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1993-10-29 第128回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十月二十九日(金曜日)    午前十時一分開議 出席委員   委員長 中井  洽君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 大畠 章宏君    理事 古賀 正浩君 理事 河合 正智君    理事 伊藤 達也君       赤城 徳彦君    小川  元君       小此木八郎君    梶山 静六君       熊代 昭彦君    坂井 隆憲君       鈴木 宗男君    中尾 栄一君       中島洋次郎君    丹羽 雄哉君       藤本 孝雄君    細田 博之君       山岡 賢次君    秋葉 忠利君       輿石  東君    坂上 富男君       沢藤礼次郎君    野坂 浩賢君       鉢呂 吉雄君    松本  龍君       青木 宏之君    土田 龍司君       豊田潤多郎君    西川太一郎君       山田 正彦君    吉田 公一君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       佐藤 茂樹君    枝野 幸男君       武山百合子君    山田  宏君       塚田 延充君    吉井 英勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  熊谷  弘君  出席政府委員         通商産業大臣官 江崎  格君         房総務審議官         通商産業省貿易 中川 勝弘君         局長         中小企業庁長官 長田 英機君         中小企業庁計画 村田 成二君         部長         中小企業庁小規 山田  豊君         模企業部長  委員外出席者         大蔵省主税局税 渡邊 博史君         制第三課長         国税庁課税部酒 二宮 茂明君         税課長         商工委員会調査 山下 弘文君         室長     ————————————— 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   田原  隆君     鈴木 宗男君   谷川 和穗君     赤城 徳彦君   中川 秀直君     坂井 隆憲君   野田 聖子君     藤本 孝雄君   山本  拓君     細田 博之君   沢藤礼次郎君     鉢呂 吉雄君   関山 信之君     輿石  東君   野坂 浩賢君     坂上 富男君   細谷 治通君     秋葉 忠利君   山田 正彦君     青木 宏之君   吉田  治君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   赤城 徳彦君     谷川 和穗君   坂井 隆憲君     中川 秀直君   鈴木 宗男君     田原  隆君   藤本 孝雄君     野田 聖子君   細田 博之君     山本  拓君   秋葉 忠利君     細谷 治通君   輿石  東君     関山 信之君   坂上 富男君     野坂 浩賢君   鉢呂 吉雄君     沢藤礼次郎君   青木 宏之君     吉田 公一君   塚田 延充君     吉田  治君 同日  辞任         補欠選任   吉田 公一君     山田 正彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定中小企業者の新分野進出等による経済の構  造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法  案(内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 中井洽

    中井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定中小企業者の新分野進出等による経済構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  3. 尾身幸次

    尾身委員 特定中小企業者の新分野進出等による経済構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案につきまして質問をさせていただきます。  現在の厳しい景気状況に加えまして、急激な円高や、あるいは大企業海外進出あるいは部品内製化など、我が国中小企業を取り巻く環境には極めて大きな構造的変化が起こっているわけでありまして、これに積極的に対応するために、いわゆるこの中小企業リストラ法政府が提案されているわけでございますが、リストラ法につきまして、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  最初に、こういう法案を提出するに至りました基本的な考え方について、政府側にその基本的な背景考え方についてお話を伺いたいと思います。
  4. 村田成二

    村田(成)政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいままさしく御指摘のように、近年我が国産業をめぐります経済環境、非常に大きく変動いたしております。特に、アジアなど海外地域におきます工業生産というのは非常に大きな伸びを示しておりまして、そういった関係から来る競争力変化という問題も生じております。あるいは、情報化あるいは技術高度化ということに伴いまして、今まで伸びてきた国内の投資が一巡化しているという面もございます。さらには、技術革新によりまして、コンピューターを駆使いたしました生産工程変化というものも生じているわけでございます。  こうした変化に加えまして、最近とみに円高が急速に進行するというようなこと、さらには、現下の景気状況循環的要因も含んで非常に落ち込んでいるという、いろいろな要因が出てきているわけでございます。一言で申し上げますと、経済の多様かつ構造的な変化が大きく生じてきているということかと思っております。  この法案を提出するに至りました背景は、このような状況下中小企業のこういった状況への適応円滑化するというのが趣旨、目的でございます。  以上でございます。
  5. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、この法案内容につきまして幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  最初に、この法律におきましては、支援対象となります特定中小企業者が属する特定業種指定する考え方になっているわけでございますが、これはどういう考え方指定するか、どういう業種指定するかについて説明をいただきたいと思います。
  6. 村田成二

    村田(成)政府委員 ただいま申し上げましたように、この法案を提出するに至りました背景にかんがみまして、政令では、対象になります業種指定は、経済の多様かつ構造的な変化による影響を受けている業種指定するというのが基本的考え方でございます。  具体的に申し上げますと、工業はこうした経済構造的変化を共通にほぼ受けているのではないかと考えられますので、おおむね工業全体を幅広く特定業種としてまず指定していきたいと考えております。また、このほかに、類似の影響を受けておりますソフトウエア業あるいは情報処理サービス業というものについても指定することを検討中でございます。
  7. 尾身幸次

    尾身委員 今たしか製造業とおっしゃいましたか。製造業ソフトウエアサービス業というお話だったのですが、これらの業種日本の全体のいわゆる経済企業のトータルの中でどのくらいの比率を持っているものか、そういうことについてお伺いをさせていただきます。
  8. 村田成二

    村田(成)政府委員 例えば事業所数で見てみますと、平成三年の事業所統計によりますと、製造業でも同じなのですが、工業に属するものの比率は一三%程度でございます。ソフトウエア業情報処理サービス業はウエートは非常に低うございまして、それぞれ〇・一%、〇・〇六%ということでございますが、全体といたしましては一三%強ということと考えております。
  9. 尾身幸次

    尾身委員 その一三%強というのは、その業の企業数ということですか。どういうことですか。もう一回済みません。
  10. 村田成二

    村田(成)政府委員 その業に属する事業所の数でございます。
  11. 尾身幸次

    尾身委員 従業員数比率で言うとどうなりますか。
  12. 村田成二

    村田(成)政府委員 従業員数で申し上げますと、製造業に属する者は二四%でございます。先ほど申し上げましたように、情報処理サービス業あるいはソフトウエア業は微々たるものでございますので、二四%強ということになろうかと思います。
  13. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、業種指定について、そういう考え方で今指定をする予定と聞いておりますが、経済の変動その他いろいろな状況に応じてこの指定業種の追加の可能性もあるというふうに考えていいですか。それとも、今の業種で当面ずっといく、ほかの業種については考えていないということでしょうか。そこをちょっと。
  14. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的には経済の多様かつ構造的な変化による影響を受けている業種ということでございまして、多様な構造変化ということになりますと、一つだけの変化ではだめなのでございますが、そういった影響を全体として受けている業種、こういうふうに考えております。  今例えばということで三つ例を申し上げましたけれども、こういった要件に合致するものがありますれば、今後検討の中で政令指定していきたい、かように考えております。
  15. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、特定業種が今のような基準指定をされるわけでありますが、その次のステップとしては、この法律適用を受けることができる特定中小企業者になるわけでありますけれども、その特定中小企業者になり得る要件というのは、この法律によりますと、これらの指定業種の中で「その事業がこれらの変化による影響を受け、又は受けるおそれがあるものであって、その生産額又は取引額相当程度減少していることその他の政令で定める要件に該当するもの」であるというふうに書いてあるわけでありますが、具体的にはどういう要件によって特定中小企業者を決めるのか、御説明を願います。
  16. 村田成二

    村田(成)政府委員 具体的には二つ要件を考えておりまして、これはいずれかに該当すればいいという性格のものとして考えております。  第一は、生産額等が「相当程度減少していること」、これは法文上書いてあるわけでございますが、この場合におきまして「相当程度減少」というのは、私どもの今の腹づもりといたしましては、過去と過去の一定時期と比較いたしまして、生産額等がおおむね一〇%程度減少しているというあたり目途として政令を書きたい、こう思っております。  それから第二は、生産額等がそれほど減少していなくても、輸出比率あるいは下請比率がある程度のものにつきましてはこれまた指定いたしたいと思っております。この場合、その生産額等減少程度、これは過去と比較しまして、先ほど一〇%以上という第一の範疇を申し上げましたけれども、第二の場合には、一〇%に至らなくて五%程度から一〇%程度減少しているというふうな点を、ラインを目途としております。それからまた輸出比率下請比率につきましては、それぞれおおむね二〇%程度目途として考えております。  この結果、いずれにしましても、相当数中小企業者特定中小企業者に該当することになるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  17. 尾身幸次

    尾身委員 この場合、今のお話ですと、特定中小企業者指定するといいますか、なり得る要件というのは、一般的には、過去の数字と比べて一〇%程度生産額減少している企業ということになりますが、輸出比率が二〇%以上の企業及び下請比率が二〇%以上の企業については、一〇%までいかなくても五%よりやや上ぐらいならばいい、そういうふうな基準要件を満たずという説明でありますが、そうしますと、この特定中小企業者になり得る要件というのは、輸出関連産業それから下請関係産業に対して特に優遇しているような印象があるわけであります。例えば、消費財をつくっている企業で、製造業の中で輸出比率下請比率も低いものについては、過去の生産額に比べて一〇%以上減っていなければ、生産減少していなければ適用にならないということで、下請輸出関係企業を優遇しているように感じられるわけでありますが、この法律立法趣旨から見て、その点についてはいずれの企業も同じように扱うべきではないかという考え方もあると思いますが、この点についてはどういうふうな考え方でそういう対応をされるのか、理由説明していただきたいと思います。
  18. 村田成二

    村田(成)政府委員 先生、まさしく御理解いただきましたように、基本的には、輸出比率下請比率関係なく、ある程度要件に合致すれば適用になるわけでございますが、そこまでいかない企業につきまして、輸出比率下請比率という別の基準も絡み合わせた理由でございますけれども一つは、輸出比率が高い場合には、海外地域におきます工業化の進展といったようなことで競争条件変化による影響を受けるおそれが非常に高いのではないか、ほかの、輸出比率が低い産業業種企業に比べましてそういう可能性が高いのではないかというのがまず一つでございます。  それからまた、下請比率につきましては、先ほど冒頭申し上げましたように、技術革新等々に伴いまして親会社生産工程等が著しく変化してきております。御存じのように、部品点数減少あるいは生産内製化というようなことが生じてきておるわけでございまして、そういった影響を特に下請比率が高ければ受けるおそれが大きい、こういう二つ観点から、一定の場合について下請比率輸出比率要件一つとして勘案していこう、こう考えている次第でございます。
  19. 尾身幸次

    尾身委員 そういうふうなことでいわゆる有資格者といいますか、特定中小企業が決まるわけでありますが、その特定中小企業が新分野進出する場合にいろいろな支援をしよう、こういうことになっているわけでありますけれども、新たな事業分野への進出、いわゆる新分野進出でありますが、新分野進出というのは具体的にどういうことを意味しているのか、内容としてはどういうことを考えておられるのかということを、具体的に実例を挙げて説明を願いたいと思います。
  20. 村田成二

    村田(成)政府委員 具体的に御紹介申し上げる前に考え方整理をちょっと一言申し上げたいと思いますが、新たな事業分野への進出は、大きく分けて二つ範疇で考えております。  一つは、例えば日本標準産業分類の四けた分類細分類がございますが、その垣根を越えて別の業種進出していく場合、それからもう一つが、製品が、従来の製品に比べまして原材料あるいは生産加工技術が異なっておる、加えて、かつ用途、販路機能性能といった点においていずれかが異なるものであるというふうに考えております。  非常に抽象的でございますが、これを具体的に少し御紹介申し上げますと、前者標準分類を超える例としては、例えば綿・スフ製造業者というのがおりますが、その綿・スフ製造業者金属糸織り込み技術を活用いたしまして家電製品、これは全く違う分野でございますが、家電製品のボディーとなります新素材を開発する、それで家電部品製造を行うような事例がございます。それから、後者の機能性能等々の異なる場合でございますけれども陶磁器タイル製造業者特殊成分を混入いたしまして素材軽量化に成功する、それで非常に軽い素材を開発した結果、学校給食向けの食器の製造分野進出する、こういった、同じ素材を使いつつ事業展開するという例が具体例として挙げられようかと思います。
  21. 尾身幸次

    尾身委員 今の村田部長お話は、新分野進出という内容についてかなり広く考えておられるように承っておりますが、しかし法律文言上、新分野進出ということになると、その言葉の常識的な解釈、常識的な意味事業転換のようなものをどうしても頭に浮かべる内容になっていると思うわけであります。  私は、中小企業が意欲を持って新しい事業展開をする、事業転換ではなくて事業展開を図っていくことに対する支援という意味では、できるだけ広く弾力的に解釈する方がこの法律基本的精神にとっていいというふうに思ってはおりますが、しかし法律名前そのもののイメージから見て、どうも非常に限定的に理解されるようなおそれがなきにしもあらずという感じがするわけでありまして、この点については広く中小企業方々に、そういう方々がやられる、今お話のあったようなものについては適用があるんだということを周知徹底をする必要があると思います。その点についてはどんなふうな対応をされるつもりか、説明を聞かしていただきたいと思います。
  22. 村田成二

    村田(成)政府委員 先生指摘のとおりでございまして、確かにこの法案名あるいは新たな事業分野進出という文言だけでは、一般国民方々から見れば、御指摘のような狭い解釈通常されるものという点、そう思いますし、また私ども懸念しているわけでございます。したがいまして、本法案が仮にも成立の暁には、私どもといたしましては、各都道府県を通じて、あるいはその他いろいろな手段を通じまして具体的な事例を極力集めまして、それから具体的な例を挙げまして、具体的に中小企業の皆様が範囲を認識できるようにいろいろ啓蒙普及PR活動をやっていきたい、かように考えております。
  23. 尾身幸次

    尾身委員 今の質問とやや裏腹の質問になるのでありますが、また、この法律そのものの一番基本的なところに触れてくるかと思うのでありますが、この法律案によりますと、何か新しい製品、新しい分野の仕事を始めるときに支援をするということであって、今までの事業分野で今までの製品を、いい機械を入れたり、合理化近代化して競争力をつける、コスト切り下げをするあるいは販路開拓をするというようなことについてはこの法律適用にならない。しかし、中小企業企業者が生き残るためには、同じ分野であって同じような製品であっても、合理化近代化をしてコスト切り下げを図っていかなければならないわけでありまして、そういうことに対しては、もちろん中小企業政策全般としてのいろいろな支援策はありますが、この法律による支援がないということになると、そこに大きなハンディキャップといいますか、支援程度に格差がつくのではないかというふうに思うわけでありますけれども、なぜいわゆる新分野進出分野に特段の支援を行う必要があるのかということについての考え方あるいは対応というものについて説明をいただきたいと思います。
  24. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほど御指摘になりましたできるだけ幅広く対象になるようにというお話でございますけれども、やはり一方におきまして、それなり範囲の限定を付きざるを得ないわけでございます。例えば織物業世界あるいは衣料品世界におきましても、単にデザインを変更するというだけではこれはなかなか要件に合致しないわけでございまして、やはりそれなりの、先ほど申し上げました原材料あるいは生産加工技術というものが変化している、また機能性能変化しているという、幾つかの点において従来と異なった特色がある必要があると考えておる次第でございます。  ただ、そういったことといたしましても、先生指摘のように、いろいろ既存分野で既に活動されている方々との公平感、公平の問題という懸念があることは私ども認識いたしております。ただ、この法案は、何も進出する企業だけに適用されるわけではございませんで、進出を受ける企業にもひとしく適用されるわけでございます。企業努力あるいは創意工夫次第で支援措置を受けられる仕組みとなっているわけでございます。  それからまた、新分野進出と一口で申し上げましても、それなりの多大な努力あるいはコスト負担を必要といたすケースが大部分であろうかと思います。それからまた、違った分野進出するあるいは新たな分野に挑戦するということになりますと、それなりの大きなリスクも伴うわけでございます。本法案によっていろいろな支援措置を用意いたしておりますけれども、こうした困難性を一〇〇%カバーできるものでもこれまたないというのも、一方で事実であろうかと思います。  以上の点を総合勘案いたしますと、既存事業者と全く同じ商品で新規性を持たないまま参入する、こういった例は現実にもないと思われますし、御懸念の点はそう大きな問題として発生しないのではないかというのが現段階での私どもの認識でございます。  ただ、懸念懸念としてやはりあるわけでございまして、例えば社会的に認めがたいほど他の企業への著しい悪影響を招来するに違いない、こういった場合には、法案の第三条第三項、これは承認規定でございますが、これに基づきまして、例えば「国民経済の健全な発展を阻害する」といったような観点から承認を行わないというようなことも必要かと思っております。
  25. 尾身幸次

    尾身委員 質問は少しさかのぼりますが、この法律の第二条で、中小企業者定義をしております。普通、中小企業者定義というは、常識的といいますか、これはどこかの法律で決まっていると思うのでありますが、この法律殊さらここに中小企業者定義を置くのは、何かこの法律適用する中小企業範囲というものを一般解釈とは違う範囲の者に適用するという考え方ではないかと思うのでありますが、そういうふうな考え方かどうか。それから、もしそうであるとしたら、この法律での中小企業者範囲一般中小企業者範囲と違っているのかという内容についての御説明をお願いいたします。
  26. 村田成二

    村田(成)政府委員 先生よく御承知のように、中小企業定義につきましては、基本法等々で基本的な定義規定が置かれているわけでございます。そういう観点から申し上げますと、この第二条の定義の中で、大きく分けて、一つは、中小企業者自体定義、それからもう一つは、組合その他この法律対象となる者というふうに大きく分かれますけれども前者中小企業者につきましては、第二条の定義規定の一号、二号というところは、基本的な中小企業者定義範囲と異なるものではないわけでございます。  ただ、本法律におきましては、先ほど来出ております大きな構造的変化に極力対応してもらいたい、しかもその構造的変化というのが、ややもすれば発展途上国の追い上げを受けている業種その他そういった面での困難性を伴う面が大きいということもございまして、三号といたしまして、今一号、二号で申し上げました通常中小企業者範囲に加えまして、資本規模の割に労働集約的である業種、これを追加して指定いたしたい、範囲を広げたい、かように思っております。  この例は本法で初めての例ではございませんで、過去にも幾つかの中小企業立法例がございますが、具体的に申し上げますと、従来の例で申し上げますと、例えば、ちょっと列挙する形になって申しわけございませんが、陶磁器製品製造業ゴム製品製造業織物機械染色整理業あるいはマイニングの鉱業、伸銅品製造業、こういったあたりが、例えば従業員基準につきまして九百人以下とか六百人以下とか、そういった形で膨らんでおります。資本金規模は一億円ということで変わっておりません。  本法の場合さあどうするかということなんですが、基本的に、こういった過去の、今五業種申し上げましたけれども、五業種指定いたしたい、こう思っておりますが、それに加えて、昨今の経済環境下でどの程度業種、どういう業種を追加して指定するかというのは鋭意検討を進めているところでございます。  それから、組合につきましては、これはいろいろな立法例があるわけでございますが、極力…  失礼いたしました。
  27. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、資本金一億円の規定は大体変えないで、労働集約的な業種になっていて、通常の常識から見ると、中小企業としては割合と従業員を大勢抱えているという業種を特に業種ごと政令指定をする、こういうことになりますね。
  28. 村田成二

    村田(成)政府委員 「その業種ごと政令で定める金額以下の会社」と書いてございますが、あるいは「従業員の数がその業種ごと政令で定める数以下の会社」ということで、個別具体的に、個々に政令で人数と資本金規定しよう、こう思っております。
  29. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、さらに一歩進んだ質問になりますが、このいわゆるリストラ法では、新分野進出する企業新分野進出に対して支援を行うということでありますが、新しい分野進出するわけでありますから、イメージとしては、当該中小企業にとっては新しい分野であります。しかし、その分野にも既に今まで既存中小企業事業を行っている。そうすると、現在事業を行っている既存中小企業者がいる分野にほかの業種なり、ほかの業務内容から転換をして同じ分野に競合的な関係で新しい中小企業者が参入をしてくるというふうにイメージされるわけでありますが、そのときに、今までの既存中小企業、同じものをつくっている中小企業と、新規に別の分野から入ってきてそのものをつくる中小企業者がいるということになったときに、新規の新分野進出をしてきた中小企業方々に対してはこの法律によって手厚い支援がなされるが、今までと同じことをやっている既存中小企業者にはその支援がないということになると、その進出先の分野において競争条件にハンディキャップが起こり、そしてまたそれが過当競争の原因にもなって、既存中小企業者が非常に困難に直面するのではないかという心配があるわけであります。  例えば鉄鋼メーカーが、今まで銑鉄メーカーでありましたのが、部品のメーカーとして組み立て加工の分野進出するような場合に、その進出する銑鉄メーカーにこの法律によります支援をいたしますと、既存の、同じ品物をつくっている組み立て加工メーカーは競争条件上非常に不利な状況になるということも考えられると思うのでありますが、そういう点につきましてはどう考えて、どういう対応をされるつもりか、伺います。
  30. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほどちょっとお答え申し上げましたように、現実問題として御指摘のような懸念が実際に起きるという可能性は、新規に事業を開始する困難性等々から考えまして、そうそうないのではないかとは私ども思っております。  ただ、やはり仮にも問題が生ずるということになりますと、これは行政庁といたしましても、この法律上適切な事態であるかどうか大いに疑問となるわけでございますので、社会的に認めがたいような、他の企業に著しい悪影響、こういうものを生じかねないような場合には、法案の第三条第三項でいろいろ承認要件が書いてございますけれども、その中に書かれておりますように、「国民経済の健全な発展を阻害する」というような観点から承認行為を行わないという事態もあり得る、あるいはそうすべきであるというふうに考えております。
  31. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、この新分野進出を考える中小企業がこの支援を受けるためには、新分野進出等計画を出して、その計画を都道府県知事によって承認をしてもらうという手続が必要なわけであります。これは、いわゆるお役所の手続上は確かにそういうことが必要だということは私もわかるのでありますが、この計画を出すこと自体が膨大な書類、膨大な手続ということになって、実は中小企業に手続面で非常に大きな負担をかけるのではないかというふうな危惧もされるわけであります。  この法律に、「目標」とか「内容」とか「実施時期」とか「資金の額」等々、項目としてかなりの項目がありますが、実際にどのくらいの書類を出させることを考えているのか。私は、実際の中小企業者がこういう法律適用を受けようと思うときに、実は相当膨大な手続、書類によって悩まされている現状をよく知っております。そういうことでありますので、この法律ではどのような程度の書類を出させることになるのか、その点について伺いたいと思います。
  32. 村田成二

    村田(成)政府委員 確かに先生おっしゃるように、実際問題として、申請を出す場合には通豊かなりの膨大な資料あるいは書類を提出させられるケースが間々多いわけでございます。私ども幾つかの従来の法律におきましても、ちょっと調べてみましたけれども、かなりの分量の書類の提出を求められているというのが実態でございます。  ただ、やはりしかるべき支援措置に結びついていく手続でございますので、むやみに簡素化できないわけでございますし、それからまた、これからどういうふうな通達等を発出して、それに基づいてどういう運用をするかということも現段階では決まっておらないわけでございますので、具体的にどういう分量がという御質問になかなか端的に答えられない面がございます。  ただ、基本的な方針といたしまして、やはり申請者の負担、これは特に中小企業の場合のいろいろな金銭的、コスト的あるいは従業員的な問題点を考えますと、極力この中小企業者の負担を軽減して、申請書の内容、分量というものも従来の立法例に基づく分量に比べまして極力軽減を図ってまいりたいというふうに考えております。
  33. 尾身幸次

    尾身委員 ぜひこの手続上の中小企業者の負担を合理的な範囲でできるようなものにしていただきたいというふうにお願いをしておきます。  次の質問でありますが、今度は、この計画を承認する、都道府県知事の承認を受けることが必要なのでありますが、その承認基準は、第三条によりますと、「新分野進出等が当該特定中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮させるものであり、かつ、国民経済の健全な発展を阻害するものでないことごというのと、それからその「計画が当該新分野進出等を円滑かつ確実に遂行するために適切なものであること。」というふうな承認基準になっているわけであります。  法律の文章でありますからやむを得ない部分もあると思うのでありますけれども、こういう抽象的な表現では、現場で、一体どういう計画を承認すべきなのか、どういう計画を承認してはいけないのかということが実はよくわからないし、それから承認をしてもらおうと思って書類を出す中小企業者の方もわかりにくいのではないかと思うのでありますが、具体的にはどういう内容基準でこの承認あるいは承認しないということを決めるのか、その点についてやや詳しい説明をお願いいたします。
  34. 村田成二

    村田(成)政府委員 少し具体的に御紹介申し上げますと、「国民経済の健全な発展を阻害するものでない」あるいは二号において「当該新分野進出等を円滑かつ確実に遂行するために適切」、ここは号はまたがっておりましても割合と共通的な事項を言っているわけでありますけれども、これは、例えば公序良俗に反するもの、それから関係法令違反、あるいはそれに準ずるものといった社会的に認容しがたいものをなるべく具体的に示したいと思っております。  それから、「中小企業者の能力を有効かつ適切に発揮させるもの」、さらには、新分野進出等を確実に遂行するものという要件が、これまた一号、二号にまたがって規定されておりますけれども、これは申請者の事業規模等に照らしまして、この新分野進出計画自体に必要とする資金の額あるいはその調達方法、こういったものが適切であるかどうか、無理がないかどうかという点をチェックするということを考えております。  以上の点は、なるべく具体的に運用方針として各都道府県知事に示したいと思っております。
  35. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、計画の承認がされた場合には、融資の点、それから信用保険の点あるいは税制等で相当に手厚い支援がなされる内容になっているわけでありますけれども、融資、信用保険それから税制等で、内容的には具体的にどの程度支援がそれぞれなされるのかということをお聞きをしたいと思います。  もうちょっと具体的に言いますと、例えばある企業が三億円ぐらいの設備投資をして新分野進出しようという計画を立てたときに、税制の問題は特別償却等々でやりますから別でありますが、それに対する融資についての支援はどんなふうな形でなされるのか、ややイメージがはっきりしたようなことで説明を願えればありがたいと思います。
  36. 村田成二

    村田(成)政府委員 融資、税等の支援措置につきましては、この法案に書いてあるものとしましては、税制上の措置、具体的には設備に対する特別償却あるいは試験研究関連税制、欠損金、これはいずれも次期通常国会で御審議いただくことになると思います租税特別措置法で具体的な中身が決定されるという仕組みになっております。  それから、金融上の措置としましては、法案上書いてありますのが中小企業設備近代化資金の償還期間の延長、これは施行前の貸し付けの償還延長も含めて規定されております。それからまた、信用保険の限度額の引き上げ、料率引き下げ等々特例が書いてあるわけでございます。  そのほかに、ただいま先生指摘になりました新分野進出等に必要な資金に係る低利融資制度、これを創設いたしまして、特にこの法律によりまして計画の承認を受けました場合には、三・六%程度の低利の融資を実施するということを考えております。  具体的に、それでは例えば三億円ぐらいの資金を必要とする場合にどうなるか、こういう御質問でございます。  まず、中小企業設備近代化資金、これにつきましては、必要資金の半分を例えば無利子で貸し付ける、あるいは貸し付けを受けるということにいたしましても、先ほど申し上げました特利の融資というのは、抱き合わせで措置を講ずることはなかなか難しゅうございます。したがいまして、先ほど御紹介申し上げました信用保険、この制度を活用いただきまして、残りの部分を市中からあわせて調達していただくということになろうかと思います。  以上でございますが、ちょっと不十分で申しわけございません。
  37. 尾身幸次

    尾身委員 中小企業近代化資金というのは、たしか機械の部分に対する融資ではなかったかなというふうに思うのであります。全体の計画の中の一部に機械が入っていたときには、その機械の部分については近代化資金の貸し付けを受けられて、そのほか全体の建物とか何かについては中小企業金融公庫のこの事業に関する低利の融資を受けられるというふうに解釈していいわけでしょうか。
  38. 村田成二

    村田(成)政府委員 設備近代化資金の場合には、機械設備が入るわけでございます。それから、中小企業金融公庫等の政府系金融機関からの融資対象には建物は残念ながら入りませんので、そういった点ではちょっと、先生の御指摘ではございますけれども、建物を除外した部分についての融資の話ということにならざるを得ないと考えております。
  39. 尾身幸次

    尾身委員 ちょっと、素人でわからないのですが、そうすると、この新分野進出の場合に、中小企業金融公庫から借りるものと、近代化資金で借りるものは対象がダブるわけでしょうか。——どうぞ、よく相談して答えてください。
  40. 村田成二

    村田(成)政府委員 抽象的に、対象はダブりますけれども、両方から借りるということはできないわけでございますので、いずれか選択していただくということにならざるを得ないと思います。
  41. 尾身幸次

    尾身委員 余り細かいことをここで聞くのもあれですから、現場の窓口の方に細かいことをよく聞いていただかなければいけないと思いますので、この点については、後でよく調査の上御説明を願いたいと思います。  次の質問に参ります。  この法律の第十二条に雇用の安定という部分がございまして、例えば第一項では「特定中小企業者は、新分野進出等を行うに当たっては、その雇用する労働者について、その雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうに書いてあるわけであります。これについて、「雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる」というのは、この十二条一項でございますが、どういうことを内容として意味しているのかということをお伺いしたいと思います。  それから、十二条全体として、国それから都道府県の努力義務のようなものが書いてあるわけでありますけれども、一体どういうことを内容として意図しているのかということについて御説明を願いたいと思います。
  42. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほどの御指示につきましては、機会を改めましてお届けいたしたいと思います。  それから、ただいまの御質問でございますが、まず十二条の第一項、「必要な措置」とは何かということでございます。事業者といたしまして社内的な職業訓練を実施するとか、あるいは雇用調整助成金の活用等によりまして雇用不安が生ずることのないよういろいろ努力するということが具体的中身として相定されております。  それから、二項、三項を含めました具体的内容でございますけれども、第二項、これは事業活動の縮小が余儀なくされた場合においての国の努力義務を書いたものでございます。具体的には雇用調整助成金の活用、これは休業、出向あるいは教育訓練といったような場合に適用される制度でございますけれども、そういった活用を図りまして、雇用の安定を図る必要があるという中身でございます。  それから第三項、「国及び都道府県」、両方にかかっておりますけれども、これは、不幸にしましていろいろ雇用問題が発生した場合の規定でございます。雇用されていた労働者につきまして、具体的には職業訓練、すなわち雇用促進事業団の行います能力開発訓練事業、あるいは職業訓練短期大学校におきます養成訓練、あるいは都道府県の職業訓練校における訓練といったような職業訓練の実施、さらには職業安定所を通じます就職のあっせんといったことを具体的内容として想定いたしております。
  43. 尾身幸次

    尾身委員 この法律で、いわゆる新分野進出と同時に、中小企業海外進出についても支援をする、こういうことになっているわけであります。  実は、我が国産業、特に製造業では、大企業も含めまして、海外への生産の大幅シフトによりまして国内の事業活動に影響が出始めておりまして、そういう意味でいいますと、日本経済の空洞化を懸念する声も強いわけであります。大幅な円高と国内の不況が続く中で、将来性のある国内市場が一方にあり、そして低いコストで勤勉な労働力を豊富に持つ中国とかあるいは東アジア地域産業がシフトをして、日本経済の空洞化が生ずるのではないかというふうにも言われているわけであります。私は基本的に、いわゆる物をつくる製造業は我が国経済を支える根幹であるというふうに考えておりまして、物をつくる産業製造業を中心としていかないと日本全体の健全な経済発展が阻害されてしまうのであるというふうに考えて、空洞化問題については非常に心配をしているわけであります。  これは大臣にお伺いしたいのでありますが、大臣はこのことについてどう判断をされておられるか、また、どう対応されていかれるつもりか、お伺いをさせていただきます。
  44. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 企業海外進出は、一般的に申しまして、対外不均衡の是正ということにも確かに役に立ちますし、また、適正な国際的な産業構造の調和ある展開ということに役に立つことは事実でございます。しかし他方で、これはレーガノミックスの時代のアメリカの例に見ましても、委員が御指摘のように、それが行き過ぎますと我が国製造業の空洞化を招くのではないかという懸念があることは御指摘のとおりだと私も思います。  私ども通産省といたしましても、これは私、当委員会における審議で再三御説明を申し上げてきたところでありますけれども我が国産業の空洞化を防止することは極めて重要な課題だというふうに考えておりまして、このためにはやはりファンダメンタルズを反映した為替レートにしていかなければならないし、また内外価格差の是正あるいは活力ある産業構造への転換ということが基本的に重要だと考えております。  第一に、マクロの経済運営につきまして適切な運営を図りまして、経済収支不均衡の縮小を図ること、過度の円高を是正すること、新規の需要を創出すること、こういったことがまず基本であろうと思います。第二に、我が国経済に存在する広範な内外価格差を是正し、かつ新規産業を創造するために規制緩和を初めとしたミクロ経済の構造改革を推進すること。第三に、セミマクロとでもいうのでしょうか、将来の産業展望を踏まえつつ円滑な産業構造の調整に努めること、こういった政策を三位一体のものとしてとらえて、総合的な改革を展開することが重要であると認識しているところであります。  いずれにいたしましても、通産省といたしましては、こうした総合的な政策対応によりまして、我が国企業海外展開が我が国と世界経済の双方に利益をもたらしつつ進展するよう努めるとともに、今後ともその動向を十分に注視してまいりたいと思います。
  45. 尾身幸次

    尾身委員 大臣から、空洞化防止が極めて重要な政策課題であるというお話がございましたが、こういう状況のもとで、中小企業海外展開支援するこの法律は国内産業の空洞化を促進することになるのではないかという懸念があります。いわばこの法律が空洞化促進法のような効果を持つのではないかという懸念がされているわけでありますが、この点についてはいかがお考えですか、お伺いをさせていただきます。
  46. 長田英機

    ○長田政府委員 先生の御指摘の点でございますが、非常に厳しい状況に置かれております中小企業者が何とかしてその活路を開いていこうというのがこの法律趣旨でございまして、そういう意味では、海外進出を行うということが活路を開くためにやむを得ない一つの選択であるというふうに考えられるわけでございます。また、海外展開を行う中小企業について私どもで調査したところによりますと、国内の生産事業所生産拠点を閉鎖するというのはもう極めてわずかでございまして、海外のいろいろな生産と相まって企業全体の経営の安定を図る、こういうような形が多いというふうに理解しております。  こういう意味におきましては、こういう一つ海外展開を図るということも、そこだけをとらえると空洞化的なニュアンスはありますけれども企業のアクション全体としてとらえていけば、これは空洞化をもたらしていくというよりもむしろ日本の活力をもたらしていくんじゃないかというふうに考えられると思います。
  47. 尾身幸次

    尾身委員 この法律の運用に当たっては、全体として我が国中小企業が国内を基盤として活動できるような、そういうものにぜひ配慮していただきたいと考える次第であります。  八月に施行されました小規模事業者支援促進法、俗称でありますが、ございます。この法律によりまして、小規模企業対策の担い手として各地域の商工会、商工会議所を位置づけて、商工会、商工会議所が非常に活発な活動をこれから中小企業発展のために展開をすることが期待をされているわけであります。新しい分野、新しい事業への挑戦をこういう機関を通じて促進し、指導していくということがこれからの大きな中小企業政策の課題になるのではないかというふうに考えておりますが、この法律の施行に当たりまして、中小企業に関する商工会とか商工会議所の役割というものをどういうふうに考えておられるか、この点についてお伺いをさせていただきます。
  48. 山田豊

    山田政府委員 お答えいたします。  先生御高承のとおり、全国各地に設置されました商工会、商工会議所は、これまで総合的な地域団体として域内の小規模企業者に対しまして金融、経理、技術改善その他経営に関する指導や、各種制度に対する情報提供等の経営改善事業を実施してきたところであります。  今後、商工会、商工会議所には、本法案適用を受けて積極的に新分野進出等事業展開を図っていくことを検討する事業者に対しまして、経営指導や情報提供といったようなことを通じて積極的な役割を果たしていくことが期待されていると思います。  このため、中小企業庁としては、今後、商工会、商工会議所等の経営指導員が本法案内容やその適用のための各種情報を十分に活用できるように、商工会等を通じまして研修を初め情報の提供に努めてまいりたいと考えております。
  49. 尾身幸次

    尾身委員 我が国の中小企業我が国産業の基盤を支える大変に重要な存在でございまして、日本経済競争力、大企業ばかりが脚光を浴びておりますが、実はその陰に優秀な中小企業が存在をして全体としての経済の活力を維持し、競争力を発揮していることは疑いのない事実でございます。  本法律案につきましては、全体としていわゆる守りの姿勢ではなく、積極的に攻めの姿勢で中長期的に中小企業発展を実現をしていこうという趣旨でありまして、私は、この法案趣旨につきましては基本的に非常に結構であると賛成をするものであります。これからこういう姿勢のもとで、この法律の施行によりまして中小企業が積極的な成長、発展を遂げ、日本経済をしっかりと支えていくことが極めて重要であると考えているわけでございます。こういう点につきまして、これからも中小企業発展中小企業政策全体の充実をぜひお願いをしたいと思う次第でございます。  この点につきまして最後に大臣の所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりにさせていただきます。
  50. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員が政治家になって以来、中小企業政策につきまして多大の情熱を傾けて指導的な役割を果たしてきたことを私も承知しておりますし、かつてはその傘下のメンバーとしてお互いに中小企業政策の充実発展努力をしてきたわけでございまして、それだけに委員の御認識とそして政策提言は大変な重みを持っていると私も理解をいたしているところでありまして、中小企業の占める役割がいかに重大であるかということはもう委員の御指摘のとおりでございます。私ども通産省といたしましても、この中小企業の役割を踏まえて、今後政策的にもいろいろと工夫をしていかなければならないと考えているところでございます。  ひっきょうするところ、この中小企業政策の基本的な目的というのは、将来にわたり経済社会の基盤を支える企業家として意欲を持つ、活力に満ちた中小企業群を形成することにあるわけでございます。今後とも、本法案に基づく施策を初めとした総合的な対策を講じていくとともに、中長期的にも、中小企業が新たな経済環境適応し、将来の我が国経済社会をリードする活力ある企業群を形成できるよう、充実した中小企業政策を展開してまいる所存でございます。
  51. 尾身幸次

    尾身委員 どうもありがとうございました。  以上で質問を終わらせていただきます。
  52. 中井洽

    中井委員長 次に、甘利明君。
  53. 甘利明

    ○甘利委員 先般に引き続いて質問の時間をいただきまして、退屈しないで充実をさせていただいております。  法案の中身につきましては、今尾身委員の方から子細にわたって政府質問がありました。私は、法案の中身よりも、その周辺の中小企業政策の根幹というか全般にかかわる部分について主に質問をしたいと思います。答弁は事務方でも大臣でも結構でございますが、大臣も退屈されるでしょうから、適当なときに御発言をなすっていただいて結構でございます。  尾身委員の今の法案に関する質問で、最後の方に、この法律が空洞化をむしろ促進する側面を持ってはいないか、その心配があるという話がありました。そしてその前に、空洞化に関しては、通産大臣からレーガノミックスの教訓というお話がありました。確かに状況が少し似ている部分があるなと思います。それぞれ権威者が御臨席ですからあえて御説明する必要はないと思いますが、アメリカもレーガンの時代に深刻な不況を経験した、今も大変ですけれども。レーガンが、四万八万全部歓迎されるような案はないだろうかということで、消費を刺激するのが一番いいということで減税を行った。これはもちろん増税よりはどこでも歓迎をされますけれども、所得減税で消費が刺激になった。今も日本では大型所得減税論議が盛んでありますから、状況が似ているのであります。確かに消費が一挙に伸びた。伸びたけれども、気がついてみたら国内に生産力というか供給力がなくなっていた。人件費が高いことやらいろいろな理由で、アメリカの中にいるよりも製造業というのは外へ行った方が効率がいいんだと、きれいに外へ行っちゃったわけですね。消費は拡大したけれども、供給力が全然なかった。そこで供給力は外に求めて、輸入が一挙に拡大をして日本の貿易黒字が発生をした。結局アメリカ経済にとってはそんなにいいことはなかった。状況が若干似ているのであります。  そこで、あれから学んだ教訓というのは、いろいろ人件費が高くなったり、いろいろな避けられない要件があっても、それをいろいろな面で克服をして、製造業、つまり供給をする側が国内に踏みとどまるということがいかに大事かということを我々は学んだわけであります。もちろん、踏みとどまっていたってそのままでは競争力がないから、国内に踏みとどまってなおかつどうやって競争力をつけるか、これがまさに産業政策の根幹をなしてきているわけです。空洞化を促進する面があるというのは、そういう点から、本当に一番がなめのところを放しちゃっていいのかしらという心配が若干ある。それもあって尾身委員質問をされたわけでありまして、我々は、こういう時代に一体全体何が日本を今日まで支えてきたか、それをどうやってしっかり心に刻んではぐくんでいかなきゃならぬかということをみんな、行政も政治家もよく刻んでおく必要があると思うのです。  きょうは、私は別に大演説をするつもりはないのですが、持論をいろいろ展開しますが、御案内のとおり、日本というのは面積でいえば世界の〇・三%であります。〇・三%のところに二・三%の人口が住んで一五%の経済力を支えているというわけであります。世界の三百分の一の面積で世界の六分の一の経済を担っているわけでありまして、それは何がそうさせているかということをしっかりと認識をしなくちゃならない。  それは、前にもたしか与党時代に質問に立って申し上げたことがありますけれども日本が無から有を生み出す力、それが日本を支えてきたのだ。つまり、素材を輸入して、その素材に付加価値をつける。付加価値をつけて製品化をして、それを国内列に販売することによって利益を生んでくる。それが原資になってすべての施策が全部進んでいるんだよ。だから、技術立国日本というのは合い言葉のようになっていますけれども、非常に深い意味があって、その技術立国がまさに日本の今日を成り立たせているし、これからもそれをしっかりとはぐくんでいかなきゃならない。それを銘記する必要がある。  よく引き合いに出される例が、かつて鉄の問題がありましたね。鉄鉱石というのはオーストラリア、あそこが一番安いのでしょうか、そこに買い付けに行くと、現地では一トン千円ちょっとなんだそうです。千円ちょっとの一トンがはるばる太平洋を渡ってこの日本の製鉄所に着くと、一トン二千五百円になりまして、これが製鉄所で製錬をされて鉄板として製品化をされると、一トン五万円になりまして、五万円の鉄で大型エンジン、ディーゼルエンジンなんかつくると、これが一トン八十万円になるわけでありまして、さらにいろいろな電子部門とか高度化する部門だと、トン当たりの単価はうんと上がってくるわけですね。こういう、いかに付加価値をつけていくかということが大事である。それで、その付加価値をつけていく技術ですね、これは大企業にあるとはかり思うとこれは違って、中小企業が相当な技術を持っているというのは、後でまた私お話ししますけれども、具体的な例でも、あるいは私の地元の県でも調査してわかった例がたくさんあります。  大企業が細かい部品から何から全部自分で抱えますとコストがかかってしょうがないから、それは個々の部品なりなんなりを中小企業に切り売りするわけですね。その中小企業がしっかりした技術で納品をしないと、その部品一個のレベルに沿った製品性能しか出ないというわけですから、中小企業技術力というのはもう本当に大企業製品の品質を完全に支えていると言っても過言ではないと思うのですね。  その中小企業を初めとする企業の活力をどうやって維持していくか、活力があるかないかというのは、新しい業に、ここでも新分野進出をするためのサポートの措置もありますけれども、新分野にどんどんチャレンジしていく、つまり業を起こしていく、開業していく、これがどれくらい活発か。そして一方で、業を閉じちゃう、もうこれはだめだ、時代的な要請に沿わないとか経営が成り立たない、まあいろんな理由があるでしょうけれども、廃業率、今その廃業というのは、もう月に千件超えたでしょうかね、もう戦後最大の廃業率だと思いますけれども。業を起こす開業率とやめちゃう廃業率、この関係は、割と企業の活力を明示してくれるのですね。ところが、昨今では起業、業を起こす開業率、こっちの方がもうかなり低下をしてきている。そして、そのやめちゃう廃業率の方が上昇してきています。その辺の動向と、一体どこに原因があるか、理由ですね、まずその辺のところから伺いたいと思います。
  54. 長田英機

    ○長田政府委員 先生指摘のとおり、私ども平成三年度までの総務庁の事業所統計を調べてみますと、全体として見ますと開業率が長期的には低下してきている、廃業率は実はほぼ大体横ばいなのでございますけれども、特に小規模企業、二十人未満の企業をとってみますと、これは開業率が減少してきているのみならず廃業率も増大してきているというようなことで、だんだん企業数減少している、こういう実態でございます。  その原因でございますが、我々白書を書くときにいろいろ分析をしてみますと、幾つ理由がございまして、一つは、消費者ニーズが非常に高度化してきたこととか、技術革新とか情報化とか、そういうような全般的に経営資源が高度なものが要求されるということになかなか対応していけないとか、あるいは地価が上昇しているために開業費用が非常にふえていっているとか、あるいは独立開業意欲を持つ人材の減少が見られる尊いろんな理由がございますが、まあそんなようなところが主な理由として分析されております。
  55. 甘利明

    ○甘利委員 今指摘のあった点は、非常にこれから政治や行政が真剣に対応していかなくちゃならないその主要部分の御指摘だったと思います。  先ほど申し上げましたけれども中小企業が我が国経済の活力の源泉であるというのはだれも異論がないところでありますけれども、そういった活力のある中小企業が新たに市場に参入をしていく、そういうことを促進をしていくということはもう何よりも大事だよと、これも論をまたないところであります。  今、動向についての説明理由がありましたけれども、こういった状況にどうやって政府としては対応されていくおつもりなのか、さらに踏み込んで伺いたいと思います。
  56. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業庁としてのさまざまな具体的な政策については後ほど事務方から御説明させていただきますが、政治家士してこの問題に本格的に取り組んでおられる甘利委員ですので、私の方からお願いも込めて私の認識を申し上げたいわけですが、私は、これは従来もそうでしたし、これからますますそうだと思うのですけれども、この中小企業、とりわけ企業家精神に満ちた中小企業をどのようにビルトインするといいますか、この国の経済の中にビルトインしていくかということが我々の将来に大きな影響があると考えているわけであります。私は、昨今の金融市場の傷み方からこのことに大変危機感を持っておりまして、私は、金融のメカニズムもまた視野に入れて、つまり、中小企業庁のあるいは通産省の持つ政策手段のみならず、日本経済運営の全体の枠組みをどうつくるかということに視野を広げてこの問題を考えていかなければならないのではないかというふうに思っております。  御存じのとおり、金融の仕組みにはアングロサクソン型もございますし、ドイツ型もあるわけであります。日本型もあるわけでありますが、後発資本主義国でありました日本やドイツの場合は銀行が強いわけでありまして、その結果といたしまして、見えるといいますか、売り上げがどれくらいになりそうで、どれくらいの利益が見込めるかという、既にほかの地域で、ほかの国でできた産業を取り入れるには向いている仕組みなんですね、ですから金融、いわゆる銀行なんかのファイナンスに向いている。ところが日本がフロントランナーになりまして、この事業が成功するかどうか極めてリスキーだ、しかし、その製品をつくるプロセスというのが極めてイノバティブというか、革新的なものであるという場合には、金融機関はなかなかこれはお金を貸したがらないわけでございます。  この金融システムの傷みに私は危機感を持つというのは、ますますそういう方向へ来ておりまして、資本市場もまた傷んでおりまして、そういう仕掛けが少しできかかったかなと思って我々も期待していた時期があったのですけれども、今やむしろほとんどその動きがとまっておる。もともと、例えばアメリカ、イギリスなんかにおきましては、資本市場が、ビッグバンでありますとか、あるいはNASDAQといった市場ができておりまして、まさに一獲千金というような野心に満ちた企業家精神が発露される、それにファイナンスされる仕掛けができておるのですけれども日本にはないわけであります。一応店頭市場なんというものがありますけれども、これがまるで、大蔵省の知的関心をかき立てたのかどうか知りませんが、がんじがらめでございまして、ですから、そういう部分も含めて、私は経済改革という視点からこの問題にアプローチすべきではないか。  本来ならば私がそちらの方へ座りまして、野党的精神に満ちて現行システムを徹底的に批判をしたいぐらいでありますが、残念ながらもこういうところにおりますので、ぜひ甘利委員が中心になって、野党の自民党の皆さんに動員をかけて徹頭徹尾今のシステムに対決するぐらいのことで、データを集め頑張っていただきたい。そういう意味で、もちろん通産省といたしましては、後ほど御説明いたしますが、最大限の努力をするつもりでおりますし、現在もいろいろな工夫をしておるわけですが、もっと大きな仕掛けを我々はこの分野につくっていくことが、委員の御指摘の方向にこたえる道だと私は考えておるところであります。
  57. 甘利明

    ○甘利委員 今大臣から陳情をいただきましたが、その点は非常に私も共感するところでありまして、もともと金融機関自体が、例えばこれはバブルの発生の原因の一つにもなっているのですが、担保主義とか、つまり、取りっぱぐれのない、先に押さえておくものがないと金を貸さないとか、あるいは、何といいますか、非常に保守的なんですね。そこの会社のそのプロジェクトの優秀性とかプランのすばらしさとか意欲とか、そういうものに評価点数を与えるのがうんと少なくて、間違いなく取りっぱぐれがないという方向にしかいかないから、意欲を持っているけれども金がないというところが伸びていかないのですね。  大臣から御指摘がありましたアメリカのNASDAQの話も、まさに日本でも、じゃ、ベンチャーキャピタルの市場というかそれをつくろうよという話だったのでしょうね、最初は。それで、店頭公開市場というのをやろうとした。そうしたら、大蔵省がすぐ興味深く近寄ってきて、結局、何というか上場、一部上場、二部上場、三部上場とか、同じような、ただ規模が小さいだけというのにがんじがらめにしちゃったわけですね。だから、幾ら意欲がある人でも、意欲もアイデアも才能も技術も皆あるのでしょうけれども、そこにちゃんとカバーしようよという仕組みがアメリカみたいにないのですね。これは、日本にとっては非常に不幸なことだと思うのですね。  中小企業施策というのを通産省ではかなり、私も手がけてきましたし、充実はしていると思うのですけれども、それもあくまでも既存の、既にある中小企業が、今回の法律もですよ、新たにこっちへ展開をするとか外へ行くとかいうのをやるのであって、開業するというのは、それまで後ろが何もないわけですからね。実績も何も、何にもないのが新しく生まれていく。そういう中小企業に対する施策、例えば金融施策なんか、既存の、現存する中小企業と同じようなぐあいの対応というのはなかなかできていないと思うのですね、言ってみればベンチャーキャピタルみたいなものでありますから。その辺の充実整備というか、適切な活用といいますか、その辺はどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  58. 長田英機

    ○長田政府委員 先生指摘のとおり、新規の開業を行う中小企業に対する資金面とかあるいは信用力の確保という面で、いろいろな施策を展開する必要があると思っております。  実は、余り目立ってないのかもしれませんけれども、従来よりも幾つかの制度はやっておりまして、例えて申し上げますと、ふるさとの創造企業を育成するような中小公庫からの貸し付けとか、あるいはフロンティア企業を育成するための体質強化資金というのがございますが、これの中にそういう制度をつくりましたり、あるいは従業員の独立開業貸し付け、まあ、のれん分け貸し付けと言ったりしておりますけれども国民金融公庫でこういう制度をつくったり、さらに信用補完の点では、新事業開拓保険といいまして、これが通常の付限度額とかてん補率の優遇措置を講ずるような、こういうようなことをやっているわけでございます。また、平成五年度からは、中小企業近代化資金貸付制度の中に創業枠というものを創設いたしました。  私どもも基本的に先生と同じ認識でございまして、こういうような制度、少し細かくたくさんあるような感じもいたしますけれども、いろいろな制度を運用したり、あるいはこれからまた創設したりして、とにかくこの開業支援ということに万全を期していきたいと思っております。
  59. 甘利明

    ○甘利委員 起業家精神、つまり業を起こす精神ですね、これを高揚していくということは、日本産業の活力を担うわけでありますから、今おっしゃったような各種施策、ぜひ充実をしていっていただきたいと思います。  よく大企業中小企業との企業間格差という話が出ます。私は持論として、意欲も力もないところに対しても、補助金や融資や税制で援助づけというか、そういうことをしろと言うつもりは毛頭ありません。インセンティブをつけてやればぐんぐん伸びるぞという可能性にはどんどん応援をしていってやりたい、これがやはり中小企業施策であると思います。大企業中小企業との格差で、資本装備率の格差というのは縮小しているというふうに聞くのでありますけれども、むしろ肝心なところの付加価値の生産性の格差というのはここへきて拡大をしているのじゃないかということが言われているわけですね。新商品の開発とか、むしろそれよりも広告宣伝とか生産、販売管理等に係るノウハウとか、まあ言ってみますと、ソフトな経営資源の高度化というのですか、この辺の格差が大企業との企業間格差のむしろ大きな原因になっているということが近年指摘されているわけですけれども、この中小企業のソストな経営資源の高度化というのでしょうか、その辺の施策の強化拡充というのも大事だなと思いますが、この点に関してはいかがでしょう。
  60. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 今委員指摘の、中小企業が抱える構造的問題であります情報、技術、人材、こういったソフトな経営資源の不足が背景になりまして、中小企業と大企業との間の格差が依然として大きい。この中小企業のソフトな経営資源の充実の必要性については、十分私どもも認識しているところであります。  そのため、従来から、地域中小企業創造力形成事業、舌をかみそうなあれですが、要すれば、地域中小企業技術力とかデザイン力等の向上を図るための補助事業でございますが、こういった事業でありますとか研修事業でございますね。人材育成を図るために中小企業事業団の中に中小企業大学校等の制度がございまして、こういった形で研修事業を行う、それから情報化推進のために事業団あるいは中小企業地域情報センターによる情報化事業などを通じまして、中小企業のソフトな経営資源の充実を支援してまいってきたところであります。  今後とも、委員指摘のとおり、中小企業者のニーズを踏まえつつ、こういった施策の効果的な運用、適時適切な内容の充実等に努めてまいりたいと考えているところであります。
  61. 甘利明

    ○甘利委員 今大臣から人材の点にも触れていただぎました。このソフトな経営資源で、確かに人材も非常に大きい要素ですね。業を起こす人はどんなに優秀で能力があっても、支える人たちが大企業との人的資質での格差というものがどうしても出てしまう、これが企業全体の経営発展にかなり影響を及ぼすわけですね。大企業というのは、ほっておいても広く人材が集まります。中小企業というのはなかなか限られた範囲からピックアップしてこなくちゃならないですから、それだけに余計、さっき大臣がおっしゃったように、中小企業大学校の研修事業とか、あるいはもっと言えば、地域の商工会とか商工会議所がいろいろな人材育成事業をやっていまして、もちろん通産省の施策の一環としてやっているわけですけれども、その辺にさらに重点を置いて、幅広く人材を募ることがなかなかできないから、集まった人の練度を上げていくといいますか、そういう作業というのは中小企業施策の中で非常に大事なわけでありまして、大臣がおっしゃった人材育成施策、これをさらに内容の充実を図っていく必要があると思いますが、この辺に関して事務方の方で何かお答えはありますか。
  62. 長田英機

    ○長田政府委員 中小企業がこういう厳しい状況にある中で、先を見通しながら活路を開いていくためにはとにかく人材の育成、人材というものが非常に重要だと思うわけでございます。今、先生からお話ありましたように、商工会や商工会議所で人材能力開発事業とか若手の後継者の育成事業という支援を行ったりしておりますし、また中小企業大学校で各種の研修もやっております。さらに、都道府県や大きな市におきましても研修事業をやっておりまして、こういうことに対する支援を私どもしているわけでございますが、御指摘のように、集まった人のレベルを上げるというような意味で研修期間を長期化してみたり、あるいはコースをいろいろ再編成してみたり、いろいろこねからも工夫をしながら実質的な効果を上げるように努力していきたいと思います。
  63. 甘利明

    ○甘利委員 中小企業の人材育成がおくれているというのは、一つには、そんなことやっている暇がないよ、手いっぱいで、日曜も働いてもらわなくちゃならないし、残業もしてもらわなくちゃならないという問題と、それから私が現場を歩いてみると、意外と各種の中小企業に対する施策が浸透してないんですね。知らないというのも結構ありますから、これは商工会とか商工会議所、いろいろな中小企業政策を補佐している機関を通じて、例えば商工会の工業部会を通じるとかして、こういうのがありますよ、利用できますよという周知徹底はした方がいいんじゃないかな。新しい税制ができましても、それを知っている人というのは意外と少なかったりしまして、私の方が講師になって説明したりする例がよくありますから。あるのに利用していないという例もかなりあるようですから、その辺は徹底して、これは別に答弁は結構でございます。  それから、人材といえば必ずぶち当たるのは後継者難なんですね。農業でも後継者難というのが言われて久しいのですが、中小企業でもやはり後継者難というのが大変な問題になっているんですね。小さいころからおやじが苦労して油まみれになって働いているのを見て、その割に余りいい目を見てないから、ばかばかしくてやっていられないとか、いろいろな思いもあるんでしょうけれども、後継者が育っていかないというのは、これはどうしても取り組んでいかなければならない問題の一つでありましょうから、後継者対策の充実強化も健全な中小企業をはぐくんでいく上では大事な要素の一つですから、その充実策というか強化策についてもお取り組みをいただきたい。
  64. 長田英機

    ○長田政府委員 現在、高度成長期から約二十年が経過しまして、多くの中小企業におきまして世代の交代期を迎えてきております。そういうような点から後継者問題が非常に重要な問題でございまして、私どもとしましては、商工会や商工会議所におきまして、小規模企業の次代を担う若手後継者という人を対象にいたしまして、先進的な経営管理技術を導入している企業に派遣していろいろ勉強して研修してもらうというようなことを実施したり、先ほどもお話出ました中小企業大学校におきまして経営の後継者の研修をやる、そういうようなことをやって努力をしております。まだ必ずしも十分とは言えないかもしれませんので、今後この後継者問題を何とか解決していくようにいろいろ施策面の充実に努力をしてまいりたいと思います。
  65. 甘利明

    ○甘利委員 後継者難というのは、本人が、中小企業の後継予定者が魅力を感じて意欲を持ってくれるかということでありますから、このボタンを押すとすぐ結果が出てくるということじゃないものでありますから難しい点はありますけれども、ぜひ引き続き御努力をしていただきたいと思うわけであります。  私の地元に大和市というのがありまして、人口が二十万人でございまして、市長は私のおじがやって、どうでもいいことでありますけれども。その二十万都市の商工会があります。これは会議所じゃないんですね。神奈川県で一番大きい商工会、二十万都市で商工会ですから一全国一なんじゃないですか。この商工会が商工会議所に移行するというので私もいろいろ相談を受けまして、通産省から基本的なオーケーは出まして、近い将来に商工会議所になるんですけれども会議所に移行するのにいろいろな要件がありますけれども、会員の加入率というのが重要な要件でありますので、加入率をふやすのに商工会の特に工業部会が挙げて市内の中小企業を全部回ったんです。  それで、工業部会長が後で報告に来たんですけれども、我が地元にこんなに中小企業の数がたんとあると思いませんでした、加入総数が四千を超えたとか五千を超えたとか言っていましたけれども、回ってみて物すごいたくさんの中小企業がよくやっているなという印象でした、それともう一つ大きな発見は、いろいろ行って加入の要請をしてオーナーと話してみると、意外と中小企業が大変な技術を持っていたり、あるいはびっくりするような特許を四、五十人の中小企業のおやじが持っていたりする発見が随分ありました、やはり日本中小企業というのはすごいですよという話を工業部会長さんが私にしてくれました。工業部会長というのは上場している自動車部品会社の元社長さんなんですけれども、その会社に自動車関連でベンツあるいはビッグスリーからいろいろな視察が来るときに、むしろ外国の首脳の方が地元の中小企業の優秀さの実情をよく知っていますよ、この市は言ってみればシリコンバレーとデトロイトが一緒になっているような市ですねという指摘を前に外国の自動車会社の重役から受けました、そうして回ってみると、確かに中小企業に非常に優秀な技術がある、自動車のメーカーが立地している、いすずとか日産が現地や近隣地にある、まさにシリコンバレーとデトロイトを一緒にしたような町ですということがようやくわかってきました、こういった中小企業がばらばらにいろいろ持っている技術を組み上げていくとか、あるいは製品化していくとか、そういう仕組みをうんと充実させていくことが大事なんですよねということを私にしみじみ言っておられました。  神奈川には通産が誇るKSP、かながわサイエンスパークというのがありまして、これは言ってみればそういう役をやっている一つなんですけれども、こういった中小企業技術を相互に組み上げるというか、そしてまた製品化につなげていくというか、そういう優秀な技術を具体的な形に仕組んでいくような、言ってみればそういうサイエンスパークみたいなところの環境整備や支援策というのは非常に大事だなと、その話を聞きながら思いました。かながわサイエンスパークがかなり順調にスタートしているというような話も聞きますけれども、そういったところの環境整備や支援施策について、現状どう取り組まれて、これからどうされていくのか、その辺のところをちょっと。
  66. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業にとりまして技術力の向上というのがキーポイントだということは、委員指摘のとおりだと思います。委員もおっしゃられていましたけれども日本中小企業の中に、世界に冠たる技術を持つ中小企業がたくさんある、これもまた御指摘のとおりでございまして、単に時代の環境に合わせていくために技術力が必要だというよりは、中小企業が生き抜いていくために技術力というのは決定的な役割を果たすものだ、これは委員の御指摘のとおりだろうと私は思っておるわけであります。  通産省といたしましては、公設試験場、都道府県が持っております試験研究機関でございますが、この公設試験場を中小企業技術開発のための支援機関として位置づけまして、この公設試験場が行う研修とか指導とか、あるいはみずから行う技術開発などいたしまして、積極的な支援を行っているところでございます。また、中小企業みずからが技術開発をやるという場合に、これに対しても技術改善費補助金といった支援策を講じているところでございます。そのほか、いろいろな法律によりまして、さまざまな地域の、あるいは中小企業向けの技術開発対策をいろいろやってきたところであります。  やや脱線するかもしれませんが、サイエンスパークの例をおっしゃられて、これは非常に成功している例だと思いまして我々も評価をしているわけですが、それをみんなでモデルにいたしまして、テクノポリスだとかさまざまな法律をつくってやりましたですね。ところが、私自身も苦い体験をしておるのですけれども、これは通産省自身もこれから反省していかなければならない。私、通産大臣になってから口を酸っぱくして言っているのですが、第三セクターと称するのをつくりたがるのですね。まさに私が言う日本型談合システムだと思うのですが、やたらと名前を言ってあっちこっち入れさせるわけです。だれも責任をとらない組織にする。その組織のそれぞれの、これは役所も含めてですけれども、一番気のきかない、間に合わない、置いときたくないやつをみんな出向させまして、そして出資したのはだれ一人、この分だけ、まあ役所が旗振るからしょうがないからつき合おうかということで出す、こんなものがうまくいくわけないのですね。それで、東京から見ていて、この条件に、要件に該当したからといって偉そうな顔をしておる。二年置きにかわって、責任なんかとりゃせぬのです。旗振った担当者というのは、お互い政治家ですからわかりますが、これは十年、二十年やっておるわけでして、ちょっとでもおかしくなれば全部政治責任、こう追及されるわけであります。しかも、言いたいほうだい言って、ろくな手伝いもしなかった役人だけが偉そうな顔をして、さようなら、こういうことでは、私は、これは済みませんよ、もうそういう手法は終わったのだ。やはり本当に実質的に効果が上がるような技術開発政策、中小企業のためですから。中小企業にとりまして、技術開発をやるというのは、単発物が成功するのは、あるとき成功しますけれども、これは経営ですから持続しなければなりません。そういう意味で、やはりオーソドックスなきちっとしたサポートするシステムというのをつくっていくということが大事だなというのが、私も十七年近く、甘利委員と同じような思いで中小企業の多い町を走り回った体験から積み上げてきた考え方でございます。  いずれにいたしましても、さきに申し上げましたように、変動するこの社会、とりわけ環境が激変しているこの時代に日本経済の中核たる中小企業が生き抜いていくためには、技術開発力をつけてあげる、これがもう一番大事だという認識は共通でございまして、とかくいたしますと、技術開発政策といいますと、東京の周辺に本社のある企業だけのために奉仕する政策になっているのではないか。私どもも、ローカルで走り回った経験から、これは必ずしも当たっている議論がどうかわかりませんが、やはり日本中小企業のためには、地域の政策と両にらみしながら政策を充実していかなければならないと考えているところであります。
  67. 甘利明

    ○甘利委員 大臣の前段の御発言は、事務方は冷や汗をかきながら聞いていらっしゃったと思いますけれども、だからこそ、まさに現場の声なのですよね。どうしてもお役所の行政というのは、体裁が整えばオーケーを出すけれども、意欲を持ってそれから若干踏み出した形になると、要件に合わないとかいう話がよく出ますから、これは本当に何のためにつくるのか、その辺の視点をしっかりと踏まえて、責任転嫁組織の三セクにならないように、これは私からもぜひ注文をつけておきたいと思います。  大蔵省、わざわざ済みませんね、商工委員会までお越しをいただきまして。時間がないので、相続税のことにちょっと触れたいと思うのです。  さっき、中小企業に驚くべき技術が随分あるという話をしましたけれども、東京の下町に、五、六十人でやっている、おやじさんがやっている中小企業がありまして、ここはどういう技術を持っているかというと、アメリカのペトリオットミサイルの重要な部品のメッキ技術を持っているのですね。この会社技術を提供して部品をつくらないとペトリオットは飛ばないのだそうでして、あのペトリオットミサイルというのは、向こうから、よそから飛んでくるのを水際で撃ち落とす、迎撃の防御用ミサイルですね。日本は専守防衛ですから、まさにあれをしっかり装備してもらわないと、今、北朝鮮の核開発疑惑なんてありますし、労働一号の実験が終わって、東京、千葉、神奈川の一部を除いたら、あと全部届く。二号が開発されると議事堂まで来るという話でありますが、そういう脅威もあり、言ってみれば、飛んでくるのを散弾銃で撃ち落とすみたいな装置ですから、これは日本にとって大変重要なことになってくると思うのですけれども、ペトリオットというのは、言ってみれば水際で飛んでくるのを撃ち落とさなくてはならないのですから、潮風の中を動くものですから、どうしてもすぐさびてしまう。これのメッキ技術というのは大変なものなんだそうでありまして、そこのおやじさんが、おれが亡くなったら相続税でまず我が社はだめだろうねと言っているのだそうでありますけれども、それは一例でありますが、いろいろ根幹にかかわるような技術が、相続を通じて消滅してしまうという危険が随分叫ばれております。  そこで、中小企業事業承継の中でも相続税というのは切り離すことができない問題なのですが、まず大蔵省、相続税というのは一体何なのですか。どういう目的で相続税というのはつくってあるのか、理由というか、哲学というか、まずそこから伺います。
  68. 渡邊博史

    ○渡邊説明員 大分根本的な御質問をいただきましたのですが、手短にお答えをしたいと思います。  相続税の課税の根拠あるいは趣旨、目的につきましては、従来からいろいろな考え方があるわけでございますが、特に課税の仕方自体が、残りました遺産に対する課税をしている場合、それから、受け取った側の相続人に対する、いわゆる取得者に課税する場合ということで大分考え方が違うわけでありますが、日本のように、取得者課税の前提をとっているところにおきましては、相続によりまして財産というものが無償で取得される、つまり、偶発的な原因によって財産が、担税力がいわば不労所得的に生ずるわけでございますので、そういった取得行為に対して負担を求めるというのが本来的な機能としてあるわけでございます。  あと、遺産課税という側面から見ますと、被相続人自体が生前にいわゆる所得を得ているわけでございますが、それの関連で、さまざまな税制上の特典、あるいは租税回避といったことによって蓄積された財産というのが最終的に残るわけでございますので、こういうものを相続の際に清算をするという、いわば所得税の補完税という機能も持っているというふうに言われております。  あと、社会政策的な観点からいえば、まさに巨額の財産を相続した者とそうでない者との間のバランスを図るという意味で、富が過度に集中しないようにこれを抑制していき、再分配を行うということが基本的な機能というふうに従来は考えておるところでございます。
  69. 甘利明

    ○甘利委員 今のお話の中にもありましたように、相続税の哲学というのは、言ってみれば、人は生まれながらにして平等であります、つまり、人生をスタートさせるスタートラインはみんなほぼハンディキャップなしに並べられますよということですね。母親から生まれたときからローレックスの腕時計をして出てくる人はいませんし、服を着て、靴を履いて生まれてくる人はいませんから、全部同じ条件で、裸で出てきている。スタートラインに着いて、これから人生の競争を始めるときに、最初から物すごいハンディキャップは与えませんよ、人間平等だから。その後で、能力の差でついたハンディキャップは、これは個々人のものですが、人生をスタートさせるときにはハンディはなるべくやらないようにする、これが言ってみれば相続税の哲学だと思うのですよ。  そうすると、相続税というのは人にかかわる税ですよね。つまり、死亡という事実を持つ人間の残した遺産を課税対象とするものなわけですね。ところが、中小企業の場合は、個人の死亡が企業の存続にもろにかかわってくるのですよ。だから、個人の死亡に対する課税と企業の存続とをどうやって整合性をつけるか。つまり、要は、これは確実に事業の用に供しているのだ、そういうものを個人の死亡にかかわる課税という枠組みでとらえると、まさに企業自体に相続が発生するのと同じことになるのですよ。この個人の死亡と企業の存続、これをどう整合性をつけるか、この辺についてのお考えを。
  70. 渡邊博史

    ○渡邊説明員 企業といいますか、あるいは具体的に法人の形態をとっている場合には法人という形になるわけでございますけれども、そういうものはいわゆる個人で、一人ではできないものを集団的に、同一の目的を持った者が集まりまして一つの組織として行うという性格のものであるわけでございまして、本来的には、資本的な限界があるということであれば、先ほど通産大臣の方からお話がございましたように、エクイティーファイナンスという問題も含めて、他の出資者あるいは株主を求めて、全体として組織に対して必要な資金を供給するという形で組織が営まれているわけでございます。  したがいまして、そういう意味でいえば、理論的には、もともと法人あるいは事業といったものは、所有と経営を分離した永続的存在ということで法律的に位置づけられているわけでございますから、そういう意味事業承継という問題、あるいはそこで自然人が死んだからといって何らかの問題が生じるということは本来はないわけでございます。  しかしながら、今委員指摘がございましたように、実態といたしまして、その法人の中にも、今申し上げたような形で広く人を糾合して行った組織というよりは、どちらかというと血縁関係を中心に株主が構成されているという組織が存在しているわけで、そういう意味で、個人の問題と法人の問題というのはかかわってくるというふうに考えているわけでございます。  一般的に申し上げれば、株主である役員が死亡したときに、それを契機といたしまして、当該の役員が持っていた経営能力あるいは技術能力というものがなくなってしまうがために事業を継続しがたくなるという事実はあるわけでございますけれども、それに加えまして、その役員が保有していた株式あるいは資産というものが相続人に移転することによって、そこで税負担が生じた結果、相続人が企業に対する支配権を喪失するということはあるわけでございますけれども、それは経営権の移転ということでございまして、本来は事業の存廃に直接つながるものではないというふうに考えているわけでございます。  また、仮に役員の死亡があった場合に、経営能力の喪失ということを原因としない事業の廃止があったとすれば、それは本来、法人というものをどういう形で構成するかという意味で、もともとの目的と若干違った見地で現在の中小企業の株主構成ができているというところに起因しているということと思っておりますので、いずれにせよ、その経営権の支配あるいはそれに対する所有の帰属という両方の面から、中小企業を含めた法人税制全体の中、あるいは、法人制度という商業上あるいは民事法上の中であわせて考えるべきであるというふうに考えております。
  71. 甘利明

    ○甘利委員 今の話を聞いていると、相続によって企業の存続が危ぶまれるなんということは理論上ないというようなお話に聞こえますけれども、これは上場している企業の話をしているのではなくて、もう当然おわかりになって答弁されているのはわかりますけれども、実態として、相続が企業の存続を重大に脅かすという実態が出ているのですよ。それをどうしていくのか。  どうも大蔵省の話を聞いていると、私は、税調での論議を再燃するつもりはありませんけれども、主税局というのは何か社会主義者の集まりなんだろうか、強制的に国権力で結果の平等を担保することがすべてに優先する、それは、みんな平等になったけれども、貧乏で横並びになりましたというような社会が到来するのではないか、そういう心配を物すごくしておりますよ。  時間がないから余りこの問題は掘り下げて議論はできませんけれども、相続が企業の存続に重大な影響を及ぼしてきてしまう。そうすると、必ず事例を挙げよと言うのです。事例を挙げよ、どんなものがありましたか、たくさんそういうものが出ましたか、何とかやっているのではないですかと必ず言われるのですよ。だけれども、これは近年一挙に顕在化してきている問題なんですね。それは何かというと、今まで土地の評価やら土地の実勢価格というのはそう上がってきていなかった。今価格もうんと上がってきているし、まして評価額がぐんぐん上がってしまっている。逆に、その評価額が上がった後また実勢が落ちて、評価額の方が実際に処分する値段よりも高いのではないかな。これは、昨年の税制改正で若干の手当てはしましたよ。しかし、そういう問題が出てきてしまったからこの相続の問題が今大変になってきているのですね。土地が上がって、あるいは評価が上がったためにどんと押し寄せてきてしまった。  そこで、土地の問題もありますけれども、相続税全般を、税率構造とか最高税率を見直さないと、片方がそういう状態になっているのですから、もうどうにもならないところに来ている。税にはいろいろな骨格があって、国際的な整合性というのもその中に必ず言われますね。日本と同じような国で、アメリカやイギリスやフランスやドイツで相続税の限度額を見てみると、七〇%なんという国はないですよ。三〇%から四〇%程度ですからね。これは国際的な整合性がとれていないのではないですか。
  72. 渡邊博史

    ○渡邊説明員 今御指摘の点でございますが、相続税につきましては、過去減税の歴史しかない中で、確かに今議員御指摘のように、ここ数年非常に大きな問題が生じているという御指摘があることは十分承知しております。  その主たる原因が何かということも、まさに議員御指摘のとおりに、地価というものが非常に異常な動きをして、それが結果的に相続財産の中に占めますウエートが高くなるということによって評価が上がり、結果として税額がふえているという状態がございます。基本的には土地の価格を抑えていく中で、税負担がもとに戻っていくということを基本的な方向として考えていくわけでございます。  なお、税率構造につきましては、確かに七〇%というのが非常に高いということは御指摘のとおりでございますが、それをどういうふうに踏まえていくかというのは、その相続税全体の中ということと、あと、所得課税との関係でどのように考えていくかということで、現在政府税調で御議論いただいているわけでございます。  それからもう一つの問題は、仮にその七〇%がいいかどうかというときに、預貯金、現金あるいは上場株式等が十億円あった場合、これから七割取るという話と、まさに土地が十億円として評価されている場合にそこから七億円取るということが結果として大分違った経済的効果も与えますし、あるいは相続人に対する印象も与えているわけでございますので、そこら辺の調整をどのように行うかというのも一つ重要な課題であるというふうに考えているところでございます。
  73. 甘利明

    ○甘利委員 この問題については、きょうはちょっと時間がないので、また改めての機会にこれはもっと掘り下げていろいろ伺いたいと思います。  それから、時間がありませんが、最後にこの中小企業事業承継に関して、土地の問題、それから取引相場のない株式の評価方法の問題がありますね。純資産方式と類似業種比準方式。そして最近、この二つでもやはり正当に反映されていないよということで、収益還元方式というのがこのところ随分中小企業者から言われています。この点について、これは通産省で結構でございますが、どうお考えになりますか。
  74. 長田英機

    ○長田政府委員 非上場株式の評価に当たりましては、その会社の収益性を基準とした評価方法を採用したらどうかという御意見でございますが、利益や配当には操作性というのがあるというような点、そういう点から、公平とか客観性のある収益をどのような指標で見るかということがなかなか困難な問題がございまして、この評価方法にはいろいろ議論はあると思いますが、なかなか最善の方法が見つからないというような現状であるというふうに認識しております。
  75. 甘利明

    ○甘利委員 時間が来ましたので、この議論はまた次の機会に譲りたいと思います。  終わります。
  76. 中井洽

    中井委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後零時三十一分開議
  77. 中井洽

    中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本龍君。
  78. 松本龍

    ○松本(龍)委員 松本龍であります。商工委員会、私初めての委員会の所属でありますけれども委員各位が活発に御論議をされていることに、まず敬意を表したいと思っております。大臣、食後休みもなく本委員会においでになりまして、大変御苦労さまであります。これからのまずまずの御活躍を祈念申し上げたいと思っております。  この間ずっと御意見を伺いまして、まず大臣にお伺いをしたいのですけれども、共通認識として今皆さんそれぞれ委員の中にあられるのは、この景気の低迷をどう打破していけばいいのだろうか、また中小企業の雇用不安、さまざまな不安に対してどう対処をすればいいのだろうか、そういうことがおおむねずっと議論になってきたと思っています。ですから、本法に入ります前に、大臣の今の経済に対する現状の認識からお伺いをいたしたいと思っております。  私はことしの春先にタクシーに乗りまして、そのタクシーの運転手さんがこういう話をされました。バブルの時期は、いろいろ景気が絶好調というふうに言われましたけれども、自分たちには忙しいばかりでほとんど恩恵がなかった。バブルのときはおつき合いができなかった。しかし、こうやって不況になってきたら、これはひとしくツケが回されてくる、つき合いをしなければならない。つまり、そのときにもうけた一部の人たちだけではなくて、ひとしくみんなが景気の低迷のあおりを受けなければならない、これは不公平だなというふうな話をされました。それどころか、まさに中小企業とか生活弱者に対してそれが一番あおりがかかってきているというふうに思います。そういった観点から、このバブルの弊害がいかに大きかったかということを物語る事例を二、三大臣に申し上げたいと思います。  一つは、この前本院の佐藤剛男委員も言われましたけれども素材産業の問題であります。エチレン、紙・パルプあるいは粗鋼でありますけれども、そういった産業が、実は産構法による主な過剰設備処理状況と、経済白書六十二年版に載っておりますけれども、紙パあるいはエチレン等々、これはもう減少状況にずっとあったわけですね、それは大臣もうとっくの昔に御存じだと思いますけれども。さらに、一九八七年の六月の基礎素材産業懇談会の中間報告においては、粗鋼生産は一九八五年度一億三百七十六万トンから九〇年度時点では八千五百万トンあるいは九百万トンの水準まで減少するとの見通しがなされたことを受けて、各鉄鋼メーカー、そのレベルの生産でも収益が確保できる体制を目指すこととなったというふうにありますけれども、まさにこれがバブルのちょうど前あたり状況だったと思います。  しかしながら、そういったバブルの状況が目の前に現出をいたしまして、そういった産業が、いわゆる素材産業の設備投資がどういう状況になってきたかといいますと、まさに二〇%、三〇%、四〇%の前年度比で設備をずっと投資をし続けてきた。このことは、やはり今非常に大きな問題を抱えているなというふうに思います。しかも、私が思いますのは、設備を減少するときの当時の状況は、まさに老朽化した設備とか償却がし終わろうかという設備でありましたけれども、今抱えている過剰設備というのは、ここ五、六年で抱え込んだ新規の設備でありまして、まさに固定費の増大に大きく悩んでいる、そういう状況が今あるというふうに私は認識をいたしています。佐藤委員も、ヒアリングをされて、これからの対応を考えられればいいというふうに言われましたけれども、一点はそういう状況を今現出をしているということであります。  もう一点は、私、建設委員会にも所属をいたしておりまして、住宅着工戸数というのもこの間ずっと推移を見てまいりました。おおむねバブルの以前といいますか、八五、六年あたりは、大体年オーダーで百二十万戸、年間百二十万戸くらいが住宅着工戸数でありましたけれども、バブルの真っただ中は、何とそれから五十万上乗せの百七十万戸という時代があったわけです。今はもう百四十万戸くらいで推移をしているわけでありますけれども。実は、経済の指標になる住宅着工戸数ということで、私も建設委員会の中でちょっと指摘をしたのですけれども、これは、戸数が伸びてきたから堅調になってきた、底を打ったとかという指標にするには、ちょっと今そういう時代ではないのじゃないかというふうに私自身は考えています。  といいますのは、バブルの時代の百七十万戸というオーダーは、実は賃貸とかそういった、いわゆる財テク、キャピタルゲインあるいは節税等々で市場が拡大した中身であって、いわゆるそこに住まうとか居住をするとかいう目的での市場の拡大ではなかった。といいますのは、そのときの持ち家のシェアというのは、トータルで見ますとダウンをしています。伸び率からいうと、それほど伸びておりません。そういう意味では、いわゆる実需ではなくて仮需の状態があのときのバブルではなかったかというふうに思います。  きょうの新聞を見ましたけれども、日経の朝刊ですけれども、「今後半年間の持ち家の受注見通しについては、前年同期に比べて「増加する」とする割合が、「減少する」を上回っている、「金利低下により持ち家の着工意欲が高まっているためだ。」というふうに載っていました。まさに今金利が下がった、そして土地も下落傾向にある。そういった中で、本当のこれは実需で持ち家がだんだん回復してきているな。そういう意味では、バブルのときは絶好調で持ち家が伸びなかったけれども、そういう時期になって実需が少しずつふえてきているという、この状況を見たときに、私は、バブルの山の高さといいますか、山高ければ谷深しと言いますけれども、谷の深さの状況をどう考えるかということも非常に大事ですが、山の高さが何であったかということを認識しなければいけないというふうに思っております。  そういう意味では、経済を人間の体に例えると、バブルのときにだんだん太っていって大きな背広を着てしまった。大きな背広を着てしまってだんだん体がやせ細っていって、気がついたら大きな背広の間から大きなすき間風が吹いて、不景気の風が吹き始めた。そういうときに体に栄養をつけることもこれは非常に対症的には大きな療法でありましょうけれども、もう一方では、大きくなってしまった背広を少しずつ仕立て直していくという方面でもやはりこれからの産業政策として必要ではないか、経済政策として必要ではないかというふうに私自身考えているわけです。そのあたりの大臣の御認識、そしてこの長期的な不況を、いつも使われておりますマクロ、セミマクロ、ミクロという観点からどう克服をされればいいかということをまずお尋ねをしたいと思います。
  79. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御指摘のとおり、現在の経済の状態というものが、バブル期の反動といいますか、そういうことでひとしお寒さを感じるところなのでありますけれども、バブルが何であったかという御指摘でございますけれども、よく銀座にいるカラスが糖尿病にかかっているなんいう冗談話がございましたけれども、土地市場、金融市場、あえてそういうふうに言っていいかどうかわかりませんが、設備投資市場の傷みといいますか傷つきぐあいといいますか、そういうのを見ますと、バブルの時代の経済というものがいかにむなしいものであったかというのはよく我々も実感をするわけであります。  しかし、いずれにいたしましても、現在の経済の情勢を見ますと、委員指摘のとおりバブルの後遺症もございますし、もっと長期にわたる技術革新の停滞でありますとか新商品というものが出てこない、いろいろなものの市場の成熟化とあえて言いましょうか、そういうような要素もございます。それから、戦後の経済発展を支えてきたさまざまなシステム、枠組みというのが、従来はその枠組みがあったから成長の要因であったわけですけれども、それが今となっては逆に成長を引っ張る枠組みになってきているというような意味での構造の問題というものが、例えば雇用市場、金融市場、金融のシステム、雇用のシステムといつたものが、そこに端的にあらわれていると思いますが、ある。ですから、従来型の経済循環的要因ではなくて、非常に複雑な要因が積み重なって現在の景気の状況というものが出てきているという認識を持っているわけであります。  したがいまして、これに対応するのに、逐次投入方式の、例えば即効性、即効性、こう言いますけれども、それをやっても効かないというのが、累次の景気対策が私は示しているのではないか。一昨年以降いろいろなことが言われ続けたのですが、さしたる効果がなかったというのは、まさに日本経済の構造そのものを変えなければならないという事態を示しているのではないかと考えているところであります。  そう考えておりますので、委員が先取りして御指摘をいただいたわけでありますが、私どもがいわゆる三位一体でマクロ、セミマクロそしてミクロと申し上げておりますのは、やはり経済の構造をさまざまな視点からつくり変えていくということが基本になければならないと考えているからでございまして、そのために、規制緩和もそうでありますし、内外価格差の是正もそうでありますし、また産業構造政策もそのような形で発動させなければならないと思うのでありますけれども、ただしここで大事なことは、基本のベースはマクロの内需主導型の経済成長を促していく、財政金融政策も含めてやはり正統的な政策が極めて大事だ、それを抜きにして構造改革政策をやりますとやはり摩擦が非常に大き過ぎるのではないか、そういう意味で三位一体ということを申し上げているところでございます。  いずれにいたしましても、実は私、けさほど通産省の事務方に指示をしたわけでありますけれども、この十月の鉱工業生産、これはまだ予測でございますが、見込みなんですが、どうも単月で見ると過去最大の落ち込みになるのではないかという気配が出てきております。また、本日の閣議におきまして、総務庁長官から完全失業率の報告がございました。また、労働大臣からは有効求人倍率の動向について報告がございました。いずれも雇用情勢に重大な危機が生じている気配が見られるということでございまして、労働省の方も、労働大臣の御発言によりますと、総力を挙げてこれに対応する体制をしくということでございましたけれども、私、それを受けまして通産省事務方に、これは総力戦体制を整備してこの事態に臨んでいこうということで指示を発したところでございます。
  80. 松本龍

    ○松本(龍)委員 先ほど来言われております市場の成熟化とか、今までキャッチアップシステムでやってきてフロントランナーになったというところの産業構造の大きな転換期にあるということも、私は大臣仰せのとおりだというふうに思っています。しかも、今のこの不況打開が大変難しいのは、バブルのときに大変たくさんのエコノミストがテレビに登場していましたけれども、このごろほとんどお見かけをしない。それだけ大分、専門家でもこれからの不況の打開というのは大変な大きな悩みを抱えているんだろうというふうに思っています。これからの大臣の頑張りに期待をしたいと思っています。  さて、本法でありますけれども、こういった厳しい時期にありまして、幅広い中小企業対象とした措置を緊急に講じようとすることについて、私自身、時宜にかなったものだというふうに思っております。とりわけ資本力等の制約から大企業、親企業と同様の対策を講ずることも極めて中小企業は困難な状況にありますし、また本法案は、こうした中小企業の置かれた現状にかんがみて、企業の生き残りをかけた、当該企業のいわゆる自主努力、自助努力を促しながら、その際、中小企業であるがゆえのいわゆる経済的な制約といいますか、そういった不利を是正するために金融、税制等で国が支援策を講じるものであるというふうに理解をしておりますけれども、まず、いわゆる大企業ではなくて中小企業に緊急にこういう措置を講じなければならないその背景なりねらいなりをお伺いをしたいと思います。
  81. 長田英機

    ○長田政府委員 近年の内外の状況を見てみますと、中国とかASEAN諸国等の工業化の進展だとか、あるいは情報化とか技術高度化に伴って急成長してきた商品といいますか産業部門が投資が一巡してくるとか、あるいは親子の下請関係などを見ましてもなかなか厳しい状況になってくるとか、幾つかの構造的な変化が出てきておりまして、こういう構造的な変化に直面している中小企業は極めて厳しい環境下にあるわけでございます。  したがいまして、まさに先生指摘になられましたように、こういう中小企業は、何とかして生き残りをかけて活路を開いていく。しかしながら、中小企業は大企業に比べれば非常にまだ資金力その他いろいろな面で劣っている面があるわけでございまして、そういう意味で、私どもとしましては、この中小企業の生き残りをかけた努力に対して必要な支援を送りたい、そのためにこの法案を提案さしていただいているということでございます。
  82. 松本龍

    ○松本(龍)委員 先ほど尾身先生あるいは甘利先生、的確な御指摘をされましたように、産業の空洞化ということが、私もいろいろな方々にこの法案を審議するに当たってヒアリングをしたわけでありますけれども、やはりそのことが大きな懸念として残っているわけであります。  特定中小企業が、新分野進出事業開始によって本来の活力が発揮されていくことに大いに期待しているわけですけれども、また海外進出によっても今後さらに進んでいくと思われるわけですけれども、そういう意味では、空洞化ということが先ほど来言われておりますけれども、これは、企業が空洞化をするということもありますけれども、その産業自体が空洞化をする。もう一つは、実は中小の町工場といいますか工場地帯といいますか、そういうものを一体として考えた場合に、そこでは日本の古くからの伝統といいますか、そういうものがありまして、いわゆる工場同士で分業体制があるとかネットワークがあるとかというふうに私は理解をしているわけであります。そういったところでやはりお互いに助け合って、もち合って生きている状況があるわけです。ですから、そこの優良企業一つ空洞化をしてしまうと、ほかの産業にも少なからず影響を与えてくるということも考えられると思うのですけれども、そういった懸念を払拭をしていただきたい。そういう意味で、こういった懸念に対してどのような考え方でお臨みになるのか、御所見を賜りたいと思います。
  83. 長田英機

    ○長田政府委員 今御説明申し上げましたように、構造的影響を受けている中小企業が何とか生き残りをかけていく方法、そのオプションの一つとして海外事業展開するという、生き残り策の一つという面が一つございます。  それから、次は実態面ですけれども海外事業展開する場合に国内の事業を閉鎖してしまうというようなことは、我々の調査によりますと極めて少ないわけでございます。そうしますと、海外事業展開して、国内のいろいろな企業活動と相まって中小企業が経営の安定を図っていくというような形になってくるということだと思います。そういうことによりまして日本経済の活性化が行われるということで、私どもは、出ていくというそこだけをとらえるといなくなってしまうような感じがするのでございますけれども、やはり全体として見れば経済の活性化につながっていくということで、空洞化ということにはならないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  84. 松本龍

    ○松本(龍)委員 いろいろなケースがこれからまたさまざま考えられると思いますので、そういった懸念を払拭されるように鋭意御努力を賜りますようにお願いをしたいと思っております。  さらに、第十一条関係ですけれども、「指導及び助言」というところで、「国及び都道府県は、新分野進出等又は事業開始の円滑な実施に必要な指導及び助言を行うものとする。」とありますけれども、こういった計画を作成する際、当該企業のいわゆる従業員の理解や協力を求めていくように指導や助言も行ってほしいと私は思うわけです。といいますのは、当該企業が、新分野にしろ海外進出にしろ、出ていくことはかなりリスクが伴う。こういったリスクを伴う事業を成功させていくためには、そこで働く従業員の理解や協力が必要だと思うわけですけれども、その点に関してどうお考えになっておられるか、御答弁を願いたいと思います。
  85. 長田英機

    ○長田政府委員 こういうふうに中小企業が新分野進出をする計画をつくりまして、そういうことを行おうとする場合には、やはりそこで働いている労働者の方々、こういう人たちにもよく現状を理解していただくという必要があると思うわけでございます。こういう点から、この十一条の規定に基づきまして、この新分野進出を円滑に実施するように、必要に応じまして特定中小企業者に対して、雇用されている労働者の方々の意見を聞くように指導助言をしていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 松本龍

    ○松本(龍)委員 そのことはこれからも鋭意行っていただきたいと思います。中小企業に対して、この法案を提出するに当たってはいろいろな中小企業者の生の声や意向調査をされたと思うわけです。そういった、じかに接していきながら、これからの中小企業活性化に向けて御努力を重ねてお願い申し上げたいと思っております。  大臣にお伺いをいたしますけれども、雇用不安、雇用調整ということが、今の時期大変大きな国民の不安ということを招いております。先般も大臣は、いわゆる雇用問題が一番大事なのだというふうにおっしゃいましたけれども、こういった法案による事業を円滑に実施していくためには、通産省だけではなくて、中小企業庁だけではなくて、労働省やほかの関係省庁と、いわゆる縦割り行政の枠を乗り越えて、さまざまな関係省庁との連係プレーのもとに進めていかなければならない。とりわけ雇用問題等々は密接な連携をとっていただく必要があると思うわけですけれども、この点について大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  87. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御指摘のとおりだと思います。したがいまして、私どもといたしましては、労働省を初めとする関係各省とは今後とも協力提携に努めることが重要でございまして、本法案につきましても、その成立、施行の暁には、適切な施行のため連携を密にしたいと考えているところであります。
  88. 松本龍

    ○松本(龍)委員 前向きの御答弁、ありがとうございました。頑張っていただきたいと思います。  最後になりましたけれども、今のと関連したお話ですが、雇用の問題ということについて大臣にお伺いをしたいと思います。  戦後四十数年間、みんな一生懸命我々の先輩が頑張ってきて、今の日本を築いてこられました。高度成長が続いて今日まで来たわけですけれども、まあ今までの産業でいいますと、元気のない産業が出てくるとそれにかわる新しい産業が出てきた、そういうふうにうまくマッチをしてきて今日の状況を迎えてきたと思うのですが、それが今少し違った状況になってきている。やはり制度疲労といいますか、政治の世界もそうですけれども、そういった制度疲労が経済分野でも産業分野でも起こってきているというふうに思っています。  といいますのは、有効求人倍率が今〇・七ですか、 一番高いときで、バブルの時期で一・四とか一・丑とかありましたよね。その時期から比べるとうそのような話ですけれども、三年前は人手が足りない、今はもう大学生とかというのはどしゃ降りだというふうに言われています。そういう中で有効求人倍率が〇・七になっている。しかもこれは一方で、外国人労働者は年々やはりふえてきているのですよ。私は、外国人労働者の是非を今ここで議論するという気持ちはありません。そのことは別として、外国人労働者がそうやっそふえてきているというのは、どこかやはり雇用のミスマッチがあるのじゃないか。いわゆる三K職場とか三K労働とか言いますけれども、この間韓国の国会議員と会いましたら、韓国では三Dと言うそうで、ダーティー、ディフィカルト、デンジャラスという言葉が韓国にもあるそうで、同じような問題をやはり抱えている。そういったときに、やはり若い人たちに、きついけれども、こういう産業をバックアップしていただきたい。  先ほど甘利先生も言われましたけれども中小企業にはたくさんの人材が、優秀な技能を持っている人たちがいる。そして、中小企業がなければ、その二、三人の人たちがいなければ、大企業さえも成り立っていかないすばらしい技術を持った人たちもたくさんいるわけですね。例えばカメラにしましても、性能のかぎを握る真円度の高い筒をつくることができる技能士がいるわけですけれども、これも確実に減っている。例えばCDなんかでも、きのう優秀な若い官僚の方と話したのですけれども、ダイヤモンドで金型を削るのですが、そのダイヤモンドを研磨する職人さんというのは全国で二、三人しかいない。これがなければ実はもうCDそのものが高性能を保てないという状況があるわけで、しかしながら、やはりそういう人たちはなかなか、長い間厳しい修行を積んできたり、さまざまな下積みをしてきてやっと今ここにあるわけで、そういう人たちに、そういう職種に、そういう産業に若い人たちが目を向けるようなインセンティブを通産省は持っていただきたいと思うわけです。といいますのは、やはり通産省というのは今までは産業政策ということを重点にとらえてやってこられました。まさに業を何とか立ち直らせたい、成長させたいということでやってこられましたけれども、これからの時代は、そういったいわゆる雇用の面から産業政策を見直していくということが必要ではないかなというふうに思っています。  さっき人材確保ということも言われましたけれども、確保することが問題ではなくて、確保した人材がどれだけ夢が持て、誇りが持て、そういった中で汗の分だけ、苦労の分だけ、給与の面であるとか身分の面であるとか年金の面であるとか、そういったものをしっかりバックアップをしていく体制が必要ではないかというふうに私は常々思っております。縦割りの弊害を克服して、やはりさまざまな省との共通認識としてこれからの雇用の問題というものを真剣に考えていただきたいと思うのですけれども、大臣の御決意をお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  89. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、本日の閣議におきまして労働大臣が発表したところによりますと、有効求人倍率は〇・七〇からまた一ポイント落ちまして〇・六九になったということでございました。まさに委員の御指摘のとおりでございます。  問題は、中小企業に人材確保が困難だということでございまして、やはり基本的には、中小企業における労働者の待遇の改善を図ることが大事だろうと思うわけであります。中小企業庁といたしましては、労働省とともに中小企業労働力確保法を柱とする制度をつくりまして、具体的には、この法律に基づきまして、労働時間の短縮、職場環境の改善、福利厚生の充実などの労働者の待遇改善事業を行う組合並びに構成中小企業に対しまして、予算、金融、税制上の支援措置を講じているほか、累次の経済対策におきましても、中小企業の職場環境改善に資するような設備投資に対する支援措置を講じてきているところであります。  また、委員が御指摘になりましたように、優秀な労働者が来るためにはイメージアップというのも大事でございまして、中小企業のイメージアップ事業も実施しているところでございます。また優秀な従業員に対する顕彰制度でありますとか、労働省におきましても技能検定制度といったものも運営されておりまして、今後ともこうした現在の制度を活用することによりまして、優秀な人材が中小企業に確保されるというように努力をしてまいりたいと考えております。
  90. 松本龍

    ○松本(龍)委員 ありがとうございました。
  91. 中井洽

    中井委員長 次に、小此木八郎君。
  92. 小此木八郎

    ○小此木委員 小此木でございます。  前回は中小企業問題等についての質問をさせていただきました。きょうも中小企業問題でありますけれども、今回の特定中小企業者の新分野進出等による経済構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案について、この時期の対策として十分なものであるか、中小企業海外展開への支援が果たして適正に運用されるのかどうかを中心といたしまして質問をさせていただきます。通産御当局には、わかりやすく具体例を出していただきまして、お答えをいただきたいと思っております。  まず最初に、通産大臣にお尋ねをいたします。  私は、昭和六十一年の円高不況と対比して、今回の不況の方がはるかにその度合いが厳しいと思っております。政府としてどのように、大臣としてどのような御認識で、またきょうの法案内容も含めてお聞かせいただきたいと思います。
  93. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 今回の景気の低迷は、過去の不況、とりわけいわゆる過去の円高不況と比べておりますと際立った特徴がございます。まず、極めて長期にわたっているということであります。それから、民間需要の落ち込み、またそれを反映した生産減少企業収益の落ち込み、いずれも極めて深刻でございます。その結果、経済成長率の低下幅も大きいということになるわけでございます。  従来の不況というのは、日本も戦後幾たびか景気後退局面がありましたけれども、いずれも特徴的なことは、外からのショックというのが極めて特徴なんですけれども、今回の場合は、いわゆる経済学で言う循環的要因に加えまして、これももう各委員からいろいろ御指摘があったわけでありますが、バブル崩壊とかあるいは我が国経済システムが中長期的な要因で行き詰まっている、制度疲労という御指摘も先ほどありましたけれども、こういった我が国経済に内在する要因が複合的に作用して生じたものであるということでございまして、その意味でまさに新しいアプローチが必要な不況ではないかと考えているところであります。
  94. 小此木八郎

    ○小此木委員 また、前回の円高不況のときには、今回の法案と性格がよく似ております事業転換法といわゆる企業城下町法が制定をされましたが、事業転換法の方は期待されたほどの利用がなかった、余り効果がなかったと聞いております。その理由と、またその反省が今回のこの法案にどのように盛り込まれておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  95. 村田成二

    村田(成)政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘事業転換法でございますが、六十一年の二月に制定されております。プラザ合意後の急激な円高によりましていろいろ事業活動に困難を来しておりました主として輸出産地等におきます中小企業者事業転換支援するというのが趣旨でございました。  制定以来七年間この法律が施行されたわけでございますが、事業者事業転換計画は三百六十一件、それから組合単位で実施いたします円滑化計画が五十八件承認されております。特に六十一年、六十二年の不景気下におきましては、こうした承認が集中的に出てきておりまして、厳しい環境にございました業種の経営環境の改善あるいは新たな業種への転換という意味でこの二カ年間について特に大きく寄与したものではないか、こう考えております。ただ、六十三年以降は、御存じのように、景気が急速に回復したということもございまして、承認件数は大幅に減っているわけでございます。  基本的には、このようにある程度の効果を生じたものと私ども考えておりますが、ただ問題点として挙げられるといたしますと、事業転換法におきましては、事業の転換自体を進める、こういう観点がございましたものですから、事業の廃止縮小要件が非常に厳しかったという点が指摘できようかと思います。  今回の法案ではこうした点も勘案いたしまして、新分野進出内容は非常に幅広いものとするという工夫を凝らしておりますし、それから対象中小企業要件につきましても、極力今の景気の実態、経済の実態に即して考えたい、かように考えておる次第でございます。
  96. 小此木八郎

    ○小此木委員 ありがとうございました。  そして一方の企業城下町法の方なんですが、これはかなりの成果が上がったと言われておりまして、今回の不況を考えたときに、この種の立法措置は必要でないのかと私は考えますが、御見解を伺いたいと思います。
  97. 村田成二

    村田(成)政府委員 御指摘企業城下町法、いわゆる特定地域法でございますけれども先生指摘のように、事業転換法と相まちまして、円高不況下におきます中小企業、特に特定地域経済状況の回復に相当程度役に立ったものと私ども考えております。  このような経験を踏まえまして、私どもといたしましては、地域性の強い中小企業に対しては、昨年、特定中小企業集積の活性化に関する臨時措置法、いわゆる集積活性化法を御提案申し上げ、成立させていただきました。これによりまして、産地、企業城下町など中小企業一定の場所に集積している地域につきまして、全体として活性化するための対策が講じられているところでございます。  今回の法案は、こうした集積活性化法と相携えまして、地域を超えて広がるいろいろな構造的課題を抱えております個々の中小企業者に対しまして、経済構造変化に円滑に対応するための支援を行うという観点から御提案申し上げているものでございます。いずれにいたしましても、地域法たる集積活性化法と相まちまして、所要の効果が発揮されるということを期待している次第でございます。
  98. 小此木八郎

    ○小此木委員 今回のこの法案なんですが、不況対策を目的としたものではないというふうに言われておりまして、中長期的な産業構造の調整を目的としている。親企業下請企業切り捨てに利用されるおそれがあるのではないかと思いますけれども、なぜこのようなときに提出しなければならなかったのか。また当初は、次期の通常国会に提出をされると聞いておりました。なぜこの国会になって提出をされたのか、お尋ねいたします。
  99. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほど来大臣も申し上げておるところでございますけれども、現在の経済状況と申しますのは、先生も先刻御承知のとおり、単に景気循環的な要因のみではなく、やはり構造的な問題と両方相まって難しい状況がつくり出されているというふうに私ども認識している次第でございます。  この法案自体は、いろいろと累次にわたる総合経済対策を政府としても講じてきたわけでございますけれども、そういった経営安定対策を主眼といたします当面のいろいろ緊急経済対策、これと相まちまして、片方の要因でございます構造対策、これにつきましての中小企業努力支援するという、いわば右手、左手の両方の関係にあるものでございます。  先生御承知のように、この夏といいますか、初夏以来円高が急速に進行いたしました。また、冷夏ということもございまして経済の回復起動が予想外におくれ、かつまたむしろ深刻になってきているわけでございます。そういった中で、実は先生指摘のとおり、私ども、この法案通常国会に提出する予定にしていたわけでございますけれども、今申し上げましたような景気の悪化、経済環境の悪化というのが予想以上に速かったということもございまして、中小企業の経営環境は非常に予想以上に厳しくなっている。そこにいち早く、なるべく早く対応したい、こういうことで急速臨時国会に提案させていただいたわけでございます。  ただ、こういった構造調整と申しましても、御指摘のような親企業下請企業切り捨てということが主眼ではございませんで、やはり親企業自体も非常に苦しいわけでございますけれども下請中小企業は親企業に依存することなく、できるだけ自主的、自律的な対応を行うことによりまして自分自身の活路を開拓していくということが今こそ必要なのではないかというふうに考えております。したがいまして、経営環境は厳しいだけに、こうした自律的、自主的な対応をより強力に支援する必要があるということでこの法案を考えておる次第でございます。
  100. 小此木八郎

    ○小此木委員 中小企業をめぐる現下の厳しい状況ということを踏まえての法案の早期提出ということでありましたが、中小企業は、これまでの不況とは違うより大きな困難に直面をしているというふうに感じておられるのは前回もお話を申し上げたところであります。本法案の第一条の「目的」や第二条第三項の「定義」のところで、こうした根本的な原因が「海外地域における工業化の進展等による競争条件変化」等と要約をされておりますが、これの具体的な内容をお聞かせいただきたいと思います。
  101. 村田成二

    村田(成)政府委員 まず、本法案の一条の「目的」のところに書いてございます「近年における国際分業の進展、需要構成の変化その他の」というところでございますが、具体的内容といたしましては、中国、ASEAN諸国等の工業化が非常に急速に進展いたしております。そうした進展を背景といたしまして、競争条件が国内企業と先方の企業とで著しく変化してきております。そのために、もちろん海外市場におきます力関係も変わってきておりますし、さらに我が国からの生産のシフトという状況も生じているわけでございます。そういったことですとか、あるいは、情報化あるいは技術高度化に伴いまして国内の投資が非常に急成長してまいりました。しかし、そういった急成長してまいりました設備投資が、これら情報化機器あるいは技術高度化した機器の普及に伴いまして投資が一巡しているというような状況もございます。そういった経済構造的変化を第一条のところでは指しているわけでございます。  それから、御指摘の二条第三項の「情報化及び技術高度化に伴う投資の一巡ことは何かという点でございますが、例えばオンラインシステムあるいは産業用ロボット等、今申し上げたような急速に伸びてまいりましたところが投資一巡ということを指しております。それからまた、「技術革新による生産工程等変化」といいますのは、例えばNC工作機械等の普及、さらには精度の飛躍的向上によりまして生産工程内製化というのが急速に進んでおります。こうしたことを指しておるつもりでございます。
  102. 小此木八郎

    ○小此木委員 続きまして、特定中小企業者要件についてお伺いいたします。  本法律の助成の対象となる特定中小企業者要件といたしまして、生産額または取引額相当程度減少していること、下請比率一定以上であること、輸出比率一定以上であること、このいずれかに該当することが求められているということであります。海外を含めた新展開を求めるものであれば、取引高の相当程度減少などを経験する前にも努力させることが望ましいと思いますし、現実であると思いますが、なぜ減少要件としなければならないのか。現在苦しんでいる中小企業でありますから、高いハードルといったものはこの時点では取り外すべきではないのかと考えますが、いかがでしょうか。
  103. 村田成二

    村田(成)政府委員 確かに、すべての中小企業の皆様をいろいろな形で御支援申し上げれればいいのでございますけれども、やはりある程度の特段の支援措置を講ずるということになりますと、その支援措置趣旨、目的に従いましてある程度範囲の限定というものをさせていただかざるを得ないというのが実態でございます。  本件の場合には、やはり経済構造的変化影響を受けている、あるいは受けるおそれが非常に強いということが本法案趣旨、目的に合致するというふうに考えておりまして、そういった影響を受けている、あるいは受けるおそれがあるということをどういう指標でとらえるかということになりますと、やはり生産額あるいは取引額相当程度減少しているというところが一つの大きなよりどころになるわけでございます。  ただ、この生産額取引額だけではなくて、先生指摘のように、輸出比率あるいは下請比率ということでその影響を受けやすいところも定性的に要件として入れることによりまして、できるだけ必要性の高い中小企業方々を幅広く対象とできるような工夫を凝らしているつもりでございます。
  104. 小此木八郎

    ○小此木委員 下請比率輸出比率についてはですが、まず下請比率についてでありますが、下請取引の定義は必ずしも明確でなく、数字的基準としては不適当ではないかと思われます。一方、輸出比率については、間接輸出というものは含むのか。もし含むのであれば、間接分のデータを親企業から求めるのは難しいのではないか。この点について見解を。
  105. 村田成二

    村田(成)政府委員 まず下請比率でございますけれども一般的な定義といたしましては、その事業者生産または取引のうち委託を受けて行っている製造または修理、その比率ということになるわけでございます。ただ、こういった概念はこれまでも、例えば都道府県が行っております体質強化資金貸し付けといったようなシステムでも同様の基準を採用しておりまして、今までのところ、私どもとしましては、この基準で適切に運用されている、また支障はないというふうに判断いたしております。  それから、輸出比率につきましては、間接輸出をそもそも含むものではないと私ども考えております。間接輸出といいますと、輸出される製品の一部を下請製造している、こういうことになるわけでございまして、即すなわち下請取引になるケースがほとんど大部分だと思います。したがいまして、むしろ間接輸出面につきましては、下請比率の方でカバーして特定中小企業者に該当するかどうかという判断をしていくことが適切ではないか、かように考えている次第でございます。
  106. 小此木八郎

    ○小此木委員 それでは次に、具体的な支援対象となる中小企業者の行為について質問をいたしますが、本法案の大きな特徴の一つは、海外展開支援であると考えております。海外展開の実情と、これまでの海外進出助成策の利用状況についてお聞かせください。
  107. 長田英機

    ○長田政府委員 我が国中小企業海外投資件数を見てみますと、一九八五年のプラザ合意以降、ここで急速な円高になったわけですが、それとともに非常にふえてきております。一九八八年には千六百二十五件ということで、一九八五年当時の三百十八件に比べますと五倍にもなっております。その後、単年度ベースではやや落ちつきを見せてきておりますけれども、例えば昨年一年間をとってみますと、五百七十四件ということで、なお比較的高水準であると思われます。また、現下の中小企業が直面している状況から考えますと、先ほど来議論がありますように、生き残りをかけた海外への事業展開ということがこれからふえていくのではないかと思います。  それから次に、助成面のことでございますが、従来、この中小企業海外展開につきましては、政府中小企業金融機関から低利の貸し付けを行いましたり、あるいは中小企業事業団でアドバイスをしたり情報提供を行ったりしております。利用状況ということでございますので数を申し上げますと、この政府中小企業金融機関による低利融資におきましては、六十二年度にこの制度が創設されましたが、本年九月までに総計約六百件、総額四百六十億円の貸付実績になっております。また、中小企業事業団によるアドバイス制度、アドバイス事業というのがございまして、これは事業団が頼んだ専門家の方が海外投資についてアドバイスをするわけなのでございますが、平成四年度の利用実績を見ますと、三百四十七件というようなことになっております。
  108. 小此木八郎

    ○小此木委員 法文上には、第三条にもあるとおり、単に「海外地域における事業の開始若しくは拡大」となっておりますが、この「海外地域」には、地域限定は付されていないと考えてよろしいのでありましょうか。
  109. 村田成二

    村田(成)政府委員 この法案自体においては限定は付されておりません。ただ、外為法等の他法令におきまして直接投資が禁止されている地域というのがございます。こういった地域に対して海外展開をするというような計画申請が出てまいりました場合には、当然のことながら、承認基準の中にございますように、「新分野進出等を円滑かつ確実に遂行するために適切」であるかどうかという観点から不適切と認められますものですから、そういう場合には承認は行わない、こういうことになろうかと思います。
  110. 小此木八郎

    ○小此木委員 それというのは、まだ自国の産業が十分に発展していないというようなことなんでしょうか、その国が。そこのところをもうちょっと詳しく。
  111. 村田成二

    村田(成)政府委員 ただいま申し上げました例は、今先生のお尋ねのような理由ではなくて、外為法等の理由でございますから、安全保障上の理由でございます。例えば外国為替及び外国貿易管理法、外為法でございますけれども、これの上で直接投資が現在禁止されている国というのがございますが、これは安全保障上の観点から、イラク、セルビア、モンテネグロというようなところが禁止されております。こういう地域を指して申し上げております。
  112. 小此木八郎

    ○小此木委員 それで、今私が申し上げました、いまだ自国の産業が十分に発展していない国々にすぐれた技術等を持った我が国の中小企業がそこに進出をしていった場合に、これらの諸国の産業企業発展を阻害するおそれはないかどうか、そうした点ほどのような認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。
  113. 長田英機

    ○長田政府委員 先生御案内のとおり、我が国では中小企業が非常に大きな役割を果たしておりまして、それがまた我が国産業発展を大いにサポートしてきているという実態にあるわけでございますが、今お話しのASEAN諸国などにおきましても、我が国からの投資の拡大、そしてその国における中小企業のサポーティングインダストリーとしての発展ということを非常に期待しているわけなんでございます。そういうような実情から考えまして、我が国の中小企業海外展開は、現地の中小企業との取引を通じた技術移転というようなことも通じまして現地産業の育成発展のためにもなっていく、またそれが発展途上国のニーズにも適合している、こういうふうに考えております。
  114. 小此木八郎

    ○小此木委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  続いて、もう一つ支援対象となる新分野進出について質問いたします。  第三条第一項に「新たな事業分野への進出」とありますが、これは具体的にはどういうことでありましょうか。
  115. 村田成二

    村田(成)政府委員 この法律案は、先ほど来御紹介されておりますように、経済の多様かつ構造的な変化影響を受けております工業等の多数の中小企業者がそうした変化への適応を円滑に行えるよう御自身の企業努力政府としても支援する、こういうのがその趣旨でございまして、こうした趣旨にのっとりまして、できるだけ広くこういった努力をしている中小企業の行為をとらえたい、かように考えております。  具体的に申し上げますと、そういった観点から、新分野進出といいますのは、例えば原材料あるいは生産工程というものが何らかの形で従来と異なっておる、さらには品質の面、機能性能等の面で、こうした、今申し上げました生産工程原材料変化とともに、そういった面も変化しているというような形のものをとらえたい、こういうふうに考えております。
  116. 小此木八郎

    ○小此木委員 これの新しさという部分で見きわめるのは大変に困難であると思うのですけれども、新しさというのは当人にとって新しいのであれば可と考えてよいのか、また新しさの差異の程度を客観的に果たしてこれは決められるのであろうか、決められないとすれば担当者の主観によって決められるおそれが大きいのではないのか、この点どうお考えでしょうか。
  117. 村田成二

    村田(成)政府委員 この法案におきまして、新たな分野という新たな、新しいという点は、個々の事業者が現在行っている事業と異なる事業、何らかの意味で異なる事業を行うという概念でございます。承認に当たりまして、御指摘のように、これはやはりある程度具体的な基準になっている必要があるわけでございますけれども、少しがたい言葉になりますが、私ども基準として考えておりますのは二つございます。  一つは、特定業種等に属します事業の実施であって、新たな分野事業は、現在行っております。その企業事業日本産業分類の四けた分類を超えて異なる、これが一つ分野範疇でございます。それから、第二の範疇は、製品が、従来の製品に比べまして原材料または生産、加工技術が異なり、かつ販路機能性のいずれかを異にするものという場合を第二番目の範疇として考えております。  いずれにしましても、御指摘のように、客観的にかつできるだけ具体的にこれが区別されることが大事でございます。適切な判断が行われますよう、私どもといたしましても、都道府県に対しまして通達によって基準を明確化したい、さらにまた、都道府県において判断が困難な場合には、私どもに対して照会をするようあわせて指導していきたい、かように考えております。
  118. 小此木八郎

    ○小此木委員 その新しさという、部分で、まだはっきりとしたものがわからないのですけれども、ちょっと具体例を出して私から言ってみたいと思います。  例えば製造業の場合、野球のボールを製造していた会社が、今人気でありますJリーグなどのサッカーボールに変更したいでありますとか、ゴルフクラブのヘッドをスチールから軽量のカーボンですとか、そういうものに変えた場合にはどうなのでしょうか。この辺が一番中小企業が知りたいところで、また、末端の中小企業方々にはちょっとわかりにくい部分でもあると思いますので、もう一度詳しくお願いいたします。
  119. 村田成二

    村田(成)政府委員 先生の今御紹介いただきましたケースでございますけれども、具体的にケース、必ずしもつまびらかではございませんけれども、今御指摘になりましたようなことでありますれば、素材の面あるいは生産、加工技術の面、さらに用途、性能といった面をずっと見ていきますと、明らかに従来と異なるものであると考えられます。したがいまして、御指摘のケースは、基本的に新分野進出に該当するというふうに私どもは判断しております。  それから、抽象的な話で申しわけなかったのですが、少し具体例を御紹介申し上げますと、同じ業種でいろいろな新しい工夫をするというような例といたしましては、例えばねじ製造業のケースでございますが、従来は一般ボルト等のねじを製造、販売しておった、こういう企業が、ねじに化学処理等の表面処理、表面加工を行いまして、非常に高付加価値のしっかりしたねじをつくれるようになった、こういうことで、従来の販路と違った高度な産業機械用の特殊需要に対応する、こういうケースもあるわけでございます。
  120. 小此木八郎

    ○小此木委員 次に、本法案による中小企業の利用件数はどの程度見込んでいらっしゃるのか、また、その予算措置をどう手当てされるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  121. 村田成二

    村田(成)政府委員 具体的にどの程度かという御質問にはなかなか端的にお答えしにくいのですけれども、本年の九月に、実は私ども九百社ばかりのアンケート調査を行いました。そのアンケート調査結果によりますと、大体二五%、四分の一くらいの中小企業者が何らかの形の新分野進出を考えている、それから五%の中小企業者海外進出海外展開を考えている、こういう非常にラフなアンケート調査結果でございますが、得られております。  そういった中で、全体の製造事業者、その他八十万事業所を超えるような母体があるわけでございますが、その方々すべてがこういった、例えば八十万事業所掛けることの四分の一の方々、すべてこういう努力をされるわけではないと思いますけれども相当数の利用が見込まれるのではないか、かように考えております。  具体的な支援措置として、それでは利用件数、どれほど見込んでどういうふうな措置を講じようとしているのかというところはなかなか難しい問題がございますけれども、いずれにしましても、金融、税制、予算上のきめ細かい支援措置はできる限り講じていこうと思っておりまして、緊急な対応が必要なものにつきましては、このたびの補正予算案に盛り込むべく現在作業を続けているところでございます。  それから、将来において、仮にいろいろな要請が出てまいりまして支援措置が足りなくなるというような事態においては、そのときにおいて追加的にさらに十分な手当てを講じてまいりたい、かように思います。
  122. 小此木八郎

    ○小此木委員 この法案で、個々の中小企業者が計画の承認申請をする場合に、申請書の作成に当たる事務能力が十分であるかどうかが心配をされると思います。手続の煩雑さから申請が敬遠されるという事態を招かないようにどのような手だてを用意されておりますか、お聞かせください。
  123. 村田成二

    村田(成)政府委員 計画承認申請の具体的な手続につきましては、現在検討を始めたばかりではございますけれども、いずれにしましても、ややもすればこういった法律承認を受けるに必要な書類というのは非常に膨大なものになりがちになる、加えまして、中小企業の現実の能力を考えますと、なかなかコスト的にもあるいは人員的にも対応が難しい、こういった問題がございます。そういった観点から、煩雑さというものをできるだけ軽減したいというふうに考えておるところでございます。  そういった観点で、例えばこの法律案でも中小企業者が都道府県で申請を行えるように、中央省庁ということではなくて、あるいは各地方支分部局、通産局みたいなところではなくて、地元の都道府県で申請が行えるようなシステムにしておりますし、それからまた、場合によりましては市町村長等にまで委任できるような形で、いろいろな意味での事務負担の軽減を工夫しておるところでございます。  いずれ促しましても、できる限り利用しやすいものとなるように鋭意検討してまいりたい、かように存じます。
  124. 小此木八郎

    ○小此木委員 申請が承認された新分野進出計画及び事業開始計画のすべてが成功するとは思いませんけれども、もし失敗した場合、このリスクヘッジの担保はあるのでありましょうか。
  125. 村田成二

    村田(成)政府委員 この法案に基づきますいろいろな支援措置を含めまして、そもそも中小企業対策におきます基本的な考え方と申しますのは、中小企業者の自分の努力、自助努力、これを助長するというのがあくまでも基本でございます。したがいまして、本法律案に基づきまして、いろいろ中小企業の皆さんが新分野進出等事業を行うに際しましても、基本的には、中小企業者の自己責任とそれから自分のリスクというものが基本にあるべき話だろうと思っております。  ただ、そうは申しましても、情報力、資金力、非常に弱い中小企業努力にも限界がございます。そういった意味で、実際に新分野進出等を始めるないしはそれを実行していくプロセスにおきましては、この自律性あるいは自己責任というものをベースにしながらも、政府としても最大限の支援措置を講じていきたい、こういうことでございまして、信用保険法の特例あるいは税制上の優遇措置等もそういった考え方で講じてまいる所存でございます。
  126. 小此木八郎

    ○小此木委員 次に、この計画の承認についてでありますが、お尋ねをいたしたいと思います。  この承認は都道府県知事が行い、あるいは先ほどもおっしゃいましたけれども、さらにそれを市町村長または特別区の長に委任することができることとなっております。こういったことは利便性を考えると理解できますが、承認を決定する判断基準が余りにも抽象的で運用がばらばらにはならないか、そういったおそれがないか。何か基準を示すのか、示すのならどんなものになるのでしょうか、お聞かせください。
  127. 村田成二

    村田(成)政府委員 確かに一面では、知事に委任し、知事が市町村長に委任するというのは、利便性の面では非常に効果のあることでありますけれども、ややもすれば運用がばらばらになりがちになる危険性、これもまた御指摘のとおりでございます。ただ、私どもといたしましては、この利便性の点についてはやはり維持すべきだろうと考えておりますものですから、本法案の運用に当たりましてこういったばらつきが出ないように、各都道府県あるいは関係市町村と共通認識を形成すべくいろいろな担当官の講習会あるいは手引書あるいは通達、こういったものの整備をできる限り図ってまいりたい、かように思っております。  具体的な承認基準につきましては、まだ法案審議中でもあり、また私ども検討中でもございますけれども解釈、運用方針について極力具体的に例を挙げつつ明記してまいりたい、かように思っております。
  128. 小此木八郎

    ○小此木委員 こうした点が大変にわかりにくいといいますか、地域によってそういった判断基準が変わってしまうということになってきますと、やはり相当複雑にもなってくると思いますので、十分に考慮をされてお願いをしたいと思います。  適正判断というものがその実務担当者にできるかどうか大変に心配なのでありますけれども、特に海外の場合に、実務担当者がその事情に精通していない場合もあると思います。この判断に困惑する場合は大変なことになってしまうのではないか、こうした問題を解決しないと事務処理がおくれ、事業者に迷惑がかかることになって適正な運用が全国的になされることは難しくなると私は考えておりますけれども、こういった対策はどうでしょうか。
  129. 村田成二

    村田(成)政府委員 仮に本法案が成立いたしました場合に、実際に運用に当たりますのは都道府県あるいは市町村になるわけでございますけれども、こうした実際の事務に当たります人たちの間の認識あるいは勉強というものが非常に大事だと思っております。したがいまして、こういった実際に事務処理に当たります担当職員を対象といたしまして、私どもとしましては、法律解釈ですとか運用ですとか、あるいはいろいろなバックグラウンドとなる情勢判断、そういった点を含めましていろいろな形での講習会、説明会、勉強会、研修会というものを重ねてまいりたい、かように思っております。  それから、御指摘のように、確かに海外進出につきましては非常に高度な知識、判断を要する問題だと思っております。最近、地方公共団体の職員の皆さんも大分海外にいろいろな形で、ジェトロ等を通じて赴任したりあるいは海外に視察に出かけたりということで、大分いろいろな実情について、日本津々浦々まで実態についての認識が蓄積されてきているとは思います。思いますが、やはり何と申しましても、企業進出とか企業展開という話になりますと非常に高度な判断を求められることになるわけでございまして、そういった点につきましては、中小企業事業団あるいはジェトロといったところ、それからまた商社、機械メーカー等で現実にいろいろな形での海外事業海外展開のお仕事をされてきた方々、こういった方々の御支援もいただきながら、いろいろな形での研修、勉強あるいは事例紹介、こういったものをやっていきたい。こういうことを通じまして全体的な御心配の点の懸念が払拭されるように努力してまいりたい、かように存じております。
  130. 小此木八郎

    ○小此木委員 それから、この法案は七年間の時限法となっておりますが、経済構造的変化への対応を念頭に置いた法律としてこの期間が適当なものであるのかどうか、お聞かせください。
  131. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほど冒頭にお話ございました事業転換法、これもやはり似たような形での構造転換あるいは構造改革を一つのねらいとした法律でございましたけれども、これもやはり七年間の時限立法でございました。何年間がいいかというのはなかなか決め手がない難しい問題ではございますけれども、私どもとしましては、一応中長期的に見て相当の期間を構造調整には要するなということもございますし、それから今申し上げました事業転換法の例もございますので、そういった点を総合勘案いたしまして七年の時限立法ということで御提案させていただいている次第でございます。
  132. 小此木八郎

    ○小此木委員 それでは、もうこの七年がたってしまった場合に、また新しい措置をするということでありましょうか。
  133. 村田成二

    村田(成)政府委員 実は、事業転換法も六十一年二月に制定されまして本年二月で失効したわけでございます。本法案につきましても、やはり七年間やってみまして、当然のことながらいろいろ経済情勢も変わってくると思いますし、そういった時点でまた全体的な観点からどういうふうな措置が必要なのか、適切なのかというあたりを判断しながら対応策を新たに検討してまいりたい、かように存じます。
  134. 小此木八郎

    ○小此木委員 いずれにいたしましても、不況にあえぐ中小企業者の立場に立ちましてこの法案が運用されるには、現場でのきめ細かい対応と判断というものが最も重要であると考えております。本当に複雑でなく簡単にこのような法案が皆さんに使われれば、運用されれば大変すばらしいことであると私は思っております。  時間が大変余りましたが、最後に、大臣、このような法案を通過させるということの意気込みといいますか、皆さんに期待をさせるために、一言お願いをしたいと思います。
  135. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員が多方面からこの法案のいろいろな内包する問題について浮かび上がらせていただいたわけでありますが、基本は、委員が再三御指摘になっておりますように、中小企業をめぐるさまざまな状況に対してこの法案に基づく政策が極めて弾力性を失わずに運用されることが大事だという御趣旨ではないかと思うのでありますけれども委員の御質問に答えて事務方が申し上げてまいりましたように、都道府県知事に承認をしてもらう、また場合によっては市町村長にも事務を委任するケースもあるという弾力的な仕組みになっているわけでございます。  さはさりながら、これは地方拠点都市法なんかの例を見ますと、県知事に承認を委任したのですけれども、私どもの原体験によりますと、じゃ、これがいい承認作業になるかというと必ずしもそうじゃないんですね。それこそとんでもないやり方で承認作業をしたりするケースが間々あるわけでございます。私どもは、こういうことをやったからすべてうまくいくとは決して思っておりません。まして日本経済にとって一番大事な中小企業の生き死にの問題をかけた政策路線ということになるわけでありますので、もとより手続きその他について周到な注意を払いますけれども、七年間の時の間に、やはりこの法律の運用の実態に耳を澄ませまして、運用全体を時として考え直していくという基本姿勢が必要である、委員は再三その点を御指摘なさっておられましたけれども、私ども同感でございまして、そういう方向を基本方針としてこの法律の運用に当たっていきたいと考えます。
  136. 小此木八郎

    ○小此木委員 時間が大変に余ってしまいましたけれども、この法案がいろいろな時点ですばらしく活用され、この法案がまた一刻も早く通過することを願いまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  137. 中井洽

    中井委員長 次に、逢沢一郎君。
  138. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 大分議論も進みまして、相当問題点もえぐり出されたわけでありますけれども、私は私の立場から、議題になっております通称リストラ法案につきまして質問をさせていただきたいというふうに思います。  先般、大臣所信に対し質問もさせていただいたわけでありますが、やはり日本の景気は依然として厳しいな、引き続きそういう強い印象を私も持っているわけであります。新聞を見ておりましても、どの企業も、製造業と言った方がいいかもしれませんが、減産体制に入っている、減収減益である、設備投資をふやすような状況ではない、そういうニュースばかりが目につくわけであります。各企業はぎりぎりの努力をして経費の節減に努めている、配置転換その他で何とか活路を見出そう、そういう努力も行われております。しかし、今雇っている従業員をそのまま抱えて大丈夫かな、雇用調整というところまで踏み切らざるを得ないかな、何かそういう足音のようなものが私どものところにもひたひたと聞こえてくると申しますか、気配のようなものを感じる、それは恐らく大臣も同感であられると思いますし、また、きょうお見えの通産省、また中小企業庁の幹部の皆さんもそういう認識を持っておられるのではなかろうかというふうに思います。  中小企業の経営者の皆様にお伺いいたしますと、とにかく資金繰り、とにかく資金繰りなのだ、こういう声をほとんどすべての方がおっしゃるわけでありますし、また、地域業種によって違うわけでありますけれども、確かに、ここのところの円ドルレートが、今現在どのくらいになっているかあれでありますが、百七円、八円台ということでちょっと一服感もあるようではあります。しかし、依然としてその円高による影響というのは非常に深刻であるという話もたくさん出ているわけであります。  そういう状況の中で、中小企業の倒産の件数がだんだんふえてきたということについては、これは注視をしておかなくてはならぬなというふうに思います。平成四年は、一万四千件近くの資本金一億円未満の中小企業の倒産があった、これは平成二年に比べますと、実に倍以上の件数になっておる、こういう数字も報告がされているわけであります。既に同僚の委員各位からも話があったわけでありますが、こういった経済環境の中にあって、中小企業は今どういう実態にあるのか、中小企業を取り囲む環境、業況はどうなっているのかということについてどんな認識を持っておられるのか、改めて大臣にお伺いを申し上げます。
  139. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業をめぐる環境が厳しい、これは委員の御質問の中に既に明示されているように思いますが、私どもも全く同感でございまして、生産、出荷、それから設備投資も大幅に落ち込む、輸出も減少する、こういう状況でございまして、さまざまな景況判断の調査等を見ましても、いずれも中小企業者についての景況判断は悪化傾向を示しているわけであります。以上考えますと、中小企業の景況は、率直に言って極めて厳しい状況にあるものと認識いたしております。  どういうところにあるのかというと、私は、中小企業状況というのはすべての業種に及んでいるような感じがいたしております。けさの閣議でも、労働大臣が、いわゆる有効求人倍率が非常に低下しているということを御指摘になりました。私も、この十月の鉱工業生産の予測がどうも過去類例を見ないくらい落ち込みそうだという報告も受けておりまして、早速省を挙げて事態の把握、対応策について臨戦態勢をとるように指示をしたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、大変厳しい状況だというふうに判断をいたしております。
  140. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 言うまでもないことでありますけれども中小企業は大企業あるいは中堅企業を支える大変重要な役割を果たしているわけでありますし、また、中小企業の持つ活力、それが日本経済あるいは日本社会の活力そのものであるというふうに言っても過言ではなかろうかという認識を私も持っているわけであります。全事業所数に占める中小企業範疇事業者の割合も九九%、従業員数にいたしましても八割に近い方々がいわゆる中小企業で働いておられる。そういうことから考えてみましても、この中小企業が将来に向かってどうなるのかということは、すなわち日本経済そのものと言っても過言ではなかろうかというふうに私は思います。  そこで、実は今日午前中に同僚の甘利委員の方からもお話があったことと多少重複するわけでありますが、その中小企業がどういう状況にあるか、今大臣もみずから認識をお述べいただいたわけでありますけれども、これから先行きを展望するときに、一体中小企業の未来、将来というのは本当に明るいものなのかどうか、あるいはむしろ困難と苦渋に満ちた道ということになるのか、そのあたりは非常に判断が難しいなというふうに私も思うわけであります。  特に気がかりなのは、先ほど来お話が出ておったわけでありますが、いわゆる新規開業、新しく工場ができる、新しい商売を始める、そういう方々の割合が減ってきている、そのことはやはり注視をしておかなくてはならぬなというふうに思います。また、昭和四十年代から五十年代にかけて、中小企業も頑張って、もちろん大企業中小企業のいろいろな意味での格差はあるわけでありますけれども、特に生産性を高めていこう、付加価値の高いものをつくり出していこう、生み出していこうということで、実は相当成果を上げてきた時代があったわけであります。ピークは、恐らく昭和五十年前後ではなかったかと思いますが、大企業に対する付加価値生産性、そのころには六〇%を超える、もちろん大企業一〇〇に対して中小企業六〇ですから相当な格差がありますけれども、大企業一〇〇に対して六割を超えた、実は相当成果を上げてきた経緯があったわけであります。  昨今どうかということを調べてみますと、平成二年でありますから少し前の数字でありますが、またちょっと大企業とのいわゆる付加価値生産性の格差がついてくる。五〇%程度までやはり落ちてきた。平成二年が五〇・六という数字を伺っております。じゃ、平成三年、四年、この五〇が五一、二、三になってくれていればいいなと思うわけでありますが、場合によっては、これは大企業ももちろん努力するわけでありますから相対的なものになっているということを考えれば、やはりなかなか厳しい数字になっているということも予測されると思います。そして、生産性において格差があるということは、どうしてもそのことは賃金にも反映されるということになろうかと思うわけでありますが、やはりこの生産性を大企業にできるだけ近づける、あるいは賃金も近づける、それは将来にわたっての大きな課題であるというふうに思うわけであります。  改めてお伺いしたいのは、いろいろ努力するにもかかわらずなかなかその溝が縮まらない、そこには一体どういう原因があるのか、どんな状況がそこにあるのかということは、きちんとお互いに認識をする必要があろうかと思うわけでありまして、そのことについてお伺いを申し上げたいと思います。
  141. 長田英機

    ○長田政府委員 先生から今お話のありました大企業中小企業の格差の問題でございますが、平成三年でとりますと、一人当たり賃金は、大企業を一〇〇としますと六五・七でございまして、付加価値生産性は五二・六、付加価値生産性は六十一年よりもさらに差が広がっているというような状況にあります。このような傾向は、高度成長期にはこの格差が縮まる傾向にあったのですけれども、安定成長期に至ってまたこういう格差が若干横ばいないし広がるような傾向を示してきております。  この背景は、いろいろ難しいと思います。中小企業、六百五十万事業所があるわけでございまして、業態もいろいろあってなかなか難しいと思いますが、私どもが今非常に気にしておりますのは、やはり情報とか技術とか人材とか、そういうような面で非常に格差があることによってなかなか新規の事業をやりにくいとか、生産性を上げるのがなかなか難しいとか、いろいろそういうようなことが現在我々としては非常に気になっているところでございます。
  142. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 そういう認識をしっかり持ちつつ今回新しい法案が出たわけでありますが、この法案の中身についてお伺いをする前に、今までもいろいろな中小企業対策をやってきた、施策も打ってきた、あるいは数次にわたって経済対策を発表して、その中の大きな柱の一つ中小企業問題であった、そういう経緯があったというふうに思うのです。  例えば、ここ一、二年を振り返ってみても、平成四年三月春に緊急経済対策を策定し発表し、そしてその年の夏には総合経済対策、そしてことしの春、四月に新総合経済対策、そして政権がかわって、このたび緊急経済対策ということで、これを振り返ってみると、今私が申し上げた一番早い段階でのものが平成四年の三月でありますから、今から一年半ほど前の対策であります。この一年六カ月、一年半ほどの間に、実に四回の経済対策あるいは緊急対策というものがつくられ、それを政府が世に出した、そして、その対策に基づいて各種の施策が打たれてきたという経緯があります。  それで、実は議論する前に、そういうたび重ねての経済対策というものが一体どういう効用、効果をもたらしてきたか、どんな成果を上げてきたかということについては、やはりしっかり検証する必要があるなというふうに私は思うわけであります。例えば、ざっと見てみましても、いわゆる金融の支援でありますが、貸付枠の追加なんというものは大抵どの経済対策の中にも盛り込まれているわけでありまして、平成四年八月の分については、貸付枠の追加一兆二千億円、ことしの春の対策には、一兆九千百億円でしょうか、そして、この九月の対策につきましても、一兆円の融資枠の追加ということがその中に盛り込まれているわけであります。  先ほどもちょっと触れさせていただいたわけでありますが、そういった中小企業施策ということになりますと、金融対策、そしてもちろん予算、税、この三本柱ということになるわけでありますが、今私が触れさせていただいた去年の三月の緊急経済対策以降の対策、この施策は随分一般事業者の方にも利用頻度が高かった、あるいは減税効果も上がった。しかし、この対策についてはこういう意図という思いがあったのだけれども、まあ思ったほど効果が上がらなかったな、率直に言って、そうだなというふうに思えるものがいろいろとあろうかと思うわけでありますが、少しそのあたりの評価をレビューをする必要があるというふうに思うわけでありますが、どういうものが本当に効果的であったか。まあ正直に言えば、案外そうでもなかったというふうに、きちんと評価をされておられるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
  143. 長田英機

    ○長田政府委員 今お話がございましたまず金融の点でございますけれども、金融につきましては、政府中小企業の金融機関につきましてはかなりの貸し付けの伸びを示しております。中小企業金融公庫と国民金融公庫をとりますと、平成四年度の貸付実績では、それぞれ前の年に比べまして二〇%と一五%伸びておりますし、五年度に入ってからは、上期だけとりましても、二七%と一八%伸びております。したがいまして、これはかなりの伸び率になっているということかと思います。  それから、設備投資減税につきましても、中小企業についてはかなり幅広い投資減税の制度をつくりました。時短とか省エネとか環境等の長期的な幅広い課題となっている制度なんでございますけれども、こういう現状の設備投資の低迷傾向にあるということから判断すると、これによりまして今その設備投資を維持するかなりの下支えにはなっているのではないかという感じがいたします。  それからもう一つ、この緊急対策として設けられましたものとしまして、国の金と県のお金を一緒にして市中金融機関に預託して行うところの緊急経営支援貸し付けというものがございます。既に三千億円の資金を配付しておりまして、これが非常に人気のある制度でございます。  このように、今幾つかの例で申し上げましたけれども、施策が動き出してだんだん浸透してきているというような感じではないかと思います。
  144. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 今御説明をいただきましたように、それぞれ税におきましても金融においても成果を上げつつあるというお話をいただいたわけでありますが、さてしかし、もちろんその景気の下支えに効果を上げつつあるというものの、振り返って考えてみると、この一年間あるいは一年半、景気はやはり厳しい方向に進んできた。また、中小企業を取り囲む環境もなかなか出口、光明が見出しにくいという状況が続いているということは、それはそれで間違いがない現状認識ではなかろうかなというふうに思うのです。  そこで、これは、実は私自身も政治家として、また、中小企業問題に取り組む政治家として勉強もしてみなければいけない、考えてみなければいけないというテーマでもあるわけでありますが、もちろん中小企業対策ということになれば、予算と税と金融政策を駆使をしてということになるわけでありますけれども、何か景気が悪くなる、あるいは厳しい、そういう状況になると、大体出てくる施策というのは、まあ似たり寄ったりというとちょっと言葉が悪いかもしれませんけれども、同じようなメニューが並ぶ。もちろん、どこにアクセントが置かれているかあるいは新規のものが何であるか、そういうものはあるわけでありますけれども、しかし、総じて大体同じような、貸付枠の追加でありますとか、よく使われている税制の深掘りでありますとか、そういうものが並ぶ傾向にあるという印象は否めないなというふうに思うわけであります。いわゆる中小企業問題に対する施策の新分野、まさに新分野開拓というものがどういうところに求められるのかな。一味違った、なるほどというふうな新しい観点からの対策、施策というものはなかなか難しいのかな。しかし、何かないかなということを私もよく考えるわけでありますが、何かそういうことについて温めておられるようなもの、あるいは、アイデアとしてこういうものを実行に移していったらどうだろうかということで頭の中で考えておられるようなもの、そういうものがあれば、この際、ぜひお教えをいただきたい、勉強もさせていただきたい、そういうふうに思うわけであります。
  145. 長田英機

    ○長田政府委員 中小企業庁で行うような対策について申し上げさせていただきますと、今、金融、税、補助金、そういうお話がございまして、通常、こういう不況になりますと、倒産を防止するために、まず緊急経営安定のための金融を講ずるわけでございまして、そして今回お願いしておりますような法案で、構造的問題解決のために新規分野進出、大体こういうような考え方になろうと思います。  私どもも、実は金融、税、補助金だけが何となく目立っているような感じがあるのですけれども下請企業に対する取引の適正化とか、あるいは官公需、国等の発注に当たって、中小企業について受注機会を拡大するようにするというような、実はそんなようなことも入れまして中小企業庁としての施策を駆使してやっているような現状でございまして、今、次に何かというのも私ども考えなければいけないのかもしれませんが、まことに恐縮ですが、今ちょっと具体的に思い浮かばないというような状況で、今実施しております広範な対策を一生懸命実施して浸透させていくというところに力を尽くしているところでございます。
  146. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 その点について、最後にちょっとだけコメントをお伺いしたいと思うのですが、予算ですね、中小企業の予算というのは大体二千億ということでありますが、もちろんぜいたくをさせればいいというわけにもいかないと思いますし、今までの長年のいきさつというものも、もちろんあるということはよく承知をいたしているわけでありますが、考えてみれば、世界のGNPの一四%、一五%を持つ日本経済力、GNPも五百兆ですか、そういう大きな経済、もちろんその中にあって中小企業が果たしている役割、大変大きなものがあるということは、これはもう日本人ならだれでも素直に認めるところではなかろうかというふうに思いますが、ちょっとこういう議論は適当ではないのかもしれませんけれども、農業のそれと、いわゆる産業政策あるいは中小企業対策予算、同じ土俵で比べること自体が間違いだと頭から言われればそれはそうなのかもしれませんが、よく話の引き合いに出される。そういう現実については大臣も政治家としてよく御存じではなかろうかと思います。二千億ほどの中小企業対策費でまことによくこれだけの成果を上げているな、コストベネフィットというか、生産性はこれはまた随分高いなという評価は、それはそれでできようかどは思うわけであります。  しかし、ここまで経済環境が変わっていくと、また日本経済を未来型にしていくためにも、まさに大臣も所信の中で述べておられるような構造的な改革をやっていかなければいけない、そういう大きな節目というか曲がり角に今我々はまさに立とうとしているわけでありまして、そういう今までの延長線ではないのだということを前提にしたときに、通産省分が今までと同じ三百、四百億ぐらいで、毎年の補正で六百か七百か何とかして、全体で二千でというふうなそういう枠組みを許容するだけで、これからの中小企業がしっかりやっていくという環境をいろいろな意味で整えていくことが果たして本当にできるのだろうか。できるだけお金を使わずに効果を出すのだ、何といっても国民の血税でありますから、そういう認識、意識を持ってお互いに政治に当たり、行政の立場から政策を推進するということはもちろん大事でありますけれども、しかし、そのことのために何となく武士は食わねど高ようじみたいなことでは、状況が変わってもやはり立ち行かないところも出てくるのではないかな。将来に対してそういう一種の不安というか危惧を実は私自身が持っているようなことでありますが、できれば大臣、本当にこの二千億ということで将来とも大丈夫なのかということについてどうお考えか、御所見をお伺いできればというふうに思います。
  147. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 大変力強い心温まる御質問をいただきまして、我々も大変心強く思っております。二千億が妥当かどうかというのは、委員も御指摘になりましたように、これは水準について妥当性があるかどうかはなかなか難しい問題なのですけれども中小企業がこれほど大事な経済の役割を果たしているにもかかわらず、その政策について、全体の比重からすると、結果としてはいささか投入量が少ないのではないかと、私も全く同様の判断をいたしておるところでございます。  問題は、これをどのようにして望ましい方向へ変えていくかということが大事だろうと思うわけでございまして、ぜひ委員のお知恵もおかりしながら、我々は、そういう委員の御指摘のあった方向へ向けて渾身の努力を傾けていきたいと考えておりますので、引き続き叱咤激励のほどをよろしくお願いいたします。
  148. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 同様のことで中小企業庁長官、御所見がございますか。
  149. 長田英機

    ○長田政府委員 私ども中小企業対策をやります場合に、中小企業対策はマーケットメカニズムというのを前提に置きまして、そして自主的に努力をする人、そういう人を前提にいろいろの支援措置を講じていく、こういうのが基本的な考え方になるのだと思います。  そうしますと、補助金ということももちろんございますが、それ以外に金融が非常に大きな役割を果たしてまいるわけでございまして、例えば、金融の金額で申しますと、政府系三機関の貸出残高でございますけれども平成五年三月末で二十八兆円、それから、さらに中小企業向けの信用保証債務残高でございますが、これが二十四兆円、合計五十二兆円の資金が中小企業に出回っているわけでございまして、こういうような点を考えてみますと、中小企業が農業に比べて特に非常に少ないというか、政策の考え方が違うという面があるのじゃないかと思います。  一般会計の予算につきましても、二千億でございますので、これももちろん私どもとしてはふえることが望ましいと考えておりますが、そういう面で、財投といいますか、金融が非常に大きな役割を果たしているということもひとつ御承知いただければありがたいと思います。
  150. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  お互いに、引き続き努力をするところは努力をし、研究、勉強するところはしていく、そういうことで頑張ってまいりたいというふうに思います。  さてそこで、先ほど同僚の小此木議員の方から若干触れたようにも聞いたわけでありますが、既に失効した臨時措置法の評価ということについても、これはきちんとやっておくべきだという観点でお伺いをするわけでありますが、例の事業転換臨時措置法、あるいはまた特定地域中小企業対策臨時措置法、それぞれ時代背景をうけて策定をされ、所要の成果、効果を上げたというふに思うわけでありますが、それぞれ五年間あるいは七年間でどういう成果を上げてきたか、その評価をどうなさっておられるのか、お伺いをいたします。
  151. 村田成二

    村田(成)政府委員 お答え申し上げます。  今二つ法律、御指摘いただいたわけでございますが、まず特定地域法でございますけれども、これは六十一年十二月に制定されまして平成三年十二月に失効ということでございます。この間、五十一地域二百十六市町村の多岐にわたりまして特定地域指定されております。かつまた、この法律に基づきます適用計画の承認件数、これは五年間で実に一万二千件に上っておりまして、こうしたことを通じまして、地域活性化のため積極的な企業誘致等の総合的な対策が実施できたのではないかと思っております。  これを具体的な指標でというのはなかなか難しいのでございますが、例えばとして例示でお示し申し上げますと、特定地域経済状況について、平成三年の法失効時、三年度下期でございますけれども、これと六十年の工業出荷額を見てみますと、六五%以上の地域で六十年の工業出荷額を超えている、こういう実態になっております。それからまた、八〇%以上の地域で有効求人倍率、これが一を下回っておったわけでございますが、これが八〇%以上の地域で有効求人倍率が一を超えるというようなことで、いろいろと景気状況にも幸いされた面があろうかと思いますけれども、基本的に、この制度はおおむねその目的を達した、こういうふうに評価していいのではないかと思っております。  それから、事業転換法の方でございますが、これは地域活性化法に先立つこと十カ月以上で、六十一年の二月に制定されまして七年間の時限立法でございました。先ほども出ておりましたように、事業転換計画及び組合単位の円滑化計画、これを合わせまして大体四百十数件、計画の承認が行われております。基本的に、経済的に厳しい影響を受けていた業種から他の業種への円滑な事業転換というのはこの法律趣旨、目的でございましたけれども、実際問題としまして、六十一年、六十二年、この二カ年間に特に集中いたしまして、事業転換計画二百五十一件、円滑化計画三十二件というのが承認されているわけでございます、実際問題といたしまして、御存じのように六十三年以降景気が大幅に、急速に回復したということもございまして、効果としてはこの六十一年、六十二年を主体に評価していただければありがたい、かように存じているわけでございます。  こうしたことも踏まえまして、地域性の強い中小企業というものについての対策は縦糸と横糸みたいな関係でございますが、これはこれでまた必要であるという認識のもとに、昨年には特定中小企業集積活性化法、こういうのもつくりまして地域活性化対策というものにつきましての対応策を講じているところでございますが、今国会に御提案申し上げているこの法案につきましても、いわば今度は横糸の部分でこの地域活性化法と相まって所要の効果を発揮すべく努力してまいりたい、かように存じております。
  152. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 今いみじくもおっしゃったわけでありますが、法律をつくって、動かして二年、三年たった段階で景気は一気に回復してきた。その後バブルというふうに呼ばれたわけでありますが、何というのですか、この法律が効果を上げたという面と、結果的にはバブル景気というか、バブル経済に乗ってうまくいった。ちょっと意地悪な質問になるかもしれませんけれども、何か合理的に仕分けというものがそこでできますのでしょうかね。
  153. 長田英機

    ○長田政府委員 非常に難しい御質問でございまして、私ども法律をつくってその運用実績というのはとらえておりますけれども、ほかのどういう事情によってその後どういうふうに推移していったかということをちょっと詳細に追っかけていないものでございますから、御質問ではございますが、なかなかはっきりとした回答ができなくてまことに申しわけないと思います。
  154. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  幾つかのことをお伺いをしてまいりましたけれども、それでは、提案されております法律案の中身に少し触れてみたいと思います。  実は既に同僚各位から、特定中小企業者とはだれのことを指すのか、あるいは特定業種とは一体何であるのか、何をもって新分野進出とするのか等々のことにつきましては質問させていただき、詳細な御回答をいただいているようでありますので、あえて重複は避けたいと思いますし、また都道府県レベルでの承認手続等の問題につきましても既に言及をさせていただいたように思うわけであります。  そこで、海外進出のテーマにつきましてお伺いをするわけでありますが、実はどういう企業海外事業展開をしているのか。そして、もちろん志を抱いて大いなる夢を持って海外に出ていく、それぞれの思いを遂げられればそれにこしたことはないわけでありますが、しかしそこはビジネス、事業でありますから、うまくいくこともあれば、なかなか厳しい現実に直面して場合によっては撤退を余儀なくされる、そういうケースもあるわけでありますが、実は今私の手元に、国別に、現地に出資をした、投資をしたのだけれどもその後撤退したという企業のいささかの一覧があるわけであります。韓国、中国、台湾、香港、いわゆるNIES、ASEAN、アメリカ、ヨーロッパすべての国の資料があるわけでありますが、これを見ると、撤退をされたところというのは、出ていって非常に短期間のうちにそういう決断をしているんだなということがこれからよく読み取れるわけであります。もちろん、なぜ撤退したかという事情はそれぞれ個別にさまざまであろうかということだろうとは思います。その事由が一つ一つ明記がされてないわけでありますけれども、出ていって二年あるいは三年で撤退する場合には、もうそういう短い期間の間に戻ってきちゃうというケースが大半なんだなということが改めて勉強ができるわけであります。  二、三申し上げてみますと、タイに一九八九年に乃村工芸社、これは中小企業とは言えないと思いますね。大きな立派な会社でありますが、九二年六月でありますから三年三カ月ほどで撤退をしたということでありますし、シンガポールで申し上げますと、パルプ・紙の関係の大石産業さん、出資率四五%ということでありますが、八六年四月に出ていったけれども、九〇年初頭には早々に引き揚げたという報告が出ております。あるいはプラスチック関係の三光合成さん、八九年三月にシンガポールに出ていったけれども、九二年初頭には撤退。マレーシアの例で申し上げますと、マレーシアなんかは非常に日本企業がたくさん進出をし、環境国民感情的にも最もうまくいく地域だ、うまくいってきたという認識をお互いが持っているわけでありますが、例えば陶磁器の関係のシンコーという会社があるそうでありますが、八八年十一月に出ていって九一年四月には撤退等々の事例相当数多く報告がなされているわけであります。  今回この法律中小企業海外進出を手助けをする、ある意味で促進をするということであるわけでありますけれども、国別に見ても、過去の経験則によれば相当成果を上げてきたところとなかなか難しい地域、あるいは、こういう業種は比較的うまくいくけれどもこういう業種はなかなか難しいぞ、そういうこともあるかもしれません。あるいは、失敗する場合には大概このハードルを越えられない、こういう問題にぶつかってうまくいかないときには、大概やはりここがネックになっているというふうなことが過去の事例から蓄積としてお役所の手元にあるのかないのか、ぜひそこのことについて、これはこれから出ていこうとする中小企業の皆さんにとって非常に重要な情報といいますか、テーマだろうというふうに思うわけでありまして、ぜひ御報告をいただきたいというふうに思います。
  155. 長田英機

    ○長田政府委員 海外展開先におきます日系中小企業の現状を見てみますと、やはり展開地域によっていろいろと状況が異なっているように思われます。  例えば、昨年十二月に中小企業庁が調査を行ったわけでございますけれども、現地での経営が総合的にうまくいっているという企業は、北米やEC地域展開している企業については三八%にとどまっております。一方、アジア地域展開している企業については五八%がうまくいっている、こういうふうに答えております。また、現地での経営がうまくいっていないとする企業は、今の逆でございますが、北米、EC地域展開している企業については三六%と高いのに対しまして、アジア地域では二四%にとどまっている、そんなような状況でございます。
  156. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 そういうことは報告がされているようでありますが、私は自分自身で商売、事業をやった経験がないものですからなかなか想像するのは難しいわけでありますが、中小企業の経営者、社長が海外に出ていこうかどうかというのは、恐らくこれは大変な決心というか決断を伴うものだろうと思うのですね。それは想像にかたくないというふうに思います。大変不安もあるでしょう。あるいは海外のことなんか今まで眼中になかったということからすれば、情報もないし、どこに相談に行ったらいいものやら、どこに例えばいろいろな情報を与えてもらえるのやら、さっぱりそういうことがわからぬなという方も、それは数多くおられるということに結果的になろうかと思うわけであります。商売していくわけでありますから、いわゆる海外の実情、労働力のこと、あるいはお金の問題、あるいは資材を調達しようと思えばそういう問題、そういった具体的な情報、あるいは海外での企業経営に関するノウハウのようなものを一体どういうところで知ることができるのか、勉強することができるのか。それは、商工会議所がそういう機能を持っているところもあれば、まだそういう機能を果たしていないところも田舎の方に行けばあるのかもしれませんし、ジェトロなんかにそういうセクションがあるのか、それを広く広報するということは非常に大事なことであろうかと思いますけれども、その点いかがでございますか。
  157. 長田英機

    ○長田政府委員 御指摘のとおり、大企業に比べますとどうしても中小企業はいろいろな情報面で非常に困難があるということでございますので、私どもとしましては、中小企業者海外展開というのを行うに当たりまして、いろいろネックとなる点について幾つかの対策を今やっておるわけでございます。  一つは、中小企業事業団におきまして、これは国際関係の部もつくりまして、そして現地の事情把握、それから先ほどお話がございました成功、失敗の事例集を情報誌でつくる、そんなようなこととか、講演会とかそういうことをやっております。それから、今先生からお話のございましたジェトロ、日本貿易振興会では、特に投資先における交通だとか電力等いろいろなインフラ関係の情報を集めたり、現地の事情に関する情報を収集しておりますので、そこから情報提供が行われております。  それからもう一点御指摘になりました、ノウハウをどういうふうに入手できるのかという点でございますが、これは中小企業事業団に海外投資のアドバイザー制度というものをつくりまして、これは専門の方にお願いしてアドバイザーになってもらっているわけですけれども、そこで…(逢沢委員「もう既にあるわけですね」と呼ぶ)ええ、既にアドバイザー制度というものがございまして、ここでアドバイスを行なうということになっております。  さらにまた、中小企業大学におきましても、現地に管理者として派遣される中小企業の職員を対象といたしまして研修を行っている、そのようなことを実施しております。
  158. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  どうかひとつ、中小企業海外展開を支えるいろいろな環境の、あるいは条件の整備につきまして、より一層御配慮をいただけますようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。  それでは、次のテーマに移りたいと思うわけでありますが、支援措置の中身の問題についてお伺いを申し上げます。  この法律案によりますと、対象者は中小企業近代化資金等助成法の特例措置を受けることができる、近代化資金の貸し付けを受けることができるわけでありますが、その償還期間を七年を起さない範囲一般の場合よりも延長していただけるということになっているようであります。あるいは、これは私、最初に担当課長から御説明をいただきましたときに、なるほどよく考えられたものだなということで本当に驚いたというか感心したのは、既にこの法律が施行される前の貸し付けにさかのぼってといいますか、それを含んで対象にする、これは本当にありがたいなということを思ったわけでありますが、その場合には、既存のものにつきましてはプラスアルファの三年という対応にしていただいているようであります。  さてそこで、この七年という期間でありますけれども、この法律案が今度国会にかかってくる、そういう段階になって、地元を初め幾つかの中小企業の経営者の皆さん、あるいは中小企業のいろいろな団体がございますが、そういう皆さんとこのことを一つの材料にしてお話をしてみたわけであります。本音を言えば、リストラというのはやはり相当しんどいことだし、また景気がいいときには一つのきっかけをつかむことができれば、うまくすればとんとん拍子でうまくいくということもあるんだけれども、本当に不況を脱出するのがいつのことになるやらまだ先も見えないし、確かにこういう法律をつくってくれるということは大変ありがたいけれども、しかしこういった景気の中で、果たして本当に五年あるいは七年、それで本当に勝負がつくのだろうか、実際に自分の事業から新しい事業展開を考えたときに、新分野への進出を想像してみたときに、過去にそういう経験を持った方もおられたのでしょう、やはりちょっと、もう少しぜいたくを言えば余裕を持ちたいな、余裕、ゆとりを持ってもらえないものだろうか、そういう議論もいささか私の耳に届いたわけでありますが、なぜ七年なのか、あるいは、既に借りておられるものについてはプラスアルファなぜ三年なのかという、細かい議論はするつもりはないわけでありますけれども、どうなんですか、今から施行後七年たった段階で、こういうことなら最初からもう少し長く見ておった方がよかったなということにならなければもちろんいいわけでありますが、そのあたりについてお考えがあれば、あるいはなぜこういう期限ということになさったのか、いささか御所見を承ることができればありがたいと思います。
  159. 村田成二

    村田(成)政府委員 確かに先生おっしゃいますとおり、こういった中長期の息の長い、話につきましては、一体どのくらいの期間を設けて、どういうテンポで対策を打っていったらいいのか、個々の企業者を含めまして、私どもも実は非常に判断が難しいところでございます。  ただ、先般の事業転換法、これはことしの二月に期限が来たわけでございますが、この事業転換法も同様に構造対策を講ずるということで七年間の時限立法でやってきたわけでございます。先生いみじくもおっしゃいましたけれども、その間に景気の変動等があっていろいろ、法律趣旨、目的がその段階でどういうことになったのかわからなくなったではないかというような事態も、場合によりましては今後生じないとも限らないわけでございます。ただ、いずれにしましても、やはり事業転換法並みに七年、しかも七年あればある程度は各事業者努力というものがめどが立ってくるのではなかろうかという、これはある意味で期待も込めまして七年というふうにさせていただいております。  ただ、いずれにしましても、経済情勢の変化あるいは経済構造の変化に伴いまして臨機応変に対応策を講じていくというのが何よりも大事だと思っておりますので、それはその段階でまたいろいろ考えながら対応してまいりたい、かように思っております。
  160. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  それでは、最後に大臣にお伺いをいたしまして私の質問を終わりたいと思うわけでありますが、約一時間近くにわたって質問させていただきました一この法律案趣旨あるいは意図するところ、改めてよく理解ができたというふうに思いますし、また幾つかの心配事につきまして、率直な私の意見も申し上げさせていただき、大変ありがたい気持ちを持っているわけであります。  そこで、改めて中小企業の存在、本当にこれは大事にしていかなければいけないな、本当に大臣、私はそういうふうに思うのですね。とにかく、この中小企業が先行き立ち行かないということが仮にあるとすれば、それは日本経済の根幹が揺さぶられる、そういう認識をしっかり持たなければならないなというふうに思います。  なぜこういうことを申し上げるかというと、実は、両大臣の所信表明のときに、あのときには経企庁長官に主にお伺いをしたわけでありますが、今回の細川政権は、とにかく生活者を大事にする、消費者を大事にする、そのことを一つのキャッチフレーズ、看板になさっておられるわけであります。もちろん、その中身については私どもも十二分に理解をし、承知をし、そういった国民の意識の大きな流れの中に今日我々がいるということは理解をいたしているわけであります。しかし同時に、中小企業を大事にしていく、とりわけその中でも物づくりですね、物づくりを非常に大事にする、重視をする、大切にする、そういうことを、消費者を大事にすると言うならば、それ以上にそこのところに力点を置く必要が私はあるなというふうに思います。  通産大臣の立場では最もそのことについては御配慮いただかなければいけないというふうに思うわけでありますが、そのことについての御所見と、あわせて大臣御自身が、いわゆる中小企業の未来像をどういうふうに描いておられるのか。たくましさもあるし、小回りもきくし、余り世間には知られていないけれども、相当な経営力もある、あるいは技術も持っている、心配ないんだというふうな総じて御認識なのか。あるいは、もちろんそういう基礎体力はあるけれども、しかしそれにしても、これからの世界の大きな経済、その中の日本ということを考えれば、よほどこれは気合いを入れて、性根を入れて、また政治としても政府としてもその支援をしていかなければなかなか、今までの順風満帆、いろいろ山や谷ありながらも右上がりのカーブでやってきた、しかしこれからは相当な努力をしなければそういう状況はキープできない、むしろそういう御認識なのか。あるいはそれ以外のお考えがあるのかもしれません。そこのことについて最後に大臣の御所見をお伺いをいたしたいというふうに思います。
  161. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業日本経済の中で大変重要な役割を担ってきた、これは委員質問の中で再三再四御指摘をなすっておられる点でございますが、まさに我々もそのとおりだろうと思います。そして、その中小企業の重要性というのは、見かけ以上に、日本資本主義の特性を形づくるくらいに重要な意味合いを持ってきたというふうに私は思っております。  しかしながら、現在の中小企業がどういう状況に立ち至っているかと申しますと、これも委員がいろいろな観点から御指摘をいただいておりますように、なかなか厳しい局面に直面をしているわけであります。中小企業政策を所掌する通産省、中小企業庁にとりましても、これは大変大事なところに来たなというふうに思っておるわけであります。  西洋のことわざに、チャンスという女神はチャンスという顔をしてはあらわれない、チャンスという女神が人々の前に姿をあらわすときには、危機、クライシスという顔をしてあらわれるんだ、しかし人々が恐れずにこの危機という顔をした女神を抱き締めれば、その女神の顔はチャンスという顔に変わる、こういうことわざがございます。確かにある意味では経済の危機、中小企業にとって一つの危機も迎えているわけでありますが、それは実は、適切に対応していけば新しいチャンスをつかむことになるのだ。日本は、戦後だけ見ましても幾多のさまざまな危機を乗り越えてまいりました。その危機に突っ込む場合にすべて人々は大変だと言っておったのですが、乗り越えてみれば、それは見事な転換能力を示す日本のたくましい姿だったと私は思っております。中小企業はその中で躍動的な役割を果たしてきたわけであります。  私は、現在の危機というのは今までと違う、また複雑な重みを持った危機だと思いますけれども、しかし知恵を絞ればこれは乗り越えられないわけがないと考えるわけでございまして、今後引き続き、まさにマクロレベル、ミクロレベル、セミマクロレベルと、我々何か呪文のように唱えているわけでありますけれども、この構造改革をやり遂げることによりまして、中小企業方々にとりましても、また我々中小企業を所掌する者にとりましても、この危機は実にチャンスなんだ、チャンスであったと言えるような対応を講じていきたいと思っているところであります。
  162. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 大変ありがとうございました。  大臣のしっかりとした、また力強い認識の披瀝をいただいて、本当に私自身も何か新しく目が開かれたような、そんな気持ちもいたします。そう遠くない時期にこの法律案も通過、成立をするというふうに思います。どうぞひとつ、そういった環境の中で大いなるリーダーシップを発揮していただきまして、中小企業の振興のために御努力をいただけますように、また私どもも大いにともども頑張ってまいりたいということを最後に申し上げさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  163. 中井洽

    中井委員長 次に、熊代昭彦君。
  164. 熊代昭彦

    熊代委員 岡山一区選出の熊代昭彦でございます。御審議中の法案につきまして質問を継続させていただきます。  まず最初に通産大臣にお伺いいたしたいと思いますが、円高の今後の見通してございますけれども、個人的なことを申し上げて恐縮でございますが、私は一ドル三百六十円のときもアメリカで生活しておりました。二百五十円から百五十円ぐらいまで振れたときにも生活しておりまして、大変に円が動いたという生活実感があるわけでございますが、今一ドル百円に近づきつつある。何となく、デノミをするならば、百円を百分の一にして、一円が一ドルか、そういう雰囲気もあるいはひょっとしてあるのじゃないかと思うのですが、しかし、いずれにしましても、このレベルの円高というのは大変な、そういうデノミとかそんなことを全然考えなければ、これは大変な円高であると思います。こういう中で、既に自動車産業競争力が失われつつある。我が国の貿易の十分の一を担っておるという自動車産業、最も大きな輸出の主役を担っていた産業だと思いますが、それが失われつつあるということでございまして、最初に、今後の円高の見通しはどのようになるというふうに考えられるか。  そして、このような円高の進展によりまして大企業などの生産海外シフトというのが相当に行われておりますけれども、さらにまた進んでくるということでございますが、本法案は、こういう状況をとらえまして、中小企業がとるべき対応として、新分野への進出とともに海外展開支援対象としておられるということでございます。大企業も出て、中小企業も出る。我が国の中小企業は非常に優秀でございますから、大企業が単純に出ましても、それの下請中小企業がなければなかなか本当の事業は行えないだろうというふうに思うわけでございますが、それがセットで出れば本当に海外での事業展開というのはうまくいくだろうと思います。しかし反面、国内の産業の空洞化ということが大変に進むということも事実であろうと思います。そういう意味で、これは大変に思い切ったいい法律であるとともに、大変に危険な法律かなという気もいたすわけでありますが、空洞化を惹起しまして雇用問題等に大変な問題を起こすというふうに恐れる方々もいらっしゃいます。こういう方々に対しましてどのようにお答えしたらいいか。空洞化に対するおそれ、それと円周の今後の進行を絡めて御答弁いただければ大変ありがたいと思います。
  165. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御指摘は大変重要な、しかも本筋をつかまえて御指摘をいただいていると思います。  まず、為替レートの状況についての判断ということになるわけでありますが、現在、若干日々振れておりますけれども、私は、現在の為替レートの水準というものが日本経済のファンダメンタルズを反映したものであるというふうには思えないのでございまして、いささか過大評価をされているのではないか。とりわけ購買力平価から見ますと一ドル二百円と言われているように、多くの経済的にひずみを持ったこの国の経済でございますし、いささか円高過ぎるなという感じは私はあるわけであります。しかしながら、何ゆえにこのような水準になっているかといいますと、そこには経常収支黒字というものが一大政治問題になるくらい、つまり世界の政治問題になるくらいの重圧になっているという事実は厳然としてあるわけであります。  私どもは、そのことを踏まえて、単に対外交渉においてこの経常収支の黒字を縮小していくということを言っているだけではなくて、我々の基本的な、この国の将来にかかっている問題だという認識のもとに、それをマクロ政策、産業構造政策、あるいはミクロといっていますけれども、規制緩和を初め、あるいは内外価格差の是正といった政策を通じて問題を解消して、経常収支黒字の、クリントン・宮澤会談の共同声明の言葉を借りれば、ハイリー・シグニフィカント・ディクリース、つまり十分意味のある縮小に向けて王道の政策をとるべきである、こういうふうに思うわけでございます。  さてそこで、今般、我々新しい法律を提出いたしまして中小企業対応についての政策の審議をお願いしているわけでありますけれども、確かに表面的に見ればそのとおりではございますけれども海外進出というのは一面いわゆる収支均衡へ向けての道筋にもなるわけでございますし、その意味ではやがて円安の方向へ振れる一つ要因であろう、私はそういうふうに思うのであります。  したがって、その意味では、大企業であろうと中小企業であろうと、一つの方向であるというふうには思うのでありますが、委員が御心配のように、これまたさきに甘利委員の御質問にお答えしたときにも申し上げたことでありますけれども、過度な為替レートの切り上げによって産業の空洞化を招いたアメリカの例を見るまでもなく、これも委員が御指摘なされたわけですが、これは問題を内包していることも事実でございます。さらばといって中小企業は、大企業は自力で出ていく、おまえたちはとにかく憤死せよ、楠木正成みたいに憤死しろといってもそうはまいらないわけでありまして、やはり中小企業もその時代に応じて海外進出を図っていくということも私は大事なことであろうというふうに思います。  問題は、空洞化が起こらないような適切な為替レートのもとにおいて国際的にバランスのとれた産業構造にする、日本にとっても他の国々にとってもバランスのとれた産業構造にしていくという政策が大事なのではなかろうか。そのためには、何か呪文のように申し上げるわけでありますが、まず我が国といたしましては、基本的には内需主導型の経済成長を維持すること、そして一方でリストラを初めとする産業構造転換、これは同時に、実は現在御審議をいただいている法案もそうなんでありますけれども、大企業に限らず中小企業においてもリストラを行うこと、同時にミクロ面で、規制緩和でありますとかそういった、新しい産業をつくり出す政策を強力に進めることによって、この国の産業が空洞化しないような正統的な努力をしていかなければならないと考えているところであります。  そして、現在出しておりますこの法案は、個々の企業レベルについて申し上げますと、確かに海外進出、ある部分が進出する、しかし、こちらで本社の機構、本社工場の方は、新しい事業に向けて根っこを持ちながら、あるいは技術開発力を持ちながら展開することによって生き残りが出てくるわけでありまして、全部出ていってこちらを空にするといっているのは現実にはなかなかない姿ではないだろうか、こういうふうにも考えております。
  166. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  海外進出するものと新分野を切り開くものと両方相まって中小企業対策の万全を期したい、国内産業の空洞化も防ぎ得るということでございます。一応そのように進展することを願っております。  次に、中小企業対策のこれも一環だというふうに思いますが、既に出たかと思いますがオーバーラップをあえてさせていただきますれば、中小企業の景気対策の全容の中で、全容をまずお伺いしまして、その中で本法案がどのような欠けたるところを補うのか、どのような位置づけになるのか、そういうことを大臣にお伺いいたしたいと思います。
  167. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業景気対策というのは、昨年の八月、ことしの四月、そして今回九月十六日と三度にわたって景気対策が各般にわたって講じられてきたところでございます。  羅列的に申し上げますと、まず第一が、中小企業の経営安定対策でございまして、さまざまな、例えば運転資金支援特別貸付制度の拡充でありますとか、それから緊急経営支援貸付制度の拡充でありますとか、あるいは中小企業信用保険の、特に業況悪化業種について弾力的な指定を行うとか、あるいは中小企業金融機関及び信用保証協会を活用した中小企業金融の一層の円滑化のための各種の政策でありますとか、それから中小企業等に対する民間金融機関の金融の円滑化に向けてさまざまな措置を講ずる、こういった政策が大きな分野一つでございます。次に、構造的な分野についての政策でございまして、この低利融資制度を含めたさまざまな制度を講ずること。三番目が、特に小さい企業、小規模企業対策、下請中小企業については、もちろんそういった金融対策のほかに、大企業との間の問題、トラブルがございますので、こういったものについて緊急調査を実施するとか、官公需対策といったさまざまな政策を講じてきたところでございます。  その中で、今回の政策がいかなる意味を持つかということでございますけれども、この中で、先ほど来御説明したところでありますが、根本的には構造問題というのがあるわけです。これは日本経済全体についてもそうですし、中小企業も内包しているわけでありまして、緊急の対策とは別に、やはり根本的な対策、構造改革政策というもので対応していく以外にないではないか、その構造改革政策の中心的な政策として今回本法案を御審議願っているところでございます。
  168. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  では次に、やや観点がずれるわけでございますけれども、景気対策の一環といたしまして、所得税減税が政府の一部でもう検討されているというふうに伺っておりますが、現下の景気の背景の中で所得税減税というのはどのような効果があるのだろうか、あるいは今後政府部内でどのように取り扱われていくのか、国務大臣としての御所見、それから今後のお見込みを聞かしていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
  169. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 経済学的な分析を示せといいますれば、所得税減税について長短いろいろ議論できるわけでありますが、現在の時点における政治判断として、ただいま所得税減税の問題、税制改革の問題について御質問をいただいたのでございますが、私どもも、産業所管大臣でありますし、景気の現状について非常に心配している者からいたしますと、今回の税制改革論議というものは極めて重大な関心を持っているものでございます。  ただ、委員御案内のとおり、現在政府税制調査会におきまして、各方面からこの税制改革の問題については議論がとり行われ、今取りまとめの最終段階に入っているところでございます。したがいまして、内閣の一員として、この調査会の結論が出ればそれを十分参考にするといいますか、尊重をするということになってくるだろうと思いますが、それなりにまた政治判断もなされなければならないと私は思っております。  しかし、審議の途上におきまして、内閣の一員であるがゆえに、この内閣の調査会の審議に予断を加えるということはいかがかなというふうに思っているところでありまして、総理も、過般の予算委員会等におきまして再三申し上げてまいりましたように、御審議をお願いしている立場でございますので、今のところ御意見を差し控えさせていただきますと御返事をしておられましたけれども、私どもといたしましても大変な関心を持っておりますけれども、今ここで我々が、具体的なこの局面に即して意見を言うのは控えた方がいいのではないかな、こんなふうに思っているところであります。
  170. 熊代昭彦

    熊代委員 お立場は理解できると思いますので、それでは、次の質問をさしていただきたいと思います。  以下は、本法案の個別の内容につきましてお伺いしたいと思いますが、特定業種ということでございますけれども特定業種としまして工業などのような業種政令で定めるということになっておりますが、特定業種としまして、工業、そのほかどのようなものを政令で定められる御予定になっているのか聞かしていただきたいと思います。
  171. 村田成二

    村田(成)政府委員 先ほど来御議論が出ておりますように、現在中小企業を取り巻くいわば多様かつ構造的な経済環境変化ということに対応する必要のある業種、こういうことでございますので、工業を含めまして、類似の影響が出ております、例えば情報処理サービス業、さらにはソフトウエア業といったようなものを指定してまいりたいと考えております。
  172. 熊代昭彦

    熊代委員 それでは、工業のうち、どの業種特定業種として指定されるか、御説明をお願いしたいと思います。
  173. 村田成二

    村田(成)政府委員 ただいま申し上げました多様かつ構造的な変化、かみ砕いて申し上げますと、例えば海外地域におきます工業化の進展によります競争条件変化、あるいは技術革新によりまして生産工程がいろいろ変化してきている、こういったことになるわけでございまして、こういった変化は、おおむね工業全体共通に受けているというふうに認識いたしております。したがいまして、政令指定におきましては、おおむね工業全体を包括的に特定業種として指定してまいりたいと考えております。
  174. 熊代昭彦

    熊代委員 工業は全部包括的に御指定いただくということでございますので大変結構だと思いますが、工業以外の業種ども現在景気の低迷で大変苦しんでいることはご承知のとおりでございます。それらのものも特定業種対象とすべきではないかと思いますが、いかがでございましょう。
  175. 村田成二

    村田(成)政府委員 先生指摘のように、確かに非常に厳しい経済環境のもとで多くの中小企業が大変苦しんでいることは事実でございます。ただ、この法案でとらえておりますのは、その苦しさというのが、先ほど来申し上げておりますいろいろな多様かつ構造的な要因で出てきている苦しさ、こういうことでございまして、一般的な景気、不景気によります苦しさ、苦境というものに対しましては、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、累次にわたります総合経済対策、緊急対策の中での経営安定対策ですとか、そういったきめ細かい対策をもって対応してまいりたい。やはりこの法案において対応いたしますのは、構造的な厳しさに直面する中小企業がそれに積極的に対応していく、その措置について支援してまいりたい、かように考えております。
  176. 熊代昭彦

    熊代委員 本法案は構造的問題に特に限定したいという御説明でございます。それは本法案趣旨から納得できるところでございますが、ここで、ちょっと個別な業種につきましてお伺いして申しわけございませんが、先ほどの関連でございますけれども、酒類の売れ行きが大変に悪くなっている。酒類販売業の売り上げが大変悪くなっているということが訴えられておりまして、その状況とか、今後こういう酒類の販売の落ちに対してどのような対策が実施されるのかお伺いしたいと思います。
  177. 二宮茂明

    ○二宮説明員 酒類の需要動向につきまして、国内の出荷、輸入の合計数量で見てみますと、昭和六十二年から平成四年までの最近五年間では、年平均の伸び率が四%ということでございます。直近で見ますと、平成三年、四年の二年間は二%台の伸びということになっておりまして堅調に推移してきたということでございます。ただ、本年につきましては、一月から七月までの累計で見ますと、酒類のシェアの七割強を占めておりますビールがこの冷夏等の影響で前年比で一・八%ほど減少したこともございまして、酒類全体としては、本年七月までの累計で見ますと、昨年並みの数量にとどまっておるということでございます。したがいまして、マクロの数字で見ますと、大幅に落ち込んでいるというような状況にはないということでございます。  中小の酒類販売業者に対しましては、ことしの四月の経済対策の一環といたしまして、従来からの制度を大幅に拡充いたしまして、一定額以上の機械、装置あるいは器具、備品等につきまして特別償却あるいは税額控除を認める特別措置が講じられておるところでございます。また、先般九月の緊急経済対策の一環といたしまして、大規模な酒類販売業者に対しましても特別償却などの税制上の措置の対象が拡大されておりまして、こうした措置が積極的に今後活用されることによりまして酒類販売業者の企業経営の合理化に役立つのではないかと考えております。
  178. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  それでは次に、もう一つ個別なものについてお伺いいたしたいのです。  先ほどちょっと触れました我が国輸出のリーダー役でありました自動車産業におきまして、特に下請企業で人員削減、それから給与カットなどを行うような厳しい状況が続いておりますが、こうした下請中小企業に対します支援策をもっと充実すべきではないかと思いますけれども、いかがでございましょう。
  179. 長田英機

    ○長田政府委員 現在のような厳しい経済状況の中ですと、下請企業は相対的に弱い立場にありますので、私たちとしましては、親企業の優越的な地位を乱用されることによって影響をこうむらないようにしなければいけないということで、親企業に対して指導をするということが一つ、それからもう一つは、今度は下請企業に対していろいろな支援を充実する、この二つをやる必要があるだろうと思います。こういう点から、下請取引の実態に関して全国に六百六十人の下請取引相談委員というのを置きまして、下請企業の親企業との間の取引のいろいろな相談に応じております。また、さらに親企業に対しましても、いろいろな手段を通じまして下請代金支払遅延等防止法を守らなければいかぬということを周知徹底しております。  そのほか、昨年の十月に稼働したのですけれども、各県内だけの下請と親企業の取引のあっせんではなくて、全国ベースでそれをやるようなネットワークをつくろうということであっせん体制の強化もやっております。  そのほか、今回の総合経済対策を受けまして、下請取引の適正化のための特別の調査を実施することにしておりまして、一万企業対象といたしまして、十一月の上旬にもすぐに調査にかかって、その結果を得まして下請取引の適正化を図りたいと考えております。  それから、今熊代先生が挙げられました自動車産業に属する下請中小企業につきましても、これは当然のことでございますが、本法案支援対象に含まれるわけでございますので、この法案のいろいろな措置をもちまして万全を期してまいりたいと思うわけでございます。
  180. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。ぜひ万全の措置を講じていただきたいと思います。  次に、本法案の期間は七年間の時限立法でございますが、七年間、短いといえば短いし、長いといえば長いわけでございます。景気対策では長いということかもしれませんが。本法案が成立、施行されました暁には関係政令及び通達等が出されるわけでございますけれども、景気は生き物でございますので、いろいろと事態が変わってくると思います。これを弾力的に改めていかれる、こういうことで中小企業が置かれました実態に合う形でその運用実態を図っていただきたい、図るべきだと考えますが、大臣に御所見をお伺いしたいと思います。
  181. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員の御指摘のとおり、七年という年月は短いようであり長いものでございます。経済はまさに生き物でございまして、しかも現下の構造的な変化の激しさというものを考えますと、この法律の運用というものはときどきの状況に的確に対応していかなければならないと考えております。いずれにいたしましても、七年たちますともう二十一世紀でございますので、二十一世紀には委員とともに、いい政策をやったな、こう言えるように頑張っていきたいと思っております。
  182. 熊代昭彦

    熊代委員 本法案が非常に難しい構造的な不況対策に対しまして正面から取り組まれるということでございますので、本法案の円滑な実施が産業の構造問題の解決に大いに資することを祈りまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  183. 中井洽

    中井委員長 次に、中島洋次郎君。
  184. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 それでは、通産省から出されましたリストラ法案について質問させていただきます。  大臣も随分長い時間大変に御苦労さまでございますが、自民党も含めてこれは採決に賛成できる法案だと思いますので、もうしばらく頑張っていただきたいと思うわけでございます。  私はこれを読ませていただきまして、支援対象としては、円高の直撃を受けた業界が支援の主な柱になると思うわけでございますが、そういった意味で、こうした円高が進んだ事態に至っては大変時宜を得た政策であると思うわけでございます。ただ、思いますのは、ここまで急激な円高が進んできた、この急激な円高の進行を何とかできなかったか。これは前政権の対応も含めてでございますが、この円高の傾向というのは、日本経済の実態から見て、徐々に円高に進むだろうということは理解できますが、これがもう少し緩やかに進んでおれば企業の自助努力というものでもこれを切り抜けることができたのではないか、ここまで立派な法案をつくっていただかなくても何とかなったということも私は考えられるわけでございます。  為替とか税金の話になりますとすぐ財政当局のマターだとおっしゃるかもしれませんが、これはあえて通商産業政策担当の大臣として、御意見というかお願いというか、そのお考えをお聞きしたいのです。やはりこれは、通産省としてももっと為替レートに対して影響力を行使していただきたい。国内の財政当局に対しましてはもちろんですが、アメリカ、ヨーロッパの財政政策当局、また海外産業のトップに対しましても、産業政策のトップとしまして通産省がもっと影響力を行使していただきたい。例えば、急激な円高が進んだ場合、日本経済や景気を冷え込ませてアメリカの産業にとっても決して得にはならない、いろいろな言い方があるかと思いますが、そういった影響力を行使していただきたいと思うわけでございますが、こうした為替レートについて通産省としてのかかわり方について、大臣はどういったお考え方をお持ちかというのが一点。  もう一点、先ほど同僚議員からも質問がありましたが、適正な円ドルレートは一体どれぐらいなのだろう。きのうですか、バーグステンさん、アメリカの国際経済研究所長さんですが、一ドルは百五円ぐらいがいいという意見を言ったそうでございます。そして、適正水準というのは一ドル百円から百十円、百十円をもし超えた場合には介入が必要だ、そういったこともおっしゃっている。そういった一方で、日本の輸出産業の大方の意見としましては、日本経済の実力に見合った円ドルレートというのは、購買力平価から見て百二十円程度ではないかという意見があります。そしてさらにその一方で、ことし下半期の各企業の具体的な社内レートというのは百十五円ぐらいで大体計算をしている。そういった中にありましても、円が一円上がれば、先ほどの話ではございませんが、自動車産業などにおきましては一社平均で百億円近い減益になる。この適正な円ドルレートというのは大変に見方が分かれるところでございますが、ぜひとも熊谷大臣に、現在の日本経済の実力から見てこれぐらいが適正水準ではないかということをずばりおっしゃっていただければと思います。
  185. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 ただいまの為替レートの水準が日本経済のファンダメンタルズを反映したものではないというのは、私自身もそう思いますし、恐らく日本のあらかたの政策担当者の気持ちではないかと思います。ただ、為替レートというのは、基本的には、それこそ何兆ドルと言えるようなお金が行き来する場の市場において決定されていることでございまして、委員が引用されましたこのバーグステン所長の意見も、タイミングよく発言されれば効果があるわけでありますけれども、しかし、市場を支える大きないろいろな要因が積み重なってまいりますと、必ずしも効果が上がっているわけではございません。先般もアメリカの財務省の担当次官なども発言をしておるわけでありますが、いわゆる政府によるあるいは中央銀行による市場介入というのは麻薬のようなものであって、一時的には効くけれども、市場の構造と逆行するような政策はなかなか効かないものだ、これは円高を演出しているという側からもそういうような発言が出ているわけでございます。  そういう意味で、基本的には大きな市場が決めていくものだと私は思いますが、ただ、今までの円高が起こったその基本的な背景というのは何であったかと申しますと、やはり日本の経常収支の黒字、それも世界に突出した黒字。日本に次ぐ黒字は、これは委員御存じのとおりドイツでございますが、日本が一千三百億ドルを超え、ドイツは三百億ドルそこそこということで、何とその差には一千億ドルの差があるわけでありまして、これはやはりマーケット心理というものを大きく左右したと私は思うのでございます。  しかし、現実の円高の進行の中で、輸出にも輸入にも御存じのとおりJカーブ効果というのがございますので、ドルベースでいいますとまだ依然として高い水準には見えるのですけれども、数量ベースで見ますと明らかに輸出は先どまり感が見えてまいりました。輸入も確実な増勢、特に製品輸入は著しくふえてくるという傾向でございまして、それらの情勢が現在の為替レートがやや少し円高を是正する方向に動き出したのを反映しているのではないかなと私は思います。  しかし、根本的なところでまだ、クリントン・宮澤会談の共同声明で発表されたように、十分意味のある是正に向かっての数字が出てきたわけではございませんので、我々は内需拡大を中心にする経済成長政策、そして産業構造政策、あるいは規制緩和を初めとする内外価格差の是正、こういった正統的な政策を一つ一つ、大変その一つ一つが厳しい、これは政府当局者だけではなくて日本経済全体に厳しい判断を要求されるものでありますけれども、それらの仕事を一つ一つクリアすることによって、委員が御希望なさっておられる正常なレベルヘ向けて為替レートが収れんしていくことになるだろうと私は確信しておるところであります。
  186. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 大臣のまだまだ円高過ぎるという御認識は伝わってまいるわけでございますが、私がこの質問で意図したのは、やはり大蔵省当局というのは、経済がわかってないとは申しませんが、産業の実態は通産省が一番把握しておるわけでございます。産業界の政策をリーダーシップをとる官庁として、ぜひとも通産省、この為替レートについてさらなる関心と行動をとっていただければと願うわけございます。  今回の円高というのは、前回の円高よりもさらに厳しい局面にあると私は思うわけでございます。といいますのは、今回の円高というのは、先ほど購買力平価ということを申しましたが、それに見合った水準からさらに円高に動いている。前回の円高というのは、購買力平価から見れば過小評価されていたものが是正されていったという側面が強い。さらに経済環境を見ましても、前回の場合は国内外ともに好景気だった。内需が大変にあった。前回の円高時も確かに企業海外へ転出していきまして産業の空洞化というのが心配されたのですが、結局は内需の拡大とともにその進出した先に、自動車などで言えば優良な部品の調達ができなくて、結局国内から部品をその海外の工場に輸出したというようなことがありまして、前回の場合は産業の空洞化というのはほとんど起こらなかった。しかし、今回はまさに産業の空洞化が現実のものとなっている。  さらに、今回の法律におきまして、海外移転というのを大企業だけでなくて中小企業にも進展させていこう。そうしますと、前回と違いまして、今後はその進出先で現地の企業との分業化というのも進んでまいります。そうしますと、これまで日本経済競争力を支えてきたと言われます、競争力の源泉と海外でも評価されましたピラミッド型の構造、これはさまざまな批判もあったわけですが、そういったピラミッド型の多重構造というものが、分業構造というものが今回のこの法律を施行していくことによって崩壊していくという懸念があるのですが、その点について大臣はどういったお考えをお持ちでしょうか。
  187. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 一般的に言って、海外進出をいたしますと、ブーメラン効果といいますか、できた製品がまた逆輸入されるということがあるわけでありまして、今までやっていた産業がなくなるだけではなくて市場のライバルとしてあらわれるというような意味合いがあることは、委員指摘のとおりだというふうに思います。  ただ、さはさりながら、中小企業のみが座して死を待つといいますか、大企業はどうやったってこれは海外展開せざるを得ない、どんどんしている。中小企業だけが討ち死にを覚悟で待ち構えるというわけにはまいらないだろう。リストラといいますか、事業の再構築のためにいろいろなやり方がありましょう。新分野に出るのもそうでしょうし、一緒に共同で、お互いに合併したりして、あるいは協同組合をつくってコストダウンを図って、同じ分野で立ち向かう体制をつくる、一層のコストダウンを図るという従来型のやり方もあるでしょう。しかし一方で、海外へ出てまいりまして活路を外に求めるという道もまたリストラの方法ではないだろうか。ただ、そのことを誤解のないように申し上げておきますと、出ていくといっても、事業所全部行くというわけではないのですね。本社はここに残りまして、技術の開発をやったり、また新しいところに事業展開を求めて本社は本社で頑張るというのが実態の姿でございます。問題は、そういう形で出ていったときに、国内の経済全体が空洞化するんじゃないかという御心配だろうと思うのです。それには新しいビジネス、新しい産業、そういうものを産業構造的に、産業政策的につくり上げていくということはやらなければなりませんし、そのためには規制緩和をしたりさまざまな制度、枠組みをつくり出していくということも大事でありますし、何よりも、新しいビジネスがあるといっても、こちらから、今までやっていたものから先へ変わるときに、全体としてある程度の成長がされていなければ、変わる間の摩擦失業を初めとする摩擦というものは非常に大きくなるわけでございます。  私どもが、マクロ、ミクロ、セミマクロといって政策の三位一体を申し上げているのもそういうような意味合いで申し上げているわけでございますが、いずれにいたしましても、海外投資、海外進出をすることによって起こるであろう問題といいますか、内包している問題というのは委員指摘のとおりでございますけれども、我々はそれを全体の政策の中で吸収していきたいというふうに考えているところであります。
  188. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございました。  あえて問題提起をさせていただいたわけでございますが、この現況にあっては、この法律は輸出関連の中小企業にとっては大変大きな支援になると私は基本的に思うわけでございます。それで、多少この内容について御質問したいと思います。  今大臣もおっしゃられました、今後、技術開発とか新ビジネスを通じてそういった空洞化を避けていきたい。やはり新分野進出とか新規の事業開始ということに当たりましては、今おっしゃった技術開発、さらに商品開発、そういったものが大変大きな重要なポイントとなってまいるわけでございます。オーストリアの経済学者シュンペーターという人は、経済というのは企業家の技術革新によって進展する、発展するというふうにも言っております。この技術開発、商品開発、に対してどういった具体的な支援策が考えられているのか。今後考えられるものも含めて、事務当局でも結構でございますが、御答弁いただけたらと思います。
  189. 長田英機

    ○長田政府委員 中小企業が新しい分野進出していく、新しいことを考える場合に、技術開発、新商品の開発が非常に重要であるわけでございますが、今私どもがやっております一つの制度としましては、個別の中小企業者とかあるいは組合が行う技術開発に対しまして技術改善費補助金というような補助金を設けて支援をしております。  それで、本法との関係で申しますと、本法におきましても、技術開発、新商品の開発に必要な資金につきましては、政府関係金融機関からの低利の融資あるいは信用保険の特例の適用がございます。また、技術開発あるいは新商品開発用の設備の取得につきましては、本法によりますところの設備投資の減税制度が適用になります。さらに、設備近代化資金等助成法の特例措置も適用になります。また、特に組合がみんな一緒になりまして技術開発を行う場合には、本法によりまして税制上の優遇措置を講ずるということになっておりまして、先生の御指摘の点につきまして、この法案によりましてかなり対応ができるというふうに考えられます。
  190. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございます。  さらに、今後の支援の方向として、下請といいますか、そういった協力会社企業というのは、親企業に比べて情報力、マーケティングの情報収集力というのは大変弱いという現実があると私は思います。それが国内だけでなく海外展開しようとなれば、さらに情報能力というのにかなりの優劣が出てくると思うわけでございますが、そうした、海外展開しようあるいはさまざまなマーケティング情報を集めようというときに、実践的な生の情報というか市場ニーズを的確にとらえたものをいかに取り入れることができるか、それが新たな分野進出あるいは販路開拓といった方につながっていくと思うわけでございますが、そういった情報力、マーケティング能力というものにつきまして、この部分に対する具体的な支援策というのはあるのでしょうか。これもお聞かせ願いたいと思います。
  191. 長田英機

    ○長田政府委員 確かに、下請中小企業の場合にはいわゆる人材、情報、私どもソフトの経営資源と言っておりますが、そういう面の不足があるわけでございまして、これが非常に問題になるわけでございます。こういう点につきましては、地域の例えば中小企業の方に対しましては、いろいろな需要開拓とかデザイン開発とか、そういうようなことについての補助金等による助成を行ってまいりましたり、人材育成につきましては、中小企業大学校におきます研修、こういうことをやっております。  そのほか、情報面につきましては、中小企業事業団あるいは、県の関係の機関でございますが、中小企業地域情報センターというようなところから情報の提供を行っております。  また、特に先生が御指摘になられました海外進出の点につきましては、事業団にアドバイザーの制度を設けて、いろいろ相談に応じたり、ジェトロで海外関係のいろいろな情報を提供したり、そういうようなことで対応しているわけでございます。  また、ちなみに、本法案におきましても、承認を受けた新分野進出計画に基づいて販路開拓というようなことを行います場合には、先ほども申し上げましたように、その資金につきまして信用保険法の特例措置が適用になるということがございます。
  192. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ぜひとも、そういったソフト面においてもさまざまな支援をお願いして、万遺漏なきよう対応していただきたいと思うわけでございます。  次に、円高とか景気低迷の影響というのを直接受けるのは、個別の企業もそうでございますが、やはり特定の産地といいますか地域地域がそのまま丸ごと大きな影響を受けるということがあると思うわけでございます。本法案には地域中小企業対策ということは特にうたわれてないわけでございますが、本法律が成立し施行されましたならば、各地の中小企業地域の実情に沿ったきめ細やかな措置が実施されるよう希望するわけでございますが、そういった点につきまして都道府県知事などを適切に指導していただきたいとも思うわけでございますが、その点につきまして熊谷大臣の御所見を伺いたいと思います。
  193. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 委員おっしゃられるとおり、本法案が想定する対象業種というのはなかなかバラエティーがございまして、大枠で言いますと、委員の御指摘のように、繊維のような、日用品のような、いわゆる地場産業とか産地産業と言われるような地域型の産業と、それから機械、自動車等のような、都市的なといいますか、中小企業群に大体おおむね分類されるだろうと思うのですが、実にバラエティーがあるわけでございまして、都道府県知事あるいは市町村長、本法案の実施に当たりましてお手伝いをしていただく、あるいは主体的に参加していただく自治体に対しましては、我々お互いに協力し合いまして、それらのさまざまなニーズにこたえるような運用の弾力的展開を図っていきたい、また、具体的な運用に当たりましてはきめ細かな運用を志していきたいと考えているところであります。
  194. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございます。  あと、特定業種ということがございましたが、この特定業種が具体的にどんなものかは先ほど同僚議員も質問いたしました。私がお聞きしておきたいのは、今さまざまな海外からの日本経済に対する圧力があるわけでございますが、そういった中におきまして、本法案でも特定業種というのを定めて支援していくということでございますが、この点について海外からの批判を招くことはないか、そういった懸念はないかということについてお聞きしたいと思います。
  195. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 これは特定業種を補助金で強い産業にしていくということを目指した法案ではございませんで、さまざまな環境変化に苦しんている中小企業の新たな展開を目指した環境づくりのための法律でございますので、いわゆる輸出に何か補助金を与えているのではないかというような、その種の従来型の批判には全く該当しないものと考えております。
  196. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございます。  まだ時間があるようですのでお聞きしたいと思いますが、大臣も先ほどもおっしゃいましたように、中小企業の輸出というのは年々減る傾向にある。さらに、輸出が減るだけではなくて中小企業の開業率も年々減っていく。中小企業を新たにやっていこうという人がどんどん減っているという状況にございますが、こうした中にありまして、中小企業の開業支援策というものについては新たな具体策というのはあるのか。これは事務当局で結構でございますが、お願いします。
  197. 長田英機

    ○長田政府委員 御指摘のとおり、近年中小企業の開業率が低下してきております。こういうことに対応しまして、私どもとしましては、いろいろな面からの創業支援ということをやってきております。  例えば、ふるさと創造企業育成貸し付け、中小公庫でございますが、こういう貸付制度、あるいはフロンティア企業の育成貸し付けということで体質強化資金による貸し付け、あるいは従業員が独立するような場合ののれん分け貸し付け、これは国民金融公庫でございますが、こういうような貸付制度を実施しましたり、あるいは保険制度といたしまして、新事業開拓保険というような、通常よりも優遇した特例保険がございます。また、平成五年度からは、設備近代化資金貸付制度に創業枠というのを創設をいたしました。そして、優遇措置を講じました。また、現在御審議いただいておるこの法律案自身におきましても、特定業種分野で開業を行う中小企業支援を行うというような案になっております。  このように、新規の開業支援というのは非常に重要なことでございますので、これからも一生懸命取り組んでいきたいと思います。
  198. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございました。  先ほどから私も申し述べておりますように、今回の円高によりまして量産型産業の大企業というのは大変な打撃を受けていまして、しかし、そういった大企業というのは再構築するにはやはり時間がかかる、長期の対応を要する。そういった中におきまして、景気を回復させる先導的な担い手として中小企業、小回りがききますし、創造性に富む中小企業を積極的に支援していくという今回の法律は、私も大賛成でございますし、大変な期待が高まっていると思うわけでございます。しかし、今申しましたように大企業が大変な再構築を迫られる中で、規模経済の終えんということも言われております。今後は、大企業中小企業が入りまじって競争する時代が来るのかなという気もいたしております。  そういった中で、やはり中小企業への支援というのが大切かと思います。中小企業は、資本市場からの資金調達の手段がないわけでございますから、今長官がおっしゃったようなさまざまな融資、これにも一層力を入れていただきたいと思いますし、今回の法律の効果をさらに高めるため、これまでも中小企業を中心に近代化とか高度化、融合化などさまざまな施策をやっていただいているわけでございますが、従来のこうした中小企業諸施策の成果、こういったものをさらに有効に活用していくという必要があると思います。そういった、今後をにらんで、これまでの方策をさらに有効に活用するための将来に向けての御所見がありましたら、伺っておきたいと思います。
  199. 長田英機

    ○長田政府委員 中小企業施策につきましては、技術面、情報面、人材面、いろいろ最近問題になっている大企業との格差がございます。こういうことのために、税制、金融、補助金、いろいろな措置がございまして、非常に体系化した制度になっているわけでございます。しかしながら、中小企業者は六百五十万人おりまして、こういう施策がやはり末端まで徹底されていくことが重要だと考えられるわけでございまして、この点につきましては、中小企業団体を通じましていろいろ普及をやっているわけでございますが、まだ必ずしも十分であるとはなかなか言えないと思います。  こういう点から施策自身をわかりやすくするということも重要だと思いますし、また、その普及を徹底して、皆さんによく理解してもらって使っていただくということが大切だと思いますので、こういう点についてこれからなお努力してまいりたいと思います。
  200. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 どうもありがとうございました。  質問を終わります。
  201. 中井洽

    中井委員長 次に、吉井英勝君。
  202. 吉井英勝

    ○吉井委員 私が本日の最後の質問者ということになりますので、これまでの質問された方と若干の重複というものを避けがたいところがありますが、そのことを承知した上でお聞きしていきたいと思います。  今、中小業者の皆さんは本当に深刻な事態に置かれております。一昨日、十月二十七日にもテレビで大きく放映されておりました。私も、その集会にもごあいさつに行けば、テレビでもまた改めて見ましたが、日比谷の公会堂で、「つぶされてたまるか!仕事よこせ、資金よこせ 不況打開・営業とくらしを守る全国中小業者総決起大会」——今本当に中小業者の皆さんは、もう生きるか死ぬかというところで深刻な状態に置かれております。それだけに、あらゆる業界団体を超えて、どうして中小業者が生き延びていくかという大変深刻な事態にみんな直面しているわけです。  今度の法案の目的というのは、近年における経済の多様かつ構造的な変化対応するためとなっておりますが、この点で、先日の当委員会でも大臣所信に対する質問で私指摘いたしましたが、自動車、電機などの大企業は巨大な貿易黒字をつくり、その結果、今日の異常な円高をつくり出し、国民に多大な困難を今もたらしております。ところが今度は、国内では採算が合わないからとして一斉に海外進出を強めているという状況です。  せんだっても紹介しましたように、トヨタ自動車は、ことしの一月から九月で、前年同期に比べて国内生産を七・四%減らし、海外生産は逆に一九・八%ふやす。同様に日産は、国内では二二・六%減らして、海外で三三・九%ふやしているという状態です。電機の方も、ことしの一月から八月の数字を見ますと、前年同期に比べて、カラーテレビは国内生産を一一・八%減らし、海外からの逆輸入を四七・六%ふやしている。同様にVTRは、国内では一九・二%生産を減らして、逆輸入を三五・五%ふやしているわけですが、こうした企業行動が雇用や中小企業の経営悪化に拍車をかけているということは、この委員会でも、先日も、きょうも多数の委員の方からも論ぜられてきたと思うのです。  自分の利益を第一にして海外に出ていくという、こういう大きな企業の身勝手な行動が産業空洞化を生み出していく。これに歯どめをかけなかったならば、幾ら本法案などによる中小企業の不況対策を進めても、全く仕事がないとか、仕事の入る見通しが立たないという中小企業の困難や労働者の失業の危機などは打開できないと思うのですね。私は、先日も議論いたしましたので、まず最初に大臣の基本認識について、ごく簡潔にお伺いをしておきたいと思うのです。
  203. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 大企業もうれしくてうれしくて海外へ出ていっているのではないと私は思っておるのです。やはり国内で、トヨタなんかは典型例ですけれども尾身委員なんかよく御存じですけれども、日米のさまざまな摩擦の際に、一番海外に出ていくのを嫌がっていた企業でございます。しかし、時代が熟するとともに、時代が変わるとともに海外展開せざるを得ないという環境になっていった。とりわけ、今回の円高は突然天から降ってきたものではございませんで、円高が起こってきた背景があるわけでございます。それは日本の経常収支黒字の存在でございます。それが為替レートの変更という形になってきたわけでありまして、そういうものを踏まえて、やはりある程度世界企業展開していかないと世界経済は回らない。それに対応していく形で海外展開をしていくというのは、ある意味で市場メカニズム、指令経済、計画経済世界に負うという観点に立てはいざ知らず、世界はまさに市場経済のメカニズムで動いているわけでございまして、これはやむを得ないところがあるわけであります。  しかし、我々、この一つの国に身を置いている者といたしましては、委員も示唆されておられますように、その結果として国内の経済が空洞化してしまってはたまらない、そのためには私ども、この委員会で再三申し上げているようなマクロの政策運営というものをきちっとやること、産業構造政策もきちっとやること、またミクロの面で、規制緩和や内外価格差の是正といったミクロの政策も重視していかなければならないと思っているところであります。
  204. 吉井英勝

    ○吉井委員 貿易収支の黒字そのものが今も触れました自動車、電機などの集中豪雨的な輸出ラッシュによって生み出され、それがこの前に円高を生み出して、その対策として、今度は中小企業また働く皆さんの非常な犠牲の上で新たな競争力を強めて、それが今日また貿易黒字を生み出して、そして円高、こういう状態に今来ているわけでありますから、これをそのままにしておいて、それで根本的な解決はできないということ、これは大臣も恐らく御認識のことと思います。  中小企業白書とか予算委員会に提出された資料を見てみますと、生産額が五億円以上の産地について、八五年、プラザ合意のあの年ですが、八五年から九一年の推移を見たときに、輸出型産地では、産地数が八十二から四十二へ大体半減、企業数が二万三百二十六から七千七百九十三へ、約三分の一へ、従業者数が二十三万二千三十二人から十一万四千三百七十六人へ半減、内需型産地を含めた産地全体でも、産地数が五百三十三から五百三十へ、産地の数はそう減っていないのですが、企業数が十二万一千二百四十一から八万六千八百八へ、大体七割ぐらいに、従業者数では百六万一千二百七十五人が九十一万九千六百八十五人へと、九割を切るほどへ、企業数も従業者数も大きく減っている、こういうのが数字の上でもはっきり出ております。  全国の産地が前回の円高不況でいわば強制的につぶされたというような状態になっているわけですが、大阪で見ましても、この間ずっと伸線とか自転車とか繊維とか、東大阪、堺、泉州といった、この地域の地場産業と言われたものが転廃業を余儀なくされてきました。中小企業庁の調査で見ましても、やっとの思いで生き残ってきた輸出型産地が今また大変な事態に追い込まれているわけです。それに加えて今回、これまで日本経済を支えてきた電機、自動車、機械などの下請中小企業体制を崩壊させてしまうということになれば、本当にこれは取り返しのつかないことになってしまうと思うわけです。そういうふうにさせないためにも、やはり大企業の身勝手な海外進出、リストラというものについては、簡単に産業空洞化を許さない、企業にも社会的責任を果たさせていくように取り組まなければいけない、そのことを主張しておきまして、この点は前回議論をいたしておりますので、法案そのものに入っていきたいと思うのです。  本法案では、特定中小企業者等に対してさまざまな支援措置を講ずることとなっております。現在の不況で苦しむ中小企業者ができるだけ広く法律対象になるように、政令で定める特定中小企業者、特例中小企業者などの要件をできるだけ緩やかにするべきだと思いますが、どのように考えておられるか、この点、具体的に示していただきたいと思います。
  205. 村田成二

    村田(成)政府委員 今御指摘特定中小企業者、これにつきましては、日本経済をめぐるいろいろ構造的な、しかも多様な困難の中でそれに挑戦していく業種あるいは中小企業者を主にする、こういう趣旨で決まってくるものでございます。そういった観点から、政令では二つのグループで指定いたしたいと思っております。  第一のグループは、生産額等が過去の一定期間に比べまして相当程度減少しているというグループでございます。おおむね過去と比較いたしまして一〇%以上の生産額減少というのをめどとして考えてまいりたいと考えておる次第でございます。  第二のグループは、生産額等がここまで減少していない場合であっても、輸出比率あるいは下請比率がある程度のレベルに達していればこの特定中小企業者として認めていこう、こういうグループでございまして、この減少程度は、先ほど申し上げました一〇%に至らなくても五%以上であれば認めていこう、こういうふうに考えております。  それからまた、輸出比率下請比率につきましては、おおむねそれぞれ二〇%程度をめどとして考えているわけでございます。  それから、特例中小企業者でございますけれども、これは特定中小企業者のうち、第一のグループで申し上げましたグループを念頭に置いて考えております。
  206. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、新分野進出計画をつくり、都道府県庁に行って計画の承認を受けるということになりますが、中小業者にとって大変な負担にならないように、計画書の内容はできるだけ簡素なものにすることとか承認手続を簡単にすることとか、法案にあるように、県だけでなくて、さらに県の方にも働きかけていただいて、これは条例が必要になるかもしれませんが、市町村でもこの承認が受けられるようにするなど、業者の立場に立った運用をするべきではないかと思いますが、この点はどうですか。
  207. 村田成二

    村田(成)政府委員 まさしく先生おっしゃるとおり、中小企業者の場合には、個々に見ていきますと、いろいろな申請書類を準備するとか、あるいはいろいろなところに出向いていくゆとりですとかそういうものが比較的少ない、あるいはほとんどない中小企業者もおられるわけでございまして、そういった観点から、私どもとしましては、この法案に基づきます措置は、なるべく広く一般的に利用していただきたいという観点もこれあり、できる限り手続等々簡素化してまいりたいと思いますけれども、それはやはりおのずから限度があるものでございますから、今後そういった諸手続を定める上で極力努力するということにさせていただきたいと思います。  それからまた、都道府県知事に属します権限、市町村長に委任することになっておりますけれども、これもやはり中小企業者の利便を考えての上での措置でございまして、そういった点もあわせてできる限りの便宜を図ってまいりたい、かように考えております。
  208. 吉井英勝

    ○吉井委員 この不況のさなかに新分野進出といっても、それ自体が大変なことです。ですから、これまでと全く違う分野進出する者だけに限定するのではなくて、何らかの経営努力を行おうとするところは、できるだけ多くの中小業者が利用できるように弾力的な運用を図っていくことが大事じゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  209. 村田成二

    村田(成)政府委員 確かに厳しい経営環境にある中小企業者に対しましていろいろな形でできる限りの支援措置は講じたいとは思いますけれども、本法案で目的といたしておりますところは、やはり経済の構造的な、しかも多様な変化というものに積極的にいろいろな構造対策をもって対応していく、ないしは企業として今までにない新しい努力をもって対応していく、その困難性に着眼いたしましてできる限りの支援を講じたい、こう思っているわけでございます。したがいまして、おのずからその支援対象というところもそれなりの限定がかぶってくるわけでございますが、それにいたしましても、先生おっしゃいますように、突拍子もない新しいことを突如できるわけではございませんから、できる限りの現実に即した運用というのが必要かと思っております。  ただ、いずれにいたしましても、ある程度の外縁部というのは切らざるを得ないわけでございまして、そういった観点から、主に二つ基準で考えておりますが、一つは、四けた分類を超えるような業界間の移転、移動という場合でございます。それからもう一つは、製品が、従来の製品に比べまして原材料または生産加工技術が異なっている、そしてかつ用途、販路機能性能というもののうちいずれかを異にするというような要件で運用を考えていきたいと思っております。
  210. 吉井英勝

    ○吉井委員 特に、その第三条第二項に係る部分で、新分野進出の「目標」「内容」など、新分野進出計画に記載する事項をここで定めておりますが、実際に新分野進出しようとする者にどのように運用されるのかという点で、少し具体的なことで伺っておきたいのですが、以下六点についてちょっと伺いたいと思います。  一つは、例えば金属加工専用機械中心から組立機、搬送機械にも進出するという場合。二つ目に、設計など専用工作機械の標準化率を高め、新たな販路を開拓するという場合。三つ目に、高級化とか高付加価値化を目指す場合。四つ目に、部品加工の設備機械の稼働率をアップするということ。五つ目に、技術や能力向上のため従業員教育を行うということ。六つ目に、営業を強化するということなどで、問題は、ただそれだけのことじゃなくて、新商品の開発とか、それによる新しい販路の開拓など、今私挙げましたようなこういう六つの事例について、新分野進出に結びついていくというものであれば、こういうものは当然認められることになるのじゃないかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  211. 村田成二

    村田(成)政府委員 ただいまいろいろ御紹介いただきました事例でございますけれども、もう少し具体的にケース・バイ・ケースで判断しないと、なかなか判断が難しい面があろうかと思います。ただ、今お挙げいただきました事例のうち、最初の金属加工専用機械中心から組立機、搬送機械進出、こういう事例は少なくとも産業分類細分類を超える移動でございますので、これだけで新分野進出に該当してくる蓋然性が高いというふうに考えております。  それから二点目の、専用工作機械の標準化率を高める、これはいろいろな可能性があるのだろうと思うのでございますが、いずれにしましても、生産加工技術の変更ということだろうと思います。ただ問題は、それによってつくられます製品の用途、販路機能性能といったあたりがどうなるかということによって決まってくるのではないかと思っておりまして、そこいらでやはり従来と異なる対応がとられるということであれば、新分野進出に当たってくる蓋然性が高い、こう思います。  それから、高級化、高付加価値化につきましては、これだけでは直ちに新分野進出に当たるとは言い得ないことが多いのではないかと思います。いずれにしましても、先ほど申し上げました要件に合うような形での高級化、高付加価値化というものであるかどうかがポイントであろうかと思います。  それから、あとのところは非常に難しいと思います。ただ、従業員教育、営業強化等々、そういったソフト面の対応策につきましては、仮にもそれ自体としては新分野進出に該当しなくても、他の要因で新商品の開発等が行われる場合、それに伴って付随して行われる従業員教育等々は、これはいずれにしましても支援措置自体の対象にはなり得るということかと思います。
  212. 吉井英勝

    ○吉井委員 さらに伺っておきたいのですが、工作機械とか産業機械を製作している中小企業が、売り上げが三五%も下がった場合、近代化資金を借りてそういう企業も今助かっているわけですが、返済残を約二千五百万円残している、月々の返済が百六十万円にもなってくるとなりますと大変な事態なんですが、何とか償還期間を延ばしてもらえないかという相談なんかもよく受けておりますが、こういう場合を含めて、低利融資とか近代化資金、設備貸与の償還期間の延長とか信用保険法、高度化融資の特例など、特定中小企業者や特例中小企業者などへの支援措置というのは具体的にどうなっているのか、この点を伺いたいと思います。
  213. 山田豊

    山田政府委員 お答えいたします。  先生指摘の設備近代化資金貸し付けは、資金調達力の弱い中小企業の設備の近代化を図るために、中小企業近代化資金等助成法に基づきまして、都道府県が設備の導入を行う中小企業者向けに必要な資金の二分の一について五年間の無利子貸し付けを行う制度であります。  本法案におきましては、特に中小企業者承認を受けた計画に基づいて新分野進出等を行うに当たりまして、新たに設備近代化資金貸し付けを受ける場合、中小企業近代化資金等助成法の特例を設けまして、償還期間を五年から七年に延長し、事業展開に当たっての資金負担を軽減することにしております。また、設備貸与事業、すなわち都道府県に設置されている設備貸与機関が中小企業向けに行う設備の貸与事業におきましても、本法案によりまして、承認計画に基づいて新分野進出等を行う中小企業向けの設備について、貸与期間を五年から七年に延長することとしております。  それから、本法案におきましては、特例中小企業者承認を受けた計画に基づきまして新分野進出等事業を行う場合に、本法案の施行の日以前に貸し付けを受けました設備近代化資金がある場合には、特例中小企業者の厳しい実情にかんがみまして、特に償還期間を三年を超えない範囲内で延長できることとしておりまして、事業展開に当たっての資金負担を軽減できることにしております。また、設備貸与事業におきましても同様の措置がなされることになっております。  以上であります。
  214. 吉井英勝

    ○吉井委員 さらに低利融資ということで期待していたわけですが、融資の面で伺っておきますと、融資規模は五年間で五千億円、そのうち四千億円は金利四・三%、一千億円が利子補給による三・六%金利の融資だということですが、これでは中小企業者の要求からかけ離れた非常に不十分なものと言わざるを得ないと思うわけなのです。  全商連などの調査では、ことしの四月から八月の五カ月間だけで、営業不振などを苦にして痛ましい自殺者が四十六人も出ておりますが、各業界団体で集めているデータを全部集積しますと、もっと大きな自殺者、犠牲者が出ているわけです。そういう営業不振などによる自殺者などの出ている事態の中で、今、中小企業者の方の声を私はずっと聞いているのですが、仕事がないということ、生活費をどうするかとういう心配、年が越せるかどうかなど、本当に深刻な事態に追い込まれております。これまでの借金を抱えてこういう状態では、もう無利子でないと借りられない、こういう声が非常にたくさん出ております。私は、こうした声にこたえてもっと低利の融資制度を今実現していくべきだ、こういうふうに思うのですが、この点、どうでしょうか。
  215. 長田英機

    ○長田政府委員 無利子の制度ということでございますが、設備近代化資金制度がございます。そのほか、無利子ではございませんが、担保の関係で優遇されているマル経の融資もございます。それから、返済に当たりましてなかなか大変な方に対してましては、返済の猶予をなるべく行うように私たちも政府系金融機関を指導したりしておりまして、なるべく皆様方の資金繰りに問題が生じないように努力しているところでございます。
  216. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は今、まずもっと低利の融資制度、ぜひ実現を考えられてはということで言っているのですが、同時に、今も少し触れられた、既に借りている既往債務の返済猶予の実績が今どうなっているのかということと、それから、これまでの借入金の返済がどうしてもなかなか難しい、やむを得ないという場合は景気がよくなるまで猶予を認めていくということ、そういうことを金融機関に対して今きちんと指導して、この不況で深刻で仕事がない、自殺だということにならないように、景気が回復すればまたちゃんと返してもらうことはできるわけですから、本当にこの時期を中小業者はどう乗り越えていくか、そのことについて私は、金融機関に対する指導、特に景気がよくなるまで猶予を認めるようにすることなど、このうんと利息の安い融資制度の実現とともに、すごくここが大事だと思うのですよ。この点どうでしょうか。
  217. 長田英機

    ○長田政府委員 政府中小企業金融機関の既往債務の返済猶予の問題でございますが、これにつきましては、従来から個別の事情に応じた配慮を行うように指導を行ってきております。  そこで、実績を申し上げますと、中小公庫、国民金融公庫でございますが、この二つともそれぞれ平成四年度は前年度に比べて金額ベースで二倍ぐらいになっております。さらに五年度に入りましても、この両機関それぞれとも前年度に比べまして六割ぐらい返済猶予がふえております。さらにまた、この九月の緊急経済対策を受けまして、私どもとしましては、返済猶予につきましてきめ細かい配慮を行うように指導している状況でございまして、個別の事情に応じて万全の配慮をするように対応していきたいと考えております。
  218. 吉井英勝

    ○吉井委員 返済猶予をしたからといって今度はまた新たな借り入れを制限するとか不当に差別する、こういうことがあってはならないと思うのですが、実際にそういう問題なんかも耳にするわけです。これから年末にかけて、中小企業、中小業者の切実な要求にきちんとこたえていくように、金融対策に万全を期してもらいたいと私は思いますし、必要な通達等を出して、本当にこれは積極的な強力な取り組みをしていただきたいと思うのですが、この点、もう一度伺っておきたいと思います。
  219. 長田英機

    ○長田政府委員 今お話がございました、返済猶予を受けたら次の新しいニューローンは出さない、こういうようなことをちょっと言及されましたけれども政府系の中小企業金融機関におきましては、いわば中小企業の経営実態というものに基づいて金融審査を実施しているわけでございまして、返済猶予を受けたから、ただそれだけの理由で新たな貸し付けはしないというような差別的な取り扱いをすることはないと思います。  また、これは一般論でございますが、政府中小企業金融機関に対しましては、その中小企業の実態を十分配慮した適時適切な貸し付けを行うよう、これも従来から指導をしてきておりますし、今後とも引き続き目配りをしてまいりたいと思っております。
  220. 吉井英勝

    ○吉井委員 最後に大臣に伺っておきたいと思うのですが、今回のこの法律はまさにこれから出発ということでありまして、これから運用をどうするかということでかなり、この点で既に御答弁いただいておりますように、できるだけ実態に即してよくこれが活用できるように、そういうふうにやっていこう、そういう趣旨、意向等は伺いました。そのことを含めて、まさにこの法律が生きるも死ぬもこれからの運用に係る問題もありますし、それから、私が最後に取り上げました金融対策の面などについては、実際に今仕事がないということと、そして金が借りたくても借りられないという実態とか、そういう深刻な状況にあるのが今日の中小業者の皆さんの実態です。新分野への進出にしても何にしても、意欲はあってもなかなか大変というのが現状ですよね。  そこで私は、運用面についても積極的に、解釈としてできるだけ広義にといいますか弾力的に運用して、本当にこれが生かされていくようにということと、もう一つは、業者の皆さんの間では無利子という声がこれまでとは違ってうんとたくさん出てきているのですが、そういう低利の融資の実現の方向に向けての努力など、ぜひ大臣の方からお考えを伺って、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  221. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 中小企業対策の中で、構造政策と経営安定政策は車の両輪ではないかと思うわけですけれども、御議論いただきましたように、どちらも機動的、弾力的にできるだけ中小企業の実情に沿った運営が図られるべきでありまして、この議論を通じて明らかになりましたさまぎまな点について十分配意をして、政策の運用に努めたいと思います、
  222. 吉井英勝

    ○吉井委員 終わります。
  223. 中井洽

    中井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  224. 中井洽

    中井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出特定中小企業者の新分野進出等による経済構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  225. 中井洽

    中井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決まりました。     —————————————
  226. 中井洽

    中井委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、尾身幸次君外六名より、自由民主党・自由国民会議日本社会党・護憲民主連合、新生党・改革連合、公明党、さきがけ日本新党、民社党・新党クラブ及び日本共産党七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。尾身幸次君。
  227. 尾身幸次

    尾身委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     特定中小企業者の新分野進出等による経済構造的変化への適応円滑化に関する臨時措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、我が国経済構造変化及び中小企業をとりまく厳しい経済情勢にかんがみ、次の諸点について特段の措置を構ずべきである。  一 新分野進出又は事業開始に係る法の運用に当たっては、既に当該分野事業を行っている中小企業者との競争を不必要に激化させ、これら中小企業者に困難を生じさせないよう留意すること。  二 海外における事業の開始又は拡大に係る法の運用に当たっては、当該計画により、国内の関連事業者に不当に悪影響を及ぼすことがないよう留意するとともに、関連事業者事業の振興についても配慮すること。  三 「新たな事業分野への進出」を幅広く取り上げる等、新分野進出等計画の承認に当たっては、中小企業者努力を積極的に支援するよう努めること。  四 新分野進出等に当たっては、雇用の安定に配慮するよう指導を行うとともに、雇用安定施策の積極的活用を図ること。  五 中小企業の置かれている厳しい経営環境にかんがみ、政府中小企業金融機関に既往の債務を有する中小企業者の金利負担の軽減について検討すること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  228. 中井洽

    中井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 中井洽

    中井委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決まりました。  この際、熊谷通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。熊谷通商産業大臣
  230. 熊谷弘

    ○熊谷国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して、本法案の適切な実施に努めてまいる所存であります。     —————————————
  231. 中井洽

    中井委員長 お諮りいたします。  ただいま決議いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 中井洽

    中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  233. 中井洽

    中井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十五分散会