○星野朋市君 私は、
平成会を代表して、
政府提出の
育児休業等に関する
法律の一部を改正する
法律案と、新進党提出の
介護休業等に関する
法律案に対しまして
質問させていただきます。
我が国の
人口は、かつて厚生省の
人口問題研究所が試算で最大一億四千万人と想定をいたしましたが、現状では、西暦二〇一〇年に一億三千万人でピークを迎え、現在の出生率をもとにして計算をいたしますと、その後、総
人口の急速な減少が想定されております。このような厳しい現状が存在していることを見逃すことはできません。
この事態は、先進国につきましてはある程度共通の現象であることは事実でありますけれども、
我が国の特徴は、これまで世界のどの国もが経験したことのないほど
高齢化の
スピードが速いということはさんざん
指摘されております。
現在、六十五歳以上の老齢
人口は約一千六百九十万人、
人口に対しまして七・七人に一人の割合でございますけれども、
高齢化のピークを迎えるであろう西暦二〇二五年にはその数約三千二百五十万人と想定され、何と三・九人に一人という超
高齢化社会になることが予想されておるところでございます。また、本案の
趣旨である要
介護老人は現在約二百万人、それがその時点では五百二十万人に急増するであろうと言われております。
このような
状況に関しまして、
政府は
高齢者保健福祉推進十カ年
戦略いわゆる
ゴールドプランを推進中でありますが、残念ながら現実の問題解決には道ほど遠しの感が否めません。
特に、
介護にかかわらなければならない
家族の悩みは深刻であり、そのしわ寄せはどうしても
女性に偏らざるを得ないという事実がございます。さらに、
仕事と
介護を
両立させなければならない
立場の人には、その困難が重くのしかかってきているのであります。
人間はだれしもケアなしには生まれ育つことは不可能であります。そして、ある年齢に達すれば、これまた周囲のケアが必要になるのは必然であります。
家族と
家族生活、人間と人間が
生活の中でケアし合うということは、基本的に人間そのものの問題であります。
調査によれば、要
介護者の六〇%以上が在宅で
介護を受けており、完全看護の病院に入院中のお年寄りでも、本心では
在宅介護を希望しているのが実情でございます。
このような中で、
家族の
介護や看護のため
仕事をやめていかなければならない人たちの数は、年間八万一千人にも達しております。特にその中の
女性については七万三千人、異常な割合でございます。
また、働く人たちの「
介護者を抱える
家族」についての実態調査によれば、主たる
介護者となっているのは、在宅では七〇%が
女性、残り三〇%が男性であります。
このような事態を
考えてみますと、ただいま
議題となっている
介護休業制度の
法制化は実に重要な問題であり、だれにでも、この議場におられる諸先生方にも、少なからずその御経験がおありになるだろうと推測されるのでありますが、だれにでもいつ何ときその状態を経験するかもしれないという問題として、働く者みんなが着目し、実効ある
法案の
成立を期待していると言っても過言ではありません。
さて、諸般の
事情をるる
説明させていただきましたが、ここにいずれも
家庭生活と
職業生活の
両立を図ることを目的として提出された
二つの
介護休業制度の
法制化案を比較し、これらの問題についてそれぞれ
質問をいたします。
まず、その第一として、
介護休業の
対象となる
家族の
範囲についてであります。
政府案では、要
介護者の
範囲を
配偶者、
父母、子、
配偶者の
父母に限定しておりますが、昨今の
家族形態はさまざまにふえまして、
核家族化が進んでいるとはいえ、現実に兄弟姉妹や祖
父母、おじ、おば等の
介護の必要があるにもかかわらず、
政府はそれは
対象外だと割り切れるのでしょうか。
労働大臣、
お答えいただきたいと思います。また、新進党はこの点についてどう
考えておられるのか、あわせて
お答えいただきたいと思います。
私は、以下何点かについて
お尋ねをいたしますが、このような
政府案と野党案が同時に審議をされるということは参議院では非常に珍しいケースでございます。そこで、両案の比較の意味からも、またここはぜひ強調しておきたいという点がございましたら、野党案はぜひその点について明確な御発言をお願いしておきたいと思います。
第二点といたしまして、
介護休業の取得
期間と
取得回数について
お尋ねいたします。
子育ては、一年たてば一歳に、二年たてば二歳にと確実に見通しが立ちます。しかし、高年齢者の
介護では何と一年以上が圧倒的に多く、平均して五年八カ月という調査結果もあります。
政府案の三カ月というのは、三カ月で大体
介護のめどがつくという根拠にあると思うのですが、現実には三カ月では
施設への入所もできず、やむを得ず退職を余儀なくされるというのが実情ではないでしょうか。
政府案は三カ月、一万新進党案は一年となっている
期間の根拠を、それぞれにお伺いをいたします。
また、その
取得回数についてでありますが、
政府案では要
介護者一人につき一回となっていますが、これは
介護休業を取得する者にとって、その時点では取得すべきか否かの判断が非常に難しく、再発した場合や新しい
介護が必要となってきたときはどうすればいいのでありましょうか。残念ながら資格なしとなるのではないでしょうか。
政府はどう
考えておられるのか、
労働大臣に
お答えいただきたいと思います。まさしくこの条項は、仏つくって魂入れずの典型的な例としか言いようがございません。新進党案はその点リーズナブルであると思いますが、提案者の
説明をお願いいたします。
次に第三点目として、
取得者の
不利益取り扱いについてお伺いいたします。
政府案は、
介護休業及び
介護時短について解雇の禁止を定めておりますけれども、それの取得に付随して
考えられる
不利益取り扱いについては、
育児休業について指針で示しているからそれでよいのだと、同様に
考えておられるのでございましょうか。
労働大臣のお
考えをお聞かせいただきたいと思います。また、新進党はそれに対してどう対処されようとしているのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
さて四点目は、
介護休業中の
所得保障についてであります。
主たる
介護者の年代が、四十代と五十代で六五%以上を占めており、ちょうど
家庭的に一番
負担のかかる年代であることがわかりますが、
政府は
介護休業中の
所得保障について何も定めてはおりません。その
理由をお聞かせいただきたいと思います。また、新進党の
考えも
提出者にお聞きいたしたいと思います。
次に第五点目として、
事業主とりわけ
中小企業者の
支援措置についてお伺いいたします。
介護休業制度を
導入するに当たって、
事業主とりわけ
中小企業の
負担がその円滑な
導入を妨げる要因となり得る可能性が大でありますが、
政府はどのような
措置を
考えておられるのか、
お答えをいただきたい。また、新進党にも同様に
お答えをいただきたいと思います。
そして第六点目は、
施行期日についてであります。
今、年間八万一千人もの人たちが
介護や看護のために退職せざるを得ない実態の中で、多くの人たちがこの
法案のできるだけ早い
実現を望んでいるにもかかわらず、
政府案は実に四年先の
実施を
考えているのはなぜなのでしょうか。この間、四千万人に上る
中小企業に働く人たちは
介護休業の恩恵に浴することなく退職を余儀なくされることになりかねません。これは今必要な
法律であるということが
政府には全くわかっていないんじゃありませんか。それを
お答えいただきたいと思います。新進党が来年の早期
実現を求めているのは当然のことだと思いますが、その点についていかがお
考えでございましょうか。
最後に、村山
総理に
お尋ねをいたします。
総理は常々「人にやさしい
政治」を表明していますが、私が今まで何点かにわたって
政府案と新進党案の主な違いを
質問して、それぞれに
お答えをいただくことになりますけれども、
政府案は
育児休業等に関する
法律の一部を改正する
法律案であるのに対して、新進党案は
介護休業等に関する
法律案という独立した
法案の名称となっております。その名が示すとおり、
政府案は形だけで実のない、もしくはあっても中身の乏しい
法案だと思いますが、いかがお
考えか、
総理の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
今まで述べてまいりましたように、新進党案の方がはるかに人にやさしい
法案であることは明白でありますので、一刻も早く新進党案のような
内容の
充実した
法案を
成立させていただくよう強く要望して、私の
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕