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1996-04-23 第136回国会 衆議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年四月二十三日(火曜日)     ――――――――――――― 議事日程 第十号   平成八年四月二十三日     正午開議  第一 訪問販売等に関する法律及び通商産業省     設置法の一部を改正する法律案内閣提     出)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  日程第一 訪問販売等に関する法律及び通商産   業省設置法の一部を改正する法律案内閣提   出)  橋本内閣総理大臣日米首脳会談及びモスクワ   原子力安全サミットに関する報告及び質疑     午後零時四分開議
  2. 土井たか子

    議長土井たか子君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  日程第一 訪問販売等に関する法律及び通商   産業省設畳法の一部を改正する法律案(内   閣提出)
  3. 土井たか子

    議長土井たか子君) 日程第一、訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。商工委員長甘利明さん。     ―――――――――――――  訪問販売等に関する法律及び通商産業省設置法   の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――     〔甘利明登壇
  4. 甘利明

    甘利明君 ただいま議題となりました法律案につきまして、商工委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、電話勧誘販売マルチ商法等をめぐる取引の現状にかんがみ、消費者利益の保護を一層図るための措置を講じようとするものであります。  その主な内容は、  第一に、電話勧誘販売について、書面交付の義務づけ、不実の告知の禁止等販売業者等に対する規制を設けるとともに、八日間のクーリングオフの制度を導入すること、  第二に、連鎖販売取引について、禁止行為対象者の範囲を拡大し、クーリングオフの期間を十四日から二十日に延長すること、  その他、罰則の強化消費経済審議会設置等について定めること等であります。  本案は、去る四月九日当委員会に付託され、翌十日塚原通商産業大臣から提案理由説明を聴取した後、質疑に入り、参考人から意見を聴取する等慎重な審議を行い、昨二十二日質疑を終了いたしましたところ、自由民主党社会民主党・護憲連合新党さきがけの三会派から、消費経済審議会に係る施行日を公布の日に改める修正案が提出され、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決すべきものと議決いたしました。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  5. 土井たか子

    議長土井たか子君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 土井たか子

    議長土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり修正議決いたしました。      ――――◇―――――  内閣総理大臣発言日米首脳会談及びモス   クワ原子力安全サミットに関する報告
  7. 土井たか子

    議長土井たか子君) 内閣総理大臣から、日米首脳会談及びモスクワ原子力安全サミットに関する報告のため、発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎さん。     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  8. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 私は、四月十六日から十八日まで国賓として訪日されたクリントン大統領との間で十七日に日米首脳会談を行い、その後、十八日から二十日まで原子力安全サミットに出席するためモスクワに滞在し、二十一日に帰国しました。  日米首脳会談では、世界の将来にとってもかけがえのない日米両国関係の大切さを再確認し、さらに、二十一世紀に向けた両国協力関係方向性を示すことができました。そして、その議論を踏まえ、日米両国民へのメッセージ及び日米安全保障共同宣言の二つの文書に合意し、これらを発表いたしました。  日米両国民へのメッセージでは、両国が共有する民主主義自由等価値の大切さについて述べ、そして地域問題への両国協力国連改革軍縮へ向けての協力経済関係などに触れつつ、日米関係両国国民にとっていかに大切か、また両国が将来の課題にどのように協力していくかがまとめられております。  そして、安保共同宣言においては、我が国の安 全、アジア太平洋地域の平和と繁栄を図る上で日米安保体制がこれまで同様重要な役割を果たしていくことを確認し、またこの宣言が将来へ向けての両国協力出発点であることをうたいました。  沖縄施設区域整理統合縮小の問題については、首脳会談において、沖縄方々負担を軽減するための両国政府努力を念頭に置きつつ、特別行動委員会中間報告内容を評価するとともに、この中間報告に取りまとめられている措置を的確に実施していくことが重要であること、また十一月までに特別行動委員会作業成功裏に結実させることを確認し合いました。  経済関係については、私から、我が国政府規制緩和など経済構造改革に向け努力中であることを説明するとともに、個別の問題についても、これまでの実績を踏まえ、必要な場合にはいつでも話し合っていくとの立場を表明しました。大統領よりは、財政赤字の削減に引き続き努力するとの姿勢が示され、我が国経済が持続的に成長することが世界経済にとって重要であるとの指摘がありました。  また、人類地球社会に対する脅威日米協力して立ち向かうためのコモン・アジェンダと呼ばれる協力に、テロリズム、地震のような自然災害、新しい感染症などに協力して対処していくよう、新たに六つ分野を追加することなどに合意しました。加えて、二十一世紀型の自然と共生する発展あり方につき、ともに検討することを確認しました。  さらに、日米両国民の相互理解促進するために、米国の高校生、大学生、教職員、芸術家などの若者がより多く日本について学ぶ機会を拡充するための包括的な取り組みを進めていくとの方針大統領に伝えました。  そのほか、私とクリントン大統領は、中国、朝鮮半島、ロシア、旧ユーゴスラビア、中東和平国連改革原子力安全サミットなどのさまざまな国際問題についても意見を交換し、両国政策方針にっき話し合いました。  今回の首脳会談を通じ、日米関係はこれまでのさまざまな分野での協力成果をさらに促進していくための大きな方向性を示すことができたものと思います。政府としては、今回の首脳会談で私とクリントン大統領から両国民及び世界に対して示した日米協力関係の今後の姿を、日米両国さらには世界のためにさらに具体化させるよう誠心誠意努力してまいる所存でありますので、議員各位の一層の御協力をお願いいたします。  次に、原子力安全サミットについて申し述べます。  冷戦終結に伴う東西対立の解消及びロシア政治経済改革進展により、原子力安全の分野においても、これまで対立関係にあった国々が新たな協力関係発展させていく可能性が広がりっっあります。このような状況のもと、チェルノブイリ事故の十周年に当たる本年、主要国首脳会議、いわゆるサミットに例年参加している七カ国にロシアを加えた八カ国の首脳が一堂に会し、原子力安全の分野における国際協力重要性を改めて確認したことは、極めて有意義であったと評価しております。  今次サミットでは、民生用原子炉の安全、放射性廃棄物管理核物質の安全な管理の三つの主要議題に加え、核軍縮・不拡散の問題につき首脳間で活発な議論が行われました。また、会議後半にはウクライナクチマ大統領の参加を得ました。その結果、原子力安全モスクワサミット宣言全面核実験禁止条約に関する声明及びウクライナに関する声明の三本の文書が発表されました。さらに、レバノン情勢ボスニア情勢を含む国際問題についても有意義意見交換が行われ、特にレバノン情勢については、敵対行為を直ちに終了するよう訴える趣旨首脳文書が採択されました。  今次サミットの重要な成果及び私から強く主張した点は、次のとおりであります。  まず、原子力利用に当たり、安全を最優先すべきことが確認されました。この分野の初めての国際的な法的枠組みである原子力安全条約早期発効重要性が訴えられたことは一つの成果でありました。私からは、原子力安全のための国際協力の一環として地域協力重要性指摘し、特にアジアの国としての立場から、本年中を目途に東京アジア諸国原子力安全会議を開催することを明らかにしました。  我が国が重視する放射性廃棄物海洋投棄の問題については大きな進展が得られました。この点は後ほど御説明したいと思います。  核軍縮・不拡散分野では、私は、被爆がいかに悲惨かを体験した非核兵器国としての立場から、日本意義ある貢献をしていきたいと強調しました。特に全面核実験禁止条約早期署名を強く訴え、交渉促進のため協力していく意向を表明しました。今回、全面核実験禁止条約に関する声明が発表されたことは、交渉促進世界にアピールする上で大きな意義を有すると考えます。  今次サミット成果を踏まえ、原子力安全問題での国際協力強化並びに全面核実験禁止条約交渉軍縮促進に真剣に取り組んでまいる所存であります。  また、今回の原子力安全サミット出席機会に、私はエリツィンロシア連邦大統領会談をいたしました。また、クレティエン・カナダ首相会談し、今日の日加関係が良好であることを確認いたしました。  エリツィン大統領との会談において、私は、ロシア改革路線、二国間関係、国際問題につき幅広く忌憚のない有意義な話し合いを行いました。この会談を通じ、今後の日ロ関係全般をバランスよく前進させるための政治的弾みをつけることができたと考えております。また、エリツィン大統領と個人的によい友人関係をつくることができたと信じます。  ロシア改革国際社会全体にとっても極めて重要であり、今回の会談エリツィン大統領ロシア改革路線を堅持するとの決意を表明したことを高く評価しており、私は、ロシア改革路線が継続される限り、引き続きこれに協力していく考えであります。  領土問題につきましては、東京宣言基礎として両国関係をさらに発展させていくことが確認され、外務大臣レベル平和条約交渉を再活性化することが重要であるとの点で認識一致がありました。さらに、そのために大統領選挙後に次官級平和条約作業部会を再開することが合意されました。これは、大統領選挙後、領土問題に両国協力して取り組んでいく上で大きな政治的意義を 持つものと考えます。  また、北方四島周辺水域における日本漁船操業枠組み交渉にっきましては、交渉を続けていくことに合意し、妥結に向けてお互いに努力していくことについて認識一致があったことも有意義でありました。  放射性廃棄物海洋投棄問題について、私の要請を受けて、エリツィン大統領から、ロンドン条約附属議定書の改正を本年中にも受諾すること、さらに、それまでの間も引き続き海洋投棄を行わないことを明言されたことは、高く評価されます。  さらに、ロシア極東地域との関係については、これを強化発展させていくことの重要性につき認識一致がありましたことは、今後の日本と同地域との関係強化に資していくものと考えます。  また、今回、四月末に臼井防衛庁長官が訪ロすることに合意いたしましたことは、両国関係政治対話の幅を広げ、両国間の信頼醸成を一層促進していくことになるものと考えます。  本年は、両国国交回復四十周年の年に当たります。私は、今回の会談を踏まえ、日ロ関係の前進のため一層の努力を払っていきたいと考えます。(拍手)      ――――◇―――――  内閣総理大臣発言日米首脳会談及びモスクワ原子力安全サミットに関する報告)に対する質疑
  9. 土井たか子

    議長土井たか子君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。武部勤さん。     〔武部勤登壇
  10. 武部勤

    武部勤君 自由民主党武部勤でございます。  質問に先立ちまして、厳しい国会対応の日々の中で、クリントン大統領をお迎えし、歴史的な成果を残した日米首脳会談に臨み、引き続きモスクワ原子力サミットに出席するなど、超ハードスケジュールをすべて成功裏にこなされた橋本総理の情熱と行動に、心から敬意と感謝の意を表したいと存じます。(拍手)連日まことに御苦労さまでございました。  さて、最初の質問日米首脳会談に関してであります。  このたびの日米首脳会談の後に発表されました日米安保共同宣言は、アジア太平洋の平和と安定のために日米同盟重要性を明確にしたものでありまして、私は、歴史的にやがて吉田首相岸首相に匹敵する偉業と称されるであろうと存じます。  まさに、今回の会談の成功は、総理が我が党総裁に就任されたときから、日米関係ほど重要な二国間関係はないという強い信念のもとで今日まで粘り強く行動された成果であると思います。  そこで、今後重要なことは、共同宣言に盛られている内容を速やかに実行に移すことであろうと思います。とりわけ沖縄における米軍基地整理統合縮小の問題については、例えば普天間基地返還に伴う基地機能本土移設など、日米安保体制は全国の人々によって支えていくという、そういう観点からの取り組みがぜひ必要であろうと考えます。  同時に、今回発表された共同宣言のすばらしい意義について正しく国民理解していただき、支えていただくための努力が必要であろうと考えます。また、周辺アジア諸国に対しても誠意を持って説明するならば、必ずや理解が得られることと私は信じます。総理のお考えと御決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。  次に、日米間の安全保障面関係に基づく二国間協力の推進は極めて重要であり、中でもガイドライン見直しを開始することで意見一致したことの意味は大変大きいものと考えます。  五五年体制下では、安全保障論議が、自衛隊違憲日米安保廃棄という強い勢力がありましたが、今日、三党連立政権においては、自衛隊合憲日米安保堅持ということで現実的な対応をしてまいりました。責任政党としてのすばらしい見識によるものでありまして、今後は、ポスト冷戦ポスト戦後五十年ということで、戦後のすべてのタブーに挑戦することが強く求められてくるものと考えます。  特に、共同宣言には、ACSAの実施次期支援戦闘機F2などの装備、技術の相互交流弾道ミサイル防衛などの研究協力などが述べられております。今後、まず憲法及び法令に従って具体的に詰めの作業をしていくことが緊急のテーマであろうと思いますが、我が党の安保調査会では、ガイドライン見直し国内法整備については既に具体的な検討に着手しているところであります。政府安保会議議長というお立場から、総理はこの問題にどのように取り組まれるおつもりか、お伺いしたいと存じます。  また、集団的自衛権の問題に関しても、現行政府解釈では米軍への支援が具体的にどこまで許されるのか、それが有事の場合でも十分機能するのか、今後積極的に論議を始めるべきと考えますが、いかがでしょうか。  総理は、「変革と創造」の政治を掲げて、橋本内閣の目指す目標を明らかにされました。私は、これからの日本あり方が問われている今、内外に、日本人がどんな国家を目指し、どういう生き方をしょうとしているのかをわかりやすく示していくという意味からも、国の基本法である憲法見直しについて国民的な論議を活発化していくべきと考えますが、総理の御所見をお聞かせいただければ幸いです。  次に、私は、今回の日米首脳会談において、安保の側面だけではなく、人類地球社会に対する脅威に対し、日米協力して立ち向かっていこうと確認されたことを高く評価したいと思います。人類共通の問題にグローバルな視点で取り組んでいかなければなりません。これは大変重要なことであると存じます。今後、コモン・アジェンダを単に日米政府間の協力にとどめることなく、民間部門、さらには多数の国と人々が参加するよう働きかけていくべきと考えます。  そこで、お尋ねいたしますが、クリントン大統領と新たな六つ分野を創設することで合意されたということでありますが、この新分野をどのように推進していくおつもりか、総理のお考えを伺いたいと存じます。  さて、次は、モスクワで開かれた原子力安全サミットについてお伺いいたします。  今回の原子力サミットは、エリツィン大統領提案による原子力発電核物質安全管理議題を絞った初めての会合であったと伺っております が、その意義はどのようなものだったのでしょうか。  特に、このサミットの合意にある、原子力利用の安全に絶対的優先順位を与え、世界じゅうで安全に関する基本原則と適合して原子力利用が行われるよう互いに協力するとうたわれた点、また、放射性廃棄物海洋投棄を禁止することにコミットするということ、さらに、九月までにCTBTの交渉妥結条約に署名するとの決意を確認したことなど、我が国にとりまして重要な点が合意されましたことは、高く評価されてしかるべきと考えます。  ただ、もう少し望みたかった点は、原発の安全性に関する国際協力や、老朽化した施設及び廃棄物処理具体的プロセスが示されるべきではなかったかということであります。  かつて橋本総理政調会長であったとき、強い御指示により、ロシア放射性廃棄物海洋投棄に対し、ロシア大使館に我が党議員厳重抗議文を届けたことは記憶に新しいところであります。今回のサミットでは、この問題にロシア側からどのような確約を得ることができたのかを含めて、原子力サミット会議の評価と意義について具体的にどのような成果があったのかをお答えいただきたいと存じます。  次に、この機会利用して行われた日ロ首脳会談についてお尋ねいたします。  まず、領土問題についてでありますが、東京宣言基礎とし両国関係発展が確認されたとともに、外務大臣レベル平和条約交渉を再活性化することが重要であるという点で意見一致し、早期作業部会を再開することで合意されたと承知いたしております。本年は、両国間の国交が回復され四十周年に当たる節目の年であります。総理としては、今回の首脳会談の結果を踏まえ、今後、北方領土問題にどのように取り組んでいくのか、決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。  最後に、北方四島周辺水域における日本漁船操業枠組み交渉についてでありますが、総理からの先刻の御報告で大きな可能性を感じた次第であります。この問題の成否いかんによっては、北方領土問題についてもより現実的な幅の広い進展が期待されることでもあり、相当困難な交渉であろうと思いますが、強力なリーダーシップによってぜひ妥結に導かれますよう総理の特段の御努力をお願いいたしたいと存じます。総理の御決意のほどをお聞かせいただきたいと存じます。  以上、日米首脳会談及びモスクワで行われた原子力サミット日ロ首脳会談において合意されました事項について、総理の御見解をお尋ねしてまいりました。  私たちは、今、地球という共通の家に住みながら、日本存亡とともに人類世界存亡をかけた試練の時代に生きようとしているのであります。四月十七日、太陽の光が降り注ぐ記者会見の場の橋本総理クリントン大統領、そこに見た日米両国首脳は、ともに確たる意思と信頼に裏打ちされた二十一世紀へのチャレンジャーの姿でありました。  橋本総理のいよいよの御奮起と御活躍をお祈り申し上げ、私の質問を結びます。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  11. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 武部議員にお答えを申し上げます。  まず、沖縄県における米軍施設区域整理統合縮小について、また日米安保共同宣言アジア諸国に対する説明の御質問がありました。  沖縄県には、もう申し上げるまでもなく皆さんがよく御承知のように、多数の施設区域が集中しており、長い間、県民の方々に大変なその結果としての苦しみを与えてまいりました。こうした沖縄県の方々我が国全体の安全のために担っていただいてきた負担を、日米安全保障条約目的達成との調和を図りながら、少しでも軽減していくためには、普天間飛行場を初めとした特別行動委員会議論になってきた多くのテーマを解決していくことが我々に求められておりました。  今回、特別行動委員会中間報告に、普天間飛行場全面返還を含め、きちんと報告がまとめられたわけでありますが、御指摘のように、今後これを実現していきますためには、空中給油機十数機の岩国飛行場への移駐などのように、沖縄県の中にありました米軍機能の一部を本土に移す必要があるものもございます。また、県内で他の地域に御協力を願わなければならないものもございます。このためには、これを実現していく過程で、本土を含む関係者の御理解と御協力をぜひとも得なければなりません。  さらに、この中間報告措置を実現いたしますためには、十六日の閣議決定で行いましたとおり、法制面及び経費面を含めて総合的な観点から早急な検討を必要とし、十分かつ適切な措置を講ずることが求められております。政府としては、こうした諸施策を実施する観点からも、関係者の御理解、御協力が得られるよう誠意を持って努力してまいります。  また、日米安保共同宣言は、日米安保体制の重要な役割を改めて確認いたしますとともに、二十一世紀に向けた日米協力関係強化の方策を明らかにするものであり、第三国に対して日米が対抗するようなことを目的としたものではありません。このことを含め、共同宣言趣旨につきましては、中国及び韓国には既に外交ルート説明をし、理解を得るよう努力をいたしております。今後とも、日米防衛協力のための指針見直しを初めとして、共同宣言で示されました日米協力方向実施に移すに当たり、アジア近隣諸国との関係を十分配慮してまいりたいと考えております。  また、十七日、大統領との間で署名いたしました日米安全保障共同宣言そのものは、二十一世紀に向けて、我が国の安全、アジア太平洋地域の平和と安定のために引き続き重要な役割を果たしていく日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を含め、日米間の安全保障面での協力促進していく旨明らかにいたしております。そうした考え方の上に立ちまして、共同宣言において日米防衛協力のための指針見直しを表明いたしました。見直しの具体的な内容は、まさにこれからの検討を待つ必要があります。しかし、冷戦終結後の安全保障情勢というものを踏まえ、これに対応した形で日米防衛協力を一層効果的に進めていくという観点から、見直し作業を精力的に進めてまいりたいと考えております。  また、米軍支援集団自衛権政府解釈に対するお尋ねがございました。  政府としては、安全保障上のさまざまな事態対応し、アメリカとの協力も含めて、我が国がこ れに対応していくための手段をきちんと整備する必要があると考えております。このような考え方に立ちまして、大統領との間で署名いたしました日米安保共同宣言におきまして、指針見直しを開始することとともに、日本周辺地域において発生し得る事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米協力に関する研究促進することも表明いたしました。こうした見直しあるいは研究具体的内容にっきましては、まさに今後の検討を待つ必要がありますが、いずれにせよ、我が国対応憲法に従って行われることは当然でありまして、集団自衛権の行使のように我が国憲法上許されない事項について、従来の政府見解の変更はございません。  また、これに伴って憲法見直しについて国民的な論議を活発にしていくべきだという御意見を承りました。  しかし、私は、憲法基本理念である民主主義あるいは平和主義基本的人権の尊重といった価値、これは現行憲法が制定されましてから今日まで長い間一貫して国民から支持されてきた、将来においても堅持すべき価値観だと思っております。  憲法九十六条には憲法の改正手続を規定しておりますし、私も憲法が法理的に永久不変なものだと申し上げるつもりはありません。また、憲法をめぐる議論を行うこと自体、それが行われること自体、何ら制約されるべきでないことは当然です。  しかし、国の基本法である憲法の改正については、少なくとも世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要することだと私は思います。そして、今  平成八年四月二十三日 衆議院会議録第十九具日までも憲法改正についてはさまざまな御議論が提起をされてまいりました。そうしたプロセスを振り返ってみましても、私は、現在、国民の間に憲法改正の具体的内容についての合意が形成されているとは考えておりません。したがって、現段階において、内閣として憲法を改正するという方向にはございません。  また、コモン・アジェンダについてお尋ねをいただきました。  今回、これまでの協力分野に加えまして、新興・再興感染症自然災害、これは我々は地震を例示といたしました。市民社会と民主化、テロ対策、地球的な食糧供給、二十一世紀のための教育工学の六つを新しい分野として追加をいたしました。しかし、これは一口に新分野といいましても非常に多様な内容を含んでおりますし、まさに真の意味での地球的な規模の協力を行おうとするなら、日米両国だけではなく、当然、両国の民間、NGO、さらには第三国にも協力の輪を広げていかなければなりません。  昨年の秋に行われましたAPECの非公式首脳会合におきましても、我が国のイニシアチブの中で、二十一世紀におけるこのアジア太平洋の成長の制約要因として、人口、食糧、エネルギー、そして環境といったテーマが取り上げられている状況であります。私は、この場をかりて、広く内外の皆さんにコモン・アジェンダヘの参加を促したいと思います。  また、原子力サミットにおきまして、まず原子力利用に当たって安全を最優先すべきことが確認をされました。この分野の初めての国際的な法的枠組みである原子力の安全に関する条約早期日米首脳会談及びモスクワ原子力安全サミットに発効の重要性が訴えられたことは、一つの成果だと思っております。私からは、原子力安全のための国際協力の一環として地域協力重要性指摘するとともに、特にアジアの国としての立場から、本年中を目途に東京アジア諸国原子力の安全会議を開催することを明らかにいたしました。  我が国が重視する放射性廃棄物海洋投棄の問題についても大きく進展をいたしました。  さらに、私は、被爆がいかに悲惨かを体験した非核兵器国としての立場から、日本核軍縮・核不拡散分野においても意義のある貢献をしていきたいと訴えてまいりました。殊に全面核実験禁止条約早期署名を強く訴え、交渉促進のために協力していく意向を表明いたしました。今回、八カ国の首脳一致して全面核実験禁止条約に関する声明を発表いたしましたことは、従来この問題についてのロシアの態度が必ずしも明確でありませんでしただけに、私はこの条約交渉促進世界にアピールする上で大きな意義を有すると考えております。  また、放射性廃棄物の処理問題を含めお答えを申し上げますが、私は、日ロ首脳会談の際、放射性廃棄物海洋投棄の問題が我々にとっていかに深刻な問題であり、強い意識を持っておるかを強調いたしました。その結果、この日ロ首脳会談におきまして、エリツィン大統領の方から、ロンドン条約附属書の改正を本年中にも受諾する、そしてそれまでの間も引き続き海洋投棄を行わないという明言がなされ、翌二十日の原子力安全サミットにおきましても、ロンドン条約附属書について同じ趣旨発言が行われましたことを評価いたしております。また、原子力の安全に関する条約早期発効の訴えができましたことも、成果として私は考えていきたいと思います。  また、日ロ首脳会談について、北方領土のお尋ねがございました。  今回、幅の広い議論をいたします中で、領土問題については、エリツィン大統領の方から東京宣言を確認する旨の発言が行われ、私の方からそれをさらに延長しながら、両国関係発展させていくためにも外務大臣レベル平和条約交渉を再活性化することが重要であると申し上げ、この点の認識一致を見ることができました。そして、そのためにも大統領選後に次官級平和条約作業部会を再開することが合意できました。  私は、これは大統領選後、領土問題に両国協力して取り組んでいく上で大きな政治的意義を持つと思います。殊に、ロシア側も意識し話の端々に出してまいりましたが、国交回復四十周年の年というその一つの節目でもありますだけに、領土問題の解決を含めながら、日ロ関係の前進のために一層努力をしていきたいと考えております。  また、北方四島周辺水域における日本漁船操業枠組み交渉につきましては、これまで五回の交渉が行われ、双方の立場を接近させるべく精力的な作業が行われてまいりましたが、このところ暗礁に乗り上げておりましたことは議員御承知のとおりであります。今回の会談で、エリツィン大統領から、交渉を継続して解決したいという強い意思が示され、私も、困難な交渉であることは承知しているが協力して妥結のために努力していきたい、交渉を継続していくことに合意をいたしました。  この交渉は、領土問題にかかわる大変難しいものでありますし、今見通しを申し上げることは極めて困難でありますけれども、いずれの側の法的な立場も害さないという前提をきちんと立てた上で、ロシア側との交渉に引き続き努力したいと考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 土井たか子

    議長土井たか子君) 愛知和男さん。     〔愛知和男君登壇
  13. 愛知和男

    ○愛知和男君 私は、新進党を代表して、さきに行われました日米首脳会談並びに日米安保共同宣言及び原子力安全サミット等に関連して、外交・安全保障全般について、橋本総理並びに久保副総理の所信を伺うものであります。橋本総理、一連の過密な外交日程を終えられ、大変御苦労さまでございました。まず冒頭、御慰労申し上げたいと思います。また、久保副総理もワシントンでのG7御出席、まことに御苦労さまでございました。  さて初めに、日米首脳会談に関してお尋ねいたします。  このたびの日米首脳会談は、冷戦後における我が国と米国との基本的な関係をどう構築するか、また、今後の世界、とりわけアジア太平洋の平和と安定に日米がどのような役割を果たしていくのか、そのため両国が今後どのような課題を解決すべきなのかを話し合う極めて重要な会談であったと私は認識しております。  ソ連の脅威がなくなった今日、一国平和主義、一国繁栄主義に基づく外交観、平和観、安全保障観でよいのか、アジア太平洋の平和と安定を具体的にどう主体的につくり上げていくのか、今まさに日本人の国家観、平和観、生き方そのものが問われているのであります。  そこで、まず初めに、具体的内容に入る前に、これらの前提として橋本総理及び久保副総理の国家観、平和観をまず確認しておきたいのであります。内閣における総理と副総理の間で、このような基本的な課題についての認識に違いがあってはならないからであります。  今回の日米安保共同宣言は、日米安保体制が、日本安全保障だけでなく、二十一世紀に向けてアジア太平洋の平和と安定の基礎であると位置づけるとともに、日米安保体制の一層の強化に合意した意義は、極めて重要であります。この合意は、日本がこれまでの一国平和主義を改め、積極的にアジア太平洋の平和に関与していくという決意を表明したものと理解してよいのかどうか。日米安保体制アジア太平洋の平和と安定の基礎と位置づける以上、日米安保条約の極東の範囲についての見直しや、あるいは今後、条約そのものを極東からアジア太平洋へと改正せざるを得なくなるのではないかと思いますが、総理及び副総理の御所見を伺いたいと思います。  さらに、今回の合意に基づき、今後、極東有事体制の整備など防衛力強化検討していけば、論理の帰結として、これまでの集団的自衛権憲法解釈を見直す必要があるとの議論が出てくるのは当然であると考えるのでありますが、橋本総理及び久保副総理はどのような基本姿勢で極東有事における我が国対応について見直すお考えなのか、お伺いをいたします。  ところで、橋本内閣は、今回の日米安保共同宣言に当たって、内閣としての一致団結した決意のもとで宣言案に合意されたのか、率直に申し上げて私は非常に疑問に思うのであります。日米安保体制強化について、事前に与党内で十分論議がされたとは思えません。この合意に基づく見直しを進めれば、各党の安全保障基本理念の違いが表面化することは必至と言わざるを得ません。  政治理念の全く異なる自民、社民、さきがけ三党が、政権維持を最優先に置き、各党の理念を棚上げにし、常にあいまい、場当たり的な政治を繰り返してきた矛盾について、心ある与党の一部においても指摘され始めているところであります。橋本総理は、今の連立政権で、今回合意された日米安保体制強化を図ることが本当に可能と思われているのかどうか、この際、明確にお答えいただきたいのであります。  冷戦終結し、対ソ脅威はなくなったものの、アジアとりわけ日本周辺は、朝鮮半島を初め不安定要因が存在し、顕在化しております。その中で、日本がこれまでのように米国のリーダーシップを追認するだけでなく、日本自身の世界観でアジアの平和と安定に積極的なイニシアチブを発揮していかなければなりません。また、日米同盟関係という以上、米国への一定の支援は当然としても、同時にまた、アジアにおける米軍のプレゼンスに対して、日本としての考えをしっかりと持ち、そのあり方についても米国側と対等に協議していくという姿勢が重要であると考えます。これらの点につき、総理及び久保副総理の基本的認識をお伺いするものであります。  今回の日米安保共同宣言について、中国や韓国などで日本の軍事大国化あるいは中国脅威国論として懸念する見方がありますが、政府として、その内容と意図をきちんとアジア周辺国に説明する必要があると考えるものでありますが、政府の今後の対応をお伺いするものでございます。  次に、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドライン見直しについて伺います。  現在のガイドラインは、冷戦時代に対ソ連への対処を想定してつくられたまま、今日まで変更されずにきたものであります。冷戦終結し、ソ連の脅威が少なくとも意図の面から見れば大幅に後退する一方で、朝鮮半島や中国などにおける紛争危険性も指摘されている今日、新ガイドラインの策定は急務であると考えます。また特に、昨年策定された新防衛大綱が、日米同盟関係強化我が国防衛戦略の基軸として位置づけ、米国との共同行動をこれまでより重視したものに改めた以上、ガイドラインをより中身の濃い、充実したも のにする必要があります。  これまでのガイドラインにおいても、共同作戦計画などについて研究作業実施されていたはずでありますが、当時の野党、特に社会党と共産党の反対で、国内情勢はそれを許す状況にはありませんでした。ガイドライン見直しについては、単に閣議決定だけではなく、きちんと条約として国会に提出すべきであると考えますが、いかがでしょうか。  また、ガイドラインを一朝有事の際に有効に機能させようとするのであれば、ACSAの有事への適用も検討対象にしてしかるべきであると考えますが、総理のお考えをあわせてお聞かせいただきたいのであります。  次に、いわゆる有事法制の整備についてお尋ねいたします。  これまで我が国において有事法制の検討が不十分であったのは、まことに遺憾なことであると言わざるを得ません。国の自衛権を認めれば、当然有事法制の整備にまで至らなくては首尾一貫した防衛体制はとれないのであり、現に自衛隊法は有事法制としての性格を持っており、自衛隊法はいいが有事法制は認めないというのは矛盾するのであります。もし有事法制を整備しておかないと、結果的には法に基づいて自衛隊を運用することを放棄し、シビリアンコントロールを空洞化することになるのであります。この点についての橋本総理並びに久保副総理の御所見をお伺いいたします。  我が国の安全を確保し、国民の生命と財産を守っていくために、集団的自衛権の行使についても真剣に議論していく必要があります。集団的自衛権の行使は憲法上認められないというのが政府解釈であり、どの行動集団的自衛権の行使に当たるのかというのは個々の判断で決めていくというのが政府の判断でありますが、問題が起きてからその時々で政府解釈して決めていくというのでは、現実に問題が生じたときに即座に対応のしょうがありません。あらかじめ国会で法律を制定して、国としてできる部分を定めておくということが必要であると考えます。この見地から安全保障基本法を制定すべきであると考えますが、総理並びに久保副総理の御所見をお伺いいたします。  次に、いわゆるACSAについて伺います。  ACSA締結は、遅きに失したとはいえ一歩前進であると評価するものでありますが、今回の協定の他の国に見られない特徴として挙げられることの第一は、適用対象を共同訓練とPKO、人道的な国際救援活動に限定していることであります。つまり、米国との間にこの協定を締結している国の中で、危機ないしは戦時における適用を排除しているのは我が国の場合のみであります。訓練はそもそもいざというときを想定して行うものであって、いざというときに訓練どおりの物品・役務が提供されないのであれば何のための訓練かということになりかねません。他国に比べて適用日米首脳会談及びモスクワ原子力安全サミットト対象範囲を限定した理由は何なのか、この際、政府見解を明確にするよう求めるものであります。  第二は、供給する物品役務の内容についてであります。  各国が締結している協定では、弾薬、銃砲の口径測定にかかわる役務も含まれることがおよそ常識となっておりますが、今回の協定にはこれらは含まれておりません。米国に対する武器輸出三原則の適用除外を言いながら、他方でこのような措置をとったのはいかなる意味を持つのか、政府見解をお尋ねするものであります。  次に、沖縄米軍基地の整理縮小問題に関するいわゆるSACOの中間報告に関してお伺いいたします。  私は、今回の米国側の姿勢を率直に評価したいと思いますが、今回の整理縮小案は関係自治体との事前協議が一切ないまま決定され、事後の報告すら十分なされておりません。こうした政府の姿勢に対して、岩国市などでは既に反発が起きております。具体的な返還の実現には、関係自治体の了解、関係地主等への配慮、代替施設等の建設に対する理解協力が不可欠であり、関係自治体へのきめ細かな対応が必要であります。政府の独断専行がかえって問題解決を困難にさせる結果とならないよう、十分配慮すべきであります。この点、どう認識しておられるか。  また、基地の返還、整理縮小、移転等に伴い、一兆円とも言われる巨額の資金が必要になると言われておりますが、これを防衛関係費の枠内で行うことには当然無理があると考えますので、シーリングの別枠とすべきだと思います。地位協定の問題を含め普天間基地返還に関する総合的取り組みについて、総理並びに大蔵大臣である久保副総理方針をお伺いしたいと思います。  最後に、原子力安全サミット等についてお伺いします。  このたびのモスクワでの原子力安全サミット宣言では、核物質管理や流出防止の国際協調などが先進七カ国とロシア間で合意されたものの、核の安全性確保という観点では極めて不十分と言わざるを得ません。問題となっているチェルノブイリ型原発の閉鎖問題について、これまでG7が主張してきたロシアの十五に上る旧原発の早期閉鎖要求が議論されず、放置されたことはまことに遺憾であります。なぜこの問題を真正面から協議しなかったのか。さらに、解体された核兵器から出るプルトニウムの処理についても本格的な論議が先送りされております。これらに関して日本がなぜもっとイニシアチブがとれなかったのか、御説明いただきたいのであります。  核実験全面禁止条約に関する声明では、本年九月までに核実験全面禁止条約交渉妥結し署名すると期限が確認されたことは前進でありますが、このサミット参加国中唯一の非核保有国日本として、核実験全面禁止にとどまらず、核保有国の核軍縮促進についてももっとはっきりした主張を すべきであったと考えるのでありますが、総理の明快な御所見をお伺いしたいと思います。  また、中国が今回の合意をどう受けとめると予想しているのか、さらに、今回の協議で核爆発を伴わないシミュレーション実験についてどのような議論が行われたのか、これらの点もあわせて答弁を求め、私の代表質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  14. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 愛知議員にお答えを申し上げます。  まず、一国平和・一国繁栄主義に基づく外交観、平和観でよいのかというお尋ねから始まりました。  私は、既に日本は一国平和主義あるいは一国繁栄主義という時代は脱して、国際社会の平和に既に自分たちの役割を果たしつつある国家だと考えております。  こうした状況の中で、今後とも我が国の安全と平和を確保し繁栄を続けていきます上で、日米安保体制政治的基盤とする日米関係を基軸としながら、アジア諸国などとの二国間関係、この協力関係とともに、アジア太平洋地域における協力、国連などを軸とするグローバルな協力関係、この三つがそれぞれに重要であり、これをそれぞれ強化しながら重層的に発展させていくことが、これからの日本の大きな目標でなければならないと考えております。そうした諸点を踏まえ、我が国として、新たな国際秩序の構築に向けて積極的な努力を積み重ねていきたいと考えております。  今回の日米安保共同宣言、私とクリントン大統領は、日米安保条約基礎とする両国間の安全保障面での関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認いたしますとともに、両国政府がこの地域安全保障情勢をより平和的で安定的なものにするために、共同でも個別でも努力をしていくことで意見一致いたしました。  政府としては、今後、このような認識の上に、日米安保体制信頼性の一層の向上に努力をいたしますとともに、米国や地域内の他の国々とも協力しながら、地域の平和と繁栄のために、ASEAN地域フォーラム等の地域的な枠組みの発展を初め、各種の外交努力を積極的に行ってまいるつもりであります。  次に、安保条約の極東の範囲、今回の日米安保共同宣言の「アジア太平洋」についてのお尋ねでありますが、安全保障条約上の極東が、日米両国が平和、安全の維持に共通の関心を有している地域であり、かかる区域が大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であることは、安保国会当時の統一見解に示されているとおりであります。  今回の日米安保共同宣言におきましては、日米安全保障条約を基盤とする両国間の安全保障面関係が「二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した。」と述べましたが、これは、日米安全保障条約目的の達成のために米軍我が国に駐留しているという事実がアジア太平洋地域諸国に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用しているという認識を述べたものでございます。  この安定要因として作用している対象というのは、一定の地理的範囲に限定される性格のものではございませんので、今回の日米安保共同宣言に言う「アジア太平洋地域」が、どの国を含み、どの国を含まないかということを一般的に申し上げることは、私は余り意味がないように思います。そして、議員が御指摘のように、今回の日米安保共同宣言を契機に、安保条約に言う極東の範囲を見直し、あるいはアジア太平洋への改正を行わざるを得ないといった認識を私は有しておりません。  また、極東有事体制の整備と集団的自衛権憲法解釈の再検討についてでありますが、安全保障上の各種の緊急事態に対する具体的な対処方法を検討し整備しておくことは極めて重要でありますし、政府としても万全の体制で臨み得るよう引き続き努力をしてまいりますが、いずれにせよ、我が国対応憲法に従って行われるということは当然でありますし、憲法上許されない事項については従来の政府見解に変更はありません。  また、日米安保体制についての連立与党の取り組みについて御心配をいただきました。  しかし、先般の日米首脳会談におきましては、日米両国民へのメッセージとともに日米安全保障共同宣言を発出し、我々が日米安保体制というものを基盤とした日米間の各般の協力を推進することを含めて、二十一世紀を見据えた日米安保体制あり方というものを幅広い観点から明らかにしたわけであります。  この文書を発出するに当たり、連立与党三党は共同で声明を発表されました。この中で、「日米両国首脳は」というので始まりまして、「アジア太平洋の平和と安定のために日米防衛協力を進め、あわせて同地域における多角的安保対話・協力を図ることを表明しました。我々三党は、両文書を二十一世紀に向けた日米関係の基本方向を示したものとして高く評価する」と述べていただいております。このように、今般の日米安保共同宣言内容について連立与党から力強い支持を受けているものと私は認識しており、今後、この内閣のもとで共同宣言内容を一つ一つ実施に移していくべく努力をしてまいりたいと思います。  また、アジアの平和と安定についての基本姿勢を言えということでありました。  冷戦終結後も東アジアを初めとして国際社会に依然として不安定要因を内包している中で、私は、日米安保体制というものが、我が国の安全確保のために必要不可欠であると同時に、このアジア太平洋地域の平和と安定を確保する上でも非常に大きな役割を果たしていると考えています。そして、その米国が引き続き軍事的プレゼンスを維持することがアジア太平洋地域の平和と安定の維持のために不可欠である、そうした考え方は、先般発出いたしました共同宣言でも明らかにいたしました。そして、この宣言の中で、米国の軍事態勢については在日米軍の兵力構成も含めて引き続き日米で緊密に協議する旨表明をいたしたところであります。  今後とも、日米安保体制信頼性を一層向上させるために日米両国がともに協力していくことが重要だと認識しながら、この共同宣言や昨年決定されました新防衛大綱を踏まえて、具体的な施策につき積極的に検討実施していきたいと思います。  さらに、アジア太平洋地域の平和と安定を確保する観点から、我が国としては、ASEAN地域フォーラムなど、この地域におけるさまざまなレベルでの政治安全保障対話を推進いたしております。  アジア周辺諸国に対する説明という御指摘をいただきましたが、共同宣言趣旨については、既に中国及び韓国に対し外交ルート説明をし、理解を得るように努力をいたしております。今後とも、防衛協力指針見直しを初め、共同宣言で示されました日米協力方向実施に移すに当たり、アジア近隣諸国との関係に十分配慮してまいりたいと考えます。  また、日米防衛協力のための指針見直しについて、政府としては、先般発出いたしました共同宣言も踏まえながら、冷戦終結後の安全保障情勢対応した形で日米防衛協力を一層効果的に進めていくという観点から、見直し作業を積極的に進めてまいる考えでありますが、具体的な内容はまさに今後の検討でございます。見直しによって得られる結果をどう取り扱うかについては、現在お答えできる段階にはございません。  次に、日米物品役務相互提供協定の有事における適用を検討してはという御指摘をいただきましたが、この協定の交渉に当たりまして、日米安保条約の円滑かつ効果的運用や国際平和のための努力に寄与するという目的に合致し、かつ、自衛隊及び米軍双方のニーズの高いものを対象とするとの観点から、米国との間で種々検討を進めました結果、共同訓練と国連平和維持活動等のために必要な物品または役務を協定に基づく提供の対象とすることで日米政府間で合意に達しました。政府としては、現在の内容で国会の御承認をいただきました上で早急に本協定を締結し、そのもとにおける協力の実を上げてまいりたいと考えております。  いずれにせよ、日本周辺地域において発生し得る事態で、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力につきましては、今後とも真剣に検討研究していくべきものと考えております。  また、有事法制を整備しておかないとシビリアンコントロールを空洞化するというお尋ねがございました。  自衛隊が法令及びシビリアンコントロールの原則に従うことは当然のことであります。また、現在の自衛隊法により、第七十六条の規定によって防衛出動を命ぜられるという事態における自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は既に整備されていると考えております。  有事法制の研究について、なお残された法制上の不備はないか、不備があるとすればどのような事項かなどの問題点の整理を目的として、昭和五十二年から政府部内で検討を続けてまいりました。なお、法制化の問題については、高度の政治判断に係るものでありますし、国会における御審議国民世論の動向などを踏まえて対応していくべきものだと思います。  そして、集団的自衛権の行使に当たるかどうかの判断、安全保障基本法の制定についての御意見をいただきましたが、政府といたしましては、守全保障上の緊急事態に対し、米国との協力も含めて、我が国がこれに対応していくための手段をきちんと整備する必要があると考えておりますし、そのような対応の法的側面にかかわる問題は真剣に検討しておかなければならないと考えております。いずれにいたしましても、集団的自衛権の行使のように我が国憲法上許されないとされていることについて、従来の政府見解に変更はございません。  安全保障基本法の制定については、さまざまな御意見があることは存じておりますが、国会の御審議を初めとする各方面の議論を踏まえながら、その可否について検討していきたいと思います。  また、日米物品役務相互提供協定、ACSAの適用対象範囲を限定したというお尋ねがございました。  この協定の交渉に当たりまして、先ほど申し上げましたような目的議論し、ニーズの高いものから対象とするという観点で相談をいたしました結果、今般、共同訓練と国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動のために必要な物品または役務を協定に基づく提供の対象とすることで日米政府間で合意に達したものでございます。  また、米国が他国と締結している物品役務相互提供協定について、我が国としては、第三国間の協定の内容あるいはその運用についてコメントすることは避けるべきであると思います。  また、このACSAの中で弾薬等が提供の対象となる物品または役務に含まれていない理由についてお尋ねをいただきましたが、弾薬の提供を提供の対象となる物品あるいは役務から外しましたのは、そもそもアメリカ側に弾薬の提供について特段のニーズがなかったことからでありまして、武器輸出三原則などとの関係ではございません。  また、御指摘の銃砲の口径測定にかかわる役務、大変申しわけありませんが、私は知識を欠いておりまして具体的に何を指すのかよくわかりま せん。しかし、一般的に、各種機器の調整等を行う役務については、この協定に規定する修理・整備の区分に含まれるものだと私は思います。  また、沖縄米軍基地の整理縮小問題についてお尋ねをいただきました。  米軍施設区域が集中しておる沖縄において県民の方々に非常な御苦労をかけてきたことは、もう今さら私が申し上げるまでもなく、よく御承知のとおりであります。こうして沖縄方々我が国全体の安全のために担っておられる負担を、日米安保条約目的達成との調和を図りながら少しでも軽減するためには、普天間飛行場全面返還を含め今般発表いたしました特別行動委員会中間報告措置を確実に実行していくことが不可欠であります。  こうした認識から、法制面及び経費面を含めた総合的な観点からの早急な検討を行い、十分かつ適切な措置を講じることが必要であると考えており、十六日に政府としてはその旨の閣議決定を行いました。この所要の移設等を含めまして、この中間報告措置実施する観点から、関係者の御理解協力が得られるよう配慮しながら、最大限努力してまいるつもりであります。  そして、この普天間基地返還に関する総合的取り組みについて、シーリングの別枠という御指摘をいただきました。  私どもとしては、これは他の府県に対する移設をも含めまして非常に多くの問題を含んでおりますだけに、事前の手続その他についてもおしかりを受けているさなかでありますけれども、これを何としても仕上げていかなければなりません。そのためには、本土を含む地元関係者の御理解をいただきながら、また協力をいただきながら、最大限努力をしてまいるつもりでありますし、そのためにも、関係省庁だけではなく沖縄県の代表者にもお入りをいただいたタスクフォースの設立について、今準備を進めております。  経費面につきましては、これから施策の具体的内容検討していく上であわせて議論されていくものでありまして、今回のSACOの中間報告につきましても、実現に要する具体的な必要経費についてまで数字を得ているものではございません。いずれにいたしましても、特別行動委員会中間報告にまとめられている措置を確実に実現していくために必要となる経費は、我々は沖縄方々に対する約束を守る上でも何としてもつくり出さなければならない性格のものであります。  次に、チェルノブイリ原子力発電所の閉鎖問題並びにロシアの旧型の原子力発電所の早期閉鎖についてお尋ねをいただきましたが、今回のモスクワサミットにおきまして、G7及びロシア首脳は、原子力利用に当たって安全が最優先されること、その安全を確保する主要な責任は原子力施設国自身が負うことについて確認をいたしました。また、各国首脳は、原子力施設の建設、運転等について、国際的に受け入れられている最も高い安全水準へのコミットメントを再確認いたしますとともに、現行の安全要件を満たしていない既存の原子炉については、その安全性が受け入れ可能な水準まで引き上げられるか、または運転が停止されるべきという認識一致いたしております。  次に、解体されたプルトニウムの処理についてお尋ねがございました。  解体核兵器から生ずるプルトニウムの処理につきましては、私からは、非核兵器国としての立場に立って、解体核兵器から生ずる核物質を処理する第一義的な責任は核兵器国自身にある、さらには、このような核物質を自発的にIAEAの保障措置のもとに置くべきことを主張いたしました。これらの主張は、サミット宣言の中にしかるべく盛り込まれております。同時に、日本としては、本件に関する国際協力重要性認識しておりますし、本年中の開催が合意されました解体核兵器から生ずるプルトニウムの処理の方策を検討する国際的な専門家会合に積極的に参加し、プルトニウムの取り扱いに関して我が国の有する技術や経験をもとに貢献していく所存であります。  また、核軍縮促進に対する主張についての御指摘がありました。  我が国は、従来から、核兵器のない世界を目指し現実的な軍縮措置を着実に積み上げていくということが重要という立場におります。今回のサミットにおきましても、こうした立場から、CTBTの早期署名を強く訴えると同時に、交渉促進のために協力していく意向を表明いたしました。  同時に、私からもう一つ提起をいたしましたのは、米国とロシアの間の現実的な核軍縮措置であるSTARTⅡ、第二次戦略核兵器削減条約早期発効実施の必要性についても提起をいたしたところであります。さらに、我が国としては、二十一世紀に向けた核軍縮あり方についての議論を深めるために、NPT延長後の核軍縮テーマとする国際セミナーを本年十二月に京都で開催する旨も紹介をいたしました。被爆を体験した非核兵器国としての立場からの主張を私としては行ってきたと思っております。  また、そのCTBT等について中国がどう受けとめていると思うのかという御指摘がございました。  中国対応、私にとりましても、今回の合意は強いメッセージとして伝わってくれることと期待をいたしております。今回のサミットにおきましては、禁止される核実験の範囲について、「いかなる核兵器の実験的爆発その他のいかなる核爆発も禁止しなければならないこと」にっき、従来この点を不明確にしておりましたロシアを含む参加国すべてが合意し、その旨を明記した声明が発せられました。私は、違った主張をここまで続けてこられた中国にとりまして強いメッセージになると思っております。  また、核爆発を伴わないシミュレーション実験についてどのような議論が行われたのかという御質問がありましたが、この議論は全く出ておりません。  残余の質問は、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣久保亘君登壇
  15. 久保亘

    ○国務大臣(久保亘君) 外交・安保、平和等の問題に関して、副総理としての私にお尋ねでございました。  けさ帰国をいたしましたので、今、総理の御答弁を注意深く聞かせていただきました。私、副総理として、この橋本内閣が誕生いたしますときの与党三党の政策合意を踏まえた御答弁であり、そのとおりであると考えております。これに私から特につけ加えることはございません。(拍手)  なお、基地の移転等に関する経費の問題についての大蔵大臣としての私に対する御質問でございましたが、首相からも御答弁がございましたけれども、この問題は、具体的施策の検討を進めることとあわせて経費の規模や負担あり方等について検討が行われるものと考え、今日そのことについて申し上げることは困難でありますが、沖縄県におきます基地の整理統合縮小政府全体として真剣に取り組むべき課題でございます。この問題については、今後の具体的施策の検討の中で、十六日の閣議決定を踏まえて適切に対応してまいります。(拍手)     ―――――――――――――
  16. 土井たか子

    議長土井たか子君) 東中光雄さん。     〔東中光雄君登壇
  17. 東中光雄

    ○東中光雄君 私は、日本共産党を代表して、日米首脳会談日米安保共同宣言について質問します。  今回の宣言は、日米安保体制日米同盟関係の中核と位置づけ、この軍事同盟を二十一世紀においても引き継ぐことを強調しています。これは、ソ連が崩壊し、いわゆるソ連の脅威という日米安保条約の存在の口実がなくなったにもかかわらず、五十年続いた安保・基地体制をさらに二十一世紀にわたって固定化しようとするものであります。クリントン大統領は、国会演説で「今後五十年間のパートナーシップ」を呼びかけましたが、百年にわたって日米安保同盟を固定化するなどは、これを過渡的措置とみなした安保条約第十条の規定に照らしても、国連憲章の趣旨からいっても、許されないものではありませんか。総理の所見を求めます。  総理は、今回の宣言の根底には日米共通価値観があると述べました。しかし、宣言の土台になったアメリカの東アジア戦略報告では、ベトナム戦争について、「たたえられるべきコミットメント」すなわち正義の戦争だったとしています。総理、あなたはベトナム戦争についてのこの価値観を共有するのですか。答弁を求めます。  今回の日米会談で重要なごとは、日米政府がこの安保宣言によって日米安保条約の事実上の大改悪を強行しようとしていることであります。  そもそも日米安保条約は、外部の侵略から日本を防衛することを建前としたもので、第五条に日本への武力攻撃に対する日米共同対処を規定し、第六条で在日米軍が極東において行動するための日本の基地使用を規定したものであります。  ところが、第一に重要なことは、今回の宣言日米安保体制を「二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎」と位置づけていることであります。これは、アジア太平洋地域に向かって安保体制を発動すること、すなわち米軍行動範囲の大きな拡大であります。安保条約の重大な改悪ではありませんか。  また、宣言は、米国の軍事プレゼンスを維持することはアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠であるとしています。しかし、そのアメリカは今なおベトナム侵略を肯定しているのであります。米軍の存在が平和と安全の保障と断定できる根拠はどこにあるのですか。総理見解を求めます。  第二に、日本防衛以外の事態における海外での自衛隊と米軍の共同作戦に道を開いたことであります。  宣言は、「両国間の緊密な防衛協力」を「日米同盟関係の中心的要素」と規定し、「日本周辺地域において発生しうる事態」に対して日米共同で対航する方策の研究と政策調整を促進することを確認しております。  まず、ここで言う「日本周辺地域」とはどこを指すのですか。極東の範囲より広いのか狭いのか、それとも重なり合うものなのか、明確な答弁を求めます。  そして、日本周辺地域での事態における日米共同対処とは、日本が武力攻撃を受けない事態日本に対する侵略とかかわりのない事態日米が軍事協力、共同作戦を進めるものであり、朝鮮半島などを含む地域紛争に際して、米軍への軍事協力という形で自衛隊が介入をするための大きな突破口を開くものではありませんか。明確な答弁を求めます。  この二点は、いずれも安保条約の核心である第五条、第六条の根幹に触れる問題であり、条約の大改定に匹敵する内容であります。およそ憲法国民主権と議会制民主主義に基づくならば、国会にも諮らずに政府の一方的宣言で再定義するなどは断じて許されないことではありませんか。答弁を求めます。  第三の問題は、こうした安保の拡大のもとで有事体制づくりを進めようとしていることであります。  総理は、日米防衛協力のためのガイドライン見直しを開始することで合意し、「できること、できないことの研究をやる」と共同記者会見で明言しました。この見直しガイドライン政府決定にすると報道されていますが、これは予算、立法の拘束力を持つ政府計画にするということなのですか、お伺いをいたします。  また、有事の際の自衛隊基地や民間飛行場の緊急使用を検討することが合意されましたが、これは、民間施設利用制限など有事立法につながる危険をはらんだものであり、米軍の戦闘作戦行動日本が能動的に関与することにほかならないではありませんか。答弁を求めます。  最後に、宣言は、沖縄の基地縮小を「日米安保条約目的との調和」の範囲でしか行わないと確認したものであり、普天間基地返還合意なるものも、結局、嘉手納基地や岩国基地などへの基地のたらい回しによる基地機能の維持強化を図るものであり、基地撤去、平和な日本をという沖縄県民、国民の願いに逆行するものであります。  日本共産党は、日米安保条約の大改悪に反対し、憲法の平和原則を守り、安保条約廃棄、非核・非同盟の新しい進路を目指して奮闘する決意を表明して、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣橋本龍太郎登壇
  18. 橋本龍太郎

    内閣総理大臣橋本龍太郎君) 東中議員にお答えを申し上げます。  まず、クリントン大統領が国会演説で「今後五十年のパートナーシップ」を呼びかけたことがけしからぬというお話でありますが、私は、安保条約第十条あるいは国連憲章の趣旨、どう見ましても友情を呼びかけることが国連憲章に触れるものだとは思いません。今後五十年あるいはもっと長く、私は日米間の友情が続くことを心から期待をいたしております。  また、ベトナム戦争についてどう考えるのだというお尋ねがございました。  ベトナム戦争というのはいろいろなことのあった戦争でありますが、基本的には南北ベトナム間の内戦が基本にあり、そこに米国の介入があった戦だと思います。ただし、米国は、東西冷戦構造の中において自由主義陣営の支援のために介入をしたということであり、領土的野心から戦争に介入したとは私は認識をいたしておりません。現在、ベトナムが国民和解のもとで繁栄を築きつつあることを私は非常に喜んでおります。  また、日米安保共同宣言アジア太平洋地域に向かって安保体制を発動する意思を示したものであり、条約の改悪であるという御指摘でありました。  しかし、日米安保共同宣言におきまして、日米間の安全保障関係が「二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続ける」と述べておりますのは、日米安保条約目的達成のため米軍我が国に駐留しているという事実がアジア太平洋地域に安心感を与え、結果としてこの地域の安定要因として作用し、さらに、日米安保体制を基盤とする日米両国間の各般の分野での幅の広い緊密な協力関係がこの地域の平和と安定に貢献している、そうした認識を申し述べたものであります。  アジア太平洋地域に向かって安保体制を発動するという御指摘はどうも意味がよくわかりませんが、今申し上げたような認識は、安保条約の枠組みを変更するものではございません。改悪はしておらないと思います。  また、米軍のプレゼンスが本当にアジア太平洋地域の平和と安全を保障するのかという御指摘でありますが、私は、すると思っております。そして、日米安保体制を基盤とする日米両国間の各般の分野での幅広い緊密な協力関係はこの地域の平和と安定に貢献しておると認識し、それは我々だけが考えていることではございません。アジア太平洋地域の多くの国も、この地域における米軍の存在を歓迎していると承知をいたしております。  今回の安保共同宣言の発出後、例えば韓国はその外務部論評におきまして、日米安保共同宣言は「アジア太平洋地域の平和と安定のための米国の役割が今後とも確固に維持されることを明らかにしたものとして評価」というコメントを出しております。オーストラリアも首相声明の中で「日米同盟関係アジア太平洋地域の安全と繁栄にとって必須のものである」との認識を述べております。私は、こうしたことが事実を証明するものと思います。  それから、日本周辺地域と極東というお尋ねがございました。  この共同宣言に言います「日本周辺地域」とは、基本的には新防衛大綱において使用されております「我が国周辺地域」と同じ概念であります。ちなみに、新防衛大綱で申しております「我が国周辺地域」とは、我が国の防衛努力日米安保体制の存在が相まって国際社会の安定に効果を及ぼしている地理的な範囲として観念されるものであり、これはその時々の国際情勢によって変動し得るものであり、明確に境界を画する性格のものではございません。したがって、今回の日米安保共同宣言に言う「日本周辺地域」とは、政府が昭和三十五年二月二十六日の政府統一見解によって示したところの日米安保条約に言う「極東」の範囲とは別の次元の問題であり、比較することに意味はないと思います。  また、その日本周辺地域における事態に対する我が国対応ということについて御指摘がありました。  しかし、我が国の周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が生じた場合、我が国としてどう対応していくかということは、私は、政府として真剣に研究検討しておくべき重要課題だと思います。そして、この安保共同宣言におきましても、そうした事態における日米間の協力あり方についての研究の必要性を確認しております。具体的内容はこれから検討を開始するわけでありまして、現在お答えする状況にはありませんが、いずれにせよ、私は、憲法のもとにおきましても、こうした研究が許されないとは考えておりません。  それから、日米安保共同宣言を国会に諮らなかったことはけしからぬというおしかりをいただきましたが、これは両政府首脳政治的意思を確認し合うものであり、国会による御承認を必要とするものではございません。また、この共同宣言はあくまでも現行日米安保条約を前提としたものでありまして、何ら改正の手を加えるものではございません。こうした共同宣言政府が発出することは、議会制民主主義との関係において問題になり得るものではないと考えております。  それから、ガイドラインについてのお尋ねがございました。  十七日、クリントン大統領との間で署名いたしました日米安保共同宣言におきましては、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と繁栄のため、引き続き重要な役割を果たしていく日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を含めて、日米間の安全保障面での協力を推進していくという観点で、日米防衛協力のための指針見直しを開始することを宣言しているわけであります。この具体的な内容は、まさにこれからの検討を待つ必要があるわけでありまして、現時点で確定的なことを申し上げる状況にはございません。  また、有事の際の飛行場の緊急使用についての御指摘がございました。  去る十二日、私とモンデール駐日米国大使との間で普天間飛行場全面返還に合意をいたしましたが、その際、同飛行場の極めて重要な軍事上の機能及び能力を維持するために、他の諸措置とあわせながら、危機に際しての施設の緊急使用について日米共同の研究が必要である旨は確認をいたしました。こうした研究具体的内容は、今後まさに検討を行っていく課題であると思います。(拍手
  19. 土井たか子

    議長土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  20. 土井たか子

    議長土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十一分散会