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田英夫君
大臣も所信表明の中で、
阪神・
淡路に関連をして「
道路、港湾など主要な
インフラ施設については
復旧が完了いたしましたが、その一方で、今なお約二万四千
世帯の
方々が仮設
住宅で
生活を送られているなど、いまだ残された
課題が存在することも事実であります。」、こういうふうに述べておられるわけです。
今までは公的な資金を使っての
災害対策というのは
インフラの
整備というようなまさに公共的なものにむしろ限られていた。それをやるのが公の国や自治体の仕事だという、そういう
考えがもうしみ込んでいるんじゃないかと思うんです。
阪神・
淡路の教訓というのは、そうじゃありませんよということを言っているんじゃないでしょうか。
私も何度がお見舞いを兼ねて現地の視察をさせていただきました。この東京の国会の中にいて想像つかない
被災者の皆さんの実態を、しかも
災害直後から現在に至るまで、その中で本当にこれは被災をされた方、その周囲の方でしかわからないような非常に大きな打撃を受けておられる。それは目に見える物的なあるいは肉体的な損害だけじゃないんですね。精神的な損害というのが非常に大きいということを教えています。だからこそ、大の男が三年もたっているのに仕事につこうともせず仮設
住宅の中でひとりで暮らして孤独死をしていくというこういうことは普通の神経の状態だったらあり得ない、そういうことが現実に起こっているんですね。しかも、決して一つや二つの例ではない。
あれだけの大きな
災害の場合には人間というものは本当に精神的に大変大きな打撃を受けるものだということをやはり行政もあるいは私
どももしっかりと教訓として把握する必要があるんじゃないか。そして、
対応を、つまり哲学を転換しなければならないということを教えていると私は思っています。
私ごとですが、長いこと新聞記者をやっておりましたから、しかもそれは
社会部記者という仕事が多かったので数々の
災害の現場に行っております。
最大のものは伊勢湾
台風であります。本当に
災害のときに
被災者というものがどういう状態に陥るのか。
阪神・
淡路はもちろん一番大きなものですけれ
ども、伊勢湾
台風のときもやはり、原因は、
地震ではなくて
台風という違いがありますけれ
ども、結果は同じように目に見える打撃じゃなくて目に見えない大きな打撃があります。このことをやはり今改めて大きく重く受けとめる必要がある。
それを救うにはどうしたらいいか。これは公的資金を
生活再建という形で
災害の直後にまとまった形で
支援をしてあげるという、さっき本岡さんも出されましたが、去年の四月から毎月一万五千円ないし二万五千円という形で払われているということ、これは確かに一種の公的援助ですけれ
ども、
被災者の皆さんにとってみますと、さっきの御
答弁では全く違うんです、実際現場に行ってみると。やっぱりまとまって、うん、これでひとつ頑張ろうという気になるようなそういうものを差し上げなければいけない、効果がないといいますか、そういうことをぜひ温かい目で見ていただきたいと私は思います。
別の教訓で言えば、例えば伊勢湾
台風のときに、ちょうど長良川、木曽川のところに満潮が押し寄せてきたその時間に
台風の襲来と重なりましたから高潮になった、満潮と高潮が一緒になった、そして国道一号線の鉄橋にそれが激突をして水の壁ができて両側の堤防が決壊をしたという現実をその直後に私は取材をしておりました。
今度そこに
建設省と水資源公団が御存じのとおり長良川河口堰をつくられた。国道一号線の鉄橋よりもさらに大
規模なものがあそこにできてしまっているのを私も目撃して、これは違うんじゃないかと。
建設省は初め、利水のためと言われた。そのうちにもう工業用水も余り要らなくなってきた。そうすると、これは治水のために必要ですと。治水のためということは、結局堤防が決壊したりしないような、
台風が来ても大丈夫なようなそういう役に立ちますよということになるんでしょうけれ
ども、実はそれが
災害の原因になるという警告をいたしましたが、聞く耳持たずという
ことで二千数百億円の巨費を投じて
災害の原因をつくったと私は思っているんです。そういう過去の教訓ですね、これをあらゆる問題について生かさなければ私は
災害対策とは言えないと思いますよ。
災害というのは、いつ起こるかわからない。そして、原因も数々ある。
地震も津波も、
雲仙・
普賢岳のような火山もあるし、
日本の場合は
台風が毎年来ます。そういうことを一つ一つ取り上げて教訓にしていかなければならないと思います。
そこで話を変えまして、まさに今三つの
法案が出つつあるわけですが、二つは既に出ております。その三つを比べてみると、実は非常に重要な部分で共通点があります。それは、先ほどから申し上げているような公的資金を
被災者の
生活再建のために出すというこの点は全部一致しています、三つとも。自民党案も拝見いたしました。自民党の中の御議論も今続いているようですけれ
ども、要はそこは全部一致しています。それは
政府の今までのお
考えと違う、率直に申し上げて。しかし、今度の
議員立法三つは一番大きなところで、重要なところで共通点があります。繰り返しますが、公的資金を
生活再建のために出すという、それから
住宅の
被害状況によって金額に差をつけて出すという、これも共通しています。全壊とかそういう
住宅がやられてしまうということ、何を基準にするかというと結局それが一番
被災者の皆さんにとって打撃の大きさをはかる基準になるという
考え方ですね。決して公的資金で壊れた
住宅を直したり建て直すためのお金を差し上げるというやり方じゃないわけです。ここはまた三つとも共通しています。
一番三つの違うところは、
阪神・
淡路に遡及するかしないかです。この点は重要な違いだろうと思います。これからやがて審議されるであろうものを、きょうはこれ以上申し上げませんけれ
ども、やはり私
どもはお互いに、
政府の皆さんも一緒に何とかこれを実らせるように
努力をしなければならないと思います。
例えば、私も実はその一つの発議者になっておりますけれ
ども、いろいろ
考えました。議論もしました。その中で、国土庁もお気づきでしょうけれ
ども、
都道府県によって
災害に対するいわば温度差があります。
台風が始終襲来するような鹿児島とか高知とかそういうところ、あるいは
地震の起こり得ると言われている東海とかそういうところ、
都道府県によっておのずから
災害に対する過去の体験から温度差がある。それを一律に
考えていいかどうかという点も私
どもも
考えました。
そこで、私
どもの
法案は
都道府県ごとに条例をつくっていただくと。
都道府県で条例をつくっていただいて公的資金で
生活再建の援助をするということを条例で決めていただく。ただ、条例で決めるということを法律で決めているという。そして、その金額は実は法律で決めております。
支援の金額は法律で決めておりますが、なぜ
都道府県ごとに条例をつくるということにしたか。これは、さっき申し上げたように
都道府県によって温度差がある、また事実起こり得る
災害の可能性が違うとすれば、全国一律にしかも自治体が負担をする部分が半分という規定にしたものですから、それを全国一律にしていいかどうかということでそういう配慮をいたしました。
これ以上もう
法案のことについて立ち入って申し上げることはきょうは控えておきますけれ
ども、そういう
状況にまで今至っているときに、ぜひ国土庁を初め
政府も、国
会議員の皆さんあるいはもちろんその根底には
阪神・
淡路を初めとする
被災者の皆さんの声そしてその実態、それをつかんだからこういうことになってきたんです。それをぜひお
考えいただきたい。もう皆さん、
政府の立場だって
阪神・
淡路の
被災者の皆さんの実態をお調べになることは容易でありますから、むしろそれを正しく把握されれば我々と同じお
考えになると私は信じています。
きょうは、
質問というよりも、一方的に
意見を申し上げました。どうぞひとつ
亀井大臣を初め国土庁の皆さんあるいは
政府の皆さんがそうした哲学の転換をされるようにお願いをして終わります。
ありがとうございました。