運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1995-02-21 第132回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年二月二十一日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 衛藤征士郎君       越智 通雄君    伊藤 英成君       石田 祝稔君    江田 五月君       笹木 竜三君  五十嵐ふみひこ君    兼務 上原 康助君 兼務 辻  一彦君    兼務 前原 誠司君 兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房長 池田  維君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  分科員外出席者         防衛庁防衛局調         査第二課長   山内 千里君         防衛施設庁総務         部業務課長   冨永  洋君         外務大臣官房会         計課長     田中 映男君         大蔵省主計局主         計官      佐藤 隆文君         農林水産省経済         局国際部国際協         力課長     五十嵐清一君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   左藤  恵君     江田 五月君   五十嵐ふみひこ君   小沢 鋭仁君 同日  辞任         補欠選任   江田 五月君     石田 祝稔君   小沢 鋭仁君     荒井  聰君 同日  辞任         補欠選任   石田 祝稔君     左藤  恵君   荒井  聰君     宇佐美 登君 同日  辞任         補欠選任   宇佐美 登君     中島 章夫君 同日  辞任         補欠選任   中島 章夫君     五十嵐ふみひこ君 同日  第一分科員前原誠司君、第五分科員上原康助  君、山原健二郎君及び第六分科員辻一彦君が本  分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成七年度一般会計予算  平成七年度特別会計予算  平成七年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 衛藤征士郎

    衛藤主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成七年度一般会計予算平成七年度特別会計予算及び平成七年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。河野外務大臣
  3. 河野洋平

    河野国務大臣 平成七年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、七千二百四十七億八千二百万円であり、これを平成六年度予算と比較しますと、三百一億三千三百万円の増加であり、四・三%の伸びとなっております。  今日の国際社会においては、冷戦終結後の平和と繁栄を確保することを目指し、たゆみない努力が続けられておりますが、政治経済両面での課題は山積しており、依然として、不透明で不確実な状況が続いております用地域紛争については、旧ユーゴスラビアなどの紛争は、いまだなお解決の兆しが見えません。また、核兵器の拡散の危険は依然大きいものがあります。主要国経済は困難を抱えたままであり、さらに、開発途上国の貧困の問題は一層深刻化しております。加うるに、地球環境、麻薬、難民、人口、エイズといった地球的規模の問題に取り組まなければなりません。  さらに、本年十一月には、我が国においてアジア太平洋経済協力非公式首脳会議及び閣僚会議などが開催されますが、我が国は、議長国として、地域協力の一層の前進を図るため、積極的にその任を果たす必要があります。このような状況の中で、我が国としても、一層積極的で創造性豊かな役割を果たす必要があります。  このような観点から、我が国外交に課せられた使命は極めて重大であり、平成七年度においては、その足腰ともいうべき外交実施体制拡充国際貢献策充実強化の二点を重点事項として、予算強化拡充を図っております。  まず、外交実施体制拡充に関する予算について申し上げます。  定員の増強につきましては、平成七年度においては百六十名の増員を得て、外務省定員合計四千八百九十二名といたしております。また、機構面では、在ルクセンブルク大使館を新設することなどを予定しております。  さらに、在外公館機能強化のために、在外公館施設などの強化及び海外邦人安全対策危機管理体制強化のための経費三百三十億円を計上しております。  加えて、外交政策策定の基盤となる情勢判断を的確に行うために不可欠な情報通信機能強化に要する経費として五十二億円を計上しております。  次に、国際貢献策充実強化に関する予算について申し上げます。  国際貢献策充実強化の四つの柱は、二国間援助などの拡充、平和及び地球的規模の問題に関する協力国際文化交流強化、そして平和友好交流計画であります。  まず、二国間援助などの拡充の大宗を占める平成七年度政府開発援助(ODA)につきましては一般会計予算において、政府全体で対前年度化四・〇%の増額を図っております。このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比二・〇%増の二千五百五十九億円計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が二千百二十七億円、食糧増産等援助費が四百二十二億円であります。さらに、人的協力拡充のため、技術協力予算拡充に努め、なかんずく、国際協力事業団事業費は対前年度化四・〇%増の一千六百九十二億円を計上しているほか、国際協力事業団定員につき二十六名の純増を図るなど援助実施体制強化に努めております。  次に、平和及び地球的規模の問題に関する協力でありますが、新しい世界平和の秩序の構築のための国際協力を進めることが必要との認識に立ち、国連平和維持活動を初めとする平和及び難民人道分野での国際機関などによる活動の支援のため、また、地球環境問題、あるいは麻薬問題といった国境を越えて国際社会影響を及ぼす地球的規模の問題に取り組むため、国際機関を通じて積極的貢献を行うべく、総額三百七十億円を計上しております。  次に、国際文化交流強化でありますが、各国との知的・文化的交流を図り、異なる文化間の相互交流を促進するため百五十八億円を計上し、国際交流基金事業拡充強化及び文化協力推進を図ることとしております。  また、アジア太平洋経済協力閣僚会議などAPEC経費として二十七億円を計上しております。  さらに、戦後五十周年の節目を迎え、平和友好交流計画として、三十億円を計上して、アジア近隣諸国などとの関係の歴史を直視し、また、相互理解を一層増進することにより、ともに未来に向けた関係構築を図ることとしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」を配付させていただきましたので、主査におかれましては、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。
  4. 衛藤征士郎

    衛藤主査 この際、お諮りいたします。  ただいま河野外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 衛藤征士郎

    衛藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――    外務省所管平成七年度予算案説明  外務省所管平成七年度予算案について大要を御説明いたします。  予算総額は七千二百四十七億八千百九十四万九千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費五千二百七十四億八千九百二十八万一千円、エネルギー対策費三十九億九百四十二万三千円、その他の事項経費一千九百三十三億八千三百十四万五千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省六千二百四十三億三千三百九十五万八千円、在外公館一千四億四千七百九十九万一千円であります。  只今その内容について御説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費三百十七億六千五百五十二万一千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、九一四名の人件費及び事務費等、並びに審議会運営経費であります。  第二 外交運営充実に必要な経費八十四億五千五百四十六万六千円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉我が国に有利に展開させるため本省において必要な情報収集費等であります。  第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費百八十六億九千七百二十六万円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金百四十億四百十九万三千円及び啓発宣伝事業等委託費八億八百八十五万七千円等であります。  第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費百二十二億二千三百四十万八千円は、「旅券法」に基づく旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費であります。  第五 諸外国に関する外交政策樹立等に必要な経費八十一億一千六百七十万円は、アジア北米、中南米、欧州、大洋州、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会補助金十九億七百九十四万七千円、財団法人日本国際問題研究所補助金六億一千六百八万九千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五千四百十三万七千円、社団法人国際協力会等補助金一億四千八百二十八万円、インドシナ難民等救援業務委託費九億九千三百三十万円及び平和友好交流計画関係経費三十億一千百七十九万四千円並びにアジア太平洋経済協力閣僚会議等開催経費二十七億五百八十八万八千円であります。  第六 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費二億六千六百八十四万二千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第七 条約締結及び条約集編集等に必要な経費五千四百二十万七千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第八 国際協力に必要な経費二十二億三千六百七万円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会等補助金四千五百九十七万三千円であります。  第九 外務本省施設整備に必要な経費二十六億三千百三十六万五千円は、外務本省庁舎等施設整備に必要な経費であります。  第十 経済技術協力に必要な経費五十八億七千五百七万四千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金二十九億七千八百八十二万三千円等であります。  第十一 経済開発等援助に必要な経費二千五百六十億五千二百四万九千円は、発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助に必要な経費であります。  第十二 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費九百六十二億一千四百十五万六千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十三 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費三十九億九百四十二万三千円は、我が国が加盟している国際原子力機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十四 国際分担金等支払に必要な経費八十四億八千八百三十一万五千円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十五 国際協力事業団交付金に必要な経費一千六百四十二億七千三百十万二千円は、国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。  第十六 国際協力事業団出資に必要な経費四十九億七千五百万円は、国際協力事業団の行う施設取得等に要する資金に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。    (組織在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費七百十七億八千五百七万七千円は、既設公館百七十五館六代表部平成七年度中に新設予定の在ルクセンブルグ大使館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加合計二、九七八名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費百四十七億三千七百七十九万二千円は、諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な情報収集費等であります。  第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十一億四千三百三十六万二千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国政治経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。  第四 自由貿易体制維持強化に必要な経費二億八千四百九十二万四千円は、自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費百四億九千六百八十三万六千円は、在ミャンマー大使公邸営工事(第一期工事)、在フィリピン大使館事務所営工事(第一期工事)、在ポーランド大使館事務所公邸・新営用基本設計、その他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管平成七年度予算大要であります。  慎重御審議のほどをお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  6. 衛藤征士郎

    衛藤主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 衛藤征士郎

    衛藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。笹木竜三君。
  8. 笹木竜三

    笹木分科員 新進党の笹木竜三です。二、三の点について質疑をしたいと思います。よろしくお願いします。  まず第一点目なんですけれども、今回の震災で、予算委員会でも何度か議論がされているわけですけれども、危機管理について非常にシステムとしても、平常の考え方としても甘かったんじゃないかという話がたびたび出ております。それで、それに関連して原子力事故早期通報に関する条約、それと原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約、このことについて、まず最初にお聞きをしたいと思うわけです。  もちろん事故はあってはなりませんし、その可能性も非常に低いとは思いますけれども、ありとあらゆる可能性を考えて、危機管理体制を整えておくということが非常に大事だと思います。そういった意図から、この条約昭和六十二年の三月六日ですか、日本署名をしているわけですけれども、この署名に至った経緯について、まず御説明をお願いしたいと思います。
  9. 林暘

    ○林(暘)政府委員 この二条約につきましては、今御指摘のとおり、一九八七年に我が国として加盟をいたしました、できましたのはその前年でございますけれども。それで、現在のところ早期通報に関する条約につきましては六十六カ国が参加しておりますし、事故それから緊急事態の場合の援助に関する条約については、六十一カ国が加盟しておるわけでございます。  これはいずれにいたしましても、そういう緊急事態事故等が起こった場合に早期関係国通報する、ないしは援助を求めるということを規定しておりまして、そういう形で事故というものが、原子力事故が起こりました場合に、国境がございませんので、国境を越えてその影響が波及いたしますので、そういうことを早期に、波及を何らかの形で阻止するように国際協力をしていこうという趣旨でつくられた条約でございます。
  10. 笹木竜三

    笹木分科員 昭和六十一年に、旧ソ連チェルノブイリ事故がありまして、その事故に関する情報の提供が非常におくれた、そういう反省も踏まえて東京サミット議論もあり、それを受けてこういった動きがあったと聞いております。  先般も、科学技術委員会ですとかで何度か質疑をしているわけですけれども、残念なことに、例えばこの条約に沿ってのマニュアルですとか、いろんな細かい取り組みが必要になると思います。例えばどういうような、どの程度事故の場合に通報をするかどうか、これは自国でもし事故があった場合ですけれども、それについては各国が独自に判断して通報する、そういうふうにガイドラインでは書かれているわけですけれども、その判断に当たってのマニュアルですとか、あるいは実際に援助をする体制、どういうような専門家がいるか、どのような機材があるか、そういったことを事前にいろいろ体制を整えておく、あるいは財政的な条件についても大体想定をしておく、これは援助する場合ですけれども、そういったことも書かれております。  それについて、科技庁についてはまだほとんどそういったマニュアルができていないということで、これから検討したいということを、先週ですか、お答えいただきましたけれども、外務省においてはこの点についてはどういうような現状か。どういうような体制が整っているのか。これも事務方の方で結構です。
  11. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今先生の方から御指摘がありましたように、先日の科学技術委員会の方で科学技術庁局長からも御答弁申し上げたようでございますが、現実に通報する場合ないしは援助を供与する場合、逆の、事故が起こった場合に我々が援助を受ける場合につきましても、それぞれ国内科学技術庁ないしは通産省等と協議してやるということになっておりまして、外務省の場合には、いずれにいたしましても双方の場合に窓口となって外国との連絡に当たる、ないしは連絡を受けるという立場に立つわけでございます。  原子力安全局長が御答弁したと承知しておりますけれども、国内的なマニュアルがまだ十分にできていないというのはそのとおりのようでございますし、我々としては基本的に連絡をし、連絡を受けるという立場でございますので、国内的なところについて外務省が特に何かをつくっているということはございません。
  12. 笹木竜三

    笹木分科員 今、連絡を受けるあるいはする窓口ということ、確かにそのとおりだと思います。その場合に、科技庁との事前打ち合わせが必要かと思いますのでは、どの程度事故だったら、どの程度の放射能の漏れの事故が起きたら通報するのか。これは自国判断でするわけですから、そういった科技庁判断と、外務省打ち合わせをしておいて、外国に対する通報をどういうふうにするのか、マニュアルをつくっていくのが普通かと思いますけれども、そういった科技庁との連絡あるいはIAEAとの連絡体制についてどのような準備ができているのか。これも事務方の方で結構です。
  13. 林暘

    ○林(暘)政府委員 いろいろな機会をとらえて、科学技術庁その他とはこういう件についても連絡はいたしておりますが、今御指摘のように、どの程度規模事故、どういう種類の事故についてどうするかという具体的なマニュアルづくり、詳細なマニュアルづくりについては、現在のところでき上がってはおりません。
  14. 笹木竜三

    笹木分科員 ぜひそうしたことを急いでいただきたいと思います。  先ほども御説明がありましたけれども、あってはいけないし、ないことを願っているわけですけれども、今後例えば日本周辺国でも非常に原子力発電所がふえていく可能性がございます。仮に周辺であった場合にはもう国境がないわけですから、日本で仮にないとしても外国である可能性も否定できません。あるいは日本での可能性もゼロとは言えないわけですから、今度の震災に対する危機管理、非常に甘かったわけですけれども、ぜひそういった反省に立って、今すぐにでもそういったマニュアルをつくって体制を整えていただきたいと思います。ぜひ大臣、一言御意見を伺いたいと思います。
  15. 河野洋平

    河野国務大臣 今御指摘になりました条約のきっかけとなったチェルノブイリ事故当時、私は実は科学技術庁長官をしておりまして、まさに国境のない事故影響というものを実感をいたしました。自来、我が国はこの問題について、これは当時ソ連でございますが、ソ連に対して事故通報あるいは事故実態を明確にしてもらいたいということを言い続けてきたわけですけれども、なかなか実態がわからないという状況でございました。  環境の問題を初めとして、もちろん人体に直接間接影響を及ぼす可能性のあることでもありますから、こうしたことは国際的に条約をつくってやらなければいけない、こういうコンセンサスができ上がってこの条約づくりへ進んだわけですが、条約ができました以上、それを効果的にするためには国内においてもマニュアルづくりというものが必要であることは、もう議員御指摘のとおりだと思います。今の御意見を踏まえて、関係省庁にも私どもから呼びかけたいと思います。  ただ、この問題は、現場を持っておりますのは通産省そして科学技術庁なものですから、この両省庁が果たす役割は非常に大きいわけでございます。かといって、外務省もただ受け身に回っているというだけではならぬと思いますので、外務省外務省として何をやるべきか、何ができるか、十分検討したいと思います。
  16. 笹木竜三

    笹木分科員 次の質問に移りたいと思います。  国連海洋法条約について、日本も九六年の批准を目指しているというふうに聞いております。それに向けて、今いろいろな国内法整備ですとが関係各国との調整をされているのかと思いますけれども、その状況について事務方の方、御説明をお願いします。
  17. 折田正樹

    折田政府委員 長年にわたり交渉が続けられておりました国連海洋法条約が、昨年の十一月十六日発効いたしました。日本政府といたしましても、海洋法条約早期締結に向けていよいよ作業を本格化させているところでございます。  本件に係ります国内法、完全にまだ洗い出しは済んでいるわけではございませんけれども、数えますと七十ぐらいにも及ぶ日本国内法に関連するのではないか。そういう国内法日本がこの条約締結するに当たってどのように調整するか。あるいはアンブレラというのでしょうか、大きな国内法をつくる必要があるのかないのか。そういうところを含めて、関係する所管庁も二十にも及びますので、そういうところとも御協議をしながら、いよいよ作業を本格化させているところでございます。可能でございましたらば、来年の通常国会にお出しできればということで作業を進めているところでございます。
  18. 笹木竜三

    笹木分科員 海洋法条約全体の広がりの中ではごく一部の小さい問題かもしれませんけれども、常に問題になるのは中国、韓国との間の漁業でのいざこざの問題です。  海洋法条約とは直接関係しませんけれども、二百海里、この中国、韓国との間ではなかなかそういう原則どおりはいかないということで、日本の場合、沿岸、沖合の漁業、就業者数が三十万人、百トン未満の船籍が二十七万隻ということで、ずっとトラブルが続いているわけです。  このトラブルについて、例えば日本としての被害は大体毎年どのくらいの金額なのかという点と、今どのような取り組みをなされているのか。これも事務方の方で結構です。
  19. 川島裕

    ○川島政府委員 日中の漁業関係及び日韓の漁業関係は、先生御指摘のとおり、韓国の場合の違反操業、それから中国が日本沿岸に大挙出てきて乱獲をする等、まさに大変問題の多い水域でございます。  それで、違反でどれくらいの額がということは、ちょっと私どもも把握しておりません。多くの場合捕まらないで逃げてしまうというところが、まさに非常にいりいりした状況のポイントでございます。  これをどうするかということでございますが、日韓関係につきましては、累次の日韓首脳会談や何かで日本側から申し入れを行いました結果、金泳三大統領自身が大変強い指導力を発揮しているようでございまして、昨年に至りまして、九四年になりまして九三年の五分の一ぐらいに激減しております。九三年が千二百五十四件の違反操業、昨年が二百三十件ということで、それなりに韓国側の措置の成果は出ているということでございます。  いずれにいたしましても、日韓、日中それぞれこの漁業関係をどういうふうにするかということで、日韓の場合は実務者協議というのを今まさにやっておりますし、日中の漁業関係につきましても日中漁業共同委員会という場がございまして、これも先週行いましたのですけれども、操業問題について問題解決のためにやりとりを続けている、こういうのが現状でございます。
  20. 笹木竜三

    笹木分科員 一昨年に細川総理が金泳三大統領と会って、そのときにいろいろお話をされて、その後韓国での取り締まり強化があったと聞いております。  大臣にお伺いをしたいわけですけれども、まだ減ったとはいっても相変わらず問題が続いているわけです。これについて何か働きかけをされる用意があるのかどうか、お願いします。
  21. 河野洋平

    河野国務大臣 今政府委員御答弁申し上げましたように、日韓関係におきましては、首脳会談で、今御指摘のように、細川・金泳三大統領との間の会談、さらには村山総理と大統領との会談、両会談でいずれもこの問題について言及がなされまして、私は村山・金泳三会談に同行いたしましたが、お二人とも、つまり漁業には大変造詣が深いということもあって、この問題についてはいろいろとお互いに感じ合うところがあったように伺っております。そうした影響でしょうか、今政府委員御答弁のとおり、非常にこの問題については効果が上がっているように私どもは見ているわけでございます。  しかし、それはそれとして、今御答弁ございましたように、日韓も日中も実務者会議あるいは共同委員会という話し合いの場がございまして、これはほぼ定期的に開かれるということでもございますので、この場でこの問題は、常に相手方の注意を喚起し、より効果的な方法について検討をするという態度で臨みたい、こう考えております。
  22. 笹木竜三

    笹木分科員 全国漁業協同組合連合会は、資源管理水域を設定し、四十から五十海里ですか、旗国主義なんだけれども、この四十から五十海里については沿岸国が資源管理水域を取り締まれるようにというような主張を長くされております。これについて対応する用意があるかどうか、これは事務方の方で結構です。お答えいただきたいと思います。
  23. 川島裕

    ○川島政府委員 海洋法がいよいよ発効して、行く行くどうするかという脈絡の中で、日韓、日中それぞれの漁業秩序をどういうふうに持っていくか、現状のままでいいんだろうかという問題意識でいろいろ作業は進めております。  特に、沿岸国が拿捕権を持ちたいという現場の雰囲気というものはよく承知しているわけでございますけれども、日韓漁業関係というのは、三十年にわたって、何と申しますか、李承晩ライン以来の大変な経緯があるものですから、話し合いの中で着地点を見出すべく今いろいろやっておりますけれども、またひとつ方向が見えてきていないというのが現状でございます。
  24. 笹木竜三

    笹木分科員 非加盟国漁船の問題等もいろいろあります。ぜひさらに詰めて対応をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。  次に、ODAに対する評価のあり方について御質問をしたいと思います。  ODAに対する評価は、平成元年から見てもどんどん予算がふえておりまして、平成七年度で、まだ少ないですけれども、二億四千万ですか、をかけて評価を行っております。特にお伺いしたいのが、一つは、外務省が派遣する調査団による評価、あるいは在外公館実施する評価、いろいろありますけれども、外部に委託して、外部の機関あるいは外部の団体による評価の現状、どのぐらいのことがされているのか、量とその内容について、どのような調査による評価なのか、御説明をお願いしたいと思います。
  25. 平林博

    ○平林政府委員 外部の関係者から評価をしていただくことは、援助の評価の中立性、客観性という点から非常に大事でございますので逐次拡充しておりますが、最近までの情勢、御説明申し上げますと、NGO関係ではアジア医師連絡協議会、大変なNGOでございますが、こういう方々にネパールに行っていただいたり、あるいは会計検査院のOBの方々にチリやペルーに行っていただいたり、マスコミ関係者、大学の先生方あるいは民間のシンクタンクといった方々にいろいろな方面に行っていただいております。平成六年度におきましては、そういうものを全部合わせますと、国の数で申し上げますと十三ないし十四ぐらいの数にわたっております。  また、国際的な専門家日本専門家じゃなくて国際的な専門家にもお願いする評価もございます。平成六年度は、タイの専門家一人にお願いしてそういう評価も行われております。
  26. 笹木竜三

    笹木分科員 もう少し細かく、外部、例えば専門家ですとか学者の方々によって、大使館の方々あるいは外務省の方々と一緒に行くような調査、それとNGOに完全に委託してNGO独自でやっていただく評価、それぞれ数がどの程度あるのか、御説明いただきたいと思います。
  27. 平林博

    ○平林政府委員 お答えを申し上げます。NGOということで狭く限りますと、まだ、たくさんあるわけではございません。平成六年では、先ほど申し上げましたような三件程度でございます。大学の先生には、平成六年度では五人行っていただきました。マスコミ関係では二名、会計検査院関係が一名、それから、先ほど申し上げました国際的な専門家の方が一名、こういうことでございます。  そういうことで、まだ全体の数、外務省関係で百六十ぐらい、JICA、OECF合わせますと二百八十ぐらいの評価を年間やっておるのですが、まだまだこの点は改善の余地があろうか、こういうふうに考えております。
  28. 笹木竜三

    笹木分科員 それと、例えば援助をしている相手の国、被援助国との合同での評価、これはどの程度あるのか、実態を御説明いただきたいと思います。
  29. 平林博

    ○平林政府委員 被援助国側は評価を受ける側でございますので、そこと一緒になってやるということはございません。便宜は計らってもらいます。  我々がやっておりますのは、先生御承知のとおりでございますが、よその援助国、例えばアメリカとかフランスとかと一緒にやる、あるいは国際機関、世界銀行等と一緒にやるような共同の評価ということでございます。  こういうものは合同評価と申しておりますが、過去におきましては、日本は、国でいえばカナダ、豪州、ニュージーランド、スウェーデンなどとやってまいりましたし、本年度は、マダガスカルとスリランカにおきましてフランスと合同評価を実施しております。また、国際機関ということになりますと、国連の開発計画とか世界銀行とかユニセフとか、そういったところと合同でやるということでございますが、この援助の評価の客観性を高める、あるいはお互いにお互いの援助現場を見てお互いに学ぶということもございますので、こういった合同評価も逐次拡充してまいりたい、こういうふうに考えております。
  30. 笹木竜三

    笹木分科員 日本のプロジェクトは、私も個人的に見て回ったときがありますけれども、非常にいい方だと思いますけれども、まだまだ、どの国に比べてということじゃなくて、さらにいいものを目指すべきだと思います。  それに当たって、今お話にもありましたけれども、NGO、これは日本はこの十年非常に育ってきておりますけれども、例えば相手国、被援助国においても、アジアの国々、非常に数が多くあります。しかも、恐らく日本に比べてもそのすそ野も広く、いろいろな団体が育っていると思います。評価報告書を読ませていただきましても、これは十年前に読ませていただいても大体同じような論調だと思うのですけれども、やはり問題というのは、例えばメンテナンスとか運転資金とかが相手の国に足りなかった、人手、金、両面とも足りなかったということで、せっかくのいい計画が、プロジェクトがなかなかその後機能しなかった、こういった例は今でも多くあるようです。  あるいは、新聞などで、これは技術援助ですとか無償の比較的小規模援助の場合ですけれども、相手国の例えは集落とかその地方の実情とか、詳しく把握することができなくて失敗するケース。私がかなり前に行ったタイの東北部でのため池プロジェクト、ため池をつくる、乾季にそのため池を使ってもらうというプロジェクト。ある集落に十カ所ぐらいつくっていましたけれども、非常にいいプロジェクトですけれども、実際に調べていきましたら、その土地をやはり何人かの地主から提供していただいて、それでつくっている。つくったため池はみんな平等に使うようにということで、そういったプロジェクトだったわけですけれども、実際には、土地を提供した方がほとんどその使用権については采配を振るっている、実際には使えない農民も三割いた、その集落でですけれども。そういったことを実際に見てまいりました。  こういったことまできめ細かくやれというのは、やはりなかなか外務省の皆さんには酷なのかもしれないとも思います。逆に、たくさんNGO、相手国のNGOもあります、あるいは日本国内にもたくさんNGOがありまして、各国に散らばって、一年、二年住み込みでいろんな活動をしております。特に、技術協力ですとか無償の資金協力、こういったものについては、さらに日本国内のNGOあるいは相手国内のNGOにその評価に対してもっとかかわってもらう、これが非常にいい効率的な評価になるのじゃないかと考えます。  大臣にそれについての御意見を伺いたいと思います。
  31. 河野洋平

    河野国務大臣 NGOが世界各地、今お話がありましたように、とりわけ開発途上国で積極的な活動をしておられるということに、私はまず最初に敬意を表したいと思います。正直、なかなか手の届かないところまで積極的に行っておられる、我々からすればやや危険が伴うのではないかというような心配もいたしておりますけれども、大変に、現地の人たちとも理解し合うということから非常に積極的に活動をされておられるということ、これはなかなかできない部分というものもあるわけで、我々としては大変ありがたいことだと思っております。  したがいまして、時にこうした方々とうまく連携がとれて、かみ合って援助の効果がより高められる、あるいは効果的に援助が行われる、あるいは援助の質が高まるということであるとすれば、それは本当にいいことであると思います。  問題は、NGOといっても組織の大きなNGOもあれば、本当にごく少人数でやられる方もある、あるいは非常に長期にわたって作業をしておられる方もあれば、まあそう長期でない方もある。それはそれぞれなものですから、NGOといっても一口で全部を表現することはなかなか難しい部分があるわけですが、しかし、我々としては、連絡、提携できる部分については、これはやっていくことは差し支えないというより、もっと積極的な私は価値を感じております。
  32. 笹木竜三

    笹木分科員 非常に熱心なNGOの方々が相手国に行って活動をされているわけですけれども、まあ資金難で苦しんでいるのは大体共通の問題です。  外務省も三億ぐらいですか、無償資金協力の中で三億円ぐらいはNGOにいろいろ、ODAの一部を、ことしでしたら協力費として出しているということを聞きますけれども、まだ日本はNGOに対する、例えば民間とか個人からの寄附、それと国からの援助を合わせた額、NGOに対するお金の集まりぐあいでは、例えばドイツの五分の一、ヨーロッパの国によっては十分の一ぐらいの段階です。  ぜひ、まだいろいろなNGOがあるのはわかりますけれども、育てていく意味でも、この評価にかかわるというのが非常にいいんじゃないか。これは無償資金とか技術協力だけじゃなくて、大規模プロジェクトの場合でも事前調査に対してかんでいただくというのは、結果的に非常に大規模プロジェクトが、誤解ですとか調査の足りなさで、いろいろな問題で実施できなくなるような場合もあるわけですから、事前調査についても非常に有効かと思われます。あるいは、相手国の日本援助に対する理解を増すためにも非常に有効だと思います。ぜひこの評価にNGOをもっとかかわっていただくことを検討していただきたいと思います。  もう時間ですので、きょういろいろ質問いたしましたけれども、最初の、特に一番急ぐ問題として、原子力発電所事故通報あるいは援助に関する条約、そのマニュアルを、科技庁通産省と一緒になって早くつくっていただきたいと思います。  では、質問を終わります。
  33. 衛藤征士郎

    衛藤主査 これにて笹木竜三君の質疑は終了いたしました。  次に、江田五月君。
  34. 江田五月

    江田分科員 河野外務大臣とは、私が議員になってからずっと長い間、何かと深いおつき合いをさせていただいてきたと思っております。十数年前になりますか、参議院時代には私の属する社民連と河野さんの新自由クラブと一緒の会派を組ませていただいたり、一緒に参議院選挙を戦わせていただいたりしましたが、今は与野党に分かれております。なかなかおもしろいものだと思っておりますが、河野さんのお人柄や、平和や環境や人権などの問題についてのお考えもよく承知をしておるつもりで、尊敬を申し上げているわけですが、きょうはこういう機会をいただきましたので、国際社会における人権の問題について、最大限の敬意を表しながら、幾つか御質問したいと思います。  ただ、冒頭ちょっとお断りをしたいんですが、三十分時間をいただいたんですが、五分おくれになっておりまして、私の次の日程で、この時間を五分間短縮させていただきたいんで、二十五分で質問を終わりたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。これは私の都合ですので、済みません。  まず、我が国の外交における人権問題の位置づけ、さらに、河野外務大臣国際人権問題についての基本的な考えについてお伺いをしたいと思います。  私はやはり、今歴史の一番基本的な特徴というのは、地球が随分小さくなった、国境というのが随分狭くなった、こういうことだと思っております。この地球とか世界とかの運営の仕方について、世界のどの地域の人間も皆物を言う権利があるんだ、それぞれの地域に住む人たちがその代表者を自分たちで決めて、その代表者がみんなで集まって、この世界をどう動かしていこうか、そういう議論ができるような、そういうことを世界の人々みんなに保障をしていかなきゃいけないし、また、どの国もその領域の中に住む人々に対して、人間として尊重される、そういう人権というものを保障していく義務を世界に対して負っている、そういう時代が来ている。  もちろん現実の壁というのは、これはもうとてつもなく厚いですから大変ですけれども、そのことを百も承知で、しかし日本もそのために、つまり、世界じゅうの人々の人権が守られていく、そういう世界をつくるためにありとあらゆる努力をしなきゃいけないという、そういう時代に来ていると思いますが、まず、その点について大臣の御見解を伺います。
  35. 河野洋平

    河野国務大臣 本当に長いおつき合いで、こういう立場で答弁をするのは何か妙な気がしますが、お尋ねでございますからお答えを申し上げたいと思います。  私は、江田議員が、例えばアムネスティに非常に熱心であったり、その他世界各地に人権問題をテーマに飛んで歩いておられるということは百も承知でお答えを申し上げるわけでありますが、人権というものは人類共通の普遍的価値、こう我々は考えているわけで、正当な国際的な関心事項というのが我々の基本的な姿勢でございます。これは、つまり、そうした基本的な認識というものをベースにして世界の平和、安定というものの基盤が構築されるということが最も望ましいというふうに思っているわけでございます。  したがって、我が国としても、重大な人権侵害、に関しては、国際社会が懸念を表明すること、それをすべて内政干渉だと言って排除したり、あるいは各国や地域の独自性を理由にして、人権尊重への努力を怠るということは適当ではないというふうに考えております。各国はその置かれた状況の中で、人権の保護のため最大限の努力を行う必要があるというのが我々の基本的な認識あるいは立場、主張でございます。問題は、それぞれ各国が置かれた状況の中で最大限の努力がなされるか、なされないか。なされているかどうかという評価には、これはいろいろあるかと思いますが、まず基本的にそういう考えを持っております。
  36. 江田五月

    江田分科員 大変勇気づけられる御発言で敬意を表しますが、しかし、これはお互いもうわかっておるわけですが、現実の壁というのは非常に厚いし、また、それぞれの置かれている国の立場というものもあり、アプローチの仕方もいろいろある。しかし、だからといって、例えばアジアの人権とヨーロッパの人権とは異質のものだなんということはない。人権というのは普遍的な価値であって、そこに対してそれぞれの国ができる限りの努力をしなきゃならぬ、困難があるから後ろ向きになりますということであってはいけない、このことは同じ認識であろうと思っております。  そこで、少し具体的な問題についてお聞きをいたします。  まず最初に、先ほど私申し上げましたように、この地球の動かし方について、世界のどの地域の人もそれぞれ皆現代に生きている地球市民として参加をしていく権利があるんだ。すなわち参政権、自分の地域の代表者を自分たちが選んで、その代表者がこの地球の動かし方について協議をしていく、そこにかかわるという、そういう権利が認められなきゃならぬと思うんですが、その意味で一番今私ども心を痛めなきゃならぬのが、ビルマあるいはミャンマーの問題であろう。  ここでは選挙が行われたわけですね。そして国民の代表者が決められたわけです。ところが、その代表者が集まって議会を開くことが妨げられている、そういう状況が続いている。そういう中で、ビルマという国名がミャンマーと変えられる、ラングーンという首都の名前がヤンゴンと変えられる。今日本にも大勢のビルマの人々がおられて、この皆さんはミャンマーとかヤンゴンとかというのは認めない、民宿をつくってそこの名前がビルマという名前で営業しているなんという、そういう皆さんもおられるわけですが、お互い議会に籍を置き、あるいは政府の役職を担って、この日本の民主主義を動かしていくために努力をしている立場からすれば、これはビルマ、ミャンマーの皆さんの民主主義への努力というのは人ごととは思ってはならないことだろうと思っております。  経緯はいろいろございます。それは省略をしますが、ビルマの人権問題の象徴となっているのはアウン・サン・スー・チーさんの自宅軟禁状況ですね。これからの解放というもの、これはまだ実現をしていないので、我が国でもこの問題に対する関心は高い。昨年は、衆参国会議員全部で五百八人の署名活動があった。小杉隆さんが会長、鳩山由紀夫さんが事務局長、土井たか子さん、原文兵衛さんが顧問、私も副会長を務めて、アウン・サン・スーチーさんの解放を求める議員連盟というものを超党派百十一名から成る議員でつくりました。早くつくらないと、そのうち準備をしているうちにアウン・サン・スー・チーさん解放されてしまうんではないかなどと心配をしていましたが、この心配は実は杞憂で、なかなか簡単にはいかないという状況でございます。  日本政府は、ODA大綱に基づいて人権状況の改善、民主化の促進のためにミャンマーへの経済協力を原則停止をしているわけですが、つい先日も新聞にいろいろ報道されたりして、日本政府立場が揺らいでいるのではないかという心配を国際社会に与えた。聞いてみますと、いやそんなことはないんだということですが、そういう報道もあったりしましたので、あえてお伺いをしますが、アウン・サン・スー・チーさんの解放を含め、国際社会の大方が納得するような人権状況の改善がないと現在の方針を変更するということはない、こういう立場日本はとるべきだと私は思いますが、いかがですか。
  37. 河野洋平

    河野国務大臣 我々も、民主化であるとか人権状況の改善というものに大きな関心を持っております。スー・チー女史はまさに議員おっしゃるように象徴的になっていますね。ほかのことが全部うまくいってもスー・チーさんだけはだめという場合に、じゃどうするかとか、いろいろなケースがあるんだと思います。ただ、やはりスー・チー女史という、選挙でも勝って非常に国民の支持を得たことのある方でありますだけに、その去就というものはどうしても関心が集まることだけは間違いがないわけで、我々もスー・チー女史の去就というものに関心を持っております。  ただしかし、それだけではない、やはり少数民族に対する対応の仕方とか、それからそれ以外にも民主化への何か兆しというものがないだろうかということも、我々とすれば、これは我々とかつてのビルマ、今のミャンマーとの間には伝統的な長いおつき合いがありますから、言ってみればかつて非常に親目的だと言われた地、国でありますし、日本にも思い入れをたくさん持っている人たちがいるわけで、何とか支援をしたいという強い気持ちもあるわけです。支援したいという気持ちはあるけれども、今この支援の仕方によっては間違ったメッセージとして伝わるのではないかという気持ちから、先ほどお話しのように原則停止、そして人権とか民主化というものに改善の兆しが見えるまでは原則停止だよ、こういうことを言っているわけですけれども、そのことが一体何を指して民主化の兆しと言うか、人権問題の改善の兆しと言うかということについては、これは我々も慎重に考えなければならないと思います。  欧米諸国がいろいろな動きがあるということで、マスコミの一部ではさまざまな報道がございますけれども、我々としてはミャンマーに対して支援をする気持ちがあります。ありますだけに、問題の改善をぜひしてほしい、こういう気持ち、だ、こういう気持ちをぜひミャンマーの人にわかってもらう、ミャンマーの人というか、現在の為政者の方々にわかってほしいという気持ちで私はおるわけでございます。
  38. 江田五月

    江田分科員 言葉を慎重に選ばれて御説明いただいていることはよくわかるんですが、しかし、じっと聞いておりまして、やはり後で議事録をずっと読むと、これはどうなっているのかなという言い回しになっているのじゃないかという気がするのですね。  やはり基本のところ、すなわち、今の軍政で国民が投票したその結果が政治を動かす中に生かされていないという、これは遺憾なことであって、そしてかなり政治犯の皆さんも釈放されたとか、対話の兆しが生まれているとか、そういうことは非常にいいことではありますが、しかし、やはり国際社会が納得する人権状況の改善、民主化への進展がなければ、これは日本はミャンマーのことを思いながら、しかし、全力でミャンマーの皆さんの生活改善などをODAその他で援助をしますよということになっていかないんですよ、困るんですよ、それは。そこのところはやはりひとつはっきりさせていただきたいと思いますが、いかがですか。そういう立場でよろしいですか。
  39. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返し申し上げますが、我々としてはアジア全体の経済の発展を考えるときに、今のような状況では、あの地域だけがおくれてしまうのではないかというふうにも思うわけです。ですから、やはりアジア全体が経済的に発展をしていくためには、ぜひミャンマーにも考えてもらいたいという気持ちがある。しかし、少なくとも今の状況ではできません。ぜひ改善をしてもらいたい、こういう気持ちでおります。
  40. 江田五月

    江田分科員 今の状況ではできません、改善をしてもらいたい、そういう気持ちだ、そこのところが結論だろうと受けとめておきたいと思います。  次に、東チモール問題について伺います。  これもまた随分タッチーな問題でございます。経過、背景についてはもう述べる時間がございませんが、インドネシアという国がある。すぐ隣に東チモールという国といいますか地域といいますかがある。これは植民地支配の時代に別の、片やオランダ、片やポルトガルの植民地になっていて、そして東チモールの皆さんは民族自決を求めてポルトガルから独立しようとした。一九七五年でしたが、その途端にインドネシアが軍事進攻して自分の領土にしてしまった。  その問いろいろな、ああ言えばこう言うというのがありますが、日本はこれまで、ここの帰属についてはポルトガルとインドネシアが国連の仲介で話し合いをしておりますので、日本はそのどちらに加担するということを決めるわけにいかない、日本が領土の帰属を決める立場にない、したがって話し合いを見守るということでずっときているわけで、あわせ東チモールの領域内でいろいろな人権侵害が言われておった。そのことについては、日本はいろいろな形で人権状況の改善を求めてきた、こういうことだと私は理解をしておるのです。  ことしの一月十二日、東チモールでまた住民がインドネシア国軍に殺されたという事件があったようですね。先日外務省の担当者の方に説明いただきましたが、日本政府も現地の大使館を通じて事実関係調査等についてインドネシア政府に申し入れているようであります。東チモールの人権状況について、日本政府として引き続き重大な関心を持っていただきたいと思っております。  やはり民族自決、これは二十世紀の課題で、二十一世紀まで持ち越す課題ではないと私は思うのですね。ですから、民族自決が課題になっているところは、とにかく国連がもっと積極的に動いて早く解決をする。東チモールの皆さんも、別に独立だけを求めているわけではないので、自分たちの運命については自分たちで決めさせてもらいたい、どこからの干渉なしに。そしてその上で、例えばインドネシアに入るというかもしれない、あるいは自治領というような格好があるかもしれない、独立ももちろん一つの選択肢だが、そういう決め方をさせてほしいということを言っているわけで、こういう課題については、日本国連の中などでひとつ積極的に動きながら、民族自決というのはもう解決をしてしまうのだという意欲を持ってほしいと思いますが、いかがですか。
  41. 川島裕

    ○川島政府委員 経緯につきましては、まさに先生の御指摘のとおりでございます。  一番最近は、一月にまた六名ばかりどうも処刑されたのではないかという問題提起等があることも承知しておりますし、まさに御質問の中にもありましたとおり、関心はまた表明しておりまして、事実関係を見きわめることとしております。  民族自決という一般論につきましては、確かにこれは今世紀における一つの重要な柱として国際関係において大きな意味合いを持つわけでございますけれども、ただ個々の、例えば東チモールについてどうかと言われますと、これはやはり日本としては、まずは国連事務総長の仲介努力を見守るということ以上には踏み出してはいないのが従来の立場でございますし、それは変える考えは今のところない次第でございます。
  42. 江田五月

    江田分科員 ただ、国連事務総長の仲介による話し合いは、それはそれで大変重要で、話し合いもかなり精力的に行われていると聞いておりますが、問題は、当事者は東チモールという地域に住んでいる人々なんですね。その人々が自分たちの民族自決権というものを尊重してほしいと言っているわけです。ところがそうでない、旧宗主国と今支配を事実上行使をしている人々、ポルトガルとインドネシアが話し合いをしているわけで、その民族自決権を主張している皆さんが話し合いに入っていない、入れていただいていないというのは大変残念なことだと思います。  外務大臣、この問題について国として関心を持っているか持っていないか、この点だけでも結構ですが、お答えください。それと、民族自決権問題というのは解決をしたいという意欲をお持ちかどうか。
  43. 河野洋平

    河野国務大臣 東チモール問題には関心を持っております。  私も、インドネシアの外務大臣に対して、この問題でお話を申し上げたことがございます。少なくとも現在は、インドネシアが同地域を効果的に統治しているという状況であるという認識があって、したがって、そういう状況下で少なくとも平和的に問題を解決してほしいということを私は期待をしているわけでございますが、たび重なって人が殺されている、あるいは亡くなっているという状況には、大変憂慮すべき事態だというふうには思います。しかし、いずれにしても、この問題、インドネシアがポルトガルとともに国連の仲介等を受けて話し合いで解決をしてもらうべきものであろうというふうに思っているのです。  議員のおっしゃる民族自決云々という問題は、これまでどこでも言われてきた問題であって、そうした考え方が効果的にあるいは説得力を持っているということであれば、それはそれでいいと思うのです。ただ、そのことではなかなか問題が解決しないということになったときに、ではどういう方法があるかということを考えなければならないと思いますが、我々としては関心を持って、外相にはお話をその都度累次しておりますけれども、一義的にはやはりインドネシアがこの問題解決のイニシアチブを持っておられるというふうに思います。
  44. 江田五月

    江田分科員 インドネシアが効果的に統治をしておるというこの評価はまた、これいろいろあって、無理やり人権をねじ曲げて統治しているのは効果的統治と言えるかとかいろいろありますが、まあそれはよろしい。  次に、同じく民族自決の観点で問題となる地域というのは西サハラというところでございますが、河野外務大臣、西サハラというのはどこにあるか御存じですか。
  45. 河野洋平

    河野国務大臣 議員から質疑通告がございましたから、十分調べてまいりました。
  46. 江田五月

    江田分科員 時間がありませんのでそれだけで結構ですが、ひとつこういう問題もあるのだということをよく御理解いただきたいと思います。  人権問題でもう一つ、死刑廃止条約というのがありまして、もう時間がありませんが、死刑の問題というのは本当に、国民世論の動向などもありますけれども、しかし世界の大きな流れの中で、人がというか、国家権力などが、いかなる理由があっても自分の支配下にある人の命を奪うというようなことはいけないのではないか。人間の命というのは人間が奪うというものではなくて、やはり神というか仏というか何というかはわかりませんが、そういう人間の知恵を超えただれかにゆだねられているものではないか、そんな感じがするのですが、河野外務大臣の死刑というものに対しての基本的な考え方をお聞かせください。
  47. 河野洋平

    河野国務大臣 人の命というのは、本来、議員おっしゃったように、神様というか仏様というか天というか、そういうものが与えてくれたもので、そういうものにゆだねられているということが一番いいというふうに思います。  ただ問題は、それぞれの社会がどうやって秩序を維持するかということについてさまざまな議論が行われて、最小限度の秩序維持のための方策ということとして法制が決められているということになれば、それはそれぞれの社会の法制にのっとるべきであろうと思うし、その法制度というものがやはりその国の国民の意思、意向というものを全く無視して変えられるというわけにはいかないのではないかというふうに思います。
  48. 江田五月

    江田分科員 この問題については、実は私、三年前に同じ予算委員会分科会で当時の渡辺外務大臣にお尋ねをさせていただいたのですが、渡辺さんから「真剣に研究します。」という、そういう答えをいただいていまして、河野さんは自民党総裁を争った相手でございますが、ひとつぜひ真剣に考えていただきたいと思います。  そのほか、例えばコロンビアの問題であるとか、あるいは今世界を見ますと、例えばチェチェンのことあるいはチベットのこと、ユーゴのこと、パレスチナのこと、南アは相当改善はされた、しかしまだいろいろ起きている、世界じゅうに人権について憂慮すべき事態というのはまだまだいっぱいあるわけです。日本はこれから国際社会の中で、国連の常任理事国問題、これはどうなるのか、いろいろありますが、いずれにしたってやはり国際社会のことは他人事じゃない、日本にとって自分のことだ、自分も国際社会の一員として国際状況をいろいろつくっていく、変えていく立場にあるんだという、そういうことですから、人権問題というのは日本にとっては重要な関心事でなければならぬ、世界のどの地域のことについてもそういう覚悟でやっていただきたいと思います。  最後に、覚悟を一言伺って終わりにします。
  49. 河野洋平

    河野国務大臣 人権問題について、私も長く関心を持ってまいりました。現実の国際政治というものはなかなか大変なものだということは先ほど議員も御自身おっしゃったとおりでございますが、そうした現実の国際政治の中でどうやって人権問題というものを大事にしていくか、一種のチャレンジだという気持ちも実はいたしております。
  50. 江田五月

    江田分科員 終わります。
  51. 衛藤征士郎

    衛藤主査 これにて江田五月君の質疑は終了いたしました。  次に、辻一彦君。
  52. 辻一彦

    ○辻分科員 外相にまずお尋ねいたします。  きょうは、APEC、それから中国の問題、それから環日本海と三江平原開発等について若干お尋ねしたいと思います。  まず最初に、私は戦後の青年時代を青年運動にほとんどかけてきました。そういうことで、昭和三十年に当時の中日友好協会の会長でありました廖承志先生から、五十名代表を三十一年の春中国に招きたいという招請をいただいた。旅券が多分出るだろうというので、全部五十人代表が集まったのですが、当時の鳩山内閣が昭和三十一年の三月二十四日、臨時閣議をもって共産圏渡航制限を決めて、そのために旅券が出なくなって、半年かかって二十二名だけ旅券を手に入れて、昭和三十一年の九月から十一月まで七十五日間、二万五千キロ中国を二十二名が初めて行きました。  そのときに、初めて戦後日本人が行ったところがほとんどなんですが、雲南の昆明からハルビン、東北に至るまで西安や重慶等も全部訪ねた。そこで中国の青年団体と日中青年不戦の誓いを結んで、再び日中の青年は戦争はしないということを誓い合おう、こういうことで七十五日間中国全土を回ったことがあります。  一年置いて昭和三十二年ですが、中国から初めて十名青年代表を招いて、日本を約一カ月回ってもらった。そのときに来たのは、中華青年連合会の国際部長だった呉学謙さん、それから日本科長であった楊振亜、いずれも外務大臣、副総理、また駐日中国大使としてその後活躍をしました。  そういう縁で、私は青年時代から、日中の友好と協力アジアの平和の基本である、こういう確信を持って今日までいろいろな時期を過ごしてきましたが、欧州においてもイギリス、ドイツ、それからアジアにおいても日本、中国の協力というものが何といっても大事ではないか、そういう点で、すべてのアジアの平和のもとは日中の友好や協力にある、こう認識をしておりますが、大臣のこれについてのひとつ御見解をまずお尋ねいたしたいと思います。
  53. 河野洋平

    河野国務大臣 発展するアジアの中で中国が占める役割、果たすべき役割というものは大変大きいものだというふうに思います。それは、あの広大な領土もそうですし、あれだけの人口もそうです。と同時に、長い歴史、文化、伝統、そういったものをとってみても、この国がアジアの発展あるいは安定、そういったものに大きなかかわりを持っているということは、だれもが疑わないところであろうと思います。  今議員がお尋ねのように、その中国と日本との関係は、過去において一時大変不幸な時代もございましたけれども、そうしたものを乗り越えて、両国が未来、将来に向かって友好的な関係を発展させていこうという気持ちになるということは極めて大事なことであろうというふうに思います。我々の先輩は、日中国交正常化のために大変な努力をされて、そして両国関係についても子々孫々に至るまでの友好を誓い合っだということは、我々大変敬意を表したいと思っております。そういう気持ちで、私はこの日中関係、見てまいりたいと思います。
  54. 辻一彦

    ○辻分科員 基本的に我々と同じような認識を持っていらっしゃるということを伺いました。  そこで、今の日中関係でいろいろな、両国間ですから、いいとき、またきしむときもありますが、台湾問題は非常に難しい問題だと思います。これはもう基本的に日中の共同声明と平和条約を基本にして、中国はもう当然一つですから、台湾は経済的な関係に限るべきだ、こう思いますが、私は、去年十一月十七日、WTOの特別委員会においても総理と外務大臣にこのことを御質問いたしました。御答弁をいただいておりますが、APECの会議がいよいよ大阪で開かれるわけでありますので、そのときに、やはり台湾の出席があっても、これは経済関係に限るべきである、ここは明確にしてきちっと臨むということが大変大事だと思います。その御認識をひとつお伺いいたしたい。
  55. 河野洋平

    河野国務大臣 大阪でのAPECの非公式首脳会議への台湾からの出席問題につきましては、一昨年のシアトル会合及び昨年のボゴールでのやり方を踏まえて対応をするということを先般も総理がお述べになったところでございまして、私も全く同様に考えております。
  56. 辻一彦

    ○辻分科員 私も、長い日中関係は、昭和三十年ぐらいからですと満四十年になりますが、これは台湾のことはよほどきちっとしないと、非常に中国はこの問題については敏感である、ちょうど我が国が核問題に敏感なのと同様のものを持っていると思いますので、今の御発言をもとに、ぜひひとつしっかりと努力をいただきたい、このように思っております。  そこで、WTOのときにも若干お尋ねしたのですが、APEC参加の各国の中には、関税や貿易の自由化を前倒しにして、ガットの、この間のWTOの協定等を前倒しにやるべきだ、その中で農業問題を前倒しにすべきでないかというような意見があるということも聞いておりますが、これは大変難しい問題で、特に、食糧の自給率が穀物ベースでいうと二九から二二%にも大転落をして、先進諸国の中にはこんな例はない、また開発途上国にもごく下の方に、我々は今自給率がなっている。こういう状況を見ますと、農業の、食糧の自給卒という点と環境と国土の保全という点から、これ以上ひとつ後退させては絶対にならない。  そのために、これは副総理にも御努力いただいて、十月二十一日夜半の政府・与党の会議におきまして、六兆百億、一兆二千億の地財措置を含めて国内対策が打ち出されたわけでありますが、それらを、私は、こういうものを前倒しにするとか緩めれば、崩壊を、せっかくの努力を掘り崩す懸念もある、こう思いますので、ここは、APECで大いに論議されるのは結構でありますが、この点についてはしっかりと対応していただきたいと思いますが、お尋ねいたしたいと思います。
  57. 河野洋平

    河野国務大臣 昨年のAPECにおきまして、インドネシアが議長国でございましたけれども、インドネシアのイニシアチブによりまして、いわゆるボゴール宣言というものが発出されたわけでございます。  このボゴール宣言、御承知のとおり、二〇一〇年、二〇二〇年という自由化に向けての政治的な方向性を定めた宣言、こういうことだと思いますが、この宣言を発出するに当たりましても、各国にはそれぞれ意見があったようでございます。あったようでございますというのも少し妙な言い方でございますが、しかし、実際には、非公式首脳会議はインドネシアのイニシアチブの宣言案を一つも手を入れることなく、最終的には認めるという状況になりました。それは、やはり何といってもAPECの一つの方向性を示す政治的意味合いがあるということであって、そうしたことをインドネシアが非常に各国に対して説明をなさったということもあるかと思います。  しかし、我々はそのボゴール宣言がなされたAPECを引き継いでことし大阪でAPECの会合の議長を務めなければなりません。この大阪のAPECは、やはりシアトル、インドネシアと続いてきたAPECの会合を踏まえて、その方向を少しでも具体的に前進をさせるということが重要ではないかという意見もございます。と同時に、他方、域内全体の経済を進めるためには、協力協調関係というものを進めることが重要だという意見もあって、そのことがむしろ自由化を早めることにもなるんだという議論もあって、十一月のAPECに向けて今議論をまさに始めたところでございます。  議員御指摘の農業問題につきましては、これも各国それぞれ農業問題を抱えている国があって、いろいろな議論がこれから先もあるだろうというふうに予想をいたしておりますが、我が国といたしましては、今議員が御指摘のように、まさにガット・ウルグアイ・ラウンドの合意を我が国として了承をする、合意をするというときに、あれだけの痛みをみんなでこらえて、あるいは痛みをみんなで分かち合ってといいますか、そしてガット・ウルグアイ・ラウンドの合意を認めたといういきさつがございまして、APECの中でも、我が国としては、あのウルグアイ・ラウンドの合意を我々は忠実に実施するという態度で臨むということを基本的に考えているところでございます。
  58. 辻一彦

    ○辻分科員 これは要望ですが、ウルグアイ・ラウンド後の交渉、WTOの交渉は六年たてばあとは何年か前から始まると思いますから、ひとつ日本の農業については、工業と農業はやはりかなり違うという、こういう認識を踏まえて、しっかりとした我が国の考え方を主張していただくように要望いたしておきたいし、それからまた、早目にこれは十分ひとつ理論武装をし、大いに検討をしておいていただきたいと思います。  そこで、第二は、環日本海の経済圏形成の問題についてお尋ねしたいと思いますが、私は北陸、福井県でありますので、その対岸になるものですから、日本海の沿岸の一員として大変深い関心を持っております。  ちょっと私の考えなんですが、それを申し上げると、環日本海の経済圏を形成するのに大事な四つの点、一つは、北から言えば、シベリアの開発。しかも、木材もありますが、天然ガスの量というものは、場合によれば中東の石油をしのぐ量があって、これを生かせば十分世界のエネルギー関係に貢献をなし得る、こういうような豊富な天然ガスがありますが、これの開発。それから第二は、中国国境にあります、中国の黒竜江省、旧満州になりますが、東北の黒竜江省における三江平原一千万ヘクタール、農耕可能地六百万ヘクタールの半分は農場になっておりますが、半分は低生産地になっている。そこの食糧基地としての開発。それから、サハリン等を含むロシアの沿岸州の開発と、流通の拠点として豆満江の河口開発というこの四点が、非常にこれから環日本海の将来を考えた上に大事だと思います。  これはEU、ECの三億五千万の人口にも匹敵し、北米のNAFTAにも匹敵する人口、労働力、資源、それから資本、技術をこの周辺国は持っていると思うので、力を合わせれば大きな開発可能性があると思うんでありますが、こういう考え方について、環日本海の経済圏形成についての大臣の考え方をちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  59. 河野洋平

    河野国務大臣 我々はこれまで東南アジアとか、ともすれば南に向いていろいろ物を考えるということがあったように思うんです。私は、北東アジア、これは別に私が言い出したわけではありませんけれども、北東アジアというものに対して、経済的にもあるいは安全保障の面からいっても、もっと目を向ける必要があるのではないか。これまでどうも北東アジアというと、かつてソ連がいろいろ関心を示して、安全保障の問題で物を言ったり、いろいろしてきた時代もございましたけれども、今我々は北東アジアというものをもう一度よく考えてみる必要があるんではないか。  これは、今議員は経済面で開発問題についてお触れになりましたけれども、私はロシアにしても、北朝鮮にしても、あるいは中国にしても、もちろん韓国は我が国と最も近い考え方をいつも持っている国でございますが、こうした国々がどうやってこの地域の安定といいますか、あるいは繁栄といいますか、そういうものを考えるかということは、非常に重要なのではないか。そしてまた、なおかつ、考えていい状況がだんだん整いつつあるのではないか。  私は、米朝合意なんというものが、ちゃんと双方が誠実に約束事を果たしていくということができますと、北朝鮮がもっともっと国際社会の中で相互依存関係という状況に入ってくると思うんですね。そういうことを考え、あるいはロシアの今後は、一体どういうロシアになっていくかということをも、これはなかなか簡単ではないかもしれませんけれども、ロシアとの関係も、ロシアの北東アジアに対する考え方もよく確認をしながら、北東アジアの安全といいますか、安定といいますか、こういうことを考えるべき時期に来ているというふうに思うんです。  と申しますことは、そういうものがないと、この地域の開発というものも安心して行われない、あるいは積極的に行われない。私は、こういう地域の経済的な発展というものは、民間がどれだけ積極的にその関心を示し、投資を行い、あるいは経済活動を行っていくかということに結局なるんだろうと思うんです。そのためには、やはり何といっても相互信頼といいますか、あるいはお互いの安定を求めるための考え方の合意がなされなければならないのではないか、そういう状況下で進んでいくことであろう。  私は環日本海で、日本海に面している我が国の福井県、新潟県を初めとして、さまざまな方々が非常に意欲的に取り組んでおられるということも伺っておりますし、また日本海の向こう岸の方々にもそういう気持ちを多く持っておられる方がいらっしゃるということも聞いておりますが、基本的に、そういう大きな安定を保障するようなものが出てこないとなかなか進まないんじゃないか、しかしその機運は出てきているというふうに私は思います。  しかし、その中でも例えば日中関係とか、これはもう揺るぎないものになっているわけですから、そういう部分は今私が申し上げたようなことでなくても進めていくことはできるであろうというふうに思っております。
  60. 辻一彦

    ○辻分科員 その中で、豆満江の河口開発が非常に大事な一つだと思います。米朝関係が、今お話しのように、かなりやや前に向いてきた。この中で、過日アメリカは、豆満江開発に国連とともにいろんな民間団体等が参加をする等を今まで抑えておったのを解除したというふうに報道されておりますね。そういう状況を見ながら、我が国としては国連のあの豆満江河口開発にどう対応しようとしているのか、これをひとつお伺いいたします。
  61. 川島裕

    ○川島政府委員 これは大変興味深い開発計画でございます。中国、モンゴル、韓国、北朝鮮、それから国連、UNDPでございますね、これが既に九二年から五カ年計画の中でこの地域の技術協力プロジェクトの一つとして豆満江開発計画の策定に取り組むことに合意した次第で、ロシアも参加しまして、豆満江地域開発会社設立に関する協定とか開発に関する協定とか、いろいろ作業が進んでいるわけでございます。  我が国といたしましても、この豆満江地域の開発については関心を持っている次第で、国連、UNDP及び関係国からの要請を受けまして、この開発計画の計画管理委員会の会合というものがございますので、そのオブザーバーとして参加している次第でございます。ただ、まだその開発の詳細と申しますか、全貌が固まってないわけで、一部では三百億ドルの経費というようなことも言われておりますけれども、まずは計画の進捗状況を見守っているという段階でございます。  民間企業につきまして、アメリカの企業の動きについて触れられましたけれども、関心を持つ向きが出てきているという印象は持っておりますけれども、要は民間レベルにおいてこの開発に参加するということになるのであれば、これは政府としてはもとより異存はないし、むしろ歓迎すべきものだというふうに考えております。     〔主査退席、越智(通)主査代理着席〕
  62. 辻一彦

    ○辻分科員 シベリア、中国の三江平原沿岸、そして流通の拠点となると豆満江の河口、中国で言えば図們江の河口開発、非常に重要性をこれから帯びると思うので、積極的にぜひ取り組むようにしていただきたいと思います。  時間的に非常に制約されておりますので、最後に三江平原の問題について伺いたいと思います。  私も何回か外務の委員会でも、分科会で過去にも論議をしましたが、十三年前ですか、一九八一年以来、日本の農林省は延べ百八十名、かつてない技術陣を中国に送って、日中共同で三年間かかってこの開発計画の青写真をつくった。しかし、円借款の順位がどうしてもエネルギー、交通あるいは通信の方に回って、なかなか回ってこなかった、しかし、ようやく第六次にめどがついてきたという感じがいたしますが、長い間時間がかかっておりますが、その時期に来たのじゃないかと思います。私も三年ほど前でありますが、二回、春と秋にわたって調査団を編成をして現地も見てまいりました。その後いろんな連絡等もあって、現地からおいでになって要望も聞き、それは外務省、農林省にもお伝えしているところであります。  そこでひとつお伺いしたいのは、円借款の手順といいますか、全部にわたれば大変ですから、この三江平原、黒竜江省の竜頭橋のダムと、それから国営農場にありますが、その円借款のこれからの見通しについて簡潔にひとつお伺いしたいということ、それからもう一つは、現地の方から非公式ないろいろな声を行ったり来たりして聞いておるのですが、十数年前に調査をやってかなり時間がたったので、補充調査を、中国側の独自の調査をもう一度やりたい、しかし、それには遠い日本から協力したいろんな測量の機械等々が十数年たって少し古くなって十分機能していないので、その新しい機器をぜひ協力をしてもらいたい、こういう声があるということも聞いておりますので、それらにどういうように対応しているか、これは外務、農林両省にわたれば、それぞれ簡潔にひとつ御報告をいただきたいと思います。
  63. 平林博

    ○平林政府委員 三江平原につきましては、辻先生本当にかねてから大変造詣も深いし、御理解、御支援いただいていますが、ついに第五次円借款計画で取り上げられることになりまして、我々としては、日本政府がかねてから言っておりました円借款における農業重視あるいは内陸、特に東北部重視、こういう観点からも大変望ましい案件ということで、取り上げることに決定いたしました。  多目的ダムと穀物基地、両方ございますが、これは毎年の年次協議、政府間ベースのいろんな話し合いが毎年これから行われますので、そこで具体的なプロジェクトを詰めてまいりたいというふうに考えておりますが、とりあえずの見積もりでございますと、竜頭橋ダムにつきましては、ダム本体は九六年から四年程度、その他いろんな関連施設がございますので、全体の計画が終わるのは二〇〇二年ぐらいというふうに予想しておりますが、できるだけ手順をよく踏みましてやってまいりたいと思っております。  もう一つの穀物基地は、これは機器その他の供与あるいは施設の建設というものがございますが、こちらの方はもう少し早目に完成するかということでございます。  それからもう一つ、今新しい機器のお話が出ましたが、詳細をまた伺いまして、中国側と政府ベースでお話ししまして、どういうことができるのか、できないのか、改めてよく検討してまいりたい、こういうふうに考えます。
  64. 五十嵐清一

    ○五十嵐説明員 三江平原でございますけれども、先生御案内のとおり、非常に食糧増産の可能性を秘めた地域でございます。農林省といたしましても、八一年以来各種調査団を送りまして、その可能性について検討してきたわけでございますが、当省といたしましては、世界の食糧の安全保障の確保のためには、開発途上国の自助努力によります農業生産力の向上が何よりも大切であるというふうに考えておりまして、積極的にこれまでも農業協力に取り組んできたところでございます。  特に中国につきましては、近年の人口増加等を考慮いたしますと、その食糧需給の安定は世界の食糧の安全保障の確保という点から極めて重要な課題であると考えておりまして、またこのことが、我が国の食糧の安定輸入にもつながるものと考えているところでございまして、三江平原につきましては、このような考え方のもと、中国政府からの要請も踏まえまして、外務省はか関係省庁と相談の上できるだけの協力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  65. 辻一彦

    ○辻分科員 最後にお尋ねした計測、測量等の機器類を含む協力要請にどういうようになっているのか。簡単で結構でございます。ちょっとお尋ねしたいと思います。
  66. 平林博

    ○平林政府委員 今のお話の点は、大変申しわけないのですが、私つまびらかにしておりませんので、早速関係者と話しましてどういう対応をとるか協議し、また必要であれば中国側との話し合いを持ちたいというふうに考えます。
  67. 辻一彦

    ○辻分科員 かなりなところまでは前進をしておるようなので、それで中国の期待に大体沿えるのかどうか、そこを検討をいただいて、足りないところがあればなお努力をお願いしたいと思います。  大臣、最後に一言だけ申し上げてお願いしたいのですが、今お話のありましたように、中国は将来、沿岸を中心にあれだけ経済発展をすると、国民所得が上がって食生活に大きな変化がきて、たんぱくや脂肪、いわゆる家畜をたくさん飼わなければいけなくなる。このえさとか穀物の需要が飛躍的にこれから伸びることが予測されます。一つはやはりそれに中国が対応できるような三江平原の広大な地域に食糧基地の協力をするということが大変大事ではないか。また、トウモロコシ等は、将来日本が、そこでどんどん生産されれば、これはえさの面については遠方から買うよりも近い方が具体的である、こういう感じがいたします。  私は、三江平原に何回か行ったり、のめり込んでおるという御批判を大分聞いておるのですが、実はなぜかというと、私の小学校の同級生が四名、いわゆる満蒙開拓義勇軍で宝清県の竜頭橋の近くに行っておったのですよ。そして、五名で一名亡くなり、四名がシベリア、ウクライナに抑留されて帰ってきた。この間亡くなったのですが、非常にそのことをよく話しておりました。  それで、彼らは純粋でありましたが、国の政策のもとに非常な犠牲になった感じもしますが、今度は日中の友好と平和の中で、この事業を日中で協力してぜひ実現をさす。そして食糧基地が中国のためにも、日本にも役に立つ可能性がある。平和の中に日中協力ができるということが、亡くなった彼らが、何とかやってくれ、こう言って亡くなりましたので、報いられるのではないか、こういう気持ちで思い入れをいたしておりますので、それをひとつぜひ御理解いただいて、これからも三江平原の開発に最大限の努力を外務当局としてもお願いをいたしたい。  一言ちょっと決意のほど、気持ちを伺って終わります。
  68. 河野洋平

    河野国務大臣 先生のお気持ちはよく伺いました。  私どもとしては、日中の円借款のプロジェクトの中で、農業分野、環境分野、こういったことに特に十分配意をするという基本的な考え方を持っておりますので、これに合致したプロジェクトとして私どももぜひ支援をしてまいりたい、こう考えております。
  69. 辻一彦

    ○辻分科員 終わります。
  70. 越智通雄

    ○越智(通)主査代理 これにて辻一彦君の質疑は終了いたしました。  次に、石田祝稔君。
  71. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 それではお時間をいただきまして、若干外務大臣並びに外務当局、関連省庁にお伺いをしたいと思います。  まず最初にお伺いをしたいのは、昨日の新聞記事でございますが、日米安保条約につきましてアメリカの高官の御発言がございまして、またシンクタンクの提言もあった、こういうふうな新聞記事がございました。これは、外務大臣、また外務省として御確認はされておりますでしょうか。
  72. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 御確認とおっしゃいましたが、私ども直接に新聞に出ましたナイ国防次官補のインタビューの内容を確認しているということではございませんけれども、従来、従来と申しますか、アメリカ側において日米安保関係というものについての対話を深めていかなければいけないという考え方を持っているということは、私ども十分承知をいたしているところでございます。
  73. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 内容そのものについては御確認になっていないようでありますけれども、この記事がすべてを物語っているかどうかは私ももちろんわかりませんが、この書かれている中で非常に大事なことではないか、考え方として大事ではないかと思うことがございますので、この点を若干お伺いをしたいのです。  「日米安保は冷戦を前提にしたもので、その後の世界の変化に応じた新しい日米協力の基盤を打ち立てるべきだ」、こういう御発言があったということで、括弧書きでされておりますけれども、これは外務大臣、やはり日米安保は冷戦を前提にしたものだ、外務省としてもこういう御見解のもとに安保条約というのをお考えになっているのでしょうか。
  74. 河野洋平

    河野国務大臣 私、きのうの新聞記事をここに持っておりますが、記事はともかくとして、会見の要旨がここに書いてございます。ここにはナイ次官補は「冷戦後も同様の利益を維持することができるよう改めて確認すべきだ。こう書いてございます。ナイ次官補は「日米同盟は過去四十年間にわたって、日本のみならずアジア全域の安定の基盤となり、地域の経済的繁栄を助けた。しこういうことを言っておられるわけで、結果としてこういうことになっているという認識は私も共有できます。
  75. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 私もこの新聞の記事だけですけれども、ナイ国防次官補は、条約の中身については改定は必要ない、条文ですね。しかし、前提が変わったので、新しい時代に対応したものに内容を変えていくべきではないだろうか、こういうことで、OSCEということの設立も含めて提案をされているわけであります。  ここのところ、私も村山総理の御見解も本会議等また予算委員会等で拝聴いたしましたけれども、村山総理自身も社会党の委員長で総理になられて、日米安保に対する考え方を百八十度お変えになった。これはこれで私は非常に結構なことだと思いますけれども、村山総理の御発言は、日米安保の堅持以上のことは中身については余りおっしゃっていないような気が私はいたします。  安保条約の当事者、アメリカと日本と、片っ方のアメリカの方はやはり新しい時代に即応して内容を考えていくべきではないか、こういう御発言もあるわけですね。それに引きかえ、日本の方としては、村山総理が日米安保の堅持と言ったことが物すごく大転換で、ですから、安保条約の今後の問題についてどういう方向で日本としては検討していくのか。今のままでいいのか、それともアメリカと歩調を合わせる形で、東アジアのプレゼンスということも考えて、新たな役割を付与していくのか。そこのところが村山総理の発言では日米安保の堅持以上のものが私には余り聞こえてまいりません。  これは当然外務省としてもいろいろとお考えになっていらっしゃることだろうと思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  76. 河野洋平

    河野国務大臣 アメリカ側も安保条約の修正を求めているわけではないということははっきりしているわけで、そういう意味では、安保条約を堅持するという村山総理の考え方は日米両国が合意できるところであろうと思います。これは首脳会談でもそういうお話が出て、双方はそういう考え方だというふうに私は思っております。  それで、今議員お尋ねのOSCEですか、かってヨーロッパでCSCEと言われたものでございますが、我々もかねてからCSCEというものに関心があったことは  我々もというのは、ちょっとここは誤解があるといけませんが、外務大臣としてではなくて、一議員として、かつてCSCEに私も関心を持ったことがございます。  しかし、ヨーロッパにおけるCSCEをそのままアジアに持ってこれるかどうかということになると、これはなかなかそう簡単ではない。あそこは御承知のとおり、NATOというものがあって、ヨーロッパという土地柄ソ連との間に東西の厳しい対立点があって、そこでNATOができ、それがCSCEのもとになって今OSCEと名前を変えてさらに域を広げている、こういう状況でございますが、アジアの国々を今すぐにまとめてOSCEのようなものをつくれるかといえば、これはそう簡単なことではないというふうに思うのです。  これは、それぞれの国にはそれぞれの国の経済的発展段階もございます、あるいは宗教的なものもございます、何よりも政治的なシステムの違いが、余りにもさまざまなシステムが集まっているわけでございますから、そう簡単なことではない。しかし、ではあるけれども、ASEAN地域フォーラムなんというものを昨年から始めて、まずASEANに集まる、拡大外相会議が、この地域フォーラムの中で安全保障の問題についてもいろいろ情報交換をしてみるか、どういう考え方がお互いにあるか、その透明性というものをどうやったら大きくできるかというような話し合いをするというところからまず始めようかという、今そういう状況であって、それはアメリカもそれに参加しているわけですから、アメリカもASEAN地域フォーラムが今どういうレベルかということはよくわかっておられるわけで、私はこの次官補の御発言を見て、OSCEみたいなものが将来の頭の中に仮にあったとしても、このインタビューが今そういうものをどうだという提案をしておられる、そういうものではないんじゃないかというふうに私はこの要旨を拝見して思いました。
  77. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 この問題はまたいずれ取り上げられるだろうといろいろ思いますけれども、私は、ちょっと観点を変えましてお伺いをいたします。  昨年の十月の十四日に米軍機が高知県の嶺北の山中に墜落をいたしまして、その後委員会等でも取り上げられましたけれども、確定した事故状況と申しましょうか、その事故の起こった当時はやはりなかなかわからないことも多かったと思いますけれども、現在の段階で確定した、こうだ、こういうふうな事故概要についてお聞かせをいただければと思います。
  78. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 先生今お話しの、現時点で確定した事実関係、こういうお話でございますが、実はアメリカ側においてなおこの事故原因の調査ということは継続中、こういうことでございまして、ただいまの時点で申し上げられます事実関係といいますのは、先生御案内のことだと思いますが、十月十四日の三時半ごろに米海軍機二機のうちの一機が高知県大川村付近の吉野川流域に墜落したということ、それから、搭乗しておりました乗員二名が死亡した、こういうことでございますが、乗員以外に死傷者はいなかった、こういうことでございます。その後、米軍と地元警察等々が協力をいたしまして現場の処理を行った、こういうことでございます。  私どもは、アメリカ側に対しましては再発防止ということを申し入れてまいっておりますし、こういう訓練は必要ではありますけれども、安全の確保あるいは地元への迷惑がかからないように最小限にするために何ができるかということを依然話し合っていくという状況にございます。
  79. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 もう少し確認をしたいのですが、この事故が起きたのは訓練中ですか、移動中ですか、どちらですか。
  80. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 訓練中であったというふうに承知をいたしております。
  81. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうしますと、訓練とはいろいろあろうかと思いますけれども、いわゆる低空飛行訓練というふうに了解してよろしいでしょうか。
  82. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 仰せのとおり、いわゆる低空飛行訓練を行っていたというふうに承知いたしております。
  83. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 低空飛行訓練というのは具体的には、それぞれ低空の考え方が違うかと思いますけれども、低空飛行訓練と言われているぐらいですから、ローレベルフライトというのでしょうか、非常に低いところを飛ぶのだと思いますが、これは外務省としては、米軍がいわゆる低空飛行訓練と言ったときにはどのぐらいの高度で飛んでいるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  84. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 お尋ねの点は米軍の運用にかかわる点で、私ども詳細を承知しているという次第ではございません。ただ、従来から米軍が申しておりますことは、日本国内法に言うところの安全基準、すなわち人口が密集しておりますところでは最低三百メートル、それから人口が過疎、欄密でない地域、こういう地域の場合には最低限度百五十メートル以上ということで訓練は行っているということは申しておりまして、私どもはそのように承知しておりますが、個々の低空飛行訓練なるものの全体を見ましてどの程度の高度で飛んでいるかということの詳細まで、私ども承知をいたしている次第ではございません。
  85. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうしますと、局長が低空飛行訓練というふうにおっしゃったわけですけれども、そうすると、低空飛行訓練のレベル、これぐらいを低空飛行訓練だというものがなくて低空飛行訓練と言うのは、これはおかしいんじゃないですか。大体どのぐらいのところを低空飛行訓練だというふうに、ある意味の概念の認識がないと、低空飛行訓練、通常何フィートかわかりませんけれども、そこのところは、外務省としては低空飛行訓練ということを認められたというのは、どういう高さで飛んでいるから低空飛行訓練だ、そのときの事故だ、それがはっきりしていないとおかしいんじゃないでしょうか。
  86. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 正確に定義と申しますか、高度幾らでどの程度の、何といいますか、長さを飛べば低空飛行訓練であるかという、そういう定義は多分存在しないのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、今申し上げましたように、私どもが低空飛行訓練というふうに観念をいたしております種類のものは、百五十メートルないし三百メートルという最低限の高度以上、低空であるけれどもそういう最低高度というものは守って訓練をする、そういう種類の訓練であるというふうに承知をいたしている次第でございます。
  87. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 これはますますもってはっきりしないわけですね。このことはもうちょっと後でもお聞きをしたいと思いますが、その後の処置についてお伺いをしたいのですが、原因の究明とそれからその原因の発表ですね、これはどのようにされておりますか。先ほど若干答弁もあったような気もいたしますけれども、いま一度この原因の究明、発表がどうなっているか、お聞かせいただけますか。
  88. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 事実関係を申し上げますと、事故が発生しました後、直ちに私から、ここの在京アメリカ大使館のデミング公使に対しましては遺憾の意を表明しますとともに、事故原因の徹底究明それから再発防止ということを申し入れました。  その後、十月二十一日の日米合同委員会、これは日米間で地位協定の運用について設けられている委員会でございますが、ここにおきまして、当該訓練の安全の確保あるいは地元への影響を最小限とするための話し合いを行いたいということを申し入れた、こういうことがございます。  そういうことで、アメリカ側も真剣に対応いたしておりまして、現在、依然として事故原因の調査ということについては現在も継続中であるというふうに承知をいたしております。なかなか事故原因の究明、調査結果を出すまでに時間がかかるという状況がございますけれども、これは事柄の性質上、徹底的に細かく調査をする、こういうことでございますので、その点はある程度やむを得ない状況かなというふうに思っております。
  89. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうすると、局長、もう一度確認をしたいんですが、これは原因の究明が終わっていない、まだその途中だということですか。それとも、終わっているみたいだけれども、アメリカの方から発表がない、どちらですか。まだ終わっていないんですか。
  90. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 終わっていないんだというふうに思います。
  91. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 このことももうちょっと後で一回聞きますけれども、それでは、原因の究明に関してアメリカ軍が十月十四日以降に現地に行かれて、いろいろとされている。そのときに、地元が損害賠償の請求をされるようなことが若干あったというふうに聞きましたけれども、これは防衛施設庁、どういうふうなことでしょうか。
  92. 冨永洋

    ○冨永説明員 先般の墜落事故による被害につきましては、日本側に人身被害は生じておりません。また、財産被害に関しましては、墜落事故そのものに直接起因する損害、これにつきましては、賠償の請求は現在までのところ行われておりません。  ただ、墜落事故そのものに直接起因するものではありませんけれども、事故後に捜索あるいは回収作業のために現地に赴いて活動しておりました米軍車両が、誤って遊歩道を一部破損させたという事故がありまして、これに関して、地元自治体から損害賠償請求が一件出ているという状況でございます。提出されたこの請求につきましては、関連規定に従いまして適切に処理してまいる所存でございます。
  93. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 これはぜひ適切に、早急に処理をしていただきたいんですが、その遊歩道の破損ということのみではなくて、これは大臣も御存じだろうと思いますが、早明浦ダムという西日本で一番大きなダムの上流でございます。ここから取水をして吉野川、導水管を通って香川とかにも給水がされているわけですね。ですから、飛行機が落っこちて水が全然汚れないということもあり得ない話ですから、請求が出ていないでしょうけれども、非常な、ある意味でいえば精神的、またいろいろな意味での地元に大きな迷惑がかかっている、こういうことはぜひ御認識をいただきたいと思います。  それで、先ほどの局長の御答弁にもございましたことで、順次関連したことをお聞きをしますが、そうしますと、原因の究明がまだ終わっていない、こういうお答えでございましたが、飛行訓練は現在再開をされておりますか。
  94. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 具体的に、その後どういうところで、いわゆる低空飛行訓練が行われたかどうかということは、私ども具体的には承知をいたしておりませんけれども、アメリカ側は必要に応じてこの訓練を行うという態勢でいるというふうに了解をいたしております。
  95. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 もう一度確認しますが、再開をされていると思いますか、されていないと思いますか。
  96. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま申し上げましたことは、必要に応じて再開をする、訓練を行う、こういう態勢で、つもりで米側はいるというふうに承知しております。
  97. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうすると、局長、先ほど、事故の原因は、これは究明をされていない、まだ最中である、こういう御認識のもとで、なおかつ米軍が飛行訓練を再開するというふうに言ってきている。こういうことは日本政府として、また外務省として、そうすると、原因究明は終わっていないんだけれども飛行機は飛んでいるみたいだ、こういう御認識でいらっしゃるわけですか。
  98. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 いわゆる事故を起こしました飛行機、これにつきましての事故原因の究明ということは、現在依然としてアメリカ側で行っている、こういうことでございますけれども、墜落事故がございました十四日以降十八日までは、米側といたしましても飛行を中止したというふうに承知をいたしておりまして、この間アメリカ側といたしましては、米軍といたしましては、飛行手続や安全措置の再点検、それから装備の検査、こういうものを行いまして、その結果、A6Eという、この事故を起こした航空機でございますが、航空機としての安全性には問題がない、こういうことを確認したということを申しておりまして、その上で必要があれば訓練を再開する、こういうことがアメリカ側の意図であるということでございます。  仰せのとおり、問題となりましたといいますか、高知県で起きました事故原因そのものの原因究明ということは、依然米側生じて継続中ということでございます。
  99. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうしますと、これは外務省のお立場の御見解で結構ですけれども、アメリカが訓練を再開した以上は、これはアメリカとしても自国のパイロットの安全ということは大事でしょうから、アメリカがそういうことで再開をした以上は、これは安全だろう、こういうふうに、アメリカそのものはもちろん考えてやっていると思いますが、外務省としても、これはもう安全だ、もう再開をした以上は安全であるというふうに確信をする、こういうお立場ですか。
  100. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 私どもの立場から、何といいますか、保証すると申しますか、そういうことはし得る立場にはもちろんないわけでございますけれども、日ごろ私どもは米軍との間でこの訓練につきましては始終話し合いを持ってきておりまして、我々の抱いておる関心、それから日本各地から寄せられておりますところのこの問題についての御意見、要望、そういうものは米軍にはしかと申し伝えてございますので、そういうことも十分念頭に置いて、安全性については米軍としても十分念を入れた上で再開というつもりでいるということだと私どもは思っております。
  101. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 そうすると、外務省としては確認すべくもないけれども、やはり米軍が再開した以上は、これは安全であろう、こういう前提に立たざるを得ないということだろうと思いますが、私はなぜこういうことを聞くかといいますと、去年の十月十四日に事故が起こりまして、十七日の参議院予算委員会、それから十月二十日の衆議院の安保委員会でそれぞれ御質問がございまして、それから、私がいただいた資料では、飛んでことしの二月三日に衆議院の予算委員会でも議論をされておりますが、局長の御答弁もずっと拝見をしますけれども、要するに、アメリカと話し合っていきたい、アメリカに要求を伝えていきたい、こういうことで、十月も二月も同じなんですね、答弁のスタンスが。  ですから、その間、結局どういう話し合いがされてどうなったのか、一切わからない。要求を伝えるだけだ。ある意味では、要求を伝えていただくのでしたら、こちらが直接赴いてお願いをすればいいことであって、国会で審議されていることが一体何なんだろうという、正直、私も率直な疑問を抱くわけでありますけれども、こういうふうにアメリカに、国会でこういうことでいろいろ話があった、このことをアメリカに伝えたということでありますけれども、伝えてどういうふうな話し合いになっていらっしゃるんですか。
  102. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生が仰せになりましたことは私よくわかりますけれども、今どうなっているかという仰せでございますが、私どもは、地元の方から日ごろお聞きしておりますこと、あるいは国会でいろいろ御議論になったこと、こういうこともアメリカ側に伝えて、従来からアメリカ側は、先ほど申し上げましたように、安全確保あるいは地元への影響を最小限にする、こういう努力は行ってきている、こういうことでございますけれども、さらにこの点で何かなし得ること、事態を改善する方途はないのか、こういうことをアメリカ側にも検討するように、こういうことを私どもは申し入れている次第でございます。  現在、具体的にどういう状況にあるかということは、ちょっとアメリカ側との関係もございまして、協議中という状況でございますので、御勘弁をいただきたいと思いますが、そういうことで、話し合いを継続しているということでございます。
  103. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 私は非常に疑問に思うのは、話し合いの中身はもちろん出せないこともたくさんあるだろうと思います。しかし、現地に、これは間違えば近くに保育所も役所もある、そういうところに落ちたわけですし、西日本で一番大きなダムのすぐ上流なんですね。ですから、これは外務省として、何日、何日にこういうことで話し合いをしております、中身については外交上のこともあって申し上げられませんけれども、住民の皆さんの御意見は十二分に話し合いをして伝えてあります、こういう現地への説明とか、こういうことはその以降されておりますか。
  104. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 私どもの方から御連絡あるいは不十分かもしれません、その後も地元の方が私どものところにお見えになることもございまして、そういう機会に私どもはお話をしている、アメリカ側といかなることがなし得るかということについて話をしておるということは申し上げておりますが、先生今御指摘の点は心して対応したいというふうに思います。
  105. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 これは、重ねてになりますけれども、要するに外務省は言われてくれば教えるのですよ。  だけれども、実際この墜落事故があったという現地にとっては、そこがたまたまコースになって落ちたんじゃない。今回も、このアメリカの軍の準機関紙のスターズ・アンド・ストライプスというのを読みますと、明確にローレベル・トレーニング・ルートというふうに書いているわけですね。ですから、たまたまそこを飛行機で移動したのではなくて、一つのトレーニングのルートであった、そのルートの上で事故が起きたんだ、こういうことをちゃんと広報官が認めて、アメリカの軍の出している機関紙に書いているわけですね。ですから、たまたまじゃないので、これはまた今私は飛んでいると思いますよ。  ですから、そういうことで、来れば説明をするのじゃなくて、こちらが赴くということじゃないと私はいけないのじゃないかと思うのですよ。  ですから、これは私ども疑問なんですが、実際現地に外務省でどなたか行かれて、地元の役所なりと率直な話し合いをされた人いらっしゃいますか。
  106. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 外務省から地元に赴いた者はございません。
  107. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 大臣、ずっとやりとりをお聞きになっていて、これは外務大臣というお立場もございましょうが、やはり日米安保があって、双方が誠実に条約の履行について責任を持つ、これは当然のことだろうと思いますけれども、やはり墜落をして、まかり間違えばという事故がありながら、外務省のだれも現地に行っていない、そして現地に対する説明もしていない。上京して、陳情に来ればお答えしますよ、こういう立場なんですよ。  ですから、やはり日本外務省なんでしょう。やはり私は日米安保のことを最初にお伺いをしましたけれども、やはり安保条約もだんだんと支持する方がふえてきている、村山総理自身も大転換をされている。ですから、そこにはやはり国民の支持というものがないと条約の履行というものは私はできないと思うのですよ。そういうことで、ずっと御苦労もされてきたと思いますけれども、今回のこの外務省の態度、余りにもちょっと誠実さがないのじゃないか、こういうふうに思わざるを得ませんけれども、大臣お聞きになっていてどう思いますか。
  108. 河野洋平

    河野国務大臣 この事故は、私も大きな関心を持っております。  議員もよく御承知のとおり、この問題には二つ、三つの側面があると思います。地元の皆様方のお気持ちというものが非常に重要だということをまず最初に申し上げた上で、日米安保条約というものを考えれば、在日米軍は在日米軍の務め、つまり日米安保条約によって、彼らは彼らなりに技術を磨いて、一朝事あれば最も優秀な技術を発揮する、そういう準備、訓練を行うというのは、これはまた彼らの務めでもあるわけです。促したがって、彼らはそれなりに最善の努力を、訓練という意味で努力をしている、その間に起きた、原因がまだわからないわけですが、事故であった。そして、在日米軍は、人命を失ったという事実が一つあります。一方で、議員がお話しのように、日米安保条約は、とりわけ日本国民の理解がなければこれは有効に機能しないということもあると思うんです。  そういう意味で、いかに双方が、つまり在日米軍は在日米軍として努力をしていたんだというふうに私は思います。そして、我が方は我が方として、しかしながら大変大きなショックを受けたことも事実でありますから、これは双方がよく話し合って、技術を磨いてもらわなければならぬが、こういうことは困るということを言わなければならぬ。そこは御承知のとおりなかなか難しいところではあるわけで、どういう話し合いが結論を導き出せるかということについて、まだまだ先方も、原因の究明中だ、こう言うわけですから、それ以上の踏み込んだ議論はできないわけですが、私は、この問題には関心を引き続き持っておりまして、事あるごとにこの問題については言及をしていこうというふうに思っております。  地元の皆様方にはもう本当に大変驚かれた、これはただ単に驚いたというだけではなくて、精神的なショックもあったと思います。このことについては、日米安保条約締結をしている立場に立って在日米軍からもそれなりの気持ちの表明があったでしょうし、それに我々もまた、地元の方々に対してはそういう気持ちを示すということは必要であろうというふうに思います。  その方法が、どういう方法が適切であり、今議員が御指摘のように、余りそういうことがなかったじゃないかという御指摘があれば、その点についてはもう一度よく、どういう方法が必要なのかを考えなければならないと思います。
  109. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 最後になりますけれども、局長大臣からもそういう御答弁いただいたのですが、一度現地へ行って、その後こういうふうにアメリカにも申し入れしておりますよ、中身については言えないんだけれども、しっかり皆さんのお心も受けてちゃんとやっておりますよ、こういうことで現地の説明会なり、役所にも行かれて一言御説明あってもよろしいんじゃないでしょうか。最後にそのことだけお聞きをします。
  110. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 考えさせていただきます。  それから、申し忘れましたが、事故のとき、地元との関係で申せば、私も知事にはお電話をしてお話をいたしましたし、その後アメリカ側からも地元の方にもしかるべき形で遺憾の意の表明等がなされたというふうに承知をいたしております。
  111. 石田祝稔

    石田(祝)分科員 ありがとうございました。
  112. 越智通雄

    ○越智(通)主査代理 これにて石田祝稔君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  113. 上原康助

    上原分科員 どうも、河野副総理・外務大臣、連日大変御苦労さんです。  わずかな時間ですので余りたくさんお尋ねすることはできないと思うのですが、また立場立場だけに、どういう質問の仕方をやるのか少し戸惑いもあるのですが、きついところを申し上げたらお許しを願いたいと思います。  まず、河野さんが副総理・外務大臣に御就任なさって、しかも村山首班政権であるということで、日本外交に新しい顔、顔というか姿勢などが出てくるんじゃないかという期待を、国民もまた与党はもちろん野党の皆さんもやっておったと思いますね。しかし、いろいろ難しいこともあってのことだろうが、なかなか何か、率直に申し上げていまいちぱっとしないというような感じがなきにしもあらずなんです。  そこで、一つは、この国会で、ぜひ与党としてというか国会として実現をしていきたいといういろいろの三党間の申し合わせとか、あるいは与党三党として、それぞれの立場はあるにしても、何とか合意形成を図って解決をしていきたいという課題があるわけで、そういう基本的な、しかも非常に難しい課題を私は党内でさせられているというか、やっているものもあって、きょうこの機会をおかりしたわけです。  まず一つは、河野外務大臣の、人権問題あるいは特にODA問題とも関連するわけですが、南アジアあるいはアフリカ、要するに最貧国と言われている国民、人々が十億以上いらっしゃる。環境問題を含めて、こういった人権とか人種差別、国際的、国内的問題に対する河野副総理・外務大臣の御認識と、これらの途上国あたりが今最も期待をしている日本に対してこういうことを、しかもポスト冷戦という大きな変化の中でどう対内外に明確に方針を出し、そういう面の必要性があればODAの中身を改善すると同時に、予算的措置も国際貢献という立場あるいは国内的面でやっていかれようとするのか、そこらの基本的なお考えについて少し聞かせておいていただきたいと存じます。
  114. 河野洋平

    河野国務大臣 上原議員からいろいろと御心配をいただいておりますことに、大変恐縮に存じます。  釈迦に説法という感じもしないではありませんが、少し私の考えを申し上げておきたいと思いますが、外交問題というものはそう個人プレー、スタンドプレーで問題が本質的に片づくものだとは私は思いません。やはり、地道な積み重ねが問題を解決していくのであろうというふうに考えて、私は、一つ一つの問題を誠実に解決をする努力をするということが何より重要ではないかというふうに考えているわけでございます。間違ったことをしてはなりません。しかし、正しいことも急いで主張をし、行動をすれば、それが多くの人に理解されるか、あるいは具体的に実現ができるかといえば、必ずしもなかなかそうでないものもあるということは、もう議員が十分御承知だと思います。  村山総理が、外交は継続、こう言われましたが、まさに外交問題の多くは継続の中で進めていく必要があるものがございます。日米安保条約などはその大きな例の一つだと思います。  ただ、私外務大臣になりまして非常に感じましたことは、国際的に日本との関係が必ずしもいい関係ではない、例えば日米関係も若干ささくれ立った状況でございました。これらをとにもかくにもスムーズな関係に直すということに相当意を用いてきたつもりでございますし、それ以外にもあちこちなかなか対日感情というものは厳しい、難しい状況になっているところが多うございます。そういうものをやはり一つ一つ信頼を回復していかなければならないということが一つございます。  それからもう一つは、残念ながらたび重なる政変によって、日本政治に安定感、安定さが欠けたということから来る対外的な日本に対する見方というものがございまして、これらもやはり何とかしなければならない。かつて中曽根内閣当時、外務大臣が、安倍外務大臣でございましたが、非常に長期にわたって外務大臣を務められて、そのことが、対外的に外務大臣外交政策あるいは外交的主張というものが外国においても重きを置くようになったということがあったことを思い出すと、今それは残念ながら、日本の外務大臣の発言というものの重みが当時に比べるといささか欠けているのではないかという気がいたすのでございます。これは非常に残念なことでございます。しかし、そういったことをとにかく取り戻して、日本には日本国際社会に果たすことのできる大きな力があるわけでございますから、その力にふさわしい信頼というものを取り戻さなければならないというふうに思います。  ちょっと前置きが長くなりましたが、そこで議員お尋ねの人権問題、人種の問題、いわゆる南の問題と申しましょうか、これらは我々にとって大変大事な問題だと思います。大きな東西の対立というものはなくなった。しかし、国際社会の中ではあちこちで紛争が起こっておる。その紛争の中には、今議員御指摘のようなものが紛争の原因になっている。もちろん、原因の中には貧富の格差というものもございます。あるいは宗教上の問題もございます。しかし、それらが民族の問題であったりすることも非常に多いわけでございまして、こうした問題をどうやってお互いに乗り越えていくかという努力をしなければなりますまい。  紛争解決することよりも紛争を未然に防ぐ、いわゆる予防外交と言われるものが非常に重要だと言われるゆえんのものはそこにあると思います。私どもは、そうしたことに十分意を用いなければならないと思います。そのためには、外交はもっと詳細な情報を入手する必要もございましょう。政府間の話し合いばかりでなく、地をはうような人たち、こういう人たちの気持ちをどうやって理解をするか、その努力をどうするかということにもっともっと我々も配意をしなければならないというふうに思っているところでございます。
  115. 上原康助

    上原分科員 いずれ、機会がありましたら、いろいろ議論をしてみたいなという気があります。  きょうは冒頭申し上げましたように、そこで、近く社会開発サミットがあるのですね、せっかく総理が行かれるというわけですから、これは別に、強い要望を申し上げておきたいわけですが、外務省準備をしておられるという、我が国の取り組みとかいろいろ考えているようですが、私が冒頭日本の顔が見えない、外交の顔が見えないのじゃないかということがよく指摘されるという点で、せっかく総理がコペンハーゲンまで行っていろいろ短い時間演説をするに当たっても、ただありふれた、日本国際貢献がこうだ、経済援助はたくさんなのだというようなことではいかぬと思うのですね。  やはり今日の世界にとって一番大事なことは、貧困でも紛争でもすべては軍備、戦争から来ているわけですよね。国際的軍縮をどう普遍的に日本国連の場でも国際舞台で進めていくかというこの基本を、ぜひ強く打ち出してもらいたいと思うのですね。まず軍縮、貧困、自然環境、人権でしょう。そういうことを大胆に日本側が打ち出すということによって、日本国際的地位、経済力というものが、私は、今大臣もお述べになった南南あるいはアフリカ等々の後開発国から評価されると思いますので、そういう姿勢をぜひこの社会開発サミットでは打ち出していただきたいということを要望を申し上げておきます。これはもう準備もされていると思いますので、お答えがあれば後でちょっとコメントをいただきたいと思います。  そこで、あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約、いわゆる人種差別撤廃条約、これをなぜ今まで日本署名もしない、承認も求めない、批准しないのか。経過はいろいろあります。こういう人権に対して関心を持っておるとは言いながら、これは国連総会の第二十回会期で、一九六五年十二月二十一日ですよね、効力が発生したのが一九六九年一月四日。これでは、日本国際的な立場というか、あるいは、しかも国連安保理の常任理事国入りをしたいとかいうことについては、余りにもおくれをとっている。失礼な言い方だがお粗末じゃないか。確かに、外交は継続であり内政は改革だということは強く打ち出したけれども、外交継続にしても、やはり発展的継続でなければいかないと思うのですよ。  大臣は、この人種差別撤廃条約に対してどういう御見解を持っておられるか、聞かせてください。
  116. 河野洋平

    河野国務大臣 議員御指摘のとおり、随分長い間検討に次ぐ検討が続いているわけでございます。しかし、その検討に当たって、この条約が規定するさまざまな問題、これは日本国内、各省庁との間でいろいろ議論がございまして、その議論がクリアできないことには最終的な批准というわけにいかないところがございます。  とりわけ、私も聞いてみますと、思想の自由、集会、結社及び表現の自由こういったところとの整合性といいますか、そういう問題についてはまだ議論が残っているということでございまして、法務省と累次にわたって相談をしておりまして、専門家の、学者の意見なども徴しているところでございますが、残念ながら依然としてまだ結論を得ていないところでございます。
  117. 上原康助

    上原分科員 こういう議論はもう十年来やってきているのですよ。私も会議録を若干調べてみました。古いのは、もうこれはずっと、十四、五年前から、特に六十年から六十一年にかけて、六十二年、あるいは最近では平成二年あたりに相当国会でも議論している。その都度、今大臣がおっしゃるようなことを言っておられる。こういうことは、余りにも役所任せと言うと失礼ですが、もう少し政治がリーダーシップを発揮しなければいかないのじゃないですか、この人種差別撤廃条約こそ。  今批准している国は、加盟国でどのくらいあるのですか。
  118. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 現時点では百四十三カ国でございます。
  119. 上原康助

    上原分科員 アメリカはいつ批准したのですか。
  120. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 昨年の十月でございます。
  121. 上原康助

    上原分科員 河野大臣日本国際人権規約にしても、あるいは女性差別その他のILO関係、よく問題になった子どもの権利条約、児童権利条約等々も、大体七、八年ないし十年以上はかかってきているのですよね、すべて。しかも、この人種差別撤廃条約日本が批准しない。特にこの条約の四条とのかかわりで、国内問題がいろいろある、憲法との関係がある、私もその点は、もちろん専門でもありませんし、素人ですが、ある程度議事録とか関係の解説書を読んでみた。  問題があるのはわかるけれども、一説には、アメリカがなかなか批准しないから日本も批准しないんだ、国連の場でもこういうやゆさえされている。常にアメリカの顔だけをうかがっている。さっきのこの安保条約の運用の問題にしてもそうなんだ、沖縄の基地問題しかり。  私ばこれではいかないと思うのですね。対等のパートナーであっても、同盟的な関係にあっても、言うべきことは言って、主体的外交というものがないといかぬじゃないですか。なぜ批准できないのか。いつまで、こういう質問を受けて、鋭意検討しています、もうしばらく時間をかしてください、こういう会議録は幾らでもあるのですよ。どうなさるつもり、これ。  この件は、河野大臣、やはり村山内閣のこの機会に、あるいは外務大臣、あなたがやっていらっしゃる間に、ぜひめどづけしていただきたいと思うのです、いろいろ問題はあるにしても。やるのですか、やらないのですか、日本は。どうなさいます。
  122. 河野洋平

    河野国務大臣 これは先ほども申しましたように、関係省庁の合意を取りつけるべく努力をしているわけでございまして、この関係省庁の合意ができ次第批准をするという気持ちでおるわけでございます。  議員御指摘のように、アメリカも既に批准をしたということでございますが、アメリカの批准は、その内容は多くの留保条件をつけているわけでございます。我々としては、一体どういうことが、憲法で定められた事柄との整合性を持ちながらこの条約を批准することができるかということを検討をしているわけでございまして、これは一刀両断、えいやというようなわけにはいかないものだろうというふうに思っております。
  123. 上原康助

    上原分科員 一刀両断でやってくださいと言ってないのですよ。十年も二十年もこういうやりとりをやって、もうしばらく時間をかしてくださいとか、鋭意検討して結論を出すとか、あるのですよ、この会議録は。随分、中曽根内閣のときもそういう議論をしている。  そこで、今おっしゃったアメリカの留保条項とかそういうのはちょっと聞きますけれども、関係省庁で一番問題になっているところはどこなんですか、明らかにしてください。
  124. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 当然、事柄の性質上、政府部内では、外務省といたしましては法務省と主として協議しておるというところでございます。
  125. 上原康助

    上原分科員 余り憲法の条項を挙げて質問をすると、ますますあなた方は難しいとおっしゃるかもしらぬから、それは、罪刑法定主義とかいろいろ法務省は言っているようですが、しかし、国連加盟国、百八十五カ国ですか、そのうち百四十三、八〇%近く、七八%くらいは署名、批准しているわけでしょう。先進国も全部やっている。日本だけ。これでは僕は国際的な人権問題とか人種差別とかいろいろな日本の先進国としての立場というか、外交面においてもむしろ支障を来すのじゃないかと思うのですよね。  そういう意味で、鋭意検討をなさっておるというわけですが、そうしますと、これは国内法を、関連法をきちっと整備をして条約の完全批准が私は最も望ましいと思うのです。それが可能なのか、あるいはそれが非常に難しいということであるならば、留保または解釈宣言等々でやるようなこともお考えなのか。そろそろそういったことを含めて、このことについては結論を出さなければいかない状況だと私は思うのです。その点についての御見解があれば聞いておきたいと思います。
  126. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 問題は、四条を留保して批准する可能性云々の件でございますが、この点につきましては累次政府答弁で申し述べておりますとおり、四条は先生御承知のとおり、人種差別的言動に対してこれを犯罪として刑事罰を科すということが規定されているわけでございます。したがいまして、この条約のいわば根幹をなす部分であるということでございまして、従来から今日に至るまで政府といたしましては、この条約の根幹部分に対する留保をした上での批准ということは望ましくないというふうに考えておりまして、現時点でも、留保しないでの早期批准という方向で現在も検討中でございます。
  127. 上原康助

    上原分科員 外務大臣、担当局長がそうおっしゃるわけだから、あとはやはりこれは政治のリードですよ。外務大臣と法務大臣と総理大臣と、あとだれがいるんだ、関係省庁は。厚生省も関係するのかな。これはやっていただかないと困るのですよ。  例えば、部落解放基本法を制定しようということで、我々は一生懸命プロジェクトチームで努力している。だが、この人種差別撤廃条約さえ批准されていないからだめだという意見も出てきているのですよね。なかなか与党の合意形成が難しい状況にある。だから、私はこの問題を取り上げざるを得ないのですよ。外務大臣、ここは決断してください。どうですか。
  128. 河野洋平

    河野国務大臣 十分検討をいたします。
  129. 上原康助

    上原分科員 ぜひ、こういった非常に重要な人種差別撤廃条約あるいは人権にかかわる国際条約を、日本がいつまでも検討だということで役所任せにするということは私はよくないと思いますので、十分検討なさるということですが、期待をしておきたいと存じます。  あとわずかな時間しか残りませんが、若干、さっきも石田先生でしたか、安保地位協定の問題でお尋ねしていましたが、私は安保堅持主義者じゃないのですよ、河野大臣。これはやはり改正すべきだと思う。僕は見直しすべきだと思う。アメリカだって見直し論が出てきている。  最近、ちょっとこれは確かめておきたいのですが、前にも時野谷局長にもちょっと非公式に聞いたというか、お話ししたことがあるのですが、何かマスコミ報道等によると、日米安保の再構築とかアジアの安定を軸に、既に日米協力のニュービジョン、新たなビジョンを策定する方向で検討がなされている。そして、それは十一月に予定をされているAPECの日米首脳会談で明らかにしていく作業だ云々があるのですが、そういう計らいがなされているの。
  130. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 今先生おっしゃいましたこと、すなわち再構築とかニュービジョンというようなことは、私ども申しておらないのでございます。  私どもが重要だというふうに思っておりますのは、いわゆる冷戦が終わった現在の状況にあっても日米安保体制というものの妥当性、重要性、そういうものは変わらない。そういうことを念頭に置いて日米間の安全保障問題についての対話を進めていくことが必要だ、こういうことを思っております。  そういう意味で日米安保体制の重要性を再確認したい、こういうことなんではないかと思いますし、そのことはこの前の日米首脳会談でも確認をされた、こういうことでございまして、そういう認識に立っていろいろな課題と申しますか、主題について話をしていきたいというふうに思っております。その結果としてと申しますか、その結果、十一月に想定されておりますところのクリントン大統領の訪日の際に何をするかということ、そういうシナリオを私ども持っている次第ではございません。
  131. 上原康助

    上原分科員 一方において、こういう日米安保を強化する方向での見直し論があるのですね。私は、日米首脳会談とか外務大臣や国務長官がやることまで否定しようという立場でお尋ねしているわけではありませんからね。さっきのはもう私の持論ですから、その前提でお聞きしていただきたいのです。  もう一点は、日米安保条約、日米安保体制のあり方について、米国の有力なシンクタンクが新たな提言をしているわけですよね。これは、日本は世界第二位の経済力を持ち、民主化が定着している。朝鮮民主主義人民共和国は潜在的に危険な存在だが、韓国は経済力などあらゆる点で北朝鮮を圧倒している。三点目に、もはやソ連の脅威はなく、中国の軍事近代化も近隣諸国に重大な脅威を与えるものにはなっていない。だから、今世紀末までに、東アジアに展開している、あるいは太平洋地域を含めての米軍の削減縮小、安保体制というものは、いわゆる有事駐留型に見直していいのじゃないか。こういうシンクタンクというか、ケイトー研究所の意見などもアメリカで出ているわけですよね。これについてはどうお考えですか。これは外務大臣じゃないかな。
  132. 河野洋平

    河野国務大臣 アメリカという国は、御承知のとおりたくさんシンクタンクがございまして、そのたくさんあるシンクタンクがこの問題に関心を持ち、あるいはこの問題について何らかの研究の依頼を受けたかもしれませんが、今先生おっしゃるようなことを述べたということであったとしても、私は、今アメリカ政府あるいはアメリカの主流がそういうことを考えているとは思いません。  それは、思っているか思っていないかはまた別として、じゃ、現在のアジアの情勢はどうかといえば、今後のアジアの安定ということを考えると今何が必要なのかということは、アジアの国々みんな考えているわけでございまして、その国々が今考えている、少なくとも今考えていることの一つは、やはり米軍のプレゼンスというものが少なくとも今は安定の基礎になっているというふうに思っている国が多くて、それが有事駐留型でいいと思っている国は私はそう多くないというふうに思いますが……。
  133. 上原康助

    上原分科員 時間がたちましたが、あと一分ぐらい。しかし私は、これは必ず動いていくと思いますね。  最後に、せんだって玉沢防衛庁長官が沖縄へ行かれて、三事案を含む基地問題についての提言がありました。中身は中長期的なところもあります。私は、沖縄側の意向というものは、小さい、狭い沖縄でリロケートをして基地を再編統合ということは、基本的には革新、保守を問わず歓迎する立場にはないということは、政府、ぜひ理解をしていただきたい。整理統合ではなくして、我々はあくまでも整理縮小なんですよね。  そこで、この三事案はこれから具体的に進むということですが、防衛庁だけでやることではない。外務省がもちろんアメリカとの交渉をやらなければいかないと思いますので、沖縄の基地問題について具体的にこれからどう作業を進めていかれようとするのか、外務大臣の基本的な見解だけ、お聞かせをしておいていただきたいと思います。
  134. 河野洋平

    河野国務大臣 沖縄の基地問題、とりわけ三事案については、日米首脳会談で両国首脳がそれぞれこの問題が重要であるということをお述べになったわけでございます。  総理が帰国された後、防衛庁長官と私、総理から呼ばれて、この問題について総理からの御指示をいただきました。御指示は、この三事案についてできるだけ実現するよう努力をしろということでございましたので、防衛庁長官、私、それぞれこの問題実現のための努力をしようと言い合っているところでございます。  具体的に、今何からどう手をつけているかということにつきましては、それぞれ作業部会での議論もございますし、それらを踏まえて、私が今出ていく場面かどうかということについても、今省内で相談をしているところでございます。
  135. 上原康助

    上原分科員 ありがとうございました。
  136. 越智通雄

    ○越智(通)主査代理 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  137. 衛藤征士郎

    衛藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。前原誠司君。
  138. 前原誠司

    前原分科員 新党さきがけを代表いたしまして、外務省並びに防衛庁に御質問をさせていただきたいと思います。通告に従いまして御質問させていただきます。  まず一点目の、中国の海軍力増強についてということでございます。この実態については諸般ございまして、今まで中国というものは陸軍、大陸が広うございますので陸上部門について、毛沢東の思想もあって整備をしていた経緯がございました。それが、一九七八年十二月以降の改革開放という流れに沿って沿海側を経済特区あるいは開放都市ということを決めて、沿海側を中心に外資を取り入れて、中国の経済発展をやっていこうというふうなことでございます。  したがいまして、船の出入りも多くなりました。商船の出入りも多くなりました。そういう意味で、海軍力を増強しなければいけないというのはある意味で自然の流れかなと思うわけでございますけれども、しかし、きょう御質問するように南沙諸島の問題、それから台湾の問題、こういった部分も範疇に入れてのことではないかというふうに私は思っております。  そこでお尋ねをしたいわけでございますが、まず外務省として、中国の海軍力増強について危機感を持っておられるか、また、そういう何か意図をお感じになっているかどうか、また、これは単なる人民解放軍の中の組織変革の問題であるととらえておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  139. 川島裕

    ○川島政府委員 危機感を持っておるかという御質問でございますけれども、中国の国防の近代化というものが進んでおりまして、これについて注意深く見守っているというのが私どもの姿勢でございます。  中国自身、改革開放路線というものは、基本的には平和な国際環境を必要としているということでございますし、中国自身その点は言っております。他方、まさに最近は海軍それから空軍を中心に、漸進的に近代化を進めておるということでございます。  それで、これをどう受け取るかでございますけれども、今のところは、装備が相当古いのを若干近代化と申しますか一世代前に進むとか、そういうのが中心の動きであるというふうに考えております。  ただ、いずれにいたしましても、私どもが重視しておりますのはその透明性でございます。予算なんか見ただけでは本当のところはつかめないのではないかというような指摘もなされている中で、とにかく透明性をもっと増したらいいのではないかということを中国と実際にやりとりをしておりますし、実は本年一月にも日中安全保障対話という場を持ちまして、これは制服も参加した場でございますけれども、その中で私どもは何よりも軍事の透明性の向上というものを求めた次第でございます。  そういう中で、こういう中国の国防政策と申しますか、近代化の動きを注視していくというのが基本的な姿勢でございます。
  140. 前原誠司

    前原分科員 今、川島アジア局長から御答弁がございましたように、中国の兵器の質自体が非常に古い部分が多い、これも事実でございます。また、改革開放路線に従って、国防の近代化というものも将来目指す四つの近代化の一つでございますので、そういった路線もあるだろうというふうに私も思っております。  ただ、今おっしゃったように防衛費だけではわからない部分も非常にあるわけであります。その流れの中で海軍力を中国は増強しつつあるというふうに私は感じているわけでございますけれども、海軍力を増強したときには最終的には空母を持たなければいけない。商船を守る、その海路を守る、あるいは領土的な利益を守るというふうな場合には空母を持たなければいけない。  よく中国の空母の保有についてはいろいろと誤報もあったりしておりますけれども、今のところ、外務省、これは防衛庁でもお答え結構でございますけれども、中国が空母を持つ可能性、また何かそういうきっかけみたいなものをつかんでおられるのかどうか。外務省、防衛庁どちらでも結構でございますので、お伺いしたいと思います。
  141. 山内千里

    ○山内説明員 お答えいたします。  中国の海軍あるいは中国が空母を保有する計画を持っておるかというお尋ねでございますけれども、先生の御案内のとおり、空母の導入につきましては、従来より中国の国内、これは中国政府部内あるいは中国共産党の中で、長期的ないわば希望という形ではしばしば議論の対象に上っているということは承知しております。そういう意味で、中国が長期的な目標としまして、空母保有について大きな関心を持っているものということは事実であろうと思います。  しかしながら、現在のところ、結論的に申し上げますと、我が方としまして、中国が空母の保有に向けて具体的な取得の準備あるいはそういうような動きに出たというような、具体的な兆候というのは把握しておりません。  ちなみに、可能性についてでございますけれども、一般的には財政的な問題と技術的な問題があると思います。技術的な問題といたしますと、従来一度も例がないわけでございますから、例えば船体そのものの建造技術あるいは船体に付随する例えばカタパルトのようなものの技術、あるいは航空機を載せるわけでございますから航空機のパイロットの養成であるとか、そういう問題があると思います。  それから財政的な問題としまして、みずからの手でつくるとしましても相当規模経費を要する。さらに、これはしばしば議論になりますけれども、外国から仮に輸入する場合でしたらさらに相当の経費がかかる。  それから、一般的に空母といいましてもいろいろな種類がございまして、結局どのような運用をこれから構想を立てていくか。つまり、空母一隻持っていても実際には用に足りませんので、そういうような非常に複雑な問題がございます。  そういうわけで、現時点で我が方として具体的な兆候をつかんでおりませんし、また仮に中国がそういうような長期的希望を持っているとしても、相当の期間を要するのではないかと思っております。
  142. 前原誠司

    前原分科員 今の御分析は非常に甘いというふうに私は思います。数人の軍事専門家の中で、これは中型の空母でありますけれども、中国がいわゆる海外購入というものを打診をしているというふうなことをおっしゃっています。その真偽はもちろん、ましてや武器に関する問題で、兵器の購入でありますからなかなか具体的な事例は表には出てこない問題でありますけれども、私は必ず中国は空母を持つと思います。  そして、それは今おっしゃった自力製造は非常に時間とコストがかかるという部分から、どこかから購入するという方法でやってくるんだろう。具体的に国の名前を挙げますと、ウクライナなんかそういう打診を受けているということが数人の専門家の証言から出ておりますので、その辺は防衛庁としては確たる証拠がないという言い方だと思いますけれども、これはこれからの議論のたたき台でございますのでこれ以上はお話をいたしませんが、将来的には、それも近い将来に、中国は空母を持つ国になるのではないかと私は思っています。  そこで、それを前提にして南沙諸島の問題と台湾の問題について御質問させていただきたいと思います。  現在、南沙諸島の問題について、フィリピンが領有権を主張していたミスチーフ岩礁というところに中国が建造物をつくったということで、南沙諸島の緊張感が高まっているのは御承知のとおりでございます。  これについては中国側は、海南省が、地方政府が勝手にやったことであって中央政府は存じ上げていない、そういう見解で、いわゆる中央と地方の二重構造ということでフィリピン政府には説明をしているわけでございますけれども、こういった問題については、多分中央政府が積極的に関与してやっている問題であると思います。  この南沙諸島の問題については、今までも非常に領土の問題で、マレーシア、フィリピン、ベトナム、台湾、ブルネイ、そして中国、こういったところが複雑に絡み合って、棚上げをしようということでありますけれども、南沙諸島よりもより近い海域でベトナムがいわゆる資源の採掘の調査をしたりとか、あるいは今回の事態とかいうことで、非常に中国の行動には目に余るものがあるというふうに私は思っております。  そこで、これは大臣に御答弁いただきたいのでございますけれども、今回の南沙諸島への中国の建造物について、日本政府として正式の、公式の御見解がございましたらお話をいただきたいと思います。
  143. 河野洋平

    河野国務大臣 今議員お尋ねのいわゆるミスチーフ礁における建造物の存在について、中国とフィリピンとの間でやりとりがなされているということは承知をいたしております。  南シナ海は北東アジアとインド洋を結ぶ非常に重要な、我が国にとっても海上輸送路でございますから、この地域の平和と安定というものが我が国にとって、あるいは東アジア地域全体にとっても極めて重要だということはどなたも異存がないところだと思います。  我が国といたしましては、南沙群島を含む南シナ海諸群島の領有権問題については、関係当事者が自制しつつ、話し合いにより平和的に解決していくことを強く希望している、これが目下のところ公式見解でございます。
  144. 前原誠司

    前原分科員 ということは、自制をしつつということではございますから、棚上げをしようと中国も含めて話がなされていたわけでありますけれども、それにもかかわらずこういう行動をとったことは、日本政府として遺憾であるというふうに解釈をしてよろしいわけでございますか。大臣、お願いします。
  145. 河野洋平

    河野国務大臣 遺憾と言うかどうか、まだその事実関係が、どういう状況でこういうことになったのかということがまだはっきりしないわけで、遺憾だということまで申し上げられない、今の時点ではそういう状況でございます。
  146. 折田正樹

    折田政府委員 ちょっと法的側面から御説明させていただきますと、戦前、我が国は南沙諸島を領有していたわけでございますが、御承知のようにサンフランシスコ平和条約によりまして、サンフランシスコ平和条約では新南群島となっておりますけれども、これに対するすべての権利、権原、請求権を放棄しているわけでございます。  それから、我が国自身は本件の当事者ではないということでございますので、日本がどちらかの、特にこの問題について特別な見解を出すという立場にはない。ただ、今外務大臣がおっしゃられたように、関係当事者が自制しつつ、話し合いにより平和的に解決していくことを強く希望しているという主張をしているわけでございます。
  147. 前原誠司

    前原分科員 当事者でないのでそういう見解は出せないという御説明でございますけれども、先ほど大臣から御答弁ございましたように、日本にとってもこれは重要な航路でございます。そういったところから、日本がこの件について何も言わないというのは、逆に私はおかしな部分があるのではないかと思います。  では、違う角度から御質問いたしますけれども、フィリピン政府からこの件について何か日本政府に対して照会があったのか。新聞には、フィリピンのミスチーフ礁に中国の建造物がつくられているというふうな写真が載っておりましたけれども、そういう具体的な事例をもってフィリピン政府から何かこのことについて説明があったのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  148. 川島裕

    ○川島政府委員 フィリピン側は、ミスチーフ岩礁での建造物の問題について大変強く受けとめております。その間のフィリピン政府の受けとめ方、それから考え方、対応等については非常に詳細に逐次連絡を受けております。
  149. 前原誠司

    前原分科員 中国がこの南沙諸島にこだわる理由、これは唯一と言っていいと思います資源の問題。もちろん島の領有権、漁業的な権益の問題もございますけれども、大まかに言ったら資源の問題であろうと私は思っております。したがいまして、資源といえば極めて経済的な問題ではないかと思っております。  拡大ASEANの会議においては、この南沙諸島の問題も含めて議論をしよう、ベトナムがASEANに入るということもございまして、その議論が進められるような報道がなされておりますけれども、これは今申し上げましたように、フィリピン、台湾、ブルネイ、マレーシアそれからベトナム、そして中国というふうな国々が絡み合っている問題でございまして、特に、こういう強行的な措置を中国がとる場合に、軍事的な側面も非常に強くなるだろうと思うわけであります。したがって、ASEANの会議だけではそういった問題が果たしてまとまるのかなと思うわけであります。ですから、アジアの安全保障にもかかわる問題でございますので、ある程度もうちょっと間口を広げて、例えばアメリカとかあるいは日本が話に乗る形、やはり話し合いで棚上げを決めた以上は、一国の横暴、専横を許さないという立場を明確にしていくのが私は必要だと思います。  そういった点で、極めて政治的な問題であると同時に、資源という経済的な問題でございますので、APECの会議にこの南沙諸島の問題というものを含めて話をする、今回日本議長国で外務大臣も非常に大変になられるわけでございますけれども、この南沙諸島の問題をAPECの会議にのせるというふうな意図はおありか、あるいはそういうふうな打診みたいなものが他国からあったりあるいはこちらからされたり、また非公式的な折衝の中でそういうものがあるのかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  150. 河野洋平

    河野国務大臣 目下のところはないそうでございますし、私としましては、少なくとも現在、APECでこの問題をやるということは考えておりません。
  151. 前原誠司

    前原分科員 では、領有権を主張している国々の中で自主的に解決をされる問題であるというふうな御認識でいらっしゃいますか。
  152. 河野洋平

    河野国務大臣 関係諸国はこれまで、この問題は話し合っていこうということ童言ってきているわけでありますから、その中には中国も入っているわけでありますから、話し合いをしてほしいと我々は期待しております。その話し合いの成り行きというものは、我々は注視するということでございます。
  153. 前原誠司

    前原分科員 では、次の問題にまた絡めてお話をしたいと思います。  台湾問題でございますけれども、私、中国の現状を見ますと、改革開放というものが過熱をし過ぎている、つまり、政治的な自由は抑えつつ、経済的には社会主義を捨てていわゆる資本主義、自由競争体制を取り入れようというのが中国の今の政策でございまして、これは必ず矛盾を来す。特に、鄧小平氏、最高実力者と言われております鄧小平氏の健康問題も含めて、中国の先行きというものに非常に私は不安を感じているところであります。  そういったところで、今まで歴史の教科書をひもときますと、内政が混乱したときにどういった方法でそれを静めるか、あるいは回避をするかという方法の一つに、いわゆる外に目を向けるということがございます。  北朝鮮も一つのその例と言ってもいいのかもしれませんが、いわゆる中国が内政問題でポスト鄧小平のときに混乱をした場合に、例えば求心力がなくなってチベットがまた紛争を起こす、あるいは新疆とかウイグル、あの辺でも国境問題を抱えておりますし、あるいは自治、自立、独立の動きも水面下ではあるわけでございまして、そういったところが同時的に多発をするおそれがある。そういったときに台湾というふうなものを一つのスケープゴートにして、中国の領土は不可分である、一つであるということで武力制圧といいますか、少なくともそういう圧力を武力的にかける可能性というものは、私は皆無ではないと思っております。  そうしたときに、まずこれは防衛庁にお伺いしたいわけでございますけれども、紛争が仮に起きたとしても、これは中国の内政の問題であるということで、多分しばらくはどの国も動かないと思います。しかし、ある一定時期が過ぎたときに、どう見ても仕掛けたのが仮に中国であった、そしてアメリカからこの間もF16戦闘機百五十機、フランスからミラージュ2000戦闘機を六十機、こういう購入を台湾はしているわけでございまして、アメリカに要請をしてくるケースというのが非常に多い。そうしたときに、アメリカがもし、議会が今は台湾の独立というものを共和党が主導になって、いわゆる台湾独立いいじゃないか、李登輝がハワイに来て一歩も機内から出さなかったのは失礼じゃないか、そういう議会の中での意見が盛り上がっておりまして、これが大統領府と衝突をしているという部分も報道されているわけでございます。  それが多数の共和党に押された形で、台湾が仮に武力の侵攻を受けた場合にアメリカが要請を受けて、そしてそれに対して助けに出るといった場合には、一番近い日本の基地あるいはほかの韓国やフィリピンの基地というふうなことになると思うのでありますけれども、そのとき、例えば日中の平和友好条約を結んでいることについて何ら法的に抵触をしないのか。また、そういう在日の米軍が使われることに対して、今までの日米安保のいわゆる協定に抵触しないのか。後者の方は防衛庁、そして日中平和条約に絡んでは外務省からお話を伺いたいと思います。
  154. 折田正樹

    折田政府委員 今非常に仮定のお話があったように思いますけれども、中国が台湾に武力侵攻したようなときにどうなるかということですが、御承知のように日米安保条約というのがあるわけでございますけれども、安保条約の運用の問題につきましては、やはり具体的な事例に即して検討すべきであろうと思います。  今のような事態をあらかじめ想定して、仮定の議論に立っていろいろ議論することはいろいろ差し支える点もあろうかと思いますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  155. 山内千里

    ○山内説明員 お答えいたします。  ただいま外務省の方からも御答弁がございましたように、何分中国と台湾が武力衝突をしたということ自体あくまで仮定の問題でございますので、それに対しまして米軍あるいは在日米軍、あるいはさらに自衛隊がどのように支援するかという事態を想定いたしまして具体的に申し上げるという段階ではない、そういうことで、個々の問題についてお答えいたしかねるということで御理解いただきたいと思います。
  156. 前原誠司

    前原分科員 内部で議論されていて表に出せないということなら結構ですけれども、そういう仮定の議論はされていないということでよろしいのですか。全く議論は内部でも……。お二方、簡単に、イエスかノーかでお願いします。
  157. 折田正樹

    折田政府委員 いろいろなケースを考えながら我々は対応しておるわけでございますけれども、今、現時点でこのような状況に直ちになるというふうには我々は考えておりません。
  158. 山内千里

    ○山内説明員 先生もおっしゃいましたように、中国は従来より、建国以来いわゆる一つの中国という方針を維持しておりまして、台湾の独立に対して武力を行使する、武力使用を放棄しないという旨を再三にわたって表明しているということは承知しております。  しかしながら、この問題、今後どうなるかというのは、今後の中国と台湾の動向にかかっておりまして、そういうような仮定の問題でございますので、現時点で申し上げることは差し控えたいと思います。
  159. 前原誠司

    前原分科員 いや、内部で話をしたことがあるのかどうか。今言ってくれというのではなくて。
  160. 山内千里

    ○山内説明員 一つ、議論としては、そういう議論はされております。
  161. 前原誠司

    前原分科員 結構です。中で議論をされているなら安心をいたしました。今回の地震でも危機管理ということが言われているわけでありまして、具体的な国の名前が挙がる問題でございますので、公の場で出すということはもちろん差し控えるべき問題であろうがと思いますが、内部ではやはり話し合いをしていただいておかないと、これだけ、東南アジアの情勢、極東の情勢というものも今後ますます流動化してくると私は思いますので、その点の対応策だけは抜かりなくお願いをしたいと思います。  まとめて最後に質問をさせていただきたいわけでありますが、外務大臣にお願いをしたいと思うわけでございますが、これは私、先般の予算委員会でも総理に対して御質問したことでございますけれども、今回大阪でAPECの会議が開かれます。この大阪のAPECでの会議に、中国の問題というのを話し合う、話し合われないにしても、非常に色濃く影を落とす会議になるのではないかと私は思います。  そういった意味で、ある意味で中国の今の膨張主義と言ったら言い過ぎかもしれませんが、南沙諸島の問題もしかり、あるいは海軍力の増強にしてもしかり、また、我々のODA大綱というふうなものがあるにもかかわらず核実験を行ったり武器輸出をしたりしているというふうな、ある意味で国民になかなか説明がつかないような横柄な、あるいは横着な行動が目につくのではないかと私は思っております。  そうしたときに、では大国として中国、もちろんつき合っていかなければいけない。筋が通らないからこれで関係を切るということには、十二億の人口を抱えている大国についてはなかなか言えないのは私も承知をしているところであります。しかしながら、そういうものをある程度周りの国でガードしながら、そして封じ込め政策とまで言えるのかどうかわかりませんが、ある程度周りの国々が一致協力して中国の膨張主義あるいは横着な行動というものを、間接的に、直接的にプレッシャーをかけていくという態度も必要ではないかと私は思っております。  そこで、できる、できないは別にして、実質的に独立した経済主体でございますけれども、台湾のトップをAPECの会議に、経済会議、純粋な経済会議として呼ぶということについてはそれなりの意義があるのではないかと思いますので、その点についての御見解を伺いたいのと、それからもう一つは、先ほど申し上げましたODA大綱の問題でございますが、もし万が一、南沙諸島あるいは台湾の問題、きょう御質問いたしました二つの点について中国が、例えば南沙諸島の問題だったら、棚上げたという議論を無視して武力の威嚇を伴う形で既得権益化をしていく、あるいは他国との摩擦をふやしていくということをやった場合、あるいは台湾について何らかの武力的な威圧あるいは武力的な圧力を加えた場合、その点については私は明らかにODA大綱には違反する行為ではないかと思っております。  先ほど触れましたように、地下核実験の問題でも、また武器輸出の問題でも、私は、国民の目からすれば、なぜ中国にもっときつく言わないのか、あるいはODAの停止も含めた外交手段をとらないのかという素朴な感覚があるのではないかと思っております。  したがいまして、今でも私はODA大綱に抵触するようなことがあると思いますけれども、南沙諸島の問題がさらにエスカレートして武力の威嚇を伴う場合、あるいは台湾について、何かそういった場合においては、ODA大綱に即して中国のODAについて見直しをする御意思があるのかどうか、まとめて大臣に御答弁をいただきたいと思います。
  162. 河野洋平

    河野国務大臣 APECの問題でございますが、議員がAPECの出席について台湾のトップの出席を考えろ、こういう御提案だったと思います。  大阪APEC、これはどこのAPECもそうでございますが、非公式首脳会議というのをやるわけです。非公式ではありますけれども首脳会議というときには、過去二回、それなりの解釈といいますか、考え方といいますか、そういうものがあって、それぞれまさに主権国家のトップとでもいうのでしょうか、そういうものを非公式首脳会議には呼ぶという従来のやり方があるということになっております。  今度の大阪のAPECにおいても、次の大阪APECはどうするんだという質問が、ジャカルタのAPECが終わりました直後の共同記者会見の席で、もう既に質問として出ております。私どもはその質問に対して、シアトル、そしてジャカルタ、二回にわたるAPECのやり方を踏襲いたしますということを言っているわけです。予算委員会でも議員の御質問に答えて村山総理からもそういう御答弁があったと思いますが、今政府としては、そういう考え方で大阪APECに臨むというのが基本的な考え方でございます。  それから中国の問題ですが、議員は、中国は膨張主義ではないか、こういうふうにやや膨張主義だという断定をして、議員のお立場として、見解としてお述べになりました。  議員の御見解は議員の御見解だと思いますが、私は、実は中国が膨張主義であるかどうかということを断定する状況ではまだないというふうに思っております。我が国と中国とは良好な関係に今あって、そして、それぞれ子々孫々に至るまでこの良好な関係を発展させようと、言ってみれば誓い合って日中共同声明などでうたっているわけで、そのことはお互い忠実に守っていこう、こういう状況でございます。  そして、私は先ほども申し上げましたように、中国の存在というものは、やはりこのアジアにおいてというか、あるいは国際社会の中において非常に大きな存在だと思います、これは領土からいっても人口からいっても。やはり我々は上手につき合っていく必要があるというふうに議員もお述べになりましたが、我々もこの国とはいい関係でいかなければならぬと思っているわけです。  こっちだけそう思っていたってだめじゃないか、向こうはそう思っているのかい、こういう御意見だと思いますが、基本的に双方は、これまたお互いの考え方を率直に述べ合って、我々も核実験については、相当繰り返し率直にさまざまなレベルで言ってきているわけです。私は、こういうことはもっと言ったらいい、言い合ったらいいと思っておりますから、これから先も我々の考え方を率直に申し上げるつもりです。  南沙諸島の話については、先ほどから何回も繰り返して申し上げておりますように、まだまだこのことについて私が物を言う段階ではないというふうに思っておりますので、これは差し控えさせていただきますが、我々は言わなければならないことは今までも率直に言ってきた、それが言える間柄でなければならぬというふうに思っているところでございます。
  163. 前原誠司

    前原分科員 もう時間が終わりましたので、一つだけ確認で、では、李登輝総統は、日本政府としては従来のパターンで呼ばないというお立場であるかどうか、その点だけちょっと確認して、終わりたいと思います、
  164. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返してございますが、これまでのやり方を踏襲したい、こう考えております。
  165. 前原誠司

    前原分科員 終わります。
  166. 衛藤征士郎

    衛藤主査 これにて前原誠司君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  167. 山原健二郎

    ○山原分科員 現在西日本、あるいは近畿、中国、四国の米軍の超低空飛行訓練の問題につきまして、随分今までも要請をしてまいりましたが、昨年の十月十四日に、ついに早明浦ダム、私の町にあるダムですが、ここで墜落事故が発生しまして、住民が非常な衝撃を受けているところでございます。  事故現場は、高知県大川村船戸地区というのですが、ここは村役場あるいは学校が集中する小松地区というのがございまして、わずか一キロメートルしか離れていません。機体の一部は保育所から二百メートルほどのところに飛び散っていまして、一歩間違えば村民、子供を巻き添えにしかねない事故であったと思っております。  再三にわたりこの中止を求めてきた者としまして、また県知事を初め地元五カ町村の行政機関あるいは周辺県行政機関を通じて外務省に要請をしてきたところでございますが、このことについて伺いたいと思います。  外務省は、重大事故を受け、米軍に対してどう対処したか、また米軍、米側からはどういう回答が来たのか、答えていただきたいと思います。また、詳細については文書で提出をしてほしいと思っておりますが、お答えをいただきます。
  168. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 ただいま先生御提起の件でございますが、本件につきましては先生からも当時御意見を私ども承ったわけでございまして、アメリカ側もこの十月十四日にこういう事故が起こったということは非常に遺憾というふうに思っております。  私どもは、先生おっしゃいますように、地元の方々からも、地元の町村の方からも御意見、御要望を承りました。私ども外務省といたしましては、この承りました御意見、御要望は合同委員会、あるいは私ども日ごろから米側とは接触がございますし、意見交換あるいは連絡等は密接に行っておりますので、そういう機会に米軍の飛行訓練についての関係地方自治体から寄せられました御要望等は米側に伝えてきている、こういうことでございます。  そういう御要望も踏まえまして、私どもはアメリカ側に対しまして、再発の防止、事故原因の究明ということはもとよりのこととして、今後安全の確保、あるいは地元に対する影響を最小限度にとどめるために何ができるか、こういうことについて米側でも真剣に検討してほしい、こういうことを申し入れて協議をいたしてきておる、こういうことでございます。アメリカ側も、飛行訓練の実施に当たりましては十分安全面に配慮し、それから地域の方々に影響を与えることを最小限にしたい、こういうことは累次にわたって表明をしてきておる、こういうことでございます。
  169. 山原健二郎

    ○山原分科員 なぜ中止を求めないのかということです。これはもう住民の本当に率直な感情です。  外務省から今お答えになったようなことを文書でもいただいております。努力されていることはわかりますが、事故が起こりまして数日後から、もう既に低空飛行訓練が開始されていまして、この二月に入りましても十二回行われています。去る二月の十四日、これまた超低空飛行が行われておるというふうに、全く住民の声も、あるいは外務省からの要請に対してもこたえる姿勢がないわけですね。  しかも、調査報告もされていない状況のもとで同じ訓練が再開されるということを許すということもおかしいし、これをあえて強行するという米側の姿勢にも非常に大きな問題があるわけでございまして、例えば昭和五十二年に起こりました横浜市内での米軍機墜落事故問題、お母さんと子供さんが亡くなった大事件で、痛ましい事件でありますけれども、あのときは四カ月弱で米側が報告書を出しておりますが、昨年の十月から計算しますと既に四カ月以上経過してなおかつ事故調査の報告が出ていない、また、正確に外務省にも日本政府にも通知がないということについてどうお考えなのか、伺っておきたいのです。
  170. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 仰せのとおり、この事故そのものにつきましての調査報告というものはまだ出ておらない、こういうことでございますが、アメリカ側として何らの措置もとらなかったということではございませんで、十四日の墜落事故以降十八日までは米軍も低空飛行訓練を中止したというふうに承知しておりますし、この間飛行手続や安全措置の再点検、装備の検査、こういうものを行いまして、当該航空機の航空機としての安全性には問題がないということを確認したというふうに私ども承知をいたしております。  事故原因、この事故そのものの原因調査の結果がまだ出ておらないということはそうでございますし、時間がかかっているということはそうでございますが、やはり徹底的に究明をするということでございまして、少し時間がかかっている。過去におきましても遺憾ながらこの種の事故、この種といいますか、墜落事故等が過去においてもありましたけれども、その際も、事故原因の究明ということには数カ月、五カ月でありますとか十カ月でありますとか、そういう、若干ばらつきがございますけれども、調査期間というものは要した、こういう事例もございまして、御指摘の点はわかりますし、私どももなるべく早く結果が出るようにアメリカ側にも申してきておる次第でございますけれども、客観的な状況は今申し上げたようなことでございます。
  171. 山原健二郎

    ○山原分科員 過去の事故が起こった場合も、外務省としては、米軍が我が国の安全規制と地域住民への影響への配慮を払っているというふうに説明をしているわけですね。奈良県の十津川の木材運搬用ケーブルのワイヤロープ切断事故を起こしました翌年の衆議院の予算委員会で、外務省北米局長がこういうふうに答弁しているわけですが、「米側は、」「引き続き我が国航空法を尊重し、最低安全高度百五十メートル、ただし人口密集地上空では三百メートルを実体的に守るとともに、飛行の安全及び地域住民に与える影響に一層の配慮を払うということを明らかにいたしております。」これは有馬北米局長の一九八八年二月二十三日の衆議院予算委員会の答弁でございまして、昨年の八月の参議院決算委員会でも同様な答弁を行っておられます。  そこで、実際の訓練飛行高度というのは百五十メートルより低いということは、地域住民の目撃によっては明らかなんです。パイロットの顔が見えたとか、早明浦ダムの堰堤を目指して下流から飛んできて、堰堤のところで急上昇していくというような状態ですね。あるいは、早明浦ダムの堰堤というのは今百六メートルあるのですよ。これプラスしますと、百五十メートルプラスして、これが高度でなければならぬですが、実態としては、目撃者の話でも、すれすれに飛んでいるということ、これはもう否定できない事実でして、今回の事故の直前に、ダム周辺の方の目撃した話ですけれども、異常に低い高度で斜めに飛んできて、一瞬飛行機の背中が見えたという、そういう高度で飛行してきた。我が国の安全高度規制を尊重しているなどということは実態としてはもうかけ離れている、信ずることはできないというのが住民の声でございます。  外務省は、この吉野川の周辺の米軍機の低空飛行訓練がどの程度の飛行高度で行われているかということを事実としてつかんでいるのでしょうか。今回の事故機がどの程度の飛行高度で訓練していたか、これはおわかりですかね。
  172. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 私ども、米軍が実施しております個々の飛行活動実施ぶりの詳細を承知しているわけではございませんで、具体的な飛行高度というものを把握をしておるということではございませんけれども、先生もお述べになりましたように、米軍は、日本の安全基準にもあります最低高度、これは厳守をしておるということは累次確言をいたしておるところでございます。  それで、より具体的に昨年の事故の場合の飛行高度ということでございますが、その点は承知をいたしておりません。先ほど来申し上げますように、事故原因の調査ということは依然進行中ということでございますが、その結果としてあるいはそういうことも明らかにされることがあるのかもしれませんが、目下のところは飛行高度について何ともお答えしかねる状況でございます。
  173. 山原健二郎

    ○山原分科員 米軍機は、フライト・データ・レコーダーが民間航空機と同様に搭載されております。軍事問題で世界的権威を持つジェーンの航空電子関係の年鑑を見ましても、事故を起こしたA6イントルーダーですが、これはDSS100というフライト・データ・レコーダーが搭載されていると記載されておりますし、そこには飛行高度、方向あるいは方位、機体の姿勢、スピードなどが記録されているわけです。だから、きちっとした事故調査が出ていないという事実があるわけですが、フライトレコーダーはどうなっているのですか。
  174. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 承知をいたしておりません。先ほど来申し上げておりますように、米側は米側において調査が進行中ということでございまして、私どもまだその結果を承知していない、こういうことでございます。
  175. 山原健二郎

    ○山原分科員 私も現地で湖底に沈んでいるのではなかろうかという感じもしますけれども、肝心のものが出てこない、あるいは不明である、全く報告もないということでは、真相究明もできないままじんぜんと日がたっていくのではないかという心配をしておるわけですが、実態をつかまないで、米軍がこう言っているから心配ないとかいうようなことは、もはや地域の住民にとっては通用しない話なんですよ。  我が国の安全高度規制よりはるかに低い高度で訓練を行っているということは、米軍の飛行訓練マニュアルによっても裏づけられていまして、米空軍、海軍の共用マニュアル「飛行訓練航空航法」によりますと、「低空戦闘任務のための通常の高度は地上から二百フィートから五百フィートの間である」というふうに明瞭に書かれているのですね。そうしますと、二百フィートというのは、それから五百フィートというのは、メートルに直しますと約六十メートルから百五十二メートルというふうなことになっておりまして、そういう高度で訓練することが米軍の訓練規則の中にあるわけですからね。したがって、三百メートル以上という我が国の安全高度規制を守るというのは、米軍にとってはもともとできない訓練をやっておるという大変な矛盾が出てきているわけでございます。  外務大臣は、河野さん、本当に、二月の三日の衆議院予算委員会で、「米軍が我が国において全く自由に飛行訓練を実施していいというわけではなくて、我が国関係国内法令などにある安全基準を尊重して、また我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うべきことは当然でございます。」と答えておられるわけですね。これは当然のお答えだと思いますが、本当にこの我が国の安全基準を尊重させると言うならば、我が国の航空法に定められた安全飛行や最低安全高度の遵守などの規定を米軍についても適用させるべきだと私は思います。  これらの規定を米軍については適用除外している、いわゆる航空特例法、米軍地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律、一九五二年七月制定したものでありますが、これを直ちに廃止すべきだと思います。米軍側も尊重すると言っていますし、外務省も米軍が尊重するのは当然だと言っておるのであるならば、それならば航空特例法を廃止に踏み切っていいのではないかというふうに思いますが、この点お答えをいただきます。
  176. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  一般国際法上、外国にあります軍隊には国内法というものはそのまま適用になることはない、こういうことでございまして、そういう考え方で地位協定というものもつくられている、こういうことでございまして、その趣旨にかんがみまして、航空法特例法といいますのは航空法の規定の一部適用除外を定めておる、こういうことでございます。したがいまして、外務省といたしまして、航空法特例法を廃止すべきだというふうには考えておらない次第でございます。  ただ、先生ただいま言及されましたように、外務大臣からも申し上げているわけですが、国内法がそのまま適用されているということではないのですけれども、しかし米軍が我が国において全く自由に飛行訓練を実施してよいということではない。何となれば、我が国関係国内法令にある安全基準を尊重する、適用はないけれども尊重する、こういうことなのだということでございまして、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うべきだということは、もう申し上げるまでもなく当然のことだというふうに私どもは考えているわけでございます。  先ほど先生、確証がないと米軍がこう言っているからといって信用ならないという趣旨のお言葉がございましたけれども、私どもは、やはり日米両国というのは同盟関係にあるということでございまして、したがいましてお互いに信頼というものを持って対する、こういうことがやはり同盟関係の基本にある、こういうことなのではないかというふうに思っているわけでございます。その上に立って、もちろん日本側としては日本側の考え方、意見、事情、こういうことがあるわけでございますので、その上で米側に対しても言うべきことは言う、こういうふうにしてほしいという希望は言う、こういうことでいろいろな問題に対応していくべきなのじゃないかというふうに考えておりまして、私どもはそういう立場でこの問題に対応してきておるつもりでおります。
  177. 山原健二郎

    ○山原分科員 日米安保に対する考え方の違いは、これはあると思います、私も反対ですからね。けれども、日本を守るために必要な訓練だというのはこれは偽りです。  例えば、先ほど少し挙げましたが、米海軍・空軍共用マニュアル「飛行訓練航空航法」は、第二十章「低空飛行」で、低空飛行訓練の目的を次のように定めています。「低空作戦を指導する主な理由は、奇襲攻撃要素を獲得すること、探知および妨害を避けること、および敵の防御を最小にすることである」。つまり、敵のレーダーによる探知や対空ミサイルによる迎撃などを避けるために低空で進入して、レーダー施設や迎撃基地をつぶして、敵を奇襲するというのがちゃんと書いてあるのですね。  それを、日本国内で勝手気ままにやられてたまりますか。日本国民を守る、日本の国土を保全するなどというものではない訓練目的を持って動いているわけですから、そういう意味で、これはもう深刻な問題として考えていただかなければならぬと思います。結局、敵地に乗り込むときの作戦訓練をやっているわけですよ。だから、日本を他国の軍事的な侵略から守るというものではないのです。私は、そう思っています。  今度も米軍機の低空飛行訓練について、高知県本山町が克明な記録をつけておるわけですが、その昨年の記録を見ますと、一月から六月の半年間は二十三回、二十八機ですね。ところが、七月八日、いわゆる金日成が死去した日から、七月には二十二回、八月に二一回、九月に二十七回、十月が、事故の起こる十月十四日までに十四回、頻度が物すごくふえるわけですね。  結局、米軍が中東や朝鮮半島などの有事に軍事的行動を展開するための訓練ではないかということを素人でも皆思っているわけです。今、日本の国民というのはこんな問題について素人じゃありませんから、もう必死で飛行機の航路を追跡したりしておりますので、国民をやはりなめたらいかぬわけですよね。  昨年の十一月二十八日の衆議院外務委員会で北米局長は、「日本の安全あるいは極東の平和と安全の維持に寄与するために、米軍としてはそういう即応体制を維持するための訓練がどうしても必要である、そのためにまさに危険な訓練もあえてアメリカのパイロットとしてはやらざるを得ない」と述べているでしょう。  結局、日本を守るための訓練というよりは、思わず本音が出たといいましょうか、まさに危険な訓練をやっているということをおっしゃっているわけでして、パイロットとして危険な訓練というのは、結局訓練地となった地域住民にとってはまさに危険きわまりない訓練が連日のごとく行われていると言っても間違いではないわけですね。この点を私は重視してもらいたいと思うのです。  それで、例えばドイツの場合をちょっと調べてみますと、低空飛行訓練で事故が相次ぎましたので、特に一九八八年から八九年にかけて頻発し、その事態を受けてドイツでは八九年に大幅な規制が行われた。ドイツ国内五カ所の空域以外では低空飛行訓練はさせないという規制がかけられたわけでございます。  ドイツでNATO軍が低空飛行訓練を行うことのできる根拠規定は、一九五九年に締結された地位協定を補足するボン補足協定があったわけですが、その第四十六条三項で、「軍隊当局及びドイツ当局は、許可されている高度より低い高度で飛行し得る地域に関して協定を結ぶことができる」と規定をされておりましたけれども、しかし、一九九三年の三月にこのボン補足協定が大幅に改定されまして、この四十六条三項は削除されることになっておると思います。この点、外務省として、間違いないか確認していただきたい。
  178. 時野谷敦

    ○時野谷政府委員 私ども、他国において米軍の低空飛行訓練等の詳細について承知をいたしておりませんけれども、私どもの承知しておりますところによれば、ドイツでも通常は一千フィート、約三百メートル、一部の地域では百五十メートルということでございまして、低空飛行訓練が中止されたということはないというふうに承知をいたしております。
  179. 山原健二郎

    ○山原分科員 大臣に最後にお伺いしたいのですけれども、私はこれは本当に、これほど我が国の主権が侵害され、しかも住民の間からまたさまざまな疑念が出たり、心配、危惧が出たりしまして、そういう状態の中で、これはやはり主権国家日本としての立場、最近元NHKの論説委員長さんなどが、日本はまだ独立国家ではない、半独立国家だ、それはなぜか、基地があるからだというような論文も出ておりますように、これは今後の日本の将来にとって一番大事な問題だと思っているのですが、その一つのあらわれが今度の超低空飛行、しかもそれをもうやめてくれやめてくれと何遍行政機関が頼んでもほとんどそっぽも向かない、そして事故が起こった。これは大変なことになったということで、その真相を究明してもらいたい、事実を知らせてもらいたい。事実もわからなければ、外務省も、これもつかんでいない。  そして、さらにその数日後にはすぐに訓練が再開されるということを聞きますと、これはどうしても腹を決めて当たってもらいたいと思いまして、ドイツでも低空飛行訓練の危険性が明らかになったため、こうした大幅な、先ほど言いましたような規制へと動いているわけでして、我が国でも、外務省北米局長が認めましたように、まさに危険な訓練となっている。これを規制し、やめさせることは、国民の生命と生活を守る政治の責任だと私は思うわけでございまして、米軍による低空飛行訓練の中止を政府としても率直に、大胆に、国民の立場に立って強く要請すべきだと思います。  その点についての河野外務大臣の御見解を伺いたいと思うのです。
  180. 河野洋平

    河野国務大臣 高知県の地元の方々からこの問題について、私もいろいろとお話を伺いました。どんなにかショックを受けたかということをこもごも語っておられるのを伺いまして、恐らくそうであったに違いない、こう思っております。  そうした県民の気持ちというものは、私なりによく理解をいたしておるところでございます。しかし一方、今山原議員がお話しのように、米軍に対してこの訓練を中止しろ、一切やめると言うことは、これはまたなかなかできることではありません。  議員と私とは安保条約をめぐって意見が違いますので、私が議員に対して申し上げることも議員は受け入れるということではないかもしれませんが、私どもは、やはり日米安保条約というものは重要なもので、これが機能していることが日本の安全にも大きな寄与をしているというふうに考えておりまして、安保条約が十分に機能するためには、やはり在日米軍の十分な訓練、日常欠かさぬ訓練というものもまた必要であるというふうに考えているわけです。  その訓練のやり方がどうかということについて先ほど来議員お述べになりましたが、私どもは、在日米軍は在日米軍としての役割を果たすべく日夜訓練をしておられるに違いない、こう確信をしているわけでございまして、その在日米軍に対して訓練をやめるということを言うというのは、これは少し言うべきことではないというふうに思うのです。  しかしながら、だからといって、日本国民が危険にさらされるということをそのまま黙認をする、放置をするというわけにいかないことは、もうそれは当然のことでございまして、北米局長からも御説明を申し上げましたが、外務省として累次にわたって、地元の皆様方のお考え、お気持ちというものを体して、在日米軍にもあるいはアメリカ当局にもそのことは伝えております。  しかしながら、先ほど未議員からのお話のように、なかなか原因究明が進んでいないとか、その結果、それではどういう改善が行われたかということが余りはっきりしないとかという御指摘もございました。これらについては、累次にわたって申し入れをしているところでございます。  地元の皆様方のお気持ちというものはよくわかっておりますが、米軍は米軍でやはりショックであったに違いない、これは推察でございますが、と思っているわけです。彼らもまた貴重なパイロットを失ったわけでございますから、彼らは彼らなりに原因の究明をやるに違いないと私は思います。さらに、我々からも申し入れをしているわけでございますから、原因の究明が必ず厳しく行われているに違いないと私は確信をいたしております。  残念ながら、まだその原因究明が終わったという報告を聞いておりませんし、したがって、それが何であったかという見解もいまだに提示していないことは残念でございますが、これらは私どもとしても、できるだけ急いで原因究明がなされ、県民の皆様方にも安心していただけるようなことになっていかなければならぬ、そのためには私としても、アメリカ当局に対しまして今申し上げましたようなことをこれから先も累次にわたって申し入れをしたい、こう思っておるところでございます。
  181. 山原健二郎

    ○山原分科員 時間が参りましたのでおきますが、私はきょうは、私の生まれた故郷のことを取り上げたように思いますけれども、しかし、これは安保条約をめぐっての全日本の問題でございますから、また論議をすることがあると思いますが、本日の質問はこれで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  182. 衛藤征士郎

    衛藤主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後二時三十六分散会