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1996-03-14 第136回国会 参議院 厚生委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年三月十四日(木曜日)    午後一時三十八分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         今井  澄君     理 事                 石井 道子君                 大島 慶久君                 朝日 俊弘君     委 員                 阿部 正俊君                 尾辻 秀久君                 清水嘉与子君                 塩崎 恭久君                 高木 正明君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 竹村 泰子君                 西山登紀子君    国務大臣        厚 生 大 臣  菅  直人君    政府委員        厚生省保健医療        局長       松村 明仁君        厚生省薬務局長  荒賀 泰太君        厚生省社会・援        護局長      佐々木典夫君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君    事務局側        常任委員会専門        員        水野 国利君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     小池 将文君        自治大臣官房企        画室長      細野 光弘君        自治省財政局調        整室長      岡本  保君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 今井澄

    委員長今井澄君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  平成会所属委員出席がありませんので、理事から出席を要請いたしたいと存じます。しばらくお待ちください。――平成会所属委員出席を要請いたしましたが、出席を得ることができませんでしたので、やむを得ず議事を進めます。  社会保障制度等に関する調査を議題とし、前回に引き続き、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 社会民主党の朝日でございます。  冒頭に、菅厚生大臣に御就任早々から薬害エイズ問題を初めとする当面の諸課題に対して積極的に挑戦されておられることに心から敬意を表した  いと思います。  厚生行政にかかわる課題、なかなかに難しい課題が山積しておりますが、大臣自身も所信の中で述べておられましたように、厚生行政責任者であると同時に、国民の代弁者であるという立場で今後とも積極的かつ着実に取り組んでいただきたいと思います。御激励を申し上げたいと思います。  さて、私は今回、多くの重要課題が山積しておりますが、当面急いで私たちとして審議をし、あるいは検討しなければならない幾つかの課題、三点に絞ってお伺いをしたいと思います。  第一番目の課題は、薬害エイズ訴訟問題でございます。  昨日の衆議院厚生委員会においても、大臣みずから、和解実現に向けて今週中にも対応を固めたいと、こんな御答弁をされておりました。衆議院における審議内容とできるだけ重複を避けながら、三点にわたってお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、大臣お尋ねをいたします。  七日に東京大阪地裁から第二次の和解勧告案が示され、これを受けて現在関係者の間で真摯な協議が続けられているという状況であると認識をしております。しかも、いわばその大詰めの段階を迎えている、こういう状況に十分留意し、またそうであるからこそ行政府立法府に求められる役割は大変重大である、このことを踏まえながら私からもぜひ和解早期成立に向けてなお一層の御努力を要請したい、こういう気持ちを込めまして改めて大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思います。  その際、私は、所見の中で裁判所が述べておりますように、被害者への鎮魂慰霊を含め、最大限配慮をされることが必要である、とりわけ遺族原告に対する格段の配慮といたわり、この部分を国としてどのように受けとめることができるのか、これが和解成立に向けた一つの大きな要素であるというふうに考えております。  私が思いますには、例えばこの際、今後にも引き継ぐことができるような何らかのメモリアル事業、これはあくまでも検討の素材として申し上げますが、例えば遺族皆さん自身による被害者への支援相談活動とか、あるいは感染者発症者自身によるセルフヘルプ活動など、このような活動に対して国として支援できるような何らかの事業をスタートさせることが考えられないだろうか、こんなふうにも考えております。ぜひ御決意とあわせて大臣のお考えをお聞かせいただければ幸いでございます。
  4. 菅直人

    国務大臣菅直人君) まず、大変激励をいただきまして、どうもありがとうございます。  この薬害エイズの問題、今、朝日委員の方からもお話がありましたように、今月の七日に第二次の和解案東京大阪の両地裁から出されまして、これをどういうふうにそれぞれのお立場で受けとめていくか、今大詰めにだんだん差しかかっているというふうに受けとめております。  この間の経緯は、もう御承知のことも多いと思いますが、患者皆さんもそれぞれ会議を開かれたり、あるいは与党の皆さんにもいろいろ要請をされたりいたしておりますし、また各メーカーも私のところに、三日ほど前ですか、ミドリ十字の社長も来られまして、また外資系の方も今回は国内の責任者が、日本の責任者業務局長の方にいろいろ意見交換に来るというような場面もありまして、きょう原告皆さんがそれぞれのメーカーに面会を求めるというお話も聞いておりますが、そういう中で被告の各メーカー原告皆さんに対しての何らかの意思表明があるのではないかと、こんなふうにも受けとめているところであります。  そういう中にありまして、特に、今、朝日さんのおっしゃった所見の中に述べられている遺族皆さんに対する問題、これは大変重要な問題と私も受けとめております。私も遺族皆さんにも何度かお会いをいたしまして、特に非常に厳しい環境の中で、エイズ感染され、そして発症された患者を抱えて本当に苦しい思いをされて、そして亡くなられたと、そういうことをお聞きしておりますと、その御苦労に対しては何らかのことを私たちもしていかなければならない、こういう気持ちを大変強くさせられるわけであります。  裁判所の方もこの点については、全体の和解を成り立たせるためといういろいろな配慮の中でも、特に、今、朝日さんの方から指摘をされましたように、被害者への鎮魂慰霊措置を含め、最大限配慮をされるように要請するものであるというふうに指摘をしていただいております。  今、具体的な一つ考え方としてメモリアル事業という形で、例えば患者さんに対して逆に遺族皆さんがいろいろな支援をする、あるいは精神的なケアをする、そういったことの一つ考え指摘をされたわけですが、ぜひそういう今の提案も含めて原告皆さん意見を十分伺いながらこの問題については何らかの対応が具体化するように私たちも全力を挙げたい、このように考えております。
  5. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 ぜひ原告皆さんの御意見を十分に伺っていただきながら前向きに御検討をお願いしたいと思います。  それでは次に、今後の課題の重要な一つになっております医療体制整備のことについてお尋ねいたします。  エイズに罹患された患者さんたち、とりわけ薬害エイズ患者皆さんたちが今後いわれなき差別を受けることなく安心して医療が受けられる体制づくりが急務であると思います。もちろん、厚生省の方で既にエイズ治療に関する拠点病院の選定の作業等、さまざまな対応が進められているというふうに伺っておりますが、しかしその一方で拠点病院が名乗りを上げない、病院名を積極的に公表しないというお話も伺っております。ぜひこの医療体制づくりについてさらに一層の取り組み強化が求められていると思います。  正直言いまして、なかなか思うようには進んでいないということに私自身半ばいら立たしささえ感ずるわけでございますが、この作業が思うように進んでいかないその隘路は一体どの辺にあるというふうにお考えなのでしょうか。その辺の分析も含めまして、さらにこれまでの施策に加えて、例えば協力いただく医療機関に対してもっと積極的なインセンティブを与えるような何らかの方策検討すべきではないのでしょうか。ぜひ問題点の整理を含めて今後の取り組みの仕方についてお考えお尋ねしたいと思います。
  6. 松村明仁

    政府委員松村明仁君) エイズ診療の基本的なあり方につきましては、どこの医療機関でもその医療機関の持っておられる機能に応じましてエイズ患者感染者を受け入れていただくことであると考えております。  このため、厚生省といたしましては、今、委員指摘のように、全国エイズ治療の中心的な役割を果たしていただく病院として拠点病院整備に努めているところでございますが、本年の二月末をもちましてすべての都道府県において一応整備の状態になった、こういうことでございます。  しかし、今御指摘のように、この拠点病院整備が十分でない、あるいは病院名公表というような問題、確かにいろいろな隘路もあるわけでございますが、厚生省といたしましては、エイズ診療の質の向上と患者受け入れ体制推進するためには、特にそこで働いておられる拠点病院の医師、看護婦、こういった方々考え方あるいは技術というようなものが非常に重要になる、このように考えておりまして、こういった方々を対象といたしまして研修事業等を実施しておるところでございます。  さらに、平成八年度予算案、現在御審議いただいておる案におきましては、拠点病院の設備、例えば個室化を進めるとかあるいは医療機器整備というような、そういった方向でこのインセンティブと申しましょうか、充実に努めることとしておるところでございます。また、医療従事者に対します実地研修、あるいはカウンセラーの設置のための予算というようなものを新たに計上しているところでもございます。  また、拠点病院公表の問題でございますが、これは当該病院あるいは各都道府県の御意向等もありまして公表あるいは未公表ということになっておるわけでございますが、残念ながら現時点では病院名公表されているものは三五%程度にとどまっておるところでございます。  私どもといたしましても、この拠点病院の名前を周知するということは地域医療機関に対しましても、あるいはエイズ感染者患者方々にとっても大変重要なことでありますので、これまでも関係機関に対して協力を呼びかけておるところでございますが、今後ともこういった拠点病院公表につきまして、関連する医療機関方々やあるいは支援団体方々の御協力も得まして、感染者あるいは患者方々にこういった必要な情報がどうしたらちゃんと伝えられるか、そういった方法について検討してまいりたいと思っています。
  7. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 いろいろ御努力をいただいているんだと思いますが、エイズ患者さんに限らず、やはり医療機関が提供するサービス情報を積極的にユーザーの皆さんに提供するということはこれからの医療あり方一つとして求められていることでありますので、今ここでこんなふうにしたらという具体的な提案ができないのが残念なんですが、ぜひ何らかの方策について今後も積極的に検討をお願いしたいというふうに思います。  それでは、エイズ問題の三番目の問題として、今後の再発予防対策の一環としても重要な課題であるというふうに認識をしておりますが、血液医業の進め方と関連して一つお尋ねをいたします。  実は、先月二十六日だったと思いますが、日にちは定かではありませんが、青森県のある高校で集団献血を行った。その際に使用された、採血時に使用された問診票、この質問項目の中に、例えば新聞によれば、本人さんの売春行為があったかどうかというようなことを問う項目が入っていた、これはちょっと問題ではないかという新聞取り上げ方であったと思います。  私も気になりまして、その問診票を取り寄せてみました。今、手元にありますが、確かに読んでみますとなかなかに難しい。例えば、最近六カ月以内に伝染性核球症にかかったかどうかなどという質問があったりして、これは医者でもなかなかわからないのかもしれない。さらに、「この一年間に次のいずれかに該当することがありましたか。」というところで、あえて申し上げませんが、いささかぶしつけな質問項目が、あるいはプライバシーを無視した質問項目が入っております。  採血に際してより安全な血液を確保したいという気持ちというか意図は十分理解できますけれども、こういうやり方はいかがなものかと私も思わざるを得ません。これは日赤の方でいろいろ具体的には用意されているものだというふうに思いますが、この辺ぜひ改善の必要があるのではないかというふうに思います。  同時に、この問診というのはプライバシーにかかわることもあるわけですから、採血する場所とは違って、例えば問診室をつくるとか、あるいは本人さんに面接をして、そういう中で必要な情報を選び取ることができるような要員を確保するとか、そういう条件整備を含めてもう少しきめ細かな配慮対策強化が必要ではないかと思います。  ぜひ早急にこれらの課題について検討をしていただきたいというふうに思いますが、この点についてお伺いいたします。
  8. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) ただいまの工夫配慮が必要だという点は私ども十分注意をしなければならない点だと思っております。  委員承知のように、輸血用血液製剤安全性を確保する上で肝炎とかHIVウイルスの検査ということが非常に重要でございまして、その充実に努めておるわけでございます。  この中でウインドーピリオド、こう言っておりますが、感染をしまして、そして抗体等があらわれるまでの間の感染の事実が検知できない期間、これをウインドーピリオドと申しておりまして、六週間とか八週間という期間がこの検知できない期間でございます。そういったことがある以上、現在の科学技術の水準でウイルス感染というものを完全に技術的に排除することができないという問題がございます。  これに対しましては、専門家で構成をいたしました血液問題検討会提言によりまして、昨年七月から献血を受けられる方々感染症が伝播しないような、そういう危険を排除するための問診充実ということを図りまして、そして安全性対策強化を図ってきたところでございます。この検討会提言におきましては、HIV感染している可能性のある方を献血から排除しなければならないと。個人のプライバシーに十分な配慮を払いつつも、具体的に踏み込んだ問診を行うこともこれはやむを得ないのではないかという御提言。また、問診につきましては、マススクリーニングが不可能な病原体がございます場合の危険性を排除する唯一の方法であると、こういったことになっておるわけでございまして、私ども問診強化ということは不可欠だと考えております。しかし、今御指摘のありました具体的な運用面につきましてはいろいろな配慮が必要だと。  そこで、委員今御指摘もいただきましたが、この献血者プライバシー保護を図るために、日赤に対しまして今年度の補正予算国庫補助を約一億円計上いたしまして、全国日赤血液センターにおきまして問診室整備していく、あるいは検診車についても問診のための整備をしていくということで今その事業を進めておるわけでございます。  それから、ただいまの問診の事項につきましても、日赤におきましては、献血者への配慮をすべく、問診項目の中で「売(買)春行為をした。」というような記述については削除する方向で今準備を進めておるというふうに聞いておるわけでございます。  この血液事業の円滑な推進を今後とも図って、そして献血血液安全性を確保しつつ、またプライバシー保護も十分図りながらこの事業推進してまいるように最大限配慮をしてまいりたいと、このように考えております。
  9. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 ぜひよろしく御検討をお願いしたいと思います。  薬害エイズ問題については以上で質問は終わりたいと思いますが、最後に一つ意見を申し上げておきたいと思います。  この薬害エイズ問題について現在も、そしてこれからも真相解明再発防止のための取り組みは大変重要だというふうに思います。その際、製薬企業及び政府厚生省責任とともに、医学界医療界責任も大変重大であったというふうに私は受けとめております。ここであれこれ申し上げる時間はございませんが、一言で言えば医学医療界そのものに内在する体質といいますか、いわば構造的な問題があって、その上に製薬企業行政医学医療界、三者の関係が構造的な問題として存在していたのではないか、そんなふうに私自身は感じております。  今後の真相究明再発防止対策を確実に進めていくためには、このような問題意識のもとにぜひ取り組みを進めていきたいと思いますし、私ども立法府としても引き続きそのような作業に取り組んでいく必要があるということを申し添えておきたいと思います。  では次に、大きな二番目の課題に移ります。  新ゴールドプランとこれに関連する新介護システムの問題についてお尋ねしたいと思います。  既に御承知のように、新ゴールドプランは新しいプランとなって二年目、その前身のゴールドプランのスタートから数えれば早くも七年目を迎えております。また、これと並行して全国自治体では、それぞれの自治体が策定した高齢者保健福祉計画の策定、実行に取り組んでおります。しかし、昨年の秋だったと思いますが、日弁連あるいは日経産業消費研究所などが行ったアンケート調査の結果によれば、かなり多くの自治体計画どおり目標達成は困難というふうに数字を示されています。ある意味では、自治体からそういう悲鳴が聞こえてきているという状況かもしれません。  そこで、これらの状況について、実態について、厚生省皆さん、新ゴールドプラン進捗状況あるいは各自治体が策定した高齢者保健福祉計画進捗状況についてどのように把握され、分析され、そしてどのような対応をされているのかお伺いしたいと思います。
  10. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  新ゴールドプランに基づきます介護サービス基盤整備につきましては、平成八年度予算におきましても、例えば在宅福祉のかなめでございますホームヘルパーにつきましては対前年度三万人増の十二万二千四百八十二人、それから施設整備の面で申し上げれば、特別養護老人ホームは対前年度一万五千六百人増の二十四万七千百九人というふうに事業費を計上し、またそれが予算消化という面でも今日まで順調に消化をされているということから、総体として申し上げれば着実な推進に努めてまいったというふうに申し上げていいと思います。総じて一歩一歩着実に前進をしているというふうに考えているところでございます。  ただ、総体といたしましても、やはり新しい介護システム等をにらんで全体のニーズの増加というようなことをも視野に入れなければなりませんし、また新ゴールドプラン事業を子細に見てまいりますというと、事業ごとに若干進捗に差がございますし、それから、今、先生御指摘ございましたように、各地域ごと格差がございますことは事実でございます。それはそれぞれの地域の置かれている高齢化率の差でございますとか、あるいは同居率の差、あるいは住民の方々意識の差、さらにそれに加えまして自治体サイド財政事情、あるいは自治体自身意欲と申しますか、それに取り組みます首長さんを含んだ自治体意欲の差というようなものがもろもろ反映をいたしましてこのような格差になっておるわけでございます。  しかしながら、できるだけ全国的に均衡のとれた形で介護サービス基盤整備を進めなければならないこと、これは仰せのとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、全体的にも比較的おくれております事業、これについて一層強力にてこ入れをしてまいるということはもちろんでございますけれども地域差ということにつきましても、例えば都市部整備につきましては補助単価の割り増しでありますとか、あるいは逆に過疎地域等におきましては小規模施設を活用するといったようないろいろ地域特性を踏まえましたさまざまな努力をこれまでもしてまいりました。  今後とも、さらに自治体の一層の努力を促すということをお願いしてまいると同時に、国といたしましてもそういった施設なりあるいはサービス基盤整備の促進のために助成等の面でさらに一層知恵を絞りまして工夫をし、新ゴールドプラン目標達成全国的に均衡のとれた姿で行われていくように一層の努力をしていきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  11. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 次に、同じ問題を自治省の方にお伺いいたします。  もう改めて申し上げませんが、新ゴールドプランは大蔵・厚生自治大臣合意ということであります。しかも、今のお話にあったように、ぜひ自治体で積極的に取り組んでほしい、こういうことでございます。  現状、そして問題点、今後の対応自治省としてどんなふうに考えられているのか、お伺いいたします。
  12. 岡本保

    説明員岡本保君) 新ゴールドプラン推進状況支援策についてお答えさせていただきます。  新ゴールドプラン推進状況につきましては、ただいま御答弁ございましたように、自治省といたしましても、事業ごとあるいは団体ごとに差はあるかもしれませんが、全体として見れば着実に推進をされていると承知をしておりますし、また推進していかなければいけないものであるというふうに考えております。  新ゴールドプランにおきます地方負担額、約四兆円弱というふうに見込んでおりますが、この新ゴールドプラン推進に着実に地方団体がそれぞれ取り組めますように地方負担につきましては全額財源措置をすることとしておりまして、例えば平成八年度の事業費約一兆六千六百億円の地方負担額につきましても所要の財源措置を講じているところでございます。  また、新ゴールドプラン、基本的には国庫補助負担事業で組み立てられておりますので、地方公共団体がそれぞれの地域特性に応じて自主的に実施いたします介護施策等支援いたしますため、平成八年度の地方財政計画におきましていわゆる単独社会福祉系統経費を対前年比七・三%の増、約三兆五千八百億円確保などいたしております。  今後とも、国庫補助負担事業及び地方単独事業をあわせまして、各地域特性に応じました高齢者介護対策推進できますようにその支援を図ってまいりたいというふうに考えております。
  13. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 厚生省自治省も全体としてはほぼいいところいっているんじゃないかという御答弁なんですが、どうもあちこちで話を伺いますとそうではないという現実も結構聞こえてまいります。ぜひこれは自治省厚生省、双方の立場からより一層の推進を図るというところで協力をしていただきながら進めていただきたい、こんなお願いを強く申し上げておきたいと思います。  さて、関連して、現在新しい介護システム介護保険制度の創設についての検討が進められているというふうに伺っております。その新しい介護システムを構築していくためにも、現在の新ゴールドプランあるいは各市町村の高齢者保健福祉計画、これの着実な推進が求められるというふうに思います。  この際、ぜひそのような取り組みをもう一歩、積極的にというか強力にというか、前進させていくために何らかの方策、手だてが検討できないかというふうに私は思っているのですが、この点はぜひ大臣に何かお考えがあればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 今御指摘のように、新ゴールドプランを現在着実に進めながら、できればこの国会で新しい介護システムについての提案もさせていただきたいということで、老健審を中心に議論を進めていただいているところです。  新ゴールドプランについては、先ほど局長からも答弁を申し上げましたが、前年度比一六・七%、約一千億円増の六千九百九十六億円を平成八年度の予算に計上して在宅・施設サービス強化充実を図っておりまして、こういった介護サービス基盤整備が新たな高齢者介護システムを創設する上での極めて重要な条件となるというふうに理解しております。  今、さらに何らかの施策をというお話でありますけれども、これはこれからの議論がまだあるわけでしょうけれども、ある意味では公的介護保険制度というものそれ自体が一つの形として見えてきて、そしてそういうものをつくっていこうという方向が国民の合意となってくること自体が、あるいはそれまでの間にこの新ゴールドをきちんと仕上げながらさらに次に上っていく、次の段階の機関車になっていくのではないだろうか、そういうふうにも期待をいたしておりまして、この新ゴールドプランを実現する、そのためにも次の積極的な方向が見えてくることがそうした刺激といいますか推進の力に、あるいは引き上げていく力になっていくのではないか、このように考えております。
  15. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 なるほどそのお考え、私も賛成でございます。  ただ、お聞きしますと、その新しい介護システム介護保険制度の創設に向けた作業が若干おくれてきているというふうな状況であります。もちろん、新しい制度をつくるわけですからさまざまな議論があることは当然でありますし、可能な限り関係者、国民の皆さんの間での合意形成を図るべく慎重な配慮が必要であることは言うまでもありませんが、その一方でこの課題をずるずる先送りするようなことになってしまっては、これほどまでに多くの国民の関心と期待を集めている課題であるだけに、かえって無責任とのそしりを免れないと思います。  改めて、今なぜ公的介護保険制度の創設が必要なのか、そしてそのための具体的な関連法を今国会の提出に向けて大臣は現時点でどのようにお考えなのか、御決意を含めてお伺いしたいと思います。
  16. 菅直人

    国務大臣菅直人君) まず、法案について先に申し上げますと、当初は予算非関連法案として三月中にも出したいということで準備は進めてきたわけですけれども、今お話もありましたように、老健審の中での議論がまだまだ残っているというか、必ずしも十分合意を得るに至っておりませんので、今月の末あるいは来月に入った段階で老健審からの最終報告がいただけるのではないだろうかと。それを受けまして、さらに与党のプロジェクトの皆さんやあるいは関係方面といろいろな議論をして何とか連休前後、あるいはこの国会の会期中に法案として出していく、そういう形で考えております。また、法案が出たからすぐにそれが、もちろん大きな法案ですから議論がそれで煮詰まるということではなくて、今度は法案が出た後にも十分な議論を与野党含めてお願いをする、そういうことを展望いたしております。  そういう中で、今この公的介護保険制度、御承知のようにいろいろな言い方をされております。一方では余り拙速につくるべきではない、あるいは自治体にとっての負担が大きくなるので慎重にしてほしいという声もあることも承知しております。しかし、一方では現実の状況が、家庭の中で介護を受けているたくさんの高齢者の皆さんが、御本人にとってもなかなか厳しい状況の方もおられますし、あわせて家族にとっても一年三百六十五日、一日二十四時間の介護というものを家族の、特に女性の皆さんに受け持っていただいていて、そのことが家庭の崩壊にもつながりかねないといったような実情もあちこちで存在をしていることも指摘をされております。  そういう意味では、この公的介護保険制度というのは、大きく言えば人間が人間として人間らしく生き、人間らしく死んでいける社会といいますか、あるいは人間としての尊厳を持って一生を全うできる、そういう社会をつくるためという大きな目標があるというふうに私は思っております。  そういった意味で、この目標を実現するために、今の医療保険制度あるいは今の措置制度、そういったものの中で一部こういった問題もカバーをされているわけですが、こういった制度の組みかえを含めて、ある意味では福祉構造の改革を含めてこの新しい制度を導入して、そしてそのことが介護を受ける立場皆さんにとってもよりよいサービスになると同時に、財政的な負担をする立場からも、単に負担がどんどん増加するというのではなく、従来の制度の中で、ある意味ではよく言われる社会的入院といったように、必ずしも治療が必要でない場合にも病院であれば治療が中心になるといったような一部矛盾もあるわけですから、財政的にも、効率という表現が適切かどうかわかりませんが、より効果的にそういうものが生かされるような、そういう新しい制度に全体としてつくり変えていく、そのことが必要ではないかと思っております。  そして、最後にもう一つつけ加えますと、今日、自治体も国も財政が大変厳しくなっております。それだけに、先ほど申し上げたように、新ゴールドプランそれ自体も次の一つの大きな目標、大きな機関車がないと、現状の予定どおり進めていく上でも大変な力がかかるわけですから、そういった点では新しい介護保険制度をつくり上げることによってまた大きな前進のエネルギーにしていきたいし、そういう骨格を何とかこの会期中に国民の皆さんにお示しすることでより積極的な議論を巻き起こしていく必要があるのではないか、このように考えて全力を挙げたいと思っているところであります。
  17. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 基本的に賛成ですのでぜひ頑張っていただきたいと思いますし、私どももそれぞれの立場でぜひ協力をし、頑張りたいというふうに思います。  それでは、時間も迫ってまいりましたので、三つ目、最後の課題に入らせていただきます。  昨年末に初めて策定をされました障害者プランについてお尋ねをいたします。  質問に先立って、昨年末は総理府の皆さんを初め各省庁の皆さんに大変御苦労をいただきました。心から敬意を表したいと思います。  ただ、せっかくつくったんですが、必ずしもこの障害者プランのことについて十分関係者皆さんや国民の皆さんに知られていないという面もあるような気がしてなりません。ちょっとアピールの仕方が下手なのかなというふうに思うんですが、ぜひこの障害者プランについて取りまとめ役をされた総理府の方にできるだけかいつまんで特徴点を中心にこの障害者プランについての概要を御説明いただきたいと思います。
  18. 小池将文

    説明員(小池将文君) お答えいたします。  お話のありました障害者プランでございますけれども、昨年秋からですけれども、総理府を中心に関係省庁間で協議、検討を重ね、また与党福祉プロジェクトの強力なバックアップもいただきまして昨年末、平成八年度の予算案の当初内示直前になりましたけれども、何とかまとめることができました。  このプランは、障害者対策に関する新長期計画という障害者施策の基本計画があるわけですけれども、その新長期計画の重点施策実施計画という位置づけにしまして、計画期間も新長期計画の最終年次に合わせて平成八年度から平成十四年度までの七カ年計画としております。  このプランの特徴ですけれども、基本的には今後障害者のために何が必要かということを七つの視点から総合的、横断的に整理して、可能な限り施策の具体的目標を設定した点にその特徴があります。例えて言いますと、第一の視点で挙げたのが「地域で共に生活するために」ということで、住まいの場としてのグループホームの整備とか介護サービス充実、あるいはおくれていたと言われています精神障害者の社会復帰の促進、そういうことを重点に進めるというふうな具体的な目標を掲げて強調しているわけであります。  このプランの副題にもありますように、障害者行政の最も重要な理念となっていますノーマライゼーションの実現に向けて、これから関係省庁と一体となってこのプランの着実な推進に取り組んでまいりたいと考えております。
  19. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 例えばPR版をつくるなどぜひ積極的な取り組み検討をお願いしたいなというふうに思います。  障害者プランの実行については、先ほど新ゴールドプランのところでもお尋ねしましたが、やはり何といっても基礎自治体である市町村の取り組みが大変重要というふうに思っています。  ややもすれば、市町村は新ゴールドプラン高齢者保健福祉計画推進で手いっぱいというか、そういう状況のところへさらに障害者プランということについて、率直な感じ、いま一つ積極的な姿勢に乏しいのではないかというふうにも感じておりますが、この点について自治省の方ではどのような受けとめ方をし、どのように対応されようとしているのか、自治省に伺います。
  20. 細野光弘

    説明員(細野光弘君) 先般取りまとめられました障害者プランにつきましては、私どもといたしましてもこれは重要なものと認識をしているところでございます。  その推進に当たりましては、住民に身近な行政を行っております地方公共団体の果たすべき役割が大変意味があるというふうに考えております。例えば、具体的な財政措置といたしましては、平成八年度の地方財政計画におきましてこのプランにかかわる地方負担分について所要の財政措置を行っておりますほか、先ほどゴールドプラン関係でも説明ございましたが、単独分につきましては対前年七・三%の増とするというふうにいたしておりますし、特に地方公共団体地方単独事業で行ういわばバリアフリー化を進めるための障害者にやさしいまちづくり、そういった事業や障害者の社会参加や活動のための施設整備、それから保健・福祉マンパワー養成のための施設整備、こういったものに関します事業につきまして地域福祉推進特別対策事業ということで私どもといたしましても積極的な地方単独事業支援策を講じておりますし、講じていきたいと考えております。  今後の財政措置につきましても、毎年度の地方財政計画の策定を通じまして適切な措置を講じてまいりたいと考えておるところでございます。
  21. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 今、総理府並びに自治省の方からお伺いいたしました。今回の障害者プラン、身体障害、知的障害、そして精神障害、この三障害をこの障害者プランできちんと受けとめていこうということであったと思います。  しかし、どうしても精神障害については、とりわけ市町村側の受けとめ方が弱いような気がしてなりません。どちらかといえば精神障害の仕事は県の仕事という受けとめ方がまだまだ一般的であります。そういう点もきちんと踏まえながらその三つの障害が、さらに加えれば難病の対策も入ってくると思いますが、総合的に推進されていくような形で取り組みをぜひお願いしたいと思います。  では最後に、この障害者プランの推進にかかわって、今申し上げた点も含めまして、今後の積極的な推進方策について大臣のお考え、御決意を伺って質問を終わりたいと思います。
  22. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 障害者プランについては、今、総理府あるいは自治省の方からもその内容や考え方について御説明がありました。厚生省にとってもこの障害者プランはいわゆる新ゴールドプラン、そしてエンゼルプランと合わせて三つの大きなこれからの社会福祉、あるいはそういう社会を目指しての保健福祉政策の重要なプランだととらえております。  先ほどお話がありましたように、ノーマライゼーション、体の弱い方もあるいはいろいろな障害をお持ちの方も普通の生活を普通の健常者と同様にしていける社会をつくっていくという上ではこの計画の持つ重要性は大変大きいものがあると思っております。  そこで、障害者プランの具体的な推進方策としては、平成八年度の予算で、先ほどの他の省庁からのお話と若干重なるかもしれませんが、七年度より二百五十一億円増の二千二十五億円をこの障害者プランの初年度として予算を確保いたしたところであります。  また、障害者プランを実施していく上で市町村の障害者計画の策定は極めて重要であることから、計画づくりを支援するため、新たに市町村障害者計画策定モデル事業を創設したところであります。  今後とも、地方公共団体における計画の策定や事業の実施について必要な支援を行っていくことにより障害者プランを強力に推進していくとともに、その推進状況についてフォローアップを行い、社会経済情勢の変化等を踏まえた見直しも随時行っていきたい、そういうことによって障害者プランを強力に推進し、障害者が地域でともに生活ができる社会、ノーマライゼーションの社会を目指して厚生省としても最大限努力してまいりたい、このように考えております。
  23. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 どうもありがとうございました。
  24. 西山登紀子

    西山登紀子君 まず、私は質疑に入る前に、衆議院予算委員会が大変不正常な状況のもとで本委員会の不正常な開会が行われたということにつきまして、抗議の意を表明したいと思います。  次に、質問に入りたいと思います。  昨年の十月六日に和解勧告が出されたわけですけれども、それからはや五カ月がたちました。既に五日に一人とも三日に一人とも言われておりますが、被害者の命が奪われていっているわけです。私は一日も早い和解の成立、これを心から望んでおりますし、またその大前提となっている真相の究明、いろいろさまざまな努力が払われ、追及が行われてきているわけですけれども、まだまだ中核部分というものはやみの中です。これがますます重要になっていると考えます。この点、国会は非常に大きな責任を負っていると思うわけです。そして、国会の真相究明の大前提というのは、真実を述べるということではないでしょうか。  そこで、業務局長にお伺いしたいと思います。  昨年の十月三十一日、あなたは私のエイズ研究班の資料提供の要求に対して虚偽の答弁をなさいました。とても許せることではありません。当時どのようにあなたがお答えになったかといいますと、「エイズに関する学術的な研究を目的として設置されたものでございますが、議事録は作成をされておりません。その運営管理については研究班の班長にゆだねられておりまして、正式の審議会のように厚生省が事務局を務めましてすべての配付資料を用意する、そういうような性格のものではなかったわけでございます。」と。そして、「本研究班の資料をくまなく探したわけでございますが、残念ながら現在保存されていない」、わからない、提出ができない、こういう答弁をなさっているわけです。  くまなく探したと言われますけれども、資料が出てまいりました。九冊もある、そのほかにもある、厚生省の棚の中から出てきた、議事録らしきものもある、こういうことです。これはあなたの答弁は国会と国民を愚弄するものであり、とりわけ被害者を愚弄する行為ではないでしょうか。厚生省はこういう不誠実な態度を十年以上もとり続けてきました。また、裁判が起こって以来七年もずっと資料はない、わからない、予知不可能、こういう態度を示してきたわけです。この間どれぐらいの患者さんが亡くなられたか、この命の重みがあなたにはおわかりになりますか。  厚生省が真相に接近するまじめな態度があれば審理はもっと早く進んだでありましょうし、不誠実な態度が患者さんや原告団をこれほど苦しめることはなかったのではないかと思います。国会と被害者に対して真摯に反省と謝罪をすべきだと思います。いかがですか。
  25. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) 従来、裁判の過程でありますとか、あるいは国会質問等でこのエイズ研究班の関係資料を求められておりまして、厚生省内では過去何回か探したわけでございますが、発見することができなかったわけでございます。委員に昨年十月三十一日に御質問に対してお答えをしたときも、このような状況の中で資料が見当たらないということを申し上げたものでございます。  しかしながら、ことし一月二十三日に厚生省内に調査プロジェクトチームが設置されたことを受けまして、省内を改めて徹底的に調査をしました結果、省内から九冊のファイルが発見をされまして、これらの資料の中にはエイズ研究班の配付資料と思われるものも含まれていたところでございます。  これまでの国会質問におきまして、従来見つからなかった資料が発見されましたことにつきましては、過去の調査が十分でなかったことにつきまして深く反省をしております。また、従来の国会答弁に反する結果になりましたことにつきましてはまことに申しわけなく思っておりまして、今後十分気をつけてまいりたいと考えておりますし、また事実関係調査究明につきましても力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  26. 西山登紀子

    西山登紀子君 国会で虚偽の答弁をなさるということでは本当に国会の責務を果たすことができないわけですから、そういううその答弁を今後一切なさらないように厳重に私は申し入れをしたいと思います。  次に、大臣にお伺いしたいわけですけれども、ミドリ十字の回収虚偽報告、この問題です。  立入調査では、報告では第Ⅷ因子につきましては八五年の九月出荷停止と報告しながら十二月まで出荷を続けました。危険な非加熱製剤を売り続けたわけでございます。第Ⅸ因子については八六年の二月に最終報告としながら十二月まで売り続けた、患者に打ち続けた。驚くべきことは、この回収報告はまだ最終的にはいつまでやったのか、いつ回収ができたのかということが現在まだわからないというような状況です。まさにこれは犯罪だと思います。  このときの社長は元厚生省薬務局長の松下氏ですけれども大阪原告団長は、これはもう殺人だ、このように言っているわけです。東京地検は専従捜査班を設置いたしましたけれども、厳正な捜査を私は望みたいと思います。そして、ミドリ十字の行為は明らかに犯罪行為でありまして、薬事法五十六条違反でもある。大臣に厳正な行政処分を要求したいと思います。いかがですか。
  27. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 加熱製剤が許可をされた後の非加熱製剤の回収をいわゆる自主回収に任せたという、その判断がまず適切であったかどうかという問題が今も議論になっております。  私もこの問題は、もう少し非加熱製剤の危険性というものを考えれば、加熱製剤承認後にそういったものが回収されないで長く残っていたというのは適切な対応の仕方ではなかったのではないかと考えております。同時に、立入検査を含めて事実関係の確認を進めておりますけれども、そのことがどういった責任ということになるのか、この点についてはもう少し検討をいたしてみたいと。  つまりは、その時点では、判断は別として、いわゆる回収命令を厚生省としてかけておりませんので、かけていなかったところで回収が自主回収に任されていて、それがかなり長い期間になっていたということが薬事法上の責任ということを問えるのかどうか、これについてはもう少し検討させていただきたい。  ただ、先ほども申し上げたように、このこと自体が適切であったかということになれば、私は決して適切なものではなかった、そのことは改めて申し上げておきたいと思います。
  28. 西山登紀子

    西山登紀子君 ちょっと歯切れの悪いお答えだというふうに思うんですけれども、ミドリ十字が加熱製剤が承認された後も非加熱製剤は危険だということがわかっておりながら売り続けた、それも非常に大きな犯罪行為です。それと同時に、やはりうその報告をして、その後も売っていた、厚生省に虚偽の報告をしていた、これも非常に重要な犯罪の上塗りというふうに申し上げたいと思うわけです。  そこで、大臣、いみじくも行政責任ということを言われたわけですけれども、私もそれは免れないというふうに思います。加熱製剤の承認と同時になぜ製造の中止や回収命令や出荷停止をきちっとなされなかったのか、そして立入検査をしなかったのか。薬事法ではこのような非常に強力な権限がはっきりとあるのになぜ発動しなかったのか、これはだれでも国民は不思議に思う点でありますし、許せない点でもあります。防げるものが防げなかった、そして感染をさせられた人たちが今本当に苦しい思いをしながら、また無念の思いをしながら亡くなっている、そういう事態であるわけです。  政府は、郡司元課長の単独判断、つまり回収命令を出さなかったことについて単独の判断だと、このようにしていらっしゃるわけですけれども、だれもそういうことは信じないと思います。一課長でできることではないと思うわけです。そして、中間報告の中でも、上司に連絡をした、このように回答しておられる方もおられるわけです。こういう一課長のトカゲのしっぽ切りのような責任の持たせ方、こういうことでは国民は納得できません。  当時の局長とか、それから大臣責任も重大であると思いますが、どのように関与してきたのか、その点も明らかにされ、そしてまた当時やはりその回収命令をきちっと出すべきではなかったか、そのことについて大臣の御見解を伺いたいと思います。
  29. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) ただいま御質問の非加熱製剤の回収関係でございますが、加熱製剤の承認後の問題だととらえておりますが、御質問について、ただいまお話もございましたが、省内の調査プロジェクトチームの報告によりますと、当時の生物製剤課の関係職員からの回答が寄せられておりますが、これについては、加熱製剤の供給が開始されました当時、非加熱製剤を一斉に回収いたしますと患者方々の治療に重大な支障を来すというふうに考えられておりましたために、メーカーが従来使用していた非加熱製剤と交換する形で自主的に加熱製剤に取りかえていくという方法で非加熱製剤を回収していたということでございましたので、厚生省としては回収命令をかけなかったというふうに考えておるところでございます。
  30. 西山登紀子

    西山登紀子君 私はそれがおかしいと言っているんですよね。  だから、大臣、どうですか、そのときやっぱり回収命令を出すべきじゃなかったですか。そして、当時の局長大臣責任をどうお考えになっているか、大臣のお答えを求めたいと思います。
  31. 菅直人

    国務大臣菅直人君) これは、先ほども申し上げたように、私は、非加熱製剤の危険性というものの認識がきちんとあれば、場合によればもっと早い時点での加熱製剤の承認ということも含めて、当然できる限り早く非加熱製剤というものが使われなくなるような処置はすべきだったというふうに思っておりますので、そういう点ではこの時点でもそういった方向で判断がとられるべきだったと思っております。  ただ、多少申し上げますと、今回いろんな経緯の中を見ておりますと、ある種の危機管理的な発想が非常に薄くて、スタートのとき、あるいはかなりいろいろなことが明らかになってウイルスが固定された後の判断、さらにはこの加熱製剤が承認された後の判断、実は余り変わらないまま非加熱製剤についてはそのまま何も手を打たないでやってきているという経緯があって、そういう点では非常にそういう非加熱製剤に対する危険性認識がどこかで、何といいましょうか、このままでいいといったままでこの時点までずっと続いてしまったということがあるわけでありまして、そういう点では、今、西山委員がおっしゃるとおり、政策判断としては私は何らかの処置はとるべきだったと思っております。  そのことに関連して、先ほど申し上げたように、その行政的な責任とかあるいは薬事法上の責任という問題については、今、全体の中でこの問題を調査いたしておりますので、そういう調査で全体の、何といいましょうか、流れが定まった段階でどういう責任の受けとめ方あるいはとり方があるかということは十分検討してまいりたい、こう思っております。
  32. 西山登紀子

    西山登紀子君 アメリカにおくれること二年四カ月、そういう事態でもまだそういうふうなことを何か弁解がましくおっしゃっているんですけれども、私はこの問題については今の御答弁では十分ではないと思っております。今後とも、その点について集中審議などでさらに詳しくお聞きしたいと思います。  次に、実はミドリ十字というのは単にこの回収の虚偽報告で売り続けただけではなくて、エイズが問題になって以来ずっと製薬会社の存立にかかわるような、企業モラルが問われるような行為を続けてきました。  お手元に配付をさせていただきました資料を恐れ入りますけれどもちょっとごらんになっていただきたいと思います。これは両方ともミドリ十字が作成をし、配った文書でございます。  まず最初に、五月三十日と日にちが打たれている文書でございます。これはエイズについて、「社内資料 須山忠和」、名前が入っておりますけれども、この方は当時ミドリ十字の副社長でドクターでありまして、研究所の所長をしておられた方です。「株式会社ミドリ十字」と名前が入っている文書です。  この社内資料は、エイズというのはどういう病気かという定義について最初に三行ほど述べられておりますけれども、最後の方には「死に至る死亡率の高い疾患である。」と、このようにきちっと明記がされています。そして、病因はといえば、「ウイルス感染による可能性が濃厚である。」、このように記述がされておりまして、そしてさらに三枚目のところですけれども、米国のCDCの調査の結果が載せられているわけですけれども、それには血友病患者の死亡率、エイズ発症者、血友病患者の中では実に七三%が死亡する、死亡率は非常に高い、こういう報道も載せているわけです。  そして、四枚目になりますけれども感染経路はどうかといいますと、「AIDS患者からの血液および製剤」、このように感染経路はエイズ患者からの血液及び製剤だ、こういう経路もきちっと記録がされているわけです。  そして、最後の二枚ですけれども、これは米国政府の当時の対処の仕方はどうだったかという資料でございます。その資料の中には、一九八三年当時ですけれども、一番最後のページですね、第Ⅷ因子に関して米国政府はどういうディスカッションをしているかということです。一九八三年の五月三日、二番目を見ていただきたいと思うんですが、「製造工程を改良する(加熱処理)」、そして最近FDAは加熱処理を許可した、こういう記録がきちっとこのメモに載せられています。これが八三年の五月三十日に出された文書です。  そして、第二の文書は何かといいますと、これは実は一九八八年の十一月二十九日に厚生省が当時のミドリ十字の社長さんを呼んで事情聴取をされて確かめられた文書であります。これは当時、八八年に実は社会労働委員会でこの資料について我が党の沓脱タケ子議員が質問をし、調査を依頼したものですが、この二枚の資料というのは一体何かといいますと、作成者はミドリ十字の須山忠和さんですね。この文書は一九八三年の七月に作成されまして、配付されたのは八月だと。どれぐらい配付したのかといえば七十部ほどで、これは特に社員教育用に病院からの問い合わせに役立てるためにミドリ十字のプロパーの方などに持たせていた資料です。  内容はといいますと、これはつまり社外向けであるわけですけれども、内容をよく見ていただきたいと思うんですが、最初の三行ほどですけれども、これはエイズの問題について日本は八〇%を血液、原料血漿を米国からの輸入に依存しているけれども、「AIDSの日本上陸・発症の可能性は皆無に近い。ほとんど考えられない。」、こういうふうに内容を記述しているわけです。  さらに、左側のページ、第Ⅷ因子のところですけれども、これも血友病患者からのエイズの発症率については「非常に小さい。」、「それが第Ⅷ因子製剤によるとする証拠は全くない。」、このように危険性を全くないというふうに断言をしているわけです。そして、最後のページの結論のところでは、「輸入血漿およびその製剤による日本でのAIDS発症はほとんど考えられない。」と、このように記述をしているわけです。  少し詳しくお話をさせていただいたわけですけれども、この二つの文書、局長は既に見ておられると思いますけれども、同じものだとお考えになりますか、内容が。
  33. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) さらに詳しく見てみないとわかりませんが、最初のこの一九八三年のアメリカのCDC等の米国政府の勧告なり発表の書きぶり、それから五十八年当時のこのミドリ十字の社員教育用の資料でございますが、まあ多少危険性認識のあたりにつきましては当初のものと、危険性が非常に小さいとかと言っているような点についてはこのものとは多少違いもあるようにも思いますが、中身はよく見てみたいと思います。
  34. 西山登紀子

    西山登紀子君 これは、今私が読み上げましたとおり、多少どころか、まるっきり違うわけですね。決して同じではありません。社内向けば非常に危険だ、非常に死亡率も高い、危ないと。ところが、こちらの社外向けの七月の作成された分は安全だ、発症の可能性は皆無だと、こんなふうに百八十度違うことを言っているわけです。  大臣、この文書は内容的に同じですか。
  35. 菅直人

    国務大臣菅直人君) この両方の文書とも裁判所に出された文書と同じだというふうに思っておりまして、そういう点ではミドリ十字もこの存在を認めているんだろうと認識しております。  内容については明らかに大きな差があると、数字などはあるいは一致をしているかもしれませんが、少なくとも問題の認識については明らかに差があると私は受けとめております。
  36. 西山登紀子

    西山登紀子君 今、大臣がお認めいただきましたように、明らかに差があります。百八十度内容は違います。  ところが、その二つの文書について、皆さんに恐縮ですけれどもお配りいたしました当時の参議院社会労働委員会での我が党の沓脱タケ子議員の質問の議事録でございますが、答弁者の北郷業務局長はこのように答えているわけですね。一番上の真ん中のあたりなんですけれども、   五月の時点で出したものが一部ございますが、この八月に配布されましたものとほぼ似たような内容の文書でございまして、会社あてに危険ですというふうな、注意を喚起するというようなものとは私どもは受け取れませんでした。 このように答弁をしているわけでございます。百八十度内容が違うものをよく似たものだと。  この当時、沓脱議員の手元にはこの五月三十日の文書は手に入っていなかったわけでございます。ですから、よく似たものだと、このように答弁をしているわけですけれども、私はこれはやはり先ほどと同じように国会に対する虚偽の答弁だと思いますが、釈明をしていただきたいと思います。
  37. 荒賀泰太

    政府委員荒賀泰太君) 五十八年五月とこの資料につきましての違いは確かにございます。したがって、当時の政府委員答弁につきましても、確かに五月の時点のものとあるいはこの八月の配付されたものとの間には危険性に対する認識に差が出ておるということについては、より慎重にその事実関係調査すべきではなかったのかと、このように考えております。
  38. 西山登紀子

    西山登紀子君 当時、事実関係調査するどころか、これを文書を見ながら言っているんですね、この局長は。よく調べたと。ただ、一つございますが、五月にもう一つ文書が出ておりまして、よく見たと、内容は余り変わらないというふうに言っているわけで、私はこれは国会に対するやはり虚偽の答弁と。  そして、もう余り時間がなくなりましたので大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この議事録をお読みになってもおわかりになるように、実は重要なエイズ法案の審議の中でこういう虚偽の答弁をなさると。二つの文書を実際実物を手にしながらうその答弁をした、似たものであるというふうに答弁をした。これはやはり厚生省が事実を覆い隠してミドリ十字、つまりミドリ十字が何をしていたかというと、五月三十日には社内用には大変危険だという文書を配りながら、社外向けには安全だ安全だといって危険な製剤を売りまくった、そしてエイズにたくさんの人を感染させたと。そういう犯罪的な行為を行っている、そういうことを示す二つの文書につきまして似たものだ、よく内容は似たものだ、こういうふうなでたらめな答弁をなさっているわけであります。こういう答弁はミドリ十字の行為をかばい立てする行為だと、政官財の癒着が問題にされているときにそのように思われても仕方がないのではないかと思います。  大臣、こういう不誠実な行政の姿勢、厳しく対処をし改善をし、そしてミドリ十字については厳正な処分を要求したいと思いますけれども、最後に大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  39. 菅直人

    国務大臣菅直人君) 御承知のように、従来から、私も大臣に就任する前からいろいろな疑問なり疑念をこの問題について持っておりまして、大臣就任後、一月二十三日に省内にこの問題の調査プロジェクトを事務次官を責任者として設けて今日まで調査を続けているわけであります。その中でもいろいろな新しい資料なり事実が判明をしてまいりましたし、また今お示しをいただいたこういった資料、既に裁判などでも示されてきたわけですけれども、もう一度重ね合わせて見てみると、今、西山委員から言われたように、かなり企業の姿勢としてもあるいは問題である、また当時の行政の姿勢としてもいろいろ問題がある、そのことは重くこの時点でも受けとめなければならないと思っております。  私は、この問題は行政として、あるいは厚生省として調べるべきものについて現在いろいろと調査を続けているわけですが、ある意味では、行政の内部的な調査というものができる範囲と、場合によっては国会などの場でいろいろ御議論あるいは調べていただく問題と、さらに場合によっては捜査機関などが調べられる問題と、それぞれ権限も異なるというか、あるいは厚生省調査よりももっと踏み込んだ調査をできる権限をお持ちの機関もありますので、それぞれの中で調査なり事実関係がより明確になってくる、このことを期待いたしているわけであります。  そういう中で、行政責任なり、あるいは薬事法などに基づく観点から企業の責任なりがはっきりした段階ではそれなりの対応をしなければならない。ただ、それを超えたいろいろな責任といった問題もあるいはあるかもしれませんが、そういった問題はそういった事に当たっておられる機関の方で判断をいただく、あるいは対応をいただく、そういうふうになろうかと思っているところです。
  40. 今井澄

    委員長今井澄君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時八分散会      ―――――・―――――