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1999-04-22 第145回国会 衆議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十二日(木曜日)     —————————————  議事日程 第十七号   平成十一年四月二十二日     午後一時開議  第一 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 環境事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 海岸法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案内閣提出)  第六 司法制度改革審議会設置法案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 環境事業団法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 海岸法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 司法制度改革審議会設置法案内閣提出)  拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑     午後一時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案内閣提出
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。労働委員長岩田順介君。     —————————————  労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔岩田順介登壇
  4. 岩田順介

    岩田順介君 ただいま議題となりました労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案につきまして、労働委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、深夜業に従事する労働者の健康を保持するため、当該労働者がみずから受診した健康診断について必要な措置を講ずるとともに、化学物質等による労働者健康障害を防止するための対策充実を図るなど、労働者の安全と健康を確保するための対策の一層の充実を図ろうとするものであります。  その主な内容は、  第一に、深夜業に従事する労働者が自発的に受けた健康診断についても、事業者が行う法定健康診断と同様に、事業者は、その結果について医師等意見を聞き、その意見を勘案し、必要な場合には、深夜業の回数の減少を含め、就業上の措置を講じなければならないこと、  第二に、労働者健康障害を生ずるおそれのある化学物質等を譲渡し、または提供する者は、文書の交付により、これらのものの有害性等に係る事項をその相手方に通知しなければならないこと、  第三に、検査業者または作業環境測定機関について、合併等があったときは、合併後に存続する法人等は、その検査業者または作業環境測定機関の地位を承継すること などであります。  本案は、去る三月十七日労働委員会に付託され、同月十九日甘利労働大臣より提案理由説明を聴取し、四月十六日に質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告を申し上げます。(拍手)     —————————————
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 環境事業団法の一部を改正する法律案内閣提出
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第二、環境事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。環境委員長北橋健治君。     —————————————  環境事業団法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔北橋健治登壇
  8. 北橋健治

    北橋健治君 ただいま議題となりました環境事業団法の一部を改正する法律案につきまして、環境委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、特殊法人整理合理化推進し、あわせて最近における地球環境問題等をめぐる情勢に適切に対応するため、環境事業団業務として、地球温暖化対策推進に特に資すると認められる緑地を設置し、及び譲渡する業務等を追加するとともに、資金の貸し付けに係る業務を廃止する等の措置を講じようとするものであります。  本案は、去る三月十日本院に提出され、同月十七日本委員会に付託されました。  本委員会におきましては、同月二十三日に真鍋環境庁長官から提案理由説明を聴取した後、四月十六日に質疑を行い、特に、本改正に基づく環境事業団整理合理化内容、ゼロエミッション事業推進事業に対するリスク対策必要性王子アルカディアリゾート事業教訓等問題点に関し活発な論議が交わされましたが、その詳細については会議録を御参照いただきたいと思います。  かくて、同日質疑を終了し、討論を行い、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣提出
  11. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第三、国民金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。大蔵委員長村井仁君。     —————————————  国民金融公庫法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔村井仁登壇
  12. 村井仁

    村井仁君 ただいま議題となりました法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、平成九年九月二十四日の閣議決定に基づき、特殊法人整理合理化推進し、経済社会情勢の変化に応じた業務効率化を図る観点から、国民金融公庫環境衛生金融公庫を統合して国民生活金融公庫とするための措置を講ずるものであり、以下、その概要を申し述べます。  第一に、国民生活金融公庫は、独立して継続が可能な事業について、当該事業の経営の安定を図るための資金環境衛生関係の営業について衛生水準を高めるための資金、その他の資金であって、一般金融機関からその融通を受けることを困難とする国民大衆が必要とするものを供給し、もって国民経済の健全な発展及び公衆衛生その他の国民生活の向上に寄与することにしております。  第二に、環境衛生金融公庫は、この法律施行のときにおいて解散するものとし、その一切の権利及び義務は、そのときにおいて国民生活金融公庫が承継することにいたしております。  第三に、国民生活金融公庫役員につきましては、特殊法人の統合の趣旨に即して、役員数の縮減を行うことにしております。  第四に、国民生活金融公庫会計等につきまして、所要の規定の整備を行うことにしております。  第五に、この法律は、平成十一年十月一日から施行することにしております。  本案は、去る四月十六日、宮澤大蔵大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑を行い、質疑を終局いたしましたところ、上田清司君外一名から、民主党提案に係る修正案が提出されました。次いで、採決いたしましたところ、修正案は否決され、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 海岸法の一部を改正する法律案内閣提出
  15. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第四、海岸法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。建設委員長平田米男君。     —————————————  海岸法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔平田米男登壇
  16. 平田米男

    平田米男君 ただいま議題となりました海岸法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査経過及び結果の御報告を申し上げます。  本案は、総合的な視点に立った海岸管理及びその充実を図ろうとするものであります。  その主な内容は、  第一に、海岸法の目的に「海岸環境整備保全」及び「公衆海岸の適正な利用」を加えること、  第二に、公共の用に供されている国有の海岸公共海岸と規定し、海岸保全区域以外の公共海岸区域対象とする一般公共海岸区域制度を創設すること、  第三に、海岸保全に関し、主務大臣海岸保全基本方針を、都道府県知事海岸保全基本計画をそれぞれ定めることとし、あわせて地域の意見等を反映するための手続を導入すること、  第四に、市町村長海岸の日常的な管理を行うことができる制度導入すること、  第五に、沖ノ鳥島については、国が全額負担の上、直接管理できる制度を創設すること、  第六に、海岸の汚損その他の一定の行為禁止、油濁事故処理等海岸の維持のために必要な諸制度導入等を図ろうとするものであります。  本案は、去る三月十二日本委員会に付託され、同日関谷建設大臣から提案理由説明を聴取し、四月十六日質疑を行い、同日質疑を終了いたしましたところ、本案に対し日本共産党から修正案が提出され、採決の結果、修正案賛成少数をもって否決され、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対して附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案内閣提出
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第五、電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。商工委員長古賀正浩君。     —————————————  電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔古賀正浩登壇
  20. 古賀正浩

    古賀正浩君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、近年の規制緩和及び経済構造改革要請等を踏まえ、電気及びガス事業について、大口需要家に対する小売供給に係る参入規制緩和等を行うとともに、その実施に必要となる接続供給制度創設等を行うものであります。また、自由化対象外の部門について、料金引き下げ時における届け出制導入選択約款の拡充などの料金規制見直し等を行うものであります。  本案は、去る三月三十日、本会議における趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、四月十六日与謝野通商産業大臣から提案理由説明を聴取いたしました。同月二十日質疑を行った後、討論を行い、採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  22. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第六 司法制度改革審議会設置法案内閣提出
  23. 伊藤宗一郎

  24. 杉浦正健

    杉浦正健君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、内閣司法制度改革審議会を設置しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、内閣司法制度改革審議会を置くこととし、審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するとともに、調査審議した結果に基づき内閣意見を述べるものとすること、  第二に、審議会委員十三名以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て内閣が任命するものとすること、  第三に、審議会事務を処理させるため、審議会事務局を置き、事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置くものとすること、  第四に、この法律は、政令で定める施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うものとすること であります。  本案は、二月五日に内閣から提出され、三月二十三日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。  本委員会においては、同日陣内法務大臣から提案理由説明を聴取した後、同月三十日から質疑に入り、参考人意見を聴取し、昨二十一日には小渕内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど、慎重に審査を行いましたところ、自由民主党民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及びさきがけの六派並びに鯨岡兵輔君の共同提案により、審議会における調査審議国民がより利用しやすい司法制度実現等を目指すものであることを明確にする旨の修正案が提出されました。  修正案について趣旨説明の後、原案及び修正案について質疑が行われ、採決の結果、本案全会一致をもって修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり修正議決いたしました。      ————◇—————  拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件の趣旨説明
  27. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件につき、趣旨説明を求めます。外務大臣高村正彦君。     〔国務大臣高村正彦登壇
  28. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明を申し上げます。  この条約は、公務員等による拷問を防止するため、各締約国がこれを刑法上の犯罪とするとともに裁判権を設定すること、及びそのような犯罪を引き渡し犯罪とすること並びに各締約国が残虐な刑罰を防止することについて規定するものであります。また、この条約は、この条約により設置される拷問禁止に関する委員会が各締約国報告検討すること等についても規定しております。  第二次世界大戦後の国際社会において、拷問人権の重大な侵害行為であるとの認識が広まり、拷問禁止につきましては、昭和二十三年に採択された世界人権宣言昭和四十一年に採択された市民的及び政治的権利に関する国際規約等において規定されました。  しかしながら、一九七〇年代に、一部の軍事独裁政権による拷問と見られる行為に対する国際的な非難が高まったことを背景に、国際連合において、拷問を実効的に禁止する新たな国際文書を作成する必要性が強く認識されるようになり、この条約を作成するための検討国連人権委員会において始められました。この条約は、こうした検討を経て、昭和五十九年の第三十九回国連総会において、全会一致で採択された次第であります。  我が国がこの条約締結することは、国際的な枠組みにおいて人権の保障を促進するとの見地から、有意義であると認められます。また、昨年の国連総会決議において、この条約早期締結が呼びかけられており、このような点を勘案いたしましても、早期にこの条約締結することが重要であると考えられます。  以上を御勘案の上、この条約締結について御承認くださいますようお願い申し上げる次第でございます。  以上が、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑
  29. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。坂上富男君。     〔坂上富男登壇
  30. 坂上富男

    坂上富男君 私は、民主党を代表して、拷問等禁止条約締結についての承認について、質問をいたします。  政府が、遅くに失したとはいえ、ようやく国際社会からの声に耳を傾け、拷問等禁止条約批准を決断されたことを心より歓迎いたします。拷問等禁止条約は、被拘禁者を初めとして、すべての人が、人間としての尊厳を尊重された取り扱いを受けることができるよう、加盟国国内制度整備充実と、条約実施機関である拷問等禁止委員会による国際的監視制度によって、これを図ろうとするものであります。  私は、先般、院から派遣をされまして、ベルギーのブリュッセルで開かれた第百一回IPU総会に、保利耕輔先生を団長として、四月九日から十六日まで会議に参加してまいりました。私は第一委員会に所属し、政治、軍縮について議論して、日本を代表して演説し、核軍縮を強く要請し、特に、我が国世界唯一被爆国であるとの訴えに、会場は水を打ったように静粛になってくれたことが印象的でありました。そして、各国代表の演説の中に、しばしば広島、長崎の名前が出ておりました。  この間、委員会の開催のない日、私はブリュッセル郊外ブレンドンク国立博物館を見学してまいりました。第二次世界大戦中のナチスユダヤ人収容所を、そのまま博物館にしたのであります。既に収容所先生方の中には見学なさった方々も多いかと思いますが、ユダヤ人政治犯密売者その他、三千四百六十人がとらわれ、収容されたと言われております。  拷問部屋には、収容者を後ろ手に縛り、鉄ごてを体に当てたり、顔を水の中に押さえつけて入れるなど拷問した部屋で、いまだに、拷問した道具がさびついて置かれた、生々しい様子がありました。やみの独房は、光が一切入らない真っ暗な独房で、手探りでなければ動けないという状態でありました。  死体置き場は、リストによれば、三十二人絞首刑、七十八名栄養不良死、二百四十名銃殺、百四十七名他の収容所で殺害されたとありました。中に、十八歳の少年もが処刑され、その処刑者一覧表の中に名前がありました。棺おけが三つ、そのまま部屋に置かれてもおりました。声を詰まらせるばかりでありました。  当時撮った写真が残されて展示されており、百余名の女性が真っ裸のままむち打たれながら移動している写真死体の頭にかぎ棒をかけて収容所から引き出している写真などは、とても正視することができませんでした。  収容所の出口に、あなたは今何を考えておりますかとありました。私は、激しい戦慄と衝撃に襲われながら、収容所を後にいたしました。  拷問、残虐はいかなることがあろうと許されるものではありません。本条約批准を心から歓迎するゆえんであります。  以下、質問をいたします。  第一、収容所見学についてであります。  総理法務外務大臣国家公安委員長は、この収容所または類似のナチス収容所を見学されたことがありますか。あるとすれば、御感想はいかがでございましたか。見学されたことがなければ、ぜひ見学されることをお勧めいたしたいと思います。  第二に、条約名称についてであります。  条約名称が、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約とされております。英語の「アゲンスト」は「禁止する」と訳すべきでありまして、「関する」と訳すのは無理でないかと思われますが、いかがでありますか。市販されておる権威ある東信堂出版国際人権条約宣言集でも、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰禁止する条約と翻訳されているのであります。  この条約は、拷問等禁止条約と通称呼ばれてきました。翻訳を変えるべきでないかと思っておりますが、いかがでございましょうか。  第三に、条約二十二条の個人通報の権限についてであります。  受諾宣言批准案に含まれておりません。今後、受諾計画はあるのでありましょうか。この制度は、拷問等の非人道的な取り扱いに関する個人からの通報国際機関が直接審査できるという画期的な制度なのであります。ぜひ前向きに、受諾する方向で検討してほしいと思っておりますが、いかがでありましょうか。  第四に、国内法改正についてであります。  この条約批准によって国内法律上の修正が必要となると考えられますが、ありとするならば、どのような点があるのでありますか、明示していただきたいと思います。  第五に、刑法百九十五条についてであります。  刑法百九十五条は、特別公務員暴行陵虐罪であります。暴行、凌辱、加虐行為禁止しておりますが、これは、条約第一条の定める、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為刑法上の犯罪とすることが、条約四条第一項の求めるところであります。  条約の定義する拷問国内刑法上の犯罪との対照関係説明を求めたいと思います。立法措置が必要となってくるのじゃなかろうかと思いますが、いかがでありましょうか。  第六に、自国裁判権の設定であります。  条約第五条一項、二項に定める自国裁判権を設定するため必要な措置として、どのような措置が必要であると考えておられるのでございましょうか、お答えをいただきたいと思います。  第七番目に、教育についてでありますが、条約十条は、十六条によって拷問以外の行為についても準用されております。したがって、拷問や非人道的な取り扱い禁止についての教育と情報を人の拘禁、尋問などに関与する法執行の職員、医療職員、公務員の訓練に取り入れることを求めております。このような教育と情報提供は極めて重要であります。今後、どのような職務を行っている公務員に対して、どのような教材を用いて、教育、情報の提供を行う計画があるのか、お答えいただきたいのであります。  第八に、条約十一条の翻訳についてであります。  「拷問が発生することを無くすため」と翻訳されておる部分の原文を忠実に翻訳すれば、「いかなる拷問の事件も予防するという観点で」と訳すべきであると思っておりますが、いかがでございましょうか。「体系的な検討を維持する」と翻訳されている部分の原文は、「組織的な再検討を続けなければならない」と翻訳すべきであると思いますが、いかがでございましょうか。  翻訳は、明らかに、問題となっております代用監獄制度を意識し、条約正文の意義を薄める意図で、意図的に誤訳されているのでないかと思っておりますが、いかがでございましょうか。翻訳の再検討を強く要請いたしたいと思います。  第九に、人権救済機関の設置についてであります。  条約十二条、十三条の保障する、権限ある当局による迅速かつ公平な調査、迅速かつ公平な検討を求める権利、あらゆる不当な取り扱いまたは脅迫から保護するための措置を、どのようにして確保するつもりでありましょうか。警察機関や法務当局によってのこのような調査は不可能であると私は思います。  昨年十月の国連規約人権委員会日本政府に対する最終見解においても、独立性を持った新たな人権救済機関の設立が必要とされたと言われております。拷問禁止条約も、このような機関の設立が求められるのでないかと思っておりますが、いかがでございましょうか。  最後に、情報の交換についてであります。  条約十九条によりまして、政府は、条約の発効後一年以内に、条約に基づく約束を履行するためにとった措置に関する報告を国連事務総長を通じて委員会に提出することとなっております。この報告書を作成する過程で、この条約の保障する人権に関連する国際的、国内人権団体と情報交換を行う予定はおありでございましょうか。情報交換はぜひすべきであると思っておりますが、いかがでございましょうか。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇
  31. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 坂上富男議員にお答え申し上げます。  ブレンドンク収容所等を見学したことがあるかとのお尋ねでありました。  残念ながら、これまで見学の機会に恵まれておりませんが、機会がありますれば、ぜひ見学いたしたいと考えております。  私自身、平成三年にはカンボジアのポル・ポトによる拷問、虐殺に関するトゥオル・スラエン犯罪博物館を訪問するなどの経験にかんがみ、今世紀の世界において、拷問によって強制的に政治信条を曲げさせられたり、無実の罪を着せられ、場合によっては虐殺されるなどの例が数多く見られることは、まことに遺憾であると認識いたしております。このような悲劇を繰り返さないためにも、我が国国際社会とともに不断の努力をしなければならないと考えており、本条約はまことに意義あるものと考えております。  個人通報制度の受け入れについてお尋ねでありましたが、このような制度は、本条約実施の効果的な担保を図るとの趣旨から、注目すべき制度であると考えますが、本制度につきましては、国内における司法権の独立を含め、司法制度との関連で問題が生じるおそれがあるとの指摘もあることから、御指摘の宣言は行わない予定であります。今後とも、本制度の運用状況をさまざまな角度から検討していきたいと考えております。  本条約が独立性を持った人権救済機関の設立を求めているのではないかとのお尋ねでありますが、御指摘の規定は、締約国に対し、独立性を持った人権救済機関の設立を義務づけているものではないと考えており、また、これらの規定によります義務については、現行法により設けられている各種の人権救済制度をもって履行することが可能であると考えております。  以上、お答え申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣高村正彦登壇
  32. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 収容所を見学したことがあるかとの御質問でありますが、見学したことはありません。  本条約名称日本語訳についてのお尋ねでありましたが、条約日本語訳は、正文テキストの文言の意味をできるだけ正確に反映するように、また、我が国が既に締結している他の条約国内法令における用語との整合性等を勘案しつつ、慎重に検討し作成しております。本条約日本語訳についても、このような検討を経て作成したものであり、適切な日本語訳であると考えております。  ちなみに、我が国昭和六十二年に締結した人質をとる行為に関する国際条約の表現の英語正文においても同じ言葉が用いられておりますが、日本語訳においては「に関する」としております。  個人通報制度の受け入れについてのお尋ねでありますが、かかる制度は、本条約実施の効果的な担保を図るとの趣旨から、注目すべき制度であると考えますが、本制度につきましては、憲法の保障する司法権の独立を含め、司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり、慎重に検討すべきとの指摘もあり、その受け入れに当たっては、拷問禁止に関する委員会による本制度の運用状況をさまざまな角度からさらに検討する必要があると考えております。したがって、本条約締結に当たっては、第二十二条に規定する宣言を行わない予定でございます。  本件については、今後とも関係省庁とともに検討に努めていく考えでございます。  本条約第十一条の日本語訳についてのお尋ねでありますが、御指摘の第一の点に該当する英語正文は、拷問に当たる行為がいかなる形態であってもそれが行われることがないようにするためという趣旨であり、「拷問が発生することを無くすため」という日本語訳は、正文の意味を正確に反映した適切な訳であると考えております。  御指摘の第二の点に対する英語正文の趣旨に関しては、例えば、逮捕された者の取り扱いに係る措置等を系統的、包括的に検討することを意味しており、当該箇所を「体系的な検討を維持する」とする日本語訳は、文意を正確に反映した適切な訳であると考えております。  したがって、御指摘の二点についての日本語訳の再検討は必要ないものと考えております。  本条約締結後に提出することとなる報告についてのお尋ねでありますが、政府といたしましても、人権分野における民間のさまざまな活動の重要性を十分認識し、従来より、人権分野における国内外の団体とは意見交換を行ってきたところでございます。本条約に基づき拷問禁止に関する委員会に提出する報告は、政府の責任において作成するものですが、報告を作成する過程においては、これらの団体の意見も参考としてまいりたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣陣内孝雄君登壇
  33. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 坂上議員にお答え申し上げます。  まず、議員が御視察になられたベルギー王国の収容所または類似の収容所についてのお尋ねがありました。  私は、残念ながら見学したことはございませんが、ただいま議員のお話を拝聴いたしまして、個々人の人権に対する過酷な出来事のあったことに改めて深く思いをいたし、いつか機会を設けて訪れてみたいと思った次第であります。  次に、本条約批准によって国内法の修正が必要となるかについてお尋ねがありましたが、本条約上の義務は、刑法その他の既存の国内法により担保されており、新たな国内整備は必要ないものと考えております。  また、本条約が定義する拷問刑法上の犯罪との対照関係、及び拷問に当たるすべての行為刑法上の犯罪とするために必要な立法措置についてのお尋ねがありました。  本条約第一条が拷問と定める行為には、議員御指摘の特別公務員暴行陵虐罪に該当するものがあるほか、暴行罪、脅迫罪等の刑法等に規定する罪に該当するものもあると考えられますが、いずれにせよ、現行法の罪で担保されているものと考えております。したがって、本条約第四条が、締約国に対し、第一条に定義する拷問に当たる行為を、締約国刑罰法規において犯罪とすることを義務づけている点につき、新たな立法措置は必要ないものと考えております。  裁判権の設定についてお尋ねがございました。  我が国の領域内等で犯罪が行われた場合には、国内犯として処罰されることとなりますし、また、犯罪が外国で行われた場合においても、刑法等の規定により、国外犯として処罰が可能となっておりますので、新たな立法措置の必要はないものと考えております。  本条約第十条及び第十六条に関し、今後の公務員に対する教育、情報の提供についてのお尋ねがありました。  検察官、矯正職員及び入国警備官に対しては、各種の研修を通じて、拷問や非人道的な取り扱い禁止はもとより、職務の執行に当たって、被疑者または被収容者等の人権に十分配慮するよう指導しているところでありますが、本条約締結後は、研修等の機会を通じて、本条約内容に関する情報提供に努め、その周知を図ってまいりたいと考えております。  本条約第十二条及び第十三条に関してお尋ねがありました。  まず、現行法上、拷問に当たる行為犯罪とされ、その嫌疑があるときは、捜査当局によって適正な捜査が行われることになります。一方、拷問を受けたと主張する者は、犯人の処罰を求めて告訴をすることができ、また、処分の適正を担保するため、検察審査会、付審判請求等の制度も設けられております。さらに、証人等保護の観点からは、証人等威迫罪等も設けられております。以上により、お尋ねの条約の規定は、我が国において確保されているところであります。(拍手)     〔国務大臣野田毅君登壇
  34. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 私への質問は三点ございました。  まず、御指摘のブレンドンク収容所や、それに類似するような収容所に行ったことがあるかとのお尋ねでございます。  残念ながら、まだ行ったことはございません。今後、機会がありましたなら、見学してみたいと思っております。  次に、拷問や非人道的な取り扱い禁止についての教育と情報提供についてのお尋ねでございます。  警察におきましては、犯罪捜査という人権にかかわりの深い職務を行っていることから、これまでも警察官に対する人権教育を積極的に推進しているところであります。具体的には、警察学校において新たに採用された警察官や昇任した警察官に対し、拷問や非人道的な取り扱い禁止等の人権尊重に関する授業や訓育を行っておりますほか、犯罪捜査や留置業務に従事する者に対し、あらゆる機会をとらえて、被疑者等の人権に配意した適正な職務執行を期するための教育を実施しております。  今後とも、人権尊重の徹底を図るため、こうした取り組みを一層推進してまいりたいと考えております。  また、警察が本条約に規定する調査等をすることは不可能ではないかとのお尋ねでありますが、拷問に当たる行為犯罪であり、警察は、犯罪があると思料するときは捜査する責務を負っているものであります。警察としては、この捜査責任を全うし、本条約が規定する迅速かつ公平な調査等を行っていくことは当然のことと考えております。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  35. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 赤松正雄君。     〔赤松正雄君登壇
  36. 赤松正雄

    ○赤松正雄君 公明党の赤松正雄でございます。  会派公明党・改革クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりましたいわゆる拷問等禁止条約につきまして、総理並びに関連各大臣質問をいたします。  この条約は、一九八四年、今から十五年前の国連総会全会一致で採択をされ、一九八七年に発効されており、既に、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国などを含む約百十カ国が批准をしております。  その内容は、公務員らが情報提供などを強要するために、肉体的または精神的に激しい苦痛を故意に加える行為拷問と定義し、国内法でこれを禁止する措置をとるよう求め、戦争状態や政治不安などの緊急事態の中での行為であっても正当化することはできないとしております。さらに、拷問を受ける可能性のある他国への送還を禁止しております。  また、この条約が成立するに至るまでには、一九四八年に世界人権宣言国連総会によって採択されたことを皮切りに、六六年の市民的及び政治的権利に関する国際規約の制定、七五年の拷問禁止宣言の採択、八四年には拷問等禁止条約が採択され、八五年には国連人権委員会拷問に関する特別報告制度設置を決議、そして八七年にこの拷問等禁止条約の発効へと、長い道のりがありました。  この成立の背景には、拷問を廃絶しようと国際的な活動を展開されてきたアムネスティを初めとする人権団体等の努力を忘れてはならないことは言うまでもありません。  そこで、まず、最も基本的な点を総理にお伺いいたしたいと思います。  この拷問等禁止条約は、採択後既に約十五年も経過をしておりますけれども、今日に至るまで、何ゆえこんなに時間がかかったのでしょうか。  政府は、批准までに十五年かかった理由として、さまざまな場で、人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約あるいは児童の権利条約など、他の人権関連条約批准を優先したためだとの点を挙げているようでありますけれども、国連、市民団体など内外から早期批准我が国に求めてきていたことも考え合わせますと、それだけの説明では不十分ではないか。国際的に通用するのかどうか、甚だ疑問であります。  どうして今ごろになってしまったのか。こんなことでは、人権後進国との指摘を受けても仕方がないのではないか。今日までの経過を踏まえて、総理に明確な答弁をお願いいたします。  この問題に関連をいたしまして、もう一つ、批准がおくれている国際人道法についてもお尋ねをいたします。  同法は、世界百八十八カ国が加入している一九四九年採択のジュネーブ四条約と、その後の民族自決戦争、ゲリラ戦の出現などに対応するため、一九七七年に採択された二つの議定書に集大成されています。この法は、捕虜を公衆の面前にさらすことや、民間施設、民間人を攻撃の対象とすることを禁じています。このことからしますと、ユーゴ連邦当局が、拘束された三人の米兵を公衆の面前に立たせたことも、NATOの攻撃が民間施設や民間人に被害を与えることも、ともに重大な国際人道法違反であります。  コソボ紛争の拡大が懸念をされる中で、国際人道法の重要性は一段と高まっていると言われます。ところが、日本では、四九年の条約には五三年に加入をしておりますけれども、七七年採択の二つの追加議定書の批准はしていません。この理由は何なのか。国際人道法の遵守を担保するものは何もないとの意見がありますけれども、そういった考え方に政府は影響されているのかどうか。  日本が主要先進国の中で際立って国際人道法に対して無関心であるとの評価は、残念だと言うほかありません。この際、この議定書批准を進めるべきではないのか、総理のお考えを聞かせていただきたいと存じます。  次に、具体的にこの条約の中身に入ります。  まず、拷問の定義についてお伺いをいたします。  第一条には三つの要件が記されており、第一には、激しい苦痛を故意に加えること、第二には、一定の目的、動機の存在が記されており、一般的には取り調べ、強制のためといった動機であります。拷問対象者は、被拘禁者のみならず、医療施設における患者、学校の生徒なども考えられ、体罰も拷問と考えられますが、いかがでしょう。その保護対象の範囲をどう考えておられるのか、外務大臣の答弁を求めます。  第三の要件としては、公務員の何らかの形での関与についてであります。  公務員だけではなく、そのほかの公的な資格で行動する人も含まれます。私人についても、公務員の同意、黙認のもとに行えば条約上の拷問に当たり、拷問が行われていることを知りながらそれを防止しなかった公務員も、行った私人も処罰の対象になるとも考えられますが、この拷問の定義について、具体的な例を挙げた上で、外務大臣説明をお願いいたしたいと存じます。  この条約では、拷問はいかなる状況下であっても絶対に許されてはならないとされております。たとえテロリストに対するものであっても、拷問は全面的に禁止だとこの条約は定めております。また、上官や上司からの命令のものであっても、拷問を正当化する理由にはならないとされております。逆に、下級の公務員が上官の命令に抵抗することが求められているのであります。  次に、この条約を受けて、拘禁施設を管轄する警察庁、法務省の態度についてお伺いをいたします。  刑事事件の被疑者の処遇について、なぜ警察施設を代用するのか、拷問の下地にならないのかとの指摘があります。いわゆる代用監獄制度についての問題であります。例えば、警察が容疑者を逮捕した場合、被疑者の留置、勾留の期間は、最長で二十三日間となります。容疑事実を否認する被疑者の多くは、警察の留置場、いわゆる代用監獄に置かれます。ここでは警察が被疑者を二十四時間完全に管理できますので、拘置所では不可能な、深夜にわたる取り調べもできます。  また、この第三者の目の届かない場所で拷問もしくはそれに類する行為が行われ、虚偽の自白を生み、冤罪の温床となるとの批判があります。もちろん、この代用監獄制度は被留置者の人権尊重には十分配慮しておる、警察の迅速、適正な捜査に寄与しているといった意見もあることは承知をいたしております。  しかしながら、この条約の第二条に、「拷問に当たる行為が行われることを防止するため、立法上、行政上、司法上その他の効果的な措置をとる。」こととしており、その意味からも、拷問もしくはそれに類する行為の可能性がある限り、積極的に何らかの措置を行わなければならないと考えます。法務大臣並びに国家公安委員長の答弁を求めます。  次に、拘禁施設訪問制度新設問題についてお伺いをいたします。  これは、拷問等禁止条約議定書の草案において、すべての拘禁場所への無条件の査察制度を記したものであります。既にヨーロッパではこの制度が確立されており、定期的または必要に応じて、情報が入った場合、その国のすべての拘禁施設を訪問、査察することができるとされており、効果を上げています。  この制度を国連でも導入しようということで、この選択議定書の成立に向け、努力をしているところでありますが、しかし、我が国は、少数派の消極意見に同調し、条約成立に否定的であると伺っております。何ゆえ、この制度について、我が国はこういう態度をとるのでありましょうか。  拷問を廃絶、防止するのは、政治的意思と、拷問を起こしやすい拘禁施設への訪問制度の確立であることは、具体的事例によって知られているとの指摘もあります。外務大臣は、この件についてどうお考えか、答弁を求めたいと思います。  また、この条約批准することは、国際的監視制度を避けて通ることはできず、むしろ積極的に拘禁施設訪問制度を取り入れるべきではないかと考えます。外務大臣の答弁を求めます。  次に、条約批准に当たっての国内法との整合性について、今も御質問がありましたけれども、さらに改めてお伺いをいたします。  言うまでもなく、憲法第三十六条に、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と、公務員による拷問禁止がうたわれており、さらに、刑法第百九十五条には、いわゆる裁判所、検察、警察の職務の対象となる者に対する特別公務員暴行陵虐罪が明記されております。また、そのほか、傷害罪、暴行罪を適用することで、拷問に対する取り締まりは、現状では可能であります。  しかし、この条約の第一条では、拷問の定義について、「身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、」と規定されており、この精神的拷問我が国国内法でカバーできるのかどうか。法改正が必要なのではないでしょうか。法務大臣に答弁を求めます。  次に、個人通報制度についてお伺いをいたします。  この条約では、第二十二条に、「締約国は、自国の管轄の下にある個人であっていずれかの締約国によるこの条約の規定の違反の被害者であると主張する者により又はその者のために行われる通報を、委員会が受理し及び検討する権限を有することを認める宣言を、いつでも行うことができる。」と記されております。いわゆる個人による国際機関への直訴が可能だと記されているわけであります。しかし、今回、政府はこれを受諾しないとのことでありますが、なぜ受諾しないのか。外務大臣の答弁を求めます。  これまでも、個人通報制度については、先ほども、総理または外務大臣が挙げておられましたけれども、司法権の独立が侵されるおそれという点を指摘されておりますけれども、司法権の独立と個人通報制度は両立できないのでしょうか。法務大臣の答弁を求めます。  次に、締約国増大に伴う条約機関の審査体制の整備についてであります。  第十七条で設置されている拷問禁止に関する委員会は十名で構成されておりますが、締約国が百十カ国に及ぶ現在、十分に機能するのかどうか疑問であります。各締約国から提出される報告書の処理であるとか、締約国内の領域における拷問制度的な実行の存在を確認するための調査であるとか、そういった審査体制は充実しているのか、きちんと行われるのかどうか。また、我が国は、拷問廃絶に向け、この条約機関に何らかの協力を考えておられるのかどうか、外務大臣に答弁を求めます。  次に、この条約を実効性のあるものにするためには、まず、この条約の存在とその意義が国民に十分に知らされなければなりません。その意味でも、国による啓蒙活動の促進をどう考えておられるのか、外務大臣の答弁を求めます。  かつて、我が国において治安維持法がありました。戦争の最中とはいえ、罪もなき人々が逮捕をされ、特高警察の拷問的取り調べに遭い、中には獄死をした人もいました。戦後、半世紀も過ぎているにもかかわらず、いまだにその名残があります。憲法にも法律にも規定されているにもかかわらず、拘禁施設内における非人道的な事件はいまだにやみません。むしろ、その監視の行き届かない閉ざされた空間で、あしき権力の魔性はきばをむいているのではないでしょうか。  そして、やっと今ごろになって、拷問等禁止条約批准しましょう、しかし、個人通報制度受諾しません、また選択議定書にあるような拘禁施設訪問制度には積極的にはなれませんというのでは、やはり我が国は、本気で拷問禁止しようという立場に立っていないのではないかと考えざるを得ないのであります。  我が国は、人権小国であってはならない、人権大国、人権先進国であるべきだと強く思う次第であります。そのためにも、今後、人権をめぐる問題については、我が国がリーダーシップをとって、世界の模範となるべきではないでしょうか。憲法において基本的人権の尊重を掲げている我が国は、本来であるならば、この拷問等禁止条約批准に真っ先に取り組まなければならなかったのではないでしょうか。  最後に、総理に、拷問根絶に向けた国際的な取り組みの推進、さらには、人権先進国、人権大国日本に向けた取り組みについての決意をお伺いし、私の質問といたします。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇
  37. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 赤松正雄議員にお答え申し上げます。  本条約締結になぜ時間がかかったかとのお尋ねであります。  我が国は、人権関係諸条約の重要性を認識し、各条約の目的、意義、内容締結必要性国内法体制との整合性等を十分勘案の上、順次、締結してまいりました。拷問等禁止条約につきましても、同様の観点から鋭意検討してまいりましたが、今般、検討が終了し、国会に承認をお願いすることとなった次第でございます。  御指摘の議定書は、戦争犠牲者の保護、戦闘手段の規制、これら義務の履行の確保等を詳細に規定いたしておりまして、全体として見ますれば、一定の意義を有していると考えております。他方、本件追加議定書は、長期間の交渉の結果合意された妥協の産物であり、長年にわたる論点に十分な解決を与えていない面もあります。  いずれにせよ、締約国数の増加、他方における米国等の未締結国の存在といった諸事情を勘案しつつ、その締結につき、引き続き総合的な検討を行ってまいりたいと考えております。  人権問題に対する基本姿勢についてお尋ねですが、人権の擁護は憲法の柱であり、民主政治の基本でもありますので、すべての人々の人権が最大限に尊重される社会の実現に努めるべきものであると考えております。また、国際社会におきましても、拷問の根絶を含め、人権の尊重を一層促進し、普遍化すべきと考えており、今後とも前向きに取り組んでいく考えであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣高村正彦登壇
  38. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 本条約が保護の対象としている者についてのお尋ねでありますが、本条約は、公権力を行使する者により、またはその関与のもとで行われた行為対象としております。よって、医療施設に公権力により強制的に入院させられている者に対して行われる行為も、一定の場合には本条約禁止されている拷問に当たります。  他方、学校における体罰の問題でありますが、学校における教育行為が公権力の行使に当たるとは考えられません。したがって、体罰は本条約に言う拷問あるいは残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いには該当しないと考えられます。  拷問の定義についてのお尋ねでありますが、御指摘のとおり、本条約において拷問とは、公務員その他の公的資格で行動する者により、またはその扇動により、もしくはその同意もしくは黙認のもとに行われるものであるとされております。また、拷問の共謀や拷問への加担についても刑法上の犯罪とすることを締約国の義務としております。  具体的には、個別のケースごとに判断する必要があり、具体的な例を示すことは困難でありますが、例えば、私人が公務員と共謀して拷問に当たる行為を行った場合、このような行為を処罰し得るようにしておくことが締約国の義務となっております。  拷問等禁止条約選択議定書に関する御質問でありますが、現在、作成に向けた検討が進められているこの議定書は、拷問禁止に関する委員会の小委員会を設立し、その小委員会締約国の拘禁場所を定期視察する制度を設けることを目的とするものであります。  我が国は、このような制度拷問の慣行を抑制する手段として一定の意義はあると考えておりますが、この議定書ができる限り多くの国によって締結され得る内容とならない限り、このような議定書を作成する意義は薄れるものと考えております。したがって、我が国としては、各国における国内制度、実情等を十分配慮し、多くの国が締結し得るような実効性のある議定書が作成されるよう、この議定書の作成交渉に積極的に参加してきており、今後とも採択に向け努力を続けていく考えでございます。  個人通報制度の受け入れについてのお尋ねでありますが、かかる制度は、本条約実施の効果的な担保を図るとの趣旨から、注目すべき制度であると考えますが、本制度については、憲法の保障する司法権の独立を含め、司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり、慎重に検討すべきとの指摘もあり、その受け入れに当たっては、拷問禁止に関する委員会による本制度の運用状況を、さまざまな角度からさらに検討する必要があると考えております。したがって、本条約締結に当たっては、第二十二条に規定する宣言は行わない予定でございます。  拷問禁止に関する委員会についての御質問がありましたが、締約国からの報告検討締約国の領域内における拷問制度的な実行の存在を示す情報を受けて行われる調査等につきましては、締約国数の増大に伴って委員会の機能に問題が生じているとは承知しておりません。我が国は、報告書の提出を初め、委員会により情報の提供の要請があった場合には、これに積極的に協力する所存でございます。  また、我が国は、これまで拷問被害者のための国連自発的基金を初めとする国連の人権関係基金に拠出してきておりますところ、今後とも、このような協力を継続していく考えでございます。  本条約の広報に関する御質問がありましたが、政府としても、本条約の広報の重要性については十分認識しており、官報による公布に加え、外務省ホームページや各種広報誌への掲載、各種パンフレット、冊子の配布等を通じて、本条約の存在、意義、規定等の広報に努めていく考えでございます。(拍手)     〔国務大臣陣内孝雄君登壇
  39. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 赤松議員にお答えを申し上げます。  まず、本条約第二条の規定と代用監獄についてのお尋ねがありましたが、代用監獄においては、捜査を担当しない部門に属する留置担当官が、監獄法等の関係する法律等に基づき、その責任と判断において、人権に配慮して、勾留された被疑者の処遇を行っているところであり、いわゆる代用監獄における被疑者の身柄拘束が、取り調べに不当に利用されるおそれはないと考えております。このようなことから、代用監獄に身柄を拘束することが、拷問またはそれに類する行為につながったり、その可能性を生じせしめるものとは理解しておりません。  次に、いわゆる精神的拷問に関して国内法の改正が必要ではないかとのお尋ねがございました。  精神的拷問とは、生命、身体、自由等に関して害を加えることを告知したり、暴行等によって精神的に重い苦痛を故意に与える行為を言うものと解されております。このような行為は、脅迫罪、暴行罪、特別公務員暴行陵虐罪等の刑法等の罪で担保できますので、法改正の必要はないものと考えております。  また、個人通報制度司法権の独立についてお尋ねがありました。  憲法上、裁判は、立法権及び行政権から独立したおのおの裁判官が、法と良心に従い具体的な事件について判断を下すものでありますが、個人通報制度に基づき、ある個別の事案につきまして拷問禁止委員会が見解を示すということになりますと、当該事案またはこれに関連する事案に関する裁判官の審理、判断等に影響を及ぼすおそれがあり得るので、慎重な検討を要する問題であると考えております。(拍手)     〔国務大臣野田毅君登壇
  40. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) いわゆる代用監獄制度に対し、何らかの積極的な措置を行う必要があるのではないかとのお尋ねでございます。  いわゆる代用監獄に留置されている者に対し、拷問等行為が行われてならないことは、当然のことであると考えております。警察におきましては、これまでも、捜査を担当しない部門に属する留置担当官が被留置者の処遇を行うこととしておりますほか、被留置者の人権に配慮した処遇を行ってきたところでありまして、今後ともそのように努めてまいる所存であります。(拍手
  41. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  42. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後二時十四分散会     ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         労働大臣    甘利  明君         建設大臣    関谷 勝嗣君         国務大臣    野田  毅君         国務大臣    真鍋 賢二君  出席政府委員         外務省総合外交政策局国際社会協力部長  上田 秀明君