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1996-02-28 第136回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成八年二月二十八日(水曜日)     午後六時三十七分開議  出席委員   委員長 久間 章生君    理事 石原 伸晃君 理事 大島 理森君    理事 金子 一義君 理事 青木 宏之君    理事 北側 一雄君 理事 永井 哲男君    理事 錦織  淳君       衛藤征士郎君    柿澤 弘治君       岸田 文雄君    熊代 昭彦君       栗本慎一郎君    小泉純一郎君       佐田玄一郎君    中村正三郎君       中山 利生君    堀之内久男君       村田 吉隆君    茂木 敏充君       井奥 貞雄君    上田 清司君       斉藤 鉄夫君    樽床 伸二君       中田  宏君    中村 時広君       藤井 裕久君    宮地 正介君       吉田 公一君    網岡  雄君       関山 信之君    中村 正男君       早川  勝君    細谷 治通君       田中  甲君    佐々木陸海君       小森 龍邦君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 久保  亘君  出席政府委員         大蔵政務次官  鉢呂 吉雄君         大蔵省主計局次         長       伏屋 和彦君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 西村 吉正君         国税庁課税部長 内野 正昭君  委員外出席者         国土庁土地局土         地利用調整課長 大隈  満君         国民金融公庫理         事       齊藤 高志君         大蔵委員会調査         室長      藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 二月二十八日 辞任      補欠選任   太田 昭宏君     斉藤 鉄夫君   谷口 隆義君     樽床 伸二君 同日 辞任      補欠選任   斉藤 鉄夫君     太田 昭宏君   樽床 伸二君     谷口 隆義君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成八年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第六号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第七号)      ————◇—————
  2. 久間章生

    久間委員長 これより会議を開きます。  内閣提出平成八年分所得税特別減税のための臨時措置法案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田公一君。
  3. 吉田公一

    吉田(公)委員 私は、質問の前に、予算委員会とダブる質問、そしてまた、私の質問資料が若干整理ができていないものですから、多少飛んだりなんかいたしますけれども、あらかじめ御了承とお許しをいただきたいと存じます。  まず、平成八年分所得税特別減税のための臨時措置法案提案理由について御質問を申し上げたいと思います。  つまり、所得税減税最高限度額、五万円住民税減税分最高限度二万円、合計七万円の減税平成年度も引き続き行われる。しかし、減税をするということは税収が減るということでありますから、当然その減税分だけどこかからお金を持ってこなければならないわけでありますが、その減税分特例公債で賄うということについて一つ質問を申し上げたいのですけれども特例公債ということは借金ですから、実質的な意味で言えば減税にはなっていないのではないか、そう思うのですけれども、その点いかがでございましょうか。
  4. 薄井信明

    薄井政府委員 お答え申し上げます。  今御質問のポイントは、いずれ税金公債はお返ししなければいけない、そういう意味ではという御指摘であれば、そのとおりだと存じます。
  5. 吉田公一

    吉田(公)委員 そうしますと、所得税減税住民税減税をやった本当意味は何か。つまり、最終的には税金で返すということになれば、減税ということにはならないので、一見減税に見えそうですけれども、実際は特例公債で埋め合わせするのですから、これまた国民借金で埋め合わせと。したがって、それならばなぜそのわずかばかりの七万円程度減税をしなければいけないのかということなのですが、この減税をした意味というのは何でしょうか。
  6. 薄井信明

    薄井政府委員 平成六年の税制改革の際に、制度減税といたしまして、所得税住民税については三・五兆円規模減税を決めました。これは昨年の一月から実施しておりまして、これは法律を直しておりますので、ずっといきます。一方で、消費税税率引き上げということを平成九年四月から行うということも法律で決めてもらっておりますが、景気対策観点から先行させていただいております。まさに景気対策の点から先行させていただいている。それに加えまして、この経済情勢をさらに確実なものにするという観点から、当面、現在、減税を上乗せすることが適切であると考えているわけでございます。
  7. 吉田公一

    吉田(公)委員 一つは、今局長がおっしゃったように、平成九年の四月一日から消費税を五%にアップする。そのためには、つまり国民の反対を余り起こさないようにアップをするために、そのために先に減税してあげましょうよという地ならし消費税の五%アップ地ならしのために、つまり、減税をしたんだよということを国民事前に知らせておいてそれでショックを和らげようと。  だけれども、実際には減税になっていない。特例公債を発行してまた国民税金で返さなければいけないんですから、結果的には、国民にはいかにも減税をしてやったように見せかけるけれども、実際は減税にはなりていない。しかし片方では、消費税を五%に上げるための地ならしてはないか、そう思われてもこれはある意味で仕方がないことであって、私どもは、景気対策ではなくて実は消費税を五%に値上げするための理由づけとしてこういうふうに無理な減税をしたのではないか、そういう発想ではありませんかということであります。それはいかがですか。
  8. 薄井信明

    薄井政府委員 先ほどちょっと触れましたが、平成六年の抜本的といいますか、一連の税制改革の内容は、一方で所得課税について税率フラット化をする、このことによって活力を増そうという構造的な対策と思ってやらせていただきました。他方、その財源消費税率引き上げる。昨日もお話ありましたように、やはり消費所得、資産の間でのバランスということを考えますと、消費課税がもうちょっと上がってもいいということでやったわけでございます。そういう意味では、委員指摘のように、同時にこれを実施する ことが本来の姿であったと思います。  しかし、去年、おととしの景気状況から見て、これは消費税を一緒にスタートさせるのでは経済を悪くしてしまうという判断から、むしろやむを得ず減税を先にしたわけでございます。税率を上げたいがために減税しているのではなくて、同時にするべき消費税率引き上げをおくらせたというのが第一点でございまして、その場合は三・五兆の制度減税でいいのですけれども景気状況から見て、その前の年、六年度に五・五兆をやっておりますので、それを縮小すると経済に影響を与えるのではないかということで、実は平成六年に抜本的な改正をやったときに、平成七年分は二階建ての二兆円を足します、しかし八年はやりません、ただし景気が特に好転しない限りやることあり得べしということを当時決めていました。去年の年末の私ども判断では、やはり八年度も念のためやっておく方が経済を確実なものにするということでやらせていただきました。先生指摘のような見方があるということは、私は気がつきませんでした。
  9. 吉田公一

    吉田(公)委員 景気対策のために一つ減税をしたという、そういう理由もあるということでありますが、しかし、本当景気対策国民生活を底上げしていくならば、本来は借金減税をするということは実質的には全くメリットがないわけですよね。要するに、あなた方の減税はしてやるけれども、しかしあなた方は後で返すんですよというだけの話でありまして、本来の意味減税にはなっていない。したがって、減税分だけ特例公債をまた発行しなければならない、国の財政はますます赤字が膨らんでくるというようなことでありまして、そういう意味では、財政論からいっても変な減税だなと私自身は思っているわけです。  しかも、消費税値上げというのがなければまだそれはそれでいいのですけれども、ついに来年は消費税値上げをしなければならない。このことについて、きっと、その三年間、事前国民皆さん方には減税をしているじゃありませんかと、そういう理由が成り立つ。その理由づけのために所得税減税だの住民税減税だの、しかも合わせて七万円にしかならないんだからね、実際は。限度額が決められているわけですからね。だから相乗効果というものも私はないと思いますし、景気対策のてこ入れになっているかどうかは非常に疑問に思っているわけでして、そういう意味では、この減税分だけ特例公債を発行する減税というのは、どうも私にはなかなか納得がいかないわけです。  税収が七年度当初予算水準をさらに二兆円下回っている見込みだということでありまして、これまでのさまざまな工夫も実は限界に突き当たりましたと。しかし、そのさまざまな工夫というのを本当にやっておられるのかどうか。やっておられれば、二百四十一兆円というように赤字国債がふえ続けるということは私はないと思っているのですね。さまざまな工夫というのは、つまり国赤字を一兆円でも減らせばさまざまな工夫ということが言えますけれども、そうではなくて、さまざまな工夫をしていながら、なおかつ国民負担になります赤字がふえているということについて、それではさまざまな工夫とは一体何だろうというふうに思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  10. 伏屋和彦

    伏屋政府委員 お答え申し上げます。これまでの予算編成におきまして、歳入歳出両面であらゆる努力を行う過程におきまして、とりわけ特例公債の発行を回避するということで、いわゆる特例的な歳出削減措置を講じてきたところでございます。  例えば七年度予算においてでございますが、これは大蔵委員会でも御審議いただきましたのですが、七年度繰り入れ特例法によりまして、まさにさまざまな措置を講じてきたわけでございます。それは、例えば具体的に申し上げますと、国債費定率繰り入れの停止とかいうような措置を初めといたしまして、措置の数として九つございました。税外収入確保もございました。それら歳出削減歳入確保合計額として約六兆円の規模になっておったわけでございます。しかしながら八年度におきましては、まさに今先生が言われましたのですが、定率繰り入れにつきましては、国債整理基金の資金繰りに支障が生ずることから法律原則どおり定率繰り入れを行う必要があるなど、まさにこうした特例的な歳出削減措置等限界に突き当たりつつあるということで、八年度におきます措置の数は二つに減っておりまして、歳出削減歳入確保は、合計額のベースでも六分の一には縮減しております。  八年度当初予算におきましてもいろいろ歳出削減努力をいたしまして、全体の一般歳出が二・四%、なかんずく経常部門でございますが、これは一・五%という伸びの低い水準に私ども一生懸命努力しているところでございますので、御理解いただきたいと思います。
  11. 吉田公一

    吉田(公)委員 さまざまな工夫というのは、行財政改革とかあるいは歳出カットとか、要するにそれがさまざまな工夫だ、私はこう思っておりまして、特別会計から一般会計、こっちの会計からこっちの会計、全部借金でやりとりしているだけがさまざまな工夫じゃないわけですよ。それは大蔵省計数整理の問題であって、本当のさまざまな工夫の原点は何かと言えば、歳出カットすること、これをしなければ、やりくりやっているだけの話で、こっちの金がこっちへ行っただけ、こっちの金がこっちへ来ただけの話になってしまう。  そこで、「容易ならざる事態」になったということが大臣所信表明で言われておりますが「大臣、「容易ならざる事態」というのはどういう意味でおっしゃったのか大臣のお考えを聞きたい、こう思うのです。「容易ならざる事態」というのはどういうことでございますか。
  12. 久保亘

    久保国務大臣 昨年の十一月に前大蔵大臣財政危機宣言ともいうべき財政事情についての発表をいたしました。このような事態に立ち至りましたのにはいろいろな原因があるのでありますが、一つはバブルの崩壊後の成長率の著しい低下、そして各年度税収見込みが前年度の当初見込みに達しないという状態が続いておりますね。本年度、今御審議いただいております八年度予算も例外ではございません。  加えて、高齢化社会の急速な進展によって財政需要が高まっております。また、社会保障政策等国民の求める政策的な経費も増大の一途をたどっておりまして、そういう中で非常に容易ならざる事態に立ち至ったものと思っておりまして、今吉田さんがおっしゃいましたように、やはり歳出にも大胆な見直しが求められる事態になった、こういうことであろうかと思います。
  13. 吉田公一

    吉田(公)委員 財政危機宣言というのは確かに前大蔵大臣発言をなさったわけでありますが、このまままた平成年度予算をこの状態で組むようになれば、まさに財政危機宣言どころじゃありませんで、財政破綻になってしまう。  そういう意味では、日本財政破綻をするということは、国際経済にも影響してくる話であります。国際経済の中で高い地位を占めて、いわば外国から大変頼りにされている日本経済金融がだめになるということは、日本発世界恐慌になる可能性だって十分あるわけでありますから、まさに国内財政という問題だけではなくて、世界的にも日本健全財政を心がける責任を持つ、そういう大きな国になったこと自体は喜ばしいのですけれども、いわば国内の問題だけではない、実はそう思っているわけでございます。  したがって、容易ならざる事態になった以上は、今後具体的には何をどうしなければならぬか。ただ容易ならざる事態になった、これまでのさまざまな工夫という文言だけでは、これはまさに財政危機宣言を幾ら発しても実態に伴っていかないわけでありますから、容易ならざる事態、何を具体的にやればいいか、お答えをいただきたい、こう思うのです。
  14. 伏屋和彦

    伏屋政府委員 お答え申し上げます。  今、大臣から御答弁させていただきましたが、 諸外国でもやはり財政改革といいますか、財政対策というものに非常に熱心に取り組んでいるわけでございます。したがって、現在のような財政悪化状況は、欧米の主要先進諸国も含めまして、我が国も含めまして共通して直面している課題でございます。  そこで、実際には、先ほどから委員が言っておられますように、財政改革に取り組むときの、やはり歳出歳入両面努力が必要なのですが、歳出につきましては、今後、歳出全般について支出が一体効率的に行われているかどうか、それから本当国民生活の向上に役立っているだろうかというような点を徹底した見直しを行いまして、その節減合理化に努めることはもちろんのことでございます。  将来にわたり構造的に厳しい財政状況が見込まれる中でございますので、これまでは財政支出が適当とされてきた施策につきましても、今日の情勢のもとでなお財政が関与すべき分野か否かというような行財政守備範囲見直し観点に立ちまして、聖域を設けることなく制度の根本にさかのぼって見直しを行う、洗い直しを行うことが重要な課題であると考えております。
  15. 吉田公一

    吉田(公)委員 年々赤字が累積をして、最後には、今年度は二百四十一兆円だ、地方財政赤字合計百二十兆円程度だ、こう言っているわけであります。したがって、両方合わせますと三百六十一兆円という国と地方公共団体赤字を抱えて、しかも財政はますます硬直化しつつある。しかし、少子・高齢化社会を迎え、とにかく予算弾力性を持たせなければ、もう既に動脈硬化を起こしている。消費税値上げのときに、常に高齢化対策のためにと言っているけれども、しかしその消費税さえ高齢化対策に回すお金は約八分の一程度しかない。  したがって、三百六十一兆円という大赤字は、一つ需要に沿ってお金をどんどんどんどん出してきた結果だと思うのでありますが、最終的には、国力を超えた予算支出をやった結果が要するに地方公共団体、国、合わせて三百六十一兆円なんという膨大な、まず何年かかって何十年かかって返せるかわからないような天文学的な数字の赤字を今抱えているわけであります。  したがって、これからは、先ほど来から申し上げておりますように、歳出カットをする。例えば、七十五兆円程度予算でありますから、三%全部カットするということになれば消費税の一%程度は出てしまうわけですね。六%なら消費税の二%程度。ですから、そういう思い切った歳出カットをして、もう既に用件が終わったもの、目的が終わったもの、そういうものについてどんどん予算カットしていかないと、財政危機宣言したのはいいけれども、実際には、実態の中では全然財政危機意識がないというようなことになってしまえば、これはもう大変なことになるわけであります。  恐らく二十一世紀は日本はだめだろうなんという観測まで今日出ているわけでありまして、まさに三百六十一兆円という借金を抱えている借金国日本に今残念ながらなってしまった。  そこで、平成年度予算は徹底した歳出の洗い直しに取り組みました、こういうことでありますが、それは具体的に、大きなもの、三つでも四つでも結構ですから、徹底した洗い直しとは一体何をしたのかということについてぜひひとつお聞かせをいただきたい、そう思うのです。
  16. 伏屋和彦

    伏屋政府委員 お答え申し上げます。  そもそも行財政改革につきましては、やはり社会経済情勢の変化に対応しまして、簡素にして効率的な行政の実現を図るために、八年度予算に限らず不断に見直しを進めるべき課題でございます。八年度予算におきましても、私どもいろいろ引き続き既存の制度施策の徹底した見直しを行いまして、種々の制度改革とか歳出合理化に積極的に取り組んだところでございます。  一つは、一般歳出でございますが、一般歳出におきまして、八年度は対前年度一兆円を下回る増、二・四%の増ということで、これは六年度に次いで低い伸びにしたところでございます。具体的な話といたしまして、例えば国立病院療養所経営改善改善合理化とか、そのほか公立の社会教育施設社会体育施設等見直しとか、いろいろな節減合理化にも努めたところでございます。  さらには、行政改革の方でも、国家公務員定員につきまして、第八次定員削減計画に基づく定員削減を着実に実施することといたしまして、増員を一層厳しく抑制いたしまして、七年度を上回る二千百八人の純減を立てるとか、そのほか、補助金等につきまして、地方行政自主性の尊重ということはこれは大事なことでございますし、また、財政資金の効率的な使用という観点からも見直しを行って、補助金整理合理化に努めているところでございます。
  17. 吉田公一

    吉田(公)委員 徹底した歳出の洗い直しに取り組んだというふうにはとても考えられませんで、国立病院改革でありますとか、具体的には国民の目にはどこを洗い直ししたのだか全然わからないわけですね。政府特殊法人だって一つ整理をされていない。そしてまた、予算編成に当たっても、つまり査定をするのは大蔵省主計局でありますけれども、なかなか歳出カットができない。結局はまた赤字がふえてしまった。しかも、景気対策のために、今まで五年間六十兆円というお金をつぎ込んで景気対策を図ってきたわけですけれども、それだってほかに財源があったわけではありませんで、景気対策費もやはり借金で賄わなければならないというような、これはもう自転車操業的な国家財政になっているわけであります。  平成年度予算に当たっては、大蔵大臣財政危機宣言というのをやった以上は歳出カットをやらないと、これは二百四十一兆円ではなくて二百五十兆円にも六十兆円にもまた赤字がふえてしまうということになりかねないので、ぜひ厳しく査定をしてもらって、もっとも国会の方もあの予算をよこせ、この予算をよこせとやるから、こっちにも責任はあると思うのですけれども、そういう意味では私たちの方もやはり健全財政を目指して議会も努力をしていくという、そのことも大事だと思っているわけであります。  それから、地方自治ということもございまして、地方自治体に完全な地方分権を推進していくためには財源ということが一番問題になっている。三割自治とか一割自治とか言っておりまして、現実に県税収入なんかを見ますと、県によっては一一%程度のところがたくさんありますね。だから、残りの九〇%は国の交付金補助金か、あるいはまた公債を発行して年間の財政運営をやっているわけです。  ところが、今度消費税の一%については地方の完全な自主財源にする、こういう方針が打ち出されているわけですね。完全な自主財源ですから、県が自由に使っていいことになるわけでありますけれども、しかし、消費税の本来の目的は、高齢化対策ということが一本の柱で消費税を創設したわけですから、つまり、地方自主財源は結構なのだけれども、それが地方人件費に使われたり、あるいはまた補助金に使われたりすることのないように気をつけるべきだ、私はこう思っているわけであります。  地方行政委員会で、私はこのことについても質問をいたしましたけれども、そんなことはまさにないだろうという自治大臣の御発言でありました。しかし、ないだろうなどという話ではだめなので、やはり高齢化対策なり福祉層にできる限りその財源を充てるということにしなければいけない、こう思うのでありますが、これは実際には自治省の答弁だろうと思いますけれども財政金融当局としてその趣旨についてはいかがなものでしょうかね。消費税を提案する財政当局として、その使い道についても当然やはり配慮すべきだ、こう思うのですが。
  18. 薄井信明

    薄井政府委員 消費税を創設したときの私どもの説明、あるいはあのときの法律の立て方からいいまして、これから我が国がさらに直面してきます高齢化社会の中でどう財政を運営していくかと いう問題があったことは、御指摘のとおりでございます。そういう意味で、直接的に、いわゆる目的税というような形で消費税から入ったお金を必ずここに入れるという、そういう発想には立つことはできませんけれども、これからの財政需要の大きな要因でございますから、そちらに事実上向けられていくということは私どもも考えているところでございます。
  19. 吉田公一

    吉田(公)委員 これは久保大蔵大臣にむしろお聞きした方がいいと思うのでありますが、もともと消費税というのはそういうことで、高齢化社会を迎えるために必要な財源確保ということで消費税が導入されたと記憶いたしておりますが、むしろ消費税というのは福祉財源だけに目的を持って充てた方がいいのではないか。  よく財源硬直化になるからだめだ、こういう御意見もあるようでありますが、むしろ消費税福祉目的のために使った方が透明性が増してくる。つまり、消費税でもらった金額がわかるわけです。そして福祉にどれだけ使ったかということも国民の前に非常に明らかに、透明度が高くなってくる。そういうことによって、今後もし消費税をふやさなければならぬ、つまり、福祉皆さんこれでいっぱいですよ、あと消費税をまた上げなければ福祉お金を回すことができませんよという国民に対する理解を求めるためには、むしろその方がはっきりしていていいのではないか。  要するに、一般財源固定化につながるといいますけれども、今予算に占める社会保障費というのは一七、八%ぐらいかな、ちょっと正確にはわかりませんが、その社会保障費というのが一八%抜けるということは、むしろ一般財源弾力性を持たせるのではないか、そう思うんですが、大臣いかがでございましょうか。
  20. 薄井信明

    薄井政府委員 委員が御指摘になったような考え方は十分議論としてございまして、消費税を導入するときにも、どちらかといいますと、私ども政府に対して、はっきりした目的税にすればもっと国民はわかるのにということを言われたことを記憶しております。  ただ、私どもといたしましては、委員が最初に御指摘になりましたように、直接的にリンクするような目的税にしてしまうことはかえって福祉財源を制約することにもなりかねませんし、できる限りそこは自由度を持っていた方がいい。ただし、先ほど来の御指摘のように、これからの財政需要、かなりの部分が福祉あるいは高齢化対応の財政需要であることは間違いありませんから、その点については私ども、きちっとわかりやすくしていく必要があろうと思っております。
  21. 吉田公一

    吉田(公)委員 次に、土地バブルを招いた一つの原因に国土法があるのではないか、私はそう思って、たしか国会でも質問したことがありますけれどもつまり国土法によります監視区域をセットしたわけですね。昭和六十二年十一月一日に全域、それでまた改正をいたしました。平成七年一月一日に解除したんですけれども、土地バブルのときには私、東京の都会議員をやっておりまして、つまり、ある一定の平米を超えますと東京都に出す、それ以下のものについては区なり市に提出をいたしまして、この値段で土地を売ってよろしいでしょうかといういわばお伺いを出すわけだ。  それで、土地の高いときには不動産鑑定士なりあるいは直近の売買事例を参考にして、例えばここが坪二百万円で十日前に売買できた。そうすると、今度は、そこの直近が売買されるときには二百五万円です。そうすると、また次の人が土地を買うときには、ことは直近が二百五万円だから、ここは二百十万円です。そうすると、今度は二百十万円が二百十五万円になる。そういうことが実態で行われたわけですよ。  だから私は、国土法の監視区域というのは、むしろ土地の高騰を長引かせた。つまり、土地が欲しい欲しいで、土地が高くなってまいりますね。そのときに、上限価格というのがあるわけだ、上限価格というのが。そうすると、その上限価格が要するに公定取引価格みたいな形になって、上限価格が取引価格になっているわけだ。中にはプラスアルファなんという人がいるわけでしょう。そのぐらいすさまじかったのだ。  だからそういう意味では、国土法で監視区域を設けたことによって、つまり役所が土地の値段を決める、まさに社会主義ではないかと私は言ったのだ。国が土地までも売買取引に口を出して、そしてその取引価格を設定するなんということは、まさに社会主義の最たるものだ、自由主義経済の中で、しかもそれが鎮静化させるならいいけれども、逆に価格が高騰して安定化させてしまったわけだ。その点どうですか。
  22. 大隈満

    ○大隈説明員 御説明申し上げます。  監視区域制度先生指摘のとおり、国土法による、通常は一定の面積規模以上の土地の取引を届け出るということでございますが、監視区域制度をしきました場合には、この届け出対象面積を引き下げる、価格の審査をいたしますということでございます。  それで、この価格を審査いたします場合に、投機的な要素を排除いたしました正常な価格を軸に据えて、その上で一定のアローアンスを見て上限価格を定めるというような形になっておりまして、この価格設定の方法というのはいろいろあるわけでございますけれども、標準地比準法とかあるいは不動産鑑定評価の手法による評価方式、独自評価方式と言っておりますが、いずれにしましても、投機的な要素を排除した正常な価格であるということで、上限価格がバブルを引き起こすような高値をもって設定され、そこに取引の値段が張りついていくということではない、むしろ地価抑制効果を持つ制度であった、こういうふうに認識しております。  もちろん監視区域制度だけではございませんで、土地税制あるいは土地関連融資の規制等々あわせまして、総合的に地価鎮静の効果を果たしてきたというふうに私どもとしては認識しております。
  23. 吉田公一

    吉田(公)委員 もともと、役所の人が土地の取引なんかしたことないのだからわかるわけないのですよ。そうすると、役所の人が判断をするのは何かといえば、バブルのときの値段を判断して要するに上限価格を決めるわけです。つまり、これ以上はだめですよ、この価格以上の売買は認めませんよということで、要するに通知表が返ってくるわけだ。幾ら幾らで最初申請するわけだ。この土地は二百三十万円です、この価格で取引してよろしいでしょうか。そうすると、役所の人から返ってくる、直近の取引状況を見て。その直近の取引状況というのは何かというと、もうバブルの取引状況だから高いに決まっているのだよ。だから、抑える権限なんていうのはもちろんないわけだ。むしろ逆に、直近の取引の高くなった価格をさらに調整して上限価格というのは持ってくる。  ところが、需要と供給だから、つまり供給が多いときは土地なんというのは自動的に下がるわけだ。だけれども需要が多くて供給が少ないときには、何ぼ出したっていいから買いたいわけだ。そのときに上限価格を設けてくれたら、その上限価格は取引価格になってしまう。実態はそうなのだ。我々が知っている範囲の中ではみんなそうだ。  その上限価格を、おろす作用にしてくれればいいよ。こんなのはだめです、高過ぎますと。直近の取引価格については二百万円だったけれども、こんなのはだめですよ、百八十万円ですよといって上限価格を設けてくれるのならいいけれども、そうじゃないのだから。二百万円だとすれば二百五万円ならいいでしょう、こうなるわけだから。だから長引かせてしまったわけだ。価格を下げるなんてどころの騒ぎじゃないでしょう。  だから私は、土地バブルの責任の一端は国土庁にあると思っているのですよ。つまり、上限価格、しかも土地の価格を役所が決める。まさにそういう場当たり的な発想でやった、それが土地の高騰価格を長引かせた。それで、土地が下がったのは国土庁のおかげではないのですよ、国土庁のおかげではない。自然に落ちてしまったのだから、買う人がいないから。それだけの話ですよ。  だから、そういう意味で、今後またいつ土地の高騰があるかどうかわかりませんけれども、しかしこういう、役所が土地の価格に口を出すときには、よほどやらないとそれが要するに葵の紋どころになってしまうのだ。そこで二百万で取引されたら今度はまた次は二百十万、その次は二百二十万ですよ。私は、そういう意味では国土庁に責任があった、そう思っているわけです。  それから、話は飛んで恐縮でありますが、住専処理案の概要について、つまり預金保険機構に五十億円の出資をする、六千八百五十億円のうちの五十億円は運営費に使う。しかし、この運営費こそは母体行に出させるべきではないでしょうかね。何でこんなバブルの後始末の運営費を税金で賄わなければならないのか。まさに自分たちで起こしたことなのですから、運営費は自分たちで捻出させるのが当たり前の話ではないですか。それを税金で運営費を賄って、そして今後、取り立てたとかそういうものについて、人件費だとか事務所の借り入れだとか取り立て費用だとかそういうものに、何で国民税金を充てなければいけないのですかね。まさにこんなものは母体行に負担させるべきではありませんか。いかがですか。
  24. 西村吉正

    ○西村政府委員 御指摘の五十億円は、預金保険機構に対する出資という形になるわけでございますが、これを原資といたしまして、その運用益をもちまして住専処理機構に対する指導等に係る人件費あるいは業務運営費を賄う、こういう性格のものでございます。  母体行は、確かにこの住専の処理に非常に大きな責任もございます。しかしながら、その母体行の負担といたしましては、損失の処理に関しまして、三兆五千億円に上ります債権の全額放棄という限度いっぱいの負担をしてもらう、こういう形で今回の処理案ができているわけでございまして、この仕組み全体を動かすための経費につきましては、国が負担をして、その出資金の運用益でそれを賄っていこう、こういう考え方になっておるわけでございます。
  25. 吉田公一

    吉田(公)委員 この前も私は申し上げましたけれども、例えば東京都の二信組問題、あのときの三百億円も、つまり運営費として金利を一%つけてそれを五%で回して、十五年間で百八十億円のお金を出してもらって、そして返済をしていこうという机上の計算だった。ところが、果たして今の時代に五十億円のお金を出して、これ金利がつくのですか。金利をつけて貸し出してやるのですか。そして、その五十億円をどこかで運用して、その金利でこの預金保険機構の運営費に使うのですか。ただ貸してやるのですか、出してやるのですか、どちらなのですか。
  26. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは出資でございますので、無利子といいますか、無利子のお金として出資をするわけでございます。その五十億円を運用いたしまして、この運用利回りがどれくらいに回るかというのはその時々の金利情勢によるかと存じますが、その運用によって得られた資金をもって人件費等に充てる、こういうことでございます。
  27. 吉田公一

    吉田(公)委員 そうすると、じゃ、運用に充てるその五十億円の金利を何%にセットして、そしてどのぐらい金利が上がってきて、どこへ運用して、だれが運用していくのですか。そして、その運営費が、五十億円つぎ込むことによってどの程度の運用益に、金利として戻ってきて費用として使うわけですから、どのぐらいになるのですか。
  28. 西村吉正

    ○西村政府委員 これを運用いたしますのは、預金保険機構が運用するわけでございます。今までも預金保険機構は、昭和四十六年以来設置されておりますので、他の資金を運用することによって今までの業務の経費を賄ってはきたのでございますが、今回は、住専関係の経費を賄うために五十億円の出資金の運用益を用いる、こういうことでございます。  今想定しておりますのは、年三%相当で運用した場合という考え方を一応とっておりまして、そういたしますと、年間一億五千万円程度の運用益が得られるということになります。これは、人件費及び業務の運営費に充てられるということを考えているわけでございます。
  29. 吉田公一

    吉田(公)委員 局長の揚げ足をとるわけじゃありませんが、大蔵省がスキームをつくった二信組問題の三百億円も、一%、それで五%で貸す。それはまだ実行されていませんけれども、これは三%で運用するとなると、二信組問題のものは五%ですよね。その整合性というのはどうなるのですか。  片っ方には五%で回せと言っておいて、うまくいかないと今度は三%だと言うのですか。同じ大蔵省がスキームを組むわけですから、二信組のことについてはどうですかね、関連してちょっと質問したいのですけれども。片っ方は五%でしょう。今度は三%でしょう。どういうふうになっているのですか。
  30. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは、そのスキームを組まれたときの金利情勢というものもございましょうし、それから、運用をいたします場合にどのような運用方針で臨むかということもあろうかと思います。  二信組のあのスキームが組まれましたのは、一昨年の十二月のことでございます。あの当時の考え方といたしましては、あのようなスキームというものが一般に妥当と考えられたものでございますが、現時点で妥当な利回りということで考えますと、一応年三%相当で想定をしておるわけでございますが、もとよりこれは、未来永劫このような運用益を当てにしていくということではございませんで、金利が上昇いたしました局面ではもっと高い金利で運用できると存じますし、低下いたしますればこのような運用は難しい。このように、金融情勢によって変化をしてまいろうかと考えております。
  31. 吉田公一

    吉田(公)委員 二信組問題は、十年前の話じゃなくて、たしか去年の話ですね。したがって、そう二%も金利が違うなんということは本来あり得ない、こう思っているわけであります。  基本的に、先ほども私は質問申し上げましたように、何で運用資金を国の税金で賄わなきゃいけないのか。何か弱みがあるから、しょうがないから出したのですかね。なければ、母体行に五十億円程度、二十一行で割ったら幾らになるのですかね、そんなもの、利回りの得意中の得意の二十一行、母体行に責任を負わせたらいいじゃないですか。だって自分たちのことでしょう。どうしてこんな運用まで国の税金で賄わなければいけないのですか。何か弱みがあるのですかね。
  32. 西村吉正

    ○西村政府委員 決して弱みということではございませんが、もともと、預金保険機構には国からも出資をいたしまして預金保険機構の従来の業務というものを扱ってきたわけでございます。預金保険機構は、もともと、預金者保護あるいは金融システムの安定という目的のために公共の仕事をするということで設けられているものでございます。今回の住専の処理の仕事も、広く金融システムの安定のために行うものでございますので、その活動に要する経費に関して国が出資をするということは十分妥当性を持ったものだと考えております。
  33. 吉田公一

    吉田(公)委員 次の質問に移りますが、久保大蔵大臣は、低金利政策というのはメリットばかりではない、つまり年金生活者等にとっては低金利政策によって大変デメリットになっているので、何か方法を考えなきゃいけないというお言葉がございましたけれども大臣のお考えの中に、つまり年金生活者のために具体的にどういう対策がおありなのでしょうか。
  34. 久保亘

    久保国務大臣 金利が低下いたしますと、年金生活者等が、預金金利を生活設計の中にしっかり組み込んでおられた方などにとりましては大変打撃を受けるわけでございます。  従来、民間の金融機関におきましても特別な金融商品を発売したりされておりましたが、政府の方といたしましても、四・一五の利回りの福祉定期を出してまいりました。今度、二月の未をもってこれは期限が到来するわけでありますが、さらに一年延長することにしまして、去る二十二日にその通達を出したところであります。  そういう金融商品の問題もございますが、政策的にも、金利で影響を生ずる層の方々に対して政策的な、金利の低下を補うものをどのように考えていくかというようなことは、特に福祉政策の予算等の中で検討されてきたと考えております。
  35. 吉田公一

    吉田(公)委員 預金をしてその金利に分離課税がかかっているわけですが、たしか現行では二〇%ですね。国税が一五%、住民税地方税が五%。その分離課税を、例えば二〇%を一〇%にしてあげるとか、あるいは五%にしてやるとか、そういう具体的な方法はとれないものでしょうかね。
  36. 薄井信明

    薄井政府委員 利子所得につきましては、前回の抜本的な税制改革のときに、長年悩んできた利子課税に対する方式を一つの結論を得たわけでございますが、それは、現在の所得把握体制、納番がないというこの状況のもとで実質的な公平を図らなくちやいけないということ、それから、大量といいますか、たくさん出てくる利子というものをどう考えるかというようなこと、さらには経済活動に対する中立性、そんなことから分離課税が一番適当であろうということで、じゃその税率をどうするかということを決めました。その数字が、御指摘のように国一五%、地方五%、合計二〇%になっております。  御指摘のように二〇%というのは比例でございますから、利子が下がると税金も下がるようになっております。したがいまして、これをさらに下げるということは考えにくいということを御理解いただきたいと思います。
  37. 吉田公一

    吉田(公)委員 しかし、大蔵大臣がそう思われて、そうしなきゃならないという政治的な発言があるわけですから、事務当局としてはその意を体して、ぜひ年金生活者等について具体策をもって救済をしてあげてもらいたい、そう思っているわけであります。  時間もありませんから次に移りますが、国民金融公庫についてお伺いをさせていただきます。  つまり、国民金融公庫というのは最後の金融機関なんですね。普通の銀行や保証協会で断られた人が最後の望みとして駆け込むのが国民金融公庫なんですね。国民金融公庫法の第一条に、「国民金融公庫は、庶民金庫及び恩給金庫の業務を承継し、銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金等の供給を行うことを目的とする。」ということが国民金融公庫法の第一条の「目的」に実は書いてあるわけであります。  しかし、最後のとりでですから、全部の金融機関で断られて、もうとにかく国民金融公庫しかないと、国民金融公庫へ行って助けてもらわなければ後は倒産をするか夜逃げをするか遺書を残すか、それをポケットに入れて国民金融公庫へ最後のお願いで頼みに行く。ところが、その国民金融公庫が、第一条の「目的」に合っているような貸し方をしているかどうかということについて、まず御答弁をいただきたいと思うのです。
  38. 齊藤高志

    ○齊藤説明員 国民金融公庫の融資面を担当しております斎藤でございます。  ただいまの先生の御指摘にお答えさせていただきます。  おっしゃいますとおり、私どもの融資の大宗を占めておりますのは、中小企業、とりわけ小規模層でございまして、担保力等、いわゆる民間の金融機関からの資金の調達能力が総体的に乏しいという層が大多数でございます。  したがいまして、私どもの融資につきましては、そういった面を十分念頭に置きまして、かつ金融という観点から、個々の資金の入り用等を十分吟味いたしまして、極力役立つような前向きな姿勢で融資をしているつもりでございます。
  39. 吉田公一

    吉田(公)委員 バブルの崩壊で実際迷惑しているのは国民と中小零細企業でありますが、倒産件数も非常にふえている。政府は明るい見通しができたなんていったって、いまだに失業者二百万以上、第一、高等学校を卒業してまだ就職ができない人が七万人いる、そういう状況でありますから、これから中小企業の運営についてはますます厳しくなるわけでありますね。しかも、五年間で六十兆円というお金景気対策に出しているわけだ。  問題は、倒産をするから貸さない、要するに審査を厳しくする。それは、金融機関として審査が厳しいということはよくわかるんですけれども、しかし、中小企業、零細企業が最後に飛び込む、要するに人助け寺みたいなものだよ。駆け込み寺みたいなものだから、やはり具体的には、保証協会や都市の金融機関みたいなことを言っていたのでは、第一条の「目的」にも合わないわけだ。  要するに、貸し倒れ率というものをできるだけ圧縮しよう、少なくしようと思うからそういうことになるわけで、要するに厳しい貸し出しをしろ。これは、銀行局長の通達で、「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」は、「取立て行為の規制」の中で、「法律上支払義務のない者に対し、支払請求をしたり、必要以上に取立てへの協力を要求したりしてはならない」と明記しているんだけれども国民金融公庫の何か内部資料があるようでありますが、この銀行局長通達に抵触しているのではないかというようなことが言われているわけですね。  そういう点は、景気対策だと思えばいいわけだから、六十兆円のお金景気対策に使っているんだから、中小企業、零細企業の育成を助けてやるためには、多少の危険率があってもやむを得ないんじゃないでしょうかね。それが国民金融公庫だと思う。  しかも、景気対策に六十兆円も使っているわけだから、一兆円や二兆円の赤字が出たって、そんなの中小企業が育成して元気になって頑張れば税収入も上がってくるし、日本経済も活性化していくんだから、どこかに中小零細企業の抜け道をつくっておいてあげないと、もう行きどころがない。最後はサラ金しかない、国民金融公庫の次にはサラ金しかないということですよ。だから大蔵当局も、国民金融公庫については、貸し倒れ率を厳しくやるというようなことでなくて、景気対策の一環としてこれから融資をしてもらいたいと思うのですね。  つまり、国民金融公庫は延滞率二・二%である。国民金融公庫では、元金、利息、いずれでも三カ月以上延滞すると延滞債権と呼ぶ。つまりチェックされるわけだ。ところが銀行は六カ月だというんですよ。銀行のように六カ月以上たたないと延滞債権として見ないということになれば、わずか一・九%でしかない、この数字が。だから銀行よりずっと貸し倒れが少ない。バブル以前の銀行も、少なくとも公表された限りでは一%以下だった、こういうんですね。国民金融公庫が異常なのではなくて、バブルに踊った銀行経営者が異常だった。  国民金融公庫はなぜバブルに狂うことがなかったのかといえば、それはつまり、公庫の取引相手がバブルの恩恵に浴さない零細企業であったから今の都市銀行みたいな被害に遭わなかったということなんですね。  そのこと自体は大変結構なことなんで、ぜひ国民金融公庫、最後の——私どもによく助けてくれませんかと来るわけだ。だけど、助けてくださいといったって、自分でお金を貸してあげるわけにいかないし、結局、銀行に行ったって最初からだめで我々のところへ相談に見えるわけで、私たちだって何とかしてこの人たちも助けてあげたいと思うから依頼されるわけだけれども、ぜひひとつ、三カ月たまったらもうだめだ、おまえのところはチェックするぞというのではなくて、つまり景気対策の一環として、中小企業が活性化しなければいずれにしたって税収入だって上がらないわけだから、そういう意味でぜひひとつお願いをしたい、こう思っております。  もう一つは、今度住専問題で無税償却というのがあるわけですけれども、無税償却ということは、例えば百億円の担保物件だった、ところが今三十億円になっちゃって、七十億円というものは赤字になっちゃった。そうすると、七十億円というものを銀行は無税償却できる。三十億だけ確保した。だけれども、不良債権が七十億円残ってい るんだけれども、これを無税償却しちゃった。  ところが、無税償却をしても、銀行が今度は、住専の先の建設業界やマンション業者や不動産屋さんにお金を貸しているわけだから、その回収債権というのは全部銀行が持っているわけだよ。だから、政府や何かには、いや私どもは七十億円無税償却しましたなんといったって、今度は住専から先の取り立てを銀行ができることになっているわけだ。あの会社は徹底して取り立ててやろう、この会社も徹底して取り立ててやろうと。七十億円の債権回収権というものは銀行が持っているわけでしょう。  そうすると、住専から先の、お金を借りた建設業でも何でも、それじゃ、ひとつ倒産をしなければ償却にならないということになってしまうんですけれども、その点、七十億円の無税償却だけで終わらせていいものかどうか、最後に御答弁をいただきたいと思うんです。
  40. 西村吉正

    ○西村政府委員 私、御質問の趣旨をあるいは取り違えているのかもしれませんけれども、銀行が住専に対して貸し出したものの権利を放棄するというのが今回の住専処理策でございますが、しからばその債権はどうなるか。従来、例えば不動産業者が借りていた債権はどうなるか。これは、新たに設けられます住専処理機構がその債権を引き継ぎまして、決してそれを免責するわけではなくて、以前と同じような額面の債権を取り立てる、こういうことになるわけでございます。  なかなか、それがうまくいくかどうかということで、今回債権の放棄をしていただいて、仮に損失が生じても大丈夫なようにという手当てをしたわけでございますが、うまくそれを回収できた場合には、例えば、今回六千八百億円という財政措置をお願いしておるわけでございますけれども、そういうものを出さなくて、出したものがもう一度国庫に還流してくるような措置を講ずる、このようにしておるわけでございますので、決して債権放棄をした銀行に戻ってくるという仕組みになっておるわけではございません。  なお、恐縮でございますが……
  41. 久間章生

    久間委員長 簡明にお願いします。
  42. 西村吉正

    ○西村政府委員 先ほど大臣福祉定期で政策的と申し上げましたのは、あくまでも民間の金融機関が自主的に行うものでございますが、政策的に環境を整える、こういう趣旨でございます。
  43. 吉田公一

    吉田(公)委員 終わります。
  44. 久間章生

    久間委員長 次に、中村時広君。
  45. 中村時広

    中村(時)委員 新進党の中村時広でございます。先週に引き続きまして質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  きょうは、御提案されております租税特別措置法の一部を改正する法律案を中心にお伺いをし、後半は先週の続き、住専問題についてお伺いをいたしたいと思いますので御答弁のほどよろしくお願いをいたします。  今回、租税特別措置法だけではなくて全般的な税制改革を眺めてみますと、高齢化社会を本格的に迎えるに当たってどのような税制であるべきかとか、外国との比較において若干割高であると言われている法人課税とか資産課税の問題、こういうふうなところの本質まで切り込んでいる段階ではないなという印象を持っております。それはあらしの前の静けさなのかもしれませんけれども、今回の内容というのは、それを見ただけでは、どちらかといえば景気という問題に配慮して土地税制にいわば集中した、こんなふうな印象を持っております。  そういう観点から、提案されております内容に触れていきたいと思いますけれども、今申し上げました土地税制、まずこの中から地価税の問題についてお伺いをしていきたいと思います。  もともとこの地価税は、九一年の税制改正のときに、いわば土地に対する課税の適正とか公平の確保、こういったことを観点にしまして制定されました土地基本法の理念に基づいて生まれてきたというふうに理解をしております。それは、言いかえれば、当時土地投機によって非常に土地の値段が急上昇をしていった。そういった投機を目的とした土地保有の有利性をなくそう、こういうふうな観点であったと思いますし、もっと端的に言えば、保有コストは上げてしまって、土地神話はともかくぶつつぶせ、こういうところから誕生した経緯があったのではないかと思いますが、まずその導入の経緯を確認しておきたいと思います。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  46. 薄井信明

    薄井政府委員 平成に入りまして土地問題が非常に大きな政策課題になりました。御指摘のように平成元年十二月に土地基本法ができまして、土地を考える際の憲法のようなものができたわけです。これに基づいて、土地というのは公共のものという考え方が世の中にはっきりし、そういった中で土地政策が展開されたわけです。  当時、税の世界から申し上げますと、税制だけで対応できる世界ではないという気持ちを持っておりましたが、土地基本法というものの中で土地税制の位置づけもされたものですから、私ども平成三年から土地税制を展開しております中で地価税というのが入ってくるわけでございます。  おっしゃるように、それまでの土地税制の反省に立って、保有に対する課税があの当時のようなものでいいのかどうか、現在では固定資産税は非常に改善されてきておりますけれども、当時いろいろ問題があるという指摘がありました。保有課税をきちっとしていくということは、土地を持っていたらほかの資産を持っているより絶対得である、こういう意味での土地神話をなくしていくには有効であるという考え方で創設したものでございます。
  47. 中村時広

    中村(時)委員 そういう導入の経緯があったわけでありますが、今回政府の御提案では、〇・三%であった地価税率を〇・一五%に引き下げる、このような提案をなされております。まず、その税率云々に入る前に、この税引き下げの明確な目的というものをお教えいただきたいのです。  新聞なんかを見ていますと、その議論の最中に、例えば土地の取引を活性化するためだというような意見もあったようでありますが、これは当初の経緯からすれば誤った認識ではなかろうかと思います。いわば、土地取引活性化、流動化を図っていくとするなれば、当然これは保有コストを上げて流通税というものを下げる、これによってインセンティブが働くはずであります。  ですから、そういう話ではなくて、やはり今回は景気対策景気低迷で業績が悪化している産業界から大変要望が強かったはずなのです。特に、課税対象が特定されていますから、その対象である産業界からの要望というのが非常に強かった。要は、景気が悪いから税金まけてくれ、こういう声があったがゆえに景気対策の一環としてこの税率引き下げというものにつながったのだというふうに思えるのですが、その点いかがでありましょうか。
  48. 薄井信明

    薄井政府委員 確かに、地価税を納めておられる企業にとっては、この不況の中、地価税負担というものが重荷になるという声があることは事実でございます。また、あったことも事実でございます。  ただ、私ども税制を担当するサイドからは、平成四年にスタートした地価税ですが、この法律には少なくとも五年以内に固定資産税との関係で負担を見直すということをたしか附則で書いていただいております。ちょうど足かけ五年になるわけでございまして、その間に、先ほどちょっと触れましたもう一つの保有課税である固定資産税がいろいろな意味で変わってきました。率直に申し上げて、負担は当時に比べて重くなってきております。その保有課税の状況が変わってきたということ。さらにもう一点申し上げますと、土地をめぐる状況が、地価が極端に上がったものが戻ってきているという面も含めて、法人の土地を持つことによる含み益とかいろいろなものに影響して状況が変わってきている。こういったものを勘案いたしまして今回手当てをしたということでございます。
  49. 中村時広

    中村(時)委員 今の御答弁の中に、保有課税の状況が変わってきた、あるいは固定資産税の改善 もあったというような内容が含まれておりましたので、この点、固定資産税との絡みの中でちょっとお伺いしていきたいと思います。  地価税導入前、税調は当初、固定資産税というものは行政サービスに対する対価、応益税だ、こういう認識をとられていたものと記憶しております。ただ、それに対しましては、当時自治省が、いや、それは違うのです、固定資産税には保有税という性格も含まれているのだ、こういう主張をされたわけですね。それを受けまして税調は、保有税というキャラクターがあるのであれば、その当時、これは北海道から沖縄まで、地域によって違いというものはあったと思いますけれども、当時の課税標準ですか、これは平均すると大体公示価格の二割ぐらいだったと思うのですけれども、保有税のキャラクターがあるのであればこの水準では幾ら何でもだよ、こういうことを打診したということを何かの記事で読んだことがあります。それに対して、保有税の性格は認めつつも、そういう課税標準の引き上げというものはちょっと応じられません、これが自治省の回答だったわけですね。  それで、税調はそれを受けまして、それだったらもうほかにつくるしかない。本来だったら固定資産税の課税標準を上げれば地価税的な役割も担わすことができると思っていたのだけれども、それを自治省が受けないので、それだったらしょうがない、地価税をつくろう、こういうような形で誕生してきたのではないかと自分は思っております。  すなわち、最初は固定資産税の課税標準を引き上げて保有コストを上げて、それで土地政策、地価政策を検討していこう、こういうふうな考え方があったと思うのですね。それが、自治省の難色によって地価税が誕生する、こういう経緯だというふうに理解しております。  ところが、地価税が成立いたしますと、突如として自治省は方針を変えていますよね。いわば一片の通達なるものをもって、難色を示していたはずのこの課税標準の引き上げを行ったわけですよね。公示価格の七割というふうな通達を、一通の通達でもってこれをやってしまったわけであります。そのことによって非常に税負担が急増しましたから、その後さまざまな負担調整措置なんかやっているようですけれども、逆にそんなことをやっているからもともとの理念であるとか哲学というものががらがらと音を立てて崩れていったのではないだろうか、そんなふうな感想を持っております。  すなわち、これは市町村税と国税の違いがありますけれども、役所間の縄張り争いのとばっちりが納税者にも来ているという観点もありますし、だからこそ、これは二重課税なのじゃないかというような声も起こってくる。だから、もともと地価税が誕生した最初の条件であった固定資産税の課税標準の低さ、こういったものは解消されておりますので、何かこの理念というものが、このまま存続していくことがどうなのかな、そんなふうな感想を私自身は持っております。ただ、だからといって、今すぐにこれを廃止して固定資産税に保有課税の性格すべてを負わせていくということにもちょっと無理があるというのは十分理解しております。  いろいろな問題があると思うのですね。例えば固定資産税の場合は、三年に一度の評価がえでありますから、一筆一筆調べていくという作業があるのでそのぐらいの期間でないとできない。これだけ地価の変動が激しいときに三年に一度の評価がえというのが果たして正しいのかどうかという議論もこれから詰めていかなくちゃならないだろうし、あるいは公示価格を使うこと自体が、バブルの値段も入っているわけですから果たして適正なのか。それ以外の物差しというのがあるかもしれない。そんな議論もこれから積み上げていく過程において、この問題というのはいずれけりをつけていかなくちゃいけないのだろうと思っております。  今我々が立たされているのはその前の段階でありますから、そこから、私の気持ちといたしましては、地価税の廃止というものには踏み込めない、だからそれは残す。しかし、景気対策という側面が、先ほど全部とは言われませんでしたけれども、いささかはある。ということであるならば、ゼロ税率というのがファイナルな回答、凍結、ゼロ税率が正しい回答ではないか。これは前回も新進党の方からも提出しておりますけれども、そこに着地させるべきではないだろうかというふうに思いますが、いかがでありましょうか。
  50. 薄井信明

    薄井政府委員 今御指摘ありました固定資産税と地価税の性格論、これは非常に大切な問題だと私ども思っております。  昨年秋から年末にかけての政府税調でもかなりこの点は時間をかけて議論をいたしました。その議論の内容が税調答申として残っております。この答申について私ここで触れるつもりはありませんが、御指摘のような点を含めて、保有課税の性格論、あり方については今後ともきちっと議論していく必要があろうかと思っております。  ただ、固定資産税あるいは地価税の両方を加えた保有課税というものが日本においてどの水準にあるかということを考えたときに、これも御指摘ありましたように、まだ固定資産税については相当の調整をしている実態にある中では不十分な状況にあろうかと思います。そういう意味で、固定資産税、地価税の存在というのはそれぞれ存在意義を持っていると私考えております。  平成二年の土地税制の議論のときには、さっき御指摘のような固定資産税の性格論を行政サービスとの間の受益の関係で説明しておる面もあるし、一方、地価税につきましては資産価格、資産価値に応じた負担ということを求める税だということで、両税が存在することは説明されていると考えております。  最後に御質問ありましたが、存在は認めるが、景気対策ならばゼロ税率もあるのではないかということですが、ただいま申し上げましたように、両税の現状を見たときに、〇・三%を下げる必要はあっても、これを半分以下にするまでに保有課税を下げることは、平成二年の土地税制の議論を踏まえて考えたときに、それは適当ではないと考えております。
  51. 中村時広

    中村(時)委員 半分という言葉をいみじくも使われましたけれども、そこまでは無理というのだったら、本来だったら二という数字が最初に出てくるのじゃないかな。すなわち、途中から〇・二から〇・三に上がっているわけですから、それだと何となく理屈は通るのだけれども、半分ということになると、やはり利害関係者の足して二で割る回答かな、その結果として出てきたと言わざるを得ないというような感想を私は持っております。  いずれにいたしましても、この点については、私の主張といたしましては、今言ったような、概念は残しゼロ税率、これが正しい回答であるということを重ねて強調させていただきたいと思います。  保有課税の問題については、今後ともこの委員会あるいはいろいろな場において真摯な議論を続けて結論を見ていただきますように御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、保有税の次は流通税の方に入ります。  譲渡益課税でありますが、これは内容的には景気動向を考えるといいのですけれども、遅きに失した。昨年我が党が提出したときに、なぜそうした措置に賛同いただけなかったのだろうか、そういう思いを率直に持っております。  ただ、ちょっと細かいことで最初恐縮なんですが、優良住宅地の造成などのために土地などを譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の問題でありますけれども、基本的にこれは今まである特例を適用期限五年間延長するというふうな内容と、もう一点は、今までは一律であったものを四千万円超については一五%から二〇%に上げる、こういうような提案となっております。  土地の流動化というものを目的に今回のような措置をなされたというふうな観点に立つならば、 あえてこの四千万超に触れる必要は僕はなかったのではないかな。今までどおり、現行のとおり五年間延長すればいいのではなかったかなというふうに思うのですが、いかがでありましょうか。
  52. 薄井信明

    薄井政府委員 譲渡益課税の問題につきましても、やはり平成二年の秋の議論を忘れてはいけないと思っております。  あのときの議論は、土地の譲渡に対しても適正な負担を求めていくことが必要である、ただし、有効利用される部分についてはめり張りをつけて安くしたらいいではないかということで、平成三年からは、一般の譲渡につきましては三九%にしたのに対して、優良な譲渡につきましてはそれまで二六%であったものを二〇%にした、こういう経緯を踏まえております。その後、平成七年そして今回の改正で、あの平成二年の考え方を生かしつつ、土地をめぐる状況の変化を踏まえてどう直すかということを議論したものでございます。  そういう意味では、優良の譲渡につきましてはかつては二六%であったということは一つの重要なポイントであろうかと思います。一方、三九%も残っております。であるならば、平成三年の二〇%も逆に残しておくという考え方が二段階になったということでございまして、二六を加えたというよりは、かつての二六%にめり張りをつけるという意味の二〇%が加わったというふうに考えているところでございます。
  53. 中村時広

    中村(時)委員 片方は戻したから片方も戻そうというバランス論だと思うのですけれども、今回の場合、ちょっと経済状況経済状況でありますから、土地の流動化を徹底的にできることはやっていくのだという観点に立つならば、ちょっと余計なことなんじゃないかなというふうな気がいたしております。これは見解の相違でありますけれども、この点についても四千万超の部分を二〇にあえてするということにはちょっと私同意しかねるなというふうな思いでおりますことを申し上げておきたいと思います。  それと、譲渡益課税からはちょっと外れるのですけれども、土地の流動化ということに関連いたしまして、事業用資産の買いかえ特例の問題について、ちょっとお伺いしておきたいと思います。  これは、昨年、それまでに認めていた圧縮記帳八〇%の比率を、既にもうやった人とこれからやる人との間に差をつけなくちゃねというような理由で六〇%に引き下げた経緯がございます。しかしながら、これは関係者に聞きましても、大変流動化促進要因になる、またバブルの見直しのときにも、これがある意味では土地の流動化を促したインセンティブになったのではないかというような議論もありましたし、一つの有効な手だてであることは間違いないと思っております。  そこで、今なおその流動化、これが叫び続けられて何年もたつのですけれども、目に見えた実績というものが上がってきていない状況でありますから、私は、できることは全部やってしまえというふうな観点に立つべきだろうというふうに思うのですね。  そこで、昨年六〇%に戻されましたけれども、逆にこの部分については八〇%の圧縮記帳を認める方向に戻されたらいかがでありましょうかということを申し上げたいと思うのですが、御回答をお願いいたします。
  54. 薄井信明

    薄井政府委員 事業用資産の買いかえ特例の圧縮割合につきましては、平成三年以降、大きな流れができているわけでございまして、平成三年に、まさに土地税制改革の際に、法人が土地を、必要もなくというわけにはいかないんでしょうけれども、実用に向けるためだけでなく、土地を持っていればいずれ困ったときにそれを処分すればいいんだという安易な保有がバブルの一因にもなっているのではないかという反省から、平成三年の改正によりまして、平成四年以降、圧縮割合ゼロというところまでいったわけでございます。  ただ、その後、行き過ぎていたのではないかということから、例えば法律に基づく構造改善等でどうしてもその土地を資産にかえなければいけない、減価償却資産にかえなければいけない人までも巻き込まれるのはおかしいというような政策的意図で六〇%というのが復活した、ゼロから六〇に戻ったという過程にあります。また、その後、経済対策景気対策ということや種々の理由から八〇%、さらには去年の、今御指摘の、原則的なものとしては六〇にし、中小リストラとか事業革新については八〇のまま残すといったことで一応の安定した形に立ち至ったというふうに考えております。  一方、土地から土地へ資産を移す場合には、これは国土計画といいますか、国土をどう利用するかという政策的観点がありますが、今の土地から減価償却資産につきましては、平成二年の秋の議論、これを基本的には踏まえながら、実情に応じて現状の姿に立ち至ったということを尊重してまいることが必要かと思っております。
  55. 中村時広

    中村(時)委員 いみじくも経済対策等、等ですけれどもね、そういう目的のためにこれを復活させたということはお認めになったわけであります。だから、今それをやるときだという認識に立つのであれば、八〇%、これはいずれ払われる税金でありますから、そういう観点に立つならば認めてもいいんじゃないかなというふうに思います。  この点についても、昨年、新進党の方としては法案提出いたしましたけれども、重ねてこの姿勢は、私は全く変わりない、八〇%にすべきであるというふうなことが土地の流動化にもつながるということを確信しておるということで要望をいたしておきたいと思います。  その他、租税特別措置法の中に、もう一つお聞きしたいのが、今回の新設・拡充措置の中に、ストックオプションに係る課税の繰り延べ、こういう特例を設けられようとしております。これは、特定新規事業実施円滑化臨時措置法の一部改正に基づいていわゆるストックオプション制度が創設された、それに伴って設ける特例でありますが、要はベンチャー企業であります。ベンチャー企業の人材を集めよう、そういう目的でこうした制度というものに踏み込んでいかれたと思うわけであります。  経済の構造改革等々、これは重大な政策目標になってまいりますけれども、その中でベンチャー企業が果たしていく役割というのは極めて大きい。そういう観点に立つならば、そのスタートの時点で有能な人材を集めることはなかなか難しいわけでありまして、こういう制度を設けたことによって、いわば成功報酬ですよね、会社が大きくなったら株にかえてお金が入ってくるよ、こういうインセンティブを与えることによって有能な人材を集めよう、こういう意図があると思うわけであります。その点ちょっと、いかがですか。
  56. 薄井信明

    薄井政府委員 いわゆるストックオプション、外国で行われているものは別として、我が国で現在ストックオプションと言われているものは、会社の取締役や使用人に対して付与される、将来一定の価格で一定の期間内に自社株を購入できる権利ということでございまして、このシステムは、昨年十一月の法改正によって国会でもお認めいただいたものでございます。  今委員指摘のような政策的な観点からこの制度が昨年つくられた。その内容は、いわゆる商法の特別法としての位置づけとしてつくられたのかと思いますが、これを税制面からも支援するということで今回の提案をさせていただいております。  ただ、これが余り安易に流れますと、税ですから不公平な制度になりかねません。そういう意味では、税制面からもかなりその辺は注意をしまして今回の提案とさせていただいております。
  57. 中村時広

    中村(時)委員 このベンチャー企業育成ということにつきまして、もう一つお伺いしておきたいのですけれども、こうした企業が飛躍的に発展していくためには、まず会社そのものに技術であるとかノウハウであるとか、こうしたものがなくてはならない、これが一つのエネルギー源であります。ところが、それを事業ベースに乗せていくためには、次に人が要る。それで、この制度によっ て一つのインセンティブができました。  いま一つ欠けているものが資金であります。この点の問題につきましては、きょうも予算委員会でちらっと出ていたようでありますけれども我が国の店頭登録市場、こうしたものの育成というものが図られていかなければ、なかなかその資金の調達という面での弱点というものが埋め合わされることはないのではないだろうかというふうに思います。  せっかくここでベンチャー企業を育成しようというふうな方向が出てきておるわけでありますから、大蔵大臣、店頭登録株式市場、この育成については積極的に取り組まれるお考えをお持ちなのかどうか、その点だけ、まずその点だけでいいです。積極的に取り組んでいくのかどうか。
  58. 長野厖士

    ○長野政府委員 店頭市場の今後の発展につきましては、いろいろな問題点があることは事実でございますけれども、基本的な姿勢のお尋ねでございましたら、積極的に取り組んでいかなければならない課題だと存じております。
  59. 中村時広

    中村(時)委員 それで、まずこの店頭登録市場、やはり一番の根本的な阻害要因というのは何かなというのを探っていきますと、一九八三年ぐらいですか八四年ですか、審議会の報告で、店頭市場は補完的役割を担わせる、こういうふうな文言が明記された報告書があるやに聞いているのですよ。  ところが、アメリカなんかは非常に、店頭登録市場に相当するのはNASDAQでありますけれども、このNASDAQ市場というのは、補完的な役割ではなくて、一般取引所とは競合的な関係、上下じゃなくて競争関係、こういうような位置づけで育成が図られている。  例えば、NASDAQ市場なんというのは二十四時間機能しているわけでありますし、大変ハイリスク・ハイリターンな市場とはいえ、非常に一つの独立した市場として認知をされ、育成が図られている、そこからベンチャー的な企業が資金を調達していく、これが育成につながる、こういう効果があらわれているわけですね。  だから、最初の段階で補完的な役割、こういう位置づけでは、その意気込みも空振りに終わってしまう懸念があるわけでありまして、ここの部分はやはり方針を変えて、独立した市場として育成していくんだという方向に変えていくべきではなかろうかと思うのですが、いかがでありましょうか。
  60. 長野厖士

    ○長野政府委員 御指摘いただきました証取審の報告が出された時期は昭和五十八年でございます。以来の数字をちょっと申し上げて恐縮でございますけれども、今日、登録会社数では六倍になり、時価総額では二十倍になり、一日平均の売買代金は百倍になりました。この一日平均の売買代金は東証の二都市場を上回る規模になってきております。  補完的という言葉はさまざまな意味にとれる言葉であろうと思いますけれども、当時の店頭市場を前提としていろいろ御議論があったことは事実であろうと思います。その後、私どもは、例えばインサイダー規制も店頭市場に適用するとか、そのかわりに登録基準について緩和していくとか、いろいろなことをやってまいりました。  そのやってまいりましたことは、私どもは、ひょっとすると五十八年の証取審の言葉の範囲を、逸脱してというのは言葉が過ぎるかもしれませんけれども、決して上下だとか、なるたけ発達しない方が望ましいんだという位置づけでない位置づけで今日まで来たように存じておりますし、今後とも、それが上下という意味合いではない。ただし、取引所取引は一般的な、基幹的な産業のものでありますけれども、店頭市場というのは、いずれかといえば中堅、中小企業のための、まさに先生が御指摘になっておられるような資金調達の場という特性は残ると思いますから、その特性を生かしながらこの二つの市場がいかに相補っていくかという意味で補完という言葉をこれからとらえていくべきかなと考えております。
  61. 中村時広

    中村(時)委員 できれば、その補完という言葉は使っていただきたぐないなというふうな感想を持っております。  今、昔と比べて何倍、何倍、何倍というお話がありました。もとが低ければその倍数というのは高くなるということでありますから、私はちょっと、その倍数であらわされた数字をそのまま受けとめることはできないのですけれども、はっきり申し上げまして、今の日本の店頭登録市場というのは、投資家から見たら余り魅力のある市場ではない、そんな気がするのですよ。流動性という面において、土地じゃないですけれども、大変弱いなという気がする。  技術的にはいろいろな問題があると思うのですね。例えば、新規の会社が公開しようとしたときに、日本の場合は現在は入札制度でやっていますよね。だから、登録されて公開された日はばかんと値段が上がるのですよ。それから急激にずどんと落ちて閑散としていくという、この繰り返しのような状況が出ていますよね。  たしか通産省か何かで一時研究していたデータを見たことがあるのですが、こういう入札方式ではなくて、例えば、ブックビルド方式という言葉を使っていましたけれども、いわば幹事証券会社が企業を全部調べて、投資家からも意見聴取をして、それで適正な価格を決める、だからスタートの時点が極めて適正な価格で公開される、それによって継続性を出していこう、こういう試みもおもしろいのじゃないかという提案も見たことがあります。  あるいは、NASDAQなんかになりますと、これはリスクも大変あるのですが、売り気配が出てきたときに、証券会社というのは、たしか五%ぐらいの上下の範囲の中で、買い気配、買いの対象を探していかなければいけないという義務を負うような制度になっていたはずなんですよ。向こうでマーケットメークと言っていますけれども、売り気配が出てきたら必ず証券会社が買いを探してくる、こういうことが義務づけられている。ところが、日本の場合は、売り気配が出てきても、ああそうですがですっと終わっていってしまう。これは大きな違いがあると思うのですね。だから、そのあたり、やはり随分研究していく余地がある。  いわば一般の市場とは競争する、補完的な市場じゃなくて競争する、そして中小、ベンチャーの資金調達の市場として育成していくということであるならば、そうした流動性の問題というのは、もっと急いで踏み込んで研究、実施をしていく必要があると思うのですが、いかがでありましょうか。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 長野厖士

    ○長野政府委員 二、三具体的な御提言をちょうだいいたしました。  公開価格の決定の問題につきましては、一つども経緯がございますのは、現在の入札という公開価格の決定方式は、リクルート事件というものを挟みまして、その発行企業にとっての資金調達の便宜、あるいは一部投資家にとっての便宜という面だけではなくて、やはり公正な価格形成ということがより重要ではないかという判断からとられた経緯がございます。そういった経緯をどう踏まえるかという問題がございます。  ただし、昨年から取り組んでおります特則市場におきましては、御指摘のブックビルディングというやり方も取り入れておりますので、そういったものが、そういった公平さ、公正さというものとの兼ね合いでたえ得るものかどうかという検証はこれからできると思いますから、そういったことも踏まえて今後検討してまいりたいと思います。  それから、マーケットメーク機能につきましても、これは大変検討課題であろうと思います。  日本ではそれが十分に整っておりません背景には、もう先生御承知のとおりだと思いますけれども、いろいろな問題がございます。証券会社が気配を出して、買うなり売るなり必ず対応するというためには、証券会社がそれを借り株といった形で例えば手に入れるという仕掛けがございません と、ごく限られた株式でございますと、借り株のうまくワークしないそういったマーケットというのは、極端な例で申し上げますと、仕手株のばっこするばくち場になりかねないといったような問題がございましたから、そういった仕組みが、借り株みたいなものが現実にこういった小さな企業の問題のときにでき得るのかどうかというような問題がございますけれども、現在、証券業協会の中にワーキンググループを設けまして、それらの問題も含めて改善の余地がないかということを研究しておるところでございまして、その成果を期待して待っておるところでございます。
  63. 中村時広

    中村(時)委員 大蔵大臣、今の店頭公開市場、これはベンチャー企業育成にもつながってまいりますので、どうか積極的に検討して、育成していくというような方向で臨んでいただきたいと思うのですが、一言で構いませんので御見解をお述べいただけませんでしょうか。
  64. 久保亘

    久保国務大臣 先ほど予算委員会でも同じような御質問がございまして、私の考えを申し上げておきましたが、新たな資金調達の場としてその機能が考えられているんだと思っておりまして、そういう意味で、店頭市場が整備されていくことを進めるべきであろうと思っております。
  65. 中村時広

    中村(時)委員 それでは、時間も三分の二使ってしまいましたので、先週の続きになりますが、住専問題について若干お伺いしていきたいと思います。  まず、基本的で非常に初歩的な話なんですが、先週から今日に至るまで、特別何があったのかなというのを振り返ってみると、あいなかに公聴会がございました。  公聴会は、もうこれは御存じのとおり、国会法第五十一条で開催を義務づけられているものでありますし、国民の側から見れば、法案審議に大変影響があるんだ、その審議の参考とするためにきちっと開かれていくものなんだ、その声というのは反映されていくものなんだという認識があるのは常識だろうと思います。  新聞なんかを見ますと、一部政治家の中から、そうじゃないんだ、これは中身よりも日程が問題であって、いわば儀式にすぎないんだという不届きな発言なんかも出てくるのでありますけれども大蔵大臣、この公聴会というものに対してはどういう御認識でいらっしゃいますか。
  66. 久保亘

    久保国務大臣 重要な議案、特に予算案等につきましては、公聴会は義務づけられております。この公聴会における公述人の御意見というのは、私ども予算法案等を審議していく場合に極めて重視しなければならないものと考えております。
  67. 中村時広

    中村(時)委員 当然の考え方だろうと思います。  そこで、そういうふうな認識の上に立って公聴会の各公述人の意見というものを振り返ってみますと、この段階では、かなり政府答弁、質疑等々も進んでいた段階、なおかつ出ていらっしゃった方というのは学識経験者の方ばかりでありますから、それを前提に公述人として予算委員会に来られたというふうに思っております。  合計で十二名の方がいらっしゃったのですが、はっきりと賛成だというふうに言われた方というのは二人、大場さんという方と富田さんという方、二人ぐらいしかいないのですね。あとの十人、そのうちの二人は、禿河さんとか宮尾さんという方は余り住専の問題に触れなかった。残りの八人というのは全員が異口同音にこの問題に触れておりまして、ほとんどが、反対であるとか、国民は納得していない、あるいは今までの説明ではだめだとか、こういうふうな意見になっているわけであります。相撲の星取りでいったら、政府の側からすれば二勝八敗二引き分けというところ。相撲は引き分けはないのですけれども、二勝八敗二引き分け、これが現実だったわけでありますよね。  ということは、先ほど申し上げましたけれども、例えば、ぎりぎりの線とか総合的判断等の抽象的説明ではだめですよとか、こういう具体的な文言を使われている方もおりましたし、与党の推薦で出てこられた方の中にも、出し方であるとかこういったものがはっきりしていない、国民も納得していない、こういう表現で公述をされているわけなんですよ。  だから、少なくともこの公述人の公聴会における議論を真摯に受けとめるとするなれば、例えば六千八百五十億円もそうでしょうし、スキーム全体もそうでしょうし、五千三百億円もそうでしょうし、今までの説明ではだめなんだよ、こういうことになると思うのです。なおかつ、中にはそのものが反対であるという方もいらっしゃる。  今の政府、それをどこまで受けとめるか知りませんけれども、いかがに考えられているのですか。
  68. 久保亘

    久保国務大臣 一つ、私、公述人の公述についていろいろ申し上げるわけではございませんで、誤解なく聞いていただきたいのは、公聴会における公述人は平成年度予算案に意見を述べたものでございます。その中で、今度の予算案の中で問題となって、国会でも審議が続いております、審議の焦点になっております住専の問題についての御意見が多く述べられたと思っております。そういう中で、今御発言がありましたような御意見が述べられたことは、よく承知をいたしております。  公聴会における公述人の公述を経て、今なお、その後集中審議等も続いておりまして、明日からは分科会が開かれることになっております。予算委員会の審議を十分に尽くしていただいた上、国会としてこの案についてお決めいただきたいと思っております。政府としては提案をした立場で、今は、公聴会を含め、国会の御審議をお願いをしている立場でございます。
  69. 中村時広

    中村(時)委員 このままもし無修正で突っ走るとするならば、公聴会は儀式なんだ、無視するんだよ、こういうふうな結果になってしまうのですよ。だから僕は非常に、公聴会そのものが今後ともに形骸化してしまう、そういうふうな分岐点に差しかかっていると言っても過言ではない。このまま突っ走るとするならば、まさに国民の立場に立って出てこられた第三者である公述人の意見は踏みつぶす、こういうふうなことになることは、ぜひともこれは認識をしていただきたいと思います。
  70. 久保亘

    久保国務大臣 それは国会が御判断になることではないでしょうか。公聴会の公述をどのように受けとめるかということは、御審議くださる国会が受けとめられる問題だと思っております。
  71. 中村時広

    中村(時)委員 それはちょっと筋違いだと思いますけれどもね。やはり、政府の提案に対してあれだけの意見を申されたわけですから、私はそれは真摯に受けとめておく必要があるんじゃないかなというふうに思いますよ。まあそれは結果を見させていただきます。  先週質問させていただいた中に無税償却のお話がございました。その中で、系統金融機関も母体行も一般行も、債権放棄分あるいは贈与分全額を損金扱いされる、その物差しというものは法人税の基本通達であるという御答弁をいただきました。それは例の「子会社等」云々の通達のことであります。この点については確認もとらさせていただいております。  私はあのとき、系統金融機関についてちょっと何か釈然としないなと思ったのは、この文章を読む限りにおいてはちょっと無理があるのではないでしょうかね、こういうことを申させていただいたのですが、「子会社等」の「等」というところには、資本関係にある親子関係や、取引関係、人間関係、資金関係などすべて該当するんだ、こういう拡大解釈で適用されるということでありました。  まだここに至っても、債権が全額回収されるのにどうなのかなという疑問を感じてはいたのですが、またまたさらにクエスチョンマークをつけざるを得ない記事を目にしたのです。  今週、二月二十六日の日経新聞、農中の理事長の意見というものが載っております。こういうことを言われているのですね。  親会社が子会社の経営に責任を持ち、子会社の  経営問題が生じた場合には親会社が責任を持つ  て処理する、またはメーンバンクが取引先の業  務遂行に最大限のお世話をすることはわが国の  確固たる商慣習であり、金融慣行である。これ  まで金融機関および事業法人が、その子会社に  つき責任を持って処理した事例は枚挙にいとま  がない。この後なんです。   こうした慣行を踏まえ、税制は法人税法基本  通達で資本的、人的、資金取引などで極めて密  接な関係にある子会社、取引先に支援の必要性  などの理由がある場合には非課税にすることを  認めている。現に母体銀行の住専支援もこれに  よっている。こういう記事が出ているのですよ。  これはすなわち、親銀行の責任なんだよ、そしてそれを証明するためにはこういう通達だってあるし、現にこれが使われているんだよ、こういうところでこの通達が使われたのですね。ということは、自分は関係ないよという話なんですよ。そういうところになぜこの基本通達が適用されるのか、私は全く理解ができないんです。  だれを助けるとか助けないとか、そんな話じゃなくて、解釈をそこまで、自分たちは別にその解釈をしてくれとは言ってないにもかかわらず、いやおたくはこの解釈だと押しつけるというのは、ちょっと無理があるんじゃないでしょうかね。いかがでしょうか。
  72. 内野正昭

    ○内野政府委員 お答えいたします。  今先生が御指摘になられました法人税の基本通達九−四−一というものは、法人が子会社等を整理する場合に、親会社ですとか利害関係者がやむを得ず資金贈与や債権放棄等により行います損失負担は寄附金に該当しない旨を明らかにしているものでございます。  先日も御答弁をさせていただきましたが、この場合の子会社といいますのは一つの例示でございまして、法人にとりましてやむを得ず損失を負担しなければいけないような事業上密接な関係にある相手方を「子会社等」というふうに表現しているものでございまして、資本関係のほか、人的関係、取引関係、資金関係など、密接な関係を有する者がこれに該当することになるわけでございます。したがいまして、単に親会社子会社の関係にないことをもちましてこの取り扱いの対象外にあることにはならないというものでございます。  一般的に子会社等を整理する場合の損失を、だれが、どの程度、どのような形態で負担をするかということにつきましては、その損失規模責任の度合い、分担能力、損失を負担する当事者のそれぞれの立場におきますそれぞれの事情等のさまざまな要素を考慮いたしまして当事者間で決定されるものでございまして、資本関係にない者が損失の一部を負担した場合でありましても、それが社会通念上やむを得ず行われるものである等相当な理由がある場合には寄附金に該当しないものというふうに考えております。  なお、こうした考え方は、従来から金融機関、一般事業法人等、すべての法人に適用されているものでございます。
  73. 中村時広

    中村(時)委員 質問の趣旨と全然違うのです。内容はいいのですよ。それは前もお聞きしたとおりなんです。  私が申し上げたのは、その後、こういう記事が出たわけです。まさにその基本通達を使っているじゃないか、だから銀行は親会社としての責任を負えと、その通達を振りかざして親会社責任、経営者責任を強くうたうわけですよ。だから、それをみずからも使ったということになったら、逆に系統金融機関は後でやられてしまうんじゃないですか。何を言っているんだ、系統だってこれを使ったじゃないかと。これを振りかざして経営責任を母体行に言うんだったら、系統、あなただって使っているんだから同じ穴のムジナだということで、母体行側から逆に系統はやられてしまう可能性があるのですよ。  だから私は、こういう記事が出ているわけですから、それについてどうですかという質問をさせていただいたのですが、いかがでしょうか。
  74. 内野正昭

    ○内野政府委員 先般も御回答申し上げたところでございますが、系統金融機関につきましては、確かに資本関係、人的な関係はございません。したがって、ここに述べております子会社には直接は当たらないわけでございますが、「子会社等」と申しますのは、繰り返しになって恐縮でございますけれども、その他資金関係ですとか取引関係を持つ系統金融機関もこれに該当するというふうに私どもは考えております。
  75. 中村時広

    中村(時)委員 これは税の方から御答弁いただくのはちょっと無理かなと思うのですけれども、これは多分母体行に使われると思いますよ。いずれにしても、母体行からすれば、この通達に基づいて損金扱いをするという明確な事実が浮き彫りになるわけでありますから、同じじゃないか、同じように密接な関係があるのだというようなことで、系統がこの通達を使うことによって、母体行の逆襲の一つの材料になっていくだろうということを僕は予想させていただいておきます。  銀行局長、どうですか。
  76. 西村吉正

    ○西村政府委員 これは税務行政上の取り扱いの問題でございますので、私どもの立場からコメントすることは適切でないかもしれませんが、系統のお立場で、この住専問題の責任の所在というものについていろいろな御議論があるわけでございます。今の委員の御指摘は、その論拠としてそのような論拠を挙げるのは必ずしも適切ではないのではないかという御指摘なのでございますが、これは系統の方々にお尋ねいただくべき課題ではなかろうかと存じます。
  77. 中村時広

    中村(時)委員 新聞によりますと、政府は母体行責任どんどんどんどんということでありますから、その中で、こういう一つ一つの闘う材料というのはやはり母体行も探し始めると思いますので、これが使われていく可能性というのは十分あるなというふうなことだけ僕は指摘をさせておいていただきたいと思います。  あっという間に時間がなくなってしまったんですけれども、まだ大分残っていますね。困ったな。もう時間がありませんのであと一問程度にさせていただきますけれども、きょう予算委員会で同僚議員から、このスキームをやらなかったら一体何が起こるんですか、どんな不安が起こるんですか、こういう問いかけがありました。銀行局長は、いわば取りつけ騒ぎという視点から金融不安の広がりというものが懸念される、それが半分であれ数%であれ、そういう可能性があるのであればというような御答弁をされたというふうに記憶をいたしております。  ただ、その論法というのはちょっと違うんじゃないかなという気がするのですよ。取りつけ騒ぎをそこに持ってくるというのはちょっと無理があるのじゃないかな。というのは、今後五年間にわたっては、政府は預金者の預金を守るということも決定いたしておりますし、この前の新聞を見ましたら、六年後には預金保険機構のペイオフに備えてさまざまな準備をもう始められているというふうな事実もございますから、そういう形でシミュレーションに引っ張り出すというのはちょっと違うんじゃないかな。  逆に言えば、この議論をずっと聞いていまして、やたらに金融不安というものをあおるという流れが底流に流れているのですけれども、例えば一番ひどかったのは、昭和恐慌を持ち出したこともありましたね。当時なんか預金保険機構もないんですし、預金者を保護するという概念が当時非常に希薄だったから、金融機関の倒産が小口の預金者も含めて多くの人たちを巻き込んでいったというような状態ですから、それを持ち出すなんというのは本当に的外れもいいところ。こういうようなことがまかり通っている。  このやり方というのは何かで見たことがあるなといろいろ考えていたんです。オウムですよ。昨年オウム真理教の事件があった。あのとき何をやっていたか。ハルマゲドンという、来るのか来ないのか全然わからないものをばんばん打ち出し て、不安を徹底的にあおって、それから逃れるために寄附をしなさいよ、お布施しなさいよ、こういうことで拡大していったのがオウム真理教ですよ。このハルマゲドンを金融不安に置きかえて寄附金を税金に置きかえたら、見事に同じ論理でこの金融不安をあおるということを政府がやっているかということが浮き彫りになると思うのです。橋本さんは尊師ですか。冗談じゃない。  こういうようなやり方で不安をあおるというのは、政府はやってはいけませんよ。およそ責任ある行政をやるということであるならば、やはり、預金者は大丈夫なんだ、こういう制度がありますよ、政府は五年間保護しますよ、それこそを強調して取りつけ騒ぎを防ぐということをやるのが筋だと私は思う。だから、今回のやり方には到底納得できないということを申し上げたい。いかがでしょうか。
  78. 西村吉正

    ○西村政府委員 私どもも、どちらかといえば、金融不安というものをあおり立てるようなことをすべきでない。むしろ私どもとしては、そういう不安を起こさないように抑えた御説明を申し上げるということが、私どもの従来から行っております方法でございます。  先ほどの御質問にお答えいたしましたときにも、昭和金融恐慌のときとは違います、日本経済の体質も体力もはるかに強くなっておりますし、当時ございませんでした預金保険というものも整備されておりますので、決してあのときと同じように考える必要はないということをも申し上げながら、しかしながら、この十三兆円という債権債務関係が全く心配ないのかという御質問でございましたので、それは仮に、この債権債務関係が全く見通しが立たないままに、特に弱い金融機関にどう影響を与えるかわからないままに預金者が不安を持った場合には、不測の事態を招きかねないということも十分念頭に置きながら我々は行政を行っていかなければならないと申し上げたわけでございます。  確かに、御指摘のように預金保険という制度はございます。今一千万円以下の元本というものは保証されているわけでございますが、それではそれ以上のところはどうするのか。私どもは、五年間というものは預金者には少なくとも不安を与えないようにしたいという方針も申し上げております。しかしながら、現実に、例えば先日の木津信用組合の問題というようなものが起こりましたときに、政府としてあるいは大阪府として、どうぞ預金については御心配なくと申し上げましても、やはり預金者の方々は大変な不安をお持ちになる方もおられる。そういうものが不測の事態を起こさないようにというのは、やはり私ども金融行政の担当者として心しておくべきことではないかということを先ほど申し上げた次第でございます。
  79. 中村時広

    中村(時)委員 もう時間も終わりましたので質問はいたしませんけれども、ともかく金融不安をいたずらにあおるようなことは決してなさらないようにしていただきたいということと、この住専というものは、住専問題だけじゃない、その後ろに控えている問題もひっくるめて本当は考えなくちゃいけない、この点について次回質問させていただきたいと思います。  以上で終わります。
  80. 久間章生

    久間委員長 次に、佐々木陸海君。
  81. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 初めに、住専問題についてちょっとお聞きをしたいと思います。  今度の国会が始まったときに、政府はこの住専の処理策について、国民の理解と納得を得て実行させてもらいたいということを要請をしたわけでありますが、しかし、国会の審議も進んでまいりまして、採決というような話も出てきている事態ではありますけれども、現実の国民の理解と納得という点からいきますと事態は全く逆でありまして、既に昨日も出ましたけれども、京都の市長選挙の結果とかあるいは新聞の世論調査の結果等々にも明白に示されておりますように、政府の処理策というものに対して国民は納得していないし理解もしていないし、いわば理解が深まれば深まるほどこんなもの許しちゃならぬという感情を強めている。そして、実際にこの処理策をつくった当時の最高責任者自身が、こんなになるとは思わなかったと述懐をせざるを得ないような事態が進んできているのはもうごらんになっているとおりで、久保大蔵大臣も、きょうの予算委員会でも納得得られていないということはお認めになっていることだと思うのです。  そういう中で、母体行の責任の追及ということが大きな声になってまいりまして、大蔵大臣自身も、母体行にもっと負担するようなということでしょうけれども、要請する、こういうこともはっきりと言っておられる。その表明の仕方を見ますと、あるいはもう一定程度の要請、要求をしているのかもしれませんとも受けとれるような態度で発言をされておるわけです。  もともとこの処理案が昨年の末に決まったときの時点を振り返ってみますと、あのときには、実際には国民の目から見えないところで、まあ言葉が悪いかもしれませんが、密室で協議が続けられて、いきなりああいう処理案が出てきたわけですが、それ以来国民の理解も、この問題に対する理解そのものはいろいろな形で深まっているわけです。  ですから、ここでぜひ大蔵大臣に要請したいのですが、母体行と、母体行に対するもっと負担しなさいという要請をどこか密室でこそこそやるのじゃなくて、堂々と国民の見ている前でオープンなところでやってもらいたい。銀行の代表はテレビの討論会にもさっぱり出てまいりませんけれども、やはりそういう議論を国民の目の前でやるならば国民も支持するし、もともとこれは、談合という言葉が悪ければ話し合いでどういうことにするかということをしたわけで、何といったって、三・五兆円とかあるいは六千八百五十億円というのが何か法律的なきっかりとした根拠がある数字じゃないわけで、話し合いの結果決まったわけなんですから、再協議をきちんと国民の見ている前で国民にわかる形でおやりになったらどうですか。  その点をひとつ要請したいと思うのです。大蔵大臣にそうしてもらいたいということを言っているのですが、答弁をお願いします。
  82. 久保亘

    久保国務大臣 母体行の責任をどのように明確にして、その責任を具体的にとってもらうかということについては、何も密室でやっているわけじゃありません。大きな声を出せばそれで結果がどうでもよいという問題ではないと私は思っております。  これらの問題は、まず母体行側に、三・五兆の債権全額放棄でこの母体行の責任が完結するものではないということを、私は委員会の席でも記者会見でもはっきり申し上げております。そういうことに対して、母体行側がみずから責任を重く受けとめてくるということがまず最初の段階だと思っております。その上で、具体的ないろいろなこちら側の要請も進むものと思っておりますが、しかし、これらの問題は今法的に強制できる手段があるか、それから、実際に母体行に対して私が大蔵大臣として負担をどういう形で要請できるか、これらのことは、実効あらしめるために慎重に検討しつつ進めなければならないと思ってやっているのであります。  それが密室だと言われれば、どのような方法で、公開の席で母体行側と協議をするなんということは、そういうことがこの種の問題で可能であろうか。私はいろいろ今お話を聞きながら疑問に思うこともございますが、決して密室の取引をやっているのではありません。この問題をしっかり決着させるために話を進めているのであります。
  83. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今密室の取引をやっているというふうに私は申し上げておりません。昨年の十二月の段階ではそういう形で決まってきたけれども、今やこの問題そのものについての国民の理解は深まってきているのですから、そういう国民の世論も背景にしながら、銀行に対して、母体行に対して強い立場から再交渉すべきだということを申し上げているのです。それ以上は申し上げません。  租税特別措置法案について若干の質問をいたします。  先ほどちょっとストックオプションを促進するための税制の話も出ましたが、昨年秋の新規事業法の改正によって、ベンチャービジネスを育て、そこにいわば有能な人材を確保する、その有力な手段として、この法律に基づく認定事業者に株式を利用した成功払い報酬制度といいますか、ストックオプション制度というものが導入されてきたということになっているわけですが、今度の法案では、これを促進するための税制を導入することが盛られているわけであります。  この税制を導入することによりどんな減税になるかという具体的な問題ですが、この制度を推進している通産省は幾つかの試算を行っております。例えば、一株百円、株式数五万株で権利行使総額の上限いっぱいの五百万円を付与された社員がいるとしますと、この会社がその後成長して業績を上げて店頭公開し、社員は市場価格が例えば千五百円になったときに権利を行使して株を購入する、五万株購入するわけですが、その市場価格がさらに二千円に上がったときに株を売却したという仮定を通産省などもやっているわけです。  通産省のを見ますと、試算の前提としてそういうやり方をしているのですが、所得税や個人住民税を試算する場合にも、社員は独身者として、控除は本人の基礎控除のみとするとか社会保険料控除も無視するとか、所得は、当然本来給与所得があるわけだけれども、これも考慮しないで、付与株に係る所得だけに限定するという非常に単純、純粋な試算をしておりますが、それでも一つの傾向は出るわけであります。  こういう前提で試算しますと、現行制度では、自社株を取得した時点で権利行使価格との差額が所得税住民税合計で約三千五百四十万円課税されて、二千円で株を売却した時点で売却価格と取得時の時価との差額が譲渡益となって、キャピタルゲイン課税がかかる。これが六百五十万円。だから現行税制では、これで合計四千百九十万円が課税ということになるわけです。これに対して、今度の改正で優遇措置を講じる場合には、権利の行使時点での所得課税は繰り延べになって、株を売却したときだけキャピタルゲイン九千五百万円に二六%の税金がかかるということで、課税が二千四百七十万円。ですから、現行に比べて約四割税金が安くなる。また、この社員が市場価格千五百円ではなくて千八百円で権利を行使して株を購入した場合には、同じ二千円で売った場合、同じ計算法でいきますと、現行では四千七百二十六万円が課税されるが、改正後は二千四百七十万円という税額になる。この場合、税額は現行に比べて約半分になる。つまり、権利行使時の株価格が高いほど減税効果が大きくなるわけです。  いろいろな前提を置いての話でありますけれども、大体こういう数字に間違いはないと思いますが、いかがでしょう。
  84. 薄井信明

    薄井政府委員 今委員も、前提について粗く置いたという御指摘がありました。そういう意味では、現実にどういうケースが出てくるか、今の前提でいいのかという問題はあろうかと思いますが、一つ気になりますのは、これは取締役あるいは従業員といいますかそういう方についてのインセンティブでございますので、多分給与所得は別にあるのだろうと思います。だから、所得がないという前提は置きにくいかと思います。  それから、もう一点気になりましたのは、現行の制度の場合に、今の御指摘ですと、これは通産省が計算したということでしたが、株式を譲渡したときに申告分離課税の方を使うという前提で計算されておりますけれども、もし今回の法案を出さなければ源泉分離を選択できるわけですから、源泉分離であれば今の御指摘よりも安くなる。それは五、六百万違ってくるかと思います。  それをもってすべてが間違っているということではございませんが、先ほども御答弁申し上げましたように、まさにインセンティブとして税制面からも手当てしておりますので、今のような例で言えば、一千万以上の差額が出てくるということにつきましては御指摘のとおりかと思います。
  85. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もちろん、これは有能な人材を小さなベンチャー企業がとってきてうまく活動してもらおうというわけですから、もともといろいろなインセンティブを与えるためのものでありまして、税制上もそういうメリットを与えることがもともとの前提になっているわけであることは言うまでもないわけでありまして、正確な数字という点ではいろいろ議論はあるでしょうけれども、税制上も今度の措置でかなり優遇措置をとるということになることは間違いないと思うのです。  この制度そのものについては、新聞報道などを読みますと、大蔵省は当初かなり強く反対をしていたということが伝えられております。例えば、給与の臨時支給や現物支給には課税している、なぜ株で受け取った場合だけ優遇しなくてはいけないのか理解ができないというような議論があったとか、あるいは米国では公開企業の八割がストックオプション型の報酬制度を採用しているが、日本とは事情が違うじゃないかという心配をしていたということも伝えられておりますけれども、こういう論点といいますか、心配といいますか、そういうものはどんなぐあいにクリアされてきているのか、その辺について、ちょっと経過も含めて説明していただけませんか。
  86. 薄井信明

    薄井政府委員 ストックオプションという制度につきましては、例えばアメリカにこういう制度があって非常に活用されているということは私ども承知しておりますが、それなりに背景が違うというふうに考えております。特に我が国の商法のもとでは、いわゆるストックオプションというのは不可能であろうという発想で私どもおりましたが、昨年秋の改正によりまして、商法の特例といいますか、特別法といいますか、制度が開いたわけでございます。  非常に狭い道が開かれたわけではございますが、委員指摘のように、ベンチャーに人材をという発想から国会での御審議を経て成立した、これに対して税制面からも対応することができるかどうか、してほしいという要請が我々にありました。私どもとしましては、常にそうですが、税制は公平ということが重要なポイントでございますから、その公平、それから今経済が求めている、世の中が求めているインセンティブ税制のバランスを考えないといけない、またそれが濫に流れてはいけないということから十分議論をしたわけでございます。  今最後に御質問の点につきましては、例えば次の三点について考えてあるということでございます。  まずは、取締役等が、三分の一を超える株式を有する大口株主等ではない、そういう人ではない。仮にそうであると、有能なあるいは必要な人材の確保という美名のもとで恣意的な租税回避が行われると考えられますので、大口株主等に該当しないということを一つのポイントにさせてもらっております。  また、もう一つは、新株を取得する権利の行使というのは、権利が付与された日から二年以上経過していないといけないということにさせてもらっております。これも、必要な人材の確保ということですから、権利をもらってすぐ行使してしまったら、その人材を活用していないということになります。そういう趣旨に合わない、あるいは売り抜けということが生じることを防がなければいけないという手当てをいたしました。  それから大きな三つ目としましては、権利行使価格の総額に制限を設けました。一人当たり年間五百万円以下であるということを今回の制度では決めさせていただいております。幾つかの権利を持っている場合でも、その年は合計して五百万という制度になっています。  そういったことによりまして、この制度が趣旨と反する租税回避行為につながったり、過大なメリットにならないようにということを配慮したつもりでございます。
  87. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど読み上げたような大蔵 省の懸念と、言ってみれば私も同じ立場にあるわけであります。  新しい事業を起こし発展させていく、中小企業が技術力や経営力を高めて成長発展する、そういうことを援助するために国がしかるべき措置をいろいろ講じるということは当然のことで、大いにやっていかなければならぬ、そのための施策の拡充は当然重要だと我々も考えるものです。しかし、アメリカがやっている制度をそのままちょっと直輸入してきて、しかも税負担の公平の確立ということと矛盾するような方向が、新しい事業を起こして発展させるという美名のもとに余り大っぴらにやられていくようなことは望ましい方向とは言えないわけで、その辺は大いに配慮していかなければならないし、その新しい事業を起こし発展させるという点でも、税の不公平を生むような方向でない方向を大いに探求していかなければならぬだろうというふうに思うのですが、その点について大蔵大臣の見解を伺っておきたい。
  88. 薄井信明

    薄井政府委員 先ほどちょっと触れましたが、アメリカにおいては、日本における商法に当たる法体系のもとで自己株を持てる州があります。そういう州におけるストックオプションというのは、今回議論されているストックオプションと、質的にと言うのも大げさかもしれませんがかなり違うものでございます。  今回のストックオプションは、日本の商法の前提の中で、特に整理して申し上げれば、公開前のベンチャービジネスが公開に当たってという部分を活用したストックオプション制度になっておりまして、アメリカにおけるような大きな制度ではないということは御指摘させていただきたいと思います。
  89. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 次に、土地税制の問題ですが、今度地価税をかなり大きく引き下げるという問題について、どういう経緯からそういうことになったかということはさっき説明がありましたが、〇・三%の税率を当分の間〇・一五%にする、〇・二や〇・一ではなくて〇・一五%にするという、その理由は何でしょうか。簡潔に説明してもらいたいと思います。
  90. 薄井信明

    薄井政府委員 税制につきましてはすべての問題がそうなんですが、必ず今の数字でなければならないかといえば、それはそうではないと思います。しかし、制度として定着してきているものにつきまして、国民あるいは納税者の受けとめ方、それからこの税をめぐっての議論を踏まえて、私どもとすれば軽減していくことが適当だと考えました。  先ほど御説明しましたように、固定資産税が従来と違う形になってきている中で、いろいろな議論が重ねられてきておりますので、少なくとも半分にしようということが今回の考え方でございます。半分といいましても、地価は下がってきておりますので、実力でいいますと多分半分よりもさらに低い数字になっているかと思います。それは、繰り返しになりますけれども、土地をめぐる最近の情勢、それから保有課税をめぐる近年の動き、こういうものを踏まえたものでございます。
  91. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大蔵省にも同情しなければならぬと思いますけれども、この地価税の問題などは、去年の与党の税調の議論なんかが連日のように新聞に報道されて、その新聞の報ずるところでは、要するに理念も政策も何か大したものがあるわけじゃなくて、新聞の報道ですが、要するに景気が悪いから税金をまけてくれというだけの話だとか、あるいは企業の税負担を緩和し経済を活性化させるべきだとかいったような議論で、与党の中でのいろいろな皆さんの力関係の中で〇・一五に決まったというのが実情で、大蔵省の説明は、それを後から説明をつけてくるということにすぎないのじゃないかというふうに思うわけです。  新聞の社説などでも「投機を目的とした土地保有の有利性をなくすために創設されたのが地価税である。軽すぎた土地保有税を適正な水準引き上げるという社会的要請は、いまも変わらないはずである。土地保有税の緩和は、「土地の公共性」を重視する土地税制の基本的な方向に反する。」という議論もなされている。まさに私はそうだと思うのであります。  ですから、今度のこの地価税の緩和というようなものは、基本的な土地税制のあり方に逆行して、結局バブルを引き起こした大企業の責任を言ってみれば和らげてやり、財界、大企業の景気回復を主眼とした身勝手な要求をそのまま受け入れたというものだと私は言わざるを得ないと思うのですが、大蔵大臣いかがでしょう。
  92. 薄井信明

    薄井政府委員 平成二年のいきさつについて先ほど申し上げましたが、あのときの状況が今変わってきております。ただし、私どもはあのとき、単に短期的な応急措置としてこの土地税制全般を議論したわけではございませんので、あのときの哲学を生かしつつ、かつ土地をめぐる状況がこれだけ変わってきている中で、いかに調和させていくかということに苦しんで出した答えであると申し上げたいと思います。
  93. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 確かに、もうなくしてしまえという要求もあったのに対して、当分の間こういうふうにするというその大蔵省努力は多としなければならぬ面もあると思いますけれども、いずれにしても、大企業向けに有利な方向を取り入れたことは間違いないということを言っておかなければならぬと思うのです。  それから、個人の長期譲渡課税の問題でも、個人の長期譲渡課税がバブル退治を目的とした九一年度の土地税制改革前の水準に完全に戻されてしまった。一つだけ例外がありまして、社民党などの主張で八千万円超の部分に三九%という税率が残してありますけれども、この八千万超の取引というのは全体の中でのシェアはごく小さなものではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  94. 薄井信明

    薄井政府委員 御指摘のとおり、件数でいえばわずかなものかと思いますが、金額的にはある程度のシェアを占めているかと思います。たまたま現在データを持っておりませんが。
  95. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろこれも理由はそれなりに説明をつけられるのでしょうけれども、なぜバブル退治前の水準に戻されるのか、その基準や理由は全く明確ではないということを言わざるを得ないと思うのです。  それから、法人の重課制度、この問題でいいますと、現行の法人の土地等の譲渡益課税制度は、短期、長期保有土地には通常の法人税に加えてそれぞれ二〇%、一〇%の追加課税が行われ、超短期保有土地には通常の法人税率に三〇%の税率を加えた分離課税という重課税制度が行われてきたわけです。これは、法人については当然適切な重課税制度が必要であり、特に短期、超短期での土地転がし抑制を求める見地からこういうものが組み立てられてきたわけですけれども、今度の改正では、いろいろこれも理由がつけられておりますが、保有期間の長短を問わず全面的に税率を半分にしてしまった。これはバブル退治以前どころか今までにない水準に実際にしてしまおうとしているわけでありまして、バブルの時期に買い占めた法人が言ってみればリストラを進めるための税負担の軽減をねらったものと言われてもしようがないし、状況によっては新たな土地転がしを誘引する危険性も持つことになると思うのですが、その点いかがでしょう。
  96. 薄井信明

    薄井政府委員 確かに平成元年、二年の土地税制の論議の中では、法人が土地を持つことが何にも増して有利であるということが土地問題を複雑にしてきたということが議論されました。そういう反省から、土地税制の中でも法人の土地譲渡につきまして、御指摘のような姿で、一〇%のオンという付加課税が行われましたし、それまでの経緯の中で、短期については、土地転がしをとめなくてはいけないということで、二〇%、三〇%という税制がつくられました。  先ほど申し上げましたように、その後の法人の土地保有の状況あるいは含み益の部分、土地をめぐるその他の状況を見ますと、これをそのまま維持しておくことは、かえって今日の経済に適当でないという考えをとったわけでございます。ただし、この付加税部分をなくしてしまうことは、や はり一般の所得とは違うんだという考え方は維持していくべきだということで、今回のような案にしたということでございます。
  97. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 これによって、法人の土地取引の課税の負担は現行に比べて文字どおり半減するわけでありまして、それが経済に対するというようなことはいろいろ言われますけれども、結局のところ企業に有利な、企業を潤してやれば経済がよくなるというような、我々到底納得できない理由でそういうことが進められているわけであります。  赤字法人の場合には、これまでの土地譲渡分についての負担がこの改正後は極度に低くなるという問題もあるわけで、これは指摘するだけにとどめておきますけれども、要するに今回のこの税制改正の性格全体ということになりますと、結局今見てきたように、バブル退治以前の税制あるいはそれ以前にもなかったような軽減措置をとっているわけでありまして、我々から見ますと、九〇年の土地答申の言ってみれば放棄であり、事実上の土地税制の転換とも言えるような方向が目指されているのじゃないかということを懸念せざるを得ないわけであります。  これは、橋本首相が昨年秋の自民党総裁選挙で、地価税の廃止、凍結など、土地税制の抜本見直しを言ってみれば公約の目玉として、その後党の税調幹部に、土地税制では、税理論に問題があるのを承知の上で、経済活性化に重点を置いた取り組みをしてもらいたいと指示をしたというようなことが大きな背景になっていることも否定できないわけでありまして、我々はこういった方向に対して到底賛成できないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。  最後にちょっと大きな問題ですが、ことしの九月三十日までに消費税の問題については一定の結論を出さなければならないわけですが、大蔵大臣は、その結論というのか、方向というのか、いつまでに大蔵省としての態度をはっきりさせるつもりなのか、その辺の腹づもりを少し話していただきたいと思います。
  98. 久保亘

    久保国務大臣 九月三十日を検討条項の期限といたしておりますが、六年の十一月に税制改正が行われましたときに、八年の九月三十日までにもし税率を変える場合には法定しなければならないことになっております。そういうことからまいりますと、検討条項の検討は、国会の審議等を考えればそんなにもう時間がないのではないかと思っておりまして、今種々の検討を行っていると思いますが、現実には法定されております来年四月一日からの五%の税率を動かすことは非常に困難だと思っております。
  99. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ただ、その困難かどうかということは検討の結論として出てくる問題じゃないのでしょうか。何か困難だということが最初の結論としてあって、それに合わせた検討ということになるはずでもないわけでありまして、そこのところをちょっとはっきりさせていただきたいと思います。
  100. 薄井信明

    薄井政府委員 今回の消費税率引き上げは、先行する所得減税に見合う形で全体として御議論いただいたわけでございまして、そういう意味では、今後検討すべき事項としては、やはり福祉関係、介護保険とかいろいろ議論を今しておりますが、この点が大きなポイントになってくるかと思います。御指摘のように、まだそういうことについて答えが出ていない以上、この見直しについての答えも今は出ていないということでございます。  それと、四項目ございますが、これについて触れませんが、昨年度、本年度と二年度にわたりまして各方面についてはそれなりの努力を続けてきております。それが数字になって固まってきて本当に五を上げなくちゃいけないのか、そのままでいいのかというのは、今後の結論というタイミングになろうかと思います。
  101. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 財政やそれから福祉の問題等々を考えますと、この五%を上げるのは困難だということを結論的に先に言われるのは、やはり率直に言って大蔵大臣として無責任であって、上げろとはもちろん申しませんけれども、しかし、どういう検討でどうなるのかということを早く国会にもきちんと示すべきであるということを申し上げて、質問を終わります。
  102. 久間章生

    久間委員長 次回は、来る三月一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十二分散会