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1998-01-21 第142回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年一月二十一日(水曜日)    午前九時開議  出席委員    委員長 松永  光君     理事 伊藤 公介君  理事 石川 要三君     理事 西田  司君  理事 深谷 隆司君     理事 山本 有二君  理事 五島 正規君     理事 高木 義明君  理事 北側 一雄君     理事 加藤 六月君        相沢 英之君     江藤 隆美君        小澤  潔君     越智 通雄君        大原 一三君     河村 建夫君        熊谷 市雄君     栗原 博久君        小林 多門君     桜井  新君        関谷 勝嗣君     津島 雄二君        東家 嘉幸君     中川 昭一君        中山 正暉君     野中 広務君        葉梨 信行君     萩野 浩基君        桧田  仁君     増田 敏男君        松本 和那君     村田 吉隆君        村山 達雄君     綿貫 民輔君        岩國 哲人君     生方 幸夫君        岡田 克也君     海江田万里君        小林  守君     原口 一博君        松沢 成文君     山花 貞夫君        上田  勇君     草川 昭三君        斉藤 鉄夫君     西川 知雄君        鈴木 淑夫君     谷口 隆義君        中井  洽君     西村 眞悟君        木島日出夫君     佐々木憲昭君        辻  第一君     矢島 恒夫君        上原 康助君     北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣    橋本龍太郎君         法務大臣      下稲葉耕吉君         外務大臣      小渕 恵三君         大蔵大臣      三塚  博君         文部大臣      町村 信孝君         厚生大臣      小泉純一郎君         農林水産大臣    島村 宣伸君         通商産業大臣    堀内 光雄君         運輸大臣      藤井 孝男君         郵政大臣      自見庄三郎君         労働大臣      伊吹 文明君         建設大臣      瓦   力君         自治大臣         国家公安委員会         委員長       上杉 光弘君         国務大臣         (内閣官房長官)  村岡 兼造君         国務大臣         (総務庁長官)   小里 貞利君         国務大臣         (北海道開発庁長官)         (沖縄開発庁長官) 鈴木 宗男君         国務大臣         (防衛庁長官)   久間 章生君         国務大臣         (経済企画庁長官) 尾身 幸次君         国務大臣         (科学技術庁長官) 谷垣 禎一君         国務大臣         (環境庁長官)   大木  浩君         国務大臣         (国土庁長官)   亀井 久興君  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房人事課長    洞   駿君         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長         田波 耕治君         内閣法制局長官   大森 政輔君         内閣法制局第一         部長        秋山  収君         防衛庁防衛局長   佐藤  謙君         防衛庁運用局長   太田 洋次君         防衛施設庁長官   萩  次郎君         経済企画庁調整         局長        塩谷 隆英君         経済企画庁調査         局長        新保 生二君         科学技術庁長官         官房長       沖村 憲樹君         沖縄開発庁総務         局長        玉城 一夫君         法務省刑事局長   原田 明夫君         外務省アジア局         長         阿南 惟茂君         外務省北米局長   高野 紀元君         外務省条約局長   竹内 行夫君         大蔵大臣官房長   武藤 敏郎君         大蔵大臣官房総         務審議官      溝口善兵衛君         大蔵省主計局長   涌井 洋治君         大蔵省主税局長   薄井 信明君         大蔵省証券局長   長野 厖士君         大蔵省銀行局長   山口 公生君         大蔵省国際金融         局長        黒田 東彦君         証券取引等監視         委員会事務局長   堀田 隆夫君         文部大臣官房長   小野 元之君         農林水産大臣官         房長        堤  英隆君         農林水産省構造         改善局長      山本  徹君         運輸省航空局長   楠木 行雄君         郵政大臣官房総         務審議官      濱田 弘二君         労働大臣官房長   渡邊  信君         労働省職業安定         局長        征矢 紀臣君         労働省職業能力         開発局長      山中 秀樹君         建設省建設経済         局長        五十嵐健之君         建設省道路局長   佐藤 信彦君         自治大臣官房長   嶋津  昭君         自治省行政局公         務員部長      芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長       牧之内隆久君  委員外出席者         参考人         (一橋大学経済         学部教授)     石  弘光君         参考人         (日本労働組合         総連合会事務局         長)        笹森  清君         参考人         (日本経済研究         センター顧問)   鈴木 道雄君         予算委員会専門員  大西  勉君     ───────────── 委員の異動 一月二十一日  辞任           補欠選任   小澤  潔君       小林 多門君   大原 一三君       桧田  仁君   桜井  新君       熊谷 市雄君   鈴木 淑夫君       谷口 隆義君   志位 和夫君       辻  第一君   不破 哲三君       矢島 恒夫君 同日  辞任           補欠選任   熊谷 市雄君       桜井  新君   小林 多門君       小澤  潔君   桧田  仁君       松本 和那君   谷口 隆義君       鈴木 淑夫君   辻  第一君       佐々木憲昭君   中林よし子君       吉井 英勝君   矢島 恒夫君       不破 哲三君 同日  辞任           補欠選任   松本 和那君       大原 一三君   佐々木憲昭君       志位 和夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成九年度一般会計補正予算(第1号)  平成九年度特別会計補正予算(特第1号)  平成九年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ─────◇─────
  2. 松永光

    松永委員長 これより会議を開きます。  平成九年度一般会計補正予算(第1号)、平成九年度特別会計補正予算(特第1号)、平成九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、参考人として、一橋大学経済学部教授石弘光君、日本労働組合連合会事務局長笹森清君、日本経済研究センター顧問金森久雄君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。参考人各位には、平成九年度補正予算三案について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、議事の順序について御説明申し上げます。  まず最初に、参考人各位からお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。委員質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔かつ明瞭にお願いいたします。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、衆議院規則の規定により参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをお願いいたしたいと存じます。  それでは、参考人各位から平成九年度補正予算三案について御意見を聴取いたします。まず、石参考人にお願いいたします。
  3. 石弘光

    石参考人 おはようございます。  時間が限られておりますので、以下三点に絞りまして、見解を述べさせていただきたいと思います。  まず、総論部分でありますが、今日本経済の現状をどう認識しておるか、どういう手段でそれに対処しなければいけないかという点につきまして、かいつまんで御説明をいたします。  バブル崩壊後、日本経済景気後退に入りまして、その後、九三年秋に一応底を打って、上昇局面に入ったと言われつつも、長いこと上昇局面が極めて緩かった、あるいは停滞ぎみであったというのが一般的な認識ではないかと思います。  後ほど、数字で金森さんの方から御説明があるかと思いますが、そういう基調の上に、今年度に入りまして、俗に言われます九兆円の国民負担増とか、それから今年度後半に入りましてから、アジア経済あるいは金融危機とか、あるいは相次ぐ金融証券会社の倒産であるとかというのが起きまして、また一層厳しくなっている、このように理解をいたしております。  そこで、その主たる原因は何かということであります。これに関しましても、経済界、あるいは学界、あるいはさまざまなマスコミ界でも議論が割れていることは承知いたしておりますが、私は、景気低迷局面から本格的に抜け切れないのは、不良資産を抱えた金融システム不安定性、つまり金融不安にあるというふうに認識いたしております。  つまり、その逆ではない。逆ではないという意味は、金融不安というのは日本経済の長引く不況の結果起きているのである、したがって日本経済を浮上させれば金融不安は解消される、こういう見解もあるわけでありますが、私は、因果関係が逆だと思っております。  その最大の理由は、バブル崩壊後六回にわたります総合経済対策を打ち、事業規模六十兆という大量の資金を投入いたしました。その四割ぐらいが財政赤字だったと思いますが、それにもかかわらず、昔ほど力強い景気回復がなかったということは、ひとえに私は、不良資産を抱えている日本経済の構造的な問題ではなかろうかと考えております。  そういう意味で、従来型のように、公共事業をふやしたり、あるいは減税を使ったりという総需要拡張策というのは限界がある。恐らく、今みたいな認識に立ちますと、政策手段も当然違った手法をとるべきであるとかねがね考えておりました。  したがって、従来と異なるべき手段は何か。これは、私は、金融システム安定化にダイレクトに貢献すべきそういう政策手段をとるべきである、このように考えております。金融システム安定化に資するという政策がやっと出てきたという意味において、速やかにこれを実施に移すべきだ、私の基本的な考え方はそこにございます。これが第一点でございます。  そこで、第二点でございますが、そういう意味で、今補正予算審議が行われております金融システム安定化のための緊急措置、これをどう理解すべきかということだと思いますが、基本的には私はこれを支持いたしております。しかし、詳細に中身を見ますと、やはり幾つか問題もある。しかし、今とり得る手段としてはこれ以外に見当たらないという意味では、ぜひ実施に移すべき。ある意味ではもろ刃の剣かもしれません。しかし、やらなければいけない事態になっているのではないかと思われます。  振り返りますと、住専処理のときの公的資金導入、これはかなり国民から反発を受けたと思います。それを受けて、政府・与党、やや、ややというか非常に腰が引けて、その後の公的資金投入をためらってきた経緯があるのは否定できないと思われます。しかし、今回、そのような事態を踏み切りまして、このような緊急措置を具体化して、言うなれば国会議論しようという段階まで来たのは大いに歓迎すべきではないか、このように考えております。  中身でございますが、これは先般来いろいろな形で紹介がなされ、国民の中にも大分この議論は浸透してきたと思われます。国民の中でコンセンサスのあるのは、預金全額を保護するという十七兆円分の特別業務勘定の創設については恐らく皆異論がないことだろうと思います。  問題は、公的資金三十兆円の中身の残り十三兆円を、言うなれば一般金融機関救済を含めて、俗に言われます資本注入に使っていいかどうか。この議論が恐らく意見が分かれるし、この国会でも議論が分かれていると承知いたしております。  ただ、十兆円国庫から出すわけでありまして、公債として認知しているわけですが、交付型にしたという点について私は大いに評価いたしております。後ほど申し上げますが、やはり財政構造改革との関連は断ち切るべきではなくて、それを絶えず念頭に置くということになりますと、交付型の公債というのが一つ選択し得るベストの方法ではなかったか、このように考えております。  さてそこで、金融危機管理勘定十三兆円、これをどう見るかということだろうと思いますが、恐らく、金融ビッグバンというのを念頭に置きますと、ない方がいいに決まっている。つまり、そのほかいろいろな形でビッグバンと逆行するような措置も今回繰り入れざるを得ない事態になっておりますが、そういう意味では、恐らく一切不要で不必要として、公的資金導入しない方がすっきりする、このように思われます。  というのは、住専処理のときの経験から踏まえて、やはり破綻しそうな金融機関を救うということ、国民の税金で救うことはどうだということについて、かなりの反発が予想されるし、事実そういう反発も起こっているからであります。  ただ、冒頭申し上げましたように、私は、今回の景気後退あるいは景気回復がおくれているのは金融不安にあると思っておりますので、そこにダイレクトに要するに治癒を施す施策として、こういう形の資本注入は、緊急措置としてはやむを得ざるものがあるかと思っております。  逆に言って、全額預金保護だけでいい、十三兆円の金融システム注入はなくてもいいという議論を立てるならば、今の金融不安をどうやって救うかという別途その案を立てる必要があるし、あるいは、今十三兆円、もうこれは市場が織り込んでいるかもしれませんが、こういうものなくして今の金融不安を解消できるのかという具体的な処方せんを示す責任が出てこようかと思われます。私は、そういう処方せんが見当たりませんし、なしで今の金融不安は乗り越えられると思っておりませんので、この種の公的資金導入は必要だろうと思っております。  そこで、その具体的な理由でございますが、やはり受け皿銀行に対して、何かしらの援助というのはあってしかるべきではないかと考えております。北拓銀行破綻、その後で北洋銀行、こういう関係を見ますと、やはりこれからこの種のことが起こったときに、受け入れ側の方で、受け皿の方で財務ががたがたしてきたときには支えてやるということは、それなりの公のしかるべき責任ではないか。  もう一つ、貸し渋りが問題になっておりまして、それが優先株、劣後債の購入、公的資金導入という形で一連のシナリオになりかかっております。しかし、その貸し渋りは確かに重大な問題でありますが、貸し渋りの背後にある、借り手としての企業が十分な資金を与えられていないということが、私は日本経済の今の低迷一つの大きな原因であろうと考えております。そういう意味で、貸し渋りはさることながら、その受け手としての、資金需要者としての企業の方に対してのダメージを救う意味でも、この種の公的資金導入というのはある程度是認され得るのではないか、このように考えております。  そこで、問題は、ある種の劇薬的な要素を盛り込んだ金融システム安定化、逆に言えば金融機関救済策となりかねないこの施策を、どう国民に納得してもらい、どういう形で正々堂々進めるかというところに核心があると考えております。  そこで、先般、アメリカのRTCを仕切りましたシードマンさんにもお会いしていろいろ議論したことがございますけれども、はっきりしていることは、公的資金はつぶれる銀行を救うものではないということははっきりすべきだろうと思います。  つまり、つぶれる銀行はつぶさざるを得ない。これはもう、金融ビッグバンになってからではなくて、今からはっきり、不良資産の整理というものの視点から、いわゆる失敗した、破綻に瀕した、破綻した銀行ははっきりつぶす。  問題は、破綻しかかった銀行をどうするか、金融機関をどうするかということだと思います。これはアメリカでいうと、フェールドの銀行フェーリング銀行をどう区別するかということだと思いますが、一番悩ましいのは、破綻しかかった、フェーリングの状況の銀行を、どう厳格に識別して、どこまで救うかということだろうと思います。これがはっきりしませんと、恐らく公的資金導入の支持は得にくい、得られないであろうというふうに考えられます。  そこで、今回のスキームでは審査機関というのを設けるというふうに書いてございますので、そういう種の仕組みは絶対必要だと思いますが、そうなりますと、この審査機関審議が、透明性があり、公平な中立な議論ができるかどうかにかかってくると思っております。議事録の公開は当然のことでありまして、そのほかに、民間から選ばれるという委員の選出等々も、この審査機関の性格を占う上で非常に重要ではないかと思います。  いずれにいたしましても、その資金投入、やるのなら速やかにやった方がいいのでありまして、この審議機関等々で手間をとって発動がおくれるというのでは、せっかくの仕組みが機能いたしませんので、スキーム全体を私は早く移すべきではないか、このように考えております。これが第二点。  第三点は、ここが恐らく核心部だと思いますが、今問題にされております景気対策と、それから従来から叫ばれております財政構造改革、この関係をどう区別するかということだろうと思いますが、私は、一言で申しますと、今の時点においては両にらみでやるしかないと考えております。  つまり、今般の景気の急速な冷え込みで大分国民の意識も変わりつつあるようでありますが、しかし、構造改革必要性ということに関しましては、昨年の夏この案が出され、国会での議論を踏まえて、国民の中でも浸透してきていると思います。  例えば、昨年の十一月三十日、読売新聞でございましたが、ある世論調査をいたしまして、景気回復を優先するのが四八・四%で、財政再建あるいは財政赤字削減を優先すべきというのが四〇・四%ありますから、十一月の段階景気回復を優先するというのが多い。今やればもっと多くなるかもしれませんが、しかし、四割ぐらいの人があの時点財政赤字削減を優先してもいいと考えております。  そういう事態を踏まえますと、今すべて構造改革を棚上げにして、言うなれば、すべからく今の景気対策の方にすべてあらゆる施策実施するというのはやはり問題があろうし、一たんそのような、言うなれば構造改革のスローガン、旗印がおりたときに、またもとに戻すのも大変なことだと思います。  構造改革重要性というのは、端的に言えば財政赤字の累増の問題でありますが、その問題は、今の景気がよくなろうが悪くなろうが、中長期的にはどうしてもやらなきゃいけない課題でございますので、その筋道はやはりしっかりとっておくべきであろうと思います。つまり、財政構造改革という軸はやはり持っておって、その範囲の中で、でき得る範囲で今の景気対策に対応すべきであろう、このように考えております。  今、減税の声が非常に強い。恐らく、唯一減税のルートしか総需要喚起策はないと思っております。私は、公共事業を中心とした歳出増によります、公共投資増によります従来型の浮揚策については非常な疑問を持っております。そういう意味減税なのでありますが、やはり、何人かの人も言っておられるようでありますが、所得税住民税減税して、果たして予期したような個人消費浮揚につながるかというと、これまた大きなクエスチョンマークがつくかと思います。  将来の不安も抱え、あるいは先行きの金融機関等々の不安も抱え、一体どれだけ消費に回すか。あるいは、まとまった金が入れば貯金に回すかもしれないということはある。さはさりながら、心理的な効果というのが恐らく期待し得る、あるいは期待せざるを得ないということでこの種の話は必要なのかもしれません。  そういう意味では、駆け込み的な二兆円特別減税というのがございましたが、まあこれも、心理的な効果を期待するという意味では、そこそこというか、さっき言った私の両にらみの範囲の中では処理できるのかなという感じを持っております。  私の認識では、現在、政策当局市場、特に株式市場牽制効果が続いているんだろうと思います。まだこの種の話は続くかもしれません。恐らく市場は非常にぶれます。それを受けて、マスコミ議論もぶれますし、あるいは企業、家計の行動もぶれますし、あるいは言論界意見、この国会の論争も、ある時期になるとある方向に押し流されるという気配は当然あり得るわけでございます。  そういう意味で、私は、最後に強調しておきたいのは、やはり財政赤字の問題というのは、これはもう主要先進国全部が問題になっておるわけでありまして、きょう、後いろいろ御質問を承ると思いますが、この問題は、一たん景気浮揚した後、また再度起きてくるのは必至でございます。そういう意味では、その仕組みはしっかりと保存し、その中で現下の問題を生かすべきではないかと思います。  具体的に申しますと、財政赤字公共支出削減でやっていこうという意味で、言うなればキャップ、上限をかけたわけでありまして、この手法は私は譲るべきではない。はっきり、公共事業抑制も含めまして、このキャップ方法は残すべきであろうと思っております。  仮にもう一段いろいろな形で景気浮揚等々があるならば、それはそれで、例えば歳出カットを踏まえた上での減税にするとか、いろいろなやり方はあろうかと思いますが、私は、四月以降の景気動向を眺めながら、見詰めながらその手段を再度考えるべきで、今やるべきことは、補正予算で盛られておりますこの金融システム安定化施策問題点を整理しつつ、これを早急に移すべき検討、これが一番の景気対策になると考えております。  以上であります。(拍手)
  4. 松永光

    松永委員長 どうもありがとうございました。  次に、笹森参考人にお願いいたします。
  5. 笹森清

    笹森参考人 おはようございます。  連合の笹森でございます。昨年の十月に八百万連合の事務局長に就任をいたしました。これからよろしくお見知りおきいただいて、御指導いただきたいと思います。  日ごろ諸先生方には国政の場で国民のいろいろな案件について御活躍されていることに対して、心からまず敬意を表させていただきたいと思いますが、きょうお呼びいただいたことに感謝を申し上げながら、八百万連合、六千万人雇用労働者の代表という意味で、いろいろと御意見を申し上げさせていただきたいと思います。  今、国民の声というのは、非常に生活の不安、雇用の不安を抱えておりまして、そういう意味では、早急に政府責任を持って抜本対策を講じてほしい、こういう声が切実な要望でございます。  そういう立場から、まず経済情勢の認識について申し上げさせていただき、具体的な対応策について御提起をさせていただきたいと思います。  最初に、日本経済の状況認識についてでありますけれども、昨年の後半、特に十一月以降、日本の景気は腰折れの局面にあります。九七年度の実質GDP成長率はほぼ〇%にとどまるのではないか、政府予測は〇・一%程度というふうに見込まれておるようですが、場合によってはマイナスの危険性もある、こういうふうに思っておりまして、九六年度の三・二%という数字から見ますと、大幅に後退をするという局面にあるのではないかというふうに思っております。  この景気の腰折れの最大の要因は、幾つかあると思うのですが、私は、きょうは二つだけ提起をさせてもらいたいと思っています。  腰折れの最大の要因のその一つは、財政再建に偏重した経済運営にあったのではないかというふうに感じております。すなわち、昨年の四月から消費税の引き上げ、特別減税の打ち切り、そして九月からの医療費の一部負担増、それに加えまして、公共事業費の抑制、駆け込み需要の反動減、これの影響等をあわせますと、約十兆円を超える、GDPに置きかえますと約二%強のマイナスの材料というふうに出ておりまして、したがって、この要因が消費減退につながっているというふうに思っております。  二つ目の要因は、こうした財政ショックに加えまして、金融機関破綻ですとか信用収縮などのいわゆる金融ショック、これによりまして実体経済への悪影響が出ているというところにあるのではないかというふうに思っております。  昨年の十一月に生じました北海道拓殖銀行そして山一証券、こういった相次ぐ大手の金融機関ですとか証券、そういった企業に大型の経営破綻が生じて、そのことが金融不安を起こさせている。そして、その影響によって、企業家の投資マインドや消費者の心理に非常に大きな萎縮感という心理を起こさせているのではないかというふうに思っております。  九八年の四月から、この状況に加えまして、金融機関に対する早期是正措置導入を控えて、金融機関がいわゆる貸付資産の圧縮、言いかえれば貸し渋り、そういった動きが非常に顕著になってきておりまして、このことが中堅、中小、それぞれの企業に対して大変な企業不安と、これからの二月、三月に迎える倒産状況を踏まえた危機的な状況になっているのではないか、こういうふうに考えております。  そのことと、加えまして、今申し上げたような信用不安が生み出す雇用不安というものに、働く側の立場からは大変な危機感を抱いておるわけであります。この雇用不安が、悪循環ではありますが、消費不況を生み出している、そして、さらに加えて株価の低迷、そういうものを経由して信用貸し渋りを生み出すような、非常に経済の悪循環に落ち込んでいるのではないか、こういうふうに思っております。  このことを打破するには、三つの方策というものがあるのではないかと思っております。一つは、消費の回復策をどういうふうに講じていただけるのか、二つ目は、金融システム安定化策をどう講ずるのか、そして雇用の対策をどういうふうに講じていただけるのかという、この三つについて同時に行っていく必要があるというふうに考えております。  今後は、さらにこれに加えて、景気を底支えしてきたというふうに思われておりますアジア向けの輸出、これがアジアの金融危機の中で減退をしていく、プラスの設備投資が金融不安の中で停滞をする、こういうことが重なりまして、さらなる厳しさが予想される。したがって、この景気の回復というのは、今のままで推移をしていけば、この春先からは全く取り返しのつかないことになるのではないか。したがって、早急に手だてを講ずる必要があるというふうに思っております。  中でも、雇用の問題については、現状、非常に危機的な状況に来ておりまして、数字的に申し上げますと、失業率が、九七年の五月以降三・四から三・五%という大変高い水準にとどまっております。加えて、雇用者数の伸び、有効求人倍率だとか所定外労働時間などの伸びについても、昨年、九七年の半ば以降悪化に転じているという状況にありまして、このまま推移いたしますと、九七年度全体では厳しい状況のままで、今まで経験をしたことのないような、三・五%という史上最悪の数値になるというふうに、雇用情勢は逼迫している現状にあるのではないかというふうに考えております。  したがって、これから私どもが御要請をする内容は、今お手元の方に資料としてお配りさせていただいておりますが、既に、政府それから各政党に対して、連合の立場からそれぞれの御要請も数回行わせていただいている内容でありますので、ぜひお酌み取りをいただきたいと思います。その中で、補正予算関係する対策について、幾つか御提起を申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、景気回復策の抜本的な強化の問題です。  消費の減退による景気の下降を阻止するということのために、連合は、二年にわたって、二兆円の特別減税の継続と、その制度恒久化について御要請をしてきました。幸いにしてこの方向性については確認をされたわけですが、でき得れば、この二兆円の特別減税については、切り離しをして、年度内に早急に実現ができるという取り扱いを行っていただきたいというふうに思っております。  加えて、この規模では今の状況からはとても足りないというふうに思っておりますので、九八年度に向けまして、三兆円プラスをするような規模で制度減税として恒久化するべきではないか。トータルでは、法人税、さらに教育、住宅の問題等の政策減税も含めまして、六兆円規模の減税をぜひ実現をお願いさせていただきたいというふうに思います。  それから二つ目は、金融システム安定化対策の問題であります。  金融システムの不安をどういうふうに除去するのか。そして雇用問題の発生をどういうふうに防止するのか。さらに、政府は、破綻時の預金者等の保護策の強化をどういうふうに図っていただくのかということとあわせて、早急に金融システムの再構築を検討していただき、貸し渋りという状況に対しての解消策を講じていただきたいというふうに思っております。  金融不安の除去の問題につきましては、連合としては、公的資金導入については、大変悩ましい選択をさせていただきました。組織の中でもまだまだ完全に意見が一致をしているという状況にはなりませんけれども、一つには、情報開示の徹底をする。このことを、今までの金融の取り扱いの中での反省を十分にしていただいて、まず確認をし、そのことの徹底方を図っていただくということが一つの条件。  二つ目は、経営責任、監督責任をどういうふうに徹底をさせていくのかというのが二つ目の条件です。経営責任、監督責任の問題につきましては、諸外国の例を見ますと、民事、刑事でそれぞれいろいろな罰が採用されているわけですが、今まで私どもがマスコミ等を通じて仄聞するところによると、日本の場合には、民事、刑事で罰せられるという経過が今までなかったわけであります。  したがって、この監督責任、経営責任の問題について厳しくチェックをする、そして、そのことを徹底するということがない限り、国民公的資金導入については聞く耳を持たないということになるのではないかというふうに思っておりますので、情報開示と責任の追及の徹底、これについては、ぜひ前提条件として、極めて厳しく対応していただきたいというふうに思っております。  その上で、債権回収機構の整備強化、あるいは公正、透明な処理手続を定めて、預金者等の保護を中心とした金融システム安定化に限定して、雇用不安の発生を防ぐというために、公的資金導入をすることを連合としてはやむを得ないというふうに判断をしております。もちろん、これについては、条件は厳しくつけるということがあることは言うまでもないことであります。  それから三つ目に、金融機関の貸し渋り対策の抜本強化の問題であります。  連合もいろいろな地域に組織がございますし、構成組織の企業も大変数多くあります。その中で、特に北海道経済圏を中心にいたしまして何回も陳情団が連合の方に来ておりますが、その中身を見ていきますと、中小企業をも超えて、中堅企業も含めて危機的な状況にあるというふうに思っております。  したがって、公的機関の中小、中堅企業への融資条件の緩和、融資枠の抜本的な拡充を行うということが一つ。それから二つ目には、中堅企業への公的融資制度も九七年度に利用できるように早急に創設していただきまして、いわゆる設備投資に限定をすることなく、運転資金への融資も可能としなければならないのではないかというふうに思っております。  緊急雇用対策の拡充の問題について一つ触れたいと思いますが、この内容につきましては、財政構造改革法案の考え方についてであります。  冒頭御指摘を申し上げましたように、二つの要因が今回の大きな停滞要因であるというふうに申し上げましたが、政府は、九〇年代の回復過程の中で、二回同じ政策の過ちを犯したのではないかというふうに思っております。その一回目は、一九九五年、この状況の中で、政策の失敗によって回復を腰折れさせたという経過が一度ございます。それから、二回目は今回でありまして、この一回目と同様に財政再建を急ぎ過ぎたのではないか、そのことによって結果として不況を招いてしまったということであります。  その意味で、今年度以降、再び同じような間違いを犯さないように政策をとることが大変重要なのではないかというふうに考えております。したがって、そういう意味から申し上げますと、財政再建は、正常な経済成長が確保されない限りは困難であるということを認識いただかなければいけないのではないかというふうに思っております。  アメリカやイギリスの例を見てみますと、財政が健全化するまで、二%以上の成長が二年ないし三年持続をしてから初めて財政再建問題に取り組んで、それが成功したという経過があるわけで、日本の状況の中では、これはまだまだそういった体力回復には全く至っていないというのが現状であります。  したがって、日本においても、このアメリカ、イギリスの例に倣って、現在の景気低迷と生活不安を打破するための景気回復が成り立つまでは、財政構造改革法案は凍結をして、所得税減税等の景気対策、雇用対策を最優先すべきだというふうに考えております。  連合は、今ちょうど各産業別組織、企業別組織が春季生活改善闘争の時期に入っております。私どもは、日経連と同じように、理想的には、日本の経済は三%台の成長を続けていくことが望ましいというふうに考えておりますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、今年度の経済成長の状況を見ますと、ゼロ%になるというような状況は、これは否めないということであります。  したがいまして、三%台に景気回復をする前に、とりあえず二%台の経済成長は何としても確保する。そのためには、連合総研、シンクタンクとして持っております機構からは、五%程度の賃上げと適正な所得税減税がなされなければその回復は全く不可能だ、こういう数値が言われております。  したがいまして、私どもは、要求の中では、経済成長を幾らに戻すのか、そのために、今大変国民が不安に陥っているようなこの経済不安、景気動向について、何としても国会の場で一日も早い抜本的な対策を講じていただきますように、まず冒頭お願いを申し上げさせていただきたいと思います。  よろしくお願いします。(拍手)
  6. 松永光

    松永委員長 どうもありがとうございました。  次に、金森参考人にお願いをいたします。
  7. 金森久雄

    金森参考人 おはようございます。日本経済研究センターの顧問の金森でございます。ちょっと風邪を引いておって、声がおかしくなっておりますが、お許しを願います。  日本の経済を振り返ってみますと、一九九六年には大体回復の軌道に乗っておりました。九六年度の経済成長率が三・二%なのですね。これはかなり望ましいレベルに入ってきたわけであります。  経済というのは、大体、一度回復をいたしますと、投資が消費をふやす、消費がまた投資を拡大するというような累積的な過程が起きまして、九七年もさらに高い成長になるべき状況だったわけであります。ところが、実際にはそうならずに、非常に大きな落ち込みが起きまして、九七年度は恐らくゼロ成長ぐらいになるのではないかと思うわけです。  どうしてこういうような状況になったかと申しますと、やはり、九七年度はいろいろな要因が作用をしておりました。プラス要因、マイナス要因がいろいろまざっているわけでありますが、プラス要因としては、一つは、経済は、バブル不況から脱出しまして、自然的な回復段階にあったわけですね。ですから、設備投資等がリプレースメントの取りかえ需要のためにかなり強かった。それから第二番目には、輸出が非常に好調でございました。  この二つはプラス要因でありますが、マイナス要因が三つございました。  一つは、まだ不良資産が非常にたくさん残っていたということですね。それからもう一つは、九六年度に、消費税の引き上げを前にいたしまして、駆け込み需要がございました。それの反動が起きてくる。政府はこれは余り大きくないだろうというように考えていたようでありますけれども、実際には相当大きな反動がございまして、九七年度の住宅とかあるいは耐久消費財、自動車等の内需を抑制したわけですね。それからもう一つ、最後の要因でありますが、これは政府が余りにも強い引き締め政策をやったということでありまして、これがやはり最大の要因であるということは間違いないと思います。  御承知のように、消費税の引き上げと特別減税の廃止、それから医療費の自己負担の増大、こういうものによりまして、約九兆円の個人所得が政府に吸い上げられたわけであります。これは、個人消費は三百兆といいますと、その三%に当たるわけでありますから、非常に大きいわけですね。消費は大体年に三%もふえないわけでありますが、一気に三%だけ負担を課した。その結果といたしまして、九七年度の消費は、ゼロあるいはマイナスになるのではないかというように言われておりますが、非常に異例の状況が起きたわけであります。それから、いま一つ政府の抑制としましては、公共投資の削減、これが恐らく三兆円近い減少ではないかと思います。  こういうようなことでありますので、政府は、当初は、景気は緩やかに回復していると言ったわけでありますけれども、実際にはそれとは逆に、後半になりまして、落ち込みが一段とひどくなりました。  そこで、これに対しまして、いろいろな緊急経済対策を出されたわけでありまして、それは私は非常に結構なことだと思うわけであります。この場合、金融対策と所得対策とどちらが優先すべきであるかという問題が発生するわけでございますけれども、現実にとられました政策は、まず金融対策が先にとられたわけですね。それは北海道拓殖銀行とか山一証券とか、そういう金融関連の機関が破綻を来すという現実の問題が生じたからであります。そのためにだんだん金額もかさんでまいりまして、三十兆円をこれに充てるというようなことになってまいりました。  私は、これもやむを得ないことではないかと思いますが、これは先ほどの参考人も触れられましたけれども、預金者保護のためにお金を使うというのは、これは当然のことであります。それから、金融システム安定、コール市場が混乱するというようなことでは大変でありますから、このために使うのと、それからいま一つは、やはり議論が分かれておりますのは銀行にお金を出すかということですね。劣後債か優先株を政府が買うことによってそれを救済するか、救済すべきか、この点は非常に議論が分かれておるところでありますけれども、私はある程度そういうことも必要ではないかと思います。大きな銀行がつぶれましたときに、受け皿銀行のバランスシートを改善するためにも、政府は何かの手を打たなければなりません。  それから、やはり銀行の貸し渋り等で中小企業が非常な混乱を受けるという問題が発生しておりますので、それもやはり必要であろうというように思うわけでありますが、この最後の点につきましてはやはり大変な危険性を同時に持っている。不良銀行政府の税金で救済するということになりかねないわけでありますから、住専のときに国民が非常な反発を起こしましたように、これが起きる危険というのはかなりあるわけであります。  したがって、これも先ほどの方、皆さん言われたわけでありますけれども、中立的な審査機関を設ける、それから政府のお金を入れてもらう銀行につきましては経営責任を十分にはっきりしてとってもらう、そういう措置がとられるということを前提といたしまして、できるだけ幅広い資産対策というものが行われないと日本の経済は大変な混乱に陥るというように考えるわけであります。  しかし、そうした金融対策だけでは十分でありません。むしろ、やはり有効需要をふやしていくということが先決であります。有効需要がふえなければ、今の金融の方を救済しようというようなことでお金を出しましても、これはいつまでも出るばかりということでありまして、もとになります経済の成長率を復活させるということがまず大事であります。  しかし、政府は、お金は減税あるいは公共投資とかそういうところには使いませんよ、これは財政構造改革という基本方針に反しますよというように言われておりまして、私も非常に心配していたわけでありますが、幸い橋本首相が突然二兆円減税ということを言われまして、私もこれは非常によかったことだというように思うわけであります。  減税につきましては、先ほどの参考人の御意見にもございましたように、連合もあるいは日経連も共同して五兆円ぐらいの減税をやってほしいという要望を出しておりまして、これについては問題がないのではないかと思います。ただ、減税につきましては、これは規模がいかにも小さい。九兆円、九七年度に国民の方から政府に取り上げたわけでありますから、そのうち二兆円だけ返したというのではこれは十分な効果を持たないと思います。  それからもう一つは、一回限りということでは、これは効果が非常に減殺されてしまうわけでありますので、まずとりあえずは二兆円減税でありますが、これは恒久減税に切りかえていくべきではないかというように思うわけであります。  それから、いま一つの問題は公共投資であります。減税をやるべきだという意見は新聞でも評論家の間でもほとんど一致しておりますけれども、今公共投資をやるべきだという見方は大変少数であります。しかし、私はやはり需要拡大のためには、減税と公共投資は車の両輪でありますから、両方をやらなければいけないというように考えております。  公共投資は余り効果がなかったということで先ほど参考人は言われたわけでございますけれども、決してそういうことではありません。私の資料をお配りしてございますけれども、今回の不況では、従来に例を見ないほど大幅な民間設備投資の落ち込みというのがあったわけですね。日本では民間設備投資が落ち込む例というのは、ほとんどこれまでなかったわけでございますけれども、九二年から九四年度までにつきまして三年間設備投資が落ちる。九三年に至りましては一〇%も落ちたわけであります。  そういう非常に大きな落ち込みを支えるというために公共投資が発動されたわけでありまして、いわばもう凍りそうになるときに公共投資でたき火をしたわけでありますから、その結果経済が上向かなかった、部屋が暖かくならなかったからといって、これが効果がなかったということではありません。もし公共投資が行われなければ、日本の経済は冷却して大変なことになったというように考えられるわけであります。  現在の政府の方針を見ますと、九七年度につきましても九八年度の経済見通しにつきましても、大幅な公共投資の減少ということになっているわけですね。こういう不況の段階で公共投資を六%も七%も減らすというのが、いかに非常識な経済政策であるかということは、十分にお考えいただきたいと思います。  公共投資につきましては、これが非常に能率が悪いとかむだなところに行われているとか、いろいろ変なところに結局お金が回ってしまうとかいう批判というのが非常に多いわけでありまして、その一部私は妥当ではないかと思うわけでありまして、日本の公共投資を透明にし、能率を上げるというためにはいろいろな工夫が要るわけでありますけれども、そういうところを改めて、そうして公共投資を拡大する。初年度七%、三年間で一五%引き下げるというような政策というのは妥当でないというように考えるわけであります。  現在、日本の経済は非常に需給ギャップがあるのですね。日本の持っております潜在的な能力に比べまして、需要が不足している。これがどれぐらい不足しているかということはいろいろな計算がございますが、今OECDでやっております計算では、需給ギャップが三%であります。これは世界で、OECD二十一カ国の中で、スイスを除きますと、一番大きな需給ギャップなんですね。  世界の倍以上の需給ギャップというものがあって、非常に大きい。三%といいますと、五百兆円GNPに比べまして三%でありますから、十五兆円の需給ギャップがある。正しい政策としては、やはりこれをだんだん埋めていくような積極政策が必要であったというように考えるわけでありますが、実際には、九七年度は十五兆円の需給ギャップがあるのに、逆に九兆円の増税その他と三兆円の公共投資の減少で、十二兆円の削減を行ったわけですね。  これでは、バランスが崩れてしまうということは当然でありまして、ここのところをさらに改めていかないと、九八年度の景気の回復というのも難しいのではないだろうかというように思うわけであります。  これだけ需要が不足のときに、さらに政府が抑制的な政策をとられたのは、言うまでもなく日本の財政赤字が非常に大きいということで、それを直すのが何よりも大事だというようなお考えであったと思いますけれども、やはりこれは順序がちょっと違っていると思うのですね。今どちらの方が緊急問題かといえば、やはり需要を高めて適正な成長路線に経済を乗せてやるということが大事であります。  日本の赤字というのはGDPの七%くらい、累積の赤字は、GDPを超えて五百兆円以上の累積の赤字があるというようなことは言われておりますけれども、実際には、それほどその赤字が危機直前に迫っているということではありません。  政府の赤字が大き過ぎて経済に問題を起こすというのは、どういうところで問題があるかといいますと、金利が上がって民間の投資ができなくなるといういわゆるクラウディングアウトの問題、あるいは財政赤字のために物価が上がるということですね。あるいはまた、財政赤字が大き過ぎるために国際収支が赤字である、こういうような状況が起きたときには、確かに財政赤字というのは問題であります。  現在、日本の場合には、金利は下がっておりますし、物価は安定している、国際収支は黒字が大き過ぎて困るというような状況でありますから、経済全体から見れば、決して危険な状況に財政の赤字が膨らんでいるということではありません。やはり財政赤字問題というのは、経済全体の中でもって考えないと正しい答えは出ないのではないかと思います。  現在では、まず景気をよくする、そして税の自然増収を図る、それでも、完全に経済が回復いたしましてもなお赤字が残るというときには、またその財政赤字削減のための政策というものは必要であるというように私も思うわけでありますが、現在のやり方というのは完全に逆になっているわけですね。まず財政赤字を減らすために、経済の非常に強い引き締め政策をやりまして景気自身を冷やしてしまったということで、この矛盾が最近至るところにあらわれているのではないかというように思うわけであります。  新年度の見通しにつきましては、非常に心配な点がございます。一つは、これまで設備投資は比較的堅調だったわけですね。これは、先ほど言いましたように、リプレースメントのための設備投資需要というものがございましたが、これが現在、企業は非常に弱気になっておりますから、設備投資も下がってくるという可能性がございます。  それからいま一つは、東南アジアの混乱ということですね。これを比較的日本ではまた軽視しているようでありますけれども、とにかく東南アジア諸国は、日本は最も東南アジア諸国の影響を強く受けるわけでありまして、最近の混乱によりまして、来年度は〇・四%ぐらいGNPが下がってくるんじゃないかという見方が多くのシンクタンクから出されております。OECD等の見方では、一・四%という見方をとっているわけですね。ですから、輸出依存型の景気政策というのは新年はとることはできません。  また、設備投資の支持力というのにも期待ができない。やはり内需拡大がどうしても必要な段階にあるわけでありまして、私は、これは幾ら上げたらいいかというのは、なかなか難しいですね。簡単に言えませんけれども、先ほど言いましたように、十五兆円ぐらいの需給ギャップがあるわけでございますから、五兆減税、五兆施策ですね。昔は、千億減税、千億施策ということがございましたが、もう経済規模が大きくなっておりますから、五兆減税、五兆施策。あとはやはり日本の経済の自然回復力によって埋めていくという程度の思い切った対策を打って、気分を一新するということが必要ではないかというように考えております。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 松永光

    松永委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 松永光

    松永委員長 これより各参考人に対する質疑に入ります。  この際、質疑者に申し上げます。  議事整理のため、質疑をする参考人の氏名をその都度お告げいただきたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智通雄君。
  10. 越智通雄

    ○越智(通)委員 ただいま三先生から大変有益な御見解を承りました。それなりにそしゃくして、今後の予算審議に役立たせていただきたいと心から思うわけであります。  お触れになりました問題の一部に、私どもさらに深く御見解を賜りたいと思う点がございますので、御発言の順序で、一問ずつお伺いさせていただきたいと思います。  石先生が金融の問題をおっしゃいましたが、金融不良資産というのは、多くの場合に担保が不動産、それも土地でございました。地価の動向というものと不良資産の増減というものは、どのように関係していたとお考えでございましょうか。俗っぽく言えば、地価がぴんとしてもっと上がってくれば、不良資産というのはうんと減ってしまうのではないかという議論さえあるわけでありまして、今回、政府・与党の方におきましては、土地税制の改革を大きく平成十年の税制改革に入れておりますが、それによって金融にどのような影響が出るとお考えでございましょうか。  さらに、金融関係で言えば、貸し渋りの問題とされております早期是正措置は、実は海外支店を持っている銀行についてのBIS規制、すなわち国際決済銀行というヨーロッパの銀行を中心とした機構がつくりました、資本と貸し出しとの因果関係というか、数量的な関係だけが基準でございます。  本来、銀行の経営というものには、かつて多く使われておりました預貸率、預かった資金の量のうち一部を、業態によって違いますが、貸し出しに回し、一部を流動性の多いものとして保持するという規則、規則というかルール、さらには経費率、資金コストに何がしかの経費を乗せまして、その限界内で貸し出しを行う、経費をかけるという、預貸率や経費率というものがございました。  今日のBIS規制は、端的に資本と貸し出しとの比率だけでやっておりますが、それについて、あれでいいんだ、海外支店の出てないものも同様の基準で国内を成績評価すればいいんだというふうにお考えかどうか、その点についての御所見を承りたいと思います。  二番目に、笹森先生からお話がございました。その中で、実は連合の資料をいただいております。その中に、地方分権の推進ということが書いてございます。  もともと、今回の財政再建は、ヨーロッパにおきます統合の例に倣いまして、国の財政事情と地方の財政事情を合わせて計算することになっております。実は、私ども、地方の財政事情、必ずしも資料その他でしっかりと把握できておりません。その両方を合わせた赤字が三%におさまるかどうかという論議としましては、地方の財政をどのようにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。  あの文章の中には、公務員の給料を今回も一%上げるようにということも書いてございました。国家公務員、一般で約五十五万、それに対しまして地方公務員は三百六十万、六倍おられます。空出張、空会議等の問題が非常に多く出まして、各県で億のつく数字が不正、不当に使用されたことも出ております。そうした中で、雇用の中における公務員のあり方、そしてまた、地方分権の、殊に財政面でのあり方についての御所見があれば承りたいと思います。  御高承のとおり、現在、地方交付交付金は十五兆ないし十六兆でございます。十年前は九兆でございました。二十年前は五兆でございました。それは、交付交付金の算定根拠が、かつて三税の三二%でございましたが、最近におきまして、平成に入りましてから、消費税の二九・五%、たばこ税の二五%を足しましたものですから、伸びております。  きょうですか、発表になりましたようですが、財政の中期試算によりましても、向こう五年間に地方交付交付金はその十五兆がさらに最低三兆、最高五兆ふえるという計算がされておりました。それは、国税の伸びに準じた現在の率を掛けたからそうなるのでございましょうが、一体、国でこれだけの財政の緊縮を図らねばならないときに、地方の財政というのは、そのように二割も三割も五年間になぜふえなきゃいけないというふうにお考えでしょうか。  あるいは、そういうことではなくて、地方交付交付金の制度についても、私自身は定額にすべきだという主張をしておりますが、そのような何か改革についてのお考えがございますか。笹森先生にお伺いしたいと思います。電力会社は各地方における主導的な立場で経済に当たられておると思いますので、各種の実情を踏まえての御見解を賜りたいと思います。  第三に、金森先生には、長年経企庁を初めとして、経済の運営に最もマクロから見る達人だと、私も大蔵省におりましたときに、先生が経企庁の次長をされておりました、それ以来御尊敬申し上げておりますが、ただいまのお話の中で、あるいは、いただきましたこの資料の中で、なかなかに理解しがたいところがございます。それは、住宅投資と設備投資が大変弱く見られているということでありまして、住宅投資はマイナス一・八%、そして設備投資はプラス一・四%と見ております。  私も、各研究機関、総研とかなんとかいう名前のつくところ約十機関、それから各普通の金融機関等十四社がどのように九八年の経済を見ているか、数字をいただいて検討してまいりましたが、確かに、それらの中におきまして一番政府の見通しと差が出ておりますのが、今の住宅投資と設備投資でございました。でも、住宅投資は、総研十機関の中では平均がプラス一・三でありました。政府はそれを四・九と見ております。また設備投資は、一・七が三・五、まあ早く言うと、二倍から三倍違っている。  だけれども、例えば設備投資は、利益率から資本コストを抜いたものが関数だと理解しておりますけれども、利益率は一部企業ではそんなに落ちていないという話もございます。また、今日、土地の税制を変えますと、それも一つの誘因になるであろう。さらには、技術革新をしておれば、その必要性も出てくる。さらには、法人税の減税を三%いたすわけでございますので、余力もあるのじゃないか。  設備投資と住宅投資がこのように落ち込んでいるということについて、特段の御所見がございましたら、ぜひその点の御見解を承らせていただきたい。  以上、三先生に、それぞれの問題の御教示を賜りたいと思います。
  11. 石弘光

    石参考人 二点ほど御質問いただいたと思いますので、順次お答えいたしたいと思います。  確かに、地価が下がったのが金融機関不良資産を増幅させて、言うなれば資産デフレを増長させる、これはまさに御指摘のとおりだと思います。  ただ、地価を政府の力等々で上げるのは非常に難しい。同時に、私は、バブル崩壊後七年の間に、やはり売り惜しみと買い控えがあった。言うなれば、市場では均衡価格がなかなか決まらなかった。いずれ値段が上がったときに売りたいという売り手側と、もっと下がってから買いたいという買い手側の思惑が、なかなか市場の取引に結びつかなかったということだと思いますが、やっとその機運も時がたつにつれて出てきたように理解をいたしております。  そこで、土地税制がそれについてどのぐらい役割があるかということでありますが、恐らく、バブル前の税制に戻ったということを言っておられますので、土地取引にはプラスになろうかと思っておりますし、これが結果的には、今後予想される不良資産の縮減につながるのではないか、このようには考えております。  ただ、私自身は、土地税制というのはそうころころ変えるものじゃなくて、地価税を初めとして恒久的な税制として導入した経緯の一端もございますので、地価税凍結とかキャピタルゲインを見直すとか、キャピタルゲインを見直すのはそれなりの意味があるかと思いますが、あと借りかえとか、いろいろやられたことに対しては若干の批判的な点は持っておりますが、今の土地に対してプラスになるという側面はあろうかと思っております。  それから、貸し渋りに関しまして、第二点でございますが、BIS規制だけでいいか。まさにおっしゃるとおりだと思います。  特に、八%自己資本比率を上げなければいけない、そういう国際的な業務をするところは確かにグローバルな物差しで規制しなければいけないでしょう。ただ、御指摘のように、四%でいいという、国内の業務を主流としてやるところには、恐らく経費率とか預貸率とかいう、従来の伝統的な物差しがやはりある。逆に言えば、こういう物差しというのは国際的には使えないわけでありまして、そういう意味で、物差しを幾つか当てて、それなりに議論しなければいけないというのは、御指摘のとおりだと思っています。  以上であります。
  12. 笹森清

    笹森参考人 越智先生の御質問にお答えをしたいと思います。  大変中身的には多く出されておりますので、箇条的に申し上げたいと思いますが、一つは、地方分権と行政改革の問題です。  私は、地方分権と行政改革の問題は、整理をしなければならない前提条件がある。これは、一つには、官と民の役割をどういうふうに見直しをするのか。それに接続をする、集権なのか分権なのかということ、それから中央と地方の役割、これを整理していって、そのことによって、行政のスリム化と国民のサービスが今まで以上によくなるのかどうか。こういう条件の整理をまずしなければ、根本的な解決にはならない、こういうふうにまず思っております。  それから、地方財政の問題でありますけれども、確かに、金額的な面から見ますと、先生御指摘のとおり、増額をずっと図られてきているというのは事実でありますが、仕事の面から見ますと、国が三分の一、地方が三分の二なんですね、仕事の配分比率から見ますと。それから、財源から見ますと、逆に、国が三分の二で地方が三分の一なんです。  したがって、このことをどういうふうに調整をするかというと、この部分を地方交付税制度で調整をしているというのが実情ではないか。したがって、仕事の面から見て、どういうふうな調整をするかという観点の中で、何ぼがいいのかということを考えなければいけない。したがって、現象面としてふえているという事実については、全く同一認識は持っております。  それから、地方交付税のあり方の問題ですけれども、財政需要だけで見る必要があるのかどうかということですね。これはやはり、それぞれの地方行政が抱えている人口ですとか面積ですとか、そういうものを全部加味した中でどういうふうな見直しをするのかという観点が必要なのではないかというふうに考えております。これからの高齢・少子化、医療問題等を考えていきますと、より抜本的に必要なことは、課税的な部分だけではなくて、地方財政の今以上の拡充が逆に必要になってくるのではないか、こういうふうに認識をしております。  それから、行政のあり方としては、国民により近いところ、ここの部分にやはり行政サービスの厚みをつけていくということが必要ではないかというふうに思っておりますので、冒頭申し上げました、官民、中央地方、集権分権という部分については、そういった観点で、地方に任せる部分の割合を今まで以上にふやしていく必要がある、こういうふうに私どもとしては考えております。したがって、地方行政の権限に、財源と、できるものは仕事部分を含めて地方に移譲するということで、言うなれば地方分権を推進する必要がある、こういうふうに考えております。  それから、公務員のモラルの問題でありますが、これは連合の組織の中でも大変大きな論議になっておりまして、直接担当している組織、企業もございます。もう一つは、民間の企業の中のやはりモラルハザードということもありまして、これは、働く側の立場からすれば、労働組合の役割は、そういった行政あるいは経営組織に対するチェック機能は非常に大きな役割分担としてあるわけでありまして、したがって、不正の追及については、私どもの立場からも、徹底的に声を大きくしていきたいというふうに思っております。  それから、公務員給与の一%の問題でありますけれども、御承知のように、公務員の給与は民間準拠でありまして、交渉権を持っておらないわけであります。  したがって、民間に準拠をするという立場の中で、国の財政、地方財政の逼迫化は十分に理解できますけれども、民間の賃金の上がり方と公務員の上がり方を比較してみますと、約束をされて交渉権のないところに、いきなり、半分にしますよとか、場合によってはゼロなんですとか、時期を先延べしますとか、こういうような一方的な押しつけというのはいかがなものか。  もともとが、一%支給というのは約束をされていた事実ではなかったのかというふうに思っておりますので、〇・五%の保証はされましたけれども、でき得れば一%に復元をさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  13. 金森久雄

    金森参考人 見通しの数字についてのお尋ねでありますが、これは日本経済研究センターで最近発表しました数字であります。なかなか見通しは当たらないものでありまして、その妥当性について細かく議論するのは難しいのであります。  住宅につきましては、九七年度に大幅に下がりました。ですから、現時点で非常に低いところにあるわけですね。その結果、九八年度中になりましてから少しずつ住宅投資は回復してくると考えているわけでございますけれども、年度年度で比較しますと、九八年度の方が低くなる可能性が相当多い。これは、いわゆるげたの問題ですね。出発点が低いものでありますから、年度中に回復しましても、余り上がらなくなるということでありまして、これはマイナスになる可能性も相当あるのじゃないかというように思っております。  それからいま一つ、設備投資でございますが、これは、九七年度は二・八%とプラスを記録したわけであります。ところが、最近、やはり企業のマインドが非常に冷えているのですね。これは日銀の短観等で見ましても、非常にはっきりと出てきております。それから、需給ギャップが大変拡大をする可能性がございます。成長率が〇%でありますと、設備の過剰状況というものが一層ひどくなるわけですね。そういうことがございます。  設備投資をいろいろな関数で説明する方法はあるわけでありますけれども、私は、一番大きなのは、やはり企業マインドと需給状況ではないかというように考えております。  そういう状況がどうかということは、二月に入りましていろいろな投資予測調査が出ないと、本当のことはわからない。日本経済新聞あるいは日本開発銀行、方々から設備投資の予測調査が出るわけでありますが、現在そういうものは一つもございませんので、どうなるかという手がかりは甚だ不十分なんです。  政府は、九七年度よりも九八年度の方が設備投資はふえる、三・五%の増加ということを経済見通しで予想しておられるわけでありますが、現状から考えまして、やはり設備投資は九七年度よりも九八年度の方が相当下がる確率の方が私は大きいのではないか。これを変えるためには、やはり今の企業の悲観ムードを一新するような思い切った景気対策というものが打たれる必要があるのではないかというように考えております。
  14. 越智通雄

    ○越智(通)委員 三先生、ありがとうございました。  率直な話、多少反論したいと申しますか、さらにお伺いしたい点もありますが、時間が参りましたので、締めくくらせていただきます。  やはり景気も病気も気持ちからでございまして、気分が明るくならないとこの不況を脱却できない。幸いにして、そういうものを先取りする傾向のある東京証券取引所におきましては、十六日から六億九千万株、六億八千万株、五億六千万株と、ひところの倍のペースで売買が行われながら、平均株価は上がっております。  私どもは、みんなが期待したときにそれを実行に移すのが政治の責任だと思いますので、一日も早くこの補正予算、関連法案を成立させまして、その期待にこたえることが責任だと感じております。御列席諸委員の御理解と御協力をいただくことをお願いして、質問を終わります。
  15. 松永光

    松永委員長 これにて越智君の質疑は終了いたしました。  次に、小林守君。
  16. 小林守

    小林(守)委員 民友連の小林です。三先生には、大変お忙しいところ、貴重な御意見を賜りまして、感謝を申し上げる次第であります。  私は、今日の経済不況そして金融不安、これらの大きな背景には、政治や行政に対する国民の不信、そして、特に大蔵官僚OBにかかわるまさにモラルハザードというか、業界の経営責任とか経営者の倫理とか、そういうものと同時に、行政に携わる、監督責任のある官僚の持つモラルハザード、さまざまな景気回復対策や金融安定対策にもかかわらず回復ができないその一つの大きな原因に、国民の政治や行政そして官僚に対する不信がある、このように思えてならないわけであります。  今日の日本の経済、金融環境を考えるならば、ビッグバンに向けての早期是正措置とか、さらにはBIS基準への対応のためのさまざまな体力強化、こういうものが求められているわけでありますけれども、そういう環境の中にあって、やはり経営者の、また行政のそれぞれの責任者が自己責任を確立して、そして国民に信頼が受けられる、そういうものが大きな基盤でなければならないのではないか。どんな立派な経済整合性を持った政策であろうと、やはり信用がなければうまく機能しないわけであります。  そういう点で、今日の金融不祥事にかかわるような政治、行政不信に対する御所見等を、三人の先生にまず最初にお伺いしたいというふうに思います。
  17. 石弘光

    石参考人 大変大きな問題を出されたと思います。  御承知のように、戦後の日本の経済発展というのは、ある種の政官業とか政官財の非常に集中したところでのデシジョンメーキング、意思決定でスムーズにいったという面があったと思いますが、そういう仕組み自体が今問われていると私も理解いたしております。その一端が恐らく行政に対する不信であり、行政改革などというのはその流れから出てきたのだろうと思いますが、言うならば、官と民のもたれ合いの中でさまざまなことが行われた。  金融不安の解消などというのは、そういう方向でいっては非常に問題なので、そういう意味で、今国民が監視する中で、つまり透明度を高めた政策決定をしつつ、官も姿勢を正すし、民もそれに癒着型のような形をしない。  最近、接待みたいな問題もいろいろ起きておりますが、そういうことは、襟を正す非常にいい機会、この景気低迷等も踏まえて、金融システムのこういう緊急措置も踏まえての今のさまざまな事態の変化は、そういう過去のきずなを断ち切る非常にいい機会だと思っていますので、単なる法案、単なる政策を出すと同時に、その背後にある今御指摘のような、非常に深いところでの問題、日本経済の構造的な問題、それもえぐり出す、あるいは是正するという政策が必要だと考えております。
  18. 笹森清

    笹森参考人 全体的な認識としては、国民は非常に不満を持っておるということでありまして、冒頭も申し上げましたように、金融不祥事等の対応につきましては、どこまで当事者が物を言ってくれるのかということだと思うのです。  私は、この事件がいろいろ起きました後に、不祥事が起きた後、連合の加盟組織の中では、金融関係は連合に加盟をしておりません、労働組合もほとんどないというところが多い、しかし、倒産問題等を踏まえまして、初めて、いろいろな接触をさせてもらいました。全く危機感がないというのが現実なんですね。  加えて、大蔵や、今不祥事あるいは倒産が起こっている金融関係の各企業等々、いろいろお話を申し上げますと、今何かを言っても聞いてもらう耳がない、言ってもむだなんだ、こう言うんですよ。例えば、大蔵省の姿が国民の目にどう映っているのか。自分たちが今の段階で、自分たちがやってきたことに対してどういう説明をし、そのことによってどういう結果責任をとるのか。これは企業の方も同じだと思うのです。  こういった姿勢が全く欠けているところに、今、大蔵行政や金融のいろいろな問題について国民の不信と不安が解消されないというところがあるわけです。したがって、その問題について抜本的にただすのはやはり国会政府の役割じゃないかというふうに私は思っておりますので、ぜひそのような対応をお願いができればというふうに思います。
  19. 金森久雄

    金森参考人 現在、政策当局あるいは企業に対する国民の不信感というものが非常に広まっておって、それを改めて、信頼を取り戻すということがあらゆる政策の基本にあるという先生の御指摘は、全く同感であります。  現在の補正予算に関連して言えば、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、国のお金を使って銀行を助けてやるという面があるわけですね。もし信頼がないと、これがいろいろ汚職の原因だと、どういう機関を選定して、どうやって政府資金を投入するかということは、非常に国民の疑惑が出てくるわけでありますので、いかなる政策といえども、政策に対する信頼感というものをまず回復するというのが、成功の前提条件ではないかというように考えております。
  20. 小林守

    小林(守)委員 今、金融も含めて、信用収縮、クレジットクランチという状況が加速している状況でありますけれども、経済ばかりでなく、政治、行政、そして人間社会全体が、日本全体がいわゆる信用収縮に向かっているのではないか。これは、政党政治自身にも言えることかもしれませんし、我々も深く反省しなければならない問題でもありますけれども、このような信用収縮に向かって、私たちは政治の責任として信用創造の方向をどのように見出していくのか。そういう点でも、先ほどもお話がありましたけれども、人心一新というような視点も極めて重要ではないのかな、このように考えているところでございます。  さて、戦後五十数年たちまして、昨年、ソニーの井深大さんがお亡くなりになりました。本田宗一郎氏と同じように、戦後日本経済を誘導してきたというか、敗戦後の焼け跡で小さな町工場から世界的な企業にまで成長発展させてきた、物づくりの先達といたしましての方々がお亡くなりになったわけであります。そういう点で、戦後日本経済の経済成長の構造の行き詰まりと同じように、戦後の日本の経済、企業、産業を支えてきた一つの巨木が倒れたと言っていいんだろうというふうに思うのです。  この後、二十一世紀に続く日本の科学技術、物づくりのリーディングのあり方というものがまだよく見えてきていない、このようにも思えてならないわけでありますが、やはりいいもの、しっかりとしたもの、本当に人間にとって必要なものをつくるということはどんな時代になっても滅びないんだろう、私はこのように思うわけであります。  そういう点で、これからの二十一世紀に向かって、新たな分野というか、よく言われておりますけれども、情報通信産業分野とか、さらには環境配慮型の、環境への負荷を極小化していく、最小化していくような環境産業のあり方、さらには、もちろん少子・高齢化社会に向かっての福祉産業の分野、こういう分野に日本の持っているきめ細かな科学技術力、物づくりの力、こういうものを結集していくことによって、私は、日本のこれからの経済構造というもの、それから新しい雇用というものが創出されていく、このような展望を見出していきたいものだというように思っているわけです。  その辺について、これは連合の事務局長笹森さんの方から、そういう問題についても十分取り組んでおられるというお話を聞いておりますので、お聞かせ願えればありがたいと思います。
  21. 笹森清

    笹森参考人 小林先生の今の、日本の産業の一番もとになること、それから日本経済が敗戦後、戦後五十年、国際競争に打ちかって十分なる経済発展を遂げたというその基盤の問題について、御指摘があったと思います。  連合としても、御指摘のとおり、この問題については大変重要視をしておりまして、産業基盤と雇用安定確保のためにということで、お手元の資料の最後の五のところに、特に、中小企業における技術振興と公正取引を確保するという観点の中から御提起をさせていただいているわけです。  今の状況から言いますと、国際競争にどのくらい打ちかつ力を維持できるのかどうか。この国際競争に戦後日本が十分に対抗して勝ってきたというものは何だったのか。これは、製造業、特に輸出産業を中心とする、そこの技術力と、働いている人たちの力だった、こういうふうに思っているわけです。  しかしながら、現状は、その底辺を支えていた、ブランチをしている、大手のところからさらに下請、孫請というところに行きますと、雇用不安と、企業の存立基盤が非常に薄らいできている。それによって失業者が増大をするんではないか。そうなっていきますと、国際競争に打ちかってきたその最低の底支えをする基盤がなくなってしまうという危険性があるというふうに考えております。  したがって、ここに御提起をしてありますように、これからの技能、技術の発展ですとか継承そして人材の育成に向けて、ぜひ国政の場でモノづくり基本法、そこに焦点を当てた法案をつくっていただいて、ここの部分の維持強化をお願いしたいというふうに思っております。  加えまして、そういったものに対しては、当然教育の問題も重要視されていきますので、国際競争に打ちかてるような技術基盤の維持向上が図れるような学校制度、これは特殊学校、大学ということになるのかもしれませんが、そういう問題についての創設についてもあわせて御検討いただければ、この部分についてはかなり補完ができるのではないか。  加えて、現在世界的な関心になっております、御指摘の環境問題でありますけれども、これは、連合の中は官と民がまざった組織でありますし、それからいろいろな産業が入っておりますので、それぞれの産業別エゴがどうしても出過ぎがちになります。片方の状況を立てますと片方が余りうまくないということになるので、国会論議と同じようなところもあるかもしれませんが、そうなりますと、どこでそのことを整理するかというと、やはりこれから最大重要視するのは、これからの地球環境をどう守っていくのかという観点の中でいかなければいけないということです。  したがって、この環境問題については、いろいろな今までの産業別の利害関係を超越して、子々孫々に残るようなものをどういうふうに検討させていただくのか。これは、ぜひ国会の場でも御検討をいただければというふうに思っております。
  22. 小林守

    小林(守)委員 ありがとうございました。
  23. 松永光

    松永委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  24. 原口一博

    ○原口委員 民友連の原口一博でございます。  三人の先生方には大変示唆に富んだ御指摘をいただきまして、本当にありがとうございます。  私は、きょうお三人に御質問したい点は二つでございます。  まず第一に、先ほど三人の先生からお話しになりました、昨年の暮れ通りました財政構造改革と、景気対策の問題でございます。石先生は両にらみでやる、そして笹森先生、金森先生については、まず日本の経済を軌道に乗せて、それからやるべきだ、そういう御主張でございました。  きょう、ちょっとパネルを用意してまいりました。  私たちは、昨年の四月から、特に後ろのお二人の先生がお話しになったようなことを国会の中でずっと議論してきました。まず日本の経済成長をもとに戻して、その中で財政再建をやるべきだ。政府案のアプローチは歳出抑制で、結局、このことは大きな失業の増大、あるいは、先ほど金森先生がおっしゃいました、対米貿易の摩擦やあるいは金融不安のリスクにまで広がってしまう、このことを採用すべきではないんだ。  私たちは、直接税の大型減税やさまざまな規制緩和を同時にやることによって、しかも先ほど金森先生がお話しになりましたように、公共事業は効率化によってその事業量を確保するんだ、そして民間投資を活性化させて、内需主導による三・五から四・〇の成長を遂げる、その中で財政再建をやっていくべきだという主張を旧新進党の中でやってまいりました。  そして、きょうお尋ねをしたいのは、まず、この財特法の処理スキームが崩れてしまっているのではないだろうか。  昨日公表されましたところによりますと、国民負担率はもう既に五〇%を超えている。これは財特法が予定していなかったことであります。また、この金融不安によるさまざまな公的支援、そういったものを入れると、とても二〇〇三年にGDPの三%に持っていくことはできない。逆に、歳入歳出ギャップは、歳出が抑制されるどころか広がってしまうんだ。昨日いただいた資料では、経済成長率が一・七五%のときに、実に最大八・一兆円もの歳入歳出ギャップが生まれてしまうんだ。  これは、また国民の皆さんに御負担をお願いしなければいけない。本来だったら、後世の皆さんに対する負担を減らそうと思ってやったことが、むしろ逆の効果を生んでしまっている。この処理スキームが壊れてしまっているということを、私は御指摘したい。  そこで三人の先生にお尋ねをしたいのですが、橋本総理が御決断になった二兆円の特別減税、これをどのように御評価なさるのか。これが、財特法との関係で、私は大きな政策転換であるというふうに思いますが、このことについて、いや、これは臨機応変の措置であるとおっしゃるのか。  例えば、財特法の特別委員会の中で、石先生、こういうふうに私たちに教えていただいています。財政構造改革景気対策というのはトレードオフの関係にある、両立しないんだ、どっちか片方なんだということを、これは平成九年十月三十日におっしゃっています。きょうは、そうではない、両にらみできるんだということでございますが、私は、まず三人の先生方にお尋ねしたいのは、政策転換をしっかりやったのか、やらないのか。そこを三人の先生がどのようにお感じになっているのか。  また、公共事業についても、例えば先ほど金森先生がお話しになりました。私は、政府歳出、不透明な歳出については思い切って切り込まなければいけない。これは特に金森先生にお尋ねをしたいのですが、例えばこの公共事業の七%、一五%のカットが経済全体にどのような悪影響を与えるのか。私の九州では、ことし大体二万四千人もの雇用の喪失を生むというような試算もございますが、このことについてどのようにお考えになっているのかお尋ねをして、まず一番目の質問にしたいというふうに思います。
  25. 石弘光

    石参考人 大変重要なポイントを御指摘いただいたと思います。  私は、前回、十月の段階で申し上げましたように、基本的には、構造改革景気はトレードオフの関係になっていると思います。つまり、短期的に見ますと、構造改革というのは、歳出カットであるとか、あるいは、まだ議論になっていませんが、恐らく国民負担を上げるとかという今後の話を含めますと、どうしてもやはりデフレ効果を持ちます。そういう意味で、どっちか、スキームをつくるときに、思い切ってそれをしなきゃいけないという趣旨で、原点、出発点の議論をしたわけであります。  そこで、言うなれば、財政構造改革法案は国会を通り、二〇〇三年のあるターゲットを目指してスタートしたわけですね。そこまでは、景気に変更がなければ、恐らくうまく動いたのでしょう。ただ、相手は生き物である経済であります。そういう意味で、恐らくこのスキームが当初期待した、あるいは予定したコースに五年も六年もいくという保証は、恐らく当初からなかったはずであります。  と同時に、GDP比で三%にするとかなんとかということ自体、極めてアバウトな目標であります。GDPは変わりますからね。計算の仕方も随分いろいろあると思いますし、時期も変わります。そういう意味で、私は、一たん動き出した後、さまざまな形で微修正なり伸縮的な取り扱いはあり得ると思っておりました。  ただ、これがこんなに早く来るとは思っていなかったのですね。そういう意味で、恐らくデフレ効果を低く見たという反省はあるでしょう。ただ、予期しなかったアジア経済危機があったり、あるいは倒産が相次いだりという、法案をつくった段階では余り予期しなかったことが起こったというのも事実でございましょう。  そういう意味で、私は、いわば臨機応変に、ある許容範囲議論をすべきである。そういう意味では、私は、二〇〇三年とか赤字国債等々というのは、もう何か検討が始まっているようでありますが、まだ先の話であります。これから日本経済、五年落ち込みっ放しということもないでありましょうし、いずれ好転する時期もございましょう。そうなれば、そこの期間の伸縮的な取り扱いということにおいて、この当初の出発点、当初の目標をクリアするべく努力するのが先ではないかと思います。  ただ、これから何が起こるかわかりません。もう一段深刻な事態になれば構造改革法自体の見直しというのはあるのかもしれませんが、これはだれも今わかりません。そういう意味で、私は、両にらみと言ったのは、一たん出したスキームに基づきつつ、できる範囲で調整しながらという考え方でございます。
  26. 笹森清

    笹森参考人 基本的には、今先生御指摘の内容と全く同感であります。  私どもも、先ほど申し上げましたように、さらには今お手元にお配りしてある資料も、昨年の春、そして昨年の秋、そして十二月の段階、それから今国会が始まってから、これは政府、橋本総理以下、それから各政党に御要請を申し上げている内容です。  特に昨年の暮れの段階で申し上げましたのは、総理官邸で総理に、私は政策転換という言葉は使わなかったのですが、財政構造改革をやらなければならないということは、これは国民もみんな理解しています、しかし今の時期なんですか、でき得れば、こういう状況のときには君子大豹変をしてください、こういうお願いをいたしました。いろいろな政策について検討はすると言ったのですが、そのときに、減税はけんもほろろのお答えだったわけですね。それで、突然ああいう形で二兆円が実行されるということになりました。  終わった直後に、新しく着任をされましたアメリカのフォーリー大使が連合に表敬訪問に来ていただきました。そのときのいろいろなやりとりの中で、連合は経済政策、特に減税についてはどういうような考え方をお持ちなんですかというフォーリーさんからの質問があったのです。私と鷲尾会長がそれに、今までの政策について説明をいたしました。そうしたらば、非常に選択は正しい、アメリカはその考え方を歓迎したい、こういうことも申された。そのことによって減税が実現をされてよかったですな、こういうふうに言われました。  しかし、この二兆円という問題は、昨年の春の与党三党合意の中で、玉虫色表現でしたけれども、財源が生じた場合には国民生活に直結をするものの使途にするのですよということは決められたわけですけれども、あの時点で我々が要求したのは二兆円規模だったわけです。  しかし、現在の景気の失速状況からいいますと、先生御指摘のとおり、全くこんなものでは足らない。昨日もいろいろな、この予算委員会質疑の中でも、戦力投入、小出しではどうにもならないよというようなやりとりもあったというように聞いておりますが、全くそのとおりであります。  したがって、先ほども御説明申し上げたように、今体力をどういうふうに蓄えて、その体力を蓄える場合にどういう栄養剤とカンフル剤が必要なのか。そのための手だては、おくれればおくれるほど取り返しのつかないことになる。したがって、今緊急に実行させなければいけない。そのためには、規模的には、所得税減税で申し上げれば、三兆円の制度恒久化と一兆円の特別減税、合わせて四兆円の減税、これをどういうふうに実行していただけるかという部分が、国民の期待にこたえるものではないか。  もう一言つけ加えさせていただきますと、景気という言葉の景という字は情景をあらわす言葉ですね。気の字は気持ち、気分なんです。だから、景気を高める、景気浮揚させるというのは、状況を好転させて、国民の気持ちをどういうふうに明るいものにさせるかというのが景気という言葉だと思うのです。そのことの対策をやはり今の国会が早急に打つことが必要ではないかというふうに考えております。
  27. 金森久雄

    金森参考人 ただいまお尋ねの件につきましては、いろいろ申し上げたいことがあります。  私は、長期的に財政構造改革の目標をつくるというのは意味のあることだと思うのですね。ただ、そのやる時期というものがあるわけでありまして、手術をするにも、病人の体力の回復というのを待たなければいけない。ところが、現在は、そういうものを無視して、大幅な支出の抑制をやったという点に大きな誤りがあったというように思います。  財政構造改革の今の考え方で、私は、二つ問題があると思うのですね。  これは、余りにも赤字抑制という点に重点が置いてある。もっと内容で、日本の補助金をどうするかとか、むだな支出をどうやって削減するかという問題がいろいろあるはずでありますけれども、財政のバランスをとる、バランスをとるために歳入をふやし歳出を減らすというところに余りにも重点を置き過ぎたのではないかと思うのですね。  それからいま一つは、やはり弾力性がない。アメリカでもレーガン大統領のもとでこういう法律は幾つも出たわけでございますけれども、財政の歳出抑制も、二四半期間、成長率がマイナスのときにはそういうことは適用しませんとか、いろいろ弾力条項が入っているのですね。日本ではそれが非常に硬直的になっているのではないかというように思うわけであります。  現在、情勢を見まして二兆円の減税をやられたことは、実際には弾力的な取り扱いをされたわけでありますから、これは結構だし、特に財政構造改革という長期の目標と、今の二兆円減税という対策が矛盾していると言うには当たらないというように私は考えているわけです。  それから二兆円の評価、先ほど申し上げましたけれども、これはいかにも小幅であります。そして、一年限りということでは効果がございません。こういう対策というのはやはり心理を変えるのが重要でありまして、小出しに少しずつやるというのは、非常にまずいやり方ではないかというように思います。  それから公共投資でありますけれども、需要をふやすためには、減税でやっても公共投資でふやしても、どちらでもいいわけでありますけれども、その効果が違うわけですね。現在の日本で考えてみますと、個人の消費をふやすというよりも、一層重要なのは、やはり社会資本の充実ということではないかと思います。  公共投資、非常にむだだと言われますけれども、むだなのはやめなければならないのは当然でありますけれども、必要な点というのは、例えば災害対策ですね。東京に地震があったらどうなるかとか、あるいは情報通信のインフラをどうするかとか、老人ホームをどうするかとか、いろいろ必要なものがたくさんあるわけであります。そういう意味では、私は、個人消費を高めると同時に、公共投資をふやして社会資本をふやすのが重要ではないかというように考えるわけであります。  公共投資を仮に五兆円ふやしますと、GNP五百兆円でありますから、仮に乗数効果が全然なくても、それで成長率を一%高めることができるわけですね。乗数効果が全然ないということはございません。公共事業をやれば、それがそこの働いている人の所得になりまして、またその消費をふやすという波及的効果は必ずあるわけでありますので、できるだけむだを省き、能率を高めて、公共事業を確保するというような方向に政策が進むことを私は希望しているわけであります。
  28. 原口一博

    ○原口委員 三人の先生から本当にありがたい御意見をいただきまして、ありがとうございます。  財特の処理スキームがこんなにも早く破綻したこと、景気を回復させなければいけないこと、この貴重な御示唆をいただきました。特に笹森先生からは、二兆円の特別減税を切り離す、切り離して審議すべきだという貴重な御指摘をいただきましたことを心から御礼申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  29. 松永光

    松永委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  30. 北側一雄

    ○北側委員 平和・改革の北側一雄でございます。  三人の参考人の先生方、大変お忙しい中、きょうは貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  早速質問をさせていただきます。今、原口委員からも御質問ございましたが、まず財政再建景気対策との関係につきまして、私の方からも聞かせていただきたいと思っております。  今、この予算委員会は、平成九年度の補正予算審議しているわけでございます。この補正予算の内容というのは、一つは二兆円の特別減税、もう一つ金融システム安定化に向けた対策、この二つが大きな柱になっておるわけでございます。一方、平成十年度の予算案も、既に今週の初めに国会の方に提出をされております。この平成十年度の予算案の内容は、昨年成立しました財政構造改革法に基づいて、キャップをかけられたものに基づいて、この予算案はでき上がっているわけでございます。  要するに、一方では、今回の補正予算というのは減税という対策を打ち出している。これは、車でいいましたら、アクセルを踏んでいるわけですね。ところが、今週の月曜日に提出されました平成十年度の予算案は、財政構造改革財政再建という観点から、例えば、公共投資についても七%削減しなければいけないというキャップがございまして、現実には七・八%、平成十年度予算案では公共事業関係費が削減されているわけでございます。というふうに、今度こちらの方はブレーキを踏んでいるわけでございまして、今の日本の経済の現状ということを考えたときに、非常に矛盾した政策をとっているのではないか、だからなかなか経済効果が出てこないのだというふうに私は思っております。  また、参考人の先生方もこの間、新聞でお読みになられたかと思いますが、政府の高官がアメリカに行きまして、平成十年度の予算成立後に直ちに大型の補正予算を組むとか組まないとか、そういう発言をしたとかしないとかということが話題になっておりますが、そのこと自体が極めて矛盾した話と言わざるを得ないというふうに考えております。  そこで、改めて、財政再建景気対策との関係についてお聞きをしたいわけでございます。  私は、ポイントは、昨年の財政構造改革法案の中に、キャップをかぶせているということが一つ、もう一つは年々公債発行を減じないといけない、こういう規制が働くのですね、あの法案によりまして。それは、建設国債であれ赤字国債であれ、年々公債発行の額を毎年減らしていかないといけない。こういう規制が働いておる関係で、そのときの経済事情に応じた柔軟な財政出動ができない、こういうふうになっておるわけでございます。  もちろん、財政再建そのものを否定するような人はいないわけでございまして、今の日本のこの五百兆を超えるような政府、地方の借金を考えましたら、財政再建財政構造改革必要性はもう当然の話であると思うわけでございますが、まずは、やはり経済をよくしないとならないわけでございまして、やはり経済の再建なくして財政の再建なんというのはあり得ないのだというふうに私は思っているわけでございます。  そこで、欧米の立法なんかを見ますと、財政再建と、そのときの経済事情に応じた対策を打つことのバランスをとるために、経済成長が例えばゼロだとかもしくはマイナスになるような場合には、一時期それを凍結するような法律例もあると聞いております。  そういうお話も含めまして、この財政再建景気対策、どのように考えるべきなのか、改めて、三人の先生方からお聞きをさせていただきたいと思います。
  31. 石弘光

    石参考人 お二人のほかの参考人と私の一番の違いは、恐らく、短期的なポイントと中長期的なポイントを分けて、中長期的な視点から短期的な問題を処理できないかというのを考えているというふうにお酌み取りいただいていいと思います。  つまり、総需要の刺激で景気をよくしようというのは、例えば減税を五兆円、六兆円やれというのが一番簡単でありまして、私も、すべからくそれで終わりならば、何ら問題なく、賛成すると思いますが、それを赤字国債でやるといったときに、その五兆円、六兆円の後々のことまで考えたらどうなるのかということを絶えず私は心配しているわけであります。要するに、景気がよくなればそれはすぐ戻りますよというけれども、これは、多分いろいろな計算を見ても、まともに戻るはずはございません。  そういう意味で、赤字国債を通じて今景気刺激をしろという見解には、必ず将来どうなるのかという具体的な裏づけを持った財源確保をしない限りは、今、毒薬的なもので、後でどうなるということがないのはちょっと政策論としては不備である、僕はこのように考えておりますので、そういう視点からいって、絶えず、私は、先々の財政バランスの視点を失ってはいけない、こういう言い方をしているわけであります。  御指摘の、キャップを入れ、毎年毎年財政赤字の幅を減らすというのは余りにも硬直的、まさにそのとおりだと思います。  ただ、こういう財政計画は、先行きの景気の動向は全くわからないわけでありますから、何年目に景気が落ちたらどうなるとか、五年目になったらどうなるということはできません。そういう意味で、最初につくるときには標準ケースという形で、とりあえず、年々こういう格好でやりましょうというやり方でやらざるを得ないのですよね。問題は、ほかの国もそうでありますが、弾力的に早めたり遅めたりということがあって、トータルで、言うなれば期間五年間で、ある目標を達成できればいいのだろうと思うのですね。  不幸なことと言うべきか、初年度から何やらつまずきかけたのが我が国の財政構造改革法案でありまして、そういう意味で、スタートラインでこけたので、後、全速力で追いつくというようなやり方もあるかもしれないし、いろいろな今後やり方があると思いますので、大きな枠組みの中で弾力的に、あるいは伸縮的に動かせれば、私は必要だと思いますが、ただ、キャップに関しましては、私は、政治的に、外してしまいますと一体どうなるかというのは極めて容易に予想がつくのでありまして、そこはやはりここのコアな部分でありますので、守っていただけたらとは思っております。  以上であります。
  32. 笹森清

    笹森参考人 先生御指摘のとおりだと思っております。財政構造改革法案は、もともと名目三・五%の経済成長を前提として組み立てているわけですね。したがって、二〇〇三年を、そのことを前提にしながら財政再建目標を定めた、こういうふうに承っております。したがって、今の状況からいうと、その前提条件が崩れたわけですから、この財政構造改革法そのものは、私は、砂上の楼閣だというふうに思っております。  さらに、では、経済を回復させるものは何かということになれば、今まで三種の神器があったと思うのです。一つ減税効果一つは公定歩合、そしてもう一つが公共投資、これが三本立てだったと思うのですね。  公共投資の問題については、当然削減をしなければいけないということになるわけですが、やはり質と量の問題があると思うのです。量的確保、地域経済等、雇用の問題を考えますと、量的には確保していただきたいけれども、民間との工量対価の問題から見ますと、余りにもずさん過ぎるという部分がある。したがって、量的確保は、質の問題を限定してやっていけば、十分にできる、そのことによって経済効果は非常に上がるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ、先行きの将来不安、これに対して、現役の働いている人たちも高齢者も、物すごい危機感を持っているわけですね。これは年金、医療、介護問題です。こういった社会保障の問題については、私は、これは、構造改革法案の中にカットが入っておりますけれども、するべきではないというふうに二つ目には思う。  それから、全体的な経済のアップの問題については、先ほど各先生が御指摘になられたように、減税効果がある。公定歩合の問題は非常に難しいけれども、経済成長がある程度安定軌道に乗ってきたときに、初めてそこで公定歩合の問題に早急に手だてを講じていく必要性も生じるのではないか。  そういうことをやった上で、経済が安定軌道に乗って初めて前提条件が整うわけですから、私が冒頭、財政構造改革法案は凍結すべしというふうに申し上げたのは、現状では砂上の楼閣という状況になっておるわけですから、これは大転換をさせていただいた方がよろしいのではないかというふうに思っております。
  33. 金森久雄

    金森参考人 先ほど御指摘になりました財政構造改革、ほかの国ではもっと弾力的にやっているのではないかという点でございますが、そのとおりであります。  私が先ほど申し上げましたように、レーガン大統領のときの構造改革法は、経済の成長が非常に低いときには削減はやめますというようなことがちゃんと書いてございまして、日本のは少し硬直的であり過ぎたというように思います。  それから、キャップ制の問題ですが、ある程度削減をしようという考えに立ちますと、この支出は幾ら、この支出は幾らというように支出削減の目標を機械的に決定したいというような気分になるというのはわかりますけれども、現在のキャップ制というのは、どうも余り合理性がないように思うのですね。  例えば、対外援助は一〇%、それから公共投資は七%というようにしてやっているわけですね。これは非常に重要なことでありまして、その内容こそが大きな課題であるにかかわらず、今、対外援助を一〇%も減らすというような機械的なやり方は、やはり問題があるのではないかと思うわけで、キャップ制をやるとすれば、そのキャップの決め方について、もっと十分な審議が必要ではないかというように思います。  それから、補正予算と今度の一般会計予算とで矛盾があるのではないかという御指摘でありますが、私も非常に矛盾があると思うのですね。補正予算でいろいろ景気の刺激を図りながら、本予算では公共投資が大幅な削減ということになって、これは極めて大きな矛盾であります。  しかも、一般会計の予算が通るとすぐ補正予算を出すということは過去にも行われたことがございますけれども、今回もそういううわさがあるわけですね。ぜひ私は、こういう習慣というのは直していただきたいと思うわけであります。  最初の予算の表面づらをよくするために一般会計では非常に厳しくやって、そして、すぐまた補正で直すというのでは、何のために一般会計予算を熱心に御審議いただくのか、全く意味がないことであります。それに、最初に当初予算をきっちりしないで、後から補正でくっつけますと予算のむだ遣いも起きるのではないかというように考えられるわけであります。  それからいま一つ、財政の将来の赤字あるいは現在の赤字ということでありますが、そういう数字は非常に重要な数字ではあるわけでありますけれども、極めて不十分にしか示されていないのですね。例えば、今、五百二十九兆円の債務がこの平成十年度の末には出るというようなことが新聞に出ておりましたけれども、しかし、これはグロスの債務であります。ネットの債務はどうなんでしょうか。これは、私が勉強不足でわからないのかもしれませんけれども、ネットの債務があるかどうか、こういうことを余り議論しないわけですね。  OECD等では、グロスの債務とネットの債務を両方発表しておりまして、ネットの債務で見ると、日本は決してほかの国に比べまして大き過ぎるということはないわけですね。グロスの債務ですと、日本はイタリアの次に世界で最大の債務国になっているというようなことがございます。  それからまた、これだけ大きな債務を国が負っているとすれば、反対側に債権者があるはずでありますが、この債務の債権を持っている人はだれであるか。五百兆の債務があれば五百兆の債権というのが日本国内にあるはずでありますけれども、そういうような財政に関する数字というのが非常に不十分である。これは今回のOECDの対日批判にも入っておるわけでございますけれども、大蔵省の出しました数字だけがひとり歩きをして、いかにも日本は危機状況になっているというような印象を与えて、かえって国民の意気を阻喪させているというような問題もあるように思うのですね。  以上でございます。
  34. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  もう一点、金融システムの安定の問題で御質問させていただきます。  今一番問題になっておりますのは、この三十兆のうちの十三兆の金融機関の自己資本充実に充てる対策の方が大きな問題になっておるわけでございます。  私どもは、これはどう考えても、政府が民間の金融機関の資本を政府のお金で充実させるということが、今の金融ビッグバンの時代、今求められているのは金融の淘汰がまさしく求められている時代でございまして、市場原理だとか自己責任透明性、そうしたことを重要視しないといけない流れなんだろうと理解しております。  そういうときに政府金融機関資本注入をすることは、これはこうした時代の流れに逆行する話ではないのか、こういう根本的な疑問はもちろんあるわけでございますし、さらには、これは結果として金融機関救済につながる可能性が強い、また、金融機関のモラルハザードを助長するおそれが高いと思います。  また、この審査基準を見てみますと、極めて抽象的な要件になっております。こういう要件のもとですと、結果としては、金融行政の透明化、これも極めて今大事な理念、原理だと思うのですけれども、この金融行政を透明化しないといけない、ルール化しないといけない、こうした流れにも反するのではないかと思うわけでございます。  問題は、今言われております貸し渋り対策の問題でございますが、これについては、今議論が出ておりますが、土地の再評価、例えば土地を時価で再評価して、そして資本を充実させていくという対策をとれば、これはもう何の公的資金も要らないで相当な貸し渋り対策になるわけでございます。また、そもそも、景気をともかく浮揚させていく、それが第一でございまして、それによって、結果としては、例えば株価が上昇してくるわけでございます。株価が上昇してくれば、これは金融機関の自己資本充実に資するわけでございます。等々考えてみますと、この十三兆円の方の自己資本充実策というのは、私どもは反対せざるを得ないなというふうに考えておるわけでございます。  私の今のこういう反対の理由を聞いていただきまして、参考人の先生方の御意見を改めてお聞かせ願いたいと思います。
  35. 石弘光

    石参考人 私は、この十三兆円の資本投入、これは景気対策として非常に意味があると思っているわけです。  冒頭申し上げましたように、今の景気低迷、株価の低迷を受けて、それはすべからく金融不安に来ているので、ほかの参考人の方との違いは、従来型の総需要管理刺激策では、多分同じ金を使うにしても難しい。そういう意味で、三十兆という金を用意したわけでありますから、ダイレクトにこちらに投入して、そして、金融不安の解消から景気立て直しというルートが財政出動よりいいだろうというのが私のロジックなんです。  そこで、確かに、おっしゃるモラルハザード、あるいは救済になるのではないかという心配、これはもう皆さん持っていると思いますね。私も持っております。  ただ、外国の例からいいますと、例の一九三〇年代の大不況のアメリカのRFCみたいな例もございますし、北欧の三カ国でもかなり入れて、立て直した。つまり、金融システムというのは国全体の資産であるという立場に立ちますと、一金融機関というよりは、その背後にあるネットワークとしての金融システムを保護するという立場に立てば、その辺はかなり理屈づけは可能かとは思います。  ただ、御懸念、あるいは国民も疑惑の目で見ておりますような点を極力なくすべく、制度的な、例えば審査機関をどうするこうするというところの議論で、どこまで説得的な議論ができるかがかぎだと思いますね。それはこれから十分御審議をいただけたらと思います。  土地の再評価、これも一つ手段かと思います。これは税法上、商法上いろいろな問題があって、今検討しているようでありますので、帳簿のつけかえだけで、確かに効果があるのかもしれませんが、ちょっとここにつきましてはまだ私も判断をしかねております。  以上であります。
  36. 笹森清

    笹森参考人 公的資金の投入の問題については、私ども、あくまでも預金者保護のためだ、決して金融機関救済のために使うことではない、このことは明確にさせていただきたいと思っているのです。  今政府がやろうとしているのは、先生御指摘のとおり、みずから市場を通じて金融機関が行うべき問題なのですね。したがって、政府が今実施しようとしています優先株等の引き受けによる自己資本の増強策というのは、経営の比較的良好な銀行に対しては過剰な保護策になってしまうのではないか。それから、本来もう市場から退場してほしいというような銀行に対しては、逆にその経営を温存させるということにもつながってしまうのではないかというふうに思っておりまして、したがって、結果から見ると、市場原理に基づいたビッグバンの流れに逆行する可能性が非常に強い、こういうふうに受けとめております。  さらに、自己資本比率の向上全体のものに使うのか、貸し渋り対策に使うのか、これについても、また、御指摘のとおり、全くはっきりしていないというような状況があると思うのです。貸し渋り対策として効果があるのかどうかというのは、私は専門家ではありませんのでわかりませんが、薄いのではないかというふうには受けとめているのです。  ただし、冒頭申し上げましたように、限定された地方経済、そしてそこの中で、受け皿行が倒れることによって雇用に直結をするというふうな危惧が非常に出始めている。特にこの二月、三月の決算の状況から見ますと、非常に危険性が強いということになりますので、あえて、中心としたという表現を私どもが使わせていただきましたのは、その部分に限定をするべきものがあるのではないか。  したがって、預金保険機構が当該の受け皿銀行に、直接そこの金融機関に出資をするという部分に限定をする。したがって、一般銀行ですとか特定の合併による新銀行、そういうものについて使うということは、これは当然させるべきではないというような前提条件をきっちりつけた上で、本当にぎりぎりのところで雇用問題に直結しないような配慮をとっていただけるならば地域経済と雇用は助かるな、こういう意味でございます。
  37. 金森久雄

    金森参考人 ただいまの、政府資金を使って銀行を助けてやるかどうかという点につきましては、今先生おっしゃいましたように、非常に弊害を伴う措置でありますので、私も、どういうぐあいに答えをすべきか、ちょっと迷っているわけであります。  しかし、現在のところは、貸し渋りの現象というのがかなり出てきておりまして、銀行の資産を充実しないともう貸せない、貸すばかりでなくて今まで貸したものを引き揚げるという問題も出ていると聞いておりますので、現状の対策としてはやはり必要ではないか。劣後債、優先株を政府が引き受けてやるということも、私は、必要ではないだろうかというように思うわけであります。  そのとき、やはり、どういうものを助けるかということにつきまして、審査機関を非常に強力にしまして、国民がその審査機関の判断に対してある程度信頼するということがどうしても必要だと思うわけですね。それからもう一つは、資産の内容というものを透明にきっちりと公表させるということ、それから、政府のお金で助けてもらうような金融機関はやはりそれなりの経営の責任というものをとるということです。こうした条件を十分付した上で、私は、現在の政府が言っておりますような措置というのは必要ではないだろうかというように思っております。
  38. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。
  39. 松永光

    松永委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  40. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。三人の参考人の方々、お忙しい中わざわざお越しいただきまして、貴重な意見を開陳いただきまして、まことにありがとうございました。  私からも、大きな質問を二つ出させていただきたいというふうに思います。  一つは、景気対策関連なんですが、先ほど最初の陳述の中で、石参考人は、従来型のケインズ政策のようなタイプの財政刺激策、事業規模で累計六十兆円もやったのに余り効果が出なかったというふうにおっしゃいました。そこで、金森参考人がお配りになったこのGDPの統計をちょっと見ていただきたいのですね。上から二行目に実質成長率があります。  確かに、戦後例を見ない長期停滞で、九二から九四年度まで三年間、〇%台で来るわけですね。それが九五年度に二・八、九六年度に三・二と回復してくるわけですよね。ここには出ていないけれども、暦年で見ると、この九六年というのは実に三・九%も成長している。近ごろ、日本経済はこれからはもう二%成長するのがやっとだなんていいかげんなことを言う人がおりますが、ついこの間、三・九%成長をした。それが、本年度は〇%にたたき落とされたわけですね。さあ、これはもうまさにケインズ政策が効くということを示していませんでしょうか。  この表一を見ていただきまして、ケインズ政策、主として公共投資でやったのですから、公的固定資本形成というところを見ますと、なるほど九二年度と九三年度は、一六・六、一二・六と頑張っている。しかし、上を見ていただくと、設備投資がこの間マイナス七・二、マイナス一〇・四です。これは、設備投資の方がウエート高いから、寄与度でいったら完全に相殺されちゃっている。これは、さっき金森参考人がおっしゃったことですね。  その間、確かに〇%台成長で来るのですが、さっき言ったように、九五年度、九六年度と回復してくる。なぜだろう。九五年度にもう一回事業規模十四兆円というやつを打つのですね。これは九五年度から九六年度にかけて効果が出てきます。公共投資七・九%。ここで初めて設備投資が下げどまって回復に転ずる。七・四、九・一。それから、個人消費にも乗数効果が効いてきて、三・一、二・八になった。だからこそ二・八、三・二という回復が出てきたのであって、強烈な設備投資の落ち込みがあったからケインズ政策が効くまで時間がかかったが、明らかに効いているというふうにお考えになりませんか。  逆に、マイナスのケインズ政策が、本年度の、九七年度予算の九兆円の国民負担増と公共投資カットですね。マイナスのケインズ政策をやってみたら、三・二%まで成長した、暦年で三・九という猛スピードが出ていた経済が、あっという間にゼロにたたき落とされたわけです。  だから、近年の日本の経験からいうと、私は、むしろ、ケインズ政策、ちょっと時間はかかったけれども、よく効いた。逆に、マイナスに使ってもえらい効くぞということじゃないかと思うのですが、石参考人は、これをどう御説明になるのかということでございます。  この財政政策関連で、笹森参考人金森参考人には、お二人とも財政政策、効かないなんておっしゃっておりませんから今の点はお答えいただく必要はないのですが、逆に、減税を言っておられるわけですね。金森参考人は公共投資も言っておられますが。  この減税の乗数効果といいますか、景気に対する影響をどう見ておられるか。一般的に言えば、公共投資の乗数の方が減税の乗数より大きいわけですが、私は、これは非常にモデルで計算した、人の心理が入っていないシミュレーションの結果だと思うのですね。最近の経済学でよく言われるように、エクスペクテーション、将来の予想が入ってくると大分話が変わってくる。  そこで、今政府が出している特別減税、一時的な減税というのは一年間で終わり。ということは、来年増税になるということですから、私に言わせれば、増税予告つきのたったの二兆円のばらまき減税に見えるわけですが、これに対して、もしこれは恒久減税だよと言われれば、来年増税ということがなくなる、そういう予想がなくなる。そのことによって、私は、乗数効果が大きくなるんじゃないかと思うのですね。  さらに言えば、この直接税の減税というのは、サプライサイドをねらっている。単に需要を拡大するだけじゃなくて、もっと長期にわたった恒常的なサプライサイドの改善、勤労意欲とか投資意欲、やる気、そういったものに働きかける政策であって、単にモデルでひょいと計算した乗数で議論できるようなものではないと思うのでございますが、笹森参考人金森参考人、この減税効果について、今私が申し上げたことも含めて、御意見をお聞かせいただければと思います。
  41. 石弘光

    石参考人 かねてより論争しているところを、さらにまたしかけられたという形でありまして、当然、今のような御見解、あろうかと思います。  私の立場から申し上げますと、一〇〇%むだになったという言い方はしていないのでありまして、従来より効果が著しく落ちているだろう。つまり、一兆円、二兆円の規模で投下して、昔だったら乗数の値から見てそれが数倍になったろうというのが、今はないだろう。それから、まさにこの御指摘の公共事業、公的固定資本形成によって浮かび上がったというのも、それはある程度事実だと思いますが、その背後に、やはり資源配分機能から見て僕は偉大なむだを積み重ねてきた、こう思っております。  ということは、今さまざまな形で、マスコミを中心として、もう公共事業はいいじゃないかという声に結びついてきたというふうに理解しておりまして、ごく短期的に今何かやるべきだといった意味においては、私は、ケインズ政策というのは、唯一政府の持っている財政の手段の発動としてはあり得ると思うし、理論的にも認められておる。  ただ問題は、あとの積み残し分をどうするかという議論が全然ないのがケインズ政策の欠陥でありまして、この欠陥を大きく見るがゆえに、欧米各国、特に欧州ですね、余りこれに対して信をおかなくなったというのが事実でございまして、そういう意味で、ケインズ政策はどうかという問題提起をかねてしているわけであります。  確かに、マイナスのケインズ効果とおっしゃった九兆円の国民負担増、昨年の四月にあったわけでありますが、そういう言い方も可能かと思いますが、私は、財政構造改革はそもそもデフレ効果なんだと。  この表にございますように、一九九五年に二・八%GNPが上がり、三・二%伸びた。確かにこのぐらい伸びた時期を見計らってしかけたというのが事実だろうと思いますが、その後、やった後で、対外的な、アジアから呼んでくる不況であるとか、やはり私は金融デフレのしこりというものが最後まで響いて、結局、増幅した、初発の冷やしをもっともっと冷やしてしまったという面もあろうと思いますし、もう景気循環もそろそろ一めぐりして下降期に入ってきたこと等も考えられますし、いろいろな意味で確かにそういう御指摘のようなストーリーあるいは御指摘はあろうと思います。  また、別な側面から見ると、私のように、政府の役割は景気刺激だけでないよ、ほかにいろいろな、社会保障をしたりあるいは資源配分機能もあるわけでありまして、重点の置き方がいろいろその場その場で違うかと思いますが、私は、総合的に見ると、何でもかんでも今やらなければいけないかということに対しては、財政構造改革も踏み出したところだからという意味で、やや両にらみなどという言葉で抽象的にも言っておりますが、総合的に判断したい、こういう気持ちでございます。
  42. 笹森清

    笹森参考人 鈴木先生の経済論については、いつも参考にさせてただいておりますので、この場でいろいろ反論するとか、何というか、おこがましい気持ちは全くありません。御指摘のとおりだと思っておりますが、特に減税景気乗数効果をどう見るかという問題です。  私どもの資料にもありますように、一過性のものでは全く効果がないということなんですね。政府企業も痛みを分かち合うという言葉をすぐ使うわけでありますけれども、痛みを分かち合う部分が三方一両損なら我々はわかるのです。  政府も、社会保障の問題に対して、あるいは行政のスリム化に対してどうするか。企業も、それぞれの企業努力をした結果、働く人たちに対して企業みずからも経営責任をとってどうするか。今、全部働く側、国民の方にしわ寄せされている。その部分が、減税をやらないとか、社会保障はやめますよとか、消費税は上げますよとか、医療費は高めますよ、全部来ているわけですね。  だから、ここのところの心理をどういうふうに改善をさせていくかということになれば、これは、最大のアナウンス効果は、私はやはり減税だと思うのです。それも一過性のものではいけないというのは、先生の御指摘のとおりだと思います。  したがって、萎縮マインドを含んでどういうふうに考えるのかということを重大な要素に置いておく必要がある。そのためには、恒久化と今のランクアップというのが必要になってくるのではないか。加えて、今の時点では、申し上げたように、国民の不安感というのは非常に大きいということで、その不安感を解消する意味でも、国民生活に直結した経済政策、その最大の焦点が減税の恒久化ということを思い切って打ち出していただきたいということがあります。  さらに、景気対策関係からいいますと、先ほど景気なんという言葉の生意気な分析を申し上げましたけれども、これはいかに消費を拡大するかという部分でありまして、今の成長の六割を個人消費が支えているという状況からいきますと、減税効果によってその消費がどう拡大するかというのは、大変これからの日本経済にとっては必要なことではないのかな、そういうふうに受けとめております。
  43. 金森久雄

    金森参考人 公共投資と減税との乗数効果ということでありますが、これはよくわからないと思いますね。そのときの情勢によりまして、減税しても貯蓄に回る場合もあるし、そうではない場合もあるということで、この点は余り、私は乗数効果の高い低いによって公共投資と減税のどちらがいいかという議論をするというのは、意味が乏しいのじゃないかと思うのです。  それで、むしろ公共投資と減税というのは、それぞれに長短があるわけですね。  減税でやれば個人の所得がふえるわけでありますから、それを一番いいところに使う、効率的なところに使うということは、すぐ効果が出ると思います。それで、公共投資の方は、今計画を決定いたしましても、そのお金がうまく使われるかどうかという点に保証はないわけですね。そういう点では減税の方がいいわけであります。効果として、減税をやれば一世帯六万円ぐらいふえる、それを消費に使うわけですね。しかし、現在の日本の経済におきましては、消費をふやすよりは、やはりまだ社会資本を充実するというのが客観的に大事なことではないかと思うのです。  だから、そういうことで、一長一短ありますので、やはり私は、両方を同時に実行すべきであるというように思うのですね。  公共投資が、今やればこれは国債でやるということになるわけでありますが、子孫に負担を残すという議論というのはやはり間違っていると思うのですね。  昨年末に、東京湾のアクアラインというものができました。これは一兆四千億円のお金がかかっておるわけでありますけれども、この橋ができたことによって、今後四十年なり五十年なりの子孫というのはその橋を使うという非常に大きな恩恵を受けるわけですね。その費用はどこで負担したかというと、子孫が負担するわけではなくて、我々の、現世代の者が負担しているわけですね。税金と、それからこれは民活でありますから、多少は我々のお金をそこに投入したということで、現時点の者が公共投資を負担しているわけでありまして、余りやると子孫が大変な借金で首が回らなくなるよというような議論というのは、恐らく正しくないのではないかと思うのです。
  44. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  今の金森参考人の御意見、私は賛成でございますし、笹森参考人の御意見も全くそのとおりだと思っております。石参考人も必ずしも硬直的ではないことがわかって、安心いたしました。  そこで、時間もないので、あと一問ずつ、各参考人にお伺いいたします。中身は全部違います。  石参考人はやはり財政の専門家でいらっしゃいますから、金融はやめにして、財政のことをもう一つお伺いいたします。  先ほど笹森参考人が、財政構造改革法はもう完全に破綻しておる、こんなものは凍結しろと。私も全くそう思うのですが、ただ、これは形の上では来年度から施行されるものですから、もう明らかに破綻しておるが、まだわからぬぞ、こう言われるおそれがあります。  そこで、石参考人に伺うのですが、私も石参考人が言っておられるように、財政政策というのは景気対策以外いろいろな大事な目的があるよ、所得の再分配とか資源の配分とか、いろいろあると。それはそのとおりですね。これは、どちらかといえば中期でやるべきことですね。景気対策というのは、割と目先。  それで、この財政構造改革法の中でも、あのキャップは、中期的に見てああいうふうにやっていかなきゃ歳出のむだが削減できないのだと石参考人はおっしゃるので、私はあれは単なる繰り延べにすぎないのであんなものじゃちっともむだは排除できないぞと思っていますが、百歩譲って、あそこはいじらないとしても、第四条に、毎年毎年赤字国債を減らすというところがありますね。  私はこの予算委員会で、おとといも総理にこの場で確認したのですが、あれは、赤字国債だけじゃなくて、財政赤字全体を毎年減らすというのが法の精神なのですね。ここのところの硬直性が私は問題だと思うのです。これで完全に財政赤字拡大を伴う景気対策の手足を縛っちゃったと。これはいけません。  一瀉千里に、蛇が棒をのみ込んだみたいに、がんがんやれと、財政を景気対策に一切使っちゃいかぬというのがあの第四条であって、私も、せめてあの第四条を外せ、そういう改革をしろと。それをやりますと、今本当に楽になります、景気対策の上で。二〇〇三年に財政赤字の対GDP比率三%以下に下げる努力は、反対だと言っている人はいないですよ。みんな賛成なのですよ。だけれども、その経路を縛るのはだめだ。  第四条の削除という法改正について、石参考人の御意見を伺いたいと思います。  それから次に、笹森参考人については、大変金融安定化対策で、もうほとんど私の考えていることと同じような御意見をおっしゃいまして、十七兆の預金全額保証のための公的資金投入、あれはいいと。私もそう思います。不良資産の回収の強化と経営責任の追及という条件がつけば、あれはいい。それで、十三兆の資本注入について、笹森参考人は、受け皿銀行ならいいが、それ以外に広げていくのはいかがかと。まさに私の意見のとおりでございます。  それで、一つお伺いしたいのは、これはいいのですが、もう一つおっしゃいましたのは、政府のあの公的金融機関国民金融公庫とか中小公庫とか、ああいうところの融資条件をもっと弾力化して、中小企業への貸し渋りを防いだらどうかと。  私は、お気持ちは非常によくわかるのですが、しかし、笹森参考人も御承知のように、あの原資は、国民の皆さんからお預かりした郵貯であり、簡保であり、年金であって、貴重な国民の財産を国がお預かりしている。だから、安全、確実に運用しなきゃいけないのですね。それを、貸し付け条件をじゃんじゃん緩和して出しちゃっていいのかなというところに一つ疑問があります。  しかし、おっしゃることはごもっともで、貸し付け条件を緩和しなければ、あれは出ません、幾ら予算組んだって。これもおととい橋本総理にはっきり申し上げましたが、今みたいに保証人を二人連れてこいの、一番抵当じゃなきゃいけないのと言われたんじゃ、たまったものじゃない。だからといって、そこをどんどん緩めたら、国民からお預かりしている大事な大事なとらの子の財産を危ないところにつぎ込む話になる。ここに悩ましさがあるのですが、その辺のところはどうお考えか、特に労働組合の立場でその悩ましさをどうお考えかということをお伺いしたいと思います。  最後に、金森参考人に対しては、資本注入について、確かにモラルハザードが発生するかもしれない。それから、これ、資本注入しますと、いろいろ経営干渉するわけですから、いわば銀行の社会化みたいなことが起きてくるのですね。それから、一種の護送船団方式になってきます。優良行は要らないと言っているのに、優良行が受けてくれなきゃ、受けたやつはみんな不良行というレッテルを張られちゃうから、こういうことも言っております。  これはなかなか厄介なことなのですが、金森参考人、いかがでしょうか。最も抜本的な金融システム安定化策というのは、実は景気対策なんじゃないのでしょうか。金森参考人のような御発想からいえば、実は、もっと大型の景気対策を打って、減税と公共投資とそろえてやれば、これはもう先行き感で動きますから、株価は高くなるでしょう、円相場は強くなるでしょう。  これによる含み益の増加、自己資本比率の上昇というのはばかにならないのですね。これも、おととい、ここではっきり数字を申し上げました。今の一万六千円台から二万二千円台に六千円回復しただけで、自己資本比率は大銀行で二%ポイント上がっちゃうのですね。そして、これは金額にすると、今用意している十三兆円の注入どころの話じゃない、もっと多額の資本注入に相当する。  恐らく金森参考人のお立場だったら、王道はこっちだよ、そんなごちゃごちゃ護送船団方式に戻るような介入行政をやるのじゃなくて、しっかりと景気対策をとりなさい、そうすれば、景気もよくなると同時に金融安定化するということではないかと思いますので、その点についてお考えをお聞かせいただければと思います。
  45. 石弘光

    石参考人 簡単にお答えいたします。  財政計画であります、財政構造改革というのは。したがって、ある所定期間があって、その年度ごとに何をしなきゃいけないというのをプロポーズするのが計画であると思いますので、恐らく、景気に対してはニュートラルにやらざるを得ないのが僕は財政計画だと思います。今ある財政構造改革は、二〇〇三年までの三%と、赤字国債をやめるということと、キャップだろうと思いますね、恐らく。三つのコアの部分と言われました。  そういう意味で、財政構造改革の中の一つの柱であります、一兆二千五百でしたか、毎年減らしていくという、その筋道は既に壊れているのですよね。来年度からはちょっと無理だろうと言われておりますように、実態がそういう動きを示しているときでありますので、恐らく、財政構造改革の本体、思想、基本的な精神というのはありますので、テクニカルな部分でそういう修正というのは僕はあり得ると思いますね。  そういう意味で、二〇〇三年のターゲット自体どうするかという議論も波及するかもしれませんけれども、とりあえずこういうことをやるという姿勢を出したのが非常に重要なことでありまして、実施段階でその辺の修正、これを破綻と見るか、それとも微修正と見るか、これは僕は、定義の問題でありますから、どっちとも言えると思いますので、本体のところの旗が重要であると思っています。  そういう意味で、私は、破綻したというとり方よりは、これから実態に合わせてその計画を練り直すということで十分にたえ得ると考えています。(鈴木(淑)委員「四条削減は」と呼ぶ)四条削減は、そういう中で。
  46. 笹森清

    笹森参考人 御指摘のとおりでありまして、考え方としては全く一致しておるのですが、冒頭申し上げたように、連合としては大変悩ましいということを申し上げました。  これは、私どもの立場からいうと、地域経済、地域雇用に重大な影響を及ぼすというふうな中では、今最大にピンチだなというふうに受けとめていますのは北海道なんですね。全国の状況はどうかというのは、これまたいろいろケースとしては出てくるのかもしれませんが、北海道の状況からいきますと、やはり拓銀の破綻で、通常ならばやっていける企業が成り立たなくなっている、そういう状況が非常に出始めています。  連合の中でも、今年度、暮れのつなぎ融資がどうしてもできなくて、組合側が担保になって労金から貸し出しを受けて、ぎりぎり一カ月しのいだというような例もあるわけです。ここがなくなりますと、もうこの一カ月ぐらいで完全にばたばたいっちゃうという、そういう状況になっています。  そういった事例からいいますと、いろいろ問題点があるというのは承知をした上なんですが、そこの部分について、政府金融機関、特に緊急融資、設備投資に限定をしているところを少しクリアにしていただかないと、もう成り立たなくなって、北海道経済圏壊滅というようなことにつながりかねないのかなというふうに思っていますので、そういう意味では、資本注入が限定をした上で必要な箇所というのも、ある部分理解を示す必要があるのじゃないか、こんなふうに思っているわけです。
  47. 金森久雄

    金森参考人 今、我々同業のエコノミストの間でも、対策を打つなら金融にやった方がいいと言う人も少なくないですね。今の困難の根本は金融不安にあるから、金融のためにお金をたくさん使う。ですから、激しい人になりますと、減税のためにお金を使うというようなことをやらない方がいいよと言う人さえもあります。  でも、私は、今言われましたように、もとはやはり景気でありまして、思い切った景気対策をやるという方が対策の重点になるべきである。金融対策の方はむしろ二次的な問題で、景気がよくなれば今度は金融問題もずっと軽くなってまいります。  景気対策でありますけれども、やはり今の政府では、とにかくお金を出すということに対しまして非常に抵抗があるわけですね。ですから、十一月の初めに出しました緊急経済対策でも、科学技術の振興とか規制の緩和とか、そういうことで、なるべくお金が出ないような対策ばかり出しているわけであります。それは長期的には結構なことでありますけれども、現在はそんなことでは間に合わない。やはり大幅減税とそれから思い切った公共投資という、景気政策の本筋的な対策を早く実行すべきではないかと思います。
  48. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ありがとうございました。
  49. 松永光

    松永委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  50. 矢島恒夫

    矢島委員 三人の参考人の皆さん方から、日本経済の現状あるいは景気に対する御認識などなど、御意見をお聞かせいただきました。ありがとうございました。  そこで、私、与えられました時間がたったの十分でございますので、取り急ぎ金森先生の方から御質問をさせていただきたいと思います。  先生が日経に連載していらっしゃいます「一刀両断」、楽しく読ませていただいております。この中でもありますし、また今も、各委員からもそれぞれ財政構造改革景気の問題というので、るる御質問がございました。  私も、財政構造改革特別委員会でこの問題について質問してまいりましたけれども、実は経済企画庁の前調整局長さんの談話を用いて質問をしました。いわゆる財政構造改革法という法律が出されただけで実はこれは消費に重大な影響を及ぼすんだ、こんな発言だったわけです。そうしましたら経企庁長官が、あの人は二重人格だなんというとんでもない発言をしまして、後で取り消すという場面もございましたが。  先ほど笹森参考人の方からは、国民生活関連の部分というものをどんどんカットしていくということ、あるいは、そこを負担をふやすという方向がこれからずっと続くというような問題があるということでお話がありましたが、私も実は国民生活関連の部分についての、福祉だとか医療だとか年金だとか、そういう部分についての法案の中身というのは非常に問題があるのじゃないか、景気というものとのかかわり合いでです。その点をどのようにお考えかということが一つ。  もう一つは、先ほど来公共事業との関係でいろいろお話がございました。キャップの問題であります。もちろん、私どもは公共事業全部だめだなんということを言っておりません。必要な公共事業はたくさんあるわけですが、先生も、「一刀両断」の中でも、いわゆる公共事業を今日の状況のままふやすというふうにはおっしゃっていらっしゃらないと思うのです。むだや浪費にメスを入れろというのが私たちの主張でありますが、今の公共投資あるいは公共事業のどこが問題だとお考えになっていらっしゃるか。その辺を、お考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  51. 金森久雄

    金森参考人 公共事業でありますけれども、やはり日本の公共事業というのは非常に問題が多いことは事実だと思うのですね。まず、実行した後のそれの成果を評価するシステムというのがございません。そのために、非常にむだだ、むだだと言われている。本当にむだであるのか、効果があったのかということがわからないわけですね。ほかの国では、ドイツ等ではそういうものがかなり整備をされていると聞いております。  それからもう一つは、公共事業の全体の金額というのが国会で決まるわけでありますけれども、それがどこに割り当てられるか、それから全体の配分が、本当に望ましいところに行っているかどうかというようなことは議論されていないのですね。議論を全くされないことはないかもしれませんけれども、非常に不十分であります。  ですから、事後に評価するということのほかに、事前に総合的な評価をするというシステムが必要ではないかというように思うわけですね。現在は、住宅の何年計画、治山治水の何年計画という個別の計画というのはございますけれども、総合的な評価というものがないのではないか。  それからもう一つは、やはり入札の制度であります。これはかなり競争入札制度が入ってきたわけでありますけれども、やはり方々でいろいろな批判というものがあるわけですね。入札をもっと透明化して、そしてあとは民間の企業にもっと自由にやらせるということも必要ではないかと思います。それから、いま少し海外のそうした建設会社に市場を開放して、競争条件を高めるということが望ましいのではないか。この程度のことを考えております。  それから、今後の社会保障とか老人問題とか、こういう問題と財政でありますが、将来そういうことになるから今抑えておかなければいけないよということを言う人がいるわけでありますけれども、将来の社会保障でも老人医療対策でも、経済が成長しないとどうにもならないのですね。  これは計算してみますとすぐわかるわけでありますが、ゼロ成長ではたちまち医療保険というものが破産をしてしまうわけでありますので、できるだけ成長を続ける。私はかねてから高成長、高福祉と言っているわけでありますが、そういう観点でこの財政政策というものを考えていただきたいというように思うわけであります。
  52. 矢島恒夫

    矢島委員 笹森さんに質問したいと思います。  もちろん、今日の不況、元凶は、いろいろ要件はあると思いますが、直接的なものとして、消費税の増税だとかあるいは福祉、医療の負担増とか、九兆円、九兆円、こう言われているものも非常に重要な影響を及ぼしていることは確かですし、そういうお話もございました。消費不況と言われる中で、やはり庶民の懐を暖めるということが今最も重要だろうと私も思います。ですから、二兆円の減税では到底、九兆円ふやしておいて、二兆円だなんというのは話にならない。  先ほど資料を見せていただきましたけれども、やはり規模の拡大の問題と恒久減税の問題が出されておりました。もちろん、懐を暖かくするための大幅賃上げの問題だとかあるいは雇用不安を取り除く問題だとか、いろいろ消費拡大のためにはあろうかと思います。  そういう中で、一つは、私たち、やはりこの九兆円の負担増というのが元凶であるし、その基本にある消費税の増税、これが間違っていたのだ、だからこれをもとに戻せ、三%にしたらどうだ、こういうことを私は考えるのですが、それについてどういうお考えがあるかということが一つ。  もう一つは、銀行に対する財政投入の問題ですけれども、預金者保護ということを大前提に行うということは、もちろんこれは重要なことだ、しかし銀行支援というのは、これは認められない、こういうお話でございました。  私たちも、大銀行の体力というのは十分あるのだ、いわゆる自己資本比率ということを拡大するというような一つ導入理由もあるわけですけれども、いや、大銀行は十分体力がある、こういうことへの支援というのはいかがなものか、こういうことでおるわけです。  この二つの点について、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  53. 笹森清

    笹森参考人 消費税の問題と減税規模の問題それから財政投入の考え方、三つお尋ねいただきました。  消費税の問題ですが、私ども、何%が適切かというのはなかなか数字的には出てこないわけですけれども、現状の負担との関係からいうと、どこをどういうふうにへずったらいいのか、このバランスに欠けているのではないかという部分があります。特に減税効果は、雇用労働者にとってはそのことが非常に大きいのですけれども、年金生活者にとってはそのことは全く波及効果がない。消費税はどうかというと、そういうところに非常に波及効果が強過ぎるという状況なのですね。  したがって、その負担のバランスをどうとるかということになれば、そういったものを全部整合した中で何%の消費税がいいのか。そこに、先ほどちょっと申し上げたように、金利の問題もリンクをしてくるのではないか、こんなふうに思っております。  それから、規模の拡大については、これは何回も申し上げていますように、今の中では全く足らぬ。ただ、これは税制上からいいますと、やはり所得の捕捉率の問題等含めて不公平税制の是正と、それから規模の拡大による制度の恒久化、二つがミックスをされた形で対応する必要があるのではないかというふうに思っています。  それから、銀行支援については、これはやはり情報の開示というのが、一昨年の住専のときから含めて、現実に何ぼなのかというのは全く出されていないのですね。これは、銀行の方も物を言おうとしない。底がどこまでの底なのかということがわからない中でどうやるかというのは、こんなばかばかしい論議はないわけです。  したがって、情報開示をどう徹底させるのか。それによって、今まで大変な苦労をしている部分もないわけではないのですが、銀行の、非常に恵まれた部分の中でぬくぬくとしているところについてどういうふうにメスが入れられるのか。これはやはり責任問題のところだと思うのです。  そのことを前提条件としてクリアして、ぎりぎりのところどうだという支援策というのは、私は、これは先ほど申し上げた範囲の中で必要ではないかというふうに思っております。
  54. 矢島恒夫

    矢島委員 石先生にもお尋ねしたかったわけですが、残念ながらもう時間になりました。終わらせていただきます。
  55. 松永光

    松永委員長 これにて矢島君の質疑は終了いたしました。  次に、北沢清功君。
  56. 北沢清功

    ○北沢委員 社民党の北沢でございます。  きょうは、三先生から、非常に高度な、基本的な問題に触れてお教えをいただいたことをまずもって感謝を申し上げたいと思います。  私は実は長野県の田舎の人間でございますから、そういう原点からちょっと実情をお話して、やはり国民の意思も非常に多様化していますから、なかなかこのことの問題というのは非常に複雑な要素を持っているのではないか。率直に言って、よく今の市場原理、規制緩和ということが政治経済の中枢になっていますが、そのことと同時に、いわゆる財政再建論というものがその一つの大きな中心であろうと思います。しかし、きょうの先生方のお話の中では、性急な財政再建論というのは非常に問題があるという御指摘であろうというふうに私は理解をしております。  今まで危機説がなかったわけではないわけでありまして、いわゆる空洞化の危機だとか、コスト高の日本の危機であるとか、今回は財政危機、そういうことが、非常に実はその都度その都度危機の中で国民の皆さんは持っておりましたけれども、私は、そういう面では、ある程度そういうものは余り顕著にあらわれてこなかったのではないかと。  しかし、末端では、今日の一番重要なことは、そういう危機説よりも、本当の危機とは何だということを我々は意識をしてこなければいけないと思うのです。それはやはり、笹森先生からお話がございましたような国民の不信とか不安、財布のひもを締めるということが、実際に金が動かないから消費が伸びないということになるわけであります。  そのことは私は、今九兆円に上るという表現がございます。今回の税制も含めて、九月からの健保の値上げ等を含めると、実際の不況のなったのは私は二、三兆円だろうというふうに見ておりますね。これは来年の九月まで行けば九兆円になるかもしれぬが、その間これから減税がございますから。やはり経済というのを見るときに、正確に見てこないとこれは大変なことになりますね。  そうなると、笹森先生の言うように、気である、気分である、そういうふうに実は非常に消費低迷というものが出てくるのではないか。今日のように、評論家の皆さんやマスコミや多くの政治家の皆さんが、そういう九兆円ということの中での大合唱が、むしろ非常に国民消費を冷やしているのではないか。  私どもの地元で、私はなぜ地元の問題を申し上げますというと、今回の減税については、しないでもらってもいいんだ、将来我々にかかってくる問題だからこれはしないでも私どもは耐えていくが、しかし、現に横たわっている将来における不安、不信、そういうものを、はっきりした将来の展望なり見通しを示していただいて、そのことにするならば我々は耐えましょうということを実は言われております。  景気浮揚を申し上げますと、今農村ではスーパーがつぶれますし、また既存の商店は全部つぶれてシャッターを落としています。大型店は郊外に出ていますが、ここへ来て感ずることは、これは大変なことだと。若い者のいる家は自動車で買い物に行くのでいいが、年寄りが町の中に多くなってくると一体どこへ買い物に行けるか、そういう実は心配がある、不安があるわけですね。だから、そういうことを実は私は見ていかないといけないのじゃないかというふうに思います。そういう意味での不安と不信をどういうふうに払拭するか。  それから、または債権の問題や、預金をしてありませんから、株式も買ったことがないから、もうけるときはうんともうけておいて、いけなくなってから今あれしてくれとは何だというような、そういう感情もあるのですよ。  そのことは、やはり私は消費の構造も変わってきていると思うのです。昔は過剰と景気は一体になってきましたが、その質が変わってきているのです。もう大量生産、大量消費ということの中に、みんな物を持っている。だから、買う物がないと言ってはおかしいけれども、本当にそういう意味での消費の冷え込みもあるわけですね。  そういういろいろの要素を勘案しながら、そして、今までの従来型の景気浮揚が果たして今日通用するかどうかということも含めて、やはり検討しておかないと大変なことになるのではないか。そこに私ども二十一世紀を含める政治家の不安と不信というもの、そういうことが極めて重要な責任だということを私は改めて農村という立場で申し上げたいと思います。  いろいろと時間がございませんのでここで御質問をいたしますが、そういう意味で一番心配なのが雇用なのです。今までの公共投資の役割は確かに景気の上向きに乗らなかったけれども、日本の雇用、特に農村では皆さんが土方に行くのです。雇用を維持したのです。だから、必ずしも悪い面ばかりではなくて、先行投資の中で、ただ、中の問題はいろいろあると思います。しかし、雇用を確保したというのが私は最大のあれだと思いますね。  今後もアメリカ型の雇用がされてくると、もう家を建てる計画も、教育をする計画も立たぬのです。そうすると、みんな金をみんなしまい込むよりしようがない。そこに私は問題があると思いますが、笹森参考人に、その問題と、いわゆる税金も減税をすることもさることながら、そこに行き届かない低所得者層の深刻な、まあ諸税の影響は一番もろに受けるわけですね。また企業も、中小企業に受けるわけです。  そういう意味で、やはり賃上げをある程度確保していかないと景気はよくならぬ、実質的な可処分所得がふえない限りは消費は伸びない、私はそう思いますので、そこらを含めて、先ほど先生から非常にお考え方としてはお聞きしたわけでありますから、そのことの雇用と賃上げの問題について若干触れてお話をいただきたいと思います。  多分、お二方の先生方には、そういう意味での深い配慮の中で、世の中は変わっているんだということだけを、今までの見方でなくて、これから変わりつつあるんだ、そこだけをひとつ、私の意見に皆さんの御支援をいただきたいと思います。
  57. 笹森清

    笹森参考人 現在、国民的な課題の中で連合が、国民生活改善のための春季生活改善闘争というのを組み立てております。けさも日経連と春闘問題で意見交換を行ってきたのですが、経営側の方は、雇用か賃金か、この二者択一を迫っており、我々は、雇用も賃金もない。  しかしながら、経済政策関係からいいますと、適正な賃上げと減税効果によって日本経済を三%台の成長に、回復軌道に乗せることができるのかどうかというのが最大のポイントになっているわけです。そういう意味では、私どものシミュレーション結果によりますと、三%台の景気回復をするためには、減税が今要求されているような五兆円から六兆円規模というものが確保された上に、六%の賃上げがあると三%台の経済成長率復帰は可能だ、こういうシミュレーションになっております。  しかしながら、今回の場合にゼロからいきなり三と飛ぶのは、先ほども申し上げたように、かなりこれはステップとしては難しいということなので、二%台の経済成長に戻すための賃上げ、この適切な額というのは五%、一万五千円というのが私どもの要求、こういう内容になっているのですね。この二本立てで経済効果というのは私はあるだろうと。  ただ、今先生御指摘のように、ではしからば、かなり低い層の賃金をもらっている人たち、それから雇用されていないで年金生活をされているような高齢者の人たち、これも先ほど言ったように、バランスをどうとるかということになれば、全体的な部分としては、経済をある程度安定させるという見通しがついた段階で、私は今すぐでもいいんじゃないかと思っているのですが、公定歩合の問題についてどのぐらいメスを入れることができるのかというところがあると思うのですね。銀行救済に充てるという部分と、そのことで銀行が体力を温存するということにつながらせないためにも、今、公定歩合の問題についてセットで考えなければいかぬ。これは、一%で四兆円の効果がある、こういうふうに言われておるわけですから。  したがって、低所得者層とか年金生活者とか全体の、国民全部の部分をどうカバーするのか、そういう経済政策の中で考えていっていただければいい。特に雇用不安の問題は、もう壊滅的な状況になりかねない。この危機的な状況を、経営や労働の責任だけではなくて、政労使でどう解決するか、そういう対応策が今望まれるのではないかというふうに思っております。
  58. 北沢清功

    ○北沢委員 ありがとうございました。  先生お二方、ちょっと簡単に触れていただけませんか。
  59. 石弘光

    石参考人 まさに雇用はこれからの経済指標として一番重要でありましょうから、特に地域のばらつきを見ながらその対応をするやり方が重要だと思います。  ただ、公共事業を削っていったときに地方に一番ダメージがあるのが恐らく雇用だと思いますので、それは地場産業の育成とか、何かそういう面での対応を恐らく政治的には考えなければいけないのではないかと考えております。
  60. 北沢清功

    ○北沢委員 終わります。ありがとうございました。
  61. 松永光

    松永委員長 これにて北沢君の質疑は終了いたしました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、まことにありがとうございました。委員会を代表して、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  62. 松永光

    松永委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。三塚大蔵大臣
  63. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本日、本委員会に、財政構造改革を進めるに当たっての基本的な考え方等を提出いたしましたが、これらについて一言申し上げます。  まず、財政構造改革を進めるに当たっての基本的な考え方は、昨年十一月に成立した財政構造改革の推進に関する特別措置法を踏まえた今後の財政構造改革についての考え方をお示ししているものであります。  次に、この基本的考え方の背景にある中期的な財政事情を試算したものとして、財政構造改革法等を踏まえた中期財政試算を添付いたしております。  この中期財政試算においては、財政構造改革法に規定された財政構造改革の当面の目標である平成十五年度特例公債脱却に向け、毎年度一兆四千億円程度ずつ機械的に均等に公債金収入を減額すると仮定した試算を示し、また参考として、国及び地方の財政赤字対GDP比を示すなど、今後の中期的な財政事情をお示しするものとしております。  また、この中期財政試算に関連して、国債整理基金の資金繰り状況等についての仮定計算もあわせて提出をいたしております。  財政健全化は主要先進国共通の課題であり、各国とも具体的な目標を掲げて果断に取り組んでいるところであります。我が国においても、今後とも、財政構造改革法に従って予算編成を行うことにより、現下の諸課題に的確に対処しつつ、財政構造改革を着実に進めてまいりたいと考えております。  提出いたしました資料について、よろしくお目通しのほどお願いをいたします。
  64. 松永光

    松永委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  65. 岩國哲人

    ○岩國委員 民友連を代表いたしまして、政府景気対策及び減税問題について質問させていただきます。  これはメリルリンチという世界最大の投資銀行あるいは証券会社と言われているところの調査部の最も新しい調査報告書でありますけれども、最大であるからといって、常に正しいことを言っているわけではございません。しかし、そうした最大の規模を持っているところが、世界じゅうの五百万人以上の機関投資家あるいは投資機関にどのような見方を流しているかということは、我々も大いに参考にしなければならない点があろうかと思い、その一部分を御紹介申し上げてから、質問に入らせていただきたいと思います。  世界のことしの長期展望、世界経済の長期展望について、メリルリンチ社は次のような見方をしております。  最大の経済大国と言われますアメリカに関して、「米国に関して言えば、今年は景気拡大が八年目を迎え、平時での過去最長を更新するだろう。しかも、リセッションの影は見当たらず、来年」、ということは九九年ということになりますけれども、「来年は今年より景気がよくなる可能性が十分ある。」このような見方を示しております。さらに、「景気拡大がここまで長期化して、インフレ率が今ほど低かった例はかつてない。」  年末年始をニューヨークで私は過ごしましたけれども、新聞等においては、百年に一度の好景気、こういう表現が見られ、今のアメリカ景気にはアジアの少し冷たい風がむしろ好ましいという、余裕を見せた評論さえ出ている次第であります。  さらに、問題になっておりました財政赤字、一時二千億ドルを超えておりました。今の日本の円に換算していいますと、大ざっぱに言って三十兆円以上の年間の財政赤字が見る見る減少し、来年は財政黒字に転化する。アメリカ国会議員は、今、その財政黒字を減税に使おうか、あるいは福祉の支出をふやそうか、これで議論しております。日本の国会議論していることと全く逆であります。日本は、どれだけ税収をふやそうか、あるいはどれだけ福祉をカットしようか。  同じような体力を持っているアメリカと日本の間にこれだけ大きな景気の差、はっきり言って、それは政策の差がもたらしたものであるということはもう明々白々であると私は思います。例えて言えば、株価を見ただけでも、七年間に三倍に株価がなったところと七年間に株価が半分になったところ、この三倍と半分の違いというのは、明らかに私は政策の差がこのようにあらわれてきているのではないかと思います。  こうした環境の中で、総理は、やらない、やれない、やるべきでないとおっしゃった所得減税を決意されました。そうしたことについて既に何人もの議員がここで質問をさせていただいておりますけれども、こうした理由一つとして、アジア各国のいろんな要請、そして厳しい現状というものを踏まえて決意されたということを総理は答弁で答えておられます。  そうした東南アジア各国の現状というものについて、外務大臣も同じようにそのような各国を訪問されたのではないか、そのように思いますし、また、国際会議等においてアジア各国の代表との接触を重ねられて、そして、十月に外務委員会において、そうした各国の現状についていろいろと報告をしておられます。  十月二十九日でありますけれども、この小渕外務大臣のその委員会における御発言は、そうした厳しい現状について全く触れておられないわけであります。これは十月二十九日であります。この中において、中国との問題、日韓問題、北朝鮮の問題、いろんな問題についてお話しになっておられますけれども、こうした経済情勢がそれほど深刻であるということについての御認識はなかったのかどうか。  一カ月たって、十一月二十七日、外務委員会において、初めてと言っていいのでしょうか、こうしたアジア各国の問題については触れておられます。しかし、依然として、「アジア経済は、基本的には良好なファンダメンタルズに基づいて」、良好なファンダメンタルズというのは三塚大蔵大臣が日本について好んでお使いになる表現でありますけれども、小渕外務大臣も同じように、「アジア経済は、基本的には良好なファンダメンタルズに基づいて高い潜在成長率を維持しており、今後とも自立的な経済発展が可能である」、こういった見方をそこで紹介しておられます。  今でもそのような見解を持っておられるのか。十一月二十七日から、総理がこうしたアジア情勢を踏まえて景気政策の大転換を決意された十二月十七日まで、わずか二十日間の間にそれほど急激な変化が起きたとは思わないわけであります。  ここで、小渕外務大臣が、その十月、十一月そして現在と、こうしたアジアの経済情勢についてどのような御意見を持っておられるか、それを御披露いただきたいと思います。
  66. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 タイに始まった通貨、金融の厳しい環境、現在、アジアのそれぞれの国でこれを乗り越えるために努力をしておることは承知いたしております。  しかし、私自身は、APECにも参りまして、いろいろインタビュー等に問われまして、潜在的にはアジアは大きな力を持っているから必ずこれを乗り越える力を持っている、こういうことを申し上げたことでございまして、現在の状況は大変厳しいとは思いますが、必ず回復できるもの、そう感じております。
  67. 岩國哲人

    ○岩國委員 私は、新しい内閣を迎えまして、そうした各大臣がいろいろと仕事に努力しておられる中で、建設大臣が多数のダムについて大胆にそれを中止するという決定をされたこと、あるいは農水大臣が干拓事業について非常に前向きにそうした見直しを進めておられること、そうして三番目に、小渕外務大臣が対人地雷の禁止について、それまでの消極的であったかのように報道されておりました内閣の姿勢を一変して、前向きに取り組んでいただいたこと、この三つを私は大変高く評価しております。  そうした、外務大臣が帰朝されて、そして報告された中で、十月あるいは十一月、そして総理の十二月十七日の大決断、そこに至るまでに、外務大臣としてのそのような的確な現地の報告がされておったのかどうか。  橋本総理大臣は、外務大臣の進言ということは一言もおっしゃいませんでした。現地へ行って、向こうの方からの話を聞いて、ある意味では慌ただしく決断されたような説明が本会議でも行われております。まあ、必ずしも、外務大臣からそういった報告が一言もなかったということはないと思いますけれども、こうした大事な、外務委員会の場でもそういったところがもっともっと詳しく報告されておれば、我々もそれなりの理解が進んだのではないか、その点を残念に思っております。  また、たまたま昨日でありますけれども、イギリスのザ・サンという大衆紙に、総理は、どのような種類の新聞かも知らないで、そういった寄稿をされた。このことは、恐らく総理も深く反省していらっしゃるのではないかと思いますし、私も大変残念に思っております。  私もロンドンに長く住んでおりました。夕刊で、買っていく人の層がそれは違います。そして、そういった新聞が非常に無責任な取り扱いをする。そういったことも、これは決して外務大臣責任を私は問うておるのではなくて、外務省は一体何をしておるのか。このようなアジア情勢についても、あるいはこうした、総理がそのように向こうの首相から誘われたとしても、それについて適切な助言をする外務官僚は一人もいなかったのか、あるいは現地のロンドン大使館は何をしておったのか、その辺を非常に残念に思います。もし外務大臣の方から、何らかこの点についてコメントをいただけるようでありましたら、お願いいたします。
  68. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 総理大臣の投稿につきましては、外務省といたしましても、その方針について検討したことは事実でございます。イギリスにおけるクオリティーペーパーとしてのロンドン・タイムス等いろいろございますが、やはりこの問題について全般的にイギリス国民の理解を深める、そういう意味合いから、サン紙に投稿されるということにつきましては、その内容について十分検討させていただきましたと同時に、この問題の取り扱いについても十分御留意を願いたい向きを申し上げて、この決定をいたした、そして総理大臣の御判断をいただいた、こういうことでございます。
  69. 岩國哲人

    ○岩國委員 最後の点、よく聞き取れない箇所がございましたけれども、外務大臣としては、サンへの総理の投稿ということについては、慎重に、あるいは反対されたということですか。外務省あるいはロンドン大使館は、いろいろ検討されたということですけれども、検討されても、なおかつそれはされた方がいいという結論を外務省としても出されたということでしょうか。くどいようですけれども、もう一度御答弁をお願いします。
  70. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 外務省というよりも、この草案につきまして、十分読ませていただきまして、そして、その内容については問題はない、こう理解をしたわけでございます。
  71. 岩國哲人

    ○岩國委員 いや、内容については検討されたということでありますけれども、今問題になっているのは、その内容も問題ではありますけれども、その行く先がどういう新聞に行くかということも十分に検討された上でそれは了解をされたということでしょうか。
  72. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  外務省におきましても、この提案がございました際に、十分ロンドンの大使館とも打ち合わせをいたしまして、現地の意見も聴取いたしまして、発行部数が四百万部という、イギリスの中で最も発行部数の多い新聞であるということ、それから、ブレア総理大臣自身が過去におきまして数回このサンにおいて投稿して意見を発表して、それが有効であったというようなことを慎重に判断いたしまして、総理に対しましては、これは適当な機会であるという判断をいたしたというふうに承知しております。
  73. 岩國哲人

    ○岩國委員 きょうの本題ではございませんのでもうこれでやめにしたいと思いますけれども、昨日、総理は、そういったサンという新聞がどういう新聞かということも知らなかった、このようにはっきりこの席で答弁されました。しかし、外務省の方はどういう種類のものかということを総合的に判断した結果了解されたということであれば、外務省及びロンドン大使館としては、どこでどのように使われるかということはもう十分に承知の上で、総理の原稿をチェックされたということに理解させていただきたいと思います。  私がこの問題をあえて取り上げますのは、こうした最近の経済政策の転換においても何においても、アジアの問題においても、日本の言うこと、なすことが正しく報道されているとは必ずしも限らない。また、外国からのそういった批判あるいは反応というものが、また日本で間違った方向で報道されるということも多々ありますので、これからのそうした総理あるいは内閣の各大臣の御発言、あるいは、そういったものを外国でどのように説明されるかということについては、非常に慎重に対応していただきたいと思います。  それに関連して、先ほどのメリルリンチの調査部の日本についての見方を一部御紹介いたします。日本の経済についてこのように言っております。「日本政府も米国の圧力により新たな景気対策を模索し始めた。日本市場はこの動きをポジティブに受け止めている。」アジアのことが理由ではなくて、アメリカでは、これは米国の圧力によって、つまり政策の圧力転換を日本のマーケットが前向きに受けとめている、このような見方をしているわけであります。  「ただ、九八年度の実質GDP成長率を一・九%としているように、政府景気判断は市場よりはるかに楽観的である。政府が「経済悲観論」を掲げたとき」つまり経済対策に本腰を入れざるを得なくなったとき、市場に初めて経済楽観論が生まれてくる、政府の経済悲観論は市場の経済楽観論につながる、このような見方をしているということも御紹介させていただきます。  こうした日米の景気の力強さが違うということは、年末、クリスマス休暇の明け、二十六日の朝ですけれども、向こうの一流新聞に、今度は一流の新聞ですけれども、大手百貨店が朝の七時から開店する、そういう広告が出ておりました。  日本の常識から見ますと、朝の七時から大手の百貨店が店をあける、信じられないことでしたから、私も無理に早起きして行ってみました、確かめるために。確かにあけておりました。たくさんの方が並んで、かなり身なりのいい中高年の方が多かったと思いますけれども、そして朝七時の開店と同時に売場へ向かって走っていく。クリスマスのときにたくさん買い物をした上に、なおかつ休暇明けに、朝の七時から、外はまだニューヨークの朝は暗かった、その暗いうちから行列が並んでいます。  私も、朝暗いうちから世田谷の三軒茶屋で行列を見たことがあります。それは、山一証券の支店の前に並んでいました。日本ではお金を受け取るために朝から行列をして、ニューヨークではお金を持って買い物に行くために行列をする。まさに、日本とアメリカの違いがそこにあらわれているような気がいたしました。  こうした景気対策について、二兆円の所得減税、これは特別減税を継続すべきだということを我々新進党は、当時の新進党でありますけれども、総選挙のときに訴えてまいりました。消費税を上げるべきでない、そして特別減税は継続すべきである。そうしたことが行われておれば、今の二兆円所得減税のように、効果がないというふうな評価には終わらなかったと思います。  一年前にやっておけば二兆円の減税で済んだところが、今は六兆円と三倍の減税にしなければ、同じような効果は期待できない。逆に言えば、今の二兆円はわずか三分の一ぐらいの価値しか、働く役割しかしない、そのような結果に終わっているんではないでしょうか。景気対策が後手で終わったということのツケは、結局六兆円と二兆円の差、四兆円の税金のむだ遣いに今終わろうとしております。  こうしたことについて、我々は何度も、予算委員会であるいは本会議で、政策の転換を迫ってまいりました。それについて、やらない、やれない、やるべきでない、こういったことを何度も答弁されてきたのは総理であり、そして大蔵大臣であります。大蔵大臣もこうしたことについて、効果はない、減税はあり得ない、そして特例公債に依存する政策はやらない、このようにおっしゃっておりますし、また、不退転の覚悟でと、こういう表現も使って答弁もしておられます。こうした大蔵大臣がなぜ一年前とそして一年後と、これはアジアだけではなかったと私は思います。  大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  74. 三塚博

    ○三塚国務大臣 財政構造改革、先進国七カ国において枢要な課題として取り上げられ、我が国もそのことに賛同をし、内閣の決定としてこれを取り進めさせていただいた、こういうことでございます。  当時、一年前を振り返ってみましても、前年度の実質成長は予想を上回る成長でございました。当然、体力のある中で我が国財政の健全な基本的枠組みをつくり上げていかなければならぬ。当時の世論もそうでありましたし、私どももそのことを体して、昨年の一月から六月まで大きな会議を何回も開きながら、合意を得つつ、財政構造改革の基本的な方針を決めさせていただいたことは、御案内のとおりであります。  その後、アジア通貨が夏ごろから急速に変化をしてまいりました。そして、秋に入り大型倒産が続きました。不安感がマーケット、国民間に広がる、経済の不透明感が広がる。こういうことの中で、今後の経済運営は、基本は基本として取り組みながら、整合性、そして経済の深刻な状態を健全な方向に押し上げるためのありとあらゆる選択肢を探求したところ、首相の最終の指示で特別減税二兆円を決定いたしましたのも、そういうさなかのことでありました。  これらのものにあわせまして、制度減税補正予算における取り組み方、年度予算におけるめり張りのきいた予算措置というものをワンパッケージで提出させていただいたところでありまして、一日も早い成立が日本経済を本来の姿に戻すものであると存じておるところであります。
  75. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵大臣の答弁は、十月二十八日に、不退転の決意で、赤字公債は出さない。それから二カ月もたたない間に、その不退転の決意というのはどこへ行ってしまわれたのですか。少なくとも国民は、大蔵大臣がそこまでかたい決意を持っておられる政策であれば、しばらくは続くものと思うのは当然であります。そうしたことについて、我々が要求したことではありますけれども、そういう説明、あるいはその直近までこのように不退転の覚悟という言葉をお使いになったことの政治的な責任はおとりになるべきではないか、私はそのように思います。  あるいは、銀行の不良債権の処理の問題についても、これは順調に処理が進んでおりますということを委員会でも答弁されました。しかし実態は、順調に処理が進んでいるどころではなくて、逆にその後不良債権の額はふえてきたではありませんか。  こうした、根拠のない数字に基づいて答弁されることは、マーケット、株式市場においても、これは経済がいい方向に動いているという受けとめ方をし、現にこの予算委員会が終了し、四月、五月、六月、市場は上がっております。ダウにおいても二万円を超えている。結果的には、根拠のない見解を多くの人に広めることによって、つまり市場における風説の流布に相当するんじゃありませんか。証取法百五十八条によって、私は大蔵大臣は告発されるべきじゃないかと思います。  これほど一年間の間におっしゃることが次々と変わるということは大変私は問題があると思います。今のように、赤字公債について決断されるのにはいろんな要素があったということは私もわからないわけではありませんけれども、しかし余りにも、この一年間のこの予算委員会での御答弁に使われた表現というのは、例えば経済成長率にしましても、一・九%にプラスオンしていく、一・九%をはるかに上回る、このような表現で再三答弁がなされておるわけです。  一年たって、一・九%プラスオンどころか、さっぱりのパアではありませんか。〇・一%とか〇%とか、メリルリンチはマイナス〇・二と見ておりますけれども。このような根拠のない数字が、堂々と国会の中で、予算委員会の中で再三使われてきたことを私は大変残念に思っております。  そうした点について、景気判断を誤ってこられた、そして、答弁が一年以内に百八十度転換されたということについての政治的な責任を、どのようにお考えになっておられますか。
  76. 三塚博

    ○三塚国務大臣 委員は、時系列的に私の答弁を御紹介いただきました。私は、経済閣僚として、国の月例経済報告、またそれぞれの指標というものを分析しながら、その都度物を申し上げてきておるところであります。  特に赤字公債の問題については、今でも信じて疑いません。六年後、発行をゼロにするということ。言うなれば、九年度発行、七兆五千であります。今度これが修正されまして、一・四ということになるわけですが、本来でありますと、十年度予算において一兆二千五百億を縮減しなければなりません。そのための最大の努力はいたしました。  三千四百億円の縮減で終わりましたことは残念でありますけれども、これは、夏以降、また特に秋以降の市場の不安感、国民の不安感、不透明感を払拭するために、税制上の措置として、法人税、市場税制、土地税制を断行いたしたところであります。そのために、財源は、縮減することを三千四百にとどめることによりまして、充てていったところであります。  それと同時に、初年度に当たる十年度予算でございますから、一・三の歳出カットをいたしました。五千七百億円余であります。このことによって、スリムな予算編成、国民各位から出されておりますそれぞれの要望、批判に十二分にこたえるための素地はでき上がった、こう思っておるわけであります。  そういうことなどを基本としながら取り進めさせていただき、十月二十八日の不退転の決意、変えるのかと言われれば、不退転であります。事柄が困難でありましょうとも、中長期的な視点に立って、まず六年後を目指して最大の努力をするということは、法律が決定をしておる事項でございますから、法律を守るのは内閣の使命であります。また、担当者の責任でございます。そういうことを取り組ませていただいておるところでございまして、風説と一緒にされては、私も責任を持って仕事をやっておるわけでございますから、この信念の方向は変わりません。
  77. 岩國哲人

    ○岩國委員 法律が要求しておる、法律を守るのは閣僚の責任である、だから私はそう言った、このように私は受け取りましたけれども、であるならば、この特例公債を決意された担当の大蔵大臣としては、法律に背いているという心境は今お持ちでしょうか。今でも私は信念としてやるべきでないと、信念に背き、法律に背き、今そのような御心境ですか。
  78. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは、率直に申し上げますと、国家が危機的状況に立ちましたとき、全力を尽くさなければなりません。ありとあらゆる選択肢を駆使しなければなりません。  しかし、その中にありましても、法律が制定をされて初年度、基本を崩すわけにはまいらない。その範囲の中で、ぎりぎりいっぱいできることは何か。こういうことで、特に赤字公債、特例公債の発行の減が、一・二五兆円でございましたが、三千四百億円カットすることにとどまったことは、決して私は十分だなどとは思っておりません。それは六年後に続く決意であるということで取り組ませていただきました。  御理解を得たいと思います。
  79. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵大臣がいろいろと努力されたということは、私も率直に受けとめたいと思います。  しかし、一国の大蔵大臣は、ただ全力を尽くしたというだけでは決して責任を回避できるものではないことは、よく御承知のとおりでありまして、そうした信念あるいは法の要求とずれておるということについては、私は、政治的な責任を十分に感じていただきたいというふうに思います。  昨日、経済企画庁長官、尾身長官はこのような答弁をされました。減税効果がないということについて、いろいろ議論がありました。効果がないと長官自身が言われた、その減税を使った景気対策を決断していただき感謝しております、感謝しておりますという言葉を使われました。  自分の持論やあるいは信念や主張に反した政策の転換が行われて、なぜ、一閣僚として感謝しなければならないのですか。御答弁をお願いします。
  80. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 昨日も申し上げましたが、私は、減税自身が効果がないというふうに申し上げてはおりません。  経済の実態から見て、かなり長期にわたる財政出動、公共事業等を中心とする財政出動をしたにもかかわらず、日本経済はそれなりに下支えはしてありましたけれども、しかし、日本経済が順調な回復軌道に乗らなかった理由は、構造的な要因がある。それは、例えば製造業の空洞化とか、あるいは古い体質の日本経済の制度疲労の問題とか、あるいはバブル後の不良債権の処理が進んでいなかったというような構造的な問題がある。  そういう中で、財政事情も厳しい折であるから、むしろ、財政出動ではなくて民間活動中心の、民間需要中心の経済構造改革の方向に進めながら、経済を新しい方向で発展させていくということが正しい方向ではないかというふうに申し上げました。その結果として、例えば法人課税の減税とか有価証券取引税の減税とか土地関係の譲渡益課税の減税とか、そういうこともやりましたし、規制緩和もやって、方向性は私は出ているというふうに考えているわけでございます。  ただしかし、そういう中で、御存じのとおり、アジアの経済の状況、あるいは特に金融システムに対する不安感というものが出てまいりまして、経済が非常に難しい状況になってきた。しかも、先ほど申しました、民間活力中心の経済構造への転換という意味におきます、いろいろな法律とか予算とか税制改正とかいうものは今度の国会に出すわけでございまして、それが実際に発動されて効果を持つに至るのは四月、五月以後になるというのが大部分であります。  そういう状況のもとで、この一月—三月、クレジットクランチの問題も含めまして、大変に経済運営の際に重要な時期になってくる。そのちょうど重要な時期になってくるときにおいて、総理がぎりぎりの決断として、アジアの経済状況も踏まえ、金融システムの問題を踏まえて、特別減税二兆円を決断されたことについては、私は、その一月—三月という大変大事な時期にこの金が出ていくわけでありますから、大変に大事なことであり適切な判断である、そのように申し上げた次第でございます。
  81. 岩國哲人

    ○岩國委員 経済企画庁長官のそういう景気判断というのは、大変重みを持っておるものであります。例えば、九一年三月のこの予算委員会で、当時バブルが崩壊し、さらにそれが深刻な不景気に入っていくであろうという局面の九一年三月、当時の経済企画庁長官が、倒産の件数、そしてその内容を分析し、その中で、バブルの整理がつきかかっているのかどうかの一つの判断になりつつあると、ようやく出口が見えたような発言をされ、そしてまた総理が、当時の総理でありますけれども、企画庁長官の判断を受けて、五十二カ月目に入っております景気の拡大というものを、物価の安定に十分注意しながらこれからも長続きさせていきたい。こういう長官と総理の景気判断というものを見れば、国民は、ああ、これでもうバブルの深刻な影響というのはこの辺でそろそろ終わるんだな、このような受けとめ方をするわけであります。それがいかに間違った判断であったかは、その後の歴史が証明しております。  であるがゆえに、私は、尾身長官には、学生時代の下宿の先輩ではありますけれども、ぜひ的確な判断をしていただきまして、これからの難しい経済運営の判断そのものが間違うということのないように、この一年間、判断は外れっ放し、タイミングはずれっ放し、この一年間のためにどれだけ国民が塗炭の苦しみを味わいつつあるか、そういったことも十分認識して、的確な判断を常に下していただきたいと思います。  次に、質問を変えまして、金融安定化対策についてお伺いしたいと思います。  こうした金融安定化対策について、再三引用して申しわけありませんけれども、メリルリンチの調査部はこのような紹介をしております。  金融システム安定化策は、一九三〇年代に米国で適用されたRFC、金融復興公社をモデルにして、銀行資本注入しようとしている。しかし、三二年につくられ、一時的小康状態を保ったが、アメリカは再び金融不安に陥り、混乱はアメリカ全土に広がった。三三年にアメリカ銀行のうち四三%は閉鎖を余儀なくされた。約半分が消えるような金融不安に陥ったということであります。そして、RFCについては、歴史的な評価としては、悲劇的に不十分であった。要するに、見事な失敗例だったとしてここに紹介されております。  こうした事実を踏まえて今度のこうした三十兆円のスキームというのを検討しておられるのかどうか、その点について御答弁をお願いします。
  82. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  米国におきまして、大恐慌の後にRFCというものをつくったわけでございますが、事態がだんだんに深刻になりまして、そのうち、ちょうど今先生の申されたような年代でございますが、相当思い切った資本注入をやりました。それは、株式の購入もございますし、また劣後債等の購入もございます。結果としては、そこで金融機関、約半数ぐらいにわたっていると思いますが、そういった資本注入をやって、やっと立ち直らせたという状況でございます。  最終的に締めてみましたら、国としては、これは、伝わっている情報によりますと、損をしないで、むしろ益が出たというふうに言われておりますが、いずれにせよ、そこで思い切った資本注入策をとることによって、この大恐慌からやっと抜け出した。  そのときに、やはり一番問題になったのは金融不安であったわけでございます。その金融不安が、今先生の御指摘のとおり、少し手を打っただけではうまくいきませんでした。そこで、思い切ったそういった手をとった、こういうのが歴史だというふうに私どもは聞いております。
  83. 岩國哲人

    ○岩國委員 歴史に学ぶということは大変大切なことでありますけれども、とりわけ、失敗例に学ぶということはより大切であると私は思います。  そうした一九三〇年、三二年、三三年というのは、当時のアメリカ銀行は証券業務を兼営しておった時代。いろいろな今の金融システムと全く違う。そういう違った歴史、違った環境の中のものを持ってきても、もちろん、そのとおりで成功するとは思っておられないと思いますけれども、私は、大変問題がある発想ではないかと思います。  こうした、銀行そのものが、例えば預金保険の強化については、預金者を保護するという考え方そのものに私は反対するわけではありません。しかし、人から預かったお金を返すのが、銀行の最大の責任じゃありませんか。極端に言えば、それが最初で最後の責任だと私は思います。個人の場合でも、全く同じこと。人から借りたお金を返さない人間は世間では何と言われますか。人間のくずと言われます。  なぜ、日本の立派な銀行が、個人がきちんとやっている、借りた金を返す、預かった金を返すということさえもできないような、そして、国民の税金を使ってまでそれを助けてもらわなきゃいけないようなことになってしまうのですか。私は、もっと平均的な納税者の感覚に、理解力にわかるような政策を打ち出すべきではないかと思います。  あれだけの立派な建物を持った銀行がなぜ預かった金が返せないのか、これは庶民の素朴な疑問であります。アメリカの最大の銀行シティバンクは、マンハッタンの真ん中にある自分の本店の立派なビルを売ってしまったではありませんか。どこで仕事をしているか。家賃を払って、そのビルの中で仕事をしております。  自己責任のとり方というのは、これぐらいの思い切ったことをまず実行させることじゃありませんか。本店を売った銀行がどこにありますか。支店さえも売っていない。にもかかわらず、庶民の税金が三十兆円というスケールで使われてしまう。  私は、預かったお金を返せない人間が人間のくずと言われるように、世界の銀行の中で、そういう不況の中の税金を使ってまで、銀行の国際競争力というものをつけなきゃいけないことがそれほど大切なものかどうか、大蔵大臣の御感想をお願いします。
  84. 三塚博

    ○三塚国務大臣 経営破綻に追い込まれ、多くの方に迷惑をかけるだけではなく、大きな社会不安の種をまくということはあってはならぬことでありますことは、御案内のとおりであります。大蔵省の金融行政も、そういう意味では、その視点をしっかりとにらみ、銀行は信頼できる、安心だということでありました。  これが、昨年の夏以降の急激な変化、私どもの予想を超える変化でありました。絶対次の時代を担うであろうと折り紙つきのアジアのポテンシャル、アジアの現況、こういうものが金融不安ということで深刻な問題を投げかけました。我が国においても、山一証券、拓銀、大手が倒産に追い込まれるという深刻な状態になりました。  そういう中で、政治として、政府として大事なポイントは、お預かりしたお金をしっかりとお返しを申し上げるという万全の対策をとることが重要である。これは大前提で、各党とも異論のないところであろうかと思います。その手だてを完全につくり上げて、お示しをしなければならぬというのが安定化法の大きなねらいであります。  同時に、予想を超えるこの変化が経済恐慌、総理の言葉をかりれば、日本発恐慌は起こさない、これが国家として、政府として極めて重要なこと。こういうことの中で万全の備えをするということで、法律改正をいたしまして、危機管理勘定を設けさせていただきました。三兆であります。ウエートの高さ、個人預金をお守りしますし、必ず破綻の場合でも御返還申し上げますということで七兆。そういうことで、こちらにも十兆、十兆と政府保証をさせていただきました。  社会的また経済、金融の不安感を解消、払拭する、こういうことで安心をいただきますために三十兆の枠組みをつくったことは、御承知のとおりであって、国債は償還しなければなりません。しかし、政府保証で借り入れた十兆は、資金繰りのために臨機に応変していかなければならないわけでございますから、その措置として政府保証をおのおの十兆円つくらせていただいたところでございまして、優先株の引き受け等を行うことにより、清算できるときには、願わくば損が一銭も出ない形であってほしいなと願います。  ロスが出た場合は国債で償還、七兆、三兆の世界に入るわけでございますが、今後、仕組みを、法令にお示しいたしましたとおり、審査委員会、監査委員会、きっちりとしたものをつくらせていただきながら、決定のプロセスも国民の御理解を得られますように、厳正なものとさせていただいたところでございます。  いかなる事態に当たりましても、機動的に対応できる体制というのが、政府保証の十プラス十の二十兆でございます。
  85. 岩國哲人

    ○岩國委員 御説明を伺いましたけれども、私は、十七兆円も、そして十三兆円も、びた一文税金をこうしたスキームに投入してはならないと思います。十七兆円は銀行が預かったお金を返すためのそのためであれば、預金保険料が毎年五千億円近く支払われております。十年で五兆円ということになります。また、この五千億円そのものも、昨日の議論でもありましたけれども、もっと引き上げるべきだと思うのです。  現に、バブル崩壊後、低金利政策という名のもとに、約十五兆円が庶民の財布から銀行へと所得移転しております。それだけの壮大な所得移転起こして、国民の犠牲のもとにおいて、銀行の業務利益が年々向上したではありませんか。低金利政策において犠牲となった納税者の税金を使うという発想ではなくて、奪われた預金利子を預金保険料として一部お返しするという発想へ持っていくべきではありませんか。  これから払うべき、十年間で五兆円、あるいは、預金保険料率をアメリカ並みに三倍とすれば、十五兆円。十五兆円の債務証書を各銀行に出させて、その債務証書を担保にして政府保証債を預金保険機構が発行する。あくまでも第一義的に銀行預金保険料は払う。その方が、はるかに私は筋が通っていると思います。  預貯金というのは、日本人だけではありません。島根県や世田谷、宮城県の人だけが預貯金をしているなら、私も、もう少しこういうことに対しては理解が持てるかもしれませんけれども、このビッグバン、グローバリゼーションの時代においては、外国の預貯金者も同じように保護するわけです。フロリダに住んでる社長の預貯金を日本の私がなぜ払う、こういう庶民の率直な感情に対して、どのように御説明いただけますか。
  86. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  保険料をもっと引き上げてシステムの内で賄ってはどうかという御説だと思いますが、マネーセンターバンクの場合を申し上げますと、マネーセンターバンクにつきましても、七倍の引き上げによって相当な負担になっております。競争相手であります米銀は、今はほとんどゼロでございます。そういった問題が一つあるということ。それから、さらに上げたときに国際的な評価がどうなるかという問題があります。  それからもう一つ、中小金融機関のことも考慮に入れなければいけません。中小金融機関の業務純益はそれほど多くありません。今その業務純益で比較しますと、九%を超えているところが平均でございます。恐らく相当な負担になっております。これ以上上げた場合には、中小金融機関は相当苦しくなります。それに依存している中小企業、これがやはり相当な影響を受けるということも考えなければいけません。今まで一倍だったのを七倍に上げたわけです。それでまた、中小金融機関の努力で何とか今は賄っております。  ただ、十年度末までには見直すということにしておりますので、これを一切動かさないということを申し上げているわけではございませんが、今、こういった経済的な状況のもとで、この保険料を直ちに賄うように引き上げ、あるいは少々出させて、それを引き当てにするということが適当かどうかということは総合的に考えなければいけない。  日本全体のシステムに対する海外の信認、あるいは中小企業の置かれている立場、そういったものを総合的に考えながらこの保険料の問題を考えていくべきものと考えております。
  87. 岩國哲人

    ○岩國委員 今の局長の答弁には、二つ問題点があると思います。  一つは、中小金融機関の問題でありますけれども、これは、規模に応じ、あるいは利益率に応じ、自己資本比率に応じ、もう少し調和のとれた形で、小さなところにそれだけの過大な負担が生じないような案というのは、十分に検討できるのではないかと私は思います。  そして、今、このような環境の中でと言われますけれども、それは、銀行の方ばかりをあなた方は見ていらっしゃるから、銀行が苦しんでいると。国民はどうなんですか。銀行だけが不景気で、国民は好景気、こんな状態ではないわけです。苦しいときは国民もみんな同じように苦しんでいるわけです。その大切な税金をなぜそのように、少なくとも今の説明では、利益を上げていらっしゃる。利益も上げられないような中小企業はたくさんあるではありませんか。そのような人たちのことをもう少し配慮したスキームに変えていくべきだと私は思います。  そうした銀行の負担、今の負担ではなくて将来的な負担というものを担保にしながら、将来の預金保険料の収入というのを担保にしながら、直ちに国債ではなくて銀行債を発行すべきではありませんか。それを預金保険機構の資金の充実に使うべきだ、私はそのように思います。  次に、十三兆円についても、貸し渋り対策として、このような自己資本の充実ということが叫ばれております。確かに、BIS基準に対応させて、そのような対応を今まで怠っておったということにも問題があろうかと思いますけれども、土地の再評価あるいは株式含み益の資本繰り入れ、土地と株式の利益というものを自己資本に転化させることによって、国民の税金で優先株を買うという、ややこしい、こそくな、そして国民に負担を感じさせるようなやり方でない、王道を行かれたらどうなんですか。  自分の持っている土地や株式という、自分の財産をまず使うことです。さっきも申し上げました。アメリカで一番の銀行は売却までしてしまったのですから、再評価どころか。なぜ、そのようなことが日本の銀行にはできないのか。大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  88. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、BIS基準あるいは国内基準というものが、一つの大きなクリアすべきものということであります。特に、BIS基準は国際的基準でございますので、それを下回った場合、例えば外貨調達がほとんどできないというような深刻な事態になるわけでございます。  したがいまして、自己資本充実というのは急務であります。そのときに、今おっしゃったような、土地の再評価、あるいは株式の含み益云々とおっしゃいました。いろいろな手だてというのはあると思います。それも総動員する必要もあると思います。  また、加えて、それだけで十分かどうかということになりますと、三月期の株価等はわかりません。三月の状況がわかりません。これが二月に入りますと、あるいは三月に入りますと、その三月の末の株価等を非常に気にしながら、金融機関は行動するわけでございます。そうしたときに、あらゆる方策を、手だてを用意してあげるということは、大変に安心感を与えるわけです。安心感を与えるということが、金融不安を、不安が不安を呼ぶという悪循環をとめることができるのではないかと思います。  それから、自分の社屋あるいは土地を売ってはどうか。  それは確かにそういうやり方もあります。一つだけ例を挙げさせていただきますと、昨年十一月に、ある銀行でかなり取りつけ騒ぎ的なものが、ある地方で起きました。そのときの理由は、そこの銀行がどうも本社の社屋を利益を上げるために売った、すると、本社を売るほど悪いのかといううわさが立った。  こういうことでございますので、確かに筋論としては、先生のおっしゃるとおり、そういう手段はあります。しかし、国民の皆様方はいろいろな受け取り方をするということも考えなければいけないというふうに思っております。
  89. 岩國哲人

    ○岩國委員 そういった、本店を売るほど悪いのかといった見方も、それはあり得るでしょうけれども、そうすると、銀行員の給料を下げなければならぬほど今銀行は苦しんでいるのか。この点については、どういう説明をされるのですか。  今一生懸命、銀行局長として、下げろという指導をしていらっしゃるでしょう。それは、経営が苦しいからそのような指導をしていらっしゃるわけであって、今のように、資産の売却といったことが直ちに風説の根拠になるということでもって、銀行に支援をしなければならないという考え方そのものが、私はおかしいと思います。  ここで、大蔵大臣にひとつ検討をお願いし、あるいは所感をお願いしたいことがあります。  それは、四十五兆円という株式を日本の全銀行で所有しております。これは、投資目的もありますけれども、今までいろいろな義理、そういったものもあった。米国から要求されております、株式の持ち合いというものを、もっと比率を下げなければならない。残念ながら、下がってはおりません。  今このような時期に、優先株ではなくて、銀行の持っている株式を買い上げて、共同証券あるいは証券保有組合、このような前例もあります。そのような方向の方がはるかに、市場性のあるものを公的資金で保有し、そしてマーケットで売却する、もちろん利益が出るような将来においてでありますけれども。  今の局長の答弁にありましたように、三月末だ、九月末だ、決算期末の株価のアップダウンに一喜一憂する、そのような経営体質を少しでも変えていくためには、持っている株式を、四十五兆円の半額二十三兆円ぐらいを公的資金で保有してしまう。その方が銀行の体質改善にもそのままつながるのではないでしょうか。市場は必ず好感する、私はそのように思います。  このような案については、もう既に検討をされたことなのかどうか。
  90. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ビッグバンは、ロンドン並み、ニューヨーク並み、公正公平、グローバルスタンダード、国際基準、こういうことで、資本主義経済下におけるセンターとしてのオープンなマーケットにつくり上げるということでございます。  危機的状況に近い今日、優先株を引き受けますのも、発行したものをこちらが買い上げる、こういうことの原則であります。委員御指摘のように、それを、持ち合い株を公的資金で買うということになりますと、かつての護送船団という御批判に直ちにリンクするでありましょうし、国営化に向けてという誤解も受けるだろうし、そういうことどもを考えますと、今日はオーソドックスに取り組むべきである。救うべきは銀行ではございませんで、信用秩序であります、国民生活そのものであります。そういう点で、大きな歯どめをかけながらこれに対応をしていく、こういうことになります。
  91. 岩國哲人

    ○岩國委員 今の大蔵大臣の答弁でありますけれども、そういった護送船団につながることはないと思います。持っている株式を半分までは買い上げますよと。売りたいところは売るでしょうし、売りたくないところはそのまま持つでありましょう。しかし、これを絶好のチャンスとして、売ってしまえば、あと何の行政というひもはつかないわけであります。そうした点からも、そういった体質を改善させるということ。  それから、証券市場というのは、たとえ優先株といえども、株数がふえれば需給関係は悪化し、株価は下がります。しかし、それを一時的に凍結するということは、実質的な株数を少なくすることによって需給関係を好転させ、そして結果的に、三月末だろうと九月末だろうと、株価に対して大変大きないいインパクトを与えることになるわけですから、ぜひこれは御検討いただきたい。再三引用して申しわけありませんけれども、メリルリンチはこれを提案しています。四十五・六兆円、これを使うべきではないか、そのような提案をしております。  最後に、政治倫理についてお伺いいたします。  自民党の新井代議士が日興証券から四千万円の利益供与を受けておった。一年四カ月の間に四千万円。その間に株式市場が約二割下がっていることを考えますと、一億円に対して六割の大変な運用成績であります。これは、ごく自然になったとはとても思えないわけでありまして、六千万円のそうした不当な利益供与が日興証券の犠牲において行われたとみなさざるを得ないと思います。  これについて、日興証券を業務監督しておられる大蔵省として調査はされましたか。また、新井議員に対してどのような調査をされましたか。調査をしておられるかどうか、それについてお答えいただきたいと思います。大蔵大臣
  92. 長野厖士

    ○長野政府委員 証券市場におきまして違法な行為があるか否かにつきましては、証券取引等監視委員会が調査をすることになっております。四大証券につきましては、昨年来さまざまな調査、捜査当局の手にまでわたった事案があったことは御承知のとおりでございますけれども、そういった全体の調査がなお継続されておると承知いたしております。
  93. 岩國哲人

    ○岩國委員 調査中ということでありますけれども、調査終了の時点はいつの見込みでございますか。
  94. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  私ども、市場取引に関するいろいろな資料情報を集めまして、その分析の上に立ちまして、証券取引法に違反する疑いのある取引が出てくれば厳正に対応する、法の定めに従いまして厳正に対応するというところで、現在、そういった考え方に立って対応をしているということでございます。
  95. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵大臣にお伺いします。あるいは橋本総理から。  これは、自民党としては、所属している国会議員がこのように大きく新聞に報道され、そして本人も、他人の名前を使って取引したということをはっきりと認めておられるわけです。他人の名前を使うということは、一般人にしても、これは褒められたことではないわけです。しかも、総選挙、私の名前を書いてほしい、他人の名前ではなくて自分の名前を書いてほしいと。そうして見事当選された方が、当選されたら直ちに人の名前で取引をするということは、これは政治家の品性を疑われることになるのです。  自民党の総裁として、これは調査をされたかどうか、お伺いいたします。
  96. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、法に違反するかどうかについて、これは当局が厳正な対応をするものと考えております。  その上で、党は既に、こうした問題が報道されました時点で、それぞれの立場の方たちから、新井議員に対してその時点において聴取をしたと承知をいたしておりますが、改めまして、一昨日、党の執行部に対し、調査をするように指示をいたしております。
  97. 岩國哲人

    ○岩國委員 各政党には公的助成金というものが支払われます。これは新井議員の分も、これは自民党にその分が入ってくる。そして、離党勧告をされるとするならば、まず最初に、新井議員一人分の公的助成金については返上されるというふうなお考えもされるかどうか。総理にお願いいたします。
  98. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、一昨日、改めて調査を指示したということを申し上げました。  報道で報ぜられておりますことと、一昨日調査を指示したという段階において、ここで結論を持って臨むことはどうぞ差し控えさせていただきたいと思います。
  99. 岩國哲人

    ○岩國委員 私もそろそろ交代させていただきますが、最後の一問。  山一証券に対する日銀特融、つまり国民のお金を使って山一を救済する、この発表はたしか長野証券局長がテレビでされたと理解しております。大蔵大臣ではありませんでしたね。北拓のときは大蔵大臣でした。  今から約三十年前、山一証券が日銀特融を受けたとき、あのときはだれが発表されましたか、大蔵大臣
  100. 長野厖士

    ○長野政府委員 まず、今回のことにつきましてお答えさせていただきます。  今回の特融の発表は、私がやったのではございません。私は、十一月二十二日に、山一に簿外負債があるという事実関係を報告するようにという大臣の御指示で、その発表をいたしました。特融に関します発表は、十一月二十四日、三塚大蔵大臣及び松下日銀総裁から行われております。  前回の山一の特融につきましては、四十年五月二十八日、当時の田中大蔵大臣及び宇佐美日銀総裁から発表されております。
  101. 岩國哲人

    ○岩國委員 国民に衝撃的な発表というのは、二十二日であります。そして、そのときに大蔵大臣のお顔はありませんでした。私は、なぜだろうと疑いました。宮城県に補欠選挙の応援にでも行っておられるのかな、そのようなことも考えました。  あの大事な発表、そして国民にとって衝撃的な記者会見というもの、そのときに大蔵大臣はどこにおられたのですか。
  102. 長野厖士

    ○長野政府委員 当日は土曜日でございまして、新聞にいろいろな報道がなされておりました。まだ決定されていない段階での、さまざまな憶測の報道でございました。それに対しまして、事実をもってコメントしておくようにという大臣の命を受けて、私が事実関係につきまして発表したわけでございます。
  103. 岩國哲人

    ○岩國委員 大蔵大臣は、そのときどこから指示されたのですか。
  104. 三塚博

    ○三塚国務大臣 それは前日だと思っております。報道がどんどん先行いたしておりました。そういうことについて、事実関係というのを明確にすることが大事、こういうことで申し上げたというふうに……(岩國委員「大臣はどこにいらっしゃったのですか、都内ですか」と呼ぶ)都内です。都内でしたか、ちょっと後で調べて、正確に申し上げます。
  105. 岩國哲人

    ○岩國委員 私の時間が終わりましたので、これで終わりますけれども、かつて山一証券の特融事件、そして山一のそうした経営破綻というものを発表されたのは当時の大蔵大臣田中角栄さんです。堂々と、この難しい問題、国民の耳にとって決してうれしくない発表を、大蔵大臣みずからが自分の声で、自分の言葉で語られたのです。なぜあのときに大蔵大臣がそれをなさらなかったのか、私は残念に思いました。  宮澤元総理はこの席に立って、今一番の問題は景気の悪いいいではなくて、金融にとって一番の問題は疑心暗鬼だという言葉をお使いになりました。これが大切だと私は思います。大蔵大臣がみずからの言葉で、そして、まさにお好みの不退転の決意でもって、そのときに堂々と山一の経営破綻についてお話しになるべきだったと思います。これは一証券局長説明するべきことではないのではないでしょうか。  しかも、この自主廃業の結果、日銀特融に必ず行くということは百も承知の上で一証券局長説明を代行させられた。そのような大臣の政治家としての見識を私は疑わざるを得ないということを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  106. 松永光

    松永委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、松沢成文君。
  107. 松沢成文

    ○松沢委員 民友連の松沢成文です。岩國代議士の残り時間を、補正予算関連について質問させていただきたいと思います。  まず基本的な問題から始めたいと思うのですが、総理、九七年度の補正予算の目的とその特徴、そして、これからの審議でありますけれども、それに関連しますので、九八年のいわゆる当初予算、本予算の編成に当たっての基本ポリシーをもう一度、簡潔に御明示いただきたいと思います。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 九年度補正予算と十年度予算というお尋ねでありますけれども、まず共通して申し上げなければならないこと、それは、いずれも、二〇〇三年までを法的に定めております中期的な目標であります財政構造改革の推進という中で、もう一つは、当面のアジアを初めとする内外の厳しい経済金融情勢に対して臨機応変に対応するという、そのタイムスパンの異なる二つの課題にこたえるべく進めてきたということであります。  九年度補正予算は、これから二月、三月にかかっての予算であります。現下の経済金融情勢というものを考えまして、二兆円規模の特別減税金融システム安定化対策としての十兆円の国債の交付といった施策を盛り込みますとともに、八年度決算剰余金の処理について、その二分の一を国債整理基金に繰り入れ、残りの二分の一を特例的な歳出削減措置の処理に優先的に充当する、こうした考え方をとってまいりました。  なお、つけ加えさせていただきますなら、公共事業につきまして真に必要なものを積み上げたその結果として、事業規模約一兆円の災害復旧事業などの公共事業の追加とともに、効率的な公共事業の執行等を図りますために、公共事業規模として一兆五千億円のゼロ国債の確保を図ることといたしておりまして、そうした点において、景気にも最大限配慮した中身になっております。  同時に、十年度予算は財政構造改革法が成立をいたしまして初めての予算ということもあり、一般歳出を五千七百億円、一・三%縮減をすると同時に、一兆一千五百億円の公債減額を達成いたしました。  同時に、例えば経済構造改革という視点におきまして、歳入面で、法人課税、金融・証券税制あるいは土地・住宅税制等におきまして八千四百億円程度の政策減税を行っている。同時に、歳出面におきましても、将来の経済発展に向けての基盤整備という視点も含め、科学技術振興費に対し、創造的、基礎的研究の充実に配慮して、対前年度四・九%の増額を行っている、こうした特色を持った形のもの。  なお、細かく申し上げればまだありますけれども、要点を拾わせていただきますと、こうしたことを御報告するということになろうかと思います。
  109. 松沢成文

    ○松沢委員 今総理から二つの予算の特徴をるる述べていただきましたけれども、まあ国民にわかりやすく言うと、例えば中学生でも理解できるような表現で言うと、今回の九七年度の補正予算というのは、二兆円の減税と公共投資の追加、これを国債で賄うという、景気浮揚のための予算ということになると思うのです。これに対して、九八年度の予算というのは、十一月に成立した財政構造改革法のもとに、財政構造改革の初年度として位置づけた、そのルールによって編成された予算、こういうことになると思うのですね。  私がここで問題にしたいのは、同じ十二月に、補正予算では景気浮揚のために非常に前向きな姿勢を打ち出して、そしてその直後に、一九九八年度の予算ではそれを逆に引き締めた超緊縮型の予算を打ち出す。この同じ十二月に、一方で経済活性化を打ち出して、他方でそれを打ち消す、こういう形になっているわけですね。  やはり私は、予算の編成というのは政府政策を示す最大の象徴だと思うのですね。それを、同じ一カ月の間に、超景気浮揚型、それに対して超緊縮型、これを二つ打ち出すようなことでは、とても国民にとってはわかりにくい。ましてや、今の中学生にとっては、政府というのは今どっちを向いて政治をやろうとしているのか、こういう疑問を抱くと思うのですね。  私は、ちぐはぐで一貫性のないこの政府の予算というのが景気の先行きにも混迷度を深めて、そして逆に経済を萎縮させて、市場国民の不信を買っているのではないか、こう思うのですけれども、総理はいかがでしょうか。
  110. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、議員の御意見は御意見として承りました。構造改革法成立後初めての予算だという御指摘も、そのとおりです。  その上で、今、将来を考えましたときに、私は日本の科学技術の振興というものは極めて重要なことだと思います。ですから、まさに創造的、基礎的研究の充実というものに配慮しながら、科学技術振興費は、その予算の中でも前年度に比べて伸びております。  あるいは、公共事業は、ひところ国会の御論議の中でも、あるいはマスメディアの扱いでも、公共事業というと、諸悪の根源のような言われ方をさんざんした時期がございました。そして、その公共事業というものを我々は見直してまいりました。当然ながら、縮減しろという声もあり、そうしたものが構造改革法にも反映していることは、御承知のとおりです。  しかし、その中で、物流の効率化対策に資するものを中心とした経済構造改革関連の社会資本整備、あるいは生活関連の社会資本についての重点的な整備、将来を見据えた配分というものもあることを、私は、中学生の諸君は見落とさないだろうと思います。
  111. 松沢成文

    ○松沢委員 今細かい点も御指摘をいただきましたけれども、橋本総理は、財政構造改革をやらなければいけないということで、六大改革の一つに掲げて、これを政権の最大の命題として取り組んできたわけですね。  ただ、やはり今回の補正予算というのは、赤字国債を発行して公共投資をやる、減税をやるということで、この財政構造改革路線の精神には逆行した予算であるというのは、私は正しい見方だと思うのです。となると、なぜこの一九九七年度の補正予算をこういう形で組まなければいけなかったのか、その最大の理由を端的に教えていただきたいと思います。
  112. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、しばしば既に御答弁を申し上げたことを余り繰り返して申し上げるのも、これは失礼だと思います。  そして、私は、しかし財政構造改革というものが、我が国の危機的な財政状況というものを考えるときに、必要でないとおっしゃる方はだれもないと思うのです。そして、その必要性は変わらないと思います。同時に、経済情勢あるいは金融情勢、さらに国際的な状況に応じて、財政、税制などの措置を通じて機敏に対応する、これも政府の役割だと思いますし、二者択一の課題だと私は思っておりません。  中期的なスパンで考えていくべき、また考えて、現に財革法もそうです、中期的な目標を定めています。そういう考え方と、現実に必要な対応を私はやってはならないということではないと思うのです。  そして、今御審議をいただいております九年度補正予算並びに特別減税を初めとする関連諸法案、さらに平成十年度の予算案、そしてこれと一緒に御論議をいただきます政策的な減税措置、こうしたものが、規制緩和等いろいろなものと相まって、日本の経済というものを回復軌道に押し上げていくものであって、これが議員が今規定されたような姿のものではない、私はそう考えております。
  113. 松沢成文

    ○松沢委員 私の認識は、本予算の編成の過程の中で、やはり景気対策をしなければいけないような状況に陥ってきた、それに気づいたから、焦ってこの補正予算を組んだとしか思えないのですね。  消費税の引き上げ、それから特別減税の打ち切り、医療費の負担増などで九兆円の国民負担増、これで景気低迷してきた。それで株価も下落してきた。資産デフレもひどくなってきた。大手金融機関の相次ぐ経営破綻日本経済が本当の危機的状況になってきたのですね。また、これがアジア諸国あるいは世界経済にも大きな影響を与える可能性が出てきた。このままじゃまずいということで、この補正予算を組んだのだと思うのです。  簡単に言えば、超緊縮財政が景気悪化をもたらして、それが株価下落につながって、またそれが金融不安につながって、その金融不安がまた株価下落を引き起こして景気をさらに悪くするという、最悪の循環に陥ってきた。これは、このままではまずい。だからこの補正予算を組まなければならなかった。私はこういう判断をしているのですが、総理、いかがでしょうか。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  114. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 議員のお立場から、議員の御意見をまとめられたものとして伺いました。  そして、これは、昨年来また今国会になりましてからも、何回か御答弁を申し上げておりますけれども、私どもは、消費税の二%の税率の引き上げ、また特別減税の廃止というもの、これに耐えられると考え、その方針を選択いたしました。そして、私どもの予測どおり、あるいは予測を少しオーバーいたしまして、昨年ですが、一—三月に駆け込みの需要が発生いたしました。私どもは、四—六月はそこに影響が残るであろう、しかし、年度の後半になれば、それはなだらかなものになっていき、回復の軌道に自律的に乗っていくと判断をいたしていたことを、これは否定も何も、隠してもおりません。  そして、先日来、それを申し上げるたびに、人のせいにするという言葉をいただきますけれども、タイのバーツ危機というのは、日本が招いたものではございません。その後にアジアの各地域で起きたものも、我が国はそれを何とかとめようと今も努力をしている、その側の国でありますし、しかし、そういう状況が日本の経済に反映しなかったはずはありません。  そして同時に、我が国の金融機関破綻が秋以降相次いだことも、これもそのとおりでありまして、結果的に、回復の軌道というものがとまり、むしろ消費動向に非常に厳しさの見える状況になってまいりました。そして同時に、補正予算、これは必要とされるものを当然のことながらいつでもつくっていくものでありますけれども、議論が並行し、タイミング的に本予算編成と同じ時期になってきた。その補正予算の中には、特にこの一—三月というものを考えた対策が用意をされた。  私の立場からはそのように申し上げます。
  115. 松沢成文

    ○松沢委員 総理からの御答弁は相変わらずなわけでありますけれども、ちょっと話を振りまして、きのうも議論に出ましたけれども、一月十七日の朝日新聞の夕刊の額賀官房副長官の訪米の件について、もう一度ちょっと確認をしたいと思うのです。  額賀官房副長官は、一月に訪米をして、スパーリング大統領補佐官、サマーズ財務副長官等々と会談をして、そのときに、報道によりますと、四月にも二兆円の特別減税の継続と所得税減税の積み増しを中心とした九八年度の大型補正予算編成に着手をするというようなことを、米政府にその意向を伝えたというふうに報道されているのですね。  それに対して、総理は、そんな事実は絶対にないということで否定をされて、また昨日は、ここに額賀官房副長官が出ていらっしゃって、そのようなことはないというふうに打ち消したわけです。また、朝日新聞には誤報だということで抗議をしているということでありました。  ただ、官房副長官が訪米をする。この訪米については総理は知っていたわけですね、訪米をするということは。それで、アメリカに行って、アメリカ政府要人と経済問題あるいは安全保障、外交の問題もそうかもしれません、意見交換をしてきてくれ、あるいは情報を得てきてくれ、こういう指示はなされていたのではないでしょうか。
  116. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは、私自身、この前お尋ねをいただきましたときに、そのような報告は受けていないという言い方でお答えをしたと思いますが、その時点で間違いなく額賀さんから、アメリカの訪問中にそうした発言、報道されたような発言はしていないということを聞いておりましたから、そのとおり申し上げました。  そして、事実関係として申し上げるべきこと、これは、副長官から国会閉会中に勉強のために訪米をしたいということを求められて、私は確かに許可を与えました。そして、その時期で、なお相手側が、アメリカでどなたに会うかということまでは、確定していた方、確定していなかった方がありますけれども、こういう人たちに会うつもりという話も聞いておりました。  私なりに、今までその中には面識のある方もありましたし、ない方もありましたが、その方に対する、こういう人物像といった助言はいたしましたが、今あなたから御質問があったような、特別の指示をし派遣をしたということでありますなら、それは全く事実に反します。御本人が行きたいということで、私は、閉会中のことで許可をいたしました。  また、報道のような発言をしたという報告はありませんでしたし、事実、昨日も本委員会で本人がきちんと申し上げましたように、そのようなことを言っていない、報道に対して抗議をしているということを、院のこの委員会の席上の答弁としてもきちんと申し上げております。この点は、本人がここで述べたこと、これを委員会として受けとめていただけることを私は願っております。
  117. 松沢成文

    ○松沢委員 こういう一連の報道もあったり、また、総理の今回の補正予算編成に当たっての理由の多くは、やはり東南アジアの危機、これが一つのきっかけになった。ASEANに行ってきたときも、大変な状況に驚いたということもあるのですが、経済政策というのはあくまでも日本の国民を対象にして行うべきであって、それが主体のテーマなのですね。  もちろん、アジアの経済にも日本の経済は影響を与える、あるいは世界経済にも与える。あるいは、アメリカから、減税をやってほしい、内需拡大をやってほしい、そうしないと貿易赤字がふえてアメリカも困るから、こういう要望も強いと思うのです。  何か総理の答弁、ずっと予算委員会でも聞いていましたけれども、海外のことを非常に気にされている。それはいいことなのですが、国民の経済を立て直すために今私が決断しなければいけないという、そういう意思がなかなか見えないのです。主体性がないように思えてならないのです。その辺については、いかがお考えでしょうか。
  118. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 国民が、また日本国というものがあるのは当たり前のことであります。それが私の仕事の一番の基礎なのです。  その上で、当然ながら、日本は一国だけで生きておるわけではありませんし、経済活動も世界に広がっております。そうした中で、その影響を考え、国にとって、国民にとってよき方法を選択しようとするのは、私は間違ったことではないと思いますし、そのたびに、日本国民のことも考えております、あるいは日本国のことを考えておりますとつけ加えてお話をしなければならないものなのでしょうか。  国家そして国民、この国というものを考え、仕事をするのが当然のことでありまして、その上で、国際的に影響を受けやすい、資源の乏しい、そして貿易を非常に大きな我が国の生き方としている、この日本という国の立場を考えて行動することは、私は誤りだとは思いません。
  119. 松沢成文

    ○松沢委員 ぜひともそういう心構えでやってほしいと思います。間違っても、今後の新たな経済政策が外から入ってくるということではなくて、あくまでも総理の決意は、国会なり記者会見で国民に向かって言っていただきたいと思います。  それで、経済を立て直すために、私たちは野党としてずっと、大型の減税をやるべきだと主張してきました。今回の補正予算特別減税、それに踏み切ったことは評価をするわけですが、今後も続けていく、あるいは恒久化していく、あるいは特別減税だけではなくて制度減税もやっていくべきだ、こういう要求をしているわけであります。  そこでお尋ねをしたいのですが、きょうの朝刊に、「二〇〇三年度赤字国債ゼロ 目標年次の延期検討」、政府・自民党は景気対策を優先して、もうこうした財革法に盛られた路線から景気対策優先の路線に変更することを検討を始めたというふうに書いてありますけれども、これは本当でしょうか。
  120. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 報道の御確認でありますので、報道のとおりにお答えをさせていただきます。  これは時事のファクスでありますが、景気に不安あれば追加措置考える、財政再建はぎりぎり達成可能、加藤氏という見出しのもとに、自民党の加藤幹事長と山崎政調会長は二十一日朝、電話で会談し、財政構造改革について、二〇〇三年度までの財政再建目標を変えないとの認識で一致、財政再建目標の延期は自民党として検討しないことを確認した。これは、山崎氏が、二十日の加藤氏の講演で財政再建目標の延期を示唆する発言について、真意をただしたのに対し、加藤氏は財政構造改革の基本路線は変えない等々、まだ後はありますけれども、ということが報道されております。  そして、きょう、ちょうど十二時半ごろでありましたけれども、幹事長が総理官邸の私のところに見えましたけれども、今引用されました、財政再建を断念する、あるいは延期するといったような御発言は一言半句ありませんでした。
  121. 松沢成文

    ○松沢委員 総理、お尋ねしたいのですけれども、この特別予算の景気対策が生きて、追加的な景気対策をとらないようになるように頑張るんだというふうにおっしゃっております。ただ、もし今後これ以上経済が悪くなっていった場合には、来年度の特別予算をつくるのでしょうか。追加的な減税なり、あるいは公共投資なり、景気対策を打つということがあり得るというふうに考えてよろしいですか。
  122. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 そうしたことにならないためにも、私は一日も早く補正予算、また金融安定化のための施策特別減税、さらに十年度予算、関連する税制改正等々、できるだけ早く国会で成立をさせていただきたいとお願いを申し上げています。  一番の問題は、例えば発表されました施策が、市場としては当然その賛否は別にして織り込んでいくわけですけれども、いつまでもそれが具体化されないというようなことが一番私は影響が大きいと思っています。  ですから、特別減税も二月から実施ができますように、早く御審議をいただきたいとお願いを申し上げましたし、年度の切れ目で予算が執行できないといったようなことのないように、年度がかわりましても、次年度予算がすぐに実行に移せるといった、そうした基本をきちんとしていくことが、今私は一番大切なことだと考えております。
  123. 松沢成文

    ○松沢委員 政府の閣僚の中にもさまざまな景気判断あるいは財政構造改革に対する考えがあると思うのですけれども、先日、小泉厚生大臣がこんな発言をされているのですね。減税の継続には反対だ、赤字国債を使っての減税は不況よりも悪いとおっしゃっているのですが、これはもう財政再建至上主義であって、財政再建を守るためなら不況になってもいい、こういう考えでありますけれども、総理は、この考え方についてはいかがお考えでしょうか。
  124. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 あの、これ、私が申し上げたことであれば私がお答えをする……(松沢委員「それに対してどう思うか」と呼ぶ)いや、どういう場所で、どういう前後の脈絡の中でそれを述べられたのか、私にはわかりません。しかし、社会保障構造改革という点で大変厳しい状況で苦労をしていただいている小泉大臣として、そうした制度の改革というものにいかに、安易な道がなかなかあるものではない、厳しいものを越えていかなければやり遂げることができないといったようなことで話されたとすれば、自然体の流れだと私は思います。
  125. 松沢成文

    ○松沢委員 私たちは、野党として再三指摘してきましたけれども、景気低迷というのはもう異常な状況に来ている、ここで思い切った政策判断をしなければ取り返しのつかない状況になるということで、大型減税を初めとする減税の継続を強く訴えてきたわけでありまして、再度、政府にその政策変更を求めていきたいと思います。  次の質問に移りたいと思うのですけれども、補正予算の中にいわゆるガット・ウルグアイ・ラウンドの対策費が盛られている。今補正予算に緊急米関連対策経費として千七百一億円が計上されています。これはいわゆるウルグアイ・ラウンド農業対策費であると聞いていますけれども、それを確認したい。そして、その中身、内訳について御説明をいただきたいと思います。
  126. 堤英隆

    ○堤政府委員 今回の補正予算の中に、緊急米関連対策ということで千七百一億含まれてございます。中身は、公共事業、いわゆる農業農村整備事業が千二百億円、それから非公共事業といたしまして、農業構造改善事業等でございますけれども、これが五百一億円でございます。  中身につきましては、ウルグアイ・ラウンド対策でございますけれども、後でまた御質問があるかと思いますが、今の米の需給事情は非常に厳しい状況でございますけれども、そういう中で今回、稲作の経営体質の強化それから転作条件の整備、こういったことを緊急に推進するということで、そのための農業生産基盤整備あるいは経営近代化施設等の整備を緊急に実施する。そういう意味で、名は体をあらわすと申しますか、そういうことをあらわすためとして、緊急米関連対策という形の名前でお願いをしているところでございます。
  127. 松沢成文

    ○松沢委員 これまでも何度も言われてきていますけれども、補正予算というのは、財政法の二十九条にあるように、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊急となった経費の支出に限られているわけです。言いかえれば、例えば災害対策などの当初予算では予測不可能だった事態に対応する緊急性を持った予算であるはずであります。  今御説明いただいた緊急米関連対策経費のどこに緊急性があるのか。また、ウルグアイ・ラウンド対策費が毎年のように補正予算に計上されていますけれども、どうしてなのか。この二点について御説明をいただきたいと思います。農林大臣。
  128. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えをいたします。  ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策の緊急性についてのお尋ねでありますが、平成九年度におきましては、四年連続の豊作、すなわち一〇九、一〇二、一〇五、一〇二と実に四年のいわゆる豊作によりまして、自主流通米価格が大幅に低下いたしました。例えば、七年産米は五・四%、八年産米は二・〇%、九年産米につきましては実に一一・五%、こういう大幅な低下がありまして、いわば農村、いわゆる米の生産者は途方に暮れている、こういう状況にあります。  また、そのために過去最大の生産調整面積の設定をいたしました。新たに十七万六千ヘクタール、二二%の増加ということでございますから、このためには当然にいろいろな手だてが必要になってまいります。その一つとして大区画圃場整備、あるいはライスセンターとかあるいはカントリーエレベーター等の整備が必要となりますし、また水田の汎用化を可能とする圃場整備、転作作物の集出荷設備等の整備が必要になります。  これらを十年度の水稲転作作物の作付時期や収穫時期までに効果を発揮させることが必要であることから、緊急米関連対策に係る経費を補正予算に計上することとしたものであります。これは、いずれも年度内に緊急に本対策を実施する必要があることから補正予算措置したものでありまして、財政法第二十九条に基づき適切に計上しているものであります。  なお、農家も、これでこれから意欲を持って農業に取り組めるという御評価をいただいていることを申し添えます。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 松沢成文

    ○松沢委員 どこまで緊急性があるかちょっと疑わしいところもあるんですけれども、千七百億の予算の中で千二百億円は農業農村整備費と銘打った土地改良事業等の農業土木事業なんですね。これが災害対策などと同じように、緊急を要する必要な予算とはどうしても考えられないわけです。  また、今回の補正予算景気対策型ということでありまして、地方経済の浮揚効果を強調する声も自民党の中には多々あるわけですけれども、この土地改良事業など農業公共事業の経済波及効果というのは極めて私は小さいと思います。一部の農林土木業者が少しお金をもらって事業する、これだけなんですね。この農業農村整備事業のどこに緊急性があって、どこに景気浮揚効果があるのか、もう少し詳しく説明していただきたい。
  130. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  いわゆるUR対策の農業農村整備事業は、農業の体質強化と農村地域の活性化を図るために事業を加速的に推進するものでありまして、残された対策期間内に着実に実施することがまず必要であります。  他方、現下の米をめぐる状況は、今申し上げましたとおりでございまして、大変厳しいものになっております。これに対処するためには、米の品質向上やコストダウンのための大区画圃場整備、そして生産調整面積の拡大に対応するための水田汎用化、いわゆるあらゆる作物、例えば国家が希望する小麦とかあるいは大豆とか、現在大量に輸入に依存しているものに転作をお願いする、こういうことを可能にするための排水条件の整備が必要になってまいります。これらを緊急に行うことが必要でありまして、ただいま申し上げたように、補正予算に計上したところであります。  なお、これは、緊急性がないということについては今の御説明で御理解をいただきたいところでありますが、景気浮揚効果がないのではないか、こういう御指摘でございます。  御参考までに、建設省の資料によりますと、資本金一億円未満の企業への発注率が、少なくも農林水産関係の仕事に関しましては七七%がいわば中小企業といいましょうか、一億円未満の企業への発注になります。また、治山に関しましても、治水と合わせまして六七%ですから、他の道路、下水道あるいは港湾、空港などに比べると、はるかに発注率が高いという意味では、これは中小企業に対する影響が極めて大きい。これは建設省の資料に基づくものであります。  また、そのほか、事業費に占める用地補償費の割合が、構造改善局並びに建設統計によりますと、農業農村設備に関しましては、用地補償費の割合はわずか六%であります。これに比べまして、治水は一六%、住宅が一七%、道路二三%でありますから、用地補償費の面でもその負担は極めて少ないわけでありまして、それはそのままいわば効果につながっていくと言っていいのではないかと思います。  さらに、十億円投資した場合の経済波及効果についてでありますが、農業土木事業に関しましては十八・四億円。そして下水道が十七・九億円、河川事業十五・〇億円、道路、街路等が十三・二億円、これらと比較いたしましても、農業土木事業の経済波及効果は非常に大きい。これは三和総研の資料に基づくものでありまして、御参考までに申し上げます。
  131. 松沢成文

    ○松沢委員 波及効果はともかくとして、大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、昨年の十月十七日の閣議後の会見で、大蔵大臣は、ウルグアイ・ラウンドの補正は組まないと申し上げている、補正予算は、財政法二十九条で必要やむを得ないものと明示されている、農業の問題は農政の問題で議論してもらい、当初予算でやってもらいたい、こう発言しているのですね。にもかかわらず、今回の補正予算の計上となっているわけなのです。  十月十七日から補正予算計上まで、この間にどのような状況あるいは心境の変化があったのか、こうなってしまったのか、御説明いただきたいと思います。
  132. 三塚博

    ○三塚国務大臣 会見で申し上げたことは私は覚えております。また、当委員会財政構造改革に関する特別委員会、岩國委員のときにも申し上げました。そういう中で、速記録をお読みいただければわかるわけでございますが、財政法二十九条に基づき、農林水産大臣と十分協議の上、内閣として適切に処理するという、合意に基づいて対処をしてまいる、こう申し上げておるところであります。  ただいま来、質疑応答の中で、農水大臣から現下の緊急性についてお話がありました。農山村は、やはり意欲がある限りこれを押し上げていかなければなりませんし、意欲が完全になくなるような事態に追い込むということは、政治として避けなければなりません。まさにそれは、緊要性という二十九条の条項に照らして当てはまることである。大幅な生産調整、減反、三五・五%であります。四年度にわたり下落が続く、耕作意欲がなくなる、深刻な声が届く、こういうことの中で、農水大臣と協議の中で、緊急米関連対策経費ということで、新たに項目を設けまして対応してもらうということになりました。  農水省は、キャップのかかっておる農業関係予算の中で、これだけの経費を節減し、捻出した、こういうふうに理解をいたしておるところでございまして、二十九条、緊要なもとでこれを行うという追加の条項に合っておると考えたからにほかなりません。
  133. 松沢成文

    ○松沢委員 調べたところによりますと、大蔵省は、ことしの深刻な米余りを理由に、日本農業の基盤整備を緊急に進めるためということで、緊急米対策費として、当初一千億円規模の補正計上は仕方ないという考え方だったということです。これに対して、農水省が一千九百億円を強く要求してきたのですね。その後の両者の交渉の結果、一千七百億円という数字が出ているのです。これは、足して二で割る安易な妥協策というか、見方によれば農水省の勝ち、ごり押しなんですね。農林大臣、どうやって大蔵大臣を言い含めたのですか、これは。
  134. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 我が国農業の将来展望を切り開こう、そして農村の体質を強化して、いわば農村を活性化しよう、我々政治家である以上、だれしもこう考えることは当然だと思うのです。  ちなみに、私はあなたと同じで都会の政治家で、大蔵大臣はむしろ農村の代表者です。その都会の政治家の私の立場から考えても、同じ日本人でありながら、農村の人たちがどれだけ苦労をし、厳しい自然と闘っているかという現実は、認めざるを得ません。  特に、我が国の農業の場合は、私はついこの間もヨーロッパで力説をしてきたのですが、他の国々と多少趣を異にいたしますのは、何しろ極めて小さな農家一戸当たりの面積の中で農業を営んでおりますが、これは、単に農産物をつくるといういわば社会的な使命だけでなくて、例えば国土の保全とか自然環境の保護あるいは水資源の涵養等々、都会の人たちも有形無形の恩恵を受けているような、いわば多面的な機能というものを農村は担っていると思うのです。  その農村が、このところ、ウルグアイ・ラウンドの農業合意を受け入れたということから、にわかに国際化の波をかぶるわけでありますから、今回のように、いわば自主流通米が急速に下落し、一一・五%、前からずっと積み上げてさらに一一・五%というのは、とてもとてもこれは担い切れる状況にないし、途方に暮れているという現実に触れたために、私はその点を大蔵大臣につぶさに申し上げて、何度もお話し合いをして、御理解をいただいた、こういうことでございます。
  135. 松沢成文

    ○松沢委員 大蔵大臣、あなたが、ウルグアイ・ラウンド対策費は緊急性がなく、補正には計上できないと言っていたのですね。にもかかわらず、農水省の要求に屈してしまう。財政構造改革で当初予算にはキャップがかかっている、その中ではウルグアイ・ラウンド対策費の消化は難しい、だから補正予算でやるしかない、農水省のこの要求に簡単に屈してしまうわけですね。  これでは財政構造改革なんかできないし、改革に対するリーダーシップを疑わざるを得ないのですけれども、大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  136. 三塚博

    ○三塚国務大臣 補正予算は、二十九条をここで改めて申し上げるまでもなく、災害等、また緊要な事態が生じました場合に対応する、こう書いておるわけであります。  ただいま農水大臣言われましたとおり、予算委員会が終わりましたり、国会審議が終わりましたり、その後に何回か事態の分析をいたしたところであります。  米価が、四年続き豊作なのに下がっていくということで、四年で、計算しますと二四%の下落というようなこと。生産意欲は完全にそこでなくなっていくであろうし、それに対して、減反、いわゆる生産調整を十七万ヘクタールをオンすることによってこれに対応する。これは共補償ということでやるという決心もすることに相なりました。  みずからの地域はみずからが守るという気迫が示されておるということであれば、まさに農村崩壊の事態を考えれば、緊要な米対策が必要に相なります。こういうことでございまして、その視点を点検しながら、稲作の転換、そして転作、いわゆる高度化、効率化ということでこれを行ってまいるわけでございますから、バランスのとれた食糧供給が行われるということになる。寒冷地においてもその転換を行うべきである。こういうことで取り進めるということにいたしたわけでございます。  ウルグアイ・ラウンド対策は対策として当初でやりますけれども、私の認識は、全くないと言いません、構造改革でありますから、いわゆる緊急米関連対策ということでありますけれども、やることは、畑作に転換するためにはそれだけの構造改革をやるという意味で、ウルグアイ・ラウンド、公共事業に同じではないかという御批判は甘んじて受けることといたします。
  137. 松沢成文

    ○松沢委員 最後に、沖縄の普天間飛行場の返還に伴う代替施設としての海上ヘリポートの建設問題をお伺いしたいと思うのです。  総理がクリントン大統領との電撃的な合意をして、沖縄の県民の要望であった普天間基地の返還を決めたわけですが、その後、SACOの協議の中で県内移設が決まって、海上ヘリポート案が出てきたわけですね。ただ、その後の経緯が、名護市での住民投票で反対派が僅差で勝利した、名護市長は、にもかかわらず受け入れを容認して、そして辞職をした、二月八日には市長選挙が行われるという目まぐるしい状況の変化があったわけであります。  今注目されているのは、大田知事の態度表明が注目されているところだと思いますけれども、まず総理、こういう、あなたとクリントン大統領とのこの決断によって、いい形で動いていくと思われた中での状況の変化については、今どんなふうに考えておられますでしょうか。
  138. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今の時期、私として個人的な思いを述べていい時期かどうかも迷う、率直に言えばそんな思いがいたします。なぜなら、この問題の原点は、私が総理を拝命し、その後大田知事に最初にお目にかかったときの大田知事からの御発言からでありました。そして、その御発言というものは、当時三事案と呼ばれ、沖縄で解決を一番急ぐと言われておりました問題を超えてという言い方で強調をされたものでございました。たまたま沖縄を訪問する何回かの今までの経験の中で、その普天間基地というものの姿は私にもその瞬間思い出せるものでありましたから、知事が強調された気持ちも、私は私なりに御理解をさせていただいたつもりです。  そして、事務的には、持ち出すべきではない、成功の可能性はないという意見具申もありましたけれども、あえて私は、サンタモニカで、知事さんのお気持ちを受けて、この問題をテーブルにのせてまいりました。私は、クリントン大統領以下、殊に前ペリー国防長官など関係される方々は、本当に誠心誠意この問題の解決のために日本側と話し合い、努力をしていただいたと思っております。  それだけに、名護市長が、市民投票、その結果も私も存じておりますけれども、その後に、国益、県益、市益という言葉をわざわざ選択された上で、これを受け入れるという決断をされましたとき、本当に、総理という立場だけではありません、政治家の一人として、私は、その決断に対して心からの敬意を表しました。  その上で、私は、その英断というものを無にすることがないよう全力を尽くしていかなければいけないと考えておりますし、県民にも御理解をぜひいただきたい、そして、何よりも知事さん御自身が提起をされた問題に対して御協力をいただきたい、そんな思いでございます。
  139. 松沢成文

    ○松沢委員 大田知事が、反対の理由の第一に、やはり沖縄の民意というものを挙げているのですね。名護市民投票が、政府の介入にもかかわらず、反対票が過半数を占めた。二つ目に、各種団体の意見聴取でも大半が建設反対を表明しており、移設を認めれば県内が大混乱するおそれがある、こういうことも言っているのです。  総理は、この日本の安保条約での基地提供義務という、国政の根幹である安全保障政策と、この基地受け入れ反対という地元の住民意思、これが対立する場合に、どのように考え、どのようにバランスをとるべきだとお考えでしょうか。  そして、総理は、地元の意向を無視して強行はしないと何度も表明されている。と同時に、普天間基地の代替施設は名護市のキャンプ・シュワブ沖の海上へリポート以外に選択肢はないとも発言されているのですね。現状の名護市、沖縄県の民意を考えると、この総理の二つの発言は残念ながら両立をしないわけでありますけれども、どうお考えでしょうか。
  140. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、あえて、今議員の述べられましたものに真正面から答えることは、今の時期控えさせていただくべきであろうと思います。  その上で、私は先ほども、名護の市長が使われた、国益、県益、市益というものを踏まえ決断をしたという言葉に対して、政治家としても、総理大臣としてだけではありません、政治家としても深い敬意を覚えるということを申し上げました。  私は、この前市長の一言というものに、重みと申しますよりも、すごみを感じました。そして、移転ができなければ現在の基地が残ってしまうんだということをぜひ思いの中に入れていただきたいと思います。  そして、基地の整理、統合、縮小というものを目指してきたその努力は、私は、これからも政府として当然ながら続けなければならないと存じますが、選択肢が否定をされる限りにおいて、問題の解決は難しくなるのではないだろうか、前進しなくなりはしないだろうか。これは、私自身、本当に心配の思いです。
  141. 松沢成文

    ○松沢委員 以上で終わります。
  142. 松永光

    松永委員長 これにて松沢君の質疑は終了いたしました。  次に、上田勇君。
  143. 上田勇

    ○上田(勇)委員 平和・改革の上田でございます。  まず最初に、今回の補正予算に計上されていますウルグアイ・ラウンド関連対策費について若干質問させていただきますが、今、松沢委員の方からも、るる質問がありました。極力重複は避けて質問させていただきたいというふうに思います。  先ほど大蔵大臣も答弁の中でお述べになったように、今回、緊急米関連対策費というふうに名前は変わっておりますが、内容は、八年度まで、昨年度まで計上されておりましたウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策費と同じものであるということであります。  このウルグアイ・ラウンド関連対策というのは、平成六年に策定されまして、昨年一部修正が行われておりますけれども、これは、あらかじめ決まっている計画に沿って毎年執行されている予算であります。このUR関連対策の中身の是非の議論についてはいろいろありますけれども、私は、こういうふうに決まった計画であれば、これは、適宜適切な見直しを行いつつ計画的に実施していくべき性質のものであるというふうに考えております。  と考えれば、これはやはり毎年当初予算で計上していくというのが本来の形であるというのは、これは全くそのとおりじゃないか。去年も、たしか予算委員会あるいは特別委員会でもこの問題についてはいろいろ議論がありまして、政府説明、もう一つよくわからない面が多かったのですが、やはりこれは、その性質を考えたときには、当初予算で計上していくのが普通なんじゃないか。  また、加えて、昨年、財政構造改革法が成立しております。その中では公共投資関係費の量的削減目標というのは各年度の当初予算をベースに定めるわけでありますので、この法律の趣旨を考えれば、なおさら、あらかじめ決まっている必要な事業というのは、それぞれ毎年当初予算で入れていくというのが通常の考え方ではないかと思うのです。  しかし、今回もそうですし、これまでも補正で追加してきた。これについて昨年来、大蔵大臣また農水大臣、いろいろな御発言があったわけでありますが、今回このウルグアイ・ラウンド関連対策費を、あえて当初予算ではなくて補正予算で追加することにした理由を、まず総理の方から統一的にお伺いしたいというふうに思います。
  144. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私が申し上げられることは、これは大蔵大臣並びに農水大臣が今までお答えをしてきたことを超えるものではございません。  なぜなら、平成九年度の補正予算に、自主流通米価格の大幅な低下でありますとか、あるいは生産調整面積の拡大など、現下の稲作をめぐる厳しい情勢、こうしたものに対応するために、稲作、転作の高度化、効率化の基礎となります農業生産基盤あるいは経営近代化施設などの整備、こうしたものを中心とする緊急米関連対策を実施する必要があるという判断をしたことは間違いありませんし、これが九年度予算の編成後に生じたものであることも、またそのとおりであります。  これは、米の収穫期というものをちょっと考えていただければ、そう申し上げる理由も一部はおわかりがいただけると思います。そして、二十九条に基づいてこれを計上いたしたわけであります。  ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策そのものにつきましては、対策期間中の総事業費というものは決まっておりますけれども、年度ごとの事業費が決まっていない。こうしたことから、各年度の予算計上に対して、事業の執行状況その他の情勢というものを十分見きわめながら検討するという状況にあることも申し添えたいと思います。
  145. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もちろん、各年度ごとの予算というのはあらかじめ決まっていない、そのとおりだと思います、予算は単年度主義でありますから。しかし、これまでの実績をずっと追ってみますと、これは補正予算で多少の修正を加えるというのはわかるのですが、ずっと補正予算の方が二倍から三倍の規模なんですね、当初予算の。例えば七年度などでは、当初予算の一千四百七十億に対して、補正予算で四千億、合わせて五千四百七十億だ。それが毎年続いてきているわけであります。  多分、昨年は、三塚大蔵大臣は、そういった実態をとらえられて、財政法第二十九条の規定にこれはどうしても合わないのじゃないかというようなお考えで国会でも答弁されていったんだというふうに思うのですが、先ほどの答弁を伺いますと、今の総理の答弁も含めて伺いますと、それは、米の収穫が終わって初めてそういうことがわかったんだということであるのです。  それでは、昨年仮にこういうふうな米余りの状況ができなかったら、六年度からずっと続けてきて、当初予算に比べて何倍も補正をつけてくるというような方法でずっと来ているのに、もし、じゃ、仮に昨年そういうような今の米余りの状況がなかったら、今回の補正予算にはこのウルグアイ・ラウンド対策費は含まれなかったんですか。ちょっとその辺を大蔵大臣にお伺いしたいというふうに思います。
  146. 三塚博

    ○三塚国務大臣 財政法二十九条を基本に据えて、農水大臣と編成の過程において協議をするという、これも取り決めでございますから、その協議はございました。  それともう一つは、豊作にもかかわらず米価の下落、それと、農業者からとれば、耕地面積は全部つくらせていただくということが長年の願望でありましたけれども、減反、生産調整にみずから協力、協調をして価格対策に貢献をするという決心をしていただいた。  この話を農水大臣から聞くに至りまして、そこまで深刻に自助努力を働かせながら自由市場においての今後の競争に、頑張って農山村を守り、家族を守ろうというのであれば、このことについての手だてはどうするべきだろうか、こういうことの中で農水大臣から、いろいろの案件が出されたわけでございます。  いわゆる転作、畑作に転換していく、それで他作物がそこでつくられていく総合経営の中で農山村が蘇生する、今これやらずばということの中で、データを示されてお話し合いをした中で、最終的に決心をいたし、御指摘のように、緊急米関連対策経費ということでこれに対応させていただいたということであります。新農業方針をこの中で打ち立てられていくものと期待をいたしております。
  147. 上田勇

    ○上田(勇)委員 このウルグアイ・ラウンド関連対策費というのは、先ほど申し上げましたように、総枠があらかじめ計画で決まっている。それを計画的にこれまで実施してきた。今私が申し上げたように、補正予算というような方法で、確かにわかりにくい方法ではあったんですけれども、毎年実施してきた。それがことしは、じゃ、たまたま豊作で本当に米がたくさん余った、農家の方が今置かれている状況が大変厳しいのはよくわかるんですが、そういう状況があったから初めて補正予算をされたということですか。もう一度そこを確認したいんですが。
  148. 三塚博

    ○三塚国務大臣 何回も同じことしか申し上げられません。これは基本原則を踏まえて、公共事業関係は当初予算において処理すべき、これは何回も申し上げてまいりました。二十九条は、この条文に整合するもの、いわゆるこの二十九条の緊要なというところの解釈において、それが緊要であるという認定をされるもの、こういう感じで編成に臨んでおったところでございまして、米作の極めて深刻な状態、それを転換することによって他の作物をつくることに方向を変えてまいりませんと、これはいつまでも同じ課題を背負うことになるということで、その転換が果たしてできるのだろうか、こう申し上げましたところ、農水大臣は、全体を統括していただき、それぞれの団体との協議なども聞いていただきまして、そこは転換に向けて全力を尽くす、こういうことでございましたから、最終の作業の決定、こういうことになりました。
  149. 上田勇

    ○上田(勇)委員 どうも私、まだよくわからないのは、今回の米関連緊急対策というのは、確かにウルグアイ・ラウンド対策から名前は変わっておりますが、その中身は、昨年度まで補正で追加していたウルグアイ・ラウンド対策費とさほど大きく変わっているということはないのですね。  例えば農業集落排水事業なんというのも含まれています。これは農村の下水道事業ですね。これは米余りとは直接関係ないのじゃないかというふうに普通には考えるのです。それから畑地帯総合整備事業、これも、UR対策という意味ではよくわかりますが、今回の米余りとはそんなダイレクトには結びつかないのじゃないか。しかも、生産調整対策推進費、これはまた別途この補正予算の中で、その他経費の中で三百九十億円追加計上されております。  こうした中身についての議論はいろいろあるかと思いますが、このように事業費の大半部分を毎年補正予算で追加していくやり方というのは、これは農業者にとっても先が見えない、大変不安なやり方だというふうに思いますし、国民の方から見てもこれは非常にわかりにくい手法じゃないかというふうに思います。  なぜこうした手法をとるのかということを考えてみると、なぜ毎年こういう手法を踏襲していくのかというのは本当はよくわかりませんが、あえて考えれば、これは毎年の予算編成で大蔵省がシーリングを設ける、その例外をつくりたくないというような大蔵省の都合によるのかな、そのぐらいの理由しか思いつかないわけであります。  財政構造改革法では、各年度の当初予算は、シーリングを設けることによって歳出削減を目指しているというふうに理解しています。しかも、この量的な目標というのは、当初予算がベースになって七%減、それ以降はそれを上回らないというような規定になっているのですけれども、そういうことを考えると、財政構造改革法に基づく予算編成の基本的な考え方は破綻してしまっているような気がしてならないわけであります。  もう一つ、また大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、このウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策費は、見直し後で、八年間での総事業費が六兆百億円。若干国費ベースでの予算が減っていますけれども、残り五カ年でこの計画を達成しようとすれば、非常に大ざっぱな計算でありますけれども、毎年三千億円近い予算計上が必要になってきますね。ところが、十年度の当初予算では一千七百二十五億円しか計上されておりません。  これは、十年度については、これまでの例に倣って、既に補正予算で追加をするということが想定されているということなのですか。それについて、十年度についてはどのように考えておられるのか、ぜひ大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  150. 三塚博

    ○三塚国務大臣 原則は当初予算でというのは変わっておりません。そういうことの中で、米対策緊急事業、こういうことで本年、九年度補正に計上しておるところであります。
  151. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ということは、今のはちょっと、だから補正をやるのか、やらないのかということがよくわからなかったのですが、やるというふうに理解してよろしいんでしょうか。  私は、これはあらかじめ決まった計画を計画的に行っていくということであれば、それは当然、当初予算だけでは計画が達成する見込みが非常に薄くなってくるということを考えれば、補正が視野に入っているということをおっしゃっているのかもしれませんが、やはりこれは補正じゃなくて、大臣おっしゃったように、本来当初予算で対応すべきことでありますし、何かあらかじめ本予算の審議が始まる前に、既にそういう補正が予定されているというような本予算というのは、どうもこれは到底納得できるものではないというふうに思います。  そういう意味からいえば、この十年度の予算案は一たん撤回していただいて、編成して再提出していただくべきじゃないんでしょうか。総理大臣、いかがでしょうか。
  152. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま九年度補正予算について御審議をいただいておるところであります。二十九条を守り、緊急米対策費として計上を認めたところでございます。
  153. 上田勇

    ○上田(勇)委員 この問題については、ちょっと私は、今の説明、この先どういうふうにされようとしているのか全く見えてこないので、本当は納得できないんですが、ちょっと話を変えます。  先ほど松沢委員の方からも話がありましたけれども、本日の新聞で加藤幹事長の講演の内容が、各紙またテレビでも紹介されております。  その中で、これは日経新聞に書いてあることでありますが、内容は、これはそのまま引用させていただきます。「本当に事態が改善しないときには若干、時間を延ばして機動的な対応をしていくことになる」と。またそれについて、本当に経済が悪いということであれば、橋本首相も「柔軟に対応を考えていくと思う」というふうに語ったというふうに報道もされております。さらに、公共事業費の積み増しに関して、「建設国債額は年ごとに増やしたり減らしたりできる。公共事業を途中で足すことは上限はあっても可能だ」というような御発言をされております。  もちろん加藤幹事長は政府の閣僚ではございませんけれども、与党の責任あるお立場の方でありますので、このコメントについてお伺いしたいんですが、このコメントは、財政構造改革法の趣旨とは整合性がとれないんじゃないかというふうに考えます。  公共投資関係費は、九年度当初予算、これをベースにして上限が決まっているわけですね。でありますから、年ごとにふやしたり、減らすことはできますけれども、ふやしたりすることはこの法律上できないということじゃないかと思います。  各年度の当初予算をベースにしているわけでありますから、あえて言えば、補正を組むのであれば法律には抵触しないのかもしれません。それがここでの発言の、途中で足すということは可能だというような発言のベースになっているのかもしれませんが、これはやはりごまかしになるんじゃないかと思うんですね。そういうような、何かわかりにくいテクニックを使うということは、この財政構造改革法の趣旨がやはり生かされていないということじゃないかというふうに思います。  この発言も含め、どうもいろいろな閣僚あるいは自民党の幹部の方々の御発言を聞いていると、何か既にもう十年度についても補正予算を編成するということが既定の事実になっているような感じがします。それであれば、これはちょっと今から、例えば本予算をやる前からそういうようなことというのは、これは順序が逆の話でありますし、同時にこの財政構造改革法の趣旨がもう既に破綻しているということじゃないかと思いますので、この法律は一たん撤回して、新しい考え方に基づいて予算編成をやり直すべきじゃないんでしょうか。  その辺、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  154. 三塚博

    ○三塚国務大臣 提案を申し上げ、趣旨説明を申し上げ、それで各党代表の委員各位に御質疑をいただいております本旨は、一日も早く補正予算を可決決定を願いたい、緊急な、深刻な経済状況もこれあり、関係法とともに御審議をいただき、成立をお願い申し上げる、もうこの言葉で尽きるのです。
  155. 上田勇

    ○上田(勇)委員 財政構造改革法は、政府が、反対に反対があるにもかかわらず可決成立させた法律であります。その趣旨がもう既に私は破綻しているのじゃないかと申し上げているわけであります。そうであれば、これは、今回の補正予算もそうでありますし、既に来年度、十年度の予算についてもその趣旨が、補正含みであればそれは趣旨が生かされていないということで、その趣旨が生かされていない法律は撤回すべきじゃないかということを申し上げているわけであります。  今度の予算の成立を早く図るということは、政府がどういう考えに基づいて今度の予算編成をしているのか。今度の補正予算そして十年度の当初予算、またその先のことも考えられているのか、そのことがはっきりしないと、早く成立しろ早く成立しろと言っても、それは納得のいかないことだというふうに思います。  そこは、今度の補正予算も、そして十年度の予算さらにその後、どういうふうに考えられているのかわかりませんが、その辺、この財政構造改革法の趣旨に沿って予算編成されていくという考え方でよろしいのでしょうか。そこをもう一度確認させていただきたいと思います。
  156. 三塚博

    ○三塚国務大臣 最後によろしいのでしょうかと言われましたが、そのとおりであります。  昨年の臨時国会におきまして、長い期間、衆議院、参議院において御審議をちょうだいいたしました。もちろん反対の政党もございましたが、最終的に可決決定、また反対の議員各位の中におきましても、目指す方向については理解ができるものの今日の時点において、という御論議などもいただいたところであります。  委員、言外に、また冒頭も申されましたとおり、自由民主党幹部がかく言っておる等々のことが引用されてのことでございますが、ともに構造改革の法律をつくるまでの、「財政構造改革の推進について」で、六月三日でございましたが、盛られておりますように、半歳余にわたる大審議の中で与党三党で決めたものでございます。  それを法律として御提案を申し上げておるわけでございまして、この法律の理念と基本は守りながら、どんなつらくても、最大限の努力をして取り組んでいかなければならぬ基本的な方針であります。よって、この方針は堅持をして、最大の努力をして、目標が達成できるように頑張る、こういうことでございます。
  157. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっとまだその辺、これからも議論をさせていただきたいところではありますが、もう時間もございませんので、きょう、道路公団の方にも御出席をいただいていると思いますが、最後に、元大蔵官僚の道路公団経理担当理事をめぐる収賄事件について、若干御質問させていただきたいと思います。  この事件、当然これは当該理事の個人の責任に帰するというところが大きいのですが、同時に、外債発行に際してのシステムそのものにも問題があったのではないかというふうに思うわけであります。  昨日、道路公団の方からお話を伺いました。そうすると、主幹事会社決定については、法令上または公団内部規定上特段の定めはないのだというお話でありまして、結局、これは報道されていることでもありますが、事実上その担当理事の判断で最終決定ができるというような仕組みになっていた。チェック機能が全然働いていないということで、非常に異常なシステムなのではないかというふうに思うわけであります。これは、当然次にまた外債発行するというようなことがあると思うのですが、それまでにはこの今のシステム、やはり改めていかなければいけないというふうに思うわけであります。  そこで、一つお伺いしたいのは、外債発行、債券発行をするときに、一般の社債等においてはこの手数料の扱い方が、手数料と同時に経費負担、これは業者側の経費負担ですけれども、これがその手数料に込みで扱われている場合と、また別枠で扱われている場合もあるというふうに聞いております。これはどうなっていたのかということを一つお伺いしたい。  ちょっと時間がないのでまとめて申し上げますが、やはりこれからこのシステムを改めていくために、この主幹事候補会社の選定及び主幹事会社の決定に関しては、総裁を含む複数の責任ある役員がチェックする体制を整備することが必要でありますし、またその複数の役員が決定に責任を持つということが必要だと思います。また第二に、その選定、決定の過程はやはり透明なものにしていかなければいけないというふうに思いますし、同時に、透明にするためにはその結果も公表していくということが重要なことではないかというふうに思います。  先日の当委員会でも、総理も見直しについては前向きな答弁をしていただいておりますので、ぜひとも次の外債発行までに見直しを行いまして、国会の方に御報告をいただきたいというふうに思いますが、公団の方で答弁をお願いいたします。
  158. 鈴木道雄

    鈴木参考人 今回、当公団の経理担当役員が収賄容疑で逮捕され、大きな社会的不信を招いたことに対しまして、公団の責任者として深くおわびを申し上げます。また、二度とこのようなことが起こらないよう、綱紀の粛正につきましても厳に徹底してまいりたいと考えております。  御指摘の、外債発行に係る業務につきましては、これまで主幹事候補の選定や主幹事の決定等につきましては経理担当の限られた者のみが行っておりましたが、御指摘のように、透明性、客観性に欠けるところがあると考えられておりますので、まず内部チェックシステムとして、一月六日付で、本社に副総裁を委員長とする外債引受主幹事選定審査委員会を設置したところでございます。  今後さらに、主幹事候補の選定基準とか主幹事の決定方法の明確化、それから今御指摘になった手数料の問題等につきまして、具体的方策を早急に取りまとめたいと考えております。(上田(勇)委員「今まで手数料の取り扱いはどうなっていたのですか」と呼ぶ)手数料の取り扱いについては、今先生のおっしゃったような点につきまして、今後どういうふうにやるかはその中で……(上田(勇)委員「今まではどうなっていたのですか」と呼ぶ)今までは、御指摘のとおりでございます。
  159. 松永光

    松永委員長 参考人、こちらが正式に立って述べたことについてだけ答えてください。
  160. 鈴木道雄

    鈴木参考人 はい。(上田(勇)委員「いや、私がお聞きしたことについて、聞いたことに答えてないので」と呼ぶ)
  161. 松永光

    松永委員長 まだ質問する。では、もう一回言ってください。(上田(勇)委員「手数料は込みで扱われていたのか、別途取られていたのかということに対して確認をしたいのです」と呼ぶ)じゃ、もう一回質問しますか。(上田(勇)委員「いや、聞いたことに対して答弁がなされてないということですから」と呼ぶ)では、答弁漏れなら、もう一回立って言いますか。  上田勇君。
  162. 上田勇

    ○上田(勇)委員 先ほどお伺いしたことでありますが、一般に社債を発行する場合に、その手数料の取り扱い方が、手数料には、発行の手数料そのものと、それから業者の、いろいろ印刷費であるとか旅費であるとか会議費、そういった経費があるのですが、それが別々に扱われている場合と、込みで扱われている場合があります。それについては今までどういうふうに扱われていたのか、そこを確認したかったのです。
  163. 鈴木道雄

    鈴木参考人 ユーロドル債の場合、引受手数料は引受額の〇・三二五%、別に諸経費十万ドルから二十万程度というふうになっております。
  164. 上田勇

    ○上田(勇)委員 以上で終わります。
  165. 松永光

    松永委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、谷口隆義君。
  166. 谷口隆義

    谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  本日は、金融機関の不良債権の問題、また金融二法の問題、また現下の大変厳しい雇用状況の問題等々についてお伺いをいたしたい、このように考えております。  まず初めに、この一月の十九日に野党の側で、御存じのとおり、新井将敬議員の証人喚問の問題を申し入れたところでございまして、本日、そのことにつきまして御回答がございました。  その回答を見ますと、「日興証券社長金子昌資氏については参考人招致に応じる。 新井将敬君については、その状況をふまえ検討する。」というもので、全く無回答に近いものであります。さらに、民間人を呼んで国会議員の証人喚問をはぐらかすというようなやり方は、これは極めて認められるものではない、到底認められるものではない、このように強く申し上げたいと思います。  しかも、自民党の金融政策に関与されておったこの新井将敬議員でございますので、その新井将敬議員が証券業界から便宜供与を受けておったということでございます。今国会は、政治倫理の確立に加えて金融問題が最大の焦点でございます。その中で、新井将敬議員は、いやしくも日興証券から便宜供与を受けた議員であり、国民の批判はすさまじいものがございます。  国会は、国民の声を反映し、その事実を究明する義務があり、その立場から、新井議員の証人喚問を求めているものでございます。この要求を無視するということは、民主政治の根幹そのものを揺るがすものと言わざるを得ない、このように考えております。橋本総理が民主政治を守り、政治倫理を正すとの決意があるならば、新井議員の証人喚問に応ずるべきである、このように強く思う次第でございます。  したがって、この補正予算審議終了までに新井議員の証人喚問を行うべきであると考えるわけでございますが、総理の御見解、御決意をお伺いいたしたいというように思います。
  167. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず、党としての立場でお答えを申し上げますならば、一昨日、党の執行部に対し調査を指示したことを冒頭申し上げたいと存じます。  その上で、現在理事会において御論議が行われており、今理事会は休憩というふうに伺っており、協議中のことであります。私は、これに対して内閣の立場から物を申すことは控えるべきであると存じます。
  168. 谷口隆義

    谷口委員 今私が申し上げたように、民間人を参考人招致で出す、国会議員は出ない、これは国民が到底許すものではないというように強く申し上げたいと思います。ぜひ総理、新井将敬議員の証人喚問をよろしくお願いいたします。  その次に、先ほどから同僚議員が何回か質問をされておった件でございますが、昨日の自民党幹事長、加藤幹事長の御発言がございまして、この財政構造改革法案を棚上げするがごとくの御発言があったというように聞いておるわけでございますが、それについては、先ほど総理の御答弁で、いや、そんなことはないんだ、これからも財政構造改革法案の方向でいくんだというようなお話をされておりました。  一方で、今の財政状況の実態をかんがみますに、この財政構造改革初年度となります九八年度予算案で、法人税減税、土地・金融税制の緩和により、赤字国債の新規発行の減額幅が三千四百億にとどまり、二〇〇三年に赤字国債発行をゼロにするための目安とした減額幅一兆二千五百億に達しなかったという事実があります。  また二点目に、九七年度補正予算案で二兆円の特別減税を行うことになりました。これで新たに一兆四百八十億円の赤字国債を発行する、このようなことになったわけでありますが、このようなことを踏まえて、この二〇〇三年の目標をどのように完遂される御決意なのか、総理にお聞きいたしたいというように思います。
  169. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 まず第一に、先ほど来、報道の問題でいろいろ御論議をいただきました。議員からも今引用をされましたが、これに対し時事ファクスで流れておりますのは、我が党の政調会長と加藤幹事長が、財政構造改革の基本路線は変えないということ、またぎりぎり計画年次内に目標は達成できると考えている旨を説明し、了解したというものが報道として流れております。  また、幹事長は、本日昼に私のところにほかのことで見えましたけれども、財政構造改革を中断しなければならないとか延期しなきゃならぬというようなお話は全くございませんでしたということも、先ほど申し上げました。  そして私は、その上で、財政構造改革必要性というものは全く変わっていない。同時に、そのときそのときの経済あるいは金融の状況、さらに国際的な状況を考えながら、実情に応じて対応していくというのも政府責任だと存じます。そして、特別減税を決断いたしましたことにより、また法人課税、有取税あるいは地価税等々、政策減税を行いました結果、赤字国債の縮小幅が三千四百億にとどまったという御指摘もそのとおりでありまして、それを否定するものではありません。  その上で申し上げたいことは、財政構造改革と同時に、当面の経済あるいは金融情勢を踏まえた景気対策というものは二者択一のものではありませんということ、そして、中期の目標と当面の対応という異なるタイムスパンの問題だと考えているということを、再度申し上げさせていただきたいと存じます。
  170. 谷口隆義

    谷口委員 当初、財政構造改革法案を行おうという趣旨は当然よくわかるわけでございますが、行われた状況と大きく環境が変化してきた、経済状況が変化してきた、このようなことになるのだろうと思います。  私も、昨年の十一月に、臨時国会預金保険法の改正案の折に代表質問をさせていただいたところでございまして、そのときに、やはり今のこの金融システムの大変危機的な状況について対応しなければいかぬ、また、現下の経済状況を十分に念頭に入れてやっていかなければいかぬ、このように申し上げたところでございます。  どうもそういう観点からしますと、財政構造改革法案で金縛りになって景気対策が十分に行えない、そういう状況の中でずっと進んでまいったわけでございますが、突然、やはり今の経済状況を勘案すると減税もやらざるを得ないだろうというようなことで、総理は御決断になったのだろうというように思うわけでございます。それも、株式市場の反応は一日大きく反応しただけでございまして、その後全く何の反応もない、こういうような状況になっておるところでございます。  また後でこの御質問をしたいと思っておりますが、雇用状況がだんだんやはり悪化いたしております。特にゼネコンの経営破綻が近々あるのではないか。現に、株式市場の動向を見ますと、十社以上、二けたの、上場しておるゼネコンの株価が百円を割っておるというような状況にあるわけでございます。これは、一つ財政構造改革法案の公共投資七%削減というのが大きく影響しているのだろうというように思うわけでございます。  財政構造改革はやらなければいかぬ、しかし一方で、それをやることによって、体が衰弱し切って、新たに活動する意欲もなくなってしまったら、これはどうするのかということになるわけでございますので、そのあたりの状況を十分勘案してやっていかなければいかぬ大変厳しい局面になってきたというように思います。  現に、昨年の十一月に金融機関四社の破綻があり、年末には東食の経営破綻があり、現実のものとして、経済的に大変厳しい状況が浮かび上がっておるところでございますので、ぜひそういう観点で、それは総理のその責任は当然ございましょうが、我が国全体のことを考えたときには、一たんそれを棚に置いても、棚に上げても、そういう経済対策、景気活性をやっていかなければいけない時期に差しかかっておる、このように思うわけでございますが、総理、御答弁をもう一度お願い申し上げたいと思います。
  171. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今議員が御指摘になりましたとおり、雇用情勢、確かに非常に高いところで失業率が高どまりをしておる、有効求人倍率自体も非常に厳しいということで、非常に気になっておりますし、議員はたまたま今建設関連を例に挙げられましたが、金融関係破綻したそれぞれの企業からの離職者というものもあり、さらに中高年の方々の雇用が以前から厳しかったという状況も相まって、非常に厳しい状況にあることを存じておるつもりであります。  それだけに、私どもは、既に決めてお諮りを申し上げていることが、一日も早く実行に移せるようにさせていただきたい、まずそれで土台を固めさせていただきたいということを繰り返しお願いを申し上げてまいりました。減税にいたしましても、これが一月おくれるのか二月に実施できるのか、そして金融安定化システムをいつから動かすことができるのか、そういう思いを持っておりますことを素直に申し上げます。  そして、補正予算につきましてもそうでありますけれども、次年度の予算案にいたしましても、その切れを生じないように政府としてもできる限りの努力をいたしますので、国会においてもぜひその御協力を賜りたい。これが私は今まず一番基礎の部分として必要なこと、安心を持っていただくための必要なこと、そのような思いでおることを申し上げます。
  172. 谷口隆義

    谷口委員 ですから、私が申し上げたいのは、明確にこの際一たん財政構造改革法案は棚上げする、景気対策に打ち込みますよというようなことを宣言しない限り、市場は大きく反応しないのだろうなというように思うわけでございます。そのような観点で、私先ほど申し上げましたように、総理の責任は当然ございます、しかし、そのことを乗り越えて、我が国の今後のこの対応を考えたときには、そのような大決断をぜひお願いいたしたいというように思うわけでございます。  先ほど私申し上げましたように、今株式市場の状況も大変厳しい。これは三千数百社あるわけでございますが、百六十七社が百円割れになっているのです。株式市場ですよ。そのうち、先ほど申し上げましたように、十社以上がこれはゼネコンでございます。大変厳しい状態になっている。  昨年十一月に、先ほど申し上げたように、金融機関の倒産が四社ございました。その後、この十二月に東食の倒産がございました。九七年度において、上場企業の倒産件数は十件ございました。これは、大変イレギュラーというか珍しいことであります。六五年に次ぐ戦後二番目の倒産件数でございます。  そういう状況の中で、先ほど申し上げましたように、昨年の秋から完全失業率が、三・五%、ぴたっと高どまりをしている。これからどんどんまた高くなろうとしておる。昨年秋に三・五%になって、その後、山一、拓銀と倒産していくわけでございますが、今後また、そういう倒産の予備軍がふえてくるだろうというようなことが言われております。  それで、先ほど総理にお話をいたしました建設関連のことをちょっと申し上げたいわけでございますが、九二年から九六年度におきます日本全体の就業者増加数が百十七万人ございまして、このうち七十二万人が建設関連の就業者でございました。バブルが崩壊した以降、雇用のいわば下支え役を果たしてきたのが建設関連事業でございまして、それが九七年以降、住宅投資の減少、また先ほど申し上げました財政構造改革法案によって公共投資の抑制、こういうようなことで、雇用の急激な減少、低下が予想されるわけでございます。  現に、今週号のエコノミストの表題は「大失業の危機」、週刊ダイヤモンドは「大失業時代到来!」、こういうように、これから起こるであろう状況を予測した記事が大きく載っておるわけでございます。  日本総研において、資料がございまして、公共事業費の抑制を九七年度二兆円、九八年度三兆円とすると、建設業だけで九七年度は十三万人、九八年度は十九万人の雇用機会を喪失すると推定いたしております。さらに、建設資材の購入であるとか運送であるとか建築機械等々、周辺産業の影響を入れますと総計七十万人の就業機会の喪失につながるだろう、このように言われておるところでございます。  それにつけ加えまして、男性の就業者、年齢構成比率で見ますと、この建設業関連の方は四十五歳以上の比率が五〇%と、他業種に比べて極めて高いわけですね。  また、地域別に見ますと、大都会よりもむしろ地方、北海道、東北、北陸、このようなところが高くて、地方の失業問題がこれから表面化するだろう、このように言われておるところでございます。特に北海道は、あの拓銀の経営破綻がございまして、企業の経営に大変大きな影響があるところにつけ加えて、この公共投資の削減によって、またそれにつけ加えた倒産件数がふえてくるのではないかという見通しがなされておるところでございます。  今私が申し上げました大失業時代が到来するのではないかと言われるような状況の中で、総理は、一体どのようにお考えになられるのか、御所見をお伺いいたしたいというように思います。
  173. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今議員から数字を御披瀝いただきましたもの、私はすべてを承知しておるわけではありませんが、土木・建設業というものが雇用機会の創出の上で一定の役割を果たしてきた存在であること、同時に季節性のある労働を受け入れてきた存在であること、そして地域的に依存度にばらつきのあること、そうした点を私は承知していないわけではありません。  そして、そういう意味でも、例えばこの補正予算の中にありますゼロ国債等がいかに活用されるか、そうしたことを当然ながら意識の中に持っております。同時に、今議員のお述べをいただきましたような御議論が、公共事業は悪といったような決めつけが一時期なされておりました空気を、少しでも変えてくれればいいなという思いもございます。同時に、今我が国全体の産業構造の中で、余りに公共事業に依存する度合いが高かった、そして、それを変えなければならないという御批判があったことも、私は想起をいたしております。  その上で、私どもが今しなければならないこと、それは間違いなしに金融システム安定化することでありますし、その金融システム安定化することによって、先ほど議員が北海道の例を引かれましたような状況を現出しないことでありますし、景気の回復に向かうその基盤をつくることでありますけれども、同時に、常に考えていかなければならないこと、それは、新規産業の創出に向けて努力をしていく、既にその芽は一部には出てきておりますけれども、基本的にはそうした方向を目指していくということが答えになるのではないでしょうか。  その間にとらなければならない手当てはさまざまなものがあろうと思います。雇用対策の中で工夫すべきものもありましょう。いろいろなものがあると思いますけれども、極端から極端を申し上げるなら、今申し上げたようなことになるのではないでしょうか。
  174. 谷口隆義

    谷口委員 中長期的には産業構造の転換が図られるべきで、そういう意味においては、今の社会の状況を十分勘案した上での、就業移動と申しますか、そういうことが行われるべきだと思いますが、短期的にばたばたばたと企業が倒産というような状況になりますと、これは社会的心理も大変暗くなりますし、失業の問題が現実に、完全失業率が出てまいりますと、これは国民の側で、今現在、個人資産が一千二百兆円ある、また対外資産ももう大変な金額になっておる、外貨準備も大変ある、こういうことで、我が国は大変心配ないんだというように言っておりますが、これが一たん失業率に影響してまいりますと、大変な事態に私はなるのではないかというように考えておるところでございます。  そういう意味においては、先ほど申し上げました、財政構造改革法案について一たん棚上げするぐらいのことをやっていかないと、総理、これは今の路線をそのまま踏襲しながら、おっしゃるように二つ一緒にいくんだというようなことはなかなか難しいというように私は考えておりまして、そのような状況を十分勘案していただきたい。  まさに、ある意味では危機管理体制なんですよ。我が国の産業全体に対する力、底力というのは、これはあるんだろうと思いますが、しかし、急激に発生した失業者を吸収するだけの力が本当にあるんだろうか、このように考えるわけでございまして、このような観点で今お話を申し上げました。  これから起こると予測されておる事態に対して、建設大臣にお聞きしたいと思いますが、どのような雇用対策を行われておるのか。
  175. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま委員からの御質問で、建設業の倒産、雇用情勢、これらの問題について極めて深刻な事態であるということを踏まえての御質問がございまして、まず、そのことからお答えをしてまいりたいと思っております。  平成九年の建設業の倒産は、御指摘のように、大変厳しいものがございまして、全体で四千七百八十五件、負債総額は二兆三千六百六十八億でございまして、前年に比して、件数で約三割増、金額で約三倍となっておりまして、極めて厳しい状況にございます。建設業者の従業員数は三万七千となっておりまして、今、委員指摘のような厳しい環境であります。  かような環境は、昨年来、建設省におきまして、公共工事の発注面における中小、中堅建設業者の受注機会の確保であるとか、あるいは貸し渋りに対処するために、「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」などにおける政府金融機関等による建設業者に対する円滑な資金供給の確保であるとか、あるいはまた、倒産した場合に、関係省庁と連携を図りつつ、連鎖倒産防止対策であるとか労働者の対策の機動的な実施、かようなところを積極的に取り組んでおるところでございます。  いずれにいたしましても、厳しい環境でありますので、建設省におきましても、建設業の経営改善に関する対策本部を設置いたしまして、今検討を進めて早急に結論を得たいと思っておるわけでありますが、建設業者に対する円滑な資金供給の確保であるとか、あるいは経営健全化への支援をどうするかとか、中小、中堅業者の受注機会を確保してまいるとか、元請下請取引の適正化であるとか、いわゆる諸般の対策を検討してまいろう、できるだけ早く実効性の高い対策を取りまとめていかなければならぬ、こういうことで取り組んでおるわけであります。  以上、状況を報告しながら、今対応しておることをお答えとさせていただきます。
  176. 谷口隆義

    谷口委員 それでは、労働大臣にお聞きしたいのです。  政策的には、求職と求人の職業紹介機能を高めていくことであるとか、また中高年の、労働意欲はあるんだけれどもなかなか職業能力が乏しいというような方に対する能力開発施設を充実させるというようなことが考えられると思いますが、労働大臣、ちょっと時間がございませんので、簡単に御答弁をお願いいたします。
  177. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 全体の認識は今先生がおっしゃったことと私は同じでございます。特に、先ほど総理が申し上げましたように、長期的、構造的な考えと、短期の心配ということを先生ははっきり分けて考えておられますので、当面のことについて申し上げれば、まず、昨年末に私の名前で都道府県知事に通達を出しまして、職業の紹介のマッチングについて、より一層内容を充実し、きめ細かにやっていただきたいということを申し上げておりますし、また大口倒産等が起こりました場合には、雇用調整助成金の活用等によりまして下請等の失業が生じないように対応をとっているところであります。特に、御承知のように、ゼネコンについては、東海興業、大都工業、あるいは多田建設をその対象に指定したところでございます。  また、中高年の働く意欲がある人についても、全国で六十五カ所の職業能力開発促進センターというものがございまして、ここで中高年の方々を中心に職業能力の開発、再就職のための準備ということを精力的に行うようにいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、雇用というものは、先生がおっしゃったように、短期的にはマクロ経済が円滑に動くことによって有効需要が出てきて雇用機会が確保されねばなりません。したがいまして、先ほど来総理がるる申しておりますように、現在の不況の原因である金融不安というものを払拭するための諸法案と補正予算の早期成立を心からお願いするものでございます。
  178. 谷口隆義

    谷口委員 建設関係就労者は日本全体の一割になるというような状況でございますので、そういう観点で、今後起こることも十分予測した上での対応をぜひお願いいたしたいというように思います。  あと、金融システムの崩壊の問題、崩壊と申しますか、大変危機的な状況になっておりますので、金融システムが崩壊したら一体どのようになるのか。これはある推計によりますと、戦争の被害よりも甚大だと言われるぐらい、一たん金融インフラが崩壊しますと大変な事態になる。  私は、一昨年来ですか、ずっと申し上げておるのは、このような事態がもう既に何年か前から生じておるわけで、この原因はもう既に何年か前からあるわけでございますので、そのような原因があって、なかなか小手先の対応ではこれは難しい問題ですから、危機管理体制を講じなければいけないのではないか、このように強く訴えておったところでございます。  果たしてこの危機管理体制ができておるのかといえば、そこまで至っていないというようにこれは断言してもいいんだろうと私は思うわけでございまして、なぜそのように申し上げるかと申しますと、危機管理体制を構築するためにまず何をやらなければいけないかと申しますと、金融機関の不良債権は一体幾らあるのか、ここから始まるんですね。  これがあって、これに対してどうしよう、ああしようというようにその体制がしかれるべきであるわけでございますが、最近のこの議論、また昨年来の議論を聞いておりますと、どうもこのあたりが明確でない。  大蔵省の公表数字が、二十七兆であるとか二十八兆である。それに対して、先日出てきたのが七十七兆円、これは第一分類から第四分類で大蔵省が査定した結果出てきた金額だ。なぜこのような金額が出てきたのか。  これは、一つは、この四月から早期是正措置が始まって、自己査定を銀行みずからがやらなければいかぬ、このときに、二十七兆とか二十八兆とかいうような金額が出ておって、箱を開いてみるとそんなものじゃない、こういうことになってしまうと、これはもう大変大きな問題になるから、当面、小出し、小出しと言ったら失礼ですが、ある程度の金額を出しておかなければいけないのではないかというようなことになったんじゃないんですか。
  179. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  不良債権額が幾らあるのかということについてはいろいろな御議論があろうかと思いますが、これまで私どもが統計として集めておりました不良債権額といいますのは、たびたびの御説明でもう恐縮でございますが、一定の基準でもって比較可能なものを集めるということでございます。破綻、延滞、金利減免。特に延滞等は六カ月以上の延滞というような客観的な数字でもってそういった不良債権を集計しております。それが三十八兆程度あったのが、今は二十八兆程度に下がっている。なおかつ、それに対する引き当てが大分上がってきているということも、先生よく御存じだと思います。そういった一つの基準でもってディスクローズをしていくという考え方、これはアメリカでもとっておりますし、ヨーロッパでもとっております、その基準をもう少し強めようというのが一つ動きとしてあります。  もう一つ、今回初めてお示ししたものは、その基準とは違いまして、各金融機関が自分の与信、すなわち貸し出しと保証につきまして回収の可能性の度合いで四つに分類をしたということでございます。一つの基準で拾っていったというものではなくて、自分が見て、どれくらいこれは回収できるだろうか、これはまず大丈夫だけれども個別にちょっとよく管理しなきゃいけないなというふうにグルーピングしたわけでございます。それで第一から第四まで分けました。  それで、第二から第三、第四というものを集めてみますと七十七兆という数字になりまして、それが不良債権だというふうに書かれている向きもありますけれども、しかし、特に第二分類の六十数兆のものは、中にはそういったものになっていくものもあるかもしれませんが、中には、個別管理をしていればそれは正常な債権にほぼ近いもの、つまり、相手の企業として、赤字が何期か続いている、しかしまあしっかりしていけば大丈夫だろうというのもたくさん含まれております。したがって、全部が全部不良債権で、もうそこには貸しちゃいけないというものではありません。  そういったものを分けてみたときの数字が初めて今回出ましたので、今回の国会の御議論に供するために、そういった形式的な一つの客観的基準ではなくて、実質判断をそれぞれやってもらったものを集計したというものでございます。そうした場合に七十七という数字が出てきた。しかし、三と四でいきますと十一、また、そのうちかなりの分はもう償却を済んでいるというような事情もぜひ御理解賜りたいと思います。
  180. 谷口隆義

    谷口委員 私は、以前も申し上げたのですが、一つの定型約定どおりに返済するのが普通なのですね。だから、一月でもおくれれば、これは普通は不良債権なのですよ。ですから、アメリカでは三カ月なのでしょう、三カ月でやっておるわけです。  今度三カ月でやりたいというようなお話で、どうも全銀協はそういう公表基準でやっていきたいということのようですが、これを三カ月でやりますと、また不良債権がふえますね。  また、今度全銀協で考えておるのは、公定歩合以下ではないが、金利を引き下げたものについても広義の不良債権として上げていこうと、これは当たり前なのですよ。そのくらい保守的に考えていかなければいかぬのです。確実に不良債権のものだけ押さえるのはだめなのですよ。私が言っておるのは、危機管理体制を考えるならば、そういう蓋然性の高い債権は全部不良債権として上げなければいかぬですよ、このように申し上げているのです。  それにつけ加えて、今アジアの金融危機ですよ。従来から申し上げておりましたが、アジアの金融危機が発生した折、我が国がバブルが崩壊しました、バブルが崩壊して、その後我が国の企業行動がどういう行動をとったのか。ゼネコン、金融機関は全部アジアに行ったのですよ。邦銀もアジアに融資をどんどん、日本の国内で出せないものですから、アジアに行った。ゼネコンもそうですよ。ゼネコンもどんどんアジアに行ってしまったのです。ですから、日本のバブルが崩壊して、その後は全部企業がアジアに行ってしまうのです。  それで、今アジアが、これは日本のデフレ政策もあるでしょう、アジアの今の、近隣の状況は極めて悪くなった。そうしますと、当然考えられるのは邦銀の不良債権の問題ですよ。海外における不良債権がどの程度あるのか、まず融資金額がどの程度あるのか、御報告をお願いいたしたいと思います。
  181. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 事実に関する御質問でございますので、私からお答え申し上げます。  最新のBIS、いわゆる国際決済銀行の統計によりますと、九七年六月末現在で、まずASEAN諸国、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンといういわゆるASEAN四カ国に対する邦銀の与信のトータルは七百三十五億ドル、それから、いわゆるNIES四カ国、韓国、香港、シンガポール、台湾に対する与信総額が千七百九十一億ドル、合わせますと二千五百二十六億ドル、約三十兆円程度になろうかと思います。
  182. 谷口隆義

    谷口委員 それで、御存じのとおり、昨年の夏に韓国がデフォルト寸前になりましたね。IMFに融資を依頼して、我が国も間接的に援助をしたようでございますが、そういう状況になっておりまして、これは大変厳しい。また、タイもそうでございますし、インドネシアも今大変な状況になっておるわけでございます。  これが邦銀の不良債権に結びつく可能性は高いと私は思うわけでございますが、このあたりの状況に関しまして、大蔵大臣、どうですか。
  183. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 先ほど申し上げました約三十兆円ほどの邦銀のこれらアジア諸国に対する債権残高のうちどのくらいが不良債権になっているか、あるいはなるかということについては、当然のことながら、各国の経済状況、あるいはその中でも特に各債務者の個々の事情によるものであって、一概には申し上げられないわけですが、各銀行が自己査定をした金額の中には、自己査定で不良債権化しておる、あるいは問題債権になっておる、分類債権にすべきだと思うものは当然入っているわけでございます。  私どもから客観的に見まして、先ほど申し上げたASEAN諸国とNIES諸国に対する融資とでは若干性格が違っておると思いまして、特にASEAN諸国に対するものは、実際問題として、それらの国に進出しております日系企業に対する融資というのが相当な部分を占めております。他方、韓国その他のものについては、それらの国の銀行に対する融資がかなり多いということで、それぞれ性格も違っておりますので、私どもとしても十分注視して、ウオッチしていきたいというふうに思っております。
  184. 谷口隆義

    谷口委員 これは私が実際見たわけではございません、うわさなのですが、邦銀の直接韓国またそれ以外のインドネシア、タイに融資しているものと、例えば邦銀のロンドンの現地法人、ロンドンの支店を通じて融資しておるもの、海外のですね、そういうものが全部入って二千五百億ドルですか。私がお聞きしておるのは、直接の融資しか把握できておらないというふうに聞いておるわけでございますが。
  185. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 先ほど申し上げた数字には、邦銀の本店からあるいは支店から、さらに現地法人、例えばロンドンにある現地法人から出している分も入っております。(谷口委員「二千五百億ドルも」と呼ぶ)そのとおりでございます。
  186. 谷口隆義

    谷口委員 これは多分、私は、どの程度の海外の、今アジアの金融危機にかかわる邦銀の融資の自己査定の中に不良債権として上がっておるのか、極めて不明確でわからないのですが、この状況を踏まえた、私が先ほどから申し上げておるこのことでいいますと、本来これから起こるであろうということを十分想定した金額を念頭に置かないと、今度金融二法ができますね、総理。きょうから大蔵委員会でやっておるのです。この金融二法で三十兆というように、先ほども同僚議員が尋ねていらっしゃいました。十兆の交付国債と二十兆の政府保証でしょう、それで三十兆なんですよ。この三十兆というのは、根拠がどうもはっきりわからないのです、一つは。  今考えられるのは、もう既に七十七兆円という数字は上がっているのですね。この七十七兆円というのは、さっきおっしゃったように、全部が不良債権ではないかもわかりません。しかし、第二分類といえども蓋然性の高い不良債権。不良債権なんです、広義の意味では。  これに対して三十兆というのはどこから出てきたのですか。また、従来の経営破綻したところにつぎ込む十七兆円、今度十三兆円は、また優先株であるとか劣後債、劣後ローンでやっていこう、こういうものと。この十三兆、十七兆、三十兆。これは本来は、私が申し上げたいのは、金融機関の不良債権がある程度わかっておって、それに対してどの程度対応したらいいのか、こういう発想でやらないと危機管理体制にはならぬわけですよ。  まず、この三十兆、十七兆、十三兆の根拠をお聞きいたしたいと思います。
  187. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のとおり、国債の交付が十兆、融資が二十兆ということでございます。それを今度は預金者の保護のための仕組みが十七兆でございます。  まずそっちの方から御説明申し上げますが、うち七兆が国債の交付でございます。これは、将来の破綻を見越してこれだけ必要だというふうにして積み上げたものではありません。これは、あらゆる事態に対処できるようにという準備でございます。将来の破綻を、こことこことここで合計幾ら損が出るからという性格のものではないと思います。しかし、今先生もいみじくもおっしゃいましたが、例えば不良債権の額があって、それが全部つぶれるというわけではないということでおっしゃいました。  そこで、私どもが一つ念頭に浮かびますのは、二十八兆ベースの、御報告申し上げている数字に要処理額が四、五兆ございます。正確には四・三兆ぐらいあります。それでも十分かという御議論がありました。したがって、SEC基準でまたそれを深めようと思っておりますが、そういった数字を見たときに、それが全く、すべての銀行がつぶれる場合であれば、その数字そのものが根拠になるわけですけれども、そうではないという前提に立ちまして考えてみたときに、それがかなりふえたとしても、七兆程度の準備をしておけばまずは大丈夫ではないかというような感覚であります。  それから、先ほど申し上げました、七十七兆と申されました分類の数字でいいましても、三分類、四分類、これが回収に非常に懸念がある、あるいは回収できないというものですが、これが、償却がかなり進んでおりますが、償却前でも合計で十一兆ぐらいでございます。今だとかなりそれはまだ減っていると思いますけれども、それもすべての銀行の話でございますので、千ぐらいある銀行のうち今まで二十数行が破綻したわけですが、そういうことを考え合わせて、七兆程度の準備をさせていただければ、国民の皆様に御安心いただけるだろうと思うわけでございます。  融資の十兆は、破綻したときに不良資産を買い取ってあげなければいけない、つまり、優良資産は受け皿銀行が引き取ってくれますけれども、不良資産を時価で買い取る、そのための資金として十分な資金を確保する、こういう性格のものでございます。  もう一方の十三兆の方でございますが、これは三兆の国債交付と十兆という融資でございます。これも、それは多ければ多いほど安全だというような御議論はあると思いますけれども、十兆の融資でもって仮に、もちろん三兆も使えるわけですが、仮にそれで優先株あるいは劣後債、劣後ローン等を引き受けたり、あるいは供与したりしたときに、主要行の半分ぐらいがその対象に仮になったとしても、それで国際的な自己資本の水準は確保できるというような考え方がございまして、そこまで準備をしておけばこういった信用収縮のようなことを防げるのではないか、こういうことで準備させていただいております。  少なくとも積み上げでというのではなくて、安心をしていただける体制、準備をさせていただいた、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  188. 谷口隆義

    谷口委員 だから、今銀行局長のおっしゃったことで申し上げますと、根拠はないわけですね。このくらいあればいいだろう、こういうことなのです。  これは、やはり私は、杞憂かもわかりませんが、先日も申し上げたのですが、銀行が融資するでしょう、融資して、融資を受けたところは利息を払うわけですよ。これが六カ月間延滞したら不良債権になるわけですね。六カ月以内に利払いをすれば不良債権にならないのです。ですから、どんなことが市中で起こっておるかといいますと、追い貸しをして、追い貸しをした資金で金利を払う。ですから、実態は不良債権、しかし公表上は不良債権になっておらない、こういうものがあるのです。  そういう、追い貸しをして不良債権を逃れているような債権、これが今回の、目前に、この四月から早期是正措置が始まりますから、今そういう状況の中で貸し渋りが始まっておりまして、貸し渋りがあって融資をしない、追い貸しをしないということになってくるとどうなるかといいますと、それこそ一本の糸でつながっているようなところが、一挙に債権全体が不良債権になってしまう。レバレッジ効果と申しますか、負のレバレッジ効果みたいなものですよ。  少額の追い貸しをしないがゆえに債権の元本自体が全部不良債権になってしまう、突然出てくるというようなこともありはしないのか。これはどうですか。
  189. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のようなケースが非常に極端な場合、例えば本来貸すべきでないところに追い貸しをしてということでありますと、金融機関としては余り正常な貸し出し態度ではないというふうに思います。  ただ、問題は、それにとどまらない、つまり本来なら貸せる、あるいは貸してもいいというところにまで資金が回らない、あるいは自己資本が足りないからといって資産圧縮をするというようなことになりますと、これは経済全体に大変な影響を及ぼすわけでございます。そこで今回いろいろな施策をお願いしているということで、御理解賜りたいと思います。
  190. 谷口隆義

    谷口委員 いずれにしても、今回大変な公的資金を、即座に出すかどうかは別にして、枠取りはしたわけですね、今度の三十兆。大変な金額でございますので、私が申し上げたいのは、十分現在の不良債権を捕捉するというか、把握することからすべてが始まるということをまずもって申し上げたいというように思います。  それと、貸し渋りの問題も、これは今同僚議員の間でも出ておったと思いますが、自民党の対策を見ておりますと、早期是正措置の弾力的運用ということで、本来その対象になるやつを一年間待ってやろうというようなことのようでございます。それともう一つは、有価証券の評価を低価法から原価法に選択してもいいというようなことで自己資本を上げていこう、こういうようなお話のようでございます。  もともとこの早期是正措置というのはどういう目的で行われたのかといいますと、これは、自己資本比率という客観的な基準を採用して行政の透明化を図っていこう、こういうために早期是正措置が入れられたのですね。これが一点ですよ。二点目は、破綻金融機関を延命させずに処理していこう、これが二つ目ですね。今やっておられるのは、どうも透明性に欠けるような対応、いわば小手先の対応でしかないのではないか。  一つは、昨年の預金保険法の改正でもございましたように、悪い銀行と悪い銀行を合併して新設銀行をつくって、預金保険機構に不良債権を売って残っていく。それについて今回の預金保険法の改正になるんでしょうか、金融二法の中で、こういう生き残った金融機関にまた優先株なり劣後債なりを出させて、これを買い取ってやる。そこまで保護していいんでしょうか。  本来、それは、先ほど総理もおっしゃったように、システム全体を守るという観点で公的資金は使われなきゃいかぬのです、預金者保護の立場で。本来生き残れないところを合併し、その不良債権を買ってやって、またそこに優先株を出させて、その分をまた公的資金で面倒見てやる。そのようなことをして、これは延命できなかったらどうなるんでしょうか。これについて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  191. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  御提案申し上げ、御審議を賜っておりますこの二法は、先生がかなり強く御指摘いただきましたような、金融の危機的な状況を起こさないためということでございまして、個別金融機関の保護のため、あるいは救済のためということではないということをはっきりとそこには法律上、明記してございます。審査委員会は、そういう法律の趣旨に十分のっとり御審査されるわけでございますし、そういった措置を準備することによって、金融の危機を引き起こさない、日本発のそういった金融危機を出さない、こういうことをさせていただきたいということでございます。
  192. 谷口隆義

    谷口委員 はっきりわからないのですよ。  だから、昨年の臨時国会でも私は反対したのですが、悪い銀行と悪い銀行が合併して残った銀行がどうして生き残っていけるのと。今まで経営状況が悪くて、みずから経営状況を悪化させたわけでしょう。そういう銀行が残って、またその銀行公的資金を入れてやる。これはどう考えてもおかしいんじゃないか。これはもう、そういう破綻金融機関を助けてやっておるという以外の何物でもない、このように断言せざるを得ないと思うのです。  こういうことをやっておると、どんどん国民は離反しますよ。今回のこの三十兆の問題にしても、これは十分説得力がないわけです、説得力が。  また、先ほど申し上げました貸し渋り対策の第二点目で、低価法を原価法にしてもいいというようなことのようでございますが、本来低価法というのは、企業の保守主義の原則と申しまして、企業の体力をはかる指標になっていたわけですよ。これを、低価法採用による評価損を計上させないように原価法で行うというようなことは、これは小手先の対応きわまれりということを言わざるを得ないと思うのです。本来は金融機関の体力をつけてもらうように努力をするべきなんです。そのように持っていかなければだめなんだ、私はこのように思うわけでございまして、今やっていらっしゃるこの方法については大変疑問がある、問題があるというように申し上げたいと思います。  その次に、先日、大原議員の方でございました土地再評価による資本充実についてというようなことで、総理も大変関心を持っていらっしゃるということでございます。私の意見を申し上げたいのですが、これは慎重に対応する必要があるのではないか。  BIS、国際決済銀行、バーゼルのコンコルダートで、株の含み益の四五%を自己資本に入れてください、このように申し上げたのは我が国ですよ。我が国が株の含み益がほとんどなくなってしまった、だから今度は土地の含み益を入れてください、こんな格好悪いこと言えますか。これはもう御都合主義もいいところなんですよ。  それにつけ加えて、この株の含み益はティア2ですね、補完的項目です。これをティア1で一〇〇%自己資本に入れたいということでございますが、これはちょっと私は難しいような気がいたしまして、これはちょっと問題があるのではないかというように考えております。また、これを行いますと、一つは、ROEと申しまして、株主資本利益率、今企業の評価尺度はROEで行っておるわけで、これが相対的に低下するということになります。これについてどのように考えておられるのか。  また、我が国も、昭和初期、二十年代に資産再評価法を採用したというか行ったことがございます。これは償却資産のみ行ったのですね。償却資産を評価をその当時上げて、これを減価償却費で、結局、最終的には時間の差だけの問題になるわけでございますが、そういうことが行われて、土地については行われたことがございませんでした。その償却資産を評価益を上げたときには、これは六%の法人税、法人税と申しますか税金を取っているわけですよ。今回非課税で行うということについて、これもまた金融機関だけ行うということについての問題。仮にそういうようなことをやるというようなことになるならば、全法人、これは金融機関に限らず全法人、また個人も含めて行うべきではないか、このように考えております。  総理、御見解をお願いいたしたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、先日、大原議員から提起がありましたとき、この土地の再評価というものについて、まさに金融機関の自己資本比率の向上というものを通じて金融システムの安定に資する、そういう視点から現在与党で検討が行われている、その状況の中での意見を求められて、私は、非常に関心のあるものという御答弁を申し上げたところでございます。  そして、議員、非常に細かい幾つかの点のお尋ねがありましたので、それぞれにつきましては政府委員からの補足答弁をお許しいただきたいと思いますけれども、BISが、議員から御指摘がありましたように、金融機関の自己資本の充実を通じて、経営の健全性の維持、金融システムの安定性の確保というものを目的としたものであることはそのとおりでありまして、私は、各金融機関はこの規制を踏まえて自己資本の充実に努力していると考えております。  政府委員から補足をお許しいただきます。
  194. 山口公生

    ○山口政府委員 補足的に御説明申し上げます。  BISの規則上どうだという御指摘がございました。BISの規則、バーゼル・コンコルダットによりますと、銀行が保有する営業用不動産の再評価を行い、そこから生ずる再評価準備金を自己資本に算入することについては、自国の会計制度のもと、バランスシート上で正式に再評価することを条件に、補完的な自己資本に算入することができるというふうになっております。
  195. 薄井信明

    ○薄井政府委員 課税関係についての御質問についてお答えいたします。  自民党において今検討されている方式の中での課税関係につきましては、税制上は再評価前の簿価を引き継ぐこととし、再評価時には課税しないと書かれております。これは、簿価をそのまま保管しておいて売却したときに課税するという趣旨と私ども理解しておりまして、金融関係なり、今回再評価をするところを非課税にするということではないと理解しております。
  196. 谷口隆義

    谷口委員 もう時間がこれでなくなりましたので終わりますが、今主税局長おっしゃったように、簿価のまま置いておくならば、これはティア1に入れるのはかなり難しい話ではないかというように思う次第でございます。  今回のこの再評価の問題は、金融機関からすると大変採用しやすいんですね、全く文句なく自己資本がふえるわけですから。一方、例えば優先株また劣後債、劣後ローン、こういうのを入れますと、政府が干渉するんじゃないかとか、いろいろ金融機関にとっても、なかなか痛しかゆしと思っているようでございますので、そういう観点からすると今回の再評価というのは簡単でいいわけでございますが、一方で金融機関のモラルハザードを招来する可能性が極めて高いということで、私は、大変慎重に扱うべきであるということを申し上げまして、終わりたいと思います。
  197. 松永光

    松永委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  198. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  質問に先立ちまして、一言申し上げたいと思います。  野党が一致して要求をしておりました新井将敬議員、金子日興証券社長の証人喚問について本日自民党の回答がありましたが、残念ながら事実上のゼロ回答でありまして、本補正予算の中心問題として、現在、金融支援三十兆、この問題が審議されておりますけれども、審議の基本として、政官財癒着の真相解明というのが絶対に必要である、このことを強く要求をいたしたいと思います。  また、額賀官房副長官の米国での発言というのが、これが事実だといたしますと、国会をないがしろにするものでありまして、また冒涜するものではないかと我々も考えております。このことについても引き続き追及していきたいと思いますが、きょうは、このことを指摘しまして、具体的な質問に入りたいと思います。  不況の深刻化の問題でありますが、国民の多くはなかなか先の見通しが持てない、こういう深刻な状況にあります。また、元大蔵官僚をめぐる贈収賄の疑惑、銀行による大蔵検査官の接待疑惑など、いろいろな問題が広がっております。こういう中で、政府銀行に対して公的資金の投入を決めた、提案をしている、このことが多くの国民の怒りを買っているわけであります。  今度のこのスキームというのは、第一に、公約に反して、銀行破綻処理に十七兆円の公的資金投入の枠組みをつくったこと、第二に、信用秩序維持を名目にして、預金保険機構に危機管理勘定を新設し、破綻もせず、経営も悪くない銀行の発行する優先株等を公的資金で引き受けて自己資本を増強させる仕組みを提案したことでございます。ここに重大な問題があると私は思います。  具体的に聞きたいわけですけれども、総理にお聞きをいたします。  報道によりますと、総理は、昨年十一月二十九日に自民党の加藤幹事長との会談を行いまして、公的資金投入預金者保護に限ると述べたと報道されています。ここに新聞記事がございますけれども、「首相、預金者保護に限定 金融機関「淘汰やむを得ぬ」」こういう報道がございますけれども、これは事実でございましょうか。
  199. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 昨年の秋以降相次ぎました金融機関破綻で、例えば十一月から十二月にかけましても、銀行の株価が急落する、あるいは格付が低下する、ジャパン・プレミアムの拡大、あるいは内外の市場における資金調達難、あるいは預金引き出しなどの現象が見られる中で、我が国の金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らぎかねない状況となり、そうした中におきまして、自由民主党の中におきましても、政府の中におきましても、公的資金を活用した金融システム安定化策についてさまざまな議論がございました。まず、これは事実として申し上げておきます。  こうした議論の中で、金融システムの安定のためにはまずもって預金者を保護することが最も重要だということは、基本的な考え方として、私は幹事長との会談においても申し上げたと覚えておりますし、そのほかのときにも同じようなことは申し上げたと思います。  同時に、金融危機の時期において、資本注入によって金融システムの安定を図るという考え方について否定したこともございません。与党・政府内での議論を経まして、今回、金融システム安定化のための緊急の特例措置に関する二法案を提案させていただいて、御審議をお願い申し上げております。
  200. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうしますと、預金者保護に限定をしたというふうにおっしゃったことはないというようなお話でありました。そうしますと、この新聞記事自体が事実と違うということになるわけでありますが、具体的なスキームの問題について伺いたいと思うんです。  優先株の購入を行う、それは預金保険機構の危機管理勘定によって行うということになっておりますが、この優先株の購入というのは、預金者保護を直接の目的にしているのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  201. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 事務的に補足をお許しいただきたいと思いますけれども、多分、今議員がお見せをいただきました新聞記事と同じ新聞だと思いますが、手元にありますものを見ますと、「ただ、首相は加藤氏に「予算委員会での各党の意見や党内外の意見を聞いてみて考えたい」とも述べた。最終的には与党内などの論議、世論の動向などを見極めたうえで、具体的な対応を決める考え」、中にはそのような記事がございます。  いわば、見出しをどうつけられたかということについて私が責任を問われることは、ちょっと、むしろ記事が間違っているといいますか、記事、むしろ非常に、そこまで書いてあるということでございます。  優先株の最終判断の問題は、事務当局から答弁をさせます。
  202. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今回の金融危機管理につきましては、金融の危機的な状況に対処するというのが目的でございます。それは何のためにそういうことをしなきゃいけないかというと、金融が持つ機能が大切だからでございます。  その機能の中には、預金者を守る、先ほど、預金は全部返すべきものは返す、当然だという御指摘もありました。そういったお預かりしたものをきちっと返せる形をとる、これは預金者の保護でございます。  それから、あるいは取引先、これに資金をきちっきちっと供給する、これは健全な取引先ですけれども。そういうことによって経済全体に血液の役割を果たすわけでございます。その血液の役割が、預金者保護も当然含まれています、これは信用秩序ですから。信用というのは、私どもが銀行を信用するし、それで銀行がまた企業を信用し、それで企業企業間同士で信用して、血液、血流がスムーズに流れるわけでございます。  だから、この制度は、ある意味ではすべて預金者のためになるものであります。非常に狭い意味でお使いになれば、いろいろな御議論はあると思います。しかし、広く信用秩序というのは、そういったお互いに信頼し合う、預け合う、預けても安心だということでございますので、その点を御理解いただきたいというふうに思います。
  203. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 この危機管理勘定というのは、風が吹けばおけ屋がもうかる式に預金者が保護されるというような今の説明では、実際のこの危機管理勘定の説明にはならないわけであります。つまり、十七兆円で、こちらの方が預金者保護に直結する問題である、勘定である、そして十三兆円の方は資本の注入である、これが今度の法案の特徴であります。  私は、ここに二つの公約違反問題というのがあると思うのです。  まず一つは、住専、信組以外の銀行破綻処理に公的資金を使わない、こう言ってきたのに、この特例業務勘定を設けて、本来金融機関が共同で負担をすべき、責任を持つべきところに、そこに公的資金を投入する仕組みをつくった、これがまず一つの公約違反。  二つ目の公約違反は、預金者保護そのものを直接の目的とせず、資本の増強、資本そのものを増強するために財政資金を注ぎ込む、公的資金を使うという仕組みをつくったことであります。つまり、ここに二重の公約違反があるというふうに私は指摘せざるを得ないと思うのです。  そこで、具体的にこの資本増強の勘定についてお聞きいたしますけれども、銀行業界は資本の増強のために何らかの負担をするのか、一円でも負担するのかという点を聞きたいと思います。
  204. 山口公生

    ○山口政府委員 お尋ねは、この資本増強の措置に負担があるかというお尋ねでございますけれども、それはいろいろな見方での負担ということがあり得ると思います。  一つは、例えば優先株あるいは劣後債、劣後ローンというものを引き受けたり、あるいは供与したりすれば、それは当然配当なり金利を払うということで、それも通常のものよりは高いということになります。それが負担ではないとおっしゃれば、負担ではないかもしれません。しかし、当然そういうことが前提になります。  それから、申請をするときに、金融機関は、経営の合理化に関する、あるいは健全性確保に関する計画を出して、審査委員の皆様全員の御了解を得る必要があります。これがまた負担ではないと言われればそうでありますけれども、みずから律するということが前提になっているということをお聞き賜りたいと思います。
  205. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁でも、この危機管理勘定に銀行が直接負担をする仕組みはないわけです。一円も出さないんです。当然、株を発行すればそれに関連する費用というのは、これは当たり前であります。これは通常、株を発行すればそういうことになるのは当たり前です。そういう仕組みになっている。つまり預金者保護のためでは直接使わない。つまり資本の増強のために使う勘定、ここに公的資金を使うけれども、国民の負担はそこで出てくるけれども、銀行は一円も負担をしない、これがこの危機管理勘定の最大の特徴であります。何のためにこういう負担を国民がしなければならないのかというのは当然出てくるわけであります。  さらに問題なのは、その対象となる金融機関というのは健全な金融機関である、こういう規定になっている点ですね。自民党の加藤幹事長は、資本は優良行から中位行にまで注入し、問題行には注入しない、こういうふうにある雑誌でも述べているわけであります。  総理にお伺いしますけれども、この資本注入というのはまず優良行から行う、この加藤幹事長と考え方は同じでございましょうか。
  206. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今般の自己資本充実策、これは基本的には、もう既に議員はよく御承知でありましょうけれども、金融機関の自主的な申請というものが前提になっております。そして、法案を成立させていただきました後に、それぞれの金融機関が申請を行ってきた段階で審査委員会が審査基準に基づいて、引き受けを行うかどうかを決定する仕組みでございます。政府として、引き受けの可能性及び引き受け対象となる金融機関について云々できる立場にはございません。  ただ、これまで申し上げてまいりましたけれども、今回の公的資金によります自己資本充実策、それは経営が悪化した金融機関の、言いかえれば破綻する金融機関救済を目的とするものではございません。金融の危機的な状況に対処するための緊急措置として行われるものでありますし、基本的にきちんとした経営を行っている金融機関を対象とするものでございます。
  207. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 上から入れるかどうかということについては明確なお答えではなくて、優良な銀行からと、こういうふうにおっしゃいました。  それで、もうちょっと具体的にお伺いしますが、自民党の山崎政調会長は、一月十五日の全国幹事長会議で、優良な銀行から資金注入していく、このように述べておられます。具体的には、東京三菱銀行の劣後債、三和銀行の優先株を引き受けると、これは日経の一月十六日付に出ておりますが、そうなりますと、東京三菱銀行というのも当然その対象になる、その範囲に入っているということを意味すると思うんですが、それでよろしいでしょうか。
  208. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今私は正確に、間違えないように申し上げましたが、もう一度申し上げさせていただきます。  まず、基本的に金融機関が自主的な申請をされる、それが前提であります。法案を成立させていただきました後に、それぞれの金融機関、先ほどは私は各金融機関と申しましたけれども、申請を行ってきた段階で、その引き受けをするかどうか、それは審査委員会が決定することであります。政府がその引き受けの可能性、引き受け対象となる金融機関について云々できる立場にはおらないと先ほども丁寧に申し上げました。
  209. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それでは、申請が出されるかどうかというのがまず最初のスタートである、こういうことであります。  東京三菱の岸頭取は、昨年末に、まず最大手の東京三菱から優先株をやったらどうかとの意見もあるというふうに問われまして、次のように述べております。これは十二月二十五日の「金融財政」という雑誌でありますけれども、この中で、それはかなり違和感のある話だ、どの銀行が危ないかをぼかすために、ある銀行に国家の資本を入れるというのはどうかと思う、このように言っておられます。金融機関の自己資本充実への活用は、モラルハザードの問題がある、これは毎日新聞でもこのように述べておられます。つまり、当の本人が、必要はない、優先株を買ってもらわなくてもいい、こういう立場を表明されているわけであります。  実際、東京三菱銀行というのは、ニューヨーク証券取引所に日本の銀行で唯一上場している銀行でありまして、しかも、昨年九月期には一兆一千二百五十一億円、この大規模な不良債権の処理を行いました。大蔵省からいただいた資料によりますと、不良債権残高一兆五百十二億円に対しまして、債権償却特別勘定の積み立ては一兆三千二百七十六億円に上っておりまして、引き当て率一二六・三%。本当に体力のある優良な、括弧つきだと思いますけれども、そういう日本でトップクラスの銀行であります。  ですから、最初からこういう一番上の優良な銀行から入れる、このように山崎政調会長もおっしゃっているし、あるいは加藤幹事長も上から入れるとおっしゃっているわけですから、実態と、上から入れるというその言葉とは大きく開きがあるわけです。  当然こういう優良銀行というのは基準から外れるというのが、これは当たり前のことではないでしょうか。ですから、こういうところに資本を入れる、資本注入ということになりますと、まさに巨大資本、巨大銀行最優遇ということになるわけですから、これはどこから見てもつじつまは合わない、こういうことになるわけでありまして、その点はいかがでしょうか。
  210. 山口公生

    ○山口政府委員 今特定の銀行の名前をおっしゃいましたけれども、それだといろいろ語弊がありますので、一般的に、優良な銀行についてどうしてこういったものの対象になるのかというお尋ねだという理解で申し上げますと、昨年の十一月から十二月にかけての危機的な状況ともいえることを思い出させていただきたいと思うのでございますが、金融破綻がありまして、株価が、特定の銀行、複数下落しました。不安が増長しまして、格下げの動きもありました。危機の報道もありました。そこで、窓口では預金の引き出しが起こりました。  一方、これが一番重要だという感じの一つだと思いますが、コール市場、インターバンクのすくみ現象が起きております。それから、海外でドル調達ができなくなるという大変な危機感がありました。これは優良な銀行でもそういう状態になりました。つまり、幾ら円貨を持っていても、それはもう外貨を手に入れなければ海外では仕事ができない。円を売ればいいじゃないか、しかし、それは大変なロスを生じるわけです。すぐには対応できません。日々それでドル調達をするわけです。  そのときに、昨年でしたので、十二月期越えがとれるかとれないか、大変な問題になりました。その状態というのは、今度は三月期の期越えがとれるかとれないかという話につながるわけです。  優良銀行だからといって、その市場がすくみ現象が起きたときには、それは何が起きるかわかりません。もし特定の銀行で優良銀行がドルがとれないとなったら、ほかの銀行に頼まなきゃいけない。ほかの銀行は融資、回してくれなきゃいけない。しかし、ほかの銀行だって八%を割るようなことはできません。八%を切ったらクレジットラインを切られてしまうというおそれもあります。ジャパン・プレミアムが一%まで上がったということはそういう現象でございました。非常にそのときは私どももはらはらした状況であります。しかし、私は危機をあえてあおるつもりはありませんけれども、そういった事態ということはいつ何どき起きないとも限らないということをぜひ御理解いただきたい。  そうしますと、特定の銀行、これは例外、これはもう対象にしませんとかいうべきものではないと思います。それは総理がおっしゃるように、いろいろ申請があって、それで審査委員会がその要件に合っているかどうかというのを十分御審査されて、適切に危機対応としてなさるというふうに考えております。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今、昨年十一月の事例を挙げまして、かなり深刻な事態になっていた、こういうお話でありました。  仮にそういう資金調達難が生まれてくる、こういうことになったときに、本来やるべきことは、中央銀行、つまり最後の貸し手としての日銀の特別融資、こういうものが一つの対策としてとられるというのが普通の措置であります。それをやらずに、国民の負担によってわざわざ優先株を買ってあげる、こういう仕組みをつくる必要があるのかということなのです。  つまり、プレミアムの問題がある、ジャパン・プレミアムがあるというふうにおっしゃいますけれども、そういう問題についてももう一つの要因があるわけです。例えば九五年のあの大和銀行事件、アメリカで不正を起こした、そういう事件に対して大蔵省の対応がおくれた。こういう問題もプレミアムを引き上げた一つの要因でありますし、あるいは総会屋との癒着関係、簿外債務問題、政治家に対する不当な利益供与、こういう体質そのものが国際的な不信感を呼んでジャパン・プレミアムを引き上げたということは、これまでも事実としてあるわけであります。  だから、まずやるべきことは、緊急対策として、もしそういうことがあるならば、当然資金繰りに対する日銀の役割の発動、長期的には、この日本の非常に重大な問題のある不公正な銀行の体質の改善、あるいは政官財癒着の問題、そこにメスを入れる対策ということにまず取り組むというのが、現在のような事態を改善する最大の課題だろうというふうに私は思うわけであります。  先ほどから私は、自民党の幹部の方々が上から入れていくというふうに発言をされているということの問題点について指摘をいたしました。  こういうことから、つまり全部が対象であって上から入れるということも方法だ、こうなりますと、直接国民のいわば預金保護に関係のない資本注入そのものに、資本の注入国民の税金を使って、そして危ないところはこれは助けないのだと。破綻するところはどんどん、これはもうしようがない、つぶれてもしようがないと。これは破綻処理だ。そして優良なところにはどんどん入れていく。  こういうことになりますと、これは今の国民の感情からいうと、とても認められないということになるわけであります。この点を厳しく指摘をしておきたいと思うのです。  次に、では優先株を公的資金で購入するというけれども、その場合の銀行の経営責任というのは、一体どのようにこれを問うのかという問題があるわけです。つまり、優先株を買ってもらわざるを得ない事態にその銀行が陥ってしまう、そういう状況になった経営責任というのはどのように問うのか、この点について大蔵大臣見解を伺いたいと思います。
  212. 三塚博

    ○三塚国務大臣 委員の主張、質疑は午前の大蔵委員会でもしっかりとお聞きいたしたわけであります。基本的な点を一つ、共通項を持ちたいと思うんです。  銀行を救うためにやっておるわけではございません。守るべきは金融システムそのものであります。そのために公的仕組みが今日つくられるということになりました。銀行から負担金を取ったらいいんじゃないかという御意見もあるわけでありますが、そうではなく、政府みずからがトップを中心として断固たる意思を表明する。  それは、公的資金十兆円、資金繰りに緊急な場合、いつでも対応できるように預金者保護に対して十兆、危機管理に対して十兆、合わせて三十兆の枠組みです。そして、預金者保護は名目ではないかと言われましたが、十兆の国債、直ちに現金にかわるこの国債、七兆円をそれの保護に充てるということです。三兆円が危機管理、優先株の発行の資金の最終的なロスを補てんいたします。こういうことでありまして、買うわけで、また売るわけでございますから、十兆円の保証で資金を調達し、買っていく、その売買の中でとんとんになるのではないかという計算もあります。  私は、そうしていくのが国民の負担をなくす意味で大事だ、こういうことであります。その点を御理解いただければ、すべて解決すると思います。
  213. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が質問をしたことに全然答えてないじゃないですか。経営責任についてどう問うのかと聞いているんですよ。全然答えてないですよ。
  214. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ですから、本件については、破綻した場合には経営責任を民事、刑事で問うということなんです。(佐々木(憲)委員破綻処理の場合でしょう」と呼ぶ)そうです。  それで、危機管理、その購入をするに当たりまして、また発行するという銀行側の行為が、意思が決定した場合には、健全化目標を明示した計画書の提出を受ける、こういうことであります。その審査会において全会一致でこれを決定する、また閣議でこれを決定する、こういうきちっとしたルールを確立いたしておるわけであります。  そういうことで、ルールがきっちりなって、破綻の心配はない、資本力増強のためにさらに融資態度が伸びる、地域貢献が伸びる、こういうことになりますと、両々相まちまして、銀行もよい、地域のお得意さん、そういうところもよい、こういうことになりますので、民事、刑事の問題はこの際別である、こう申し上げておるわけです。
  215. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が質問していることに何か答えたか答えてないのか、よくわからないような御答弁であります。  今説明になったのは、破綻した銀行の経営責任については民事、刑事の話でしょう。破綻しない銀行ですから、こっちは。優良銀行なんですから。その優良銀行に対して、優先株を買う、資本注入を行う、その場合に経営責任を問うのかどうかと聞いたわけです。  それに対して、今三塚大蔵大臣の答弁は、経営計画を出すからいいんだ、その経営計画を出すということによって経営責任を問うたということになるということですね。そういう回答だったですね。
  216. 松永光

    松永委員長 大蔵省山口銀行局長。今の質問に対して的確に答えてください。
  217. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  経営内容が悪化して破綻した金融機関責任とこの資本注入の場合の責任とは、やや性格を異にするのではないかというふうに思います。先生の御質問を聞いていますと、何か資金を贈与するような印象を受けますけれども、これはあくまで一つの融資の形でございます。それは御存じだと思いますが。  そこで、なぜこういう措置が必要かといいますと、市場が全く平穏で、必要なところに必要な資金が流れる、株を発行したいと言えばそれを引き受けるところがある、あるいは劣後債を出したい、ああ引き受けましょう、劣後ローンを出したい、ああ私が出しましょうということで、市場がすくみ現象を起こしていなければ何も問題は起きません。しかし、私が申し上げたように、すくみ現象が起きるというのは、不安は不安を呼びますから、みんな自己防衛に走るわけです。自己防衛に走るということは、将来がちょっとでも不安になると過剰になりがちです。それが悪循環を及ぼすということです。  したがいまして、市場のすくみ現象あるいは市場が十分にカバーできないものを、こういった市場の外からちょっと力を加えてあげることによって立ち直らせるということでございますので、そこについての経営責任の問題ということについては、破綻の場合とは当然違ってくるわけでございます。  それで、大臣から御答弁いたしましたように、引き受けの議決の前提として計画を出すことになっております。そこで審査委員の方々が、やはりそこに責任について何かきちっとしたものがなければならないと御判断されれば、それはそこで責任が触れられることになるでしょう。そういったことも全くないということであれば、それはそれで、そういうことでございますけれども、そのときそのときのケース・バイ・ケースで判断すべきものというふうに考えます。
  218. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 破綻した金融機関と区別するというのは当たり前なんですが、具体的にどういう責任を問うのかということに対しては、ケース・バイ・ケースという話であります。要するに、まともに問わない。この第四条では、優先株等の引き受けを行った金融機関等の経営に不当に関与をしてはならない、こう言っているわけですから、要するに経営責任を問わないということですね。そういうことなんですよ。  こうなりますと、要するに、金は出すけれども口は出さない、こういうことを制度的に決めたということになるわけですね。そこに重大な問題が私はあると思うのです。これはまさにモラルハザードを招くようなやり方でありまして、国民は納得しないと思います。しかも、健全化計画といいますけれども、健全化計画の内容については具体的に法律の中では規定されておりません。もともと健全な銀行を対象にしているとおっしゃるわけですから、まともなチェックは最初からするという形にはならない。  こういうことになりますと、最終的には国民の血税を注ぐ可能性のあるそういう仕組みをつくって、つまり十三兆円の公的資金の投入の仕組みをつくって、優良な銀行にどんどん優先株購入のために投入をする。しかし、経営責任は問わない。国民の税金は使うけれども口は出さない。結局、負担は全部国民に回ってくる。これが今度の危機管理勘定の重大な問題点であります。そういうことになるわけであります。  こんなやり方というのは国際的に通用するのか、国際的にやった事例があるのかというのが次の問題であります。  よく政府は、アメリカでも一九三〇年代、優先株を購入した、こういうふうにおっしゃいますけれども、それでは、一九三〇年代のアメリカではどうであったか。預金保険機構も整備されていない、そういう時代の話であります。それでも、日本のような、このような野方図なやり方はしておりません。  一九三三年三月九日に優先株購入を含む緊急銀行法というのが制定されました。この法律には、どのような条件を備えた銀行を優先株購入の対象としていましたでしょうか。
  219. 山口公生

    ○山口政府委員 お尋ねのアメリカのRFC、復興金融公社が引き受ける優先株などの発行金融機関の条件については、法律上具体的な基準があったわけではなく、幅広い金融機関に対して資金注入が行われました。ただ、その際、一部の金融機関に対し、経営者の退陣、優先株等の償還費用の積み立て等を課した例もあったと承知いたしております。  それから、ほかの国であるだろうかという御疑問が呈されましたけれども、最近におきましても、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、いずれも大手銀行の経営悪化あるいは債務超過等で信用不安が起きそうになりました。その際、各国とも、例えばGDPの二・七%がノルウェー、四・五%がスウェーデン、フィンランドが七%、こういう資金を投入いたしまして、優先株等の取得を行い、経済を立ち直らせておる例も御紹介させていただきたいと思います。
  220. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁は不正確であります。  「証券研究」という雑誌がありますけれども、この中で具体的な研究が行われておりまして、アメリカでは、確かに今おっしゃいましたように、緊急銀行法そのものの中には具体的な条件は書かれておりませんが、この成立を受けまして、RFC、復興金融公社は優先株購入計画の具体化を急ぎまして、その三月末には以下のような詳細が発表された。この中に、具体的な次の状況に該当する銀行の優先株を引き受ける準備があるという規定が決められました。  その内容は、その資本の一部が損壊を受けている場合、資本の全部が欠損によって消失している場合、資本の消失によって預金が損壊を受けている場合、この三つを挙げまして、いずれかの状況に該当する場合に優先株を引き受けるというふうになっております。  ですから、今の日本のように、経営が優良である、優良銀行だ、こういうところは対象にはならない。アメリカの場合には、一九三〇年のあの大恐慌がありました。ですから、大きな銀行もこの条件に合いましたから、優先株を引き受けることになったわけであります。そのような具体的なアメリカの状況を私どもはよく調べて、その上で具体的な問題を指摘しているわけであります。  もう一つの問題は、優先株を購入した銀行に対してどのような規制が行われたかという点でありますが、具体的にどのような規制を優先株を購入した銀行に対して行ったか、この点について回答を願いたいと思います。
  221. 山口公生

    ○山口政府委員 基本的に、アメリカのRFCの例と、現在お示ししている例を単純に比較することにはいろいろ問題があるのではないかというふうに思うわけでございます。  例えば、アメリカ預金保険法の発効は一九三四年だと思います。したがって、RFCは破綻金融機関をも対象にするものでありまして、今先生の御指摘の点は、恐らくそういった点の部分をお示しされたのではないかというふうに思います。  規制については、先ほど申し上げましたように、一部の金融機関に対し経営者の退陣あるいは優先株等の償還費用の積み立て等を課した例があるというふうな記録がございます。
  222. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 単純に比較してはならないというお話であります。そのとおりであります。今まで政府説明では、アメリカで大きなところから優先株を買ったじゃないか、日本でも同じようなことをやって当然なんだ、こういう説明をされていたわけです。しかし、日本がやろうとしていることとアメリカの現実は、今説明がありましたように全く違うわけです。  例えば具体的な規制の問題で、銀行の全事項に関するRFCの議決権の行使の承認。つまり、優先株とはいうけれどもその株には議決権がある、したがってその議決権を行使して従来の経営者の退陣を求める、抵抗した場合には株主総会を開いて、そして退陣の決議をする、こういうことまでアメリカの場合はやっているわけであります。事実上の半国営的、そういう措置をとったわけであります。  先ほどノルウェー、スウェーデン、フィンランドという事例も挙げられましたけれども、この面でも、その株の購入によって事実上国有化した場合もありますし、半国有化という事態もそこでつくられているという状況であります。  そういうことを考えますと、現在の政府説明は、こういう諸外国の事例と比べますと全くつじつまが合わないわけであります。日本がいかに異常であるかというのは、こういう経営者の責任や経営内容の改善、そういう点をまともに追及もせず、あるいは預金者保護とも関係がない、そういう優良銀行に対して国民がお金を払わなければならない、そういう仕掛けだけをつくって、外国でもやった、外国でもやったという宣伝をする。これはやはり事実に反するわけでありますから、その点の是正を私は求めて、質疑時間が終わりましたので、終了したいと思います。
  223. 松永光

    松永委員長 銀行局長、簡単に言ってください。
  224. 山口公生

    ○山口政府委員 先生のいろいろな御指摘につきましては、アメリカの場合、一九三四年に預金者を保護する預金保険法が発効した、だから、それ以前とその後ということはやはりよく区別して議論されなければならないのではないかというふうに思います。
  225. 松永光

    松永委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  226. 上原康助

    ○上原委員 橋本総理初め各閣僚の皆さん、大変御苦労さまでございます。  本補正予算案に対する質疑は、日程は明日も残っておりますが、残念ながら社民党の持ち時間はきょうで一応終わるということになっておりますので、若干確認をさせていただきたいことがございます。時間が限られておりますので、項目を申し上げて総理あるいは大蔵大臣の方からお答えを願いたいと存じます。  まず一つは、九七年度予算において九兆円を超える急激な国民の負担増を招いたというこの事実を直視して、このたび措置される特別減税を九九年度以降いわゆる継続して、延長するなり制度化するなりやっていただきたいということ。また、消費税の飲食料品課税の見直し問題は、長いこと与党三党間でも協議をされてきたことであります。今日の国民負担を考えると、このことはぜひ見直しが必要だと社民党は考えております。そういう意味での負担の軽減を図り、内需拡大にもっと役立つような方策をぜひ講じていただきたいというのが一つであります。  二点目は、預金者保護の徹底と、金融システム安定化のための公的資金を活用する場合は、いろいろ議論がありましたように、経営責任というものを徹底的に追及する。モラルハザードを防ぐためにも、公正な審査機関によって厳正な基準を設けて、透明性の高い手続のもとで行わなければならないと考えます。金融破綻に起因する雇用不安の克服、金融破綻金融不祥事に関する経営責任、行政責任、刑事責任等の徹底追及を明確にすることが、今国民が求めていることだと思います。これが二点目であります。  三点目は、これもいろいろ議論がありましたが、不透明な通達行政から、やはり法的根拠を持つ法令によるルールに基づく行政への転換を促進することが必要ではないかと存じます。特に、金融機関の不良債権額が明らかにされないなどの事態を改革するため、国際的にも社会的にも通用する水準の経営情報を金融機関に開示させる制度を確立すること、法的面を含めて必要があると存じます。  社民党は、あと二点ございますが、今申し上げた三点をぜひ政府として、また自民党さんにも御理解を願いたい、そういう前提で、本補正予算案を早期に成立させることに協力していきたい、こう考えておりますので、御答弁を願いたいと存じます。
  227. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 今、委員から述べられましたもの、それは恐らく九七年度補正予算案の衆議院における採決に当たって、与党確認に向けた御党からの御提案の項目を指しておられるものと思います。そして、あと二つの項目があるとおっしゃいました。個々に私は長々と御答弁をしようとは思いません。  いずれにいたしましても、国政をあずかる与党三党、お互いの立場を尊重し合いながら、よい知恵を出していかなければならないと考えます。そして、いずれにいたしましても、私としては、大きな方向性を見定めながら、現実の経済実態に即した的確な対応をとることが政治の使命だと考えておりますことを申し上げたいと思います。
  228. 上原康助

    ○上原委員 あと二点申し上げますので、まとめて、もう少し確たる御答弁がいただければありがたいと思います。  貸し渋り問題、あるいは公共事業関係についても、社民党としても真剣に検討の上、特に次のことを留意していただきたいと思います。  これは四点目になります。いわゆる貸し渋り問題への対処として、政府金融機関に新たな融資制度が創設されました。また、信用保証協会の保証枠が拡大されるなど、いろいろ手だて、施策がとられつつございます。そこで、今後これをさらに拡大するとともに、金融安定化措置によって信用収縮を解消して、特に中小企業向け融資等の改善につながるように、積極的に取り組んでいただきたいということでございます。  五点目は、災害関係費、緊急米関連対策経費など、公共事業関係費が多く計上されております。これら公共事業については、やはりいろいろ御指摘がありますように、再評価あるいは再検討すべき点もあるのじゃないかと思います。また、私個人は、公共事業、公共投資というものは必ずしも費用対効果だけに依拠するものではないと思うのですが、費用対効果分析等も積極的に行って、いわゆるむらやむだを省くということが今必要だと思います。  この二点を含めて、先ほど総理から御答弁があったのですが、社民党としてはこの五点程度、程度というか、この五点については少なくとも、ぜひ政府に対しても強くこの意見というもの、意向というものを、提言というものを尊重していただきたいと思っておりますので、重ねて御答弁を願いたいと存じます。
  229. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は、議員が社民党の持ち時間は今だけだという前置きを置かれましたので、できるだけ要約したお答えを申し上げようといたしまして、かえって失礼をしたかもしれません。  御党が考えておられます内容を今手元で拝見をいたしております。そして、その第一点には税制についての御党の御主張が書かれております。  その中には、特別減税の問題あるいは消費税の飲食料品課税の問題等、今日までも与党内におきましても議論してまいりましたテーマがございます。それに対して従来の政府見解をここで繰り返すことは避けたいと存じますが、先ほども申し上げましたように、与党三党としてよい知恵を出し合っていく、そういう議論で今日まで参りましたもの、これからもその関係が続けられることを願います。  また、第二点、第三点、そして第四点、これにつきましては、預金者保護の問題あるいは金融システム安定化、行政のルールをきちんとしていけ、さらに情報開示の必要性、そしてそういう文脈の延長線上に貸し渋り問題に対してきちんと対処をすること。  それぞれの御指摘は、例えば先ほども御論議があったところですが、金融破綻に起因する雇用不安の克服といったテーマにつきましてもこの中にはあるわけであり、それぞれに我々が努力をしていくべきことがあろうと存じます。  また、公共事業関係費についての再評価あるいは費用対効果分析というものが、今後ともにより積極的に採用されていくべきものであることは、本院におけるさまざまな御論議の中におきましても提起をされ、既に政府として一部これに取り組んでおりますことを申し添えたいと存じます。
  230. 上原康助

    ○上原委員 大蔵大臣も、総理がお答えになったわけですから、その点は御確認いただけるという前提で、答弁は求めませんが、ぜひ尊重していただきたいということを要望申し上げておきます。  それと、昨晩というかけさ未明までかかって、大蔵省のいわゆる財政と金融の分離の問題ですね。これもマスコミ等でいろいろ玉虫色とか批判も強いようですが、ぜひこの三党合意を尊重していただいて、二〇〇三年からの、我々は、二〇〇二年までということですから、二〇〇三年からは大蔵改革はきちっとできるという前提でこれは合意されていると認識をしておりますので、その点強く申し上げておきます。お答えがあれば、後ほどお答えを願いたいと存じます。  次に、自民党さんと委員長の御了解を得て、私の持ち時間以上に少しは時間をもらってあるのですが、それでも足りないようですから。  基地問題についてもお尋ねしたいのですが、私は、基地問題と沖縄振興策ということをリンクさせるとか、あるいは同次元でといいますか同列で議論をする立場はとりませんけれども、この間もお尋ねしましたように、いわゆる沖縄経済振興二十一世紀プランということはどうなっていくかということは、非常に関心と、今日の基地問題をめぐる政府と沖縄側の関係からすると懸念される向きもないではありません。  それで、沖縄開発庁もいろいろ振興策については御努力をなさっておられるようですが、今私が申し上げた二十一世紀プランとのかかわり等も含めて、今後の振興策について、どういうスケジュールでやっていかれるのか、この際、明らかにしていただきたいと存じます。
  231. 鈴木宗男

    鈴木国務大臣 上原先生自身、熱心に沖縄振興に尽くされておりますので、敬意を表しておりますけれども、ちょうど沖縄は復帰二十五周年です。この二十五周年の間に約五兆円の国費を投入して沖縄振興に努めてきました。これからも沖縄は大事な場所であるという認識の中で、しっかり振興に努めていきたいと思います。  同時に私は、上原先生にぜひとも御理解いただきたいのですけれども、沖縄の振興のためには私はやはり人的財産を生かすべきだ、こう思っているのです。歴代の内閣で、橋本総理ほど一生懸命沖縄の思い、心、目を考えてやってきた人はいないと私は思っております。  同時に、この内閣には、沖縄開発庁第十代目の長官、小渕外務大臣もそうでありますし、小里総務庁長官沖縄開発庁長官経験者であります。だれよりも沖縄を思っている人たちがそろっておりますから、ぜひとも国益とか国策に沿ったことを御理解いただきたいし、御協力いただきたい。さすれば、沖縄振興はついていくものだ、こう思っておりますので、さらなる御支援をお願いしたい、こう思っております。
  232. 上原康助

    ○上原委員 お言葉を返すつもりはございませんし、私もいろいろ悩んでいると言うと変ですが、考えながらやっているわけで、余り情緒論、心情論、同情論で沖縄問題というのはなかなか前進しない、解決しないのですね。総理の普天間問題に対するお考えあるいは御答弁を聞いても、ちょっとそういう面が強調され過ぎるのかなと思って、私はむしろ心配というか懸念をしているわけです。  そこで、今鈴木長官から非常に前向きというか熱意のある御答弁があったわけですが、沖縄経済振興二十一世紀プランというのは、これは総理、どういうふうにお考えなのか、どういうテンポでまとめていかれるのか。この点、私はやはり総理なり官房長官から、この機会により明確にしておいた方がいいのじゃないかと思いますので、ひとつお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
  233. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 情緒的であってはならないと言われました。私自身大いに気をつけてまいりたいと存じます。  その上で、今まで論議をされてまいりました内容、これは米軍基地の整理、統合、縮小に対応しながら、依存型経済から自立型経済へ移行を図ろうという県のお考えでありました。これを基本的に我々は重く受けとめてまいりましたし、沖縄政策協議会を中心にこれまで政府としても沖縄振興策に鋭意取り組んできた、そう考えております。  それだけに、私は、この前提となっております問題点、これに大きな変更を加えなければならないような判断が県から示されました場合に、県自身が御提起されました国際都市形成構想などの地域振興構想を大幅に見直される必要が生じるのではないかという懸念を持っております。
  234. 上原康助

    ○上原委員 その点は私も理解ができます。いわゆる国際都市構想というのは、普天間の全面返還というものを前提に構想されていることは御指摘のとおりです。  そこで、昨日来、コーエン国防長官が来日なさって、外務大臣、もちろん総理もそうですが、防衛庁長官、いろいろ御協議をなさったようです。  時間がありませんので多くは触れませんが、いろいろマスコミ等の報道なりあるいはコーエン長官の口からも、要するに、普天間返還問題というのは、沖縄の基地問題というのは国内問題だ、国と地域が決めていくべき課題だというふうな認識だ、こういうふうなニュアンスですね。  もう一点は、海上基地構想というかヘリ基地がベターなんだというか、現時点では選択し得る最上の案なんだが、それが不可能な場合はいろいろなオプションが考えられていいのではないかという話をなさったという報道もなされております。また、けさほどの一部の新聞においては、普天間返還問題はもう暗礁に乗り上げたのだという説明をしたという報道さえあります。  こういうこと等を考えますと、やはりアメリカ側も、建前論はともかくとして、本音においては真剣に沖縄の今の状況というものを受けとめておるのではないのか。日本政府としても、先ほど総理からありましたように、県の国際都市形成構想そのものが変更せざるを得ない事態が来るかもしれない。それは、何も私は、沖縄県だけの責任とかあるいは結果とか、沖縄側が受け入れなかったからということで済ませることではないと思うのですね。そういう打開策を政府として、総理のリーダーシップで改めてやっていただかなければいかないと思うのです。  大変、今そこまでお尋ねするのはちょっと踏み込み過ぎるかもしれませんが、私は、やはり新たなメッセージというものが必要ではないかと思うのです。総理のお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
  235. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これはもう議員がよく御承知のとおりの経過でありまして、私は、今それを長々繰り返すつもりもありません。そして、その原点がどういうところから現内閣においてスタートしたかも御承知のとおりであります。  その上で、我々としては本当に日米が真剣に論議をし、考え抜き、その結果の選択肢の中の最良のものとして海上へリポート案を提示したということはもう御承知のとおりであります。  代案を考えろ、それがぱっと出てくるような、我々は生ぬるい検討で海上へリポートという考え方を出したつもりはございません。少なくとも私は、知事の御意見というものに真剣にこたえるための努力を日米双方ともしてきたと思っておりますし、特にその中で撤去可能という条件、これを非常に大きなものとしてとらえて考えてまいりました。
  236. 上原康助

    ○上原委員 今のお立場で総理がそれ以上のお答え、御答弁はあるいは難しいかもしれない。  ただ、ここは私も、県民の代表という立場と、この問題に客観的にかかわってきた者として、原点は大田知事からの提言があった、確かにそうだったと思うのです。三事案の優先扱いということもございました、基地の置かれている危険性からして。しかし、これは橋本総理と大田知事がどういう話し合いをしたかは知るすべもございませんが、海上を受け入れるとか、あるいは県内での移設条件を結構ですと言う立場ではなかったと思うのですね。その点は申し上げておきたいと思うのです。  それと、私は、政治家には、あるいは自治体の首長さんも、それぞれの御判断や決断があっていいと思うのですが、先ほど、国益、県益、市益というものを重く受けとめたいと。これは、一般論、一般論というか、私もその認識もわかります。しかし、残念ながら、国益、県益、市益ということを、総理がお考えになっている、あるいは政府が今おとりになろうとする解決策には、沖縄側と名護市民は拒否してきているわけですね。そこをどう再調整するかというのが今問われているのじゃないでしょうか。  ですから、そういう点は余りかたくなにお考えにならずに、外務大臣防衛庁長官も、総理をもっと補佐、もちろんやっていらっしゃると思うのだが、お考えになって、新たなオプション、いわゆる海兵隊の駐留のあり方、あるいは沖縄に四軍を常駐させなければいかないのかどうか、海外移駐ではできないのか、本土との関係はどうなのかと、総合判断した上でこの問題についてはやっていただかないとなかなか接点は出てこないのじゃないのか。  もう一点、海上ヘリだけに限られていいのかどうか、ほかのオプションはないのかどうかを含めて御判断をいただきたいと思うのですが、これに対して、総理でもいいし、どなたか御答弁あれば聞きましょう。
  237. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 これは知事さんの名誉にもかかわることですから私からきちんと申し上げた方がよいと思いますが、知事さんは、海上移設でいいとかあるいは県内移設でいいという言葉をお使いになってはおられません。これは正確に申し上げます。同時に、県内移設しかないということは私は当初から申し上げておりましたが、それにいけないともおっしゃらなかったことも事実なんです。  それから、国益、県益、市益という言葉は私が使ったのではございません。私が強調しているのではございません。比嘉前名護市長が用いられた言葉を御紹介いたしました。  その上で、あとは防衛庁長官あるいは外務大臣から補足がありますかもしれませんが、コーエン国防長官と私もきのう会談をいたしましたけれども、きのうは、沖縄の問題の前進に協力をしてもらいたい、できるだけのことをするというだけの、私との間は時間の関係もありまして、その程度のものでございました。その後、今議員が引用されましたような発言というものが、少なくともコーエン長官と私の間では出なかったことであります。
  238. 久間章生

    ○久間国務大臣 昨日いろいろと意見交換をいたしまして、地域の情勢その他も話しました。その中で沖縄の問題も話しましたけれども、沖縄については、私どもが今追求しているこの線に沿って理解を得るべく努力していくという話をしまして、それを見守るというような、そういうだけのことでございました。  なお、きょうのニュースでああいうようなことがありましたので、私も、また外務省もそうでございますけれども、アメリカの方に聞きましたけれども、特別のオプションを検討しているわけではないという返事もいただいております。  なお、昨年のSACOのとき、あれは私は前の外務大臣と一緒にまとめたわけでございますけれども、どうしてもこれを譲れなかったのは、沖縄における現在の海兵隊の機能を維持する形で、この機能を維持しながら普天間を返還するという、これがもう絶対の条件になっておりまして、これはなかなか両方の話し合いの中で譲ることができなかったわけでございまして、これがある以上はどうしても、県内移設といいますか、その周りで機能をどうやって維持していくか。これがその後、総理の方からも、海上ということで、撤去可能というああいう案が示されたわけでございます。向こうとの交渉の中で出ましたのは、やはり現在の海兵隊のあの機能を維持しておく、現在の国際情勢ではどうしてもそれは譲れないのだということだったわけでございますので、その辺については、やはり私どもはその原点に立って議論をせざるを得ないという立場でございます。
  239. 上原康助

    ○上原委員 時間を余り食い込んでもいけませんので終わりますが、こういうやりとりといいますか議論の積み重ねが、何か解決に向けての糸口になればと期待をせざるを得ませんね。  最後に、きょうの東京新聞のコラムの中に、議長をなさった田村元先生の、私も尊敬をしているのですが、対米交渉のあり方についてという、非常に辛らつな批判がございます。これはもちろん通産大臣をなさったころのことを振り返って言っておられるのですが。  私は、安保を、基地の問題を全面的に否定する立場で議論しようとは思いませんが、余りにもアメリカ側の要求を日本政府なり日本は聞き過ぎるんじゃないのか、こういう気持ちが国民の中に非常に強いわけですよね、基地問題を含めて。  これを私は、かつて、かつてというか質問した時点にも、要するに冷戦構造下の延長線上で沖縄の基地問題や安保というものをこれからやろうとしても、二十一世紀に向かって、私は通用しないと思う。ここは、今国会においても、与野党間のコンセンサスも、次第に議論をしていけば得られる面もあるんじゃないかと思うのですね。  ぜひお願いしたいことは、この大先輩である田村先生のこういうアメリカ観、あるいは、対米交渉について日本はもっと主体を持たなければいかないという提言なども参考にして、沖縄の基地問題についても一層の御努力をお願いして、質問を終わりたいと思います。
  240. 松永光

    松永委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、山本有二君。
  241. 山本有二

    山本(有)委員 今国会の冒頭、総理が一月十二日に本会議場で経済演説をされました。そのときに、最初のくだりで、日本発の金融恐慌、経済恐慌を避けなければならないという趣旨のお言葉がございました。私も、恐慌というのはちょっとオーバーではないか、言葉の使い方がどうかな、こうちょっとよぎったわけでございますが、恐慌の勉強をさせていただきまして、なるほど、恐慌という言葉を総理が使ったということに深い意味があるんだなということがわかりました。  そこで、総理に御質問させていただくわけでございますが、自由経済というのは神の見えざる手によって導かれているわけでございますが、そうすると、資本主義の避けがたいものとして、循環四局面、景気循環の四局面がある。一つは活況、アクティビティー、繁栄、プロスペリティー、恐慌、クライシス、停滞、スタグネーション、こういう四局面が必ずあるんだ。ところが、特に戦後の修正資本主義という新しい知恵のある時代には、ビルトインスタビライザーという景気調整が生まれて、財政金融政策でこの恐慌を避けてきた。こういうことが私にもわかりました。  そこで、今度は景気循環論を見てみますと、キチンという人は三年に一遍景気循環がある、ジュグラーという人は十年に一遍、コンドラチェフという人は五十年に一遍。ところが、もし仮定として七十年に一遍ということを想定しますと、ちょうど今から七十年さかのぼると、昭和二年、これになるわけです。そうすると、昭和恐慌ということになります。  そこで、私も昭和恐慌を勉強しますと、何と衆議院予算委員会、昭和二年三月十四日、ここで、片岡直温大蔵大臣、これは私の選挙区の人でございますが、この人が、野党の諸君が余り騒ぐから金融界が不安になり渡辺銀行が休業のやむなきに至った、こういう答弁。これで金融不安に端を発して昭和恐慌が生まれるわけでございます。  それを考えると、余り政府景気対策に無秩序な批判を重ねていきますと、ただただ批判に次ぐ批判では、この昭和恐慌の二の舞になってしまうのではないかということを私は危惧するものでございます。  特に、昭和恐慌というものをひもといてみますと、実に第一次世界大戦の好況、活況、これをバブルになぞらえますと、その後の不況、これはまさに平成不況に当たります。そして、何と関東大震災が起こりました。それをまた阪神大震災になぞらえることができたとするならば、その後の戦後公債のいわば財政危機を今の財政赤字とまたなぞらえることもできるわけであります。そしてさらに、米国の株価が過熱していることもまた、このことが全部全く一緒でございます。  そのことを考えたときに、私はこういう本にぶつかりました。「昭和恐慌と経済政策」、中村隆英という東大の先生でございますが、その最後の最後の最後に処方せんを書いてあります。その処方せんはこういうことでございます。不況の行方は決して楽観を許さない、とりあえず緊急対策によって一段の落ち込みを防ぎつつ、小型の成長産業の出現と消費の回復と公共投資の効果を待つべきだというのが私の判断であるというように締めくくっております。  これを一つずつ考えていきますと、自民党は緊急対策をやりました。そこでこの緊急対策は済んだ。小型の成長産業の出現、これは情報産業ではないか。その育成にも通産大臣、頑張ってくれております。消費の回復、まさに二兆円減税のことでございます。公共投資、ゼロ国債一兆五千億のこの発表であります。全部このことはやった。  さらに、国会開会して後に、この中村先生が、新聞にこう書いてあります。金融安定化が最大の課題の通常国会も始まった。銀行への資本注入策などで野党には異論もあるようだが、むやみな与党批判は、まあ、よしなさいと言いたい。健全で立ち直れる銀行をつぶすのは、昭和二年で懲りているはずだ。歴史に学び、同じ過ちを繰り返さないことが大切だ。こう結んでおります。  そこで、総理に、昭和恐慌にならない御決意をお伺いいたします。
  242. 橋本龍太郎

    ○橋本内閣総理大臣 私は一つ議員に申し上げたいと存じますが、私どもは、言論の府として、国会議員それぞれの議論を封ずる国ではございません。ですから、どの党の方がどのような御議論をされようと、それは私は、院としての権威、また品位の中で行われることでありまして、これを政府として制肘する立場にはないと存じます。  その上で、政府は、まさに今議員が引かれましたような、政府の発言によって恐慌あるいはそのほかの事態の引き金を引かないように、十分な冷静さを持ってお答えをする。そのかわり、同じことを繰り返すとしておしかりを受けましても、申し上げるべきことは申し上げなければならないと思うのです。  そして、今、何を言いましても、やはり本当に我々は金融システムを安定させなければなりません。景気を回復軌道に乗せていかなければなりません。そのためには、金融システムを安定させますためには、預金者に完全に安心していただけるだけの措置をとらなければなりません。  そして、破綻すべきものを助けるのではないと繰り返し申し上げてまいりましたけれども、先刻来銀行局長が御答弁を申し上げている中に、彼自身がその厳しい記憶を思い起こしておりましたが、昨年の十一月、一時期の非常に厳しい金融市場の動きというものをどんなことがあっても再燃させてはいけない。そのために、金融機関の自己資本充足というものも必要ということを申し上げてまいりました。  減税あるいは次年度予算、その個々について長々申し上げるつもりはありません。しかし、政府がこうして取り組んでおりますそれぞれの施策が的確に市場に届けられますことを、国民のもとに届けられ、それが国民の暮らしを安定させるために働くことのできる状況にしていただきますように、心からお願いを申し上げる次第であります。
  243. 山本有二

    山本(有)委員 質問を終わります。
  244. 松永光

    松永委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会