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宇野参考人 宇野でございます。
私からは、
先ほど鈴木さんから
お話がございましたように、
地方分権に絞りまして
意見を申し上げさせていただきたいと思います。
この
行革審では、四月に
中間報告がありまして、
あと最終答申に向かって
起草作業に入ったわけでありますが、
先ほどお話にもありましたように、「
地方分権の
推進」については、
鈴木会長の方から私がまとめるようにという御要請がありましたので、
委員、
専門委員のうちから数名の人に参加していただいて、私から言うのも大変はばかられますけれ
ども、真剣な討議を行ってまいったということでございました。その間に、実は六月には
衆参両院で
地方分権の
推進に関する決議を採択されまして、私
どもは大変勇気づけられたわけでございます。また、きょう、このような
特別委員会が設置されまして積極的に
検討されているということに対しましても、心から敬意を表したいというふうに思う次第でございます。
先ほど鈴木さんから
お話がありましたように、実は今度の第三次の
行革審というのは、戦後十二年間ずっとやってまいりました
行政改革についての、ここはもう総決算であるという意気込みで私
どもは臨んだわけでございます。
特に
地方分権について申しますと、
土光臨調以来の
改革の
成果というのは着実に進んではおりますけれ
ども、その間に
日本の国のありようというものが
国内的にも国際的にも非常に変わったということがありますので、そういう
視点から見て、二十一
世紀を踏まえた
行政改革というものはどうあるべきか、
地方分権というのはどうあるべきかという問題に取り組もうではないかということが私
どもの
出発点でございました。そういう点から申しまして、六つの
ポイントについて私
どもはまとめてまいりました。
一つは、抜本的になぜ今
地方分権が必要であるかという
必要性の問題でございます。
先ほどの
お話のとおり、やはり
日本の
国内からいいますと、ゆとりがあって豊かな
社会を
実現しないと、このままで一極集中の状態で東京に集中するということが二十一
世紀に続いては、これはまずいではないかという
一つの
国内的な問題がございました。もう
一つは、国際的に申しますと、
日本がこれだけ
世界の中の大国になってまいりましたけれ
ども、後ほど申しますが、
外交、
防衛その他について、もっと国がやっていかないといけない問題が十分果たせているのかなという問題が一方であるではないかということでございました。そういうことに加えて、
地域についての
行政というものが
地域の中で
自律、
自主の
精神でもってやれておるかというと、これまた甚だ問題があるではないかということがございますので、こういうような問題を考えていきますと、どうしてもここで
地方分権という問題は取り上げなければならないという問題が第一点でございます。
それから第二の問題は、それでは本格的にそういう問題を詰めていくと、そもそも二十一
世紀を踏まえた
日本の国がやる
役割、それに比べて
地方のやる
役割というのは何であるかという問題にぶつかるわけでありますが、国の
役割については、
先ほどからも申し上げておりますように、国の存立にかかわるような基本的な問題、これはあえて言うなれば、
外交とかあるいは
防衛とかという問題であろうかと思いますし、さらにまた、
国内の問題でも、全国的に統一して国でやってもらわないとできないという問題が
幾つかあるであろう。これは例えば
義務教育の問題とか、あるいは環境の問題とか、あるいは道路の問題とかというような問題があるであろう。こういう問題は、ぜひひとつ国でしかとやっていただきたいという問題でございます。
もう
一つは、
地域に対する
行政ということになりますと、それ以外の私
どもの
生活に絡んだ問題は、これは
地方に任すべきではないかということでございます。したがって、
地方の
立場で申しますと、それをだれがやるのかという問題になりますけれ
ども、要するに
市町村と
都道府県が今
地方の
組織の基幹でありますが、住民の
生活に関する
行政というようなものは
自主、
自律の
精神で、
地方の特に
市町村が主体になってやる。その上に位している
都道府県というのは、
市町村がカバーできない
行政の問題を
都道府県がやる。したがって、この
市町村と
都道府県とが相補って
地方の
自治をやるというのが当面の考えられる
地方の
行政の
あり方ではないかということでございます。これが国と
地方の
役割の
分担の
見直しの私
どもの
一つの結論でございました。
三番目の問題は、それではひとつ、国から
権限をどう渡すかという問題でありますが、この国と
地方の
役割の
分担の本格的な
見直しをする中で、
幾つかの法令を点検する必要がありますから、これは膨大な
作業になるわけでありますが、
一つの
精神としては、国からの
権限の
移管という問題があるのですが、それはいわゆる
機関委任事務というものがございます。これは現在は一見
自治体が自分でやっておるように見えておりますが、実は国の方の指揮を受けてやっておるということでありますから、一見
自治体風という現在の
実態をやはり変えるという
方向に持っていかないと、
本当の
自治はできないという問題でありますから、
機関委任事務の
縮減合理化というふうな
方向を時間を置いて考えるべきではないかという問題でございます。
それからまた、
地方間でいろいろ問題があると思いますが、その問題は
市町村間で水平的に
調整をするということを原則としてやるべきではないかということでございます。
なお、その
権限を国から渡す場合に、ここが問題なんですが、実は
地方の基礎的な
自治体というのは
市町村だということでありますけれ
ども、国からいきなり
市町村に
権限を渡すというのは現実的ではない。したがって、
都道府県に渡す、
都道府県から
市町村に渡すという
一つの
順序が要るのではないかというような指摘もいたしました。これが国から
権限を
移管する場合の
一つの問題でございます。
第四番目の問題は、今度は
財源をどうするかということでございますが、
地方自治体が
自主的、
自律的に
財政運営を行っていくというためには、やはり
地方税の
財源を
強化するという以外にはないわけであります。それでは、具体的にどの税金をどこに持っていくかということについても、これまた
権限を
移管すると同じく大変大きな
作業と大きな抵抗があると思います。思いますが、
一つ申せますことは、やはり
地方の
財源を
強化するために、国から
地方への
財政の移転という問題をこれは詳細に詰める必要があるということでございます。
もう
一つの問題は、しかしながら、
地方の中に
地域別に
経済的な
格差があることも事実でありますから、その
格差調整のために、やはり今行われておる
地方交付税というものは残さざるを得ないだろう。この
地方交付税の出し方について、なおかつこれは
検討する必要があるだろう。
もう
一つ言えることは、
ひもつきの
補助金というのはできるだけ早くやめるべきであるということでございます。この辺のところは時間をさらにかけて詰める必要がありますが、要するに、
考え方として、国から
地方へ持っていく
財源の問題はそういうふうな
考え方をいたしましたということでございます。
あと
二つ問題がありまして、
一つの問題は、それでは
地方の受け皿としての
地方の
組織というのはどうあるべきかという問題でありますが、
一言で言いますと、現在の
地方の
組織というのは、
市町村と
都道府県という
二つの、二層の構造でもって
自治体を形成しておるわけであります。今後ともこの
地方の
自治は、
市町村と
都道府県というものが相補完し合って
地方の
自治を形成するという
時代がやはり続かざるを得ないと私は思っています。
しかしながら、その場合に
ポイントは何かといいますと、やはり基礎的な
自治体というのは
市町村であるということには間違いないわけでありますから、
市町村が
本当の
自治をやるというためにひとつ府県の方も協力をするという必要もあろうと思いますし、
市町村の方も、
先ほど鈴木会長からの
お話がありましたように、
パイロット自治体制度という問題の
提案も国から既に出ております。しかし、これ以外に
中核市という
一つの
提案が前の
行革審でも
答申されております。それからまた、
拠点都市法という、これは産業上の問題でありますが、
地方の
一つの
自治体に対する
提案といいますか、法制がございます。そういうことで
地方分権特例制度あるいは
中核市、
地方拠点都市法というような
メニューがありますから、その
メニューの中でどれを食べるか、あるいは新しい
メニューをどう考えるかというのは、かかって
市町村がそれぞれの
地域の特性に応じて考えていかれればいい問題であろうというふうに思うわけでございます。
一方、
都道府県でありますが、
先ほどちょっと申しました
都道府県の
自治というのは率直に言って一見
自治風でありまして、現在の
都道府県は、やはりこれは国の執行
機関的な性格が非常に依然として強いということでありますから、何としてもこの
都道府県の
自治性というものを確保するという必要がある。したがって、それに関連しましては、
先ほど申しましたような
機関委任事務の整理その他を含めて
都道府県の
自律、
自治というものを進めていくことが必要である。その中で
都道府県がまた
市町村に
権限、
財源を渡していくという
順序が必要であるというふうに思うわけでございます。
なお、こういうものを通じて、
市町村といわず
都道府県といわず、現在の
日本の
経済、文化の
活動を見ておりますと、この境界を越えてやらないと
自治ができないという
実態もありますから、
市町村の
合併あるいは
都道府県の連合、将来は
合併というふうな問題が進行してくることは、これはそれぞれの
都市の実情に応じてやられればいいのではないか。
ちなみに、私
どもは、
都道府県の連合から
合併に進んだ結果、道州制というものがあり得るだろうということで、道州論を非常に早くから、考えてみますと三十八年前から提唱しておることがありましたが、こういう問題も将来は起こることなのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
ともあれ、今まで
地方分権ということになりますと、受け皿であるところの府県をどうするか、
市町村をどうするかという受け皿諭だけが非常に前に出まして、
本当の
地方分権というのはどうあるべきかという議論が余りなかったわけでありますが、今回はその問題を、なぜやるか、なぜ必要かという問題を先にやったということが特徴がと思います。
最後に、こういう問題をひとつまとめて
答申いたしましたけれ
ども、これを
実行する担保というのは、
答申を出しまして最大限尊重される、閣議決定をされるというのはありがたいのでありますが、実情を見ていますとなかなか進まない。したがって、どうしてもこの
実行を担保するためには
法律をつくっていただかないといけないという問題が、
最後の
答申のところの
最後の山場でございました。この間に、六月の
国会決議が非常に私
どもにとって勇気づけられたわけでありますが、最終的な
活動の方針は、一年をめどにして
先ほど申し上げたような
地方分権の大綱を詰めてもらいたい、その大綱が詰まりましたら、これは
法律によって
地方分権を進めていただきたいという問題を
最後の結びとして
答申したという次第でございます。
なお、ここで触れませんでしたが、
地方の首長の多選制限の問題が随分議論になりました。多選禁止をすべきであるという議論も随分出たわけでありますが、これは憲法に保障されておるところの法のもとの平等あるいは職業の選択、
自治の
精神というものに合致しないから、
法律ではいけないということに相なりましたので、
答申は全体の中に、
自治の中でそういうふうな申し合わせをしてほしいという
期待を込めて書いたということでございます。
多少時間が超過いたしましたが、私の
意見はこれで終わります。ありがとうございました。