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1997-05-14 第140回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年五月十四日(水曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 武部  勤君    理事 小川  元君 理事 小此木八郎君    理事 中山 成彬君 理事 茂木 敏充君    理事 遠藤 乙彦君 理事 西川太一郎君    理事 大畠 章宏君 理事 大森  猛君       安倍 晋三君    甘利  明君       江渡 聡徳君    小澤  潔君       大石 秀政君    奥田 幹生君       加藤 卓二君    亀井 善之君       自見庄三郎君    中島洋次郎君       中山 太郎君    林  幹雄君       林  義郎君    船田  元君       松本  純君    伊藤 達也君       長内 順一君    鍵田 節哉君       神田  厚君    古賀 正浩君       島   聡君    島津 尚純君       達増 拓也君    樽床 伸二君       中野  清君    吉田  治君       生方 幸夫君    末松 義規君       渡辺  周君    吉井 英勝君       横光 克彦君    前田 武志君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長官梶山 静六君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総長    糸田 省吾君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     塩田 薫範君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部長  山田 昭雄君         法務大臣官房審         議官      柳田 幸三君         大蔵大臣官房審         議官      尾原 榮夫君         通商産業大臣官         房審議官    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局長    渡辺  修君         中小企業庁長官 石黒 正大君         労働省労政局長 松原 亘子君  委員外出席者         労働省労政局労         働法規課長   岩崎 伸夫君         商工委員会調査         室長      安本 皓信君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   石原 伸晃君     安倍 晋三君   岸田 文雄君     松本  純君   河本 三郎君     江渡 聡徳君   中尾 栄一君     林  幹雄君   村田敬次郎君     大石 秀政君   石井 啓一君     長内 順一君   島   聡君     樽床 伸二君   松本  龍君     川内 博史君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     石原 伸晃君   江渡 聡徳君     河本 三郎君   大石 秀政君     村田敬次郎君   林  幹雄君     中尾 栄一君   松本  純君     岸田 文雄君   長内 順一君     石井 啓一君   樽床 伸二君     島   聡君   川内 博史君     生方 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   生方 幸夫君     松本  龍君     ————————————— 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法 律の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川元君。
  3. 小川元

    小川委員 おはようございます。自由民主党の小川元でございます。  まず、官房長官には、公務御多端の中、早朝より御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  この私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案、いわば経済の憲法という重要な法律改正案でありまして、私ども商工委員会といたしましても、本件には非常に関心を持ち、委員長の御裁断により、異例といいますか、極めて珍しい議員同士自由討議というものも含めまして、昨日まで四日間にわたりましていろいろと検討を重ねてまいりました。  きょうは、責任者でいらっしゃる官房長官に御出席をいただいておりますので、私といたしましては、この純粋持ち株会社の一部解禁ということにとどまらず、それに伴う経済情勢変化あるいは関連環境整備等々につきまして、せっかく官房長官が御出席ですので、やや御担当の範囲外にわたることもあろうかと思いますけれども、御質問をさせていただきたいと思いますので、お許しをいただきます。私は、この独禁法改正は、日本経済体制変化といいますか、そういうものに伴って必然的に起こってきたものであろうかと思っております。従来は内に守りを固めて外へ攻めていく、戦いでいえば非常に理想的な形で日本経済は発展してきたと思うのですけれども、そういうことが、輸出はアジア等への工場移転も含めまして非常に厳しくなってきているし、いわゆる自由化に伴う海外の製品等も入ってくるというようなことで、今後は自由競争下において内需を拡大していく、そして経済成長を高めていく必要がある、こう思っているわけであります。  こうした経済の動向、考え方につきまして、官房長官の御意見を、経済問題の大家でいらっしゃいますし、内閣のかなめでいらっしゃいますので、ぜひお伺いをさせていただきたい。そうした環境下での純粋持ち株会社の一部解禁ということになろうかと思いますが、これをどんな理念で解禁をされ、そしてどのような効果をお考えになっているかを、いわば我々の今までの議論の集大成として、官房長官からまずお伺いをさせていただきたいと思います。
  4. 梶山静六

    梶山国務大臣 この独禁法改正について大変御熱心な御審議をちょうだいしておりまして、大変ありがとうございます。  大変な褒め殺しの言葉をちょうだいしましたけれども、私は今番頭でございまして、官房長官というのは、おたくの、派閥で言うといけないのですが、大平さんが言ったのに、官房長官は無でなければならない、エンプティーでなければならないということは、いろいろな既存の知識を持たないで現実対応をしていくのが官房長官仕事だというので、過去の古い蓄積は全部私の場合はゼロにいたしております。そういうことですから、今大変広範な質問をちょうだいしましたけれども、残念ながらそれに答える能力を持っておりません。  しかし、考えてみますと、戦後五十年間、確かにこの理想的な効果というか、追いつき追い越せ型で、日本の失ったものというか、なくなったもの、ゼロからの出発ということで、その意味では大変立派な経済成長を遂げて一つのいい形をつくり得たと思います。  しかし今、御承知のように、言われる第三の開国、いわば国際化という波を受けて、これからの日本はどうであるべきかということを考えますと、果たしてこれからも内需を拡大してうまい分野でいくかというと、前のような成長率を考えるわけにはいかないということは、パイ自身が、昔の小さい日本経済であれば五%、一〇%伸びても全世界の経済に及ぼす影響はそれほど大きくなかったわけでありますが、今日のように十数%という大きな経済を持っておりますと、その一%の成長率というのは発展途上国のすべての経済をのみ込んでしまうような状態であるわけですから、これからの日本というものを考えれば、この成長率、そういうものにとらわれないで実質の中身の勝負をしていく、質の時代に今入ったという気がいたします。  それともう一つ、この問題で考えなければならないのは、戦争に敗れて、日本のかつての財閥中心になって軍事推進力になり得たということを考えれば、占領政策の中から独禁法、特に持ち株会社禁止をするということが、日本の、いわばそういう意味での財閥の復興やあるいは過度経済進出、こういうものを抑える力になり得るという前提でやってこられたと思います。  しかし、今にして思いますと、それは逆のというか、そういうものを抑えますと、ある意味一つ企業巨大化をしていくということになります。持ち株会社を認めないかわりにと言ってはあれですが、ここに今大畠さんがおいでになったのですが、日立製作所なんというのは小さい会社だったのですが、だんだん自己増殖をして、それからあらゆる分野を、それは扇風機から原子力までという、それを一つ傘下におさめてやるようになってしまいました。  ですから、日本工業生産を見てみますと、諸外国と比べて、必ずしも例が適切であるか、あるいは正しいかどうかはわかりませんが、日本工業生産というのは、巨大な工業資本というか、その寡占体制のもとに約六割強の工業生産品は大企業の手によって生産をされている、片や欧米の各国はその半分程度のものが大企業のシェアだ、こういうことが言われます。それだけに、新しいベンチャー企業的なものの進出欧米の方が簡単でありますし、逆に大きな企業になりますともたれ合いがありまして、新しい、小さい企業が入ろうと思っても大企業の圧力のもとでつぶされてしまう。  ですから、こういうものを改めて、それぞれが分社化というか事業別企業を分けることによってその弊害である相互関連がなくなるとするならば、持ち株会社という大きなフレームをつくって、相互の連携ができるようにしながら、その中で分社化をすることによってその中に新しい企業が入り得るような立場、これをつくることが最も望ましいということが、産業政策の上から見た今回の持ち株会社の一部解禁というか、そういうことにつながったと私は思います。  いずれにしても、これから私たちはそんな急速な、大きな成長を望むべくもありませんが、その新しい成長の原資をどこに求めるかというと、いわばベンチャービジネス的なもの、そういうものが進出できる社会的な、経済的な余力を残すこと、これが今回ねらわれた一番大きな動機ではないか。現象面を取り上げればそういうことは書いてありませんが、内蔵するところはそういうものに期待感を持ったものでなければならない、このように考えております。
  5. 小川元

    小川委員 今大変にわかりやすく的確な御説明をいただきまして、ありがとうございました。  何のために本法改正するかということについて、同僚委員の皆さんを初め、今日まで何回かこの委員会質問していましたが、何か隔靴掻痒の感があって、ややもどかしい気がしておりましためですけれども、今の御説明、本当に私もよくわかります。  私ごとで恐縮ですが、私も貿易会社におりまして、二十年ぐらいビジネスに携わったわけですが、その間いろいろな仕事をやりまして、やはり新しい分野、新しく起こっていく仕事に携わったときは全体が非常に活気があって、何かやっていこうじゃないかという自由な雰囲気の中での競争というものが行われた。しかし、古い秩序のところが必ずしも悪いという意味ではないですが、やはりいろいろなしきたり等々があって、なかなか新しいアイデアが出てこないということを、自分自身の体験としても経験をいたしております。  この持ち株会社は、決して大企業だけではなくてあらゆる分野適用ができるわけでありますから、これを契機に自由な競争の中での新しい日本経済の勃興というものが望まれると私は思っております。  ただその中で、どうしても今後日本経済が、今官房長官おっしゃったように、必ずしも量でふえていくわけでなくて、質でふえていくとしても、やはり自由競争というものが行われていくわけでありますが、その自由競争というのは、大変活気は出ますけれども、ややもすれば行き過ぎになるという弊害もあるというふうに私は考えるわけであります。  そういう点から今回の改正でも全面解禁ではなくて部分解禁、しかも幾つかの制限も設けられていると思うわけでありますが、本法が成立をしましたときには、公取ガイドラインを作成、提出するというふうに聞いておりますけれども、現時点、まだこれからの話でありますから余り詳しいことは必要ないわけでありますが、そのガイドラインというのは、どのような方針でどういった内容のものを考えておられるか。概略方針をお聞かせいただきたいと思います。
  6. 根來泰周

    根來政府委員 先日来申し上げておりますように、これまでの国会の御意見、あるいはいろいろの方々の御意見を踏まえまして明確かつ客観的なガイドラインを作成したい、こういうふうに思っております。  なお一部、公正取引委員会が恣意的な運用をするのではないかという疑念もあるようでございますが、そういう点も払拭するようなガイドラインを作成したい、こういうふうに思っております。
  7. 小川元

    小川委員 ガイドラインについては、もちろんこれは過度集中弊害を事前にチェックするために大変重要なことでありますし、また、再三にわたって、委員長初め公正取引委員会から立法府の意向も尊重するという御発言もあるわけでございます。本委員会、必ずしもそれだけではないと思いますけれども中心にいろいろな議論が行われたことを十分御参照いただきまして、ただ、あくまでも法律の趣旨を生かして過度の規制にならないように、非常に難しい話で、ペルーの人質事件のような話になってしまうかもしれませんけれども、自由な競争という原則に立った上で、そういう面を配慮しながら適正なガイドラインをぜひつくっていただきたい。そういう意味公取に期待する点が非常に大きいわけでございまして、そのことをお願いを申し上げたいと思います。  ただ、純粋持ち株会社というのは戦後五十年なかったわけでありまして、したがって、これからどういう形でどういうふうになっていくかということは、いろいろ想定はしておられますけれども、これは完全に予測するということは無理だと思うんですね。よく旧財閥の復活というようなことを言われますが、私は、昔の財閥というのはオーナーがいて、三菱だったら岩崎三井だったら三井家があって、そのもとでのあれですから、それと経済規模が違う。  今持ち株会社中心とする系列だけで取引をやろうと思ったら、とてもその企業は生きていけないというような気がするのですが、いずれにしても、現在でも私はこのいわゆる財閥グループの中の取引というのはそんなに大きくないんじゃないかな、それでとやかく旧財閥が出てくるというようなことにはならないんじゃないかなという感じがしているんですが、念のため、代表的ないわゆる旧財閥系と言われる三井グループ三菱グループの今の系列内の取引というのは、ウエート概略どのくらいになっているのか、これを教えていただけますか。
  8. 塩田薫範

    塩田政府委員 今御質問ございました大企業グループの中での内部的な取引がどのぐらいのウエートを占めているかということでございますが、私ども、いわゆる六大企業集団と言われるものにつきまして、何年か置きにその実態調査を行ってきておりまして、最近では平成六年の七月に公表したものがございます。  この調査の対象としましたデータは基本的に平成四年の分でございますが、それで見ますと、集団内の取引比率、これを売り上げで見た場合に、三菱グループの場合に二二・六二%、三井グループでは八・四一%ということでございます。それから、これを仕入れの方で見ますと、集団内仕入れ比率で見ますと、三菱グループでは一五・八七%、三井グループで三・八九%というふうになっております。  さっき申し上げましたように、何年か置きに調査をしてきていますということでございますが、この比率、内部的な取引集団内取引比率を見ますと、五十六年度の調査以降といいますか、五十六年以降、一貫して低下しつつあるという状況でございます。
  9. 小川元

    小川委員 八・四%から二割ちょっとぐらいということであります。大きいか小さいかというのは、ウエートの問題は個人的な感覚の差もあるかと思いますが、いずれにしても、たったこれだけの、一番最大でも五分の一ぐらいの取引のために、ほかのグループとの取引、あるいはほかの自由な貿易を犠牲にするということは、私は考えられないだろうと思っております。しかし、そのためには、再三繰り返しますけれども、公正な自由競争確保されているということが私は前提だと思うんですね。  それで、純粋持ち株会社の話が出ましたときに、ちょっと何の新聞だか、見つけようと思ってそのまま時間切れになってしまって、覚えていないんですが、三井グループが、グループ内の金融関連会社過当競争を避けるために、持ち株会社設立を考慮しているという新聞記事が出ていた記憶があります。何かの誤報だろうとは思うんですが、これはいわゆる純粋持ち株会社解禁と全く逆行する考え方になるわけでございます。  こういう目的で持ち株会社をつくるということは当然独禁法違反になるだろうと私は思うわけでございますが、その点の御見解、何条の何号でどういうことになるかというようなことについて、御見解をお伺いします。
  10. 塩田薫範

    塩田政府委員 今回御審議をいただいております改正法案におきましては、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社設立、あるいはそういった持ち株会社に転化するということを第九条において禁止をするということにしておりまして、過度集中というものはどういうことかということを第九条第五項において規定しているところでございます。  今お話がありました、ある企業グループ金融会社一つ持ち株会社傘下に入ってそれが統括されるという場合に、この改正法案考え方ではどういうふうに判定するのかということでございますが、一般論として申し上げれば、先ほど申し上げました第五項の、これらの会社相互関連性のある相当数事業分野においてそれぞれ有力な地位を占めているという一つ要件、それから国民経済に大きな影響を及ぼすということ、それから公正かつ自由な競争の促進の妨げになる、この要件に該当するかどうかということでございまして、これに該当するということになれば、当然禁止されるということになるわけでございます。  持ち株会社関係で、九条についてだけ申し上げましたけれども、当然、持ち株会社についても他の独禁法の規定が原則的に適用になるわけでありまして、例えば、持ち株会社株式保有によるグループ形成によりまして個別市場における競争が実質的に制限されるということになりますれば、これは現行の第十条によって禁止をされる。それから、持ち株会社が他の事業者を排除するような行為については、私的独占禁止であるとか、あるいは不公正な取引方法禁止ということに該当するかどうか、該当すれば当然禁止されるということでございます。
  11. 小川元

    小川委員 問題は、私はこれは純粋持ち株会社だけの問題じゃないと思いますが、これが解禁された後、実際にそういうことが密室の中で行われる余地があり得る、そうしたものに対して情報が十分公開されているかどうかということが大切なことだと思うわけでありますが、純粋持ち株会社解禁後、独禁法上、情報開示というのはどの程度公取として要求できるものなのか、その点をお伺いしたいと思います。  また本件は、やはり私はこの独禁法だけではなくて、経済取引全体として今後公平で透明性のある競争確保するためには、情報開示そのものについてもっと幅広い見地から立法措置を含めて検討する余地があろうかと思うわけでありますが、その点についての官房長官の御意見をお聞かせをいただければ幸いであります。
  12. 梶山静六

    梶山国務大臣 持ち株会社については、その業績は、一般事業会社に比べ、傘下の子会社業績に左右されることになるために、連結決算ベース情報、特にセグメント別情報重要性が高まるものと考えられるわけであります。  このような観点から、現在大蔵省の企業会計審議会において検討が進められており、この六月を目途に最終報告を取りまとめる予定と伺っております。これを踏まえて、この持ち株会社のディスクロージャーの充実について政府としても鋭意対応してまいる所存であります。
  13. 塩田薫範

    塩田政府委員 持ち株会社について公正取引委員会としてどのような情報を入手し、どのように作業するのかということでございますが、今回御審議をお願いしております改正法案の九条第六項におきまして、一定規模以上、三千億円以上ということを考えておりますが、こういった持ち株会社については、毎年その事業に関する報告書提出していただくことにしております。  それから、新規にそういった持ち株会社設立された場合にも提出をしていただくということでございまして、私どもとしては、そういった御報告ベースに、その持ち株会社過度集中という観点から問題がないのかどうか、もし問題になる可能性があるという判断をいたしましたときには、当然その実態といいますか、本当に過度集中として問題なのかどうかということをさらに追加的に調査をする。これは一般独禁法違反になるかどうかの調査の場合と同様の作業でございますが、そういったことによって問題なきようというか、問題があればきちんと是正するということも含めて対応していきたいと考えております。
  14. 小川元

    小川委員 国際ルールにのっとって、日本だけが異質にならぬように、その一番大きな点は透明性確保だと思いますので、この情報の問題についてはきっちりとやっていただきたい。  また次に、自由競争の最も重要な条件というのはルールを守るということだと思います。そのルール一つの大きな柱がこの独禁法であるわけでありまして、例えば談合の問題なんかについても、同じ業界が繰り返して談合をやって摘発をされたりしている。あるいは談合が必要であるというような発言一流会社の、業界の代表から出てくる。これはルールを守るという点から絶対許せないことだと思うんですね。公取としてはこういう問題について十分厳正なる態度で臨んでいただきたい。本当は質問したいんですが、時間の関係がありますので、この点は御要望だけにとどめておきます。  純粋持ち株会社部分解禁になりますと、大企業が優越的な地位を利用して中小企業を圧迫するのではないかという懸念が言われております。先般の参考人でも、日本商工会議所小柳参考人からも、企業買収優越的地位を利用した不公正はないか、不公正な取引を強いられぬよう独禁法下請取引法の強化について要望がありました。  まず、今日、持ち株会社解禁中心とする自由競争下での中小企業施策につき通産省の見解をお伺いし、また、独禁法上どう考えるか、公取の御意見をお伺いしたいと思います。
  15. 石黒正大

    石黒政府委員 お答えを申し上げます。  中小企業施策は、意欲のある中小企業者の自主的な努力を助長するということによりまして、これを活力あるマーケットプレーヤーとして登場していただくということを基本といたしまして、金融対策であるとかまた積極的な事業展開の支援であるとか、こういうことをやってきているわけでございますけれども、他方、今回の持ち株会社解禁によりまして、大企業事業集中力が増すことによって中小企業にいろいろな影響が出てくるんじゃないかという御心配があることも事実でございます。  その点につきましては、まさに私ども施策は先ほど申し上げました基本に立っておりますけれども意欲のある中小企業方々が自主的にいろいろやれるような環境整備をしなきゃいかぬというふうに思っておりまして、環境整備の中にはそういう、先ほど委員の御指摘にありました公正な競争確保、これが実現されていないことには中小企業方々の活躍の場というのは狭められるという認識でございますので、そういう環境整備観点から、具体的には、例えば下請代金支払遅延等防止法という法律もございますが、そういうものを活用いたしまして、法に触れるようなことがあれぱ厳正に対処するのは当然でございますし、そういう環境整備には従来から意を用いておるところでございますけれども、今後とも意を尽くしてまいりたいと思います。
  16. 根來泰周

    根來政府委員 私どもの所管法に下請法というのがございますが、これは通産省と協力いたしまして、その運用に遺漏のないようにいたしたいと思います。  また、先日も申し上げましたように、この法律がお許しいただいて成立した場合には、中小企業者あるいは消費者からの意見を十分に吸い上げて今後の施策に生かしたい、こういうふうに思っております。
  17. 小川元

    小川委員 時間になりました。  最後に官房長官に、本件、まだ労働法の問題あるいは連結決算の問題等々、省庁の枠を超えた幅広い問題がいろいろ派生してくると思っております。やはり内閣として一括して今後の施策検討していただく必要があろうかと思いますが、御所見をお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  18. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員御指摘のように、親法ともいうベきこの経済の憲法独禁法改正によって派生をするもろもろの問題、これは私は大きな広がりを見せると思います。この方向をよく見定めながら、どういうものが必要なのか、過剰な拘束になってもいけないし、最小限度のルールは守っていかなきゃならない、そのためにどういう立法が必要か、そういうことに懸命に取り組んでまいりたいと考えております。
  19. 小川元

    小川委員 ありがとうございました。終わります。
  20. 武部勤

    武部委員長 次に、西川太一郎君。
  21. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 新進党の西川でございます。  私は、このたびの独禁法改正につきましては何回か質疑に立たせていただいてまいりました。思い起こしますと、橋本現総理が通商産業大臣であられた当時、山口鶴男総務庁長官時代に、独禁法のこの改正についての村山内閣における、私は決して大げさではないと存じますが、内閣における不一致を指摘をしたものでございます。それが今日、こういう形で積極的に法改正に取り組まれたことを評価をいたしながら、残された主要な諸課題についてお尋ねをし、最後に官房長官の御所見を伺うという形で質疑をさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず初めに、私は譲渡益課税の問題についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  このたびの持ち株会社解禁は、企業リストラクチャリングという命題をいかに上手に効率的に展開をしていくか、そのために企業分社化を一層推進をしたり、統合再編を容易にするという観点から議論が行われてまいったわけでありますけれども、これは構造改革がメガコンペティションという時代認識のもとで重要である、こういう共通の認識を持つものであると存じます。  こうした時代の要請に対して持ち株会社解禁して対応していこう、こういうことでありますけれども企業が魅力的な環境をつくってもらうことによって持ち株会社を、この制度を利用していく、このことが促進をされなければ、部分的に解禁をしたというだけでは意味がないわけであります。  その中の一つは、いわゆる譲渡益課税の問題があります。  現在、企業は盛んに分社化を行っておりますけれども、大切なことは、我が国の商法に企業分割に関する規定がないということでございます。分社化は子会社設立という形で行われるわけでありますけれども、この際、親会社の資産譲渡に多額の譲渡益課税が発生することになります。この譲渡益課税については、リストラを目的とする分社化に関しては圧縮記帳という優遇措置があるわけでありますけれども、もしこの譲渡資産に土地が含まれることになりますと、この圧縮記帳は御案内のとおり八割までしか認められないわけであります。例外的に、さきのNTTの分割の際には十割、すなわち結果的には無税になるという措置が特例としてとられたわけでありますけれども一般には八割しか認められておりません。  持ち株会社は、子会社設立による分社化の究極の形ということが言えるわけでありますけれども、しかし、ただいま申し上げましたような税制上の優遇措置が決して十分でないということでございますと、これを利用してリストラや構造改革を行っていこうという意欲がそがれてしまうというふうに思います。私は、少なくとも、事業部制とか分社化とか、どのような経営組織形態をとるにしても税制は中立であるべきだ、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、これはもう古くて新しい問題でございますけれども分社化と譲渡益課税の問題、特に圧縮記帳一〇〇%をぜひひとつ可能にしていただきたい、こういう観点から、一般企業のリストラを目的とする分社化にあっても圧縮記帳による優遇税制の措置を強化していただきたい。特に、譲渡資産に土地が含まれる場合にもNTT同様一〇〇%の圧縮が可能である、こういうふうに私は思うわけでありますが、この制度を生かすために、ぜひ大蔵省にこのことを検討していただきたい。御意向を伺いたいと思います。
  22. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、現在の制度は、企業が子会社設立するために資産を現物出資した場合には原則として含み益課税は行わないこととしておりますけれども、現物出資資産に土地が含まれております場合、含み益の二割相当部分が課税の対象とされている、そのとおりでございます。この制度は、平成三年の改正で、土地の資産としての有利性を縮減するという観点を踏まえ、措置されたわけでございます。  この資産の含み益についてどう考えるかということになるわけでございますが、理論的には毎期の所得の概念に含まれる、したがって、税制としては、本来できる限り早い時点で実現した利益と考えて課税してもいいのではないかという考え方もあるのだろうと思います。  NTTについてお話がございました。NTTの分離分割に伴いましてこの圧縮割合を一〇〇%にしたところでございますけれども、これは強制的にNTTを国策として再編するという固有の事情によるものでございまして、通常の企業分社化の場合といささか事情を異にするのではないかというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題、実は昨年の十一月、課税ベース中心検討いたしました法人課税小委員会報告というのが出されたわけでございます。この中でも、土地などの資産を現物出資して子会社設立する場合に生じる譲渡益の課税のあり方について議論がなされたところでございます。先生が今御指摘ございましたように、分社化と申しましょうか、組織形態の選択についての中立性という観点もございますでしょう。他方、資産の含み益を保有する企業と含み益を保有しない企業に対する課税のバランスをどう考えていくかという問題もございます。そのような両者を踏まえまして議論検討していくべき課題ではないかというふうに考えているところでございます。     〔委員長退席、小川委員長代理着席〕
  23. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 私、そういう答弁が出てくるだろうと想像しておりましたが、そのとおりでありまして、まことに残念でございますけれども、現段階では大蔵省はそういうふうにお考えであることは承知をいたしました。  そこで、今いろいろおっしゃいましたけれども、より端的に伺えば、例えば今の制度というものは、バブルの時代の地価が暴騰して大変だというときに考えられた税制であって、それはできるだけ早い時期に改正をするべきだ、私はこういう意見を持っております。  と申しますのは、仮にこの譲渡資産の中に土地が含まれていて、実効税率五〇%だとしますと、結局、計算をしますと一〇%くらいの負担をこの分社化の際に企業は負わなきゃならない。これは大変巨額な負担でございまして、こういうことがあれば、せっかくこの独禁法改正がされて、経営資源としてのいろいろな組織の分社化を行って、専門的なものは事業活動を子会社に任せよう、本社は戦略機能を残して多角化していこうというような、この国際競争の中で日本経済を活性化していく、またはベンチャー企業を育てていく、新規事業を起こしていく、こういう本来のこの法改正の目的がアクセルとするならば、大きなブレーキが大蔵省によってかけられる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういう気持ちを、今自民党の甘利先輩からも、そうだという激励をいただきましたけれども、これは新進党だけの意見では当然ないわけで、広くこのことに対しては大蔵省に希望を持っているわけでございます。いかがでしょう、もう一回そういうことで御答弁を願えないでしょうか。
  24. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ただいまお答え申し上げましたが、法人課税小委員会報告の話を少しさせていただきました。その中では、分社化観点からこの制度を見直してはどうかという意見もあったところでございます。  私が申し上げておりますのは、そういう意見とあわせまして、今の資産の含み益の課税のあり方、両々あわせたところで今後検討していくべき課題であろう、こういうふうに考えているところでございます。
  25. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 そこで、私はこれは大蔵省だけの責任ではない、こう思うわけでありますが、それは先ほども申し上げましたとおり、企業分社化を真っ正面からとらえた企業分割制度という整備が我が国に欠けているところに、大蔵省も踏み切れない、そういう面があるのではないか、こう思うわけでございます。  商法改正については、この間から法務省は非常に、失礼ながら消極的というか、その必要はない、この一点張りのようにかたくななまでに答弁をされるわけでありますけれども、もうここまで来たら、私はむしろこの法律を活用させるためにも、企業分割の規定というものを商法の改正によってきちっと整備をしておくべきではないか、こういうふうに思いますけれども、法務省はどうお考えでございましょうか、お尋ねをいたします。
  26. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答えを申し上げます。  実質的な意味における企業分社化につきましては、先ほども委員から御指摘がございましたように現行商法でも認められているわけでございまして、例えば親会社の営業を現物出資して子会社設立するとか、あるいは子会社設立いたしましてこれに親会社の営業を譲渡する、あるいは子会社が親会社の営業の現物出資を受けて新株を発行するといったことによりまして実現することができるということになっているわけでございます。  ただいま委員から御指摘ございました新しい会社分割制度の導入の問題につきましては、私どもといたしましては重要な課題として受けとめているわけでございますけれども、何分にも全く新しい制度を創設するというものでございまして、それからまた分割の方法といたしましてはさまざまな形態があるようでございますので、こういった形態での分割についての具体的なニーズがどの辺にあるのかというような問題とか、あるいはこれに伴う株主の権利保護、あるいは会社の財産の減少に伴う債権者の保護のあり方をどうするか、それから既存の会社組織に関する諸制度との整合性といった幾つかの問題点がございまして、今後これらの問題につきまして十分な検討を要するものであるというふうに考えておるところでございます。
  27. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 何度も同じことを繰り返して恐縮でございますが、我が国経済は、今国際競争力において、スイスの研究所の調査によりますと世界四位に転落をしてしまった、そして生産性については、アメリカを一〇〇とすると日本は七〇である、内外価格差は依然そんなに大きく詰まっていない、したがって、高コスト体質で経済は非常にメガコンペティションの状況の中で苦悩しているということは、もう国民的コンセンサスになっているわけであります。  この状態から一日も早く抜け出していくということが非常に大事でありまして、そのためにはクイックレスポンスが大事なんですね。慎重にやるということももちろん大切です。しかし、戦後五十一年、ニューディーラーたちの忘れ物、こういうふうに言われたこの九条を、部分的にせよ解禁するという踏み込んだ、積極的な、競争政策と規制政策を上手にミックスしてやっていこう、こういう法律改正されようとしているときに、ましてや連立与党内で五十一回に及ぶ協議を繰り返して、私どもは遅きに失したのではないか、もっと早くこの我が国経済の現状にかんがみてこれを提出すべきではないかという意見を持っている者としては、ただいまのように様子を見ながら対処してまいりたいなどということでは、どうも不十分なような気がしてなりません。  この辺につきましては後ほど官房長官の御所見を承るとして、次の質問に行きたいというふうに思います。  三つ目は、連結納税制度でございます。  これについては、私のみならず多くの委員からこの間議論がございました。きょうは最終の議論の場でありますから、もう一度これを確認させていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  我が国の税制では連結納税制度はとられておらない。企業としても、赤字部門の分社化というのは税負担の増加を招くために極めて行いがたい状況がある、これが客観的事実であります。赤字部門を分社化して、本当は身軽になりたい。だけれども、結局は税の問題を考えればそれができない。そこで、財界を中心とした長年の要望があるわけでありますけれども、今回も税制改正ではこの制度は先送りになってしまいました。持ち株会社解禁議論の中でも、持ち株会社解禁と連結納税制度の導入は一体として実現してほしい、この導入がなければ持ち株会社の利用が非常に消極的になってしまう。  実はそこに客観的データがあるわけでございまして、三菱総研を中心に行いました企業調査、三百十八社の回答申、条件次第では、例えば連結納税制度の容認があるならば持ち株会社を持ちたい、こういう企業は三百十八社中八十五社あるわけであります。また逆に、このままであなたは持ち株会社に移行しますかという質問に対して、三百十八社の経営者は、このままでは移行することはないと答えた人が五十社あるのですね。残りは、「条件次第」とか「回答なし」とか「その他」とかいろいろあるわけでございますけれども、これを見る限り、そんなに消極的ではないけれども、しかし積極的に持ち株会社にこのままの形で移行していい、決してそういうことにはならない。多くの人がもっと、これからお尋ねする問題についてぜひやってほしい、こういう強い要望があるわけでございます。  何度も何度も同じことを聞いて恐縮でありますけれども、この点について大蔵省の見解をぜひ伺いたいと思います。     〔小川委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 連結納税制度についてお尋ねがございました。  今回、いわゆる純粋持ち株会社解禁されることになるわけでございますが、実は現在でも御承知のようにいわゆる事業持ち株会社が広く存在しておりまして、一つグループができているわけでございます。したがいまして、今回解禁されます純粋持ち株会社とその面での違いというのはないわけでございまして、連結納税制度の問題と純粋持ち株会社の問題といいますのが、やや次元が異なる面もあるのかなというふうにも思っております。  それで、連結納税制度についてどう考えるかということでございますが、御承知のように、今の我が国の法人課税の仕組みは、法人格に着目いたしまして個々の法人に課税するという仕組みをとっております。これに対しまして、いわゆる連結納税制度、人によりましてどのようなものを連結納税制度と言うのか異なっているわけでございますが、個々の法人ではなくて企業集団一つの課税単位とする、いわば企業集団一つの納税者とする、そしてその企業集団に課税する制度というふうに理解するわけでございまして、そうなってまいりますと、その導入は地方税を含む我が国の税制の考え方を根底から変えるものであろう、こういうふうに認識しているわけでございます。  そこで、連結納税制度の導入を議論する場合の観点でございまするけれども、税制というのは世の中の変化についていかなければならぬと我々は思っております。  ただ、一方において、その実態がどうなっているか。つまり、この連結納税制度が入りまするならば、税負担は軽減されるわけでございます。確かにその企業が一集団として、株主本位といいましょうか、そのような経営が行われているのだろうか。現実には益出しとか損出しというような行為もあるようでございますが、そのように企業グループが一体として経営されているという実情にあるのだろうか。それにつきまして国民の方も、なるほど、そうだなと思われる基盤があるのだろうかということがあるだろうと思います。いわば企業経営の実態がどうなっているか。それから、さらには商法等の関連諸制度の考え方がどうか、これからどうなっていくのだろうか。さらには、租税回避の問題をどう考えるのか。それから、このような制度でございますと、当然のことながら、税収減が発生することが予想されるわけでございます。こういうことについてどう考えるのか。さらには、いささか技術的にはなりますけれども、現在の法人税の仕組みは、それぞれの単体の実情に応じまして、例えば中小企業であれば特例措置を講ずるとか、そういう形になっているわけでございます。したがいまして、そのような税体系の問題にも響いてくるということについて十分考慮していく必要があるのだろうと思っております。  いずれにいたしましても、今申し上げましたような点につきまして慎重な議論が必要とされる、今後の研究課題であろうというふうに認識しているところでございます。
  29. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 また慎重な検討、こういうことになるわけですけれども考え方としては、確かに税回避であるとかこれを悪用するという懸念もなくありません。それは私も認めます。  しかし、大宗は、経済競争力をつけていく、そういうことが目的でこの法律改正するわけでありますから、企業がどんどん活発になって収益を上げて、自然増収でそうした足らず前が補えるということも、これは政策上の大事なポイントだというふうに思うわけで、最初から節税対策のためにこれが利用されるんだというような消極的な見方でこの改正をとらえていけば、いつまでたっても消極的な対応しかできない。私は、どこかでこれを吹っ切る、そういう転換を行う必要があるのじゃないか、まさに今我が国はそういう状況にある、こういう気持ちを持っておりますので、慎重になさることも結構ですけれども、一方でぜひひとつ果敢にやっていただきたい。  私は、慎重と果敢というのは相矛盾しない、あしきことを志している者に対しては慎重に厳しく対応してもいいけれども、やる気のある者には積極的にひとつ支援をするべきだ、経済活動は役所が中心じゃないんですから、民間の経済団体や企業があくまで主役なんですから、その人たちに、自由に行動できる、そういう余地をこの機会に与えるべきだ、こういう意見を持っておることを申し上げておきたいと思います。(「答弁、答弁」と呼ぶ者あり)答弁しろという与党のサポートがありますが、しかし時間の都合がありますから……。  そこで、次に私は株式交換制度についてお尋ねをしたいと思います。  合併にかわる企業統合の選択肢の一つとして持ち株会社が期待されているわけでありますけれども、この合併にかわる形の持ち株会社設立は実は簡単ではないわけであります。持ち株会社で統合される会社は、それぞれが独立した企業であり、既にたくさんの株主がいるわけでございます。持ち株会社となる会社は、こうした株主から一々株式を買い取って、最終的に持ち株会社にならなければならないという理屈になります。こうした株式の買い付けが円滑にいくような制度は残念ながら我が国にはありません。  仮に、株式の買い付けが相当順調に進んで特定の持ち株会社設立てきたとしても、買い付けに応じない株主がいれば、これは少数株主として残るのですね。そして、子会社を通じて事業経営の戦略やいろいろなことにブレーキがかかってしまう。こういうことでありますと、せっかく持ち株会社の制度をつくっても、これも先ほどの税制と同じように、何か十分この制度が活用されない、こういうふうに思うわけであります。  このたびのこの持ち株会社議論をいろいろと私もさかのぼって調べさせていただきましたが、昭和四十二年にヨーロッパに経済使節団として、帝人の大屋晋三さんを中心として「産業体制近代化に関する提言」というものが出されているそうであります。これがこの持ち株会社解禁論の源流である、こういうふうに一般的に言われているわけでございますけれども、そこでも、既存の合併制度を活用するとともに、新たに持ち株会社という制度を設けることが企業統合を促進するという意味では重要だということを主張しておられるわけであります。  今回の改正案は、こうした昭和四十年代からの経済界のいわば悲願にこたえる形でつくられたということで、先般の弓倉参考人初め皆さんも、そのことに対しては非常に喜んでおられる。こういうことは大変結構なことなんでありますけれども、私は、先ほど来申し上げているとおり、合併にかわる形の持ち株会社設立に当たっても、それにより統合される会社の株式を持ち株会社の株式と一挙に交換するという制度ができて、一人残らず、いわゆる少数株主というものを残さずにみんながそれぞれの新しい会社の株主になれる、こういう制度を商法に盛り込むならば、この少数株主による、親企業に対するいろいろな意思決定に阻害要因として加わるというような問題が除去されるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  また、こういう制度を導入するに際しては、現行の合併制度におけると同様に特別決議を要するものとして、かつ反対株主が株式買い取り請求権を手にするならば、こういう問題、想像できる問題というものは起こらない。こういう一つの安全装置をつけておけば、特別決議、こういうものをつけておけば問題ないのじゃないか、株式交換制度というものが実行できるのじゃないか、こういうふうに私は思うのですけれども、法務省の御見解伺いたいと思います。    〔委員長退席、中山(成)委員長代理着席〕
  30. 柳田幸三

    ○柳田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございました株式の交換制度は、当事会社の株主総会の決議等によりまして、ある会社に出資をして株主となった者を強制的に別の会社の株主とするというものでございまして、株主の地位に重大な変容を生じさせるものであると同時に、株主権の内容につきまして重大な変更を生じさせるというものでございます。先ほど合併制度のアナロジーで御指摘がございましたけれども、合併制度の場合には、会社の法人格というものは新設会社あるいは存続会社に同一性を持って存続をしていくわけでございますが、この場合には全く別の会社の株主になってしまうということでございまして、全く新しい制度ということになるわけでございます。  このような新しい制度に対しまして社会的ニーズがどの程度あるのかということがまず問題になるわけでございまして、すべての株式会社が広くこういった制度についてニーズを感じているのか、あるいは特定の業種の会社に限ってニーズがあるのかというような問題もございますし、それから我が国の企業社会にこういった制度がなじむものであるかというような点もございます。それから、会社債権者を初めといたしまして、会社をめぐる利害関係者の利益の点についても配慮が必要でございますし、それから既存の会社組織に関する制度との整合性といった問題につきましても検討する必要があるわけでございまして、新しい制度でございますので、こういった幾つかの問題につきまして慎重な検討を要するという問題ではないかというふうに考えておるところでございます。
  31. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今のお答えは形式論理としては正しいお答えだと思います。しかし、合併はもとの会社がなくなってしまうのだから、新しい会社の株主にそのまま移行することはいいよ、しかし、この持ち株会社というのは親会社も残ってそして子会社もできる、だからこれは慎重に検討する必要があるよ、こういうことに整理できるわけです。しかし実態としては、合併もそれから持ち株会社も同じなんですね。だから私は、慎重に慎重にと言っている間にどんどん国際競争力は五位、六位になって大変なことになる、だから早く、クイックレスポンスを求めるゆえんのものがあるわけでございまして、ひとつその辺についても早急に対応していただきたい、こう思うわけであります。  もう時間も限られてまいりましたから、通産省に、このたびの経済憲法九条とも言われる持ち株会社が部分的にせよ解禁されることによって、これに刺激されてどういう産業政策が考えられるのか。私どもこの商工委員会でずっとこの四年間、いかに我が国経済を活性化させるかということについて超党派で議論をしながら産業政策を立案をしてきたわけでございますし、法案の通過にも全面的に協力をしてきたわけでございます。  そういう観点から、簡単で結構でございます、もう時間がありませんし、官房長官にお尋ねするのがきょうの本旨でございますので、いかなる産業政策が考えられるか、急に今ここで全体をというわけにもいかないでしょうから、その方向性だけでもお示し願いたいと思います。
  32. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今回の持ち株会社解禁のもたらします企業活動の活性化等々に及ぼすメリットというのは、先般来当委員会における御議論並びに先ほどの官房長官の答弁に尽きておりますので、繰り返すつもりはございません。これをもとにいたしまして現在経済構造改革に努めておるわけでございますが、特に近々、二〇〇一年までの経済構造改革の行動計画を策定いたそうとしておりますが、それの大きな一つの柱が新規産業の創造、主として可能性を秘めました十五分野の新規産業の創造でございます。各種の政策手段を集合したいと思いますが、そのときに、この持ち株会社解禁が大きな手段になることは間違いないと確信しておるわけでございます。  先ほど来先生から幾つかの問題点の御指摘がございました。いずれも、持ち株会社解禁を今後駆使して新規産業を創造していく上において、核心を突いた問題点であると拝聴した次第でございます。私どもは、今回の解禁の目的をより効率的に達成していきますために、法制面あるいは税制面さらには企業会計画、そういった面で環境整備にさらなる努力をしてまいる所存でございます。  あわせまして、産業界におきましてもこれらを十二分に活用することが望まれておりまして、我々といたしましては、幾つかの実例をより早く知る立場に立つわけでございまして、そういった事例集あるいは成功例、そういったものを集大成いたしまして、産業界に対して周知徹底に努めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  33. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 最後に、官房長官にお尋ねを申し上げたいと思います。  実は、このたびの独禁法の部分改正につきましては、金融持ち株会社は形式的にはまだ積み残されております。そして独立行政機関である公取の事務総局制に合わせて出されてしかるべきであったこの法律案が、時間がずれたという事実もございます。私は遅きに失したという感を持っている一人だと先ほども申し上げましたけれども、それは決して野党が与党のいろいろな手続上の問題を突いてどうこうというけちな了見で申し上げているのではなくて、日本が置かれている現況はもう一刻も早く対応を急がなければならないという思いから申し上げているということを御理解いただきたいと思います。  きょうは主として、ぜひ官房長官にお聞きをいただきたかったのは、この法律が確かに改正をされますけれども、少なくとも私が何点か指摘をしたような、今後の宿題のような、そしてできるだけ早くこれを整備しなければ、仏つくって魂入れずということわざのようなことになってしまうという心配があるからでございまして、この辺を、政府のリーダーであられ、しかも通産大臣の御経験もあり、先ほど小川自民党筆頭理事のお言葉でありませんが、経済通でもあられる官房長官に、ぜひとも大蔵省や、失礼でありますけれども、大蔵省や法務省や労働省や関係官庁は、何となくこの法律に対して慎重に慎重にという姿勢ばかりで、これでは実効あることにならない、こういう懸念を持つ者として、ぜひひとつリーダーシップを発揮していただいて、早急に足らないところを補っていただきたい、こういうお願いをしながらお尋ねをしたいわけでございます。
  34. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいまここで種々の問題提起やら御提言をお聞きをいたしまして、むべなるかなという感じもいたします。  確かに現在置かれている日本の、特に産業政策の中での国際化、この問題で企業分社化や統合というのは喫緊の重要課題であるわけでありますから、これに対して今回の法改正というのは、親法の中でいわばそういう問題に風穴をあけて誘導政策の一つの柱を立てた。そして、それぞれの機関が慎重であるということは、一つの穴をあけてみてどんな弊害が起きるかということをまずもって検討するのは、通常行政を預かる者として当然のことかもしれませんが、今問題提起をされたようなことをめぐりまして、いかに効果を上げるかという点、これからは諸制度というものを見直していかなければならない。  ですから、私はこのことによって一日も早く成功例が出ることを、そして成功例が出ればこれに付随をして、こことここは直していった方がいい、ここはこういうふうにとめた方がいい、そういう問題が出てこようかと思います。どの企業が、どの分野の方がやるかわかりませんが、一日も早くこの法改正を生かして次なる展望を開くための御努力を願うか、刮目して待ち、私も内閣にあってそのために努力をしてまいりたい、このように思います。
  35. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 時間ですので、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  36. 中山成彬

    中山(成)委員長代理 次に、大畠章宏君。
  37. 大畠章宏

    大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。  先ほどから自由民主党の小川委員、そしてまた西川委員からも御質疑がございましたが、私も民主党を代表して、長時間を要したこの独占禁止法の改正法案について御質問をさせていただきたいと思います。  きょうは、特に官房長官に御出席をいただきました。昨今の大変複雑な、非常に難しい事件あるいは事象が多発している中、一生懸命に取り組まれていることに対しては心から敬意を表したいと思います。と同時に、私も茨城県選出の議員でありますが、茨城県選出の議員の中から官房長官が誕生し、そしてその官房長官に対して、きょうはこの独占禁止改正案について質問をするというよい機会をいただいたと思っているところでございます。  この独占禁止法の改正についての、先ほど官房長官から政治家としての御認識を承りました。戦後の財閥問題から始まって、さまざまな歴史的な経過を経て昭和二十二年に制定をされたわけでありますが、それから五十年たち、世界の経済状況あるいは国際状況も大きく変わり、今日本純粋持ち株会社解禁するという動きになり、経済上の観点からも重要な改正だと思うというような趣旨の御見識を賜ったところであります。  私ども民主党も、昨年の一月二十三日、新聞のたしか一面記事だったと思いますが、この独占禁止法の改正についての報道がされて以来、約一年半をかけて独占禁止法の改正について真剣に論議をしてまいりました。きょうは初めて官房長官を前にして御質問をさせていただきますので、民主党の基本的なこれまでの認識というものを簡単に整理をしながら申し上げ、そういうものを経て官房長官の御意見等を中心としてお伺いしたいと考えているところであります。  私ども民主党は、熾烈な国際競争あるいは産業空洞化に直面し、閉塞状態にある我が国経済及び企業活動が再び活力を取り戻す一つの方策として、また規制緩和の観点からも、事業支配力過度集中を招かない範囲で純粋持ち株会社制度を解禁をさせるべきであろうという立場に立っているところでございます。  そういう観点に立って種々検討をしてまいりましたが、幾つかの問題点もわかってまいりました。官房長官から先ほど、まず風穴をあけて、それがどういう影響を与えるのかということも十分見ながらやっていく必要があるだろうというような趣旨のお話もございましたけれども、いわゆる労働問題に対して大変大きな影響を与えるだろうというのが第一点でございます。  第二点には、先ほど金融問題のお話が出ましたけれども日本の独特の企業慣習といいますか風土といいますか、あるいは社会風土といいますか、そういうものがありまして、いわゆるアメリカの銀行持株会社法というものが出ておりますが、企業についても、あるいは金融業界についても何らかの措置をしておくことが経済の混乱を防ぐために大変重要だろうということで、この二つがこの独占禁止法の改正に当たって、いわゆる純粋持ち株会社解禁に当たってネックになったところでございます。ほとんどの時間はこの金融問題あるいは労働問題に費やされたと言っても過言ではないと思うのですが、こういう問題を一生懸命に与党内で努力をされまして今回この独占禁止法の改正案にこぎ着いたところでございますけれども、そういうものについては、与党の皆様方にも敬意を表したいと思います。  そこで、何点か御質問させていただきますが、ちょっと質問の順序は前後するかもしれませんが、まず、労働問題について、一番懸念もされているところであります。金融問題については一応金融関係の特別法というものを準備するということになっておりますので、この問題はこの問題としてまた別の機会にさせていただきますが、労働問題についてまず二点お伺いしたいと思います。  この問題については労政局長にまずお伺いしたいと思いますが、この労使の確認事項には、「検討期間中に労使紛争が発生した場合には、連合と日経連が誠意をもって話し合い解決に努めることとする。」ということでございます。しかるべく法改正等が行われる間、専門家会議報告にあるように、労働省としては、雇用主と同視できる程度に現実的に支配することができる地位にあれば、使用者としての責任を負うこととなることについて周知徹底を図るべきと考えますけれども、労働省としてこの問題にどのように取り組むのか、お伺いしたいと思います。  これまでの労働問題というのは大概、裁判事例を見ますと、使用者の定義が不明確だ、そういうことによって非常に長い間裁判事例が起きているのですね。この問題、どのように労働省としては取り組むのか、きょうは労働省からも労政局長がおいででございますので、御答弁をいただきたいと思います。    〔中山(成)委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 松原亘子

    ○松原政府委員 お答え申し上げます。  判例によりまして確立されましたこの労働組合法第七条の使用者の解釈、これにつきましては、今先生御指摘のとおり、専門家会議の中にも引用されているわけでございますけれども、この周知を図るということは私ども非常に重要なことだというふうに考えておりまして、労使の関係者とも相談をしながら、どういう方法で周知を図っていけばいいか、今後真剣に検討いたしたいというふうに考えているところでございます。
  39. 大畠章宏

    大畠委員 今労政局長から御答弁いただきましたけれども、私としては、今の、真剣に考えていきたいということでありますけれども、ぜひそういう形でやっていただきたい。  特に、私も昨年の一月からずっと独禁法改正問題に取り組んでまいりましたけれども、さまざまな観点からお話を賜りました。労働関係の専門家の方の話、あるいは弁護士さんの話、さまざまお伺いしましたが、とにかく戦後のさまざまな裁判の中で、この使用者の定義が不明確なために五年も十五年も裁判が行われているという事例がたくさん積み重なってきていますので、これだけの判例があれば、当然この使用者の定義というものをきちっとすべきだろうというのが一般的な話なのかなと思うのですね。  それを労働省としてずっと見過ごしてきたとは言いませんけれども、その問題について余り手をつけなかったということについては、労働省として私は反省をしていただきたいと思うのですね。ぜひこの際、これから純粋持ち株会社解禁をされますと、さまざまな御議論がありましたとおり、分社化がされるでしょう、あるいは今いろいろ予測されておりますが、金融関係の不採算部門の分社化をし、それを例えば処理をするとか、あるいはまた売りに出すとかいう話も出てくると思うのです。  そういうことにおいては、日本の中の働く人がどういう状況にあるのかということを、労働省はまさにそれを専門に扱う省でありますから、真剣に考えて私は今後ともやっていただきたい。きのうもちょっと厳しく申し上げましたけれども、今日までこの独占禁止法の改正法案が採決といいますか成立がおくれてしまったのは、ひとえに私は労働省の責任ではないかという感じも実際持っております。  これは労働省の皆さんも、昨年の与党の審議の中で、夜中の二時、三時まで激論を交わしながらやってきたわけですが、その大もとといいますか、根本のものは労働問題であったということも事実なんですね。したがって、私は、労働省という、省の名前に労働というものがついているわけですから、労働問題に関してもっと積極的に関係省庁と調整をしながら、今のような姿勢をより具体化するように今後とも努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、官房長官にお伺いをしたいと思っているところであります。  橋本総理は、これも労働問題に関するところでありますが、さきの本会議における独占禁止改正法案の質疑において、持ち株会社解禁はビッグバンの柱の一つであると強い決意を示されました。私たちもまた同じ気持ちでございます。我が国の経済は国内、国際ともに厳しい状況にあり、克服しなければならない使命を痛感をしております。  しかし、持ち株会社解禁に伴い、そのために労働者の犠牲があってはならないということは言うまでもありません。今日の日本経済の飛躍的発展は、働く方々の血のにじむような努力があったことは言うまでもなく、激動の今日的事態を乗り切るために、企業にとって労働者は一層の。パートナーであることも事実だと思います。私の好きな言葉で、「人は石垣、人は城」という言葉がございますが、まさに私は企業にとって「人は石垣、人は城」ではないか。そのような状況下で、この働く方々の問題というものは大変重要だろうと思います。  労働省から今後の措置について一定の見解が今示されたわけでありますけれども官房長官より、労働者の、働く方々の保護の観点から、労使合意の実のある検討についての決意のほどを改めてお伺いしたいと思います。
  40. 梶山静六

    梶山国務大臣 今日までの良好な労使関係が今日の経済を築いてまいったことは、委員御指摘のとおりであります。  ですから、今回のこの持ち株会社の一部解禁というか、これは産業政策上どうしても国際化に耐えていかなければならない、その目的のための一つの風穴というふうに御理解をいただけるならば、ほかを恐れる余りこれをやらなくて何も波風がなければいいのかというと、決してこの問題だけではありませんが、あらゆる分野でそういうものを見直しをしなければ、日本のこれからの産業政策は立ち行かない。こういう思いで今回のいわば持ち株の新規のあれが認められたわけでありまして、戦後のいわば新しい出発点にもなろうか。  これが、やがて巨大化した企業の分割なり、あるいはそれぞれが持って生まれたような、冒頭私が申し上げたように、新しい新規企業の創造を生む。そういうことにつながることを期待して改正がなされるものだというふうに私は期待をいたしております。広い意味では、逆に労働者の利便というか、向上に寄与するものだという期待を持ってこの法案を見ております。
  41. 大畠章宏

    大畠委員 今官房長官から、官房長官としての御見識を賜りました。私も今労働省に対してちょっと厳しいことも申し上げましたが、やはり今官房長官からもお話がありましたように、労使というものは、日本経済を今日までの状況に引き上げてきた。本当に両輪のごとく、日本の独特の慣習のもとに、いい意味での慣習のもとに、労使の協調をしながら一生懸命努力をした結果として今日の日本経済があると思うのですね。したがって、今日の非常に厳しい経済環境下でありますが、ぜひそのような視点で、官房長官としても、この独占禁止法の改正に当たって、これからも施行に当たっては強力な御指導をお願いしたいと思います。  この一年間の議論を経ながら来たわけでありますが、私ども民主党として、今の御論議を経ながら幾つかの視点を持っております。  独占禁止改正に当たって、一つには、事業支配力過度集中することとなる持ち株会社の範囲についてガイドラインを定めることになっておりますが、この定めるに当たっては、立法府のこういう委員会での議論というものを十分踏まえて、個別事案ごとの裁量的判断の余地をできるだけ少なくするよう法律要件及びその解釈基準の明確化に務めることが必要じゃないか。  二点目には、持ち株会社事業活動の実態を常に的確に把握し、内部成長等その後の状況変化によって事業支配力過度集中することとなる場合には、機動的かつ厳正な排除措置をとることが必要じゃないか。  また、三点目には、金融持ち株会社に関する法整備に当たっては、これまでの金融不祥事等の事件の再発防止も十分念頭に置きながら、金融機関の健全性確保、預金者保護等の観点から、事業会社及び兼業の規制、グループ金融会社間のいわゆるファイアウォールの規制についても厳格なルールを設けることが必要じゃないか。  四点目には、今御指摘がありましたけれども企業グループにおける労使協議の実を高め、労使関係の安定を図るため、政府の責任において労使関係者を含めた協議の場を設けて、労働組合法の改正問題を含め、今後二年をめどに検討し、必要な措置をとることが必要じゃないか。さらには、分社化等に伴う労働契約関係上の問題について、労働基準法の精神を踏まえ、適切な労働基準監督行政を行うことが必要じゃないか。  さらには、五点目には、企業集団内の株式持ち合いや金融機関による株式保有率の高さ等の状況を見直して、健全な個人投資家が拡大するよう、証券市場の改革を図るとともに、子会社事業活動等についてのディスクロージャー、少数株主の権利保護等の面での法制の見直しも必要じゃないか。  さらには、六点目には、経済全体の規制緩和や企業結合の複雑化などを背景に市場における独占力行使や競争制限的行為が行われ、独立事業者や消費者の利益が損なわれることのないよう、引き続き競争政策及びその執行体制の強化を図るべきじゃないかというような論点を、私どもとしては基本的にこの法律案に対して持ってきたところであります。  そういうものについて、この委員会の中でさまざまな論議を経ながらそういうことがされるだろうという認識を持ちつつありますが、こういう認識のもとに、この法律ができた場合、私は公正取引委員会というものの位置づけというのは非常に強くなってくると思うのですね。したがって、私は、法律法律としながらも、公正取引委員会の役割について強化が必要じゃないかと思います。  いわゆる経済全体の規制緩和や企業結合の複雑化が進むと、これらを背景に市場における独占力行使や競争制限的行為が行われ、独立事業者、消費者の利益が損なわれるおそれもあります。一昨年に公正取引委員会が行った海外実態調査報告書でも、持ち株会社グループ相互間での株式持ち合いなど、複雑に絡み合った企業集団内部で価格維持工作が行われると、情報が隠されて立証が困難になることから、持ち株会社を頂点とする企業結合に切り込むには、少しでも疑義があれば直ちに強制捜査ができるよう、強大な権限が必要になるのじゃないかという忠告も受けております。  このため、今回の持ち株会社解禁を踏まえ、引き続き競争政策及びその執行体制の一層の強化を図ると同時に、調査権限の強化についても具体的に検討すべきじゃないかと思いますが、公正取引委員会を所轄されている官房長官にこの件についてお伺いをしたいと思います。
  42. 梶山静六

    梶山国務大臣 今、大畠委員及び御党の考え方中心にして幾つかの問題点が列挙をされたわけでありますが、当然、事業支配力過度集中することになる持ち株会社については引き続き禁止という大前提に変わりはございませんし、今までも、公取委員会が昨今のいろいろな経済状況をめぐって存在感が強まってまいった、そういうところから、いわば組織の改廃あるいは定数の増加、特に検査部門、そういうものを図ってまいられたし、課徴金や罰金制度等のいわば新設もでき上がったわけであります。全体としての公取委員会の機能強化、これは図られているわけであります。  そして、今回のものは、既に委員御指摘のように、日本のいわば国際化に備えて、産業の空洞化やその他をいかにして防いでまいるか、その一点、これが目的で、これに派生をする労働問題と金融問題をどうするか、それぞれに手当てを講じながらこれからやってまいりたい、このように思います。
  43. 大畠章宏

    大畠委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  44. 武部勤

    武部委員長 次に、大森猛君。
  45. 大森猛

    ○大森委員 日本共産党の大森猛でございます。  今回の法案について、本会議で橋本首相は、持ち株会社全面解禁ではなく、部分解禁という立場から答弁をされておりますけれども、今回の一連のこの委員会での審議などを通じまして、私は、改めて本法案が、部分解禁どころか実質的には全面的な解禁に限りなく近づいていく、そういう極めて重大な法案であるということを痛切に今感じているところでございます。  この立場で、時間が極めて限られておりますので、単刀直入にお聞きをしたいと思いますが、まず第一に、今回、審議の最大の焦点の一つになりました九条五項に関連してであります。  禁止されるべき持ち株会社として、「事業支配力過度集中する」、この定義については、長い間与党協議会の中心メンバーとしてこられた議員の方も、また公取委員長も、また出席された参考人の方も、いずれも口をそろえて、これは規定ができない、このように再三述べてこられたわけであります。  それはなぜか。これは理由は二つあると思います。一つは、もともと「事業支配力過度集中」、これは独禁法第一条の目的規定で使われてきたことであります。抽象的な目的規定を禁止規定に据える、こういういわば大変粗っぽいことをやっているからそういう状況が生まれているんじゃないか。私は特に、このこととの関係で、将来この条項について公正取引委員会が本当に真剣に発動する意思があるかどうかという点で、真剣な意思をそこに感ずることができないというのも、これは率直な印象であります。  泉水文雄大阪市立大学助教授は、この点に関してこういうぐあいに指摘されております。「一条は目的規定であり、「事業支配力過度集中」は本来的に「競争の実質的制限」のような構成要件ではない」、こう明快に指摘をされているわけであります。  現に、過度集中規制の条項としてこの委員会でも指摘されてきた九条は、九条の二さらには十一条、これらと比較して、九条の二あるいは十一条では明確に数量的にも規定をされているのに、九条においてはそれがなされていないわけであります。加えて、過度集中は「きわめて多義的であり、経済学的な定義はなく、測定もなしえない。」と、この泉水助教授は言われているわけなんですが、本当にこれはそのとおりであると思います。明確に定義できない、そういうものを無理やり書き込もうとしていることから、いろいろな矛盾が今生まれてきているのではないかと思います。  さらに、この委員会参考人出席された実方参考人は、国民経済の大きな影響等、価値判断によって左右されるものが含まれていると、その有効性についての疑問視も表明されたわけであります。同参考人は、当日の陳述でも言われておりましたけれども、従来の独禁法の立場、つまり過度集中の規制が困難だから全面的に規制をする、これこそが道理があり、しかも独禁法の目的、過度集中の防止やあるいは公正かつ自由な競争確保する、そういう目的を本当に有効に確保する方法になるのではないかと思いますけれども、この点からまず公取委員長の御見解をお聞きしたいと思います。
  46. 根來泰周

    根來政府委員 私どもは、再々申し上げておりますように、この第九条の全面禁止というのは、いわゆる過度の制限といいますか、心配のし過ぎといいますか、杞憂の部分があるという御指摘がありましたので、その杞憂の部分を切り捨てるという趣旨で立法を考えたわけでございます。  そういう見地から申しまして、ただいま申しましたような九条の事業支配力過度集中になるような持ち株会社禁止するという規定を置いたわけでございまして、これは、独禁法全体がそうでございますけれども、やや抽象的であります。抽象的というのは、物事の性格上抽象的にならざるを得ないわけでございますし、どの条文を見てもそういうところがあるわけでございまして、それを今後、その解釈といたしましてガイドライン等で明確にしてわかりやすく解説するといいますか、それをお示しするということに尽きているわけでございます。
  47. 大森猛

    ○大森委員 きのう来の議論の中でも、このガイドラインについては、法的拘束力が全くない、法的な判断基準にもなり得ない、こういうことも明らかになりました。ですから、本当に過度集中持ち株会社禁止するという点に法的拘束力を持たせるという意味では、法案の中で明確に定義をしなくちゃいけない。ガイドラインで書けるものをなぜ法案で書けないのかときのう質問いたしました。これについて、公取委員長いろいろ述べられましたけれども、結局、納得できる答弁はなかったわけであります。  改めてこの点でお聞きしたいと思うんですが、例えば、過度集中の定義である第一類型、これの中で、「相当数事業分野」というのは、おおむね五つと言われました。それから「著しく大きい」というのは、総資産十五兆円を超える、こういう御説明がありました。この十五兆円あるいは五つの事業分野、これをなぜ法案に書き込むことができないのでしょうか。
  48. 塩田薫範

    塩田政府委員 きのうもお答えをしたところがあるかと思いますけれども過度集中ということを裸で使って禁止をするということではなくて、御承知のように、九条第五項の中で、事業支配力過度集中することとなる場合ということを具体的に書いているわけであります。  その場合に、例えばその中で三つのパターンといいますか、類型を書いているわけでありますけれども、その中で、事業規模が大きいというようなこと、あるいは幾つかの分野にわたるということを書いているわけであります。これは、過度集中になるような場合に、どの程度規模、あるいはどの程度事業分野にそれぞれ有力な会社があるかということで判断をしようということでありまして、例えば、我々として、総合的事業規模が十五兆円ということをガイドラインの中で規定をしたいというふうに考えておりますけれども経済実態が変動すれば、当然これを見直しをしていく必要があるわけであります。それから、事業分野の数として、五程度といいますか、おおむね五というふうに御答弁したと思いますけれども、これは五と書いていいのかどうかというような話がございますので、そこは法律の中にきっちり書いてしまうということがいかがかということで、ガイドラインの中で具体的に書いていきたいということでございます。
  49. 大森猛

    ○大森委員 経済的な変動があるのは当然のことでありますけれども、そうすると、例えば九条の二で数量的な規定がされていることの説明は、これではつかないことになると思います。なぜ法案に書き込めないのか。引き続き、これは全く疑問のままであります。  特に、この九条五項については、三つの類型だけじゃなくて、日本経済に大きな影響を与えるという点、あるいは公正、自由な競争を妨げるという二つの要件、これは二つが過度集中の定義になっているわけなんですけれども、この点についても、この間この委員会でもいろいろ、この三つの類型、二つの要件との関係で、今も含めてありましたけれども、これについても、国民の側から見て本当にわからない問題だと思うのですね。  今お話があった総資産十五兆円超、これがおっしゃった今回のガイドラインのドラフトなのか、草案なのか。だとすれば、国会の議論を踏まえて今後決めていくということの答弁と、一体その関係はどうなるのか、こういう点も大きな問題になると思います。しかも、二月二十五日の独禁法の与党協議会の山崎座長の記者会見では、この三つの類型については、禁止基準じゃなくて、あくまでも審査基準といいますか、つまり十五兆円超で一律禁止になるものではない、こうおっしゃつているわけなんですが、これは二つの要件との関係でいえばそうなると思いますが、この点をお聞きしたいと思います。
  50. 塩田薫範

    塩田政府委員 お答えをいたします。  第九条第五項で、禁止されるべき「事業支配力過度集中することとなる」ということの中身を書いているわけでございますが、先ほど三つの類型と申し上げました。その一番目、最初が「持株会社及び子会社その他持株会社が株式の所有により事業活動を支配している国内の会社」、これが一つ持ち株会社グループということで考えますと、そういった持ち株会社グループの「総合的事業規模相当数事業分野にわたって著しく大きいこと、」ということでございます。十五兆円というのは総合的事業規模が大きいということでございまして、それから「相当数事業分野にわたって」というところがございますから、先ほど申し上げたように五程度ということでもう一つ要件を考える必要がある。それからもちろん、先ほど先生おっしゃったように第二番目、第三番目の、国民経済云々というところも当然検討しなきゃいけないということでございます。
  51. 大森猛

    ○大森委員 時間が参りましたけれども官房長官に幾つか質問を予定していたのですけれども、一点だけ伺って、私の質問を終わりたいと思います。  禁止されるべき持ち株会社要件過度集中の定義について、たくさんの本質的な問題が出てきたと思います。法律的にも経済学的にも規定できないことがやられている。しかも今の、十五兆円を超えても一律には禁止されないという点についても否定はございませんでした。経済的には旧財閥規模企業集団の復活と言えるものが禁止されない可能性があるというような点とか、あるいはガイドライン、国会にも国民にも一度もそれが具体的に示されていないというような形、あるいは、金融制度全体の改革方向が明らかにされないまま、これはきのうの議論でも相当強い疑問も出されましたけれども、金融持ち株会社、金融機関の株式保有の緩和が今打ち出されようとしているわけであります。  欠陥だらけ、問題だらけの法案という感じが非常に強いわけでありますけれども、こうした法案について、今すぐこれをつくらなくちゃいけないのか、急ぐ必要はないのではないか。法案を撤回して改めて白紙状態で国民的な議論に付す、こういう選択もあってもいいのではないかと思いますけれども、最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  52. 梶山静六

    梶山国務大臣 この問題、長い年月をかけて、それぞれの各分野から大変な熱心な御討議をいただいて今日に至っているわけであります。今直ちにこれを撤回してどうこうという意思は全くございません。
  53. 大森猛

    ○大森委員 終わります。
  54. 武部勤

    武部委員長 次に、横光克彦君。
  55. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  きょうは官房長官、まことに御苦労さまでございます。  先ほどからお話がございますように、経済憲法九条と言われてきました独禁法九条が改正されることにより、純粋持ち株会社解禁されるわけでございます。この純粋持ち株会社解禁によって、経営効率の向上等、いわゆるプラスのイメージといいますか、そっちの方が先行しがちでございますが、これまでの本委員会におきまして、各委員から、確かにバラ色ではあるが、決してバラ色ではない部分もあるという指摘が数多く出されております。私たちは与党の立場ではございますが、一歩立ちどまって、何か問題があるならばそれに対して真剣に考える必要があろうという、そのような思いでいっぱいでございます。  私は、そうした観点から、持ち株会社解禁後、一層定着すると考えられておりますグループ経営、このグループ経営に対応した法律のあり方について、例えば子会社関係者の権利保護、あるいは子会社の従業員の権利保護、あるいは親会社の株主の権利保護、この三つの問題を私は本委員会で一貫して指摘してまいったわけでございます。きょうは時間の関係上、官房長官にお尋ねしたいと思うのですが、子会社の従業員の権利保護一点に絞ってお尋ねしたいと思っております。  現在でも事業持ち株会社のもとで、残念ながらいろいろな労使の紛争が起きております。そして、団体交渉で解決できない場合には司法の場に移される。そしてそこで長い年月と金を使って解決に努力するわけですが、そういった司法の場でも最高裁の判例が出ているわけですね。親会社が雇用者と同視できる地位にある場合は使用者として団体交渉に応じなければならない、こういった判例が確立されております。  私は、今回の独禁法改正というのは、まさにこの五十年続いた日本経済構造を本当に根底から変えるような大改正だと思うわけです。そうしますと、いろいろな関連する問題が生じてくる、その一つが、先ほどから質問されております労使の問題だろうと思うのです。そして、こういった判例がある以上、この大改正を契機に、そういった司法の場に行かないで済むようにはっきりとすべきじゃないか、つまり、労働組合法七条に親会社あるいは持ち株会社を使用者として明記する必要があると私は考えているのですが、官房長官のその点に関しての御意見をお聞かせください。
  56. 岩崎伸夫

    岩崎説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいました、労働組合法に関する使用者の定義の明確化ということでございますが、この点につきましては種々議論があるところではありますが、今後、労使を含めました検討の場におきまして十分議論されるべき課題であるというふうに承知いたしております。
  57. 横光克彦

    ○横光委員 確かに、労使の協議の場が設けられることになりました。これは今回、与党でこの独禁法改正案を協議するプロジェクトの中で最後まで難しい問題だったわけです。それゆえ、日経連、経団連、連合の皆様方が、附帯決議を前提に、これから二年間を目途に前向きに協議をしようという合意にたどり着いた、これは私は非常に大きな前進であろうと思っております。  しかし、この中で検討の場が具体的にどのように設置されるのか、あるいは、この問題の所管であります労働大臣がどのように関与するのかは書かれておりません。私は、三団体、三者がそこまで歩み寄って、これからこの問題を検討しようということになった以上、ただ労働省はそれを傍観するだけでなく、むしろ側面から支援する、あるいは率先して引っ張っていくリーダー的な立場をもって、この三団体の合意を決してむだにすることのないようにしなければならないという気がするわけでございます。  そういった意味で、この問題解決のために、労働省の中に私は審議会を設置して、そして審議会などの場で早急に検討をして、そこで出された結論に対して労働大臣が責任を持って対応する、そうした方がいいのじゃないかと思うわけでございます。これからの話し合いをさらに進める意味でも審議会の設置を強く望むわけですが、このことに対して官房長官のお考えをお聞かせください。
  58. 梶山静六

    梶山国務大臣 既にたびたび議論なされておりますように、今回の合意のもとにおいては、連合とそれから日経連、経団連、それぞれがこの問題で二年間を目途に協議をするということで合意をされているわけでありますから、その申し込みは労働大臣のもとにもなされておりますし、この要請に、こういう国会の議論を踏まえながら、適切に労働省は対応する、その中には委員の提案のことをひっくるめて検討がされるものと期待をいたしております。
  59. 横光克彦

    ○横光委員 この問題は本当に難しい問題である、ここまで来てもまだ解決が見出せないというほど難しい問題であるわけです。ですから、この改正を機に、何とかしてこれをお互いに納得いけるような解答に向かって努力をしていかなければならないと思うわけです。  ところが、再三質問しているのですが、労働省の説明員は、先ほどの答弁にもございましたように、関係者の意向を踏まえて対処すると、非常に消極的でございます。そっけない。行革の流れにむしろ逆行するというお話でもございました。確かに、審議会を設置するということになりますと、行革の流れには逆行するかもしれません。しかし、必要なことをやるための審議会設置は決して逆行するものではないし、むしろ私は必要であろうと考えております。  私が一番申し上げたいのは、日経連と経団連と連合の皆様方が、とにかくこの問題を話し合おうというところにこぎつけたということは大きな前進である。そして、それを決してむだにしないようにしなければならない。そのためには、やはりそういった関係、その所管省庁である労働省が本当に前向きに取り組んでいただかない限り、私はこの問題は非常に時間がかかるのじゃないかという思いでいっぱいでございます。三団体の合意をぜひとも尊重していただいて、そして労働省として、また政府の立場としても、官房長官もいろいろな御指導いただきますことを心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  60. 武部勤

    武部委員長 次に、前田武志君。
  61. 前田武志

    ○前田(武)委員 持ち株会社解禁でございます。  戦後ずっと続けてきた持ち株会社全面禁止というこの独占禁止政策をまさしく百八十度転換したわけでございます。もちろん、そういった経済社会あるいはグローバリゼーションといった背景がございます。時あたかも本国会において為替自由化法案、いわゆる日本流のビッグバンの先駆けを行っておるわけでございます。それと関連して、特に金融等を中心にして、グローバリゼーション、これはとめようがないということで、金融監督庁の法案の審議、要するに金融監督関係の分離独立、それも一つの市場の透明性、公正さを確保していく、そのための環境整備である、こう思いますへ日銀法の改正。  そういったことで、このグローバリゼーションという観点からとらえると、もちろんこの独禁法改正持ち株会社解禁ということは、ビッグバンよりも前から検討されてきたことではありますが、今申し上げたように、これは相互にまさしく関連し合ってきている、こういうふうに思うのですね。  当然、この先金融持ち株会社の問題、既に政府検討中でございますが、これは一般的に今議論をしている純粋持ち株会社とはまた違った、経済一つのインフラである金融関係でございますから、特別の状況等があるわけでございますから、これも当然、今議論をなされているわけでございます。  そういったことで、私自身もここまでに何度か議論をさせていただきました。論点は既に同僚議員が指摘してきたとおりでございまして、もちろんこの持ち株会社自由化によって、グローバル化し、情報化し、進展していく市場において、プレーヤーが、手かせ足かせではなしに、自由な意欲に満ちた企業活動ができ得るように、それが翻って日本経済社会の発展につながるようにという観点でございますが、当然弊害が出てくる。企業そのものは企業の論理で動くわけでございますから、同僚議員が御指摘のような懸念がいろいろある。そういったことも既に相当議論は深めた、こういうふうに思うのですね。  私は、少ない時間でございますから、論点を、そういったもろもろのことを含めて、結局は、急激に今我々の目の前に発展し、大きくなってあらわれている市場というものが経済活動のプレーヤーのグラウンドであるとすれば、そのグラウンドが、国民から見て、あるいはそのプレーヤーから見て、公正かつ透明なルールによって思う存分のプレーができるようなグラウンドであるべきだ、こういうふうに思うのです。そのグラウンドの整備あるいは番人、アンパイアが公正取引委員会に課せられた大きな責務であり、またそのプレーヤーの後ろにはコーチや、いろいろ各業態別に省庁等もついているわけでございますから、そのプレーしやすい透明な、公正なルールで動くグラウンドを確保するという意味においては、内閣の大番頭である官房長官の役割もまた大きいのだろう、こういうふうに思うわけです。もちろん、公正取引委員会を指揮する立場にあられるわけでございます。  そこで、そんなことを前提にしながらひとつ公取の方にお聞きしたいのですが、市場の公正さ、透明さ、そういったものを確保していく、今までとは恐らく観点も、それからその調査の、調査といいますか、透明な市場を確保するための機能的な役割、こういったものも随分と深く広く、随分と責務は大きいと思います。それだけに、公取の市場に対する情報収集能力であったりその調査能力であったり、こういったものをよほど向上させないといけない、こういうふうに思いますが、その点についての公取のこれからの取り組みについてまずお伺いをしたい。
  62. 根來泰周

    根來政府委員 従来、国会初め各部局の御理解を得まして、組織の拡充あるいは増員をいただいておるわけでございます。そういう重さを受けとめまして、私どもも力を尽くして仕事に励みたい、こういうふうに思っております。  ただ、そうは申しましても、公取の世帯というのは非常に小さい世帯でございまして、力の及ぶ範囲というのは当然あるわけでございますが、この行政改革の時代に大勢の人間をいただくということも、これも難しい話だと思います。そういうことになりますと、やはり一人一人の個人が力をつけてやっていくしかないと思うわけでございますので、今後、オールラウンドのプレーヤーということで、いろいろ研修等を拡充いたしまして力をつけて調査能力を充実したい、こういうふうに思っているわけでございます。  それからもう一つは、これは長期的な問題でございますが、独占禁止法の審査体制といいますか審査手続といいますか、これについてもいろいろ問題があります。こういう問題についてもいろいろ私どもの中で考えて、また政府部内でも御理解を得て、また要すれば法案という形で国会でお願いしたい、こういうふうに思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
  63. 前田武志

    ○前田(武)委員 要すれば、会社が大いに企業活動を展開していただいて、新規産業なんかもどんどん出てくる、会社がもうかる、従業員がその利益を得る、株主に利益が還元される、そういうことになってくればいいわけでございます。  そうなって国民全体が、経済社会の発展ということでそのフルーツ、成果を享受できればいいわけですが、企業企業の論理で動くわけでございます。先ほど官房長官が御指摘のように、巨大企業あるいは株の持ち合い、そういったようなことを通じて、新たな分野に参入してくるニューカマーというものを見えないような形で排除していく、いろいろあります。そういったことであればあるほど、公正で透明性の高い市場を確保していく、そのグラウンドを整備していく、そのための独占禁止行政、その政策というものは非常に重要になるわけであります。  今、公取委員長のお答えがありましたが、最後に官房長官内閣を代表してお伺いをしたいわけでございます。もちろん行革のこともある。私は、実は金融監督庁のところでもそういう議論をさせていただいたわけでございますが、原理が別でございます。透明な、公正な市場というものを確保していく、その市場が信頼されなければ、これはまさしくグローバルに日本の市場は、あるいは国内の企業社会においても、この市場はどうもプレーしにくいね、こういうことでは本当に自由な企業活動はできないね、あるいは国民の利益にならないねということになるわけでございますから、それは、監督し、検査し、公正な市場を確保していく、国民の不利益にならないようにする。そのための原理というものは、当然、人員、組織、必要なものは最低限は確保していくという原理でやっていく必要があると思うのですね。  もちろん、公取委員長としては、内閣全体としての行革の方針というものも受けとめていかなければいかぬわけですから、その辺も含めまして、新規産業の発展、あるいはそういうものを通じて、国民が安心して公正に行われているなと思えるような形で日本経済社会がどんどん発展していくような、そういう観点からの独占禁止政策、そしてそれを本当にしっかりとやっていけるような体制づくり、私は、あえて言えば市場政策局といいますか、そういったものまで公取の中につくるべきではないかというぐらいのことを考えているわけでございますが、そういったことも含めまして、最後に官房長官のひとつ御見解をお聞きして、終わりたいと思います。
  64. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変過大な御期待をちょうだいしておりまして、私の力に負えるかどうかとてもわかりません。ただ、公取が公正にして透明な、いわば経済の憲法とでも言うべき役割、これを今日まで果たしてまいったわけでありますから、いろいろな最近の状況を見ましても、機構やあるいは罰則やあるいは課徴金制度やそういうものを近来取り入れ、若干でも定数の増加を図りながら、今、公取委員長がそれぞれ、その人、能率をパワーアップしてやってまいる、こういうことでございますので、私はこの公取の本来の任務もいささかも疑うものはないし、むしろこの機能を、大変大きく変化をする社会でございますから、それに対応させていかなければならないという思いは同じであります。  それともう一つ、今回の改正によってむしろ私が恐れることは、この五十年間、現状で実は固定をしてしまった環境で、果たしてこれがそういうものの誘導策になるのかどうなのか、もうちょっとやはり民間の企業それ自体が意欲を持ってこういう変化に耐えられるようなシステムができれば、これに伴ういろいろな利害の調整をする法令その他の整備も進んでまいるであろう、このように思っております。
  65. 前田武志

    ○前田(武)委員 終わります。
  66. 武部勤

    武部委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  67. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。大森猛君。
  68. 大森猛

    ○大森委員 私は、日本共産党を代表して、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する反対の討論を行います。  反対理由の第一は、本法案の根幹をなす事業支配力過度集中の定義そのものが不明かつ恣意的なものであるという根本的な欠陥法案だからであります。  政府公正取引委員会は、事業支配力過度集中する持ち株会社禁止すると言いますが、その定義は、多義的かつ根拠が不明確であるばかりか、公正取引委員会の価値判断によって左右されるものであり、およそ定義とは言い得ないものであります。また、ガイドラインには法的拘束力はなく、かつ違法性の判断基準たり得ないことも明瞭になったところであります。  したがって、反対理由の第二は、本法案は、財界、大企業の年来の要求を受け入れ、法制定以来禁止してきた持ち株会社を実質上全面解禁するものと言わざるを得ないものであり、それは、大企業、大銀行の資本集中を飛躍的に加速させ、巨大企業グループと多国籍企業経済支配力を著しく強め、独占の弊害を大きくして、日本経済の民主的な発展と国民生活に重大な悪影響をもたらすものであるからであります。  第三に、持ち株会社解禁は、公正取引委員会自身の欧米における持ち株会社実態調査報告書等でも明らかなように、不公正な取引方法、不健全な企業経営をより一層助長するとともに、大企業の経営の公開や公益事業等の公的規制の回避及び経営責任の追及の遮断など、国民の監視を弱めるおそれがあるからであります。  第四に、持ち株会社解禁はまた、九条の二の大企業株式保有総量制限の大幅緩和とあわせ、企業の切り売り、合併、買収や本体事業の再編を含む大規模なリストラのてことなり、下請中小企業の切り捨てや労働者の労働条件の切り下げをより一層促進する危険性が大きいからであります。財界代表も参考人質疑において持ち株会社に子会社の雇用責任を求めるのは筋違いとの認識を表明されたことからも、いよいよ明瞭になったところであります。  第五に、金融持ち株会社について、金融業の規制のあり方に関する国民的検討を抜きに、金融業の全体像も明らかでないまま解禁するばかりか、さらに十一条の五%ルールさえ骨抜きにするもので、金融制度の公的性格をゆがめ、大銀行による金融支配、産業支配の危険性を強めるものであるからであります。  最後に、以上申しました商法、金融業法、労働法制や税法等、我が国経済制度の根幹に関連するさまざまな問題点は、法案の賛成論者からも、また法案支持の参考人からも強い懸念が表明され、立場の違いを超えて共通して指摘されたにもかかわらず、それら問題点の究明が先送りにされたまま本法案を成立させることは極めて重大であります。与党の内部的議論は約五十回程度あったということですが、国会の正規の審議は始まったばかり、しかも、参考人発言は賛成派ばかりで、反対派の参考人は一人もいなかったというかってない異常なものでした。  こうしたことからしても、国民的な議論を白紙からやり直すことを強く要求して、本法案に対する反対の討論を終わります。(拍手)
  69. 武部勤

    武部委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  70. 武部勤

    武部委員長 これより採決に入ります。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  71. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  72. 武部勤

    武部委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、中山成彬君外四名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合及び太陽党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。西川太一郎君。
  73. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 事業支配力過度集中することとなる持株会社に関するガイドラインの作成に当たっては、国民の意志を代表する立法府の意見を踏まえ、禁止される持株会社の解釈をより明確にし、個別の持株会社に関する公正取引委員会の審査における行政裁量の余地を極力排除すること。    なお、事前相談については、透明性確保する観点から、その経過や結果等を適当な方法で開示すること。  二 金融持株会社については、競争政策の観点とともに金融政策の観点から引き続き検討を行い、その解禁に当たっては、金融関係法制の整備等の必要な措置を講じること。  三 持株会社によるグループ経営における連結ベースのディスクロージャーの充実等情報開示制度の見直しを行うとともに、持株会社株主の子会社事業への関与や子会社関係者の権利保護のあり方等について検討を行うこと。  四 持株会社解禁に伴う労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。    なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。  五 持株会社設立企業分社化等のリストラクチャリングに伴う企業組織の変更が円滑に行われるよう、資産譲渡益課税に関する圧縮記帳の優遇措置や連結納税制度等の税制上 の検討を進めること。  六 持株会社設立等の企業組織の変更が利害関係者の権利等に配慮しつつ円滑に行われるよう、会社分割制度や株式交換制度等について検討を行うこと。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  74. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  75. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、梶山内閣官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。梶山内閣官房長官
  76. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、本法案の適切な実施に努めてまいる所存であります。  ありがとうございました。
  77. 武部勤

    武部委員長  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  79. 武部勤

    武部委員長 次回は、来る十六日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時十四分散会