○
国務大臣(大木浩君)
環境庁長官の大木でございます。今回の参議院の
委員会の編成がえに伴いまして、私どもの方もこちらで御厄介になることになりましたので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げます。
それでは、第百四十二回
国会における参議院
国土・
環境委員会の御
審議に先立ち、
環境行政に対する私の
所信を申し述べ、
委員各位の御
理解と御協力をお願いしたいと存じます。
今日の
環境問題は、
経済社会活動の拡大により多様化かつ深刻化しております。例えば、既に
地球温暖化の影響が平均気温の上昇や海面の上昇の形であらわれるなど、人類
社会の
基盤を揺るがしかねない
状況が生まれつつあります。
環境問題の多くは大量生産、大量消費、大量廃棄という今日の
社会のあり方に根差しております。したがって、個別の
環境対策に加えて、これまでの生産、消費を
見直し、
環境に負荷をかけない
社会の仕組みづくりにより根本から問題解決を図ることが求められております。
現在、二十一
世紀に向けてこれまで
日本を支えてきたさまざまな
制度の
見直しが進められています。その一つとして、
環境保全型
社会への
改革を位置づけ、大胆に取り組むことが必要であります。また、地球
環境問題についてはその原因、影響の双方が一国の範囲を超えており、地球
規模の
対策が不可欠であることなど、
環境問題の解決のためには国際的な視点が重要であります。
昨年十二月の
地球温暖化防止京都
会議では、二十一
世紀の温暖化
対策のあり方について、全世界の注視のもと白熱した議論が交わされ、
我が国は議長国として
京都議定書の採択に努力いたしました。今後とも
我が国は、
国際社会で政治的、経済的に有している大きな責任に応じて、温暖化
対策を初めとした
環境問題の解決にリーダーシップを発揮していくことが求められております。また、過去の公害防止
対策の経験を生かして
開発途上国に対し
環境協力を行っていくことが必要であります。
環境庁といたしましては、これまで「循環」、「共生」、「参加」及び「国際的取組」という
環境基本計画が掲げる四つの目標の
実現を目指し
施策を行うとともに、各
省庁の
施策が
環境基本計画に沿って行われるよう努めてまいりました。しかし、その実施
状況については、
施策間の
連携が十分ではなく、また個別
施策の効果が必ずしも明らかでないという指摘がなされております。
このため、今後統一的な方針に基づき
施策の体系化、一体化を図り、
環境保全のための
取り組みを
強化することが必要であります。
私は、以上のような認識のもと、次の
施策に重点的に取り組んでまいります。
第一に、
地球温暖化対策を抜本的に
強化いたします。
京都議定書では、
我が国について、二〇〇八年から二〇一二年の期間に温室効果ガス排出量を一九九〇年レベルに比べて六%削減するという目標が課されました。しかし、
我が国の二酸化炭素の排出量は増加を続けております。この傾向に歯どめをかけ、一刻も早く減少に転換させることが緊急の
課題であります。
このため、国際的
検討の
状況を踏まえつつ、国内における総合的な温暖化
対策のあり方について
検討を進めるとともに、並行して温室効果ガスの
排出削減のために早急にとるべき
施策について、中央
環境審議会の中間答申を踏まえ、早期に法律案を提出するよう鋭意作業を進めてまいります。また、
住宅やオフィスでエネルギー使用に伴う二酸化炭素排出量を把握し、削減に取り組むため、電気やガスの簡易測定器を試験的に設置する
事業を実施いたします。
さらに、温暖化防止に資する
施策として、
地方公共団体の温暖化防止
対策の
支援、自然公園内での太陽光などの自然エネルギーを活用した施設
整備等を進めます。温暖化防止に当たっては、
国民一人一人の
取り組みが極めて重要であることから、普及啓発を
強化いたします。具体的には
地球温暖化防止
推進月間の創設や
地球温暖化防止大会の開催を通じて、
国民の参加による排出抑制・削減の行動の広がりを促してまいります。
国際的な
取り組みについては、まず
京都議定書の円滑な実施のために必要ないわゆる排出権取引や
開発途上国における
取り組みを促すクリーン
開発メカニズムの
具体化等に関する
検討作業に貢献してまいります。さらに、
開発途上国の温暖化
対策を
支援するため、アジア太平洋
地域の
環境大臣が参加するエコアジア等の場を活用した政策対話の
推進、情報
ネットワークの
構築、共同実施活動の充実を図ります。また、地球
環境戦略研究機関の発足を初めとして、地球
環境研究を進めてまいります。
このほか、アジア太平洋
地域を中心とした国々に対し、
環境教育や酸性雨
対策、サンゴ礁の
保全等の分野で協力を進めます。
第二に、
環境保全型
社会の
構築に向けた
取り組みを進めます。
近年、深刻な
社会問題となっている廃棄物問題については、廃棄物、リサイクル一体となった望ましい物質循環を
促進する総合的な
制度について
検討いたします。また、フロンの回収・破壊に関しては、モデル
事業の実施及び技術
開発により効率的かつ信頼性のある
システムを
構築いたします。
平成十一年に予定されている
環境影響
評価法の本格施行に向け、審査体制の充実
強化や人材の育成、情報
基盤の
整備を行います。また、個別
事業に枠組みを与える上位
計画や政策において
環境配慮を行う戦略的
環境影響
評価の
制度化に向けた
調査研究を進めます。
環境研究、技術
開発を
促進するため、その
振興計画を
策定するとともに、遺伝子組みかえ生物が生態系に与える影響の
調査手法を確立します。さらに、
環境保全型
社会の
構築に向けた
国民、
事業者の自主的、積極的な
取り組みを
促進するため、
環境教育や
事業者による
環境管理
システムの普及を行います。
政府みずからについても、その活動による
環境負荷を削減するため、率先実行
計画の目標達成に向けて、
環境負荷の少ない製品を優先的に調達するための推奨リストを
整備してまいります。
第三に、ダイオキシン等の化学物質
対策を
推進いたします。
ダイオキシン類については、人の健康と生態系への影響の未然防止を図るため、
平成十年度からの五カ年間に総合的な
対策を順次行います。
平成十年度においては、大気、水質、土壌、発生源について総合的な
環境モニタリングを行うとともに、
関係省庁と
連携しつつ、人体汚染の
状況と健康影響の
調査研究を進めます。
また、化学物質の
環境への排出量や廃棄物としての移動量の把握、公表を行う
環境汚染物質排出・移動登録、いわゆるPRTRの導入に向けてパイロット
調査を引き続き実施いたします。加えて、多種多様な化学物質の有害性や人体への影響を
調査します。新たな問題となっている
環境ホルモンや微量な化学物質の影響については、実態の把握と解明に努めます。
第四に、自然と人間の共生を
推進します。
生物多様性の
保全については、情報の収集、管理、提供を行う生物多様性センターを開設いたします。さらに、生物の生息
環境の広域的なつながりを
確保し、
保全するためのモデル
計画を
策定します。また、野生鳥獣の適正な管理のための人材育成等を行います。
総理府の世論
調査の結果によれば、今よりもっと自然と触れ合う
機会をふやしたい人の割合が六割を超えるなど、自然との触れ合いについての要求が高まっております。このため、緑のダイヤモンド
計画や自然を生かした学習を通じて自然に学ぶ場を提供するふれあい自然塾の
取り組みを着実に進めます。また、自然公園内の荒廃した山地
地域を
対象として、
自然環境の
保全や公園
利用施設の
整備を行います。
第五に、大気
環境、
水環境の
改善に向けた
取り組みを進めます。
まず、
都市部における大気汚染を
改善するため、ディーゼル車の排出ガスの規制
強化について
検討します。さらに、低公害車の大量普及を
実現するため、規制的手法や誘導的手法を含めた
制度的な普及方策のあり方について
検討します。
地方公共団体に対しては、引き続きその
集中導入に当たっての
支援を行います。
また、
水環境の
回復、
創造を図るため、健全な水循環の
回復手法に係るガイドラインの
策定や瀬戸内海における
環境保全及び
環境創造の
施策の
検討を行います。海洋
環境の
保全については、生態系の
保全を含めた海洋
環境モニタリング
ネットワークの
形成を図ります。
第六に、健康被害の予防及び公害健康被害者の救済を実施します。
公害健康被害者の救済に万全を期するとともに、健康被害を予防するための
施策の着実な
推進を図ります。このため、今
国会に補償給付の支給等に要する費用について、自動車重量税収入からの引き当て措置を五年間延長する、公害健康被害の補償等に関する法律の一部を
改正する法律案を提出しております。
また、水俣病
対策については、水俣病総合
対策医療
事業など、
平成七年十二月の閣議了解等に盛り込まれた
施策を着実に実施いたします。患者に対する補償金の支払いを円滑に継続していくため、チッソに対する
支援にも取り組んでまいります。
平成十年度には、この六つの柱を中心に
環境行政を進めてまいります。
私は、持続的
発展が可能な
社会に転換することにより、
環境負荷の少ない製品や自然との共生に対応したサービスなど
環境保全関連の産業が生まれる、これまでとは質の異なった新たな
活力ある
社会となると考えております。このような
社会を目指し、
環境行政の総合的、
計画的な
推進に
全力を挙げて
取り組みたいと考えております。
以上、
環境行政の主要
課題と今後の
取り組みの
基本的方向について
所信を述べさせていただきました。本
委員会及び
委員各位におかれましても、
環境行政の一層の
推進のため、今後とも御
支援、御協力を賜りますよう心からお願いを申し上げます。ありがとうございました。(
拍手)