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1996-02-27 第136回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十七日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足立 良平君     理 事                 南野知惠子君                 真島 一男君                 武田 節子君                 大脇 雅子君     委 員                 佐々木 満君                 山東 昭子君                 坪井 一宇君                 前田 勲男君                 松谷蒼一郎君                 石井 一二君                 今泉  昭君                 星野 朋市君                 青木 薪次君                日下部禧代子君                 吉川 春子君                 笹野 貞子君                 末広真樹子君    国務大臣        労 働 大 臣  永井 孝信君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  七瀬 時雄君        労働省労働基準        局長       松原 亘子君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業安定        局高齢障害者  坂本 哲也君        対策部長        労働省職業能力        開発局長     伊藤 庄平君    事務局側        常任委員会専門  佐野  厚君        員    説明員        文部省高等教育        局企画課長    若松 澄夫君        厚生省健康政策        局看護課長    久常 節子君        厚生省社会・援        護局施設人材課  柴田 雅人君        長     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件)     —————————————
  2. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 今泉昭

    今泉昭君 平成会今泉でございます。  大臣は長らく労働界で第一線に立ちまして労働者雇用改善のために大変な御指導をされてこられたというキャリアがございますので、特に働く人たちの気持ちを十二分におわかりのことだと思いますので、答えにくい質問もあるかもしれませんけれども、ぜひひとつ率直な御答弁をお願いしたいというふうにまずもってお願いをしておきたいと思います。  まず第一点でございますが、ちょうど今、春の時期になりますと労働組合は恒例の賃上げ交渉が始まるわけでございます。御存じのように、働く者にとりまして賃金というのは唯一の収入でございますから、この賃上げの結果というのは大変生活を安定させるという意味では重要な意義づけがあるわけでございます。しかしながら、最近の特に産業界流れを見てみますと、経済の厳しさの中から、あるいはまた経済構造変化をするというリストラ必要性から、ベースアップゼロであるとか、むしろ賃下げなどというような話まで聞こえてくるわけでございます。  こういう一般的な経済界流れに対しまして、率直なところ、大臣、どのように受けとめていらっしゃるか、ちょっとその御見解をお聞きしたいというふうに思います。
  4. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今御指摘がありましたように、春闘のいわゆる本番と言われているのが三月の下旬だそうでありますから、私どもといたしましても大変その行く末を慎重に見守っているところであります。  ようやく今景気回復軌道に乗ってきた、こう言われているわけでありますが、その景気回復を確かなものにするためには幾つかの必要な要素が存在すると思うんです。その中に、今先生が御指摘になりましたように、働く人々賃金というものが重要なファクターを占めることはこれまた間違いないところだと私は思うわけであります。  それはとりもなおさず、景気回復のために幾つかある要件の中の内需拡大という面に絞って考えてみますと、消費購買力を高める必要がある。この消費購買力を高めるということは、それぞれの勤労者の皆さんがどれだけ支出にお金を使うことができるかということが基本でありますから、そういう面でいきますと、賃金引き上げということは景気回復にとっても重要な意義を持つものだと私は認識をいたしております。  しかし、賃金引き上げそのものは、従来から常に言われていることでありますが、これはあくまでも労使関係で決めることでありますから、労働省としては介入できませんけれども景気回復を確かなものにするためのいい結果が出ますように労使の間で真摯な協議が進められることを強く期待しているわけであります。
  5. 今泉昭

    今泉昭君 今、大臣が御指摘されましたように、経済活性化経済の安定的な発展を実現するためには、消費の、六割を占める消費支出の安定的な伸びというのは当然これは必要なことだろうと思いますし、それにあわせまして設備投資であるとか財政支出の面も当然これは伸びが必要であると思うわけです。  今の我が国経済実態を見てみますと、かつて高度経済成長を主導してきたいわゆる設備投資主導型の経済ではなくなってきていることも事実でございます。特に、バブル時代過剰投資が行われまして、必要以上に生産能力ばかり高まってしまった。現に、日本を代表するような自動車産業であっても、操業率は七五%、生産台数は千四百万台近くの生産能力があったって実際の生産をしているのは一千万台そこそこだというような状態の中で、新しい投資が出てくるというような環境にない。景気見通しの中で最近はやっと設備投資回復が見られるという報道もございますが、これはあくまでも老朽化しました設備を一部補充投資をしているような状態生産能力拡大するというような思い切った大型の投資が出てこないわけであります。  そういうことを考えてみますと、また我が国財政赤字実態を考えてみましても、景気を主導していくための設備投資であるとか財政というものに大きく期待ができないような実態ではないかと思います。  そういう中で、実は政府は八年度の経済見通しを、二・五%という見通しを立てられたわけであります。これには、もちろんどの程度雇用者所得伸びるのか、あるいはまた設備投資がどのくらい伸びるのか、いろいろな計算がなされたと思うんですが、この二・五%ということを計算された裏側に、大体恐らく閣議でその点においても十分考慮の上にこれを確認されたんだろうと思うんですが、どれぐらいの雇用者所得伸びるということを前提に二・五%の実質経済成長を見通されたのかどうか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  6. 七瀬時雄

    政府委員七瀬時雄君) 二・五%の成長は、おっしゃいましたように、投資消費、その他いろいろあると思いますが、雇用者数の増を〇・六%という想定でやっていると思います。したがって、あとはいわゆる分配率の問題でございますが、分配率が変わらないとすれば単純計算で一・九ということになるので、先ほど大臣が申し上げましたとおり、分配をどうするかというのは労使交渉の問題である、こういうふうに認識いたしております。
  7. 今泉昭

    今泉昭君 私が一番心配をしているのは、政府のそういう思惑で計算されてはいますけれども産業界の発言を見てみますと、どうもそれすら、賃上げという形で雇用者所得を伸ばしていこうという意欲が全く見られないという点を大変心配するわけでございまして、ぜひひとつ行政立場からも大臣立場からもそういうことがないように、景気を支えるための消費支出を増大するためには一定の賃上げなり雇用者所得の増大が望ましいという形の世論形成努力をしていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思うわけであります。  それから第二点の質問でございますが、雇用問題について少しお聞きしたいと思うんです。  御存じのように、景気回復をしてきているとはいいながらも、失業率の高さというのは依然として変わらないわけでございまして、専門家見方によりますと、恐らく四%に近くなるぐらいまで残念ながら上昇するのをある程度覚悟しなきゃならないんではないかという見方すら、あるいはまたそういうコメントすら聞こえるような状況なわけでございます。  私自身我が国雇用実態をずっと見てみますと、まず一つ心配として考えられるのは、大企業が抱えているいわゆる企業内失業者群の存在ということであります。恐らく日本の良好なる労使慣行の中で終身雇用というのもあるんでしょう。そういう条件の中でなかなか一方的に人員整理ができないということもございまして、企業の中に抱えているという企業内失業者が約二百万人いるんじゃないかということが言われているわけであります。  これに対して、特に大企業中心として行っているのは、リストラをやって分社化をして外にどんどん人を出していくというやり方であるとか、あるいはまた日経連が最近盛んに出していますところの終身雇用をやめるであるとか、あるいは年功賃金制度を抜本的に見直すであるとか、あるいはいろんな形の雇用形態を変えていく必要があるとか、そういうことを盛んに発表しながら、大企業自体はその企業の中でいろんな努力をしている、あるいはまた逃げ道を見出そうとしていることも事実だろうと思うんですが、しかし、現実の姿として三・四%という高い失業率でありながら、そういう人たちは一体自分たちはどうなるのであろうかという不安にさいなまれているようなのが実態じゃないかと思うわけであります。  加えまして、実はこれが大変重要なことだろうと思うんですが、特に生産性日本では最も低いと言われる第三次産業、この部分において目に見えない大変多くの潜在失業者群というのを抱えているんじゃないかと思うわけです。御存じのように、我が国の特に第三次産業というのは大変生産性が低いわけでありまして、アメリカなんかと比較しますと、我が国の第三次産業生産性というのは約四割ないし四五%ぐらいの水準にある。  したがって、乱暴なことを言う人は、規制緩和という流れの中でこの第三次産業規制緩和を一挙に導入するとするならば、欧米諸国とも十分対抗でき得るための生産性向上をしなきゃならない。生産性向上のためには設備投資をやって生産の能率を上げるということと、もう一つ人件費の削減ということでしょう。そうすると、大変乱暴な論議ではあるけれども、今第三次産業に働いている約三千五百万人の方々の半分を減らさなければ、規制緩和がされた場合には対等な競争ができない。だから、いわばこれらの方々規制緩和流れの中では潜在的な失業者群と言われてもいいグループじゃないかと思うのであります。  そういう意味では、よっぽど根本的な雇用対策をやらないと、我が国雇用問題というのはもうこれまで経験をしたことのないような大変危機的な状況に直面するのではないかと思うわけであります。  加えまして、私、アメリカといろいろと比較をしてみたわけでございます。御存じのように、アメリカ日本よりも十年か十五年ぐらい前、現在と同じような苦しみを実は経験をしているわけでございまして、金融問題だけではなくして、空洞化問題を中心といたしまして製造業中心となりまして七〇年代の中葉から八〇年代の前半にかけまして大変な雇用調整をやりました。  でありますから、アメリカ企業は今までは大きければいいことだと言われていた、言わばフォーチュン誌のランクに上る上位五百社を対象とした大企業中心とした支える経済を、むしろこれらの企業を根本的にリストラをして中小企業中心とした新しい経済体質にしようではないかということで、この大企業が大変な実はリストラ雇用調整をやったことは、これはよく知られていることでございます。結局、そういう方々アメリカの場合は中小企業中心とした第三次産業にみんな流れていったわけであります。  第三次産業流れていったということとあわせまして、第三次産業大変賃金水準が低かったものですから、アメリカ全体の賃金コストが大変下がってしまった。大企業に働いていたときは大変高い賃金水準であったわけですから、全体の賃金コストアメリカとしては伸びなくても済んだということが実はアメリカの今日の新しい時代経済成長経済リストラに大変大きな貢献をしてきたということがよく言われているわけです。  こういうことを考えてみますと、どうも日本の財界を中心とした流れというのは、このアメリカ経験をしたと同じようなことをどうも考えているんじゃないかという気がしてならないわけであります。これに符牒するような形で、実は通産省を中心といたしまして、中小企業少し元気出せやということで、創造的中小企業活性化のためにいろんな法案をつくりました。大変いいことだったと思うんですが、要するに一九七〇年代の後半から八〇年代の前半アメリカと全く同じような形で、中小企業中心とする第三次産業に大きなメスを当てて、ここに大きな雇用受け皿をつくっていこうではないかという流れ日本の中にもあるわけでございます。  しかし、日本の中には、御存じのように今言いました第三次産業というのは大変生産性が低い、弱いところでございますので、企業内失業者として抱えている大企業潜在失業者群が吸収される可能性というのは大変少ないような気がしてならないわけです。そういうことは、どうもアメリカがやってきた実験というのは参考にならないというような気がして私はならないのですが、この点につきまして大臣の御見解をちょっとお聞きしたいと思います。
  8. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生からアメリカの例をとりながらいろんな御指摘がございました。確かに大企業でかなりの潜在失業者と言われている人々を抱えているという実態があることも承知をしているわけでありますが、それは単に終身雇用制度ということだけで抱えているのではなくて、企業の持つ社会的責任ということから企業としても労使の間で真率な話をしながら、ある意味では歯を食いしばるところもあると思うのでありますが、経営者自体が頑張ってくれているということから、非常に厳しい状況ではありますけれども欧米のような高失業率にならずに済んでいるという現実がそこに存在するのではないかと、こう思っているわけであります。  それだけに、第三次産業関係についても御見解がございましたけれども、必ずしも第三次産業に圧倒的な潜在失業者がいるという認識はそこまでは私は持っておりませんけれども、しかし言われておりますように、大企業リストラをする際に第三次産業に結果的に受け皿を求めている。その受け皿づくりがうまくいかなかったときには、その中小企業中心とする第三次産業にしわ寄せとしてもたらされることがあってはならぬということから、私ども今この新しい雇用創出、新しい企業を興していく、あるいはそのための労力開発雇用創出にかかわるいろんな労働省としても助成措置もとりながら対応しているというのが現実実態であります。  言われましたように、大企業中小企業との関係、あるいはリストラ関係については多くの課題が残されておりますが、これを一つ一つ解決するための知恵を私ども労働省挙げて対応してまいりたい、このように考えているところであります。
  9. 今泉昭

    今泉昭君 働く者が心配をしているその点につきまして、労働行政の面でぜひ大いにひとつ御指導を賜りたいというふうにお願いを申し上げておきたいと思います。  さて、実は第三次産業に対する、必要以上という表現はおかしいのですが、実力以上の期待というものが実は一般的な経済誌であるとかその種の専門家から語られてくるわけでございまして、政府当局のいろんな産業構造の転換に伴うところの新しい産業育成という方針の中にも見られるわけでございますが、どうもこの中の中心というのは、かつて我が国製造業中心として大量生産大量消費の中で育ってきた大企業が大変多くの労働者を吸収していくという形の産業というふうな期待はできないような気がしてならないわけです。  特に、これもまたアメリカの例を出して大変失礼でございますけれどもアメリカの場合はこの一九七〇年代の後半から一九八〇年代の実は中盤までの間、大変中小企業がふえました。ベンチャー企業ももちろんこの中に含まれているわけでございまして、これらがアメリカ経済成長の立て役者になっているわけでございますが、これらの企業の中には従業員なしの企業というのは大変多いわけです。せいぜいいても一人か二人、こういうような中小零細という、あるいは企業主という形の雇用創造ということだけに頼るということが、私自身としては何とも心もとない感じがするわけです。  それ以外にもう一つ心配なのは、実は我が国の場合、大企業に働く人たち労働条件というものと中小企業で働く人たち労働条件を比較してみますと、大変大きな格差があることも当然でございますけれども、それ以上に、労使関係というのが実に確立されていない。そういう意味では、社会的な公正労働基準というものが明確に設定をされて労使関係の中で生きてきていないという実態があろうと思うわけであります。  私は、大企業におけるところの労使関係というのは、日本の戦後の大変良好な労使関係の中で築かれました。ほかの国からもうらやまれるような立派な労使関係があるからこれは心配はないと思うんですが、今後期待をされている第三次産業の中でふえていくと思われる中小企業労使関係というものを、これは考え直していく必要があるのではないだろうかと思うわけであります。労働組合の側からいいましても、実はこの中小企業に対する組織力というのは大変手が回っていないわけでございまして、組織率が実は数%という大変低い水準にあるわけでございます。したがいまして、労働組合立場から基準法に定められた労働条件を着実に実行していくという指導もなかなか手が届かないというような産業が大変この第三次産業に多いわけでございます。  そういうことを考えてみますと、我が国労働基準法なり労組法の中身を見てみますと、どうも製造業中心の、どちらかといえばそういう状態を想定した基準法がつくられているような気がしてならないわけであります。中小零細企業で、あるときには経営者立場に立つような労働者も出てくる中小企業の場合、あるいは職制という立場に立たなきゃならないような働く労働者を抱えている中小零細企業、そういうところに向けての基準法のあり方というもの、こういうものをもう一度見直してみる必要があるんじゃないだろうかな、そういう面について何か考えておられるようなことがございましたら、御意見をお伺いしたいと思います。
  10. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先生が御指摘されましたとおり、労働条件について大企業中小企業格差があるというのが実態でございます。この背景はいろいろあろうかと思いますけれども一つは先ほど先生も御指摘されておられましたように、大企業中小企業との間で大きな生産性格差があるということがあろうかと思います。  ただ、基本的な労働条件、これは原則として労使が自主的にお決めいただくということではございますけれども、今申し上げましたような実情を背景といたしまして、労使の自主的な交渉にゆだねておくということだけではやはり社会的な公正が確保されないおそれがあるといったようなことから、労働法はそこにいわば国が介入をするという形で労働者最低労働条件を確保するという形をとっているわけでございます。それが現在の労働基準法基本的な考え方であり、またその他最低賃金法等最低労働条件を定める法律基本的考え方であるというふうに私ども認識をいたしているわけでございます。  ただ、労働基準法は、その中にも書いてございますように、この法律で定める基準というのは最低基準であるということを書いており、それを上回る部分については労使が自主的な決定をするようにという精神も書かれているわけでございます。そういうことから、今先生が御指摘なされましたように、さまざまな中小企業実態というのはあろうかと思いますけれども、そういうことも全体的に視野に入れた中で、労働基準法で定める基準最低基準ということで設定しているわけでございますので、いろいろな経済社会変化というのはあろうかとは思いますけれども労働基準法考え方そのものがそれによって変わってくるということはないのではないかと思います。  ただ、具体的ないろいろな規定につきましては、制定当時の実態から大きく離れてきている、変わってきているというようなことも反映して見直さなければいけないということはあろうかと思いますけれども基本的な性格は変わるというものではないというふうに認識はいたしております。
  11. 今泉昭

    今泉昭君 今のことに関連してもうちょっとお聞きしたいと思うんですが、我が国の場合いろんな基準法以外の労働関係法がございますが、例えば労災保険法にしろあるいはその他の失業保険にしろ、ある種の法律は例えば五人未満中小企業の場合は例外であるとか、例えば産業医なんかを定める場合も、五十人以上の企業には義務づけても五十人未満の場合は義務づけないというような、中小零細に対しては大変例外的な意味での取り扱いが多いと思うんです。今私が申し上げましたのは、今後ますます第三次産業という分野が拡大を仮にしていくとするならば、そういう中小零細企業は大変これからますますふえていく可能性が多いと私は思うわけであります。  そういう意味で、全部はそうではございませんが幾つか残っている、例えばある業種における何人未満零細企業の場合は例外措置をするとかというものを抜本的に見直してみる考え方はございませんかどうか、お聞きしたいと思います。
  12. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 例えば、今御指摘ありました産業医の問題など、安全衛生法の中でそういう規模考慮に入れました規定というのはございます。  産業医の目的は、労働者の健康を確保する、企業の中での健康管理のいわばキーパーソンとして位置づけるということであろうかというふうに思いますけれども企業産業医を独自に選任して確保するというやり方ももちろん重要であり、今五十人以上の事業所に対してそれは義務づけられているわけでございますけれども、一方において、そういう産業医を選任するというのはある意味では企業がその経費を負担する、こういうことになってくるわけでございます。そういうときに中小企業まで含めて独自に産業医を選任するということまで義務づけられるかどうか、義務づけなければ労働者健康確保に問題があるかといいますと必ずしもそれだけではない、別の方策というのも場合によっては考えられるのではないかというふうに思うわけでございます。  ケース・バイ・ケースですべての場合をカバーして申し上げられるというわけではありませんけれども労働者の健康という観点からいえば、それは大企業に働く労働者であれ中小企業に働く労働者であれ確保されなければいけないということはそのとおりでございますけれども、全く同じ方法でなければそれが確保できないかというと、必ずしもそうでない場合があろうかと思います。  今申し上げた産業医について申し上げれば、小さな規模に対する産業保健サービスを提供するための、私どもが今整備をいたしておりますが、地域産業保健センター、そういったものを整備することによって産業保健サービスを提供できるようにしてきているわけでございますので、そういったやり方と相まって、中小企業における労働者労働条件なり健康の確保というのを図るというやり方もあるというふうに認識をいたしております。
  13. 今泉昭

    今泉昭君 次の問題についてお聞きしたいと思います。  円高の進展によりまして、我が国の特に製造業中心といたしました海外進出が大変盛んなわけでございまして、工場の海外進出によりまして相当な雇用の空洞化というものの心配が言われているわけでございますが、今日までの間、特にプラザ合意と言われる一九八五年の急激な円高以降、特に東南アジアを中心としてではございますけれども、工場が海外に移転することによって喪失をしたと思われる我が国労働者雇用喪失をした労働者の数というのはおよそどのぐらいになるか、これは推定計算でも結構ですけれども、わかりますでしょうか。
  14. 坂本哲也

    政府委員(坂本哲也君) 企業の海外進出に伴う雇用喪失の状況ということでございますけれども我が国の海外生産の比率を見てみますと、例えばアメリカは大体二五%程度、それからドイツが約二〇%程度。これに対しまして、平成五年度ですが、我が国では七・四%程度ということで、それほど高くはないということですが、先ほどお話ございましたプラザ合意当時、昭和六十年当時は大体三%程度でございましたので、これが徐々に高まってきておるということでございます。  直接的にどのくらい労働力が流出したかということについてはなかなか難しいわけですけれども、昨年十二月の総務庁の労働力調査を見てみますと、雇用者数は対前年比で全体としては四十八万人増加しているわけですけれども、その中で製造業だけについて見ますと実は二十四万人の減少という状況になっているわけでございます。ただ、このうちどの程度が海外生産増加による直接の効果によるものかということを判定することは非常に難しいところがございます。  もう一点、私どもの公共職業安定機関を通じましていろいろ海外進出を実施している企業に対してヒアリング調査を行った結果がございますけれども、海外進出の実施に伴って国内の従業員数が減少していないという企業の割合というのが、平成六年の八月時点では七二%ということになっております。こういったことで御理解いただきたいと思います。
  15. 今泉昭

    今泉昭君 次の問題に移ります。  高齢者の問題と定年制の問題についてお聞きしたいと思うわけでございますが、失業率をずっと見てみますと、高齢者の失業率、若年層の失業率というのが大変高いという実態があらわれているわけでございますが、労働省指導によりまして、特に六十歳代前半の高齢者の雇用につきましていろいろな指導をされているという実態、私も十分承知をしているわけでございます。  そういう中で、今定年制六十歳ということが言われているわけですが、今後の我が国の平均寿命の変化であるとか、あるいはまた健康維持の体制の完備等を考えていって、定年というものが六十五歳以上、例えば六十五歳までというような方向に流れていく可能性があるかどうか、どういう見通しを立てられているか、お聞きしたいと思います。
  16. 坂本哲也

    政府委員(坂本哲也君) 御指摘のように、急速に高齢化が進展していく中で、高齢者の雇用のあり方は大変大きな課題であるわけでございます。ちなみに、私どもとしましては基本的には二十一世紀の初頭までには、希望すれば六十五歳まで現役として働けるような、そういった社会の仕組みをつくり上げていくことが重要であるというふうに思っているわけでございます。  一方、定年制の状況でございますけれども、現在六十歳定年ということで指導を行っているわけでございますけれども、既に六十歳以上の定年をとっておるところが八六%、それからまた、その改定を決定している、あるいは予定しているといったものを含めますと九四%というところになってきているわけでございます。  今後は六十歳代前半層をどうするのかということになってくるわけでございますけれども、私どもとしましては、六十歳定年を基盤として六十五歳まで希望すれば働けるような、そういった継続雇用制度の導入についていろいろと支援措置を講じながら普及を図っているわけでございますけれども、ただ、現時点におきまして、やっぱり六十歳代前半層になりますと就業ニーズも非常に多様化してくる、あるいは健康等の個人差が拡大するといったようなこともございますし、事業主の負担といったことも考慮いたしますと、今の時点で直ちに六十五歳まで一律定年制でいくべきだというような考え方をとるということにはなっておりません。
  17. 今泉昭

    今泉昭君 御存じのように、勤労者の老後の生活を支える厚生年金がこれから段階的に支給開始年齢が下がるというんですか、上がるというんですか表現は。先に延ばされていくような状態でございまして、要は、この厚生年金の支給開始年齢と働く機会、雇用機会というものが実は上手にこれは織り成っていかなければ働いている人たちの老後の、特に高齢時代の安定した生活はできないんではないかと思うわけでございますが、もう既に六十五歳支給という日にちも、日にちというか年度も決定をされているような状況でございますが、六十歳代前半雇用実態というのは必ずしもそれに見合ったようにふえていっていないんじゃないか。  定年延長ということだけではなくして、雇用率というんでしょうか、再就職、嘱託という形での雇用率というのも決して多いとは思えないんですが、実態的にはどういう状態にございますか。
  18. 坂本哲也

    政府委員(坂本哲也君) 六十歳代前半層で希望すれば引き続きそこの企業へ継続的に雇用されるといったような制度を設けているところ、それから六十歳以上の定年制を設けているところを合わせますと大体二〇%程度という実態でございます。
  19. 今泉昭

    今泉昭君 二〇%程度というのは大変低い率でございまして、既に決められている六十五歳年金支給の開始年次にこれがもっと急速に上がっていくということはなかなか期待できないと思うんですね。そういう意味で、もう少し労働省といたしましてもこの点に向けての指導なり助成なり、新しい政策をぜひひとつ打ち出していただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、あちこち飛んで大変申しわけないんですが、労働時間のことについてお聞きしたいというふうに思います。労働時間の実は基準法の改正というのが、戦後四十年たちましてやっと十年前でしたか、八年前でしたか、九年前でしたか実現をいたしまして、そのときから十年をめどにいたしまして四十時間というものを実現していくためのいろんな方策なりあるいは指導がなされてまいりまして、着実な前進をしているという実態、これも私もよく見ております。  問題は、来年に迫りましたこれまで猶予措置をとられていた中小企業の四十時間労働の問題、この問題につきまして、産業界あるいは各種経営者団体からさらにまた延期を希望されているというような動きが伝わってくるわけでございますけれども、まず最初にお聞きしたいのは、今猶予措置をとられている企業で四十時間に到達をしていない企業というのはどのくらい残っているんですか。
  20. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 私ども平成七年に実施いたしました労働時間等総合実態調査結果によりますと、逆の言い方で恐縮でございますけれども、週四十時間達成事業場の割合は三八・七%ということになっております。  御承知のとおり、四十時間を猶予されているところといいますのは産業別、規模別に非常に入り組んでおるところでございますので、それごとに申し上げると非常に煩雑になってしまうんですが、まず規模だけを見て申し上げますと、三百一人以上の事業場では週四十時間を達成しているところが九五・一%、百一人から三百人という規模では六三・〇%、三十一人から百人というところで四五・三%、一ないし三十人というところで三七・三%ということでございます。このうち三十人以下の事業場というところにつきましては、業種で申し上げれば、金融広告業とか通信業、ここについては既に四十時間、法定が四十時間ということになっておりますが、他の大部分産業におきましてはまだ猶予されているところでございます。  したがいまして、非常にラフな言い方で、若干誤差はあるのかもしれませんけれども、こういったことから申し上げますと、猶予されている事業場におきましては、まだ約六割ぐらいが四十時間になっていないと。もちろん一部に、御承知のとおり特例事業というのがございまして、ここは猶予とは違う別の取り扱いがございますので、ここまで入れますと非常にややこしくなってしまいますけれども、五、六割のところがまだ四十時間には至っていないと、非常に荒っぽい言い方で恐縮ですが、そういうふうに申し上げられるのではないかというふうに思っております。
  21. 今泉昭

    今泉昭君 先ほどから申しておりますように、この労働時間短縮の問題は、法律がきょう決まったから例えば来年じゅうにはすぐ直せというような荒っぽい取り組みではなかったと思うんです。ある程度期限を区切りまして、こういうふうに努力をせいと、相当時間の猶予を与えた上での取り組みが行われてきたというふうに私ども判断をしているわけであります。  しかしながら、今のお話によりますと、来年に迫っている猶予措置撤廃の問題がまだ相当対象企業の中に実現されていないような実態ということを、私自身大変残念に思うわけです。苦しいのはみんなどこだって同じだと思うんであります。大変まじめに取り組んでいる企業というのは、計画を立て、苦しい中にも社会の一つのルールを守ろうとして一生懸命努力をして実現をしてもらっているわけでございます。にもかかわらず、実現できないからさらにまた猶予をしてくれと。それをやることによって実現できるかどうかということも、計画書でも出せば別でございましょうけれども、これも保証できないわけであります。  加えて、私が先ほどから申しておりますように、これからの我が国産業構造の大きな変化を考えてみた場合に、特にこの猶予措置の対象になっているところというのは第三次産業に多いわけであります。そういうところの中小零細企業がこれからふえていくという中にありまして、ますますそういうところが多くなっていくような私は実は危惧をしているわけでございまして、そういう意味ではぜひひとつ強力な指導をしていただきたいと思うわけであります。  かつて、定年制の延長に当たりましては、定年制延長の計画を立てなさい、計画も出さないところにおいては名前を公表するというような強い指導も行ってきたやに聞いておりますが、それと同じように、実際に努力をしていないところにはそれなりに強い指導を行っていかなければ、やっぱり人間安易な方にどうしても流れていきがちでございますから、ぜひひとつ労働省としても御指導のほどお願いをしたいと思うわけであります。  特に、中小企業の場合は、悪意であるところと悪意でないところと両方あるわけですよ。悪意でないところというのは、要するに社長さんは労務部長も兼ね、営業部長も兼ね、財政部長も兼ね、何でもかんでも全部やっているわけでございまして、何といったって一番真っ先に企業の収益に関係のあるところに目が行くのはこれは当たり前のことであって、いかにしてお客をとるか、いかにして収益率を高めるかというところには目は行くけれども、やはり労働者の生活改善というところにはどうしてもなかなか目が行かないんですよ。これは当たり前のことだろうと思うんです。そういう意味で、専門的な知識を持っている人がこの中小零細企業には少ないわけでございますから、特に行政のアドバイスや指導というものが必要ではないかと思っております。  私がこういうことを申し上げますと、いやそれは商工会議所であるとか中央会であるとか、あるいはいろいろな地域の相談所であるとかというところで指導体制はとっているとおっしゃるんですが、これはどちらかといえばそういう相談に乗っている立場人たちというのは経営側のスタンスにある方が多いんですね、私どもがつき合ってみますと。そういう面ではなかなか実効を上げていないという実態もございます。  私どもも実はこれまで長いこと、労使が話し合いをする中で企業発展をさせていかなきゃならないという立場労使関係を重視してきた運動の経験がある人間でございますから、一方的に経営側の苦境であるとか、経営側の立場の苦しいところを理解していないということはあり得ないと思うわけでございますので、ぜひ行政の強い指導お願いしたいというふうに思いますし、当初予定の一九九七年にはこれが実現されることを心から実は願っているところでございます。  次に、別の課題に移らさせていただきます。最近、実は日本労使慣行を抜本的に変えるということが、新しい時代に向けての我が国経済発展に欠かすことができないという論議を大変目にいたします。例えば、退職金制度の見直しであるとか、あるいはまた福利厚生費の法的負担の減少であるとか、そういうコストの削減であるとか、あるいはまた労働時間に関して成果に見合う賃金なり報酬が出せるような裁量労働というものをもっと大きくふやしていくというような論議であるとか、あるいは賃金制度というものを今までの一般的に言われている、これはキャッチフレーズ的に言われていることだろうというふうに私どもは思っているんですが、年功賃金制というのを抜本的に変えていく、そういうことをやらなければ、何か新しい時代産業構造なり新しい時代の国際化の中で、日本企業の競争力が落ちていくんではないだろうかというような論議が盛んに聞かれるわけでございます。  考えてみますと、これまで実は外国からいろいろ言われてきた日本の特色である終身雇用であるとか、あるいはまた年功賃金制度であるとかということは、我が国全体の企業の中で本当に実施されていたんだろうかということを調べてみますと、これは一部の大企業においてやられてきたことであって、一般的な中小企業には関係のなかったことではないだろうかなという気がしてならないわけです。  確かに、戦後の日本経済成長につれまして、中小企業から物すごい大企業に育った日本企業はたくさんございます。そういう中で、日本独特の終身雇用制度であるとか年功賃金制度であるとかということを大企業ではっくり上げてまいりましたし、それが特に我が国の労働力人口の年齢構成が大変低いときにはうまいぐあいに回転してきたことも事実でございます。  しかし、全体の労働者の大多数である中小零細企業において、果たして年功賃金というものがあったのかどうか、あるいはまた終身雇用制度があったのかどうかということをつぶさに検証してみますと、どうも中小零細企業の中ではそんなものはなかったような気がしてならないわけでございます。  しかしながら、中小企業に働く労働者というのは、大企業賃金だけではなくして、すべての労働条件格差がございましたから、何とか一生懸命働いて我々もあの恵まれた大企業に働いている労働者と同じような生活条件労働条件を実現したいという気持ちで一生懸命働いてきたことは事実でございます。  ところが、最近の流れでは、今まであこがれというふうに見られていた大企業の中でそういう制度をむしろ崩してしまって、一般的に中小企業でとられてきたような形のものが望ましいんじゃないか、そういうことをやることによって労務費を下げて競争力を高めようではないかというような風潮がどうも強いような気がしてならないわけでございます。私は、これは大変危険なことであろうと思うわけであります。  一般的に、新聞なんかは特にそういう形で物を報道したがるわけでございますが、最近は年功給から能力給に移行するなんと言う。何も今まで能力給がなかったわけではないわけでございまして、ちょっとそういうことを言うと、すべて何か今までなかったものが新しく出てくるように一般的に見られるような風潮がどうも我が国においてはあるわけですね。私は、中小企業において今まで目指していた望ましい生活水準、すべての労働条件というものの目標がなくなされていくということは、大変危険な風潮ではないだろうかなという気がするわけです。  というのはどういうことかと申しますと、学校を卒業する優秀な学卒者の方々は、実は中小企業にはなかなか就職したがらないわけです。魅力がないからですね、これは。労働環境もしかり、労働条件もしかり、いろんな意味で魅力がなかったからなかなか中小企業に行かなかったわけでございます。今、特に新卒者の就職が大変厳しい厳しいと言われておりますけれども、確かに大企業、中堅企業においては厳しいわけでございますが、中小零細企業においては人が足らなくて人が欲しいというような状況にある。しかしながら、そこに向けて就職をしようという気を起こさない。そういうところに、例えば留年をしようかとか、あるいはまたフリーターとして残っていこうとかいうような方々も含めて、就職難、就職難ということが一面では言われる点も私は否定できないと思うんです。  私は、こういう優秀な学卒者の方々の能力を活用するためにも、今まで中小の方々が目指していた大企業労働条件体系のあり方を否定するようなこの大きな流れというものは、ぜひひとつ余りこの風潮を助長するような形にしてもらいたくないと思っているわけでございます。  そういう意味で、中小企業を魅力ある職場ということにするためには幾つかの条件をつくってやらなきゃいけないと思うんですが、特に労働省の方で魅力ある中小企業にするために必要不可欠だと思われているような点についてちょっとお聞きしたいと思うんです。どういう点が優秀な人材が中小企業に積極的に出向いていくような条件というふうにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  22. 七瀬時雄

    政府委員七瀬時雄君) 先生の御指摘の点、非常に重要な点、多岐にわたっておりましたけれども、例えば長期継続雇用終身雇用の問題についてはそのいい面を評価すべきだという議論は欧米にもあるわけで、その辺は大事にしていかなければならないと思っております。  それから中小企業の問題につきましては、やはり賃金をどうすべきかという問題がありますが、これはやはり労使でお決めになる問題でございまして、私どもとの関係からいえば、中小企業の働く職場を魅力ある、つまり働く環境をどういうふうに整えていくか、それに対して行政がどういう援助ができるかという問題。  それからもう一つは、やはり中小企業における技能というか能力開発、そこのところをきちんとしないと、やはり賃金が労働の対価である以上、能力というものをどういうふうにやっていくか。大企業の場合にはこれまで主としてオン・ザ・ジョブ・トレーニングという形でやってきたわけでございますが、その辺のところがやはり勤続年数が違ったりする中小企業において、国なり社会がどういうふうにバックアップをしていくべきか、そういう視点が非常に大切ではないかというふうに思っております。
  23. 今泉昭

    今泉昭君 バブルの時代に、実は我が国の大企業が大変人を競って採りまして、必要以上の人材を抱えたという実態が、今日の大企業リストラに足かせになって大変悩んでいるような実態があるわけであります。当時、中小企業は人が採りたくてもなかなか来なくて大変苦労をいたしました。しかし、大企業の場合は、これまでと同じような右肩上がりの経済成長が続くだろうということを前提にいたしまして、先取りに人材投資をした方がいいだろうということで計画以上の大変大量の人を採ったことは事実だろうと思うんであります。  ところが、このようなバブルの崩壊によりまして、実は盛んに人を企業の外に出そうという肩たたきを中心とした行動がとられているわけでございます。かと思えば、一部の企業においては、景気が戻ってきますとまた人を採るという行動をとるわけでございますが、人を雇用するための、企業にとりましては一つの社会的な責任というものがあってしかるべきだろうと思うんであります。一回雇用をし、そしてあるいはまた一回人員削減などとして人員整理をした企業が、やはりそれだけの社会に対しまして一つの、そこに働く人たちあるいは社会の構成員に対して犠牲を強いるような行動をとったわけでございますから、例えば人員削減をしたときは一定期間新しい人を採ることはできないというぐらいの社会的な責任を持ってしかるべきではないだろうかなというような気が私はしてならないわけでございます。  そういう人事権なり雇用権を持っている、これは自由主義経済社会でございますから、そんなの当たり前だろうと言われればそれまでのことでございますけれども我が国の場合は、自由主義経済体制にありながら大変社会主義的な意味合いの強い社会だろうと思うんであります。これは制度的な意味合いだけではなくして、その構成する人たちの倫理的な感じにおきましても私は大変社会主義的な感覚を持っている国民性だろうというふうに思うわけでございますが、そういう意味で、一定の制限をするということについてはいかがお考えになられますか。
  24. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 企業がそれぞれの地域に存在するということは、先生の御指摘のように大変な社会的責任を有していると思うんです。したがって、そこで人を採用する、解雇する。例えばある自治体が地域の経済活性化のために企業の誘致条例をつくって企業を呼び寄せてくる。その前提条件は、その地域で現地採用を多くしてもらう、そのことによって働く人々の職場の領域を広げること、いろんな意味で地域の経済活性化につなげようということからそういうことをやったことも随分ありました。  そういう感覚からいきますと、例えばその企業で大量解雇があった、じゃ今度それを景気回復によって新たに人を採用するときに制裁措置を加える。御指摘の点も気持ちとしてはわからないわけではありませんけれども景気が常に流動化するわけでありますから、その時々に最低限の倫理性を確立しつつ対応していかなきゃいかぬ、こういうことになっていくかと思うわけであります。  したがって、そこで制裁措置を今直ちにとるかどうかということは、なかなか私も簡単にお答えすることはできないわけでありますが、しかしいずれにいたしましても、その企業がその地域に存在する以上、有形無形でいろんな地域の支えがあってその企業の活動が成り立っているわけでありますから、そういう面でいきますと、例えば景気が悪くなってきた、そのときに安易に解雇するというようなことだけは絶対に避けねばなりませんし、避けるようなことを行政立場で積極的に対応していかなきゃいかぬと、こう実は思うわけです。  また、ある有名な財界の重鎮と言われている人が、かつてそういう問題について論文を発表されたことがございましたけれども、その論文の内容でいきますと、例えば景気が悪くなって企業が苦しくなってきた、そのときにどこまで歯を食いしばって雇用している労働者を守っていくことができるか、あるいは景気がよくなったときにどうやって社会的に還元することができるか、それを常に経営者としては意識の上にしっかりと持っていかないと経営者の資格がないという、そういうことを言われた経済界の重鎮の方もいらっしゃいました。私は、大変にそれは重視すべきことだと考えているわけであります。  したがって、今先生の御指摘のように、その企業社会的責任を果たしていくために行政の側でそれをまたどれだけ援助することができるか、こういう視点に立ってこれからも労働省としては積極的な対応をしていきたい。とりわけ、今産業構造がどんどん転換しているわけでありますから、その産業構造の転換について、それに対応できるような諸施策、こういうものが今一番求められているわけでありますから、新しい年度においてもそのためのいろんな予算措置も講じて対応しょうとしていることを、ぜひひとつ御理解を願っておきたいと思います。
  25. 今泉昭

    今泉昭君 ありがとうございました。時間が来ましたので終わります。
  26. 星野朋市

    ○星野朋市君 平成会の星野でございます。  最近、経済企画庁が景気回復の宣言をしたわけでございますけれども、先ほどもちょっとその点について大臣触れられたと思いますけれども、改めてこの景気回復宣言に対して労働省大臣としてはいかにお感じになっているか、その見解を述べていただきたいと思います。
  27. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今もお答え申し上げたわけでありますけれども景気回復が緩やかながら着実なものになってきた。したがって、来年度は二・五%の経済成長率を見込んでいるわけでありますが、その経済成長率を達成するためには今大変な状況に置かれている失業率というものを、たとえ段階的であってもそれを確実に回復する必要がある。そのために、産業界における構造改革を積極的に実行することによって、持続的な、安定的な内需主導型の経済成長を実現させねばいけない、このように実は考えているわけであります。  そのために雇用の創出を図ることが大事だ、それにはいろんな手だてがあるだろうと。例えば雇用を確保するための施策であるとか、あるいはリストラによって新しい人材を育成するための教育を積極的に行政もかかわって推進していくことであるとか、そういういろんな意味で私どもは着実に経済成長がなし得るようにやっていきたい。  そのために、とりあえず当面目標に置いておりますのは、今の三・四%と言われている失業率を少なくとも二%台の後半、数字で言いますと二カ四分の三と、こう言っているわけでありますが、そういうところに最低限でも失業率を抑え込むような努力をしていきたい。そこで満足するのではなくて、さらにさらに努力をしていくわけでありますが、今の失業率をそこまでは最低限でも平成十二年にはなし遂げるような、そういう施策を講じていきたいと、こう考えているわけでございます。
  28. 星野朋市

    ○星野朋市君 そういうふうにおっしゃられたことは、実は後で質問をしようと思った内容の一部なんですけれども。改めて、私がこの景気回復宣言の所信といいましょうか、所感というものを大臣にお尋ねしたのは、実は幾つかの心配があるからです。  どういうことかといいますと、多分今の公共投資前半で使い切ってしまい、秋以降の公共投資が非常に先細りになるおそれがあるということが一つ。それからもう一つは、ことしの九月に、来年度からの消費税のあり方について決定しなくちゃならないという問題が一つあるわけです。それから、既に日本の長期金利はやや上がりぎみ。どういうことが想定されるかというと、それに伴って円高にまた進むおそれがある。それから、議論になっておりますけれどもアメリカ景気ですね、これが実際にかなり低下したのか、いやまだ相当な力を持っているのか議論が分かれる。  ところが、ヨーロッパはドイツの失業率が一〇%を超えてちょっと問題になっているように、欧米景気自身がかなり雲行きが怪しくなってきているということ。それから、日本自身についていいますと、さっきから問題になっている失業率三・四%、この雇用不安ですね。先ほど同僚議員からもありましたように、多分社内の潜在失業率、そういうものを含めたら実際には五%の失業があるんではないかな。そういう社会を欧米は許しているけれども日本の社会がそれを許すだろうかという問題があります。  そういうことを並べてみますと、五つぐらいの不安がありまして、今は確かに回復はしていると私も実際にそう思います。それで、デパート、大型店の売上高も四十七カ月ぶりに対前年比を上回ったというようないい結果も出ておるわけですけれども、ことしの後半に至って、そういう私が述べたような問題というのが再現されるおそれがあるんじゃないか。  こういうことで、実は大臣見解をお聞きしたわけですけれども、もう一度それについて見解を述べていただきたいと思います。
  29. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 経済政策としてよく政府として申し上げていることは、切れ目のない対応をしていきたいと、こう言っているわけでありまして、公共投資も後半は息切れするんではないかというお話でございますが、昨年も実績で示しておりますように、前半の予算執行の結果、さらに必要があれば途中で補正もやって切れ目のないような対応をしてきたわけであります。したがって、そういうことを全体的に見通した上で来年度の予算編成も行ってきているわけでありますが、前半と後半で著しく変化が起きるようなことのないような対応を政府全体で取り組んでいく必要があろうと、こう思っているわけであります。  なお、産業構造がどんどん転換していくさなかでありますから、産業構造転換に対する対応が的確にできなかったら、今先生の御指摘のようにヨーロッパ型の大変な高失業率になっていくだろう。だからこそ、労働省としてはその産業構造の転換に機敏に対応できるような、そういう雇用政策を全体として進めていこうとしているわけでありまして、そのことを私どもがなし遂げるという決意と、またなし遂げることによって、現在三・四%と言われている失業率が、私どもの目標としております、平成十二年と言っているのでありますが、そのときには二%台の後半に抑え込むことができるように、そういう目標をしっかり立てて、それにそごを来さないような取り組みできちっと対応していきたいと、こういうことでございます。
  30. 星野朋市

    ○星野朋市君 それでは労働省にお聞きしたいんですけれども、宮澤内閣のときに想定した実質三・五%成長という一つの目標がありました。これは、私なんかはその策定がなされたときからそれに批判をしておりまして、既に日本経済全体では三・五%の実質成長率を遂げられるような体制にはなっていない。OECDが日本については潜在成長率は二・五%だと、こういうふうな判断を下しましたり、実質ここのところ何年間というのは一%にも満たないような成長が続いている。  早くこれを変えないとだめじゃないかということで、ようやく昨年の末に構造転換のための経済計画というのが閣議決定された。それも、中間発表があったときは、日本経済成長率は幾らかという数字はなかなか入れられなかったんですね。最後にやむを得ず三%と、やむを得ずというふうに私はあえて言うんですけれども日本には珍しいんです、こういうことはなかなか今まで例がないんです。もし構造変換がなされなければ一・七五、一カ四分の三程度にしか成長しませんよ。それで、そのときに完全失業率は、経済成長率三%の場合、大臣おっしゃったように二・七五%、二カ四分の三、もし経済転換がなされなければそれより一%高い三・七五%になるであろうというのが今度の計画なんですね。  私は、前から幾つかと決めないで三通りぐらいの成長率の仮定をして、こういう場合にはこういう問題が起こりますよ、こういう場合はこういう問題、どれを国民は選択するべきかという、こういう論を持っておって、この持論を展開しておるんですけれども、やや今度はそれに近い形の推定がなされました。  そこで、問題になるのは三%の成長というのを遂げられるのかどうか。経済構造の変換によって、この新しい産業というのはどういうものなのかというのは、この次の質問で申し上げます。それで、現在三・四%という高い失業率があって、なおかつこれが実質的にはもっと高いであろうというのが、大臣おっしゃるような二・七五%で済むのかどうかですね。私は、労働省がかなり勇気を持って言ったことを評価するのですけれども、宮澤内閣が表明していた三・五%実質経済成長率、このときはむしろ労働不足になるだろうというのが一般の見方だった。  ところが、労働省は逆に三%の成長を遂げなければ労働不足どころか労働過剰になるということをいち早く表明した役所なんですね。私はそれはもう非常にそこのところは勇気あると評価したわけですけれども、今私がそういう形で展開している論からいって、果たして三%の実質成長、それで二・七五%の失業、これで済むのかどうか。労働省はどうお考えですか、おっしゃっていただきたい。
  31. 坂本哲也

    政府委員(坂本哲也君) 今後の実質経済成長率がどの程度の水準を確保できるかというお尋ねでございますけれども、その前に先ほどちょっとお話出ました、二〇〇〇年までに実質経済成長率を三%程度確保できないと労働力の需給が非常に緩んでしまうといったようなことを試算いたしましたのは、一昨年、雇用政策研究会で中期雇用ビジョンを策定したときにいろいろ学者の先生方に御検討をお願いした結果であるわけでございます。  今回の経済計画におきましても、私どもとしては、ずっと雇用の観点から最低三%程度の成長というものが必要であろうと。実際に確保できるかどうかというよりも、何としても雇用の安定を確保するためにはいろんな政策手段を動員しながら、そしてこれから予想されるであろう産業構造の変換に対応した産業間、企業間の労働移動、そういったものを見据えながら高失業社会に陥らないような政策手段を工夫して三%成長をぜひ実現しなきゃいかぬというふうに思っております。
  32. 星野朋市

    ○星野朋市君 どうしてもしたいという考えはこれは私もそう思うのはやむを得ないと思いますけれども、実際にはそうはいかないんじゃないか。今までの政策というのはそこら辺でかなり大きな過ちを犯している。実際もっと現実に即した計画を立てないと問題ではないか。今度の計画も、これは労働省の責任ではないんだけれども、三%というのは無理やりにつくった数字じゃないかというふうに私は思っておるわけでございます。  これに関連して後で質問を申し上げますけれども、途中で一回質問内容を変えまして、労働時間の問題についてちょっとお尋ねをいたします。  先ほど今泉委員からも、来年の四月から週四十時間の労働時間の問題が設定されておって、これに対してやや産業界の一部に抵抗感があるということの指摘がございました。私は、去年の秋にもこのことについて、そういうような動きがあるやに聞いておるけれどもどうなんだという質問をして、政府はなかなかそこら辺は答えにくいと思うんで、そういうことはまだございませんという返事をいただいておったわけです。これは、もっと前からそういう動きはあって、そろそろ一年前ということになるとその動きは非常に活発になってきていると思うんです。現実にそういう動きがあるのかどうか、基準局長、お答えをいただきたいと思います。
  33. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 昨年、先生から御指摘がありましたとき私どもは具体的にそういった要望があるということをつかんでおりませんでしたので、そういったお答えを申し上げたわけでございます。その後、具体的には昨年の十一月二十八日でございますけれども日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会という四団体から労働大臣あてに中小企業の労働時間法制に係る要望というのが提出をされました。  その内容は三つございまして、一つは、来年四月からの四十時間の実施ということについて中小企業実態も踏まえてさらにその実施期日を先延べにしてほしいという、猶予措置の延長というふうに言っておられますけれども、そういった要望と、その他二点につきましては特例措置に関する要望でございますが、先生指摘中小企業団体の要望というのは今申し上げたような形で具体的に私どもの方に提出されております。
  34. 星野朋市

    ○星野朋市君 週四十時間という問題とそれから年間労働時間千八百時間という問題ですね。この千八百時間の問題について、私はそっちの方がかなり重要だと思っているんです。ということは、ゆとりのある生活というよりも、労働時間の千八百時間というもので日本の文化そのものもある程度変えなくちゃならないというような思いがあるわけです。  ところが、実際に統計上、現在平均するとたしか千九百九時間ですか、去年逆に五時間延びちゃっているんですね。そういう実態があると思うんですが、いかがでございますか。
  35. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 先生おっしゃいましたように、私どもの毎月の統計調査によりますと、昨年の総労働時間、全労働者の平均でございますけれども規模三十人以上の事業場における総労働時間は千九百九時間というふうになっておりまして、その前の年、平成六年に比べまして五時間の増加というのが統計上把握されている数字でございます。
  36. 星野朋市

    ○星野朋市君 労働基準法の改正のときに議論になりまして、政府側は、まず週休二日それから有給休暇二十日という大前提を出したわけです。我々はそのときにどういう考えを持っていたかというと、週休二日プラスいわゆる日本の休日プラス日本特有のお盆とかお正月のその他の休み、それから有給休暇、実際はそのときたしか十三・八日しか平均でとれていなかった、こういう試算をして、そこで議論が分かれたと思うんですね。  現在、有給休暇の平均的な取得日数は幾日になっていますか。そのときと変わっていますか。
  37. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 恐縮でございますけれども、そのとき議論の対象になったのが何年の数字だったかということはちょっと今承知しておらないんですけれども、現時点の最新の数値で申し上げますと、平成六年でございますけれども労働者平均に付与された日数は十六・九日、そのうち取得された日数は九・一日、取得率で五三・九%という状況になっております。
  38. 星野朋市

    ○星野朋市君 やはり千八百時間を達成するというためには、一日の労働時間をどうするかというよりも休日の数をふやさないとなかなか難しいんですね。  ことしは祭日が一日ふえるわけですよ、海の日です。それから、その後一部に祭日のない月があるから、そこに何かをつけようという考えはあるけれども、実際にはちょっと難しいだろうと思います。有給休暇を前提条件として、二十日なるべくとらせようということでこれは発足しているんですから、有給休暇をいかに完全に消化させるかという、これは労働省指導してしかるべきだと私は思いますけれども、いかがですか。
  39. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 御指摘のように、年間総労働時間千八百時間の達成ということのためには、一つの非常に大きな要素として有給休暇の消化率といいますか取得率を高めるということがあるわけでございます。  これは、労働者が権利として持っている有給休暇を使うか使わないかという問題でございますので、最終的には労働者の方にかかっているところがあるわけでございますが、ある意味では社会全体として、そういう休暇をとってゆとりある生活をするということが労使双方にとっていいことだということについての社会的機運といいますか、そういったことが醸成されることによって、とりやすい、とろう、とる、こういうことになってくるのではないかというふうに思うわけでございます。  私ども、そういう観点からも昨年、ゆとり休暇推進要綱というものもつくりまして、改めてという感じはいたすんですけれども、社会的な機運の醸成、ゆとりある社会の実現のために有給休暇を積極的にとるようにというキャンペーン活動といいますか、ということをやっているわけでございますけれども、具体的には個別の労働者の方がいかに自分の生活をゆとりあるものにし、豊かなものにするために、この休暇を使うかという、最終的にはそこに来てしまうわけでございますが、行政としては、今申し上げたようなことで努力はいたしているわけでございます。
  40. 星野朋市

    ○星野朋市君 時間がございませんので、最後の質問に移らせていただきます。  私は持論として、労働省の政策は、もうそろそろ労働福祉の面からスタンスを雇用の面に移すべきだということを前から申し上げておったんですけれども、今労働省にとって最大の課題は失業なき労働移動だ、こういうふうに私は思っておるわけです。  それで、じゃ実際に失業なき労働移動ということになれば、古い産業それから規制、それから流通、そういうところから余剰人員というものがもっと出てこないと日本経済構造はなかなか変わらない。そこの人間を吸収できる新しい産業は何かということになると、これは例えば労働時報の二月号で、学者、労働省を含めて対談をやっている中に、いわゆる高度情報通信、環境、それから高齢化、この三つで三Kというごろ合わせをしてやっていますけれども、その前にもう一つ、これも去年の秋に、私は青木労働大臣のときに御質問申し上げたんですが、経団連と連合が合作でもって同じような研究をしています。これでは、さらにもう一つ加えて、良質な住宅産業ということをうたっている。  そうすると、今度の構造改革のための経済社会計画の中にも、良質な住宅を従来の三分の二の価格でという目標が入っているんですよ。ただ、そのときも申し上げましたように、高度情報化社会というのはもう少し時間がかかる、それから環境産業というのは何なのか、それから高齢者のための看護、介護、こういうものは財政との絡みでどうなるのか。片方では、もうすぐ出てくるかもしれない失業というのをかなりタイムラグをもって吸収するというような形であったのでは、失業なき労働移動という労働省の方針、これがうまく作用しないんじゃないかと私は思っているわけですけれども労働省はそれに対してどういうお考えで、どういう対策を立てようとなさっているのか、最後に大臣にお聞きしたいと思います。
  41. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から御指摘がありましたように、産業構造を改革していく、転換していく、それに実際どう対応できるかということがこれから最大の課題として問われてくるわけでありますから、そういう面からいきますと、日本の労働人口も高齢化が進んで少子社会になってきている。言いかえれば、若年労働者が不足して中高年齢者がより多くなってきているという中で、産業構造の転換、構造改革に対応できるようにしていかなくてはいけない、こういうことでありますから、そういう中にこの失業なき労働移動ということをきちっと位置づけて、日本がヨーロッパ型の高失業社会になっていかないように、そういうことを考えて私ども今対応しているわけであります。  それが、第八次雇用対策基本計画ということにして、十二月に閣議で御了解いただいて、内外に明らかにしているわけでありますが、今言われたように雇用創出のための環境整備、これが非常に重要だろうと、もちろんその環境整備というのは、施設の関係もあれば人的な環境整備ということも必要であろう、その中には福祉の問題ももちろん入ってまいります。そういうことをやりながら、業種雇用安定法などを機動的に運用していく、労働力の需給調整機能を強化する、こういうことをきちっと対応していきたい、このように考えているわけでありまして、そういうことを総合的に進めることによって、今先生の御指摘になっているような、これからの日本産業界の発展ということと失業なき労働移動ということが実現できる、こう私は確信をしているわけでありまして、そのために、いろんな御批判もあろうかと思いますが、できる限り労働界産業界の御要望を聞きながら対応していきたい。  二月の二十一日にも、そういう視点から、雇用対策本部の会合を開きまして経営者のトップ、労働界のトップからも御意見を伺ったわけであります。そこで貴重な御意見をいただいたものでありますから、その貴重な御意見を踏まえてこれからの施策の中に生かしていきたいと、こう思っております。
  42. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  43. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、御質問をさせていただきます。  雇用状況を見てみますと、有効求人倍率や完全失業率などから見まして非常に厳しい状況にあります。とりわけ新規大学卒の女性に対する就職は超氷河期とも言われまして、大卒で六七・一、短大で六五・四というのが一九九五年度の問題だということになります。  女性の場合、もう結婚は逃げ道とはなり得ない時代になりまして、大学進学率は女性が既に男性を上回り、今まで男性が多い学部に女性の進出も増加しつつあります。そしてまた、使用者側の意識も女性を幹部として処遇したいというアンケート結果が出ているにもかかわらず、新規学卒者等の問題というのは非常に深刻な状況を示していると思います。  婦人少年室では特別相談窓口を設置されておりますが、平成七年度における相談件数と内容、その中で雇用機会均等法違反というのはどのくらいあるのでしょうか。また、違反に対する指導、助言、勧告の状況はどうなっているか、お尋ねしたいと思います。
  44. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 女子学生の就職問題への対応のため、今先生おっしゃいましたように、都道府県にございます婦人少年室に女子学生の就職相談に関する特別相談窓口を開設いたしております。平成七年度の場合は六月から十月まででございますが、その間に九千八十九件の相談が寄せられました。そのうち、男女雇用機会均等法及び指針に規定する事項に関するものが七千八百三十五件あったわけでございます。  その主な内容といたしましては、例えば四年制大卒の女性は採用しないと言われたなど、女性であることを理由として応募の機会が与えられていない場合とか、それから資料請求をしたけれども女性には送られてこなかったなど、募集または採用に係る情報提供が男性に比べて不利に取り扱われるもの、それから男女別に募集または採用する人数の制限を設けたり、女性の場合は自宅通勤者に限るなど、女性に厳しい募集・採用条件が付されているものなどがございます。
  45. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした状況の中で、企業に対する集団指導などを行うというようなことを従前言われておったと思うんですが、そういった集団指導体制は現実に行われているのかどうか。また、平成六年三月十一日に、「事業主が講ずるように努めるべき措置についての指針」において就職等における男女別枠などの状況の改善などが行われておりますが、これは指導上効果を上げているのでしょうか。
  46. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 最初の御質問でございます集団指導でございますけれども、女子学生が男性と比べて不利に取り扱われることのないように、求人活動開始前の五月、六月と企業に対する集団指導を全国的に集中的に実施しておりまして、均等法及びその指針の周知徹底に努めているところでございます。  それから、改正されました指針につきましては、やはり性にとらわれず、意欲と能力に応じた形で採用を行うという機会の均等という考え方に沿った形での改正でございますが、これも企業に対しまして、均等法の趣旨の徹底を図る中で改正された指針についての理解が進むよう指導するとしておりまして、少しずつではございますけれども、改正指針に沿った改善が図られてきているというふうに認識をしておるところでございます。
  47. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 女子学生の就職差別問題に関して、面接におけるセクシュアルハラスメントが社会問題となっております。  セクシュアルハラスメントに関しては女子雇用管理とコミュニケーションギャップという形での啓発パンフレットがあるということを承知しておりますが、さらに一歩進めて、その予防と救済措置についてどのように考えておられるのか。とりわけ、女子学生からは面接の際のガイドラインを設定してほしいという要望などが寄せられていると思います。また、均等法の改正等について、このセクシュアルハラスメントはどのように位置づけられようとしているのかお尋ねいたします。
  48. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 面接のときにいろいろとセクハラまがいのことを聞かれたというような事案であって、先ほど申しました特別相談窓口に女子学生が来まして企業名がわかった場合などは、企業指導させていただいているところでございます。労働省といたしましては、求職活動を行う女子学生の人権が尊重され、学生たちの意欲を損なうことがないよう、今後とも必要な指導に努めてまいりたいというふうに思っております。  それから、婦人少年問題審議会での議論でございますが、始まったばかりでございまして、まだそういうセクハラ等についての御議論には至ってはおりません。
  49. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 これまでの企業の新規採用というのは、高度経済成長と豊富な若年労働者の大規模採用ということ、そしてそれが終身雇用制という慣行の中で四月に一括して採用するということがこれまでのルールのようでございました。  しかし、大学等で既に女子の進学率も向上いたしまして各分野において女子の進出も顕著でありますことから、さらにまた高齢者の雇用、さらに失業なき労働移動というようなことを実現するためにも、いわゆる四月の一括採用主義というものを見直す必要があるのではないかということで、第八次雇用対策基本計画の中にも時に応じた採用というようなことをうたっておられますが、これに対して労働省はどのような形でこれを見直し、新しいシステムの構築について御検討中なのか、大臣にお尋ねしたいと思います。
  50. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘でございますが、新卒者の採用時期については一義的には企業の判断によるものだと考えております。しかし、御指摘のように四月の一括採用のみならず四月以外にも採用を行う企業が出てきていることは十分承知をしているところであります。  こうしたことにつきましては、未就職卒業者の就職応募機会、こういうものが拡大されるではないかという御意見がある一方、多くの新卒者が学校を三月に卒業するという現状のもとで、四月に就職する機会が総体的に減少して未就職卒業者が増大することを懸念するという御指摘もございます。  したがって、私といたしましては、昨年の秋に設置されました大学等新卒者就職問題懇談会、こういうのがございますが、この場において、採用の時期を含めて採用のあり方全般について社会的な議論を深めていくことが必要であると考えているわけであります。今後とも、そういうさまざまな方々の御意見もお聞きしながら研究を進めてまいりたいと考えております。
  51. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 第八次雇用対策基本計画が策定されましたが、その中には企業行政労働者自身が三位一体となって労働力の付加価値を高めていく、そして技能と専門性を持つ労働力へとシフトしていくというプロセスが描かれております。  確かに、高度経済成長あるいはある程度の経済成長を前提といたしましたときには、雇用調整助成金の活用でいわば失業を防止していくということは効果を上げてきたかもしれないわけですが、労働移動の一面といたしまして、我が国では性別あるいは年齢に対する偏見を取っ払った職業訓練計画あるいは職業教育といったもののシステムが構築されていかなければ、失業なき労働移動も雇用の安定も労働条件を切り下げないための雇用の安定という意味では実現できないと思うわけです。  この職業教育訓練システムの構築というものは、ある意味では非常に根本的、ダイナミックな我が国における壮大な実験として、すべての労働者に対してそれが行われるということが新しい二十一世紀の我が国雇用を開くものだと私は考えるわけです。そのためには、教育有給休暇制度とか高度な職業訓練の施設やシステムというものが不可欠であるというふうに思いますが、これは具体的にどのような施策として検討中なのか、お尋ねをしたいと思います。
  52. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先生指摘のように、我が国の現在の厳しい雇用情勢の中で、この能力開発の面から機動的に対応して、できるだけ円滑な労働移動や再就職の促進、そういった面も非常に大事でございまして努めておりますが、これから先我が国経済社会産業構造変化を初めいろんな変化を乗り越えて、活力ある新しい経済社会をつくっていかなければならない、そういうときにあるというふうに考えております。  そういった新しい経済社会を支えるための基盤の一つとして人材の育成という問題、昨年十二月の新経済計画、また第八次雇用対策基本計画においても、そういった観点から職業能力の開発を含む人材の育成を非常に大事な政策課題として位置づけたところでございます。  先生指摘のように、そういった考え方に基づいてこれから展開していく際に、一つ産業構造が変わる、そういった中で出てまいります労働移動等が失業のない形で円滑に行われますように、移動の前後におきます能力開発、これについて積極的な支援をしていこうということで昨年不況業種法を改正いたしまして、その前後における能力開発を支援する仕組みを新しく取り入れ、その期間も昨年秋さらに延長して充実させたところでございます。また、これからさらに我が国産業、特に対外的な経済環境を見ますと一層の高付加価値化や新しい事業分野へ展開していかなくてはならない面が確かに強うございます。  したがいまして、そういった問題を抱えた中小企業等を中心に、直接公共の能力開発施設が事業主の方々と相談して、そういった具体的に事業を展開している方々のニーズに合った職業訓練計画を一緒につくり、そして公共の施設が最新の設備や何かを整えて実施してあげる。それで、そういうところへ参加する事業主に対しては賃金を含め助成していく、そういう形で中小企業等の新しい事業分野への展開や高付加価値化を支援することによりまして、そういったところでの雇用の安定、さらには雇用の吸収力を高めていこう、こういったことも積極的に取り入れて展開しておるところでございます。  それから、何といいましてもこれから大きい柱になりますのは、先生からも御指摘がございましたように、一人一人が職業生涯の節目で自分の能力を高めて、とりわけ産業活動、経済活動が高度化する中で高い専門性が要求され、事業主、企業側もそういった実力主義的な評価の傾向を高めておりますので、そういった中で安定した雇用、能力の発揮をしていくためにみずから主体的に能力開発を行う、そういったことも進めてまいりたい。そのために文部省と連携をとって、いろんな教育機会を体系的に整備し情報を提供する。また、そういった際の個人個人への費用等を含めた支援策を具体的に検討して、早晩実施していきたいというようなことも含めまして考えております。  そういったことを雇用対策基本計画、さらには去る十六日に閣議報告いたしました職業能力開発基本計画に織り込みまして、私どもこれからの重要な政策課題として受けとめて展開を図っていきたいと思っております。
  53. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうした職業訓練計画について、二つの点で気がついたことといいますか、要望があるんですが、まず一つは職業訓練のカリキュラムを組むときに、性に対する偏見、例えば女性の感受性とか、あるいは女性的な仕事に固定したような訓練計画に女性を参加させるのではなくて、むしろ非伝統的な分野における女性の能力の開発というようなプログラムに積極的に女性を組み入れていってほしいということ。  もう一つは、年齢差別といいますか年齢に対する偏見で、老人は雑役のような、例えば今さまざまな紹介事業の中でありますようないわば三Kに近いような職業ではなくて、まさに年齢にこだわらず高齢者もまた能力の開発というものが十分あり得るんだという視点に立って高齢者の能力開発という視点もやはり組み入れていってほしいと思います。  それからまた、国内の労働市場だけを視野に入れるのではなくて、これからは国際的な労働市場への進出ということも頭に入れた職業訓練計画というふうに進んでいっていただきたいと思うんですが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  54. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) まず最初に、御指摘のございました性にとらわれないカリキュラム、訓練科目の編成についてでございますが、確かに御指摘のように、私ども全国に公共訓練施設を配置しながら職業訓練を展開しておるわけでございますが、例えば職業能力開発短期大学校、こういった女性の中でもほぼ全員就職に近い形をことしも実現しておるわけでございますが、そういった中で苦労する科目を見ますと、例えばビジネスマネジメント関係とか、割合女性の方が多く入る職種ほど、実際問題出た後の就職になかなか苦労している面も確かにございます。  そういったことから、女性の方が私ども公共の施設にも大分入ってきていただけるようになりましたので、そういった方々の希望等につきましては十分聞きながら、またこれからの再就職をにらんだ場合の相談等も十分いたしながら、その方が受ける訓練の内容やカリキュラムというものを、十分再就職に適したものを選べるような相談を展開しながら実施をしてまいりたいというふうに思っております。  また、年齢に関しての問題でございますが、これも御指摘のとおりでございまして、やはり目下の情勢の中で年齢の高い方ほど再就職が難しい面がございます。私ども公共職業訓練施設におきましても、高年齢者向けの特別のカリキュラム、コースを設定して対応をいたしておりますが、再就職をにらんだ場合それだけでは不十分だという場合には、さらに事業主の団体あるいは各種学校等に委託して機動的に高齢者の方の職業訓練を実施いたしております。特に現在は、昨年の秋、今まで五十五歳以上の方についてそういった委託訓練等を実施しておりました事業を四十五歳に下げまして、そういった施策の機動的な活用に努めておるところでございます。  また、外国もにらんだ職業訓練の展開という御指摘でございますが、確かに私ども職業訓練を通じまして、あるいはそこへ外国の方々の研修生の受け入れ、あるいは技能実習による実習生の受け入れ、そういったことによりまして我が国の持つ高い技術や技能が確実に途上国等に移転されて、その国々の発展につながっていくこと、そういった意味での国際貢献というものは非常に大事だというふうに考えております。  外国人の職業面の研修、実習等についてはかねてより推進をいたしてきているところでございますが、特に技能実習制度につきましては平成五年から新たに開始をいたしております。実績は着実に伸びてきておりますが、こういった経済情勢を反映いたしまして、まだ私ども当初のねらいどおりの水準までは至っていない面も確かにございますので、そういったこともにらみながら、来年度早々総合的な実態調査を行いまして、事業主の方々がこういった実習生や研修生を受け入れるに当たってどんな問題を抱えているか、十分私ども見きわめながら、より的確な事業の推進ができるように工夫をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  55. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 確かに外国人労働者の活用ということも大事ですが、私が申し上げましたのは、日本人であっても、これからは国際労働市場への進出ということを視野に入れて職業訓練、教育をして世界へ出ていくということも必要になるのではないか、こういう趣旨でありまして、したがって、日本人の職業訓練も国内市場だけに目を向けているのではなくて、そういう形の、言ってみれば生き残り作戦といいますか、そういったことが必要になるのではないか、こういうことでございます。  大臣、この職業訓練と教育についてどのような所信をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  56. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生が御指摘になりましたように、海外から研修生を受け入れて教育することも大事。どんどん海外進出が図られているときでございますから、そこに日本の技術者が現地で十分能力を発揮できるようなことを職業教育としても、今問題になっている国際語、これの教育についても積極的に対応していかなきゃいかぬということで、労働省としても幕張にOVTAがございますが、ああいう非常に高度な施設を持っているわけでありますから、そういうものも最大限活用しながら企業の皆さんの海外進出のための教育にお役に立っていきたい、このように考えているわけであります。  なお、外国人研修生の受け入れの問題について今局長からお答えいたしましたけれども、なかなか当初の目標どおりいっていないという御指摘も片方いただいておりますが、もしも事業主の皆さんが受け入れについて障害となるというふうに思っていらっしゃる面があるとするならば、それの克服のための手だても実態調査しながら対応していきたい、このことも考えておりますのでつけ加えておきたいと思います。
  57. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 我が国は人的資源こそ二十一世紀を切り抜けていく力だというふうに考えますので、そのように述べさせていただきました。  その中で、高齢化社会、少子社会というものに対して資源として最も活用されるべきは女性の労働力であるというふうに考えます。不況の中で、均等法はバブルではなかったかというような形でさえ、その法律の力のなさというものが働く女性の中でささやかれ始めておりまして、雇用機会均等法の改正という問題が浮上しております。婦人少年問題審議会でも既に具体的な討議が始まっているわけですが、この均等法七条というもの、これは募集、採用に係るものですが、これが努力義務となっておりますが、これをさらに強力に見直していくという方針はあるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  58. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生おっしゃいました均等法第七条は募集、採用に係る部分でございまして、先生指摘のとおり、「事業主は、労働者の募集及び採用について、女子に対して男子と均等な機会を与えるように努めなければならない。」という努力規定になっているわけでございます。  ただ現在、男女雇用機会均等法のあり方につきましては、労働基準法の女子保護規定の見直し等をあわせまして、御指摘のとおり婦人少年問題審議会で御審議をいただいているところでございます。この第七条に係る問題につきましても、この婦人少年問題審議会の中で御議論が今後されるものでありますので、私どもといたしましては、その結果を踏まえて対応していきたいというふうに考えております。
  59. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひ均等法七条を効果あるものに改正していただきまして、企業名の公表など組み入れていただきたいというふうに思います。  さらに、自主点検制度というものがございまして、いわば企業の中における男女平等の状況というものの報告制度ができております。また、男女雇用機会均等問題研究会の報告も、男女平等推進措置としてそれは望ましいシステムとして議論をされておりますが、こうした平等推進計画というものは、やはり男性中心のそれも壮年中心企業の中で、企業のノーマライゼーションといいますか、生きやすい企業社会をつくるためにも私は非常に必要なものだと思いますし、それがまた日本社会の活力を支えると思うわけですが、そうした平等推進措置というものを今後どのようにして日本社会に取り入れていくかということについて、労働省の御見解はいかがでしょうか。
  60. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生指摘の自主点検事業といいますのは、百人以上の事業所に対しまして機会均等推進責任者というものを選んでいただきまして、その方々に均等法及び指針に沿って、いわゆる募集、採用から定年、退職に至るまで各企業雇用管理が均等法にのっとった形で行われているかどうかというものを自主点検表によってチェックをしていただくというシステムでございます。これによりまして、各企業の中での女性活用の実情を確認いたしていきたい、そしてまた、もし均等法に照らして問題がある場合は直していっていただきたいというような形でやっているものでございます。  ただ、これだけではやはり決して十分とは言えないかと思いまして、女性の能力を一層促進し発揮していくためにはより一層積極的な措置が求められるのではないかというふうに考えておるところでございます。  このため、労働省といたしましては、平成八年度におきまして、企業において参考とすべき女性の能力発揮のための積極的措置のガイドラインというようなものを策定していきたいと。そして、企業における自主的取り組みをさらに促進をしていっていただくことによって女子労働者雇用管理の改善に資していきたいというふうに考えておるところでございます。
  61. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 企業に向けてのガイドラインというお話でございましたが、やはりガイドラインと申しますと行政指導一つの指針というようなことにもなるわけですが、男女の平等推進措置として日本の土壌に合った平等計画というものをぜひとも法律の中に組み入れていっていただくということはなかなか難しいのですか。そういう御検討はありませんでしょうか。
  62. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生の御指摘は重く受けとめたいと思いますが、先生からそういうふうな御指摘があったということも今後は婦人少年問題審議会等にも御報告をさせていただきたいというふうに思っております。
  63. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、第八次雇用対策基本計画によりますと、「労働基準法上の母性保護を除く女子保護規定については、労働時間を始めとした労働条件や就業と家庭生活との両立のための条件整備の状況などを勘案しつつ、今後解消する方向に向け具体的な検討を行う。」というふうに書いてありますが、現在具体的な検討が審議会で始まっているわけですが、労働省としては労働条件とか条件整備について、既に達成したと考えられるのか、あるいはまだどこが未達成だと考えられるか、そのような考え方はどのようにお持ちでしょうか。
  64. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 第八次雇用対策基本計画において、今先生がお挙げになりましたところの条件整備の状況と申しますのは、企業における育児介護休業制度の普及状況、それから育児のための勤務時間短縮措置の実施状況、保育所等の整備状況等をいうものでございまして、今後これらの普及に努めていきたいというふうに思っております。
  65. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 労働時間を初めとした労働条件というのは、どのようなものとして考えていらっしゃるでしょうか。
  66. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 労働時間短縮の問題はまた基準局の方でやっておりますが、育児・介護休業法の方にも勤務時間短縮措置をつくるようにというような措置もございますので、そういうような点についても企業指導を積極的にしていきたいというふうに思っておるところでございます。
  67. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、労働条件条件整備の状況というのは、解消する方向に向けて具体的な検討を行うときに、もう成熟しつつあるというふうにお考えなんでしょうか。
  68. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) これまでも条件整備をいろいろやっておりますが、この方向で続けていきたいというふうに思っております。
  69. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 介護休業制度の実効性を担保するために、介護手当の支給については検討を始められておりますか。
  70. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 昨年、介護休業制度を法律を審議しました際に、当時の労働委員会で御質問がございまして、当時浜本労働大臣でございましたけれども、浜本労働大臣が、その法律を施行する際に、法律は施行されているんですが、義務化させる場合、三年後ということになりますが、その時点までに検討して対処したいと、このように答弁をされております経過がございます。  したがって、私どもとしては、先生の御指摘のことはおおむね理解できますので、そのことを念頭に置いて具体的な実施までの間にさらに検討を加えていきたい、こう思います。
  71. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 女子保護規定の改廃に関しまして、一九八五年に雇用機会均等法が成立いたしましたときには、この女子保護規定の改廃につきましては、男女平等を実現するためより高い水準の確立に向けて組みかえていくというようなことを当時の赤松局長が言われていたと思いますが、現在もその男女共通のより高い水準への組みかえという考え方というのは労働省の中では維持をされており、またあるいは検討されておられるのでしょうか。
  72. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 先生が御指摘の文言は、昭和五十九年に取りまとめられました現行の男女雇用機会均等法のときの婦人少年問題審議会の建議の中にあるものかと思います。その建議におきましては、長期的な展望といたしましては「原則として、企業の募集、採用から定年・退職・解雇に至る雇用管理における男女差別的取扱いを撤廃し、労働基準法の女子保護規定は母性保護規定を除き解消することが求められる」というふうにされておるところでございます。  この点につきましては、さきの婦人少年問題審議会におきましても、労使ともにこれについては基本的合意は、コンセンサスはあるという点では一致をしておるところでございます。
  73. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 改廃をいたしまして男性の労働基準に女性を合わせていくということではなくて、むしろ女性の基準にも男性を合わせていくという、両々相まって男女平等のより高い水準の確立を目指すということでなければ、本当に人間らしい労働条件は実現しないと思うわけです。  具体的にお尋ねいたしますのは、例えば深夜業について、深夜業の緩和ないしは廃止が起きた場合には、ILO百七十一号の夜業条約の批准といったようなものを視野に入れて、夜業に関して男女共通の規制を図っていくというような方向とか、あるいは時間外労働の場合にも最長時間外労働の規制をするとか、そういった具体的な改正についての検討はなされているのでしょうか、いないのでしょうか。大臣にお尋ねをいたします。
  74. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 現在、婦人少年問題審議会におきます議論の過程では、まだそういう具体的な議論まで行っておりませんで、これからそういう議論がなされるものというふうに思っておるところでございます。
  75. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、そのILO百七十一号条約の批准について、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  76. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ILO百七十一号条約についてでございますが、国内法制との整合上、今直ちに批准するという段階に至っておりません。したがって、これらについては十分検討する課題が多うございますので、多角的に検討を加えていきたい、このように考えています。
  77. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、大臣に最後にお尋ねをいたしたいんですが、均等法改正のあり方についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。  とりわけ、均等法が十年たちまして、調停の開始が一件だということとか、あるいはコース別雇用、既婚者差別で調停が開始しなかったということを理由に女性の方から迅速な救済を受ける権利を侵害されたという慰謝料請求事件として国家賠償請求が行われているような時代になっておりまして、ぜひ大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  78. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 御指摘のように、この機会均等法を施行するに当たりまして、当時の審議の経過を私自身も今思い出しているわけでありますが、これを強制法にすべきだとか、あるいはそうではなくて現状に合わせて努力義務でいいではないかとか、大変な議論があったことを当時審議に携わってきた一人として今思い起こしているわけであります。いずれにいたしましても、均等法の趣旨を徹底して有効な成果を上げなくてはいけない、こういうことの立場に立って今私どもも取り組んでいるところであります。  均等法が施行されましてもう既に十年を経ておりますから、募集、採用から定年、退職、解雇に至る女子の雇用管理の変化状況を踏まえて、女性がその意欲と能力に応じて持てる力を十分に発揮できるようにしていかなくてはいけない。その指導をするための、あるいは対応していくための責任を私どもは重大に受けとめているわけであります。  なお、今先生が御指摘になりましたように、そういう具体的な事例もございます。そういう事例が今後起きてこないような対応というものを今の均等法の中でもきちっと対応できるように、最善の努力をするとともに、今審議会で御検討いただいておりますので、そういう問題も含めて審議会で十分議論をしていただいて、その議論の結果出されました建議を受けて労働省といたしましては具体的な対応を図っていきたい、このように考えておるところであります。
  79. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 男女雇用機会均等問題研究会の報告を見ますと、これは均等法は性差別禁止法として雇用の全ステージの差別を効果的に規制できるような法の仕組みへというような報告もされておりますので、ぜひその作業に期待をしたいと思います。二十一世紀の男女雇用平等法にふさわしい、国際的な批判にたえる均等法改正へぜひ力を合わせたいというふうに思っているものでございます。  それでは、まだ少し時間がございますので、短時間労働者雇用管理の改善等に関する法律、いわゆるパート労働法についてお尋ねをいたしたいと思います。  短時間労働者雇用管理の改善等に関する法律のいわゆる指針に関しまして、通常の典型的パートではないいわゆる疑似パートに関連しては、「通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。」というふうに書かれていますが、これに基づいた行政指導というのはどのようになされているのでしょうか、またどのような効果があったのか、お尋ねをしたいと思います。
  80. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) いわゆる疑似パートは、所定労働時間が正社員とほぼ同じであるにもかかわらず正社員と異なる処遇が行われている者を指すものでございまして、先生指摘のとおり、指針で「通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。」としているところでございます。労働省といたしましてはこの指針の周知徹底をあらゆる機会を通じて図っているという状況でございます。
  81. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 具体的に個別の企業に対して、どのような形で周知徹底を図られているのでしょうか。
  82. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 21世紀職業財団にパートに対する相談員がございますので、その相談員が個別企業を訪問していろいろとパートの状況等についてお聞きをしているというような状況もございますし、また集団的にパート旬間等を利用してこういうものがあるということを周知も図っているような状況でございます。
  83. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、この疑似パートの数というのは現在ふえているのでしょうか、あるいは減っているのでしょうか。あるいは疑似パートがその形を変えているということがあるのでしょうか。あるいは相変わらず疑似パートで差別は是正されることなく来ているというふうに解釈したらいいんですか。どのような状況にあるのでしょうか。調査などはまだ具体的にされていないんでしょうか。
  84. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) いわゆる疑似パートにつきましては、正確な数字というものは手元にございませんが、平成二年にパートタイム労働者総合実態調査というのをやっておりまして、そこから推計した数字といたしまして、平成二年でございますが、約百二十万くらいがいるというふうに推計されております。パート労働者全体がその後もふえておりますので、多分疑似パートもふえているのではないかというふうに推計はされますが、特別な調査というものはない状況でございます。
  85. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 平成二年度からかなりの年数もたちましたので、その間そうした日本的なパートタイム労働者の特徴とされる疑似パート問題に関してもぜひ実態調査を入れていただきまして、その改善あるいは具体的な問題点など御調査いただきたいということを要望したいと思います。  それにつきまして、この法律ができましたときに、附則の第二条に三年後にさまざまな状況の中で見直すというふうに書かれておりまして、それは本年六月で三年ということであります。どのような作業が考えられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  86. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生から今御指摘がありましたように、三年後の見直しということは、当時の審議の過程でいろんな議論の末、そういう附則を入れたことは御承知のとおりであります。  このパートタイム労働法平成五年十二月一日から施行されておりますので、六月ではなくて十二月一日でございますから、本年十二月に三年を迎えるわけであります。したがって、この法律規定の施行状況を勘案しながら、今先生が御指摘になった疑似パートの問題など、いろんな問題がございます、そういう問題も含めて実情を調査もいたしますが、そういうものを見ながら必要な措置を講じて見直しの作業に当たっていきたい。  具体的には、本年の秋にそれらを取りまとめる予定のパートタイム労働者総合実態調査というのを実施いたしますので、その結果を結果的には踏まえる、こういうことになりますが、それを踏まえて三年後の見直しということに合うように検討を進めてまいりたい、このように思います。
  87. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ILOでは百七十五号条約としてパート労働者の条約が策定をされておりまして、そこでは絶対的な均等処遇を行う分野、例えば母性保護とか団体交渉等、そのほかには比例的な均等処遇を求める条項として賃金その他労働時間に比例して平等処遇をするようにという条約が策定されましたが、我が国においてはその条約の批准ということに関しては労働省の方はどのようなお考えでしょうか。
  88. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) ILOの第百七十五号条約は労働条件などの面で、先生今おっしゃいましたように、パートタイム労働者がフルタイム労働者に与えられる保護と同一または同等の保護を受けることを確保するための措置等について規定しているものでございます。  我が国では、パートタイム労働法等によりましてパートタイム労働者の保護について各種の措置は講じているところでございますけれども、このILO百七十五号条約の批准につきましては、国内法制との整合性等々の観点からさらに慎重に検討をする必要があるというふうに考えておるものでございます。
  89. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 パート労働法の三年後の見直しと関連いたしまして、ぜひこのILO百七十五号条約の批准に関しても政治的な一つの課題と申しますか、検討課題に組み込んでいただきたいと思います。  最後にちょっと細かいのですが、第八次雇用対策基本計画について、「女性の労働市場への参加の障害となるような制度については見直しが必要であるという観点からも、社会制度の在り方について検討を進める。」というふうに書いておられますが、これは具体的に何をイメージされているのでしょうか。二十三ページであります。
  90. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) これは実は、今パートの話が話題になったのでありますが、パートタイム労働者の中には収入が例えば百三万円等、一定額を超えないよう就業調整を行う方がおられるわけでございまして、これは現在の税制とか社会保障制度のもとで、やはり有配偶女性労働者がその能力を十分に発揮していない状況につながっているのではないかと思うわけでございます。  このような問題は、平成五年七月の婦人少年問題審議会の建議におきましても、「妻の就労を取り巻く税制、社会保障といった社会制度の枠組みや企業賃金制度が、妻は家庭内にとどまり、夫に扶養されるのが通常であった制定当時の社会状況背景として作られていることにより生じている」というふうに指摘されているところでございます。  女性の生涯におきまして、職業生活の比重が非常に高まってきておりまして、家庭だけでなく職場においても能力を発揮することを希望する女性が増加しております。また、女性を今後社会の基幹労働力として位置づける必要性ということはますます増大していくと思います。そういう観点から現行の社会制度等の枠組みの見直しの検討が求められているのではないかということで、第八次雇用対策基本計画におきましても、このような趣旨で盛り込んだというものでございます。
  91. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひその点の検討は始めていただきたいと思います。  女性の中でも、百三万円の壁というものに囲われて働く働き方についてみずから問題だという意見も既に多く出始めておりますし、この税制こそ、さまざまな賃金制度と絡んで、女性の賃金を総体として下に沈めているシステムだと思います。御期待を申し上げております。  終わります。
  92. 足立良平

    委員長足立良平君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時三十分開会
  93. 足立良平

    委員長足立良平君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  94. 南野知惠子

    南野知惠子君 自民党の南野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  永井労働大臣、御就任おめでとうございます。本日は持ち時間がたくさんございますので、ゆっくり実りあるお答えをいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  私は、前政務次官といたしまして、青木労働大臣とお呼びしたいんです、青木大臣とともに労働省におきましていろいろと学ばせていただきました。この間に得られました貴重な体験はこれから先の、あとどのくらいあるかわかりませんが、私の人生に十分活用させていただきたいとありがたく感謝いたしております。  労働省は、他の省庁と異なりまして課長、部長、局長に女性が起用されております。さらに、副知事、公使、大臣等々にも広がりを見せております。女性の活躍が目覚ましい省であるということは皆様御承知だろうと思っておりますが、まさしく男女共同参画型社会の発信地であると思われます。また、労働省内の方々人々に対する仕事が中心でしょうか、対人関係というものにポイントを当てておられると思いますが、そういった意味からも人に優しい心ある省、人を大切にし人の痛みのわかる省との印象を持ちました。  永井労働大臣の御印象はいかがでしょうか、お伺いいたします。
  95. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) つい先日まで労働政務次官をお務めいただきました南野先生でございますから、お答えするまでもなく先生が御体験されていることと思いますが、一言で言って私は労働省ほどすばらしい行政官庁はないとさえ思っているんです。ちょっとこれは思い過ごしたと言われる方もあろうかと思いますが、心底そう思っています。  振り返ってみますと、昭和二十二年九月の発足以来、雇用とか労働問題のみならず、今先生が御指摘になりましたように婦人問題、女性問題についても所管する官庁として、婦人の地位、婦人という言葉はもう直さなければいけませんけれども、婦人の地位向上その他婦人問題の調査及び連絡調整という役割を担ってきたわけです。この間、戦後民主化の重要な要素でありました婦人参政権についてもその普及定着のための啓発に力を入れてきましたことは御承知のとおりであります。  こうした労働省の生い立ちゃ任務を反映して、労働省はこれまでも他の省庁にぬきんでて女性の社会参加、あるいは社会的役割への認識は高かったし、またこれを担う幹部職員にも多くの女性が登用されてきています。他の省庁と比べて労働省出身の、今先生が御指摘になりましたように、大臣になられた方もいらっしゃいますし、大使をされた方もいらっしゃいますし、あるいは副知事をされた方もいらっしゃいますし、そういう面では他の省庁よりも早く女性の登用ということを実践してきた省庁でございますから、私は幹部職員にもそういう意味で非常に意気軒高たるものがあるというふうに実は思っているわけであります。  また、男女共同参画社会ということが国の内外で言われていますが、その実現のために労働省の果たすべき役割、重要性はますます大きなものがあると私は認識をいたしております。また、職員も十分認識してくれていると思っています。  この社会を支えているのは額に汗を流して働く労働者であり、労働者雇用の安定と労働条件向上に果たすべき労働省の役割はもちろん言わずもがな重要なことでありまして、いずれにいたしましても、労働省の職員はさまざまな制約の中でその任務と役割を十分認識をしつつこれまで業務に精励してきてもらった、このように思いますし、これからも人に優しい役所を心がけてその職務を遂行していってくれると期待をいたしているわけであります。  また、ちょっと余談になりますが、勝手につくった私の座右の銘で、政治家になってもう十数年これを使ってきたわけでありますが、私は人の喜びは我が喜びという言葉を使ってきました。まさに労働行政はそのことに尽きるのではないかというふうに思いますので、私自身もそのことを心がけて、他の行政官庁よりもよりすばらしい行政官庁でありたい、こう願っています。
  96. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。大臣の座右の銘としておられる人の喜びは我が喜び、私もそれにあやかりたいと思っております。  私の背景といたしますところが看護職でございます。また、労働と関連いたしましても、すべての人が生まれたら必ず労働をする、これはもうどうしようもございません、これは決まりでございますので。そういう意味では労働省はすべての人の関心事であると思いますし、私どもが属しております看護の世界、すべての人は助産婦の手によって生まれると思いますので、看護婦、保健婦、助産婦、そのいわゆる看護労働につきましても多大なる御関心をお示しいただきたいというふうに思っております。そういうことで大臣のお心は十分今理解させていただきました。.  次に、質問させていただきたいのでございますが、先般、永井労働大臣の所信表明をお伺いいたしました。働く人々が安心して生活していくために、また最近の景気回復の足取りを確実にするという観点からも、雇用の安定の確保が極めて重要であると考えております。最近の雇用失業情勢につきましてどのように御認識しておられるのでしょうか、また今後の雇用対策の推進につきましてどのように取り組もうとしておられますのか、大臣の御決意もあわせてお伺いしたいと思っております。
  97. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生も今御指摘になりましたけれども、大変この雇用の問題は厳しい状況にあると認識いたしております。  昨年も十一月、十二月段階は完全失業率が三・四%ということでございますから、求人は若干上向きになってきておりますが、失業率の方は横ばい状態に置かれているわけであります。これは昭和二十八年以降いわゆる比較できるレンジでいきますと最悪の記録ということになりますので、これ以上失業率が高まっていかないように、そのことを最低限のものとして三%以下に抑え込んでいくような施策をとっていきたい、こう考えているわけであります。そうした現状に対応するために新総合的雇用対策の効果的な実施をということが求められているわけでありますが、これにすべてをかけて頑張っていきたい、こう決意いたしております。  具体的に申し上げますと、改正業種雇用安定法に基づきまして、特定雇用調整業種の労働者を受け入れた事業主に対しまして賃金助成なども行うことにいたしておりまして、失業なき労働移動をそういう立場からも支援していきたい。  また、二つ目には、昨年成立させていただきました改正中小企業労働力確保法という法律がございますが、これに基づきまして中小企業の活力を生かした雇用機会の創出ということを積極的に進めていきたいと思うわけであります。また、この関係についても必要な助成措置も講じることにしているわけであります。  また、人材の育成という面で、いわゆる高付加価値化、新分野展開、こういうものを担う人材を育成するための教育、こういうものを大変重視しているわけでありまして、そういう人たちを雇い入れた企業に対しましてもそれぞれ助成措置を行うことにしておりまして、労働省の持つ雇用関係助成措置の幅は非常に広がってきているわけであります。これをさらに拡充していきたいと思います。  また、残念ながら新卒者の就職状況が極めて悪いわけでございまして、徐々に数字は上がってきておりますが、まだまだ低い数字にとどめおかれております。したがって、学生職業センター、学生職業相談室における新卒者への就職支援というものを行ってまいりたいし、現在六カ所しか設置されていないそういうセンターを全国の都道府県に全部これを設置するということにして、そこに重点を置いて学卒者の皆さんの就職相談、あっせんなどにも応じていきたい、こう考えているわけであります。  また、産業構造転換・雇用対策本部というのがございますが、これを二月二十一日に官邸で開催をいたしまして、初めての試みでありますが労使のトップに参加していただいて、全閣僚出席のもとに御意見を伺いました。非常に貴重な御意見をいただきましたので、それらを十分に私ども参酌をしながら、これからの対策を政府一丸となって進めていきたいと考えているわけであります。  なお、求人倍率は若干よくなっていると私申し上げましたけれども、昨年十一月段階までで見ますと〇・六三という数字でございますが、現在の段階、最終的にはまだ発表されておりませんけれども、少しまた上向きの傾向が出てきておりますので、さらに求人倍率が上がっていくようなことも私たちの対策が総合的に進められれば必ず私は可能性があると、そのことによって景気回復もより順調にいくのではないかというふうに期待を持っているわけであります。
  98. 南野知惠子

    南野知惠子君 力強い御決意をいただきました。それに引き続きまして、景気回復も御予言なさいましたので、それが本当になりますことを祈っております。  次は、人件費ども含めながら、生産拠点の海外移転、そういったことが気になっている今日でございます。製品輸入の増加などを背景とした産業構造の転換が見込まれることから、こうした構造的な問題をも踏まえて雇用対策に当たっていくべきではないかと思っておりますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
  99. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の点でございますが、現下の厳しい雇用情勢の背景には、御指摘のように、景気循環的な問題のほかに、生産拠点の海外移転あるいは製品輸入の増加など構造的な問題があるものと考えております。こうした構造的な問題に適切に対処しなければ、今後我が国もヨーロッパのような高失業社会に陥ることが大変心配でございます。  このため、労働省といたしましては、この中長期的な課題に対応した雇用政策の方向、これを示しました第八次雇用対策基本計画を昨年十二月に閣議決定いたしたところでございます。この計画を踏まえまして、失業なき労働移動の支援、あるいは中小企業の活力を生かした雇用機会の創出などから成る新総合的雇用対策を、ただいま大臣お答え申し上げましたように、積極的に展開しておるところでございますが、今後とも、我が国が高失業社会にならないように総力を挙げて取り組んでまいりたいというように考えております。
  100. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  次の質問でございますが、人材育成ということは、これはどこの国でも関心事でございます。今後の経済社会の発展の基盤というものを形成する上では特に重要な課題であるというふうに考えております。  労働省におかれましては、先般、今後五カ年の職業能力開発の方向性を示す第六次職業能力開発基本計画を策定されたということでございますが、その計画を実施し、さらに労働者の職業能力開発を推進していくに当たっての御決意を大臣お願いいたします。
  101. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から人材育成の重要性を御指摘いただきました。  我が国経済社会は、現在技術革新、国際化の進展などに伴って産業構造変化等に実は直面をしているわけであります。この構造改革を進めて新しい経済社会を支えるための基盤として、人材育成はその面では極めて重要な課題だと私は認識をいたしております。だからこそでありますが、昨年十二月に閣議決定されました新経済計画におきましても、職業能力開発を初めとした人材の育成は非常に重要な問題であるというふうに位置づけをされているわけであります。  こうしたことから、労働省といたしましては、高付加価値化、新分野展開を担う人材育成、ホワイトカラーの職業能力開発システムの整備、これは今錦糸町にその建屋を新築中で来年の四月から稼働することになっておりますけれども、さらに個人主導の職業能力開発の推進、人づくりを通じた国際社会への貢献などを内容とする第六次職業能力開発基本計画を策定いたしまして、去る十六日に閣議で御報告して御了解をいただいたところであります。  労働省といたしましては、今後この計画を的確に実施をしていきたい、そして来るべき二十一世紀に向けて、あらゆる労働者がその職業生涯のすべての期間においてこの計画が目指します、各人の個性を生かしつつ経済社会変化に的確な対応を図る職業能力開発の実現が図られますように、全力を尽くしてまいる決意であります。
  102. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  大変すてきな決意でございまして、実は女性の就職難ということとも関連いたしますけれども、やはりOLのブランド志向というようなものはもう古い、これから先は自分の専門性というものを身につけながらもっと前に進んでいき、困難な社会を乗り切るべきではないかというような御意見も聞かれる今日ではございます。  そういう産業構造変化の中で、仕事の内容が高度で複雑なものとなってきておるのが昨今でございますが、今後は独創的な商品を企画化する能力、または人事や財務などの分野での高度で専門的な能力をも身につけていくことが必要となってくると思われます。一方、労働者の意識といたしましても、科学技術の進歩また国際化の進展、それらに対応すべく、みずからが主体的に能力を開発しようという方向に変わってきております。  こうしたことから、これからは企業による教育訓練だけではなく、労働者みずからが行う能力開発ということが重要であると考えますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。
  103. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、我が国産業構造変化が進んでおります。それに伴いまして、職務内容も非常に高度化、専門化をいたしております。一方、勤労者の方も職業を通じて自己実現をしたいといった要求が高まっているわけでございます。一方、企業の方から見ましても、個人個人の能力を非常に重視していく、そういった傾向が強まっているわけでございまして、そういった中で、個々の勤労者一人一人がやはり自己の能力を機会をとらえて磨いて発揮していく、そういったことがこれから非常に重要になってくるんではないかというふうに私どもも考えているところでございます。  こうした考えから、昨年、有識者の方々に集まっていただきますこの問題についての会議を設けておりまして、そこから個人が主体的に進める能力開発につきまして、そういった能力開発の機会を文部省とも連携をとりながら整えてそういう情報を提供していくこと、また、そういった教育訓練の機会をとらえて学習する勤労者方々に支援をしていく体制を整えること等を織り込みました提言、その中では、行政はもとより労使に対しても一定の取り組みが提言をされているわけでございます。私どもそういった提言を受けまして、その考え方を先ほど御指摘のありました第六次の職業能力開発基本計画に織り込みまして、そこに盛られた施策の具体化を今後急いでやってまいりたいというふうに考えているところでございます。  したがいまして、今後、有給教育訓練休暇を付与した企業等に対する助成、今までも行ってまいりましたが、そういったものをさらに普及させ、その他個人個人への直接の支援策等も新たに検討をし、内容を充実した形で施策を推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  104. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  そこで、能力開発ということにつきましては、例えばどのような方向で、またどのような項目についてリードしていこうとしておられるのか、どういうメニューを示していこうとしておられるのか、お示しいただきたいと思うんです。
  105. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) これは一人一人の勤労者方々が学習を主体的にしていく場合、いろんな広範な分野が考えられるかと思いますが、昨年十二月に策定されました新経済計画、ここで求められている人材像が一つの参考になるかと思います。  それはやはり基本的には、これから非常に自由度が高まっていく中で個人個人が自立した考え方を持つ、そういった人材であることを基本としながら、やはり一つは高度化していく情報通信、これらを処理していける、そういったものへの対応能力を備えた人材。それから、一層国際化してまいります、そういったことがビジネスの面でも同様でございまして、そういった国際的な交流対応能力を備えた人材。それから、やはり産業の高度化に伴いまして、また我が国産業日本でなければできないような高付加価値化や新分野への展開を迫られておりますので、そういった方向をにらんで非常に進取の気持ちに富んだ独創性のある人材を育てる。  こういったことが経済計画にも求められておりまして、そういった方向をにらみながら広範な分野の学習機会を、文部省とも連携をとりつつ整えてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  106. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  御答弁にもございましたが、我が国が国際社会においていわゆる先進国としての貢献を行っていくということに当たりましては、特に各国の発展基盤をなす人づくりというものが一番重要であると思っております。特に、アジア太平洋地域におきましては、NGO活動なども本当に活発に行われておりますし、また昨年大阪でございましたAPEC、そういった会議におきましても人材育成が大きな課題とされてまいりました。  これらに対して労働行政としては、今お答えいただいたように思いますが、さらに追加してお答えいただくことがございましたら、大臣に御意見をいただきたいというふうに思っております。
  107. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 諸外国との相互依存関係ということが非常に大事な状態でございまして、国際社会における我が国の役割を積極的に果たしていくためには、開発途上国の経済社会開発に対して援助すること、これは非常に重要だと思うんです。その基礎である人づくり、今先生が御指摘になっていらっしゃいますが、この人づくりに寄与する技術協力というのは最も重視されるべき分野だと考えています。  このため労働省では、海外における職業能力開発施設の設置などに対する協力、また技能実習制度等の外国人研修生の受け入れの適正かつ円滑な推進、また民間企業が海外において行う職業訓練に対する援助などを実施しているところであります。  さらに、APECの問題が出ましたけれども、APECに対しましては労働省といたしましても、APEC大阪会議において採択されました大阪行動指針というのがございますが、これを具体化するために、ことしの十月、APEC人材養成シンポジウムを開催することにいたしております。そのほか、APECの地域内に立地する日本企業が現地の人々に対して貢献できる、そこを非常に重視しているわけでありますが、貢献できる職業訓練を行う場合には、財政的な支援も含めて援助することにいたしているわけであります。  今後とも、こういう職業能力開発分野におきましては、国際協力を積極的に進めるという立場で取り組んでまいりたいと思っております。
  108. 南野知惠子

    南野知惠子君 大変うれしいお言葉をお聞きいたしました。  実は私も、NGOの活動をいたしておりまして、そういった観点からベトナムに大変興味を持っております。そのベトナムにおきまして、彼女らの自発的な行動の中で助産婦協会をつくりたいというような申し出がございまして、それについて我々も援助をさせていただきました。そのおかげで、ベトナムでは助産婦協会を発足させることができました。日本の大使を初め多くの方々からもごあいさつをいただいたりしましたけれども、それが一年たちまして、自分たちの力でまた総会を開くことができましたと。彼女らの希望としましては、やはり婦人の問題いわゆる女性の問題、助産婦でございますから、家族計画、人口の問題、そういったものも含めまして、今度は病院をつくりたいというような意向を持っております。  病院をつくることによって、健康管理、家族計画、また人口問題とさらに深く広がっていき、女性の自立というところに持っていけると思いますので、そういったものも視野に入れながら私たちも援助していきたいというふうに思っておりますが、そういったことについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思っております。
  109. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 非常に貴重な御提言でございまして、女性の自立というのは当然言われるまでもなくやらなくてはいけない、当然そこの視点に立って行政を進めていかなきゃいかぬというふうに私は実は考えているわけであります。  NGOの活動につきましても、私も随分以前からNGOに関係したことがございますが、非政府組織でありますだけに行政で扱えないような問題まで幅広くNGOは扱ってくれているわけです。これは世界的に高く評価されておりますから、そういうNGOが行っていろいろんな行動計画、こういうものについてもできるだけ私たちは多くの関心を持ちまして、十分に日本政府として対応できる、こういうことを推進する一つの役割を労働省としても積極的に持っていきたい、こう考えております。
  110. 南野知惠子

    南野知惠子君 大変ありがとうございました。  我が国企業の海外進出が進んでいるやに聞いております。各国の労働事情などそれぞれに異なっておると思いますが、海外進出企業に対する情報の提供はもとより、これから海外に派遣される社員、そういう方々に対する教育訓練を国としても支援していくべきというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  111. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、企業活動は非常に国際化が進んでおります。そういった中で、海外での産業活動、生産活動に必要な労働者を現地で育成をしなければなりません。そういった方の育成に当たる教育訓練の指導者の養成なり交流、そういったことを初め我が国労働者の国際化に対応した職業能力の開発ということが大きな課題になっているというふうに私ども認識をいたしております。  このため、私ども、民間企業が行う我が国労働者の国際化に対応した能力開発を援助するために、これは千葉の幕張でございますが、大規模な教育訓練施設であります海外職業訓練協力センターを設置いたしまして、そこを通じまして海外において職業訓練等の教育訓練に当たる企業内の職業訓練指導者の養成またはその交流等も実施いたしております。また、そういった方あるいは海外へ派遣される社員の方々に対しまして、海外において用いる訓練用の教材あるいは訓練技法の開発等々の提供、あるいは現地の国々におきます産業経済やそういった教育等も含めました職業訓練にまつわりますいろんな情報、こういうものの収集、提供を行っております。  そのほか、初めて海外へ進出をなさる企業等に対しては、いろんな相談、援助の業務を展開しておりまして、今後ともこういった施策を一層充実させるように、適正に実施しながら、国際化に対応した職業能力の開発に積極的に対応していきたいというふうに考えております。
  112. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  次は、最近の景気の冷え込みということで、大変つらい思いをしているんでございますが、それらが大きく影響しているのではないかというふうに思われることの一つに、学校を卒業しましても仕事につくことができない、いわゆる失業の状況に追いやられてしまうということがあってはいけないというふうに思っております。  そこで、お伺いいたしたいのですけれども、新規学卒者の就職決定の状況についてはどのように認識しておられるのでしょうか。また、学生の就職先の確保等について、先ほど大臣からも学生職業センターということが出されておりましたが、学生職業相談室または女性のためのレディス・ハローワーク、私も視察させていただきましたが、大変明るくどんどん人が寄ってくる、そういった環境は大変必要なことだろうと思っております。そういう活性化がされているというふうに私も存じ上げておりますが、今後さらにどのような対策をとっていかれるおつもりでおられるのか、お伺いしたいと思っております。
  113. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 今春卒業予定の学生の就職内定状況でございますが、十二月末現在におきまして、大学で八一・七%、短期大学では五六・五%、専修学校では七八・四%と、専修学校におきましては前年より上回っているわけでございますが、それ以外につきましては昨年同期を下回っておりまして、女子学生を初め新卒者の就職状況は極めて厳しいというふうに考えております。  多分、一月末現在の数字につきましては、これよりなお数字がよくなると思いますが、もうしばらくいたしましてまとめる予定でございます。  このため、新卒者が三月の卒業までに何とか就職が決まるように最大限の努力をしなければならないということでございまして、昨年来労働大臣あるいは文部大臣と数回にわたりまして事業主団体の方々に新卒者の採用枠の拡大についてお願いをしてきたところでございますが、去る二十一日に開催いたしました産業労働懇話会におきましても、永井労働大臣から改めて事業主団体に要請を行ったところでございます。  また、第一線の公共職業安定機関におきましても求人開拓に全力を挙げますとともに、公共職業安定所あるいは大学等を通じました求人一覧表の提供、あるいは全国各地におきます就職面接会などの対策を昨年以上に回数をふやし強化しながら就職支援を行っているところでございます。また、御指摘ございましたように、学生職業センターのほかに学生職業相談室、全国各県に設置いたしまして、きめ細かな職業相談、職業紹介等を進めているところでございます。  今後とも、なお三月末までの間最大限の対策をとってまいりたいと思いますが、三月初旬には大卒等新卒者を対象といたします本年度三回目の求人一覧表の提供を行うなど、引き続き就職支援に最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  114. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。いろいろなことを試みながら、就職ということについての御努力をしておられるということに敬意を表します。さらに、その結果が四月に全員就職できたよというようなことであれば、本当にうれしいなというふうにも思ったりいたしております。  さて、均等法が施行されまして十年となりました。いろいろな分野に活躍する女性はふえてきておりますけれども、やはり昨年の厳しい雇用失業情勢のもとでは、新規女子卒業者を初めとして女性が男性に比べて不利に取り扱われる事案など、均等法上問題あるものと同じ事案が見られておるということにつきましては、大臣が所信でお述べになられたとおりであると考えております。職場におきます男女の機会均等を一層推進するためには、労働省としてはどのような対策を講じようとしておられるのか、また十年たちました男女雇用機会均等法の見直しということについても、大臣のお考えをお伺いいたしたいと思っております。
  115. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 労働省といたしましては、職場における男女の機会均等を一層推進するために今全力を尽くしているところでありますが、経営者の側もこの機会均等法の趣旨というものについては、十分に理解をしてきてくれているわけです。理解をしてくれていることと、それが具体的に実践されているかどうかに大きな乖離が実はあるのが事実でございまして、だからこそ均等法の定着に全国の婦人少年室を通じまして啓蒙を一生懸命やっているというのが今の実態であります。また、指導もいたしております。  また、女子学生対策につきましては、就職活動におきまして女子学生が、今御指摘にありましたように男子学生に比べて非常に不利に取り扱われることがあると、これはもう随分と御指摘をいただいているわけでありまして、均等法の周知徹底に努めるとともに、その女子学生からの相談や実態把握に基づいて企業に対する指導もさらに強めてまいりたい、このように考えているわけであります。  また、均等法の趣旨の徹底のための有効な方策ということにつきましては、労働基準法の女子保護規定のあり方とあわせまして、現在婦人少年問題審議会で御検討いただいておりまして、その御審議の結果を私どもは尊重いたしましてその対応を進めてまいりたいと考えているわけであります。また、この均等法は施行後十年を経過いたしまして、募集、採用から定年、退職、解雇に至る女性の雇用管理の変化を踏まえまして、女性がその意欲と能力に応じてその持てる力を十分に発揮できますように、そういう社会を目指していくことが労働行政にとって極めて重要な課題だと、こう考えています。いずれにいたしましても、審議会において十分に議論をしていただきまして、その結果を踏まえて対処してまいります。  ただ一つ、ちょっと余談になることでありますが、最前も安定局長から御答弁申し上げましたけれども、女性の学卒者を含めまして新卒者の採用を一人でもたくさんということで、私の知る限りでは今全国の職業安定所、ハローワーク、本当に涙ぐましい努力をしてくれておりまして、先日も新聞を見てうれしくなったことがございました。最近新聞は政治のことについて余りいいことは書いてくれないんでありますが、先日朝日新聞の記事で、政府を批判するばかりじゃなくて、いいことやったときは思い切り褒めようではないかと。その褒めようではないかということの具体的な例として、国技館を借り切って職業安定所の皆さんがいろんなイベントを計画して、当初入場を予定しておりました人よりもはるかに多い方々が来て非常に盛り上がった、これはすばらしい企画であると。こんなことをなぜ褒めないのかといって、そういうことで朝日新聞が書いてくれておりましたけれども、非常にうれしかった。そういう努力を今全国で展開しております。  もう一つは、私の持論でありますが、大卒者よりも専修学校の卒業生の就職率が極めて高くなってきているわけです。だから、大学の教育のあり方、短大の教育のあり方も含めて、先日ちょっと文部大臣に私見として申し上げたんですが、産業構造が転換していくという、改革されていくという、その時代にマッチしたような教育内容を積極的に取り入れてほしいと。それが必ず新卒者の採用につながっていくと私は思うということを文部大臣にはちょっと御提言申し上げたんですが、そういう思いを持ちながら今進めているところであります。
  116. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。特に、最後にお聞きしました新聞などの状況も、勇気を出せ、そして褒めていこう、そういったものを、実際を見ていわゆるPRしてもらう、マスメディアもそういった実際をとらえていっていただきたいものというふうに思っております。  また、男女機会均等というような中では、消防ポンプ機関士なども誕生いたしておりますし、また警視の方、またパイロットの方、いろいろな方が男女同じような形で誕生していっていることについてもやはり労働省として御奨励していただき、続く後輩たちにも勇気づけていただきたいものというふうにも思っております。そういうアイデアがどんどん生活の中に取り込まれていくことによって、我々の生活が活性化していくというふうにも思っております。  職業は夢をはぐくむものとも思われておりますし、さらにまた夢をはぐくむのは教育にあるというふうにも思っております。大臣も仰せになられました。仕事の中でもいろいろないじめということにもぶつかるのではないかと思いますが、文部関係の問題で申し上げますならば、養教についてもいわゆるすてきな労働者といいますか、教育の柱になっていただきたいとも思いますし、また今検討されている司書教諭ということにつきましても、いじめをなくす発信地としての子供たちのオアシスというものを持っていくならば、その図書館からもっといいアイデアの職業を考えていくというようなことも教育の場で展開されるのではないかなと思っております。可能な限り大人が視野を広げて子供たちを育て、二十一世紀の職業というものを考えていきたいというふうにも思っております。  引き続きまして、昨年開催されました北京におきます第四回世界女性会議の行動綱領を踏まえまして、労働省としましてはどのような女性対策を講じようとしておられるのか、お伺いいたします。
  117. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 昨年九月の北京会議におきまして採択されました行動綱領におきましては、教育、健康、経済といった十二の重大問題領域を掲げておりまして、各分野について女性の地位向上のためにとるべき措置が掲げられ、我が国においても今後積極的に取り組む課題が盛り込まれているというふうに考えております。  労働省といたしましても、この行動綱領を踏まえまして、今後も積極的に女性の能力発揮を可能にする環境を整備するため、まず第一として男女雇用機会均等確保対策を推進し、職業生活と家庭生活との両立支援対策をも推進し、さらにパートタイム労働対策の推進に努めてまいりたいというふうに思っております。また、平成八年度におきましては、新たに行動綱領にも規定されておりますが、起業を希望する女性を支援するため調査研究を実施し、必要な施策の検討を行いたいというふうに考えております。  さらに、女性労働者の能力発揮を一層促進していくためにはより積極的な措置が求められるという観点から、企業において参考とすべきガイドラインを作成し、企業における雇用管理に自主的に取り組み、促進していただくための改善を図りたいというふうに考えておるところでございます。
  118. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。我々女性としても大いに頑張っていかなければならないと思っております。  つい先日も、マニラでアジア地域のそういった大きな大会がございました。その中でも、いろいろな女性問題、人口問題、食糧問題まで含めましてアジア地域のことをかんがみ、マニラ宣言というものを出したところでございます。そういったことでも大いに労働関係と連携を持ちながらいい社会をつくっていきたいというふうにも思っております。  次は、高齢化の問題でございます。高齢化、核家族化などが進む中で、労働者が生涯を通じて充実した職業生活を営むためには、育児や家族の介護、それと仕事との両立が極めて重要であろうかと思っております。労働省方々が大変上手にそこら辺の調和をとっておられますことを敬服いたしておりますけれども、特に昨年法制化された介護休業制度につきましては、平成十一年の義務づけを待たずに早期に導入されるということが重要と考えております。さらに、労働省におきます介護休業制度の早期導入ということも大臣は仰せになっておられますので、そういう取り組み状況についてお伺いしたいと思っております。
  119. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 介護休業制度は、先生指摘のように、平成十一年四月一日から事業主に義務づけられることになっておるわけでございますけれども労働省といたしましては、個々の事業所にできるだけ早く法に沿った介護休業制度が導入されるよう、指導、援助に今全力で取り組んでいるところでございます。  具体的に申しますと、事業主とか労働者を対象とした集団説明会を開催いたしておりまして、法の趣旨、内容の広報啓発をしておりましたり、それから事業所訪問、電話相談などあらゆる機会を通じまして事業主等に対する個別相談、指導をも行っております。また、介護休業制度を導入した事業主に対しましては、介護休業制度導入奨励金が支給されますので、この導入奨励金も積極的に使っていただくようPRにも努めております。  さらに、中小企業集団において集団ぐるみで介護休業制度の円滑な導入を進めていくために、計画的な取り組みを行う場合は、これを支援いたします中小企業集団における仕事と介護両立支援事業という支援もいたしておりますが、これらについてもPRをさせていただいておるところでございます。おかげさまで、婦人少年室長の方から聞きますと各企業の関心はかなり高いようでございます。  また、平成八年度からは、介護休業制度の早期導入をより促進してもらうために、介護休業制度導入奨励金の充実も図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
  120. 南野知惠子

    南野知惠子君 それともう一つあるんですけれども、育児・介護休業のことに関連しまして、「財形で所得補助」というようなことが新聞にも出されております。これは質問お願いしていたわけではございませんけれども労働省の方針として「来年から最高七万円」というようなこともけさの新聞に出たりいたしております。いいお話をお伺いしたいと思っておりますので、そこを少し御説明いただけたらと思っております。
  121. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省で今国会に財形貯蓄法の改正案を御提案をしているところでございますが、財形貯蓄には利子の非課税の制度がございます年金と住宅貯蓄がございますが、そのほかにも利子非課税の特典のない一般財形貯蓄というものがあるわけでございます。これもやはり財形貯蓄として大きな柱だというふうに思っておりまして、勤労者が計画的に財産形成をする大きな手段だというふうに思っています。  今般の改正案は、この一般財形貯蓄を使いまして、育児・介護、そういったことに勤労者がまとまった大きな支出が必要であるというときに、事業主がこの勤労者に対して助成をするといった制度を設けたときに、国としても一定の、さっきお話しのあったような一定の助成をしよう、こういったことを内容とするものでございまして、勤労者の計画的な財産形成を支援しながら、人生の節目節目の大きな支出にも一定の援助をしていきたい、こういったことを趣旨としてお願いしようというものでございます。
  122. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  財形貯蓄の利用ということにつきましては、特に現在少子社会であるというところからもやはり若い世代の人たちに、育児休業をしているというところでは利用しやすい方法をおとりいただけた、幅を広げていただけたということは、大変ユーザーにとったはいい方向ではないかなというふうに思っております。今御説明いただきましたので、いろいろ聞いて安心する人たちも多いのではないかというふうにも思っております。  引き続きまして、次の質問でございますけれども我が国におきましては急速に高齢化が進展しております。今少子化のことを申しましたが、さらに高齢化が進展しており、二十一世紀の初頭におきましては労働力人口の約四人に一人が五十五歳以上となる超高齢社会が到来すると見込まれております。  このような超高齢社会におきまして、我が国経済の活力を維持していくためには、高齢者の雇用、または就職機会というものを確保していくことが、ある一面では重要な課題であろうというふうにも思いますが、高齢者の雇用問題についてどのようにお取り組みされるのか、お伺いいたします。
  123. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御指摘のように、今後高齢者の雇用就業機会を確保することは極めて重要な課題であるというふうに考えております。急速な高齢化の進展が予想されるわけでございまして、これに対応するために二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働けるような社会の枠組みづくり、これが重要課題であるというふうに考えておるところでございます。  このため、労働省といたしましては、六十歳定年制を基盤として六十五歳までの継続雇用を推進するため、本年度、昨年四月から発足いたしましたが、雇用保険におきまして高年齢雇用継続給付の支給を始めておりますが、その他各種の支援措置を講じてまいりたいと考えております。  また、多様な形態による雇用就業機会の確保という観点から、労働者派遣事業につきましても特例措置を講じておりますが、特に今後はシルバー人材センター事業の発展拡充を図っていくことが重要であるというふうに考えておりまして、今国会におきまして都道府県単位のシルバー人材センター連合を創設すること等によりまして、希望する方がだれでも参加できるような、そんな枠組みを内容といたします高年齢者雇用安定法の改正法案を今国会に提出し、審議をお願いしているところでございます。  今後とも、これらの諸施策を講ずることによりまして、高齢者の雇用就業機会の確保に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  124. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。  次は、労働省と厚生省の両省にお伺いしたいと思います。  厚生省の老人保健福祉審議会におきまして、公的介護保険制度の導入が検討されております。必要な介護マンパワーの確保が重要であるということは十分考えておるわけでございますが、その重要な一翼を担っている人たち、家政婦、ホームヘルパー、アテンドサービスをする方々等の活動について、労働省、さらに厚生省はどのように連携をとって、そしてそれを検討し、図っていこうとしておられるのか、お聞きいたします。
  125. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 人口の高齢化の進展等によりまして、高齢者に対する介護サービスの需要は増大しておりまして、御指摘のように今後公的介護保険が導入されれば、在宅介護分野におきます介護ニーズ、これは相当増大するものと予想されるところでございます。  労働省におきましては、現在、介護労働者雇用管理の改善等に関する法律に基づきまして、シルバーサービス事業者に対する雇用管理改善事業の実施、家政婦に対する職業講習や公共職業能力開発施設の介護関連訓練科の充実、福祉重点ハローワークによります介護に従事できる方々の登録、あるいは登録した方に対する情報提供等の実施、在宅介護分野への家政婦活用の支援等の施策を講ずることによりまして、介護マンパワーの確保対策を推進しておるところでございます。  今後は、家政婦、介護アテンドサービス士などの民間部門におきます介護マンパワーにつきましても、公的介護保険制度導入に伴い一層の活用が重要になるものと考えておりまして、厚生省との間の家政婦対策等連絡調整会議等の場も活用いたしまして、厚生省とも一層密接に連携を図りながらこれらの民間部門の介護マンパワーの活用を進めてまいりたいと考えております。
  126. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) 先生指摘のように、高齢者介護制度の充実という上で人材確保は大変重要なことだということでございまして、既に平成四年に福祉人材確保法あるいは看護婦等人材確保法の法案を通していただきまして、それに基づきまして養成力の強化あるいは就労の促進あるいは処遇の充実等、各般にわたる総合的なマンパワー対策を推進しているところでございます。  それから、一昨年末に新ゴールドプランが策定されたわけでございますけれども、そこでも例えばホームヘルパーの整備目標数を決め、そしてその目標数を決めるだけではなくて、人材確保というのを介護基盤整備の重要な柱にするというようなことでマンパワー確保に努めているところでございます。  これから介護保険導入ということを考えますと、その担い手は相当数を確保しなきゃいけないということになっていくわけでありますけれども、その場合には、サービスの質を確保する上でのかなめとなります介護福祉士の養成ということはもちろんやらなきゃいけないわけですが、それと同時に、家事従事者あるいはほかの職種からの転職者など非常に介護の仕事に関心を持つ方々がたくさんいらっしゃいますから、そういう方々の意欲が生きるような施策というのを講じてまいりたいというふうに考えております。  それから、先ほど先生の方からも御指摘がありました連携ということでございますけれども、例えば先ほど労働省局長からもお話ございましたように、家政婦問題については連絡調整会議を設けていると。あるいは労働省の所管の法人でございます介護労働安定センターというのがあるわけですが、ここでの家政婦さんの講習、これをホームヘルパーの二級の講習ということで指定をするというようなことなどを通じまして、いろんな形で連携を図っているところでございますけれども先生の今御指摘もありましたように、今後もいろんな形で労働省とは相談しながら物事を進めていきたいというふうに考えております。
  127. 南野知惠子

    南野知惠子君 労働省とそれから厚生省が本当にお話し合いをされて、そしてうまくマンパワーを活用していただくということが私にとっては大きな念願でございます。  いろいろな職種がございますけれども、これはこちら用、これはこちら用ということではなく、その両者がともにユーザーに対して価値ある人材であるべきであるというふうに思いますし、そういう活用を両省ともぜひ連携をとりながらしていっていただきたい、これは本当にお願いしたいことでございます。今お言葉をお聞きしまして大変安心いたしました。そういう調整会議の中でとられましたことをまたうんと下の方まで流していっていただきたいというふうにも思っております。  次は、厚生省の方にお伺いしたいのでございますけれども、先ほども出されました介護福祉士の件でございます。  これは、国家試験の受験資格ということにつきましては介護業務などの実務経験を有する者というふうになっており、特別養護老人ホームの寮母などとされております。また、老人保健施設におきましては介護などの業務の経験は受験資格として認められておるところでございます。たしか経験三年だったかというふうに思いますが、それに比べて医療と介護を提供する特例許可老人病院の看護補助者には、同じようなケアが展開されていると思うんですけれども、この人たちは受験資格を認定されていないわけでございますので、そこら辺について、同じような業務をしている人たちなので、やはり資格者として国家試験の受験資格を認定するべきではないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  128. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) 介護福祉士試験の受験資格でございますけれども先生今お話ございましたように、三年間の実務経験がありますと受験資格を持てるということでございますが、この三年間の実務経験というのは一定の施設での実務経験ということに限られております。  そして、今お話ございましたように、特別養護老人ホームの寮母さんとか老人保健施設の介護職員につきましては、介護業務を行うということが施設基準などで明確に位置づけられているということで今まで対象にしてきたと。一方で、老人病院や療養型病床群の看護補助者につきましては、介護業務を行うか否か、必ずしも法令上明確に位置づけられてもいないということもありますし、それから従事している業務の内容が非常にさまざまであるということでございますので、これまでは受験資格を認めてこなかったということでございます。これはこれまでの考えということでございます。昨年、行政監察の結果に基づきまして勧告をいただいたということもございまして、私どもは、これは先生の御指摘を踏まえて検討すべき事項であるというふうに認識しております。  今後どうするかということでございますが、老人病院などの看護補助者の業務の実態というものをよく把握した上で、介護業務に従事していると認められるものにつきましては、御指摘の趣旨を踏まえて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  129. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひそのことを前向きに御検討いただきたいと思っております。  そういう小さな病院、また特別な老人病院におきましては、三年間たっても資格が得られないんだったらやめていくという方々が出てきている。そういうことについて、経営者ともども看護部長も大変悩んでおりますので、そういうマンパワーも、なれた方々の定着ということもこれ試みたいことだというふうに思いますので、前向きにお願いしたいと思いますが、本当に前向きにしていただけるか、もう一度御決意をいただきたいと思います。
  130. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) ただいま申し上げましたように、御指摘の趣旨を踏まえて前向きに検討してまいりたいと思います。
  131. 南野知惠子

    南野知惠子君 余り申し上げるとしつこいようでございますが、これはただ病院経営者だけでなく、ユーザーが希望しているということでもあり、働き手も希望していることであるというふうに思いますので、ぜひ御検討いただきたい。いつまでということの、何かめどがございますでしょうか。
  132. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) 今、何月何日までというのはちょっとはっきり申し上げるわけにはまいりませんけれども、私としてもできるだけ早く何らかの結論を得たいというふうに考えております。
  133. 南野知惠子

    南野知惠子君 行政監察からの勧告が出ているということについては、それはいつまでにけりをつけるという意味のものではございませんのでしょうか。
  134. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) 特段いつまでにということはございませんが、やはり勧告を受けたものにつきましては、どうするのかということについては誠実に対応するということで我々は考えております。
  135. 南野知惠子

    南野知惠子君 常識的にはどのくらいの範囲なんでしょうか。
  136. 柴田雅人

    説明員(柴田雅人君) 大変恐縮ですが、できるだけ早くということを申し上げたいと思います。
  137. 南野知惠子

    南野知惠子君 わかりました。きょうはそのくらいにさせていただきたいと思っております。  さらにもう一つございます。また厚生省にお伺いいたしたいことでございますが、昨年の八月の保健医療・福祉に係る人材確保対策に関する行政監察結果、それに基づく勧告というものが出されていると思います。これには、都道府県ナースセンターの支所に無料職業紹介事業の許可を与えることについて、そういったことと、さらにナースセンターの現況ということについて厚生省はどのようにお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
  138. 久常節子

    説明員(久常節子君) 都道府県ナースセンターは、看護職員確保対策の拠点として就業の促進を図っておりますけれども平成六年度では、都道府県ナースセンターが実施している無料職業紹介事業によりまして年間約一万九千人の看護職員の再就業を図っております。今後とも、都道府県ナースセンターの事業の充実を図ってまいりたいと思います。  議員御指摘の都道府県ナースセンターの支所に無料職業紹介事業の許可を与えることに関しましては、行政監察結果に基づく勧告を踏まえまして、今後労働省と相談してまいりたいと思っております。
  139. 南野知惠子

    南野知惠子君 厚生省にさらにお伺いしたいと思います。  最近、社団法人東京都看護協会からナースセンター事業について東京都の区東部地域に新たに一カ所の無料職業紹介事業の許可の要望が労働大臣へ出されております。この動きを厚生省は御存じでしょうか。また、これに対してどうお考えになっておられますでしょうか、お伺いいたします。
  140. 久常節子

    説明員(久常節子君) 本件につきましては、平成八年二月十四日付で東京都衛生局医療計画部長から厚生省健政局看護課長あてに御連絡いただいておりますので承知しております。  東京都ナースセンター事業の実施者であります東京都としましては、区の東部地域における無料職業紹介事業というのは求人施設数あるいは求職者数から必要かつ重要と考えているところでありまして、厚生省といたしましては、東京都からの連絡を踏まえまして今後労働省と相談してまいりたいと思っております。
  141. 南野知惠子

    南野知惠子君 ぜひ御検討をお願いしたいと思っているところでございますけれども、本当に御検討をお願いいたしたいのは労働大臣でございますので、よろしくお願いいたします。  今、厚生省にお尋ねさせていただきましたが、総務庁から出されました行政監察結果に基づく勧告を踏まえまして、既に労働大臣あてに出されております、ナースセンター事業につきまして東京都の区東部地域に新たに一カ所の無料職業紹介所、紹企業務、それの紹介事業の許可、それが要望として出されております。ぜひ御認可いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。  また、この法律につきましては、各都道府県に一カ所のセンターを置くということについては法的に示されておりますけれども、支所のことにつきましてはこの法律には触れられておりません。したがいまして、今後さらにこのような支所の許可申請が出された場合、どのように対応されるか、お伺いしたい。ということと、先ほど看護課長からお答えいただきましたある地区の状況につきましては、本当に下町でございます、病院がいっぱいございます。そこは職業紹介所、労働省のお持ちの分と、職安といろいろとネットワーキングをしながらやっているところでございますので、さらにそういうところにもつともっと光を当てていただいて求人が活発にできますことをお願いしたいということで、大臣に二つの件についてお答えいただきたいと思います。
  142. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生から御指摘されました要望でございますが、去る二月八日、社団法人東京都看護協会の矢内会長から私あてに、無料職業紹介事業の許可についてという御要望をいただいております。また、今もお話がございましたけれども行政監察結果に基づく勧告というのがございますが、その中に、「職業紹介の実態を早急に把握し、その結果を踏まえて、ナースセンター及び福祉人材センターにおける無料職業紹介事業の許可の範囲等を検討すること。」という項目がございます。これを率直に私ども受けとめてまいりたいと思っているわけであります。  なお、細かい数字で恐縮でありますが、全国の看護婦家政婦紹介所における東京都の看護婦家政婦紹介所数というのがございますが、東京都では二百六十カ所がございます。そういう実態も踏まえながら実態を把握して、先ほどそれぞれ厚生省からも御説明がございましたけれども、これらの点も含めまして早急に検討を行うよう事務当局に私の方から指示をいたしたいと思います。
  143. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。支所につきましては各県でも支所を持ちたいという意向はあるようでございますが、それはやはり所属しております各都道府県の要請だとか、または認定、または補助、援助ということが必要となってきておりますので、その他の県がそれだけさっとできるということではございません。たまたま今お願いしましたところが東京都から既に箱物、人が手配済みの段階でございますので、早急にそれをお願いしたいと思っております。  もう一つのことについてお答え願いたいと思っていたのでございますが、これからさらに許可申請が出ましたときに、この範囲ならハードルはこうですよというようなものが何かお考えがございましたら、お示しいただけますならば、その他の支部の者もそれに向かって検討させていただけるのではないか、そのように思っておりますのでよろしくお願いいたします。
  144. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま東京都の問題につきまして大臣から事務当局に指示をするという御答弁を申し上げましたので、私、事務当局でございますから、それを受けまして早急に検討いたしたいと思います。  ただ、具体的に何をどうするかという点につきましては、これはやはりいろいろと諸情勢を見ながら検討するということでございまして、どういうハードルをどうしたらいいかという点につきましてはここで私、直接なかなかお答え申し上げられませんので、その辺も含めて検討いたしたいと思います。
  145. 南野知惠子

    南野知惠子君 大変厳しいところを、いいお答えをいただきましたので感謝申し上げます。ありがとうございます。  次の質問に移らせていただきます。日本経済的地位にふさわしいと思われるようなゆとりある豊かな勤労者生活を実現するためには、平成九年四月からの全面的な週四十時間労働制、そういったものの円滑な実施を図ることが重要であるというふうに考えておりますが、労働大臣の御意見をお伺いいたします。
  146. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 総労働時間を千八百時間にすること、これは国際公約でございまして、現在、昨年度の実績を調べてみますと若干、一昨年よりも五時間程度時間外労働がふえまして、千九百九時間という数字が出てまいっているわけであります。これは、バブルで落ち込んでおったものが少し景気回復してきた裏づけかもしれませんけれども、しかしこの千八百時間に到達させるという面から見ると数字上は逆の現象を来しているわけであります。  したがって、一日も早くこの千八百時間が完全に達成できますように労働省としては全力を尽くしてまいりますが、そのためには所定内労働時間を週四十時間にするということはもう不可欠でございまして、これは明年の四月一日から法律によって完全に実施をすることになっているわけであります。  今まで猶予期間を特定の中小企業などについては設けてまいりました、特例は別にいたしまして。そういう中で、今起きている動きを率直に受けとめますと、とはいうものの景気が非常に芳しくないという現状の中で、週四十時間ということを法律に基づいて実施することは極めて困難だという中小企業団体の方から強い御要望をいただいているわけであります。しかし、もう既に十年もかかってこの四十時間制を目指してきたわけでありますから、何としてでも明年の四月一日から確実にこの週四十時間ということが実施できますようにしていきたい、これが労働省基本的な態度であります、また方針であります。これを今のところ変えるつもりは私自身は持っておりません。  ただ、中小企業団体などを中心にして、この猶予期間を延長してほしいという要望の中に、さまざまな要件が出されているわけであります。この要件を業種別あるいは地域別に実態を見ながらどうやってそのことをクリアしてもらうことができるか、そのために労働省として尽くせる手段というものは最善を尽くしてまいりたい。あくまでもそれは来年の四月一日から完全に法律どおり四十時間制に移行するという前提での話でありまして、そういう立場を貫いて対応してまいりたい、こう考えております。
  147. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。大変強い御決意でございますので、労働省を愛する私としては大変うれしいお言葉だと思いますが、それにはいろいろな難問も抱えておられるだろうと思いますので、よろしくお取り計らいをお願いいたしたいと思っております。  次の質問に移らせていただきます。成人病につながります所見を有する労働者の職場生活でストレスを感じる労働者が増加いたしております。いわゆる過労死ということも社会問題化いたしておりますし、このような事態に対処するために労働者健康確保対策の充実強化を図るべきというふうに考えておりますが、今後どのように充実強化していかれるのか、お伺いいたします。
  148. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 最近の労働者の健康をめぐる状況を見ますと、先生指摘のように成人病を持つ労働者の割合が非常にふえてきているという状況にございます。  定期健康診断の結果では、脳・心臓疾患等につながる所見を含めまして労働者の三人に一人が何らかの所見を有するというような状況になっているわけでございます。また、産業構造の転換ですとか技術革新の急速な進展などによりまして職場環境が非常に変化している。こういったことを背景として職場生活で不安ですとか悩みとかストレス、こういったものを感じる労働者の割合もふえているということもございますし、御指摘になりましたいわゆる過労死という問題が大きな社会問題として取り上げられるようになってきているわけでございます。  労働省におきましては、このような状況を踏まえまして、すべての労働者が職業生涯を通じて健康で安心して働くことができるようにすることが極めて重要であるということから、職場における労働者健康管理ですとか産業保健サービスの提供の面で今後対策の充実を図る必要があるというふうに考えているわけでございます。  労働大臣の諮問機関に中央労働基準審議会というのがございますが、この中央労働基準審議会に今申し上げたような観点からの検討をお願いいたしていたわけでございますけれども、ことしの一月、健康確保対策のさらなる充実が必要だということを内容とする建議をいただきました。その建議を踏まえまして、幾つか今後充実したいというふうに考えているものがございます。  一つは、労働者健康管理には産業医方々の果たす役割というのが非常に大きなものがございます。そういうことからこの産業医の専門性をさらに確保するということ。それから二番目には、この産業医方々は、規模五十人以上の事業場に置かなければいけないということになっておるんですけれども、それ以下の小規模事業場においても労働者の健康というのは確保される必要があるわけでございます。そういうことから、小規模事業場において事業者が行う労働者健康確保、こういったものを国として支援をしたいといったようなことでございます。三番目は、健康診断というのは事業主は毎年一回実施しなければいけないということになっておりますけれども、その結果に基づいて適切な事後措置が行われるということもまた労働者健康確保にとって極めて重要でございます。そういうことから、この健康診断結果についての医師からの意見聴取、そしてそれを踏まえた上での適切な事後措置をとるという、こういう仕組みにいたしたいというものでございます。第四番目は、健康診断結果の労働者への通知といったことですとか、医師、保健婦または保健士による保健指導の実施、こういったことについての事業主の努力を求めるということにいたしたいというふうに考えております。  今、概略四点申し上げましたけれども、これらを内容といたします労働安全衛生法の改正案を今国会に提出したいというふうに考えておりまして、これらにより労働者健康確保対策の充実強化を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  149. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。景気が上向きますと、先ほどの四十時間もそうでございますが、このような保健対策ということも各企業が取り入れやすくなるだろうというふうに思います。景気回復人々の健康を回復させるということにも連動することを肝に銘じながら、さらに頑張っていきたいというふうには思っておりますが、労働者健康確保を図るためには、企業の取り組みだけでなく、やはり労働者自身の自主的な健康管理、いわゆる健康の自己管理といいますか、そういった努力が必要だと考えております。  また、その際、企業における労働者健康管理を進めていく上で非常に重要な役割を担っておると私は信じておりますが、看護職すなわち保健婦、助産婦、看護婦の活用を図っていくことが必要であると考えております。これらの点につきまして、労働省といたしましては、今後どのような対策を講じていかれるお考えでしょうか、さらにお伺いしたいと思います。
  150. 松原亘子

    政府委員松原亘子君) 労働者の健康を確保するためには、事業主が一定の措置をとるということだけではなく、労働者みずからも健康管理に努めるということが極めて重要なことだというふうに私ども考えておりますが、このため、先ほど申し上げました、今回提出を予定いたしております労働安全衛生法の改正案の中におきまして、健康診断結果を労働者に通知をするといったことですとか、一般健康診断結果に基づく医師、保健婦または保健士による保健指導の実施について事業主が努力をするといったことを盛り込みたいというふうに考えているわけでございます。そういうことによって、労働者がみずからの健康問題について知識を持ち、関心を持ち、そしてみずから健康保持のための努力をすることを促すということにつなげていきたいというふうに考えているわけでございます。  そこで、先生いわゆる看護職の方々のこういった面への関与といいますか、貢献といいますか、そういうことを御指摘なさいました。私どもも職場での労働者健康管理を進める上で、保健婦さん、看護婦さんが現実に非常に大きな役割を果たしておられるということは十分承知をいたしておりますし、今後とも大きな役割を果たしていただきたいというふうに思っているわけでございます。そういうことから、先ほど申し上げました事業主が行う保健指導の実施につきましては、保健婦さんにその仕事もやっていただくということを法律上きちんと書いていきたいというふうに考えているところでございます。  また、具体的にどういつだことをどういうふうにやっていただくかというようなことにつきましては、法案を成立させていただきました後に、こういった産業保健分野における保健婦さん方の活用を図るための指針の策定ということを予定いたしておりますけれども、看護婦さんにつきましては、この指針を策定するに当たりまして、どういう形でそのことを書き込めるかということについては今後の研究課題として受けとめさせていただきたいというふうに考えております。
  151. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございました。産業保健という問題については、ドクター、ドクター、ドクターの独占であったものがいわゆる看護職に道を開いていただいたということは、これは大変大きな意味を持つものだというふうに感謝を申し上げております。  実際は看護婦(士)職、それから助産婦職、保健婦(士)職も保健活動をいたしておりますけれども、現行の保助看法の中では、保健婦と助産婦だけが保健指導ができるように示されておりますので、そういう意味では、助産婦につきましても妊産婦の労働者方々がおられたならば、やはり職場との絡み合わせの中で妊産婦保護の立場からも一つ指導ということになろうかなとも思っております。そういうことで、保助看ともに保健指導ができるこれからの保助看法の改定ということがありましたら、またその節には御配慮いただきたいと思っております。  そういう意味で、このたび看護職に道を開いていただいたことを感謝します。ありがとうございました。先ほどのナースセンターの件につきましてもいろいろとお願いいたしまして、いいお返事がいただけましたことをありがたく思っております。  以上で質問を終わらせていただきます。両省の方々、大変ありがとうございました。
  152. 吉川春子

    ○吉川春子君 まず最初に、大臣にお伺いいたします。  女性も人間として自立して働き続ける権利があることは当然認められていますけれども、女性が家庭を持ち、子育てをしながら仕事を続けることは並大抵のことではありません。女性に対するあらゆる差別を禁止した女子差別撤廃条約をさらに徹底したILO百五十六号条約が締結され、我が国も昨年批准しました。  また、北京で開かれた国連第四回世界女性会議で採択された行動綱領にも、家庭責任の不十分な分担が保育のようなサービスの欠如または不足と相まって、女性の雇用経済的、職業的、その他の機会と女性の移動を依然として制限し、それらへの女性の関与を極めてストレスの多いものにしていると指摘して、戦略目標として、女性及び男性のための職業及び家庭的責任を両立することとして、政府のとるべき行動が具体的に示されています。  行動綱領は、法的拘束力のある条約ではありませんけれども日本政府も合意して採択されました国際的な文書です。政府は、ILO条約、行動綱領の定着、浸透を図る責任があるわけです。家庭的責任を有する労働者、とりわけ女性が働き続けられるようにきめの細かい労働行政が求められているのではないでしょうか。  大臣も所信表明演説で、「労働者一人一人が職業生活のあらゆるステージを通じてゆとりを持ちつつ、その能力を開発、向上し、健康で安心して働ける環境整備を進める」とおっしゃっています。これはやはり、職業生活と家庭生活の両立がなければできない課題であると思いますが、御見解を伺います。
  153. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生指摘のように、家族的責任を有する男女が共同の責任を持って生活ができるように、これは非常に大事なことだと考えておりまして、だからこそ昨年百五十六号条約を批准いたしましたけれども、私自身も当時与党の労働調整会議の座長として随分とこの百五十六号条約の批准に向けて私なりに努力をさせてもらった経過がございます。  したがって、この家族的責任を有する男女労働者が差別待遇を受けることなく、またできる限り職業上の責任と家族的責任を両立できるようにする、そのための方策を実はこの条約自身規定をしているわけでありますから、私たちは全力を挙げてその規定を実行に移す、このことが今労働省として求められていることだと、こう思っているわけであります。  したがって、その趣旨を十分踏まえまして、育児であるとか、介護休業法に基づく介護休業制度の早期導入の促進も図っていきたい。これは、実施はいま少し先になりますけれども、既に労働省として前倒しでこの介護休業制度も早期導入ができるようにということを強く労使にそれぞれ、あるいは関係団体に要望しておりまして、そのための奨励金制度も設けているわけであります。一人二人と介護休業制度を実際にとる人ができれば、それに応じて奨励金を支給するということもいたしているわけであります。  また、この育児休業制度の円滑な運用の確保を図っていきたい、そして育児や家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活の両立支援対策という総合的な立場から体系的にこの対応をしてまいりたいと、実は考えているわけであります。  なお、この行動計画に書かれておりますいろんな問題点につきましては、私どもはその一つ一つを十分にクリアできるように、今関係各局で全力を尽くして当たっているということを、ここで申し上げておきたいと思います。
  154. 吉川春子

    ○吉川春子君 介護・育児もですけれども、女性の障害はそれだけではないわけです。ILOの百五十六号条約の三条では、就業にかかる責任と家族責任が相反することなく就業する権利を行使することができるようにすることを国の政策の目的にすると言っておられまして、今大臣が述べられたこともその中に含まれるわけです。  しかし同時に、大臣が所信の中でも引用しておられますけれども、第八次雇用対策基本計画は、女性の労働参加について障害となる社会制度の改善という課題を提起しておりまして、この障害となっている社会的制度というのはいろいろあるわけです。  そこで、労働省にお伺いしますけれども、均等法第十四条あるいは三十三条に基づいて処理した、幼児がいる女子社員が解雇を予告された例と、出産直後の女子社員を遠隔地へ配転しようとした例について、どういう対応をされたのか、簡潔で結構ですが、報告していただきたいと思います。
  155. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) これは、二つほど先生、事例を挙げられたわけでありますが、最初の場合は、幼児がいる女子社員が解雇を予告されたわけでございます。というのは、勤務する事業所が業績不振のため人員削減が必要になったということで、遠距離にある事業所への転勤命令がその女性社員に出されたわけでありますが、女性社員がこれを拒否したところ、解雇をすると予告がありましたので、彼女から婦人少年室へ援助の申し出があった事例でございます。  この事案につきましては、婦人少年室では、女子社員の所属長から事情を聴取いたしまして、当該女子社員が転勤する合理的な理由が認められないと、子供を理由とする解雇は均等法の趣旨に反するのではないかということで、改善を指導いたしました。この結果、解雇予告は撤回され、現場での、もとの職場での継続勤務ができることになったものでございます。  二つ目の出産直後の女子社員の例でございますが、これは出産直後の女子社員を遠隔地へ配置転換しようとした事例でございますが、女子社員が産後休業後出勤いたしましたところ、育児を行う者は突発的に休むことが多いということを理由にされまして、通勤時間が片道二時間かかる営業所への転勤を命令されたわけでございますが、やはり引き続き今まで勤めておりました職場で働けるよう援助してほしいという申し出が婦人少年室にあったものでございます。  婦人少年室では、当該事業所から事情を聴取いたしましたが、これはやはり合理性はないのではないかと。また、当該女子労働者に行った転勤命令は均等法の八条及び配置に関する指針に反しております。そして、改善の努力が求められること等を企業に説明をいたしまして、企業に対して法の遵守を指導したわけでございます。  この場合も、その結果、当該女性は転勤命令を取り消され、これまでどおりその職場に勤務できることになったという事例でございます。
  156. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは裁判で争えば恐らく十年以上はかかった事例だと思いますけれども、一週間とか二カ月とか非常に短い時間に対応されて解決された例で、労働大臣の権限が相当強い力を発揮した例だというふうに私も考えております。  転勤というのは男性にとっても大きな問題ですけれども、女性にとっては一層困難が伴うわけなんです。昨年、男女雇用機会均等問題研究会が、企業における女子のみ、または女性優遇措置の実施状況を報告しましたけれども、この中で転勤について男性と異なる扱いをしている企業が八九・五%ある。それからまた、勤務地について女性に特別の配慮をしている企業が五五・七%あるということですが、簡単にこの内容を説明していただきたいと思います。
  157. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 今、先生が申されました男女雇用機会均等問題研究会という研究会で出された報告書の中の事例でございますが、約八百社の企業を対象に行った調査でございます。  その中で、女性の転居を伴う配置転換、転勤でございますが、これについて男性と異なる取り扱いをする企業が全体の八九・五%を占めております。その中で具体的に、これから申し上げるのはその八九・五%の中の数字でございますけれども、具体的な例といたしましては、転勤の対象としないという企業が一九・九%、転勤の対象となる場合でも本人の意向や家庭の事情を踏まえ、できるだけ転勤しないように配慮しているという企業が二五・五%、それから、本人の意向を尊重して、転勤を行う企業が一四%でございます。勤務地について女性に特別の配慮をする企業が五五・七%ございます。そのうち自宅から通勤できる範囲に配属する企業が六二・六%、家庭内の事情をできるだけ配慮して定める企業が四〇・一%というふうになっております。
  158. 吉川春子

    ○吉川春子君 この研究会報告では、「個々の労働者の家庭責任の事情を配慮する方向で見直す必要がある。」と、こういうことを言っているわけわけですけれども、この報告を受けて、労働省としては、この問題についてどういうふうに今後対処されるんでしょうか、お伺いいたします。
  159. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) この研究会報告では、「女性であることを理由とした配慮は、かえって女性が職業生活において多様な経験を積むことを妨げ、女性の能力の有効発揮を抑制し、ひいては女性の雇用も抑制する方向に機能するおそれがあると理念上考えることもできる。」と。「また、このような配慮は、女性が家庭責任をより多く負っているという実態に着目して行われる場合も多いと考えられるが、結果として女性が家庭責任の多くを負担することの固定化につながると見ることもできる。」というふうに言っております。  とした上で、転勤においては女性労働者の家庭責任を配慮している場合は、本来は、男女双方に対して、個々の労働者の家庭責任の事情を配慮する方向で見直す必要がある、と。女性だけだと、かえってそれが女性の昇進等にマイナスの影響があるというふうに書いてあるものでございます。
  160. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、育児・介護に加えて転勤も今労働省でも研究を進めているような問題があるわけです。  ここには、今局長から報告がありましたように、女性の雇用を抑制する方向に機能するおそれがあると考えることができるが、しかし、と。後半にウエートがあるんですね、太田さん、前半じゃなくて後半に。しかし、これはやっぱり考え直さなきゃいけないと。「転勤については労働者及びその家族に及ぼす影響を十分考慮することが望まれる。」ということなんですが、この転勤の問題についても、大臣、ぜひ今後労働省において見直すということにしていただきたいと思いますが、言いかがですか。
  161. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ILO百五十六号条約の問題について御指摘があり御答弁申し上げたわけでありますが、そういう条約に盛り込まれた趣旨も当然のこととして十分配慮しながら、業界に対しましても、あるいは組合のあるところは労働組合に対しましても、十分にそのことを配慮するように留意して指導するように努めてまいりたいと思います。
  162. 吉川春子

    ○吉川春子君 それから大臣、女性が仕事を続ける上で障害になることは、介護・育児そして今挙げた転勤、そういう問題に限らずあると。この狭い範囲で考えないでいろいろ障害があるんだと。そのことについて積極的に対応していただきたいと思いますけれども、その点はいかがですか。
  163. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 確かに、御指摘のように職場における仕事の関係だけではなくて、自分が生活している社会的な基盤の中で自分の家庭というものを維持していかなきゃいかぬという面から考えますと、またそこにはおのずから男性と女性の持つべき任務の内容が変わってくる面もございます。  そういう面も十分に配慮してこそ初めて男女の共同社会というものは形成されると思いますので、今先生の御指摘になったような問題も、なかなか難しゅうございますけれども、幅広く視野を広げて検討もしてまいりたいと、こう思います。
  164. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一つ、転勤問題については労働省が研究会報告というのを出されていますけれども、「転勤と勤労者生活に関する調査研究会報告書」、これは平成二年の十二月ですから五年ほど前のなんですけれども、こういうものも出しておりまして、転勤が女性だけではなくてこれはもう男性を対象にしているんです。  ILO百五十六号条約の批准よりはるか前なので、女性の転勤問題はここではちょっと視野にないみたいですけれども、男性にとっても非常に問題で、しかも単身赴任という形になりますと、子供が教育の重要な時期に差しかかって、非行になったりとかさまざまな問題があるというふうに指摘をしているわけですけれども、こういうものも踏まえて、これは問題点は指摘してあるんですけれども、方向性がもうちょっと示されていないといううらみはありますけれども、問題点はばっちり指摘してあります。  こういうものをせっかく出されているんですから、女子差別とか女子の地位向上ということでなくて、転勤というものがいかに家庭生活にマイナスの影響を与えるか、単身赴任も含めて、そういう問題も考えたときに、転勤問題のあり方についてやはり行政指導をもっと強めるか、あるいは法改正を含むか、そういう点についての見直しが必要だと思うんですけれども、これについてはいかがですか。
  165. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 前段といたしまして、今先生指摘調査研究会の報告について若干概要を触れさせていただきたいと思います。  今、先生から御指摘がありましたように、この報告は平成二年という少し古い時点のものでございますが、転勤特に単身赴任についていろいろと調査研究したということになっておりますが、報告書では、転勤といいますか企業の人事異動というものにつきましては、これはその労働者のキャリア形成というふうな面で非常に大きな意味を持つ、あるいは企業の人事政策、企業経営の戦略といった上で大変重要な意味を持つということを指摘しながら、おっしゃいますように、一方で勤労者が転勤を命じられた場合の経済的精神的負担が大きいこと、こういったことも指摘しまして、この転勤、人の異動につきましては慎重な対応が企業に求められる、そういった人事システムを確立することが必要だろうというふうなこと、あるいは人材配置や人材育成システムの改革が必要だということを言っておりまして、行政としましても、夫婦のキャリア形成とか子供の教育の問題等々についての情報提供やガイダンスなどが必要であると、こういったものを提言しておるものでございます。
  166. 吉川春子

    ○吉川春子君 こういう研究会報告をいろいろ出されるのはいいんですけれども、その後どうするんですか。
  167. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 報告書を受けまして、十分と言えるかどうかはあれですが、婦人局におきましては男女労働者を対象に育児・介護にかかる情報提供を行うものとして、例えばフレーフレー・テレフォン事業を実施するとか、勤労者家庭支援施設等において各種の講習、相談等を実施しているところでございます。またさらに、介護休業法等々をつくって男女労働者が職業生活と家庭生活の両立をできるように環境整備をしてきたところでございますけれども、今後とも転勤等の問題につきましては実態把握に努めまして、家族的責任を有する労働者対策としての検討は行ってまいりたいというふうに思っております。
  168. 吉川春子

    ○吉川春子君 この転勤問題で大臣お願いいたします。  今、局長も言われたんですけれども、そういう形でガイドラインをつくるなり、転勤問題についてもう一歩前進していただきたいと思いますが、いかがですか。
  169. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) ちょっと話は余談になりますが、きのうでしたかおとといでしたか、転勤問題の大きな記事が日経に出ておりまして、それを見ますと、男性の方がアメリカへ転勤になると。本来、その会社は三年間ということが限度だったようでありますが、今度は五年間というふうに言われたと。五年間も単身赴任は望ましくないということで、その配偶者の方は仕事を一たん中断をして、その間休職になるんでしょうか、中断をして一緒に御夫婦そろってアメリカへ転勤することにしたと、その苦悩ぶりが新聞記事に出ておりました。それを見まして、今先生が御指摘になりましたように転勤の持つ非常な問題点というものを、先生の今のお話も受けまして非常に深く胸に突き刺さるような思いで実は聞いているわけであります。  したがって、転勤そのものはもちろん第一義的には企業企業の活動をする上での必要性から考えることでありましょうけれども、そこにさまざまな問題が出てまいりますので、この研究会報告にも情報提供やガイダンスということが出ておりますけれども、知恵を絞って何か労働省としてガイドライン的なものをつくって業界を指導できるようなことが、どこまで効果が出るかということは今のところは定かではありませんけれども、何か知恵を絞って考えていきたいなと、こう思います。
  170. 吉川春子

    ○吉川春子君 ILO百五十六号条約の八条関係について伺いたいと思うんですけれども、ここでは、家族的責任のみをもって解雇の事由としてはならないという厳しい規定があります。ほかの条文には、国内の事情とか可能性とかいう条件をつけて決めているんですけれども、これは、そういう留保は一切なしに解雇してはならない、こうなっているわけですけれども、そういう規定を受けて家族的責任を果たさせるような対応が日本政府も求められているというふうに思うわけです。  さっき大臣が言われた育児・介護の規定の中にも、この休暇を取得したことによって不利益扱いをしてはならないという厳しい規定がありますが、今の転勤も大きな問題だと思います。そして、男女とも家族的責任を果たすことが不可能になるようなときには、会社はその労働者を、転勤を断ったという理由で解雇することが許されない、このように解釈できるんじゃないでしょうか。
  171. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) ILOの百五十六号条約の第八条は、家族的責任それ自体は雇用の終了の妥当な理由とはならないということでございますので、家族的責任それ自体というふうに狭く解釈するものというふうに思っております。
  172. 吉川春子

    ○吉川春子君 家族的責任のみをもって解雇してはならないわけですね。それは、じゃどういうことですか。家族的責任、育児とか家事とか介護とかいろいろ抱えている労働者が、その責任が果たせなくなるということで転勤を断ることはできるんじゃないんですか。
  173. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) この八条が言っておりますのは、家族的責任を有しているということ、それだけを理由として解雇されるということはいけないというふうなものでございますから、家族的責任があることが遠因となって、そのために例えば欠勤が多いとか勤務不良が起こるとかいうようなことの問題につきましては、その勤務不良の程度が解雇相当性があるほどひどい程度であるかどうかというような場合は解雇を禁じているということではないということだというふうに思いますが、これは八条についての条約審議の過程で明らかになっているというふうに聞いております。
  174. 吉川春子

    ○吉川春子君 だから、遠因になって、欠勤が多かったとかなんとかということじゃなくて、家族的責任があって自分は転勤できないんです、こういうふうに断ってもこれは解雇の理由にしてはならないということじゃないんですか。
  175. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 家族的責任それ自体でございますので、家族的責任それ自体が解雇に該当するかどうかというのは個々の事例に即して判断すべきものであるというふうに思っております。
  176. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、個々の事例で判断するのはだれが判断するんですか、裁判所ですか、裁判闘争になると十年以上かかりますよ。それでは、条約がこういうふうに定めていて、それを批准したという意味というのはなくなるんじゃないですか。  今までも、それは権利の乱用になるのかどうかと延々と裁判所で十年以上かけて民法に基づいて判断されてきた例はあるんですが、そういうことをしないためにもILOの百五十六号条約というのは批准されているんじゃないんですか。
  177. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今、先生の御指摘でありますが、この第八条は、批准に当たって随分と事前の段階で労働省と外務省で時間をかけて検討した内容でありまして、それだけに非常に難しい問題点を持っているわけであります。  もともと、この家族的責任それ自体を理由にして解雇してはならぬということになっておりますから、今局長がお答えしましたように、個々の事例に即して判断すべきものでありますが、百五十六号条約とはいかなるものかということ自体をなかなか事業主とか事業主団体が理解をしていない面があろうかと思います。これについては、当然のことでありますが、労働省として啓蒙に努めていきたいと思います。  あとは個々の事例に即して判断されることでありますが、今言われたように、何でもかんでも裁判にかけて十年も二十年もかかるようなことがあっては、これは何のために批准したかということになりますから、まず百五十六号条約はこういうものですよということを事業主団体あるいは事業主の方々にも十分に理解を求めるということは労働省の責務としてPRに努めてまいりたい、こう思います。
  178. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、それはPRとか啓蒙する場合には、事業主団体に対して何かガイドラインみたいなものも示していくということも含めて、お考えですか。
  179. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 現段階ではそこまで検討しておりません。  個別の事例が家族的責任それ自体による解雇に該当するかどうかにつきましては、繰り返しになりますが、やはり個々の事例に即して判断すべきものでありますから、一般的な判断基準を示すガイドラインを作成するということは困難であろうというふうに考えます。
  180. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣にお伺いしますけれども企業指導する場合に、一対一で指導するわけじゃないですよ。何か物差しがなければたくさんの企業を相手に指導できませんね。指導していただくということが非常に必要だと思います。だから、その際の、名前はいいです、ガイドラインでも何でもいいんだけれども、そういうものをやっぱりつくらないと指導できないと思いますが、例えば大臣、こういう例はいかがでしょうか。  私も、実は、二人子供を育てながらずっと市会議員をやったり今日まできているんですけれども、保育所というのが一つありますね。これは、保育時間が限られているけれども、議会とかその他の仕事はそれにとどまらないいろいろなのがあります。だから、二重保育をしたり、お手伝いさんを頼んだり、近所の人に頼んだり、綱渡り的なことをやっているわけですね。  私の例は例外としても、例えば通勤時間が二時間ぐらいかかるところに転勤させられてしまった、今職場のすぐそばに住居があるのに、二時間もかかるところに転勤を命じられてしまった、子供が一人いる、おなかにも赤ちゃんがいると、そういうような女性を、キャリア形成とかそういうことを抜きに、現場の本当に一労働者としている人をぽんと飛ばすような、そういうようなことは、家族的な責任は全うできないということで、やっぱり難しい問題だと思うんですね。  だから一つ一つ、個々の事例といってもいろいろあるんですけれども、例えば今のような事例、大臣はお子さんが小さかったときどうされたか、お子さんがいらっしゃるのかもわかりませんけれども、そういうような場合について、女性はどういうふうに対処したらいいと思いますか。これは、男性の立場から、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  181. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) これは、個々のケースを全部並べて、こういうケースの場合、ああいうケースの場合ということになりますと、これは膨大なものになってしまうと思うんです。  ですから、一回十分に検討してみますけれども、ガイドラインをつくることは困難であっても、百五十六号条約を批准するに当たって、これは何を求めているのかということはあるわけですね、条約そのものが。だから、それは一回知恵を絞りまして、条約そのものをできるだけ周知徹底させること以外に今ちょっと頭には浮かばないわけです。だから、個々のケースでいろいろありますけれども、片方で男女雇用機会均等法もありますので、そういうものとも複合的に検討を加えながら、どういう形で実際に事業主団体などに啓蒙活動すれば一番いいのかということも考えてみたいと思います。  ただ、先生が言われる個々のケースを全部並べてガイドラインをつくることは、ちょっとこれは難しいと思いますので、とにかく家族的責任のきちっと果たせるようなことを念頭に置きながら、一回研究させてください。
  182. 吉川春子

    ○吉川春子君 検討されるに当たりまして、最後に要望申し上げますが、ILOの百五十六号条約の三条関係では、さっき言った障害となる事例がいろいろあるわけですね。そういうものに対して国はどうするかという、その一つガイドラインが要ると思います。  それから、八条関係で言うと、これは雇用の終了としてはならないということになっていますから、どういうことがならないのかということを、個別的なケース一つ一つ並べるという意味じゃないんですけれども、そういうやっぱりスケールが必要だと思います。  だから、そういう二つの点について、この百五十六号条約を具体化するために、きちっと方向を示して企業指導していただきたいし、ガイドラインだけではなくて、私は、法律の改正もそのうちに必要になるだろうということを申し上げまして、時間になりましたので質問を終わりたいと思います。
  183. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 最初に、私ごとを申し上げて大変失礼だとは思うんですけれども、一言非常にうれしいニュースがありますので、皆さんに聞いていただきたい。  先ほど南野委員も、労働省を愛する一人ということでお話しになりましたけれども、去年の暮れ、私は国会の中で不覚にも転びまして足の靱帯を切ってしまいました。歩行が困難になりまして非常につらい思いをいたしました。仕事はたくさんあるわ、動けないわ、もうどんどんたまってしまうわということで非常に困り果てておりました。そして、立法府である国会の中ではそういう障害を持ったときの対策というのは非常におくれているということがわかったわけですが、そこで労働省の高齢・障害者対策部は、そういう私が非常に困って、ともすれば落ち込みそうな精神状態のときに大変激励をしていただきました。きょうは、ここに当時の大臣もいらっしゃいますが、大臣を初めとして、勤労ができなくて非常に困っているときに大変激励をしていただいたことを本当にうれしく思っております。これこそ労働省のあるべき姿ということで感謝をする次第です。  そのときにつくづく思ったことは、人間にとって一番何が重大なんだろう、勤労するという意欲を持ち続けることというのがどんなに重大かということを感じました。私自身も、勤労意欲を持ち続けるということは大変なことなんだなと。こういうふうに何か困ったことが起きるとがたがたと弱気になってしまう。この強気の私が弱気になるんですから、非常に大変なことなんです。  私は、この勤労というのは、かつて奴隷の労働であるという義務から始まって、今や基本的人権の勤労権という権利にまで高まってきた。勤労権というのは本当に基本的人権の中でもすばらしい権利であるというふうなことをしみじみと感じまして、働きたいという意欲のある女性にとってその意欲を阻害することがあるとすれば、基本的人権の一つである勤労権というものはこれは達成できないのではないか。  そこで、先ほどからずっと、きょうは女性が次々と女性の働くことに対してみんな元気よく御質問をなさっているのを見て、通告をしていないんですけれども、勤労権ということ、勤労する意欲という問題について、大臣と文化的議論をしてみたいなというふうに今思っております。これは通告をしていなくて本当に申しわけないんですけれども労働省は代々女性にお優しい大臣がなっておりますので、多分造詣が深いことだろうというふうに思っております。  そこで、先ほど私はとっても重大だと言ったこの勤労意欲というのは、基本権であるならば、自由主義社会であってもそこにやっぱり国家権力が公平で公正だという価値観を入れなければ、これは権利にはならないだろうというふうに思います。働きたいという女性にとって、今現在、公平で公正である社会でしょうか、それともどこかに公平さが欠けているところがあるでしょうか。私は、もしも勤労権という権利を実現したいという女性の意欲を阻害するいろいろな条件があるならば、その阻害する要素は、大臣は今どこに一番重きを置きそしてこれからの大臣の女性に対する政策の中でここが一番公正じゃないという点がありましたら、まさにこれは大臣の哲学をお聞きしたいと思います。
  184. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生にお答えできるほど哲学的に自分が能力を持っているとは思わないのでありますが、今御指摘になりましたように、本来なら男性であろうと女性であろうと、男女雇用機会均等法があろうとなかろうと、本人が就職を希望する、その希望が満たされるのが一番すばらしい社会だと私は思います。  しかし、封建時代から長年、必ずしも男性が精神的にまで優遇されておったかどうかは別にいたしまして、女性が低い地位に押し込められてきたということから、戦後民主主義体制になってから女性の権利回復とか、あるいは女性の持っている能力を可能量大限生かし切るようなそういう職場の開拓であるとかいうことが叫ばれてきたと思うんです。  しかし、現実はなかなか、そうは言っても男女が平等になっていないということから機会均等法もつくられたわけでありますが、現実に現在もなおその機会均等法の理念というものは事業主にも理解されておりますけれども、実際に今新卒者の採用を見ましても、必ずしも男女が平等な権利を受けて就職活動ができているとは思えないわけですね。だからこそ、労働省といたしましては、機会あるごとに機会均等法の遵守といいますか、理念をきちっと生かして対応するようにということを求め続けてきているわけであります。  しかし、それだけでもなお不十分でありますから、今婦人少年問題審議会で御検討いただいているわけでありますが、少なくとも家庭の中にいる男性が、家庭に帰ったときの男性が自分の配偶者がいるとすれば、その配偶者に対する物の見方というものをまず男性自身が変えていかなきゃいかぬ。私は、それほどすばらしい人間だとは思っておりませんけれども、できるだけ私自身も配偶者、自分の妻のことを尊重しながら生活はしているつもりでありますが、それでもなお自分の妻からするとあなたは一つも家庭のことは考えてくれないとか、女性の立場は考えてくれないとおしかりを受けるぐらいでございますから、まだまだ十分な人間ではないなと、こう実は思っています。  しかし、先生が言われるように、日本がより成熟した社会である、世界に対して誇り得る国だということを言おうとすれば、いろんな問題ありますけれども、少なくとも男女の問題については事あるごとにきちっと同じような公正さが保たれるようにあるべきだと思います。  そういうことを念頭に置いて、だからといって今すべてがうまくいくわけじゃありませんけれども、そのことを念頭に置いて日々の労働行政は進めていきたい、こう思っているところであります。
  185. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、国家という大きな観点からすると、一番世の中を大きく変えて、そして人間の生きがいというところまで到達する、そういう国家権力を行使する一番の大もとはやっぱり労働省だというふうに思っております。ですから、平等という言葉は非常に危険な言葉でありまして、その中に公正な平等じゃなければいけない、そういうふうに思います。  そういう点で、今大臣はおうちの中に奥様という大変いいチェックをなさる方がいらっしゃるということは心強いことでありまして、きょうの皆さんの御質問も非常に女性に対して公平になっていないという理由で女性の問題を次々と質問なさっているというふうに思います。そういう点では、どうぞ大臣、これからそういう大きな哲学を持ちながら労働政策を進めていっていただきたいというふうに思っております。  そこで、これまた通告をしないで大変申しわけないんですけれども、しかし先ほどからいろいろな委員が、やっぱり日本の社会の中には女性に対するいろんな政策が公平になっていないところが、これもあるんじゃないか、あれもあるんじゃないかというふうに御指摘になったんですが、私は、きのうきょうニュースで非常に問題になっております夫婦別姓の問題という問題が、ともすると女性の働く意欲というものに対して何か阻害してはいないんだろうか。これは、労働省関係がないところで今論議になっていますけれども、しかし働く女性にとっては途中で姓が変わるということは非常に不便だということはずっと前から言っていることです。そして、私も大学を出てからずっと働いていますので、途中で名前を変えるのは嫌ですからずっと変えないで来ている一人なんです。  そこで大臣に、通告なしに申し上げて大変悪いのですけれども、この夫婦の姓について大臣はどのようにお考えになりますか。
  186. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 結論から言いますと、私は夫婦の別姓があっていいと思っています。むしろその方が自然体ではなかろうかなと。戸籍上いろいろな規定がございまして、結婚すればどちらかの姓を名乗らにゃいかぬと。それは昔から連綿として続いてきた家系を守るとかあるいは家長制度とかというものがその背景にあると思いますので、基本的には私は自由に姓を名乗ることができていいのではないか、それがまた素直に、仕事をする場合職場でも受け入れられるようなことがあっていいのではないかと思います。  しかし、法的にはいろいろなことをクリアせにゃいかぬと思いますので、そこまで私はきょうは言及することはできませんけれども、気持ちの上でそのことについてはお答えを申し上げておきたいと思います。
  187. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 聞くところによりますと、与党の中でそういう別姓の問題に対して反対ののろしが物すごく上がっているということを聞き及びます。かつて労働省にも関係のあった方もそういうことだということを聞きまして、ちょっとこれはくぎを刺しておく必要があるなと、こういうふうにきょうは思いまして、やはり働く女性の意見というのを十分に労働省として、働く女性がどのように思っているのかという、そこら辺のところをお酌みおきいただきまして、適正な政策に反映していただきたいというふうに思っております。  それでは、きょうは女性の就職の問題が次々出てきますので、私もその追い風に乗って少し質問させていただきたいというふうに思います。  と申しますのは、まさに今女子学生の就職の氷河期と言われていますが、この原因は、女子学生が卒業する数も多くなってきている、つまり大学に入る女性が多くなってきているというのも一つの現象です。私はこれは非常にいいことだというふうに思いますし、そして大いに人格、識見を養った女性が社会に出て活躍することはいいんですけれども、ここでコース別人事というのが採用されて、そして総合職というのが女性の就職の仕方にあるわけですが、今年度を見ますとこの総合職の窓口がずっと狭くなっている。だから一般職の女性がますます雇用の幅がなくなって、結果的には雇用状態が非常に悪い状態になってくるということです。  こういうことを勘案すると、女性が多くなっている、しかし総合職は少なく採る、採用も少なく採るということは、よく考えてみると間接的に、目の見えないところで男女の差別が起きてきているんではないかなというふうに思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  188. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 今御指摘になりましたように、ことしは全般的に学卒者の就職状況は厳しい状況にございます。数字的に申し上げますと、十二月末現在でありますが大学卒業生の就職率は七五・五%、そして短大では五六・六%の数字になっています、また三月末には少し上がると思いますが。今申し上げた数字はこれは女性を対象にした話でございます。  こうした中にあって、平成八年度の総合職の女性の採用の内定者数、これはコース別に雇用管理制度を導入している企業に関して労働省が委託して調査をしてもらったわけでありますが、平成七年度に比べて一一・二%増加しています。したがって、少しは改善をされてきていると見ていいし、女性に対する企業の視点も少しは変わってきた、いい方向に変わってきたというふうに見ていいんではないかと実は思うわけであります。  しかし、この女子学生の就職が極めて厳しい状況は間違いないわけでありますが、その理由の一つとして、従来から女子学生の卒業生が多く希望するのは事務職だったわけですね。その事務職の求人数が軒並みに減少してきた。今はもう近代化されておりますから、そういう面で事務職の求人数が減ってきた、これと私は非常に深い関係があると見ているわけであります。一般職の女性の採用、さっき申し上げました委託しました調査によりますと、女性の内定者数は平成七年度に比べて一五・八%減少しているわけです、一般職は。そのかわりに総合職で一一・二%ふえているということでありますが、総合職全体の数と事務職、一般職の希望する数と数が違いますから、数値が違いますから、パーセントだけでいくとそう差がないように見えますが、現実はかなり乖離があるわけです。  そういうことから、いろいろ私ども指導をいたしているわけでありますが、先生が御指摘になりましたように、就職に当たって女性が女性であるという理由で差別されることがあってはならない、ここを非常に強く私どもは態度を表へ出して関係の団体とか業界に御協力をお願い申し上げているわけであります。このことが実践されることによって初めて均等法の存在というものの価値が出てくるわけでありますから、そういう立場でこの問題については扱っていきたいと思っています。  もう一つは、これは私見でありますから、言い過ぎた点があったら御勘弁いただきたいのでありますが、就職活動をするときにどうしても、女子学生のブランド志向がまだまだ残っているわけですね。このブランド志向というものをできるだけ本人の意識の中で改革をしてもらいませんと、特定のところには求職者として集中しますけれども、特定のところにはなかなか求職に行かないという、そのアンバランスが起きてまいりますから、この点についても、私は女性の就職活動をされる方についてもできるだけ意識の改革も片方で自発的に行ってもらいたいなと、こういう気持ちを持っています。
  189. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 その女性の意識の問題なんですけれども、女性が働くということは、先ほど言ったように働く意欲というものがついて意識が変わってくるというふうに私は思うんです。今、日本の女性は働ぐ意欲に対して、働くつまり実力が備わっているかどうかということが問われてくるというふうに思います。  そこで、文部省いらっしゃいますね。学校を卒業して就職云々というのは、私にしたら、意識と技術と能力と、そして職場が求めるいろんなもののミスマッチがものすごく起きているということなんですね。その一つに、文部省の、国立て構いません、つまり学部が採用する人数ですね、どういう学部にどれだけの人数を採るかという、その学部の人数をちょっと言っていただけますか。
  190. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 国立大学の学部の学生の数という意味でございましょうか。
  191. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 学部の入学者数。
  192. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 国立大学の八年度の予定でございますけれども、十万四千四百六十四人の予定でございます。
  193. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 学部、工学部とか文学部とか、その学部の入学者数。
  194. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 分類はちょっと今手元にございませんのですけれども、トータルしか今ちょっと手元にございませんけれども
  195. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは通告をしている問題です。  つまり、私は人数を決めるときにどういう基準で学部に入れる入学者数を、次の二問目の質問ですね、しょうがないですから二問目の質問。どういう基準で採りますか。
  196. 若松澄夫

    説明員(若松澄夫君) 国立大学の場合で申し上げますと、学部の学生数というものを設定するためには、当然その分野全体の学生側のニーズはどうあるのかということとか、就職の問題とか、あるいは各大学で用意できる教員あるいは施設というようなこと等を勘案して、個別各大学が定員というものを設定する。最終的には予算要求、あるいは定員要求という格好で決まっていくという形になっておるわけでございます。
  197. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 通告をしていたんですけれども、全然通告どおり返事がなくて何が何だかわからないので、まあいいです、私わかっていますから。  つまり、文部省が学部の人数を決めるのは、つまり工学部とか機械とか、そういうところはお金がかかりますから余り学生を採らないですね。それで、お金のかからないところにたくさん学生を入れるわけですよ。そうすると、社会の必要としている工学とか機械とか電気とか医学とか、そういうところは非常に人数が少なくなっているはずです。もうけたが違っているはずです。そうすると、文部省は、日本は人的資源という割にはお金が施設にかかるから少ししか採らないというのは全く逆な発想で、社会が求めているニーズに合った学部の人数を設定すべきですね。  つまり、何も機械がいいとかというんじゃなくて、一番機械学科なんというのはお金がかかるわけですからすごく少なく採るでしょう。そうすると、入学定員が少ないから競争率が高くなって、そんな競争率が高いところには人は行かない、こういう現象になってくるわけです。ですから、結局、女性は入りやすいところを目指して入る人が多くなる。必然的に文学とか社会学科とか、そういう何百人と採るところに行く。でも、そういうところは社会的ニーズに合わなくなってきて必然的に就職できなくなるという、こういう悪循環なんですよ。  文部省は、社会のニーズに合わせて人員を採るとは言っていますけれども、全然ニーズに合ってないですよ、ニーズと逆なことをやっているわけですよ。例えば私の大学でも、人員をちょっとでも採ろうと思うと、文部省からはすごい厳しいチェックがあって全然増員できないというのが現状で、文部省はいいです、それで。つまり、就職に文部省は関係がなくてもいいと思います。人格、識見を養ってくれたらいいんです。  私は、何のためにこんな質問するかというと、そこで労働省の出番ですよと、こう言いたい。しょっちゅうこれを言っているわけです。文部省は社会のニーズと違ったことをやるわけですから、それはそれで文部省はいいでしょう。私は文部省というのは雇用のための教育じゃないと思っていますから、それはそれでいいと思います。ですから、どうしても女性が入る学部のニーズが社会に合いませんから、結果的には失業状態になるというこの現状を早く踏まえていただきたい、早く理解していただきたい、こういうふうに思っております。  私は、いっぱい書いたいんですけれども、いつも時間がなくなって本当に舌をかみそうに焦るんですけれども。そこで私は、労働省というのは女性が働くためのその意欲を高める技術と能力を持つことによって、より一層女性が職業に対して積極的に参加できるというふうに思います。それを聞きたいんですけれども、時間がなくなりますからひとつ伊藤能開局長、その点十分そこを検討していただきたいと思います。  そこで、きょうは労働省がやっております若年求職者職業能力開発事業についてお聞きしたいと思うんです。  今、私が焦り焦り言っているのは、とにかく労働省は文部省と関係なしに、女性の雇用に対する力、技術、そういうものをつけることによって、先ほど大臣が言ったようにミスマッチを私は解消できるんじゃないか、自分の能力がわかることによって自分の能力に合った仕事を探せる、そういう選択眼というのを持てるんじゃないかというふうに思っております。この若年求職者職業能力開発事業について、簡単に説明いただけますか。
  198. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今お話しのございました若年求職者職業能力開発事業でございますが、これは平成七年度から開始している事業でございます。  大学を出た女子学生の方等を中心に大学で学んだことと実際のその職業とが必ずしも結びつかないケースが多い、そういったことで大変雇用情勢が厳しい中で御苦労なされている方々が多い、そういうことを勘案いたしまして、もし未就職等になった場合、私ども全国の職業能力開発施設と雇用促進センターがそういった方々の相談を受けて、そういった方々が職業能力の開発をして少しでも能力の付加価値を高めて就職できる、そういった機会に結びつけていけばということで始めたわけでございます。  実際、昨年から始めまして十二月までの段階で、私ども相談を受けた件数が大体一千件を少し超える件数で相談を受けておりまして、現在、その措置に基づきまして相談をして能力開発のためのプログラムをつくり、その結果といたしますと、私どもそれに乗ってこられた学生の方につきましては、卒業されていますが、施設内で公共職業訓練の特別のコースを開いて受講していただくか、あるいは専修・各種学校、事業主団体の方に委託して、これは無料で学生の方は受講できるわけですけれども、教育訓練を受けてもらう。それで就職と結びつけていくという形になっておりまして、現在まで約半年の間で二百八十五名の方が実際にそういう形を通じて教育訓練を受けられた。まだ受講中の方も多数おられるわけでございますが、その結果、大体四四%ぐらいの方が就職と結びついた、こういう状況になっております。
  199. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、これはすばらしいと思うんですね。未就職の人がこれを受講して約半分が就職できたという御報告です。これはいいんですけれども、隔靴掻痒の感がありまして、たった三カ月なんですね。そして、これで見ると北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、福岡、いつでも京都を抜かすんですが、こういうふうになっているんです。最後に、その他の雇用促進センターにおいても相談を実施と。この、その他の雇用促進センターというのはどことどこを言うんですか。
  200. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、この若年求職者職業能力開発事業、昨年の大変厳しい新規学卒者の就職状況の中で、少しでも就職で苦労されている学生の方が能力面で付加価値をつけて職業に結びつけばという、そのお手伝いをしようということで緊急的な措置として実施したこともございまして、始めたときは非常に慌ただしい状況の中で出発したのが実情でございます。  そういった意味で、三カ月と申しますのも、やはり早く就職したいという学生の方の気持ちとマッチさせながら教育訓練を受けてもらうにはその辺が限界かと、こういうこともございまして三カ月を中心にやっておりますが、全国に六十五カ所ございます私どもの公共の職業能力開発促進センターで受講していただく場合には、それを六カ月ということで受けとめていきたいと思っております。ただ希望は、そこはどうしても技能系が中心になるものですから、OA機器等の操作を中心に教える専修・各種学校の方へ行かれる方が多いというようなことで三カ月が中心になっております。  こういったことを通じて、私ども当面の緊急の能力開発面でのお手伝いは学生の方々にさせていただいていますが、基本的には学生の方々の職業ともっと円滑に結びついていくためには、早い段階からの進路等をにらんだ本人の方々の進路決定なり、あるいは職業意識というものをどう持つかとか、早い段階からの準備も必要かと思いますので、そういった面では労働省内でも職業安定局、婦人局等といろいろ連携をとりながら、そういった方面での施策も進めているところでございます。
  201. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私はそこを言ってほしくて、一生懸命鼻から息を出しているのはそれなんですね。つまり、就職が決まらないからやるというんでは手おくれなんです。  ですから、今局長は慌ただしくと言いましたけれども、これは本当に重大なことなんですから、もっとじっくり腰を据えて、そしてもっと卒業をする前からこういうことをやると卒業のときにはきちっと自分に合った職業、つまり自分の能力がわかれば、先ほど大臣が言ったようにブランド志向もなくなって、働く意義というのもしっかりわかるようになるんじゃないかというふうに私は思います。  そういう意味では、大臣、どうぞ文部省に頼らずに、先ほど文部大臣に言ったと言いますけれども、文部省というのはこれは知識、教養、人格、識見でいいと私は思います。雇用の面までとても今の文部省はその力がないというふうに思いますから、これからは労働省が人間の働くという意欲を実現させる、つまり力を持たせるところだというふうに思います。  時間がなくて、きょうは本当は時短の問題を聞いて「モモ」の話も聞こうと思いましたんですけれども、この次に大臣に「モモ」のお話を聞かせていただきます。  最後に、時間が過ぎたんですけれども大臣ひとつ、能力開発という、労働省が人間の、文部省と違った教育に力を入れるという御決意を言いただけますか。
  202. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の方が私よりはるかに哲学をお持ちでございます。先生のそういう御指摘を十分に受けとめまして、御要望におこたえできますように私なりに全力を尽くしたい、労働省も全力を挙げて取り組みたい、こう思っております。
  203. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 よろしくお願いします。終わります。
  204. 末広まきこ

    末広真樹子君 参議院フォーラムの末広真樹子でございます。  これからの雇用をめぐる重点施策について、まずお伺いしたいと思います。  労働委員会における労働大臣の所信表明におきまして、大臣は、雇用失業情勢は依然として厳しい状況にあり、労働者の多様な個性や能力を十分に発揮できるような環境整備を一層進めるとして、「ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会の創造を目指して、全力を挙げて取り組む」と、このようにおっしゃっております。そのお気持ちはまことにすばらしいものと拝聴いたしました。  しかしながら、大臣のお述べになった総論の格調の高さに比べまして、各論の内容がどこまでついていっているのか甚だ疑問に感じるわけでございます。特に、所信にございました五つの法律改正案が、この厳しい状況下で、ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会の創造にどれほどつながっていくのか見えません。余りに細かな改善にしかすぎず、時代をダイナミックに動かしていく政策とはとても思えません。私自身、まだ議員になって半年、労働行政の一端しか理解できておりませんが、こうした政策の打ち出し方というのは理解の及ぶものではないわけでございます。  そこで、質問でございます。今国会に上程される五法の改正案を含めた重点政策の立案はいかに雇用の促進、安定に役立つとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。私は、かような小手先の改革ではない抜本的な雇用促進安定策が必要と思います。そのためには、職安のこれまでの枠を飛び出した、町に出て定職を持ちたがらない若者の意識変革、これについて徹底した調査を行う必要があるのではないかと思います。つまり、今までの労働の概念というのは、自分自身の時間を売ってお金にかえる、自分は家族や妻や子供たちのために嫌でもそうせざるを得ない、つまり我慢して犠牲になっていくのが労働というような概念がございました。しかし今は、若者たちは卒業してもお金は親からもらう、自分は自由と無拘束を選択するという、こういう意識になってきているわけでございます。そういう若者たちと思い切って語り合ってみるというようなことが必要じゃないかと思うんですが、大臣はこの点に関していかがお考えでしょうか。
  205. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生大変壮大な視野から御指摘がございました。言われましたように、若い人たちの意識は私どもの若かったころと比べますともう比較ができないほど変革をしてきているわけであります。多様化してきております。価値観が違います。そういう若い人たちの社会に貢献する思いとか、あるいは自分が働いて家庭を築いていくその心構えとか、そういうものを的確にとらえることが非常に私は大事だと思います。しかし現実は、例えば職業安定所の職員がそういう盛り場に出ていって若者に対して直接アタックするというほど、なかなか要員の関係で余裕を持たせてもらっていないのもまた片方の厳しい現実なんです。  そんな中で、職業安定所の皆さんあるいはレディス・ハローワークの皆さんなどは、本当に私が誇張して言うんではなくて、いろんな面で知恵を出し合って自分で体を動かして求人開拓をやり、どうやれば若者のニーズに合うような職業の紹介活動ができるか、大変な私は頑張りをしてくれていることを実は自分でも見て知っているわけであります。午前中の質疑でもちょっと申し上げましたように、国技館を借り切って若者を集めて職業紹介のイベントをやった、大変すばらしいことだと朝日新聞で褒めてもらって喜んでいるわけでありますが、そういうことでただ単に喜ぶだけではなくて、そういうことが社会の求めていらっしゃるニーズに、ニーズの全部とは言いません。角だと思いますが、その一角にこたえていることは間違いないと思いますので、そういうことを私どもは積極的にやっていきたい。  今度の国会でも法律の改正案を幾つお願いするわけでありますが、その法律の改正によってすべてが片づくと私どもは思っておりません。それはもう一つ一つ必要な法律の改正を行ったり、場合によっては新しく法律をつくったりお願いをしていくわけでありますが、その作業と合わせて、全体的にその求めている社会のあり方、姿というものに、労働行政がいかにしてこれに対応できるかということを日々の業務の中で懸命にやることが今の先生の御指摘にお答えする道ではなかろうかなと、こう思います。  直ちに、あしたにしか浮かぶようなすばらしいことがすぐにできるとは思いませんけれども、そこまで一つの夢と希望だけは捨てないように持ってやっていきたい。これが、ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会の、私のキャッチフレーズに合うんではないかなと、こう思っております。
  206. 末広まきこ

    末広真樹子君 そういう情熱を忘れないで一緒にまいりたいと思うのでございますが、ただお役所的にとんと受けて待っていたんでは時代の変革はキャッチできない、時代の波はあくまでも現場におりてつかみ取れという、これは申し上げておきたいなと思います。  次に、男女雇用機会均等法の見直しについて、これは先輩方がもう朝から皆さん何か集中しておっしゃられたので、大変私ごとき新米がまた最後に同じことを言うのかなという気もしないでもないんですが、そこには新米のまた新鮮さもあろうかと思いますので、お聞きいただきたいと思います。  ともに働き、喜び、安心して暮らせる社会の創造にとって大切な国民の半数を占める女性の雇用を取り上げたいと思います。去年の臨時国会で質問させていただいた際には、十月二十五日に開始された婦人少年問題審議会での男女雇用機会均等法の見直し作業に大いに期待を抱かされたものでした。この作業はどれほど進んでいるのでしょうか。  私の手元に送られてまいりました就職難に泣き寝入りしない女子学生の会の就職黒書には、大変ショッキングな内容がたくさん出ております。これにつきましては労働省側でもその内容は承知されていると思います。去年十月三十日付で出たものですが、学生三百六十一人からの回答で、現状への不満を持つ人が多いと思われ、幾分偏りがあるかなとも思いますが、そこに出てきたことが真実であることは否めないと思います。  アンケート調査によりますと、募集、採用が男子のみであったというのが百八十九人、回答中の五七・八%。資料請求しても女子にこない、百七十五人、回答中の三八・七%。男女別の採用人数を明示して募集していた、はなから女性をのけていたという、これが百九十九人、回答中の六割。女子には応募できない、または女子の採用が極端に少ない職種があったというのは大変多いんです、二百三十五人、回答中七二・八%。女の子を持っている親は、ここでよよと泣くと思うんです。女子は自宅通勤のみとか通勤時間は三十分などのような条件があったというのが百五十一人、これが回答中の四七・五%。これがわからないんですよ。なぜ女子は自宅から通わなければいけないのですか。独立してアパートを借りて自立の道を選んではいけないんですか。働くというのは、親のすねをかじって、家賃も食事代も親がかりで、それでいて働かせてもらいなさいと言っているとしか思えないんですよ。これ大臣、男性の試験官が多いと思うので、何で女子は自宅通勤のみというのがくっつくのか、ちょっと解説してほしいと思うんでございますけれども。  同じ業種なのに男女で初任給に差があったとか、男女同様に募集しても受付での対象は男子のみであったと。これは完璧にだましですね、受付へ行ってみたら男子だけですよと。女は家庭、女にはできないなどのような女性べつ視、性別役割分業についての発言があったというのは回答中二三・七%。これらすべて男女機会均等法からすれば許しがたい事実です。もうそんなことを言った人を全部ここに呼んできなさい、一遍参考人として聞くからというぐらいなことでございますけれども、呼ばれたためしがないですね。一回呼んでほしいなと思うんですが。  現在行われている均等法の見直しは、これらの事実に対応したものとして行われているんでしょうか。同会は、見直しに当たって罰則規定を設けることを労働大臣に強く求めております。当然、このようなアンケートの事実からすれば必要なことと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。とても所信の中で、「均等法上問題のある事案もなお見受けられるところです。」といった、おっとりした認識では現実は済んでいない、せっぱ詰まったところにきておると。つまり、ここへ呼ぶ意思がありますか、確かめる御意思がございますかというのはいかがでしょう、大臣
  207. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 先生の言われたことは十分に私も理解できます。そこで、均等法に定める不当な差別があってはならぬということがまだ守られていないという事実が存在するということは、所信表明でも私は申し上げました。これは事実を指摘したのでありますが、激烈な言葉を使うか使わないかは別にして、私の持っている認識先生の持っている認識もそう変わらないと思うんです。  ただ、罰則規定どうこうということになりますが、実は今この均等法の見直しは審議会で御審議をいただいておりますから、軽々に今ここで私の方からとやかく言うことはできませんけれども、本当のあるべき姿というのは罰則がなくってもちゃんと守られることが本来の姿なんですね。本当はそれを求めているわけです。罰則をつけて強制的に首に縄をつけて引っ張っていくようなやり方が果たしていいのかなという思いもあります。しかし、どうしても罰則規定をつけなくてはいけないような事案があれば、それは当然刑法もあるし民法もありますから、そういうことで対応を今まで日本でもしてきておりますが、この種の問題については私は審議会の御審議の経過を十分に見きわめた上で対応を考えていきたいと、こう思っています。  なお、参考人というお話がございました。これは、参考人を呼ぶ呼ばないは委員会でお決めになることでございますから、もしそれの必要性があればひとつ委員長の方で理事会に諮っていただいて処理をしてもらえばいいことでありまして、そのことを私は決してやるべきでないとかやるべきだということは、ここでコメントすることは差し控えておきたいと思います。
  208. 末広まきこ

    末広真樹子君 ぜひ一度参考人に来ていただくことを、委員長、御検討いただきたいと思います。  次に、こういう大所高所からの男女雇用機会均等法の見直しばかりでなくて、もう少しソフトな面から見直しについて述べさせていただきたいと思います。  女性の労働参加ということについて、女子学生の就職難が起きている原因というのは、女子学生が無能なのではなく、むしろ男子学生より優秀な学生が多いんです。それでも企業が雇いたくない理由は、女性であるための四つのハードルのせいではないかと思います。一つは結婚。結婚するとやめる人が多いから、会社は人材育成のために投資した分が回収できない。二つ目が出産。三つ目が育児。結婚のハードルを共働きという形で越えても、出産後は必ず育児休暇をとるわけでございます。そして、四つ目が介護。家に寝たきりの病人が出れば、まず女性がその勤めをやめて介護に当たる。  この幾つものハードルを乗り越えて職場に定着する女性は数が少ないのです。そんな低い確率に依存するよりは、企業としてはもっと安定性のある男子学生を採用したがる、こういうことであると思うんです。逆に言えば、男性にも育児休業を均等にとらせ、介護休業を平等にとらせれば女性のハンディキャップは一挙に解消できると思います。  そこで質問ですが、これまで賃金を払われていない家事や育児や介護といった無償労働をどのように評価し、真の男女平等の確立の必要性をどれほどお持ちでしょうか。これは婦人局長お願いします。
  209. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 幾つかのハードルの中でも、近年女性の社会進出が進みまして、職場進出というのは著しいものがあるというふうに思っております。  このような中で、実際の共働きの夫婦の生活時間を見ますと、夫と比べましてやはり妻の方に家事等の負担がかかっているというのが現状でございます。女性の能力発揮を進める上では、やはり職業生活と家庭生活の両立というのが主要な課題でございまして、これは、先生おっしゃるように、本来男女双方が担うべきものであるというふうに思います。であればこそ、育児・介護休業法も男女労働者に休業の権利を認めたわけでございまして、その辺もぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それからさらに、女性が家庭責任の多くを担っている根底には、男は仕事、女は家庭といった、いわゆる性別役割分担意識というもの、これは少しずつ変わってきてはおりままけれども、まだまだ根強く残っておりまして、この是正が不可欠であるというふうに思うわけでございます。  この是正につきましては、婦人週間を初め男女雇用機会均等月間、あらゆる機会をとらえて啓発活動に務めているところでありますが、今後ともこれはもう不断に、飽きずにやり続けなければいけないことであるというふうに思っているところでございます。
  210. 末広まきこ

    末広真樹子君 二〇二五年には、日本では高齢者数がそのピークを迎えるわけでございます。介護労働、福祉労働への女性労働力の必要性が高まるだけでなく、男性労働力も広くこのジャンルで求められてくることになります。こうした時代にあって、女性は男性労働力の穴埋めにとどまらず、広い分野での主体的活躍が求められます。  ですから、高齢化・少子化社会を展望したときに、家事と労働の男女均一化、家庭と社会におけるパートナーシップの確立が今後の労働力確保において重大なことであることは否めない事実です。  そこで質問ですが、二十一世紀に向けた労働力の確保の見通し、つまり少子化、高齢化、この二つを抱えた上での労働力の確保の見通しをどうお持ちでしょうか。お答えください。
  211. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御指摘のように、今後二十一世紀になりますと、従来戦後一貫して労働力は増加してまいったわけでございますが、この増加幅は減少し、かつ二〇〇〇年を越えますと労働力が減少に向かう、こういうふうな見込みでございます。  そういう中で、御指摘の点でございますけれども、これは他面、経済成長がどういうテンポでいくかというようなこととも関連するわけでございますが、当面政府といたしましては、新しい経済社会計画あるいは雇用対策基本計画におきまして、長期的には難しゅうございますが、二〇〇〇年までの間の見通しといたしましては、年平均の経済成長実質三%程度ということを前提といたしまして、二〇〇〇年時点では完全失業率二カ四分の三%程度を目標として、それ以下にできるだけ低く抑える、こういう目標で対処しようということでございます。  そういう目標ということからいきますと、労働力自体は確保できるものと見ておりますが、ただ目標どおりいかない、厳しい経済状況の中でいかない、そういうケースにつきましては、経済成長率が一カ四分の三%程度にダウンすることが見込まれる。そうしますと、完全失業率も三カ四分の三%程度に上昇する、こういう厳しい見通しもあるわけでございます。そういう中で、御指摘のように、少子・高齢化ということで、今後高齢者あるいは女性、そういう方々が積極的に働く場に参加していただくことが重要になるわけでございまして、そういう意味で高年齢者あるいは女性が働きやすい環境を整備していくことが今後の私どもの重要課題になるというふうに考えておるところでございます。
  212. 末広まきこ

    末広真樹子君 ありがとうございます。というように、福祉労働、介護労働での労働市場が大きく開けてくる、この点について御理解をいただけでありがたいと思っております。ですからこそ、このジャンルに抜本的な施策を施していただいてダイナミックな市場をつくり出してもらいたい、かように思っているわけでございます。  現在、男性の労働時間の短縮化、目標千八百時間でございますが、これで給料の手取りが減少しました。しかし、休日はふえました。薄い財布で休みがふえた。うれしいのか悲しいのかよくわからない。消費は落ち込んでおります。さらに、将来的には高齢化のために税率は上がるだろう、賃金は横ばいだろう、実質所得は大きく下がるだろうという点が予測されます。これではますます労働意欲が低下するんです。  そこで提案なんです。もう一つ財布をふやしてはどうでしょうか。夫に一つの財布、妻にも一つの財布、ダブルインカム効果です。一世帯に二つの財布のメリットというのは、納税者が二人、消費者が二人、そして労働時間の短縮ということで男性の過労死を防ぎます。女性も無報酬の家事、育児・介護から解放されて、生き生きと報酬を得て働くわけでございます。家庭の中でも外でも男女の役割と責任を分担した結果、一人を複数の役割で人間を活用できるのです。つまり、マンパワーが生まれます。そのためには、パートタイム労働者への所得控除の見直しや労働時間を自由に選択できる労働参加の保障など、新たな施策が必要であろうかと思います。  大臣、これまでの施策を振り返って、男女とも経済的に自立した男女共生社会実現のためにどう施策を進めていかれるのでしょうか、お示しください。
  213. 永井孝信

    国務大臣永井孝信君) 一言でなかなか御回答申し上げることは難しい問題だろうと思いますけれども、要は女性の職場を開拓すること、そういう職場を創出すること、これが大事だと思うんです。これは労働省だけがどこそこに職場をつくりなさいといってできるものじゃありませんから、産業構造が改革されていく、転換していくというその中で、できるだけ女性の職場の開拓ということを実現できるような方向に労働省としても留意をして対応してまいりたい、これがまず一つです。  もう一つは、女性が働くことができれば、今言われたように財布が二つになるわけです。なかなか全部が、全員が財布が二つになるかどうかは別にいたしまして、片方で育児の問題あり介護の問題という細部の御指摘がございました。だからこそ育児休業法をつくるときは大変な論争があったんですよ。大変な論争があって、当時議員立法で出したんです、これは。議員立法ではなかなかうまくいかないというので途中から内閣の提案に置きかえてもらって、中身も少し変わったのでございますが、当初の育児休業法は女性だけが対象だったんです、原案というか政府提案は。それをすったもんだあったあげく、男性も一緒にということで男女がともにこの育児休業を、育児のために休むことができるということにいたしました。  今度の介護休業制度も同じですね。配偶者も含めて全部その介護に当たることができるということにしておるわけでありますから、そういう環境整備は、その土台はできていると思う、土台は。その土台を着実に実現するためにどこまで社会がそれを受け入れてくれるかということでございまして、今調べましたところ、育児休業一つとってみても、男性の取得率というのは極めて低いんですよ。しかしゼロではない。そこに私たちは希望を持っているわけです。だから、ゼロではなくて、限りなく男性も育児に携わってもらう、その間は母親の方は働きに出るということを二十一世紀に向けて着実に前進させていく必要があろう。そのために援助できることは、今の法律の制定された経緯も含めて、労働省としては全力を尽くして環境整備に当たっていきたい、こう思うわけであります。  先生の言われたようなことに、なかなかすばっとお答えすることはできませんけれども先生の言われていることは十分に理解ができますので、御理解が得られますように私ども努力をしていきたい、こう思います。
  214. 末広まきこ

    末広真樹子君 時代はなかなか待ってくれてはおりませんので、わかっちゃいるけどすぱっとはできないでは困るんで、これはダイナミック、ダイナミックと申し上げているのは、だっただったといかぬと、そのはざまで女たちが押しつぶされていくのが目に見えているからでございます。  男性で育児休暇をとった人の話を聞いてみますと、新しい人生が開けた、仕事場以外でこんな楽しいジャンルがあったのかということで、かえって職場に帰ったときに新しい労働意欲がわいてきたというような事例も聞いております。ですから、できるだけ早く女性も男性もともに働けるような社会基盤の整備、保育所とかいろんな面での。それから、今介護の問題でも、介護ヘルパーの数が実質的に足りません。このあたりもどうやって具体的にふやすのかというあたりをやっていただきたいなと思います。  労働力を固定化して一人の労働者に過度に何もかも期待するのではなくて、これからの時代は職業を自由に選択して、ライフステージに合わせて職場を自由に出たり入ったりできて、また長い人生のある局面では夫が再び学習の場へUターンしたりすることも可能な、これが我々の目指す男女共生社会なのでございます。それが一日も早く実現できますように施策の充実をお願いしたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  215. 足立良平

    委員長足立良平君) 本件に対する質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会