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1997-03-21 第140回国会 参議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年三月二十一日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  三月十七日     辞任         補欠選任      阿曽田 清君     平井 卓志君      高橋 令則君     林  寛子君      大渕 絹子君     村沢  牧君      菅野 久光君     国井 正幸君  三月十八日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     田沢 智治君      林  寛子君     高橋 令則君      平井 卓志君     阿曽田 清君  三月十九日     辞任         補欠選任      田沢 智治君     松村 龍二君      村沢  牧君     三重野栄子君      一井 淳治君     竹村 泰子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         真島 一男君     理 事                 浦田  勝君                 高木 正明君                 谷本  巍君     委 員                 青木 幹雄君                 井上 吉夫君                 岩永 浩美君                 松村 龍二君                 三浦 一水君                 石井 一二君                 及川 順郎君                 高橋 令則君                 都築  譲君                 常田 享詳君                 三重野栄子君                 国井 正幸君                 竹村 泰子君                 須藤美也子君                 島袋 宗康君    国務大臣        農林水産大臣   藤本 孝雄君    政府委員        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君        農林水産省食品        流通局長     本田 浩次君    事務局側        常任委員会専門        員        秋本 達徳君    参考人        農畜産業振興事        業団理事長    塩飽 二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣  提出) ○製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案内閣  提出)     —————————————
  2. 真島一男

    委員長真島一男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十七日、大渕絹子君及び菅野久光君が委員辞任され、その補欠として村沢牧君及び国井正幸君が選任されました。  また、去る十九日、村沢牧君及び一井淳治君が委員辞任され、その補欠として三重野栄子君及び竹村泰子君が選任されました。     —————————————
  3. 真島一男

    委員長真島一男君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 真島一男

    委員長真島一男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事阿曽田清君を指名いたします。     —————————————
  5. 真島一男

    委員長真島一男君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として、農畜産業振興事業団役職員出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 真島一男

    委員長真島一男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 真島一男

    委員長真島一男君) 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案、以上両案を一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。藤本農林水産大臣
  8. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  蚕糸業は、従事者高齢化輸入製品との競争の激化等により近年生産が大幅に減少しているものの、養蚕業は依然として中山間地域等農業経営の重要な作目であり、また製糸業伝統的な地場産業として地域経済において重要な地位を占めております。  このため、農畜産業振興事業団の行う生糸買い入れ売り渡し等操作を通じて繭及び生糸価格安定を図り、蚕糸業経営安定等を図ってきたところであります。  しかしながら、近年、生糸需要減少生糸国際相場低下国産繭減少に伴う輸入糸割合増加等により国産生糸価格は長期的に低下傾向にあり、高騰もあれば下落もある循環的な価格変動が期待できないなど、事業団国産生糸売買操作が効果的に機能しなくなっております。また、行政改革推進の観点から特殊法人業務の効率的な運営を図る必要性も高まっております。  一方、繭及び生糸国境措置については、一昨年に世界貿易機関を設立するマラケシュ協定実施に伴い関税化されたところでありますが、蚕糸業経営の安定と絹業への生糸安定供給を図るためには引き続き生糸輸入に係る調整等に関する措置を維持する必要があると考えております。  このような蚕糸業をめぐる状況の変化にかんがみ、生糸輸入に係る調整等に関する措置を維持しつつ、事業団が行う国産色糸売買操作等による繭及び生糸価格安定制度を廃止することが必要となっていることから、今回この法律案提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農畜産業振興事業団が行う買い入れ売り渡し等による繭及び生糸価格の安定に関する措置を廃止することとしております。  第二に、価格の安定に関する措置の廃止に伴い、現在の生糸輸入に係る調整等に関する措置について所要規定整備を行うこととしております。  第三に、附則において、農畜産業振興事業団業務のうち価格安定措置実施に必要な国産生糸買い入れ売り渡し等業務及び委託を受けて行う乾繭の売り渡し業務等を廃止することとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  製糸業法は、製糸業免許制製糸業者に対する統制命令等措置規定することにより、器械生糸製造業者乱立防止製糸業体質改善等を図ることを目的に、昭和七年に制定されたものであります。  また、蚕糸業法は、戦前の旧蚕糸業法蚕糸業統制法原蚕種管理法等を受け継いで蚕種製造業許可制蚕病予防駆除、繭の売買協定に係る独占禁止法適用除外繭検定生糸検査の義務づけ等の措置規定することにより、蚕糸業生産の安定と生糸品質改善等を図ることを目的に、昭和二十年に制定されたものであります。  しかしながら、最近における蚕糸業をめぐる状況は、両法の制定当時と比べて大きく変化しております。すなわち、法律制定から半世紀以上を経た現在、蚕糸業の規模が大幅に縮小し、一方、技術水準向上等により繭生産及び生糸品質改善が大幅に進んでいる等の状況にあり、規制緩和に対する要請高まり等を考慮すれば、製糸業法及び蚕糸業法に基づく措置をもって製糸業体質改善蚕糸業生産の安定、生糸品質改善等を図る意義はなくなっているものと考えております。  このため、製糸業法及び蚕糸業法平成十年四月一日をもって廃止するとともに、これに伴う所要規定整備を行うこととし、本法律案提出した次第であります。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  9. 真島一男

    委員長真島一男君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより、両案に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 岩永浩美

    岩永浩美君 おはようございます。自民党の岩永です。  ただいま御提案がありました製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案並びに繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、数項目にわたって質疑をさせていただきたいと思います。  まず初めに、今後の養蚕製糸業対策について伺いたいと思います。私事にわたって恐縮ですが、私はかつて、昭和四十二年以降、山梨県選出の中尾栄一代議士の秘書を九年近くやっておりました。当時の山梨県の主要産業養蚕でありました。そして、その生産農家皆さん方大変意欲を持って養蚕業にいそしんでおられた。そのことを思い浮かべながら、現在の養蚕農家皆さん方の見るに忍びない今の現状、そしてまた時代の移り変わりとともに大変養蚕のあり方が変わってきていることを考えるとき、どうしてもこの法の改正に伴って養蚕農家育成はもちろんのこと、織物業振興に伴うに当たって間違いのないひとつのかじ取りをぜひしていただきたい。特に、生糸を原材料とする地域に根差した伝統産業、その伝統産業を今後はぐくんでいく上においても、その一つ原料である蚕業は何としてでも振興しなければいけない、そういう立場に立って、ぜひ御意見をお伺いし、そして積極的な御答弁を賜りたいと思っております。  特に、昭和四十九年ごろは二十八万戸以上の生産農家がありましたが、今、平成八年度は生産農家皆さん方は一万戸を割り込んでいるということをお聞きいたしております。また、繭の量は、昭和四十九年の十・二万トンが平成七年には五千三百五十一トン、シェアにおいては、群馬県が三八%、福島一四%、埼玉約七%、長野五%、当時私が仕えていた中尾代議士地元山梨県は、その長野の五%にも及ばないような感じになっております。  生糸生産も、五十年は約三十三・六万俵あったものが、平成八年には四・三万俵と減少しております。それに比べて生糸輸入量は、六年度二万俵あったものが平成七年度には三万俵とふえております。  そういうことを一つ一つ考えてみると、今後これ以上養蚕による国内における生産量減少していくと、養蚕農家が消滅するのではないだろうかという心配をいたします。今後の日本養蚕業の姿をどういうふうに描いておられるのか、まず初めに当局の御見解をお示し願いたいと思います。
  11. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今御指摘がございましたように、養蚕業は非常に長い歴史がございまして、中山間地域、条件不利な地域におきまして基幹作物であったわけでございます。その意味で、この経営安定という問題は非常に大事な問題だと認識しております。残念ながら、だんだんと国内外の厳しい条件のもとにこの養蚕業減少しているといいますか、だんだんと少なくなってきております。  そういう状況考えますときに、これからこの養蚕業方向としては、私はまず高品質絹織物分野から、これは需要があるわけでございまして、海外からの輸入に対しましてもある意味ですみ分けといいますか、差別化といいますか、そういう高品質絹織物分野からの需要にこたえて高品質な繭、生糸生産推進していくということが非常に方向として重要な方向ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  このために先進的な技術を導入したり、経営複合化推進などによりまして、養蚕経営の安定と、やはり川下との連携というものも大事でございまして、川下との連携をしながら高品質、しかも特徴のある繭づくりによる繭、生糸品質向上を図り、養蚕産地育成努力をしてまいろうというふうに思っております。  なかなか厳しい状況ではございますけれども、できる限りのことはやらなきやならない、大きな問題の一つだと考えております。
  12. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、これ以上国内産の生糸減少が続いていくとすると、国内伝統繊維産業はどいうふうな形に推移していくというふうにお考えになりましょうか。  先ほど大臣は、輸入量もだんだんふえてきて、もちろん国内よりも国外の輸入量がふえてきていて、高品質一つ生糸が入ってくることによってある程度のすみ分けができるというお話はありました。しかし、何はともあれ、やっぱり日本伝統産業国内でとれたもので糸をつくり、そしてその糸をもってより伝承された技術をもってその地域伝統の文化、伝統織物、そういうものができていくと思っておりますが、その点についてどう影響を与えるというふうにお考えになっておられるのか。  そしてまた、絹関連産業として今後どういうふうなことが可能なのか、絹の問題と生糸の問題そのことの絡み合わせば今後どういうふうな形で進行させようとされるのか、お尋ねをしたい。
  13. 高木賢

    政府委員高木賢君) やはり今日の養蚕なり製糸減少背景には、大きく申し上げれば絹製品に対する需要の大幅な減退というものがあろうと思います。絹の需要は、御案内のように着物が大宗を占めるわけですけれども和装需要というものがこの三十年で言いますと半分ぐらいに減っているということが大きな背景としてあろうと思います。  それからもう一つは、やはり内外価格差がありまして、非常に労賃の低い中国を初め海外製品がかなり流入をしてきております。これが背景になりまして、国産絹織物需要減退、そしてそれがさらに川上の生糸、繭というふうに影響が及んできている状況であろうと思います。  そこで、これは通産省さんの方もおやりになっていることでございますが、私ども絹需要全体の増進ということがやはり流通、加工、消費全体にわたりましてのシルク産業が発展するための基礎であり、また養蚕業の存続の基礎でもあるということで、これまで養蚕対策製糸対策と並びましてシルク需要増進ということにつきましてもかなりの力を入れてまいりました。これはいろいろな広報宣伝資料の作成とか、各種の催し事への参加とか、あるいは地方の特色を生かしたシルク製品普及宣伝でありますとか、いろいろなことをやりまして、全体としてのマーケットが何とか維持されるようにということでやってまいっておるわけでございます。  ただ、現在のところその効果がありましたのは洋装分野でございまして、下着類とか洋装分野ではある程度の絹の需要増進というのが見られるわけでございますが、伝統的な和装需要着物の方の減退というものがなかなかとまっていないと、これが現在の状況でございます。  いずれにしても、需要の全体の増進につきましては私どもも引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  14. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、今回の法の改正によって養蚕農家人たち繭生産を続けていく、安心して繭生産を続けていくということについて、今回のこの補てん制度は具体的にどういう形で生産農家皆さん方安心感を与えていくことになりますか。
  15. 高木賢

    政府委員高木賢君) 今回の繭糸価格安定法改正によりまして、安定価格帯制度と、これを支える事業団によります国産糸売買操作業務、これは廃止されることになります。しかし、一番肝心なのは国境調整措置でございまして、これは堅持をするということにいたしております。  具体的に申し上げますと、生糸実需者輸入制度、これは堅持をするということでございまして、この輸入の量につきまして調整を行うということと、もう一つ輸入に当たりまして調整金をいただくということで、外国産生糸の値段そのままで国内に入りますと影響が大きいものですから、その調整措置を講ずるということにいたしております。  そしてまた、したがいまして、その量の調整によりまして国内生糸需給に均衡を失しないようにすると、これが一番肝心な点であろうかと思います。これをきちんとやるということと、二番目には、今お話がありましたように、調整金をいただいて、それを財源として国産の繭の取引指導繭価、これの実現のための補てん措置に充てていきたいと、このことによりまして養蚕農家の所得の確保ということを図ってまいりたいと考えております。
  16. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、一昨日、蚕糸業振興審議会生糸部会が開催されて、農林大臣の方から審議会の方に安定基準価格などについての諮問をされておる。諮問をされたその経過と結果について御説明をお願いいたします。
  17. 高木賢

    政府委員高木賢君) 蚕糸業振興審議会への諮問でございます。今回の諮問のポイントは、生糸価格安定帯基準繭価を引き下げるということでございます。具体的に申し上げますと、糸の方は、安定基準価格安定上位価格をこれまでの六千円、九千二百円からそれぞれ五百円引き下げまして、五千五百円、八千七百円とするということであります。  これだけを見ますと何か引き下げだけのようでございますけれども製糸側が支払うべき基準繭価というものが、いわば養蚕農家に払わなければならない最低限のお金が五百九十二円から五百円ということに引き下げております。これは、製糸業経営の安定ということに配慮いたしまして、支払わなければならない金額を下げているということと同時に、養蚕農家に対する手取りであります取引指導繭価千五百十八円につきましては、これを前年同ということで維持しております。  したがいまして、千五百十八円という養蚕農家が取り得べきお金製糸側が支払うべきお金の五百円というこの間の格差が昨年より九十二円拡大をいたしておりますが、これは先ほど来お話が出ております輸入糸調整金を活用した事業団交付金交付事業、それから農産園芸局の予算であります繭安定供給体制事業実施を通じましてその実現を図るということにいたしております。  いずれも、これらのお話養蚕団体製糸団体からの御要望もあり、かつ、絹業団体からも国際価格に近づけた価格水準にしてほしいという、いわば三者からのそれぞれの御要請がありまして、それらの意見を踏まえた結果であるということで諮問をしたわけでございます。  そして、審議会におきましては、それらの団体代表の方が委員にそれぞれなっておりますが、全会一致でこの諮問案につきましておおむね妥当であるという結論をいただいているところでございます。
  18. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、生糸輸入問題についてお伺いをしておきたいと思います。  今回の法改正によって、国内価格安定制度は法的にその裏づけを失うことになります。国境調整措置しか強制力のある需給調整手段はなくなってしまうことになりますが、需給調整供給側需要側双方利害が異なることがたまたまあります。したがって、国境調整措置は合意のとれた形で運用されないとこのことは運営が非常に難しくなると思いますが、利害が相反するそれぞれの団体業界との調整をどのような方針でされていくおつもりか。今、局長の方から、それぞれ業界団体の方から話があったことを受けて諮問したということを申されましたが、需給のバランスが毎年うまくいくとは限らない、具体的に相反することが非常に多く出てきた場合の調整はどういうふうにされようとするのか、それを伺っておきたいと思います。
  19. 高木賢

    政府委員高木賢君) 今、先生指摘のとおりでありまして、養蚕製糸の間、あるいは製糸絹業の間はそれぞれ原料供給者需要者関係にございます。できるだけ安い価格原料を求める需要者と、原料をできるだけ高く売りたい供給者との間では利害が対立する側面を持っておるわけでございます。  ただ、今日のような事態になりますと、やはり対立しているだけではいけない、お互いに連携する場面も必要なんではないかということがございまして、全体として絹関連産業の発展を図っていくという考え方も一方では出てまいっております。  そこで、この春、二月二十八日でございますけれども養蚕製糸流通絹業、この四者の代表者から成る、俗称四者協議会と言っておりますが一この需給問題に関する協議会を開きまして、関係者が寄り寄り集まって今後の需要見通しなりそれぞれがどういうふうに供給していくのかという話し合いを始めているといったところでございます。実は三月七日とかその後も会議がありましたが、まとまった部分もありまとまらない部分もあり、大変その辺の見通し調整には苦慮したわけでございますが、最終的にはお話がまとまりました。  それはどういうことかといいますと、やはり需要見通し、九年度も八年度程度の生糸繭糸を含めてということでございますが、おおむね十二万三千俵という前年度ぐらいの需要はあるであろうと。その中で生糸生産見通しがどうかということで、これは三社が昨年やめたということもあり、前年度より減るという結果になるであろうということ。  それから、生糸輸入につきましては、国内生糸生産が減った分をふやす必要があろうということで、何といいますか、大体感触が整理されてまいりまして、生糸生産については三万四千俵、それから外国からの実需者輸入につきましては、絹糸の振りかえも含めまして四万一千俵というラインで結論が出たと、こういう次第でございます。  実はそうは申しましても、先生指摘のとおり、今後ともいろいろな場面で一時的な需給変動とかそういうものが予想されるわけでございます。したがいまして、実需者輸入の運用につきましては四半期ごとにこれを価格なり需給の動向で変動によって調整をしていくということが一つ。それからまた、予想されない事態が起こった場合には、随時四者で協議をすると、こういうことで今後の運営に努めるということにいたしております。
  20. 岩永浩美

    岩永浩美君 蚕糸生産減少することに伴って、国内製糸業者を救済するという一つ意味からプレス繭というものが輸入されている。大量に輸入されて非常にこのことが混乱を招いているということを漏れ聞きますが、今後こういうプレス繭輸入についてどういう規制をとったり、そしてどういう方向でこの措置をなさろうとしているのか、それも伺っておきます。
  21. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のように、昨年はプレス繭といいますか、正確に言いますとくず繭という関税分類になっておりますが、これが大量に輸入されました。その前の年から比べますと約四倍に相当する一千五百トンというものが昨年の年間輸入の数量でございます。そもそもくず繭と申しますのは、関税分類上は絹紡糸というものの原料に充てられるということになっておりまして、糸を引くのに適していないもの、繰糸に適しないものというものがくず繭の定義になっているわけでございます。  したがって、今大量に入りたいわゆるくず繭は、現行の関税分類基準上はくず繭ということなのでありますけれども、しかしそういうふうに判定したにもかかわらず実際には生糸原料として利用されている疑いが非常に強いものでございます。この繭は、普通の一般の繭とまぜて糸にされるということによりまして、国産生糸品質低下させる原因一つであり、また生糸需給混乱を招く原因にもなっているということが広く関係者の御認識として一致していると思います。  そこで、今後は繰糸可能な繭がくず繭というものとして入らないようにする必要があるというふうに考えておりまして、現在関税当局と御相談をいたしまして、税関の段階でのサンプル調査などを実施いたしております。その結果として、くず繭関税分類基準改正する。今のままの基準では糸が引ける繭が入ってしまうわけですから、本来のくず繭というものに厳密に該当するものだけがくず繭になるように関税分類基準改正するということで、これは関税当局と合意をしておりまして、具体的にどういう内容にするかということにつきまして目下調査の上、結論を出したいというふうに考えております。  また一方、現実にそのくず繭を使うのが製糸業者でございます。製糸業者みずからの問題として、やはりくず繭を使って品質の悪い糸をつくって国産生糸の評判を落とすということは非常に生糸業界にとってもぐあいの悪いことでありますので、くず繭は買わないということについて組織を挙げた取り組みを行うよう指導しておりまして、先般、口器工という団体ですけれども、組織決定をしたというふうに承知をいたしております。
  22. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは次に、事業団業務との関係について伺っておきたいと思います。  農畜産業振興事業団、法人の見直しの対象に恐らくなっているかと思いますが、今回の法改正などによって生糸価格安定制度の廃止など、業務はかなり縮小されていくと思います。この縮小されていく過程の中で合理化案あるいは合理化効果、そういうものについてどういうふうにお考えになっていくのか、今後の特殊法人の見直しについて当局はどういうお考えで事に臨もうとしておられるのか、それもお尋ねしておきたいと思っております。
  23. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御提案申し上げているように、今後の農畜産業振興事業団業務につきましては、平成十年からこの事業団によります国産生糸売買操作業務、これを廃止をいたすことにしております。これに伴いまして職員も大幅な合理化を図るということで現在検討を進めております。まず、この九年度につきましては現在員三十人でございますが、三割減の二十一人にするということで、当面九年度は二十一人というふうに減らしたいと思います。行く行くは一けたにするということで、現在取り組んでいるところでございます。  一方、先ほど来お話も出ておりますが、輸入糸調整金の徴収業務、これは内外価格差がまだ相当ある段階ではこれがないととても蚕糸業は立ち行かないということでございますので、輸入糸調整金の徴収業務は引き続き行う、これは目下御提案している法律においても明記をしているところでございます。  それからもう一つ輸入糸調整金を活用いたしまして養蚕農家の所得確保のために奨励金を交付する、この蚕糸業振興事業というものにつきましては、蚕糸業経営安定を図る上から必要不可欠と思いますので、今後ともいろいろな御議論はあろうかとも思いますが、私どもとしてはこれはやっていく、こういう考え方でおるわけでございます。
  24. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは最後に、蚕糸業法廃止後の業務体制と、県への財政支援について伺っておきたいと思います。  今回、この蚕糸業法の廃止によって繭の強制検定は根拠を失うことになって、しかし現場ではまだこの検定に対する強い要望があります。また、地方自治体でも養蚕業者のニーズを踏まえて検定は引き続き実施せざるを得ないということを聞いています。養蚕に関する施策に関しては、法に基づく委任事務として自治体の一般財源から補てんで賄われているものがありますが、地方交付税の算定基礎として、今その交付税は計上をされています。  法の廃止に伴い、この補てんの廃止、減少ということになれば実質的に養蚕農家の負担でそれを賄わなければいけない形になるのではないかという恐れがあります。  法廃止後の業務体制として農水省はどういうふうな形を今後考えておられるのか、また法廃止に伴う自治体の負担の増加はないのか、あるとすればその軽減を図るべきだと考えていますが、その件についてどういう当局のお考えか、最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  25. 高木賢

    政府委員高木賢君) 最初にお話にありましたように、任意化になりますけれども、直ちに繭検定所を廃止したいと考えている県は少ない模様でございます。それは、やはり繭の生産がかなり少ない県に限られているかと思います。かなりの県は既に引き続き繭検定をやるというか、あるいは繭検定をやる方向で検討をしているという状況にございます。  そこで、任意化ということではありますが、直ちにそのまますべての方法を従来と同じようにやるということではございません。任意化されるに伴いまして、品質評価方法につきましても、現在の二回繰糸して判定する方法から、一回繰糸して判定する方法に変更するとか、繰糸試験に供する繭の数を縮小するとか、あるいは繰糸しないで重量とかその他の方法で品質評価を行う方法ということで、今の検定繰糸方法、検定方法にかわる簡易な方法を採用するということを今あわせて検討いたしております。  したがいまして、まず総トータルといたしまして品質評価に要する経費、これ全体を削減しようというのがまず一つでございます。これによりまして全体のコストが、それからもちろん繭検定所の人員につきましても必要最小限の人員にしていく、こういうことがございますから、そもそも経費が大幅に下がるであろうというふうに見ております。  その中で、都道府県の負担と農家負担がどうなるかということでございます。やはり農家負担につきましては、現下の状況でございますから、なるべくこれが上がらないようにということを県にも申し上げたいというふうにも思いますし、また県の負担も今申し上げたように全体のトータルのコストが下がりますので、基本的には県の負担も減っていく、このように思っております。
  26. 岩永浩美

    岩永浩美君 それでは、最後に大臣にお尋ねをしておきたいと思います。  今回の法改正に伴って、主要な幾つかの問題について質問させていただきました。我が国の伝統的な産業である養蚕業、この養蚕業の健全な発展のためには関係者連携や協力なくしてうまくいかないと思いますから、農林当局として、そして通産省の伝統産業育成していくというその両省の会議も一緒に含めて、ひとつ大臣の御決意のほどをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  27. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今御指摘のようなことは非常に大事なものだと私も思っております。伝統的な産業でございますし、また非常に厳しい内外価格差の問題であるとか、国内需要が非常に減ってきているというような厳しい状況の中でございますけれども、我々としてはこの養蚕業また製糸業、またこれを原料とした織物、こういう産業については守っていかなきやならぬ、こういう考え方は十分持っておるわけでございます。そのためにも農水省だけではなくて、関係省庁と十分に連携をとりながらできるだけの対応はしていかなきやならぬというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  28. 及川順郎

    ○及川順郎君 三つの法案のうち二つが廃止、一つは一部改正でございますが、この内容に入る前に大臣に今回の法改正についての率直な感想を承りたいと思っております。  と申しますのは、私、縁ありまして山梨県に居を構えましたのが三十年前でございます。養蚕農家のうちへ宿泊をいたしました。そして、朝起きたら雨が降っているんじゃないかというざあっという音が耳をつきまして、きょうは雨かいなと言ったら大笑いされまして、養蚕農家ですから幼虫が桑の葉を食べている音が雨の音に聞こえたという、こういう状況の中でいろいろ養蚕農家の今までの歴史や悲哀や誇りを懇談したことがございます。  あの小さな繭を吐く前の、養蚕農家ではおぼこさんと言うんですね。おぼこというのは方言で子供という意味なんです。同じ家に住んでおりまして、そして同じ家で繭を吐いてもらう。要するに、養蚕農家の方々は我が子のようにかわいがり、慈しんで養蚕にいそしんでいる、こういうことを聞かされました。今はだんだん厳しくなってきているけれども、当時三十年ぐらい前ですけれども、厳しくはなってきておりますが、かつて明治から戦前の初期にかけては日本の国を代表する大きな輸出産物であって、そして日本の経済、日本の国づくりの基礎になってきた部分だと、こういうことを一養蚕農家の主からるる私聞かされたことが今でも耳栗に残っているわけですね。甲府盆地の周辺はそういうところなんです。  大臣の国元は養蚕農家が少ないようでございますし、余りないようでございますけれども、もう一つは、富士山のふもとに富士吉田という町があるんです。そこから川沿いに都留市、大月、東京の八王子、短な期間ですけれども、ある意味では日本シルクロードというような、ミニシルクロードというぐあいに呼ばれておりまして、非常に撚糸、製糸の盛んなところでございます。昔は機織りのがっちゃんという音がしますとざらざらとお金が出てくる、こういうぐあいに言われる非常に華やかな業界の時代もあった。それが少なくともここ三十年の間には織物機はほとんど姿を消しました。撚糸業を富士吉田でやっておられる方々も、この先どのぐらいもつのかなと、こういう思いもしておりますし、八王子の業界を回ってみましても、非常に先行きに対して厳しい見方をしている意見を私は承っているんです。  それで、ある意味では国がバックアップしている法律を廃止するということは、一つの幕引きになるようなイメージというのは非常に強いわけでございます。私はやはりこの業界が果たしてきた役割、西陣や丹後ちりめんなんかも日本伝統文化としては歴史的な日本文化的な意味も持っておりますし、そういう観点から考えますと、時代の趨勢とはいえやはり考えさせられるものがあるわけです。  現状にかんがみてこうした措置はやむを得ないかなという思い、私自身個人的にもそういう思いはございますが、今までそうした歴史と伝統業界の中で誇りを持って従事してこられた方々の心情を推量いたしますときに、やはり感慨ひとしおなところがあるわけでございます。  大臣に、まずこの点についての御感想を承りたいと思います。
  29. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 養蚕業、また製糸業につきましては、今委員が申されましたように、戦前戦後、古くは江戸時代から非常に大きな産業として地元の発展、また戦前戦後ということに限っていえば輸出産業として地元経済の発展のために大きな役割を果たしてきたことは私もよく承知をいたしております。  しかしながら、まことに残念なことでございますけれども、最近絹に対する需要が減ってきておるということやら、さらには内外価格差という問題が非常に出てまいりまして海外から安い製品が入ってくる。こういう二つの影響から、おっしゃられましたように蚕糸業の規模というものは非常に小さなものになってきております。  今回、行政改革要請も高まっておる中で、法律改正ということを御提案申し上げた次第でございますけれども、これは決して、私どもはこれによって養蚕業製糸業の幕引きをするんだと、そういう認識は絶対に持っておりません。むしろこういう機会にさらに決意を新たにして、関係者とも十分に協議をしながら、生産者、また製糸業界、そういう方々に対して可能な限りの対策、対応というものはしていかなきやならぬと思います。また特に、安い繭を供給するということがまず前提でございますので、そういう意味におきましては奨励金という形で十分に対応していかなきやならぬと考えておりますし、また外国との関係考えますと、やはり高品質化、付加価値の高いものをつくっていただいて、それによって海外からの製品とのすみ分けというものも図っていく必要がある。  そういう点からは、川上と川下が十分に連絡、連携をとりながら進めていっていただきたいというふうにも思っておりますし、先ほどの御質疑の中にもございましたが、農水省だけではなくて、関係する省庁とも連携をとりながらこれから頑張っていきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  30. 及川順郎

    ○及川順郎君 ぜひ前向きの姿勢で、今の御発言のとおり、またよろしくお願いいたしたいと存じます。  それでは、法案関係で具体的な問題を何点か提起させていただいて、質問をさせていただきたいと存じますが、質疑通告をしてございました中で既に同僚委員から質問が出たのはなるべく省いて、時間もコンパクトにできるように努力をいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  数値的に見ますと、平成八年度で養蚕農家数ですけれども七千八百九十戸、対前年度比で四四%減という数値が出ております。それで、生産量も三千二十一トン、特にこの八年度で見る限りにおきましては急激な減少ということが見られるわけでございます。東北、それから関東、中部の中山間地に多いと言われる養蚕農家状況、これは製糸業界とのかかわりは連動するわけでございますが、両方の養蚕農家経営、それから製糸業界の厳しい経営状況、農産園芸担当局としてはどんなぐあいに現状認識をされ、将来見通しを立てておられるのか、まずその点を承りたいと思います。
  31. 高木賢

    政府委員高木賢君) 最近の厳しい現状の認識というお尋ねでございますが、御案内のとおり、養蚕農家減少あるいは製糸業者の数も年々減少しているという状態でございます。  このような減少につきましては、養蚕従事者高齢化などの構造的要因もありますけれども、特に最近七年から八年にかけて減ったというのは、特に七年におきまして実勢の生糸価格がかなり下落をしたと。そのために、製糸サイドがこのままでは繭代が払えないということで繭取引が各地で混乱をいたしました。これが大きく影響いたしまして大幅な減につながったというふうに見ております。  そこで、今後はどうするかということでございますが、やはりある程度低い価格になりましても養蚕農家の手取りが確保されるという仕組みを維持しなければいけないんではないかということで、引き続き取引指導繭価の仕組みを維持し、その確保をしていきたいということでございます。  それから、製糸業界の方は、繭代の負担が、価格が下がってもそれに見合う繭代を払えば足りるという意味合いで、来年度の生糸価格基準価格を五千五百円にし、基準価格を繭一キロ五百円ということで下げまして、いわば製糸業の負担を軽減したということでございます。  そして、その間の繭代の補てん措置につきましては、調整金などを原資といたしましてこれを着実に実施していくということによりまして、養蚕農家が安心して養蚕経営が営めるような体制といいますか、仕組みを整備したところでございます。  これらの施策を今後とも講じてまいると、このように考えております。
  32. 及川順郎

    ○及川順郎君 繭糸価格安定法は、これは一部改正、それから製糸業法蚕糸業法は廃止という状況なんでございますが、今度の法改正養蚕製糸業界に与える影響についてですが、少なくとも私が今所属しております県の製糸協会の方は大体農水省や国の向いている方向については理解をしているというぐあいに私は見ているんです。ただ、現場は今後やっぱり国は生糸対策はなくなるなと、こういうぐあいに見ている意見が非常に強いんですね。  具体的に、例えばさっきも出ておりましたけれども平成八年度の繭の基準価格の指導取引価格が千五百十八円ですか、それに対して実際は五百九十二円、この差額というのは補てん対策をしておるわけでございますが、そういうものも一方においてはこれは全部なくなるなと、こういう見方の現場の声が非常に多いんですね。  ですから、この点については明確に将来性ですね、実際の実態に即して、規模は小さくなっても我々はこういう方向で安定的に経営が営める方向考えているということを明確に明示していただくことが大事かと、こんなぐあいに思いまして、ぜひその辺のところをお示しいただきたいと思うわけでございます。
  33. 高木賢

    政府委員高木賢君) 今回の改正のポイントは、繭糸価格安定法の一部改正の方は、あくまで事業団売買操作を通じて国産糸価格安定を図るという仕組みだけを除くということでございます。特に製糸関係者養蚕関係者の一番のポイントは、生糸国境調整措置、これはぜひ維持してもらいたい、それが一番の眼目でございまして、この点につきましては確保するということで御提案を申し上げているわけでございます。  それからもう一つ蚕糸業法製糸業法の方は、提案理由の御説明にもございますが、昭和の初めの片仮名の法律でございまして、いわば統制立法的な性格でございます。既にこちらの方の諸規定は現実には動かないものが多くもなっておりますし、実態としては法律の意図したとおりが現実には行われているという状況にございますので、製糸業法蚕糸業法を廃止しても養蚕製糸業にとって何か打撃が生ずる、こういうことではないと思っております。  それからまた、今、先生指摘の千五百十八円を定めております取引指導繭価制度でございますが、これはもともと法律上の制度ということではなくて、国際価格に近い国産糸の値段ということの実現に向けました場合に、養蚕農家がその価格ではやっていけないということで一定の手取り価格を確保しようと、こういう意図のもとに行政運営上設けた価格でございます。これは農畜産業振興事業団業務規定にも蚕糸業振興について支出できると、支援するということが明記されておりまして、そしてまた、その原資は先ほど来申し上げております輸入糸の調整金などでございますので、この仕組みは、取引指導繭価そのものは法律上明記はされておりませんけれども、その基礎になることは法律上明記されておりますので、これは引き続きやっていくということでございます。  また、農家の方々が御不安ということでございますれば、その点は養蚕団体なり農家の方々に十分御説明を申し上げたいと思っております。
  34. 及川順郎

    ○及川順郎君 現実に今のかかわりでいいますと、養蚕農家の所得補償は、これはまず期待できない、それでも。現場の人たちはそういう声が非常に強いわけですよ。  ですから、今回の法改正が、これは一部改正と廃止ということなんですが、本当に養蚕業をやっている人や製糸業に対してどういうかかわりで、今申し上げました養蚕農家の所得補償にはならない、いや、だけれども政府としては、農水省としてはそういう方向養蚕農家を守る方向考えているんだと。ある程度の水準を示してやらないと、どういう基準考えているんだという、この考え基準になるところを示してやらないとすとんと胸に落ちない部分があるんじゃないかということが一つ。  それから、その後、検定の廃止について、やはり現場的にはまだニーズがあるというさっきお話がございましたが、この検定のニーズにこたえるための必要経費、現場で農家の人が実際負担しているのは二千円ぐらいだけれども、実態はもっとお金がかかるという状況で、これが払われますと万単位の検定料がそのまま農家にかぶってくるんじゃないかと、こういう不安があるわけですよ。この点のところについての考え方を示していただけませんか。
  35. 高木賢

    政府委員高木賢君) まず、千五百十八円でございますが、これは八年度もそのように決定しておりますし、九年度も千五百十八円ということで決定をいたしております。これは価格でございますので、ずっとそのままということでお約束はできかねますけれども、毎年度毎年度そういうことで決めてきた経過があるわけでございます。  現実には千五百十八円だけが農家の所得になるというか、懐に入るわけではございません。これは評価のうちのかなり低い部分の繭につきましての値段でございまして、現実には、昨年は平均ベースで千六百八十七円という平均価格実現をいたしております。中でも品質の高いものになりますと千八百円とか二千円とか、そういったものも実現されているわけでございます。  そういう観点から、私どもも、品質のいい繭、製糸側から喜ばれる繭、さらには絹業サイドから喜ばれる繭づくりを促進するということが外国との関係を考慮した上でも大事なポイントではないか、そしてまた養蚕農家の所得の向上の上からも大事なことではないかということで、養蚕製糸絹業、一体となった取り組みの中で地域に合った繭づくりを進めていく、こういう方向を推奨しているわけでございます。そういうのが基本的な養蚕農家振興策に関する考え方でございます。  それからもう一つお尋ねの検定所の件でございます。  先ほどお尋ねがございましたが、お金がかかるという問題がございました。実はこれはその大部分が、繭検定所の人件費をそのまま足しますとおっしゃるように大変なお金ということに相なるわけでございます。  ただ、現在のところ、私どもの見ておりますところでは、繭の検定量と人員の関係ということで申し上げますと、やはりいろんな観点から合理化は図られておりますけれども、まだまだ繭の量に比べて人員の方が相対的に多いと言わざるを得ないと思います。これは各県で御尽力をいただいておりまして、業務量に見合った人員ということで逐次減ってきてはおりますが、なお多いかと思います。  それからもう一つは、検定のやり方も、先ほど別の御質問にもお答えしましたが、簡単に申しますと、二回を一回にするとか、あるいはやり方を簡素化するということで、経費がかからない、あるいは人員も要らない方法を検討いたしております。  したがいまして、全体としての繭検定に要する費用をまず大きく削減すると、金のかからないようにするということが大事な点ではないかと思います。したがって、全体としては経費は減るというふうに見通されますけれども、その中でも、また金をすべて農家の方が全部負担するんだということのないように関係者を御指導したいということでございます。  さらに具体的に申し上げますと、養蚕農家だけが負担しているだけではなくて製糸業者と半々で負担している県、あるいはむしろ製糸業者の方が負担している県といろいろございます。要するに、利用者に対する過負荷というものが急激に上がるということになりますと、これはまたいろいろな問題が参りますので、その点は十分に配慮して今後の運営に当たっていきたい、このように考えております。
  36. 及川順郎

    ○及川順郎君 現実には、十年の四月以降はなくなるわけでしょう。この廃止によって、やはり繭取引に混乱を生じないかという不安はまだ払拭されているという状況ではないんですよね、御承知と思いますけれども。だから、今後ともぜひこれは努力を続けていかなきゃならぬ部分かなと、こんなぐあいに思っております。  この検定があることによってある一定の価格が、信頼関係が保たれているという状況も一方にはございまして、この廃止によって製糸業者による繭の買いただきが生じないかという、養蚕農家人たちにはそういうものがもう一つ大きな柱として懸念される部分としてあるんですが、この点についての見通しはどんなぐあいに見ておりますか。
  37. 高木賢

    政府委員高木賢君) 繭の品質の評価につきましては、やはり生産者と需要者みずからによって行われるというのが基本であろうとは思います。しかし、現実には、両者が相争いますと評価が分かれると、こういうことになりますので、第三者による公正な繭の品質評価を求めるニーズというものはお話のとおりで非常に強いと思います。  したがいまして、任意化後もなお引き続き繭検定体制を継続する県、並びに繭品質評価能力を有する民間の機関、大日本蚕糸会というものがございますが、それによりましてこれらのニーズに対応していくという考え方でございます。私どもが県のこれからの対応方針を伺っている中でも、多くの県は引き続きやっていこうということを既に決定しているか、その方向での検討を行っているというふうに承っております。  それから、強制検査がなくなると買いただきが起こるのではないかということでございます。過去にまさにそのようなことがあった時代もございましたが、現在は養蚕農家は大体農協を通じまして繭の共同出荷体制をとっておりますので、売る方の側の力がまとまっておりまして、かつてと違ってかなり力が強いという点が一つでございます。  それから、現在、繭の生産が減ってきた結果、製糸業者原料たる繭の確保に非常に熱心でございまして、いわば売り手市場の状況にあるという構造的な状況になってまいりましたので、買いただきという事態は極めて起こりにくいことではないかというふうに考えている次第でございます。
  38. 及川順郎

    ○及川順郎君 そうならないことを祈りますが、この点は現実にやってみないとわからない部分がございますから、ぜひサーチライトを当てて手抜きなく監視をしてよく見ていっていただきたいことを、この点については要望しておきます。  それで、先ほども質問に出ておりましたけれども、府県の繭検定員の合理化問題で、実質的には養蚕農家に対して負担増になるのではないかという御指摘が同僚議員からございました。ある程度そういうものは起きないように指導していくという趣旨の答弁をされたと思うんですが、これは地方交付税の算定基礎となって計上されている部分もあるんですが、一般財源からの補てんという状況も含めてこの部分のところはなくなるわけでしょう。それとも、ある程度名目を変えてでも継続する府県に配慮される要素があるのかどうなのか。あるとすれば、ないとすればこれはもうどうにもなりませんが、あるとすれば、ある一定の農家負担の増加にならない、これ以上負担増にはならないという水準をもって示さないと、これは対応にはならぬのじゃないかと思うんですが、この点についての見解はいかがでしょうか。
  39. 高木賢

    政府委員高木賢君) 繭の検定所の廃止といいますか、強制検査の廃止は十年四月ということになっておりまして、現在地方交付税の問題、九年度につきましてはまだあるわけでございます。十年度以降はこれから自治省さんとお話しする問題というふうに理解をいたしております。  それから、二番目に、指導に当たっての水準の問題ですけれども、これもまさしくこれから都道府県とよく御意見を伺いながらどういうことが実効が上がるのかということをにらみながら考えたいと思っております。  ただ、今荷口が百キロから四千キロまでが同じ負担額、こういうことになっております。現実には五百キロ平均ということでございまして、そういう中でも荷口をもうちょっと大口化することによりましてもかなり負担が軽減するということもございますので、これもあわせて考えながら対応したいと思っております。
  40. 及川順郎

    ○及川順郎君 一つの時期もあるでしょうから、これはある程度の水準がぜひ現場に提示できるように、その時期が参りましたときにはそういう措置をぜひお願いいたしたいと思っております。  それから、生糸の強制検査の廃止によりまして、一つ品質への影響がどうなるのか、もう一つは農林水産消費技術センターの業務というのは、これはもう縮小の方向は理解できるんだけれども、縮小で済むのか、将来的にはなくすのか、この点の現場での質問があるわけです。  この点についてどういう方向を持っているのかということも含めまして、生糸の強制検査の廃止によって生糸取引がだんだん縮小していくということになりますと、その指導性が、撤退するという状況の中で生糸の取引に混乱を生じないのかな、こういう懸念もあるわけでございまして、その点の見解を承っておきたいと思います。
  41. 高木賢

    政府委員高木賢君) 生糸につきましても一見しただけで品質がわかりにくい、こういうことがありまして、取引当事者間で信用がありましてそれだけで取引されるという事例も、強制検査という制度のもとではございますけれども、事実上検査を受けないで流通している実態もございます。  しかし、やはり第三者で見てもらわないと安心できない、こういうことでもあろうかと思います。そういう御要望に備えまして、生糸の強制検査の廃止後におきましては、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、俗称JAS法と言っておりますが、これに基づきまして生糸の規格を設定いたしまして、JAS規格による格付によって行うということを検討いたしているわけでございます。  国の生糸検査部門がそれによってどうなるかということでございますが、まさに取引実態がどのように動くかということにもよるわけでございます。引き続き、検査を受けて、それをもとに取引をしたい、こういう御要望がある程度ありますれば、当然それに対応していくということに相なりますが、いずれにいたしましても、今後の検査需要というものがどうなるかを見きわめながら組織、定員の問題は考えていきたい、このように考えております。
  42. 及川順郎

    ○及川順郎君 今の段階ではそういう答弁にしかならざるを得ないだろうと予測はされますが、生糸の取引届け出が実際なくなるわけです。これはよろしいでしょう、そういう認識で。
  43. 高木賢

    政府委員高木賢君) はい。
  44. 及川順郎

    ○及川順郎君 そうなると、実態掌握が現実的にはできない、そうするとやはりこれは混乱のもとになるんじゃないか、こういう状況があるわけです。そういう状況の中で、そういう状況を来さないために国の生糸検査部門の合理化はある程度進めざるを得ないが、最低の骨格になる部分はどこかの機構の中に残してもいいんじゃないか、あるいは残すんじゃないか、こういう見方があるわけです。  今、どちらの方向を向いているんですか、お答えいただけますか。
  45. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国の生糸検査部門といたしましては、横浜と神戸に農林水産消費技術センターというのがありまして、その一部門として生糸検査業務を担っております。  先ほど需要の動向がどうなるかということを申し上げましたが、当面需要が全くなくなるということは想定しにくいものでございますから、定員の方の大幅な合理化ということは検討すべき課題と思いますが、組織そのものをなくすということにつきましては目下考えておりません。
  46. 及川順郎

    ○及川順郎君 考えていなくても実態はそういう方向へ進むということはあるわけです。ですから考えていないという考えは持たないで、そういう方向に現場は進むということを念頭に入れて、常に実態に即した対応をしてやることが行政サービスとしては非常に私は大事な部分じゃないか、また行政サービスという表現よりはむしろ行政の責任として大事じゃないかということを指摘せざるを得ないんです。  ですから、そういう意味できちっと見定めておいていただきたいということを、この点については要望をいたしておきたいと思っております。  それで、今商品取引所問題が出ましたけれども生糸の取引所の現状は、一部の商品、大体十分の一、一割程度の上場しかなくて、むしろ価格の乱高下を助けている要素にもなっているんじゃないかという厳しい見方もあるわけです。今お話で若干触れておりましたけれども、今後の商品取引所のあり方、位置づけというものを明確にしていく必要があるんじゃないか。それに対してはどういう認識を持っているのか。  そういう認識を含めて、今回の法改正に基づく新たな制度へのソフトランディングを図るべきじゃないか。急激な変化というのは、農業というのは御承知のように一年サイクルですし、その中で春から始まって晩秋蚕から晩晩秋蚕まで繭はやったとしても、やはり一年サイクルで動くわけですから、そういう状況を踏まえて安定的に蚕業をする方も糸の製造の方も両方行政指導しておく必要があるんじゃないか、このように思いますが、その辺に対する取り組みはどのようにお考えになっておられますか。
  47. 高木賢

    政府委員高木賢君) 商品取引所の問題は、農水省内部の問題で恐縮でございますが、私の所管でないところもございますが、お答え申し上げます。  やはり生糸取引所というものはリスクヘッジの場あるいは商品の価格の先行指標の提供という機能が適切に果たされるということが重要であろうと思います。したがいまして、取引所の能力向上といいますか経営基盤の安定ということで、まず小規模な取引所は合併を推進するということが必要であると思います。現に関西の方では合廃の動きが出ておるというふうに承知をいたしております。  それから、不公正な取引を防止するというためにはいろいろ監督手段がございます。商品取引所法に基づくいろんな手段を講じまして公正な価格形成を確保するということが必要であろうと思います。そしてまた、取引所がまずそれは第一義的に責任を負うわけですけれども、取引所が適切な措置を講じない場合には農林水産省が監督機関としての必要な措置を講ずる、こういうことで適正な価格形成が行われる場として取引所が正常に機能するということを確保したいと存じております。  それから二番目に、価格安定制度の廃止によっていわばソフトランディングといいますか、関係者がなだらかにと、こういう御趣旨の御質問でございますが、まさに御指摘のとおりだと私は思います。  そこで、先ほど来も申し上げましたが、繭の価格につきましては千五百十八円というのを八年度に続きまして九年度も維持するということにいたしましたし、それから事業団による買い支えというものがなくなった場合、実勢糸価が低下する可能性があるわけでございますが、それに対応いたしましては製糸が義務として払うべき繭代を引き下げて糸の値段が下がっても対応できるように、一年を通じて価格が多少動いても対応できるように基準繭価の引き下げを図ったところでございます。また、絹業サイドにつきましては中国やブラジルの糸の動向にも応じられるように国産生糸価格との差が縮まるようにということで、それぞれの方面の御要望をにらんで決定をしたということでございます。
  48. 及川順郎

    ○及川順郎君 輸入繭のことにつきましては、ちょっと品質の問題や病害虫を持ってくる要素になっていないかとか、いろんな意見が出ているんですが、国内産との間で考えますと、今度の法改正で結局繭の価格安定というのは国境調整措置だけになってしまう。先ほど同僚委員からもこの点の指摘がございましたけれども業界からの要望もあって、それに対して国で対応しているという先ほど見解を述べておられたように私は記憶してございましたが、やはり何らかの形でこの国産繭の価格安定措置が必要じゃないか。根拠法がいろいろの問題等もありますが、その点については、その必要の是非について農水省としてはどんなぐあいにお考えになっておられるんですか。
  49. 高木賢

    政府委員高木賢君) 事業団買い入れをやめて国境調整措置だけで繭糸価格の安定が図れるかということでございますが、現在の実態といたしましては、国産繭の生産減少いたしまして、また国産製糸生産減少いたしました。したがって、需給バランスをとるための輸入糸の割合は十数年前は一割ぐらいだったわけでありますけれども、昨年は既に五割近い水準が輸入糸ということになっております。それから、九年度は五割を超える、五十数%が輸入糸になる見込みでございまして、この輸入にどう対応するかということがまさに国内需給価格の安定にとってのキーポイントになってきているというふうに思っております。  そこで、実需者輸入制度ということを効果的に運用する必要があるということで考えておりまして、法律上はこの制度を堅持するということにいたしておりますが、運用といたしましてもこれを効果的に運用するということが必要であろうと思います。これまで年間一本で実需者割り当て数量というのは輸入されていたわけですけれども、これを需給の動向に応じて四半期ごとに弾力的に調整する。つまり、糸の値段が下がったときには輸入量を減らす、逆に上がったときにはふやす、こういう弾力的な調整をすることによりまして生糸価格の安定を図っていくというふうに考えております。  それからもう一つ国境調整措置といたしましては輸入糸調整金の制度もありまして、これによってストレートに輸入価格そのもので国内に入って、国内生糸価格に悪影響を及ぼさないようにするということをあわせて講じているところでございます。  今後とも、この制度の適切な運用を図って、国内生糸価格の安定に努めたいと考えております。
  50. 及川順郎

    ○及川順郎君 これ、かかわりは避けられないわけですから、ぜひそういう目でこの点につきましてもよく現場の実態を見定めながら対応の持続を要望しておきたいと思います。  それで、農畜産業振興事業団、きょうお願いをしてございましたが、今回の法改正で具体的に事業団業務内容が、常識的に考えますと減少が予想されるという大づかみのところはわかるんですけれども、合理化をしながらも質的な効果を上げていくというその姿勢を恐らく持ちながら検討されておると思いますが、今後どういう役割を果たしていこうとなさっているのか、まず基礎的な部分をお伺いしたいと思います。
  51. 塩飽二郎

    参考人(塩飽二郎君) お答え申し上げます。  先ほどから農林水産大臣並びに農産園芸局長から御答弁がありましたこととも非常に関連があるわけでございますが、私ども農畜産業振興事業団、これは昨年の十月に従来の蚕糸砂糖類価格安定事業団と畜産振興事業団が合併をいたしまして、農畜産業振興事業団として新たに発足をして約半年になるわけでございます。発足の際にも、従来の事業は基本的には踏襲をいたしましたけれども、管理部門の一元化でございますとかあるいは組織の機能別の見直しといったような合理化もやってまいっておるわけでございます。  そこで、今回の二つの法律、特に繭糸価格安定法改正に伴いまして業務のかなりの大きな変更があるわけでございます。先ほど来御答弁がありますように、生糸価格安定のための国産生糸売買操作、これは従来事業団業務として位置づけられていたわけでございますが、今回の法律改正が通りますと、その業務平成十年度からは廃止になるということが非常に大きな変更になりますけれども、その他の我々が事業団として行っております事業は、そのまま今後の日本蚕糸あるいは関連部門の安定のための措置として残されているわけでございます。具体的には、実需者輸入に伴いまして外国産生糸が入ってまいります場合に、事業団で瞬間タッチ操作を通じまして決められました調整金の徴収が確実に行われるようなそういう措置が我々の事業団としての業務としてございますけれども、これは今後も引き続き実行する必要がございます。  また、そうやって徴収をいたしました調整金を財源といたしまして、取引指導繭価の財源の一部に充てるということを従来からやっておりますけれども、これも先ほど来お話がございますように、今後の日本養蚕農家の繭価の安定のために非常に大事な手段でございますので、これも的確に実施をしていくという業務を今後の残された業務として引き続き実施をするわけでございます。  さらにまた、養蚕につきましては、生産者段階あるいはその糸を流通加工する製糸なり関連の部門の段階、さらには末端における消費、需要等いろいろ局面がございまして、振興事業団といたしましてもこれまでも諸種の事業を行う。例えば、生産段階におきましては養蚕主産地を中心にいたします普及指導活動が極めて重要でございますので、それの実施のために必要な助成を行いますとか、あるいは需要面につきましてはハイブリッドシルク等新しい素材を活用した新製品、あるいはブランド化、それの推進といったようなことも従来行っておりますし、今後におきましても国の御指導のもとに事業団としての役割を引き続き担ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  52. 及川順郎

    ○及川順郎君 取り組みのほどはよくわかりました。ただ、大変耳ざわりな言い方になりますけれども、当事業団につきましては特殊法人見直しで改廃等も含めて議論が時たま見え隠れし、また現実に議論されているという経緯もございますので、この事業団の中の具体的な活動というのは非常に関心のあるところなんですね。  そこで、もう一点あわせてお伺いしたいんですけれども蚕糸業振興資金というのがございますね。将来は廃止されるんじゃないだろうかという懸念が現場側の声としてあるんでございますが、この方向見通しが一点。念のためにコンパクトにまとめまして、現在のスタッフの数、それから現在やっている蚕糸関係に関する資金規模。それから、今事業の取り組みにつきましてはお話を承りましたから、効果についてはどういうぐあいに自分なりの自己評価をし、そして今後の方針としてもし改善すべき事項があるとすればどういうところに軸足を置いた改善努力をしていこうとなさっているのか、この点についてお答えいただきたいと存じます。
  53. 塩飽二郎

    参考人(塩飽二郎君) お答え申し上げます。  まず二つ御質問があったと思いますけれども、後者の人員の問題でございますけれども平成八年度で蚕糸関係の部門に所属をいたしております事業団の職員の定員が三十名いるわけでございますけれども、事業内容の見直し、あるいは現在の行政改革方向というものも踏まえつつ、平成九年度におきまして二十一名に削減をする、約三割の定員の削減を九年度中に行うということにいたしております。さらに、今後法制度の変更に伴います事業の縮減が当然ありますので、今後二年間をかけまして、平成十二年度に向かって定員を相当大幅に削減をするということを既に予定いたしておるわけでございます。  これは、現実にその職務に従事している職員がいるわけでございますので、定員の削減を着地させるということは非常にいろんな問題があることは御案内のとおりでございますけれども、我々事業団の内部あるいは外部への定員の振りかえ等によりまして雇用の安定を確保するという主眼のもとに、そういった定員の縮減合理化を実行せざるを得ないというふうに認識をいたしております。  それから、蚕糸業振興資金についてのお尋ねでございます。これは平成八年度におきまして約二十一億ぐらいの資金規模になっているわけでございまして、その中は、先ほど御答弁申し上げました実需者輸入の際に輸入される外国産生糸につきまして調整金を徴収するということによって確保される資金、これが相当あるわけでございまして、それは先ほど御答弁申し上げましたように、取引指導繭価の確保のための財源に充てるというものがその一部をなしているわけでございます。そのほかに、主要産地におきます普及指導事業でございますとか、あるいは消費の拡大あるいは製品差別化といったような問題に対応する事業、もろもろ行っておりますが、それはすべてその約二十一億の蚕糸業振興資金の一部といたして実施をいたしているわけでございます。  事業の評価というお尋ねがございました。これは、なかなか私の立場で申し上げるのは苦しい、言いにくいわけでございますけれども、我々は決められた事業内容、事業要綱に基づきまして的確に実施をいたしておりますし、また関連する団体からの御要望を踏まえつつ実施しているわけでございまして、これらの事業を通じて我々は末端の蚕糸なりあるいは流通加工のそれぞれの部門に対して御要望に沿った事業の実施ができているものというふうに認識をいたしております。  今後も国の指導を受けつつ、これを引き続き担っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  54. 及川順郎

    ○及川順郎君 農産園芸局長、輸入繭と国産繭、輸入繭は平成七年、八年で大体中国産が非常に、中国、韓国あるんですが、中国が大体八割方占めている、そういう数字のようでございますけれども、こういう状況の中で国産繭の位置づけを現時点でどういうぐあいにとらえておられるか、簡潔にお述べいただけますか。
  55. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国産繭につきましては、輸入繭と比較をいたしますと糸のほぐれぐあいがよいとか生糸にした場合の糸への歩どまり率というものがよいというように、品質面において大変すぐれていると思います。したがって、着物などの和装用を中心とした高品質絹織物分野にふさわしい生糸原料と、このように考えております。
  56. 及川順郎

    ○及川順郎君 それでは、最後に大臣に御所見を伺って私の質問を終わりたいと思いますが、協会の代表人たちと懇談をしておりまして、今度の法改正につきまして、三点にわたってもう端的に意見を言われました。  その一つは、養蚕製糸の信頼関係が崩れる心配がある、これが一つ目です。二つ目は、やっぱり繭の検定がなくなれば、いろいろ理屈を言っても安くたたかれるということは避けられないというのが現状である、これが二つ目です。三点目として言われましたのは、ここ数年にして養蚕農家養蚕のやり手がなくなる、これは間違いなくその方向へ行くだろう、こういう三点について指摘がございました。  そこで、願わくば、今園芸局長からお話がありましたように、少ないにしても、非常に品質的にある意味では日本の文化を支える役割もあるわけで、国産養蚕農家、将来、小なりといえども安定的に行き着いていけるような、そういう姿勢をぜひ政府として持ち続けていただきたい、このことをぜひ申し上げてもらいたい、こういう意見を私はちょうだいしてまいりました。  大臣の御所見を伺いまして、私の質問を終わります。
  57. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 私に対する御質問の前の国産繭の位置づけ、輸入繭の位置づけ、このことがまさにこれからこの養蚕業製糸業の将来にとって非常に大きなポイントだと考えられます。  つまり、付加価値の高い伝統産業に位置づけされました養蚕業製糸業、こういう特性を十分に生かして、高品質な付加価値の高い製品をつくっていく、これが海外からの安い製品に対しての差別化、すみ分けということになるわけでございます。そういう方向に進むことができるように我々としては十分に援助をしていかなきやならぬわけで、そういうことが今、委員指摘の三つの懸念に対しましてお答えできる、そういうことにつながっていくことになるのではないかというふうに思っております。  これからも十分に御意見を念頭に置きまして、しっかりとした対応を進めていきたいと考えております。
  58. 真島一男

    委員長真島一男君) 午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩      —————・—————    午後二時一分開会
  59. 真島一男

    委員長真島一男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律案、以上両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  60. 谷本巍

    ○谷本巍君 初めに、価格安定の方策について伺いたいと存じます。  御存じのように、今回の繭糸価格安定法改正は、安定価格帯と事業団売買操作をやめて、そして輸入調整によって需給バランスをとりながら価格を安定させていこうというところに改正の趣旨が置かれておるようであります。このため、安定上位価格とかあるいは安定指標価格というのは法律的にはなくなっていくわけでありますが、そうかといって何の指標もなく不明確なままでよいかということになると、そうはならぬわけであります。改正目的にも蚕糸業経営安定ということを明確に掲げているからであります。  どのような価格を指標とし調整を行っていくのか、初めに大臣にその点を伺いたいと存じます。
  61. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 実需者輸入制度の適切な運用によりまして生糸需給価格の安定を図ることが一層重要となっております。実需者輸入制度につきましては、生糸需給の均衡を失うことがないように運用すべきことが法定化されておりまして、その運用といたしましては四半期ごと輸入数量を調整して行うこととしております。このことによりまして需給価格の安定を図ってまいる考えでございます。
  62. 谷本巍

    ○谷本巍君 局長、何か補足説明がありますか。
  63. 高木賢

    政府委員高木賢君) 基本的には大臣から答弁したとおりでございますが、お話しありましたようにまさに輸入数量調整をやるわけですけれども、そのときに調整の指標となるべき生糸価格というものが念頭になければいけないわけでございます。そこで、生糸価格の動向、あるいは一年を通じて養蚕製糸の繭取引や経営安定が図られるという視点、それから絹業経営安定にも配慮するという視点から、それぞれ下位指標といいますか、指標の下位のもの、あるいは上位の指標というものを設けまして、それぞれが調整の目安とすると。つまり、下位の指標を下回った場合には輸入数量の減、上位の指標を上回った場合には輸入数量の増ということで、これを物差しとして需給価格の安定を図りたい、このように考えております。
  64. 谷本巍

    ○谷本巍君 そうしますというと、従来のそれでいえば安定上位価格であるとかあるいは安定指標価格、そうしたものを念頭に置きながらやっていく、つまりこれまでと基本的に考え方は変わらないというふうに見ておいていいのですか。
  65. 高木賢

    政府委員高木賢君) 現行法におきます安定基準価格、それと安定上位価格事業団売買操作をするという、買い入れをしたり売り渡しをするときの物差してございます。したがって、直接に今申し上げた輸入調整のところの物差しにはなっていないわけでございまして、若干本質としては似て非なるものがあるということでございますが、やはり輸入量調整にとりましても一定の物差しが必要だということで導入したいと、こういうことでございます。
  66. 谷本巍

    ○谷本巍君 それで、法の趣旨というと、輸入操作を基本にして需給の安定を期すということにしておるわけであります。そうしますと、それを実現していくためには幾つかのしっかりした前提というのがなきやならぬと思うんです。その一つは、密輸入対策についてどうするかということであります。  たしかことしの一月の末であったと記憶しておりますが、鹿児島の業者が魚粉に生糸五トンほどまぜて輸入をして捕まったという事件がありました。聞くところによりますというと、この種の例というのは結構ふえているぞという話を耳にいたします。こういう事態をそのままにしておきますと、新しく法律をつくって輸入調整でもってやっていくんだというのが空洞化される可能性も出てくるおそれなしとしない。  したがいまして、密輸入対策、これは従来以上に新法のもとでは厳しくしていかなければならぬと考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  67. 高木賢

    政府委員高木賢君) 生糸の密輸の防止の意義は先生指摘のとおりでございます。したがって、私どもも大蔵省関税当局連携して厳正に対処する必要があるというふうに考えております。現に、密輸につきましては一昨年も鉄くずにまぜた生糸が摘発されまして、それからことしになりましても、御指摘のとおり魚粉に混入された生糸の密輸というものが摘発されました。  このように密輸防止につきましては、生糸流通消費に携わる関係者並びに関係当局が一致してその防止に努める必要があるというふうに思っております。我が省といたしましても通達を出しまして、流通消費関係者に、正規の輸入生糸であると、これはマークが正規の実需者輸入ですとつくわけでございまして、あるいはシールがつくということで、これによって確認できるわけでありますから、疑義のある流通されている生糸があれば速やかに情報提供を求めてこれに対処していくということを考えております。  それから、万が一そのような生糸を使っている実需者があって、先ほど来お話の出ている実需者輸入割り当ての対象になっている業者であるという場合には、使ったということがはっきりした場合には、自今、実需者輸入割り当てはしないというような措置も講じまして、万全を期したいと考えております。
  68. 谷本巍

    ○谷本巍君 それともう一つ、大事な前提的な条件をなすのは投機対策だろうと私は思うんです。  きょうの午前中の論議の中でも、どうやら新法のもとで自給率がもっと下がっていくのではないかという見方がほぼ支配的でありました。生産量減退していきますというと、投資家にとっては少ない資金で価格操作がやりやすくなってくる、こういう条件が生まれてまいります。したがいまして、輸入による需給調整をやっていこう、これが基本でありますから、そういう政策効果を出していくようにするのには他方でとにかく投機的な行為というのをどうなくしていくか、この努力が必要になってまいります。その点、どういう施策をお持ちなのか、明らかにしていただきたい。
  69. 本田浩次

    政府委員(本田浩次君) 御指摘のとおり、生糸の取引につきましては生糸取引所で行われているわけでございます。生糸取引所につきましては、リスクヘッジの場としての機能と商品の価格の先行指標の場という機能が適切に果たされていくことが重要であるというふうに考えております。  このために、農林水産省といたしましては、取引所の市場管理能力の向上、経営基盤の安定などを図るために、従来から繭糸関係取引所の合併を推進してきているところでございます。従来、四取引所がございましたけれども、この四月の時点で二つの合併を完了いたします。  それから、不公正な取引などを防止し公正な価格形成を確保するために、まず第一点といたしまして、取引状況などを注視し、売買枚数の制限、委託証拠金の増徴などの措置を講ずるということでございます。それから二番目に、取引員の受託業務状況などを監査して、必要があれば改善を図るということでございます。それから第三番目に、不公正な取引が行われた場合でございますけれども、過怠金の徴収、取引の停止、除名を含めて厳しく対処するなど、市場管理措置が適切に行われるように取引所を指導してまいったところでございます。  なお、取引所が適切な措置を講じない場合には、今後は過怠金などの制裁措置を強化するように適切な措置を講ずる定款等の変更を命ずるというようなことを考えていきたいと考えているところでございます。  今後とも、このような取り組みによりまして生糸取引所の機能が適切に発揮されるよう努めてまいる所存でございます。
  70. 谷本巍

    ○谷本巍君 その点、しかとお願いをしておきたいと存じます。  次に、大臣取引指導繭価についてのお考えについて伺いたいと存じます。  繭生産の安定のためには、農家に対して一定の手取りを保証するということと、そのために取引指導繭価の維持というのが必要であります。昨年もことしもキログラム当たり一千五百十八円が維持されてきております。これは平均生産費の半値ですけれども、ともかくもこれを維持してきたと。ところが、この取引指導繭価はもともと法律で定めたものではありません。関係者の取引を行政指導型で決めてきたというものであります。  今回の法改正で、この取引指導繭価の位置づけを変えるのか変えないのか、ここのところが非常に大事なところであります。安定帯価格事業団売買操作もやめてしまう、そしてそういう中でこの取引指導繭価の位置づけにしてもやめていきますというようなことになってきますというと、農家の方から見ますとこれは大変な事態というようなことになってまいります。取引指導繭価を維持していくのかどうなのか、大臣の御所見をいただきたいのであります。
  71. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御承知のように、この取引指導繭価の仕組みは、農家の手取りを確保するための運用上の制度として実施されてきたものであります。今回の法改正後も、蚕糸業経営安定を図るため取引指導繭価での農家手取りの確保は必要でございまして、引き続きこれを継続していく、こういう考え方でございますが、指導繭価を法定化すべきではないか、こういう御指摘、よくお考えはわかります。  この指導繭価、すなわち養蚕農家にとりましては手取りの価格でございますから、これをずっと何年来、この数年間据え置きしてきておるわけで、そういう意味からいたしますと、養蚕生産者にとりましてはこれが一つの手取りの金額として目安となっておることも私どもはよく理解をしておるところでございまして、そういう現状を十分に考えながら取り組んでいかなきゃならぬというふうに思っております。
  72. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、製糸基金安定のための生糸加工費の算定について伺いたいと存じます。  これまで安定基準価格をもとに基準繭価を算定する際、必要加工費を算定してまいりました。平成八年、そしてことしの場合も一キログラム当たりたしか二千八百円でありました。今度の改正でこの安定基準価格が廃止されると、この保証は一体どうなっていくのだろうかという声もあります。製糸工場で働く人たちからは、特にこの点従来どおりという希望が多いのでありますが、一方養蚕農家の立場に立っても、ここのところは影響が少なくありません。  例えば、平成七年の繭代の精算のおくれによる取引の混乱、あの状況を見ても生糸加工費の算定というのはなくしてしまってはならぬなというようなことははっきり言えるわけであります。今後ともこの措置を継続すべきだと思うが、いかがでしょうか。
  73. 高木賢

    政府委員高木賢君) 九年度の安定帯価格の決定に当たりましては、安定基準価格から生糸の加工費、これをまず控除いたしまして、その残りといいますかを製糸支払い繭代として基準繭価五百円、これを算定いたしました。つまり、一定の糸価が実現するとして、そしてその中から加工費分二千八百円は算定の上、製糸養蚕家に払うべき繭代という形で算定をいたしたわけでございます。これは八年度から実行しているわけでございます。  今回、安定価格帯制度は廃止することにはなりますけれども生糸輸入調整の仕組みでありますとか取引指導繭価の仕組みは存続させるということにしておりまして、その一環といたしまして、製糸支払い繭代を設定するに当たりましても、ただいま申し上げたような製糸経営の安定ということを考えて、今までの考え方を踏襲した決定にしてまいりたいと考えております。
  74. 谷本巍

    ○谷本巍君 それからもう一つ、今の問題と関連しますが、製糸工場の操業度の維持の問題について若干伺っておきたいことがあります。  国内生糸が不振になる、そして製糸工場の操短がだんだんひどくなってきているといったような状況等々があるわけでありますが、どうせと言ってはなんでありますけれども、外国産の繭や生糸輸入するなら製糸工場に対する輸入繭の関税割り当て量を確保していくということが大事ではなかろうかと思います。現にこれは今も行われておるわけであります。この点は今後もきちっと継続すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 高木賢

    政府委員高木賢君) 輸入乾繭の関税割り当て数量につきましては、製糸業者の側から見ますと国産繭とあわせて必要な原料繭を確保するという点から適正に設定されるべきものであろうと思います。その際には、製糸経営安定、操業度の確保という観点も重要なポイントだろうと思っております。  そこで、平成九年度の関税割り当て数量設定に当たりましてもその考え方に立ちまして、ただ現実問題として製糸業者、この一年間に三社の廃業もございますので、前年並みの生産量というわけにはまいりませんが、前年の約一割減の三万四千俵の生産量というものを見込みまして、それに必要な国内産の繭がどの程度か、それから在庫の繭がどの程度か、これも勘案をいたしまして、それで足らざる分を輸入繭の関税割り当て数量ということで決めたわけでございます。これは平成八年度には乾繭ベースで二千二百トンでございましたが、ただいまのような観点も含めまして三百トン増加させて二千五百トンということにしております。製糸経営が維持できるように配慮したものと考えております。  今後とも、需給の均衡と製糸経営の安定とこの両にらみで輸入乾繭の関税割り当て数量を決定してまいる考えでございます。
  76. 谷本巍

    ○谷本巍君 それから、法改正に伴う雇用問題について若干伺いたいと思います。  きょうの午前中の論議の中でも、今回の法改正背景には行革や規制緩和といったような問題等々がありますといった問題指摘が続きました。そういう状況の中で、今回の法改正で畜産振興事業団業務縮小、それからまた蚕糸業法の廃止、これによって繭の検定、生糸の検査が任意化するというようなことで、これまた同じような組織、人員の減少、縮小といったような問題等々がこの二つの問題で起こってくるわけであります。蚕糸部門の事業団にいたしましても、生糸検査部門の農林水産消費技術センターにしましても、多くの人たちが働いております。  それからもう一つは、これと関連して都道府県の繭検定所の問題もあるんです。今後、合理化を進めていくに当たってこれらの人たちの雇用をどうしていくのか、使用者側としては使用責任というのがあるわけでありますから、きちっとそれを守ってやっていかなきゃならぬというような点があるわけであります。  雇用の安定確保に責任を持ってどう当たっていくか、その辺のことについての考え方を聞かせていただきたいと存じます。
  77. 高木賢

    政府委員高木賢君) お尋ねのありました国あるいは農畜産業振興事業団のベースにおきましては、製糸業法蚕糸業法の廃止、あるいは繭糸価格安定法の一部改正に伴いまして現行の生糸の強制検査制度を任意化するとか、国産糸売買操作業務の廃止をするというようなことで、業務量の減少が必須であろうと思います。そこで、ひとつこれに応じまして組織、定員の合理化を進めていく、こういう考え方でございます。  しかしながら、御指摘のように雇用の安定ということは重要な課題でございまして、合理化を進める場合にありましても、他部門への振りかえなどの措置をきちんと講じまして、雇用の安定には十分配慮してまいる考えでございます。それから都道府県につきましては、これは私どもが直接どうこう言うという立場にはないわけでございますが、基本的に県が県内の養蚕産地の動向とか養蚕業の位置づけをもとにいたしましてそれぞれの県が判断をする、こういうことになろうかと思います。その中で、業務量の減少に応じまして組織、定員の合理化が進められていくものと思いますけれども、この場合にありましても、公務員でありますから、他部門への振りかえなどの措置によりまして雇用の安定が図られるということが十分配慮されるものと私ども考えているところでございます。
  78. 谷本巍

    ○谷本巍君 雇用の安定の場合、特に心配なのは消費技術センター、それからまたこれは県の方が絡んでくるわけですが、繭検定所です。比較的高齢の女性が多いというふうに聞いております。したがって、新たな職場への転換というのはかなりこれは難しいんじゃないか、厳しいんじゃないかという内部からの話もあるのでありますが、その辺のところは万全を期してやっていくといったことはできるでしょうか。いかがですか。
  79. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御指摘のような事情にあるのが生糸検査部門であり、繭検定部門であろうと思います。したがいまして、これはそれぞれの事情などを十分伺いながら、かっ業務量に応じた合理化という非常に両立には努力を要する課題ではありますけれども、そういうことをにらみながら着実に進めたいと思っております。
  80. 国井正幸

    国井正幸君 国井正幸でございます。  何点かお伺いをしたいというふうに思いますが、これまで午前中あるいはただいまを通じていろいろ質問があったわけでございまして、重複する部分は避けていきたいと思います。  私もしみじみと統計資料を見させていただきまして、我が国の養蚕というのも随分急激に減ってきたな、そんな感じがしております。そういう中で、午前中も議論があったところでありますけれども、今後の我が国の養蚕、これをどのようにしていくのか。それなりに施策は講じていくんでしょうが、こういう減少傾向にあることは否めない事実でありますけれども、自然に任せてこのままでいいのか、あるいはいろいろ話を聞いてみると、どうしても絹織物を織っていく上でたて糸はやっぱり国産生糸を使った方がいい、こういうふうな話はよく聞くんですね。  そういうことで、我が国の伝統産業を守る上でもやっぱりある一定の養蚕というのは残していかなければいけないんではないか。そういう意味で、随分減ってきているのは事実なんですが、いわゆるこの程度は残していきたい、あるいはこの程度を残すためにはこういう施策をやっていきたい、そういう点がありましたらちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  81. 高木賢

    政府委員高木賢君) 今後の養蚕業のあり方についてでございますが、るるこの委員会で申し上げておりますように、養蚕農家の手取り、この確保のための措置は継続して続けていかなきゃいかぬと、これが第一点だと思います。  それから第二点目は、それはいわば最低の価格のラインに近いものでございまして、それより多く農家手取りを確保するためには川下のニーズに応じて良質な繭あるいは特徴ある繭をつくりまして、国産の繭の一定のシェアを確保する。こういう考え方と同時に、それによって所得の向上にも資する、こういうことになると思いますので、やはりこれからの方向といたしましては、川下と一体となりまして特徴ある産地をつくる、我々の言葉で言いますと、いわゆるブランド化という言葉を使っておりますが、今全国各地でそのブランド化の動きが進んできております。  この動きを大いに支援して、それぞれの産地が特徴を持った繭、生糸をつくっていく、こういう方向でこれから進めたいというふうに考えております。
  82. 国井正幸

    国井正幸君 できれば具体的な数値目標なりを置いて、大変厳しい環境にあるわけでございますが、今後とも我が国の養蚕業が残っていけるような措置というものをぜひ講じていただくように、これは御要望しておきたいというふうに思います。  次いで、いわゆる今度の法改正によって、事業団売買操作等による価格安定というものをやってきたわけでありますけれども、これをやめるというふうなことで、残るのは国境措置、こういうふうなことになるわけでございます。先ほども議論があったわけでございますが、本当にそれだけで価格安定が図られるんだろうかな、あるいは安定的な流通というのが図られるんだろうかな、そんな思いをしております。  特に、そういう中でやはり自由貿易というのが一方では国際的には迫られてくるという状況があるわけでございまして、ウルグアイ・ラウンド対策等含めて今後そういう国境措置だけでいつまでやっていけるのかという問題もあると思うんです。今後の見通しを含めて、いわゆるこの国境措置だけで本当に大丈夫かな、そんな感じを受けているんですが、その辺はいかがでしょうか。
  83. 高木賢

    政府委員高木賢君) これまでるる申し上げてまいりましたように、これからは国産糸売買操作はやりませんが、国境調整措置、その一つ実需者輸入制度によります輸入量調整措置、これは四半期ごとに弾力的に行うということが一つでございます。  それからもう一つは、輸入に際して輸入糸調整金をいただいて、裸の価格輸入が行われて、国内生糸の市況に悪影響を及ぼさないようにするということが二つ目でございます。  それからさらに加えまして、生糸が余計に生産されるというような事態があるとすれば、これは製糸業者生産調整をするとか、さらには調整保管をするというような需給調整の手段もあろうかと思います。調整保管につきましては、これは事業団の助成対象にするということにいたしまして、需給価格の安定に資する方策としてひとつ今後も柱立てをしたいというふうに考えております。  それから、長期的な見通しにつきましては、これからどうなるのかというのは大変難しいわけでございますが、このウルグアイ・ラウンドの再交渉までの間は現在の体制を少なくとも維持するということははっきりしておるわけでありまして、その後の国境調整措置のあり方はまた改めてWTOの交渉の場での議論が起こり得るとは思っておりますけれども、当面のところ現在の国境調整措置を維持すると、こういう考え方でまいる考えであります。
  84. 国井正幸

    国井正幸君 そういう意味で、当面はこの国境調整措置でやっていくということになっても、これは長い目で見ていくと大変な問題を含んでいるんだろうと思います。そういう意味では、長期的な展望も含めて、ぜひ農林水産省においてもよくよく考えて対応を行っていっていただきたいなと思っています。  次に、蚕病の予防措置について伺いたいというふうに思うんです。蚕糸業は病害虫に非常に弱いと言われているわけなんですが、今回の蚕糸業法の廃止ということに伴って、蚕種の検査とかあるいは蚕病の駆除予防の取り締まり命令とか、こういうのは根拠を失うわけでございますけれども、病害虫のチェック機能の機会というのが大幅に少なくなると思うんですね。こういう状況になって、しかし病気は相変わらずこれはあるわけでございまして、これらに対する対応というのはいかがなものなんでしょうか。これは大丈夫なんですか。
  85. 高木賢

    政府委員高木賢君) 蚕病につきましては、現在、蚕種製造業者段階におきまして蚕種の自主検査ということが規定されております。また実際に行われております。  それからもう一つは、農業改良普及員さん、それから養蚕産地育成推進員が実施しております稚蚕共同飼育所並びに農家段階での蚕病予防あるいは駆除の指導ということで蔓延が防止されているわけでございます。  そこで、この蚕糸業法が廃止されてどうなるかということでありますが、蚕種製造業者に定着している蚕種の検査、これは需要者である養蚕農家から、これは病気を持った種ではどうしょうもありませんので、非常にニーズが根強い。したがって、また蚕種製造業者さんの方もきちんとこれをやっているという実態がございますので、これはそういった関係から当然継続されるというふうに見ております。  それから、農業改良普及員さんなどの活動は、これはいい種であるかどうか、これを現場で検分をしておりますし、また現場で病気の予兆があればこれに適切に対処するということをやっておりますので、これも実態として今後も確保されるというふうに考えております。  現実問題としては、そうはいっても蚕病の発生が皆無ということではございません。ときどきこれは病を持ったものが出てまいりますけれども、これは発生初期段階におきまして罹病した蚕、これの廃棄を徹底して行うということを現在やっておりまして、これを徹底してやるということは今後とも当然でありますから、それによりまして蚕病の蔓延につながらないように対処をしてまいる考えでございます。
  86. 国井正幸

    国井正幸君 次に、都道府県でやっておりました繭の検定、それから国がやっておりました生糸の検査、これを任意の検定なり検査に切りかえると、こういうふうなことになるわけでございます。いろいろ聞いてみますと、特に都道府県段階でこの繭の検定ではいろんな対応、まるっきりやめてしまうところと、法的な根拠は持たないけれどもこれまでどおり都道府県で対応してやっていくという県もあるようでございまして、もちろんその県内における生産状況等にもこれは影響されているのはよくわかりますけれども、随分ばらつきがあるようなんですね。それはそういうことにならざるを得ないんだというふうに思うんですが、現場段階で聞いてみますと、安定した取引をしていくためには、特に買いたたかれたりしないためにはやっぱりきちっとした検査というのがある意味では必要なんではないか、こういうふうなことも随分言われているんですね。  したがって、任意といえども、可能な限りこれまでの検査体制と連動するような何らかの方策が必要なんではないかと考えておるんですが、その辺はいかがでしょうか。各都道府県の実態を含めてどのように状況をつかんでおって、どんな形になると想像しているか、その辺をお伺いしたいと思います。
  87. 高木賢

    政府委員高木賢君) 繭検定の今後の方向でございますが、先ほど来申し上げておりますが、最近の繭づくり高品質あるいは特徴のある繭づくりと、こういうことが川下との連携で行われておりまして、生産される繭あるいは取引の形態というものは大変多様化していく、しつつあるというふうに考えられます。  したがいまして、繭検定の方法というのを一律に強制するということは、多様な繭生産、繭取引に取り組む関係者にとりましては過度な負担になることがありますので、強制で一律にやるということはやめようということでございます。  そこで、任意になりました後に、今お尋ねがありましたように、どうなるかという見込みでございますが、この一月に私どもが都府県の繭検定任意化後もどうするのかということでいろいろ御意向を聞きましたところ、既にもうやると言っている県もありまして、そのシェアで四割強、それから検討中であるがやる方向であるというのがやはり四割弱ございまして、合わせますと八割が、これは生産のシェアがベースですけれども、合わせて十六県がそういう積極的な方向であるというふうにお答えをいただいているところでございます。  先ほど来、職員の問題も出ておりますけれども、当然そういった技能をお持ちの方がその場合には継続しておやりになるというようなことでもありましょうから、技術的にも継続する体制は相当程度はあるのではないかというふうに見ております。
  88. 国井正幸

    国井正幸君 やっぱりそういう意味で、各都道府県ともよく話し合って、現場で混乱が起きないようにぜひ御指導をお願いしたいと思います。  まだ時間は若干あるんですが、最後の質問にさせていただきたいと思います。先ほど谷本先生の方からもお話がありましたように、この法律を廃止することによって都道府県あるいは農水省、それから事業団、それぞれの中で要員の変更を伴うことになるわけでございますけれども、ぜひこの要員の見直しについては働いている人の立場というものも十分に参酌をしていただきたいなと思います。  事業団の問題については後で議論をする機会もあると思いますのでそちらに譲りたいと思いますけれども事業団全体を見できますと、役員の数と職員の数とを比べてみると役員の数の方が極めて多いような気がするんですよ。そういうことを含めて、職員の問題については十分に配慮をしていただけるように御要望を申し上げて、御見解があれば伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 高木賢

    政府委員高木賢君) 職員の雇用の安定ということは十分に頭に置かなければならない重要な課題であるというふうに思っております。  事業団につきましても、先般、去年の十月に統合いたしました際に、常勤理事、非常勤理事を含めましてかなり大幅に削減を既にやっております。  そういう中でもありますから、職員の皆さんにも御理解をいただいて、雇用の安定ということを図りながら、業務量に見合った数にさせていただくということは御理解をいただきながらやっていきたい、このように思っております。
  90. 須藤美也子

    須藤美也子君 午前中からいろいろ質問に対する答弁を聞きながら、私は大変むなしい思いをしながら聞いておりました。今養蚕農家は、この一年だけでも一万三千六百四十戸から七千九百八十戸と五八%に激減しています。こういう状況の中で今回の繭糸価格安定制度の廃止と製糸業法蚕糸業法を廃止する法案が上程されているわけですが、大臣は我が国の養蚕業製糸業をどう守り発展させていくのか、これが私の心に響いてこないんですよ、先ほど来の答弁の中で。ここをひとつお聞きしたい。  さらに、政府は九五年十二月、農産物の需要生産の長期見通しを閣議決定しました。ところが、この中には、中山間地で最も重要な基幹作物一つである養蚕の長期見通しが全く一つも、一言も記載されていない。これはなぜなのか。大臣自身が養蚕の将来展望を持っていないと、こういうことなのかどうか。この点をまず最初にお聞きしたいと思うんです。
  91. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 須藤委員から我が国の養蚕業についての私ども考え方について御質問があったわけでございます。きょうの委員会の御質疑を通じまして申し上げておりますことは、まず養蚕業に対する私どもの認識としては、養蚕業というのは条件の不利な地域、言いかえれば中山間地域での基幹作物として今日まで戦前戦後を通じて地域の経済の発展のために大きな役割を果たしてきたと。そういう認識は持っておりますし、同時に、これからも条件不利な地域であり中山間地域というそういう地域での活性化のために養蚕業経営の安定は重要な課題であるという認識は持っております。  ただ、残念ながら、これは委員もよくおわかりのように、需要が非常に激減してきたということと、同時にまた外国との内外価格差という問題が非常に大きく足を引っ張っておる事情になってきておるということも、これまたよく御理解のことと思います。  そういう現状の分析、認識と、この養蚕業は我が国の伝統産業でもあるし、また条件不利な地域での活性化のために非常に重要な産業であるというこの認識とは、残念ながら大事であるけれども今の現状からすると非常に難しい、現実は厳しいと、こういうことにもなると思うわけであります。  そこで、これからの将来展望ということになりますと、しばしば申し上げておりますように、国内生産される織物というものに対する需要はあるわけでございまして、それはやはり付加価値の高い高品質化をすることが需要に対応することになるわけでございますので、そういうところに力を入れる、またそういうところに力を入れることができるようにできるだけ助成も考えていくと。で、外国との競争とはそういう高品質化によってすみ分けをしていく、そういうところに生きる道を見出していく、そういうことではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、長期見通しの中に入っていないということについては、数字の問題でございますので事務当局から説明いたします。
  92. 須藤美也子

    須藤美也子君 例えば、養蚕の非常に盛んな福島県の岩代町にこの間行ってきたわけですけれども、ここは家族四人で年間の養蚕の所得は約百七十万円です。所得率が五一・四%、一人一時間当たりの労賃は六百十三円です。パートの非課税扱いにも達しない低所得水準です。  こういう状況の中でも中山間地で一生懸命頑張って働いている、こういう養蚕農家がいるということをやっぱり皆さんに具体的に知っていただきたい。そういう人たちに将来展望をぐじゃぐじゃと言ったってだめなんですよ。何が必要かといえば、養蚕農家経営を守るには何といっても所得補償なんです。平成九年度の安定価格基準繭価で昨年度五百九十二円からことし五百円に落ち込んでいます。昨年の生産費はキロ三千五百三十円です。そこで、取引指導価格として農家の手取りは千五百十八円にしましたが、それでも生産費の四三%にすぎない。  そこで、お尋ねしますけれども、現行の価格安定制度がなくなるとこの養蚕農家の手取りを確保するための新たな仕組みがつくられるのかどうか、これは先ほど答弁なさいました。千五百十八円はそのまま続けたいとおっしゃいましたが、将来はわからないと言いました。これで養蚕農家の将来、経営をやっていける、そういう展望が開かれるんでしょうか。もうだめだと言うしか、私は先ほど来の答弁を聞いて、もう安楽死する以外ない、私の受けとめ方がひねくれているのかもしれませんけれども、そういうふうにしか受け取れないんですよ。どうなんですか、ここは。
  93. 高木賢

    政府委員高木賢君) お尋ねのありました取引指導繭価につきましては、法改正後におきましても、これは関係者の間に定着している制度でありますので、堅持をする考えであります。ただ、その水準が千五百十八円でずっと行くかどうかということにつきましては、これは毎年度毎年度の生産条件あるいは需給事情で決められるべきものでありますので、今ここで永遠にとかずっとと言うわけにはまいらない状況でございます。  ただ、先ほど大臣から御答弁いたしましたのは、現実にそういう千五百十八円というのが現実実態として定着をしておる、そういう重みがあるということを認識しているという御趣旨でのお話であったかと思います。そういう中で、取引指導繭価、まさに水準はともかくといたしまして、制度としてはこれは堅持をするということでありますので、そのように御理解賜りたいと存じます。
  94. 須藤美也子

    須藤美也子君 改正案の土台となった自民党の改善策の発表に際して、繭糸価格安定制度も現行の仕組みの維持が必要だと、全養連の会長談話が発表されました。  愛媛県野村町では、昨年から町内養蚕農家の繭全量を二千五百円で買い取っているわけです。養蚕農家は最低でも二千円は必要だ、こう言っているわけです。町独自で全量二千五百円で買い上げている、こういうところもあるわけです。  ですから、価格保証制度をつくるためには、四十億円程度の財源があれば可能なわけです。輸入糸調整金をつぎ込めば二十数億円の新たな財源措置でできるわけです。中山間地の養蚕農業発展のためにも、需要が多くなってきているというのであれば、こういう財政措置をして価格支持制度をつくれば我が国の養蚕を再建できる、私はこう考えるんです。こうした積極的な養蚕再建の方向が今必要なんではないか。もうこのままで行ったら養蚕農家はつぶれてしまいますよ。本気になって農水省が養蚕農家を再建させる、そういう意気込みがあるならば、これくらいの価格支持制度をやるべきだ、私はこう思うんですけれどもどうでしょうか。
  95. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいま委員大変適切な野村町の例を引き出していただきましたが、これは実は製糸業者それから糸を使う織物業者、まさに三者一体となってこういう規格の繭をつくってくれれば製糸業者は買います。そして、その糸を引いていい織物をつくります。それをブランド化して市場に売ります。こういう協定のもとに成り立っている仕組みでございます。  これがまさに私どもがこれから進めようとしているブランド化の方向でございまして、こういった製糸養蚕織物業者、三者が一体となった体制を地域でつくる、それで評価された繭が適正な評価を受ける、こういうことで価格実現される。まさにそういう仕組みの一つの例でございまして、私どももひとつこれはいろいろと支援したいと思っているものでございます。  それから、二番目に、いろいろと財源手当ての問題がございましたが、現在、取引指導繭価千五百十八円、製糸が払うべき価格が五百円、千円が事業団からの助成ないし国費ということでございます。三分の二が既に助成対象ということでありまして、今のこの世の中で一体それをさらに拡大することがいいのかどうか。それから、絹業の負担金にもお触れになりましたが、絹業者からは調整金はできるだけ下げてほしいという要望は常に私どもに寄せられているところでございまして、養蚕農家の点を考えれば一円でも高い方がいいという論も成り立つと思いますけれども、財源手当てまであわせて考えたときには、これはそんな簡単にいく問題ではないというふうに思っております。  いずれにいたしましても、ブランド化によりまして三者が一体となっていい製品をつくり、価値の高いものをつくり、そして繭の価格実現する、こういう方向を追求していきたいというふうに考えている次第でございます。
  96. 須藤美也子

    須藤美也子君 三者にだけゆだねるのでなくて、やっぱり農水省が積極的に価格の支持制度を支援する、そういう姿勢がなければ私はできないと思うんです。そういう点で、ぜひ価格支持制度をつくるように改めて強く要請をしたいと思います。  最後になりますけれども、余り丁寧に御答弁いただいたものですから、十五分なんというのはすぐあっという間に過ぎてしまいますけれども。  最後に、繭価は製糸価格に連動しているわけですね。この一年、製糸相場では一部の投資家、つまり仕手軍団が生糸相場に参入して買い占めたり投げ売りをしたり価格操作をしているために、国境措置など需給調整価格を安定させることなどできないような状況にある、こう現地では言っております。  ことしは生糸価格が二十三年ぶりの安値、キロ四千六百円台に暴落しました。こんな状況の中で、製糸業者経営が成り立たなくなり、繭も買ってもらえなくなる。その上、繭糸価格安定制度がなくなれば養蚕農家にとってもう大変な、息の根をとめられるようなことになってしまう。どうずればいいか、こう言っているんです。  繰り返しまずけれども養蚕農家のことを本当に考えているならば、繭糸価格安定制度を廃止するのではなくて、繭の生産費を補償する水準に引き上げるために改善する法案をつくられたらいかがでしょうか。最後の質問です。あと、検査についてはほかの方がおっしゃいましたから、申し上げる時間がありませんので省きますが、そういう積極的な姿勢を見せてください。
  97. 高木賢

    政府委員高木賢君) 繭と生糸をめぐります情勢、並びに絹織物などをめぐる情勢等を考えますと、保護を手厚くするという方向は大変考えにくい、むしろ行政改革などの要請の折からその制度を簡略化して、あるいは簡素化して済むものであるならばその方向考えるべきであろうと思います。  そして、養蚕農家への所得の問題につきましては、私どもるる触れておりますように、取引指導繭価制度を維持して、これで対処をするということでありまして、従来よりその水準を下げるということをやっていないわけでございますから、ぜひ御理解を賜りまして、この法案につきましての御賛同をお願いしたいと思っているわけでございます。
  98. 須藤美也子

    須藤美也子君 あなたいつも水をぶっかけるような答弁するから。  もう終わります。
  99. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 繭糸価格安定法の基本的な問題点について二、三点お伺いしたいと思います。  まず、このような法律の題名及び目的改正され、制度の大幅な変更がなされた場合、養蚕農家の所得はこれまでと比べるとどうなるのか、農家にとっては十分の所得確保が重要な関心事になるわけでございます。現在は取引指導繭価によって農家の手取りがどうにか確保されているようでありますけれども、制度の廃止に伴ってその仕組みは維持されるのかどうか、その辺について御見解を承りたいと思います。
  100. 高木賢

    政府委員高木賢君) 今回の法改正によりまして安定価格帯制度は廃止されることになるわけでございますけれども、引き続き養蚕業経営の安定を図るということは極めて重要であると思っております。  したがいまして、生糸輸入調整措置の弾力的な運用によりまして一定の糸価水準を形成する、一定の糸価水準が形成されたもとで製糸が支払うべき繭代を確保する、そしてその取引指導繭価と現実の製糸が支払う繭代の差額につきましては、農家の手取りの確保策として取引指導繭価に対する繭代の補てん措置を講じていくということで今後とも考えたいというふうに考えております。
  101. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 今いろいろお話がありますように、ますます減退するような我が国の蚕糸業、今後はどうあるべきかという大局的見通しがなければならないと思いますけれども、今後は外国からの輸入に係る調整を中心にして蚕糸業経営安定化を図ることになると思いますけれども、我が国の蚕糸業を今後どうされるおつもりなのか、その点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  102. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先ほどから当委員会におきましていろいろ御答弁を申し上げてきたわけでございますが、我々の認識といたしましては、養蚕業というのは中山間、また条件不利地域での基幹作物である、それだけにその経営安定というのは重要な課題である、こういう認識は持っております。  今後の養蚕業は、外国との競争であるとかまた需要の落ち込みなど、今の現状からいたしますと、高品質絹織物分野からの需要にこたえて外国とのすみ分けをこういうところで図っていく、そのための高品質の繭、生糸生産推進していくことが我が国の養蚕業の地位を安定させるために必要なことであろうというふうに考えております。  そのためには、先進技術の導入であるとか、また経営につきましても、養蚕業以外の農産業との複合経営というようなことも推進しながらこの養蚕経営の安定を図っていく。さらに、川下との連携をして高品質、特徴のあるこういう繭をつくってもらいたいというそういう要請に対して特徴のある繭をつくっていく、そういうことによって繭であるとか生糸品質向上を図る。そういうことが可能になってくるわけでございまして、そういうことによって養蚕産地育成努力をしてまいる、そういう考えでございます。
  103. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 沖縄の実例を申し上げますと、ほとんど本島では生産されていない状況だと思います。石垣のほんの一部で生産されていると思いますけれども、沖縄本島でも相当盛んにやっていた時分もありますけれども、石垣島にちょっと残されている程度であります。  今後、養蚕業者の農家の育成ということについては、農水省としては進める方向にあるのか、あるいはまたもう衰退する一方てしょうがないというふうな感じの御指導であるのか。その辺のニュアンスは非常にとらえ方が違うと思いますけれども、どういうふうな農家の御指導をなさるおつもりなのか、その辺についてちょっとお聞きしたいと思います。
  104. 高木賢

    政府委員高木賢君) 養蚕農家に対する指導なり育成の問題といたしましては、やはり主産地の県の学校では養蚕コースもございますし、もちろん希望のある方が学んでいる実態もあろうと思います。したがいまして、当然その御希望に応じた支援をしていくということになろうと思います。  そういうことで、それぞれの農業者のまさに選択が基本になりまして、そういう方々には支援をしていくということでございますが、やはり大きな枠組みとしては、先ほど来言っておりますが、一定の価格につきましては繭代補てん措置で確保するということと、さらにその工夫により特に織物業者、生糸業者、三者が一体となって、地域でまとまってある種の規格をもとに統一的なブランドをつくっていくという方向お話し合いをまとめてより付加価値の高い繭をつくる、こういう動きが各地で出ておりますので、そういう動きにつきまして支援をしていきたいと、このように考えております。
  105. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 最後に一点だけお伺いしておきたいと思います。  国民の関、心の高い行政改革の一環として、法律の廃止、改正等制度の大幅な変更に伴い、国、県、事業団の組織はどうなるのかということが問われていると思います。これらの業務に従事する職員数も確実に減少をしていくでありましょう。  今後の組織人員、あるいはその合理化をどのように図っていくのか。この際、雇用の安定については十分配慮すべきだと思いますけれども、農水省の立場として御説明願いたいと思います。
  106. 高木賢

    政府委員高木賢君) 国や事業団の組織あるいは県の組織につきましては、やはり業務量の減少という実態がございますので、要員についてもそれに見合った減少ということは求めざるを得ないと思っております。ただし、その手段といたしましては、他部門への振りかえというようなことが主体でございまして、雇用の安定ということにつきましては十分配慮しながら進めてまいる考えでございます。
  107. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 終わります。
  108. 真島一男

    委員長真島一男君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時九分散会