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1996-02-27 第136回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十七日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         及川 順郎君     理 事                 志村 哲良君                 野村 五男君                 平野 貞夫君                 橋本  敦君     委 員                 下稲葉耕吉君                 鈴木 省吾君                 中原  爽君                 魚住裕一郎君                 大森 礼子君                 山崎 順子君                 一井 淳治君                 千葉 景子君                 本岡 昭次君                 田  英夫君    国務大臣        法 務 大 臣  長尾 立子君    政府委員        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務大臣官房司        法法制調査部長  永井 紀昭君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        法務省刑事局長  原田 明夫君        法務省矯正局長  東條伸一郎君        法務省人権擁護        局長       大藤  敏君        法務省入国管理        局長       伊集院明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   堀籠 幸男君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  石垣 君雄君        最高裁判所事務        総局家庭局長   木村  要君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        外務大臣官房外        務参事官     古屋 昭彦君        大蔵大臣官房企        画官       古井 俊之君        大蔵省銀行局金        融取引管理官   大月 洋一君        国税庁課税部所        得税課長     村上 喜堂君        厚生省児童家庭        局家庭福祉課長  大泉 博子君        労働省職業安定        局業務調整課長  井原 勝介君        労働省職業能力        開発局能力開発        課長       北浦 正行君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)     —————————————
  2. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 志村哲良

    志村哲良君 私は最初に、長尾大臣所信に関して幾つかの質問あるいは私の意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、この所信表明を拝聴したり拝読いたしまして、私は法務大臣のこのたびの所信表明の中には一つの流れがあるなというように受けとめました。と申しますのは、善人であれ悪人であれ、これに対する根底での人間に対する愛着、これに裏打ちされておるような実は思いがしたわけであります。  例えば、例のオウム真理教であります。私どもなどは、もう事オウムの件に話が及びますと、あいつはとかあいつらはとか、許しがたいねというようなことに話が終始するわけでありますが、大臣所信をお伺いしておりますと、例えば「オウム真理教に対する破壊活動防止法適用の問題につきましては、それが基本的人権に重大なかかわりを有する問題でありますところから、法と証拠に基づいて慎重に検討を重ねた結果、同法に定める解散指定請求のための弁明手続が開始されたものでありまして、今後その手続の中でオウム真理教弁明を十分聞いた上で、公安審査委員会に対する解散指定請求をするか否か慎重に判断することにいたしたいと考えております。」と述べておられますが、実は私などではとても考えられないような本当に温かいお気持ちだな、ああいう邪悪な徒に対しても根底で温かい思いやりをお持ちだなと実は感動をいたしました。決してこれは嫌みでも何でもなく、本気でそう思っております。  次に、「第二は、犯罪者に対する矯正処遇更生保護についてであります。」という項に関してですが、この中で例のイラン人の逃走問題にも触れられながら、「言うまでもなく、安全で平穏な社会確保するには、犯罪者矯正処遇更生保護に万全を尽くし、犯罪者社会復帰の援助にも努めなくてはなりません。」とありますが、できましたらもう少し具体的にこの点をお聞かせいただけたらありがたいと思います。
  4. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 先生から私の所信表明について温かいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。  私は、所信表明におきましても申し上げたところでございますが、法務省の基本的な任務は我が国法秩序維持、また国民のお一人お一人の権利を守っていくというところにあるかと思います。そして、このことは、法律秩序を守るというのは、決してしゃくし定規に法制度適用、運用するということではなくて、国民の方、いろいろなお立場の方がおられると思いますが、お一人お一人のお立場や御意見、また基本的な人権、こういうものを尊重しながらこの基本的な課題というものを遂行していく、こういうことにあるかと思っております。  それから、国民権利を守るという点におきましては、人権尊重ということ、これは現在の我が国社会の中で非常に基本的な大きな課題になっていると思いますが、こういった人権尊重という基本理念を踏まえまして、そして今の情勢の中で国民皆様が考えておられるいろいろな価値観、こういうものを十分に踏まえて行政を進めていかなくてはならない、このように考えているところでございます。  今、先生からは矯正施設、またこういった今後の対応のあり方ということについての御質問がございました。  まず最初に、今回東京拘置所におきまして七名の集団逃走事故を発生させましたことにつきましては、法務大臣といたしまして、まことに遺憾なことでございまして、心からおわびを申し上げる次第でございます。  今回の事件が発生いたしまして、十四日、矯正局長から全国の矯正施設に対しまして保安警備体制の再点検、こういうことについての通達を出したわけでございまして、東京拘置所自体も直ちに外国人独居房に移すということをいたしまして保安警備体制の見直しに努めているところでございます。  私は、今回の事件東京拘置所が四十年ぶりに起こした大きな事故であるという事実に深く思いをいたし、こういった意味では従来の矯正施設における保安体制というものを再点検してみる必要があるのではないかということで、省内に法務事務次官委員長といたします事故調査委員会を設置してもらいまして、あらゆる角度からこの問題についての今後の具体策検討を指示したところでございます。  先生のお尋ねは、こういった警備体制のことに加えまして、全体としての矯正あり方ということになってくるかと思うのでございますが、まずそれぞれの刑務所、拘置所、こういったものにつきまして人権の保障ということは十分に留意していかなければならないものだと思っております。  もちろん、今申し上げましたように、保安というもう一方の観点の留意も重要なことでありますので、このバランスということを十分図っていかなければならないわけでございますが、それぞれの方々につきましてもやはり人としての生活、人としての本来の権利、これが十分に保障されていくということを考えていかなければならないと思っております。  また、刑を終えまして退所いたしました後の更生保護という観点につきましては、ありがたいことに民間の多くの篤志者の方から御協力をいただいているわけでございますが、こういった更生施設というものの充実をやはり今後十分に図っていく、こういうことも私どもにとりましては非常に大きな課題ではないかと思っております。  保護司の皆様、また民間のさまざまな形のボランティアの皆様の御協力のもとに、地域社会の中でこういった方々人権が十分に守られながら、全体としての更生事業が円滑に進んでいくことができるよう努力をさせていただきたい、このように思っております。
  5. 志村哲良

    志村哲良君 ありがとうございました。  申しおくれましたが、実は私が昨晩まで熱を出して人並みに風邪で寝ておりまして、法務省に対して質問内容を御連絡することができていなかったと存じますが、ひとつあしからずお許しを願います。  先ほど来お伺いしておりますような大臣のお考え、これらをもとにしまして、私は、やはりここにもあります、大きな社会問題となっている子供たちのいじめの問題を挙げておられますが、これらにもしっかりとひとついろいろ御指導を願いたいと思っておるものであります。  その次に、この七ページに「そのほとんどが不法に就労していると思われる推計約二十九万人の不法残留者が存在し、社会問題化しております。」と述べられておりますが、まさにそのとおりであると思います。これらに対して具体的にどのような、いろいろ要員の確保云々というようなことは述べられておりますが、対策をあらましで結構ですからお聞かせいただけたらと思います。
  6. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 不法就労外国人問題でございますが、我が国社会経済的な状況変化、また国際的な状況ということを背景といたしまして、不法入国不法残留、こういった外国人が非常にふえているわけでございます。  法務省という立場で申しますと、こういった不法入国不法残留をした上に不法に就労している、こういった入管法違反者という者につきましては、やはり我が国出入国管理の根幹的な在留資格制度、こういうものを揺るがしかねない問題であると思います。公正な出入国管理秩序を乱し、我が国社会の健全な発展ということに悪影響を及ぼすものと認識をしているわけでございます。  そういう意味では、こういった不法入国防止、その減少、こういうことを中心に対策を立てていかなければならないわけでございますが、そのためには入国審査厳格化在留審査厳格化摘発活動を強化していく、それに特に関係機関との連携を強化する、それから国内、国外への広報、こういったものの強化ということが必要ではないかというふうに考えているところでございます。
  7. 志村哲良

    志村哲良君 それでは次に、民事訴訟手続に関する改正要綱について幾つかの質問をいたしたいと存じます。  法制審議会民事訴訟法部会がまとめた民事訴訟法改正案は、裁判所に訴えたいが時間や経費が心配という声が国民の間に根強くあることにかんがみまして、正規の司法手続を経たトラブルの処理が遠慮されがちな風潮を改めようとされたものであると私は受けとめております。まず、これに関する御意見を伺いたいと思います。
  8. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 昨日開催されました法制審議会総会におきまして、これまで法制審議会民事訴訟法部会で長年にわたって検討されました結果を踏まえまして、民事訴訟法改正要綱が決定され、法務大臣答申されたところでございます。  この答申がされた趣旨でございますけれども、現在の民事訴訟法は法典としては明治二十三年に制定されたものでありまして、その第一編から第六編までにおいて民事訴訟手続に関する規定が設けられておりますが、実質的には大正十五年に全面改正がされまして、その後、基本的な改正がされることなく今日に至るまで大正十五年当時の手続構造維持されているわけでございます。  しかしながら、この規定は、一つは片仮名、文語体規定一般国民には理解しにくいという批判が大変強くなってきておりますし、内容的にも、その後の社会変化や経済の発展等には著しいものがございまして、それに伴って民事紛争複雑化多様化の度を強めております。そういうことで、現行法には現在の社会状況に適合しない部分が生じているという点が多々ございます。  また、今御指摘がありましたように、裁判に時間と費用がかかり過ぎるという御批判も大変強いところでございまして、そういうところから裁判所を利用したいと思ってもそれをためらうというようなこともないではないのではないかというふうに考えられるわけでございます。  そういうことで、民事訴訟の現在の制度がより国民にわかりやすく、かつ利用しやすくするという観点から、これまで五年余にわたって検討を続けてきたわけでございまして、その結果を踏まえて昨日、法制審議会答申がされたところでございます。  私どもといたしましては、この答申を踏まえて、ぜひともこの通常国会に所要の法案を提出させていただきたいというふうに考えているところであります。
  9. 志村哲良

    志村哲良君 次に、この改正の中にありました選べる夫婦別姓の件に関してお伺いをいたします。  過日、自民党法務部会におきましては、この問題に関して幾つかの勉強会参考人方々などにもお運びをいただいた中で論議いたしました。非常に建設的な多くの議論が行われましたが、私がその中で感得いたしましたことは、何で今、夫婦別姓かというような点に議論の焦点があったと思っております。  新聞などでも、民法改正要綱夫婦の片方の姓に統一する吸収合併から両方の姓が生きる対等合併への第一歩というようなおもしろい記事もありました。  現在、この問題に関する議論が盛んになっております。何度も御説明いただいたことですが、何で今、夫婦別姓なのかという問題に関しての御説明民事局長にひとつお願いしたいと存じます。
  10. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 民事訴訟法法律案要綱と並んで、昨日の法制審議会におきましてあわせて民法の一部を改正する法律案要綱が決定され、これも法務大臣答申されております。  ここに至るまでの検討といたしましては、法制審議会のこれは民法部会でございますが、平成三年一月から審議を開始いたしまして、以来これも約五年間にわたって関係各方面の意見参考にしながら慎重な審議を行った結果、部会としての答申案が決定され、昨日、法制審議会総会で正式に答申されたという経緯でございます。  法制審議会で今御指摘の選択的な夫婦別制度の導入ということを検討するに至りました主要な理由でございますが、まず一つに、女性社会進出が進んでまいりまして社会で活躍される女性がふえてきたことに伴って、現行制度のもとで婚姻によって氏を改めることによって社会生活上の不利益を受けるという方々が増加してきたということ、それから少子化子供の数が少なくなってきたということの進行に伴いまして、夫婦の一方が氏を改めなければならないということが婚姻の障害になっているという事例が増加してきているということ、それから三つ目に、氏が名とともに自分を表現するものであることを重視して、自己の氏が変更されることを苦痛であると考える人がふえてきていること、そういったことから、こういった問題を回避しながら法律上の婚姻をそういう方々には選択的に認めるということが適当であるというふうに考えられたからであります。  なお、この問題は、我が国政府としても推進をしております男女共同参画型社会の形成との関係も有するわけでございまして、閣議報告されました「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画(第一次改定)」におきましても、地域社会及び家庭生活における男女共同参画の促進の問題として取り上げられました問題の一つでもあるわけでございます。  そういう経過を踏まえて、今の時点で、選択的にそういう方々については別氏のまま婚姻する道を設けるということが適当であるというふうに考えられてまいったわけでございます。
  11. 志村哲良

    志村哲良君 ただいま民事局長の御説明を伺って、何かわかるような、時にわからなくなるような思いがするわけですが、何で今と申しますよりも、じゃ、このことのメリット、これがありましたら、そうでない場合のデメリットメリットに関してお聞かせいただけたらありがたいと思います。
  12. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 夫婦は同じ氏であるということ、これは明治以来の我が国の長い伝統でございますので、現時点におきましても多くの方々は、やはり婚姻をすれば氏を同じにするという道を選びたいというふうに考えられるであろうというふうに私どもも思っております。したがいまして、もしこの制度が導入された場合にも、当面は同氏で婚姻をされるという方々が実際問題としては圧倒的に多いであろうというふうに推測しております。  しかしながら、今申しましたような女性社会進出の進展、それから子供の数が、一人っ子というのがふえてきたというような背景から、やはり氏を変えないまま、別氏のまま婚姻をしたいという方々が、これは全体から見れば現在は少数であろうと思いますけれども、着実に増加してきているということはこれは間違いない事実であろうというふうに思います。そういう方々に、それはだめだ、法律上そういうことは許されないというのが現在の制度でございますが、そういうことにするのがいいのか、あるいはそういう方々にはそういう道もあけるのがいいのかという施策の問題であろうというふうに考えているわけでございます。  デメリットとして指摘されておるところといたしまして、そういう別氏婚姻を認めると家族きずなを弱めるのではないかというような指摘もいただいているところでありますが、しかしながら、法制審議会考え方あるいは私ども考え方といたしましては、やはり家族きずなの強さというものは基本的には当事者意思によってつくっていただくというべきものであろうと思います。もちろん、夫婦が同じ氏であるということがそれに無関係であるとは思っておりませんが、基本的にはそれぞれの当事者意思によるものであるというふうに思っております。  別氏で婚姻をしても、当事者がお互いの人格を尊重して協力し合って夫婦としての生活をしていくという意思を持って婚姻されるということであるならば、そうされる夫婦、それによって形成される家族が必ずしもきずなが弱いものになるということではないのではないだろうかというふうに考えているわけであります。むしろ、当事者がそういう形で夫婦として協力していきたいという意思を持っておられるならば、そういう方々にも法律上の婚姻関係の成立を認めて、そういう方々関係保護を図る方が望ましいのではないかというふうに考えているところでございます。
  13. 志村哲良

    志村哲良君 お恥ずかしい話ですけれども、私なども若干の疑義は持ちながら、自分の妻には、今度この法案ができたら昔の姓に戻っていいよというようなことをわかったような顔をして言うんですが、本当にそうなんです。わかったような顔をして言うんですが、どうも妻の方が見抜いておりまして、あなたそんな無理言わなくてもいいよなんて、もう私は志村の姓の方になれちゃったんだからなんて言われて、毎日何か漫才みたいなことをしておるのが実情であります。  ただ、それにいたしましても、そういう形で今までの家族制度の中に一つの新しい息吹をこの法律によって吹き込まれることができたら、私はそれはそれで非常に有意義なことであろうと考えておるものです。  時間ですから以上で終わります。
  14. 野村五男

    野村五男君 ただいまは我が党の志村理事より、オウムイラン人脱走事件夫婦別姓選択制のお話があったわけでありますけれども、そして人権というものがやはり入っていたような感じがするわけであります。  そこで、私は治安確保法秩序維持について質問をさせてもらうわけでありますけれども、最近非常にコンビニエンスストアで働いている女子高生が銃で撃たれたりという、かつての日本ではなかったような犯罪が起きて、実に痛ましい事件が多発してきていると。やはり、治安維持の面で世界に誇れる日本がまるでどこかの外国の一都市のように変化しつつあるということで、大変危惧しているわけであります。  そこで質問をさせていただきますけれども銃器を使用した強盗殺人事件などが頻発しているところでありますが、その具体事例を改めてお伺いいたしたいと思います。
  15. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘いただきましたように、近年幾つかの銃器を用いた、かつて我が国ではめったに見られなかったような犯罪が発生するようになりまして、世間の耳目を集めているという状況は御指摘のとおりでございます。その幾つかの最近の例について御報告申し上げたいと思います。  まず、強盗殺人事件といたしましては、平成六年十一月に千葉県の松戸市内のファミリーレストランでアルバイト中の女子学生が射殺され、現金が強奪されたという事件がございました。また、平成七年七月には八王子市内のスーパーマーケットの事務所で女子従業員など三名が射殺された事件がございまして、これも大変世間皆様方衝撃を与えた事件であったと思います。さらに平成七年、同じ年の九月には横浜市内の路上で釣り具店の店長が射殺されて、売上金が強奪された事件が発生いたしております。  強盗殺人事件以外の殺人事件といたしましては、けん銃を使用したまさに凶悪な事件といたしまして、若干さかのぼりますが、平成五年八月に和歌山市内で発生いたしました阪和銀行頭取射殺事件平成六年九月に名古屋市内で発生いたしました住友銀行名古屋支店支店長射殺事件がございまして、いずれも金融機関経営幹部が何者かによって射殺された。しかもこの二件は未検挙でございまして、大変な衝撃を与えたというふうに思います。さらに、平成六年十月には品川区内の私鉄駅構内で発生いたしました元患者による医師の射殺事件、それから平成七年三月に荒川区内で発生いたしました警察庁長官狙撃事件等があるわけでございまして、委員指摘のとおり、かつてない事態が散見されるようになったということで、私どもといたしましても、警察等関係当局十分意思疎通を図りながら、その検挙とそして厳正な取り調べのために協力していかなければならないと考えているところでございます。
  16. 野村五男

    野村五男君 銃による犯罪が多発しているわけで、またこの銃というのは、かつて我が国にはないほどの対策上非常に難しい面があろうかと思っております。今現況があったわけですけれども、実際銃に対する対策というものはどのように考えられているのか、お願いします。
  17. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) まさに御指摘のとおり、銃、特にけん銃というものに対しては、最近暴力団の関係者ばかりでなく、その押収対象者という観点からいたしましても一般人たちにも拡散している状況がうかがわれます。  そして、先ほど申し上げましたような悪質な犯罪が発生するなど憂慮すべき状況にございますので、そのような状況にかんがみまして、平成七年九月には内閣に銃器対策推進本部が設置されました。そして、七年十二月にはこの推進本部におきまして銃器対策推進要綱が決定されたのでございます。この要綱におきましては、「銃器の密輸入、密売、不法所持やこれを用いた殺傷等の事犯に対しては、関係法令を適切に運用しつつ、悪質性立証のための証拠収集をも含めて、徹底した捜査・調査と厳格な処理を行い、厳格な科刑が実現されるよう努める。」ということなどが示されたのでございます。  法務・検察といたしましては、けん銃に対する厳格な規制が将来にわたって我が国の良好な治安維持のために必要不可欠であるという認識に立ちまして、この銃器対策推進要綱趣旨を踏まえまして、より実効性のある取り締まりに資するとの観点から、今後とも警察庁を初め関係省庁との連携を一層密にいたしまして、関係法令を適切に運用して引き続き徹底した捜査の実施と厳正な科刑の実現に努めるとともに、国内にいまだ隠匿されていると認められますけん銃の効果的な回収方法にも意を用いまして、事犯の根絶を期してまいりたいと考えております。
  18. 野村五男

    野村五男君 銃をいろんな方法で取得して、日本人が銃を使う場合と、それからやはり外国人が使うという、傾向が二つあると思いますが、外国人による犯罪が凶悪化の傾向にあると言われておりますが、その根拠はどのように把握しておられるのか、お伺いします。
  19. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 日本国籍以外の外国人による犯罪自体も徐々にふえつつあるわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、外国人による犯罪も凶悪化の傾向があると認められて憂慮される事態でございます。  この凶悪犯と一般に私ども呼ばせていただいているのは、殺人罪、強盗罪、放火罪、強姦罪等を挙げるわけでございますが、その検挙人員数から見ますと、昭和六十年、一九八五年、約十年前でございますが、その凶悪犯の検挙人員数は二十八人にすぎなかったのでございますが、平成元年、一九八九年には九十四人と約三・四倍になりまして、さらに平成六年、一九九四年の数字によりますとこれが二百三十人ということで、この十年間で約八・二倍にまで増加しつつあると。この傾向はこのまま続くおそれがあるということで、私どもとしても注目しているところでございます。
  20. 野村五男

    野村五男君 ただいま説明がありましたが、日本には今、非常に暴力的な銃を使った犯罪と、ある意味では住専問題にも絡んでくると思うんですけれども、経済犯罪という二通りの方向性があると私は心配しております。  そこで、経済犯罪についてお伺いするわけですが、主な財政経済事犯にはどのようなものがあるのか、まずお伺いしたいと思っております。
  21. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 一般的に財政経済事犯と呼んでおりますものにつきましては、各種の税法違反事件のほか、金融関係機関等をめぐる詐欺、背任、業務上横領等の事件あるいは商法違反事件、それから不公正な取引に関係いたします独占禁止法等の違反事件、あるいは証券取引の不正に関します証券取引法違反事件、あるいは無体財産権等に関します商標法等の関係法令違反事件等の経済事犯を総称しているわけでございます。  最近摘発された主な財政経済事犯といたしましては、いわゆる二信組をめぐる背任事件、これは東京地検が平成七年七月から十二月までの間に摘発し、現在公判請求中のものでございます。また、財団法人余暇厚生文化財団等をめぐる業務上横領事件、これは同じく東京地検が平成七年十一月に業務上横領等で東京地方裁判所に公判請求し、現在公判中のものがございます。  さらに、日本下水道事業団をめぐります入札談合事件、千代田証券株式会社の役員らによる証券取引法違反事件、これはいわゆる損失補てん禁止違反事件等が記憶に新しいところでございまして、各種経済関係事犯をめぐりましてさまざまな不正実態がございまして、それぞれに対しましてはできるだけ関係者等からの情報収集に努めまして、摘発に当たっているところでございます。
  22. 野村五男

    野村五男君 ただいまは納税時期なんですけれども、脱税等財政経済事犯の取り締まりについてはどうなっているのか、お伺いいたします。
  23. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 一般的に脱税事件または経済取引に絡む不正事犯につきましては、これが経済秩序を混乱させるばかりでなくて、国民一般の間に社会経済に対する不公平感を募らせまして、ひいては民主主義社会根底から、内部からこれに対する疑惑を生じさせるということで、私どもといたしましても、委員指摘の凶悪な暴力事犯と並んで、やはり民主主義社会を守るという観点から、できるだけその実態に迫って適切な取り締まりをしていかなきゃならないということで、こういう認識に立って行うわけでございます。  検察といたしましては、ふだんから内外の経済情勢の推移を注視いたしますとともに、国税当局その他関係機関との連絡を密にいたしまして的確に事犯の実態を把握いたしまして、その上で真に時代の要請に即応するような妥当な検察権の行使に遺憾なきを期しているものと考えております。  そういう観点から、従来、東京及び大阪の地方検察庁には特捜部が設けられておりましたが、今般、明年度予算、現在御審議いただいております予算で、新たに名古屋地方検察庁に特別捜査部が設けられるということが政府原案の中に盛り込まれております。それ以外の検察庁におきましても、この種の財政経済事犯に対して即応できるようにということで、組織体制を強化していこうということで検討をし、予算にもそれを反映させていただいているところでございます。
  24. 野村五男

    野村五男君 今国会はまさしく住専問題で国民の目がそちらに行っているわけなんでありますけれども、この住専問題について現在検察当局ではどのような捜査をしているのか。大蔵省や住専から資料の提供を受けたり、関係者からの事情聴取を行っているのかどうか、まずお伺いします。
  25. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的な事件の具体的な捜査の状況につきましては、この場でお答え申し上げるのを差し控えさせていただきたいのでございますが、このいわゆる住専問題につきましては、政府全体としてこの問題が適切に処理されて大きな意味で解決されていく中で、刑事上の責任についても適切な措置が図られるべきだということが認識されていると私ども理解しております。  その観点から検察当局におきましても、かねて国会等で御論議される状況またその他の情報につきましてできるだけこれを収集分析いたしまして、事態の真相を解明すべく現在努力しているところだというふうに承知いたしている次第でございます。  ただ、住専問題と一口で申しておりますけれども、非常に長い期間にわたってたくさんの関係者が入り乱れて行われた一つの経済的な事象、大きな社会的な事件の流れが背景にあるわけでございまして、その中で経営者の責任と考えられるものから、まさに刑罰法規をもって国家の刑罰権を発動すべきような不正行為があるのかどうか、あるとすればどういう形でどこにあるのかということを適正に探し当ててまいらなければならないと私どもも考えております。  そういう意味で、従来、検察の捜査につきましては、内偵段階からいわば秘匿された形で行われるのが実情でございますけれども、事柄の重要性、そしてその背景について十分理解をした上でないとこれに対しては対応ができないということから、現在、東京には最高検、高検、地検を合わせた連絡協議会、また大阪には高検、地検の間に連絡協議会が設けられまして、情報の収集、そしてその整理分析に当たっていると同時に、既にこの段階から東京、大阪には専従の検察官を定めてその対応に当たっているというところでございます。
  26. 野村五男

    野村五男君 先ほど志村委員質問をいたしましたが、イラン人の問題ですね。私ども、科学技術庁の例の「もんじゅ」の事件で、最近何かぴりっとしない、何か責任が非常に緩んでいるんではないかなというところで、また「もんじゅ」と違った意味で、イラン人のこの逃走劇をやっぱり国民としては心配しているということもあるのでお伺いするわけです。  先ほどもちょっと出ましたが、なぜイラン人逃走事故について警察へのいわゆる通報がおくれたのか、これをお伺いしたいと思います。
  27. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 今般、被収容者の身柄の確保を最大の責務といたしております行刑施設におきまして、七名もの集団逃走事故を発生させたことはまことに遺憾でございますし、深くおわびを申し上げたいと思います。  ただいま先生指摘警察への通報がおくれたのはなぜかということでございますが、端的に申しますと、内部に当時二千十六名の収容者がございましたが、その収容者の人員点呼ということを優先させましたためにおくれたわけでございます。  若干経緯を御説明申し上げますと、午前三時二十二分に、私ども防犯線と呼んでおります外塀に取りつけられた線が切られたらしくて、本部にそこの切られた部分の箇所を示す電灯が点滅すると、本部に詰めておりました職員が外塀のところへ駆けつけましたところ、三時二十七分にはしごがかかっているのが発見されました。  警察への通報は四時十分でございますので、それから考えましても四十数分おくれておるわけでございますが、本来、外塀にはしごがかけられていることを発見いたした時点で、当然のことながら逃走事故の疑いが極めて濃厚であるということでございますから、直ちに通報すべきであったと今深く反省しております。  当時とりました処置は、その後、自宅で待機しております職員を非常呼集をかけるなどいたしまして、所内の先ほど申し上げました二千十六名の収容者の点呼を全部行うと。その間にも若干、逃亡いたしました収容者があたかも寝ているように毛布などを丸めまして布団の中に入れていたという偽装工作などをされまして点呼に手間取りまして、結局四時五分に七名が逃げたということがわかったと。そこで通報した、こういうことでございまして、再度申し上げますが、逃走が疑われるはしごを発見した時点で当然通報すべきであったと今深く反省しているところでございます。  なお、このような反省に基づきまして、翌日、私、矯正局長の名前で全国の行刑施設に対しまして、逃走事故等が疑われる事態が発生した場合の警察当局への通報について改めて注意を喚起する通達を出したところでございます。
  28. 野村五男

    野村五男君 今、説明を受けましたが、やはり新聞等でも、逃走したイラン人をなぜ雑居房に入れていたのかという疑問を感じているわけなんですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  29. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 御指摘のとおり、本件逃走者七名は、ほか一名、もう一人のイラン人とともに私ども東京拘置所の北舎一階の一房という雑居房に収容しておりました。その経緯について若干御説明いたします。  本来、外国人収容者というのは独居に入れておくのが原則でずっとそのような取り扱いをいたしておりましたが、外国人被収容者の中には、言葉の違いから、収容しております職員との意思疎通が著しく欠けるということがございまして、不安を持つといいますか、そういうことで心情の安定を欠く者が多く出てまいりました。その結果どういうことが起こりましたかと申し上げますと、ハンガーストライキをしたりあるいは非常に精神的に異常な興奮をしたりしまして、いわば独居の房内で手がつけられないような状況になってしまうということで、私ども保護房というそういう状態になった者を入れる房がございますが、そこをたびたび使用せざるを得ないというような状況になったことがございました。  そこで、これはやっぱり言葉が通じないために非常に不安感を内に持っているんだろうということで、言葉を同じくする房で一緒に処遇してみたらどうだろうかということで、平成四年に試験的に、心情安定を図るために、共犯関係あるいは房内における行状等にも留意しながら、大丈夫だろうと思われるような者を雑居、つまり同じ国籍あるいは同じ言葉をしゃべる人たちと雑居に入れてみましたところ、心情面において著しく安定をして、そういう暴れるとか精神的に異常な行動をするとかいうことが少なくなってまいりました。  一方におきまして、先ほど刑事局の方からも御説明がございましたように、外国人犯罪が急増しておりまして、それに伴いまして東京拘置所における外国人の被収容者の数も非常に急増してまいりました。そういう配房上の都合等もございまして、現在まで外国人の雑居処遇というものを継続して、事故発生当時は問題のイラン人雑居房一カ房、それから中国人の雑居房三カ房というものを設けて運営しておりました。  このように雑居拘禁をする外国人処遇の選定は、大体次のような基準で行っておりました。まず第一に、犯した犯罪が殺人などの凶悪犯罪でないということ。それから、当然のことですが、同一居房者にお互いの事件の共犯者関係に立つ者がいないということ。それから、対人関係等を見まして集団生活に問題ないと認められる者、こういうような基準で選んでおりました。  本件事故発生の翌日から外国人についてはすべて独居房に移すという措置をとって、現在は独居房に全員入れております。  以上でございます。
  30. 野村五男

    野村五男君 今回のはまあできてしまったことなんですけれども、非常に国民が不安に思っていますので、よりお願いしたいと思いまするが、今回の事件を踏まえて法務省の再発防止策を含めた今後の対応についてはどうなっているのか、お伺いします。
  31. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 本件事故発生後の十四日に、矯正施設に、保安警備体制の再点検はもとより、巡回視察の強化、それから差し入れ物品や房内所持物品の検査の徹底、居房の検査の徹底、構内における鉄パイプ等の適切な管理、防犯線作動時の的確な対応、事故発生時の警察当局への迅速な通報などについて矯正局長通達を発出して指示をいたしました。  また、東京拘置所におきましては、先ほど申し上げましたように、外国人独居房に移しましたほか、今私が申しました通達に従った措置を講じて保安警備体制の見直しに努めておるところでございます。  なお、本件逃走事故の原因を徹底的かつ迅速に調査究明の上、早急に再発防止策を検討し、矯正施設における万全の保安体制を確立することを目的といたしまして、事故発生後の今月十四日に法務事務次官委員長といたします東京拘置所逃走事故調査委員会を設置いたしまして、現在、具体策検討しているところでございます。  夜間における外塀の巡回等警備体制の強化、これは塀の外側を夜間に回るということですが、そういうことの強化、それから鉄格子が容易に切断できないような鉄格子にかえるというような居房設備や警備用機器の改善等、逃走事故防止するための諸方策をこれから講じてまいりたい、このように考えております。
  32. 野村五男

    野村五男君 時間ですので最後にお伺いしますが、大臣にお伺いしたいと思います。  今いろいろありましたように、大変不安な事件が数々起きているわけであります。特にこういうイラン人の逃走事故と申しますか、そういう事件が起きてしまっているわけでありますけれども、これについて大臣はどのようにお考えになられておるか、最後にお伺いしたいと思います。
  33. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今般の七名の集団脱走事故を発生させましたことは本当に遺憾でございまして、法秩序維持を所管いたします法務大臣といたしましては、深くおわびを申し上げたいと思っております。  今、矯正局長から事故状況、原因等について御説明を申し上げたところでございますが、やはり私どもは、こういった事故の発生については職員の気持ちのたるみがあったということを深く反省していかなければならないと考えております。  このためには、あらゆる角度から発生防止のための諸対策検討していく必要があると思っておりまして、事故東京拘置所で起こったことでございますが、全国の施設を視野に入れまして、このような事故が起こらないよう抜本的な対策を講じていく必要があろうかと思っております。  また、先生も御承知であると思いますが、東京拘置所は大変施設も老朽化をしております。今回の事故の現場を私も見てきたわけでございますが、今申し上げましたような簡単に鉄格子が切れないようにするためには、やはり建物の面でも抜本的な解決ということを考えていかなければならないと思っておりますし、施設全体の保安設備等の具体的な仕組みということについても我々は配慮していかなければならないと思っております。  また、今回の事故につきまして、近隣の方々に大変な不安、いろんな意味の御迷惑をおかけしたわけでございますが、地域の皆様との関係を考えますと、やはり今の矯正施設というものの構造上のあり方ということも、保安の問題と並びまして考えていかなければならない問題ではないかというふうに思っております。  そういう意味では、総合的な観点でこの問題に取り組む必要があると思いますが、いずれにしろ、この事故の究明また保安体制の確立という点につきましては、先ほども説明を申し上げました東京拘置所逃走事故調査委員会の結論を早急に得まして対応をとらせていただきたい、このように考えているところでございます。
  34. 山崎順子

    ○山崎順子君 平成会の山崎順子です。  昨日、法制審議会から答申がありました民法改正案についてきょうはお尋ねしたいと思っております。  まず、今回の改正夫婦の氏について別姓の選択制を採用するかどうか、どうも皆様の関心がそちらにばかり行っているようなんですけれども、まず先に、女性の生き方や家族あり方に大いに関係がありますもう一つの離婚制度についてお尋ねしたいと思っております。  申すまでもないことですが、我が国では毎年協議離婚が九割ほど、また家裁の調停を利用する調停離婚が八%、そして裁判離婚が二%くらいというような形で、既に実質的な破綻主義離婚が相当進んでいる、実現していたと言うことができると思います。その上に、一九八七年には最高裁が有責配偶者からの離婚請求を認めましたので、裁判離婚においても積極的破綻主義が一段と進みました。  私は、たまたま二十年ほど前からボランティアで離婚講座ですとか離婚一一〇番というホットラインを開いてまいりましたけれども、ここで家族あり方また夫婦が、親子がどうすればいい関係で生きていけるか、そういったことを一生懸命皆様と相談を受けたりしながら考えてきたわけですけれども、もちろんそこで個人的に相談を受けただけでも二千人、そして講座の受講者となりますと二万人もの方の悩みに耳を傾けてまいりました。  皆、そういった悩みを訴えた方々の中には、御自身の精神的自立や夫との関係修復に努めて今もいい形で結婚生活を続けていらっしゃる方が多数です。ただ、中には家庭内離婚というような形やまた現実に別居という形の破綻した関係になって大変苦しんでいらっしゃる方たちもいらっしゃいました。  そうしたケースを多く見てまいりますと、破綻した婚姻関係によってより深く傷つくのは対等な関係に立てない社会的弱者の側だということを痛感してまいりました。したがって、社会的弱者と言われる方々が一日も早く離婚できるように制度を改善することこそが個人の尊厳と子供の福祉のために必要ではないかと考えております。  ですから、今回の破綻主義というこの改正は大変いいことだと思うんですが、ただ五年の別居期間による離婚を認めるということですね、これ幾つかの問題点があると思います。ただ、法制審議会でも指摘しますようにさまざまなメリットがございます。  まず、裁判の過程で互いを非難し合わなくて済むことから不当に傷つけ合うことを回避できると思います。そのことが離婚のプロセスはもとより、離婚後の子供の福祉という面からも私はプラスに働くことは明らかだと思います。また、経済的自立の困難な女性たち、また今の日本では家庭も仕事もということよりはどちらかというと家庭に入って子供を産むのが幸せというような価値観がかなり蔓延しておりまして、そうしたものをインプットされた女性たちに逆に離婚への心構えを与えるという面でもこの破綻主義というのは好ましいかとも思えます。そして、何よりも愛情や信頼関係がない不幸な結婚は一日も早く解消していいのだろうと思いますし、解消できるような積極的な道を今回の改正は開くことになるのではないかと思います。そのような意味で、私は今回の改正に基本的に賛成でございます。  しかし、幾つか残念なところがございまして、それは社会的弱者と言われる人たちが離婚するまでの間パニックに陥らずに、また追い詰められずに主体的に離婚を選べるようにするその配慮がどうも欠けているのではないかと思うんです。主体的に離婚を選ぶなんていいますと、いろいろ反対意見が出てくるかと思いますけれども、人は、男性も女性もそうなんですが、だれかに言われて離婚させられたと思うとその後の人生というのは大変恨みつらみの暗いものになりがちです。女性でも男性でも、相手から言われたけれども、いろいろお互いの関係を考え、そして今までの来た道を振り返り、そしてまた話し合って、努力して、これはもう無理だと。言われたけれども、最終的には自分が選ぶんだとなりますと、その後の人生の歩み方というのが全く違ってくるというのが、皆さんもよくおわかりになっていただけると思います。そういう意味の主体的にということなんです。  さて、そういうところで、どういう配慮が欠けているかといいますと、この五年間というのがどうも私には、今までのその二千人の個人相談を受けてまいりましても、長過ぎるのではないか。大体二年か三年でほとんどの方たちは、これはもう無理だなと思うと、最初離婚したくないと思っていらしてもほとんどが仕事につき、新しい生活の準備を始められる。ですから、離婚するときの有職率というのはかなり高いんです、昔から。  ただ、離婚をしたい、または相手から言われている、どうしようと悩んでいらっしゃるときは専業主婦が圧倒的に多いんです。でも、皆さん、自分の人生や子供たちのために何とか働きに出るという形で、大体三年ぐらいすればうまくいくということをたくさん見ておりますので、まずこの五年の根拠と、それから別居中というのは、長引けば長引くほど公的扶助が受けられず、母子が経済的にも精神的にも不安定になるケースが多いんですけれども、この別居中の生活費が夫から妻子に払われているかどうかのその実態を知っていらしたら教えてほしいし、それから今回の改正で別居中の生活費が速やかに決められるようなそういった法改正がなされているのかということと、先ほどの五年の根拠についてお答えいただければと思います。
  35. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) まず、五年以上継続して別居しているときというのを離婚原因に加える場合の五年間の根拠ということでございますが、これは婚姻関係調停事件、これは平成六年の一年間に終局した事件について裁判所の方で調査していただいた結果でございますが、申し立てのときに当事者が別居中である者につきまして、調停の申し立てまでどのぐらい別居しているかということを調べましたところ、二年未満の者が約七五%を占めているということから、大体二年くらいの別居で調停の申し立てがされるという平均像が浮かび上がる。そして、調停を申し立てて結局調停が不調に終わる、不成立に終わるというまでの期間、これが大体一年以内でそういう不成立ということに至るということが一つの資料としてございました。  そういうことから考えますと、二年と一年合わせて三年もたてば、三年もそういう婚姻の本旨に反する別居をしていると婚姻関係が回復しがたい状況になっているということなのではないだろうかという推測がつくわけでございます。  ただ、この期間を定めるに当たりまして法制審議会でもいろいろ御議論がございましたけれども、やはり国民感情一般ということを考えました場合に、あるいは外国の立法例等でもかなり長期間を要求しているものがあるというようなことを考えました場合に、やはり三年別居しておればそれで離婚原因になるというのはやや短過ぎる嫌いがあるのではないかというような経過を踏まえまして五年以上ということとされたわけでございます。  ちなみに、平成六年の秋に総理府で世論調査をしていただいた中で、一定期間夫婦としての関係がなくなっている場合には離婚を認めてもよいという考え方を支持する方に、どのぐらいの期間があればいいかということを問うたものにつきましては、四年未満の期間でいいという御意見が五六・八%、六年未満の期間を選択された方、これは四年未満の方の数も含めてですが、七九・六%を占めておったと、そういったことから五年ということにしたわけであります。  もちろん、五年未満の別居期間でございましても、そのほか婚姻関係が破綻して回復する見込みがないときということであれば、それは別個の裁判離婚原因になっておりますので、もとより五年間たたなければ裁判上の離婚が認められないということではないわけでございまして、それ未満のものについては一般的な破綻条項ということで処理するのが適当ではないかというような判断がされたということでございます。  それから、いま一つの別居中の公的な扶助、これは私どもの所管ではございませんので、今にわかに……
  36. 山崎順子

    ○山崎順子君 公的な扶助ではなくて、別居中の生活費を確保するための法改正がありますかということです。
  37. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 別居中の生活費の確保の実情ということでございますが、これは、その実情がどうであるかということについて、申しわけございませんけれども、私現在承知いたしておりません。  法律上の手当てといたしましては、当事者の協議で定められればいいわけでありますが、それができない場合には家事調停あるいは家事審判という形で履行を求めると。それで、家事調停が成立しあるいは審判が確定いたしますれば、それは債務名義として強制執行によって履行できると。なお、家事審判法によりまして、家庭裁判所に履行勧告あるいは支払い命令というものを求めるという制度があるわけでございます。
  38. 山崎順子

    ○山崎順子君 ちょっと質問趣旨をおわかりになっていなかったようですので、済みません、途中で手を挙げましたけれども、今の制度をお聞きしたわけではないんです。今度の改正に当たって、別居中の生活費の確保についてどういう改正がなされたかという質問をさせていただいたんですが、お答えになれないのは改正されていないからで、結構でございます。  じゃ、私の方から要望を言わせていただきますけれども、今おっしゃったように、当然民法七百六十条では婚姻費用の分担請求権に基づく調停または審判の制度があるんですけれども、これは一般に決定までに六カ月以上もかかっているんですね、そういうことは御存じだと思いますけれども。また、長い場合には二、三年もかかっております。そうしますと、別に裁判離婚で五年と決められなくても、今既に、先ほど濱崎さんおっしゃったように別居の方多いんですけれども、調停に出しても何をしてもその間の生活費すらなかなか決まらないという状況では五年の別居なんといったらどうなるのかと、その五年間が今問題でお話をしているわけです。  ですから、そのあたりの、調停で婚費が決まってもまたなかなか履行されないということも多いわけです。婚姻費用分担請求というのは別居中も婚姻関係が継続しているような錯覚や混乱を当事者に与えがちなんですが、この七百六十条に二項として、例えば別居中の生活費分担請求を別項で規定することが私は望ましいと思いますし、例えば家裁に別居調停ですとかまた審判部を専門に創設して、ここで別居の開始を確認するということが大事だと思うんです。  それは後の公的扶助にも関係があるんですけれども、そこで生活費の分担というのは別居の理由を問わずに負担能力に応じてすることにして、子供の監護、面接等も含めて、生活費の迅速な処理がなされるような制度をつけ加えたらどうかなということを要望したいんです。また、審判などですと、申し立ての一カ月以内で生活費の請求が決まるようなそういった迅速な処理をお願いしたいと思うんです。  それから、後の履行の方ですと、今現実には履行勧告や履行命令、これは生活費の方じゃありませんけれども、養育費の方では履行勧告も六割ぐらいしか履行されないというような状況が家裁の調査官などの意見でも論文に書いてあります。ぜひとも民事執行法も改正して、弁護士を頼まなくても、ここには弁護士さん大勢いらっしゃいますけれども、給料債権に対する強制執行に限っては当事者が簡単に申し立てができて、継続的な支払いについては毎回の期限到来ごとに新たな申し立てをしなくても、これは五万とかまたは養育費三万、今は生活費のことですが、十万とか、そういったことを一回一回やらなきゃいけないのが今のシステムですけれども、そういったことをしなくても強制執行ができるようにするとか、ぜひそういったことをお考えいただきたいということを要望します。  では、ちょっと労働省にお聞きしたいんですが、別居中、生活費というのは、今申し上げましたようになかなか夫側から送られてこないし、調停に出しましてもすぐに決まらないんですけれども、別居中の女性が再就職するときに就労するためのトレーニング制度などはあるのか、また別居中だということで就職しにくいという相談が多いんですが、そういったような実態をつかんでいらっしゃいますでしょうか。
  39. 北浦正行

    説明員(北浦正行君) トレーニング制度関係について御説明したいと思っております。  能力開発の関係でございますが、御指摘のように別居を余儀なくされたような女性の方も含め、そういった個人事情にかかわらず職業生活を中断した後に再就職を希望される方は大変多うございます。そういった方々につきましては、就業に必要な知識とか技能が必ずしも十分でない場合がございますので、私どももそういった観点からの能力開発を積極的に進めているところでございます。  具体的に申し上げますと、公共の職業能力開発施設、これは国の方で雇用促進事業団の運営するものとそれから各都道府県の運営するものとございますが、こういった公共の施設におきまして、特に職場復帰や再就職を希望する女性方々に対し、そういった希望者ごとのニーズに即した特別の訓練コースを設定して実施をしているところでございます。  また、それにあわせまして、特に再就職に向けていろいろな情報提供なりあるいはそういう準備、心構えなどが必要な場合がございます。そういったような関係の雇用促進センター、あるいは都道府県、地方公共団体におきます婦人就業援助施設、こういったような施設におきまして関連の援助を行っているわけでございます。  これに限らず、女性の能力開発は大変重要な問題だと考えておりまして、私ども今後そういった女性方々の多様なニーズにこたえた能力開発機会の提供ということには十分努力をしてまいりたいと思っております。
  40. 井原勝介

    説明員(井原勝介君) 別居中の女性の職業紹介についてお答えいたします。  ハローワーク、公共職業安定所におきましては、職業紹介に当たりまして別居中であるかどうかということについては把握するシステムにはなっておりませんので、別居中ということによって女性が再就職に当たって不利になっている事例等については把握をしておりません。
  41. 山崎順子

    ○山崎順子君 ありがとうございます。  男女雇用機会均等法の中に、雇用者に対する「指針」として、採用上限年齢等で男女差別をしないようにというような指針が入っているのは皆さん御存じだと思いますけれども、現実には男性は割合、今でも転職する方もいらっしゃいますが、終身雇用の制度で学校を出てからずっとお勤め続けている方が一般に多い。ところが女性の側は、出産、育児等で退職して子育て後にまた再就職するという形が多いわけですので、その再就職のときに採用上限年齢、いわゆる年齢制限ですけれども、これがあることによって実質的に差別をやはり受けるのは多くは女性だと思うんです。ですから、男女の差別をしないように、同じようにという指針だけではどうも間に合わないというような感じがいたします。  一九六七年にアメリカでは既に年齢で採用差別、応募差別をしてはならないという法律ができておりますけれども日本でもぜひそういったものをつくっていただきたい。そうしませんと、やむを得ず離婚になる、だれも好きこのんで離婚をするわけではございませんから、そういった人たちが別居中に一生懸命働きたいと思っても大変難しいのではないかと思いますので、ぜひ労働省の方でこの年齢制限についてこれから研究し御検討いただきたいと思っております。  それで、時間がありませんのでちょっと急ぎますが、厚生省にお伺いしたいと思います。  厚生省の方では、保育園のことについてちょっとお聞きしたいんですけれども、例えば別居中、夫が出ていったとします。そうしますと、共働きの妻が保育園に子供を入れて働いている場合に、夫と妻の所得の合算で保育料が決まっているんですね。そうしますと、生活費が夫から全く来ないにもかかわらず大変高い保育料を払っていて本当に困っているという相談が多いんですが、こういったものは速やかに妻だけの所得で保育料を決めるということにはできるんでしょうか。今、それともそういうことがなされているか。簡単で結構です、お答えくださいますか。
  42. 大泉博子

    説明員(大泉博子君) 保育料につきましては、御指摘のとおり、お父さんとお母さんの合算で決めておるわけでございます。  別居しまして直ちにお父さんを合算から外すということはしておりませんけれども、別居の実態によりましてお父さんが明らかにお子さんと同一世帯でない、同一生計でないという場合には外すことをしております。
  43. 山崎順子

    ○山崎順子君 それでは、それはぜひ、直ちにじゃなくても、別居中でこういうふうに困っているというときは保育料を速やかに変えていただきたいと思います。  建設省によれば、母子世帯、別居中は公営住宅には入れないということははっきりお答えいただいたんですが、ただ、離婚しても倍率が十一・九倍とか十・一倍とか、一年間の新規のその枠が六百三十八戸という優先枠しかないので住居に大変困っている。持ち家が、全世帯は六一・二%で、死別の母子は六八%が持ち家なんですが、離別は大変低くて二二・六%しかないという、住居に困っている方が多い中でなかなか優先されない、また別居中は入れないという状況なんですが、母子寮とかそういったのは別居中でも入れると聞いております。  ほかに医療費とか、それから別居のときというのは母親が病気になりやすいんですね。そうしますと子供もまた病気になるというようなことがありまして、ヘルパーの派遣等はどうなっているのか、ちょっとその辺をお伺いしたいと思います。
  44. 大泉博子

    説明員(大泉博子君) 母子寮は、御指摘のとおり、離婚と同じ状態にある別居中の女性も対象にしております。  それから、医療費関係でございますけれども、母子及び寡婦福祉法というのがございます。この法律は、配偶者と死別あるいは離婚した女性だけでなく、配偶者から遺棄されている、捨てられていると申しますか、そうした女性も母子家庭として制度の対象としております。したがって、事実上離婚と同様の状況だと判断されればホームヘルパーの派遣事業も対象にしております。  それから、医療費の助成制度についての御質問でございますけれども、これについては地方自治体において独自の制度として行われているものでございます。したがって、私どもすべては把握してございませんけれども幾つかの事例を見てみますと、離婚に至っていないけれどもお父さんから遺棄されている、捨てられている状態にある母子家庭、つまり別居中の母子家庭も対象にしている自治体が多うございます。
  45. 山崎順子

    ○山崎順子君 そういったことをお聞きいたしましたのは、今回の改正に当たってはぜひとも、厚生省や労働省、建設省、すべての省にこれはわたることだと思いますので、いろいろ各省庁から御意見を出していただいて、よりいい形の改正にしていただきたいと思うからでございます。  大蔵省に聞きたいんですが、別居中に妻に生活費を送らない夫が会社で配偶者控除ですとか子の扶養控除を受けているんですけれども、こういった点については違反ではないのか、またはすぐに妻側にそれを変更できるものなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  46. 村上喜堂

    説明員(村上喜堂君) お答えいたします。  今お尋ねのケースは、家族と別居中の夫が生活費を払っていない場合、こういうケースだと思いますが、こういう場合は一般的には配偶者控除の適用は受けられませんということでございます。
  47. 山崎順子

    ○山崎順子君 子供の扶養控除もですね。
  48. 村上喜堂

    説明員(村上喜堂君) 子供の扶養控除、それは夫が別居中の奥様が養育している子供に対して生活費を送っているケースですね。通常そういった場合は、お子様が他の方の扶養控除になっていない場合は夫の扶養控除の対象になります。
  49. 山崎順子

    ○山崎順子君 ちょっとよくわからなかったんですが。妻が子供を引き取っていて、別居中の夫が生活費を妻にも子供にも送っていないというときは、当然子の扶養控除は受けられないと解してよろしいんですね。そうお答えになったんですね、今。
  50. 村上喜堂

    説明員(村上喜堂君) そのケースは受けられない。それは受けられないと思います。
  51. 山崎順子

    ○山崎順子君 ありがとうございます。  原則は受けられないというのはわかっておりますが、調べられていないので受けている方が結構あるんじゃないかと。妻側になかなか変えてもらえないというケースがありますのでお伺いいたしました。  それでは、なぜこういった別居中のことをいろいろ聞きましたかといいますと、やはり別居中の子供たちの精神状態などを見ますと、母親の経済生活が安定しているかどうかというのが大変大きく影響するものですから、別居中でも公営住宅に入れるようなシステム、そこまでいかなくても、今の住んでいる家を追い出されないかどうかという不安を持っている方もいらっしゃいますので、居住用の住宅の確保ですとか、それから先ほどの生活費の確保ですとか、働きやすい状況とか、そういったものを十分整備していく必要があると思うんです。  そこでもう一つ大事なことは、今度は離婚した後、先ほど生活費のことを申しましたが、養育費の確保ということが大事だと思うんです。今回、養育費については費用のことが書かれておりますけれども、現実にはその養育費について協議するとなっておりますが、これは協議が調ったかどうかというのはどういうふうに見るのか。また、それは何か離婚届等に書くものなのか、費用の算定方式とか、どういった支払い方法でとか、そこまで詰めるのかどうか、ちょっと法務省の方からお答え願えますか。
  52. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 協議上の離婚をする場合には、子の監護に関する必要な事項を協議で定めるということでございまして、今回の法制審の答申におきましては、この協議対象として養育費の点をその対象であることを明確にするという改正案になっているわけでございますが、これは当事者間の協議で定められると。協議で定まらなければ調停あるいは審判、あるいは離婚訴訟におきましてはその離婚判決の中で一緒に定められるということでございます。  その基準については、特に今回法改正ということは考慮しておらないわけでございますし、また協議の内容が離婚届に記載されるということも現在の制度ではないわけでございます。
  53. 山崎順子

    ○山崎順子君 御存じだと思いますが、離婚後の母子の収入というものは、これは厚生省の全国母子世帯等調査結果の概要で、平成五年八月一日現在ですけれども、これは平成四年度のですが、まず一般世帯六百四十八万円に比べまして、離別母子世帯というのは二百五万なんですね。そして、先ほど言いました母子世帯調査平成五年のですが、養育費を現在受けているのは一四・九%なんです。受けたことがあるという人を入れても三割なんですね。  たった二百五万程度の収入で、それでいて子供たちは養育費も父親から送られていないということであれば、今のお答えのような形では、まず貧しい状況生活に苦労している中で、協議が調わない後も養育費を調停に持ち出して一生懸命決めるための努力ができないんじゃないかというのが、私など相談を受けていての痛感するところなんです。やはり、もう少し養育費をどう算定するか、またはきちんと養育費が取り立てられるような制度というものを考えなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、これについては今後養育費についてきちんと整備なさるおつもりなんでしょうか。
  54. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) まず、養育費の額を決める基準ということでございますけれども、これはその性格上、法律的に言えばおのずからどういった事情を考慮するかということは明らかになっておるのではないか。要するに、子供さんの養育に要する費用ということが基本でございまして、それを踏まえて双方の経済能力ということを考慮して定められるということで、この点はおのずから明確な事柄なのではないかなというふうに思っております。  それから、その手続につきましては、先ほど来申しましたような家事審判、いわゆる家事調停、家事審判あるいは離婚訴訟の場面で決定されるということで、これも裁判所を利用した手続としては一応整備されているのではないかと思っております。  なお、先ほど来委員が御指摘の別居中の費用の分担、あるいは離婚した後の財産分与等の問題も含めて、そういった婚姻関係、離婚関係にまつわる費用の履行の確保について、委員先ほど申されましたような民事執行上の特別の手当てといったことを含めたさまざまな御提案があるということは私どもも承知しておりますし、今般の答申がされるまでの法制審議会民法部会議論の中でもそういうテーマは一つ検討事項として取り上げられたところでございますけれども、この問題は、民事執行制度全体との関係等々慎重な検討を要する問題が多数あるということで、今回の改正案の中には盛り込まれなかったという経緯がございます。その審議におきましても今後の重要な一つ検討テーマであるという位置づけがされているところでございますので、私どももこれからの問題として重大な関心を持って検討を続けていきたいというふうに思っているところであります。
  55. 山崎順子

    ○山崎順子君 昨年の暮れに私は離婚した人たちにアンケートをとったんですが、それは養育費の件や面接権、離婚した後一緒に住まない親との行き来というような面接交渉権についてですけれども、離婚した後も父親または母親、養育費というのは私はどちらも払わなきゃいけない、その義務があると思っております、父親だけじゃないんですが。  主に今は七割が母親が子供を引き取っておりますから、その一緒に住んでいない父親と子供たちが行き来がちゃんとある場合はおもしろいことに養育費の支払い率も大変高いんですね。これは面接がある場合五六%も支払いがあるということが判明いたしました。ないケースでも四四%ありました。これはたまたま私どもがやっている千五百人の全国のネットワークというところでのアンケートですから、多分かなり養育費についてとか面接権についてという意識が高い人たちだから多いということもあるかと思います。さっき厚生省の全国の調査では一四%とか一五%の支払い率でしたから大変高いんですが、それでも十年前に調査したときもやはり親との行き来があれば養育費の支払い率がいいということがございましたので、今回面接権をきちんと規定したというのは大変私はいいことではないかと思っております。  それと同時に、アンケートでは養育費についてこういう要望が多かったんです。やはり国で何か第三者機関なりをつくって養育費の立てかえ払いをしてもらえないかというのが六九・二三%。それから、夫が今はサラリーマン世帯が多いわけですけれども、夫の給与からの自動天引きを望む声が四四・三八%というふうになっておりました。  この辺はいろいろ詰めなきゃいけないところで、即座にこれができるとは思っておりませんけれども、言いたかったことは、多くの方たちがやはり父親からの養育費がないことが、経済的な問題だけじゃなくて、子供たちが捨てられたような思いを持つ、そういったことが精神的によくないんじゃないかということや、やはり女性ひとりだけで父親役割、母親役割を両方するのは無理がある。そしてまた、経済的にもやはりある程度安定していた方が、子供に対して八つ当たりをしたりいらいらしたりそういったこともなくなり、大変母子の関係がよくなる。そして、経済的によければ離婚の影響というのもほとんどマイナス面で影響しないということもいろんなデータから出ております。  そういう意味から、母親たちが養育費をきちんと取り立てができるような、そして決定できるような、つまり、先ほど支払い額とつい言ってしまいましたが、額は労研方式とかいろいろ基準がもちろんございますが、今回の場合、届け出にきちんと明記できるような方法にするとか、何かもう少し検討する余地があるのではないかなというふうに考えております。  そこで次に、厚生省の方にも、審議会にたしか児童家庭局の企画課長がメンバーとして入っていらしたそうですが、知り合いの弁護士の委員によりますと、何か出席なさらなかったんじゃないかというようなこともあります。それはともかくとして、一九八五年に離婚制度等研究会を厚生省ではつくられて、報告書も出していらっしゃいます。その中で、養育費の取り決めを離婚届の記載事項とする方法ですとか、未成年子のいる夫婦の協議離婚に対しては公的機関による離婚意思や扶養の取り決めなどの確認手続を義務づけるという方法を提案していらっしゃるんですね。その後そういったことを今回の民法改正に当たって提案なさったのかどうか、また検討なさっているのかどうか。どうもちょっとそうじゃないみたいですので、ぜひ今国会でいろいろ審議される中で厚生省としては、現場から母子の生活をよく御存じでしょうから、いろいろいい提案をしていただきたいという、ちょっと要望をさせていただきます。  さてそれから、あと最後にちょっと財産分与について聞きたいんですが、今回の改正は原則二分の一ずつと考えてよろしいのでしょうか。
  56. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回の改正におきまして、財産分与ができるだけ充実した内容で適正にされるということを確保するという観点から、その判断基準をより明確にする改正をするという案が法制審議会から示されているわけでございます。  財産分与の制度の本旨は、現行法夫婦別産制を前提といたしまして、離婚に伴う当事者間の財産上の公平を図るというものとして位置づけられております。したがいまして、その財産分与は婚姻中に夫婦が取得しあるいは維持した財産の清算ということが中心課題になるわけでございます。  したがいまして、原則として婚姻中における財産の取得または維持についてのそれぞれの当事者の寄与の程度、これが中心的な基準であるというふうに考えております。  ただ、当事者婚姻中に従事した労働の質が異なるなどの事情によってその寄与の程度が同じか異なるか明らかでないという場合には、それを補完する補助的ルールとして二分の一、相等しいものと取り扱うという考え方でできているわけでございます。  そういう趣旨でございまして、あくまでも寄与度がどちらが高いかということを基準にして考えるという原則のもとで、その異なることが明らかでないときは二分の一というルールを設定しようということであります。
  57. 山崎順子

    ○山崎順子君 ちょっと今の説明ではわかりにくいんですが、例えばサラリーマン家庭で専業主婦の場合はどうなりますでしょうか。
  58. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) それは、収入を得ている者の収入とそれから家庭を守っているということの労働の価値を比較するということでございまして、それはそれぞれの事情に応じて審判におきましては家庭裁判所において判断されるわけです。したがって、それが異なることが明らかだ、そういう場合には、例えば七対三というふうに見るべきだという判断がされればそれはそういうことで判断されるだろうと思いますし、そうでなくて、これはやはりどちらが高い低いということを比較することができないということになれば、相等しいものというふうに取り扱うということになろうと思います。あくまでも個別の事情に応じて家庭裁判所において判断されるということであります。
  59. 山崎順子

    ○山崎順子君 今のはちょっと違うんじゃないかと思うんです。今までは大体そうだったんです。  今までそうだったものですから、財産分与というのはほとんどされないで、離婚する人の半数というのは妻の側は、慰謝料も財産分与も今どんぶり勘定ですから一銭ももらわずに別れているというのが実情で、今回の改正はそれを、専業主婦であってもサラリーマンの夫が得た収入というのはその夫が働くために専業主婦になったんであって、子育てや家事やありとあらゆることをやってきたから貢献度は同じだということで二分の一にするというのが今回の改正ではないかと思いましたが、違いますか。
  60. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 今回の改正案において一番中心的な基準として、「当事者双方がその協力によって取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度」、これを最も中心的な基準として掲げているわけであります。したがいまして、その中には当然家事、育児ということで財産維持に貢献した妻の貢献というものが考慮されるということになろうと思います。  それから、今回の改正によって従前の規定とどう違うのかということでございますが、これまでは極めて抽象的な基準しかございませんでしたけれども、今回はその基準を具体化するということによって適正な家庭裁判所の判断がされるということに寄与しようとするものでございます。  それから、二分の一ルール、これにつきましても、先ほど来申しましたように、寄与度がはっきりしなければ二分の一ということを打ち立てているわけでございますけれども、寄与度が違うと判断されれば違う判断がされる、これはそういうことでありますが、そういうわからないときには二分の一ということを定立することによって、運用としては適正、充実した処理がされるということが期待されるというふうに思っております。
  61. 山崎順子

    ○山崎順子君 どうも二分の一ルールがマスコミ等でもひとり歩きをしておりまして、原則二分の一になるのかと思って今回の改正に大変賛成だという方たちが多いように思うんですが、今のを聞いておりますと、結局、収入もなく精神的な苦痛の状況にある人が必死で、私はこれだけ何十年の間寄与した、これだけの貢献をしたと、時間をかけて弁護士をつけて言わなきゃならないように聞こえるのでとても残念なんです。  この問題をやっておりますと別姓の方に行けないので、とりあえず、これは財産の分与を請求することができるというのではなくて、婚姻中二人で築いた財産はサラリーマン家庭のような場合原則二分の一ずつ分割をすると。財産分与ではなくて分割とお決めになる方が私はいいのではないかと考えております。清算すべき財産には年金、退職金、恩給等の見込み財産も、恩給は見込みじゃありませんが、そういったものも含めるというようなことや、また情報開示制度を確立して公正な財産の清算が行われるように、もう少しこのあたりを検討する余地があるのではないかと考えております。  これはまたいずれ上がってきたときに議論させていただくといたしまして、ちょっと別姓についてこれから御質問させていただきたいと思います。  長尾大臣にお伺いしたいんですが、大臣長尾というお名前は御自身の旧姓でいらっしゃいますか、それともお連れ合いのお名前なんですか。
  62. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 夫の姓でございます。
  63. 山崎順子

    ○山崎順子君 お仕事の途中で例えばお名前を変えられてやっぱり不便だなとお思いになったことや、御自身のことだけじゃなくていいんですが、周りで今までキャリアを積んでいらした女性たちの中で、そういったやっぱり女性は大変だ、女性だけじゃありませんけれども、九七・七%が夫側の姓に変わっている今の世の中ですから、主に女性の側が大変だなというような、そういったことをお感じになったようなことはございますでしょうか。
  64. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 私自身は仕事をいたしましてから三年目ぐらいに結婚をいたしました。  そのとき、当然でございますが、どちらの姓を名乗るかということを夫婦で相談をしたわけでございますが、夫がいわゆる長男でございまして、どうしても自分の方の姓を名乗りたいと強く主張をいたしまして、私は三年目でございますので、実は旧姓は小林というのでございますけれども、小林立子さんで売っていたわけでもないということで、妥協をいたしまして夫の姓にいたしたわけでございます。  しかし、私どもの同世代の方の場合には、ある程度の社会的な活動を今までの旧姓でしてきたということから、その姓を名乗って今後も活動を続けたいという方は何人かおられまして、その方々の場合には、もちろん夫の方が妻の姓に直すということを同意されたケースもありますし、また現実には夫の姓に戸籍上はされていても、社会的な活動の場では旧姓のまま通されたというケースもあったように記憶をしております。  しかし、旧姓で通すということにつきましては、やはりお仕事の種類等におきまして若干の制約があったということではないかと思っているわけでございます。
  65. 山崎順子

    ○山崎順子君 女性が今後どんどん社会進出をして、また日本では今でももう高齢化社会ではなくて高齢社会に入っているというような状況で、今後、少子化と相まって労働力もなくなりますし、若い人たちがどんどん少なくなっていくという中で、女性の労働力というのは大変大事なものですし、それから女性たちが家族も大事にしたい、そして子供も産みたい、そう思いながら仕事もしたいという、そういった希望をかなえていくのが私たちの務めではないかと考えております。  そういった中で、やはり別姓も選択できるというのは若い人たちにとっては朗報ではないかと考えているんですが、ただ、働く女性のためだけじゃなくて、例えば私たちは、同窓会にしても、また昔の友達にしても、あの人の名前何だったかしらと、旧姓の方は覚えているんだけれども結婚した姓がわからなくて大変戸惑ったり苦労することがございます。  例えば大臣ですと、今、長尾立子さんてすごくよくいろんなあれでテレビへ出ていらっしゃるけれども、あれは昔の小林さんかしらとか、そういった形でわからないわけです。ところが、ここにいらっしゃる鈴木省吾さんですとか及川順郎さんですとかという先生方ですと、ああ及川さんちの順郎君が頑張っているなというふうになるわけです。  その辺がやっぱり、女性たちは好きな人と一緒になってその人の名前になりたいと思うときももちろんありますし、そういう人が多いだろうとも思うんですけれども、今の中では。ただ、結婚してみたら名前が変わって、そういうふうに仕事じゃなくても大変不便を感じることが多い。まず印鑑から運転免許証から年金の手帳からもうありとあらゆるものを変えなきゃいけなくて、何でこう同姓にしなきゃいけないかなと疑問を持つような方も多かったんじゃないかと思います。  そういう中で、今の民法ができたときにも、またそれから離婚の際の福祉の問題の昭和五十年ごろの国会の議論でも、全部その議事録を取り寄せてみますと、民法ができた当時から、なぜ同姓にしなきゃいけないのか、別姓でもいいんじゃないかというような議論はずっとあったわけですね。  そういう中でようやく今回、別姓も選択できる、何も別姓を強制するわけじゃなくて、そういった形に世の中が変わってきたというか、法務省からそういった答申がなされたということは本当に世の中の流れが変わってきたんだなということで、ある意味では大変喜ばしいことでもあると思っております。  反対意見も随分、慎重意見といいますか、あるように思いますが、幾つか先ほど同僚議員からの質問で反対意見がございました。例えば家族の一体感がなくなるとか、そういったことについては大臣はどういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  66. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今回、法制審議会から夫婦別姓答申をいただきまして、きのう私は審議会の総会に出席をさせていただきました。非常に記念すべき日に法務大臣をやらせていただいていて私は大変幸せだとそのときに思ったわけでございますが、ある意味では日本のこういった民法の歴史の中でも画期的な一時期を今迎えているんではないかという気がいたしております。  それは、このような方向に審議会の御意見がまとまりましたことには、今、先生からお話がありましたいろんな意味社会情勢の変化、それから大きくは我々の意識の変化というようなことも背景にあるんだろうと思います。確かに、夫婦が同じ氏を称するということは家族の一体感の確保という観点で意義があるという御主張は、それは私も否定できないところであるかと思います。しかし、家族きずなというのは決してそういった形式的なものだけではないという気もいたすわけでございます。  これからの新しい時代というものを考えてみますときに、今既にもう始まっているかと思いますが、やはり個人にとりまして多様な生き方を選択する、そういうことを認めていく、こういう時代に私たちは入りつつあるのではないかという気がいたしております。夫婦が大切である、家族きずなが大切である、このことは我々の社会の安定という極めて大きな課題から見ますと大変大切な、我々が守っていかなければならないものであると思いますけれども、それを具体的に表現する方法としてはさまざまな選択がそれぞれの方のお考えによってあり得るのではないかという気がいたしているわけでございます。  この選択的夫婦別制度というものは、ある意味でこういった我々の社会の大きな流れの中で一つの方向として提案されたものだと思っているわけでございまして、国会での御審議につきましてはよろしくお願いを申し上げたいと思っております。
  67. 山崎順子

    ○山崎順子君 今、大臣の御答弁にもありましたように、家族の一体感とかきずなというようなものは形でつくられるものではないというのは、もう本当に多くの方々の一致する意見だと思うんですね。  家族の機能といいますのは、経済機能、保護の機能、教育の機能、先祖を祭る機能、子供を産み育てる機能、さまざまな機能がございますけれども、今のように外部でいろいろな機能が代替できるような世の中になってまいりますと、究極の機能というのはもう本当に情緒的機能に集約されるんじゃないかというふうに家族社会学の先生たちも、ほとんどの方たちも、私が全国を講演で歩いて女性たちに話を聞いていろいろディスカッションしてもらっても、やはりそこに集約できるんじゃないかというふうにおっしゃいます。  その情緒的機能というのはどういうものかといいますと、ただ名前を一緒にする、ただ一緒に暮らすというだけではなくて、やはり一生懸命お互いに働き、子供を育てる中で、苦労もあります、本当に波風もたくさん立つでしょう。そういう中で、行動をともにして共感する、そして感動する。そういったことを繰り返す中でお互いのきずなが生まれ、一体感が生まれていくのであって、そういうことをほとんどの方が認識している中では、私は、たとえ別姓というものを選んだからといって、それは家族きずなが失われるとか一体感が失われるということにならないと思うんですね。  反対論者の中にいろいろ今回、全部読ませていただきましたけれども、名前が違う子供は愛せないんじゃないかということを弁護士さんでおっしゃるような方がいたり、大学の先生でいらっしゃるんですが、そういった方はやはり子育てにかかわってこなかったからなのかなとか、そういうふうにも考えましたけれども、その辺では女性たちはたとえ別姓を選んでも、それ以上に夫との関係をよくしたい、子供たちともいい関係で暮らしていきたいということを望んでいるのであって、その辺の危惧は余りないんじゃないかという気がいたします。  今回の世論調査のおもしろかったところは、夫婦が別々の名字、姓を名乗ることができるように法律を変える方がよいと思いますか、そうとは思いませんかというときに、そう思うというのは二七・四%で確かに少数派ではございます。しかし、四分の一以上というのは決して少ない数ではないんですね。それと同時に、二十代、三十代では、そうは思わないという人よりもそう思う人の方が上回っているわけです。  ですから、これからの世の中をつくっていく、日本を支えていく若い人たちにとっては、男女ともに働きながら家族を形成し子育てをしていく、そこで別姓も選べるというのはもう当たり前のような意識になっていくんじゃないかと思います。  もう一つ、私は、日本って捨てたものじゃない、国民ってとても、私たちっていいなと思いましたのは、そう思うと答えた中で、でも自分は別姓は選ばないという人が多いんですよね。だけれども、じゃなぜ別姓を選んでもいいというふうに答えたかといいますと、別々の名字を名乗りたいという夫婦がいるならこれを禁止するまでの必要はないというふうに、多様化する価値観との共生を受容する、大変寛大といいますか寛容な成熟社会になってきているんじゃないかという気がするんです。  実は、国家公務員で別姓というか旧姓使用をなさったのは自治省にいらした加藤富子さんなんですけれども、彼女はその当時、三十年ぐらい前ですけれども、旧姓使用を認めてくれた自治省というのは大変寛容な省であった、自分の職場を誇りに思うとおっしゃっているんです。  そういう意味で、私、円より子という通称を最初から使わせてほしいと言っているのに使わせていただけない参議院というのは余り寛容じゃない職場なのかなという気がしないでもなくて、大変不便な生活を今しておりますけれども、これはさておきまして、日本全体はそういう多様な価値観を認める大変成熟した社会になってきております。同姓がいいという人は同姓も選べる、別姓がいいという人は別姓も選べるという、そういう選択肢を広げる社会になってこそ二十一世紀に国際化社会の中で生き残れる日本、また高齢社会の中で女性たちの労働力や、それから少子化の中でも三人は子供が欲しいという女性たちが働きながら子育てができる、その一つの突破口になるのではないかと思っております。  子供の姓を結婚するときに決めなきゃいけないという、これからはきっと六十歳で再婚なんという人もふえると思いますので、なぜそのときに生まれる子供の姓を決めなきゃいけないのかというようなこともあったり、ちょっと子供の姓についてはもう少し検討をしていただきたいし、既婚女性というか既婚の夫婦が変えるときにも一年というのはちょっと短過ぎるかなとか、幾つか小さな問題点はございますけれども、その辺もう少し国会でぜひ、反対、慎重意見方々ともいろいろディスカッションしていい形に変えていきたいと思っております。  応援しておりますので、最後に大臣、また何かありましたら一言お願いいたします。
  68. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 円先生と申し上げた方がよろしいんでしょうか、長らく離婚問題をずっとお手がけいただきまして、日本社会ではまだまだ離婚ということについてのマイナスイメージが強かった時代から、それぞれの母と子の幸せという観点からお手がけをいただいたという長年の御尽力には本当に敬服をいたしているところでございます。  本日も、離婚した場合の扶養の実行といった観点でいろいろな問題点の御指摘がございました。  これは確かに委員の御指摘になられたこと、私も多々納得すると申しますか、そういう点について今の現実の母子が置かれている状況を考えますと、おっしゃることの意味は大変に理解できるつもりでございます。  制度として仕組んでいきます上では、局長からも申し上げましたように、全体の法秩序の中での位置づけといった観点からの検討も加えていかなくてはならないと思っておりますが、きょうは重要な宿題をいただいたというふうに受けとめさせていただきます。  ありがとうございました。
  69. 山崎順子

    ○山崎順子君 終わります。
  70. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  71. 及川順郎

    委員長及川順郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、法務行政基本方針に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  72. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会の魚住裕一郎でございます。  先般、法務大臣所信を拝聴いたしました。抽象的な文言ではなくかなり踏み込んで所信をお述べになりまして、伺っておりましていろんな諸問題、諸課題に真剣に取り組もう、そういうふうに思った次第でございます。  今、衆議院レベルではありますけれども、住専問題についてかなり議論が深まってまいりました。ずっとその様子を見ておりましても、何か明らかになっていかないというか、もやもやするものがあるわけでございまして、これは国民皆様がお感じになっていることではないだろうか、このように思います。一体政治家は与野党を問わず何をやっているのだろうかというような声もありまして、このままいきますと、大臣のお話の中にもありましたように、「この問題に対する国民の不公平感や不信感には深刻なものがある」、まさにそれが爆発してくるのではないだろうか、法務当局に対する信頼感もなくなってくるのではないだろうか、そういうふうに思うわけです。  同じようなことが過去にあったかなと思って見ましたら、昔ロッキード事件というのがありました。このときにも、海の向こうでありましたので事案の解明がなかなか進まない。そんな中で検察・法務当局は頑張った。そこに国民の拍手喝采がありましたし、その当時非常に検察官の任官者もふえたというようなこともございました。  なかなか事案が解明になっていない段階でございますが、この住専問題処理に当たりまして、国民から見れば法務省、本当に信頼するところでございます。大臣のこの問題に取り組む決意というものをいま一度お聞かせいただきたいというふうに思います。
  73. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今、先生からお話がございました住専をめぐる不良債権問題でございますが、政府全体が一体となって取り組んでいくということが必要でございます。もちろん債権回収のために万全の措置を講じるということが中心になるわけではありますけれども、御指摘のように、関係した者の民事上及び刑事上の責任が可能な限り明らかにされていくということが必要であると思っております。  検察当局は既に東京と大阪におきまして住専問題等に関する協議会、また捜査専従班、これを設置いたしまして体制を整えているところでございます。  国会におきましてさまざまな角度から御審議が進んでいるわけでございますが、こういった御審議の内容も念頭に置きながら、さまざまな観点から資料や情報の収集等に努め、その分析検討を行っているものと思います。  今後、不良債権の発生にかかわった関係者らについてその刑事責任を追及すべきであると認められるような容疑事実が判明した場合、あるいは債権の回収過程におきまして悪質な妨害工作等の不法事犯が発生したような場合には、検察当局において警察当局等の関係機関と緊密な連携のもとに鋭意所要の捜査を遂げ、法と証拠に基づいて厳正に対処するものと思います。
  74. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ただ、国民一般の感覚からして何か手ぬるいなというような感じが持たれてなりません。  どうしてそうなんだろう。住専問題いろいろ議論ありますけれども、住専各社に大蔵省のOBが天下りする、そういうこともあるのかなといろいろ考えていたところ、先般新聞に、元検事総長が住専からの大口融資先の興英コーポレーションというところの役員になっていたというような記事が載っておりました。もちろん御存じかと思いますけれども、やはり何か役所と業界というか、つるんでいるんじゃないかというような、そういう印象が持たれるわけでございまして、住専及び関連会社あるいは融資先の会社に法務省のOBあるいは検察のOBが役員とかに就職されている者をぜひ調査して、早急に御報告いだだきたいということを要望としてお願いしたいと思います。
  75. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今、委員が御指摘になりました案件でございますが、実は検察関係者は、退職いたしました後、弁護士として開業するというケースが多いわけでございます。今回のケースにつきまして私どもすぐに事実を調査いたしましたところ、顧問弁護士として就職をいたしましたのが平成二年の七月でございます。その後、平成三年の六月に非常勤の監査役に就任をいたしまして、翌年の平成四年の二月に今申し上げました監査役を退任いたしております。現在は同社との関係はないということが判明をいたしております。  今、先生から検察関係者がこういった住専七社または主要な貸付先へ就職したケースについて調査をしろという御依頼でございますが、顧問弁護士として就任をしているかどうかということになりますと、これは私どもといたしましても全体像を把握することが大変に難しいというふうに思っておりますので、今の御指摘の点につきましては、例えば役員というような範囲に限定をしていただきますれば、その意味では私どもからも調査をいたしまして御回答は申し上げられるということではないかと思っております。
  76. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ぜひ役員なりあるいは使用人なりというレベルで調査の上、御報告いだだきたいというふうに思います。  さて、先ほど専従班という御指摘がございました。これはどのような規模、人数、構成、検事なのか副検事なのか、そういう規模等についてお教えいただきたいと思います。
  77. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいまお尋ねの点は、住専問題に関しまして東京及び大阪地検に捜査の専従班を設けられたということに関するお尋ねだと存じますが、私ども承知しておる限りでは、現在のところは検事数名と、それからもちろんこれを支える検察事務官の組織がございますけれども、そういう体制の状況でございます。  ただ、全体といたしましては、これは私どもの捜査に関します用語で、新聞等でよく言われますけれども、いわゆる捜査行為そのものに入る段階に今まだ至っていない状況で、またいわゆる内偵というような状況でもない。いわばさまざまな情報また資料を収集分析している段階ということでござまいす。現在のところはそういうところで、この事件一つ社会的な事象としての大きな流れの中でどういうことがあったのかということをきちんと調査してまいるという段階であろうと考えております。
  78. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、数名とおっしゃいましたけれども、これは東京、大阪合わせて数名ということですか。
  79. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) それぞれにということです。
  80. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 大臣所信の中でもありましたけれども、刑事責任の追及、この中には「不良債権の発生にかかわった関係者らについて」云々という文言がございます。まさに国民はそこが知りたいし、そこをきちっとやってもらいたいということだと思いますが、かなり年限がたっております。もう五年にもなるところもあるかもしれません。  そうすると、当然公訴時効の問題が出てくるわけでございますが、午前中の答弁の中にもありました。非常に広い範囲でどこをどういうふうにきちっと刑事処理するかというようなこともございました。かなりの時間が必要ではないかと思うわけでございまして、過去の世界の例でも、イスラエルのナチスの追及とか、あるいは韓国の光州事件処理に当たって公訴時効を延長するような措置がとられておりますけれども、これについての法務省の御見解をいただければと思います。
  81. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員指摘のとおり、例えば西ドイツ等におきまして一定の犯罪について公訴時効をいわば延長するといいますか、完成しないような措置がとられたというようなことがあるようでございます。また、新聞等でも、また国会でもお取り上げになった中に、アメリカでいわば同じようなRTC関係で問題が生じた際に、一定の犯罪についていわば公訴時効といいますか公訴期間を延長するというような措置がとられたということも私ども承知しているわけでございます。  ただ、我が国の場合、何らかの犯罪があったといたしまして、過去に行われた行為につきまして事後的に時効を一般的に廃止してしまうとか、あるいは時効期間を延長するという立法を行うことにつきましては、事後法の禁止を定めました憲法三十九条との関係で大変な問題が生じ得るおそれがございまして、極めて慎重な検討を要するところだろうと考えられるわけです。  特に、かつて最高裁でもお取り上げになったケースで、これは時効そのものを延長したわけではないわけでございますが、法定刑を延長してそれに従って公訴時効が延びるという結果を生じた場合に、行為時においては旧法を適用するというようなケースにおいて、公訴時効が満了していないのではないかということで、そのような立場で検察官が捜査に及んだことがございます。しかし、最高裁の最終的な判断は、それはやはりおかしいということで、日本の場合、公訴時効といいますものは、単に検察官の行為を制約するということのみならず、やはり行為に対する罰則の適用の基本的なあり方に関するものという受け取り方が一般のようでございまして、この点につきまして、既に行われた行為に関して、これについて罰則を重くするとかあるいは公訴時効を延長するというようなことについては、やはり極めて慎重でなければならないだろうというふうに考えております。
  82. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今の御答弁を伺っておりますと、何かアメリカには事後法の禁止がないかのような印象を受けるわけでございますが、いずれにしてもかなり時間が迫っているわけでございまして、その辺しっかりした体制を組んでいただきたい、このように要望をいたします。  さて、最高裁の方にお聞きしたいんですが、今この住専処理にかかわって法的処理ということが大きく言われております。  そこでまずお聞きしたいのは、会社更生なり破産なりかなり時間がかかるというような言われ方をしておりますけれども、統計的にいわゆるサラ金破産とかカード破産以外の会社の破産に関してどのぐらいの時間がかかるものなのか。また、過去最大規模の倒産事案、会社更生を含めてですね、その負債総額なり債権者数、そういうものを教えていただければと思います。
  83. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 初めに破産関係処理期間について申し上げたいと思いますが、今御質問の御趣旨は、一つは、いわば個人破産を除く法人の破産事件処理の期間ということになろうかと思います。  実は、申しわけございませんが、終局区分別の破産の既済事件の審理期間、これは終局区分といいますのは、破産宣告の前であったか後であったかというようなことでございますが、その期間は掌握をしておりますが、個人であるか法人であるかという形での審理期間は掌握できておりません。  ただ、この個人か法人かの区別はできておりませんけれども、御参考のために、平成六年度において破産宣告後管財人の選任された事件のうち配当により終結した事件、これ三千五百二十九件ございますが、その審理期間を申し上げてみたいと思います。実はこの種の事件の中には、通常は同時廃止決定によって管財人が選任されることなく終結をするサラ金やカードによる個人破産というものはほとんど含まれていないからでございます。  御参考になろうかと思いますが、大まかに言いますと、一年から二年以内に三六・五%、二年から三年以内に二四・六%と、このあたりが山になっておりまして、ごく大ざっぱに申し上げますと、破産宣告後管財人が選任され配当によって終結する事件の約三分の二が三年以内に終結をしている一方、五年を超える期間を要する事件も二〇%あるという状況でございます。  それから、大型の倒産関係事件のことでございますが、一つは、私どもが承知している範囲で申し上げますと、過去最高の負債総額というようなことは実は掌握できておりませんが、破産事件につきまして例えば昭和六十年から平成六年まで、十年間でございますが、この間に終結をした事件の中で確定破産債権額を基準にして上の方からその処理期間を見てみますと、一番大きいのが大阪地裁における豊田商事の事件でございますが、確定破産債権額は千百五十四億円余りでございまして審理期間が約六年、二番目が東京地裁で取り扱われました中村汽船という会社の事件ですが、確定破産債権額が六百十六億円余りで審理期間が約八年三カ月、それから三番目が大阪地裁の銀河計画という会社の事件でございますが、確定破産債権額が三百八十五億円余りで審理期間が約六年となっております。  一方、会社更生事件について見ますと、平成五年から平成七年までに更生計画認可決定がされた事件の中で債権額を基準にしてその上位三社と処理期間の関係を見てみますと、一番大きいのが大阪地裁で扱われました村本建設の事件で、債権額が五千二億円余りで審理期間が認可まででございますが約二年、二番目がマルコーという会社の東京地裁の事件ですが、債権額が二千六百二十八億円で審理期間が認可まで約二年十カ月、三番目が静岡地裁の静信リースでございますが、二千四百億円余りで審理期間が認可までが約二年十カ月、大体こういうところでございます。
  84. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今、会社更生あるいは破産になりますと、大体地裁で、東京地裁なら八部、二十部という形でやると思いますが、この法的処理でやるというような場合はこの体制がかなり大変になるんだろうと思うんですが、それは裁判官の人数をふやす、書記官の人数をふやすという形になっていくと思いますけれども、その点について最高裁としてはどのようにお考えでしょうか。
  85. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 体制の関係でございますが、私どもとしては、事件の動向に応じて遅滞のないようにできる限りの対策をとっていくということ以外に申し上げることはございません。
  86. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 ありがとうございました。時間が来ましたので終わります。
  87. 大森礼子

    ○大森礼子君 平成会の大森礼子です。  住専問題につきまして、これは法秩序に関することですから御質問させていただきます。  まず、法務大臣所信表明の中で「国民生活の安定を確保し、国家の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民一人一人の権利が十分守られていることが極めて重要であります。」と述べておられます。全くそのとおりでありまして、日本は法治国家でありますから、例えば法律上の争いがあればその解決を司法にゆだね、法律適用のもとに公正かつ公平に解決する建前となっております。  今回の住専問題で国民の多くの方が怒っておられる、何で民間会社の経営破綻処理に税金を投入するのかと。この憤りというものは、これは裏を返せば、何で法治国家である日本において法的処理、その手続最初から無視してこういう方法をとるのかということです。つまり、同じ民間会社なのになぜ住専だけ法適用の場面で例外的に扱うのかという、こういう不満であると思います。  所信表明の中で大臣も、この問題、住専ですが、に対する国民の不公平感や不信感には深刻なものがあると考えられると言っておられますが、考えられるどころじゃありませんで、非常に怒り狂っておられます。住専のみ司法的処理の外に置くのはなぜかということ、これも国民の不公、平感、不信感の内容となっております。  きょうの午前の質問野村委員が脱税事犯について質問されたときに、原田刑事局長が、脱税事犯というのは社会に対する不公平感を増すものでありますから、こういう不公平感を増すということは民主主義の内部から疑惑を生じさせるものである、だから厳正に対処していくと、こういうことを述べられたと思いますけれども、この住専処理をめぐる国民の中の不公平感というものは、個々の脱税事犯の中で感じる不公平感の比ではないと私は思います。  それで、法務大臣所信表明の中で、公的資金導入が図られるのですからこれからどうするかという形で述べておられるんですけれども、法的秩序を守るべき任務を負った法務大臣が何ゆえに住専問題について法的処理によらない解決、言ってみればこれは超法規的措置であると思うんですけれども、この理由についてお尋ねしたいと思います。言ってみれば、法務大臣法秩序よりも金融システムの安定、これを優先させたことになるのではないかと思うんですけれども、その理由は一体何でしょうかということです。
  88. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員の御指摘は、今回の住専問題の処理に当たって、先ほど来いろいろな御討議がございますが、破産法とか会社更生法、こういった法的な処理によるのが最良のものと考えていくべきではないかという御質問かと思います。  制度一般論ということで考えますと、確かにこの住専問題につきまして、その法人に破産法に定めます破産原因があるということでございますと破産手続の対象になるわけでございますし、株式会社に再建の見込みがある場合には、確かにその株式会社は会社更生法の手続の対象になるものと考えるわけでございます。  問題は、今回のような住専の実態、七社に対します不良債権、この債権者というものが極めて入り組んだ形で多数に存在いたしておりますし、債務者というものも大変に多数に上っているわけでございます。こういった実態を考えますと、法的処理ということも確かに一つの方法として、選択肢の一つとしてあり得るということを否定はいたしませんけれども、具体的に考えてまいりますと、これらの手続にゆだねるのがいいのか。  関係者らの責任の所在の有無、この責任と申しましても母体行と一般行、また系統金融機関、こういった関係者らの間には相当な差があるように承知をいたしておりますし、また住専七社がそれぞれ入り組んだ形でこういった金融機関関係を持っております。  こういうような状況を考えますと、住専の持っております不良債権の有効適切な回収を図っていく、これをやっていくことが今回の中で非常に大きな柱になっているわけだと思うのでございます。これらのことを考えますと、現在の提案をいたしております政府のスキームというものと今の法的処理というのと、どちらが有効適切かという判断の問題になるかと思っております。私は政府提案の方向が適切であるという判断をしております。
  89. 大森礼子

    ○大森礼子君 今お述べになったことは、衆議院の予算委員会でも大蔵省の政府委員等が述べている、その範囲を超えているものではないと私は思  います。一般論であると思います。  私が問題にしたいのは、今の大臣の答弁ですと、法秩序よりも政治を優先させたということなんですが、それがきちっと理由づけされていれば、それはそれで国民の方は納得すると思うんです。法秩序よりも金融システムの安定を優先させる、超法規的な措置なわけですから、はっきり申しまして。であれば、なぜそのような結果になったかという比較考量の問題ですから、その具体的事実に即してきちっと国民に示すのが私は法務省の役割ではないかと思います。  結局、こういう措置をとりながら六千八百五十億円の積算根拠もまだ明らかになっていない、責任の所在も明らかではないわけです。覚書の扱いをめぐりましても、農水大臣と大蔵大臣とで食い違っていると。同じ政府の間なんだからちゃんと統一してくれと言いたいんですけれども、食い違ったまま事が進んでいるわけであります。このような現状のまま公的資金導入を決定することによる国民の不公平感と不信感、これは大臣所信表明の中でおっしゃるように、債権回収のための万全な措置を講ずることで払拭できることではないと私は考えます。  じゃ、その債権回収のための万全な措置が一体どうなのかということが問題になるわけなんですけれども、大蔵省の方で「住専問題の処理方策について」と題する文書が出されております。そして、政府は、要するに強力な債権回収回収、責任の徹底追及追及と言うわけですが、問題は言葉ではなくて、その具体的な裏づけがあるのかどうか、これを問題にしなくてはいけないと思うわけです。  さっき言いましたこの大蔵省の文書の中で、項目3で、「住専の不良債権の強力な回収体制」という項目がございます。そこで「考え方」として述べております。そのまま引用させていただきます。  債権回収と責任追及に最大限の努力を払う。まずやるべきことは、預金保険機構と住専処理機構が一体となって強力な体制をもったものにすることである。その具体像を国民に明示することが緊急に必要であり、損失発生を前提にするような対応は変えなければならない。その体制確立を鮮明にすることなくして国民に負担を求めることは出来ない。 このように考え方を述べておるわけであります。  この言葉自体はそのとおりであり、了解いたします。  じゃ具体的にどう行動するのかなんですけれども、その次の項目、「強力な回収体制」というのがあるわけなんですけれども、この中で住専処理機構の本部に回収困難事案対策室と、これは仮の名称ですが、これを設けると。その内容については、今度は大蔵省の「強力な回収体制について」と題する文書によりますと、法務・検察、警察及び国税OB、弁護士云々と、こういう各分野のスペシャリストを結集するというふうに書いてあるわけであります。  それで、この回収困難事案対策室、これがどういうものかということを知りたいわけなんですけれども、これについて法務省法務・検察OBの投入についてどのような関与をされるんでしょうか、簡単で結構です。
  90. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 私どもが承知している範囲でお答え申し上げますが、ただいままさに御指摘のとおり、預金保険機構の中には回収困難事案対策室と、名称はどうなるのか今後わかりませんが、そういう形でいわば住専処理機構の指導助言する機関としての機能を果たすべくチームがつくられるようでございます。その中には、御指摘のとおり、法務・検察の職員の派遣を含む体制がとられるということが検討されておりまして、私どもといたしましてもそのようなことで内々大蔵当局から承っておりまして、もしそういう状況になればということで、準備と申しますか対策は立てつつあるわけでございます。  それと同時に、ただいまOBということでございましたが、このOBは主として住専処理機構の方に派遣されると。この住専処理機構は、ただいま問題になっているケースの住専各社のいわば債権を回収するための組織としてつくられる株式会社というふうに考えられているようでございまして、これには現在ある住専七社からそれに適した人を集めて組織をつくると。そこには、それだけではやはり十分な体制がとれないということで、私どもの範囲で言えば、検察のOBを含むそういうさまざまな法的な処理についての経験を有する職員であった者を派遣してもらう方向で検討してはどうかというお話がございまして、私どももできる限りそのような状況に応じられるような場合には、これに応じていくということで対策検討している状況にございます。
  91. 大森礼子

    ○大森礼子君 預金保険機構の方はこの後お聞きしょうと思ったんですが、今お答えになりましたのでよろしいんですが。  そうしますと、例えば、これは本来大蔵省に聞くべきことなんですが、一応法務省とも関係するのでお尋ねするんですが、住専処理機構、これがどういうものかというのがよくわからないんです。例えば、本部をどこに置くかとか陣容はとか設立時期はいっかとか、こういうことはまだ詰めている段階になっていないということでよろしいでしょうか。
  92. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 最終的な姿がどのようになるかということについて、現在鋭意検討中と承っております。
  93. 大森礼子

    ○大森礼子君 この住専処理機構の内容につきましては、一月三十一日、二月十三日の予算委員会でどういう内容なのかと聞いているわけですが、検討中ということ、現時点でも法務省経由で聞きますと検討中ということであります。  それで、今度、預金保険機構につきましては特別措置法、もう省略しまして住専処理機構法案とでも呼びますが、これが衆議院の方に提出されております。この預金保険機構の中に債権回収推進指導部が新設されると。それで法務・検察の現役が参加することになるというんですが、参加する場合に彼らの身分というのはどういうふうになるんですか。検事のままなのかどうかということなんですが。
  94. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 最初に、ちょっと私、答弁が不適切なところがあって申しわけございませんでした。  まさに預金保険機構の中に債権回収に関する指導部が設けられるわけでございまして、その点、私、間違えてお答えいたしましたので訂正させていただきたいと思います。  お尋ねの預金保険機構の中に設けられます特別な指導に当たる部門に検事の派遣が検討されているということは、私どももそのようなお話を承って検討しているところでございますが、その場合は現役の検事は検事たる身分を離れます。ですから、検事からいわば一たん退職いたしまして新しくこの預金保険機構に出向する、預金保険機構の職員になるということでございます。
  95. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、結論から聞きますと、現役検事が預金保険機構の中へ行くといいますと、何か独自のそこで捜査機構みたいなものをつくるのかなという気もするんですが、そうではないと。独自の捜査権限はもちろんないということでございますね。イエス、ノーで結構です。
  96. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) そのとおりでございます。
  97. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、預金保険機構の職員が、ここは住専処理機構から委託を受けて取り立てなんかもするそうなんですが、例えばこういう検事の身分だった人がその職員として取り立て等をやっていて相手から暴行を受ける、こういう場合でも公務執行妨害罪とかは成立しないということでございますね。
  98. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 検事だった者がいわば法律家として新たに預金保険機構の職員になるわけでございますが、その場合、この職員そのものが取り立てに回るということになるのかどうか、その点は新たにつくられる組織における機能の問題になろうかと思いますが、この機構の職員そのものは法律によりまして公務に従事する者とみなされることになります。  ですから、その職員のみならず他の職員についても、その職員が預金保険機構の職務に従事するという場合には公務員としての公務に従事する者とみなされることになりますので、これに対して妨害行為があれば公務執行妨害罪の成立はあり得るということでございます。
  99. 大森礼子

    ○大森礼子君 それで、準公務員、そこの地位的なものはまだはっきりは確定していないということでございますか、どういう扱いになるかということは。
  100. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) それは現在も、預金保険法によりますと、預金保険機構の職員は、刑法その他罰則の適用については法令により公務に従事する者とみなされますので、その職員が職務を遂行するに当たっては、この者に暴行ないし脅迫を加えた者は公務執行妨害罪を構成するということになろうかと思います。
  101. 大森礼子

    ○大森礼子君 その点ちょっと疑問があるんですが、それはまた後の機会に譲りまして、その預金保険機構の方に出向する例えば検察官の人数とかそこら辺、つまりどういう形で債権回収推進指導部を形成するかということについて具体的な形にはなっておるんでしょうか。イエス、ノーで結構です。
  102. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的な形と申しますか、どのような立場の者がどの程度ということは内々話を進めている段階でございます。
  103. 大森礼子

    ○大森礼子君 まだ話を進めている段階ということで結構です。  それで、これ強力な債権回収ということを強調されるんですけれども、例えばこの住専処理機構法案の中で、法務に関する範囲でよろしいんですけれども一般民事の場合と違って特にこれが強力な回収に役立つんですよ、これが特に超目玉の規定なんですよと、そういうものがもしありましたら、まず項目だけ挙げていただきたいと思います。
  104. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいまその法案が手元にございませんので恐縮でございますが、債権回収に当たりまして、必要な関係者に対しては調査をし、また質問、検査をすることができる規定を恐らく持つことになろうと思います。  それから、先ほど申し上げましたようなスキームからいきますと、直接的にはこの住専処理機構が債権回収に当たるわけでございますが、特に困難な事案については、そのいわば指導する立場にある預金保険機構がその債権回収の仕事を引き取りまして、そして直接その仕事に当たるということも考えられているようでございます。その点は、通常のいわば民間の会社に任せられたということに比べますと、債権回収に当たっての大きな柱になるのではなかろうかと考えます。
  105. 大森礼子

    ○大森礼子君 ちょっと、それはいろいろ意見があるところだと思います。別に弁護士さんでもできるじゃないかという意見もあると思うんですが。  それで、法案をお持ちでないそうですので、一点だけ指摘しておきたいと思います。  いわば調査権等あるわけですが、この法案の十七条で、立ち入り、それから現況確認、質問あるいは帳簿等の提示、それから説明を求めることができる、こう書いてあるんですけれども、「ただし、」とありまして、「住居に立ち入る場合においては、その居住者の承諾を得なければならない。」とあるわけなんです。そうしますと、この規定からしますと、住居であった場合には、その債務者が財産を隠していないかどうか、そういうのを調べるにしましても承諾がなかったら入れないという規定になっておりますね。それでよろしいですか。
  106. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 私、このあたりになると直接の所掌でないので、あるいはお答えするのが不適切かと思いますが、いずれにいたしましても、この十七条のような現況確認、質問、帳簿提示等に関する調査権と申しますのは、通常のと申しますか、行政権限として認められる立入調査権としては恐らく一番厳しいと申しますか、捜査権は別でございますが、行政権限として行政目的を達するために行う質問調査権としては最も厳しい規定というふうに考えられるだろうと思います。  それから、したがって、そういう場合でも通常やはり住居の場合は、その住居の居住者または管理を任された方の承諾を得るというのが通常の行政権限に基づく調査権の場合は恐らく一般的なものであって、それを超えて承諾なくして入るという場合には、やはり司法権、捜査権に基づく、令状に基づく立ち入りということでなければ恐らく難しいんではないかと思います。
  107. 大森礼子

    ○大森礼子君 ありがとうございました。  要するに、その行政権限、そうなんです、おっしゃるとおりなんです、承諾なくして入れないということは。だからこそ、特にこの法案によりまして、これまでと違った特に強力な回収ができるのかなということについて疑問を持ったものですから質問させていただきました。  最後に一つだけ。これ所掌ではないとおっしゃったんですが、この法案作成に当たっては法務省の方から、いやこれじゃまだ足りないとかそういう意見交換とかは余りされなかったんでしょうか。
  108. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) これは、刑事局のみならず、関係部署で相当細かく詰めをいたしまして、必要な協議はさせていただきました。
  109. 大森礼子

    ○大森礼子君 ありがとうございました。
  110. 一井淳治

    ○一井淳治君 しばらく民間におられました、女性の新しい大臣に、私ども期待いたしております。  まず法務行政のあるべき姿についてのイメージですね、大臣、どのようなイメージをお持ちかということをお伺いします。  私の言いたいことは、例えば省庁によっては、国民に親しまれ愛される省庁になりたいと努力している姿が見える省庁もございます。そういったことで、一言で言えばどういうイメージをお持ちなのかということをお伺いしたいわけでございます。
  111. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 法務省の基本的な役割は、社会法秩序維持、それから国民皆様のお一人お一人の権利を守っていくということが使命であると思っております。  こういった本来の基本的な使命から、ややもしますと法務省は非常にかたい役所であるというような印象を一般の方に与えているかと思っております。しかし、国民皆様に信頼され、親しまれ、そして今の時代の要請に十分こたえていける、時代の流れをつかむことが上手な役所だ、こういうような方に行ければ大変ありがたいと思っております。
  112. 一井淳治

    ○一井淳治君 そういう意識をお持ちになって御努力賜りたいと思います。  私ども、日ごろ法務省に対していろいろと期待するところが多いわけですけれども、例えば施策や予算をもっと積極的にお示しになってはどうだろうかということが一つあります。  よその省庁のことを出して非常に失礼であることはわかっておるんですが、例えば一定の方向を示す施策や予算について、局を超えて、場合によっては省庁を超えて一つにまとめて、国民に対しあるいは議員に対してお配りくださるという省庁もございます。PR版をつくるとか、あるいはポンチ絵というんですか、そういった漫画風の絵まで含めてやっておられるわけでございますけれども、そういう点、法務省は余り進んでいないんじゃないか。  私ども議員が非常に関心を持って、こういう点はどうなるんだろうかということを聞きましても、なかなか率直に速やかなお答えがいただけないという官庁ではなかろうかと思うんですけれども、そういった点を含めまして、さっきの大臣のお言葉を聞きますと非常に期待が大きいわけでございますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  113. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員から大変いい御提案をいただきました。確かに行政というのは、国民皆様に支持され、国民皆様の共感を呼ぶような形で、国民皆様の御理解を得ながら進めていかなくてはならないものだと思っております。  法務省が担当いたしております行政のほとんどが国民皆様の日常的な生活に深いかかわりを持っている分野ばかりでございますので、今いただきました御示唆を生かしまして、もう少しわかりやすい、国民にとって親しみやすい、それから他の行政の分野とも十分に連携をとって、お互いがお互いのよさを補い合ってまたさらにプラスの効果を生んでいくような、そういう方向に仕事を進めてまいりたいと思います。
  114. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、住専問題に関して質問させていただきます。  大臣所信表明の二ページに何行か触れられております。これをそのまま見ますと、捜査開始について二つの規制をかけているような感じがするんです。  私どもの感じは、このように国民全体から強い要望が寄せられているこの問題につきましては、犯罪があることは大体予見されるといいますか予想されるわけですから、検察庁とすれば積極的にこの事案の解明を進めていただきたいと思うんですけれども、この二ページを見ますと、住専問題について一つは、「刑事責任を追及すべきであると認められる」と一つの要件を付しているんですね。私どもは積極的に捜査をしてほしいと言うんだけれども、刑事責任を追及すべきという一つの政策判断をした上でということが一つの要件になって、もう一つは、そういう事実が明らかになった場合、混迷している場合は出動しないんだ、明らかになって初めて出るんだというふうに二つの自己規制をやっておられるように思うんです。  私は、これはちょっと誤解を生ずるような書き損じじゃないかと。本当は法務大臣も積極的に疑惑の解明に乗り出すというお考えじゃないかと思うんですが、その辺はいかがでございましょうか。
  115. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 先生にはもう十分おわかりいただいておるかと思いますが、法務大臣と検察の立場ということを踏まえましてこのような表現にさせていただいているわけでございます。
  116. 一井淳治

    ○一井淳治君 それじゃ、この会議録は恐らく検察当局の方もごらんになると思いますから、そういう趣旨であるということで私も理解させていただきたいと思います。  それから、この住専問題は本当に社会的にも大変影響が大きい、通常の会社の経営では起こり得ないようなことが現実に起こってしまっておるわけでありまして、やはり商法の機能ということもこの際住専問題の中でしっかりと見ていかなくちゃならないんじゃないかと思うわけでございます。  恐らくまだ資料の収集も不十分でしょうから、具体的なお答えはとても私は期待できないとは思うんですけれども、商法の中には、計算書類、それから資産の評価、取締役会の権限、それから取締役の責任あるいは監査役のさまざまな機能、そういったものがずっと書かれておるわけです。こういったことが本当に十分に機能しておればこういうひどい問題には発展しなかったのではなかろうかという気がいたします。  そういった意味で、この問題については、先ほどのお話によりましても政府として取り組むんだというふうに言われましたから、情報はほかの省庁からもどんどん入ってくるわけですから、そういった資料を十分に検討して、商法のさまざまな会社法の機能が十分果たされたかどうかということを検討いただきたい。そして、運用あるいは法の欠陥があれば改善とか改正について御検討賜りたいと思いますけれども大臣の御所見を伺いたいと思います。
  117. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 株式会社の業務の運営の適正を確保するための会社制度あり方につきましては、御承知のとおり、監査役の権限を強化するといった何回もの商法の改正を実現させていただいてきたところでございます。  今御指摘がございました住専各社の状況でございますが、現実のこれらの社の業務運営がどのように行われてきたかということにつきましては、今後具体的な事実関係が明らかになっていくものと思っております。その中で、会社制度上どのような問題点があるかについて十分関心を持ってまいりたいと思っております。
  118. 一井淳治

    ○一井淳治君 ひとつ関心をお持ちいただきまして、調査いただいたり、あるいはさらに運用や法について欠陥があれば是正ということも念頭に置いた上でいろいろ御検討賜りたいと思います。特に今は自己責任とかあるいは公正ということが日本経済の構造改革のために必要であるということが指摘されておるわけですから、そういう積極的な立場で、ただ単に後ろ向きではなくて、日本経済が世界経済の中でうまく調和し発展できるように、そういう会社をつくっていくんだというお立場で御配慮賜りたいと思います。  それから次に、阪神・淡路大震災の関係平成七年度は法律扶助関係法務省から大変御配慮をいただきまして、法律扶助に対する阪神・淡路大震災の関係で三億数千万円という助成をいただいて、これを扶助協会の方では非常に有効に使わせていただいたという経過がございます。  平成八年度でございますけれども、依然として阪神・淡路大震災の被害者の方々に対する救済という大きな課題が残っておりまして、弁護士さんのさまざまな活動のためにも平成八年度は前年度ぐらいの助成を法律扶助制度に対して賜りたいという強い要望が実はあるようでございますけれども、扶助担当の方からその辺のお考えなりをお聞かせ願いたいと思います。
  119. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) お答えをいたします。  今御指摘がございましたように、法務省におきましては、従前から財団法人法律扶助協会が行います法律扶助事業に対しまして国庫の補助金を交付いたしまして、その推進を図ってきているところでございます。  今お話がございました平成八年度におきましても、今年度における震災関係法律扶助事業の動向を十分踏まえまして、震災関係法律扶助事業の遂行に支障を生じることのないように十分配慮してまいりたい、かように考えているところでございます。
  120. 一井淳治

    ○一井淳治君 何といいましても予算の確保が大切でありますので、特別な御配慮をお願いしたいと存じます。  そして、現在この法律扶助の問題につきましては、法務省の方でいろいろ厚い御努力をいただきまして、法律扶助制度研究会が進められております。この進捗状況、今後の見通しということについて御説明をお願いします。
  121. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) 法務省におきましては一昨年の十一月七日に、最高裁判所日本弁護士連合会、さらに財団法人法律扶助協会から推薦をされた人たち、それからまた諸外国のこういった法制度について詳しい民事訴訟法学者の参加をいただきまして法律扶助制度研究会を発足させたところでございます。  この研究会におきましては、法律扶助制度についてのアメリカやイギリス、フランス等の先進諸国の法制について鋭意調査を行いますとともに、扶助を実施する主体の問題、あるいは扶助の対象となるべき事件の範囲、さらには勝訴の見込みなどの扶助要件の問題、そういったさまざまな問題について多角的な論点の整理と検討を現在行っているところでございまして、今後とも今申し上げました諸外国法律制度状況を十分検討しながら、我が国の司法制度に適合した望ましい法律扶助制度あり方について鋭意研究を進めてまいりたいと考えているところでございます。
  122. 一井淳治

    ○一井淳治君 締めくくりの結論をお出しになる時期とか、あるいはこの研究成果というものはどのように将来活用されていくのかという点についてはいかがでございましょうか。
  123. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) 大変難しい御質問で、具体的なお答えができませんのが大変申しわけございませんが、できるだけ早急に論点を整理いたしまして進めてまいりたいと思います。  現在は第一読会が進行しておりまして、三月をもって一応第一読会を終了させる予定にいたしております。その後できるだけ早い時期に、さらに各論点について詳細な議論を深めるという意味で第二読会に入ることにいたしておりまして、以後の進行もできるだけ慎重かつ迅速に行いたい、そういう考えでおります。
  124. 一井淳治

    ○一井淳治君 現在の法律扶助の対象の拡大ということについても御論議を賜りたいわけですが、特に過疎地、今たしか浜田市でしたか、多くの弁護士が集まってきて、弁護士不在の都市に法律相談所を設けるとかそういう新しい展開をしておられますけれども、そういったことについては研究会で論議するまでもなく今の制度の中で御配慮を賜りたいと思うわけです。  それができない場合にも、研究会の中でそういった問題とかあるいは起訴前弁護人の選任、これも非常に要望が強いわけでございますけれども、正式の議題にならなくても、せめて議論ぐらいはして、一応研究に手をつけていただきたいというふうに思うんですが、どうでしょうか。
  125. 大藤敏

    政府委員(大藤敏君) まず、過疎地の問題につきましては、御案内のとおり、現在運営主体でございます財団法人法律扶助協会と弁護士会等におきまして相談の窓口を、より充実させるための努力の一環として、今お話がございましたような過疎地にそのような制度を設けて運営しているところと承知いたしております。この点につきましては、もちろん今後の研究会で十分検討しなければならない事項だと考えております。  それから、刑事被疑者に対する弁護士援助の件につきましては、私どものこの研究会の課題にはしておりませんで、これは申しわけございませんが、扶助制度の研究会の論点としては検討しないということで運営上の合意ができておるところでございます。
  126. 一井淳治

    ○一井淳治君 ですけれども、事態に即応する法務行政を展開されると大臣が今言われたわけですから、議論ぐらいはされてもいいんじゃなかろうかと思います。  次に、法務行政、その中でも特別お忙しいのは入管とかあるいは登記の関係ではないかというふうに思いますけれども法務局の職員の増員とか施設の充実確保について質問させていただきます。  よく言われることでございますけれども、登記の業務量はかつての二・五倍になっている、しかし人員は一九%増にしかすぎないじゃないかと言われております。本当に忙しくてとても所定時間内では仕事が完了できない状態が続いておりまして、正規職員だけでは追いつかないということで、さまざまな配慮も実際に行われているところでございます。  そして、金利が下がりますと抵当権の設定がえが起こるとか、あるいは三月の末になってきますと最低資本金制度関係でまた登記がふえるとか、いつもいつも何か新しい仕事が法務局ではふえておるというようなことがあると思います。  私も最近登記所の現場を二カ所ばかり拝見させてもらいましたけれども、台車の上に登記簿が積み上げられておりまして、その台車の中で、職員の方が仕事に追いまくられながら本当に一生懸命やっておられるというところを見せていただきました。また、窓口近くでは非常に大勢の人が待っておられるという状況でありまして、登記というものは間違いがあったらいけないんですけれども、本当にあんな職場では間違いが起こりはしないかというふうな心配もありました。  そういったことで、どうか法務局の職員の増員とか施設の拡充については特段の御配慮をいただきたい、前進をするように御努力いただきたいと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  127. 濱崎恭生

    政府委員濱崎恭生君) 法務局の人員及び施設の充実について御指摘をいただきました。  法務局の所掌している事務、ただいま委員指摘いただきましたように、登記を中心といたしまして戸籍、国籍、訟務、人権擁護等の事務、いずれも多様化、国際化する社会情勢の中にありまして、事務量が増加しているのみならず質的にも複雑困難な度を強めているところでございます。これを適切に処理するということはもう法務局の使命にかかわる重要な問題でございます。  こういった観点から、法務局といたしましても、機械化、OA化、特に登記事務についてはコンピューター化を鋭意推進しておりますが、やはり基本的には人でもつ仕事でございます。そういうことで、これまでも所要の増員措置を図ってきたところでございますが、今後も関係各方面の御理解を得て必要な措置を講ずるように努めてまいりたい。  また、施設の問題につきましても、全国合わせて千余り、支局、出張所を含めて千余りの庁舎がありますが、その中には古い庁舎あるいは狭くなっている庁舎等、整備を要するものがたくさんございます。そういったことが今御指摘のような事務能率の阻害のみならず利用者に対するサービスの関係からも隘路になっているということがございます。そういったことから、今後ともこの方面でも国民に対する行政サービスの向上という観点から努めてまいりたい。  また、これらの点につきましてはこれまでも委員各位の御支援をいただいてきたところでありますが、今後とも一層御支援を賜りたいというふうに思っております。
  128. 一井淳治

    ○一井淳治君 非常に困難な中でございますけれども、適正な登記行政のためにはやはりある程度の人員を確保することが必要ではなかろうか。東京や大阪が非常に忙しいことはわかるのでありますけれども、地方の法務局もやはり人員が不足しておりますので、適正な人員配置をよろしくお願いしたいと思います。  次に、入管行政関係ですが、これも担当の方が忙しいからこういったことが起こるんじゃないかというふうに思うんです。  今、国際化の時代、国際交流を進めていかなくちゃならない時代ですけれども、まさに善良な、脱法目的でなくて本当に日本で勉強しようということで、例えば大学あたりでまじめに勉強している人たちが就労しようというような場合に、入管の窓口で許可の申請を出すという場合に、担当者の人が忙しい、あるいは特定の国の場合は偽って入国してきて就労するという人が非常に多いものですから、特にそういった国の人たちに対しては第一線の窓口の人たちが非常に厳しい。言わなければいいな、これは言い過ぎだなと、誇りの高い外国人の心を非常に傷つけるんじゃなかろうかというふうな言動もあるように私どもの耳に入ってまいります。  第一線の御苦労はわかるんですけれども、やはり国際的に仲よくしていかなくちゃならない。立派な外国人に対してそういう心を傷つけるような言動がありますと非常に困るわけですから、そういった側面の強い御指導も賜りたいと思うわけですけれども、いかがでございましょうか。
  129. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) ただいま委員から御指摘がありましたように、私どもの窓口での対応というものは、これは外国人日本に対するイメージを決めていく大きな要素になるということで、私ども非常に重要視しております。  そういう意味で、かねてから窓口の職員にはできるだけ親切な対応に努めるよう研修等を通じて指導してきているところでございます。特に、先ほど御指摘がありましたように、不利益な処分を受けた外国人から非常に不満とか苦情が多いわけでございます。こういう場合には特に丁寧な説明に心がけるようにという指導はかねてからしておりますが、先生指摘のとおり、そういう御批判も引き続きあるようでございますので、窓口の事務の一層の改善ということは今後とも留意していきたいと考えております。
  130. 一井淳治

    ○一井淳治君 本当にまじめに日本で勉強しようということで、例えば大学を卒業して大学院まで進んでいるとか、そういうふうに一見してよくやっているなという人からそういう苦情が出てくるんですね。ですから、私どもは、これはもう名札をつけるとか、デスクに担当者の名前を書いていただくぐらいしないとうまくいかぬのじゃないかということぐらい考える状態でございますので、よろしく御指導をお願いしたいと思います。  それから、大蔵省の方にお聞きすることになりますが、手形の決済の問題でございます。  手形、小切手は信用が第一でありまして、言うまでもないことでありますけれども、手形の決済において不渡り処分制度が行われており、これが非常に手形の信用を高めるために強い機能をしていると思います。しかし、現在なお不渡り届の対象となる手形が、これは強制提出になる手形が限られておりまして、任意提出、不渡り届を任意に提出すればいいという範囲がかなりの範囲にございます。これについて、これじゃいかぬのじゃないかという意見も相当強くなっておりますので、これは銀行協会ですか、そちらの方が恐らく担当しておるんでしょうから、大蔵省の方から銀行協会の方へ、そういう意見法務委員会で出たと、ひとつ検討してはどうだろうかという御示唆を賜り、できればそういったような御指導も賜りたいというふうに思うわけでございます。  私はかつて決算委員会で大蔵省の方に対してこういう質問をいたしましたら、それがきっかけになって手形交換所規則の一部改正が行われました。今回もよろしくお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
  131. 大月洋一

    説明員(大月洋一君) 御説明させていただきたいと思います。  手形交換所でございますが、先生指摘のように、各地の銀行協会によって運営されているものでございます。その規則の制定でございますとか改廃、あるいはそういうような手続面につきましては、銀行協会の決議機関でございます社員総会や理事会の決議によって行われるものでございます。  ただいま先生指摘いただきました、手形が決済されなくても不渡り届の提出が不要となっているようなものがございます。例えば形式要件が整っていないような手形でございますとか、あるいは同一銀行内の手形交換、同一銀行内における決済なんかの場合がそういうような場合だと思います。  現在の規則では一応任意の規定になっております。と申しますのは、手形交換所の外で決済がなされている、そういうような手形の不渡り事由というものを交換所の中で決済のペナルティーを科すのはいかがなものかというような点もございますし、また一方におきまして、信用取引の基盤となります観点から、その安定化を期すためにはやはり交換所の交換手形と同じような取り扱いをすべきだというような御意見もあることは承知しております。  先生指摘の点につきましては、本日の趣旨を踏まえまして、銀行協会の方に伝えさせていただきたいと思います。
  132. 一井淳治

    ○一井淳治君 もう一つ大蔵省の方にお聞きしたいんですが、これは住専問題に関してでございます。  いろいろと住専問題について論議が進んでおりまして、そういった中で、住専の会社の役員に対する責任とかあるいはさまざまな関係者に対する責任の追及ということをしなくちゃならないという方向で進んでおると思いますけれども、今回のスキーム、今論議が始まっているスキームでは、役員等に対する責任というものをだれが最初に明らかにして原案をつくっていくのかという点がはっきりしないんですね。まずその点をお伺いしたいんです。
  133. 古井俊之

    説明員(古井俊之君) お答えいたします。  今回のスキームにおきましては、住宅金融専門会社の貸付債権その他の資産をすべて住専処理機構が譲り受け、積極的に回収、処分することとしているところでございます。  ここで住専処理機構が譲り受けるその他の資産の中には、住宅金融専門会社に損害を与えた役員等の関係者に対する損害賠償請求権も包括的に含まれることとなります。そして、住専処理機構は、これを譲り受けました後に速やかに過去の取引等を精査いたしまして、請求の相手方、不正の事実、損害の概要等を特定した上で請求するということになります。
  134. 一井淳治

    ○一井淳治君 できるだけそのものを早くつくっていただくようにお願いしたいと思います。  それから、このスキームの中では告発をしろということが書かれておるんですけれども、その点も十分に実効あるようにしていただくことをお願いをいたしまして、とりあえず私の質問は終わらせていただきます。あとは千葉議員の方からいたします。
  135. 千葉景子

    千葉景子君 限られた時間でございますので、一、二点だけ、許す限りお尋ねをさせていただきたいと思います。  まず一点目でございますけれども、先刻の東京拘置所イラン人の逃走に関連してお尋ねをいたします。  そもそも勾留の趣旨というのは、適正な裁判を担保するということもあり、身柄をきちっと確保し、あるいは証拠の隠滅などを防ぐ、こういう基本的なものであろうというふうに思います。ただ、反面、身柄の確保が第一の目的ですから、それ以外の基本的なやはり収容者の人権、こういうものには十分に配慮される、そして適正な当事者としての裁判を受ける、こういう必要があろうというふうに思うんです。  今回、予想だにしなかったような事件が起こったということでございますけれども、これまで法務省としてはこの拘置所の運用などについてはどういう基本的な考え方に立って行ってきたのか、まずその点についてお尋ねをしたいと思います。
  136. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 先般、七名の集団逃走事故というものを発生させまして、大変申しわけなく思っております。おわびを申し上げなければいけません。  ただいまのお尋ねは、拘置所の運営についての基本的な考え方ということであろうと思いますが、委員が今御指摘になりましたように、拘置所というところはいろいろな人が入っておりますけれども、主として刑事裁判手続のため、逃亡または罪証隠滅の防止を目的として、刑事事件の被疑者または被告人を収容するために設けられた制度でございます。  したがいまして、拘置所の運営に当たりましては、今申し上げましたような未決の拘禁者の身柄の確保と罪証隠滅の防止を最大の使命としながら、その処遇に当たりましては、安全で秩序ある生活確保しつつ、同時に被疑者あるいは被告人として当然持っております防御権の行使にも支障のないように留意する、こういう基本方針で運営してまいりました。
  137. 千葉景子

    千葉景子君 お答えのとおりであろうというふうに思いますが、これまで本当にその趣旨が十分に満足されていたのかどうか、今回若干の疑問が出てきたわけですね。  片方では、身柄の確保について、これだけのいろいろな近代的な機器というのもおかしいですけれども、いろいろな機能というものも考え得る、そういう時代でもございます。そういういろんな工夫がなされていたのかどうか、こういう問題も片方ではあるかというふうに思いますし、反面、当事者としての防御権などを十分に保障する、この面も本当に十分になされてきたのか。  私も何回かこの当委員会など過去にも収容者の待遇とかそういう部分についても御質問をさせていただいたことがございますけれども、そういう面もこの際改めて、今お答えがあったような基本的な観点に立って原点から考えていただきたいというふうに思うんです。こういうことを契機にして、今後、基本を具体化するに当たってどんなふうに対応されていくのか、どんなふうに考えられているのか、お答えをいただきたいと思います。
  138. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 先ほど申し上げましたように、拘置所に収容されている人々はいまだ未決でございます。既決の囚人ではございませんので、先ほど来申し上げておりますように、防御権といいますか、防御権のみならず、いわゆるできるだけ普通の人としての権利といいますか、そういうものを保障するということについては今回の事故があったということで特に変化をさせるということは許されないと思っております。  したがって、そういう観点から、身柄の確保という点が今回の事故ではしなくも不十分であったということが暴露されたわけでございますので、身柄の確保については、今、先生がお話しになりましたような活用し得る機器類も十分に活用しながら、それから職員の意識もまた問題意識を持って執務に当たるように指導しながら、身柄の確保を十分に行いながら、今申し上げましたような未決拘禁の目的に応じた適切な処遇ということにも十分意を払ってまいりたいということで、申し上げるまでもないことでございますけれども、今回の東京拘置所における逃走事故を契機として、俗な言葉で言いますといわゆる締めつけといいますか、そういうものを厳しくするというような考えはもちろん毛頭ございません。
  139. 千葉景子

    千葉景子君 当然のことでございまして、これを機に一人一人の権利が制約をされたり規律がいたずらに厳しくなったりというようなことはあってはならないことであろうというふうに思います。  大臣にも、御就任になって本当に何十年ぶりというこういう問題に直面されたということであろうかというふうに思いますけれども、御決意のほどがございましたらお答えをいただければと思います。
  140. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今般のこの事故につきましては、まことに遺憾でありまして、深くおわびを申し上げたいと思っております。この事故の反省、いろいろなものがございます。保安警備体制を再点検してみる、また我々の処遇のあり方、これについても十分に検討していかなければならないと思っております。  私も拘置所に参りまして、拘置所の現在の状況、これは小菅の場合には大変に老朽をいたしておりますので、今、委員が御指摘になりました入所者の方の生活状況という意味で言いますと、必ずしも良好であるということは申し上げられないような状況がございます。この点につきましては、やはり施設を全般的に改築を早急に手がけなければならないという印象を非常に強く持ったところでございます。  それから、小菅というところは、御承知のように将軍家のいわば下屋敷というようなところでございますので、大変環境上はいいところであったのではないかと思うわけでございますが、こういう意味では、地域の皆様との関係ということも考えまして、かねてから、例えば評判の余りよくございません高い塀というものを違う形で新しい形のものに取りかえていく、いわば開放型というようなものも内部では検討いたしているところでございます。  その中で、もう一つの大きな課題でございます保安警備体制を確実にしていく、なかなか難しい課題であると思いますが、御指摘の方向は今後の方向としてそのとおりと認識いたしておりますので、御趣旨の線に沿って検討させていただきたいと思っております。
  141. 千葉景子

    千葉景子君 時間ですので、残余のものはまた別な機会にさせていただきます。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、HIVの感染、薬害の責任に関する問題から質問をしたいと思いますが、この問題については、重要な責任があると見られている帝京大副学長の安部英氏がきのう辞任するということもあって、厚生省で資料が発見されたことに続いて大きな問題になっております。  この問題については、言うまでもありませんけれども、危険な非加熱血液製剤、これを直ちにとめるのではなくて、これを引き続き使用させたということの中で二千人もの血友病患者のHIV感染を生んだ、そういう悲惨なことが出てしまったわけでございます。患者の皆さんは、まさにこれはそのために死んでいくのではなくて、国の責任で殺されていくんだという悲痛な叫びをこの間もやっておられましたが、私どもの胸にこたえる響きであります。  この問題について裁判所は、これまでのHIV訴訟の経過を踏まえて、明確に国の責任を宣明した上で和解の勧告をされたということは、私は極めて裁判所としては正しい貴重な態度であったと思うんです。新しい厚生大臣のもとで新資料も発見され、国の責任が一層明確になるもとで和解が全面的に進むことを期待しておりますが、同時に関係者の責任追及ということもこれは極めて大事な課題であります。  そうした点で、きょう私が質問をしたいのは、今お話ししたエイズの問題で、八三年に厚生省につくられた研究班の班長であった安部英氏に対して、殺人罪及び殺人未遂罪等でこれまで告発告訴がなされておるわけですが、それらについては検察庁はすべて受理をされているのかどうか、まずこの点はどうですか。
  143. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) お尋ねの件につきましては、東京地方検察庁におきまして、まず平成六年四月二十一日に、当時の帝京大学医学部教授を被告発人といたしまして、同教授が血友病患者に対し非加熱製剤を投与した行為が殺人未遂に当たるとする旨の告発を受理いたしております。  また、本年二月十三日には同教授を被告訴人とする殺人の告訴を受理いたしまして、さらに本年二月二十日には同教授を被告訴人とする殺人未遂罪の告訴も受理しているところでございます。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 この一連の告訴告発事件について、HIV感染でエイズを発症し亡くなったお母さんからは殺人罪による告訴、そして感染をしたということについては殺人未遂ということで告訴並びに告発がなされている。  これについて当然法務省としては、つまり検察庁としては厳重な捜査を速やかに厳正に行っていただけると思いますが、いかがですか。
  145. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) これらにつきましては、東京地検におきましていずれも現在捜査中でございまして、ただいまの御指摘の点も含めまして厳正に対処するものと考えております。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 法務大臣の御所見も同じでございますか。
  147. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 御指摘の薬害エイズにかかわる問題でございますが、今も委員から御指摘ございましたように、人間の生命にかかわります重大な、そして社会的にも多くの関心を呼んだ問題であることを十分に踏まえまして、広い観点から証拠を集め、吟味した上、法律証拠に基づきまして適正に対処するものと考えております。
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 この問題は八三年ごろからということが告発告訴状でも具体的に指摘されておりますので、殺人未遂の場合は時効が十五年ですから、時効の点を考えましても速やかな捜査が必要な段階になりつつあるわけですから、その点も踏まえて今お話しの厳正な捜査を遂げていただくことを要望して、次の質問に移りたいと思います。  次の質問は、住専問題にかかわる刑事責任の追及の問題であります。  この点では、先ごろ新聞にも報道されましたが、市民オンブズマンの学者及び市民の皆さんから、有価証券報告書の虚偽記載ということで証券取引法違反に基づく告発がなされております。  一つは、住専の一つであります日本住宅金融株式会社、これに対する告発であります。もう一つは、住専の一つであります第一住宅金融株式会社の関係での告発であります。これらは検察庁はいずれも受理されたと思いますが、告発の具体的な事実の概要、その理由はどうなっておりますか。
  149. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) お尋ねの件に関しましては、平成八年二月二十三日に、虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した旨の証券取引法違反の事実を内容とする告発状が東京地検に提出されたことは承知しておりますが、現在までにその告発を受理したとの報告は受けていないのでございます。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 速やかに受理してもらうのが当然だと思いますが、刑事局長いかがですか。
  151. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的な告訴事案でございますので、どのような対応をするかにつきまして、法務当局として直ちにお答えするのは差し控えさせていただきたいのでございますが、一般論として申し上げますと、告発状が提出された場合、検察当局におきましては、犯罪事実の特定が十分であるか、その他所要の要件につきまして点検いたしまして、これらに不備等があるため直ちに受理しがたいものにつきましては、告発状を提出された方々に対してその補正等を求めるなどをした上で適切に対処することとなると思われます。
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 受理すべきであることがはっきりしたら、当然受理して捜査を進めるというのは当たり前のことでしょう。ちょっと一言。
  153. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) そのとおりでございます。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、速やかにそういった審査をして進めてもらいたいということです。  それで、法務大臣所信表明の中で、この住専の問題に関しては民事上、刑事上の責任も含めて法務省としては厳正な対処をしていくということを表明なさっておられます。だから、その一つの問題として今の問題も積極的に告発の趣旨をしっかり踏まえて捜査をする必要があるという観点に立って進めていただくことをまず要求をしておきたいと思うんです。  これの告発の中身は、これはもう告発状を見れば言うまでもないんですが、例えば日本住宅金融の場合には、これは回収不能な債権、これが大体八千億円、こういう額であるということが大蔵省の指摘ではっきりしておるんです。ところが、この年度、損失見込み額の引当金はそれの十分の一、その程度しか書いていないということで決算全体としてはそんな大きな債務の超過がないということになっているという意味で、いわゆる粉飾決算に近い形になっているんです。  それで、有価証券報告書というのは言うまでもなく、これは社会的な重要な信頼性を企業の運営、資産に対して国民の目から見て正しくそれを進める上で重大なものですから、これに対する虚偽記載は証券取引法で厳しくこれを禁止して懲役刑も含む罰則まで科しているわけでしょう。だから、こういう住専がそういう粉飾までして債務を明らかにしないということでやってきたということは、やっぱりこれは私は重大な反社会的行為の一つだと思います。だからこの問題については、告発にある問題として厳しくこれから捜査をしていってもらいたいと思うんです。  そこで、さらに次の問題に移りますけれども、刑事局長にお聞きしたいんですが、今、検察庁としては鋭意この問題について刑事責任の追及のために検討されているというんですが、この住専問題ではどういうような刑事責任の追及が課題としてあるとお考えになっていらっしゃいますか。
  155. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的な事案におきまする犯罪の成否につきましては、捜査当局が実際に収集した証拠に基づきまして個別にまた具体的に判断されるべき事柄でございますので、法務当局として御答弁することは差し控えたいのでございます。  ただ、あくまで一般論として申し上げますれば、不良債権の発生に関連いたしまして通常どのような犯罪が考えられるかと申し上げますと、通常の場合、背任罪や特別背任罪などが考えられますし、また債権回収の過程で発生する事態といたしましては、強制執行妨害罪とか脅迫罪あるいは場合によっては暴行罪等が考えられると存じます。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのほか、場合によっては詐欺、文書偽造あるいは税法上の脱税その他いろいろあるでしょう。しかし、主要な問題として今おっしゃったような背任罪、特別背任罪という刑事責任の究明は、これは住専問題にとっては私は基本的に重大な課題だと思うんです。  そこで刑事局長一般論としてで結構ですが、いわゆる莫大な不良貸し付けを生む、そういう不良貸し付けと特別背任罪との関係は、これは講学上、当然私は特別背任罪が成り立つということだと思うんですが、どのようにとらえられていますか。
  157. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) あくまで一般論ということで申し上げますれば、特別背任罪は犯罪主体たる身分で限定がございます。また、これは一般的な背任罪と同じでございますが、図利加害目的、任務違背行為、そして損害の発生等の要件がすべて認められる場合に成立するものでございます。その際、その犯罪の成否の判断に当たりましては、実際の具体的な債権債務の関係等を初めとするさまざまな状況を総合的に慎重に判断する必要があろうかと考えます。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 おっしゃることは一般的にそのとおりです。  例えば判例の立場を見ましても、東京高裁、昭和四十二年一月三十日の判例では、要旨として、これは不十分、ずさんな審査による貸し付け、担保物件の価値を超える不良貸し付け、それが特別背任罪ということで問擬をされている例が一つある。  さらに、最高裁の昭和六十年四月三日の判例では、任務違背として役員に対して、貸付金の回収が危ぶまれる状態にあることを熟知しながらやった場合、これも任務に反する行為として、第三者の利益のためにやったわけですから、これも特別背任罪に該当するという判例もあるわけです。  そこで、今度の場合を考えてみますと、大蔵省が衆議院予算委員会に提出をした「住宅金融専門会社七社に関する平成七年八月の調査結果」、総論部分がございます。これを見ると、住専のずさんな融資ぶりを大蔵省自身が指摘しているんです。  指摘をしてみますと、単に担保余力のみの審査で要請に応じて、収益計画からは全く経済的に合致しないような案件にも融資をしてきたため、その結果ロスが拡大したという指摘がある。これは日本住宅金融に対する大蔵省の指摘です。これは、住専の役員の慎重に融資をしなきゃならぬ任務に違背していることはもう明白であります。そのために、まさに不良債権ということになって住専は重大な損害を負っているわけです。さらに、それだけではありません。体力に比して多額の融資を行ったとか、あるいは大型物件取得に走る債務者に対して、事業計画の検討もなく融資に応じてきた。これもまたひどい話です。大蔵省の指摘です。  さらに、住宅ローンサービスの貸付金の審査結果を見ますと、債務者の事業遂行能力、事業計画の妥当性、返済財源の検討等、融資の基本的な審査が不十分なまま、役員として当然審査すべきこういった基準さえ守らずに急激な与信の拡大を図ったということが多額の損失を発生させた原因だと言っています。  それだけじゃありません。第一住宅金融の場合については、メーン銀行の債務者に対する支援を頼りに、つまり紹介融資ですよ、事業遂行能力や返済財源の見きわめもないまま担保掛け目も高いままで急激に貸し付けを拡大して多額の損失を生じた。担保掛け目は、普通、担保評価額の七割、八割と言われていますが、この住専問題では一〇〇%、ひどいところでは一八〇%の融資をしたと、こういうことがあるでしょう。これらは明らかに特別背任罪に言う住専の役員そのものの任務に違背することが明白なことを示す一つの資料であるわけですね。  だからそういう意味では、この問題については、住専の役員のこうした乱脈な融資についてはもちろん特別背任罪として重大な責任を追及する、そういうことが刑事責任の追及課題としてあるということは、これはお認めになりますか。
  159. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員の御指摘になったさまざまな諸点というものにつきまして、確かに一つの判断材料と申しますか、大きな流れの中における一つの資料といいますか、事情としては判断されるべきものと考えておるわけでございます。  ただ、一般的に申し上げますが、先ほど申し上げましたように、最終的にはそういう事情も含めましたさまざまな状況の中で判断されていくべきものというふうに考えておりますので、御理解いただきたいと存じます。
  160. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、私は、今すぐ特別背任罪が成立するということを強引に言っているわけじゃないですよ。捜査の対象として十分考えられる状況がありますよということを指摘していることを御理解いただきたい。  もう一つ、刑事局長、これは一般論で結構ですが、そういう多額の不良債権となることがわかり切っている融資を持ちかけ、その融資を受けた者、つまり、あの大蔵省が発表した多額の不良債権をつくり出している不動産会社その他です。その役員は、このような住専の会社の役員が責任を負う可能性のある特別背任罪について共犯の関係に立つ可能性が、これは講学上、一般論としてあると私は思いますが、いかがですか。
  161. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 背任罪の行為主体におきまして、その任務にかかわる者以外の者の加功の問題ということで、これは委員に申し上げるまでもないことでございますが、一般論としてもさまざまな形態があり得るということは申し上げられると思います。
  162. 橋本敦

    ○橋本敦君 ただ、負う責任としては、融資を引き出した不動産会社の役員は身分がありませんから特別背任罪の責任は負いませんよ。しかし、刑法上の背任罪の責任は負うということで、共犯関係が成り立つことは理論的にこれはもうはっきりしているわけです。  例えば、有名な千葉銀行の頭取の特別背任事件があるんですが、ここにこの判決が手元に、私読んでみたんですが、これは東京地裁昭和三十六年四月二十七日です。これによりましても、千葉銀行頭取が明らかに焦げつきになるということを十分認識しながら、自分の名誉も考えたりなどして不良な貸し付けを続けた結果、重大な損害を会社に与えた事件なんですが、裁判所は、その頭取に対して特別背任罪を認定すると同時に、その融資を引き出した人、融資方の懇請に応じて、その融資方とその頭取とが共謀の上でまさに千葉銀行に対して損害を与えるということで、共犯の関係にあることを認定しています。  それからさらに、それだけじゃありませんで、東京高裁の昭和四十二年一月三十日の判決を見ましても、銀行の幹部から担保物件の価額を超える不良貸し付けを受けた行為について、その幹部らの特別背任罪に対して、共同正犯が金を引き出した側にもあるということを認定している判決もあります。  だから、私は今度の場合、多額の金を住専から引き出して、それでまさにぜいたく三昧の暮らしもやり、そしてある不動産会社のごときは、新聞に出ていますが、遊興費に一億二千万円一年に使ったというんでしょう。そんなことをやっていて、こんなの許せるわけないですよ。  だから、具体的な状況に応じては、まさに特別背任罪の共犯として厳しく刑事責任を追及するという、そのことも必要になってくる。そういう意味では、融資を引き出した不動産会社の刑事責任についても、法務省、検察庁としてはこれは見逃すことなく捜査を遂げるということで、厳重にこれからの捜査の中で見ていかなくちゃならぬと思いますが、いかがですか。
  163. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員指摘の背任罪ないし特別背任罪が成立する場合におきます借り手側との共犯関係が、一般的にそのような共犯関係を認定される場合があり得るということにつきましては、私どもももちろん承知しておりますし、そのようなことは具体的な事案の判断の中で考慮されてまいるだろうと存じております。
  164. 橋本敦

    ○橋本敦君 それからもう一つ、今度は母体行の紹介融資なんです。  これは、法務大臣お聞きのとおり、驚くべきことですが、母体行の住専に対する紹介融資約一兆七千億円、それの九一%が不良債権になったというんでしょう。これはとんでもないことです。融資をした九割が不良債権になるというそんな融資なんというのは、そもそもこれはまさに通常常識では考えられない乱脈な融資ですよ。母体行の紹介融資がそういう状況だということは、その危ない債務者に対する莫大な融資を紹介した責任ということは一体どうなんだろう、こういうことなんです。  この問題についても住専の幹部が、自分が派遣をされた親会社であるからそこの紹介融資との関係では意を相通じて、これは危ないということをわかっていてやったということもあり得るし、それから大蔵省の調査では紹介融資は無審査のままで通したという事例だってあるということなんです。だから、そういう場合は、母体行の方がまさにその融資を進める一番の責任を持つということになるわけです。  母体行の紹介融資のこの乱脈な実態について母体行の責任はないのかと、こうなりますと、私は、さっきの不動産会社が引き出した方じゃなくて母体行の方にも、住専に対してこのような乱脈な融資をさせたということにおいて教唆、幇助、こういった共犯関係、あるいは意を通じてやったとなれば特別背任罪の共犯、共謀共同正犯そのものがずばり成立する可能性だって理論的にはあり得ると見ているんです。刑事局長、いかがですか。
  165. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 御指摘のような問題が理論的にあり得るということについては、そのとおりであろうと思います。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、この問題については本当に検察庁は腹を決めて、まさに正義のために国民のために徹底的な捜査をやってもらわなきゃいかぬですよ。  アメリカでは、刑事局長法務大臣も御存じのように、RTCの問題については徹底的な捜査をやりましたですね。このRTCの報告書、司法省の報告書では、これは膨大なこういった報告書ですけれども、新聞でも報道されました、起訴された人数が千八百五十二名、そのうち有罪が千五百七十七名、こうなっているわけですね。そのうち実刑判決が一千七十二名、こうなっております。  判決の中身はこれは裁判所のやることですが、こうした徹底的な厳しい追及捜査をRTCがアメリカでやったというのは、これは司法省報告によって法務大臣も刑事局長も御存じのとおりですが、こういう実態であることは間違いありませんね。こういうことの中で、どういう人たちが主に処断されたか、ちょっと類型的に言っていただけますか。
  167. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 具体的にそれぞれの被告の、起訴された方々の具体的なその役職等まではもちろん把握できないわけでございますが、関係資料によりますと、ただいま御指摘にあったような有罪判決を受けた人々というのは、やはり金融機関関係者、それからまさにそれに関与していたさまざまな関係の人々ということになろうかと思います。
  168. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりやすく言いますと、融資をした銀行の幹部、融資を引き出した不動産あるいはそういった企業の幹部、それからいろいろそれに加担をしてそういった違法行為に手をつけて、ともに違法行為を進めた会計士あるいは弁護士まで含まれるということで、徹底的な捜査が遂げられている状況がこの報告書から散見されますが、間違いありませんね。
  169. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 御指摘のとおり、関係会社の役員、またその従業員を含めまして、かなり広範な人々が対象になった模様でございます。
  170. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、法務大臣、私が指摘をしたいのは、こういった今の住専に関する母体行、住専及び不良貸し付けを引き出した不動産会社等、刑事責任のある者について全面的な捜査を遂げていくという大事な課題がまさに検察の任務としてあるわけですけれども、それを本当にやっていくということを法務省としては腹を固めてやっていただかなくちゃならぬ。法務大臣所信表明でお述べになった、民事上、刑事上の責任追及には厳しい態度で臨むという趣旨所信というのは、私が指摘したようなこういう問題についても決しておろそかにはしないというかたい決意でやっていただけるものと受け取ったいんですが、いかがですか。
  171. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員のおっしゃるとおりでございます。
  172. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、刑事局長、二つの問題がありますよ。一つは、こういう全面的な捜査を進めて、悪を許さない、巨悪は眠らせないということでやるということで、これからつくられる住専処理機構、あるいはこれからつくられる機構にこれを任せておくわけに私はいかぬと思うんです。それは機構の問題ではなくて、現にこの住専で起こっているその中での違法行為を捜査する責任は今の瞬間も検察庁にあるんですから。だから、そういう意味では、処理機構ができてからこれからやりますじゃなくて、現に速やかにこの問題については検察庁としては厳正な態度で調査なり検討を進めていくということをはっきりしてもらいたいことが一つです。この点はいかがですか。
  173. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) そのとおりでございまして、検察の責任に関して、今後できる体制とは離れまして、現在もその責務があるというふうに考えております。
  174. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、さっきおっしゃった専従班その他で積極的な検討を、これは私はもうまさに検察庁として特別の会議でもやって、緊急にこの体制をどうするかということで、研究とそれから情報収集と資料集めとその体制づくりも含めて緊急の会議を持つというぐらいの決意でおやりいただく、それに値する重大問題だと思いますが、法務大臣いかがでしょうか。
  175. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員の御指摘のとおり、既に私どもの知る限りでは最高検で関係者を集めまして協議を始めております。
  176. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、最後に一つ、刑事局長意見が違うんですが、先ほど同僚委員質問に対して、時効の延長はこれは難しいというお話がありました、最高裁の判決をお引きになって。それは法律家として我々もよくわかっているんです。しかし、アメリカではこのSアンドL問題について、この司法報告書を見ましても、特別に時効の延長をやったということは刑事局長もお話しになったとおりです。これでは連邦法の特例を設けたということです。アメリカは人権を尊重する国であり、そしてまた憲法修正一条に基づいて人権を最高裁も大事にするところですが、そこでこれがやられているわけです。  そこで、この商法上の住専犯罪の核になる特別背任罪の時効は五年ですから、まさに大蔵省が調査を始めた九一年あるいは九二年、そのころに乱脈な融資が既に行われているわけですから、五年という時効を考えますとこれはもう猶予がないわけです。だから、法務大臣がおっしゃったその会議でこの時効問題についてどうするんだということを真剣に論議してもらわなきゃならぬと同時に、刑事局長は消極的な見解をきょうはお述べになったけれども、この時効の壁をどう突破するかということで巨悪を眠らせないためには知恵を出さなくちゃならぬ。この問題についてももっと私は論議をしてほしいと思うんですが、いかがですか。
  177. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいま委員指摘の点は、法律家といたしましてもさまざまな観点から議論をさせていただきました。そして、やはり日本の刑事司法の根幹に触れてくる問題でございまして、その点については簡単にはいかないだろうというのが現在の結論でございます。  先ほどアメリカの例を引かれましたが、アメリカの場合はいわば検察官の起訴行為を制限する制度としての公訴に関する期間制限のような意味合いを持つようでございまして、その点がアメリカの制度と私ども制度と若干違うような面があるかと思います。この点につきまして、私どもといたしましてもさまざまな観点から議論をしてまいりましたが、現在のところ極めて難しい問題であるという結論に至っているわけでございます。  ただ、時効の問題が、委員指摘のとおり、この一連の事態に関して大きなウエートを占めているという点は私ども認識しておりますし、検察当局においても念頭にあるだろうと考えているところでございます。
  178. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ最後に、今の点は私どももさらに議論をしていきますが、もしも時効延長が我が法制から見て難しいということであれば、刑事局長が今おっしゃったように、みすみすと時効になっていくことを目前にして手をこまねいていたらこれは検察の責任になりますよね。だから、その点では、そういう時効延長は難しいとおっしゃるならおっしゃる責任を持って厳重な捜査を速やかに遂げるということをぜひやってもらいたいということで、その点の決意を大臣に伺って質問を終わります。
  179. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 国民皆様の大変重大な関心の集まっております問題でございます。問題の性格に照らしまして考えますときに、今、委員のおっしゃいましたこと、私もそのとおりと考えております。
  180. 橋本敦

    ○橋本敦君 ありがとうございました。終わります。
  181. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、昨年十一月九日の法務委員会で取り上げました日本軍強制慰安婦問題の解決について、我が国の法を所管し人権擁護の責任者である法務大臣質問をいたします。  一九三〇年代の初めから第二次世界大戦が終わるまで、日本政府は軍部の要請により、国内からアジアの各地で慰安所と呼ばれる軍人向けの売春施設を運営してきました。そこには、日本の将兵たちに性的慰安を与えるためにだまされ、強制され、また誘惑されたアジア各地の若い女性たちが置かれていました。これらの不幸な女性たちは、慰安婦または従軍慰安婦と呼ばれていました。このように大規模で重大な人権侵害を私たちはこれまで四十年以上にわたって放置してきたのです。  なぜでしょう。これは女性の問題であるからです、アジアの問題であるからであります、と私は思っております。  一九九三年四月、国際法律委員会、ICJの調査団が日本を訪れました。八月に日本政府は初めてその事実を認め、日本軍の行為が多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけた行為であったことを認め、これらの女性すべてに謝罪しました。ICJ調査団は、これらの女性は国際法において認められる最大限の救済を受ける権利を有するものと考えると、日本政府に対し可及的速やかに犠牲者となった女性たちに正義をもたらすことを求めました。  一九九五年七月に、国連人権委員会における四年間の日本軍強制慰安婦問題論議を踏まえ、国連人権委員会は公式の調査団を日本に派遣しました。その団長であるラディカ・クマラスワミ女史は、人権委員会の女性に対する暴力とその原因及び結果に関する特別報告者として、ことしに入ってその報告書を人権委員会に提出いたしました。  その報告書は、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく戦時の軍事的性的奴隷制問題に関する報告書というものでございます。  そこで、法務大臣にお尋ねいたします。  このクマラスワミ報告が人権委員会に提出された事実経過、私が今若干述べましたが、このことについて大臣女性大臣として御存じでございますか。
  182. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 承知しております。
  183. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこで、この報告書は人権を担当する閣僚としてお読みになったことと思います。  後ほど大臣の御見解を伺います。  その前に、この報告書がどういう中身のものであるかということの要点を私の方から申し上げてみます。  報告書では、まず、旧日本軍が朝鮮半島出身者などに強制した従軍慰安婦は性奴隷であると定義し、奴隷の移送は非人道的行為であり、慰安婦の場合の女性や少女の誘拐、組織的強姦は明らかに一般市民に対する非人間的行為であり、人道に対する罪に当たるとしています。その上で、現代にも通じる女性に対する暴力と見る観点から、六項目を日本政府へ勧告を行っています。  一、日本帝国陸軍がつくった慰安所制度は、国際法に違反する。政府はその法的責任を認めよ。  二、日本の性奴隷にされた被害者個々人に補償金を支払え。その目的達成のために特別行政審査会の設置を求める。三、慰安所とそれに関連する活動についてすべて資料の公開をせよ。四、被害者の女性個々人に対しては公開の書面による謝罪をせよ。五、教育の場でこの問題の理解を深めるようにせよ。六、慰安婦の募集と慰安所の設置に当たった犯罪者の追及と処罰を可能な限り行うこと。  また、この勧告とは別に、女性のためのアジア平和国民基金、通常国民基金と言われているものですが、これについても言及し、日本政府の道徳的懸念のあらわれであるが、法的責任の否定の表明である。道徳的観点からはこれを歓迎するが、国際慣習法に基づく慰安婦からの法的な主張を認めたものではないとしております。  随分厳しい勧告の中身でありますが、法務大臣としての御所見を伺っておきたいと思います。
  184. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 多数の女性が数多くの苦痛を経験され、心身にいやしがたい深い傷を負われたいわゆる従軍慰安婦問題につきましては、私も大変に胸が痛む思いがいたしております。
  185. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、今、大臣にお伺いしましたのは、人権を担当する閣僚としてはあなたがただ一人なんです。その大臣がその程度の感想的なことではちょっと私は納得しかねます。事は、女性の重大な人権侵害にかかわる問題について国連の人権委員会のある責任者が、先ほど申し上げたような勧告を日本政府に突きつけているというこの状況でございます。
  186. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 感想だけを申し上げたわけでございますが、私は、この従軍慰安婦問題が多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であるということは深く認識をいたしております。  人権擁護機関を所管する法務大臣としてこれに対してどう対応するのかという御質問でございますが、こういった過去の反省、経験にも十分に我々は心をいたしまして、女性の名誉と尊厳を脅かす今日的な問題につきまして、啓発活動、人権相談、人権侵犯事件調査、こういった事柄を通じまして積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  187. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大変不満であります。納得できませんけれども、だからといって審議を拒否するわけにもいきませんし、順次中身に触れながら、さらに大臣の考えを聞いていくことにします。  そこで、外務省に伺います。  先ほど私が概略申し上げましたクマラスワミ報告は、ことしの一月四日に人権委員会に提出されています。これですね。(資料を示す)  ジュネーブの日本代表部に内容を知らされたのはいつですか、外務省がこれを入手したのはいつか、それを教えてください。
  188. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 今の委員の御質問にお答えいたします。  御指摘の附属文書と呼んでおるものでございますが、ジュネーブの時間におきまして本年二月六日が公表された時期でございますが、それに先立ちまして国連の人権センターの方より草案ということで、原案といいますか草案というものとして、厳に日本政府限りで扱ってほしいという条件のもと、ジュネーブの代表部の方では一月九日入手しております。これはあくまでも事前の配付という了解でいただいたものでございます。
  189. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 草案でいいわけですが、それを入手した外務省はそれをどのように扱いましたか。
  190. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 草案ということなので、部内におきまして検討をさせていただきました。
  191. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 日本政府に対しての勧告でありますから、それは各閣僚に恐らく渡ることになったと思いますが、今私がお尋ねしました法務大臣の手元にはいつ渡りましたか。
  192. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 公表という時期に合わせまして配付をしたと了解しております。
  193. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もう一度はっきり言ってください。
  194. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 法務省方々へは二月六日に送付させていただきました。
  195. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 二月六日に送付されたこの文書を恐らく仮訳もつけて渡されたと思うんですが、それを法務省は直ちに法務大臣にお渡しになりましたか。
  196. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 私どもの記録によりますと、二月七日に英文でいただいておりますが、仮訳をいただいたのは先週金曜日と承知しております。
  197. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それから法務大臣にはいつお渡しになりましたかと言っているんです。
  198. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 昨日でございます。
  199. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私はこういうことがいかぬというんですよ。これだけ厳しいことを国連の人権委員会から日本政府に対して突きつけられている。しかも事は人権の問題です。所管大臣長尾法務大臣。直接は外務省かもしれない、これは外務省の人権難民課があるんだから。だから、こうしたものをすぐに大臣のところへ知らせて、そして一体これをどうしたらいいのかということを大臣自身が政治家としてこういう問題の判断をしにゃいかぬのじゃないですか。  それを全部、表現はまずいかもしらぬけれども、官僚の皆さんの中で適当にそれを、ここで私が質問をしなかったらこれは恐らく法務大臣の手元に渡っていない。今、住専の問題が起こっておるのも皆そうでしょう。厚生省でエイズの問題が起こっておるのも皆そうでしょう。この人権問題だって、国連で何が起こっているのかという問題を逐一法務大臣に報告する義務があるとかないとかいうことじゃなくて、世界じゅうの人権問題が今何を議論しているかということは、少なくとも日本法務大臣は知る必要がありますよ。国際的におくれてしまっている。  私もそんなことだろうと思ったんですよ。大臣を責める気にならないじゃないですか、それでは。大臣、適当に後で処理しておいてください、この問題。  外務省、クマラスワミ報告の仮訳をいただきました。そして、この中に、特別行政裁判所というのが二カ所出てくるんですね。ところが、特別行政裁判所というのは、法務省がおられますけれども、憲法七十六条のところにそういうものを置いたらいかぬと書いてある。そこで、国民基金のある人が、鬼の首をとったように、このクマラスワミ報告というのは大変な報告だ、日本の憲法七十六条に違反するようなことを書いておると書って、この報告書の権威そのものを陥れようとしておる。  そこで、法律家の幾多の専門家がそのことを調べた。本当にそうなのかどうなのか。クマラスワミさんという方がそんなばかなことをするのか調べた。ところが、それは東大出版社の英米法辞典というところで、アドミニストラティブトライビュナルというのですか、これは行政審判所というふうに訳してあるんですよ。  それで、ある人が言った。トライビュナルというのを裁判所と訳すのは受験英語だと。外務省の中には受験英語しか訳せぬ人がたくさんおるのかなということになって、外務省の権威が逆に落ちたんですよ。どうなんですか。これを早く直されないと大変なことになりますよ。故意にクマラスワミ報告そのものの権威を失墜させようとするのか、それとも外務省に翻訳する能力がないのかという問題に、仮訳だからいいけれども、どうしますか。
  200. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 御指摘のございましたクマラスワミ報告者の附属文書の中のアドミニストラティブトライビュナル、報告者自身がいかなる意味でこの言葉を使っているのかまでは我々として有権的に申し上げる立場にはございませんが、仮の訳ということでとりあえず行政裁判所と、通常の訳語に従って訳させていただいたものでございます。
  201. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、このまま押し通されるんですか。特別行政裁判所ということで受けとめていくんですか。日本国の憲法七十六条に書いてある、してはならぬ、置いてはならぬと書いてあるそのことをここに、本人の意思がそうではないのに外務省はそうだと言い切って、これから人権委員会でもそういう立場議論なさるんですか。  いかがですか。
  202. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 仮の訳ということで、とりあえず通常の英語の訳例に従いまして行政裁判所と訳させていただいたわけです。これは本来私どもがコメントすべき問題ではないんですが、行政裁判所の設置について書かれている憲法七十六条でございますが、行政裁判所であっても司法の体系に服するものであれば設置が認められているというふうに理解しております。また他方、仮に行政的審査会とかほかの用語の場合であっても、司法の体系に服さないものは設置が認められないというような差があるように理解しております。  したがいまして、ここのクマラスワミさんの使われた意味というのははっきりいたしませんが、いずれにしても実質的な意味合いというのはさほど我が憲法との関係ではないのではないかと、かように理解しております。
  203. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、国民基金のある人が、先ほど言ったように、憲法違反のことを書くようなクマラスワミさんだというふうな言い方をしているということは間違いですね。そういう言い方でもって批判しているんですよ。憲法違反のことを書くようなクマラスワミさんの報告は権威がないと言って批判しているんですよ。そのことは間違いですね、そういうことをやっていること自身が。ちゃんと見解を出してくださいよ、外務省、これは。
  204. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) どのような批判をされているのか私どもとしては承知しませんので、ここでコメントするのは差し控えたいと思いますが、いずれにしても、通常の訳に従って仮訳としてこういう言葉を今は使わせていただいているということでございます。
  205. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、先ほどおっしゃったように、それは憲法七十六条に違反するというふうなとらえ方は外務省はしていないということだね、こういうふうに訳しても。
  206. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 何度も申し上げておりますが、とりあえずの訳ということで訳させていただきまして、その使われている意味合いというのは、報告者自身の見解を聞いたわけではございませんので、その点については、我が国の憲法との関係がどうなるかという点はコメントを控えさせていただきたいと思います。
  207. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 こういうのをこんにゃく問答と言うのかな、押しても突いてもどうにもならぬ。  それでは仕方がない。これだけにかかわっているわけにいかぬから、これは仮訳なんだから本訳のときには、先ほど私が言ったように、東大の出版社が出している英米法辞典に行政審判所とこれは訳すと、なぜかというとということをきちっと書いてあるから、受験英語だと笑われるような訳じゃなくて、これに従って正確に訳してください。強く外務省に要望しておきます。それで、後ほどまた別の機会に私、外務省へ返事を聞きに行きます。  私がこの問題を取り上げたのは、法務大臣にぜひとも閣僚のメンバーとして、このクマラスワミ報告、これを日本政府が尊重する立場をとっていただきたいということなんです。  この報告が出たときに、総理大臣、官房長官がにべもなくこれを突き放しておるんですね。いや、日本はもう法的責任はないんだと、国連の人権委員会で言いたいことがあるならどんどん言ってもらったらよろしい、日本日本の主張をするだけですと、こういう対応に今、日本政府が出ようとしているんです。  しかし私は、国連の人権委員会が正式の調査団を日本に派遣した。国連のどこかの部署が正式に日本に対して調査団を派遣したというふうなことは過去にあるんですか、外務省、何回も。
  208. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 本件に関しましては初めてだと了解しております。
  209. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、そのほかのことで。
  210. 古屋昭彦

    説明員(古屋昭彦君) 国連の関係のいろいろな調査団というのは分野に応じて多種多様でございまして、手元に資料の持ち合わせがございませんので、ここでほかのものまであるかないかというのはちょっとお答えは控えさせていただきます。
  211. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、多種多様であなたがわからぬということじゃないんですよ。あなたに記憶のないほどないことなんです、これは。  それで、私たちの調べた限りでは、前例を挙げれば、満州事変における日本軍の軍事行動を国際法違反とした一九三二年の国際連盟に提出されたリットン調査団報告書がある。これは私たちも教科書で覚えましたが、それがあるだけですよ。それ以来の正式の人権委員会というところの調査団だと、こういうことなんですね。その調査団の正式の報告、勧告を日本政府がこれを無視して、これから先どうなるのかという問題なんです。  三月の十八日から人権委員会が開かれます、約一カ月間にわたって、ジュネーブで。そこでこの報告書の中身について議論が行われるわけです。  この報告書が否決されるんならいい。しかし、歓迎されて、これは承認、皆が認めることになると思います、僕は、見ているところ。それは日本政府は必死になってロビー活動をやってつぶしにかかるかもしれない。だけれども、つぶせる問題じゃないんです。  女性に対するこのような重大な人権侵害をやって、そして日本がそのことについて法的責任をきちっととろうとしない。法的責任と言ったらあの住専も同じことなんですが。そして、国民基金の道義的責任のところだけで、国はできないから国民にお願いするんだというようなことで今逃げようとしている。こんなことが国際的な場で通ずるわけがないんです。人権委員会の中で日本は孤立します。日本というのは人権問題についてこのレベルの国なのかということになるでしょう。  世界女性会議のあの北京では、日本人権委員会のこうした方向に従わないならば、日本の商品をボイコットしようというふうな決議がNGOの集会で行われるというふうな状況にもあるわけなんです。そして、これはきのうやきょうのことではない。私が一九九〇年の六月に参議院の予算委員会で取り上げてから六年目、国連の人権委員会でこの議論が始まってから四年、それだけの積み上げの上にこれがあるんですから非常な重みを持っております。  私は、長尾法務大臣人権擁護の所轄庁である法務大臣として、この種の問題は、国連は外務省だといってそちらに、つかさつかさなどといって縦割りで切るんじゃなくて、人権の問題は私のところの所轄なんだといってしっかりと対応してもらわなければ、私は大変なことになると、こう思うんです。閣僚の中で法務大臣一人でも、この問題を今までのような対応ではだめですと、日本日本のやり方があるんだというようなことでは通用しませんよという主張があってしかるべきだと思うんです。  しかも、このクマラスワミ報告にも書いてありますけれども日本は今まで国際条約をたくさん批准してきております。法務大臣女性であるからといってあえてそういうものだけを取り上げるわけじゃありませんけれども、一九〇四年に醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買取締二関スル国際協定、一九一〇年には婦女売買禁止ニ関スル国際条約、一九二一年には婦人及児童ノ売買禁止二関スル国際条約というようなものを全部批准しているんです。  その中には、「何人タルヲ問ハス他人ノ情慾ヲ満足セシムル為醜行ヲ目的トシテ未成年ノ婦女ヲ勧誘シ誘引シ又ハ拐去シタル者ハ本人ノ承諾ヲ得タルトキト雖」「罰セラルヘシ」、これは第二条に同じように、成人でもこういう醜業につかせることを強制的にやったら罰せられるべし、とこうなっておるんですよ。  そうすると、従軍慰安婦制度の従軍慰安婦にさせられた人たちは、これは明らかに醜業につくことを強制的に軍の力によってやらされたわけでしょう。そして、そのことはクマラスワミさんは奴隷だと、奴隷状態だ、性奴隷だ、軍事的性奴隷だと、こういうふうに言っているんです。私は、これほど厳しい女性に対する人権侵害の状況は最近ないんではないかと思うんです。  だからこそこのことをきちっと日本法務省人権擁護の立場から受けとめて、過去の清算を国の責任によってきちっとやって、そして以後こうしたことが再び起こらないように一体どうするかということを国際社会の中で、憲法にも書いてあるように名誉ある地位を占めるために、日本は経済大国であるけれども人権大国でもありますと。  そして、アジアの中の日本としていくためには、五十年前のアジアの女性に対して行ったこの奴隷的な性搾取のこの問題に対してきちんとして国が逃げることなくけじめをつける。そのことによって、初めてアジアの皆さんから日本は尊敬されることにもなり、信頼を私は回復することになると思うんです。私は瀬戸際だと思っているんです、これ、これから国際社会の中で日本が生きていくために。法務大臣が文字どおり人権という立場で力いっぱい頑張ってもらわにゃいかぬと思うんです。  だから、そのことは抽象的でなくて、今言いましたように三月十八日から人権委員会が開かれるんですから、そのときに日本政府はどう対応するのか。それは、この勧告を尊重して、新しく日本が何をしたらいいのかということをそれこそ政府も国会も国民も一遍大議論をやってみる、そのぐらいの値打ちのあることだと私は思うんです。そしてその旗振りを私は長尾法務大臣に期待したいんです。どうでしょうか。
  212. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員女性の名誉と尊厳にかかわりますこの問題につきまして重大な関心を持っていただきまして、多くの活動をしていただいておりますことに深く敬意を表するものでございます。私も、先ほど申し上げましたように、この従軍慰安婦の問題は、従軍慰安婦として多くの女性の方が心身にわたっていやしがたい傷を負われたそのことを考えますと、本当に深くおわびを申し上げなければならないということを深く感じるものでございます。  政府全体の姿勢について今、先生からも御批判がございました。御承知のように、今次の大戦にかかわります賠償問題、財産請求権の問題、これにつきましては政府全体といたしまして、サンフランシスコ、平和条約、二国間の平和条約、それらに関連いたします平和条約に基づきまして誠実に対処してきたという形で基本的な方針をとっているところでございます。委員の御指摘は、こういった型どおりのことではなくて、もっと温かみのある心のこもった対応を経済大国となった日本が考えていくべきではないかという御指摘であると思います。  先般、政府が提案をいたしました女性のためのアジア平和国民基金でございますが、これにつきましていろいろな御批判があることは承知いたしております。政府がいわば責任を回避しているのではないか、国民に何か押しつけているのではないかという御批判もあることも承知いたしております。しかし、五十年たちました現時点におきまして、このような過去に委員がお述べになられましたような極めて厳しい身体的な心理的な被害を受けられました多くの関係者の方に具体的に対応していることの難しさを思いますときには、やはりこういった国民基金という形で解決をしていくのも私は一つの方法ではないかと思っているところでございます。  残念なことに、現在、伺うところによりますと、まだこの国民基金は目標額には到底到達しないような低額であるというふうに伺っております。私も国民の一人といたしまして、また女性の一人といたしましてこの基金に協力はいたしたい、このように考えているわけでございます。  今、委員が御指摘になりました、我々全体が心の中に負っていかなくてはならないこの従軍慰安婦問題に対する反省の気持ち、これは今後いろいろな形で我々の施策の中に生かしていかなくてはいけない、このように考えているところでございます。
  213. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 時間が来ましたけれども、一言だけお願いします。  大臣のおっしゃっておる今のお話はお話としてわかるんですが、しかしその考え方が国際社会の中で認められるのかどうか、国連の人権委員会の中で結構だと、そういうことでよろしいとなるのかどうかということなんです。いや、外国がどう思おうと、国際社会がどう考えようと、人権委員会の皆さんが何を言おうと日本日本だというふうにして我々がやっていくのかという問題と、それとやはり国がやったことは国がきちっと責任を持つ。この法的責任というものを我々自身がやって、その上で国民基金の道義的な問題に移るんならいいけれども、法的な問題はサンフランシスコ平和条約があるから、二国間条約があるからそれはできないんだというふうなその考え方がクマラスワミ報告では全部否定されているんです。  だから、そのことを大いに論争なさるのも結構でしょうけれども、やはり私は、ここで新しい立場に立って国がきちっとした責任をとるようにと。だから、それを政府が従来の関係でできないならば、これは国会がやらなければならぬと思うんです。国会も責任を負っていると思うんです、このことについては。条約を承認するのは国会ですから、国会が承認した条約が一体どうなっているのかということに対する責任は国会にもあると私は思います。  だから、そういう意味で我々は我々の立場でかかわっていかなければなりませんが、もう一度法務大臣、今のお話はそれはそれで結構ですが、しかしそれでは通用しませんよというこの深刻な事態をもう少し厳しく認識していただいて、きのうお読みになったんだからこれは無理だと、何遍も何遍も読まぬと本当によくわからぬ。だから、そういうことでもう一度考え直していただいて、日本政府がさすがは日本政府だというふうに国際的に高い評価を受けられるようにひとつやってもらいたいと思います。  労働省、お呼びしておりまして、質問する時間がなくて申しわけございませんでした。おわびいたしておきます。  また改めて次の機会に、もう少し事態が動くと思いますから、その動いたときにまた再び法務大臣とこの問題について議論をしていきたいと思います。  ありがとうございました。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 私は、法務省の所管の問題の中で非常に重要だと思っております死刑制度について取り上げたいと思います。  死刑制度というのは、いわば人間社会にかかわる一つの哲学の問題ではないか。それだけに非常に古くからこの制度についての疑問あるいは論議があったと承知しております。確かに、公権力が公然と人を殺すということは戦争とこの死刑しかないわけでありますから、考えようによっては本当に大変なことを実はお互いに長い間やってきた。過去をさかのぼると、日本でもおよそ千年ぐらい前に約三百年間死刑を執行停止していた時代があると聞いています。  それはともかくとして、実はこの参議院法務委員会というのは大変この問題については一つの歴史を持っているようでありまして、私も新聞記者でそのことを承知しているんですが、昭和三十一年、一九五六年にこの参議院法務委員会で、当時の高田なほ子委員長自身が加わって、羽仁五郎あるいは市川房枝さんというような先輩の皆さんが提案者になって議員立法で死刑制度廃止の法案を提出されている。そして、この委員会で極めて真剣な議論があって、二日間にわたって公聴会も行われたということを承知しております。  その中で、参考人として出席をした評論家の中島健蔵さんは、国家が公然と合法的に殺人を行うことを許すということは、これは生命の尊厳という点で全く私の考えと相入れない、こういうことを述べておられますし、奈良少年刑務所の所長だった方が、自分の体験から、死刑の判決を受けた人を含めて受刑者は皆性善説をとらなければならない人たちであったということで、刑務所の中で死刑の判決を受けながらも人間としてちゃんと生きていくだけの自覚を持っていた、人間の性は善だと思わざるを得ないということを言っておられます。  こういうことを考えますと、この死刑の制度というのは本当にこのまま放置していていいのか。  法に規定されているのだから死刑執行を淡々と実行すればいいんだということを言われた過去の法務大臣もおられたわけですけれども、それでいいのかと思わざるを得ない。  そこで、まさに担当大臣である長尾法務大臣はこの制度についてどうお考えか、まず承りたいと思います。
  215. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 死刑の問題、今、委員から御指摘がありましたように、いわばその人その人の哲学、人生観、そういうものに基づいた認識が行われるものであろうと思っております。  法務大臣といたしまして、いわば我が国法秩序維持国民権利の擁護というものを預かる立場になって考えましたときには、それは我々の現在の社会皆様が、国民皆様がこの問題についてどのような認識を持っていらっしゃるかということにやはり深く思いをいたさなければならないというふうに考えております。  先生が今御指摘になりましたこと、私も大変興味深く聞かせていただいたところでございます。  しかしながら、現在、国民の多くの方は、七〇%程度の方が死刑の存続ということについて、これを存続すべきであるという御意見と伺っております。そういう段階におきまして、法務大臣が死刑を廃止するというような方向を決定していく、これはできない、このように判断をいたしているところでございます。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 今、世論のことを言われました。七十数%ということのからくりと私は思っておりますが、この点は後で触れたいと思います。  まず、むしろ、先ほど大臣は同僚委員の他の質問に対して、法務省としては時代の流れに沿った役所でありたいということを言われました。まさにその意味で、今の死刑制度に対する世界の状況から申し上げたいと思うんですけれども、現在、私の調べた限りでは、死刑制度を廃止している国が百一カ国、これは一九九五年十二月、去年の十二月の数字でございますが、死刑制度を廃止している国が百一カ国、存続している国が九十三カ国、廃止した国の方が若干多いという、こういう状況にあるということがまず第一です。  同時に、その結果として起こります事態は、いろいろ起こってくるわけですけれども、例えば日本人に関係のあることで最近起こったことでは、フィリピンで麻薬所持のために逮捕された人がフィリピンの裁判で死刑の判決を受けた。これはそれぞれの国の法律が違うわけですから起こり得ることでありますが、フィリピンは一度死刑制度を廃止してまた復活している国だと聞いておりますが、日本では麻薬所持で死刑になることはまずあり得ない、フィリピンでは死刑になる、こういうことが国際化時代の中では起こってくる。そして、国際的にほぼ半々と言っていい死刑制度廃止国と存続国があるという状況の中で、さまざまな問題が起こってきます。  そこで、当然のこととしてこの問題は国連でも取り上げられ、その調整をしなければなりませんから、死刑廃止条約というものが既にでき上がっているということは大臣も御存じだと思います。  そして、これは一九八九年の条約ですけれども、採決のときの票数を見てみますと、賛成した国が五十九カ国、反対が二十六カ国、さすがに迷ったのでしょう、棄権が四十八カ国あります。しかもなお、残念なことに日本は反対した二十六カ国の中の一つであります。  なぜ日本がこの採決のときに反対という意思を表示されたのか、これは法務省からお答えいただきたい。
  217. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 日本国の立場という観点から、当時の法務省としてもそのような立場をとらざるを得ないということで反対したのではないかと考えております。
  218. 田英夫

    ○田英夫君 これは、これから触れていく問題でわかってくると思いますが、今の刑事局長のお答えは極めて残念なお答えだと言わざるを得ない。  この死刑制度の問題について法務省が本当に真剣に考えているんだろうか、政府全体として本当に真剣に考えているんだろうかということを言わざるを得ないと思います。  この条約は、既に二十八カ国が批准をし、四カ国が署名を終わっている。賛成した国は五十九カ国あるわけですね、既に死刑を廃止している国は実は百一カ国もあるわけですから。そういう状態ということは、世界の流れがまさに死刑廃止の方向に動きつつあるということはだれも認めざるを得ないことだと思いますが、その意味で、大臣、これをどうおとらえになりますか。
  219. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今、刑事局長からお答えを申し上げたわけでございますが、こういった条約で死刑を廃止するというような形をとることがいいかどうか。いわば、先ほど私が申し上げましたように、死刑制度の存続については国民皆様がどう判断をするかということが非常に大きな要素であるということから見て、条約で一律に決めていくということはいかがかということがこの反対を投じた理由の大きなものであったというふうに考えているわけでございます。  確かに、現在の状況を見ますと、死刑を廃止をするという傾向が世界の多くの国において見られるということは私も承知をしているつもりでございます。  私が申し上げておりますことは、日本において今後死刑を廃止するということがあり得ないとか、そういうことは考えられないとかということを申し上げているのではなくて、やはり国民の間でもう少しこの問題について十分な御議論がなされて、そしてその中でコンセンサスが生まれてくる。また、そのことは今の刑罰法規の体系全体をもう一度見直すことにつながっていくことであるかと思っておりますが、国民皆様の中のそういった動きを、御議論を待って対処するのがやはり法務省としてのあるべき姿であると考えております。
  220. 田英夫

    ○田英夫君 もっと後で触れようと思いましたが、どうやら大臣を含めて法務省は、世論が七三%なお死刑の存続を望んでいるからこれに従うんだというところに逃げ込もうとしておられることが明白でありますから、その七三%という、これは総理府の調査の数字でありますけれども、その欺瞞性を言わざるを得なくなるわけです。  この総理府の世論調査の設問が、これは実は私ごとですが、私も新聞記者をやっていた、ジャーナリストの段階の中で調査部長というのをやりまして、世論調査のことを専門に勉強した期間がありますのでよくわかるんですけれども、設問が非常に重要ですね。総理府の設問は、「場合によっては死刑もやむを得ない」と、こういう設問に対する、そうだ、賛成というのが七三・八%あるわけです。「場合によっては死刑もやむを得ない」という設問の仕方は、これは極めて恣意的であると言わざるを得ない。  それに対して、例えば九四年の六月に朝日新聞が衆議院議員を対象に行いました世論調査では、存続すべきだというのが四〇・二%、死刑制度はやめるべきだという御意見が四七・二%、廃止論の方が多いわけであります。それから、NHKが同じ九四年の七月に行いました世論調査、これは一般の世論調査ですけれども、その数字は、死刑制度廃止が四七%、存続が四三%であります。これも廃止論の方が多いわけであります。  世界の趨勢といい日本国民意見といい、このところずっと続いてきた傾向は、明らかに死刑制度というものに対する疑問が募ってきている、廃止すべきだという方が今や多くなってきているということで、この七三%に逃げ込まないでいただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。  この点について法務当局の御意見を伺いたいと思います。
  221. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) ただいまの委員の御指摘については、私どもといたしましても十分かみしめてまいりたいと思います。世論調査の世論、何といいますか、数字に頼ってと申しますか、そういうことを一つの、それだけにということではなくて、大臣からも御答弁ございましたように、この問題についてはさまざまな観点から今後とも議論がなされていくべきだと存じますし、私どももそのような意見を大切に聞いてまいりたい、そういうふうに考えます。
  222. 田英夫

    ○田英夫君 先ほど死刑廃止条約のことを申し上げましたが、条約で決めるのはいかがなものかという御答弁が大臣からありましたけれども、条約をつくると同時に、国連の場で、長い名前ですが、死刑に直面している者の権利保護の保障の履行に関する決議というのが一九八九年十二月十五日、国連総会において決議をされております。  時間がありませんので、その決議の内容と現在日本政府、法務省がとっておられる対応との間に既に矛盾が起きているということを指摘しなければならないと思います。  まず第一は、一九九五年十二月に残念ながら死刑の執行が行われましたその一人は、恩赦を出願中の人でありました。これはこの決議の精神からすると大変私は問題があると思います。あるいは、再審を準備中に執行されたという人が二件あると。実は、民間の皆さんの御努力によってこのところずっと死刑が執行されてきた状況についての資料がありまして、それには御本人の名前も全部承知をしておりますが、人権のためにこれはここでは申し上げません、人数だけ言いますけれども、再審を準備中に執行された者が二件あります。あるいは、精神障害の可能性が強かったにもかかわらず執行された人が一人おります。それから、この決議では死刑執行の最高年齢を定めるべきであると書いてありますが、七十歳で処刑された人がこの数年の間に二人おります。  こういうことは、この国連決議の中のこうあつてはならないということに全部触れていると。  この問題については法務当局はどうお考えですか。
  223. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) 御指摘の国連決議はもとより承知しているものでございますが、ただいま御指摘幾つかの点につきまして、私どもの考えでいるところを申し上げさせていただきたいと思います。  まず、恩赦の出願自体は法文上刑の執行停止事由に当たらないとされているのでございますけれども、それが、つまり恩赦の出願がなされている場合には、死刑執行のもたらす重大な結果にかんがみまして、法務大臣が死刑執行命令を発するに当たりまして、中央更生保護審査会の議決の有無でありますとか、その内容を十分参酌されているところと承知しております。  また、再審の請求につきましても、法文上刑の執行停止事由には当たらないとされているのでございますが、実際それがなされている場合にも、その事情について十分しんしゃくされていると承知しております。  他面、国の司法機関たる裁判所において言い渡されまして最終的に確定した裁判につきまして、速やかにその実現を図ることもまた刑の執行の任に当たる者の重要な職責であるということは言うまでもないのでございます。  さらに、もし恩赦出願、再審請求等の手続中はすべて執行命令が発せられない取り扱いとするものといたしますと、次々にこれらの請求ないし出願を繰り返す限り刑の執行はなし得ないこととなるわけでございまして、刑事裁判の実現を期することは極めて困難という事態になると言わなければなりません。  また、刑事訴訟法第四百七十九条第一項は、「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」旨規定してございます。死刑確定者が心神喪失の状態であるか否かについても当然考慮されているところでございまして、心神喪失の状態にある者に対して死刑を執行することはあり得ないものと考えております。
  224. 田英夫

    ○田英夫君 次々に再審あるいは恩赦の請求をしていると執行ができなくなるという、帝銀事件の平沢氏のことを想起されているのかもしれませんけれども、これは後で触れます。  そこで、死刑制度を存続すべきだという御意見の中でしばしば強く主張されるのはいわゆる抑止論ですね。何か核抑止論を想起するんですけれども、死刑制度があるから殺人をしないんだと、こういう論理、果たしてそれは本当にそうだろうかということを考えざるを得ないんです。  まさに法務大臣に直接かかわる問題として、一九九〇年から九三年にかけて、左藤恵法務大臣が強く主張されて、以下四人の法務大臣の間、三年四カ月間死刑の執行が停止されたことがあることは、もちろん大臣も皆さん御存じのとおりであります。じゃその間に、死刑がないんだから今なら殺人事件を起こしても大丈夫だということになったでしょうか。言うまでもなくオウム事件はその後であります。死刑執行が再開されてからということになります。だからということではありませんけれども、抑止論というのを私はとらない。  そこで大臣に伺いたいんですけれども法務大臣として死刑執行をなさらなかった最近の四人の法務大臣についてどうお考えですか。
  225. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 委員も御承知のように、死刑の執行については公表をしていないところでございます。  私は、今、先生の御質問につきましてはお答えを遠慮させていただきたいと思います。
  226. 田英夫

    ○田英夫君 それではもう一つ、死刑制度の恐ろしさの方で一つの大きな問題点は裁判の誤判の問題ですね、冤罪の問題であります。  これは、現実に戦後の問題を取り上げただけでも冤罪事件というのはかなりたくさんあります。  再審請求をすること自体非常に難しかったのを、白鳥事件以後再審が行われるようになった。それ以後、たしか、裁判で再審になって結果として無罪になった人が四人いると思いますね。刑事局長、それで間違いありませんか。
  227. 原田明夫

    政府委員原田明夫君) そのとおりでございます。
  228. 田英夫

    ○田英夫君 これは再審の結果無罪になったということでありまして、免田さんとか四人おられるわけですが、そのほかにも裁判の過程で死刑が無罪になっていくという事件が実はたくさんありますよ。  私がちょうど新聞記者のころにまず手がけましたのが帝銀事件です。ですから、私が死刑廃止論者になったきっかけは、あの平沢貞通氏という人がどうしても真犯人だと思えないという疑問を持っています、もちろん勘ですけれども。そして、御存じのとおり、九十五歳で亡くなるまで三十数年間獄中にあったという、死刑の判決を受けてからだけでも三十年を超しておりますね。彼のために死刑の時効ということが議論をされたことも御存じのとおりであります。これは実は考えようによっては大変な残酷な刑じゃないでしょうか。死刑の判決を受けて延々と、いつ執行されるかと思いながら三十数年、こんな残酷なことはないと思いますよ。  私は、実は平沢貞通氏を救う会という会の方に頼んで、彼のかいたテンペラ画の絵を私の議員会館の部屋に二十枚ほどかけたことがあります。展示したことがあります。昔の絵は静かな風景画です。それが死刑の判決を受けた直後の絵は、炎が燃え盛ってそこに真っ白なひげの、頭も真っ白な自画像が浮かび上がって憤怒の形相ですよ。本当にあれだけ、要するに死刑に値するような犯罪を犯した人が死刑の判決を受けたら、あんな憤怒の形相をみずからかくかという疑問を私は持たざるを得なかった。そして、それがだんだん、最後に獄中で亡くなるまで、最後の方の絵はまた非常に静かな絵になっている。テンペラ画という油絵と日本画の中間のような色調の絵ですけれども、こういうことを体験しております。  この平沢氏も問題ですが、もっと問題は例えば三鷹事件、これはいきなり共産党の人がやったんだという見込み捜査をやって、三鷹電車区と中野電車区の共産党の指導者を逮捕した。結局、もちろん無罪です。全くの見込み捜査です。最後は竹内景助という人が一人だけ死刑の判決を受けた。  獄中で亡くなりました。私は、この事件はずっと担当しましたから、決して一人でできるような事件じゃない、そして竹内景助氏も真犯人かどうか大変な疑問を持っています。  あるいは徳島のラジオ商殺し事件、これも同居していた少年の供述をもとにして冨士茂子さんという人を死刑判決にした。しかし、結局この方も獄中で亡くなりました。死後、再審で無罪になった。  八海事件というのもありました。阿藤という人、この人のことは今井正監督の「真昼の暗黒」という映画になって有名になりました。私も現場まで行きました。これも無罪ですよ。  もしあれが、再審が行われなかったり、あるいは裁判でそのまま通っていってしまって死刑が確定する、死刑が執行されるというようなことになったら、この人たちはすべて殺されたということになったわけであります。  時間がなくなりましたから、最後に法務大臣に二つの提案をしたいと思います。  一つは、一定期間今後死刑の執行を停止されたらどうかと。あの三年四カ月のような状態を再現されて、大臣もしばしば先ほどからお答えになったように、国民の皆さんの間の議論を深めていく、こういうことをやったらどうか。その議論を深めるために、ちょうど脳死臨調と同じような形で、死刑制度臨調とでもいうべきものを法務省も加わって、民間の皆さんが中心になっておやりになる、法務省はそれに協力をしていただく。  一定期間死刑の執行を停止する、死刑制度臨調に協力をする、この二つの点について大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  229. 長尾立子

    国務大臣長尾立子君) 今、先生からは、死刑の執行を一定期間停止し、その間に死刑存続についての臨調というべき審議機関を設けて議論を深めるという二つの御提案がございました。  前段の死刑の執行を一定期間停止するということでございますが、大変法律的なことだけを申し上げて恐縮でございますけれども現行法制のもとでは、法務大臣がその判断で裁判所が下されました判決を停止する、いわば事実上裁判の執行、効力を停止するということは法律上は許されないことであるということが一つあると思います。その意味で、この公開の席上で私が停止をするということにつきまして、先生の御提案にそれはまことに適切であるというお答えはできない、このことは御了解をいただきたいと思っております。  第二の、死刑の臨調を設けて広く議論をしてみたらどうかという御意見でございます。  先ほども答弁をさせていただきましたが、死刑問題は、死刑だけではなくて、全体の刑のあり方、例えば死刑がない国におきましては終身刑と申しますか、日本の場合の無期とは違う刑があるように聞いております。そういう全体の体系の中でやはり考えていくべきものであろうと思っているわけでございますが、どのような形でこの問題に取り組んでいくのか、もう少し勉強させていただきたいと思います。
  230. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  231. 及川順郎

    委員長及川順郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時十一分散会