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1997-05-14 第140回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十四日(水曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 額賀福志郎君    理事 金子 一義君 理事 坂井 隆憲君    理事 保岡 興治君 理事 柳本 卓治君    理事 北側 一雄君 理事 谷口 隆義君    理事 池田 元久君 理事 佐々木陸海君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       衛藤征士郎君    木村 隆秀君       小林 多門君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田中 昭一君    中野 正志君       吉川 貴盛君   吉田左ヱ門君       渡辺 喜美君    上田 清司君       北脇 保之君    鈴木 淑夫君       中川 正春君    並木 正芳君       藤井 裕久君    前田  正君       松崎 公昭君    宮地 正介君       村井  仁君    山本 幸三君       川内 博史君    田中  甲君       古川 元久君    佐々木憲昭君       秋葉 忠利君    吉田 公一君       新井 将敬君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      阪田 雅裕君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   中川 隆進君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       林  正和君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      榊原 英資君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 宮本 和夫君         農林水産省構造         改善局建設部開         発課長     江頭  輝君         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         参  考  人         (日本銀行理事山口  泰君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   木村 太郎君     松崎 公昭君   北脇 保之君     山本 幸三君   末松 義規君     古川 元久君 同日  辞任         補欠選任   松崎 公昭君     木村 太郎君   山本 幸三君     北脇 保之君   古川 元久君     末松 義規君     ————————————— 五月十三日  共済年金制度の堅持に関する請願(上原康助君  紹介)(第二五七三号)  同(河村たかし紹介)(第二五七四号)  同(熊代昭彦紹介)(第二五七五号)  同(谷垣禎一紹介)(第二五七六号)  同(濱田健一紹介)(第二五七七号)  同(吉田幸弘紹介)(第二五七八号)  同(稲葉大和紹介)(第二六五九号)  同(白保台一君紹介)(第二六六〇号)  同(仲村正治紹介)(第二六六一号)  同(岡島正之紹介)(第二七一二号)  同(玉置一弥紹介)(第二七一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本銀行法案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本銀行法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。並木正芳君。
  3. 並木正芳

    並木委員 おはようございます。並木正芳でございます。大臣にも御苦労さまでございます。日銀法質疑も半ばを越えようとしているわけでございますけれども、皆様には御苦労さまでございます。  それでは、質問させていただきます。  日銀法改正は、金融経済グローバルスタンダード化流れ対応するものであると考えます。つまり、日本版ビッグバンと言われる金融システム改革を遂行するため、市場ルールにのっとって運営する中央銀行にしようとするものであると考えます。それゆえ私は、行政権不介入の大原則なくして日本グローバルスタンダードへの流れは構築され得ないと考えるし、日銀自己責任に基づく政府からの独立性最大限尊重されなければならないと考えますが、最初大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  4. 三塚博

    三塚国務大臣 並木議員の御主張のとおりで、最大限独立性を尊重し、政策決定過程を公開していくということもまた独立性を担保する基本であります。
  5. 並木正芳

    並木委員 金融制度調査会日銀法改正小委員会においてのことでありますけれども、一部新聞に報道された議事録、これは公開されてはおりませんけれども、報道されたところであります。  これによりますと、委員側姿勢からは、金融政策はもちろん、業務予算も含めて日銀自己責任に基づく自主性最大限に尊重し、一般的監督権予算認可権は廃止し、公的コントロール政府人事掌握権日銀のアカウンタビリティー、説明責任によって開かれた日銀独立性を保障すべきだとする意見が多く見られるところであります。  一方、事務局を務めた大蔵省内閣法制局は、憲法第六十五条の「行政権は、内閣に属する。」との規定を盾に、行政一端を担う日銀は、政府から完全に独立することは困難であり、その中の意見でありますけれども、「日銀独立性とは、専ら金融政策に関する独立性である。」と限定的な法律論が展開されているわけであります。  結局、第五十八条の「大蔵大臣は、日本銀行業務の執行の状況に照らし必要があると認めるときは、日本銀行に対し報告又は資料提出を求めることができる。」という一般的監督権を残したと思える、こうした監督権の色彩の強い条文となったわけであります。  また、予算に関しても届け出制でもよいのではないかとする委員側意見に対し、「届け出制というのは、チェックではなく、言わば報告であり、事実を承知するということである。」すなわち公的チェックはできないという発言や、「予算について、日銀最終決定権を有し、大蔵省がそれに対して意見を述べるという形では、政府日銀予算責任をとっていない形になってしまい、憲法違反のおそれがある。」との見解も示され、ついには「どうしても独立性を向上させ、認可権を不要とするのであれば、憲法改正について議論があってしかるべきである。実際、フランスでは大議論が巻き起こり、結果として憲法改正して、中央銀行独立性を強化した。そうまでしないというのであれば、大変恐縮だが、事務局国会で立ち往生しないような結論を出していただきたい。」こういう事務局側意見さえ出た。そして、結局、第五十一条に見られるように、経費予算大蔵大臣認可を受けなければならないという条文になったわけであります。  昭和二十四年、戦後でございますけれども、この現行法改正後も、国の権力的支配を認める従来の建前と日銀政策委員会独立性中立性を尊重しようとする新しい考え方とが、相互に矛盾しながら包含されて今日に至っているわけであります。今回の改正においては、この問題につき明確な見解を示すべきではないかと考えるわけであります。  憲法六十五条につき、国会地位を定めた四十一条や裁判所の地位を定めた七十六条に比べてやや弱いものの、行政権原則として内閣に独占させるとの見解をとったとしても、行政委員会などの独立行政機関について、事務性質が厳正、公平に、または技術的に処理される必要があり、時々の政府、あるいは政党内閣と言ってもいいかと思いますけれども、この政策からの独立性中立性を認めるだけの合理的根拠を持っており、しかも他面において、人事権等を通して政府がこれをコントロールできることになっていれば合憲と、この行政委員会に関してもそういう解釈をしているわけであります。  日本銀行政策委員会は、私法人の一種でありますけれども行政委員会に準ずる地位を有するものであり、事務そのもの内容性質からして、政府からの独立性中立性が要求され、公正、中立通貨価値安定確保という見地に立って技術的に決定されることが妥当であり、しかも、大事においてこれをコントロールする手段が保障されていれば、違憲のそしりを受けるべきではないと私は考えるわけでありますが、内閣法制局見解はいかがか、お聞きしたいと思います。
  6. 阪田雅裕

    阪田政府委員 今御指摘ありましたように、憲法六十五条「行政権は、内閣に属する。」さらに六十六条三項「内閣は、行政権行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」これは内閣行政権を属さしめるという趣旨規定でもありますが、同時に、行政を民主的なコントロールのもとにおくということを意図した規定でもあるというふうに承知しております。  ところで、今お話がありましたように、公正取引委員会等のいわゆる独立行政委員会につきましては、これらの規定との関係で、その憲法適合性がどうかということで、従来も国会等議論がなされてきたというのは御案内のとおりであります。これに対しまして、政府といたしましては、内閣人事及び財務等を通じて一定の監督権行使するという条件が満たされる場合には合憲であると解してきておるわけであります。  日本銀行につきましても、行政権限行使する主体であるというところについては御異論がないんだろうかと思いますが、そうであります以上、少なくともこの独立行政委員会と同様の条件が満たされるということが、合憲性の担保としては必要であるというふうに考えております。現在、先生今御指摘がございましたように、人事権だけ内閣が持っている、予算についてはおよそ内閣関知をしないというような組織は、もちろん行政機関はありませんし、その余の行政主体存在しないわけであります。  日銀の場合、その財源の中心になりますものが通貨発行益、これは特段営業努力をして上げ得るというような性格のお金でもないし、また全く独占的に得られる資金なわけでありますけれども、そういうものにつきまして、仮に政府あるいは国が全くチェックをしないということになりますと、果たして適切な監督がなし得ると言えるのかどうか。これは六十五条との関係であります。さらに、その結果として、その行政権行使について、行政を一元的につかさどる内閣として、日本銀行業務責任を負い得ることになるのかどうかという点が恐らく大きなポイントになるのではないかというふうに思います。  これについて、今にわかに右だ左だと申し上げる自信はないわけですけれども憲法上全く問題がないかどうかということについては、なお十分に慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。
  7. 並木正芳

    並木委員 明快な法解釈というのを示されなかったわけでありますけれども、結局、戦後改正のそのままの二つの矛盾をある意味では包含しながら、今回も改正しなければならないということになってしまいかねないと思います。そういうことでは、二十一世紀に向けてのいわゆる金融ビッグバンに対して、常に憲法との関係での懸念が生じるという中で、一方では市場ルールに十分に適応できない金融政策をやっていかなきゃならないのじゃないか、そういう危惧もあるわけであります。この際、もっと大幅に独立性をむしろ付与する、その方向性であるべきではないかなと考えるわけです。  果たして、一般監督権等を残す必要があるのじゃないかというような、明快ではなかったわけですけれども、そういうお答えであったわけですけれども最低限人事権という中でコントロールできれば、ほかの行政委員会でもそれに近いものがあるわけです。そういうことでは、違憲というそしりは免れるのではないかと考えるわけです。政府として行政をやっていく上で連絡を密にしていく、そのようなことは当然あり得るのかと思いますけれども、法的な解釈においては、最低限、どの程度まで確保されればいいとお考えでしょうか。
  8. 阪田雅裕

    阪田政府委員 事柄が、国の行政機関に係る場合であるのか、あるいは国の行政機関ではない、国以外の法人の場合であるのかということでいささか違うのであろうかというふうには思いますが、まず国の行政機関について言いますと、もうつとに先生案内のように、公正取引委員会等のいわゆる独立行政委員会が存するわけであります。これらにつきまして、人事権はもちろん内閣において持っている、限られた範囲でありますけれども持っておる。それから予算については、内閣においてこれを全体の中で調整をし、国会の御審議をいただくということでありますので、これも内閣コントロールをしておる。そういう存在しかないし、またそういう存在であれば、その業務が公正、中立に行われるべきものである以上、憲法適合性は十分満たしているというのが従来の考え方である。  では、その一方が欠けたらどうかということについては、従来議論をされたことはないわけですけれども、私どもは、憲法六十五条というよりは六十六条で、内閣国会に対して責任を負う、逆に言えば国会がその仕事の結果を全体として内閣に対して問えるというだけのある種の権限といいますかを持って監督をしていると言えることになるのかというところが、実は非常に疑問なのではないかというふうに思っておるわけです。例えば人事権がない、あるいは予算についておよそ関知をすることができないということであるとすればということでありますね。  それからもう一つ、日銀の場合には、これは行政組織の外にあるわけでありますから、そうだといたしますと、行政内部であれば当然に監督されるような事柄、例えばその組織あり方、これは内閣部内で予算査定が行われ、またそれを予算として国会に御提出申し上げ、御審議をいただくというようなプロセスで、国家公務員の定員が何人が適当であるかとか、どこに地方支分部局をどれだけ設けていいかとかというようなところは御審議いただいているわけでありますけれども、もし日銀が自由に組織を改編あるいは新設することができるということを認めますと、そういうチャンスが全くなくなる。日銀の自由自在になる。  それから、例えば給与でありますけれども、これも国家公務員の場合には特別職給与法あるいは一般職給与法等によってコントロールをされておりますし、運用基準についても人事院が目を光らせているという状況でありますけれども日本銀行についてはそういう部分がないというようなこと。そういった、内閣の中にない組織であるということによって当然に必要となるような部分というのもあると思います。  例えば、最初お話しになりました報告資料徴収権のようなものも、政府部内であれば、常に上位の官庁がこれを報告してくれと言えば当然に報告を得られる性格のものだと思うのですけれども、これが一たん人格を異にしますと、何の規定もなければ、言われて出すべきものであるかどうかということについて一々判断が必要になるというようなことで、ちょっと性格が異なるところがあるというふうに思っております。
  9. 並木正芳

    並木委員 先ほど申し上げたように、日銀は一私法人というわけでございますけれども行政権を付与されているという点では準ずると考えるところでこうした問題が出てくるわけです。  六十六条の三項、いわゆる国会に対しての連帯責任ということなんですけれども、それについても、国会、いわゆる政党内閣国会政党性、そういうものも含めて、むしろ憲法根本原則とするのは、いわゆる民主的なコントロールというものが政党内閣あるいは政党によってゆがめられないというところこそ憲法が目指しているところではないか、そういう解釈もできると思うわけです。  この議論は切りがないのかとも思いますけれども、いずれにしても、この時点において、先ほど示したような見解といいますか、いわゆる予算認可権というものがなければ憲法違反のおそれがあるんだというような見解、あるいは一般的な監督権というのを離すべきでないというところは、今明快な解釈をされなかったということは、必ずしも憲法違反のおそれがあるということを言っているわけではない、そういう認識でよろしいのでしょうか、逆の考え方ですけれども
  10. 阪田雅裕

    阪田政府委員 どの程度の強さで申し上げていいのか戸惑うのでありますけれども憲法違反のおそれがあるというふうに強く申し上げるつもりはもちろんないわけですけれども最初に申し上げましたように、憲法上、やはり我々の立場ではかなりの程度に疑問が残るということなのですね。したがって、それは最終的には国会の御判断でもあるかとは思うのですけれども、私どもとしては、少なくとも憲法疑義が残る、一点の疑義もないというものではないというものについて、御審議をいただく法案として御提出するわけにはまいらないということであります。
  11. 並木正芳

    並木委員 一応ここまでとして、ほかの委員さんのまた議論にお譲りしようかと思います。  それで結局、今議論があったわけですけれども、これらの審議に関して、結論的に日銀予算人事面などで政府に縛られるということになって、これは事務局主導の形骸化した審議じゃないかという批判も一部マスコミ等でされているわけです。私としては、二十一世紀に向けたグローバルスタンダードをにらむ改革議論の場が、初めから法律論にこだわって、そうした硬直したというか、そういう姿勢で押し切られたとするならば、これで日本版ビッグバンができるのか、大きな金融システム改革が遂行できるのかと大変懸念し、危惧するものでありますけれども日本銀行総裁、この辺について、当事者であるわけですけれども、どのようにお考えでしょうか。
  12. 松下康雄

    松下参考人 今回の日銀法改革に関しましては、これまで中央銀行研究会や、または金融制度調査会の場で具体的な検討を進めてこられたわけでございますけれども、私どもといたしましては、これらの審議会委員方々等には、中央銀行の現状あるいは制度改革に関します私どもの要望といったようなことも御説明、御理解をいただいた上で御議論が行われたというふうに認識をいたしております。また、金融制度調査会におきましては、私どもも公式の場で考えを述べるという機会も与えられたところでございます。  そういうことでございまして、私どもといたしましては、今回の制度改革が実現をするならば、現在の市場化あるいは国際化が非常に進んでおります世界的な情勢の中で、また、今御指摘のありました日本版ビッグバンというような大きな改革を推進してまいろうという情勢の中で、私ども日本銀行主体的な自己改革をこれはみずから進めながらでございますけれども、的確に対応していく上で大きな力になるものであると考えております。
  13. 並木正芳

    並木委員 大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども大臣は、これらの一連の経緯において、大蔵省は完敗したというようなコメントをされているようでありますけれども、今私がお話ししてきたところだと、内容が随分違うのじゃないか、むしろ事務局の思ったところに落ちついたというような見解もとれるのじゃないかと思いますけれども、その辺、大臣、もう一度そのコメントに違いがないかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
  14. 三塚博

    三塚国務大臣 その趣旨は、ぶら下がりですから応答の中で、皆さんが言うように大蔵が抵抗をするということではありませんと。中銀研及び審議会等その他大前提に、三党の協議の中で、金融改革の中での日銀あり方、まさに独立性公開性、こういうことでありましたから、そういう点を踏まえればそのとおり、こういう意味で申し上げたわけでございまして、巷間伝えられるように、大蔵事務方徹底抗戦をしてこれをつぶすなどということがしきりに言われたわけですね。だから、そういう意味からすれば、わかりよく言えば、短い時間なものですから、それは完敗だよと。ということは、時代の潮流にしっかりと対応してこれだけのものをつくり上げた、まさに独立性であり、公開性であり、こういう意味で申し上げたと御理解ください。
  15. 並木正芳

    並木委員 わかったということにさせていただきたいと思います。  ところで、今申し上げたように、私は日銀独立性最大限尊重すべきであると考えますがゆえに、日銀自己改革努力についても触れさせていただきたいと思います。  これまでの大蔵省日銀との関係において、大蔵日銀の風よけだ、そういうことも言われてきておるわけであります。つまり、大蔵省がこれまで金融政策に関する我々国会への説明政治家への根回しといった役回りを一手に引き受けてきており、日銀はすぐにその責任大蔵省へ持っていくことで何とかその風を免れてきた、こういうふうにも言われてきております。  こうした関係が云々される中でバブル発生から崩壊までの過程に適切な手を打てなかった、その辺が独立性云々で言われているわけでございますけれども、果たして大蔵省圧力といいますか、つまり財政至上主義大蔵省により公定歩合操作などの金融政策がゆがめられた、こういうようなことで大蔵省圧力に屈した、そのゆえにバブルというのがこういうことになったのか。その辺の問題につきまして、一体どのような運営ならバブルを起こさなかったと考えるのか、総裁、それと大蔵大臣、御意見ありましたらその見解をお述べください。
  16. 松下康雄

    松下参考人 政府大蔵省と私どもとの間では、一般金融経済情勢等につきましては日ごろから意見交換を行っておりますけれども金融政策決定ということにつきましては、これは日本銀行みずからの判断責任でこれまで行ってまいったところでございます。  そこで、御指摘のいわゆるバブル発生時の経緯についてでございますけれどもバブル原因というものは大変複雑な要因がいろいろ絡み合っておりまして、自由化国際化などの経済環境の変化とか首都圏への一極集中とか、あるいは土地取引関係法制、税制の問題などいろいろな要因が影響し合っている中で、経済全体の中に右肩上がりというような幻想が生まれてきたということであったというふうに理解をいたしますけれども、その中には、やはり長期にわたる金融緩和ということも原因一端であったということは否めないところでございます。  ただ、当時の情勢を申しますと、これは景気回復がだんだん強まっていきます中で、物価の安定基調というものはなお維持されておりました。また他方で、この時期は為替円高のデフレ的な影響が非常に国内で心配をされていた時期でございまして、国の経済政策面におきましても、大幅な経常黒字是正とか円高回避ということが最優先の政策課題とされていた時代でございます。そうした中で、私ども金融政策運営面でもぎりぎりの選択を迫られたということになりますが、結果としまして、長期にわたる金融緩和バブル一端をなしたということであったかと思います。  私どもとしましては、お尋ねの、これからどのようにしていく考えかという点でございますけれども、やはり金融政策運営上に大切なことは、まず為替相場の安定や対外不均衡の是正のために過度に金融政策に依存した対応をとるということは適切ではないのでありまして、この点はあくまで、各国ともそれぞれの国のインフレなき持続的成長を目標としていくべきであるということ、それからまた、資産価格やマネーサプライの動向などには十分注意を払いまして、早目早目対応をとっていくというような点が重要なことであると考えているところでございます。私どもといたしましては、こういった点を十分念頭に置きながら、今後とも適切な政策運営をいたしてまいりたいと考えております。
  17. 三塚博

    三塚国務大臣 日銀総裁の御答弁で大体尽きるかと思いますが、日銀政策委員会の所管事項として、決定権が明確にされておるわけでございます。さらに、この規定のもと、日銀は、政府経済政策との整合性に留意しつつと言った方がいいのでしょうか、みずからの判断による金融政策対応がなされておると思っております。  政府には、経企庁長官、大蔵大臣という経済関係閣僚がおるわけであります。トップとしての総理大臣経済見通しについても、経企庁長官なり私どもがそれを代弁し、意見調整をするということは当然のことでありますが、みずからの判断で行うという総裁の言はまさにそういうことで、そりポイントはしっかりと今日まで堅持されておりますし、これからもそういうことで日本銀行が最終決断をしていく。しかし、為替政策内閣であり、前面に出ますのは大蔵大臣、こういうことでございますから、為替の安定が経済のインフレなき安定成長ということに金利とともに重要なパートを占めますから、両々相まちまして行うということであります。  巷間言われますように、日銀政策政府によって、あるいは政党によってねじ曲げられるなどということは私は全くないと思っておりますし、特に、これからのシステム改革の中で、そうとられるようなことがあってはなりません。成熟した民主主義社会、そして非常に情報公開といいますか、情報社会と言った方がいいのでしょうか、そういう中でのチェック機能、また国民代表によって構成される国会というところで常時審議を通じチェックが行われるという意味で、今後の金融、国際金融の場面においても国内場面においても、それぞれの持っております権限が明確に位置づけられ、最終責任を負うことによっての決定、こういうことの仕組みである、こう思います。
  18. 並木正芳

    並木委員 私も、責任云々というよりも前向きのお考えをお聞きすればそれでいいわけですけれども、今の大臣のお話ですと、現実にバブルが発生し、崩壊し、今、後遺症に悩んでいるわけですけれども大蔵圧力日銀政策をゆがめたことは決してないのじゃないかというような、そういう非常にすみ分けをした見解、精神をお持ちだということなんです。しかし、実際には、今言ったようにそういう事態が起きている。そうすると、この責任というのは、そういう点とは違うんだ、短く確認させていただきたいと思いますけれども、そういうことなのでしょうか。
  19. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融政策と財政政策との関連において、バブル要因ということについてのお尋ねだと思いますが、大きな流れ総裁から答弁申し上げたとおりでございますが、あのいわゆるプラザ合意後の状況におきまして財政はどのように対応したかということについて簡単に申し述べますと、当時、財政の対応力の回復、いわゆる財政再建が喫緊の課題となっておったのは御承知のとおりであります。しかしながら、内需を中心とした景気の着実な拡大を図る、あるいは調和ある対外経済関係の形成に努めるといった内外の声にこたえまして、昭和六十一年九月には総合経済対策、翌年五月には六兆円に上る緊急経済対策といったようなことで、財政面の措置もとられておるわけでございまして、決して金融政策に財政政策の面から特段の大蔵省圧力がかかったといったような実態はないというふうに考えております。
  20. 並木正芳

    並木委員 時間的な配分もありますので、一応お聞きしておきます。  次に、政策委員会についてちょっとお聞きしたいわけなんですけれども政策委員会は、今回大幅に権限が高められるということなんですけれども、現行法においても最高意思決定機関であるわけであります。その政策委員会がスリーピングボードと言われている。これはなぜなのかというようなことは、これはある面では、今、大蔵の云々ではなくて、日銀自身の問題であると思うわけです。  実際、水面下の根回してあらかじめ同意を得ておいて、委員会が開かれればしゃんしゃんで終わるんだとか、あるいは時間のない直前に招集して、もう結論を出している政策をいきなりその場で提示し、議論のないままに事務局案を自動承認する、こういうやり方を繰り返してきた、こういうようなことが言われているわけですけれども、実態についてはどうなんでしょうか。
  21. 松下康雄

    松下参考人 政策委員会の現在までの運営につきましては、私どもは、任命委員として、地方銀行、大都市銀行、商工業、農業という四つの分野からそれぞれすぐれた経験と識見を有する方々に委員をお願いしているわけでございますけれども、やはり運営上、これまでも十分に議論を尽くしていただいた上で政策決定を打ってまいったところでございます。  ただ、現在の政策委員会制度におきましては、政策委員会の所掌事項でございますとか執行部との関係といった点で若干必ずしも明確でない点もございますし、何よりも、この政策委員会で現実に行われております政策決定に関するさまざまな議論内容につきましては、これは建前上公表いたさないということでまいっておりますようなこともありまして、政策委員会のこれまでの活動の状況について必ずしも十分な御理解をいただいてまいらなかったと思います。  その点につきましては、政策決定の都度、議長でございます私からできる限り詳細に政策の変更の理由等は御説明をいたすわけでございますが、この点、今回の改正法のもとにおきましては、第一に、この行内の理事会との間の関係がきちんと整備をされておりますし、第二に、議事の内容につきまして、その要旨の公開を考えてまいるということでございますので、これらの点につきまして、従来の問題点が著しく改善されることになるものと思っております。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
  22. 並木正芳

    並木委員 それでは、これは銀行局長でしょうか、聞きたいのですけれども、この人選というのは各業界代表を選ぶというようなことなのですけれども、どのように行われてきたのでしょうか。その政策委員の出身と経歴について、簡単に教えていただければと思うわけです。  いわゆる総裁に関しては、これは大蔵日銀で交互に総裁を出し合う、こういう慣行があるらしいですけれども、この政策委員についても省庁間のバランス人事という面がなかったのかどうか、この辺。についてお聞きしたいと思います。  そして、その先をお聞きしたいわけですけれども、この際、この政策委員会の活性化ということで今回の法律ということになるわけですけれども、そうした観点に立つと、今後の委員の人選についてはどのようにお考えなのか、現状と今後についてお聞きしたいと思います。
  23. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  現在、日本銀行政策委員のうち、国会の同意を得て内閣が任命しますいわゆる任命委員につきましては、先ほどもちょっとお話が出ましたが、現行の日本銀行法第十三条ノ四によりまして、金融業、商業及び工業、農業に関しすぐれた経験と識見を有する者が任命されるとなっております。そうした立場に立ちまして、委員の選任に当たりましては、今申し上げたような分野ですぐれた経験と識見を有し、かつ国民全体を代表する広い立場に立ちまして、適材適所の原則にのっとって選任して、国会の御同意を得て任命しているところでございます。  具体的に選ばれている方々は、まず、都市銀行の御出身の方は、例えば第一勧銀、三井銀行、長期信用銀行等が最近の例でございます。それから地方銀行ですと、都民銀行、大分銀行、滋賀銀行という方々でございます。中には一部、日銀出身の方も含まれております。それから商工業の方は、電発の総裁あるいは川鉄の副社長というような元通産省の御出身という方が最近はなられております。それから農業につきましては、日本穀物検定協会会長さんあるいは農林漁業金融公庫総裁という方々でございまして、元農林次官等をお務めになったその道のエキスパートの方でございます。そうした方々を御推薦申し上げて、それで国会の御同意で選んでいただいております。  今後はその範囲をぐっと広げまして、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者」というふうに大幅にその範囲を広げたわけでございます。したがいまして、この広げた範囲の中から、真にこれからの新しい政策委員会のメンバーにふさわしい人を任命できますように、いろいろと幅広い観点からの人材になっていただくようお願いしていきたいというふうに考えております。  出身につきましては、官庁の御出身の方がいらっしゃる等とのいろいろな御指摘もございますけれども、出身が官庁あるいは民間を問わず、それぞれの分野ですぐれた経験と識見を有する方々を選考してきたところでありますし、これからも、そうした幅広い分野からの人事を行っていくべきものというふうに考えておる次第でございます。
  24. 並木正芳

    並木委員 今お話しされたように、今後、省庁間のバランス人事というようなことにならないと思いますけれども、その辺については配慮をしていっていただきたい。もちろん全面的に省庁OB等を否定しているわけではないわけですけれども、その辺を御配慮いただきたいということを申し上げておきます。  次に、給与待遇面でちょっとお聞きしたいわけです。総裁の給与は都銀の上位行並みと言われているわけでありまして、年収が総理大臣の一・一四倍の五千百三十三万円、これは九五年度ですけれども、私の資料は古いのですけれども政策委員会委員についてはどうなっていたんでしょうか。  それで改正案では、国家公務員特別職の給与を勘案して決める、こういうことになるということで、特別職並みとなりますと、今申し上げたように首相と同レベルということになると一五%程度低くなってしまうと思うわけですけれども、こういうふうに役員とともに職員の給与も下がるということなんでしょうか。この辺についてもお聞きしておきたいと思います。  また、一般的に金融機関の給与というのは高過ぎるのじゃないか、これは幾らがいいかというのは難しいところなんですけれども、そういう声もあるわけです。そしてそれが、昨今の金融不祥事とかいうことを見ますと、金融機関のおごりといいますかそういうことではないか、エリート意識が強過ぎて庶民の利益というものを考えていないのじゃないか、こういう批判もあるわけです。これは答えにくいところかもしれませんけれども、この辺の金融機関一般の給与ベースについても総裁はどう考えられているのか、お答えできるようでしたらお願いします。
  25. 松下康雄

    松下参考人 最初政策委員の給与についてでございますけれども、現在の日本銀行の給与の決め方は、御指摘のように、市中銀行の役員報酬も参考にしながら、他方、職務の公共性にも十分配慮をして総合的に判断をした上で、大蔵大臣認可を経て決定するという手続でございます。こういった中で、政策委員の年収は、現行年三千三百六十二万円ということに相なっております。  今後、法改正後の役職員の給与でございますけれども、役員の給与につきましては、この改正法案においては、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家公務員の給与その他の事情を勘案して定めなければならないということでございます。私ども、現時点で具体的な方針を固めているわけではございませんけれども、そういった日銀法改正趣旨を十分踏まえまして、今後、役員給与に関する基準は、これを作成して公表してまいりたいと考えております。  他方で、職員の給与でございますが、こちらの方は、ただいまの法律の関係におきましては、特別職国家公務員云々ということはございませんで、新法施行後、新しい政策委員会におきまして十分な議論を行った上で支給基準を決定し、公表をしていく。その際の給与の支給基準につきましては、私どもとしましては、労働市場における競合でありますとかあるいは民間における同種の仕事の社会的な価値というようないろいろな要素をよくにらみ合わせました上で、法律の原案にございますように、社会一般情勢をより広く考慮をして定めてまいりたいというふうに考えております。  なお、金融機関の給与水準についてのお尋ねでございますけれども金融機関の具体的な給与の定め方というものは、これはあくまでも経営者と従業員との間の自主的な交渉の積み上げによって決定されるというものでございますので、この具体的な水準につきまして私どもとしてコメントいたしますことは適当ではないと考えますので、御理解をいただきたいと存じます。
  26. 並木正芳

    並木委員 わかりました。  政策委員会の活性化という点で先ほどからもお話が出ているわけですけれども、現在、役員集会ということで、政策委員会を上回る機能、権限を持っているというようなことなんです。今後、この改正法でも理事等は残していくわけなんですけれども、それはどのような形となるのでしょうか。役員集会という意味では確実に廃止されるのかどうか、その辺を確認させていただきたいと思います。     〔保岡委員長代理退席、坂井委員長代理     着席〕
  27. 松下康雄

    松下参考人 政策委員会の今後の機能に関連をいたしまして役員集会がどうなっていくかということでございますが、現行法のもとでは、役員集会は、日本銀行定款二十四条に基づきまして、業務の執行につき重要なる事項を審議するということを目的として設けられているものでございます。  ただ、改正法案におきましては、これは金融制度調査会の答申を受けまして、業務の執行の基本方針に関する事項の議決及び役員の職務の執行を監督することにつきましては、いずれも明確に政策委員会権限ということにされております一方で、行内の役員でございます理事は、政策委員会の定めた方針に従いまして、政策委員会監督のもとで業務執行を行うという位置づけになっております。こうした考え方のもとにおきましては、理事の段階での実質的な意思決定ということが行われるということはあり得ませんし、そのような誤解を招くような形での役員集会は、制度としては廃止をするということになってまいります。
  28. 並木正芳

    並木委員 わかりました。  ところで、提案させていただきたいと思うのですけれども、全く今の政府考えと違うところかもしれませんけれども政策委員会日銀組織から取り出してしまいまして、外部に、例えばこれは金融委員会というような名称で、政府内での独立性を有する独立行政委員会としてはっきり位置づけてしまう、そうして日銀政策決定するポリシーボードにする、こういう構想はいかがかという考えであります。こうした仕組みの方が、冒頭質問させていただきました、憲法六十五条「行政権は、内閣に属する。」それと日銀独立性との整合性もとれるのではないか、こういう考え方であります。  こういう仕組みにすると、業務執行部署と金融委員会と申しますかその辺の連携に支障が出るという懸念もお聞きしているわけですけれども、かつて、御案内のとおり連合軍のドッジ顧問の指摘ではそうであったように、アメリカではこういうような形がとられているわけであります。そしてこの金融委員会審議日銀総裁、副総裁が加わるということなら、今申し上げた業務部署との連携にも大きな支障は生じないと思いますし、政府内での独立性という観点から委員会への政府代表の出席もこれは不必要になる、そういうことで金融政策独立性がより保持できるのではないか、こういうふうに考えるわけです。  それと、今、行革特別委員会の方で金融監督庁設置法案ということで審議されているので、余りその辺についてはここでは触れる必要がないのかとも思いますけれども、こういう金融監督庁をつくると、これは行革にむしろ反していくのではないか。金融委員会を今のように設置して、金融機関を監督するための金融監督庁に本来来るであろう検査、そういうものと、今、日銀がやっております最終貸し手としての決済システムの安定的な運行の確保のための日銀考査、こういうものを効率的、かつ事務負担が多くなるということで金融機関からの要望も出ているわけですけれども、こういうことにかんがみて日銀傘下に当面入れてしまって一元化してしまう、そういうことにすればこの新省庁も必要なくなる。こういうことで、むしろスリム化、リストラ化されて二十一世紀金融体制に合っていくのではないか、こういう考えを提起させていただければと思うわけですけれども大蔵大臣にいきなりお聞きしてどうこうというのはあれかもしれませんけれども、今お話しした範囲での見解をお聞きしたいと思います。
  29. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  私ども、この今御審議賜っております法律案を中央銀行研究会金融制度調査会での長い間の真剣な御議論を経ましてまとめて提出申し上げている印象からいいますと、独立させて国家行政機関として政策委員会を置くということになった場合に、いろいろ中央銀研なんかの議論の感じからいうと、内閣コントロールとの関係をどうするかという議論が随分ありましたからいいますと、むしろ内閣そのものになってしまうというところにかなり、どういうふうに考えればいいのかなという感じがするわけでございます。  例えば独立行政委員会になりますと、先ほどもちょっと出ておりましたが、予算は財政当局が査定をするという形に当然なるわけで、政府予算になるわけでございます。それから給与も公務員の給与になるわけですし、それから定員の縛りとか機構の査定もございますし、それから行政監察との関係をどうするかというような問題もあります。行政機関そのものでございますから、かなりそれは、例えば私ども大蔵省というようなのと同じようなことにいろいろ扱いがなってくるわけでございます。  そういったところが、例えば独立的に金融政策等を行うということが、果たして中立的、独立的という、私どもの御提案申し上げている一番のポイントである透明性のあみ独立性を確保するというところに、どういうふうに金融政策を決める部署が立つのだろうかというのに、私どもとしては、ややいかがなものかという感じがいたすわけでございます。  それから、政府代表もその結果不要になるのではないかという御指摘でございますけれども、今回、必要に応じ大臣あるいは大臣の指名する者が出て意見を提案したりすることにしておりますのは政策の調整のためでございまして、その点からいいますと、やはり政府部局内での意思疎通ということからいいますと、必ずしも、そういう形になると政府代表が不要ということにもならないのではないか。  それから検査権限云々につきましては、行政権限そのものといいますか、権力的行政の最たるものの一つであります検査権限というものを、そういったものに移すのがいいのかどうかという問題がいろいろあるのかなというふうに思っておる次第でございます。
  30. 並木正芳

    並木委員 次の時代をにらんだ金融体制というかそういうものがどうあるべきかということになってくるわけですけれども市場ルールにのっとっていくというこの金融ビッグバンの大原則からしても、スリム化していく、しかし政府政策云々には配慮しながらその市場ルールにでき得る限り任せていく、こういうことからすれば、金融委員会も想像するよりも事務局も含めてかなり少人数の委員会の機構ということになると思います。問題としては、今私がお話ししたような日銀に当面検査、考査を統一し一元化していくということで、この辺の部分が、身分も含めて、あるいは大変膨大な検査機構になるのかなと。しかし、現状と比べれば、さまざまな面でほかの省庁との調整においてむしろスリム化できるのかなと思うわけです。  将来的には、省庁のいろいろな再編、リストラ問題がありますので、こういう中でまた考える必要があるかと思いますけれども、当面の課題としてそのように考えるわけです。もう一度、その辺についての見解をお聞きしたいと思います。
  31. 山口公生

    山口政府委員 今回御提案申し上げております日銀法は実質五十五年ぶりの改正でございますし、この日銀法もかなり長い間これでいくというようなしっかりしたものを御提案申し上げているつもりでございまして、できれば、そういう将来のまた改革というものを念頭に置くよりは、二十一世紀にはこれでいくんだというような姿で、ぜひ日銀法を見ていただきたいなと思っている次第でございます。  また、若干つけ加えて言いますと、金制の御議論でもありましたが、実質ツーボード化している、あるいはスリーピングボードという御批判もありましたが、そういったものをなるべくワンボードとして、一つの、日銀の中にきちっとその意思決定機関を置こうということからいいますと、何か意思決定機関とその実行部隊とに分かれ、また、その実行部隊の方に何かそういう事項を決定する機関を置くのかなどうなのかなというような、ちょっと疑問も今わいたところでございます。
  32. 並木正芳

    並木委員 今の問題について、今後また続く委員さんの御議論にもまちたいと思いますけれども、最後に一点だけ、第一条関係に信用秩序の維持ということを残したわけなんですけれども、この辺の観点で、不良債権処理において今まで、日債銀なんかでもそうですけれども、いわゆる特融というのを発動して、そしてこの破綻処理を乗り切ってきているわけです。この改正案でも、特融での大蔵大臣の主導権というのを明記しております。要請権というのをですね。こうした場合、政策委員会がこの大蔵大臣の要請の諾否を決めるとあるわけですけれども、否とした場合に混乱を招くわけで、そういう意味での要請拒否が困難になるのじゃないかと懸念するわけです。そうした中では政策委員会が追認するだけのことになってしまって、ひいては特融がどんどん膨れ上がって、今後どのぐらいそういう不良債権等があらわれるか不明確なわけですけれども、そういう中で日銀が不良債権をある面で抱え込むとなると、銀行券の信用低下を招く危険性があると考えるわけですけれども、この辺について、最後にその懸念についての見解をお聞きしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  33. 松下康雄

    松下参考人 私どもはこれまでも金融システムの安定のためのいろいろな措置を講じてきたわけでございますけれども、その際の基本的な考え方といたしましては、関係者の責任の明確化でありますとか、あるいは日銀自体の財務の健全性というものに配慮をしながら、それがシステミックリスクを引き起こすようなおそれがあり、また日銀の資金供与が不可欠であるという場合に限って資金供与を行ってきたところでございまして、こういった対応考え方につきましては、私ども今後とも堅持をしてまいりたいと思っております。  もとより、この新法のもとにおきまして、金融機関の破綻処理等の行政的手法を要します対応の最終責任政府にあるわけでございますけれども、私どもも、実際に新法下でこのような要請がございました場合には、政策委員会におきまして、信用秩序の維持に資するという当行の目的に照らしながら、また最初に申し上げましたような考え方を基本として、御相談をし処理をしてまいりたいと考えております。
  34. 並木正芳

    並木委員 時間がございませんので、これまでとさせていただきます。ありがとうございました。
  35. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、前田正君。
  36. 前田正

    ○前田(正)委員 並木議員に引き続きまして、新進党を代表して、私、前田正が質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  まず最初に、今度は日銀法からちょっと離れまして、住専関係について少し御質問をいたしたいと思います。  昨今の報道によりますと、住専七社からの貸付債権を譲り受けた住宅金融債権管理機構は、中坊社長の指揮のもとに債権回収に大変な努力をされておられるようであります。この間、私もたまたまテレビを見させていただいた折、その中坊社長のドキュメントといいますか、そういう活躍をしておられるものが報道されておりました。大変に御無理なことをお願いをしたような気もいたしますし、また住専七社がしでかした不始末、あるいはまた私ども政治家としての責任の問題を中坊社長にお願いをしておるところでございます。社長そのものも、給料を御辞退をされて本当に毎日大変な御苦労をされておられる由でございますし、また少し胃にポリープのようなものがおできになっておられるようでありますけれども、しかし、それも顧みずに、今やる、もう死ぬまで、やれるところまでやる、こういう強い熱意と情熱で取り組んでおられるその報道を見て、私も本当に申しわけない、そういう思いをしたわけでございます。  そこで、住宅金融債権管理機構の平成八年の活動状況の概要はどうだったのか、まずこの点からお伺いいたしたいと思います。     〔坂井委員長代理退席、柳本委員長代理着席〕
  37. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  住専処理法の成立によりまして、昨年七月の二十六日、住宅金融債権管理機構が設立されました。十月一日、旧住専七社から貸付債権等の財産を承継するとともに、十二月の二十六日には財産承継に伴う資金決済が行われたわけでございます。  この間、住宅金融債権管理機構は、財産調査権を有する預金保険機構と一体となって、債権回収及び責任追及に取り組んでいただいてきたところでございます。悪質な資産隠匿を行っていた末野興産に対する破産申し立てなど、債務者の実態に応じた対応が積極的に行われているところでございます。  平成八年度の回収状況につきましては、現在決算の確定中ではございますが、回収の予定額として二千七百四十三億円を目標に置き回収に努めてきたところ、目標額を幸いにして上回りまして、二千七百五十六億円程度になる見込みだというふうに聞いておる次第でございます。
  38. 前田正

    ○前田(正)委員 大変御努力をいただいておる成果が着々と見えておることは、私どもも大変頼もしい限りでございます。その勢いでもって、さらに本年度以降も本格化していくことだと思っております。  その際の担保不動産の処分の方法が大変重要だと考えております。不動産の所在地や価格などの情報を開示することで処分が進むのではないかというふうに考えておるところでございます。  そこで、担保不動産等の処分のあり方についてお伺いをさせていただきたいと思いますが、今後どのような方針で、どれくらいの期間で処分をされようとしているのか、またその処分のための方策としてどのようなことをお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  39. 山口公生

    山口政府委員 お尋ねの、住宅金融債権管理機構が回収額の最大化を図っていくために担保不動産等の適切な処分を行っていくということが大変重要であるというのは、御指摘のとおりだと思います。  同機構におきましては、十五年以内を目途として完了する処理の基本的な方針のもとに、担保不動産の管理・処分につきましては、これは不動産価格の動向を見ながら、適切な売却により回収を図られるよう努めることとしております。ただ安く売ってしまえば済むということでもございませんし、国民の御負担を少しでも減らすということがあるわけでございますので、そういった適切な価格ウォッチングをしながら進めていくということだろうと思います。  具体的には、不動産の処分は、ある面では、国民の目から見ますと、公正、透明なルールに従ってやらなければいけないという面もございます。したがって、現在、担保不動産等の関係連絡協議会、これは住専機構等のあるいは整理回収銀行等の活動を、私ども各省庁あるいは金融界も含めましてできるだけいろいろサポートしようということでやっておる協議会でございますが、そこにおきましても、公開競争入札、公募抽せんあるいは随意契約などの手法をいろいろ駆使しまして、その担保不動産の処分を適切にやっていきたいというふうに思っております。できるだけ私どももサポートしていきたいというふうに思っている次第でございます。
  40. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、例えば裁判所の不動産の競売物件だとか各官庁、役所の不動産の公売物件あるいは旧国鉄の清算事業団の一般競争入札物件などは、それぞれその機関が民間の不動産流通機構などに情報を公開し、入札率のアップあるいは落札率のアップの実績を上げていると私どもは聞いておるところでございます。これらの実績は、民間の宅建業者がビジネスとして不動産を仕入れて、それをリフォーム等の再商品化を図り売却するという形式をとっているために成果が上がっていると考えられるところであります。私は、一日も早い住専問題の解決に向けて、今申し上げたような民間機関も大いに利用して担保不動産の処分をしていくべきだと考えております。  と申し上げるのは、実は、私の地元の不動産に携わるある業者から、住専の不良債権を実は取得をしたいという問い合わせがあって、できれば金融債権管理機構に紹介をしてもらいたいという話があったものですから、私も、それじゃいいですよということで実は管理機構の方へ連絡をさしていただきました。それで、確かにそれは管理機構が押さえておる物件であることは理解できたわけでありますが、ただ、それをおたくは何ぼで買いますかというふうに反対に値段を買い手の方に言って、売り手ではなしに買い手の方に何ぼだったら買うんですかという物の売り方をされておられる。むしろそれよりも、うちは何ぼだったら売りますよ、何ぼだったら売りたいからあなたのところは何ぼだったら買いますか、そういう売り方の方が、相手も、それならちょっと高いからやめましょうとか、もう少しまけれませんかという話になるんですが、もうその相手先を見てその値段をつけるというふうな処分方法が実はされておるということを後ほど知ったために、そういうものではなしに、むしろそういう担保物件については、今安く売るとそれだけ国の負担が大きくなるというお話を聞いたわけでありますけれども、大体今の取引価格というものを掌握された上での値段というものをあらかじめ決めて、それによって買う人あるいは買わない人、この辺のことを積極的に進めていく必要があるのではないかということを私は申し上げたいわけでありますけれども、そういうふうな民間的なものを利用して大いにこれから私はやってもらいたい、そう思っておるところでございます。  その辺、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  41. 山口公生

    山口政府委員 今の御指摘は大変私ども参考になります。実際、不動産の売買という民間の契約をとるわけでございますので、この機関は公的な機関でありますけれども、やはりそこには取引を成立させる努力が必要なわけでございまして、そのためには、あらゆる買い手の注目を引くようなことをやっていく必要があるだろうと思うわけでございます。  その一環として、例えばデータベース化していくというようなことも非常に大事ではないか。たまたま来た買い手がいるだけではそれはもう出会い頭の契約みたいなものでございますので、データベース化しまして一般にこれを公表しておきますと、そういったニーズが、今先生のちょうど例をお挙げになったようなケースがたくさん出てくるんではないかというふうに思っております。  したがって、今御示唆いただいたようなことを参考にしながら、できるだけそういった観点を入れていきたいというふうに思います。
  42. 前田正

    ○前田(正)委員 それから次にまた、債権の回収や不動産の競売処分には往々にして、これは本当に申しわけないんですけれども、我々として情けない、暴力団絡みの問題がよく浮上するわけであります。私どもも、この不良債権の中にもそういった事例というものは数多くあるんだろうというふうに思います。  そこで、警察当局にお伺いをいたしたいと思いますが、金融あるいは不良債権関連事犯に対応した捜査体制やその検挙の状況はどのようになっておるのでしょうか。  また、金融当局においてもお伺いをいたしたいのですが、暴力団の債権回収への介入に対してはどんな対応方針で臨んでいるのかお尋ねいたしたいと思います。
  43. 宮本和夫

    ○宮本説明員 まず体制の問題でございますけれども、警察といたしましては、金融・不良債権関連事犯対策の重要性にかんがみまして、昨年初めに警察庁にこの種事犯の対策室を設置して、都道府県警察に取り組み強化を指示しているところでございます。  また、本年度には、警察庁に金融・不良債権関連事犯を担当する長官官房参事官を新設して、捜査指導、調査体制を強化し、地方警察官の増員等により捜査体制を強化いたしております。  また、各都道府県警察におきましては、金融・不良債権関連事犯対策を推進するため、金融・不良債権関連事犯対策室を設置するなどして所要の体制を整備し、取り締まりを強化しているところでございます。  また、検挙状況についてでございますが、金融・不良債権関連事犯につきましては、平成五年から七年までの三年間に百十五件を検挙しておりまして、うち、暴力団等が関与したものは三十四件であります。平成八年中はその検挙は百七件に上っておりまして、このうち、暴力団等が関与したものが半数以上の五十五件となっております。  最近の具体的検挙事例といたしましては、暴力団組長らが共謀の上、住専の申し立てにより競売開始決定がなされた不動産について、これを占拠して組事務所を開設するとともに、競売の際には、買い受け人の申し出を排除するなどして自己らに有利に買い受けようと企て、現況調査に訪れた裁判所執行官に対し虚偽の賃貸借契約事実を申し向けるなどした競売等妨害事件、また不動産会社役員らが暴力団幹部と共謀の上、その会社が金融機関からの借入金返済に滞り金融機関からその会社名義の普通預金口座が差し押さえられるや、さらに債権者からの差し押さえを受ける可能性があったことから、これを妨害するべく、その預金口座に賃料等が振り込まれる都度、別口座に振りかえ入金させて資産を隠匿するなどした強制執行妨害事件などがあります。  このように、暴力団等は、金融・不良債権問題につき、主として債権の回収に絡んで犯罪を敢行しているところでありまして、警察といたしましては、こうした暴力団等が関与する金融・不良債権関連事犯につきまして、今後とも積極的な取り締まりを進めてまいる所存であります。
  44. 山口公生

    山口政府委員 債権回収における暴力団関与の件につきまして、まず住宅金融債権管理機構の例から申し上げて一般化した話につなげたいと思いますが、この同機構は、預金保険機構と一体となって強力な債権回収を行っておりますが、その過程におきまして、悪質な関係者による妨害行為に対しましては刑事告発という厳しい姿勢で対処しております。  こうした状況を踏まえまして、不良債権問題の早期解決のために、取り締まり当局、行政当局及び金融機関等によって、昨年の十一月、不良債権回収対策連絡協議会というのを発足させまして緊密な連携を図っておるところでございます。こうすることによって、この同機構の回収の実を上げていきたいと思っております。  その際、各金融機関等とのあるいは司法当局との連絡が緊密になったことの結果として、民間金融機関そのものが、自分の債権の回収に当たりまして、警察とよく連絡をとるというようなことがふえてきているような気がいたします。警察当局でも体制の整備を図っていただいておりますし、金融機関も、ともすれば暴力団介入を恐れて何もしなかったというところが、警察に通告して、その回収のときにいろいろな御協力を、御支援をお願いするというようなことをやっているように聞いております。私どもも、そういうふうにぜひ指導していきたいと思っております。
  45. 前田正

    ○前田(正)委員 いろいろとこの不良債権回収に当たって、以前は名古屋で銀行の支店長が暴力団に、これはそういう不良債権のことなのかどうかわかりませんけれども、そういうふうにして殺されたり、あるいは阪和銀行の役員が車に乗り込むときに殺されたり、これはやはりバブルのときのツケといいますか、あるいはまたその銀行としての不良債権の回収といいますか、そういうトラブルに銀行そのものが巻き込まれて、大変いろんな暴力団とのトラブルが発生しておるように聞いておるわけであります。銀行も、今までとられるということになると大変二の足を踏むということになりますが、特に我々は、この不良債権というものは急務のことでございますし、特にその不良債権にまつわる暴力団は、これからも金融当局と警察と全国またいろいろと密にとりながら、徹底的にひとつ取り締まっていただきたい、こう願うものでございます。  それでは次に、日銀法改正に移りたいと思っております。  私もこの委員会に何度か出ておりますが、特にニホン銀行なのかニッポン銀行なのか、この辺を総裁、ちょっとお答えいただけますか。
  46. 松下康雄

    松下参考人 御質問の点につきましては、私どもの発行いたしております日本銀行券の上に書いてありますローマ字での印刷を見ますと、NIPPONGINKOという表示でございます。そこで私どもは、極力ニッポン銀行という呼び名を使うように努めているところでございます。
  47. 前田正

    ○前田(正)委員 その辺、我々、口癖になっておるのか、ニッポン銀行というよりもついニホン銀行というふうな、そういう使い方がもう定着をしておるように思うわけでありますが、極力ではなしに、これは徹底して総裁、ひとつニホン銀行ではなしにニッポン銀行とはっきりこう申し上げていただきたいと思っております。  そこで、今回の日本銀行法案は、政策委員会を強化して、これからの金融政策の最終的な判断を示していくものと理解をしております。しかし、現在のその政策委員会の実態が私どもよくわからないために、今後の金融政策がどう決まっていくのか国民にはイメージがわかないわけでございます。  例えば九五年の九月に公定歩合を史上最低金利〇・五%に引き下げの際、政策委員会はいつ開催通知が行われたのか、あるいは公定歩合の変更を議論するということはいつ政策委員会へ知らされたのか、何時間かけてその公定歩合の引き下げの決定がなされたのか、その辺、ひとつ具体的に説明をお伺いいたしたいと思います。
  48. 松下康雄

    松下参考人 御指摘の九月初旬の公定歩合引き下げの取り扱い方でございますが、現在、日銀政策委員会は、原則としまして火曜日、金曜日、週二回が定例開催日となっているのでございます。御質問の公定歩合の引き上げは、九五年九月八日の金曜日の定例政策委員会において決定をされたものでございます。  したがいまして、開催日はあらかじめ定まっておる定例日でございますが、議案といたしましては、その委員会の席上で私からお諮りをいたしまして、各委員の御議論をいただきました上で決定をいたしたものでございます。  当日の政策委員会審議の所要時間でございますけれども、全体で約一時間半の審議時間でございました。
  49. 前田正

    ○前田(正)委員 要するに大変重要なその公定歩合の引き下げを論議するのに、事前に政策委員にも話がいっていない、突然に総裁が、じゃ公定歩合の件について討議しよう、討論しようということになったのだと思いますが、しかも大事なその公定歩合を変更するのに、わずか一・五時間、一時間半という非常に短い時間で、本当にそれだけで論議ができたのかどうかというところは私も大変疑問に思うわけでもございます。  まさにその政策委員会が、よく言われるスリーピングボード化しているということがあるわけでありますけれども、どんなに有識者を集めても、突然に公定歩合の変更を提案されても、なかなかこの公定歩合の十分な議論となるというわけにはまいらない、私はそう思うわけであります。  そこで、今度の日本銀行法の改正後は、公定歩合の変更を議論すること等の政策委員会の詳細な議事内容が通知されるからそうした問題はなくなると金制答申でも指摘をされておると聞くわけでありますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
  50. 松下康雄

    松下参考人 前回のこの決定につきましてちょっと補足をさせていただきたいと存じますが、議案の提出は当日でございますけれども、現在、政策委員のお仕事は定例の委員会だけではございませんで、その合間におきましても、常時、私どもからあるいは御自分で金融経済の情報を収集し、その判断をし、また私ども説明を求められるということがございますし、またお互いの間での御議論も時に応じて行っているところでございます。  したがいまして、金融政策の変更が必要となりますようなそういう事態になりました場合には、むしろ各政策委員の側からも通貨政策についてそろそろ検討すべき時期ではないだろうかというような御意向は、私どもの方にも感じられて、出てくるわけでございまして、前回もそのような順番を踏みまして実行されたわけでございます。  それから、その当時はもう非常に経済が落ち込む心配がございまして、このままでおいておきますとデフレ的なスパイラルが発生をする心配もあるのではなかろうかというようなことがあり、また、この足踏み状態でありました景気の評価をどう考えるかというようなことにつきましては、当日はもとよりでございますけれども、その前から数回にわたりまして御議論をいただいてきたところでございます。  こういうことでございまして、当日の委員会におきましては、その議論を集約するという形で、最終的に、この御議論の上で〇・五%の公定歩合引き上げを本日中に行うということで、全会一致で決定をした次第でございます。  これまでのところのやり方はそういうことでございますが、今後この法律が変わりますというと、事務当局が議案を用意しまして、そしてそれに基づいて運営するという形よりも、むしろ政策委員会自体の中で、各委員からるるの議案についての提案はもちろんできるわけでございますし、やはり政策委員会におきまして定例的に経済情勢金融情勢検討を行いながら、その中で時宜に触れてこれは必要であるというような場合に、例えば金融政策変更についての提案がその席上行われるというようなことも十分考えられるわけでございます。そのあたりの細かい具体的な運用をどういたすべきかということは、私どもも外国の例なども参照しながら今後十分それを詰めてまいりたいと思っております。
  51. 前田正

    ○前田(正)委員 そうすると、要するに政策委員の方々にはあらかじめ議題となるものに関してのそういうものについては、これからも積極的に知らせるというふうなことで御理解をしていいということですね。  そうすると、今度のこの日銀法改正後も政府からの出席者が毎回毎回その政策委員会に出席するのでは、これはもう今の政府代表委員制度と全く変わりはないというふうに私は懸念を持っているところでございます。今後、政策委員会で公定歩合の変更が議論される等の議事内容や参考資料が送付されれば、政府は出席の必要のない場合も判断できるようになって毎回出席する必要がなくなると考えますが、この辺は、大蔵大臣総裁にお伺いをいたしたいと思います。
  52. 松下康雄

    松下参考人 この点につきましてはい私どもとそれから政府との間にやはり経済政策金融政策の間のいろいろの考え方の疎通ということが大変に大切でございますから、それはそれで情報の交換、意見交換というものは平素行われてまいるところでございます。したがいまして、そういった事柄の中から、政府におきまして、この問題につきましては政府側にも提案権はあるわけでございますし、政府の代表を派遣することが適当であるという判断はその折におできになるものだと私どもとしては考えております。  先ほどから、大変私は申しわけないのですけれども、公定歩合の引き下げと申すべきところを引き上げと言い違ったそうでございます。謹んで訂正をさせていただきます。
  53. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 委員指摘のとおり、今般の法改正におきまして、現行の政府代表委員制度が廃止されまして、金融政策に関する会議に限って必要に応じて政府から出席できるということになったわけでございますが、出席の要否の判断についてのお尋ねでございますけれども、まず、本法案におきまして、日銀は常に政府と連絡を密にして十分な意思疎通を図らなければならないというふうにされておりますので、両者の間で日ごろから緊密な意見交換を行うことになります。また、政策委員会の付議内容審議資料が事前に通知されるというのは御指摘のとおりでございますので、今後、これを踏まえた通知が行われると考えられますので、政策委員会の前に十分な検討を行った上で、政府からの出席の要否を判断できるというふうに考えております。  ただ、具体的な出席の要否はその時々の状況に応じて判断されるということになりますので、現段階で具体的な出席頻度について確たることは申し上げかねるわけでございます。その点は御理解をいただきたいと思います。
  54. 前田正

    ○前田(正)委員 そうすると、要するに事前に議事案件を政策委員にそれぞれ知らせることによって、政府は場合によっては出ることもあるし、場合によっては出ないかもわからない、こういうことですね。わかりました。  次に、守秘義務違反の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今度、日本銀行の考査が法定化され、守秘義務の重要性が増すことから、日本銀行の機密保持体制についてお伺いいたしたいと思います。  過去に三菱銀行、これは新聞に出ておりますけれども、「日銀考査資料が流出」という大きな見出しで載りました。それからまた富士銀行の考査資料、これはエコノミストという雑誌ですけれども、「エコノミスト編集部はこのほど、富士銀行の不良資産を含む経営実態を調査した日本銀行の考査関係資料を入手した。」こういうことで、実はこう載っておるわけでございます。  そのようにして、日本銀行の考査資料が漏えいし、問題となりました。現在までに漏えい事件の真相は本当に解明をされたのか、あるいは身内の守秘義務違反の調査で調査が甘くなかったのか、その辺をお尋ねいたしたいと思います。
  55. 松下康雄

    松下参考人 お尋ねの件につきましての事実関係でございますが、まず富士銀行の件についてでございます。  平成五年の十月から十一月ごろの時期に「富士銀行考査所見要旨」というもののコピーが流出をしているということが一部で報道をされましたが、当該コピーを私ども入手いたしまして、行内の富士銀行考査関係書類と照合いたしました結果、これは日本銀行文書のコピーではないということが当時確認をされたのでございます。このことは、当時、当該報道機関にも私どもから伝えたところでございます。  次に、三菱銀行考査の件でございますが、平成五年の一月に私どもの考査資料と称されるもののコピーが流出しているということが一部で報道をされました。この件につきましては、日銀内部検査部署におきまして一カ月強にわたりまして誠心誠意調査を実施いたしたのでございますけれども、私ども、そのコピー自体を当時手に入れることができませんでしたために、資料の真偽を確認することはできませんでした。このため、流出をしたものであるかどうか、残念ながらその確認ができないという結果になりまして、このことは同年の三月に対外公表をしたところでございます。  いずれにしても、そういううわさが出ること自体、私どもとしては反省すべきことであると思い、当時、調査は厳しく十分徹底的に行ったというふうに聞いております。  私ども、そのように機密情報の管理につきましては、考査資料も含めて従来から厳重な措置を講じてまいっておりますが、特に今回の守秘義務の法制化の機会に、この守秘義務規定も踏まえながら、さらに一層万全な情報管理に努めてまいる考えでございます。
  56. 前田正

    ○前田(正)委員 今総裁がおっしゃられましたけれども、このエコノミスト、新聞でも内容が非常に詳しく載っておるということは、これはもう日銀の考査で調べたもの以外の資料に基づくものではない、私どもはそう思いますし、またこの三菱銀行の聴取メモというものも、実物は見ておられないとはおっしゃるものの、手に入らないとはおっしゃるものの、これほどのものが現に公表されておるということ、そのこと自体をやはり重く受けとめていただいて、ぜひひとつこの秘密の漏えいという問題についてはこれからも徹底して守っていただきたいと思います。それが日本銀行が信頼されるゆえんであろうというふうに思っております。大蔵省も、日本銀行に対する信頼回復のために、日本銀行の守秘義務違反に対しては厳しく是正指導を行っていくべきだと考えますが、その辺、大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  57. 三塚博

    三塚国務大臣 守秘義務は、公務員初めそれぞれのパート、パートで法律によって明示をされ、それに違反した場合は処罰をする、こういうことでありますから、特に独立性、透明性ということがありますが、先ほどの論議の中で、利子の政策は市場に大きな影響を与えるものでありますから、そういう点で先ほど総裁の一時間半、議題はどういう議題か私は見ていませんからわかりませんが、そういうものだろうと思っております。  まして、報道をされて、改善をし全力を尽くしておりますにもかかわらず問題指摘がそういう形で出るということは、金融システムの上からいきましても、また危機管理の上からいきましてもいかぬことでありますから、厳正な体制をとるということは当然です。
  58. 前田正

    ○前田(正)委員 次に、日本銀行のリストラについてお伺いをいたしたいと思います。  これはもう委員会でも何回も出ておるわけでございますが、日銀総裁は、報酬が年間五千万円超でありまして、交際費は三千万円超、相当高給な待遇になっておる、私どもはそう考えております。そしてまた、中にはそれぐらいしないといい人材が集まらないとおっしゃっておられる方も聞いてはおるわけでございますが、私は、日本銀行の役職員は、高給目当ての人材ではなくて、給料返上で活躍をなさっておる先ほどの中坊社長のように、給料は少なくとも気にしない、物価安定という使命感に燃えた人物こそがふさわしいと考えておりますけれども、その辺、総裁、どうお考えでしょうか。
  59. 松下康雄

    松下参考人 人材の確保ということは給与だけの問題ではないという御指摘の点は、まさにもうそのとおりであると思っております。私ども日本銀行の役職員におきましては、これは私は、みんなが国民から負託された重い使命というものを重要に考えて職務に精励をしてもらっているというふうに信じているところでございます。  ただ、日本銀行がその使命を全うするために、いろいろの専門的な分野等を含めまして本当に有為な人材を十分にそろえてまいりますためには、やはりこの能力あるいは職務の内容や職責というものに見合いました、またそれなりの対応、処遇ということにも配意をしていく必要がある。これは私、日本銀行の経営というものをお預かりしている立場からは、そういうふうにも考えているところでございます。
  60. 前田正

    ○前田(正)委員 この間ちょっと寄せていただいたのですけれども日本銀行の大阪支店は、今名門の茨木カンツリー倶楽部の会員権を所有されておられるようでございます。また、人に聞くところによると、大阪支店長の公邸というところは、何かパーティーができるような会場まで増設をされたと聞いておるわけでございます。  それでゴルフ場を一遍ちょっと調べてみたんですけれども、釧路カントリークラブ、北海道ですね。札幌ゴルフ倶楽部、札樽ゴルフ倶楽部、それから北海道カントリークラブ、青森カントリー倶楽部、秋田カントリークラブ、泉パークタウンゴルフ倶楽部、グリーンアカデミーカントリークラブ、伊香保カントリー倶楽部、よみうりゴルフ倶楽部、箱根カントリー倶楽部、これは四口を持っておられるそうでありますね。磯子カンツリークラブ寸富士レイクサイドカントリー倶楽部、昇仙峡カントリークラブ、新潟ゴルフ倶楽部、片山津ゴルフ倶楽部、松本カントリークラブ、静岡カントリー島田ゴルフコース、名古屋ゴルフ倶楽部、京都ゴルフ倶楽部、茨木カンツリー倶楽部、芦屋カンツリー倶楽部、岡山カントリークラブ、広島カンツリー倶楽部、玉造温泉カントリークラブ、下関ゴルフ倶楽部、高松カントリー倶楽部、松山ゴルフクラブ、高知ゴルフ倶楽部、門司ゴルフ倶楽部、福岡カンツリー倶楽部、古賀ゴルフクラブ、別府ゴルフ倶楽部、長崎国際ゴルフ倶楽部、熊本ゴルフ倶楽部、霧島ゴルフクラブ、沖縄国際ゴルフ倶楽部、琉球ゴルフクラブ、最後にこれは香港なんですが、ザ・ロイヤルホンコンゴルフクラブ、これだけの実は会員権を日銀さんが有しておられる。これは現在の相場で計算すると合計五億九千万、売買ができないものを除くものなんですが、これだけのいわばゴルフクラブを持っておられますし、また不必要な豪華施設は、私ども即刻売却をして、納付金として国民にやはり還元すべきと考えております。その辺、日本銀行見解をお伺いいたしたいと思います。
  61. 松下康雄

    松下参考人 私どもがゴルフ会員権を保有している点についてでございますけれども、これは、日本銀行業務それ自身が、金融の調節、通貨の調節を考えてまいります際に、その方法としまして、市場においてあるいは個別の各金融機関との取引等を通じまして、いわば市場のプレーヤーの一人として取引を行いながら金融政策判断をし、またその実績を確保していくというようなやり方でございます。そういう点で、地元の各地の金融界、経済界の方々との意思疎通を図っていくということも必要でございまして、ゴルフ会員権はそういった目的のために有用だということから、戦後間もなくから購入をしてきたというふうに聞いております。そういった地元の金融界、経済界の多くの方々が会員となっておられるところに個別に参加をしまして、広く意思疎通を図る上での役に立てたいということであるというふうに聞いているところでございます。  それから、大阪支店長宅でございますが、先般の阪神の大地震で全壊をいたしまして、今回建て直したところでございます。これは地震前に比べればやや小さくなっておりますけれども、支店長の役宅は支店長が居住をするということだけではございませんで、いろいろな場合に、銀行の内部でなくて外部で事務連絡とかあるいは会議とかということを行う必要もあるわけでございます。  この地震のような緊急災害の場合はもとよりでございますけれども金融上の不安というようなことがございますと、時を選ばず会議をするというようなことも必要でございますし、また他方では、内外の要人の方々の御訪問を受けまして、そこでお話を申し上げるために、これは事務所というよりも役宅という形でお話をいたす、そういった意味での公的なスペースというものもあわせて持っておりますために、一般の住居として見ますというと大き目になっているという点があるかと思いますけれども、この点、御理解をいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、私どももむだな不動産というものはこれからも売却をすべきであると思っておりまして、保有不動産の中で、人が減りましたので社宅が要らなくなったというような遊休地につきましては、逐次売却をやってまいっております。  それからまた、ゴルフ会員権も、先ほど申し述べましたような趣旨でございますけれども、社会通念上の妥当性というのは時代によって変わっていくものでもございますから、私どもとしましては、先般からの国会審議でも厳しい御指摘をいただいていることもございますし、今後も利用状況を勘案しながら見直しを行って、適正な活用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  62. 前田正

    ○前田(正)委員 総裁が今いろいろとおっしゃいましたけれども、実にこれだけのゴルフ場が本当に接待をするのに要るのかどうか、私は大変疑問に思うところでございます。また本当にそういうふうな接待用としてお使いになっておるのか、あるいは身内だけが楽しむためにやっておるのではないかとさえ我々思うところでございます。  しかも、そのパーティー会場というものが本当に外国の方々が来られて年間いかほど使われるのか。あるいはまた、町にも市中にもホテルなりいろいろそういう公的施設というものがあるわけでありますから、そういうものを使われれば、年にどれほどの方が来られるかわかりませんけれども、十二分にそれでいわば御接待をすることぐらいはできるのではないか、私はそう思うところでございます。  そのようなゴルフクラブのメンバーといいますか数とか、あるいはそういうパーティーができるような豪邸に住んでおることが、すなわち本当に日本銀行が国民のためにある銀行がどうかということは、本当に我々よくわからないということでもございますので、今総裁がおっしゃるように、この際、一遍洗いざらいすべての面を改革するという形をぜひとってもらいたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  それから次に、日銀の支店が多過ぎるのではないかと私は疑問がわいております。日銀はどちらかというと各民間金融機関に対しては支店の廃止あるいはまた人をリストラ、こういうことを積極的に今指導をされておると聞くところでございます。それならば、日銀自身がやはりリストラをする必要がある。自分たちはリストラしなくて、民間銀行にはリストラ、リストラ、支店を少なくしろ、人を少なくしろ、こういう指導をしておるというところは私は理に合わないと思うところであります。  イングランド銀行も全支店廃止という大胆な改革を行ったことがございます。昭和三十年代に日銀法改正議論された際にも日銀支店の廃止が必要と指摘されておられたようであります。昭和三十五年以来、どのくらいの数の支店を廃止したのか。現在でも札幌支店と小樽支店、あるいは下関支店といわば橋を渡った、トンネルを渡った向こう側に北九州支店、あるいは東京は東京で本店があるにもかかわらず横浜支店。これはどう見ても私どもは不必要な支店と言わざるを得ないわけでありますけれども、これらの廃止、支店のリストラを断行すべきだと思いますが、その辺、総裁のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  63. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行といたしましても、中央銀行としましてのいろいろの発券業務あるいは各金融機関との預金取引、貸出取引、国庫業務、国債業務等を行っておりますが、こういった機能を十分に執行いたしますために、現在、本店のほかに全国三十三の支店を持っているところでございます。支店につきましては、それぞれの地域の金融経済環境や地理的条件ですとか、あるいは各地域での金融機関の取引ニーズなどを総合的に勘案をいたしながら設立をしてまいったものでございます。  ただ、支店のあり方につきましては、金融制度調査会におきましても、交通や情報通信の進歩に従って、効率的配置の観点から見直しを行っていくことが望ましいとされたところでございますし、私どもも、そういった点を踏まえまして、この見直しというものを行ってまいりたいと思っております。  私どもとしましても、経営の効率化という点はいろいろと努力をしてまいっておりまして、例えば人員につきましても過去にかなりの人員削減をいたしましたり、また組織につきましても小規模の支店は四課制から三課制に削減をする、これは一九八七年でございますけれども、そういう合理化はいたしてまいったところでございますが、さらに、法律改正の機会をとらえまして検討をいたしてまいる考えでございます。
  64. 前田正

    ○前田(正)委員 ぜひこれは私どもとしても、全国三十三カ所の支店、十二カ所の事務所、これだけのものが日銀として必要かどうかということをもう一遍ひとつこの際洗い直していただいて、昔から比べて交通網も大変よくなっておるところでございますので、日銀そのものもやはりリストラを積極的に、国民に見えるようにひとつ進めていただく御努力をお願いいたしたいと思います。  それから、あしたまた日銀本店の視察に行かせていただきます。私も、以前本店の視察に行ったことがあるわけでありますけれども、今、国会委員会に上げられている国会議員の肖像画というのがございます。ここは上がっておりませんけれども、各それぞれのところに上がっておる。大体あれは百万円ぐらいをかけての肖像と私どもは聞いておるところでございます。しかし、日本銀行の本店に総裁の肖像画、松下総裁の肖像画が上がっておるのか、まだ私は行っておりませんのでわかりませんけれども、その肖像画は今までずっと歴代、著名な画家の手に成る大変高価なものと私は聞いておるところでございます。  例えば前回の三重野さんの、前総裁の肖像画に幾ら支出をしたのか。内部に日銀総裁意見をする者がいるのかどうかわかりませんけれども、こうした常識外れの浪費が行われておるのではないか。日銀監事の強化、日本銀行の経費支出に関し総裁意見を言える第三者のチェックを強化するべき必要があると考えますけれども、その辺いかがお考えでしょうか、お尋ねいたします。
  65. 松下康雄

    松下参考人 日銀の歴代総裁の肖像画でございますが、これは創立以来の各総裁につきまして、これまで高名な画家に制作をお願いしてまいってきているところと聞いておりますが、それをつくりますのは、退任後にお願いをしているところでございます。  制作費についてのお尋ねでございますが、これはそれぞれの画家の方々、先生の方々に対しまして、直接お答えをいたすということは甚だ礼を失することにもなりかねませんので、どうか差し控えさせていただきたいと存じます。  歴代の日本銀行総裁の肖像画は、銀行の長い歴史の中で、その時代その時代を映し出す一つの象徴のような意味合いを持ってまいったものでございまして、行内に展示をし、また一般の見学者にも公開をされているという事情でございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  66. 前田正

    ○前田(正)委員 その著名な画家とおっしゃる、その金額が出せない、これはやはり我々として納得のいかないものでございまして、これはぜひひとつこの数字をお聞かせいただきたいと思っております。
  67. 松下康雄

    松下参考人 個別の画家の先生にお願いをいたしまして、いろいろ御配慮をいただきまして制作をしていただいているという立場に私どもございますので、この点につきまして先生の御了解をいただきながらでありませんと、なかなかこの公の場でお答えを申しますことは差し控えさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
  68. 前田正

    ○前田(正)委員 今度の日銀法改正は、そういうところを改正するということが大事なことだと私は思っておるのです。だから、日銀は、日銀の人のための日銀ではなくて、国民のための日銀であるわけでありますから、これはやはりぜひこういうことを明らかにしていただいた上で我々は今回の改正考えたいというふうに思っておりますので、ひとつその金額をぜひ、何百万か何千万か、この辺の数字ぐらいはぜひおっしゃっていただきたいと思います。
  69. 松下康雄

    松下参考人 ただいま申し上げましたようなことでございますので、制作をされました先生の御了解をまずいただく必要があると存じます。先生の方にひとつ御了解を得るようなお話をいたしますので、しばらくお答えは待っていただきたいと存じます。御了解をいただきましたならば、御連絡、御報告を申し上げます。
  70. 前田正

    ○前田(正)委員 御了解をいただきましたら公表します、御了解をいただけなければできないということは、これは公的な日銀というその機関において当然支出したもの、領収書というものがあるわけですから、これさえ見せていただければ、我々は別に何も言うことはありません。  これはぜひひとつ委員長、後日でいいですけれども、必ず私どもにお知らせをいただきたいと思います。  それに、話に聞くと、一千万とも二千万とも言われる肖像画が現に上がっておる、私はそう聞いておるところでございます。その値段がそうなのかどうかは私は確認をしておりませんけれども、しかし、それほどに総裁として絵を残すことが大事かどうか、それよりも日銀総裁としての名前を残すことが私は大事なことだというふうに思っております。したがって、この絵というものをここらで一遍見直していただいて、写真ぐらいならともかくとして、絵まで残す必要があるのかどうかということをぜひひとつ検討していただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  71. 柳本卓治

    ○柳本委員長代理 ただいまの前田委員の質問内容につきましては、後に理事会において検討させていただきます。  次に、山本幸三君。
  72. 山本幸三

    山本(幸)委員 新進党の山本幸三です。  日銀法改正ということで、今回の法律改正の目的は日本銀行独立性を高めることに主な目的があるというふうに言われております。それは一面結構なわけでありますけれども、その結構な前提は、日本銀行がまともなことをやるという前提つきでありまして、もし日本銀行が変なことをやっている、変なことをやるようなところだということであれば、これは大変なことになる。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、猛獣を野に放つようなことになる可能性があるわけですね。  そこで、私はきょうは、八〇年代の終わりから九〇年代のバブル、そしてそれの崩壊から今日に至るまでの状況の中で日本銀行金融政策が果たした役割を検証しつつ、一体日本銀行というのはどういう考え金融政策をやっているのか、どうもそのやり方、考え方はおかしいのじゃないか、私は日本銀行金融理論は間違っているのじゃないかというふうに思っているのですが、そういう観点から質問いたします。きょうはその意味で、ちょっと技術的、専門的なところがありますので理事に来ていただいておりますけれども、しかし、これはどうしても日本銀行責任をはっきりさせるためには必要なことでありますので、御勘弁いただきたいというふうに思います。  まず最初に、振り返ってみますと、一九七三年から七四年に我々は大インフレを経験した。その後不況があって、そして経済が落ちついて七〇年代の中ごろから八〇年代の中ごろまで、大体八五年ぐらいまでかなり安定した経済状況になりました。そのときの金融政策を見ていると、非常に安定したマネーサプライが供給されているし、これは経済理論からいっても妥当な金融政策をやったように見える。  その後、おかしくなるのは八五年のプラザ合意以降でありますけれども、プラザ合意それからブラックマンデーを経て、八〇年代の終わりに今度は物すごいバブルが起こって、そして九〇年代に入ると今度は猛烈な平成大不況ということになる。そのときの八〇年代の終わりから九〇年代の初めにかけての金融政策というのは、マネーサプライという数字を見ても非常に大きな乱高下を繰り返す。物すごく伸びて、そして今度は一気にマイナスまでいってしまう、そんな金融政策をやってきた。私はこれを見ていると、こういうバブルそしてこの大不況というのは、日本銀行こそがその元凶ではないかというように思うのです。そのことを、きょうは少しきっちりとやりたいと思っています。  そこで、まず最初大蔵大臣にお伺いしたいのですが、一体金融政策とは何なのか。基本的な考えですね。この基本的な考えがもとで日本銀行監督しておられると思いますので、その点だけは、まず大蔵大臣認識をお伺いしておかなければなりません。  いろいろ考え方ありますが、基本的に経済学の教科書が言っていることはもう決まっておりまして、代表的にポール・サミュエルソンの経済学の教科書を見ると、金融政策というのはハイパワードマネーの供給——ハイパワードマネーというのは発行した現金通貨とそれに市中の民間銀行が日銀に預けている日銀預け金、これは準備とも言いますけれども、つまり日銀券発行プラス準備、この二つを合わせて、市中に回るお金のもとになるものですから、これをハイパワードマネーと言っていますが、金融政策というのは、そして中央銀行の役割というのは、このハイパワードマネーの供給をコントロールして、それを通じて一国の経済の貨幣の供給と信用をコントロールすることである、サミュエルソンの経済学にはそう書いてある。あるいはほかの教科書、スタンレー・フィッシャーとかドーンブッシュの教科書なんかも、要するにハイパワードマネーに貨幣乗数というのが掛かって、そして貨幣残高、マネーサプライというのが出てくるんだ、そこをコントロールすることが金融政策であるというように書いてあるのですね。  この点について、大蔵大臣は、金融政策というのはそういうものであるというように認識しておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  73. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融政策とは何と心得るかというお尋ねでございますが、委員指摘のとおり、ハイパワードマネーの供給をコントロールし、それを通じて一国の経済の貨幣と信用をコントロールすることというのが教科書に書いてあるというのは重々承知しております。  ただ、一般的に金融政策とはといったときに、中央銀行が各種の金融調節手段を活用することによりまして、物価の安定、経済成長等の政策目標を達成しようとする政策というような一般的な定義もございます。日本銀行法におきましては、そういうことを前提に目的が書かれておるわけでございますけれども、このハイパワードマネーのコントロール議論はいろいろな議論がございますので、私ども理解は、日本銀行がやっておることは、公定歩合の操作あるいは公開市場の操作、あるいは準備率の変更等の手段を通じまして適切な金融政策運営に当たるということだと理解しております。
  74. 山本幸三

    山本(幸)委員 各金融指標の調節手段を通じて貨幣の供給、信用をコントロールするという一般的な定義があると言われたのですが、そんな定義はどこに書いてあるのですか。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 定義という言葉はちょっと不適切だと思いますけれども日本銀行の基本的な考え方はそのようなもの、今申し上げたような各種の金融調節手段を活用することによって、物価の安定、経済成長等の政策目的を達成しようとする政策というふうに考えているというぐあいに理解しておるところでございます。
  76. 山本幸三

    山本(幸)委員 私は、日本銀行考え方がそういうものだというようなことを聞いているのではない。大蔵大臣大蔵省金融政策というものをどういうふうに理解しているのかと聞いているのです。
  77. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先ほども申し上げましたとおり、教科書に書いてある定義というのは重々承知しておりますけれども、私どもとしても、金融政策というものは、日本銀行が、今申し上げましたような各種の調節手段を活用するということによりまして、物価の安定、経済成長等の政策目標を達成しようとする政策だというふうに理解する次第でございます。
  78. 山本幸三

    山本(幸)委員 それでは、もうちょっと進めますが、各種の調節手段を活用して何をするのですか。
  79. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 この点はむしろ日本銀行にお尋ねいただいた方が適切かもしれませんけれども、究極の目標は、物価の安定であり、あるいは経済成長の達成ということであろうというふうに考えております。
  80. 山本幸三

    山本(幸)委員 もちろん最終的な目標はそうでしょうが、各種の調節手段を活用してハイパワードマネーをコントロールする、そういうことではないのですか。
  81. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ハイパワードマネーということに的を絞った御質問であるということになりますと、そのハイパワードマネーの調節というのが政策目標として適切であるのかどうか、これは委員御承知のとおり、いろいろな議論がございます。コントロールの可能性、コントロールはできるとしても、その他さまざまな関連において本当にそれが適切であるのかどうかといったような問題もありますので、私が今申し上げたような、究極の目標ということでお話をさせていただきました。
  82. 山本幸三

    山本(幸)委員 ハイパワードマネーをコントロールすることができるかできないかわからない、あるいはそれが適当かどうかわからないというような話ですが、適当でないという考え方はあるのですか。
  83. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ハイパワードマネーを直接コントロールする手段があるのかどうか、あるとして、それを実行することがマーケットに対して適切な対策であるのかどうか。私ども、ハイパワードマネーを中央銀行としてコントロールするということが全くできないというふうには考えておりません。考えておりませんけれども、そういう直接的な政策をとることによって市場にどのような影響を与えるか。もうちょっと申し上げますと、結局は金利の動向というものを基準にして、政策中央銀行として遂行されているのではないか、また、そういうことが最も妥当なのではないかということでございます。
  84. 山本幸三

    山本(幸)委員 ハイパワードマネーを直接コントロールできる対策があるかどうかというような話をされたのですが、それでは、最初に調節手段として挙げられた準備率を操作するとか公開市場操作をするとか、これはまさに直接ハイパワードマネーをコントロールすることではないのですか。
  85. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ですから、今申し上げたとおり、ハイパワードマネーを直接コントロールするということは決して不可能なことではないというふうに思っております。ただし、そういう直接的なコントロールをすることが市場にとって適切なことなのかどうかということについては、またいろいろな議論があるわけでございますので、結局、それは金利という形によって表からは示される、外からは見られるということでございますので、金利というものを中心に日銀政策を行うというのが合理的なことではないかというふうに考えておるわけでございます。
  86. 山本幸三

    山本(幸)委員 はっきりしたことは、ハイパワードマネーのコントロールはできると大蔵省考えている。しかし、そのことが市場にとって適切なのかどうかはよくわからない。したがって、金利というものを中心的に考えるということが必要かなという話ですが、ハイパワードマネーをコントロールすることが市場にとって何か不適切なことがあるのですか。その理由がありますか。
  87. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ハイパワードマネーの中で、銀行部門でない、企業あるいは家計によって保有されておる現金通貨の額というものについては、直接日銀コントロールできないわけでございます。でありますので、全体のハイパワードマネーにどの程度の影響を与えるかということになりますと、それは準備預金制度の運用なりなんなりに相当大きな負担がかかってくるというふうに考えられるわけでございまして、そういうのが本当にマーケットにとって一番適切な方法なのかどうかということについていろいろな議論がある、こういうことでございます。
  88. 山本幸三

    山本(幸)委員 大分わかってきました。現金のところはコントロールできないところがあるから、ハイパワードマネーで云々というのはちょっと問題がある、議論があるということですが、実はハイパワードマネーの中で現金通貨というのは大した量ではないのですね。ちょっと僕は数字がありませんが、計算すればわかります。今それをやっている暇はありませんからしませんが、やはり大きなのは準備。そこでそれを操作するということですが、大蔵省考え方は大分わかってきました。しかし重要なことは、大蔵省はハイパワードマネーはコントロールできると言明されました。  そこで、日本銀行にお伺いしたいのですが、日本銀行金融政策というのは一体どういうふうにやっているのか、どのようにして金融を引き締めたりあるいは緩めたりするのかこの点、基本的な考え方をお伺いします。
  89. 山口泰

    山口参考人 日本銀行金融政策運営の仕方というものも、戦後数十年の中で若干の変遷はございました。現在の考え方ということで申し上げますと、日本銀行に与えられました金融政策の諸手段、その中心は公定歩合の変更あるいは市場金利の誘導ということ、つまり市場金利の活用ということでございますけれども、これを活用することによりまして、物価あるいは経済活動という政策の最終的な目標に影響を与え、それを適切なところに誘導してまいりたい、こういうことでございます。
  90. 山本幸三

    山本(幸)委員 つまり市場金利をまずメルクマールとして大事に考えて、そして金融調節をやるということのようですね。  そこで、話を進める意味でお伺いしますけれども日本銀行金融を引き締めたり緩めたりするときの基本的な式というのがありまして、これに基づいてこの統計表もできているわけですが、お配りした資料の(1)ですが、日本銀行券増発マイナス財政資金払い超、これが日銀信用の増マイナス準備預金増という式があって、これは大体会計学上の恒等式なんですが、従来から日本銀行のいろいろな金融政策資料を読んだり論文を読んだりすると、この左辺、日本銀行券増発マイナス財政資金払い超、これがプラスのときは資金が不足している、民間の市場では資金不足の状況にある、そう判断し、逆に左辺がマイナスのときは民間市場で資金余剰状況にある、そう判断して、その判断に基づいて日銀信用を、資金不足であればこれをふやし、資金が余剰であると判断すればこれを減らすという調節をしているといろいろなところに書いているようでありますが、この基本的な考え方でよろしいですか。
  91. 山口泰

    山口参考人 ちょうだいいたしました図表の一番上にございます式の中で、今委員の御指摘のような考え方を基本的には持っております。  ただ、この式が厳密に当てはまりますのは、現行の制度のもとでは準備預金の積み立ての期間であります一カ月という期間をとった場合のことでございまして、その期間の中で、私どもは市場金利を適切に誘導していくことができるような日銀信用の増減あるいは準備預金の調整といったことを実行しているところでございます。
  92. 山本幸三

    山本(幸)委員 大体この式のとおりだ、しかし、それは準備預金積み立ての一カ月を単位として考える、そしてその間は市場金利に影響を与えることができるという形で金融調節をやるのだというお話ですね。その点については後からゆっくりやりますが、その前提を置いた上で、基本的に日本銀行はこの式で大体金融調節を考えていく。  そうすると何が起こるかというと、非常におかしなことが起こるのです。このおかしなことがバブルをいよいよ激しくし、あるいは平成不況をいよいよ深くした、私はそういうふうに考えているのです。  例えばどういうことかというと、あのバブル華やかかりしころ、土地取引が盛んになる。そうすると、現金を積んで土地を買いに行く。ばあんと現金を積んで、この土地売ってくれという形で現金取引というのが非常にふえる。そういう状況が起こってきたときに日本銀行はどう判断するかというと、そのときは、この左辺、日本銀行券の増発が起こる。そうすると、日本銀行はそのときは、この左辺がプラスですから、民間の資金は不足であると判断するのですね。民間資金は不足している。したがって、それを埋めるように日銀信用をまた出す。その結果何が起こるかというと、バブルで現金需要がふえて実体経済は過熱ぎみになるかもしれないときに、また日銀は信用をぶち込むのですよ。この考え方でいくと、これが起こってくる。私は、まさにそれが起こったと思っています。それがバブルをいよいよ激しいものにした。  それから、今度逆に九〇年に入って一気にバブルが崩壊して不況に落ち込んだ。そうすると、資産デフレ。不良債権が一気に発生して株価、地価は暴落して、そうすると、もちろん現金需要は減りますね。それから、そういう不況のときですから景気対策で財政資金をぶち込む。そうすると、財政の資金の払い超がふえたり、あるいは日銀券の増発が減ったりする。その結果、不況に入ったときにこの左辺はマイナスになる。そうすると、日本銀行はこれは資金余剰の状況であると判断する。資金余剰でありますから、日銀信用はいよいよ減らさなければいけないと減らしてしまう。その結果、マネーサプライはがんがん減って、そして平成不況はいよいよ二段、三段と深くなっていった。これが起こったのじゃないですか。その点についていかがですか。
  93. 山口泰

    山口参考人 先ほど申し上げましたように、私どもは、金融市場全体としての資金の余剰が発生したとき、あるいは資金の不足が発生いたしましたときは、それを日本銀行の信用の増減によって適切に調整するということを日々のオペレーションの中で実行をいたしております。  ただ、先ほども申し上げましたとおり、その実行をするに当たりまして、市場に生じました資金の過不足というものを全く受け身で、受動的にあるいは機械的に行うということではございませんで、一カ月という限られた期間の中でも、日銀信用の増減あるいは準備預金の金額を適宜調節することによりまして、市場の金利がその時々の経済情勢に極力見合うところに落ちつくようにというようなオペレーションを実行しているわけでございます。  委員の御指摘のところに即して申し上げますと、例えば八〇年代後半のいわゆるバブルと言われた時期におきましては、世間におきまして現金を使う取引が非常にふえるということが起きまして、日本銀行といたしましては、その日その日の現金の需要というのは、これは金融機関に預金を置いておられる消費者の方、国民の方が預金よりは現金を使いたいという需要があり、そのような行動をとられるわけですから、その現金を供給せざるを得ない立場にございます。  ただ、その資金を供給するに当たりまして、例えば金利水準が一定にとどまるようにするのが適当か、あるいは現金需要が非常に強い場合には金利が上昇するというふうにこれを調整していくのが適当かという判断をすることになるわけでございます。  仮に、金利水準の上昇が適切であるというふうに判断されました場合には、例えばその日の準備預金の残高が大きく取り崩されるというような資金の供給の仕方を行うわけでございます。つまり資金の供給を抑え目に行うわけでございまして、そういたしますと、金融市場は当然引き締まりの方向に向かい、市場金利が上昇するということになるわけでございます。  こういうことがいずれはその他のマーケットの金利の変更を促し、それを通じて物価あるいは経済活動といった最終的な政策目標にも影響が及んでいく筋合いにあるわけでございますが、何分、金利の変動から経済活動の修正に行き着くまでにはかなりの時間がかかります。タイムラグがございます。そこまで行き着きませんと、消費者あるいは国民の現金需要に対する需要の度合いというものもなかなか変わりにくいということでございます。
  94. 山本幸三

    山本(幸)委員 その点は理論的な話ですから、ちょっと後でやります。  要するに、言っていることはさっきと同じことで、一カ月という準備預金を積むという期間を見れば、もう市場の資金不足、資金需要に対してその点は完全に満たさなければいけない、日本銀行はそれに受動的に応じますと。だから、準備預金の積みの最終日には不足している準備預金は全部供給してやる。しかし、日本銀行は、その場合に、その前の期間の間では、準備を、その日その日の必要額から見れば多目か低目に供給して、最終的には全部見てやるのだけれども、途中ではその進捗状況をある程度コントロールすることで金利水準に影響を与えることができる、そういう主張をしているわけですね。私はそれは疑問に思っています。  というのは、きょう準備を供給してくれなくたって最後には面倒を見てくれるとわかっていたら、民間銀行の行動は、日本銀行がこの金利でいいと考えるようなふうには動かない。はっきりと予想が立てられるときには、その予想に基づいて金利水準を民間銀行は必ず考えると思いますから、最終的にけりをつけてやる以上は、そう動かないだろうというふうに思いますが、この点は少し後でやります。  その前に、具体的に、実際のバブルのときの状況を見たいのですが、この図の(2)と(3)を見ていただきたいのですが、この図は、要するに実体経済とマネーサプライの関係を見ると何が起こったのか。名目マネーサプライを名目GNPで割ったものをマーシャルのkといって経済分析でよく使いますが、その数値を見ると、趨勢的に成長していきます。これは経済の拡大とともに成長していきますが、あの七三、四年のバブル、インフレが起こる前も、七二、三年には大幅にマーシャルのkは趨勢線より上がるわけですね。つまり、マネーサプライが実体経済より異常に発行されたときには必ずその後インフレが起こる。それから八六年から九〇年にかけて、これも趨勢線よりは異常にマネーサプライがふえている。このことがインフレ、バブル原因でなくて何が原因か。  それから、この(3)を今度ちょっと見ていただきたいのですが、ここでおもしろいことが起こる現象にちょっと注目してもらいたいのです。  実は日本銀行は、あのバブルのときに金融引き締めをやらなければいかぬということで、一九八九年の五月三十一日、公定歩合を二・五から三・二五に引き上げます。しかしマネーサプライは一向に減らない。九〇年いっぱいぐらいまで減らないのですね。九〇年の第三・四半期には一三%ぐらいになってくる。つまり、この後公定歩合を五回引き上げるのですが、公定歩合を何回も引き上げたと言いながら、マネーサプライは減らないのです。つまり、実際は金融引き締めをやっていないということですね。  なぜそういう金融引き締めをやらないようなことが起こるかというと、日本銀行は、私がさっき言ったように、基本的にこの式をもとに物事を見るものだから、この式で見ている限り資金不足の状況が続いていると思ってマネーサプライを供給し続ける。ところが、さすがに九〇年の後半に入るとこれは大変だということになり、あるいは九〇年になると実体経済の方が大きく動いてきます。冷戦構造の崩壊とかあるいはイラクの事件とか、そんなことが起こって、どうも経済はおかしいぞという話になって、株価がまず暴落し始めて、そして九一年に入ると地価が暴落する。そうすると日本銀行は、そこで九〇年の八月に公定歩合を今度は下げ始める、金融を緩和したというわけですね。ところが金融を緩和したと言いながら、マネーサプライは全然ふえない。むしろつるべ落としのように落ちていく。  これは一体どうしてだ。九〇年に入ると、この日本銀行金融政策にプラスして大蔵省の不動産融資総量規制というのが九〇年の四月から始まります。あるいは税制の改正とかいろいろなことが寄ってたかって行われて、そして資産価格の暴落に至るわけですが、しかし金融政策として重要なことは、むしろ景気がおかしくなったというときに、なぜこんなマネーサプライがマイナスに落ちるようなことまでやるのか。公定歩合を引き下げたと言いながら、金融の緩和とか引き締めとかを実体的にあらわすマネーサプライにはさっぱりあらわれない。むしろ逆の動きをする。これはおかしいんじゃないか。これはどうしてか。  ところが、日本銀行はそれに対して、実は日本銀行は一九八八年の日銀調査月報の中で、異常なマネーサプライの増加は資産価格の増加、つまりバブルを生じるおそれがあると警告していた。ところが、九〇年に入って九二年にその辺を回顧して論文を発表していますが、その要旨は、要するに日本銀行には責任ありません、こういうふうにマネーの急減が起こったのは資産価格が暴落して企業の資金需要が急激に落ち込んだからです、日本銀行はそういう動きに対して起こってくるハイパワードマネーについてはそれを受動的に受けるしかありません、そういう説明をしているんですが、日本銀行はこのバブル、そして不況に対していかなる責任もないといまだに考えているんですか。
  95. 山口泰

    山口参考人 ただいま金融政策につきまして幾つかの問題の御指摘をちょうだいしたというふうに承りましたけれども、主としてマネーサプライを中心にしましてお答えを申し上げたいと存じます心  まず、いわゆるバブルと言われた時期におけるマネーサプライの増加、それから、その増加が一九八九年に公定歩合を引き上げた後においてもなかなかとまらなかったのはなぜかという点でございます。  一九八九年の五月に公定歩合を引き上げまして、その後も数次にわたる金利の引き上げを実施いたしましたので、これは当然のことながら経済活動に影響を与え、ひいてはマネーサプライにもブレーキをかける筋合いのものでございました。ただ、当時の資産取引の状況あるいは資産価格の見通しというものが世間一般に非常に強気のものがございましたので、私どもの実行いたしました金利の引き上げによってこれに直ちにブレーキをかけるということが難しかったということではないかと理解しております。  先ほど、一般的に金融政策の効果が発現するまでには時間がかかる、タイムラグがございますということを申し上げましたけれども、こういう資産価格の上昇が非常に遠いテンポで進んでおるときには、なおさらそういう時間がかかるという要素があったのではないかと思われます。したがいまして、この点を踏まえますと、金融政策というのは極力早目早目に手を打っていく必要があるというのが私どもの一つの教訓でございます。  九一年に入りまして御指摘のとおり状況が変わり始めまして、日本銀行は九一年の七月から公定歩合を引き下げ始めました。当時の経済企画庁の判断によりますと、景気の基準日付の転換、いわゆる景気のピークでございますが、これはその年の四月ごろであったということでございましたので、それから幾ばくもなく金融を緩和方向に転換したわけでございます。その年のうちに公定歩合を三度にわたって合計一・五%引き下げました。  そういう点から申しますと、経済情勢の変化に対応いたします金融政策の転換は遅きに過ぎたということは必ずしもなかったというふうに思っておりますが、ただ委員指摘のとおり、その後マネーサプライの動きを見ますと、このグラフにもあらわれておりますようにかなり急速な減速をたどるというふうに動いてまいりました。マネーサプライが八〇年代の後半にふえましたときも、それから九〇年代の前半に減速いたしましたときも、いずれも資産価格なり資産取引なりの状態というものに非常に強く関連し、影響をこうむっていたというふうに思っております。ここでもやはり金融政策の効果が出るまでに時間がかかるという要素がございますが、それに加えまして、いわゆるバブルと言われるほどに資産価格が上昇し、国民の購買力からかけ離れてしまうという事態が起きてしまった後、これを適切に修正するといいますか、それがいかに難しいことかということを経験的に思い知らされたということでございます。  いわゆるバブルについての責任という御質問が最後にございまして、私ども、実はこのバブルという現象はいろんな国で歴史的に何回か経験しておりますが、いずれのバブルをとりましても、実はその原因とか構成要素というのはかなり複雑ではないかというふうに思っております。  我が国の一九八〇年代につきましても、やはり経済活動なり資産価格なりについて右肩上がりの状態が相当長期にわたって持続するという非常に楽観的な見通しが基本的に背景にあったというふうに思います。そういう楽観的な背景がなぜあれほどまでに生じたかということにつきましては、先ほど複雑という言葉を使わせていただきましたけれども、幾つかの要素があったと思います。  短期間で二倍にも上昇した円相場を何とか克服して新しい成長の展望が切り開けてきたということが産業界にとっては大きな自信を生んだと思います。また、経常収支の黒字が大きくなってきたこととの関連で東京の金融・資本市場が国際金融センターにのし上がってくる、こういうイメージ、それに関連いたしましたオフィス需要の急増といったことも一つの要素だったと思います。その他にも税制、法制といったことの影響もあったと存じますが、私どもはこのときの長期にわたる金融緩和政策、それによってつくり出されましたマーケットの緩和の状態というのも、バブルがあれほどまでに大きくなるに至った一つの要素であったというふうに受けとめております。
  96. 山本幸三

    山本(幸)委員 その責任についてはっきりしないんですが、もうちょっと細かくお聞きします。  それじゃバブルが起こるとき、要するに右肩上がりの様相が起こってきた。企業家は自信を持ち、あるいは経常収支が黒字で東京が金融センターになるという意味でオフィス需要がふえた、あるいは資産価格が上昇した、そういう実体経済状況とマネーサプライとどういうふうに関係していると理解しているんですか。
  97. 山口泰

    山口参考人 一九八〇年代後半につきまして経済情勢を若干コメントをさせていただきましたけれども、そういう経済情勢のもとで、金融機関に対する非常に強い資金需要が発生いたしました。また逆に金融機関におきましても、資産価格の右上がりという想定のもとに極めて積極的な融資の方針がとられたと理解しております。マネーサプライというものの約九割は金融機関の預金でございます。したがいまして、金融機関の与信活動が積極的になることによりまして金融機関のバランスシートが変動いたします。そういう金融機関行動を媒介にいたしましてマネーサプライの速い伸びというものが見られたということでございまして、なぜそういう金融機関の与信行動が生じたのかという背景をつぶさに見てまいりますと、先ほど申し上げました幾つかの要素の中に当時の金融政策も含まれていた、こういうふうに理解しております。
  98. 山本幸三

    山本(幸)委員 つまり経済がそういうふうにいい状況があって、それに対応するために金融機関が貸し出しを進め過ぎた、そのことによってバブルは起こったんだという議論なんですが、ここが問題なんですね。  確かに、金融機関は貸し出しをふやすと、その貸し出しというのは貸し出した先の預金としてバランスシートに計上する、それによって預金がふえていく、それでマネーサプライがふえるということなんですが、これは日本銀行が何もしなければそんなことにはならない。もし金融機関がどこかに貸し出しをふやしたいとして貸し出しをふやします。百ふやす。そうしたら、その百が預金としてもバランスシート上計上されて、貸し付けと預金に計上される。日本銀行説明するのは常に、そういうふうに起こってくるからマネーサプライがふえちゃったんだ、私どものあずかり知るところでありませんよという説明をするのですが、これは実はごまかし。  そういう状況が起こったときに何が起こるかというと、今の準備預金制度のもとでは、貸し付けがふえた分、預金がバランスシート上計上されちゃうと、その百に対する準備預金を持たなきゃいけない。無利子で日銀に積まなきゃいけない。何も日銀がしなかったら、日銀がその準備預金の分を貸してやらなかったら、日銀は何もしていません、これは金融がちょっと緩み過ぎていて景気が過熱状況だ、おかしい、そんなところで貸し付けがどんどんふえるというのはインフレになるおそれがあるときちんと判断すれば、そんなことしない。  もし日銀がその与信がふえたということによって起こった預金の増加に対して必要な準備というものの金額を日銀信用という形で供給しさえしなければ、民間銀行はどこかからそれを持ってこなければいけない。民間銀行はどこかから持ってくるとすると、どこで持ってくるかというと短期金融市場から持ってくる。短期金融市場から持ってくると、短期金融市場の金利が上がる。短期金融市場の金利が上がればほかでも金利が上がって、それで自然に引き締まっていくのです。  ところが、日本銀行は何をやったかというと、これを全部受け入れた。つまり日本銀行のそのときの考えは何かというと、そんな形で短期金融市場の金利が大きく上がるのは好ましくない、自分が思っている短期市場金利はその水準で維持したい、そのために需要がふえた分に応じて供給もふやしちゃったのです、その準備の。この(4)のところに準備市場の需要曲線をかいています。これは後でちょっと日銀議論しなければいけないので使いますが、要するに準備というものに対する需要もある。それは銀行の与信活動、貸付市場によって決まる貸し付けの需要と供給曲線、それを受けて、さっき言ったように与信がふえたら預金もふえますから、その預金に応じて準備が必要になる。したがって、準備市場でも準備の需要曲線が上にシフトする。シフトすると、コール・手形レートの短期市場金利が本来は上がるべきだ、日銀が何もしなければ。日銀が余分な準備を供給しなければ、短期市場金利が上がるということによって金融市場ではバランスがとれて、そして余分な与信活動がどんどん進むということは起こらなくなるのです。しかし日本銀行は、それは民間銀行がやったことですよと言いながら、実際やったのは日銀の貸し進みなんです。日銀がそれによって必要となった準備をちゃんと貸してやるから、それがどんどん回っていよいよ貸し付けや与信活動がふえて、そして預金もふえて、それがいよいよバブルになった、そういうことじゃないのですか。
  99. 山口泰

    山口参考人 マネーサプライは、その大部分金融機関の預金でございますから、それが大きくふえるというときには、現在の準備預金制度のもとでは金融機関は準備預金を日本銀行の当座勘定に積まなければいけません。おっしゃるとおり、準備に対する需要がその時点ではふえてくるわけでございます。日本銀行がそれに対して何のアクションもとらなければどういうことになるかといいますと、私どもが埋めておる、あるいは需要を充足しておりますのは個々の金融機関の準備金の不足ではありませんで、金融組織全体としてどうしても足りない、そういう部分でございます。その部分も埋めずにほっておくということになりますと、当然のことながら短期金融市場の金利は極めて大幅に上昇するということが起きるはずでございます。逆に、何らかの理由で金融組織全体といたしまして準備に対する需要が減ってきた場合、これについて何のアクションもとらなければ、逆に短期金利は暴落するはずでございます。つまり、金融市場の金利が非常に大きく上下するという状態ができるはずでございまして、その状態が必ずしも望ましくないと思いますものですから、私どもは、そういう金利の乱高下というものが起きないように金融調節をオペレーションという形でやっております。  ただ、それは金利の変動を封じてしまうということでは決してございませんで、準備預金の積み方を速めたりおくらせたりするということで短期金融市場の金利を誘導することは十分可能であり、現にそういうふうにやってきております。  したがいまして、委員の御指摘は、せんじ詰めていきますと、結局、この八〇年代後半のマネーサプライがかなりふえましたときになぜもっと大幅に金利を上げなかったのかという問題に行き着くような感じがいたします。誤解がありましたら御指摘いただきたいと思いますが、その点について一言だけ申し上げさせていただきますと、マネーサプライをなぜ重視するかという問題に結局は入っていくのだろうと存じますけれども、それはマネーサプライが安定しておれば物価も安定している、あるいは経済活動も安定しているということで、マネーサプライと経済政策の最終的な目標の間に比較的強い緊密な相関関係があるというふうに考えるからであろうと思います。  御記憶のとおり、八〇年代の後半は、急速な円高の影響もこれありまして、マネーサプライの急速な増加にもかかわらず、このバブルの期間、大体の期間を通じまして物価は極めて安定した状態が続いておりました。金融政策の最も重要な目標はやはり物価の安定ということでございますので、私どもは、マネーサプライの増加は増加として十分認識はいたしておりましたけれども、もう一方で、物価がこの時期非常に安定した状態を続け、また急速な円高の結果、日本経済の将来について一時期かなり悲観的な見通しが多かったというような当時の状況を踏まえまして、ぎりぎりの政策的な選択をしていった、こういうふうに理解しております。  物価の安定というのはバブルの時期の中でもかなりの期間にわたって実現したわけでございますが、今から振り返ってみますと、その当時の物価の安定というのはやはり持続可能性が十分ではなかったということでありましょうし、また資産価格の大幅な変動というのがマネーサプライ増加の背後にあったわけでございますから、そういう意味で、この時期の金融政策につきまして、先ほど来申し上げておりますように、バブルの一因であったということと同時に、悔いの残るところがあるということでございます。
  100. 山本幸三

    山本(幸)委員 おっしゃったように、短期市場金利をどうしてもっと上げなかったのか。むしろそれよりマネーサプライを安定化させた方がよかったなと私は思っている。それはなぜかというと、金利で意味があるのは名目金利ではなくて実質金利なのですね。その当時、金利が高いといっても、インフレ期待が物すごく大きくなってくれば実質金利は低い。あるいは今日のように経済が不透明な状況になると、名目金利は低いといいながら物価水準はむしろマイナスか超安定。本当はそれにプラスしてリスクプレミアム、企業活動をやるときのリスクをとるだけのプレミアムが要る。そのすべてを合わせた期待実質資本コストで企業は判断する。したがって、非常に重要なのは名目金利ではない。実質金利であるし、いやそれよりも期待実質資本コスト、これで見なければいけない。その意味では、私は、このときに短期市場金利がもっと上がったって構わなかったと思っているのです。  今お話ししたことからおわかりのように、日本銀行は名目金利の大幅な上昇というのは非常に嫌う。経済が過熱ぎみであるにもかかわらず、与信活動がふえているときに、準備が必要となった場合に何もしなければ物すごく上がってしまうから、それを嫌って準備を供給する。その結果インフレはちっとも収束しない。まあ、完全にではない。本当はこれぐらいまで短期市場金利が物すごく高く上がるべきところを、それはちょっと行き過ぎたという感じで、ほどほどにというような形で日本銀行は常に行動する。そのことが、さっきからあなたが一生懸命言っている経済の実体に影響を与えるのにタイムラグがかかるということに結びついているわけですね。  日本銀行の論文を読むと、大体一年半から二年ぐらいかかると書いてある。一年半から二年ぐらい金融政策をやり始めてかかるのだったら、もう状況は変わっている。バブルのときから今の不況が起こったのはそうではないですか。引き締めて、その影響があらわれてきたのは、もう実体経済が弱気に転じたときにあらわれてきて、二重に不況を深くしたのではないですか。  そういうように、この日本銀行金融政策あり方というのは、一つはさっき言った会計学上の恒等式で見ていて、一体どれが日本銀行が操作できる政策手段なのかわからない。どれが原因であり、どれが結果なのかわからない。あるいは、こういう政策をやるときに、単にこの恒等式で見て資金不足だとか資金余剰だとかいうような判断をしてしまうものだから、一体そのときの金融状況は逼迫していたのか緩んでいたのかわからない。だから間違いを犯す。それはいわゆる価格の観念がないのですね。つまり金利という観念がない。日本銀行は、そうではあるけれども、いや、やはり金利は見ていますよと言っているのですが、さっき言ったように、その金利ということにも徹底していない。何かある主観的な、自分たちが望ましいと思うような短期市場金利のレベルというものを想定して、でもそれ以上はもう余りめちゃくちゃに動くというようなことは嫌って、そしてマネーの面では、必要が起こってくれば準備需要というものをほぼ一カ月の単位で見れば受動的に供給してしまう、そういうやり方をやっているようですね。  それに関連して、理財局長も見えているのでちょっとお聞きしますが、実は日本銀行の九〇年代に入ってからの急速なマネーサプライの減少の説明として、実体経済が弱くなったということも言っていますが、あるいは金利の自由化とかなんとかいろいろあるのですが、一つに郵貯シフトということを言っているのですね。九一年から郵貯シフトが大幅に起こって、マネー需要が減った。この点、日本銀行いかがですか。郵貯シフトもマネーサプライの減少の原因だと思っているのですか。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  101. 山口泰

    山口参考人 マネーサプライと先ほど来一つの言葉で議論をさせていただき、お答えを申し上げてきたわけでございますけれども、御高承のとおり、マネーというのは、狭義のキャッシュ、日銀券というところから始まりまして、M1、M2、M3あるいは広義の流動性というすべての金融資産を包含する概念まで、非常に狭義から広義まで多岐にわたる概念でございます。その中で、私どもが主としてこれまで使ってまいりましたM2あるいはM2プラスCDといいますものは郵便貯金を含んでおりません。あるいは、当然でございますが、国債その他我が国における主要な金融資産を含んでいない部分でございます。その部分と、民間金融機関の預金から構成されますM2プラスCDという一つのマネーサプライ概念の間には、当然資金の出入りがございます。その資金の出入りはいろいろな形で起きますけれども、郵便貯金との間の資金のシフトというのも時により非常に大きな流れになることがございまして、御指摘のようなことがあったというふうに理解しております。
  102. 山本幸三

    山本(幸)委員 そういう説明をするのですが、僕は大体においておかしいと思っているのです。私、最初にマネーサプライを定義しなかったので申しわけないのですが、私はM2プラスCDで言っています。それで結構だと思いますが、国債にそれが動いたからマネーサプライが減るかそんなことはない。これは市場参加者のバランスシートの動きをずっと見ていればわかるわけですね。つまり、国債をだれが売ったか。民間の主体が持っているものを売れば、預金を引き出して買った人はいるけれども、逆にそれを売った人のところに預金は入ってしまうのだから、市場全体とすればマネーサプライは変わらない。そういう意味では、そういういろいろな、金利が自由化したとか動いたとかいうような話でマネーサプライが出入りしましたなんて、そんな素人に言っているような話だったらいいけれども、私には通用しない。  唯一マネーサプライが減少することが起こるのは、郵貯シフトの中の一部。郵貯にシフトしたからといってマネーサプライの減少が起こるわけではありません。これは郵貯に民間の銀行から預金が流れたとしても、郵貯は資金運用部に預けられる。そうすると、その資金運用部が民間に金を放出している限り、余資の運用として民間が持っている証券を買ったり民間のコール・手形市場に投げたりすれば、当然それは民間部門の預金増として返ってきますから、マネーサプライは変わらない。しかし、郵貯に大きくシフトしてもマネーサプライはほとんど変わらないのだけれども、唯一、資金運用部が日本銀行が持っている国債を買ったときに減る。日本銀行が持っている国債を買うと、市中の預金という姿から政府預金になる。政府預金になると、さっきの最初の、一番目の数字で言ったように、財政の受け超という形になってマネーサプライは減るのですね。確かに、この九一年から九二年にかけて資金運用部の国債の保有を見てみると、日本銀行から物すごく買っているのですよね。しかし、それはその後なくなります。  だから、問題は、そういうのをやめてしまえばいいのじゃないか。そういう意味で郵貯シフトとかなんとかが経済の撹乱要因になるというようなことだったら、資金運用部は、その余裕資金の運用を、日本銀行から国債を、国債だけじゃないのですけれども、ほかの証券でもいいのですが、そういうものを購入するようなことをやめて、資金運用部の余資の運用というのは民間に限定する。コール・手形市場か現先などで運用するというような、そういう制度にしてしまえば、もう国債に行ったり郵貯に行ったりというようなことでマネーサプライが減りましたという日本銀行のおかしな説明などは、全然間違っているということがはっきりする。この点について大蔵省いかがですか。
  103. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  資金運用部は、今委員言われましたように、預託を受けた金額を直ちに財政投融資の対象となっている公庫とか公団、こういうところに貸し付ける、この場合は問題ないわけでございますが、そうではない場合には、これは資金運用部資金法に基づきましての運用の一環といたしまして国債等への運用を図るわけでございます。それによりまして、今委員が言われましたように、私どもとしては基本的にはまず金融市場への還流を図るということを考えるわけでございますが、したがって、政府部内に滞留し運用されていない資金があるわけじゃございません。  その次に、日銀との関係になるわけでございます。  そこで、運用部は、金融市場での運用の一環といたしまして、まさに今委員言われました日本銀行との間で国債を用いた現先取引を行っているわけでございます。これが日本銀行との関係で、それだけの現象を見ますと日本銀行に資金が吸収されるわけでございますが、日本銀行におきましては、これらを含めて金融情勢を総合的に勘案された上で適切に全体としての金融調整を行っておられるというぐあいに考えております。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 山本幸三

    山本(幸)委員 急に言っても無理でしょうから、これはぜひ改善を考えてもらいたいなと思っています。というのは、そんなことを理由にして、日本銀行のマネーサプライの運営方針、金融調節がおかしいことをその理由にされたら困ってしまうので、この点は今後検討してもらいたいというふうに思います。  そこで、いろいろ言ってきていますが、それではどうしたらいいのか。  日本銀行は、準備預金の最終積み立て日に、この日に必要な準備を全額供給しなきゃいかぬ、そういう気持ちで運営をしている。今の準備預金制度からいうと、準備というのは民間の銀行信用がつくった結果であるから、それはもう決まってしまっておるからそうやらざるを得ないのだ、しかも準備預金の積み立てというのは毎月十六日から翌月の十五日、つまり十五日が前月の必要準備預金に対する積み立ての最終日、そういう積み方をしているからそうせざるを得ないのだというように言って、積み最終日にはこれを必ず見てやらないと銀行は大変なことになる、したがってそうせざるを得ない、しかし、その間の期間は進捗率を操作することによって金利を動かすことができるというような議論のようですが、その意味で、日本銀行はハイパワードマネーをコントロールできない、もう準備は決まった結果としてそれを見なきゃいけないのだから、こういうようにいろいろな論文で言っているように思いますが、それでいいですか。
  105. 山口泰

    山口参考人 ハイパワードマネーというものを流通現金と金融機関の日本銀行に預けております準備預金というふうに定義いたしますと、日本の場合、刻々金額も変化しておるわけでございますが、直近のところで大ざっぱに言いますと四十五、六兆円という金額でございます。このうち流通現金が大体四十三兆円程度、準備預金の金額が三兆円程度、こういうような構成になっているかと存じます。  このうち、流通現金につきましては、国民の方々がさまざまな理由によって現金を手元に置いておきたいというニーズに応じて決まっていくわけでございまして、申し上げておりますとおり、その時々の中では私どもとしてもいかんともしがたい動きでございます。  したがいまして、ハイパワードマネーをコントロールする、しかもそれを極めて限られた短期間の中でコントロールするという場合には、流通現金の動きを金融機関の準備預金によって相殺していくというようなオペレーションが必要になってくるわけでございます。相殺していく場合、流通現金の減少した場合には準備預金の金額を大幅にふやしていくということによって相殺することは理論的には可能でございます。逆に、流通現金が大幅にふえた場合には準備預金の金額をその分圧縮するということが必要になりますが、その上限は現在の状況のもとでは三兆円というところで区切られることになります。したがいまして、事のよしあしを別にして申し上げますと、ごく限られた範囲の中でしかハイパワードマネーのコントロールは難しいのではないかというふうに考えております。
  106. 山本幸三

    山本(幸)委員 そのごく限られた範囲ではできるということですか。
  107. 山口泰

    山口参考人 今申し上げました三兆円というバッファーを有効に使い得る限りにおいて、その事のよしあしは別といたしましてとつけ加えさせていただきますが、その範囲の中で理論的には可能でございます。
  108. 山本幸三

    山本(幸)委員 その意味では、私は最初にちょっと間違ったかもしれません。通貨の量の方が多いという意味で、ちょっと訂正しておきたいと思いますが、しかし、量的には少ないかもしれないけれども、この準備預金というのはまさに金融政策の実に大きな手段なんですね。この準備を通じて短期市場金利の動向を決めて、金融政策というのは行われているわけですね。それをやるときに、先ほどから何度も出ていますが、最終的には、一カ月で見れば、この資金需要というのは埋めなきゃいかぬ。しかし、途中では進捗状況をあんばいすることによってコントロールできるというようなことをやるということなんです。  しかし、準備という意味ではコントロールできるということなんですが、この準備の積みの最終日に積まなかったら、過怠金というのがかかるのですね。公定歩合プラス三・七五、今の状況ではかなり高い。  この過怠金がかかった例というのはありますか。
  109. 山口泰

    山口参考人 ちょっと詳しいデータを持っておりませんが、全くの単純な事務ミスによりまして準備預金の積みの不足が生じ、結果として過怠金がかかった例はあるようでございます。
  110. 山本幸三

    山本(幸)委員 全くの間違いでかかったという例はあるということですが、実は、この積みの最終日に積めないというのは大変なことになるというふうに民間の銀行では理解されている。  そして日本銀行は、結局基本的には、私が最初に申し上げた式で物事を考えながら、資金不足、資金需要というものを考えながら、しかしその結果、経済に大きな変動を与える。それはなぜかというと、マネーサプライの動きというよりは、短期市場金利水準というものを余り乱高下させたくないから。そして、積み最終日のときにその短期市場金利をどのレベルへ持っていくかを日本銀行はどう考えているかということによって金融調節をやると言っているわけですね。  それがマクロの経済運営としての金融調節なんですが、実際の現場でこの積み最終旦広々が行われるときには、そんなきれいごとじゃない。かなり日本銀行はこの積み最終日に——最終的には面倒を見るとしている。その最終的に面倒を見るとしていることが、実は金融機関のマネーサプライの変動をまた大きくしていることにもなっているわけですけれども、具体的に最後の積みをやるときにどんなことが起こるか。  日本銀行のやっていることというのを書いた本があるのですが、焼き鳥というのですね、そのときに積みをできそうになくなった場合。   最後の頼みの綱は日銀貸出。   日銀から公定歩合で借りて、それを金利ゼロの積立金に充当するというのは、銀行の論理には反するが、ことここに至ってはそういうことは言っていられない。 もし積立が不足したら大変なことになる。頭取は大蔵省に呼ばれて怒られる。あるいは、準備預金が不足した、その銀行に金がないということになって、公表されたら大変なことになる。経理部長は当然首になる。役員は当然何らかの処分を受ける。通常は、最後には日銀貸し出しをやるということがあるからみんな安心してやっているんだけれども日銀は銀行をいじめようとしたら、ここで嫌がらせをやる。  実際にこの人が丁銀行という、これはどこか大体わかっていますが、焼き上げたことがあると。準備預金積み立ての期限の当日だというのに丁銀行は二百億円ほど不足していた。そして金融市場はタイトになっていた。これはタイトでないとできませんね。コール市場ですぐ調達できるとこんなことは起こりませんけれども、タイトになっていて、日銀の担当者はもう資金調達ができないということをよく知っている。   普通なら、このくらいの資金は資金第一係の判断で、すぐにでも日銀貸出で不足分を充当させるのだが、その日は違っていた。係長が私のほうをちらちら見ながら、  「最近、焼き鳥の串もさびついちゃってるねえ」  などと、謎かけする。私も、  「そうですねえ、ここらで焼いときましょうか」  という。条件はそろっている。   焼くといっても、実際には何もしないだけの  話。そうしていると、今度、担当者からは矢継ぎ早に電話が入る。場合によっては、日銀のN支店に泣きついたのだろう、日銀のN支店もやってくる。しかし、担当者はN支店には教えないで嫌がらせをやる。そして、一生懸命やるけれども、やらない。とうとう最後に局長さんのところに副頭取がやってくる。当然、営業局の総務課長も同席している。  丁銀行の副頭取は本当に真っ青な顔をしてい  る。実は、この時の局長は、前の日銀総裁の三  重野さんだった。  「局長さん、なんとか貸出を」  「そうですねえ。丁銀行さん。そういえば、ウ  チが送った副会長は元気ですか」そういう嫌がらせをやる。そして、たまりたまった要望というのをこの際全部のませて、それでもう最後の三時半過ぎぐらいにやっと受け入れてやる。こういうことが恐らく現場では日常的に行われている。非常に不明瞭で権力的で陰湿。  私は、こういう日本銀行金融政策のやり方ではおかしい。まずマネーサプライということを考えない、ハイパワードマネーのコントロールということを考えないのはおかしい。また、金利と言いながら、本当に金利のコントロールをちゃんとやっているのかわからない、つまり名目金利だから。したがって、やることがあいまいになる。しかも現実的には非常に陰湿なやり方でやる。  こういうのを一挙に解決するためには、やはり日本銀行金融調整のやり方を制度的に変えなければいけない。これを変えて、ハイパワードマネーをコントロールしやすいようにするためには、日銀は最終的に面倒を見なければならないということがあるからできないと言っているのですが、それは準備預金の積み方の方式にも問題がある。アメリカがやっているように、最終的に日本銀行は面倒を見ることもないよということを、もう原則的に決めてしまえばいい。そうすると、銀行は余剰準備を持つようになる。しかも、余剰準備を持ったものを次の期に繰り越しを認めたりする。あるいは積み立て方式を、日銀は、預金が決まっちゃってその後積みだからそれを受けざるを得ませんという言い方をするので、これを同時に積むというように、アメリカがやっているような形でやれば、この準備預金の需要曲線というのも弾力的になってくる。弾力的になってくれば、ハイパワードマネーと短期金利の関係がはっきりわかって、日銀が貸し出す準備、それでマネーサプライをコントロールすることができる。  そして、日銀がハイパワードマネーをコントロールするのは問題だと言っているのは、貨幣乗数が大きく動くということが一つの根拠になっているんですが、これは今言ったように準備の積み方・準備の制度を変えてしまえば、繰り越しを認めれば、銀行は余剰に積むようになりますから、その部分は現金預金比率が変わって貨幣乗数が動くときにそれを中和することができるし、あるいは持ち越しを認めたり、同時積み立てを認めるのであれば、これが安定化する。  私は、そういう意味で、この準備預金制度を変えて、現場では陰湿で、しかし外から見ると何をやっているかわからない、しかも、やった結果というのは、物すごいマネーサプライの乱高下を起こして、経済は物すごく変動し、この今日の不況もつくり出している。そういう意味で、この準備預金制度を変えるべきだというふうに思いますけれども大蔵省、いかがですか。
  111. 山口公生

    山口政府委員 お答えいたします。  大変、持論的にいろいろなことを教えていただきまして、ありがとうございました。  準備制度につきましては、金融制度調査会でも、「将来的には、準備預金制度全体につきそのあり方検討していくことが考えられる。」という指摘もいただいております。この準備預金制度は、金融政策遂行上大変大事なツールでもございますし、その遂行に最も適したよい制度であるべきだというふうに思うわけでございます。  今御指摘の積み方の問題等につきましても、海外でも、アメリカの例を挙げられましたが、私の資料では二日おくれ、フランスでは日本と同じような制度とか、それぞれ各国でいろいろ違っておるようでございます。いろいろなことを勉強しながら、その適切なあり方について議論を深めてまいりたいというふうに思っております。
  112. 山本幸三

    山本(幸)委員 最後に、要するにこれから日本銀行が独立してかなり重要な役割を担っていくというときに、もうこれまでのような密室でおかしなことをやるようなことは絶対許されない。客観的で、明示的で、はっきりとした基準を設けて金融政策運営し、個々の銀行を陰湿ないじめでやるというようなことは決して許されない。そのためには、制度というものを少し変えて、日本銀行金融政策をはっきりとこれでやるんだと。  まあ中央銀行全部がハイパワードマネーをコントロールして教科書的にはやっていないということは知っていますが、しかし、少なくともマネーサプライの水準はこうですよというようなことぐらいははっきり示しているんです。それを常に議会で議論してチェックするというような形で金融制度というものを変えていかなければ、私は今日の日銀法改正意味を持たないというふうに思いますので、今後はぜひそういうはっきりとした明確な基準で、わかるような制度にして、日銀金融政策を監視していきたいというふうに思います。  このことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  113. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 午後三時三十分に委員会を再開することにし、この際、休憩をいたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後三時三十分開議
  114. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川内博史君。
  115. 川内博史

    ○川内委員 民主党の川内博史でございます。よろしくお願いを申し上げます。  まず冒頭に、日銀総裁にお伺いをさしていただきます。  今回の日銀法改正の最も重要なポイントというのは、中央銀行としての日本銀行独立性であるかというふうに考えます。独立という言葉、字を見ますと、ひとりで立つと書いて独立というふうに読むわけでございますが、今回のこの日銀法改正大蔵委員会でも、さまざまな委員やあるいは参考人の方々から、もっと独立性をしっかりと規定をすべきであるといったような御意見が出ているようでございます。  私も全く同様の意見を持っておりますが、そういう意味で過去のいろいろな資料というものを調べさしていただきましたが、日銀理事をしていらっしゃった吉野俊彦さんという方が、昭和十七年当時に現在の日銀法が制定をされたときのことを文章にしていらっしゃいました。それによりますと、当時の結城日銀総裁が、政府日銀法を準備しているのを察知されて、日本銀行独立性を云々するのに日本銀行自身が中央銀行あり方議論をすべきではないかとお考えになられて、日本銀行の中に特別調査委員会を設けられ、大蔵省とちょうちょうはっしの意見交換をされたというようなことを文章で読まさしていただきました。  現在は、もちろん当時とはいろいろな状況も変わっておりますが、先ほども申し上げましたように、日銀の周りの方が日銀の独立独立とおっしゃっている。ところが、当の日本銀行さん御自身として、この結城総裁がおやりになったように、日銀の中に何らかの形で検討委員会を設けられて大蔵省さんと折衝されたのか、それとも周りの方々に支えられての独立を考えられていたのか、その辺の御事情からまずお伺いをさしていただきます。
  116. 松下康雄

    松下参考人 日銀法改正につきましての党の方からのお話が始まりましたのは、昨年の、ちょうど一年ほど前のことでございますけれども、私どもも、その当時からこの問題は、ただいまもおっしゃられましたように独立性の強化、それに伴います責任の加重ということは当然あるわけでございますけれども、そういう方向のもとにおいてぜひ実現をしていただきたいというふうに考えまして、行内にはその検討のための委員会を設けまして、相当に詰めまして諸外国の例やその他従来の日銀法関係議論内容につきまして調査をし、検討を続けたわけでございます。  その結果は、私どもといたしましても、中央銀行研究会金融制度調査会委員の方々には、中央銀行の現状あるいは海外の状況、私ども考え方等につきまして機会あるごとに御説明をいたしてまいりました。制度改革に関します私どもの基本的な考え方につきましては、御理解をいただいた上で議論を尽くしていただいたと認識をいたしております。また金融制度調査会におきましては、私ども考え方を公式の場で述べる機会も与えていただいたわけでございます。  さようなことで、今回の改正案につきましては、私どもの新日銀法に対します希望でありますとか考え方でございますとか、十分にお聞きをいただいた上でのこれは結論をいただいたと思っております。
  117. 川内博史

    ○川内委員 今、日本銀行の中に検討委員会を設けて独自に研究、検討をしたという総裁の御答弁がございましたが、その検討委員会はどういう検討委員会であったのか。だれがキャップで、何人の委員がいらっしゃって、そして何回会議を開いて、そしてどのような結論に達したのか、あるべき日本銀行の姿というものを日本銀行さん自身がどのように考えていらっしゃったかということをぜひとも私ども知りたい。  それは、今、日銀法改正案が出ております。それと日本銀行考えたあるべき日本銀行像との違い、それを明確にすることが非常に大事なことではないかというふうに思うのですが、その辺を明らかにはしていただけないでしょうか。
  118. 松下康雄

    松下参考人 私どものつくりました検討委員会は、当初、考え方の基本的な点を議論しまして内部でまとめるまでは、総裁、副総裁を初め関係役員も出席をいたしまして、朝早い時間から定期的に集まって議論を重ねたのでございます。その後、基本的な考え方を部内で固めました後、いろいろの具体的な点につきましては、それぞれの分野に分かれましてさらに詳細の検討をいたしました。  これらの検討の結果につきましては、私どもも、実際に中央銀行研究会あるいは金融制度調査会先生方に機会があればお話をいたしますし、またその機関の事務局をやっておられますところ、中央銀行研究会におきましては総理府の中の機構でございましたが、金融制度調査会では大蔵省でございますが、そういう事務当局とも情報の交換、意見の交換は非常に重ねてまいったわけでございます。  したがいまして、でき上がりましたこの法案につきましては、私ども考え方を十分踏まえていただいておりますし、どこがどちらの考え方というようなことでなしに、本当に議論を重ねたあげくの総合的な、適正な結論を出していただいたと考えております。
  119. 川内博史

    ○川内委員 私は、私自身が自分はこうありたいとか、こうあるべきだというふうに考えたときに、例えば友人におれの人生はこれでいいのかなということを尋ねたとします。そうすると、友人が、いやおまえのこういうところがだめだ、もっとこうしろとかああしろとかいうアドバイスをしてくれる。しかし、それはあくまでもアドバイスであって、自分自身がこうありたい、こうあるべきだと願うその願いが一番その根本にあるべきだというふうに思うのですが、松下総裁からは、その議論の結果として、その結論には満足をしているので御理解をという御答弁でございましたが、視点を変えまして、大蔵省さんにお伺いをさしていただきます。  大蔵省としても、日銀独立性を強化したいんだ、そうしなければこれからの金融、大変な競争の時代にやっていけないんだという思いでこの日銀法改正案をおつくりになられたというふうに理解をしておりますが、日本銀行さんと大蔵省さんとの議論過程の中で、意見が食い違った部分というのはどこだったのか。具体的に、例えば大蔵省意見日銀意見とは違ったが日銀意見をのんだ部分、あるいは日銀大蔵省意見をのませた部分、具体的に何点がそういう検討項目というのはあったはずです。その辺を具体的に教えていただけますでしょうか。
  120. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  この御審議賜っております日本銀行法案は、中央銀行研究会及び金融制度調査会において相当綿密な、また精力的な御審議を賜ったわけでございます。その際、私ども事務局を務めましたのは後者の金融制度調査会の方でございますけれども、そのときにおきましても、私ども事務局でございますので、私どもが余り、こうありたい、ああありたいということを申し上げるべきではないということで、事務的な作業に徹しておったつもりでございます。そこで各委員先生方はいろいろ御質問はされました。法的にどういうふうになるのだろうかとか、外国の制度はどうなのだろうか、そういうことには一つ一つお答えしておったのでございますけれども、今先生の御指摘のような、意見の対立をそのまま持ち込んで調整していただくというようなことはなかったと思っております。
  121. 川内博史

    ○川内委員 事務的な裏方を務めていたので対立する検討項目などはなかった、ただ委員から聞かれたことに関しては資料をそろえて御提示を申し上げたという御答弁であったかと思うのですが、しかし、いろいろ漏れ承るところによりますと、議論のたたき台、論点となるべきものは当然事務局の方でおつくりになられたのでございましょうし、また最後の最後で大蔵省さんが、大変な、何か憲法違反になるので憲法改正をしてくれなきゃそれはできませんよみたいなことまでおっしゃられたというようなことまで聞いておりますが、そういう幾つか議論になった点、日銀独立性を云々する上で大変重要な論点というものがあったと思うのです。そういうところをこの正式な委員会の場で、いえいえ、そんなことはございません、裏方としてやらせていただいておりましたと言うところがちょっと怪しい。何となく、日銀をまだまだ支配下に置いておきたいのだと思う大蔵省さんの意図というものがどうも感じられてしまう。大変な邪推であると言われれば、邪推であれば、それはそれでいいのでしょうけれどもね。  もう一つ大蔵省さんにお伺いをさせていただきたいのですけれども、そもそも今回の日銀法改正というのは、大蔵改革の一環ということで日銀法改正されるのか、それとももっと別な理由で、大きな意味金融システムの改革を進める意味で、日銀独立性を高めていかなければならないということで日銀法改正されるのか、どちらの論点であったのか、視点であったのかということをお聞かせをいただきます。
  122. 山口公生

    山口政府委員 この日本銀行改正問題のきっかけは、当時の与党のプロジェクトチームがこの問題を取り上げておられたわけでございますが、金融行政金融政策の構築に向けてというような党の方の問題意識が、中央銀行研究会あるいは金融制度調査会の方で日本銀行のあるべき姿ということで議論してまいりますと、次第にこの日本銀行法の改正問題が持つその重要性というのが認識されてまいったわけでございます。  そこで、これから二十一世紀を迎えるに当たって、金融システムの中核にふさわしい中央銀行制度にしなければならないということでございまして、そこには、透明性と、中立性といいますか独立性ということが強く認識されたわけでございます。特に金融政策におけるその二点でございました。  なぜかといいますと、これからはマーケットを中心とした行政、あるいはマーケットを中心とした経済になっていく。そのときに、マーケットに、金利政策等をおやりになっております日本銀行が何を考え何をしようとしているのかということが正確に伝わらなければならないということでございます。そのインフォメーションをきちっとやる、そのための仕組みというものをその独立性と透明性という形で明らかにしていこう、そのためにはこれまでのような、昭和十七年のような法律ではとても実現できないということで、そういった非常に前向きの御議論が次第に色濃くなってきたということを御紹介いたしたいと思うわけでございます。
  123. 川内博史

    ○川内委員 二十一世紀に向けて金融システムを改革する必要があるということだと思うのですけれども、なぜ金融システムを改革しなければならなくなったのか。何も問題がなければ改革をする必要はないわけでございまして、今回、外為法の改正日銀法改正あるいは金融監督庁の設置と、大改革とも言えるような法律が次々に出ているわけでございます。私がお伺いをしたのは、なぜ金融システムを改革しなければならなくなったのかということを、もう一度銀行局長にお願いをいたします。
  124. 山口公生

    山口政府委員 なぜ金融システムの改革が必要かということについてはいろいろな必要性が指摘されると思うのでございますが、まず、現状を踏まえて見る必要があろうかと思うわけでございます。我が国の金融・資本市場というものが今どういう状況にあるかということでございます。  このままいって空洞化をもたらすことはないかどうかという点が一つあろうかと思います。それからまた、私どもが行っております金融行政についても、いろいろな御批判がございました。これもマーケットを中心としたものにだんだん変えていく必要があるということも十分認識しておるわけでございます。それから産業を担っております金融界、証券界、あるいは保険業界もそうでございますが、それがやはり国民の期待にこたえられるだけの力をつけていかなければならないということでございます。そのためにどういうことをやってもらわなきゃいけないのかということ。さまざまな側面がございまして、二十一世紀に向けて金融システムの改革を急いでやる必要があるということだと思います。
  125. 川内博史

    ○川内委員 議論が抽象的で、国民の皆さん方にはちょっとわかりにくいかと思うのです。もっと具体的におっしゃっていただけるとわかりやすいと思うのですけれども、具体的には、一九八五年のプラザ合意以降のバブル、それからバブルの崩壊という過程の中で、数々の金融行政あるいは公定歩合の操作等について反省をすべき点があった、だからその反省を踏まえてこの金融システム改革に手をつけていかなければならないんだというふうに私は理解しているのですが、その過去のいろいろな金融行政あるいは公定歩合の調節について、いや、これはまずかったな、ちょっと失敗だったなというふうな点はどうなんでしょうか。銀行局長日銀、それぞれに伺わせていただきます。
  126. 山口公生

    山口政府委員 これまでのバブルの崩壊過程で大変な不良資産問題を抱えた金融界、これを何とかしてもとの健全な状態に立ち上がらせるということで、金融行政としても大変苦労を重ねているわけでございます。過去の政策についてはいろいろな御批判がございましたけれども、しかし私どもとしては、それらに謙虚に耳を傾け、変えるべきものは変えるということで今努力をしておるわけでございまして、特別にこれが間違っていた、これが正しかったというわけではございません。そのときそのときで精いっぱいのベストのつもりでやっておりますけれども、それを今後とももっと将来に生かしていくということだろうと考えておる次第でございます。
  127. 松下康雄

    松下参考人 ただいま八〇年代後半のバブルに関連をしての御指摘がございました。この時期のバブルにつきましては、自由化国際化という金融経済環境の変化や、また首都圏への一極集中とか土地取引に関します法制、税制問題など、いろいろの原因が複雑に絡んで発生をしたものでございます。ただ、これも長期にわたる当時の金融緩和にもその原因一端があったことは否定できないところであると考えております。  ただ、私どものその時代についての振り返っての判断でございますけれども、当時は、急激な円高が進行をしている時期でございまして、円高によるデフレ的な影響が強く懸念されておりました。いわゆる円高不況でございます。為替相場の安定を強く意識した政策運営が行われざるを得ず、これが結果的にはマネーサプライの増加なり、また資産価格の上昇につながったこともあるかと思います。  私どもといたしましては、そういったいろいろの状況の中で、金融政策としてどこまでの範囲をとるべきものであるかというぎりぎりの判断を重ねてきたわけでございますけれども、この当時の経験を踏まえまして、第一には、金融政策運営に当たりましてはあくまでもインフレなき持続的成長というものを目標としていくべきこと、それから第二に、マネーサプライとか資産価格の動向など、一般の物価水準とは違う要素につきましても十分に留意をしながら、早目早目対応をとることというような点、十分に念頭に置きながら、適切な政策運営に努めていくべきものだというふうに考えております。
  128. 川内博史

    ○川内委員 そのときそのときでベストと考えられる選択をしていたので、これがまずかったとかあれがよくなかったということについては申し上げられない、ただ全体として反省をして、システムを改革すべきは改革をしていくんだという銀行局長の御答弁なんですけれども、どうにも割り切れないものがあるわけですね。これだけ長期にわたって日本経済がそれほど余りいい状態ではない状況をつくり出した一番大きな原因というのが、この八〇年代半ばから九〇年代前半にかけての金融行政だったわけですから、その辺を真摯に反省をして、抜本的なあるべき姿に変えていくということが必要なことではないかと思うのです。  例えば私などは外側にいて、新聞やテレビあるいは雑誌等で後で情報を聞くだけなわけですけれどもバブル期に公定歩合を五回に分けて引き下げているわけですけれども、四回目、五回目の公定歩合の引き下げについては、非常に強い政治的な圧力がかかったのではないかというふうに言われているわけでございます。今度の日銀法改正案では政策委員会議事録を公開するというふうに改正しているわけでございますから、バブル期の四回目、五回目の公定歩合を引き下げる決定をした当時の日銀政策委員会議事録を、どんな政治的圧力がかかったのか、そこでどんな議論がされて、本当は公定歩合を下げるべきではないと日銀の方々は思いながらも、嫌々下げざるを得なかったというような生々しい状況をぜひここで明らかにしておく必要があると思うのですけれども、当時の議事録等を公開していただけるかどうか、日銀総裁にお伺いをさせていただきます。
  129. 松下康雄

    松下参考人 金融調節事項を審議いたします政策委員会議事録につきましては、改正法案におきましてその公表が義務づけられているところでございます。この点につきましては、私ども今後事務方として、引き続き検討を急いでまいりたいと考えているところでございます。  それから、過去の政策運営に関しましてのお尋ねでございますけれどもバブル期の金利引き下げにつきましては、先ほどちょっと申しましたように、当時の非常な円高の進行というものが国全体にとって大変不安の種でございまして、これが不況のもとになる、あるいはさらにもうデフレ的な効果を深めていくのではないかという時期でございました。そういった状況から、私どもといたしましても、そのような不況に対処するために金融政策の活用を図るということは、これは中央銀行としての役割であるという判断をいたしまして金利の引き下げを行ってきたわけでございまして、これは政府の側からどうということよりも、やはり当時の状況から出てまいった、私ども責任において行いました判断でございます。  ただ、この点につきましてはさようなことでございますが、当時の政策委員会議論は、現行法のもとでありますので、議事録は公表を行わないということを前提にして、そこで各委員方に自由な立場で意見の表明をお願いいたしますということで運営をしてまいっているわけでございます。したがいまして、この点で私どもは、政策決定内容考え方、理由につきましては、その都度詳細に記者発表なぞをいたしまして公にしているところでございますけれども議事録の中身そのものは、ただいまのそういう事情がございますので、これは今後の問題ということでお願いをいたしたいと思います。
  130. 川内博史

    ○川内委員 今後の問題ということで、過去の議事録については見せられないと、大変残念な答弁であったわけです。もし時期が来たら、またそれを見せていただけることもあろうかと思いますけれども、しかし、これからのことであろうと過去のことであろうと、国民の財産を扱うセクターであるわけですから、情報公開をしていくということは非常に大事なことだと思います。  大蔵省やあるいは日本銀行さんに対して、一般の国民がどうしてもなぜなんだろうなと不信を抱く大きな原因としては、例えば金融機関の破綻の問題などで、破綻する前までは、あるいは再建計画が発表されるまでは、大丈夫だ、大丈夫だと言うわけですね。不良債権の額も少ないよ、全然心配ない、問題ない、一生懸命頑張っているんだからというような言い方をされる。しかし、ある日突然破綻する。ある日突然再建計画が発表される。  大蔵省日本銀行というのは、検査あるいは考査という形で各金融機関の経営の内情というものをお調べになっていらっしゃるわけです。経営の内情をお調べになっていらっしゃって、破綻するまでわからない、あるいは債権処理計画が発表されるまではわからないということでは、検査や考査は何のためにやっているのですかということになってしまうと思うのです。  具体的には、例えば阪和銀行や兵庫銀行で、破綻前と破綻の後、不良債権の発表額が大きく違っていますけれども日本銀行さん、本当に破綻前にはその不良債権の額が正確に把握できていなかったのかどうか、それをお伺いさせていただきます。
  131. 松下康雄

    松下参考人 私どもは平素、考査を通じまして取引先金融機関の経営の実態把握や経営改善の指導に努めているところでございまして、兵庫銀行につきましては、平成七年八月でございますが、破綻の約二年前の五年一月基準の考査を行いましたし、また阪和銀行につきましては、同じく、八年十一月の破綻の約三年前の五年一月基準の考査をいたしまして、その当時、不良債権の早期処理やリストラについて強く促してきたところでございますが、それを受けまして、両行とも経営改善に向けての努力は行ってきたものと考えております。
  132. 山口公生

    山口政府委員 大蔵省も、検査に入りました後は、各金融機関にいろいろな指導を日銀とともにやっておりました。今申された兵庫銀行あるいは阪和銀行が破綻に陥ったというのは大変残念でございますけれども、いろいろな努力はしていただいたのでございますけれども、余りにもその不良額が大き過ぎたということで立ち直れなかったということが実情でございます。
  133. 川内博史

    ○川内委員 だからお聞きしたのは、破綻する、手を挙げる前に不良債権の額を正確に把握をしていらっしゃったのかどうかということを聞いているのです。正確に把握をしていたのか、していなかったのか。  要するに、銀行側が提出してくる資料をそのまま、ちょっと問題があるなと思いながらふむふむと思っていたのか、それともちゃんと検査をしてその額を正確につかんでいらっしゃったのか、それをお答えください、銀行局長
  134. 山口公生

    山口政府委員 検査を常時やっていれば的確に日々指導はできるのでございますが、やはり数多くの銀行がございますし、数年に一度ということになります。そうすると、このように経済状態にバブルの崩壊の影響が急激に出てきた場合には、前に検査に入って厳しく指導をしていても、次、破綻の前に入ったときにはもう全然状況が違っていたということがあるわけでございます。検査に入ったときは、必ずそれは正確に把握しながらやっておるわけでございます。
  135. 川内博史

    ○川内委員 銀行局長、検査というのは二年に一回でしょう。日銀大蔵省は交互に入りますよね。それから、当然、ある日突然不良債権がばあっとふえるということもないでしょう。やっぱりそれはボードがあって、そのボードの経営の方針のもとに融資を拡大し、営業をしていくわけですから、そのボードメンバーからどういう方針で営業しておるんだということをお聞きになれば、大体どういう感じで経営をしているということは把握できるわけです。数年に一度入るので、ある日突然ふえていましたということでは、これはとても私ども理解をするわけにいかないわけです。ちょっともう時間がないので、お答えになりたいみたいですけれども、もういいです。言いっ放しで済みません。後できちんと反論はお聞きします。  いずれにしても、結局、都合が悪くなると大蔵省日銀は別々だみたいな、今銀行局長がおっしゃられたように大蔵省日銀というのは多分交互に検査、考査に入っているのですよ。それで、それぞれ法令的にも結びつきがあるのであれば、当然連絡も取り合っているであろう。しかし、それにもかかわらず金融機関があっという間に破綻をしてしまう。これではシステムがうまく機能していないんだなあということになると思うのですね。  一体だれが責任をとるのかということが、どのセクションが責任をとるのかということが非常に大事なことだと思うのですけれども、今回の日銀法改正案を見ますと、大蔵大臣認可とか大蔵大臣に届け出とか、大蔵大臣という文言がやたらといっぱい出てきます。だから有識者の方々からも、これでは日銀独立性がどこにあるんだということを指摘されるんだと思います。  ここで、答弁の形で確認をさせていただきますけれども、信用秩序の維持という面に関しては大蔵省大蔵大臣責任をおとりになるのであろうというふうに思うわけでございますが、日本銀行さんというのは物価の安定、私などは通貨価値の安定と言う方が正しいのかなというふうに思うのですが、物価の安定に関しては日本銀行さんが責任を負うんだということでよろしいかどうか。その仕切りを、大蔵省日本銀行さん、それぞれに簡潔にお願いをいたします。
  136. 山口公生

    山口政府委員 御提案申し上げております日本銀行法案では、第一条に「目的」がございまして、第二条に「理念」とい青ふうに書いてございます。そこでうたわれておりますことは、「物価の安定」ということをその理念にしておりますが、加えて、「目的」の第一条の第二項には、「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。」となっております。  したがって、信用秩序の責任と言われた場合には、金融機関の破綻処理等は行政的手法を要しますから、最終的責任政府にあると思います。しかし、日本銀行におかれても、最後の貸し手という立場がありますので、適切な流動性供給を行っていくという役割を通じまして、ここに言います「信用秩序の維持」に寄与していただいている、こういうことだと思います。
  137. 松下康雄

    松下参考人 ただいまの銀行局長の答弁のように、私どもの目的は、一つは、通貨及び金融の調節を通じる物価の安定の確保を図るということでございます。もう一つは、資金決済の円滑の確保を図って、それによって信用秩序の維持に資するということでございます。この二つでございます。
  138. 川内博史

    ○川内委員 私は、最終的にどちらが責任をとるかということをお尋ねをしたわけでございまして、今銀行局長から、信用秩序の維持に関しては政府がその最終的な責任をとるし、物価の安定に関しては日本銀行さんだということで、その仕切りでよろしいですね。  ラストリゾートという話も出てきましたけれども、今後は、日本銀行は独立をするわけですから、債権が固定化すると思えば日銀特融を断るということも十分にあり得るということも、この場で確認をさせていただきたいと思います。  時間がございませんので、現在、金融監督庁が審議をされているわけですけれども大蔵省金融監督庁それから日本銀行、この三者の関係日本銀行はこれから金融監督庁の所管になる部分が出てくるのかどうか、そのあたりのことについて御説明を簡潔にお願いいたします。
  139. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融監督庁は民間金融機関の検査・監督を行うということでありますが、日本銀行は御承知のとおり中央銀行として銀行券を発行する、通貨及び金融の調節を行うということでありますので、これは通貨に関する行政事務を所掌する大蔵省が所管することに相なるわけでございます。  それでは、日銀法の中に金融監督庁長官との関連はないのかということにつきましては、実質的に、一つは今、大蔵大臣が検査をやり、日銀が考査をやって、その間のいろいろ連携をとっているというのは御指摘がございましたが、今度は金融監督庁が検査をやりますので、検査と考査の連携は日銀監督庁の間でとられるということになるものですから、例えば監督庁長官の要請があれば考査の内容を閲覧させるといったような規定が出てまいります。
  140. 川内博史

    ○川内委員 最後になるかならないかまだあと五分ありますので、いずれにせよ、新生日本銀行が九月からスタートをしていくということになるわけでございますが、たびたびこの委員会でも質問が出ていると思います新しい日本銀行総裁の附則の規定のことでございますけれども、新しい法案が成立をするわけでございますから、日本銀行総裁としては、まずみずからの身を、改正法案内容と同様に国会の同意を得て、もう一度新たな気持ちで総裁に就任をして、物価の安定の番人として、お目付役として仕事をしていくんだという御決意は持っていらっしゃらないのか、附則のとおり自分はこのまま総裁でいるんだというふうにお思いか、または、いやいや、必要であれば国会の同意を求めてもいいんだという思いでいらっしゃるのか。日銀総裁お答えください、私は日銀総裁の御自身の気持ちを確認したいと思っていますから。
  141. 松下康雄

    松下参考人 私の立場といたしましては、この経過規定の附則の法律条項の内容につきまして申し上げられる立場ではございませんけれども、私といたしましては、所定の法律の手続に基づきまして日銀総裁としての任命を受けております期間中、全力を挙げてその職務を全うしてまいることが私の重い責任であると認識をいたしております。
  142. 川内博史

    ○川内委員 男の中の男の答弁を聞かせていただいて、松下総裁はみずからの身を法律にゆだねるというふうにおっしゃられているわけでございますが、最後に大蔵大臣にお尋ねをさせていただきます。松下総裁がこうおっしゃっているわけですから、新しい日本銀行のスタートに当たって、その総裁を、やはり日本銀行の顔ですから、どうするかという問題に関して、改正案の内容に沿って国会の同意を得るべきであるというふうに私ども考えますが、大蔵大臣の御所見はいかがか。  それとまた、政策委員が、現在、地方銀行を代表する方、それから大都市銀行を代表する方、二名欠員でございます。現在は五人の政策委員審議をしているわけでございますが、しかし、五人の中の二人は議決権を持たない委員でございますので、結局三人で多数決をとっている。合議制ですから合意を得るということなんでしょうけれども、万々が一多数決になった場合、三人で多数決というのも大変妙な話でございます。ですから、この政策委員の欠員をいつまでにお埋めになられるのか、その辺の目途についてもあわせてお伺いをさせていただきます。
  143. 三塚博

    三塚国務大臣 欠員の委員につきましてはできるだけ早く選任をしたい、こう思っております。  それから、新しく総裁の信任を求めたらどうだという意味の御質問、本件は、現任の総裁は一定の範囲で身分の保障を付して任命をしたわけですね、五年ですけれども。この決め方は重いのです。そして、新しい、生まれ変わった日本銀行独立性、透明性、こういうことでスタートを切るに当たりまして、諸準備その他、法律に基づいて総裁のリーダーシップのもとでこれをおやりいただかなければならない。この二つを勘案いたしますと、現在、信任を得て任命をされておるわけでございますから、私自身は、任期いっぱい頑張ってもらうことが正解である、こう思っております。
  144. 川内博史

    ○川内委員 終わります。
  145. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、古川元久君。
  146. 古川元久

    古川委員 民主党の古川元久でございます。どうかよろしくお願いいたします。  日銀法の質問をさせていただく前に、実は私、先日、今大変に話題になっております諌早湾の干拓事業のところを見てまいりまして、納税者の一人として、またこれだけ借金のある我が国の財政を何とかしなければいけない、そう切に願う者として、この問題についてはぜひとも予算査定責任者である大蔵大臣の勇断をいただきたい、そういう気持ちで、最初に少し、この諌早湾の干拓事業に絡む公共事業の見直しについて御質問をさせていただきたいと思います。  現在、政府におかれましては、財政構造改革会議ということで公共事業の見直しということが議論されておられるというふうに聞いておりますが、その公共事業の見直しという中には、この諌早湾の干拓事業のように現在進行中のものまで含まれるのでしょうか。大臣、御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  147. 林正和

    ○林(正)政府委員 財政構造改革会議での御議論は、聖域を設けることなく、あらゆる歳出の全般的な見直しを進めて、財政構造改革を強力に推進していこうということとされてございます。こうした中で、公共事業についても幅広い見地から今議論が行われているところでございます。  なお、御指摘のありました大規模な公共事業につきましては、これまでも不断の見直しを行っているところでございまして、財政構造改革会議での御検討も踏まえて、今後とも対処していきたいと思っております。
  148. 古川元久

    古川委員 要するに、今既存の、現在進行中の公共事業も見直しの対象に入るということだと思うのです。  きょう農水省の方においでいただいていると思うのですが、当然これはもう政府において、七月の概算要求とかそういうものに向けて、各省庁間で見直し作業に入っていなければいけないはずだと思うのですが、では、この諌早湾の干拓事業については、農水省の方では公共事業の見直しの対象の中には入っているのでしょうか。
  149. 江頭輝

    ○江頭説明員 御説明いたします。  この議論におきまして、農業農村整備事業を含めた公共事業全体について議論がなされている、このように承知いたしております。
  150. 古川元久

    古川委員 じゃ、これは検討項目に入っているというふうに理解してもよろしいということですね。  そうしますと、この事業というのは、これは当初計画では千三百五十億円の事業規模だというふうに言われていたわけですが、現在では、これが二千三百七十億円に膨らんでいるわけなんです。このうち千五百億円が現在建設中の潮受け堤防の建設に充てられており、残りの九百億円で内部堤防及び干拓地の給排水をも含めた整備を行うことになっておりますが、しかし、これから、今建設中の潮受け堤防ができた後につくらなければいけない内部堤防というのは潮受け堤防より七キロも長くて、そしてまた、現在もう既にある堤防の一部もかさ上げをする必要がある。そういうことを考えると、これは実際に今後どのくらいの費用がかかるか極めて明確でない。  また、先日現場の担当の所長さんにお話を伺いましたら、今いろいろと干潟が消えてムツゴロウが消滅するというようなことでの反対運動が起こっているわけでありますが、そういう話に対しては、いや、この潮受け堤防の前にまた干潟がそのうちできます、ですから、そんな干潟がなくなるというわけじゃなくて、そのまた前にできるんですというお話をされておられたんですが、しかし、そうなると、この潮受け堤防の前に干潟ができればまたその前に堤防をつくらなければいけない。結果として、この諌早湾の埋め立てを順々に順々にやって、すべて締め切らない限りは永久にこれは前へ前へ進んでいかなきゃいけない。そうしたら、これは幾らお金を使っても、ある意味でもうエンドレスに堤防をつくり続けていかなければいけない。そういった事業は、農水省、今見直しに入っているというふうにおっしゃいましたが、じゃ、この問題についてはどのように農水省さんは考えていらっしゃるのですか。そのようにいつまでもいつまでも永久に、エンドレスにこれは公共事業を続けていくつもりですか。
  151. 江頭輝

    ○江頭説明員 今御指摘のように、この地域は歴史的に干拓を繰り返してきておりまして、幾重にも堤防が築かれてきた歴史がございます。その干拓の方式はいわゆる地先干拓というふうに言われているものでありまして、干潟ができればその前にまた堤防を築いて土地をつくる、それを繰り返してきたわけです。今回、そういう中で考えておりますのはいわゆる複式干拓と言われるものでございまして、内部に調整池を持って水源を確保する、外からは高潮対策を含む防災対策をなし得る、そういうふうな構造になっておりまして、前面に干潟が発達したからすぐにまた堤防をつくらなければならない、そういうことは生じない、このように考えております。
  152. 古川元久

    古川委員 それは、じゃ、将来にもわたって堤防の前にできないということをおっしゃるわけですか。向こうの所長さんは、今干潟がなくなっても、またこれは潮受け堤防の前にできるというふうにおっしゃっているわけです。農水省さんがつくっている資料にもそういうこと書かれているじゃないですか。
  153. 江頭輝

    ○江頭説明員 私が申し上げましたのは、干潟が前に発達しないということではありませんで、御指摘のように干潟は前に発達いたします。また、そのようなことを促進するように考えておるわけですけれども、今考えておりますように、農地を確保する、あるいは防災対策のための堤防をつくるという意味からいいますと、完結したものになっている。したがいまして、前面の干潟が発達したからさらにまた堤防をつくらなければならない、そのようなことは生じない、このように考えております。
  154. 古川元久

    古川委員 今のお話は、それは堤防の中の話をしておられるんであって、その外のことを考えていないんじゃないですか。これは議論を言っていても、ここは大蔵委員会ですから、もっとこの議論は農水委員会などでぜひともやっていただきたいと思います。  今、大臣も聞いていてわかると思いますけれども、こういうような事業を実態としてやって、私も見てきましたが、私も大蔵省にいましたけれども、こういう事業をやっていると、外の人から見ると、大蔵省は一体ちゃんと予算査定しているんだろうか、そうやって疑われてもこれはいたし方ないんじゃないかなと私は正直言って思います。  これから高齢化社会が到来するということで、どうしてもやはり国民に負担もしていただかなきゃいけないということで、ことしの四月から消費税も上がったりしているわけですが、しかしこういう税金の使い方をしていて、永久に前に前に堤防をつくって、もうここでは堤防をつくり続けることを未来永劫ほとんどやらなければいけない。しかもやり方が、今回のように無理やり、もう大規模に、今までの地先干拓のような歴史的に徐々に徐々にということであれば、それは自然と人間とが共生しながら費用も必要最小限の範囲内でやっていくわけですけれども、今回のように無理やりばしゃんと閉めて、そしてもうそこは無理やり干上がらせて、貝の死骸が累々として大変な異臭が漂うような、そういう事業を今後も未来永劫やっていくというようなことに税金を使われていたのであっては、これは主税局の皆さんとかがたとえ税制上公平な税制を幾らつくってそれで御理解をいただきたいと言ったって、税金を納める側からしたら、幾ら公平な税制を大蔵省がつくろうと、とんでもないというふうに思われるというふうに私は思うんです。  ですから、大臣、これは本当にむだな支出を削るということで言われるのであれば、ぜひとも大臣を先頭にして、主計官の人たちを皆さん引き連れていただいて、全国、世の中今いろんなところでこれは税金のむだ遣いじゃないかと指摘されている事業や施設というものはたくさんあるわけですよ。ですから、これを実際に見てこられたらいかがでしょうかね。  紙の上で数字だけ見ていて、これ削る、あれを削ると言っていたのでは、大蔵省に上がってくる数字、上がってくるペーパーというのは各省庁が出してくるものですから、そこだけ見ればそれなりに理屈もあってそれなりに筋を通してきた、そういう数字です。それを特別どこかだけ削ろうとしてもなかなかそれは削れなくなって、やはり一律五%削減とか、そういうめり張りのない財政削減みたいな形に、支出削減みたいになってしまうわけですから、真に必要なものにはちゃんと苦しい中でも予算をつけて、それでむだなものは削るということを考えるためには、やはり私は、とにかく現場をよく見て、その辺で皆さんに見ていただければ、これはおのずから、もうこの事業はとにかくストップだとか、そういうことが判断できるし、見たら、さすがに普通もうそれは事業を今までずっとつけてきたといっても、幾ら何でもこれではやはり予算はつけられないというふうに考えるんじゃないかと思いますけれども大臣、いかがですか、ちょっとそういう全国行脚をされてみては。
  155. 三塚博

    三塚国務大臣 歴代大蔵大臣、特に渡辺美智雄先生、現場を見るという先駆者でもあったわけです、御子息がおられますけれども。よき伝統は守らなければなりません。私もできるだけ現場の声を聞き、機会があればと心がけてまいりましたが、就任以来の、御案内のような法律及びその他、決算委員会等々重要な会議に、全部重要なんですけれども、お呼びをいただき真剣に論議をいたしておるところでございます。それはそれとして、機会を見て、見なければならぬ、そんなふうにも思っております。  大変重要な財政構造改革の年を迎えて、毎年やってきておるわけでありますが、特別に財政構造改革をやりながら、真剣に、行政機構もそうでありますが、財政のあり方、そして今後の予算執行の進め方、聖域なく見直していこう、こういうことの原点もございますから、御趣旨はよくわかりましたので、その対応をどのようにするかは考えさせていただきます。国会が終わってからでしょうかね。
  156. 古川元久

    古川委員 大臣のお忙しい立場はよく私も理解をしているつもりでいますが、今、国会が終わってからというお話ありましたが、例えば諫早、国会が終わるまでこのままの状況を続けておきますと、干潟が干上がって、干潟に生きている生物はみんな死んでしまうんです。そうなってから大臣に見に行っていただいても、これは手おくれになってしまうんですね。  ですから、ぜひともこれは私は大蔵大臣に、予算を担当しておられる、それだけではなくて、大臣は、ただ単に大蔵大臣というだけでなく、もっと幅広く、今までいろいろな閣僚も歴任しておられる、そういった意味で天下国家を見ておられる大臣でいらっしゃるわけでありますから、また、内閣法の四条では「各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣提出して、閣議を求めることができる。」というふうに規定もあって、別に大蔵大臣だから農水省の管轄のことについて口を出してはいけないというわけじゃないわけでありますから、ここはぜひとも大臣の勇断を持って、自分が見に行くにはまだ時間がかかる、ちょっとそれまでの間、まずこの状況、今のままでとめ置いてほしいと。  だから、とりあえずおれが見に行けるようになるまで排水門をあけて海水を入れて、今議論になっているそうした状況を、このまま一方的に事業推進派の方の話だけで進めてしまうのではなくて、一度排水門をあけたって閉めればまた戻るのですから、排水はできるわけですから、大臣が御自分の目で見られて必要だと思えば、またそのときにそれから議論されればいいわけですから、そういう時間をとっていただくためにも、ぜひとも大臣のイニシアチブで勇断を持ってこの排水門をあげてほしい、あけるようにということを閣議でお願いをしていただきたいと思うのですが、大臣の勇気ある御発言をお願いいたします。
  157. 三塚博

    三塚国務大臣 よく研究をします。
  158. 古川元久

    古川委員 今のは前向きな御発言というふうに受けとめさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  本題の方に入っていきたいと思うのですけれども、今回の日銀法改正につきましては、中央銀行研究会指摘されました中央銀行独立性政策運営の透明性の確保を基本とする内容であるというふうに今回の日銀法改正案は言われているわけですが、きょうは、私はこの独立性と透明性の二つの視点からこの改正案を私なりに見まして、その点から御質問をさせていただきたいと思います。  まず、第三条の一項では「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」とありますし、また、第五条の二項では「この法律の運用に当たっては、日本銀行業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。」というふうにありますが、ここで、中央銀行研究会では独立性という言葉が使われたにもかかわらず、この改正案では自主性という言葉が使われているわけなんですが、この独立性自主性の言葉の違いはどういうふうに違うのか、教えていただきたいと思います。
  159. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  日本銀行法案におきましては、政府の広範な業務命令権の廃止等を通じまして、中央銀行研究会報告書で指摘されました日本銀行金融政策独立性の確保を図っているところでございます。  また、同報告書は、日本銀行金融政策を遂行していくには強い独立性中立性を付与することが必要であるが、我が国の議院内閣制のもとでは日本銀行国会内閣から独立した存在ではないとも指摘しておるところでございまして、こうした日本銀行金融政策独立性性格を踏まえまして、日本銀行法案におきましては自主性という文言を用いておるわけでございます。  要すれば、日本銀行独立性という表現をとった場合に、日本銀行内閣国会から完全に独立した存在であるとの意味合いで受けとめられることから、用語として適当でないということで、自主性という用語を使わせていただいているところでございます。
  160. 古川元久

    古川委員 そうしますと、今局長の言われたことを私なりに理解いたしますと、つまり独立性自主性は、まあ書き方は違うけれども同じ意味というふうにとっていいということでしょうか。
  161. 山口公生

    山口政府委員 今回の提案申し上げております法律の一つのポイントは、金融政策における自主的な判断決定を示す意味自主性という文言を用いているものでございます。いずれにせよ、日本銀行法案においては日本銀行金融政策における独立性を高めるための措置が講じられているということで、おおむね委員の御指摘のとおりということでよろしかろうと思います。
  162. 古川元久

    古川委員 ありがとうございます。  そうしますと、日本銀行法ですから、金融の世界ですから、この法律案が通ると、当然外国の人たちもみんなやはりこの法律案に対しては関心があると思うのですが、英語に訳した場合には、この自主性はインディペンデンシーになるというふうに理解してよろしいということですね。
  163. 山口公生

    山口政府委員 まだ法律案を成立させていただいておりませんので、英訳等はまだ作業をしておりません。何という英訳がよろしいかよくわかりませんが、私が今申し上げた日本銀行金融政策独立性性格を踏まえて、適切な翻訳がなされるものというふうに考えております。
  164. 古川元久

    古川委員 国内的に行政との絡みで誤解が生じるといけないからということで独立性自主性にしたということであれば、海外向けには、これはやはりはっきりと独立性を担保するという意味でインディペンデンシーという言葉が使われてしかるべきだと思いますので、そういう形で訳されることを私は確信を、今の局長のお話ではこれから検討されるということでありますが、そういうふうに理解をさせていただきたいと思います。  では、日銀が独立をしているということでお話があったわけですが、一体何をもって日銀が独立しているというふうに言えると考えておられるのか。これにつきましては、大臣そして日銀総裁からの御意見を伺いたいと思います。
  165. 松下康雄

    松下参考人 金融政策にとりまして重要なことは、インフレなき経済持続的成長を図るという中長期的な視点に立ちまして、その時々の短期的な利益に偏らないで中立的に政策運営を行っていくということが一つございます。また、金融経済のメカニズムに関します専門的な理解政策運営の現場での実務能力を活用していくということにあると考えられるところであります。  このために、主要国におきましても、中央銀行政府、議会との適切な関係を前提としながら、個々の政策判断につきましては、中央銀行中立的、専門的判断にゆだねて政策運営独立性を尊重するとともに、あわせて責任の所在を明確にするという仕組みとすることが適当であるという考え方一般的になっております。  今回の日銀法改正におきまして、独立性と透明性という二つの理念を軸としました制度改革が提案をされておりますけれども、その独立性という言葉につきましては、ただいま申し上げたような趣旨であると考えております。
  166. 三塚博

    三塚国務大臣 改正法案におきましては、我が国の政治体制の枠組みで、日本銀行金融政策独立性確保にさまざまな配慮を行った次第であります。  具体的には、主務大臣の広範な業務命令権を廃止したことであります。そして次に、役員について政府意見が異なることを理由とする解任を認めないこと、解任事由の限定ということになります。法に違反をした場合を除く、そういうことになります。こういうことであろうかと思います。  このような措置を講ずることによって、日本銀行金融政策政策委員会が最終的に判断することであることを明確にしたことでございます。  その他ありますが、時間の関係で主要点のみ申し上げました。
  167. 古川元久

    古川委員 何となく、今のお話を聞いておりますと、日銀大蔵省の間の独立性考え方に、大蔵省からすると、法律的に今まで行使してきた日銀に対する権限は、これが切れれば日銀は独立したと言えるというふうに考えておられるようなのですが、総裁のお話を聞いておると、そういう法律の文言上だけじゃなくて、もう少し事実上も自由な、フリーハンドが確保されるということが本来の意味での独立性というふうに解しておられるというふうに私は理解いたしたのであります。その点から見て、この改正案を私どもが見てみますと、ちょっと疑問があるのではないかなという感じがいたしておりますが、その話はいろいろ私どもの党でもこれからまた質問させていただくと思いますので、次の質問に向かわせていただきます。  第十九条には、政府から政策委員会に対する議決延期請求権が、つまり、今大臣が言われていた日銀に対する関与、こういう法律上のものを極力減らしたというお話でありますが、そういう中で、新しく、法律上こういう関与する権限を認める規定があるわけであります。  これに似たような規定はドイツ連銀にもあるわけでありますけれども、しかし、現実にはドイツ連銀ではこの規定は一度もこれまで使われてこなかった。これはどうしてだというふうにお考えになっておられるのか。  現実に、欧州通貨機構が作成した報告書におきましては、もうこの規定は今の時代には必要ないということで廃止を求めているというようなことからしても、どうもこの規定は、これから金融ビッグバンをやろうという大蔵省の立場からしますと何か時代おくれの規定を入れたように感じるのですけれども、この点につきまして、大蔵省日銀の御見解をお伺いしたいと思います。
  168. 松下康雄

    松下参考人 この議決延期請求権でございますけれども、ドイツに存在いたします議決延期請求権は、御指摘のようにこれまで発動されたことはないわけでございます。  ただ、この議決延期請求権の考え方の中に二つございまして、その点につきまして中央銀行研究会でも金融制度調査会でも大きな議論がございました。  すなわち、ドイツの場合には、政府が議決の延期を決定いたしますと、それが自動的に効力を生じまして議決が延期されるという仕組みでございます。  これに対しまして、金融制度調査会におけるいろいろの議論におきましては、金融政策運営における日本銀行独立性を強化するという観点から、政府からの議決延期の求めに対しまして、これを一つの議案の提出ということにしまして、政策委員会がその採否を決定するということが適当であると判断をされ、法案におきましてもこの仕組みが採用されているところでございます。そういうことでございますと、最終の判断政策委員会にゆだねられているということでございますので、この趣旨は、そういう政府との関係を考慮しながら、慎重な判断をお互いに求めているということになろうかと思います。  私どもとしては、これによって独立性を大きく損なわれたというふうには考えておりません。
  169. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま総裁からお話がありましたとおり、ドイツの議決延期権は、これは政府が議決の延期を求めた場合には自動的に議決が二週間を限度として延期されるというものでございます。今回の日銀法改正案におきます仕組みは、政府が議決の延期を求めた場合、政策委員会がその採否を決定するということでありますので、ドイツの議決延期権とは全く異なるものと考えております。日銀政策委員会が採否を決定するということでありますので、日本銀行金融政策独立性が損なわれることはないと考えるわけでございます。  それでは、なぜこういう仕組みを採用しているのかということにつきましては、中央銀行研究会及び金融制度調査会におきましてもいろいろな御議論がございました。  要するに、これからは政策委員会最終決定権を名実ともに持つわけでありますが、一方で、政府経済政策との整合性をとるという必要性、これはぜひとも必要なわけでございますが、一般的に議決延期の請求がしばしば行われるというような事態は非常に考えにくいわけでございます。  といいますのは、事前に議題の連絡もあるわけでございますから、政府としてはよくよく事前の準備をして必要な意見を述べるということだろうと思いますが、しかし、ぎりぎりの制度といたしましては、やはり委員がだれでも議案を提案し得るというような運営になりますと、必ずしも十分な準備ができないまま、その場で意見を述べるということになる可能性がございます。最終的な決定をする前に十分に政府意見を聞くということが整合性を保つぎりぎりのやり方、仕組みでございますので、そういう意味では、政府意見は十分に内部で調整され、適切に表現されなければならないというふうに考えます。そういう十分な準備ができない場合等に十分な説明を行う機会を確保するための仕組みということで、ただいま申し上げましたような議論を踏まえて採用した仕組みでございます。
  170. 古川元久

    古川委員 今審議官の方からぎりぎりの仕組みというお話があったのですが、そうしたら、例えば議決延期を請求したけれども委員会でそれが却下された場合、それはもうそれで仕方ないというふうに考えるわけですか。
  171. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今回の法律におきまして日本銀行独立性といいますか自主性を確保するということでありますから、名実ともに政策委員会決定する。したがって、意見は述べまして、十分にそれを聞いた上で政策委員会がお決めになったことがすべて最終的判断になる、これは当然のことというふうに考えております。
  172. 古川元久

    古川委員 そうしましたら、一度議決延期請求をしてそれが却下された場合には、しかしどうしてもこれをここで決められては困るというときにまた議決延期請求をするということは、もう同じことで、同じ点で請求をするということはないというふうに理解してよろしいということですね。
  173. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま委員から御質問があったような状況というのを具体的に想定するということが、突然のお尋ねでございまして非常に難しゅうございますけれども、字義どおり、一回延期を請求した事柄については、そこで採否が決まればそれが最終的な決定になるというふうに理解しております。
  174. 古川元久

    古川委員 とにかく法文だけを見ていますと、一体どういう場合を想定しているのかということがなかなか普通の者には理解できないのです。ですから、そのぎりぎりということになれば、私から見ますと、経済政策との整合性をとるために、ここはどうしてもやはり政府として譲れないような場合なのかなというふうに思ったものですから、幾ら委員会で却下されようと、しかしそこで決められては困るということで頑張るんじゃないかなというふうに思ったのです。  じゃ、もしそうなりますと、一回それで却下されたらもうそれは委員会の決断ということになりますと、そこの意味で言うと、その限りでは政府判断よりも委員会の方の判断が優先されて、そういった意味経済政策との整合性がとれなくなる場合というのも起きちゃうんじゃないですか。  請求する場合というのは、具体的に一体どういう場合を想定されておられるのでしょうか。
  175. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今回の法案の中で、まず日本銀行政策が全体の経済政策と整合的でなければならないという趣旨規定がございます。したがいまして、政策委員会判断をされるときには、当然そのことも踏まえて判断をなされるわけでございますので、その判断は最終的に尊重されるといいますか、最終決定になる。  それで、政府が全く意見が違ったときには、そうすると政府の意向は無視されるのかというお尋ねでございますが、それはやがてその議論過程がディスクローズされ、世の批判を受けるわけでございますから、最終的には国民の判断の中でどちらが適切であったかという検証を通じて、それぞれ適切な行動をとるように努力していくということになるのではないか。強いてそういう先まで、ぎりぎりの状態をお尋ねでございますので、想定される、考えられる状況をあえて申し述べますと、そういうことかなというふうに考えます。
  176. 古川元久

    古川委員 そういうことであれば、これはこういう規定を置かなくても、むしろディスクローズをできるだけ早い時期にして、そして国民の判断国会判断というものを踏まえれば、そういう今大蔵省政府が危惧しておるような事態、議決を延期しなければいけないというような事態まで危惧する必要はないのじゃないかと今の審議官のお話を伺って私は思ったわけでありますけれども、先ほどちょっとお伺いしましたが、具体的にはどんな場合にこれは実際に議決延期請求をされるわけですか。
  177. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先ほども申し述べましたとおり、政策委員会が全体の政府経済政策と整合性があるような御判断をいただくためには、政府見解が十分政策委員会の場で説明されるということが、これはぜひとも必要なことだろうというふうに思います。  したがいまして、仮に政策委員会で議案が提案されましたときに、政府からの出席者が十分に予期された範囲内の議案であって、事前に政府部内での方針が大体取りまとめられているといったような事柄であれば、そこはその場で御説明し、御判断をいただければいいわけでございますけれども、どういうことかという点について、新たに提案された議題についての政府見解が必ずしも明らかでないという事態が生じ得るわけでございます。そういう場合には、政府の中でさらに検討をして、意見を取りまとめるべき一定期間の、それはそれほど長い期間とは考えられませんが、一定期間の検討が必要になるということがまず考えられますし、またあるいは政策委員から説明を求められた際に、政府から出席しておる者が十分な説明ができればベストなわけでございますが、必ずしもそれだけの準備がない場合もあるいはあるかもしれません。  どういう場合が具体的に考えられるかということについては、まだ明確に申し上げるだけのものがございませんけれども、ある程度抽象的なことにはなりますが、今言ったような事態に当たりまして、その議決延期の請求を行うということでございます。
  178. 古川元久

    古川委員 大変長い御説明をいただいたわけではありますが、私がお願いしたのは具体的にということでありまして、それで具体的にまだ大蔵省の方でも思い浮かばないものについて、こういうものを事前に法律にするというのは、私、こういうのを杞憂というふうに申し上げるのじゃないかなというふうに思うわけでありますが、ここの場は国会でありますから、国民がここの議論をやはりみんな注視しているわけです。ですから、専門家の方にはこれはそういう抽象的な議論をしていてもわかるのかもしれませんけれども、この国会の場で、国民が聞いている場で、その中の議論というものは、専門家じゃなくても後で議事録を読んだらわかるような、そういう形で具体的な例を提示していただけるような形でないと、これは国会審議が国民から遊離してしまう、そういう批判を受けてもやむを得ないのじゃないか。  これはちょっと私がこう申し上げるのも僭越かもしれませんが、こういう議論の場では、国会の場では、具体的な事例を挙げて、そういう中で審議をしていかなければ、私たち法案審議する者としても具体的なイメージがわかなくて、そういう抽象的な議論だけでこれが正しいのかどうかを判断しろと言われても、それは無理だと思うのです。今お話あったように、具体的な事例が具体的な例として提示できないということであれば、私などからすると、そういう具体的なものまで想定もされていないのにこういう規定を設けるということについては、これはやはり行政側の日銀に対してある一定の影響力を行使したいという意図があると考えざるを得ないというふうに判断をさせていただかざるを得ないと思いますから、今後の審議の中でぜひとも、具体的にというふうにお願いを申し上げたときには、だれでも、専門家でなくてもわかるような具体例を挙げていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。  時間もなくなってきましたので、次の方に行きますけれども、三十一条で給与等の支給の基準につきまして、役員については特別職国家公務員の給与に準じてというふうになっていますが、職員については「社会一般情勢に適合したもの」というふうに書いてあります。この「社会一般情勢」という場合に、この「社会一般情勢」というのはどういう尺度なのか、これも具体的にぜひともお答えをいただきたいと思うのですけれども、具体的にといってまた抽象的にお答えになられると困るので、例えばというふうに私から申し上げますと、今、日銀の給与水準というのは、都銀の上位行の平均をとってというようなことを言われておりますが、この新生日銀においても、そういう他の金融機関の給与、都銀のそういう上位行の給与などをベースにして考えるということでしょうか。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  179. 松下康雄

    松下参考人 職員の給与につきましては、新法施行後に新しい政策委員会が十分な議論を行いました上で具体的な支給基準を決定し、公表していくということになると考えておりますが、その中で「社会一般情勢に適合」という点につきましても、内容的には、新しい政策委員会がどのような意味でこの給与支給基準の決定のときに織り込んでいくかという判断問題でございます。  ただ、私どもとして立法の趣旨理解しております点を一般論として申し上げますと、給与の支給基準を決めますときには、現在、労働市場におきます競合とか同質の仕事の社会的価値等さまざまな要素を評価して決定に織り込んでまいる上で、今後は従来以上に広い範囲で社会一般情勢を考慮する。その内容としましては、社会一般の賃金、物価等の情勢もございましょうけれども、また同時に、基準の相手としていくべき対象の範囲についても、より広くこれを見ていくということになるのではないかと考えております。
  180. 古川元久

    古川委員 新しい政策委員会で決めるというお話でありますけれども、もしそれが今までと同じような、金融機関の給与をベースということでありますと、今一般の世の人は、金融機関の給与は高過ぎる、そういう認識があるわけでありますから、そこをベースにして決められると、これは社会一般情勢には適合しないというふうに理解をされるかと思いますので、その点は、総裁がその新生の日銀におかれても総裁であられるかどうか、それはまだ御自身でもわからないというふうにおっしゃられましたが、もしその場合には、十分とその部分を念頭に置いて給与水準を決めていただきたいと思います。  時間になりましたので、最後に一点だけ、第五十八条に、一般的な報告資料徴収請求権というものが大蔵大臣に認められているわけです。これは、必要があるときには随時大蔵大臣はその資料報告を徴収できるというふうになるのですが、これではせっかく一般的監督権をもう外したにもかかわらず、事実上そういう一般的な監督権を認めたことになってしまうのではないかと思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
  181. 山口公生

    山口政府委員 日本銀行から報告等を求めることは、日銀に対しまして何らかの業務上の行為を求めたり、あるいは直接立ち入ったりというものでは全くございません。日銀の行う金融政策独立性に照らしても、このこと自体が監督権につながるものではないということを御理解いただきたいと思います。
  182. 古川元久

    古川委員 独立性、なかなか御答弁では理解をしにくいものがありますが、この際、本当に日銀独立性とともに責任も持たせるということで、大蔵省もそういう意味責任分担をした方がむしろはっきりわかりやすいのではないかということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  183. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、佐々木陸海君。
  184. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。日銀法案について質問をいたします。特に、金融システムの安定のため、信用秩序の維持のためとする日銀の資金出動の問題についてお聞きをしたいと思います。  バブル崩壊後の金融機関の破綻などに際して、これまでしばしば日銀の資金が投入されてきました。それが現行日銀法の第二十五条に基づいて行われてきたわけですが、新しい法案では、この二十五条が三十七条と三十八条の二つの条項に分かたれました。最初に簡単な質問ですが、三十七条の「電子情報処理組織の故障その他の偶発的な事由」の「その他」の事由というのをもうちょっと詳しく説明していただきたい。それから、同じく三十七条の「政令で定める期間」というのはどの程度を想定しているのか、御説明を願いたいと思います。
  185. 山口公生

    山口政府委員 まず、改正案三十七条の一時貸し付けの原因となる事象につきましては、「電子情報処理組織の故障その他の偶発的な事由」とされておりますが、コンピューター故障のほか、事故、突発的な災害等の偶発的な事由が緊急かつ一時的な流動性不足の原因として想定されるところでございます。  また、あわせてお尋ねの「政令で定める期間」というのはどの程度かというお尋ねでございますが、この一時貸し付けで想定されている流動性不足は、緊急かっ一時的なものでございますのでごく短期間のものと想定されることから^政令で定める期間は基本的に約一カ月程度とする方向で検討したいと思っております。
  186. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 これまで二十五条で行われてきたいわゆる日銀特融というのは、今度は三十七条ですか三十八条ですか、どちらが根拠になりますか。
  187. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  新日銀法の施行日に現行日銀法第二十五条に基づきこれまで実際に行われてきた特融等がある場合には、その特融等は新法第三十八条の規定による大蔵大臣の要請に応じ実行されたものとみなすこととしております。これは改正法案の附則の第十三条第二項の経過措置でございます。
  188. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日銀はこれまでこの二十五条に基づきまして、一時的な流動性不足に対応するいわゆる特融だけでなくて、東京協和、安全の二信組の破綻にかかわる旧東京共同銀行への二百億円の出資とか、あるいはその後の資金拠出、あるいは劣後特約つきの貸し出しというように資金の出動範囲を拡大してきているわけですが、改正第三十八条ではこれまでのような出資や資金拠出等々も引き続き可能というふうにお考えでしょうか。そして今度三十八条というのが設けられるに従って、この行い得る業務の範囲は二十五条に比べてどうなるのか。変わらないのか、拡大するのか、縮小するのか。大蔵大臣が要請の主体ですから、大蔵大臣見解をお聞きしたいと思います。
  189. 山口公生

    山口政府委員 今後、金融市場がグローバル化してまいります、さらにデリバティブ等の金融商品が登場する中で、信用秩序維持に資する業務につきましては、特定の形態に限定することなく、多様な信用不安に最も適した手段を講じ得ることが必要だというふうに考えます。このため、信用秩序維持に資する業務につきましては、融資のほか出資、拠出など、信用秩序維持のため必要な業務を講じ得ることとしたところでございます。
  190. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 限定されないということだと思います。  第三十八条では、大蔵大臣の要請を受けて日銀業務を行うことができるという規定になっております。前の委員会で銀行局長は、我が党往々木憲昭議員の質問への答弁で、大蔵大臣の要請を受けて政策委員会の同意で決まるというふうに言いました。日銀が要請を無条件に受け入れるというわけではないという趣旨だと思いますが、この条項のもとで日銀が行う業務については、最終責任大蔵省日銀のどちらになるのか、大蔵大臣にお聞きしたいと思います。
  191. 山口公生

    山口政府委員 御審議いただいております日本銀行法案において、いわゆる日銀特融については、大蔵大臣の要請があった場合、当該要請に応じて日本銀行がその判断により実施するものである、今先生指摘のとおりでございますので、大蔵省及び日本銀行の緊密な連携のもと、両者が責任を持って実施をしていくものというふうに考えております。
  192. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日銀総裁はどのようにお考えでしょうか。
  193. 松下康雄

    松下参考人 この中央銀行研究会報告あるいは金融制度調査会答申におきましては、信用不安が生じた場合の対応については、金融機関の破綻処理等の行政的手法を要することから、最終的な責任政府にあるという考え方が示されております。この考え方条文解釈上どういうふうにして解釈を行っていくのかという点は、この第二項の、日本銀行側が要請を受けた場合に必要と認められる業務を行うことができるということで、これは日本銀行政策委員会を通じますところの判断というものを前提として実行するようになっております。そういう点につきましては、日本銀行はその判断についての責任があり、それからいわゆる最終的責任につきましては、またこれは政府に属するというふうに考えております。
  194. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この今までの答弁でも明らかなように、改正法ではこの条文上は、日銀資金の三十八条に基づく出動形態について、これまでと同様特別な歯どめは何も設けられていない。日銀資金の投入の範囲を無原則に拡大しないために、法律の上でも歯どめが必要だと私たちは考えておりますが、いずれにせよ、本当の最終的な責任政府が負い、そしてこの三十八条、要請に基づいてそれを受ける、その限りでの責任日銀が負うということでありまして、政策委員会責任も極めて重要だと思うのです。今、日銀総裁の答弁にもありましたように、大蔵大臣の要請を日銀は無条件に受け入れるわけではなくて、政策委員会で是非を判断して必要な決定をするということだと思うのですが、その際の判断の基準はどんなことになるでしょうか。
  195. 松下康雄

    松下参考人 現行法のもとにおきまして、日本銀行金融機関の破綻等に関しまして資金の供給を行うという場合におきまして、私どもはこれまでその判断の基準に四つあるというようなことを申してまいりました。それは、システミックリスクを引き起こすようなおそれがある場合であって、かつ日本銀行の資金供与が不可欠である場合、なおこの関係者の責任の明確化が行われ、最後に日銀の財務の健全性に配慮されるということでございます。  ただ、これは抽象的でございまして、個別の事案によりましてその中のどれかはあるいは当てはまらないということもあり得るわけでありますが、それはつまり、例えば責任というような場合に、それはケースによりまして内容はいろいろ出てまいりましょうけれども、ただ物事の考え方の基本はこの四つでございます。今後ともそれは同じように考えてまいります。
  196. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今、四原則ということをこれまでも総裁は強調されてまいりましたし、これからも当然この四つの原則は貫かれると。その四つの原則というのは一体のものであって、このどれか一つは欠けてしまってもいいとか一つか二つ満たされておればいいとかというようなものではなくて、やはり全体としてその四つの原則が満たされるということを条件、基準というふうにおっしゃるのだと思いますが、その点、ちょっと確認したいと思います。
  197. 松下康雄

    松下参考人 ちょっとただいま関係者の責任というようなことを申しましたけれども、そういう事案の内容から、当然にケースが違うという場合を別にいたしますと、これは四つが一つのセットというふうに。
  198. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日銀は、言うまでもありませんけれども発券銀行でありまして、その資金がこういうことで野方図に使われてはならないということは当然のことであります。何らかの歯どめをきちんと設けることが絶対に必要だというふうに考えます。そして総裁は、これまでの二十五条の発動でもこの四原則を貫いてこられたし、今後の三十八条の業務でもこの四原則を基準にしていくということをおっしゃっていると思います。  しかし、これまでの実態を見ますと、二つ私は問題点を指摘せざるを得ないと思うのです。一つは、この四原則のうちの一つ、日銀以外に貸し手がない、最後の貸し手だという問題ですが、最後の貸し手のはずが最初の貸し手になっているという批判があります。もう一つは、日銀の資金出動の範疇が歯どめもないまま拡大しているのではないかという点であります。  これは多くの論者が指摘している点であります。幾つか持ってまいりましたが、一つは、エコノミスト、ことしの四月二十二日号、田尻嗣夫さんの文章ですが、   日銀資金の投入は文字通り中央銀行の「最後の貸手機能」を緊急発動する最後の最後の手段であって、民間金融界の資金支援をまとめるための呼び水であったり、金融当局の将来的なコミットメントを担保するものであってはならないはずである。ましてや、財政資金投入に対す  る国民の批判をかわすために、日銀が政権の身代わりとして資金を拠出することがあってはならない。   だが現実は、「最後の貸手」であったはずの日銀が特別融資や出資、資金拠出といった形で次々とカネを出し、事実上「最初の貸手」に変質している、と断じざるをえない状況が現出している。 というような批判をしております。  それからまた、かつて日銀理事であった吉野俊彦さんですか、今、山一証券の経済研究所の特別顧問ですが、ことしの二月の金融ジャーナルで、 日銀は「最後の貸し手」レンダー・オブ・ラスト・リゾートであるべきなのに、しばしばレンダー・オブ・ファースト・リゾートと呼ばれている。日銀は、東京協和・安全信組問題で東京共同銀行の株主になり、コスモ・木津信組を始めとして第二地方銀行にも安易に特融をした。 というようなことを批判をしております。  この最初の貸し手という点に関して言えば、例えば昨年十月の住専処理にかかわる新金融安定化基金への一千億円の拠出の問題があります。この基金というのは、要するに住専処理のために出資された六千八百五十億円の財政支出、それを穴埋めするための金融機関の追加負担策として想定されたものですが、この日銀の一千億円は、当時の経過を見ますと、この基金に民間金融機関が出し渋っている、なかなか出そうとしない、だから政府日銀に出せ、出せとせっついて、まさにその呼び水として政府の強い要請で出すことになったのではないか。  日銀総裁にお聞きしたいと思いますが、いろいろあると思いますけれども、そういう点では、これはまさに民間資金の拠出のための呼び水、最初の貸し手としてこの一千億円の日銀融資が使われたのではないかと言わざるを得ないという側面を持っていると思うのですが、いかがでしょう。
  199. 松下康雄

    松下参考人 御指摘の新金融安定化基金への拠出につきましてでございますけれども、この基金の性格については、当時いろいろに議論をされたところでございます。この基金に拠出をされました資金の運用益を通じて、住専に投入をされました公的資金に関する国民的負担の将来の軽減を図るということもございました。また、しかし同時に、この基金を活用することによりまして、我が国の金融システムの安定の回復に資するということも基金の目的とされたところでございます。  私どもの拠出をいたしました一千億円の基金は、当時の、第一部と申したと思いますが、そちらの方に拠出されまして、民間金融機関から拠出された分は第二部の方でございます。民間の分は、先ほど申しました第一の目的に投下をされました。私どもの方は、そういう将来の負担軽減というようなことでございませんで、金融システムの安定回復を図る、あるいは、この基金の運用益を活用して、具体的にはこの基金の業務を行っていく財源にするというようなことでございまして、この二種類の基金が日銀側と民間側から出たわけでございます。合わさって一つの基金というものができ上がったわけでございます。御理解をいただきたいと存じます。
  200. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 決まった後のいろいろなつじつま合わせは後でできるわけですが、経過から見ますと、やはり民間金融機関の資金をこの基金に出すための呼び水として、言ってみれば、日銀最初に出すことを決めたという経過があったと思うのです。しかも、今おっしゃいましたようなこの基金に一千億円の拠出というのは、何かこれを出さないといわゆるシステミックリスクが起こる、現実化するというような性格のものでもなかったという点に関して言えば、この四つの原則に照らしてみても、厳密に言って出すことが妥当だったかどうかというものになるのではないかと思うのです。  しかも、今回この日銀の拠出部分が日債銀の再建計画に使われることになっております。日債銀の優先株の引き受けのために一千億円のうち八百億円程度が使われる。つまり、日銀資金という公的資金が、新しくこういう特定の金融機関の再建策のための優先株の引き受けというようなところに使われる。これは概念の拡大にもなっていくことになるわけであります。  そもそも三重野前日銀総裁は九四年十月の講演で、金融システム危機への対応として、金融機関の支払い不能がごく一時的な流動性不足によるものであれば、中央銀行の最後の貸し手機能を発動する、支払い不能の原因が債務超過といった経営の完全な行き詰まりに起因するものである場合は、預金保険制度が大きな役割を果たすと述べておりまして、日銀の最後の貸し手機能を極めて限定的にとらえていたのではないかと思うのです。ところが、東京の二信組の破綻に際しては、日銀は、新たに設立した旧東京共同銀行への二百億円の出資という形の資金投入、これを最初にすることになりました。  総裁にお聞きしますけれども、これは出資である以上、日銀はその経営に責任を負うし、仮に債務超過というような事態に陥れば日銀が直接リスクを負担することになる、仕組みの上ではそうなるのではありませんか。
  201. 松下康雄

    松下参考人 今回の日債銀に対しますところの新金融安定化基金を活用した出資についてでございますけれども、これは、日債銀が先般、四月一日に公表いたしました、思い切ったリストラをみずから実施をするということ、それからこれに伴いまして、日債銀としましては、不良債権処理から生ずることが予想されるロスにつきましては、これも思い切った償却を一時に実行する、これによって市場の信用を回復するということが柱でございますけれども、この措置を講じます結果は、日債銀の自己資本が著しく減少をいたします。減少いたします自己資本をさらに復活いたしまして、そこで初めて本来的に市場の信認回復による再建が可能になるわけでございますけれども、この信用回復のための資本の充実の措置の一部分日銀が資金を拠出をすることを決めたわけでございます。  ただ、その場合に、日債銀自体の経理につきましては、大量の償却をいたしますから単年度は大きな赤字が出ますけれども、なお自己資本そのものは、それをやりました後で約一千億の金額がございまして、全体として見て債務超過の状況に陥っているわけではないという判断のもとに、そのような再建措置に協力をした次第でございます。
  202. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私が今質問したのは、東京共同銀行への出資の問題は、直接経営に責任を負うし、債務超過というような事態になればリスクを負担することになる、仕組みの上では少なくともそうなっているのではないかということをお聞きしたのです。
  203. 松下康雄

    松下参考人 東京二信組の関連の受け皿金融機関に対します出資につきましては、この機関を今後もいろいろな不良債権処理に活用いたしてまいりますけれども、これに対しましては、預金保険機構等からの資金の拠出ということもございますし、日本銀行の出資につきましては、将来これは回収することが可能であると見込んでいるところでございます。
  204. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今、仕組みの問題をお聞きしたのですけれども、仕組みの上では、この銀行が債務超過というような事態になれば二百億円は返ってこないという危険性も当然あるわけですね。  この東京共同銀行、その後、整理回収銀行になりましたけれども、去年の九月期の決算では、正常債権として引き継いだ債権が不良化して貸出金の七割を占めている、一方で、回収は一割強にとどまっているということも伝えられているわけであります。そこを詳しく議論はいたしませんが、いずれにいたしましても、この新金融安定化基金の問題とか、あるいは整理回収銀行への出資の問題とか等々を見ましても、これまでの日銀のこういう問題への資金の投入、いろいろな問題があるわけです。そして新法のもとで第三十八条が野方図に拡大実施されて、日銀資金が際限なく投入されるというようなことがあってはならないし、日銀自身の努力、政策委員会の努力とともに、やはり法的な歯どめというものが必要だと私たちは考えるのです。  その一つは、情報の開示であります。  三十八条を発動した場合、可能な限り、その発動の背景や実態を詳しく国会と国民に知らせて、その発動が、四原則なら四原則という公表された基準、国民が納得し得る基準に合致していることを明確にする必要がある。それは、今は四原則といった形で表明されている何らかの原則が貫かれる保障として、それを検証できる仕組みをつくるということが必要だと思うのです。  これは大蔵省にお聞きしたいと思いますが、今の法律案で、三十八条を発動した場合、その発動について国会報告される仕組みになっておりますか。
  205. 山口公生

    山口政府委員 三十八条の発動が、そのまま国会説明する義務が課されているかということになりますと、そういう規定にはしておりませんけれども日本銀行総裁等には、日本銀行業務及び財産の状況につき国会より説明を求められたときに出席する義務を課しております。したがいまして、必要により国会で御審議いただくことが可能な形にしてあります。
  206. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もちろん国会が求めたときにそこに出てきて説明していただくのは当然なんですが、今申し上げましたように、これまでの二十五条の発動にもいろいろ問題があるし、そこにきっちり歯どめをかけなければいかぬ。三十八条でも今までどおりのことが、あるいは今までよりももっと拡大したことがやられる可能性があるわけですから、その問題についての歯どめとして、これを発動した場合には国会に示すという条文を、今はないということですから、追加をするおつもりは、大蔵大臣、ありませんか。
  207. 山口公生

    山口政府委員 日本銀行の方からは、総裁等が国会説明して、そのいわゆるアカウンタビリティーというものを果たすということになっておりますので、そうした場で御説明を申し上げるということだろうと思います。
  208. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 五十四条で、いわゆる金融調節事項については、国会に年二回というのですか、六カ月に一回報告をきちんとする、そしてその説明もするということになっているわけですね。先ほどからも話がありましたように、この金融調節というのは日銀の第一の重要な使命ですけれども、同時に、前半略しますが、「もって信用秩序の維持に資する」ということも第一条に書かれている日銀の大事な使命でありまして、その使命にかかわる三十八条の発動についても、金融調節事項に準じて国会にきちんと報告をして、そしてちゃんと歯どめがあるのだ、四原則なら四原則というものが満たされているのだということを国民の中にもしっかり示して検証する、そういう装置をつくることが必要ではないでしょうか。大蔵大臣、いかがですか。
  209. 松下康雄

    松下参考人 私どもは、日本銀行業務運営全般に関しまして、できるだけ多くの機会にわかりやすく国民に説明を申し上げることが、透明性向上、日銀に対する信頼を確保するという上で重要な課題と考えております。  そこで、現行法におきましても、日銀法二十五条にかかわる業務につきましては、国会におきます答弁でございますとか、総裁談話の公表あるいは記者会見、政策委員会月報への掲載、講演などを通じまして、私ども考え方をできるだけ丁寧に、具体的に御説明をするように心がけてまいりました。  この改正法第三十八条に基づく業務を行う場合におきましても、引き続き、そういった意味での情報開示の充実については十分努めてまいる考えでございます。
  210. 三塚博

    三塚国務大臣 総裁等の国会出席の件でありますが、本法律が成立した後であればなおのこと、今まででもお呼びをいただきますと、総裁は出て御質疑に答えておるところであります。  日本銀行業務及び財産の状況につき国会より説明を求められましたときに出席をする義務が課されておりますことは、佐々木議員御指摘のとおりであります。必要により、国会で御審議をいただくことが可能と考えておるところです。
  211. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう御答弁もありますけれども、私は、今までの二十五条の発動について、先ほども読み上げましたような批判、日銀理事をやっておられた方まで含めて、際限なくなっているではないかという批判があるわけですから、そういうものに対するしっかりした歯どめをかける意味でも、もちろん日銀総裁国会に出てきて説明するのは当たり前ですけれども、この法の中にもきちんと入れておく。言ってみれば五十四条を修正する、それから三十八条にさらに追加をして、こういう業務を行った場合には直ちに国会報告するということを入れるべきだということを申し上げておきたいと思います。  そして歯どめのもう一つは、資金投入の問題での歯どめです。  これは、前回、佐々木憲昭議員もやりましたけれども、中銀研報告書でも、そして金制調の答申でも、明白に回収不能なケースについての損失補てんは、金融機関のモラルハザードを避けるために行うべきではないということを、どちらの報告書も答申もちゃんと言っているわけですが、こういう重ねての指摘が立法化の過程で法律案の中には入っていないわけです。これをきちんと法律の中に入れるということに何か不都合がありますか。
  212. 山口公生

    山口政府委員 明白に回収不能な場合は日銀特融を行えないことを法定化するというような考え方につきましては、この明白な回収不能という要件の厳密な定義をどうするのかという非常に難しい問題がございます。  いずれにせよ、いわゆるこの日銀特融の発動に当たりましては、今委員の御指摘になりました金融制度調査会の答申等の指摘を踏まえて、適正に対処していく所存でございますので、その点、御理解いただきたいと思います。
  213. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 適正にやっていくから御理解を願いたいということなんですけれども、その適正にやっているという説明の中でも、これまでの二十五条の近年の発動についてはいろいろ批判もあって、国民からもこれでいいのかという声が上がっているわけですから、そういうものを受けて、今、日銀法改正するに際して、最小限の歯どめとして、この三十八条を発動した場合に国会に直ちに報告するということと、そしていろいろ書き込みたいことはあるにしても何もかも書き込むわけにはいきませんし、四原則を実行したいということを日銀の方は言っておられるわけですけれども、それも最小限の歯どめとして、回収不能なケースについての損失補てんはしないのだということを、これは法律の技術の問題はいろいろあるでしょうけれども、法律にきちんと書き込むということはできない話ではない。私は、ちゃんとやるべきだ、その程度の歯どめはつけておいて、国民の批判にこたえるべきだということを重ねて大蔵大臣に答弁願いたいと思います。
  214. 三塚博

    三塚国務大臣 山口局長が言われましたとおり、厳密な定義という、ここは難しいところなんですね。信用危機等の問題に俊敏に対応するわけですから、きちっと内容がなっております、債務超過はございません等々の要件を踏まえて行うということであります。  いずれにいたしましても、日銀特融の発動に当たりましては、明白に回収不能なケースについての損失補てんは行うべきではないという金融制度調査会の答申の指摘を踏まえながら、適正に対処してまいる所存であります。
  215. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 厳正な対処を要望して、質問を終わります。
  216. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次に、吉田公一君。
  217. 吉田公一

    吉田(公)委員 まず、日銀が独立する以上は、透明性、自浄能力、そういうものがきちっと備わっていなければならない、こう思うのであります。いわば国の機関の一つと言われております日銀は、全く独立というわけにはまいりませんで、やはりチェック機能というものが必要でありますが、監査制度、部内監査、そういう担保が、大蔵省というか、むしろ大蔵大臣から見て、独立させてもそういうものがちゃんと備わっている制度になっているのかどうか、大臣の御所見を伺いたい、そう思うわけでございます。
  218. 三塚博

    三塚国務大臣 その点は段々の御質疑でも申し上げてきておるわけでございますが、独立性という観点で種々の項目を補てんいたしました。そして適法に行われないということがわかりましたときには是正措置を講ずること、当然でありますので、そういう対策、体制の中で、独立性の保持、そして適正な執務が法令に基づいて行われるように期待をするという措置があります。
  219. 吉田公一

    吉田(公)委員 今まで日本銀行というと、まるで高度三千メーター以上にそびえる、霧がかかっていて、何だか物すごいことをやるところとはわかっているんだけれども、その割には国民には影が隠れて全然わからない。  一般の国民には全く縁のないところでありますが、たまたま私の地元に日銀グラウンドというのがある。これは日銀の人には申しわけない、運が悪かったと思って。しかも一万四千五百坪という、都内に日銀グラウンドというのがある。まさに特権階級が使って、今まで全然区民なんか使えないようになっていた。最近どういうわけか使わせてくれるようになって、しかも一週間のうち月水金と使えと。だけれども、余り使う人はいないな、月水金なんていうんじゃ。一万四千五百坪の土地を、日銀の人が総出で行ったって運動会が三つもできますよ。  そういう土地を初めとして、ほかにも福利厚生施設、もっとも福利厚生施設というのは大事ですから、それを否定しているわけじゃないんですよ。だけれども、普通の国家公務員の皆さん方に比べて、それじゃ大蔵省グラウンドがあるかといったらありゃしないんだから。だからそういうこともやはり特権意識の一つじゃないか。したがって、平日の三日間だけ月水金と使わせてもらっているけれども、土日は使わせてくれないというんだね。それは日銀の職員の人が野球やったりキャッチボールやったりするんだ。キャッチボールなんて一万四千五百坪なんて必要ないわけで、だから土曜日も日曜日もたまには使わせてもらいたいという地元の要望がある。  きょうは別に練馬の区議会じゃないんだから、そんなこと一々聞く必要もないんだけれども、こういうことも含めて、何となく日銀グラウンドなんというと、我々もあそこで、練馬で生まれて育ったんだけれども、小さいころ、日銀グラウンドなんて言われたって我々には全く縁のないところだった。偉い人だけが行ってテニスやったりサッカーやったり、ほかの人は入れてくれない。今度ぜひ考えてもらいたい。半分ぐらい練馬区によこしたっていいんだ、本当は。そういうことで、私は感想を申し上げたわけで、そんな細かいことはどうしろということは申し上げません。本来国民の財産なわけですから、ぜひお願いしたい、そう思うわけであります。ぜひ大臣もひとつよろしく。  それから、さっきもゴルフ会員権の話が出たんだけれども、これは重複するから、人様がせっかく手に入れたゴルフの会員権をまた蒸し返して二回目に質問するというのはどうかと思うんだ。しかし、先にやるとは思っていなかったから、私は後になっちゃったからこれはしようがない。それじゃないと三十分時間がもたないんだよ。  そういう意味で、ゴルフの会員権、一等ゴルフ場、一体日銀の支店長さん初め、そんな一等地のゴルフの会員権を購入して、まさか毎日ゴルフやっているわけじゃないんだろうけれども日銀の支店というのは全国三十三カ所あるといいますが、大体この三十三カ所というのも多いので、まず、大体支店長というのは何をやっている人なんですか。日銀の支店長、三十三支店あって三十三支店長おられるわけですが、支店長というのは何をやって、講演してこれからの公定歩合とかなんとか言って説明して歩いているわけじゃないでしょう。
  220. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行の地方支店におきます業務は、いろいろと実務を担当しておりますが、非常に大きなのは、例えば日銀券の域内での管理、つまり日銀券の供給あるいは日銀券の古くなりましたもの等の鑑査、そういう業務がございます。また金融機関との間の取引がございまして、金融機関に対する貸し出し、そういう業務もございます。また国庫の業務を代行いたしておりますので、歳入の収納でありますとか国債の発行関係業務でございますとか、いろいろの実務があるわけでございまして、支店長の一つの仕事は、こういう実務を滞りなく果たしていくということを監督をすることでございます。  また、もう一つの業務は、日銀支店におきまして地元の経済界の経済情勢あるいは金融情勢の実態をできる限り正確に把握をいたしまして、これを中央に集めまして、中央において日本銀行日本経済の現状と今後の、将来につきましての判断を行います資料を提供する、あるいはまた日本銀行考えでおります今後の政策問題でありますとか経済運営につきましてのいろいろの事項につきまして、これを地元に伝えるというようなことでございます。  その支店長がやっております業務は、行政とは違いますので、法律、通達というような手段を用いてやるわけではございませんで、個々の民間銀行等との取引や金融市場におきます取引等を通じて政策の浸透を行ってまいりますので、そのような観点から地元の金融界、経済界の方々と業務上に交流をする機会が多いわけでございます。  そこで、御指摘のゴルフ場の会員権につきましても、そうした方々との意思疎通を図ってまいります上で役に立つということから、戦後間もなくから購入をしてまいったものでございまして、現在でもそういった目的で利用されているところでございます。
  221. 吉田公一

    吉田(公)委員 業務を別にゴルフ場でやっているわけではないと思うのですが、独立する以上はやはり国民に責任を持ってきちっとやらなければいけないので、そういう意味に当たって、利益が上がっているということで給与も高いとか交際費も十分あるとかという話を伺いますが、ゴルフの会員権を買うことは別に専決事項でも何でもない。公定歩合はよく専決事項、専決事項と言われますが、総裁、会員権を買うのは専決事項ではありませんから、その辺はぜひひとつ御認識をして、本当は返した方がいいと思うのですけれどもね。そして新たな日銀にするということが望ましい、こう思っております。  それで、大蔵省に伺いますが、こうした日銀の今まで取得した資産でありますとか、さっきのゴルフの会員権だとか、やはりきちんと整理、監督する必要があるのではないか、そう思う。ただ日銀だけにお任せするのではなくて。そういう点についてはいかがでございますか。
  222. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  日本銀行が保有する資産は通貨発行益により取得されるものでございますから、その保有、管理、運用につきましては、日本銀行の公的性格から、国民の批判を受けることのないように日本銀行において適切に行われるべきものと考えておりまして、当局としましても、この国会での御議論を踏まえまして、引き続き適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  223. 吉田公一

    吉田(公)委員 これは例えば極端な話ですけれども、一万円札を印刷するのに原価が三十円だか四十円だかかかるわけです。そうすると、九千九百七十円もうかってしまう。もちろん、それで国債を買ったりなんかするから、そんな利益があるわけないんだけれども。要するに利益が上がっているからというお話をよく聞くんだけれども、まさか三十円で一万円札をぼんぼん印刷しているからうちは利益が上がっているんだなんていうんじゃないだろうと思うのですよ。その点、利益が上がっているからという意味は何でしょうか、もしそういうことが言われているとすれば。ないですか、そういうことは。
  224. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行の発行しております日本銀行券は、製造原価と額面価格の差が日本銀行の利益になっているわけでありませんことは、よく御承知のとおりでございます。ただ、私どもといたしましても、各金融機関からの預金の受け入れ、準備預金等は無利子の預金でございますけれども、そういったものの受け入れなり、また資産面におきまして、日本銀行が保有いたします資産の収益とか、そういうものから利益が上がるわけでございます。ただ、もちろんこの利益は通貨発行権というものがその根底にございますから、いわば通貨発行に基づいた収益という点では公共的な性格を持った利益であると理解をいたしております。
  225. 吉田公一

    吉田(公)委員 これは民間企業でないので、商取引の結果、利益が上がったというわけではありませんで、そういう点を、本来は利益が上がっているという認識はおかしいと思うのですね。幾ら自分たちが原価三十円で印刷しちゃって一万円発行しているから、その利益、それはもうどんどん発行してしまえ、五千月だってと。ぜひひとつそういう利益が上がるとか上がらないとかという認識は、これはもう絶対に改めてもらわないと。だって、いわば国立銀行なんだから、ぜひひとつそういう点は改めてもらいたい、そう思います。  それから、成長と物価が均衡しているときというのは、日銀大蔵省も余り対立することはない。しかし、そうでなくなったときに、例えば日銀は、バブル経済で物価が上昇するのではないか、土地が上がってくるのではないかという懸念から公定歩合を上げようとした。そしたら大蔵省が、まあ上げることについては余り賛成ではなかった。結果的にはバブルが崩壊した。こういうことを言う人もおりますが、そういう政策が違ったときに、今言った延期、大蔵省政策決定の延期をすることができる、こういうことであります。そうすると、政策委員会政策決定というのは、いろいろな議論をした上で大蔵省から、いや、それはだめだ、今公定歩合を上げたり下げたりするのは経済状況上好ましくない、したがって延期の請求権が大蔵省にあるんだから延期をしてもらいたい、こういったときに、まずどうなさるのですか。どっちも経済政策をやっている、どっちも研究して正しいということになると、結果的には一回だけは言うことを聞いてやる、だけれども二回目は聞かないとか、どういうふうにするのですか。
  226. 松下康雄

    松下参考人 政府の議決延期請求権でございますけれども、その内容は、政府政策委員会に対しまして一定期間、場合によりまして政府判断でこの議決の延期を請求することができるという権利でございますが、ただ、この権利は、政府がそういうふうに決めますというと自動的にそれが実行されるというものではございませんで、それは政府からの提案ということで政策委員会におきまして検討をいたしまして、その結果、政策委員会として最終的にはこれを受け入れるかどうかという判断を行うということになるわけでございます。そういうことでございますので、この制度は、政府経済政策日本銀行の行います金融政策との間の調整を考えてまいります上での一つの手段でございますけれども、これをもちまして何らか政策委員会自主性が非常に大きく損なわれるという形のものではございません。
  227. 吉田公一

    吉田(公)委員 そこで日銀大蔵省見解が違った、しかし、その結果責任を私は明確にする必要があるんじゃないか、そう思うのですね。これは国民に対して、例えば公定歩合についてもそうでありますが、上げた方が正しかったのか、あるいは下げた方が正しかったのか維持したのが正しかったのかということをやはり明確にしなければいけないのですよね。いつも責任があやふやになってしまって、この前の、日銀が公定歩合を、物価上昇だとか土地高騰のために金利を上げなければいかぬといったときに、大蔵省側はだめだ、こう言って結局バブルが崩壊してしまった。一体だれが責任をとっているんだ。だれも責任をとっていないでしょう。それはまことに国民にとって不幸なことであって、責任の明確化ということは、これはどの役所でもそうなんですよ。少なくとも責任の明確化というのはどうやってやるか。きちっと公表して、三年後、四年後に国民がわかるような、国会がわかるような、そういう制度というものは設けられないのかどうかということでございますが、大臣も御所見がありましたら、ひとつお願いしたいと思います。
  228. 三塚博

    三塚国務大臣 吉田議員の言われるのはディスクロージャー、政策決定のプロセスを明確にしたまえ、こういうことであろうと思います。それは、そのとおりであります。それで合意しよう、その部分についての公開はしますと。ましてや意見の違いがありましたということの場合は、それも公表をさせていただく、こういうことになっております。
  229. 松下康雄

    松下参考人 ただいまのお答えにございましたように、政府から議決延期の請求がございまして、これが受け入れられたか受け入れられなかったかという点は、その後に公表されます議事の要旨の中で明らかにされることになるわけでございます。したがいまして、政策委員会側といたしましても、これにつきましては十分検討を慎重に行い、責任を持って決定を行うということでございます。  通常の場合を想定いたしますと、政府が議決の延期を請求する、これに対して例えば日銀政策委員会がこれに反対を行うというほど、それほど政府日本銀行との間で経済金融についての見解が食い違うということは普通には考えられません。したがいまして、この規定は、むしろこういう規定を置くことによりまして、お互いに非常に慎重に政策決定を運んでいくための一つのきっかけにするということがむしろ本当の意義ではなかろうかと考えております。
  230. 吉田公一

    吉田(公)委員 いずれにしても、大事な経済の接点でやるわけですから、ぜひひとつ責任の明確化ということだけは制度上も今後明らかにしてもらいたいと思います。  それで、今、総裁、低金利政策をとっているわけでありますが、個人的な預貯金というのは一千二百兆円ある、こう言われております。そうすると、簡単な話ですが、一%公定歩合が上がったり下がったりすると十二兆円、二%だと二十四兆円違ってしまう。つまり国民は、公定歩合が一%下がれば、簡単な話が十二兆円損している、二%下がれば二十四兆円損している。こんな簡単な数字ですけれども、こうなるんですね。これは一種のいわば税金だ、そういうふうに思っている人が多いわけで、政策上そうなっていると。だから、国民は一千二百兆円という個人預金の利息が減少してしまって、そういう意味では片方では政策上生きているでしょうけれども、公定歩合を下げることによって、片方ではえらい損害をしている人がいるわけ。  そういうことについて、片方の経済政策だけで、産業政策だけでやっていて、一生懸命国民が積み立てたお金、一千二百兆円の資産が目減りをしているということについて総裁は全然お考えになりませんか。その対応策というのはないんですか。
  231. 松下康雄

    松下参考人 個人の金融資産の中には預貯金以外にもいろいろなものがございますし、預金金利の計算上にはまたいろいろ計算がございますけれども、それはさておきまして、私どもも、金利所得に多くを依存していらっしゃる家計にとりまして、現在は大変厳しい状況にあるということは十分承知をいたしておるつもりでございます。  ただ、この点はぜひとも御理解をいただきたいと思いますのは、金融政策をとってまいります目的は、やはり経済全体の動きといういわゆるマクロ的な見方をもとにして、そして全体の経済の動きが、現状でございますと、インフレなき持続的な成長を実現できるようにということで政策をいろいろに運営するわけでございます。  現状のように、経済が、回復はいたしておりますけれども、その回復が非常に緩やかでありますような、こういう状態のもとにおきまして、また一方では、例えば先般の消費税引き上げのときの駆け込み消費の反動でどのぐらい個人消費が落ち込むだろうかとか、そういういろいろの懸念も経済界の中にある状態でございますので、私どもといたしましては、ここ当面、そういう点につきましてある程度の見通しが明らかになり、そして経済全体が自律的に、自分の力で、公共の支えによらないでも発展ができていくという状態に早く持ってまいりたいと思っているわけでございます。  民間経済がそういうふうにして力が出てまいりますと、それが雇用をふやし、また給与所得もふやすということで、そのプラスが消費者の家計全部にも及んでまいるわけでございます。  そういう点を私ども考えながら、金融政策、誤りなくやってまいりたいと思っております。
  232. 吉田公一

    吉田(公)委員 個人貯金者にとっては、風が吹けばおけ屋がもうかる式の話で、全然そんな話は聞く人はいない。  それはもう現実に預金をしても金利が安いわけですから、そういう意味では、そういう個人預金者が大変困っているということについて本来なら——分離課税でもってあれは一五%取っていっちゃうわけだ、地方が五%、国税が一〇%。僕も多少貯金しているから、何で地方税取るんだ、五%、おかしいじゃないか、こう言っているんですが、やはり国税、地方税の中でこの低金利政策の補てんをして初めて私は政治が成り立つと思うんだけれども、そういうことになると今度は大蔵大臣になるわけでありますが、大臣いかがでございますか。
  233. 三塚博

    三塚国務大臣 金利政策日銀の専管、御案内のとおりです。同時に、政策委員会協議の中で絶えず意見交換が行われていくだろうと思っております。  低金利状況の中で、物価は安定しておるというプラス面があります。同時に、金利生活者等々の方々にとりましては、御指摘のように、利子が安いために減少をもたらして国民各位の御不満がありますことは私もよく承知をしておりますし、心苦しい感じをいたしておるところであります。しかし、低金利は、また同時に企業、家計の金利負担等の軽減に役立っておることも事実であります。景気回復に大きく寄与するものと考えられ、私はそのことを期待をいたし、今総裁言われました、自律経済への近道になってほしい、こういうことであろうと思いますので、ひいては国民生活に好ましい影響を及ぼすであろう。日本経済が確かな足取りになっていくということであれば、その辺の時点から、長い御辛抱をいただいたことに対する転回が日銀総裁そして政策委員各位の中で御協議が行われるのかなと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、これは日本銀行政策委員会の所管事項でございます。日本銀行におかれましては、景気の動向や金融市場の状況など内外の経済情勢を注視しつつ適当な対応がなされておる、今日の時点ではそう認定をいたしておるところでございまして、日銀のこのスタンスは変わらないのかなと思っております。
  234. 吉田公一

    吉田(公)委員 日銀の中で、どこでも会社はそうですけれども、社内預金という制度がある。日銀の中にも社内預金制度があって、かなり金利が高いというのだね。ほかの人には金利を安くしておいて、自分たちだけ金利が高いというのはどうかと思うのだけれども、その点は、ちゃんとした常識の範囲の中の金利でやっているのですか。
  235. 松下康雄

    松下参考人 日銀にも行内預金がございます。行内預金は、ただ、労働省令に従いまして、また都市銀行における他の制度の運用の実情も見ながら運営してまいっているところでございます。  行内預金の金利につきましては、現在の金利水準は、先般の労働省令の改正によりまして、社内預金の下限利率が引き下げられましたことを受けまして、普通預金につきましては一・〇%、住宅預金につきましては三・〇%ということになっております。これは労働省令の最低下限でございます。
  236. 吉田公一

    吉田(公)委員 給与は高いわ、グラウンドはいいのを持っているわ、会員権はあるわ、社内預金の制度はいいわ、接待はあるわ、天下りはあるわなんていうのじゃ困るのだね、これ。  よく日銀の天下り人事、こう言われますけれども、これは国家公務員と違って、日銀の支店長さんが欲しいと言われればそれは行くということですけれども、独立した機関ですから、市中の金融機関にまで影響を及ぼすような天下りはできるだけ避けた方がいいと私は思うのであります。  それから問題は、今のこの時代流れというのは非常に速い。したがって、総裁、副総裁が任期五年ということになっておりますが、何で五年にしたかわかりませんけれども、普通は四年でいい、衆議院議員だって四年だから。参議院は六年、これは別だよ。やはり独立してやるのだから、同じ人が五年間権限を持つということは余りいいことじゃありませんね。それだから、やはり四年。衆議院議員の任期と同じ。解散はしなくてもいいけれども、それは。そして、理事は三年。体質改善を図るということは、独立している以上は大事なことだ、そう思っている次第でございます。  これで終わりにいたします。ありがとうございました。
  237. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 この際、松下日銀総裁から、午前中の前田委員質疑に関し、発言を求められておりますので、これを許します。
  238. 松下康雄

    松下参考人 午前中、前田正委員から御質問がございました総裁の肖像画の制作費でございますが、あの後、至急画家の先生方に連絡をとりまして、連絡のつきました先生方にお話をいたしましたところ、御了解を得られましたので、おくれましたが、お答えさせていただきます。  歴代総裁直近の五名、すなわち第二十二代の佐々木、第二十三代森永、第二十四代前川、第二十五代澄田、第二十六代三重野、各総裁の肖像画の制作費は、それぞれ、五百万円、一千万円、一千二百万円、一千三百万円、一千四百万円でございます。
  239. 額賀福志郎

    ○額賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これをもって散会といたします。     午後六時三分散会