運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1996-05-14 第136回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年五月十四日(火曜日)     午後一時開議  出席委員   委員長 平林 鴻三君    理事 虎島 和夫君 理事 穂積 良行君    理事 持永 和見君 理事 粟屋 敏信君    理事 富田 茂之君 理事 山崎広太郎君    理事 畠山健治郎君 理事 田中  甲君       石橋 一弥君    稲葉 大和君       小野 晋也君    栗原 裕康君       谷  洋一君    中馬 弘毅君       西田  司君    山本 公一君       貝沼 次郎君    川端 達夫君       北橋 健治君    武山百合子君       永井 英慈君    福留 泰蔵君       山名 靖英君    吉田 公一君       米田 建三君    緒方 克陽君       加藤 万吉君    山口 鶴男君       山下洲夫君    穀田 恵二君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   倉田 寛之君  出席政府委員         警察庁長官   國松 孝次君         警察庁長官官房         長       菅沼 清高君         警察庁長官官房         総務審議官   山本 博一君         警察庁生活安全         局長      泉  幸伸君         警察庁刑事局長 野田  健君         警察庁交通局長 田中 節夫君         警察庁警備局長 杉田 和博君         自治大臣官房長 二橋 正弘君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    黒沢  宥君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十四日  辞任        補欠選任   村田敬次郎君    小野 晋也君   新井 将敬君    北橋 健治君   山下洲夫君    緒方 克陽君 同日  辞任        補欠選任   小野 晋也君    村田敬次郎君   北橋 健治君    新井 将敬君   緒方 克陽君    山下洲夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第五  七号)      ――――◇―――――
  2. 平林鴻三

    平林委員長 これより会議を開きます。  内閣提出警察法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗原裕康君。
  3. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 自由民主党の栗原でございます。  警察法の一部を改正する法律案について、若干質問をさせていただきたいと思います。  今回の改正案の内容を一言で申し上げますと、いわゆる戦後の民主警察と言われておって、各都道府県ごと執行機関としての警察組織があって、それを中央では企画、指導というような、戦前に比べると大変地方の各都道府県警察の力が強くなったということに対して、若干中央コントロールを強くしよう、こういう趣旨だというふうに思うわけでございます。  今盛んに地方分権ということも言われておりますし、地方分権推進委員会現実にスタートをしているわけでございます。その流れに今回の法律というのは若干逆行しているのかなとも思うわけでございますけれども、例えば橋本総理施政方針演説でも、二十一世紀にふさわしい、住民に身近な行政といいますか、地域に密着したものについては地方に任せていくのだ、しかし、やはり有事の際とかあるいは緊急時には中央が大変強いリーダーシップを持って処理をしていかなければいけない、こういうことも言われておるわけでございます。  今回、私が先ほど申しましたように、中央でのコントロールといいますか、中央での権限が若干強くなるわけでございますが、今申しました二十一世紀にふさわしい政府として、住民に身近な行政地方でやってほしい、しかし緊急時とか有事の際には、例えば阪神大震災の後の対応とかそういうものについては中央政府が強力なリーダーシップを持っていくのだ。こういうこととどういうふうに整合性を持たせているのかということについてまず最初にお尋ねをしたい、こういうふうに思います。
  4. 倉田寛之

    倉田国務大臣 現行の警察法におきましては、都道府県警察がその固有の判断と責任のもとに警察活動に当たることといたします自治体警察制度をとっておることは委員御案内のとおりでございます。  今回の改正におきましては、このことを前提としつつ、各都道府県警察広域組織犯罪等に迅速、しかもかつ的確に対処をすることができ得ますようにするために、国といたしましてより積極的、能動的なサポートを行うこととするものでございますので、地方分権推進であるとか危機管理体制強化といった政府方針から見ても適切なものであろうと考えておるところでございます。
  5. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 私も確かにそのとおりだと思います。  今回の改正というのは、そういう意味では、広域的な組織暴力等対処をするということでございますので、直接にはやはりオウム事件契機になってこういう改正が出てきたと思うのでございます。オウム事件捜査の、一連オウムの犯した犯罪というものに対する警察組織としての対応が果たしてどうだったかという問題は別としましても、もうちょっとこういう組織であればオウム捜査についてもやりやすかったのではないかなということの反省のもとに出てきたというふうに私は理解をしておるわけでございます。  ただ、例えば山口組等広域暴力団というのはもうずっと前からあったわけでございますので、確かにオウム事件契機としてというのはわかるのですけれども全国にまたがる組織犯罪というのは今までもなかったわけではないのです。なぜ今ごろに、今ごろというのは変な言い方ですけれども、ここまで改正が行われなかったのかということについてはやはりここで少し御質問をさせていただくことがいいのかなと思いますので、なぜ今までこの改正が行われなかったのか、そのことについて伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  6. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えをいたします。  確かに御指摘のように、今までもいわゆる組織的犯罪と言っていいようなものにつきまして発生していたことは事実でございますけれども、今までの犯罪につきましてはおおむねその発生地を管轄する都道府県警察によりまして適切に捜査推進されてきたというように考えております。  具体的に申し上げますと、一般に大きな事件、重要な事件と言われるものは大体対応力のある都道府県発生をしていた。したがいまして、それぞれの警察が、警察庁の調整を受けながら、それぞれ連携をとって対応することは可能であった、このように考えているわけでございます。  しかし、今回のオウム真理教関連事件におきましては、事案そのものが未曾有の規模かつ複雑なものであったということもございますし、発生地を管轄する都道府県警察のとり得る態勢を超えた事案であったというのが大変大きな特徴でございました。したがいまして、今回の事案につきまして、各方面の御指摘等を踏まえまして、こうした特異な全国治安にかかわるような事案につきましては、全国都道府県警察が早い段階からみずからの治安にかかわるものとして乗り出すことができる、さらに、警察庁はより積極的、能動的なサポートができる、そういう仕組みをつくっていこう、こういうことで今回の改正お願いしているわけでございます。
  7. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 確かにオウムの総本部というのは静岡県の富士宮市にありましたし、今回の、例えば仮谷さんとかを拉致したり、あるいは松本サリンに出かけていったのは山梨県の上九一色村でありますし、そういう意味では、必ずしも大都市の警察ではないところでかなり重要なことが行われておって、それに対して日本警察全体が対処し切れなかった、こういうことだというふうに今の答弁については理解をするわけでございます。  私が国会に送っていただいてから三年弱でございますけれども、私の記憶によりますと、県境をまたぐ捜査というものについても、たしか私が議員になってから警察法改正になったと思いますし、それからいわゆるおとり捜査、特にけん銃密輸とかそういうことについても、たしか私が議員になってからということでございますし、また今回こういう改正が行われるわけですね。  そうすると、大変言いにくいことでございますが、犯罪そのもの警察組織よりも先行している。犯罪はどんどん広域的かつ巧妙になってくるのにもかかわらず、警察組織というのはそれをいつも後で追いかけていくような、特にここ近年そうなのかなという気がいたしておるわけでございますが、そういうことを考えざるを得ないわけですね。  そうなってきますと、今後やはり、犯罪の方は警察組織の裏をかくといいますか、何かさらに進んでいって、それにまた警察が、いや、今度はこういう事件が起きてしまって組織改正しなければいかぬということにどうもなる、今までのパターンでいくとそういうことになり得る可能性もあると思うのでございますが、やはりこれは警察行政としては非常にうまくないことであって、あらゆるタイプ犯罪にもうこれで万全になった、やはりそういう組織を、あるいは法律をつくらなければいかぬ、こういうふうに私は思うわけでございますが、その点についてこれからどうなるのか。  もっと言うと、これでこれからどのようなタイプ犯罪が起きても大体対処できるというような、そういう自信がおありかどうか、そういうことも含めて、これからどうするかということについての御答弁お願いをしたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  8. 菅沼清高

    菅沼政府委員 御指摘のとおり、あらゆる事案対応できるものをあらかじめ持っているということが一番望ましい形ではあろうかと思いますが、今回の事件は毒ガスを使用した無差別テロという、我が国はもちろんでございますけれども、国際的にもいまだかってなかった種類の事案でございました。  しかし、こうした組織犯罪、特殊な犯罪につきましても十分今後は視野の中に入れて治安的な対応を考えていく必要があろうか、このように考えておりまして、今回の法改正とあわせて組織改正等も行いまして、こうした事案対応できる担当の審議官を設けましたり、また、こうしたものにつきましては情報があらかじめ得られるということも大変大切でございますので、こうした組織犯罪についての情報を集めるセクションを今回の組織としても設けたわけでございます。さらに、長期的に治安を展望する意味で、シンクタンク的なものを警察組織の中につくって、そして中長期的な展望に立った治安対策を考えてまいりたい、このように考えておるところでございます。  なお、こういう治安対策というのは、どういたしましても情勢をにらみながら対応していかなくてはならない側面もあるということも御理解いただければありがたいと思っております。
  9. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 大変お答えしにくいような質問で恐縮だったわけでございますが、日本警察というのは私は大変優秀だというふうに思っておるわけでございますが、なかなかやはり悪いことをする人間もそれなりにすき間をついてくるというか、すきをねらってくるというか、そういうことで、特に世の中の進歩というのが早うございまして、そういう意味でなかなか大変だと思うわけでございます。  私がなぜそんなことを聞いたかといいますと、例えば、これはここの委員会でこういう発言をしていいかどうかわかりませんけれども、朝鮮半島の情勢なんかを大変私ども一般国民も含めて非常に心配をしているわけですね。一説によると、ことしの夏にはもう食糧が完全に底をつくんだということも言われておりますし、この北朝鮮という国が相当ひどい状態であることは多分間違いないだろう、こう思うわけでございます。  そんな中で、いろいろ起こってはならない、あるいは起こってしまっては大変困るというような事態想定できるわけでございまして、例えば北朝鮮が南に攻め込んでいくとか、いろいろな最悪シナリオというのがあると思うんです。その中で、やはり一つのその最悪シナリオの中に、北朝鮮人たちが一部難民化して、小船でも夏とか春とか秋の、秋はちょっと波が荒れるでしょうけれども、なぎのときには日本海側にさっと難民が船に乗って、それこそ漁船に乗って押し寄せることができるんですね。しかも、その中には軍隊で鉄砲、銃器を持った人たちがあるいは紛れ込んでいるかもしれない。そういったことが起きたときに、じゃどこまで自衛隊の持ち分でどこまでが警察持ち分かというようなことも、これはやはり相当大きな問題になってくると思うんですね。  ですから、私がこれからの各種の事件ということを申し上げた中には、海外からの脅威といいますか、武装化した難民日本海の方に押し寄せてくるというようなこともやはりある意味では想定をしておかないと、来てから、いや実は組織が悪かったとか防衛庁との連絡がうまくいかなかったとかいうことじゃ遅いわけでございますので、大変具体的な質問でやはりお答えしにくいのかもしれませんけれども、今言いましたように、もし仮にある国から武装した難民等日本海に押し寄せてきた場合には、これは警察はどういうふうに対処するのかということについてもある程度想定なさっていらっしゃるかどうか。想定なさっているならば、どういう対処をしようとしていらっしゃるのか、仮定の話で恐縮でございますが、御質問を申し上げます。
  10. 杉田和博

    杉田政府委員 警察といたしましては、従来から、半島有事の場合に起こり得る事態、ただいま委員指摘の点も含めまして、そういう場合を想定をいたしまして、その場合にどのように効果的に対応するかという点についてこれまでも勉強をしてまいりました。  ただ、今の段階で具体的にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、そうした大きな事態の場合には、警察のみでは対応は不可能であります。したがいまして、今後とも、関係機関とも連携をとりつつ具体的に検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  11. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 よくわかりました。今までも勉強しているということでございますし、関係機関とも連携をとっておるというふうに判断をさせていただきます。ぜひ、そういうことにならないように私ども政治家として努力をしなければいけないと思いますけれども最悪シナリオの場合には敏速に対応するように、おさおさ怠りのないようにお願いをしてまいりたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、今言いました将来起こり得るということについて、今度は、例えば「広域組織犯罪等」という言葉がございまして、麻薬とかいろいろなことについての警察庁長官権限といいますか、指揮権というものが発動できるように法改正でなっておりますけれども日本警察捜査の仕方というのは、よく言えば非常に自粛しておって余り人権に踏み込まない、被疑者人権というものは大切にするということで、いわゆるおとり捜査というものは、けん銃密輸等あるいは麻薬等に適用するのみで、ほかには余り適用されておりませんね。ただ、欧米等を見ますと、特にアメリカなどは、ありとあらゆるところでおとり捜査をやって悪い者を取っ捕まえる。この前映画を見ておったら、地下鉄の警察も、あれは「マネートレイン」という映画でしたかな、酔っぱらいのまねをした捜査官がいかにもお金をとってくださいというようなふりをして、それで犯罪者を取っ捕まえているんですね。  そこまでやれとは言いませんけれども日本警察も、私はもうちょっとおとり捜査というものを利用された方がよろしいんではないか。大変残念なことでございますけれども、これだけ凶悪犯罪もふえてまいりますし、特に今銃の密輸なんかも、銃はおとり捜査をやっておるんですけれども、ふえてまいりますし、治安大変心配でございますので、もう少しおとり捜査という手法をおとりになった方が警察のいわゆる検挙の実効が上がるんではないかというふうに思っておりますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  12. 野田健

    野田(健)政府委員 一連オウム真理教関連事件を見ますと、極めて閉鎖的な集団による組織的な犯罪でありまして、このような組織背景とした犯罪については、密行性とかあるいは計画性というようなことがあるためにその解明は極めて困難になるわけでございます。  御指摘のおとり捜査については、一般捜査員または協力者がおとりとなって、想定している犯罪行為が行われるのを待って犯罪者を検挙する捜査手法をいうものと理解しておりますが、日本においては、犯意のない者に犯意を生じさせるようなおとり捜査は排除すべきものと考えているところであります。  ただ、既に犯意を有している者に、犯罪現実化であるとかあるいは対外的な行動化というようなことが行われた、その機会を与えたにすぎないというようなものについては、その捜査手法適法性を認める判例も集積されているというふうに承知しております。  そこで、一般組織背景とする犯罪に対する特別の捜査手法については、適正手続の保障あるいは国民警察に対する信頼の確保に留意しながら、犯罪情勢全般の変化に伴う捜査困難性等を総合的に検討した上で、これらに的確に対応し得る種々の捜査手法の導入についても検討してまいりたいと考えております。
  13. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 確かに、犯意のない者に犯意を起こさせるようなものは悪いのでしょうけれども、そこはなかなか境界が難しゅうございまして、基本的にはオウム等の凶悪な犯罪あるいは銃を使った非常に凶悪な犯罪、あるいは最近新聞、テレビをにぎわしている猟奇的な、一たん裁判で無罪になった人が実は、これはまだわかりませんけれども、とんでもないことをしておったとか、そういうことを見ますと、日本警察というのは本当にそういう意味では信頼をされているのですから、踏み込んだ捜査をなさった方がかえって国民信頼が上がるのではないかというふうに思っておりますので、答弁意味よくわかりますけれども、ぜひ研究していただいて、捜査実効が上がるようにお願いしたいと思います。  今回の改正、この法律については大体今御質問申し上げたようなことで終わりたいと思いますけれども最後に、「広域組織犯罪等対処する」ということで警察庁長官指示権というものが新設されておるわけでございますけれども、この指示権ということ、これは具体的にどういう運用をするのか、あるいはどういうことに留意して運用していくのかという基本的なことについて、この改正案についての質問最後にちょっとお尋ねをしたい、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  14. 國松孝次

    國松政府委員 改正法第六十一条の三というところで警察庁長官指示というものが規定されるわけでございますが、そうした指示の行われる場合というのは、条文にも明らかにされておりますとおり、「広域組織犯罪等対処するため必要があると認めるとき」、そういう場合に発動されるということになっておるわけでございます。  このような「広域組織犯罪等対処するため必要があると認めるとき」というのはどういう場合かということでございますが、そのことにつきまして私どもは、先ほど来の答弁にもちょっと出ておりましたけれども、その発生地を管轄する都道府県警察が個々に対応すれば足りるような程度はもうずっと超えてしまった大規模かつ複雑な事案発生しておりまして、全国の広範な区域における公安維持等のため特に迅速な処理を必要とするような場合というものを指すものというように理解をしておるところでございます。そのような場合というのはそう日常的に発生するものではございませんで、例えばオウム真理教関連事件のような事件、そういった大規模かつ複雑な事案発生した場合に限って警察庁長官指示が行われるべきだというように考えておるところでございます。  したがいまして、今後の運用につきましては、そういった警察庁長官指示と申しますものは、そうした大規模かつ複雑な事案発生した場合に、全国的な見地から個々具体的な条件を勘案いたしまして、その必要性判断し、その上で都道府県警察の主体的な活動のあり方というものにも配意しつつ指示を行うかどうかを決めていくべきものというように考えております。
  15. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 確かに都道府県警察に配慮しながらということでございますけれども、ぜひ果断に大胆に、特に強力なリーダーシップを持って進めていただきたい、私はそういうふうに思っております。  先ほどから、オウムのことを直接のきっかけとして今回こういう改正案が出てきたのでしょうということを私は申し上げたのでございますが、オウム事件についてはもう大分、裁判のニュースこそ出てまいりますけれども、その後の捜査状況とかあるいは今後の見通しとかということについてはほとんどマスコミも取り上げなくなりました。しかし、現実にはまだオウム指名手配になっている人間が数名逮捕されずに、相変わらず各駅等に行きますと写真が出ておる。世間では大分忘れられてきておりますけれども、出ておる。それから、これはオウムに関係するかどうかはまだ判明しておりませんけれども長官を撃った者もまだ捕まってない。こういう状況でございますので、この際、オウム捜査の今の状況あるいは見通しといったものについてお尋ねをしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  16. 野田健

    野田(健)政府委員 オウム真理教関連事件につきましては、昨年三月二十二日の一斉捜索着手以来これまでに三十数件の重大事件を検挙し、重大事件を含む逮捕者数は実員で四百二十余名ということになっております。同教団代表麻原彰晃こと松本智津夫の公判も開始されたところでありますけれども警察としては、現在引き続きオウム真理教関係警察庁特別手配被疑者に対する追跡捜査、それから犯罪被害に遭っているおそれのある所在不明者等に対する犯罪容疑解明捜査等の所要の捜査を鋭意推進し、全容の解明に当たっていきたいと考えているところでございます。  なお、このオウム真理教関係警察庁特別手配被疑者でありますけれども、現在七名おりますが、これについては追跡捜査強化月間ということで、全国都道府県警察挙げてその強化に努めているという状況にございます。
  17. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 強化月間というのは今月のことですか。
  18. 野田健

    野田(健)政府委員 五月十一日の土曜日から来月の六月十日までを特に一カ月定めて強化してまいりたいと考えております。
  19. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 ぜひ成果が上がるようにお願いしたいと思いますけれども、やはりマスコミ等にもこういうことはある程度流していただかないと、本当に最近のマスコミを見ていると、裁判のことについては報道されておりますけれども、その後の捜査のことについては余り報道されていません。もっと言うと、国民からだんだん忘れ去られていくような気がいたしますので、ぜひそのことをお願いしたいと思います。  最後に、もう時間がございませんので、最近少し話題になっておりますSWATというのですか、特殊部隊、これが実は警察にちゃんとあったのだということが公表されました。これはなぜこの時期に公表をしたのか、ちょっとお答えしにくい質問かもしれませんけれども公表に至るまでの経過というものについて一度当委員会で明らかにしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  20. 杉田和博

    杉田政府委員 警察といたしましては、従来から、ハイジャックなど特殊な事態対応するための部隊を警視庁と大阪に配備いたしておりました。御承知のとおり、昨年の北海道のハイジャック事件のときに初めてこの部隊運用いたしました。加えて、昨今の大変に厳しい銃情勢等、どんな事態が起きるかわからないということを踏まえまして、ことしの四月一日付で警視庁と大阪に加えまして北海道、神奈川など五つの道県に同種の部隊を配備いたしました。これによって全国的に主要なところについては特殊な部隊が配置されることになるということを踏まえまして、この際名称も、日本の場合はSATと申しますけれども、このSATという名称も付しまして、今後とも士気を高めつつ技術の向上というものに努力させる、そういう意味合いを込めまして公表したものでございます。
  21. 栗原裕康

    栗原(裕)委員 わかりました。  確かに警察業務の中には、いわゆる駐在さんを含めて我が村のお巡りさんということで、本当に親しまれるような部分も大切だと思いますけれども、やはり凶悪なものに対しては断固とやる、こういう姿勢も国民の前に明らかにしなければいけない。そういう意味では、このSATというものについて今の時期に公表なさったということは大変時宜を得ていると私は思います。ぜひ御健闘をお祈り申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  22. 平林鴻三

    平林委員長 富田茂之君。
  23. 富田茂之

    ○富田委員 新進党の富田茂之でございます。  私ども新進党も、昨年の十一月でしたか、オウム真理教事件再発防止検討プロジェクトで警察庁の御協力もいただきまして、広域犯罪について機動的捜査が可能となるような警察法改正案をまとめたという経緯がございます。残念ながら、議員立法で提出したかったのですけれども、提出まではいきませんでしたが、その際、警察庁の方から広域捜査についての問題点等いろいろ教えていただいたり、そういう経緯もございますので、本法案には基本的に賛成するのでありますけれども、何点かは疑問の点がありますので、逐次質問させていただきたいと思います。  実は、本年の三月十五日付で、本法案について日本弁護士連合会会長声明が出されております。国家公安委員長、また警察庁長官の方にも多分届けられていると思うのですが、その中で、今回の改正につきまして、こういうふうな声明文がございます。  改正理由とされているオウム真理教関連事件についていえば、とりわけ坂本弁護士一家拉致事件松本サリン事件に対する警察捜査が、「個人の生命、身体及び財産の保護」を第一としてなされたかなど、多くの疑義が提起されているところである。これらの疑義に対し、警察は、前記事件捜査に関する情報公表し、国民の批判・検討に付すべきである。これらの捜査情報公表されず、捜査への疑義が解明されない状況下において、今回の改正理由をそのまま是認することはできない。 というふうに、改正に反対する理由の一つとしてこのようなことを日弁連の会長声明の中に書かれております。  オウム真理教事件捜査についてこのような批判があるのだということについて、警察庁の方としてはどういうふうに受けとめられているのか。ちょっと御見解を伺いたいと思います。
  24. 野田健

    野田(健)政府委員 オウム真理教に対する捜査につきましては、国民の不安を一刻も早く解消するため、全国警察を挙げて懸命に取り組んできたところであります。  今回のオウム真理教関連事件といいますのは、高度な科学技術を悪用した犯罪であったこと、閉鎖的な集団による計画的な犯罪組織的に証拠隠滅が行われたこと、あるいは全国規模にわたる広域捜査が求められたことなど、捜査上、非常に困難を伴ったところでございます。また、本件の捜査に関しましては、今委員指摘のとおり、いろいろな御批判があることも承知しております。事件の様相がある程度解明された現時点から見ますと、種々の御意見もあり得るというふうに考えておりますが、事件発生当時、それぞれの事件捜査に当たっては担当者がその全力を尽くして行ったものでありまして、適正な捜査手続によって得られた証拠に基づき、一歩一歩着実に捜査を積み重ねた結果、教団主宰者を初めとする主要被疑者を逮捕するに至ったものと御理解いただきたいのであります。  また、逃走中の被疑者については、現在指名手配などをいたしまして鋭意追跡捜査をしているところでございます。また、軽微と言われる事件につきましても、事案の具体的な状況に即しまして犯人の住居あるいは氏名が明らかでない場合、その他逮捕の必要性等を判断いたしまして、法の定めるところに従って処理したものでございます。  それぞれの裁判結果等から見ましても、おおむね国民の御理解は得られたものではないかというふうに認識しておりますが、さらに今回の捜査の教訓を踏まえながら、公共の安全を害するおそれのある集団に対する諸対策、捜査運営等について、今後検討をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、捜査情報公表といいますか、そういう御質問でございますけれども警察としては従来から、捜査上の支障であるとかあるいはプライバシー上の支障、あるいは訴訟に関する書類の開示を制限する刑事訴訟法上の要請等を考慮した上で、公表できる内容については可能な限り公表することとしております。今後もこの方針のもとに、警察白書等の公刊物を通じるなどして、国民の皆様の御理解をいただきたいというふうに考えております。
  25. 富田茂之

    ○富田委員 多分、今の刑事局長答弁では日弁連側は納得しないと思うのですね。警察の方が一生懸命やって検挙されたのだというのはもうそのとおりだと思いますし、なかなかオープンにできないものもあるということもよくわかるのですけれども、わざわざ日弁連会長がこういう会長声明を出したということは、もう少し突っ込んだ捜査情報の提供があってもいいんじゃないか。弁護士が拉致されたということで、日弁連もかなり警察と協力して坂本さんの事件についてはずっとやってきたわけで、そういう点からもこのような批判が出ているのじゃないかなというふうに私自身は感じました。もう少しこういう部分に関しては弁護士会とも協力して、もう一歩踏み込んだ情報提供というのを今後は考えていただければなというふうに思います。  その件に関連してですけれども、本法案の趣旨説明が行われました四月二十六日の本会議で、我が党の山名議員がこのように総理に質問をしておりました。この事件捜査の反省、教訓等、十分な検証が必要であり、その検証なくして制度の改正のみで事足りるものと考えているなら、これは大きな間違いだ。今回のオウム事件に対する認識、事件の教訓、反省をどのようにとらえておられるのか、今回の法改正で今後の対応が十分果たせるのかというふうに山名議員は総理に問いかけました。  それに対して、総理はこのように答弁されました。   地下鉄サリン事件を初めとする一連オウム真理教関連事件は、複雑化する社会情勢の中で生じてきた閉鎖的な集団による悪質きわまりない組織的な犯罪であり、善良な国民を犠牲にした卑劣な事件だと思っております。   このオウム真理教関連事件犯罪としての特徴は、高度な科学技術を悪用したことであり、組織的に証拠隠滅を図り、全国の広範な区域に犯行が及んだことなどでありまして、こうした原因により捜査が難航したものと承知しております。こうした教訓を踏まえて、専門捜査員の育成、装備、資機材の充実等、科学捜査力の強化のための措置を講じながら、一方では、広域組織犯罪などに迅速かつ的確に対応するため、今回、本警察法の一部改正お願い申し上げた次第であります。  ぱっと聞くとなるほどなと思うのですが、ちょっとこれは二通りに読めるのですね。捜査が難航したのはオウムがこういう、先ほど刑事局長もおっしゃっていましたけれども組織的に証拠隠滅を図ったとか閉鎖的な集団であったとか科学技術を駆使したという、これまでの犯罪にないかなり特徴的なものがあった、そのために捜査が難航したんだ、オウム側に主たる要因があったんだというふうに、警察側が悪いわけじゃないよと言っているようにも聞こえるのですね。また逆に、こういうことがあったので警察は十分な対応ができなかったんだというふうに弁解しているようにも聞こえるのですね。ちょっと、どちらかよくわからない。  公安委員長の方から前回の委員会で提案理由の御説明がありましたけれども、提案理由の中にも、オウム真理教関連事件の経緯にかんがみ、都道府県警察広域組織犯罪等に迅速かつ的確に対処することができるようにするため一部の改正を提案したんだというふうになっているのですね。この「経緯にかんがみ」というのはどういう意味なのか、ちょっと教えていただきたいのですが、橋本総理の挙げた要因により捜査が難航したんだという意味しかないのか、あるいは、警察の方にも例えば初動捜査等にミスなりあるいは不手際があったんだ、それを反省して、法案の改正をしなければやはり機動的な捜査はできなかったんだというふうに考えて改正案の提案に至ったのか、そのあたりちょっとお聞かせ願えればと思います。
  26. 倉田寛之

    倉田国務大臣 今回の一連オウム真理教関連事件につきましては、目黒公証役場事務長拉致事件であるとか地下鉄サリン事件発生をいたします前に、警視庁が山梨県内のオウム真理教関連施設等に対し権限を及ぼすことができなかったのかとの御指摘はいただいておるところでございます。  しかし、現行法上におきましては、都道府県警察は、オウム真理教関連事件のような広域組織犯罪等が管轄区域外で発生した場合には、管轄区域内の公安維持等に関連することを明確に認定できなければ権限を及ぼすことが困難でございます。また、広域組織犯罪等発生した場合に必要な全国的な警察の態勢につきまして、個々の道府県警察では判断が困難でございます。そこで、広域組織犯罪等に関して都道府県警察の管轄区域外における権限警察庁長官指示等について規定を整備してまいりますため、この改正お願いいたしているところでございます。
  27. 富田茂之

    ○富田委員 今の公安委員長の説明は、もうそれはよくわかるのですけれども現実問題として、今の御答弁の中で批判があるということも言われておりましたが、もう昨年になると思うのですけれども、この委員会オウム捜査について刑事局長の方にちょっとお尋ねしたのです。警察庁の方としては、山梨県警や長野県警等にも適切にその都度その都度きちんとした指示をしていろいろ調査等もさせていたんだというような御答弁があったのですね。だから私は、ちょっとそれは納得いかなかったのです。もしそうだとしたら地下鉄サリンまでは起きなくてよかったんじゃないかというふうに申し上げたことがあるのです。  今回の改正がされる前でも、やはりもう少し各都道府県警察間の協力とか警察庁の適切な指示等があれば、上九一色村の第七サティアンでサリンがつくられていたんだということがもう少し早くわかったのじゃないか、またもう少し早い時期にきちんと警察の強制捜査ができたのじゃないかなというふうに、これは後になってからわかったことですからこういうふうに質問するのは簡単なんです、現場で実際にその捜査に当たられた方たちはそういうわけにいかないというのはよくわかるのですけれども、ただ、法律改正しようという限りは、実際に前の法律でどういうところがだめで、しかも警察警察権を行使するに当たってこういうだめな部分があったんだというのをもう正直に認めた方がいいと私は思うのです。法が不備だったからできなかったという事案とは今回のオウム事件はちょっと違うのじゃないかなと思うのですね。  先ほど官房長が、これまでの事件というのはその都道府県警察対応できる、対応できる能力のある都道府県警察で大きな事件が起きていたんだと言われましたけれども、どうもずっとオウム一連の経過を見ていますと、対応できないところをねらってやってきている。警視庁にはとにかく触れない、警視庁管内では事件を起こさないんだ、警視庁で事件を起こしたら必ずやられてしまうというような認識のもとに、その周辺でやってきたというような報道も大分なされていました。  そういうところから見ますと、松本サリン事件が起きて、その後上九一色村で異臭事件が二回発生しましたね。その後、第七サティアンの裏の方ですか、警察庁の科警研の方で土を採取して、十一月になってサリンの副生成物が出てきた。この前の委員会では、刑事局長は、副生成物はサリンからできるものだけではないというような科学的なあれもあるんだというような答弁をされていましたけれども、今の経過を考えれば、上九一色村のオウム施設でサリンがつくられていたのじゃないかという疑いはかなり出るわけですから、現行法でも強制捜査に踏み切れたのじゃないかと私は思うのですが、そのあたりについては今はどういう御見解をお持ちですか。
  28. 野田健

    野田(健)政府委員 委員指摘のように、現時点から考えますと、もう少し早く上九一色村のいわゆるサティァンと呼ばれる施設に捜索が入れなかっただろうかと、我々もいろいろと事件の検討等の機会にやっているわけでありますけれども、捜索令状を取得するためには、犯罪事実として確定的な、それなりの疑いを持ったということを証明しないといけないということがありまして、現実に、いろいろな事件で何とか捜索できないかということで個別の検討もしましたし、あるいは警察庁にお集まりをいただいて、それぞれの県からのみんなの事件をまとめれば何とかならないかとか、そういう意味でも検討いたしましたが、残念ながらその時点で捜索まで至ることはできなかったという実情にございます。
  29. 富田茂之

    ○富田委員 御苦労はよくわかるのですが、やはり後から見るとちょっと早く決断してもらえたらなというふうな思いが残ります。  昨年の十二月八日の委員会で、オウム事件の経過をずっとお聞きした最後に、官房長に法改正したらどうなんだという御提案を申し上げました。そうしましたら、官房長の方ではこのように御答弁をいただいております。  現在の規定上も可能なのかどうか、そこのところを今ぎしぎし詰めている状況でございまして、また行政法学者の先生方の御意見等も伺いながら検討している。それが、やはり明確にした方がよい、あるいは創設的にそういうものをつくらなくてはならないという結論になれば警察法改正お願いしたい、こういう答弁で、最後に、現在の解釈の中でも可能であるということになれば現行法の運用対応したい、こういうところまで現在検討は進めております。 これが去年の十二月八日の段階でございました。  今回改正法ということで提案されたということで、十二月以降ずっとまた検討を重ねたのだと思いますが、現行法ではだめで、新たな規定を幾つか設けてきたというところに至った経過、行政法学者の先生方がどんな意見だったのかとか、そのあたり、差し支えない範囲で教えていただければと思うのですが。
  30. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  昨年の一連事件捜査等の経緯にかんがみて今回の改正お願いしておるわけでございますけれども、具体的な捜査の過程等につきましては刑事局長から御説明をいたしたとおりでございますが、制度的な観点から御説明をいたしますと、最も好ましいのは、全国的な治安に影響があるような重要な事件発生した場合には、それに対応できる、体制的にも知識、経験においても能力においても最も力を持っておるところが早期にその捜査に着手、介入していけるという形が一番いいわけでございます。  しかし、現在の警察法上の制約といたしましては、一つは管轄区域の制約がございまして、これは平たく言いますと、自分の県の治安にかかわる場合、その県内で発生をしたとか被害者がいるとか被疑者がいるとか、そういう状態でないと基本的には管轄区域外で権限を行使することができない、こういう仕組みになっているわけでございます。したがいまして、力のあるところがやっていこうと思いましても、そういう状態になってまいりませんと外へ出ていけないという問題がございます。  また、重要事件発生する場所が必ずしも対応力のあるところとは限らない。例えば、山梨は千四百人ぐらいの規模でございますけれども、警視庁は四万を超える定員を持っておるわけでございます。そのくらい差がある。そうしますと、今後いろいろな事件が比較的対応力の弱いところで発生をしてくる可能性もある。そうした点につきましても、先ほど言いましたような制度上の制約があるわけでございます。  もちろん、お話ございましたいろいろな協力とか応援とかいう形での対応が現在の制度上もできるわけではございますけれども、応援といいましても、例えば千四百人のところに五千人が応援に行きますと、これは応援を受ける態勢そのものがまた大変でございまして、これは果たして応援を受けた形で主体的な捜査活動ができるのかというような問題もあるわけでございます。  したがいまして、そういったもろもろのことを、制度上の制約また実質的な制約、そういったものを比較検討いたしまして、学者の方々、また各方面の方々の御意見等を伺って、結局、現在の制度上ではなかなか乗り越えられない、そこで今回の改正の内容に至ったわけでございまして、この過程におきましては、新進党の方で検討されました内容等につきましても十分に参考にさせていただいたところでございます。
  31. 富田茂之

    ○富田委員 新進党の案を参考にしていただいたということで、本当に賛成せざるを得ないなとは思うのですけれども。  実は、新進党の方で警察庁の御協力を得てこの広域組織犯罪に対してどう対応していくかということを詰めていたときに、最終的に警察庁の方もこういう案文でいいのではないかということで一つでき上がっているものがあるのですね。今回「広域組織犯罪」という新しい用語が出てきているのですけれども、その用語がまた意味がよくわからないという批判が出てきたりしますので、新進党の検討していた案ではこういうふうな言い方をしておりました。「都道府県における公安の維持に重大な支障を生じるおそれのある事案又は特殊の犯罪であって一の都道府県警察においてその処理を行うことが困難と認められるものに係る警察行政に関する調整」、これを国家公安委員会の事務分担にするというような形で、こちらの方がどういう事件なのか、事案なのかがストレートにわかって私はいいと思うのです。  「広域組織犯罪」と新たな用語をつくって何かちょっと意味がわからなくなる、また、「広域組織犯罪」なんだということで広げられる、拡大解釈のおそれがあるよりも、もう一つ都道府県対応できない事案だというふうに明確に規定した方がいいと思うのですが、そのあたりはどういう検討経過になったのでしょうか。
  32. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えをいたします。  御意念はごもっともでございますけれども先ほど来の一連の御質疑の中にもございましたが、現在の警察制度は自治体警察の基本に立っているわけでございます。したがいまして、どの県が行ってもいいという形だけになりますと、例えば全く東京に関係がないあるいは全く大阪に関係のない事案について、警視庁が出ていくあるいは大阪が出ていくという仕組みが一つ考えられるわけでございますけれども、こうしますと、現在の自治体警察の基本、つまり、みずからの県の県民の安全にかかわるということにおいてのみ管轄区域外の権限行使ができる、もちろん県内の治安活動ができるという仕組みになっているその部分と切れる問題になってくるわけでございます。したがいまして、重要な事件であればどこの県に行ってもいいという仕組みにつきましてはそういう難点がある。  したがいまして、今回「広域組織犯罪等」という言い方をいたしましたのは、ここで定義いたしております「広域組織犯罪等」といいますのは、全国の広範な地域において生命、身体、財産あるいは公共の安全と秩序の維持にかかわるような事態に至る犯罪、ということは、全国どの県においてもその事案についてはみずからの県内の安全、県民の安全にかかわる、そういう性質の犯罪ということに定義をしたわけでございます。  したがいまして、それは見かけの上ではまだ自分の県内に発生していない事案でございましても、極めて蓋然性の高い状態において自分の県内にも及んでくる、あるいは発生してくる状況がある。したがって、これは自治体警察の観点からいたしましても、県内の治安にかかわるということで出ていける。こういう仕組みといいますか、考え方で整合性が出てくるのではないかということで今回のような定義の仕方をいたしたわけでございます。
  33. 富田茂之

    ○富田委員 ある程度理解はしますが、次の質問にいきます。  日弁連の会長声明の中にもう一つちょっと気になる部分がありますので、その点にきちんとお答えいただいておいた方がいいと思うのですね。  会長声明の中で、先ほど栗原委員質問の中にもありましたけれども、「現行警察法は、一九九四年(平成六年)六月に、「犯罪の広域化等に効果的に対処する」ことを理由として改正されたばかりであった。この時の改正の効果の内容が何ら明らかにされないまま、わずか一年半後に再び「広域犯罪」を理由として改正がなされようとしていることには疑問なしとしない。」これはもっともだと思うのですね。  平成六年に犯罪の広域化に対応するということで幾つかの規定が改正され、また新設されております。この平成六年の改正犯罪の広域化等に効果的に対応するために設けられた各規定、この規定でどういう効果があったのか、警察庁の方でもし掌握されているようならこの委員会で明らかにしておいた方がこういう批判にこたえられると思うのです。  例えば、旧の六十条の二から現行の六十条の二に、用語がちょっと広げられて管轄区域外のところが広がったと思うのですね。その部分とか、あるいは新設された六十一条の二、共同処理ができるようになるという規定でしたけれども、こういう規定で具体的に捜査協力等ができるように、こういうふうになったのだとか、あるいはこういう事案でこういう解決に役立ちましたというような何か具体的な事例がありますか。
  34. 野田健

    野田(健)政府委員 平成六年の警察法改正では、管轄区域が隣接し、または近接する都道府県警察は、相互に協議して定めたところにより、社会的経済的一体性が認められる都道府県の境界周辺の区域における事案処理するために、関係都道府県警察の管轄区域に権限を及ぼすことができることとなりました。  また、合同捜査の制度に関する規定が整備され、複数の都道府県警察が管轄権を有する事案については、その処理を円滑に行うため、警察本部長が相互に協議して定めたところにより、関係都道府県警察の指揮を一元化することができることとなったのであります。  広域犯罪については、これら改正規定を有効に活用いたしまして、関係する都道府県警察間に合同捜査本部を迅速に設置したり広域捜査隊を円滑に運用したりするなどして、適切に捜査を進めているところでございます。  具体的な効果といたしましては、殺人の絡む捜査本部設置事件のうち、合同・共同捜査を実施した件数は、平成四年、五年がそれぞれ六件あるいは七件でありましたが、平成六年、七年にはそれぞれ十五件、十二件と大幅に増加しております。また、窃盗事件に関する合同・共同捜査を実施した件数は、平成四年、五年がそれぞれ八十八件、八十四件でありましたが、平成六年、七年ではそれぞれ百二十件、百三十八件と、こちらも大幅に増加しております。  都道府県の管轄区域が隣接する警察間では、例えば北関東広域捜査隊というようなものを設置しておりますけれども、この茨城、栃木等の県境付近で発生した事件、例えばことしの二月二十九日、茨城県の猿島町内においていわゆる凶器を持った強盗、持凶器強盗事件発生しておりますけれども、この事件について北関東広域捜査隊が初動捜査に従事いたしまして、現場から一キロメートル離れた地点で不審な男を発見し、職務質問の上、緊急逮捕したというような事例がございます。     〔委員長退席、持永委員長代理着席〕
  35. 富田茂之

    ○富田委員 先ほど栗原委員も言われていましたけれども、今のようなことをもっと一般に広報するという方法をやっていただくと日弁連の方の誤解もなくなるのじゃないか。この会長声明のこの部分は僕は誤解だと思うのですね。実際にどういうふうに効果があったのかというのを知らないで、何の効果も明らかにされてないのに改正するのはおかしいというのはちょっと批判としては間違った批判じゃないかなと思いますので、警察庁の方でもそのあたりは努力されて、弁護士とけんかだけしてないで、弁護士の方にも情報提供すればそれなりに協力体制ができるのじゃないかと思いますので、その点は今後も検討していただきたいと思います。  あと、今回の改正案で一番気になりますのは、先ほど質問させてもらいましたけれども、やはり「広域組織犯罪」という新しい用語がつくられて、「広域組織犯罪」というのはこういうものだ、また「その他の事案」というのはこういうものだということで具体例の御説明等をいただいておりますが、何かちょっとよくわからない。具体的な事案になると、それが当たるのかどうかがちょっと難しいなと思うのですね。  警察庁の方から事前にいろいろ御説明いただいた部分とか、あるいは調査室の方でつくっていただいた資料等にこういう例が当たりますというふうに書いてありますが、そこに挙げられた例というのはこれまで起きた重大犯罪がある程度例として挙げられていて、今後同じようなものが起きるのかどうかわかりませんし、起きてくる可能性のある事案をある程度類型化して、こういうものも含まれますよというような提示がないと、拡大解釈されるのではないかという不安は、やはり弁護士とか学者は思うと思うのですね。そのあたりについては、「広域組織犯罪」とか「その他の事案」、また「必要な限度において、」とか「権限を及ぼすことができる。」という各用語についても意味がまだ明確になっていないのではないかという批判がありますけれども、その点についてはどういう認識をされておりますか。
  36. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えをいたします。  「広域組織犯罪」の定義等につきましては、先ほど御説明をいたしましたことの繰り返してございますけれども、「全国の広範な区域において個人の生命、身体及び財産並びに公共の安全と秩序を害し、又は害するおそれのある」ものというように定義をしているわけでございまして、過去に起こった事案等については今までも個別の御説明をしているところでございますけれどもオウム真理教関連事件と同種のテロ事件といいますのは、全国にそれぞれ足場を持っておりまして、そして、一定の目的のもとに、どの拠点あるいはどの活動のできる場所においても同種のことが敢行されるという可能性のあるようなテロ事件のようなもの、それから、暴力団の抗争事件の中でも全国的に拠点を持っているいわゆる広域暴力団相互間の対立抗争事案、これにつきましては、あるところで発生したものが速いテンポで全国的に波及をして、全国各地でそうした末端の対立抗争事案発生していくというような可能性がある、そういった事案が考えられるわけであります。さらに、全国に流通する食品に対する毒物混入事案、かつてグリコ・森永事件というのがございましたけれども、ああしたタイプの、全国どこの場所においてでも起こり得るという意味では、全国国民、県民が同じような被害の危険にさらされているような事案といったものが考えられると思います。さらに、先般アメリカでユナボマー事件というのが検挙されておりますけれども、反技術主義という目的のもとに、全国に、ある特定の対象者に対して爆弾を送りつける、こういった事案も同種のものとして想定できるのではないかというように考えております。  「犯罪等」、「等」とつけましたのは、「広域組織犯罪等」と言っておりますけれども、まだ捜査の着手した段階、あるいは犯罪の初期の段階におきましては、組織的に行われているのか個人として行われているのか必ずしもはっきりしない、ただ、全国どこの県においても発生する可能性があるという意味で、そうしたものもこの中に含むというように考えているわけでございます。  それから、「必要な限度」といいますのは、先ほど長官答弁でも御説明いたしましたけれども、そうした一定の事案に該当するものについて常に管轄区域外の権限行使が行われているわけではございませんで、それぞれの状況に応じまして、それぞれの県が対応すれば足りるものについては必ずしもこの規定が実施されるというわけのものでもないわけでございまして、そういう意味で、「必要な限度」というのは、他の都道府県警察との関係において必要な限度という意味でございます。  それから、「権限を及ぼすことができる。」というのは、これは警察権限を及ぼすことができるということでございまして、刑事訴訟法、警職法等、警察に与えられている権限の行使を、先ほど言いました一定の条件下において管轄区域外に権限の行使ができる、こういうように考えております。  それで、将来起こり得るいろいろな事象を類型化するというのは、私どもも考えてみたいと思っておりますけれども、なかなか難しゅうございまして、やはり過去に起こった事案あるいは諸外国に起こっている事案、そういったものを念頭に置いて想定をしている状態でございます。
  37. 富田茂之

    ○富田委員 今のはよくわかりました。現時点ではそこまでしか説明できないと思いますので、その点は理解します。  あと一つ、六十一条の三の関係で、これは五条にもあるのですが、「警察の態勢」という意味がよくわからないというような批判が日弁連会長声明の中にも出てきておりました。  この調査室の資料を見ましたら、それが明確に書いてありましたので、こういうふうな意味ならば理解してもらえるのではないかなと思うのですけれども、「警察庁長官は、広域組織犯罪等対処するため必要があると認めるときは、①捜査等を行うべき都道府県警察の範囲、②関係都道府県警察間の指揮系統、③関係都道府県警察間の役割分担等について必要な指示をすることができる」というふうにこの調査室の資料には書いてあるのですが、条文上はこれは出てこないのですよね。「警察の態勢」というのは、この三点が主なものなのですか。その点、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  38. 菅沼清高

    菅沼政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもが考えておりますのも、捜査あるいは管轄区域外で権限を行使する都道府県警察の範囲、これは観念的にはすべての警察が同じ条件下に立たされるわけでございますけれども、その中でどの警察が管轄区域外権限行使をしろというその範囲、それから任務分担、これも警察活動がふくそうして効率化を失しないためにお互いの任務分担をあらかじめ明らかにしておく、あるいは指揮系統が乱れないように指揮系統の調整を行うといった、管轄区域外あるいは当該警察活動を行う場合に必要な基本的な方針というように考えていただければありがたいと思います。
  39. 富田茂之

    ○富田委員 その点に関して、やはり山名議員質問には橋本総理の方で、この規定は個々の警察活動の指揮にわたるものではありませんというふうに明確に答弁されているのですが、この点は間違いないのでしょうか。  それと、この指示権警察制度の中央集権化につながるのではないかというような懸念も出されておりますけれども、その点についてはどういうふうに考えられていますか。
  40. 菅沼清高

    菅沼政府委員 この六十一条の三の規定に基づきまして管轄区域外の権限行使等を行う場合におきましても、その内容につきましてはそれぞれの都道府県警察の主体的な判断と責任において行われるという性質のものでございます。したがいまして、個々の、いつだれを逮捕しろ、あるいは捜索をしろというような個別具体的なものについてのものは含まれていない。そういう意味では、いわゆる国家警察的といいますか、中央集権的といいますか、そういう性質のものではなくて、どこまでも自治体警察の本旨に基づいたものであるというように考えております。
  41. 富田茂之

    ○富田委員 法案に対する質問はこれで終えまして、一つ警察庁の方にはちょっと耳の痛い御質問になるかもしれませんが、白紙調書というのがちょっとここのところいろいろ報道をにぎわせております。実はもう一昨年ぐらいからありまして、できればこの委員会質問したかったのですが、なかなかチャンスがございませんで、きょうはちょっとお時間をいただいていますので。  まず、警視庁の管内で起きた白紙調書の事件についてちょっとお尋ねしたいと思うのですが、恐喝傷害事件の目撃者とされる女性が白紙調書に署名押印させられたということで警視庁の巡査部長を告訴した。その件に関して、七月の二十二日、東京高等裁判所の方でこの事件の判決公判が予定されていたのに、弁論が再開されて、検察側からも、問題とされている調書を証拠から排除するよう請求があった。その後、この女性の証人尋問等が予定されているみたいですけれども、これは普通の裁判を考えるとかなり異例なことだと思うのですね。なぜこの件で白紙調書が作成されるようになったのか、警察庁の方で何か調査等をされましたでしょうか。
  42. 泉幸伸

    ○泉政府委員 ただいま御質問にありました警視庁の白紙調書の事情でありますが、平成六年十二月ごろに、警視庁に勤務する巡査部長が恐喝傷害事件の参考人から事情を聴取し、供述調書を作成いたしました。その際、参考人からより詳細な事情も聴取いたしまして、それは供述調書ではなくてメモの形で手控えしておったわけであります。改めてその詳細な内容の供述調書を作成する必要があったわけであります。参考人等の希望もあり、次の機会が得られないというようなことから、安易に、さきに作成いたしました簡単な骨子を記載した供述調書につきまして、詳細な事実関係を書き加えまして、正規の手続を経ない供述調書を作成してこれを送付してしまったというような事件でございます。  なお、白紙調書云々という新聞等の報道がございますが、その際、後日あるいは使用することあるべしという思惑から白紙に署名はもらってはおりましたが、結果として、白紙に署名だけをもらったその署名につきましては利用はされていないという状況でございます。     〔持永委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 富田茂之

    ○富田委員 この件でその巡査部長は告訴されているわけですけれども、今のような経過ですと、本来あるべき証拠収集からはかなり外れた、違法な証拠の収集になると思うのですが、その点について、この当該警察官に対してはどんな処分がされたのか。  また、こういう報道に接しますと、こういうのはもう日常的にやっているのではないか。私も弁護士ですので、刑事事件を担当したときに、調書を、こんなことを言っていないという被告人、被疑者がかなり多い。ただ、それは被告人や被疑者の方がうそを言っている場合もかなり多いのですけれども。こういう報道があると、本当にこんなのが日常的にやられているのじゃないかなというふうに国民は思うと思うのですね。そのあたり、再発防止ということの観点からも、どんな対応をされているのか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。
  44. 泉幸伸

    ○泉政府委員 ただいま御指摘がありましたように、捜査書類そのものがこういう不適正な手続で作成されるということは司法捜査手続の根幹に影響を及ぼす大変重要な事実だという認識を持っておりまして、当該警察官につきましては、告訴を受けまして、警視庁の方で捜査をいたしまして、虚偽公文書作成、同行使ということで検察庁の方に送致をするという処分をしております。  なお、このようないわゆる白紙調書作成が日常化しているのではないかと御指摘もありましたが、供述調書等の捜査書類の重要性は今さら申すまでもなく、警察官に対しましては十分にその教育をしておりまして、このような本件自体は非常に残念な、例外的なことであるというふうに認識をしております。  なお、このような事態もありましたので、この事実を厳粛に受けとめて、今後この種の事案の絶無を期すということで、都道府県警察に対しまして改めて適正捜査の指導体制の強化指示するとともに、従来から実施しております学校等における適正捜査についての教育をさらに充実強化して、全警察職員に捜査書類の重要性を改めて認識させてまいるということにいたしております。
  45. 富田茂之

    ○富田委員 極めて例外的なと言われるのですけれども、これは質問通告しておきましたが、福岡県警の南署でも同じようなというか、もっとひどい白紙調書の捏造事件がありましたよね。これはかなり新聞等でも報道されまして、覚せい剤の事件で、被告人は一審では実刑になって、二審になって弁護士さん、保釈になった被告人が、自分がもともとその覚せい剤を持っていたんだというような参考人の調書をとられた女性を突きとめて、その女性から白紙調書をとられたのだということを聞いて白紙調書の事件が明るみに出たというような事案が、福岡の南署というのですか、そういうところであったようであります。  これは一昨年の事件になるのですけれども、この件に関して、ことしの二月二十二日ですか、福岡高裁の方で白紙調書をつくったという警察官に対して執行猶予つきの判決が出た。この警察官は一審では実刑判決を受けたようです。実刑判決を受けて、これは警察署ぐるみで、上司も容認して白紙調書をつくったのだというような主張をされたみたいで、その件に関して、上司を証人に呼んでの証拠調べとかはされなかったようですけれども、判決文の中で、上司が調書偽造を容認していた疑いがあるというふうに裁判官は指摘したようなんですね。  この点について、先ほど局長は、極めて異例な件で、全国にきちんと指導しているんだというふうに言われていますけれども警察署ぐるみあるいはその部署ぐるみでやっていたとしたら、一人の警察官を教育してもちょっともうしょうがないのじゃないかな、そういう意味で、日常的にこういうことがやられているのじゃないかということを先ほどお尋ねしたのです。  この福岡の事件では、県警の監察官室の方で、二審も恐らく実刑判決が出るだろうということで、厳粛に受けとめるみたいなコメントを用意していたけれども、執行猶予になって、しかもその上司の関与までが判決で指摘されたというごとで、裁判長の判断にコメントする立場にないというようなコメントをしたようです。これは新聞にはそういうふうに書かれている。裁判長からこれだけの指摘を受けて、福岡県警の方あるいは監察官室の方ではどんな対応をとられたのでしょうか、ちょっと教えてもらえればと思います。
  46. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  福岡南署の事件につきましては、今御指摘のような判決が出ているところでございますが、私どもといたしまして、福岡県警の方にいわゆる上司の関与あるいは組織ぐるみというような問題がなかったかどうかということについて調査をさせましたけれども、厳正に調査した結果、言われるような事実はないという報告を受けているところでございます。  ただ、そういうような疑惑を招くことについては極めて遺憾なことでございますので、そうしたことがないように、またそうした疑惑を招くことのないように十分指導をいたしてまいりたいと考えております。
  47. 富田茂之

    ○富田委員 そういうことはなかったとおっしゃいますけれども、これは報道されていましたが、ここの署長さんはこういう覚せい剤事犯とか暴力団事犯についてかなり熱心な、本当に力のある署長さんだったというふうに聞いています。その方がこの事件の責任をとって自殺までされているので、上司が一切関与していなかったというのはちょっとにわかに信じがたいなというふうに思います。そういう後の調査を、みんな内部の方だからそれは隠したがるのはわかるのですけれども、こういうところをきちんとしないと、またこれは絶対起こってくる、態様を変えて白紙調書の問題というのはいろいろな地域で出てくると思うのですね。  現場の警察官は、とんでもない人を相手にするわけですから、供述をとるのは本当に大変だと思います。だからといってこういう不正なやり方が許されるわけではないので、そのあたり、何か起こったときに組織ぐるみでかばい合うのではなくて、ここがいけないんだというのをきちんと、特に警察ほどそれをきちんとしないといけない組織はないと私は思うのですよ。今回のように権限法律で拡大されるわけですから、余計現場で実際に国民や市民に接する現場の警察官は、せめて供述をとるときには真摯な態度で、本当に言われたとおりのことをとっていただきたい。  一つ思いますのは、読み聞けというのをさせますよね。調書をとって読み聞けして、このとおり間違いないかということで、最後被疑者や参考人に署名させるわけですけれども、実際に読み聞けさせられても、聞かされた方はよく理解していないということが多いのだと思うのですね。それで、おれはそんなこと言っていなかったとか、そういうことがよく起こるのだと思うのです。あれは現場の運用として本人に見せるとかいうふうに変えていったら、書っていないことを調書にとられたとかいうことはかなり変わってくるのではないかな。私自身が弁護活動をしていたときには、見せてもらえということを被疑者に接見したときによく言っていたのです。そうすると警察官の方では見せてくれることもあるということで、そうすれば納得して署名できるでしょう。そういうような運用面もちょっと考えていっていただければ、こういう白紙調書の問題というのもひとつ防げるのではないかなというふうに思っておりますので、そのあたり、ぜひ御検討していただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。どうもありがとうございました。
  48. 平林鴻三

    平林委員長 吉田公一君。
  49. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 新進党の吉田公一でございます。富田委員と若干重複するところもございますが、何問か質問させていただきたい、こう思っております。  今般の警察法改正に伴いまして、実はアメリカには組織犯罪を取り締まります組織犯罪規制法というのが連邦法の中に明記されておりまして、麻薬、殺人、賭博、恐喝等、個々の犯罪に対してはもちろんそれぞれ対処していくわけでございますが、その活動組織的に繰り返し行われるということに対しては大変厳しい制裁が行われるわけでございまして、まさにこのRICO法という制度を日本でも法整備をしたらどうか、そう思っているわけでございますが、それについて警察庁のお考えを伺いたい、こう思います。
  50. 野田健

    野田(健)政府委員 御指摘のいわゆるRICO法は、アメリカ合衆国においてマフィア対策のために制定されたものでございます。組織犯罪規制のための連邦法といたしまして、殺人、賭博、恐喝等、個々の犯罪の実行に対して訴追するだけでなく、その活動組織として繰り返し行われたことをもって新たな犯罪として、没収等の厳しい制裁を加えることとしているものでございます。また、これらの不法活動によって得られた収益をもって企業を経営するなど、所定の団体活動について、これらの不法に得られた収益を没収するほかに、活動を禁止するというようなことまで行えるような規定でございます。  政府においては、オウム事件類似の凶悪事件の再発防止のため、既にサリン人身被害防止法につきまして提案し制定をいただいた、あるいは、大量殺略用の兵器として使用される可能性のある物質の法的規制の強化を図ってきたところでありますが、さらに、今回の一連事件の経緯を踏まえまして、組織的に敢行されるテロ事件の再発防止のため、体制の強化を図るとともに、諸外国におけるテロ防止対策等を参考にしながら、必要な法制度の調査研究も進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  51. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 ぜひ検討していただきたい、こう思うのであります。  今般の警察法の一部を改正する法律案改正背景として、オウム・サリン事件というのが背景にあるわけでありますが、こういう犯罪というのは百年に一遍あるかないか、それだけに実は国民は驚いたわけですけれども、こういう事件が年じゅう起こるようなことであっては、もちろん国民治安に対する考え方も違ってきてしまうわけで、今後こういうことのないように予防していくというための法律だ、こう思うのでありますが、その点はいかがなものでございましょうか。あくまでも、こういうオウム・サリン事件のような事件を予防していく、そのために法を整備するということが趣旨なのか。それとも、今後こういうオウム・サリン事件みたいな事件が起きないように、この法律を駆使してあらかじめ調査を進めていくということが趣旨なのか、その点はいかがでございましょうか。
  52. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  今回の改正は、昨年の一連事件等の経緯にかんがみましてお願いをいたしているものでございまして、管轄区域外の権限行使を可能にすることによって早期により的確な対処ができるための仕組みをつくっていこうというものでございますが、もちろんそれだけにとどまるものではございませんで、今回の事案契機といたしまして、警察としても早期にそうした異常な治安事象に、早くからそういう事象を探知して必要な発生を予防する措置をとり、また、早期に検挙するための態勢をとっていくということもあわせて考えているところでございまして、この種の事案対応するための事件処理体制とあわせて、そうした犯罪情報を早期に把握するための対策室を設置もいたしているところでございます。  また、長期的な展望に立って各種の治安事象を予測し、対処するためのシンクタンクのようなものもつくってまいりたい、このように考えておりますので、そういう意味におきましては、今後、予防的なものも観点に置いた警察活動を行ってまいりたい、このように思っております。
  53. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 オウム真理教事件というのは今まさに終局に向かっておりまして、首謀者はもう逮捕されて、いよいよ裁判に出るというところまで来ているわけであります。しかし、恒久的に見れば、私は、地域社会を初め、多くの犯罪では暴力団だと思うのですね。暴力団に対してこの法律を適用するということをぜひやっていただきたい、こう思うのです。  ある地方の人が東京へ出てきて、東京に住むようになった。東京というところは非常に治安がいいですね、そういうことを私は聞いたことがあります。それは、地方の中小都市が、いわば暴力団等によってかなり侵食をされているという印象があったわけですね。  この法律を恒久的な暴力団対策に使っていただきたいと思いますのは、むしろ殺人件数だとか犯罪件数だとか、オウム事件の比ではない、こう思うのですよ。まして今後、この組織暴力団というのは全国組織を整備しつつある。そういう状況の中で、実は以前に暴対法ができましたね。警察庁の中に、たしか暴力団対策調整官というものをつくって、初代は立花さんという人だったと思うのでありますが、そういう暴力団対策の法律をつくったわけですね。そして、その暴対法と今度の法律改正とは、暴対法だけではそういう組織犯罪に対する適応能力がない法律なのか、その点はいかがでございますかね。暴対法をせっかくっくったわけです。調整官まで置いてやっているのですけれども、以後、組織暴力団は壊滅をしたと聞いていない。その点について、この法律改正をした以上は、ぜひ強力にそういうことをやっていただきたい、こう思いますが、その点は警察庁のお考えとしてはいかがでございましょう。
  54. 野田健

    野田(健)政府委員 いわゆる暴力団対策法を施行されてから、もう既に四年になっております。この暴力団対策法というのは、従来の刑法等の処罰規定では必ずしも犯罪として検挙できない、けれども、暴力団がそういうような行為をすることによって彼らの資金源を獲得している、こういったような種類、いわゆるみかじめ料と言われるような行為でありますけれども、そういった行為をしている者に法の網をかぶせて、させないようにする方法はないかということで法律お願いいたしまして、その結果、いわゆるバブルがはじけたということもありますが、暴力団の資金源を相当程度封圧することに成功しつつあるというふうに考えておりまして、現に暴力団の組織数とか、あるいは構成員数も少なくなってきつつあるというふうに考えておりますが、他方、いわゆる広域暴力団と言われているものの寡占化というのが進んでいるという傾向にございますので、万が一、それらの寡占化されている暴力団が全国的な規模で対立抗争を起こす、ただ、たまたま大府県では必ずしもまだ事象が起きていないというような場合に、そういった大府県がその対立抗争事件の封圧のために諸活動を行う、特に管轄区域外において活動するというような場面においては、今回改正お願いしています警察法改正された場合には有効に機能するというふうに考えております。
  55. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 今度住専問題に絡んで不良債権が相当数発生をしているわけでありますが、その不良債権をめぐってまた暴力団が動き始めているというようなことも考えられますので、こういう問題についても、資金源にさせないように、そしてまた日本の商慣行が暴力団の介入によって曲げられないように、暴力団が復活しないように、ぜひこの不良債権をめぐっても適切な手を打っていただきたい、こう思います。  次に、長官指示権によりまして、仮に、山梨や長野の今度のサリン事件もそうでありますが、警視庁というところは、私も都議会の警務消防委員長をやって、機動隊も特科車両隊も自動車警ら隊も、交通機動隊、機動捜査隊等全部そろって、事務方も入れてですけれども、約四万四千人の警察官がいる。そうすると、やはりなれているということもありまして、浅間山荘事件のときなんかもそうでありましたが、いつも警視庁の警察官が動員をされて捜査、警備に当たるという事犯が全国組織犯罪では非常に高まってくるのではないか、そう想像されるわけですね。  そういう意味では、逆に言えば、都民の税金が全国犯罪組織に使われる。本当は警察庁が持たなければいけないのを、要人警護だとか国賓警護のために常に警視庁が出動して警備に当たっているわけですけれども、一体こういうふうにやって警察庁からお金来ているのですかねといつか私が聞いたならば、いや、半分とか六割とか、五億円いただきましたとかなんとか言って、これは本当かどうかわかりませんよ、ただ当時間いた話ですから。  だから、なるべく警視庁にお金を、負担をかけないように、都民の税金に負担をかけないように、これは自治体警察の趣旨にも反するわけですから、ただその指示だけ長官が与えて、あとのお金のことは警視庁でやれよ、都民で、東京都は金持っているからいいではないかなんというのでは困るので、その点はきちっとできているのでしょうかね。
  56. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  日本の場合、国が直轄する執行部隊というものは持っておりませんので、唯一皇宮警察だけがちょっと例外的組織でございますけれども、いわゆる事件処理等の直轄部隊を持っていないのは日本警察の特徴でございます。したがいまして、警視庁の側におきましては、多分に国家的業務的なものも警視庁が担当するということになっているわけでございます。  先ほどお尋ねのような経費の点につきましては、そうしたことも考慮された国庫支弁の措置がされておりまして、例えば、警備出動にかかわる部隊出動経費でございますとか、あるいは特定の国家的業務にかかわる事案処理経費、あるいは重要事件捜査経費、そういったものが警察法の施行令に基づきまして国庫が支弁をするという仕組みになっておりますので、必ずしもすべてを都費をもって賄うという仕組みにはなっておりませんし、そういう形の切り割り方と分担の仕方をしている、このようにお考えいただきたいと思います。
  57. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 よく各都道府県や市町村でいろいろな建物を建てると、持ち出しが多いのですよ。つまり、建物の算定基準が、国の算定基準と各都道府県の算定基準では大体四割違う。だから警察庁も、その四割減なんて言わないで、かかった費用はぜひひとつお支払いをいただきたい。別に私は警視総監でも何でもないのだけれども、ぜひ、都議会の警務消防をやった者として一言お願いをしておきたい、こう思っております。  それから、長官指示権が今回強化されるわけであります。自治体警察制度というのは昭和二十二年、昭和二十九年に警察法改正ということでありましたが、憲法を背景にして昭和二十二年に自治体警察民主警察というようなことで、国家警察と自治体警察というのが別れたわけであります。そうすると、自治体警察権限というのを結果的に侵食をするのではないか。犯罪捜査、検挙には確かにその方が効率がいいと思うのですね。各県警にまたがっている犯罪捜査を一々隣の県の公安委員会へ申請してから、しかもちゃんとした書類を出してからなんて言っているうちに犯人は逃げてしまうわけですから、それはそれで大変効果的でいいと思うのでありますが、自治体警察制度に対する長官指示権限を強化することによって侵食をする、その点について基本的な自治体警察制度に対する警察庁のお考えをまず伺っておきたい、そう思います。
  58. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  今回の法改正におきましても自治体警察の基本は変えていないわけでございまして、管轄区域外の権限行使ができる場合も、それはあくまでも当該県の治安にもかかわってくるという特定の事象、今回の改正でいいますと「広域組織犯罪等」という定義の仕方をしておりますけれども全国のどの地域においても発生する可能性がある、被害が及ぶ可能性がある、治安にかかわってくる可能性が高い、そういった事案についてのことでございます。したがいまして、全くの外へ出ていくということだけでなくて、自分のところの治安にも関係があるということから外へ出ていくという仕組みをつくっているわけでございまして、自治体警察の基本にかかわるものではございません。  それから、長官指示権につきましても、先ほど来も御説明いたしておりますけれども、個々の捜査活動について指示をするわけでございませんで、それぞれの県が同じ立場において管轄区域外権限行使ができる状態にありますときに、どの県がどういう形で関与しなさいということ、またその役割分担、任務分担、また指揮系統、そういった基本的なことについての指示でございますので、その当該都道府県警察の主体性を損なうというものではない、このように考えております。
  59. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 ぜひそういう精神でお願いをしたい、こう思うのであります。  各都道府県公安委員会というのは、行政委員会一つ委員は各都道府県の承認を得るわけであります。教育委員会だとか選挙管理委員会あるいは監査委員会、人事委員会とか収用委員会、それぞれ行政委員会として、別個の組織として知事部局から建前は独立しているのですね。公安委員会も本来はそういうことでありますから、独立した都民や県民の治安を預かる委員会として公安委員会があるわけです。  ところが、監査事務局にしても選挙管理委員会の事務局にしてもみんな独立した事務局を持っております。しかし、各都道府県公安委員会は独立した事務局がないのですよ。各都道府県本部がやっている、警視庁でやっているわけですね。そうすると、だんだん本来の趣旨の、要するに自治体警察制度が形骸化してくる可能性があります。自分たちで事務局がないわけですね。本来なら独立した行政委員会として機能を発揮しなければならないのだけれども、事務局が各都道府県警察にある、警視庁にあるということになると、独立した行政委員会にはならないのですね。  そういう点では最初各都道府県公安委員制度をつくったときに、私はミスだったと思うのですけれども、監査事務局だって御承知のとおり独立した組織になって各行政部局の監査を独自にやっているわけです。それで、選挙管理委員会は選挙管理委員会で、御承知のとおり独自に選挙管理委員会を公正を期すために事務局を設けてやっている。人事委員会なんかもそうです。これは、人事が偏ったりしないように人事委員会という別な規則を持って、そしてこの人事委員会を置かれて公正な人事をやっているわけですね。御承知のとおり、各地方では人事委員会があって、そして昇給でありますとかそういうものについては全部人事委員会が答申をして、知事がそれを参考にして議会に諮ってやる。  ところが残念ながら、先ほど申し上げましたように、各都道府県には独立した事務局は公安委員会の下にないのですよね。そういう意味で、長官指示権限を強化するに当たって、各自治体警察制度というものを尊重していくのだということであれば、この公安委員会の事務局もきちっとつくっていかなければならない。これは警察庁の仕事ではないと思いますが、そういう制度をきちっとつくっていく、各都道府県にも私は努力をしてもらわなければならないことではないか、そう思っているわけでありますが、各都道府県公安委員会に事務局がないということについて、警察庁としてのお考えがあればぜひひとつ教えていただきたい、そう思います。
  60. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  公安委員会警察との関係、国におきましては国家公安委員会と警察庁、それから都道府県では都道府県公安委員会都道府県警察の関係でございますけれども、これは委員会と事務局という関係ではございませんで、管理機関と実施機関という関係にあるというようにお考えをいただきたいと思うわけでございます。  国家公安委員会は警察庁に対して、また都道府県公安委員会都道府県警察に対して、警察行政のいわゆる中立性、民主的管理を行うための管理機関でございます。したがいまして、定期的に、おおむね毎週一回でございますけれども、それぞれの都道府県警察、あるいは国におきましては警察庁でございますが、やっている行政の実態について報告をし、また基本的な方針等について説明を受け、そして管理をする。そして、大綱方針という形において警察行政のあり方について方向づけを示して、それを踏まえて実施機関たる警察庁あるいは都道府県警察がこれを行う、実施機関として主体的に警察行政を行う、こういう形になっているわけでございますので、ちょっと事務局と委員会との関係ではないというように考えております。また、そういう形において現在は機能をしているのではないかというように私どもは承知しております。
  61. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 それから、第六十条の三に「必要な限度において、」ということでありますが、その「必要な限度において、」ということはどういう限度なのか。それから、「広域組織犯罪」というのは、さっき富田委員からもあったと思いますが、どのような犯罪を具体的に指しているのかということであります。そしてまた、「その他の事案」ということでありますが、「その他の事案」というのはどういうことなのか、この三つをひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  62. 菅沼清高

    菅沼政府委員 「必要な限度において、」と申しますのは、管轄区域外の権限の行使を行う場合に、その場合における事態に応じて他の都道府県警察との関係において必要な限度ということでございますので、仮に管轄区域外の権限行使ができる状況でございましても、それぞれの都道府県警察がみずからの態勢において処理できる場合には必ずしも管轄区域外の権限の行使をする必要がない、またそういうことをするような指示をする必要もないというように考えていただきたいと思うわけでございます。  それから、「広域組織犯罪等」と申しますのは、広範な地域における公安の維持にかかわる事案でございましても、必ずしも組織性があるかないかということについて事前にわからないケースがございますので、そうした場合も踏まえて、全国のどの県においても、治安にかかわってくるような事態についてはこの管轄区域外権限行使の対象になる、そういう意味合いにおきまして「等」をつけたわけでございます。
  63. 吉田公一

    ○吉田(公)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  64. 平林鴻三

  65. 畠山健治郎

    ○畠山委員 警察法は、第一条に定められておりますように、個人の権利と自由の保護及び民主的理念を基調とする警察の管理運営の保障にかかわる基本法であると考えます。それだけに、その扱いは常に慎重でなければならないと存じます。そうした基本理念を踏まえつつ、一方では新たな犯罪に対する警察機能をどのように強化していくのか、常に難しい課題解決を求められるわけでございますが、その場合にも、戦後警察制度の根幹たる自治体警察制度の枠組みの維持強化は忘れてはならないと考えます。とりわけ、今回の改正オウム事件という特異な犯罪契機としているだけに、ともすれば機能強化のみに目が向きがちでありますが、ただいま申し上げました基本的視点を踏まえて法改正を考えることが重要であろうかと考えます。  そこで、今回の改正自治体警察制度との関連等、警察行政の基本問題について幾つか御質問申し上げたいと存じます。  まず第一に、今回の法改正の要因について御質問をいたします。オウム事件がその要因とされておりますが、この事件の性格と現行法における捜査上の問題について具体的に説明をいただきたいと思います。
  66. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えをいたします。  今回の改正は、一連オウム真理教関連事件を踏まえた検討の上に立っての改正でございますけれども、今回の一連事件につきましては、もっと早い段階で警視庁が権限を及ぼす形で捜査活動ができなかったかという御指摘を受けているところでございまして、これが最も大きな指摘一つでございました。  ただ、現行法上は、都道府県警察はみずからの管轄区域内、自分の県内で発生した、あるいは被害者がいる、被疑者がいる、こうした状態でございませんと管轄区域外へ権限を行使することができないというへこういう仕組みになっているものでございますから、必ずしも今回の事案においてそうした期待にこたえるような仕組みにはなっていないという反省があったわけでございます。したがいまして、今回、特定の事案、「広域組織犯罪等」という定義をいたしておりますけれども、そうした事態につきましては、それぞれの県がそれぞれの県の治安にかかわる事案として管轄区域外へ、みずからの判断と責任において主体的に捜査活動ができる仕組みをつくっていこうということで今回の改正お願いするに至ったわけでございます。
  67. 畠山健治郎

    ○畠山委員 今回の法改正必要性が、ただいまの説明では十分に国民理解していただくことが困難ではないだろうかというふうに思います。  と申しますのも、八九年十一月四日の坂本弁護士一家失腺事件、これは後には殺人事件になったわけでありますが、これを皮切りにしまして、九四年六月二十七日の松本サリン噴霧事件、それから九五年二月二十八日の仮谷さん拉致事件、そして同年三月二十日の地下鉄サリン事件、こういう一連事件からオウム関連施設への捜査が行われたのが三月の二十二日ということでございます。この間、実に六年以上もの歳月がたっておるわけであります。しかも.松本事件の場合は被害者を当初犯人扱いとするなど、さらには坂本事件等につきましては、初動捜査の立ちおくれに加えて、オウム捜査の視野になかったとも伝え聞かれるところでございます。このような捜査の経過からすれば、当初から適切な捜査が行われておれば一今回の法改正で規定する広域組織犯罪は未然に防げたのではないだろうかというふうな考えを国民が持っても一向に不思議ではないというふうに思うわけであります。  率直に申し上げて、今回の捜査について国民は重大な疑問を持っていると言っていいのではないかと思われます。そうした国民の疑問にこたえ、今回の改正に対する国民理解が得られるためにも、オウム事件について、有識者を交えた、国民的な検証をする必要があるのではないだろうかというふうに考えますが、御見解を承りたいと存じます。
  68. 野田健

    野田(健)政府委員 坂本弁護士事件につきましては、事件発生直後から、弁護士一家が何らかの被害に遭っている可能性が高いものとして、捜査本部を設置し、所要の捜査を鋭意進めてきたものでございます。  当時、坂本弁護士は、オウム真理教被害者の会の救援活動に従事し、同教団との間に激しい対立関係があったことや、同氏宅に同オウム真理教の教団のバッジ、プルシャと呼ばれておりますが、これが残されていたというようなことから、オウム真理教の関与についても初期的段階から視野に入れて、広範な捜査推進したところでございます。  残念ながら、現場における物証が極めて少なかった上に、教団の閉鎖性が強くて内部情報がほとんど得られなかった、組織的な証拠隠滅活動がなされたというようなことのために、多岐にわたる捜査を丹念に行う必要が生じ、被疑者を検挙するまでに五年余の期間を要したということでございます。  また、松本サリン事件については、当時残念ながらサリンというものの知識が警察には十分にございませんで、事件発生後、サリンの生成方法その他について勉強をするということから始めなければならなかったという大変厳しい事件であったということでございます。その捜査の過程で、第一発見者であり被害者でもあった方に大変御迷惑をかけてしまったということについては、大変申しわけなく思っているところでございます。  ただ、その後上九一色村の土砂からサリンの分解残留物でもあり得る物質を検出したというようなことで、オウム真理教がサリンを製造しているのではないかという疑いを持つに至り、その後実行行為者の特定等が行われて、本事件の解決に至った、こういうような経過でございます。  一連オウム真理教関連事件につきましては、多くの事件が公判の係属中でありまして、また特別手配者七名を現在追跡捜査中という状況にございますので、引き続き全国警察を挙げて所要の捜査推進してまいりたいと考えております。  警察においては、オウム事件捜査が終結した時点で、本事件全般について総括し、今後の捜査に生かしたいと考えておりますけれども、他方、本事件の教訓に基づきまして、これまでにサリン等による人身被害の防止に関する法律案を提案し、制定いただいたところでありますし、化学防護服、鑑識・鑑定資機材の充実を図るなどの施策を講じているところでありますが、今後とも警察としては、装備資機材、鑑識・鑑定資機材の一層の充実と化学的知識、技術を有する捜査員の育成、急激な社会情勢の変化に伴う犯罪の広域化により一層適切に対処できるような制度の確立に努める必要があるというふうに考えておりまして、その一環として今回の警察法改正の審議をお願いしているところでございます。  さらに、オウム真理教の生成拡大等とテロ行為に至る経緯あるいはそれらに対する警察対応についての検証、将来におけるこの種事案発生の防止及びこれに対するための組織のあり方等については、警察全体の大きな課題であると受けとめ、現在検討を行いつつあるところでございます。今後、その検討内容につきましても、警察白書等の公刊物を通じるなどして、可能な限り国民の皆様に公表し、御理解をいただこうというふうに考えております。
  69. 畠山健治郎

    ○畠山委員 私の提起をしておる国民的な立場で検証する必要があるのではないだろうか、この種の問題、極めて大事な問題ですから、あえてそのことを再提起をさせていただきたいというふうに思っております。  冒頭に申し上げましたように、警察法の扱いは慎重でなければならないと思います。歴史的にもそのような扱いをしてきたのではないだろうかというふうに思っております。しかし、ここに来て、この扱いというのはかなり急なものがあるというふうに言わざるを得ないと思います。というのも、先ほどからいろいろありましたように、広域犯罪等に効果的に対処するとの理由から一昨年に改正がなされておるばかりでありますから、殊さらそんな気がしてならないわけであります。そういう立場からすると、前回の警察法改正というのは大変大がかりなものだ、局の再編を含めて大がかりなものがやられたのだろうというふうに思っております。  そこでお伺いをいたしますが、さきの改正は、要人の身辺警護が主たるねらいとはいえ、やはり広域犯罪が理由となっておるわけでありますから、まず改正効果の有無を具体的にする必要があるのではないかと考えます。その点についての、先ほど若干ありましたけれども、改めてお伺いをさせていただきたいと思います。
  70. 野田健

    野田(健)政府委員 平成六年の警察法改正では、管轄区域が隣接しまたは近接する都道府県警察は、相互に協議して定めたところにより、社会的経済的一体性が認められる都道府県の境界周辺の区域における事案処理するために、関係都道府県警察の管轄区域に権限を及ぼすことができることとなったのであります。  この規定に基づきまして、例えば茨城と栃木の県境部分に北関東広域捜査隊というものも設置して、相互に新協定を結んだということもございますし、またほかの地域でも、社会的経済的に一体となった関係が認められているというようなところにおいて、広域捜査隊の設置をしたところでございます。  また、合同捜査の制度に関する規定が整備され、複数の都道府県警察が管轄権を有する事案については、その処理を円滑に行うため、警察本部長が相互に協議して定めたところにより、関係都道府県警察の指揮を一元化することができることとなりました。  広域犯罪については、これら改正規定を有効に活用し、関係する都道府県警察間に合同捜査本部を迅速に設置したりして、適切に捜査を進めているところでございます。  具体的な効果といたしましては、殺人の絡む捜査本部設置事件のうち、合同・共同捜査を実施した件数は、平成四年、五年がそれぞれ六件、七件であったものが、平成六年、七年ではそれぞれ十五件、十二件と、大幅に増加しております。また、窃盗事件に関する合同・共同捜査を実施した件数は、平成四年、五年がそれぞれ八十八件、八十四件でありましたが、平成六年、七年にはそれぞれ百二十件、百三十八件と、こちらも大幅に増加しているというような状況にございます。
  71. 畠山健治郎

    ○畠山委員 広域化に対応する都道府県警察相互の関係については、現行法にも相互協力義務あるいは援助要求、境界周辺に関する権限、それから管轄区域外における権限あるいは共同処理に係る指揮、連絡等が五十九条から六十一条の二までにわたって規定されてございます。しかも、六十条、六十一条の二では、警察庁への連絡義務規定があります。これらを見ましても、関係都道府県警察警察庁は連絡をとり得る法的体制にあると言ってもよいのではないかと思います。  問題は、このような規定に基づく捜査態勢が、例えばオウム事件の初期の段階でなぜとれなかったのか。今回の改正のような法的根拠がなかったからなのか、それとも都道府県警の運用上の体質的な問題があったのか。それらを明らかにする必要があるんではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  72. 野田健

    野田(健)政府委員 オウム真理教による一連事件につきましては、事件発生当時には、これが極めて広域的な犯罪である、組織的に行われた犯罪であるということを関係の都道府県警察において把握することが非常に難しかったというような状況にございますが、その後、オウム真理教による一連事件について関係都道府県警察が相互に緊密な連携を図り、警察庁が必要な調整を行うということで、現行法の規定に基づいて所要の捜査を行ったわけであります。  具体的には、必要に応じ、関係府県がオウム真理教一連事件で十一の合同捜査本部を設置し、この合同捜査本部の運営に当たりましては、先ほどの平成六年の改正に伴う指揮の一元化を行うことによって効率的にこれを実施することができたということでございますが、それ以前の段階、それぞれの個々の事件発生を報告を受けている段階では、なかなか合同・共同捜査を組むというところまで具体的な内容として煮詰まっていなかったというのが実情でございます。
  73. 畠山健治郎

    ○畠山委員 今回の改正に言う「広域組織犯罪」の一例に広域暴力団が挙げられておりますが、これについては既に暴対法が定められ、現行警察法の規定によって広域的にも有効な対策が進められていると思うんです。オウム事件をもって改めて広域組織犯罪対策を強調することは理解できますが、それをもって安易に法制度の不備とすることには常に慎重でなければならないと思うんです。この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  74. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  暴力団の対立抗争事件につきましても、今回改正お願いをいたしております「広域組織犯罪等」の一つとして当たる可能性があるということを私どもは考えております。  これまでにも広域暴力団の抗争事案のようなものもございましたけれども、今までは、おおむね重要な、大規模事案というのは対応力のあるところで発生をするのが通常でございました。したがいまして、それぞれの都道府県警察がみずからの権限として処理をするという形において、またお互いに連携をとりながら、警察庁の調整を受けて処理をするということで対応できてきたというように考えております。  しかし、今後の状況を考えてみますと、いろいろの動きが、人の動き、物の動きが広域化しておりますので、思いもかけないところで全国的な規模を持つ暴力団による対立抗争事案発生しないとは限らない、当該県の対応する対応力を超えた事態発生してくる可能性もあるわけでございまして、そうしたことを考えますと、今回の警察法改正は暴力団の対立抗争事案についても有効に働くものではないか、このように考えております。
  75. 畠山健治郎

    ○畠山委員 今回の法改正の内容の一つは、国家公安委員会の所掌事務を定めた五条の二項五号に広域組織犯罪のための警察の態勢に関する規定を追加するものとなっております。  そこでお伺いしますが、このような改正がなされた場合、この規定は当然、第十六条二項に規定する長官の指揮監督権の行使の対象となるはずであります。この点について確認いただきたいと思います。
  76. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、十六条二項に規定する警察庁の所掌事務に関して指揮監督することができる、その指揮監督の対象に入ると考えております。
  77. 畠山健治郎

    ○畠山委員 第五条の追加規定が第十六条二項に及ぶ以上、なぜ新たに第六十一条の三を新設し、長官指示権なるものを新設する必要があるでしょうか。現行の十六条二項の規定で十分であるのではないかと思うのです。指示権は指揮監督の権より下位にある概念と考えるのが当然であって、殊さら弱い規定を追加する積極理由はないのではないかと考えます。この点についてのお答えをいただきたいと思います。
  78. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えをいたします。  警察法第五条の規定は、これは国と都道府県との一定の責任関係といいますか分担関係を定めるためにあるものでございまして、五条の規定を受けて、十六条二項の規定によりまして、警察庁長官が「警察庁の所掌事務について、都道府県警察を指揮監督する」ことができるという形になっているわけでございます。  改正案の五条に言うところの「広域組織犯罪等対処するための警察の態勢に関すること。」につきましても、先ほど答弁いたしましたように指揮監督の対象となりますが、その指揮監督の要件、内容あるいは都道府県警察のとるべき措置の内容等を具体化あるいは明確化するために今回の六十一条の三の規定を新設する必要がある、このように考えているわけでございます。
  79. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ただいまの答弁には余り説得力がないと言わざるを得ないと思います。  なぜ私がこの点を問題にするのかということは、それは今回の五条と六十一条の三の改正自治体警察制度に影響を及ぼす可能性があるのではないかと考えるからでありまして、ただいまの答弁ではそうした危惧が消えないからでございます。  第五条に「広域組織犯罪」を加え、それに対する指示権を明記するとなれば、自治体警察の根幹はどのように保障されるのか。改正する場合にも極めて抑制的でなければならないと考えますが、見解をお伺いいたしたいと思います。
  80. 菅沼清高

    菅沼政府委員 五条二項の規定は、現在も幾つかの項目につきましてその関係を明記するために書かれているわけでございまして、この中に今回も改正規定を入れることによりまして、国家公安委員会あるいは十六条におきます警察庁の任務及びその役割の内容を限定をする形になるわけでございます。既に五条二項におきましても、自治体警察の基本を踏まえながら国の関与する度合いについて規定をしているわけでございますので、今回につきましても指示という形で、具体的に申し上げますと管轄区域外の権限行使を行う場合の対応等についての指示を行うという形で改正お願いしているわけでございますけれども、この五条二項の中に入れることによりまして、このほかのものと同じような形において国の関与の度合いを明示する、こういうことになろうかと思っております。
  81. 畠山健治郎

    ○畠山委員 公安委員長にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほども議論になっておりましたが、都道府県公安委員会については、とかくその存在が空洞化が指摘をされておるところでございます。しかし、民主的な警察運営を制度的に保障する機関である以上、その実在感を高める方策を検討するときに来ているのではないだろうか、率直にそう思っております。  その一つとして、例えば委員の公選制導入も十分検討すべきではないかと思いますが、その辺についての委員長の御見解をお承りいたしたいと思います。
  82. 倉田寛之

    倉田国務大臣 現在の都道府県公安委員会制度につきましては、委員御案内のとおり、警察の民主的な管理という趣旨にのっとりまして適正に運営されているものと私は考えております。委員の任命のあり方を含めまして制度の改正の必要はないものというふうに考えているところでございます。
  83. 畠山健治郎

    ○畠山委員 最後になりますが、警察行政のあり方、特にその透明性を確保する方策の一つとして第三十七条の財政問題について御質問を申し上げたいと思います。  三十七条は、地方警務官の給与、警備装備品等九項目について国庫支弁を定めております。これに基づく支弁金は、会計法二十四条一項に基づき、都道府県予算に計上されることなく直接都道府県警察の会計官に支弁されております。また、国の決算では、支弁総額は報告されますが、都道府県警ごとの支弁額は示されてございません。  やはり財政民主化の立場からしても問題ではないでしょうか。情報公開が求められておる昨今の状況からしても、少なくとも都道府県警察別の支弁実績について警察白書なりで明らかにする必要があるのではないかと考えますが、見解をお伺いしたいと思います。
  84. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  警察法三十七条に定められております国庫支弁経費につきましては、財政法の規定に基づきまして、大蔵大臣が定めた様式によりまして警察庁において内閣総理大臣に報告をいたしまして、内閣から国会に提出されているものでございます。  都道府県ごとの国庫支弁額を明らかにできないかという御指摘でございますけれども、国庫支弁経費の主なものは、いわゆる国費事件と称しておりますけれども、主として重要な事件捜査にかかわる経費の支弁でございますけれども、どのくらいの額がどの県にどの年行っているかということは、それぞれの都道府県警察の重要事件についての捜査の具体的内容、実態に微妙にかかわってくる問題がございます。  それから、警察活動の場合に、その額と、形にあらわれた活動の結果というものが必ずしもリンクしない。といいますのは、捜査というものの性質上、経費を投じただけの結果が必ずしも出てくる性質のものではないというような関係もございます。  そうしたことから、各県ごとの国庫支弁経費を比較する、あるいは逐年の変化を比較するということにはどうもなじまないと私どもは考えておりまして、そういう意味合いにおきまして、各県ごとの国庫支弁経費の額を公開することについては控えさせてもらっているところでございます。  ただ、国庫支弁経費についてもその執行が適正でなくてはならないことはもちろんでございます。したがいまして、その適正につきましては、警察庁におきましても都道府県警察において国費の支出については監査をいたしておりますし、また会計検査院も都道府県警察に赴きまして必要なチェックをいたしておりますので、その執行の適正については十分担保されている、このように考えております。
  85. 畠山健治郎

    ○畠山委員 以上で終わりますが、今回の改正に当たりましては、改めて自治体警察制度の枠組みの維持強化の問題、さらには、一層の警察情報の公開に努めるとともに、警察を市民に開かれたものとするような努力を今後とも引き続きやっていただきますことをお願いしながら、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  86. 平林鴻三

    平林委員長 田中甲君。
  87. 田中甲

    田中(甲)委員 警察法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。既に事前に質疑をされた皆さん方と内容が重複する、そんな点もあろうかと思いますが、どうかお許しをいただきまして、私の思うところをお話しする中で質疑を進めさせていただきたいと思います。  実に多くの死傷者を発生させるというオウム真理教の関連、この一連事件捜査の経過等を見ておりまして、大変に胸の痛む思いがいたしました。冒頭、一連オウム真理教事件について、警察当局として今現在どのような点で反省をされておられるか、同時に、国家公安委員会としてどのような反省点を認識されているか、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  88. 野田健

    野田(健)政府委員 一連オウム真理教関連事件は、高度な科学技術を悪用した犯罪であったこと、閉鎖的な集団による計画的な犯罪であって、また、犯行後組織的に証拠隠滅が行われたこと、全国規模の広範な区域にまたがる犯罪であったことなどの理由で捜査が難航したものと認識しております。一連オウム真理教関連事件の中にはサリン等の有毒化学物質を使用したものも幾つかあり、これらが犯罪に悪用されるというようなことを想定していなかったというような事情もございまして、事件捜査に当たって戸惑いがあったということも事実でございます。  一連オウム真理教関連事件については、多くの事件が現在公判係属中であり、また、七人の特別手配被疑者の検挙に至っていない、追跡捜査中というような状況にございますので、まだ全体として総括をしているということではございません。いずれオウム事件捜査が終結した時点で総括をいたしまして、今後の捜査に生かしたいと考えております。  一方、これまでにいろいろ得られました事件からの教訓に基づきまして、既にサリン等による人身被害の防止に関する法律案を提案いたしまして制定していただいたほか、化学防護服であるとか鑑識・鑑定資機材の充実を図るなどの施策を講じているところであります。  今後とも警察としては、装備資機材、鑑識・鑑定資機材の一層の充実と科学的知識、技術を有する捜査員の育成、そして急激な社会情勢の変化に伴う犯罪の広域化により一層適切に対処できる制度の確立に努める必要があるというふうに考えておりまして、その一環として今回の警察法改正の審議をお願いしているところでございます。
  89. 田中甲

    田中(甲)委員 国家公安委員会からも同様に、どのような点での御反省点を現在認識としてお持ちでしょうかという質問をいたしたのですが、それも含めて今答弁をされたということでありますか。
  90. 倉田寛之

    倉田国務大臣 田中委員のただいまの御質問につきましては刑事局長が詳細に答弁を申し上げたとおりでございまして、一連オウム事件につきまして、この種の事件が再発しないようにするためにも、ただいま御審議をいただいておりますように警察法改正お願いいたしておるところでございます。
  91. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  テロ活動に関して、これまで警察において右翼、極左あるいは暴力主義的団体に着目して情報収集を行ってきたという認識を持たせていただいておりますが、このオウム事件の経緯を踏まえた警察組織のあり方について、改善ということでありますが、どのように現在検討されているか、お聞かせをいただきたいと思います。  あわせて、重複した質問になるかもしれませんけれども、今後どのような事案が「広域組織犯罪」として該当することになるか、どのようなものを想定されているかもお聞かせいただければありがたいと思います。
  92. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  治安にかかわる諸情報を集めるのは当然警察としてやらなくてはならないことでございますが、今回の事案につきましては、必ずしも、早い段階から的確な情報収集ができたかといいますと、いろいろ反省、検討すべき面もあったわけでございます。したがいまして、こうした重要事件についての犯罪情報を早い段階から収集するための体制を整えようということで、今回の組織改正におきましても、警備局に特殊組織犯罪対策室、また刑事局に特殊事件捜査室といったものを設けて、早い段階からこの種の情報の収集と対応に当たってまいりたいと考えているところでございます。また、こうした事件発生に対しましては、直ちに現場に赴きまして必要な指導ができる担当の審議官の創設につきましてもお願いをしたところでございます。今後とも、こうした重要凶悪事件犯罪につきまして、必要な情報収集体制を整えてまいりたいと考えているところでございます。  なお、どのような事案が「広域組織犯罪等」に該当するかというお尋ねでございますが、今回のオウム真理教関連事件と同種のテロ事件全国的に対象を選定をして、そして特定の目的のもとにテロを敢行する可能性のあるような、そういう組織犯罪が典型的なものでございますが、そのほか、先ほども御答弁いたしたところでございますけれども全国的な広範な区域にわたって組事務所あるいは傘下団体等を有しております暴力団相互間の対立抗争事件、あるいは全国に流通する食品に対する毒物混入事件などが当たるもの、このように考えているところでございます。
  93. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  新規新設ということで公安第一課特殊組織犯罪対策室という御答弁をいただきましたが、十日、予算成立によりまして三千五百名の増員が図られる、そういう予算が盛り込まれた平成八年度の予算成立てありましたけれども、その人的な配置における組織強化について、今私にお伝えをいただきました、その組織にどのような人員の配置をお考えになられているかも具体的にお答えいただければありがたいと思います。
  94. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  昨年は重要凶悪事件が相次ぎましたことから、治安に対する国民の不安感を与えたところでございまして、私どもでも、早急にそういう状況を克服して治安情勢を回復すべく努力をしているところでございますが、まず人的な基盤の整備も重要な一つでございまして、内部的なリストラ、またリストラによるシフトによりまして、必要なところに必要な人員を配置するということをやっているところでございますが、なおかつ、緊急に対応すべき人的な体制の強化ということで、三千五百人の増員をお願いいたしたところでございます。  内容について申し上げますと、交番における市民安全サービスの強化、これは、やはり国民警察との接点として極めて重要な働きをしております交番体制を強化しようということから、三千五百のうちの約二千三百人、それから、このところとみに多発しておりますけん銃犯罪捜査体制の摘発強化のために約千人、それから、科学捜査体制の強化、これは十分な科学知識を持った捜査体制を緊急に整備していこうとするものでございますが、これにつきまして約二百人、合わせて三千五百人の地方警察官の増員をお願いして、その採用及び配置に努めているところでございます。
  95. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございました。  これは私の意見としてお話しをさせていただきますので、お聞きをいただければありがたいのですが、三千五百名、成田の対策のための増員ということを抜かしますと十年ぶりということと認識しておりますが、一どきに三千五百名の増員ということ、これは必要に迫られて行うというお話はいただきましたが、そうしますと、また一定の期間を置いてごそっと警察官が退官される、あるいは退職されるということになって、もう少しなだらかに増員態勢ということを行うことの方がよりよい体制づくりにもつながっていくのではないか。その辺で弾力的な対応をお考えになられてはいかがか、そんな私の意見を伝えさせていただきました。  さて、警察法の一部改正ということ、広域組織犯罪への対応、もちろんそのことが主眼に置かれているわけでありますけれども、今回の一連捜査を追ってまいりますと、国内の広域犯罪にとどまらず国際犯罪への対応というのが必要になってくるように思われます。これは捜査の面から見てまいりますと特にそのように感ずるのでありますけれども、国際的な犯罪への、今回の一連オウム真理教事件においても諸外国との対応というのをどのようにしていくかというのが今後の捜査の大きなポイントになってくるやにも思われます。入国管理局や外国捜査機関との連携というのが現在どのようにとられているかということをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  96. 菅沼清高

    菅沼政府委員 委員指摘のとおり、近年特に犯罪の国際化が進んできておりますし、国際的な規模における犯罪対策を一層推進していく必要に迫られているところでございます。  現在、我が国警察といたしましては、一つは、外国捜査機関との間で平素からの情報交換を緊密に行うことを一層進めてまいりたい、このように考えておるところでございまして、また、そのために多国間の国際会合等にも積極的に参加する、こういうことをやっているところでございます。また、個々の事件捜査におきましても、各種情報の照会や、あるいは証拠資料の提供依頼等の協力も進めているところでございます。  また、国内的にも関係省庁による提携がより必要となっている状況にございますので、例えば、けん銃の取り締まり等につきましては、関係機関が合わせて強化月間を設けるということもやっているところでございます。入国管理局も含めた、国際化する犯罪対応するための措置を緊急に現在進めているところでございます。
  97. 田中甲

    田中(甲)委員 引き続き質疑をさせていただきます。  外国の犯罪捜査においては、私も改めて認識をするようになったのですけれども、ワイヤタッピングという捜査方法があるそうですね。また同時に、司法取引という手法が多く用いられているということも聞いております。これからの我が国における捜査においてもそれを取り入れる必要があるとお考えになられているのでしょうか、御答弁をいただきたいと思います。
  98. 野田健

    野田(健)政府委員 御指摘のように、諸外国においては、組織的な犯罪解明のためにいわゆる電話傍受あるいは司法取引といったような捜査手法が活用されているものと承知しております。このうち、電話傍受につきましては、我が国においても、薬物事犯の捜査において裁判官の発する検証許可状に基づいて一定の要件のもとに実施された事例がありまして、裁判においてもその適法性が認められているところと承知しております。  一般に、組織背景とする犯罪に対する特別の捜査手法につきましては、適正手続の保障や国民警察に対する信頼の確保に留意しつつ、犯罪情勢全般の変化に伴う捜査の困難化等を総合的に検討した上で、これらに的確に対応し得る種々の捜査手法の導入について検討してまいりたいというふうに考えております。
  99. 田中甲

    田中(甲)委員 審議をしております警察法の一部改正、また、今私が質問させていただきました国際犯罪への対応、ワイヤタッピングですとか司法取引ということを行っていく中で、私は、警察行政関係の情報公開ということが必要になってくると思います。このことについて、私が細々とお話をする前に、警察行政情報公開ということを今当局はどのようにお考えになられているか、御答弁をいただければありがたいと思います。
  100. 菅沼清高

    菅沼政府委員 お答えいたします。  警察行政の円滑な運営あるいは現下の厳しい治安情勢対応いたしていきますためには、国民理解と協力が何にも増して必要であることは私どもも感じているところでございます。そうした観点から、国民に対する情報の提供等につきましても積極的に進めてまいりたい、このように考えているところでございます。  ただ、警察の保有する情報には、警察業務の特殊性から、いわゆる情報提供、公開になじまないものも存在することも御理解をいただきたいわけでございまして、そうしたことにも配意しながら、できるだけ警察行政についての情報の公開を図りまして、警察活動の円滑化と、さらには国民の安全に寄与するという観点から、一層情報提供等については進めてまいりたい、このように考えております。
  101. 田中甲

    田中(甲)委員 前向きな御答弁をいただきまして大変にうれしく思います。  警察行政情報開示ということもぜひこれは進めていっていただきたいと強く御要望申し上げると同時に、業務の特殊性の中から情報開示はできない、しづらいということが多くあることも私も十分推測できるのでありますけれども信頼される警察行政をつくり、国民理解していただくためには、積極的に警察行政情報開示、時限情報開示ということを取り入れていく、この姿勢が必要になろうかと思います。御検討をぜひいただきたいと思います。  数分時間が残りましたので、オウム事件に、偽造運転免許証が随分新聞紙面でも書かれておりましたし、この対応策として今運転免許証のICカード化ということが検討されているようでありますが、現在どのような検討がされているか、この機会に参考に聞かせていただければありがたいと思います。
  102. 田中節夫

    田中(節)政府委員 運転免許証の偽造、変造事件は、運転免許行政の根幹を揺るがしかねない重大な問題でございます。また、運転免許証が身分証明書としての機能を有しておりますので、最近では、御指摘のように、オウム真理教教団による事案のように、高度な複写技術を応用したものや最新の電子科学技術を応用したものなど、新たな手口の偽造、変造事件発生しております。  このような状況を踏まえますと、従来の偽造、変造防止対策に加えまして、より偽造、変造されにくくするための新たな対策を講じることが喫緊の課題でございまして、高度なセキュリティー機能を有するICカード化は、運転免許証の偽造、変造防止対策として、また、増大し続ける交通警察業務の合理化、効率化等のための有効である施策というふうに考えております。有識者等の御意見もいただきながら、現在その導入に向けて検討しておるところでございます。
  103. 田中甲

    田中(甲)委員 警察法の一部を改正する法律案に関連していろいろな質問をさせていただきました。ICカード化を検討している運転免許証のお話を伺いましたが、無制限に予算があるわけではありません。各省庁が今ICカード化あるいはICカード化のようなシステムというものを導入しようとしてやはり検討あるいは研究を進めています。偽造運転免許証を取り締まるために、適正な投下コストでより多くの効果を上げるということを引き続き検討していただきたいという私の要望を申し述べておきます。  ICカード化、破損や防水性あるいは読み取り機の予算が必要になるなど、いろいろな問題がそこにはあろうかと思います。偽造されない運転免許証をどのように低コストでつくっていくかということも重ねて検討いただきたいと御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  104. 平林鴻三

    平林委員長 穀田恵二君。
  105. 穀田恵二

    ○穀田委員 日本共産党の穀田です。  今度の警察法改正は、当局の説明によりますと、改正背景として、目黒公証役場事務長拉致事件や地下鉄サリン事件発生する前に、警視庁が山梨県内のオウム真理教関連施設等に対し権限を及ぼすことができなかったのかとの指摘があったのでそれが理由だ、こう書いています。  私は、まずオウムの問題でいえば、国民警察に対する批判は、都道府県の区域を超えて警視庁が動けなかったかどうかという問題とは違うと思います。新聞でも、坂本弁護士拉致事件の初動捜査のつまずき、松本サリン事件の第一通報者に対する見込み捜査、こういったものに対する批判が多いのは明らかで、つまり、犯罪の初期の段階での警察当局の対応がうまくいっておれば防げたのではないかというやりきれない思いを多くの方々がお持ちだと思うんです。同じ新聞は、法改正の前に、捜査のどこに問題があり、何が欠けていたのかというのは明らかにする必要がある、こう述べています。私は、真摯に捜査の問題点を明らかにして、反省もしないうちにともかく制度を変えるんだということは全くけしからぬと思うんですね。  といいますのは、私、この委員会で三月二十五日、國松長官の記者会見の内容を紹介しました。一つは、誠実に反省、検討するという。二つ目に、初動捜査のミスの指摘に検討を加え、反省、教訓を披瀝する。この二つを私は紹介しまして、その際に長官は、時期が来たらということと、一段落したら総括をと述べたにとどまっています。私は、世論にもこたえて反省点を明らかにし、警察の責任を明らかにすることが先決だと思っています。  そこで、オウム事件に関してお聞きしたいと思います。  まず第一に、九〇年十月の熊本・波野村の国土法違反事件で、熊本県警は全国の強制捜査を行いました。それは何カ所か、どこか。  第二番目に、山梨県上九一色村の教団施設での異臭事件が九四年七月に二回発生しています。この事件に関連して、現場にサリン残留物があったことを警察は確認していますが、残留物質がサリンだと突きとめたのはどこなのか。  第三に、長野県警はサリン合成したという報道が四月に行われました。これは事実かどうか。  第四に、以上のことは当然警察庁に報告なされていると思うのですが、どうか。  この四つについてまずお聞きします。
  106. 野田健

    野田(健)政府委員 オウム真理教の幹部であります早川紀代秀、青山吉伸らによる熊本県波野村における国土利用計画法違反事件につきましては、第一次捜索として、平成二年十月、熊本県波野村所在のオウム真理教熊本道場、静岡県富士宮市所在のオウム真理教富士山総本部道場のほか、東京、福岡、大分所在のオウム真理教の関係箇所等合計三十四カ所を捜索いたしました。また、第二次捜索として、平成二年十一月、山梨県上九一色村所在のオウム真理教修行道場のほか、東京、静岡、大分所在のオウム真理教の関係箇所等合計八カ所について捜索を行っております。  第二点の、山梨県上九一色村で採取したサリンの分解残留物でもあり得る物質を確認した機関でありますけれども、本鑑定につきましては、警察庁科学警察研究所で行ったものであります。通常、鑑定業務というのは、都道府県の科学捜査研究所で行っておりますけれども、サリンということがありましたので、当時警察庁の科学警察研究所で行ったものであります。  それから、長野県警察がサリンを合成したという報道に関するお尋ねでありますけれども、長野県警察松本サリン事件の立証に資するため、平成六年六月二十八日から平成七年二月十四日までの間に、鑑定を長野県警の科学捜査研究所が行いました。そのために必要な処分を行ったのでありますけれども、鑑定書は一件書類として検察庁に送付してあり、いまだ公判廷において開示していない状況にございますので、鑑定の具体的内容についてはコメントを差し控えさせていただきたいと存じます。  以上の、それぞれの警察庁への報告があったかというお尋ねでありますけれども、その都度必要な報告を受け、必要に応じ指導調整を行っているところでございます。
  107. 穀田恵二

    ○穀田委員 要するに、波野村の事件では一都四県にまたがる教団施設を捜索した。八九年十一月の坂本弁護士一家殺人事件では、オウムのバッジを坂本さんのお母さんが発見をした。これは事実ですが、九四年六月には松本サリン事件、同じく、今言いました十一月には上九一色村のオウムの施設周辺からサリンの残渣物を科学警察研究所が突きとめる、当然警察庁は知っていた、こういうことですね。  私は調べてみたのですが、一昨年、警察法犯罪の広域化等に対処するとの理由で改正されると同時に、犯罪捜査共助規則も改正されたはずです。その中との関係でいいますと、オウム事件に関連して、先ほどもお話がありましたように、当然複数の都道府県にまたがっている、しかも殺傷だけを目的にする猛毒サリンと結びついている点からも、改正された犯罪捜査共助規則第十九条の「広域重要犯罪」に該当すると言っていいと思うのです。この規則を活用して、速やかに関係都道府県警察の合同捜査なり共同捜査が早い段階で行われるべきであった、行い得たということは私は言えると思うのです。  しかも、関係する都道府県警察相互の間で合同捜査なり共同捜査の態勢がつくられないとするならば、今度は警察庁長官がっくりなさいと指示することができるのではないですか。そして、「都道府県警察は、数都道府県の地域に関係のある重要な犯罪長官の定めるものを認知したときは、その旨を速やかに警察庁及び管区警察局に報告しなければならない。」と十九条にあるのです。そしてさらに、同じく犯罪捜査共助規則第二十六条第一項では、警察庁長官が必要があると判断すれば、「関係都道府県警察に対し、合同捜査又は共同捜査を行うべきことを指示する」とあるわけなのです。  当然、オウム事件に関連して、長野県警、神奈川県警の捜査に問題があったのは事実ですが、そうだとしても、その後の捜査の過程で、警察庁長官が関係都道府県警察の合同捜査や共同捜査指示あるいはあっせんを行うことはできたはずですよね。私は、そこはなぜしなかったのかということを明らかにしていただきたいと思います。
  108. 野田健

    野田(健)政府委員 御指摘がございました犯罪捜査共助規則に基づきます合同捜査あるいは共同捜査は、それぞれの都道府県警察がそれぞれの事件について管轄権を共有しているという場合に合同捜査あるいは共同捜査を組む、そのための規定でありまして、例えば波野村で行われた事件について他の都道府県警察が、いわゆる従来の考え方でおりますと管轄権を有しないということになりまして、必ずしも共同捜査を組めるという性質のものではないわけでございます。
  109. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、波野村の例を言っているわけじゃないのです。この共助規則によれば、関係都道府県は報告をしなければならぬと書いてあるのが十九条なんですね。それに基づいて、二十六条に、今言いましたように、それを長官は認知した場合においては、必要があると認めるときは「共同捜査を行うべきことを指示するものとする」と、指示できるんですよね。だから当然、猛毒、殺傷だけを目的とするサリンが数カ所で発見された、そして同じように関連する背景オウムがあるということも明らかになってきた、こういう段階で、私はそういう指示することができるということを使ってやるべきだと言っているのです。先ほども、少しおくれたけれども合同捜査だとか共同捜査のことをとったとありましたけれども、私は、明らかに当初からこれができたんだということを言っているのです。  私が言いたいのは、今言った共助規則だけじゃなくて、実は現行法でこれができるということを警察庁長官もおっしゃっているんですよね。これはこう言っているのです。九五年の十月十二日の記者会見で、「オウム事件の場合、東京都内に教団の総本部があったので、警視庁が関係県警と合同捜査できないことはなかった。解釈論では可能だった」と述べたじゃありませんか。要するにできたんでしょう、共同捜査を含めて。
  110. 國松孝次

    國松政府委員 最後の、私の発言につきまして御引用がございましたが、そのようなことは私は申しておりません。要するに、管轄権があったかどうかということについていろいろな意見がある、しかし、なかなか難しいのではないかということを申したつもりでございます。  それで、そもそも先ほど捜査共助規則を引いておられますが、それにつきましては、そこに警察庁長官指示というのが確かにございます。しかし、これは先ほど刑事局長答弁申しましたとおり、お互いに管轄権がもう生じておりまして、管轄権を持っている県が幾つかある、その間のいろいろな調整について、合同捜査をするか、共同捜査をするか、そういうことについて長官指示するということでございますので、管轄権がある場合の指示というのがそこに書いてあるわけでございます。  今御審議をいただいております警察法六十一条の三に言う警察庁長官指示と申しますものは、言ってみればまだ実は現行法では管轄権がない、ないものについて、それを六十条の三をつくりまして管轄権があるようにいたしまして、それについて警察庁長官はどうするかという問題でございますので、捜査共助規則とはちょっとレベルの違う話でございますので、そこのところを御理解いただきたいと思います。つまり、管轄権があるかないかということで全然話が違ってくるわけでございます。  現行法におきまして、端的に言いますれば、長野あるいは神奈川でいろいろ事件が起こっておった段階で警視庁に管轄権があったかどうかということについては、なるほど学者先生方にいろいろ聞きました。いろいろな御意見がございます、そういった御意見があるということを申し上げたわけでありまして、私は、そうは言うけれども、やはり現行法で、まだ仮谷さん事件が起こるまでには警視庁が管轄権を持つということが言えるのは本当は難しいのじゃないのか。もし、よしんばあったということになりましても、その辺がはっきりいたしませんので、それについては今回の御審議をいただきます改正法できちっと整備をしていただくのがやはり一番いいのではないかということで、今御審議をいただいておるわけでございます。
  111. 穀田恵二

    ○穀田委員 これは実は、東京新聞の十月十三日付の新聞なんです。この内容でいいますと、管轄を規定した警察法改正が議論されているが、警視庁の國松長官は「法改正の必要はないのではないか」と消極的な姿勢を示した。」このようにこの新聞には書いてあるのです。それはあなたがどう言ったかじゃなくて、この新聞にはこう書いていると私は言っているのですよ。しかも、そのくだりの中で、先ほど述べたようなことを言っている。もちろん、その後半のところで、管轄区域を超えて出ていくのかというのはありますよ。しかし、当時これを見ますと、同じようにその時期に都道府県の管轄規定の見直しを検討しているということを確かに九月段階で言っているのですね、そういうふうに言っています。しかし、いわば新聞報道で、管轄区域を超えられるか超えられないかという議論があった際にそういう発言をしているということですから、現在の法改正がなくてもできるというふうに新聞報道から見るのは私は当然だと思うのですね。  では、国家公安委員長にお聞きしますけれども、十月十一日の予算委員会で、当時の深谷国家公安委員長はこのように述べているのですね。  昨年の六月でございますが、警察法改正させていただきまして、合同捜査の際の指揮権はどちらにあるかということについてきちっと決めるといったような内容も決定させていただいております。したがいまして、従来よりはかなりスムーズになると思っておりますので、私は、今日の法律運用することによって適切な対応は可能だと思っております と、はっきり対応は可能だと答弁しているのですね。ですから、たったニカ月間にそういうふうに変わるものですかね。実際、前任者である当時の国家公安委員長がこうお答えになっているわけですが、今の段階国家公安委員長の大臣はそういう話を当然お聞きになっていると思うのですね、引き継ぎなされていると思う。そういう点からいったら、大臣、どうですか。
  112. 野田健

    野田(健)政府委員 平成六年の警察法改正では、管轄権を持っている都道府県同士の合同捜査本部をつくる場合に、その指揮権を一体化するということで円滑に進めていくことができるようになったわけでございます。そして、恐らく、その当時深谷大臣の説明された趣旨は、オウム真理教に係る合同捜査本部を、平成七年三月から六月八日ぐらいまでですと八件ないし九件実施しているという時点でございますので、そういったそれぞれの合同事件について管轄権があるそれぞれの県が一緒になってやっている、そして指揮権が一体化しているということで非常に円滑、効果的に行えるということで、またそれは平成六年の法改正のおかげである、そういう趣旨のことを御発言になったのではないかと思います。
  113. 穀田恵二

    ○穀田委員 違いますよ。こういう質問に答えているのですよ。江田委員質問は、  警視庁というのがあれだけの捜査能力を持って  いるのは東京都のためだけじゃないんですよ、  やはり国民の税金でこういうものをちゃんと持っているわけですから。   そうすると、やはりこういうときにはもう  ちょっと機動的に、単に捜査の協力だけでなく  て、自分の管轄の中に入ってきた事件以外にも  いろいろな能力を発揮して、こういう団体犯  罪、集団犯罪、テロ犯罪というものに対して対  応できるようにしなきゃいけないんじゃない  か。こう尋ねているのですよ。  つまり、警視庁が出ていけるようにしたらどうだ、そしてそれをしようと思ったら法律がネックになっていて、改正する必要があるのか、改正までいかなくても運用を改善する必要があるのか、こう尋ねているのですよ。つまり、法律改正しなければ無理か、運用改善でいけるのじゃないかと。これに答えて大臣は、運用することによって適切な対応が可能だと思うと答えているのですよ。そうすると、先ほど紹介した東京新聞の内容ですね、國松長官の記者会見で言われたという内容とこれは符合するわけなのですよ。だから、当然現行法でできる、こうなってしまうのですよ。そうでしょう。どうですか。ですから、大臣に私はもう一度そこだけ最後に聞いておきたいのです。
  114. 野田健

    野田(健)政府委員 当時、深谷大臣がおっしゃった趣旨は、恐らく、新進党の法改正の意見がありまして、そして小規模都道府県警察ではとても手に負えないというような事件が起きたときに警視庁が行ってそれをやったらどうかという、そういうふうに法改正する必要があるのか、あるいはそれをしなくても警視庁が出ていけるのかというお尋ねであったのだろうと思います。  ただ、現実問題といたしましては、当時は既に合同捜査が始まっておりましたので、その合同捜査を強力に進めることによってオウム真理教の全容の解明に向かって一層進捗していくであろうということを確信をお持ちになって発言されたという趣旨であって、警察法改正についてそういう趣旨で御発言になったかどうかということについてはちょっと私にはよくわかりません。
  115. 穀田恵二

    ○穀田委員 だから、それはあなたがどういう趣旨でお答えになったかなんて推測してしゃべることは当然無理なわけで、問題は、今お話ししたように、質問がこうあり、しかも警視庁が出ていけるではないか、そういう法律をつくったらどうだと言ったことに対して、運用でできると答えているという経過を私はしゃべっているのですよ。それは、正確にそれを読み取ったらそのとおりしか出てこないのです。私は、その辺はちょっと疑問ですね。  だから問題は、現行法でも管轄を超えて警察庁がそういう調整能力を発揮してやればできるという法体系になっているということを私は見てとる必要があると思うのです。しかも問題は、警視庁が、大きな力がスケールメリットで出ていけるかどうかが多くの国民の方々の批判じゃないのですよ、それぞれの捜査が機敏に対応されておれば防げたのではないかということが多くの国民の批判なのですよ。だから、日経新聞の社説でも、確かに結果から見て前のことを議論するのはフェアでないけれども、しかしそうだといっても長野県警の捜査には疑問が残ると言っておられるのです。ですから、長野県警だとか神奈川県警なんかのそういう捜査について疑問が残ると言わざるを得ない問題がやはりあったわけなのです。  しかも、さらにその社説はこうも言っているのです。昨年十一月、警察庁の科学警察研究所は山梨県でも発見をした、この段階で長野、山梨両県警が広域捜査態勢をとり、オウム教団に的を絞った捜査を展開していれば十分探知できたはずだ、こういう共同の悪さについても指摘をしているのですよ。  そしてさらに、最後ですから済みません、聞いてほしいのですが、都道府県警の枠を超えた協力をというとすぐ連絡調整に当たる警察庁権限強化の議論が出る、こういう指摘まで実は日経の社説は言っているのです。そして、硬直化した警察組織が問題だ、警察庁による中央集権化は動脈硬化に拍車をかけていることを関係者は胸に刻むべきだとまで最後に言っているのですね。  ですから、多くの国民の批判は、それぞれの警察がそれぞれのところでしっかり努力をしてやるべきなのだ、しかも、「警察学論集」なんかでは、それぞれの警察が自分のところの自治体の区域の中で責任を持ってする仕事があるがゆえに、そういう責任を持ってするがゆえに優秀な捜査能力を持っているということまで言っているわけなのです。そういうものをしっかり踏まえることこそ私は大事だと思っています。  そういう意味で、先ほどから議論になった自治体警察の原則を突きますことになりはしないか、こういう懸念が当然出てくるわけでして、私は、そういう戦後の警察のあり方の方向、民主化の方向、そういったものからしても、これは逆行するものだということを特に述べて、質問を終わりたいと思います。
  116. 平林鴻三

    平林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  117. 平林鴻三

    平林委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。
  118. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、日本共産党を代表して、警察法の一部を改正する法律案に反対するの討論を行います。  反対の第一の理由は、オウム事件警察捜査に対する国民の批判を逆手にとって、都道府県を単位とする現行警察制度の原則を崩し、警察庁長官権限の拡大が図られていることです。  現行警察制度は、国の機関としての警察庁都道府県機関としての都道府県警察から成っており、都道府県警察は原則として管轄する都道府県を超えて権限を及ぼすことはできないとされています。こうした原則が確立されたのは、戦前の警察が国家警察として専ら国の政策目的実現のために動員され、国民の自由や人権を著しく侵害したことの反省から、憲法の地方自治の原則にのっとって自治体警察の創設による警察の民主化が行われたことによるものです。  改正案は、広域組織的犯罪等に限定しているとはいえ、都道府県警察が管轄区域を無視して全国どこへでも出動できるようにするもので、この自治体警察の原則を踏みにじるものです。しかも、管轄区域外に権限を及ぼすかどうかの判断は専ら警察庁長官に任されており、自治体警察が国家警察のもとで活動するというもので、自治体警察として出発した警察の民主化の方向と逆行するものです。  重要なことは、警察庁長官権限の拡大です。犯罪捜査共助規則に基づく警察庁長官指示は、「広域重要犯罪を認知した場合」とあるように、犯罪捜査に限定されています。その法的根拠も、警察法第五条二項十五号の指導助言という性格のものです。ところが、改正案の法第六十一条の三の指示は、警察の態勢に関する事項についての具体的なもので、いわば命令ともいうべきものです。また、その範囲も、広域組織犯罪その他の事案発生した場合だけでなく、そのおそれがあると警察庁長官判断すれば、犯罪の起きる前から管轄区域を超えて警察を出動させることができます。犯罪を未然に防止する行政警察の分野、警備・公安警察分野での警察庁長官権限の拡大と言わなければなりません。現状でも、警備警察警察庁の一元的管理のもとにあり、本部長を初めとする都道府県警の主要な人事は警察庁で決められるなど、自治体警察としての都道府県警察の形骸化が進んでいますが、法案はその形骸化を一層促進するものです。  反対の第二は、国民の生命、身体及び財産の保護という都道府県警察の基本的な責務遂行能力を後退させるものだからです。  警察の管轄区域を明確にしたことは、そこを管轄する都道府県警察の責任の明確化ともなり、結果として地域住民の生命や身体、財産の保護の役割を果たしてきました。警察庁長官による派遣の指揮命令は、管轄区域を無視して行われるもので、管轄区域に対する都道府県警察の責任をあいまいにするものです。そのことは、全国警察の総体としての捜査能力を低下させることにつながります。  最後に、広域犯罪対応するための都道府県警察間の連絡調整のための警察庁の関与は、今後ますます必要とされるでしょう。しかし、そのために必要な法改正は行われており、それらを適切に運用すれば現行制度のもとでも対応できることは明らかにしたところです。警察庁は、捜査の第一線に立つ都道府県警察捜査力の向上のための具体的施策や、迅速で効果的な捜査が行われる連絡調整にこそ力を注ぐべきで、いたずらに権限の拡大を図るべきでないことを申し上げて、反対の討論とします。
  119. 平林鴻三

    平林委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  120. 平林鴻三

    平林委員長 これより採決に入ります。  警察法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  121. 平林鴻三

    平林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 平林鴻三

    平林委員長 御異議ないものと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  123. 平林鴻三

    平林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会