○
内閣総理大臣(
橋本龍太郎君) 愛知議員にお答えを申し上げます。
まず、一国平和・一国繁栄主義に基づく外交観、平和観でよいのかというお尋ねから始まりました。
私は、既に
日本は一国
平和主義あるいは一国繁栄主義という時代は脱して、
国際社会の平和に既に自分たちの
役割を果たしつつある国家だと
考えております。
こうした状況の中で、今後とも
我が国の安全と平和を確保し繁栄を続けていきます上で、
日米安保体制を
政治的基盤とする
日米関係を基軸としながら、
アジア諸国などとの二
国間関係、この
協力関係とともに、
アジア太平洋地域における
協力、国連などを軸とするグローバルな
協力関係、この三つがそれぞれに重要であり、これをそれぞれ
強化しながら重層的に
発展させていくことが、これからの
日本の大きな目標でなければならないと
考えております。そうした諸点を踏まえ、
我が国として、新たな国際秩序の構築に向けて積極的な
努力を積み重ねていきたいと
考えております。
今回の
日米安保共同宣言、私と
クリントン大統領は、
日米安保条約を
基礎とする
両国間の
安全保障面での
関係が、二十一
世紀に向けて
アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための
基礎であり続けることを再確認いたしますとともに、
両国政府がこの
地域の
安全保障情勢をより平和的で安定的なものにするために、共同でも個別でも
努力をしていくことで
意見が
一致いたしました。
政府としては、今後、このような
認識の上に、
日米安保体制の
信頼性の一層の向上に
努力をいたしますとともに、米国や
地域内の他の国々とも
協力しながら、
地域の平和と繁栄のために、ASEAN
地域フォーラム等の
地域的な枠組みの
発展を初め、各種の外交
努力を積極的に行ってまいるつもりであります。
次に、
安保条約の極東の範囲、今回の
日米安保共同宣言の「
アジア太平洋」についてのお尋ねでありますが、
安全保障条約上の極東が、
日米両国が平和、安全の維持に
共通の関心を有している
地域であり、かかる
区域が大体においてフィリピン以北並びに
日本及びその周辺の
地域であることは、
安保国会当時の統一
見解に示されているとおりであります。
今回の
日米安保共同宣言におきましては、
日米安全保障条約を基盤とする
両国間の
安全保障面の
関係が「二十一
世紀に向けて
アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための
基礎であり続けることを再確認した。」と述べましたが、これは、
日米安全保障条約の
目的の達成のために
米軍が
我が国に駐留しているという事実が
アジア太平洋地域諸国に安心感を与え、結果としてこの
地域の安定要因として作用しているという
認識を述べたものでございます。
この安定要因として作用している対象というのは、一定の地理的範囲に限定される性格のものではございませんので、今回の
日米安保共同宣言に言う「
アジア太平洋地域」が、どの国を含み、どの国を含まないかということを一般的に申し上げることは、私は余り
意味がないように思います。そして、議員が御
指摘のように、今回の
日米安保共同宣言を契機に、
安保条約に言う極東の範囲を
見直し、あるいは
アジア太平洋への改正を行わざるを得ないといった
認識を私は有しておりません。
また、極東有事体制の整備と
集団的自衛権の
憲法解釈の再
検討についてでありますが、
安全保障上の各種の緊急
事態に対する具体的な対処方法を
検討し整備しておくことは極めて重要でありますし、
政府としても万全の体制で臨み得るよう引き続き
努力をしてまいりますが、いずれにせよ、
我が国の
対応が
憲法に従って行われるということは当然でありますし、
憲法上許されない
事項については従来の
政府の
見解に変更はありません。
また、
日米安保体制についての連立与党の
取り組みについて御心配をいただきました。
しかし、先般の
日米首脳会談におきましては、
日米両国民への
メッセージとともに
日米安全保障共同宣言を発出し、我々が
日米安保体制というものを基盤とした
日米間の各般の
協力を推進することを含めて、二十一
世紀を見据えた
日米安保体制の
あり方というものを幅広い
観点から明らかにしたわけであります。
この
文書を発出するに当たり、連立与党三党は共同で
声明を発表されました。この中で、「
日米両国首脳は」というので始まりまして、「
アジア太平洋の平和と安定のために
日米防衛協力を進め、あわせて同
地域における多角的
安保対話・
協力を図ることを表明しました。我々三党は、両
文書を二十一
世紀に向けた
日米関係の基本
方向を示したものとして高く評価する」と述べていただいております。このように、今般の
日米安保共同宣言の
内容について連立与党から力強い支持を受けているものと私は
認識しており、今後、この内閣のもとで
共同宣言の
内容を一つ一つ
実施に移していくべく
努力をしてまいりたいと思います。
また、
アジアの平和と安定についての基本姿勢を言えということでありました。
冷戦終結後も東
アジアを初めとして
国際社会に依然として不安定要因を内包している中で、私は、
日米安保体制というものが、
我が国の安全確保のために必要不可欠であると同時に、この
アジア太平洋地域の平和と安定を確保する上でも非常に大きな
役割を果たしていると
考えています。そして、その米国が引き続き軍事的プレゼンスを維持することが
アジア太平洋地域の平和と安定の維持のために不可欠である、そうした
考え方は、先般発出いたしました
共同宣言でも明らかにいたしました。そして、この
宣言の中で、米国の軍
事態勢については在
日米軍の兵力構成も含めて引き続き
日米で緊密に協議する旨表明をいたしたところであります。
今後とも、
日米安保体制の
信頼性を一層向上させるために
日米両国がともに
協力していくことが重要だと
認識しながら、この
共同宣言や昨年決定されました新防衛大綱を踏まえて、具体的な施策につき積極的に
検討し
実施していきたいと思います。
さらに、
アジア太平洋地域の平和と安定を確保する
観点から、
我が国としては、ASEAN
地域フォーラムなど、この
地域におけるさまざまなレベルでの
政治・
安全保障対話を推進いたしております。
アジア周辺諸国に対する
説明という御
指摘をいただきましたが、
共同宣言の
趣旨については、既に
中国及び韓国に対し
外交ルートで
説明をし、
理解を得るように
努力をいたしております。今後とも、防衛
協力の
指針の
見直しを初め、
共同宣言で示されました
日米協力の
方向を
実施に移すに当たり、
アジアの
近隣諸国との
関係に十分配慮してまいりたいと
考えます。
また、
日米防衛協力のための
指針の
見直しについて、
政府としては、先般発出いたしました
共同宣言も踏まえながら、
冷戦終結後の
安全保障情勢に
対応した形で
日米防衛協力を一層効果的に進めていくという
観点から、
見直し作業を積極的に進めてまいる
考えでありますが、具体的な
内容はまさに今後の
検討でございます。
見直しによって得られる結果をどう取り扱うかについては、現在お答えできる段階にはございません。
次に、
日米物品役務相互提供協定の有事における適用を
検討してはという御
指摘をいただきましたが、この協定の
交渉に当たりまして、
日米安保条約の円滑かつ効果的運用や国際平和のための
努力に寄与するという
目的に合致し、かつ、自衛隊及び
米軍双方のニーズの高いものを対象とするとの
観点から、米国との間で種々
検討を進めました結果、共同訓練と国連平和維持活動等のために必要な物品または役務を協定に基づく提供の対象とすることで
日米両
政府間で合意に達しました。
政府としては、現在の
内容で国会の御承認をいただきました上で早急に本協定を締結し、そのもとにおける
協力の実を上げてまいりたいと
考えております。
いずれにせよ、
日本周辺地域において発生し得る
事態で、
我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合における
日米間の
協力につきましては、今後とも真剣に
検討、
研究していくべきものと
考えております。
また、有事法制を整備しておかないとシビリアンコントロールを空洞化するというお尋ねがございました。
自衛隊が法令及びシビリアンコントロールの原則に従うことは当然のことであります。また、現在の自衛隊法により、第七十六条の規定によって防衛出動を命ぜられるという
事態における自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は既に整備されていると
考えております。
有事法制の
研究について、なお残された法制上の不備はないか、不備があるとすればどのような
事項かなどの問題点の整理を
目的として、昭和五十二年から
政府部内で
検討を続けてまいりました。なお、法制化の問題については、高度の
政治判断に係るものでありますし、国会における御
審議や
国民世論の動向などを踏まえて
対応していくべきものだと思います。
そして、
集団的自衛権の行使に当たるかどうかの判断、
安全保障基本法の制定についての御
意見をいただきましたが、
政府といたしましては、守全保障上の緊急
事態に対し、米国との
協力も含めて、
我が国がこれに
対応していくための手段をきちんと整備する必要があると
考えておりますし、そのような
対応の法的側面にかかわる問題は真剣に
検討しておかなければならないと
考えております。いずれにいたしましても、
集団的自衛権の行使のように
我が国憲法上許されないとされていることについて、従来の
政府の
見解に変更はございません。
安全保障基本法の制定については、さまざまな御
意見があることは存じておりますが、国会の御
審議を初めとする各方面の
議論を踏まえながら、その可否について
検討していきたいと思います。
また、
日米物品役務相互提供協定、ACSAの適用対象範囲を限定したというお尋ねがございました。
この協定の
交渉に当たりまして、先ほど申し上げましたような
目的を
議論し、ニーズの高いものから対象とするという
観点で相談をいたしました結果、今般、共同訓練と国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動のために必要な物品または役務を協定に基づく提供の対象とすることで
日米両
政府間で合意に達したものでございます。
また、米国が他国と締結している物品役務相互提供協定について、
我が国としては、第三国間の協定の
内容あるいはその運用についてコメントすることは避けるべきであると思います。
また、このACSAの中で弾薬等が提供の対象となる物品または役務に含まれていない理由についてお尋ねをいただきましたが、弾薬の提供を提供の対象となる物品あるいは役務から外しましたのは、そもそもアメリカ側に弾薬の提供について特段のニーズがなかったことからでありまして、武器輸出三原則などとの
関係ではございません。
また、御
指摘の銃砲の口径測定にかかわる役務、大変申しわけありませんが、私は知識を欠いておりまして具体的に何を指すのかよくわかりま
せん。しかし、一般的に、各種機器の調整等を行う役務については、この協定に規定する修理・整備の区分に含まれるものだと私は思います。
また、
沖縄の
米軍基地の整理
縮小問題についてお尋ねをいただきました。
米軍の
施設・
区域が集中しておる
沖縄において県民の
方々に非常な御苦労をかけてきたことは、もう今さら私が申し上げるまでもなく、よく御承知のとおりであります。こうして
沖縄の
方々が
我が国全体の安全のために担っておられる
負担を、
日米安保条約の
目的達成との調和を図りながら少しでも軽減するためには、
普天間飛行場の
全面返還を含め今般発表いたしました
特別行動委員会の
中間報告の
措置を確実に実行していくことが不可欠であります。
こうした
認識から、
法制面及び
経費面を含めた総合的な
観点からの早急な
検討を行い、十分かつ適切な
措置を講じることが必要であると
考えており、十六日に
政府としてはその旨の
閣議決定を行いました。この所要の移設等を含めまして、この
中間報告の
措置を
実施する
観点から、
関係者の御
理解と
協力が得られるよう配慮しながら、最大限
努力してまいるつもりであります。
そして、この
普天間基地返還に関する総合的
取り組みについて、シーリングの別枠という御
指摘をいただきました。
私どもとしては、これは他の府県に対する移設をも含めまして非常に多くの問題を含んでおりますだけに、事前の手続その他についてもおしかりを受けているさなかでありますけれども、これを何としても仕上げていかなければなりません。そのためには、
本土を含む地元
関係者の御
理解をいただきながら、また
協力をいただきながら、最大限
努力をしてまいるつもりでありますし、そのためにも、
関係省庁だけではなく
沖縄県の代表者にもお入りをいただいたタスクフォースの設立について、今準備を進めております。
経費面につきましては、これから施策の
具体的内容を
検討していく上であわせて
議論されていくものでありまして、今回のSACOの
中間報告につきましても、実現に要する具体的な必要経費についてまで数字を得ているものではございません。いずれにいたしましても、
特別行動委員会の
中間報告にまとめられている
措置を確実に実現していくために必要となる経費は、我々は
沖縄の
方々に対する約束を守る上でも何としてもつくり出さなければならない性格のものであります。
次に、チェルノブイリ
原子力発電所の閉鎖問題並びに
ロシアの旧型の
原子力発電所の
早期閉鎖についてお尋ねをいただきましたが、今回の
モスクワ・
サミットにおきまして、G7及び
ロシアの
首脳は、
原子力の
利用に当たって安全が最優先されること、その安全を確保する主要な責任は
原子力施設国自身が負うことについて確認をいたしました。また、各国
首脳は、
原子力施設の建設、運転等について、国際的に受け入れられている最も高い安全水準へのコミットメントを再確認いたしますとともに、
現行の安全要件を満たしていない既存の原子炉については、その
安全性が受け入れ可能な水準まで引き上げられるか、または運転が停止されるべきという
認識で
一致いたしております。
次に、解体されたプルトニウムの処理についてお尋ねがございました。
解体核兵器から生ずるプルトニウムの処理につきましては、私からは、非
核兵器国としての
立場に立って、解体核兵器から生ずる
核物質を処理する第一義的な責任は
核兵器国自身にある、さらには、このような
核物質を自発的にIAEAの保障
措置のもとに置くべきことを主張いたしました。これらの主張は、
サミットの
宣言の中にしかるべく盛り込まれております。同時に、
日本としては、本件に関する
国際協力の
重要性を
認識しておりますし、本年中の開催が合意されました解体核兵器から生ずるプルトニウムの処理の方策を
検討する国際的な専門家会合に積極的に参加し、プルトニウムの取り扱いに関して
我が国の有する技術や経験をもとに貢献していく
所存であります。
また、
核軍縮の
促進に対する主張についての御
指摘がありました。
我が国は、従来から、核兵器のない
世界を目指し現実的な
軍縮措置を着実に積み上げていくということが重要という
立場におります。今回の
サミットにおきましても、こうした
立場から、CTBTの
早期署名を強く訴えると同時に、
交渉促進のために
協力していく意向を表明いたしました。
同時に、私からもう一つ提起をいたしましたのは、米国と
ロシアの間の現実的な
核軍縮措置であるSTARTⅡ、第二次戦略核兵器削減
条約の
早期発効と
実施の必要性についても提起をいたしたところであります。さらに、
我が国としては、二十一
世紀に向けた
核軍縮の
あり方についての
議論を深めるために、NPT延長後の
核軍縮を
テーマとする国際セミナーを本年十二月に京都で開催する旨も紹介をいたしました。被爆を体験した非
核兵器国としての
立場からの主張を私としては行ってきたと思っております。
また、そのCTBT等について
中国がどう受けとめていると思うのかという御
指摘がございました。
中国の
対応、私にとりましても、今回の合意は強い
メッセージとして伝わってくれることと期待をいたしております。今回の
サミットにおきましては、禁止される核実験の範囲について、「いかなる核兵器の実験的爆発その他のいかなる核爆発も禁止しなければならないこと」にっき、従来この点を不明確にしておりました
ロシアを含む参加国すべてが合意し、その旨を明記した
声明が発せられました。私は、違った主張をここまで続けてこられた
中国にとりまして強い
メッセージになると思っております。
また、核爆発を伴わないシミュレーション実験についてどのような
議論が行われたのかという御
質問がありましたが、この
議論は全く出ておりません。
残余の
質問は、
関係大臣から御答弁を申し上げます。(
拍手)
〔国務大臣久保亘君
登壇〕