運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-06-30 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月三十日(水曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊代 昭彦君       小島 敏男君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    園田 修光君       滝   実君    谷畑  孝君       中山 成彬君    丹羽 雄哉君       萩山 教嚴君    御法川英文君       水野 賢一君    宮腰 光寛君       宮本 一三君    矢上 雅義君       安住  淳君    河村たかし君       神田  厚君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    上田  勇君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    北沢 清功君       前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 六月三十日         辞任         補欠選任   金田 英行君     谷畑  孝君   木部 佳昭君     小島 敏男君   熊谷 市雄君     水野 賢一君   堀込 征雄君     河村たかし君   前島 秀行君     北沢 清功君 同日         辞任         補欠選任   小島 敏男君     滝   実君   谷畑  孝君     金田 英行君   水野 賢一君     熊谷 市雄君   河村たかし君     堀込 征雄君   北沢 清功君     前島 秀行君 同日         辞任         補欠選任   滝   実君     木部 佳昭君 本日の会議に付した案件  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第六九号)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木幡弘道君。
  3. 木幡弘道

    木幡委員 おはようございます。  この法律改正案質問に入ります前に、ここ二、三日の梅雨前線の大変な雨によりまして、けさの報道ですと、二府二十二県で死亡、不明合わせて三十八名、大変な被害が出たようでありまして、亡くなられた方に心からお悔やみを申し上げますと同時に、被災者方々に心からお見舞いを申し上げたい、こう思っておるわけでございます。  実は、つい昨年、私どもの県を初め、栃木、福島、新潟を中心に人命を失う大変な災害があったわけでありますが、そのときの物的な損害の中に、農地関係を含む農業施設等々の災害も大変なものがございまして、大臣あるいは総理もお出かけをいただいて、その後大変な御尽力をいただいたことに心から感謝を申し上げたいわけでありますが、恐らくは今回も大変な被害になっていくのではなかろうかなというふうに心配をしておるわけであります。  現段階農水省がつかんでおるものがもしあれば、どのような状態なのか教えていただきたいのと同時に、さらに一層の御努力をいただきたい、こう思うのですが、大臣、つかんでおるものがあればお願いしたい。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 私からも、まず、亡くなられた方々に心から御冥福を申し上げ、被災された方々にお見舞いを申し上げさせていただきます。  後ほど官房長の方から、より最新の話が、補足があれば答弁させますけれども現時点で把握できているのは主に山の方でございます。昨年の大変な被害のときも、若干農地の方が後にずれたという記憶が私自身ございますが、現時点で、我が省関連では、広島を中心として全国各地で、林地荒廃治山施設林道施設への影響は、合計で三十一億三千万円の被害を把握しております。まだ雨も続いておるようでございますので、この後災害が広がらないことを念じております。  農林水産省といたしましては、昨日午後八時付で、林野庁長官本部長とする六月末梅雨前線豪雨災害対策本部というものを設置いたしまして、とりあえず林地で、あと農地とか水産関係とかの状況もこれからきちっと把握をしていくつもりでございますけれども現時点ではそういう状況でございます。
  5. 木幡弘道

    木幡委員 この種のものは、後手後手にならないように、ぜひひとつ特段の御努力をお願い申し上げたいと思います。  法律案に入りますが、これを見ますると、この改正の中に地方分権という思想がほんのちょっと見えて、それで改正になったのかなというふうにも見えるわけであります。その辺のところを、大臣趣旨説明はついこの前承りましたが、この法改正趣旨説明になかった心意気といいますか理念といいますものがもしございますれば、まず冒頭お聞かせをいただきたいと思います。
  6. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今回の制度改正は、二つ大きな特徴を持っております。  一つは、新しい基本法案との関連におきまして、農地確保、とりわけ優良農地確保していくということについて姿勢をきちんとするということでございます。国の基本的な考え方をこの際つくらせていただくということです。  もう一つは、地方分権を推進するという立場から、やはり都道府県市町村事務を円滑かつ客観的に行えるような体制を組むということでございます。今回、地方分権一括法とも関連をいたしまして、都道府県市町村事務自治事務ということになるわけでございますので、その事務が円滑に遂行されますように、例えば農用地区域の設定の基準あるいは除外の基準について法定化をする、それから、国との関係につきましても、これまでのような上下関係ということではなくて、両者対等というふうな形に中身を改めさせていただきたいと考えております。
  7. 木幡弘道

    木幡委員 この農振法なんですが、実は、戦後の我が国農政を取り巻く歴史的なものを考えてみますると、昭和三十年代あるいは四十年代の大変な高度成長期において、土地投機的に扱われる、あるいは、住宅急増の時期を迎えて、優良農地が宅地に権利移動が甚だしくなって、優良農地が守れなくなるというような危機感もあった。そういうことから、当然、我が国において優良農地確保するということの意味合いが大変強い時代であったわけであります。  近年でも、バブル時には当然土地投機対象として扱われ、大変な危機感農水省もお持ちであったでありましょう。翻って、バブル崩壊後の現時点を見ますると、逆に、少子化に伴って、住宅急増といいますか新築につきましては、景気対策で精いっぱい予算化をし、新築住宅をあおっているという表現は当てはまりませんが、一生懸命つくることによって景気の回復に寄与させたいというぐらいの逆の感じになっております。  また、農地につきましても、JA、系統農協では、不良債権肩がわりで逆に農地がだぶついている。あるいは、減反によって優良農地荒廃して作付が行われないでいる。あるいは、農地そのものの全体の面積がどんどん落ち込んできている。こういうふうに、その時代背景によって、農地そのもの投機対象になったり逆に疎まれたりするという感じで翻弄されてきた。  ということで、この時点での法改正ということは、うがった見方をすれば、より現実的なものに農振法そのもの改正しようかということと、先ほど話がありました分権というものを少しは意識した形でこれを改正するのかなとも思えるわけであります。  それと同時に、もう一つは、指定地域をどういうふうにするかという基準が今度は法律明示をされる、あるいは、今までなかった担い手確保のための施設整備やあるいはその他の担い手育成のためにも努力をしていかなければならないということを盛り込んでいるというようなことでは一歩二歩前進した、こう見られるわけでありますが、冒頭申し上げました地方分権かかわりからいいましては、この法改正をしましても、今までと何ら実態は変わらないのではなかろうか、こう思うのであります。  例えば、承認から協議に変わったということでの違いというもの、改正前の法律に基づく手続等々においてと、改正した後の承認から協議に変わるということでは、行政手続その他で何か大きな変化があるのかどうかということについてはどうお考えになるか、お聞かせをいただきたい。
  8. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今の先生の御指摘の中に重要な点が二つあると思うのです。  一つは、従来、国の基本的な姿勢というものが必ずしも法律明定をされていなかったということから、国の指導というのはいわゆる通達ベースで、上意下達という形でやられていたという点だろうと思うのです。  確かに、おっしゃいますように、実態としては変わらないではないかという御指摘もあるわけですけれども法律上の意味合いとして、承認というやり方協議というやり方には大きな差がございます。新しい基本法でもそうでございますけれども、国から県、市町村へという上から下への流れではなくて、おのおのが言ってみれば対等の立場で、役割分担をしながら農地を守っていくということが大きなポイントであるわけでございますので、私どもは、分権推進計画趣旨もそうでありますけれども、こういった承認制度自治事務もと協議にするという点は非常に大きな変化だろうというふうに考えております。
  9. 木幡弘道

    木幡委員 実は、これは宮澤さんが名誉委員長になって、今の経企庁長官堺屋さんが委員長になっている日米二十一世紀委員会というのがあるのですね。そこの中に農業に関する提言というのが、まとめられたものが五項目にわたって提言されている。これを見ますると、ああ、なるほど、宮澤さんといいますのは農業に対してこういうふうな考え方をお持ちなんだなとよく見えてきますし、堺屋さんも、ああ、農業に対してこういう見方をしているんだなと思います。  この一項目で、輸入数量制限の廃止をしろ、あるいは輸入数量を制限されているものは一〇〇%の関税までを容認しろ、こういうふうにかなり過激な提言をなさっている。  かつてMA方式を受け入れたのは細川の責任である、こういうふうな論議政治的な発言としてよくされますが、政治をよく知っている諸先輩の皆さん方は既に御承知のとおり、長い間の交渉の中で、宮澤総理時代MA方式やむなしということの結論を出し、最後の煮詰めの段階政権交代になり、細川総理が誕生して最後の調印のときに座ったということをだれもが知っている。とすると、宮澤さんそのものは、ああ、なるほど、こういうふうな大変過激な、我々農業者にとりまして、あるいは農業関係者にとりましては過激なまでの改革論者なんだなということがよく読み取れる。  その中に、農家にとって、あるいは農業関係者にとって、痛みを伴うがやっていかなければならないというようなことや、いいことも実は入っているんですね。例えば三項目の中に、「農業補助事業の財源と権限地方自治体への移管。」という項目が入っているのです。すなわち、農業にかかわる補助金の見直しや、あるいは農地にかかわる事業そのものかなり思い切った努力をして都道府県市町村にその権限を移管すべきである、こういう提言もあるのですね。  当然これは末端農家方々、あるいは末端市町村農業関係あるいは農地にかかわる行政に携わっている方々からすれば、その地域実情考え、あるいは農地実情、あるいはその地方農業実態というものを考えたときには、その実態に合うような、その地域に合うような、基盤整備事業を初めとする農地事業かなり権限を、主体的に市町村企画立案をできるような形のものが欲しいと思うのはこれは偽りのない事実なのであります。  そういうことを考えますると、例えば今局長から話がありましたとおり、承認から協議に変わったということになれば、言外にかなりの思い切った考え方地方分権気持ちというものを酌み取ったやに聞こえる答弁ではありますが、私どもからすれば、もっともっと思い切って地方分権というものを農地事業にかかわる、構造改善局にかかわる事業については取り入れていただかなければならない、こう思うのであります。  局長、再度お聞かせをいただきたいのでありますが、実は、基本指針を作成して、それに基づいて都道府県基本方針を策定する、こういうことになるわけですね。とすると、やはり実態は今までと同じように国が主体的に、もちろん当然農地関係でありますから国が権限を持っているのを悪いと言っているのではなくして、やはり基本指針を作成する段階において、この改正をいたしましても何ら今までと実態は変わりがないのではなかろうか、こう思います。承認から協議に変わったということは大変な変わりようだ、こういう答弁でありますが、もうちょっと具体的にどのように変わるのかということをお聞かせいただきたい、こう思います。
  10. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 地方分権とのかかわりでございますけれども農地なり農業補助事業も含めまして、地方分権というのはひとえにこれだけではなくて、さきの国会で農地法改正もやらせていただきました。それから、それ以外に国の補助事業について、国営を廃止すべきものもございますし、統合補助金をつくるものもございます。地方分権推進計画の中で、それぞれでき得る最大限のことをやってきているわけでございます。  次に、国の基本指針とそれからそれぞれの都道府県市町村計画との関係であります。  これはもう先生案内と思うのですけれども農業生産を持続させていくための一番重要な要素農地と水と担い手と技術ということになりますけれども、その中でも農地というのは移動ができないものであります。それから、一度毀損しますとなかなかもとに戻らないという性格を持っておりますので、これは国全体として自給率をどうするか、自給力をどうするかという中で、農地の総量、利用あり方、そしてその中でとりわけ優良農地をどう確保するか、こういう基本的な哲学はやはり国家として、政府として示すべきものだろうと思うわけでございます。  ところが、実際に各都道府県市町村ではそれぞれの地域担い手も違いますし、農業生産あり方も違いますので、そこの地域において、どういうところでどういう農業生産をすべきか、どういう農地を守るべきかということは、それぞれ地方方々が一番よく知っているわけでございますので、そこで地域実情に一番即した計画を立てていただくということになります。ですから、法律用語上でいいますと、協議というのは場合によれば調わないということもあるかもしれません。調わない場合にはそうした、もともと自治事務である都道府県市町村のお考えの方が制度上は優先するわけでございます。  ただ、そのことが国全体としての食料供給に支障を生ずるようなものであれば、そこについてはやはり私ども国家全体としての見地から御意見を言わせていただくということでございますが、あくまでもイニシアチブは地方公共団体にあるということがこれまでの制度とは違うところでございます。
  11. 木幡弘道

    木幡委員 今までの長い戦後の農水省努力、あるいは法律まできちっと整えているにもかかわらず農地がどんどん減少している、五百万ヘクタールを割り込んでいるという現状を見まするときに、一方で、つい先ほどの農水委員会で新農業基本法論議したときに最も焦点になったのが自給率向上ということなんでありますね。  自給率向上のときには、今局長答弁のとおり、農地というものがきちっと確保できて担い手がきちっといるということが大事で、水がきちっとなきゃならないというような話を今なさいましたが、まさにそのとおりなんでありまして、自給率を幾ら論じても、農地がどんどん荒廃をしていって農地全体の面積が五百万を割り込んでいるということになれば、新農基法でいかに自給率向上をうたい、五〇%の自給率目標にするといいましても、これは絵にかいたもちになってしまうわけでありますね。  ということを考えますると、まず、これは農水省というよりは大臣政治家としての考え方で結構ですから、農地がなぜこんなに減っていると担当大臣として思われますか。
  12. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法の御審議のときにも総括という中で農地のことをちょっと触れた記憶がございますが、戦後約二百万ヘクタールの農地が失われ、そして一方では百万ヘクタールが造成されて、トータルとして百万ヘクタール減って現在五百万ちょっとということであります。  やはり、生産性向上とか、その前提としての基盤整備というものがまだまだ行われていない中での農家経営の厳しさというものも一方ではあったでありましょうし、基本法の議論のときには、周りの地価が上がって土地保有的な、資産的な価値がふえて、その結果農地流動化が進まずに規模拡大が進まなかったというような答弁をいたしましたけれども、一方では、そういう農地等々が、周りの、特に経済成長、あるいはつい最近でいえばいわゆるバブル時代に、これは文字どおりキャピタルゲイン的な大きな収入が見込まれたということもございました。  そういうことで、一方で規模拡大合理化によってもっともっといい経営をやっていきましょうという我々を含めた農政一つの大きな柱と、諸般の経済事情あるいは土地そのもの基盤のおくれ等も一部にあったわけでございまして、なかなかそういう形にいかずに農地が失われていった部分がかなりあるというふうに考えております。
  13. 木幡弘道

    木幡委員 いろいろな要素がある、今大臣の話のとおり、この質問に答えるというのは至極難解でありまして、いろいろな要素がかかわっているということは当然だと思うんです。  さはさりながら、農地をきちっと守っていくという姿勢を、とりわけ農振法の改正案審議委員会でありますから、優良農地の保全ということに主力を置いていかなければならないということから考えますと、新農業基本法論議のときに基本計画の中に農地面積というものを入れてほしいなというふうに思いましたが、これを盛り込むことが困難であった理由というのはどういうことなんでありましょうか。それをお聞かせいただければと思います。
  14. 高木義明

    高木政府委員 新しい基本法案の中では、食料自給率目標明示するということになっております。食料自給率目標というのは、消費サイドの問題とあわせて生産サイドで、要すれば、品目ごとに、何をどのくらいつくっていくのかということをはっきりさせるということを考えております。  その場合に、品目ごとの、例えば麦なら麦、大豆なら大豆何万トン、そのために必要な作付面積は何かということを基本計画の中で明らかにしていくということでございますが、何せその一番の大もと食料自給率目標ということでございますから、それに必要な手段ということとしての農地面積ということで、条文自体には明示をしておりませんが、基本計画の中では、自給率目標だけでなくて、それに必要な農地面積も記載をするということを考えております。
  15. 木幡弘道

    木幡委員 とすると、自給率と同時に必要な農地面積明示をしたい、こういうことでありますが、食料自給率については当面五〇%ぐらいということになってくるんだろうというふうに大体理解をしているのが現状であります。しからば、農地面積はどのぐらいを明示するというふうなお考えなんですか。
  16. 高木義明

    高木政府委員 ただいま五〇%というお話がございましたが、まだ、私ども作業といたしましては、現在、どのように何をつくるのかということの積み上げの作業中でございまして、数値それ自体はそういう結論には至っておらないという事情にまずございます。  次に、お尋ねの、では仮に五〇だと置いたら出るのではないかという御趣旨かと思いますが、自給率目標何%というのは、やはり何をつくって何%という目標に到達するかという中身なしには論ずることができないと思います。そうなりますと、物によって単収も違います。大豆の単収は御案内のように約百八十キロ、小麦ですと三百六十キロ、こういうことでございますから、また、麦は裏作も可能だということにもなります。  したがいまして、何をどれだけつくるかということが出ませんと、農地面積が自動的に出る、こういうことにはならないわけでございまして、何をどうつくるかという作業とあわせて、それに必要な作付面積あるいは耕地利用率も勘案した農地面積、こういうものの作業を進めたいというふうに考えております。
  17. 木幡弘道

    木幡委員 ことしの十一月の末から次期WTO事前交渉シアトルであるというふうにお聞きしております。今の話を承ると、それを見据えた形でいつごろ国民に対して明示ができるようなタイムスケジュールをお考えになっているのか、お聞かせいただきたい。
  18. 高木義明

    高木政府委員 基本計画につきましては、これまでも当委員会でるる申し述べてまいりましたが、遅くとも今年度中をめどに策定いたしたいというふうに考えております。
  19. 木幡弘道

    木幡委員 本年度中というと来年の三月末ということですね。すると、十一月の末のWTO次期交渉事前交渉にはそういうものを全く頭の中に入れないで交渉に臨むということになるんでしょうか。
  20. 中川昭一

    中川国務大臣 十一月の交渉というのは、実質、WTO次期交渉に向かってのスタートを切ったと言ってもいいということだろうと思いますが、来年から次期交渉をやりましょうという中での極めて大事な前段階会議だろうと思っております。  その場ではやはり、我が国主張というものを提案という形で既にお示しをしておりますけれども我が国主張がどういうものであるかということで、例えばよく私どもが聞かれるのは関税率をどのぐらいにするのかとか、そういうような具体的な数字も含めまして、まだまだ国内的な作業も含めましてでき上がっていない段階であるし、また、その場で交渉一つ材料として出すべき会議ではないというふうに考えておりますので、十一月の事前交渉自給率も含めた具体的な細かい数字交渉一つ材料として出すということは、直接的には交渉には影響を与えないのではないかというふうに考えております。
  21. 木幡弘道

    木幡委員 大臣官房長も、聞いている趣旨を理解いただけなかったので残念ですが、要するに、十一月末のシアトルでの交渉で今私が申し上げたようなことを表に出して交渉するなどということは到底私も思っておりません。そうではなくして、前回のURの交渉のときに何が一番問題であったかということなんです。  結果とかいろいろなこと、瑣末なこと、感情的なことを抜きにして、要するに農業交渉に対して全国民合意形成をして、国の食料安保たる、主食を守るために頑張るんだ、そういうものがない、いわゆる国論が二分された、三分されたという苦い、悲しい経験があるのですね。ですから、そういう意味で、次期交渉では、一億二千万国民がこぞって同じ気持ちでもって交渉に臨んでいただくという形にしていくためには、前よりはタイムスケジュールを早くしていかなければならない。  それはなぜかといえば、大臣初め農水省方々が新農業基本法のときにおっしゃっていたでしょう、次期WTO交渉のときに国民合意に基づいて交渉に臨まなければならないと。とすれば、これをどうしても早目に通して国民合意形成を図ろうということで我々も協力をして可決をした。ということを考えたらば、その肝心の中身基本計画は、諸般の事情があって、今話したとおり、それはもうここで論議をする必要はないですよね。  食料自給率の算定については、当然、今官房長が話したとおり、大変難しいことではあっても、国民に早く明示をして、当面の目標をこうしましょう、こういうことでもって、次期交渉できっちりとあの強硬なアメリカやケアンズ・グループに理解を求めていこうということのためには、なるべく早目早目に基本計画合意形成し、国民のコンセンサスを得るということが大事だ。  そういう意味でお聞きしたわけです。そういう意味では、十一月三十日前にそういうものが全くない、どういうふうな交渉中身にするかということを、十一月三十日から行くのはあらあらのことを決めるというのはよく承知していますよ。そうではなくして、今申し上げたようなことに関してどう理解をしていただいているのか、なるべく早くそういうことを明示するということがないのかどうかということをお聞きしているのですが、再度、答えがあれば。
  22. 中川昭一

    中川国務大臣 若干先生の御質問の御趣旨と違うような答弁をしたと思います。  まさしく先生指摘のように、国民的なコンセンサスのもとで、そして我が国と同じ立場考えを持つ国々とも連携をしながら、提案の中の三つの柱、多面的機能、食料安全保障、あるいは輸出国と輸入国とのバランス、さらには発展途上国の問題等々、これは国際的に通用する理屈だと実は我々は考えておるわけでありまして、そういう原則の中で、我が国食料自給率あるいは食料生産状況というものを考えますと大変低いんだということは各国にも強く訴えていくことでございます。  これは、定性的に我々としては大きな一つの論拠として言っていくことはもうはっきりと申し上げたいと思います。では、定量的にどのぐらいになるのかということになりますと、基本法を参議院で今御審議いただいております。そして、基本計画づくりに入ってまいります。そのときに、先ほど官房長答弁しましたように、品目別に、しかもつくるだけではなくて、消費者の受け入れというものも、相手方のあることでございますから、受け入れ可能な、そして実現可能な自給率というものをできるだけ高く設定したいという気持ちはございますけれども、その作業そのものが大変に複雑な試算といいましょうか、目標値の設定になるわけでございます。  そういう意味で、今年度中、遅くとも来年三月までにということでございますが、我が国交渉に臨む一つのスタンスとしては、三つの提案の具体的な主張の原因として、我が国の食料の状況というのは極めて厳しいものである、その厳しいものの原因の一つとしていろいろな状況があるのですよということを申し上げながら、食料安全保障、あるいは輸出入国の協定上の権利義務のアンバランス等について、何としても我が国主張を実現させていかなければならないということで、先生趣旨の前提に立って、ただし十一月三十日までに具体的な数字が挙げられるかどうかということになりますと、実務の問題としてなかなか作業は大変なことになるのではないかということでございます。おっしゃっていることは十分踏まえた上で交渉に臨むつもりでございますが、具体的な数字については、十一月三十日までに出せと言われてもなかなか実務的に難しいということも御理解をいただきたいと思います。
  23. 木幡弘道

    木幡委員 出せとは言っていません。過去の苦い経験から、学習効果を出して、なるべく早くそれをまとめて国民に提示をしていただきたい、こういうふうに申し上げたのであります。  農地が欠落しています。官房長にお尋ねしますが、基本計画のときの数字を算定するときに、初めに自給率を、例えば五〇なら五〇、どういう数字になるかわかりませんよ、今官房長が言ったとおり、例えば五〇%というものを出して、それを逆算した形でそれに当面必要な農地面積はこれこれということで出すのか、それと全く別に、農地面積は当面これだけということの目標だということで出すのか、その辺の考え方があれば。
  24. 高木義明

    高木政府委員 お尋ねの農地面積自給率関係でございますが、自給率目標は、主な品目別といいますか、米とか麦とか大豆とか、そういったものについてどれだけつくるか、消費の需要をどう見込んでどれだけつくるかということで、各作目別にまず出すというのが作業の順番でございます。  そのときにどれだけつくるかということになりますと、そのときの作付面積、そしてまた表裏の関係もございますから、耕地利用率を勘案した必要な農地面積というのが各作目別に出てくるわけでございます。全体の米、麦、大豆、その他いろいろな、果樹、野菜等々ございますが、それを全部積み上げた結果として出てくる、こういうことでありまして、何か自給率目標が先にあって、それから演繹的に面積が出てくるというのではなくて、まさにそれぞれの作物の目標、この積み上げの過程の中で農地面積も出てくるということでございます。
  25. 木幡弘道

    木幡委員 おもしろいですね、今のは。結局、初めに自給率ありきでしょう。自給率農地面積関連ないというふうに言っていましたが、各作物別の目標を設定して、それに必要な農地を積み上げてきて総計を目標面積にするんだということは、自給率を初めに決めなければ農地面積が決められないということを、同じ答弁の間に全く違うことを話しているというふうに私は受けとめました。ともあれ、自給率についても、農地目標面積についてもなるべく早目に提示をしていただきたい、こう思います。  実は、農地面積がどんどん減っている。先ほど大臣答弁がありましたが、いろいろな理由があります。就農の魅力がないのも一つの大きな原因になっている。就農の意欲が減退するのには、ただ単にお金にならないからというだけの理由ではないのですね。当然、経済行為を行う自由主義社会の中にあって、そうもうからないものについては余り手を出さないということもあるにはあるでしょうが、事第一次産業従事者の方々というのは、ありていの言い方、ざっくばらんな言い方をすれば、損得抜きにしてやはり農業がおもしろい、簡単に言えば、宮仕えには向かない、自然に親しむことを業とする農業というのはもうからないがこれで結構楽しいんだという気持ちで営農にいそしんでいる方も大変多いんですね。そういう方々にとっての勤労意欲の減退は何かといえば、やはり減反なんですね、現実として。  例えば、構造改善局でもって精いっぱい努力をいただいて、通年施行でもって圃場整備事業を行った、でき上がった、立派なものができたということになったら、今度は減反の枠組みの中に入れられて、できたばかりの立派な圃場を減反するということを見ていれば、農家方々は、もう経済的な理由というよりは、勤労意欲そのものが減退してしまう、こういうことなのであります。  そういうことを考えたときに、これは国税を使い、農家の負担金をつぎ込み、都道府県市町村の裏負担までつぎ込んで立派な圃場を整備して減反だということを考えますと、減反というのは大変深刻な問題と思わざるを得ない。とすれば、その減反の主体的責任というのはどこにあるとお考えですか。この政策実現のための主体的責任者あるいは責任の機関というのはどこにありますか。
  26. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お答え申し上げます。  先生既に御承知のとおり、米につきましては大変な需給ギャップがあるということは申し上げるまでもないと思いますが、この生産調整が行われておりますゆえんは、米の需給と価格の安定を通じて稲作農家経営の安定を図る、これが一つあると思います。  それから、片方、主食であります米を消費者に対して安定的に供給する、こういう目的もあろうかと思います。  これとあわせまして、地域の自然的、経済的条件を生かして望ましい地域農業の実現をする、こういう地域的な部分に配慮をしたということもあろうかと思います。  また、自給率の低い作物、先ほどからいろいろな御議論がございますけれども、そういう作物もございますので、そういうものについての生産振興も図らないといけない。  こういう、国全体あるいは生産者、消費者それから地域の問題等々ございますが、このような事情を踏まえまして生産調整が行われるわけでございます。  この生産調整によります米の需給、価格の安定のメリット、これは生産者にあるわけでございますが、片方、米の需給、価格の安定や国内農業生産の振興を行う国、それから先ほどお話を申し上げました望ましい地域農業の実現に取り組む都道府県市町村、これらの皆さんもそういうことでかかわっていただいていると私ども考えておりまして、こういう関係者が一体となって生産調整の推進に当たる、そういう基本的考え方を持っておるところでございます。
  27. 木幡弘道

    木幡委員 全体でかかわるということだとよくわからないんですが、主体的な責任の機関というのは農水省ではどこだとお考えになっているか。今以上のお答えが出てこないときには今と同じ答弁で結構ですが、全体でかかわるということではよくわかりませんので、主体的にどこが減反政策の中心になるというふうにお考えなのか、もし答えがあればお聞かせをいただきたい。
  28. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほどの答弁とやや重なる部分があって恐縮ですが、まず、米の需給、価格安定のメリット、それを最初に享受されます生産者それから生産者団体が主体的にそういう意味では取り組んでいただくということは当然でございます。当然、それとあわせて行政機関も一体となりまして、先ほどるる御説明を申し上げましたいろいろな目的あるいは効果、それからそういう経済的な役割といいますか、それをねらいとして一体となって取り組んでいくということで考えております。
  29. 木幡弘道

    木幡委員 前段の答弁のとおりだと思うんですよ。主体的責任というか、その中心はどこかといえば、生産者なんですよ。そうなるんですね。そうしなきゃならないんです。  ですから、食管法がなくなって、生産調整の主体的責任はどこにあるかといえば、生産者並びにその生産者を取り巻く系統団体なんですよ。ところが、なぜ減反のたびに、農水省から減反を押しつけられた、あるいは末端では農水省経由で県や町から減反を押しつけられたというふうな論議実態を見ますと、減反の説明をするときに、もうほとんどの系統農協が出先でもってかかわっていないんですよ。市町村役場の担当者あるいはその部署にある者が行って、農業者の団体に対して説明をしているということからすれば、主体的な責任といいますか、減反政策の中心にあるのは、市町村を経由して都道府県であり農水省なんだというふうに思うのは当たり前なんですね。  この辺のところを変えていかなければ、この減反の政策の話というのは、これから先進まないんですよ。その実態についてはどう思いますか。
  30. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 ややプライベートな経験を踏まえての話になって恐縮なんですが、実際、現地で転作といいますか生産調整を実施しますときには、農協はもちろんですけれども、普及組織とか市町村関係者が集まっていろいろな会合あるいは相談の場が持たれるということになっております。恐らく、例えば米の地域に占めるウエートといいますか、そういう事情地域により濃淡はあるかと思いますが、どのくらいその推進について大きな発言をされる方がおられるかによって、受け取り方によって、だれがイニシアチブをとっているかということはあろうかと思います。  私どもがこれにかかわっております立場から、あるいは地元で私も県におりまして経験したことから申し上げますと、そういう個別の事情によりましていろいろなケースはあろうかと思いますが、全体としては関係者が集まって知恵を出して目標を達成しようということで推進をしていると思っております。
  31. 木幡弘道

    木幡委員 この前の委員会か何かでも同じことを言いましたから、同じことを言っているなというふうに言われるかもしれませんが、かつて、日本のミカンが大豊作でもって暴落をして、小田原とか静岡では捨てる場所がなくて、生産者が摘果をして海に投げて小田原の海が真っ黄色になったということがあったんですよ。その後、柑橘連を中心にしたミカンの生産者と生産組合組織が生産調整をして、曲がりなりにも農家の所得も安定をし、均衡のとれた作付面積生産面積確保したということがあるんです。  本来、生産調整というのはそうあるべきなんですね。決して農協に対して批判をするわけじゃないんですが、農協が、農家の生活にかかわること万般について、農協法に基づいて各種事業をするということはそれはそれでいいんです。農家の方の共済をやったり、農家方々が電化製品を安く入れるために電化製品を売る、それもそうなのかな。あるいは、農家方々も服を着る。その服については、洋服を売りに一生懸命歩く、信用事業もやる、厚生事業もやる。それはそれで結構ですが、本来の系統農協組織といいますのは、一番大事なことは、生産者のもってみずからの農業生産物を、いかにどれだけのものをつくっていい価格で売るかという生産と流通についての情報というものを掌握し、それを系統農協を通じて農家方々に周知徹底するということがなければ、本来の業務が欠落していると言わざるを得ないと私は思うんですね。  そういう意味では、全中を中心とした系統農協が、かつて丹羽兵助さんと、自民党の総合農政調査会の会長さんのときに、いわゆる適地適作をしながら、それぞれの作物別にどれだけの生産をすることが我が国にとっていいかということの論議をして久しいのですね。その極めて重要なところを、系統農協が余りにも食糧庁あるいは農水省に頼り過ぎているというか、そっちでやっていただけるというような姿勢が見受けられてならないのであります。とすると、生産調整、いわゆる減反というのは、やはり農水省から押しつけられているということになる、農家の感覚は。  ですから、そういうことをなしにして、生産者団体がそれぞれの適地適作ということになれば、がらっと前に戻りますが、立派な圃場をつくったところが減反になるなどというのは、ごく機械的に減反をしているからこういうふうになってしまうということだと思うのですよ。農協を初めとする系統農協生産者がかかわって生産調整をすれば、立派な生産性の高い農地整備したらば、そこを減反の対象に入れるはずもないのですね。この地域でもってこれだけの面積、この地域でこれだけの面積ということで、機械的に行政ルートで行っているために、今話したとおり立派な圃場が減反の対象になってしまう。それを見ると、やはり農家は勤労意欲がなくなってしまう、こういうことだと思うのです。  ですから、減反は原則として行政の中でやるなどというような時代ではありません。系統農協生産者の中で、農家経営を守るために、よりよい対価を得るために、いかにどれだけのものをつくるかということは、系統農協中心になってそれぞれの知恵を出すということに変えていかなければならない時期だと思いますが、大臣どう思われますか。
  32. 中川昭一

    中川国務大臣 まず基盤整備をやる、あるいは完了した。そして、いろいろな数字があるのでしょうけれども、減反になるというのは生産者の気持ちとしては大変つらいものがあるであろうことは、私自身、全国を回っていつもその話が出てまいりまして、よく個人的にはわかる話であります。  しかし、これだけの米が、千三百万トンとか千四百万トンとかいう潜在能力があって、それをつくりっ放しにすると、結局は、マクロとして米をつくった人が大変な損害を受けてしまうというのも、これも全国の生産者の皆さんは頭ではわかっていただいていると思うのであります。  一方、先生指摘のように、適地適産というお話、これまた全国いろいろなところで伺います。本当においしい米、高くても売れる米をつくっているところを適地適産と呼ぶのか。あるいはまた、価格の評価は低いけれども、コスト面で安い米を生産できるところを適地適産というのか。あるいはまた、裏作等で米以外にも、先ほど耕地利用率の話がありましたけれども、そういう農地を適地適産と呼ぶのか。これは地域によって、我が地域が、我こそは適地適産だというような誇りを持っているというのは、私は非常に大事なことだろうと思っております。これを全体として見ると、強制的に、あなたのところは適地適産じゃないんだとか、あなたのところは適地適産なんだと言うことは、これは人情面においてもなかなか難しいというのが過去の生産調整の現実であったのではないかと思っております。  したがいまして、何で自分のところが三割も四割も減反しなければいけないんだということになるわけでありますけれども、それによってペナルティーを与えるとかそういうことではなくて、まさにそれにみんなで協力することが、トータルとしての、一番経済的にも、また農業経営的にもいいことなんだということを御理解をいただいた上で生産者がそれに取り組んでいただく。  そしてまた、そのためには、事情に詳しい地元単協あるいは市町村、そしてそれをまとめる都道府県、そして最後は国というものが、さっき一体的という話がありましたが、文字どおり、国の米の需給政策は、ひとえに農林水産省、食糧庁が管理をしておるわけでございますから、どのぐらいこの地域でどうするこうするということについては、生産者あるいは地域が主体的に取り組むということを否定はいたしませんけれども、やはりそれと行政とが一体となってやることによって、やりたくないでありましょう農家が大半だろうと思うわけでありますから、そういう中で全体的に調和のとれた米の需給政策をやっていくためには、やはり第一線の皆さん、そして団体、地方行政、国、全体が一体となってやっていくことが、短期的にも、また中期的にも大事なことではないかということであります。  あえてだれが主体なんだということに関しては、生産者はなかなか厳しい気持ちになることは私自身もわかりますけれども、みんなで全体としてこの問題に取り組んでいきましょうということでやっているということでございます。
  33. 木幡弘道

    木幡委員 農業はやはり大変難しいですわな、大臣。  市場原理の導入を促進するということが生産性向上につながるという、その基本理念を新農業基本法の中でもうたい、あるいは皆さん方も常平生そうおっしゃっている。だけれども答弁そのものは、市場原理を導入するということはなかなか容易でないということを違う言葉で言っているというにすぎないのですね。  ですから、当然これは工業製品と違いまして、自然が相手ですし、あるいは大変難しい要素がいっぱい加わっているということでありますから、快刀乱麻のごとき答弁とか、あるいは快刀乱麻のごとき政策というものがなかなか出にくいというのはわかりますよ。しかしながら、事生産調整といいますのは、生産者の知恵と経験と努力によって行われるという大原則がなければ、やはりそれは生産性向上というものは望み得なくなる、知恵が出てこなくなるのですね。  ですから、主体的にといいましても一体となってという、ではどこが一体でどうなのかということは難しいのでありますが、生産調整が大原則として市場の原理に基づいて知恵と経験を生かして汗を流しながら努力するということであれば、生産者がもってみずからその責任において生産調整をする。  しかしながら、その生産調整が、余りにも国政全般に大変大きな影響を与える、あるいは悪影響が出るというときに、大もとの総責任者である大臣並びに農水省が、それを是正したり、これを指導するということは当然あり得る。だけれども、大原則は、生産者がもってみずから減反政策の中心をなすというふうにお考えになるということはできないですか。再度大臣答弁をお願いします。
  34. 中川昭一

    中川国務大臣 政府は、米、いわゆる国家貿易品目としての内外の国境措置に対して責任を持つと同時に、国内での、例えば平成五年のあの大冷害のときの米パニック、あるいは過去二度の米の大過剰、現在も大変大きな在庫を抱えておるわけでございまして、それに対して適切な需給にするということについては責任があるわけでございます。  そういう意味では、トータルとしてこのぐらいの米がことしは必要なんではないかというようなことについては責任があるわけでございますけれども、個別の需給、都道府県単位あるいは農協、集落単位でどういうふうにするかということにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、一番実態のわかっておる地域の調整といいましょうか、生産者が主体的に取り組んでいただくことに対して、我々も一体として協力を、いろいろな施策をとっていく。  そして、市場原理というお話がありましたけれども基本法には市場原理という言葉は出ておりませんけれども、需給事情で価格が決定される。需給が大きく変動した場合には、三十条二項によりまして、いろいろなそれに対する経営安定措置、米は去年から稲作経営安定対策というものをとっております。  まさしく自然、生き物、そして生産者の御努力というものが大きなウエートを占める米作を初めとする農業生産活動でございますから、できるだけ経営安定のための措置をとっていくことが必要であるということで、基本法中心とする、今の農振法の御審議も含めて、新しい農政、食料政策というものに取り組んでいかなければならないというふうに考えております。
  35. 木幡弘道

    木幡委員 やはり一体。まあ、一体でも、今の発言から自分なりに解釈をして、今までは一体どころか、先ほど話したとおり、農水省から都道府県経由市町村市町村の担当部課長が農家の代表のところを回って歩くということですから、一体どころか農水省が一〇〇%だったものが、恐らく今の発言で全中を初めとする系統農協も少し思いを強くしていただけるであろうというふうに期待をしてやみません。その論議はまたの機会にやります。  系統農協組織は、全国段階で優秀な人員を擁した巨大な組織でもありますし、全国隅々まで単協ありということからすれば、当然、国全体の生産調整の数字をはじき出して、各都道府県の全中の方々と話をし、各都道府県の全中は末端農家方々と話をするという全国規模での展開ができるということでは、生産調整に主体的責任を負えば全国レベルでできるということでありますから、農水省が主体的に責任を持つということはぜひやめていただかなければならない、ここで強く申し上げておきたいと思います。  ところで、減反の場合に、今生産調整はなぜするかということは、当然これは過剰とそれから減少で、近いところでは、平成五年の冷害でもって繰り越しが三十万トンを割って二十六万トンになったときもあった。その前には大変多いときもあった。六十万トンの韓国からの緊急輸入でもって国民の主食をつないだこともあった。と思えば、きょう現在でいえば、三百万トンを超すというふうなことにもなった。あるいは、備蓄の論議のときには、幾らなんだといえば、最初は百万トンをかたくなに守って、百万トン以上はだめだと言っていた。その後、もっともっとすべきじゃないかということになったらば、五十万トンはね上がって百五十万トンになった。百五十万トンプラス・マイナス五十万トンということは、上限二百万トンになった。  ここ十数年の間の我が国の主食の管理につきましても、これほど農業は難しい。天候によって左右される。その中で、とりわけ備蓄というものはなかなか難しい。それはよくわかります。しかしながら、新農基法の中で、農業の持つ機能というのが多面的機能とそれからもう一つ食料安保ということが入ってきたわけですね。食料安保ということは、単に食糧庁や農水省ばかりではなくして、この国の安全保障というものの根幹にかかわることであるから、全省を挙げて、全国民の合意をもって農業に理解も示していただかなければならないし、あるいは、ひとえに農業予算だけでこれらの問題を片づけるということではだめですよという意味を込めてこういった新農業基本法というものができ上がったということを考えますと、食糧庁長官にぜひお尋ねをしますが、備蓄にかかわるお金というものはだれがどう負担するというふうにお考えですか。
  36. 堤英隆

    ○堤政府委員 日本の場合には、現在お米につきましては、国が国家備蓄ということをやっております。これは、米が持っております主食としての消費生活上の地位、それから農業全体に占めます稲作の重要性ということもあって、やはり国が役割を果たすべきだということが、農業者だけでなしに、消費者、国民方々も含めて今の大きなお考えではないかというふうに思います。  そういう意味では、私どもとしては、先々のことは別にいたしまして、当面やはり、先ほど先生おっしゃいましたように、国の安全保障にかかわる、また国民の生命にかかわることでございますので、一たん緩急ありました場合におきましても、一定の品質のものを安定的に供給していく責務というのはやはり国の責任だというふうに考えております。そういう意味では、その負担につきましても国が負担すべきもの、こういうふうに理解をいたしております。
  37. 木幡弘道

    木幡委員 戦略物資という言葉がよく使われます。国家安全保障にかかわる物資、その戦略物資の双璧をなすのが、一つはエネルギーであり、一つは食料だというふうに私自身は考えています。  そういうことを考えますると、かつて昭和四十八年に相次いで石油ショックと小麦ショックというのがありました。あのときに国民は、ああこれは大ごとなんだ、石油というものが枯渇すれば国民生活がトイレットペーパーに至るまで大変なことになるんだというふうに認識をさせられました。  あるいは、小麦ショックでもって、アメリカがあれほど豊作だったにもかかわらず、ミシシッピ川を初めとするありとあらゆる倉庫に小麦を満載して、なおかつ小麦は一粒たりとも輸出はできないというふうに世界にサインを送り、シカゴの穀物相場が一気にはね上がって、高騰した途端にアメリカが自国の小麦を放出した。まさに経済の戦略物資であり、国防にかかわる、安全保障にかかわる戦略物資として有効に使ったということを、昭和四十八年に私どもは痛いほど経験をさせられた。  そういう経験に基づいて、石油は国家備蓄と民間備蓄を両方でもって責任を持とうということになった。もちろん国家備蓄もありますが、民間で備蓄をしている。民間の備蓄は、当然、原油にかかわる精製業者を初めとする石油業界で応分の負担をして、その一部を、国家備蓄の一部を民間が負担する。まさにこういう仕組みでもって、その後、ありがたいことに、石油がどのような状態になろうが安心をしていられるということなのであります。  とすると、食料について民間の方々も応分の負担をいただくということの方法が食糧庁あるいは農水省としては頭の中にあるのか、あるいは今後そういうことも検討の余地があるなというふうにお考えなのか、その点について考えがあればお聞かせをいただきたい。
  38. 堤英隆

    ○堤政府委員 今先生おっしゃいましたように、エネルギー、特に石油とそれから食料というものが国の生命あるいは国民の生命にかかわる重要な戦略物資だということだろうと思います。  そういうことを考えました場合に、今先生は石油の場合を例に出しておっしゃいましたけれどももともと石油については精製業者等々の民間備蓄からスタートしたというふうに理解をいたしております。民間備蓄だけでは不十分だということの中で、国家備蓄というものがその後始まった。それは、やはり石油ショック等を経験したということだと思います。  現在の状況を見ますと、通産省の審議会等におきましても、むしろ国家備蓄を基本にすべきだというような答申が出されております。したがいまして、平成に入りましてから、国家備蓄を非常に充実させております。現実は今半分程度が国家備蓄ということになっておりまして、民間備蓄は従来九十日でございましたけれども、これを徐々に減らしまして七十日というふうにしております。そういう意味では、石油につきましても、その重要性にかんがみて国家備蓄というものを基本に据えながら対応してきているんじゃないかというふうに私どもは理解をいたしております。  もちろんお米につきましても、現在の食糧法におきましても、自主流通法人ではございますけれども、一部、民間備蓄という規定もございます。当面そういう形で持たせたこともあるんですけれども、今は非常に過剰になっておるものですから、民間備蓄はございません。  そういう意味で、先ほど申し上げたような考え方から見て国家備蓄というのを基本にしておりますが、特に石油との関係でいえば、もう一つは、精製業者等、非常に大規模な企業が主体でございます、五十五社程度でございますけれども。お米については、御案内のように、卸さんだけで見ても三百七十社、小売店まで入れますと十二万戸ということになります。そういう中で、全国津々浦々、全世帯にお米を届けていくということについての不安感といいますか、うまくできるだろうか、こういう問題もあろうかと思います。それから、もともと全量管理であった食管法を廃止して、百五十万トンの備蓄限定ということになってきたという経緯もやはり大きいものがあろうかと思います。  そういう中で、私どもとしても、なお先々の課題といたしまして、民間備蓄というものが検討の対象にならないというのは毛頭考えておりませんけれども、当面は、やはり今のような体制のものが国民的な合意をいただいて、かつ効率的に運用できるのではないかな、こういうふうに理解をいたしております。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  39. 木幡弘道

    木幡委員 国家備蓄、要するにこういうことだと思うんですね。今の石油の話、長官の話のとおりでありまして、民間から始まって、民間備蓄であった、それまでは、石油というのはどこでも好き勝手、お金さえあれば買えると思っていたから国そのもの国家備蓄というものを全く考えないでいた、四十八年に石油ショックになった、これは大ごとだ、民間だけの備蓄では足りないから国家備蓄もするぞということになってきた、そういうことなんであります。それで、九十日だったというのを百二十日にしなきゃならないであろうという論議も一時はあった。  そういうことを考えますると、食料についての備蓄というのは、人によっては、百五十万トンプラス五十万トンで二百万トンを超したらあなた方は大変じゃないか、金がかかって何だというふうに一部心ない人は、財界人あたりも言う人がいる。私どもからすれば、石油の備蓄が九十日、三カ月相当分を備蓄しているということからすれば、食料だって三カ月ぐらい備蓄をしなければならないということになれば、粗っぽい計算で、一千万トンの中の三百万トンというのは当然備蓄しなきゃならないということで、三百万トンぐらいの備蓄でもって決してうろたえる必要はない。食糧庁長官、心からエールを送ります、多くて困ったなんということは絶対言いませんから。  要は食料安保でありますから、食料安保ということからすれば、再度お聞きしますが、備蓄にかかわるお金を新農基法でうたい上げたのは、全省庁にかかわるという心意気がなければ後ろ向きになるんです。基盤整備事業も一緒です、後でウルグアイ・ラウンドの話をしますが。これは、多面的機能、国土保全というその他もろもろの多面的機能ということになれば、農水省だけの予算だなどということではないですよという心意気を持たなければあの新農基法ができた意味がない。食料安保ということからすれば、食糧庁だけの予算でもってこれを負担するんだなどということであれば、食料安保などというふうな、あの声高に、大上段に振りかざしたことがこっけいに思えてくるんですから、これがこっけいでないということは、全省庁がこれについて応分の責任と負担をして、国民合意でもってやっていくという新農基法の基本理念から外れるということになるんです。  それで、再度お尋ねしますが、まず一つは、時間もどんどん迫ってきていますので食糧庁長官に一括してお尋ねをいたしたいんでありますが、これから先も今の備蓄方式でいいのかどうか。それはなぜかというと、ちょっと耳が痛いでありましょうが、食管法という法律があった時代にもかかわらずあの米がショートしてしまったということもある、にもかかわらず多くなったこともあるという過去の苦い経験を思い出せば、ましてや、状況が変わって、食管法がなくなった今日、今のような備蓄の方式でもってこれから先、国民に主食の米の不安を与えることがないかどうか、あるいは備蓄の方式についても、回転備蓄というものだけではなくして、いろいろな方法を考えながら備蓄というものをやっていこうという考え方がありやなしや、その辺についてお聞かせをいただきたい。
  40. 堤英隆

    ○堤政府委員 現在、食糧庁が米を所管して、回転備蓄という形で対応いたしております。  備蓄につきましては、御案内のように棚上げ備蓄という方法もあるんですけれども、さまざまな利害得失、当時、国会等も含めまして国民的な御議論があって、回転備蓄という形でしていくことが、国民の食味との関係、それから財政負担、財政負担といっても、結局は備蓄に要するお米は国民の負担の関係になるわけでございますから、そういう意味での国民の負担等を考えまして、現在の方法が、いろいろ問題がないわけじゃございませんけれども、いいのではないかということで、現在のような形で、かつ規模につきましても、今おっしゃられたように百五十万トンプラス・マイナス五十万トンという形で対応いたしております。  そういう意味では、私どもとしては、当面百五十万トンの備蓄を国家として持つという方法で対応していくことが国民に対します安心感という意味におきましても妥当な方法ではないかというふうに考えておりまして、当面こんな形で運営をしていった方がいいのではないかというふうに思っております。
  41. 木幡弘道

    木幡委員 この備蓄の場合に、食管法の時代といいますのは、例えば、各農協の倉庫に政府米を保管していただいて倉敷料を農協が国からいただくということで、農協の経営安定に少なからざる貢献をした時代もありました。時代が変わりまして、この倉敷料そのものがほとんど入らなくなってしまって、農協の経営も大変になってきている。まあそれが主たる原因じゃないですよ、ほんのわずかでありますが。そこで、カントリーエレベーターができたんですね。そのカントリーエレベーターの活用というものは今どういうふうになっているのか。  それと同時に、従来から話しているんですが、もみ貯蔵というものを今から五、六年ほど前に、わずか一千五百万だったと記憶しておりますが、初めてもみ貯蔵の調査についての予算化をしたことがあった。だけれども、どうもその後、見てみますると、もう食糧庁の頭の中にはまるでもみ貯蔵というものは頭にないように見受けられるんです。時々言われればしようがないからちょっとやるかというぐらいでありまして、あくまで玄米貯蔵。  もみ貯蔵といいますのは、二千有余年の稲作の歴史を持つこの瑞穂の国の我が国においては、地方においては郷倉(ごうそう)あるいは郷倉(ごうぐら)といって、いわゆるもみを貯蔵して、一朝有事、天変地異のときに備えて校倉式の倉をつくって、それぞれの保有米を持ち寄ってもみでもって保管をしておったということが、私どもの国の食料危機から、天保、天明とかそういう大飢饉のときはいざ知らず、そのほかのところの微小の冷災害のときには日本の国民が飢え死にしなくて済んだというまさに長年の知恵なんですね。やはり先人の知恵というものは、現代版としても当然それを参考にしながら備蓄というものを考えていく。  すなわち、備蓄の第一義的なものは、食料の供給について不安ならしめることがないようにということが大前提ではありましょうが、もう一つは、できることならば食味のよいものを保管していただきたいというのも現実論としてあるわけであります。理想は、もみの低温貯蔵というものもある程度考慮に入れる、あるいはそういう考え方がないのかどうなのかということになるとどうもいつも同じ答弁で、もみは残念ながらかさばります、保管の経費が高くなります、ましてや低温貯蔵しなければ、夏を越せば食味もさほど保証できません、ゆえに今の玄米貯蔵の方がより経済的にも有利であるし、これがベストであろうと思いますというふうに、いつも同じ答えが返ってくるのでありますが、また同じ答えかどうかを聞いてみたいと思いますので、もみ貯蔵についてどんなふうな考え方をお持ちなのか、食糧庁長官考えをお聞かせいただきたい。
  42. 堤英隆

    ○堤政府委員 私が用意しましたお答えを先生みずからお話しになったわけでございますけれども、実は、私どもも決してかたくなに玄米の低温の方がいいということで思っているわけではございませんで、そういう意味では、もみの低温保管等についてもかなり調査等はいたしております。  そういうデータをいろいろ見ますと、現在、例えば平成六年から平成十年度までカントリーエレベーターにおきましてもみの低温保管に関する調査を実施しているのですけれども、結局のところ、玄米の低温保管と比べまして、食味について明確な差は出てこないということなのですね。かつ、先生がおっしゃったような、かさばってしまうということで保管料が二割程度高くなるということだと思います。仮にもみを貯蔵するとして、これは多分低温でなしに常温でやるということによって、かさばるということにつきましての保管料の経費節減とか、もみ貯蔵することによります、品質の劣化を防ぐというよさもあると思うのですけれども、これも、夏を越えなければもみとしての品質の保持も、よさも認められるわけですけれども、どうしても日本の蒸し暑い夏を越えました場合には品質が大変急激に低下するということもこれまた調査でわかっております。  例えば発芽率で、平成七年二月で、常温でもみでありました場合には九七%の発芽率でございましたけれども、その年の十月に調べますと七四%にまで低下する。もう一つ越えまして、八年の七月になりますともう五四%にまでなってしまうということで、これはやはり食味に大きく響きますので、国民の皆様方から、貯蔵したものといえどもやはりいい品質のものを食べたいという国民の御要望におこたえできないのではないか、そういうこともいろいろございましたので、今のところは低温の玄米貯蔵ということをやっておりますが、なおこれからも、決してかたくなに一つの方法にこだわるわけじゃございませんで、さまざまな御指摘をいただきながら、幅広い意味での検討、研究はさせていただきたいというふうに考えております。
  43. 木幡弘道

    木幡委員 カントリーエレベーターの答弁が抜けましたが、時間がありませんから結構です。  実は、農協の問題ですが、農協の組織団体についてちょっとこの際お尋ねしたいのです。  先ほどの日米二十一世紀委員会宮澤大蔵大臣名誉委員長堺屋経企庁長官委員長、の提言の中に「農協への政府支援の廃止・独禁法適用除外の解除。農協への資本参入の自由化。」こういう項目がぴしっと入っているのです。これはもう大変ですよね。こう宮澤さんと堺屋さんはおっしゃっています。それで提言をしています。  この提言論議はさておき、農協そのものについて、やはり改革はきちっとやっていかなければならないということで、当然二段階制が決められてそれが進められているということでありますが、現状タイムスケジュールどおりになっていますか。
  44. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 農協の組織整備関係のお尋ねでございますが、農業、農村をめぐる環境が変わってまいります中で、農協としまして、事業機能の一層の強化と経営の効率化、合理化を図っていくということを目的にいたしまして、二〇〇〇年度を目途に、末端農協では約五百三十を目標として広域合併を進めておりますし、また、縦系列では、お話がございました組織二段にも取り組んでいるところでございます。  その実施状況でございますが、農協合併につきましては、ことし四月一日現在で目標の約六二%の達成状況ということになっております。  また、組織二段につきましては、これは事業別に状況が異なりますが、まず経済事業では、昨年の十月に三つの経済連が全農と統合いたしましたほか、十二年四月にはさらに三つの経済連が統合を予定しております。十二年度末までには三十の経済連が統合等により組織二段を完成させる方向で取り組みが進められているという状況でございます。  また、信用事業でございますが、二十七の信連で農林中金との統合方針を決定いたしまして、既に十以上の信連が統合に向けて農林中金との間で組織整備の検討会を設け、個別の協議に入っているという状況でございます。  また、共済事業でございますが、これは来年の四月に四十七共済連が一斉に全共連と統合することを決定いたしまして、現在合併委員会を開催しているところでございます。  こういうふうに、事業ごとに若干の相違はございますが、それぞれまずは着実に進展してきているのではないかというふうに考えております。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 木幡弘道

    木幡委員 ぜひどんどん進めていただかなければならない、こう思いますね。それは何かといいますれば、先ほどの転作、減反政策の話のときに申し上げたとおり、系統農協の本来の主たる業務というものは、私の目から見れば農水省におんぶにだっこであって、その他の業務に奔走をしていた嫌いが見受けられないとは言えない。余り強烈なことを言うときつくおしかりを受けますから、遠回しな言い方になりますが、そんな感じだ。  特に、その中で、宮城県関係者の方もいる中でありますが、例えば宮城県信連の例の不良債権の問題、これは別に宮城県信連ばかりではなくして、全国津々浦々あちこちの信用事業で大変な状況になっている。あるいは信用事業ばかりではなくして、経済事業そのものの中にも、未収金として計上されてはいるがなかなか回収困難な未収金というのが販売事業、購買事業の中にもある。こういったことを考えれば、総合商社的な機能をどんどん、高度経済成長期の中において余りにも過熱し過ぎたという反省がなければならない。本来の、生産にかかわる、営農にかかわる農家の目線に合わせた形の本来の仕事というものを、ややもするとどうも見落としがちになりそうな感じになったのかもしれないなというふうに思う。回りくどい言い方をしています、先ほどと同じ理由であります。  そういうことを考えますと、くどいようですが、これは先ほどの二十一世紀委員会提言の中に独禁法適用除外の解除。すなわちこれは、生協でいいますならば、生協もそうですが、農協法という特別法によって員外利用の制限があるために独禁法その他の適用を除外しているという、これは昭和二十三年発足のときの我が国の経済状況、戦後の荒廃した中で、とりわけ地方農業を取り巻く、あるいは農家を取り巻く経済事情の劣悪さから、万人が一人のために、一人は万人のためにということで農協法がつくられ、そして今日に至ったということを考えますと、この員外利用の制限というものをきちっと守っていれば果たして——この信用事業不良債権その他、いわゆる貸し付けや資金運用や資産運用について、不動産関係者を初めとする多くの員外の方々によってこの種の不良債権が惹起されたのではなかろうか、なかろうかではなくして、そうなんであります。  ということを考えますと、この宮城県信連のような信連がそのほかにあるのかと聞けば、ございませんと答えるでしょうし、どうお答えになるのか、まずお聞きしてみたいと思います。
  46. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 各県信連の状況でございますが、各信連の十年度の決算につきましては、決算総会が終了した信連からそれぞれ順次報告を受けることになっておりますが、現在、すべての報告がそろっているわけではございません。  各信連におきましては、特に今年度は、全中等の指導もございまして、厳正な自己査定によって思い切った有価証券の含み損等の処理を行うべきであるという指導もございまして、十年度決算の経常利益が赤字になる信連が若干あるふうには聞いておりますが、宮城県信連のような大幅な繰越欠損を出すような信連はないものと考えております。
  47. 木幡弘道

    木幡委員 ほんのちょっと前の答弁とは変わってきていますが、ともあれ大変な数ですよ。公的な場ではなかなか責任ある局長さんの答えは、いっぱいあるとも言えないでしょうし、全然ないとも言えない、なかなか難しい答弁だったと思いますが、そう少なからざる県信連が同じような状態になっている。それで、末端の単協においても、これは大変な状況になっているのですよ。そういうことを考えると、これから先、先ほど言いました員外利用の制限というものをどうなさるのか。農協法の改正ということまで含めて考えることがあるのかないのか、その辺のところをお聞かせいただきたい。  と申し上げますのは、生協はどういう形になっているかといえば、生協は時代に合った形で、いかに特別法で守られているとはいっても、そういう生易しい状況ではないということで、大変な省力化、あるいはリストラ、経営合理化というものを行っているのであります。それに比べて、系統農協は、何か困ったときにはまた三者協議をすればいい、三者協議というのが事農政に関してはことしのはやり文句になりそうでありますが、この三者協議をすればいいのだということなのかどうなのかわかりませんが、どうもやはり、経営努力をする、あるいは自己改革をきちっとするということがないと、農家のための農協ではなく、農協のための農協になってしまう、こう思わざるを得ないのであります。その辺のところで、再度農協の改革のことについて、今のことを含めて考え方があれば、大臣が答えるのか局長が答えるのかわかりませんが、お答えをいただきたい、こう思います。
  48. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 員外利用関係のお尋ねでございますが、信連で見てみますと、員外利用につきましては、農協法の規定によりまして、原則として員内貸出額の五分の一という制限を課しているところでございます。そういう中で、地場産業等の資金ニーズに対応して、資金運用の状況なり地区内における農業事情等を勘案いたしまして、資金の安定的、効率的な運用を確保できるように、行政庁が指定した信連につきましては、貯金量の百分の十五までというような形で員外貸し出しをできるということにしておるわけでございます。  信連で、平成九年度で員外貸し出しの状況を見てみますと、総貸出額六兆七千億円のうち、員外貸し出しは三兆二千億というような状況でございますが、受け入れている貯金が大変大きいわけでございまして、貯金等に占める割合は六%というふうな状況になっております。  信連の員外貸し出しにつきましては、これまでも担保の徴求等の債権の保全に努めまして、不良債権化しているものにつきましては、厳正な自己査定に基づいて適正に償却、引き当てを行うように指導しているところでございます。お話にございました宮城県信連の話も、根っこのところはいわゆるバブル時期の有価証券の運用の失敗でございまして、総じて員外貸し出しによって経営がおかしくなっているというような状況はないものと考えております。
  49. 木幡弘道

    木幡委員 結局、員外貸し出し、員外利用の問題がなければこの種の大口の不良債権というのは出てこないわけですから、最後の発言ぐらいきちっと言われると、またかみつかざるを得なくなる。そうではなく、ぜひ、実態は残念ながらそうなんだという認識はして、今後きちっと不良債権の解決について取り組んでいただきたい。員外貸し付けによる不良債権の発生による経営の破綻ということは考えられないなんという、こんなことを言っていたのでは、これはもう何ともならぬ話ですから、そういうことにしてください。  それで、実は農林中金の資金運用ですが、各農協から集まったお金を、かつて金利が高い時代ならいざ知らず、公定歩合が世界最低の金利の状態、ましてやコールレートはほぼゼロに等しい、こういう低金利の時代を迎えて、各金融機関押しなべて同じでありますが、資金運用に大変苦労なさっている。農林中金といえどもその例外ではないのでありますね。それで、大変な状況でありますが、その中で恐らくや、こういう苦しい状況になれば、持っているものを売っていきたいというふうに思うのは当たり前なんですね。とりわけ外債というものがあればお金にかえたいと思うのは、経営者の方々はだれでも一緒であります。  余談になりますが、歴代総理で、アメリカに行って講演した中で即座にニューヨークの株式市場が反応したのが、橋本龍太郎前総理がアメリカのとある大学か何かで講演をしたときに、こういう厳しい我が国の経済状況だと、持っている財務省発行の米国債を売りたいなという誘惑に駆られることが時々あるという発言をした途端に、アメリカのニューヨークの株が暴落をした。これを見ますると、いかに私どもの国でいわゆるトレジャリーボンドと言われる財務省発行の米国債を保有しているかということが、漠然とながらわかる。  農林中金も、この委員会で今から一、二年前だったと思いますが、どのぐらいのTBを持っていますかという質問をいたしましたら、当時三兆か四兆という答えがうろ覚えでありますが出て、公式な答弁として返ってきました。再度お尋ねしますが、現在農林中金が抱えている、あるいは系統農協が抱えていると言っても構いませんが、トレジャリーボンドはどのぐらい保有をしていると認識をなさっておりますか。把握をしておりますか。
  50. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 農林中金の外国証券の保有の問題でございますが、十一年三月末現在で、外国証券全体、これはトレジャリーボンドも含めた全体でございますが、四兆四千億円程度と承知いたしております。先ほどの先生のお話も、全体の話であろうかと思います。  その内訳としてのトレジャリーボンドなどの個別具体的な債券の保有高につきましては、これは民間金融機関の個別の取引にかかわることでございますので、承知もいたしておりませんし、コメントする立場にもないということを御理解いただきたいと思います。
  51. 木幡弘道

    木幡委員 これは、三百六十円のときのトレジャリーボンド、二百四、五十円のときのもの、百八十円のころのもの、いろいろ織りまぜて全部でこの金額。この金額も、当時の購入なのか、当時の為替レートなのか、今の為替レートに直したものなのかどうなのかもさっぱりわからないのです。さっぱりわからないが、農水省もよく把握ができない。農林中金ですら把握が余りできないのですね。これが売れますか。これは売れるとお考えになりますか。
  52. 中川昭一

    中川国務大臣 これは一般の金融機関の一つのポートフォリオですから、それを売れる、売れないというのは、個別的にはその金融機関の判断だろうと思います。  ただ、橋本総理が、国の財政状況考えて、日本政府が大量に持っておるTBをマーケットに売れば大変な混乱になるであろうということで、現にそういう反応になったわけですけれども、TBを売ったという形跡がないということとこの問題とは、個別の金融機関の判断ですから、橋本総理の発言と、一般の民間金融機関がどういうポートフォリオで資金運用をしていくかということとは直接関係のない、個別の経営判断であろうというふうに考えております。
  53. 木幡弘道

    木幡委員 これは大蔵委員会でありませんから、そのうち大蔵委員会へ出向いて話をしますから、大臣答弁は、大臣の個人的な考えとして受けとめておきます。これは、これ以上言うとけんかになりますよ。こんなものは売れっこないです。売れっこないから困っているのであって、個人あるいは企業の判断でもって売れるなどということになれば、大手都市銀行が持っているTBを全部売ればいい。それは売れないんです、現実の問題、日米関係で。ということなんですが、それはさておきます。  ともあれ、時間がどんどん迫ってきましたので、農協の問題については、きょうの一連の減反の問題、減反の主体的な責任はどこなのかということを含め、あるいは信用事業不良債権の問題、農協法の員外制限の適用の問題等々を含めてすべて、新農業基本法ができたのでありますから、ぜひそれに見合う形の系統農協の改革をお願いしたい、こうお願いしたいところでございます。  そこで、農業委員会に入る前に、自治省がずっと待機しているから自治省の方、次の質問に移る前に答えて帰っていただきたいのですが、地方自治体の公債費負担比率が一五%を超すというのが、昔私ども地方議会に議席を置いておったときに、一五%を超せばもう赤信号ですよ、二〇%を超せば会社でいえば倒産ですよというふうに教わりました。それで今、一五%を超している自治体が三千有余の中でどのぐらいあるのか、あるいは二〇%を超している自治体はそのうち幾らか、これをまずお聞かせいただきたい。
  54. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 公債費負担比率でございますが、財政運営の一つの指標として私どもは用いておりますが、平成九年度決算におきまして、公債費負担比率が一五%以上の団体数は千八百五十三団体、全体の三千二百七十九団体の五六・五%になっております。そのうち、二〇%以上の団体は七百一団体でございまして、全団体の二一・四%になっております。
  55. 木幡弘道

    木幡委員 これは前に何かの会合でお聞きしたときに千八百四十七だったのが、もう既にほんのわずかな期間にまた六つふえて千八百五十三になった。いわゆる赤信号の自治体が地方自治体の六割だということですね。それから、二〇%を超すということは一般の会社なら倒産だというのが七百一団体。これは、七百一団体が企業ならば、三千二百七十九のうち七百一団体が本来の経済行為なら倒産だという危機的状況なんですね、地方の財政は。  地財計画を担当している自治省で、もう一つだけ答えたらお帰りいただきたいのですが、これからどうしたいと思いますか。
  56. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方財政は、近年の経済状況を反映いたしまして、大変厳しい状況にございます。マクロの地方債の借入金残高も百七十六兆円という数字に達しておりまして、非常に厳しい状況にございますし、また、個別の団体で申しましても、先ほど申しましたような公債費負担比率という指標で見ましても、半分以上の団体が一五%、いわゆる警戒ラインを超えているという状況でございまして、大変厳しい状況でございます。  しかし一方で、景気状況が回復してまいりませんと、地方税なりあるいは地方交付税の原資になります国税の増収が期待できません。そういう状況の中で、なかなか財政の立て直しが難しゅうございまして、今当面の最大の課題は、景気を回復軌道に乗せることだということが国、地方を通じての最大の課題でございまして、まずそのために全力を尽くしているというのが現在の状況でございます。  その間、毎年度毎年度、財源不足が出てまいりますので、その財源不足に対しましては、毎年度の地方財政対策を通じまして、地方交付税あるいは地方債等によります財源確保を図って、毎年度の地方財政運営に支障が出ないように全力を尽くす、その上でまず景気の回復に全力を尽くして財政を安定軌道に乗せていくということかと思っております。
  57. 木幡弘道

    木幡委員 局長、あと一分ぐらい滞在して、後はお帰りいただきたいのですが、結局これは景気だけではなくて、やはり現実は高齢化が進んでいる。町村によっては高齢化率、六十五歳以上が地域住民の総人口に占める比率が五〇%を超している町村もいっぱい出ているんですね。だから、半分が六十五歳以上。当然、福祉にかかわる負担増というのがありますし、少子高齢化のまさに典型ということもある。  こういうことの中で、ぜひ聞いてもらって後はお帰りいただく、答弁いただかなくて結構なんですが、地方分権というのは、財源論といいますか、課税権、徴税権に踏み込んでちょうちょうはっしやるという気構えをぜひ自治省も大蔵省とのやりとりで持っていただかなければ、景気がよくなれば地方財政も潤うなどというような状態ではないということを御認識いただいてお帰りをいただきたい、こう思います。ありがとうございました。  構造改善局長、お待たせしました。  それで、今話したとおり、実は地方自治体の六割が一五%を超すいわゆる赤ランプ。二〇%を超す公債費負担率が七百一団体、会社でいえば倒産の団体が七百一団体。ここの中で、全国、五百万ヘクタールを割り込んでいる農地を何とか保全したい、本日の委員会での法改正案もまさにその一点でありますが、そのために、それに伴う農業構造改善局の仕事というのは、すべて都道府県市町村、受益者の負担がある。さっきお帰りになった局長が一月ほど前に局長の談話として、ぶら下がりの自治省の新聞記者に、もう目いっぱい努力をしたために、今年度これ以上、ことしの予算以降、新たな公共事業予算化をされても、地方では裏負担を捻出することが極めて困難だという談話を出しているんですよ、ぶら下がりの記者に。新聞に載った。これはそのとおりなんですね。  そうすると、聞くと答えはどうかといえば、起債をしていただくように指導していますから何とかできると思うということですが、これは起債の比率がこういうように高くなったんだ。それで、その市町村のことをよくおもんぱかる首長さんは、後世に、市や町や村がいかに今事業が必要とはいえ、一般の会社ならば倒産になるぐらいの借金を、さらに借金をして事業を行うというのはいささか無理があるということで、受け入れが不可能になる市町村が出てきているのでありますが、それをどういうふうになさるおつもりですか。
  58. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今自治省の方から具体的な数字も聞かせていただきまして、大変地方の財政状況が悪いということはかねてから思っておりましたけれども、やはり日本の農業生産性向上させて、そこに担い手を定着させる、農地確保するためには、どうしてもやはり基盤整備事業中心とした農業、農村整備事業、社会資本の整備をしていかなきゃいけないというふうに思っております。  そうなりますと、地方財政事情が非常に厳しいという中でどういう道を選ぶかということになるわけでありますけれども、やはり総体として必要なものに限定をし集中をする、そしてその整備水準も、その地域が求めるぎりぎりのところという言い方が適当かどうかわかりませんけれども、必要な限度における整備水準、それから工事自身も相当にコストダウンを図るというふうなことで対応せざるを得ないと思っております。  私ども、自治省ともお話をいたしまして、地方の負担についてはガイドラインを設け、事業ができる都度、どこがどれだけ負担をしていくかということもやっております。そういう中で、どうしても事業はやりたいけれども公債比率が非常に高いというふうなところにつきましては、平成十一年度の臨時特例措置として、繰り上げ償還であるとか借りかえであるとかまたは特別交付税措置というふうなことにつきましても、自治省にお願いをいたしまして、措置をしているところでございます。  いずれにいたしましても、必要なものはやはりやらなければならないわけでありますけれども、それに対する負担なり財政措置のあり方につきましては、これからも慎重に一つ一つ検証しながらやっていきたいと思っております。
  59. 木幡弘道

    木幡委員 確かにおっしゃるとおりでありまして、必要なものはやらなきゃならない、いかに厳しくてもやらなきゃならないが、それにかかわる負担金の軽減措置その他については、コストの削減やその他でもって努力をすると、ぜひ努力をしていただきたい、こう思います。  その中に、市町村の負担もさることながら、受益者負担というのも大変高いのであります。卑近な例でありますが、私どものところでの一反、三百坪の農地、田んぼの売買価格は、平均で七十万であります。高いところで百万から百十万、条件不利地は三十五万です。何と安いところか、こうお思いでしょうが、現実がそうです。その売買の価格が平均七十万の一反、三百坪の基盤整備事業を行ったときの農家の負担金が平均で約二十万円です。二十万のお金といいますのは、今話したとおり、売買価格が七十万の資本に二十万の資本投下ですから、これは比率でいえば大変な負担なのであります。  そういうことを考えますると、いわゆる正規の手続を踏んだ形での基盤整備事業、特に面工事の基盤整備事業は高過ぎるので、農家方々が自主的に自分たちでもって基盤整備をした方がその負担金を払うよりも安くできるのではなかろうか、あるいはできるところが出るという形でもって、現に実施されているところがもう全国で出てきているのですね。  農家の負担金そのものは、かつてのUR対策の、UR合意関連対策大綱の中にも、当然あの当時論議があったのは、こういう厳しい状況であれば、将来、かんがいから暗渠排水に至るまでの水回りを一貫してコントロールできる二十一世紀に向けての汎用水田というものを全国大々的にラウンド対策費でもって行い、農家の負担金を少なくしていく、少ない事業としてやっていこうということでの話があったのであります。  もちろん、その後努力をいただいて、担い手型というのは、従来のものよりもおおむね一〇%ほど農家の負担が軽くはなっておりますが、それですらも、今話したとおり、末端農家では、売買価格七十万の資本に二十万の資本投下をしなければ面工事ができないという現実もあるということからすると、農家の負担、先ほどの市町村の財政負担もさることながら、それも当然。それで、農家の負担も高過ぎるということだとすれば、そこでさわらざるを得ないのが、やはり土地改良区や土地連やその他の組織の中での改革すべきものは改革するということがなければならない、こう思うのであります。  土地改良区その他についての改革、先ほどは農協の改革をお話ししましたが、今の話を踏まえて、時間がありませんから、土地改良区の問題、農家の負担金の軽減の問題と土地改良区の改革の問題について、意見があればお聞かせをいただきたい。
  60. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 二つ御指摘がございました。  一つは、農家負担の問題でございます。今先生おっしゃられましたように、ウルグアイ・ラウンドの農業合意に関連いたしました対策を進めてくる中で、農家土地改良にかかる負担をできるだけ軽減するということで、私ども随分いろいろな工夫をしてまいりました。  担い手育成型圃場整備事業につきましては、今先生から御指摘のあったとおりでございまして、国庫補助率を五〇%とする、それ以外に、農家負担の部分について無利子資金を貸し付ける、それからさらに、農地利用集積をした場合にはその実績に応じて事業費の最大五%相当の促進費を交付するというふうな対策をとっております。この結果、これらのものを目いっぱい活用しますと、農家の負担が五%になるというふうなケースも出てくるわけでございます。これから先も、いろいろな工夫を重ねてまいりたいと思っております。  それから、二点目の土地改良区の問題でありますけれども、これは、土地改良区の性格が、今までのような農業社会の中の農業のための土地改良区というよりは、混住化社会の中で、地域の資産を管理するというふうに変わってきております。それにしては財政基盤が非常に弱いというふうな状況もございます。一方で、消費者のアンケートをとりますと、こういった農業施設に対して、自分たちもいろいろな活動に参画をしたいという希望もございます。  もろもろそういったことを含めまして、今後、土地改良制度について総合的な見直しをすることにしておりますので、その中で、土地改良区の問題についても取り上げてまいりたいと考えております。
  61. 木幡弘道

    木幡委員 時間がなくなりましたから、次の委員会のときに、きょうの残りの十五問ほど、また後々やらせていただきます。  最後一つだけ、二、三分ではあれでありますが、次のときの質問の入り口として最後にやっておきます。  それは、皆さん方農水省の大先輩であります農業会議所会長の桧垣さんが、この前の公述人でお出かけいただいたときに、自民党の増田委員からの質問で、こう話しておるのです。農業団体の頂点にいる人間なので、系統組織の問題について、なかなか言いにくいのでありますと。なかなか言いにくいということは、どんどんこれを再編整備、改革をやっていかなければならないにもかかわらず、今そういう立場だから言いにくいということの意味なのですね、解説するまでもなく。  それで、私は農林省にも言っておりますのは、農林省の新政策というものが四、五年前に発表になった、その中で、農業の組織及び団体の整備という項目があった、しかしながら、その項目はあるが、中身は何も書いてない。少なくとも農業団体は時代の進展に対応できるような組織にしなければならない、皆さん方の先輩はこうおっしゃっている。  新農業基本法のときにも、基本問題調査会の中では、系統の再編強化、再編整備というものがなければだめだという大変な論議があったにもかかわらず、残念ながら画竜点睛を欠く新農基法は、この組織の問題がまさにほんの四、五行しか書いてなくて終わった。ということになれば、やはり事は極めて深刻かな、こう思わざるを得ない。そういう意味で、農業会議所の会長さんで皆さん方の先輩がこう話している。後輩の皆さん方、ぜひ思いをいたしていただきたい、こう思うのであります。  特に農業会議所の問題についても、この次の委員会でもって、入り口としてお話をしましたから、ぜひそのときに備えていただきたいのですが、最後に、大臣にぜひお聞かせをいただきたいのは、今申し上げたとおり、系統組織の再編整備について、いわゆる改革について、基本問題調査会の中であれほどの論議があったにもかかわらず、今回の新農基法についてはほんの四、五字しか触れられていなかったことに対してどうお考えになっているのか。ぜひ今後の、系統農協を初めとする、四団体を初めとする組織の再編整備についての大臣の意向をお聞かせいただき、質問を終わりたいと思います。
  62. 中川昭一

    中川国務大臣 系統団体のあり方につきましては、ここ数年、いろいろと団体御自身も改革の努力をされておるわけでありますし、また、国会、政治レベルでもいろいろと御議論のあるところでございます。基本問題調査会におきましても農業団体のあり方というものが議論されたというふうに記憶をしておりますし、基本法の条文の中にも、農業団体のあり方だったですか、一条が設けられておりますので、あくまでも基本法でございまして、それに基づいて、本法案のような実体法面で、この基本理念、基本法に書かれた理念を進めていくわけでございますけれども、「国は、基本理念の実現に資することができるよう、食料、農業及び農村に関する団体の効率的な再編整備につき必要な施策を講ずるものとする。」これは国としての義務規定というふうにも読めるわけでございまして、この趣旨を実現していくべく、団体自身の努力だけではなく、国としてもこれから一層取り組んでまいらなければならないというふうに認識をしております。
  63. 木幡弘道

    木幡委員 ありがとうございました。
  64. 穂積良行

    穂積委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  65. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木村太郎君。
  66. 木村太郎

    ○木村(太)委員 大臣初め皆さん、本当に御苦労さまです。午後のトップバッターでありますが、一時間の時間をいただきましたので、よろしくお願いしたいと思います。  今回、審議しております農業振興地域整備に関する法律案、これは、私なりに感じるのは、先般衆議院を通過して今参議院で審議しておりますいわゆる新農業基本法案とリンクさせるべきこと、あるいはまた地方分権一つとしてもとらえさせてもらっております。加えて、昨年農地法改正もありましたし、その際、私もこの委員会質問させていただきましたけれども、まずお聞きしたいのは、今回の改正趣旨一つに農用地を良好な状態で確保するとありますけれども、具体的に今回の改正によってこれまでとどう違うのか、どのようにその違いがあって進められていくのかということをまずお聞きしたいと思います。
  67. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法の御議論をやっていただきましたが、やはり今後の食料、農業政策を推進していく上で、優良農地確保ということが一番大事な柱の一つでございます。したがいまして、今回の改正法案におきましては、優良農地等の確保に関する基本的な方向、それから農振地域の指定基準に関する事項等を内容とする国の基本指針というものを新たに定めることといたしまして、都道府県農業振興地域整備基本方針、あるいはまた市町村農業振興地域整備計画に適切に反映をしていただくようにいたします。  また、農用地区域の設定、除外の基準法定化いたします。これは地方分権との関連もあるわけでございますけれども制度運営の公正さ、透明性の向上を図り、国民の信頼確保事務処理の円滑化、迅速化に寄与することによりまして、優良農地の一層の確保を図っていくこととしております。  そのほか、この有効利用を図るために、圃場整備事業基盤整備事業を実施し、優良農地確保だけではなくて整備、保全すること、そしてまた担い手への農地利用集積を推進すること等、いろいろな施策の一層の推進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  68. 木村太郎

    ○木村(太)委員 この法律もそうですが、やはり土地つまり農用地ということに対して大変意識した法律でありますけれども、今の我が国における農地面積というのは、昭和三十六年の六百九万ヘクタールをピークに減少し、今や四百九十一万ヘクタールだ、また農用地区域内の農地というのが四百五十五万ヘクタールという現実の今の姿があるわけですが、ということは、今までも議論にありました遊休、放棄地がふえているということは大変懸念するところでありますけれども、良好な状態で確保するというのは、いわゆる優良農地ということを指すのか、良好な状態で確保するイコール優良農地というふうに見ていいのかどうか、ちょっと確認させていただきたい。また、そうでないところは今後どうなるのかということもお聞かせいただきたいと思います。
  69. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 これまで農振法の運用の中で、特に農用地区域内の農地につきましては、集団的な農用地あるいは土地基盤整備が行われた農地というものを、言ってみれば優良農地という形で線引きをしてきたわけでございます。  今回、今先生がおっしゃられましたように、優良農地というふうに農政改革大綱の中でも言っているわけですけれども、これは農振法上の良好な状態で確保された農用地と概念は基本的には一致をするものというふうに考えております。したがって、こうした農地対象に農用地の整備を図り、また効率的に使われるように経営体に集積をする、そういった作業が必要ではないかというふうに思っております。  では、逆に良好な状態でない農用地とは何を指すのかというのが二番目のお尋ねだと思いますけれども、今の良好な農地優良農地の裏返しとして、集団的ではない、これはコストがかかります。それに、整備をされていなければ機械効率も悪いということですから、基本的にはそういうものを指すわけでありますけれども、これに加えまして、例えば農用地区域内に位置づけをされて、当初は優良な農地とされたところであっても、不耕作の状態が続く、あるいは手入れが不十分だ、そうしていい状態の農地に戻らないというふうなものについては、やはり良好な状態にあるとは言えませんので、こうした機能の回復を図るために、今回の農振法の改正の中でも、農用地の保全に関する事項というのを新たに追加をさせていただいているところでございます。
  70. 木村太郎

    ○木村(太)委員 関連して、さらにお尋ねします。  新農業基本法案においても、自給率向上ということを大変議論した経緯があったわけですけれども、この基本法案においても、国は基本計画を策定して、それに伴って農用地等の確保に関する基本指針を策定するというふうになっております。良好な状態で確保しようとする農地面積、今答弁でもそれは優良農地と概念は一致するというお答えでありましたので、その良好な状態で確保しようとする農地面積農林水産省としてどう考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  71. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 午前中の部の答弁でも官房長から申し上げたところでありますけれども、私ども、食料・農業・農村基本法案を成立させていただきますと、速やかに自給率関連した作業に着手をしたいと考えております。基本計画の中におきまして、それぞれ品目ごとに、品質、コスト等の生産面における課題を明確にした上で、課題が解決をした場合に到達可能な水準を生産努力目標として設定をする考えでございます。  その生産努力目標の設定に当たりましては、当然のことながら、耕地の利用ということも計算の中に入れまして、全体の総量としての農地面積を計算し、明らかにしたいと思っております。その総量としての必要農地が出ましたことと関連をいたしまして、ではそのうち農振地域農用地区域内でどれだけの農地確保するかという面積を、これは余り時を置かずに出していきたいと思っておりますので、現在農用地区域内には四百三十五万ヘクタールの農地があるわけでございますけれども、もう一度そうした作業の中で優良農地面積を近いうちに明らかにしていきたいと考えております。  現況は、まだちょっと作業中でございますので、お許しをいただきたいと存じます。
  72. 木村太郎

    ○木村(太)委員 もちろん作業中というか検討していることは理解しますので。まあ理解しますと言いましたけれども、仮に具体的な数字、幾ら必要だというふうな数字が出てきた場合でも、やはりなぜそれがそういう面積になったのかということを、私たち国民あるいはまた農家の皆さんに理解してもらえる内容というか、これをきちっと示していただけるような形で具体的な面積を提示いただけるように、今最中の作業、検討の中において十二分に配慮していただきたいとお願いしたいと思います。  ちょっと視点を変えてお聞きしますけれども、新農業基本法案の質疑の際、私も、担い手確保のためにも、優良農地を将来にわたり確保していくためには規制と一方では特典を明示すべきだと主張させていただきました。だとすれば、今回のこの農振法改正というのは規制なのか、特典なのか、どちらなんでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  73. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 規制強化か、それとも特典かということでございますが、そういうふうな割り切り方はちょっとなかなか難しいというのが率直なところでございます。  私は、今回の農振法改正優良農地確保に関して、考え方といいますか哲学を明確にし、それを確保していくためのプロセスを、公正でかつ透明性あるやり方でやるというふうなものであるというふうに考えております。同時に、この法律の中にも、優良農地を一たん指定したらそのままでいいというわけではなくて、おおむね五年ごとに見直すというふうな規定も入れさせていただきまして、不断の見直しをするという体制もとっております。  結果的にこうした哲学を明らかにし、プロセスを明らかにし、そして点検、見直しをするというやり方をいたしますと、農業者方々にとりましても、また地域住民にとりましても、関係方々にとりましても、その全体像がきちんと見えるわけでございますので、そういう点で、農用地の利用について安定的かつ安心をもたらすものというふうに思っておりますので、規制か特典かというふうに言われますとなかなか難しいわけでございますけれども、この種の計画法は、計画なければ開発なしというのが基本問題調査会の答申でもございます。そういう点で、あらゆることをできるだけ世の中にきちんと知らせていこうという点で、安心と安定をもたらすものというふうにお考えいただけたらと存じます。
  74. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ぜひその方針で努力をお願いしたいと思います。  もう少し細かくお尋ねしてまいります。  今回の農振法の改正によって、都道府県基本方針を策定する際に、国との関係がいわゆる中央管理的な承認という形態から協議という仕組みになるようでありますが、この農振制度の一層の実効を高めるためには、やはり地域の自主性あるいはまた創意工夫というものが十分発揮できるような仕組みにすることが必要だと思います。国との協議という場面で制約を極力少なくすることが実際は今度必要になってくると思いますが、こういう点をどのようにお考えでしょうか。
  75. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、これは農政上の観点、それから地方分権という一つの大きな政府の方針と、両方の流れの中での今回の法律改正でございます。  これまでは都道府県の作成する農業振興地域整備基本方針については、機関委任事務ということで農林大臣承認を得なければならないことになっておりました。しかし、機関委任事務が今度廃止されるわけでございまして、これに基づいて今度は自治事務ということになります。今までは通達という形でやっておりましたけれども、この通達も自治事務ということで廃止になるわけでございます。  これによりまして、従来の上下関係の非常に強い承認という形から、農業振興地域整備基本方針にかかわる国の関与につきましては、両者、国と地方自治体とが対等の立場に立つ協議というものへ変更することとしたところでございます。これによりまして、それぞれの都道府県、自治体がその地域の自然的、経済的、社会的、いろいろな条件に応じた農業振興施策がより一層的確に実施できるという趣旨にもかないますので、その徹底に努めてまいりたいと考えております。
  76. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今までは承認ということだったのが協議ということであります。今大臣答弁にあったとおり、できる限り的確にとらえるということも大事でありますので、地域の自主性、創意工夫が発揮できるように、くどいようでありますが、地方分権ということの最も基本的なことを大事にしながら、ぜひ協議の場を有効活用できるような場にしていただきたいとお願いしたいと思います。  また、ちょっと話が変わりますけれども、去る六月三日の農業新聞の一面に載っていた記事であります。地元のことで大変恐縮でありますけれども、私の地元青森県行政が意欲的な農業青年を育成、確保するため、県独自で新規就農奨励事業というものをスタートさせるという記事が出ておりました。中身を読んでみますと、継続年数など一定条件を満たせば返済を免除するのを特徴としている。例えば、農地の取得を助けるため、県の農村開発公社というところが農地を価格の五分の一を差し引いて販売する。差し引きの限度は十アール当たり十五万円が上限であり、四十八歳以下の県の認定農業者で、その農地を五年以上耕作することが条件として挙げられているようであります。  県単独でこういった施策も実施しているというのが農業新聞にちょっと出ていたのですけれども、この農振法改正によりまして農地確保を一層重視しようとするならば、確保された後のその農地を有効活用されるべき視点ということもやはり大事と思います。だとすれば、先ほど規制と特典という話をしましたが、これまで以上に土地確保した後の有効活用するための特典なる施策が求められてくると思うのですが、その点はどのように考えておられるでしょうか。
  77. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 私もこの新聞記事を拝見いたしました。今先生から御説明があったわけでございますけれども、言ってみると、農地価格のうち五分の一相当額を助成するということと結果としては同じだろうと思うのです。率直に申し上げて、青森県も随分思い切ったことをやられたなという印象を受けております。  ただ、この種の手法というのは、国と県あるいは地域によってやはりやり方に制約があることがあったり、あるいは地域実情を踏まえてやったりということでございますので、手法の差異かなというふうに思っております。ポイントは、新規就農者等で農地を取得される方々に、総体として農地取得にかかる負担を減らすことだろうというふうに私は思います。  国の方の手法は、御案内のとおり、保有合理化事業の中で中間保有をした農地を次の農業者に取得させる、その間は無利子の資金でつなぐ、リースをするというふうな手法でございます。これは言ってみれば、一気にその所有権を移すわけではなくて、緩やかに中間保有をし、その間、利子助成をしながら次の方々につないでいこうということなんだろうと思います。  国により、それから地方公共団体により、やり方に差はございます。国では個人に対する補助というのはなかなか難しいわけでございます。融資で対応するということも多いわけでございますけれども、今先生から御紹介がありましたように、一たん確保された農用地をより有効に利用するという点で、こういった新規就農者の方々にこれから先なお農用地の利用を集積し、うまくそれが営農につながるような努力をいたしたいと考えております。
  78. 木村太郎

    ○木村(太)委員 きのう、昨今の不景気のあおり、リストラによってサラリーマンをやめて初めて就農するというか、そういう人がふえてきているというニュースをちょっと耳にしましたけれども、そのこと自体がいい悪いは社会背景として判断は分かれるところだろうと思います。しかし、農業という分野から見た場合に、その動きもまた一つ農業者確保農業の振興ということを考えれば、やはり一つの受け入れ、またチャンスというふうにとらえるべきだと私はきのうのニュースを目にして感じたわけであります。  だとすれば、やはり全く未知の世界から農業の分野に入ろうとしている人たちに対しても、今私は地元の例を言いましたけれども、こういったことが本当に備わっていればいるほど、ある面ではまた意欲の向上にさらにつながっていくだろうし、個人に対して国が直接というのはなかなかという今答弁であったわけですが、もちろんそれは私否定するものではありません。しかし、やはり国としてもその思いというものを大事にしていただきたいし、また、地域においてそういったアイデアを実施しているところがあるとすれば、国としても何かお手伝いできることがあるのかどうかということも前向きに、積極的に把握しながら対応していただきたい、この姿勢をぜひお願いしたいわけであります。  もう少し土地のことをお聞きしたいのですけれども土地確保してその後の有効活用ということがそれ以上に大事だというふうに言いましたが、この農用地区域内の効率的な利用を図っていくためには、いま一つ大事なことは、地域全体あるいはまた地域ぐるみでの話し合いによる土地利用調整活動というものが必要だと私は思います。もちろん今までもそういった趣旨の動きはあろうかと思いますが、今回の改正に伴っても、いま一度、こういった調整活動というものを意識してお互いに努力することが必要ではないかな、こう思っております。  もちろん、それには、関係機関としては農業関係あるいは自治体あるいはまた農業委員会などなどありますし、また、ある面では農業の分野以外の分野の参加もお願いしながら、そういった地域ぐるみでの話し合いをしながらの調整活動というのが大事じゃないかな、こう思っております。  この点について、国としての考え方があればお聞かせください。
  79. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今、先生から、地域ぐるみというお言葉がございました。これは釈迦に説法になりますけれども、日本の集落は古くから水と農地の合理的な利用について大変な調整を行ってきたという歴史がございます。それは今も変わらないのだろうと私は思います。  ただ、そういう集落の中の話し合いの中から、できるだけ経営感覚にすぐれた効率的かつ安定的な担い手農地を集積させていくというのが大きなテーマになっております。土地利用調整の活動はこれまでにも増して大変重要になってきております。  御紹介がありましたように農業委員会、例えば流動化推進員というふうな方が全国に八万人ほどいらっしゃいますが、こういう方々による農地の権利の移動のあっせんだとか掘り起こし活動。それから、農協も農作業の受委託という形で実業などもできますし、また、そのあっせんも行います。そして、農業公社、これは特に最近は市町村レベルでの農業公社の活動を活発にするようにお願いをしているわけでございますけれども、そういったところ、合理化法人を通じた合理化事業によって土地利用調整をしていくという方向が、三つ大きなテーマだろうと思います。  これらがそれぞればらばらに行われていたのではやはり効率が悪いわけでございますので、地域には構造政策推進会議といった話し合いの場もございます。そこで、ことしこの地域では何を重点テーマにしてやっていくかということを明らかにいたしまして、とりわけ、できるだけ現場に近い市町村段階流動化目標をきちんと立てる、そして、全国段階では、流動化のために、阻害されるようなものがあればこれは制度も改めていくというふうなことで、国、県、市町村そして集落、両々相まって調整活動が円滑に行われるように支援をしたいと考えております。
  80. 木村太郎

    ○木村(太)委員 次に、事務的な、あるいはまた作業的な手順というか、そういった視点からちょっとお聞きしたいと思います。  新農業基本法案でも、国は基本計画を策定して、それに基づいて農用地確保に関する国の基本指針を策定する、また、これを受けて都道府県あるいはまた市町村農業振興地域整備計画なるものを策定することとなっています。先ほど、地域の自主性、創意工夫というお話をちょっとしましたが、逆に、地域実情や将来の可能性あるいはまた希望などを最も身近に把握しているのが市町村であるだろうし、また県であると思います。だとすれば、市町村、県がつくる計画の集約、これが積み重なっていって国の基本指針がおのずと策定されるべきではないかなというふうに、手順というか事務的にもそういう考え方の方がいいのではないかなということを私は最初から思っていたのです。そして、それがいわゆる自給率向上などの確実性にも結びついていくのではないかなというふうに思うわけです。  新農業基本法案のときにも私は実は質疑させてもらったのですが、今回のこの農振法の改正の議論の中でも、いま一度お尋ねをさせていただきたいと思います。
  81. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 考え方の角度の問題だろうと私は思うのです。  もちろん自治事務ということで市町村が主体になって農用地区域を設定し、そこの中のどれだけの農用地を確保していくかということをお決めになるわけでございます。ただ、その場合に、何らの指針もないまま線を引くわけにもまいりませんし、農用地の数量を出すわけにもいきません。そういう点で、国が、全体として一体いかなる農地の総量が必要であり、そしてその中でいかなる優良農地の量が必要かということはやはり示す、つまり、よりどころを示す必要があろうかと思っております。  今回のこの農振法の改正というのは、一番大きな改正点は、国が農用地の確保に関する指針、つまり、よりどころを定めようということでございまして、作業はあくまでも市町村がその地域の自然的、社会的、経済的条件に応じてやっていくわけでございます。もちろん、そうした形で積み上げられた数字が国がお示しをしたよりどころとしての指針と大きく離れるというふうなことであれば、もう一度またディスカッションをしなければならないかと思いますけれども、上から下へということではなくて、我々は、あくまでも指針としてよりどころを示したいということでございます。
  82. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。ただ、上から下へという印象を結構持っている人が多い感を、私、地元なんかへ帰ると意見として出てくるものですから、今答弁があったとおりに、決してそうでなくて、よりどころという思いなんだということを実際に姿としてあらわしていただきたい、こう思います。  もう一つ事務的なことでちょっとお伺いします。  先ほど答弁にもありましたが、市町村は、おおむね五年ごとに農業振興地域整備計画に関する基礎調査を実施して、それに基づいて計画の見直しを行うというふうにしておりますけれども農用地区域はおおむね十年以上にわたる農業上の利用確保すべき土地としております。改正で、おおむね五年ごとに見直しをするとした意義は何なのか、確認をさせていただきたいと思います。  また、市町村あるいは各地域での見直しの度合い、あるいはまた全国的な範囲もあろうと思いますけれども、場合によっては国の基本指針も柔軟に見直しされることもあり得るというふうに考えていいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
  83. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 法律案におきまして、市町村はおおむね五年ごとに農振計画を見直すというふうにしております。これは、率直に申しまして、技術論からくるというふうにお受け取りいただいてよろしいと思います。  制度が円滑かつ有効に働くためには不断の見直しをしなければいけないわけでございますけれども、この農用地あるいは農業就業人口、農業生産の動向等の調査に当たりましてやはりデータをとる必要がございますけれども我が国の社会経済情勢の変化状況とか他の各種調査、例えば国勢調査、農業センサス、都市計画法の基礎調査、こういったものはおおむね五年ごとに行われておりますので、そういったもののデータを活用するという点で、この農振の計画につきましてもおおむね五年ごとに見直すのが適当である、データのとれる期間を勘案しての期間ということでございます。  なお、国の指針の改定についてもお尋ねがございましたけれども、社会経済情勢が大きく変化をすることもございます。そういう状況の中で、国の指針についても適当な間隔を置いて見直しを行い、必要であれば改定をするということも考えられるところでございます。
  84. 木村太郎

    ○木村(太)委員 もう一つ事務的というか作業的なことでお伺いしますけれども、五年ごとに見直しするとすれば、市町村レベルなんかでは特に財政的な負担も伴うことがあるのではないかな、こう私は考えます。そして、それは決して市町村地方自治体にとっては小さなことではないというふうに思うわけでありますが、食料供給県あるいはまた市町村というものが姿としては全国の中にあっても、あろうかと思いますので、何らかのそういった不安というものが市町村にあるとすれば、支援策みたいなものも市町村サイド、地方自治体から出てくる可能性もあろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  85. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農業振興地域整備計画の見直しに係る経費に対する支援ということだろうと思うのですけれども、実際に私どもがサンプル調査をいたしましても、これまでの例で、基礎調査、検討、計画作成費などなどを含めまして、やはり数百億円のオーダーの費用が必要でございます。  現在、私ども、こういった調査を定期的に行う場合、やはり地方交付税において措置をする、単位費用の中に農業行政費というのがございますけれども、その中の農業振興計画基礎調査等という形で織り込んでおります。今後の見直しにつきましても、引き続き地方交付税による措置ということについて自治省と話し合いをしたいと思っております。
  86. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今聞いてちょっとびっくりしたのですが、数百億円ぐらいという大分大きな……。
  87. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 済みません。単位を間違えました。数百万円の間違いでございます。申しわけありませんでした。
  88. 木村太郎

    ○木村(太)委員 びっくりしました。数百億円という数字を聞きまして今びっくりしたのですけれども、数百万円ということであります。  でも、くどいようでありますが、これも自治体にとっては決して小さな額だとは私は思っておりません。ですので、今御答弁があったとおり、自治省さんサイドともぜひ連絡を密にして、できる限り、せっかくいいことをやろうとするわけですから、そのやることに対しておっくうにならないようなシステムというか支援策というものも、一方ではきちっと準備しておくこともぜひお願いしたいと思います。  次にお伺いしますが、地域段階土地利用計画を策定する場合、非農業土地利用に対応した各種土地利用計画制度との適切な調整が必要であると思います。よって、ほかの関係制度の見直しに当たっても、今回のこの改正趣旨が十分反映されることが当然に求められてくると思いますが、こういったことに関してどのように考えておられるでしょうか。
  89. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘がございましたように、優良農地確保するということが今回の制度改正の眼目でございます。この趣旨が国の中はもとより各地方公共団体の中でもきちんと浸透するように、お願いもし調整もしたいと思っております。  現実には、地元で一番調整上問題になりますのは、やはりオーバーラップをしております都市計画が一番大きいわけでございますし、それ以外にも各種振興計画がございます。都市計画の市街化区域や用途区域の設定につきましては、都道府県市町村の農林部局と都市部局、あるいは自然公園を担当しております部局との協議を通じまして、農業利用農業以外の土地利用について、私どもからいえば、農林漁業の健全な発展が図られるように調和をするということで調整していきたいと思っております。  国レベルでも、今回私どもがねらっております優良農地確保農業の健全な発展という観点で、建設省その他と十分な調整をしたいと考えております。
  90. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ぜひ建設省を初め他の省庁とも連絡を密にして取り組んでいただきたい、こう思います。  私、感じるのですけれども、新農業基本法案という大転換というか大きな試みをしようとしているわけですが、その中でも土地のことを意識しておりますし、農振法においても、土地確保するということで今議論しているわけであります。  むしろ、随時それは建設省を初め政府内でもいろいろ調整していると思いますけれども、新農業基本法という大きな試みに向かおうとしている中、そしてまた、我が国の今後の農業あり方、そのための農業用地、農地がどのぐらい必要かとかいうことを今作業している段階で、ある面では、じっくり話ができる、また他省庁にも協力をいただいてその目的の達成に向かえるように、もちろん今までもやっていると思うのですけれども、本当に形が見える協議の場を政府内にきちっと、新農業基本法が仮に通った後設けて、日本の今後の農業あり方について、農林水産省のリーダーシップで、政府全体で本当に土地に関してもこうやってやっているんだという姿があってもいいような気がするわけです。  今答弁があったことを受けて、ちょっと飛躍的な私の思いかもわかりませんけれども、こういった考え方に対して思いがあれば、お聞かせいただければと思います。
  91. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 二つ申し上げたいと思うのですが、どういった場をつくれるかということになると思いますけれども一つは、新しい農業基本法案の中で、日本の農業、農村が持っている多面的機能の発揮という点を非常に強調させていただきました。このたび建設省との間で、この多面的機能について、これがいかなる価値を持つものであろうか、両省庁でじっくり研究しようじゃないかという合意が成りまして、両省庁それぞれ予算を持ち合いまして、これはたしか三千万ずつ、六千万ぐらいの規模になると思うのですが、両省庁間で多面的機能についての調査研究を進めようということになっております。  それからもう一つは、このたびの中央省庁改革基本法の中で、インターエージェンシーの活用というふうなことも出てきております。農村地域の振興というのが設置法と基本法案によりまして農林水産省の所掌事務というふうにされましたので、農村地域全体をどうするかということについて我々がやはりイニシアチブを持たなければならないと思っております。その際、インターエージェンシーというふうなものも活用しながら、各省庁とのお話し合いの場を持つというのも一つの手法として考えられようかと思っております。
  92. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。ぜひ、他省庁とも連絡を密にして努力をお願いしたいと思います。  いま一つ視点を変えてお聞きしますが、今回の改正によりまして、農業振興地域整備計画計画事項の拡充を図るとしておりますし、具体的には、担い手の育成、確保のためにその施設整備ということも追加することにしているようであります。  そこでお伺いしますけれども、いわゆる施設整備のマスタープランと位置づけるとすれば、例えば研修施設などのさまざまな施設設置の希望が農村地域から現在もあるだろうし、まだまだ続いていくと私は思います。よって、各施設整備のために、全国的な整備状況、あるいは条件とは言わないまでもある程度の目安となるものが必要でないかな、こう考えます。  例えば、こういう研修施設をつくる場合には、面積でいうとこのぐらいの農用地のところに一カ所ぐらい必要だとか、農家戸数に置きかえれば、このぐらいの農家があるところにこういった施設が必要だとかという、ある程度の目安となるものが必要ではないかなというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  93. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 大変重要な御指摘をいただきました。  今回の農振法の改正で、これまで主として農地ということに着目をしてきたわけでありますけれども農業生産を持続させていく大きな四つの要素農地と水と担い手と技術ということで、担い手についてもやはりこれからは十分な配慮をしなければならないということにかんがみまして、今回、担い手確保対策の一環として、市町村計画の中に技術の習得、情報提供等の施策の基盤となる、これは研修施設や情報通信施設になると思いますが、そういった農業を担うべき者の育成及び確保のための施設整備を新たに計画事項として位置づけることとしたわけでございます。したがいまして、市町村整備計画の中でそういった事項に必ず言及をしてくださいというのが私どもの要望であります。  ただ、こうした事項について一定の基準なり枠を示すということになりますと、きめ細かい形での担い手の育成、これは地域の置かれております自然的、社会的、経済的条件が相当違いますので、具体の内容はむしろ地域の特性を生かした形でやっていくべきであり、言葉を選ばずに申し上げますと画一はなるべく避けた方がいいのではないか、むしろ主体性を地域に持たせた方がいいのではないかなというふうに考えておりますのが、私どものこうした法律上の規定ぶりになったわけでございます。
  94. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の答弁も私はもちろん理解させていただきます。先ほどもあったように、できる限り、地域実情、また特性を伸ばしていこうということもやはり大事だと思います。  ただ、実際、国を初めいろいろな方々の協力、支援によって担い手確保のためのある施設が隣の村に、町にできた。我が町にもぜひ欲しいなという意見が当然現実には出てくると思うのです。今でもそういう動きがあるわけですので。そのときに、では、おたくの地域はだめです、おたくの町にはつくりましょうというような現実の姿が出てきたときにそれを十二分に説明できるような、ある程度そういったことも必要でないかなということをちょっと心配というか懸念してこういった質問をしたわけであります。しかし、今の御答弁では、地域の個性、特性というものを生かすということを意識して施設整備にも向かっていくということでありますので、ぜひお願いしたいと思います。  その答弁を受けて、今の答弁をもう少し幅広く考えた場合に、この農振法の改正に伴っての担い手確保のための施設整備というこれからの動きは、新農業基本法案のキーワードの一つである農村の整備というものにも当然つながっていくものと思いますが、この点どのように意識されているでしょうか。
  95. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 その点は全くそのとおりでございます。基本法案の第五条におきまして、「農村については、」という書き出しから、農業生産条件の整備と生活環境の整備その他福祉の向上により、その振興が図られなければならないというふうになっております。  今回の計画事項の拡充というのは、そういう点で各種施設担い手のためにつくるというふうな観点もあるわけでございますので、農村振興の点で重要な施設が含まれております。農村の整備に大きく資するものだというふうに考えております。
  96. 木村太郎

    ○木村(太)委員 いま一つお聞きしますが、先ほども地域ぐるみのことでちょっとお尋ねしましたけれども、農振計画制度が適切に運用されていくためには、先ほども議論したとおり、地域ぐるみでの土地利用計画の実現がやはり大事だと思います。  その際、農業者行政の橋渡し役である、そしてまた地域実態を最も知っている立場にあるのが農業委員、つまり組織としては農業委員会、また国全体の組織でいうと農業会議所ということになろうと私は思います。  そこで、今後この農業委員の役割というのがますます大きくなっていく、この農業委員会の活動をいわゆる強化というかバックアップしていくことが大事ではないかなと私なりに感じておりますけれども、国としてはどのように考えておられるでしょうか。
  97. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農業委員会の役割につきましては、今先生がおっしゃったとおりでございます。従来から、農業振興地域制度の中で、市町村計画を策定する、あるいは変更するに際しては農業委員会に意見を聞くことというふうにされているところでございます。とりわけ、今回は、こうした市町村事務がこれまでの事務から一変いたしまして自治事務という形になります。地元での、みずからの計画づくりということに重点が移ってまいりますので、その点で、地元に精通し、農地利用関係についての調整、あっせんを行ったり、農業や農村に関する振興計画を立てるというふうな事務を行っております農業委員会の役割は非常に重要でございます。  私どもといたしましては、地域実情に即して各種の農業振興策を一層適切に推進することを強く期待いたしておりますし、現場レベル、都道府県レベル、国レベル、それぞれのレベルにおきまして緊密な連絡をとらせていただきたいと思っております。
  98. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ありがとうございます。  きょうは一時間の時間をいただきましたので、今、法案の農振法改正についていろいろお尋ねしてきましたけれども、お許しいただいて、実は最近一つまた大きな動きがありましたので、ぜひこの機会にお尋ねしたいと思います。  何かというと、今まで何回も私取り上げてきました、外国産リンゴ輸入解禁の問題と新たな植物検疫方法、それがまたいわゆる果樹の振興策ということになると思いますが、去る十五日、十六日に農林水産省の分庁舎でアメリカ産リンゴ五品種に関する輸入解禁についての公聴会が行われたという一つの大きな動きがありましたので、ちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。  まず、公聴会という位置づけをどのように考えているのかお伺いしたいと思います。  我々、この間の新基本法案についても、委員長初め、二班に分かれて地方公聴会というものに出席させていただいて地域の声を聞かせていただいたわけでありますけれども、実は公聴会での、出席した人たち、あるいはまたそれら農家というか生産者サイドの人たちからの声として、公聴会とは何なのか、単なる形式というか手続上の消化にすぎないのではないかというような不満が大変大きくなっているというふうに私肌で感じております。  私なりに感じるのは、公聴会というのは、あくまでも公聴会での意見を踏まえて農林水産省として検疫上の問題点を点検して、問題なしと判断した場合に、植物防疫法施行規則というものを改正して、輸入解禁というふうに向かうのだと思います、問題なしと判断した場合ですね。しかし、実際公聴会での意見というのは、九割方、反対している声が多いというふうにも聞いております。よって、先ほど言ったように公聴会とは何なのかというふうに生産者サイドからおっしゃる方がいるわけですけれども、公聴会の位置づけをお聞かせください。
  99. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お答え申し上げます。  若干前提を御説明するのをお許しいただきたいと思いますが、農産物の貿易上の取り扱いとしまして、いわゆる自由化をされております場合には、基本的に、まず輸入は自由に行える、これは改めて先生にお話をするまでもないと思います。  例えば、先生からしばしば御質問をちょうだいしていますけれども、リンゴにつきまして見ますと、生果は昭和四十六年に自由化をされておりまして、原則として輸入そのものは自由なわけでございます。  その中で、植物防疫法という法律がございまして、一定の病害虫が侵入するおそれがある、そういう植物防疫上の理由があれば、その限りで輸入を禁止できるとされているわけでございます。それも薫蒸などの化学的な措置で侵入防止が確立できるということになりますと、輸入をとめることはできないわけでございまして、このことは、我が国も加盟をいたしております国際植物防疫条約の規定にもはっきりと定められているということでございます。これはもう先生御承知のとおりでございます。  その場合に、病害虫の侵入を完全に防止できる検疫技術が確立をされたかどうかということが議論になるわけでございまして、私どもとしては、検疫技術が確立されたということをさまざまなデータで確認いたしました場合には、植物防疫法上禁止されている輸入措置を解除するということになるわけでございますが、その場合に、法律の第七条第四項の規定におきまして、あらかじめ公聴会を開くように、そこで利害関係人等々の皆さんからの意見を聞くようにということの規定があるということで、先生のお話をされた公聴会がこれに該当するわけでございます。  この場合の意見となりますと、先ほどるる御説明を申し上げましたが、もともと病害虫の侵入のおそれがあるということを理由として輸入をとめているということでございますので、専ら、検疫上病害虫の侵入が防止できるかどうか、そういう検疫技術上の観点からの御意見を拝聴するということが中心になろうかと思うわけでございます。  実際問題としてはいろいろな御意見があるわけでございますが、その中で、先ほど言いました、主としてこれが禁止しております理由以外の御意見を私どもとしてはいろいろな形でまとめまして、執務の参考にはさせてもらっておりますが、判断の最終的な場合にはなかなか、この理由でとめるということになりますと適当でないし、また別の問題を引き起こすことになろうかというふうに考えておるところでございます。
  100. 木村太郎

    ○木村(太)委員 私、そのことは国会に来る前から知っておりますので、全くそのとおりなんですが。  私が聞いたのは、公聴会という場面をどう位置づけているのか、何のための、何をするための公聴会なのかということを聞いたわけでありますが、もし答弁があればお聞かせください。
  101. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほどの説明が十分でなかったのかもしれませんが、この公聴会におきまして、定められておりますのは、利害関係人あるいは学識経験者の意見を聞いて、最終的に判断をする場合のよりどころになるということでございますので、こういう御意見を参考にしますが、先ほどと同じことでございまして、参考にさせていただく意見につきましては、この法律が禁止をしておりますもともとの理由、そういうものと密接に関係をさせていただくことになろうかと思っております。
  102. 木村太郎

    ○木村(太)委員 判断をするための参考にする場、参考になる意見を聞く場ということでありますが、その意見を聞く場において、数からいくと、例えば、十人意見を言えばそのうちの九割がいわゆる反対している意見を言っているわけですね。しかし実際は、過去の例からいくとなかなか、公聴会に出席した人たちも理解しないままにというか、病害虫が絶対入ってこないんだ、わかりましたというふうに参加した人たちが理解したかというと、決してそうでない状況だと思うのですね。そこのギャップが、公聴会というのが単なる事務的な、形骸化したものではないかというような不満につながっているような感じがするわけです。  もちろん、今の御答弁も否定するものではありません。しかし、意見を聞く場であっても、むしろ国として、こういうことですから絶対心配ありませんというようなことを十二分に理解をしてもらえる場でもあってほしいなという個人的な思いを私は持っております。でないと、本当にそういったことがますますいわゆる農政不信というか、そういうことにつながっていくかなと懸念するわけであります。  もう少し具体的にお尋ねしていきます。十六日にはオーストラリアのタスマニア産ふじが実際に販売されたというふうにニュースにも入っておりました。これに続いて、今お尋ねしたアメリカ産のリンゴ五品種が解禁となれば、国内産のリンゴは大変厳しい販売競争にさらに向かうことになろうと思います。農林水産省としては、こういった動きに対して、予測というか、具体的な予測調査みたいなものもやっているのかどうか。また、やっていないとすれば、必要ではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  103. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お話しのとおり、六月上旬にオーストラリアのタスマニア州産のふじリンゴが輸入をされたわけでございまして、全体の輸入量は約百十トンでございました。  その評価につきまして若干御説明申し上げますと、向こうはちょうど裏側に当たりますので、収穫直後で新鮮であるということ、それから初めて輸入されるという話題性もございまして、おっしゃったようにニュース等には取り上げられたのでございますが、外観的には、玉が小さくて着色が悪いということもあったりしまして、国産に比べて劣っておったというのが大方の判断でございます。  販売価格は、国産の価格がキロ当たり六百円前後でございましたのに比べまして、五百円前後で販売をされておりましたが、国産の卸売価格の動きをその間見ていたわけでございますが、余り動きがございませんで、その限りにおきましては、国産リンゴに影響はなかったという判断をいたしております。  御質問のアメリカ産の五種類のリンゴの見通しでございます。我が国に実際どのくらい輸入されるか、これはなかなか、前回の事例、細かいことを御説明申し上げませんが、一たん輸入されて、その後ゼロになったという経験もございますので、なかなか量あるいは影響を推しはかることは難しいわけでございますが、一般論で申し上げますと、我が国のリンゴの品質は世界的に非常に高うございまして、米国産のリンゴは、小玉果が中心で、きずやつる割れが結構多いということでございます。これは私どもの方の職員がアメリカへ実際行きまして、いろいろな調査をしたり、検分をしてきているわけでございますが、アメリカで我が国のリンゴと競争するということになりますと、相当頑張って品質管理をされたものが到着しないと勝負にならないのじゃないかという感じはいたしております。  仮に、あえて価格を推計してみますと、現在の国産のふじの平均的な価格が、大体卸売段階でキロ当たり二百五十円から二百八十円程度というふうに計算をいたしておりますけれども、今私どもが承知している限りのアメリカ産の一番いい方のふじが到着をした場合の価格は、単純に積み上げてみますと、大体二百六十円前後かなという感じがいたしております。  それにしましても、競争力としてはそれほどのものではないのじゃないかと思っておりますが、米国は前回の学習効果が恐らく相当あるとは思われますし、品質改善を行うということは、これは当然そういうふうに判断をしておくべきと思っておりますので、私どもも、国産のリンゴについて、品質改善あるいはコスト削減、さらなる競争力の向上を図っていくためにいろいろ支援をしていかないといけないと思っております。
  104. 木村太郎

    ○木村(太)委員 私がお願いしたいのは、もちろんキロ当たり何円ぐらいになるだろうという予測だけでなくて、もしそれが実際入ってきた場合に、市場に出回った場合に、市場動向としてどういうことが予想されるかとか、調査するのでしたらそのぐらいまで、予測として、あくまでも予測でありますけれども、そういった大変厳しい状況ゆえにこのぐらいの努力をしていただきたいなという趣旨でありますので、ぜひ検討していただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、最後に、ちょっとお願いも兼ねてお伺いしますが、新しい検疫方法は今いろいろ検討しているようでありますので、ぜひ病害虫が入ってこないという新しい方法をつくり出していただきたいし、あるいはまた検疫体制そのものはむしろ強化すべきだと、例えば人間の数でいうと、検疫官を、今まで二人だったのを四人で見るとか、こういったことはさらに強化してもいいのではないかなというふうにお願いしたいと思います。  最後に、何度もこの委員会でお聞きしました。前に、新基本法案のときに、大臣みずからもブーメラン効果ということに対して答弁いただいたことがあったんですけれども、実際、ふじという日本語の言葉、そして日本で生まれたリンゴが、オーストラリア産、アメリカ産のふじというのが入ってくる、入ってこようとしている、こういった厳しい状況を踏まえて、何度も聞きましたけれども、今のリンゴ矮化等のいわゆる園地の整備ということ、これは具体的には平成十二年が目標年次だったと思いますが、それ以降も農家の希望が続くとすれば延長するように今から検討していただきたい。  いま一つは、価格安定制度という、いわゆる所得補償制度と概念的には同じなわけですけれども、これについても、国にお願いしておりますが、今現在、皆さんの方は将来的な検討課題というふうな答弁でありますが、実際はもう現実に厳しいので、県とか農業者団体が市町村も参加してもらってスタートしようとしておりますので、ぜひ具体的に検討を始めていただきたいということ、この二つだけ最後に聞いて、質問を終わります。
  105. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 再三の御質問に全く同じことで非常に恐縮でございますけれども、まず矮化栽培の方は、これは予算上の扱いはもう既に御承知のとおりでございまして、まだ実施期間が残っておりますので、その後の扱いにつきましては、これまでのいろいろな実施状況、それからこれからの諸般の動向を見きわめながら、これは検討させていただきたいと思います。  それから、価格補てんの新たな御提言につきましては、たくさんハードルがあるということはもう先生御承知でございますので、それらを含めて将来の検討課題にさせていただきたいと思っておりますので、御容赦をお願いしたいと思います。
  106. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ありがとうございました。
  107. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  108. 中林よし子

    ○中林委員 まず、質問に入る前に、今回の大雨によって大変な被害が出てまいりました。被害を受けられた方々に心からお見舞いを申し上げ、そしてお亡くなりになった方もたくさんありますので、まず御冥福をお祈り申し上げたいと思います。  さて、法案の審議に入りたいと思いますが、新しい農業基本法案の審議の中で、自給率向上のために農地確保するということが非常に大切だという問題点が浮き彫りになったと思います。  今回、農振法の改正案なんですけれども、農振地域の中での、農用地区域が指定されているわけですが、この農用地区域というのは優良農地として転用も制限され守られるべき農地だ、こういうことだと思うんですね。その農用地区域内の農地面積、これが一体今日までどういう推移をたどったのかということをまず最初にお伺いしたいんですが、年次ごとにといってもなかなか大変ですので、一九八五年以降どういうぐあいに推移しているのか、まずお答えいただきたいと思います。
  109. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農用地区域内の農地面積であります。  四十四年に法が施行されまして、現在、全国三千市町村でおおむね農業振興地域整備計画が策定をされたという五十年の数字から申し上げますと、昭和五十年四百二十一万ヘクタール、続々と計画が策定をされて線引きがされてきましたので、六十三年には四百五十四万ヘクタール、その後減少に転じまして、現在、平成十年三月末の面積で四百三十五万ヘクタールという状況でございます。
  110. 中林よし子

    ○中林委員 確かに農用地区域の指定がされて一度はふえてきましたけれども、私、農水省側から資料をいただきまして、一九八五年から九七年まで十二年間、約十四万ヘクタール、農用地区域内の農地が減っている。だから、本来は転用も制限されて守られるべき優良農地とされているにもかかわらず、実際は、この間に青森県の農用地区域内の全農地が減った勘定になるわけですね。これ自体、私は極めて大変な問題を含んでいるというふうに思うんですけれども、守られるべき優良農地、規制の網もかかっているにもかかわらず、こんなに減った原因をどのようにお考えでしょうか。
  111. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地全体、昭和六十三年の五百三十二万ヘクタールから、平成十年には四百九十一万ヘクタールということになっているわけでございます。五十二万ヘクタールの壊廃ということになります。  二つ、大きな原因がございます。一つは、都市的用途への転用、宅地などでございますけれども、これが約半分の二十五万ヘクタール、それから耕作放棄地等の増大による減少が二十四万ヘクタール、言ってみると、転用需要の高まりや近年における耕作放棄地の増加等が原因と考えております。  ただ、その中で、農用地区域農地の減少の度合いと全体の農地面積の減少の度合いを比較いたしますと、ピーク時と比べて、六十三年と平成十年を比較して、農用地区域内の農地面積の減少率は九六%へということでございますので、全体農地が九二%に減っておりますから、優良農地確保という点では、かなり市町村とも頑張って確保をしてきたというふうに私は考えております。
  112. 中林よし子

    ○中林委員 本来、規制の網がかかって、守られるべき優良農地とされている農用地区域内の農地、これがほかのところ、全体の農地の減少率よりもその進みぐあいが緩やかだからということでよしとされるのはいかがなものかというふうに思うんですね。それならば、その転用規制の網をかけている意味がないわけですから、ちゃんとそういう転用も制限され、守られるべきものとして当然それは本来ならば確保されていなければならなかったはずだというふうに思うんですね。にもかかわらず、やはり随分減ってきたというところに私は問題があるんじゃないかと思います。  農地法農地の転用というのはこれまでも随分厳しく制限をされていたわけです。ところが、日本じゅうに開発の波が押し寄せて、開発の要請にこたえるために実は次々と転用できる仕組みが出てきたというふうに思います。その中で、農用地区域の除外基準も、農水省は通達でこれが除外できるんだということをずっとやってまいりました。  実はここに農地転用の改善措置の経緯というものがあるわけですけれども、これを見ますと、昭和四十四年、市街化区域内農地の転用は届け出とするということに始まって、昭和四十七年、農村地域工業等導入促進法に基づく用地は原則転用許可。それから、昭和五十八年、テクノポリス法に基づく用地は原則転用許可。昭和六十二年、リゾート法に基づく用地は原則転用許可。平成元年、国道、県道に接した流通業務施設や沿道サービス施設、倉庫、ガソリンスタンド、ドライブイン等を建設する場合は、優良農地でも転用許可可能。インターチェンジ周辺の農地は原則転用可能。それから、多極分散法及び頭脳立地法に基づく用地は原則転用許可。それから、平成二年、市町村が農村活性化土地利用構想を策定しその計画に従って住宅、工場等を建設する場合には、優良農地でも転用許可可能。平成五年、地方拠点都市整備法に基づく用地は原則転用許可。平成六年、市町村農業集落地域土地利用構想を策定しその計画に従って農家住宅等に転用する場合は、優良農地でも転用許可可能というふうに、これまで転用が許可されていく過程が年次的にここに明記をされております。  これは、構造改善局が平成九年十一月に「農村における土地利用制度」ということで、第三回農地に関するプロジェクトチーム資料ということで出されている冊子なわけですけれども、これは一体何のためにつくられたのか、それからだれに向けて出されたのか、お答えいただきたいと思います。
  113. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 昨年の国会におきまして、農地法改正をお願いし、改正をさせていただきました。この国会で農振法の改正もお願いをしております。こういう過程の中で、地方分権あるいはある種の手続その他の公正、厳正な運用、そして透明性というふうなことをやっていく必要があると私ども感じておりました。  したがいまして、農地と農振制度、線引きの制度、ゾーニングの法律につきまして、今現に運用がどうなっているかということを、やはり全体すべて、過去の点検をし、総括をして、今回お出ししておりますように、この線引き、除外の事由を法定化するというふうなところに結びつけたいと考えておりまして、中での勉強のために整理をしたものでございます。  るる御説明がございましたプロセスは、おおむねそのようなことだろうと思っております。
  114. 中林よし子

    ○中林委員 だれに向けて出された資料なんですか。
  115. 穂積良行

    穂積委員長 渡辺局長、何の目的にその資料をつくったかという質問だから、それに答えてください。
  116. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 重ねて申し上げますけれども、不断にやはり、今農政改革をやっているわけでございますので、あるいはまた地方分権もやっておりますので、その中で、一体農地というものあるいは農用地区域というものをどういうふうに位置づけ、どういうふうに改善していくべきかということについて、私どもは、私どもの中でもそうでありますし、与党であります党との勉強の中でもそういった資料を皆さんにお勉強していただくべく準備をした次第でございます。
  117. 中林よし子

    ○中林委員 勉強していくためということだったのですけれども、この背景は、実は第四次緊急国民経済対策に向けて、開発のために農地法改正して農地を放出せよということで、私は、現行の通達でもこれだけ転用ができるということで、構造改善局としてまとめられたものではないかというふうに思うのですね。これ以降、第四次緊急国民経済対策というのが自民党自身でまとめられている中に、実は農地法や農振法の運用をちゃんとやれというようなことがまとめられているのですよ。だから、そのために私は出されたと思うのですけれども、出どころだけは構造改善局ということははっきりしているわけなので。  そこで、お伺いするわけですけれども、ここに、優良農地確保しつつ、地域の活性化を図るために必要な需要に対し、計画的に土地利用の転換を行うことを基本とすることが重要であると明記されているわけですね。だから、農水省としては、今までずっといろいろ転用などの経緯もあるわけだけれども優良農地確保するためにこれは明記をされたものではないかというふうに解釈するわけですけれども、それはいかがですか。
  118. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 重ねて申し上げます。  優良農地確保するというのは、私どもは、もうこれは大前提でございます。  ただ、我が国土地条件の制約というふうなことを考えますと、やはりある程度農業も振興しなければいけませんけれども、例えば農村地域の活性化というふうな観点から、非農業利用に対しても一定程度の農地を出していかなければならない局面もあるわけでございます。  そういう中で、やはり私たちの考えは、計画なければ開発なし、きちんとした整序を持って農用地を転用する、あるいは農用地区域の線引きをし直すという考えでございまして、開発のための、つまり、こうすれば転用できるというふうな事例を集めたわけではないわけでございまして、一度そういった線引きであるとか転用についての実情がどうなっているかしっかり勉強して、昨年農地転用につきましては国会で可決をしていただきまして、農地法改正いたしました。  この国会には、そのゾーニングの問題についてこれからどうすべきかということを、御議論をお願いしておるところでございます。
  119. 中林よし子

    ○中林委員 私は、今局長がおっしゃったことは、実は大変な問題を含んでいる。だから、優良農地確保しつつというのだけれども、やはり開発の要求にはそれなりにこたえなければならない面もあるんだという話もされているわけですね、計画さえちゃんと立てればという話なんですけれども。これで本当に農地が守られ自給率が上がるのかという、いわば根幹の問題にかかわることだと思います。  このプロジェクトチームに出されている資料を見ますと、ずっとこれまで、農地を守ることから、そこを除外していく方向の歴史など、さまざまな問題が網羅されております。  優良農地確保しつつということなんですけれども農用地区域除外の要件、これは通達なんですけれども、そこを見ますと、道路、鉄道等公共性の強い事業の用地。それから二番に、地域整備六法、この六法とは農村工業等導入促進法、テクノ法、リゾート法、頭脳立地法、多極分散法、地方拠点都市法、これに基づく開発行為。それから三番目に、次の五要件を満たすものとして、農用地区域以外に代替すべき土地がないこと、それから二番目に、可能な限り農用地区域利用上の支障が軽微であること、三番目に、除外後も農用地等の集団性が保たれること、それから四番目に、土地利用の混在が生じないこと、五番目に、土地基盤整備事業完了後八年を経過していること、こういうことになっているわけですね。これが規制をかけているということになっているわけです。  さらに、これも事務次官通達で、土地基盤整備事業完了後八年を経過しなくても除外できる方策として、農村活性化土地利用構想ということで、集落周辺、インターチェンジ、国県道沿い、それから駅周辺などの住宅や店舗などをつくってもよい、こういうことですね。さらに、農業集落地域土地利用構想、これは集落を対象土地利用区分の明確化を図り、一定の面積を非農地に誘導する。農家の分家、地域内の居住者のための店舗、加工施設などをつくってもよいこととする、これも認めております。こうやって、優良農地でも農用地区域から除外する。  この資料によりますと、優良農地においても立地可能な主な施設、そういう欄があって、実はもうあらゆる施設ができるような状況になっております。それを見ますと、優良農地においても立地可能な主な施設として、土地収用事業該当施設として、私立学校、老人ホーム、地方公共団体が設置する公園など。それから、スプロール的な土地利用にならないものとして、集落に接続する住宅、店舗、それからドライブイン、ガソリンスタンド、先ほど読み上げたものですね。というようなことで、ずらりとあらゆるものが立地可能な主な施設として載っております。  これでは、優良農地確保するとおっしゃりながら、実は農水省自身が計画的に優良農地を減らしてもよいんだ、こういう方向を示しているものではないのでしょうか、大臣
  120. 中川昭一

    中川国務大臣 どうも先ほどからお話を聞いていますと、農林省が、一方では優良農地と言いながら、どんどん農地以外のものにするために間口を広げているとおっしゃられているように聞こえるわけでありますけれども、あくまでも優良農地というものを確保しながら、しかし一方では、それをきちっと集約をしたり、あるいはまた整備をするという目的を達成しながら、他方では、やはり今先生最後の方で述べられた事例の中にもありますように、公共用施設、例えば病院でありますとか、学校でありますとか、道路でありますとかという公共性の高いものに限って、限ってといいましょうか絞って、全部とは申し上げませんけれども、そういう公共性といったような基準に照らして、十分にきつい基準の中でそういうものを例外的に認めていく。  さらには、これは農地としてやっていけない所有者の事情、例えば耕作放棄地なんというものが現に農用地の中にも存在するわけでございまして、それも事実として幾つかの面積はあるわけであります。  さらには、何でもかんでもつくっちゃうんじゃないかというお話でありますが、何でもかんでもではございません。基本法でも御議論いただきました、農業、農村の果たす多面的機能という観点からも、農村空間あるいは農村地域一つの面的な整備といった面からも資するものにつきましては、これは国家的な、国民的な利益ということでやるわけでございまして、極めて慎重にやっております。何が何でも公共性とのぶつかり合いの中で排除するというものでないことは御理解をいただきたいと思います。
  121. 中林よし子

    ○中林委員 私、一番最初に、この十二年の間に大体青森県の農用地区域内の農地が減った計算になるという話をしましたね。その原因もただしましたが、実は、この間の通達の状況を見れば、当然こういうもの、これに基づいて、例えば国道や県道沿いにドライブインができたり、ガソリンスタンドができたり、あるいは工場団地ができたり、店舗ができたり、スーパーができたり、これは優良農地においても立地可能な施設として通達で認められているものなんですよ。  だから、私は、この間いろいろな通達が出されておりますけれども、これが優良農地を減らしている原因だということはもう明らかではないかというふうに思います。大臣、重ねて聞きますけれども、その点はいかがでしょうか。
  122. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先ほど来申し上げておりますけれども、農用地のゾーニングの中に入れるか除外するかということは、やはりきちんと計画を持って実行しているわけでございます。計画なければ開発なしという話をいたしました。  それから、先ほど来先生が事例として挙げておられる市町村活性化構想にいたしましても、集落の構想にいたしましても、これは言うなれば当該地域農業、農村の振興のために一定の非農用地を生み出していくということでございますので、人がいなければ農村地域というものの繁栄はないわけでありまして、担い手がいて、そしてそれを取り囲む人たちがいて初めて農業自身も活性化をするものでございます。  それから、実態的に申し上げまして、現行の農用地の面積が四百九十一万ヘクタール、その中で四百三十五万ヘクタール、九割をこの農振制度農用地区域の中に囲い込むことによって優良農用地が確保されているというのは、厳然たる事実ではないかというふうに私たちは受けとめております。
  123. 中林よし子

    ○中林委員 私の立場は、農用地を本当にしっかり守っていこうということをぜひ皆さんと御一緒に進めたいということなんですよ。しかし、今までしっかり規制の網がかかっていたものが、通達によって、これもよろしい、これもよろしいということで優良農地が奪われている事例が余りにも多いということで申し上げているわけです。  具体的に申し上げましょう。  茨城県の藤代町というところへ行ってまいりました。ここは農用地区域内の農地の中にぽつんぽつんと住宅が建っていて、ある住宅の話を聞けば、電車で一時間も離れた水戸市内の道路建設の代替地として農用地区域内に移転してきて建てたんだ、そこの町じゃなくて水戸市内だ、こういう話なんですね。藤代町の役場の農地担当の方にもお会いしました。その方は、農地保全という点からは本当に困るとおっしゃっております。それから、農業委員の方も、そういうところは集落排水の整備も追いつかず、用水路に排水がそのまま入る、虫食いで農地が転用されていくということで大変困っておられました。  具体的に、そこからはなかなか見にくいかとも思いますけれども、藤代町の農用地の指定、後で大臣見ていただければいいと思いますけれども、緑のところですね、ちゃんと優良農地として守るべきところ。ところが、よく見ると、農地でなくなっているところがぽつりぽつりとあるんですね。  だから、農水省としてこういう事態をどういうふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  124. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 原則と現実ということでお答えをしたいと思うんですが、大原則は、やはり、例えばそういった除外もしくは転用された後の農地が集団性を持ってきちんと保たれているということであります。それは通達にもそう書いてあります。それから、土地利用の混在が生じないことというのも通達の中に書いてあります。したがって、その原則の中で行われるべきことが必要なことであるというふうには考えております。  ただ、今先生がお示しになった案件が何を根拠にしてそういうふうになったのかについては、今直ちにお答えするだけのあれはございませんので、私はそこは十分に点検をしてみたいと思っております。  いずれにしても、原則を外れるようなやり方というのは好ましいことではありません。多分きちんと原則に合致をした上で行われているものと思っておりますけれども、そこは十分点検をさせてください。
  125. 中林よし子

    ○中林委員 今まで言いましたように、通達に沿って、こうやれば除外はできるとか、それからこれなども、実は代替地として求めてきているわけですから、それは原則的には合っているでしょう。でも、優良農地としてせっかく確保した、ところがそういう意味で除外されていくということ自体が、私は今の農地をしっかりと守るということに合致しないのではないかというふうに思うんですね。これまでは通達だったわけですけれども、今度の法改正法定化してしまえば、農地を開発のためにどんどん転用する仕組みが未来永劫固定化するのではないか、こういう懸念を持っております。  優良農地確保するというんですけれども、事例を挙げたとおり、それすらも守られていない。現実にはそういうことが起きているわけです。それを今度は法律化していくということになると、大臣自給率を上げるということを新しい農業基本法案の審議のときに何度も明言をされてまいりました。そのためには農地確保するということが私は不可欠だというふうに思うわけです。通達を法令化するんじゃなくて、むしろこれらの通達は廃止する方向で農用地区域の除外を厳しく規制をしてこそ、私は農地が守れるんじゃないかと思うのですけれども、そのお考えはありませんか。
  126. 中川昭一

    中川国務大臣 機関委任事務を廃止することによって、通達というものも廃止をする。その分、法令、条文化するわけでありますけれども、今回の法律で御審議をいただいております基本指針というものは、全国的な優良農地確保、そしてそれを前提として、人、技術等々の要素も加味して、できるだけ実現可能な自給率というものを国民的な理解のもとで示していこう、そしてみんなで努力をしていこうということでございます。  これは一例でありますけれども、やはり国全体として基本的な大きな方針というものを立てて、その上で、基本法の条文で言いますならば、国と自治体とが相協力をしながら、あるいはまたこの農振法の法律に基づきますならば、協議をしながら、それぞれ個別の都道府県あるいは個別の市町村とやっていくことが、私はよりよい地方分権と国の食料、農業政策との整合性のある接点であろうというふうに考えております。
  127. 中林よし子

    ○中林委員 私は、今まで、除外するためにいろいろな通達が出される、それから優良農地であっても転用ができるようなことがどんどん出されてくる、それを法制化するということ自体、本当に農業は守れない、農地は守れないというふうに思うわけです。  具体的にもう一つ、具体的といいましょうか、法案に沿ってちょっとお聞きしたいわけですけれども、農振地域内の農用地区以外の土地、いわゆる農振白地と言われているところなんですけれども、ここは農地法の規制だけはかかるけれども、基本的には余り規制の網はかかりません。こういうところは開発のあらしにさらされるのではないかというふうに思うわけですけれども、この法案で確保すべき農地等と言われているわけですが、この白地は入るのでしょうか。
  128. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 現実問題として、農振の農用地区域外のいわゆる白地地域農地において一定の農業生産が行われており、かつ、それが日本の食料供給に一定の役割を果たしているというのはおっしゃるとおりであります。  これらの農地につきましては、優良農地というある種の範疇には該当しないわけでありますので、農用地区域と全く同じ程度での厳しい規制というのにはなじみませんけれども、当然、農地であれば農地法の規制はかかりますし、それから食料供給のベースにはなるわけでございますので、必要な農業生産活動の促進を図るという観点、あるいは望ましい農業構造を確立するという点から、今後ともいろいろな意味での農業施策、つまり農地流動化施策とか経営対策とか各種の生産対策、そういったものは着実に推進してまいりたいと思っておりますし、その対象となる農地であると考えております。
  129. 中林よし子

    ○中林委員 今回の法改正農用地区域の指定基準が法制化されるということになると、政令で定める規模、現在、通達では十ないし二十ヘクタール、それがないと農用地域に指定されないとなるわけです。すると、さっきも言いましたように、飛び地になって小さい農地、あるいはこれまでの経緯でモザイクになってしまったような農地などは、白地になっていくわけですね。そういうところは農地法による転用手続だけでよくなってしまうわけです。  日本の農業は農用地域だけでできるのでは決してなくて、先ほど局長も言われたように白地も含めて農業生産をしているので、私たちは、こういうところもしっかり守るべき農地として対策が必要だというふうに思います。  農振地域に指定されて白地になった場合には実は何のメリットもない、地域指定があるだけだということで、農家方々は不満の声も上げておられるわけで、農振地域外の農地の転用とこの白地の転用は同じ基準になるわけですよね。だから、農振地域内の、いわば農振白地、これはそれよりも厳しい規制をかけるべきではないかというふうに思うわけですけれども、それはいかがでしょうか。
  130. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地法上の一筆ごとの審査という話と、農用地区域あるいは農振地域のゾーニングをしたときの手続の話が多少関連をするわけでございます。  農用地区域に指定をされますと転用は原則禁止、こういうことになります。それから農用地区域の設定基準につきまして、今、先生からは、私が事例に出しました二十ヘクタール、集団的な農地と、それから土地改良事業等が進んだ農地ということを説明させていただきましたけれども、それ以外に、これは市町村がみずからの構想で定めるわけでございますので、例えば果樹または野菜の生産団地の形成であるとか、それ以外にも、農業振興地域における地域の特性に応じた農業の振興を図るために土地農業上の利用確保することが必要だというふうに認められる地域につきましては、農用地区域のゾーニングができるように、そういうふうにしたいと思っております。  したがって、これは農業者もさることながら、市町村長がどういった農業上の利用を今後その地域農地について行っていくかということにかかってくるのかなというふうに思っております。
  131. 中林よし子

    ○中林委員 農地を本当に守るという意味で、去年農地法改正の話が出たわけですけれども、そのとき問題になった優良田園住宅促進法、この問題が、私は、農地を守る上でも非常に重要な今後の問題になるというふうに思うわけですね。日本共産党は、これが農地をつぶしていくものであると指摘をしてまいりました。  二ヘクタール以上の農地を転用する場合には農水大臣との協議が必要であるということで、昨年四月に我が党の藤田スミ議員がこの委員会で取り上げました。そのとき農水省側は、計画段階で事前に十分調整をして優良農地確保する、こういう答弁をされているわけですが、今、計画が実施されているところは新潟県の上越市だけだ、こういうふうに聞いております。  その他は一体、現状はどうなっているのか。この上越市の状況を見ると五ヘクタールが対象のようですけれども大臣農地をしっかり守るという立場から協議に応じられたのかどうなのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  132. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 二点御指摘がございました。  上越市の基本方針につきましては、既に今月、第一号として策定、公表されているところでございます。これにつきましては十分なる協議が行われてきておりますし、今後ともそうした方向で臨むという姿勢変化はございません。  それから、それ以外の都道府県市町村等におきましても、優良田園住宅の建設の促進に向けて協議会をつくるなど、今、情報交換を頻繁にやるといったような形で自主的取り組みを始めているところでございます。私も実はこの協議会の発足のときに建設省と一緒に出ましたけれども、今の会員数が二百五、六十あろうかと思っております。今、情報交換の段階でございます。
  133. 中林よし子

    ○中林委員 昨年の審議の中でも藤田議員が明らかにされているわけですけれども、農振白地と農振外農地合わせて千二百八十八万ヘクタールが優良田園住宅開発可能地ということで、四百兆円プロジェクトの一つの資料として提出もされて、私は本当にびっくりしているわけです。だから、本当に農水大臣優良農地確保ということではしっかりとした態度で臨んでいただきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。  そこで、新しい農基法案との関連でお伺いするわけですけれども農地を守るということで、食料・農業・農村基本問題調査会の中間取りまとめでは、「国民にとって最低限必要な栄養水準を検証し、これに必要な農地総量を明確化すべきである。」こうなっていたわけですが、最終答申では、「安定的な食料供給力を確保するため、我が国全体として必要な農地確保されるよう、農地確保の方針を明示する」こうなって、農水省が決定した農政改革大綱、これによると、優良農地確保に関する国の方針の明確化というぐあいに変わりました。  中間取りまとめの必要な農地総量の明確化というのはなぜ落ちていったのか、実際に国民に必要な栄養水準を満たす農地総量という計算はされているのか、この点について、されているのであればどういう計算をされているのか、ぜひ具体的に報告をしていただきたいと思います。
  134. 高木義明

    高木政府委員 新しい基本法案に基づきます基本計画中身といたしまして、現在、準備作業といたしまして、食料自給率目標の策定に必要な主要作目別の生産努力目標について詰めております。その生産努力目標を達成する上で必要な作付面積、それと耕地利用率を勘案した農地面積というものもあわせて準備作業を進めております。  その食料自給率目標というものができますれば、当然それが平時におきます食料供給目標、こういうことになるわけでございますし、それがさらに進んでいけば、不測の事態におきます食料供給能力の向上ということにもつながるわけでございます。  そういう意味で、平時におきます食料の供給のあり方、不測の事態における食料供給あり方、それと連動した形での食料供給あり方という一環として、作目別の生産努力目標並びに作付面積、そしてさらに耕地利用率を勘案した農地面積ということを今検討いたしております。
  135. 中林よし子

    ○中林委員 新農基法案の審議のとき、大臣は繰り返し繰り返し自給率向上ということをおっしゃったわけですね。そうなると、農地自給率の問題というのは私は不可分だというふうに思います。  実際、農水省の新農基法審議に当たっての資料を見ると、二〇一〇年、農地がどうなった場合はどのぐらいなカロリーが保てるかということを計算したシミュレーションはちゃんと資料としてあるわけですね。百万ヘクタール減った場合は一体どうなるのかというところまで計算しています。ふえた場合というのが全くありません。  だから、私は、この改正案審議ではありますけれども、これまでも、優良農地を守る、こう口で幾ら言っても、通達で次から次へとその規制を外していきました。これでは、本当に自給率が上がるのか、農地確保していくことができるのか。  大臣、もう時間が参りましたので終わりますけれども最後にお聞きします。この改正案で、本当に農地を増大させ、優良農地を守り、維持することができるのか、これ以上壊廃を食いとめるその担保は一体どこにあるのか、お答えいただきたいと思います。
  136. 中川昭一

    中川国務大臣 この法案の改正によりまして、優良農地確保し、そしてまた維持、保全をしていくことによって、まず作物をつくるベースを一層充実させていく、それと同時に、自給率に最終的にはいくわけでございますけれども、今官房長が答えたような、品目ごとの実現可能な、できればできるだけ高い実現可能な自給率というものを設定し、実現をしていきたい。  そのためには、例えば耕作放棄地から農地への回復でありますとか耕地利用率の問題でありますとか、あるいは消費者側の皆さんにもお願いをして、食べ残しの問題であるとか、日本型食生活の問題とか、また、おしかりをいただくかもしれませんけれども国民全体でこの平時、不測時における安定的な食料確保のために努力をしていく、最終的には政府がその責務を負うという前提で、国民的な、それぞれの皆さんの御努力として自給率を設定する、その前提としての優良農地確保ということでございます。
  137. 中林よし子

    ○中林委員 終わりますが、国民に必要な農地の総量も示せないで、今の御答弁だけではとても農地確保、維持できるというふうには考えられないことを申し上げて、私の質問を終わります。
  138. 穂積良行

    穂積委員長 次に、北沢清功君。
  139. 北沢清功

    北沢委員 社民党の北沢でございます。午前中の木幡委員質問と若干ダブる面もございますが、御質問をさせていただきます。  今回の新たな農業基本法においては、衆議院を通過して、今参議院に行っているわけでございますが、新たな基本法審議を通じて、政府もそうですが、各党ともに共通して強調された点は、まず第一に食料の自給率向上でありました。残念なことに、何をどれだけいつまでつくるか、つまり具体的な自給率目標については政府から示されておりませんでしたが、自給力を高める上で何よりも重要なことは、優良農地確保することでございます。  かつては六百万ヘクタールあった農地も、今は四百九十一万ヘクタールに減少してしまいまして、政府は、昭和四十四年に農振法を制定以来、五十年、五十九年と改正をしておりますが、農地の減少に歯どめがかからなかった。その点について、農水省の、原因はどこにあるかということについてお尋ねを申し上げたいと思います。
  140. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地の総面積、今御指摘がありましたように、昭和三十六年の六百九万ヘクタールをピークといたしまして減少に転じ、平成十年には四百九十一万ヘクタールとなっております。これは、高度経済成長下における宅地等への農地転用や、近年における耕作放棄地の増加等が原因と考えております。  先ほども答弁申し上げましたけれども、六十三年から平成十年にかけまして、農地の壊廃が五十二万ございます。そのうち都市的用途への転用が二十五万、耕作放棄地等の増大による減少が二十四万ヘクタールという状況にございます。
  141. 北沢清功

    北沢委員 農水省は、いわゆる原因については、高度経済成長政策による農業の後退、それから無秩序な都市の拡大などを理由としておりますが、現行の農業基本法もとで、高度成長政策によりまして農村から人と土地が奪われたわけであります。今またここ数年、耕作放棄地の増加によって、中山間地を中心に集落の維持すら困難な状況を迎えようとしておるわけです。  私は、特に、長野県の山村地帯におりますから、非常に農地荒廃、放棄ということが進んできておりまして、水田においてはアシや木が生い茂りまして、恐らく、水田の床を復元しようとも、なかなか困難ではないか。そうなってくると、永久的に耕地が荒廃をするという結果になり、また、その草の種等に応じて周辺の実際に農業をやっている方も大変な迷惑を受けて、大変な状況でございます。  今回の基本問題調査会の答申資料においては、平成二十二年で耕作放棄地が三十三万ヘクタール、転用面積が二十九万ヘクタール、農用地が四百四十二万ヘクタールと推計をしております。さらに、耕作放棄地が七十九万ヘクタールというようになれば、農用地は三百九十六万ヘクタールに減少することも指摘をされております。こんなことで果たして食料自給率向上ができるのか。政府、農林省の、食料自給率向上のために何としても五百万ヘクタールの優良農地確保するのだという決意がなければ、幾ら法律をつくっても農地確保できないではないか、そういうふうに考えますが、いかがでしょうか。
  142. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 おっしゃいましたように、特に中山間地域中心といたしまして耕作放棄が非常に大きな面積に上っていることは事実でございますし、私どもも、特に中山間地域においてこれ以上耕作放棄が生じないようにするということに全力を注がなければならないと思っております。  そういう意味で、今回、農政史上では初の試みでありますけれども、平成十二年度からの実施を目途に、中山間地域に対しまして直接支払いという制度を導入したいと考えているところでございます。  なお、基本問題調査会にある種の推計を二通り出しましたけれども、これは、現状のまま推移すればこういうことが起こりかねないということでございまして、今まさに、個別の農産物をどれだけ、どういう状態でつくるかという積み上げをやっております。その中には、農地の総量の問題もございますし、農地利用率の向上という点もございます。  こういう点も含めまして、必要な農地の総量の確保、そして、その中で優良農地をどれだけ守っていくかという点について、いずれ、近い将来、数字国民に提示し、それに向けた努力をしたいと考えております。(発言する者あり)
  143. 穂積良行

    穂積委員長 この際、委員諸君にお願いします。静粛に願います。質疑がよく聞こえるように。
  144. 北沢清功

    北沢委員 今、やはり中山間地域における直接支払い制度、かつて私どもは、デカップリングという、日本型のものをぜひ早く実現をしてその地域農業を守ってもらいたいという強い要請をしたことがございます。私は、状況として、今平地と中山間地域との間にどのような傾向というか、差異があるのか、どのような把握をしているか、また、中山間地域については、直接支払い制度以外にどのような対策を考えておられるのか、改めてお尋ねをいたしたいと思います。
  145. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 まず、中山間地域農地現状でありますけれども、これは、具体的に申しまして、耕作放棄率が都市的地域や平地農業地域に比べて相当割合が高いという特徴がございます。また、中山間地域におきましては、特に高齢化の進展が平場あるいは都会よりも大きなテンポで進んでおりますので、高齢化と耕作放棄、これが言ってみればマイナスの循環ということでドミノ的に進むおそれがあるわけでございます。ここを何としてでも防止しなければならないというのが私ども考えでございます。  中山間地域、基本的に、コストが高い、生産条件が不利だという状況にございます。そして、その上に、この中山間地域というのは言ってみれば下流地域に対してダムや防波堤といった公益的機能を果たしているわけでございますので、その地域において何としてでも耕作放棄がこれ以上発生をしない、広がらないというふうな対策を打ちたいと考えておりまして、耕作放棄地の受け手としての担い手の育成、あるいは農地流動化推進員によりまして、掘り起こし活動を通じて担い手利用集積をしていく、新規参入も図るというふうな対策を講じますとともに、先ほど申し上げました、生産条件の不利の格差を補正するという点で、直接支払いの政策を導入すべく検討しているところでございます。
  146. 北沢清功

    北沢委員 また、私は先ごろこんな意見を実は聞いたんです。私自身は非常に問題であるというふうに思いますが、特に新たな農業に入られる皆さんの負担を軽減するということから見て、または、その地域の農用地をより活性化するということは、今の農水省の方針は、自立農家の規模の拡大を図るということが一つの大きな柱でございます。  しかし、そういう中にあって、厳格な適用は、農家の必要条件というのは五十ヘクタールなんですね。そのことが一つの新たな農業をする皆さんの負担といいますか、なかなかそういう土地を得にくいというような、そういう訴えも実はあるわけでありますから、ここら辺については、何かうまい方法というか、原則は原則として、何らかの形で考えるべき道があるのかどうかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  147. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 恐縮でございますが、先生今、五十ヘクタールとおっしゃいましたか、農地取得……(北沢委員「五反」と呼ぶ)五反、五十アール。  それは、今おっしゃられたのは、取得後の農地の合計が五十アールを下回らないというふうな状況でなければ農地を取得することができないという農地移動の下限面積ということだろうと思います。  この点につきましては、二つ申し上げたいのですが、一つには、都道府県知事がその地域実情に即して下限面積をまた下げることができるという仕組みがございます。また、今回もしこの点が本当に障害になっているのであれば、農林水産大臣協議をしなくても、都道府県知事が地域実情に即して、農林水産大臣との協議なしにその下限面積を定めることができるというふうな方向がとれないかどうか検討してみたいと思っております。
  148. 北沢清功

    北沢委員 農地をいかに有効に利用するかということにおいては、やはり規模拡大中心に、自立農家の創設に向けて努力をされているわけですが、逆な面でもそのことがより活性化できるということを私にその方は訴えたというふうに思いますので、これらの点については御検討をいただきたいと思っております。  最後に、基本法の中で農業生産法人に株式会社の参入を認めるための検討を進めているようであります。その参入の条件、生産法人における役員、運営条件はどのように検討を進めておられるか。  我が国農業生産組織は、今まで、家族経営または集落営農とともに、これらを基礎とした農業生産法人を主体としてまいりました。その基盤となる農村地域社会と農業の果たす多面的な機能を維持するために、農地法の耕作者主義を厳守して、資本参加をした株式会社、企業の農地取得は認めるべきではないのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  149. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今御指摘の点につきましては、既に基本問題調査会におきまして、土地利用農業における株式会社形態の導入につきまして、まさにおっしゃいました耕作者主義という理念を外すことがないようにという、言ってみればたががかかっております。したがいまして、株式会社一般についてこれを認める考えはございません。  ただ、担い手経営形態の選択肢を拡大するという点から、今おっしゃいましたような農業者の共同体である農業生産法人、この一形態としての株式会社に限って、言ってみればメリットを生かした形での措置をとろうではないかということで検討に入っているわけでございます。  その際、今御指摘ございましたように、懸念をされる幾つかの事項、つまり、支配をされるおそれはないか、所有者が転々としないか、さらには偽装参入が図られないかというふうな点につきまして、念を入れた検討を行っているところでございます。  その過程で、例えば構成員の要件としては、その議決権との関連で二五%を超えない、あるいは一社当たりの、一人当たりの所有の範囲を一〇%にとどめる、そういったことをやってはどうか。それから、株券につきましては譲渡の規制をかける、これがある場合に限って認めてはどうかというふうな議論が出ているところでございます。  いずれにいたしましても、近々成案を得まして、農地法改正作業に取りかかりたいと考えております。
  150. 北沢清功

    北沢委員 ひとつ的確な基準を決めてこのことを図っていっていただきたいということを御要望申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  151. 穂積良行

    穂積委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  152. 穂積良行

    穂積委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。藤田スミ君。
  153. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、日本共産党を代表して、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場で討論を行います。  第一に、農用地区域の設定基準法定化は、中小農地に対する選別的規定を固定化するものです。耕作放棄地が十六万ヘクタールにまで拡大し、農地の減少に歯どめがかからない中で今必要なことは、農地を規模によって線引きし選別するのではなく、中小零細農地も含め、農地農地として維持、保全するためのあらゆる手だてをとることです。しかし、現在、農用地区域の設定基準は、通達により、十ヘクタールから二十ヘクタール以上の規模の集団的農用地に限定されています。これでは、都市近郊や山間地の点在、零細農地対象とはなりません。本法案は、この通達を固定化するものです。  第二に、農用地区域の除外基準法定化するとしていますが、それによって農用地区域の除外が厳格化されないことです。除外基準には、この間の規制緩和でリゾート法や農村活性化土地利用構想による例外的な取り扱いなど、多数の抜け穴措置がつくられてきました。その結果、宅地開発や大型商業施設等のために、農地転用がなし崩し的に進んでいます。除外基準法定化は、農地転用を可能とするものであり、むしろ、本来転用を厳しく規制すべき農用地の壊廃促進につながるものとなりかねません。  また、新たに国が農用地確保等の基本指針をつくるとしていますが、本法案に農用地維持のため規制強化をする内容はなく、基本指針農地壊廃の歯どめになる担保はありません。  我が国農業を立て直し、食料供給力の維持、向上を図るためには、生産基盤としての農地を守る確固たる規制強化が不可欠であります。しかし、本法案はその緊急な課題に反するものであると言わざるを得ません。  以上、反対の理由を述べて、討論を終わります。(拍手)
  154. 穂積良行

    穂積委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     —————————————
  155. 穂積良行

    穂積委員長 これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  156. 穂積良行

    穂積委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  158. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、来る七月七日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五分散会