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1996-07-24 第136回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年七月二十四日(水曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  七月二十三日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     岡  利定君      阿部 幸代君     筆坂 秀世君      本岡 昭次君     国井 正幸君      栗原 君子君     山口 哲夫君  七月二十四日     辞任         補欠選任      吉川 芳男君     塩崎 恭久君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野沢 太三君     理 事                 笠原 潤一君                 西田 吉宏君                 吉川 芳男君                 星野 朋市君                 山崎 順子君                 筆坂 秀世君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 岡  利定君                 景山俊太郎君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 長峯  基君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 牛嶋  正君                 武田 節子君                 山下 栄一君                 今井  澄君                 上山 和人君                 菅野  壽君                 国井 正幸君                 水野 誠一君                 田  英夫君                 山口 哲夫君    国務大臣        運 輸 大 臣  亀井 善之君        労 働 大 臣  永井 孝信君        建 設 大 臣  中尾 栄一君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        総務庁行政監察        局監察官     本田 清隆君        大蔵省主計局調        査課長      松元  崇君        大蔵省主計局主        計官       南木  通君        運輸大臣官房長  土井 勝二君        運輸省鉄道局長  梅崎  壽君        運輸省自動車交        通局長      荒谷 俊昭君        運輸省港湾局長  木本 英明君        運輸省航空局長  黒野 匡彦君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省婦人局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省建設経済        局長       小鷲  茂君        建設省河川局長  尾田 栄章君        建設省住宅局長  小川 忠男君        自治大臣官房参        事官       的石 淳一君        会計検査院事務        総長官房総務審        議官       牛嶋 博久君        会計検査院事務        総局第二局長   諸田 敏朗君        会計検査院事務        総局第三局長   山田 昭郎君    参考人        住宅金融公庫総        裁        高橋  進君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書内閣提出) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  (内閣提出) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(内  閣提出)     —————————————
  2. 野沢太三

    委員長野沢太三君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十三日、阿部幸代君、本岡昭次君、栗原君子君及び尾辻秀久君が委員辞任され、その補欠として筆坂秀世君、国井正幸君、山口哲夫君及び岡利定君が選任されました。     —————————————
  3. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 理事補欠選任を行います。  昨二十三日の本委員会におきまして、欠員中の一名の理事につきましては、後日、委員長指名することとなっておりましたので、本日、理事筆坂秀世君を指名いたします。     —————————————
  4. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 平成年度決算外二件を議題といたします。  本日は、運輸省労働省建設省及び住宅金融公庫決算について審査を行います。     —————————————
  5. 野沢太三

    委員長野沢太三君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  7. 野沢太三

    委員長野沢太三君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 岩井國臣

    岩井國臣君 平成年度という年度でございますが、細川内閣羽田内閣村山内閣という三つの内閣がそれぞれ同じ年度の国政を担当するというまことに異常な年度であったかと思いますけれども、その点はちょっと横へ置きましても、建設省では九十年ぶりの大改革と言われております指名契約制度の改革が行われましたし、それからまた阪神淡路大震災という言語に尽くしがたい大災害に見舞われまして、建設省にとっても大変な年度であったかと思います。  二十一世紀を目前にいたしまして、今は政治、経済行政国民生活、すべてにおきまして新しい時代に向けてまさに変革の時期だと思いますけれども建設行政平成年度という年度を境にいたしまして新しい秩序というものを生み出すためのいわば陣痛の苦しみに入っているのではなかろうかな、そんなふうに思えてならないのでございます。新しい秩序というものがはっきりしないわけでございますが、だからこそそこからくるところの混乱というのが避けられない、大混乱の時期と言ってもいいかもわからない、そんなふうに思います。  ですから、議論というものが必要でございまして、建設省は私の古巣でございますけれども、やはり国会というこういう場で厳しい議論が要るんじゃなかろうかと思います。したがいまして、回答次第によりましては遠慮会釈なく厳しい議論をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。  さて、私は、昨年十月三十日の決算委員会におきまして、阪神淡路大震災に関連いたしまして、緊急輸送道路の問題とか道路啓開の問題を取り上げました。そして、建設省からはそれぞれ前向きの回答をしていただきました。本日は、その際時間の関係から質問できなかった事柄からまず質疑を始めていきたいと思います。  まず最初でございますが、昭和六十年の一月二十五日の「応急復旧時の民間保有機械等活用体一制について」という事務次官通達がございますね。この通達趣旨内容説明願いたいと思います。事実関係説明でございますので、できるだけ簡単に願えればと思います。
  9. 尾田栄章

    説明員尾田栄章君) 先生指摘通達内容でございますが、地震、洪水等の異常な天然現象によりまして大規模災害が発生した場合には、社会的、経済的に影響の大きい河川道路等公共施設応急復旧を迅速に実施する必要がございます。  その場合、被災地域が広範囲にわたりまして、建設省保有建設機械資材、要員だけでは不足する、そういうことも考えられるわけでございます。このため、民間保有をされております機械等活用できるように、あらかじめ建設業者あるいはこれらの業界団体協定を締結する等の整備を図りまして発災に備えようという趣旨でございます。
  10. 岩井國臣

    岩井國臣君 ただいま説明いただきました通達は、阪神淡路大震災の大体十年前に出された通達でございます。阪神淡路大震災の直後、いろんな事態があるわけですが、応急復旧なんかも含めまして通達趣旨が十分に生かされたのかどうか、その辺の評価をしていただきたいと思います。事後評価というんでしょうか、ひとつ簡単にお願いいたします。
  11. 尾田栄章

    説明員尾田栄章君) 阪神淡路大震災に際しましては、近畿地方建設局におきまして災害発生後直ちに施設点検に着手するとともに、点検応急復旧を行いますために、災害の場所及び状況に応じて通達に基づきます協定業者に依頼をいたしたところでございます。これを受けまして、各業者方々は迅速に対応されたところでございます。  また、今回の大震災は大変広範にわたる被災地でございましたので、これを復旧するために、これ以外の多数の他の業者方々にも応急復旧を依頼したところでございますが、それぞれ緊急事態内容をよく理解いただきまして、それぞれ所要の処置をとっていただいたところでございます。  これらの応急復旧に参加されました建設業者は約百社に及んでおりまして、このうち中小中堅業者地元を中心に約七割ということでございます。その活動に対しましては地元から高い評価をいただいているというふうに承知をしておるところでございます。  このように、一応応急復旧に迅速な対応がとれたと考えておりまして、通達趣旨は生かされたものと考えております。今後とも通達趣旨を生かしまして、災害時における応急復旧に迅速に対応できるよう対処してまいりたいと考えております。
  12. 岩井國臣

    岩井國臣君 実はその通達は、私が大臣官房技術調査室長のときに河川局防災課へお願いして出していただいたというものなんでございます。  私はかねがね災害時には地元建設業者協力が不可欠であるというふうに考えておりまして、果たして阪神淡路大震災の際に地元建設業者協力があったのかどうか、その辺を確認いたしたくて、実は昨年十月三十日の決算委員会でその点の質問をいたしました。  今も河川局長からお答えあったわけですが、昨年十月三十日の決算委員会道路局長からお答えございました。  地元建設業者は、道路啓開にかかわる作業のほ  か、人命救助行方不明者の捜索、現地状況の  情報収集報告避難所飲料水確保、ごみ  処理、建設機械及び資材確保物資輸送ト  ラックの提供、余震活動による二次災害予防の  ための応急措置など、昼夜を問わず献身的な努  力をされたそんな御報告がありました。先ほどの河川局長の御答弁と基本的には同じような高い評価地元においてもなされておる、こういうことかと思います。  やはりそうなんです。各県の建設業協会では戦後、最近の話じゃなくて戦後、いち早く傘下の建設業者から成る緊急対応のための防災組織というものをつくられまして、地域に密着した防災活動というものをやってきておられるわけであります。  私は、長い間防災仕事に携わってきましたので、その辺の事情にはやや詳しいわけでありますが、官房長は余りそういった細かいところは御存じないかもしれないんですけれども、いろいろなところから話をお聞きになって大筋については御理解いただいておるのではなかろうかというふうに思っております。したがいまして、質問というよりも確認みたいなことになるわけでございますが、一応質問させていただきたいと思います。  地元中小中堅建設業者は、先ほど出されました全国建設業協会の将来ビジョンにおきまして指摘されております地域防災を初め、地域社会において重要な役割を果たしておるんだというふうなことを業界として大変強くアピールをしておられるわけでございます。その辺よく御存じだと思いますが、そういうことをどのようにお考えになっておるのか。それが結局、中小中堅建設業保護育成みたいなところへつながっていかないと意味がないわけで、評価だけじゃいかぬと思うのでございます。  したがいまして、受注機会確保につながっていかなきゃいかぬ極めて重要な問題じゃないかと思っておるのでございますが、その辺、建設省の基本的なお考えをこの際ただしておきたいと思うわけでございます。
  13. 小野邦久

    説明員小野邦久君) お答え申し上げます。  ただいま岩井先生指摘のとおり、地元中小中堅建設業者、この方々地域住宅社会資本整備とかあるいは災害復旧等地域に大変密着した仕事をしていただいている、こういうことでございまして、またそういう事業の展開を通じまして地域の雇用にも大変大きな寄与をしていただいている、こういうことを考えておりまして、地域社会においても大変重要な役割を果たしておられる、こういうことだと思います。  このような中堅中小建設業者の振興あるいは育成を図る観点から、先生指摘公共工事受注機会確保を何とか図れないかということは大事な観点だと思っておりまして、地域経済活性化のためにも重要な施策である、こういうふうに認識をいたしております。  このため、従来から中堅中小建設業者方々受注機会確保対策としては、発注標準の遵守でございますとかあるいは分離分割発注の推進、こういうようなことを徹底をさせようではないか。特に、建設省直轄工事だけではなくて、関係省庁あるいは関係公団事業、あるいは特に地域性という点では関係地方公共団体の御理解をいただくことが大変重要でございますので、地方公共団体に対してもこの趣旨徹底をしてきているところでございます。  御指摘のとおり、今後とも中小中堅方々受注機会確保対策をどうするかということについてはあらゆる観点から努めてまいりたい、こう思っているところでございます。
  14. 岩井國臣

    岩井國臣君 さて、冒頭に申し上げましたように、平成年度という年度指名契約制度大改革が行われました年度でございます。そしてその大改革の結果、建設業界大変混乱に陥りました。もう過ぎ去ったことですから言ってもしょうがないのかもわかりませんけれども、ここは決算委員会でございますので平成年度どうであったかということを振り返っておく必要があるんじゃないかというふうに思います。大手ゼネコン仕事をとりまくり、中小中堅建設業者仕事が激減したんです。これでは中小中堅建設業死ねと言わんばかりではないか、こんな気がするわけです。  先ほど申し上げましたように、戦後間もなく緊急対応のための防災組織をつくられ、地元に密着した防災活動に努力してこられた地元建設業者の気持ちを全く踏みにじる結果になったわけであります。  もちろん、平成年度になりまして、建設省には必死になってそれまでの行き過ぎを修復していただきました。現在はただいま官房長から御答弁ございましたようなことでいろいろ配慮をしていただいております。その点につきましては、この際建設省に対し感謝もいたしますし、それから心から敬意を表させていただきたいと思いますが、平成年度を総括するに際し、なぜ中小中堅建設業仕事量があのとき激減したのかという点だけは原因をはっきりさせておきたいというふうに思います。  そこで質問でございますが、平成年度に比べまして平成年度におきまして大手ゼネコン受注が伸びて、逆に中小中堅建設業受注が激減するというふうな傾向が見られた。問題はその辺の原因がどこにあるのか、建設省はどのようにお考えになっておるのかということでございます。ひとつよろしくお願いします。
  15. 小野邦久

    説明員小野邦久君) お答え申し上げます。  大変厳しい御指摘をいただきましたけれども建設省直轄工事中小企業向け実績数字を申し上げますと、平成年度におきましては四五%ございましたけれども平成年度におきましてはこれが四〇・一%ということになっておりまして、ほぼ四・九%低くなっていると、こういう実態がございます。  いろんな原因考えられるわけでございますけれども、一つは先生指摘になりましたとおり、平成年度におきましては公共工事契約方式というものをかなり変えたわけでございます。公共工事効率化をどう図っていくのかという必要性もございまして、公共工事建設費の縮減の観点も加わってかなり発注ロット大型化したのではないか、こういうふうに考えられるわけでございまして、これが一点でございます。  二番目は、一般的に災害関連事業というのは中小建設業者方々受注される場合が多いわけでございますが、平成年度におきましては、阪神淡路大震災を除きますと災害関連事業というのが平成年度より大幅に減少している、こういうこともございまして、この二つの原因が大変大きな課題ではないかと、こう思っておるわけでございます。  このような観点から、私どもは、平成七年の七月、昨年の七月でございますが、それから十月、中小中堅建設業者受注機会確保対策というのを取りまとめまして、精力的に中小企業対策というものに取り組んだわけでございますけれども建設省直轄工事における平成年度発注実績は、こういったような対策の効果もございまして、中小企業向け契約額で過去最高の九千百八十五億円ということになりました。また、比率でございますけれども、四四%ということになりまして、平成年度実績を上回ると、こういうことになったわけでございます。  これはいろいろな対策をとった結果だというふうにも思っておりますけれども、さらに発注標準につきましては、発注ロット大型化に伴うランク間の工事量の不均衡、アンバランスを是正していこうということで、これは平成年度からやった措置でございますが、一般土木工事あるいは建築工事につきまして発注標準の引き上げを行ったわけでございます。  こういったようなことを今後とも十分やっていくことによって、中小建設業者方々受注機会確保のための具体的な施策というものにきちっと取り組んでいきたい、こう思っているところでございます。
  16. 岩井國臣

    岩井國臣君 先ほど、私は中小中堅建設業受注が激減したというふうに申し上げました。今の官房長の御答弁をお聞きしておりますと余り激減という感じがしないんでございますけれども、世の中で言われておりますのは、平成年度大手仕事量が三%ふえたと言われており、大手が三%ふえるということは中小中堅が三%減るということじゃなくて、大手は大きいですから四〇%ぐらい減ったと言われているわけですね。大手が三%仕事量をふやして中小中堅が四〇%ぐらい減ったというふうに、俗説かもわかりませんけれども、そんなふうに言われております。数字の話は今ここでしても仕方がありません。あるいはそれが俗説であって間違っているのかもわかりませんが、そのことは言いませんが、私はそういうことを踏まえて激減したと、こう言っておるわけでございます。  先ほども述べましたように、災害緊急時のことを考えましても、地域建設業というものはまことに大切だと思います。地域建設業といいましても、いろいろありますので、極めて誠実で優良な業者からそうでないものもあるかと思いますので、すべてということではない。誠実でしかも技術力にすぐれている、経営力もある、いい業者というのはこういう意味であります。  しかし、実態は、私が昨年十月の決算委員会で懸念を示しましたとおり、この間もちょっと私兵庫県へ行ってきたのでございますけれども兵庫県の場合、大手ゼネコン仕事をとりまくりまして、地元業者には期待していたほどの仕事をさせてもらえない、そんな不満が今なお渦巻いているようでございます。  そこで質問でございますが、兵庫県に限らず全国的には中堅建設業不満がございます。今なおございます。中堅建設業技術力が正当に評価されていないのではないかという不安が建設業界にあるようでございます。そこで、建設省中小中堅建設業技術力というものをどう評価しておられるのか。もちろん直轄だけの話じゃなくて県だとか市町村工事も含めての話でございますけれども建設省認識というものが県に影響を与え市町村影響を与えますので、まず建設省のその辺の認識をお聞きしたいわけであります。中小中堅建設業技術力というものをどう評価しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  17. 小野邦久

    説明員小野邦久君) お答え申し上げます。  公共工事一般の問題といたしまして、やはり品質を確保向上するという点で技術力は大変重要な要素でございます。技術力にすぐれた優良建設業者活用を図るということは何よりも大事だと、こう思っております。  御指摘中堅中小業者受注機会確保観点から技術力をどう評価していくのか、こういうことでございますが、昨年七月の一連の対策の中で、私どもは、例えば公募型の指名競争入札におきまして、発注標準における直近の下位ランク建設業者についても、例えば技術要件等条件を満たせば地理的条件も十分勘案して応募を認めるといったような、そういうことも優良建設業者がより上位の企業へ参入できるような道も開いております、いわば土俵づくりでございますけれども。  また、工事発注に際して、競争に参加する者を指名しようとする場合に、当該工事施工についての技術的な適性というものをとにかく十分に勘案いたしまして指名をするということをやってきております。  具体的には、当該工事と同種または類似工事施工実績とか、あるいは公共工事でございますので、ある一定の規模以上の場合には技術者をきちっと現場に配置しなければいけないわけでございます。そういう配置予定技術者の資格、経験、あるいはその企業当該管内における、地域における過去の工事実績というようなものも十分把握をして技術的な適性評価を行ってきております。  こういったような技術力を適正に評価するためには、何といっても企業施工実績でございますとか技術者に関するデータベースといったようなものをきちっと整備する必要があるわけでございます。そういったような観点から今いろいろな整備を進めておりますけれども、ことしの二月には、工事成績をより客観的に評価できるように工事成績評価要領というものを改定いたしました。企業技術力全国共通指標として活用できないか、活用できるようなことも考えたいと、こう思ってきておりまして、過去からやってはおりますけれども、過去の至らない点を十分反省いたしまして、より以上に工事成績評定要領をきちっと実施していく、具体的な指標として取り上げていく、こういうふうに考えてきております。  企業技術力というものを企業規模に応じて適正に評価する仕組みについて幅広く今後も検討してまいりたいというふうに思っております。
  18. 岩井國臣

    岩井國臣君 ロットの話が先ほど出ましたけれども、先般、ちょっと兵庫県に行きましたときに聞いた話でございます。  舗装工事です。道路舗道工事ですね。ロットが長いんですよ、延長が。だから金額は相当な金額になるんです。ですけれども仕事の中身は分割さえすれば地元で何ぼでもできる。長くてもできるんです。それから堤防の工事でもそうです。護岸工事でもそうです。ロットが長くなるからといって難しくなるんじゃないんです。金額じゃないんですよ。もちろんダムだとか大きな橋梁だとかシールド工事だとか、そんなのはちょっと中堅といえども手が出ないんですね。だけれども、普通の工事というか、普通の工事ロットが大きくなっただけで急に難しくなって中堅中小ができないということではないんですよね。だから、そういう不満が一つあります。  それからもう一つは、県の割に大きい工事中堅中小はとれているんですよ。直轄がとれないんですね。Cですと今度標準発注を上げていただきましたので二億五千万まではいけるとこういうことですけれども、県の工事だったらもっとでかいのをとっているんです。十何億とか二十億とっているわけですね。そういう技術力は私はあるのではなかろうかと。  これは、なるほど今までの考え方からいきますと、今言っているようなことは大転換なんですね。何妙なことを言っておるかというふうに聞こえると思うのでございますけれども指名契約制度というものを九十年ぶりに大改革をやったわけでありますから、いろいろな問題をもう一遍原点に戻って、中小中堅建設業技術力というものをどのように評価するのが正しいのかというようなことをひとつ基本的な議論をしていただきたい。ここで答えをいただくつもりはありません。大問題ですから問題提起だけ一つさせていただきたいと思います。  次の質問に移りますが、私、いろいろ現地に行かせていただいておるわけでありますけれども、現地で聞こえる声でございますが、最近歩切りがちょっとひどくなったんではなかろうかという、そんな声なんですね。実態はわからないですよ、業界の声ですからね。一〇〇%信用できないところもあるかもわからない。だけれども、あっちこっちでそういう声が聞こえるものですから、やっぱりそうかなと思ったりもしておるわけでございます。やはり公共工事の品質確保ということを考えたときに、歩切りというものは厳に慎まなければならないのではなかろうかというふうに思います。  私はそう思っておるんですが、その点につきまして建設省の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  19. 小野邦久

    説明員小野邦久君) 御指摘公共工事発注について、設計書金額の一部を正当な理由もなく控除して予定価格を作成する、いわゆる歩切りの問題でございますが、これまでもこういう行為があるのではないかということでいろいろな方面から過去何回か指摘されてきたことは事実でございます。  このような行為は、先生御案内のとおり、公共施設のきちっとした品質の確保というものに大変大きな影響が出てまいります。また、同時に、工事の安全の確保、いかに安全に工事を施行するかという点でも大変大きな問題があるわけでございまして、建設業の健全な発展に全体として大変大きな影響が出てくるわけでございます。  私どもでは、このような行為は厳に慎む必要があるということで、関係省庁の事務次官あて、あるいは関係の都道府県知事あてに何回か通達を出しまして、こういうことのないように要請をしてきているわけでございます。  具体的なきちっとした積算に基づく予定価格の設定ということは大変大事な課題でございまして、これを正当な理由なく歩切ると申しますか、控除するということはあってはならないことでございますので、こういうことのないように今後とも引き続き周知徹底に努めていきたい、こう思っております。
  20. 岩井國臣

    岩井國臣君 これもちょっと私ごとで恐縮でございますけれども、私が大臣官房技術調査室長をしておるときにやはりこの問題がいろいろ問題になりまして、別に私だけということじゃないんですけれども、各局とも相談をしながら建設省全体として取り組んだときがございます。もちろん、自治省が主務みたいなことになりますから、自治省にも働きかけて、自治省からも指導通達を出してもらうというようなことがございました。  坂野重信先生が自治大臣のときに、大臣からも相当強力に御指導をいただいて、あのころ少し歩切りがなくなってきた、ゼロにはならなかったと思いますがこれが減ってきた。ところが、最近ちょっとひどくなっておるんじゃないかというような声を耳にするものですから気になっておるわけです。  私は、大臣官房技術調査室のときに積算を担当しておったわけでございまして、決して積算は甘くないんですね。厳し過ぎることもないと思いますが、適正に積算はされておる。毎年毎年いろんなところで会計検査院の検査を受けておるわけであります。積算基準というのは適正につくられておると思います。それに基づいて適正に予定価格というものを積算しておる、こういうことでありますから、何の理由もなしに五%も一〇%も、あるいは一五%も、適当に歩切りをするなんというのはとんでもない話ではないか。先ほど言いましたように、地域における中小中堅建設業というものは大事に育成しなきゃいかぬわけでありまして、こんなことをやっておったら地元業者は伸びませんよ。  ということで、ひとつ自治省に対してお願いをして、一片の通達を出すというだけじゃなくて、少し実態を調べていただくと同時に、建設省としてもこの問題に真剣に取り組んでいただきたいと思うわけでございますが、これはちょっと質問通告なかったんですけれども、いかがでしょうか。
  21. 小野邦久

    説明員小野邦久君) 通達による指導だけで十分ではないのではないかという御指摘をいただいているわけでございますが、確かに過去何回か通達を出して指導してきておりますけれども、まだそういう声があるというような御指摘もあったわけでございます。私どもは、具体的な指導については、通達の発出だけじゃなくていろんな機会をつかまえまして趣旨徹底に努めているわけでございますけれども、これからも自治省とも十分相談をいたしまして、いろいろなサイドからの趣旨徹底に努めていきたい、こう思っております。
  22. 岩井國臣

    岩井國臣君 きょうは問題提起だけにさせていただきたいと思いますが、私も実は、こうやれば確実になくなるという方法を、考えを持っておりますので、きょうはちょっと時間の関係もありますので申しませんが、またいろいろと御相談をさせていただきたいというふうに思います。  最後の質問になりますけれども、もう一つ、地域における中堅中小建設業育成という問題を考えたときに、困った問題が一つ近年出てきておるのは不良業者でございます。  最近、不良不適格業者の参入が大変多くなってきておるんではないか。したがって、ダンピングまがいの受注競争もいろんなところで見られるようでございます。私、しかとはわからないのでございます、そんな話を耳にするということでござ  いまして、要するに不良不適格業者の参入防止、排除といいますか、そういう問題につきまして建設省としてどのようにお考えになっておるのか、これもぜひ私、実態を調べていただいて手を打つていただきたいと思うわけでございます。
  23. 小鷲茂

    説明員(小鷲茂君) 不良・不適格業者の問題でございますが、いわゆるぺーパーカンパニーと言われるような企業あるいは適切な施工力に欠ける業者、こういった業者を排除していくということは大変重要な問題でございます。  このため、従来建設業許可の段階あるいは公共工事発注の段階でいろいろ努力を重ねてまいってきておるわけでございますが、最近では平成六年に建設業法の一部を改正させていただきまして、建設業の許可基準を強化させていただきました。例えば、一度悪いことをした、問題を起こしたような業者さんは再度許可をとりにくくするといったような改正をいたしております。また、都道府県知事さんの監督権限につきましても、一部権限を拡充いたして対処いたしておるところでございます。  さらには、今後の問題といたしましては、やはり当該企業がきちんとした技術者を持っているかどうかということをチェックすることが非常に大事ではないかというふうに考えております。そのために、現在、全国の公共工事発注者が共通して使えるような建設業者のデータバンクを構築しつつございますので、これを活用することによりまして、工事現場ごとに置かなければならないとされております専任技術者をチェックするという方向で今後対策を強化してまいりたいというふうに考えております。
  24. 岩井國臣

    岩井國臣君 建設省におかれましては、地域における中堅中小建設業者育成というようなことで大変いろいろと意を尽くしていただいておりまして、その御努力につきましては多としたいと思います。感謝も申し上げたいと思います。きょう申し上げましたのは、しかしなおまだいろいろ問題があるということでございまして、どうかひとつよろしくお願いしたいと思います。  質問を終わります。
  25. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 私は、運輸省に対しまして若干の御質問をさせていただきたいと思います。  まず、平成年度運輸省についての検査の概要についていろいろ事前に調べさせていただきました。不当事項が二件あるというようなことでございましたけれども、本当に会計検査院としても微に入り細に入り非常に丁寧にお調べになっているなと、そして運輸省としてもしっかりとまた対応をやっておられるんではないかと思いますので、この点につきましては省きまして、運輸省の運輸・交通政策について若干お伺いさせていただきたいと思っております。  島国の経済レベルはその国の港湾や空港のレベルを超えることはできない、これはシンガポールのリー・クアンユー前首相の言葉だそうでございます。現在のシンガポールは、完全なコンピューター化されたカードオペレーションの港湾とかあるいは巨大な空港を活用してアジア屈指の経済の成長を続けておるわけでございます。それだけに、このリー・クアンユー前首相の言葉は、長い間経済不況に苦しんできた日本にとって、我が国の立ちおくれておる社会資本整備のあり方に対する忠告のようにも思われるわけでございます。  運輸・交通というのは経済活動にとって重要な動脈の役割を果たすものですから、これからの日本経済活性化するには、運輸・交通施設整備して人と物の交流機能を強化し、あるいはこれを効率化して、こういう面から国際競争力のある経済体質にしていく必要があると思いますし、また全国的に運輸・交通体系を整備することで国土の均衡ある発展を図ることができ、それによって今懸念されている産業の空洞化の傾向から、産業に地方へ進出してもらうような流れの変化を起こさせることができるんじゃないか、日本経済地域からよみがえらせていくようにすることも国土政策として重要な取り組みになるんではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、我が国の陸海空の運輸・交通政策の大宗をつかさどっておられる運輸大臣に、日本経済の再生を目指した国土の均衡ある発展を期してどのような総合的運輸・交通政策を展開されようとしておるのか、基本的なお考えを伺わせていただければと思います。
  26. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) お答えを申し上げます。  今、委員から御指摘をいただきましたが、まさに我が国は四面海に囲まれているわけでありまして、そういう中で、人、物、情報が極めて迅速に地球的規模で動き回るグローバリゼーションの進展、これを踏まえていろいろなことを考えていかなければならないわけであります。そういう面から、運輸関係社会資本整備ということが当然必要になってくるわけであります。  我が国といたしましても、経済社会の活力を高め、国際的な競争の中で産業を活性化し、生活の質の向上を実現する環境を整備することが重要である、このように認識をいたしております。このため、国際交流の基盤となる国際的な交通ネットワークを形成する、またそのための社会資本を効率的に重点的に整備し魅力ある経済社会を構築することが必要である、このように考えております。  このような視点から、我が国が安定した発展を持続し国際社会に一定の地位を確保するためには、時期を逸しない国際ハブ空港の整備が喫緊の課題と思っております。  また、先ほど申し上げましたとおり、島国である我が国の経済活動は、国民生活に必要な物資の輸出入の大部分を海上輸送に依存しているわけでありまして、我が国経済の国際競争力を確保するという面からも、三大港湾及び北部九州の中枢国際港湾において諸外国に比べて立ちおくれております大水深のコンテナターミナルの整備を積極的に推進してまいりたい、このように考えております。
  27. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 ありがとうございました。  規制緩和を一層推し進めて、その面から経済構造を改革する必要が大いにありますけれども、同時に、経済発展にはその基盤となる運輸・交通面での国土構造の改造も極めて重要であると思いますが、大臣のお話、お考えをお聞きいたしまして大変心強く思いました。ぜひこの具体化を強く期待申し上げまして、若干具体的な質問を続けていきたいと思います。  まず、空港整備に対する基本的な方向を伺いたいと思っております。  我が国の国際空港として拠点的な役割を果たしているのは現在、成田空港と関西空港だろうと思います。しかし、国際間の航空需要がこれからも増大していくでありましょうし、また航空機の超高速化あるいは大型化による大航空時代が到来して質的に変わっていく可能性も高まってきていると思うわけでございます。アジアの国ではアジアのハブ空港を目指した巨大な空港整備が既に進んでいるという現実を十分視野に入れて、日本の拠点的な国際空港整備に取り組むことが今重要だろうと思うわけでございます。  その際にぜひとも考えていただきたいことは、国土の均衡ある発展を図るために三大都市圏のほかにも、九州とか東北、北海道のブロックでも、それぞれが持っている有利な空港立地条件、こういうものを十分に生かして拠点的な国際空港を整備していくべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。そのことが大航空時代における厳しい経済競争を将来にわたって乗り切っていけるような我が国の全体としての発展ポテンシャルをつけていくもとになるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  いずれにしても、我が国は狭い国土でございますので、これを隅々まで適切に利活用できるように、つまり国土の均衡ある発展を可能にするようなことが我が国の国づくりにおいては肝心だと思います。  また、地方空港においても地域間の連携交流、とりわけ首都東京との航空機を利用した交流強化が高速交通時代の地方振興の決め手であると地方では強く期待しているところでございます。なお、地方空港では、すべてではございませんが、有効な活用のために近隣地域間の交流を促すようなコミューター航空の普及がもっとあっていいではないか、こういうことも考えるわけでございます。  こういったことを踏まえまして、国際拠点空港あるいは地方空港の整備についてどのような基本的なお考えをお持ちか、伺わせていただきたいと思います。
  28. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) ただいま先生の御指摘、私どもも全く同感でございます。  御承知かと思いますが、ことしから第七次の空港整備の五カ年計画がスタートするわけでございまして、昨年の八月、それに向かっての第一段階といたしまして、中間取りまとめということで学識経験者の方々の御意見も入れまして方向づけを出させていただいております。  その中に実はこういう一文をあえて入れまして、空港整備という課題、これにこたえていくことは「我が国自身の問題であるばかりでなく、我が国が相互依存関係を深めつつある国際社会から期待されているところでもある。」ということで、大規模な空港の整備は単に我が国だけではなくて、世界から見れば一つの義務でもあると思っておるところでございます。  そこで、具体的に拠点空港をどう整備するかということでございますが、この中間取りまとめにおきましても、とにかく需要が多い大都市周辺の拠点空港の整備を何にも増して急げ、こういう方向性を出していただいております。  そこで、早速、関西の二期工事、平行滑走路をもう一本つくろうという工事を今年度予算から事業化を認めていただいております。また、成田につきましては、いろいろな紆余曲折はございましたが、関係方々の文字どおり血のにじむような努力のおかげで対立構造が解消いたしまして、平行滑走路についてはその存在を否定しないというところまで参っておりまして、日夜この完成に急いでいるところでございます。それから、三番目が中部、これは伊勢湾の中でございますが、そこに新たな国際空港をつくろうと。これは、現在の名古屋空港が早晩パンクいたしますからそれも視野に入れて、つくるからには国際ハブ的な機能を発揮する空港にしようではないかという方向で今鋭意調査をしているところでございます。  さらに進んで、今先生指摘の地方の拠点空港、これをどうするかという問題が残っているわけでございまして、この中間取りまとめにおきましては、これは二〇〇〇年までを見た数字でございますが、地方の拠点空港は近距離の国際需要にこたえるようにこれも整備しようではないかという方向を出させていただいております。  ただ、超長期的に我が国の国際航空需要が伸びることは確実でございます。したがって、今申し上げました三つだけでいいのか、さらに遠くまで視野を広げて三つにプラスする空港の整備が必要だということも、この七次の間では無理かもしれませんけれども、将来的な問題としては当然出てくる問題であり、それに対して我々も真正面から取り組まなければいけない、かように思っているところでございます。  それから、コミューターのお話が出ました。  実は、我が国の国際定期路線を利用していただくお客さんの七五、六%が東京もしくは大阪を起点、終点としているお客さんでございまして、地方対地方の需要というのは非常に細いのが実態でございますが、最近になりまして大変地方同士の交流が盛んになったせいか、地方都市間の路線網が目に見えて充実しております。したがって、地方の発展のためにも地方路線の充実を図りたいと思っております。  ただ、コミューターというのは大変難しい事業でございまして、私の漠たる記憶ではジェット機ですとお客さん一人当たり二十円から三十円近くのコストです。ちなみにYSですとそれが四十円ぐらいになる。コミューターはこれが九十円から百円になるわけですね。そういう大変不利な条件での事業でございます。  ただ、私どもコミューターの振興も考えておりまして、着陸料をまけるとかあるいはコミューター用空港の整備に支援を申し上げるとか、そういう形でコミューターにつきましても私どもの航空行政の視野の中に入れまして努力をさせていただきたいと思っているところでございます。
  29. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 二十円とか四十円とかおっしゃったのは、これはキロ当たりか何かですか。——わかりました。  長期的な取り組みとしてもっと全国的な拠点空港の展開を考えておられるというふうにも受け取ったわけでございますが、国際拠点空港の整備に当たっては、航空利用の客が増大していく、それに対応して逐次整備を進めていけばよいという面も確かにあろうかと思いますけれども、他方では国家戦略として、今例えば首都機能移転のプロジェクトとか第二国土軸の形成というようなプロジェクトが国の将来の発展に向けて重要な国策として実現が目指されている、あるいは目指されようとしているわけでございます。  私は、国際拠点空港についても各地方ブロックで整備していくことこそが、各地方ブロックが独自に直接国際化を図っていけるようにもなりますし、また、今必要とされている地方分権もより広域的に確固としたものを築く基盤ができていく、そういうものを先導するような役目も出てくるんじゃないかなというふうにも思うわけでございます。そういうことを考えますと、やはり大いに前向きに国土計画を打ち立てて、その中での国際拠点空港というものを位置づけていただきたいと思うわけでございます。  第四次全国総合開発計画の見直しが行われておりますけれども、その改定に際しましては、九州国際空港など地方ブロックの拠点空港を、第二国土軸などと同じように、こういう他の国家戦略プロジェクトと並べて位置づけられるように努力をお願いしたい、こういうふうに思うわけでございます。  さて、地方空港にとりましては東京との結びつきというのが大変関心事でございます。そこで、東京国際空港についてお尋ねしたいと思います。  今、東京国際空港の沖合展開が進んでおるようでありますが、その進捗状況と完成後の処理能力がどうなっていくのかをお尋ねしたいと思います。  また、運用面の工夫などでさらに処理能力を増大させて、地方空港の利用向上がその面からもより図れるようなことができないかどうか、このことについてもお聞かせいただきたいと思います。
  30. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 羽田のいわゆる沖合展開事業でございまして、これはおかげさまで順調に今進んでおります。  現在利用していただいておりますターミナルビルがございますが、あれを挟んで海側にもう一本滑走路をつくる工事が最終段階を迎えておりまして、今年度末にはその滑走路が完成する見通しでございます。  さらに、横風用の滑走路、これは現在、昔の滑走路をそのまま使っておりますが、あれにつきましても騒音問題等を配慮いたしましてさらに沖合に延ばすという予定でございます。その滑走路も平成十一年度末には供用開始ができると思っております。  問題は、それによってどの程度処理能力がふえるかということでございますが、今私ども管制の専門家を中心にぎりぎりどこまで伸ばせるかという数字を一生懸命詰めている段階でございますが、若干の推測分も踏まえて申し上げますと、現在の羽田が大体年間二十から二十一万回程度でございます。それに対しまして、今年度末の新しい滑走路の完成でこれが二十三万回程度には伸ばせるのではないかと思っております。さらに、もう一本横風用を沖に出すことによりまして二十五・五万回程度の数字確保できるのではないかと思っております。  さらに、もっと羽田を大きくできないかという御指摘をよく受けます。私ども航空行政というか空港行政だけの立場からいいますと、あの羽田というポジションは大変便利でございまして、もっともっと拡張はしたいわけでございますが、幾つかのそれを阻害する要因がございます。  まず一つは今の滑走路、これを地図でごらんいただきますとおわかりいただけるかと思いますが、ほぼ南北に向いております。したがって、北の方に真っすぐ飛行機が離陸いたしますと、高輪とかその辺も含めてその真上を二分から三分間ごとにジャンボが飛ぶという事態になるわけでございます。したがって、沖合事業を始めるに当たって東京都との約束で、北の方に向かって離陸した飛行機はすべて右転回する、それによって騒音問題を防ぐ、そういう約束ができておりまして、現時点において住民の方々にその約束を白紙にしますよということは到底無理だと思っております。したがいまして、滑走路を若干ふやしたといたしましてもすべて右回りになりますから、飛行機の飛ぶ空域が非常に狭うございます。そういう意味で能力の拡大が難しいということ。  さらにもう一つは、今の羽田空港のすぐ沖合を東京港に入る大型の船舶が利用しております。さらにその先は、やっと話がまとまりました例の東京都と千葉県の間の廃棄物の処理施設、埋め立て用に使うというふうに決まっておりまして、東京湾も非常に狭うございます。したがいまして、私ども羽田をこれ以上延ばすことは極めて困難だと思っております。  ただ、そのまま手をこまねいているわけにいきませんから、私どもといたしましては第三空港、羽田にかわるというか、羽田とともに首都圏の需要にこたえる空港をつくろうということで既に関係地方公共団体方々と話し合いを始めているところでございます。
  31. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 すぐには妙案がないようでございます。したがいまして、それだけに今度増便可能になってくる東京国際空港の運用に当たりましては、各地方空港が地域の期待に最大限こたえていけるように運輸省としてもひとつ十分に心がけていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  港湾についてお伺いいたします。  経済構造が変化し経済のボーダーレス化が進んでまいりますと、当然製品や部品の輸入がふえてくる、また食糧の輸入もふえておるわけでございますが、こういう場合に海上コンテナ貨物の役割が非常に大きいわけでございます。今後、この動向を踏まえまして第九次港湾整備五カ年計画ではコンテナターミナルの整備をどのようにお考えでしょうか。大臣から基本的なことはお伺いいたしますけれども、その辺をお聞かせください。
  32. 木本英明

    説明員(木本英明君) 先生今御指摘なされましたように、我が国の貿易の大半は海上輸送で運ばれておりまして、最近ではコンテナ輸送という輸送形態がそのまた大半を占めておりまして、年率一〇%近い伸びでコンテナの輸出輸入がふえておる状況でございます。特に最近は輸入が大変ふえてきておる状況でございまして、そういった貿易の増大に対応いたしまして、それを運ぶコンテナ船というのも大変大型化が進んできております。  特にヨーロッパとかアメリカを結ぶ基幹的な航路を走りますコンテナ船につきましては、積載するコンテナの個数が二十フィート換算で、コンテナは標準的に大体二十フィートと四十フィートの長さのものがあるわけですが、約六メーターと十二メーターでございますが、その二十フィート換算で四千個を積める大型コンテナ船が現在主流となってきております。最近ではさらに六千個を超えるような超大型コンテナ船が就航し始めた、そういう状況でございます。  こういった大型コンテナ船に対応するためには、港湾の能力といたしまして水深十五メートル級のいわゆる大水深コンテナターミナルが必要でございますが、シンガポールでは既に六バース、香港では既に四バース供用がされておるという状況でございますし、また韓国の釜山、台湾の高雄でも数年内に供用する予定で着々と整備が進んでおるという状況でございます。我が国におきましては、去る四月に神戸港におきまして我が国初の十五メートル級のコンテナターミナルを、二バースでございますが、供用したところでございます。  こういったどちらかといえば我が国の大水深コンテナターミナルの立ちおくれに対応するために、今年度から始まります第九次の港湾整備五カ年計画におきましては、先ほど大臣の方からもお話ございましたように、主要な国際港湾におきまして水深十五メートル級の大水深コンテナターミナルの整備を最重点課題にいたしまして取り組み、そして我が国の港湾の国際競争力の回復を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。  具体的には、東京湾、伊勢湾、大阪湾と北部九州の四地域のいわゆる中枢国際港湾におきまして大水深のコンテナターミナルの整備を進め、そしてこれらの港湾を補完する意味におきまして、地域の中核となる全国八地域の中核的な国際港湾において国際海上コンテナターミナルの整備を図るべく私ども全力を挙げて取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  33. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 十五メートルの水深のバースがまだまだ、日本ではやっとでき始めたぐらいなところでございますけれども、国際競争力を確保するためにはそういう港湾の整備も必要ですが、ハードだけじゃなくてソフトの面でも整備が重要ではないかと思うわけでございます。  先ほどちょっと冒頭で触れたシンガポールでは、限られた土地とか労働力不足を克服するために、電子データ交換とリンクしたような完全コンピューター化したヤード操作をできるように、最高水準の荷役ができる大変効率的なものをつくっておるというふうに聞いておるわけでございますが、我が国でも港湾料金を安くしたり、あるいはサービスを改善する上からもこういったソフト面でおくれている整備が急がれる必要があると思うんですが、この点についてのお考え、あるいは取り組みはいかがでございましょうか。
  34. 木本英明

    説明員(木本英明君) ただいま御指摘ありましたように、港湾の国際競争力を取り戻していくためには、ハード面だけではなくてソフト面もしっかりと取り組んでいくことは大変重要であるというふうに私ども認識をいたしておるところでございます。  そういったことで、我が国におきましては人件費とか土地代を初めとする諸経費がどうしても割高になっているという面もございますし、また円高の影響もあり、特にアジア諸国の港湾に比して港湾関係料金が割高の傾向になっている、これは否めない事実であろうというふうに考えております。  こういった状況の中で、我が国の港湾の国際競争力を確保していくためにいろんな取り組みを現在進めております。例えば、平成年度におきまして、外貿埠頭公社における水深十五メートル以上の大水深の外貿コンテナターミナルに対しまして、それの貸付料といいますか、使用料を少しでも低くするために国及び地方公共団体の無利子の貸し付けの比率を従来の四割から六割に拡充をいたしたところでございます。  また、そういった管理費の増大を防ぐために、外貿埠頭公社の承継特例及び大規模特例という税制にかかわる優遇措置、いわゆる税制の優遇措置につきましても従来からあったわけでございますが、それを八年度におきましても延長させていただいておるところでございます。  また、第九次の港湾整備五カ年計画の最重要課題と考えております国際競争力の確保をさらに進めていくために、いわゆるソフトの面でございますが、その効率的な利用や港湾コスト全体のコストの削減、さらには港湾関係諸手続の簡素化等の規制緩和やターミナルの情報化の問題、ただいまシンガポールの例を先生指摘されましたけれども、そういった問題につきましても、現在、港湾管理者等と調査委員会等設けましていろいろ前向きに取り組んでいくようにいたしております。そういったことで少しでも港湾の国際競争力、ソフト面でも回復をしていきたいというふうに考えております。  また、港湾荷役サービスの改善につきましても、いわゆる休日・夜間荷役の問題もございますが、そういったことについても鋭意取り組んでおるところでございます。ひとつ御理解、御支援をお願いいたしたいと思います。
  35. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 私は、日本にもしも国際基幹航路に就航して世界各地を結んでいるような大型コンテナ船が立ち寄らないようなことにでもなってしまうと、私たちの国民生活やあるいは経済活動に大きな影響を受けることは必至だというふうに思うわけでございます。  そこで、もし外国のハブ港湾でコンテナを積みかえて日本へ持ち込むようなことになった場合には、積みかえ回数がふえるというようなことでさらに日本への輸入コストも高まるでしょうし、輸送時間も長くなるとかジャスト・イン・タイム方式がとれなくなるとか、とにかく経済安全保障の面等々懸念材料はいろいろとあるだろうと思います。そういう意味では、アジア諸国との激しい競争に勝てるような中枢的な国際港湾というものをハード、ソフト面を含めて大いにひとつ整備していただきたいということをお願いして次に移りたいと思います。  最後でございますが、陸上交通に関しましてちょっとお伺いしたいと思います。  現在、山梨におけるリニアの実験線ですか、この研究開発状況がどういうぐあいになっているのか、また宮崎にもこの前身があったわけでございますが、宮崎の実験線は今どういうふうに活用されているのか、このことをお尋ねしたいと思います。
  36. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) お答え申し上げます。  御指摘の超電導磁気浮上方式のリニアモーターカーの技術開発でございますが、昭和三十七年に当時の国鉄により開始されまして、国鉄の分割・民営化後は財団法人の鉄道総合技術研究所にこの技術開発が承継されまして、現在、山梨あるいは宮崎の実験線等におきまして基礎研究を進めております。  平成二年からは、実用に向けました技術開発を推進するために山梨実験線の建設に着手いたしまして、工事は順調に進んでおります。現在、トンネル、高架橋等の工事は終了いたしまして、ガイドウエーの工事を実施中でございます。  この山梨実験線におきます実験に関しましては、平成九年、来年の四月ごろから走行実験を開始いたしまして、時速五百キロを超える高速での連続走行試験、それから高速でのすれ違い試験、複数の列車の制御試験などの実験を行いまして、平成十一年度までに実質的な実用化のめどを立てる、こういうような計画で進めております。  それからまた、宮崎の実験線についてでございますが、この実験線につきましては山梨におきます実験を開始した後もしばらくの間実験を継続していくということにしております。  緊急ブレーキ試験など、設備に損傷を生ずるおそれがあるために山梨の実験線ではなかなか行いがたい実験などを宮崎で行うことによりまして、山梨の実験線におきます実験を補完するということで活用してまいる考えでございます。
  37. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 ドイツではトランスラピッド、若干方式の違うリニア鉄道だそうですが、もう既に一部試乗運転をさせているとか、あるいは来年ごろからでしょうか、実用線の建設に入っていく、こういうふうなことも伝えられておるわけでございます。  恐らく次の世代の陸上交通の花形といいますか、基幹になっていくんじゃないかなと思うわけでございますが、ドイツと日本が世界へ向けてこれから競争していって、そういう面でのリーダーシップをとっていただければなと思うわけでございます。  リニアの将来にどういう期待を持っているのか、その点について考えがあったら最後にお聞かせいただきたいと思います。
  38. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) このリニアモーターカーは、営業最高速度時速五百キロを目指した高速の陸上輸送システムでございますし、快適性といった面におきましてもすぐれた特性を持つということから、新しい時代にふさわしい最新交通システムだと私ども考えております。  これにつきましては、ただいまお答え申し上げましたとおり、技術開発のめどを立てるという状況でございますが、このシステムの実用化に向けて私ども努力してまいりたいと思いますし、それから関係地域の皆様方において大変強い熱意があることも十分承知しております。私どもそういうような点も踏まえまして、この実用化に向けて努めてまいりたいと思っております。  それから、この技術は我が国独自の技術でございますので、この研究開発というのは単に鉄道にとどまらず広い分野で大きな効果をもたらすものだと、そういう点でも私ども大きな期待を持っております。
  39. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 運輸・交通行政の今後の御発展を祈念いたしまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  40. 岡利定

    岡利定君 私は、きょうは労働省関係に絞って、特に雇用の関係について御質問させていただきます。  まず最初に、失業問題というのは、今日、世界諸国の共通の重要課題になっておるわけでありますが、そういう意味で、この前のリヨン・サミットでも大変重要なテーマの一つとして取り上げられました。  この論議を受けて、雇用に関する国際会議が日本で開かれるということが決定したと聞いておりますけれども、どのような予定になっておるのかお教えいただきたいと思います。そこで、この会合の主要課題と、それに対する労働省対応についてお教えいただきたいと思います。
  41. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 雇用に関する国際会議の日本開催の件でございますけれども、御指摘のように、本年四月にフランスのリールで開催されましたG7の雇用関係閣僚会議、いわゆる雇用サミットにおきまして、永井労働大臣が出席いたしたわけでございますが、大臣から若年者、高齢者の雇用問題等に焦点を当てた会合を日本において開催することを提案いたしまして、各国から賛同を得たところでございます。  これを踏まえまして、六月にリヨン・サミットが開催されたわけでございますが、そこにおきましても、橋本総理大臣から、雇用問題につき掘り下げた議論を行うため、若年者、高齢者の雇用問題に焦点を当てた会合を我が国で来年の秋ぐらいに開催することを提唱いたしまして、経済宣言にその旨が盛り込まれたところでございます。  現在、これを受けまして具体的な開催時期あるいは開催場所や内容について検討を行い、関係各省と協議をいたしているところでございます。今後、関係各国とも協議しつつ、この会議の成功に向けて最大限の努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  42. 岡利定

    岡利定君 新聞では、経済の国際化との関連で、その会合では貿易と雇用、さらには橋本総理の提唱された福祉イニシアチブ構想というのも絡んでなかなか大変な会議だというように予想する向きもございます。そういう意味で、労働大臣には大変御苦労も多いと思いますけれども、成功に向けてぜひとも御努力いただきたいと思う次第でございます。  次に、失業率の関係でちょっと御質問申し上げたいと思います。  日本の経済はバブルの崩壊の影響を受けまして戦後二番目に長い景気後退を経験したわけでございますが、この景気後退はその長さ、深さにおいて極めて厳しくかつ深刻なものであったと言えると思います。  経済企画庁は平成五年十月を谷にして回復局面に入ったと見ておりますけれども、きょうの新聞などにも報ぜられておりますように、景気動向指数、これは経企庁ですね、それから日銀情勢判断というものにもありますように、景気回復の足取りは依然緩やかなものにとどまっておるという状況でございます。  こういった中で、有効求人倍率が平成四年十月に一倍を切る状況になっており、とりわけ完全失業率の推移を見ますと平成四年三月以降上昇基調が続いておりますが、平成七年四月には終戦直後を除いて戦後最悪の三・二%となり、さらに先般発表されましたことし五月の統計では完全失業率が三・五%とワースト記録を更新している状況にございます。  そこで労働大臣にお伺いいたしますけれども、こうした現下の厳しい雇用失業情勢をどのように見ておられるのか御所見をお伺いいたしたい次第でございます。また、平成年度決算の審査でもありますので、平成年度以降において労働省がとってきた雇用支援トータルプログラム等の雇用対策の成果についての評価をお伺いいたしたいと思います。
  43. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 先生の御指摘のように、景気は緩やかながら回復の動きが見られるというふうに言われておりますが、雇用失業情勢は極めて厳しい状況にございます。私の言葉で言えばゆゆしき事態だ、こういうふうに申し上げてきているわけでありますが、三・五%という数字は史上最高であります。  しかし、その中身には、いろんな分析の仕方があろうかと思いますが、例えば従来見られなかったような若年者、中高年者を含めて転職希望者が物すごくふえてきたこと、それが転職の先が見つからないまま退職をして転職を希望して就職活動に入って、ミスマッチから就職できないでいる、こういう人たちも極めて多数に上ってきているわけであります。あるいは、景気が緩やかながら回復の基調にあることから、今までいわゆる非労働力として家庭内におられた方々が新たに就職活動に入ると、こういう数字も入ってきておりまして、一概にこの三・五%の失業率の数字評価することは非常に難しゅうございますけれども、しかし依然として厳しい状況にあることは間違いないところであります。  片方、有効求人倍率でありますが、先生も御指摘のように、やや明るい兆しが見えてまいりまして、五月現在〇・六九倍という倍率でございますが、今六月分の集計中でありますが、さらにやや上回ってくるんではないかなという観測を今現在持っているところであります。  また、雇用者数でありますが、完全失業率が三・五%という数字の中で、雇用者数は、例えば前年同月比で見ますと、ことしの三月は前年に比べて六十三万人ふえています。四月には六十八万人ふえました。五月には四十五万人ふえておりますから、雇用者数は確実にふえてきているということが言えると思うわけであります。  その片方で、今御指摘にありましたように、雇用支援トータルプログラムということを実施してきておりますが、これによりまして失業者の予防、再就職の促進あるいは雇用機会の創出に相当程度の寄与があったというふうに思っているところでありまして、例えば雇用調整助成金で見ますと、平成年度の休業などの実施延べ人数比、これでいきますと七百四十三万人、これは前年度に比べて三〇・二%ふえているわけであります。  あるいは特定求職者雇用開発助成金というのがございますが、これは高率の助成でありまして、その対象年齢も従来の五十五歳から四十五歳に引き下げをいたしました。そういうことから六年度には約十八万人の就業を促進してきている、これは率にいたしまして一〇九%の伸びであります。そういう効果も上げてまいりました。  しかし、現在のこの厳しい雇用情勢の背景には、景気循環的な問題のほかに、国際化の進展など構造的な問題があるというふうに認識をいたしておりまして、このため昨年七月以降、構造対策により重点を置いた新総合的雇用対策というものを実施してまいっておりまして、さらに九月以降これを拡充いたしまして、一つには改正中小企業労働力確保法という法律をつくっていただきまして、これに基づく中小企業の活力を生かした雇用機会の創出ということに力を入れてきているわけであります。  また、二つ目には、改正業種雇用安定法に基づきまして、失業なき労働移動の支援という対策を強力に進めてまいりまして、そういう関係からいきますと、例えば特定求職者雇用開発助成金の関係からいきますと、受給資格決定者数はざっと十八万人を超えているわけでありまして、これはかなり私は効果があったものと見ているわけであります。  こういうものを着実に総合的に実施することによりまして、この史上最悪の三・五%という失業率を可能な限り早い機会にもっと数字を引き下げるような、そういう努力を労働省のみではなくて関係省庁とも協議を進めながら全力を尽くしてまいりたい、このように決意をいたしておるところであります。
  44. 岡利定

    岡利定君 ぜひ最大限の御努力をお願いいたしたい次第でございます。  そういう意味で、やや質問が重なるかもわかりませんが、我が国の失業率は数字の上では欧米諸国に比べますとまだ低い水準にあるわけですけれども企業が抱える過剰雇用といいますか、いわゆる企業内失業者と言われるものは完全失業者数にほぼ匹敵する二百万人程度存在するんじゃないかと言われており、実質的には大変厳しい事態に直面していると言わざるを得ないと思います。  その中で、各企業のリストラはさらに積極的に進められるだろう。それに加えて、今大臣もおっしゃいました情報化の進展とか経済のグローバル化による産業構造の変化というようなことも予想されるというよりも現実のものとなっておりますし、また新規学卒者の就職困難の発生とか、終身雇用、年功処遇という日本型の雇用に変化の兆しが見られるというようなことから、国民の間では今後の雇用情勢について先行き不安感があるんじゃないかと思う次第でございます。  他方、我が国の経済活性化し、国民生活の豊かさを実現するために、規制緩和、高コスト構造の是正、新規事業の展開等のいわゆる構造改革を進めていくことが必要とされておりますが、このような大きな構造変化の中でも失業問題が発生しないように的確な雇用対策というのがとられていく必要があるのだろうと思います。  このような状況全体を踏まえて、今後の雇用対策に対する課題と基本的な方針について労働大臣から所見をお伺いいたしたいと思います。
  45. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 御指摘のように、産業構造がどんどん転換してまいっておりまして、一口で言いますと日本の空洞化ということが実は言われているわけであります。  海外進出という企業のメリットは、いろんな意味企業ごとによって受けとめ方が違う、あるいは目標が違うと思うのでありますが、一口で言えば安い労働力を確保するということもありましょうし、あるいは販路を拡大するということもありましょう。いろんなことがあろうかと思いますが、いずれにいたしましても海外進出する企業が極めて多い、このことから空洞化が懸念されているわけであります。あるいはそのことによって系列の中小企業などがどんどんリストラを求められていくという傾向にあります。それをどのように私どもが失業者を出さないような形で支援することができるか、言葉で言えば失業なき労働移動という言葉を使っておりますが、そこに最重点を置いているわけであります。  もう一つは、日本の国内においても地方において空洞化が進んでおります。それは、地方ごとに培ってこられた地場産業などがどんどん衰退をいたしまして、伝統的な技術、技能が途絶えてしまうという危険性を今持っておりまして、そのことが大都市以外のところでは地域経済の力を非常に弱めてしまっているということがあります。確実に三%以上の経済成長を進めていくことによって、私どもは近い将来三・五%という失業率を二%の後半台に抑え込もうという計画を持っているわけでありますが、その計画を着実に実施するためには、日本の国内における地方のそういう落ち込みといいますか、空洞化というものも防がにゃいかぬということで、今労働省では来年度の政策の中に、地場産業で培ってきた特定の技能、技術を生かしながら地方に新たな雇用機会の創出を図るような対策をつくっていこうということで今努力をしているわけであります。  またもう一つは、この経済社会の変革下において雇用の安定を確保することとともに、労働者が可能性を主体的に追求できる社会、そして安心して働ける社会を実現するための環境整備ということを掲げているわけでありまして、この中には、単なる環境整備という言葉に終わらせることなく、日々転換していく産業構造の改革、転換に対応できるような職業能力の開発が極めて重要である。  これは、日本の終身雇用制度と言われているものを培ってきた一つの要素であろうと思いますが、企業内では教育投資としてどんどん投資をして教育を進めてきました。それにより得ないものについては、私どもが持っております公共の職業訓練所などを活用してもらっているわけでありますが、その公共職業訓練所などをより高度なものにしていく、あるいはホワイトカラーの皆さんに対する職業能力開発ということも来年度から新たに施設をつくって実施をしようとしているわけでありますが、そういうことをどんどん進めていくことによって日本の空洞化を防ぐことが可能になってくるのではないか。あるいはそのことが発展途上国に対する技術援助にもつながっていくだろう。  そういう関係から、私どもは、今先生が御指摘になりましたような今後の雇用対策については非常に幅広い面で、そして部分的にはきめ細かく対応するということで全力を尽くしてまいる決意であります。
  46. 岡利定

    岡利定君 ぜひ大臣のその決意で取り組んでいただきたいと思います。いずれにしましても、労働省役割というのが大変複雑かつ困難な問題の中でますます大きくなっていると思いますので、ぜひとも積極的な行政展開をお願いいたしたい次第でございます。  そういう観点で、今度はもう少し長い目で見ますと、日本の超高齢化といいますか、それから少子化社会を迎えることは確実であるわけであります。  このような事態というのはかつて我々が経験したことのない事態でありますので、そういう状況の中で我が国の経済力を維持していくということはもう大変なことだろうと思います。そういう観点からもこの雇用対策、今度は今直面しております問題とはちょっと質が違ってくるかもわかりませんけれども、労働力確保対策というようなこともまた大変大事な問題だろうと思います。  そういう問題について、労働省の方でも既にいろいろと取り組まれておると思うわけでございますけれども、高年齢者雇用対策に今焦点を置いて御質問いたしたいと思う次第でございます。  二十一世紀初頭に国民の四人に一人が六十五歳以上の高齢者になるという超高齢社会が到来する。そして、逆に若年労働力の絶対量が減ってくるという状況になるわけでありますが、そういう中で高年齢者の雇用というのがこれまで以上に大事な問題になってくるんじゃないかなと思っております。  そこで、現在の高年齢者の雇用、失業の状況はどのようになっておるか。また、企業における定年制の状況及び六十五歳までの雇用確保状況はどのようになっているか、お教えいただきたいと思います。
  47. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 今後、我が国は先生指摘のような問題があるわけでございます。高齢者の関係につきまして雇用・失業状況等について申し上げますと、依然として厳しい状況が続く中で、特に高年齢者の方については、例えば六十から六十四歳層について見ますと、完全失業率、全体平均が三・五%に対しまして、この年齢層では六・八%というふうに非常に厳しい状況にございます。  また、定年制の状況につきましては、平成八年一月一日現在の調査によりますと、一律定年制を定めている企業のうち六十歳以上定年の企業の割合が九割近く、八八・三%というところまで来ておりまして、これが六十歳以上に改定することを決定している企業または予定している企業を含めますと九五%程度というふうな状況になっております。  また、六十五歳以上定年の企業の割合、これはまだ割合は少のうございまして六・二%、定年到達後少なくとも六十五歳までの勤務延長制度あるいは再雇用制度、こういうものを有している企業、この割合は五五%程度でございます。ただ、希望者全員を対象とする六十五歳までの雇用を確保している、そういう企業の割合は六十五歳定年も含めまして全体として約二割程度とまだ少ない状況でございます。
  48. 岡利定

    岡利定君 まだいわゆる六十五歳、六十歳以上六十五歳のところというのはこれからの課題だというような感を受けるわけでございますが、これらの高年齢者の雇用対策について、労働省としてこれまでどのような対策を講じてきたのか、概要をお教えいただきたいと思います。
  49. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 今まで講じてきました対策といたしましては、特に六十歳定年の定着、これを最大の目標といたしまして、高齢化社会の中で企業において六十歳までは一律定年制という形で雇用を継続していただく、こういうことを重点的な課題として取り組んでまいりました。  これにつきましては、高齢者雇用安定法におきまして法律改正もされまして、平成十年だったと思いますが、そこで企業に義務化するというような形で作業を進めておりまして、現状におきましては先ほど申し上げましたようにほぼ定着しているところでございます。  ただ、高齢化社会の中で六十歳定年が確立いたしましても、それでもなお、先生指摘のように、一方で活力を維持するために希望して働ける方は働いていただく必要があるということ、あるいは高齢化社会の中で年金制度につきましては二〇〇一年から六十歳が六十一歳ということで、三年刻みで支給開始年齢が引き上げられまして二〇一三年には六十五歳になる、こういうようなこと、そういう両面から少なくとも六十五歳程度までは希望する方について積極的に働いていただく、こういうことが非常に重要課題になってきているということでございます。したがいまして、今後は六十五歳まで働けるような、あるいは働いていただく、そういう対策に重点を移していく必要がある、こういうことでございます。  そういう点につきましては、昨年の四月から雇用保険の制度として実施いたしました高年齢雇用継続給付、これは定年後の雇用につきまして一般的に賃金が相当程度下がりますので、その際の下がった分の賃金についての一定割合を雇用保険制度の中で高年齢雇用継続給付として支給する、これは五年間、六十五歳までということでございますが、そういうことで雇用を促進する、こういう給付も始めているところでございます。  そのほかの対策といたしましては、平成六年十一月から高齢者につきましては労働者派遣事業について特例措置を講じまして、これは一般的には原則自由という形で派遣事業ができるというような仕組み、あるいは地域におきます臨時短期的な就業機会を提供するためのシルバー人材センター事業について、これにつきましてもさきの通常国会におきまして法律を改正していただき事業の拡大を図っているところでございます。  そういう形で六十五歳までの雇用の確保あるいは就業の確保、こういうものについて今後さらに重点を置いて進めてまいりたいというふうに考えております。
  50. 岡利定

    岡利定君 高年齢者雇用対策として今のお答えのような考え方のもとでいろんな奨励金が用意されておるようであります。  そこで、これらの高年齢者雇用のための奨励金について、予算で組まれた額が全部使われないで使い残しが出るというような状況もあるというように聞いておりますが、平成年度における各種の高年齢者雇用のための奨励金の支給について、その予算額と実績についてお伺いいたします。
  51. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 高齢者の雇用確保のために事業主の方に対する各種の助成金を御指摘のように設けておりまして、幾つかございますが、それについて平成年度におきます予算額と実績関係について申し上げます。  まず、継続雇用制度導入奨励金という制度がございます。これは、先ほど言いましたように、定年後さらに引き続き継続して雇用する、そういう仕組みをつくっていただいた事業主に対する奨励金でございますが、これは予算額百十九億九千四百四十万円に対しまして、実績は百十四億三千七百二十万円でございます。  それから、高年齢者雇用環境整備奨励金というものがございます。これは予算額二十四億一千七百四万円に対しまして、実績がこれは少のうございまして二千四百万円でございます。  それから、高年齢者多数雇用奨励金、これは予算額が七百二十六億三千百七十四万円に対しまして、実績といたしましては六百六十五億六千五百八十五万円となっております。  それから、高齢期就業準備奨励金、これにつきましては予算額七億五千五百三十四万円に対しまして、実績が百二十三万円と少のうございます。  それから、先ほど御説明申し上げました特定求職者雇用開発助成金、これにつきましては予算額六百十二億二千九百二十一万円に対しまして、実績が四百九億四千五百十六万円となっているところでございます。
  52. 岡利定

    岡利定君 ありがとうございました。  今の御説明にありましたように、いわゆる助成金なり奨励金なりの支給につきましては実績が当初計画を下回っているものも幾つかあるわけでありますが、労働省の国会提出の資料によりますと、これは単に六年度だけではなくて従来からそうした状況があるようであります。  例えば、六十歳以上六十五歳未満の高年齢者を一定率以上雇用した事業主に支給される高年齢者多数雇用奨励金をとってみましても、予算を使い残した割合は、平成年度が二七・七%、四年度が一七・四%、五年度が二・三%、そして六年度が八・四%、使い残しの割合は徐々に減っておるわけでありますが、そういう状況にあります。  高年齢者の厳しい雇用失業状況と雇用対策必要性指摘され続けていく中で、こうした予算の不用額が生じておるということにつきまして労働省としてはその原因をどのように分析されておるのか。いわゆるPR不足なのか、あるいはそれぞれの雇用の奨励金なり助成金の支給金額なり支給要件なりに改めるべき点があるのか、あるいは手続が厄介過ぎるんじゃないかとかいったようないろんなことが考えられるわけでありますけれども、それらの点について労働省の見解をお伺いいたします。
  53. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 予算に比べまして実績が下回っておる点につきまして、原因についてはさまざまあろうかと思います。どれか一つということではございませんが、おっしゃるように一つには、PRしているわけでございますが、まだなおかつそのPRが十分でないという問題もございます。  それから、例えば高年齢者雇用環境整備奨励金とか、あるいは高齢期就業準備奨励金等につきましては、法律改正等をいたした後、平成六年六月に創設いたしたものでございまして、特にこの辺については新しいということと、そういう意味で十分に事業主の方に周知がされていないというような問題がございます。  それから、多数雇用奨励金につきまして、これは確かに支給実績が予算を下回っている面があるわけでございますが、これはかなりPRは行き届いておりまして、金額的にも七百数十億に対しまして六百数十億と、かなりの金額活用されているところでございます。  それから、特定求職者雇用開発助成金につきましては、これは不況期におきます緊急対策として実施したものでございますが、そういう意味では、特に高齢者の方が不況期、就職が難しいというようなことからその助成金が計画を下回っている、そういう面もございます。  いずれにいたしましても、制度につきまして、今後高齢化社会の中で非常にこの対策が重要でございますので、十分周知徹底を図る、あるいは助成金等について必要な改正等も検討しながら対処してまいりたいというふうに考えております。
  54. 岡利定

    岡利定君 ぜひ有効な制度にしていただきたいと思っております。  最後でございますけれども阪神淡路大震災関連での雇用関係についてお伺いしたいと思います。  御存じのとおり、平成七年一月十七日に大震災が起こったわけでありますが、この震災で事業場の倒壊、焼失だけでなくて、経済活動への深刻な打撃が生じたことによって、事業主、労働者とも甚大な影響、被害をこうむっております。  労働省及び関係府県におかれましても、特に職業安定所など現場において、職員自身が被災者であるという状況でありながら各種の対策に御尽力をいただいたわけでございますけれども、第一点としまして、阪神淡路大震災後の雇用失業情勢はどのようになっておるのか、それから第二点としまして、この大震災に係る雇用対策はどういう現状になっておるのか、お伺いいたしたいと思います。
  55. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 阪神淡路大震災関係につきまして、御指摘のように大変予想もできないような大事故でございまして、当時私、担当局長をしていたわけでございますが、これについて雇用対策面でどうしたらいいかということで、これはできるだけ早く最大限できることはやらなければいけないというようなことで、事故が起こりましてすぐ雇用調整助成金等の被災地域の適用の問題とか、あるいは雇用保険の失業給付の特例給付の問題とか、そんなものについて関係省庁と御相談しながら、これは被災地の激甚災害の指定等の問題とあわせてそういう対策をとり、かつ公共職業安定所の職員も総力を挙げて対処してきたわけでございます。  そういうことで現状について申し上げますと、五月時点での雇用失業情勢、これは昨年の五月を一〇〇とした場合で見ますと、例えば新規の求人数については一一一・四%というふうにふえております。それから新規の求職者につきましては九六・一%と減少しております。  したがいまして、新規の求人倍率で見ますと、昨年五月の〇・八一倍に対しまして、本年五月におきましては〇・九四倍というふうになっておりまして、数字の上では落ちついてきているのではないかというふうに考えております。  それから、特に公共職業安定所による支援を必要としながら求職活動を行っております被災求職者、この方につきましては、ピーク時平成七年四月末時点で三万三千四百八十一人おられたわけでございますが、八年の五月末時点では八百七人になっているところでございます。  ただ、数字の上で落ちついている面はあるんですが、例えば中身を見ますとミスマッチも大きい面もございまして、復興関連事業の求人が多いんですけれども、就職希望者は必ずしもそういうところでないところを希望しておられるとか、いろんな問題点もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、引き続きこの関係対策につきまして最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  56. 岡利定

    岡利定君 御尽力をお願いいたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  57. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩      —————・—————    午後一時開会
  58. 野沢太三

    委員長野沢太三君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成年度決算外二件を議題とし、運輸省労働省建設省及び住宅金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 星野朋市

    ○星野朋市君 私は時間が限られておりますので、失業の問題一点に絞って御質問をしたいと思います。  去る五月十四日の労働委員会で、私は労働省に対して、四月の失業率は未就職の学生、三月まではこれは失業者になっておりませんけれども、四月になると失業者の仲間入りをするということで、失業率が上がるんではないかという心配をいたしました。政府の答弁は、今年度はそういう未就職の若者は約二十万人、去年は二十三万人おったので、心配はないという言い方はしなかったんですね、さすがに。ただ、そういうようなニュアンスを持ちながら、これを心配をし、注意深く見ている、こういう慎重な御答弁がありました。  ところが、ふたをあけてみると、四月は三・一から三・四と実に一〇%もの失業率が上がっている、こういう事態が生じたわけであります。これの背景について労働省はどう見ておられるのか、御答弁いただきたい。
  60. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) ただいま先生指摘の失業率の問題でございますが、御指摘のように完全失業率の状況につきましては、昨年の十一月から本年の一月までの間、史上最高水準の三・四%が続いたわけでございます。それがその後二月に三・三%になり、三月に三・一%というところまで行ったわけでございますが、これが再び四月が三・四%というような水準、あるいは五月になりますとさらにこれが三・五%、こういう水準になってきているわけでございます。  この点についてどう見るか、雇用失業情勢、これは設備投資の回復等景気の回復の動きが見られる中でこれをどう見るかということでございまして、比較的景気の回復と同じ動きを見せます私どもの有効求人倍率で見ますと、これについては今回の不況期最悪時で〇・六一倍まで落ちましたものが、最近になりまして、五月時点で見ますと〇・六九倍まで、これも緩やかですが上昇してきているということが言えるわけでございます。  しかしながら、完全失業率を見ますと、御指摘のように非常に厳しい、こういうことでございまして、この点をどう見たらいいかということでございますが、完全失業者内容を五月の例で見ますと、新たに労働市場に参入してきた者、これが十三万人増と相当いるわけでございますが、そのほかに自発的に離職した者が三万人増、こういうことで一般的に景気が回復基調のときに求職活動が活発化しているという面が言えるかと思います。  ただし、他面で、非自発的失業者が前年同月に比べて九万人ふえている、あるいは学卒で就職できない方は五万人ふえているというようなことで、リストラ等による失業も依然として増加傾向にある。そういう意味で、雇用失業情勢が依然として非常に厳しい状況であるというふうに考えているところでございます。  この点が、ただいま言いましたような有効求人倍率の改善傾向、景気の回復基調とあわせての改善傾向、この辺が今後どうなっていくか、そういうことが続くことによってそれが失業率の改善につながっていくことが望ましいわけでございますが、現時点においてそこがどうなっていくか、これが私どもの最大の関心事であり、心配なところであるわけでございます。
  61. 星野朋市

    ○星野朋市君 五月のことまで触れられたわけですけれども、五月はさらに三・五と上がって、その理由が今征矢局長がおっしゃったような理由だとすると、これには私はちょっと異論があるんです。  なぜかといいますと、今就業者はパートタイマーとか派遣労働者、これでふえているんですね。常用者はほとんどふえていない。それから失業、いわゆる離職をしようとしている、または離職をしちゃった人というのは実はホワイトカラーが多いわけですよ。そうするとどうなるかというと、今おっしゃった理論からいえば景気が回復するにつれて失業率はますます上がるということになりかねない。  ここは、ですから学者及びマスコミも二論ありまして、確かに今までのような分析でもってこれを評価するといいますか、景気がよくなっているんだという見方をする者と、いやそうじゃなくて経済的な構造がすっかり変わってこれからはそういう中でリストラが進み、企業の業績は回復するけれども失業が実は次第にふえていくんだと、こういう二つの見方があって、今どちらとも言えないんですね。  それで、時間がありませんから大臣にお伺いしたいんですが、この間のサミットも実は雇用の問題というのが一つ大きなテーマとして挙げられておった。ところが、雇用問題というのは余りにもダイレクト過ぎるんでグローバリゼーションという名前に変えられたんですね。だけれども、あれはヨーロッパにおける失業の深刻さ、アメリカの問題というのは別の意味で、雇用者はふえているけれども賃金が低下しているという、この意味から日本とちょっと違う深刻さ、これをもってグローバリゼーション、その一番問題は雇用にある、こういうことだったはずなんです。  それで日本の労働問題、これから雇用が一番重要な問題であるということを私は再三申し上げておりますけれども、そのためには労働省対策または施策が、しかも予算編成期を目の前にしてここの点に予算の傾斜配分、そのぐらいやるつもりで新しい成長産業へどうシフトするか、この点について大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、これをお示し願いたいと思います。
  62. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 先生の御指摘のように、今三・五%という大変な失業率でございますが、その内容の分析についてはさまざまな見解が述べられているわけでありますが、押しなべて言えますことは、産業構造が著しく転換をしてきていること、あるいは海外にシフトしていること、こういうことなどが失業者の増大につながっていると思うのであります。  片方、日本型の雇用形態と言われてきた終身雇用制度的なものがだんだんと変わってきているんではないか。その証拠に、例えばみずからが離職をして新しい職を求めていく。それは必ずしもホワイトカラーだけに限っているとは思えないのでありますが、現在の失業者数の中で見ますと、八十九万人という人々が自発的な理由で退職をされて新たな就職活動をされているという数字になってまいります。  例えば構造転換あるいは海外シフトなどによって、リストラによってやむなく職を失った人、これが六十六万人という数字であります。もちろんそのほかに学卒でまだ未就職の人が十五万人という数字を数えておりますが、こう考えていきますと、雇用のあり方に一つは大きな原因があるのではなかろうかという気がするわけであります。  したがって、労働省といたしましては、そういう構造転換に対応できるように失業なき労働移動に最大限の重点を置いておりますが、その一つの柱に適切な職業能力の開発ということを重点に置いているわけでありまして、来年度の予算編成におきましても、この職業能力の開発にかなりの重点を置いて対応しようとしているわけであります。それは一般的な生産事業に従事する者、ホワイトカラーと言われている人たち、それぞれにそういう施策を講じようとしているわけであります。  そしてもう一つは、地方における地場産業などの技能、技術を生かした新しい雇用創出ができないかということで、それにも一つの大きな柱を据えて今重点政策として進めようとしているわけでありまして、これについては、単に労働省だけではなくてあらゆる業界にもその理解の上に立って御協力をいただかないと成功いたしませんので、そういう関係については関係業界にも強く私どもはお願いをして、ともに失業なき労働移動が実現できるように全力を尽くしていきたいと思っているわけであります。  なお、職業安定所を私は随分回りました。職業安定所を随分回りまして、例えば中小企業団体では求人数の八〇%を切るぐらいしか充足率がないんです。なぜ二〇%以上も充足ができないのかと、いろいろ職業安定所に来ている学卒者の皆さん、若い人たちに直接私は話を聞きました。そうすると、給料もいいしなかなかいいんだけれども、例えば大企業と比べて労働条件がかなり格差がある。労働時間が長いとか残業時間が多いとか、週休二日制が大企業よりも少ないとかいうことで、私はそういうところには行きたくないというふうなことが率直に出てくるわけでありますから、そういう面では中小企業などにおける労働条件の向上ということも視野に入れながら対応していきたい、こう考えておるところであります。
  63. 星野朋市

    ○星野朋市君 終わります。
  64. 武田節子

    ○武田節子君 平成会の武田でございます。  初めに、労災診療費の地域特掲料金について伺います。  会計検査院の改善処置要求で、平成年度より六年度に至るまでいまだ完全解決に至っていない事項は、国営木曽岬干拓事業の問題と、もう一つは労災診療費の地域特掲料金のこの二件のみでございます。木曽岬干拓事業の問題については関係者の努力によって問題解決に大きく前進しているとのことでございますから、残るはただ一つ、地域特掲料金となっております。  こちらは、今なお完全解決に至らず、現在なおその問題の尾を引きずっているようでございますが、この件につきましては、私は平成七年九月十四日の決算委員会で取り上げました。このとき当時の青木労働大臣及び松原労働基準局長も、この地域特掲料金については早期解決、完全解消を図ることの重要性を強調されました。  私がこの件で質問し、労働省答弁なさった平成七年九月十四日から本日平成八年七月二十四日までのこの件に関する進捗状況について明示していただきたいと存じます。  会計検査院より改善への処置要求がなされれば、一年以内、遅くとも二、三年ぐらいで解決されるのが通常だと思います。ここまで来ますと、会計検査院の改善処置要求は一体何なのか、なぜここまでこうも長引き、完全解消に至らず尾を引きずっているのか、その体質そのものを取り上げ、メスを入れなければ根本的な解決にはならないのではないでしょうか。  当初、この問題は二十四局において存在したものですが、現在は残り三局とのことであります。既に解消しているところがある反面、いまだ解消していないところがございます。算定基準で認められない項目について算定したり、基準の点数に一定の点数を加算するなどしているのがこの地域特掲料金であり、そして、公正な算定基準の確立のために昭和五十一年に全国的な統一基準である労災診療費算定基準を定めたわけであります。したがって、たとえ残りわずかといえども完全解消に至っていないところがあるということそれ自体が大きな問題であると思います。世の中にごね得というものがありますが、まさにそれを連想いたします。  労働大臣、本日現在なお残っている三局とは一体どこか。まだ完全解消できないこの事実をどう感じておられるのでしょうか。なぜ今なお完全解消できずにいるのでしょうか。そして、完全解消達成の時期とそれに至るスケジュール及び決意をお示しいただきたいと思います。
  65. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 先生指摘の労災診療費におきます地域特掲料金につきましては、私どももかねてよりその解消に向けて取り組んできた課題でございます。  先生から昨年九月に御指摘のありました段階で、未解消の地方労働基準局単位で申せば三局ございました。私どもその後努力いたしまして、一局において解消をいたしまして、現在二局となっているところでございます。  もちろんこの未解消の二局につきましても、今後とも地方局に対しまして関係者と十分話し合うことなど積極的な指導をいたしまして、なるべく早い時期に地域特掲料金の解消に向けてさらなる努力をいたしているところでございます。
  66. 武田節子

    ○武田節子君 ぜひしっかり進めていただきたいと思います。  次に、今月十六日に婦人少年問題審議会婦人部会より均等法見直しについて中間報告がなされました。それについてお伺いいたします。  この中間報告を見た限り、女子保護規定については解消の方向で労働者、使用者とも合意し、他の重要な部分については両論併記で何ら具体的な改善方法が示されておらず、大変失望いたしております。全国の女性からも私のところに失望したとの声が続々と寄せられております。  中間報告ですからこれから再度検討されていくわけですが、労働省は八月、九月において労働省へ御意見をファクス、文書で聞かせていただき参考にしたいと呼びかけられておりますが、この意見はどういう形でいかなる機関が集約するのか、これを審議会にどう反映するのか、またその集約したものは公表する考えがあるのでしょうか、お伺いいたします。
  67. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) お答えいたします。  均等法と労働基準法の女子保護規定の見直しにつきましては、先生おっしゃいましたように、昨年十月から婦人少年問題審議会におきまして精力的に御審議をいただきまして、去る十六日に中間的な取りまとめが行われたところでございます。  この中間取りまとめは、今後さらに議論を深めるに当たりまして、これまでの議論の論点を整理するとともに、多方面において広く議論が行われることを期待して取りまとめを行ったものでございます。  今般、この中間的取りまとめに対する意見をファクスなどにより受け付けることにいたしましたのは、多方面からの建設的な御意見を審議会での議論の参考にしたいという意図でございます。ですから、寄せられました意見につきましては、労働省において一定の整理を行いまして審議会に報告をいたしたいというふうに考えております。
  68. 武田節子

    ○武田節子君 公表するお考えはあるのでしょうか。
  69. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) 審議会において報告をいたしました後、その資料は一応外に出したいというふうに思います。
  70. 武田節子

    ○武田節子君 では次に、女子保護規定の解消の方向で合意したとの報告は、使用者側の言う女子保護規定の撤廃は均等推進と取引されたのではないだろうかという感じが私はどうしても否めません。だとしたならば、使用者側の言う均等推進の事項についても当然この中間報告で方向性だけでも示されて当たり前ではなかったのでしょうか。  この中間報告を見ると、まるで女子保護規定はもともと必要なかったものを規定していただけにすぎなかったと言っているような見解にとれます。とんでもない話で、劣悪な職場環境、不当な労働行為が横行していた我が国の労働環境の中で、最低限必要なものとして存在していたわけであります。確かに、以前とは違ってかなり整備されてはおります。しかし、今日では女性労働者の八割が三十人未満の事業所で働いており、組合もない厳しい労働環境にあります。今回、その方たちへの視点が欠けているように思います。  また、新しい課題として、今日の出生率一・四三という異常な事態にあることです。女子保護規定を解消した場合、未婚率は上昇し、ますます少子化と高齢化が進むことは間違いありません。その上、女子労働者の過労死の多発現象をも招き、二十一世紀の我が国の労働市場に明るい未来は感じることができません。深夜業、休日労働、時間外労働等の女子保護規定の安易な解消はぜひ避けるべきだと思います。労働省としてはどうお考えでしょうか、お伺いいたします。
  71. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) この点につきましては、既に均等法ができました昭和五十九年に婦人少年問題審議会から建議をいただいておりまして、その建議の中で、原則として企業の募集、採用から定年退職、解雇に至る雇用管理における男女差別的取り扱いを撤廃し、労働基準法の女子保護規定は母性保護規定を除き解消することが求められるということで、公労使一致した原則がございます。  ですから、今回の婦人少年問題審議会における議論におきましても、一つの点といたしまして、募集、採用及び配置、昇進に係る均等取り扱いの促進についての議論を深めるべきであるとする一方、時間外、休日、深夜業に係る基準法の女子保護規定につきましては、男女均等の取り扱いとそれから女性の職域拡大を推進する観点からその解消を目指す方向で議論していくということになったわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  72. 武田節子

    ○武田節子君 十年前に、ある使用者代表が、均等法の実効性を上げること自体がおかしいのだというとんでもない話をしていましたが、十年たった今もこの認識は全く変わっていないわけです。それは、近年の女子大生の就職に当たって応募する機会さえ奪われている今日の現状を見れば明らかであります。  したがいまして、均等法の実効性を上げるための見直しこそ必要であります。募集、採用、配置、昇進を禁止規定にすること、調停は当事者の一方で申請できるようにすること、男性の労働時間の短縮を図り、男女共通の規制については最低限実現すること等々、見直しを行っても逆に後退することのないようにすべきだと思います。  最終答申に向けて労働省としていかなる決意で臨まれるのか、御決意を伺います。
  73. 太田芳枝

    説明員(太田芳枝君) この十六日の中間的な取りまとめにおきましては、均等取り扱いの促進につきましては、労働者側委員からは、募集、採用から定年退職、解雇に至る雇用管理の全ステージにおける差別的取り扱いを包括的に禁止すべきであるという意見が出された一方、使用者側委員からは、募集、採用及び配置、昇進に関する均等取り扱いをさらに進めるための方策について、現時点における男女の就業実態の差などに留意しつつ議論を深めるべきであるという意見が出されたところでございます。  女子保護規定につきましては、解消を目指す方向で今後議論をしていくことになりましたけれども、労働者側委員からは、時間外、休日労働、深夜業について新たに男女共通の規制を設けるべきであるという意見が出された一方、使用者側委員からは、時間外、休日労働の水準は労働時間法制全体の中で議論すべきであるという意見も出されております。  労働省といたしましては、今後婦人少年問題審議会の場におきまして十分な議論を行っていただくことが必要であると考えておりますし、できるだけ早く議論がまとまるよう尽力をしていきたいと思っております。
  74. 武田節子

    ○武田節子君 よろしくお願いいたします。  次に、自殺事案に対する労災認定について伺います。  先月、過労死弁護団全国連絡会議が設置する過労死一一〇番の相談件数が、過去八年間で四千件を上回る事案の相談があったことが報告されております。その中で、自殺で死亡した相談件数が八十二件もあり、最近の傾向として、過労、ストレスが原因と見られる自殺の相談が増加の傾向にあると報告されております。  業務に起因する自殺が社会で注目されている中で、労災請求件数と認定件数はどのように推移していますか、また累計の労災請求件数及び認定件数はどうなっておるのでしょうか。
  75. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 過去三年間の精神上の問題等によります自殺に関します労災の請求件数でございますが、平成年度が二件、平成年度が五件、平成年度が七件となっております。  また、こうした自殺に関して労災請求がなされました件数の累計でございますが、私ども昭和五十八年度からこういった請求件数の数字をとっておりますが、平成年度末までに三十二件となっております。そのうち原処分段階で業務上として認定された件数の累計は、その間二件につきまして業務上の認定を行っておるところでございます。
  76. 武田節子

    ○武田節子君 原処分で労災認定されなかった自殺に関する事案の審査請求件数、提訴件数及び認定件数はどうなっているのでしょうか、お答えください。
  77. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 昭和五十八年度以降におきまして、原処分で労災の認定がされなかった精神上の問題によります自殺事案につきまして、先ほど三十二件と申し上げましたが、二件が認定されておりますので残りの三十件につきまして、その後の状況につきまして御説明させていただきます。  まず、三十件のうち労災保険審査官に審査請求されたものは、平成年度末までで十二件ございます。そのうち棄却決定がなされているものが十一件、現在審理中は一件でございます。また、労働保険審査会に再審査請求されたものにつきましては、審査請求で棄却されました先ほどの十一件のうち八件が労働保険審査会に再審査請求をされております。そのうち棄却決定がなされたものは二件、現在審理中のものが六件ございます。  また、この平成年度末までに裁判所に行政訴訟として提訴された件数は七件ございます。そのうち現在係争中のものは六件でございます。また、一件につきましては国側敗訴の判決が確定しておりまして、訴訟が終結いたしております。
  78. 武田節子

    ○武田節子君 労災請求件数は過労死一一〇番の相談件数をかなり下回っていると思いますけれども、この差についてどのように認識されているのでしょうか。泣き寝入りをしている人が多いのではないでしょうか、いかがでしょうか。
  79. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 御指摘の過労死一一〇番に寄せられた自殺に関します相談件数、その相談内容につきましては私ども詳細には承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、労災請求は被災者あるいはその遺族の方々がいろんな諸般の経緯等も踏まえて自主的に判断いたしましてその請求が行われるものでございます。  したがいまして、労災請求として上がってくるものは、いろんな形で相談された中からそういった自主的な判断を経て請求されてくる、そういったことによる違いではないかというふうに思っております。
  80. 武田節子

    ○武田節子君 先ほどお知らせいただいた業務に起因する自殺案件の請求件数は、平成年度二件、六年度五件、七年度七件と増加の傾向にありますが、労災保険制度における自殺に関する取り扱いはどのように扱われているのでしょうか。
  81. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 労災保険の保険給付につきましては、労働者災害補償保険法十二条の二の二という規定がございまして、労働者が故意に負傷、疾病あるいは傷害もしくは死亡、その他労災の直接の原因となった事故を生じさせた場合には政府は保険給付を行わないという規定がございます。これは他の社会保険等と同様でございます。これが原則的な立場でございますが、御指摘のございました業務に起因する自殺等の場合、私どもこんな判断をいたしております。  労働者が業務に起因する事由によりまして精神異常とかあるいは心神喪失等の状態に陥りまして、その結果として正常な意思能力を欠如した状態のもとでみずから死を招いたような場合につきましては、業務上の災害として保険給付の対象にしていくと、こういう取り扱いをしているところでございます。
  82. 武田節子

    ○武田節子君 そうしますと、要するに労働者災害補償保険法第十二条の二の二第一項にあるように、今日の労災認定基準においては労働者が故意に行った負傷、疾病、傷害、死亡は対象にはならない。いわゆる自殺はまさに故意によるものであり労災認定はしないと否定しているわけです。しかし、現実にはこれまで二件認定されておりますね。その認定の根拠は労働省から提出されました「自殺の労災保険上の考え方」によると思いますが、そのように理解してよろしいんですね。  続けてお願いします。その考え方は、労働者災害補償保険法第十二条の二の二第一項の故意の死亡について、いわゆる自殺の場合の特例によって、労働者が業務に起因してうつ病、精神異常、または心神喪失の状態に陥った場合、その結果として正常な意思能力を欠如した状態のもとでの自殺については認めるとして認定されているわけですが、そのように理解してよろしいのでしょうか。
  83. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 御指摘の自殺の場合の取り扱いでございますが、ただいま先生から御指摘ございましたように、業務に起因する事情に基づきまして精神的な異常あるいは心神喪失、そういった精神上の問題に陥りまして、その結果として正常な判断能力を欠如した状態でみずから死を招いたような場合につきましてはこれを業務上の災害として扱うと、この扱いのとおりでございます。
  84. 武田節子

    ○武田節子君 そうしますと、簡単に申し上げれば、業務に起因することが明らかで、自殺に至るまでにうつ病、精神異常、心神喪失の状態になって、その後自殺した者については保険給付があります。言いかえれば、業務に起因しても直後に、つまり精神異常または心神喪失状態に陥らずに自殺した人は保険給付はされませんよ、しかし精神的におかしくなるまで待ってから自殺すれば認定されますよという仕組みなのでしょうか。果たして自殺においてそこまで分けられるものでしょうか。お伺いいたします。
  85. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 先生指摘のございました自殺の取り扱いにつきましては、先ほど来御説明申し上げていますように、そういった業務との因果関係を判断いたしまして、因果関係が認められるケースにつきましては業務上と判断しているところでございますが、もちろん、そこに故意による事故をみずから招いた場合につきましては保険給付の対象としないという一般原則と、それから業務との因果関係を判断する両方を、慎重に私ども個々の事案に応じて判断しながら決定をさせていただいておるわけでございます。したがいまして、私ども、個々の事案ごとに専門の医師の方等と相談しながら、慎重な判断を行いながら業務上・外の判断を行っているところでございます。
  86. 武田節子

    ○武田節子君 労働者災害補償保険法第十二条の二の二第一項では、先ほど申し上げましたように、故意に死亡した者について労災適用としないと完全に否定していながら、故意でないという自殺については保険給付を認めるという一歩前進した内容ではありますが、言ってみれば法解釈によるものであります。このように労働者の権利義務にかかわる重大な事柄は、当然国民が十分にその内容を承知できるように法改正をすべきではないでしょうか、いかがですか。
  87. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) こういった取り扱いにつきまして法改正をしてはどうかという御指摘でございますが、先ほども説明申し上げましたように、とりわけ業務に因果関係がある自殺等の場合、私ども個々の事案に応じて慎重に専門の医師の方等とも相談しながらその因果関係を判断いたしているところでございます。したがいまして、そういった判断の基準あるいは判断の仕方につきまして、これを法律等で画一的に規定することは大変難しいことではなかろうかというふうに考えております。  ただ、御指摘ございましたように、そういった業務と因果関係のあるケースにつきまして労災保険の給付の対象になるケースがあることにつきまして、私ども関係の局、担当者、その辺に対しましても相談があった場合には適切にお答えし、またいろんな場面でそういった労災保険の制度の内容等につきまして周知、PRに努めて、先生指摘のような、御懸念のようなケースが出ないように努めているところでございます。
  88. 武田節子

    ○武田節子君 昭和四十年七月三十一日付で基発第九〇一号の「故意」というのは、労災保険法第二条の二の二第一項の後段の「その直接の原因となった事故を生じさせたとき」の事故に対する解釈の通達と思われますが、故意であっても業務に起因するものであれば本項の適用はないとされております。このような場合には保険給付はなされると考えてよいのでしょうか。また、この故意については、負傷にも疾病にも障害にも死亡にも認めると考えてよいのでしょうか、お伺いいたします。
  89. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 先生指摘のとおりでございます。その業務との因果関係が認められるケースにつきましては、疾病、負傷、死亡の場合であっても業務上として判断をさせているところでございます。  例えば、作業中に何らかの事故に遭われた同僚を救出するために、自分がけがをするとかそういったことをある程度認識していながら救助のために手を出す、そういった結果受けた災害につきましては、これはもちろん故意ということではございませんで、労災保険の給付対象になる事案でございます。
  90. 武田節子

    ○武田節子君 そうしますと、自殺というのは、相当思い詰めたもので、心神喪失状態でなければ起こり得べきものではありません。一般の生命保険でも、現在、自殺に対しては加入後一年という条件がありますけれども保険金は支払われております。責任感が強く自殺しても、精神異常、心神喪失まで追い詰められての自殺でなければ保険給付はされないというのであれば、余りにも冷酷な行政と思います。人権上も問題が出てまいります。  永井労働大臣、自殺の労災保険上の考え方については見直しを行うべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  91. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 先生指摘のように、自殺に関する認定というのは非常に難しゅうございまして、労災保険法だけではなくて健康保険法もその他の保険もそうでありますが、本人が故意によって自殺をした場合あるいは事故を起こした場合は保険給付の対象としないということになっているわけであります。  したがって、そういう法律を厳格に運用はするにいたしましても、自殺に追い込まれるような状況が存在をしておって、それが結果的に精神錯乱状態あるいは精神異常を来すようなことが明確になった場合は給付の対象にしてきているわけであります。  その線引きをどこでするかということは非常に難しゅうございまして、これはもう専門的な医師を初めとする方々の御判断にゆだねる以外にないのでありまして、そういうことを十分に判断を求めていくということには慎重な上にも慎重を期してまいりますが、直ちに正常な判断能力を失ってその結果死を招いたということを要件の一つにする場合、判断のそういうとり方というものについては一応今のような実態を踏襲せざるを得ないのではないか、このように私は考えるわけであります。  そういう問題は非常に複雑でありますから、業務に起因をいたしまして自殺前に精神異常等に陥っていたか否かについては、これからも十分な上にもさらに十分な調査の上に結論を出すようなそういう審査体制というものを私どもは確立していきたい、こう考えるわけであります。
  92. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。  次に、公務災害と労災との取り扱いの格差についてお伺いいたします。  国家公務員の場合は、被災者の請求がなくとも国が補償を受けるべき者に対して速やかに通知することとされているのに対して、地方公務員、民間労働者の場合は、補償を受けるべき者からの請求に基づいて補償を行うこととされている理由についてお伺いいたします。このような取り扱いに差が生じているのはおかしいのではないかというふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。
  93. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 御指摘のように、国家公務員の場合、その使用者たる国といいますか管理者側の方が直接被災者と雇用関係を有しているわけでございまして、そういったことに基づきまして災害補償につきまして権利を有する旨の通知をする仕組みとなっております。  労働者災害補償保険制度の場合、保険システムによりまして個々の事業主が行う災害補償を代行する性格のものでございまして、保険の実施機関である国は、被災者の方々と直接雇用関係にないわけでございまして、例えば労働者の方に補償の事由、そういう災害が生じたことを直接把握できる立場にはございません。したがいまして、被災者やその遺族の方々からの請求を待って認定を行う、こういった仕組みといたしているところでございます。  もちろん、お話がございましたように、そういったことで被災した労働者の方あるいはその遺族の方が保険給付につきまして十分な制度を承知していなくて損をされるというようなことが生じてはいけないわけでございますので、例えば被災労働者がみずから保険給付の請求を行うことができないような場合には、事業主がそれを助ける助力義務を事業主に課すとか、あるいは制度の周知、PRに私ども日ごろから努めておりまして、そういった被災者や遺族の方々が生じることのないように万全の意を尽くしてまいりたいと思っております。
  94. 武田節子

    ○武田節子君 今、局長がお話しなさったように、被災労働者が死亡した場合は、遺族が労災保険について認識がなければ請求せずに時効が到来することも考えられるわけでございまして、地方公務員の公務災害認定、民間労働者の労災認定の場合については、請求に基づいて補償を行うのではなくて、国家公務員の場合のように請求がなくても補償を受けられるようにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  95. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 今この問題につきまして基準局長から答弁がございましたけれども、公務員の場合は国家公務員であれ地方公務員であれ直接の雇用主は行政の側が把握できるわけでありますが、これだけのたくさんの民間企業でありますから、その民間企業で労災が発生したかどうかということについては、直接雇用主でない国がそれを把握することは非常に困難なことであります。  もちろん、労災保険は事業主も負担をして保険料を納付しているわけでありますから、納付している立場からいたしますと、その事業主が、みずからの雇用している労働者が労災事故を起こした場合には、当然その保険に照らしてそのことに適切に対応する、報告をする、措置をとる、これはもう当然な義務であると思いますし、またそのことをおろそかにする事業主は私はいないと思っているわけであります。  しかし、問題が問題でありますだけに、これからも労働省といたしましては、労災保険制度というものを働く側にもきちっと徹底させて、もちろん家族の皆さんもそのことはわかっているという、そういう状況をつくり上げることについてこれからも最大限の努力をしてまいりたいと、このように考えるわけであります。
  96. 武田節子

    ○武田節子君 事業主にも労働者にも周知徹底、御指導を徹底していただきたいと思います。  次に、労働保険財政についてお尋ねいたします。たくさん伺いたいことがございますけれども時間がございませんので、決算委員会ですので労働保険財政について伺ってまいります。  労働保険事業特別会計の平成年度決算書、予算書を詳細に見せていただきました。これを拝見いたしますと、これは保険事業というよりは目的税的な財政の形をしているのではないかというふうなのが私の率直な感想でございます。国の財政が逼迫していることから、大蔵省はその負担を軽くするため労働保険事業の財源を当てにしているのではないかと疑いたくなるような実態でございます。  まず、この労働保険事業特別会計、いわゆる労災勘定、雇用勘定、徴収勘定のそれぞれの事業目的を簡単に御説明願います。  また、平成年度決算の特別会計のそれぞれの勘定ごとに何人の労働省職員の人件費が支払われているのか、また三つの勘定のトータルの労働省の職員数は全労働省職員の何割に当たるのかを含めて、簡単に御報告いだだきたいと思います。
  97. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 労働保険特別会計には労災、雇用、徴収の三勘定がございますが、まず労災勘定の目的ですけれども、これは労働者の業務上の災害あるいは通勤災害に関しまして保険給付等を行うために、保険給付、労働福祉事業に関する事業等を行うことを目的としております。雇用勘定は、労働者が失業した場合の労働者の生活の安定等を図るため、失業の給付、雇用安定事業等に関する事業などを行うことを目的としております。徴収勘定におきましては、労働保険の事業の効率的な運営に要する費用に充てるための保険料を徴収し、労災勘定及び雇用勘定に繰り入れることを目的としております。  次に、各勘定における職員数でございますけれども平成年度数字ですが、労災勘定が三千四百八十二人、雇用勘定が五千七人、徴収勘定が二千一人で、合わせて一万四百九十人でございます。この職員は労働省全体の職員数二万四千八百七十二人の四二・二%を占めております。  以上でございます。
  98. 武田節子

    ○武田節子君 平成年度の支出済み歳出の中で、庁舎及び公務員宿舎の新営等に必要な経費について各勘定ごとの金額を御報告お願いいたします。  また、それぞれの勘定中でどのようなものに支出しているのか概要を御報告願います。特に代表的な大きな事業について、事業名と金額を五件くらい御報告いただきたいと思います。  簡単にお願いいたします。
  99. 征矢紀臣

    説明員(征矢紀臣君) 平成年度におきます雇用勘定におきます庁舎、宿舎の新営等に支出した経費でございますが、九十六億八千四百万円となっております。  また、庁舎及び宿舎の新営のうち主なものといたしましては、和歌山県海南公共職業安定所、埼玉県大宮公共職業安定所、東京都王子公爽職業安定所、大阪府池田公共職業安定所、京都府京都七条公共職業安定所等がございます。
  100. 武田節子

    ○武田節子君 労災勘定については、この保険制度の目的が、企業において労働災害が発生した場合、その費用負担を保険制度によって事業主にかわって補償するわけですので、事業主が負担するのは当たり前で、国庫負担すること自体おかしいという考えもございます。しかし一方で、一万人に及ぶ労働省職員の行政活動費のほとんど大半の人件費が支払われている。これで果たして労働省は本当に労働者側に立った労働行政ができるのかと疑いを持たれるのも当然でございます。国または行政機関が企業に面倒を見てもらっているというようなイメージは、公平性から見ても労働者は不信を抱くのではないでしょうか。  労働省は、平成七年の労災保険法施行規則の改正により、労働福祉事業への支出枠を百十五分の十五から百十八分の十八に増大を行いましたが、その理由は何なのでしょうか、お伺いいたします。
  101. 伊藤庄平

    説明員(伊藤庄平君) 労災保険におきましては、業務上の災害につきまして一定の保険給付を行うほか、労働災害そのものの予防や防止、あるいは労働者の方々の労働条件の改善や福祉の増進を目的として労働福祉事業を行っているところでございます。ただ、この労働福祉事業に充てる財源率につきましては、先ほど先生からも御指摘がございましたように、平成七年の改正に見られますように一定の上限を設けておりまして、平成七年にはこの上限を百十五分の十五から百十八分の十八に変更をいたしたところでございます。  その理由でございますが、労災保険料の料率につきまして、この年の四月に省令改正を行っておりまして、五十二業種中三十三業種について保険料率の引き下げを行っております。したがいまして、全体の保険料収入が減ってまいるわけでございまして、そのままでは労働者の方々の福祉の増進、災害の予防等を目的といたします労働福祉事業の安定的な運営、財源の確保に問題を生ずる可能性もあるということから百十八分の十八に引き上げまして、私ども労働福祉事業の安定的な運営を図っているところでございます。
  102. 武田節子

    ○武田節子君 労働福祉事業の中身を見ますと、未払い賃金の立てかえ払い事業、勤労者財産形成促進事業への助成、中小企業退職金共済制度への助成など、労働条件確保事業は労働災害の保険事業とどう関係があるのか、全く意味不明な事業もございます。労働福祉事業の中で一般会計で行うべき事業もありますが、なぜか労働保険事業の財源が豊かですから、私は国までが依存してきているのではないかと思います。もっと毅然とした姿勢を貫くべきではないでしょうか。  これらの部分は本来一般会計で負担すべきもので、しかも労働福祉事業の支出枠を労働省が勝手に省令でふやすことは間違いだと思います。それでしたら、保険料率を下げたりあるいは給付の水準を上げていくのが当然ではないでしょうか。  労働大臣、労災保険事業のあり方やまた労働福祉事業の支出枠の上限について無原則に変更すべきではないと思いますが、労働大臣の所感をお伺いいたします。
  103. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 労災保険の財源の実態あるいは給付の実態などから、今も基準局長が答えましたように、労災保険料率を五十二業種中三十三業種について引き下げを行ってきたところであります。  この労災保険におきます労働福祉事業につきましては、労働者及びその遺族の福祉の増進を図るということを目的としておりまして、未払い賃金の立てかえ払い事業等につきましては、労働者の労働条件の改善や福祉の増進につながっていくことでありますし、労災保険法における労働福祉事業の目的にも合致するわけでありますから、関係審議会の場におきまして十分に時間をかけて労使のコンセンサスの形成を図りながら、一般会計ではなく労働福祉事業として行うことが適切であるということから、今一般会計からの対象にはしていないわけであります。  また、労災保険制度につきましては、その取り巻く社会経済情勢の変化などに対応していかなくてはなりませんので、一定の期間ごとに見直しを行ってまいりまして、平成七年には介護給付の創設などの制度改正も行ってきたところであります。こうしたことから、今後につきましては改正されました制度を中心にしてその普及や促進に努めていくことが極めて重要であろう、このように考えるわけであります。  労働福祉事業等に要する費用に充てるべき額の限度につきましては、労災保険料率等の動向を踏まえて決定されるものでありますが、今後とも過度の負担になっていかないように、そして適切な運営ができますように、そのあり方については十分な配慮を行ってまいりたい、このように考えるわけであります。
  104. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございました。どうぞ今後とも労働者の福祉の増進に全力を挙げて労働行政をしっかり行っていただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  105. 山下栄一

    ○山下栄一君 質問に入ります前に、昨日私、委員長に御要望申し上げたことにつきまして委員長のお答えをお願いしたいと思うのでございますけれども、もうよろしいですか。
  106. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 山下委員お尋ねの問題については、六月二十日に全般的質疑第二回の日程を決める際、運輸省及び建設省からは七月二十三日の大臣日程は既に入っているとのことでありましたので、外務大臣等と同様、両大臣を除いて日程を決めたものであります。その後、両大臣ともに神奈川県内の交通事情、道路事情等を視察することが決まっていたことが後日判明いたしましたが、このような事情であれば委員指摘のとおり国会を優先すべきものと考えますので、今後政府に対ししっかり申し入れをしたいと考えております。  以上です。
  107. 山下栄一

    ○山下栄一君 委員長から、当然の御指摘だとは思いますけれども、明確な御返事をいただきまして安心いたしました。建設大臣、そしてまた運輸大臣におかれましては、国会軽視のないように今後ともきちっと対応をお願いしたい、このように思うわけでございます。  それじゃ、質問に入らせていただきたいと思います。  まず初めに、平成年度の会計検査院によります決算検査報告の中から質問させていただきたいと思うわけでございます。  いわゆる公共事業でございますけれども、自治体が行います公共事業、国の補助事業の対象になっている事業の中で食糧費の問題に非常に不適切な会計処理があったという指摘だと思うわけでございますけれども、この内容につきまして質問させていただきたいと思います。  昨年、市民オンブズマンの指摘によりまして、宮城県を初めとする北海道、また秋田、その他島根もございましたか、いわゆる食糧費のお役人の使い方が非常に不明朗であり、また不当な使われ方がしておるという指摘のもとに非常に社会的な関心が高まりまして、マスコミにも報道され、そして国会、なかんずくこの決算委員会でも取り上げられたわけでございます。  まず、検査院にお伺いいたしますけれども、社会的な背景もございまして、自治体の国庫補助事業、特に食糧費問題につきまして調査されたわけでございますけれども、これは私は緊急の調査で完璧な調査じゃないというふうに認識しております。選ばれた自治体も全自治体じゃなくて五つだけである。そして、省庁も農水、建設、運輸、この三つだけであったということでございますので、非常に不十分な調査であった。その三つの省庁、そして五つの府県の実態を調査すると非常に問題のある内容であったということがこの報告にあるわけでございますけれども、これは緊急で不十分な調査であったと思いますので、今後これをどのような形でフォローアップされていくのかということをまずお聞きしたいと思います。
  108. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) お答えいたします。  食糧費の問題につきましては、先生指摘のように、昨年、年の途中において補助事業の事務費の中の食糧費の問題が提起されまして、社会的関心も非常に高かったことから、公共事業関係の予算の大宗の八〇%を執行しています農林水産、運輸、建設の三省所管の五府県に係る食糧費について急速調査を実施いたしました。その結果、先生指摘のように、検査報告に掲記しているところであります。  会計検査院では、前回のというか昨年の検査が三省だけであったということもありますので、ことしになりまして三省以外の他の省庁における補助事業に係る食糧費につきましても、その後の検査によってフォローアップの調査を行っております。その指摘を行っていまして、今回の指摘が農林水産、運輸、建設省だけじゃなくてほかの省庁にも十分に浸透するよう努めております。  他の都道府県の公共事業関係、三省の公共事業関係についても他の府県でも同様な効果が出るように、浸透するように検査を進めてまいりたい、そう考えております。
  109. 山下栄一

    ○山下栄一君 公共事業だけでしょうか、非公共事業も入るんでしょうか。
  110. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) フォローアップ調査は、公共事業だけではなくて三省の非公共事業も含めて考えております。
  111. 山下栄一

    ○山下栄一君 冒頭申しましたように、これは非常に検査院としても不満足な調査であったというふうな文書もあるわけでございますので、検査院の方自身がおっしゃっておるわけでございますから、今フォローアップのお話しいただきましたように、きちっとしていただきまして御報告をまたお願いしたいと思うわけでございます。  それで、これ改善の処置の中に入っておりまして不当事項になっていないわけでございますけれども、検査院の調査によりますと、ここに書いてあるんですけれども、こういう事例があると。要するに、国庫補助を受ける自治体の方で担当の課が、該当の公共事業の食糧費じゃなくて非公共事業の方の食糧費にこのお金を流用していると。いわゆる対象となる補助事業の食糧費に計上しないで、その使った懇談会のお金を、飲み食いしたお金を、非公共事業の方の食糧費の分を公共事業の方の食糧費に充てていたとか、また担当でない別の課のところが使ったやつを該当の課の食糧費に流用していたとか、また自治体の担当の課のお役人が東京に出張して関係省庁と懇談会をした、そのときのお金にこれを使っているとか、こういうことが書いてあるわけでございます。  これはもともと自治体が組んだ公共事業に国が援助するというそういう内容の補助事業なわけですけれども、その補助金を使って東京に行って中央省庁を接待しているという、こんなことは全然目的外使用であるというふうに思うわけでございます。大変こんなことはルール違反も甚だしい、このように私は思うわけでございまして、これがなぜ不当事項に当たらなくて、そういう使った分は全然目的外使用ですから国庫に返還すべきであると思うわけでございます。  当然これは各省庁とも、建設省運輸省もそうだと思いますけれども、補助金の交付規則を省庁で、また各局でつくっているわけでございます。そのルールにのっとって何十年と食糧費の使い方については、会議用の茶菓子に使うんだ、そのための食糧費なんだと、夜の会食のための費用じゃないということは書いてあるわけですね。  だから検査院は、各省庁がつくっている自治体に補助金を交付する規則があるわけですが、その規則が不備であった、こういうふうに考えておられるんでしょうか。
  112. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) お答えいたします。  昨年の食糧費の問題に関する検査は、時間的、人員的な制約から、まず食糧費の使用及び経理処理の実態を解明することに主眼を置いて検査を実施いたしました。したがいまして、検査に当たりましては経理関係書類の調査を中心に行い、補助事業者における事務処理の実態を解明することに努めました。  その結果、食糧費については従来から恒常的に同様の処理が行われており、また検査を実施しました五府県以外の都道府県においても同様の事態が起こっているということが推定されましたので、不当事項として指摘するよりは不適切な事態の発生原因を早急に改め、将来に向けて改善を求めるのが適当であると判断いたしました。農林水産、運輸、建設の三省も同様な考えに立っておられまして、全国の都道府県に対し事務次官通達等を発し、全国的な改善の処置をとられているところであります。本院としては、他の省庁においても三省と同様な適切な処置がとられるよう、その対応を見守っているところであります。  通達が明確でなかったという点は指摘しております。
  113. 山下栄一

    ○山下栄一君 通達じゃなくて、だから交付規則です。既に文書で出されている法令です、省令というか……
  114. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 山下君、それ、立って言ってください。
  115. 山下栄一

    ○山下栄一君 済みません。  省令にちゃんと食糧費というのは会議用の茶菓子なんだよというふうに書いてあるわけですよ。飲み食いするためにと書いてないわけです。ルールが明確なわけやから、全然違う目的で使っているわけですから、これは明らかな不当事項であると。これは別に建設省運輸省は問題ないと私は思うわけです。  食糧費の使い方の分類が夜の懇談会用と昼の茶菓子用と二つあってというようなこと、そんなことはもともとないわけでございまして、会議用の茶菓子のために、いろんな用地買収の交渉とかあるだろうから会議も必要やと、そのためにこれは補助金を、税金を使ってやるわけですから、そんな飲み食いのために使うことを言っていなかったからその省庁に問題があるなんというようなことは、これはおかしいと思うんですよ。ちゃんとそういうルールが書いてあるわけですから。文書があるわけですから。文書そのものに不備があるんやったらそれはあれですけれども、僕は省庁に何の問題もない、それは自治体の使い方が明らかに不当であると思うんですよ。だから、会計検査院の指摘はおかしいと思います。役所に通達でフォローせいなんというようなことは言う必要ないと思うんです。
  116. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) 五府県の検査を実施しましたところ、補助事業の担当者は、そういう食糧費の使い方も補助事業関係、関連していると、そのように考えられまして、そういう認識のもとに傾向的に従来からやられていました。そういう意味で、茶菓子等という定義が必ずしも明確でないということで、はっきりとその範囲を明示された方がいいということで指摘したわけでございます。
  117. 山下栄一

    ○山下栄一君 会議用の茶菓子等、「等」の中に夜の飲み食いが入っているなんというようなことを、それは入りませんよなんてわざわざ新たに通達出せなんというようなこと、これは会計検査院の指摘に基づいて通達を出しているわけですけれども、僕はそんなことなんて全然やる必要ないと。自治体の使い方自身が不当であるということはごく自然のことであると思います。これ、今度は具体的に省庁にお伺いしたいと思いますけれども。  それから、もう一つ会計検査院にお伺いいたしますけれども、この公共事業の補助金というのは要するに工事本体と事務費がある。事務費の中に食糧費があるわけですけれども、事務費というのは食糧費だけやなくて人件費、旅費とか備品購入とかいろいろある、その中に食糧費があると。だけれども、調べてみると、食糧費の使い方に問題があるだけやなくて、事務費の中には例えば備品購入とか場合によっては工事雑費なんてあるわけです。それが飲み食いに使われている可能性もあるというふうに思うわけです。  というのは、公共事業が例えば建設省の場合は五兆幾らかの補助金がある、そのうち事務費というのは千五百十二億円あると。だから、全省庁合わすと何千億という事務費があるわけです。その中に食糧費があるわけですけれども、その食糧費じゃなくて、事務費のほかの費目があるわけですけれども、今申し上げた工事雑費とか共済とか備品購入、それを飲み食いに使っていた可能性があるということはあったんでしょうか、事務費が流用されていたと。
  118. 牛嶋博久

    説明員牛嶋博久君) 会計検査院の検査は食糧費がどのように使われたという観点から検査しております。その他の事務費については全部を見たわけではありませんけれども、ほとんど全部ではありません、食糧費を中心に検査を実施したということで、他の事務費については十分検査しておりません。
  119. 山下栄一

    ○山下栄一君 中央省庁が、実際公共事業がどのように行われる計画、そしてどのように行われたかという完了届ですか、そのときには食糧費という項目で報告しなくてよろしいよと。例えば運輸省の場合でしたら事務費としてとか、食糧費の上の項目の需用費として計上してください、結構ですよ、食糧費まで一々報告しなくてよろしいよというのがあるわけです。というふうに考えると、そういう事務費の流用というのが非常にあったのではないかと考えられるわけですね。これは今後厳しい審査、チェック体制が入ると思うわけでございますけれども。  そこで、建設省運輸省にお伺いいたしますけれども、まず、これは検査院からの指摘がここに書いてありまして、それは五つの府県だけのことが書いてあるわけですね。ほかの都道府県もそういう可能性があると。建設省運輸省が一生懸命予算をやりくりしながら補助事業を応援したのにこんなひどい使い方をしている、とんでもないことであるということで、私は指摘されたことは大変な不名誉なことだと思います。  五府県だけじゃなくてほかの都道府県も当然各省庁、調べられたと思うわけでございますけれども、その中で特に、私ちょっと先ほど例を出しましたけれども建設省運輸省におかれましても、これはもうひどい使い方をしているなと感じられた具体例がございましたら一、二挙げていただきたい。建設大臣、運輸大臣、それぞれお願いします。
  120. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 全都道府県の実態調査報告を受けている限りのことを申し上げたいと思いますが、個別補助事業における事務費の支出状況につきましては、従来より交付申請あるいは事務費の使途協議、完了検査というものを通じましてその把握に努めているところでございまして、また、昨年十一月二十日に都道府県に対しまして通達を発し、実績報告書の審査等あらゆる機会をとらえて従来以上に審査資料の充実を図るとともに、審査・確認を徹底してきているところでございます。今後とも食糧費を含む事務費の支出状況を的確に把握できるように努めてまいりたいと考えておる次第でございます。  特に食糧費の使途について、国庫補助事業にかかわる食糧費の使用につきましては、会計検査院による検査の結果、まず第一といたしまして、補助事業との関連性が明確でない、第二点といたしまして、経理関係書類が不備となっているなどの事態が見受けられるなどといったことが問題点として指摘されておるわけでございます。  建設省としましては、これらの問題点を踏まえて、先ほどの通達におきまして国と地方公共団体との間での補助金による会食を禁止する等、食糧費の使い方について明確化を図ったところでございまして、国民の疑惑を招くことのないよう今後とも食糧費の厳正な執行を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。  以上。
  121. 山下栄一

    ○山下栄一君 ということは、具体例をちょっと言っていただきたかったんですけれども、運輸大臣、今みたいな答弁じゃなくて具体的に、いやいや不当な使われ方をした、問題だ、これはというふうな例をひとつ挙げていただけますか。具体例でよろしいです。
  122. 土井勝二

    説明員(土井勝二君) お答えいたします。  この食糧費につきまして、特に会計検査院の方から、いわゆる懇談会の経費につきまして、国庫補助対象である範囲を具体的に定めていなかった、あるいはそのために懇談会等にかなり使われたという御指摘を受けておりまして、その金額等も挙がっておるわけでございますが、特にこれこれこういうものがあったということについては現在手元に持っておりません。
  123. 山下栄一

    ○山下栄一君 ということは、指摘は受けたけれども余りちゃんと調べていないということですね。これは五つの府県を調べただけですから、緊急事態で急にチームをつくって検査院も去年一カ月でやっているわけですからね、五つの府県だけ。ほかのところもそういうことが考えられるわけです。大変なことだと。一生懸命各省庁の方で自治体を応援してあげているのに、そのお金でおれたちを接待したのかという、そういう使い方をしているわけですから、これはもう頭にきて当然だと思うんです。危機感が全然ないように建設大臣の御答弁をお伺いしても運輸省官房長にお聞きしても思いました。  建設大臣は、大臣になられてこの食糧費問題につきまして、不適切な使われ方をした自治体については、これは国のお金なんだから返還を求めたいと、こういうことをおっしゃったという記事があるわけでございますけれども、今もお変わりございませんか。お変わりございませんかというか、そういう返還を求められるわけですか。
  124. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) それは何のことでございますか。私はそんな、言った覚えもございませんが。
  125. 山下栄一

    ○山下栄一君 建設大臣、これは新聞報道で一月十三日の新聞に、これは前の森建設大臣のとき、おととしか去年の十一月、とにかく森建設大臣のときはもうこれははっきりしないから返還要求しないと。だけれども中尾建設大臣は、これは大変大きな問題だ、自治体に返還要求したいと、こういうふうな記事が載っていましたが、そういう御記憶はないということでございますね。  ということは、返還要求はしないと、こういうことでございますか。
  126. 小野邦久

    説明員小野邦久君) 多少事務的な問題もございますので私の方からお答えをさせていただきますけれども、秋田県は食糧費の国庫への返還を決めているわけでございます。検査院の方から五つの府県につきまして調査もあったわけでございます。そういう点を踏まえまして、私どもでは昨年の十一月に全都道府県あてに通達を発出いたしまして、きちっとした使途の明確化、検査の徹底、あるいは県によりましては例えば単独事業の、食糧費と申しますか、あるいは……
  127. 山下栄一

    ○山下栄一君 そこまではよろしい。返還要求をやるかやらないかだけ。時間がないので。
  128. 小野邦久

    説明員小野邦久君) はい、ちょっと前提もございますので。  そういうものを一緒にしている例もございますので、そういう不適正な使用というものが認められるというようなことになれば、それは返還を命じていくということになるわけでございますが、現在は、果たしてそういう不適正使用が私どもの所管事業の中であったかどうかということを調べていただくように指示をいたしておりまして、その結果によりたい、こういうふうに思っております。
  129. 山下栄一

    ○山下栄一君 今の答弁の担当の方に聞きます。  書いてあるんですよ、ここに。要するに、今お答えになったのは建設省でしたね、建設省と懇談を行っていたり、国庫補助事業の執行課が上京して、自治体の執行課ですわ、関係省庁いわゆる建設省と懇談会を行っていた例が二千八百七十七万円あると、こう書いてあるんですよ。具体的に書いてあるわけです。これ、おかしいことはないんですか。
  130. 小野邦久

    説明員小野邦久君) これは、具体的に当該県が補助事業の執行をする場合に、どういうふうに事務費を使ってこられたのか。それは具体的に支出の明細の調書等もあることが多いと思うんでございますけれども、必ずしもその辺の資料がはっきりしていないということもあるわけでございます。具体的に、そういう都道府県の調査結果によって対応していきたいと、こういうふうに思っておりまして、例えば今の御指摘のような幾つかの懇談会があったという事例を指摘しておられるわけでございますけれども、私どもでそういうような具体的なケースというものも十分把握をできておりませんで、専ら事業……
  131. 山下栄一

    ○山下栄一君 わかりました。いいですか。時間がなくなつちゃう。  これ建設省に対する指摘ですよ。今申し上げた、東京へ行って補助金を使って東京のお役所と懇談していた、飲み食いに使っていたと書いてあるわけです。これは根拠があってちゃんと具体的に一つ一つの帳簿を調べて出てきたやつやからね。今何をおっしゃっているんですか。信じられぬ御答弁でございます。  それで、財政削減で今シーリングの問題を必死になってやっておられるんでしょう。こんなひどい使い方をされていて、自治体から国庫の方に返還すべきですよ、これは。どう思いますか、建設大臣。どうでしょうか、返還は必要ありませんか、これ。これは大臣が答える問題ですよ。もう時間ないんです。
  132. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 返還すべきというのはどういうことなんですか。
  133. 山下栄一

    ○山下栄一君 使われ方がひどい。全然目的外の使われ方がされているわけです。返還を求めるべきであると思いませんか。
  134. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 私は前の建設大臣の森君からもそんなことは聞いたこともありませんし、また継承もされておりません。私はたった今聞いたわけでございますから、返還すべきかどうかなんてことをこの場でもって私が云々言うべきことではなかろうと思います。
  135. 山下栄一

    ○山下栄一君 じゃ、こういう今申し上げたような使われ方をしていても仕方がないと、こういう御認識でしょうか。建設省が先ほど一生懸命説明していますよ。自治体の事業を応援するために補助金を出しているわけです。その補助金で中央省庁、建設省の役人を、東京に担当の人が来たときに接待していたというんです。そんな補助金の使い方、ひどいでしょう。
  136. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 私は、事務費の中において、当然のことながら、時によくあります用地買収やその他の問題などでいろいろと話し合いをする、そういうことにおいて必要経費のものは、何もこれを使っていくということに決して忠告すべきものでもなければ、多く必要以上なものを使えということはあえて言うことはございませんが、全然使わないで全部すべてをやれというような下命もしたこともございませんし、またその必要もなかろうと思っております。  しかし、当然のこと、必要であるということにおいては認めますけれども、これはオーバーなことであるということは絶対に認めません。
  137. 山下栄一

    ○山下栄一君 運輸大臣、先ほど言っていることだけれども、地方の役人が上京して運輸省の役人をいろいろ接待した。そのお金を補助金からの食糧費から使っていたというんですよ。おかしいと思いませんか。おかしいと言っているんです。
  138. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 補助金は、当該補助金の本来の目的に従って厳正に執行されるべきものと私は考えております。したがって、補助金の不正な支出の事実が明らかになった場合には、補助金適正化法の規定に基づきその返還が求められるのは当然であると、このように考えます。
  139. 山下栄一

    ○山下栄一君 返還を求めるべきだと、今抽象的におっしゃいましたけれども。だから、建設大臣、改善措置も全然信用できなくなりましたよ、私。  これは要するに、懇談会というのは会食用の懇談会、飲み食いということですけれども、これはもう原則として廃止すると、こう言っているんです。そして、これからは食糧費の使い方について建設省みずから審査・確認の徹底を図る体制をつくる、こういう改善措置通達で出しているわけです、全自治体に。その関係の帳簿もちゃんと残しておきなさいと指摘しているんですけれども、これは本当にやる気があるのかなという疑問を今感じた次第でございます。  ちょっと時間がなくなって、別の問題に移らさせていただきます。  もう一つの、運輸省の航空優待券による公務出張、これが何億とあるわけでございますけれども、要するにただで各民間の航空会社に公務出張の場合は、航空行政にかかわる場合は無料の航空券を支給してもらっていたという、それが国際慣行であるということなんでございます。これはガバメントオーダー、政府要求ということで各民間会社に、公務出張の場合に運輸省が予算計上しないで民間会社が負担するという制度だそうでございます。私はこれはもうなくすべきだというふうに思うわけでございます。  もう時間がございませんので私から申し上げますけれども、このガバメントオーダー、GOの対象となっている日本の民間会社、日本航空、全日空、日本エアシステム、エアーニッポン、日本エアコミューター、日本トランスオーシャン、琉球エアーコミューター、この七つの民間会社が対象になっております。JALの場合は国内だけで千百二十六件。国際的な公務も使っているんですけれどもそれは省きます。ANAが千八百五十八件。JASが七百八十一件。エアーニッポンが八百五十八件。日本エアコミューター、これは鹿児島本社の地方航空会社ですが五百二十六件。日本トランスオーシャン、沖縄関係の航空会社ですけれども九百二十二件。琉球エアーコミューター、これも沖縄関係の地方会社ですけれども三百十六件。合計約六千四百件余りの国内の出張扱い。これは平成年度の話です。国際的な会議、安全チェック、そのためには三百五十枚、これは全額無料だそうでございます。半額の場合も国内の場合はあるということでございます。  JAL、ANA、JASは別といたしまして、これはただ券とか半額券を要求する民間会社に非常に偏りが私はあると思います。鹿児島と沖縄関係が、沖縄の琉球エアーコミューターというのは社員が七十人の会社なんですが、それに三百十六件も半額の航空優待券を要求している、政府要求で。日本航空を初めとして、ほとんど民間航空会社は今赤字なわけですよ、ANAは違うかもわかりませんけれども。そんな厳しい経営実態の中でこういうただ券とかそういうのを要求する慣行が四十年間ぐらい続いているという、そういうことは全然おかしいと私は思うわけでございますけれども、この御見解をお伺いいたしまして、終わりたいと思います。
  140. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 今、先生指摘のガバメントオーダーでございますが、これは航空運賃にかえて無料の航空券を使うということでございまして、実は私ども個人個人では全くプラス・マイナス・ゼロで、本来ならば全額払って胸を張って乗りたいとは思うわけでございますが、実は航空といいますのは世界的にも非常に複雑なネットワークがございます。特に安全問題につきまして、事故が起きないようにと常時相談しながら、そういうことで国際的にも国内的にもフェース・ツー・フェースでの会議をしなけりゃいけない場合が大変たくさんございます。そこで、そういうことも考えましてこういう制度が国際的にもできたと承知しております。  ただ、昨年の十一月にちょっとばかり行き過ぎではないかという御指摘も受けました。そこで、このガバメントオーダーが目的どおり使われているかどうか、万が一つにでもせよ不正に使われていないかどうかにつきまして私どもは慎重に調査をいたしまして、そういう不正使用の実態は全く出てまいっておりません。  ただ、そうはいいましても、この制度につきまして、今まで空港事務所で扱っていたものを中央局できちんと扱う、あるいは本省で一括して管理する、さらには総体としてなるべく減らしていこう、こういう改善の方向を決めまして、現在もその考え方のもとに厳正に運用させていただいている、こういう状況でございます。
  141. 山下栄一

    ○山下栄一君 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
  142. 上山和人

    ○上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。  私は、きょうは、最近とみに国民の皆さんの間に不安が広がり懸念が強くなっておりますいわゆる旧国鉄債務と、それに関係する国民負担の問題について御質問を申し上げたいと思います。  なお、時間が残りましたら、労働省の方にも労災保険、雇用保険等について若干の質疑をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  いわゆる旧国鉄債務等は、申し上げるまでもなく日本国有鉄道清算事業団、鉄道整備基金、さらにはJR各社等で承継されているのでありますけれども、全体的に一向にその債務等が減る方向に進まないことから、それにかかわる国民負担が今後どんどんふえるのではないかということが憂慮されているわけでございます。  そういう状態の中で、特にさきの通常国会の住専処理の問題あるいは来年四月一日からの消費税率を引き上げる動向等とも関連いたしまして、今、国民の皆さんの間に国の財政状況についての関心がとても深くなっております、当然のことだと思いますけれども。したがって、国としては、財政民主主義の観点からも、国の責任でそういう国の財政状況についてはわかりやすく説明をする必要があるのではないかと思うのでございます。とりわけ、最近、報道機関がいろんな機会をとらえて国の財政構造がどんなに危機的な状況にあるかということ、国の債務等について報道を繰り返しておりますから、そういう状況の中ではなおのこと、国が責任を持ってわかりやすく国民の皆さんにその実態を正確にお伝えする義務があると思うのでございます。  私が最近見た新聞の記事をちょっと紹介いたしますと、一番近いので、これは私が見た範囲でございますからもっと近い記事があるかもしれませんけれども、この七月十一日の毎日新聞の「望雲観風」という、コラム欄というにはスペースが広いんですけれども、毎週木曜日に定例的に掲載される政治評論的な解説記事みたいな欄でございますけれども、「起きるか消費税の反乱」という見出しでこの記事が書かれております。その中で、国の財政構造なり債務の問題について十数行にわたって記述がございます。  ちょっと御紹介いたしますけれども、  国債発行残高は来年三月には二百四十一兆円になる。国鉄清算事業団の借金などを加えると国の長期債務の累計は三百二十一兆円に達する。これに地方債の百三十六兆円を加え、重複分を引いた国と地方の借金の総額は四百四十三兆円となり、国内総生産(GDP)の実に九〇%になる。   財政赤字が大問題になったアメリカの累積債務がGDP比六三%、ドイツやフランス、イギリスが六〇%を割っているのと比較しても日本の財政が破産状態に陥っているのは明らかだ。 と、そういう記事が七月十一日の毎日新聞に出ているのでございます。  これはあくまで報道機関がそれなりの資料に基づいて書いた記事でございますけれども、こういう記事が出るだけに、私は大蔵省として率先して国の責任で今のこういう問題の実態を国民の皆さんにわかりやすく説明をする必要があると思いますので、まず大蔵省からわかりやすく正確に現状についてお答えいただきたいと思います。
  143. 松元崇

    説明員(松元崇君) 現在の国、地方を合わせた債務状況についての御質問でございますが、議員御指摘のとおり、現在の国及び地方の長期債務残高につきましては、国としましては普通国債、これがいわゆる公債残高と言われるもので二百四十兆でございますが、これに加えまして特別会計の借入金等がございます。こういったものを合計いたしますと、三百二十兆円といった形になっております。これに地方債等の地方の債務残高を合計いたしまして、国と地方の債務重複分を除きますと、平成年度末には約四百四十二兆円に達するという見込みでございます。
  144. 上山和人

    ○上山和人君 毎日新聞の記事とほんの少し数字が違いますけれども、おおよそ違いませんね。大体記事はそのとおりと理解をしていいように思うんです。それで国民の皆さんわかると思いますか。これは決算委員会の場でありますから、少なくとも決算に対する質問なんですから、そういう決算との関連でももう少しわかりやすい説明はできませんか。今の大蔵省の答弁よりも毎日新聞の記事の方がまだ親切ですよ、わかりやすい。もっとわかりやすい説明はできませんか。
  145. 松元崇

    説明員(松元崇君) 数字といたしましては今御説明したような形でございますが、議員御指摘のように、果たしてどれだけ国民一般にこの数字が知られておるかといった点はあろうかと思います。  現在、国の財政が大変厳しい中で、大蔵大臣の諮問機関でございます財政制度審議会におきましていろいろ御議論、御検討をいただいておりますが、この財政制度審議会におきまして、先ごろ「財政構造改革を考える」ということで、国の財政の現状につきまして各論にもわたりまして御説明いたしました報告を発表いたしております。その中で、ただいま申し上げました数字についても御説明させていただいているところでございます。
  146. 上山和人

    ○上山和人君 今、国民の関心がどこに集まっているかということを私は最初申し上げているんです。少なくともそういう問題については、例えば国鉄債務は現在幾らですということぐらいは説明をされる方がいいと思うんです。これは後でお尋ねしますから、もうこの場ではいいです。  来年の三月時点で国債残高が二百四十一兆円になる、それはおおよそ国民一人当たりの負担としては百九十二万円の借金をみんなで抱え込むことになるとはよく言われていますね。この四百四十二兆円を国民一人当たりの負担に直すと幾らになりますか。
  147. 松元崇

    説明員(松元崇君) 議員御指摘のとおりかと思いますが、ちょっと百九十二という数字、きっちりなるかどうか検算はいたしておりませんが、おおよそそんな数字になろうかと承知いたしております。
  148. 上山和人

    ○上山和人君 ちゃんと答えていませんよ。
  149. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 大蔵省、計算が間に合わないのなら後刻資料提出と、こういったことでしっかり答えなさい。
  150. 上山和人

    ○上山和人君 そういう難しい問題じゃなくて、今お答えになった国と地方の借金を合わせて毎日新聞は四百四十三兆と書いている。しかし、大蔵省の今の御答弁は四百四十二兆、おおよそそうなるとお答えになったんだから、それは国民一人当たりの負担に見積もれば幾らになりますかとお聞きしたんです。さっきの百九十二万円、私が言ったとおりですから、それを繰り返し答える必要はないんです。
  151. 松元崇

    説明員(松元崇君) 国民一人当たりに直しました数字につきましては、後ほど提出させていただきたいと存じます。
  152. 上山和人

    ○上山和人君 頭の中ですぐ計算できることじゃないですか。人口一億二千六百万としても三百五十万を超える額になるということは、もうこれは小学校のレベルでわかるんじゃないですか。大蔵省の役人の皆さんがお答えになれない数字ではないでしょう、難しい計算でもないわけですから。  私は、もう一事が万事とは言いません。一生懸命に大蔵省の皆さんも住専問題からいろんな問題を抱え込んで御苦労なさっていることもわかるし、霞が関を見ると朝から晩まで電灯つきっ放しですからね。役人の皆さんが大変な御努力をなさっていることはよく承知をしておりますよ。それでも今国民の関心の高い問題について、そういう状態で地方に行かれたときに説明できますか、わかりやすく。いつでも答えられなければならないようなことについてしか私は御質問申し上げておりませんよ。改めて計算をし直さなければ答えられないという性格の難しい問題を私は質問しているとは思っておりません。ぜひもう少し丁寧に、役人の皆さんのレベルの問題としてではなくて、国民にどうわかりやすい説明をいつでもすることができるかという観点で資料の整備等についても御努力をいただきますようにお願いして、次の質問に移ります。  そこで、国鉄債務が現在どのくらいになるかということをその後で御質問をしたいと思うんですけれども、旧国鉄債務等にかかわる国民負担はどういう形であらわれることになりますか。そこは私は今まだ国民の皆さんはよく理解をされていないように思うんですよ。だから、どんな形で国民負担は具体的にあらわれることになりますか、ちょっと御説明いただけますか。
  153. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) 旧国鉄の債務を国鉄清算事業団が引き継ぎまして、今、事業団はこの債務の償還を行っておりますが、清算事業団が持っておる資産、すなわち土地、株式、それから鉄道整備基金に対する債権でございますが、これらの資産を処分してもなお残る分、これにつきまして国民負担ということが問題になってくるということでございます。  その際の基本的な考え方につきましては、昭和六十三年の閣議決定で基本的な考え方自体は、既に政府の方針といいますか、考え方自体は決められております。
  154. 上山和人

    ○上山和人君 その分については私は大方の国民の皆さんは御理解いただいているんじゃないかと思うんですけれども、おっしゃるように、昭和六十三年一月二十六日の閣議決定で、言われたように、残った分については国で処理するということが方針として決められておりますから、その分は国民負担になるんだということは大体みんなわかっているんじゃないでしょうか。  ただ、それだけで国民負担は済まない問題があるんじゃないですか。ありませんか。私の質問意味がわかりませんかね。今おっしゃった問題だけ国民負担になるという性格の問題ではないんじゃないですか。もっと別な形で国民負担に具体的にはなる部分があるんじゃないですか。どうでしょうか。
  155. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) あるいは先生の御質問の受けとめ方が間違っているかもしれませんが、清算事業団が保有しております自主的な財源、これをもって償還のための原資として充てまして、残った分についてどうするかということで、これにつきましては国において処理をするとなっておりますが、これの具体的な処理の方策はこれからの問題でございまして、この点につきましては、これから私ども運輸省といたしましては財政当局とも相談をしながら具体的な処理策を検討していく必要があると、こう考えております。
  156. 上山和人

    ○上山和人君 少し私のお尋ねの仕方も悪いのかもしれませんけれども、JRと鉄道整備基金の債務等については、これは実質はJRで処理していますね。そうしますと、やっぱり一部が受益者負担になることになるのではないか。それは別の形の国民負担になる、そういう心配が今起き始めているわけですよ。  だから、そういうことについては今からわかりやすく説明をしておかないと、この大問題をいよいよ本格的に処理する段階になって不満が爆発しますよ。ですから、国民負担はどういう形であらわれるんですということはわかりやすく親切に早い段階から説明をすべきだと思うからお尋ねをしている。私の質問趣旨、言い方も悪かったのかもしれませんけれども、なかなか期待するような御答弁がないんですけれども、JRの処理の過程を通して受益者負担としてあらわれる部分があるんでしょう。どうですか。
  157. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) それでは、若干数字的な点で御説明させていただきたいと存じますが、国鉄改革の際に国鉄清算事業団が引き継ぎました債務は三十七・一兆円ございますが、これにつきましてこの負担をどの主体に負わせるかということでございますけれども、そのうちの十一・六兆円は既にJR各社に負担させているわけでございまして、JRに負担させるということは、結局運賃という形を通じまして利用者の負担になっているわけでございます。したがって、そういうことで言いますと、十一・六兆円は既に利用者が負担をしているということでございます。  先ほど申し上げました今後清算事業団が持てる資産を充ててもなお残る、自主財源をもちまして償還をいたしましてもなお残る分について、これにつきましては国において処理をするとなっておりますが、これをどうするかはこれからの問題でございます。
  158. 上山和人

    ○上山和人君 そういう国民負担が今いろんな面で、住専処理以降、国民の間に不安が広がっているわけです。そういう状況の中で今は国鉄債務に関心が集まりつつある。一体国民負担は減るんだろうか、ふえる一方ではないか、しかも国で処理する分の負担だけで済むんだろうか、やっぱり受益者負担の形で、もっと別な形で負担しなくちゃならない部分もあるんじゃないか、そういうことにだんだん気づき始めていることは事実なんです。地方に私どもが帰りましてもそういう質問をよく受けるんですよ。  ですから、そういうことは運輸省の責任で、国としても最初からわかりやすく御説明をこれからはしておく必要があると思いますので、その点十分今後とも御留意いただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  そこで、今も申し上げておりますように、これから国の財政状況の中で大きな比重を占めるようになります旧国鉄債務の現状について、一部数字もおっしゃいましたけれども、改めて国民の皆さんにわかりやすく説明をすべきではないか。  そういう観点から運輸省にお尋ねしたいのは、平成年度末のこの問題に関する決算額、それと平成年度末のこの旧国鉄債務の見込み額は、一体どの程度になるのか。これは十分資料をお持ちだと思いますから、まずその点について明確にお答えいただけますか。
  159. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) 国鉄清算事業団の長期債務でございますが、平成年度首におきましては二十六兆でございます。それから平成年度首におきましては二十七兆六千億円、こういう状況になっております。  なお、先ほど私、国鉄清算事業団が当初承継いたしました債務三十七・一兆円と申し上げましたが、これは旧国鉄にかかわる債務全体が三十七・一兆円でございまして、そのうち清算事業団が引き継ぎましたのは二十五・五兆円でございます。訂正させていただきます。
  160. 上山和人

    ○上山和人君 平成年度末は、少なくとも私の手元にある運輸白書等をもとにした資料によりますと二十六兆九千億。これは清算事業団の平成年度決算額でございますけれども、今その数字をおっしゃったのかなと思いますね。そして平成年度は、よくこれは新聞に書かれている数字ぴしゃっと合いますね、二十七兆六千億。これはほとんどの報道機関がこのように報道するように今なっていますね。減るんじゃなくてふえる方向で進んでいることが一目瞭然ですよ、これを見ましても。だから、余計国民の間に不安が広がっているという状態なんです。  そこで、状態がよくわかりましたから、平成年度末で二十六兆九千億あるものがこの平成年度首には二十七兆六千億にふえることが見込まれるという、ふえる傾向にある実態はまずお互いによくもうみんなわかっていることですけれども、確認をしておきたいと思うんです。  そこで、次の質問ですが、平成元年十二月十九日の閣議決定で、「事業団の土地の処分については、平成年度までにその実質的な処分を終了するもの」とされていますね。  そこで、この閣議決定に関連して、まず一つは、土地、株式をすべて売却した場合の見込み額はどの程度になりますか。もう一つは、それがわかれば、したがって最終的に国において処理すべき金額がおのずから算出をされることになりますから、幾らになりましょうか。
  161. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) 清算事業団が持っている資産の評価の問題でございますが、土地につきましては、平成八年一月一日の公示価格をもとに推計をいたしましたところ、三・〇兆円という価値、価額でございます。三兆円でございます。JR株式の分でございますが、これは額面で〇・三兆円、三千億円でございます。それから鉄道整備基金に対する債権でございますが、これは一・九兆円でございます。  そこで、ただいま御指摘の国民負担が幾らになるかということでございますが、土地の、一定の前提を置きました資産の推計をやっておりますが、これが幾らで売れるか。それから株式につきましても、これは市場の状況によって異なってくると思われますが、幾らで売れるか等々、一定の前提を置いて計算することはできますけれども、これにつきまして現在の段階で確たる見通しを申し述べることはやや難しいと、あるいは株式の上場も控えておりますし、適切ではないと考えております。
  162. 上山和人

    ○上山和人君 おっしゃることはよく理解できます。  ただ、今三兆円、三千億、一兆九千億とおっしゃいましたか、一兆九千億ですね。それで一応仮の計算をすると、最終的に国の処理すべき金額は幾らになりますか。
  163. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) まず、平成年度の予算でも一定の土地の売却収入等々を見込んでおりますが、先ほど申し上げました二十七兆六千億、これを前提といたしますと、これから土地が三兆円、それから株式の額面での評価が〇・三兆円、鉄道整備基金に対する債権が一・九兆円でございますので、株式を額面で評価いたしますと五・二兆円の資産になります。  したがいまして、二十二・四兆円程度となりますが、ただ、土地がどの程度で売れるかというのはやはり市況の状況で異なってまいりますし、特に株式は額面の評価でございますので、この点は実際に市場で売りましたときに違ってまいりますので、これをもって現在の段階におきます国民負担の額として運輸省として申し上げるというのは余り適切でないと考えております。
  164. 上山和人

    ○上山和人君 それはごもっともなことだとよくわかります。ただ、今見通しを立てて準備をするとすればおおよそ二十兆円前後の国民負担になる、そういう見通しを立てながら準備を進めなくちゃいけないということだけはよくこれに出ていると理解をしてよろしいんだと思いますね。  そこで、六千八百五十億の住専処理問題ですらあれほどの大問題になって、いまだにまだ問題は尾を引きずっております、正直に申し上げまして。二十二兆円、二十兆円余りを、あるいは二十兆円前後を国民が負担をしなくちゃならないという具体的な問題が提起されて、議論をする段階になると、どれほど国民の皆さんにショックを与えるかというのはもう火を見るよりも明らかなんですね。  したがって、何とかしてこの債務額は、国民負担額は減らしたい、そういう思いで努力をなさっていらっしゃると思うんですけれども、今の経済状況等、金利や株式の動きなどを見ましても思うとおり進まない、むしろふえる方向が非常に心配だということはみんなの認識だと思います。  もう一つ、私は金利の動向が大変みんな気になっていると思いますね。償還がおくれることによる国民負担増といいますか、住専処理問題の教訓は幾つかありますけれども、処理すべき時期に決断をして処理しなかった、問題を先送りしたことがどれだけ国が負担しなくちゃならない、税金を投入しなくちゃならない額をふやすことになったかということはもう明白なことだったし、大きな教訓なんです。  それをこれから本格的な処理をなさろうとする、六千八百五十億とはけた外れの二十兆を超えるかもしれない、そんな規模の大きな問題を処理するに当たって、償還がおくれることによって国民負担はこんなにふえるんです、だからこれを先送りしてはいけないんですということを、みんなそういう認識を私たちも政府の皆さんも共有しなくちゃならないと思うんです。  そういう観点で、清算事業団一般会計、鉄道整備基金、JR各社において旧国鉄債務に対する金利負担が行われていますね。したがって、まず清算事業団一般会計で償還が一年おくれますとどの程度金利負担がふえて、そのふえた分を国民一人当たりのマターの負担に換算するとそれは幾らになるかということ、わかりますかね、その点を細かく通告していませんが。わかりましたらでいいです。
  165. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) おおよその数字で申し上げさせていただきたいと思いますが、清算事業団発足以来、六十二年度以来現在までに年平均約一兆四千億の金利等の支払いが発生しております。この金利等の中には、金利のほかに鉄道共済が破綻したためにこれに対する国側の特別負担として毎年一千億円がございまして、そういったようなものを含んでおりますが、それらも含みまして約一兆四千億ということでございます。  これが、金利がやや最近下がっておりますが、これまでは年平均約一兆四千億でございますが、現在ではこれが年約一兆三千億円でございます。したがいまして、年間約一兆三千億円ないし一兆四千億円の金利等の負担を事業団は負っているということでございます。
  166. 上山和人

    ○上山和人君 大変な額だと思いますよね。だから、一年おくれると一兆三千億、もう一年おくれるとさらにその程度、そんなふうにおくれるごとに金利負担が膨大な一兆というけたでふえていくという実態をもっとみんな私は理解すべきだと思う。今おっしゃったそれを国民負担に引き直しますと、一人当たり一兆三千億は幾らになりますかね。わかりますか、出ていますか。
  167. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) 人口を一億二千万として割りますと、大体一人当たり一万二千円程度かと存じます。
  168. 上山和人

    ○上山和人君 だから、一年おくれるとそれだけ国民一人当たりの負担もふえていくという、そういうことなどもろもろの直接国民にかかわる問題を含んでいる問題であります。もう一つ追加して御質問申し上げますと、清算事業団と一般会計の金利負担はよくわかりました。鉄道整備基金とJRにおいてはおおむね計画どおりに償還されていると見られていますけれども、そうだと思うんですが、鉄道整備基金、JRにおいてそれぞれ一年当たりどの程度、そして何年間金利負担を行うことになっているんですか。これは私も今しっかりとお聞きしておきたいと思うんです。
  169. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) JRの負担分につきましては、当然のことながら債券の償還期限が来ると借りかえというような形になってまいりまして、形式的な意味での当初負担いたしました債券の償還の期限と、その後必要なものとして元本の借りかえを行いますので、まことに印しわけございませんが、今現在の段階で何年というのはちょっと手元に資料がございません。資料を整理いたしまして御説明したいと存じます。
  170. 上山和人

    ○上山和人君 わかりました。じゃそのようにぜひ、おおよそのことは通告してありますけれども、私もそこまで細かい通告をしておりませんので、どうぞ後で今のように御連絡をいただきたいと思うんです。  時間が過ぎておりますので、もう終わりの方になりますけれども、実は、こういう実態の中で本格的に一体どんなふうに二十兆円を超える債務の問題を国が責任を持って処理しようとするのか、この点についてなかなか政府の明確な方針が見えないんですよ。  そこで、日経新聞、ことしの五月二十八日、これはまだ住専問題の審議のさなかの時期ですよ、五月二十八日といえば。日経新聞が報道しましたのは、これは大蔵省にお尋ねしたいんですけれども、「大蔵省は国鉄清算事業団が抱える約二十七兆六千億円の旧国鉄長期債務について、処理財源は増税か運輸関連予算の大幅な歳出削減で確保せざるを得ないとの方針を固め、運輸省に伝えた。」とあるんです。そして、増税については「使途を債務処理に限った目的税の創設、」をすることとする。そして「歳出削減では整備新幹線計画の大幅な縮小などを柱に検討する。九七年度予算編成から具体化作業に着手するが、運輸省や与党などの反発は必至」だ。こんなふうに日経新聞が五月二十八日、あの住専問題の審議のさなかで報道していますよ。これは大蔵省、事実ですか。
  171. 南木通

    説明員南木通君) 旧国鉄債務等につきましては、先ほど来いろいろ閣議決定等の引用がございましたけれども、そういったものに従いまして、今後最終的な国民負担額を極力軽減するための方策といたしまして具体的にどういう措置があり得るか、あるいは最終的な国民負担のあり方としてどういう形があり得るかということについてさまざまな議論が必要であるというふうに認識しているところでございますけれども、記事にございますように、大蔵省としての方針を固めたというような事実はございませんし、そういったことを運輸省にお伝えしたというようなこともございません。
  172. 上山和人

    ○上山和人君 そうすると、日経新聞のこの記事は何ですか。全く事実無根ですか。そうだとすると、これは極めて重大な、住専問題の審議のさなかの記事なんですよ。目的税を創設する、増税によると書いてあるんだから。そういう方針を大蔵省は固めて運輸省に伝えたとここに明確な記事になっている。この記事は何ですか。
  173. 南木通

    説明員南木通君) 記事について私どもなかなか確たることを申し上げるわけにはいかないのでございますけれども、そういった方針を固めたという事実もございませんし、ましてそういったことを運輸省に申し上げたというようなこともございません。
  174. 上山和人

    ○上山和人君 そうすると、「運輸省に伝えた。」とありますが、運輸省は全然お聞きになってはいないんですか。
  175. 梅崎壽

    説明員(梅崎壽君) 今、大蔵省の主計官から御答弁がありましたけれども、私どもも大蔵省の方針がそういうことで固まったということで聞いたという事実は一切ございません。
  176. 上山和人

    ○上山和人君 この日経、これは経済中心の記事ですよね。購読者も非常に多い新聞ですが、影響力は大きいんですよ。そういう記事が出たときにはどういうふうに対応なさるんですか。大蔵省、どういうふうに対応なさいましたか。
  177. 南木通

    説明員南木通君) この記事に関連いたしましては幾つかお尋ねがございましたけれども、今申し上げたような趣旨で御説明をいたしました。
  178. 上山和人

    ○上山和人君 新聞社と政府なり私どもとの関係はいろいろ難しい問題もありますけれども、明確に全く事実無根の記事が、しかも重大な内容として報道されるときに政府は何もなさらないんですか、対策は。社長をお呼びになってその記事のソースをただすとか、そういう対策は全くされないんですか、マスコミ対策というのは。  私は責任を持ってきちんとしなくちゃ、今世論を誘導しているのは、これはマスコミの方もいらっしゃるかな、マスコミを中心にどんどんいろんな誘導が行われている。私どもが誘導と言えば語弊があるかもしれませんけれども、これで判断をすることが多いんですよ。何の対策もされないんですか、事実無根の記事が出たときに。しかも、大きな見出しの記事ですよ。されなかったんですか。
  179. 南木通

    説明員南木通君) この新聞記事等につきましては、確かにさまざまな記事が出ることはございますし、その中にはこれに限らず必ずしも正確じゃない報道というのは私どもの立場からしますと間々あることでございます。これについて、特にそういうことを申し上げたということではございませんけれども、事実関係としてそういったことはきちんと御説明をしているということでございます。
  180. 上山和人

    ○上山和人君 ちょっと私の質問に対するお答え、少し角度が違うんですよ。  これからも大変重要だと思うんですよ。少々の事実と違うという問題ならいざ知らず、全く事実無根だとおっしゃるんでしょう。しかも、こういう大きな見出しの記事ですよ。こういうので国民がそういうものかと理解をし始める、そしてまた政府に対する、あるいは私どもに対する不信が広がる。目的税、増税、そんな表現ですよ。住専処理のさなかの問題ですよ。そんな簡単な処理で済むんですか。  私は、これからもマスコミとの関係はお互いに真剣に対応しなくちゃならないと思うものですから、そういうふうに見逃されるから、やり過ごされるから同じことが繰り返されるんじゃないですか。なぜそういうことをきちんと処理しないんですか。これからはしっかりしてほしいと思います。  ちょっとそのことについてコメントを最後に言ってください。
  181. 南木通

    説明員南木通君) 今の御指摘も十分踏まえまして今後につきましては対応考えたいと思います。何といいますか、別に私ども弁解するつもりはございませんけれども、政府の仕事をしておりますといろんな意味でややニュアンスが違ったりしている記事というのは、いろいろ新聞を見比べていただいてもそうでございますが、これは正直申し上げてニュアンスということではなかなか違っているものもあるのかなという感じも持っております。
  182. 上山和人

    ○上山和人君 これでこの問題を終わろうと思うんだけれども、そういうふうに言われるとどうしても終わることはできないんですよ。少々のニュアンスの違いじゃない、全く事実無根だとおっしゃるんでしょう。そういうときに今のような対応をされ続けますと、同じことが繰り返される。私は幾らマスコミには報道の自由があるとしても事実でないことを報道してはいけないと思うんですよ。しかも国民世論に大きな影響のあるような問題について責任を持って報道すべきだといつも思っているから、きちんとした責任ある対応をしないからこういうことが繰り返される。  これは、私は、日経新聞にもいずれこの質問との関連でただしてみたいと思いますけれども、もうちょっとお答えとして、これからは私が御質問申し上げている趣旨に沿って責任ある対応をマスコミにもしたい、そういう決意はきちんと表明してください。そんな言いわけは要らない。
  183. 南木通

    説明員南木通君) ただいまの委員の御指摘も踏まえまして、適切に対応してまいりたいと思います。
  184. 上山和人

    ○上山和人君 ぜひ、大事な問題として受けとめて今後対応してくださるようにお願い申し上げておきます。大臣に対してもよくお伝え願いたいと思います。  そこで、最後に運輸大臣にお尋ねいたしたいのは、これは七月五日、国会が終わってからの朝日新聞の記事でございますけれども、七月五日の閣議後の懇談で旧国鉄の長期債務の処理を政府の重要課題とするように運輸大臣が求める方針だと。これも大きな見出しの記事になっておりますよ、朝日新聞の。運輸大臣としてはこれはそのとおりになさったんだと思いますけれども、そのとき、運輸大臣のその御提案に対して懇談ではどういうふうに認識が統一されたものでしょうか。ちょっとお聞かせいただけますか。
  185. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) お答えを申し上げます。  先生からいろいろ国鉄清算事業団の長期債務のことにつきまして御意見をちょうだいし、まことにありがとうございます。国民の皆さんの御理解を得るような努力をしてまいらなければなりませんし、さらには国民負担の軽減のために努力をいたさなければならないと、目下清算事業団あるいはまたそれぞれ土地の処分、株式の売却、これらの問題につきまして懸命な努力をいたしておるところでもございます。  なお、あわせて、平成年度末が十年と、こういうことに相なるわけでありまして、先ほど委員からも御指摘の国債残高の問題、債務の全体的な問題、その中で国鉄債務の問題があるわけでありまして、私からは、国鉄清算事業団の債務、この処理が十年、もう目前に九年度末ということでありますので、やはりいろいろ財政当局とも相談をして今後進めていかなければならないのではなかろうか、このような発言を申し上げたわけであります。  ただ、そのときはその発言だけで、いろいろ閣僚の皆さん方からも御発言があったわけでありますが、この清算事業団の債務の問題ではございません。概算要求の問題等々の発言でありますが、私ども運輸省といたしましては、この長期債務、先ほど先生から御指摘のように少しでも国民負担の累増を防止しなければならない視点から私はこのことを申し上げたわけでありまして、この件に関しましては私だけの発言であります。
  186. 上山和人

    ○上山和人君 ちょうど時間が一分残っておりますので。  運輸大臣も大変だと思います。また、大蔵省も大変だと思うんですけれども、この内閣の、あるいはこの政権の重要課題とすることを運輸大臣の方から改めて提起をなさらないと、そういう認識内閣になかなか生まれないといった状態ではないと思いますけれども、今もう既に重要課題とすることすら遅きに失している。難しい問題ですけれども、私たちは与党の一員としても思うんですよね。  ですから、いつ本格的にこの処理に着手できるのか。これも、先ほどから御質問申し上げるような具体的な問題を含めて、そういう環境が整わないと本格的な処理に着手できないんだと思いますけれども、ぜひ御努力を続けていただいて、住専問題の轍を踏まないように、けたの違う大問題でありますから、これから問題解決に向けて、どうかひとつ運輸省も大臣を先頭に、大蔵省も大臣を先頭に果敢に積極的に御努力を続けてくださいますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  どうも失礼しました。
  187. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 まず最初に、労働大臣にお伺いしたいと思います。  今も旧国鉄の長期債務問題が議論になりましたけれども分割・民営化がされてちょうど十年目に入りました。この結果というのは私は到底万々歳と言える状況にないと思うんですね。今の長期債務問題はますます深刻化している、あるいはJRによる採用差別問題、これもいまだに解決を見ていない、こういう状況です。  私がJRの態度で不届き千万だと思うのは、各地方労働委員会あるいは中央労働委員会で採用差別に対して救済命令、これが次々と出されております。ところが、JR側はこれに従わずに行政訴訟に持ち込んでいく。行政訴訟に持ち込めばどうなるかといえば、前の伊藤茂運輸大臣も二十一世紀になっても解決はしないだろうということを国会でも答弁されました。何で労働委員会が設置されたのかといえば、迅速な処理をして労働者の権利を守っていくというところに労働委員会設置の理由、意義があるわけです。これが全く無視されている。分割・民営化の際に当時の中曽根首相は一人だって路頭には迷わせないんだということを言われました。労働大臣もよく御存じだと思います。  中でも深刻なのが一千四十七名の解雇された労働者です。子供が進学をあきらめるとか、家族全体が大変な苦境に陥っています。したがって、労働委員会命令に基づいて採用していく、職場復帰をかち取っていく、これはまさに緊急の課題だというふうに私は思います。  前の亀井運輸大臣は、この一千四十七名の問題が解決しないと国鉄改革は終わらないというふうに答弁されました。あるいは、歴代の運輸大臣、労働大臣も、話し合いで解決することが重要である、そのためにJR各社をテーブルに着かせていくということも国会で答弁されてきました。改めてこの問題についての永井労働大臣の御決意をお伺いしたいと、こう思います。
  188. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、国鉄がJRに民営化されました以降幾つかの救済を求める事案がございまして、現在までに地方で救済命令が出されましたのが十八件ございます。その十八件のうち今一件は結審をいたしまして、まだ裁定が出ておりませんけれども、あと残る十七件のうち三件は、地方では救済命令が出されましたけれども中央労働委員会では逆に棄却命令が出されているわけであります。したがって、あとの十四件につきましては中央労働委員会でも、不当解雇といいますか、労働組合からいいますと不当解雇だと言われているこの事案についての救済命令が出されているわけであります。しかし、不幸にいたしまして中労委の命令がそのまま履行されずに、今言われましたように法廷にこの問題が持ち込まれているわけであります。  労働委員会は準司法性を持った独立機関でありますから、本来なら労働委員会の結審、救済命令が出されました場合は、その救済命令ですべてが終わるのが本来の姿であると私は思うのでありますが、しかし片方、日本の法制上では、その救済命令を受けたといたしましても、当事者がそれを不服として法廷に持ち込むことはこれまた権利として認められているわけでありますから、これを行政の立場から阻止することは非常に難しく、できない問題であろうかと思っているわけであります。  しかし、今御指摘になりましたように、民営化するときに当時の中曽根総理が一人たりとも路頭に迷わせないという答弁をされていること、あるいは歴代の運輸大臣、労働大臣がこの問題の存在することを認識して解決のために努力をすることの約束がされてきたこともこれまた事実であります。  したがって、私も運輸大臣と十分連携をとりながら、もともと安全輸送に携わる企業でありますから安定した労使関係が最も待たれるわけでありますから、その安全輸送に資するための良好な労使関係を確立するためにも問題は一日も早い解決が望ましい、そういう立場で労使の双方の忌憚のない話し合いによって解決されることが最も順当なあり方だと思うのでありますが、なかなかその問題が進展していないという事実を認識した上で、運輸大臣とも十分に連携をとりながら、この問題については早期解決の方法を探ってまいりたい、このように考えているわけであります。
  189. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 今、労働大臣からも、いろんな困難はあるけれども、しかし両者が忌憚のない話し合いができるように努力する、こういうお答えがございました。  運輸大臣は、この前の衆議院で私どもの寺前議員の質問に対して、両者間に大きな隔たりがある、したがってなかなか困難だという趣旨の御答弁をされました。しかし、両者間で大きな隔たりがあるのは、これはもう別にきのう、きょうのことじゃないんです。最初からあるんです。あるから一千四十七名が採用されない、解雇ということが起こってきているわけです。  しかし、今いみじくも労働大臣がおっしゃったように、安全輸送を確保していく、そのためにも安定した労使関係、これが不可欠だと。私も全くそのとおりだと思うんです。そうであるなら、大きな隔たりがあるからというので手をこまねいておったんじゃ、安全輸送に責任を持っている立場から見ても、あるいは運輸省自身が進めてきた分割・民営化ですから、そのことに照らしても、これはやはり、今労働大臣もおっしゃったように、運輸大臣としても、両者が忌憚のない話し合いをする、JRが話し合いのテーブルにちゃんと着く。労働者の側はいつだつて着いていいということを言っているんですから、JR各社に話し合いのテーブルに着かせる。  前の亀井運輸大臣はその努力をされました。今の亀井運輸大臣という言い方も変ですけれども、大臣はこの点についていかがでしょうか。
  190. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) お答えいたします。  運輸省といたしましても、これまでの経緯を踏まえて、労使双方の対応を決して静観しておるわけではないわけでありまして、この問題の解決のために私どもなすべきことがあれば努力をしてまいりたい、このように考えておるところでもございます。先ほども労働大臣からもお話がありましたが、よく連携をとりまして努力をしてまいりたい、このように考えております。
  191. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 いま一つ運輸大臣に伺いますが、JRに対して話し合いのテーブルに著くように、そういう努力をされるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  192. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) これは労使双方の問題でございますので、またいろいろ今日までその努力をしてまいったわけでありまして、なかなか困難な問題がございます。これらの問題を検討し、そして現実に今、法律的な問題で処理をする、このような経営側の考え方もあるわけでありまして、今日すぐテーブルにと、これはなかなか難しいことではなかろうか、このように思っております。
  193. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 問題は、その現実。今、労働大臣おっしゃいましたよ、その現実踏まえてと。今の運輸大臣の御答弁はその現実をおっしゃっただけだと思うんですよ。その現実は、それはもう事実ですから隠しようがないですね。しかし、その現実を踏まえて、今労働大臣もおっしゃったような方向で運輸大臣も御努力はされるというふうに理解していいですか。
  194. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) お答えいたします。  いろいろ困難な問題を克服するためにはいろいろな問題を整理する必要があろうかと思います。労働大臣にいろいろ御努力をいただいておるところもございますし、そのような連携と申しますか、またよく話し合ってその対応に努力をしてまいりたい、このように思います。
  195. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 じゃ、この問題はこの程度にしておきまして、いわゆる雫石事故、全日空機と自衛隊機が衝突をして百六十二人の乗客乗員の命が一気に失われるという大惨事が起こってから、ことしはちょうど二十五年目ということになります。この事件というのは、自衛隊機が訓練中に正常運航しておった民間機に衝突をするという事件でした。これは日本の空というのが軍事優先になっているというので、当時大問題になりました。  この事故を契機に航空交通安全緊急対策要綱というのがつくられまして、空は民間機を最優先させるという当然の原則が確立をされました。特に重要なことは、この緊急対策要綱で、自衛隊の訓練空域と民間機の航空路、これをもう完全に分離するということが明確にされたことであります。  そこで伺いますけれども、この雫石事故があった一九七一年当時、自衛隊の訓練空域は何カ所設定されて、その面積というのはどうなっていましたか。
  196. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 四十六年に今御指摘の航空交通安全緊急対策要綱が定められまして、それを機に四十六年中に設定されました訓練空域、これは低高度訓練試験空域として九カ所、高高度訓練試験空域として九カ所、合わせて十八カ所でございまして、そのうち高高度訓練試験空域の面積は約三十八万五千平方キロメートルでございます。
  197. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 その後、自衛隊の訓練空域というのは大きくふえたんじゃないですか。
  198. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) その後、現在に至るまでの間、高高度訓練試験空域が五カ所、超音速訓練試験空域が一カ所追加してふえております。
  199. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 新たに六カ所ふえましたね。そのほかに、訓練空域が拡大されたというところもあります。ニカ所ほど減ったところもありますが、六カ所ほどふえたところもある。つまり、要綱制定時よりも十カ所ほど空域が拡大されるかあるいは新たに訓練空域が設置されると。面積にしますと、先ほど七一年当時は大体四十万平方キロメートル弱ですね。今約八十万ですよ、大ざっぱに言えば。ほぼ倍に膨らんでおる。しかも、七一年から今日一九九六年まで二十五年間、民間機の航路帯もふえたし、便数もふえた。飛躍的にふえていますでしょう、飛行便数が。  当時、内村運輸省航空局長は、訓練空域を完全に空港の空域及び航空路から外したところに設定をしたと、自衛隊の訓練空域はすべて海上に移すというふうに明言をされました。要綱では、訓練空域と民間の航空路は完全に分離するというふうになっています。現実はそうなっていますか。数多くのところで訓練空域と民間の航空路が交差している、こういうふうになっているんじゃないですか。大体どれぐらい交差しているのか、その実態を明らかにしていただきたいと思います。
  200. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 自衛隊の訓練空域と私どもの航空路を区別するというか完全に分離する手法といたしまして、三つございます。  一つは、平面的に分ける方法であります。二番目が垂直方向で分ける。例えば、五千フィート以上は民航が使う、五千フィート未満は自衛隊が使う、こういう方法が二つ目でございます。それから、三番目は時間的に分ける。民航が使う時間は、その間それに必要な部分については訓練から外す。  この三つの方法を従来からとってまいっておりまして、現在、自衛隊当局と非常に密接な連絡の中で、特に大きな問題もなく運用をさせていただいております。
  201. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 特に大きな問題もなくと言ったけれども、しょっちゅうそんな大きな問題があったら困るんだよ。いつあるかわからないから完全分離したんでしょう。  今三つ挙げられて、例えば時間差分離も完全に分離するうちの一つの方法だと、こういうふうに言われた。しかし、訓練空域とそして民間航空機の航空路、これは当初は完全分離されていたでしょう、七一年のときから。時間が違うからというので交差する、こういう訓練空域と民間航空路がありましたか。ないでしょう。八四年から始まったんですよ。十三年間は完全に分離されていたんです。ところが、飛行便数がふえる、訓練空域がふえる。完全分離できなくなったから新しい概念を持ち込んで、いや、時間帯さえ分ければこれは完全分離のうちだと、高度を分ければこれも完全分離のうちだと。  しかし、自衛隊機の訓練というのはそんなものじゃないんですよ。一万フィートを飛べば、五千フィートも飛べば、まさに自由に飛び回るんですよ。それが軍用機の訓練です。あなたたち、完全分離を、三つの概念があるというので事実上七一年の要綱を崩してきた。これは明白じゃないですか。
  202. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 私どもは、今三つの方法で分離することによりまして、四十六年の要綱を忠実に守っていると認識いたしております。
  203. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 あなたが認識したってだめなんだよ。八三年まではそうじゃないんですから、八三年までは。八四年から変わったんじゃないですか。そうでしょう。
  204. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 繰り返しになりますが、御指摘の現在の航空交通安全緊急対策要綱、そこで明白に民航の航空路と訓練空域を分離すべしと、こう書いてございます。  私ども、この日本の狭い空を民航と自衛隊と米軍、この三つが分け合って利用しているわけでございまして、当然民航優先で航空路の設定等をしているわけでございますが、かと申しまして、他の二つの機能を完全にゼロにするというわけにもいかないと思っております。したがいまして、今申し上げました三つの方法は、安全性を担保しつつ、かつ三つの機能を果たせる一つのやり方だと思っております。
  205. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 答弁になっていないんですよ。七一年の要綱にはそんな三つの概念なんか書いてないです。完全に分離すると。そして八三年まではそれでやられてきた。  今はどうなっているかといいますと、三つありますね。A訓練空域、B訓練空域、K訓練空域。これは国内線だけです。A訓練空域では三十路線四十五便が自衛隊の訓練空域を飛んでいるんです。B訓練空域では二十三路線三十八便が自衛隊の訓練空域を飛んでいる。K訓練空域では六路線三十六便。一日当たり、合計五十九路線百十九便が自衛隊の訓練空域を飛んでいるんですよ。  そして、その間どうしているかというと、ただストップかけているだけでしょう。今から全日空機が飛びますから、今からJALが飛びますから、その間は訓練をやめてくださいと、ちょっとあけてもらって通っているんです。ピンホールを通すようなものですよ、飛行機にとっては。これが何が完全分離なんですか。これがどこが要綱どおりなんですか。  大臣、この要綱を見ますと、要綱の六項に、「運輸省の航空行政と自衛隊の業務との間の調整に関する覚書」、当時あったらしいです。この覚書というのは防衛庁優先の覚書だった。だから、この雫石事故を教訓にできた要綱では、この覚書を白紙に戻す、つまり軍用機優先を改めるということもこの要綱には書いてあるんです。  そして、この訓練空域なりを設定するときには防衛庁長官と運輸大臣が協議して公示する、こういうことになっていますでしょう。ですから、運輸大臣は防衛庁長官に対して、いつだつてこの要綱に基づいて物を言うことができるんです。それは、今は事故が起こってないからいいですよ。しかし、事故が起こったらこれは重大問題ですから。  こんな訓練空域、しかもこれは自衛隊だけです。そのほかに、ウオーニングエリアとかレンジだとか米軍の訓練空域はこれは別に設定されているんです。これで空の安全を確保できると大臣、自信を持って言えますか。
  206. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 今、先生、ピンホールを通るようなものだという形容詞を使われましたが、私ども、この時間差でやるときには大変緊密な連絡をとり、あらゆる余裕をとった上でやっておりますから、水平的な分離に比べて安全度が格段に落ちるとは認識しておりません。この時間的分離でも十分に対応できると考えているところでございます。
  207. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 じゃ、角度を変えて聞きますが、米軍の訓練空域でレンジ129というのがあります。地図で見れば青森と北海道の太平洋岸に設定されています。これは自衛隊のB訓練空域の中に米軍のレンジ129というのが包み込まれるような格好で設定されています。  これは、もともとは今の位置よりも約三十五キロ、地図でいえば下、南側ですね、この位置にあったんです。それを三十五キロ北側に上げたんです。上げた理由は何かといえば、この要綱に基づいて、もともとのレンジ129の位置は民間航空機が飛ぶ航空路になっている、だから米軍の専用訓練空域を外したんです、民間航空路から。  つまり、あなた方がとった措置は、米軍の訓練空域はこれを民間機が飛ぶのが危険だからというので外したんです。ところが、その位置に今度は自衛隊の訓練空域がそのまま残っておるんです。米軍の訓練空域は外したけれども、危険だけれども、自衛隊の訓練空域は安全だと、そんな理由一体どこから出てくるんですか。
  208. 黒野匡彦

    説明員(黒野匡彦君) 先生指摘のとおり、このR129というのを移設していただきました。その理由は、従来のR129の場所に新しい民航用の航空路をつくる、その目的のためでございます。  私、防衛問題の専門家じゃございませんから余り詳しいことを申し上げる能力はございませんが、このR129というのは射撃訓練等を行う、かなり頻度高く使う空域でございます。したがいまして、そういうところには民航機と重複した使用というのは無理であろうということで、米軍側と交渉いたしまして若干北の方に移したということでございまして、自衛隊の訓練空域とは若干性格が違うものだというふうに理解しております。
  209. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 時間が来ましたので終わりますけれども、運輸大臣、この問題というのは、一たん事あれば大量の人命が奪われるという重大問題ですから、やはりこれは今後とも防衛庁と緊密に協議して、可能な限り民間航空機の、可能な限りじゃないですね、やっぱり要綱がきちっと守られる、そういうために御努力をいただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  210. 国井正幸

    国井正幸君 私は、まず最初に中小建設業の官公需確保対策についてお伺いをしたいというふうに思います。  官公需についての中小企業者の受注確保に関する法律に基づきまして、毎年、中小企業者に関する国等の契約の方針、これが閣議決定をされているところでございます。平成六年においては七月十五日、七年においては七月四日、そしてことしは去る十二日に閣議決定されたわけでございます。   これによりますと、「中小企業者を取り巻く厳しい情勢を踏まえ、中小企業者の受注の機会の増大に努めるとともに、国等の調達する物品等」、これは工事とか役務を含むわけでございますが、「の受注確保しようとする中小企業者の自主的な努力を助長するよう配慮するものとする。」、ういうふうにあるわけでございます。    〔委員長退席、理事西田吉宏君着席〕  ところが、中小建設業者受注状況というものをいろいろ聞いてみますと、平成六年の一月十八日でしょうか、閣議了解をされた公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画によって本格的に一般競争入札の制度が導入されたわけでございまして、これ以来大変厳しい状況に置かれておる、こういうふうな話を伺っております。  岩井委員の方から午前中この辺についてお話があったわけでございますけれども中小建設業者受注状況というものはいわゆる入札制度の改善の前と改善の後でどのような状況にあるのか、その辺についてまずお伺いをしたいというふうに思  います。
  211. 小野邦久

    説明員小野邦久君) お答えを申し上げます。  午前中も岩井先生から御指摘をいただいたわけでございますけれども建設省直轄工事におきます中小企業向け契約比率でございますが、御指摘のとおり、平成年度には四五%という実績がございます。これが平成六年には四〇・一%というふうになっておりまして、およそ五%弱低くなってきている、こういうことがございます。  この原因といたしましては、大きなものとして、先生指摘のとおり、一つは確かに平成年度に入札契約制度の大幅な変更があったわけでございます。九十年ぶりの改革ということで、一般競争入札を導入する等のことをしたわけでございますが、一般的には公共事業効率化必要性観点から、発注ロット大型化発注単位の大型化が進んだということが一番の原因ではないか、こう思っております。  また、災害関連事業でございますけれども、従来はどちらかというと一般的には中小建設業者方々受注して仕事をしていただくことが多いわけでございますが、平成年度におきましては阪神淡路大震災に関する事業を除く災害関連事業というものが平成年度より大幅に減少したこともございまして、平成年度中小企業向けの契約比率というものが前年度に比べてかなり減ったというふうに考えております。  実態は以上でございます。
  212. 国井正幸

    国井正幸君 私も建設省からいただいた資料等を見ているわけでございますが、例えば平成年度、これは物品なりあるいは役務なり工事分全体の合計額であって、さらには直轄関係公団ども合計した額で見ると、目標を定めてというところで、いわゆる官公需総額ですね、建設省分の総額で四兆六千八百八十億ということで、そのうち中小企業向けが一兆六千七百十億、比率が三五・六%、こういう目標を立てておったんですが、結果的にはその目標率が三三二%であった。さらに、平成七年については、額は別にしても、目標の率が三五・二%であったものが三四・七%。随一分御努力はされているというふうに思うんですが、未達だ。さらに、先ほどのいわゆる直轄分だけで見ると、平成年度が四五%あったわけですが、平成六年四〇・一ですね。そして七年には四四、こういうふうなことで、まだ回復していないようでございまして、大変中小企業の厳しい状況がいまだ続いているんだろうというふうに思っております。  そこで、中小建設業者受注機会確保を図るため、建設省においても、先ほど申し上げましたような大変な御努力はあるんだろうというふうに思いますけれども、実は業界誌の中で建設オピニオンという雑誌があるわけでございまして、これの昨年の七月号に大変興味深い記事が載っておりました。「入札制度改革本格化への対応 試行期間を振り返って」ということで座談会をやっているわけでございますが、ここに出ているのが、前の建設省大臣官房地方厚生課の公共工事契約指導室長、現在国土庁の方へ行かれている押田彰さんという方と、さらに日本道路公団の調達用地部長の三宅政廣さん、それから静岡県の土木部の室長とか出ているわけですね。  ここの中で日本道路公団の話がいろいろ出ているんですよ。この三宅さんという方は、これは去年の話での昨年ということですから、今からいうと一昨年の話なんですが、   昨年六月までは、道路土工はほとんどが特定JVなのですが、基準は下位ランクまでJVで募集し、例えばCC、CD、BCという組み合わせでやっていた。ところが昨年七月から道路土工の場合、AA、AB、BBまでとしC以下はJV参加できないようにした。そうなると、C以下からは受注機会が減少した、あるいは無くなったという意見が出てきます。このため、これまで採用していなかった経常JVを今年七月から募集することにしました。これでCランク以下の者が経常JVを結成することにより上位等級工事への参加が可能となります。とりあえず道路土工だけで試行して、それを見ながら他の工種に広げられればと思っています。 というふうなくだりがあるんですね。大変私も実は興味深く思ったわけでございます。  そこで、中小企業者の受注機会確保を図るという上で、特定JVの構成員の数、これは前からずっと絞り込んできたわけですよね。今二社ないし三社、こういうふうなことになって、三社という運用もされているようでございますけれども、二社ないし三社。そういうことでございますが、さらに経常JVのさらなるその活用ということをもう少し考えていただいたら中小企業のいわゆる受注機会確保に資するんではないかと、このように考えるところなんですが、この辺に関していかがでしょうか。
  213. 小野邦久

    説明員小野邦久君) 先生指摘のとおり、中小建設業者対策といたしまして、いわゆるJV工事でございます、共同企業体、ジョイントベンチャーに関しての活用を図るということは大変重要なことだと認識をいたしておりまして、私ども平成七年の七月と十月に中小建設業者受注機会確保するためのいろいろな対策を講じましたけれども、その中でも、特に共同企業体に関して条件を緩和する、これによってより規模の小さな建設業者でも共同企業体に参加できるようにできないか、こういうことを考えてまいりました。  先ほど先生指摘になりました雑誌の詳細については、まことに申しわけないのでございますがちょっとまだ熟知をしておりませんけれども、特に地方公共団体あるいは公団等における運用の改善の措置といたしまして、特定建設工事共同企業体の構成員の組み合わせについて第三位等級の者の取り扱いの明確化を図れないかということで、地質、地形あるいは自然条件等に関する見地から技術力を補充するような第三位等級の取り扱い、具体的には共同構成員に参入を認めるということでございますけれども、こういうふうなことによってより以上に中小建設業者受注機会が図られるような、そういうことも考えてきているところでございます。
  214. 国井正幸

    国井正幸君 今もちょっと出たんですが、関連して自治省に伺いたいというふうに思うんですが、きょうおいでいただいていると思うんですが、地方公共団体の建設工事発注分のうちで中小企業向けの契約はどの程度になっているのか、お答えをいただきたいというふうに思います。
  215. 的石淳一

    説明員(的石淳一君) お答えいたします。  中小企業受注実績につきましては、自治省では把握いたしておりませんが、中小企業庁が実施しております調査によりますれば、一番新しいデータは平成年度分でございまして、都道府県及び人口十万人以上の市を対象とした調査でございますが、この調査の六年度分の結果によりますと、発注総額二十一兆三千二百九十八億円のうち中小企業向けの契約実績は十四兆九千二百四十八億円となっておりまして、中小企業向け契約比率は六八・四%となっております。
  216. 国井正幸

    国井正幸君 あえてこれを自治省にお伺いしたのは、どうも私も選挙区等を歩いてみまして、入札制度の改善があったことはいいんですが、非常に各自治体が国等で定めている基準以上に一般競争入札、これは悪いことではないんですが、そういうふうにシフトしているように私、現実の問題で思うんですね。実は私の地元の自治体でも役場の庁舎をつくったわけですが、これも落札が二十億三千万というふうなことなんですが、制限つきの一般競争入札でいずれも二千点以上の業者指名した、こういうふうなことで、残念ながら我が栃木県には二千点以上の業者というのはない、全国的に見ても名立たる上場会社を中心とした業者だけだと、こういうふうなことがあるわけです。    〔理事西田吉宏君退席、委員長着席〕  そういう意味で、ぜひこれ自治省にもお願いをしたいというふうに思うんですが、中小企業者に関する国等の契約の方針の中には、「国は、地方公共団体に対し、国等の契約の方針を参考として、地域の実情に応じ必要な場合には中小企業者に関する契約の方針を策定する等中小企業者の受注機会の増大のための措置を講ずるよう要請する。」と、こういうふうなことに閣議決定でなっているわけでございますので、そういう意味では、自治省においてもこの趣旨がきちっと生かされるように各都道府県あるいは市町村を指導していただきたいということと、あわせて、いわゆるサンプル調査のようなものではなくて、当然起債等を認めているわけですから、そういう中できちっとした報告をとって、すべての工事の中でどういう業者が落札をしたのか、こういうことを落札金額と同時にきっちり把握していただくように、この点についてはお願いをしておきたいというふうに思います。  建設省関係で、最後にこれは大臣にひとつお答えをいただきたいというふうに思うんですが、公共事業、わけても公共建設工事というのは、社会資本整備拡充を図るというのはもちろんのことでございますけれども、景気対策としても大変重要な役割を担っているわけでございまして、そういう位置づけも現にしているわけでございます。  公共建設工事が景気対策としてより効果的になるためには、やはり工事が特定の業者に集中をしちゃったりするというよりも、中小企業が我が国の経済の下支えをしている、こういう状況考えたときに、できるだけ広く行き渡るようにされることの方がこの趣旨にもかなっているのではないか、こういうふうに私は思うところでございます。  ぜひこの点に関して、大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  217. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 基本的な理念といたしましては全く委員と私は同感でございまして、公共事業発注に当たりましては、公共事業の有する経済波及効果というものを御指摘のとおりに十分に活用いたしまして、そして地域経済活性化を図る等の観点から、地場産業としての地域中小企業者の受注の機会を確保することが全く前提条件だと、私はそれをベースに置いて理念として実行したい、こう考えておる次第でございます。また同時に、委員の言われたことは私の脳裏にも認識として強く持っておる次第でございます。  このためには、これまで講じてまいりました中小建設業者受注機会確保対策につきましても、建設省直轄工事において徹底していくことはもちろんのことでございますが、関係省庁関係公団あるいはまた地方公共団体に対しましても、今後ともさまざまな機会をとらえて一層すそ野の広い、言うなれば業界のA、B、C、Dランクそれぞれノウハウを持っておるところ、ないところもございましょうけれども、一律に汗を流した分だけは自分たちのためにもなる、同時に公共事業の大きな一翼を担った分だけ成果を上げていく、こういう方向に位置づけていきたい、こう考えておる次第でございます。
  218. 国井正幸

    国井正幸君 大臣、そういうことでぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。  続いて、運輸省関係でお伺いをしたいというふうに思います。  改正道路運送車両法が昨年の七月一日から施行されて一年が経過したわけでございまして、去る七月十二日には運輸省の自動車交通局から、施行後一年の動向について、こういうものが発表されて私も見させていただきました。  それによりますと、ユーザー車検は前年比でもって六二%ふえて百二十一万件ということで堅調に増加している、こういうふうに報告されております。このこと自体は大変よいことだというふうに思っておりますけれども、ただ、その中でユーザー車検のうち、検査に不合格になったいわゆる再検査の割合というのが二七%ある、四分の一を超えているということなんですね。そして定期点検整備をせずに検査を受ける、いわゆる前検査車両の再検査の割合というのがこれまた三分の一を超える三五%もある、非常に高い水準だなというふうに思います。  そういう意味では、平成六年六月二十日、この道路運送車両法の改正案を本院の運輸委員会で採決をする段階で附帯決議がつけられたわけでございまして、これの第一項の中には自動車使用者の保守管理の徹底、それから点検整備の義務履行というのが出ているわけですね。これとの兼ね合いでどのような措置を講じようとしているのか、この点について簡潔にお答えをいただければと思っております。
  219. 荒谷俊昭

    説明員(荒谷俊昭君) 自動車の点検整備につきましては、自己責任の原則ということを大前提といたしまして、先生今おっしゃられたように、前検査、後整備ということも認めるという一大転換をいたしたわけでございます。そういったことで、私ども、自己責任の原則ということをユーザー自身がきちんと認識していただくように、いろんな機会をとらえて啓蒙に努めてまいりたいというふうに考えております。
  220. 国井正幸

    国井正幸君 ぜひこの点については特段に、安全を確保するということが大切なことでありますから、お願いをしたいというふうに思います。  次に、これはぜひ亀井運輸大臣にお答えいただきたいと思うんですが、実は昨年の決算委員会でも私質問させていただいたわけでございますが、農耕用トラクター等特殊自動車の検査証というんでしょうか、これの有効期間の問題でございます。  やはりこの改正法案の通る段階で、附帯決議の第五項に「使用実態調査を進め、その検討結果に基づき延長等の措置を講ずること。」と、こうされているわけなんですね。  調査報告書もまとまったようでございまして、その調査報告書によれば、「農耕作業用自動車は、他の特殊自動車と比較し公道を走行する距離は全車種平均の三分の一程度」だ。さらに「走行の多くは圃場内における移動に伴うもの」であると、こういうふうに言っているわけですね。そして「農耕作業用自動車が第一当事者となった一万台当たり死亡事故件数は〇・〇八と低く、」「自家用乗用車の一・一に対し十三分の一程度」、「大型特殊自動車全車種と比較しても四分の一程度と非常に低い」と、こういうふうなことが出ているわけですね。  そして、規制緩和推進計画においても、昨年も、ことしもですが、これらについて見直す。当初は平成年度中に見直す、こういうふうなことであったわけなんですが、ことしは平成年度中に見直す、こういうことになっているので、ぜひ大臣、もう今平成八年で大体折り返しに来るわけでございますから、この辺で大臣の思い切った前向きの御答弁をぜひお願いしたいと思うんです。
  221. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 農耕用トラクターの車検につきましては、平成七年七月から車齢十年を超えたものにつきましては二年延長という緩和をしたわけでありまして、今委員指摘の農耕用トラクターの使用実態調査をいたしました。その結果、御指摘のとおりのいろいろのことも承知をいたしております。  関係省庁と調整を今進めておりまして、本年度内を目途に農耕用トラクターの車検が不要となるよう措置をする方向で検討いたしております。
  222. 国井正幸

    国井正幸君 ありがとうございました。ぜひ今年度中に大臣の御努力によりまして、農耕用トラクターの車検がなくて済むように特段の御配慮をお願いしたいというふうに思います。  実は、自動車重量税の問題についてもお聞きをしようと思って大蔵省の方にも来ていただいておったんですが、時間になりましたので、大変申しわけないんですが別の機会に質問をさせていただくことにしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  223. 水野誠一

    ○水野誠一君 さきがけの水野でございます。  まず、総務庁に伺いたいと思いますが、平成六年の衆議院内閣委員会で、さきがけの石井紘基議員が住宅・都市整備公団とその出資会社との不透明な関係指摘いたしまして、当時の行政監察局長が可能な限り必要な調査を行うという答弁をしております。  総務庁はこの三月に「公共工事発注事務に関する調査結果報告書」を公表して、その中で住都公団の特定の出資会社に対する指名の偏りの問題を指摘しておりますが、この調査結果について簡潔に御報告をいただきたいと思います。
  224. 本田清隆

    説明員(本田清隆君) 総務庁におきましては、平成七年一月から三月にかけまして、入札契約制度の透明性、客観性及び競争性を確保する観点から、国の機関及び特殊法人における入札契約制度の実施状況等を調査し、その結果について平成八年三月二十九日に建設省関係十六省庁に対し勧告を行ったところでございます。  住宅・都市整備公団につきましては五つの支社を調査いたしましたが、平成年度及び六年度の保全工事に係る指名競争入札において、同公団の出資会社一社に対し、発注総額八百五十九件中六四%に当たる五百五十件の指名を行っており、その結果、発注件数の四四・八%に当たる三百八十五件を落札しております。  中でも、五支社のうち一支社においては、調査した発注件数百二十七件中八六・六%に当たる百十件の指名を行い、その結果、発注件数の七八・七%に当たる百件を落札している状況が見られたところでございます。
  225. 水野誠一

    ○水野誠一君 今御説明にございました公団の出資会社でありますけれども、これは日本総合住生活株式会社という大変長い名前の会社でありまして、通称JSと呼ばれている会社であるということを私は認識しております。  この会社、住都公団が資本金の実は三分の二を出資しておりまして、公団が建設した団地居住者への各種サービスを行うことなどを目的に設立され、社長は建設省OBでありますし、非常勤を含む役員十九名のうち十二名が公団OBという構成になっております。  いずれにしても、公団の関西支社の修繕工事の約八〇%を落札、金額で百億円を超える公共工事を一つの会社が受注していたということは、ちょっと理解を超える出来事ではないかなという気がいたします。  今回の行政監察においては、建設省の所管では住都公団とともに首都高速道路公団の発注に関しての指名に偏りがあるという報告もされていますが、一つの業者が首都高速道路公団工事二十六件のうち十一件を落札しているという指摘であります。この件に関してかもしれませんが、公正取引委員会が談合の疑いがあるということで立入検査をしたという報道もございました。  それでは建設省に伺いたいと思うんですが、建設省としては今回の住都公団に関する行政監察の結果をどのように受けとめているのか、また今後どのように公団を指導していくつもりなのか、御説明をいただきたいと思います。
  226. 小川忠男

    説明員(小川忠男君) ただいま住宅・都市整備公団の主として保全工事についての指名あるいは受注についてやや偏っているのではないかという御指摘がございました。  住宅・都市整備公団の主として賃貸住宅の修繕工事、広い意味での保全工事、いろんな形態のものがございます。例えば計画的に壁を塗りかえるというふうなことから始まりまして、街路灯をつけかえるとかいろんなものがございます。ただ必要なことは、居住者からのいろんな修繕の要請に対してきちっとした形で迅速に対応するというふうなことが最も駐要なことであろうというふうに考えております。  こういうふうな観点からした場合には、長い実績を持っております会社、さらにはいろんな意味でのノウハウが豊富というふうなことから、これまでの経緯といたしましては、ただいま御指摘ございました、日本総合住生活の指名あるいは受注実績が結果として多くなってきたというふうなことは御指摘のとおりであろうと思います。  ただ、私どもといたしましては、実は昨年でございましたが、二月に「特殊法人の整理合理化について」の閣議決定がございました。これは住都公団だけではなくて広く特殊法人一般を対象にしたものではございますが、この中で、住都公団あるいはただいま議論のございました日本総合住生活の業務につきましては、「民間と競合する大規模修繕工事から段階的に撤退をする。」というふうなことが閣議で決められております。私どもとしましては、この閣議の趣旨に沿いまして鋭意努力をしているというふうなことでございます。  また、全国ベースで受注状況数字で恐縮でございますが、平成年度指名状況が六四%から平成年度には五二%、同じく受注実績でございますが、五七%から四七%へと若干ではございますが減少いたしております。  私どもといたしましては、先ほどございました行政監察、さらには閣議決定の趣旨を踏まえまして、引き続き適切な競争性を確保した発注業務というふうなことから公団を指導してまいりたいと、このように考えております。
  227. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。  次に、公団における随意契約について伺いたいと思います。随意契約というのは競争入札によらない発注方法でありますが、今回の行政監察は、今後競争入札に検討する余地があるということで住都公団の随意契約の例を挙げているわけであります。これは団地の給水施設の維持管理を行っている業者、これも今問題にいたしましたJS社であるわけでありますが、そこに六千二百万円余りの団地の給水施設改良工事を随意契約によって発注したという例が挙げられているわけであります。  随意契約は、これは発注機関にとっては便利な面というのもあるわけでありますけれども競争がないということで勢いコスト高につながる危険性が大きいものであります。今の例でも、黙っていても契約がとれるということで、業者としてのコスト削減の企業努力が果たして本当になされているのかどうかということが疑問でございます。  行政監察は、一定規模以上の工事については、「より競争性を発揮させるため、緊急又は特殊のものを除き、できる限り競争に付すことが望ましい。」というふうに述べておりますが、住都公団に関しては、これは非常に重要な勧告であるというふうに考えます。二百五十万円を超える工事に関しては競争入札を原則としている特殊法人が大半だというふうに聞いております。  住都公団における随意契約の実態及び今回の行政監察の勧告に関する建設省の御見解を伺わせていただきたいと思います。
  228. 小川忠男

    説明員(小川忠男君) 住宅・都市整備公団におきます工事発注方式、これは基本的には恐らくはかの特殊法人と同じような考え方に立っていると思います。  繰り返しかもしれませんが、原則として競争入札によることにいたしまして、一つには、契約の性質あるいは目的が競争を許さないときとか、あるいは緊急の必要性があるような場合、さらには競争に付することが不利である、こういうふうな場合には随意契約によるというふうな形になっております。  ただいま具体的な例をお引きになられました給水施設の改良工事について、維持管理業務を行っている業者が即改良工事受注したというふうな件でございます。ただ、これにつきましては、一般的には工期の短縮であるとか、あるいは経費の節減が図れるというふうなことから随意契約として処理したというふうに理解しております。ただ、契約関係の透明性、公正性、さらには競争性をさらに確保するというふうなことは御指摘のとおり重要な観点であろうと思います。  こういうふうな観点から、昨年の十月でございますが、住都公団におきます随意契約につきましてきちっとしたガイドラインを定めさせていただきました。内部的な準則でございますが、工事請負契約における随意契約のガイドライン、こういうふうなものを今御指摘のような点も念頭に置きまして決めさせていただきました。今後はこのガイドラインをベースにいたしまして、随意契約でございましてもさらに一層適切な処理ができるというふうなことを念頭に置いて対応させていただきたいと思います。
  229. 水野誠一

    ○水野誠一君 ぜひ今回の行政監察の勧告を受けとめて真剣に取り組んでいただきたいというふうにお願いいたします。  次に、住都公団の空き家問題に関して伺いたいと思います。  ここ一年ほど住都公団の空き家に関する新聞報道がしばしば目につくわけであります。例えば、これは毎日の六月二十九日の夕刊でありますけれども、埼玉県鴻巣にある「パークシティ鴻巣駅前プラザ」の件が出ておりました。ここでは百十戸のうち三十五戸が空き家で、それにもかかわらず十階建ての新たな高層住宅を近く着工する予定である、住民は都内の職場まで二時間近くかかるのに家賃が三DKで十万円前後というのは高過ぎる、住民が出ていくのは当然だ、また新たな公団ができたらゴーストタウンになるんではないかというふうに報じられているわけであります。  また、世田谷区の「成城通りパークウエスト」は場所は大変いい立地でありますが、三LDK八十平米で月家賃が二十六万円というふうに高く、三百九十戸のうち百戸があいているという記事が、これは昨年の十月二十二日の日経に出ております。民間の方が二割方家賃が安いということで引っ越す人が非常に多いんだという報道がされているわけであります。  これら挙げましたのは賃貸住宅の例でありますけれども、分譲住宅でも深刻な問題があります。浦安市にあります「浦安マリナイースト21」では、九四年に分譲を開始しました八百四十一戸のうち百八十七戸が売れ残った、最高分譲価格が約八千二百万円という価格設定が敬遠されたというふうに言われています。  住都公団によりますと、平成八年三月末で全国に六千六百二十三戸の賃貸住宅の空き家があって、分譲住宅に関しても売れないものが何と二千百十五戸もあるということであります。  それで、公団としては何とかしなければいけないということで、新聞広告あるいは電車の中づり等で宣伝に努めているようであります。そのため、募集にかけた広告費も平成年度が二十七億円であったものが六年度には三十六億円と大幅にふえている、こういう事実もあるようであります。  このような多くの空き家を抱えているということは、当然住都公団の経営に影響があるのではないかと思いますが、それが財政的にどの程度の負担になっているのか。例えば、売れない分譲住宅二千百十五戸の総額は幾らなのか、またこれにかかわる利息、また家賃収入の欠損、維持管理費等は公団の経営の負担にどの程度なっているのか、建設省の御見解を伺いたいというふうに思います。  また、この空き家の原因は基本的に公団住宅の家賃や分譲価格が高いということにあると思います。バブル時代のツケが回ってきているという面もあると思いますが、質はいいけれども、ともかく価格設定が高いという印象は否めないわけでありまして、建設コストを下げる経営努力が必要なことは言うまでもありませんが、一体その公団住宅の建設コストというのは今坪当たりどれくらいなのか伺いたいと思います。そしてまた、これは民間と比べたときにどれくらいの位置づけになるのかということも伺いたいと思います。また、コストダウンについてはどのような努力をされているかということを、いろいろあわせて御質問申し上げましたが、簡潔にお答えをいただければと思います。
  230. 小川忠男

    説明員(小川忠男君) 御指摘のとおり、賃貸住宅あるいは分譲住宅において必ずしも十分な形で埋まり切っていないというふうな状況がここ一、二年生じております。  本年三月末断面の未入居分譲住宅、これは入居可能になった日から起算して三カ月間入居者が定まらないというふうな状況をもって未入居分譲住宅と言っておりますが、戸数として二千百十五戸、その価額総額、発売価格の累計でございますが、一千二十億円というふうな状況になっております。  このような、新規の供給住宅に必ずしもきちっとした形で入居しない、あるいは既存賃貸住宅についても相当の空き家が生じているというふうな原因は、住都公団に限らないかもしれませんが、一つにはバブル経済の崩壊後の景気の低迷でございますとか、あるいは所得の伸び悩み、あるいは家賃価格水準の下落等々の要因があろうかと思います。  ただ、 一つございますのは、公団という立場上、比較的長期なプロジェクト、大規模なプロジェクトが多いというふうなことから、どうしても短期間では軌道修正をしにくいというふうな面、さらにはやはり公団の立場上、それなりの質は確保せざるを得ないというふうな面があったことは否定できないかと思います。  その経営に及ぼす影響でございますが、現段階ではまだ、例えば空き家につきましては家賃収入の一定割合を引当金というふうな形で留保しておりますが、これを充当していくというふうな形で対応するなどの形で、必ずしも経営について直接的な形で大きなダメージが現段階で生じているというふうなわけではございませんが、ただ経営というふうな面から見た場合には相当大きな課題を抱えつつあるというのは御指摘のとおりでございます。そういうふうなことから、もう少し時間がかかるかと思いますが、あらゆる努力を傾注させていただきたいというふうに思います。  それから、建築コストについてのいろんな御指摘がございました。これにつきまして、民間との比較というのは直ちにはしにくい面がございますが、ほぼ同額ないしは若干安い程度ではないかというふうに思います。  具体的に申し上げますと、かなりラフな集計でございますが、平成年度の賃貸住宅を例にとりますと、坪当たりで平均約六十四万円というふうな数字が出ております。ただ、平成六年と比べますと、平成六年には坪当たり七十四万円でございましたので、十万円ばかり下がったというふうなことでかなり経営的な努力が数字としてあらわれているかと思います。コストを下げるというふうな観点からは、例えば設計あるいは躯体そのものをもう少し簡素化するとか、あるいは配管であるとか配線であるとか、もう少し努力する必要があるんじゃないかとか、いろんな角度からコストを下げるというふうな努力を全力投球しております。少し時間をかしていただければというふうに思います。
  231. 水野誠一

    ○水野誠一君 今、未入居の二千百十五戸が一千二十億円という大変大きな金額であるということも伺いました。これを一日も早く入居者を見つけるということをしていかなければいけないと思うのでありますが、ともかく非常に高額である、つまり家賃も高いし建設コストも高い、それから分譲価格も高いということが問題の本質にあるような気がいたします。  確かにバブルの影響というのは否めないわけでありますが、とはいえ、バブル崩壊後、平成五年、六年あたりにつくられたものの中でも実は八千万を超える価格帯のものが随分あるというような事実を見ても、やはり時代に即応する、あるいは本当に国民の生活感というものに即応した物づくり、物件づくりができていないんじゃないかなということを感じるわけであります。  今、例を挙げました成城のパークウエストで、家賃で約三十万していたものが最近二十五万ぐらいまで値下げをしたというような報道も拝見いたしましたが、それにしてもまだまだ高いのではないかなというふうに思いますし、今話題にいたしました港北ニュータウンのマンション、九千万円近くするというようなものもあるわけであります。この程度のマンションが対象とする人の収入というのはどれくらいなのかと基準月収額というものを見てまいりますと、大体月収百万程度が基準月収というふうに言っているわけであります。  つまり、広くて良質なマンションであることは間違いないんですが、ほとんどの国民には手が届かないという事実からいって、こういうものは民間業者に任せて、住都公団という立場からいけばもっとリーズナブルなものをねらうべきではないかなというふうに思います。  確かに、今御説明ありましたが、平成七年あたりになりますとこういった八千万超のものはなくなるんですが、ただ平成五年で私が調べてみましたところ、総供給戸数六千七百戸のうち十二戸、〇・二%が八千万超のものであったというのが、平成六年には五千百七十八戸のうち六十一戸、つまり一・二%が八千万超ということで、バブル崩壊後であるにもかかわらず、実は実数でふえたというような状況を見ても、もっとその状況に即した対応がとれなかったものかと大変残念に思うわけであります。  こういった状況を今から御説明いただきまして、また御質問をしました状況をも踏まえまして、公団のこのような住宅の戦略、施策というものについてどういうふうにごらんになるか、あるいは今後どんなお考えをお持ちなのかということを建設大臣に一言御答弁願えればと思います。
  232. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 水野委員の非常に学識のある、今までの内容ある言葉を聞きまして私も大変勉強になりました。  公団の業務というものについて私もそれほど深く知悉しているわけではございませんが、昨年二月の特殊法人の整理合理化につきましての閣議決定等に沿いまして、地方公共団体民間では対応が困難な事業を重点的に実施するようにということで指導しておるところでございます。特に、分譲住宅事業につきましては、民間でも実施可能なものから撤退をしていきまして、質の高い住宅市街地を創出するために必要不可欠な場合等に限定しているところでございます。  いずれにいたしましても、公団住宅は、行政区域を超えました広域的観点より大都市地域中堅所得者層が負担可能な住居費で入居できるように供給していくべきものであると考えております。今後とも、建設コストの低減などによりまして適切な供給そのものを心がけるように頑張っていきたいと、こう考えておる次第でございます。
  233. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。終わります。
  234. 山口哲夫

    山口哲夫君 先ほど同僚議員からも質問がありました国鉄職員千四十七名の採用問題について質問をいたします。  御案内のとおり、ことしは国鉄が民営化されてちょうど十年目になります。しかし、千四十七名の採用問題がいまだに未解決の状態にございます。当時、国鉄労働組合に所属する職員の方が採用されなかったというようなことで、これが地労委、また中労委でもって審議をされました。  先ほどの労働大臣のお話ですと千四十七名、地労委、中労委の審議については十八件というふうにお話しされておりましたけれども、私の調査によりますと地労委では十九件、それから中労委では十五件、先ほど十四件とお話しされましたけれども。  数字の違いは別といたしまして、この地労委、中労委でJRに採用しなかったことは不当労働行為である、したがってこれはJRに採用するべきであるというような救済命令が出されたわけでございます。しかし、JR側はこの救済命令に従わないで裁判に持ち込んだというのが実態でございます。  これに対して、先ほど永井労働大臣の答弁は、労働委員会の命令が出たらこれで終わりというのが本来の姿だと、こういうふうにお答えされました。私も全く同感であります。しかし、この本来の姿にJRの企業側が、会社側が従おうとしない。これについて、どうしてもやっぱりおかしいと思う。大臣、おかしいと思いませんか。
  235. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) まず初めに、中労委にかかっております件数の関係でありますが、失礼をいたしました。一件が結審はされておりますが、まだ具体的な裁定が下されておりませんので、それを除きまして十八件ということでありますから、訂正をしておきたいと思います。  今、先生の御指摘がありました労働委員会でございますが、労働委員会は準司法的な権限を有する第三者の独立機関でありますから、労使紛争を解決するために労働委員会が設置をされているというその趣旨からいきますと、労働委員会の裁定に基づいて処理されるのが一番望ましいわけであります。しかし、日本の法制上は絶対的な、例えば仲裁裁定のようなそういう拘束力を持っておりませんので、今の法制のもとでは、当事者がその救済命令を不服として法廷に持ち込むということの道もこれまた保証されておりますから、そのことを私は最前申し上げたわけでありまして、それが好ましいことであっても、そうでなければならぬと命令する権限を行政が持っておらないということを私は申し上げたのであります。  本来なら、労働委員会で結審したものをそのまま労使双方が受け入れるというのが一番好ましい姿であることは論をまたないところだと思っております。
  236. 山口哲夫

    山口哲夫君 永井労働大臣は参議院の労働委員会でこういうふうにも答弁しております。今もちょっと触れておりましたけれども、「でき得れば労働委員会の結論に基づいて措置されるのが一番好ましい」と。全く同感であります。  確かに、行政側としては、この命令に従いなさいという命令を出すことはできないのは、これは法制上十分承知しております。しかし、この問題に限っては、普通の問題とは違うと思います。少なくともこれには政府が関与した大きな政治的な問題として当時の国鉄を民営化させたという、そういう政府の責任がやっぱり私はあると思うわけです。そういう点から考えて、やはり労働大臣はもう一歩踏み込んで、JR側にこれに従うような説得をするべきでないでしょうか。その点いかがでしょうか。
  237. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 歴代の運輸大臣、労働大臣は、この問題の円満な解決を目指して大変な御苦労をいただいてまいりました。私も、政務次官当時、労使双方にそれぞれ集まっていただきまして、何とか労働委員会の命令を受け入れて労使双方で決着を図ってもらいたいということをお願いしたことがございましたけれども、不幸にして今までそのことが実っていないのであります。  したがって、その経過を十分に承知しながらも、今私どもはこの問題の解決がどういう方法でできるのかということなどを非常に真剣に検討はしておりますが、まだ具体的にそのことが日の目を見るといいますか、そういう状況には至っていないという現実だけは申し上げておきたいと思います。
  238. 山口哲夫

    山口哲夫君 運輸大臣にお尋ねいたします。  先ほどの答弁を聞いておりますと、決してこの問題を静観してはいない、労働大臣とも連携をして解決に努力をしていきたいと。そうお答えになっている一方で、この問題は労使双方の問題でもある、こうお話をされております。  しかし、先ほども申しましたように、民営化というのは政府の方針として実行してきた問題でございます。ですから、先ほどもお話があったように、当時の中曽根総理はこう答えております。一人といえども心配をかけない、そのために全力を注ぐ決心である、そこまで言い切っているわけであります。しかし、残念ながら、一人といえども心配をかけないとはおっしゃっているけれども、千四十七名の方々は毎日大変な苦労をしております。本人だけではありません。子供たちの苦しみを考えたら、一体どうしてくれるんだろうか。恐らく子供たちにしてみたら、一日も早くうちのお父ちゃんが採用してもらえたらと、毎日そういう幼い子供が考えているんでないでしょうか。  そんなことを考えたら、中曽根総理が当時おっしゃったような、何としても一人も路頭に迷う者を出さないというその決意というものを、やっぱり今の大臣が実現させていただかなければならないと思うんですね。しかも、今の橋本総理大臣は当時の直接担当の運輸大臣でありました。そのことを考えると、今の橋本内閣の中でどうしても解決してほしい、私はそう願っております。  この問題を考えるときに、どうもJR側というのは運輸行政の公共性というものを甘く見ているんでないだろうか。国民の生活や日本の経済を発展させるために欠かすことのできないこの運輸という業務は、どんなものよりも大きな公共性を持っているはずなのに、その認識が甘いんでないかと思うんですが、どう思いますか。
  239. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 国鉄改革のことにつきまして今いろいろお話を承ったわけでありますが、今日千四十七名の方々の問題、またあわせて当時、昭和六十二年四月の国鉄改革に際しましては北海道、九州を中心として全国で七千六百人余の再就職先未定者が発生をしました経緯もありまして、その後、再就職促進法、これに基づきまして三年間いろいろな努力をしてきたわけであります。その経緯につきましては委員十分御承知のことと思いますし、JRにつきましてもそれぞれ努力をしてきたことは事実ではなかろうかと、このように思います。  しかし、現在千四十七名の問題があるということは事実のことでありますし、また御承知のとおり労働委員会に係争中。そして、このことにつきましても過去何回か政治決着のために我々は労使双方に協力方を求めてきた経緯もございます。  残念ながら関係者間に大きな意見の隔たりがあるわけでありまして、また経営者側に裁判で決着と、このような考え方もございまして、私どもといたしましては、先ほども答弁申し上げましたが、労働大臣にも大変御心配をちょうだいしておるわけでありまして、いろいろ連携を持ちまして努力をしてまいりたい、このように考えております。
  240. 山口哲夫

    山口哲夫君 両大臣、一生懸命努力をしていきたいとおっしゃるんですけれども、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、お二人のお答えを聞いておりますと、おれたちが労働大臣、運輸大臣のときにこの問題は何としても解決してみせるという、そういう熱意が伝わってこないんです。  今まで、連立政権ができてから運輸大臣も三人目、労働大臣も三人目。私は、各大臣に今度こそは解決していただけるだろうと思って、大臣室にも足を運んで大きな期待を寄せておりました。ことしは、先ほど申し上げたように、民営化されてちょうど十年目です。この十年目という節目の年に解決しなければなかなかこの問題は解決しないんでないだろうか。  しかも、先ほどもお話があったように、清算事業団が抱える債務は二十兆を超えると言っております。恐らく運賃も値上げせざるを得ない時代が来るんでないだろうか、国民の負担で解決すると言っているわけですから。大蔵省の話じゃないけれども、今度は目的税で解決しなければならないという、そんな発表をしたことはないとおっしゃっていたけれども、新聞ではそういうふうに言われているわけですね。  そういうことを考えれば、やっぱりこの問題、二十兆を超える債務を解決していくためには、国民一人一人の理解が得られなければこの国鉄問題というのは私は解決していかないと思うんです。そう考えたときに、まず第一に、この民営化でもっていまだに採用されていない千四十七名の採用問題、これをまず解決しない限り、私は国民の理解をなかなか得ることができないだろうと思います。  しかも、先ほど来お答えがあったように、準司法的な権限を持つ労働委員会、それが不当労働行為であるから採用しなさいという命令を出しているわけですから、それにも従わないということになれば、一体JRという会社は何を考えているんだろうか、あえて問題をこじらせようとしているんでないかとさえ言わざるを得ないわけですね。  私は、両大臣に大きな期待を寄せているだけに失礼なことを申し上げたわけですけれども、あなた方が大臣のときに十年目を迎えるわけですから、何としても解決していただきたい。その決意のほどをもう一度両大臣からお聞かせいただきたいと思います。
  241. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 先生御案内のように、このJRの労使関係というのは非常に複雑なものがあることも事実であります。労働組合も幾つかに分かれておりますし、よく世間で言われるような労労問題ということが存在していることも、これまた否定できないところであります。したがって、この問題を解決するためには、とにもかくにも労使間でどうやって話し合いができるかということが一番大事なところでありまして、そのために行政の側が何ができるかということにかかってくると思っているわけであります。  ここで現在までの経過をつまびらかにすることはできませんけれども、この問題を放置するのではなくて、一日も早く円満に問題の処理ができるように、そうして安全輸送を確保するためのよき労使関係というものが確立できるように、その願いを込めて私も運輸大臣も力を合わせながら全力を今尽くしているところであります。その解決のための決意は十分に御理解いただける、このように思っているわけであります。
  242. 亀井善之

    ○国務大臣(亀井善之君) 今、労働大臣からもお話がありました。私どもずっとこのことにつきまして、いろいろの場をつくるとか努力をしておるわけでありまして、先ほど先生からも御指摘のとおり一つの節目と、こういう面におきましてもさらに努力をいたさなければならない、このように考えております。
  243. 山口哲夫

    山口哲夫君 いろいろ複雑な問題があるということは私も承知しておりますけれども、しかしその以前に一番大事な問題は何かといえば、いまだかつてこんなことはないと思うんですけれども、これだけ多くの労働委員会の救済命令がきちんと出ているということが一番大事だと思うんですよ。  ですから、そこに焦点を当てて、その精神に立って行政的な立場で説得をしていただくことしかないと私は思うんです。両大臣で何回協議されたかわかりませんけれども、あるいはJR東日本の例えば社長を何回お呼びになったかわかりませんが、私はやっぱり執拗にこの問題は両大臣の熱意、御努力によって解決していただくしか道はないと思うんです。  大きな期待を寄せておりますので、ぜひひとつあなた方お二人の大臣時代に解決していただくように重ねてお願いをして、この問題は終わります。  次に、男女雇用機会均等法の問題で質問をいたします。  七月十六日に婦人少年問題審議会婦人部会が、この法の改正問題について審議をされた中間報告を発表されております。労働側と使用者側との間に相当意見の相違があると中間報告を読んで感じました。募集、採用はもちろんでございますけれども、私はこの意見の相違を考えたときに、この二つの問題だけではなくして配置、昇進、定年、退職、解雇に至る雇用管理のいわば全ステージにおいて、差別的取り扱いについては禁止規定と罰則規定をきちんと設けない限りこの問題は解決できないというふうに私は判断しておりますけれども、大臣いかがでしょうか。
  244. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 昭和五十九年だったと思うのでありますが、審議会でこの問題の答申がされましたときに、その辺のところも労使でかなり対立のあった中で、いきなり禁止規定にするのではなくてお互いに努力をし合うことが最も肝要であるという立場から現在の均等法ができたというふうに私は認識をいたしているわけであります。  今回、十六日に中間報告をいただきましたけれども、この中間報告では、労使それぞれの御意見が鋭く対立している部面もありますし、一歩踏み込んでお互いに妥協し合うという面もございますが、その双方の意見が全部そこに報告されているわけであります。  例えば、均等法施行十年の社会経済情勢の進展を踏まえまして必要な法的整備を行うべき時期に来ていると、このことについてはそれぞれ労使の代表が意見の一致を見ているわけであります。  それを受けまして、均等取り扱いの促進につきましては、労働側委員からは、募集、採用から定年、退職、解雇に至る雇用管理の全ステージにおける差別的取り扱いを包括的に禁止すべきであるという意見が出されております。これに対して使用者側からは、募集、採用及び配置、昇進に関する均等取り扱いをさらに進めるための方策として、現時点における男女の就業実態の差などに留意しつつ議論を深めるべきだという意見が出されました。  これは言いかえれば、五十九年のときの審議会の答申にも出ておりますように、女性に対する保護のあり方ということがここに大きくかかわり合いを持ってきております。その面につきましても労働者側からは、保護規定は最大限確保すべきであるという基本的な認識に立ちながらも、現実に今のままの保護規定でいいのかどうなのかと。五十九年番時の答申を受けて、母性保護以外についてはその保護規定について十分に見直しを図るべきだという趣旨が盛り込まれているわけでありますが、そういう立場で最低限のものは絶対的に確保するという立場を労働側はとっているわけであります。そのほかについては見直しがなされていいのではないかと。  これに対して使用者側は、全面的に保護規定は排除すべきであると、そうしないと男女の差をなくするような対応ができない、こういう議論になってきておりまして、これらについて私は、双方の意見を十分にこれからも議論していただいて一日も早く結論が出るように、そのことを願っているわけであります。  なお、労働省ではこの中間報告を受けまして、八月一日から九月三十日まで、今まででは例のないことでありますが、労働省の婦人局にファクスを設けまして、各界からの意見を幅広く聴取いたしまして、その意見を審議会にも反映させようという手だてを現在講じていることも申し上げておきたいと思います。
  245. 山口哲夫

    山口哲夫君 お互いに努力し合うことは大事でしょうけれども、しかしこういう問題は特に経営者側の経営権の問題もあるわけでして、そういう経営権の問題を振りかざされたのでは到底解決できないので、やはり禁止規定、罰則規定というものを設けない限りはこの問題は解決しない、私はそんなふうに思っておりますので、そこを私の意見として申し上げておきたいと思います。  そこで、二つお尋ねいたしますけれども、果たしてこの機会均等法という法律が正しく守られているかどうか、その法律の実効性を高めるためにも企業内に労使で構成する苦情処理機関の設置を私はやっぱり義務づけるべきだ、それでなければなかなかこの問題は解決しない、そう思いますことが一つ。  それからもう一つは、労働者側から機会均等調停委員会に調停の申請が仮に出されたといたしましても、現在は企業側も調停に同意しなければ委員会は開かれない、こういうことになっているわけです。これでは調停委員会は全く機能しないと言っても私は決して過言ではないと思います。ですから、これは当事者の一方の申請で調停が開始できるようにするべきである、そう思います。  その証拠に、この十年間、実際に調停が行われたというのは住友金属の女性が訴えたたったの一件だけです、十年間でですよ。ですから、いかに今の法が不備であるかということを考えたら、今私が申し上げたように、一方の申請が出されたらそれで調停が開始できるようにするべきであると思います。  大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  246. 永井孝信

    ○国務大臣(永井孝信君) 先生の御指摘でありますが、この内容の決定の仕方についてはあくまでも審議会の答申を受けて対応するということになっておりますので、審議会の検討が進められている段階でこうあるべきだということを断定的に申し上げることは非常に難しいわけでありますが、この中間報告の中でも、今先生が御指摘のように苦情処理や調停制度のあり方について労使双方からそれぞれ意見が出されております。これも中間報告では一致していないのであります。  その中で、御紹介申し上げておきますと、企業内の苦情処理のあり方については、労働者側委員からは、労使で構成する苦情処理機関の設置を義務づけるべきであるという意見が出されております。これに対して使用者側委員からは、企業内の苦情は自主的に解決するのが基本であって、企業が自主的に取り組む方策を充実していく必要があるという意見で、いわば対立のままになっているわけであります。  また、調停制度のあり方につきましては、労働者側委員からは、調停は当事者一方の申請で開始できるようにすべきであると、先生の御指摘のような御意見であります。また、機会均等調停委員会には労使の代表を入れて、救済命令を出すことができるようにすべきであるという意見が出されております。一方、これに対して使用者側委員からは、調停は両者が歩み寄るのが原則である、その開始に双方が同意しないと調停そのものが機能しないと、こういう意見であります。そして、均等法上の調停は公正中立な第三者に判断させるべきであって、救済命令の権限を付与することは適当でないという意見が出されておるわけであります。  いずれもお互いの意見が対立のままにありまして、これらの論点につきましても、その御意見などもファクスでいただくとか、いろんなことをしながら十分に労使で議論していただくことが重要だと考えておりまして、そのこれからの審議の経過というものを尊重してまいりたいと思っております。  また、現在までに調停が住友の一件しかないという御指摘がありましたが、そのとおりであります。しかし、全国に展開しております婦人少年室に寄せられました苦情処理といいますか、調停にかかわるような問題についてはかなりの数に上っておりますが、そのうちの大半は、ここに今細かい数字は持っておりませんが、三分の二程度はお互いの話し合いの中でその調停申請が取り下げられたというふうに聞いているわけであります。  したがって、そのほかの関係の中で住友の一件だけが正式に調停作業が進められたということでありますが、より婦人少年室の機能が発揮できますように、私ども、婦人少年室長に先日も集まっていただきまして、そのような指導を徹底したところであります。
  247. 山口哲夫

    山口哲夫君 審議会があるわけですから、審議会の意見を聞くのは結構ですけれども、その前に政府としてどう考えるかという、そういうことがやっぱり私は一番大事だと思うんです。そういう意味で、ぜひ今申し上げたようなことを十分御検討いただきたい、このことをお願いして、終わります。  ありがとうございました。
  248. 野沢太三

    委員長野沢太三君) 他に御発言もないようですから、運輸省労働省建設省及び住宅金融公庫決算の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会      —————・—————