○坂野重信君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
衆議院から送付されました政府提出の
政治改革関連
法案につき、
総理ほか関係大臣に質問を行うものであります。
本論に入ります前に、一言申し上げたいと存じます。
現下の緊急課題は二
政治改革の断行とともに、厳しい不況の速やかな克服であります。景気は、今や極めて深刻な状況にあります。
我が党は、九月九日、
総額十兆円を超える緊急総合景気対策を決定し、政府にその実現を求めました。しかしながら、
細川内閣が九月十六日に発表した緊急経済対策は、事業費一兆円の社会資本整備や景気回復策とは言えない
規制緩和など、
総額六兆円程度の
内容にすぎませんでした。これでは不十分であり、しかも、いまだに補正
予算案として
国会に提出されておりません。加えて、公定歩合再引き下げの効果もあらわれず、為替相場は一ドル百円台にとどまっており、これに米の凶作が重なり、雇用情勢も一段と悪化しつつあります。
我が党は、さらに河野総裁を本部長とする不況・冷害対策本部を設け、深刻な不況への対応策を検討いたしました。今や新たに早急な対策を時宜を失することなく講じなければなりません。
政府は、この際、
さきに発表した緊急経済対策を
見直し、冷え切った消費需要を喚起するための大型
所得税・住民税減税の実施、地域経済に配慮した公共事業の追加、異常気象・冷害対策等を
内容とする大型の第二次補正
予算案を編成、すべてに先んじて一刻も早く
国会に提出すべきであります。
ところが、この補正
予算の提出時期について、政府首脳は十一月二十六日と言っておきながら、今度は議運理事会における官房長官の
報告で三十日に延期することにしたとのことですが、これは
一体何事ですか。まさか
政治改革関連
法案の
委員会審議を優先するという政略的な
理由で補正
予算の提出をおくらせるというようなことではありますまいか。もしそうだとすれば、とんでもないことであります。
法案の審議入りがおくれたのは政府のかかる姿勢によるものであります。そうした政府の姿勢に対しては強く抗議しなければなりません。
総理の説明を求めます。
さて、リクルート事件を初めとするさまざまな
政治不祥事の発生を契機に、
国民各層に広くかつ急激に
政治改革の機運が生まれ、海部内閣以降今日まで
政治改革が三たび試みられました。この間、海部内閣と宮澤内閣とが相次いで
政治改革に挫折して倒れ、我が自由民主党が政権の座を離れるという事態にまで至りました。
そして、
政権交代によって生まれた
細川内閣に至り、今回初めて
衆議院を通過し
参議院に送付されてまいりましたことは、まことに画期的なことではあります。今まで
政治改革法案の審議は
衆議院どまりであり、
参議院には送付されたことはなかった。私自身、再度
政治改革に関する調査特別
委員長に選任されながら幻に終わってしまいました。
そこで、細川
総理にこの
参議院の審議開始に当たり、冒頭に幾つかの
基本的な認識をお伺いいたしたいと存じます。
これまでの
衆議院における濃密かつ真摯な議論に対しましては深く敬意を表します。そして、ともに
政治に携わる者として、我々も
政治改革の実現に向けて積極的に取り組んでいかなければなりません。
ところが、これまでの
衆議院における審議を見ますと、なるほど実質審議時間は実に百二十五時間を超えました。しかし、地方公聴会において、
政治改革の緊急性については十分認識されるが、まだ
法案の
内容がよくわからず、理解が不十分なばかりか、地方の無所属議員に対する
政治資金の扱いなどに配慮が欠けていると指摘されたではありませんか。この点は、我が党も政府案の重大な欠陥として指摘してきたところであります。地方公聴会における論議を踏まえて、地方の
意見が十分
反映されるよう
修正等の対応が考えられるべきであったと思います。
にもかかわらず、中央、地方の公聴会を終えると、自由民主党の反対を押し切って、
政治改革関連
法案の採決を急ぐ余りこの十五日に石井
委員長が職権で締めくくり総括質疑を行う旨を宣言するなど、数を背景として強行手段に訴えたことは遺憾であります。こうしたことは絶対に
参議院において許すことはできません。よもや良識の府と言われる
参議院ではかかる
委員長の強権的言動はないものとかたく信じております。このことをまずもって強く申し上げておきます。
そもそも、
政治改革法案は議会
政治のルールづくりでありますので、時間をかけても与野党が歩み寄り一致点を見出すことに最善の努力を傾けるべきであります。
連立与党側から
修正項目として五項目が出され、また、我が党から二十一項目を示したところでありますが、何回かの六者会談による
修正論議を踏まえ、去る十五日、河野総裁と細川
総理によるトップ会談に期待されたが、遺憾ながら決裂しました。
我々としては、何とかお互い不満ながら納得のいく妥結点を見出してほしかったのであります。年内成立が公約だからただ急ぐ、
連立与党の一党派の主張をおもんぱかって根幹部分の
修正には応じられないというのでは、
民主政治の共通の土俵づくりである
選挙制度はまとまらないではありませんか。政府・与党の
衆議院の皆様には野党ぐせが残っていて、まだ与党の立場になり切っていないのではないでしょうか。
しかし、我が党は、こうした
連立与党の姿勢にもかかわらず、責任野党として粛々と論議、討論に参加し、採決に応じ、まじめな態度で終始しました。そして、今までの野党に再々見られたような審議拒否とか牛歩等の物理的な抵抗などは行いませんでした。このことは政府・与党の皆さんも評価されていると信じておりますが、いかがですか。
総理はこの点とう認識されておりましょうか。また、前社会党
委員長の山花大臣の感想を伺いたい。
政治改革の実現にとって重要なことは、まず議員みずからが
政治倫理を確立することであります。同時に、
選挙制度の仕組みを抜本的に改めるとともに、
政治資金について公私の
透明性を高めることであります。また、
国民の皆様にも意識
改革をお願いしなければならない面もあると思います。残念ながら
現行の中
選挙区制のもとでは、我が党について見れば、本来の
政策中心の争いでなく、主として
個人中心の同士打ちの
選挙となっております。今こそ
政党中心の
選挙に移行し、議会
政治に活力と緊張感を与え、
政権交代可能な
政党政治の体制の確立が要請されております。
我が党としても、この五
年間、
政治改革大網を初めとして、党を挙げてこの
政治改革の実現に取り組み、この間、資産
公開法の制定など
政治倫理、
政治資金などについて積極的に対応してきました。そしてこのたび、いよいよ抜本的な
政治改革四
法案が
参議院へ送付され、ここに本格的審議がスタートしますが、我々が目指す
政治改革の理念は、
政治に対する
国民の信頼を回復して新しい時代に対応できる
政策本位の
政治システムを構築することであります。
これに対し、立党の精神や
政治理念の異なる連立八党会派が妥協し、まとめた政府案の
政治改革の
基本理念は
一体どういうものでありましょうか、全くはっきりいたしておりません。
総理は
一体どのような
政治システムを目指しておられるのか、この際、改めて明らかにしていただきたいのでおります。
理念がはっきりしないで、
法案成立を急ぐ余り、拙速に走ることで迷惑するのは
国民であります。我が党と政府案はともに小
選挙区
比例代表並立制ではありますが、その
内容や目指すものは全く異質の似て非なるものであります。
十二月十五日までの会期終了日まで二十日ばかりでありますが、
民主政治の根幹を定める大
改革であるだけに、
参議院において我々は、年内成立という
総理の公約にこだわることなく、二院制の使命と役割に照らし、
衆議院におけみ議論に行き過ぎがあればこれを
是正し、また足らざるところがあればこれを十分に補って、
国民の負託にこたえ、十分な審議を尽くす決意であります。
細川
総理、あなたはよもや
政治改革法案が
衆議院を通過したことで大きな山を越したとお考えではありませんか。
参議院での審議の
重要性についての
総理の御認識とともに、あわせて、これからの
参議院における審議の結果、
修正等の問題が生じた場合に、当然政府・与党において柔軟に対応していただけるものと信じますが、お考えをお伺いします。
これまでの
衆議院における議論につきまして、我々
参議院側におきましては与野党を通じまして物足りなさを感じておりました。それは、今回の
政治改革の論議が
参議院を視野に入れないで
衆議院中心に進められてきたからであります。
言うまでもなく、
政治は
衆議院のみで行われているのではありません。御存じのように、我が国の
憲法は第四十二条以下で二院制を
規定しております。その意味からは、
参議院を全く視野に入れずに
衆議院の
選挙制度だけを論じることは余りにも一方的ではありませんか。
参議院とのバランスを配慮しながら論議すべきでありました。
しかるに、細川
総理自身、
参議院の
選挙制度につき、
参議院におきましてもぜひ活発な御議論をいただきたい、そうした御議論も踏まえて政府としてもぜひ検討させていただきたいと答弁され、また担当の
佐藤自治大臣も、
参議院のことは
参議院で検討していただければよいなどの
趣旨の答弁がありました。このことは、とりもなおさず、二院制のあり方について
総理も担当大臣も確固たる理念がなく、
参議院を考慮の外に置いたまま
政治改革論議を推し進めようとしていることを示しているではありませんか。
特に
参議院議員の経験があり、
参議院の実情をよくおわかりのはずの細川
総理にその点の認識をお伺いいたしたい。また、佐藤大臣の見解もあわせてお聞きしたい。
特に、政府案が採用した比例代表区の全国単位と二票制は大変な問題であります。政権与党は、この
衆議院における
比例代表制を多様な価値観を持つ人の
民意が
反映できるとしておられますが、これは自由民主党の
都道府県単位、一票制と
基本的仕組みが大きく異なっています。政府案は、
重複立候補制度を除げば、まさに
現行の
参議院の拘束式比例代表
選挙そのものではありませんか。
改めて申すまでもなく、
参議院の
比例代表制度は、特に職域職能の代表や専門的知識、経験にすぐれた国家的人材が選出されるという
参議院らしい独自性を発揮するための特色ある
選挙制度であります。両院の
選挙制度の整合性を何ら考慮に入れることなく、抜本
改革と称して類似の紛らわしい
制度の導入を図らんとするこのたびのやり方は、二院制下の
参議院を無視したものと言わざるを得ず、我々は到底容認できるものではありません。仮に同時
選挙にでもなれば大変な混乱が生じるおそれがあります。
一体政府は何を考えているのですか。
私は
都道府県単位の自民党案がよいと思うが、いずれにしても、全国単位は何としても改めるべきであります。我々としては、この点につきましては本院において
法案の
修正が必要であることをあらかじめ強く指摘しておきたいと存じます。
以上、
参議院軽視に立った
改革について反省を促すとともに、
総理の御所見を承りたいと存じます。
さて、
政治改革はひとり
選挙制度の
改革だけではありません。それとあわせて議会の組織、運営についても、従来の慣例にとらわれることなく新しい時代の開かれた議会の構築、つまり
国会改革を行わなければなりません。
例えば、我々は今日まで議員同士が議論し合うという
参議院独自の調査会を三つ
設置したり、
参議院で議員立法を行ったり、
衆議院側の協力を得て
法案の
参議院先議案件を増加させたり、あるいは
委員会の運営に改善を加えたりしてきましたが、さらに努力する決意であります。
これまで
参議院が存在意義を発揮することなく、本来の使命を失っているという声があります。今こそ我々は二院制の原点に立って、
衆議院に対する抑制、均衡、補完の役割を果たし、独自性が発揮できるよう、与野党が
一体となって
参議院の
選挙制度とともに
国会改革に積極的に取り組み、
参議院らしい充実した審議を通じてその権威を高めることが急務であると思います。
もとより、
参議院の議会運営は議院みずからの課題ではありますが、再度の本
院議員の経験をお持ちの
総理としては、二院制下における
参議院の役割を十分認識されていると思います。この際、
参議院の
選挙制度並びに
参議院の議会運営のあり方についての御認識を御披露願いたいと存じます。
さて、我が
参議院自由民主党は、これまでも
参議院の
選挙制度が
衆議院のそれと異質性を確保しながら均衡を図る見地に立って、数
年間にわたり
現行参議院選挙制度の
見直しを検討してまいりました。今回、
衆議院の
選挙制度の大
改革が行われるに当たって、改めて本年八月、
参議院選挙制度検討
委員会を
設置、不肖私が
委員長となり、真剣に検討の結果、
改革大綱を取りまとめ、
参議院自由民主党の議員総会において決定を見ておりますので、これを紹介し、
総理の所見を求めたいと思います。
まず、
参議院選挙制度の仕組みについてであります。
我が党提案の
衆議院小
選挙区
比例代表並立制は、各
都道府県を幾つかの小
選挙区に
分割し小
選挙区
候補者への一票制による
投票により
候補者を選ぶとともに、小
選挙区の補完として
重複立候補を認める
都道府県単位の拘束
比例代表制により比例代表
候補者を選出する
制度を採用し、政権を担当する
政党を選択するいわば不完全並立制の
選挙となっております。
一方、
参議院の
現行制度は、地域代表としての性格を持つ各
都道府県を一
選挙区とする
選挙区と全国を一
選挙区とする比例代表区とから成る二票制、つまりいわば完全並立制を採用しております。すなわち、
参議院の
選挙区は細分化される
衆議院の小
選挙区とは異なり、必ずしも
人口比例にとらわれず
都道府県の行政単位に基づくものであり、また比例区については小
選挙区との
重複立候補を含める等の中途半端なものでなく、この
選挙制度により広く全国的な立場から学識経験者や職能代表を選出することとなっております。以上のとおり、
選挙の性格や議員の選出
方法において小
選挙区を
基本とする
衆議院の
改革案と大きく異なり、
現行の
参議院の
選挙制度は
参議院としての特色があり、形式や呼び方は似ていても全く異質のものとなっておりますから、その
基本的仕組みは変えることなく維持することとした上で、
参議院の独自性を高め問題点の解決を図るよう検討しました。
総
定数二百五十二につきましては、
参議院創設以来、沖縄復帰に伴う二増を除いて増員することなく据え置かれており、いわば本則の
定数でありますが、この際、
民意の動向を踏まえ、我が党の
政治改革大綱等に掲げられている
政治改革の方針に沿って、思い切って比例区
定数を十減じて九十、
選挙区
定数も十減じて百四十二として、総
定数を我が党提案の
衆議院の総
定数四十減の二分の一に相当する二十減の二百三十二とすることといたしました。
比例区
選挙については、昭和五十八年
選挙より全国区にかわって拘束比例代表
選挙が導入されていますが、この
制度は、各党で
候補者を決定し党名
投票を行う関係上、
参議院の
政党化を助長し
参議院の独自性が損なわれるおそれがあること及び有権者が直接
候補者を選べないため
民意が
反映されないこと等の諸問題が指摘されておりますので、この際、第八次
選挙制度審議会の答申を踏まえ、党名でも
候補者個人名でも
投票できるいわゆる非拘束
比例代表制を導入し、かつ、各党として出したい
候補者を出しやすい
現行の拘束
比例代表制との組み合わせ方式に変更するとともに、
定数を十減いたしたいと考えております。
なお、その際、非拘束
比例代表制の導入に当たりまして、
候補者個人に
一定の
選挙運動は認めることといたしますが、かつての全国区のように
候補者の負担が過重とならないよう公営の拡充
措置を講ずることとしております。
選挙区
選挙につきましては、
選挙区における議員
定数配分と
都道府県人口との関係において逆転現象を生じています。そこで、
投票価値の平等の見地から、第八次
選挙制度審議会の答申に沿って
是正を行うとともに、
定数を十減じ、最大剰余法により各
都道府県に
定数配分を行いたいと考えております。
以上が骨子であります。
総理の御理解を得たいと存じますが、御所見をお述べ願います。
野党の我々が
参議院としてあるべき
選挙制度を求めて検討しておりますので、政権を担当されている
連立与党においても、さぞ検討を進められていることと推察いたします。進捗状況はいかがでしょうか。
連立与党においても
制度改革案を早くおまとめになり、
参議院与野党で
衆議院制度と対比しておよその共通の考え方なり方向づけをすることが望ましいと思います。いつごろを目途に
改革案が取りまとめられるのか、
総理からお示し願いたいのであります。
そこで、
衆議院より送付されました
政治改革関連
法案につきましては、
参議院における審議の中で以上の考え方を配慮の上、
さきに申し上げました全国単位の問題の
修正は言うに及ばず、二票制の問題等類似、競合するものあるいは追加して
見直しが必要なものにつきましては、ぜひとも
見直し、
修正を重ねて強くお願いしておきます。
総理、いかがでしょうか。
以下、
法案の具体的な
内容について幾つかの質問を行います。
まずは、小
選挙区
比例代表並立制という
基本的な枠組みと
定数配分の問題についてであります。
重ねて申しますが、この枠組みは、
参議院の
選挙制度と形式的には全くと言っていいほどよく似た
制度で、
国民の皆さんにはその違いがわかりにくいと思います。
参議院の
選挙制度は、その創設のときから、
都道府県を単位とする地域代表選出の地方区
選挙と、職能・職域代表選出の全国区
選挙の二つの別個のもので構成され、それがそのまま現在の
選挙区
選挙と比例代表
選挙に引き継がれており、いわば完全並立制であります。ところがこれに対し、今回の
衆議院小
選挙区
比例代表並立制はどうでありましょうか。
御存じのように、小
選挙区制は二大
政党制を指向するものであり、これに対し、
比例代表制は多党制を指向するものであると言われております。いわば両
制度は両極に位置するわけで、
一つの
選挙制度としてその両極のものを組み合わせる場合には、それなりの工夫を要するものと考えます。
衆議院に提出した自民党案では、小
選挙区制を
基本とする理念が明快に示されております。それは、
定数配分で小
選挙区三百、比例代表百七十一としている点、及び比例代表が全国単位でなく
都道府県単位となっている点から、比例代表
選挙が小
選挙区
選挙の補完として位置づけられていることが明らかだからであります。既に申し上げましたように、いわば小
選挙区を
基本とした不完全並立制とでも言うべきでありましょう。
ところが政府案のように、小
選挙区と比例代表の
定数が同数であり、しかも比例代表が全国単位である場合には、小
選挙区と比例代表は対等に位置づけられているとしか言いようがなく、政府・与党は、小
選挙区制と
比例代表制との相互の欠点を補い合うものと説明されているようでありますが、それはまことに都合のよい説明でありまして、中途半端な理念なき
選挙制度ということではありませんか。改めて
総理の所見をお伺いいたします。
そして
衆議院修正により、小
選挙区二百七十四、比例代表二百二十六となりましたが、これにつきたしか
総理は、まず四十七
都道府県に小
選挙区の
議席を
一つずつ与え、これを総
定数五百より控除し、残りを二で割って出した数字であると申されているようでありますが、特に
連立与党内の一党派の立場を考慮する余り、自民党案と政府案とを足して二で割り一引いた結果ではありませんか。
議会
政治の最も重要な
基本的仕組みが
連立与党内の調整に力点を置いた形で処理されることは余りにも党略的であり、かつ合理性を欠くものとなり、結果として理念も哲学もないものとなっているではありませんか。これを
総理はどう説明されますか。自民党案のような理念を持った
制度とすべきではありませんか。お答え願います。
次は総
定数の問題であります。
政府の送付案は、小
選挙区二百七十四、比例代表二百二十六の計五百であり、
現行定数の五百十一よりはわずか十一減少しております。しかしながら、五百十一という
現行定数は、附則で当分の間認められた暫定
定数であり、
公職選挙法の本則が定める
衆議院の
定数は四百七十一なのであります。これまで数次にわたり
定数是正を行う際に安易に総
定数を増加したことで調整してきたツケでしかありません。そうであるならば、今回のような抜本的な
改革を行う際には、本来の四百七十一を
基本とすべきであることは当然ではないでしょうか。
国会議員の
定数削減は、第八次
選挙制度審議会においても指摘されたところでもあり、また
民意の存するところであると思います。政府案がなぜ五百という
定数を採用するのか、
国民に確固たる根拠を示し、
国民の理解を求めるべきではありませんか。
むしろ、この際、
国民世論を踏まえて、さらに総
定数を本来の
定数四百七十一以下に削減することが
政治の原点だと思われます。小さな政府を目指して行政
改革を推進する以上、立法府たる
国会の方でも極力身を削って小数精鋭を目指すべきではないでしょうか。
総理の御答弁を求めます。
さて、この際問題として特に指摘したいのは、先ほど申し上げましたように、地方の担い手に対する
措置であります。
冒頭申し上げましたように、これに対する対応が政府案においてなされていないことが地方公聴会において強く指摘されました。
御案内のように、我が国の
憲法は第九十二条以下で地方自治をうたっております。言うまでもなく、地方
政治の担い手は地方の首長であり、地方議会の議員でありますが、今回の
政治改革論議では、これら地方
政治の担い手に対する視点が欠落していると言わざるを得ません。
国会議員本位の
政党助成法案や、それを前提として
企業・
団体献金を
禁止する
政治資金規正法案は、地方
政治の実態を無視し、地方
政治家の死活を制する大問題であります。
無所属議員や無所属の首長の多い地方
政治のあり方についての配慮なくして
政治改革を推し進めることは、すなわち地方自治の
原則を踏みにじることにほかならず、それでは、知事の経験をお持ちであり、また熱心な地方分権論者である
総理の信念に大きく反するものであると存じます。細川
総理への
国民の期待を裏切るものではありませんか。
その点に関する認識を
総理及び地方自治を所管する
佐藤自治大臣にお伺いいたしますとともに、今後の審議に当たり、私、
自治大臣の経験者の一人として、
政党助成法及び
政治資金規正法は本院においてぜひとも
修正の必要があることをここに強く指摘させていただきます。
次に、
戸別訪問の問題であります。
政府案は、
選挙運動として
戸別訪問を認めることにしておりますが、これを歓迎する有権者の声が意外に少ないのです。
戸別訪問は買収などの
選挙犯罪の温床になるといった指摘のほかに、
戸別訪問を受ける有権者は
戸別訪問が解禁された場合にどのような
選挙連動が展開されるかを想像して戸惑いを感じています。従来の
選挙運動の実態から見て、有権者の平穏な生活を害しないで
戸別訪問が行われるとは想像しがたいのであります。
戸別訪問解禁は時期尚早であります。ぜひとも考え直していただきたい。この点を指摘して、
総理乃び
自治大臣の御所見をお伺いいたします。
次に、
政治資金規正法についてお伺いいたします。
今回の
政治改革論議の原点が
政治と金をめぐる問題であったことから、
政治資金のあり方こそが今回の
政治改革でまず取り上げられるべきだと考えます。
選挙制度をどのように変えようとも、
政治資金のあり方を放置してはスキャンダル等を絶つことはできないと思います。
選挙制度にも増して切実な
政治資金のあり方の問題こそ先行して決着を図るべきとする考え方に対し、
総理の所見をまずお伺いいたします。
関連して、
企業・
団体献金の問題についてお尋ねいたします。
政府案は、
企業・
団体献金を
政党に対するものを除き一切
禁止することといたしております。それはいかなる
理由によるものですか。
企業、
団体も社会的な存在である以上、本来、その
政治活動の自由もまた認められなければならず、それを制約するには合理的な
理由が説明されなければなりません。政府案は、
企業・
団体献金はすべて悪だというお考えでありましょうか。そうであれば
政党に対する献金も許されるべきではないと思われますが、政府案はその点で一貫していないではありませんか。
問題は、すべての
企業・
団体献金が悪なのではなく、いわゆるやみ献金とか
巨額の献金でありながら細分化して合法化を図るような献金こそが問題なのであります。これまで
政治資金規正法にのっとり正しく処理されてきたような献金までも一切封じてしまうことは明らかに行き過ぎではありませんか。
この際、あつものに懲りてなますを吹くというような行き過ぎた
規制のお考えは撤回し、秩序ある
企業・
団体献金、つまり自民党案のように
一定の金額
制限を設けて、ガラス張りの中で、
政党に対するものに限定しないで
候補者の
一定の
政治団体に対しても許容する方式こそ採用すべきだと考えます。特に、
個人献金に多くを期待できない現状では、
一定の
企業・
団体献金は存続すべきであります。この点を指摘しておいて、
総理及び山花大臣の御見解をお伺いいたします。
ところで、それはそれとして、今
国民が最も関心を持っていることは
政治の
腐敗防止であると思います。今回の政府案及び自民党案においても、
連座制の
強化、
収賄罪で有罪となった者の
公民権停止措置の
強化、
罰金の引き上げ及び
罰則の
強化などの
措置がなされておりますが、果たしてこれで十分なのか。さらに徹底した
政治腐敗を防止するための法をイギリスの例等を参考として制定することも急いで検討すべきなどの考えに対して、
総理の御所見をお願いいたしたいのであります。
続きまして、
政党助成法案についてお伺いいたします。
我が国としても、欧米並みに公費
助成がいよいよ導入されることとなるわけでありますが、これに伴い
政党に対し、公的な監視、介入により、
政党の自由なる
政治活動がゆがめられる懸念はありませんか、伺っておきたいのであります。
政党助成においては、
政党に重要な地位を与えることになりますが、
憲法は
政党について何ら
規定してはいません。今日、
憲法の定める議会制
民主主義は
政党を無視しては円滑な運営は期待できません。そこで、
政党の要件を法的に整備し、位置づけを明らかにするための
政党法の制定が必要と認識されますが、
総理の御所見を求めたいのであります。
次いで、
日本共産党提出の
政治改革関連
法案について発議者にお尋ねいたします。
本来ならば、政権を争う
衆議院の場でこの種案件が提案されるべきところ、提出条件を満たし得ず、やむを得ず本院へ提出されたものと存じますが、貴党の熱意を評価いたしますとともに、幾つかの点についてお尋ねいたします。
まず第一は、
衆議院選挙制度において
現行の中
選挙区
制度を維持されている点であります。
現行の中
選挙区制につきましては、
個人本位の
選挙から脱却することは困難であるという指摘がなされ、我が党を初め各党は小
選挙区制や
比例代表制の導入などの
選挙制度改革に取り組んでまいったわけでありますが、これまでも熱心に
政党本位の
選挙に取り組んでこられた
日本共産党が、最も
政党本位の
選挙になじみにくいと言われる中
選挙区制を支持されることについてはどのようなお考えがあるのか、この際お聞かせ願いたいと存じます。
次は、
衆議院総
定数を
現行の五百十一を維持され、しかも
現行の五百十一は附則に
規定された暫定
定数であるのに、これを本則に
規定されようとしている点であります。
世論は
衆議院の
定数削減を支持しておるのに対し、何ゆえに五百十一という
定数に固執され、しかもそれを本則に
規定して固定化しようとされるのか、お考えをお聞かせ願いたいと存じます。
次は、
企業・
団体献金を
政党に対するものも含め一切
禁止されることについてであります。
本来、
企業、
団体も社会的な存在である以上、その
政治活動の自由も保障されなければならないと考えますし、このような全面
禁止では
団体結社の自由をも大きく阻害するものと考えますが、共産党はこの点についてどのようにお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
さて、締めくくりとして
総理に申し上げたいことがあります。
今、
日本は内外ともに重大な局面に立っております。ソ連が崩壊、東西の冷戦構造が崩れ、
世界の
政治システムも新しいものが求められています。そうした情勢のもとで、
日本の
政治体制も旧来のものから大きく脱皮して、ここに
政治改革をやり遂げ、二十一世紀に耐え得る新しい
政治システムを確立いたさねばなりません。
細川内閣が誕生して三カ月有余を経過いたしましたが、
総理に課せられた責任は重かつ大であります。かつて同志として同じかまの飯を食った者として、私は
個人的には
総理の御健闘を祈っている一人であります。今のところかつてない高い内閣支持率が続いておりますが、これがいつまでも続くと過信されてはいけないと思います。
一国のかじ取りの責めに任ずる
総理としては、パフォーマンスもさることながら、大切なことは不動の信念と決断であると存じます。最終決断は
総理自身が下されなければなりません。これから
総理の決断を必要とする幾つかの非常に重要な課題が控えております。
政治改革も極めて重要な課題の
一つです。
我々は、これから始まる
政治改革の審議に当たっては、真摯な態度で堂々の論戦を展開し、二院制における
参議院の独自性と権威を高め、もって
国民の負託にこたえる決意であります。
総理は、我々の真剣な主張に耳を傾けられ、
民意の存するところを洞察され、かつ、あなたの祖父であられ、日米開戦前の我が国未曾有の非常時に宰相を三期も務められ、
国民期待の星であった故近衛文麿公が敗戦後壮絶な最期を遂げられた心情に思いをいたされ、党利党略を超えて、国家、
国民のために誤りなきを期していただきたいと存ずる次第であります。
総理の所信を伺って、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
国務大臣細川護煕君
登壇、
拍手〕