かに限られた選挙区から選ばれるのですが、当選して国会議員となれば、その地域利益代表者だけではないんです。これは国政全般責任を負うのは当たり前の話であります。国務大臣も同じではありませんか。それぞれの職務だけの責任で、それ以外は関係ありませんか。そういうことを言っているわけです。  選挙制度の問題については別の機会にいたしますけれども、新しい仕組みのもとで政治家がそれぞれ政務次官として任務を果たすことになりました。  小池さんは、かつてニュースキャスターとして、もちろん国民にこうした事件が起こればそれを伝える役目として活躍しておられた。また、日本新党ということで、こういうこと、リクルート事件などがあって、これでは日本の政治がだめになる、その当時の既存の政治家を全部取っかえるべきだというポスターを全国に張りめぐらして、あの細川さんが選挙戦を戦ったわけであります。小池さんは、この問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  20. 小池百合子

    小池政務次官 今御指摘ございましたように、最初の選挙日本新党ポスターとして政治家総取っかえという緑のポスターを張ったことを今覚えております。それは、政治に携わる人間が襟を正して政治に当たっていかなければ国民信頼が得られないという意味を含めてのポスターでございました。そしてまた、その思いは今も変わっておりません。  藤波議員の件につきましては、先ほど来、大臣そして長官お話しになっておられますとおり、法律の問題とする点と、そして政治家個人判断する点、その二つがあると思います。私も同じ議会人といたしまして、藤波議員が地元の意見どもしっかりお聞きになった上で御判断なさるべきというふうに考えております。  もう一言申し上げますと、私がもしその立場であるならば、身の潔白を晴らそうという気持ちと同時に、やはり議会そのもの信頼を損なうことのないように、それはみずから判断をし、そして辞していくということになるかと思っております。  以上です。     〔小林(興)委員長代理退席委員長着席
  21. 渋谷修

    渋谷委員 政治家としての姿勢、考え方というのは当たり前の話であります。私が言っているのは、そうではなくて、このことで傷つけられた議会権威というものを一体どうやってそれでは私たちが守るのか。議会権威というものが守られなければ、先ほど来申し上げていますように、これから審議される中小企業政策等につきましても国民理解信頼が得られないでしょうということを申し上げているわけであります。  細田さんは、かつて役所におられました。役所の中で、例えばこうした事件が起こり、そして有罪になる、最終的に有罪が確定をした、それでも役所にそのまま居座ることはできますか。いかがですか。
  22. 細田博之

    細田政務次官 これはもう当然、失職するといいますか、懲戒免職処分になるわけでございまして、そのようなことはないと思います。
  23. 渋谷修

    渋谷委員 大臣、もちろん議会一般社会組織、あるいは役所組織、これは違うのは私もわかりますよ。しかし、一般人たちから見ればこれはダブルスタンダードなんですよ。議員が特権で居座っているとしか映らないわけです。そうでしょう。それを私たちが何の手だてもせず、国会決議をしようと思えばできるのに、わざわざ反対をしてこれを助ける、まさに共犯者じゃないですか。こういうことが許されるかということを申し上げているんです。  小池さんならもっとはっきりとお答えできるんじゃないですか。どうですか。
  24. 小池百合子

    小池政務次官 先ほど申し上げましたとおり、いろいろな問題点が含まれており、そしてまた、藤波議員そのものが、御自身が御決断なさるべきことというふうに思っております。  先ほど申し上げましたとおり、私の場合、もし万が一、百万分の一そういう問題が起こった場合ならば、私ですと身を引いているというふうに思っております。そしてまた、藤波議員がそのような結論をお出しになるということ、それはどの時点かわかりませんけれども、そういうことは御自身結論を出されるというふうに信じております。  以上です。
  25. 渋谷修

    渋谷委員 私はあえて議会権威ということをとても大事にしてこの問題を取り上げているわけです。しかし、なかなか皆さんそれについて明確な御答弁をなさらない。大臣答弁をしたら、ほとんどそれにそろった答弁、見事な金太郎あめであります。  茂木さん、この際だからそれでは理事の要請で茂木さんからもこの問題についてお答えを伺っておきます。
  26. 茂木敏充

    茂木政務次官 大変重要な御指摘だと考えます。  同時に私は、議会権威を回復する、そのためには、こういった汚職の問題であったりとか犯罪に対する自浄作用をいかに議会として持っていくか、そのための一連の、例えば小選挙制度の導入であったりとか政治資金の規制に対する厳しい強化であったりとか、そういった再発防止に対する議会としての取り組み、これがもう一方では大変重要な問題だと考えております。
  27. 渋谷修

    渋谷委員 今のやりとりで思い出しました。たしか高裁判決で、その後に辞職勧告決議案を二、三年前に出しているはずですが、そのときには新進党一緒になってこれを提案していますよね。そのときは小池さんや茂木さんは新進党一員ではなかったですか。茂木さんはそのとき自民党。小池さんはそのときたしか、経歴を見たら副幹事長かなんかやっていたかもしれませんね。それは私も不確かなので言いませんが、新進党の中に属して、高裁判決に対しては辞職勧告決議案を出して、当然それはその中のメンバーの一員として賛成しておられたはずなのに、これについて明確に答えられぬというのはどういうことですか。
  28. 小池百合子

    小池政務次官 先ほどからお答え申し上げているとおり、私は、御本人結論ということを待ちたいというふうに思っております。  と同時に、例えばここで藤波議員が御辞職なさったといたしましても、問題は、お一人がおやめになることで、それでもう事足れりとするのかどうか。また、今回は法律が適用されないということでございますが、さすればその法律に対してもう一度見直しをしてみるというようなことも考えなくては、今回は、藤波議員のことのみならず、先ほどから御指摘なさっておられますように、議会権威ということをどのようにして立法府である国会が求めていくのか、それが求められているのではないかというふうに考えております。
  29. 渋谷修

    渋谷委員 私が言っているのは、藤波さんがみずから出処進退、やめようがやめまいが、傷つけられた議会の側の権威というものを、これは私どもがどうやって回復をするか、あるいは守るかということが一番重要なポイントでありまして、そのことについて、今の現状では議会努力しているというぐあいには一般には受け取られないということをあえて指摘しているわけであります。  ところが、皆さんがそれぞれ、もうこれ以上今の状況の中ではコメントできないというような話でありまして、先ほど金太郎あめなどということを申し上げましたけれども政治家がそれぞれのやはり信念で言葉を語らなければ、中小企業者にこれから独立性を持てだの創造性を発揮しろだのなどという大上段に振りかぶった議論はとてもできませんよ、大臣。あえてそのことは指摘しておきます。  それで、さらに次に参りますが、企業・団体の政治献金。これは、既にこのことについて取り上げるということは申し上げてありましたが、きのう、きょうの展開の中で、これについては予定どおり来年一月からやめようという方向で、自民党の中での役員会、私も自民党の中がどうなっているのかわかりませんが、役員会でそういう方向であるという報道がなされております。  ついこの間までは存続という話でありますし、今度はそれはやめよう、ただ総理自身結論で発表されているという状況ではないようでありますが、この藤波問題の背景にはこのことがあったということで、これはもう御承知のように、当時の細川政権のときに、河野さんが一緒になって、このことについてはそういうけじめをつけようという合意文書を交わしたものであります。  この企業・団体の政治献金の問題、今の一連の動きがありますけれども大臣自身の御意見をお伺いしておきたいと思います。
  30. 深谷隆司

    深谷国務大臣 改正法の附則第九条で、政治献金のこの問題については、改正法施行後五年を経過した場合においてこれを禁ずるものとする、こうなっているわけであります。これは各党が合意して国会で決めたことでありますから、私は粛々として守るべきだと思っていますが、環境の変化その他もろもろでいろいろな議論があったということは私も承知しています。そして、その議論が収れんしたところで、近く我が党の総裁から最終的な判断がなされると思っております。
  31. 渋谷修

    渋谷委員 一連の報道の中で、自民党も、これは当初約束をしたことだから、与野党の合意、これはまあ言ってみれば国民に対する約束事、これを途中でほうり投げるわけにはいかない。もちろん選挙が怖いという本音もありましょうが、これはやろうという話になりました。  しかし、私どももよく知っているわけです、当事者ですから。政党及び政党の支部を使えば、実はこれは堂々と企業・団体の献金を受けることができる、そういう仕組みになっているわけですね。それぞれの支部については、皆さん選挙区で戦った方々は、多分小選挙区の責任者ということになっているわけでありますから、みずから管理する政党支部を通じて企業・団体の政治献金をこれまでと同様に受け取ることができる。これは技術的な問題で、本来で言えばこれを扱う専門的な場で議論した方がいいのかもしれませんが、もう既にそういう報道がなされている。  結局、政治家というのは、こっちをたたいてもまたこっち、何とでもうまくやるというぐあいに、国民一般に受け取られるということが悲しいのです。大臣、このことは、私ども自身がやはり襟を正して、結局は何でもかんでも政治家というのはうまくやるものだととられないようにしなければいけないというぐあいに私は思うのですが、そのことについての大臣のお考えをお聞かせください。
  32. 深谷隆司

    深谷国務大臣 この問題に関して、政党またあるいは個人の政治家がさまざまな議論や発言をしていることは承知しています。しかし、その一言一言について、私は今批判をしたりあるいは賛同したりする立場ではありません。これは、各党で協議の上、だんだんに結論をまとめていくであろうと思いますし、最終的には国会で決めていただくことであります。それに従っていくということだと考えます。
  33. 渋谷修

    渋谷委員 私ども、少しでも日本の政治の透明化を図りたい。アジア型の政治などとヨーロッパやアメリカから言われるのは嫌ですね。腐敗がはびこって、それが常に温床としてあって。そういう政治を少しでも近代化しなければならないというのは、議会人としては共通の思いではないでしょうか。この政治資金規正法の改正問題もそうですが、私たち自身がより厳しくみずからを律していくという姿勢は絶対必要だと思います。  それはなぜかと言えば、先ほどからの議論、一貫したそれは中身であります。すなわち、政治に対する国民信頼をいかに高めるか。古い話、例えばアメリカのあの大恐慌からルーズベルトが登場する、フーバーという大統領から登場するときにも、アメリカ国民政府を信用しない、もう破綻状況になってしまうという中で、ルーズベルトが行いますニューディール政策などというのは、例えばテネシー川の河川流域どうのこうのという話ではなくて、その中のたくさんある項目の中に、実は政治に対する信頼の回復、このことが重要な項目としてやはり入っているのです。  これまでの日本の政治の歴史の中でも、もちろんそのことはあります。国民政治に対する信頼が失われれば、どんな手だてを使っても、どんな政治をやってもこれは再生をすることはできないということは、これまでの経験で私どもはそれを積んできているわけでありますから、このことについてぜひ御認識をいただきまして、私ども民主党としては、実はさらに進んで、政治家がいろいろな頼まれ事をする、役所に働きかけてうまく問題を処理してあげる、そのことによって、政治家がその地位を利用して問題を処理することによって、その処理した相手からお金を受け取る。これも政治献金の一つでありますが、こういう政治家が地位を利用して利益を得る、政治家のあっせん利得行為についてはこれを禁止しよう、そういう法案も実は国会へ提出させていただいておるわけであります。  こうした考え方については、大臣、いかがでしょうか。
  34. 深谷隆司

    深谷国務大臣 政治資金規正法そのほか透明性を確保するための法律については、民主党の御意見もあるようでありますが、どうぞ議会で大いに論じていただきたい。そして、国民の最も信頼に足る答えを出すように議会側皆さんにお願いをしたいと思います。
  35. 渋谷修

    渋谷委員 議論の中心は御認識をいただいていると思います。要は、政治に対する信頼をいかに私どもが取り戻すか、あるいはそれを高めるかということでお話を申し上げているわけでありますが、大臣には、その意味では、政治家として発言をしてきたこと、このことについては当然私どもはたとえ何年年月がたとうとも責任を持たなければならないということで、あえて取り上げさせていただきますけれども、かつて細川政権のときに、大臣は自民党の予算の筆頭理事ということで、厳しく、鋭く当時の政権に対して追及をしております。  平成六年の予算委員会の場ですが、もちろん私はその場におりませんので、議事録を読んでの話でありますが、実に大臣、歯切れよく当時の羽田総理に対して追及をしている。「公明党というのはイコール創価学会だ、こう言われている」というぐあいに指摘をしているわけでありますが、このことについて、今も御認識は変わりませんか。
  36. 深谷隆司

    深谷国務大臣 お断りしておきますけれども、予算委員会でかつて私ども野党でございまして、私は筆頭理事でございました。党を代表して時の細川政権に、私どもの言葉で言えば体当たりをしたわけでございます。  そのときに、別に公明党だけを突出させて批判したわけではなくて、細川政権に参加した各党各人に対して、それぞれ疑問のある点については追及をしたということでございます。
  37. 渋谷修

    渋谷委員 役目ということでいえば私も同じでありまして、三百五十名の巨大与党に対して百五十名の野党、その中でも九十名そこそこの民主党ということでやっておるわけですから、体当たりどころか自爆覚悟で質問をしておるわけでありまして、ぜひ今質問したことについて、大臣お話はよくわかっていらっしゃると思うのです。いいですか。「公明党というのはイコール創価学会だ、こう言われている」という、大臣のその当時の認識は今も変わりませんかという御質問、それはイエスかノーかでいいです。
  38. 深谷隆司

    深谷国務大臣 公明党というのは公党でございます。それを支えている大きな集団は創価学会であるということは、今も同じであります。
  39. 渋谷修

    渋谷委員 支えているという言葉は使っていないんです、当時は。イコールと言っているのです。そのイコールというのは、今は違うんですか。今は支えているというぐあいに変わったんですか。お願いします。
  40. 深谷隆司

    深谷国務大臣 イコールという言葉と支えているという言葉がどのように違うか、私も認識いたしませんが、宗教団体である創価学会が、しかし、その大勢の信者の皆さんを中心に公明党という政党を熱心に応援されているという現状は、今も同じだと認識しております。
  41. 渋谷修

    渋谷委員 さらに大臣は続けて、公明党の大臣がこれだけ多くなって政権に参加すると、国が特定の宗教を支持したり、そのプラスになるようなことをやってはいけないという憲法の原則、それに触れないかという心配がないかと非常に不安になってしまうと述べています。これは大臣の言葉ですよ。私が追及しているわけじゃない。大臣の言葉です。その認識は変わったんですか。
  42. 深谷隆司

    深谷国務大臣 当時の、例えば大臣の数等におきましても、そのような懸念が一部で言われていたということは確かであります。  ただ、私どもがこのたび三党連立をいたしましたのは、今日のような状況を何とか乗り越えるために、議会運営を円満に進める、そして積極的に責任をお互いにとり合いながらこの事態を乗り切っていこうという判断でございまして、その場合に、自由党も公明党も政策的な協議を重ねた上で内閣として連立を組んだわけでありますから、私はそのような懸念は払拭されていると思っております。
  43. 渋谷修

    渋谷委員 政策協議を重ねて連立政権という話でありますけれども、この間の経過を見れば、まさにダッチロールと言っても言い過ぎではないような、介護保険をめぐりましての経過もそうでありますし、あるいは政治資金規正法もそうであります、その他の問題もそうでありますが、事前に政策協議をきちんと詰めてこの連立政権ができたとはとても今の状況の中では言えないではありませんか。  私が申し上げているのは、大臣がこの平成六年の予算委員会のときに質問をした、つまり、公明党イコール創価学会であって、これが政権の中枢にかかわってくることについては非常に不安だと述べていること、この不安というのは今除去されたんですかということです。
  44. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私は、ただいま申し上げたように、懸念については語りました。ただ、現在の段階では三党で協議をしながらお互いに信頼関係でスタートしておりますから、そのような思いでなくて、信頼をいたしております。  そして同時に、私たち三党は、単に多数を持つとか選挙にどうということでなしに、国家国民のために何ができるか、政策をきちんと実現させていくために責任をとり合って協力し合っていこう、そういう観点でただいまは連立を組んでいるわけであります。
  45. 渋谷修

    渋谷委員 とりあえず仲間になったから、かつていろいろすねに傷があったり問題はあったけれども、それには目をつぶろうという話ですか、そうすると。  実態は変わっていないのでしょう、公明党と創価学会の関係というのは、あなたが六年前に質問したときと今の状況というのは。変わったなら変わったという事実をぜひ申し上げていただけませんか。
  46. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今、仲間になったから目をつぶったなんて、そんな思いは全く持っておりません。  私どもは、政策の合意をもとにして、三党連立で責任を負って国家国民のために尽くすことが妥当だ、適当だ、一番大事だ、そう考えているので、そのようにいたしておるのであります。
  47. 渋谷修

    渋谷委員 かつての議論意見というものについては、その認識が、情勢が変われば、変わったなら変わったというぐあいにこれは言わなければならない。今の現状が変わっていないならば、それはやはり不見識であったというぐあいにあえて言うべきでありましょう。私は大臣が発言した内容を問題にしているのであって、そのことについて理解できる内容で答弁されれば、それはそれで構わないわけであります。  同じように堺屋長官にも御質問申し上げます。  「われ万死に値す」という、新潮社から出ている岩瀬達哉さんという方の本があります。この中に、堺屋さんがかかわってきた記事がこの本の中に載っているのですが、この内容というのは事実でしょうか。
  48. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 どなたの、どの本の、どのページでございましょうか。
  49. 渋谷修

    渋谷委員 私どもはなかなか本に載るという機会がないので、自分の名前だとかあるいは自分の発言が載れば、その本はすぐ買い求めるし内容を見るのでありますが、堺屋長官の場合はそうもいかないでありましょう。  私が問題にしているのは、政治に対する信頼を取り戻さなければ、中小企業の問題をいかにここで真剣に議論いたしましても、あしたはまた一時間も私は質問の時間をとってありますから、そこで中小企業基本法の問題についてはその内容を含めてきっちりやりますけれども、まずは、行政責任のトップにある人間が国民から信頼に足るかどうかということを私は問題にしているんですよ。そのことが問題でしょう。  「われ万死に値す」という本の中では、五十四ページ、お手元にはありませんか。では、全部読み上げますか。議事録に残ることになりますが、仕方がありませんでしょう。  例の竹下さんの皇民党事件で、竹下さんが非常に深刻な事態に陥っている。そこで、選挙区からの要請もあったのでしょう、何か強力なてこ入れ策はないかと考えあぐねた末、堺屋太一さんに応援の手紙を書いてもらうことにした。堺屋さんの手紙は、投票日の十日前に当たる七月八日付で、便せん四枚にびっしりしたためられている。この手紙を竹下陣営では大量にコピーし、後援会の集会でばらまいた。選挙宣伝用としてこれが活用されたというわけであります。  皇民党事件とのかかわりの中で、この皇民党事件も含めての話ですが、「実体不明の事件や事実無根の疑惑を並べる興味本位の報道が行われています。それに煽られて、政見の共有も政策の共通性もない小政党の野合が企てられています。万が一にも、これが実現すれば、議会政治は一切の政策決定が行えず、日本は国際的孤立と官僚独裁に陥る危機甚大といわざるを得ません」これは手紙の一部であります。そしてさらに続けて、「日本全体が「円高不況」に脅えた中で、これが日本の好況と経済力の発展に繋がることを見越して「プラザ合意」を成し遂げた竹下大蔵大臣、マスコミの反対を恐れず未来の日本のために消費税を導入した竹下総理大臣、その勇気と指導力を、今こそ日本は必要としています。 竹下登先生、日本の未来のために、ますますの御活躍をお祈りしております」という、これは一部ですよ。  こういうお手紙を出されたという御記憶はありましょうか。
  50. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 それは私信でございますから、十分正確に記憶はしておりませんけれども、皇民党というのはたしか街宣車を持ってきて騒いだものだと思うんですね。  私は、ああいう皇民党という、街宣車を持ってきて特定の人々を非難することはよくないことだ、これによって日本の政治が動かされるとすればこれは大変まずいことだと思いましたので、今お読みになったような趣旨の励ましという手紙、それは竹下先生だけじゃなしに、幾つかの政治家以外の方にも、そういうような非難を、不法といいますか、街頭でそういうような非難を受けた方には何通か出したことがございますから、恐らく、どこまで正確かわかりませんが、そういうお励ましの手紙を書いたことはあると思います。
  51. 渋谷修

    渋谷委員 そうすると、他にも政治家に対してこのような激励の手紙というのは書いた経験はおありになるわけですね。
  52. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 政治家については記憶はありませんけれども経済人でそういうのがあって、知り合いの企業経営者に対して、これは全く私の個人的なことでございまして、書いたことがあります。
  53. 渋谷修

    渋谷委員 当時の皇民党の褒め殺し事件をめぐって、実に忌まわしいいろいろな展開があったわけであります。日本の政治が裏の世界に牛耳られているのではないか。当時、私が海外に行っていたこともありますけれども、そのときにあの金丸さんの事件がありまして、海外でその事件が報道されたときに、一番先にやくざの入れ墨の写真のテレビ画像が飛び出してくる、それから事件が報道されるんです。これは深刻な問題でしょう。  日本の政治が裏社会に牛耳られている、そういうイメージが世界に流れた、そういう事件の中に実は堺屋さんのこういう手紙が使われている。こういうことについて、堺屋さん自身が竹下さんの実は選挙の応援までしたことになってしまった、このことについては長官はどのようにお考えですか。
  54. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 それは全く話が違います。私は、それは選挙の応援のために書いたのでもありません。  それから、皇民党とかいうのは私はよく知りませんが、皇民党とかいう事件はよく知りませんけれども、私の見た範囲では、裏世界にそっちはつながったかどうかは知りませんが、街頭でがんがんやっておりまして、それで特定の政治家に、あらぬような話なんですよ、聞いていても。恐らく御記憶の方おられると思いますけれども、あらぬような話でそういうことをやる。  だから、報道が、こういう裏世界とつながっている、つながっているといったらあんなことをやりませんよ、私は少なくともそう思いました。褒め殺しとか非難とかいうようなことがですね。  だから、そういうのを見逃してはならない、そういうことがあってはいけないと思ったから書いたのでありまして、これを黙って見逃すような世論ではいけない、私は当時一人の評論家でございましたから、世の中のためにそういうのがはびこってはいけないと思うものですから書いたのであります。
  55. 渋谷修

    渋谷委員 これは事件経過がありまして、例の佐川事件だとかその他ともつながっていた事件であります。これは全く事実がなかったところで起こったでっち上げの話では決してないわけでありまして、これはこれでさらに別の場で突っ込んだやりとりが行われると思いますが、そもそもこの手紙の中、私信ということでありますが、竹下さんに対する思い、竹下さんに対する堺屋長官の評価というのは今も同じでありますか。
  56. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 そこにも書いてありますように、竹下元総理がプラザ合意あるいは消費税の導入等、政治家としていろいろの功績があったことは事実だと思っております。そのことと今委員指摘の皇民党の話とは全く別のことでございまして、やはり日本の政治にそういう街宣車のようなものが深く絡むことが許せなかったから私はそういう手紙を書いたのであります。
  57. 渋谷修

    渋谷委員 国家の中枢にかかわる人間が、少なくともそういう形で問題になるとか、あるいはされるということは、これは避けなければならない、防がなければならないことであります。事実として、しかもその経過の中に巨額の金が動き、そして事件があったわけでありますから、私はあえて商工委員会でこの問題を一番トップバッター指摘しておりますのは、行政のトップとしての両大臣に対する国民信頼がそういうことで失われては困るから、あえて確認をさせていただいておるわけであります。商工委員会で取り上げるのは当たり前の話ではありませんか。  そこで、商工ローンのことについてお話をさせていただきますが、今非常に深刻な事態になっています。もう連日その報道でありますが、この対象になっておりますのは、もちろんサラ金はサラリーマン、商工ローンというのは本当は定義はもっと違うでしょうけれども中小企業者が食い物になっている、あるいは中小企業者の生き血が吸われているという現実があるわけです。  中小企業を所管している大臣という立場でいえば、当然こういう問題については敏感に反応しなければならないというぐあいに思うのでありますが、この商工ローンの問題について通産大臣としてどのような見解をお持ちになり、あるいはどのような提言等をされてきたでありましょうか。
  58. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業向けの貸金業者との間に数々のトラブルが起こっておりまして、その中には司法当局が動き出している部分もございます。まことにけしからぬ部分については徹底した取り締まりを行うということが極めて大事だと思っています。  通産省としましては、中小企業庁とかあるいは地方通商産業局、政府系金融機関、信用保証協会に貸し渋りに関する窓口を設けまして、中小企業皆さんが商工ローンに走らなくても対応できるような手段をさまざま講じてまいったところでございます。また、これらの苦情等についても親身になってお答えをしているつもりでございます。同時に、監督当局、金融監督庁であるとか財務局、都道府県、さらに必要な場合には司法当局とも連携をしながら、きちっと対応するようにと指示をいたしてまいりました。
  59. 渋谷修

    渋谷委員 保証協会の特別保証枠の拡大なども含めての話ですが、あしたまだ時間がありますからさらに突っ込んでやらせていただきますが、これは大臣の周りの中小企業者方々にお聞きになってもよくわかる話であります。相当数の方々がかかわっているんです。  三〇%以上の金利負担をさせられて、今どきのこの不景気の中でそんな金利を払ってそれでも利益が出るなどという会社はないんです。貸し渋り、こういう状態が一体なぜ起こっているかというその背景もあります。保証協会で今度枠を拡大いたしましても、これまでもそうでありますが、貸し付けたお金が商工ローンの返済に充てられたり、もちろん都市銀行も含めて借りかえでもってこれを持っていってしまったりというような実態があるわけです。  私ども民主党は、既にこの春の通常国会からこの問題を取り上げ議論いたしまして、そして商工ローンの問題については民主党としてこの事態を解決するための法案を国会に提出いたしております。  私が言っているのは、貸し渋りをなくせとか、あるいは今商工ローンはけしからぬから監督官庁それぞれ頑張れといったような、ただ激励するだけではなく、まさに中小企業を所管する大臣として、具体的に迅速にこういう問題についてはきちんと通産大臣として提言すべきではないかということを私は申し上げているわけでありますが、そういったことを前提にして、民主党が提案している法案については既にきのうファクスして入れてありますからごらんになっていると思います。  さらに、このいろいろな事件経過の中で、これを弁護する弁護団の方々からも具体的な提起がなされています。  個々に評価をいただくという時間はないとは思いますが、いずれまた詳しくやる時間はあると思いますので、こうした提起を含めまして、通産省としての、中小企業を所管している役所として余りにも対応が遅かったのではないかというぐあいに思いますが、いかがでしょうか。
  60. 深谷隆司

    深谷国務大臣 民主党から出資法等改正案、それから、全国弁護団から貸金業規制法等の改正案が出されておりますことも承知していますし、その内容についてもよく拝見させていただいているところでございます。  今、私どもは、これらのトラブルがどうして生じているかということを含めて、貸金業の監督に当たっている金融監督庁や業界団体、自身のところですね、そこに、こういうトラブル発生の原因及び発生の理由、さらに状況についてしっかり調査をし、自主的な規制も含めて業者の団体連合会には対応するように申しておりますが、いずれにしても、それらの実態を踏まえて、当然何らかの対応の答えを出していかなければならないと思っています。
  61. 渋谷修

    渋谷委員 残り四分ほど時間がありますので、あしたの質問の序文の部分をやっておきたいと思うんですが、問題は、中小企業というものに対する認識の問題です。  この間、通産省からも、もう長い間ですがレクチャーをいただいておりますけれども、実際は定義の見直しなども含めての議論でありますけれども大臣は文京区、台東区、私は板橋ですが、私ども地域で接触しているいわゆる中小企業というものと、役所がつくっていきますこういう政策、そしてその政策の対象となるもの、この中小企業という実感についてどうも乖離があるのではないかというぐあいにいつも感じております。これは事前の質問の通告はしておりませんから、あえて答えの部分も含めて申し上げますから。  というのは、大臣、今度新しく定義を改定しますけれども、例えば製造業では、資本金が三億であれば、従業員数が極端に言えば千人、一万人でも中小企業なんです。従業員数が三百人以下であれば、資本金が十億でも百億でも中小企業なんです。これは、後ろに役所の方がいらっしゃいますから、聞いていただければわかります。そういう定義になっているんです。どちらかに当てはまれば中小企業ということですから、九九・何%までが中小企業ということで、以外のもの、大企業なんというのは〇・〇何%にしかならないんですね。  それでは、我々の周りにあるそういう小規模零細企業、例えば大臣が日常の中で接触する中に、規模としてそんな大きい企業というのはございますか。そういう規模の大きい企業というのは、例えば大臣選挙区のところに実感としてありますか、それが中小企業として認識をして。
  62. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私どもの地元には、どちらかというと小規模の中小企業が圧倒的に多うございます。しかし、今御指摘のようなところがないわけではありません。
  63. 渋谷修

    渋谷委員 あしたの議論をしていく上ではどうしても必要なので、ここのところの基本認識をぜひお持ちいただきたいんです。  小規模企業という定義がありますが、従業員数が二十名以下、小売業はさらにそれ以下なんですが、この企業群が大体今申し上げた中小企業の中で八八%を占めるんです。言ってみれば、小規模企業が私どもの町、私たち地域を支えているわけですね。  今度の中小企業基本法の改正を含めて、通産省から出されてきているものは、いわば中堅企業対策。そして、小規模企業対策についてはほんの数行、つけ足しにしかすぎないんですね。ベンチャーとか創造的企業というのも、実は小規模企業の範疇です。小規模企業政策の中でこれを位置づけなければいけないんです。あとは具体的にはあした申し上げますけれども、私は、どうも今回の中小企業政策はピントがずれている、ポイントが外れているという認識をしております。  ぜひそのことを率直にお考えいただいて、私どもは実感としての中小企業を対象にした議論をこの場でしていかなければ、今世間のそういう小規模中小企業方々は、政府が提案したものを新聞等で読んでいるけれどもどうも我々のことじゃない、相も変わらず持てる企業を一生懸命に応援するけれども限界企業、小規模企業は切り捨てるという方向に行っているのではないか、そういう心配を持っているわけであります。これでは血の通った、地についた中小企業政策ということにはならないというぐあいに思います。  あとは、あしたの質疑の中で、実のある、温かみのある御答弁をぜひいただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  64. 中山成彬

    中山委員長 島津尚純君。
  65. 島津尚純

    ○島津委員 民主党の島津尚純であります。  私は、通産行政にとりまして重要なテーマであります中小企業問題、そして日米の鉄鋼問題、それから原子力の問題等々につきまして、通産大臣に御質問をさせていただきたいと存ずるところでありますが、そういう意味から、堺屋長官小池政務次官にはちょっと質問を申し上げないわけでありますので、その辺はお許しをいただきたいと存ずるところであります。  まず、今国会は、中小企業国会というふうに銘を打って、中小企業問題を集中的に考えていこうという国会、まさに私ども商工委員会が花形の舞台になってくるということで、私たち頑張っていかなければならない、このように思っておるわけであります。  昭和三十八年に基本法が制定をされた。そのときの政策理念というものは、大企業、中小企業経済の二重構造を背景とする格差是正というところに大きな視点があったわけであります。それ以来今日まで、あらゆる施策というものがこの理念、目的を達成するために行われてきたわけでありますが、私たちから見ますと、果たしてその成果というものが十分に達成をされたのかどうかというふうなことになりますと、なかなか疑問に思わざるを得ないと思うのであります。  しかしながら、先日の本会議におきまして、中小企業基本法の改正案の趣旨説明の中におきまして、深谷通産大臣は、現行基本法が規定する政策体系についても成果を上げてきた、このように明言をされてきておるわけであります。  そこで、大臣としては、どのようなところがどういうふうに成果を達成してきたとお考えになっておられるのか、その辺からお伺いをさせていただきたいと存じます。
  66. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。  昭和三十八年、中小企業基本法が制定された当時は、お話のとおり、二重構造論というのが中心でございまして、大企業に対する中小企業、近代的な企業に対して非近代的な企業、その格差をどうやって埋めるか、なくすかということが中心でございました。以来、今日までの間、法律の制定をしてから、例えば金融の問題とか、あるいは組織化、それから診断指導、小規模対策など数々の政策を講じてきたところでございます。  具体的に申しますと、中小企業の現在の一人当たりの生産性というのを考えてみますと、昭和三十八年の当時と比べますと約二倍から四倍に上がってきております。完全な成果を上げたとまでは申し上げられませんが、生産性の面ではそのような数字の上での具体的な成果が上がっています。これはもちろん政策だけの効果、国の努力だけの効果ではなくて、むしろ圧倒的にと言っていいくらいに、中小企業皆さんが額に汗して頑張ってきた成果だというふうに思っているわけであります。
  67. 島津尚純

    ○島津委員 深谷大臣はそういうふうに、成果が大変上がってきたというようなことをおっしゃいました。  私は、いわゆるいろいろな手だてをやってきたけれども、この成果というものはある意味で乏しかったのではないか。ですから、今回の一連の改正、見直しということにつきましては、過去に行ってきた政策が実効性が薄かった、成果に乏しかった、であるならば、そのことを振り返り反省をし、それを踏まえて今回の改正ということをやらなければ、やはり同じことの繰り返しになっていくのではないかということを指摘させていただきたいわけであります。  私は私で、用意しましたデータでお話をさせていただきますと、中小企業と大企業の格差がこの間ほとんど縮小されていない、是正されていないというようなデータであります。  例えば、資本装備率を見ますと、これは従業員一人当たりの有形固定資産を指しておるわけでありますが、大企業を一〇〇とした場合、昭和四十年代の前半で中小企業が二六前後だったのでありますが、ここ数年で三〇前後ぐらいにしかなっていない、こういうことであります。  また、大企業と中小企業の賃金で見てみますと、従業員千人以上の大企業を一〇〇とした場合に、従業員十人から九十九人までの中小企業が昭和四十年で六二、平成九年で六一である。大企業が一〇〇の場合、中小企業はおととしで六一だということですね、昭和四十年で六二です。この三十数年の間でほとんど六〇前後を推移してきておるというのが実態であります。  さらに、先ほど生産性という問題をおっしゃいましたけれども、私が持っておりますこの中小企業白書によるデータ、大臣はどのデータをお使いになったかわかりませんけれども、このデータによりますと、労働生産性は、同じように大企業を一〇〇と見た場合に、昭和四十二年で中小企業四八・四、平成九年で四七・七と逆に下がっておる、このような状況であります。  私が今申し上げたようなまさに主要なデータを見てみますと、これは、格差が非常に改善された、成果があったということはどう見ても申し上げることができないのではないかというふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  68. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私が先ほど申した生産性が二倍から四倍になったということは、中小企業の生産性だけを計算した場合でございまして、大企業との格差という点で比べますと、あなたが御指摘のような状態で、残念ながら、大企業を一〇〇としたときには、今日ではおおむね五〇から六〇ぐらいと見なければならぬだろうというふうに思います。  しかし、その格差の内容を見ますと、かつてのような中小企業の姿と違いまして、労働生産性とか成長性において多様性が広がっているという思いを強くするのであります。つまり、中小企業でも大企業に対して非近代的と言われないように躍進しているところも随分出てきている。そういうところをきちっと見ていかなければならないと思っているわけであります。  しかし、いずれにしても、大企業と中小企業を見た場合に、数値の上でも格差があることは、残念ながら今日の状況であると言わなければならない。そういう意味では、力のある、あるいは力をこれからつけていく中小企業に対して、いろいろな角度から真正面に取り組んでいくということは大事なことだと思っております。
  69. 島津尚純

    ○島津委員 大臣も、中小企業と大企業の格差是正については、かなりの格差が残っておるというような御認識だというふうに思います。ですから、今回の一連の中小企業関連法案の改正につきましては、今日までのこのようないろいろな中小企業に対する施策というものがどこに問題があったのか、そしてなぜ成果が上がってこなかったのか、こういうことを総合的に考えていただきながらぜひ見直し作業を進めていただきたい、このようなことをお願い申し上げまして、次の問題に進ませていただきたいと思います。  次は、中小企業の経営者の皆様方といろいろお話をしておりますと、政府は確かに熱心に中小企業問題にお取り組みをいただいておる、いろいろなことをやっていただくけれども、余りにもそれが多岐広範にわたっておるために、我々は、今自分が必要とするもの、これはどれを使ったらいいのかということがさっぱりわからないということがかなり実感としてある。  ですから、私たちが多少勉強をして、そして中小企業皆さん方に、その問題はこれがいいんじゃないですかとか、そういうことを逆に、向こうが経営者でありながら、私たちにしてもある意味で素人が御説明をしておるというような状況が言うならば現況だろうというふうに思うわけです。  これは非常にもったいない話だと思うのです。政府の御努力というものがありながら、それが実際、必要な皆さん方によくわかっていないということは極めてもったいない話でありまして、私は、このような問題を、ある意味での縦割り、中小企業庁の中でもそれぞれの課があるでしょうし、地方自治体あるいは商工会議所、いろいろなところで指導が行われておる、こういうものを何らかの形で一本化していく、窓口を一本化していくというようなことがぜひ必要ではないか、このように思っているわけです。  大臣としましては、このようなことが現状認識としてどうなのか。そして、その認識をされた上で、このような問題、今までもそのようなことは必要だというふうに言われながら、いろいろな障害があったのでしょう、その一つにはやはり縦割り行政というようなこともあったのではないでしょうか。そういうことを乗り越えて、一本化対策といいましょうか、そういうものをお考えになっておられるのかどうかということをお尋ねさせてもらいたいと思います。
  70. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今の島津委員の御指摘はまことに適切だというふうに私も思っております。  中小企業に対するさまざまな手だてというのは通産省を中心にしてやってまいってはいるのでありますけれども、それを周知徹底するという点において欠けている面が多かったのではないか。御指摘のように、いろいろな種類があるものですから、それを中小企業皆さんが御理解し、御活用なさるという点については、やや足らざるものがあった。  島津委員中小企業皆さんのいわば一つの窓口を形成して御協力なさっておられるそうでありますが、私自身も、私の事務所はある意味では相談窓口のようなそういう傾向もございました。そして、そこに御相談いただければ、しかるべき制度、仕組みなどを説明して、ごあっせんをするようなことなどもやってきたのでありますが、やはりこれらは、官を中心にして、きちんと制度立てていくべきではないかというふうに思います。  今私たち考えておりますのは、それらの各種の相談の窓口を一本化していくという意味で、ワンストップサービス機能を有するセンターをつくっていこうということでありまして、これから具体的に皆様にお示ししてまいりますけれども、例えば、中央でございますと、ナショナル支援センターと名づけます。また、都道府県ごとの支援拠点としてそのようなものをつくりますし、もう一つは、市町村レベルの広域に約三百程度のサービスセンターというのでしょうか、支援センターをこしらえまして、そこにお越しをいただければ各般にわたりましてそこで対応できるというような仕組みを、ぜひ確立していきたいと思っているところでございます。
  71. 島津尚純

    ○島津委員 私は、恐らく深谷通産大臣はそのようなお答えをなさるだろう、このように思っておったんですが、ちょっと申し上げさせていただきますと、現在、多岐にわたると申し上げたのは、たくさんの指導窓口というものがある、だからある意味では混乱をしておるということだろうと思います。  そうしてまいりますと、今おっしゃったような、新しい支援センターを全国で三百カ所つくるとか、都道府県に窓口をつくるとか、その総括的な元締めを国レベルでやるとか、このようなことでありますが、私は、そういうことはその多岐にわたる多くの窓口をさらにふやすだけではないか、このように思うわけであります。  今回の中小企業基本法の改正の中でも、九月の中小企業政策審議会の答申を受けまして、指導という言葉をもう削りなさい、いわゆる官から民という時代にあって、上から下に指導するというような時代ではない、だから、指導という言葉は削りなさいということがこの審議会の答申でありまして、それを受けまして基本法の中から、第十一条でしょうか、この中から指導という言葉を削った、除去したわけでありますね。  そうなってきますと、それと関連してきますいわゆる中小企業指導法というのがありますけれども、これは、指導法ということでそのまま温存をしてしまっておるわけですね。ですから私は、指導法もこれと連携をしてやはり削除し改正をしていかなければならない、そのように思っておるわけです。  そうなってくると、私ども考えますのは、行政の機関による指導窓口ではなくて、いろいろな経営問題が多様化する中にありまして、やはりこういうふうな指導というものは、民間による経営支援といいましょうか、そういうものを中心として、そして行政側がそれをバックアップしていくというようなことでより地域的な対応もできますし、きめ細かな対応ができるということだろうと思うんです。  ですから私は、中小企業の指導というような問題はこのような方向に転換をさせていく時期に差しかかっておる。特に中小企業国会と銘を打っているわけでありますから、ぜひそのような頭の切りかえをやっていくべき時期に来ているのではないかというふうに思うんですが、いかがお考えでございましょうか。
  72. 深谷隆司

    深谷国務大臣 委員指摘するように、指導という言葉は私は適切でないともともと思っています。何か上から下を導くような、そんな僣越な姿勢ということがそもそもいけないことであって、私は、これらについては抜本的に見直さなければいけないというふうに考えています。  それで、例えば今のセンターでありますけれども、今まででも商工会とか商工会議所等が相談の窓口の役割も果たしておりました。今度の三百の全国の支援センターは、地方にございます財団法人の中小企業振興会などを活用したらどうかということを一つの提案としておりますけれども、どういう形が一番いいのか、何が最善なのか、それはさらにこれから煮詰めていきたいと思っておりまして、その際には、あなたの御発言についても傾聴に値すると思っておりますから、参考にさせていただきたいと思います。
  73. 島津尚純

    ○島津委員 通産大臣も、指導という言葉は適切ではないだろうというような御発言、高く評価をさせていただきますし、そのような姿勢で今後見直し作業をぜひ積極的にお取り組みいただきたいというふうに思うわけであります。  次の問題に進ませていただきたいと思います。  今回の保証枠の拡大という問題につきましてお尋ねをさせていただきたいと思うわけでありますが、今回、保証枠を十兆円拡大していくということであります。二十兆円の保証枠ということは、中小企業皆さん方にとりまして大変ありがたいことで、干天の慈雨というようなことであり、それによって倒産が防止されたということに対して、一定の成果があったということは私も高く評価をさせていただきたいと思います。  しかしながら、この二十兆にさらに上乗せした三十兆という問題でありますけれども中小企業が五百万社あるとしまして、一社当たり六百万ということに実はなってくるわけであります。そうなってきますと、実際の資金需要から考えまして非常に過大な数字になってきているのではないか。この辺が、選挙対策だとか、いろいろ言われる根拠になっておると思うのであります。  そこでお尋ねをさせていただきたいわけでありますが、この上積みをされた枠の拡大の十兆円ということの基本的な根拠、これがどの辺にあるのか、その根拠というものを納得のいけるデータで何か説明をしていただければな、このように思いますが、いかがでしょうか。
  74. 細田博之

    細田政務次官 本制度にかかわります中小企業者の資金需要に十分応じますためには、本制度のセーフティーネットとしての性格も勘案いたしまして、ある程度余裕を持った規模を追加する必要があると考えたわけでございます。政府が今後の資金需要に十分に対応するという姿勢を示すことで、中小企業者に安心感を与えるという心理的な効果も期待できるというわけでございます。  数字をもって申し上げますと、これまで平成十年十月から十一年十月末までの一年一カ月の間に、御高承のとおり十七兆九千億もの資金需要が出ておるわけでございます。もちろんその保証需要が出ておるわけでございまして、そのほかにさまざまな施策がとられた上でのことでございます。そうして、それがことしに入りまして、四月、五月、六月、七月と見ましても、月々五千億円から六千億円の間で振れております。  特にこれからは、年末あるいは年度末におきまして、どういう経済状況によってどういう保証を行う需要が出てくるか甚だ不鮮明な点もございますし、それから、このたびの総額三十兆の規模というのは来年度末いっぱいまでの数字でございますから、私どもとしては、過大であるというわけではなくて、むしろ中小企業者が安心して、いわば駆け込み寺的に保証を求めてくることができる数字ではないかと考えております。
  75. 島津尚純

    ○島津委員 十兆円の数字に対して、細かなデータと言うには余りにも大ざっぱだったと思いますけれども、またあしたの委員会等々におきましていろいろお話をさせていただきたいと思います。  それで、中小企業向けの貸し倒れ率というのは、金融機関におきましてもなかなかそのデータが乏しいと言われておるわけであります。現在の保証額の貸し倒れ率を大体政府としてはどのくらいに見ていらっしゃるのか。  そしてまた、この貸し倒れによって、代位弁済をやった場合、それが国民の皆様方にツケが回ってくる、負担が回ってくるわけでありますので、いい話ばかりではなくて、やはりその辺の問題もきちっとこの国会において国民皆さん方に説明をした上で拡大をしていかなければならないのではないかと思うんですが、その辺聞かせていただきたいと思います。
  76. 細田博之

    細田政務次官 従来、特別保証制度にかかわる信用保証協会基金補助金の算出には、事故率一〇%、回収率五〇%の前提を設けて計算しております。  今般の追加に当たりまして、昨年十月に本制度が発足したときに比べましてその後の経済金融情勢が相対的に改善している、それからもう一つ、この一年間どのぐらい代位弁済率があったかということを調べてみますと、〇・三八%ということで比較的低位で推移しておりますので、それらを勘案いたしまして、追加保証枠十兆円のうち五兆円については事故率を八%と算出しておるわけでございます。  予算手当てにつきましては、特別保証制度の実施期限の一年間延長及び来年度分と合わせて十兆円の保証枠の追加に必要な予算措置といたしまして、今次補正予算におきまして信用保証協会基金補助金九百億円を要求しておるわけでございます。  また、ちなみにこれに加えて若干申しますと、代位弁済も、昨年、ことしの春、九月までの推移を見ますと、じわじわと実は上がっておるんです。今、〇・三四%件数、〇・三八%金額と言っておりますのは全体の額でございますが、やはり保証をしてから時間がたってまいりますから少しずつ上がってまいりまして、これからの金融情勢にもよりますけれども、どのくらい代位弁済が起こってくるかということはまだ予断を許さない状況でございますので、この予算措置においてかなり高目のものを設定しておる、これで十分対応できるはずだということで計算しておるわけでございます。
  77. 島津尚純

    ○島津委員 だんだん貸し倒れ率が高くなってきておるということですが、専門家等々のお話を聞きますと、一割ぐらいを想定して、そのうち最終的に資金回収不能が五%ぐらいは最低でも見なきゃいかぬだろうというような話も聞いておるわけでありまして、この辺、十分に私たちは考慮しながら対策を打っていかなければならぬのじゃないかな、このように思っております。  いろいろありますので、中小企業問題につきましては、またあした一時間私も時間をもらっていますからやらせてもらいまして、次に、日米の鉄鋼問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  日米の鉄鋼貿易摩擦といいますのは長い長い歴史を持っておりまして、昭和三十年代の半ばぐらいから既にスタートをしてきて、いろいろな問題をその都度その都度抱えてきた、大きな日米間の経済的なトラブルの第一に挙げられるような問題ではないかというふうに思っておるわけでありますが、昨年からことしにかけまして、日本の鉄鋼製品が立て続けにアメリカのアンチダンピング法、AD法による提訴を受けてきておるわけであります。  そういう中で、アメリカの商務省あるいはITC、国際貿易委員会等々が調査し、例えば熱延鋼板という最も汎用性の高い、最も輸出量の多いような日本の鉄鋼製品については、ことしの二月に商務省もあるいはITCもクロの仮決定をやり、六月には双方ともクロというような本決定をやっておる、こういうふうな状態にあるわけであります。  我が国の鉄鋼製品で提訴を受けておるものは全部で五種類、件数にして六件。そしてまた、二〇一条提訴を含めますと、七種類の鉄鋼製品、八件の提訴が行われておるわけであります。幸いなことに、先月の二十日に日本政府は、これに対してWTOに反論のための提訴を行うということを決断したわけです。これについては私は高く評価をさせていただきたいと思いますが、おっとと思いますのは、六種類も七種類も提訴を受けておきながら、今申し上げたような熱延鋼板一件に限ってのみWTOの提訴を決断したということで、なぜ全製品に対して闘う姿勢を持たないのかということが一点。  それから、ちょっと申し上げにくいわけでありますが、私はこの鉄鋼貿易摩擦について大変関心を持ち、いろいろなデータを集め、そして、通産省の担当局とも、ことしの夏以前から、いろいろな打ち合わせといいましょうか、御意見を聞いてきたわけであります。そのときに、既に二月にクロの仮決定をなされたときから、日本の鉄鋼製品には言うならばアンチダンピング課税というものが課されてきておるわけですね。日本の産業は大変な損害をこうむってきておる。なのに、七月、八月になってもなぜWTOに問題だと提訴をしないのだということを通産当局に申し上げてきました。  それに対して、二カ月前の通産当局の皆さん方の話は、アメリカの一連の提訴というものはWTOのルールの範囲内で行われておりますので、これを提訴するわけにはいかないんです、このように言ってこられた。そして、二カ月後の十月二十日には提訴に踏み切った。この大きな方針転換というものは、どこに根拠があったのか。八月ごろは私たちにいいかげんなことを言っておられたのか。  前段の、なぜ一種類かということ、それから、八月が悪くて十月はなぜWTO提訴踏み切り、いいのか。この二件について御答弁をお願いしたいと思います。
  78. 深谷隆司

    深谷国務大臣 お答えいたします。  アメリカ政府が本措置を決定したのは本年の六月のことであります。以来、鉄鋼業界からの要望も踏まえて、一体WTOに提訴すべきかどうか、省内でもかなりの議論があったようであります。ただいま、八月の時点では提訴しないという答えがあったというお話がありましたが、どこでお聞きになったか私は定かではありませんが、検討中であったという状況であるというふうに私は認識しています。そして、私が就任をいたしましてからさらに検討を加えて、私の意思も含めて、去る十月二十日に提訴に踏み切ったわけでございます。つまり、ガット及びアンチダンピング協定に違反するという結論に達したからでございます。  それから、何種類かあるのに何で熱延鋼板だけかということでございますが、他の品目についても今調査しておりまして、調査の結果が出たら提訴する場合もあり得ると思っているのであります。現段階ではこの熱延鋼板に対する措置は間違いなく提訴に値するという判断をとったということと、業界の実態を調べてみましても、鉄鋼製品のアメリカ向けの輸出の中の二〇%を占めるという非常に大きなものでありまして、これは我が業界にも多大な影響を与えるということから、そのような形でまず踏み切ったというのが実際でございます。  いずれにいたしましても、アメリカがアンチダンピングを乱用するということは好ましいことではありません。私どもは、WTOの整合性を十分に考えながら、アメリカ側の提訴に誤りがあり我が国の主張が正しいと考えた場合には正々堂々と提訴に踏み切っていきたい、そんなふうに思っております。
  79. 島津尚純

    ○島津委員 今大臣からのお話がありまして、大臣の意思を含めて十月二十日の提訴決定になったということは高く評価をさせていただきたいと存じます。  熱延鋼板のみの提訴であるというようなお話がございましたが、今後、例えば厚板にしても冷延鋼板にしても、もう既にことしの四月とか七月にはクロ判決の仮決定がなされておって、既に日本製品はアンチダンピング課税というものをされているという状況にあるわけですから、とりあえずこれからまた研究をしてWTO提訴ということよりも、もっと俊敏に、日本産業育成のためにもやるべきではないかということを指摘させていただきたいと思います。  次の問題に行かせてもらいますが、アメリカがやたらにこのアンチダンピング提訴というものを乱発するということに、自由貿易というものを阻害する根本的な問題がある。  深谷通産大臣は、大臣の就任のあいさつの中で、二〇〇〇年からWTOの新ラウンドの円滑な立ち上げに全力を尽くしますというようなお話をされておるわけでありまして、来年度からWTO新ラウンドを迎えてくるわけであります。アンチダンピング問題というのもこの交渉分野の中に入れられているというふうに確認をさせていただいておるわけでありますが、このアメリカのダンピング提訴の乱用というような問題に対して、日本が新ラウンドでどのような方針で世界にアピールをしていこうというふうに思っていらっしゃるのか、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  80. 細田博之

    細田政務次官 基本方針については後ほど大臣からお答えしますが、私自身もアンチダンピングについてはいろいろな経験を持っておりまして、ギルモア・スチールの厚板ダンピング調査に直接かかわったことがあります。  そうして、ダンピングが決定されますと、すべての製品輸出が完全にとまってしまうという、輸入抑制的な効果が非常に大きいものであります。現に、既にホットコイル、ステンレス線材、ステンレス鋼板、厚板、冷延、シームレス、形鋼と次々に広がっておりまして、この運用が輸入禁止的な措置につながるということで、アメリカは非常に大きな貿易阻害的な効果を持っていることは事実でございます。  そうして、日本としては、買い手があって、市場が若干価格が崩れておって、その中での商売でございますから、若干値が下がったり各国と競争したり、いろいろなことがある中での価格形成でございますから、そういったものをとらえて、実際上輸入禁止措置につながるようなアンチダンピング法制は極めておかしいということと、今回我々が決定しました損害認定に関して、米国産業への影響が過大評価されているとか、ダンピングマージンが過大評価されている。調査手続が不公正である。  そういったことも踏まえて、断固これを提訴するとともに、これからのWTO交渉では、アメリカ側は御存じのように農業とかサービスとか特定の分野しか取り上げないというようなことも言っておりますが、我が国としては、このアンチダンピングの見直しというものは極めて重要な課題であり、また貿易の適正化に必要なことでございますので、断固これを交渉項目に入れるように、しかもアメリカの制度を改善するように要望していきたいと考えております。
  81. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今、細田総括政務次官から御報告申し上げたとおりでありますが、私の名前も御指名いただいたものでありますから、WTOのシアトル会議に向けての決意だけ追加申し上げさせていただきたいと思います。  新たな二〇〇〇年に向けて、世界の貿易のさまざまなラウンドを検討して、新ラウンドという形で立ち上げなければなりません。そのために、過日は、スイスのローザンヌの非公式閣僚会合に私も出まして、まず第一戦を交えてきたところでございます。そのときの様子から申し上げますと、アメリカの姿勢は非常にかたい。アンチダンピングを俎上にのせて新ラウンドに入れるということについては、なかなか厳しい状況がある。  しかし、一方では、アンチダンピングというのは開発途上国にとっては極めてマイナスであります。関税をゼロにいたしても、実際にはアンチダンピングでやられてしまっては何の意味もない。そこで、これらの国の協力をいただくように、バイ会談等を通じて積極的に働きかけています。あるいは、韓国その他も我が国の方針とおおむね同じでございます。そういう同調してくれる国を一国でもふやしていくという作業をこれからやっていかなければならないと思っています。  なお、あわせて、ただいま政務次官からお話がありましたように、アメリカは農業、サービスという得意な分野だけをとろうという考え方のようでありますが、投資ルールを初めとしてもっとさまざまな、多様性のある、多角的な、包括的なテーマを新ラウンドに上げることが大事だと存じまして、一層頑張りたいと思っています。  なお、シアトルの会議は十一月三十日から十二月一、二、三と四日間行われる予定でございまして、重要な場面でありますから、私はぜひとも参りたいと思っております。心配は、予算委員会その他の議会の日程等がどうなるかという点でありますけれども、ぜひまた御理解と御協力を仰ぎたいと思います。  ありがとうございます。
  82. 島津尚純

    ○島津委員 細田政務次官がこのような問題に対して多少専門的だと思いますので、ちょっとお聞きしたいわけであります。  さっき申し上げた熱延鋼板の問題につきまして、日本の鉄鋼輸出組合といいますのは、アメリカの提訴に対して、そうではないという反論のいろいろなデータを出しておるわけですね。そういう中で、例えば九八年一年間の月ごとのものを見ましても、アメリカの鉄鋼製品の相場というのが、では日本がどのくらいでアメリカに輸出したかという価格は、すべてアメリカの相場よりも高い値段で日本は輸出しておるというデータがここにあるわけです。  これは、輸出組合が勝手に言っているのじゃなくて、通産省としてもそのとおりだというように考えていらっしゃるわけですか。いかがでしょう。
  83. 細田博之

    細田政務次官 特にホットコイルについて問題がありますのは、御存じのように、当時アメリカにおいてもミルの方にいろいろ生産の障害がございまして、そこで、物が足りないということで急遽外国からの輸入に求めるという動きがありまして、相当輸入がふえたということがございます。それに対して、輸入がふえ過ぎではないかとかいろいろな、政府ベース、国会ベースでも大きな苦情がある。  したがって、そのときの市況はかなり上昇しておるわけでございます。その後輸入が入ってきて、時差がありますから、その後また価格が下がってくるというようなことがありますと、結局、物の貿易というのは、需給によりまして、ずれがありますけれどもいろいろな動きを示すのですね。その中の一地点だけをとってダンピングがあったとかないとかという議論をすぐにするのが向こうの癖であると思いまして、これは非常に貿易阻害的行為であると思っております。
  84. 島津尚純

    ○島津委員 アメリカの好景気の中で、建設産業であるとか、あるいは自動車産業であるとか、そういうところが鉄鋼の需要を非常に喚起していった。そういう中で、日本が輸出しなければ非常なショーテージを起こしてしまった、そういう中で日本の輸出が大変ふえていったというようなことが基本的にあるわけですね。さらには、アメリカの鉄鋼業界の中のいろいろな問題、中小と大手の問題、あるいは来年控えている大統領選挙の絡みの問題等々の国内問題をひっかけられて、日本の鉄鋼業界というものがこういうふうな非常につらい立場にあるということは問題である。  さらに大きな問題は、日本の鉄鋼産業が不公正な商取引を行っておるんだというようなことをアメリカの政府が決定したということは、貿易立国の我が国にとってとてつもない、これは国際的な恥の問題になってくるだろう。ここがやはり基本的な問題であって、金を払わなきゃいいんだとかという問題ではなくて、私は、日本のそういうふうな基本的な問題を取り除くために、ぜひ新ラウンドでは深谷通産大臣等々の役割に期待をさせていただきたい、このように思いまして、鉄鋼問題、この辺にさせていただきたいわけであります。  続きまして、原子力の問題について入らせてもらいたいと思います。  東海村事故等々に触れられて、深谷大臣は、といえどもやはり原子力というエネルギーは日本にとって非常に大事なエネルギーである、このようなごあいさつをなさいました。私も認識は全く同じなわけであります。  近年、動燃の事故とかいろいろな一連の不祥事件、事故の中で、原子力問題に対します国民の皆様方の不信というものは増幅の一途をたどってきておったわけであります。そこにさらに今回の考えられないような臨界事故ということになったわけでありまして、ますます国民皆さん方の原子力に対する不信というものは募る一方である、このように思います。  そういう中で、日本のエネルギー政策の中における原子力という問題を考えてみますと、一昨年のCOP3、京都会議におきまして、日本は二〇一〇年までにCO2排出量を九〇年度レベルでマイナス六%というような大変な課題を国際公約した。そのことを実現するために、達成するために何をやるかという中で、そのキー、柱となってきたのが原子力であります。現在五十一基稼働しているわけでありますが、これに加えてさらに二十基の原子力新規立地というものを二〇一〇年までに、あと十年間でですよ、やろうというのがいわゆる国際公約を果たすための柱となってきておる。  多くの専門家は、とてもじゃないがこの十年で二十基立地というのはどうしたらできるんだ、半分できればやっとじゃないか、そのようなことが言われている中で今回の事故でありますから、ますます立地というものは私は困難、厳しい状況になってくるだろうと思うんです。  そういうふうなことを踏まえて、国民に対する信頼性の回復、それからこの立地の問題につきましてどのように認識されているかということを、ちょっとお伺いしたいと思います。
  85. 深谷隆司

    深谷国務大臣 過日の東海村の燃料加工工場の事故は、まことに残念な事故であり、極めて遺憾でございます。  実際には原子力発電所と根本的に異にしているにもかかわらず、同じように見られて、原子力政策に対して国民が不信を持つということは残念なことであります。加工工場はウラン溶液を使っていますが、原子力発電所はそんなの使っていない、全く違いますし、多重防護というのを原子力発電所は最も中心に置いているわけでありますから、そういう意味では、一緒に見られたくないという思いが正直ございます。  いずれにしても、我が国のエネルギー政策を考える場合に、やはり安定供給を確保する、経済成長を図る、同時に環境の保全を図る、この三つを一緒に達成しようという考え方に立っておりますが、その場合にやはり原子力エネルギーに負うところが極めて大きいと私は思って、そういう意味ではエネルギー政策を変えるつもりはありません、こう申し上げたわけでございます。  私は、そうはいっても、原子力エネルギー政策は安全確保、国民信頼が基本だと考えまして、過日は電力会社の社長を全員集めました、十月の十四日に。そして、手順書の不備あるいは偽りはないかというようなことについての徹底した点検を指示いたし、また職員を電力会社に派遣して調査するなど、そのような仕事などもさせていただきましたし、つい数日前は福島第二原子力発電所を視察いたしまして、改めて私自身がこの目で見、肌で感じた安全性確保がとられているということをマスコミにもお訴え申し上げたわけでございます。そして、職員を中心として、これからも緊張感を持って、慎重の上にも慎重に対応するようにと徹底指導していく覚悟でございます。  過日の反省の中から、例えば原子力防災どうするのだ、あるいは原子炉規制法というのが不備であることがわかりましたから、今国会で新しい法律をつくり、また不備なところは改正するという方向でただいま科学技術庁と相談をして進めているところでございます。  お話がありましたように、COP3のCO2排出削減目標の達成、これは原子力発電所のエネルギーが重要な部分を占めるわけでございますから、これから予定どおり、立地地域の了解をいただきながら原子力発電所をつくっていかなければなりません。その進行上、このたびの事故は非常に大きく影響すると思いますけれども、原子力発電所及び原子力エネルギーの重要性、安全性というものをこれからしっかり国民皆さんにわかっていただくように、きちっと我々も対応しながらその目標に向かって努力をしていきたいと考えております。
  86. 島津尚純

    ○島津委員 環境の厳しい中で、しかしながら、COP3国際公約達成のために原子力立地というものをやはり一生懸命進めていかなければならないというようなお話であったわけであります。  私は、二年前のちょうど今ごろでありました、当時は堀内通産大臣でございましたけれども、そこでやはり原子力問題について質問をさせてもらったんです。  そのとき申し上げたのは、なかなかやはり原子力立地というものは難しい、そして、立地する自治体の皆様方の合意といいましょうか了解、そういうものを得ることが非常に難しいわけだけれども、そういう中で、そういう立地地域に対していろいろな配慮を申し上げるというような措置が講じられているわけですね。それは電源三法によって立地交付金制度というようなことがずっと行われてきているわけですが、その中で、昭和四十年代にこの制度がスタートをしたときには立地交付金の制度というものはわずか六種類ぐらいしかなかったわけでありますが、現在はこれが七十ぐらいに交付金の種類がふえてしまっておるということで、インパクトがもうなくなってしまっているんですね。だから、これをやはり整理統合することが一つ必要じゃないか。  それからもう一つは、立地地域、立地自治体の強い要望といいますのは、交付金をある程度自由に使えるような交付制度にしてくれないかということがほとんどの立地自治体の要望であります。ですから私は、完全とはいわないまでも、やはりそれに近づけるような努力、見直しということ、厳しい立地の状況にあるわけでありますから、こういう電源三法見直し、交付金制度の見直しということをやらなければいけないじゃないですかということを申し上げました。  そのときに堀内通産大臣は、ぜひ積極的に見直させていただきますというお話をいただきまして、私はずっと見てまいったんですが、全然見直しがスタートしていないということであります。  ですから、言いっ放しではよくないわけでありまして、まさに東海村のこういう事故が起こったことを契機に、私はそろそろお約束を実行に移すときではないか、このように思うんですが、ちょっと込み入った問題でありますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。
  87. 細田博之

    細田政務次官 島津委員には大変いい御質問をいただきました。  と申しますのも、私は小選挙区が島根原子力発電所一、二号機を持っておりまして、さらにこれから三号機の電調審に入るわけでございます。そういった中であのような事故が起きましたことを大変遺憾に感じておりまして、むしろこれまでは議員立場で通産省に対していろいろな要求をしておったようなことでございますので、この問題、いささか詳しく勉強しております。確かに項目的には幾つもありますが、大半は小さな行政目的に充てられるものでございまして、大きな柱というのは大体五本柱になっております。  ただ、お話がありましたように、原子力発電施設等周辺地域交付金と電力移出県等交付金を廃止統合して電源立地特別交付金を創設するとか、拡充あるいは統合を図っておりますことをまず申し上げますとともに、もう一つ大きく違っておりますのは、私は島根原発について、では地元でどのぐらい交付金が拡充されたのかを個別に出せと言って出させたことがあります。それによりますと、一、二号機にかかわるものは、稼働後のものも含めて、十七年間かかって百六十六億円ほどの交付金を出しております。ところが、現在の枠組みでは、税金が少し大きくなって特別会計がふえた、交付金の単価もふえるというようなことで、最初の十年間に四百二十億、後の十年間で二百二十億と、概算で四倍に上る交付金の充実が行われている。  そのほかに、工業団地などへの企業誘致で電力料金を半分にしようとかさまざまな措置を講じられておりますが、あと残りますのは、やはり公共事業等をもっと地元にプラスになってもらえるように国としてもやっていかなきゃならないな、これはむしろ自民党の方で議論しておったわけでございますけれども。  そういったこともろもろをやってまいりませんと、いわゆる住民対策、説得あるいは説明というもののほかに、隣接、隣々接の問題も含めまして十分地元対策を講じていかなければ非常に難しい状況にありますから、我々も原発立地県選出議員として共感するところが多いわけでございますので、若干説明を申し上げました。
  88. 島津尚純

    ○島津委員 細田総括政務次官という強い味方を得まして、期待をさせてもらいたいわけでありますが、もう一度繰り返しますと、先ほど申し上げたような交付金の整理統合、さらには、立地自治体が強く要望しておる、かなり自由に使える交付金の見直し。そういう見直しについて二年間たなざらしになっておったんですが、深谷通産大臣あるいは細田総括政務次官、その時代に、今までたなざらしになっておった問題を、深谷細田、この体制の間に必ず手をつけますというようなことでようございますね。いかがでしょう。
  89. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大臣がお約束したことについて履行していないということは甚だ申しわけないことでありまして、さまざまな工夫をしながら御期待に添うように努力したいと思います。
  90. 島津尚純

    ○島津委員 大臣答弁、ありがたく存じております。  大臣、さきの通常国会で最も大きな法案、そしてこの一、二年の中で通産所管の最も大きな問題というのは、大店立地法の見直しあるいは電気事業法の見直し、これは海外の自由化に日本も対応しなければならないというようなことで、通常国会におきまして大幅な電気事業法の見直しが行われて、来年の三月から二八%の部分自由化というのがスタートをしてくるわけであります。  この問題について最後にちょっと触れさせてもらいたいのですが、諸外国におきましては急進的な改革というのがどんどん進んでおります。しかしその反面、供給安定度といいましょうか信頼度は、大変損なわれている。言うならば、停電が非常にふえてしまっておって、事故の発生が非常に多い。しかし、日本はほとんど無停電体制が当たり前だというような状況がありまして、日本の改革はそのバランスが大事だ、こう思うわけであります。  深谷大臣としましては、産業の米と言われている電力問題、これは通産行政のかなり大きな部分になってくるわけですが、基本的にどのようなお考えを持っていらっしゃるか、最後にお聞きしたいと思います。
  91. 深谷隆司

    深谷国務大臣 島津委員指摘のように、本年五月に電気事業法を改正いたしました。これはかなり大きな変化でございます。そして、来年の三月からは大口需要者への小売自由化というのを柱とする部分自由化を実施するわけであります。  通産省としては、こういう部分自由化の電力供給システムで、効率化の維持であるとかあるいは安定供給の維持、エネルギーセキュリティーの確保といった公益的な課題の両面をうまく進められるように図っていきたいというふうに思っております。
  92. 島津尚純

    ○島津委員 ありがとうございました。  最初ではなくて最後に深谷通産大臣に、全然これは質問じゃありません、申し上げたいのです。  深谷通産大臣が初めて衆議院に初陣で出馬されるときに、私は上野に駆け参じて、ともにマイクを持って演説をしたという記憶があります。それだけに、きょうも非常に矛先が鈍るということがあったわけでありますが、党派を超えて私は通産大臣の就任を喜んでおる一人でありまして、この大きな問題を抱えた通産行政、ぜひ思い切り役割を果たしていただきたいということをお祈り申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
  93. 深谷隆司

    深谷国務大臣 島津委員お話を承りながら、私は胸を熱くしております。  学生のころ、私は、あなたのお父さんに直接御指導いただいた弟子であります。その息子さんがこんなにお元気に立派な政治家になったことはまことにすばらしいことだ、人生というのはいいものだなと思っております。  頑張ります。
  94. 島津尚純

    ○島津委員 終わります。
  95. 中山成彬

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時十四分開議
  96. 中山成彬

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中山義活君。
  97. 中山義活

    中山(義)委員 深谷先生、大変お待たせをいたしました。いよいよ質問の時間が参りまして、尊敬する地元の深谷通産大臣ですから、私、謙虚に、陰湿でなく明るい質問をいたしたい、このように思っております。  まず、景気の見立てについてでございますが、いろいろ政策が浸透して景気が明るくなった、このように就任のごあいさつをされましたが、どうも私ども通産大臣の地元、いろは会商店街とかあさひ商店街とかへ行きますと、ほとんどの人が、景気が悪い、ふざけるな、何を言っているんだ、政府は何をやっている、議員は何だ、こういうふうに立て続けに怒られるわけでございます。  私、どこを探しても、景気がよくなった、明るい兆しが見えた、こんな話は聞いたことがございません。もしいればここへ連れてきてもらいたい、このくらいに思うわけでございまして、景気は決してよくなっていない、そういう見立てをちゃんとしていかないと、大変な大きな失敗をするのではないかというふうに思うんです。  いわば、患者さんを診た場合に、これはどんな薬を使った方がいいか、これは手術をしなきゃだめだ、いやちょっとこの注射を打てば治っちゃう、そういう面では景気の見立てが大事なんですが、深谷通産大臣、その辺のまず景気の見立てからお聞きいたしたいと思います。
  98. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中山委員といつも地元で議論していますが、国会で改めて議論をする機会を得て大変幸せでございます。  まず、冒頭質問でございますが、大臣として景気の見通しについて明るみが増してきた、景気は緩やかな改善が続いていると言ったことに対して、そういう現実ではないではないかという御指摘でございます。  確かに、私どもを取り巻く、特に東京の下町の中小企業の環境はすこぶる悪うございまして、そのことについて胸を痛めない日は片時もございません。先般私が申し上げました就任ごあいさつの中でも、我が国の経済は、各種の政策効果の浸透により緩やかな改善が続いているものの、雇用情勢は依然として厳しく、設備投資は大幅な減少基調が続くなど、民間需要の回復力は弱く、景気は厳しい状況をなお脱しておりません、そう申し上げたのですが、それが私どもの認識でございます。  ただ、GDPの数字の上では明るみが出てきたという数字が出ているということでございまして、それを下町の中小企業皆さんが実感として感じられるような状態ではないという認識を持っております。
  99. 中山義活

    中山(義)委員 それでは、堺屋長官にもちょっとお聞きをいたします。  ちょっと思い出してもらいたいんですが、九七年に、いわゆる消費税のアップ、それから医療費をアップしました。そのときに私はちょうど都議会議員で、九月ごろ委員会の質問で、景気の状況はどうだ、こう聞きましたところ、緩やかではあるが上向いているという話だったんですね。そこで、私どももいろいろ施策を練って言いましたけれども、緩やかに上がっているのでというような答弁で、なかなか新しい政策が使われなかった。しかし、外国ではもう既に、日本の政策は何だ、ツーレート・ツーリトル、常に言われてきたわけですね。そして三月になって、やはりあれは間違いで、景気は下方修正をする、こういうふうになったんですね。  そういう面では、今景気は明るみを増していると言いますが、もしこの見立てを間違うと日本はどん底までいってしまう、このように思うんですが、経済企画庁長官はいかがでしょうか。
  100. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のように、一九九七年のときにまさしく景気の判断を大きく誤って、そこで財政再建を優先いたしまして引き締め政策をとったというのが大きな痛手になっている、これは去年以来私も言い続けておるところでございます。  それで、現在の景気状況でございますけれども、依然として非常に厳しい状況であるということは、私どもの報告、月例報告でも繰り返して申しておりますが、去年の今ごろに比べると幾らか回復しているところもある。もちろんこれは業種により規模によりいろいろと差がございますので一概に言えませんけれども、去年の緊急経済対策、それから減税政策等が幾分効果を発揮いたしまして、GDPの方は少しよくなってきました。また、景状感といたしましても大企業あたりではよくなっておりますし、貸し渋りその他、金融関係でも幾らかよくなっている。  しかし、依然として厳しい情勢でございますので、その認識に立って、政府といたしましては目下経済新生対策を練っておりまして、近く第二次補正予算も提案させていただこうかと考えている次第でございます。
  101. 中山義活

    中山(義)委員 昨年の暮れから安定化資金として中小企業にいろいろ資金がつぎ込まれて、多くの皆さんが助かったということを言っておりますが、実はこの不況を招いた原因は何だ、こういう分析がいつもなされていないと思うんですね。  九四年に金融引き締めをやって、それからずっと悪くなって、何とか九六年に景気が持ち直した。いわゆるスロットルをどんどん吹かしてエンジン全開で来たところを急にブレーキを踏んだ、これが九七年だと思うんですね。その前でも同じようなことを繰り返しているんだと思うんですね。  ですから、中小企業にしてみれば、実際、二十兆円を充ててくれたのはありがたかったけれども、景気を悪くしたのはだれだ、そういう責任もとれというのが普通だと思うんですが、まあまあ二十兆円やってもらったので何とか息をついた。しかし、いつもこういう失敗を繰り返していますと、必ずどんどん借金がふえていってしまう、こういうことですから、当然いつかは構造改革をしていかなきゃならない。つまり、構造改革をする、そしてまた今度は金融緩和をしていったり、公共事業だ何だかんだとばらまく、その繰り返しをずっとこの十年ぐらいやってきたのじゃないかと思うんですね。  実は、通産省の書いている、これは深谷先生も出ていますが、通産ジャーナル、これに書いてあるんですけれども、バブルが終わってからこの十年間は何だったのか、常に同じことを繰り返してきたというんですね。つまり、スロットルを踏んで、公共事業またはいろいろな金融政策を緩和していく。しかし、その後に必ず金融引き締めをやっている。同じことをずっと繰り返してきたんですよ、この十年。だから、ここは本当に何をやったらいいのか。つまり、構造改革、そして金融緩和であるとか公共事業、この辺がどうも一体にならないといけないんじゃないかと思うんですね。  今まではただモルヒネを打ってきた、またはブドウ糖を打ってきた、しかし本当の意味での構造改革をしていなかった、こういうことで今になってしまったと思うんですが、ちょっと考えてもらいますと、例えば今やっている産業活性化法案、これはどんどんリストラを進めているじゃありませんか。しかし同時に、政府は雇用対策だといって、この間も何千万か地方自治体にやってもらう。こんなちぐはぐをずっと繰り返しているんですね。  私は、この辺の矛盾が解消されない限り、いつまでやっても日本はだんだん借金だけふえていく、そういう状況だと思うんですが、通産大臣経済企画庁長官、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  102. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、九〇年代に入りましてバブルが崩壊してから、日本経済は大変厳しい状況が続いております。御指摘のとおり、九二年、三年に悪くなりまして、九五年、九六年と経済成長率が非常に高くなった。そこで、九七年に財政構造改革をやろうとして引き締め政策に転じたところ、九七年の後半から九八年、昨年にかけて大幅な下落をした、こういう状況でございます。  小渕内閣は、発足いたしまして、まずどこに問題点があるのか綿密に考えました。その第一は、やはり金融問題にある。バブル崩壊以来、土地、株式に融資したものが焦げつきまして、金融機関が非常に傷んでいる。これが貸し渋りになり貸しはがしになり、一般の企業経営をも大きく圧迫しているというので、まずこの点を打ち切らなきゃいけない。それで、中小企業に対しましては、二十兆円の特別保証枠以下いろいろな政策をとりました。  そして、金融機関に対しても、それまではできるだけ金融機関を温存しようという政策をとってまいりまして、いわゆる護送船団方式をとっていたのを大胆に改革をいたしまして、そして、不良銀行は市場から退場していただくということで、長銀、日債銀等を国有化し、その他幾つかの地方銀行にも閉鎖その他をいたしました。このことを敏感に民間の方も受けていただいて、金融の再編成が進んでおります。これで金融の方は少しましになったかと思います。  次に、第二番目の問題は、需要不足でございます。これは、バブルの時代に大変過剰な投資をした。これが景気がよくならないものですから過剰投資になり、そしてそれが過剰負債、過剰雇用を呼んでいる。これを何とかしなきゃいかぬというので、一方では公共事業を初めといたします需要拡大政策、他方におきましては減税政策をとりまして、需要の拡大をした。  そして、三番目にはやはり雇用問題でございまして、雇用対策といたしましてかなり大きな予算、スキームをつくり、また、ことしも第一次補正予算によって雇用を中心とした対策をとってまいりました。こういう構造問題に入りまして改革していかなきゃいけない。  今度の経済新生政策では、一方において景気対策を行うと同時に、他方におきましてはやはり日本経済全体を構造改革いたしまして、新しい中小企業、ベンチャー企業が起こるようにしなきゃいけない、新しい技術開発が起こるようにしなきゃいけない。景気を回復するための需要をつけることと構造改革することを、両方一緒に進めようという対策を目下とっているところであります。  この一年三カ月、小渕内閣ができましてからの政策は、外国からも、ツーレート・ツーリトルじゃなしに、ツービッグ・ツーファストじゃないかと言われるぐらい大胆な政策をとってきたつもりでございます。
  103. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先ほど産業活力再生法の問題について触れられたわけでありますが、私どもは、この産業活力再生法をリストラ支援というふうには全く受けとめていないのであります。人的なあるいは物的な資源が効率の悪いところにあったのを効率のいいところへ移動させていくんだ、そのためにさまざまな再生法というのを考えていく、これは中長期的に見たら効果をあらわすであろう、こう考えているわけでございます。  一方、これはあくまでも中長期的な発想でございますが、当面の景気回復や山積している問題を解決するというような点からまいりますと、やはり、中小企業の活性化を図るとか、あるいは経済対策に今堺屋長官が言われたような補正予算の措置をするとか、そういうことがとても大事でございまして、そういう二通りの角度から、中長期的な対策、現実の対策をあわせて進めていこうという考え方でございます。そして、そのことは構造改革を行う背景、環境というものをつくり上げるものだと理解しております。
  104. 中山義活

    中山(義)委員 今、中長期的な対策と言いましたが、それをやっている間に国民皆さんは苦しくなる、非常に大変だ。そうすると、今回みたいに選挙が近いと選挙目当てでばらまいてしまうということを繰り返していたのでは、ちっとも構造改革になっていかないと私は思うんですね。  私は、中小企業にいつもしわ寄せが行くというのをよく見ているんですが、例えば川がはんらんして家が流されちゃった、これは国家賠償はできますね。だけれども中小企業がつぶれた場合、政府が景気を悪くして、どん底まで持っていって、自殺をした、そういう場合にだれが補償するんだ。結局はそこは自己責任ですよ、こういう言い方をするのであれば、私はちょっと間違っていると思うんですね。やはり、十年間の間違いというものはもっと反省していただいて、しっかりとした教訓のもとに次の政策を打ち立ててもらわなきゃ困ると思うんです。  また同じような、今の、私らに言わせればリストラ法案だ、こういうふうに言ったんですが、どんどんやめさせている。やめた人は購買力がなくなっていくわけですね。大きなマクロ経済からいえば、さっき言った需要を喚起しているどころか、本当に先行き不安でどんどんお金を使わなくなる。それからまた、介護保険の問題、健康保険、いろいろな面で老後の不安が出てきますね。老後が不安だからお金を使わないという状況をどんどんつくっちゃっているんじゃないでしょうか。  そういう面ではもう一度、先ほどの政策の整合性、この辺についてはやはり言及して、もうちょっとしっかりした答弁をいただきたいと思います。
  105. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 過去十年間、いろいろな政権ができまして、いろいろな政策がとられたのですが、その間に整合性がなかったんじゃないかという御指摘ですが、後から思えばいろいろとそういう点もございました。例えば、九〇年代の前半に金融問題を片づければよかったのに先送りしてしまったということもございました。  ところで、今日私どものとっております政策は、一方において、景気を振興する。そのために需要を上積みしなければいけないので、今財政がかなり大きな赤字にもかかわらず、公共事業をやり、減税をやって需要を喚起しております。そして、他方におきましては、より効率的な経済をつくる。今度の御審議いただきます中小企業法案もそうでございますし、いろいろな面でそういうよりダイナミックな日本経済の再建をしていこう。  これは決して整合性のないものではございませんで、いろいろな面で、一方で景気を支えながら他方で構造改革をし、また、リストラというのは言葉が悪いかもしれませんが、産業の競争力を強めるためには、ある程度の労働力の効率的な配分を考えなきゃいけない。そのためには、一方において、新しい産業を起こす、新しい起業、業を起こす人たちを助けていく、そういう政策もとらなきゃいけない。こういうことをいろいろと考えて、可能な限り整合性のある政策をとっておるつもりでございます。
  106. 中山義活

    中山(義)委員 いや、それが今までの反省に基づいてそういうふうにやっているのならいいですよ。例えば昨今見ても、私どもは、住専の問題で六千八百億円、これはもう絶対税金を投入することは反対をしてまいりました。小池先生も同じだと思うのですが、その当時は新進党で私らもやっていましたから、国会にわざわざ激励に来ましたよ。ところが、最近はもう一兆、二兆、三兆、豆腐じゃあるまいし、だんだんふえていっちゃう。最近は日債銀と長銀だけだって予想されるのは七兆円以上でしょう。  こういう本があるんですよ。私はこれを自分のお金で買ったんですが、村上龍の、これで何が買える。この本を見ますと、いかにお金がむだ遣いされているか。それと同時に、国民が、例えば七兆円というのはどのくらいの金か理解していないんですよ。六千八百億円のときは、赤ん坊からお年寄りまで一人五千五百円ですよ。そうすると、七兆円ということは一人大体七万ぐらいですかね。そうすると、四人家族だったら二十八万円ですか。こういうお金を使っているということをもっと国民が知ったら怒りますよ。  中小企業の場合は、大体が、おやじさんが自分の土地から家から何から全部担保に入れているんですよ。つぶれちゃえばみんな身ぐるみはがれちゃう。だけれども、何で銀行だけが七兆円だとか何だとか、それも、長銀の場合は半年ぐらいおくれたためにこんなにふえちゃったとか、一年おくれたらこんなにふえちゃった。過去の、今までの経緯、今までのやってきた歴史、こういうものに反省が全然ないんですよね。同じことを繰り返している。  ですから、さっきから言っているように、また同じことを繰り返して借金ばかりふえちゃうんじゃないか、こういう心配を私は指摘しているのですが、通産大臣、ひとつその辺、下町の我々の太陽ですから、中小企業立場に立ってお話をいただきたい。
  107. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今までの歩みを振り返ってまいりまして、あのバブルのときは一体何だったんだと怒りにも似た思いの反省を私たちは持っています。  しかし、そのバブル崩壊後に金融機関が多額の不良債務を抱えてにっちもさっちも動かなくなる、言うなれば体の血液の流れがとまってしまう、そういうことになるといよいよもってだめになるということから、金融機関を再生させる、健全化させる、そういうことに全力を注いだのがさきの六十兆の枠組みでございました。再生化、健全化をさせるということによって最終的な国民の負担をできるだけ切り詰めるという体制をとったのも、そういう考えに立ってでございます。  ところが、にもかかわらず、中小企業に対して貸し渋りが非常に多かった。私は去年から自民党の総務会長を務めておりましたが、銀行協会の皆さんに何回となくおいでをいただいて、何回か激怒したことがあるのであります。我々は国民皆さんの批判に耐えながら、しかし金融健全化というのは大事だからというので頑張っているのに、なお貸し渋りが横行するということはけしからぬ、できる限りの努力をせよということで銀行協会には何度も申し入れたのでございます。  一方で、その銀行の貸し出しというものを緊急時に待っているわけにいきませんから、あわせて中小企業に対する二十兆円という保証協会の融資というものをつくり上げてまいったのであります。今までにない思い切った対応であります。それで、そのことについては、委員も御指摘のように、一息ついたという声が私たちの耳にも入ってきているわけであります。  しかし、それで事足りたというわけではありません。一層中小企業皆さんが頑張るために何をしたらいいか、そこをしっかり踏まえて対策をとっていくことが私たちのお役目だと思っています。そういう意味では、今までのさまざまな問題についての反省は反省としながら、新しい時代を築こうと必死で今頑張っている最中でございます。
  108. 中山義活

    中山(義)委員 企画庁長官、私はちょっと思うんですが、いつも、中小企業に対する貸し渋りが大変だ、中小企業が大変だ、それをうまく利用して、結局は銀行に資本注入したりなんかしている。中小企業を助けるために七兆円資本注入するんだとか、いつも中小企業はそうやって使われちゃっているんですよ。今回、中小企業のための国会であるという認識からいえば、本当に何かあったときに一番被害が多いのは中小企業なんですよ。  例えば、中小企業保護から育成、こんな生意気な言葉は使わないでくださいよ。今まで中小企業が保護されたことがありますか。農村へ行ってくださいよ、農村。私は都会の人間ですから、もし農村の皆さんが文句があるんでしたら、これは本当にそのとおりだと思うんです。ただ、私は、農業ぐらい、同じくらい恵まれたいということを言っているんで、都会から税金集めて地方へどんどん行く、農道空港ができたりどんどん使う。しかし、都会の中小企業は保護なんかされたことはありません。そういう面では保護という認識はとってもらいたい。  私どもは、中小企業はみんなけなげに生きていますよ。私もいろは会へきのう行ったら、小上がりで飯食っているんですよ、昼行くと。それで、御飯食べながら、中山さん何ですかと来るんだから。そういう、けなげに、本当に生業として、なりわいとして商売やっているのが中小企業ですよ。  だけれども、今言ったように、中小企業の人の融資が大変だから資本注入するんだ、銀行がつぶれると大変だ、貸し渋り対策だと言うんだけれども、結果的には銀行を喜ばせているような形のものが随分多いですよ。その辺、そういう感覚を持ちませんか。
  109. 深谷隆司

    深谷国務大臣 堺屋長官からの御答弁もありますが、前段の部分について私から申し上げたいと思います。  本当に、あなたと同じような地域に住んでいて、先ほど申したように、中小企業皆さんがどんなに御苦労なさっているか、痛いくらいに私どもはわかっているのであります。ですから、保護から育成とか、高飛車な形でやろうと全く考えておりません。むしろ、中小企業の皆様方が一生懸命頑張っているその自助努力に対してどういうお手伝いができるのかというのを真剣に考えて、それがこれからの私たちの支援体制だと思っているわけでございます。  それから、もう一つだけ申し上げますと、今までは中小企業というのは基本法で画一的にとらえていました。それではきめ細かな対策はできない、こう思うわけでありまして、そういう意味では、私たち中小企業を多面的にとらえて、何がそれぞれの分野で必要かということを皆さん一緒考えていきたいと思っているのであります。
  110. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のように、中小企業を救うという名目で銀行にお金が注ぎ込まれたというような形になっているわけでありますが、経済の血液である資金を循環させる銀行がとまると、やはり中小企業も大企業も一般市民もみんな困るんです。  それで、では銀行は反省していないかという御指摘でございますが、確かにあの住専のとき、それからそのときに幾つか信用組合みたいなものがありましたが、そのころは銀行は非常に高みの見物みたいなところがありまして、みずからは血を流さなかった。ところが、今回は御存じのように銀行も吸収合併、あるいは大きな銀行が合併するとか、かなり我々も激しく市場経済を迫りまして、銀行にも反省をしていただき、また、一部にはそれで司直の手が入ったところもございます。そういう意味では、数年前の銀行対策とこの一年半の銀行対策とはかなり違ってきていると思います。そういうことが構造改革につながって、そして中小企業がよくなっていく。  私は先生と違いまして、大阪の中小企業のところに生まれ育ったのでございますけれども状況は同じだと思いますが、中小企業を十把一からげには言えません。いろいろな業種、いろいろな段階がございますけれども中小企業方々が非常に御苦労をしておられる。そういうところに、やはり銀行、金融というものは根本でございますから、これがとまるといけないということで、確かに大きなお金でございますけれども、個々の銀行ではなしに銀行システム、金融システムというものを救済するためにこれを使わせていただいているということでございます。
  111. 中山義活

    中山(義)委員 金融システムのことは私もわかりました。  しかし、先ほど言っているように、中小企業皆さんからすると、七兆円とか、それで今までの超過債務を、銀行ができないものを税金であがなってしまう、または大企業の不良債権を銀行さんが債権放棄するとか、これは結局、税金でやらなきゃならないということなんですね。さっきの話ではありませんが、景気をよくするためにいろいろやっているんだけれども、結局は、最後はそれは税金という形で国民に戻ってきてしまう、こういうことを繰り返しちゃいけないんじゃないかということを私は指摘しているわけですね。  例えば銀行金利だって、今ゼロ金利だとか言われている時代で、例えば預金者に税金をかけて、その税金で銀行に上げているようなものですよ。聞いてみたら、毎年五兆円ぐらい銀行に行っているというのは、これは十年やれば五十兆円ですよ。五十兆円だったら、さっき言ったように、国民に一人五十万円ずつ上げた方が需要は高まるし、そうなると思うのですね。それは堺屋長官も前に、減税というのはそういう効果があるという話は、私もテレビや何かで見たことがありますし、本もいろいろ読ませてもらいました。ですから、消費というものをしっかりつくるためには、やはり雇用であるとかこういうものも非常に大切なわけですね。  ですから、私たちが言いたいのは、整合性のある政策をしっかりやっていかないといつまでたっても同じ失敗を繰り返す、このように思うわけです。ですから、今の再生法案については、前の通産大臣も言っていましたけれども、やはり外国との競争に日本が強くならなきゃいかぬ。  私、こう思うのですよ。日本が貿易黒字がふえた。ふえたけれども、日本の国民は幸せになりましたか、貿易黒字がふえて。アメリカの方は貿易赤字がどんどんふえているのに何で景気がいいんですか。こんな基本的なところもしっかり国民政府理解させなきゃだめですよ。  幾ら貿易黒字をふやして鉄鋼業や何かがもうけたとしても、それは何ら国民の生活につながってこない。これは何ででしょうか。恐らく日本はアメリカの金融商品を買わされているんじゃないですか、金融商品を。ということは、日本はある意味では貿易赤字なんですよ。もっと根本の、本質をやはり政治の中で論議していかないと、私はこの国は救われないと思うのですよ。  中小企業の問題ですが、日本が救われるか救われないか、大事なときなんですね。それで、もうちょっとわかりやすく、こういう本が出たというのは国民に全部開示しろということなんですよ。どの程度借金があるかとか、銀行を救ったこの金はどこから出ているんだ、そういう面もぜひ説明をいただかないとわからない。はっきり言って、これはテレビはあれしていないかもしれませんが、やはり国民の前でもっと明らかに説明してもらわないと、国民はわかりませんよ。
  112. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この金融問題につきましては、昨年就任して以来テレビに五十回ぐらい出演いたしまして、いろいろと御理解をいただく努力をいたしました。  おっしゃるように、大変巨額のお金が金融機関に注入されている。その中には預金保険の問題もございますれば、公的資金を投入して、銀行が立ち直ったらこれがまた戻ってくるというのもございますけれども、とにかく大変なお金を注入いたしまして、金融システムのシステミックリスクを回避するために使いました。  事実、去年の秋、金融機関が傷んでいるときには中小企業方々の倒産あるいは自殺というような悲しい事件もたくさんございまして、金融の問題というのは大変な問題でした。これは仰せのように、単にお金をばらまいて金融機関を救っているだけではございませんで、金融システムの改革には非常に力を注いでおります。  また、低金利につきまして御質問がございましたけれども、低金利は、確かに預金者にとりましては収入が、金利収入が減ります。ところが、現在、卸売物価、小売物価も一%ほど下がっておりますが、卸売物価も下落している状態でございまして、いわゆる実質金利というのはかなり高い状態にあります。  そういうことをいろいろ計算いたしまして、金利が上がって、それによって個人所得がふえて、それが所得に回るのと、金利を上げることによって住宅あるいは設備投資が減少し、それがまた為替にはね返ってまいりますからドル為替が上がって、それによって企業の輸出が減るというようなことと、どっちが今重要か。  現在の物価情勢等を前提にして勘案いたしますと、やはり今はまだゼロ金利を続けざるを得ない、そういう結論になっております。
  113. 中山義活

    中山(義)委員 今もう一度あわせて答弁してもらいますが、日本が一九八〇年代に、重厚長大、こういうものをアメリカにどんどん売っていった。それで貿易黒字がどんどんふえてきた。アメリカも仕返しで、キルビー特許みたいにいわゆる知的なもので何とかやっていこうということで、むしろサービス業とか通信とかそういう部門で日本に入ってきた。しかし、それでも貿易黒字は日本はまだ多いんですね。貿易黒字、多いんですよ。  アメリカは貿易赤字がどんどんふえているのに、どうしてアメリカが景気がよくて日本は景気が悪いのか。このことをよく解明して言ってもらわないと、一生懸命産業が力をつけて貿易黒字をふやさなきゃだめだ、外国との競争に勝たなきゃいけない、グローバルスタンダードだと言っているのだけれども、何だか知らないけれども、アメリカに全部お金だけ吸い上げられてしまって、アメリカだけ景気がよくて日本は景気が悪い。これは何なんだか、我々わからないんですよ。国民にもうちょっとわかりやすく説明してもらえますか。
  114. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 貿易黒字の問題、貿易収支の問題と景気の問題というのは非常にわかりにくいところがあると思うのです。  まず、景気がいいというのは需要が旺盛だということなんですね。アメリカの場合、消費需要が非常に旺盛でございまして、大体、消費性向が一〇〇%、つまり稼いだだけ全部使ってしまう。そうしますと、あとの住宅とか設備投資の分は赤字、全体として足りなくなりますから、その分を輸入で賄っている、こういう形になっているのです。  こんなことをしていたら、いずれアメリカは倒産するのじゃないかと十数年来言い続けてきた、双子の赤字がアメリカを倒産させるのじゃないかと言い続けてきたのですが、国際基軸通貨を持っているアメリカの信用力、そしてまたアメリカという国が成長し安全な国だというようなこともありまして、外国からのお金がどんどん流れ込む。それで株が上がるようなことがございましてアメリカ経済は持続しているわけです。  日本から見ますと、日本は一生懸命働いてアメリカに輸出をして、それでまたアメリカにお金を貸しているということになりますが、やはりアメリカが買ってくれているからいいという需要の面もあるわけです。  一方、日本は個人貯蓄が非常に高くて、消費性向が比較的低いのです。家計調査で見ますと大体七〇%ぐらいなんですね。アメリカは一〇〇%近いわけですが、日本は七〇%ぐらい。それで貯金がどんどんたまる。貯金がたまるということは物が売れないわけですから、物余りになります。これが輸出に回って貿易黒字になっている。日本は決してアメリカの債券を買わされているのじゃなしに、結局、お金が余るから一番安全なドルを買っておこう、ドル債券あるいはアメリカのトレジャリーノートを買っておこうという形になっておるわけです。  だから私、日本人がもう少し楽天的になって生活を楽しんでいただける、そういう社会をつくる、これは福祉の問題もございましょうし、町づくりの問題もございましょうし、あるいは観光、娯楽の問題もございましょうし、いろいろな点で、家事のアウトソーシングするような中小企業がどんどんふえまして、生活を楽しめるような社会をつくらなければいけない、これも構造改革の重要な一つだと考えております。
  115. 中山義活

    中山(義)委員 それがいわゆる堺屋長官の言う新規性であるとか期待性であるとか、お年寄りが安心して歩ける町。これは大切なことですよ、つまり政府がどれだけ信頼を得ているか、それによって国民はお金を使うと思うんですね。  だから、僕はいつも冗談で言うんですが、きんさん、ぎんさんが預貯金している、なぜだといったら、老後が心配なんですって。そういうことですよ。つまり、老後が不安だったら金は使えないんだ。だから、そういうような安心感をまず政治がつくらなければいけないということが大事なんですが、私どもはちょっとそういう点で、いつも何か中小企業にしわ寄せが、どうも弱いところへばかり行っちゃう。だから、今回の中小企業対策というのは、ある意味では温かみのある、新規性のある、期待性のあるものでなければいけないというふうに思うんですね。  ところが、私は一つ、十兆円を積み増しした、これには大変疑問がありまして、先ほど根拠を島津議員も聞かれました。しかし、私はこの根拠と同時に、借りる側が、先ほど言ったように、銀行は十兆円も何兆円も資本注入されているんだからもうちょっと我々に貸してもいいじゃないかという気持ちがどこかにあると思うんですね。しかも今度十兆円というお金が積み増しされたのですから。  今までは五千万円という枠で一応借りていたわけですよ。ところが、私のところに話が来ているのは、返済の猶予を少ししてくれないか、いわゆるリスケですね、リスケしてくれとか、または枠を五千万円を八千万にしてくれとか。だけれども実際、銀行さんはしたたかですから、大体貸すのは月商の三倍ぐらい、しかも五千万貸す場合も、それは月商の三倍の範囲で貸しているんですね。  こういうようなことを考えると、十兆円という根拠は、今までどおりやったら出るわけないんですよ。それはよほど、今言った五千万を八千万の枠に、そういう個人個人の枠を広げてしまうとか、個人個人の会社を広げてしまうとか、今言った返済スケジュールを変えるとか、こういうところまでいけば別ですよ。そこまで気持ちがありますか、通産大臣
  116. 深谷隆司

    深谷国務大臣 セーフティーネットとして一体どのぐらいのお金を用意したらいいかということについては、いろいろな議論があろうと思います。  少なくとも、経験的な事実からいけば、去年の十月一日から二十兆円の貸し出しを始めました。現在十七兆九千億ぐらい出ているのではないでしょうか。残り二兆円というところです。これは来年の三月いっぱいまでの貸し出しの枠でございまして、これから、十一月から十二月、一月にかけての資金需要が中小企業でどの程度のものか、これは推移を見なければわかりませんが、この時期は通常よりも上がってくることは間違いがないだろう、こう思います。  そして同時に、来年もやってくれという声も非常に多うございました。しかし、来年もまた二十兆積むということがいいか悪いかと判断した場合に、私は、これからの三月いっぱいまでの出方と来年の貸し出しの枠というものをむしろ一緒考えて、十五カ月予算的な判断をした方が最も効果があるのではないか、こう考えまして、十兆円という額は、今回の二十兆の足らざる部分と来年の延長の分という形で一年延長ということにしたわけでございます。  私は、この額が実際にはどの程度のものになるかというのは資金需要の状態を考えなければならないと思っていますが、先ほどあなたが言われたように、まだ景況感というのは中小企業に非常に悪いという現実を考えてまいりますと、資金需要というのはこれから一層必要になるのではないか、こう考えます。同時に、このような貸し出しの性格から考えますと、ある程度余裕を持ってもおかしくないのではないか。そういう意味で、一年延長の十兆円、十五カ月的予算の発想の中からつくり上げたものでございます。
  117. 中山義活

    中山(義)委員 今、十兆円の根拠についてかなり突っ込んだ話になりましたが、ということはあれですか、個人個人の、または個人個人の会社、それぞれの会社の保証枠は広げるということですか。それとも、何か違った判定の仕方を考えているんでしょうか、審査の仕方とか。
  118. 深谷隆司

    深谷国務大臣 来年の三月いっぱいまでは、従来どおりの貸し渋りを中心とした貸し出しでまいります。  ただ、あなたも若干触れましたけれども、ばらつきという批判等もございます。そういう懸念を払拭するためには、貸し渋り対策と同時に、借りる側が建設的なプランをお持ち寄りいただくということがとても大事だと思います。つまり、ただ延命策ではなくて、そこから新しい前進が始まるということを期待して、そのような形を加えたいと思っております。
  119. 中山義活

    中山(義)委員 いや、これが簡単そうで難しいのですよ。だれが一生懸命だというのを判定するのですか。  銀行さんは、長い間ずっといろいろ、相手がどういう会社であるかというのを調査してきたのですね。銀行はある程度プロですよ。今言った、じゃ、一生懸命やる気のある、それで将来性があるというのは、だれが判定するのですか。それがわかっていれば、日本の銀行というのは失敗していないのです。日本の銀行はわからないのです、それが。  将来性があるか、例えばベンチャーでも、これが本当に企業として当たるか当たらないか、この判定ができるかできないか、だれがやるのか、この辺が一番問題なんですけれども、それはだれが責任とるのですか。
  120. 深谷隆司

    深谷国務大臣 そこを判断することがどこが適切かということについては議論があろうと思いますが、金融機関と保証協会がその担当に当たります。
  121. 中山義活

    中山(義)委員 というのは、今までと一緒だということなんです。  東京都が一時、直接金融というのをやったのです。直接東京都が貸す。ところが、やはり銀行に比べれば調査能力がないのですよ。貸しちゃったものはいまだに焦げついている。そこに二十人も職員が張りついて、いまだに回収しようとしている。これは大変な浪費ですよ。だから私が言いたいのは、新しく十兆円をやった、だけれども、新しい方法で貸すとはいっても、だれがそれを判定するのか。だれがそのやる気がある企業だとわかるのか。そうすると、企業の将来性というのはだれが判断するのか。ここは大切なところだと思うのですよ。  これがもしこうだという方法がないと、私はえらいことになると思いますよ。そう思いませんか。だって、だんだんいろいろなことを認めていってしまって、リスケだ何だかんだ、もうモラルハザードというか、いろいろな部分がそういうもので出てくると思うのですね。今は選挙の前だからこうやったけれども選挙が終わったら急に、いややはり今までどおりで、五千万の枠は同じとか、ぱっとやってしまうんじゃ、これも大変な問題になると思いますし。  新しい方法で金を貸すということは、どういうことなのか。
  122. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私ども考えている範疇の中に、選挙というものは存在しておりません。選挙にプラスになるから保証枠を広げるなどということは全く考えていないことでありまして、それは私たち思いも及ばぬところであります。マスコミ的にはおもしろい話題かもしれませんが、そんなあいまいな形で中小企業をいささかも考えておりません。選挙が終わったら方針を変えるなんということは、あり得ないことであります。  ただ、この二十兆と一年延長の十兆円という貸し出しは、今日のような貸し渋りが横行しているという、あるいは経済の状態が非常に悪いという緊急避難的な対応であるということでございまして、これをさらに二年、三年と続けるという意思を持っているわけではありません。
  123. 中山義活

    中山(義)委員 ですから、中小企業を育てていこうという気持ちがあるならば、緊急避難のものはもう終わったのですよ。  新たに、やる気のある企業、新規性、期待性、こういうことを言うのであれば、じゃ、その企業はどういう企業だ、本当に将来性がある企業なのか、または力を持っている企業なのか、またはパテントを持っているとかいろいろなのがあると思うのですね。そういうことを総合的に判断をしていくのであれば、三月以降この十兆円というのは大きく生きると思います。しかし、そういう能力が行政側にあるのか、銀行以上のものがあるのか、この辺が私は心配だから、幾ら十兆円とはいってもこれは結局うまく使えないのじゃないか。うまく使うんだったら、さっき言ったように、じゃ、保証枠を広げましょうとかそういう形になってしまうんじゃないですか。  私が心配しているのは、先ほど島津委員のあれに、焦げつき率が〇・三八だと。〇・三八というのは、要するに二十兆円貸し出した金に対するパーセンテージでしょう。だけれども、真水は違うのですよ。例えば東京都がやった、私が都会議員のときに、大体十億入れればその二十倍ぐらい貸し出してくれますよね、銀行が。それについて、そのパーセンテージは小さいけれども、真水に対してのパーセンテージ、これは〇・三八といったって、本当は相当大きいのじゃないですか、実際は。そうじゃないですか。  私、わからないのですけれども、その辺ちょっと明快に答えてくれませんかね。〇・三八というのは、要するに全体の融資枠の十七兆幾らの〇・三八だと思いますね。実際、真水のパーセンテージじゃないと思うのですよ。
  124. 深谷隆司

    深谷国務大臣 貸し出した総額についてのリスクの分でございます。
  125. 中山義活

    中山(義)委員 リスクに対してそれだけあるというんだけれども、本来からいえば、税金を使った金額からいえば、実際は相当焦げついているんですよ。やはりこれも現実だと思うんです。そのために、代位弁済も恐れないで貸し出すべきだということを私は何回も議会でも言ってきたんですね。  だから、問題は、これからこの十兆円を生かすためには、新たな貸し出す方法が、新規性とか期待性とか言っていますが、それはだれが判定をしてやっていくのかということを聞いているんです。  今までどおり銀行がやっていたらばこれ以上貸しませんよ。そうでしょう。銀行は返済能力があるかないかしか見ていないんだから。例えば、月商の三倍と言っているのは、銀行さんが見たら、月商の三倍以上貸したら返ってこない、こういう判定でやっているわけですよ。だけれども、今言った新規性、期待性、何かやりそうだ、この人は健康そうだし、体も丈夫だし、逃げるわけない、だったら貸そうとか、いろいろあるでしょうけれども、その辺はどうなんですか。新たなそういうことを考えているんですか。考えていないとしたら、十兆円なんて絶対使い切りませんよ。
  126. 深谷隆司

    深谷国務大臣 お言葉を返して悪いんですけれども、今、去年の十月一日からお貸ししまして、翌月から返済している方々は九九%ぐらいです。決して今の段階で焦げついてどうにもならぬという状態じゃありません。私の知っている限りで申し上げると、事故率は多分〇・三二ぐらいだと思います。中小企業方々は、そのお金を借りて、努力しながら一生懸命返しておられる。私はそこに中小企業の営々たる努力を見たいと思うんです。それを信頼したいと思うんです。  ただ、新しく十兆円、それは全額ではありません、三月いっぱいにかかったものを引いたものが来年に続くわけですけれども、その枠には、建設的なプランというものもお出しいただいた上で判断をさせていただこうということでございます。  金融機関とか信用保証協会の判断は無理だ、例えばその力はないという考え方については、これは意見の分かれるところでございます。
  127. 中山義活

    中山(義)委員 今いみじくも大臣が言ったように、次の月から返しているのが九九・何%。銀行はしっかりしているんですよ。取れるところしか貸さないんです。それが銀行なんですよ。幾ら税金をつぎ込んだって、銀行はそういうところなんです。  だから、我々が言っているのは、やはり新しい基準で貸す手だてをつくっていかなきゃいけない。これは一つはエンゼル税制の問題もありますよ。私は、何も代位弁済を恐れないで貸せ貸せとか、そう言っているんじゃないんですよ。新しい基準がないとこれ以上は伸びないんじゃないかと思っているんです。  現実に、私、うちの地域を調べました、ある信用金庫の。そうしたら、ほとんどがもう保証枠を使っているんですね。これは、通産大臣よくわかっているとおり、朝日信用金庫さんとか、地元で仲のいい銀行にちゃんと聞いてみても、ほとんど保証枠を使っていると言うんですよ。  だから、新たな貸出基準、そういうものをやはり考えていかないと、なかなか十兆円というのはうまく回っていかないんじゃないか。せっかく国が温かい気持ち中小企業のためにやっても、なかなか厳しいんじゃないかということを言っているんです。銀行が貸す場合は、次の月から返済しなさいと、取りっぱぐれないようにやりますよ。それが銀行ですよ。だから、我々もうちょっと一歩先へ行って、本当に将来性のある人にお金を貸すシステムをこれから構築してください。これは要望です。  これは、先ほど中小企業の団体からもいろいろ言われてきたんです。それか、五千万円の枠を八千万円に変えますかとか、こういうふうに聞かれるんですよ。それは無理ですよ、そういうことをしちゃったらモラルハザードは大きくなっちゃう、我々はこういうことも言っているんです。ですから、無責任なことを言っているんじゃない。だけれども皆さんが本当にやる気のあるところにお金が行くようにというシステムを構築してください、こういうお願いをしているんです。  それから、中小企業の問題というのはほとんど都市問題なんです。都心の人たちは、固定資産税が上がっていく、売り上げが伸びなくたって固定資産税はずっと上がってきた、だから追い出されちゃうわけですよ。相続税もそうです。ここは本当に通産大臣にお願いして、通産大臣のその迫力で、何としても固定資産税の改定、もっと本当に地元の人が納得するような税法に変えていく。相続税もそうです。  私はさっきから言っているように、中小企業の人に言わせれば、おれたちは保護なんかされたことないと堂々と言っていますよ、みんな一生懸命生きてきたんだと。あのいろは会の商店街の人でも、前にホームレスが寝たりなんかしているんですよ、本当に商売大変だと思う。それでも頑張ってみんなやっているわけですね。だから、そういう人たちのためにも、ひとつ新たな方法を考えていただきたい。  また、もう一つは今言った、中小企業の問題というのはあわせて都市問題だ。過密の中にいて、または空気の悪いところにいて、いろいろな問題があるんですよ。だから、我々が言っているのは、首都機能移転なんか絶対に反対なんですけれども、本当にこういう我々の首都にお金を投げ込んだ方が絶対に経済波及効果があるんですよ。人がいないところよりも、人がいるところにもっといろいろな予算を使ってもらいたい。  ですから、そういう面では中小企業対策というのはいろいろな意味があると思うんですが、もっと効率よく中小企業にお金を持ってきてもらいたい。それは必ず経済波及効果があると思います。都会の中小企業が大変苦労しているという現実をもう一度よく考えてもらいたい。  堺屋長官は首都機能移転に賛成だと思うのですが、ちょっとこの辺、どういう感じをお持ちか。  やはり、首都とか東京の環状線とか、環八なんかもまだ全然できてない。みんな分断されちゃっていますよ、環状線なんか。本当はこれができれば、今東京都内では時速十八キロでしか車は走れないんですよ、これが二十五キロ、三十キロになればどんどん経済波及効果が上がりますよ。それだけだって十兆円ぐらいあると言われているんですから。そういう面での、どこに公共事業をやったら経済波及効果があるか。それが新規性、期待性じゃないでしょうか、長官
  128. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 首都機能移転の問題をちょっと本委員会で議論するのはいかがかと思いますので、今の公共事業の点について申し上げますと、今回、経済新生対策では、本当に都会のネックになっているところを、時限を切って、目標年次を定めて解消してもらいたい、大都会の方々は東京でも大阪でもそういう主張をされますが、実際問題、土地買収が難しいとか環境問題があるとかでなかなか進まないところがあるんですね。  だから、いろいろなところを手をつけたままで置いておくのではなしに、全国で千カ所ぐらいのところを集中的にやっていただいて、とにかく二年ぐらいの間にネックを解消するような、目標年次を明確にしてやってもらいたいということで、今建設省等にもお願いしているところでございます。
  129. 中山義活

    中山(義)委員 企画庁長官が大分飛び回って新規の新しい事業をいろいろ、要するに特に都市の中で老人がどうやって歩けるかとかそういう政策もやっているわけですが、人がいるところに何かする、これがやはり一番経済波及効果があると思うんですね。  そういう面で、新規とか新しいもの、期待性、こういうものに関しては、やはり、都市の中にいろいろな人たちがいて、中小企業がみんな苦しんでいて、しかも過密の中に人が住んでいる、これを考えていただきまして、どこに投げたら一番効果があるか、波及性があるか、これをしっかり考えていただきたいと思うんです。  それともう一つは、小売とか製造業からサービス業にかえていくということも、これは仕事の転換だと思うんですね。  介護保険の問題。今回、いろいろ保険制度がおかしくなって、税金でやるとか、介護保険制度じゃなくて介護制度にするなんて言っているような人もいますが、やはりこういうことがありますと、業者の人たちは、新しいサービス業、要するに人を派遣するこの新しいサービス業に二の足を踏んじゃっているんですよ。ですから、介護保険がこうやってつまずいたことは、製造業や小売からいわゆるサービス業に転換をしていくこの大切な時期を私は失ったと思いますよ。  そういう面では、介護保険の問題について、通産大臣、それと長官、一言ずつ。新規事業ですよ、これは本当の。
  130. 細田博之

    細田政務次官 介護保険の問題につきましては、私は、政府の中で大分与党と協議してこのほど結論めいたものを出しておるわけでございますが、地方と都会で随分違うと思います。それは、都会においては、中山先生がおっしゃったように、例えば家庭介護を余りふやすと、本来デイサービスその他いろいろな雇用、企業のチャンスがふえたはずのところ、それが余り伸びないんじゃないか、何で各家庭にお金を支払うのかというような批判もあるかと私は思います。  私は、四月の実施は、そのまま実施されるわけですから、その点は支障はないんだと思いますが、そういった点があると思いますので一言申しますと、私の選挙区は日本一高齢化して、高齢化率二三%の島根県でありまして、余り自慢にもならないのでございますが、ただ、一番介護の問題については詳しく、深く取り組んでおるのでございます。  例えば、我が島根県は、在宅の中の要介護高齢者が二万五千人おりまして、全員調べました。私どもが昨年度予算で全員調べたところ、施設を利用することができない人が一万三千人もおりまして、それがほとんど家庭介護配偶者が四二%、子供が二割、子供の配偶者、お嫁さんが三二%というふうに家庭介護をやっておって、その人たちがホームヘルパーの三級の研修を受け、六千名もの方が研修を受けているということで、地域を挙げて高齢者を守っていこう、そのためには家庭介護というのは大事である、したがって、その労に報いなきゃならない。  ところが、大都会で行われている議論はそれに対して反面的でありまして、悪いものが出るんじゃないか、お嫁さんいじめがあるんじゃないか、あるいは年寄りいじめがあるんじゃないかといういわば性悪説に立ちながら、家庭介護を位置づけることに反対の方がいらっしゃいますが、地方においては、むしろ性善説に立たざるを得ない実態にありますし、それだけの人を施設に入れることはできにくいということがありますので、今回のような枠組みが必要なのでございます。  したがって、大都会の場合、地方の場合とそれぞれの立場が違いますし、今まで施設に入っていても本当は出なきゃならない人は出なくていいというふうにしますし、今までデイサービス、在宅サービスを受けている人でも、本当は要らない人もいますけれども、それも何らかの措置も必要でしょう。そういったあらゆる措置を実態に応じて考えていかなきゃいけないということがございます。  そういう大都会で介護サービスを新規で始めようというような人については、いろいろな融資制度、新規開業者経営改善貸し付けとか経営技術診断助言事業とかいろいろありますので、それは大いに使っていただく。しかし、これは途中経過的なものでございますから、地方と都市がバランスのとれた政策をとっていくべきであると思っておりますので、念のため申し上げます。
  131. 中山義活

    中山(義)委員 大変しっかり御理解をされているわけですが、本当に、介護というのは、やはりこれはサービスを保険で買う制度だったと思うんですよ。サービスを保険で買うわけですね。買うというか、買う権利があると。ですから、単価が幾らというのが出てきたわけですね。そして、そういう人たちは、派遣の、人材を派遣するということで一生懸命そうやって勉強してきたんですけれども、ここへ来てそういう目標が崩れてきますと、今商売をやっている人は、やはり投資をしてやっているわけですから、一カ月でも二カ月でもはっきりしなかったら前へ進めませんよ。  だから、皆さん考えたことを政策担当者が出てきて急にがたがた変えるということは、やはり日本の経済を根幹から揺るがすという可能性があるんですよ。何兆円の産業ですから、介護というのは。そういう面で、私どもは、ちゃんとしたサービスを受けるためにも、介護保険は絶対に当初の方法でやってもらいたい、変えるのは困るよ、こういうことを指摘しているんです。  それから、先ほど来、リストラそのものが、ここをやめてもこっちに移すんだという話がありましたが、一つちょっと、石原慎太郎さんがこういうふうに言いましたね。職員を一割カットするならば、給料を一割カットした方が、みんなで稼いでいく、みんなで力を合わせてやっていく。つまり、東京都の場合二十万人以上いますから、一割といったら二万人ですね。それよりも一割給料をカットした方がいいだろう、こういう話をされたんですが、それぞれ通産大臣長官に、賃金カットか、それとも首切りか、お二人にちょっと易しさを聞こうと思って。答弁をしてください。
  132. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいまの御質問に対しては、正直申し上げますと、なかなか答えようがないんであります。といいますのは、企業の雇用のあり方というのは、これは労使関係で決めるべきことでありまして、私どもが一概に答えるというのは適切でないと考えるからでございます。  ただし、事業の再構築に当たりましては、個々の企業は労働者の雇用の安定に最大限配慮する、それはきちんとやってくださいよということを経済界に向けて私は申し続けていきたいと思っています。
  133. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今の委員の問題提起でございますが、日本全体の経済として考えますと、低賃金でみんなに分け合っておるのと、新しい職場をつくってできるだけ効率的な配置をするのと、後の方がより効率のいいところに人が配置されてそこから新しい産業が出てくる、中長期的に見ればそれの方がいいと思います。  ただ、短期的に見ると、今首になった人をどうするかという問題がございますから、一方で十分な失業保険等の安全ネット、それから情報の公開、さらには新しい能力をつける職業訓練、そういったものをつけまして、新しい産業に対応できるような人にしていく、こういう政策が組み合わされなければいけないと思っております。  その意味で、今労働省の方でもいろいろと御検討いただいて新政策を出しておりますので、十分対応できるようにしたいと思っております。
  134. 中山義活

    中山(義)委員 最後にちょっとお礼を申し上げたいので。  どうもありがとうございました。それと同時に、一九九〇年代に入りまして、さっきから言ったように、ミクロの問題とマクロの問題、いつも同じことを繰り返して、構造改革とそれからマクロ的な経済をどんどん大きくしていく、パイを広げる、だけれどもまたすぐ増税をしていくというような繰り返し、これは本当に反省をしていただいて、今までの十年を振り返って、新しい、期待性のある、新規性のある事業を持ち込んで、必ずいい社会をつくっていただきたい。要望でございます。  終わります。
  135. 中山成彬

  136. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党濱田健一でございます。  わずか三十分という質疑の時間でございますので、深谷大臣の方に、中小企業政策の現状と東海村の臨界事故についての今後の対応等、基本的なことについて御質問させていただきたいというふうに思います。  この一般質疑が終わった後に中小企業基本法の集中的な審議が行われるというふうに理解をしているところでございますが、十一月五日の本会議質疑の中で大臣がこういうふうに答えておられます。中小企業の生産性を伸ばすことがこれまでの格差是正であり、これまでの政策は一定の成果を上げた、こういうふうに言われたと思います。  私たちは、この格差是正という、これまでの大企業と中小企業の間の溝を埋めていくという御努力をされたことは当然歴史が物語っているというふうに思っているわけですけれども、一定の成果を上げたという形で強く述べておられるその根拠というものが果たして明らかになっているかということについて、大臣の御見解を聞かせていただきたいというふうに思うのでございます。
  137. 深谷隆司

    深谷国務大臣 お答えいたしますが、私が申しておりますのは、指標としての大企業と中小企業との格差というのは私はまだあると思っているのです。数字で見ましても、賃金格差にしても生産性の格差にしても厳然とございますから、そういう意味でこれを否定しているわけではございません。  しかし、現行基本法の中小企業政策の理念としての格差の是正、これは昭和三十年代に経済の二重構造論というのがありまして、中小企業と大企業というのを比べて、大企業は大きいもの、中小企業は小さいもの、大企業は近代的なもの、こちらは非近代的なもの、こういうような区別というのがあったわけでございまして、そういうようなものが基本法の基準にそのまま残されて、私は同義語だと思っていますから、こういうことをなくしていこうというふうに思っているわけであります。  そして、いろいろな角度から、多様で活力のある中小企業にきめ細かなお手伝いをしていく、あるいは中小企業が新しい事業を起こそうとする場合には積極的なお手伝いをしていく、さらに、小規模の中小企業皆さんでいまだ御苦労なさっているところに対しては従来以上に配慮を持って相談相手になっていく、そういうことで、中小企業全体が、活力のある、つまり日本の経済の担い手になってもらえるような、そういう状態に持っていきたいと考えているわけなんです。
  138. 濱田健一

    濱田(健)委員 今の大臣の御答弁からいいまして、やはり生産性そのものもまだ格差というものは現実的には残っているし、それ以外の格差も、そして中小企業という規模の大きさ、働いている人の状況等々含めて、大企業に比べての不利な面というものはまだまだ残っているというふうに御答弁いただいたと思います。例えば設備投資などの回復も大企業に比べてまだ鈍い、雇用の過剰感もあるというような御答弁をされておられます。  そういう面でいって、やはり中小企業への対策というものが、今回の基本法の改正を含めて、大きく日本の産業構造の基盤をなす中小企業対策について、これまで以上の格差是正をしていかなくてはならないのだということの大臣の御見解だろうというふうに理解してよろしいでしょうか。
  139. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大企業と比べた場合の、例えば賃金格差であるとかあるいは生産性その他について、数字の上でも格差はあらわれております。  しかし、現在の基本法にありますように、それはただ非近代的なものが中小企業だから大きくすればいいのだといったようなそんな形ではなしに、むしろ中小企業の持てる力をどのようにこの経済社会で生かしていただくかということに、そこに視点を置こうという考え方でございます。
  140. 濱田健一

    濱田(健)委員 そういう面で、一つだけポイントを絞ってその格差という問題を申し上げてみますと、不公正な取引が、格差の広がりといいますか、是正を妨げていることの構造化をしているというふうに考えられる点が私はあると思うわけでございます。  例えば今回の日産の問題ですけれども、この日産のリストラ計画は非常に象徴的なものだと私は思います。新聞、テレビ等いろいろな情報を総合的に集約してみますと、下請業者に対してまず二〇%のコストダウンを要求されているようでございまして、その上で一方的に、千百六十五社ある下請を六百社程度にするというふうに、下請を半分ぐらいにしていかれるというふうな宣言めいたものを言われているようでございます。  この状況を見たときに、現在の不況下の中では下請いじめが激化して、これに苦しむ下請業者はどんどんふえているというふうに私は思います。中小企業の厳しさというものがここに集中をしているというふうに思うわけでございます。親会社が、下請業者の生産条件や取引条件、こういうものまで一方的に決めている状況、これがまさしく中小企業の抱えている不利な点、マイナスな点というふうに考えるわけでございまして、こういう不公正な取引を大企業が中小企業に押しつけていることこそが、まだまだ残っている格差の構造というものを助長しているというふうに私は思います。  大臣が、基本法の新たな一施策として、取引の適正化ということも大きく取り上げていかれようとしておられますが、このことについて、大臣の御見解と御決意というものをお聞かせいただきたいと思います。
  141. 深谷隆司

    深谷国務大臣 濱田委員のおっしゃるとおりで、中小企業が公正で適切な取引環境のもとで健全な発展が遂げられるようにというのは絶対に必要なことでございます。  今までも、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用ということを私たちも強く言ってまいりまして、トラブルが起こった場合の苦情の処理の対策についてはかなりの整備もしてきたつもりでございます。また、取引に関するトラブルの監視とか情報収集については、商工会とか商工会議所からもその状況を吸い上げるような、そんな努力もいたしてまいっております。  まだ十分ではありません。したがって、公平な、適切なルールのもとで中小企業が生きられるような取引環境をつくるために、我が省としては全力を挙げなければならないと思っております。
  142. 濱田健一

    濱田(健)委員 そういう中身を含めて、私は、きょうの委員会の中でも既にいろいろなお話が出ているとは思うのですが、中小企業が生き延びていくといいますか、今の会社を動かしていく資金というものが枯渇をしているという状況、これはさまざまな形で政府も御努力をいただいているということは、おととしの十一月くらいから後ずっと二年くらい、経過として存じ上げておりますけれども、一つ、やはり商工ローンの問題というのは、特徴的に、中小企業に対する社会的な問題としてクローズアップしなければならないというふうに思うわけでございます。  私は何を申し上げたいかというと、商工ローンというものを利用せざるを得ない中小企業者は、例えば商工中金や国民公庫といったものの融資を断られてしまった人々だと私は思うのです。それは一つ一つの企業ですので、企業の責任者が自分の企業をどういうふうに回していくのかという点で、個人に対する問題点というものも内在をしているとは思うのですが、現在のこの不況下というものは構造的な不況でございまして、ある一部の会社経営に対する不備な点を指摘するよりは、全体的な面で国が支えるという方向性を、これまでも出しておられますが、これからも進めていかなければならないというふうに思うわけでございます。  現に、地元に帰りますと、現在非常に苦しんでおられる中小企業皆さん方が、政府系金融機関を使いにくい、まだまだうまく資金繰りをするために多角的に使っていけないという現状を嘆いておられる。このことは、現実にここにお集いの委員皆さん方も御地元でそういうふうに聞かれておられるのではないかと思っているわけでございます。商工ローンの問題が大きく命の問題にまで発展して、社会的問題化されているわけですが、このための法的規制が行われておりません。そういう中で、中小企業経営者は、どういうふうにして資金繰りをやっていくかという究極の、命をつないでいくために日夜四苦八苦しているというこの現状。  深谷大臣、地元で、絶えずおっしゃるように、中小企業皆さん方の先頭を切って頑張っておられるというふうに自負をしておられるわけですので、この点を、新たに大臣御就任に当たって、本会議の御答弁でもお聞きしましたけれども中小企業基本法等の改正というこの方向により踏み出される中で、具体的にどんなふうにしてこのまだまだ救いにくい皆さん方を救っていくというふうに決意されて今御努力いただいておるのか。その内容といいますか御見解といいますか、その御努力状況をお聞かせいただければ幸いでございます。
  143. 深谷隆司

    深谷国務大臣 商工ローンで借りて、そこから起こってくるトラブルが刑法上の問題にまで広がっているということは、まことに遺憾なことであります。恐らくいろいろな借り手がおられましょうけれども、その中には、まだまだ政府系金融機関で借りなければならないのに貸してもらう機会がないという人もいるかもしれません。  私たちは、商工ローンの実態をきちっと調査すると同時に、司法で処理すべきものは刑法でも厳格に処理していくような形を進めますと同時に、やはりそこに借りに行かなければならない中小企業が多いということを頭に入れながら、使い勝手のいい政府系の金融というもののあり方を確立していかなければならない、そのように思っています。  今、濱田議員お話の中に、いわば使い勝手が悪いではないかといったような御指摘がありました。例えば中小企業近代化資金にいたしましても、従来は、中小企業全般で使えるようにして、業種を限定するというやり方でありました。これは使い勝手が悪いなと思いまして、これからは、小規模企業に限る、そして業種の限定は行わない、そしてそれに対する枠は一千億ぐらいを考えようではないか。さきに神戸で私が記者会見で発表いたしたのも、使い勝手のいい融資の方途というものの一つとしてお示ししたわけでございます。  あわせて、小規模の方々に対しては、これからも一層頑張るんですよというメッセージを申し上げたような次第であります。さらに、その場合に、担保がない場合はどうするんだという御意見もございますから、それならば、国が買い上げる、借り上げるなどして、リースでお貸しをする、そんな手だてもないものか。  いろいろな工夫をこれからして、先生御指摘のような状況を打破して、中小企業が前進できるような状況をつくっていきたいと思っております。
  144. 濱田健一

    濱田(健)委員 前国会の産業再生法を含めて、現在の厳しい状況の中で中小企業により光を当てようという御努力、私たちも精神はよくわかったのですけれども、実際にそれが使われるのは、大企業、中堅企業というところがどんどんその中に入ってきているという現象等もあるんですよね。  ですから、今回の、後ほど集中的に論議をされる中小企業基本法の改正案も、資本金が例えば一億から三億に、ふえるところまで広げようといったときに、中小企業対策と称しながら、本当は中堅から大企業が救われる道をどんどん開くのではないかというような、ちょっと斜めから見るような論議もあるわけでございますけれども、今大臣がおっしゃったような観点での、本当に救われる道を確実につくっていくということがこの国会の中で集中的に論議をされなければならないというふうに思っているところでございます。  新たな基本法の改正案がベンチャー支援というところにもまた重きを置いておられるわけでございまして、その中で、取引の適正化というようなものなどについても、具体的にどう取り組むのかというのはなかなか私には読み切れないところが現時点でございまして、やはりこれまでの施策で解決できなかった課題がまだまだ山積しているというふうに言わざるを得ないと思っております。  下請や中小企業への施策、大臣が従来どおり実施していくというふうにおっしゃっておりました。このことは、従来どおりやっていくことによってその効果が積み増しされて、中小企業、下請業者等々が体力の回復に向かうというふうなニュアンスで話をしてくださっておられると思うのですが、なかなか体力の回復ができていない中小企業にとっては、本当なのかなという不安が増幅していくのではないかという気持ちもございます。  これまでの政策を継続的に実施をしていくということの、今回の基本法とのジョイントしたプラスアルファ効果といいますか、その辺の展望をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  145. 深谷隆司

    深谷国務大臣 いずれにしましても、中小企業全体が経済の担い手になっていくということのために何をしたらよいか。その場合に、従来の考え方の画一的な物の判断ではとても無理である。現在の環境その他を見ると、多面的な中小企業考えていくべきだ。  例えば製造業でいうと、一億円以下を三億円以下にした云々というのがございますが、これで中小企業の枠に入るのは約一万六千社ではないかと思います。ここの中堅企業というのは、やはり活力としては非常に大きなものがあると思いますから、中小企業の枠に入れることによって、政府系金融機関からの資金融資を行う、一方で民間の金融機関との融資の関係でさまざまな交渉ができるということなどを含めて、プラスになっていくだろう。  それから、市場に上場させたいという中小企業に対して、これができるような方向に持っていくということもまた一つ考えていかなければなるまい。  さらに、アメリカと違って創業率が非常に低くて廃業率が高いというこの昭和六十一年以降の動きに対して、経済を活性化するためにはやはり創業率を高めていかなければならないだろう。そのときに、新しいベンチャー企業が起きてくる、起きてくる場合の新しいベンチャー企業を考える、あるいは小回りのきく技術を持っている、それは中小企業ではないか、私はこのようにとらえて、そこはそのような形での支援を行っていく。  さらに、先ほどの使い勝手の問題で申し上げたように、小規模に対しては、例えば設備投資一つにしても、使い勝手がいいような方向を示していく。その上、全国に三百の支援センターを設けて、そこに行けば、例えば税制だ、あるいは制度だ、あるいは会計だ、コンピューターだ、何でも、どういう形にしたら答えが出ますということの御指導を申し上げていく。つまり、小規模企業には足らざるところがたくさんありますから、それを埋めていく作業もやっていこうではないか。  こんなふうに多面的に考えていくことによって、中小企業経済の活力の源泉になる、それは雇用創出という意味でも効果がある、そんなふうに思っているわけであります。
  146. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間がございませんので、東海村の臨界事故の関係について二点、通商産業大臣としてのお考えといいますか、御見解を聞かせていただきたいと思います。  今回の事故については、国民全体が、非常に残念なことであって、事故で重症となって治療中の従業員の皆さん方の御健康の回復と、被曝された皆さん方が一日も早く心も体も回復されることを念じているわけでございます。  私たちは、以前から、原子力を使う限りこのような事故が避けられないということを強く主張してきました。原子力からの撤退というものも訴えてまいりました。その意味からいって、私たちの心配が現実となってきたわけでございます。  とみに巨大化している原子炉、ここで事故が起こったら、一体、想像でき得る事故なのか、想像し得ない事故なのか、どういう事態になっていくのか。単純な言葉で言うと、そら恐ろしいという気持ちでございます。チェルノブイリ、スリーマイル島、過去に世界の中で起きた大事故を見るまでもなく、この狭い日本の中でのこういう原子力エネルギーに関する事故が起きたときに、戦争その他以上に日本の国土そのものが大きな打撃を受けるということは、想像するだけで、想像じゃなくて現実的なものになる可能性というのはあるだろうというふうに私は思うわけでございます。  こういう事故は日本では絶対起きないと言われてきたことが、管理といいますか、やっていることが瑣末な問題ですから、こんなことはほかのところではやっていないというふうに言えるだろうとは思うんですが、起きると、私たちが今まで言われてきた、日本では原発事故は起きないんだといったことが、決してそうではないんだということを今回の事故が示したわけでございまして、これは簡単にほっておくことはできないというふうに思っているところでございます。  そして、原子力といいますか、原発における運転、電力をつくっていくということが続いていくと、その核のごみというのは何千年、何万年という単位で後世に残されていくということは当然のことでございまして、これらは私たちの子孫の命を守るために本当にプラスになるのかどうかということの論議も、直面するエネルギー問題だけじゃなくて、広く後世にこの問題については論議を積み重ねていかなくてはならないという立場で私は今いろいろなことを考えているわけでございます。  社会民主党としては、現在ある原発をすぐに全部取っ払えなどという無謀なことは申し上げませんけれども、原子力エネルギーからの脱皮というものを考えていかなくちゃならない、そのための予算もつくっていく今日的な必要性というものを十分考えるわけでございますが、通商産業大臣として、深谷大臣のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  147. 深谷隆司

    深谷国務大臣 東海村の事故というものが原子力エネルギーの不安定さというものを国民に感じさせ、そのことが日本のエネルギー政策に影響するという不安もございまして、まことに残念で遺憾なことだと思っています。  ただ、今日の状態の中で、例えば石炭に頼るというエネルギーはいずれ目に見えて枯渇するという状態にあります。一方では、委員指摘の新エネルギーにいたしましても、例えば太陽熱であるとか風力ということでございましょうが、国も予算措置も含めて今やっておりますけれども現状で、電力供給、エネルギー供給の全体の一・一%、二〇一〇年をもってしてもわずか三%程度しか期待ができない、コストが高いということも含めて。ということになりますと、エネルギーの供給安定を確保する、あるいは経済成長を考える、そして環境という、例えば地球温暖化問題等にかんがみてまいりますと、やはり原子力エネルギーの重要性というのは変わらないのかな、そう思わざるを得ない。  しかし、あのような事故が現実に起きたわけでありますから、これは十分な反省材料として、一体なぜそうなったのか、そのような場合に対応するにはどうしたらいいかということなど、法律改正や新たな法律をつくるということでその不安を除去していくということがとても大事なことだろうと思っています。  国民皆さんに強く申し上げたいのは、燃料加工工場と原子力発電所はその中身において全く違いがある。私はこの間福島第二原子力発電所を視察してまいりましたけれども、多重防護ということに徹底している。それでもなお油断ないように、一層その安全を確保せよとやかましく言っているのでありますが、そういう意味での原子力発電所の安全性というものについての御理解がもっともっと広く定着していかなければならない、そのように考えています。
  148. 濱田健一

    濱田(健)委員 動燃の「もんじゅ」の冷却水漏れのあの事故のときも、私たち党としても、そして政府としても、事故の後すぐあの中に多くの委員が入られたと思います。  私が行ったときには、対象となっている反対側の、同じような対になっている原子炉の横まで行かせていただきましたけれども、そのときに、当然私たちは防護服を着、帽子をかぶり、重装備で入らせてもらったのですが、事務員の女性の方はスリッパ姿でエプロンをかけたままその辺をうろうろ歩いているという現場を見た。あの光景が、いつか同じようなといいますか、原子力の発電所と燃料をつくる場所は違いますけれども、いつかこういうことが日ごろの惰性の中で起きるのではないかということを心配していたわけですが、現実的に起こりました。  やはり大臣は今、新エネルギーをつくっていくのになかなか時間がかかるし、そのためには核エネルギーというものを安全性を高めながら維持しなければならないというふうにおっしゃいましたが、私としては、予算面から見て、例えば太陽光発電にしろ風力にしろ、そういうものに国がもっと金をかけるという状況をより進めていけば、コストの問題とか設備の問題等についてはもっともっと前進をさせることができる、余りにも金のかけ方が少ないというふうに申し上げたいと思うんです。  この点は大臣、いや、そうじゃない、いっぱいかけているじゃないかとおっしゃりたいのでしょうか、まだまだ足りないということを認めていただけるのでしょうか、いかがでしょうか。
  149. 深谷隆司

    深谷国務大臣 予算的な措置をもっと多くすれば太陽エネルギーについてもっと前進できるのか、風力発電について前進できるのか、ここいらは非常に微妙なところでございます。やはり自然の力をかりるということで不安定性があるとか、いろいろな条件が背後にはあるように思います。しかし、今委員指摘されたように、これらの新エネルギーについてはもっと力を入れろという御指摘については伺っておきたいと思います。
  150. 濱田健一

    濱田(健)委員 ありがとうございました。
  151. 中山成彬

  152. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、最初に、今日の景気の見方について、多分両大臣の間で同じお考え思いますが、確認しておきたいという意味で最初に伺いたいのは、せんだっての大臣所信の中で深谷大臣は、雇用情勢は依然厳しい、設備投資は大幅な減少基調、民間需要の回復力は弱い、景気は厳しい状況だという見方を示されました。堺屋長官の方は、厳しい状況を脱していないとはおっしゃったのですが、雇用、設備投資、民間需要についての見方には触れておられませんでした。そこで、当然通産大臣とこの点では見方は一緒だと思うんですが、念のため、一言で結構ですから確認をしておきたいと思います。
  153. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 先ほどのこの委員会でのごあいさつのときには時間的制約もございましたので繰り返しませんでしたが、私どもも常々月例報告で、景気の回復力は弱くて雇用情勢は厳しい、そして設備投資はなお減り続けているということを申し上げております。
  154. 吉井英勝

    吉井委員 九九年版の経済白書では、「消費の回復力が弱い中で、今後の雇用情勢によっては、家計不安を通じた悪循環に再び陥るリスクも否定できず、合成の誤謬(個々の企業は立ち直ってもマクロ経済が悪化する)に陥る懸念もある。」としておりますが、改めて確認しておきたいのですが、堺屋経済企画庁長官、もちろんこういう見解をとっておられますね。
  155. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 昨年秋の最悪の事態よりは幾らかよくなっていると思いますが、依然として雇用情勢は厳しく、消費の回復力は微弱だと思っております。
  156. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、このまま今後の雇用情勢によっては合成の誤謬に陥る懸念、これは当然長官も持っていらっしゃいますね。
  157. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 そのとおりでございます。
  158. 吉井英勝

    吉井委員 さてそこで、次に見ていきたいのは、今長官が今後の雇用情勢について心配もしていらっしゃるわけですが、大企業のリストラ、働いている皆さん方に対する大量の人減らし、削減という問題でありますが、これはいよいよこれからというところへ今来ていますね。  興銀、第一勧銀、富士銀行の統合で六千人の削減、住友銀行、さくら銀行合併で九千三百人削減、日産自動車で二万一千人削減。日産は、国内では一万六千五百人のリストラなんだという話もございますが、しかし、いずれにしても発表されているのは二万一千人。それから、NTTで二万人、三菱自動車で一万人の削減。さらに、労働省が調査した人減らし計画によりますと、鉄鋼四社や電機四社、建設、運輸など四十一社で十四万人と、この分野での現在の労働者の一二%が雇用削減となるリストラ計画が出されているということであります。  だから本当に、リストラ問題というのはいよいよこれからがいわば、このままいったら本番になってしまうというところだと思うのですが、与謝野前通産大臣は、今堺屋長官もおっしゃったこの合成の誤謬になるということを問題にしておられました。一つの企業でリストラをやるのはバランスシートをよくすることになっても、全部の会社がリストラをやれば不況大運動をやっているのと同じことになると国会答弁されたわけであります。  深谷大臣、そこで伺っておきたいのですが、大臣も与謝野前通産大臣とこの点では同じ見方をしていらっしゃるかどうか、これを最初に伺っておきたいと思います。
  159. 深谷隆司

    深谷国務大臣 合成の誤謬という、まことに専門的な言葉でございますが、要するに、個々にとっては合理的な行動でも、全体としては不合理な結果を招くという意味であろうと思うのであります。与謝野大臣が言われたその前後の脈絡を私わかりませんから、それと違うとか正しいとか合っているとかいうことはちょっと答えにくいと思います、一つの側面をそれぞれ語っているかもしれませんから。  ただ、私は、多くの企業が事業規模を縮小するということで事業の見直しをやっていると一口に申しますけれども、得意な分野に人材とかその他もろもろを配置がえして、そこをまた伸ばしていこう、こういうような考え方、つまり事業再構築を通じて企業がみずから持っている力を発揮していこう、そういう考え方も一方にあるわけでありますから、そういう意味では、事業再構築を常に縮小均衡に向けた取り組みととらえることがすべてではないというふうに私は思っております。
  160. 吉井英勝

    吉井委員 要するに、リストラ、今日本で言っているリストラというのは、事実上はこれは人減らしということなんですね。雇用がなくなりますから所得は大幅に減退するわけですから、消費購買力は失われて物が売れなくなる、生産活動は停滞する。そういうことで、一つの企業だけとってみれば、リストラをやれば確かにバランスシートはよくなる、経営上の利益率は向上する。しかし、みんながそれをやれば不況大運動をやっているのと同じことだ、これが与謝野大臣が言われたことだし、合成の誤謬ということを経済企画庁が言っておられるのもそういうことなんです。  私はこの点については、深谷大臣、余り込み入ってお考えいただかなくても、そこのところはまず我々出発点のところでは同じように考えることができると思うのですが、もう一遍伺っておきたいと思います。
  161. 深谷隆司

    深谷国務大臣 私が申し上げたのは、与謝野さんが言われたような側面と私どもが申し上げている側面とは、ともにあるものだと考えています。つまり、人材とか、あるいは資源とか資産とか、さまざまなものを得意分野に持っていってそこを発展させるということは、経済の縮小ではなしに、逆に効果を上げるという部分もあるわけであります。どこの部分が今一番目立ってきているのかということに注目することが大事だと思います。
  162. 吉井英勝

    吉井委員 ある分野から新しい生産分野を開発して、そこへ人が流れるということであれば、あなたがおっしゃる、それは一つ意味があるわけです。  そうではなくて、明らかに雇用が失われていくという、今そこが問題になっているのですね。そのときには、あなたが一般論でおっしゃったようなことではこれは現実の姿に合わないということを、やはり通産大臣としてはしっかりそこをよくまず見ていただかないと、私は今日の日本のこの不況、これをどう打開して日本経済を下から回復軌道に戻していくかということにはつながってこないということを言っておかなければならぬと思うのです。これからいよいよ本格化しようとしている大企業のリストラ、不況大運動に対して、いかに雇用と中小企業の経営を守って、景気を下から回復させていくかということが今非常に大事な課題になってくると思うわけです。  そこで、リストラ問題に入っていく前に、私はまず中小企業が置かれている現状の方をここで先に少し伺っておきたいと思うのですが、廃業や倒産を減らすという政策努力は、今これは一方では非常に大事な課題だと思っておりますが、最近の廃業や倒産の大きな原因は何なのか。この点について、通産大臣はどのように見ていらっしゃるのか、それを伺いたいと思います。  個々の細かい数字的な議論はまた参考人の方にお願いしますから、まず大臣の方から、基本的に見て、そこを伺っておきます。
  163. 深谷隆司

    深谷国務大臣 質問の整理で、きょうは政府参考人が呼ばれているものですから、これはそこから答弁するものと思っておりました。  廃業率と創業率は今日の出ているデータで申し上げますと、まず、創業率は二・七%ぐらい、それから廃業率が三・二%ぐらい、明らかに廃業率の方が多いわけでございます。  また、今日までの推移を見ておりますと、廃業率については三%から四%ぐらいで推移しています。開業率というのは、五十年代、五十六年にかけてですが、五・九%ぐらいでございました。その後低下して、昭和六十一年から廃業率を下回るようになってしまった。こういうような逆転を我々は考えていかなければならないと思うわけであります。  逆転の状況について、ただいま申し上げたようでございますが、年間の平均廃業企業数は約十五万から二十万というふうに五万件ほど上昇している。一方、年平均の開業数は同じ期間で二十三万件から十三万件というような状態になっています。その原因はいろいろございましょうが、例えば資金調達、人材の確保、経営のノウハウ、そういうことの不足というような面、つまり、創業者の直面するさまざまな障害や失敗時の生活のリスクが大きいというようなことが原因であろうと思いますが、同時に、社会全体に創業の評価というのが余り芳しくないということなどもあるのではないだろうかというふうに思います。
  164. 吉井英勝

    吉井委員 廃業や倒産の大きな原因の方を、創業のお話はあったのですが、私はそこをまずよく見ておく必要があると思います。  それでは、政府参考人の方から伺っておきたいと思います。  中小企業白書でかなりその分野は書いてありますが、消費税増税などによる最近の消費購買力の落ち込み、これが販売不振の一つということになってきておりますが、中小企業白書の中で、特に六割の不況型倒産の中で、販売不振というのは八〇年代の四割であったものが、九〇年代不況の中では五割前後を示している。やはり一つは、消費不況というのが非常に廃業、倒産の大きな要因になっていると思いますが、中小企業白書の中のその指摘、こう理解して間違いじゃありませんね。
  165. 岩田満泰

    岩田政府参考人 御指摘の点は、最近の倒産状況についての分析に当たる部分かと存じますが、基本的に、最近の不況の中でそうした不況型の倒産の件数がふえているということは事実であると存じております。
  166. 吉井英勝

    吉井委員 なお、さらに中小企業白書では、海外生産比率の高い大企業ほど、下請企業が大きく減少し、下請の切り捨ても大きいし、下請取引単価も下落している、こういうことを白書から読み取ることができると思うのですが、これも間違いありませんね。
  167. 岩田満泰

    岩田政府参考人 ただいま御指摘のような部分につきまして、私正確に存じておりません。後ほど確認をして御連絡をさせていただきます。
  168. 吉井英勝

    吉井委員 中小企業白書を出していらっしゃるところがそういう頼りないことを言ってもらっては困るわけで、白書の中にちゃんとグラフまで載せていらっしゃるわけですから、これは白書を読めばそういうことが指摘されております。  また、中小商店と商店街の問題については、小売業からの撤退理由の第一は、消費不況による売り上げの減少ですね。もう一つ大きな理由が、大型店の近隣地区や郊外への出店である、このことも示していると思うのですが、これは岩田さんの専門分野ではないかと思うのですが、これはこのとおりですね。
  169. 岩田満泰

    岩田政府参考人 中小商店の減少というようなものが最近、この何年かにわたりまして連続して続いております。その減少の理由につきましては、かねてからもろもろの理由があるということでございまして、後継者の問題でございますとかもろもろの原因により、あるいは消費需要の変動の早さ、そういったようなもろもろの要因があると思います。大型店の問題が全く関係ないと申すつもりはございませんが、もろもろの要素があるものと理解をいたしております。
  170. 吉井英勝

    吉井委員 中小企業庁の流通業経営実態調査、これが中小企業白書の中でもデータとして挙げておられますが、一番が売り上げの減少ですね。二番目に、後継者の問題もあるのですが、実は大型店の近隣地区への出店の問題と郊外への出店を合わせますと、これは四三%ぐらいになってきますから、後継者の不足を上回るのですね。  だから、あなたのところのデータで売り上げの減少と大型店の影響というのが非常に大きい、これは私は間違いない事実だと思うのですが、中小企業庁がデータ改ざんをやらない限り、原子力では随分最近データ改ざんが問題になっておりますが、それがない限り、私はこのとおり、あなたのところのデータなんですから、このとおりですね。
  171. 岩田満泰

    岩田政府参考人 近年の、もう何年かにわたると思いますが、商業統計をとっておりまして、特に小規模な小売商業店の数が減少を続けているわけでございます。その最大の理由が売り上げの減少というような理由が挙げられておる、また同時に、大型店の出店というものが原因に挙げられておるということは事実であると存じます。
  172. 吉井英勝

    吉井委員 私が取り上げました中小企業白書は、過去の白書ではなくて今あなたのところが出していらっしゃる一番新しい白書で出ている数字がそういうことです。中小企業が倒産、廃業に追い込まれる最大の原因というものは、消費不況と大企業の海外移転やリストラ、それによる下請の切り捨て問題、そして大型店の無秩序な出店や撤退、この三つがやはり非常に大きな問題なんですよ。そして、廃業、倒産による所得の落ち込みが、さらに地域経済の落ち込みを招いていくという悪循環に今入っているわけですね。  ですから大臣、私は、中小企業国会と銘打つからには、一つは、GDPの六割を占めている個人消費が伸びるように、国民の懐を直接暖める対策をとるということ。二つ目には、大企業のリストラや大量解雇、下請いじめについては、やはりヨーロッパ諸国でもいろいろなやり方をとっておりますけれども、やはりそれに対する規制のルールというものを設けて、規制を加えていくということ。それから三つ目には、アメリカでもヨーロッパでもそうなんですが、当たり前のこととなっている経済的規制と社会的規制を組み合わせて、その組み合わせで大型店の進出を規制することで中小商店と商店街を守っていく、このことに全力を尽くすというのが、私は、中小企業国会と銘打つからには、やはり一番現実の問題として具体的に取り組む課題だと思うのですが、この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  173. 深谷隆司

    深谷国務大臣 消費がなかなか伸びないということは、懐が暖まらないということなど、いろいろございますが、やはり景況感が増していくということが一つの要素であると考えます。そういう意味で、やや明るさを取り戻したというのが経済企画庁を含め我々の判断でありますが、これがまだ十分ではない。  例えば、設備投資はおくれている、あるいは、雇用は改善されていない。そして、前国会において、いわゆる産業競争力強化という点についてはかなり前進したけれども、それではまだ不十分で、そこで中小企業が先頭に立って活力のあるような状況をつくっていこう、こういうことになったわけでございまして、景気回復ということに全力を挙げなければならないことは当然のことだと思います。  二つ目の、大企業のリストラの問題は、もちろんそれぞれの企業で違いがありましょうけれども、例えば日産の場合、私どもは直ちに会社側に対しまして、例えば一万二千人を減らすのだという話について、雇用関係については最善を尽くせ、あわせて、下請企業については、これをお守りするように全力を挙げて対応せよということなどをきつく申し上げてまいりました。  いわゆる解雇ということでなしに、自然減であるとか採用を中止するとか、いろいろな角度でやっていきます、そんな話もあったようでありますが、先ほどから申しておりますように、大きい企業がリストラを考える場合には、雇用という点に十分に思いをいたして、人材を配置転換して、新たな産業が元気がついてくる、そこで吸収できるのだ、そういう体制をきちっととっていかなければならないというふうに思っております。  三番目の大店舗法の話でありますが、御案内のように、来年六月をもってこの法律はなくなるわけでございます。実は、私どもも、自由民主党議員として、大店法の設立、法律をつくり上げるときには、大運動を展開してまいったものでございます。しかし、外国からのいろいろな圧力もございまして、だんだんに後退し、形骸化していたというのが実情であります。  アメリカの実態などを見ましても、例えば、国ではそのような形で抑えておりませんけれども、郡や州で守ろうとする、そういう制度もあるようでございまして、そこで発想を大きく転換いたしまして、例えば、大型小売店立地法という法律をつくる、あるいは、都市計画ということでこれの改正を行って、両面から、つまり町づくりであるとかそういう観点から、あるいは環境という観点から、きちっと地域住民の皆様の納得のいくような形を進めていこうではないかということになっておりまして、そういう意味では、ただやたら大店舗が進出するという状況をそれぞれの地域において抑えていくという、せっかくのこれらの法律を生かした町づくり、環境改善で活用していただければありがたいと思っております。
  174. 吉井英勝

    吉井委員 日産の問題はまた後ほど触れていきたいと思っておりますが、私は、やはり雇用の危機、雇用不安があれば、消費マインドがさらに冷え込むわけですから、本当に景気を後退させるばかり、悪循環に陥るという点で、私はこういう点でも、今のリストラ問題、これは中小企業対策や雇用を十分考えてほしいというだけでは非常に不十分なものになると思うのですよ。  と申しますのは、ちょうど二年前ですが、九六年の秋から九七年の三月にかけてこの委員会でも随分問題にもなりましたが、三井三池、大牟田ですね、あの閉山問題。あらかじめ対策をとるんだとかさまざまなことが言われました。しかし、結局今大牟田へ行ってみたらどうなっているか。雇用の問題、中小企業の問題、これはさっぱりですよ。ですから、本当に私は、言葉だけじゃなしに、実態の伴った対策を進める、そのことが必要だと思うのです。  大臣にもぜひこの機会に、大型店問題についても、大臣の地元もなかなか大変だろうと思いますが、これはフランスでいえばロワイエ法、しかしこれは経済規制だけではなしに、社会的規制もあそこはちゃんと組み合わせているのですね。  アメリカの例えばバークレーの条例で見ますと、アメリカは日本には圧力をかけておりますが、アメリカの場合は都市計画的手法だけで規制しているのではないのですよ。バークレーで、この分野の営業面積はこれだけだ、この分野は営業面積はこれだと決めて、経済的規制をきちっと加えているわけですね。さまざまな手法を組み合わせてアメリカでだってやっているわけですから、私はそういう点で、大型店の問題についても、昨年の春のあの立地法と都市計画法改正で、これで解決できるというふうな生易しい問題ではないというのが現実の姿ですから、そこのところをきちっととらえた対策を進めてもらいたいというふうに思います。  こういう点では、やはり大きなリストラから、雇用や中小企業地域経済が切り捨てられる、そんな状態に対して、そんな問題に対して、現実に即して具体的な対策に取り組んでいく、このことなしには中小企業国会の名に値しないものになってしまう、それをしっかり考えておかなければならぬというふうに私は思うわけです。  さて、日産の問題に入る前に、私は少し戦後の自動車産業などについて見ておきたいと思うのですが、これは通産省の出していらっしゃるさまざまなものも読ませていただきまして、私なりに整理してみるとこういうふうに言えるかなと思うのです。  まず、日本共産党は大企業を敵だなどと考えているものではありません。日本の産業、経済の中で大きな比重を占めているものですから、それにふさわしい社会責任を果たし、役割を担ってもらうということが必要だと考えているものであります。  今大リストラ計画を発表した日産にしても、日産だけで大きくなったわけではないわけですね。これは国を挙げての支援がありました。それから、地域や労働者の頑張りのおかげで世界的企業に発展したという、そこをしっかり見なければいけないと思うのです。  戦後の経済復興過程で、通産省は自動車を戦略産業の一つに位置づけて、一九五六年には機械工業振興臨時措置法をつくり、また貿易、為替自由化の時代に入ってくると、国際競争力の強化を図るために、電振法と合わせて特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法と衣がえをしました。さらに、知識集約化という情勢に合わせて、特定機械情報産業振興臨時措置法として、自動車産業とともに周辺の産業用ロボット、自動車部品、ソフトウエアなどの対象機種を指定して、その機種や業種ごとに、性能や品質や価格、生産費引き下げなどの目標、達成期日などをメーカーと通産省が相談した上で大臣告示を行ったり、その高度化計画達成のため、開銀などからの低利融資とか特別償却等の優遇税制、補助金、品種や規格等のカルテル実施など、本当に徹底して国として支援してきたということは、これは事実なわけですね。  こうした自動車産業を、中小企業政策の面からは、加工、組み立ての日産などのメーカーを、一次、二次、三次、さらに零細、ひ孫請までのピラミッド構造をつくり上げる上で中小企業近代化、高度化の制度が活用され、その反面、ジャスト・イン・タイムなどに都合のよい、親企業依存の強い下請構造というのもつくられてまいりました。この点では、通産省は、下請企業振興法や下請振興基準をつくってこれら下請企業の振興という面でも力を入れてきたわけです。  ですから、概観すれば、自動車分野での通産行政のかかわりというものは、どう評価するかという評価は別にして、大体流れとしては私が今申し上げたような流れであったということは多分深谷通産大臣ともそれほど見解は異ならないのではないかと私は思いますが、念のために大臣の見方を伺っておきたいと思います。
  175. 深谷隆司

    深谷国務大臣 改めてこれまでの歩みを振り返ってみますが、まず、一九五〇年代から六〇年代において、自動車産業に対して税制上あるいは金融上の措置を講じて、技術の導入、設備の近代化、生産性の向上などを図ってまいりました。  また、下請の自動車部品産業については、お話もありました機械工業振興臨時措置法に基づく金融上の措置や自動車部品の標準化の推進などによって自動車産業のすそ野を支える体制というものもつくってまいり、その育成に努めてきたところであります。  その後、一九七〇年代になって、自動車に関する貿易や資本の自由化を進めてまいりましたが、これに伴う価格、品質両面における内外の激しい競争の中で、我が国の自動車、自動車部品産業がそれこそたゆまぬ努力を重ねながら国際競争力のある大きな産業に育ったというふうに私は認識しております。  また、我が国の戦略産業の一つである自動車産業のもとで、自動車製造業に加えて、鋳物あるいは金属プレス加工業など部品製造業等、広範な関連産業というものが構成されておりますが、これらの関連産業こそまさに中小企業であったというふうに思います。政府としても、こうした中小企業の重要性を考えて、その育成と発展に努めてまいりました。具体的には、昭和三十八年の中小企業近代化促進法によって、金属プレス加工業あるいはねじ等の関連業種を指定して、金融面、税制面からの措置を講ずるなど、その育成、支援を図ってきたところでございます。  こういうような中小企業の育成策が自動車産業という日本の戦略産業の発展に大きな役割を果たしてきた、そのような歩みの認識を持っております。
  176. 吉井英勝

    吉井委員 流れにおいては、今おっしゃったように、大臣と私と、自動車産業と通産行政のかかわりという点では大体見解が一致しておるというふうに思っておるのです。  それで、せんだっても、自動車用のねじですね、ああいう分野のところで働いている方たちの、今度の日産リストラにかかわる問題などで御意見も伺ってまいりましたが、改めて振り返ってみますと、自動車産業の占める位置というものですね、これは全就業人口六千五百七十万人の中で七百三十四万人、約一割を占めている。それから関連産業について見ると、自動車産業への依存度というのは、ゴムの分野では七四・六%、板ガラスで四〇・〇%、ベアリングで五六・七%などなど、広範な産業分野に影響が広がるものであるというふうに思いますが、この点については政府参考人の方から、確認の意味お答えいただきたいと思います。
  177. 太田信一郎

    ○太田政府参考人 今吉井先生おっしゃいましたように、自動車産業、自動車製造業に加え、自動車部品製造業、自動車販売業を初め、広範な関連産業を有しております。我々、日本の基幹産業の一つと位置づけられると考えております。  数字は工業統計表を私、ちょっと引用させていただきたいわけですが、おととし、一九九七年の自動車・同附属品製造業の従業者数は約七十七万人、製造業全体の従業員数約九百九十四万人の一割弱を占めております。また出荷額につきましても、九七年の自動車・同附属品製造業は約四十二兆円と、製造業全体の出荷額約三百二十三兆円の一割以上を占めております。  さらに、工業統計上、自動車附属品製造業に、広く言えば部品産業に係る事業所数、これは四人以上ということで統計上の制約がございますが、約一万という数を数えておるところでございまして、こういう数字からもわかるように、自動車産業は広範なすそ野産業を有する我が国の重要な産業と認識しているところでございます。
  178. 吉井英勝

    吉井委員 そういう状況だったのですが、これが海外生産比率を八五年のプラザ合意以降、五倍近くに伸ばして、海外で設備投資と雇用の拡大、国内ではリストラ、人減らし、そして多国籍企業として、日本の企業というよりももう多国籍企業というふうになってきて、みずからの企業利益だけを考えた行動に移ってくる。だから産業が空洞化もすれば、景気が悪くなったり振り回されもする。  そこで大臣、この分野で締めくくり的に伺っておきたいのですが、やはり国を挙げての支援を受けて、中小企業皆さんも、そこに働く労働者の皆さんあるいは中小企業の従業員の皆さんも、地域も挙げて支援してきて今日があるはずなんですね。多国籍企業になっちゃって、地域は知らないよ、雇用や中小企業は知らないよというわけにはやはりいかないと思うのですね。  私は、大きな社会責任があり、雇用や中小企業地域経済についてはやはり果たすべき役割があるし、それをやはりきちっと果たす、こういう立場に立ってもらわなきゃならぬと思うのですが、大臣、この点ではどういうふうにお考えでしょうか。
  179. 深谷隆司

    深谷国務大臣 その前に、先ほど私、日産の一万二千人と言ったのですが、二万一千人の誤りでございました。申しわけありません。  社会的な責任というのは、当然大企業といえども負うべきだと思います。ただ、大企業には大企業の、構造改革も含めた再建計画というのを持ちまして、それぞれの企業の持ち味を生かして成り立っていかなければならないという事情も一方にはございます。  このたびのような再建策を考えた場合の影響というものは、雇用の問題、地域の下請企業、極めて大きい問題がありますから、それはやはり会社としても十分な対応を考えていかなければならないというふうに思います。  私は、日産自動車の再建計画の発表の日でございましたが、機械情報産業局長に対しまして、雇用、関連下請企業への影響についてできるだけ対処するようにということを強く申し入れております。
  180. 吉井英勝

    吉井委員 ここで、委員長に、午前中の理事会でお許しいただきました資料の方を配付していただきたいと思います。これは私のこれから後の質問の中で使わせていただきますので、よろしくお願いいたします。  今、政府はいつ今回のリストラ計画を聞いたのかという問題などについて聞こうと思ったら、先にお答えいただきましたが、日産の国内生産台数は、現在手元にある一番新しい数字で百五十五万台、海外工場での生産台数百五万台、合計二百六十万台ということであるわけですが、今度のリストラ計画の中では、これが減るというのじゃないのですね。カルロス・ゴーン氏のスピーチによると、生産設備を廃棄して、朝勤や夕勤の時間を延長して稼働率を引き上げるんだ、そのために、村山や京都の宇治、愛知の工場をほとんど閉鎖するというものであります。この後、さらにパワートレーン工場などの閉鎖ということについても語られております。  国内工場の生産能力は百六十五万台を持つということでありますから、現在百五十五万台、もちろん設備能力はもっと高いわけですけれども。しかし、国内工場としてはゴーン氏は百六十五万台を持つというわけですから、これで二万一千人のリストラをやるとなると、労働時間というのは、一人当たり年間二千二百から二千三百時間へと、今国として取り組んでいる年間総労働時間千八百時間よりも四百時間以上多くなる。残業、休日出勤も当然多くなる。実は、このことは組合の皆さんもこれを指摘しているところです。  フランスでは、週三十五時間労働に関する第二法案の審議が今始まっております。年間総労働時間を千五百時間にしようというのですね。日本では現在千九百時間台ですが、これを千八百時間にしようというときに、ゴーン氏は逆に二千二百時間以上へと、四百時間の残業、休日出勤を求めてきている。  この計画は、リストラされた後の雇用の受け皿をどうするこうするの議論ももちろんありますが、まずこの計画そのものに、私は今の政府の労働時間短縮の計画は決して十分なものとは思いませんけれども、しかし、政府の労働時間短縮の計画にさえ反する内容を持っているのじゃありませんか。
  181. 深谷隆司

    深谷国務大臣 日産自動車のただいま御指摘のような内容について、私たちが直接聞くあるいは調査を行うという立場でありませんで、ただいまお話を聞いた範囲のことを承知しているという状況です。
  182. 吉井英勝

    吉井委員 大臣、私は、こういうふうなやり方で、要するに設備を廃棄する、労働時間を延ばす、これで稼働率を引き上げる、企業の経営効率は確かに上がるわけですね、利益率は高くなる。しかし、そういうふうなやり方でいいのだろうかということが今国際的にも問題になってきている時代だと思うんですよ。  それで、企業のバランスシートはよくしても、雇用不安を激しくしたり不況大運動を加速するということは、私はこれは間違っているんじゃないかと思うのですが、大臣はこれはどういうふうにお考えになりますか。
  183. 深谷隆司

    深谷国務大臣 大変難しい御質問でございます。  個々の民間企業のありようというのはその企業が考えるべきものであって、例えば労使の関係も当然でございます。そういう企業の一つ一つに対して大臣がいいか悪いかというコメントをすることは適切でないと思います。
  184. 吉井英勝

    吉井委員 私は、少なくとも、雇用、中小企業地域経済を守るということなしには中小企業国会を名乗る資格はないと思うんですよ。銘打つことはふさわしくないと思っているんです。それが今中小企業皆さんの置かれている深刻な現状なんだし、そこを何とか現実的に打開しようと思ったら、やはり雇用、下請中小企業問題、地域経済の問題、真っ正面に据えて取り組む、その中でしかるべき物言いというものは当然できるわけであって、私は、大臣がそのことについてきちっとした見解を持って臨むということをやらない限り、本当に中小企業国会というのは、銘打っただけで内容のないものになると思いますよ。  私は、幾つかの財界人の言葉を最近見て、この点ではリストラ万能論については財界からも異論が出ているということを、やはりそれはそうだなと思っているんですよ。  例えば、奥田日経連会長ですね、トヨタ自動車の会長。失業と消費停滞の悪循環がそこにある。現在の我が国では、従業員の首を切ることがもてはやされているおかしな風潮がある。リストラ、経営のダウンサイジングと称して従業員の首を切れば株価が上がる。不景気だからといって簡単に解雇に踏み切る企業は働く人の信頼をなくすに違いない。こんなことをやっていると、いずれ人手が足りなくなったときには優秀な人材を引きとめておけず、競争力を失うことになる。これは奥田さんが言っておられる言葉ですね。  それから、大阪商工会議所の田代会頭は、リストラを発表した企業の株が上がるのはおかしいという意見に賛成だ。人員減らしとしてのリストラへの反省が日本の経営者全般に出てきた感じがすると言っておられます。  関西経済同友会の井上代表幹事は、日産のリストラ計画について、フランス人のゴーン最高執行責任者がよくやったと言われるが、私は反対だ。  秋山関経連会長は、企業は社会責任の中で最大の利益を追求するべきだ。自分の企業を守るためのリストラは必要だが、従業員や地域社会と話し合う必要がある。  こういうふうに、今財界人の間からも、今回の日産の二万一千人のリストラ計画については、やはりこれは賛成できない、これをやったら本当に不況大運動になってしまう、こういう声がいろいろ出てきているときに、大臣がやはりそういう立場で物を言わないならば、私は、幾ら中小企業国会だと言ってみたって、中小企業国会の名に値しないものになるというふうに思いますよ。  それで次に、日産は文字どおりピラミッドの頂点に立っている会社です。各種の下請部品メーカーから成っておりますが、日産の下請企業の数とその傘下の従業員の数、これを政府参考人の方からお聞きしておきたいと思います。
  185. 太田信一郎

    ○太田政府参考人 日産自動車からは、一次下請企業として千百四十五社あると聞いております。これは、国内、海外合わせた数字でございまして、国内では四百数十社と聞いております。通産省としては、現在、同社の再建計画が下請企業に与える影響について情報収集を行っているところでございます。  一次下請企業の四百数十社の従業員の数については、今のところ数字を持っておりませんので、また御報告させていただきたいと思います。
  186. 吉井英勝

    吉井委員 日産の協力会、日翔会の加盟企業は現在百七十五社です。九六年時点の場合は百九十一社でしたが、その従業員は五十八万人です。その他日産グループ三十三社を加えた従業員は六十五万人です。さらにその下に、その他協力企業四百五十六社があり、二次、三次、孫、ひ孫請の下請企業があるわけです。これらと別に、例えば日産の取引会社の組織である日産多摩会百二十四社などがあります。  私は、これだけ中小企業の問題、景気の問題を考えているときに、基礎的な数字というものを通産省はきちっと把握して、そしてどうするのかということを考えないと、一般論で中小下請企業に御配慮いただきたいとか、そんな言葉を幾ら繰り返したって、これは何にも中小企業対策になってこないと思いますよ。  次に、私がお手元にお配りいたしました資料をごらんいただきたいと思うんですが、親企業と下請中小企業の間でどれぐらいの格差があったか。これは通産省が戦略産業として取り組んで、そのために中小企業近代化、高度化を進めてきた自動車及び附属部品製造業で見た場合ですが、もちろん出典は通産省のものに基づくものです。  従業員一千人以上の大企業の年間給与総額を一〇〇として、四人から九人の小規模企業では四六・四。つまり、十人未満は半分以下なんですね。百人から百九十九人の企業で七〇・〇。二百人から二百九十九人で七五・四という賃金格差があったというふうに、皆さんの方からいただいている工業統計表産業編から作成すると出てくるんですが、これは、こういう賃金格差があるということ、そしてそれが工業統計ではずっと一貫して賃金格差は縮まっていない、こういう状況にあるということについて確認しておきたいと思います。
  187. 太田信一郎

    ○太田政府参考人 工業統計表をベースに算出されたということであるのは、おっしゃるとおりだと思います。そのとおりです。
  188. 吉井英勝

    吉井委員 非常に大きな賃金格差があったわけです。ですから、格差是正という意味もここにあって、これは今なおこういう状況なんですから、それを取っ払うというのは、これはあしたからの議論でやりますが、私はとんでもないことだと思っているんです。  八五年の急激な円高が進行したときに、私は浜松へ自動車部品製造下請企業の実態調査に行きましたが、そのときのことですが、アジア向けオートバイの部品加工の単価を十五年前の単価にせよと言われた下請がありました。それから、半値八掛け二割引き、つまり単価を三分の一に切り下げろ、こういう要求が異常円高の中で押しつけられていた、こういうこともありました。従業員の賃金が大企業の半分というのも、これじゃ当然そうなるなと思いますよ。  政府は、現在、現行中小企業基本法の格差是正を削除することにしておりますが、企業間格差そのものは今も歴然としてある。大臣、企業間格差は今も歴然としてあるということは、これはお認めになりますね。
  189. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、中小企業の事業活動の結果としてあらわれる諸格差が依然として大企業とにあるということは、私ども承知しております。例えば資本の装備であるとかあるいは賃金であるとか、そういうところでございます。  新基本法は、このような状況に対応するために、今日の中小企業が多様で活力ある存在であるということを踏まえて、経営基盤の強化、そういう面から施策を講ずることにしているわけでございます。  具体的に申しますと、第十五条で経営資源の確保、二十条で取引の適正化、二十一条で国等からの受注機会の増大ということで、経営基盤の脆弱な中小企業の経営基盤の補充を行う、そして事業環境の整備のための施策を講じていこうとしているところであります。
  190. 吉井英勝

    吉井委員 格差はお認めになっていらっしゃるのですが、こういう格差があっても、下請部品メーカーが一生懸命尽くして、そして日産の発展が得られてきたわけです。ところが、ゴーン氏はこの下請も半分切り捨てると言っているんですね。経営基盤をどうするこうするといったって、その経営基盤そのものが半分切り捨てだというんですよ。中小企業国会だと言っているときに、私はこれは手をこまねいて見ているようなことはできないと思うんです。  日産に計画の全面の見直しを求めたり、そして、こういう問題について政府としてもこれだけ力を入れてきたわけなんですから、民間だからといって遠慮して何にもできない話じゃなしに、まさに政府が力を入れて育ててきたところなんですから。それが今下請がばっさり半分切られちゃう、働いている皆さんは二万一千人削減だ、こういう事態に当たって、しかもその二万一千や半分削られた中小企業に簡単に仕事が生まれるわけじゃないんですから。リストラ計画の全面的な見直し、これを求めるぐらいのことは、やはり大臣として物を言うだけの根拠があるわけですから、応援してきたはずですから。私はそれははっきり言うべきだと思うんですが、大臣、どうですか。
  191. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先ほども申し上げたのでありますが、なお補足すれば、企業が積極的な事業再構築を図るということは、将来の発展基盤を確保する上では不可欠なものでございます。これは産業界においても十分な認識が必要であると思います。しかし、事業再構築を行うに当たって、雇用の維持拡大について全力を挙げていくということもまた当然でありまして、これらについては経済界にも繰り返し強く要請しているところでございます。  それから、日産自動車の取引のある部品メーカーの問題でございますけれども、日産が今置かれている立場等々については私から言うのもおかしいですから避けますけれども、日産としては、部品メーカーとの関係を単に断ち切るのではなくて、これまで取引のあった部品メーカーの再編とか、あるいは得意分野への特化等を促進することによって部品メーカー自身の競争力が強化されるような方向で取引関係の見直しを進める、こういうふうなことも言っているわけでございます。私たちも今後の対応を注目していきたいと思っています。
  192. 吉井英勝

    吉井委員 それでは、もう一枚の方の資料をごらんいただきたいと思うんですが、日産は、日本の自動車業界の中でも早い時期から国内でリストラ、その一方で海外生産比率を高めて、国内産業を空洞化させるということをやってきました。この資料をごらんいただくとおわかりのように、自動車全体については十一社の合計で出してありますが、あとはトヨタ、日産、ホンダ、三菱、マツダ、こういうふうに海外生産比率を高めてきたわけですが、ホンダが、九〇年の三〇・八%が九八年四六・六%。二番目が日産で、九〇年の二三・七%が四〇・四%。ホンダに次いで日産の海外移転、国内産業を空洞化させるという問題は非常に顕著に出ているわけです。  自動車産業全体について見れば、設備投資については、九一年から九七年にかけて国内では一兆二百億円設備投資を減らし、海外では八百六十億円ふやしておるのです。従業員は、国内では七万五千人減らして、海外では二十二万五千人ふやしております。それをさらに国内で二万一千人のリストラをやって、日産イギリスのサンダーランド工場では新型プリメーラのために三百五十四億円の設備投資。  ヨーロッパでは簡単に、秘密裏に二万一千人のリストラを進めるなんということはできないんですけれども、しかし、国内では日産はそれをやって進めているわけですね。フィナンシャル・タイムズは、普通は海外工場から閉鎖して国内工場は一番後回しにするのに、日産のやり方は違うと皮肉を込めて書いておりますが、大臣、世界全体で別に減らすわけじゃないんですよ。全体の生産台数は維持しながら、海外へシフトして国内を削っていく、こういうやり方が今日の大不況の中で進められるということについて、フィナンシャル・タイムズでさえ皮肉を込めて書いているんですが、通産大臣、財界人の批判も強い中でこれはおかしいと思われませんか。
  193. 深谷隆司

    深谷国務大臣 日産という企業がどういうような企業のありようを考えるか、企業再建の構築についての中身まで通産大臣が論評を加えるということは私はいかがかと思います。  ただ、お話の中に例えば海外生産ということがございましたけれども、貿易摩擦の対策上でも海外に工場を持つということなどは不可避なことではないだろうか、それから、消費地の生産というのは今や世界の流れではないかと一般論として申し上げることができると思います。
  194. 吉井英勝

    吉井委員 多国籍企業の場合は、企業が国を選ばないということで、最適生産ということで、この国でもうかると思ったらそこへ進出しますが、こっちがもうかると思ったら、さっさとそこをリストラをやってこっちへ移っちゃうわけですね。これはまた新たな国際的な問題を引き起こしております。  きょうここで、外務省の方に来ていただいておりますから政府参考人質問しておきたいと思いますが、EUに進出した日産やトヨタなどが今回のようにヨーロッパの工場を閉鎖する、一万人、二万人のリストラを秘密裏に準備してきて突如発表する、こういうことはEU指令があってできないのじゃないかと思いますが、このEU指令についてごく簡潔で結構ですから、お聞かせいただきたいと思います。
  195. 横田淳

    横田政府参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘の指令は、EUの大量解雇に関する加盟国の法制の近似化に関する指令のことだと承知いたしますけれども、この指令におきましては、「使用者が大量解雇を計画するときは、適当な時期に、意見の一致が得られるよう、労働者代表と協議しなければならない。」とその二条一項で規定していると承知しております。
  196. 吉井英勝

    吉井委員 その前に、EU指令の中には、労使協議会指令もありますし、それから大量解雇指令、企業譲渡の場合の既得権指令、賃金指令などリストラ関係三指令も労使協議会指令とは別にありまして、そして、実際にルノーが起こした問題については、ベルギーであれフランスであれ、あるいは国際司法裁判所であれ、この指令とそれに基づく国内法違反ということで判決も出ていますね。やはり、ヨーロッパでは今回のようなこういう乱暴なやり方は許されない。ヨーロッパではできないが、日本では突然やってくる。  私は、いわばダブルスタンダードでこんなやり方が行われるということは本当にけしからぬことだと思いますが、日産は、このような多国籍企業あるいは一大企業としてのみずからの利益のために中小企業や雇用や地域経済を切り捨てるという問題、これを今現に進めているわけですが、一体これらの分野でどのような影響が生まれるのか、アセスメントをまず行わせて、それを明らかにさせて企業としての社会責任を果たさせる、私は、まずこのリストラアセスメントを行わせて、企業としての社会責任を果たしなさい、これぐらいのことは今通産大臣の方からおっしゃって全然おかしくないことだと思いますが、これも大臣に伺っておきたいと思います。
  197. 細田博之

    細田政務次官 ちょっと、議論の方向が若干真実とずれてきているんじゃないかと思いますので一言だけ申しますと、自動車産業の歴史、世界における自動車の貿易の歴史を見たときに、アメリカにおいて大きな輸入制限運動が起こり、輸出規制が起こり、しかも、ローカルコンテンツ法案その他、現地での生産を強要され、強く要望され、ヨーロッパにおいてもしかり。日産においても、イギリス工場にしてもアメリカ工場にしても非常に苦労をして需要の増大に対処してきたということがあり、他方、国内では非常に需要が増大しておりますから、その面で海外投資が国内に直接大きな悪影響を与えたという分析は実態にそぐわないのではないかと思いますので、念のため申し添えます。
  198. 深谷隆司

    深谷国務大臣 それから、もう一点私から申し上げたいと思いますが、日産の私どもへの報告あるいは私どもからの調査によりますれば、二万一千人の削減は解雇ではないという考え方に立っています。つまり、自然減であるとか、その他新規採用等々で調整をしていく、こういう考えのようでありますから、その点だけ私の方から申し添えます。
  199. 吉井英勝

    吉井委員 まず、解雇でないというお話につきましては、私は、これはどういう玉突きでやられていくかとか、関係する労働組合の皆さんその他の方たちからも詳しく伺っておりますから、時間が大分迫ってまいりましたからそのこと自体についてこれ以上議論できないのが残念ですが、しかし、大臣がおっしゃっておられるようなことじゃない。労働組合の方も、二万一千のリストラをやると今の千八百時間に対して四百時間の長時間労働になってくるんだと、そういう指摘もきちっと労働組合の方でもやっているわけです。  ですから、企業の説明のうのみじゃなしに、それはそういうものじゃないということをきちっと見ていただく必要があるし、そして、リストラアセスメントというものをやはりきちっとやらせて社会責任を果たさせる、私は、大臣として何よりもそのことをこそやっていただかなきゃならぬと思います。  なお、政務次官から今お話ありましたけれども、私は、これについてはたった一言だけ申し上げておきたい。  それは、野村総研がトヨタ自動車の研究の中で悪魔のサイクルという言葉を使っておりますが、なぜこういう事態が自動車産業などで出てきたのか、なぜ円高が生まれてしまったのか。円高でも競争するためにということで、さらに下請に対して半値八掛け二割引きというふうな極端な単価を押しつけたり、長時間過密労働。私がトヨタの工場を見学したときに、ハンドルシャフトは一人の労働者が一日十九キロ歩いて三万六千回の工程をこなすんですよ。過密労働ですよ。  そういうふうなやり方でもってなるほど輸出競争力はできたけれども、これがまた新たな貿易摩擦を引き起こし、円高を引き起こし、円高でも競争力をということで、さらに今度は海外へ出ていかなきゃいけなくなってきたという、こういう悪魔のサイクルに陥っているというのが、これは野村総研の研究員の方のレポートですが、私は、立場の違いを超えてやはりそういうところをきちっと踏まえた議論をやらないと、政務次官のおっしゃったようなことにはならないということを申し上げておきたいと思います。  最後に、時間が参りましたから、私は、この日産の今回のような大リストラ計画のやはり全面的な、大幅な見直しを求めて取り組む、そして雇用や中小企業地域経済を守るという立場に立たないならば中小企業国会の名に値しない、こう言わざるを得ないということを指摘をして、残念ながら、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  200. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先ほどから私どもは何回も申し上げておりますとおり、日産の企業のありようということについてコメントは避けてまいりましたけれども、下請企業をお守りするとか雇用の面で全面的に会社側も対応しろということを強く申しておりますし、そのことについての目配りは忘れないつもりでおりますから、その点、誤解なきようにお願いいたします。
  201. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りましたので終わります。
  202. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 吉井委員お話が、最初は合成の誤謬から始まりまして、だんだんと個別問題に入ったんでございますけれども、合成の誤謬というのも、速度あるいは業種、いろいろなことを考えてやらなければならないと思います。  また、小売店の問題もございましたけれども、小売店だけではなしに、いろいろな業種、例えばサービス業のアウトソーシングを起こしていくとか、片一方で、生まれるものと少なくなるものとのバランス、そういうことをいろいろ考えなきゃいけないのでございまして、今、日産自動車だけを例に挙げられましたけれども、現在の日産自動車の経営状態というのはかなり厳しいものがありますので、そこだけをお取り上げになって合成の誤謬全体に議論を広げられるというのはいかがなものかという気がいたしますので、念のために申し上げておきます。(発言する者あり)      ————◇—————
  203. 中山成彬

    中山委員長 次に、内閣提出中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。深谷通商産業大臣。(発言する者あり)  それでは、吉井英勝君、一言。
  204. 吉井英勝

    吉井委員 私、終わりますということを言っているのに、委員長が指名されて、いわば大臣の方の反論権ということでされるのだったら、それはそれ自体に対する私自身の見解をきちっと述べるという時間をいただかないと、私はこれはおかしいと思うのですね。  もう時間が大分たっていますから、また機会もあるでしょうからおいておきますけれども、しかし一言、大臣のおっしゃったのは、私は、全体としての自動車産業と通産行政のあり方と、その中で個々に出てきている問題としては日産のリストラ問題を取り上げました。しかし、最初も言いましたように、日産だけを私は何か目のかたきにして言っているのじゃないのですよ。こういうことをあいまいにしておいたら、雇用も下請中小企業の問題も地域経済も大変になるじゃないか、そういうものを切り捨てておいてなぜ中小企業国会と言えるのか、それでは名に値しないじゃないかということを言っているのですよ。  詳しい議論はまた改めてやろうと思いますが、以上です。
  205. 中山成彬

    中山委員長 それでは、大臣。     —————————————  中小企業基本法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  206. 深谷隆司

    深谷国務大臣 それでは、中小企業基本法等の一部を改正する法律案の提案理由を申し上げさせていただきます。  中小企業基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び趣旨を御説明申し上げます。  現行の中小企業基本法は、昭和三十八年、その当時における経済社会の動向等を踏まえて、大企業との格差の是正を政策目標とし、中小企業の規模の拡大等によりその高度化、近代化を図るための施策を総合的に推進すべく制定されました。  しかしながら、基本法制定後三十六年が経過し、この間の急速な経済成長とその後の成熟経済への移行、これに伴う消費者の価値観の多様化、急激な国際化の進展等により我が国経済社会も大きな変化を遂げるとともに、開廃業率の逆転など中小企業をめぐる状況も大きく変化しております。こうした中、現行基本法が規定する政策体系につきましては、関係者の多大な努力により成果を上げてまいりましたが、一方で、今日の中小企業が抱える多様な経営課題や新規創業の促進など新たな要請には十分こたえられなくなっております。  このため、中小企業政策審議会の答申を踏まえ、二十一世紀を見据えて、政策体系を抜本的に再構築し、今後の中長期的な政策展開の基軸を明確化するとともに、経済実態の変化も踏まえ、中小企業関係法律に規定しております中小企業者の範囲を改定するため、本法律案を提案した次第であります。  次に、この本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、中小企業基本法の一部改正でございますが、新たな基本法では、中小企業は我が国経済の活力の源泉であり積極的な役割が期待されるものとして位置づけ、小規模企業からベンチャー企業まで多様な中小企業が抱えるそれぞれの弱みを克服し、機動性など中小企業ならではの独自の強みを発揮し活躍できるような政策へと転換すべく、独立した中小企業の多様で活力ある成長発展を基本理念といたしております。  また、新たな政策理念に基づき、資金、人材等中小企業に不足する経営資源の確保の円滑化、取引の適正化等基盤的な施策として中小企業の経営基盤の強化を、また、中小企業の強みを生かし創意工夫に基づく成長に向けた自主的努力をすそ野広く支援する施策として経営の革新及び創業の促進を、そして、経済環境の急激な変化等に対して脆弱な中小企業に対する施策である環境変化への適応の円滑化の三点を政策の基本方針として再構築することとしております。  第二に、中小企業基本法を初めといたしまして、関係法律における中小企業に関する施策の対象とする中小企業者の範囲を、製造業その他の事業を営む企業につきましては、資本金基準を現行の一億円以下から三億円以下に引き上げ、卸売業については、資本金基準を現行の三千万円以下から一億円以下に、サービス業については、資本金基準を現行の一千万円以下から五千万円以下に引き上げるとともに従業員基準を現行の五十人以下から百人以下に、小売業については、資本金基準を現行の一千万円以下から五千万円以下とすることとしております。本改正は、中小企業基本法のほか、関係の三十二の法律が対象となっております。  以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようにお願い申し上げます。
  207. 中山成彬

    中山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  208. 中山成彬

    中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る十一日木曜日、参考人として法政大学総長清成忠男君、財団法人日本証券経済研究所主任研究員紺谷典子君、全国中小企業団体中央会常任理事・宮城県中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君及び東成エレクトロビーム株式会社代表取締役社長上野保君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 中山成彬

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続きお諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として、中野清君の質疑の際に中小企業庁長官岩田満泰君、遠藤乙彦君の質疑の際に中小企業庁長官岩田満泰君、塩田晋君の質疑の際に通商産業省生活産業局長横川浩君及び中小企業庁長官岩田満泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  210. 中山成彬

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  211. 中山成彬

    中山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。
  212. 竹本直一

    ○竹本委員 自由民主党の竹本直一でございます。中小企業基本法の一部を改正する法律案について御質問させていただきます。  この法律は、昭和三十八年に立法されて以来、理念を抜本的に改正するのは三十六年ぶりでございます。立法当時におきましては、大企業と中小企業の間に存在します生産性等のいろいろな格差の是正ということを目的として立法されたことは御承知のとおりでございます。しかしながら、昭和三十八年の実質GDPを見ますと九十七兆円、現在、平成九年で見ますと四百八十九兆円、つまり約百兆円から五百兆円、約五倍になっておるわけでございます。  今回、このような質的ともいえる経済構造の変化の中で、この中小企業法の理念を格差の是正から自助努力への支援に変更するということでございますけれども、理念を中小企業の自主的な努力を助長するという形へ変換するということは、私自身は、大変結構なことだと基本的には思っておる人間でございます。  しかしながら、現実の現在の経済情勢を見ますと、大企業と中小企業の格差は依然として縮まっておりません。まず、生産性を見ますと、大企業を一〇〇としますと中小企業は五一、約半分であります。また、賃金を見ますと、大企業を一〇〇としますと中小企業は約六一というような指標が出ております。これは昭和三十八年当時からほとんど変わっていないわけでございます。  また、中小企業の問題の一番大きいのはファイナンス、金融の問題でございますけれども、割合しっかりした中小企業あるいは中小企業に近いような企業、五億円以下の企業を見ましても、四一%が代表者の個人保証を必要とする、相変わらず個人の力によって生計を成り立たせている、こういうような色彩が非常に強いわけでございます。  そこで、この大変な不況の中でございますが、全国的に見ましても、北海道と私の選挙区であります大阪が失業率も格段に高くて、大変な不況に悩んでおります。そして、兵庫県もあるかもしれませんけれども、京阪神、皆そうでございます。  そういう中で、例えば農業は後継者が育たないから農業をやめる。それから、泉州には昔は漁港があったのですけれども、演歌で泉州春木港という歌がございます。おやじが漁師で、後を継ぐやつがいないからそっと悔しくて涙ぐむという趣旨の歌でございますが、非常にはやった歌でございますけれども、まさにこの大阪南部の経済情勢を如実に反映した歌ではないかなと思うわけでございます。  このように大変苦境に瀕しているのが中小企業の実態でございますが、そういった現実を前にして、格差の是正から自助努力へと言われても、現場の中小企業は、一体どういうことかなというような、ちょっとした違和感を感じているのも事実ではないかなというふうに思うわけでございます。  中小企業の数は約五百七万三千というふうに聞いておりますけれども、今回この改正によりまして、自助努力を基本とし、定義も変えますので、新たに加わってくる企業の数が約一万六千と先ほど大臣の方からお話ありましたけれども、これが加わってまいりますと、相対的に今までの中小企業への手厚い保護がだんだん薄められていくのではないか、こういうような印象で物を語る人たちも多いわけでございます。  そこで、冒頭通産大臣、この分野には大変お詳しい、権威ある方でございますので、ぜひとも、国民に対するメッセージという意味におきましても、今回なぜ自助努力という柱を基本にして中小企業基本法を改正するのか、一言言葉でお答えいただきたいと思います。
  213. 深谷隆司

    深谷国務大臣 竹本議員の御質問お答えいたします。  現行基本法も、中小企業政策の理念としては格差の是正というふうにございますが、これは今お話がありましたように、あの三十年代の経済というのは二重構造でありまして、大企業が近代的、中小企業は非近代的、こんな区分けをして、その実態を是正しようという考え方でございました。それは同時に、格差の是正というのは今のような意味合いを持っていた、同義語だと私どもは思うわけであります。  そのような考え方というのは、今の実態にはそぐわない。むしろ多様で活力ある存在というのが中小企業でございますから、この中小企業方々経済の牽引車になっていただく、日本の国の経済の活力の源泉、あるいは雇用を促進する、そういう位置づけにすることが私は適切ではないだろうかな、こう思うわけであります。  そういうような意味合いから、中小企業の役割を正面からとらえて、中小企業が自助努力を果たそうとすることに対してしっかり支援していくのが今日的なことではないだろうかな、こう思うわけです。  ただ、今お話がありましたように、例えば、結果としてあらわれる指標においてはまだ厳然と中小企業と大企業の格差というのはあるわけでございます。これを埋めていくための物事の考え方として、私たち中小企業の基盤の強化、そういう点をとらえて今回の基本法でその文言を改正した、そういう次第であります。
  214. 竹本直一

    ○竹本委員 基盤の強化を図ると同時に、現に存在する中小企業の苦境に対しては手厚い保護を加える、こういう御趣旨の大臣答弁だったと思いますけれども、そういう意味で、やはり去年の十月一日に、信用保証協会の特別保証で特別融資をいたしました。二十兆円の枠をほぼ使い果たしたところまで来ていると思いますけれども、これは大変効果があって、あれがなければもう倒産が野に満ちておったのではないか、そのように思うわけでございます。  そうしますと、今の日本経済を語るに、ぬれた薪に新聞紙で火をつけて燃やしている状況だ、こういう説明をある学者がしておられましたけれども、ぬれた薪というのは何かというと、民需であります。民間の設備投資に火がつかない、そのために新聞紙という公共事業をどんどんやって、何とかそのぬれた薪に火をつけさせようという懸命の努力をしているのが今の日本経済現状だ。このような表現、まさに私は言い得て妙だと思うのですけれども、そういう意味におきまして、何とか薪に火をつける努力をこの中小企業分野においてもぜひとも引き続きやっていただきたい、そのように思うわけでございます。  数字を見ますと、平成九年の中小企業対策の予算が千八百六十五億円、補正後で二千五百五十九億円、平成十年で、当初が千八百五十八億円、補正後で一兆百五十億円、こう出ておりますけれども、これは中小企業に対する、大変な苦境を目の前にして、補正で大型の補正予算を組んだわけでございます。今第二次補正予算を編成しようとしているところでございますが、ぜひともこの中小企業に対するしっかりとした手当てをお願い申し上げたい、そのように思うわけでございます。  ところで、体質改善、これを通じて中小企業を強化するということでございますけれども、今回の中小企業基本法の改正案の一番基本といたします創業・ベンチャー企業の支援ということについて、私の思っていることを申し上げて、御質問いたしたいと思います。  新たな事業活動を行おうとする中小企業を今回の基本法を中心としたシステムで積極的に応援していこう、こういうことでございますけれども、先ほど来質疑応答の中で出ておりますように、中小企業白書にも出ておりますが、我が国は開業率よりも廃業率が上回っておる。開業率が二・七%に対して廃業率が三・二%、こういうことになりますと、どんどん中小企業の数が減っていくわけでございます。  比較するためにアメリカの例を調べてみましたら、開業が一三%に対して廃業が一一%、二%も廃業の方が少ないわけでございます。日本とアメリカの中小企業の数を比較しますと、それほど大きい差がない。アメリカが五百三十五万、日本が六百四十三万、こういう数字は、年によってちょっと違うと思いますけれども、ほぼ同じ数字でございます。そうしますと、日本はどんどん減っていく、アメリカはどんどんふえていく、そしてアメリカは非常に好景気だ、こういうふうなことになるのは非常に残念でございます。  そこで、今回のこの法律案の改正で創業及びベンチャー企業の創出を図るわけでございますけれども、この創業というのは、あるいはベンチャーの育成というのは、私は日本文化の変革にかかわる非常に大きいものではないかなというふうに思うわけでございます。つまり、今回この法律を何とか制定にこぎつけまして、トライアルをしまして全部が成功するわけではない、失敗してもそれに対して余りペナルティーを与えない、もう一回やりなさい、こういうバツイチに対する励みにもあるいはなるのではないかな、そのようなことを考えるわけでございます。  日本とアメリカとを比較しますと、国の成り立ちが違いますから、日本は就職にいたしましても、あるいは企業に対する融資にいたしましても、過去何をしてきたかということを常に問います。しかし、アメリカでは、現在何ができるか、そして何をしたいかということを中心に融資をするかどうかを決めていく、あるいは職員の採用を決めていく、こういう話を聞きますし、現実にそういう場に直面したこともあるわけでございますけれども、何とか日本の企業文化を、こういったいろいろな施策を重ねる中で、努力すれば報われる社会に変えていく必要があるのではないか、その第一歩がこの中小企業基本法の改正ではないか、このように思うわけでございます。  そういう意味で、いろいろ通産省では考えておられるわけでございます。私募債への信用保証の付与とか、ベンチャーへの資金供給をたやすくするとか、無利子融資を与えるとか、組合から会社への組織変更を容易にするとか、あるいはストックオプションの付与限度枠を拡大するとか、こういったことを計画しておられるわけでございますけれども、こういった細かいメニューをそろえながら、やる気のある人をこういう分野にどんどん誘い込んで、そして成功する例をどんどん上げていけば、今回の基本法の改正で中小企業にもほのかな明かりが見えてきた、このようになるのではないかなというふうに思うわけでございます。  私の考えを申し上げましたけれども、ぜひ総括政務次官にこれについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  215. 細田博之

    細田政務次官 竹本委員、大変詳しく御勉強いただいていましてお答えすることも余りありませんけれども政府といたしましては、創業・ベンチャー企業は、産業の新たな分野を拡大し、新たな関連産業と雇用の創出にも資する存在だということで、中小企業政策の柱の重要な一つとして据えておるわけでございます。  過去をさかのぼってみますと、大体平成八年から大変多くのメニューがそろってきております。国民金融公庫、中小公庫、商工中金のそれぞれの新事業貸し付け、新規開業特別貸し付けなど。マル経の融資もありますし、創業支援債務保証、それから、全国連、日商による新規開業応援セミナー、中小企業大学校の新規創業支援研修。そして、新事業促進のための中小企業総合事業団の出資ですとか、あるいはベンチャー財団が間接出資、債務保証等によって資金供給の円滑化を図るとか、あるいは、先ほどおっしゃいましたエンゼル税制その他のさまざまな税制というふうに、きめ細かく整備してきております。  そして、これからの補正予算あるいは来年度におきましては、ただいま竹本先生に大体おっしゃっていただきましたので細かく申し上げませんけれども、それらの制度をさらにさらに前向きに拡充いたしまして、創業・ベンチャービジネスがうまくいくように、人材面、技術面、資金面も含めた、ソフト面の支援も含めた総合的な支援を進めていく考えであります。
  216. 竹本直一

    ○竹本委員 ありがとうございました。ぜひ、そういったきめ細かい施策を末端まで浸透させていただきたいと願う次第でございます。  と申しますのは、いろいろな会合で私は申し上げておるんですけれども、各地方の通商産業局あるいはその傘下に商工会議所、商工会等ございますけれども、中央でのこういった制度改正、そして新しい試みがなかなか末端にまで通じていないというのが実態でございます。あの特別信用保証にいたしましても、末端に行き渡って知れ渡るまで、半年かかってもまだ十分知らない人の方が多かったのではないか、このように私は感じておるわけでございます。  そういう意味におきましても、今回行いますような施策を末端にまで行き渡らせるために、既存の組織をフルに活用して、血液を流して活性化させていただきたいな、それが私の希望でございます。どうしてもこれをやらないと、幾ら中央でいいことをやりましても、それが国民の幸せにつながらないというのが実感であるからでございます。  ところで、今、町中を歩いておりますと、旧の商店街が非常に廃れておる、空き店舗がいっぱいある、こういうものが目につくわけでございます。統計によりますと、全国の商店街のうちの八割以上の商店街において空き店舗が存在しておる、また店舗数の一割以上が閉鎖しているのが全体の四割にもなる、こういうような数字が出ておるわけでございまして、商店街の衰退というのは大変な、社会問題に近いものがあるのではないかなと思います。  このために、昨年来、中心市街地活性化法等をつくりまして、七千億を上回る予算もつけまして、そしてそれなりの努力はしておるわけでございますけれども、なかなかこれが、仮に施設として完成いたしましても、商店街はきれいになったけれども客は来ないということがあるのではないか。残るのは、そのために分担したローンがまた残ってしまう、こういうようなこともあるのではないか。そういうことを危惧しておるわけでございます。  まだ制度ができたばかり、法律ができたばかりで、これから各地区において具体的な予算の執行がなされるわけでございますが、私が恐れているようなことにならないように、ぜひとも十分な工夫が必要なのではないかなというふうに思います。  と申しますのは、昔と違って、貧しい時代と違って、今は本当に飽食の時代であります。したがいまして、商店街に来る人は、買い物に来ると同時に何か遊びに来るわけですよね。ところが、旧の商店街が幾らきれいにいたしましても、そこには、喫茶店があり、レストランがあり、洋品店はあっても、遊び場所がない。したがって、そこにはなかなか若者が近づかない。こういうようなことが往々にしてあるのではないか。  また、自動車文化の時代でございます。商店街に車を乗り入れるには駐車場がない。そのために商店街に行かない。近くの大きいスーパーへ行ってしまう。こういうようなこともあるのではないか。  こういうふうに見てみますと、やはり今の若い人たちの、そしてこの豊かな時代における人々の行動を、行動科学分析ではございませんけれども、きっちりと分析して、どのようなことをすれば商店街の活性化につながるか、よくよく工夫をし、そこに個性を見出していかなくてはいけないのではないかというふうに思うわけでございます。  商店街をきれいにするということはだれも反対できない、すばらしいことでありますけれども、そのことによって客を寄せ集める、にぎやかにする、活性化するという目標が達せられなければ、幾ら金を使ってもそれはむだになるのではないか、そういうことを思うわけでございます。  今まで、既に骨格の法律もできました。そして、各地でその準備が行われているところだろうと思いますけれども、私の危惧を前提にいたしまして、今どのようにしておられるか、そしてどのようにこれから進めていかれるおつもりなのか、総括政務次官にもう一度お答え願いたいと思います。
  217. 細田博之

    細田政務次官 まさに竹本議員のおっしゃったとおり、全国各地、大都市といえども例外ではございませんで、全国津々浦々、商店街の問題が大きくなっており、しかも歯の抜けたように商店街がシャッターをおろすというような実態にございます。  こういうことではいけないということで、平成十年の六月にでき、七月に施行された中心市街地活性化法に基づきまして、市町村の基本計画をつくろうじゃないか、各市町村が一生懸命知恵を出して、そこで計画をつくってもらおうじゃないか。それに従ってやる事業については、例えばイベントを実施するにしても、あるいは駅前を整備するにしても、それから高齢者と買い物客が融合できるような施設をつくるとか、交通機関も一緒にやろうじゃないか、ありとあらゆる地元での知恵を出していただいて、この計画をつくっていただこうということでございます。  十月末現在では百七十五の市町が作成済みでございますけれども関係省庁で今統一窓口をつくっておりまして、ほかの市や町がどのような計画をつくっているかが行けば見られるというような状態になっております。これはいずれインターネットで全部見せなきゃいけないと思いますけれども、今はそういうアドバイザーもたくさんおりますので、ぜひ地域の方がお勉強いただきまして、最も地元に合う政策をとっていただく。それに対して、公共事業ですとか、あるいはその他の地元の協力、そして通産省を初めとするさまざまな支援の措置をとってまいりたい。そうやって一つ一つ努力されることが一番大切なことではないかと思っております。
  218. 竹本直一

    ○竹本委員 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わらせていただきますけれども、中心市街地の活性化につきましては、世界各国の例も見ながら、特に、例えばオランダあたりはロッテルダムとかノートルダムとか、いろいろダムという言葉がございますけれども、あれはどうも広場を意味しているのではないかというような説を読んだことがございます。広場のあるところに教会がありまして、教会へお参りに来る。ついでに買い物をして、そこで遊んで帰る。要するに、実需と遊びを一体化した、そういう工夫ということがどうしても必要なのではないか。  本当に広い心で、そして弾力的にこの予算の執行に当たっていただきたい、最後に御要望申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  219. 中山成彬

    中山委員長 中野清君。
  220. 中野清

    ○中野(清)委員 公明党・改革クラブの中野清であります。中小企業基本法の一部を改正する法律案について、何点かお伺いいたします。  中小企業の憲法とも言えますこの基本法の改正は、いわゆる三十六年ぶりの改正でありますけれども、この改正への中心的な議論は、本年の九月二十二日の中政審の答申があると私は理解しております。  この答申におきまして、第一部の二十一世紀を展望した中小企業政策の基本的な考え方、二部の具体的な政策の方向性、特にセーフティーネット等の考えにつきましては、今回中小企業国会と言われる政府の姿勢や熱意をおおむね理解するものでございますけれども、この答申の中で、現行の中小企業基本法が想定した中小企業数の過多性、企業規模の過小性という画一的な中小企業像を前提とした大企業と中小企業との間の格差是正という政策理念とこれに基づく政策はもはや現実に適合しなくなっている、こうした中で中小企業イコール弱者として講ずる一律硬直的な保護政策は効率性を阻害し、能力ある中小企業、意欲ある創業期の中小企業の成長を奪い、中小企業の活力を喪失させるとの指摘がされておりますけれども、この認識は、私は理解に苦しむところであります。この点について、通産大臣は現在どのように考えているか、お伺いしたいと思います。  あわせて、中小企業経済的弱者としての現実像を前提として、そのための底上げ的な施策を講じてきたというのが今日までの現行の基本法の有力な手法、政策であったと私は考えます。通産大臣は、中小企業は保護育成だけでなく、日本経済の牽引車として新しい基本法を制定したいとおっしゃっておりますけれども、現実の中小企業の大部分は経済的弱者であるということをどう認識していらっしゃるか、お伺いしたいと思うんです。  今御答弁いただきますと、格差が厳然としてあるということもおっしゃっていらっしゃいますので、認識としてはどうも一緒だと思うんですけれども、特に前段に申し上げました答申について、ちょっと私ども疑義がありますので、お伺いしたいと思います。
  221. 深谷隆司

    深谷国務大臣 委員の御指摘のように、指標を見る限り、中小企業と大企業の間に格差があることはそのとおりでございます。ただ、今までの基本法に書いておりました格差是正というのが、近代的な大企業と非近代的な中小企業という、こういう形での二重構造を想定しての格差の是正でありましたので、その言葉を変えていこうというふうに考えたわけでございます。今日では、中小企業こそが日本の経済を支える活力の源泉になっている、そして雇用の源泉にもなっているというふうに判断をいたしまして、その中小企業の持てる力、これを自助努力思いますけれども、それと四つに取り組んで支えていくことがこれからの時代にふさわしいのではないか、そのように判断したわけでございます。  そして同時に、零細なといいましょうか小規模の企業について、まだ多くの企業が非常に自立に苦しんでいたり経済の不況の状態から脱し切れないために、景況感が悪いとかいろいろな悩みを持ち続けておりますから、この皆様に対しては従来と同じように、あるいはそれ以上に対応を考えて適切な政策を打ち出していこう、もっと言いかえれば、基本法では画一的に中小企業をとらえておりましたものを多面的なものと考えまして、それぞれにふさわしいきめ細かな政策を推進していこう、こういう考えであります。
  222. 中野清

    ○中野(清)委員 大臣、御答弁ありがとうございました。私も大臣がおっしゃった意味での御努力は十分理解します。しかし、今政治が求めているのは、いわゆる思いやりのある温かな政治だということは御承知のとおりです。  今、数字についてはいろいろと大臣おっしゃいましたから、私から申し上げたいのは、我が国のようなより成熟した資本主義社会におきまして、中小企業の保護政策だからといって、審議会なんかの答申が言っているように中小企業の自立性を奪うような政策というのを私は今まで余り中小企業庁はやっていなかったと思うのです。むしろ、そういう意味ではほかの、いわゆる農林とかなんかについてはあったと思いますけれども、むしろ、私も商売の現実におりまして、そういう意味での今日までの努力というものはきちっとやっていると私は思っております。  そういう中で私は申し上げるのですけれども、今大臣も、格差があるともうお認めでございますように、そうなってきますと、むしろ私は、そういう意味で格差是正というのは永遠の課題なんだと。これは資本主義経済、こういう競争社会においては当然あるわけでございますから、その事実を認めて、温かな、思いやりのある政治をやるということが一番大事でありまして、そうしますと、この答申の認識というものが、私は必ずしも、そういう意味で日本の中小企業現状というものに対して正しく認識しているかどうかという疑問を抱かざるを得なかった。大臣の御意思とはちょっと違った方向で先ほど言った答申の言葉がひとり歩きをするということを非常に恐れております。どうか、そういう意味でもう一度御答弁いただければありがたいと思います。
  223. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中野委員の御指摘は全くそのとおりでございまして、私も同じような考え方を持っています。  私の申し上げている旧来からの格差是正というのは、何回も申し上げてまいりましたが、大企業を近代的ととらえ、中小企業を非近代的ととらえた二重構造の中での格差を是正せよという意味合いは、もう時代おくれだという判断であります。むしろ中小企業はもっと先頭に立って、活力の源泉になっていただく、経済の担い手になっていただきたい、そのためには自助努力も含めて頑張っていただく、それを正面から支援をしていくという考え方でございます。  一方で、それでは小規模の方は置き去りになるのかというそんな懸念も、そういう声もたまに聞かれるものでありますから、それは政策的にはむしろ今まで以上にしっかりお守りしていくのだという考え方を明らかにし、それに対する具体的な施策も既に発表しているところでございます。
  224. 中野清

    ○中野(清)委員 それで、今大臣の御答弁で私ども安心しましたけれども、どうかこの答申の見解については誤解がないように、これからもこのことについての、答申の文章については、率直な話、多くの中小企業ががっかりしておりますし、それから、こういう形でもってやってくるということが、私は政府の、大臣の趣旨じゃないと思っていますから、そのことについて確認をさせていただきたいと思いました。  続きまして、そういう格差が依然としてある、そういうことの中に幾つかございますから、私は四つだけ大臣のお考えを伺いたいのは、例えば、金融税制問題の中に、大企業に比べて高い借入金の金利という現実があります。  それから、例えば先ほど来貸し渋り等出ておりますけれども、借り入れ時の担保、保証人。個人的に、またかつ無制限なリスク負担、これは、私も実は中小企業をやっておりますから、今日まで全部保証人をとらされておりまして、これはもう皆さんどなたも感じている姿であります。それが二つ目。  それから三つ目は、よく優越的な地位の乱用なんということで言っておりますけれども、現実に、大企業との取引におきましては、支払い代金の遅延だとか長期の手形だとか、場合によりますとその手形がジャンプするとか、いろいろなそういう意味での、優越的な地位の乱用というような格好での横暴があるはずです。  それからまた、いわゆる事業継承時における高過ぎる譲渡課税とか、そういうことが挙げられるわけでございますけれども、これらについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。  しかし、私は、スケールメリットの追求というのは、これは別に、大企業だろうと中小企業だろうとあると思います。経済的な合理性を追求するということを決して否定するわけじゃありませんから、そういう意味で、どういうふうなお考えがあるかということについて、この現状を、実は大臣、特に私も仕事の関係大臣選挙区の台東区、合羽橋なんかによく取引先がおりまして、お話も伺いますけれども、どうお考えになっていらっしゃるか、お伺いをしたいと思うわけでございます。そしてその中で、今言った格差是正、その中のいわば取引条件の是正というような問題をどうおやりになっていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  225. 細田博之

    細田政務次官 まさに中野先生、中小企業を経営してこられて、長年の御経験がおありになりますから、もう釈迦に説法でございまして、その時々の金利水準等によりますけれども、高い金利ですとか個人保証を求められる、そして再手形発行あるいは格差の問題、それから代金の支払い遅延等々、大きな問題が中小企業、各個別の企業にとってはあるわけでございます。  新基本法におきましては、重点施策として経営基盤の強化を位置づけまして、中小企業が弱みを克服し、強みを伸ばすことができるように、経営資源等の面で支援するということにしております。  具体的には、資金の供給の円滑化や租税負担の適正化について、二十三条、二十四条で定めるとともに、取引の適正化の規定、二十条についても盛り込んでおります。引き続き、多様な中小企業に対しまして、きめ細やかな政策展開をいたしてまいりたいと思います。  なお、高金利問題と保証問題については、できる限り、今のような危機的状況の中で、安い金利かつ信用保証の拡充を図っていることは御存じのとおりでございますし、下請代金の支払い遅延等の問題につきましては、下請代金支払遅延等防止法に基づく措置法律的には予定されておるわけでございます。  以上でございます。
  226. 中野清

    ○中野(清)委員 ありがとうございました。  それでは、続きまして、中小企業の範囲についてお伺いをしたいと思うんです。  中小企業の定義は、我が国におきましては、いわゆる資本金や従業員という量的な規定でありまして、今回は量的な拡大であると思っております。  私は、第一に、一律に範囲を定めることについては限界がないのかということについてお伺いをしたいと思うんです。この際でございますから、資本金が、工業で三倍、卸売業で三・三倍、小売業で五倍となった根拠は何かということについても明らかにしていただきたいと思うんです。  さらに、物価水準が昭和四十九年に比べますと約二・四倍ということになっておりますけれども、これは消費者物価のはずなんです。そうしますと、日銀の統計調査によりますと、卸売物価指数は、昭和四十九年、一九七四年を一〇〇としますと、この一九九八年、バブルの崩壊、物価下落後の傾向もあって一二五となっておりますけれども、これはいわゆる消費者物価よりも卸売物価の方がより企業の業績を反映していると思います。そういう点では、少し無理があるような気がいたしますけれども、簡単で結構ですから、この点をお伺いしたいと思います。
  227. 茂木敏充

    茂木政務次官 中小企業の範囲の引き上げについての御質問でございますが、中小企業基本法におきます中小企業の定義、これは昭和四十八年の前回改正から二十六年が御指摘のとおりたっているわけでございまして、その間に企業活動を取り巻きます経済指標も大きく変化をしている。  そこの中で、物価の上昇率の問題でございますが、卸売物価でいいますと、委員からも御指摘いただきましたが、昭和四十七年から平成九年で一・七五倍にたしかなっていると思います。その一方で、消費者物価指数につきましては二・八三倍、一般的に使われておりますGDPデフレーターでとりますと二・四二倍、こういう形になってまいるかと思います。同時に、一企業当たりの資本金額も、製造業で三倍、卸売業でも三倍、小売業で約五倍となっております。  したがいまして、今回の改定におきましては、資本金基準につきまして、製造業などで一億円以下から三億円以下に、そして卸売業で三千万以下から一億円以下に、また小売業で一千万以下から五千万以下に引き上げることとしたものでございます。
  228. 中野清

    ○中野(清)委員 今の御説明につきましては、消費者物価が二・四二倍というのは昨年の事実でありますけれども、私はそういう数字のことを言うのじゃなしに、実はこういうことの中で、中小企業の範囲の拡大によって一万六千社の中堅企業というものが多くなってきまして、既存企業への今までの施策が手薄になるという心配があるということが前提だということだけはまず御理解を願いたいと思うんです。  そういう意味で、もう一点お伺いしますと、アメリカとか先進国では、中小企業の定義というのは、今言った量的規制だけではなしに、独立企業であるとか、所有と経営がどのような形態をとっているかというような質的な規定に踏み込んだ定義がされているというのも御承知のとおりなんです。  今、資本金が引き上げられた場合に、例えば大企業の系列の中堅企業は、恐らくこれから連結決算になってきますと、分社化とか子会社化ということで、資本金が一億以下とか三億以下になってくるということは当然考えられる。では、そういう場合に、我が国の中小企業政策というのは、大企業の子会社や関連会社までを中小企業として救済するのかということについてお伺いをしたいと思うんです。  特に、中政審の答申では、いわゆる資本または議決権の一定の割合を他の企業に保有されているかどうか、いわゆる企業の独立性については施策の目的に応じて適切に考えていくということしか書いていないのです。ですから、非常に誤解を受けやすいと思いますけれども、この点について具体的に明らかにしていただきたい。  例えば、では、中金で大企業の関連会社や子会社それから分社が全部融資を受けられるのかどうか、具体的にお答えを願いたいと思います。
  229. 茂木敏充

    茂木政務次官 大企業の子会社、関連会社につきましては大変重要な御指摘をいただきました。  我が国におきましても、現在中小企業におきます多くの施策では、大企業の子会社はその対象から排除をされております。今委員指摘の中小公庫法、商工中金法等の金融支援に関しましては、個別金融機関の内規等におきまして、大企業の子会社等を対象としないこととなっております。その一方で、商工組合等につきましては、中小企業にとっても利益がある、こう考えまして大企業等の加入を認めておるなど、大企業の子会社の存在も明示的に排除していない場合もございます。  このように、基本法上で一律に大企業の子会社を排除する規定を設けるのではなく、個別の施策の事情に応じ、適切な対応をとることとしたいと考えております。
  230. 中野清

    ○中野(清)委員 どうもありがとうございました。今の御答弁で、ぜひ誤解がないように運営をしていただきたいとお願いをしたいと思います。  次に、中小企業の資金の供給の円滑化と自己資本の充実について、特に政府系金融機関が新しいニーズにどのように対応できるか、この問題について私はお伺いをしたいと思います。  今般、来年度に向けて、十兆円のいわゆる金融安定化特別保証制度が延ばされるという見通しができましたことを、これは貸し渋りを受けて資金繰りに支障を来しているところの中小企業に対する政府の力強い施策と私も評価をいたしております。  そういう中で、たびたび中政審の答申を申し上げますけれども、これは基本だと思いますから申し上げます。この答申の中におきましては、政府系金融機関というものはいわゆる民業補完を基本にしておりますけれども大臣も御承知のとおり、これは今日までの民間金融機関による貸し渋りの現状を正確にとらえていないと私は思っております。むしろ、今日こそ、政府系金融機関の役割というものは民間金融機関の補完という役割から脱却をしてもらいたい。しかも、答申では保護から競争だと言っているわけですよ。そう言いながら、この問題だけはなぜ前と同じにするのだということを私はあえて言いたいと思うんです。  ですから、そういう意味では、民間金融機関、中小企業金融の中で今は八・六%しかシェアがありません。しかもそれの中で、今度は一万六千社もふえるのでしたらば、少なくとも一五や二〇%ぐらいまで政府系金融機関というもののシェアアップをしていただきたい。これは当然だろうと思うんです。  そういう意味で、深谷大臣には、特に中小企業大臣としての第一年度としてこれをお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。特に、商工中金や中金、国金への出資金とか金利の減免とか融資枠の引き上げとか、そういう点についてのお考えをぜひ大臣から率直にお伺いをしたいと思います。
  231. 深谷隆司

    深谷国務大臣 民間金融機関の貸し付けというのが通常の融資の中心になるということは、私は今後も変わらないと思っております。民間金融機関が貸し渋りを行うために、補完的な政府系の金融機関を拡大したり臨時の二十兆というのを用意したのであって、これはこれからも十分足りるように準備はいたしますけれども、まず民間の金融機関が正常な形に立ち戻って、中小企業の実態をとらえて正確にそれを発展させるために協力するような、そういう姿になってもらうことが一番大事なことだというふうに考えます。  それから、ただいまのお話の中で、例えば中小企業の定義を改良するということで一万六千社がふえる、そうすると既存の金融関係の融資の枠がその分とられてしまうということでありましたが、一つは、一万六千社というのは既存の中小企業の約〇・三%、本当に数の上では微々たるものであります。  それと同時に、昨年の六月に金融関係の定義の改定をいたしまして、既に増加する企業の一万六千社のうちの一万二千社は、金融関係の定義ではもう既に決めておりまして、融資の対象になっています。例えば卸業でいいますと、今回資本金一億円と上げるわけでございますが、本来は三千万円でございます。しかし、昨年の融資の関係でいきますと七千万まで枠を広げておりまして、そういう意味では、このことによって、小規模企業、他の融資が薄められる、少なくなるということはないと考えています。
  232. 中野清

    ○中野(清)委員 今の御意見については、大臣中小企業が御専門ですけれども、私も実はこれについては、ある程度経験者としますとちょっと異議がございます。  と申しますのは、大臣は、金融について競争というものについてのお考えが、実は民業と政府系金融機関というものが、設備投資するにしたって、競争的な立場もあるのですよ。そうしますと、それをきちっとしておいてもらうということは、実は民間の金融機関に対して中小企業がある程度の、例えば中金で借りますとか国金で借りますと言えるだけの力を持たなきゃだめなんですよ。  そういう意味で私は申し上げているのですから、そういう意味で私はぜひ、今大蔵省なんかとか金融機関は、民間金融機関の補完なんてだめだ、補完だということについては、これは中小企業の庁としての通産省の悲願として、その言葉をなくしてもらうように御努力願いたいということをまず要望したいと思います。
  233. 深谷隆司

    深谷国務大臣 先生の御指摘はまことにごもっともだというふうに思います。例えばこのたびの中小企業の枠を広げました一万六千社を考えてみましても、旧来は民間金融機関からのみお金を借りておりました。今度から政府系金融機関から借りられるということになりますと、お説のとおり両方で対応できるという意味で、民間の貸し渋りにこれは抵抗できるという面もあることはそのとおりでございます。
  234. 中野清

    ○中野(清)委員 今そういう大臣の御発想でございますから、期待させていただきますけれども、特に私が、この間の活性化法のときに近代化資金の話がございまして、そのときに、御承知と思いますけれども、今まではいわゆる設備だとか業種についての限定がございましたけれども、私がこの委員会でお願いしまして、これを取っていただきました。しかし、所要資金の半分で四千万、期間も五年から七年ということで、そのことについては努力をしておりますが、しかし、これは小規模対策であるということ、それから無利子だということで、その限界があったと思うのです。  私は先ほど来、この十兆円の緊急対策については、そう三年も五年も続けるというのは無理だと思います。それでしたら、今いろいろな意味景気対策ということを考えるときにおいて、これはぜひ深谷大臣時代に、少なくともこれは期間も十五年から二十年とか、それから利息も、これは私は何も無利子じゃなくて結構だと思うのです。二・五とか三とかというようななるべく低い金利でお願いできればいいと思いますし、金額も、さっき言った四千万なんという金額じゃなしに五億とか十億とかというような、いわゆる長期的な新しい別の角度からの設備投資資金といいましょうか、これはぜひ、先ほどおっしゃった民間金融との競争という中においても、政府系金融機関としての大きな融資の枠をつくる必要がある。  そういう点で、ぜひ私は、そういう意味での必要性というものを痛切に感じておりますし、これが恐らく、これから貸し渋りなんかのときの有力な長期的なものとなってくる。しかも、それが今の景気対策の中においても、いわゆる長期的なものでございますから、返済ができる。そういうことでぜひ、御決意があったらば言っていただきたいと思います。
  235. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業等への設備資金の円滑な供給というのは、活性化の観点から大変重要だと思っています。このために、当省としましては、中小企業の設備資金調達の円滑化に資する多くの貸付制度を実施しています。  例えば、具体的に言いますと、事業拡大のために設備投資を行う中小企業者を対象に最長十五年という貸付期間をお認めする中小企業事業展開支援貸付制度、これは昨年春の制度発足以来五千億円以上の利用があるというふうに、着実な実績を上げております。また、さきの国会で成立した経営革新支援法に基づいて、設備資金の貸付期間として最長二十年まで認める中小企業経営革新等支援貸し付けを創設し、七月から受け付けているところでございます。  今後とも、中小企業の設備投資需要の動向を注目しながら、一層努力をしていきたいと思います。
  236. 中野清

    ○中野(清)委員 大臣、今おっしゃったとおりなんです。ただ、私がお願いしたのは、今言った支援法なんかにしましても、どうしても通産省の場合、業種とか業態とかいうのでこだわり過ぎちゃっている。ただ一本、設備投資というのはこれだというふうにだれもがわかるようなものをつくってもらいたいというのですよ。それだけぜひお願いしたいと思います。  それから最後に、実は商工ローンについてお伺いしたいと思うのですけれども、御承知のように、根保証の問題とか、利息制限法とか出資法で二〇%とか一五%とか四〇%という高金利とか、いわゆる強引な取り立てとかという社会問題になってしまった商工ローンについて、これについては今、大蔵委員会とか法務委員会とかで別の角度での討議がされておりますけれども、私は、きょうはこの商工委員会として、中小企業政策として我々が反省しなきゃいけなかったはざまがあったなという点で、何点かお伺いをさせていただこうと思っています。  といいますのは、やはり今までに、例えばマル経とか国金とかいろいろな制度をやってきたけれどもそれで救えなかった、そういう現実があったということをどうか大臣も、御認識だと思いますけれども、これについて何点かお伺いしたいと思います。  私は、この商工ローン問題の原因としては、金融機関のいわゆる早期是正措置、融資の回収というものがあったということはもう間違いない事実ですよ。それからまたもう一つは、いわゆる監督庁の検査マニュアルでもうがんじがらめにやってきたということも、私はそのことをきょうは問題にする気はありませんけれども、そういう意味で非常に問題があったということは事実であります。  その中で、実は商工ローンをやる方というのは、むしろ国金とか保証協会へやる、そのような書類とか何かをできない方が、しかも機動性といいましょうか、きょうとかあしたとかあさってお金が欲しいとかというようなお立場の方が比較的多い。そういう方がどうしてもねらわれやすいという現実の中で、幾つかお話をしたいと思います。  一つは、やはり私は、銀行はけしからぬと思っているのですよ。それは、政府の大きな公的資金助成を受けて、二・五とか三%で貸しますと、それを今度は片っ方の商工ローンの方が十倍ぐらいで貸す。これをやっていて自分で、私は違うのだとやっておりますけれども中小企業代表する通産省、中小企業庁として、これは少なくともこういうものについてペナルティーをしてもらうというような問題、また金融機関名の公表とか、そういうことをやはり要求すべきだろうというのが一点であります。  それからもう一点は、やはり政府の、昨年の十月に特別保証枠をやっていただきました。これは、ある意味で私ども政府思い切った施策として評価しておりますけれども、決して私は、甘やかせるという意味じゃありませんけれども、今の国金だとかそれからマル経とかという制度だけでもって救えない方がいらっしゃる。それについてどうしたらいいかについては、例えば金利をもう少し上げるとか保証料も上げてもらうとかということもありますけれども、少なくとも一割五分とか二割とか三割だというようなばかな、絶対に返せないような利息じゃないわけですよ。  私も、実はいろいろと相談を受けたときには、こういう町の金融のときには、なるべくそれはやめた方がいいよ、そしてそれを何とか国の資金なんかで、なるべく長期にしてもらって、その人たちが返せるような対策を立ててやらなければ、再生ができないわけですよ。その点で、そういうような、保証をするとか何かそういう手だてを、これはもうはっきり申し上げて、先ほど言ったいわゆる企業としての話ではない状況でございますけれども、どうかということをひとつお願いをしたいと思います。  それからもう一点は、実は私は、この議会におきましていつも、独禁法とかを含めて、優越的な地位の乱用を含めまして、いわゆる商工会議所とか商工会の役割については非常に高く評価をしております。今回、こういうような商工ローンの問題が起きて、この業者の人たちに営業として言われたときに、そういう場合において、少なくとも相談をするような人たちというのは全国で恐らく一万二、三千いると思いますけれども、商工会議所や商工会の相談員だとか指導員とかという人が、実はそこに一つの大きな役割があるはずなんです。しかも、それは借金の話でございますから、そう親戚や友達に簡単に言えるわけはないんですよ。  そうしますと、その中で、今こそこの人たちにどうやったらばやってもらえるか。しかし、そのときにおいては、恐らく今までの制度だけやっていたのでは、相談員も相談されて困りましたというだけで終わりになってしまう。そういう点についてのいわゆる温かい政治の、思いやりの行政というものがあるはずだということについて、私は、そういう意味でこの問題についてのお願いをしていきたいと思うんです。  ですから、商工ローンの問題を、確かに貸し手の方の企業については非常にけしからぬ、私もそのとおりだと思いますし、これについては政治がそれに対するいろいろな対策をすべきだ。これは当然だと思いますから、ぜひお願いしたいと思いますけれども、事中小企業庁にとって、これは一つの大きな他山の石だと。  つまり、中小企業金融、特に零細金融に対しての、これは非常に問題がある。しかも、それは恐らく帳簿も余りつけたこともない方、または、資金もあしたとかあさってとかすぐ下さいとかというようなことで、非常に論理的には難しいというようなことについては十分理解しておりますけれども、しかし、それでもやはり我が国民であります。つぶれてもいいんだ、財産もとられていいんだ、保証人に迷惑かけてもいいんだということにはならないわけでございまして、何とかこの辺についての政治の温かい光というものをどうやって与えられるか。  これについては、特に深谷大臣の格段のお気持ちがありましたらば、最後に御決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  237. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今、いろいろな御提言が中野議員からございました。例えば、高いリスクに応じた高いリターンを求めるといったような、そういう考え方で多様な資金供給が行われるべきではないか。私は、この認識は全く大事なことだと思っていまして、それは今後に向けての課題だと思っていますが、今までそういうとらえ方をしていなかった。これは、そういう分野にほとんど対応しておりませんでしたので、御提言を大事に受けとめて前向きに検討させていただきたいと思っています。  それから、商工ローンを借りる人たちのことに触れられました。どういう方たちかということまであえて私が申し上げるべきではございませんけれども、やはり必要に応じて、その方たちにきちっとした道筋を御指導申し上げたり、対応をお答えするということはとても大事なことで、商工会、商工会議所等でやっておりましたが、私たちのところも、中小企業庁とかあるいは地方通商産業局、それから政府系金融機関等もそれらの窓口になってきたわけでございます。  そこはよく温かく対応して、足らざるところはきちっと補っていけるような、そういう形をとるべきだと思います。一方でまた、三百の支援センターをつくると申しましたが、そこなども活用できるようにしていきたいと思います。
  238. 中野清

    ○中野(清)委員 今、大臣のお言葉でございますから、ぜひともこの商工ローンの問題については、政治としての温かい手を何らかの形でやっていただきたいと心から御期待を申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  239. 中山成彬

    中山委員長 遠藤乙彦君。
  240. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 公明党・改革クラブの遠藤乙彦でございます。  両大臣初め、答弁者の方、大変長時間にわたりまして御苦労さまでございます。今国会は別名中小企業国会とも言われまして、最重要のテーマとして、今中小企業問題が議論されているわけでございます。両大臣とも大物大臣をそろえ、また政務次官方々も粒ぞろいの精鋭をそろえまして、期待するところ大でございまして、大変ハードなスケジュールでございますが、ぜひとも頑張っていただければと思うところでございます。  さて、既に同僚議員方々からいろいろ質問が出ておりますので、若干重複を避けて、少し違った角度からお聞きをしたいと思っております。  理念の問題につきましては既に御答弁がございましたので、少し角度を変えまして、今国会、特に国民方々、また中小企業方々、大変長引く構造不況で疲弊をしておられまして、一刻も早く何とかしてほしいと切実な思いで見詰めているわけでございまして、そういった方々に対して、政府として今回の中小企業問題、国会審議を通じてどういうメッセージを送ろうとされているのか。非常にそもそも論になりますけれども、これは両大臣にお聞きしたいと思っておりますが、まず深谷大臣にお願いしたいと思います。
  241. 深谷隆司

    深谷国務大臣 一つは、何よりも景気回復が大前提でございます。一月から三月のGDPのプラス、それから四月から六月にかけて、若干訂正はしましたけれども、プラス傾向にある。来年は〇・五%以上の数値を出そうということで今努力中でございますが、ようやく明るみが出ましても、まだ設備投資その他もろもろ問題が残っていますし、雇用の問題もございます。為替もあります。片時も油断できませんので、経済対策を今国会できちんと出して、一層のてこ入れをしていこうと思っているわけでございます。  一方、中小企業というのは、旧来からの物の考え方でいきますと、何回も申し上げておりますが、大企業対中小企業という対比で物を見て、近代的か非近代的か、そういう差で、それを埋めるのが格差是正だ、こう考えていましたが、そういう後ろ向きでなくて、もっと積極的に、経済の動向を見ながら、中小企業が活力を出して先頭に立っていただくような、そういう状況に持っていきたい。そのためには、中小企業の持てる技術だとか意欲だとか、そういうものに国が正面から四つに組んで対応できるような形にしたい。それが中小企業に対する物の考え方の大きな転換だ、そんなふうに考えているわけでございます。  同時に、重要なのは、だからといいましても、まだまだ自助努力ができないような小規模の皆さん方もおられるわけでありますから、この方面に関しては手厚い、先ほどもお話がありましたような心の通った対策をとっていくことが大事だと思っております。
  242. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず申し上げたいのは、中小企業こそ夢と希望と勇気の宝庫だと思っております。  今まで、中小企業はだんだんと大企業に侵食されてなくなっていくというような思想がありました。したがって、何とかこれをカバーして支えていかなきゃならぬということでございますけれども、今見ますと、八〇年以降、アメリカでもドイツでも物すごい勢いで中小企業がたくさん出てきている。この知恵の時代こそ中小企業に大きなフロンティアを与えたんだ。だから、中小企業皆さんも夢と勇気を持ってやっていただきたいし、これからどんどんと企業を起こして中小企業に入っていただきたい。それは、単にハイテクだけではなしに、家事のアウトソーシングのような、生活に密着したところにもたくさんの働き口があるんだ、そういう夢と希望を持って、勇気を持って当たっていただきたいと申し上げたいと思います。
  243. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 両大臣から大変力強い、また希望を与えるような御発言をいただいて、大変心強く思っているところでございまして、政府側としては、今の両大臣の御決意、またビジョンに沿って、ぜひとも実質のある中小企業政策を展開していただきたいと強くお願いをする次第でございます。  そこで、まず堺屋長官にお聞きしたいんですが、今、現場の中小企業の最大の思いは、一刻も早く景気回復を何とかしてくれ、これが率直なところなんですね。もうこれ以上不況が続くと本当に沈没、倒産という状況でありまして、少しでも仕事を欲しい、何とか景気回復をというのが実は最大の願望であることは、私は現場を回って肌身で感じております。  そこで、ずばりお聞きしますけれども長官といたしまして、景気回復宣言はいつになるか、そしてまた、どういう状況になったときにそういった景気回復宣言ができるかということをまずお聞きしたいと思います。
  244. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 景気は一時よりは、去年の今ごろに比べますと幾分よくなってきた。中小企業の経営者の方々の見方も幾分よくなってきたというものの、非常に依然として軟弱な状態でございます。ここで政府といたしましては、経済新生対策をとりまして、もう一押し二押し景気を振興していきたいと考えております。  景気がいつになったら回復宣言ができるのだということでございますけれども、回復宣言というのは、そういう言葉は使っておりませんが、やはり景気がよくなったと実感してもらえるというのは、消費が伸び、続いて設備投資がやはり回復するときだろう、こう考えております。  現在、大変設備が多いのでございますけれども、別の分野で、今過剰になっている分野ではなしに新しい分野でそろそろ出てきている気配がございます。これが本格的になる、それまで政府としては需要を支えていかなければならないだろうと考えております。
  245. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今三党協議でもまさにそういった考え方で、ことし、来年で何が何でも景気を回復させるという強い決意に立っておりますが、ぜひとも政府側としてもその点御配慮いただければと思っております。  今、両大臣から大変見識に富んだ、また力強い御決意があったわけでございますが、私自身中小企業の見直し、理念の見直し、大変重要なテーマであると思っております。  私自身思いとしては、今までの日本の特に明治以降の近代化、追いつき型発展を目指してきたものであった、それが今完全に条件がもう失われて、このままでは日本再生はできないという状況でありまして、その追いつき型発展のシステムをどうやって創造革新型に変えていくか、これは大変な作業に取り組まなければいけない、中小企業問題もまさにその一環としてどう位置づけるかということではないかと考えております。  追いつき型というのは、ある意味では先行するモデルがあって追いつくのはそれほど大きな努力は要らない。だけれども、モデルがない場合、例えば欧米型のモデルがもう今ないわけですけれども、そういったものをどうつくり出してどう二十一世紀型をつくるかということは至難のわざであって、追いつくのと新しいものを創造するのとは全然次元の違う話であるぐらいに私は思っております。  特に日本の場合には、追いつき型発展というのは、長年歴史の中に組み込まれた遺伝子と言ってもいいわけで、単に近代経済発展のみならず、そもそも言えば律令国家の時代、七世紀、八世紀の律令国家時代以来、周辺の国々をモデルにして追いつき型をやったわけであって、大変深くこの追いつき型という遺伝子が組み込まれていて、これを今根底的に遺伝子組み換えをしなければいけないということで、それは意識の問題、教育の問題まで掘り下げていかなければ本当のシステムというものはできないというふうに考えておるわけでございます。  そういった意味で、この中小企業、大きな星でございますので、ぜひともそういった視点に立って御努力をいただきたいと思うところでございます。  そこで今度は、総括政務次官にお伺いいたしますけれども、今回の新基本法の中ではベンチャー支援を新たに位置づけております。今回ベンチャー施策を重点施策として積極的に講ずることは私ども大変賛成でございますけれども政府の見解、なぜそういうふうにしたのか、どういう展望を持っているのか、改めてお聞きしたいと思います。
  246. 細田博之

    細田政務次官 最近の企業の状況を見てみますと、従来型の大企業が次々に大きな問題を起こしております。経営上の困難にも逢着しておりまして、他方、マイクロソフトのビル・ゲイツを例に出すまでもなく、情報関連産業とか、あるいは小売業の中でも直接インターネットを使う産業とか、それからインターネット関連のソフト産業とか、新しい企業が次々に出てきているわけですね。  これは、今までは聞いたこともないような企業、こういう創業をどうやって政策の中で取り込めるかということは長い間の懸案で、最近の懸案であったわけでございますが、現行のベンチャー施策あるいは創業支援策を見ても随分、平成七年、八年、九年、十年とできてきております。あるいは貸し付けに、あるいは出資に、あるいは税制、そしてまたあるいはソフト支援、研修、そういった面で次々に出てきております。  したがいまして、ベンチャーというのはなかなか育てていくのは大変でございますけれども、施策の活用によりまして、新しい芽が出ますようにこれからも一生懸命育ててまいりたいということがいわばすべてでございまして、ただ、なかなかこれまでにノウハウが蓄積されておりませんので試行錯誤しておりますけれども委員の先生方からも、各党からも、いいお知恵がありましたらどんどん採用させていただきたいと思います。
  247. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 このベンチャーの問題、今まで何度もブームになって、その都度騒がれてきて、なかなか実行が伴わないというのが現実ではなかったかと思っております。  ただ、今回の日本のそういった二十一世紀に向けて新生ということを考えますと最重要のポイントであると私は考えておるわけでございまして、今までのいわゆる市場というものを、特にその創造的機能をどうやって活性化するかという一言に尽きるわけなんですが、従来の経済学教科書は非常に資源の最適配分といったプロセスばかり重視をして、どうやって新しい技術や新しい製品が起こり、どうやって市場というものが今日まで創造的な文明をつくってきたかということは、この分析はほとんどされておりませんので、むしろそういった問題こそが大変重要ではないかと私は個人的に考えているところでございます。  そんな中で、ベンチャーというのは実は最も重要なポイントになるわけですけれども、いろいろなネックが実は日本の社会にあると考えられます。幾つかありますが、特にその一つは金融のあり方ですね。今までの日本の金融というものが担保主義であって、担保をとって貸すということが基本的に行われてきたために、本当に潜在的な可能性のある個人やまたプロジェクトに対して融資をするということは余りなかったわけで、それがこのベンチャーの大きな発展の足かせになってきたというふうに私は認識をしております。  そういった意味で、これからの融資のあり方は、やはり特にベンチャーに対しては担保主義ではなくて、プロジェクトファイナンスといいますか、そのベンチャーの持っているさまざまな経営理念、ノウハウ、内容、キャッシュフロー、そういったものに着目をして、しっかりと審査をして、それが本当に信頼性のあるものであり発展可能性があれば、それに信頼して貸していく、そういう方式をとる必要がぜひとも必要ではないかと思っております。  そういう意味で、これは茂木政務次官にお聞きしたいと思いますけれども、プロジェクトファイナンス方式の活用ということにつきまして、どういう見解をお持ちか、ぜひお聞きしたいと思います。
  248. 茂木敏充

    茂木政務次官 遠藤委員指摘のとおり、担保至上主義の融資、それから与信体制、こういったものを明らかに見直すべき時期に来ていると思います。特に、御指摘のベンチャー企業は、一般的に担保力が乏しいために、どうしても特にアーリーステージ等々で資金調達に支障を来しているのが現状であると考えております。  そこで、従来から行っております融資はもちろんでありますが、成長性のある企業が担保なしで発行します社債を政府系の金融機関が取得する、こういう形態も今後は活用していくべく、新しい制度中小企業金融公庫に創設しようと考えております。また、新しいサービス産業でありますが、ソフトウエアであったりとか特許権等の知的財産、これに対しましても担保設定というものを積極的にこれからは活用することを考えていきたいと思っております。  この制度は、ベンチャー企業を含む成長性のある中小企業に対し、将来の事業から生み出される収益というものに着目をしましてその資金需要に的確に対応するもので、委員指摘の点とほぼ合致しているのではないかな、こんなふうに考えておりますし、今次の補正予算におきましても所要の予算措置要求すると同時に、今国会に所要の法律改正案を提出すべく検討を進めているところであります。
  249. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 私は、現実的にこのプロジェクトファイナンス方式、茂木次官にもう一つ、これは事前に通告してありませんが、プロジェクトファイナンス方式というのは非常にこれは有効なあれだと思います。  もう一つは、私は、今の雇用情勢とも関連して、既にその芽は出ておりますけれども、新規の雇用に対する助成金ですね。これはもっと大幅に活用していいのではないか。そういったベンチャー企業が新たに雇用を拡大していくのについては大幅にこういった助成金を出していくような、既存の雇用ではなくて新規に拡大する分についてそういった補助金を出すことは、これは雇用問題の解決にもなるし、またそういったベンチャーに対しても大きな支援になると思いますので、ある程度このターゲットはセレクトしながらも、そういう方策を弾力的に活用することは非常に効果的であろうと。したがって、プロジェクトファイナンスとこういった新規雇用に対する助成金の組み合わせというものは、これはかなりの起爆剤としてベンチャーを支援できるかと思っております。  そういうことで、ちょっとこの雇用助成金という問題につきまして、通告はしておりませんが、茂木次官の御見解をお伺いいたします。
  250. 茂木敏充

    茂木政務次官 大変いい提案だと思って、前向きに検討させていただきたいと思っておりますが、中小企業の場合、施策としまして、プロジェクトファイナンス等々を含めた融資の問題、それから税制の問題、そして補助金の問題、この三つを有機的に組み合わせていく、このことが重要だと考えております。  例えば、特別保証制度を延長させていただいて、拡大をさせていただくわけですけれども、従来の貸し渋り対策、これを基本といたしますが、同時に、雇用の増大であったりとか建設的な努力に対しても対象要件に加える等々の積極的な対応も図ってまいりたいと考えております。
  251. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 今、ファイナンスの問題を申し上げました。  もう一つ、あるいはもっとより本質的なネックは、先ほども委員の方から御質問がありましたが、教育、文化の問題、意識の問題ではないかと思っておりまして、ベンチャー文化といいますか、そういったものはまだ日本にはほとんど育っていないということが根底的なネックであろうと私は感じております。  特に日本の教育、近代の教育というのが、追いつき型を主眼としたために、どうしても知識偏重ですね。既存の知識をどうやって効率的に注入するかというところに主眼が置かれまして、知識偏重、画一型、偏差値型になったわけで、ある意味では、これは追いつき型には非常に効率的なやり方かもしれませんけれども、これからのベンチャー、創造革新型にとってはむしろ逆にネックになってくるというふうに考えるわけですね。  むしろ、教育あるいは思考方法としては、何が問題であるかを認識、識別し、どう解決するか。問題解決型、そういった思考をつくらなければ、創造的な問題解決型の教育、思考というものを定着させなければならないだろうと考えております。これは何もベンチャーに限らず、あらゆる分野にわたって必要なものであると考えておりまして、そういった意味では、教育改革は抜本的な改革が必要だというふうに考えております。  特にベンチャーが新しい仕事を始めるためには、どういう新しいニーズが起こってくるかといったことを先見性を持って見る必要がありますし、またどういう商品が売れるか、ネーミングも考える必要がありますし、また、どういうタイミングでそれをやるか、非常にクリエーティブな判断が必要になってくるわけでございます。今までの日本の学校教育からは期待できないものばかりでございまして、ベンチャーを育てるためには、日本経済を再生させるためには、教育との連動、教育改革との連動が不可欠だということをぜひともこれは認識していただければと思っておりまして、この点につきまして通産大臣の御見解を伺います。
  252. 深谷隆司

    深谷国務大臣 遠藤委員の御指摘は、全く同感でございます。  やはり今までの教育というのはどちらかというと記憶、暗記型でございまして、物をクリエーティブに考えていくということではないというところに日本の教育の問題点もありました。そこで、例えば創業精神を涵養するとか、国民意識全体の改革をしていかなければならない。その場合に、一番基本は教育だなというふうに考えます。  幸いといいましょうか、本年より、企業家精神涵養のための教材開発とか、学校と産業界との交流促進事業というのが行われるようになってまいりましたので、私は、文部省とよく相談しながら、そういうチャレンジ精神といいましょうか、そういうことを子供の教育の中にきちっと入れるようなことを考えていかなければならないというふうに思っています。  同時に、国民全体が、創業あるいはベンチャーということに対してもっと歓迎ムードで迎える、むしろこれをみんなで支えるんだという意識になっていくこともとても大事だと思っておりますので、教育改革と一般国民の意識改革というのが同時に進められなければならないと考えます。
  253. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 同じ質問でございますが、堺屋長官も大変高い見識を持っておられますので、ベンチャーと教育改革あるいは学校教育というテーマで、短くて結構ですので、ひとつお話しいただければと思います。
  254. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 教育の問題は、日本は規格大量生産をつくるために、できるだけ辛抱強くて、協調性があって、共通の知識があって、そして独創性と個性のない人間をつくったんですね。これが規格大量生産の世の中で一番使いやすかった。また、そういう人がいい成績をとるような試験、教育方法をとってまいりました。  これからベンチャー企業を起こし、新しい創造性を高めるとしますと、今の教育とはちょっと評価の違うようなものがやはり登場してこなきゃいけないのじゃないかと思っております。その点、最近、若い人たちも大分変わってまいりましたし、また一部では、学区制を廃止して選択制の小中学校をつくるというような地方自治体も出てまいりました。さらに、二〇〇二年には全部の学校にインターネットが通りまして、相互に情報交換が行われる。そうなりますと、従来の一律ではなしに、かなり多様な知識が出てまいりますので、いい影響があるのじゃないか。産業と教育とが一体化して前進できるというようなことも考えております。
  255. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 両大臣から大変力強い御決意を伺って、心強く思います。  三党協議の中でも教育改革国民会議を設置することが合意され、政府もその方針でございますので、ぜひ両大臣とも、ベンチャー、日本経済再生と教育改革という視点からも大いにひとつリーダーシップを発揮していただければと、心からお願いする次第でございます。  続いて中小企業対策、今見直しを行っておりますが、本来、製造業のみならず小売業とかサービス業とか、また福祉あるいはリサイクルとか、いろいろな分野にこれからそういったベンチャーあるいは中小零細企業が進出していくべきであります。  そういった幅広い視野、また未来志向を持った視点からこの見直しをしていく必要があるかと思っておりますが、これは若干の印象として、何となく、今の中小企業政策が製造業を中心に引き続き考えられているのではないかといった印象が一部あるやに見受けられますので、この点につきまして、これは政府参考人に伺いますが、果たしてそういうことなのか。  それとも、もっと新しい、二十一世紀型の産業構造を視野に入れた、例えば福祉とかリサイクル、あるいはさまざまなサービス産業、そういったことも視野に本格的に入れたものであるのかどうか。そこら辺につきまして政府参考人にお伺いいたします。
  256. 岩田満泰

    岩田政府参考人 創業やベンチャーを含めまして中小企業施策の対象につきましては、当然のことでございますが、製造業に限ったものではございません。  諸外国の例を見ましても、小売業の中における新しい業態の開発でございますとか、サービス業の分野においては大変広範な分野で創業が行われ、そこで非常に新しいサービスの提供が行われております。また福祉でございますとか、あるいは環境産業の分野と申しますのは、恐らくこれからの日本の経済全体の中におきましても成長のかなり期待できる分野でございますし、そういうものを中小企業の形でこれに取り組まれるのは、国民経済的にも期待をされますし、また十分に期待ができるものであるし、これを大いに支援していくことが必要ではないかと考えております。
  257. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 二十一世紀型のことを考えますと、いずれにしても、三党合意でも循環型社会元年というふうに言っておりますし、そういったリサイクル型、あるいは第四次産業というふうにも言われるかもしれませんが、そういったものは実は大変潜在的な可能性が高いと思われますので、ぜひ、そういった分野にも大いに中小零細企業を活用するような施策を展開していただくよう要望したいと思っております。  さらに、現実に創業していくあるいはまたベンチャーを起こしていくに当たって最も現実的に効果的なのは、やはりアドバイスをどうしてあげるかということですね。起業したいという人はかなりたくさんいますし、そういったチャレンジングな精神を持った人は相当多いわけでございますけれども、なかなかそういったノウハウや経験がないわけでありまして、現実的にベンチャーを促進していくためには、そういう経験のある、ノウハウのある人がアドバイスしてあげる、これが実は大変重要ではないかと思っております。私の地元も、実は大田区なんですが、職人かたぎの人が多くて、技術については非常に強い関心がありますが、営業とか広報とかネットワークとかはなかなか経験がないというのが現状でございまして、そういった分野を含めて、適切な具体的なアドバイスをしてあげることが非常に大事だと思っております。  そういった意味で、三百拠点のカウンセリングをやっていくということでございますが、具体的にどういう人材を集め、どういう機能を持たせていくのか、そういった点も含めましてお聞きしたいと思います。
  258. 細田博之

    細田政務次官 遠藤委員がおっしゃいましたように、中小企業に対するアドバイス等の支援事業を担当する人材の育成というのは非常に重要でございまして、現在は中小企業大学校におきまして、創業を支援する者を養成する研修、創業者支援指導者研修と言っておりますけれども、これを実施しておりまして、今後とも、適切な支援が行える人材の育成に努めてまいる所存であります。  また、昨年十二月に成立いたしました新事業創出促進法のもとで、地域における新事業創出の観点から、産業支援人材を活用する体制、いわゆる地域プラットホームも整備しております。今のところは二十二県及び三市に整備をされておりまして、着々と準備が進んでおるわけでございます。  さらに、中小企業の基本的な政策のあり方の見直しに伴いまして、中小企業の自助努力の支援等の観点から、公認会計士、中小企業診断士等の民間能力を最大限に活用して、創業・ベンチャー企業に対しアドバイス等を行うための体制、これは都道府県ごとの支援拠点の整備を検討しております。
  259. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 続いて、特別保証制度につきまして一言伺いますが、昨年秋の特別信用保証制度の創設、二十兆円の枠というのは大変大きな効果があったかと思います。これによって大量倒産、大量失業が避け得たということで、救命、おぼれかかった人を助けるという意味では大変大きな効果があったかと思っております。  また今回、通産大臣がさらにこれを一年間延長し十兆円の枠を追加するということを発表されましたことは、私ども、実は公明党自体が党大会で、基本政策として一年の延長と十兆円の追加枠ということを申し上げたもので、これは一〇〇%、満額回答をいただいたことで、大英断であるとして大変高く評価をしたいと思っております。  ただ、問題は、今後この運用でございまして、こういった信用保証枠の問題、現場の窓口等ではなかなか硬直的であるとか、あるいは銀行の側におきましてもなかなか思ったように融資をしてくれないとか、いろいろな問題が実はありまして、こういった運用面を極力改善し、柔軟に対応することがこの制度の趣旨を最大限に生かす方向でございますので、その点につきましてどのような措置を講じていくのか、これは政務次官にお伺いしたいと思います。
  260. 茂木敏充

    茂木政務次官 現場での運用についてのお尋ねでございますが、まず一つ重要なことは、融資に対する姿勢とか態度という問題でありまして、各信用保証協会の保証に対する姿勢として、過度に消極的にならないようにきっちりした対応をしていく。こんなことから、今次の補正予算におきまして、信用保証協会に対し補助金措置として九百億円を要求しているところでございます。  それから、現場の問題でありますが、私も幾つかの地域の信用保証協会を見てまいりました。昨年の十月一日から始まりましたこの保証制度、随分現場でも御苦労されて、この一年で経験を積んできている、こんな実感を持っております。  ただ、貸し渋り対策としての本制度の本旨が、現場においてもさらに委員指摘のように全うされるように、今後とも保証手続の迅速化の問題、それから窓口における親身な、そしてプロフェッショナルな対応等々につきまして指導を行い、的確な運用を確保してまいりたい、このように考えております。
  261. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 ぜひとも、きめ細かい、また柔軟な対応をお願いしたいと思います。  最後に、ちょっと時間がなくなってきましたので、商工ローンの問題、先ほど出ましたけれども、改めて、これは政府系金融機関の融資が円滑にいっていない、そこにやはりこういった商工ローン問題が出てくる大きな背景があるということは共通の認識ではないかと思っておりまして、この点につきまして通産大臣に、この認識とそれからどうこの問題に取り組んでいくのか、お聞きをしたいと思います。
  262. 深谷隆司

    深谷国務大臣 商工ローンが数々の社会的問題を惹起しているということに対しては、大変遺憾に思っております。また、商工ローンを利用する方たちのいわば認識ということも、とても大事なことではないだろうかと思います。  一方で、遠藤委員が御指摘のように、政府系金融機関の応援が十分でないからそうなっているのだという御意見も私は一つの御意見ではあるとは思っておりますが、しかし、政府といたしましては、平成九年以来何回も、経済対策を受けて特別貸付制度の創設や拡充等その措置を行ってまいりましたし、また信用保証協会の、先ほどから出ておりました特別の融資なども実施してまいった次第でございます。  そういう成果がございまして、例えば、倒産件数は大幅に減ったとか、あるいは昨年来の民間金融機関の中小企業向け貸出残高が減少している、そういう中で、信用保証協会の保証残高や政府系金融機関の貸出残高が着実に増加している。こういう数字を見ますと、必ずしも政府系金融機関が足りなかったという御指摘には当たらないようには思います。  しかし一方では、商工ローンの問題がこれだけ大きな社会問題になっておるわけでありますから、これに対する対応と、政府系金融機関がさらに中小企業を支える役割を果たすために全力を挙げるべきだと思っております。
  263. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)委員 持ち時間がなくなりましたので、私の質疑は終わりますが、一言。  中小企業問題、今議論をしておりますが、基本的には中長期の構造改革的な側面で今議論をしていると私は承知をしております。  ただ、現実の中小企業問題は大変深刻でございまして、それだけでは解決は非常に難しいと思っておりまして、三つの要素の合わせわざが必要だ。一つは今の構造改革でございますけれども、一つは、やはり何といっても金融ですね。これは既に手を打っていただいておりますが、ぜひともこれを十分にかつ柔軟に運用していくということが一つ。それからもう一つは、景気回復ですね。これがないとやはり借金も返せませんので、ことし、来年何が何でも景気を回復し、十分に中小企業にも仕事が回るようにしていかないと、これは中小企業は本当に存続できませんので。  これは、やはり大規模な金融オペレーション、これはいわば救命用具を投げるようなものですけれども、さらに本格的な景気回復、そして今議論しております中長期的な構造改革政策、いわばこの三本の矢がしっかりと調整され統合されて総合的な力を発揮するときに本当の意味での国民の期待する中小企業政策になるということを、私も現場の声をひしひしと感じておりますので、ぜひともそういう視点から中小企業政策、今後とも力強く展開をしていただくようお願いいたしまして、私の質疑といたします。
  264. 中山成彬

    中山委員長 塩田晋君。
  265. 塩田晋

    ○塩田委員 兵庫県第十区選出の塩田晋でございます。  私の選挙区におきましては、沿岸部に大企業があり、またその下請関連中小企業があり、また農村部が広く展開しておりますが、そこには、いわゆる農村工業、中小企業等が発展しております。いわゆる半農半工と昔から言われておった地域でございます。  今回の中小企業基本法の改正につきまして、御質問を申し上げます。  深谷通産大臣並びに堺屋経済企画庁長官におかれましては、卓越した識見とすぐれた実行力をもって日本の経済の運営に体当たりをしておられると敬意を表する次第でございます。また、これを支える総括政務次官を初め政務次官皆さん方、大臣を支えてはつらつとしてデビューをされました。大いに期待しておるところでございます。  私は、日本の経済の主力というものは、これは中小企業である、このように観念をしております。大臣はよく、中小企業は日本経済活力の源泉であると言われますが、その中身といいますか、中小企業に対する認識につきまして、私なりの意見を申し上げまして、また大臣のお考えもお聞きしたいと思います。  結論的に申し上げますと、経済運営の政策、これの中心を中小企業対策重視の政策に転換をしてもらいたいということでございます。抜本的な転換を図ってもらいたい。この中小企業基本法が改正される、これを契機にそのように大転換をお願いをしたいと考えます。  そこで、日本経済の主力が中小企業であるという意味でございますが、私は、日本の中小企業というのは世界的にも非常にすばらしいものだ、活力に満ち、そして非常な力を発揮しておる、このように思います。単に、中小企業は零細企業を含めて非常に惨めな状況で常に苦しめられている、弱者の立場だというような考え方、そういう一面もありますけれども、日本の経済を支えておるのは中小企業であり、日本の経済を今日このように生き生きとして成長させてきた、その原動力は中小企業である、このように思っておるところでございます。  なぜそのような中小企業の力が日本にあるかということにつきましては、やはり私は、日本はいわゆる瑞穂の国、農業の国であった、長年にわたりまして農業が日本の一大産業で最大の産業であった、ここからやはり発しているものだと思うんです。  私の地域におきましても、農村工業、これは徳川時代から明治にかけまして、また大正、昭和、平成と連綿として続いております中小企業、伝統的な産業もありますれば、また新規の新興産業も中小企業もあるわけでございますが、これが非常に創意工夫を発揮し、そして日本人の勤勉さ、これはやはり農業からきていると思いますが、そして団結といいますかお互いのつき合い、これを大事にしていく、その中で日本の経済を再興し発展をさせてきた原因があると思うのでございます。  そして、この中小企業というものは、自由競争の最も典型的に行われているところだと思うんです。参入が非常に容易でありますね。資本が余りなくても、知恵と度胸と、そして意欲、そして勤勉性があれば、小さいところからですとだれでも参加できる、こういう特徴があるわけでございます。したがって、農村におきまして、若干の資金の蓄積が行われたところで、いろいろな各種の特徴ある産業、中小企業が起こってきた、農村を中心にした農村工業が各地に散在し発展したのはその理由かと思います。  日本人の勤勉さにつきましては、やはり農業で大部分の国民が昔から暁、明星の星を仰ぎながら仕事を始め、そして月が高く上がるところまで一生懸命働いた、この勤勉さというもの、そして徳川、明治以降にかけましても教育に非常に力を入れた、この点から技術、技能が非常に発展をしたというところが中小企業の支えになっておる。そして、自主独立して創意工夫の中で競争し、そして今日の中小企業というものが生き生きと成り立っているということが基本であると思うのでございます。  この点につきまして、私は、今回、基本法の改正というものは、以前からずっと連綿として続いている日本の中小企業の特性、これは変わらない、今後も変わらないだろうということを期待しておるわけでございますが、基本法を三十六年ぶりに大改正を行われるという趣旨は、どういった趣旨で、どういった中小企業についての観念、認識の上に立ってやられるのか、大臣にお伺いいたします。     〔委員長退席小林(興)委員長代理着席
  266. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今塩田委員が言われました中小企業の力強い根源は農業にあるというお説は大変興味深いものとして伺ったところであります。  中小企業は日本の経済を今日まで支えてくださった。それは、極端な言い方をすれば血と涙の結晶であったかもしれない。だけれども、一方において、中小企業考え方というのを、かつて三十年代にありました経済の二重構造で、大企業との比較においてとらえてきた、近代的な企業と非近代的な企業というとらえ方をしてきたところに今日の環境に合わない状況が生まれた、こう思うわけであります。  私は、委員がおっしゃるとおり、中小企業経済を支えてきたけれども、さらに前面に立って頑張ってもらう、中小企業こそ日本の経済を引っ張っていく牽引車である、そんなような位置づけがとても大事ではないだろうかと思うのであります。  しかし、一方において、例えば指標を見る限り、大企業と中小企業の間に、例えば労働力であるとか賃金であるとか技術であるとか、いろいろな格差があります。それは、単に中小企業を広げるとか下から押し上げるということでなしに、むしろ中小企業の自立を促すことによって、中小企業が自分たちで先頭に立つという意欲を持つことに四つに取り組んでお支えするという形に私たち考え方も変えていくべきではないだろうか。  しかも、今までの中小企業基本法は、どちらかというと中小企業全体を画一的にとらえていた。ですから、これからはそういう時代ではなくて、例えば、中堅の中小企業はこれから伸びようとしているからぐんと後押しをする、あるいは新しく創業ということが今までの基本概念の中になかったわけでありますが、これがおくれているということが経済の活気を失っているわけでありますから、中小企業を中心としたベンチャー企業が次々と創出されるという状況に対しては、それができやすいような環境をつくっていく。  一方において、小規模で、旧来頑張っているけれどもまだ報われない、まだまだ力の足りないところには手厚い対応を残しておく、あるいはそれ以上の対応を考えていく。そういうような形で、中小企業が活力のあるものになるように全面的に頑張っていこう、そのためには中小企業の理念といいましょうか思いというのを込めた基本法の改正が必要だ、そんなふうに考えたわけであります。
  267. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。日本の中小企業というのは本当に、自由競争というか大変な競争の中で勝ち抜いていく、また脱落していくものもありますけれども、新たに起こってくるものもある、こういう中で非常に活力のあるものだと思います。  今や日本の経済は成長し、成長の限界にまで来ていると言われる向きがありますけれども、大企業はこれからは後始末に大変だと思いますし、また、大企業というのは日本の場合はいわゆる官業払い下げといったところから大きく発展したという面も強いわけでございますが、やはり我が国の大企業の中にも、いわゆる中小零細企業から立ち上がっていったというものもかなり多いわけです。  例えば、松下電器にしましても京セラにしましても、あるいは私の選挙区でもたくさんの優秀な企業、中堅企業がありますけれども、これは本当に農家の庭先あるいは納屋でもってごそごそと始めて、そして一生懸命汗水垂らして頑張って、夜となく昼となく働いて、そしてどんどん成長していって、今日立派な企業として成長している、こういうところも多いわけでございます。  また、農村工業の中には、酒屋さんとかしょうゆ屋さんとか、そういった食品関係につきましてもやはり伝統的な産業として、その地域で、例えば私の選挙区では靴下とかタオルとか、あるいは前の選挙区では綿織物等の日本でも有数の産地になっておりますけれども、そういったところは本当に農家の庭先から、あるいは納屋から始まったというものが多いと思います。     〔小林(興)委員長代理退席委員長着席〕  大臣のおられます東京のその地区におきましては、やはり農業の出稼ぎという形で他の県から入ってきた人がかなりいるのじゃないかと思いますし、いろいろな形で全国各地に多種多様の業種が発展したということがあると思います。  そして中小企業というのは、みずから自由に行動し、また競争しますが、やはりだめなときは責任をとる、そしてそのためにも思い切った改革をやっていける、そういう機動性にも富んでおりますし、弾力性があると思うんですね。そういった非常な中小企業の特徴があると思うんです。  そういった観点から、三十六年ぶりの大改正も、ベンチャー企業とか創業を支援する、こういう改正は結構なことでありますし、今までもそれで大きく発展してきたと思うわけでございますが、これから一層それに力を入れていくということについては私は大賛成でございます。そして、新たな技術が開発されて、新しい産業が起こっていくということを一層期待するわけでございます。  そこで、我が国の中小企業が非常に特徴的であるということは、やはり世界的な観点から見てどのような位置づけがされるかということについて次に入っていきたいと思うわけでございます。  まず明らかな事実として、ここで議論の前提といたしまして、日本の中小企業が日本の経済の主力であるということは、先ほど来話が出ておりますように、日本の中小企業は五百七万三千社、九九・四%あったものが、今度の改正後は定義が変わりまして、一万六千社ふえることによりまして五百八万九千社になり、九九・七%になる。あと〇・三しか大企業はないということですから、大部分が中小企業であるということがこれではっきりするわけでございます。  中小企業というのは、もう一つの特徴は、雇用が非常に柔軟にどこでも入っていける、そして若年労働者ももちろん起用しますけれども、高年齢者まで働ける、そういうところがいっぱいあるわけですね。雇用吸収力につきましても非常に優秀であるということが言えるかと思います。七十歳、八十歳になっても、そういった中小零細企業に従事ができるということもあるわけでございます。こういった点から、雇用の面でも非常な役割を各地域で果たしているということが言えるかと思います。  したがって、雇用面で見ますと、雇用者数は、現行の定義によりますと二千九百七十三万人、六四・四%。これは従来、事業所ベースでやっておりましたものから企業ベースになりましたので、これが六四・四%になっております。雇用の面ではそのようなウエートでございますが、改正後におきましては三百一万人ふえまして、三千二百七十四万人、七〇・九%になる、七割が中小企業に従事をしている職業者である、雇用者であるということになるわけでございます。  そして出荷額の面で見ますと、これは工業統計表ですから若干零細のところが切られておりますけれども、年間の出荷額におきましても五〇・八%といった数字も出ておるわけでございまして、我が国の経済の本当に主力になっておるということがこれではっきりすると思うわけでございます。  そこで、従来の政策の、施策の中心であった中小企業の大部分を占める既存の企業、これの対策が、この基本法の理念の転換によりまして、創業・ベンチャー企業対策に重点が行って、既存企業の国際的な競争力とかあるいは生産性を向上させるといったことの重要性が失われるんじゃないかという危惧があるわけでございますが、こういった点については大臣はいかがお考えでございますか。
  268. 深谷隆司

    深谷国務大臣 中小企業全体を見てまいりますと、やはり中小企業の枠を少し広げて、そこに中堅的な中小企業が一層活躍する必要があると思われます。また、創業率や廃業率の比較をいたしてまいりますと、アメリカが今日のような経済発展を遂げたこの十年の動き、まさに日本と逆でございまして、そういう意味ではやはり創業率を高めていかなければならない、現在の創業率をさらに、年間十四万ぐらいのものを二十四万ぐらいにふやす、そうすれば恐らく五年間で百万人ぐらいの雇用が創出できるだろう。  そして、そういうような中小企業の活性化と同時に、小規模の企業の皆さんの持てる力を一〇〇%発揮していただくために、ここにも手厚い視点は忘れてはならない。そのために、私は過日も、例えば中小企業設備近代化法という法律がありますけれども、これも名前を変えて小規模に限定して、そして業種を限定しないで一千億円ぐらいの準備をしようではないかと。これは、小規模企業に対する、一生懸命これからも頑張りますよというメッセージのつもりで申し上げているわけでございます。  そういう視点に立って、先生の御指摘のような中小企業発展のために、そしてそのことが日本の経済の活性化になるように頑張ってみたいと思っております。
  269. 塩田晋

    ○塩田委員 我が国経済の特色というのは中小企業が生き生きとして大きな役割を果たしているということにあるとすれば、諸外国におきましては中小企業というのはどういう状況になっておるか、どのように認識をしておられるか、総括政務次官にお伺いいたします。
  270. 細田博之

    細田政務次官 塩田先生の御質問お答えいたします。  まず最初に、先生御指摘になりましたように、我が国でもいわゆる創業者、偉い人が、過去にも松下幸之助さんとかあるいはソニーの創業者とか、あるいは先般亡くなった佐治さんでも一種の創業者、功労者だと思います。本田さんでもそうでございましょう。やはりそういう戦後、あるいは戦前戦後でいわばベンチャーともいうべき創業者はたくさんいたと思うのでありますが、国際的に比較しますと開業率において甚だ差があるということをまず申し上げておきたいと思います。  イギリスが一番高くて一三・二%、それからアメリカとドイツとスペインとフランス、オランダ、これが一〇%台でございますが、日本は甚だ低く、四・六%でございますね。これはもう、何世紀も前から海を渡って新しい場所を見つけようといってフロンティアスピリットで出かけていった欧米人と、あるいは農業国で農耕民族である日本人、まさにおっしゃるように性格の差が出ているかもしれません。しかし、我が日本にも創業者として非常にすぐれた方がおられるように、その才能がないとは絶対に言えないんだと私は思っております。  特に諸外国においては、アメリカにおいてどういうふうに中小企業創業者を考えるかということについては、新たに誕生する企業群に自由な成長と発展の機会を保障すべきだとする誕生権経済、バースライト・エコノミーというんだそうですが、誕生権経済の活用というものが強調されているように、非常に高く経済の担い手として評価されているわけです。また、OECDにおいては、閣僚理事会におきまして、中小企業の創造と成長のための条件を改善することが経済成長と雇用確保に重要であるということが確認されておるわけでございます。  そして、かつ、先進国もアジアも一括して申し上げたいと思いますが、外国における中小企業の割合というものは、日本においては、先ほどございましたように、法律改正後においても九九・七%、前において九九・四%という、数において圧倒的でございますが、アメリカにおいても九九・七%、イギリスにおいても九九・八%、フランスも九九・八%、シンガポールあたりは九四・七%、マレーシアが八四・五%、インドネシア九九・二%、どこも中小企業が大きな経済の担い手としてまず数の上で占めているということでございます。  ところが、従業員数になりますと、日本においては、改正前において六四・四、改正後七〇・九、これは塩田委員のおっしゃったとおりでございますが、アメリカにおいては五二・五とやや低うございまして、英国が五八・三、フランスが六六、シンガポールが四六・四、マレーシア五一・六、インドネシア五五・九というように、中小企業の雇用者数は総体的に低いです。つまり、大企業比率が非常に高いということですね。大企業の雇用吸収力が非常に高いということでございます。  また、出荷額を見ますと、もちろん統計的に若干ずつは違うわけでございますけれども、日本は五〇・八%に対して、米国は二七・八%、イギリスが三六・一%、フランスが四〇%、シンガポールが二九・三%、マレーシア二七・八%、インドネシア九%というように、出荷額に占める中小企業の割合は諸外国は非常に低いわけですね。それだけ日本の中小企業は、一社当たりで見ると相当頑張っているということが言えるかと思います。  ただ、その中で、創業して、ベンチャーでどんどん新しいものが生まれるということがいささか少ない。むしろ、長い間かかって、一生懸命努力をしているところが見られるというのが統計的分析ではないかと思われます。
  271. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  ちょっとドイツが入っていなかったですが、わかりましたら、後ほどで結構です。  欧米先進国と言われるところは大体日本と同じような形。しかし、就業者につきましてはかなり低い。付加価値額で見ましても低いということでございますが、東南アジアあるいは東アジア等の状況というのは、今お話ございましたように、中小企業の割合というものが、会社の数また雇用者の数、あるいは出荷額等から見ても非常に低いということがはっきり出たわけでございます。それだけ大企業が多いということでございます。  それは全産業の中小企業のウエートだと思うんですが、発展途上国であればあるほど、商業とかサービスとか、そういうところのウエートが大きいと思うんです。これはまた非常に中小零細の多い分野だと思うんですね。それを加味しますと、欧米の場合でもその辺を加味するとどうかちょっとわかりませんが、そういう傾向は出てくると思うんです。  それはそれといたしまして、私は、今から四十年ほど前に、まだ国交が回復されていないフィリピンで国際会議があって出たことがございます。そのときになるほどと感じましたのは、フィリピンは、今は知りませんが、四十年前の調べた感じでは、本当にいわゆる二重構造なんですね。大企業があって、中小企業はほとんどない。あるとしても、これはもうサービスとか卸、小売でありまして、あとは農業だ。当時農業が七割以上ありました。そして、あとは失業している。失業者と農業と中小企業がなくて大企業、こういう構造、これが当時のフィリピンでございました。  私は、労働関係であったものですから、当時、昭和三十二、三年のころですから、中小企業にとって最低賃金法をつくってこれを施行するのは非常に難しい、日本ではもう無理だ、こういう議論がなされる中でフィリピンへ行ったんです。そうしたら、最低賃金は二本なんですね。一般企業二ペソでしたか、そして農業が一ペソ、半分ですね。この二本立てで、こんな法制があっても実行されていないだろうと思って行ったところ、これがほとんど実行されている。それを見てまず驚いたんです。  それから、スーパーへ行きまして、日本には当時スーパーなんてなかったです。立派なスーパーがマニラ市内にあるわけですね。これまたびっくりしました。そして、喫茶店なんかでも、自動式のレコードがかかる、何というんですか、ジュークボックスですか、それなんかがあちこちに置いてありまして、そして、政府の役人なんかも、若い女性が自動車を持っているわけですね、それでもって誘いにくるような、後進国だと思っていましたけれども、随分大変な国だなと思ったんです。  しかし、路上には失業者があふれ、農村へ行きますと、日本の田植え、戦前の田植えと同じですね、たくさんの人が並んで一斉に田植えをしている、そういう状況を見たわけですが、これがいわゆる二重構造だと思ったんです。経済の二重構造というのはこれだなと。  当時、日本では、中小企業を二重構造論で盛んに議論しておりました。だけれども、私は、それを見てから各国を若干調べましたところ、先ほど総括政務次官が言われましたような数字であって、中小企業はないんですね。まあ、ないと言ってはあれですけれども、いわゆる理想の形でいいますと、二重構造であって、中小企業はない。  日本はむしろ、二重構造というけれども、弱者と強者という形の二重構造のように論じられておったわけですね。中小企業は非常に大変な、惨めな状況だというようなことから議論がされておりましたけれども、決してそうじゃなくして、日本の場合は、大企業もありますけれども、そのすそ野に広大な中小企業というかなりすぐれた、そして競争しておる生き生きとした集団がある、これが日本の経済だなという感じがしまして、二重構造は間違いだ、それはむしろ外国、特に発展途上国だというふうに思ったわけです。  日本の場合は、言うならば大企業を頂点とする多層多段的といいますか、富士山のようにすそ野の非常に広がったそういう形が日本の経済の特徴だ、このように当時から議論をしておったわけでございますが、今、実際の統計数字をもって言われましたとおりだと思うんですね。そこにやはり日本の特徴がある。これはまた後ほど申し上げたいと思います。これに関連しまして申し上げます。  そういった状況について、私が申し上げましたことについて、総括政務次官はいかがお考えでございますか。
  272. 細田博之

    細田政務次官 日本の特に中小企業と大企業の関係というのは非常に補完的関係があって、共存共栄で発展してきたと私は思っております、少なくともちょっと前までは。  先ほど来格差の問題などを言われておりますし、いつまでたってもその格差が縮まっていないんではないかという声もありましたけれども、むしろそうではなくて、奇跡的な成長を遂げた日本が世界第一のGDPを達成して、一人当たりでいうと完全に世界第一のGDPを達成した。  その間において、本来の思想、二重構造論で言えば、どんどん大企業が太って中小企業が脱落するという姿、そして産業集中が行われるという姿であったかもしれませんけれども、そうではなくて、隆々として中小企業も発展してきた。  その中で、賃金格差があったとは言われながら、日本の賃金は世界的に類を見ないほど格差が小さい。同じ国内での賃金格差が、経営者から従業員、あらゆる階層において少ない、小さいと言われているのは世界的常識でございます。そういったふうな目で見るべきであって、先生が今おっしゃったような、海外と比較してみますと特にそのことが明らかではないか。  ただ、残念なのは最近の傾向でございまして、どうも形が崩れてきて、むしろ大企業の方がよろよろしておって、また中小企業も大変な金融上の問題点あるいは消費の減退等によって困っておりますから、これを切り抜けるのにどうしたらいいか、切り抜ければまた新たな世界が開けるのではないか、そのためにも創業が必要だという先生の立論に私は全く賛成でございます。
  273. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。  もちろん中小企業者、またその働く労働者は日夜大変な苦労をし、大変な苦労の中で経営を維持し、また勤労を続けていっている、生活を支えていっているという現実につきましては、これは厳粛に受けとめなければならないことだと思っております。決して楽観ばかりしておりませんが、外国と比べての話として、我が国の、日本の経済の力の秘密はやはり中小企業だということについて申し上げたわけでございまして、今政務次官から言われましたことを本当にありがたく思います。  次に、中小企業基本法の中で、現行の法律の第二十二条、これを改正法によりまして廃止されることになっておりますね。これはどういう考え方からこのような転換を図られるのか。  ちなみに申し上げますと、現行法第二十二条は「輸入品との関係の調整」ということでありまして、主として中小企業が生産する物品の輸入によって中小企業に重大な損害を与え、または与えるおそれのある場合において、緊急に必要がある場合において関税率の調整、輸入の制限等の必要な施策を講ずる旨の規定がございます。  これは政府参考人にまずお伺いいたしますが、この規定によってどのような施策をやってこられたか、そして、その施策の成果というか、効果はどういうものがあったか、どのように評価をしておられるか。その事実関係でございますので、御説明をいただきたいと思います。
  274. 岩田満泰

    岩田政府参考人 お答えを申し上げます。  この二十二条の「輸入品との関係の調整」に関する施策につきましては、例えば一般的なセーフガードあるいはアンチダンピングの措置が挙げられると思いますが、セーフガード措置についてはこれまでは発動の実績がございませんが、アンチダンピングの措置につきましては、平成五年に対中国にフェロシリコマンガンにつきまして発動がございます。また、平成七年にパキスタンを相手国にいたしまして、綿糸の二十番手というようなものにつきましてアンチダンピングの措置の発動がされたわけでございます。これによりまして、その当時の状況として、それぞれの関係業界におきます経営の安定と申しましょうか、そういうものが図られたということと理解をいたしております。
  275. 塩田晋

    ○塩田委員 一応発動されたものも若干あるということでございますけれども、よく業界から言われますのは、中国から、例えば綿布の場合、綿織物の場合、どしゃ降り的な輸出、これに対抗できない、国内の業者はこれで大変な損害を受けた、何とかなりませんかということを盛んに言われたのですけれども、これはなかなか実現しなかった。こういう事情があります。  そのほかにも、はさみにしましても、いろいろな中小企業がつくっているこういった産品につきまして、外国からの輸出攻勢で大変な痛みを覚えている、大変な苦境に立っているという業種もかなりあるわけでございます。その詳細につきましては、通産省事務当局からお話を伺いました。  それを一応もとにいたしまして、総括政務次官、これをなぜ現基本法から二十二条を削除して新法に移るのか、その理由を御説明いただきます。
  276. 細田博之

    細田政務次官 実はその後、国際的に非常に発展をしておりまして、つまり、貿易調整措置というのは国際ルールですべてやるべきであるという基本原則ができておるわけでございます。  現行基本法では、緊急に必要があるときは関税率の調整、輸入の制限等の必要な施策を講ずると書いてありましたが、輸入制限の、いわゆるセーフガード措置とか関税賦課、例えば緊急関税というような賦課を行う措置あるいはアンチダンピング措置については国際ルールに基づいて実施する必要があるということ。それから、平成七年のWTO発足に伴いますセーフガード協定、アンチダンピング協定の発効を受けまして、国内法令、例えば関税定率法などにおいて明確な要件が定められたわけでございます。これらの措置で必要かつ十分であると。つまり、日本国全体、国際措置に基づいて、日本国内の、また包括的な措置によって発動すれば十分である。  中小企業を理由といたしまして輸入を制限したり関税率の調整を行うということは、この制度措置の整合性を損なうおそれがある等の観点から、このたびは規定を削除することとしたものでありますが、いささかも国内の一般法を発動しないというような意味ではございません。厳正に、先ほど綿糸の例などでございましたように、フェロアロイなどの例でございましたように、必要があれば発動する、要件に合致すれば発動していくということでございます。
  277. 塩田晋

    ○塩田委員 事情はわからぬこともないのでございますが、実際に、日本の中小企業を中心として、輸入が急激に増加したような場合、その企業に打撃が与えられ損害が生じる場合において、中小企業施策として大臣はどのような対策を講じられるつもりでございますか。お伺いいたします。
  278. 深谷隆司

    深谷国務大臣 今、細田総括政務次官から御説明申し上げたように、まず基本的に、関税の調整だとか輸入の制限というのは、国際ルール上、WTOを含め許されないことでございまして、国際ルールの整合性を損なうおそれがあるということが前提にございます。  そこで、この二十二条については外したわけでございますが、今先生の御指摘のような、輸入品の急増等の環境の激変がある場合、これは基本法上は第二章第三節で、経済的、社会的環境の変化に対応する適応の円滑化というところにおいて、セーフティーネットとして生きるように読み込んでいる、そういうふうに思っております。中小企業の経営の安定等の措置をこの項目でセットできると思っております。
  279. 塩田晋

    ○塩田委員 大臣、ぜひとも大胆に、断固としてそういった損害が生じることのないように、また、生じた場合には適切な措置をするようにしていただきますようにお願いいたします。  そこで、これに関連することでございますが、靴下産業、私の地元には多いんですけれども、そこで、ことしの三月から最近に至るまで、大変な問題が起こりました。  これは全国的にそうでございますが、靴下の輸入がべらぼうにふえた。それで、例えばうわさになったのは、一足百円靴下だ、これがあらわれたということで、三百円、四百円原価であったものは到底対処できないというので、その業界は操業を停止したり倒産したり、もうお手上げになったところがばたばたと出たわけです。  ところが、最近になりまして、これが関税のカウント方式の変更が原因であるということがわかったわけです。ということは、靴下は両足合わせて一足として数えておったのを、手袋だとかほかのものと同じように、片方ずつで一足と数えるようになったようなんですね。したがって、実際入ってきたものの倍額に、倍の数量で報告された。それでもうお手上げになって、値段ががくんと下がったんですね。そのように下がりまして、採算がとれなくなった、こういうところも出てきたわけです。  ところが、最近になって、それは統計上とり方を変えただけだったということがわかりました。それで、一時は日本の国内生産はもう二、三割に落ちてしまうんじゃないか、外国輸入が八割になるということで騒がれたのが、それでも一五%ぐらいふえて五〇%余りになっておるということでございます。こういったとんでもない誤りから中小企業が打撃を受けるという事態があったわけです。  これは事実であるかどうかということと、今後の対応をどうしてくれるんだという業界の声ですが、どのように考えておられるかお聞きいたします。
  280. 横川浩

    ○横川政府参考人 ただいま先生から御指摘のございました靴下の輸入数量の統計処理の問題でございますけれども、先生から御指摘いただきましたのは事実でございまして、ことしの三月から大蔵省の通関統計の集計方法が変更をされまして、一対で一と数えるか、一対のものを一つずつ数えて二つと数えるかということにつきましての集計方法の変更が行われたわけでございます。
  281. 塩田晋

    ○塩田委員 それによって、先ほど申し上げましたような大変な損害、また、今なお価格は下がったままですね、それを契機にして。そういったことに対してどのような対策をされるか、お伺いいたします。
  282. 細田博之

    細田政務次官 安い繊維製品の近隣諸国からの輸入問題については、従来非常に多くの問題が何回も起こっております。綿糸ですとか綿織物ですとか、あるいは下着ですとかニット製品、そして今回は靴下というふうになっておるわけでございまして、非常に困ったことでございますけれども、これに原産地表示をつけて、そして消費者に賢明な選択をしてもらおうということも一つの案でありますけれども、WTOの協定上、新たな貿易障壁とみなされるおそれがあります。そして、すべての国内生産者に原産国の表示を義務づけることにより新たな負担を生じさせるなど、なかなか難しい問題があるわけでございまして、若干これはこれから慎重な検討が必要なことでございます。  消費者に対して、生産者も含めまして、よく周知を図り、賢明な選択をしていただく。品質がどの程度のものかよくわかりませんけれども、よくこういうものは急増して入ってまいりますが、一時的な人気で、購入しても後はぱったりというケースもたくさんございます、繊維の二次製品については。そういうものであるかどうかこれからよく実態を見きわめなければなりませんけれども、そういったなかなか困難な問題があるということは御認識をいただきたいと思います。
  283. 塩田晋

    ○塩田委員 若干私の質問とは違うんです。カウントの誤りの問題を申し上げたんですが、その結果大変な状況が起こっておる、これに対する対策をお聞きしたわけですが、それはそれとしまして、後ほどお聞きします。  今若干出ました原産国表示の問題ですが、一部の報道でございますが、外国から輸入された製品、靴下ですね、それにメード・イン・ジャパンという表示を輸入してから張りかえて、そして国内産品だとして売っている、こういうケースがあるわけです。  これにつきましては、日本靴下工業組合連合会あるいは日本靴下協会等から、靴下類の原産国表示の判定は、ソックスについては編み立てされた国、パンストは縫製された国、タイツも同じ、こういう通達も出して注意を呼びかけておられるところでございます。こういった問題も、靴下だけ見ましても、起こっているわけですね。  結局、輸入の関係と国内生産との競合の関係なんですが、そういったところでいろいろな問題が起こりますので、そういったところも十分に細かく見ていただいて行政当局を指導していただきたいと思います。業界では大変なダブルパンチを食ったというような思いで訴えておりますので、よろしくお願いいたします。
  284. 細田博之

    細田政務次官 先ほどちょっと先走りまして大変恐縮でございました。  原産地表示問題については先ほど申し上げたとおりでございまして、その前に、一足というのが片方でも一足と数えるというこのカウントの問題につきましては、やはり一種の風評被害のようなところがありますので、行政側の措置としてきっちりと関係の方によく連絡をし周知徹底をしたいと思います。これは同じ繊維の流通も含めた業界の中での情報が倍も輸入されたというふうに誤って伝わったために起こったことだと思いますので、きっちりした情報を流せばもとに戻るというたぐいの問題だと思いますので、そのようにさせていただきます。
  285. 塩田晋

    ○塩田委員 次に、日本経済の生産性の問題、そしてそれとの関連で雇用問題についてお聞きしたいと思います。  端的に申し上げまして、日本経済は今、生産性が非常に低くて過剰雇用を抱えておるからリストラによってこれを整理しなければならぬ、こういう事態にあるのか、あるいは、先ほどもありましたが、日経連の会長が言われましたように、そういったリストラをやるのはいい経営者でない、こういったような発言もあったようでございますが、大臣としてはどのように今の日本の経済状況をごらんになっておられますか。お伺いします。
  286. 深谷隆司

    深谷国務大臣 バブル経済が崩壊をいたしました後に我が国の経済が低迷する中で、人的資源を含めた経営資源の過剰感が高いというのは先生お考えのとおりだと私も思います。  このような過剰感の背景には、バブルの時代に企業は偏った方向に経営資源を拡大して、その後それを再配分するということを怠ってきたからだというふうに思います。つまり、再配分でも成長分野に配分するということが十分にできていなかったからだと思うのであります。そういうことが結果として我が国の経済の生産性の向上、伸びを低迷させている、そんなふうに理解します。  それから、今の経済界からの御発言の中で、企業が何でもかんでもリストラをやるというのは企業経営者としては適切でないという指摘も一方にあることはわかっておりますけれども、その場合に、雇用の面を確保するとか下請を守るとか、そういう配慮の中で再建策を図っていくということが経営者に一番求められることではないかと思っております。
  287. 塩田晋

    ○塩田委員 日本の生産性、これは世界的に見て高い水準にあるのか、あるいは中ぐらいなのか、あるいは下方にあるのか、この辺の認識についてお伺いしたいと思います。  国際競争力を高める、また維持しなければ日本の経済は今後発展は望めない、こういうことから考えますと、労働生産性の絶対水準がどの程度になっているのか、日本の現状は。景気の低迷によってかなり伸び率も下がってきている状況にあると思うのですが、国際競争力の点から見て、これは非常に低ければ大変な事態だと思うわけでございますが、これについてどのようにお考えでございますか。
  288. 深谷隆司

    深谷国務大臣 国際的な競争力の向上を図るためには、先ほど申したような、我が国の各企業が人的資源を含めて経営資源を成長分野に投入するということが非常に大事だ、しかし、それがうまくいっていないために生産性の向上がやや後退をしている、これは国際競争力を低下させることだというふうに考えておりまして、政府としては、いずれにしても、このような生産性向上を含む企業のあり方についていろいろな角度から支援していくことが大事だというふうに考えています。
  289. 塩田晋

    ○塩田委員 大企業が非常な苦境に陥っている中で、やはりリストラというものを進めざるを得ない。その場合に、雇用の縮小が行われれば、これは中小企業に対しての非常な流入が行われると思うのですね。そういう意味では、日本の中小企業というのは非常に多層多段で、幅が広い、すそ野が広いものですから、また厚いものですから、雇用のバッファーとして非常な役割を果たす、諸外国に比べてこれは非常に特徴的な利点でもあるのじゃないか。日本の失業が大変に高い、アメリカよりも高い失業率になりながら、そんなに深刻化していないというか、暴動まで至らないような中におさまっているというのは、やはり中小企業の役割がかなり大きいのではないか、このように考えるわけでございます。  しかし、またその中小企業から出てくる失業者に対しては、十分政府としても対策をして、生活の安定、そして次の就職のあっせん、あるいはそのための能力の開発、向上を図らなければならない、このように思います。その点、ひとつ抜かりなくやっていただきたいと存じます。  最後に、ベンチャー企業・創業を支援される、これは非常にいい方向だし、やるべきことだ。今度の基本法の改正もそれが大きな重点の一つであるということでございますが、創業とかベンチャーの関係でどれぐらいの出荷額あるいは雇用がふえていくのか。考えますと、そんなに大きいものじゃないのじゃないか、大事だけれども、全体の雇用なり失業から考えると大きなものではないのじゃないかというふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
  290. 深谷隆司

    深谷国務大臣 創業・ベンチャーが新しく多く輩出されるという状況の中では、これは産業が活発に動いていく、新たな分野が拡張されていくという点で非常に効果を上げるわけでありますが、同時に、雇用という面におきましてもかなりの成果を上げてきたと私は思っています。  例えば、中小製造業においては、創業後十年以内の企業に働く従業員数は全事業所における従業員数の四分の一以上を占めている、そういう数字が出ておりまして、その点から考えましても、ベンチャー企業を創出させていくということは雇用に対しても大きなプラスになっていくと考えております。
  291. 塩田晋

    ○塩田委員 ベンチャー・創業につきまして期待をするところでございますが、ぜひともその成果が上がりますように十分な手を打っていただきたいと思います。  最後に申し上げますが、中小企業というのは、最初申し上げましたように、非常に自由な活動、改革をみずからやり、自主的にそして独立性というものを確保しながら日夜大変な苦労をしておられるということで、中小企業の独立性というものをやはり支援をし大事にしていただきたいと思います。そして、そのためにも、公正な取引ができるように、公正な自由競争ができるように一定のルールというもの、これは確実に守らなければならないと思うのです。  例えば労働基準法の関係にしましても、労働時間の問題あるいは最低賃金の問題等もやはりなお改革すべきことが多いのじゃないかと思います。公正な競争ができるように一層努めなければならないと思いますし、そのためにも独禁法の強化をする必要があるのじゃないか。そういったフェアなルールの上に立っての競争をやるということがやはり中小企業の活力の源泉だと思うのでございますので、よろしくお願いします。  それからまた、税制の問題につきまして、また金融の問題につきまして、個々の問題については今後各法が出ましたときに御質問申し上げますが、あくまでも中小企業の継承、相続が十分にできて、安心して世代をわたって中小企業が存続し発展できるように御配慮をお願いしたいと思います。  そして、商工会議所とか商工会で今まで一生懸命中小企業対策として日夜苦労してやってまいりました経営指導員の皆さんとかそういった方が、この基本法が大転換することによって、そういった今までの分が、仕事がなおざりにされるのじゃないか、こういう危惧を持っている向きがありますが、これにつきまして、中小企業の重要性、そして活力のある従来からの中小企業の経営基盤を確立し、自由に公正に競争が生き生きとできるように御配慮を願いたいと思います。  以上で終わります。
  292. 中山成彬

    中山委員長 次回は、明十日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会