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1997-04-22 第140回国会 参議院 労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年四月二十二日(火曜日)    午後一時五分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      西田 吉宏君     橋本 聖子君      菅野  壽君     大脇 雅子君  四月二十二日     辞任         補欠選任      今泉  昭君     泉  信也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         勝木 健司君     理 事                 石渡 清元君                 坪井 一宇君                 長谷川 清君                 川橋 幸子君     委 員                 上野 公成君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 野村 五男君                 橋本 聖子君                 泉  信也君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 星野 朋市君                 大脇 雅子君                 笹野 貞子君                 吉川 春子君    国務大臣        労 働 大 臣  岡野  裕君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    説明員        厚生省保険局医        療課長      今田 寛睦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働福祉事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 勝木健司

    委員長勝木健司君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十七日、菅野壽君及び西田吉宏君が委員辞任され、その補欠として大脇雅子君及び橋本聖子君が選任されました。     —————————————
  3. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 労働福祉事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 今泉昭

    今泉昭君 平成会今泉でございます。  労働福祉事業団にまつわる労災関係についてちょっとお尋ねを申し上げたいと思うんですが、まず最初に、現在の労災発生状況について御報告をいただきたいと思います。
  5. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、労働災害発生状況でございますが、休業四日以上の死傷災害について見ますと、長期的には減少をしております。平成八年度の速報段階でございますが、十四万二千三百六人の方が労働災害に遭われておりまして、これは着実に減少はいたしております。  ただ一方、死亡災害に限って見ますと、近年増減を繰り返しております。平成八年度の速報値でございますが、これは二千三百五十三人、昨年よりは減っておりますが、ほぼ増減を繰り返している状況でございます。  業務上の疾病というか、病気の方につきましては平成七年は九千二百三十人、これも一万人を割りまして減少傾向にございます。  こういった状況でございますが、これらの労働災害業種別等で見ますと、やはり建設業における災害が非常に多いということが一つの特徴でございます。それから、同時に産業構造変化を受けまして第三次産業、このウエートが高まるにつれまして、三次産業で起きます労働災害比率も高まっておりまして、全死傷者のうち約四割がこの三次産業で発生している状況になっております。  これらを受けとめます労災補償の面でございますが、労災補償給付額は約九千六百億でございまして、平成六年度に比べますと約二・一%の増加になっております。その給付額比率業種別に見ますと建設業が約三三%でございまして、最も多い状況になっております。
  6. 今泉昭

    今泉昭君 今、八年度の速報の御報告をいただきました。多分、前年度も同じような状況で、長期的には労災件数自体減少傾向にあるけれども死亡者の数というのは前年度も恐らく増加をしていたというふうに思いますし、今の報告をいただいた八年度においてもふえているというような状況報告でした。  特に建設業製造業、それから運輸業ですか、こういうところの死亡事故が減らない、むしろふえているということに対して行政当局として特に指導されていることがあったら聞かせてくださ
  7. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今、御指摘ございましたように、死亡災害につきましては近年増減を繰り返す状況でございまして、私ども大変憂慮いたしておるところでございます。  御指摘ございましたように、その中でも建設業比率が非常に高い、またほかに製造業、とりわけ近年は交通労働災害を含む陸上貨物、こういった分野で多いわけでございますが、ただ、中身を見ますと依然として墜落災害、しかも建設業の場合、高層の建築物等の工事だけではなくて、むしろ低層の木造建築、こういったところで墜落災害等が起きている。それから陸上貨物でふえておるわけでございますが、必ずしも交通労働災害だけではなくて挟まれるとか、そういう荷役作業中の事故も結構多い。そういったことから、非常に伝統的なといいますか、単純なケース事故が起きているケースが多いことを私ども非常に残念に思っております。  そういうことで建設業陸上貨物運送業等、私ども労働災害予防のための重点業種というふうに定めまして、全国にも、事前からの監督指導そして予防に努めるように、そういう出歩いての指導等を繰り返しているところでございます。
  8. 今泉昭

    今泉昭君 最近は余り論議をされなくなりましたけれども、一時大変注目を浴びておりました働きバチというところからくるいわゆる過労死ですね、これはその後どのような発生状況になっているのかお聞かせ願いたい。
  9. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) いわば長時間労働等が起因いたしましての過労死と呼ばれる事案、あるいは心臓等の疾患によって健康を損なわれたり不幸にして亡くなられるケースでございますが、これは件数で見ますと、労災業務上の対象は過去年間約三十件程度で推移してきておりましたが、私ども平成七年度認定基準の改正を行いまして、業務過重性の評価についてもっときめ細かく評価できる仕組みといたしました。それによりまして平成七年度は七十六件の認定にふえまして、まだ最終集計に至っておりませんが、平成八年度も大体同程度件数労災補償業務上として認定されているのではないかというふうに見ておるところでございます。
  10. 今泉昭

    今泉昭君 全体的な労災発生数減少するという状況にあること、大変いいことでございますけれども死亡事故が依然として減らない、ふえるということ、こういう状況をなくすためにはやはりこれらの予防対策というのが大変重要なわけであります。  これらの予防対策がどのようにとられているかということについて少しお聞きしたいと思うんですが、その前に、国際的な基準であるILO条約が、この労働災害関係する各種条約があると思うわけであります。例えば、百五十五号条約であるとか百四十八号条約あるいは百七十号条約、百七十四号条約等、これらはいずれも我が国はまだ批准をしていないというような状況にございますね。予防ということが大変重要なわけでありまして、そのために必要なこのような国際的な基準我が国が依然として棚上げにしているということは、これはどういうことなんでしょうか。
  11. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この労働災害、また業務上の疾病等につきましても、御指摘のとおり、まず予防ということが一番大事な課題であるということを私どもも十分認識いたしているところでございます。  こういった点につきましては、私どもまず長時間労働というものを改善していこうということで週四十時間労働制を初め有給休暇取得促進等を進めてきておりまして、ここ十年で着実な減少は見ておるわけでございます。一方、高齢化あるいは作業環境等変化の中でメンタルヘルス面、あるいは生活習慣病と言われるような疾病、そういったものが勤労者にとって非常に関心の高い問題になってきていることも事実でございます。  こういづた点について、昨年の十月から労働安全衛生法を改正いたしたものを施行いたしまして、健康診断、それに基づく医師等の意見を聞くこと、あるいは産業医の方の専門的な資質を高めて、そこからの勧告に基づいて労働時間の変更や就業の内容の変更等事業主の義務として定めておるわけでございます。  ただ、御指摘のございましたILO条約で求めています種々のそういった面の予防対策につきまして、各国の国内慣行情勢等を反映して定められているものでございますから、細部につきまして我が国法制あるいは進め方との関係で必ずしもぴたっと一致しない部分もございますので、私どもそういった細部についての我が国法制あるいは慣行との関連を詳細に調べて、こういう批准というものができるかどうか、もう少し時間をおかりしながら検討を進めさせていただきたいと思っておるところでございます。
  12. 今泉昭

    今泉昭君 労働大臣にお聞きしたいと思うんですが、ILOの百五十五号条約というのは労働安全衛生に関する条約でございます。それから百四十八号条約というのは作業環境に関する条約、それから百七十号条約化学物質に関する条約ですね。それで百七十四号条約が大規模労働災害防止条約というふうになっているわけでございまして、今、局長の方から地道に考えていきたい、そういう条件をつくっていきたいというお話があったわけでございます。これから労災をできるだけなくすためには、予防的ないろいろな環境整備というものが、あるいはそれに関する基準法の見直しというのが要求されるわけでございますけれども労働大臣として今後これを前向きな形で取り組んでいただくという気持ちがあるかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
  13. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今泉先生がお挙げになりました一つ一つILO条約につきまして、その細部を私は存じません。しかし、我が国労働災害というものが非常に最近、解釈を変えたことによっても死亡者が多くなっている、これは実際の姿だと思います。そういう意味合いで、私はそういう眼を広げたということはいいことだ、救済すべきことが漏れていたということでは相ならぬので私は一歩前進した、こう思っております。  しかしながら、事故があって後の労災でありますよりは、我々も病気になってから治すのではなくて、やっぱり定期健康診断あるいはドック等々に行って予防措置を講ずる、こういう流れがあると思います。したがいまして、労災につきましても労災保険等々のお金を運用させていただきまして、利用させていただきまして、予防というものを中心に今諸施策を展開してまいっている。これは今後ぜひ私としても前向きに対処してまいりたい、こう思っております。
  14. 今泉昭

    今泉昭君 ぜひ、ひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  また、大臣が言われました予防策一つとして、今我が国の場合は定期健康診断の義務づけがなされております。その実施率を見てみますと、どうでしょう、必ずしも一〇〇%に近いような数字が上がっていないような状況でございますね。大体八割ぐらいというところでございますけれども、実施していないところはやっぱり中小零細企業において多いのではないかと思うんですけれども、これらの完全を期すための取り組みとして、行政の方ではどのように考えていらっしゃるかお聞かせ願いたいと思います。
  15. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 定期健康診断につきましては、これはもう健康チェックのいわば第一歩でございます。その完全実施、これは労働安全衛生法に基づく措置でもございますので、私ども労働災害あるいは疾病予防に当たって、監督指導のまず第一段階でそういったものを十分チェックをしていかなければならないと思っております。  先生指摘ございましたように、一〇〇%という状況でないことは大変残念なことでございまして、先ほど申し上げました、昨年十月に施行いたしました労働安全衛生法もそういったことに対処するための観点一つ含んでおります。  また、今年度から中小企業事業主が共同で産業医を選任して、そういった産業医のアドバイスに従って健康診断、それに基づく健康管理を的確に行えるような助成事業を実施しよう、こういうことにいたしておりまして、そういったものも十分活用して中小企業においても健康診断等が確実に実施されるような体制に持っていくように努力をいたしたいと思っております。
  16. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 今泉先生、私が申し上げたことをちょっと御理解をいただけなかった部分があろうかと思いますが、私が、病気になって入院をして施療を受けるよりは事前健康診断等々と言いましたのは、職場労災一般について申し上げましたので、その辺、御理解を。
  17. 今泉昭

    今泉昭君 はい。  労働福祉事業団仕事一つとして全国に健診センターをつくっていらっしゃいますね。数を見てみますと、数は微々たるもので、全国で八カ所ぐらいですか、正式な数は私もちょっと覚えておりませんけれども労働福祉事業一つとして方々労災病院を持っていらっしゃる。そういうことを考えてみますと、予防のための健診センターとでも言うんでしょうか、むしろそういうものを大いに駆使して、中小企業がなかなかできないような対策というものを考えるべきじゃないかと思うんです。この健診センターというものの位置づけ、役割というのはどういう仕事をしておりますか。
  18. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 健診センターを各所に設け、また健診センターがないところにつきましては健診部がそういった仕事に当たっておるわけでございますが、ここでは、もちろん勤労者の方の定期健康診断事業主から受けて実施するケース、それから特殊な化学物質等を取り扱う分野におきますところで義務づけられております特殊健康診断等を引き受けて、そういった特別の項目についても健康診断を行うといったことを主として実施してきておりまして、そういったことを通じて勤労者の方の健康管理に役立てる、こういう役割を担っております。
  19. 今泉昭

    今泉昭君 労働福祉事業団が持っている労災病院全国各地にあるわけでございますが、中身を見てみますと、労災入院をしている人の割合というのは、全然労災とは関係なしに入院している人たち割合から比べますと極端に少ないわけです。一〇%を割っているというふうな状況にあると思います。  そういう意味から考えてみましても、病院がたくさんあるということは国民全体の健康管理とか、あるいは病気を持った人たちを治すためには大変いいことではございますけれども労災という立場で取り扱っている労働福祉事業団仕事としては、むしろ労災病院が積極的に予防の方にもっと力を入れていくという形で、特に中小企業対象としましてなかなか手が回らないところに手が届くような形の、業務転換というんでしょうか、転換というのは一挙にできないかもしれませんけれども、そういう方面重点を移していくという対応策はとれないものかどうかお聞きしたいと思います。
  20. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、労災病院におきます労災被災者あるいは患者比率というものは一〇%を割って低い率にあるわけでございますが、これはある面から見ますと、労災病院が、勤労者方々職業に関連する疾病予防から、不幸にして疾病やあるいは事故に遭われた場合に高度な医療、そして社会復帰に向けたリハビリテーション、これを一貫して行っていることによる地域からの信頼の裏返しでもあるわけでございます。  私ども、そういった一貫した高度な医療サービスを行う体制を持っている労災病院でございますから、先生から御指摘ございましたように、勤労者方々予防面にそのノウハウを使うことによって労災病院としての特色を一層出せないかということはこれからの大きな課題だと受けとめております。  私ども、まだ全国展開に至る途上でございますが、各都道府県に産業保健推進センターを整備いたしておりまして、ここと労災病院がいわば連携、ネットワークをとることによりまして、例えば労災病院が臨床から得られる各種の情報を産業医の方に提供する、それから産業医の方が中小企業等事業所を回って把握された患者につきまして労災病院が引き受ける、そういったシステマチックに進めることをこれからの労災病院特色の出し方として私ども取り組んでいこう、こういうふうに思っているところでございます。
  21. 今泉昭

    今泉昭君 同じく予防という面からお尋ねしたいと思うんです。  雇用均等法がこれからかかるわけでございますが、この機会均等法の中には男女平等という視点から女性の深夜業が解禁される、こういう状況にございます。これに伴って母体にいろいろな影響があるのではないだろうかというような懸念が各方面から出てきているわけです。この法案についての賛否の論議はこれからいろいろ行われると思うんですが、そういう法案を出してきたからには、そういう状態になったときの予防措置対応策というものをあらかじめ考えていらっしゃるかどうか、その点についてお聞きしたい。
  22. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 正確な数は今手元にございませんが、労災病院三十九の中の相当数が産婦人科科目診療科目として持っております。今後職場進出が進む女性の方の、とりわけ母性の保護といった面から、労働福祉事業団検討の中でも労災病院婦人科中心に、働く女性あるいは母性健康管理のための相談指導のセクションを設けたらどうか、こういうことも内部から提言されて、そういったことも理事長のもとでまとめられている状況でございます。  私ども、そういった報告も受けておりますし、先ほど申し上げました労災病院特色の出し方として、そういった予防面に焦点を当てていくことが一つ方向だというふうに受けとめておりますので、そういった動きを真摯に受けとめて具体化に向けて努力をいたしてまいりたいと思っております。
  23. 今泉昭

    今泉昭君 新しい産業の出現あるいは産業構造の大きな転換に伴いまして、これから労災事故の種類の違いというのが出てくる可能性があると思うんですが、それに伴いましてやっぱり労災保険のあり方ということも当然視野に入れた検討がなされているんじゃないかと思うんです。  例えば、特に最近のようにコンピューターが進みますとメンタル面での災害労災関係があるような形で出てくる、あるいはまたVDT作業をやっておりますとどうしても視力が落ちていくというような問題が出てくるわけでございます。  そういう意味で、これから産業構造が大きく変わるというようなことを考えて、労災保険の中でどういう点を変えていかなきゃならないか、新しく考えていかなきゃならないのかということの検討がもしなされているとするならばちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  24. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これから我が国経済社会が非常に高度化し複雑化していく、また、より技術革新も進む中で、従来どちらかといえば外傷性事故が多かったところから、やはり一つ方向として、例えば勤労者の心の問題、メンタルヘルス問題等も私どもこれから取り組まなきゃいけない課題一つとして認識いたしております。  また、御指摘がございましたように、電子機器VDTの操作に伴います眼精疲労等の問題、その他なかなか外から見てわかりにくい疾病の形につきましても、やっぱり早期予防、それから治療面で取り組んでいかなければならない幾つかの課題がこういった変化を受けて出てきているかと思います。  メンタルヘルスの問題につきましては、平成八年に労災病院の中で、今のところまだ四つでございますが、心療内科、そういった診療科目を設けてメンタル面相談やあるいは治療というところまでの体制をつくり出しているところでございます。  それから、VDT作業につきましても、先般、そういったところから出てまいります例えば以前は頸肩腕症候群と言われていたような上肢障害につきましても認定基準を改めまして、そういった作業に従事している期間等につきましてももっと幅広く見直し、画一的な労災認定基準ではなくて、もう少し作業の実態に合った認定基準とするべく専門家によりまして新しいものをつくっていただくといった作業を進めてきておりまして、これからもそういった作業を継続して精力的に行うことによりまして、新しい時代の変化に対応した疾病あるいは労働災害というものに備えてまいりたいと思っております。
  25. 今泉昭

    今泉昭君 時間がなくなってまいりましたので、最後に労働大臣にお聞きしたいと思うんです。  去年が我が国労働力人口のピークだというふうに言われておりまして、これからますます労働力人口減少していくというような中で、たまたま今景気が必ずしも芳しくないものですから失業者も多い、求人倍率も低いという状況になっていますが、将来的に、長期的に考えてみますと、外国人労働者我が国労働市場に相当参入してくることは間違いのないことだろうと思うわけであります。特に、現在でも法を逃れて不法滞在をする中で不法就労している相当数外国人労働者がいるというふうに聞いております。  一番問題になるのは、こういう方々労働災害が起きたときにどこがどのような形で補償をするのかということになるわけであります。法に従って外国人労働者を使っているという場合、問題がないわけでありまして、労災保険の中で適用されるのでございましょうけれども不法滞在をして就労をしている人たちにおいても、現在、人道的な立場からこれは労災保険の中で取り扱わなければならないというようなことが行われているというふうに聞いております。これは法をあくまでも破っているわけでございますし、不法滞在している者自身も不法でございますけれども、その不法労働者を使っているという経営側にも当然法を破った行動があるわけでございます。  そういうものに対して、法を守りながら保険料を払っている労災保険の中で対応していくべきなのか、あるいは別個に何らかの措置をするための制度をつくるというのが望ましいのか、労働大臣としてはどのようにお考えになるか、一言お聞かせ願いたいと思います。
  26. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) ある企業事業所に雇用されている労働者、特に外国人労働者が合法的に入国をしているか、それとも法に違背して入国をしているか、これは法務省出入国管理の問題であり、あるいは難民認定法の問題であります。  しかしながら労災制度は、労働基準法我が国において労働に従事している諸君を使用者はその国籍だとか信条だとか社会的身分、これを理由として差別的な取り扱いをしてはならない、こういう条文が明記してあります。  したがいまして、当該本人が合法に入国しているか否かというようなことは、使用者としてその責任を負うべきものであって、実際に働いてくれているところの労働者、これについては労災をそのまま適用する、これが法の定めてございます。
  27. 今泉昭

    今泉昭君 時間が参りましたので、どうもありがとうございました。
  28. 石渡清元

    石渡清元君 まず、労働福祉事業団そのものについてお伺いをいたします。  その現状と将来見通し、特に今特殊法人が問われているのは、採算性あるいは費用対効果の観点から事業がどうあらなければいけないか、そのあり方が問われておるわけでございます。とりわけ労働福祉事業団の不良債権について御説明をいただきたいと思います。  平成六年十六億、平成七年十九億、平成八年がどのぐらいか、またその不良債権は具体的にどういつだような内容の債権であり、これに対してどのような対処をされているか、まずお伺いをいたします。
  29. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働福祉事業団におきましては、労災病院の運営等のほかに在宅の介護に当たる方の住宅資金の貸し付けとか、例えば障害が残った方の自動車購入資金の貸し付け、年金担保資金の貸し付け、安全衛生融資、こういった貸付事業を行っておりまして、これが平成七年度末では五百二十一億円の貸付残高がございます。そのうち六カ月以上その返済が延滞しているのが先ほど御指摘ございましたように十九億円ございます。  それからもう一つは、やはり労働福祉事業団業務として、事業主が倒産等によって賃金支払い不能になった場合に、その賃金の支払いを立てかえる立てかえ払い制度を運営いたしております。これにつきまして、例えば平成七年ですと八十数億の立てかえ払いを実施しておるわけでございます。これは当然求償権を取得いたしますのでその求償を行っていくわけでございますが、性格上なかなか回収の難しいといいますか、ある程度それを前提にした制度でございます。  そういった意味で、不良債権になるかどうかは別として、平成七年において回収不能として整理した額が二十六億円ございます。平成八年はまだ決算等参っておりませんが、やはりこの状況から見まして、立てかえ払い等についても大体そういった水準で推移しているのかなというふうに判断をいたしております。  私どもこういった債権の回収に向けまして、発生要因、特に立てかえ払い制度の場合はなかなか難しい面もございますが、労働福祉事業団の担当職員が現地に赴き、担保の保全状態、保証人の状況等をよく調査いたしまして、そういった直接折衝等も交えて債権の確保に当たらせておるところでございます。  また、そういった取り扱いの金融機関につきましては毎年担保、保証人の状況等の不良債権の現況について定期的に報告をさせておりまして、これに基づいて不良債権の状況を早期に的確に把握し、早目に回収に乗り出していく、こういったことを行っております。  こういった点、やはり特殊法人として業務運営に当たる際の一つの大事な分野であろうかと思いますので、御指摘の点を受けまして今後とも的確な債権管理に努めてまいる考えでございます。
  30. 石渡清元

    石渡清元君 労働福祉事業団はかなり多種多様の融資事業、貸付事業をやっておるわけでございますけれども、今たまたま未払い賃金の立てかえ払いがございました。求償権を持って、確かに資産勘定には載っかるけれども、実際にはなかなか回収が厳しいんじゃないか。今までの回収率、実績というのはどの程度になりましょうか。
  31. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 立てかえ払い制度につきまして、繰越額でございますが、これは過去相当長期にわたって行ってきておりまして、平成七年度末で繰越債権額が約百六十一億八千九百万ございます。七年度の立てかえ払い額を加えますと合計で大体二百四十五億になります。そのうち回収金額が平成七年度末で見まして約十三億八千万、それから回収不能として整理していく額が約二十六億円、先ほど申し上げた数字になります。
  32. 石渡清元

    石渡清元君 回収不能額がふえることはあっても減るということは少なくなっているということはこの参議院の調査室の資料を見ても、ここへ来てまたどんどん立てかえ対象人数の増加や、あるいは立てかえ払いの金額が多くなっているんですね。賃金債権等々の位置づけなんかについて、これも原因をしているんじゃないか、研究の余地があるんじゃないかということをよく大脇委員とも話すんでありますが、そういうことは考えたことはありませんか。
  33. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 各事業主が持っておる賃金の支払い義務、そこに両方立てかえているわけでございまして、立てかえ払い制度は、倒産になった場合の立てかえ払いでございますので、御指摘のとおりある程度回収については困難であることを前提としている制度ではございます。  ただ、こういった賃金債権のあり方として、そういう立てかえ払い制度に全部簡単に流れ込んでくるような形ではなくて、例えば債権の確保される順位とかいろんな問題について検討していくべきじゃないかという御指摘はかねてより私どもも受けておりまして、そういった見地からの部内での検討、研究というものは行ってきているわけでございます。ただ、これが例えば公租公課、そういったものの債権との関係、非常に政府部内全般にかかわる面もございまして、正直申し上げましてその結論を得るに至っておりませんが、そういった課題があることは十分頭に置いてこれからも研究は続けさせていただきたいと思っております。
  34. 石渡清元

    石渡清元君 次に、労災病院労働福祉事業団の主たる業務一つで、先ほど今泉委員も触れられましたけれども、これからどこに重点を置いて労災病院をどういうふうな方向に持っていこうとしているのか、労災病院役割等含めてお伺いをしたい。  そして、ちょっと細かいことですけれども労災病院のほかに看護婦養成学校とかやっていますね。養成学校の定員が全国で五百四十五名、この資料によると。これはほとんど労災病院仕事をしているんですか。勤め先なんかはどんなふうになっているのかしら。
  35. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、今後何を重要な役割としてこの労災病院の運営を進めていくかという点でございますが、やはり労災病院の特徴は、勤労者方々労働災害あるいは職業性の疾病高齢化等に伴ういろんな生活習慣病的なものの早い段階からの予防、それから高度な医療、そして社会復帰につなげるためのリハビリテーション、こうした一貫した医療サービス、しかもそれが高いレベルで行われているところに特徴があるわけでございます。  労災病院の扱っている患者の中で労災患者等の比率が低いというようなことも一つ批判として私ども受けておるわけでございますが、そういった状況を考えますと、この労災病院の持つ機能を予防面に当てていく、そういったことが一つのこれからの大事な役割ではないか。  したがいまして、産業医の方とのネットワーク、こういうものを組んで、産業医の方に病院治療過程から出る臨床的ないろんな情報を提供して予防に努める。また、産業医の方が把握した勤労者の中の患者の方について、早い段階から相談あるいは治療に当たれるような体制、こういったものをひとつ確立をしていきたいというのが私どもこれからの一つの重要な方向だろうと思っております。そういった中にはメンタルヘルスというような観点もかなり重要な分野として位置づけていかなければならないというようなことを考えております。  もう一つ、御指摘ございました看護婦等の養成の施設、そこを卒業された人が労災病院で働いているのかという点でございますが、これはほとんどが労災病院で働いていただいております。
  36. 石渡清元

    石渡清元君 将来展望としてのリハビリとかあるいはメンタルヘルス、これは非常にいいと思うんです。  その他の施設、医師以外のパラメディカルグループ、そういう部門のあれが、リハビリテーション学院というのも一校やっているんでしょう、そういうそれぞれ専門職というのが各病院で充足されているのかどうか。割合今そういうのは少ないんですね。それが充足されていなかったらば、幾ら産業リハビリを重点にやろうと思います、予防医学でできるだけ労災が少なくなるようにといっても、それができないわけです。その辺の実績等々についてはどうでしょうか。
  37. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほど申し上げましたように、労災病院は特徴の一つとして、最終的には他の病院にない施設等を備えているために、場合によっては他の病院患者さんを引き受けてでもリハビリテーションを実施していくということにいたしております。  したがいまして、作業療法士あるいは理学療法士、こういったことの養成が非常に大事になるものですから、先ほど先生からも御指摘ございましたように、九州の労災病院に付設してある施設でそういった方の養成も行っておるわけでございます。  労災病院のリハビリテーション部門でそういった技術を持った人の要員確保が十分かという点、これは確かに全体的にはそういった方の充足が病院関係では大変厳しい状況に一般的にはあるわけでございます。労災病院においても大変この充足に気を使っていなければならない状況にあることは事実でございますが、先ほど申し上げたような施設を持っておることもございまして、現在のところ必要要員は確保できている状況にございます。
  38. 石渡清元

    石渡清元君 それでは本題、法改正の内容に入りたいと思います。  今回の法改正、一つは、事務所を東京都から川崎市へ、いわゆる東京一極集中是正ということでこういうことになったわけであります。私は神奈川選出でありますので、川崎に来るということは大歓迎をしておるところでございますけれども、これが国民にとってどういつだような意味があるのか、あるいは労働福祉事業団にとってもどういうメリットがあるのか、それをまずお聞かせいただきたい。
  39. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この労働福祉事業団の今回御審議をお願いしております移転の問題は、お話しございましたように、東京都区部の過密状態を是正するということで国の機関や特殊法人等が外へ出ることに向けての閣議決定があったことを受けているわけでございます。  ただ、労働福祉事業団の方から見ますと、そういった方針に沿っていくことは当然でございますが、同時に労働福祉事業団の現在入っておりますものが昭和三十六年当時、定員が六十九人で入っているものでございます。現在はもう人数はふえてはおりませんが、その間に百四十三人と増員を見てきておるわけでございまして、現在狭隘化が激しくてこれ以上定員はふやせない環境でもございます。OA化等も進めなくてはならないわけでございますが、今の狭隘の状況からしまして電力容量等も足りない、こういうこともございまして十分対応できない。これから定員をふやすことなく特殊法人として効率的な運営をするためにも、今回、貸しビルでございますが、新しいところへ入る、こういうことも私どもこれからの合理化を進める上で大変ありがたいと考えているところでございます。  また、労災病院の運営を中心としております労働福祉事業団でございますので、労災病院を通じて高いレベルの医療サービスを提供していかなければならないということで、私どもかねてより最新の医療情報や高度医療機器、これに基づく臨床研修の実施などを頻繁に行ってきております。  これは各地の病院関係者を集めて行うわけでございますが、そういう際にやはり東京、関東、横浜、こういった各労災病院を臨床研修の場として使っていくわけでございまして、そういったことを考えますと、川崎というものが研修をさらに充実した形でやるのに非常に地の利を得た形になっておりまして、研修の充実等を通じて今後とも患者方々に高い医療サービスをしていけるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  40. 石渡清元

    石渡清元君 この移転の時期なんですけれども平成七年の国の機関等移転推進連絡会議の決定によりますと平成十四年という予定、当初はそういうはずだったのに早まった理由は何か、特別なものがあったら教えていただきたいのと、東京と川崎では余り関係ないんじゃないか、そういうことを盛んに今隣で言っておるわけでございますけれども、職員の通勤体制とか宿舎等々そういったような手当て、引っ越しスケジュールを御説明いただきたい。
  41. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、この病院の移転でございますが、どうして平成十四年という閣議決定の期限より早めたかという点でございますが、これは繰り返しになって恐縮でございますが、病院の定員は医療法の基準を満たすためにある程度ちょっとずつふえているんですが、それ以外の労働福祉事業団の職員というのはもうほとんど定員増を望めない、またそれなしで進めてきております。  そういった意味で、先ほど申し上げました非常に狭隘な環境に入っておりますためにOA化等の合理化もできない、そういったことを改善していくために新しいところへ行きたい、行くことになりますと閣議決定の方針の範囲内で新しい入居先を確保する、こういうことになりますので、私どもそういった要請も受けましてこの際決断をさせていただきまして、現在御審議をお願いしておりますような形で川崎市に移転をお願いいたしておるわけでございます。  それから、移転のスケジュールでございますが、本案の成立をさせていただきましたならば具体的な日程を詰めまして、これは政令でその施行日を決めることになるわけでございますが、この秋ぐらいには移転をさせていただいて体制を整えたいと考えているところでございます。
  42. 石渡清元

    石渡清元君 法改正関係で、事務所の移転とあわせてもう一つは、監事の意見提出が大臣に対してできる、それと役員の任期の短縮。これはどういう意味なんですか、というか、今までやっていなかったんですか。
  43. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この監事が理事長あるいは労働大臣に意見を提出することができるというのは、過去、第一次行革審で特殊法人の運営活性化の観点からそういう方向が示されております。また、その後平成七年に閣議決定された特殊法人のディスクロージャーの際にも充実したディスクロージャー、こういう観点から内部監査の充実、こういったことも指摘されておりまして、今回はそれを受けて改正をさせていただいているものでございます。  この役員の任期の四年を二年とする問題につきましても、過去やはりこういった行政改革の観点から特殊法人の活性化、むしろ短期間で業績評価等を行いながら活性化につなげるという観点から指摘されていた事項でございまして、私どもそういった観点から今回織り込ませていただいているわけでございます。  もっと早い段階で処理できなかったか、こういう点は御指摘のとおりでございまして、平成七年のディスクロージャーについての閣議決定以後なかなか法改正のチャンスをつかめなかったというようなこともございまして、今回この川崎市への移転ということとあわせまして、ぜひとも早くこういった新しい体制をとって活性化あるいはディスクロージャーの充実というものにつなげてまいりたいと考えた次第でございます。
  44. 石渡清元

    石渡清元君 これからはそういうことなんでしょうけれども、私が聞いているのは、事業団は労働大臣が監督するということになっているわけですよ。ですから、今までもいろいろな意見具申等々があり、不都合なところとか、あるいはこのマイナス要因についてはこうすべきじゃないかという意見が具体的に出て、それで次の予算の、だって労働大臣は予算の承認等々も現行でも組まれているんでしょう。  ですから、そういうことを今までやってこなかったのかどうか。役員の任期を短縮したから効果があるとか、そういうことじゃないと思う、本来の職務を遂行していればそんなに法改正まで提案をしてやらなくても済むように思うんですけれども
  45. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のとおり、特殊法人として労働福祉事業団が運営されておるわけでございますので、効率的な、また業務内容についても一般の勤労者方々の要請にこたえたものにするために、ふだんからそういった内部の効率化あるいは適切な業務運営の確保のために、労働大臣も必要ならそういった意見を伝え改善をさせていくこと、これは当然でございまして、私どももそういった観点からの努力はいたしてまいったところと考えております。  特に、特殊法人につきましては過去何度かにわたりまして行政改革の考え方あるいは行政監察の結果に基づく勧告等がなされてきておりますので、そういったことを着実に実行するために随時労働福祉事業団とは意見交換を行い、必要によっては私ども本部へ参り、業務状況を把握して意見等を伝えてきているところでございます。  ただ、今回法改正でお願いしておりますのは、まず労働福祉事業団自体がそういった体制面をはっきりさせてさらなる努力をしていくべきだ、こういうことから、監事が業務状況等を見ながら理事長あるいは労働大臣に意見を申し述べることができるような規定、あるいは役員につきましても短期間にその業績評価等をして、活力ある働き方につなげていく体制、こういうものを制度面からも整備していこう、こういうことで今回の法改正の御審議をお願いいたしている次第でございます。
  46. 石渡清元

    石渡清元君 必要ならばそういうことをやるというんだけれども、やっぱり監督官庁である労働大臣もやはりただすべき点はただし、指摘すべき点は指摘すべきだと思う。その内部の監察、行政監察等々の制度、これも大事ですよ、大事だけれども、例えば、平成五年の行政監察で労災病院の設置の見直し、運営の改善、それは指摘されていると思うんです。それに対してはどういうふうに対応したのか。
  47. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、総務庁の行政監察結果に基づきまして、平成五年にこの労働福祉事業団の設置する施設等について見直しの勧告を受けたところでございます。  一つは、労災病院の新設のあり方、配置等について見直しを行うことが求められております。その勧告を受けまして、私ども、予算面からも平成三年の横浜労災病院の設置を最後に新設は行わない、こういう措置を行ってきております。また、この労災病院の果たすべき役割、機能につきましても、共通の業務につきましてはできるだけ外注化を促進していく、そういうことによって定員の抑制を図る等の見直しを行いまして、労働福祉事業団にも実施をさせてきているところでございます。  また、労災病院の運営面につきましても、例えば労災病院が備える一千万未満の医療機器については出資金ではなくて労災病院の独自の財源の中から手当てしていく、こういったことも求められておるわけでございまして、そういった点につきましては私どもから労働福祉事業団の方に指示をいたしまして、今現在完全に実施する体制に至っております。  そのほか、健康診断センター労災リハビリテーション作業所の見直し、こういった点についても求められておりますが、例えば労災リハビリテーションの愛知作業所、そこに付設されております自動車教習施設につきましても労働福祉事業団から切り離して、障害者全体の雇用につなげる観点から、愛知県障害者雇用促進協会に運営を別にお願いしていく形に切りかえていくなど、こういった合理化に向けて、私ども労働福祉事業団にも必要な事項を実施させてきているところでございます。
  48. 石渡清元

    石渡清元君 行財政改革で何を国民が求めているのかとか、そういう根本的なことをしっかり見据えて、非常に大事なことを担っていると思うんですよ、不必要なものはもう思い切って切る勇気を持って整理していかないと、ただ守っていこう守っていこう、あるいは労災勘定だから税金使っていないからいいじゃないか、これはもう通らない時代ですので、そういうことも踏まえてひとつこれからもびしっとやっていただきたい。要望して終わります。
  49. 大脇雅子

    大脇雅子君 今回の労働福祉事業団法の一部改正につきましては、所在地を東京都から川崎市に変更するということと同時に、労働福祉事業団の監事が理事長または労働大臣に監査の結果について意見を提出することができるという一項目が入ったわけです。  この意見の提出に関して、「必要があると認めるとき」とはどのような内容を想定しているのでしょうか。
  50. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のございましたように、今回の改正で、監事が理事長または労働大臣に必要があると認めるときは意見を言える、こういう改正をさせていただいているところでございます。  これは、監事が事業団に関する例えば業務方法書その他の諸規定の遵守状況あるいは事務能率それから経営合理化の状況、そういったものを決算報告書や財務諸表を通して見た際に、当然問題点が発見されていくわけでございますので、そういった段階で、例えば理事の方が行っています業務執行の面について改善を要する点、あるいは経費の節減を要する点、その他、先ほど来御指摘ございますように、労災病院役割をこれからどうしていくんだというようなことについて改善を図っていく必要があれば、そういったことについて理事長あるいは大臣に、これは監事の判断で意見を出していただく、それに基づいて私ども必要な対応をしていく、こういった体制をとりたいという趣旨のものでございます。
  51. 大脇雅子

    大脇雅子君 この第四項の規定の前例は雇用促進事業団に置かれていると思うんですが、雇用促進事業団に関連してこのような規定が機能したということはあるのでしょうか。
  52. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 雇用促進事業団法の第九条五項に同様の趣旨の規定がございます。雇用促進事業団法九条の第四項におきまして、「監事は、事業団の業務を監査する。」、こういう規定がございまして、五項において、「監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は労働大臣に意見を提出することができる。」、こういう規定が行われているところでございます。  ただいま過去の例の御質問でございますが、この規定に基づきまして過去、理事長または労働大臣に対して監事から雇用促進事業団に意見が提出された、こういう実績はございません。
  53. 大脇雅子

    大脇雅子君 実績がないということは、現在まで十分に機能していなくて、将来にかかっているということかもしれませんが、この監事というのはどういう職責の人が配置されているのかというのは雇用促進事業団に関連してお聞きをいたしまして、将来この第四項が確実に機能するためには監事の任免についてどのような配慮をしようとしているのかということについてお尋ねします。
  54. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 雇用促進事業団監事の就任状況でございますが、現在、監事は二人おりまして、一名は最終官職が雇用促進事業団本部付部長ということでございまして、雇用促進事業団の幹部職員だった者でございます。もう一名につきましては、会計検査院の第四局長ということでございまして、会計検査院出身の方でございます。  いずれにいたしましても、今後の監事任命につきましてはやはり適切な人材にお願いするというのが基本的な考え方であるというように思っております。
  55. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働福祉事業団の方の監事でございますが、現在二名おりまして、一人は常勤でございます。これは労働省の幹部職員を退職した後この労働福祉事業団の監事となっております。それから、もう一名は非常勤の監事でございまして、この方は民間の研究所にしばらくおられた方でございますが、以前はやはり労働省の職員だったことがございます。その二名が監事に当たっております。  御指摘ございましたように、こういった法改正でこの監事の機能について高めていただく、そういったことをお願いしているわけでございます。今後、特殊法人のあり方、効率化等が厳しく問われる状況の中でこの監事の業務を果たしていただくわけでございますので、そういった観点から今回の意見具申といったようなことについても十分念頭に置いた活動が行われることを期待しているものでございます。
  56. 大脇雅子

    大脇雅子君 特殊法人の見直しが行われる中で、やはり内部監査の不十分性ということがいろいろと議論されておりますので、せっかくこういう規定を置かれるわけですから、その人選については十分な配慮をされて有効に機能する道を検討されたいと思うわけです。  先ほど、石渡議員の方から未払い賃金の立てかえ払い制度というものにつきまして、不良債権化しているというか、不良債権というよりむしろ滞っている累積債務というのが百六十一億円ということで、住宅資金の貸し付けに関する残債務の不良債権よりもはるかに大きいことでありまして、これは制度の本質的な問題として赤字が出ないということはない制度となっていると思うんです。  こういう中で、未払い賃金の立てかえ払い制度に対してILOの百七士二号条約がありますが、これなどによりますと、賃金債権のいわゆる先取特権等、優先順位の問題と、それからそうした未払い賃金の支払い保証基金の問題と二者択一に制度を確立せよということになっていると思います。  この賃金確保の立てかえ払い制度ということになれば、制度的にもう赤字は避けられないわけですから、このILO百七十三号条約と関連して第一にお聞きしたいのは、我が国でこの条約批准できない理由というものはどこにあるのかということと、この未払い賃金の立てかえ払い制度というものを将来どのように見直していく展望があるのかという二点についてお尋ねいたします。
  57. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、このILO百七十三号条約批准が現段階でできない理由でございますが、この百七十三号条約第二部におきましては、労働債権は他の大部分の債権、特に国あるいは社会保障制度の債権よりも高い順位を有するものとされているところでございますが、我が国ではいわゆる民法、商法等に賃金債権の先取特権の規定がありますものの、国税等の公租公課の方が優先順位が高くなっていると、こういう問題がございます。こういった点について、ある程度政府全体の中での検討が必要になるという問題が一つございます。  また、第三部におきましては、支払い保証機関による賃金の立てかえの保証を求めておりまして、我が国においては、それにかわるものとして、御指摘のございました賃金の支払の確保等に関する法律に基づきましていわゆる労働福祉事業団が立てかえ払い事業を実施いたしておるわけでございます。これは労災保険事業の一貫として、いわば労働福祉事業という形で行われているものでございますので、この条約が、すべての労働者にそういったことが対象とされなければならないとされているわけでございますが、やはり労災保険の加入事業所ということで一部除かれるケースが出てしまう。  また、本条約で保護されている労働債権は、使用者が支払い不能に陥った場合のすべての労働債権ということで、退職労働者の賃金債権に限定されていないわけでございますが、現在の賃金支払の確保等に関する法律では、賃金支払い事業者が倒産して支払い能力がなくなった、こういう場合の退職労働者に対して立てかえ払いを行うことがその前提になっておりますので、こういった問題を第三部については抱えております。  こういうことで、我が国におきましてはこのILO百七十三号条約を現時点では国内法制との関係から批准できない状況にございます。これからの労働賃金債権について幾つかの課題をここからも提示されているわけでございますが、こういったことをさらに時間をおかりして検討はしていかなくちゃいかぬという状況にございます。  それと関連いたしまして、賃金の立てかえ払い事業我が国事業労災保険労働福祉事業ではなくて別の制度、体系で行われないか、こういう点でございますが、この立てかえ払い事業が倒産等の退職労働者に対するものであっても八十数億円の規模に達しております。これを今後別の事業で広範に実施していくとなりますと、そういった資金の確保、そのための費用、掛金等の集め方、また支払うための人件費等を含めた経費、いろんな別の例えば保険制度なりそういう支払い保証制度というものを構築する必要があるわけでございまして、現段階でそういったものを労災保険と別建てで設けられるかということになりますとこれはなかなか大事業でございまして、行政改革等を進めなければならない中で大変難しい状況にあることは御理解をいただきたいと思っております。  そういう中で、私どもこの立てかえ払い事業を許される範囲で積極的に活用して、賃金の立てかえ払いというものを確実に履行してまいりたいと思っておるところでございます。
  58. 大脇雅子

    大脇雅子君 確かに、支払い保証機関を設置して賃金確保を立てかえ払い制度ではなくて保証していくという方向がない限り、立てかえ払いである限りはもう赤字が累積していくという制度上の矛盾があるわけです。  おっしゃったように、現実には八十数億円の支出を別の制度として組み上げていくというのは現行では大変無理だということでありますけれども、やはりこの制度のまま推移するということであれば、いつかまた倒産件数が多くなり適用の労働者数がふえていって、労災保険加入者だけではなくてすべての労働債権者を救済していくという公平性の原則からいっても問題が出るわけですから、ぜひ鋭意検討を始めていくべきではないかというふうに思うわけです。  それで、現実対応の問題で、賃金支払い額というものが年齢の刻みがありまして、原則百二十万円で年齢が上がると百五十万円まで上がっていくんですが、退職金を賃金部分と合体して確保するという点については、これだけでは高齢者の退職については非常に酷ではないか。もう少し退職手当部分を別枠とするなり、あるいはさらに総体の金額を上げるなどして労働者に厚く保護をしなければならないと思うわけですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  59. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この未払い賃金の立てかえ払い事業は、企業の倒産によって賃金の支払いを受けられなかった退職労働者の差し迫った生活を救済する、こういう観点から設けられておりまして、この立てかえ払い額についても一定の上限額を設けているところでございます。  現在の立てかえ払い事業では、定期賃金の三カ月分相当額に加えまして、中小企業退職金共済制度の平均掛金月額に基づいて計算した一定の退職手当額も含めて限度額を定めておるところでございます。現状況を見ますと、未払い賃金の総額が立てかえ払い制度の上限額を超えた労働者の数は全支給者数の約二割未満ということになっておりまして、約八割の方はこの未払い賃金総額で一応対応ができていると、こういう状況にございます。  いずれにいたしましても、現在のこの退職手当の上限額につきましては平成五年に定めているものでございます。今後、その辺につきましては賃金の水準の状況なり推移等も見ながら、そういったものにおくれることなく、私ども留意し、見守りながら対応してまいりたいと思っております。
  60. 大脇雅子

    大脇雅子君 平成五年から既にかなり年限がたっていて、見直しのサイクルからすれば不自然ではない時期に来ているということで、ぜひ検討をしていただきたいと思います。  それから、労災病院事業に関連してでありますが、いわゆる被災労働者労災病院を使う、いわば労災患者割合が非常に低下しているということで、労災病院の設置の見直しというふうに言われているんです。  私が現場で経験したところによりますと、やはり労災病院の最も大きなところは、いわゆる労働災害の原因となった労働とそれから事故の原因、例えば、最近ではストレスと労働とかVDT作業と健康の問題とか、深夜業が労働者に及ぼす影響とか、時間外労働、すなわち長時間労働が蓄積疲労となっていかに労働者の健康を侵害するかというような、言ってみれば労災事故あるいは疾病労働との相関関係というものは一番労災病院のお医者さんというのが詳しかったわけであります。  そういうことを研究していらっしゃる労働医学の先生は別として、そこがやはり労働者の非常に役に立っていたところではないかというふうに思うわけですが、この労災病院事業に関連して、そうした研究体制というものは非常に重要だと思うんです。これは今労災病院との関係ではここの事業の中に位置づけられておるのか、別途何か考えておられるのか、そこについてちょっとお尋ねをしたいんです。
  61. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この労災病院の高い医療レベルを維持していくためにも、またそうした医療サービスを提供していくためにも、ふだんからのそういった新しい医療情報、その他医療技術についての研究が必要なことはもちろんでございます。そういったことで、労災病院の医師の方等もかなり共同研究等をしておりまして、例えば日本災害医学会等ではこの労災病院の医師の方がかなりリーダー的な役割を研究面でも果たしてきております。  もう一つ先生指摘ございましたように、いわば外傷性労働災害ということにとどまらず、これからの働き方、それにまつわるいろんな技術革新等の変化の中で出てくるメンタルヘルス、あるいは電子機器等の操作に伴ういろんな障害の問題、こういった点につきましても労災病院の医師の方の共同研究等の主要な項目となってきております。  特に、最近では労災病院に職歴調査員というようなものも置きまして、職業とそこの労災病院で扱われた実際の病気との関連についてのデータ収集にも努めておりまして、そういった面から御指摘のようなことについての研究がさらに進んでいくものと私どもも期待をしているところでございます。そういった研究の経費につきましてもそれぞれ必要な予算を準備させていただいて、労災病院の医師の方等が研究をさらに推進できるようになお私どもも対応をしてまいりたいと思っております。
  62. 大脇雅子

    大脇雅子君 脳血管疾患とか虚血性の心疾患等、いわゆる過労死と言われる人たち労災補償状況は、認定基準が変わった中で漸次ふえてきているようでございます。そういう認定基準が変わった以降、現在の状況で、脳血管疾患とか虚血性の心疾患と労災との関係業務上外をめぐって困難な諸点というのはどのようなものと認識しておられましょうか。
  63. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) いわゆる脳あるいは心臓疾患等が業務上の原因といいますか、長時間労働等が原因になってそういう残念な事態を招いたケース認定件数で申し上げますと、平成四年から六年まで大体年間三十件程度認定件数でございましたが、平成七年度、御指摘のございました認定基準を改正いたしましたことによりまして七十六件というふうにふえております。平成八年度につきましてもほぼ同水準の認定件数になるんではないかというふうに推計をいたしているところでございます。  そういった脳・心臓疾患の認定基準平成七年に改正いたしまして、業務過重性を客観的に評価するために、例えば、今まで一般的に同種の労働者と比較していたものを新たに年齢とか経験等を加味しながら業務過重性を判断するとか、あるいは発症前一週間の業務、ここにかなりの過重性があったかどうかというようなことを中心に評価していたものを状況によりまして一週間より前の業務についても総合的に判断の材料として見ていくこととか、それから質的に著しく異なる業務が直前に入ったと、こういう質的に違う業務をこなしたというようなことも認定の際には見ていくこと等いろんな認定基準の改正を行っております。  先生、そういった新しい認定基準を運用する上で難しいケースということでございますが、これは本当に個々のケースごとに、判定の際にどの部分重点を置いて業務上と認定することができる根拠があるのかどうか見ていかなくちゃいかぬわけでございまして、必ずしも一様ではございません。  ただ、残業等がかなり続いていたケースにつきましては、私ども業務上との関係で非常に慎重に見ますのは、やはりそれだけの過重労働があった場合には本人の持っていた素因、例えば血圧が高いとか動脈瘤等が以前からあったとか、そういったケースにつきましては業務と本人の持っておられた素因との関係が微妙な形であらわれてくるケースが非常に多いということは確かに言えるかと思います。そういった点については医師の方等に判断を求めて、慎重に判断しなければならないケースが多いことは事実でございます。
  64. 大脇雅子

    大脇雅子君 さまざまな疾病労働との間にどういう因果関係があり相関関係があるのかという点についても、現場ではそういう研究をして明快に証言できる医者が非常に少ないということと、やはり系統的なデータが、個別の患者だけではなくて総体の労働者のさまざまな労働の要因として蓄積していないということは我が国の非常に大きな問題ではないか。それゆえに認定基準の厳しさもさることながら、やはり過労死というのが国際的な用語にまでなったほどの状況をもたらした一つの要因であろうと。私は、そういう労災病院事業に関連してこういった事業と、それからもう一つはリハビリと予防メンタルヘルスの施策などとともに新しい機能を労災病院が担っていただくということが非常に必要ではないかというふうに思うわけです。  大臣にお聞きしたいのは、とりわけ充実した労災病院事業の展開についてどのようなお考えをお持ちかということを最後にお尋ねいたしまして質問を終えさせていただきます。
  65. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生、私どもが子供のころは「村の鍛冶屋」だとか「牧場の朝」だとか、今で言いますならば鍛冶屋は製造業に相なっておりますし、牧童諸君に任せることなく牧畜業になっていると思います。  つまり、世の中が非常に複雑・多様化し、かつ機械化され、その間で労働提供の密度も濃密になっているというような中で、在来と異なった心身両面にわたる病気の原因というようなものが出てきている。そういうものに対応して、労災予防し、あるいは事後にこれを治療し、あるいは労災給付の支給という面にわたって大きな仕事の変革というようなものを我々は期していかねばならない、こう思っております。  この労災を因とするところの疾病予防、防止につきましては、私ども労災病院、これが専ら担当をしようというようなことで、ただ民間にも開放して、富士山は高いが富士山の高さを維持するのには周りの山々もある程度広がっておらなければその究極はつかみ得ないというような意味合いで、よろずの患者も診ることによって労災を因とする病気の原因等も追求できるというようなことで今営んでいるわけであります。  労災病院の課せられたる使命といいますものは、この産業構造等の改革の中でますます重きをなしている。それに応じ得るような中身というものを充実させて労働者諸君を中心とする労災サービスに万全を期そう、こう思っている次第であります。よろしくお願いいたします。
  66. 川橋幸子

    川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子であります。  きょうは、ある財団、今のNGOとかNPOとかという、そういうふうな言葉で表現される歴史のある民間団体の機関誌でございます「世界と人口」というところに紹介された随筆にまつわって、外国人労働者の方の労災問題についてお尋ねしてみたいと思います。  「世界と人口」というその機関誌をやっておりますのは、家族計画国際協力財団、通称ジョイセフといいます国際専門NGOでございます。ファミリープランニングの指導をやりましたり、あるいは開発途上国に行って識字やらあるいは女性の地位向上といいましょうか、技術訓練などのインテグレーションプログラム、そういうプロジェクトを持って、長い歴史を持った財団でございます。その財団の長は亡くなられた福田元総理でいらっしゃいましたが、今は百歳のお誕生日を迎えられました加藤シヅエさんがその長に当たっておられる、こういう由緒正しい財団でございます。  そこの機関誌の去年の秋に掲載されたもので、随筆なんでございますけれども、「A氏の義足」、A氏といいますのは、労働省の方でお調べいただきましたらガーナにお住まいのアボアグイエさんという方だそうでございます。労働省の方で訳してくださったアボジーさんというのではなくて、弁護士さんに送られたお手紙、これも労働省からいただいた資料でございますけれども、そこで見ましたらアボアグイエとお読みするようでございます。三十代の男性の方でいらっしゃいます。  この随筆を書かれた方は阿部裕行さんとおっしゃる弁護士さんでございます。この弁護士さんがアボアグイエさんの労災補償にまつわる訴訟を扱われたという、そういう御縁の方のようでございます。この方の弁によりますと、恐らく資格外就労、不法就労の外国人の方の訴訟を初めて受け持たれたというふうに書いておられます。第一号でいらっしゃるのがアボアグイエさんだったということでございますけれども、約十年ぐらい前に事故に遭われまして、左足のひざ下を切断して義足を支給された、年金も支給されたということでございます。  ところが、義足というのは年がたちますと本人の体形が変わったり、あるいは少しずつふぐあいが出てまいりまして調整を要するようでございます。そこで、このアボアグイエさんは、自国でやりたいといっても自国のガーナでは医療水準、技術水準からいってそううまくは診断書をもらって調整することはできない。そこで、日本に来てぐあいよく調節してもらいたいという御希望を持たれまして、この阿部裕行さんという弁護士さんを通して、旅費を支給してもらえないものかという御相談をなさったようでございます。  そこで、問いの一でございますけれども、外国人の労災被災者の方がそのように再度義足の調整のために来日するというような場合に旅費は支給されないということのようでございますが、現状はそういうことでしょうか、確認させていただきます。  余り詳しく質問をお伝えしていなかったのでございますが、それでは、東北なりあるいは九州なりの遠方地域から東京の労災病院でぜひやりたいといった場合、国内に在住している場合は外国人労働者の被災者の場合でもそれは支給されるのでしょうか。そこの点をまずお伺いさせていただきたいと思います。
  67. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のございましたガーナの方につきましては、以前もこの義肢の再調整につきまして私どもの方へも要請の手紙等がございまして、かねてよりその事案については承知をいたしているところでございます。  労災保険の保険給付は、資格外就労であれ国内でそういった労働災害に遭われた場合には国籍のいかんを問わずもちろん支給するものでございますが、今回問題になっております義肢の問題につきましては、これは保険給付ではなくていわば附帯事業としての労働福祉事業の方で、治癒した後にアフターケアとして義肢等の支給を行い、また必要があれば調整して新しい義肢等を支給するということを行っているものでございます。これは、国内であればもちろん国籍のいかんを問わずそういう義肢の支給のために医療機関とか製作者のところに行く際の交通費あるいは宿泊費は、一定の限度内になりますが支給を行っているところでございます。  今回の場合は、国内で義肢の支給を受けた後ガーナに、もちろんこれは資格が切れておりますのでお帰りになっていたという状況でございまして、日本で義肢の再調整を受けるための旅費ということが問題になっているわけでございますが、労働福祉事業として予算の範囲内で、必要な範囲内で行っている、こういうことの性格上、外国からの旅費についてまでは私どもこの対象としてきていない、こういう状況でございます。
  68. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、労災被災者に対する労働福祉事業の利益の享受というのは、別に国籍を問わずやっておると。ただ、費用の点で海外からという場合には余りにもかかり過ぎるからという、そのようなことかと思います。  逆に言えば、これだけ外国人労働者の方が増加している、あるいはもしかしたら日本人自身も海外勤務になって、そういう調整が必要な方が海外に出られて在住地が海外ということもあるのではないか。勤務地、企業の国際化というものが進んでいくとすると、住んでいる場所が国内か国外かでもってそうした利益の享受というのが可能、不可能というのもちょっと合理的な理由とも思えないのでございますけれども、今後、こういう点につきましては現行制度を見直すというようなことをお考えになっていただけませんでしょうか。
  69. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この義肢の支給に伴います医療機関あるいは製作者のもとへ通う際の旅費の問題につきましては、労働福祉事業ということで予算の範囲内で行っていることから、今のようなケースについてどこまで対応可能かどうか大変難しい問題があろうかと思います。  また、正直申し上げまして、外国に行かれますと、その義肢の調整を当該地の医療機関でやれるようなケース、そういう場合はその費用についてはもちろん送金等の方法が可能なわけでございますが、ただ、ガーナのケースにつきましては、そういったことが恐らく医療機関の整備状況から難しかったのかもしれません。もしヨーロッパが近ければあるいはそういうところでということも御本人は考えておられたようでございますが、そういう場合に費用を送金する形でいけばいいのか、やはり日本まで来てもらってということで旅費等を検討していくのか、いろんな技術的な問題もあわせて考えて、予算の面と相談していかなくちゃいかぬことになるだろうと思います。  大変難しい問題でございますけれども、そういった事情のある点は御理解いただいて、先ほどもありましたように、この資格外就労等の方への労災補償給付の実情等もまた精査いたしまして、こういった問題についての必要性をちょっと私どもも考えてみたいというふうに思っております。
  70. 川橋幸子

    川橋幸子君 この随筆によりますと、アボアグイエさんという方は結果として旅費を工面して自弁でやってきて、それで無事義足の調整を受けた。そして、阿部さんとおっしゃる弁護士さんのところを訪ねられて大変日本を称賛したと。  この人のお手紙を労働省の方からもちょうだいしましたけれども、書き出しは、事故に遭って以来、大変皆様との間に誠意のある関係が存在して御礼申し上げたいと、それから結びの方も、できれば法改正もお願いしたいし、御配慮と御協力をお願いしたいというような、非常に謙虚な書き方のお手紙でございます。  保険収支の見合いはあるかもわかりませんけれども、少なくとも自弁でやってくれば滞在費は見てあげてもいいような気がいたしますし、旅費につきましても納得できるような公平な基準でぜひお考えいただきたいと思います。  そこで最後に、この方は十一カ所に、外国人労働者がふえていて自分のような例がふえるであろうからここを考えてほしいというような陳情のお手紙を出されて、この随筆によりますと、非常にさっぱりした表情で帰国なさったということなんですね。この十一カ所というのはどこかといいますと、労働基準局を初めとして、衆議院労働委員会、参議院労働委員会、自由民主党、民主社会党、新党さきがけ、新進党、共産党、ガーナ大使館に日本ガーナ協会会長さんというようなところで、当参議院労働委員会もちょうだいしているようでございます。しかし、さっぱりした表情になって帰ったと言われましても、その後このA氏の要望に対する反応は一つもないという随筆の結びになっているわけでございます。  長々と質問させていただきましたのは、きょうの議事録でも送って、日本の政府もちゃんと検討しているということを、僭越でございますけれども、参議院労働委員会の場ということで私がお伝えしていきたいと思います。  時間はあと三分で短こうございます。笹野先生のところにいつも食い込んで御迷惑をかけておりますので、答弁の方は三分以内でお答えいただきたいと思います。  行政改革ですとか特殊法人の見直しですとか省庁の再編ということが大きな課題になっておりまして、私も今国会を通じまして、この委員会でも労働行政役割というようなことを考えることが多うございました。労働福祉事業団労働福祉という言葉が出てまいりますと、たまたま省庁再編、行革会議のヒアリング項目がごく最近の新聞に報道されておりまして、報道によりますと、主として自民党さんの行政改革推進本部の中で検討されているところでは、福祉と労働を統合するというような御意見があるやに報じられておるわけでございます。  私は、どうも福祉といいますと何となくチャリティーという英語といいましょうか、言葉を連想いたします。でも、これからの労働省の役割というのは、そういうものよりもむしろフェアネスとかジャスティスとかというような社会のルールをつくるところに重きを置いていく必要があるのではないかと思いますが、今後の労働行政の任務についてどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか、お尋ねします。
  71. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生と全く私は同じ考えであります。  福祉といいますと、最近はもう使いませんが、かつて弱者という言葉がございました。弱者に手を差し伸べるというのがどうしても私は福祉という言葉に連想されてなりません。しかしながら、労働行政は例えていいますならば、今日は雇用問題一つつかまえましても、失業をされた方、ああこの皆さんはお気の毒だ、何とか新しい就職口にという意味ではないのではないかと。やはり新しい産業というものが開けていく、日陰になる産業もあるということでありますならば、失業をする前にこれからの動向を見きわめ、そのために必要な技術を身につけて新たな産業に身を置いて、全体の産業及び自分の家庭の繁栄というものを期すべきだと、こういうふうに積極的にとらえております。  身体障害の皆さんあるいは高齢の皆さんも、今まではやはり福祉というようなことだったと思います。しかしながら、今日そうではないのじゃないか、身体障害者の皆さんも人間生きがいを感ぜられるような、高齢者も同じでありますが、ひとつ自分の能力を大いに発揮しようと、社会に貢献をしようと、そしてみずからも自分の心を満足させようということでいいますならば、労働行政の高齢者対策、障害者全般に対する対策だという意味合いで、厚生省所管の福祉と我々の労働行政とでは性質が違うと、こう思っておりますことをお答えとしたいと思っております。
  72. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。
  73. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 福祉事業団の今度の法案について労災病院に的を絞ってお話をお聞きいたしたいと思います。  実は、この法案の審議に当たりまして、百聞は一見にしかずという言葉がありますように、私も福祉事業団がどういうことをやっているのかということを実際見てみようというふうに思いまして、先日、横浜の労災病院に視察に参りました。視察に行くときには、言葉は悪いんですけれども、何か文句をつけるところがないかなという気持ちで行ったんですが、その気持ちは全く視察した段階では消えうせて、何とまあすばらしい病院、そして驚くような業務の内容であるということで、何か非常に悔しいんですけれども、感嘆をして帰ってまいったのが実情です。  それで、いろいろと労災病院についてはある種の批判があったり、あるいは勤労者がかかる比率がどうとかということはあるでしょうけれども、私はその点は視察をして、労災病院のいろんなところを見せていただいた段階では、それは当たらないんじゃないかなという気がして帰ってまいりました。  特に、非常に最先端の技術を導入いたしまして、院長さんが脳外科のお医者さんで脳腫瘍の手術についてはコバルト治療というのをやっております。私も脳腫瘍になったときはこれで命拾いしたなと、今から予約を申し入れてきたんですけれども、そういう日本の病院の中でも非常にすばらしい機械、そして医療の先端技術があるということはとってもいいことだというふうに思います。  しかし、私がここで一つちょっと注文をつけるとするならば、京都を初めといたしましてまだ十九の地域に労災病院が建っておりません。確かに労災病院というのは、建った趣旨といたしましては北海道とか九州の炭鉱とか鉄鋼とかそういうところが主だったと思うんですが、しかしだんだん時代が変わりますと、日本の六千万人の人が勤労者なわけですから、やっぱり労災病院もそれに合わせて、働く人のためというふうにその目的を変えていった方がいいのではないかというふうに思います。  そこで、私は京都に労災病院がないということを踏まえながら、まだ労災病院が建っていない十九の府県にこれから建てる予定があるかないか。あるいはまた、私は、労災病院予防医学、働く人の病気予防するという立場から大いにこういうことが必要だということで、その機能とか役割についてお聞きいたしたいと思います。
  74. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、労災病院の配置等を含めました今後の設置についての考え方でございますが、既に三十九の病院を設置いたしておりまして、私ども平成三年に横浜の労災病院を最後に新設についてはこれを行わない、こういうことで対応をいたしております。目下はこういった各地の労災病院を本当に労災病院として特色あるものにし、効率あるものとして運営していくことに精力を注いでまいりたいと思っております。  配置の問題につきましては、もちろん検討課題一つでございます。ただ、それぞれの地域医療の中核的な病院として位置づけられている面もございまして、これはかなり時間をかげながら、また関係者といろいろ相談しながら考えていかなければならない課題かなというふうに受けとめております。  そういった中で、この労災病院役割、もちろん予防から治療、リハビリとかなり高いレベルのサービスを提供しておりますが、とりわけ予防医療に関しましては、これからの我が国高齢化の進展なりいろんな産業活動、経済活動が複雑高度化していく中で、例えばメンタル面とか健康障害の問題とか、そういった予防面の充実を図っていくことが大事かなというふうに受けとめております。  このため、私ども、個々の労働者健康管理等を預かっている産業医の方とのネットワーク体制を強めることによりまして、そこに労災病院の臨床的な研究に基づく予防面のノウハウを提供し、またそこで把握された勤労者の方について早い段階から予防も含めて労災病院が引き受けていく、こういう体制をつくっていくことを当面目指していきたいというふうに考えております。
  75. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これから大いに労災病院が発展、充実をすることを願ってやみません。  次に、今日本の企業を見ますと世界各国にどんどん出ていって、外国における日本人が大変多いという実情、これはもうどなたもわかると思うんです。実は私、今度の夏スリランカに視察に行こうと思って、この間スリランカの大使とお話をしたときに、いや実は日本の労災病院に大変お世話になっているんですという話を聞きまして、これまたびっくり仰天で、そんないいことをやっているんですかということだったんですが、海外に行っている企業で働く人のために、この労災病院がそういう活躍をしているという事実があるのかどうかちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。
  76. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 非常にグローバル化の進んでいる中で海外へ我が国勤労者の方もかなり出かけておるわけでございますが、そういった方の健康問題は大変重要でございますので、労働福祉事業団におきましては、一つは発展途上国に行かれている在留邦人を対象といたしました海外巡回健康相談を行っております。これは、医師の方がチームを組んでいただきまして発展途上国等を回っていただくわけでございますが、平成八年度では三十七カ国に延べ十三チームの医師団を派遣して在留邦人の方々の健康相談に応じているところでございます。  また、お話しございましたスリランカの例は、海外の友好提携病院に対する技術協力等も行いながら、そこに行っておられる在留邦人の方が健康相談治療等を受けやすくするための制度でございまして、これにつきましては現在七カ国十一病院と医師の交流、研修等の提携関係を持っているところでございます。
  77. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 海外に医者が巡回をしているということはすばらしいことだというふうに思います。これぞ働いている人のために何をなすべきかという医者の最もいい部分だと思いますので、そういうことはどんどんこれからやっていただきたいというふうに思います。  続きまして、私はかつて医療関係の大学で講義をしていたことがあるものですから、医者の大学とか看護婦さんの大学に大変興味があります。そこで、横浜の労災病院に行きましたら附属の看護学校がありまして、実に立派な寮を持ちきれいな教室で勉強していることを見まして大変うれしく思いました。しかし、病院の方を視察して時間がなくなってしまいまして看護婦さんのことについてはちょっと聞く時間がなくなったものですから、ここでお尋ねをいたしますけれども、やっぱり教育というのは、学生にどのぐらいの時間、どのぐらいの量、どのぐらいのお金をかけているかということで教育に対する熱心さがはかられるというふうに思うんです。  私もカリキュラムのことでいろいろお話はしてきましたけれども、ここで非常に具体的な質問をさせていただきたいんですけれども、私がかつて文教委員会に所属しているときに、看護婦さんの学校が、文部省で設置しているのと厚生省で設置しているのとは中身が非常に違うということを発見いたしまして、これではやっぱり同じ教育をするのに不公平じゃないかと。  文部省の看護婦さんの大学、これは四年制ですからちょっと数字が多くなるんですけれども、看護婦さんを養成する一人当たり費用は一千五百四十八万八千円かかっています。それに対して、厚生省が看護婦さんを養成する費用は百六十三万二千円と、けたが違うんです。文部省は四年制ですから約四百万引くと一千万相当、それに対して厚生省が百六十三万二千円という、まさにけた違いの教育費でもって一人の看護婦さんを養成している。  そこでお聞きしたいんですけれども労働省が管轄していますあの労災病院の附属看護学校の看護婦さんの一人当たりにかかる費用は幾らでしょうか。
  78. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労災の看護専門学校の一人当たりの養成経費でございますが、これは三年でございますが、三百九十九万三千円、こういうふうに計算をいたしております。
  79. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 実は、私はこれでちょっと安心をいたしました。というのは、文部省は教育を専門としておりますのでそれはそれなりに学生の育成に経費をかけるんですが、厚生省の看護婦さんの養成を見ると実に粗製乱造というんですか、余り教育費をかけないで早いこと看護婦さんをつくってしまおうというそういう発想で、これは私はこれからの看護教育にとっては余り歓迎すべきじゃないという持論を展開しております。  そこで私は、労働省はまさか厚生省の粗製乱造じゃないだろうなというふうに思いましたけれども、約二倍半でしょうか、そのぐらいの費用をかけているということはすばらしいというふうに思います。  私は、きょうは時間が短いのでこれ以上質問はできませんけれども、やはり高齢化社会、そして働く人の老後というのは、もうこれはお医者さんはさることながら看護婦さんとか保健婦さんとか介護士さんという人が非常に重大な役割を担っていくと思います。そういう点で、看護婦さんに十分な費用をかけて養成しているということは大変いいことだと思いますので、これからもっと看護教育に力を入れていい看護婦さんを養成するという、そういう福祉事業団であっていただきたいというふうに思いますが、それについての御見解を最後に伺って、私の質問を終わります。
  80. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この看護専門学校で養成に当たっています看護婦さんは、もちろん技術面の教育だけじゃなくて、こうした患者さんを扱う上で必要な豊かな人間性も重要な着眼点としてその養成に当たっているというふうに報告を受けているところでございます。  とりわけ、労災病院の場合、育成に要する費用としては、例えば実習等がその付設されております労災病院で実施されるとかということでかなり経費の節減ができている面がございます。  労災病院の看護専門学校におきます特徴は、一つはリハビリテーションまで含めた教育を実施しているということ、退院後のケアに関する継続看護、こういった部分まで含んで教育を実施しているということでございます。さらに、この看護専門学校におきましては、やはり勤労者方々予防からリハビリまでを扱うということで人間関係論といったような講座を単位の中に組み込んで教育をしている、こういったところがこの労災の看護専門学校の特徴であろうと思いますので、そういった特徴を生かしながら立派な看護学生を育成できるように、労働福祉事業団に対しましても十分指導してまいりたいというふうに思っております。
  81. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 終わります。
  82. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働福祉事業団法の一部を改正する法律案について質問します。  労働福祉事業団が有している労災病院健康診断センター、看護婦等養成施設、労災リハビリテーションなどは労災防止、予防、ひいては労働者健康管理などに重要な施設として全国ネットで設置されています。十分にその機能が発揮されるように運営されることが期待されていると思います。  そこで伺いますが、労災病院の診療の実態を数値でお示しいただきたいと思います。
  83. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 患者数でございますが、平成七年の入院と外来に分けて御説明申し上げますと、労災病院入院されている方が三十五万三千二百三十二人でございます。それから外来の方が三十六万三千三百八十七人、これが平成七年度の実績でございます。
  84. 吉川春子

    ○吉川春子君 労災に係るパーセントはどれぐらいですか。
  85. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これは入院と外来で違いますが、大体六%から、外来ですともう少し下がりまして五%前後という数字でございます。
  86. 吉川春子

    ○吉川春子君 労災の診療率が大変低いわけです。一般的な地域医療に対する貢献はこれはこれで結構なんですけれども、もっと労災病院としての役割を果たすべきだと思います。  私は新聞記事で読んだんですけれども、東北のある民間病院産業医学健診センターを併設しております。ここにタクシーの配車係をしている男性が頭が痛いと言って受診に来ました。白血球に異常はなく、不審に思って同じ職場でほかに頭痛を訴える人はないかということで念のために職場十数人のアンケート調査をしたところ、九割が同じ症状だったんです。原因は瞬間湯沸かし器の不完全燃焼だというふうに判明いたしました。このように患者の症状だけではなくて職場環境にまで目を配る、これが産業医学ということだと思うんです。  そこで伺いますが、労災病院患者の診察から問題点を感じて職場環境の是正等について勧告した例というのはありますか。
  87. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労災病院におきまして今御指摘のあったような事例につきまして詳細には把握はいたしておりません。  ただ、労災病院とそれから各都道府県のレベルで産業医の方等と連携をとっている産業保健推進センター、また産業保健推進センターがいろいろ指導に当たっています全国三百四十の中小企業等産業医を抱えておられないところの活動を支援している地域産業保健センター、こういったところが先生指摘のような職場環境と健康を考えて、そういったところを通じて巡回等により職場環境の改善等の指導を行っているというところでございます。
  88. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは伺いますけれども産業医は何人いらっしゃって、それは医師の何%に当たるんでしょうか。それから、企業嘱託医の数、パーセントも教えてください。
  89. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 平成七年の十二月の段階産業医が専任されている事業所におきます全体の数字でございますが……
  90. 吉川春子

    ○吉川春子君 労災病院です。
  91. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労災病院では、平成八年十二月現在でございますが、産業医の要件を備えた医師は二百七十二名でございます。全体の約一五%を占めております。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 企業嘱託医はわかりますか。
  93. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 企業の嘱託産業医として活動している方は百七十名でございます。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働大臣にお伺いいたします。  労災治療あるいはリハビリテーション、職業病の予防などに力を入れなくてはならない労災病院としては産業医の確保が不十分なのではないか、今の数値からは私はそのように思うんです。これでは労災病院としての任務が十分果たせないんじゃないかと思います。  そしてまた、今局長からもお話がありましたけれども産業医を独自に置けない中小零細企業、この労働者のためにも労災病院としてもっと援助をしていく必要があるんです。そういう意味で、産業医の確保ということに対してもっと努力すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  95. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生の御趣旨、私、余り専門的に勉強いたしておりません。今後、一生懸命勉強したいと思っております。かわりに政府委員をして答えさせます。
  96. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先生指摘のように、労災病院産業医の要件を備えた医師ができるだけ多くいて、そういった予防から治療等に当たることが望ましいことはもちろんでございます。ただ同時に、治療レベルのこともございまして、やはり専門医等も抱えてまいりますので、比率として産業医だけで相当数を占めてということにはなかなかそうならないケースが多いかと思います。  先ほど申し上げましたように、労災病院は各都道府県に整備されてきております地域産業保健センター、これも労働福祉事業団が運営しておりまして、そこが各企業から選任されている産業医の方とネットワーク等を形成しておりまして、労災病院産業保健センターを通じまして各企業に選任されている方の産業医との情報交換、あるいはそこで発見された問題について労災病院が援助していく、こういった体制の確立に努めてまいりたいと考えているところでございます。  また、中小零細のところにつきましては、私ども共同で産業医の選任等を進めるように助成制度も今年度新設いたしまして進めておりますが、やはりこういった点につきましても各県の産業保健推進センター、これ等を通じましてそういった体制の普及に努めていきたい、こういうふうに考えております。
  97. 吉川春子

    ○吉川春子君 厚生省、お見えですか。  診察に訪れた患者さんの労働環境に原因があると考えられるものについて原因を究明することによって、患者さんのみならず同じ職場の別の労働者を救うことができるわけで、今申し上げたとおりですが、そのためにも対症療法的に治療を行うだけではなくて、原因究明のための問診というものが重視されるわけですが、診療報酬の中で問診の扱いはどういうふうになっているでしょうか。
  98. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 問診につきましては、医師が患者に対しまして御指摘の点も含めていろいろ質問することによります患者の病状に関しますさまざまな情報を得るための方法ということでございまして、常に診察と一体となって行われるものであるということから、診療報酬におきましては初診料あるいは再診料に含めて評価を行っているところでございます。
  99. 吉川春子

    ○吉川春子君 厚生省にもう一問伺いますけれども労災に限らず問診というのは病気の発見、治療に非常に重要なんで、初診のときに重点的に診療報酬としてカウントするだけではなくて、もっと問診というものを診療報酬の中で重点的にカウントしてもらいたい。そのことを強く要求しますが、それについてはいかがですか。
  100. 今田寛睦

    説明員(今田寛睦君) 問診につきましては、先ほども申し上げましたように診察の重要な一部を担っておるということから、その重要性につきましては御指摘のとおりでございますが、少なくとも診察時におきましては、触診でありますとか視診でありますとか、幾つかを総合的に評価した形で、これまで診察料で評価をしているところでございます。  ただ、こういった無形の技術の評価につきましては、今後、適切な評価が行われるように努めていきたいと考えております。
  101. 吉川春子

    ○吉川春子君 厚生省、どうもありがとうございました。  そういうわけで、やっぱり職場環境と疾病との関係、これを明らかにして、患者個人の労災治療はもちろんなんですけれども労災予防職場環境の改善、そういう地域センターというか病院役割を十分果たせるように機能を充実していってほしい、そのことを労働省にも強く要求しておきます。  それから、次の質問なんですけれども、先ほども局長がお答えになっておりましたけれども、働く女性健康管理母性保護、こういうことの取り組みについて労災病院がどのような認識でもって役割を果たしていくかという問題なんです。  「労災病院の在り方について」という調査研究が去年の九月に公表されましたけれども、そこの十三ページの「働く女性母性健康管理への取組」、このことに触れてさっきお答えになられていましたですか、ちょっと確認します。
  102. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のとおりでございます。  労働福祉事業団の方でまとめましたこれからの労災病院のあり方、またそれを受けて、私ども省内でもいろいろ議論を進めている一つの考え方として紹介をさせていただきました。
  103. 吉川春子

    ○吉川春子君 ここには、  近年、女性職場進出あるいは地域社会における各種活動への参加などさまざまなかたちでの女性の社会参加が進んでおり、経済社会の活力ある発展を維持していくためには女性の活用を図ることが不可欠となっている。 として、  近年出生率の低下が社会的に大きな問題となっており、職業生活と家庭生活との両立が可能となるような働く女性母性健康管理面での取組が必要となっている。このため、労災病院においては婦人科中心に、働く女性母性健康管理に関する相談指導体制の充実を図ることが望まれる。 このように研究発表がされているわけです。  それで、雇用機会均等法が制定されまして十年以上たつわけですけれども、この報告書に指摘されているように、女性職場進出と健康などの問題について積極的に知見を集めて、労災防止、健康維持に役立つ活動を優先に進めるべきです。深夜業で働く女性もふえています。労災病院でこうした問題に今後積極的に取り組む、あるいは研究していく、そういうことは十分に可能なのではないか、そういう体制を持っておられるんじゃないかと思いますが、この点はいかがですか。
  104. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労災病院におきましては、たしか三十九の病院のうち二十四ほどで産婦人科という診療科目を設置いたしておるところでございます。こういった診療科目先生方も働く女性の問題について種々研究等も今までやってきた経緯がございます。  ただ、最近の女性職場進出が進む情勢の中で、さらにそういった女性仕事と家庭の両立を支援していく、あるいは母性といったことに着目した相談指導を行っていく、そういった方向を目指していこうではないかというのが、先ほど示されました労働福祉事業団でまとめられた考え方の一つに含まれておるわけでございます。  私どももそういったものを受けとめまして、これは全体にいろんな項目がございますので、労働福祉事業団ともどもこれからの労災病院のあり方を検討する場を省内にも設けまして進めておるところでございます。
  105. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと時間がなくなりました。  そのほかにも「産業医学・産業保健における専門的センター機能の設置」という項目がありまして、「労災病院には、今まで蓄積されてきた研究成果、臨床例、知識などを有効に活用し、その専門性について広く社会に還元する使命がある。」、そういうことで今後の方向として、脊椎センターとか熱傷センターとか腰痛センターとか、「臨床研修、教育研修、施設・機器の開放・共同利用、情報交換などの広域的な機能も併せもつことが望まれる。」、こういう報告もあります。  労働大臣、この項目について簡単でいいんですけれども、要するに労災病院の本当にあるべき姿といいますか、ほかの委員からもいろいろ指摘されましたけれども、そういう方向に向けて今後さらに御努力いただきたいと思います。  その点について一言コメントをいただきたいと思います。
  106. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 先生がさっき力点を置いて言っておられた職場の環境を立派なものにして、労働者諸君の疾病予防等を配慮せよと。これは労働基準法に基づきますところの労働安全衛生規則などで、上水に使っている水の検査でありますとかあるいはその部屋の光が何ルクス以上であらねばならないとか、きめ細かく職場環境の維持について規定がございます。したがって、労働省といたしましてはそちらの面についても鋭意努力をするように各現場現場に指導を凝らしてまいりたい、こう思っております。総体的に、私は労働災害の給付ではないぞ、予防だぞ、こう申しております。その予防のために労災病院というような専門的な知識を持っている者をフルに活用してまいりたい。  とにかく世の中はどんどん変わってまいります。さっき、唱歌「村の鍛冶屋」を言いましたけれども、ああいうようなあけっ広げの家のところでありますならば、お話しになったような瞬間湯沸かし器の問題などは起こらない。それがただの鍛冶屋ではなくなって、鉄鋼業、鉄鋼加工業というような製造業になっていくと非常に複雑な機能をその会社の中では営んでいく。そして、個々の労働者に付加されるところの技術というようなものもどんどん近代化していく、しかも人間の数も多い。そういう中ではストレスも厳しくなるだろうというような意味合いで、今後もそういった現象面について労災病院中心としてデータを集め、それを分析して予防的な効果を発出できるような機能を十分的に営ませてまいろうと、一言でなくて申しわけありませんが、そんなつもりでおります。
  107. 吉川春子

    ○吉川春子君 特殊法人労働行政のかかわりについてもう一点、最後に伺います。  動燃東海原子力再処理施設の爆発事故、それに伴う虚偽報告、これが動燃よりなされていたことが大きな問題になっています。それで、科技庁に対するものだけではなくて労働省の報告にも虚偽があったということが、我が党の大森議員が取り上げた質問でも明らかになりました。そういう事故をまず起こさないということが非常に必要です。  それで、伺いたいんですけれども、動燃のような施設では細心の注意を払わなくてはならない、日常的な労働者の働かせられ方はどうだったのか。動燃の時間外労働の実態、協定の上限はどの程度だったんでしょうか、報告してください。
  108. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 動燃の施設につきましては、私ども例えば東海事業所に対しましては平成四年には二回、平成五年から七年については各一回監督指導を実施してきておりますし、また新型転換炉の「ふげん」の発電所につきましてもほぼ同様に毎年一ないし二回監督指導を実施してきております。  そういった中で、安全管理体制等については必要な体制がとられておることは報告も受けておりますが、今先生から御指摘のございました労働時間の具体的な事情についてまでは私ども報告を受けておりませんので、答弁はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  109. 吉川春子

    ○吉川春子君 それが一番肝心なことなんです。私たちの調査によれば、動燃の時間外労働の協定の上限は一カ月で八十時間、三カ月で二百時間に及んでいます。  労働省が定めている時間外労働の上限の目安時間は一カ月及び三カ月幾らですか。
  110. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一カ月につきましては今数字がございませんが、年間は三百六十時間で、それを大体各期間に対応して決定をしているところでございます。
  111. 吉川春子

    ○吉川春子君 今の局長の話によれば、一カ月は四十五時間、三カ月は百二十時間、そうですね。そうでしょう。
  112. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 四週間で四十五時間でございます。
  113. 吉川春子

    ○吉川春子君 そういうことですから、一カ月で八十時間、三カ月で二百時間というのは物すごい上限なんです。  だから、労働省の言っている目安時間をはるかに超えるような時間外労働が行われていると、こういう中でちょっとのミスも許されないような厳しい労働が行われているわけですから、長時間の時間外労働のあり方については直ちに是正されるべきだと、改善されるべきだと思いますけれども労働省いかがですか。びっくりでしょう、こんな数字。
  114. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今数字につきましては先生から御指摘を受けまして知りました。私ども、この動燃の関係事業所に対する指導監督では安全管理体制、もちろん時間も見ておりまして、具体的な数字については報告を受けておりませんが、ただ時間外労働の管理等について指導してきた経緯はあるようでございますので、指導した後どうなっているかというようなフォローを含めて私ども正確に情報を把握し、必要な対応をしてまいりたいと思っております。
  115. 吉川春子

    ○吉川春子君 局長、その答弁には真実がないですよ。何遍も何遍も労働時間も含めて立入検査したと言っておきながら、実際に時間外労働が何時間なのかつかんでいない、今初めて聞いたと。こんなこと通りますか。  そして、労働省の三百六十時間だって青天井で、これで過労死が一年間に七十七人も六人も出ているわけですよ。その青天井の目安時間すらさらに超えるような動燃での時間外があると。これは本当に事故は起こるべくして起こったと言っても差し支えないぐらいですよ。  ちょっとのミスも許されないような職場で、こんな労働省の行政指導基準を大幅に超えるような時間外が行われていていいんですか。こういうことをぜひ正さないと再び三たびこういう事故は起こると思いますよ。労働省の責任は大きいと思いますけれども局長、どうですか。
  116. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほど申し上げましたように動燃の関係事業所に対する指導監督、安全あるいは被曝管理等を見てまいりまして、時間外労働についても指導してきた経緯はあるわけでございます。ただ、具体的な数字について報告を受けていないということでございまして、私どもそういった観点でほぼ毎年一、二回は定期的に監督を実施してきたことについては御理解をいただきたいと思います。  先生から御指摘ございましたそういった労働時間の問題につきましては、今まで指導してきたことの改善の状況のフォローアップも含めまして早急に把握をいたしまして必要な対応をしてまいりたいと思っております。
  117. 吉川春子

    ○吉川春子君 最後に、労働大臣、今お聞きのとおりの長時間労働なんです。これを正すためにも大臣指導力を発揮していただきたいと思います。
  118. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 動燃にあのような事故が起こりましたことは極めて遺憾である、こう思っております。  そして、現在はその事故の原因究明に努めつつありますので、その原因、結果等が判明しましたならば、それに即応した措置をこれから講じてまいりたい、こう思っております。  なお、労働省の報告に間違いがあったという吉川委員の御発言でありますが、労働省が発しました報告等について間違いがあったということは私は存じません。労働省に対する報告に間違いがあった、こういうふうには聞いております。
  119. 吉川春子

    ○吉川春子君 労働省に対するです。     —————————————
  120. 勝木健司

    委員長勝木健司君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、今泉昭君が委員辞任され、その補欠として泉信也君が選任されました。     —————————————
  121. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  労働福祉事業団法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  123. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  125. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 次に、職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。岡野労働大臣
  126. 岡野裕

    国務大臣岡野裕君) 委員長から議題としてお取り上げいただきました職業能力開発促進法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を説明申し上げます。  最近の急激な産業構造変化の中で、企業は製品等の高付加価値化や新分野展開等を図ることが必要となっており、これらを担っていく高度な知識、技能、技術や企画・開発能力、応用能力等を有する高度で多様な人材を育成していくことが急務となっております。  職業能力開発行政におきましては、事業主による能力開発を推進することとあわせ、企業内での教育訓練が困難な中堅・中小企業等中心に、産業界や地域のニーズに応じ公共職業訓練を実施してきておりますが、事業活動の高度化に対応し得る人材を育成するため、公共職業訓練の一層の高度化を図る必要があります。  また、高度化、複雑化、または専門化している業務を遂行するには、創造性の発揮のような労働者個人に依存する職業能力が強く求められていることや、急速な情報化の進展等により従来の企業内の教育訓練だけでは十分対応できない部分もふえていること等から、個人の自発的な職業能力開発の取り組みが重要となっております。  政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、昨年十二月に閣議決定した経済構造の変革と創造のためのプログラム、これに沿って、職業能力開発大学校及び職業能力開発総合大学校の設置による高度職業訓練の実施体制の整備並びに労働者の自発的な職業能力の開発及び向上の促進のための措置を内容として、職業能力開発促進法等の改正案を作成し、中央職業能力開発審議会の全会一致の答申をいただき、ここに提案した次第であります。  次に、その内容の概要を説明申し上げます。  第一に、現行の職業能力開発短期大学校で行っている職業訓練の訓練課程に加え、さらに専門的かつ応用的な職業能力を開発、向上させる長期間の訓練課程を行うためのものとして、職業能力開発大学校を国が設置することとしております。  また、都道府県及び事業主等においても、職業能力開発短期大学校と同様、職業能力開発大学校を設置することができることとしております。  さらに、職業能力の開発及び向上の促進に資するため、現行の職業能力開発大学校で行っている指導員訓練並びに職業能力の開発及び向上に関する調査及び研究とともに、公共職業訓練等の実施の円滑化に資するものとして、新技術等に対応した職業訓練を総合的に行う施設として、職業能力開発総合大学校を国が設置することといたしております。  第二に、労働者の自発的な職業能力の開発及び向上を促すため、その自発的な努力を助長するように配慮しつつ職業能力開発促進が行われることを基本理念として規定いたすとともに、労働者がみずから職業に関する教育訓練を受ける機会を確保するための関係者の責務及び事業主の講ずる措置並びに当該事業主等に対する援助及び助成の措置を明確化することといたしております。  また、国が設置、運営することとされている職業能力開発大学校及び職業能力開発総合大学校の設置、運営並びに労働者の自発的な職業能力の開発及び向上に係る必要な援助及び助成は、雇用促進事業団において実施することといたしております。  なお、この法律の規定のうち、職業能力開発大学校及び職業能力開発総合大学校の設置に係る規定は平成十一年四月一日から、その他の規定は公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして説明を申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。何分どうぞよろしくお願いいたします。
  127. 勝木健司

    委員長勝木健司君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十五分散会      —————・—————