運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-04-18 第136回国会 参議院 労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月十八日(木曜日)    午後一時一分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      佐々木 満君     平田 耕一君      今泉  昭君     石田 美栄君  四月十八日     辞任         補欠選任      石井 一二君     山本  保君      石田 美栄君     今泉  昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 小山 孝雄君                 山東 昭子君                 平田 耕一君                 前田 勲男君                 石田 美栄君                 星野 朋市君                 山本  保君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    事務局側        常任委員会専門        員        佐野  厚君    参考人        社団法人日本事        務処理サービス  大原 慶一君        協会会長        弁  護  士  中野 麻美君        日本労働組合総        連合会社会政策  桝本  純君        局長        龍谷大学法学部        教授       脇田  滋君     —————————————    本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労  働者の就業条件整備等に関する法律等の一部  を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、今泉昭君及び佐々木満君が委員辞任され、その補欠として石田美栄君及び平田耕一君が選任されました。     —————————————
  3. 足立良平

    委員長足立良平君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案審査のため、本日、社団法人日本事務処理サービス協会会長大原慶一君、弁護士中野麻美君、日本労働組合総連合会社会政策局長桝本純君及び龍谷大学法学部教授脇田滋君を参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 足立良平

    委員長足立良平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 足立良平

    委員長足立良平君) それでは、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人方々から御意見を承ることといたします。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十五分から二十分程度で御意見を順次お述べ願い、陳述がすべて終わりました後に、各委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。  それでは、まず大原参考人からお願いいたします。大原参考人
  6. 大原慶一

    参考人大原慶一君) ただいま御紹介をいただきました日本事務処理サービス協会会長を務めております大原でございます。よろしく御指導のほどお願いいたします。  それでは、前段で日本事務処理サービス協会概要、それから協会事業、どんなことをやっているか、そのようなことについて御説明をさせていただいて、それを御理解いただいた上で、後段で法律案に対する見解を申し述べさせていただきたいというふうに思っております。  まず、日本事務処理サービス協会という協会は、登録型、一般型と言われる派遣事業を営んでおります事業主全国団体でございます。傘下の会社数は二百四十社。派遣労働者数とかあるいは売り上げとかそういったビジネスボリュームという点では、全国登録型派遣事業の八〇%程度を占める会員協会に加盟しておられます。  それでは、私ども協会の「ご案内」というのがございますが、恐縮ですがちょっとお開きいただきたいと思います。本部理事会、そのもとに総務・事業部会調査広報部会能力開発福祉部会という部会を持っておりまして、右側にございますように北海道から九州まで九つの地域地域協議会、いわゆる地方組織を備えておる団体でございます。  じゃ、私ども協会はどんな事業をやっているのかということでございますが、これまた大変お手数をかけて恐縮でございますが、項目だけ申し上げますので、お手元の「平成年度事業計画」、これをちょっとごらんいただきたいと思います。この事業計画は昨年度定時総会で決定をいたしましたものでございます。  一、経済動向業界対応。これは、いい派遣、正しい派遣をしっかりやって、日本経済社会にお役に立とうじゃないかという呼びかけでございます。二番目、派遣対象業務拡大へ取り組もう。三つ目社会保険への適用促進を図ろう。四つ目派遣元責任者研修会。これは、実は全国十五、六カで、行政の諸機関とも連携をとりまして二千人ほど毎年一日かけまして講習会を行っております。私も必ず出席するようにして呼びかけをいたしております。五番目、地域協議会活動。年に一回は各地域同一歩調でいこうということで、地域協議会会長会議連絡会議もやっております。六番目、実務責任者セミナー。これは、実務責任者、いわゆる営業部長営業課長皆さんにお集まりいただいて、講師先生のお話を聞き、かつグループに分かれて当面の問題についての対応策を実地で研究するという会合でございます。実は、お隣に見える桝本参考人中野参考人のお二方にも講師としてお越しいただいたこともございます。その節はありがとうございました。  七番目、機関誌協会便り。八番目、調査広報活動。これは、半年に一回東京にあります主力の二十三社に統計をとりまして、派遣労働者がどういうふうに動いているか、人数あるいは料金、そういう動向調査をして、全会員にリターンをしております。それから、マスコミの皆さん労働組合関係皆さん連合中野先生あるいは東京ユニオンとか、そういう労働組合の方とも年に一、二回は懇談、討議の場を持っております。今後とも引き続きよろしく御指導いただきたいと思います。九番目、技能審査。これは、我が国における唯一の事務処理に関する技能審査制度でございます。労働省、それから中央、地方能力開発協会と十分にタイアップしまして四年を経ましたけれども、約一万人が受験をしてくださいまして、合格者六千人が出ております。この資格は一生どこででも使える資格でございますので、今後もしっかり実施したいと思っております。  法定健康診断。これも、派遣会社一社でやりますと近くの診療所一、二カ所しか契約ができませんが、協会で実施いたしますと、例えば東京に十ぐらいの診療所が設定できます。したがって、健康診断受診率を上げていくということを協会としてやっております。十一番目の行動基準、それから十二番目のCIETTにつきましては、ちょっと後ほど御説明させていただきます。  私どもの、今申し上げた各項目事業計画、これを進めていくには基本理念というのを定めております。その理念と申しますのが、配付してございます「行動基準」というのがございます。ここに私ども協会としての理念を定めております。基本的なところなので、駆け足で前文だけ読ませていただきます。  人材派遣事業は、一九八六年(昭和六十一年)の「派遣法施行以来順調な成長を遂げることができた。これに伴い、その社会に対する責任はより重くなった。  人材派遣事業役割は、顧客派遣社員双方にそれぞれ満足できるサービスを提供することである。すなわち顧客に対しては、良質の技能を持つ派遣社員を必要な時に適正な料金派遣し、派遣社員に対しては、適職を確保し、必要な能力開発を行うことである。これによりわが国労働力需給調整適正化に寄与し、経済社会の発展に貢献することを使命とするものである。  今後、わが国においては、個人尊重生活者重視等価値観が強まると考えられ、また、労働人口減少等により経済社会構造改革は必至である。従って、人材派遣の如く柔軟性の高い就労形態に対する必要性個人企業双方からいっそう高まるものと予想される。このような社会的要請に応えていくためには、この事業に携わる全ての者が、人材派遣事業公共性存在意義を常に自覚し、企業倫理を高く保って事業に当たることが肝要である。  当協会会員は、業界が今日まで育んできた社会的信用をいっそう強固にし、この事業をますます健全に発展させ、以ってその役割使命を果たすことを期し、会員の総意において、ここに掲げる行動基準を採択し、誇りと責任をもつて遵守することとした。  以下、よい雇用管理徹底就業条件確保福祉増進等について各条項で定め、これを会員会社はもちろん全従業員徹底するようにいたしております。私ども協会基本理念でございます。  次に、私ども協会が所属しております団体日経連商工会議所、先ほどちょっと出ましたCIEET等でございます。CIEETと申しますのは国際労働者派遣事業団体連合会でございます。ロンドンに本部がありまして、二十五カ国が加盟をしております。ロシアも加入をしておられます。現在のCIEETの最大の重点項目は、ILO九十六号条約の改定についてプッシュしていく仕事でございます。  御承知の九十六号条約紹介は国が行うものである、民間は原則禁止、認める場合は細かい規制をつけてという、この条項が現在の先進諸国状態に今やマッチしないんではないか。官と民がむしろ競争的に共存して、トータルの雇用を上げていくということが重要である。その趣旨に沿って、本年の六月までに各国の政労使からILO意見が届けられるというところまで、すぐ近くまでこの問題は来ているように思っております。  次に、派遣事業の現在の状況でございますけれども法律ができて、六十一年からスタートをいたしまして、平成二年、三年のころにピークをつけました。いわゆる一兆円産業と言われる状態になりました。しかし、三年から六年にかけて落ち込みを続けまして、ピーク・ボトムでおおむね二〇から二五%ぐらい下がった状態になりました。しかし、平成七年ごろから回復に向かいまして、八年の今現在は、対前年同月比で二〇ないし二五%プラスになっているというのが現状でございます。  急ぎ足でしたが、協会概要派遣事業の現在の状況を申し上げました。  それでは次に、労働者派遣法等の一部を改正する法律案等についての意見を述べさせていただきます。  まず、改正概要とされております派遣労働者就業条件確保のための措置項目派遣先における派遣就業適正化のための措置項目手続簡素化等項目育児休業を行う休業取得者代替要員に係る労働者派遣事業の特例、この四項目につきましては、私ども協会として要望書を提出いたしました。そして、ヒアリングの機会もございまして意見も述べさせていただきました。その上で、公労使委員皆さんが十分の時間をかけて、そして手続も慎重に進められまして得た結論でございまして、私どもも大変妥当な、むしろ必要とする措置であるというふうに考えております。したがって、改正概要項目につきましては賛成でございます。  次に、法律改正案ではないんですが、政令改正として十二の対象業務がつけ加えられると伺っております。法律案に対する意見ではないんですが、私ども事業にとっては大変重要なことなので、一言意見をつけ加えさせていただきます。  私ども対象業務に関する基本的な立場、それは公共福祉に反する等、不適当な業務を除いては原則自由化、いわゆるネガティブリスト方式が望ましいと考えております。この点については、日経連初め使用者側団体政府規制緩和推進計画等でも同様、不適正業務以外は原則自由化を主張しておられます。この御意見にも御留意をぜひお願いいたしたいというふうに思っております。  しかし、派遣はなお規制下に置くべしという御意見があることもよく存じ上げております。そして私どもは、その皆さんとも御協力、御理解を得て進んでまいりたいというふうに思っております。したがって、対象業務拡大ステップ・バイ・ステップになることはやむを得ないと思っておりますし、それでもいいのではないかというふうに考えております。そういう観点に立ってこの十二項目を拝見いたしますと、妥当な一歩、二歩の前進であると考えておりますので、これまた賛成立場でございます。  今までは、何か派遣というと欠員補充というような後ろ向きの派遣が主流でございましたけれども、これからの派遣はむしろ前向きに開発業務、キャンペーンの業務、アウトソーシングの業務というふうに前広に広がっていくと考えております。その趣旨に沿った十二項目であって、私どもとしては賛意を表しておる次第でございます。  以上が法律案に対する意見でございますが、一つつけ加えさせていただきたいのは、我々の派遣業界トラブルが多いということをよく言われます。トラブルは残念ながら足元にあると思っております。しかし、大幅に改善をしてきていると思っております。  理由は、派遣先会社業務担当者も法の理解が進んできている。労働省関係機関が、派遣先指針派遣元指針を定められて、いろんな機会徹底を図ってくださっていること。派遣元である我々も、派遣先に対して堂々と意見を言える強さ、協会も直接参加してトラブルを解決していくその力もついてきていると思います。  また、労働省の御支援もあって、従来は東京だけだったんですが、本年度から名古屋、大阪にも雇用管理アドバイザーというのを協会に設置いたしております。派遣先から、派遣元から、派遣スタッフから、すべてのトラブル相談を受け付けております。あわせまして、先ほどの「行動基準」も徹底させてトラブル減少に努めております。結果、大幅に下がっておるというふうに考えております。  以上でございますが、本年度は実は派遣法制定十年、私ども協会を設立して十年を経る年でございます。本当にありがとうございました。私ども事業が十年を経て本日の姿がかち得られましたのは、本当に多くの皆さんの御理解、御支援のたまものであったと思っております。心から感謝を申し上げ、感謝申し上げるがゆえに今後とも謙虚な姿勢を貫いてまいりたいと思っております。  また一方、実はこの十年は新しいビジネスでしたから、私ども見解と異なる見解とのぶつかり合い、調整、折衝をずっと繰り返してきた十年であったとも思っています。これからも同じようなことがあると思います。我々自身としては、見解をしっかり定めて、しかしきちっと意見を言っていく強さ、これは持ち続けてまいりたいというふうに思っております。  そんな気持ちを含めて、十周年の諸行事を検討しておるんですが、その中の一つに、五月三十一日なんですが、記念シンポジウムを開きます。一人の講師先生が一橋大学の中谷巌先生、もう一人の講師が、今や世界の派遣事業の頂点にあると考えられるアメリカマンパワーのフロムスティン会長、お二人の講師シンポジウムを開こうと思っております。御案内を差し上げたいと思っていますので、もしお越しいただければ大変幸甚だというふうに思っています。  最後に、恐縮ですが自己紹介をちょっとさせていただきます。  私、ビッグアビリティという会社を経営しております。国会営業活動をするつもりは毛頭ございません。私ども人材派遣職業紹介二つ仕事で、五つの支店で約一万人の登録社員と五百社のクライアントでお仕事をさせていただいております。双方にお役に立つようにというビジネスを展開させていただいております。  冒頭の陳述は以上でございます。
  7. 足立良平

    委員長足立良平君) ありがとうございました。  次に、中野参考人にお願いいたします。
  8. 中野麻美

    参考人中野麻美君) ただいま御紹介いただきました弁護士中野と申します。  労働相談等を通じまして派遣労働者雇用権利にかかわってまいりました立場から、法案に対する意見を述べさせていただきます。  私が代表を務めております派遣労働ネットワークが行いましたスタッフアンケート調査の結果、それから労働相談派遣ホットラインの結果、そしてこれらにあらわれたスタッフの声をもとにまとめました法改正要求資料として配付させていただきました。ぜひ目をお通しいただければと思います。  この資料にあらわれておりますように、法施行後の十年の間、労働者派遣法が新しく創設いたしました派遣先派遣元派遣労働者のトライアングルの法律関係にはたくさんの不十分な点があることがわかってまいりました。今回の法改正一つ目的は、そうした法律のほころびを構造的に究明し的確な措置を講じることにありました。そして、私たちはこの法改正目的が完全に遂げられることを望んでやみませんでした。  そうした立場から、今回の法案に目を通しますと、派遣先責任一定の範囲で明確化し強化するという、労働者権利保障派遣事業の適正な運営を図る上で一定前進が見られることは評価に値するものであると考えます。しかし、それは改善の一歩を踏み出したものであって、さらなる検討と抜本的な改善が求められる事項がたくさんあることも否定できません。  政府は、今改正に続きましてさらにこの法律を見直す方針であると伝え聞いておりますが、将来の見直しをもにらみながら、今国会においてぜひとも参考にしていただきたい事項法案内容に即して四つばかり指摘させていただければと思います。  第一には、労働者派遣契約解除に関する措置についてです。  法案では二十六条を次のように改正するとあります。つまり、労働者派遣契約の締結に当たって、契約解除に伴って講じるべき労働者雇用安定を図るために必要な事項を定めるようにする、このように定められています。これはスタッフからの労働相談で最も多く深刻な派遣先による契約解除に対して、スタッフ雇用の安定を図り生活に影響を生じることのないようにすることを目的とするものであります。しかし、問題の本質にかんがみますと、重要な、肝心な点が抜け落ちていると思えます。  それは何かといいますと、派遣契約解除に関する最も重要な問題点は、法二十七条で禁止されました不合理な契約解除横行です。私たちが実施しているホットラインでは、この問題に関する相談事例が最近では五〇%を超えております。法律では派遣先労働者の国籍、信条、性別社会的身分労働組合の正当な行為をしたことなどを理由派遣契約解除してはならないと定められています。そして、列挙された性別等の事由以外にも、公序に反するような不合理な契約解除もこの条項で禁止されているということが説明されています。ところが、相談事例では次のような不合理な契約解除横行が目につきます。  まず、派遣法違反の指摘をしたこと、労働基準法など労働法権利を行使したこと、妊娠、出産の予定といったようなことを理由とする解除、つまり労働法による権利保障趣旨に反する契約解除横行しています。また、スタッフのしぐさが男っぽい、上司の雰囲気に合わないといった、正社員ではとても職場を奪われる根拠にはなり得ないような言動をとらえて、差別的な契約解除横行していることも目立ちます。派遣先の中には派遣先の都合次第でスタッフを使い捨てできると勘違いしている企業も少なくないようでありまして、法律の定めが徹底されない現実を痛いほど思い知らされております。  わざわざ法律に定められた、この派遣契約解除禁止条項が実際の運用においてないがしろにされている場面が少なくないのは、法違反を犯した派遣先責任が明確になっていないからです。労働者派遣法は、派遣元には罰則を含む制裁措置を講じて法の趣旨徹底するよう厳しく求めていますけれども派遣先に対する制裁は何も定められていません。この不合理な契約解除は専ら派遣先に問題があるというのに、その契約解除を行った派遣先に対する制裁措置は何も定められていないのです。違法な派遣契約解除を撤回されるに当たって、派遣元によっては大変な努力を傾注していただいておりますが、スタッフサイドで見ておりますと、お客様に当たる派遣先のわがままを毅然として是正していくためには、法律の枠組みは余りにも不十分過ぎます。  この問題を解決して、スタッフが安心して能力を発揮し安定した生活確保するには、法に触れる契約解除を行った派遣先に対し次のような措置を講じることが必要だと考えます。  第一に、速やかにスタッフ職場に受け入れるように義務づけをすること、第二番目に、それを履行しなかった場合には少なくとも賃金相当損害金を支払うように義務づけること、さらに第三番目に、それさえ履行しなかった派遣先には企業名公表を含む一定制裁措置を講じることが必要だと考えます。  その点で、法改正案が示すものは契約解除論一般論にとどまり、派遣法二十七条の禁止条項違反に対して求められる本来の対策があいまいにされているというふうに考えざるを得ません。そして、二十七条に関しても、派遣先が講じるべき措置について新しく指針を策定することが予定されているようですが、百歩譲ってこの講じるべき措置の具体的な内容指針にゆだねることにしても、その内容が今申し上げました基本に沿うものかどうか、極めて重大な問題だと考えます。そして、これに違反した派遣先企業に対し、勧告を含む行政権限の果敢な発動や企業名公表を含む制裁措置が予定されているかどうかということも極めて重大な問題だと受けとめております。  第二番目の問題です。違法派遣横行に対し、事業の適正な運営をどのようにして図るかという問題であります。  そもそも現在の労働者派遣法は、専門的技術経験に裏づけられた業務であること、そして正社員代替的活用は許さないということを二つのキーワードにして、派遣原則禁止し、業務内容と期間の両面から縛りをかけて例外的に許してまいりました。派遣可能な業務ポジティブリストとして列挙し、これ以外の業務での派遣は許容されない仕組みになっているのに、一般事務営業による派遣あるいは製造ラインヘ派遣などが労働相談を介してみても急速に広がってきている実態があります。  派遣元の中には、法の趣旨に沿って高い専門的技能経験をもって企業要請にこたえることを旨とする業者もあると聞いておりますが、そうしした業者ばかりではないのです。どんな仕事でもよいから契約をとってくるよう営業マンを叱咤激励して営業に当たらせている企業もあると伝え聞いております。もはや一般事務での派遣規制しようがないほど野放しになっています。OA機器操作と聞いて行ってみたら実は検査業務であったり、ファイリングが業務であると聞いて行ってみたら段ボールの箱詰め作業であったり、めちゃくちゃな苦情もたくさんあります。外国人労働者については、請負や委託を偽装した製造ラインへの違法派遣が目立ちます。相談窓口にあらわれた苦情は氷山の一角と思われます。  そして、違法派遣のもとでは労基法や労組法に基づく権利が否定されたり、あるいは労働者がその権利を行使できないということが最も問題になっています。労災事故が起きても労災保険申請手続すら非協力で、事故を隠してしまう例さえ訴訟になっているのです。  こうした違法派遣が広がったのは、これを受け入れて利益を上げてきた派遣先には何らの制裁も講じるべき方策も定められていないからだと受けとめています。そして、派遣先違法派遣労働者から指摘されたとき、違法はなくさなければならないといって派遣契約を打ち切ってスタッフ職場を奪ってしまうのです。  東京都の地方労働委員会で争われましたインドネシア・ガルーダ航空事件では、労働者たち労働組合を結成しまして、スチュワーデス業務派遣法律で認められていないからといって待遇改善を求めたことに対して、違法なものは除去するといって契約解除したことが不当労働行為かどうかで争いになりました。東京都の地方労働委員会は、これを違法なものを排除するのだから不当労働行為意思はないといって労働者たちの救済をはねのけました。こういった状態をいかにして改善するのか。告発すればみずからの雇用にかかわるということでは、告発に鋭さを欠いてくるというのも当然のことではないでしょうか。  こういった事態を改善して法の趣旨徹底するためには、違法派遣を受け入れて利益を上げる派遣先企業責任を明らかにし、これを履行しなかった派遣先には制裁を課すること、そして違法派遣となればこれは本来の二者の構造に基づく雇用関係が、本来原則的な雇用関係が発生するものだとして、派遣先雇用責任を負わせていくような法律上の枠組みが不可欠だと思われます。これらの違法な派遣は許さないという法律の枠組みを整備しないで、規制緩和として適用対象業務を大幅に拡大することは非常に問題があります。今までに輪をかけて違法な派遣を広げるおそれがあります。  中央職業安定審議会での審議によりますと、十二もの業務拡大が予定されておりますが、例えば病院介護業務についてはチームプレーが必要な医療の実態になじまない、サービス低下につながるといったことから労働組合の反対も強かったところです。しかし、私どもにとっては医療の分野に法の枠を超えた派遣が広がりはしないかという点で大きな懸念が持たれます。また、研究開発、セールスエンジニア、企画開発など、ホワイトカラーへの拡大も予定されておりますが、一般事務での派遣横行している現状に照らしますと、派遣があらゆるホワイトカラーに広がるおそれもあります。法の趣旨を貫いた適正な派遣事業運営にとって、現行派遣法派遣先責任強化、明確化といった課題は不可欠なものだと考えます。  第三に、今回育児・介護休業代替の派遣を認めることになりました。ネガティブリストによる派遣です。これについては次の二つの側面から労働者権利保護のための枠組みを整備することが不可欠だと考えます。  一つの側面は、この派遣が旨とするところの家族的責任を有する男女労働者権利保障との関係です。こうした派遣を認めるべきだという要請は、休業取得に当たっての使用者の要員配置義務を前提とするものでありましょう。だとすれば、どうしてその要員配置義務の明確化は行わないのでしょうか。また、対象業務等を限定して正規代替を許さないという枠組みを取り払ってネガティブリストで派遣を容認するわけですから、休業取得者雇用権利にも影響を及ぼす可能性があります。したがって、育児・介護休業法の指針で指摘されております不利益取り扱いや原職復帰に関する原則は、本来法律の本文で明確化し、違反したときは速やかに原状回復を図るような措置が講じられるべきです。  二つ目の側面は、ネガティブリストによる派遣の導入が派遣法による労働者権利保障の枠組みを質的に転換させるものだということです。したがって、その導入の前提条件として、これに対応した権利保障の枠組みのためのフォローが不可欠です。そもそも今の派遣法による労働者権利保障の枠組みは、対象業務の専門性をキーワードに、市場法則によっても専門性にふさわしい一定水準の賃金と労働条件や雇用確保ができるはずだという、そういった期待をベースに築かれています。ネガティブリスト化はそのベースを破壊して法の基本構造を変えることですから、権利保障の枠組みも抜本的に変えなければなりません。  業務を問わず派遣を認める法制度も、西欧諸国の中に見受けられますが、それでも全くフリーハンドで活用できているわけではありません。正社員の休業など、派遣できる実質的な理由を限定し、派遣可能な絶対最長期間を定めて規制しています。そして、法律で許されない派遣や絶対最長期間を超えた派遣については、労働者派遣先雇用主として権利主張できるというフォローがなされています。労働条件の水準を確保するため、同じ労働についている労働者との均等処遇も義務づけられています。専門性によって雇用と労働条件水準を維持するベースがなくなるということは、今申し上げましたような実質的な規制というものを図ることが不可欠であると考えます。  今回の育児・介護代替派遣の容認には、これらの条件の充足に不十分さを残していると考えざるを得ません。この場での審議はもちろんのこと、さらに検討が予定されておりますネガティブリスト化に向けた議論に当たっても見逃してはならない課題と考えますので、ぜひ留意していただければと思います。  第四番目に、派遣労働者の待遇改善は切実な課題であります。そのために、均等待遇原則の徹底やプライバシー保護のための法的枠組み、労働者としての人格が尊重されるための措置を講じる必要についてです。  資料スタッフアンケートにありますように、登録派遣労働者の平均年取水準は二百七十万円弱です。家賃を支払って、スキルアップのための学校に通って、それで自立した生活を求める女性たちの現実の賃金水準がこれです。これが専門性を売り物にする派遣労働の対価です。そして、「派遣スタッフも人間です」というまとめにあるように、派遣スタッフへの軽視、差別がひどい、受け入れ体制が悪い、使い捨て視している、年齢が高いと差別される、セクシュアルハラスメントに遭ったといった苦情が寄せられています。  体調を壊して気分が悪くなったので地下の医務室でちょっと休みをとろうとしたら、派遣の人は入室しないでと断られたといった経験を語ってくれたスタッフもいます。顔写真入りで自宅の住所、同居の家族、電話番号、趣味、生年月日、学歴など、プライバシーのいっぱい詰まっている履歴書が派遣元からファクス送信されて、それがまた派遣先職場で公然と回し見られているという苦情も少なくありません。セクシュアルハラスメントは雇用形態を問わず問題ですが、アンケートに見られるようなスタッフに対する軽視、差別が派遣先上司からの権限乱用によるハラスメントを増幅させているのではないかと考えられます。  このような差別的取り扱いやプライバシー侵害をなくすことは、派遣で働く労働者にとって切実かつ緊急な課題です。福利厚生施設の利用を初めとする派遣先での取り扱いについて、均等待遇を徹底する措置を講じることが必要です。また、ネガティブリスト化が既に一部導入されていますが、そうしたもとでは特に賃金についての均等待遇保障が求められます。  また、プライバシー保護については労働省も指導を行っているということですが、そもそも派遣決定に当たって派遣労働者の当該業務の職業適格性にかかわる事項以外は開示を求めないということを義務づけたり、あるいは労働者のプライバシーについては派遣元派遣先に守秘義務を課することが検討されるべきだと思われます。今回の改正案ではこれらの点についての検討が不十分だと思います。  スタッフの人権を保障する法的整備が実現されることを心から希望いたしまして、私の発言を終わらせていただきます。
  9. 足立良平

    委員長足立良平君) ありがとうございました。  次に、桝本参考人にお願いいたします。
  10. 桝本純

    参考人桝本純君) 連合桝本でございます。よろしくお願いいたします。  今回の労働者派遣法の見直しは、既に五年前から予定をされていたスケジュールでございました。  私どもは、この法改正の議論がなされる場所でありました中央職業安定審議会、なかんずく、その中の民間労働力需給制度小委員会の審議に責任を持って参加をしてきた立場から、今回の法案のもとになりましたその審議会の建議、皆様方のお手元にあります委員会資料で申しますと三十九ページ以下ということになろうかと思いますが、この小委員会の報告が中央職業安定審議会の建議として取りまとめられたのが昨年の十二月でございました。  これに至る過程を振り返りつつ、当初から労働組合として取り組んできた視点を御紹介しつつ、今般上程されております法案についての見解を申し述べたいというふうに思います。  結論から申しますと、今回出された労働省の提案しております改正案内容は、幾つかの点で極めて不十分かつ不満足なものであります。しかし、約二年にわたりますこの審議過程を振り返ってみますときに、残念ながら現在の取り巻く情勢の中では、今回の見直しがこういった内容法案化されることについては、結論的に言えばやむを得ないのかなというふうに思っておるところであります。さはさりながら、私どもの観点から見て残っている問題というのは決して小さい問題ではございません。合弁護士中野先生の方から具体的な例を含めて指摘された点と重なるところも非常に多いかと思いますが、一応私ども立場から申し述べたいと思います。  まず、今回の法改正が議論されるに当たって、世上問題になっておりましたのは、現行法が中途で拡大をいたしましたものも含めて十六の業務に限定をしております対象業務拡大するかどうか、拡大するとすればどのように拡大するのかという問題が社会的に言えば注目をされていた問題でございました。しかし同時に、この審議会での法改正問題が具体的なテーブルの上に上る時期に二つ新しい条件が重なってまいりました。  一つは、御案内のとおり、現在もなおそこから脱出できていない長期にわたる不況であります。この不況の中で、私どもは現行の労働者派遣制度というものが根本的な欠陥をあらわにしたというふうに理解をしてまいりました。いま一つは、この不況からの脱出を強く念頭に置いて多くの経営者並びに経営者団体から主張されてまいりました規制緩和という主張でございます。  私どもは、社会経済政策全般についての規制緩和については、官僚統制を打破し、またさまざまな規制に伴って生じている特権であるとか利権であるとか、あるいはさらには、それが政治の腐敗にまで結びつくような問題が多々明らかになっている中で、規制緩和そのものに対しては積極的に対応すべきだというふうには考えておりました。しかし同時に、経済的な活動が透明な形で行われるのに対応して社会的なルール、つまりゲームのルールというものは強められなければならない、一つの共通した公明なルールのもとで自由な競争が行われるということがなければ現代の社会における公正さというものは担保できないというふうに考えてまいりました。そういう中で、労働関係法というのはまさに社会的な公正なルールをつくるものだと、こういうふうに考えてきたところであります。  現在、上程されております法律案一般的に言いますと労働者派遣法と言いますが、労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者就業条件整備等に関する法律、こういうのが正式名でございます。まさにこの名前が示しているように、適正な運営確保されなければならないということをわざわざ法律でうたうということは、適正でない運営が多く見られたということを如実に示しているわけでありますし、派遣労働者就業条件の整備というのは、この派遣労働者就業条件が整備されておらなかったということをくしくも示しているものだというふうに考えます。  現実に、この労働者派遣法が制定されました十年前、既に派遣という形での就労はこの法律がないまま、さまざまな形でこの社会の中に広がっておりました。  ここで、労働組合としてはどういう立場を当初とってまいったかということにつきまして若干振り返ってみますと、こういった派遣というような就労の仕方は好ましいものではないということを共通に抱いていたというふうに思います。しかし同時に、現実に存在しているものに対してこれをどういうふうにするのかということを放置して、一般的に好ましいか好ましくないかということを議論することも、これまた決して責任のある態度ではないだろう。なかんずく、我が国の労働組合のその多くが企業別の正規雇用従業員の組合でありました。その世界の外にある派遣労働者たちの問題を単に派遣労働という就業形態が好ましくないという観点からだけ論じることは、場合によっては正規雇用社員のエゴイズムというふうにも批判されかねません。  そしてまた、現実に我が国の労働組合の組織率が、我々が言うのも恥ずかしい話ですが、決して高くない、むしろ次第に低下しつつあるという傾向の中で、たまたま運よく正社員になっている人間だけの利益を主張することは、我々ナショナルセンターとしてはとるべき態度ではないだろうということを考えてまいりました。そういう観点から、今回の改正の出発点に当たって我々が考えていたことは二つであります。  一つは、対象業務の問題に関して、その前に前提的に言いますと、派遣という形での就労形態というのは現に我が国の中で広がってしまっており、これに対応して働いている労働者権利を守る社会的なルールは全く確立されていない。この問題について確立することは、労働組合社会的な使命だというふうに考えております。  それから、いわゆる正社員として働くのではなくて、もっといろいろな形で働きたいという欲求があるとすれば、その欲求そのものは否定されるべきものだというふうには考えられない。しかし、現在の労働関係法というのは、例えば労働基準法をとってみますと、これは昭和二十二年に制定され、以後労働契約に当たる部分は全く当時のままでございます。この労働契約で想定されていたのは直接雇う人間のもとで働く、このことを想定しておりますし、またその働く人間たちは一カ所に固まっており、そこで従業員の代表を選ぶことができる、そして使用者側と交渉することができる、このことも前提にしております。  けれども派遣労働者の場合というのは、まず第一に、雇われる人とそのもとで働く、つまり労働の指揮命令権を持っている人とが違うわけであります。そしてまた、登録型の派遣の場合には、雇われる人そのものがしばしば変わります。仕事が具体的にあって、その上で派遣先登録契約を結び、そこで初めて雇用契約というものが一定の期間を限定して成り立つわけです。ここまで特殊なものでなくても、雇われている人のもとで働くのではない、別なところで働かざるを得ない労働者というのはこの世の中に広く存在いたします。  例えば、典型がデパートの派遣店員でございます。デパートの派遣店員と申しますと、女性の先生方は一階にある化粧品売り場をよく御存じかと思いますが、あれが一つの典型。もう一つの典型は、六階か七階か少し上の方にあります既製服売り場でございます。ここの両方では、そこに店を出す、片方では化粧品会社、もう片方では洋服の卸会社、これらとデパートとの間の力関係が非常に大きく異なります。特に既製服売り場で働いております洋服の卸メーカーの方の派遣社員たちは、非常にデパートの力が強いためにしばしば多くの権利侵害をこうむってまいりました。  それから、例えば化学コンビナートのような装置産業ではメンテナンス専門の会社がございます。このメンテナンスの会社で働く労働者たちは自分の会社で働くわけではありません。エンジニアリング会社がつくった装置のところへ行ってそのメンテナンスの作業に当たるわけで、多くの場合には自宅にファクスがあり、何月何日から何月何日までは何という会社の機械をメンテナンスせよという指示のもとに、いろんなところで仕事をしているわけであります。  しかし、派遣労働者の場合には、先ほど申しましたように、さらに自分の雇い主との関係そのものが極めて臨時的なものであります。このような存在の労働者を、例えば労働基準法は制定当時全く想定していなかったわけであります。  先ほど、今回の不況の中で派遣法の欠陥があらわになったと申しましたが、それは先ほど中野先生の方からも御紹介がありましたように、一番典型的なあらわれが契約の中途解除でございます。派遣労働者派遣元から賃金を受け取ります。しかし、その派遣元から受け取る賃金というのは派遣先から派遣元に支払われる派遣料金によって担保されているわけです。そして、派遣先派遣元との間の契約は、これは労働契約ではなくて単なる事業者間の民事契約だというふうにみなされております。  これが中途で破棄された場合に、例えば六カ月の契約で就労した労働者は、途中四カ月目で二つ事業主の間でその民事契約が破棄されたとすれば、その次にそれにかわる仕事のあっせんでも受けない限り、当然のことながら残り二カ月間の賃金原資は派遣元に入ってこないわけでありまして、したがって派遣元の多くの場合はその場合に、先がこういうことになっちゃったからおまえはあきらめろといったようなことが横行したわけであります。かわりの仕事を見つけてくれる良心的な会社も確かにありました。しかし、時は不況でございましてますます仕事が減っている時期でございますから、たまたま派遣元の経営者が良心的であってもうまく見つかるとは限りません。良心的でない場合には御推察のとおりであります。絶えず不安にさらされている状況派遣労働者は置かれてまいりました。  このような事例が、中野先生が代表をなさっている派遣労働ネットワーク以外にも私ども連合本部にも、また特に派遣業が集中しております東京の私ども地域組織にも非常に多く集中してきたところでありました。その一端は、本日私ども資料としてお手元に配付をさせていただいているものでございますので、御参照をいただければありがたいというふうに思います。  したがって、私どもはこういった事態を前にいたしまして、何よりも派遣労働者保護の観点から是正されなければいけないのは派遣先事業主が労働関係の中で持っている位置を明らかにすること、つまりすべてを派遣元の方に使用者としての責任をいわば位置づけるのではなくて、派遣先の方がそれ相応の責任を引き受けるような内容改善すること、これが最も基本的なことだと思っておりました。それと対比の上で言えば、対象業務がどうなるかということはむしろそれとの結果で議論されればいいことだというふうに認識しておりました。これは現在も変わりません。  例えば、現行法で十六の対象業務が一応認められておりますが、それらすべてが非常によい業務で、それ以外の業務は全部派遣の対象にはならないよくない業務であるといったような基準は、線を引くことは非常に難しゅうございます。現行十六の中でも怪しげなのもございますし、また適用対象になっていないものでも適用しても構わないものもあろうと。そのことよりも、むしろ問題なのは今言いましたような現行の派遣制度の根本的な欠陥ということでございました。  この欠陥を是正するために法律上検討されるべきもの、それから法律の下にありますが、そのほかの措置で検討されなければならないもの、あわせて審議会での議論をいたしまして、審議会ではそちらの議論をまず先行してくることができました。その結果が現在提出されている法案に反映されているわけでございます。しかし、ここの中でこの前提になっております小委員会のまとめが出ました段階で、私どもが中央執行委員会で確認をしたものがお手元の配付資料の一番上についているものでございますが、ここで指摘しておりますとおり、現行制度の欠陥是正が今回の法律で一〇〇%図られたというふうには思いにくいものがございます。  しかし、少なくとも派遣先責任の問題が改めて今回論議され、法案の中で取り入れられたことについては一歩の前進だろうと。これが、どのように担保されるのかということは今後大変重要な課題を労使各側並びに行政当局に残しているというふうに思います。  それから、法制定以後も依然として後を絶たない違法派遣、多くの場合には請負という形を偽装した派遣の問題であります。これにつきましては、今回の法律は改めて派遣先については、適法な派遣業者から適法な職種以外では受け入れてはならない、当たり前のことですけれども、これが初めて明示をされ、またそれが是正されない場合については幾つかの措置法律上も確認してございます。しかし、具体的な問題は今後審議が予定されております労働大臣の定める指針にゆだねられているところでございまして、この指針がこの改正法案の本来の趣旨を生かした内容になることを強く要望したいと思いますし、連合として責任を持った取り組みをしてまいりたいというふうに考えます。  結論的に申しますと、現在の制度のすべてが労働者派遣法という職業安定法の例外規定をもとにしたいわば外づけの法律によってすべて担保できるかどうかは非常に大事な点であります。私どもは、労働契約にかかわる問題はこの法律というよりも、その前提として労働基準法自体にそのような労働契約の概念を拡張した法改正が必要だというふうに考えております。  当初、この制度を議論いたしました中央職業安定審議会の小委員会では、労働基準法でカバーされるべき問題も含めて必要な議論を行おうということから出発いたしました。しかし、残念ながらその審議の期間は短縮されてしまいました。これは政府が定めた規制緩和五カ年計画が中途で三年計画に前倒しをされたことが直接の契機でございました。当初私どもは二年間の審議時間を要求しておりましたが、そういった状況の中で一年で結論を出さなければならないということに至り、その中で今回取りまとめたような審議会の取りまとめになったわけでございまして、そのことが今回の法案自体の不十分な点を一番大きく規定しているものだというふうに思います。  残された課題は、次の見直しの時点でもう一度抜本的な議論に及びたいと、そんなふうに考えております。ぜひとも当委員会先生方の御理解を賜ればありがたいと思います。
  11. 足立良平

    委員長足立良平君) ありがとうございました。  次に、脇田参考人にお願いいたします。
  12. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 龍谷大学の脇田です。よろしくお願いいたします。  私は、労働者派遣法にかなり以前から強い関心を持ってまいりました。本日は、労働法を研究している者の一人として発言させていただきたいというふうに思います。  まず、労働者派遣法には、法自体に基本的な問題点があります。また、外国の関連する法制と比較しましても、問題が少なくありません。こういう点から考えますと、今回の改正については極めて不十分なものであると思いますし、特に派遣を一層拡大するという点については反対の意見を持っております。  まず、労働者派遣法基本的な問題点としまして、労働法の原理には、契約の形式にとらわれず実態に基づく使用者責任を問うていく、こういう考え方があると思うんです。  ところが、派遣労働の場合には、派遣先の指揮命令を受けて就労し、派遣労働者の賃金や労働条件の多くは派遣先によって左右されるのが実態であります。ところが、派遣法は、派遣元派遣労働者の間の関係基本で、これを雇用関係とし、派遣先派遣労働者の間には使用関係ということで、基本的には派遣元との関係を中心に考えるという意味で、派遣先の使用者責任を非常に追及しにくくしている。こういう点が、労働法基本原理と大きく違っているという点であります。  それから二番目は、労働基準の監督を含めまして、事業場単位に労働条件を把握する、これが基本的な考え方としてあったかと思うんですが、派遣労働者の場合には、派遣元事業場を中心にして例えば三六協定等を締結する、こういうふうなことになっておるわけです。  派遣元というのは、多くの労働者をあちこちの派遣先事業場にやっているわけで、派遣労働者が実際に就労する場ではないわけです。ところが、この派遣元事業場単位に、そこでの過半数の労働者代表が例えば時間外の三六協定を締結する、こういうふうな仕組みをとっているわけです。これはもう明らかにフィクションとしか考えられないものであるわけですし、さらに労働基準監督というのは事業場単位にそれを行うというふうになりますと、このような派遣労働者の監督というのは極めて難しくなる。同じ派遣先事業場で業務をしていても、例えば監督官については、派遣労働者は三六協定が締結されているのかどうか、その事業場ではわからないわけです、派遣元で調べないといけない。そうすると、基本的な労働条件自体を確認することさえ面倒になる、こういうふうな大きな問題を含んでおります。  さらに、派遣法ができたときに、縛られないで自由な就労形態を選択したい、こういうふうな労働者の意識にこたえるものというのが制定の理由に挙げられました。  しかし、その典型とされております登録型の派遣というのは、実態は、なかなか登録をしても仕事が来ない、来た仕事も短期で終わってしまう。ところが、雇用保険の適用資格については就労の継続を前提にしているということで、加入が非常に難しいというふうになっているわけです。そうすると、派遣という非常に不安定な雇用を法認しているのに、それに必要な法的な配慮をしていない、こういう根本的な問題があるというふうに思います。  さらに、派遣法自体に法律上、立法上といいますか、根本的な欠陥を含んでいたというふうに考えます。特に、違法派遣に対して民事的な制裁あるいは刑事的な制裁が極めて貧弱なものである。特に、違法派遣を受け入れた派遣先責任はほとんど何も定めていないという重大な欠陥を持っていたというふうに思います。しかも、職業安定行政はこれをどう取り締まるのか、取り締まりについて特に触れることがなかったと思います。  さらに、派遣法の四十四条を見ていただければわかるんですが、私も労働法学者の一人ですが、この条文を正確に理解するというのは到底困難なんですね。本当に長い条文で、複雑な仕組みになっております。労働基準法責任派遣元派遣先が分担するということになっているんですが、だれが責任者かわからない。これは結局深刻な問題を派遣労働者の犠牲の上に生んでいく、こういう原因になっているというふうに思います。  全体として不安定雇用を法認する一方で、それに必要な法的な配慮を欠いているというのが派遣法ではないかというふうに思っております。  派遣法が導入されたとき、労働法学者の多くは、厄介な法律ができたもんだというふうに困惑したのが正直なところだというふうに思います。なぜ、このような派遣法労働法基本原則の修正を持ち込むことができるのか、こういう例外的と言われる法律基本原則を大きく修正するようなことができるのだろうかという疑問が提起されたわけですし、この疑問は現在でも解消されていないというふうに思います。  むしろ、最高裁を含めて裁判所の方が労働者の保護、特に派遣先の使用者の責任を認めるという点では積極的だというふうに思います。  きょうお配りしております資料を見ていただければ、昨年の二月に、大阪の朝日放送で働く派遣労働者、当時はまだ派遣法ができる前で、派遣法違反の疑い、派遣法違反といいますか職安法違反の疑いがあるんですが、そういう派遣的な労働関係で働く労働者労働組合をつくりまして、親会社である朝日放送に労働条件の改善を求めての団体交渉を求めた事件です。  これについて最高裁判所は、労働条件に実際に影響を及ぼす親会社、朝日放送が派遣労働者労働組合の求める団交に応ずるべきであると、こういうふうな判決を下しているわけです。この判決は恐らく労働法学界のほとんどの方が支持する当然の内容であるというふうに思うわけですが、労働者派遣法の考え方というのはこれと大きくかけ離れている。また、判決はこうなんですが、この判決を得るまでに実に二十年もかかっているわけです。最も弱い派遣労働者労働組合をつくって改善の要求を掲げて実際に解決できる親会社に団交を求める、最高裁も認めるようなこの基本的な考え方が受け入れられるのに二十年もかかるというふうな状況になっているわけです。  さらに、外国の派遣法と比べましても、日本派遣法には大きな問題があります。ILO九十六号条約の見直しが叫ばれて、労働省派遣あるいは職業紹介の自由化の方向に行くんだと、これが世界の流れだというふうに言っているんですが、果たしてそうなのか、もう少し正確な実情を見てみる必要があろうというふうに思います。  まず、日本と外国との違いとしまして、日本の場合には、同じ仕事をしていても企業が異なれば労働条件が違う。それと比べましてヨーロッパでは、企業横断的に労働条件を規制しておりますので、派遣労働者についても基本的にはその規制を受けておりますから、派遣労働についての最低の保障というのがあるわけです。そういう保障のない日本での派遣と大きな意味が違っている。  関連しまして、派遣法ができたときに、大企業の子会社や系列会社として派遣会社が数多く生まれました。外国にはこのような系列的な派遣会社というのは恐らくないだろうというふうに思います。日本的な異常な状況であろうというふうに思いますし、これは当時から第二人事部型派遣ということで問題が指摘されてきたわけです。  特に、日本労働組合は正規の労働者だけを対象にした企業別組合です。非正社員は組合員にはしていない実情があります。労働協約の拡張の適用もありませんが、ヨーロッパでは、労働組合は未組織も代表するそういう代表的な労働組合ですから、派遣労働者を含めた未組織労働者全体に例えば労働協約等が適用されているわけです。その点での大きな日本との違いがある。  さらに、ヨーロッパの派遣法を見てみますと、派遣先従業員派遣労働者の待遇は均等にすべきである、こういう考え方が共通して見られるわけです。ところが、日本の場合は、きょうお配りしました資料の最後を見ていただきますと、これは派遣会社関係資料なんですが、ちょっと数字は古いですが正社員で月五十二万、人件費等がかかる。ところが、派遣の場合には派遣料金、ファイリングで二十二万九千円であると。この格差がまさに派遣会社のキャッチフレーズになっているわけです、派遣を雇えば安くつきますよと。しかも、この二十二万というのは労働者が受け取る額ではありませんで、ここからさらに料金が三割なら三割、ここもはっきりわかりませんが、なくなるわけです。そうすると、派遣労働者の手元に行く額というのは、これよりもまた大きく下がるというふうなことになっている。こういうふうに、派遣先従業員派遣労働者の間の待遇の違い、これがヨーロッパ諸国の派遣法日本との決定的な差異の一つであるというふうに思います。  さらに、ヨーロッパでは、派遣労働者はテンポラリーワーカーということで短期契約と重なってとらえられているわけです。ヨーロッパの場合は常用雇用というのを一応基本原則にしておりますから、短期については非常に事由を限定している、例外的な場合にしているわけで、派遣の場合にもそういったことが言えるというふうに思います。こういうふうに、短期労働の保護を前提にした上で、さらに三面関係から出てくる弊害を取り除こうというのがヨーロッパの派遣法の考え方であろうというふうに思うわけですが、日本ではこういった短期契約に対する保護もない中で派遣が導入されている、この点に大きな違いがあります。  また、違法派遣に対する制裁も非常に日本の場合には乏しい。例えばドイツの場合は、許可のない派遣がされた場合には、制裁の効果としまして、派遣労働者が直接に派遣先の使用者のもとの従業員になれるというそういうふうな擬制、みなしをしているわけです。日本派遣法には、派遣先責任を追及するような、このような仕組みはありません。  さらに、全体として、ヨーロッパでは非常に若年労働者の失業が多いという中で、一度も就職をしたことがない青年が多いわけです。そういった青年を何とか就職させる、初めての雇用につけるということが大きな課題になっておりまして、その中で、派遣がいわば見習い労働、試用労働の一種として利用される、そういうふうな若年労働者の就職促進として、本来は常用雇用が望ましいんだがそれが難しい中で派遣労働を位置づける、こういうふうなことだろうというふうに思います。ILOの九十六号条約の見直しの中でも、こういった雇用促進という意味に積極的な点を認めているというふうに私は考えます。  ところが、日本では従来常用雇用であった女性や中高年の労働者が現在リストラの対象になっておりますし、その一環として労働者派遣拡大されるというふうになりますので、雇用破壊というふうな意味で労働者派遣が利用されているということになると思います。いわば、全く逆のあらわれになっているという点、問題が多いというふうに思います。  それから三点目。労働者派遣法、十年たちました。この中で非常に大きな問題が出てきております。皆さんのお手元の資料には六点書きましたが、その中で、特に派遣労働者の団結権、団体交渉権の権利行使というのが非常に不十分であるということを特に強調したいというふうに思います。  これは、労働省調査なんですが、派遣労働者の組合組織率は約三%というふうな調査がありました。先ほどのお話でも全体で組合組織率が非常に下がって二三%というふうに言われておりますが、派遣の場合には極端に少ない。派遣労働者は、労働組合をつくることが非常に難しいということだと思います。  さらに、ヨーロッパとの比較でいいますと、労働協約の適用率というのが組織率以上に重要だというふうに思うんですが、派遣労働者が果たして団結活動を前提にした労働協約の適用をどれだけ受けているのだろうか、非常に疑問に思います。  一方で、比較的恵まれた正規従業員が団結権や団体交渉権を行使し、労働協約の適用を受けているわけです。ところが、弱い立場にある派遣労働者のほとんどが実際には未組織であり、憲法の保障する労働三権を行使することができない、こういう事態が現実です。これは、日本労働法が持っている最も深刻な矛盾ではないかというふうに私は考えております。  さらに、こういうふうに労働組合によって十分に保護されない派遣労働者に対しては、行政による保護というのが非常に大切だというふうに思うんですが、この十年間、労働行政派遣労働者保護の点から違法派遣の取り締まりをほとんどしてこなかった。統計を見ましても、警察が暴力団対策あるいは入国管理といった治安政策の点から外国人の違法派遣を取り締まったのが中心であって、労働省のサイドから派遣労働者保護という視点からの違法派遣の取り締まりというのはほとんどなかったのではないかというふうに思います。少なくとも、労働基準監督で派遣労働者を対象にした監督が計画的に行われたということを聞いておりません。そういう意味では、派遣法の弊害がいろんなところから指摘されているのに、政府労働省にはこれを把握しようとする姿勢が基本的に欠けている、そういうふうに思っております。  最後に、今回の法改正についての私の意見ですが、第一点は、国際的な派遣労規制の動向、ヨーロッパ諸国の動向等を正確に把握する。日本には何が欠けているのか。例えば、均等待遇ですね、派遣先会社での派遣労働者派遣先会社従業員との均等待遇、こういった比較、そういったものを正確にとらえる。そういう中で日本の実情を踏まえて法見直しが必要だというふうに思います。  今、ILOの九十六号条約の見直しが言われておりますが、そこではやはりヨーロッパの、先ほど述べたような考え方が前提になってくるというふうに思うわけです。日本では、労働者派遣職業紹介の自由化がいわば無制限のように宣伝されていますが、ILOやヨーロッパ諸国は決してそういうふうには考えていないんではないか。日本から見れば、かなり厳格な規制を維持しようとしているのではないか。  そういう中で、来年一九九七年に見直しがあると言われているそういう条約を踏まえた上で、派遣法の見直しをしても遅くはない。今回のように、派遣法の見直しを自由化、規制緩和という流れの中だけでやるということについては、タイミングが非常に悪いというふうに考えております。  それから二点目としまして、派遣法ができるときにも派遣が常用雇用の代替にならないようにというふうに言われました。その点では、派遣労働の対象業務派遣受け入れの理由をできるだけ限定すること、これが必要であろうというふうに思います。  さらに、育児休業、介護休業の代替と派遣を結びつけることはこの点から好ましくないというふうに考えます。また、逆に育児休業や介護休業の権利の行使そのものが困難になるというふうな面もあるのではないかというふうに思います。  最後に、派遣労働者の保護については、政令や省令ではなく法律の規定で明確に定めるべきであろうということで、そこに書きました六点を盛り込んでいただければというふうに思います。  一つは、職業安定法と同様の違法派遣の受け入れ禁止を法律の明文で定めるということです。それから二点目は、常用との代替を防止するために、長期に及ぶ派遣受け入れを対象業務派遣によるべき理由の点からより明確に禁止すること。三点目は、一定期間を超えた長期の派遣の受け入れば、派遣先との間で契約関係が存在するという擬制を盛り込む。四点目は、派遣先従業員の労働条件との同等待遇を保障する。五点目は、派遣労働者の組合の団交に応諾する派遣先会社責任を明文で確認する。六点目は、職業安定法が定める守秘義務を派遣法にも盛り込むということです。  以上です。
  13. 足立良平

    委員長足立良平君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 南野知惠子

    南野知惠子君 四人の参考人方々に対して本当に感謝を申し上げます。  いろいろと教えを賜りましたことでございまして、それに関連しまして私は背景として看護職ということも一つ申し上げておきたいと思っております。本日の話の中に、四人それぞれの個性をお出しになられてお話しになっておられるというふうに思っております。  そこで、最近の我々のいわゆる就業の問題を考えてみますと、経済がこれだけ冷え込んでおります。就職も難しゅうございます。さらにまた、特に新卒者の女性の就労というのが難しいというところもございますので、そういった方向で先生方四人に、本当に簡単に予言していただきたいんですが、この派遣業というのは二十一世紀に向けて伸びていくものなのかどうなのかということを簡単に御意見をいただきたいと思います。
  15. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 十年を経まして、これから十年という長い期間を見渡すわけにはいきませんが、ここ数年間を考えますと派遣事業は堅調に推移するというふうに思っております。  理由の第一は、先ほども申し上げましたけれども、本年だけでなくて、日本を含めて先進諸国経済成長が昔のように五%、六%のような高成長に戻るとは考えられない。とすると、雇用の形態も複合的な雇用で柔軟に対応していくという考え方がやっぱりベースにあるんではないか。  二番目には、派遣の使い方が、先ほど申し上げましたように、非常に前向きにも広がってきておりますので、条件として私どもがいい派遣、正しい派遣をきちっとやっていけば世の中の必要に応じて派遣は伸びていくというふうに考えております。  以上です。
  16. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 伸びていくかどうかということについては、経営者の方針によるであろうというふうに思われます。今、日経連の方でも雇用の多様化と流動化の促進ということが、これからの生き残りをかけた企業運営基本施策になっておりますので、こういった形態においての派遣に対する需要というものは極めて高い。そういった中でかなりの伸びを示してくるだろうと思われます。  しかし、こういった問題が、例えば女性の就職というものをヘルプするものであるとか、あるいは高齢社会を迎えて介護など福祉に対する国民的なニーズにこたえるものである、だから積極的に促進すべきだという論議については、私は待ったをかけたいというように思います。  なぜなら、女子学生の就職問題については均等法によってきちんと男女の雇用における差別的な取り扱いをなくしていくということが基本でありましょうし、福祉の分野についてはきちんとしたマンパワーの政策というものが厚生とあわせて追求されていくべきだろう。  そういった意味では、先ほど例示がありましたような派遣労働者あるいは派遣契約の増大という問題が、国民が持っているニーズに基づいてあたかもそういった社会的な要請があるのだというようにとらえられることについては私は懐疑的な見方を持っております。もっと別な法の枠組みが必要だろうと思います。
  17. 桝本純

    参考人桝本純君) 現在、派遣労働者というふうに言われている人たちは大きく言うと三つぐらいのグループがあると思うんです。  一つは、これが一番大きいかもしれませんが、パートタイマーの場合と同じように一定の時間と場所が限定されているところで働くということを、家計の補助ということを中心に考えている人たち。それから二つ目は、先生からもちょっと御指摘がありましたが、現在の雇用情勢の中で、正社員として働きたいんだけれども、そういう口がないのでやむを得ず派遣会社登録をして仕事を見つけるほかはない、いつかは正社員として働きたいと考えている人たち。それから三番目に、これが一番少数派だと思いますが、腕一本で食っていくというプロの派遣労働者。  現在の派遣法の一番健康な発展というものがあるとすれば、この三番目のグループを育成することでなければならないと思いますし、法の趣旨と申しますか建前も実はそこにあるわけでございます。  しかし、今の状況下では、むしろやむを得ず派遣という形態を不本意ながら選ばざるを得ないという人たちがふえていくことについて我々は非常に大きな懸念を持っておりますし、そのことは単に派遣労働者の問題だけではなくて、日本の労働市場、それから社会的な労働基準の水準、こういったものを引き下げていく役割も果たしかねない。したがって、残念ながらそういう方向での拡大は懸念として非常に大きいように思います。行き着く先が、現在のアメリカのような形になることを我々は非常に懸念しております。
  18. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 私も、現在の派遣法状況のまま派遣拡大するということについては強い疑問を持っております。  特に、この十年間の規制状況を見ますと、このまま野放しで派遣拡大していけばいわゆる常用雇用派遣型の不安定雇用にどんどん代替されてしまうというふうに思います。そういう形で派遣が伸びるということについてはやはり問題が多いというふうに思います。
  19. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  四人それぞれからお聞きいたしまして、伸びるというのが半分、いやこれは条件つきで伸びる、または常用雇用ということに少し関連して言えば問題点があるのではないかと、そのような御意見をお伺いいたしました。  そこで、私がお尋ねしたいのは、最初に御報告いだだきました大原参考人でございます。伸びないという懸念をしておられる方にはいろいろなトラブルがあるのではないか。それをどのように修正し、いい方向に持っていくかということで、大原参考人もいい方向に行けばというふうなお話もあったんでございますが、そういう意味では違法派遣があるだとか、または派遣先のわがままがあるだとか、これは中野参考人からもお聞きしたのでございますが、そういうようなことに対してトラブルが非常に多いというようなことを私も懸念いたします。  そういうことに関連しまして、派遣元事業主方々はどのようにお考えになっておられるのでしょうか、またそうしたトラブルに対しまして派遣元方々としてはどのように対応していこうとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  20. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 先ほどの冒頭陳述でも、トラブルはあります、しかし大幅に減ってきておると考えていますと、事実上として。  その理由として、派遣先理解が進んできていること、労働省指針派遣元も努力している、あるいは雇用管理アドバイザー協会に置いている等々のことをお話し申し上げましたけれどもトラブルの過半数と中野先生もおっしゃいましたけれども、中途解約の問題、これにつきましては相当の予告期間を必ず置くようになっております。これは派遣契約書の中に私ども盛り込んでございます。したがって、予告期間がかなりとれるようになりました。ずっと以前にあったような、もう来週からいいよとか、こういう極端なケースはほとんどございませんし、もしあってもそれとは派遣元は闘えるような体制にはなってきております。したがって、相当な予告期間があるわけですから、その間に次の仕事を一生懸命必ずあっせんするという努力をしたいと思っています。  なお、この点については、労働省からの委託事業としまして適切な対応策を研究、検討する専門の委員会で近々この対応策を取りまとめます。それを全会員に通知して、それにのっとってトラブルが減るように努力するつもりでおります。  それから、違法派遣というお話がございましたけれども、偽装の派遣という言葉、これはそういう仕事をやっていらっしゃる方は、発注先も受けていらっしゃる方も、御承知の請負基準にのっとってやるという意識でやっていますし、従業員もその意識でやっております。したがって、請負基準未達ということであって、その請負基準をぴっちり満たすように取り上げていくのが正しいあり方ではないかというふうに思います。ただし、適正な請負というのはやはり日本経済全体が柔軟に動いていくためには必要な制度である、雇用であるというふうに思っています。もちろん、中間搾取とかピンはねとか言われるような、あるいは就労ビザを持たない外国人、これらの問題は論外だというふうに思っております。  もう一つ派遣が伸びていきます一つの大きな前提は、派遣労働者皆さんが私どものところへ来ていただかなければ伸びないわけで、そこで私ども会社について見ましても、正社員をやめて派遣で働きたいという方が毎月数十人はいらっしゃいます。  理由を尋ねてみます。そうすると、答えることは勉強の目的、自分のライフワークの目的、余暇の使い方、そういう自分のライフスタイルと合わせて仕事ができるということ。それから仕事をチョイスできる。ノーもはっきり言える。この仕事は嫌です、要するにチョイスが自分の方にできるということ。これは正社員の場合には拘束があってなかなか難しい。それから、次によくおっしゃるのが、自分の経験してきたことを生かしたい専門職ずばりの仕事につける。これも、正社員の場合にはやはり指示に従わなきゃならないという問題があります。もう一つおっしゃることは、派遣の場合は年齢にこだわらずに働ける、いわゆる長く勤められるというようなこともおっしゃっております。  そんな理由で、正社員をやめて派遣で働きたいという希望者が本当に毎月数十人はいらっしゃるんですけれども、諸先生から御指摘のあったような派遣の不安定性、問題点、そういうことを私どもしっかり踏まえまして、その御指示、御注意事項もしっかり守って、派遣労働者皆さんと御一緒にしっかりしたいい派遣を行ってまいりたいというふうに考えております。
  21. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  お三人の方には、何かそれぞれにお言いになりたいお気持ちがあるんだろうとは思いますが、さらに引き続きまして大原参考人にお聞かせいただきたいんですが、適用対象業務というものの拡大をどのようにお考えになられるのか。先ほどはネガティブ方式が好ましいというようなことをお話しになられましたが、私が先ほど看護の背景があると申しましたのは、やはり直接人にタッチする、いわゆるそういった専門業務の分野において、介護業務ということについても今門戸が開かれております。そういった病院における介護業務等のことについて、何か御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  22. 大原慶一

    参考人大原慶一君) ネガティブリスト方式が望ましいと私ども考えております理由は、二つございます。  一つは、日本派遣は知識、技能経験を有する専門職、それから雇用管理に特殊性のあるという二つの枠が派遣法で定まっております。これが日本派遣の原点になっております。しかし、欧米における派遣の原点というのは、一時的に仕事を遂行してくれる人が必要である、また一方に一時的にしか働けない、一時的にしかし働くことは必要であるという人がいらっしゃる。この二つを結合するのがいわゆるテンポラリー・ワーク・サービスだと思います。こちらの原点に重きを置いて考えますと、対象業務の制限というのは出てこないんじゃないかというふうに考えます。  もう一つ理由は、日本では雇用の形態は常用雇用職業紹介公共職業安定所、これが中心になっております。私ども派遣とか民営職業紹介とか請負はそれを補完したものだと思っています。それでいいと思っております。しかし、補完機能であるがゆえに、お客様の方からも派遣労働者の方からも非常に変更が多うございます。本来フレキシブルなもの、したがって我々がフレキシブルにこの機能を発揮できるから日本経済社会にお役に立っているんだと思います。  したがって、基準法とか安定法とかいう基本労働法規を踏まえているならば、民と民の契約、それはできるだけフレキシブルに、自由にできるようにさせていただけないかというのが私どもの主張の原点でございます。しかし、さっき申し上げたように、これには異論も多々ございますので、その方々とも協力、御理解を得て進みたいと思っていますので、ステップ・バイ・ステップでよろしいのではないかというふうに思っています。  後段の、介護についての問題ですが、一般論としまして介護の業務が実施できるためには、その会社にやはり医師がいること、看護婦がいること、あるいはソーシャルワーカーがいることが条件になると思います。しかし、今回提案されていますのは病院における介護でございますので、医師の問題、看護婦の問題は比較的クリアしやすいと思っております。そうすると、お尋ねのまさに介護士というものをきちっと養成できるかどうかということに絞られます。  その点だけについて申し上げますと、介護士の研修は、例えば東京の場合には、都、区役所で行っております。それから民間の研修機関もございます。自社でやる場合には、四十時間コース、六十時間コースについて、講師を招請して講習を自社でやることもできると思います。したがって、それをきちっとやった上でのことだというふうに考えています。  一つただ言えることは、私ども協会として介護の業務対象業務にお願いした理由がございます。それは十年を経た私ども派遣会社には、やはり四十歳、五十歳、六十歳の派遣労働者皆さんがいらっしゃいます。この方々が自分のライフワークとして、最後のお仕事としてこのお仕事を希望される方が多い。この方々は私どもの恩人でございますので、その御恩に報いるというような意味で、長く続くお仕事としてこの仕事を御一緒にやってまいりたいというふうに考えているのも一つの原点でございます。  以上でございます。
  23. 南野知惠子

    南野知惠子君 介護の問題は、特に人に直接触れるということと、さらにプロ的な意識が必要であるということとも関連いたしますので、やはりその業につく方、またそれを派遣される方の御見識を本当にお願いしたいところでございます。  次は、中野参考人にお尋ねしたいんですが、「介護労働力確保法へ動く 家政婦等の派遣問題」ということで、このパンフレットの方にもお書きいただいておりますが、今大原参考人にお聞きしたと同じような観点で御返事をひとついただきたいと思います。
  24. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 介護について、派遣という形態での労働力の調達をどうして認めなければならないのかということを根本から議論すべきだというように思います。現在の派遣の形態ということになりますと、むしろ違法派遣をなくす枠組みが不十分であるために、その周辺の業務に限りなくこの派遣拡大するのではないかという懸念が一つあります。  それと同時に、先ほども私の方で御紹介しましたように、介護ということが医療におけるチームプレーを旨とすると。そこからしますと、短期に回転していくということが基本となる派遣労働がそのチームプレーに果たしてなじむのかどうかという問題があります。  これは、医療の現場においても本当に長年にわたって当該病院で一緒にやっているからこそいいサービスができるのだ、そういう体制をいかにして市民の人々に供給していけばいいのかという問題意識が非常に強い。そういう問題意識から見ますと、契約期間を限って、そしてテンポラリーな形での労働力の供給ということには少し難点があろうかというように思われるわけです。むしろ、国民的なサービスの向上を目指す、そしてゴールドプランを本当に実現していくための介護労働の供給のあり方は、派遣一筋に頼るのではなくてもっと大きな枠組みの中で議論すべきではないか。  それともう一つは、介護労働が専門的だということをおっしゃいましたが、専門的な基本的な性格に即してそれなりの処遇が派遣によって担保できるのかどうかという問題もございます。この点については、介護保険がどこまでの費用をカバーすることができるのかという問題とあわせましてきちんと議論しなければならないところなんですが、一部には派遣ということになりますとマージンを取得するということになります。最終的に労働者の手に渡る賃金水準が限りなくボランティア労働に近いような低水準になるのではないか、この点のきちんとした法的な賃金水準の確保のための枠組みがどのように整備されるかということによっても違ってくるのだというふうに思っています。そういった条件整備が今のところ議論が十分でないということについて、私は非常に残念に思っております。
  25. 南野知惠子

    南野知惠子君 今、お答えいただきましたことに感謝いたしますが、大原参考人に対しましては、介護で派遣される場合には、その病院、施設の看護部長または看護婦長のポリシーがございますので、ぜひともその配下でコントロールしていただきたいということをお願い申し上げておきます。ありがとうございました。  以上でございます。
  26. 武田節子

    ○武田節子君 本日、当委員会参考人として御出席賜りましたことに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。  桝本参考人にお尋ねしたいんですけれども派遣の適用対象業務にかかわる規制を緩和しネガティブリスト方式にすれば雇用機会がふえることを強調する意見がございますけれども派遣対象業務の自由化と雇用機会拡大との関係についてお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  27. 桝本純

    参考人桝本純君) 大変論争的なテーマでございまして、結論から申しますと、対象業務拡大すること自体が原理的に悪いというふうには私どもは思っておりません。ただし、それがいわゆる低賃金労働のプールになること、それからもう一つはいわゆる常用雇用のかわりに派遣に切りかえられるということ、この二つについての懸念は非常に強く持っております。  派遣労働につきましては、現行の派遣制度の枠組みというのは、既にほかの参考人先生からも御指摘があったとおり、一定技能を持つ専門性というのが基本的な枠組みでありまして、そのほか特殊な例として特別な雇用管理を要するというものが付加されているわけでございますが、実態としての現在の派遣労働の専門性と呼ばれるものは決して十分にその高さを持っておりません。  これは二つ理由があると思います。一つは、従来最も高度な専門性を持っている人たち企業の中で養成されてきた、これを外部に求めるということの慣習というのは一般的に言えば少ないということがあります。もう一つは、これは均等待遇の問題と関連いたしますが、企業横断的な職業能力の評価基準、そしてまたそれに基づく賃率の形成、こういった構造というのは我が国の労働市場では未成熟なわけです。だから、会社がかわれば必ず賃金が下がるというのが日本社会一般的な構造でございます。  そしてもう一つ企業の中に常用雇用として長期勤続をしている場合には、それに見合った熟練度の上昇に対応した賃金上昇というのが一応システムとしてございます。これがいわゆる年功型賃金の一つの側面でございます。しかし、派遣労働者の場合には、勤め先はかわっても同じ仕事を長く続けていれば本人の技能水準は次第に高まってまいりますが、実際に派遣先がかわった場合にはまた一から出発するということで、これが私どもが聞いております派遣労働者の処遇に関する非常に大きな悩みであります。  また、熟練度が増すということは一定経験年数を経るということで、それはしたがって本人は年をとるわけです。年齢にかかわらず働けるというお話が大原会長からございましたが、一方でそういう面があると同時に、他方で実際に派遣先が持っているニーズというのを勘案いたしますと、同じ仕事をするなら若い方がいい、こういう行動様式が極めて強く出ているわけで、これは実際に派遣会社の社長さんからも伺っております。  ですから、現在の派遣という労働のあり方は、必ずしも専門的能力を蓄積するということにうまく機能していないんです。したがって、現在の専門性というのはもともとそれほど高度な専門性というものがそこで通用するとは思えません。そういたしますと、対象が無限定に拡大することについては、これは全体としての労働内容そのもののニーズを低いところへシフトさせる危険性がやはり非常に大きいのではないか。  なかんずく、ネガティブリストということになりますと、これは話が全く別な次元だと思います。もともと派遣先の人たちというのは人を雇っていることに伴う雇用主としての責任を免れて人を働かすことができるという非常に大きな特権を持っているんです。これは通常の経営者からすると例外的な特権であります。こういう例外的な特権というのは当然のことながら制約をされるべきではないか。これがネガティブリスト方式に私どもが同意できない一番基本的な理由でございます。したがって、対象範囲が拡大すればそれがそのまま雇用拡大につながるのではないかという説については、決していい雇用拡大しない危険性がある、これが先ほど申しましたアメリカの最近の状況だというふうに考えております。  以上です。
  28. 武田節子

    ○武田節子君 桝本参考人にもう一点伺いたいのですけれども、今回の改正は不十分、不完全であるというふうに一番最初におっしゃいまして、しかし今回の改正はやむを得ないと考えるとおっしゃいましたけれども、そのやむを得ないと考えられた理由についてお教えください。
  29. 桝本純

    参考人桝本純君) 二つあります。一つは、当初から我々が今回の改正に臨むに当たって要求し主張してまいった点が、決して十分ではありませんが、とりあえず派遣先責任の問題を中心にして幾つかは取り込まれていること、これが一つ。それからもう一つは、今御指摘の点と関連いたしますが、非常に大きな論争点であったネガティブリスト方式への転換ということはとりあえず今回の政府原案では歯どめが加えられたこと、以上が内容にかかわる点でございます。評価している点でございます。  いま一つは、先ほど冒頭私が述べましたように、今回の政府案の不十分性というのは、十分な法案審議の条件が整っていないところでやらざるを得なかった、そのことの枠組みからくる制約でございまして、これについては法案内容そのものとは別にやむを得ない結果であった。むしろ、その制約の中では何とか我々の要求の最低限のところは、この法案に関しては入れることができたかなというふうに考えております。
  30. 武田節子

    ○武田節子君 では、次に中野参考人にお尋ねいたします。派遣労働者に対する軽視、差別、それから個々の派遣労働者は女性が大変多いように私思うんですが、特に差別されたり軽視されたりというところの人たち、女性スタッフがそういう問題を抱えているだろうと思うんです。  雇用主と労働者との雇用関係というのは、本来二者の関係から出発したもので、三者関係になるということは非常に複雑で問題が生じてくると思うんです。  その中で、非常に派遣元の方はちゃんとした、例えば賃金にしても払うという権利義務の保障は確立されていると思いますけれども派遣先というのがなかなかそういう保障がされていない。特に派遣先は力関係からいったら非常に強いので、保障をするにはかなりきつい制裁措置をしなければできないのではないかというふうに思うんです。特に今は不況でリストラで、そういう現状の中で権利義務を確立させるということは大変難しいのではないか。特に制裁措置をしなければ確立されないのではないかと思うのですけれども、そのことに対して、もしもう一歩先ほどの御説明のほかに御意見がございましたら、伺わせていただきたいと思います。
  31. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 派遣労関係と申しますのは、先ほど脇田参考人の方からお話がありましたように、本来一つとして認識されていた使用者としての責任派遣元派遣先二つに分離をして、しかも派遣元雇用責任派遣先は使用責任ということで、全く異なる法主体にそれぞれ分けて帰属させられるという非常に特殊な法律関係のもとにあります。  そして、派遣先スタッフのことをどう見ているのかといいますと、例えばパートタイム労働者であれば、これらの労働者の人事管理をする人事部がそれらの人たちのさまざまな問題について関与をいたします。しかし、派遣労働者となりますと、私どもで聞き及びますところで多いのは、例えば資材部であるとか、人を扱う部というよりもむしろ委託料だとかそれと同じような形で、人に対する取り扱いをする部局ではないところで物として扱うというような取り扱いの系列になっているということをよく聞いております。そういったところから、人格も含めて人間であるはずの労働力を売り買いするという意識の中でスタッフに対する物の見方というものが形成されてきている、非常に人格を軽視するような物の見方が形成される土壌があると思います。それが一つ。  それともう一つは、派遣先に対して派遣元はどうしたってお客様として前垂れ方式で商売をせざるを得ないという、こういう力関係にあります。民事契約というお話もありましたけれども、やはり市場原理の中ではお客様の意向に沿ってサービスを提供する、これを本位にみずからの営業利益というものを拡大していくということが本旨になろうかと思います。そういう中で、派遣先としては要するに物として来ている、そして一〇〇%自分たちの要望にこたえてくれる労働力として見ておりまして、例えば今職場の中に全体的に存在しております女性に対する差別と偏見、これが派遣スタッフに対して鋭くあらわれてくるという問題があります。  私は、こういった問題を解決する上で、派遣先の人たちに少なくとも自社で抱える正社員と同じ福利厚生であるとか、あるいは人格を尊重する取り扱い、これは事実行為も含めまして均等処遇ということを徹底していただきたいということを述べているわけです。そして、この均等処遇を行わなかった経営者に対して一定制裁措置ということも考えられるのではないかと思います。  制裁といいますと刑事罰ということがストレートに浮かび上がってくるわけですが、私は例えば企業名公表であるとか賠償に匹敵するような、すなわち均等処遇に抵触した場合には本当に割に合わないのだという世論をつくっていかなければ、働く女性たちの人格を尊重するような職場のルールもできていかないと思いますし、そういった観点から新しい視点でこのルール化というものをぜひ検討していただきたいというように思っております。  また、賃金の問題については先ほど桝本参考人がお話しになりましたように、若干、事の性格が異なってくる場面があります。しかし、派遣料金を支払っているのは派遣先であります。その派遣料金を設定するに当たって、少なくとも自社で同じような労働に従事している人たちと同じ賃金を保障するに足りるだけの派遣料金の支払いということは考慮に入れられてしかるべきである。そういった意味では、賃金の均等処遇に関しても派遣先にぜひ義務づけをしていただきたい。  しかも、ネガティブリストであらゆる業種にこれらの派遣形態が導入されていくという、育児・介護の代替派遣がこの形態を認めたわけですけれども、そういった中ではこの要請は不可欠なことだろうというように思われます。
  32. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございました。私はこれで終わります。
  33. 星野朋市

    ○星野朋市君 平成会の星野でございます。  きょうの質問者を見ますと、皆さん女性なんですね。私一人が男性でありまして、そういうことから質問も少し違った観点からしてみたいと思います。私は、法律そのものではなくて法律の周辺またはバックグラウンド、こういう面から質問をしたいと思っております。  まず最初に、時間の関係大原参考人桝本参考人にお答えいただきたいのですが、どちらかというと今規制緩和の問題に絡んでこの職業紹介の問題というのが論議されている面があると思うんです。経済団体も大体そういうようなニュアンスでございますし、学者の一部にも規制緩和をすると新しい雇用の創造ができるというような論が多いのでありますけれども、それは本当にそうなのか。  まず、十年前にこの法律が制定されたときの第一号がソフト関係の職業である、そういうこともつあると思うんです。ところが皮肉なことにバブル経済がはじけたときに、労働省いらっしゃいますけれども雇用調整助成金の最大の対象になったのはソフト事業なんです。  今度追加された十二項目のうちの最初に出てくるのが図書の編集、そういうのがありますね。今これはむしろ大手の出版会社が丸請けをして、要するに丸投げですね、そして派遣ということよりも少人数の会社自体がそういうのを請け負ってしまう、企画も何も。そういうふうに変わっていると思うんです。  それで、これは労働省資料によりますとアメリカでも派遣元事業所数というのは約一万二千、派遣労働者数というのは約百二十七万人、就業者の一・一%。それからドイツは派遣元事業所数が約五千、派遣労働者数は約十二万人、就業者の〇・四%。ドイツの場合は有給休暇、病気休暇、産前休暇等を取得した従業員の補充であると。日本はちなみにどうかというと、派遣元事業所数約九千、派遣労働者数は約五十八万人です。  こんな数字が出ておるんですけれども、今私が申し上げましたような観点から、果たして規制緩和によってこういうような新しい雇用の創出ができるのかどうか。皮肉なことを言えば、これは幻想じゃないかということを申し上げたいのですけれども、その一点についてお答え願いたいと思います。
  34. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 一例としてお取り上げになりました編集の仕事でございますけれども、これは私どもが想定しております編集の業務というのは、お話がありましたような大きな雑誌社とか新聞社とかそういうところの編集ではございません。想定できますのは、各企業あるいは法人などが出す機関紙とか社内報とかそれから何年史をつくるとか、そういう期間を置いての、あるいはいっとき必要な編集の業務というのがあり得ると考えておりますので、これは対象業務としてまさに専門性があってふさわしい業務ではないかというふうに考えております。  それから、後段にございました規制緩和と事業との関係ということでございますけれども、ちょっと論点がそれて恐縮なんですが、対象業務が自由と言われている欧米におきましても、総労働人口における派遣労働者のパーセントというのは一%、多くても二%でございます。日本においては、六千五百万ぐらいの就業人数に対して全派遣労働者で五十万、私ども登録型でいうと二十四、五万、〇・三%ないし〇・四%でございます。したがって、先ほどからお話が違った形で出ている常用雇用の代替と言われるような数字ではないんではないかというふうに思っています。  私どもは、基本的にこの常用雇用制度とかあるいは年功序列型賃金、いわゆる従来の日本雇用の慣行というのは非常にいい制度であって、戦後の復興ができた一つのむしろ原動力じゃないかというぐらいに思っております。したがって、このシステムと私ども派遣とが、いい意味で補完し合い協力し合ってすみ分けていくのが一番いい形ではないかというふうに考えております。  ところで、規制緩和との関係でございますけれども、端的に申しますと対象職務の規制緩和というのはやはり範囲が広がるのであって、これはプラスだと思っています。行政指導とか諸手続の簡素化というのは、これは直接的に派遣事業のプラス・マイナスには関係ないんではないかというふうに考えております。  ちょっと論点がずれたかもしれませんが、そんなふうに考えております。
  35. 桝本純

    参考人桝本純君) 規制緩和によって雇用拡大するというのは、先生が御質問の中でも述べられたように、私も幻想だろうというふうに思います。  場合によって、雇用者の数がふえることはあり得るんですね。というのは、一人当たりの労働時間が派遣労働者の場合に正社員のように夜中まで働くということをしないんだとすれば、それは考えられます。現に、この間の労働省統計によります日本の総労働時間の短縮というのは、かなりの部分がパートタイマーの拡大によってもたらされた部分が非常に多うございます。一昨年の、暦年で申しますと千九百四時間という数字がございましたけれども、あれはパートタイマー込みでございまして、パートタイマーを除くと千九百九十時間前後というふうに発表されております。  ですから、部分的に雇用者数が全然拡大しないかというと拡大するかもしれません。しかし、雇用総量というのはそのときの一国の経済全体が決めることでありまして、これが規制緩和によって拡大をするというのは規制緩和によって雇用需要全体がふえるということが前提にされておりますが、しかし、現在の使用者団体が押しなべて規制緩和を要求しております。その雇用政策上のねらいというのは、むしろ今いる正社員を何とか数を減らしたいというリストラの一環として考えているケースが非常に多い。  それからまた、派遣業界の中でも人によっては派遣の方が安くつくということを売り物にしている人もあり、そして、アメリカのようなつまり質の悪い雇用拡大することがむしろ将来展望であるかのように語る人さえおられるわけで、この点については私どもは非常に警戒的でございます。  規制緩和というのは、一つ社会のシステムの中で、従来、戦後の日本がつくってきたかなり多くの政府による統制であるとか介入であるとか、こういうものを一般的に解除していこうということについては賛成でございますが、これが労働市場にそのまま持ち込まれることについては、先ほど申しましたように、別個なルールをきちんとつくることによって対応すべきものであり、労働者派遣法自身もそういうルールを担うべき法律としてあるのではないか。これを通常の事業法のように考えて参入規制だというような観点から見るのは、観点としては私どもは同意できない、こういう立場でございます。  なお、先ほど例に挙げられました編集業務でございますが、御指摘のとおり、既に非常に多くの分量の出版物が、大手出版社の内部ではっくられずに大小のプロダクション、請負という形で発注をされております。出版以上にこのことが進んでいるのが放送の世界でございます。こういうところでは、テレビの場合には大体テレビ局へ来て仕事をすることが多いので派遣派遣と言われておりますが、これは必ずしも現在の派遣法でいうところの派遣には限られないケースが多いわけです。  編集の場合に、これがどうなるのかということでございますが、本当の意味でのプロの編集者というのは、これは独立したフリーのマーケットがございまして、この範囲であれば、それはそれで既に成り立っている世界なので、余り大きな問題はないかもしれません。しかし、先ほどちょっと触れましたように、日本では職種という概念が非常に未成熟でございます。ですから、編集という業務自体が規定できずに、編集部というところにいる人はみんな編集である、こういう考え方にまでこれが拡張されるとまさに補助的な労働をやっている人もこれは編集部にいるから編集業務だと、こういうふうにみなされかねないわけです。これは非常に危険度が高いと思っておりますので、その意味で、対象の業務の問題よりもその業務対応した当該労働者の労働の実態が問題にされなければいけない。  この意味で、例えば原稿をとりに行くだとかあるいはもらってきた原稿をコピーするだとか、ないしは電子送信であれば、それを通信設備によってフロッピーに落としてそれをプリンターにかけるとかといったような補助的な業務も含めて、本来の編集業務の周辺にあるような仕事にまでこれが対象として、編集というカテゴリーのもとで拡大されることについては厳重な警戒が必要だろうというふうに考えております。
  36. 星野朋市

    ○星野朋市君 もう少し別のことをお聞きしたがったんですけれども、私に与えられた時間が既に五分以上もオーバーしちゃっているんです。まことに残念でありますけれども、ルールの関係で私の質問は、これで終わらせていただきます。     —————————————
  37. 足立良平

    委員長足立良平君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、石井一二君が委員辞任され、その補欠として山本保君が選任されました。     —————————————
  38. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 正規の雇用形態ではない、いわゆる有期の雇用とかパート労働とか派遣労働だとか季節的労働というものが、いわば世界的な規模で増大しつつあるという傾向があるわけです。  そうした雇用形態というのは、企業雇用政策の柔軟性を高めたり、あるいは労働者側からいえば、ニーズの多様化に対応して選択肢をふやすとか、あるいは失業者雇用のチャンスを提供するとか、さまざまな意義が害われているわけです。しかし、世界的に見ればいわゆる正社員との、そうした不安定雇用にあるあるいは非正規の雇用形態の労働者の平等の保護ということが問題になっているというお話を、先ほど伺いました。  脇田参考人にお伺いいたしたいんですが、そうした諸外国の労働者派遣法と比較いたしまして、我が国の特色として、派遣先正社員とのいわゆる同等待遇というものが欠如している、あるいはまた、本来ならば恒常的な労働者を代替するということがあってはならないといいながら、しかし日本的にはそれが拡大しているという、そういう二点を説明いただきましたが、その点についてもう少し、どういう同等待遇を意味しているのか、御説明いただけるでしょうか。
  39. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 今の御指摘にもありましたように、諸外国の派遣法をこの間調べてみたんですけれども、やはり共通して、特にヨーロッパ諸国では派遣先従業員派遣労働者の均等待遇ということが明確になっているわけです。特にフランスの法律とか、ベルギーでもそうだと思います。  これは、先ほど言いましたように、労働条件がヨーロッパの場合には横断的に決まってくる。企業を超えて、先ほどのお話にもありましたように職種等で決まってくるということで、派遣先従業員についても同じ業務については同じ待遇というのが横断的にわかりますので、それと派遣労働者について同等に待遇するということが法律上、派遣法上はっきり定まっているというふうに言えると思います。  それから、ネガティブリスト方式をとるというふうに言われたんですけれども派遣先との均等待遇ということが前提になっているわけです。そういう中で、非常に限られた理由について、派遣を受け入れる場合の理由というのが限られて認められているということですので、このネガティブリスト方式ということについても均等待遇ということを前提にしているということを忘れてはいけないということがもう一つ言えるというふうに思います。  それから、日本の場合に、先ほどお配りした資料の六枚目ですが、これは数字が少し古いんですが、正社員派遣との格差を前提にしている。これ同じ業務になるんですけれども、これでいきますと正社員を一人雇うよりは派遣を二人以上雇えるというようなことになってしまうわけなんですね。これは、恐らくヨーロッパ等の派遣法の考え方でいけば、こういうことを派遣の宣伝文句にするということ自体、もう根本的な考え方として間違ったというか許されないものであろうというふうに思います。  そうなりますと、日本の場合には、とにかく派遣を雇えば人件費は正社員よりも安くつくということになりますので、どうしても常用雇用の代替として派遣が利用されていくということになると思うんですが、外国の場合には同等の待遇ですので、結学派遣を利用するということのメリットというのは派遣先にとっては一時的な雇用という、そこの点は確かに問題は残るんですけれども、そこに恐らく集中的に目的があるんだろうというふうに思うんですが、日本の場合にはそこの点が欠けておりますので、限りなく、先ほどの対象業務等の限定は辛うじてあるわけですが、それがなくなっていけばすべてについて正社員派遣に代替してしまうという、そういう危険性を持っているというふうに思います。
  40. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 中野参考人も均等待遇の原則というふうな御発言をなさったのですが、例えば日本における派遣労働のあるべき均等待遇の原則というのは具体的にどういう内容として考えていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  41. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 私が経験しております労働相談の中で、派遣スタッフが多く配属されているのは事務労働の分野です。こういった分野においては、本当に正社員と一丸となって有機的にその職場仕事の処理のシステムの中に組み込まれてその人の役割を果たしてきているというのが現状です。そして同じような、全く同じ仕事をするというわけではありませんけれども、同じような仕事に従事し、貢献度もほとんど正社員の人たちと変わらないような仕事ぶりで働いているというのが派遣スタッフたちの実情であります。  そういった場合に、派遣であるからということで賃金が低く抑え込まれる。しかも、長年にわたって派遣スタッフとして技能を積んできているにもかかわらず、企業がかわるからといって勤続加算というものが認められない。その結果、リセット型とでも申しましょうか、契約期間が終了するとまた最初から賃金が設定されてといったぐあいに、非常に大きな賃金格差の中で働いていかざるを得ないというのが今のスタッフの人たちの実情であります。  この人たちがキャリアに応じて、そしてその職場で果たしている役割に応じて公正な賃金の支払いを受けられるということは、私は当然保障されなければならない原則ではないかというように思うわけです。比較対照の相手はあくまでもその職場で働いている正規の人たち、これを対照にして均等な処遇が受けられるべきだというのが私の主張です。
  42. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今回の法改正は、いわゆる派遣先の中途解除それから違法派遣の取り締まりということで、使用者に努力義務を課しまして、いわゆる指針で「講ずべき措置」というのを盛り込むという法律の形式になっておりますが、今までのさまざまなそうした問題に対する苦情が、いわば法律の問題として上がってきたということは一定の進歩かもしれませんが、その規制の仕方について果たしてこれで効力があるのかという疑問があるわけです。  桝本参考人にお尋ねしたいんですが、いわゆるここで「講ずべき措置」というふうに指針で定められるんですけれども、一体どういう項目規制されるべきとお考えなのか、現場からの御体験を踏まえられまして、これまでいろいろ議論が審議会であったと思うんですが、お尋ねしたいと思います。
  43. 桝本純

    参考人桝本純君) 指針で定められるべき内容についての検討は、残念ながら現段階では非常にまだ不十分であります。具体的な内容はこれから審議会の表舞台とそれから実際の現場の内容で検討していかなければいけないと思っております。  したがって、余りお答えらしいお答えを差し上げられないので申しわけないのですが、現在の法律が持っているこの枠組み、すなわち努力義務があり、その義務の内容については大臣の告示として定める指針の中で決めると。これが果たして一つ規制の仕方として十分かどうかということは、一般的に言えば決して十分とは言えないだろうというふうに思います。  ただ、先ほど申しましたような枠組みの中で制約をされた議論でしたので、そのことについては残念ながら我々としてはやむを得ないものというふうに考えるほかはないという立場でございます。  ただし、一つ強調しておきたいと思いますが、このチェック機能というのは必ずしもこの法令だけにあるのではなくて、もう一つ重要なものが、適正運営協力員という制度がございます。これは各都道府県で労使双方から同数の人間が選任をされて、一応その協力員という格好に位置づけられてまいりました。これが実は現行法の枠組みではほとんどまともに機能してまいりませんでした。我々が重視してきた一つは、この適正運営協力員制度が実際のチェック機能として十分に機能することでございます。  この点で、現在は御案内のとおり、これは中央官庁であります労働省の一元的な政策のもとで行われておりますので、地方でこういうものが選任されるのは全部機関委任事務なんですね。  しかし、派遣という就業形態というのは地域的に非常に大きな格差というか偏差がありまして、大ざっぱに言うとこれは大都市でしか成り立っておりません。東京と大阪で六割ぐらいになりましょうか、あと神奈川、愛知といったところでほとんど日本じゅうの大部分のシェアを持っているということでございます。もっと地方自治体が自主的にその実情に沿ってできるようにすることが必要だろう、この点で今回の法改正審議のところではかなりの程度前進は見られたというふうに評価をしております。
  44. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ありがとうございました。  こうした派遣労働のいわゆる法の枠組みについては、中野参考人脇田参考人はどのようにお考えでしょうか。
  45. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 申しわけありません、法の枠組みといいますとどのレベルの枠組みですか。
  46. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 要するに、直接法律で規定するのではなくて、いわば指針として行政指導の中でやっていくという、例えば違法派遣自身を法の直接の本体で規制しない、その統制を。いわば、そういう枠組みは効果があるんでしょうかということです。
  47. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 私自身は、法の本体で明確に定めることが職場の中でのルール化を図っていく上で非常に有意義であるというふうに考えております。とりわけ、派遣法の構造にかかわった諸問題について指針でしかも企業の努力義務ということは非常に構造上大きな矛盾を含んでいるというように思われます。  しかし、現状の中でもし仮に百歩譲ってその指針に基づく努力義務が効果を上げられるとすれば、それはたった一つの条件のもとであろうかと思います。それは、労働省が果敢にその行政権限を行使し、指針で定められたところと法律本体の効力とに区別をつけずに法の趣旨を現場に徹底させていくという姿勢を持ったときに、初めてこれが可能になるのだろうと思います。  もし、この指針ということで今回の改正がなされるとすれば、労働省に対しては今まで以上に法の趣旨徹底すべく予算措置、これは人的な拡充も含めまして、予算措置と果敢な行政権限の発動を求めたいと思います。
  48. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 私も、この指導を中心にして進めるという方式については強い疑問を持っております。  特に、先ほども言いましたように、派遣法自体が労働基準法の適用を非常にあいまいにしているという、そういう面があるんですね。私も大阪で派遣労働者法律相談に参加しているんですが、そこで出てくるのは派遣法で解決するということにはならずに、結局は労働基準法労働組合法を使って労働者権利を守っていくということになるわけですが、ところがそのときに派遣法がその労働基準法の適用をいわば妨害するといいますか、そういう面が大きいわけです。  そういうふうな派遣法の持っている問題点自体を変えていくのが基本的だと思いますし、今回のように派遣労働者の労働条件確保を、そういう法律改正あるいは法律での明文化ではなくて行政指導でするということについては、この十年間の労働行政の非常に消極的な対応から考えまして強い疑問を持っております。はっきりと法律の明文で派遣先の義務というのを明確にするということが急務ではないかというふうに思います。
  49. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 大原参考人にお尋ねしたいんですが、この法律ができまして、派遣元として派遣先との派遣契約の中でさまざまな中途解約や違法派遣に関しての条項を組み入れられることになるんですが、どのような形で派遣労働者の保護を図っていくというふうに、アクションプランなどを持っておられるのかどうかということを、お尋ねします。
  50. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 先ほど冒頭陳述で申し上げましたように、今回のような諸措置が定められることについては、私ども要望書を出してお願いし、かつ審議会にも参上して意見も述べて、その上での結論であって、私どもは今の違法派遣とか偽装派遣とか、そういう問題についてきちっと定めができることはむしろ必要なことと考えておりますので、このことについては抵抗感は全くございません。  むしろ適切な処置であるというふうに考えて、私どもはむしろ今回の定めを一つの原点と考えて、協会としてもこれに基づいて諸措置会員会社は守るべしという具体案もつくって徹底を図っていきたいというふうに考えております。これは必ず実行したいと思っております。
  51. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 派遣労働者正社員との派遣先における均等処遇ということが先ほど議論されまして、いわば賃金の不平等といいますか、その格差というものは、もちろん基本的な労働契約の問題でしょうけれども派遣料率がやっぱり判然としないということに非常に派遣労働者の方が不満を持っている声をいろいろ聞くんですが、その点について大原参考人とそれから中野参考人に、現場からそれについての御意見を伺いたいと思います。
  52. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 二分の一であるというような御意見は全く間違いだと思います。  一例を申し上げます。よく三十歳の正社員と三十歳の派遣労働者の賃金というのが比較されますけれども、片方の常用雇用の方は十年積み上げていった賃金で、派遣で行った方は前月からスタートした方ですから、多少の差があるのはやむを得ないと思う。  具体例で申し上げます。短大卒の卒業生の初任給、いかがでしょうか、十八万程度かと思います。十八万で仮に三カ月の賞与があったとしますと、年俸で言うと十八掛ける十五で二百七十万になります。派遣労働者は時間給でございますから、これを時間給に割り直してまいりますと、二百七十万を十二カ月で割って、さらにそれを月間の労働時間百五十時間、例えば百五十で割りますと千五百円という数字が出ます。千五百円は今の派遣労働者皆さんにお支払いしている私どもの賃金の実は最低賃金と言ってもいいと思います。したがって、初任給、きょうから働き出した皆さんとの賃金の格差はそれほど大きいとは思っておりません。  それから、先ほどお話がありましたように、次の仕事に行ったときに賃金が下げられるというお話がありましたけれども、最近の派遣労働者皆さん派遣労働者としての意識が強うございます。それから、ほかの会社派遣労働者のことも知っております。賃金を下げて新しい仕事についてくださいという話はまずまとまらないと思います。派遣労働者のオーケー、イエスがなければ仕事が始まらないわけですから、全く次の仕事についたときに下がることがない。これは職種によって違うわけですからそういう意味での違いはあると思いますけれども、そういうこともほとんど行われていないと思います。  さらに言えば、実は連合その他がやっている春闘という方式を私ども参考にさせていただいて、春もしくは秋に派遣労働者皆さんの賃金を上げるという意味で春闘の、例えばことしの場合二・八%、それを参考にして定時的な派遣労働者の昇給を図っているのが現在の派遣会社の主流の考え方でございます。
  53. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 今の大原参考人意見に対して若干補足をしたいと思いますけれども一つは比較対照する場合に月額の基本給というだけではなくて、正規の労働者の場合にはかなり大きなウエートを占める一時金の支給がある、また退職金の保障もあるといったようなことで、この格差というのは相当なものです。  ただ、この格差をどのようにして縮めていくのかということは、まさに大脇先生がおっしゃられたように、均衡な取り扱いというものをどのようにしてルール化していくかということと大きくかかわってくる問題だということだけ申し上げておきたいと思います。  派遣スタッフの場合に、確かに権利主張という点ではしっかりとした方が多くて、今までよりも少ない賃金で働くということに対して真正面から異議を唱えるという方もいらっしゃいます。  しかし、こういったことは市場の労使の力関係によって大きく変わってまいります。不況が進んでくればスタッフ権利主張は弱くなっていきます。特にこの業界はブラックリストがあるのではないかというようなことがスタッフの中に流れ、権利主張をすること自体がお仕事紹介をしていただけないといううわさにまでつながって、本当に景気の変動が権利主張の変動に大きく影響しております。  そういった中で、何らかの形で社会の侵してはならないルールとしてこの均等取り扱いがルール化されるということは必要なことだと思います。  また、御質問にありましたいわゆるマージン取得率というものがそれぞれのスタッフによって一つ派遣会社の中でもまちまちだという苦情はよく聞きます。新しいスタッフは四〇%だけれども、古くからその派遣会社を通じて働いている人は五割にも六割にもマージン取得率が上っている。こういう現象がなぜ起きるのかということはそれなりに業界の事情はあるんですけれども、やはり賃上げを古くからのスタッフにしない、そのことによってマージン取得率が、昔は五公五民といって五割の搾取というのが公序に触れるかどうかというような議論もありましたけれども、それを超えたマージン取得率が業界の中にある。  これは、ごく一部だということで信じたいんですけれども、こういったものに対してどのような規制といいますかルール化をして、そして人間らしい生活水準をスタッフに保障していくのかということはぜひ議論していただきたい課題です。そして、そのためにもマージン取得率はスタッフに対して明らかにするように、少なくとも派遣元会社に義務づけるということは課題ではないかと思います。
  54. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 時間ですので、いろいろ貴重な御意見参考人方々どうもありがとうございました。
  55. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川でございます。  四人の参考人の御意見を伺いながら、派遣労働者の実態、それから法律問題が非常に浮かび上がってきていると思います。  順次質問をさせていただきたいと思いますが、私はまず、育児休業、介護休業の代替要員に今回派遣労働者の導入が認められた、枠を外したという問題について、脇田中野参考人にお伺いいたしますけれども、なぜ導入したかということについては介護・育児休業の取得を促進するものである、これが導入の理由になっております。  先ほど、脇田参考人資料を拝見いたしましたら、育児休業、介護休業の権利行使そのものを困難にするんだということを書いておられますが、そういう意味を説明していただきたいのと、中野参考人には育児・介護休業の取得の促進のための導入という点についてどう考えるか、お伺いします。
  56. 脇田滋

    参考人脇田滋君) この育児休業、介護休業の代替については、特に育児休業については教員で臨時の教員を採用するというのがありますが、本来は常用の労働者一定確保して常用労働者で代替していくというのが筋だと思いますし、少なくとも直用の臨時労働者で代替するというのがこれまでの法制度だったと思うんですが、なぜ派遣にならないといけないのか、そこの理屈が私にはよくわかりません。  むしろ、この派遣が入ってしまうと、例えば育児休業や介護休業をとろうとする人は、自分の仕事派遣仕事に置きかわる、そういうことをいわば覚悟しないと育児休業、介護休業がとれない。特に育児休業や介護休業をとろうとする労働者がただでさえ権利行使が困難な中で、自分の仕事がそういう派遣仕事に取ってかわるという、そういういわば危険を冒して権利を行使するということになってしまうということで、本来の育児休業と介護休業と直接に関係のない派遣がここに結びつくということの危険性をここで書いた次第です。
  57. 中野麻美

    参考人中野麻美君) 比較的長期にわたる休業の権利を取得する労働者の穴埋めに代替要員を使う、これに伴って果たしてその代替要員を配置した職場に休んだ労働者が戻れるかどうかという問題は、派遣を使うのか、契約社員を使うのか、はたまたパートタイマーを使うのか、いずれの形態を使おうとっきまとう問題であるというように私は思います。  そうした意味で、私がこの育児・介護の休業代替に派遣労働者を充てていくという法政策的な方向をお聞きしましたときに、まず何といっても整備しなければならないのは、正規の労働者が不利益な取り扱いを受けることがないような法的枠組みがあるのかと、それから原職に復帰できるという法的な枠組みが準備できているのかと、そして今までも議論してまいりましたように、なぜこの休暇が取得しづらいのかといえば、ぎりぎりの要員配置の中で残業対応によってしかとにかく仕事が回していけないといったような職場の現状、これを解消するということがまず抜本的に必要なわけですから、そういったための措置を講じる事業主の義務が規定されているのか、ここに注目したわけです。  むしろ、派遣の問題にストレートにこの問題を結びつけるよりも、そういった職場環境あるいは職場環境を担保するための法律上の枠組みを、どのようにして整備していくのかという議論こそ先行して行われなければならないというように私自身は感じました。  そういった意味で、先ほどの意見を述べさせていただいたわけですが、もう一つ均等待遇との関係で言いますと、休業で休みをとる労働者と同じ仕事あるいはポストがあくそのポストに派遣労働者が入るわけですから、これほど明確な同一労働ということを示す事実はないわけです。こういった意味で、例えばこの育児・介護休業代替派遣の枠組みを整備する上で均等処遇というのは大きな課題になろうかと思います。  以上です。
  58. 吉川春子

    ○吉川春子君 大原参考人に伺いますが、先ほど中野参考人資料の中で、派遣先でセクハラに遭うとか、あるいは履歴書のコピーが回し読みされてプライバシーの侵害が著しいとか、具体的な生々しい実態が報告されましたけれども、そういう事実についてどのようにつかみ、どのような対応をされているのかということと、事前面接ということについてどうですか、やっておられるんですか、その点伺います。
  59. 大原慶一

    参考人大原慶一君) セクハラの問題とか、それから派遣先において派遣労働者が不利益な取り扱いを受けるというような問題については、私ども派遣事業をしっかりやっていく上での一番大事なことは、派遣をしてから、その派遣先でその方がどういう状態にいるかということを正確につかんで予防措置をとることが一番大事だと思っています。したがって、私どもも、各社そうですが、一週間に一回とか必ずレギュラーに派遣労働者皆さんに連絡をとりまして、どうですか何か嫌な問題がないかどうか、そういうことを事前にキャッチして、そしてそれは堂々と派遣先に持ち込むという、派遣労働者をいかに大切にするかという競争をしているのが実は派遣会社だと思います。  そういう意味で、今のようなことをさらに徹底もしたいと思いますし、事前に防ぐということに努力をいたしたいというふうに思っております。  事前面接については、長期の派遣につきたいという方、仕事に熱心な人ほど、これから行く派遣先仕事がどういう仕事だ、指揮命令をする人がどういう人なんだ、これを知りたいというのは自然な要望ではないかというふうに思います。人間関係が中心になる仕事ですし、一人で行くわけですから、そういう方が派遣先のことをあらかじめ知っておきたいというのは、これは自然な要望だと思います。したがって、そういう要望があり本人が希望される場合には、業務の打ち合わせとして先にお打ち合わせをすることがございます。  実は、私ども業務で、ファースト・デー・コールという言葉がい言葉になっております。それは、最初に派遣で行ったその日の夜、必ずそのスタッフさんに連絡を入れてどうだったということを確認するという意味でございます。ここでもし、行って最初の日にミスマッチのような、合わないようなことが起こってはやっぱり派遣労働者自身の不幸だと思うんです。そこでそういうような、積極的な意味で御本人が要望する場合に事前の打ち合わせに参上することはございます。
  60. 吉川春子

    ○吉川春子君 脇田参考人、この事前面接は法律的に考えるとどういうことなのか、お伺いします。  それからもう一つ脇田参考人には、派遣労働者を守るために船員手帳を例に引いて派遣手帳というような提案もされていますが、その点についてもあわせて説明してください。
  61. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 事前面接は、派遣法の仕組みからも根本的におかしいというふうに思います。派遣法というのは、派遣先に対して派遣元雇用主として責任をとるという基本的な建前ですので、その建前から、派遣先が面接をするということは、派遣先派遣労働者を直接雇い入れるということになってしまうわけですから、明らかに派遣法趣旨に反する、そういうことにもつながるというふうに私は思います。先ほどの大原参考人のお話を聞いても、その点は納得しがたいところです。  それから、船員手帳のようなというのは、例えば登録型ですと、ある派遣会社に行ってまた次へ行くというふうなことで、労働関係の特に継続的な面での労働条件の蓄積による形成、これは非常に難しいということがありますので、いつ、どこで雇われていたか、派遣元にいたかということを明確にすることによっていろんな労働条件が改善できるんではないか。例えば、休暇もそうですし、それから労働災害などの非常に蓄積的な労働災害、職業病ですね、こういったものもありますし、そういう場合に、その派遣労働者の職業病の認定等にも役に立っていくということで、こういう特に登録型の派遣労働の場合には、労働者保護のためにも、そういった派遣手帳ですか、派遣労働手帳といった考え方も必要ではないかというふうに思っております。
  62. 吉川春子

    ○吉川春子君 その事前面接というようなことをやる場合には、これはもう派遣労働ではなくて、面接に行ったその会社との雇用関係が直接生ずるのであって、派遣元は単なる職業の紹介をした、こういう関係になるのではないかと思いますが、その点重ねてお伺いします。  それから、先ほど連合桝本参考人が、派遣労働者というのは高度の知識というか専門的な知識、そういうものを持ったことに限られるのが本来の姿なんだということをおっしゃられました。今回の法改正は、派遣労働を本来の姿に戻す方向なのか。私は非常に逆の方向へ行くんじゃないかと思いますが、今度の法改正がやむを得ないとおっしゃっていることとの関係について一言お伺いして、私の質問を終わります。
  63. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 私は、事前面接の場合は、派遣法趣旨に反しますし、解釈論としまして、労働者がその主張をすれば派遣先との契約関係の成立ということを認めることができるのではないか。これは裁判で争うということになるかと思うんですが、できれば立法的にもその点を明確に確認すべきではないかというふうに考えております。
  64. 桝本純

    参考人桝本純君) そのやむを得ないというところは大変私どもは苦しいところでありまして、明快なお答えにならないかもしれませんが、専門性について高度な専門性を持った者が本来の派遣労働者であるべきだということについては、ちょっと先生の、私の表現がまずかったのかもしれませんが、先生がおっしゃったように、高度な専門性というのは企業内でしか実際は担保されていないのが日本の労働市場だというふうに先ほど申し上げたつもりでございます。  ただし、派遣法が前提にしているのは、一定の専門性ということが法の建前ですから、先ほど申し上げましたように、現在の派遣労働者を三つに区分するとすれば、専門職としての意識を持っている人たちにとっての就業形態として将来を考えるのが本来のあり方だろう、こういうのが私の趣旨でございました。若干認識が違うかもしれません。  そういう意味で、専門的な職種の労働市場をつくっていくというのは、これは日本社会にとって今後の一つの展望だろうというふうに思っております。ただし、その面については現在極めて未成熟であります。派遣労働という就業形態そのものが、我が国の労働関係の中では、極めてまだ未成熟なのだと。その未成熟なところから、さまざまなトラブルが発生しているというふうに思っております。  これは、今回の改正先生が逆向きではないかとおっしゃったのは、恐らく対象が拡大されたということをもってのお話だろうと思いますが、これにつきまして現行の十六職種の方が専門度が明瞭で、今回新たに付け加えられたものがその職種の内容がより不明確だということであれば御指摘のとおりかと思いますが、その点についてそれほど大きな違いがあるというふうには考えておりません。  ただし、対象が拡大すること自体が無限定に行われますと、私どもが懸念しておりまた先生も御懸念のような点については一層危険度が高まると思っておりますので、その点についての意識は常に持ってきたつもりでございます。  なお、やむを得ないというふうに申しましたのは、当初私どもが考えていたあるべき抜本的な法の見直し、これは場合によっては基準法も含めた見直しというところまで議論が展開できなかったという点で、法の抜本的な欠陥を是正するにはまだ非常に大きな距離がある。ただし、昨今のような政治環境の中で、あるいは不況をバックにしたネガティブリスト方式の強い主張の中で、とりあえずそれに対する歯どめをかけつつ派遣先責任について法の水準にそのことを取り上げた、このことについては一定前進かなと、少なくとも現行法よりはその点では前進というふうに評価できるんではないかというふうに考えています。  ただし、これは法律そのものによって全面的に担保されるとは思っておりません。先ほどの適正運営協力員制度も含め、我々労働団体及び積極的な意思を持った使用者側との民間ベースの努力が同時に担保されなければ、それは決して保障されないものだろうというふうに思っております。
  65. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  66. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 新緑風会の笹野と申します。  きょうは四参考人から大変貴重なる御意見をお伺いいたしまして、心から感謝と敬意を表します。  さて、私が大学時代に権利の勉強をしたときに、自由という価値観に対して社会権という権利があるんだと、これが労働法という新しい分野をつくり上げたという、そういう本を読んだときに、何か私は非常にうれしい気持ちになって、こういう考え方があるのかというふうに思った感動を今思い起こしております。しかし、さっきからの御意見を聞いており、またこの派遣法改正法案を読んでいるうちに、しかし、いろいろな社会によって価値観というのはある程度の変化をするということはこれもまた一つの大きな考え方なんだなというように自分に言い聞かせながら、そういう今までの女性の労働というものに対して、非常に悲劇的な歴史というのが、私たち女性はその歴史を学ぶとよくわかるわけです。  もちろん私たち女性は、憲法がない以前というのは、まさに人身売買の対象に性というものがさせられたことを二度と繰り返してはいけない。そのためにも、社会権という権利はしっかりと守り続けなければいけないというようなことを考えながら、では価値観が動いていく、近代的とかあるいは近代化の中には便利とかあるいは迅速とか、そういう価値観が非常に入ってくるわけです。この派遣法というのは、まさに便利とか迅速という近代に対しては非常に高い価値観がある。  でも、私は便利だから飛行機に乗る。でも、必ずそこには危険が隣り合わせである。だから、近代的な価値観の中の便利とか迅速とか、そういう非常にすぐれた価値観には常に危険性が裏腹である、裏表にあるということをいつでも忘れてはいけないのじゃないかと、そういう思いを持っております。  そこで、中野参考人桝本参考人に、こういう私の考え方からお尋ねをしたいというふうに思います。  それは、今の派遣法がネガティブリストという方に向かって進んでいきそうな感じが私はいたしました。先ほど星野議員の、派遣ということによって雇用が創出するかという質問に対して、それは幻であるという御回答がありまして、ちょっと私はおもしろかったんですが、ネガティブリストという考え方をうんと発展させていったら、女性の人権あるいは女性の雇用あるいは女性の働く喜びというのは今よりも拡大するとお考えでしょうか。そして、今という設定よりも何年かたったら拡大するのか。それとも、危険と隣り合わせだという私の考え方が今なのでしょうか、何年か先なのでしょうか。そして、危険を排除するというのは一体どういう発想が必要でしょうか。御指導いただきたいと思います。
  67. 中野麻美

    参考人中野麻美君) お尋ねのことについてですけれども一つ冒頭に例を挙げさせていただきます。  男女労働者が平等に経済社会に参画することができるようにということで、ILO百五十六号条約政府は批准いたしました。そして、批准された家族的責任条約に基づいて育児・介護休業法が整備されて、そして男女を問わず平等に家族的責任と職業生活との両立を図ることのできる法整備が第一段整備されました。その結果として、休業を取得促進するということでこの派遣労働にまず白羽の矢が立った。  しかし、私が一番訴えたいのは、この派遣で働いている人たちには育児・介護のための休業が法律で保障されないのです。この法律契約期間が限定された労働者には保障されない。つまり、こういった形態で女性たちが働くということが多くなっています。  それが経済社会の分野への進出として、女性たち生活と地位を本当に高めていくことであれば、私はもろ手を挙げて賛成したいのですけれども、こういう法律の矛盾点に見られますように、そこで進出したとしても、低い賃金とそして不安定で、通常の労働者には当然のことながら権利発展の歴史の流れの中で保障されてきたものがなかなか保障されない。今でもそういった権利保障の枠組みから外されているということ、こういった状態を一日も早く是正することなくして女性たちの未来はあり得ないのだ。  そういった中で働いているということが、逆に男女間の差別を拡大し、実際に均等法や派遣法ができてから、パートや派遣で働く人たちの賃金も含めて、男女間の賃金格差を見てみますと拡大してきているという状況にあります。これがすべてを物語っていると思います。
  68. 桝本純

    参考人桝本純君) 大変難しいお尋ねでございますが、便利と危険が裏腹だというのはこれは文字どおり事実だろうと思います。  そして、現在の派遣法というのは、派遣制度といいますか派遣法だけではなくていわゆる一般派遣労働という制度は、非常に悪い言い方をすれば労働の出前であります。労働の出前というようなことは、便利であるという面では確かに便利でありましょう、それから迅速かもしれない。  しかし、企業労働者、正規雇用労働者がある水準に達するまで、ある能力を獲得するまで企業自身がそれに対する能力開発の負担をしてきたものが、当該企業にとってはよそから調達できればそのコストは削減されるとしても、どこかでそのことが担保されなければ、肝心の供給される労働者能力というのはどこでも保障されないことになるわけです。  この問題は、実は単なる危険だけではなくて、労働者能力開発そのものが社会的にどういうふうに担保されるかという問題を自動的に呼び起こします。その問題は、先ほどの御質問にありました専門性ということにもかかわりまして、これは単に派遣制度の問題ではなくて、転職がふえることに伴って通常の正規雇用労働者についても同じように言うことができます。  その意味で派遣労働が、いわゆる熟練度の低い労働の安い供給になることを我々は一番警戒しているところでありまして、今度の派遣法はその問題にも改正時点に当たって注目をしたことはしたんです。その意味で、職業能力開発の問題と能力水準の評定の問題について一定の言及をしております。  しかし、特にいわゆるホワイトカラー労働に属するところ、それから事務労働に属するところ、これについては、工場で働く現業労働者以上にその労働能力資格についての社会的な基準というのは極めて未成熟でありまして、事務専門士ということが新たに一つのメルクマールとして言われておりますが、そもそも事務専門士というものが、例えば技能士のように使用者の世界で現在普及しているかということになると、現状はまだそうではないということになろうかと思います。  女性差別にかかわることは中野先生の方からお話がありましたし、私は男でございますので余りでかい面をしてしゃべることではないかもしれないので省略いたしますが、基本的な、男女にかかわらずそこのところで働く喜びが拡大できるための条件というのは横断的な職能評価が確立することなんだろう、この点について非常に長い道のりを我が国社会は今後歩まなければならないのではないだろうか。  その点についてのネガティブリスト化というのは、十分にそのあたりの配慮がされた主張だというふうに我々は審議過程でとても理解できなかったし、審議過程でしたがってその説は棄却されてきたんだ、こういうふうに理解しております。
  69. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 満足すべきお答えをいただきまして、大変喜んでおります。  これから私たち、便利さだけが前面に出るような議論というのは、非常に危険をはらんでおります。まして派遣というのは、いかにきちっとした制限、あるいはきちっとした機関によって危険度を取り去るというそういう配慮を忘れたならば、私はこれから女性の人権というものがまた昔に戻る可能性があるということを危惧する一人です。  そこで、私に与えられている時間がもう三分しかありませんので、一言ずつで結構なんですが、きょうは労働省も来ておりますので、先ほど中野参考人労働省がしっかりやることによってこの法案がうまくいくんだということを声を大にしてお話しになりました。  そこでお聞きしますが、この苦情処理機関、「行政機関による苦情相談機能の充実を図るための措置を講ずることが適当」ということが審議会の中で言われております。そこで、この「相談機能の充実を図る」ということについて、中野参考人桝本参考人に、具体的に何かこれだということを一言御示唆いただければ大変うれしいと思います。
  70. 中野麻美

    参考人中野麻美君) この種の労働にはトラブルがつきものです。というのは、先ほど来御説明申し上げてきた複雑な法律関係に起因いたします。そういった構造的な問題から発生する労働者権利侵害を速やかに解消して原状回復措置を講じていくということが、行政が本来進めなければならない紛争処理機能であるというふうに思います。  そういった機能を持ち合わせるためには、苦情を持っている労働者が申し立てた場合には、必ずそれに対して権利保障基本にのっとって応答する、そして速やかに是正措置を講じていくというような行政の体制が不可分だと思います。そういった意味では、人的なスタッフがきちんと充足されているのか、そのための事務局なりあるいは予算が確立されているのかと、決して調停的なあいまいなことで問題をどこかに投げやってしまって、それで解決したのだというのではない紛争処理の機能というものを求めたいと思います。
  71. 桝本純

    参考人桝本純君) 今回の法改正に関しては、先生の今のお尋ねについて二つの点を行政に対して我々としては要望したいと思っております。  今回の苦情処理の問題で、それぞれ派遣元及び派遣先に加えて、一つはその能力を持っている派遣元事業主団体による苦情相談の機能と、それから行政による苦情相談の機能とがございます。加えて、先ほどの適正運営協力員制度の改善がございまして、その中における福祉会議というものが新しく設定されることになりました。これの内容が具体的に派遣元事業主団体による苦情受け付けの問題と結合することが望ましい。  それから第二には、これは今すぐにとはまいりませんけれども、これを早急に中央政府による機関委任事務から解除して、地方自治体のそれぞれの特性に応じた必要な人員配置ができるような制度に改めて、東京、大阪を初めとする大都市圏では十分な要員が職業安定行政の中に配置されるように望みたいというふうに思っております。  三番目に、労働組合自身が公共の苦情処理機関に具体的に参画できる道を開いてもらう必要があると思いますし、これは具体的な努力をしたいと思います。ただ、長期的には派遣先に対する派遣労働者自身の団体交渉機能を確立すべきだと、派遣先にも団体交渉に対する応諾義務を当然課するべきだと、これは将来の課題として我々は強く意識しております。  以上です。
  72. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 あと一分ありますので発言させていただきます。中野参考人には弁護士として、そして桝本参考人には連合の機能を十分生かしていただきたいということをお願いいたします。また、行政機関の方に対する大変な御示唆は、これから労働委員会のこの法案の審議のときに私が十分させていただきたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  73. 末広まきこ

    末広真樹子君 まずは、私たち先生方に御意見をお伺いに出向かねばならないところを、お出かけくださっていろいろ教えていただきまして、本当にありがとうございます。深く感謝いたします。  まず、一番疑問を感じましたのは、審議会でいろんな審議が出尽くされないままにやむを得ないのかなということをおっしゃいました。これはもう皆さん今先輩方が聞いてこられましたので、これはそれ以上追及しないということでまいります。  連合桝本参考人にお伺いしたいのは、使用責任というものを派遣先にも分担させるような方向でどうかというような御意見がございました。これは、何か具体的にございますか。
  74. 桝本純

    参考人桝本純君) 使用責任と申しますか、今の派遣制度で申しますと雇用管理に関する責任というふうに言った方がいいかと思いますが、現行法は、脇田先生からも御紹介ありましたとおり派遣元雇用主、派遣先は使用者と。本来、これが一つしかイメージしていなかった基準法の使用者概念を、私どもに言わせれば無理やりに切り分けた、そこに根本的な問題が実はあるわけです。したがって、先ほど言いましたように、派遣先は、人を雇うという雇用主としての責任解除されて具体的に労働者を使うことができるという非常に大きな特権を手に入れている。以上は、形式的な問題です。  しかし、もう少し実態を申しますと、この派遣労働の中の三者、つまり派遣労働者派遣元派遣先というこの三つの立場の間の、我々の用語で言うと力関係が圧倒的に不均衡だということをもう一つ加えておかなければいけません。一番力が強いのは派遣先であり、次に力が強いのは派遣元であり、派遣労働者は残念ながら一番弱い立場に置かれている。この不均衡をどのようにして是正するのかということを軸に考えなければならないだろうと思います。  そこの中で、今笹野先生の御質問にお答えしたときにも申しましたように、我々は基本的には派遣先団体交渉に応じる責任を引き受けるべきだと考えておりますが、現行法の枠組みの中で申しますならば、派遣先派遣元との間に結ばれるいわゆる派遣契約ですね。これは民事上の業務契約でございますが、これ自体が一定の労働契約的な責任を帯びているのだということを明確にすべきだろうというふうに思います。  これについては、非常に深刻な議論を審議会ではいたしました。労働省の説明は、ここにわざわざ本来書く必要のない民事契約の賠償などということが入っていること自体が通常の民事契約ではないというふうに理解をすることができるし、してほしいということでございました。しかし、それが実際に担保できるかどうかは今後の問題だと思っております。
  75. 末広まきこ

    末広真樹子君 重ねてお伺いしますが、契約書なるものは、そのトライアングル構造において、どことどことで交わされておりますか。
  76. 桝本純

    参考人桝本純君) 派遣契約につきましては、これは派遣先派遣元ですね。それから雇用契約派遣元派遣労働者であります。
  77. 末広まきこ

    末広真樹子君 派遣労働者のことをスタッフとも言いますね。じゃ、派遣先スタッフとの間は契約はないのですか、契約書というものは。
  78. 桝本純

    参考人桝本純君) はい、ございません。制度の説明をする立場かどうかはわかりませんが、そこの間は直接の契約関係にないはずでございます。
  79. 末広まきこ

    末広真樹子君 そこら辺にもきっと問題があるんでしょうね、いざとなったときに。  今度は脇田参考人にお伺いしますが、御意見の中に大企業の子会社や系列会社派遣会社を設立しているケースがあるというふうにおっしゃいました。これちょっと実例を挙げていただけますか。
  80. 脇田滋

    参考人脇田滋君) 派遣法ができるときに、特にマンパワーとかそういう専門の派遣会社がある意味で批判したんですが、金融、銀行関係とか商社の関係がみずからたくさん女子社員を雇っているわけですけれども、その人たちのOBを派遣会社にということで、ちょっと今具体的な名前は出てきませんが、ほとんどの商社やそれから銀行の系列ごとに専門の派遣会社ができているというふうに思います。
  81. 末広まきこ

    末広真樹子君 桝本参考人にお伺いいたします。  適正運営協力員制度というチェック機能を持つところがあるとおっしゃいました。これは愛知県ではどちらでございましょうか。名称だけでも結構です、住所は調べますから。
  82. 桝本純

    参考人桝本純君) 住所と申しますか、これは制度として適正運営協力員というものが委嘱されているということでございます。それの事務取扱は、県の労働部であれば労働部の中の職安課ということになろうかと思います。この辺のことは私などよりは行政の担当官に聞いていただくのが一番正確だと思うんですが、人数は先ほど申しましたように労使同数ずつでございまして、地方によって多かったり少なかったりいたしますが、私の知っている東京都では労使それぞれで三十九名ずつということでございます。
  83. 末広まきこ

    末広真樹子君 それでは大原参考人にお伺いしますが、御社の傘下二百四十社あるとお答えでございましたが、手数料なるものは統一でございますか。
  84. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 手数料と申しますと、私ども日本事務処理サービス協会協会会員会社として二百四十社が加盟しておられるという意味でございます。そして、当然会員としての入会金、月々の会費、これはちょうだいをいたしております。
  85. 末広まきこ

    末広真樹子君 ちょっと質問がよく伝わらなかったようですが、派遣元派遣スタッフに対して取っている手数料というものは、御社の協会では統一料金を設定しているかどうかという点をお尋ねしたんですが、通じましたでしょうか。
  86. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 統一の料金を設定するということは、独占禁止法その他からこれは全くできないことだと思います。しかし、自然に一つ料金の設定、スタッフさんへの賃金の支払いについて競争がいろいろございますから、一つのゾーンができることは間違いないと思います。事実上ございます。事実上はできてきている。
  87. 末広まきこ

    末広真樹子君 それは、今なかなか具体的な数字が出ないようでございますので、現場でまた調べさせていただきますが、大原参考人にお伺いいたしますが、派遣スタッフ業務報告書なるものを定期的に提出するように求めていらっしゃいますか、そういう指導はなさっていらっしゃいますか。
  88. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 派遣労働者スタッフさんに業務についての定期報告を出しなさいということを義務づけている、それを義務づけている派遣会社はないと思います。  逆に、さっき申しましたけれども、一週間に一回程度派遣先へ私どもが必ず訪ねて、仕事のことだけじゃなくてその会社の環境の問題とかそういうことについて、私どもは積極的に出向いてリサーチをしてフォローアップをするということが、私ども派遣事業の本当の勝負を分ける一番根本の大事なことだというふうに思っています。  ちょっと外れますけれども、私どものような中堅の派遣会社でも毎月百五十人から二百人ぐらいの新しい登録者の方が来てくださいます。これはもちろん広告媒体を通じての募集もございますけれども、実はその中に毎月数十人ぐらい現在稼働しているスタッフさんの友人紹介で見える方が多いんです。その方たちが一番安心して実は私ども登録を受けられるわけです。  なぜ、友人を月に数十人も皆さん紹介してくださるか。それは、やはり稼働していらっしゃるスタッフさんがこの派遣のシステムでいい、派遣のシステムが自分に合っている、それで派遣会社もいいということだから友人も紹介してくださるんですし、その友人もそれを納得して来てくださっているんだというふうに思います。  したがいまして、先ほどからいろいろございました派遣のシステムの危険性あるいは不十分な点、これは私ども派遣制度がよりょくなるための留意しなさい、注意しなさいという御指摘というふうに受けとりまして、今後一層御指摘のような点についてきちっと対応して、派遣労働者皆さんとともに派遣のロイヤルロードをしっかり歩んでまいりたいというふうに思っております。
  89. 末広まきこ

    末広真樹子君 友人紹介があるというのは、それは何か友人を何人連れてくれば特典が、ハワイ旅行く御招待とか、そういうのがついているんですか。
  90. 大原慶一

    参考人大原慶一君) 友人を御紹介いただいただけでハワイ旅行く連れていく、それはできないと思いますし、そういうことをしているところはないと思います。  ただ、友人を紹介していただく、そうすると友人に電話をしたり、それから友人と一緒にお食事をしたりという実費はかかると思います。したがって、それに見合う程度のものを、例えば図書券とかそういうことで、ありがとうという形でお渡しすることはございます。
  91. 末広まきこ

    末広真樹子君 だんだん楽しくなってまいりました。そうなんですか、お食事ね。それは楽しいと思うんでございますが、週一回派遣先にお出かけになるというのは、これは御社の営業を兼ねているというふうにも解釈できるんですが、派遣先一社に対して最大何人を派遣した実績がございますか、同時期にです。
  92. 大原慶一

    参考人大原慶一君) これは本当に会員会社各社さんによって違うと思いますが、派遣を何十人も一つ会社にするという場合は、たくさんのセクションに例えば貿易部、鉄鋼部、あるいは何々部というふうに分かれて三人、四人が合計して数十人ということがございます。今お尋ねのマックスという意味で申し上げれば、一社に二十人程度派遣の実績はございます。
  93. 末広まきこ

    末広真樹子君 実は、私は大学を卒業しましたときに、現在と全く同じ状況でして不況そのものでございまして、就職先がなかったんですよ。だから、もし私がもう二十何年か遅く生まれていたら、ひょっとすると派遣会社のお世話になっていろんなところに行っていたかもしれないなと思うので、非常に切実に感じます。  それで、私のころにはそういう派遣会社というものがまだ生まれておりませんでしたので、どうしたかといいますと、フリーで自分で営業して、自分で仕事について、自分でギャラアップの交渉をしてと、私タレント、フリーのタレントでございます。そのギャラ申請を自分でやってということをやってきました。それが大変不便なもので、自分でそういった会社個人で持って、人を雇ってその方にそういう雑事を引き受けていただいて、去年の夏、秋からですかね、こちらでお世話になっているんでございます。  そういう意味でも、この派遣法というのは今後の女性が社会参画していく上で、女性にとって味方になってくれるのか、足を引っ張っていくのかというのは十分に見定めていかなければいけないなと思います。  後日、労働委員会で質疑をさせていただきますけれども、そういう点に若干ウエートを置いてこの法案を見詰めていきたいと思いますので、今後ともどうぞ御指導の方をよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  94. 足立良平

    委員長足立良平君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたりまして御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  ありがとうございました。参考人の方、退席していただいて結構でございます。  本日の審査はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会